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防衛力を支える基盤
平成22年5月21日
日本経済団体連合会 防衛生産委員会
2
防衛産業基盤の役割
①装備品の開発・生産・提供(わが国独自の仕様・要求実現)
②自衛隊の運用支援(補用品提供、修理、改善)
防衛産業基盤の重要性
防衛産業基盤
防衛力
自律性
外交
防衛産業基盤の確立は国家としての自律性確保の大前提
3
0
500
1,000
1,500
2,000
2,500
3,000
3,500
4,000
H2 H3 H4 H5 H6 H7 H8 H9 H10 H11 H12 H13 H14 H15 H16 H17 H18 H19 H20 H21 H22
0
2
4
6
8
10
12
14
16戦闘機調達機数
航空機予算
航空機予算/戦闘機調達機数億
円機
H20~22調達なし
平成2年度以降、装備品取得予算は長期的低落傾向、装備品の調達数も減少。防衛産業が担う防衛技術・生産基盤は弱体化。
調達数量の減少と防衛産業基盤の弱体化
戦闘機レドームメーカが生産から撤退
・年産8機で生産ライン設定
・現状年産4機(19年度契約分)
・23年度でライン閉鎖(20年度以降契約なし)以降は戦闘機の新製は技術・技能散逸し困難
・装備品メーカも21年8月より順次納入を終了
23社9社14社戦闘機
計撤退が懸念されるメーカ
撤退メーカ
F-2生産状況
4
部隊 (運用)
部隊(整備)・・日々の点検・整備日々の点検・整備
・・故障した搭載機器の交換故障した搭載機器の交換
民 間 企 業民 間 企 業
・定期整備
・大規模・複雑修理
・搭載機器修理
・部品補給
・技術質問対応
・定期整備
・大規模・複雑修理
・搭載機器修理
・部品補給
・技術質問対応
基盤喪失は深刻な影響
運用を支える防衛産業基盤部隊の運用を底辺で支えているのは民間企業の防衛産業基盤
→装備品の高い可動率【注】を実現
(戦闘機の場合約1000社)(戦闘機の場合約1000社)
基盤あり(ライセンス国産)
基盤なし(輸入)
【注】可動率:スクランブルなど必要な時に正常に動いてくれる時間の割合(実際の稼働時間とは異なる)
5
1960s 1970s 1980s 1990s 2000s 2010s
米軍
空自
▽1964 運用開始
▽1971 部隊建設
▽1996 退役
F-4EJ改(能力向上)
基盤なしには米国運用終了後
の運用継続は不可能
―大規模修理
―飛行可否の判断
―補用品枯渇対策
約20年間 日本が
自主運用
F-4EJ
腐食対策腐食対策
F-4戦闘機は防衛技術・生産基盤の存在により米国運用終了後も約20年間自主運用
防衛産業基盤による改修・改善・能力向上
6
防衛産業政策の必要性
防衛産業の顧客は防衛省のみ
国家的見地から、包括的・長期的な防衛産業政策が必須
・適正な予算確保(含む研究開発費)
包括的・長期的 防衛産業政策
・重点投資分野の明確化 7~9頁
・国際的技術交流のための輸出管理政策見直し 10頁
・長期的調達計画・契約改善 11頁
7
自国で維持すべき重点技術分野、国際共同開発・生産、輸入に頼る分野に分類
国内
輸入:世界市場より
自国で維持すべき重点技術分野
国際共同開発・生産
重点投資分野の明確化 -欧州-
欧州域内の協力
欧州域外との協力
戦闘機、ミサイル、輸送機 等
潜水艦、核 等
重点投資分野の考え方
8
重点投資分野の明確化 -わが国-
基本となる安全保障・防衛政策の決定
防衛装備品整備計画
国内開発・生産
共同開発・ライセンス生産
輸入
重点投資分野を明確化
防衛技術・生産基盤の維持
海外との技術交流・導入国産技術の育成
9
防衛先進技術は一旦喪失すると回復が困難。装備品の開発から配備まで長期間を要す。防衛への投資でしか得られない技術分野あり。
例
・防衛・民生の垣根を越えて国際的な技術優位性のある分野、発展性のある技術分野を強化すべき
・有事の際の補給の必要性
・他国には依存できない
・フレキシブルな脅威への対応能力の維持、運用支援能力確保
・開発に長期間・大規模投資が必要で一旦喪失すると基盤の回復が困難
必要理由 国内開発・生産
継戦能力の確保
わが国固有の運用要求
国際的技術優位性の確保
軍民両用技術
キーとなる要素技術
システムインテグレーション技術
防衛への投資でしか得られない装備品技術
共同開発・
ライセンス生産
重点分野
重点投資分野の明確化 -案-今、基盤を失えば将来に大きな禍根。研究開発の継続が重要。
戦闘機
新素材(複合材等)
弾薬
C4ISR *
潜水艦
魚雷
*C4ISR:Command, Control, Communications, Computers, Intelligence, Surveillance and Reconnaissance指揮、統制、通信、コンピュータ、情報、監視、偵察
10
装備品の技術高度化・開発費増大に伴い多国間の共同開発が潮流に
国際共同開発参画により最新装備の早期取得、先進国との技術交流で最先端技術レベル維持(防衛技術鎖国からの開放)
国際的技術交流のための輸出管理政策見直し
原則禁止原則禁止欧州等
原則禁止原則禁止その他
原則禁止
(BMDのみ例外化済)
例外化済(S58中曽根内閣)
米国
武器武器技術相手国
少なくともこの部分の武器輸出三原則例外化が必要
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長期的調達計画・契約改善
官民公平な価格算定・契約方式防衛産業に不利な価格
算定・契約方式
価格算定・契約
メーカ選定にあたっては目先の
取得価格だけではなく、維持整備
費を含めたライフサイクルコスト
で評価し、長期的に固定
一部を除き装備品は毎年競争入札となるため、
企業は長期的な計画
投資ができない
競争入札
の弊害
陸・海・空統合運用を前提とした装備品整備計画⇒長期的な装備品調達計画を
策定
中期防衛力整備計画(5年間)は予算の裏付けがなく、計画未達のケースが多い
長期的な調達計画が不在
改善策問題点
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F-4戦闘機 修理作業
13
14
参参 考考 資資 料料
・海外への支払い増による国内への投資減
・防衛技術・生産基盤 -人-
・防衛技術・生産基盤 -設備-
・装備品の国産/輸入
・契約改善 -価格算定-
・研究開発期間 -戦闘機の事例-
・研究開発費 -他国との比較-
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0
1,000
2,000
3,000
4,000
5,000
6,000
7,000
8,000
9,000
H14 H15 H16 H17 H18 H19 H20 H21 H22
(億円)
主要装備品契約額
海外への支払い増による国内への投資減
主要装備品契約額が減少する中、輸入等で海外へ支払う金額は増加しており、国内への実質的投資はさらに減少。これは国内防衛産業基盤の弱体化につながり、自衛隊の運用支援(迅速な修理・改善等)にも支障が出る恐れ。
調達総額中の海外支払い額(輸入、企業からのライセンサー
への支払い等)
「防衛の本質からみて、国を守るべき装備はわが国の国情に適したものを自ら整えるべきであるので、装備の自主的な開発および国産を推進する」(昭和45年防衛庁長官決定) → 一定の国産・ライセンス国産を維持すべき
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A社(航空機)設計技術者1000人現場技能者1300人
B社(航空機)設計技術者500人現場技能者850人
I社(C4ISR 注)設計技術者700人現場技能者150人
D社(火砲)設計技術者140人現場技能者120人
E社(弾薬)設計技術者40人現場技能者100人
G社(ミサイル)設計技術者400人現場技能者550人
F社(戦車)設計技術者100人現場技能者100人
注. C4ISR:Command, Control, Communications, Computers, Intelligence, Surveillance and Reconnaissance
C社(艦船・魚雷)設計技術者300人現場技能者1500人
H社(ミサイル)設計技術者400人現場技能者500人
16
設計技術者、現場技能者を短期間で育成することは不可能。
人材が他部門に散逸すれば、直ちに円滑な運用支援に支障。
防衛技術・生産基盤 -人-
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I社(C4ISR)
各種シミュレータ
B社(航空機)
遷音速風洞、オートクレーブ等
D社(火砲)大型動揺試験機
E社(弾薬)
塩水噴霧試験装置、弾丸ゴムモールド装置 等
F社(戦車)
車体加工機等
G社(ミサイル)
電波暗室、空力試験設備 等
A社(航空機)
消音装置、強度試験装置、シミュレータ等
H社(ミサイル)
空力解析装置、シミュレーションセンター クリーンルーム 等
C社(艦船・魚雷)
無響音響水槽、魚雷試験設備 等
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企業は多種・多様な試験設備、生産設備を保有。
多くは防衛目的のみで民需に転用できない。一部は防衛秘密保全施設。
防衛技術・生産基盤 -設備-
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国産89式 ,97式魚雷
国産/ライセンス国産/輸入SSM-1B/シースパロー/ハープーン、SM-2艦対艦・艦対空ミサイル
国産/輸入
AAM-5, AAM-4, ASM-2/スパロー,AMRAAM
空対空・空対艦ミサイル
輸入E-2CE-767
早期警戒機早期警戒管制機
輸入MH53掃海ヘリ
国産/輸入03式, 81式, 91式/スティンガー地対空ミサイル(中・短射程・携帯)
・陸自の各種車両・施設器材は国産
国産90式戦車、99式榴弾砲、73式装甲車,89式装甲戦闘車、96式装輪装甲車
戦車・榴弾砲・装甲車車両・火砲
・PATRIOTの国産化率は約8割。
ライセンス国産PATRIOT(Raytheon/Lockheed Martin)
地対空ミサイル(長射程)誘導
機器
・イージス艦の艦体は国産、
イージスシステムは輸入。
国産DD,DDH,SS護衛艦・潜水艦艦船
国産・輸入DDGイージス艦
国産
ライセンス国産
国産/輸入
ライセンス国産
共同開発
調達形態
SSM-1地対艦ミサイル
SH-60K(Sikorsky)AH64D(Boeing)
対潜・攻撃ヘリ
C-1/C-130輸送機
・各機種に搭載される部品・装備品は国産/輸入。F-15の国産化率は約7割。
・輸入機体の整備は国内メーカ担当
F-15(Boeing)F-2(Lockheed Martin)
要撃・支援戦闘機航空機
備 考機 種 括弧内はライセンサ区 分装 備
「装備品の取得については、性能・価格面に加え、維持・補給・教育訓練の容易性やわが国独自の改善の必要性なども考慮した費用対効果に関する検討に基づき、国産、輸入あるいはライセンス国産という調達の方法の中で、最適なものを選択することとしている。」 (平成21年度版防衛白書)
装備品の国産/輸入運用・整備・支援面の機動性から国産またはライセンス国産が主体。
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企業に負担を強いる価格算定方式・片務的契約を公平なものに改善。
例1.企業実態を大きく下回る価格算定加工費レート(コスト計算の基礎となる時間あたり単価)査定の実績との乖離
例2.超過利益返納条項 コストダウンのインセンティブは働きにくい。コスト超過、実績>契約時見積→上限で契約値が変わらず利益減企業努力でコスト減、実績<契約時見積→契約額減・利益減。
契約改善 -価格算定-
契約時 確定時
GCIP
コスト
契約時 確定時
カット分GCIPコスト
(注)GCIP:一般管理費及び販売費、利子、利益等
実績>契約時見積 実績<契約時見積
契約値=上限契約額減
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研究開発期間 -戦闘機の事例-
F-1 (77機)
1950年代 1960年代 1970年代 1980年代 1990年代 2000年代 2010年~
現在
契約締結 完納
(96機)
生産期間
日本初の超音速飛行 (1971 T-2)
戦後航空産業の再開 (1952 米軍機修理開始)
1967年開発開始、1975年配備
T-2を改造 1977年配備
要素研究を含め、装備品の開発から制式化・配備までは長期間を要する。
開発期間
2011 完納予定
F-2日米共同開発(94機)
先進技術実証機2009 2014
初飛行予定要素研究
実証機(その1)
要素研究
2000量産初号機納入1989開発契約1996量産契約
19871975
1988
1967T-2(練習機)
CCV(研究機)
19841978CCV:Control Configured Vehicle 運動能力向上機
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日本の国防研究費は他国に比較し少ない。民間の研究開発投資が、国による国防研究費を補う構造。防衛固有技術(武器・レーダ・管制誘導・弾薬・ステルス等)には国による投資が必要。
70345
1714 1318 4384 4731
64
80
67
52 50
0
50000
100000
150000
200000
250000
300000
350000
米国 日本 ドイツ フランス 英国 中国
0
10
20
30
40
50
60
70
80
90
官民合わせた研究費総額
うち国防研究費
研究費民間負担割合
m$ %【研究開発投資】
出典:朝雲新聞社「国際軍事データ2008-2009」
研究開発費 -他国との比較-
不明
不明