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試薬の安全管理~試薬の安全な取り扱い~
富士フイルム和光純薬株式会社
1.はじめに
2.化学物質に関する法律
3.事故例から学ぼう
2
なぜ安全対策が必要か
3
1.事故防止の対策で完璧なものはない。
2.人はエラーをするものである。
3.事故が起こったときにどうするか、その
対策を考えておくことが必要。
購入 使用・保管 廃棄
◎法順守&正しい取り扱い
火災・爆 発 事 故
健 康 障 害
環境汚染事故
不適切な取り扱い
正しい知識の不足
試薬(化学物質)の適切な取り扱い
4
1.はじめに
2.化学物質に関する法律
3.事故例から学ぼう
5
・化学物質は、何らかの危険有害性がある
(水、食塩でも取りすぎると人体に有害)
・危険有害性の詳細が不明な化学物質も多い
・法令遵守も安全対策の1つ
試薬の取り扱い「全ての試薬(化学物質)にはなんらかの
危険有害性が存在する」
⇒量の多少に関わらず安全対策が必要!
危険有害性(ハザード)
6
化学物質に関する主な法律
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◇消防法 ◇毒物及び劇物取締法
◇覚せい剤取締法 ◇麻薬及び向精神薬取締法
◇アルコール事業法 ◇労働安全衛生法
◇火薬類取締法 ◇高圧ガス保安法
◇大気汚染防止法 ◇食品衛生法
◇農薬取締法 ◇水質汚濁防止法
◇ 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に
関する法律(医薬品医療機器等法)(旧薬事法)
◇特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の
促進に関する法律(化管法、PRTR法)
◇化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律 (化審法)
◇核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律
◇特定物質の規制等によるオゾン層の保護に関する法律
◇化学兵器の禁止及び特定物質の規制等に関する法律
◇廃棄物の処理および清掃に関する法律、etc
消防法の危険物
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・火災・爆発を引き起こす危険な、固体、液体(性質によって、第一類~第六類に分類)
(消防法第2条第7項)
第一類 酸化性固体
第二類 可燃性固体
第三類 自然発火性物質及び
禁水性物質
第四類 引火性液体
第五類 自己反応性物質
第六類 酸化性液体
第一類 酸化性固体
第二類 可燃性固体
第三類 自然発火性物質及び
禁水性物質
第四類 引火性液体
第五類 自己反応性物質
第六類 酸化性液体
~取り扱いには注意が必要~
消防法危険物の記載
×:混載を禁止する組み合わせ
第一類 第二類 第三類 第四類 第五類 第六類
第一類 × × × × ○
第二類 × × ○ ○ ×
第三類 × × ○ × ×
第四類 × ○ ○ ○ ×
第五類 × ○ × ○ ×
第六類 ○ × × × ×
~1.実験中、2.廃棄、3.保管時に活用~
類別による混載危険な組み合わせ
9
◆貯蔵又は取り扱い
1.指定数量以上 ⇒ 消防法
貯蔵所以外の場所での貯蔵を禁止
製造所、貯蔵所及び取扱所以外の場所での取扱禁止
製造所等の設置には市町村長の許可が必要
2.指定数量未満 ⇒ 市町村の火災予防条例
少量危険物の貯蔵・取り扱いとして規制
少量危険物:指定数量の 5分の1 以上、指定数量未満
の危険物(0.2~1未満)
⇒届出が必要
消防法の指定数量
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◆A実験室の例
保管薬品名 保 管 量 分 類 指定数量
ジエチルエーテル 5リットル 特殊引火物 50リットル
ヘキサン 18リットル 第一石油類(非水溶性) 200リットル
メタノール 18リットル アルコール類 400リットル
アセトン 18リットル 第一石油類(水溶性) 400リットル
◆指定数量との比を計算
5/50+18/200+18/400 +18/400 =0.28⇒ 0.2~1未満
⇒少量危険物貯蔵・取り扱いの届出等が必要
指定数量との比の計算
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少量危険物貯蔵・取り扱い所以外ではこの値が0.2未満であること
危険物:火災・爆発を引き起こす危険な、固体、液体⇒ 取扱いに注意して下さい
試薬ラベルと消防法の情報
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消防法の情報危険物第四類 第二石油類危険等級III 火気厳禁
この法律は、毒物及び劇物について、保健衛生上の
見地から必要な取締を行うことを目的とする。(法第1条)
毒物及び劇物取締法
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・日常流通している有用な化学物質
・化学物質等が持つ生物学的作用(主に急性毒性)に着目
毒性の強い順に「特定毒物」「毒物」「劇物」に分類
毒物及び劇物取締法の記載
毒物法別表第一に掲げるもの (原体)
指定令第一条に掲げるもの (原体及びその製剤)
劇物
法別表第二に掲げるもの (原体)
指定令第二条に掲げるもの (原体及びその製剤)
特定毒物法別表第三に掲げるもの (原体)
指定令第三条に掲げるもの (原体及びその製剤)
毒物及び劇物とは?(法第2条)
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注2)医薬品・医薬部外品は除く
注1)法:毒物及び劇物取締法 指定令:毒物及び劇物指定令
主な毒物・劇物
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品 名 毒劇法 製剤等除外規定
シアン化ナトリウム 毒物 製剤除外規定なし
アジ化ナトリウム 毒物 0.1%以下の製剤は除外
ホルムアルデヒド 劇物 1%以下の製剤は除外
水酸化ナトリウム 劇物 5%以下の製剤は除外
アンモニア 劇物 10%以下の製剤は除外
塩酸 劇物 10%以下の製剤は除外
硝酸 劇物 10%以下の製剤は除外
硫酸 劇物 10%以下の製剤は除外
アセトニトリル 劇物 40%以下の製剤は除外
酢酸エチル 劇物 製剤は除外(原体)
キシレン 劇物 製剤は除外(原体)
製剤:希釈や混合等された加工済みのもの
1.盗難、紛失防止措置
2.設備外への飛散、漏れ、流れ出し、しみ出し等の防止
3. 施設外で運搬する場合も2.に同じ
4.飲食物の容器として通常使用される物に入れて保存してはならない。
① 貯蔵庫は、他のものと区別し、毒劇物専用の保管庫であり、
堅固で鍵がかかるものであること。
② 保管、陳列されている毒物劇物の在庫量の定期的点検、
使用量の把握すること。
昭和52年厚生労働省薬務局長通知、他
毒物又は劇物の取り扱いと保管
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(法第11条、令第38条)
1.容器及び被包
毒物には⇒
劇物には⇒
注1)別の容器に小分け等して移し替えて保管する時や、調整したものを保管する場合、それぞれの容器に表示内容物の取り違い等を起こさないように薬品の成分名等も記載
注2)法律が改正となった時、容器に表示
2.保管・貯蔵場所
貯蔵場所にも「医薬用外毒物」「医薬用外劇物」の表示の義務がある。
表示の義務がある
毒物劇物の表示(法第12条)
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毒劇物の取扱い
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1.毒物及び劇物は、毒性が強い化学物質ですので保管(保管庫、台帳等)、表示、取扱いに注意してください。また、保管庫の鍵の取り扱いにも注意してください。
※鍵の管理者の選任、不在時の代理人の選任、鍵の管理簿を備えること(平成30年7月:厚生労働省課長通達)
2.毒物及び劇物に指定されていなくても毒性が強い化学物質はありますので、注意して下さい。
3.盗難又は紛失した時は直ちに警察署に届けて下さい。
GHS制度
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GHS(Globally Harmonized System of Classification and Labelling of Chemicals)
◆GHSは、化学物質の危険有害性の分類基準とその表示方法を国際的に統一し、安全な使用・輸送・廃棄を推進することを目的としている
◆GHSでは、ラベル及びSDSにその危険有害性の絵表示、注意喚起語、危険有害性情報、注意書きを表記することが求められている
GHS表示
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項 目
絵表示(Pictogram)
取り扱い物質の危険有害性を9つの絵表示で表現
危険有害性情報(Hazard Statements)
取り扱い物質の危険有害性に関する具体的な情報を記載
注意書き(Precautionary Statements)
取り扱い物質の危険有害性から作業者自身の身を守るための注意事項を記載
注意喚起語(Signal Words)
「危険」又は「警告」を記載「危険」の方が重大な危険有害性があり
DANGER 危険
■ 保護手袋および保護眼鏡・保護面等、必要に応じて呼吸用保護具を着用して下さい。■ 暴露または暴露の懸念のある場合、医師の診断/手当てを受けること。■ 着火源および可燃物から遠ざけて下さい。■ 眼、皮膚、衣類等についた場合、多量の水で洗い流して下さい。■ 静電気放電に対する予防措置を講じて下さい。
■ 引火性液体および蒸気■ 皮膚刺激■ 強い眼刺激■ 生殖能または胎児への悪影響のおそれ■ 臓器の障害■ 眠気又はめまいのおそれ■ 長期又は反復暴露による臓器の障害■ 飲み込み、気道に侵入すると有害のおそれ■ 水生生物に毒性■ 長期的影響により水生生物に毒性
注 意 書 き
危険有害性情報
ラベル表示例
1.化学物質等及び会社情報 9.物理的及び化学的性質
2.危険有害性の要約 10.安定性及び反応性
3.組成、成分情報 11.有害性情報
4.応急処置 12.環境影響情報
5.火災時の措置 13.廃棄上の注意
6.漏出時の措置 14.輸送上の注意
7.取り扱い及び保管上の注意 15.適用法令
8.暴露防止及び保護措置 16.その他の情報
化学物質や化学物質が含まれる原材料などを安全に取り扱うために必要な情報を記載したもの。(化学品を使用する者にとって非常に有用な情報伝達ツール)
SDS (Safety Data Sheet:安全データシート)
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SDSの例(抜粋)
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絵表示
GHS分類
注意喚起語
危険有害性情報
注意書き
安全の確認
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ラベル等に絵表示、注意喚起語があればSDSで危険有害性の種類、大きさ等を確認し、対応されることを推奨
注意喚起語
危険有害性のシンボルマーク
確認!
SDS
1.はじめに
2.化学物質に関する法律
3.事故例から学ぼう
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ヒヤリハット
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ヒヤリハットとは、事故になってもおかしくなかった状況を「冷や汗をかく⇒ヒヤリ」と「声も出ず息をのむ⇒ハット」で表した造語である。
◆重大な災害や事故には至らないものの、直結してもおかしくない一歩手前の事例の発見
◆事故に至らなかって「ああ良かった」⇒直ぐに忘れてしまう
ハインリッヒの法則
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一つの重大な事故の裏には29の軽微な事故があり、さらにその裏には300の事故寸前の「ヒヤリハット(ヒヤリとしたり、ハッとする危険な状態)」があるという。
重大な事故の発生を防ぐためには、ささいなミスや不注意などを見逃さず、その時点で対策を講じる必要がある。
重大な事故(1)
軽微な事故(29)
ヒヤリハット(300)
化学実験中に起こる事故の原因は?
不可抗力
少ない不注意 知識不足
多い
化学実験中の事故
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塩酸の取り扱いの注意
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1.皮膚に触れると薬傷塩酸から発生するHClガス、ミストに注意
2.各種金属と反応し水素ガスを発生
3.密栓した瓶を開く時は内圧が高くなっており、内容物が吹き出すことがある(夏場は特に注意)
発煙硝酸、ギ酸、低沸点有機溶媒等も夏場は内圧が高くなっているので注意すること
硫酸の取り扱いの注意
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1.皮膚に触れると薬傷(濃硫酸、熱硫酸は特に注意)
2.強酸化性物質、金属粉、有機物と接触、混合すると、発火、爆発することがあるから注意(保管場所も)。
3.比重が大きいので持ち運びは注意(比重1.84)。
4.塩酸などと異なり不揮発性→希硫酸でも溢して放置しておくと濃い硫酸
になるので注意。
5. 濃硫酸に水を加えると、発熱、飛沫が飛ぶ希釈するときは水に濃硫酸を加える。
混ぜるな危険(事故例) (1987年12月)
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NaClO + 2HCl → NaCl + H2O + Cl2↑
徳島県の主婦が、トイレで「塩素系漂白剤」と「塩酸系汚れ落とし」を混ぜて使用し、塩素中毒で死亡
塩素系漂白剤 : 次亜塩素酸ナトリウム塩酸系汚れ落とし : 塩酸
◆
類似の事故が多いので注意して下さい
水酸化ナトリウム固体を粉砕時に小片がメガネの横から
片眼に入り負傷した。
・アルカリ溶液はたんぱく質を直接破壊する。
・水酸化ナトリウムは目、皮膚、気道に対して強い腐食性
を示し、強酸よりも大きな障害を起こすことがある。
特に目に入った場合は失明する危険もあるため、溶液を
扱った後はすぐに手を洗う。
・目に薬品が入ったら15分以上流水で洗うこと。
~適切な保護眼鏡(安全眼鏡)、ゴーグル着用の
ルール化(習慣づけ)が大事~
水酸化ナトリウムによる薬傷
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業務用洗剤を入れたアルミ缶が破裂(2012年10月)
東京メトロの車両内でアルミ缶が破裂し男女16人が軽傷を
負った。業務用洗剤(強アルカリ性)をアルミ缶に入れて持
ち帰る途中に事故が発生した。
~原因~
・アルミ缶(アルミニウム)と業務用洗剤(成分:水酸化ナト
リウム水溶液)が反応し、水素ガスが発生し缶が破裂した。
Al + 2NaOH + 6H2O → 2Na[Al(OH)4] +3H2↑
薬品は入れ替える時はその容器の材質にも注意!
有機溶剤による中毒
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店内清掃作業中、陳列棚等にあった粘着シールのはがし
跡をふき取るため、アセトン含有の除光液を染み込ませた
布を使用していたところ、作業開始から約1時間後に気分
が悪くなり、病院へ搬送された(有機溶剤中毒)。
除光液 :アセトン約70%
発生原因 :換気不十分、呼吸用保護具なし
(厚生労働省HPより)(平成18年1月事故)
有機粉塵による肺疾患(2017年4月)
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高分子化合物等を製造する国内の化学工場の同じ作業場で働いていた6名に、肺の繊維化や間質性肺炎などの肺疾患が発症した。6名のうち5名は業務歴が2年前後と短期間。
現時点では、この吸入性粉塵による肺疾患の発生機序等は明確になっていない。
厚生労働省⇒注意喚起(予防的観点)◆化学物質の種類を問わず、高濃度の粉塵などを
吸入すると肺疾患などの健康障害を生じるおそれがある。
◆吸入性粉塵のばく露に注意!
◆防塵対策、粉塵マスクの着用
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シルキーマスク DF620N
国家検定合格
635-40851
スカイマスク
639-40871 632-40861
直結式小型吸収缶(有機ガス用)
サージカルマスク
適切な保護具の選択
サージカルマスク(日常使用しているマスク)
外科用のマスクという意味で、本来、手術の時などに医師の口から唾液や雑菌などが患者の手術部位に付着しないように開発されたマスク
日常使用しているマスクでは有機溶剤、粉塵から身を守ることはできない!
有機溶剤用防毒マスク、防塵マスクは国家検定合格品を使用すること
福井県の染料工場で、o-トルイジン等の化学物質を取り扱う作業に従 事していた複数名の労働者が膀胱がんを発症した事案が発生した。
~原因~o-トルイジンに汚染された保護手袋の使用などにより、同物質を長期間 にわたり皮膚から体内に吸収したことによる。
~対策~・有害物質の皮膚からの吸収にも注意・清潔な保護具の使用
オルト-トルイジンで膀胱がん発症(2015年2月)
2012年、大阪の印刷会社に勤務していた20代~30代の労働者11名が胆管癌を発症(内6人死亡)する事故が大きな問題となった。(原因:1,2-ジクロロプロパン)
フロン系の洗浄剤がオゾン層の破壊の原因物質ということで使用が禁止となった。
1,2-ジクロロプロパンは、有機溶剤中毒予防則(有機則)に該当していなかったので使用。作業環境:窓もない地下室(換気扇不十分)、防毒マスク未着用
「法規制の適用の対象でない=無害=何もしなくてよい」と勘違い
◆リスクアセスメント実施していれば防げた⇒リスクアセスメント実施の強化(努力義務⇒義務へ)
リスクアセスメントの未実施
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試験・研究もリスクアセスメントが必要
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少量・多品種を取り扱う試験研究業や教育業(大学の研究室
等)でも、リスクアセスメントの適用除外にはなりません。
リスクアセスメントの具体的な実施方法としては、取扱い物質、
作業手順と防護措置を簡単にチェックする方法などが考えられ
ますので、各事業者が適切な方法で行うようにしてください。
(厚生労働省HPより)
研究目的で少量取り扱う場合もリスクアセスメントが必要か?研究目的で少量取り扱う場合もリスクアセスメントが必要か?
リスクアセスメントは大学・研究機関・医療機関も例外ではない
1.経時変化(内容物、ラベルの劣化)
2.災害(地震、洪水)3.法規の改正
1.経時変化(内容物、ラベルの劣化)
2.災害(地震、洪水)3.法規の改正
不要薬品は早めに処理不要薬品は早めに処理
試薬の長期保存はリスクが大
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