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温度試験槽における温度の不確かさの評価方 …温度試験槽における温度の不確かさの評価方法(JTM K 08)について 2. 試験槽の温度性能の概要

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温度試験槽における温度の不確かさの評価方法(JTM K 08)について

技術解説

温度試験槽における温度の不確かさの評価方法(JTM K 08)について

中浜 寛和 エスペックテストセンター㈱ 事業推進部 校正センター

エスペック技術情報 No.53 1

日本試験機工業会(以下,日試工)では,温度試験槽内に実現される温度の不確かさを評価するた

めの規格を,JTM K 08「温度試験槽における温度の不確かさの評価方法」(以下,K 08)として 2007

年 7 月に発行した。この規格では,2007 年 3 月に発行された JTM K 07「温度試験槽-性能試験方

法及び性能表示方法(以下,K 07)」にもとづいて不確かさが考えられている。K 08 における不確

かさの考え方と求め方を以下に解説するとともに,議論になった点や規格として統一できなかった

点にも言及した。

1. はじめに

JIS Q 17025(ISO/IEC17025)「試験所および校正機関の能力に関する一般要求事項」では,試験

所および校正機関は測定の不確かさを推定する手順を持つことを要求している。温度試験槽を用い

て行われる温度試験,いわゆる環境試験においても,槽内において実現される温度がどの程度の不

確かさを持つのかを評価することが求められるようになってきた。

そこで,日試工では,K 07 の制定に合わせて,温度試験槽の温度の不確かさを求める方法・手順

を K 08 として定めたわけである。

K 07 については,エスペック技術情報№49(2007 年 4月 2日発行)で解説されているが,従来の

JTM 規格(JTM K 01,03,05)とは大きく異なっている。測定した槽内の温度性能について,温度変

動や温度勾配・空間温度偏差の最大値を試験槽の性能として表示する。換言すれば,温度性能のバ

ラツキの大きさを表示しているわけである。したがって,この K 07 をもとにすれば,温度のバラツ

キが不確かさとして計算できる。

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温度試験槽における温度の不確かさの評価方法(JTM K 08)について

2. 試験槽の温度性能の概要

2-1 温度性能の定義と表示方法

エスペック技術情報№49と重複する部分があるが,K 07 で規定された温度性能について,主要な

項目だけを表 1にまとめる。

表 1 JTM K 07 と従来の JTM 規格との相違点

従来規格(JTM K 05) 新規格(JTM K 07)

性能項目 定義と求め方 性能項目 定義と求め方

有効空間 内壁面から 1/6 の距離を除く空間 有効空間 内壁面から1/10の距離を除く空間

温度変動幅 測定点:1点(槽中心のみ)

計算方法:

得られたデータの平均値を求め

る。同じデータをその平均値より

大きい値と小さい値に振り分け,

大きい値だけの平均値(平均最高

温度)と小さい値だけの平均値(平

均最低温度)を求め,その差を 2

で割って±を付けて表示する。

温度変動 測定点:9点(槽中心および有効

空間の隅 8点)

計算方法:

各測定点において測定データから

標準偏差σを求める。得られた 9

つのσのうち,最大の値を採用し,

2倍して±を付けて表示する。

温度勾配 測定点:9点(槽中心および有効

空間の隅 8点)

計算方法:

9 点でそれぞれ平均温度を求める。

得られた 9つの平均温度のうち,

最大値と最小値との差を温度勾配

として表示する。

温度分布 測定点:9点(槽中心および有効

空間の隅 8点)

計算方法:

槽中心での平均温度を求める。

8 隅で得られた温度測定値全部を

槽中心の平均温度より大きい値と

小さい値に振り分ける。平均温度

より大きい値の平均値と小さい値

の平均値を求め,その差を 2で割

って±を付け,温度分布とする。

空間温度偏差 測定点:9点(槽中心および有効

空間の隅 8点)

計算方法:

9 点でそれぞれ平均温度を求める。

槽中心での平均温度と,他の 8隅

での平均温度との差の絶対値を求

め,その最大値を空間温度偏差と

して表示する。

エスペック技術情報 No.53 2

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温度試験槽における温度の不確かさの評価方法(JTM K 08)について

2-2 有効空間

有効空間を図 1で表す。図 1の外側の実線は試験槽の内壁面を表し,陰影面で囲われた部分が有

効空間である。

図 1 有効空間

3. 試験槽の温度と不確かさについて

3-1 試験槽の温度と不確かさについて

表 1からわかるように,K 07 では,槽中心と有効空間の 8隅の合計 9箇所で測定して得られた温

度変動・温度勾配・空間温度偏差が,すべて最大値により温度性能として表示される。また,有効

空間が大きくなり,狭い有効空間内の平均的な性能を重視していた従来規格から,壁面に近い部分

までの温度分布を考えた性能表示となった。

K 07 では,時間的・空間的な温度のバラツキを表示しており,9箇所のうち,1点でも温度が偏っ

ていたり時間的な変動が大きい箇所があれば,それによって性能が決まってしまう。非常に厳しい

規定であるが,バラツキをもとにしているので,不確かさの評価になっているわけである。

エスペック技術情報 No.53 3

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温度試験槽における温度の不確かさの評価方法(JTM K 08)について

3-2 試験槽を代表する温度

試験槽の温度を考える場合,もっとも認識が分かれるのが,試験槽の温度とは試験槽のどの部分

の温度を指しているのか,という点である。JTM 規格では従来,槽の幾何学的中心(槽の中心)での

温度を試験槽の温度としてきた。この規格(K 08)でも,槽の中心での温度が槽を代表する温度であ

ると考える。

しかし,試験槽に搭載された温度調節器が温度を計測制御するために測定する箇所(温度検出端

の感温部)は,図 2に示すように,試験槽内の隅や槽内を循環する風の吹き出し口または吸い込み

口にある場合が多い。

図 2 温度試験槽の構造の一例

したがって,試験槽の温度調節器での設定温度または指示温度と槽の中心での温度との間には,

槽の構造と計測制御用温度センサの位置および温度調節方式により,ある程度の温度偏差が存在し

ているのが普通である。温度調節器の設定値どおりに槽の温度が発生しているかどうかは制御の問

題であり,温度指示計の示す温度が槽中心の温度に忠実であるかどうかは,計測の問題である。い

ずれにしても,温度調節器による温度と槽の中心での温度に偏差があるならば,この温度偏差は不

確かさに含まれるべきである。温度調節器にオフセットをかけることにより,温度偏差の補正は可

能であるが,補正による不確かさは残る。

エスペック技術情報 No.53 4

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温度試験槽における温度の不確かさの評価方法(JTM K 08)について

3-3 不確かさの表示方法

K 08 では,不確かさをバジェット表(不確かさの要因とその見積もりの一覧表)とともに示すこ

とにより,どこまでを不確かさの要因に取り込んでいるのかを明確に示すよう求めている。

通常,校正や試験の証明書では,結果として総合して得られた不確かさの大きさだけが示され,

不確かさの要因と各要因の不確かさの数値までは示されない場合が多い。この規格では,不確かさ

の要因とその求め方について,具体的な計算手順と数値例を示すことにより,それらを明らかにで

きるようにした。

4. 不確かさの要因と評価方法

4-1 要因の分析

温度試験槽の不確かさの要因を図 3に示す。試験槽が持つ基本的な性能に影響する不確かさの要

因を図の上半分に,その基本性能を測定するシステムが持つ不確かさを下半分に示した。不確かさ

を合成する際,各要因は独立であることが前提である。しかし,独立であるかどうかを厳密に証明

することは困難である。

試験槽の温度性能を測定するために用いる温度測定システムが持つ不確かさは,得られた測定値

に影響している。応答性がよく高精度な温度測定器を使えば,得られた温度変動の数値は正確に実

態を表しているであろう。逆の場合は,応答性や分解能が悪くて温度変動が検出できなかったり,

各種の誤差を含んで変動が大きくなってしまう可能性がある。したがって,温度測定器にもとづく

不確かさも評価対象に含めるわけである。

測定条件も不確かさに影響するので,試験場所の環境としてK 07で規定した標準条件にしたがい,

不確かさ評価のための測定を行う。

図 3 温度試験槽の不確かさの要因

エスペック技術情報 No.53 5

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温度試験槽における温度の不確かさの評価方法(JTM K 08)について

4-2 供試品の有無

温度槽の性能としてメーカーが保証しているのは,基本的には供試品を入れていない空の場合で

ある。K 07 も空の場合の性能評価方法を規定している。したがって,K 08 では空の場合の不確かさ

を考え,供試品を入れた場合は取り上げない。供試品を入れた場合の不確かさは,個々の温度(環

境)試験方法ごとに考えた方が良いと思われる。

4-3 温度変動と温度分布

温度試験槽を,ある任意の一定温度を発生する恒温槽と考えた場合,その発生する温度の不確か

さは,時間的な変動としての温度変動と空間的な変動である温度分布の 2つに分けられる。これを,

JIS C 60068-3-5(IEC 60068-3-5)「環境試験方法-電気・電子-温度試験槽の性能確認の指針」(以

下,60068-3-5)では,「温度差の例」という,非常に簡略化された概念図で表している。それを図

4として引用する。

温度分布については,有効空間の中心(槽の中心)を基準にした 空間温度偏差,有効空間全体で

考えた温度勾配の 2つの方法で示されている。60068-3-5 では,これらの温度性能の具体的な測定

手順は定められていない。K 07 では,これらについて,その評価方法と表示方法を具体的に提示し

た。

図 4 温度差の例(JIS C 60068-3-5 より)

4-3-1 温度変動の不確かさ uf

K 07 では,温度変動は有効空間内の 9箇所(槽の大きさで異なる場合がある)に設置した温度検

知器で得た測定値について,それぞれの測定箇所ごとに標準偏差 σfを求め,2倍して,±を付け

て温度変動とする。表示するときは測定箇所ごとに得られた温度変動のうち,その最大値を採用す

る。したがって,K 08 で求める温度変動の標準不確かさを uf(℃)とすると,2倍する前の σfを

そのまま用いればよく,uf =σfとなる。

エスペック技術情報 No.53 6

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温度試験槽における温度の不確かさの評価方法(JTM K 08)について

4-3-2 温度分布(空間温度偏差)の不確かさ uv

時間的な温度変動は空間的な温度分布に瞬間瞬間に影響しているはずであるが,時間的な変動を

平均化することにより,温度変動と温度分布を独立した要因と見なすことができる。つまり,各測

定箇所において測定した温度について,規定した測定時間内でそれぞれ平均した温度を用いること

により,空間的な温度分布を求める。

K 07 では温度分布性能として温度勾配と空間温度偏差の 2つを規定している。K 07 では,温度勾

配とは,「温度安定後の,任意の時点における有効空間内の,別々の 2点間の平均温度の差の最大

値。」,空間温度偏差は,「温度安定後の任意の時点における,有効空間内の中心の温度と有効空

間内の別の任意の点の温度との間の平均値の差。」と定義している。

K 08 では槽中心(有効空間の中心)を基準点に考えるので,空間温度偏差をもとに温度分布の不

確かさを求める。槽中心から有効空間の各頂点までの温度偏差に一様分布を仮定できるので,空間

温度偏差をδv(℃)とし,その標準不確かさを uv(℃)すると,uv=δv/√3 となる。

4-4 設定温度からの温度偏差による不確かさ ud

温度調節器で設定した温度と槽の中心との温度偏差については,K 07 では規定しておらず,従来

の JTM 規格でも取り上げていない。つまり,設定温度に対して槽内温度がどの程度ズレているかに

ついては,仕様値として明らかにされていない。

したがって,槽の中心の温度を別途用意した温度計で実測し,得られた槽内温度と設定温度との

差を温度偏差として求める必要がある。この温度偏差は槽の構造や温度制御システムおよび外乱な

どによって異なるが,ほぼ系統的な効果と考えられ,一定の試験温度に対してはほぼ一定値を取り,

外囲温度と設定温度との差に比例して大きくなるであろうと推測される。仕様の最高温度で最も大

きくなり,外囲温度と同じ設定温度のとき最も小さくなるであろう,つまり,設定温度と外囲温度

との差に依存して一様分布になるのではないか,という推測が成り立つ。したがって,標準不確か

さに変換する場合の方法に議論の余地がある。

さらに,図 5に示すように,設定温度からの温度偏差は,空間温度偏差 aと重なりあい,不確か

さをダブルカウントすることになる,という場合が考えられる。図 5で示す空間温度偏差 aは小さ

く,それに対して空間温度偏差 bが大きい場合,ダブルカウントにはならず,温度検出端を含めた

槽内の温度分布(温度勾配)を表している,と見なせる。

K 08 の審議では,この温度偏差を不確かさに含めるかどうかで議論が分かれた。結局,不確かさ

評価の実施者の判断に任せることに決定した。しかし,不確かさはバジェット表とともに示すこと

に決定したので,どこまでを不確かさに含んでいるかは明確にされる。

不確かさの求め方としては,温度偏差の絶対値をδd(℃)とし,その標準不確かさを ud(℃)と

して,一様分布を仮定し,ud=δd /√3とする。

エスペック技術情報 No.53 7

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温度試験槽における温度の不確かさの評価方法(JTM K 08)について

図 5 設定温度からの温度偏差および空間温度偏差

4-5 温度計測器による不確かさ u i 温度変動や分布を評価するために用いる温度検出器(センサ)としての熱電対や測温抵抗体は,

通常,出力変換器やハイブリッドレコーダなどの記録計,あるいはデジタルマルチメータなどの電

圧・抵抗測定器に接続して用いる。したがって,温度計測器としての不確かさは,これらの温度検

出器と測定計器類の不確かさを合成したものである。

これらの計測器類は,校正されていることが前提である。校正成績書に不確かさが記載されてい

ればよいが,そうでない場合,仕様値や規格値から不確かさを推定することになる。さらに,再現

性や安定性を評価しておくのがベストであるが,それができないならば,仕様値から推定する。規

格値あるいは仕様値の幅±aを一様分布とみなし,u i =a/√3により,標準不確かさに換算する。

5. 不確かさの合成

温度試験槽のカタログ仕様値から,Bタイプの不確かさ ※1として槽の不確かさを見積もる場合,

K 07 にしたがって記載された温度変動と空間温度偏差を合成すれば,恒温槽としての不確かさは求

まる。さらに,ある温度試験を行う場合,その時間中,槽内温度を別途用意した温度計で実測し,

その温度計の不確かさを合成すれば,試験温度の不確かさが求められる。

温度試験槽の温度の不確かさを,Aタイプの不確かさ ※2として実測により求める場合,求めた温

度変動と空間温度偏差に加え,有効空間内に設置した温度検知器の不確かさも合成する。

温度調節器と槽の中心との温度偏差については,これを不確かさに組み入れるかどうかは,不確

かさ評価の実施者の判断に任せる。ただし,不確かさの数値だけが一人歩きしないよう,バジェッ

ト表を付けることにより,どこまでの要因を組み入れ,それがどれだけ不確かさに寄与しているか

を示すようにした。さらに,それがある一つの温度ポイントにおける不確かさなのか,ある温度範

囲にわたっての不確かさなのかを明確にする。

以上の不確かさ要因をすべて合成すると,合成標準不確かさ uは,

u=√(uf2 + uv

2 + ud2 + ui

2 )

として求まる。拡張不確かさ Uは,包含係数 K=2 として,

U=2×u

となる。

エスペック技術情報 No.53 8

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温度試験槽における温度の不確かさの評価方法(JTM K 08)について

エスペック技術情報 No.53 9

不確かさの計算のための測定データを表 2に示す。このデータは,理解を助けるための模擬的な

数値であり,実際の測定データとは異なる。このデータをもとにして求めた不確かさバジェット表

を表 3,表 4に示す。設定温度からの温度偏差を含めない場合が表 3,含めた場合が表 4である。

表 2 温度試験槽内の温度測定データ 設定温度 100℃ 単位:℃

№ 測定箇所

時間(min)

(1) (2) (3) (4) (5)

(槽中心)

(6) (7) (8) (9)

0 0 99.9 99.7 99.8 100.3 100.4 100.3 100.1 100.5 100.7

1 2 99.8 99.6 99.8 100.3 100.4 100.2 100.1 100.4 100.8

2 4 99.9 99.5 99.8 100.3 100.4 100.2 100.1 100.4 100.5

3 6 99.8 99.4 99.8 100.3 100.4 100.2 100.1 100.4 100.6

4 8 99.9 99.7 99.8 100.3 100.4 100.2 100.1 100.4 100.6

5 10 99.9 99.6 99.8 100.3 100.3 100.2 100.1 100.4 100.7

6 12 99.9 99.5 99.8 100.3 100.4 100.2 100.1 100.4 100.8

7 14 99.8 99.4 99.8 100.3 100.4 100.2 100.1 100.4 100.7

8 16 99.9 99.7 99.8 100.2 100.3 100.2 100.1 100.4 100.6

9 18 99.9 99.6 99.8 100.2 100.2 100.2 100.1 100.4 100.4

10 20 99.9 99.5 99.8 100.3 100.1 100.2 100.1 100.4 100.3

11 22 99.9 99.4 99.8 100.3 100.0 100.2 100.1 100.4 100.4

12 24 99.8 99.7 99.8 100.3 100.1 100.2 100.1 100.4 100.4

13 26 99.8 99.6 99.8 100.2 100.1 100.2 100.1 100.4 100.5

14 28 99.8 99.5 99.8 100.2 100.2 100.1 100.0 100.4 100.5

15 30 99.8 99.4 99.8 100.2 100.2 100.2 100.0 100.4 100.6

A 平均温度 99.86 99.55 99.80 100.27 100.27 100.20 100.09 100.41 100.57

B 最高温度 99.9 99.7 99.8 100.3 100.4 100.3 100.1 100.5 100.8

C 最低温度 99.8 99.4 99.8 100.2 100.0 100.1 100.0 100.4 100.3

D 温度変動(B-C) 0.1 0.3 0.0 0.1 0.4 0.2 0.1 0.1 0.5

E 槽中心の平均温度との差

(空間温度偏差) -0.41 -0.72 -0.47 0.00 - -0.07 -0.18 0.14 0.30

6. 不確かさの計算例

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温度試験槽における温度の不確かさの評価方法(JTM K 08)について

エスペック技術情報 No.53 10

表 3 不確かさバジェット表 設定温度 100℃

(設定温度からの温度偏差を含めない場合) 単位:℃

不確かさの要因と記号 記号と

計算

要因の

大きさ

標準

不確かさ

合成標準

不確かさ備考

温度変動 δf 0.3

i)温度変動による不確かさ:uf δf/2 0.15

空間温度偏差 δv 0.72

ii)空間温度偏差による不確かさ:uv δv/√3 0.416

槽の不確かさ √(uf2+uv

2) 0.442 i)~ii)を合成

温度検出器(T熱電対クラス 1) tr 0.5 JIS 許容差

iii)温度検出器による不確かさ:us tr/√3 0.289

温度変換器(記録計) Ra 0.55 仕様確度

iv)温度変換器による不確かさ:ur1 Ra/√3 0.318

熱電対補償器(室温補償) RJ 0.5 仕様確度

v)熱電対補償器による不確かさ:ur2 RJ/√3 0.289

温度計測器の不確かさ:ui √(us2+ur1

2+ur22) 0.517 iii)~v)を合成

槽の温度性能の標準不確かさ:u √(uf2+uv

2+us2+ur1

2+ur22) 0.680 i)~v)を全部合成

槽の温度性能の

拡張不確かさ:U(k=2) 2*u 1.4

表 4 不確かさバジェット表 設定温度 100℃

(設定温度からの温度偏差を含めた場合) 単位:℃

不確かさの要因と記号 記号と

計算

要因の

大きさ

標準

不確かさ

合成標準

不確かさ備考

温度変動 δf 0.3

i)温度変動による不確かさ:uf δf/2 0.150

空間温度偏差 δv 0.72

ii)空間温度偏差による不確かさ:uv δv/√3 0.416

設定温度からの温度偏差 δd 0.27

iii)設定温度からの温度偏差による

不確かさ:ud δd/√3 0.156

槽の不確かさ √(uf2+uv

2+ud2) 0.469 i)~iii)を合成

温度検出器(T熱電対クラス 1) tr 0.5 JIS 許容差

iv)温度検出器による不確かさ:us tr/√3 0.289

温度変換器(記録計) Ra 0.55 仕様確度

v)温度変換器による不確かさ:ur1 Ra/√3 0.318

熱電対補償器(室温補償) RJ 0.5 仕様確度

vi)熱電対補償器による不確かさ:ur2 RJ/√3 0.289

温度計測器の不確かさ:ui √(us2+ur1

2+ur22) 0.517 iv)~vi)を合成

槽の温度性能の 標準不確かさ:u √(uf2+uv

2+ud2+us

2+ur12+ur2

2) 0.698 i)~vi)を全部合成

槽の温度性能の拡張不確かさ:U(k=2) 2*u 1.4

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温度試験槽における温度の不確かさの評価方法(JTM K 08)について

7. おわりに

K 08 では,温度試験槽の不確かさを求める方法をできるだけ具体的で利用しやすくすることを目

指し,計算手順だけでなく,模擬データおよびバジェット表を例示した。これにより,誰でも簡単

に不確かさが求められるようになったのではないか。

規格としては,K 07 でメーカーが保証する有効空間全体での性能について不確かさを求めること

になる。実際にユーザーが使用するときは,供試品が置かれた雰囲気の性能が重要である。その場

合も,この規格に準じて不確かさを評価すればよいと思われる。

日試工では現在,恒温恒湿槽(室)の性能評価方法について審議を行っており,その後は,恒温

恒湿槽の不確かさについても規格を作成していく予定である。

〔用語解説〕

※1.B タイプの不確かさ

一連の観測値の統計的解析以外による不確かさ。具体的には校正成績書に記載された不確かさ。

カタログ仕様値や規格値を不確かさとして用いる場合は Bタイプに該当する。

※2.A タイプの不確かさ

一連の観測値の統計的解析による不確かさ。

エスペック技術情報 No.53 11

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45 号訂正のお知らせ

45号訂正のお知らせ

技術レポートの 7ページ目、図 10の一部に誤りがありました。下記のとおり訂正すると共にお詫び

申し上げます。

№45 の正誤表

エスペック技術情報 No.53 12

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公益信託 エスペック地球環境研究・技術基金 -平成 20 年度 助成対象者募集-

トピックス

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-平成20年度 助成対象者募集-

大槻 浩 環境管理部 EM 推進グループ

当基金は平成10年3月に設立し今年で11年目を迎えました。平成19年度の14件を含め、これまで78件

のテーマに対して助成を行ない、微力ながら地球環境保全のお役に立っていると自負しております。 平成20年度も下記の要領で、助成対象者を募集いたします。多数の方のご応募をお待ちしております。

公益信託 エスペック地球環境研究・技術基金

-平成 20 年度応募要項(概要)-

1. 目的

この公益信託は、地球環境保全に関する科学的、技術的な知見を高める各種活動もしく

は地球温暖化に対する一つの処方としての緑化の重要性を教育・啓発するための費用の

一部または全部を助成することにより、地球環境問題の克服に寄与することを目的とし

ています。

2. 助成対象者

地球環境問題の解決に資する調査研究、及び技術開発に関するものについては、大学、

大学院および工業高等専門学校並びにそれらに付属する研究機関の構成員またはそのグ

ループを対象とします。

地球温暖化に対する一つの処方としての具体的な緑化教育・啓発活動については、各種

の学校または NPO 等が主催(または団体として参加)するものを対象とします。

3. 助成金額

平成 20 年度の助成総額は、800 万円程度で、11~13 件の助成となります。

4. 応募方法

所定の申請書をみずほ信託銀行株式会社(下記)からお取り寄せください。申請書に必

要事項をご記入のうえ、みずほ信託銀行株式会社宛お送りください。

5. 応募期間

平成 20 年 4月 1日~同年 5月 30 日(必着)

6. 申請書取り寄せ先、問い合わせ先

〒530-0057 大阪市北区曽根崎 2丁目 11 番 16 号 みずほ信託銀行株式会社大阪支店

法人営業部 公益信託エスペック地球環境研究・技術基金宛

TEL:06-6313-4713 FAX:06-6313-4724

★応募要項の詳細は、弊社ホームページ

(http://www.espec.co.jp/corporate/csr/kenkyu/kenkyu.html)でご覧になれます。

エスペック技術情報 No.53 13