90
宇宙機の設計のための宇宙環境 宇宙航空研究開発機構 松本 晴久 2015年5月8日 第3回宇宙学セミナー 京都大学 総合博物館 本館3階講義室

宇宙機の設計のための宇宙環境の方針から国産部品開発(42品種)が実施された。 . 半導体電子部品は耐放射線性を加味して、人工衛星(特に

  • Upload
    others

  • View
    0

  • Download
    0

Embed Size (px)

Citation preview

Page 1: 宇宙機の設計のための宇宙環境の方針から国産部品開発(42品種)が実施された。 . 半導体電子部品は耐放射線性を加味して、人工衛星(特に

宇宙機の設計のための宇宙環境

宇宙航空研究開発機構 松本 晴久

2015年5月8日 第3回宇宙学セミナー 京都大学 総合博物館 本館3階講義室

話の流れ

技術データ取得装置(TEDA)の概要と成果 bull 主な成果 bull 不具合解析例

宇宙天気のリスクと対策 bull 宇宙環境による衛星システムへの影響 bull 宇宙環境を原因とする不具合の割合推移部位 bull 静止軌道不具合 bull 対策

今後必要な観測項目

まとめ

話の流れ

技術データ取得装置(TEDA)の概要と成果 bull 主な成果 bull 不具合解析例

宇宙天気のリスクと対策 bull 宇宙環境による衛星システムへの影響 bull 宇宙環境を原因とする不具合の割合推移部位 bull 静止軌道不具合 bull 対策

今後必要な観測項目

まとめ

TEDA(技術データ取得装置) (国産部品の宇宙環境での実証の必要性)

1975年度から国産部品の開発が始まりさらに1984年~

1988年(ピークは1986年)にH-II ロケットの純国産化の方針から国産部品開発(42品種)が実施された

半導体電子部品は耐放射線性を加味して人工衛星(特にETS-VI以降の衛星)との共通部品とした

国産部品を人工衛星に搭載して宇宙フライトデータ作りが必要となる(国産部品をフライト実績とする)

部品の電気特性劣化データと同時に宇宙環境データ(放射線帯電)の計測が必要になった

気象衛星ひまわり1号~4号 の宇宙環境モニタ (SEM)による宇宙放射線計測(22年間)を引きつぐ

ETS-VTEDA(技術データ取得装置) 誕生前の部品の宇宙実証の背景

国産部品の宇宙環境での実証の必要性

太陽電池モニター(SCM)の衛星搭載

bull ISS-b (1978年2月打ち上げ)

bull ETS-IV(1981年2月打ち上げ)

bull ETS-III(1982年9月打ち上げ)

bull ETS-V(1987年8月打ち上げ)でTEDAに組み入れた

bull 旭硝子製のカバーガラスもフライト実証をしたその成果はETS-VIでこの国産部品の組み合わせで採用

ETS-VTEDAの成果SEL

(世界初データであった) 64-kbit SRAM

( T Goka et al IEEE 1991 1998)

SEL Singl Event Latchup(ハードエラー)

SEL First Measurement (Japan) SEL First Anomaly (ESA)

ETS-VTEDAの成果帯電電位の 材料別10年間の計測結果 Surface Potential Monitor (POM)

Matsumoto Het al Proc Charging Conference 23-27 April 2001 ESTEC

ETS-VTEDA 熱制御材劣化モニタ(TDM)の

10年間の計測データ(太陽光吸収率α 赤外輻射率ε )

ε

α

図6太陽黒点数と静止軌道電子 (>04MeV ) Flux の変動 (ETS-V搭載DOMによる観測)

bull 1993-1994年にかけ各国の静止衛星で不具合や故障が増加したJAXAではETS-V搭載放射線吸収線量モニタ(DOM)による長期的観測により太陽活動下降期の高エネルギー電子の増加を確認しておりこれにより静止衛星に影響が出たことが明らかとなったなお同様の不具合や故障増加が11年前の太陽活動下降期である1982-1983年にも発生していたことが分かった

bull 現在はこれらの電子の環境でも太陽電池パドル等に不具合が起きらないことを地上試験で確認してきている

静止軌道における 高エネルギー粒子の長期的観測結果と宇宙機への影響

0

20

40

60

80

100

120

140

160

180

1000

3000

5000

7000

9000

11000

13000

15000

17000

1980

1981

1982

1983

1984

1985

1986

1987

1988

1989

1990

1991

1992

1993

1994

1995

1996

1997

太陽黒点数

電子

Flu

x (個

数(cm2strsec))

電子Flux

太陽黒点数

Miyoshi et al[2004]

太陽活動と放射線帯分布の変動

ETS-Ⅵ搭載TEDAの開発 (理研東大と共同で宇宙環境計測の充実)

目的

bull 新たに開発された国産部品材料等の宇宙環境下での劣化特性を同一条件で計測すると共に劣化の原因となる宇宙環境を同時に計測し比較解析する

bull 新規開発の部品材料の宇宙実証データフライト実績を得る

bull 地上試験として行ってきた宇宙環境を模擬した試験方法の検証を行う

bull 帯電現象及びガスジェット等による人工衛星の汚染の経時変化の取得

bull 衛星設計に用いている宇宙環境モデル(放射線磁場等)の検証 bull 宇宙環境に起因する人工衛星の故障や不具合現象の解明

ETS-VI(きく6号)打ち上がったが GEOに行かずGTOに留まる

bull 1994年(平成6年)8月28日16時50分打ち上げ

bull H-IIロケット試験機2号で種子島から打ち上げ

bull アポジエンジン不具合でGTO軌道に留まる

bull 急遽楕円軌道用に新たな制御プログラムを設計製作し地上検証を行った上で衛星にアップロードしこの問題を解決した

bull 最終軌道ペリジ約8600kmアポジ約38600km軌道傾斜角約13度(3日5周期回帰)で2年間運用

bull TEDAのデータ公開で宇宙環境データが役に立つ事を宣伝(SEESを立ち上げデータを公開した)

ETS-Ⅵ搭載TEDAの成果

トータルドーズ劣化や太陽電池劣化は静止衛星で10年かかった同じ評価を1年間でできた

シングルイベントの発生頻度の高度分布が取得できた (高度8千km~3万8千kmの範囲)

バンアレン帯の放射線帯の電子陽子重イオンの高度分布データを取得し放射線帯モデル日本モデルを作成(あけぼの衛星データ含む)

この成果はGTO軌道を最初から狙うMDS-1(つ

ばさ)プロジェクトへとつながった 米国は1990年7月25日CRRESS(Combined Release and Radiation Effects Satellite )衛星を打ち上げ

研究開発の流れ

計測装置開発

データ収集 計画

環境計測

研究試作

衛星への影響解析で必要なデータ及び性能を機器開発に反映する

高エネルギー軽粒子 重イオン 中性子 帯電 原子状酸素 デブリ 新たな現象(問題点)

軌道上不具合評価 宇宙環境モデル

宇宙環境データベース 警報

衛星設計基準

有人活動への反映

宇宙天気予報 システム

国内外機関とのデータ交換

打上げ衛星運用

放射線環境評価(ISOを含む)の見直し 宇宙環境モデルの最適化 効率の良い宇宙機の開発 (シールド厚最適設計) 低コスト化(部品仕様の見直し) 短期間開発(民生品の利用)

フィードバック

成果目標

プロジェクト支援

宇宙環境計測装置(放射線磁場)小型化の流れ

9kg 10cm 10cm 10kg 14W 18W

1cm 52g 480g 1cm 12W以下 15W

磁力計(480g->52g)

みどり2搭載用 つばさかけはしきぼう搭載用 Jason-2GOSAT搭載

ETS-VIII搭載用 QZS搭載用

電子(05~50MeV) 陽子(1~160MeV) α粒子(4~200MeV)

電子(04~5MeV) 陽子(7~48MeV) α粒子(30~140MeV)

plusmn655364096102456nT plusmn655364096nT

16bit 20bit

電子(003~20MeV) 陽子(04~250MeV) α粒子(08~400MeV)

LPT-S 216x182x175 mm 62 kg LPT-E 240x165x 93 mm 28 kg

積算吸収線量計

軽粒子モニタ(10kgー>9kgー>7kg最小2kg)

17times10times5mm749g

ISSKibou(09-)

GEO

LEO

ETS-V (87-97)

ADEOS-II(02-03)

ETS-VIII(06-) DRTS(02- )

STS-89(98)

MDS-1(02-03) ETS-VI(94-96)

ETS-VII (97-99)

宇宙環境計測の流れ ISSUS-Lab(01)

ひまわり1-4(78-99)

ERG(16予定)

ALOS(06-11)

GOSAT(09-)

Jason-2((08-)

Jason-3(15予定)

GTO

QZS(09-)

ADEOS (96-97)

ADEOS搭載TEDA (世界2番目の異常宇宙線ACR)

bull シングルイベント評価のための重イオン観測であったが世界2番目の異常宇宙線を観測することができた

bull 低軌道の衛星は地球磁場が邪魔となって宇宙線(重イオン)を観測するに向いていないと考えられていたが異常宇宙線を観測するのにすぐれていることが明らかとなった

T Kohno et al Radiation Measuremets 30 5 PP639-644

BBND (ボナー球中性子検出器)

bull 1994年(平成6)年7月に中性子計測のために ボナー球ホスウイッチ方式及びシンチレーションファイバーの3種類のセンサの研究をスタート

bull シャトル打ち上げ計画の管理者から搭載装置の検討依頼がありBBNDのSTS-89への搭載が決定した(1997年1月頃)

bull 振動試験で装置内のボルトが外れるという不具合もあったが約1年という非常に短期間で搭載品を開発することができた

bull コスト低減のために構造解析を自前で実施したりデータ処理ソフトウェアも内作した

熱中性子に対して高い感度を持つ6個の3Heガス入り比例計数管で構成して

いる中性子は電荷をもたないのでそれ自身には電離作用がないが軽い原子の3He気体では反跳原子を生じたり中性子の核反応(3He+nrarrp+3H+765KeV)によって荷電粒子を生じるので間接的に電離を起こす下図のように気体中に二つの電極を置き高電圧(1000V)をかけておくと中性子の入

射によって気体中に生じた陽子イオンと電子のイオン対がそれぞれの電極に向かって流動し外部回路に電離電流が流れるこの電気パルスにより中性子を計測する

ボナー球型中性子モニタの概要

Polyethylene Sphere3He proportional Counter

51 φ 51 φ81 φ110 φ150 φ230 φ

Sensor6 Sensor5 Sensor4 Sensor3 Sensor2 Sensor1

Covered by Gadolinium

[mm]3Heガス入り比例計数管の原理

6個のボナー球の断面図

3Heガス入り比例計数管とポリエチレン減速材

H Matsumotoet al Radiation Measurements 33 (2001) 321-333

ISS搭載BBNDの成果(約8か月)

実験期間中の平均的な等価線量等量率 (2001年3月23日~2001年11月14日)

太陽フレア時(2001年11月4日)

等価量等量率の平均は94μSv日で年率に換算すると34mSv年となるこれは地上において自然界から受ける等価線量当量率の約14倍に相当する 実験期間中に多数の太陽フレアが発生した2001年11月4日の太陽フレアにより019mSVの増加を観

測したこれは自然界から受ける等価線量当量率の約1か月分に相当するしかしBBNDの約8か月

の実験期間中の全等価線量当量に対するこの太陽フレアの影響の寄与分は1以下であった また搭載位置による環境の違いも確認された

H Koshiishiet al Radiation Measurements 42(2007) 1510-1520

1)船内の計測結果より低エネルギー側で2~3桁高エネルギー側で1~2桁低い 2)船内より船壁が薄く中性子が少ない環境より自然のアルベド中性子環境に近い

中性子被曝線量の ISS船外(SEDA-AP)と船内(STS-89)の比較

MDS-1搭載放射線吸収線量モニタ(SDOM) SiTungstenAlBGO

② ⑦

⑧⑧

① Collimator ② Window③ SSDs ④ Plastic Scintillator⑤ Anticoincidence Scintillator(ACS)⑥ Beam Stop⑦ Scintillator PMT⑧ ACS PMT

運用期間 2002年2月 ndash 2003年9月 軌道 -軌道傾斜角 285deg 1 lt BB0 le 84 -高度 500 km times 36000km 11 le L le 10 -軌道周期 約10時間35分 -スピンレート 5rpm

計測エネルギー範囲 Electron 04- 9MeV (5bins) Proton 09-210MeV (12bins) He 6-140MeV (4bins) Heavy Ion 15- 60MeVnuc (1bin) G-Factor 001cm2sr

放射線帯変動モデルの開発 MDS-1 065 MeV 電子フラックス

変動パラメータの選択 (1 cycle solar activity)

太陽風速度(SW)

太陽黒点数(R)

Ap指数

F107

変動パラメータ- Tavg の定義-

1日後の予測

パラメータスケールの時間平均 ApTavg SWTavg F107 Tavg

T days

放射線帯の構造は変動パラメータ値の大きさと継続時間に相関がある

065MeV 電子 L値-Tavg マップ

APTavg

SWTavg

13MeV 陽子 L値-Tavg マップ

APTavg

F107Tavg

電子観測とMDS-1モデルの比較

80 175

放射線帯フラックスピークの変動

80orbits (平穏時) 175orbits (擾乱時)

陽子観測とモデルの比較

電子(035~078MeV) 1日の変動予測GOSAT軌道

0

50

100

150

200

250

1E+09

1E+10

1E+11

1E+12

1984 1986 1988 1990 1992 1994 1996 1998 2000 2002 2004 2006 2008

Flue

nce[

ecm

2M

eVd

ay]

Launch day

FluenceSSN

Worst case Nov 12003

電子(035~078MeV) 変動の信頼度水準(1日)GOSAT軌道

00

01

02

03

04

05

06

07

08

09

10

88 90 92 94 96 98 100 102 104 106 108 110 112 114

Con

fiden

ce le

vel

Fluence[LOG10 ecm2MeVday]

AE-8 MAX

AE-8 MIN

MDS-1 model と AE-8 model との比較1日

0

20

40

60

80

100

120

140

160

180

1E+09

1E+10

1E+11

1E+12

1995 1997 1999 2001 2003 2005 2007 2009

Flue

nce[

ecm

2M

eVd

ay]

Launch day

Fluence(JAXA)Fluence(AE8)SSN

話の流れ

技術データ取得装置(TEDA)の概要と成果 bull 主な成果 bull 不具合解析例

宇宙天気のリスクと対策 bull 宇宙環境による衛星システムへの影響 bull 宇宙環境を原因とする不具合の割合推移部位 bull 静止軌道不具合 bull 対策

今後必要な観測項目

まとめ

2003年10月 みどり号の全損事故 (複合現象)

極域のオーロラ帯を通過中に電力ハー

ネスを巻いているMLIが高エネルギー電

子により帯電

MLIが接地されていなかったため内側

のハーネスとの間に1kV以上の電位差が

発生

MLI内のガス密度が発電開始に伴う温度

上昇により上昇

ハーネス被覆の傷により露出したハーネ

ス芯線とMLI内面の間で放電発生

単発の放電が隣接するハーネスに飛び火

してハーネス間の短絡

アーク放電が次々と伝搬していきハー

ネス全体が焼損

故障推定箇所 (大電力ハーネス部)

bull詳細報告書は文部科学省 宇宙開発委員会のHP参照

httpwwwmextgojpb_menushingiuchuureports04080901htm

bull 人工衛星の電位 bull 人工衛星は電気的に宇宙に浮いている bull 宇宙機構造体が接地点 bull 宇宙機への流入電流と流出電流のバランスによって宇宙機電位が決まる bull 各電流成分は宇宙機電位Vの関数として表され定常状態では式を下式を満たす

衛星帯電の基本式

( ) dtIIIIIIIC

V

dtdVCVIVIVIVIVIVIVI

BPHBSESISEIE

BPHBSESISEIE

int +++++minus=

==+++++minus

1

0)]()()()()()([)(

入射電子電流 ( E I )

後方散乱電子電流 ( BSE I )

入射正イオン電流 ( I I )

入射電子による二次電子電流 ( SE I )

太陽光

入射正イオンによる 二次電子放出電流 ( SI I )

光電子放出電流( PH I )

電荷ビーム放出電流(IB)

bull内部帯電は衛星の外壁を貫通した放射線帯外帯の01MeV以上の電子が内部に侵入

bull基板間や同軸ケーブルの線間等の容量(コンデンサ)や誘電体に帯電 bull接地されてない導体片に帯電

bullその耐圧電圧を超えると その耐圧の弱い箇所 (材質の欠陥や針状突起など の箇所)で放電して故障に至る

内部帯電

(あるエネルギ-以上の粒子が入射光電子なし)

NASA-HDBK-4002より

パドルでの帯電放電メカニズム

宇宙環境の影響により 衛星がマイナス電位に帯電

高エネルギー電子等により カバーガラスはプラスに帯電 衛星とカバーガラスに電位差が生じる

電位差が大きくなると トリプルジャンクション近傍 の電界強度が増大していく

トリプルジャンクションで放電が発生する カバーガラスの帯電が緩和される

+ + + + + + + + + + + + + +

+ + + +

カバーガラス

太陽電池セル

基板(衛星構体)

トリプルジャンクション rArr 導体絶縁体宇宙環境の接点

持続放電

Substrate

Satellite Load

insulation sheet

Solar array cell

Cover glass

Arc current

Electrode

持続放電は衛星の電力消失につながる 持続放電のモードは以下の2通りがある

Substrate

Satellite Load

insulation sheet

Solar array cell

Cover glass

Arc current

Electrode

Solar array cell

Cover glass

セル-基板間短絡 セル間短絡

放電によって太陽電池セルと基板が短絡する 短絡によって負荷に電力が供給されなくなる

放電によって太陽電池セルとセルが短絡する 短絡によって負荷に電力が供給されなくなる

サブストーム(高エネルギー電子)との遭遇

+ + + + + + + +

二次電子光電子による絶縁体の帯電(局所帯電)

電位差発生

逆電位勾配

衛星構体が負に帯電(絶対帯電)

電位

時間

サブストーム

衛星構体 VS

乖離電圧 ∆V

カバーガラスVcg

0 プラズマ電位

軌道別帯電放電現象

トリプルジャンクションで 放電発生

放電発生

静止軌道

+ + + + + + + +

逆電位勾配

軌道帯電放電現象

トリプルジャンクションで 放電発生

極軌道 オーロラ電子(高エネルギー電子)との遭遇

プラズマ流入出による絶縁体の帯電(局所帯電)

電位差発生

衛星構体が負に帯電(絶対帯電)

放電発生

電位

時間

オーロラ電子

衛星構体 乖離電圧 ∆V

カバーガラス

0 プラズマ電位

データ中継技術衛星DRTS (こだま)の不具合

2002年10月 9日 静止軌道に打ち上げ

2003年

3月24日 406JST変化率異常モニタ故障検出(FDIR)

が動作しA系からB系に切り替わった

3月25日 410JSTにB系のみ異常検知

4月 3日 327JSTにB系のみ異常検知

5月28日 124JSTにB系のみ異常検知

6月 6日1537JSTにB系のみ異常検知

ESA

DRTS ESA スパイクノイズと 電子フルエンスの比較(赤の丸が異常検知)

larr閾値

この事実を基に静止軌道における内部帯電警報システムを構築 2004年4月より運用開始

不具合が宇宙環境によるものであるか 判断する際のポイント

不具合の発生した時刻に太陽フレアや磁気嵐等の宇宙天気の大きな変動が起きていれば不具合に関係している可能性が高い但し帯電など放射線の積算的効果の伴う現象については発生から1週間位さかのぼり環境がどのように推移してきたかを考慮する必要がある

磁気嵐が起きると静止軌道に急激な粒子の増加現象が起きこれにより衛星帯電が引き起こされたりする(予測に利用可能)

地方時(真夜中や朝方か)や季節(春秋)を考慮する

低軌道衛星においてはSAA外帯のrdquo角ldquo及び極通過時に不具合

が起きやすいので衛星の位置(緯度経度)が重要

事象を把握する上で単発現象か数回起きている現象か周期

(時間同じ軌道等)的に発生している現象か

話の流れ

技術データ取得装置(TEDA)の概要と成果 bull 主な成果 bull 不具合解析例

宇宙天気のリスクと対策 bull 宇宙環境による衛星システムへの影響 bull 宇宙環境を原因とする不具合の割合推移部位 bull 静止軌道不具合 bull 対策

今後必要な観測項目

まとめ

宇宙天気のリスク -宇宙環境によるシステムへの影響 -

プラズマ (IRI)

帯電 (MUSCAT)

衝突 (AUTODY)

抗力 表面劣化

紫外線X線 中性粒子 (MSIS)

放射線粒子 (AE8AP8JPLSHIELDO

SE-2)

メテオロイドデブリ (MASTER2005

ORDEM)

電離損傷 変位損傷

bull電子回路の劣化 bull光部品の劣化

bull太陽電池セルの劣化

SEU (CREME96)

bullデータエラー bull画像ノイズ

bullシステム停止 bull回路損傷

bull熱的電気的光学的特性の劣化

bull構造の劣化 bullコンタミ

電磁パルス bull電源出力低下

bull損傷

bullトルク bull軌道落下

bull構造 損傷 bull減圧

bull電磁パルス

NASAの報告 -GNampCに注目-

1974年から1994年に起きたNASAと空軍の衛星故障の内20~25が宇宙環境に起因していたと報告

1990年から2001年に米国欧州カナダ日本の企業や政府機関が開発した衛星を調べた過去の宇宙ミション損失の大部分はロケットの失敗であったが1998年衛星損失の大部分は軌道上の衛星障害となっている多くの最近の異常は太陽電池アレイ及びバッテリの危険が増加している静止軌道通信衛星の設計寿命はこのサブシステムの故障の危険が増加している

喪失等の大きな誘導制御(GNampC)の不具合に注目 GNampC不具合の内宇宙環境による 不具合は約3と報告されている

軌道上衛星のタイプ別数

NASAの報告(続き)

衛星設計寿命における不具合発生時期 事故率と軌道

軌道別の衛星数 サブシステム不具合

宇宙環境を原因とする不具合の割合 -JAXAの場合-

2002年~2008年に運用された軌道上不具合情報が比較的充実している11衛星(利用衛星7機科学衛星4機)の結果宇宙環境によるも

のは約15過去のデータよりも割合が少ない

合計83件 合計35件

(1)利用衛星 (2)科学衛星

設計検討 不足 48

製造不良 8

軌道上環境 17

偶発故障 6

調査中 13

原因不明 8

設計検討

不足 61

製造不良 4

軌道上環境 11

偶発故障 6

調査中 9

原因不明 9

不具合発生部位の割合

不具合発生部位の割合

Brent Robertson Eric Stoneking ( 1990-2001NASA Goddard Space Flight Center )

Satellite News Digest -静止軌道不具合-

Satellite News Digest (SND) (http wwwsqt-indexcouk) で1997年~2009年の期間に静止軌道で95件の不具合が報告されている その内運用ミスや設計ミスなどを除くと32件(約33)は宇宙環境によるものであった 過去のデータより割合が多い

Choiら1)はこれら不具合の地方時と季節依存性を確認した その結果2100LT~900LTで約72の不具合が発生し900LT~2100LTは9件(約28)であった またこの9件は全て姿勢制御の不具合だった 静止軌道衛星不具合のほとんどは真夜中と朝方で起きており磁気嵐に伴い磁気圏尾部から注入した粒子による表面帯電が不具合の主原因と結論づけている

1) Ho-sung Choi et al Analysis of GEO spacecraft anomalies Space weather relationships Space Weather Vol 9 S06001

太陽活動と静止軌道衛星不具合例

ANIK-E1E2

ANIK-E1

複数の衛星で故障

Galaxy-15

帯電放電不具合 -ANIK-E1amp2Telstar401-

Jan 1994 ANIK-E1 amp E2事故時の環境 - Joe H Allen

1週間

太陽活動下降時期の電子増加

2MeV以上電子

copyNOAA Web

フラックスが3桁急増

Jan 1997 Telstar401事故時の環境

静止軌道の急激な電子増加

太陽極大期太陽フレアによる衛星障害 - 2003年10月~11月-

10486981048698 永久故障 4 10486981048698 安全モード又は運用を一時停止 31 10486981048698 データ内容の「誤り」の増加搭載コンピュータの誤動作 5

httpwwwsat-ndcomfailures等のデータによる 合計 40件

-Barbieri and Mahmot

米国極軌道気象衛星NOAA-17の改良型マイクロ波観測装置AMSU-A1 (Advanced Microwave Sounding Unit)のスキャナーが永久故障 米国気象衛星GOES -8号のX線センサがOFFになり復帰しなくなった

e-birdに深刻な不具合が発生 不具合は20本のトランスポンダ全てに影響

火星周回中の探査機「マーズオデッセイ (Mars Odyssey)」の観測機器放射線観測装置「Martian Radiation Environment Experiment (MARIE)」が太陽活動の影響により10月28日から適切に作動しなくなった データ中継技術衛星(DRTS)「こだま」 太陽捕捉モードに移行

太陽陽子

帯電放電不具合-Galaxy15(局所的的現象)- 2

5 M

eV

65

MeV

11

5 M

eV

GOES 14 ----- GOES 15 ----- GOES 11 -----

Satellite Locations

Galaxy 15 anomaly

2010年4月5日9時48分UTCは磁気嵐及びCMEが発生するなど宇宙環境は非常に荒れていたGalaxy15衛星は真夜中側に位置し宇宙環境の影響を受けやすい

位置にいたことから宇宙環境による不具合である可能性が高いということで原因追及がなされた高エネルギー粒子が引き起こす代表的な衛星不具合現象として3つ(表面帯電内部帯電SEUシングルイベントバーンアウトSEL)の可能性を検討した

チームの報告書によると磁気圏尾部からの熱電子の流入による放電が原因であったと結論付けられたGalaxy15衛星の近くにはGOES-11衛星が位置していたがGOES-11衛星には不具合を発生しておらず本現象は局所的な現象と推測される

衛星開発段階における対策 JAXAの不具合解析の結論

bull 2002年~2008年に運用された11機の衛星不具合を解析 宇宙環境による不具合は偶発故障のみ(全体の約15)確率的には想定範囲内ではあるがその影響を最小限とするためディレーティング運用モード寿命についての研究に取り組む

bull 設計基準試験の充実検証確認の強化技術成熟度(TRL)評価の徹底各々の境界制約条件の明示化等により検証不足抜けの防止有効なピアレビューに結びつける

冗長系(同じハードウェア機能の冗長)柔軟性の設計(ソフトハードの対応)

bull 従来の故障が起きないようにする設計に対してGOSAT(いぶき)では重要部

品を二重化することにより故障する可能性は上がるが故障しても衛星バスの運用や観測が続行できる可能性がより高くなるように設計した

運用における対応

bull 宇宙天気監視ーロケット打ち上げ及び宇宙飛行士支援 数日前に今後の宇宙環境の推移を把握(MXレベルのフレアの発生確率)

bull X線の増加で太陽フレア発生を検知したら高エネルギー粒子の発生をいつまで 気を付ければ良いか判断(発生位置で大凡を推定するが課題は多い) SPEが発生した場合(特に10MeV以上100MeV 以上の陽

子)最大値フラックス値の推定 ピーク値を予測(特に閾値に近くなった時に重要)

bull 衛星運用 bull 太陽フレア磁気嵐警報(X線陽子及びkpが閾値を超えた

時に警報を発信)2003年10月より運用開始 bull 内部帯電警報(2日後の静止軌道上の高エネルギー電子(>1

Me) の増加を予測し 閾値を超えた時に警報を発信) 2004年4月より運用開始

話の流れ

技術データ取得装置(TEDA)の概要と成果 bull 主な成果 bull 不具合解析例

宇宙天気のリスクと対策 bull 宇宙環境による衛星システムへの影響 bull 宇宙環境を原因とする不具合の割合推移部位 bull 静止軌道不具合 bull 対策

今後必要な観測項目

まとめ

計測対象計測項目 計測対象 粒径100μm以上のデブリメテオロイド 計測項目 デブリ粒径衝突頻度

基本原理

厚さ約125μmの絶縁性のポリイミドフィルム表面に 100μm周期で直線状の細長い導線(太さ50μm)パターンを形成導線の破断を電気的に検知することによりデブリの衝突(貫通)を検知する破断した導線の数導線の幅ピッチからデブリサイズを計測する

微小デブリ計測技術の概要

衝突孔の例(衝突試験ISAS) - 衝突粒子 SUS 309 microm - 衝突速度 52 kms

HTV5号機によるセンサ機能のフライト実証

35cm

46cm

FY2013機能実証モデル

検出線幅 50 μm 検出線間隔 100 μm フィルム厚 lt 20 μm 有感領域 30times33cm 検出線総数 3300本

サイズ 50times39times4 cm (筐体を含む)

重量 約15kg(筐体を含む)

消費電力 2W(最大4W)(他センサ含む)

テレメトリ 02 bps

宇宙環境観測装置KASPERの一部としてデブリセンサSDMを搭載 FY2013に製作開始今年8月に打ち上げ予定)

まとめ(その1)

衛星不具合の主な原因は帯電放電シングルイベント放射線損傷である今後デブリ環境が重要になると予測される

静止軌道では商用衛星が多く運用されており宇宙環境の変動把握は重要この領域で運用する衛星が気を付けなければいけない環境として

1太陽フレアに伴う高エネルギー粒子 2太陽活動下降期による静止軌道電子の増加 3磁気嵐に伴う磁気圏尾部から注入する粒子 などがあげられる

まとめ(その2)

不具合軽減の取り組み bull 開発時は宇宙環境条件(トータルフラックス及び最悪条

件)を明確にし設計(冗長系柔軟性の設計ディレーティング及び運用モード寿命について研究)試験の充実検証の充実を図る

bull 運用段階に入ったならば宇宙環境を監視し警報等で故障を防ぐ

予測課題 bull 太陽フレアに伴う高エネルギー粒子発生後フラックス

ピーク値の推定

bull 衛星により不具合の起きる閾値は異なるが閾値をこえる急激な電子フラックスの増加と継続時間の予測

bull 局所的な磁気嵐に伴う磁気圏尾部から注入する粒子

宇宙環境グループは宇宙ステーションと衛星プロジェクトの安全な遂行に貢献しています

ご静聴ありがとうございました

補足資料

不具合原因の推移 bull 宇宙天気を大きく左右する要因の1つとして約11年の太陽活動変化が挙げられる

bull 太陽活動下降時期(太陽変動CME)と極大期(フレアCME)に衛星で不具合が増加するそれにより不具合原因の割合が変わる

-Koons et al The Impact of the Space Environment on Space Systems Aerospace Corp report no TR-99(1670)-1 20 July 1999 -2009 preliminary study (unpublished)

何故不具合は減らないか

bull 部品 放射線に対する感受性が高くなっている bull 微細化が進み同時にフォールトするノードが増え同時にエ

ラーとなる論理ノードやメモリセルが増加する微細化によってメモリセルは小さくなるので記憶容量当たりでみるとエラーの発生率は下がるしかし半導体チップの記憶容量やゲート数が増えるので半導体チップ当たりのエラー発生率は微細化とともに上昇するまた蓄積電荷が小さくなり感受性が高くなってきている

bull システム 大型化大電力化運用長期化 bull 1990年代末以降静止衛星の電力が10kWレベルになったしか

し設計検証技術データ蓄積が遅れている改善されつつあると推測される

放射線による影響の概要

粒子 エネルギー又はLET

代表的な影響

陽子 100keV-1MeV 1-10MeV 10-100MeV gt50MeV

表面損傷 表面材料と太陽電池の損傷 放射線損傷(電離非電離損傷の両方)センサーへのノイズ シングルイベント効果

電子 10-100keV gt100keV gt1MeV

表面帯電 深部帯電現象(deep-dielectric charging)センサーへのノイズ太陽電池の損傷 放射線損傷(電離)

重イオン gt1MeV-cm2mg シングルイベント効果

注エネルギー及びLETは個々の部品等により異なりますあくまでも目安です

耐放射線設計手順

軌道条件

ミッション期間

環境条件設定

トータルドーズの予測

1MeV電子換算被曝算出

NIELの換算

LETフルエンス算出

陽子フルエンス算出

対  策  の  検  討

対  策  の  検  討

対  策  の  検  討

放射線による劣化率予測

劣化率予測 特性予測

耐性データ

放射線による劣化率予測

耐性データ

劣化率予測アレイ出力劣化予測

感受性データ

シングルイベント発生率予測 致命度解析

衛星内質量分布

(2)

部品材料の選定

他の要因による劣化率予測

(2)(2) (3)

回路設計等NO

OK

アレイ構造 セル選定

他の要因による劣化率予測 アレイ設計(2)

(2) (2) (2) (3)

衛星内質量分布 部品選定(2)

(2) (2)(3)

NO

OK

NO

OK

(1) 環境モデルマージを含む(2) 部品レベルの検討(3) アセンブリレベルでの検討(4) 設計マージン環境モデル   マージを含め大丈夫か

トータルドーズ

太陽電池アレイの劣化

シングルイベント効果

回路設計

補足放射線太陽宇宙線銀河宇宙線

NEILを用いたダメージファクターの算出

対  策  の  検  討

放射線による劣化率予測

劣化率予測 特性予測

耐性データ

(2)

部品材料の選定

他の要因による劣化率予測

(2)(2) (3)

回路設計等NO

OK

衛星内質量分布 半導体デバイスの変位損傷

(1)

(4)

(4)

(4)

(4)

各軌道における放射線環境

1E+10

1E+11

1E+12

1E+13

1E+14

1E+15

1E+16

1E+17

1E+18

1E+19

1E+20

001 010 100 1000

捕捉

電子

の積

分フ

ルエ

ンス

[m

2 ]

エネルギー[MeV]

各軌道における電子捕捉積分フルエンス(3年間)

LEO

EOS GEO

MEO

GTO

GEO 軌道傾斜角 0deg 高度36000km GTO 軌道傾斜角 18deg 高度 360km~36000km MEO 軌道傾斜角 51deg 高度 10000km EOS 軌道傾斜角 98deg 高度705km LEO 軌道傾斜角 29deg 高度 600km

1E+12

1E+13

1E+14

1E+15

1E+16

1E+17

1E+18

1E+19

1E+20

01 10 100 1000

捕捉

陽子の

積分フルエン

ス[

m2 ]

エネルギー[MeV]

各軌道における捕捉陽子積分フルエンス(3年間)

MEO

GTO

GEO

EOS LEO

放射線による部品材料の影響

総照射線量 (TIDTotal Ionising Dose )

電離損傷

バイポーラTrの電流増幅率の低下リーク電流の増大

γ線で評価

トータルドーズ効果

変位損傷 (DDDisplacement Damage )または 非イオン化エネルギー損失 (NIELNon-Ionising Energy

Loss )

変位損傷(格子欠陥の生成)

電荷輸送効率の低下 (CCD)太陽電池の効率低下等

電子陽子により評価

シングルイベント効果

1個の荷電粒子の入射により発生する誤動作

ソフト(Latch-Up Burnout) エラー又は ソフト (Upset) エラー

陽子及び重イオンで評価

トータルドーズ効果

+ - + + - + - + - - + + + + -

ゲート酸化膜

電離

格子欠陥

正電荷捕獲

+ 正孔 - 電子

電極

(Silicon oxidenitride)

荷電粒子

反跳原子

ゲート絶縁膜中に電荷が蓄積することによるMOSトランジスタのしきい電圧(MOSトランジスタがオフからオンに変化するゲート電圧)の変化をもたらすただ

し最近の最先端チップはゲート絶縁膜がきわめて薄くなっているこのためゲート絶縁膜よりもフィールド絶縁膜(隣接するトランジスタを電気的に分離する絶縁膜)での電荷蓄積が相対的には大きな問題になってきている」

シングルイベント効果

メモリセルはNチャンネルとPチャンネルMOSFETより構成されメモリ情報は回路ノード12の電位の

高低により記録している空乏層の広がっているPN接合12の領域に

重イオンが入射した場合電荷の発生と空乏層内への少数キャリアの収集が起こるこの収集電荷量が回路の耐量を越えた場合(c)に示すように反転が起こる(ソフトエラー)一方pウエル-N基板接

合の空乏層内に電荷収集量が起こりえる耐性を越えると寄生的に存在するPNPNサイリスタ構造がオ

ンし電源と基板間に大電流が流れる状態が生じる(ラッチアップ)

シングルイベントメカニズム -陽子と重イオンの違い-

エラー発生率の計算

線エネルギー付与(LET) (linear energy transfer)

電離性放射線が物質中を通過する際飛程の単位長さ当りに平均して失うエネルギーをいう各種の放射線のうちX線γ線はLETが小さいので低LETといいα線中性子線その他重イオン核分裂破片のLETは大きいので高LETという MeVμmMeV(gcm2)やMeV(mgcm2)で表される

南大西洋異常(SAA) bull 地球の自転軸と磁気軸のずれ

darr bull 放射線帯が自転軸に対して非

対称

bull 南大西洋上空では放射線帯内帯が低高度に落ちてきているこの領域を南大西洋異常域(SAA South Atlantic Anomaly)と呼ぶ

bull 地球観測衛星ではSAAで放射線帯陽子の影響を受ける

Single Event Lachup

シングルイベントと陽子分布

MOS-1衛星(高度909km軌道傾斜角99度)で発生したシングルイベントと 陽子30MeV以上の等高線マップを重ね合わせた結果

NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)

bull 入射粒子が電離によらず与える損傷非イオン化損失

低軌道での電子フラックスと 不具合の発生場所

南大西洋異常(SAA)と極の角

高度800kmでの電子フラックス図極の角(polar horn)とSAAを示す

太陽粒子線 bull 太陽高エネルギー粒子線(SPE Solar Proton Events)は太陽フレア とコロナガス噴出 (CMECoronal Mass Ejections )により引き起こされる bull フレアのスペクトルは可変であるためあるエネルギー域における最悪状態イベントは必ずしも別のエネルギー域における最悪条件ではない 1972年8月のイベント 10~70MeVの粒子が最も多かった 1989年10のイベント 1972年8月のイベントに比べ低エネルギー領域 高エネルギー領域が明らかに激しかった

フルエンス 105 to 1011 cm-2

変動期間 1日から数日

ldquoBastiliardquo Solar Event 14 July 2000

Carrington Flare

84

(LW Townseed) Carrington Flare(1859年) Carrington Flare による30MeV以上トータルFluenceを118times109cm-2で規格化 ~1989年フレアの約13倍(シングルイベントの評価で使用) ~1991年フレアの約9倍 2012年7月23日にキャリントンイベントとほぼ同等の爆発現象が太陽あるいは太陽の周りで起きていたということがNASAの太陽観測衛星「STEREO」の解析から発表された

放射線対策 bull 放射線シールドを付加し放射線を減衰させる

bull 放射線耐性の強い部品(SOI(Silicon On Insulator)技術による耐放射線部品)材料に変更する

bull 放射線による損傷を吸収するために回路または構造上のマージンを持たせる bull ソフト的なエラーに対しては エラー検出訂正機能や多数決

機能等でソフト的エラーが起きてもシステムが機能するようにしたフォールトトレラント機能を付けて対処する ICのハード的故障に対しては ラッチアップ耐性の強い部品を選定するしかないが 電流制限回路を付ける対策も採られる パワーMOSFETに対しては部品選定 電源電圧を規格値の半分以下に落とす等の対策を採る

SOI技術

表面帯電への対策例

表面の物体間を導線で結線する

太陽電池のカバーガラスを導電性被膜付き(酸化インジウムITO)にする

熱制御材表面にITOを被覆する

熱制御材は高誘電率のテフロンの使用を避け 高伝導度耐環境性に優れたブラックカプトンを使用

イオンエンジンの中和器で能動帯電制御

内部帯電への対策例

アルミで3mm厚さに相当するシールドで囲む(Faraday Cage)

テフロンやカプトンなどの誘電体材料の内部での使用量を最小限に押さえる

回路基板やコンフォーマルコーティングは誘電体なので電流リークパス(1012Ωcmまたは1012Ωcm2

程度)を必ずつける

特にスポット的な放射線シールドの金属材には必ず電流リークパスをつける

帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備

衛星モデル作成

材料物性テーブル設定

宇宙環境パラメータ設定

Converter

転送ディレクトリ 解析データファイル

転送

解析ディレクトリ生成 解析結果 進行状況チェック ファイル操作

MUSCAT 解析エンジン

解析結果 表示

パラメトリックラン

オプション 解析

大型パネル実験(35mtimes11m) クーポンパネル実験(26cmtimes16cm)

環境模擬試験 環境模擬試験

MUSCATに使用する物性値設計標準制定のための知見などを得ることを目的に軌道上の宇宙環境を模擬した地上試験を行っている これらの試験では放電の発生頻度や電圧閾値放電発生による太陽電池パネルや搭載機器への影響を検証している

放射線計測装置の原理

bull その粒子が物質を通過する際のエネルギー損出率が粒子の電荷(原子番号)Zの二乗に比例すること(Bethe-Blochの式)を利用する

S2

E

ΔE Ersquo

S1 S3

  • 宇宙機の設計のための宇宙環境
  • 話の流れ
  • 話の流れ
  • TEDA(技術データ取得装置)(国産部品の宇宙環境での実証の必要性)
  • ETS-VTEDA(技術データ取得装置)誕生前の部品の宇宙実証の背景
  • スライド番号 6
  • スライド番号 7
  • スライド番号 8
  • スライド番号 9
  • 図6太陽黒点数と静止軌道電子 (>04MeV ) Flux の変動 (ETS-V搭載DOMによる観測)
  • スライド番号 11
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの開発(理研東大と共同で宇宙環境計測の充実)
  • ETS-VI(きく6号)打ち上がったがGEOに行かずGTOに留まる
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの成果
  • スライド番号 15
  • スライド番号 16
  • スライド番号 17
  • ADEOS搭載TEDA(世界2番目の異常宇宙線ACR)
  • BBND (ボナー球中性子検出器)
  • スライド番号 20
  • ISS搭載BBNDの成果(約8か月)
  • スライド番号 22
  • MDS-1搭載放射線吸収線量モニタ(SDOM)
  • 放射線帯変動モデルの開発MDS-1 065 MeV 電子フラックス
  • 変動パラメータの選択 (1 cycle solar activity)
  • 変動パラメータ- Tavg の定義-
  • 065MeV 電子 L値-Tavg マップ
  • 13MeV 陽子 L値-Tavg マップ
  • 電子観測とMDS-1モデルの比較
  • 放射線帯フラックスピークの変動
  • 陽子観測とモデルの比較
  • 電子(035~078MeV) 1日の変動予測GOSAT軌道
  • 電子(035~078MeV) 変動の信頼度水準(1日)GOSAT軌道
  • MDS-1 model と AE-8 modelとの比較1日
  • 話の流れ
  • 2003年10月 みどり号の全損事故(複合現象)
  • 衛星帯電の基本式
  • 内部帯電
  • パドルでの帯電放電メカニズム
  • スライド番号 40
  • スライド番号 41
  • スライド番号 42
  • データ中継技術衛星DRTS (こだま)の不具合
  • DRTS ESA スパイクノイズと電子フルエンスの比較(赤の丸が異常検知)
  • 不具合が宇宙環境によるものであるか判断する際のポイント
  • 話の流れ
  • 宇宙天気のリスク-宇宙環境によるシステムへの影響 -
  • NASAの報告-GNampCに注目-
  • NASAの報告(続き)
  • 宇宙環境を原因とする不具合の割合-JAXAの場合-
  • 不具合発生部位の割合 
  • Satellite News Digest -静止軌道不具合-
  • 太陽活動と静止軌道衛星不具合例
  • スライド番号 54
  • スライド番号 55
  • スライド番号 56
  • 衛星開発段階における対策
  • 運用における対応
  • 話の流れ
  • スライド番号 60
  • スライド番号 61
  • まとめ(その1)
  • まとめ(その2)
  • 宇宙環境グループは宇宙ステーションと衛星プロジェクトの安全な遂行に貢献しています
  • 補足資料
  • 不具合原因の推移
  • 何故不具合は減らないか
  • 放射線による影響の概要
  • 耐放射線設計手順
  • 各軌道における放射線環境
  • 放射線による部品材料の影響
  • トータルドーズ効果
  • シングルイベント効果
  • シングルイベントメカニズム-陽子と重イオンの違い-
  • エラー発生率の計算
  • 線エネルギー付与(LET)(linear energy transfer)
  • 南大西洋異常(SAA)
  • Single Event Lachup
  • シングルイベントと陽子分布
  • NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)
  • 低軌道での電子フラックスと不具合の発生場所
  • 南大西洋異常(SAA)と極の角
  • スライド番号 83
  • Carrington Flare
  • 放射線対策
  • スライド番号 86
  • スライド番号 87
  • 帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備
  • スライド番号 89
  • 放射線計測装置の原理
Page 2: 宇宙機の設計のための宇宙環境の方針から国産部品開発(42品種)が実施された。 . 半導体電子部品は耐放射線性を加味して、人工衛星(特に

話の流れ

技術データ取得装置(TEDA)の概要と成果 bull 主な成果 bull 不具合解析例

宇宙天気のリスクと対策 bull 宇宙環境による衛星システムへの影響 bull 宇宙環境を原因とする不具合の割合推移部位 bull 静止軌道不具合 bull 対策

今後必要な観測項目

まとめ

話の流れ

技術データ取得装置(TEDA)の概要と成果 bull 主な成果 bull 不具合解析例

宇宙天気のリスクと対策 bull 宇宙環境による衛星システムへの影響 bull 宇宙環境を原因とする不具合の割合推移部位 bull 静止軌道不具合 bull 対策

今後必要な観測項目

まとめ

TEDA(技術データ取得装置) (国産部品の宇宙環境での実証の必要性)

1975年度から国産部品の開発が始まりさらに1984年~

1988年(ピークは1986年)にH-II ロケットの純国産化の方針から国産部品開発(42品種)が実施された

半導体電子部品は耐放射線性を加味して人工衛星(特にETS-VI以降の衛星)との共通部品とした

国産部品を人工衛星に搭載して宇宙フライトデータ作りが必要となる(国産部品をフライト実績とする)

部品の電気特性劣化データと同時に宇宙環境データ(放射線帯電)の計測が必要になった

気象衛星ひまわり1号~4号 の宇宙環境モニタ (SEM)による宇宙放射線計測(22年間)を引きつぐ

ETS-VTEDA(技術データ取得装置) 誕生前の部品の宇宙実証の背景

国産部品の宇宙環境での実証の必要性

太陽電池モニター(SCM)の衛星搭載

bull ISS-b (1978年2月打ち上げ)

bull ETS-IV(1981年2月打ち上げ)

bull ETS-III(1982年9月打ち上げ)

bull ETS-V(1987年8月打ち上げ)でTEDAに組み入れた

bull 旭硝子製のカバーガラスもフライト実証をしたその成果はETS-VIでこの国産部品の組み合わせで採用

ETS-VTEDAの成果SEL

(世界初データであった) 64-kbit SRAM

( T Goka et al IEEE 1991 1998)

SEL Singl Event Latchup(ハードエラー)

SEL First Measurement (Japan) SEL First Anomaly (ESA)

ETS-VTEDAの成果帯電電位の 材料別10年間の計測結果 Surface Potential Monitor (POM)

Matsumoto Het al Proc Charging Conference 23-27 April 2001 ESTEC

ETS-VTEDA 熱制御材劣化モニタ(TDM)の

10年間の計測データ(太陽光吸収率α 赤外輻射率ε )

ε

α

図6太陽黒点数と静止軌道電子 (>04MeV ) Flux の変動 (ETS-V搭載DOMによる観測)

bull 1993-1994年にかけ各国の静止衛星で不具合や故障が増加したJAXAではETS-V搭載放射線吸収線量モニタ(DOM)による長期的観測により太陽活動下降期の高エネルギー電子の増加を確認しておりこれにより静止衛星に影響が出たことが明らかとなったなお同様の不具合や故障増加が11年前の太陽活動下降期である1982-1983年にも発生していたことが分かった

bull 現在はこれらの電子の環境でも太陽電池パドル等に不具合が起きらないことを地上試験で確認してきている

静止軌道における 高エネルギー粒子の長期的観測結果と宇宙機への影響

0

20

40

60

80

100

120

140

160

180

1000

3000

5000

7000

9000

11000

13000

15000

17000

1980

1981

1982

1983

1984

1985

1986

1987

1988

1989

1990

1991

1992

1993

1994

1995

1996

1997

太陽黒点数

電子

Flu

x (個

数(cm2strsec))

電子Flux

太陽黒点数

Miyoshi et al[2004]

太陽活動と放射線帯分布の変動

ETS-Ⅵ搭載TEDAの開発 (理研東大と共同で宇宙環境計測の充実)

目的

bull 新たに開発された国産部品材料等の宇宙環境下での劣化特性を同一条件で計測すると共に劣化の原因となる宇宙環境を同時に計測し比較解析する

bull 新規開発の部品材料の宇宙実証データフライト実績を得る

bull 地上試験として行ってきた宇宙環境を模擬した試験方法の検証を行う

bull 帯電現象及びガスジェット等による人工衛星の汚染の経時変化の取得

bull 衛星設計に用いている宇宙環境モデル(放射線磁場等)の検証 bull 宇宙環境に起因する人工衛星の故障や不具合現象の解明

ETS-VI(きく6号)打ち上がったが GEOに行かずGTOに留まる

bull 1994年(平成6年)8月28日16時50分打ち上げ

bull H-IIロケット試験機2号で種子島から打ち上げ

bull アポジエンジン不具合でGTO軌道に留まる

bull 急遽楕円軌道用に新たな制御プログラムを設計製作し地上検証を行った上で衛星にアップロードしこの問題を解決した

bull 最終軌道ペリジ約8600kmアポジ約38600km軌道傾斜角約13度(3日5周期回帰)で2年間運用

bull TEDAのデータ公開で宇宙環境データが役に立つ事を宣伝(SEESを立ち上げデータを公開した)

ETS-Ⅵ搭載TEDAの成果

トータルドーズ劣化や太陽電池劣化は静止衛星で10年かかった同じ評価を1年間でできた

シングルイベントの発生頻度の高度分布が取得できた (高度8千km~3万8千kmの範囲)

バンアレン帯の放射線帯の電子陽子重イオンの高度分布データを取得し放射線帯モデル日本モデルを作成(あけぼの衛星データ含む)

この成果はGTO軌道を最初から狙うMDS-1(つ

ばさ)プロジェクトへとつながった 米国は1990年7月25日CRRESS(Combined Release and Radiation Effects Satellite )衛星を打ち上げ

研究開発の流れ

計測装置開発

データ収集 計画

環境計測

研究試作

衛星への影響解析で必要なデータ及び性能を機器開発に反映する

高エネルギー軽粒子 重イオン 中性子 帯電 原子状酸素 デブリ 新たな現象(問題点)

軌道上不具合評価 宇宙環境モデル

宇宙環境データベース 警報

衛星設計基準

有人活動への反映

宇宙天気予報 システム

国内外機関とのデータ交換

打上げ衛星運用

放射線環境評価(ISOを含む)の見直し 宇宙環境モデルの最適化 効率の良い宇宙機の開発 (シールド厚最適設計) 低コスト化(部品仕様の見直し) 短期間開発(民生品の利用)

フィードバック

成果目標

プロジェクト支援

宇宙環境計測装置(放射線磁場)小型化の流れ

9kg 10cm 10cm 10kg 14W 18W

1cm 52g 480g 1cm 12W以下 15W

磁力計(480g->52g)

みどり2搭載用 つばさかけはしきぼう搭載用 Jason-2GOSAT搭載

ETS-VIII搭載用 QZS搭載用

電子(05~50MeV) 陽子(1~160MeV) α粒子(4~200MeV)

電子(04~5MeV) 陽子(7~48MeV) α粒子(30~140MeV)

plusmn655364096102456nT plusmn655364096nT

16bit 20bit

電子(003~20MeV) 陽子(04~250MeV) α粒子(08~400MeV)

LPT-S 216x182x175 mm 62 kg LPT-E 240x165x 93 mm 28 kg

積算吸収線量計

軽粒子モニタ(10kgー>9kgー>7kg最小2kg)

17times10times5mm749g

ISSKibou(09-)

GEO

LEO

ETS-V (87-97)

ADEOS-II(02-03)

ETS-VIII(06-) DRTS(02- )

STS-89(98)

MDS-1(02-03) ETS-VI(94-96)

ETS-VII (97-99)

宇宙環境計測の流れ ISSUS-Lab(01)

ひまわり1-4(78-99)

ERG(16予定)

ALOS(06-11)

GOSAT(09-)

Jason-2((08-)

Jason-3(15予定)

GTO

QZS(09-)

ADEOS (96-97)

ADEOS搭載TEDA (世界2番目の異常宇宙線ACR)

bull シングルイベント評価のための重イオン観測であったが世界2番目の異常宇宙線を観測することができた

bull 低軌道の衛星は地球磁場が邪魔となって宇宙線(重イオン)を観測するに向いていないと考えられていたが異常宇宙線を観測するのにすぐれていることが明らかとなった

T Kohno et al Radiation Measuremets 30 5 PP639-644

BBND (ボナー球中性子検出器)

bull 1994年(平成6)年7月に中性子計測のために ボナー球ホスウイッチ方式及びシンチレーションファイバーの3種類のセンサの研究をスタート

bull シャトル打ち上げ計画の管理者から搭載装置の検討依頼がありBBNDのSTS-89への搭載が決定した(1997年1月頃)

bull 振動試験で装置内のボルトが外れるという不具合もあったが約1年という非常に短期間で搭載品を開発することができた

bull コスト低減のために構造解析を自前で実施したりデータ処理ソフトウェアも内作した

熱中性子に対して高い感度を持つ6個の3Heガス入り比例計数管で構成して

いる中性子は電荷をもたないのでそれ自身には電離作用がないが軽い原子の3He気体では反跳原子を生じたり中性子の核反応(3He+nrarrp+3H+765KeV)によって荷電粒子を生じるので間接的に電離を起こす下図のように気体中に二つの電極を置き高電圧(1000V)をかけておくと中性子の入

射によって気体中に生じた陽子イオンと電子のイオン対がそれぞれの電極に向かって流動し外部回路に電離電流が流れるこの電気パルスにより中性子を計測する

ボナー球型中性子モニタの概要

Polyethylene Sphere3He proportional Counter

51 φ 51 φ81 φ110 φ150 φ230 φ

Sensor6 Sensor5 Sensor4 Sensor3 Sensor2 Sensor1

Covered by Gadolinium

[mm]3Heガス入り比例計数管の原理

6個のボナー球の断面図

3Heガス入り比例計数管とポリエチレン減速材

H Matsumotoet al Radiation Measurements 33 (2001) 321-333

ISS搭載BBNDの成果(約8か月)

実験期間中の平均的な等価線量等量率 (2001年3月23日~2001年11月14日)

太陽フレア時(2001年11月4日)

等価量等量率の平均は94μSv日で年率に換算すると34mSv年となるこれは地上において自然界から受ける等価線量当量率の約14倍に相当する 実験期間中に多数の太陽フレアが発生した2001年11月4日の太陽フレアにより019mSVの増加を観

測したこれは自然界から受ける等価線量当量率の約1か月分に相当するしかしBBNDの約8か月

の実験期間中の全等価線量当量に対するこの太陽フレアの影響の寄与分は1以下であった また搭載位置による環境の違いも確認された

H Koshiishiet al Radiation Measurements 42(2007) 1510-1520

1)船内の計測結果より低エネルギー側で2~3桁高エネルギー側で1~2桁低い 2)船内より船壁が薄く中性子が少ない環境より自然のアルベド中性子環境に近い

中性子被曝線量の ISS船外(SEDA-AP)と船内(STS-89)の比較

MDS-1搭載放射線吸収線量モニタ(SDOM) SiTungstenAlBGO

② ⑦

⑧⑧

① Collimator ② Window③ SSDs ④ Plastic Scintillator⑤ Anticoincidence Scintillator(ACS)⑥ Beam Stop⑦ Scintillator PMT⑧ ACS PMT

運用期間 2002年2月 ndash 2003年9月 軌道 -軌道傾斜角 285deg 1 lt BB0 le 84 -高度 500 km times 36000km 11 le L le 10 -軌道周期 約10時間35分 -スピンレート 5rpm

計測エネルギー範囲 Electron 04- 9MeV (5bins) Proton 09-210MeV (12bins) He 6-140MeV (4bins) Heavy Ion 15- 60MeVnuc (1bin) G-Factor 001cm2sr

放射線帯変動モデルの開発 MDS-1 065 MeV 電子フラックス

変動パラメータの選択 (1 cycle solar activity)

太陽風速度(SW)

太陽黒点数(R)

Ap指数

F107

変動パラメータ- Tavg の定義-

1日後の予測

パラメータスケールの時間平均 ApTavg SWTavg F107 Tavg

T days

放射線帯の構造は変動パラメータ値の大きさと継続時間に相関がある

065MeV 電子 L値-Tavg マップ

APTavg

SWTavg

13MeV 陽子 L値-Tavg マップ

APTavg

F107Tavg

電子観測とMDS-1モデルの比較

80 175

放射線帯フラックスピークの変動

80orbits (平穏時) 175orbits (擾乱時)

陽子観測とモデルの比較

電子(035~078MeV) 1日の変動予測GOSAT軌道

0

50

100

150

200

250

1E+09

1E+10

1E+11

1E+12

1984 1986 1988 1990 1992 1994 1996 1998 2000 2002 2004 2006 2008

Flue

nce[

ecm

2M

eVd

ay]

Launch day

FluenceSSN

Worst case Nov 12003

電子(035~078MeV) 変動の信頼度水準(1日)GOSAT軌道

00

01

02

03

04

05

06

07

08

09

10

88 90 92 94 96 98 100 102 104 106 108 110 112 114

Con

fiden

ce le

vel

Fluence[LOG10 ecm2MeVday]

AE-8 MAX

AE-8 MIN

MDS-1 model と AE-8 model との比較1日

0

20

40

60

80

100

120

140

160

180

1E+09

1E+10

1E+11

1E+12

1995 1997 1999 2001 2003 2005 2007 2009

Flue

nce[

ecm

2M

eVd

ay]

Launch day

Fluence(JAXA)Fluence(AE8)SSN

話の流れ

技術データ取得装置(TEDA)の概要と成果 bull 主な成果 bull 不具合解析例

宇宙天気のリスクと対策 bull 宇宙環境による衛星システムへの影響 bull 宇宙環境を原因とする不具合の割合推移部位 bull 静止軌道不具合 bull 対策

今後必要な観測項目

まとめ

2003年10月 みどり号の全損事故 (複合現象)

極域のオーロラ帯を通過中に電力ハー

ネスを巻いているMLIが高エネルギー電

子により帯電

MLIが接地されていなかったため内側

のハーネスとの間に1kV以上の電位差が

発生

MLI内のガス密度が発電開始に伴う温度

上昇により上昇

ハーネス被覆の傷により露出したハーネ

ス芯線とMLI内面の間で放電発生

単発の放電が隣接するハーネスに飛び火

してハーネス間の短絡

アーク放電が次々と伝搬していきハー

ネス全体が焼損

故障推定箇所 (大電力ハーネス部)

bull詳細報告書は文部科学省 宇宙開発委員会のHP参照

httpwwwmextgojpb_menushingiuchuureports04080901htm

bull 人工衛星の電位 bull 人工衛星は電気的に宇宙に浮いている bull 宇宙機構造体が接地点 bull 宇宙機への流入電流と流出電流のバランスによって宇宙機電位が決まる bull 各電流成分は宇宙機電位Vの関数として表され定常状態では式を下式を満たす

衛星帯電の基本式

( ) dtIIIIIIIC

V

dtdVCVIVIVIVIVIVIVI

BPHBSESISEIE

BPHBSESISEIE

int +++++minus=

==+++++minus

1

0)]()()()()()([)(

入射電子電流 ( E I )

後方散乱電子電流 ( BSE I )

入射正イオン電流 ( I I )

入射電子による二次電子電流 ( SE I )

太陽光

入射正イオンによる 二次電子放出電流 ( SI I )

光電子放出電流( PH I )

電荷ビーム放出電流(IB)

bull内部帯電は衛星の外壁を貫通した放射線帯外帯の01MeV以上の電子が内部に侵入

bull基板間や同軸ケーブルの線間等の容量(コンデンサ)や誘電体に帯電 bull接地されてない導体片に帯電

bullその耐圧電圧を超えると その耐圧の弱い箇所 (材質の欠陥や針状突起など の箇所)で放電して故障に至る

内部帯電

(あるエネルギ-以上の粒子が入射光電子なし)

NASA-HDBK-4002より

パドルでの帯電放電メカニズム

宇宙環境の影響により 衛星がマイナス電位に帯電

高エネルギー電子等により カバーガラスはプラスに帯電 衛星とカバーガラスに電位差が生じる

電位差が大きくなると トリプルジャンクション近傍 の電界強度が増大していく

トリプルジャンクションで放電が発生する カバーガラスの帯電が緩和される

+ + + + + + + + + + + + + +

+ + + +

カバーガラス

太陽電池セル

基板(衛星構体)

トリプルジャンクション rArr 導体絶縁体宇宙環境の接点

持続放電

Substrate

Satellite Load

insulation sheet

Solar array cell

Cover glass

Arc current

Electrode

持続放電は衛星の電力消失につながる 持続放電のモードは以下の2通りがある

Substrate

Satellite Load

insulation sheet

Solar array cell

Cover glass

Arc current

Electrode

Solar array cell

Cover glass

セル-基板間短絡 セル間短絡

放電によって太陽電池セルと基板が短絡する 短絡によって負荷に電力が供給されなくなる

放電によって太陽電池セルとセルが短絡する 短絡によって負荷に電力が供給されなくなる

サブストーム(高エネルギー電子)との遭遇

+ + + + + + + +

二次電子光電子による絶縁体の帯電(局所帯電)

電位差発生

逆電位勾配

衛星構体が負に帯電(絶対帯電)

電位

時間

サブストーム

衛星構体 VS

乖離電圧 ∆V

カバーガラスVcg

0 プラズマ電位

軌道別帯電放電現象

トリプルジャンクションで 放電発生

放電発生

静止軌道

+ + + + + + + +

逆電位勾配

軌道帯電放電現象

トリプルジャンクションで 放電発生

極軌道 オーロラ電子(高エネルギー電子)との遭遇

プラズマ流入出による絶縁体の帯電(局所帯電)

電位差発生

衛星構体が負に帯電(絶対帯電)

放電発生

電位

時間

オーロラ電子

衛星構体 乖離電圧 ∆V

カバーガラス

0 プラズマ電位

データ中継技術衛星DRTS (こだま)の不具合

2002年10月 9日 静止軌道に打ち上げ

2003年

3月24日 406JST変化率異常モニタ故障検出(FDIR)

が動作しA系からB系に切り替わった

3月25日 410JSTにB系のみ異常検知

4月 3日 327JSTにB系のみ異常検知

5月28日 124JSTにB系のみ異常検知

6月 6日1537JSTにB系のみ異常検知

ESA

DRTS ESA スパイクノイズと 電子フルエンスの比較(赤の丸が異常検知)

larr閾値

この事実を基に静止軌道における内部帯電警報システムを構築 2004年4月より運用開始

不具合が宇宙環境によるものであるか 判断する際のポイント

不具合の発生した時刻に太陽フレアや磁気嵐等の宇宙天気の大きな変動が起きていれば不具合に関係している可能性が高い但し帯電など放射線の積算的効果の伴う現象については発生から1週間位さかのぼり環境がどのように推移してきたかを考慮する必要がある

磁気嵐が起きると静止軌道に急激な粒子の増加現象が起きこれにより衛星帯電が引き起こされたりする(予測に利用可能)

地方時(真夜中や朝方か)や季節(春秋)を考慮する

低軌道衛星においてはSAA外帯のrdquo角ldquo及び極通過時に不具合

が起きやすいので衛星の位置(緯度経度)が重要

事象を把握する上で単発現象か数回起きている現象か周期

(時間同じ軌道等)的に発生している現象か

話の流れ

技術データ取得装置(TEDA)の概要と成果 bull 主な成果 bull 不具合解析例

宇宙天気のリスクと対策 bull 宇宙環境による衛星システムへの影響 bull 宇宙環境を原因とする不具合の割合推移部位 bull 静止軌道不具合 bull 対策

今後必要な観測項目

まとめ

宇宙天気のリスク -宇宙環境によるシステムへの影響 -

プラズマ (IRI)

帯電 (MUSCAT)

衝突 (AUTODY)

抗力 表面劣化

紫外線X線 中性粒子 (MSIS)

放射線粒子 (AE8AP8JPLSHIELDO

SE-2)

メテオロイドデブリ (MASTER2005

ORDEM)

電離損傷 変位損傷

bull電子回路の劣化 bull光部品の劣化

bull太陽電池セルの劣化

SEU (CREME96)

bullデータエラー bull画像ノイズ

bullシステム停止 bull回路損傷

bull熱的電気的光学的特性の劣化

bull構造の劣化 bullコンタミ

電磁パルス bull電源出力低下

bull損傷

bullトルク bull軌道落下

bull構造 損傷 bull減圧

bull電磁パルス

NASAの報告 -GNampCに注目-

1974年から1994年に起きたNASAと空軍の衛星故障の内20~25が宇宙環境に起因していたと報告

1990年から2001年に米国欧州カナダ日本の企業や政府機関が開発した衛星を調べた過去の宇宙ミション損失の大部分はロケットの失敗であったが1998年衛星損失の大部分は軌道上の衛星障害となっている多くの最近の異常は太陽電池アレイ及びバッテリの危険が増加している静止軌道通信衛星の設計寿命はこのサブシステムの故障の危険が増加している

喪失等の大きな誘導制御(GNampC)の不具合に注目 GNampC不具合の内宇宙環境による 不具合は約3と報告されている

軌道上衛星のタイプ別数

NASAの報告(続き)

衛星設計寿命における不具合発生時期 事故率と軌道

軌道別の衛星数 サブシステム不具合

宇宙環境を原因とする不具合の割合 -JAXAの場合-

2002年~2008年に運用された軌道上不具合情報が比較的充実している11衛星(利用衛星7機科学衛星4機)の結果宇宙環境によるも

のは約15過去のデータよりも割合が少ない

合計83件 合計35件

(1)利用衛星 (2)科学衛星

設計検討 不足 48

製造不良 8

軌道上環境 17

偶発故障 6

調査中 13

原因不明 8

設計検討

不足 61

製造不良 4

軌道上環境 11

偶発故障 6

調査中 9

原因不明 9

不具合発生部位の割合

不具合発生部位の割合

Brent Robertson Eric Stoneking ( 1990-2001NASA Goddard Space Flight Center )

Satellite News Digest -静止軌道不具合-

Satellite News Digest (SND) (http wwwsqt-indexcouk) で1997年~2009年の期間に静止軌道で95件の不具合が報告されている その内運用ミスや設計ミスなどを除くと32件(約33)は宇宙環境によるものであった 過去のデータより割合が多い

Choiら1)はこれら不具合の地方時と季節依存性を確認した その結果2100LT~900LTで約72の不具合が発生し900LT~2100LTは9件(約28)であった またこの9件は全て姿勢制御の不具合だった 静止軌道衛星不具合のほとんどは真夜中と朝方で起きており磁気嵐に伴い磁気圏尾部から注入した粒子による表面帯電が不具合の主原因と結論づけている

1) Ho-sung Choi et al Analysis of GEO spacecraft anomalies Space weather relationships Space Weather Vol 9 S06001

太陽活動と静止軌道衛星不具合例

ANIK-E1E2

ANIK-E1

複数の衛星で故障

Galaxy-15

帯電放電不具合 -ANIK-E1amp2Telstar401-

Jan 1994 ANIK-E1 amp E2事故時の環境 - Joe H Allen

1週間

太陽活動下降時期の電子増加

2MeV以上電子

copyNOAA Web

フラックスが3桁急増

Jan 1997 Telstar401事故時の環境

静止軌道の急激な電子増加

太陽極大期太陽フレアによる衛星障害 - 2003年10月~11月-

10486981048698 永久故障 4 10486981048698 安全モード又は運用を一時停止 31 10486981048698 データ内容の「誤り」の増加搭載コンピュータの誤動作 5

httpwwwsat-ndcomfailures等のデータによる 合計 40件

-Barbieri and Mahmot

米国極軌道気象衛星NOAA-17の改良型マイクロ波観測装置AMSU-A1 (Advanced Microwave Sounding Unit)のスキャナーが永久故障 米国気象衛星GOES -8号のX線センサがOFFになり復帰しなくなった

e-birdに深刻な不具合が発生 不具合は20本のトランスポンダ全てに影響

火星周回中の探査機「マーズオデッセイ (Mars Odyssey)」の観測機器放射線観測装置「Martian Radiation Environment Experiment (MARIE)」が太陽活動の影響により10月28日から適切に作動しなくなった データ中継技術衛星(DRTS)「こだま」 太陽捕捉モードに移行

太陽陽子

帯電放電不具合-Galaxy15(局所的的現象)- 2

5 M

eV

65

MeV

11

5 M

eV

GOES 14 ----- GOES 15 ----- GOES 11 -----

Satellite Locations

Galaxy 15 anomaly

2010年4月5日9時48分UTCは磁気嵐及びCMEが発生するなど宇宙環境は非常に荒れていたGalaxy15衛星は真夜中側に位置し宇宙環境の影響を受けやすい

位置にいたことから宇宙環境による不具合である可能性が高いということで原因追及がなされた高エネルギー粒子が引き起こす代表的な衛星不具合現象として3つ(表面帯電内部帯電SEUシングルイベントバーンアウトSEL)の可能性を検討した

チームの報告書によると磁気圏尾部からの熱電子の流入による放電が原因であったと結論付けられたGalaxy15衛星の近くにはGOES-11衛星が位置していたがGOES-11衛星には不具合を発生しておらず本現象は局所的な現象と推測される

衛星開発段階における対策 JAXAの不具合解析の結論

bull 2002年~2008年に運用された11機の衛星不具合を解析 宇宙環境による不具合は偶発故障のみ(全体の約15)確率的には想定範囲内ではあるがその影響を最小限とするためディレーティング運用モード寿命についての研究に取り組む

bull 設計基準試験の充実検証確認の強化技術成熟度(TRL)評価の徹底各々の境界制約条件の明示化等により検証不足抜けの防止有効なピアレビューに結びつける

冗長系(同じハードウェア機能の冗長)柔軟性の設計(ソフトハードの対応)

bull 従来の故障が起きないようにする設計に対してGOSAT(いぶき)では重要部

品を二重化することにより故障する可能性は上がるが故障しても衛星バスの運用や観測が続行できる可能性がより高くなるように設計した

運用における対応

bull 宇宙天気監視ーロケット打ち上げ及び宇宙飛行士支援 数日前に今後の宇宙環境の推移を把握(MXレベルのフレアの発生確率)

bull X線の増加で太陽フレア発生を検知したら高エネルギー粒子の発生をいつまで 気を付ければ良いか判断(発生位置で大凡を推定するが課題は多い) SPEが発生した場合(特に10MeV以上100MeV 以上の陽

子)最大値フラックス値の推定 ピーク値を予測(特に閾値に近くなった時に重要)

bull 衛星運用 bull 太陽フレア磁気嵐警報(X線陽子及びkpが閾値を超えた

時に警報を発信)2003年10月より運用開始 bull 内部帯電警報(2日後の静止軌道上の高エネルギー電子(>1

Me) の増加を予測し 閾値を超えた時に警報を発信) 2004年4月より運用開始

話の流れ

技術データ取得装置(TEDA)の概要と成果 bull 主な成果 bull 不具合解析例

宇宙天気のリスクと対策 bull 宇宙環境による衛星システムへの影響 bull 宇宙環境を原因とする不具合の割合推移部位 bull 静止軌道不具合 bull 対策

今後必要な観測項目

まとめ

計測対象計測項目 計測対象 粒径100μm以上のデブリメテオロイド 計測項目 デブリ粒径衝突頻度

基本原理

厚さ約125μmの絶縁性のポリイミドフィルム表面に 100μm周期で直線状の細長い導線(太さ50μm)パターンを形成導線の破断を電気的に検知することによりデブリの衝突(貫通)を検知する破断した導線の数導線の幅ピッチからデブリサイズを計測する

微小デブリ計測技術の概要

衝突孔の例(衝突試験ISAS) - 衝突粒子 SUS 309 microm - 衝突速度 52 kms

HTV5号機によるセンサ機能のフライト実証

35cm

46cm

FY2013機能実証モデル

検出線幅 50 μm 検出線間隔 100 μm フィルム厚 lt 20 μm 有感領域 30times33cm 検出線総数 3300本

サイズ 50times39times4 cm (筐体を含む)

重量 約15kg(筐体を含む)

消費電力 2W(最大4W)(他センサ含む)

テレメトリ 02 bps

宇宙環境観測装置KASPERの一部としてデブリセンサSDMを搭載 FY2013に製作開始今年8月に打ち上げ予定)

まとめ(その1)

衛星不具合の主な原因は帯電放電シングルイベント放射線損傷である今後デブリ環境が重要になると予測される

静止軌道では商用衛星が多く運用されており宇宙環境の変動把握は重要この領域で運用する衛星が気を付けなければいけない環境として

1太陽フレアに伴う高エネルギー粒子 2太陽活動下降期による静止軌道電子の増加 3磁気嵐に伴う磁気圏尾部から注入する粒子 などがあげられる

まとめ(その2)

不具合軽減の取り組み bull 開発時は宇宙環境条件(トータルフラックス及び最悪条

件)を明確にし設計(冗長系柔軟性の設計ディレーティング及び運用モード寿命について研究)試験の充実検証の充実を図る

bull 運用段階に入ったならば宇宙環境を監視し警報等で故障を防ぐ

予測課題 bull 太陽フレアに伴う高エネルギー粒子発生後フラックス

ピーク値の推定

bull 衛星により不具合の起きる閾値は異なるが閾値をこえる急激な電子フラックスの増加と継続時間の予測

bull 局所的な磁気嵐に伴う磁気圏尾部から注入する粒子

宇宙環境グループは宇宙ステーションと衛星プロジェクトの安全な遂行に貢献しています

ご静聴ありがとうございました

補足資料

不具合原因の推移 bull 宇宙天気を大きく左右する要因の1つとして約11年の太陽活動変化が挙げられる

bull 太陽活動下降時期(太陽変動CME)と極大期(フレアCME)に衛星で不具合が増加するそれにより不具合原因の割合が変わる

-Koons et al The Impact of the Space Environment on Space Systems Aerospace Corp report no TR-99(1670)-1 20 July 1999 -2009 preliminary study (unpublished)

何故不具合は減らないか

bull 部品 放射線に対する感受性が高くなっている bull 微細化が進み同時にフォールトするノードが増え同時にエ

ラーとなる論理ノードやメモリセルが増加する微細化によってメモリセルは小さくなるので記憶容量当たりでみるとエラーの発生率は下がるしかし半導体チップの記憶容量やゲート数が増えるので半導体チップ当たりのエラー発生率は微細化とともに上昇するまた蓄積電荷が小さくなり感受性が高くなってきている

bull システム 大型化大電力化運用長期化 bull 1990年代末以降静止衛星の電力が10kWレベルになったしか

し設計検証技術データ蓄積が遅れている改善されつつあると推測される

放射線による影響の概要

粒子 エネルギー又はLET

代表的な影響

陽子 100keV-1MeV 1-10MeV 10-100MeV gt50MeV

表面損傷 表面材料と太陽電池の損傷 放射線損傷(電離非電離損傷の両方)センサーへのノイズ シングルイベント効果

電子 10-100keV gt100keV gt1MeV

表面帯電 深部帯電現象(deep-dielectric charging)センサーへのノイズ太陽電池の損傷 放射線損傷(電離)

重イオン gt1MeV-cm2mg シングルイベント効果

注エネルギー及びLETは個々の部品等により異なりますあくまでも目安です

耐放射線設計手順

軌道条件

ミッション期間

環境条件設定

トータルドーズの予測

1MeV電子換算被曝算出

NIELの換算

LETフルエンス算出

陽子フルエンス算出

対  策  の  検  討

対  策  の  検  討

対  策  の  検  討

放射線による劣化率予測

劣化率予測 特性予測

耐性データ

放射線による劣化率予測

耐性データ

劣化率予測アレイ出力劣化予測

感受性データ

シングルイベント発生率予測 致命度解析

衛星内質量分布

(2)

部品材料の選定

他の要因による劣化率予測

(2)(2) (3)

回路設計等NO

OK

アレイ構造 セル選定

他の要因による劣化率予測 アレイ設計(2)

(2) (2) (2) (3)

衛星内質量分布 部品選定(2)

(2) (2)(3)

NO

OK

NO

OK

(1) 環境モデルマージを含む(2) 部品レベルの検討(3) アセンブリレベルでの検討(4) 設計マージン環境モデル   マージを含め大丈夫か

トータルドーズ

太陽電池アレイの劣化

シングルイベント効果

回路設計

補足放射線太陽宇宙線銀河宇宙線

NEILを用いたダメージファクターの算出

対  策  の  検  討

放射線による劣化率予測

劣化率予測 特性予測

耐性データ

(2)

部品材料の選定

他の要因による劣化率予測

(2)(2) (3)

回路設計等NO

OK

衛星内質量分布 半導体デバイスの変位損傷

(1)

(4)

(4)

(4)

(4)

各軌道における放射線環境

1E+10

1E+11

1E+12

1E+13

1E+14

1E+15

1E+16

1E+17

1E+18

1E+19

1E+20

001 010 100 1000

捕捉

電子

の積

分フ

ルエ

ンス

[m

2 ]

エネルギー[MeV]

各軌道における電子捕捉積分フルエンス(3年間)

LEO

EOS GEO

MEO

GTO

GEO 軌道傾斜角 0deg 高度36000km GTO 軌道傾斜角 18deg 高度 360km~36000km MEO 軌道傾斜角 51deg 高度 10000km EOS 軌道傾斜角 98deg 高度705km LEO 軌道傾斜角 29deg 高度 600km

1E+12

1E+13

1E+14

1E+15

1E+16

1E+17

1E+18

1E+19

1E+20

01 10 100 1000

捕捉

陽子の

積分フルエン

ス[

m2 ]

エネルギー[MeV]

各軌道における捕捉陽子積分フルエンス(3年間)

MEO

GTO

GEO

EOS LEO

放射線による部品材料の影響

総照射線量 (TIDTotal Ionising Dose )

電離損傷

バイポーラTrの電流増幅率の低下リーク電流の増大

γ線で評価

トータルドーズ効果

変位損傷 (DDDisplacement Damage )または 非イオン化エネルギー損失 (NIELNon-Ionising Energy

Loss )

変位損傷(格子欠陥の生成)

電荷輸送効率の低下 (CCD)太陽電池の効率低下等

電子陽子により評価

シングルイベント効果

1個の荷電粒子の入射により発生する誤動作

ソフト(Latch-Up Burnout) エラー又は ソフト (Upset) エラー

陽子及び重イオンで評価

トータルドーズ効果

+ - + + - + - + - - + + + + -

ゲート酸化膜

電離

格子欠陥

正電荷捕獲

+ 正孔 - 電子

電極

(Silicon oxidenitride)

荷電粒子

反跳原子

ゲート絶縁膜中に電荷が蓄積することによるMOSトランジスタのしきい電圧(MOSトランジスタがオフからオンに変化するゲート電圧)の変化をもたらすただ

し最近の最先端チップはゲート絶縁膜がきわめて薄くなっているこのためゲート絶縁膜よりもフィールド絶縁膜(隣接するトランジスタを電気的に分離する絶縁膜)での電荷蓄積が相対的には大きな問題になってきている」

シングルイベント効果

メモリセルはNチャンネルとPチャンネルMOSFETより構成されメモリ情報は回路ノード12の電位の

高低により記録している空乏層の広がっているPN接合12の領域に

重イオンが入射した場合電荷の発生と空乏層内への少数キャリアの収集が起こるこの収集電荷量が回路の耐量を越えた場合(c)に示すように反転が起こる(ソフトエラー)一方pウエル-N基板接

合の空乏層内に電荷収集量が起こりえる耐性を越えると寄生的に存在するPNPNサイリスタ構造がオ

ンし電源と基板間に大電流が流れる状態が生じる(ラッチアップ)

シングルイベントメカニズム -陽子と重イオンの違い-

エラー発生率の計算

線エネルギー付与(LET) (linear energy transfer)

電離性放射線が物質中を通過する際飛程の単位長さ当りに平均して失うエネルギーをいう各種の放射線のうちX線γ線はLETが小さいので低LETといいα線中性子線その他重イオン核分裂破片のLETは大きいので高LETという MeVμmMeV(gcm2)やMeV(mgcm2)で表される

南大西洋異常(SAA) bull 地球の自転軸と磁気軸のずれ

darr bull 放射線帯が自転軸に対して非

対称

bull 南大西洋上空では放射線帯内帯が低高度に落ちてきているこの領域を南大西洋異常域(SAA South Atlantic Anomaly)と呼ぶ

bull 地球観測衛星ではSAAで放射線帯陽子の影響を受ける

Single Event Lachup

シングルイベントと陽子分布

MOS-1衛星(高度909km軌道傾斜角99度)で発生したシングルイベントと 陽子30MeV以上の等高線マップを重ね合わせた結果

NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)

bull 入射粒子が電離によらず与える損傷非イオン化損失

低軌道での電子フラックスと 不具合の発生場所

南大西洋異常(SAA)と極の角

高度800kmでの電子フラックス図極の角(polar horn)とSAAを示す

太陽粒子線 bull 太陽高エネルギー粒子線(SPE Solar Proton Events)は太陽フレア とコロナガス噴出 (CMECoronal Mass Ejections )により引き起こされる bull フレアのスペクトルは可変であるためあるエネルギー域における最悪状態イベントは必ずしも別のエネルギー域における最悪条件ではない 1972年8月のイベント 10~70MeVの粒子が最も多かった 1989年10のイベント 1972年8月のイベントに比べ低エネルギー領域 高エネルギー領域が明らかに激しかった

フルエンス 105 to 1011 cm-2

変動期間 1日から数日

ldquoBastiliardquo Solar Event 14 July 2000

Carrington Flare

84

(LW Townseed) Carrington Flare(1859年) Carrington Flare による30MeV以上トータルFluenceを118times109cm-2で規格化 ~1989年フレアの約13倍(シングルイベントの評価で使用) ~1991年フレアの約9倍 2012年7月23日にキャリントンイベントとほぼ同等の爆発現象が太陽あるいは太陽の周りで起きていたということがNASAの太陽観測衛星「STEREO」の解析から発表された

放射線対策 bull 放射線シールドを付加し放射線を減衰させる

bull 放射線耐性の強い部品(SOI(Silicon On Insulator)技術による耐放射線部品)材料に変更する

bull 放射線による損傷を吸収するために回路または構造上のマージンを持たせる bull ソフト的なエラーに対しては エラー検出訂正機能や多数決

機能等でソフト的エラーが起きてもシステムが機能するようにしたフォールトトレラント機能を付けて対処する ICのハード的故障に対しては ラッチアップ耐性の強い部品を選定するしかないが 電流制限回路を付ける対策も採られる パワーMOSFETに対しては部品選定 電源電圧を規格値の半分以下に落とす等の対策を採る

SOI技術

表面帯電への対策例

表面の物体間を導線で結線する

太陽電池のカバーガラスを導電性被膜付き(酸化インジウムITO)にする

熱制御材表面にITOを被覆する

熱制御材は高誘電率のテフロンの使用を避け 高伝導度耐環境性に優れたブラックカプトンを使用

イオンエンジンの中和器で能動帯電制御

内部帯電への対策例

アルミで3mm厚さに相当するシールドで囲む(Faraday Cage)

テフロンやカプトンなどの誘電体材料の内部での使用量を最小限に押さえる

回路基板やコンフォーマルコーティングは誘電体なので電流リークパス(1012Ωcmまたは1012Ωcm2

程度)を必ずつける

特にスポット的な放射線シールドの金属材には必ず電流リークパスをつける

帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備

衛星モデル作成

材料物性テーブル設定

宇宙環境パラメータ設定

Converter

転送ディレクトリ 解析データファイル

転送

解析ディレクトリ生成 解析結果 進行状況チェック ファイル操作

MUSCAT 解析エンジン

解析結果 表示

パラメトリックラン

オプション 解析

大型パネル実験(35mtimes11m) クーポンパネル実験(26cmtimes16cm)

環境模擬試験 環境模擬試験

MUSCATに使用する物性値設計標準制定のための知見などを得ることを目的に軌道上の宇宙環境を模擬した地上試験を行っている これらの試験では放電の発生頻度や電圧閾値放電発生による太陽電池パネルや搭載機器への影響を検証している

放射線計測装置の原理

bull その粒子が物質を通過する際のエネルギー損出率が粒子の電荷(原子番号)Zの二乗に比例すること(Bethe-Blochの式)を利用する

S2

E

ΔE Ersquo

S1 S3

  • 宇宙機の設計のための宇宙環境
  • 話の流れ
  • 話の流れ
  • TEDA(技術データ取得装置)(国産部品の宇宙環境での実証の必要性)
  • ETS-VTEDA(技術データ取得装置)誕生前の部品の宇宙実証の背景
  • スライド番号 6
  • スライド番号 7
  • スライド番号 8
  • スライド番号 9
  • 図6太陽黒点数と静止軌道電子 (>04MeV ) Flux の変動 (ETS-V搭載DOMによる観測)
  • スライド番号 11
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの開発(理研東大と共同で宇宙環境計測の充実)
  • ETS-VI(きく6号)打ち上がったがGEOに行かずGTOに留まる
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの成果
  • スライド番号 15
  • スライド番号 16
  • スライド番号 17
  • ADEOS搭載TEDA(世界2番目の異常宇宙線ACR)
  • BBND (ボナー球中性子検出器)
  • スライド番号 20
  • ISS搭載BBNDの成果(約8か月)
  • スライド番号 22
  • MDS-1搭載放射線吸収線量モニタ(SDOM)
  • 放射線帯変動モデルの開発MDS-1 065 MeV 電子フラックス
  • 変動パラメータの選択 (1 cycle solar activity)
  • 変動パラメータ- Tavg の定義-
  • 065MeV 電子 L値-Tavg マップ
  • 13MeV 陽子 L値-Tavg マップ
  • 電子観測とMDS-1モデルの比較
  • 放射線帯フラックスピークの変動
  • 陽子観測とモデルの比較
  • 電子(035~078MeV) 1日の変動予測GOSAT軌道
  • 電子(035~078MeV) 変動の信頼度水準(1日)GOSAT軌道
  • MDS-1 model と AE-8 modelとの比較1日
  • 話の流れ
  • 2003年10月 みどり号の全損事故(複合現象)
  • 衛星帯電の基本式
  • 内部帯電
  • パドルでの帯電放電メカニズム
  • スライド番号 40
  • スライド番号 41
  • スライド番号 42
  • データ中継技術衛星DRTS (こだま)の不具合
  • DRTS ESA スパイクノイズと電子フルエンスの比較(赤の丸が異常検知)
  • 不具合が宇宙環境によるものであるか判断する際のポイント
  • 話の流れ
  • 宇宙天気のリスク-宇宙環境によるシステムへの影響 -
  • NASAの報告-GNampCに注目-
  • NASAの報告(続き)
  • 宇宙環境を原因とする不具合の割合-JAXAの場合-
  • 不具合発生部位の割合 
  • Satellite News Digest -静止軌道不具合-
  • 太陽活動と静止軌道衛星不具合例
  • スライド番号 54
  • スライド番号 55
  • スライド番号 56
  • 衛星開発段階における対策
  • 運用における対応
  • 話の流れ
  • スライド番号 60
  • スライド番号 61
  • まとめ(その1)
  • まとめ(その2)
  • 宇宙環境グループは宇宙ステーションと衛星プロジェクトの安全な遂行に貢献しています
  • 補足資料
  • 不具合原因の推移
  • 何故不具合は減らないか
  • 放射線による影響の概要
  • 耐放射線設計手順
  • 各軌道における放射線環境
  • 放射線による部品材料の影響
  • トータルドーズ効果
  • シングルイベント効果
  • シングルイベントメカニズム-陽子と重イオンの違い-
  • エラー発生率の計算
  • 線エネルギー付与(LET)(linear energy transfer)
  • 南大西洋異常(SAA)
  • Single Event Lachup
  • シングルイベントと陽子分布
  • NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)
  • 低軌道での電子フラックスと不具合の発生場所
  • 南大西洋異常(SAA)と極の角
  • スライド番号 83
  • Carrington Flare
  • 放射線対策
  • スライド番号 86
  • スライド番号 87
  • 帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備
  • スライド番号 89
  • 放射線計測装置の原理
Page 3: 宇宙機の設計のための宇宙環境の方針から国産部品開発(42品種)が実施された。 . 半導体電子部品は耐放射線性を加味して、人工衛星(特に

話の流れ

技術データ取得装置(TEDA)の概要と成果 bull 主な成果 bull 不具合解析例

宇宙天気のリスクと対策 bull 宇宙環境による衛星システムへの影響 bull 宇宙環境を原因とする不具合の割合推移部位 bull 静止軌道不具合 bull 対策

今後必要な観測項目

まとめ

TEDA(技術データ取得装置) (国産部品の宇宙環境での実証の必要性)

1975年度から国産部品の開発が始まりさらに1984年~

1988年(ピークは1986年)にH-II ロケットの純国産化の方針から国産部品開発(42品種)が実施された

半導体電子部品は耐放射線性を加味して人工衛星(特にETS-VI以降の衛星)との共通部品とした

国産部品を人工衛星に搭載して宇宙フライトデータ作りが必要となる(国産部品をフライト実績とする)

部品の電気特性劣化データと同時に宇宙環境データ(放射線帯電)の計測が必要になった

気象衛星ひまわり1号~4号 の宇宙環境モニタ (SEM)による宇宙放射線計測(22年間)を引きつぐ

ETS-VTEDA(技術データ取得装置) 誕生前の部品の宇宙実証の背景

国産部品の宇宙環境での実証の必要性

太陽電池モニター(SCM)の衛星搭載

bull ISS-b (1978年2月打ち上げ)

bull ETS-IV(1981年2月打ち上げ)

bull ETS-III(1982年9月打ち上げ)

bull ETS-V(1987年8月打ち上げ)でTEDAに組み入れた

bull 旭硝子製のカバーガラスもフライト実証をしたその成果はETS-VIでこの国産部品の組み合わせで採用

ETS-VTEDAの成果SEL

(世界初データであった) 64-kbit SRAM

( T Goka et al IEEE 1991 1998)

SEL Singl Event Latchup(ハードエラー)

SEL First Measurement (Japan) SEL First Anomaly (ESA)

ETS-VTEDAの成果帯電電位の 材料別10年間の計測結果 Surface Potential Monitor (POM)

Matsumoto Het al Proc Charging Conference 23-27 April 2001 ESTEC

ETS-VTEDA 熱制御材劣化モニタ(TDM)の

10年間の計測データ(太陽光吸収率α 赤外輻射率ε )

ε

α

図6太陽黒点数と静止軌道電子 (>04MeV ) Flux の変動 (ETS-V搭載DOMによる観測)

bull 1993-1994年にかけ各国の静止衛星で不具合や故障が増加したJAXAではETS-V搭載放射線吸収線量モニタ(DOM)による長期的観測により太陽活動下降期の高エネルギー電子の増加を確認しておりこれにより静止衛星に影響が出たことが明らかとなったなお同様の不具合や故障増加が11年前の太陽活動下降期である1982-1983年にも発生していたことが分かった

bull 現在はこれらの電子の環境でも太陽電池パドル等に不具合が起きらないことを地上試験で確認してきている

静止軌道における 高エネルギー粒子の長期的観測結果と宇宙機への影響

0

20

40

60

80

100

120

140

160

180

1000

3000

5000

7000

9000

11000

13000

15000

17000

1980

1981

1982

1983

1984

1985

1986

1987

1988

1989

1990

1991

1992

1993

1994

1995

1996

1997

太陽黒点数

電子

Flu

x (個

数(cm2strsec))

電子Flux

太陽黒点数

Miyoshi et al[2004]

太陽活動と放射線帯分布の変動

ETS-Ⅵ搭載TEDAの開発 (理研東大と共同で宇宙環境計測の充実)

目的

bull 新たに開発された国産部品材料等の宇宙環境下での劣化特性を同一条件で計測すると共に劣化の原因となる宇宙環境を同時に計測し比較解析する

bull 新規開発の部品材料の宇宙実証データフライト実績を得る

bull 地上試験として行ってきた宇宙環境を模擬した試験方法の検証を行う

bull 帯電現象及びガスジェット等による人工衛星の汚染の経時変化の取得

bull 衛星設計に用いている宇宙環境モデル(放射線磁場等)の検証 bull 宇宙環境に起因する人工衛星の故障や不具合現象の解明

ETS-VI(きく6号)打ち上がったが GEOに行かずGTOに留まる

bull 1994年(平成6年)8月28日16時50分打ち上げ

bull H-IIロケット試験機2号で種子島から打ち上げ

bull アポジエンジン不具合でGTO軌道に留まる

bull 急遽楕円軌道用に新たな制御プログラムを設計製作し地上検証を行った上で衛星にアップロードしこの問題を解決した

bull 最終軌道ペリジ約8600kmアポジ約38600km軌道傾斜角約13度(3日5周期回帰)で2年間運用

bull TEDAのデータ公開で宇宙環境データが役に立つ事を宣伝(SEESを立ち上げデータを公開した)

ETS-Ⅵ搭載TEDAの成果

トータルドーズ劣化や太陽電池劣化は静止衛星で10年かかった同じ評価を1年間でできた

シングルイベントの発生頻度の高度分布が取得できた (高度8千km~3万8千kmの範囲)

バンアレン帯の放射線帯の電子陽子重イオンの高度分布データを取得し放射線帯モデル日本モデルを作成(あけぼの衛星データ含む)

この成果はGTO軌道を最初から狙うMDS-1(つ

ばさ)プロジェクトへとつながった 米国は1990年7月25日CRRESS(Combined Release and Radiation Effects Satellite )衛星を打ち上げ

研究開発の流れ

計測装置開発

データ収集 計画

環境計測

研究試作

衛星への影響解析で必要なデータ及び性能を機器開発に反映する

高エネルギー軽粒子 重イオン 中性子 帯電 原子状酸素 デブリ 新たな現象(問題点)

軌道上不具合評価 宇宙環境モデル

宇宙環境データベース 警報

衛星設計基準

有人活動への反映

宇宙天気予報 システム

国内外機関とのデータ交換

打上げ衛星運用

放射線環境評価(ISOを含む)の見直し 宇宙環境モデルの最適化 効率の良い宇宙機の開発 (シールド厚最適設計) 低コスト化(部品仕様の見直し) 短期間開発(民生品の利用)

フィードバック

成果目標

プロジェクト支援

宇宙環境計測装置(放射線磁場)小型化の流れ

9kg 10cm 10cm 10kg 14W 18W

1cm 52g 480g 1cm 12W以下 15W

磁力計(480g->52g)

みどり2搭載用 つばさかけはしきぼう搭載用 Jason-2GOSAT搭載

ETS-VIII搭載用 QZS搭載用

電子(05~50MeV) 陽子(1~160MeV) α粒子(4~200MeV)

電子(04~5MeV) 陽子(7~48MeV) α粒子(30~140MeV)

plusmn655364096102456nT plusmn655364096nT

16bit 20bit

電子(003~20MeV) 陽子(04~250MeV) α粒子(08~400MeV)

LPT-S 216x182x175 mm 62 kg LPT-E 240x165x 93 mm 28 kg

積算吸収線量計

軽粒子モニタ(10kgー>9kgー>7kg最小2kg)

17times10times5mm749g

ISSKibou(09-)

GEO

LEO

ETS-V (87-97)

ADEOS-II(02-03)

ETS-VIII(06-) DRTS(02- )

STS-89(98)

MDS-1(02-03) ETS-VI(94-96)

ETS-VII (97-99)

宇宙環境計測の流れ ISSUS-Lab(01)

ひまわり1-4(78-99)

ERG(16予定)

ALOS(06-11)

GOSAT(09-)

Jason-2((08-)

Jason-3(15予定)

GTO

QZS(09-)

ADEOS (96-97)

ADEOS搭載TEDA (世界2番目の異常宇宙線ACR)

bull シングルイベント評価のための重イオン観測であったが世界2番目の異常宇宙線を観測することができた

bull 低軌道の衛星は地球磁場が邪魔となって宇宙線(重イオン)を観測するに向いていないと考えられていたが異常宇宙線を観測するのにすぐれていることが明らかとなった

T Kohno et al Radiation Measuremets 30 5 PP639-644

BBND (ボナー球中性子検出器)

bull 1994年(平成6)年7月に中性子計測のために ボナー球ホスウイッチ方式及びシンチレーションファイバーの3種類のセンサの研究をスタート

bull シャトル打ち上げ計画の管理者から搭載装置の検討依頼がありBBNDのSTS-89への搭載が決定した(1997年1月頃)

bull 振動試験で装置内のボルトが外れるという不具合もあったが約1年という非常に短期間で搭載品を開発することができた

bull コスト低減のために構造解析を自前で実施したりデータ処理ソフトウェアも内作した

熱中性子に対して高い感度を持つ6個の3Heガス入り比例計数管で構成して

いる中性子は電荷をもたないのでそれ自身には電離作用がないが軽い原子の3He気体では反跳原子を生じたり中性子の核反応(3He+nrarrp+3H+765KeV)によって荷電粒子を生じるので間接的に電離を起こす下図のように気体中に二つの電極を置き高電圧(1000V)をかけておくと中性子の入

射によって気体中に生じた陽子イオンと電子のイオン対がそれぞれの電極に向かって流動し外部回路に電離電流が流れるこの電気パルスにより中性子を計測する

ボナー球型中性子モニタの概要

Polyethylene Sphere3He proportional Counter

51 φ 51 φ81 φ110 φ150 φ230 φ

Sensor6 Sensor5 Sensor4 Sensor3 Sensor2 Sensor1

Covered by Gadolinium

[mm]3Heガス入り比例計数管の原理

6個のボナー球の断面図

3Heガス入り比例計数管とポリエチレン減速材

H Matsumotoet al Radiation Measurements 33 (2001) 321-333

ISS搭載BBNDの成果(約8か月)

実験期間中の平均的な等価線量等量率 (2001年3月23日~2001年11月14日)

太陽フレア時(2001年11月4日)

等価量等量率の平均は94μSv日で年率に換算すると34mSv年となるこれは地上において自然界から受ける等価線量当量率の約14倍に相当する 実験期間中に多数の太陽フレアが発生した2001年11月4日の太陽フレアにより019mSVの増加を観

測したこれは自然界から受ける等価線量当量率の約1か月分に相当するしかしBBNDの約8か月

の実験期間中の全等価線量当量に対するこの太陽フレアの影響の寄与分は1以下であった また搭載位置による環境の違いも確認された

H Koshiishiet al Radiation Measurements 42(2007) 1510-1520

1)船内の計測結果より低エネルギー側で2~3桁高エネルギー側で1~2桁低い 2)船内より船壁が薄く中性子が少ない環境より自然のアルベド中性子環境に近い

中性子被曝線量の ISS船外(SEDA-AP)と船内(STS-89)の比較

MDS-1搭載放射線吸収線量モニタ(SDOM) SiTungstenAlBGO

② ⑦

⑧⑧

① Collimator ② Window③ SSDs ④ Plastic Scintillator⑤ Anticoincidence Scintillator(ACS)⑥ Beam Stop⑦ Scintillator PMT⑧ ACS PMT

運用期間 2002年2月 ndash 2003年9月 軌道 -軌道傾斜角 285deg 1 lt BB0 le 84 -高度 500 km times 36000km 11 le L le 10 -軌道周期 約10時間35分 -スピンレート 5rpm

計測エネルギー範囲 Electron 04- 9MeV (5bins) Proton 09-210MeV (12bins) He 6-140MeV (4bins) Heavy Ion 15- 60MeVnuc (1bin) G-Factor 001cm2sr

放射線帯変動モデルの開発 MDS-1 065 MeV 電子フラックス

変動パラメータの選択 (1 cycle solar activity)

太陽風速度(SW)

太陽黒点数(R)

Ap指数

F107

変動パラメータ- Tavg の定義-

1日後の予測

パラメータスケールの時間平均 ApTavg SWTavg F107 Tavg

T days

放射線帯の構造は変動パラメータ値の大きさと継続時間に相関がある

065MeV 電子 L値-Tavg マップ

APTavg

SWTavg

13MeV 陽子 L値-Tavg マップ

APTavg

F107Tavg

電子観測とMDS-1モデルの比較

80 175

放射線帯フラックスピークの変動

80orbits (平穏時) 175orbits (擾乱時)

陽子観測とモデルの比較

電子(035~078MeV) 1日の変動予測GOSAT軌道

0

50

100

150

200

250

1E+09

1E+10

1E+11

1E+12

1984 1986 1988 1990 1992 1994 1996 1998 2000 2002 2004 2006 2008

Flue

nce[

ecm

2M

eVd

ay]

Launch day

FluenceSSN

Worst case Nov 12003

電子(035~078MeV) 変動の信頼度水準(1日)GOSAT軌道

00

01

02

03

04

05

06

07

08

09

10

88 90 92 94 96 98 100 102 104 106 108 110 112 114

Con

fiden

ce le

vel

Fluence[LOG10 ecm2MeVday]

AE-8 MAX

AE-8 MIN

MDS-1 model と AE-8 model との比較1日

0

20

40

60

80

100

120

140

160

180

1E+09

1E+10

1E+11

1E+12

1995 1997 1999 2001 2003 2005 2007 2009

Flue

nce[

ecm

2M

eVd

ay]

Launch day

Fluence(JAXA)Fluence(AE8)SSN

話の流れ

技術データ取得装置(TEDA)の概要と成果 bull 主な成果 bull 不具合解析例

宇宙天気のリスクと対策 bull 宇宙環境による衛星システムへの影響 bull 宇宙環境を原因とする不具合の割合推移部位 bull 静止軌道不具合 bull 対策

今後必要な観測項目

まとめ

2003年10月 みどり号の全損事故 (複合現象)

極域のオーロラ帯を通過中に電力ハー

ネスを巻いているMLIが高エネルギー電

子により帯電

MLIが接地されていなかったため内側

のハーネスとの間に1kV以上の電位差が

発生

MLI内のガス密度が発電開始に伴う温度

上昇により上昇

ハーネス被覆の傷により露出したハーネ

ス芯線とMLI内面の間で放電発生

単発の放電が隣接するハーネスに飛び火

してハーネス間の短絡

アーク放電が次々と伝搬していきハー

ネス全体が焼損

故障推定箇所 (大電力ハーネス部)

bull詳細報告書は文部科学省 宇宙開発委員会のHP参照

httpwwwmextgojpb_menushingiuchuureports04080901htm

bull 人工衛星の電位 bull 人工衛星は電気的に宇宙に浮いている bull 宇宙機構造体が接地点 bull 宇宙機への流入電流と流出電流のバランスによって宇宙機電位が決まる bull 各電流成分は宇宙機電位Vの関数として表され定常状態では式を下式を満たす

衛星帯電の基本式

( ) dtIIIIIIIC

V

dtdVCVIVIVIVIVIVIVI

BPHBSESISEIE

BPHBSESISEIE

int +++++minus=

==+++++minus

1

0)]()()()()()([)(

入射電子電流 ( E I )

後方散乱電子電流 ( BSE I )

入射正イオン電流 ( I I )

入射電子による二次電子電流 ( SE I )

太陽光

入射正イオンによる 二次電子放出電流 ( SI I )

光電子放出電流( PH I )

電荷ビーム放出電流(IB)

bull内部帯電は衛星の外壁を貫通した放射線帯外帯の01MeV以上の電子が内部に侵入

bull基板間や同軸ケーブルの線間等の容量(コンデンサ)や誘電体に帯電 bull接地されてない導体片に帯電

bullその耐圧電圧を超えると その耐圧の弱い箇所 (材質の欠陥や針状突起など の箇所)で放電して故障に至る

内部帯電

(あるエネルギ-以上の粒子が入射光電子なし)

NASA-HDBK-4002より

パドルでの帯電放電メカニズム

宇宙環境の影響により 衛星がマイナス電位に帯電

高エネルギー電子等により カバーガラスはプラスに帯電 衛星とカバーガラスに電位差が生じる

電位差が大きくなると トリプルジャンクション近傍 の電界強度が増大していく

トリプルジャンクションで放電が発生する カバーガラスの帯電が緩和される

+ + + + + + + + + + + + + +

+ + + +

カバーガラス

太陽電池セル

基板(衛星構体)

トリプルジャンクション rArr 導体絶縁体宇宙環境の接点

持続放電

Substrate

Satellite Load

insulation sheet

Solar array cell

Cover glass

Arc current

Electrode

持続放電は衛星の電力消失につながる 持続放電のモードは以下の2通りがある

Substrate

Satellite Load

insulation sheet

Solar array cell

Cover glass

Arc current

Electrode

Solar array cell

Cover glass

セル-基板間短絡 セル間短絡

放電によって太陽電池セルと基板が短絡する 短絡によって負荷に電力が供給されなくなる

放電によって太陽電池セルとセルが短絡する 短絡によって負荷に電力が供給されなくなる

サブストーム(高エネルギー電子)との遭遇

+ + + + + + + +

二次電子光電子による絶縁体の帯電(局所帯電)

電位差発生

逆電位勾配

衛星構体が負に帯電(絶対帯電)

電位

時間

サブストーム

衛星構体 VS

乖離電圧 ∆V

カバーガラスVcg

0 プラズマ電位

軌道別帯電放電現象

トリプルジャンクションで 放電発生

放電発生

静止軌道

+ + + + + + + +

逆電位勾配

軌道帯電放電現象

トリプルジャンクションで 放電発生

極軌道 オーロラ電子(高エネルギー電子)との遭遇

プラズマ流入出による絶縁体の帯電(局所帯電)

電位差発生

衛星構体が負に帯電(絶対帯電)

放電発生

電位

時間

オーロラ電子

衛星構体 乖離電圧 ∆V

カバーガラス

0 プラズマ電位

データ中継技術衛星DRTS (こだま)の不具合

2002年10月 9日 静止軌道に打ち上げ

2003年

3月24日 406JST変化率異常モニタ故障検出(FDIR)

が動作しA系からB系に切り替わった

3月25日 410JSTにB系のみ異常検知

4月 3日 327JSTにB系のみ異常検知

5月28日 124JSTにB系のみ異常検知

6月 6日1537JSTにB系のみ異常検知

ESA

DRTS ESA スパイクノイズと 電子フルエンスの比較(赤の丸が異常検知)

larr閾値

この事実を基に静止軌道における内部帯電警報システムを構築 2004年4月より運用開始

不具合が宇宙環境によるものであるか 判断する際のポイント

不具合の発生した時刻に太陽フレアや磁気嵐等の宇宙天気の大きな変動が起きていれば不具合に関係している可能性が高い但し帯電など放射線の積算的効果の伴う現象については発生から1週間位さかのぼり環境がどのように推移してきたかを考慮する必要がある

磁気嵐が起きると静止軌道に急激な粒子の増加現象が起きこれにより衛星帯電が引き起こされたりする(予測に利用可能)

地方時(真夜中や朝方か)や季節(春秋)を考慮する

低軌道衛星においてはSAA外帯のrdquo角ldquo及び極通過時に不具合

が起きやすいので衛星の位置(緯度経度)が重要

事象を把握する上で単発現象か数回起きている現象か周期

(時間同じ軌道等)的に発生している現象か

話の流れ

技術データ取得装置(TEDA)の概要と成果 bull 主な成果 bull 不具合解析例

宇宙天気のリスクと対策 bull 宇宙環境による衛星システムへの影響 bull 宇宙環境を原因とする不具合の割合推移部位 bull 静止軌道不具合 bull 対策

今後必要な観測項目

まとめ

宇宙天気のリスク -宇宙環境によるシステムへの影響 -

プラズマ (IRI)

帯電 (MUSCAT)

衝突 (AUTODY)

抗力 表面劣化

紫外線X線 中性粒子 (MSIS)

放射線粒子 (AE8AP8JPLSHIELDO

SE-2)

メテオロイドデブリ (MASTER2005

ORDEM)

電離損傷 変位損傷

bull電子回路の劣化 bull光部品の劣化

bull太陽電池セルの劣化

SEU (CREME96)

bullデータエラー bull画像ノイズ

bullシステム停止 bull回路損傷

bull熱的電気的光学的特性の劣化

bull構造の劣化 bullコンタミ

電磁パルス bull電源出力低下

bull損傷

bullトルク bull軌道落下

bull構造 損傷 bull減圧

bull電磁パルス

NASAの報告 -GNampCに注目-

1974年から1994年に起きたNASAと空軍の衛星故障の内20~25が宇宙環境に起因していたと報告

1990年から2001年に米国欧州カナダ日本の企業や政府機関が開発した衛星を調べた過去の宇宙ミション損失の大部分はロケットの失敗であったが1998年衛星損失の大部分は軌道上の衛星障害となっている多くの最近の異常は太陽電池アレイ及びバッテリの危険が増加している静止軌道通信衛星の設計寿命はこのサブシステムの故障の危険が増加している

喪失等の大きな誘導制御(GNampC)の不具合に注目 GNampC不具合の内宇宙環境による 不具合は約3と報告されている

軌道上衛星のタイプ別数

NASAの報告(続き)

衛星設計寿命における不具合発生時期 事故率と軌道

軌道別の衛星数 サブシステム不具合

宇宙環境を原因とする不具合の割合 -JAXAの場合-

2002年~2008年に運用された軌道上不具合情報が比較的充実している11衛星(利用衛星7機科学衛星4機)の結果宇宙環境によるも

のは約15過去のデータよりも割合が少ない

合計83件 合計35件

(1)利用衛星 (2)科学衛星

設計検討 不足 48

製造不良 8

軌道上環境 17

偶発故障 6

調査中 13

原因不明 8

設計検討

不足 61

製造不良 4

軌道上環境 11

偶発故障 6

調査中 9

原因不明 9

不具合発生部位の割合

不具合発生部位の割合

Brent Robertson Eric Stoneking ( 1990-2001NASA Goddard Space Flight Center )

Satellite News Digest -静止軌道不具合-

Satellite News Digest (SND) (http wwwsqt-indexcouk) で1997年~2009年の期間に静止軌道で95件の不具合が報告されている その内運用ミスや設計ミスなどを除くと32件(約33)は宇宙環境によるものであった 過去のデータより割合が多い

Choiら1)はこれら不具合の地方時と季節依存性を確認した その結果2100LT~900LTで約72の不具合が発生し900LT~2100LTは9件(約28)であった またこの9件は全て姿勢制御の不具合だった 静止軌道衛星不具合のほとんどは真夜中と朝方で起きており磁気嵐に伴い磁気圏尾部から注入した粒子による表面帯電が不具合の主原因と結論づけている

1) Ho-sung Choi et al Analysis of GEO spacecraft anomalies Space weather relationships Space Weather Vol 9 S06001

太陽活動と静止軌道衛星不具合例

ANIK-E1E2

ANIK-E1

複数の衛星で故障

Galaxy-15

帯電放電不具合 -ANIK-E1amp2Telstar401-

Jan 1994 ANIK-E1 amp E2事故時の環境 - Joe H Allen

1週間

太陽活動下降時期の電子増加

2MeV以上電子

copyNOAA Web

フラックスが3桁急増

Jan 1997 Telstar401事故時の環境

静止軌道の急激な電子増加

太陽極大期太陽フレアによる衛星障害 - 2003年10月~11月-

10486981048698 永久故障 4 10486981048698 安全モード又は運用を一時停止 31 10486981048698 データ内容の「誤り」の増加搭載コンピュータの誤動作 5

httpwwwsat-ndcomfailures等のデータによる 合計 40件

-Barbieri and Mahmot

米国極軌道気象衛星NOAA-17の改良型マイクロ波観測装置AMSU-A1 (Advanced Microwave Sounding Unit)のスキャナーが永久故障 米国気象衛星GOES -8号のX線センサがOFFになり復帰しなくなった

e-birdに深刻な不具合が発生 不具合は20本のトランスポンダ全てに影響

火星周回中の探査機「マーズオデッセイ (Mars Odyssey)」の観測機器放射線観測装置「Martian Radiation Environment Experiment (MARIE)」が太陽活動の影響により10月28日から適切に作動しなくなった データ中継技術衛星(DRTS)「こだま」 太陽捕捉モードに移行

太陽陽子

帯電放電不具合-Galaxy15(局所的的現象)- 2

5 M

eV

65

MeV

11

5 M

eV

GOES 14 ----- GOES 15 ----- GOES 11 -----

Satellite Locations

Galaxy 15 anomaly

2010年4月5日9時48分UTCは磁気嵐及びCMEが発生するなど宇宙環境は非常に荒れていたGalaxy15衛星は真夜中側に位置し宇宙環境の影響を受けやすい

位置にいたことから宇宙環境による不具合である可能性が高いということで原因追及がなされた高エネルギー粒子が引き起こす代表的な衛星不具合現象として3つ(表面帯電内部帯電SEUシングルイベントバーンアウトSEL)の可能性を検討した

チームの報告書によると磁気圏尾部からの熱電子の流入による放電が原因であったと結論付けられたGalaxy15衛星の近くにはGOES-11衛星が位置していたがGOES-11衛星には不具合を発生しておらず本現象は局所的な現象と推測される

衛星開発段階における対策 JAXAの不具合解析の結論

bull 2002年~2008年に運用された11機の衛星不具合を解析 宇宙環境による不具合は偶発故障のみ(全体の約15)確率的には想定範囲内ではあるがその影響を最小限とするためディレーティング運用モード寿命についての研究に取り組む

bull 設計基準試験の充実検証確認の強化技術成熟度(TRL)評価の徹底各々の境界制約条件の明示化等により検証不足抜けの防止有効なピアレビューに結びつける

冗長系(同じハードウェア機能の冗長)柔軟性の設計(ソフトハードの対応)

bull 従来の故障が起きないようにする設計に対してGOSAT(いぶき)では重要部

品を二重化することにより故障する可能性は上がるが故障しても衛星バスの運用や観測が続行できる可能性がより高くなるように設計した

運用における対応

bull 宇宙天気監視ーロケット打ち上げ及び宇宙飛行士支援 数日前に今後の宇宙環境の推移を把握(MXレベルのフレアの発生確率)

bull X線の増加で太陽フレア発生を検知したら高エネルギー粒子の発生をいつまで 気を付ければ良いか判断(発生位置で大凡を推定するが課題は多い) SPEが発生した場合(特に10MeV以上100MeV 以上の陽

子)最大値フラックス値の推定 ピーク値を予測(特に閾値に近くなった時に重要)

bull 衛星運用 bull 太陽フレア磁気嵐警報(X線陽子及びkpが閾値を超えた

時に警報を発信)2003年10月より運用開始 bull 内部帯電警報(2日後の静止軌道上の高エネルギー電子(>1

Me) の増加を予測し 閾値を超えた時に警報を発信) 2004年4月より運用開始

話の流れ

技術データ取得装置(TEDA)の概要と成果 bull 主な成果 bull 不具合解析例

宇宙天気のリスクと対策 bull 宇宙環境による衛星システムへの影響 bull 宇宙環境を原因とする不具合の割合推移部位 bull 静止軌道不具合 bull 対策

今後必要な観測項目

まとめ

計測対象計測項目 計測対象 粒径100μm以上のデブリメテオロイド 計測項目 デブリ粒径衝突頻度

基本原理

厚さ約125μmの絶縁性のポリイミドフィルム表面に 100μm周期で直線状の細長い導線(太さ50μm)パターンを形成導線の破断を電気的に検知することによりデブリの衝突(貫通)を検知する破断した導線の数導線の幅ピッチからデブリサイズを計測する

微小デブリ計測技術の概要

衝突孔の例(衝突試験ISAS) - 衝突粒子 SUS 309 microm - 衝突速度 52 kms

HTV5号機によるセンサ機能のフライト実証

35cm

46cm

FY2013機能実証モデル

検出線幅 50 μm 検出線間隔 100 μm フィルム厚 lt 20 μm 有感領域 30times33cm 検出線総数 3300本

サイズ 50times39times4 cm (筐体を含む)

重量 約15kg(筐体を含む)

消費電力 2W(最大4W)(他センサ含む)

テレメトリ 02 bps

宇宙環境観測装置KASPERの一部としてデブリセンサSDMを搭載 FY2013に製作開始今年8月に打ち上げ予定)

まとめ(その1)

衛星不具合の主な原因は帯電放電シングルイベント放射線損傷である今後デブリ環境が重要になると予測される

静止軌道では商用衛星が多く運用されており宇宙環境の変動把握は重要この領域で運用する衛星が気を付けなければいけない環境として

1太陽フレアに伴う高エネルギー粒子 2太陽活動下降期による静止軌道電子の増加 3磁気嵐に伴う磁気圏尾部から注入する粒子 などがあげられる

まとめ(その2)

不具合軽減の取り組み bull 開発時は宇宙環境条件(トータルフラックス及び最悪条

件)を明確にし設計(冗長系柔軟性の設計ディレーティング及び運用モード寿命について研究)試験の充実検証の充実を図る

bull 運用段階に入ったならば宇宙環境を監視し警報等で故障を防ぐ

予測課題 bull 太陽フレアに伴う高エネルギー粒子発生後フラックス

ピーク値の推定

bull 衛星により不具合の起きる閾値は異なるが閾値をこえる急激な電子フラックスの増加と継続時間の予測

bull 局所的な磁気嵐に伴う磁気圏尾部から注入する粒子

宇宙環境グループは宇宙ステーションと衛星プロジェクトの安全な遂行に貢献しています

ご静聴ありがとうございました

補足資料

不具合原因の推移 bull 宇宙天気を大きく左右する要因の1つとして約11年の太陽活動変化が挙げられる

bull 太陽活動下降時期(太陽変動CME)と極大期(フレアCME)に衛星で不具合が増加するそれにより不具合原因の割合が変わる

-Koons et al The Impact of the Space Environment on Space Systems Aerospace Corp report no TR-99(1670)-1 20 July 1999 -2009 preliminary study (unpublished)

何故不具合は減らないか

bull 部品 放射線に対する感受性が高くなっている bull 微細化が進み同時にフォールトするノードが増え同時にエ

ラーとなる論理ノードやメモリセルが増加する微細化によってメモリセルは小さくなるので記憶容量当たりでみるとエラーの発生率は下がるしかし半導体チップの記憶容量やゲート数が増えるので半導体チップ当たりのエラー発生率は微細化とともに上昇するまた蓄積電荷が小さくなり感受性が高くなってきている

bull システム 大型化大電力化運用長期化 bull 1990年代末以降静止衛星の電力が10kWレベルになったしか

し設計検証技術データ蓄積が遅れている改善されつつあると推測される

放射線による影響の概要

粒子 エネルギー又はLET

代表的な影響

陽子 100keV-1MeV 1-10MeV 10-100MeV gt50MeV

表面損傷 表面材料と太陽電池の損傷 放射線損傷(電離非電離損傷の両方)センサーへのノイズ シングルイベント効果

電子 10-100keV gt100keV gt1MeV

表面帯電 深部帯電現象(deep-dielectric charging)センサーへのノイズ太陽電池の損傷 放射線損傷(電離)

重イオン gt1MeV-cm2mg シングルイベント効果

注エネルギー及びLETは個々の部品等により異なりますあくまでも目安です

耐放射線設計手順

軌道条件

ミッション期間

環境条件設定

トータルドーズの予測

1MeV電子換算被曝算出

NIELの換算

LETフルエンス算出

陽子フルエンス算出

対  策  の  検  討

対  策  の  検  討

対  策  の  検  討

放射線による劣化率予測

劣化率予測 特性予測

耐性データ

放射線による劣化率予測

耐性データ

劣化率予測アレイ出力劣化予測

感受性データ

シングルイベント発生率予測 致命度解析

衛星内質量分布

(2)

部品材料の選定

他の要因による劣化率予測

(2)(2) (3)

回路設計等NO

OK

アレイ構造 セル選定

他の要因による劣化率予測 アレイ設計(2)

(2) (2) (2) (3)

衛星内質量分布 部品選定(2)

(2) (2)(3)

NO

OK

NO

OK

(1) 環境モデルマージを含む(2) 部品レベルの検討(3) アセンブリレベルでの検討(4) 設計マージン環境モデル   マージを含め大丈夫か

トータルドーズ

太陽電池アレイの劣化

シングルイベント効果

回路設計

補足放射線太陽宇宙線銀河宇宙線

NEILを用いたダメージファクターの算出

対  策  の  検  討

放射線による劣化率予測

劣化率予測 特性予測

耐性データ

(2)

部品材料の選定

他の要因による劣化率予測

(2)(2) (3)

回路設計等NO

OK

衛星内質量分布 半導体デバイスの変位損傷

(1)

(4)

(4)

(4)

(4)

各軌道における放射線環境

1E+10

1E+11

1E+12

1E+13

1E+14

1E+15

1E+16

1E+17

1E+18

1E+19

1E+20

001 010 100 1000

捕捉

電子

の積

分フ

ルエ

ンス

[m

2 ]

エネルギー[MeV]

各軌道における電子捕捉積分フルエンス(3年間)

LEO

EOS GEO

MEO

GTO

GEO 軌道傾斜角 0deg 高度36000km GTO 軌道傾斜角 18deg 高度 360km~36000km MEO 軌道傾斜角 51deg 高度 10000km EOS 軌道傾斜角 98deg 高度705km LEO 軌道傾斜角 29deg 高度 600km

1E+12

1E+13

1E+14

1E+15

1E+16

1E+17

1E+18

1E+19

1E+20

01 10 100 1000

捕捉

陽子の

積分フルエン

ス[

m2 ]

エネルギー[MeV]

各軌道における捕捉陽子積分フルエンス(3年間)

MEO

GTO

GEO

EOS LEO

放射線による部品材料の影響

総照射線量 (TIDTotal Ionising Dose )

電離損傷

バイポーラTrの電流増幅率の低下リーク電流の増大

γ線で評価

トータルドーズ効果

変位損傷 (DDDisplacement Damage )または 非イオン化エネルギー損失 (NIELNon-Ionising Energy

Loss )

変位損傷(格子欠陥の生成)

電荷輸送効率の低下 (CCD)太陽電池の効率低下等

電子陽子により評価

シングルイベント効果

1個の荷電粒子の入射により発生する誤動作

ソフト(Latch-Up Burnout) エラー又は ソフト (Upset) エラー

陽子及び重イオンで評価

トータルドーズ効果

+ - + + - + - + - - + + + + -

ゲート酸化膜

電離

格子欠陥

正電荷捕獲

+ 正孔 - 電子

電極

(Silicon oxidenitride)

荷電粒子

反跳原子

ゲート絶縁膜中に電荷が蓄積することによるMOSトランジスタのしきい電圧(MOSトランジスタがオフからオンに変化するゲート電圧)の変化をもたらすただ

し最近の最先端チップはゲート絶縁膜がきわめて薄くなっているこのためゲート絶縁膜よりもフィールド絶縁膜(隣接するトランジスタを電気的に分離する絶縁膜)での電荷蓄積が相対的には大きな問題になってきている」

シングルイベント効果

メモリセルはNチャンネルとPチャンネルMOSFETより構成されメモリ情報は回路ノード12の電位の

高低により記録している空乏層の広がっているPN接合12の領域に

重イオンが入射した場合電荷の発生と空乏層内への少数キャリアの収集が起こるこの収集電荷量が回路の耐量を越えた場合(c)に示すように反転が起こる(ソフトエラー)一方pウエル-N基板接

合の空乏層内に電荷収集量が起こりえる耐性を越えると寄生的に存在するPNPNサイリスタ構造がオ

ンし電源と基板間に大電流が流れる状態が生じる(ラッチアップ)

シングルイベントメカニズム -陽子と重イオンの違い-

エラー発生率の計算

線エネルギー付与(LET) (linear energy transfer)

電離性放射線が物質中を通過する際飛程の単位長さ当りに平均して失うエネルギーをいう各種の放射線のうちX線γ線はLETが小さいので低LETといいα線中性子線その他重イオン核分裂破片のLETは大きいので高LETという MeVμmMeV(gcm2)やMeV(mgcm2)で表される

南大西洋異常(SAA) bull 地球の自転軸と磁気軸のずれ

darr bull 放射線帯が自転軸に対して非

対称

bull 南大西洋上空では放射線帯内帯が低高度に落ちてきているこの領域を南大西洋異常域(SAA South Atlantic Anomaly)と呼ぶ

bull 地球観測衛星ではSAAで放射線帯陽子の影響を受ける

Single Event Lachup

シングルイベントと陽子分布

MOS-1衛星(高度909km軌道傾斜角99度)で発生したシングルイベントと 陽子30MeV以上の等高線マップを重ね合わせた結果

NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)

bull 入射粒子が電離によらず与える損傷非イオン化損失

低軌道での電子フラックスと 不具合の発生場所

南大西洋異常(SAA)と極の角

高度800kmでの電子フラックス図極の角(polar horn)とSAAを示す

太陽粒子線 bull 太陽高エネルギー粒子線(SPE Solar Proton Events)は太陽フレア とコロナガス噴出 (CMECoronal Mass Ejections )により引き起こされる bull フレアのスペクトルは可変であるためあるエネルギー域における最悪状態イベントは必ずしも別のエネルギー域における最悪条件ではない 1972年8月のイベント 10~70MeVの粒子が最も多かった 1989年10のイベント 1972年8月のイベントに比べ低エネルギー領域 高エネルギー領域が明らかに激しかった

フルエンス 105 to 1011 cm-2

変動期間 1日から数日

ldquoBastiliardquo Solar Event 14 July 2000

Carrington Flare

84

(LW Townseed) Carrington Flare(1859年) Carrington Flare による30MeV以上トータルFluenceを118times109cm-2で規格化 ~1989年フレアの約13倍(シングルイベントの評価で使用) ~1991年フレアの約9倍 2012年7月23日にキャリントンイベントとほぼ同等の爆発現象が太陽あるいは太陽の周りで起きていたということがNASAの太陽観測衛星「STEREO」の解析から発表された

放射線対策 bull 放射線シールドを付加し放射線を減衰させる

bull 放射線耐性の強い部品(SOI(Silicon On Insulator)技術による耐放射線部品)材料に変更する

bull 放射線による損傷を吸収するために回路または構造上のマージンを持たせる bull ソフト的なエラーに対しては エラー検出訂正機能や多数決

機能等でソフト的エラーが起きてもシステムが機能するようにしたフォールトトレラント機能を付けて対処する ICのハード的故障に対しては ラッチアップ耐性の強い部品を選定するしかないが 電流制限回路を付ける対策も採られる パワーMOSFETに対しては部品選定 電源電圧を規格値の半分以下に落とす等の対策を採る

SOI技術

表面帯電への対策例

表面の物体間を導線で結線する

太陽電池のカバーガラスを導電性被膜付き(酸化インジウムITO)にする

熱制御材表面にITOを被覆する

熱制御材は高誘電率のテフロンの使用を避け 高伝導度耐環境性に優れたブラックカプトンを使用

イオンエンジンの中和器で能動帯電制御

内部帯電への対策例

アルミで3mm厚さに相当するシールドで囲む(Faraday Cage)

テフロンやカプトンなどの誘電体材料の内部での使用量を最小限に押さえる

回路基板やコンフォーマルコーティングは誘電体なので電流リークパス(1012Ωcmまたは1012Ωcm2

程度)を必ずつける

特にスポット的な放射線シールドの金属材には必ず電流リークパスをつける

帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備

衛星モデル作成

材料物性テーブル設定

宇宙環境パラメータ設定

Converter

転送ディレクトリ 解析データファイル

転送

解析ディレクトリ生成 解析結果 進行状況チェック ファイル操作

MUSCAT 解析エンジン

解析結果 表示

パラメトリックラン

オプション 解析

大型パネル実験(35mtimes11m) クーポンパネル実験(26cmtimes16cm)

環境模擬試験 環境模擬試験

MUSCATに使用する物性値設計標準制定のための知見などを得ることを目的に軌道上の宇宙環境を模擬した地上試験を行っている これらの試験では放電の発生頻度や電圧閾値放電発生による太陽電池パネルや搭載機器への影響を検証している

放射線計測装置の原理

bull その粒子が物質を通過する際のエネルギー損出率が粒子の電荷(原子番号)Zの二乗に比例すること(Bethe-Blochの式)を利用する

S2

E

ΔE Ersquo

S1 S3

  • 宇宙機の設計のための宇宙環境
  • 話の流れ
  • 話の流れ
  • TEDA(技術データ取得装置)(国産部品の宇宙環境での実証の必要性)
  • ETS-VTEDA(技術データ取得装置)誕生前の部品の宇宙実証の背景
  • スライド番号 6
  • スライド番号 7
  • スライド番号 8
  • スライド番号 9
  • 図6太陽黒点数と静止軌道電子 (>04MeV ) Flux の変動 (ETS-V搭載DOMによる観測)
  • スライド番号 11
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの開発(理研東大と共同で宇宙環境計測の充実)
  • ETS-VI(きく6号)打ち上がったがGEOに行かずGTOに留まる
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの成果
  • スライド番号 15
  • スライド番号 16
  • スライド番号 17
  • ADEOS搭載TEDA(世界2番目の異常宇宙線ACR)
  • BBND (ボナー球中性子検出器)
  • スライド番号 20
  • ISS搭載BBNDの成果(約8か月)
  • スライド番号 22
  • MDS-1搭載放射線吸収線量モニタ(SDOM)
  • 放射線帯変動モデルの開発MDS-1 065 MeV 電子フラックス
  • 変動パラメータの選択 (1 cycle solar activity)
  • 変動パラメータ- Tavg の定義-
  • 065MeV 電子 L値-Tavg マップ
  • 13MeV 陽子 L値-Tavg マップ
  • 電子観測とMDS-1モデルの比較
  • 放射線帯フラックスピークの変動
  • 陽子観測とモデルの比較
  • 電子(035~078MeV) 1日の変動予測GOSAT軌道
  • 電子(035~078MeV) 変動の信頼度水準(1日)GOSAT軌道
  • MDS-1 model と AE-8 modelとの比較1日
  • 話の流れ
  • 2003年10月 みどり号の全損事故(複合現象)
  • 衛星帯電の基本式
  • 内部帯電
  • パドルでの帯電放電メカニズム
  • スライド番号 40
  • スライド番号 41
  • スライド番号 42
  • データ中継技術衛星DRTS (こだま)の不具合
  • DRTS ESA スパイクノイズと電子フルエンスの比較(赤の丸が異常検知)
  • 不具合が宇宙環境によるものであるか判断する際のポイント
  • 話の流れ
  • 宇宙天気のリスク-宇宙環境によるシステムへの影響 -
  • NASAの報告-GNampCに注目-
  • NASAの報告(続き)
  • 宇宙環境を原因とする不具合の割合-JAXAの場合-
  • 不具合発生部位の割合 
  • Satellite News Digest -静止軌道不具合-
  • 太陽活動と静止軌道衛星不具合例
  • スライド番号 54
  • スライド番号 55
  • スライド番号 56
  • 衛星開発段階における対策
  • 運用における対応
  • 話の流れ
  • スライド番号 60
  • スライド番号 61
  • まとめ(その1)
  • まとめ(その2)
  • 宇宙環境グループは宇宙ステーションと衛星プロジェクトの安全な遂行に貢献しています
  • 補足資料
  • 不具合原因の推移
  • 何故不具合は減らないか
  • 放射線による影響の概要
  • 耐放射線設計手順
  • 各軌道における放射線環境
  • 放射線による部品材料の影響
  • トータルドーズ効果
  • シングルイベント効果
  • シングルイベントメカニズム-陽子と重イオンの違い-
  • エラー発生率の計算
  • 線エネルギー付与(LET)(linear energy transfer)
  • 南大西洋異常(SAA)
  • Single Event Lachup
  • シングルイベントと陽子分布
  • NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)
  • 低軌道での電子フラックスと不具合の発生場所
  • 南大西洋異常(SAA)と極の角
  • スライド番号 83
  • Carrington Flare
  • 放射線対策
  • スライド番号 86
  • スライド番号 87
  • 帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備
  • スライド番号 89
  • 放射線計測装置の原理
Page 4: 宇宙機の設計のための宇宙環境の方針から国産部品開発(42品種)が実施された。 . 半導体電子部品は耐放射線性を加味して、人工衛星(特に

TEDA(技術データ取得装置) (国産部品の宇宙環境での実証の必要性)

1975年度から国産部品の開発が始まりさらに1984年~

1988年(ピークは1986年)にH-II ロケットの純国産化の方針から国産部品開発(42品種)が実施された

半導体電子部品は耐放射線性を加味して人工衛星(特にETS-VI以降の衛星)との共通部品とした

国産部品を人工衛星に搭載して宇宙フライトデータ作りが必要となる(国産部品をフライト実績とする)

部品の電気特性劣化データと同時に宇宙環境データ(放射線帯電)の計測が必要になった

気象衛星ひまわり1号~4号 の宇宙環境モニタ (SEM)による宇宙放射線計測(22年間)を引きつぐ

ETS-VTEDA(技術データ取得装置) 誕生前の部品の宇宙実証の背景

国産部品の宇宙環境での実証の必要性

太陽電池モニター(SCM)の衛星搭載

bull ISS-b (1978年2月打ち上げ)

bull ETS-IV(1981年2月打ち上げ)

bull ETS-III(1982年9月打ち上げ)

bull ETS-V(1987年8月打ち上げ)でTEDAに組み入れた

bull 旭硝子製のカバーガラスもフライト実証をしたその成果はETS-VIでこの国産部品の組み合わせで採用

ETS-VTEDAの成果SEL

(世界初データであった) 64-kbit SRAM

( T Goka et al IEEE 1991 1998)

SEL Singl Event Latchup(ハードエラー)

SEL First Measurement (Japan) SEL First Anomaly (ESA)

ETS-VTEDAの成果帯電電位の 材料別10年間の計測結果 Surface Potential Monitor (POM)

Matsumoto Het al Proc Charging Conference 23-27 April 2001 ESTEC

ETS-VTEDA 熱制御材劣化モニタ(TDM)の

10年間の計測データ(太陽光吸収率α 赤外輻射率ε )

ε

α

図6太陽黒点数と静止軌道電子 (>04MeV ) Flux の変動 (ETS-V搭載DOMによる観測)

bull 1993-1994年にかけ各国の静止衛星で不具合や故障が増加したJAXAではETS-V搭載放射線吸収線量モニタ(DOM)による長期的観測により太陽活動下降期の高エネルギー電子の増加を確認しておりこれにより静止衛星に影響が出たことが明らかとなったなお同様の不具合や故障増加が11年前の太陽活動下降期である1982-1983年にも発生していたことが分かった

bull 現在はこれらの電子の環境でも太陽電池パドル等に不具合が起きらないことを地上試験で確認してきている

静止軌道における 高エネルギー粒子の長期的観測結果と宇宙機への影響

0

20

40

60

80

100

120

140

160

180

1000

3000

5000

7000

9000

11000

13000

15000

17000

1980

1981

1982

1983

1984

1985

1986

1987

1988

1989

1990

1991

1992

1993

1994

1995

1996

1997

太陽黒点数

電子

Flu

x (個

数(cm2strsec))

電子Flux

太陽黒点数

Miyoshi et al[2004]

太陽活動と放射線帯分布の変動

ETS-Ⅵ搭載TEDAの開発 (理研東大と共同で宇宙環境計測の充実)

目的

bull 新たに開発された国産部品材料等の宇宙環境下での劣化特性を同一条件で計測すると共に劣化の原因となる宇宙環境を同時に計測し比較解析する

bull 新規開発の部品材料の宇宙実証データフライト実績を得る

bull 地上試験として行ってきた宇宙環境を模擬した試験方法の検証を行う

bull 帯電現象及びガスジェット等による人工衛星の汚染の経時変化の取得

bull 衛星設計に用いている宇宙環境モデル(放射線磁場等)の検証 bull 宇宙環境に起因する人工衛星の故障や不具合現象の解明

ETS-VI(きく6号)打ち上がったが GEOに行かずGTOに留まる

bull 1994年(平成6年)8月28日16時50分打ち上げ

bull H-IIロケット試験機2号で種子島から打ち上げ

bull アポジエンジン不具合でGTO軌道に留まる

bull 急遽楕円軌道用に新たな制御プログラムを設計製作し地上検証を行った上で衛星にアップロードしこの問題を解決した

bull 最終軌道ペリジ約8600kmアポジ約38600km軌道傾斜角約13度(3日5周期回帰)で2年間運用

bull TEDAのデータ公開で宇宙環境データが役に立つ事を宣伝(SEESを立ち上げデータを公開した)

ETS-Ⅵ搭載TEDAの成果

トータルドーズ劣化や太陽電池劣化は静止衛星で10年かかった同じ評価を1年間でできた

シングルイベントの発生頻度の高度分布が取得できた (高度8千km~3万8千kmの範囲)

バンアレン帯の放射線帯の電子陽子重イオンの高度分布データを取得し放射線帯モデル日本モデルを作成(あけぼの衛星データ含む)

この成果はGTO軌道を最初から狙うMDS-1(つ

ばさ)プロジェクトへとつながった 米国は1990年7月25日CRRESS(Combined Release and Radiation Effects Satellite )衛星を打ち上げ

研究開発の流れ

計測装置開発

データ収集 計画

環境計測

研究試作

衛星への影響解析で必要なデータ及び性能を機器開発に反映する

高エネルギー軽粒子 重イオン 中性子 帯電 原子状酸素 デブリ 新たな現象(問題点)

軌道上不具合評価 宇宙環境モデル

宇宙環境データベース 警報

衛星設計基準

有人活動への反映

宇宙天気予報 システム

国内外機関とのデータ交換

打上げ衛星運用

放射線環境評価(ISOを含む)の見直し 宇宙環境モデルの最適化 効率の良い宇宙機の開発 (シールド厚最適設計) 低コスト化(部品仕様の見直し) 短期間開発(民生品の利用)

フィードバック

成果目標

プロジェクト支援

宇宙環境計測装置(放射線磁場)小型化の流れ

9kg 10cm 10cm 10kg 14W 18W

1cm 52g 480g 1cm 12W以下 15W

磁力計(480g->52g)

みどり2搭載用 つばさかけはしきぼう搭載用 Jason-2GOSAT搭載

ETS-VIII搭載用 QZS搭載用

電子(05~50MeV) 陽子(1~160MeV) α粒子(4~200MeV)

電子(04~5MeV) 陽子(7~48MeV) α粒子(30~140MeV)

plusmn655364096102456nT plusmn655364096nT

16bit 20bit

電子(003~20MeV) 陽子(04~250MeV) α粒子(08~400MeV)

LPT-S 216x182x175 mm 62 kg LPT-E 240x165x 93 mm 28 kg

積算吸収線量計

軽粒子モニタ(10kgー>9kgー>7kg最小2kg)

17times10times5mm749g

ISSKibou(09-)

GEO

LEO

ETS-V (87-97)

ADEOS-II(02-03)

ETS-VIII(06-) DRTS(02- )

STS-89(98)

MDS-1(02-03) ETS-VI(94-96)

ETS-VII (97-99)

宇宙環境計測の流れ ISSUS-Lab(01)

ひまわり1-4(78-99)

ERG(16予定)

ALOS(06-11)

GOSAT(09-)

Jason-2((08-)

Jason-3(15予定)

GTO

QZS(09-)

ADEOS (96-97)

ADEOS搭載TEDA (世界2番目の異常宇宙線ACR)

bull シングルイベント評価のための重イオン観測であったが世界2番目の異常宇宙線を観測することができた

bull 低軌道の衛星は地球磁場が邪魔となって宇宙線(重イオン)を観測するに向いていないと考えられていたが異常宇宙線を観測するのにすぐれていることが明らかとなった

T Kohno et al Radiation Measuremets 30 5 PP639-644

BBND (ボナー球中性子検出器)

bull 1994年(平成6)年7月に中性子計測のために ボナー球ホスウイッチ方式及びシンチレーションファイバーの3種類のセンサの研究をスタート

bull シャトル打ち上げ計画の管理者から搭載装置の検討依頼がありBBNDのSTS-89への搭載が決定した(1997年1月頃)

bull 振動試験で装置内のボルトが外れるという不具合もあったが約1年という非常に短期間で搭載品を開発することができた

bull コスト低減のために構造解析を自前で実施したりデータ処理ソフトウェアも内作した

熱中性子に対して高い感度を持つ6個の3Heガス入り比例計数管で構成して

いる中性子は電荷をもたないのでそれ自身には電離作用がないが軽い原子の3He気体では反跳原子を生じたり中性子の核反応(3He+nrarrp+3H+765KeV)によって荷電粒子を生じるので間接的に電離を起こす下図のように気体中に二つの電極を置き高電圧(1000V)をかけておくと中性子の入

射によって気体中に生じた陽子イオンと電子のイオン対がそれぞれの電極に向かって流動し外部回路に電離電流が流れるこの電気パルスにより中性子を計測する

ボナー球型中性子モニタの概要

Polyethylene Sphere3He proportional Counter

51 φ 51 φ81 φ110 φ150 φ230 φ

Sensor6 Sensor5 Sensor4 Sensor3 Sensor2 Sensor1

Covered by Gadolinium

[mm]3Heガス入り比例計数管の原理

6個のボナー球の断面図

3Heガス入り比例計数管とポリエチレン減速材

H Matsumotoet al Radiation Measurements 33 (2001) 321-333

ISS搭載BBNDの成果(約8か月)

実験期間中の平均的な等価線量等量率 (2001年3月23日~2001年11月14日)

太陽フレア時(2001年11月4日)

等価量等量率の平均は94μSv日で年率に換算すると34mSv年となるこれは地上において自然界から受ける等価線量当量率の約14倍に相当する 実験期間中に多数の太陽フレアが発生した2001年11月4日の太陽フレアにより019mSVの増加を観

測したこれは自然界から受ける等価線量当量率の約1か月分に相当するしかしBBNDの約8か月

の実験期間中の全等価線量当量に対するこの太陽フレアの影響の寄与分は1以下であった また搭載位置による環境の違いも確認された

H Koshiishiet al Radiation Measurements 42(2007) 1510-1520

1)船内の計測結果より低エネルギー側で2~3桁高エネルギー側で1~2桁低い 2)船内より船壁が薄く中性子が少ない環境より自然のアルベド中性子環境に近い

中性子被曝線量の ISS船外(SEDA-AP)と船内(STS-89)の比較

MDS-1搭載放射線吸収線量モニタ(SDOM) SiTungstenAlBGO

② ⑦

⑧⑧

① Collimator ② Window③ SSDs ④ Plastic Scintillator⑤ Anticoincidence Scintillator(ACS)⑥ Beam Stop⑦ Scintillator PMT⑧ ACS PMT

運用期間 2002年2月 ndash 2003年9月 軌道 -軌道傾斜角 285deg 1 lt BB0 le 84 -高度 500 km times 36000km 11 le L le 10 -軌道周期 約10時間35分 -スピンレート 5rpm

計測エネルギー範囲 Electron 04- 9MeV (5bins) Proton 09-210MeV (12bins) He 6-140MeV (4bins) Heavy Ion 15- 60MeVnuc (1bin) G-Factor 001cm2sr

放射線帯変動モデルの開発 MDS-1 065 MeV 電子フラックス

変動パラメータの選択 (1 cycle solar activity)

太陽風速度(SW)

太陽黒点数(R)

Ap指数

F107

変動パラメータ- Tavg の定義-

1日後の予測

パラメータスケールの時間平均 ApTavg SWTavg F107 Tavg

T days

放射線帯の構造は変動パラメータ値の大きさと継続時間に相関がある

065MeV 電子 L値-Tavg マップ

APTavg

SWTavg

13MeV 陽子 L値-Tavg マップ

APTavg

F107Tavg

電子観測とMDS-1モデルの比較

80 175

放射線帯フラックスピークの変動

80orbits (平穏時) 175orbits (擾乱時)

陽子観測とモデルの比較

電子(035~078MeV) 1日の変動予測GOSAT軌道

0

50

100

150

200

250

1E+09

1E+10

1E+11

1E+12

1984 1986 1988 1990 1992 1994 1996 1998 2000 2002 2004 2006 2008

Flue

nce[

ecm

2M

eVd

ay]

Launch day

FluenceSSN

Worst case Nov 12003

電子(035~078MeV) 変動の信頼度水準(1日)GOSAT軌道

00

01

02

03

04

05

06

07

08

09

10

88 90 92 94 96 98 100 102 104 106 108 110 112 114

Con

fiden

ce le

vel

Fluence[LOG10 ecm2MeVday]

AE-8 MAX

AE-8 MIN

MDS-1 model と AE-8 model との比較1日

0

20

40

60

80

100

120

140

160

180

1E+09

1E+10

1E+11

1E+12

1995 1997 1999 2001 2003 2005 2007 2009

Flue

nce[

ecm

2M

eVd

ay]

Launch day

Fluence(JAXA)Fluence(AE8)SSN

話の流れ

技術データ取得装置(TEDA)の概要と成果 bull 主な成果 bull 不具合解析例

宇宙天気のリスクと対策 bull 宇宙環境による衛星システムへの影響 bull 宇宙環境を原因とする不具合の割合推移部位 bull 静止軌道不具合 bull 対策

今後必要な観測項目

まとめ

2003年10月 みどり号の全損事故 (複合現象)

極域のオーロラ帯を通過中に電力ハー

ネスを巻いているMLIが高エネルギー電

子により帯電

MLIが接地されていなかったため内側

のハーネスとの間に1kV以上の電位差が

発生

MLI内のガス密度が発電開始に伴う温度

上昇により上昇

ハーネス被覆の傷により露出したハーネ

ス芯線とMLI内面の間で放電発生

単発の放電が隣接するハーネスに飛び火

してハーネス間の短絡

アーク放電が次々と伝搬していきハー

ネス全体が焼損

故障推定箇所 (大電力ハーネス部)

bull詳細報告書は文部科学省 宇宙開発委員会のHP参照

httpwwwmextgojpb_menushingiuchuureports04080901htm

bull 人工衛星の電位 bull 人工衛星は電気的に宇宙に浮いている bull 宇宙機構造体が接地点 bull 宇宙機への流入電流と流出電流のバランスによって宇宙機電位が決まる bull 各電流成分は宇宙機電位Vの関数として表され定常状態では式を下式を満たす

衛星帯電の基本式

( ) dtIIIIIIIC

V

dtdVCVIVIVIVIVIVIVI

BPHBSESISEIE

BPHBSESISEIE

int +++++minus=

==+++++minus

1

0)]()()()()()([)(

入射電子電流 ( E I )

後方散乱電子電流 ( BSE I )

入射正イオン電流 ( I I )

入射電子による二次電子電流 ( SE I )

太陽光

入射正イオンによる 二次電子放出電流 ( SI I )

光電子放出電流( PH I )

電荷ビーム放出電流(IB)

bull内部帯電は衛星の外壁を貫通した放射線帯外帯の01MeV以上の電子が内部に侵入

bull基板間や同軸ケーブルの線間等の容量(コンデンサ)や誘電体に帯電 bull接地されてない導体片に帯電

bullその耐圧電圧を超えると その耐圧の弱い箇所 (材質の欠陥や針状突起など の箇所)で放電して故障に至る

内部帯電

(あるエネルギ-以上の粒子が入射光電子なし)

NASA-HDBK-4002より

パドルでの帯電放電メカニズム

宇宙環境の影響により 衛星がマイナス電位に帯電

高エネルギー電子等により カバーガラスはプラスに帯電 衛星とカバーガラスに電位差が生じる

電位差が大きくなると トリプルジャンクション近傍 の電界強度が増大していく

トリプルジャンクションで放電が発生する カバーガラスの帯電が緩和される

+ + + + + + + + + + + + + +

+ + + +

カバーガラス

太陽電池セル

基板(衛星構体)

トリプルジャンクション rArr 導体絶縁体宇宙環境の接点

持続放電

Substrate

Satellite Load

insulation sheet

Solar array cell

Cover glass

Arc current

Electrode

持続放電は衛星の電力消失につながる 持続放電のモードは以下の2通りがある

Substrate

Satellite Load

insulation sheet

Solar array cell

Cover glass

Arc current

Electrode

Solar array cell

Cover glass

セル-基板間短絡 セル間短絡

放電によって太陽電池セルと基板が短絡する 短絡によって負荷に電力が供給されなくなる

放電によって太陽電池セルとセルが短絡する 短絡によって負荷に電力が供給されなくなる

サブストーム(高エネルギー電子)との遭遇

+ + + + + + + +

二次電子光電子による絶縁体の帯電(局所帯電)

電位差発生

逆電位勾配

衛星構体が負に帯電(絶対帯電)

電位

時間

サブストーム

衛星構体 VS

乖離電圧 ∆V

カバーガラスVcg

0 プラズマ電位

軌道別帯電放電現象

トリプルジャンクションで 放電発生

放電発生

静止軌道

+ + + + + + + +

逆電位勾配

軌道帯電放電現象

トリプルジャンクションで 放電発生

極軌道 オーロラ電子(高エネルギー電子)との遭遇

プラズマ流入出による絶縁体の帯電(局所帯電)

電位差発生

衛星構体が負に帯電(絶対帯電)

放電発生

電位

時間

オーロラ電子

衛星構体 乖離電圧 ∆V

カバーガラス

0 プラズマ電位

データ中継技術衛星DRTS (こだま)の不具合

2002年10月 9日 静止軌道に打ち上げ

2003年

3月24日 406JST変化率異常モニタ故障検出(FDIR)

が動作しA系からB系に切り替わった

3月25日 410JSTにB系のみ異常検知

4月 3日 327JSTにB系のみ異常検知

5月28日 124JSTにB系のみ異常検知

6月 6日1537JSTにB系のみ異常検知

ESA

DRTS ESA スパイクノイズと 電子フルエンスの比較(赤の丸が異常検知)

larr閾値

この事実を基に静止軌道における内部帯電警報システムを構築 2004年4月より運用開始

不具合が宇宙環境によるものであるか 判断する際のポイント

不具合の発生した時刻に太陽フレアや磁気嵐等の宇宙天気の大きな変動が起きていれば不具合に関係している可能性が高い但し帯電など放射線の積算的効果の伴う現象については発生から1週間位さかのぼり環境がどのように推移してきたかを考慮する必要がある

磁気嵐が起きると静止軌道に急激な粒子の増加現象が起きこれにより衛星帯電が引き起こされたりする(予測に利用可能)

地方時(真夜中や朝方か)や季節(春秋)を考慮する

低軌道衛星においてはSAA外帯のrdquo角ldquo及び極通過時に不具合

が起きやすいので衛星の位置(緯度経度)が重要

事象を把握する上で単発現象か数回起きている現象か周期

(時間同じ軌道等)的に発生している現象か

話の流れ

技術データ取得装置(TEDA)の概要と成果 bull 主な成果 bull 不具合解析例

宇宙天気のリスクと対策 bull 宇宙環境による衛星システムへの影響 bull 宇宙環境を原因とする不具合の割合推移部位 bull 静止軌道不具合 bull 対策

今後必要な観測項目

まとめ

宇宙天気のリスク -宇宙環境によるシステムへの影響 -

プラズマ (IRI)

帯電 (MUSCAT)

衝突 (AUTODY)

抗力 表面劣化

紫外線X線 中性粒子 (MSIS)

放射線粒子 (AE8AP8JPLSHIELDO

SE-2)

メテオロイドデブリ (MASTER2005

ORDEM)

電離損傷 変位損傷

bull電子回路の劣化 bull光部品の劣化

bull太陽電池セルの劣化

SEU (CREME96)

bullデータエラー bull画像ノイズ

bullシステム停止 bull回路損傷

bull熱的電気的光学的特性の劣化

bull構造の劣化 bullコンタミ

電磁パルス bull電源出力低下

bull損傷

bullトルク bull軌道落下

bull構造 損傷 bull減圧

bull電磁パルス

NASAの報告 -GNampCに注目-

1974年から1994年に起きたNASAと空軍の衛星故障の内20~25が宇宙環境に起因していたと報告

1990年から2001年に米国欧州カナダ日本の企業や政府機関が開発した衛星を調べた過去の宇宙ミション損失の大部分はロケットの失敗であったが1998年衛星損失の大部分は軌道上の衛星障害となっている多くの最近の異常は太陽電池アレイ及びバッテリの危険が増加している静止軌道通信衛星の設計寿命はこのサブシステムの故障の危険が増加している

喪失等の大きな誘導制御(GNampC)の不具合に注目 GNampC不具合の内宇宙環境による 不具合は約3と報告されている

軌道上衛星のタイプ別数

NASAの報告(続き)

衛星設計寿命における不具合発生時期 事故率と軌道

軌道別の衛星数 サブシステム不具合

宇宙環境を原因とする不具合の割合 -JAXAの場合-

2002年~2008年に運用された軌道上不具合情報が比較的充実している11衛星(利用衛星7機科学衛星4機)の結果宇宙環境によるも

のは約15過去のデータよりも割合が少ない

合計83件 合計35件

(1)利用衛星 (2)科学衛星

設計検討 不足 48

製造不良 8

軌道上環境 17

偶発故障 6

調査中 13

原因不明 8

設計検討

不足 61

製造不良 4

軌道上環境 11

偶発故障 6

調査中 9

原因不明 9

不具合発生部位の割合

不具合発生部位の割合

Brent Robertson Eric Stoneking ( 1990-2001NASA Goddard Space Flight Center )

Satellite News Digest -静止軌道不具合-

Satellite News Digest (SND) (http wwwsqt-indexcouk) で1997年~2009年の期間に静止軌道で95件の不具合が報告されている その内運用ミスや設計ミスなどを除くと32件(約33)は宇宙環境によるものであった 過去のデータより割合が多い

Choiら1)はこれら不具合の地方時と季節依存性を確認した その結果2100LT~900LTで約72の不具合が発生し900LT~2100LTは9件(約28)であった またこの9件は全て姿勢制御の不具合だった 静止軌道衛星不具合のほとんどは真夜中と朝方で起きており磁気嵐に伴い磁気圏尾部から注入した粒子による表面帯電が不具合の主原因と結論づけている

1) Ho-sung Choi et al Analysis of GEO spacecraft anomalies Space weather relationships Space Weather Vol 9 S06001

太陽活動と静止軌道衛星不具合例

ANIK-E1E2

ANIK-E1

複数の衛星で故障

Galaxy-15

帯電放電不具合 -ANIK-E1amp2Telstar401-

Jan 1994 ANIK-E1 amp E2事故時の環境 - Joe H Allen

1週間

太陽活動下降時期の電子増加

2MeV以上電子

copyNOAA Web

フラックスが3桁急増

Jan 1997 Telstar401事故時の環境

静止軌道の急激な電子増加

太陽極大期太陽フレアによる衛星障害 - 2003年10月~11月-

10486981048698 永久故障 4 10486981048698 安全モード又は運用を一時停止 31 10486981048698 データ内容の「誤り」の増加搭載コンピュータの誤動作 5

httpwwwsat-ndcomfailures等のデータによる 合計 40件

-Barbieri and Mahmot

米国極軌道気象衛星NOAA-17の改良型マイクロ波観測装置AMSU-A1 (Advanced Microwave Sounding Unit)のスキャナーが永久故障 米国気象衛星GOES -8号のX線センサがOFFになり復帰しなくなった

e-birdに深刻な不具合が発生 不具合は20本のトランスポンダ全てに影響

火星周回中の探査機「マーズオデッセイ (Mars Odyssey)」の観測機器放射線観測装置「Martian Radiation Environment Experiment (MARIE)」が太陽活動の影響により10月28日から適切に作動しなくなった データ中継技術衛星(DRTS)「こだま」 太陽捕捉モードに移行

太陽陽子

帯電放電不具合-Galaxy15(局所的的現象)- 2

5 M

eV

65

MeV

11

5 M

eV

GOES 14 ----- GOES 15 ----- GOES 11 -----

Satellite Locations

Galaxy 15 anomaly

2010年4月5日9時48分UTCは磁気嵐及びCMEが発生するなど宇宙環境は非常に荒れていたGalaxy15衛星は真夜中側に位置し宇宙環境の影響を受けやすい

位置にいたことから宇宙環境による不具合である可能性が高いということで原因追及がなされた高エネルギー粒子が引き起こす代表的な衛星不具合現象として3つ(表面帯電内部帯電SEUシングルイベントバーンアウトSEL)の可能性を検討した

チームの報告書によると磁気圏尾部からの熱電子の流入による放電が原因であったと結論付けられたGalaxy15衛星の近くにはGOES-11衛星が位置していたがGOES-11衛星には不具合を発生しておらず本現象は局所的な現象と推測される

衛星開発段階における対策 JAXAの不具合解析の結論

bull 2002年~2008年に運用された11機の衛星不具合を解析 宇宙環境による不具合は偶発故障のみ(全体の約15)確率的には想定範囲内ではあるがその影響を最小限とするためディレーティング運用モード寿命についての研究に取り組む

bull 設計基準試験の充実検証確認の強化技術成熟度(TRL)評価の徹底各々の境界制約条件の明示化等により検証不足抜けの防止有効なピアレビューに結びつける

冗長系(同じハードウェア機能の冗長)柔軟性の設計(ソフトハードの対応)

bull 従来の故障が起きないようにする設計に対してGOSAT(いぶき)では重要部

品を二重化することにより故障する可能性は上がるが故障しても衛星バスの運用や観測が続行できる可能性がより高くなるように設計した

運用における対応

bull 宇宙天気監視ーロケット打ち上げ及び宇宙飛行士支援 数日前に今後の宇宙環境の推移を把握(MXレベルのフレアの発生確率)

bull X線の増加で太陽フレア発生を検知したら高エネルギー粒子の発生をいつまで 気を付ければ良いか判断(発生位置で大凡を推定するが課題は多い) SPEが発生した場合(特に10MeV以上100MeV 以上の陽

子)最大値フラックス値の推定 ピーク値を予測(特に閾値に近くなった時に重要)

bull 衛星運用 bull 太陽フレア磁気嵐警報(X線陽子及びkpが閾値を超えた

時に警報を発信)2003年10月より運用開始 bull 内部帯電警報(2日後の静止軌道上の高エネルギー電子(>1

Me) の増加を予測し 閾値を超えた時に警報を発信) 2004年4月より運用開始

話の流れ

技術データ取得装置(TEDA)の概要と成果 bull 主な成果 bull 不具合解析例

宇宙天気のリスクと対策 bull 宇宙環境による衛星システムへの影響 bull 宇宙環境を原因とする不具合の割合推移部位 bull 静止軌道不具合 bull 対策

今後必要な観測項目

まとめ

計測対象計測項目 計測対象 粒径100μm以上のデブリメテオロイド 計測項目 デブリ粒径衝突頻度

基本原理

厚さ約125μmの絶縁性のポリイミドフィルム表面に 100μm周期で直線状の細長い導線(太さ50μm)パターンを形成導線の破断を電気的に検知することによりデブリの衝突(貫通)を検知する破断した導線の数導線の幅ピッチからデブリサイズを計測する

微小デブリ計測技術の概要

衝突孔の例(衝突試験ISAS) - 衝突粒子 SUS 309 microm - 衝突速度 52 kms

HTV5号機によるセンサ機能のフライト実証

35cm

46cm

FY2013機能実証モデル

検出線幅 50 μm 検出線間隔 100 μm フィルム厚 lt 20 μm 有感領域 30times33cm 検出線総数 3300本

サイズ 50times39times4 cm (筐体を含む)

重量 約15kg(筐体を含む)

消費電力 2W(最大4W)(他センサ含む)

テレメトリ 02 bps

宇宙環境観測装置KASPERの一部としてデブリセンサSDMを搭載 FY2013に製作開始今年8月に打ち上げ予定)

まとめ(その1)

衛星不具合の主な原因は帯電放電シングルイベント放射線損傷である今後デブリ環境が重要になると予測される

静止軌道では商用衛星が多く運用されており宇宙環境の変動把握は重要この領域で運用する衛星が気を付けなければいけない環境として

1太陽フレアに伴う高エネルギー粒子 2太陽活動下降期による静止軌道電子の増加 3磁気嵐に伴う磁気圏尾部から注入する粒子 などがあげられる

まとめ(その2)

不具合軽減の取り組み bull 開発時は宇宙環境条件(トータルフラックス及び最悪条

件)を明確にし設計(冗長系柔軟性の設計ディレーティング及び運用モード寿命について研究)試験の充実検証の充実を図る

bull 運用段階に入ったならば宇宙環境を監視し警報等で故障を防ぐ

予測課題 bull 太陽フレアに伴う高エネルギー粒子発生後フラックス

ピーク値の推定

bull 衛星により不具合の起きる閾値は異なるが閾値をこえる急激な電子フラックスの増加と継続時間の予測

bull 局所的な磁気嵐に伴う磁気圏尾部から注入する粒子

宇宙環境グループは宇宙ステーションと衛星プロジェクトの安全な遂行に貢献しています

ご静聴ありがとうございました

補足資料

不具合原因の推移 bull 宇宙天気を大きく左右する要因の1つとして約11年の太陽活動変化が挙げられる

bull 太陽活動下降時期(太陽変動CME)と極大期(フレアCME)に衛星で不具合が増加するそれにより不具合原因の割合が変わる

-Koons et al The Impact of the Space Environment on Space Systems Aerospace Corp report no TR-99(1670)-1 20 July 1999 -2009 preliminary study (unpublished)

何故不具合は減らないか

bull 部品 放射線に対する感受性が高くなっている bull 微細化が進み同時にフォールトするノードが増え同時にエ

ラーとなる論理ノードやメモリセルが増加する微細化によってメモリセルは小さくなるので記憶容量当たりでみるとエラーの発生率は下がるしかし半導体チップの記憶容量やゲート数が増えるので半導体チップ当たりのエラー発生率は微細化とともに上昇するまた蓄積電荷が小さくなり感受性が高くなってきている

bull システム 大型化大電力化運用長期化 bull 1990年代末以降静止衛星の電力が10kWレベルになったしか

し設計検証技術データ蓄積が遅れている改善されつつあると推測される

放射線による影響の概要

粒子 エネルギー又はLET

代表的な影響

陽子 100keV-1MeV 1-10MeV 10-100MeV gt50MeV

表面損傷 表面材料と太陽電池の損傷 放射線損傷(電離非電離損傷の両方)センサーへのノイズ シングルイベント効果

電子 10-100keV gt100keV gt1MeV

表面帯電 深部帯電現象(deep-dielectric charging)センサーへのノイズ太陽電池の損傷 放射線損傷(電離)

重イオン gt1MeV-cm2mg シングルイベント効果

注エネルギー及びLETは個々の部品等により異なりますあくまでも目安です

耐放射線設計手順

軌道条件

ミッション期間

環境条件設定

トータルドーズの予測

1MeV電子換算被曝算出

NIELの換算

LETフルエンス算出

陽子フルエンス算出

対  策  の  検  討

対  策  の  検  討

対  策  の  検  討

放射線による劣化率予測

劣化率予測 特性予測

耐性データ

放射線による劣化率予測

耐性データ

劣化率予測アレイ出力劣化予測

感受性データ

シングルイベント発生率予測 致命度解析

衛星内質量分布

(2)

部品材料の選定

他の要因による劣化率予測

(2)(2) (3)

回路設計等NO

OK

アレイ構造 セル選定

他の要因による劣化率予測 アレイ設計(2)

(2) (2) (2) (3)

衛星内質量分布 部品選定(2)

(2) (2)(3)

NO

OK

NO

OK

(1) 環境モデルマージを含む(2) 部品レベルの検討(3) アセンブリレベルでの検討(4) 設計マージン環境モデル   マージを含め大丈夫か

トータルドーズ

太陽電池アレイの劣化

シングルイベント効果

回路設計

補足放射線太陽宇宙線銀河宇宙線

NEILを用いたダメージファクターの算出

対  策  の  検  討

放射線による劣化率予測

劣化率予測 特性予測

耐性データ

(2)

部品材料の選定

他の要因による劣化率予測

(2)(2) (3)

回路設計等NO

OK

衛星内質量分布 半導体デバイスの変位損傷

(1)

(4)

(4)

(4)

(4)

各軌道における放射線環境

1E+10

1E+11

1E+12

1E+13

1E+14

1E+15

1E+16

1E+17

1E+18

1E+19

1E+20

001 010 100 1000

捕捉

電子

の積

分フ

ルエ

ンス

[m

2 ]

エネルギー[MeV]

各軌道における電子捕捉積分フルエンス(3年間)

LEO

EOS GEO

MEO

GTO

GEO 軌道傾斜角 0deg 高度36000km GTO 軌道傾斜角 18deg 高度 360km~36000km MEO 軌道傾斜角 51deg 高度 10000km EOS 軌道傾斜角 98deg 高度705km LEO 軌道傾斜角 29deg 高度 600km

1E+12

1E+13

1E+14

1E+15

1E+16

1E+17

1E+18

1E+19

1E+20

01 10 100 1000

捕捉

陽子の

積分フルエン

ス[

m2 ]

エネルギー[MeV]

各軌道における捕捉陽子積分フルエンス(3年間)

MEO

GTO

GEO

EOS LEO

放射線による部品材料の影響

総照射線量 (TIDTotal Ionising Dose )

電離損傷

バイポーラTrの電流増幅率の低下リーク電流の増大

γ線で評価

トータルドーズ効果

変位損傷 (DDDisplacement Damage )または 非イオン化エネルギー損失 (NIELNon-Ionising Energy

Loss )

変位損傷(格子欠陥の生成)

電荷輸送効率の低下 (CCD)太陽電池の効率低下等

電子陽子により評価

シングルイベント効果

1個の荷電粒子の入射により発生する誤動作

ソフト(Latch-Up Burnout) エラー又は ソフト (Upset) エラー

陽子及び重イオンで評価

トータルドーズ効果

+ - + + - + - + - - + + + + -

ゲート酸化膜

電離

格子欠陥

正電荷捕獲

+ 正孔 - 電子

電極

(Silicon oxidenitride)

荷電粒子

反跳原子

ゲート絶縁膜中に電荷が蓄積することによるMOSトランジスタのしきい電圧(MOSトランジスタがオフからオンに変化するゲート電圧)の変化をもたらすただ

し最近の最先端チップはゲート絶縁膜がきわめて薄くなっているこのためゲート絶縁膜よりもフィールド絶縁膜(隣接するトランジスタを電気的に分離する絶縁膜)での電荷蓄積が相対的には大きな問題になってきている」

シングルイベント効果

メモリセルはNチャンネルとPチャンネルMOSFETより構成されメモリ情報は回路ノード12の電位の

高低により記録している空乏層の広がっているPN接合12の領域に

重イオンが入射した場合電荷の発生と空乏層内への少数キャリアの収集が起こるこの収集電荷量が回路の耐量を越えた場合(c)に示すように反転が起こる(ソフトエラー)一方pウエル-N基板接

合の空乏層内に電荷収集量が起こりえる耐性を越えると寄生的に存在するPNPNサイリスタ構造がオ

ンし電源と基板間に大電流が流れる状態が生じる(ラッチアップ)

シングルイベントメカニズム -陽子と重イオンの違い-

エラー発生率の計算

線エネルギー付与(LET) (linear energy transfer)

電離性放射線が物質中を通過する際飛程の単位長さ当りに平均して失うエネルギーをいう各種の放射線のうちX線γ線はLETが小さいので低LETといいα線中性子線その他重イオン核分裂破片のLETは大きいので高LETという MeVμmMeV(gcm2)やMeV(mgcm2)で表される

南大西洋異常(SAA) bull 地球の自転軸と磁気軸のずれ

darr bull 放射線帯が自転軸に対して非

対称

bull 南大西洋上空では放射線帯内帯が低高度に落ちてきているこの領域を南大西洋異常域(SAA South Atlantic Anomaly)と呼ぶ

bull 地球観測衛星ではSAAで放射線帯陽子の影響を受ける

Single Event Lachup

シングルイベントと陽子分布

MOS-1衛星(高度909km軌道傾斜角99度)で発生したシングルイベントと 陽子30MeV以上の等高線マップを重ね合わせた結果

NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)

bull 入射粒子が電離によらず与える損傷非イオン化損失

低軌道での電子フラックスと 不具合の発生場所

南大西洋異常(SAA)と極の角

高度800kmでの電子フラックス図極の角(polar horn)とSAAを示す

太陽粒子線 bull 太陽高エネルギー粒子線(SPE Solar Proton Events)は太陽フレア とコロナガス噴出 (CMECoronal Mass Ejections )により引き起こされる bull フレアのスペクトルは可変であるためあるエネルギー域における最悪状態イベントは必ずしも別のエネルギー域における最悪条件ではない 1972年8月のイベント 10~70MeVの粒子が最も多かった 1989年10のイベント 1972年8月のイベントに比べ低エネルギー領域 高エネルギー領域が明らかに激しかった

フルエンス 105 to 1011 cm-2

変動期間 1日から数日

ldquoBastiliardquo Solar Event 14 July 2000

Carrington Flare

84

(LW Townseed) Carrington Flare(1859年) Carrington Flare による30MeV以上トータルFluenceを118times109cm-2で規格化 ~1989年フレアの約13倍(シングルイベントの評価で使用) ~1991年フレアの約9倍 2012年7月23日にキャリントンイベントとほぼ同等の爆発現象が太陽あるいは太陽の周りで起きていたということがNASAの太陽観測衛星「STEREO」の解析から発表された

放射線対策 bull 放射線シールドを付加し放射線を減衰させる

bull 放射線耐性の強い部品(SOI(Silicon On Insulator)技術による耐放射線部品)材料に変更する

bull 放射線による損傷を吸収するために回路または構造上のマージンを持たせる bull ソフト的なエラーに対しては エラー検出訂正機能や多数決

機能等でソフト的エラーが起きてもシステムが機能するようにしたフォールトトレラント機能を付けて対処する ICのハード的故障に対しては ラッチアップ耐性の強い部品を選定するしかないが 電流制限回路を付ける対策も採られる パワーMOSFETに対しては部品選定 電源電圧を規格値の半分以下に落とす等の対策を採る

SOI技術

表面帯電への対策例

表面の物体間を導線で結線する

太陽電池のカバーガラスを導電性被膜付き(酸化インジウムITO)にする

熱制御材表面にITOを被覆する

熱制御材は高誘電率のテフロンの使用を避け 高伝導度耐環境性に優れたブラックカプトンを使用

イオンエンジンの中和器で能動帯電制御

内部帯電への対策例

アルミで3mm厚さに相当するシールドで囲む(Faraday Cage)

テフロンやカプトンなどの誘電体材料の内部での使用量を最小限に押さえる

回路基板やコンフォーマルコーティングは誘電体なので電流リークパス(1012Ωcmまたは1012Ωcm2

程度)を必ずつける

特にスポット的な放射線シールドの金属材には必ず電流リークパスをつける

帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備

衛星モデル作成

材料物性テーブル設定

宇宙環境パラメータ設定

Converter

転送ディレクトリ 解析データファイル

転送

解析ディレクトリ生成 解析結果 進行状況チェック ファイル操作

MUSCAT 解析エンジン

解析結果 表示

パラメトリックラン

オプション 解析

大型パネル実験(35mtimes11m) クーポンパネル実験(26cmtimes16cm)

環境模擬試験 環境模擬試験

MUSCATに使用する物性値設計標準制定のための知見などを得ることを目的に軌道上の宇宙環境を模擬した地上試験を行っている これらの試験では放電の発生頻度や電圧閾値放電発生による太陽電池パネルや搭載機器への影響を検証している

放射線計測装置の原理

bull その粒子が物質を通過する際のエネルギー損出率が粒子の電荷(原子番号)Zの二乗に比例すること(Bethe-Blochの式)を利用する

S2

E

ΔE Ersquo

S1 S3

  • 宇宙機の設計のための宇宙環境
  • 話の流れ
  • 話の流れ
  • TEDA(技術データ取得装置)(国産部品の宇宙環境での実証の必要性)
  • ETS-VTEDA(技術データ取得装置)誕生前の部品の宇宙実証の背景
  • スライド番号 6
  • スライド番号 7
  • スライド番号 8
  • スライド番号 9
  • 図6太陽黒点数と静止軌道電子 (>04MeV ) Flux の変動 (ETS-V搭載DOMによる観測)
  • スライド番号 11
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの開発(理研東大と共同で宇宙環境計測の充実)
  • ETS-VI(きく6号)打ち上がったがGEOに行かずGTOに留まる
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの成果
  • スライド番号 15
  • スライド番号 16
  • スライド番号 17
  • ADEOS搭載TEDA(世界2番目の異常宇宙線ACR)
  • BBND (ボナー球中性子検出器)
  • スライド番号 20
  • ISS搭載BBNDの成果(約8か月)
  • スライド番号 22
  • MDS-1搭載放射線吸収線量モニタ(SDOM)
  • 放射線帯変動モデルの開発MDS-1 065 MeV 電子フラックス
  • 変動パラメータの選択 (1 cycle solar activity)
  • 変動パラメータ- Tavg の定義-
  • 065MeV 電子 L値-Tavg マップ
  • 13MeV 陽子 L値-Tavg マップ
  • 電子観測とMDS-1モデルの比較
  • 放射線帯フラックスピークの変動
  • 陽子観測とモデルの比較
  • 電子(035~078MeV) 1日の変動予測GOSAT軌道
  • 電子(035~078MeV) 変動の信頼度水準(1日)GOSAT軌道
  • MDS-1 model と AE-8 modelとの比較1日
  • 話の流れ
  • 2003年10月 みどり号の全損事故(複合現象)
  • 衛星帯電の基本式
  • 内部帯電
  • パドルでの帯電放電メカニズム
  • スライド番号 40
  • スライド番号 41
  • スライド番号 42
  • データ中継技術衛星DRTS (こだま)の不具合
  • DRTS ESA スパイクノイズと電子フルエンスの比較(赤の丸が異常検知)
  • 不具合が宇宙環境によるものであるか判断する際のポイント
  • 話の流れ
  • 宇宙天気のリスク-宇宙環境によるシステムへの影響 -
  • NASAの報告-GNampCに注目-
  • NASAの報告(続き)
  • 宇宙環境を原因とする不具合の割合-JAXAの場合-
  • 不具合発生部位の割合 
  • Satellite News Digest -静止軌道不具合-
  • 太陽活動と静止軌道衛星不具合例
  • スライド番号 54
  • スライド番号 55
  • スライド番号 56
  • 衛星開発段階における対策
  • 運用における対応
  • 話の流れ
  • スライド番号 60
  • スライド番号 61
  • まとめ(その1)
  • まとめ(その2)
  • 宇宙環境グループは宇宙ステーションと衛星プロジェクトの安全な遂行に貢献しています
  • 補足資料
  • 不具合原因の推移
  • 何故不具合は減らないか
  • 放射線による影響の概要
  • 耐放射線設計手順
  • 各軌道における放射線環境
  • 放射線による部品材料の影響
  • トータルドーズ効果
  • シングルイベント効果
  • シングルイベントメカニズム-陽子と重イオンの違い-
  • エラー発生率の計算
  • 線エネルギー付与(LET)(linear energy transfer)
  • 南大西洋異常(SAA)
  • Single Event Lachup
  • シングルイベントと陽子分布
  • NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)
  • 低軌道での電子フラックスと不具合の発生場所
  • 南大西洋異常(SAA)と極の角
  • スライド番号 83
  • Carrington Flare
  • 放射線対策
  • スライド番号 86
  • スライド番号 87
  • 帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備
  • スライド番号 89
  • 放射線計測装置の原理
Page 5: 宇宙機の設計のための宇宙環境の方針から国産部品開発(42品種)が実施された。 . 半導体電子部品は耐放射線性を加味して、人工衛星(特に

ETS-VTEDA(技術データ取得装置) 誕生前の部品の宇宙実証の背景

国産部品の宇宙環境での実証の必要性

太陽電池モニター(SCM)の衛星搭載

bull ISS-b (1978年2月打ち上げ)

bull ETS-IV(1981年2月打ち上げ)

bull ETS-III(1982年9月打ち上げ)

bull ETS-V(1987年8月打ち上げ)でTEDAに組み入れた

bull 旭硝子製のカバーガラスもフライト実証をしたその成果はETS-VIでこの国産部品の組み合わせで採用

ETS-VTEDAの成果SEL

(世界初データであった) 64-kbit SRAM

( T Goka et al IEEE 1991 1998)

SEL Singl Event Latchup(ハードエラー)

SEL First Measurement (Japan) SEL First Anomaly (ESA)

ETS-VTEDAの成果帯電電位の 材料別10年間の計測結果 Surface Potential Monitor (POM)

Matsumoto Het al Proc Charging Conference 23-27 April 2001 ESTEC

ETS-VTEDA 熱制御材劣化モニタ(TDM)の

10年間の計測データ(太陽光吸収率α 赤外輻射率ε )

ε

α

図6太陽黒点数と静止軌道電子 (>04MeV ) Flux の変動 (ETS-V搭載DOMによる観測)

bull 1993-1994年にかけ各国の静止衛星で不具合や故障が増加したJAXAではETS-V搭載放射線吸収線量モニタ(DOM)による長期的観測により太陽活動下降期の高エネルギー電子の増加を確認しておりこれにより静止衛星に影響が出たことが明らかとなったなお同様の不具合や故障増加が11年前の太陽活動下降期である1982-1983年にも発生していたことが分かった

bull 現在はこれらの電子の環境でも太陽電池パドル等に不具合が起きらないことを地上試験で確認してきている

静止軌道における 高エネルギー粒子の長期的観測結果と宇宙機への影響

0

20

40

60

80

100

120

140

160

180

1000

3000

5000

7000

9000

11000

13000

15000

17000

1980

1981

1982

1983

1984

1985

1986

1987

1988

1989

1990

1991

1992

1993

1994

1995

1996

1997

太陽黒点数

電子

Flu

x (個

数(cm2strsec))

電子Flux

太陽黒点数

Miyoshi et al[2004]

太陽活動と放射線帯分布の変動

ETS-Ⅵ搭載TEDAの開発 (理研東大と共同で宇宙環境計測の充実)

目的

bull 新たに開発された国産部品材料等の宇宙環境下での劣化特性を同一条件で計測すると共に劣化の原因となる宇宙環境を同時に計測し比較解析する

bull 新規開発の部品材料の宇宙実証データフライト実績を得る

bull 地上試験として行ってきた宇宙環境を模擬した試験方法の検証を行う

bull 帯電現象及びガスジェット等による人工衛星の汚染の経時変化の取得

bull 衛星設計に用いている宇宙環境モデル(放射線磁場等)の検証 bull 宇宙環境に起因する人工衛星の故障や不具合現象の解明

ETS-VI(きく6号)打ち上がったが GEOに行かずGTOに留まる

bull 1994年(平成6年)8月28日16時50分打ち上げ

bull H-IIロケット試験機2号で種子島から打ち上げ

bull アポジエンジン不具合でGTO軌道に留まる

bull 急遽楕円軌道用に新たな制御プログラムを設計製作し地上検証を行った上で衛星にアップロードしこの問題を解決した

bull 最終軌道ペリジ約8600kmアポジ約38600km軌道傾斜角約13度(3日5周期回帰)で2年間運用

bull TEDAのデータ公開で宇宙環境データが役に立つ事を宣伝(SEESを立ち上げデータを公開した)

ETS-Ⅵ搭載TEDAの成果

トータルドーズ劣化や太陽電池劣化は静止衛星で10年かかった同じ評価を1年間でできた

シングルイベントの発生頻度の高度分布が取得できた (高度8千km~3万8千kmの範囲)

バンアレン帯の放射線帯の電子陽子重イオンの高度分布データを取得し放射線帯モデル日本モデルを作成(あけぼの衛星データ含む)

この成果はGTO軌道を最初から狙うMDS-1(つ

ばさ)プロジェクトへとつながった 米国は1990年7月25日CRRESS(Combined Release and Radiation Effects Satellite )衛星を打ち上げ

研究開発の流れ

計測装置開発

データ収集 計画

環境計測

研究試作

衛星への影響解析で必要なデータ及び性能を機器開発に反映する

高エネルギー軽粒子 重イオン 中性子 帯電 原子状酸素 デブリ 新たな現象(問題点)

軌道上不具合評価 宇宙環境モデル

宇宙環境データベース 警報

衛星設計基準

有人活動への反映

宇宙天気予報 システム

国内外機関とのデータ交換

打上げ衛星運用

放射線環境評価(ISOを含む)の見直し 宇宙環境モデルの最適化 効率の良い宇宙機の開発 (シールド厚最適設計) 低コスト化(部品仕様の見直し) 短期間開発(民生品の利用)

フィードバック

成果目標

プロジェクト支援

宇宙環境計測装置(放射線磁場)小型化の流れ

9kg 10cm 10cm 10kg 14W 18W

1cm 52g 480g 1cm 12W以下 15W

磁力計(480g->52g)

みどり2搭載用 つばさかけはしきぼう搭載用 Jason-2GOSAT搭載

ETS-VIII搭載用 QZS搭載用

電子(05~50MeV) 陽子(1~160MeV) α粒子(4~200MeV)

電子(04~5MeV) 陽子(7~48MeV) α粒子(30~140MeV)

plusmn655364096102456nT plusmn655364096nT

16bit 20bit

電子(003~20MeV) 陽子(04~250MeV) α粒子(08~400MeV)

LPT-S 216x182x175 mm 62 kg LPT-E 240x165x 93 mm 28 kg

積算吸収線量計

軽粒子モニタ(10kgー>9kgー>7kg最小2kg)

17times10times5mm749g

ISSKibou(09-)

GEO

LEO

ETS-V (87-97)

ADEOS-II(02-03)

ETS-VIII(06-) DRTS(02- )

STS-89(98)

MDS-1(02-03) ETS-VI(94-96)

ETS-VII (97-99)

宇宙環境計測の流れ ISSUS-Lab(01)

ひまわり1-4(78-99)

ERG(16予定)

ALOS(06-11)

GOSAT(09-)

Jason-2((08-)

Jason-3(15予定)

GTO

QZS(09-)

ADEOS (96-97)

ADEOS搭載TEDA (世界2番目の異常宇宙線ACR)

bull シングルイベント評価のための重イオン観測であったが世界2番目の異常宇宙線を観測することができた

bull 低軌道の衛星は地球磁場が邪魔となって宇宙線(重イオン)を観測するに向いていないと考えられていたが異常宇宙線を観測するのにすぐれていることが明らかとなった

T Kohno et al Radiation Measuremets 30 5 PP639-644

BBND (ボナー球中性子検出器)

bull 1994年(平成6)年7月に中性子計測のために ボナー球ホスウイッチ方式及びシンチレーションファイバーの3種類のセンサの研究をスタート

bull シャトル打ち上げ計画の管理者から搭載装置の検討依頼がありBBNDのSTS-89への搭載が決定した(1997年1月頃)

bull 振動試験で装置内のボルトが外れるという不具合もあったが約1年という非常に短期間で搭載品を開発することができた

bull コスト低減のために構造解析を自前で実施したりデータ処理ソフトウェアも内作した

熱中性子に対して高い感度を持つ6個の3Heガス入り比例計数管で構成して

いる中性子は電荷をもたないのでそれ自身には電離作用がないが軽い原子の3He気体では反跳原子を生じたり中性子の核反応(3He+nrarrp+3H+765KeV)によって荷電粒子を生じるので間接的に電離を起こす下図のように気体中に二つの電極を置き高電圧(1000V)をかけておくと中性子の入

射によって気体中に生じた陽子イオンと電子のイオン対がそれぞれの電極に向かって流動し外部回路に電離電流が流れるこの電気パルスにより中性子を計測する

ボナー球型中性子モニタの概要

Polyethylene Sphere3He proportional Counter

51 φ 51 φ81 φ110 φ150 φ230 φ

Sensor6 Sensor5 Sensor4 Sensor3 Sensor2 Sensor1

Covered by Gadolinium

[mm]3Heガス入り比例計数管の原理

6個のボナー球の断面図

3Heガス入り比例計数管とポリエチレン減速材

H Matsumotoet al Radiation Measurements 33 (2001) 321-333

ISS搭載BBNDの成果(約8か月)

実験期間中の平均的な等価線量等量率 (2001年3月23日~2001年11月14日)

太陽フレア時(2001年11月4日)

等価量等量率の平均は94μSv日で年率に換算すると34mSv年となるこれは地上において自然界から受ける等価線量当量率の約14倍に相当する 実験期間中に多数の太陽フレアが発生した2001年11月4日の太陽フレアにより019mSVの増加を観

測したこれは自然界から受ける等価線量当量率の約1か月分に相当するしかしBBNDの約8か月

の実験期間中の全等価線量当量に対するこの太陽フレアの影響の寄与分は1以下であった また搭載位置による環境の違いも確認された

H Koshiishiet al Radiation Measurements 42(2007) 1510-1520

1)船内の計測結果より低エネルギー側で2~3桁高エネルギー側で1~2桁低い 2)船内より船壁が薄く中性子が少ない環境より自然のアルベド中性子環境に近い

中性子被曝線量の ISS船外(SEDA-AP)と船内(STS-89)の比較

MDS-1搭載放射線吸収線量モニタ(SDOM) SiTungstenAlBGO

② ⑦

⑧⑧

① Collimator ② Window③ SSDs ④ Plastic Scintillator⑤ Anticoincidence Scintillator(ACS)⑥ Beam Stop⑦ Scintillator PMT⑧ ACS PMT

運用期間 2002年2月 ndash 2003年9月 軌道 -軌道傾斜角 285deg 1 lt BB0 le 84 -高度 500 km times 36000km 11 le L le 10 -軌道周期 約10時間35分 -スピンレート 5rpm

計測エネルギー範囲 Electron 04- 9MeV (5bins) Proton 09-210MeV (12bins) He 6-140MeV (4bins) Heavy Ion 15- 60MeVnuc (1bin) G-Factor 001cm2sr

放射線帯変動モデルの開発 MDS-1 065 MeV 電子フラックス

変動パラメータの選択 (1 cycle solar activity)

太陽風速度(SW)

太陽黒点数(R)

Ap指数

F107

変動パラメータ- Tavg の定義-

1日後の予測

パラメータスケールの時間平均 ApTavg SWTavg F107 Tavg

T days

放射線帯の構造は変動パラメータ値の大きさと継続時間に相関がある

065MeV 電子 L値-Tavg マップ

APTavg

SWTavg

13MeV 陽子 L値-Tavg マップ

APTavg

F107Tavg

電子観測とMDS-1モデルの比較

80 175

放射線帯フラックスピークの変動

80orbits (平穏時) 175orbits (擾乱時)

陽子観測とモデルの比較

電子(035~078MeV) 1日の変動予測GOSAT軌道

0

50

100

150

200

250

1E+09

1E+10

1E+11

1E+12

1984 1986 1988 1990 1992 1994 1996 1998 2000 2002 2004 2006 2008

Flue

nce[

ecm

2M

eVd

ay]

Launch day

FluenceSSN

Worst case Nov 12003

電子(035~078MeV) 変動の信頼度水準(1日)GOSAT軌道

00

01

02

03

04

05

06

07

08

09

10

88 90 92 94 96 98 100 102 104 106 108 110 112 114

Con

fiden

ce le

vel

Fluence[LOG10 ecm2MeVday]

AE-8 MAX

AE-8 MIN

MDS-1 model と AE-8 model との比較1日

0

20

40

60

80

100

120

140

160

180

1E+09

1E+10

1E+11

1E+12

1995 1997 1999 2001 2003 2005 2007 2009

Flue

nce[

ecm

2M

eVd

ay]

Launch day

Fluence(JAXA)Fluence(AE8)SSN

話の流れ

技術データ取得装置(TEDA)の概要と成果 bull 主な成果 bull 不具合解析例

宇宙天気のリスクと対策 bull 宇宙環境による衛星システムへの影響 bull 宇宙環境を原因とする不具合の割合推移部位 bull 静止軌道不具合 bull 対策

今後必要な観測項目

まとめ

2003年10月 みどり号の全損事故 (複合現象)

極域のオーロラ帯を通過中に電力ハー

ネスを巻いているMLIが高エネルギー電

子により帯電

MLIが接地されていなかったため内側

のハーネスとの間に1kV以上の電位差が

発生

MLI内のガス密度が発電開始に伴う温度

上昇により上昇

ハーネス被覆の傷により露出したハーネ

ス芯線とMLI内面の間で放電発生

単発の放電が隣接するハーネスに飛び火

してハーネス間の短絡

アーク放電が次々と伝搬していきハー

ネス全体が焼損

故障推定箇所 (大電力ハーネス部)

bull詳細報告書は文部科学省 宇宙開発委員会のHP参照

httpwwwmextgojpb_menushingiuchuureports04080901htm

bull 人工衛星の電位 bull 人工衛星は電気的に宇宙に浮いている bull 宇宙機構造体が接地点 bull 宇宙機への流入電流と流出電流のバランスによって宇宙機電位が決まる bull 各電流成分は宇宙機電位Vの関数として表され定常状態では式を下式を満たす

衛星帯電の基本式

( ) dtIIIIIIIC

V

dtdVCVIVIVIVIVIVIVI

BPHBSESISEIE

BPHBSESISEIE

int +++++minus=

==+++++minus

1

0)]()()()()()([)(

入射電子電流 ( E I )

後方散乱電子電流 ( BSE I )

入射正イオン電流 ( I I )

入射電子による二次電子電流 ( SE I )

太陽光

入射正イオンによる 二次電子放出電流 ( SI I )

光電子放出電流( PH I )

電荷ビーム放出電流(IB)

bull内部帯電は衛星の外壁を貫通した放射線帯外帯の01MeV以上の電子が内部に侵入

bull基板間や同軸ケーブルの線間等の容量(コンデンサ)や誘電体に帯電 bull接地されてない導体片に帯電

bullその耐圧電圧を超えると その耐圧の弱い箇所 (材質の欠陥や針状突起など の箇所)で放電して故障に至る

内部帯電

(あるエネルギ-以上の粒子が入射光電子なし)

NASA-HDBK-4002より

パドルでの帯電放電メカニズム

宇宙環境の影響により 衛星がマイナス電位に帯電

高エネルギー電子等により カバーガラスはプラスに帯電 衛星とカバーガラスに電位差が生じる

電位差が大きくなると トリプルジャンクション近傍 の電界強度が増大していく

トリプルジャンクションで放電が発生する カバーガラスの帯電が緩和される

+ + + + + + + + + + + + + +

+ + + +

カバーガラス

太陽電池セル

基板(衛星構体)

トリプルジャンクション rArr 導体絶縁体宇宙環境の接点

持続放電

Substrate

Satellite Load

insulation sheet

Solar array cell

Cover glass

Arc current

Electrode

持続放電は衛星の電力消失につながる 持続放電のモードは以下の2通りがある

Substrate

Satellite Load

insulation sheet

Solar array cell

Cover glass

Arc current

Electrode

Solar array cell

Cover glass

セル-基板間短絡 セル間短絡

放電によって太陽電池セルと基板が短絡する 短絡によって負荷に電力が供給されなくなる

放電によって太陽電池セルとセルが短絡する 短絡によって負荷に電力が供給されなくなる

サブストーム(高エネルギー電子)との遭遇

+ + + + + + + +

二次電子光電子による絶縁体の帯電(局所帯電)

電位差発生

逆電位勾配

衛星構体が負に帯電(絶対帯電)

電位

時間

サブストーム

衛星構体 VS

乖離電圧 ∆V

カバーガラスVcg

0 プラズマ電位

軌道別帯電放電現象

トリプルジャンクションで 放電発生

放電発生

静止軌道

+ + + + + + + +

逆電位勾配

軌道帯電放電現象

トリプルジャンクションで 放電発生

極軌道 オーロラ電子(高エネルギー電子)との遭遇

プラズマ流入出による絶縁体の帯電(局所帯電)

電位差発生

衛星構体が負に帯電(絶対帯電)

放電発生

電位

時間

オーロラ電子

衛星構体 乖離電圧 ∆V

カバーガラス

0 プラズマ電位

データ中継技術衛星DRTS (こだま)の不具合

2002年10月 9日 静止軌道に打ち上げ

2003年

3月24日 406JST変化率異常モニタ故障検出(FDIR)

が動作しA系からB系に切り替わった

3月25日 410JSTにB系のみ異常検知

4月 3日 327JSTにB系のみ異常検知

5月28日 124JSTにB系のみ異常検知

6月 6日1537JSTにB系のみ異常検知

ESA

DRTS ESA スパイクノイズと 電子フルエンスの比較(赤の丸が異常検知)

larr閾値

この事実を基に静止軌道における内部帯電警報システムを構築 2004年4月より運用開始

不具合が宇宙環境によるものであるか 判断する際のポイント

不具合の発生した時刻に太陽フレアや磁気嵐等の宇宙天気の大きな変動が起きていれば不具合に関係している可能性が高い但し帯電など放射線の積算的効果の伴う現象については発生から1週間位さかのぼり環境がどのように推移してきたかを考慮する必要がある

磁気嵐が起きると静止軌道に急激な粒子の増加現象が起きこれにより衛星帯電が引き起こされたりする(予測に利用可能)

地方時(真夜中や朝方か)や季節(春秋)を考慮する

低軌道衛星においてはSAA外帯のrdquo角ldquo及び極通過時に不具合

が起きやすいので衛星の位置(緯度経度)が重要

事象を把握する上で単発現象か数回起きている現象か周期

(時間同じ軌道等)的に発生している現象か

話の流れ

技術データ取得装置(TEDA)の概要と成果 bull 主な成果 bull 不具合解析例

宇宙天気のリスクと対策 bull 宇宙環境による衛星システムへの影響 bull 宇宙環境を原因とする不具合の割合推移部位 bull 静止軌道不具合 bull 対策

今後必要な観測項目

まとめ

宇宙天気のリスク -宇宙環境によるシステムへの影響 -

プラズマ (IRI)

帯電 (MUSCAT)

衝突 (AUTODY)

抗力 表面劣化

紫外線X線 中性粒子 (MSIS)

放射線粒子 (AE8AP8JPLSHIELDO

SE-2)

メテオロイドデブリ (MASTER2005

ORDEM)

電離損傷 変位損傷

bull電子回路の劣化 bull光部品の劣化

bull太陽電池セルの劣化

SEU (CREME96)

bullデータエラー bull画像ノイズ

bullシステム停止 bull回路損傷

bull熱的電気的光学的特性の劣化

bull構造の劣化 bullコンタミ

電磁パルス bull電源出力低下

bull損傷

bullトルク bull軌道落下

bull構造 損傷 bull減圧

bull電磁パルス

NASAの報告 -GNampCに注目-

1974年から1994年に起きたNASAと空軍の衛星故障の内20~25が宇宙環境に起因していたと報告

1990年から2001年に米国欧州カナダ日本の企業や政府機関が開発した衛星を調べた過去の宇宙ミション損失の大部分はロケットの失敗であったが1998年衛星損失の大部分は軌道上の衛星障害となっている多くの最近の異常は太陽電池アレイ及びバッテリの危険が増加している静止軌道通信衛星の設計寿命はこのサブシステムの故障の危険が増加している

喪失等の大きな誘導制御(GNampC)の不具合に注目 GNampC不具合の内宇宙環境による 不具合は約3と報告されている

軌道上衛星のタイプ別数

NASAの報告(続き)

衛星設計寿命における不具合発生時期 事故率と軌道

軌道別の衛星数 サブシステム不具合

宇宙環境を原因とする不具合の割合 -JAXAの場合-

2002年~2008年に運用された軌道上不具合情報が比較的充実している11衛星(利用衛星7機科学衛星4機)の結果宇宙環境によるも

のは約15過去のデータよりも割合が少ない

合計83件 合計35件

(1)利用衛星 (2)科学衛星

設計検討 不足 48

製造不良 8

軌道上環境 17

偶発故障 6

調査中 13

原因不明 8

設計検討

不足 61

製造不良 4

軌道上環境 11

偶発故障 6

調査中 9

原因不明 9

不具合発生部位の割合

不具合発生部位の割合

Brent Robertson Eric Stoneking ( 1990-2001NASA Goddard Space Flight Center )

Satellite News Digest -静止軌道不具合-

Satellite News Digest (SND) (http wwwsqt-indexcouk) で1997年~2009年の期間に静止軌道で95件の不具合が報告されている その内運用ミスや設計ミスなどを除くと32件(約33)は宇宙環境によるものであった 過去のデータより割合が多い

Choiら1)はこれら不具合の地方時と季節依存性を確認した その結果2100LT~900LTで約72の不具合が発生し900LT~2100LTは9件(約28)であった またこの9件は全て姿勢制御の不具合だった 静止軌道衛星不具合のほとんどは真夜中と朝方で起きており磁気嵐に伴い磁気圏尾部から注入した粒子による表面帯電が不具合の主原因と結論づけている

1) Ho-sung Choi et al Analysis of GEO spacecraft anomalies Space weather relationships Space Weather Vol 9 S06001

太陽活動と静止軌道衛星不具合例

ANIK-E1E2

ANIK-E1

複数の衛星で故障

Galaxy-15

帯電放電不具合 -ANIK-E1amp2Telstar401-

Jan 1994 ANIK-E1 amp E2事故時の環境 - Joe H Allen

1週間

太陽活動下降時期の電子増加

2MeV以上電子

copyNOAA Web

フラックスが3桁急増

Jan 1997 Telstar401事故時の環境

静止軌道の急激な電子増加

太陽極大期太陽フレアによる衛星障害 - 2003年10月~11月-

10486981048698 永久故障 4 10486981048698 安全モード又は運用を一時停止 31 10486981048698 データ内容の「誤り」の増加搭載コンピュータの誤動作 5

httpwwwsat-ndcomfailures等のデータによる 合計 40件

-Barbieri and Mahmot

米国極軌道気象衛星NOAA-17の改良型マイクロ波観測装置AMSU-A1 (Advanced Microwave Sounding Unit)のスキャナーが永久故障 米国気象衛星GOES -8号のX線センサがOFFになり復帰しなくなった

e-birdに深刻な不具合が発生 不具合は20本のトランスポンダ全てに影響

火星周回中の探査機「マーズオデッセイ (Mars Odyssey)」の観測機器放射線観測装置「Martian Radiation Environment Experiment (MARIE)」が太陽活動の影響により10月28日から適切に作動しなくなった データ中継技術衛星(DRTS)「こだま」 太陽捕捉モードに移行

太陽陽子

帯電放電不具合-Galaxy15(局所的的現象)- 2

5 M

eV

65

MeV

11

5 M

eV

GOES 14 ----- GOES 15 ----- GOES 11 -----

Satellite Locations

Galaxy 15 anomaly

2010年4月5日9時48分UTCは磁気嵐及びCMEが発生するなど宇宙環境は非常に荒れていたGalaxy15衛星は真夜中側に位置し宇宙環境の影響を受けやすい

位置にいたことから宇宙環境による不具合である可能性が高いということで原因追及がなされた高エネルギー粒子が引き起こす代表的な衛星不具合現象として3つ(表面帯電内部帯電SEUシングルイベントバーンアウトSEL)の可能性を検討した

チームの報告書によると磁気圏尾部からの熱電子の流入による放電が原因であったと結論付けられたGalaxy15衛星の近くにはGOES-11衛星が位置していたがGOES-11衛星には不具合を発生しておらず本現象は局所的な現象と推測される

衛星開発段階における対策 JAXAの不具合解析の結論

bull 2002年~2008年に運用された11機の衛星不具合を解析 宇宙環境による不具合は偶発故障のみ(全体の約15)確率的には想定範囲内ではあるがその影響を最小限とするためディレーティング運用モード寿命についての研究に取り組む

bull 設計基準試験の充実検証確認の強化技術成熟度(TRL)評価の徹底各々の境界制約条件の明示化等により検証不足抜けの防止有効なピアレビューに結びつける

冗長系(同じハードウェア機能の冗長)柔軟性の設計(ソフトハードの対応)

bull 従来の故障が起きないようにする設計に対してGOSAT(いぶき)では重要部

品を二重化することにより故障する可能性は上がるが故障しても衛星バスの運用や観測が続行できる可能性がより高くなるように設計した

運用における対応

bull 宇宙天気監視ーロケット打ち上げ及び宇宙飛行士支援 数日前に今後の宇宙環境の推移を把握(MXレベルのフレアの発生確率)

bull X線の増加で太陽フレア発生を検知したら高エネルギー粒子の発生をいつまで 気を付ければ良いか判断(発生位置で大凡を推定するが課題は多い) SPEが発生した場合(特に10MeV以上100MeV 以上の陽

子)最大値フラックス値の推定 ピーク値を予測(特に閾値に近くなった時に重要)

bull 衛星運用 bull 太陽フレア磁気嵐警報(X線陽子及びkpが閾値を超えた

時に警報を発信)2003年10月より運用開始 bull 内部帯電警報(2日後の静止軌道上の高エネルギー電子(>1

Me) の増加を予測し 閾値を超えた時に警報を発信) 2004年4月より運用開始

話の流れ

技術データ取得装置(TEDA)の概要と成果 bull 主な成果 bull 不具合解析例

宇宙天気のリスクと対策 bull 宇宙環境による衛星システムへの影響 bull 宇宙環境を原因とする不具合の割合推移部位 bull 静止軌道不具合 bull 対策

今後必要な観測項目

まとめ

計測対象計測項目 計測対象 粒径100μm以上のデブリメテオロイド 計測項目 デブリ粒径衝突頻度

基本原理

厚さ約125μmの絶縁性のポリイミドフィルム表面に 100μm周期で直線状の細長い導線(太さ50μm)パターンを形成導線の破断を電気的に検知することによりデブリの衝突(貫通)を検知する破断した導線の数導線の幅ピッチからデブリサイズを計測する

微小デブリ計測技術の概要

衝突孔の例(衝突試験ISAS) - 衝突粒子 SUS 309 microm - 衝突速度 52 kms

HTV5号機によるセンサ機能のフライト実証

35cm

46cm

FY2013機能実証モデル

検出線幅 50 μm 検出線間隔 100 μm フィルム厚 lt 20 μm 有感領域 30times33cm 検出線総数 3300本

サイズ 50times39times4 cm (筐体を含む)

重量 約15kg(筐体を含む)

消費電力 2W(最大4W)(他センサ含む)

テレメトリ 02 bps

宇宙環境観測装置KASPERの一部としてデブリセンサSDMを搭載 FY2013に製作開始今年8月に打ち上げ予定)

まとめ(その1)

衛星不具合の主な原因は帯電放電シングルイベント放射線損傷である今後デブリ環境が重要になると予測される

静止軌道では商用衛星が多く運用されており宇宙環境の変動把握は重要この領域で運用する衛星が気を付けなければいけない環境として

1太陽フレアに伴う高エネルギー粒子 2太陽活動下降期による静止軌道電子の増加 3磁気嵐に伴う磁気圏尾部から注入する粒子 などがあげられる

まとめ(その2)

不具合軽減の取り組み bull 開発時は宇宙環境条件(トータルフラックス及び最悪条

件)を明確にし設計(冗長系柔軟性の設計ディレーティング及び運用モード寿命について研究)試験の充実検証の充実を図る

bull 運用段階に入ったならば宇宙環境を監視し警報等で故障を防ぐ

予測課題 bull 太陽フレアに伴う高エネルギー粒子発生後フラックス

ピーク値の推定

bull 衛星により不具合の起きる閾値は異なるが閾値をこえる急激な電子フラックスの増加と継続時間の予測

bull 局所的な磁気嵐に伴う磁気圏尾部から注入する粒子

宇宙環境グループは宇宙ステーションと衛星プロジェクトの安全な遂行に貢献しています

ご静聴ありがとうございました

補足資料

不具合原因の推移 bull 宇宙天気を大きく左右する要因の1つとして約11年の太陽活動変化が挙げられる

bull 太陽活動下降時期(太陽変動CME)と極大期(フレアCME)に衛星で不具合が増加するそれにより不具合原因の割合が変わる

-Koons et al The Impact of the Space Environment on Space Systems Aerospace Corp report no TR-99(1670)-1 20 July 1999 -2009 preliminary study (unpublished)

何故不具合は減らないか

bull 部品 放射線に対する感受性が高くなっている bull 微細化が進み同時にフォールトするノードが増え同時にエ

ラーとなる論理ノードやメモリセルが増加する微細化によってメモリセルは小さくなるので記憶容量当たりでみるとエラーの発生率は下がるしかし半導体チップの記憶容量やゲート数が増えるので半導体チップ当たりのエラー発生率は微細化とともに上昇するまた蓄積電荷が小さくなり感受性が高くなってきている

bull システム 大型化大電力化運用長期化 bull 1990年代末以降静止衛星の電力が10kWレベルになったしか

し設計検証技術データ蓄積が遅れている改善されつつあると推測される

放射線による影響の概要

粒子 エネルギー又はLET

代表的な影響

陽子 100keV-1MeV 1-10MeV 10-100MeV gt50MeV

表面損傷 表面材料と太陽電池の損傷 放射線損傷(電離非電離損傷の両方)センサーへのノイズ シングルイベント効果

電子 10-100keV gt100keV gt1MeV

表面帯電 深部帯電現象(deep-dielectric charging)センサーへのノイズ太陽電池の損傷 放射線損傷(電離)

重イオン gt1MeV-cm2mg シングルイベント効果

注エネルギー及びLETは個々の部品等により異なりますあくまでも目安です

耐放射線設計手順

軌道条件

ミッション期間

環境条件設定

トータルドーズの予測

1MeV電子換算被曝算出

NIELの換算

LETフルエンス算出

陽子フルエンス算出

対  策  の  検  討

対  策  の  検  討

対  策  の  検  討

放射線による劣化率予測

劣化率予測 特性予測

耐性データ

放射線による劣化率予測

耐性データ

劣化率予測アレイ出力劣化予測

感受性データ

シングルイベント発生率予測 致命度解析

衛星内質量分布

(2)

部品材料の選定

他の要因による劣化率予測

(2)(2) (3)

回路設計等NO

OK

アレイ構造 セル選定

他の要因による劣化率予測 アレイ設計(2)

(2) (2) (2) (3)

衛星内質量分布 部品選定(2)

(2) (2)(3)

NO

OK

NO

OK

(1) 環境モデルマージを含む(2) 部品レベルの検討(3) アセンブリレベルでの検討(4) 設計マージン環境モデル   マージを含め大丈夫か

トータルドーズ

太陽電池アレイの劣化

シングルイベント効果

回路設計

補足放射線太陽宇宙線銀河宇宙線

NEILを用いたダメージファクターの算出

対  策  の  検  討

放射線による劣化率予測

劣化率予測 特性予測

耐性データ

(2)

部品材料の選定

他の要因による劣化率予測

(2)(2) (3)

回路設計等NO

OK

衛星内質量分布 半導体デバイスの変位損傷

(1)

(4)

(4)

(4)

(4)

各軌道における放射線環境

1E+10

1E+11

1E+12

1E+13

1E+14

1E+15

1E+16

1E+17

1E+18

1E+19

1E+20

001 010 100 1000

捕捉

電子

の積

分フ

ルエ

ンス

[m

2 ]

エネルギー[MeV]

各軌道における電子捕捉積分フルエンス(3年間)

LEO

EOS GEO

MEO

GTO

GEO 軌道傾斜角 0deg 高度36000km GTO 軌道傾斜角 18deg 高度 360km~36000km MEO 軌道傾斜角 51deg 高度 10000km EOS 軌道傾斜角 98deg 高度705km LEO 軌道傾斜角 29deg 高度 600km

1E+12

1E+13

1E+14

1E+15

1E+16

1E+17

1E+18

1E+19

1E+20

01 10 100 1000

捕捉

陽子の

積分フルエン

ス[

m2 ]

エネルギー[MeV]

各軌道における捕捉陽子積分フルエンス(3年間)

MEO

GTO

GEO

EOS LEO

放射線による部品材料の影響

総照射線量 (TIDTotal Ionising Dose )

電離損傷

バイポーラTrの電流増幅率の低下リーク電流の増大

γ線で評価

トータルドーズ効果

変位損傷 (DDDisplacement Damage )または 非イオン化エネルギー損失 (NIELNon-Ionising Energy

Loss )

変位損傷(格子欠陥の生成)

電荷輸送効率の低下 (CCD)太陽電池の効率低下等

電子陽子により評価

シングルイベント効果

1個の荷電粒子の入射により発生する誤動作

ソフト(Latch-Up Burnout) エラー又は ソフト (Upset) エラー

陽子及び重イオンで評価

トータルドーズ効果

+ - + + - + - + - - + + + + -

ゲート酸化膜

電離

格子欠陥

正電荷捕獲

+ 正孔 - 電子

電極

(Silicon oxidenitride)

荷電粒子

反跳原子

ゲート絶縁膜中に電荷が蓄積することによるMOSトランジスタのしきい電圧(MOSトランジスタがオフからオンに変化するゲート電圧)の変化をもたらすただ

し最近の最先端チップはゲート絶縁膜がきわめて薄くなっているこのためゲート絶縁膜よりもフィールド絶縁膜(隣接するトランジスタを電気的に分離する絶縁膜)での電荷蓄積が相対的には大きな問題になってきている」

シングルイベント効果

メモリセルはNチャンネルとPチャンネルMOSFETより構成されメモリ情報は回路ノード12の電位の

高低により記録している空乏層の広がっているPN接合12の領域に

重イオンが入射した場合電荷の発生と空乏層内への少数キャリアの収集が起こるこの収集電荷量が回路の耐量を越えた場合(c)に示すように反転が起こる(ソフトエラー)一方pウエル-N基板接

合の空乏層内に電荷収集量が起こりえる耐性を越えると寄生的に存在するPNPNサイリスタ構造がオ

ンし電源と基板間に大電流が流れる状態が生じる(ラッチアップ)

シングルイベントメカニズム -陽子と重イオンの違い-

エラー発生率の計算

線エネルギー付与(LET) (linear energy transfer)

電離性放射線が物質中を通過する際飛程の単位長さ当りに平均して失うエネルギーをいう各種の放射線のうちX線γ線はLETが小さいので低LETといいα線中性子線その他重イオン核分裂破片のLETは大きいので高LETという MeVμmMeV(gcm2)やMeV(mgcm2)で表される

南大西洋異常(SAA) bull 地球の自転軸と磁気軸のずれ

darr bull 放射線帯が自転軸に対して非

対称

bull 南大西洋上空では放射線帯内帯が低高度に落ちてきているこの領域を南大西洋異常域(SAA South Atlantic Anomaly)と呼ぶ

bull 地球観測衛星ではSAAで放射線帯陽子の影響を受ける

Single Event Lachup

シングルイベントと陽子分布

MOS-1衛星(高度909km軌道傾斜角99度)で発生したシングルイベントと 陽子30MeV以上の等高線マップを重ね合わせた結果

NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)

bull 入射粒子が電離によらず与える損傷非イオン化損失

低軌道での電子フラックスと 不具合の発生場所

南大西洋異常(SAA)と極の角

高度800kmでの電子フラックス図極の角(polar horn)とSAAを示す

太陽粒子線 bull 太陽高エネルギー粒子線(SPE Solar Proton Events)は太陽フレア とコロナガス噴出 (CMECoronal Mass Ejections )により引き起こされる bull フレアのスペクトルは可変であるためあるエネルギー域における最悪状態イベントは必ずしも別のエネルギー域における最悪条件ではない 1972年8月のイベント 10~70MeVの粒子が最も多かった 1989年10のイベント 1972年8月のイベントに比べ低エネルギー領域 高エネルギー領域が明らかに激しかった

フルエンス 105 to 1011 cm-2

変動期間 1日から数日

ldquoBastiliardquo Solar Event 14 July 2000

Carrington Flare

84

(LW Townseed) Carrington Flare(1859年) Carrington Flare による30MeV以上トータルFluenceを118times109cm-2で規格化 ~1989年フレアの約13倍(シングルイベントの評価で使用) ~1991年フレアの約9倍 2012年7月23日にキャリントンイベントとほぼ同等の爆発現象が太陽あるいは太陽の周りで起きていたということがNASAの太陽観測衛星「STEREO」の解析から発表された

放射線対策 bull 放射線シールドを付加し放射線を減衰させる

bull 放射線耐性の強い部品(SOI(Silicon On Insulator)技術による耐放射線部品)材料に変更する

bull 放射線による損傷を吸収するために回路または構造上のマージンを持たせる bull ソフト的なエラーに対しては エラー検出訂正機能や多数決

機能等でソフト的エラーが起きてもシステムが機能するようにしたフォールトトレラント機能を付けて対処する ICのハード的故障に対しては ラッチアップ耐性の強い部品を選定するしかないが 電流制限回路を付ける対策も採られる パワーMOSFETに対しては部品選定 電源電圧を規格値の半分以下に落とす等の対策を採る

SOI技術

表面帯電への対策例

表面の物体間を導線で結線する

太陽電池のカバーガラスを導電性被膜付き(酸化インジウムITO)にする

熱制御材表面にITOを被覆する

熱制御材は高誘電率のテフロンの使用を避け 高伝導度耐環境性に優れたブラックカプトンを使用

イオンエンジンの中和器で能動帯電制御

内部帯電への対策例

アルミで3mm厚さに相当するシールドで囲む(Faraday Cage)

テフロンやカプトンなどの誘電体材料の内部での使用量を最小限に押さえる

回路基板やコンフォーマルコーティングは誘電体なので電流リークパス(1012Ωcmまたは1012Ωcm2

程度)を必ずつける

特にスポット的な放射線シールドの金属材には必ず電流リークパスをつける

帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備

衛星モデル作成

材料物性テーブル設定

宇宙環境パラメータ設定

Converter

転送ディレクトリ 解析データファイル

転送

解析ディレクトリ生成 解析結果 進行状況チェック ファイル操作

MUSCAT 解析エンジン

解析結果 表示

パラメトリックラン

オプション 解析

大型パネル実験(35mtimes11m) クーポンパネル実験(26cmtimes16cm)

環境模擬試験 環境模擬試験

MUSCATに使用する物性値設計標準制定のための知見などを得ることを目的に軌道上の宇宙環境を模擬した地上試験を行っている これらの試験では放電の発生頻度や電圧閾値放電発生による太陽電池パネルや搭載機器への影響を検証している

放射線計測装置の原理

bull その粒子が物質を通過する際のエネルギー損出率が粒子の電荷(原子番号)Zの二乗に比例すること(Bethe-Blochの式)を利用する

S2

E

ΔE Ersquo

S1 S3

  • 宇宙機の設計のための宇宙環境
  • 話の流れ
  • 話の流れ
  • TEDA(技術データ取得装置)(国産部品の宇宙環境での実証の必要性)
  • ETS-VTEDA(技術データ取得装置)誕生前の部品の宇宙実証の背景
  • スライド番号 6
  • スライド番号 7
  • スライド番号 8
  • スライド番号 9
  • 図6太陽黒点数と静止軌道電子 (>04MeV ) Flux の変動 (ETS-V搭載DOMによる観測)
  • スライド番号 11
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの開発(理研東大と共同で宇宙環境計測の充実)
  • ETS-VI(きく6号)打ち上がったがGEOに行かずGTOに留まる
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの成果
  • スライド番号 15
  • スライド番号 16
  • スライド番号 17
  • ADEOS搭載TEDA(世界2番目の異常宇宙線ACR)
  • BBND (ボナー球中性子検出器)
  • スライド番号 20
  • ISS搭載BBNDの成果(約8か月)
  • スライド番号 22
  • MDS-1搭載放射線吸収線量モニタ(SDOM)
  • 放射線帯変動モデルの開発MDS-1 065 MeV 電子フラックス
  • 変動パラメータの選択 (1 cycle solar activity)
  • 変動パラメータ- Tavg の定義-
  • 065MeV 電子 L値-Tavg マップ
  • 13MeV 陽子 L値-Tavg マップ
  • 電子観測とMDS-1モデルの比較
  • 放射線帯フラックスピークの変動
  • 陽子観測とモデルの比較
  • 電子(035~078MeV) 1日の変動予測GOSAT軌道
  • 電子(035~078MeV) 変動の信頼度水準(1日)GOSAT軌道
  • MDS-1 model と AE-8 modelとの比較1日
  • 話の流れ
  • 2003年10月 みどり号の全損事故(複合現象)
  • 衛星帯電の基本式
  • 内部帯電
  • パドルでの帯電放電メカニズム
  • スライド番号 40
  • スライド番号 41
  • スライド番号 42
  • データ中継技術衛星DRTS (こだま)の不具合
  • DRTS ESA スパイクノイズと電子フルエンスの比較(赤の丸が異常検知)
  • 不具合が宇宙環境によるものであるか判断する際のポイント
  • 話の流れ
  • 宇宙天気のリスク-宇宙環境によるシステムへの影響 -
  • NASAの報告-GNampCに注目-
  • NASAの報告(続き)
  • 宇宙環境を原因とする不具合の割合-JAXAの場合-
  • 不具合発生部位の割合 
  • Satellite News Digest -静止軌道不具合-
  • 太陽活動と静止軌道衛星不具合例
  • スライド番号 54
  • スライド番号 55
  • スライド番号 56
  • 衛星開発段階における対策
  • 運用における対応
  • 話の流れ
  • スライド番号 60
  • スライド番号 61
  • まとめ(その1)
  • まとめ(その2)
  • 宇宙環境グループは宇宙ステーションと衛星プロジェクトの安全な遂行に貢献しています
  • 補足資料
  • 不具合原因の推移
  • 何故不具合は減らないか
  • 放射線による影響の概要
  • 耐放射線設計手順
  • 各軌道における放射線環境
  • 放射線による部品材料の影響
  • トータルドーズ効果
  • シングルイベント効果
  • シングルイベントメカニズム-陽子と重イオンの違い-
  • エラー発生率の計算
  • 線エネルギー付与(LET)(linear energy transfer)
  • 南大西洋異常(SAA)
  • Single Event Lachup
  • シングルイベントと陽子分布
  • NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)
  • 低軌道での電子フラックスと不具合の発生場所
  • 南大西洋異常(SAA)と極の角
  • スライド番号 83
  • Carrington Flare
  • 放射線対策
  • スライド番号 86
  • スライド番号 87
  • 帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備
  • スライド番号 89
  • 放射線計測装置の原理
Page 6: 宇宙機の設計のための宇宙環境の方針から国産部品開発(42品種)が実施された。 . 半導体電子部品は耐放射線性を加味して、人工衛星(特に

ETS-VTEDAの成果SEL

(世界初データであった) 64-kbit SRAM

( T Goka et al IEEE 1991 1998)

SEL Singl Event Latchup(ハードエラー)

SEL First Measurement (Japan) SEL First Anomaly (ESA)

ETS-VTEDAの成果帯電電位の 材料別10年間の計測結果 Surface Potential Monitor (POM)

Matsumoto Het al Proc Charging Conference 23-27 April 2001 ESTEC

ETS-VTEDA 熱制御材劣化モニタ(TDM)の

10年間の計測データ(太陽光吸収率α 赤外輻射率ε )

ε

α

図6太陽黒点数と静止軌道電子 (>04MeV ) Flux の変動 (ETS-V搭載DOMによる観測)

bull 1993-1994年にかけ各国の静止衛星で不具合や故障が増加したJAXAではETS-V搭載放射線吸収線量モニタ(DOM)による長期的観測により太陽活動下降期の高エネルギー電子の増加を確認しておりこれにより静止衛星に影響が出たことが明らかとなったなお同様の不具合や故障増加が11年前の太陽活動下降期である1982-1983年にも発生していたことが分かった

bull 現在はこれらの電子の環境でも太陽電池パドル等に不具合が起きらないことを地上試験で確認してきている

静止軌道における 高エネルギー粒子の長期的観測結果と宇宙機への影響

0

20

40

60

80

100

120

140

160

180

1000

3000

5000

7000

9000

11000

13000

15000

17000

1980

1981

1982

1983

1984

1985

1986

1987

1988

1989

1990

1991

1992

1993

1994

1995

1996

1997

太陽黒点数

電子

Flu

x (個

数(cm2strsec))

電子Flux

太陽黒点数

Miyoshi et al[2004]

太陽活動と放射線帯分布の変動

ETS-Ⅵ搭載TEDAの開発 (理研東大と共同で宇宙環境計測の充実)

目的

bull 新たに開発された国産部品材料等の宇宙環境下での劣化特性を同一条件で計測すると共に劣化の原因となる宇宙環境を同時に計測し比較解析する

bull 新規開発の部品材料の宇宙実証データフライト実績を得る

bull 地上試験として行ってきた宇宙環境を模擬した試験方法の検証を行う

bull 帯電現象及びガスジェット等による人工衛星の汚染の経時変化の取得

bull 衛星設計に用いている宇宙環境モデル(放射線磁場等)の検証 bull 宇宙環境に起因する人工衛星の故障や不具合現象の解明

ETS-VI(きく6号)打ち上がったが GEOに行かずGTOに留まる

bull 1994年(平成6年)8月28日16時50分打ち上げ

bull H-IIロケット試験機2号で種子島から打ち上げ

bull アポジエンジン不具合でGTO軌道に留まる

bull 急遽楕円軌道用に新たな制御プログラムを設計製作し地上検証を行った上で衛星にアップロードしこの問題を解決した

bull 最終軌道ペリジ約8600kmアポジ約38600km軌道傾斜角約13度(3日5周期回帰)で2年間運用

bull TEDAのデータ公開で宇宙環境データが役に立つ事を宣伝(SEESを立ち上げデータを公開した)

ETS-Ⅵ搭載TEDAの成果

トータルドーズ劣化や太陽電池劣化は静止衛星で10年かかった同じ評価を1年間でできた

シングルイベントの発生頻度の高度分布が取得できた (高度8千km~3万8千kmの範囲)

バンアレン帯の放射線帯の電子陽子重イオンの高度分布データを取得し放射線帯モデル日本モデルを作成(あけぼの衛星データ含む)

この成果はGTO軌道を最初から狙うMDS-1(つ

ばさ)プロジェクトへとつながった 米国は1990年7月25日CRRESS(Combined Release and Radiation Effects Satellite )衛星を打ち上げ

研究開発の流れ

計測装置開発

データ収集 計画

環境計測

研究試作

衛星への影響解析で必要なデータ及び性能を機器開発に反映する

高エネルギー軽粒子 重イオン 中性子 帯電 原子状酸素 デブリ 新たな現象(問題点)

軌道上不具合評価 宇宙環境モデル

宇宙環境データベース 警報

衛星設計基準

有人活動への反映

宇宙天気予報 システム

国内外機関とのデータ交換

打上げ衛星運用

放射線環境評価(ISOを含む)の見直し 宇宙環境モデルの最適化 効率の良い宇宙機の開発 (シールド厚最適設計) 低コスト化(部品仕様の見直し) 短期間開発(民生品の利用)

フィードバック

成果目標

プロジェクト支援

宇宙環境計測装置(放射線磁場)小型化の流れ

9kg 10cm 10cm 10kg 14W 18W

1cm 52g 480g 1cm 12W以下 15W

磁力計(480g->52g)

みどり2搭載用 つばさかけはしきぼう搭載用 Jason-2GOSAT搭載

ETS-VIII搭載用 QZS搭載用

電子(05~50MeV) 陽子(1~160MeV) α粒子(4~200MeV)

電子(04~5MeV) 陽子(7~48MeV) α粒子(30~140MeV)

plusmn655364096102456nT plusmn655364096nT

16bit 20bit

電子(003~20MeV) 陽子(04~250MeV) α粒子(08~400MeV)

LPT-S 216x182x175 mm 62 kg LPT-E 240x165x 93 mm 28 kg

積算吸収線量計

軽粒子モニタ(10kgー>9kgー>7kg最小2kg)

17times10times5mm749g

ISSKibou(09-)

GEO

LEO

ETS-V (87-97)

ADEOS-II(02-03)

ETS-VIII(06-) DRTS(02- )

STS-89(98)

MDS-1(02-03) ETS-VI(94-96)

ETS-VII (97-99)

宇宙環境計測の流れ ISSUS-Lab(01)

ひまわり1-4(78-99)

ERG(16予定)

ALOS(06-11)

GOSAT(09-)

Jason-2((08-)

Jason-3(15予定)

GTO

QZS(09-)

ADEOS (96-97)

ADEOS搭載TEDA (世界2番目の異常宇宙線ACR)

bull シングルイベント評価のための重イオン観測であったが世界2番目の異常宇宙線を観測することができた

bull 低軌道の衛星は地球磁場が邪魔となって宇宙線(重イオン)を観測するに向いていないと考えられていたが異常宇宙線を観測するのにすぐれていることが明らかとなった

T Kohno et al Radiation Measuremets 30 5 PP639-644

BBND (ボナー球中性子検出器)

bull 1994年(平成6)年7月に中性子計測のために ボナー球ホスウイッチ方式及びシンチレーションファイバーの3種類のセンサの研究をスタート

bull シャトル打ち上げ計画の管理者から搭載装置の検討依頼がありBBNDのSTS-89への搭載が決定した(1997年1月頃)

bull 振動試験で装置内のボルトが外れるという不具合もあったが約1年という非常に短期間で搭載品を開発することができた

bull コスト低減のために構造解析を自前で実施したりデータ処理ソフトウェアも内作した

熱中性子に対して高い感度を持つ6個の3Heガス入り比例計数管で構成して

いる中性子は電荷をもたないのでそれ自身には電離作用がないが軽い原子の3He気体では反跳原子を生じたり中性子の核反応(3He+nrarrp+3H+765KeV)によって荷電粒子を生じるので間接的に電離を起こす下図のように気体中に二つの電極を置き高電圧(1000V)をかけておくと中性子の入

射によって気体中に生じた陽子イオンと電子のイオン対がそれぞれの電極に向かって流動し外部回路に電離電流が流れるこの電気パルスにより中性子を計測する

ボナー球型中性子モニタの概要

Polyethylene Sphere3He proportional Counter

51 φ 51 φ81 φ110 φ150 φ230 φ

Sensor6 Sensor5 Sensor4 Sensor3 Sensor2 Sensor1

Covered by Gadolinium

[mm]3Heガス入り比例計数管の原理

6個のボナー球の断面図

3Heガス入り比例計数管とポリエチレン減速材

H Matsumotoet al Radiation Measurements 33 (2001) 321-333

ISS搭載BBNDの成果(約8か月)

実験期間中の平均的な等価線量等量率 (2001年3月23日~2001年11月14日)

太陽フレア時(2001年11月4日)

等価量等量率の平均は94μSv日で年率に換算すると34mSv年となるこれは地上において自然界から受ける等価線量当量率の約14倍に相当する 実験期間中に多数の太陽フレアが発生した2001年11月4日の太陽フレアにより019mSVの増加を観

測したこれは自然界から受ける等価線量当量率の約1か月分に相当するしかしBBNDの約8か月

の実験期間中の全等価線量当量に対するこの太陽フレアの影響の寄与分は1以下であった また搭載位置による環境の違いも確認された

H Koshiishiet al Radiation Measurements 42(2007) 1510-1520

1)船内の計測結果より低エネルギー側で2~3桁高エネルギー側で1~2桁低い 2)船内より船壁が薄く中性子が少ない環境より自然のアルベド中性子環境に近い

中性子被曝線量の ISS船外(SEDA-AP)と船内(STS-89)の比較

MDS-1搭載放射線吸収線量モニタ(SDOM) SiTungstenAlBGO

② ⑦

⑧⑧

① Collimator ② Window③ SSDs ④ Plastic Scintillator⑤ Anticoincidence Scintillator(ACS)⑥ Beam Stop⑦ Scintillator PMT⑧ ACS PMT

運用期間 2002年2月 ndash 2003年9月 軌道 -軌道傾斜角 285deg 1 lt BB0 le 84 -高度 500 km times 36000km 11 le L le 10 -軌道周期 約10時間35分 -スピンレート 5rpm

計測エネルギー範囲 Electron 04- 9MeV (5bins) Proton 09-210MeV (12bins) He 6-140MeV (4bins) Heavy Ion 15- 60MeVnuc (1bin) G-Factor 001cm2sr

放射線帯変動モデルの開発 MDS-1 065 MeV 電子フラックス

変動パラメータの選択 (1 cycle solar activity)

太陽風速度(SW)

太陽黒点数(R)

Ap指数

F107

変動パラメータ- Tavg の定義-

1日後の予測

パラメータスケールの時間平均 ApTavg SWTavg F107 Tavg

T days

放射線帯の構造は変動パラメータ値の大きさと継続時間に相関がある

065MeV 電子 L値-Tavg マップ

APTavg

SWTavg

13MeV 陽子 L値-Tavg マップ

APTavg

F107Tavg

電子観測とMDS-1モデルの比較

80 175

放射線帯フラックスピークの変動

80orbits (平穏時) 175orbits (擾乱時)

陽子観測とモデルの比較

電子(035~078MeV) 1日の変動予測GOSAT軌道

0

50

100

150

200

250

1E+09

1E+10

1E+11

1E+12

1984 1986 1988 1990 1992 1994 1996 1998 2000 2002 2004 2006 2008

Flue

nce[

ecm

2M

eVd

ay]

Launch day

FluenceSSN

Worst case Nov 12003

電子(035~078MeV) 変動の信頼度水準(1日)GOSAT軌道

00

01

02

03

04

05

06

07

08

09

10

88 90 92 94 96 98 100 102 104 106 108 110 112 114

Con

fiden

ce le

vel

Fluence[LOG10 ecm2MeVday]

AE-8 MAX

AE-8 MIN

MDS-1 model と AE-8 model との比較1日

0

20

40

60

80

100

120

140

160

180

1E+09

1E+10

1E+11

1E+12

1995 1997 1999 2001 2003 2005 2007 2009

Flue

nce[

ecm

2M

eVd

ay]

Launch day

Fluence(JAXA)Fluence(AE8)SSN

話の流れ

技術データ取得装置(TEDA)の概要と成果 bull 主な成果 bull 不具合解析例

宇宙天気のリスクと対策 bull 宇宙環境による衛星システムへの影響 bull 宇宙環境を原因とする不具合の割合推移部位 bull 静止軌道不具合 bull 対策

今後必要な観測項目

まとめ

2003年10月 みどり号の全損事故 (複合現象)

極域のオーロラ帯を通過中に電力ハー

ネスを巻いているMLIが高エネルギー電

子により帯電

MLIが接地されていなかったため内側

のハーネスとの間に1kV以上の電位差が

発生

MLI内のガス密度が発電開始に伴う温度

上昇により上昇

ハーネス被覆の傷により露出したハーネ

ス芯線とMLI内面の間で放電発生

単発の放電が隣接するハーネスに飛び火

してハーネス間の短絡

アーク放電が次々と伝搬していきハー

ネス全体が焼損

故障推定箇所 (大電力ハーネス部)

bull詳細報告書は文部科学省 宇宙開発委員会のHP参照

httpwwwmextgojpb_menushingiuchuureports04080901htm

bull 人工衛星の電位 bull 人工衛星は電気的に宇宙に浮いている bull 宇宙機構造体が接地点 bull 宇宙機への流入電流と流出電流のバランスによって宇宙機電位が決まる bull 各電流成分は宇宙機電位Vの関数として表され定常状態では式を下式を満たす

衛星帯電の基本式

( ) dtIIIIIIIC

V

dtdVCVIVIVIVIVIVIVI

BPHBSESISEIE

BPHBSESISEIE

int +++++minus=

==+++++minus

1

0)]()()()()()([)(

入射電子電流 ( E I )

後方散乱電子電流 ( BSE I )

入射正イオン電流 ( I I )

入射電子による二次電子電流 ( SE I )

太陽光

入射正イオンによる 二次電子放出電流 ( SI I )

光電子放出電流( PH I )

電荷ビーム放出電流(IB)

bull内部帯電は衛星の外壁を貫通した放射線帯外帯の01MeV以上の電子が内部に侵入

bull基板間や同軸ケーブルの線間等の容量(コンデンサ)や誘電体に帯電 bull接地されてない導体片に帯電

bullその耐圧電圧を超えると その耐圧の弱い箇所 (材質の欠陥や針状突起など の箇所)で放電して故障に至る

内部帯電

(あるエネルギ-以上の粒子が入射光電子なし)

NASA-HDBK-4002より

パドルでの帯電放電メカニズム

宇宙環境の影響により 衛星がマイナス電位に帯電

高エネルギー電子等により カバーガラスはプラスに帯電 衛星とカバーガラスに電位差が生じる

電位差が大きくなると トリプルジャンクション近傍 の電界強度が増大していく

トリプルジャンクションで放電が発生する カバーガラスの帯電が緩和される

+ + + + + + + + + + + + + +

+ + + +

カバーガラス

太陽電池セル

基板(衛星構体)

トリプルジャンクション rArr 導体絶縁体宇宙環境の接点

持続放電

Substrate

Satellite Load

insulation sheet

Solar array cell

Cover glass

Arc current

Electrode

持続放電は衛星の電力消失につながる 持続放電のモードは以下の2通りがある

Substrate

Satellite Load

insulation sheet

Solar array cell

Cover glass

Arc current

Electrode

Solar array cell

Cover glass

セル-基板間短絡 セル間短絡

放電によって太陽電池セルと基板が短絡する 短絡によって負荷に電力が供給されなくなる

放電によって太陽電池セルとセルが短絡する 短絡によって負荷に電力が供給されなくなる

サブストーム(高エネルギー電子)との遭遇

+ + + + + + + +

二次電子光電子による絶縁体の帯電(局所帯電)

電位差発生

逆電位勾配

衛星構体が負に帯電(絶対帯電)

電位

時間

サブストーム

衛星構体 VS

乖離電圧 ∆V

カバーガラスVcg

0 プラズマ電位

軌道別帯電放電現象

トリプルジャンクションで 放電発生

放電発生

静止軌道

+ + + + + + + +

逆電位勾配

軌道帯電放電現象

トリプルジャンクションで 放電発生

極軌道 オーロラ電子(高エネルギー電子)との遭遇

プラズマ流入出による絶縁体の帯電(局所帯電)

電位差発生

衛星構体が負に帯電(絶対帯電)

放電発生

電位

時間

オーロラ電子

衛星構体 乖離電圧 ∆V

カバーガラス

0 プラズマ電位

データ中継技術衛星DRTS (こだま)の不具合

2002年10月 9日 静止軌道に打ち上げ

2003年

3月24日 406JST変化率異常モニタ故障検出(FDIR)

が動作しA系からB系に切り替わった

3月25日 410JSTにB系のみ異常検知

4月 3日 327JSTにB系のみ異常検知

5月28日 124JSTにB系のみ異常検知

6月 6日1537JSTにB系のみ異常検知

ESA

DRTS ESA スパイクノイズと 電子フルエンスの比較(赤の丸が異常検知)

larr閾値

この事実を基に静止軌道における内部帯電警報システムを構築 2004年4月より運用開始

不具合が宇宙環境によるものであるか 判断する際のポイント

不具合の発生した時刻に太陽フレアや磁気嵐等の宇宙天気の大きな変動が起きていれば不具合に関係している可能性が高い但し帯電など放射線の積算的効果の伴う現象については発生から1週間位さかのぼり環境がどのように推移してきたかを考慮する必要がある

磁気嵐が起きると静止軌道に急激な粒子の増加現象が起きこれにより衛星帯電が引き起こされたりする(予測に利用可能)

地方時(真夜中や朝方か)や季節(春秋)を考慮する

低軌道衛星においてはSAA外帯のrdquo角ldquo及び極通過時に不具合

が起きやすいので衛星の位置(緯度経度)が重要

事象を把握する上で単発現象か数回起きている現象か周期

(時間同じ軌道等)的に発生している現象か

話の流れ

技術データ取得装置(TEDA)の概要と成果 bull 主な成果 bull 不具合解析例

宇宙天気のリスクと対策 bull 宇宙環境による衛星システムへの影響 bull 宇宙環境を原因とする不具合の割合推移部位 bull 静止軌道不具合 bull 対策

今後必要な観測項目

まとめ

宇宙天気のリスク -宇宙環境によるシステムへの影響 -

プラズマ (IRI)

帯電 (MUSCAT)

衝突 (AUTODY)

抗力 表面劣化

紫外線X線 中性粒子 (MSIS)

放射線粒子 (AE8AP8JPLSHIELDO

SE-2)

メテオロイドデブリ (MASTER2005

ORDEM)

電離損傷 変位損傷

bull電子回路の劣化 bull光部品の劣化

bull太陽電池セルの劣化

SEU (CREME96)

bullデータエラー bull画像ノイズ

bullシステム停止 bull回路損傷

bull熱的電気的光学的特性の劣化

bull構造の劣化 bullコンタミ

電磁パルス bull電源出力低下

bull損傷

bullトルク bull軌道落下

bull構造 損傷 bull減圧

bull電磁パルス

NASAの報告 -GNampCに注目-

1974年から1994年に起きたNASAと空軍の衛星故障の内20~25が宇宙環境に起因していたと報告

1990年から2001年に米国欧州カナダ日本の企業や政府機関が開発した衛星を調べた過去の宇宙ミション損失の大部分はロケットの失敗であったが1998年衛星損失の大部分は軌道上の衛星障害となっている多くの最近の異常は太陽電池アレイ及びバッテリの危険が増加している静止軌道通信衛星の設計寿命はこのサブシステムの故障の危険が増加している

喪失等の大きな誘導制御(GNampC)の不具合に注目 GNampC不具合の内宇宙環境による 不具合は約3と報告されている

軌道上衛星のタイプ別数

NASAの報告(続き)

衛星設計寿命における不具合発生時期 事故率と軌道

軌道別の衛星数 サブシステム不具合

宇宙環境を原因とする不具合の割合 -JAXAの場合-

2002年~2008年に運用された軌道上不具合情報が比較的充実している11衛星(利用衛星7機科学衛星4機)の結果宇宙環境によるも

のは約15過去のデータよりも割合が少ない

合計83件 合計35件

(1)利用衛星 (2)科学衛星

設計検討 不足 48

製造不良 8

軌道上環境 17

偶発故障 6

調査中 13

原因不明 8

設計検討

不足 61

製造不良 4

軌道上環境 11

偶発故障 6

調査中 9

原因不明 9

不具合発生部位の割合

不具合発生部位の割合

Brent Robertson Eric Stoneking ( 1990-2001NASA Goddard Space Flight Center )

Satellite News Digest -静止軌道不具合-

Satellite News Digest (SND) (http wwwsqt-indexcouk) で1997年~2009年の期間に静止軌道で95件の不具合が報告されている その内運用ミスや設計ミスなどを除くと32件(約33)は宇宙環境によるものであった 過去のデータより割合が多い

Choiら1)はこれら不具合の地方時と季節依存性を確認した その結果2100LT~900LTで約72の不具合が発生し900LT~2100LTは9件(約28)であった またこの9件は全て姿勢制御の不具合だった 静止軌道衛星不具合のほとんどは真夜中と朝方で起きており磁気嵐に伴い磁気圏尾部から注入した粒子による表面帯電が不具合の主原因と結論づけている

1) Ho-sung Choi et al Analysis of GEO spacecraft anomalies Space weather relationships Space Weather Vol 9 S06001

太陽活動と静止軌道衛星不具合例

ANIK-E1E2

ANIK-E1

複数の衛星で故障

Galaxy-15

帯電放電不具合 -ANIK-E1amp2Telstar401-

Jan 1994 ANIK-E1 amp E2事故時の環境 - Joe H Allen

1週間

太陽活動下降時期の電子増加

2MeV以上電子

copyNOAA Web

フラックスが3桁急増

Jan 1997 Telstar401事故時の環境

静止軌道の急激な電子増加

太陽極大期太陽フレアによる衛星障害 - 2003年10月~11月-

10486981048698 永久故障 4 10486981048698 安全モード又は運用を一時停止 31 10486981048698 データ内容の「誤り」の増加搭載コンピュータの誤動作 5

httpwwwsat-ndcomfailures等のデータによる 合計 40件

-Barbieri and Mahmot

米国極軌道気象衛星NOAA-17の改良型マイクロ波観測装置AMSU-A1 (Advanced Microwave Sounding Unit)のスキャナーが永久故障 米国気象衛星GOES -8号のX線センサがOFFになり復帰しなくなった

e-birdに深刻な不具合が発生 不具合は20本のトランスポンダ全てに影響

火星周回中の探査機「マーズオデッセイ (Mars Odyssey)」の観測機器放射線観測装置「Martian Radiation Environment Experiment (MARIE)」が太陽活動の影響により10月28日から適切に作動しなくなった データ中継技術衛星(DRTS)「こだま」 太陽捕捉モードに移行

太陽陽子

帯電放電不具合-Galaxy15(局所的的現象)- 2

5 M

eV

65

MeV

11

5 M

eV

GOES 14 ----- GOES 15 ----- GOES 11 -----

Satellite Locations

Galaxy 15 anomaly

2010年4月5日9時48分UTCは磁気嵐及びCMEが発生するなど宇宙環境は非常に荒れていたGalaxy15衛星は真夜中側に位置し宇宙環境の影響を受けやすい

位置にいたことから宇宙環境による不具合である可能性が高いということで原因追及がなされた高エネルギー粒子が引き起こす代表的な衛星不具合現象として3つ(表面帯電内部帯電SEUシングルイベントバーンアウトSEL)の可能性を検討した

チームの報告書によると磁気圏尾部からの熱電子の流入による放電が原因であったと結論付けられたGalaxy15衛星の近くにはGOES-11衛星が位置していたがGOES-11衛星には不具合を発生しておらず本現象は局所的な現象と推測される

衛星開発段階における対策 JAXAの不具合解析の結論

bull 2002年~2008年に運用された11機の衛星不具合を解析 宇宙環境による不具合は偶発故障のみ(全体の約15)確率的には想定範囲内ではあるがその影響を最小限とするためディレーティング運用モード寿命についての研究に取り組む

bull 設計基準試験の充実検証確認の強化技術成熟度(TRL)評価の徹底各々の境界制約条件の明示化等により検証不足抜けの防止有効なピアレビューに結びつける

冗長系(同じハードウェア機能の冗長)柔軟性の設計(ソフトハードの対応)

bull 従来の故障が起きないようにする設計に対してGOSAT(いぶき)では重要部

品を二重化することにより故障する可能性は上がるが故障しても衛星バスの運用や観測が続行できる可能性がより高くなるように設計した

運用における対応

bull 宇宙天気監視ーロケット打ち上げ及び宇宙飛行士支援 数日前に今後の宇宙環境の推移を把握(MXレベルのフレアの発生確率)

bull X線の増加で太陽フレア発生を検知したら高エネルギー粒子の発生をいつまで 気を付ければ良いか判断(発生位置で大凡を推定するが課題は多い) SPEが発生した場合(特に10MeV以上100MeV 以上の陽

子)最大値フラックス値の推定 ピーク値を予測(特に閾値に近くなった時に重要)

bull 衛星運用 bull 太陽フレア磁気嵐警報(X線陽子及びkpが閾値を超えた

時に警報を発信)2003年10月より運用開始 bull 内部帯電警報(2日後の静止軌道上の高エネルギー電子(>1

Me) の増加を予測し 閾値を超えた時に警報を発信) 2004年4月より運用開始

話の流れ

技術データ取得装置(TEDA)の概要と成果 bull 主な成果 bull 不具合解析例

宇宙天気のリスクと対策 bull 宇宙環境による衛星システムへの影響 bull 宇宙環境を原因とする不具合の割合推移部位 bull 静止軌道不具合 bull 対策

今後必要な観測項目

まとめ

計測対象計測項目 計測対象 粒径100μm以上のデブリメテオロイド 計測項目 デブリ粒径衝突頻度

基本原理

厚さ約125μmの絶縁性のポリイミドフィルム表面に 100μm周期で直線状の細長い導線(太さ50μm)パターンを形成導線の破断を電気的に検知することによりデブリの衝突(貫通)を検知する破断した導線の数導線の幅ピッチからデブリサイズを計測する

微小デブリ計測技術の概要

衝突孔の例(衝突試験ISAS) - 衝突粒子 SUS 309 microm - 衝突速度 52 kms

HTV5号機によるセンサ機能のフライト実証

35cm

46cm

FY2013機能実証モデル

検出線幅 50 μm 検出線間隔 100 μm フィルム厚 lt 20 μm 有感領域 30times33cm 検出線総数 3300本

サイズ 50times39times4 cm (筐体を含む)

重量 約15kg(筐体を含む)

消費電力 2W(最大4W)(他センサ含む)

テレメトリ 02 bps

宇宙環境観測装置KASPERの一部としてデブリセンサSDMを搭載 FY2013に製作開始今年8月に打ち上げ予定)

まとめ(その1)

衛星不具合の主な原因は帯電放電シングルイベント放射線損傷である今後デブリ環境が重要になると予測される

静止軌道では商用衛星が多く運用されており宇宙環境の変動把握は重要この領域で運用する衛星が気を付けなければいけない環境として

1太陽フレアに伴う高エネルギー粒子 2太陽活動下降期による静止軌道電子の増加 3磁気嵐に伴う磁気圏尾部から注入する粒子 などがあげられる

まとめ(その2)

不具合軽減の取り組み bull 開発時は宇宙環境条件(トータルフラックス及び最悪条

件)を明確にし設計(冗長系柔軟性の設計ディレーティング及び運用モード寿命について研究)試験の充実検証の充実を図る

bull 運用段階に入ったならば宇宙環境を監視し警報等で故障を防ぐ

予測課題 bull 太陽フレアに伴う高エネルギー粒子発生後フラックス

ピーク値の推定

bull 衛星により不具合の起きる閾値は異なるが閾値をこえる急激な電子フラックスの増加と継続時間の予測

bull 局所的な磁気嵐に伴う磁気圏尾部から注入する粒子

宇宙環境グループは宇宙ステーションと衛星プロジェクトの安全な遂行に貢献しています

ご静聴ありがとうございました

補足資料

不具合原因の推移 bull 宇宙天気を大きく左右する要因の1つとして約11年の太陽活動変化が挙げられる

bull 太陽活動下降時期(太陽変動CME)と極大期(フレアCME)に衛星で不具合が増加するそれにより不具合原因の割合が変わる

-Koons et al The Impact of the Space Environment on Space Systems Aerospace Corp report no TR-99(1670)-1 20 July 1999 -2009 preliminary study (unpublished)

何故不具合は減らないか

bull 部品 放射線に対する感受性が高くなっている bull 微細化が進み同時にフォールトするノードが増え同時にエ

ラーとなる論理ノードやメモリセルが増加する微細化によってメモリセルは小さくなるので記憶容量当たりでみるとエラーの発生率は下がるしかし半導体チップの記憶容量やゲート数が増えるので半導体チップ当たりのエラー発生率は微細化とともに上昇するまた蓄積電荷が小さくなり感受性が高くなってきている

bull システム 大型化大電力化運用長期化 bull 1990年代末以降静止衛星の電力が10kWレベルになったしか

し設計検証技術データ蓄積が遅れている改善されつつあると推測される

放射線による影響の概要

粒子 エネルギー又はLET

代表的な影響

陽子 100keV-1MeV 1-10MeV 10-100MeV gt50MeV

表面損傷 表面材料と太陽電池の損傷 放射線損傷(電離非電離損傷の両方)センサーへのノイズ シングルイベント効果

電子 10-100keV gt100keV gt1MeV

表面帯電 深部帯電現象(deep-dielectric charging)センサーへのノイズ太陽電池の損傷 放射線損傷(電離)

重イオン gt1MeV-cm2mg シングルイベント効果

注エネルギー及びLETは個々の部品等により異なりますあくまでも目安です

耐放射線設計手順

軌道条件

ミッション期間

環境条件設定

トータルドーズの予測

1MeV電子換算被曝算出

NIELの換算

LETフルエンス算出

陽子フルエンス算出

対  策  の  検  討

対  策  の  検  討

対  策  の  検  討

放射線による劣化率予測

劣化率予測 特性予測

耐性データ

放射線による劣化率予測

耐性データ

劣化率予測アレイ出力劣化予測

感受性データ

シングルイベント発生率予測 致命度解析

衛星内質量分布

(2)

部品材料の選定

他の要因による劣化率予測

(2)(2) (3)

回路設計等NO

OK

アレイ構造 セル選定

他の要因による劣化率予測 アレイ設計(2)

(2) (2) (2) (3)

衛星内質量分布 部品選定(2)

(2) (2)(3)

NO

OK

NO

OK

(1) 環境モデルマージを含む(2) 部品レベルの検討(3) アセンブリレベルでの検討(4) 設計マージン環境モデル   マージを含め大丈夫か

トータルドーズ

太陽電池アレイの劣化

シングルイベント効果

回路設計

補足放射線太陽宇宙線銀河宇宙線

NEILを用いたダメージファクターの算出

対  策  の  検  討

放射線による劣化率予測

劣化率予測 特性予測

耐性データ

(2)

部品材料の選定

他の要因による劣化率予測

(2)(2) (3)

回路設計等NO

OK

衛星内質量分布 半導体デバイスの変位損傷

(1)

(4)

(4)

(4)

(4)

各軌道における放射線環境

1E+10

1E+11

1E+12

1E+13

1E+14

1E+15

1E+16

1E+17

1E+18

1E+19

1E+20

001 010 100 1000

捕捉

電子

の積

分フ

ルエ

ンス

[m

2 ]

エネルギー[MeV]

各軌道における電子捕捉積分フルエンス(3年間)

LEO

EOS GEO

MEO

GTO

GEO 軌道傾斜角 0deg 高度36000km GTO 軌道傾斜角 18deg 高度 360km~36000km MEO 軌道傾斜角 51deg 高度 10000km EOS 軌道傾斜角 98deg 高度705km LEO 軌道傾斜角 29deg 高度 600km

1E+12

1E+13

1E+14

1E+15

1E+16

1E+17

1E+18

1E+19

1E+20

01 10 100 1000

捕捉

陽子の

積分フルエン

ス[

m2 ]

エネルギー[MeV]

各軌道における捕捉陽子積分フルエンス(3年間)

MEO

GTO

GEO

EOS LEO

放射線による部品材料の影響

総照射線量 (TIDTotal Ionising Dose )

電離損傷

バイポーラTrの電流増幅率の低下リーク電流の増大

γ線で評価

トータルドーズ効果

変位損傷 (DDDisplacement Damage )または 非イオン化エネルギー損失 (NIELNon-Ionising Energy

Loss )

変位損傷(格子欠陥の生成)

電荷輸送効率の低下 (CCD)太陽電池の効率低下等

電子陽子により評価

シングルイベント効果

1個の荷電粒子の入射により発生する誤動作

ソフト(Latch-Up Burnout) エラー又は ソフト (Upset) エラー

陽子及び重イオンで評価

トータルドーズ効果

+ - + + - + - + - - + + + + -

ゲート酸化膜

電離

格子欠陥

正電荷捕獲

+ 正孔 - 電子

電極

(Silicon oxidenitride)

荷電粒子

反跳原子

ゲート絶縁膜中に電荷が蓄積することによるMOSトランジスタのしきい電圧(MOSトランジスタがオフからオンに変化するゲート電圧)の変化をもたらすただ

し最近の最先端チップはゲート絶縁膜がきわめて薄くなっているこのためゲート絶縁膜よりもフィールド絶縁膜(隣接するトランジスタを電気的に分離する絶縁膜)での電荷蓄積が相対的には大きな問題になってきている」

シングルイベント効果

メモリセルはNチャンネルとPチャンネルMOSFETより構成されメモリ情報は回路ノード12の電位の

高低により記録している空乏層の広がっているPN接合12の領域に

重イオンが入射した場合電荷の発生と空乏層内への少数キャリアの収集が起こるこの収集電荷量が回路の耐量を越えた場合(c)に示すように反転が起こる(ソフトエラー)一方pウエル-N基板接

合の空乏層内に電荷収集量が起こりえる耐性を越えると寄生的に存在するPNPNサイリスタ構造がオ

ンし電源と基板間に大電流が流れる状態が生じる(ラッチアップ)

シングルイベントメカニズム -陽子と重イオンの違い-

エラー発生率の計算

線エネルギー付与(LET) (linear energy transfer)

電離性放射線が物質中を通過する際飛程の単位長さ当りに平均して失うエネルギーをいう各種の放射線のうちX線γ線はLETが小さいので低LETといいα線中性子線その他重イオン核分裂破片のLETは大きいので高LETという MeVμmMeV(gcm2)やMeV(mgcm2)で表される

南大西洋異常(SAA) bull 地球の自転軸と磁気軸のずれ

darr bull 放射線帯が自転軸に対して非

対称

bull 南大西洋上空では放射線帯内帯が低高度に落ちてきているこの領域を南大西洋異常域(SAA South Atlantic Anomaly)と呼ぶ

bull 地球観測衛星ではSAAで放射線帯陽子の影響を受ける

Single Event Lachup

シングルイベントと陽子分布

MOS-1衛星(高度909km軌道傾斜角99度)で発生したシングルイベントと 陽子30MeV以上の等高線マップを重ね合わせた結果

NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)

bull 入射粒子が電離によらず与える損傷非イオン化損失

低軌道での電子フラックスと 不具合の発生場所

南大西洋異常(SAA)と極の角

高度800kmでの電子フラックス図極の角(polar horn)とSAAを示す

太陽粒子線 bull 太陽高エネルギー粒子線(SPE Solar Proton Events)は太陽フレア とコロナガス噴出 (CMECoronal Mass Ejections )により引き起こされる bull フレアのスペクトルは可変であるためあるエネルギー域における最悪状態イベントは必ずしも別のエネルギー域における最悪条件ではない 1972年8月のイベント 10~70MeVの粒子が最も多かった 1989年10のイベント 1972年8月のイベントに比べ低エネルギー領域 高エネルギー領域が明らかに激しかった

フルエンス 105 to 1011 cm-2

変動期間 1日から数日

ldquoBastiliardquo Solar Event 14 July 2000

Carrington Flare

84

(LW Townseed) Carrington Flare(1859年) Carrington Flare による30MeV以上トータルFluenceを118times109cm-2で規格化 ~1989年フレアの約13倍(シングルイベントの評価で使用) ~1991年フレアの約9倍 2012年7月23日にキャリントンイベントとほぼ同等の爆発現象が太陽あるいは太陽の周りで起きていたということがNASAの太陽観測衛星「STEREO」の解析から発表された

放射線対策 bull 放射線シールドを付加し放射線を減衰させる

bull 放射線耐性の強い部品(SOI(Silicon On Insulator)技術による耐放射線部品)材料に変更する

bull 放射線による損傷を吸収するために回路または構造上のマージンを持たせる bull ソフト的なエラーに対しては エラー検出訂正機能や多数決

機能等でソフト的エラーが起きてもシステムが機能するようにしたフォールトトレラント機能を付けて対処する ICのハード的故障に対しては ラッチアップ耐性の強い部品を選定するしかないが 電流制限回路を付ける対策も採られる パワーMOSFETに対しては部品選定 電源電圧を規格値の半分以下に落とす等の対策を採る

SOI技術

表面帯電への対策例

表面の物体間を導線で結線する

太陽電池のカバーガラスを導電性被膜付き(酸化インジウムITO)にする

熱制御材表面にITOを被覆する

熱制御材は高誘電率のテフロンの使用を避け 高伝導度耐環境性に優れたブラックカプトンを使用

イオンエンジンの中和器で能動帯電制御

内部帯電への対策例

アルミで3mm厚さに相当するシールドで囲む(Faraday Cage)

テフロンやカプトンなどの誘電体材料の内部での使用量を最小限に押さえる

回路基板やコンフォーマルコーティングは誘電体なので電流リークパス(1012Ωcmまたは1012Ωcm2

程度)を必ずつける

特にスポット的な放射線シールドの金属材には必ず電流リークパスをつける

帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備

衛星モデル作成

材料物性テーブル設定

宇宙環境パラメータ設定

Converter

転送ディレクトリ 解析データファイル

転送

解析ディレクトリ生成 解析結果 進行状況チェック ファイル操作

MUSCAT 解析エンジン

解析結果 表示

パラメトリックラン

オプション 解析

大型パネル実験(35mtimes11m) クーポンパネル実験(26cmtimes16cm)

環境模擬試験 環境模擬試験

MUSCATに使用する物性値設計標準制定のための知見などを得ることを目的に軌道上の宇宙環境を模擬した地上試験を行っている これらの試験では放電の発生頻度や電圧閾値放電発生による太陽電池パネルや搭載機器への影響を検証している

放射線計測装置の原理

bull その粒子が物質を通過する際のエネルギー損出率が粒子の電荷(原子番号)Zの二乗に比例すること(Bethe-Blochの式)を利用する

S2

E

ΔE Ersquo

S1 S3

  • 宇宙機の設計のための宇宙環境
  • 話の流れ
  • 話の流れ
  • TEDA(技術データ取得装置)(国産部品の宇宙環境での実証の必要性)
  • ETS-VTEDA(技術データ取得装置)誕生前の部品の宇宙実証の背景
  • スライド番号 6
  • スライド番号 7
  • スライド番号 8
  • スライド番号 9
  • 図6太陽黒点数と静止軌道電子 (>04MeV ) Flux の変動 (ETS-V搭載DOMによる観測)
  • スライド番号 11
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの開発(理研東大と共同で宇宙環境計測の充実)
  • ETS-VI(きく6号)打ち上がったがGEOに行かずGTOに留まる
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの成果
  • スライド番号 15
  • スライド番号 16
  • スライド番号 17
  • ADEOS搭載TEDA(世界2番目の異常宇宙線ACR)
  • BBND (ボナー球中性子検出器)
  • スライド番号 20
  • ISS搭載BBNDの成果(約8か月)
  • スライド番号 22
  • MDS-1搭載放射線吸収線量モニタ(SDOM)
  • 放射線帯変動モデルの開発MDS-1 065 MeV 電子フラックス
  • 変動パラメータの選択 (1 cycle solar activity)
  • 変動パラメータ- Tavg の定義-
  • 065MeV 電子 L値-Tavg マップ
  • 13MeV 陽子 L値-Tavg マップ
  • 電子観測とMDS-1モデルの比較
  • 放射線帯フラックスピークの変動
  • 陽子観測とモデルの比較
  • 電子(035~078MeV) 1日の変動予測GOSAT軌道
  • 電子(035~078MeV) 変動の信頼度水準(1日)GOSAT軌道
  • MDS-1 model と AE-8 modelとの比較1日
  • 話の流れ
  • 2003年10月 みどり号の全損事故(複合現象)
  • 衛星帯電の基本式
  • 内部帯電
  • パドルでの帯電放電メカニズム
  • スライド番号 40
  • スライド番号 41
  • スライド番号 42
  • データ中継技術衛星DRTS (こだま)の不具合
  • DRTS ESA スパイクノイズと電子フルエンスの比較(赤の丸が異常検知)
  • 不具合が宇宙環境によるものであるか判断する際のポイント
  • 話の流れ
  • 宇宙天気のリスク-宇宙環境によるシステムへの影響 -
  • NASAの報告-GNampCに注目-
  • NASAの報告(続き)
  • 宇宙環境を原因とする不具合の割合-JAXAの場合-
  • 不具合発生部位の割合 
  • Satellite News Digest -静止軌道不具合-
  • 太陽活動と静止軌道衛星不具合例
  • スライド番号 54
  • スライド番号 55
  • スライド番号 56
  • 衛星開発段階における対策
  • 運用における対応
  • 話の流れ
  • スライド番号 60
  • スライド番号 61
  • まとめ(その1)
  • まとめ(その2)
  • 宇宙環境グループは宇宙ステーションと衛星プロジェクトの安全な遂行に貢献しています
  • 補足資料
  • 不具合原因の推移
  • 何故不具合は減らないか
  • 放射線による影響の概要
  • 耐放射線設計手順
  • 各軌道における放射線環境
  • 放射線による部品材料の影響
  • トータルドーズ効果
  • シングルイベント効果
  • シングルイベントメカニズム-陽子と重イオンの違い-
  • エラー発生率の計算
  • 線エネルギー付与(LET)(linear energy transfer)
  • 南大西洋異常(SAA)
  • Single Event Lachup
  • シングルイベントと陽子分布
  • NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)
  • 低軌道での電子フラックスと不具合の発生場所
  • 南大西洋異常(SAA)と極の角
  • スライド番号 83
  • Carrington Flare
  • 放射線対策
  • スライド番号 86
  • スライド番号 87
  • 帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備
  • スライド番号 89
  • 放射線計測装置の原理
Page 7: 宇宙機の設計のための宇宙環境の方針から国産部品開発(42品種)が実施された。 . 半導体電子部品は耐放射線性を加味して、人工衛星(特に

SEL First Measurement (Japan) SEL First Anomaly (ESA)

ETS-VTEDAの成果帯電電位の 材料別10年間の計測結果 Surface Potential Monitor (POM)

Matsumoto Het al Proc Charging Conference 23-27 April 2001 ESTEC

ETS-VTEDA 熱制御材劣化モニタ(TDM)の

10年間の計測データ(太陽光吸収率α 赤外輻射率ε )

ε

α

図6太陽黒点数と静止軌道電子 (>04MeV ) Flux の変動 (ETS-V搭載DOMによる観測)

bull 1993-1994年にかけ各国の静止衛星で不具合や故障が増加したJAXAではETS-V搭載放射線吸収線量モニタ(DOM)による長期的観測により太陽活動下降期の高エネルギー電子の増加を確認しておりこれにより静止衛星に影響が出たことが明らかとなったなお同様の不具合や故障増加が11年前の太陽活動下降期である1982-1983年にも発生していたことが分かった

bull 現在はこれらの電子の環境でも太陽電池パドル等に不具合が起きらないことを地上試験で確認してきている

静止軌道における 高エネルギー粒子の長期的観測結果と宇宙機への影響

0

20

40

60

80

100

120

140

160

180

1000

3000

5000

7000

9000

11000

13000

15000

17000

1980

1981

1982

1983

1984

1985

1986

1987

1988

1989

1990

1991

1992

1993

1994

1995

1996

1997

太陽黒点数

電子

Flu

x (個

数(cm2strsec))

電子Flux

太陽黒点数

Miyoshi et al[2004]

太陽活動と放射線帯分布の変動

ETS-Ⅵ搭載TEDAの開発 (理研東大と共同で宇宙環境計測の充実)

目的

bull 新たに開発された国産部品材料等の宇宙環境下での劣化特性を同一条件で計測すると共に劣化の原因となる宇宙環境を同時に計測し比較解析する

bull 新規開発の部品材料の宇宙実証データフライト実績を得る

bull 地上試験として行ってきた宇宙環境を模擬した試験方法の検証を行う

bull 帯電現象及びガスジェット等による人工衛星の汚染の経時変化の取得

bull 衛星設計に用いている宇宙環境モデル(放射線磁場等)の検証 bull 宇宙環境に起因する人工衛星の故障や不具合現象の解明

ETS-VI(きく6号)打ち上がったが GEOに行かずGTOに留まる

bull 1994年(平成6年)8月28日16時50分打ち上げ

bull H-IIロケット試験機2号で種子島から打ち上げ

bull アポジエンジン不具合でGTO軌道に留まる

bull 急遽楕円軌道用に新たな制御プログラムを設計製作し地上検証を行った上で衛星にアップロードしこの問題を解決した

bull 最終軌道ペリジ約8600kmアポジ約38600km軌道傾斜角約13度(3日5周期回帰)で2年間運用

bull TEDAのデータ公開で宇宙環境データが役に立つ事を宣伝(SEESを立ち上げデータを公開した)

ETS-Ⅵ搭載TEDAの成果

トータルドーズ劣化や太陽電池劣化は静止衛星で10年かかった同じ評価を1年間でできた

シングルイベントの発生頻度の高度分布が取得できた (高度8千km~3万8千kmの範囲)

バンアレン帯の放射線帯の電子陽子重イオンの高度分布データを取得し放射線帯モデル日本モデルを作成(あけぼの衛星データ含む)

この成果はGTO軌道を最初から狙うMDS-1(つ

ばさ)プロジェクトへとつながった 米国は1990年7月25日CRRESS(Combined Release and Radiation Effects Satellite )衛星を打ち上げ

研究開発の流れ

計測装置開発

データ収集 計画

環境計測

研究試作

衛星への影響解析で必要なデータ及び性能を機器開発に反映する

高エネルギー軽粒子 重イオン 中性子 帯電 原子状酸素 デブリ 新たな現象(問題点)

軌道上不具合評価 宇宙環境モデル

宇宙環境データベース 警報

衛星設計基準

有人活動への反映

宇宙天気予報 システム

国内外機関とのデータ交換

打上げ衛星運用

放射線環境評価(ISOを含む)の見直し 宇宙環境モデルの最適化 効率の良い宇宙機の開発 (シールド厚最適設計) 低コスト化(部品仕様の見直し) 短期間開発(民生品の利用)

フィードバック

成果目標

プロジェクト支援

宇宙環境計測装置(放射線磁場)小型化の流れ

9kg 10cm 10cm 10kg 14W 18W

1cm 52g 480g 1cm 12W以下 15W

磁力計(480g->52g)

みどり2搭載用 つばさかけはしきぼう搭載用 Jason-2GOSAT搭載

ETS-VIII搭載用 QZS搭載用

電子(05~50MeV) 陽子(1~160MeV) α粒子(4~200MeV)

電子(04~5MeV) 陽子(7~48MeV) α粒子(30~140MeV)

plusmn655364096102456nT plusmn655364096nT

16bit 20bit

電子(003~20MeV) 陽子(04~250MeV) α粒子(08~400MeV)

LPT-S 216x182x175 mm 62 kg LPT-E 240x165x 93 mm 28 kg

積算吸収線量計

軽粒子モニタ(10kgー>9kgー>7kg最小2kg)

17times10times5mm749g

ISSKibou(09-)

GEO

LEO

ETS-V (87-97)

ADEOS-II(02-03)

ETS-VIII(06-) DRTS(02- )

STS-89(98)

MDS-1(02-03) ETS-VI(94-96)

ETS-VII (97-99)

宇宙環境計測の流れ ISSUS-Lab(01)

ひまわり1-4(78-99)

ERG(16予定)

ALOS(06-11)

GOSAT(09-)

Jason-2((08-)

Jason-3(15予定)

GTO

QZS(09-)

ADEOS (96-97)

ADEOS搭載TEDA (世界2番目の異常宇宙線ACR)

bull シングルイベント評価のための重イオン観測であったが世界2番目の異常宇宙線を観測することができた

bull 低軌道の衛星は地球磁場が邪魔となって宇宙線(重イオン)を観測するに向いていないと考えられていたが異常宇宙線を観測するのにすぐれていることが明らかとなった

T Kohno et al Radiation Measuremets 30 5 PP639-644

BBND (ボナー球中性子検出器)

bull 1994年(平成6)年7月に中性子計測のために ボナー球ホスウイッチ方式及びシンチレーションファイバーの3種類のセンサの研究をスタート

bull シャトル打ち上げ計画の管理者から搭載装置の検討依頼がありBBNDのSTS-89への搭載が決定した(1997年1月頃)

bull 振動試験で装置内のボルトが外れるという不具合もあったが約1年という非常に短期間で搭載品を開発することができた

bull コスト低減のために構造解析を自前で実施したりデータ処理ソフトウェアも内作した

熱中性子に対して高い感度を持つ6個の3Heガス入り比例計数管で構成して

いる中性子は電荷をもたないのでそれ自身には電離作用がないが軽い原子の3He気体では反跳原子を生じたり中性子の核反応(3He+nrarrp+3H+765KeV)によって荷電粒子を生じるので間接的に電離を起こす下図のように気体中に二つの電極を置き高電圧(1000V)をかけておくと中性子の入

射によって気体中に生じた陽子イオンと電子のイオン対がそれぞれの電極に向かって流動し外部回路に電離電流が流れるこの電気パルスにより中性子を計測する

ボナー球型中性子モニタの概要

Polyethylene Sphere3He proportional Counter

51 φ 51 φ81 φ110 φ150 φ230 φ

Sensor6 Sensor5 Sensor4 Sensor3 Sensor2 Sensor1

Covered by Gadolinium

[mm]3Heガス入り比例計数管の原理

6個のボナー球の断面図

3Heガス入り比例計数管とポリエチレン減速材

H Matsumotoet al Radiation Measurements 33 (2001) 321-333

ISS搭載BBNDの成果(約8か月)

実験期間中の平均的な等価線量等量率 (2001年3月23日~2001年11月14日)

太陽フレア時(2001年11月4日)

等価量等量率の平均は94μSv日で年率に換算すると34mSv年となるこれは地上において自然界から受ける等価線量当量率の約14倍に相当する 実験期間中に多数の太陽フレアが発生した2001年11月4日の太陽フレアにより019mSVの増加を観

測したこれは自然界から受ける等価線量当量率の約1か月分に相当するしかしBBNDの約8か月

の実験期間中の全等価線量当量に対するこの太陽フレアの影響の寄与分は1以下であった また搭載位置による環境の違いも確認された

H Koshiishiet al Radiation Measurements 42(2007) 1510-1520

1)船内の計測結果より低エネルギー側で2~3桁高エネルギー側で1~2桁低い 2)船内より船壁が薄く中性子が少ない環境より自然のアルベド中性子環境に近い

中性子被曝線量の ISS船外(SEDA-AP)と船内(STS-89)の比較

MDS-1搭載放射線吸収線量モニタ(SDOM) SiTungstenAlBGO

② ⑦

⑧⑧

① Collimator ② Window③ SSDs ④ Plastic Scintillator⑤ Anticoincidence Scintillator(ACS)⑥ Beam Stop⑦ Scintillator PMT⑧ ACS PMT

運用期間 2002年2月 ndash 2003年9月 軌道 -軌道傾斜角 285deg 1 lt BB0 le 84 -高度 500 km times 36000km 11 le L le 10 -軌道周期 約10時間35分 -スピンレート 5rpm

計測エネルギー範囲 Electron 04- 9MeV (5bins) Proton 09-210MeV (12bins) He 6-140MeV (4bins) Heavy Ion 15- 60MeVnuc (1bin) G-Factor 001cm2sr

放射線帯変動モデルの開発 MDS-1 065 MeV 電子フラックス

変動パラメータの選択 (1 cycle solar activity)

太陽風速度(SW)

太陽黒点数(R)

Ap指数

F107

変動パラメータ- Tavg の定義-

1日後の予測

パラメータスケールの時間平均 ApTavg SWTavg F107 Tavg

T days

放射線帯の構造は変動パラメータ値の大きさと継続時間に相関がある

065MeV 電子 L値-Tavg マップ

APTavg

SWTavg

13MeV 陽子 L値-Tavg マップ

APTavg

F107Tavg

電子観測とMDS-1モデルの比較

80 175

放射線帯フラックスピークの変動

80orbits (平穏時) 175orbits (擾乱時)

陽子観測とモデルの比較

電子(035~078MeV) 1日の変動予測GOSAT軌道

0

50

100

150

200

250

1E+09

1E+10

1E+11

1E+12

1984 1986 1988 1990 1992 1994 1996 1998 2000 2002 2004 2006 2008

Flue

nce[

ecm

2M

eVd

ay]

Launch day

FluenceSSN

Worst case Nov 12003

電子(035~078MeV) 変動の信頼度水準(1日)GOSAT軌道

00

01

02

03

04

05

06

07

08

09

10

88 90 92 94 96 98 100 102 104 106 108 110 112 114

Con

fiden

ce le

vel

Fluence[LOG10 ecm2MeVday]

AE-8 MAX

AE-8 MIN

MDS-1 model と AE-8 model との比較1日

0

20

40

60

80

100

120

140

160

180

1E+09

1E+10

1E+11

1E+12

1995 1997 1999 2001 2003 2005 2007 2009

Flue

nce[

ecm

2M

eVd

ay]

Launch day

Fluence(JAXA)Fluence(AE8)SSN

話の流れ

技術データ取得装置(TEDA)の概要と成果 bull 主な成果 bull 不具合解析例

宇宙天気のリスクと対策 bull 宇宙環境による衛星システムへの影響 bull 宇宙環境を原因とする不具合の割合推移部位 bull 静止軌道不具合 bull 対策

今後必要な観測項目

まとめ

2003年10月 みどり号の全損事故 (複合現象)

極域のオーロラ帯を通過中に電力ハー

ネスを巻いているMLIが高エネルギー電

子により帯電

MLIが接地されていなかったため内側

のハーネスとの間に1kV以上の電位差が

発生

MLI内のガス密度が発電開始に伴う温度

上昇により上昇

ハーネス被覆の傷により露出したハーネ

ス芯線とMLI内面の間で放電発生

単発の放電が隣接するハーネスに飛び火

してハーネス間の短絡

アーク放電が次々と伝搬していきハー

ネス全体が焼損

故障推定箇所 (大電力ハーネス部)

bull詳細報告書は文部科学省 宇宙開発委員会のHP参照

httpwwwmextgojpb_menushingiuchuureports04080901htm

bull 人工衛星の電位 bull 人工衛星は電気的に宇宙に浮いている bull 宇宙機構造体が接地点 bull 宇宙機への流入電流と流出電流のバランスによって宇宙機電位が決まる bull 各電流成分は宇宙機電位Vの関数として表され定常状態では式を下式を満たす

衛星帯電の基本式

( ) dtIIIIIIIC

V

dtdVCVIVIVIVIVIVIVI

BPHBSESISEIE

BPHBSESISEIE

int +++++minus=

==+++++minus

1

0)]()()()()()([)(

入射電子電流 ( E I )

後方散乱電子電流 ( BSE I )

入射正イオン電流 ( I I )

入射電子による二次電子電流 ( SE I )

太陽光

入射正イオンによる 二次電子放出電流 ( SI I )

光電子放出電流( PH I )

電荷ビーム放出電流(IB)

bull内部帯電は衛星の外壁を貫通した放射線帯外帯の01MeV以上の電子が内部に侵入

bull基板間や同軸ケーブルの線間等の容量(コンデンサ)や誘電体に帯電 bull接地されてない導体片に帯電

bullその耐圧電圧を超えると その耐圧の弱い箇所 (材質の欠陥や針状突起など の箇所)で放電して故障に至る

内部帯電

(あるエネルギ-以上の粒子が入射光電子なし)

NASA-HDBK-4002より

パドルでの帯電放電メカニズム

宇宙環境の影響により 衛星がマイナス電位に帯電

高エネルギー電子等により カバーガラスはプラスに帯電 衛星とカバーガラスに電位差が生じる

電位差が大きくなると トリプルジャンクション近傍 の電界強度が増大していく

トリプルジャンクションで放電が発生する カバーガラスの帯電が緩和される

+ + + + + + + + + + + + + +

+ + + +

カバーガラス

太陽電池セル

基板(衛星構体)

トリプルジャンクション rArr 導体絶縁体宇宙環境の接点

持続放電

Substrate

Satellite Load

insulation sheet

Solar array cell

Cover glass

Arc current

Electrode

持続放電は衛星の電力消失につながる 持続放電のモードは以下の2通りがある

Substrate

Satellite Load

insulation sheet

Solar array cell

Cover glass

Arc current

Electrode

Solar array cell

Cover glass

セル-基板間短絡 セル間短絡

放電によって太陽電池セルと基板が短絡する 短絡によって負荷に電力が供給されなくなる

放電によって太陽電池セルとセルが短絡する 短絡によって負荷に電力が供給されなくなる

サブストーム(高エネルギー電子)との遭遇

+ + + + + + + +

二次電子光電子による絶縁体の帯電(局所帯電)

電位差発生

逆電位勾配

衛星構体が負に帯電(絶対帯電)

電位

時間

サブストーム

衛星構体 VS

乖離電圧 ∆V

カバーガラスVcg

0 プラズマ電位

軌道別帯電放電現象

トリプルジャンクションで 放電発生

放電発生

静止軌道

+ + + + + + + +

逆電位勾配

軌道帯電放電現象

トリプルジャンクションで 放電発生

極軌道 オーロラ電子(高エネルギー電子)との遭遇

プラズマ流入出による絶縁体の帯電(局所帯電)

電位差発生

衛星構体が負に帯電(絶対帯電)

放電発生

電位

時間

オーロラ電子

衛星構体 乖離電圧 ∆V

カバーガラス

0 プラズマ電位

データ中継技術衛星DRTS (こだま)の不具合

2002年10月 9日 静止軌道に打ち上げ

2003年

3月24日 406JST変化率異常モニタ故障検出(FDIR)

が動作しA系からB系に切り替わった

3月25日 410JSTにB系のみ異常検知

4月 3日 327JSTにB系のみ異常検知

5月28日 124JSTにB系のみ異常検知

6月 6日1537JSTにB系のみ異常検知

ESA

DRTS ESA スパイクノイズと 電子フルエンスの比較(赤の丸が異常検知)

larr閾値

この事実を基に静止軌道における内部帯電警報システムを構築 2004年4月より運用開始

不具合が宇宙環境によるものであるか 判断する際のポイント

不具合の発生した時刻に太陽フレアや磁気嵐等の宇宙天気の大きな変動が起きていれば不具合に関係している可能性が高い但し帯電など放射線の積算的効果の伴う現象については発生から1週間位さかのぼり環境がどのように推移してきたかを考慮する必要がある

磁気嵐が起きると静止軌道に急激な粒子の増加現象が起きこれにより衛星帯電が引き起こされたりする(予測に利用可能)

地方時(真夜中や朝方か)や季節(春秋)を考慮する

低軌道衛星においてはSAA外帯のrdquo角ldquo及び極通過時に不具合

が起きやすいので衛星の位置(緯度経度)が重要

事象を把握する上で単発現象か数回起きている現象か周期

(時間同じ軌道等)的に発生している現象か

話の流れ

技術データ取得装置(TEDA)の概要と成果 bull 主な成果 bull 不具合解析例

宇宙天気のリスクと対策 bull 宇宙環境による衛星システムへの影響 bull 宇宙環境を原因とする不具合の割合推移部位 bull 静止軌道不具合 bull 対策

今後必要な観測項目

まとめ

宇宙天気のリスク -宇宙環境によるシステムへの影響 -

プラズマ (IRI)

帯電 (MUSCAT)

衝突 (AUTODY)

抗力 表面劣化

紫外線X線 中性粒子 (MSIS)

放射線粒子 (AE8AP8JPLSHIELDO

SE-2)

メテオロイドデブリ (MASTER2005

ORDEM)

電離損傷 変位損傷

bull電子回路の劣化 bull光部品の劣化

bull太陽電池セルの劣化

SEU (CREME96)

bullデータエラー bull画像ノイズ

bullシステム停止 bull回路損傷

bull熱的電気的光学的特性の劣化

bull構造の劣化 bullコンタミ

電磁パルス bull電源出力低下

bull損傷

bullトルク bull軌道落下

bull構造 損傷 bull減圧

bull電磁パルス

NASAの報告 -GNampCに注目-

1974年から1994年に起きたNASAと空軍の衛星故障の内20~25が宇宙環境に起因していたと報告

1990年から2001年に米国欧州カナダ日本の企業や政府機関が開発した衛星を調べた過去の宇宙ミション損失の大部分はロケットの失敗であったが1998年衛星損失の大部分は軌道上の衛星障害となっている多くの最近の異常は太陽電池アレイ及びバッテリの危険が増加している静止軌道通信衛星の設計寿命はこのサブシステムの故障の危険が増加している

喪失等の大きな誘導制御(GNampC)の不具合に注目 GNampC不具合の内宇宙環境による 不具合は約3と報告されている

軌道上衛星のタイプ別数

NASAの報告(続き)

衛星設計寿命における不具合発生時期 事故率と軌道

軌道別の衛星数 サブシステム不具合

宇宙環境を原因とする不具合の割合 -JAXAの場合-

2002年~2008年に運用された軌道上不具合情報が比較的充実している11衛星(利用衛星7機科学衛星4機)の結果宇宙環境によるも

のは約15過去のデータよりも割合が少ない

合計83件 合計35件

(1)利用衛星 (2)科学衛星

設計検討 不足 48

製造不良 8

軌道上環境 17

偶発故障 6

調査中 13

原因不明 8

設計検討

不足 61

製造不良 4

軌道上環境 11

偶発故障 6

調査中 9

原因不明 9

不具合発生部位の割合

不具合発生部位の割合

Brent Robertson Eric Stoneking ( 1990-2001NASA Goddard Space Flight Center )

Satellite News Digest -静止軌道不具合-

Satellite News Digest (SND) (http wwwsqt-indexcouk) で1997年~2009年の期間に静止軌道で95件の不具合が報告されている その内運用ミスや設計ミスなどを除くと32件(約33)は宇宙環境によるものであった 過去のデータより割合が多い

Choiら1)はこれら不具合の地方時と季節依存性を確認した その結果2100LT~900LTで約72の不具合が発生し900LT~2100LTは9件(約28)であった またこの9件は全て姿勢制御の不具合だった 静止軌道衛星不具合のほとんどは真夜中と朝方で起きており磁気嵐に伴い磁気圏尾部から注入した粒子による表面帯電が不具合の主原因と結論づけている

1) Ho-sung Choi et al Analysis of GEO spacecraft anomalies Space weather relationships Space Weather Vol 9 S06001

太陽活動と静止軌道衛星不具合例

ANIK-E1E2

ANIK-E1

複数の衛星で故障

Galaxy-15

帯電放電不具合 -ANIK-E1amp2Telstar401-

Jan 1994 ANIK-E1 amp E2事故時の環境 - Joe H Allen

1週間

太陽活動下降時期の電子増加

2MeV以上電子

copyNOAA Web

フラックスが3桁急増

Jan 1997 Telstar401事故時の環境

静止軌道の急激な電子増加

太陽極大期太陽フレアによる衛星障害 - 2003年10月~11月-

10486981048698 永久故障 4 10486981048698 安全モード又は運用を一時停止 31 10486981048698 データ内容の「誤り」の増加搭載コンピュータの誤動作 5

httpwwwsat-ndcomfailures等のデータによる 合計 40件

-Barbieri and Mahmot

米国極軌道気象衛星NOAA-17の改良型マイクロ波観測装置AMSU-A1 (Advanced Microwave Sounding Unit)のスキャナーが永久故障 米国気象衛星GOES -8号のX線センサがOFFになり復帰しなくなった

e-birdに深刻な不具合が発生 不具合は20本のトランスポンダ全てに影響

火星周回中の探査機「マーズオデッセイ (Mars Odyssey)」の観測機器放射線観測装置「Martian Radiation Environment Experiment (MARIE)」が太陽活動の影響により10月28日から適切に作動しなくなった データ中継技術衛星(DRTS)「こだま」 太陽捕捉モードに移行

太陽陽子

帯電放電不具合-Galaxy15(局所的的現象)- 2

5 M

eV

65

MeV

11

5 M

eV

GOES 14 ----- GOES 15 ----- GOES 11 -----

Satellite Locations

Galaxy 15 anomaly

2010年4月5日9時48分UTCは磁気嵐及びCMEが発生するなど宇宙環境は非常に荒れていたGalaxy15衛星は真夜中側に位置し宇宙環境の影響を受けやすい

位置にいたことから宇宙環境による不具合である可能性が高いということで原因追及がなされた高エネルギー粒子が引き起こす代表的な衛星不具合現象として3つ(表面帯電内部帯電SEUシングルイベントバーンアウトSEL)の可能性を検討した

チームの報告書によると磁気圏尾部からの熱電子の流入による放電が原因であったと結論付けられたGalaxy15衛星の近くにはGOES-11衛星が位置していたがGOES-11衛星には不具合を発生しておらず本現象は局所的な現象と推測される

衛星開発段階における対策 JAXAの不具合解析の結論

bull 2002年~2008年に運用された11機の衛星不具合を解析 宇宙環境による不具合は偶発故障のみ(全体の約15)確率的には想定範囲内ではあるがその影響を最小限とするためディレーティング運用モード寿命についての研究に取り組む

bull 設計基準試験の充実検証確認の強化技術成熟度(TRL)評価の徹底各々の境界制約条件の明示化等により検証不足抜けの防止有効なピアレビューに結びつける

冗長系(同じハードウェア機能の冗長)柔軟性の設計(ソフトハードの対応)

bull 従来の故障が起きないようにする設計に対してGOSAT(いぶき)では重要部

品を二重化することにより故障する可能性は上がるが故障しても衛星バスの運用や観測が続行できる可能性がより高くなるように設計した

運用における対応

bull 宇宙天気監視ーロケット打ち上げ及び宇宙飛行士支援 数日前に今後の宇宙環境の推移を把握(MXレベルのフレアの発生確率)

bull X線の増加で太陽フレア発生を検知したら高エネルギー粒子の発生をいつまで 気を付ければ良いか判断(発生位置で大凡を推定するが課題は多い) SPEが発生した場合(特に10MeV以上100MeV 以上の陽

子)最大値フラックス値の推定 ピーク値を予測(特に閾値に近くなった時に重要)

bull 衛星運用 bull 太陽フレア磁気嵐警報(X線陽子及びkpが閾値を超えた

時に警報を発信)2003年10月より運用開始 bull 内部帯電警報(2日後の静止軌道上の高エネルギー電子(>1

Me) の増加を予測し 閾値を超えた時に警報を発信) 2004年4月より運用開始

話の流れ

技術データ取得装置(TEDA)の概要と成果 bull 主な成果 bull 不具合解析例

宇宙天気のリスクと対策 bull 宇宙環境による衛星システムへの影響 bull 宇宙環境を原因とする不具合の割合推移部位 bull 静止軌道不具合 bull 対策

今後必要な観測項目

まとめ

計測対象計測項目 計測対象 粒径100μm以上のデブリメテオロイド 計測項目 デブリ粒径衝突頻度

基本原理

厚さ約125μmの絶縁性のポリイミドフィルム表面に 100μm周期で直線状の細長い導線(太さ50μm)パターンを形成導線の破断を電気的に検知することによりデブリの衝突(貫通)を検知する破断した導線の数導線の幅ピッチからデブリサイズを計測する

微小デブリ計測技術の概要

衝突孔の例(衝突試験ISAS) - 衝突粒子 SUS 309 microm - 衝突速度 52 kms

HTV5号機によるセンサ機能のフライト実証

35cm

46cm

FY2013機能実証モデル

検出線幅 50 μm 検出線間隔 100 μm フィルム厚 lt 20 μm 有感領域 30times33cm 検出線総数 3300本

サイズ 50times39times4 cm (筐体を含む)

重量 約15kg(筐体を含む)

消費電力 2W(最大4W)(他センサ含む)

テレメトリ 02 bps

宇宙環境観測装置KASPERの一部としてデブリセンサSDMを搭載 FY2013に製作開始今年8月に打ち上げ予定)

まとめ(その1)

衛星不具合の主な原因は帯電放電シングルイベント放射線損傷である今後デブリ環境が重要になると予測される

静止軌道では商用衛星が多く運用されており宇宙環境の変動把握は重要この領域で運用する衛星が気を付けなければいけない環境として

1太陽フレアに伴う高エネルギー粒子 2太陽活動下降期による静止軌道電子の増加 3磁気嵐に伴う磁気圏尾部から注入する粒子 などがあげられる

まとめ(その2)

不具合軽減の取り組み bull 開発時は宇宙環境条件(トータルフラックス及び最悪条

件)を明確にし設計(冗長系柔軟性の設計ディレーティング及び運用モード寿命について研究)試験の充実検証の充実を図る

bull 運用段階に入ったならば宇宙環境を監視し警報等で故障を防ぐ

予測課題 bull 太陽フレアに伴う高エネルギー粒子発生後フラックス

ピーク値の推定

bull 衛星により不具合の起きる閾値は異なるが閾値をこえる急激な電子フラックスの増加と継続時間の予測

bull 局所的な磁気嵐に伴う磁気圏尾部から注入する粒子

宇宙環境グループは宇宙ステーションと衛星プロジェクトの安全な遂行に貢献しています

ご静聴ありがとうございました

補足資料

不具合原因の推移 bull 宇宙天気を大きく左右する要因の1つとして約11年の太陽活動変化が挙げられる

bull 太陽活動下降時期(太陽変動CME)と極大期(フレアCME)に衛星で不具合が増加するそれにより不具合原因の割合が変わる

-Koons et al The Impact of the Space Environment on Space Systems Aerospace Corp report no TR-99(1670)-1 20 July 1999 -2009 preliminary study (unpublished)

何故不具合は減らないか

bull 部品 放射線に対する感受性が高くなっている bull 微細化が進み同時にフォールトするノードが増え同時にエ

ラーとなる論理ノードやメモリセルが増加する微細化によってメモリセルは小さくなるので記憶容量当たりでみるとエラーの発生率は下がるしかし半導体チップの記憶容量やゲート数が増えるので半導体チップ当たりのエラー発生率は微細化とともに上昇するまた蓄積電荷が小さくなり感受性が高くなってきている

bull システム 大型化大電力化運用長期化 bull 1990年代末以降静止衛星の電力が10kWレベルになったしか

し設計検証技術データ蓄積が遅れている改善されつつあると推測される

放射線による影響の概要

粒子 エネルギー又はLET

代表的な影響

陽子 100keV-1MeV 1-10MeV 10-100MeV gt50MeV

表面損傷 表面材料と太陽電池の損傷 放射線損傷(電離非電離損傷の両方)センサーへのノイズ シングルイベント効果

電子 10-100keV gt100keV gt1MeV

表面帯電 深部帯電現象(deep-dielectric charging)センサーへのノイズ太陽電池の損傷 放射線損傷(電離)

重イオン gt1MeV-cm2mg シングルイベント効果

注エネルギー及びLETは個々の部品等により異なりますあくまでも目安です

耐放射線設計手順

軌道条件

ミッション期間

環境条件設定

トータルドーズの予測

1MeV電子換算被曝算出

NIELの換算

LETフルエンス算出

陽子フルエンス算出

対  策  の  検  討

対  策  の  検  討

対  策  の  検  討

放射線による劣化率予測

劣化率予測 特性予測

耐性データ

放射線による劣化率予測

耐性データ

劣化率予測アレイ出力劣化予測

感受性データ

シングルイベント発生率予測 致命度解析

衛星内質量分布

(2)

部品材料の選定

他の要因による劣化率予測

(2)(2) (3)

回路設計等NO

OK

アレイ構造 セル選定

他の要因による劣化率予測 アレイ設計(2)

(2) (2) (2) (3)

衛星内質量分布 部品選定(2)

(2) (2)(3)

NO

OK

NO

OK

(1) 環境モデルマージを含む(2) 部品レベルの検討(3) アセンブリレベルでの検討(4) 設計マージン環境モデル   マージを含め大丈夫か

トータルドーズ

太陽電池アレイの劣化

シングルイベント効果

回路設計

補足放射線太陽宇宙線銀河宇宙線

NEILを用いたダメージファクターの算出

対  策  の  検  討

放射線による劣化率予測

劣化率予測 特性予測

耐性データ

(2)

部品材料の選定

他の要因による劣化率予測

(2)(2) (3)

回路設計等NO

OK

衛星内質量分布 半導体デバイスの変位損傷

(1)

(4)

(4)

(4)

(4)

各軌道における放射線環境

1E+10

1E+11

1E+12

1E+13

1E+14

1E+15

1E+16

1E+17

1E+18

1E+19

1E+20

001 010 100 1000

捕捉

電子

の積

分フ

ルエ

ンス

[m

2 ]

エネルギー[MeV]

各軌道における電子捕捉積分フルエンス(3年間)

LEO

EOS GEO

MEO

GTO

GEO 軌道傾斜角 0deg 高度36000km GTO 軌道傾斜角 18deg 高度 360km~36000km MEO 軌道傾斜角 51deg 高度 10000km EOS 軌道傾斜角 98deg 高度705km LEO 軌道傾斜角 29deg 高度 600km

1E+12

1E+13

1E+14

1E+15

1E+16

1E+17

1E+18

1E+19

1E+20

01 10 100 1000

捕捉

陽子の

積分フルエン

ス[

m2 ]

エネルギー[MeV]

各軌道における捕捉陽子積分フルエンス(3年間)

MEO

GTO

GEO

EOS LEO

放射線による部品材料の影響

総照射線量 (TIDTotal Ionising Dose )

電離損傷

バイポーラTrの電流増幅率の低下リーク電流の増大

γ線で評価

トータルドーズ効果

変位損傷 (DDDisplacement Damage )または 非イオン化エネルギー損失 (NIELNon-Ionising Energy

Loss )

変位損傷(格子欠陥の生成)

電荷輸送効率の低下 (CCD)太陽電池の効率低下等

電子陽子により評価

シングルイベント効果

1個の荷電粒子の入射により発生する誤動作

ソフト(Latch-Up Burnout) エラー又は ソフト (Upset) エラー

陽子及び重イオンで評価

トータルドーズ効果

+ - + + - + - + - - + + + + -

ゲート酸化膜

電離

格子欠陥

正電荷捕獲

+ 正孔 - 電子

電極

(Silicon oxidenitride)

荷電粒子

反跳原子

ゲート絶縁膜中に電荷が蓄積することによるMOSトランジスタのしきい電圧(MOSトランジスタがオフからオンに変化するゲート電圧)の変化をもたらすただ

し最近の最先端チップはゲート絶縁膜がきわめて薄くなっているこのためゲート絶縁膜よりもフィールド絶縁膜(隣接するトランジスタを電気的に分離する絶縁膜)での電荷蓄積が相対的には大きな問題になってきている」

シングルイベント効果

メモリセルはNチャンネルとPチャンネルMOSFETより構成されメモリ情報は回路ノード12の電位の

高低により記録している空乏層の広がっているPN接合12の領域に

重イオンが入射した場合電荷の発生と空乏層内への少数キャリアの収集が起こるこの収集電荷量が回路の耐量を越えた場合(c)に示すように反転が起こる(ソフトエラー)一方pウエル-N基板接

合の空乏層内に電荷収集量が起こりえる耐性を越えると寄生的に存在するPNPNサイリスタ構造がオ

ンし電源と基板間に大電流が流れる状態が生じる(ラッチアップ)

シングルイベントメカニズム -陽子と重イオンの違い-

エラー発生率の計算

線エネルギー付与(LET) (linear energy transfer)

電離性放射線が物質中を通過する際飛程の単位長さ当りに平均して失うエネルギーをいう各種の放射線のうちX線γ線はLETが小さいので低LETといいα線中性子線その他重イオン核分裂破片のLETは大きいので高LETという MeVμmMeV(gcm2)やMeV(mgcm2)で表される

南大西洋異常(SAA) bull 地球の自転軸と磁気軸のずれ

darr bull 放射線帯が自転軸に対して非

対称

bull 南大西洋上空では放射線帯内帯が低高度に落ちてきているこの領域を南大西洋異常域(SAA South Atlantic Anomaly)と呼ぶ

bull 地球観測衛星ではSAAで放射線帯陽子の影響を受ける

Single Event Lachup

シングルイベントと陽子分布

MOS-1衛星(高度909km軌道傾斜角99度)で発生したシングルイベントと 陽子30MeV以上の等高線マップを重ね合わせた結果

NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)

bull 入射粒子が電離によらず与える損傷非イオン化損失

低軌道での電子フラックスと 不具合の発生場所

南大西洋異常(SAA)と極の角

高度800kmでの電子フラックス図極の角(polar horn)とSAAを示す

太陽粒子線 bull 太陽高エネルギー粒子線(SPE Solar Proton Events)は太陽フレア とコロナガス噴出 (CMECoronal Mass Ejections )により引き起こされる bull フレアのスペクトルは可変であるためあるエネルギー域における最悪状態イベントは必ずしも別のエネルギー域における最悪条件ではない 1972年8月のイベント 10~70MeVの粒子が最も多かった 1989年10のイベント 1972年8月のイベントに比べ低エネルギー領域 高エネルギー領域が明らかに激しかった

フルエンス 105 to 1011 cm-2

変動期間 1日から数日

ldquoBastiliardquo Solar Event 14 July 2000

Carrington Flare

84

(LW Townseed) Carrington Flare(1859年) Carrington Flare による30MeV以上トータルFluenceを118times109cm-2で規格化 ~1989年フレアの約13倍(シングルイベントの評価で使用) ~1991年フレアの約9倍 2012年7月23日にキャリントンイベントとほぼ同等の爆発現象が太陽あるいは太陽の周りで起きていたということがNASAの太陽観測衛星「STEREO」の解析から発表された

放射線対策 bull 放射線シールドを付加し放射線を減衰させる

bull 放射線耐性の強い部品(SOI(Silicon On Insulator)技術による耐放射線部品)材料に変更する

bull 放射線による損傷を吸収するために回路または構造上のマージンを持たせる bull ソフト的なエラーに対しては エラー検出訂正機能や多数決

機能等でソフト的エラーが起きてもシステムが機能するようにしたフォールトトレラント機能を付けて対処する ICのハード的故障に対しては ラッチアップ耐性の強い部品を選定するしかないが 電流制限回路を付ける対策も採られる パワーMOSFETに対しては部品選定 電源電圧を規格値の半分以下に落とす等の対策を採る

SOI技術

表面帯電への対策例

表面の物体間を導線で結線する

太陽電池のカバーガラスを導電性被膜付き(酸化インジウムITO)にする

熱制御材表面にITOを被覆する

熱制御材は高誘電率のテフロンの使用を避け 高伝導度耐環境性に優れたブラックカプトンを使用

イオンエンジンの中和器で能動帯電制御

内部帯電への対策例

アルミで3mm厚さに相当するシールドで囲む(Faraday Cage)

テフロンやカプトンなどの誘電体材料の内部での使用量を最小限に押さえる

回路基板やコンフォーマルコーティングは誘電体なので電流リークパス(1012Ωcmまたは1012Ωcm2

程度)を必ずつける

特にスポット的な放射線シールドの金属材には必ず電流リークパスをつける

帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備

衛星モデル作成

材料物性テーブル設定

宇宙環境パラメータ設定

Converter

転送ディレクトリ 解析データファイル

転送

解析ディレクトリ生成 解析結果 進行状況チェック ファイル操作

MUSCAT 解析エンジン

解析結果 表示

パラメトリックラン

オプション 解析

大型パネル実験(35mtimes11m) クーポンパネル実験(26cmtimes16cm)

環境模擬試験 環境模擬試験

MUSCATに使用する物性値設計標準制定のための知見などを得ることを目的に軌道上の宇宙環境を模擬した地上試験を行っている これらの試験では放電の発生頻度や電圧閾値放電発生による太陽電池パネルや搭載機器への影響を検証している

放射線計測装置の原理

bull その粒子が物質を通過する際のエネルギー損出率が粒子の電荷(原子番号)Zの二乗に比例すること(Bethe-Blochの式)を利用する

S2

E

ΔE Ersquo

S1 S3

  • 宇宙機の設計のための宇宙環境
  • 話の流れ
  • 話の流れ
  • TEDA(技術データ取得装置)(国産部品の宇宙環境での実証の必要性)
  • ETS-VTEDA(技術データ取得装置)誕生前の部品の宇宙実証の背景
  • スライド番号 6
  • スライド番号 7
  • スライド番号 8
  • スライド番号 9
  • 図6太陽黒点数と静止軌道電子 (>04MeV ) Flux の変動 (ETS-V搭載DOMによる観測)
  • スライド番号 11
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの開発(理研東大と共同で宇宙環境計測の充実)
  • ETS-VI(きく6号)打ち上がったがGEOに行かずGTOに留まる
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの成果
  • スライド番号 15
  • スライド番号 16
  • スライド番号 17
  • ADEOS搭載TEDA(世界2番目の異常宇宙線ACR)
  • BBND (ボナー球中性子検出器)
  • スライド番号 20
  • ISS搭載BBNDの成果(約8か月)
  • スライド番号 22
  • MDS-1搭載放射線吸収線量モニタ(SDOM)
  • 放射線帯変動モデルの開発MDS-1 065 MeV 電子フラックス
  • 変動パラメータの選択 (1 cycle solar activity)
  • 変動パラメータ- Tavg の定義-
  • 065MeV 電子 L値-Tavg マップ
  • 13MeV 陽子 L値-Tavg マップ
  • 電子観測とMDS-1モデルの比較
  • 放射線帯フラックスピークの変動
  • 陽子観測とモデルの比較
  • 電子(035~078MeV) 1日の変動予測GOSAT軌道
  • 電子(035~078MeV) 変動の信頼度水準(1日)GOSAT軌道
  • MDS-1 model と AE-8 modelとの比較1日
  • 話の流れ
  • 2003年10月 みどり号の全損事故(複合現象)
  • 衛星帯電の基本式
  • 内部帯電
  • パドルでの帯電放電メカニズム
  • スライド番号 40
  • スライド番号 41
  • スライド番号 42
  • データ中継技術衛星DRTS (こだま)の不具合
  • DRTS ESA スパイクノイズと電子フルエンスの比較(赤の丸が異常検知)
  • 不具合が宇宙環境によるものであるか判断する際のポイント
  • 話の流れ
  • 宇宙天気のリスク-宇宙環境によるシステムへの影響 -
  • NASAの報告-GNampCに注目-
  • NASAの報告(続き)
  • 宇宙環境を原因とする不具合の割合-JAXAの場合-
  • 不具合発生部位の割合 
  • Satellite News Digest -静止軌道不具合-
  • 太陽活動と静止軌道衛星不具合例
  • スライド番号 54
  • スライド番号 55
  • スライド番号 56
  • 衛星開発段階における対策
  • 運用における対応
  • 話の流れ
  • スライド番号 60
  • スライド番号 61
  • まとめ(その1)
  • まとめ(その2)
  • 宇宙環境グループは宇宙ステーションと衛星プロジェクトの安全な遂行に貢献しています
  • 補足資料
  • 不具合原因の推移
  • 何故不具合は減らないか
  • 放射線による影響の概要
  • 耐放射線設計手順
  • 各軌道における放射線環境
  • 放射線による部品材料の影響
  • トータルドーズ効果
  • シングルイベント効果
  • シングルイベントメカニズム-陽子と重イオンの違い-
  • エラー発生率の計算
  • 線エネルギー付与(LET)(linear energy transfer)
  • 南大西洋異常(SAA)
  • Single Event Lachup
  • シングルイベントと陽子分布
  • NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)
  • 低軌道での電子フラックスと不具合の発生場所
  • 南大西洋異常(SAA)と極の角
  • スライド番号 83
  • Carrington Flare
  • 放射線対策
  • スライド番号 86
  • スライド番号 87
  • 帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備
  • スライド番号 89
  • 放射線計測装置の原理
Page 8: 宇宙機の設計のための宇宙環境の方針から国産部品開発(42品種)が実施された。 . 半導体電子部品は耐放射線性を加味して、人工衛星(特に

ETS-VTEDAの成果帯電電位の 材料別10年間の計測結果 Surface Potential Monitor (POM)

Matsumoto Het al Proc Charging Conference 23-27 April 2001 ESTEC

ETS-VTEDA 熱制御材劣化モニタ(TDM)の

10年間の計測データ(太陽光吸収率α 赤外輻射率ε )

ε

α

図6太陽黒点数と静止軌道電子 (>04MeV ) Flux の変動 (ETS-V搭載DOMによる観測)

bull 1993-1994年にかけ各国の静止衛星で不具合や故障が増加したJAXAではETS-V搭載放射線吸収線量モニタ(DOM)による長期的観測により太陽活動下降期の高エネルギー電子の増加を確認しておりこれにより静止衛星に影響が出たことが明らかとなったなお同様の不具合や故障増加が11年前の太陽活動下降期である1982-1983年にも発生していたことが分かった

bull 現在はこれらの電子の環境でも太陽電池パドル等に不具合が起きらないことを地上試験で確認してきている

静止軌道における 高エネルギー粒子の長期的観測結果と宇宙機への影響

0

20

40

60

80

100

120

140

160

180

1000

3000

5000

7000

9000

11000

13000

15000

17000

1980

1981

1982

1983

1984

1985

1986

1987

1988

1989

1990

1991

1992

1993

1994

1995

1996

1997

太陽黒点数

電子

Flu

x (個

数(cm2strsec))

電子Flux

太陽黒点数

Miyoshi et al[2004]

太陽活動と放射線帯分布の変動

ETS-Ⅵ搭載TEDAの開発 (理研東大と共同で宇宙環境計測の充実)

目的

bull 新たに開発された国産部品材料等の宇宙環境下での劣化特性を同一条件で計測すると共に劣化の原因となる宇宙環境を同時に計測し比較解析する

bull 新規開発の部品材料の宇宙実証データフライト実績を得る

bull 地上試験として行ってきた宇宙環境を模擬した試験方法の検証を行う

bull 帯電現象及びガスジェット等による人工衛星の汚染の経時変化の取得

bull 衛星設計に用いている宇宙環境モデル(放射線磁場等)の検証 bull 宇宙環境に起因する人工衛星の故障や不具合現象の解明

ETS-VI(きく6号)打ち上がったが GEOに行かずGTOに留まる

bull 1994年(平成6年)8月28日16時50分打ち上げ

bull H-IIロケット試験機2号で種子島から打ち上げ

bull アポジエンジン不具合でGTO軌道に留まる

bull 急遽楕円軌道用に新たな制御プログラムを設計製作し地上検証を行った上で衛星にアップロードしこの問題を解決した

bull 最終軌道ペリジ約8600kmアポジ約38600km軌道傾斜角約13度(3日5周期回帰)で2年間運用

bull TEDAのデータ公開で宇宙環境データが役に立つ事を宣伝(SEESを立ち上げデータを公開した)

ETS-Ⅵ搭載TEDAの成果

トータルドーズ劣化や太陽電池劣化は静止衛星で10年かかった同じ評価を1年間でできた

シングルイベントの発生頻度の高度分布が取得できた (高度8千km~3万8千kmの範囲)

バンアレン帯の放射線帯の電子陽子重イオンの高度分布データを取得し放射線帯モデル日本モデルを作成(あけぼの衛星データ含む)

この成果はGTO軌道を最初から狙うMDS-1(つ

ばさ)プロジェクトへとつながった 米国は1990年7月25日CRRESS(Combined Release and Radiation Effects Satellite )衛星を打ち上げ

研究開発の流れ

計測装置開発

データ収集 計画

環境計測

研究試作

衛星への影響解析で必要なデータ及び性能を機器開発に反映する

高エネルギー軽粒子 重イオン 中性子 帯電 原子状酸素 デブリ 新たな現象(問題点)

軌道上不具合評価 宇宙環境モデル

宇宙環境データベース 警報

衛星設計基準

有人活動への反映

宇宙天気予報 システム

国内外機関とのデータ交換

打上げ衛星運用

放射線環境評価(ISOを含む)の見直し 宇宙環境モデルの最適化 効率の良い宇宙機の開発 (シールド厚最適設計) 低コスト化(部品仕様の見直し) 短期間開発(民生品の利用)

フィードバック

成果目標

プロジェクト支援

宇宙環境計測装置(放射線磁場)小型化の流れ

9kg 10cm 10cm 10kg 14W 18W

1cm 52g 480g 1cm 12W以下 15W

磁力計(480g->52g)

みどり2搭載用 つばさかけはしきぼう搭載用 Jason-2GOSAT搭載

ETS-VIII搭載用 QZS搭載用

電子(05~50MeV) 陽子(1~160MeV) α粒子(4~200MeV)

電子(04~5MeV) 陽子(7~48MeV) α粒子(30~140MeV)

plusmn655364096102456nT plusmn655364096nT

16bit 20bit

電子(003~20MeV) 陽子(04~250MeV) α粒子(08~400MeV)

LPT-S 216x182x175 mm 62 kg LPT-E 240x165x 93 mm 28 kg

積算吸収線量計

軽粒子モニタ(10kgー>9kgー>7kg最小2kg)

17times10times5mm749g

ISSKibou(09-)

GEO

LEO

ETS-V (87-97)

ADEOS-II(02-03)

ETS-VIII(06-) DRTS(02- )

STS-89(98)

MDS-1(02-03) ETS-VI(94-96)

ETS-VII (97-99)

宇宙環境計測の流れ ISSUS-Lab(01)

ひまわり1-4(78-99)

ERG(16予定)

ALOS(06-11)

GOSAT(09-)

Jason-2((08-)

Jason-3(15予定)

GTO

QZS(09-)

ADEOS (96-97)

ADEOS搭載TEDA (世界2番目の異常宇宙線ACR)

bull シングルイベント評価のための重イオン観測であったが世界2番目の異常宇宙線を観測することができた

bull 低軌道の衛星は地球磁場が邪魔となって宇宙線(重イオン)を観測するに向いていないと考えられていたが異常宇宙線を観測するのにすぐれていることが明らかとなった

T Kohno et al Radiation Measuremets 30 5 PP639-644

BBND (ボナー球中性子検出器)

bull 1994年(平成6)年7月に中性子計測のために ボナー球ホスウイッチ方式及びシンチレーションファイバーの3種類のセンサの研究をスタート

bull シャトル打ち上げ計画の管理者から搭載装置の検討依頼がありBBNDのSTS-89への搭載が決定した(1997年1月頃)

bull 振動試験で装置内のボルトが外れるという不具合もあったが約1年という非常に短期間で搭載品を開発することができた

bull コスト低減のために構造解析を自前で実施したりデータ処理ソフトウェアも内作した

熱中性子に対して高い感度を持つ6個の3Heガス入り比例計数管で構成して

いる中性子は電荷をもたないのでそれ自身には電離作用がないが軽い原子の3He気体では反跳原子を生じたり中性子の核反応(3He+nrarrp+3H+765KeV)によって荷電粒子を生じるので間接的に電離を起こす下図のように気体中に二つの電極を置き高電圧(1000V)をかけておくと中性子の入

射によって気体中に生じた陽子イオンと電子のイオン対がそれぞれの電極に向かって流動し外部回路に電離電流が流れるこの電気パルスにより中性子を計測する

ボナー球型中性子モニタの概要

Polyethylene Sphere3He proportional Counter

51 φ 51 φ81 φ110 φ150 φ230 φ

Sensor6 Sensor5 Sensor4 Sensor3 Sensor2 Sensor1

Covered by Gadolinium

[mm]3Heガス入り比例計数管の原理

6個のボナー球の断面図

3Heガス入り比例計数管とポリエチレン減速材

H Matsumotoet al Radiation Measurements 33 (2001) 321-333

ISS搭載BBNDの成果(約8か月)

実験期間中の平均的な等価線量等量率 (2001年3月23日~2001年11月14日)

太陽フレア時(2001年11月4日)

等価量等量率の平均は94μSv日で年率に換算すると34mSv年となるこれは地上において自然界から受ける等価線量当量率の約14倍に相当する 実験期間中に多数の太陽フレアが発生した2001年11月4日の太陽フレアにより019mSVの増加を観

測したこれは自然界から受ける等価線量当量率の約1か月分に相当するしかしBBNDの約8か月

の実験期間中の全等価線量当量に対するこの太陽フレアの影響の寄与分は1以下であった また搭載位置による環境の違いも確認された

H Koshiishiet al Radiation Measurements 42(2007) 1510-1520

1)船内の計測結果より低エネルギー側で2~3桁高エネルギー側で1~2桁低い 2)船内より船壁が薄く中性子が少ない環境より自然のアルベド中性子環境に近い

中性子被曝線量の ISS船外(SEDA-AP)と船内(STS-89)の比較

MDS-1搭載放射線吸収線量モニタ(SDOM) SiTungstenAlBGO

② ⑦

⑧⑧

① Collimator ② Window③ SSDs ④ Plastic Scintillator⑤ Anticoincidence Scintillator(ACS)⑥ Beam Stop⑦ Scintillator PMT⑧ ACS PMT

運用期間 2002年2月 ndash 2003年9月 軌道 -軌道傾斜角 285deg 1 lt BB0 le 84 -高度 500 km times 36000km 11 le L le 10 -軌道周期 約10時間35分 -スピンレート 5rpm

計測エネルギー範囲 Electron 04- 9MeV (5bins) Proton 09-210MeV (12bins) He 6-140MeV (4bins) Heavy Ion 15- 60MeVnuc (1bin) G-Factor 001cm2sr

放射線帯変動モデルの開発 MDS-1 065 MeV 電子フラックス

変動パラメータの選択 (1 cycle solar activity)

太陽風速度(SW)

太陽黒点数(R)

Ap指数

F107

変動パラメータ- Tavg の定義-

1日後の予測

パラメータスケールの時間平均 ApTavg SWTavg F107 Tavg

T days

放射線帯の構造は変動パラメータ値の大きさと継続時間に相関がある

065MeV 電子 L値-Tavg マップ

APTavg

SWTavg

13MeV 陽子 L値-Tavg マップ

APTavg

F107Tavg

電子観測とMDS-1モデルの比較

80 175

放射線帯フラックスピークの変動

80orbits (平穏時) 175orbits (擾乱時)

陽子観測とモデルの比較

電子(035~078MeV) 1日の変動予測GOSAT軌道

0

50

100

150

200

250

1E+09

1E+10

1E+11

1E+12

1984 1986 1988 1990 1992 1994 1996 1998 2000 2002 2004 2006 2008

Flue

nce[

ecm

2M

eVd

ay]

Launch day

FluenceSSN

Worst case Nov 12003

電子(035~078MeV) 変動の信頼度水準(1日)GOSAT軌道

00

01

02

03

04

05

06

07

08

09

10

88 90 92 94 96 98 100 102 104 106 108 110 112 114

Con

fiden

ce le

vel

Fluence[LOG10 ecm2MeVday]

AE-8 MAX

AE-8 MIN

MDS-1 model と AE-8 model との比較1日

0

20

40

60

80

100

120

140

160

180

1E+09

1E+10

1E+11

1E+12

1995 1997 1999 2001 2003 2005 2007 2009

Flue

nce[

ecm

2M

eVd

ay]

Launch day

Fluence(JAXA)Fluence(AE8)SSN

話の流れ

技術データ取得装置(TEDA)の概要と成果 bull 主な成果 bull 不具合解析例

宇宙天気のリスクと対策 bull 宇宙環境による衛星システムへの影響 bull 宇宙環境を原因とする不具合の割合推移部位 bull 静止軌道不具合 bull 対策

今後必要な観測項目

まとめ

2003年10月 みどり号の全損事故 (複合現象)

極域のオーロラ帯を通過中に電力ハー

ネスを巻いているMLIが高エネルギー電

子により帯電

MLIが接地されていなかったため内側

のハーネスとの間に1kV以上の電位差が

発生

MLI内のガス密度が発電開始に伴う温度

上昇により上昇

ハーネス被覆の傷により露出したハーネ

ス芯線とMLI内面の間で放電発生

単発の放電が隣接するハーネスに飛び火

してハーネス間の短絡

アーク放電が次々と伝搬していきハー

ネス全体が焼損

故障推定箇所 (大電力ハーネス部)

bull詳細報告書は文部科学省 宇宙開発委員会のHP参照

httpwwwmextgojpb_menushingiuchuureports04080901htm

bull 人工衛星の電位 bull 人工衛星は電気的に宇宙に浮いている bull 宇宙機構造体が接地点 bull 宇宙機への流入電流と流出電流のバランスによって宇宙機電位が決まる bull 各電流成分は宇宙機電位Vの関数として表され定常状態では式を下式を満たす

衛星帯電の基本式

( ) dtIIIIIIIC

V

dtdVCVIVIVIVIVIVIVI

BPHBSESISEIE

BPHBSESISEIE

int +++++minus=

==+++++minus

1

0)]()()()()()([)(

入射電子電流 ( E I )

後方散乱電子電流 ( BSE I )

入射正イオン電流 ( I I )

入射電子による二次電子電流 ( SE I )

太陽光

入射正イオンによる 二次電子放出電流 ( SI I )

光電子放出電流( PH I )

電荷ビーム放出電流(IB)

bull内部帯電は衛星の外壁を貫通した放射線帯外帯の01MeV以上の電子が内部に侵入

bull基板間や同軸ケーブルの線間等の容量(コンデンサ)や誘電体に帯電 bull接地されてない導体片に帯電

bullその耐圧電圧を超えると その耐圧の弱い箇所 (材質の欠陥や針状突起など の箇所)で放電して故障に至る

内部帯電

(あるエネルギ-以上の粒子が入射光電子なし)

NASA-HDBK-4002より

パドルでの帯電放電メカニズム

宇宙環境の影響により 衛星がマイナス電位に帯電

高エネルギー電子等により カバーガラスはプラスに帯電 衛星とカバーガラスに電位差が生じる

電位差が大きくなると トリプルジャンクション近傍 の電界強度が増大していく

トリプルジャンクションで放電が発生する カバーガラスの帯電が緩和される

+ + + + + + + + + + + + + +

+ + + +

カバーガラス

太陽電池セル

基板(衛星構体)

トリプルジャンクション rArr 導体絶縁体宇宙環境の接点

持続放電

Substrate

Satellite Load

insulation sheet

Solar array cell

Cover glass

Arc current

Electrode

持続放電は衛星の電力消失につながる 持続放電のモードは以下の2通りがある

Substrate

Satellite Load

insulation sheet

Solar array cell

Cover glass

Arc current

Electrode

Solar array cell

Cover glass

セル-基板間短絡 セル間短絡

放電によって太陽電池セルと基板が短絡する 短絡によって負荷に電力が供給されなくなる

放電によって太陽電池セルとセルが短絡する 短絡によって負荷に電力が供給されなくなる

サブストーム(高エネルギー電子)との遭遇

+ + + + + + + +

二次電子光電子による絶縁体の帯電(局所帯電)

電位差発生

逆電位勾配

衛星構体が負に帯電(絶対帯電)

電位

時間

サブストーム

衛星構体 VS

乖離電圧 ∆V

カバーガラスVcg

0 プラズマ電位

軌道別帯電放電現象

トリプルジャンクションで 放電発生

放電発生

静止軌道

+ + + + + + + +

逆電位勾配

軌道帯電放電現象

トリプルジャンクションで 放電発生

極軌道 オーロラ電子(高エネルギー電子)との遭遇

プラズマ流入出による絶縁体の帯電(局所帯電)

電位差発生

衛星構体が負に帯電(絶対帯電)

放電発生

電位

時間

オーロラ電子

衛星構体 乖離電圧 ∆V

カバーガラス

0 プラズマ電位

データ中継技術衛星DRTS (こだま)の不具合

2002年10月 9日 静止軌道に打ち上げ

2003年

3月24日 406JST変化率異常モニタ故障検出(FDIR)

が動作しA系からB系に切り替わった

3月25日 410JSTにB系のみ異常検知

4月 3日 327JSTにB系のみ異常検知

5月28日 124JSTにB系のみ異常検知

6月 6日1537JSTにB系のみ異常検知

ESA

DRTS ESA スパイクノイズと 電子フルエンスの比較(赤の丸が異常検知)

larr閾値

この事実を基に静止軌道における内部帯電警報システムを構築 2004年4月より運用開始

不具合が宇宙環境によるものであるか 判断する際のポイント

不具合の発生した時刻に太陽フレアや磁気嵐等の宇宙天気の大きな変動が起きていれば不具合に関係している可能性が高い但し帯電など放射線の積算的効果の伴う現象については発生から1週間位さかのぼり環境がどのように推移してきたかを考慮する必要がある

磁気嵐が起きると静止軌道に急激な粒子の増加現象が起きこれにより衛星帯電が引き起こされたりする(予測に利用可能)

地方時(真夜中や朝方か)や季節(春秋)を考慮する

低軌道衛星においてはSAA外帯のrdquo角ldquo及び極通過時に不具合

が起きやすいので衛星の位置(緯度経度)が重要

事象を把握する上で単発現象か数回起きている現象か周期

(時間同じ軌道等)的に発生している現象か

話の流れ

技術データ取得装置(TEDA)の概要と成果 bull 主な成果 bull 不具合解析例

宇宙天気のリスクと対策 bull 宇宙環境による衛星システムへの影響 bull 宇宙環境を原因とする不具合の割合推移部位 bull 静止軌道不具合 bull 対策

今後必要な観測項目

まとめ

宇宙天気のリスク -宇宙環境によるシステムへの影響 -

プラズマ (IRI)

帯電 (MUSCAT)

衝突 (AUTODY)

抗力 表面劣化

紫外線X線 中性粒子 (MSIS)

放射線粒子 (AE8AP8JPLSHIELDO

SE-2)

メテオロイドデブリ (MASTER2005

ORDEM)

電離損傷 変位損傷

bull電子回路の劣化 bull光部品の劣化

bull太陽電池セルの劣化

SEU (CREME96)

bullデータエラー bull画像ノイズ

bullシステム停止 bull回路損傷

bull熱的電気的光学的特性の劣化

bull構造の劣化 bullコンタミ

電磁パルス bull電源出力低下

bull損傷

bullトルク bull軌道落下

bull構造 損傷 bull減圧

bull電磁パルス

NASAの報告 -GNampCに注目-

1974年から1994年に起きたNASAと空軍の衛星故障の内20~25が宇宙環境に起因していたと報告

1990年から2001年に米国欧州カナダ日本の企業や政府機関が開発した衛星を調べた過去の宇宙ミション損失の大部分はロケットの失敗であったが1998年衛星損失の大部分は軌道上の衛星障害となっている多くの最近の異常は太陽電池アレイ及びバッテリの危険が増加している静止軌道通信衛星の設計寿命はこのサブシステムの故障の危険が増加している

喪失等の大きな誘導制御(GNampC)の不具合に注目 GNampC不具合の内宇宙環境による 不具合は約3と報告されている

軌道上衛星のタイプ別数

NASAの報告(続き)

衛星設計寿命における不具合発生時期 事故率と軌道

軌道別の衛星数 サブシステム不具合

宇宙環境を原因とする不具合の割合 -JAXAの場合-

2002年~2008年に運用された軌道上不具合情報が比較的充実している11衛星(利用衛星7機科学衛星4機)の結果宇宙環境によるも

のは約15過去のデータよりも割合が少ない

合計83件 合計35件

(1)利用衛星 (2)科学衛星

設計検討 不足 48

製造不良 8

軌道上環境 17

偶発故障 6

調査中 13

原因不明 8

設計検討

不足 61

製造不良 4

軌道上環境 11

偶発故障 6

調査中 9

原因不明 9

不具合発生部位の割合

不具合発生部位の割合

Brent Robertson Eric Stoneking ( 1990-2001NASA Goddard Space Flight Center )

Satellite News Digest -静止軌道不具合-

Satellite News Digest (SND) (http wwwsqt-indexcouk) で1997年~2009年の期間に静止軌道で95件の不具合が報告されている その内運用ミスや設計ミスなどを除くと32件(約33)は宇宙環境によるものであった 過去のデータより割合が多い

Choiら1)はこれら不具合の地方時と季節依存性を確認した その結果2100LT~900LTで約72の不具合が発生し900LT~2100LTは9件(約28)であった またこの9件は全て姿勢制御の不具合だった 静止軌道衛星不具合のほとんどは真夜中と朝方で起きており磁気嵐に伴い磁気圏尾部から注入した粒子による表面帯電が不具合の主原因と結論づけている

1) Ho-sung Choi et al Analysis of GEO spacecraft anomalies Space weather relationships Space Weather Vol 9 S06001

太陽活動と静止軌道衛星不具合例

ANIK-E1E2

ANIK-E1

複数の衛星で故障

Galaxy-15

帯電放電不具合 -ANIK-E1amp2Telstar401-

Jan 1994 ANIK-E1 amp E2事故時の環境 - Joe H Allen

1週間

太陽活動下降時期の電子増加

2MeV以上電子

copyNOAA Web

フラックスが3桁急増

Jan 1997 Telstar401事故時の環境

静止軌道の急激な電子増加

太陽極大期太陽フレアによる衛星障害 - 2003年10月~11月-

10486981048698 永久故障 4 10486981048698 安全モード又は運用を一時停止 31 10486981048698 データ内容の「誤り」の増加搭載コンピュータの誤動作 5

httpwwwsat-ndcomfailures等のデータによる 合計 40件

-Barbieri and Mahmot

米国極軌道気象衛星NOAA-17の改良型マイクロ波観測装置AMSU-A1 (Advanced Microwave Sounding Unit)のスキャナーが永久故障 米国気象衛星GOES -8号のX線センサがOFFになり復帰しなくなった

e-birdに深刻な不具合が発生 不具合は20本のトランスポンダ全てに影響

火星周回中の探査機「マーズオデッセイ (Mars Odyssey)」の観測機器放射線観測装置「Martian Radiation Environment Experiment (MARIE)」が太陽活動の影響により10月28日から適切に作動しなくなった データ中継技術衛星(DRTS)「こだま」 太陽捕捉モードに移行

太陽陽子

帯電放電不具合-Galaxy15(局所的的現象)- 2

5 M

eV

65

MeV

11

5 M

eV

GOES 14 ----- GOES 15 ----- GOES 11 -----

Satellite Locations

Galaxy 15 anomaly

2010年4月5日9時48分UTCは磁気嵐及びCMEが発生するなど宇宙環境は非常に荒れていたGalaxy15衛星は真夜中側に位置し宇宙環境の影響を受けやすい

位置にいたことから宇宙環境による不具合である可能性が高いということで原因追及がなされた高エネルギー粒子が引き起こす代表的な衛星不具合現象として3つ(表面帯電内部帯電SEUシングルイベントバーンアウトSEL)の可能性を検討した

チームの報告書によると磁気圏尾部からの熱電子の流入による放電が原因であったと結論付けられたGalaxy15衛星の近くにはGOES-11衛星が位置していたがGOES-11衛星には不具合を発生しておらず本現象は局所的な現象と推測される

衛星開発段階における対策 JAXAの不具合解析の結論

bull 2002年~2008年に運用された11機の衛星不具合を解析 宇宙環境による不具合は偶発故障のみ(全体の約15)確率的には想定範囲内ではあるがその影響を最小限とするためディレーティング運用モード寿命についての研究に取り組む

bull 設計基準試験の充実検証確認の強化技術成熟度(TRL)評価の徹底各々の境界制約条件の明示化等により検証不足抜けの防止有効なピアレビューに結びつける

冗長系(同じハードウェア機能の冗長)柔軟性の設計(ソフトハードの対応)

bull 従来の故障が起きないようにする設計に対してGOSAT(いぶき)では重要部

品を二重化することにより故障する可能性は上がるが故障しても衛星バスの運用や観測が続行できる可能性がより高くなるように設計した

運用における対応

bull 宇宙天気監視ーロケット打ち上げ及び宇宙飛行士支援 数日前に今後の宇宙環境の推移を把握(MXレベルのフレアの発生確率)

bull X線の増加で太陽フレア発生を検知したら高エネルギー粒子の発生をいつまで 気を付ければ良いか判断(発生位置で大凡を推定するが課題は多い) SPEが発生した場合(特に10MeV以上100MeV 以上の陽

子)最大値フラックス値の推定 ピーク値を予測(特に閾値に近くなった時に重要)

bull 衛星運用 bull 太陽フレア磁気嵐警報(X線陽子及びkpが閾値を超えた

時に警報を発信)2003年10月より運用開始 bull 内部帯電警報(2日後の静止軌道上の高エネルギー電子(>1

Me) の増加を予測し 閾値を超えた時に警報を発信) 2004年4月より運用開始

話の流れ

技術データ取得装置(TEDA)の概要と成果 bull 主な成果 bull 不具合解析例

宇宙天気のリスクと対策 bull 宇宙環境による衛星システムへの影響 bull 宇宙環境を原因とする不具合の割合推移部位 bull 静止軌道不具合 bull 対策

今後必要な観測項目

まとめ

計測対象計測項目 計測対象 粒径100μm以上のデブリメテオロイド 計測項目 デブリ粒径衝突頻度

基本原理

厚さ約125μmの絶縁性のポリイミドフィルム表面に 100μm周期で直線状の細長い導線(太さ50μm)パターンを形成導線の破断を電気的に検知することによりデブリの衝突(貫通)を検知する破断した導線の数導線の幅ピッチからデブリサイズを計測する

微小デブリ計測技術の概要

衝突孔の例(衝突試験ISAS) - 衝突粒子 SUS 309 microm - 衝突速度 52 kms

HTV5号機によるセンサ機能のフライト実証

35cm

46cm

FY2013機能実証モデル

検出線幅 50 μm 検出線間隔 100 μm フィルム厚 lt 20 μm 有感領域 30times33cm 検出線総数 3300本

サイズ 50times39times4 cm (筐体を含む)

重量 約15kg(筐体を含む)

消費電力 2W(最大4W)(他センサ含む)

テレメトリ 02 bps

宇宙環境観測装置KASPERの一部としてデブリセンサSDMを搭載 FY2013に製作開始今年8月に打ち上げ予定)

まとめ(その1)

衛星不具合の主な原因は帯電放電シングルイベント放射線損傷である今後デブリ環境が重要になると予測される

静止軌道では商用衛星が多く運用されており宇宙環境の変動把握は重要この領域で運用する衛星が気を付けなければいけない環境として

1太陽フレアに伴う高エネルギー粒子 2太陽活動下降期による静止軌道電子の増加 3磁気嵐に伴う磁気圏尾部から注入する粒子 などがあげられる

まとめ(その2)

不具合軽減の取り組み bull 開発時は宇宙環境条件(トータルフラックス及び最悪条

件)を明確にし設計(冗長系柔軟性の設計ディレーティング及び運用モード寿命について研究)試験の充実検証の充実を図る

bull 運用段階に入ったならば宇宙環境を監視し警報等で故障を防ぐ

予測課題 bull 太陽フレアに伴う高エネルギー粒子発生後フラックス

ピーク値の推定

bull 衛星により不具合の起きる閾値は異なるが閾値をこえる急激な電子フラックスの増加と継続時間の予測

bull 局所的な磁気嵐に伴う磁気圏尾部から注入する粒子

宇宙環境グループは宇宙ステーションと衛星プロジェクトの安全な遂行に貢献しています

ご静聴ありがとうございました

補足資料

不具合原因の推移 bull 宇宙天気を大きく左右する要因の1つとして約11年の太陽活動変化が挙げられる

bull 太陽活動下降時期(太陽変動CME)と極大期(フレアCME)に衛星で不具合が増加するそれにより不具合原因の割合が変わる

-Koons et al The Impact of the Space Environment on Space Systems Aerospace Corp report no TR-99(1670)-1 20 July 1999 -2009 preliminary study (unpublished)

何故不具合は減らないか

bull 部品 放射線に対する感受性が高くなっている bull 微細化が進み同時にフォールトするノードが増え同時にエ

ラーとなる論理ノードやメモリセルが増加する微細化によってメモリセルは小さくなるので記憶容量当たりでみるとエラーの発生率は下がるしかし半導体チップの記憶容量やゲート数が増えるので半導体チップ当たりのエラー発生率は微細化とともに上昇するまた蓄積電荷が小さくなり感受性が高くなってきている

bull システム 大型化大電力化運用長期化 bull 1990年代末以降静止衛星の電力が10kWレベルになったしか

し設計検証技術データ蓄積が遅れている改善されつつあると推測される

放射線による影響の概要

粒子 エネルギー又はLET

代表的な影響

陽子 100keV-1MeV 1-10MeV 10-100MeV gt50MeV

表面損傷 表面材料と太陽電池の損傷 放射線損傷(電離非電離損傷の両方)センサーへのノイズ シングルイベント効果

電子 10-100keV gt100keV gt1MeV

表面帯電 深部帯電現象(deep-dielectric charging)センサーへのノイズ太陽電池の損傷 放射線損傷(電離)

重イオン gt1MeV-cm2mg シングルイベント効果

注エネルギー及びLETは個々の部品等により異なりますあくまでも目安です

耐放射線設計手順

軌道条件

ミッション期間

環境条件設定

トータルドーズの予測

1MeV電子換算被曝算出

NIELの換算

LETフルエンス算出

陽子フルエンス算出

対  策  の  検  討

対  策  の  検  討

対  策  の  検  討

放射線による劣化率予測

劣化率予測 特性予測

耐性データ

放射線による劣化率予測

耐性データ

劣化率予測アレイ出力劣化予測

感受性データ

シングルイベント発生率予測 致命度解析

衛星内質量分布

(2)

部品材料の選定

他の要因による劣化率予測

(2)(2) (3)

回路設計等NO

OK

アレイ構造 セル選定

他の要因による劣化率予測 アレイ設計(2)

(2) (2) (2) (3)

衛星内質量分布 部品選定(2)

(2) (2)(3)

NO

OK

NO

OK

(1) 環境モデルマージを含む(2) 部品レベルの検討(3) アセンブリレベルでの検討(4) 設計マージン環境モデル   マージを含め大丈夫か

トータルドーズ

太陽電池アレイの劣化

シングルイベント効果

回路設計

補足放射線太陽宇宙線銀河宇宙線

NEILを用いたダメージファクターの算出

対  策  の  検  討

放射線による劣化率予測

劣化率予測 特性予測

耐性データ

(2)

部品材料の選定

他の要因による劣化率予測

(2)(2) (3)

回路設計等NO

OK

衛星内質量分布 半導体デバイスの変位損傷

(1)

(4)

(4)

(4)

(4)

各軌道における放射線環境

1E+10

1E+11

1E+12

1E+13

1E+14

1E+15

1E+16

1E+17

1E+18

1E+19

1E+20

001 010 100 1000

捕捉

電子

の積

分フ

ルエ

ンス

[m

2 ]

エネルギー[MeV]

各軌道における電子捕捉積分フルエンス(3年間)

LEO

EOS GEO

MEO

GTO

GEO 軌道傾斜角 0deg 高度36000km GTO 軌道傾斜角 18deg 高度 360km~36000km MEO 軌道傾斜角 51deg 高度 10000km EOS 軌道傾斜角 98deg 高度705km LEO 軌道傾斜角 29deg 高度 600km

1E+12

1E+13

1E+14

1E+15

1E+16

1E+17

1E+18

1E+19

1E+20

01 10 100 1000

捕捉

陽子の

積分フルエン

ス[

m2 ]

エネルギー[MeV]

各軌道における捕捉陽子積分フルエンス(3年間)

MEO

GTO

GEO

EOS LEO

放射線による部品材料の影響

総照射線量 (TIDTotal Ionising Dose )

電離損傷

バイポーラTrの電流増幅率の低下リーク電流の増大

γ線で評価

トータルドーズ効果

変位損傷 (DDDisplacement Damage )または 非イオン化エネルギー損失 (NIELNon-Ionising Energy

Loss )

変位損傷(格子欠陥の生成)

電荷輸送効率の低下 (CCD)太陽電池の効率低下等

電子陽子により評価

シングルイベント効果

1個の荷電粒子の入射により発生する誤動作

ソフト(Latch-Up Burnout) エラー又は ソフト (Upset) エラー

陽子及び重イオンで評価

トータルドーズ効果

+ - + + - + - + - - + + + + -

ゲート酸化膜

電離

格子欠陥

正電荷捕獲

+ 正孔 - 電子

電極

(Silicon oxidenitride)

荷電粒子

反跳原子

ゲート絶縁膜中に電荷が蓄積することによるMOSトランジスタのしきい電圧(MOSトランジスタがオフからオンに変化するゲート電圧)の変化をもたらすただ

し最近の最先端チップはゲート絶縁膜がきわめて薄くなっているこのためゲート絶縁膜よりもフィールド絶縁膜(隣接するトランジスタを電気的に分離する絶縁膜)での電荷蓄積が相対的には大きな問題になってきている」

シングルイベント効果

メモリセルはNチャンネルとPチャンネルMOSFETより構成されメモリ情報は回路ノード12の電位の

高低により記録している空乏層の広がっているPN接合12の領域に

重イオンが入射した場合電荷の発生と空乏層内への少数キャリアの収集が起こるこの収集電荷量が回路の耐量を越えた場合(c)に示すように反転が起こる(ソフトエラー)一方pウエル-N基板接

合の空乏層内に電荷収集量が起こりえる耐性を越えると寄生的に存在するPNPNサイリスタ構造がオ

ンし電源と基板間に大電流が流れる状態が生じる(ラッチアップ)

シングルイベントメカニズム -陽子と重イオンの違い-

エラー発生率の計算

線エネルギー付与(LET) (linear energy transfer)

電離性放射線が物質中を通過する際飛程の単位長さ当りに平均して失うエネルギーをいう各種の放射線のうちX線γ線はLETが小さいので低LETといいα線中性子線その他重イオン核分裂破片のLETは大きいので高LETという MeVμmMeV(gcm2)やMeV(mgcm2)で表される

南大西洋異常(SAA) bull 地球の自転軸と磁気軸のずれ

darr bull 放射線帯が自転軸に対して非

対称

bull 南大西洋上空では放射線帯内帯が低高度に落ちてきているこの領域を南大西洋異常域(SAA South Atlantic Anomaly)と呼ぶ

bull 地球観測衛星ではSAAで放射線帯陽子の影響を受ける

Single Event Lachup

シングルイベントと陽子分布

MOS-1衛星(高度909km軌道傾斜角99度)で発生したシングルイベントと 陽子30MeV以上の等高線マップを重ね合わせた結果

NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)

bull 入射粒子が電離によらず与える損傷非イオン化損失

低軌道での電子フラックスと 不具合の発生場所

南大西洋異常(SAA)と極の角

高度800kmでの電子フラックス図極の角(polar horn)とSAAを示す

太陽粒子線 bull 太陽高エネルギー粒子線(SPE Solar Proton Events)は太陽フレア とコロナガス噴出 (CMECoronal Mass Ejections )により引き起こされる bull フレアのスペクトルは可変であるためあるエネルギー域における最悪状態イベントは必ずしも別のエネルギー域における最悪条件ではない 1972年8月のイベント 10~70MeVの粒子が最も多かった 1989年10のイベント 1972年8月のイベントに比べ低エネルギー領域 高エネルギー領域が明らかに激しかった

フルエンス 105 to 1011 cm-2

変動期間 1日から数日

ldquoBastiliardquo Solar Event 14 July 2000

Carrington Flare

84

(LW Townseed) Carrington Flare(1859年) Carrington Flare による30MeV以上トータルFluenceを118times109cm-2で規格化 ~1989年フレアの約13倍(シングルイベントの評価で使用) ~1991年フレアの約9倍 2012年7月23日にキャリントンイベントとほぼ同等の爆発現象が太陽あるいは太陽の周りで起きていたということがNASAの太陽観測衛星「STEREO」の解析から発表された

放射線対策 bull 放射線シールドを付加し放射線を減衰させる

bull 放射線耐性の強い部品(SOI(Silicon On Insulator)技術による耐放射線部品)材料に変更する

bull 放射線による損傷を吸収するために回路または構造上のマージンを持たせる bull ソフト的なエラーに対しては エラー検出訂正機能や多数決

機能等でソフト的エラーが起きてもシステムが機能するようにしたフォールトトレラント機能を付けて対処する ICのハード的故障に対しては ラッチアップ耐性の強い部品を選定するしかないが 電流制限回路を付ける対策も採られる パワーMOSFETに対しては部品選定 電源電圧を規格値の半分以下に落とす等の対策を採る

SOI技術

表面帯電への対策例

表面の物体間を導線で結線する

太陽電池のカバーガラスを導電性被膜付き(酸化インジウムITO)にする

熱制御材表面にITOを被覆する

熱制御材は高誘電率のテフロンの使用を避け 高伝導度耐環境性に優れたブラックカプトンを使用

イオンエンジンの中和器で能動帯電制御

内部帯電への対策例

アルミで3mm厚さに相当するシールドで囲む(Faraday Cage)

テフロンやカプトンなどの誘電体材料の内部での使用量を最小限に押さえる

回路基板やコンフォーマルコーティングは誘電体なので電流リークパス(1012Ωcmまたは1012Ωcm2

程度)を必ずつける

特にスポット的な放射線シールドの金属材には必ず電流リークパスをつける

帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備

衛星モデル作成

材料物性テーブル設定

宇宙環境パラメータ設定

Converter

転送ディレクトリ 解析データファイル

転送

解析ディレクトリ生成 解析結果 進行状況チェック ファイル操作

MUSCAT 解析エンジン

解析結果 表示

パラメトリックラン

オプション 解析

大型パネル実験(35mtimes11m) クーポンパネル実験(26cmtimes16cm)

環境模擬試験 環境模擬試験

MUSCATに使用する物性値設計標準制定のための知見などを得ることを目的に軌道上の宇宙環境を模擬した地上試験を行っている これらの試験では放電の発生頻度や電圧閾値放電発生による太陽電池パネルや搭載機器への影響を検証している

放射線計測装置の原理

bull その粒子が物質を通過する際のエネルギー損出率が粒子の電荷(原子番号)Zの二乗に比例すること(Bethe-Blochの式)を利用する

S2

E

ΔE Ersquo

S1 S3

  • 宇宙機の設計のための宇宙環境
  • 話の流れ
  • 話の流れ
  • TEDA(技術データ取得装置)(国産部品の宇宙環境での実証の必要性)
  • ETS-VTEDA(技術データ取得装置)誕生前の部品の宇宙実証の背景
  • スライド番号 6
  • スライド番号 7
  • スライド番号 8
  • スライド番号 9
  • 図6太陽黒点数と静止軌道電子 (>04MeV ) Flux の変動 (ETS-V搭載DOMによる観測)
  • スライド番号 11
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの開発(理研東大と共同で宇宙環境計測の充実)
  • ETS-VI(きく6号)打ち上がったがGEOに行かずGTOに留まる
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの成果
  • スライド番号 15
  • スライド番号 16
  • スライド番号 17
  • ADEOS搭載TEDA(世界2番目の異常宇宙線ACR)
  • BBND (ボナー球中性子検出器)
  • スライド番号 20
  • ISS搭載BBNDの成果(約8か月)
  • スライド番号 22
  • MDS-1搭載放射線吸収線量モニタ(SDOM)
  • 放射線帯変動モデルの開発MDS-1 065 MeV 電子フラックス
  • 変動パラメータの選択 (1 cycle solar activity)
  • 変動パラメータ- Tavg の定義-
  • 065MeV 電子 L値-Tavg マップ
  • 13MeV 陽子 L値-Tavg マップ
  • 電子観測とMDS-1モデルの比較
  • 放射線帯フラックスピークの変動
  • 陽子観測とモデルの比較
  • 電子(035~078MeV) 1日の変動予測GOSAT軌道
  • 電子(035~078MeV) 変動の信頼度水準(1日)GOSAT軌道
  • MDS-1 model と AE-8 modelとの比較1日
  • 話の流れ
  • 2003年10月 みどり号の全損事故(複合現象)
  • 衛星帯電の基本式
  • 内部帯電
  • パドルでの帯電放電メカニズム
  • スライド番号 40
  • スライド番号 41
  • スライド番号 42
  • データ中継技術衛星DRTS (こだま)の不具合
  • DRTS ESA スパイクノイズと電子フルエンスの比較(赤の丸が異常検知)
  • 不具合が宇宙環境によるものであるか判断する際のポイント
  • 話の流れ
  • 宇宙天気のリスク-宇宙環境によるシステムへの影響 -
  • NASAの報告-GNampCに注目-
  • NASAの報告(続き)
  • 宇宙環境を原因とする不具合の割合-JAXAの場合-
  • 不具合発生部位の割合 
  • Satellite News Digest -静止軌道不具合-
  • 太陽活動と静止軌道衛星不具合例
  • スライド番号 54
  • スライド番号 55
  • スライド番号 56
  • 衛星開発段階における対策
  • 運用における対応
  • 話の流れ
  • スライド番号 60
  • スライド番号 61
  • まとめ(その1)
  • まとめ(その2)
  • 宇宙環境グループは宇宙ステーションと衛星プロジェクトの安全な遂行に貢献しています
  • 補足資料
  • 不具合原因の推移
  • 何故不具合は減らないか
  • 放射線による影響の概要
  • 耐放射線設計手順
  • 各軌道における放射線環境
  • 放射線による部品材料の影響
  • トータルドーズ効果
  • シングルイベント効果
  • シングルイベントメカニズム-陽子と重イオンの違い-
  • エラー発生率の計算
  • 線エネルギー付与(LET)(linear energy transfer)
  • 南大西洋異常(SAA)
  • Single Event Lachup
  • シングルイベントと陽子分布
  • NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)
  • 低軌道での電子フラックスと不具合の発生場所
  • 南大西洋異常(SAA)と極の角
  • スライド番号 83
  • Carrington Flare
  • 放射線対策
  • スライド番号 86
  • スライド番号 87
  • 帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備
  • スライド番号 89
  • 放射線計測装置の原理
Page 9: 宇宙機の設計のための宇宙環境の方針から国産部品開発(42品種)が実施された。 . 半導体電子部品は耐放射線性を加味して、人工衛星(特に

ETS-VTEDA 熱制御材劣化モニタ(TDM)の

10年間の計測データ(太陽光吸収率α 赤外輻射率ε )

ε

α

図6太陽黒点数と静止軌道電子 (>04MeV ) Flux の変動 (ETS-V搭載DOMによる観測)

bull 1993-1994年にかけ各国の静止衛星で不具合や故障が増加したJAXAではETS-V搭載放射線吸収線量モニタ(DOM)による長期的観測により太陽活動下降期の高エネルギー電子の増加を確認しておりこれにより静止衛星に影響が出たことが明らかとなったなお同様の不具合や故障増加が11年前の太陽活動下降期である1982-1983年にも発生していたことが分かった

bull 現在はこれらの電子の環境でも太陽電池パドル等に不具合が起きらないことを地上試験で確認してきている

静止軌道における 高エネルギー粒子の長期的観測結果と宇宙機への影響

0

20

40

60

80

100

120

140

160

180

1000

3000

5000

7000

9000

11000

13000

15000

17000

1980

1981

1982

1983

1984

1985

1986

1987

1988

1989

1990

1991

1992

1993

1994

1995

1996

1997

太陽黒点数

電子

Flu

x (個

数(cm2strsec))

電子Flux

太陽黒点数

Miyoshi et al[2004]

太陽活動と放射線帯分布の変動

ETS-Ⅵ搭載TEDAの開発 (理研東大と共同で宇宙環境計測の充実)

目的

bull 新たに開発された国産部品材料等の宇宙環境下での劣化特性を同一条件で計測すると共に劣化の原因となる宇宙環境を同時に計測し比較解析する

bull 新規開発の部品材料の宇宙実証データフライト実績を得る

bull 地上試験として行ってきた宇宙環境を模擬した試験方法の検証を行う

bull 帯電現象及びガスジェット等による人工衛星の汚染の経時変化の取得

bull 衛星設計に用いている宇宙環境モデル(放射線磁場等)の検証 bull 宇宙環境に起因する人工衛星の故障や不具合現象の解明

ETS-VI(きく6号)打ち上がったが GEOに行かずGTOに留まる

bull 1994年(平成6年)8月28日16時50分打ち上げ

bull H-IIロケット試験機2号で種子島から打ち上げ

bull アポジエンジン不具合でGTO軌道に留まる

bull 急遽楕円軌道用に新たな制御プログラムを設計製作し地上検証を行った上で衛星にアップロードしこの問題を解決した

bull 最終軌道ペリジ約8600kmアポジ約38600km軌道傾斜角約13度(3日5周期回帰)で2年間運用

bull TEDAのデータ公開で宇宙環境データが役に立つ事を宣伝(SEESを立ち上げデータを公開した)

ETS-Ⅵ搭載TEDAの成果

トータルドーズ劣化や太陽電池劣化は静止衛星で10年かかった同じ評価を1年間でできた

シングルイベントの発生頻度の高度分布が取得できた (高度8千km~3万8千kmの範囲)

バンアレン帯の放射線帯の電子陽子重イオンの高度分布データを取得し放射線帯モデル日本モデルを作成(あけぼの衛星データ含む)

この成果はGTO軌道を最初から狙うMDS-1(つ

ばさ)プロジェクトへとつながった 米国は1990年7月25日CRRESS(Combined Release and Radiation Effects Satellite )衛星を打ち上げ

研究開発の流れ

計測装置開発

データ収集 計画

環境計測

研究試作

衛星への影響解析で必要なデータ及び性能を機器開発に反映する

高エネルギー軽粒子 重イオン 中性子 帯電 原子状酸素 デブリ 新たな現象(問題点)

軌道上不具合評価 宇宙環境モデル

宇宙環境データベース 警報

衛星設計基準

有人活動への反映

宇宙天気予報 システム

国内外機関とのデータ交換

打上げ衛星運用

放射線環境評価(ISOを含む)の見直し 宇宙環境モデルの最適化 効率の良い宇宙機の開発 (シールド厚最適設計) 低コスト化(部品仕様の見直し) 短期間開発(民生品の利用)

フィードバック

成果目標

プロジェクト支援

宇宙環境計測装置(放射線磁場)小型化の流れ

9kg 10cm 10cm 10kg 14W 18W

1cm 52g 480g 1cm 12W以下 15W

磁力計(480g->52g)

みどり2搭載用 つばさかけはしきぼう搭載用 Jason-2GOSAT搭載

ETS-VIII搭載用 QZS搭載用

電子(05~50MeV) 陽子(1~160MeV) α粒子(4~200MeV)

電子(04~5MeV) 陽子(7~48MeV) α粒子(30~140MeV)

plusmn655364096102456nT plusmn655364096nT

16bit 20bit

電子(003~20MeV) 陽子(04~250MeV) α粒子(08~400MeV)

LPT-S 216x182x175 mm 62 kg LPT-E 240x165x 93 mm 28 kg

積算吸収線量計

軽粒子モニタ(10kgー>9kgー>7kg最小2kg)

17times10times5mm749g

ISSKibou(09-)

GEO

LEO

ETS-V (87-97)

ADEOS-II(02-03)

ETS-VIII(06-) DRTS(02- )

STS-89(98)

MDS-1(02-03) ETS-VI(94-96)

ETS-VII (97-99)

宇宙環境計測の流れ ISSUS-Lab(01)

ひまわり1-4(78-99)

ERG(16予定)

ALOS(06-11)

GOSAT(09-)

Jason-2((08-)

Jason-3(15予定)

GTO

QZS(09-)

ADEOS (96-97)

ADEOS搭載TEDA (世界2番目の異常宇宙線ACR)

bull シングルイベント評価のための重イオン観測であったが世界2番目の異常宇宙線を観測することができた

bull 低軌道の衛星は地球磁場が邪魔となって宇宙線(重イオン)を観測するに向いていないと考えられていたが異常宇宙線を観測するのにすぐれていることが明らかとなった

T Kohno et al Radiation Measuremets 30 5 PP639-644

BBND (ボナー球中性子検出器)

bull 1994年(平成6)年7月に中性子計測のために ボナー球ホスウイッチ方式及びシンチレーションファイバーの3種類のセンサの研究をスタート

bull シャトル打ち上げ計画の管理者から搭載装置の検討依頼がありBBNDのSTS-89への搭載が決定した(1997年1月頃)

bull 振動試験で装置内のボルトが外れるという不具合もあったが約1年という非常に短期間で搭載品を開発することができた

bull コスト低減のために構造解析を自前で実施したりデータ処理ソフトウェアも内作した

熱中性子に対して高い感度を持つ6個の3Heガス入り比例計数管で構成して

いる中性子は電荷をもたないのでそれ自身には電離作用がないが軽い原子の3He気体では反跳原子を生じたり中性子の核反応(3He+nrarrp+3H+765KeV)によって荷電粒子を生じるので間接的に電離を起こす下図のように気体中に二つの電極を置き高電圧(1000V)をかけておくと中性子の入

射によって気体中に生じた陽子イオンと電子のイオン対がそれぞれの電極に向かって流動し外部回路に電離電流が流れるこの電気パルスにより中性子を計測する

ボナー球型中性子モニタの概要

Polyethylene Sphere3He proportional Counter

51 φ 51 φ81 φ110 φ150 φ230 φ

Sensor6 Sensor5 Sensor4 Sensor3 Sensor2 Sensor1

Covered by Gadolinium

[mm]3Heガス入り比例計数管の原理

6個のボナー球の断面図

3Heガス入り比例計数管とポリエチレン減速材

H Matsumotoet al Radiation Measurements 33 (2001) 321-333

ISS搭載BBNDの成果(約8か月)

実験期間中の平均的な等価線量等量率 (2001年3月23日~2001年11月14日)

太陽フレア時(2001年11月4日)

等価量等量率の平均は94μSv日で年率に換算すると34mSv年となるこれは地上において自然界から受ける等価線量当量率の約14倍に相当する 実験期間中に多数の太陽フレアが発生した2001年11月4日の太陽フレアにより019mSVの増加を観

測したこれは自然界から受ける等価線量当量率の約1か月分に相当するしかしBBNDの約8か月

の実験期間中の全等価線量当量に対するこの太陽フレアの影響の寄与分は1以下であった また搭載位置による環境の違いも確認された

H Koshiishiet al Radiation Measurements 42(2007) 1510-1520

1)船内の計測結果より低エネルギー側で2~3桁高エネルギー側で1~2桁低い 2)船内より船壁が薄く中性子が少ない環境より自然のアルベド中性子環境に近い

中性子被曝線量の ISS船外(SEDA-AP)と船内(STS-89)の比較

MDS-1搭載放射線吸収線量モニタ(SDOM) SiTungstenAlBGO

② ⑦

⑧⑧

① Collimator ② Window③ SSDs ④ Plastic Scintillator⑤ Anticoincidence Scintillator(ACS)⑥ Beam Stop⑦ Scintillator PMT⑧ ACS PMT

運用期間 2002年2月 ndash 2003年9月 軌道 -軌道傾斜角 285deg 1 lt BB0 le 84 -高度 500 km times 36000km 11 le L le 10 -軌道周期 約10時間35分 -スピンレート 5rpm

計測エネルギー範囲 Electron 04- 9MeV (5bins) Proton 09-210MeV (12bins) He 6-140MeV (4bins) Heavy Ion 15- 60MeVnuc (1bin) G-Factor 001cm2sr

放射線帯変動モデルの開発 MDS-1 065 MeV 電子フラックス

変動パラメータの選択 (1 cycle solar activity)

太陽風速度(SW)

太陽黒点数(R)

Ap指数

F107

変動パラメータ- Tavg の定義-

1日後の予測

パラメータスケールの時間平均 ApTavg SWTavg F107 Tavg

T days

放射線帯の構造は変動パラメータ値の大きさと継続時間に相関がある

065MeV 電子 L値-Tavg マップ

APTavg

SWTavg

13MeV 陽子 L値-Tavg マップ

APTavg

F107Tavg

電子観測とMDS-1モデルの比較

80 175

放射線帯フラックスピークの変動

80orbits (平穏時) 175orbits (擾乱時)

陽子観測とモデルの比較

電子(035~078MeV) 1日の変動予測GOSAT軌道

0

50

100

150

200

250

1E+09

1E+10

1E+11

1E+12

1984 1986 1988 1990 1992 1994 1996 1998 2000 2002 2004 2006 2008

Flue

nce[

ecm

2M

eVd

ay]

Launch day

FluenceSSN

Worst case Nov 12003

電子(035~078MeV) 変動の信頼度水準(1日)GOSAT軌道

00

01

02

03

04

05

06

07

08

09

10

88 90 92 94 96 98 100 102 104 106 108 110 112 114

Con

fiden

ce le

vel

Fluence[LOG10 ecm2MeVday]

AE-8 MAX

AE-8 MIN

MDS-1 model と AE-8 model との比較1日

0

20

40

60

80

100

120

140

160

180

1E+09

1E+10

1E+11

1E+12

1995 1997 1999 2001 2003 2005 2007 2009

Flue

nce[

ecm

2M

eVd

ay]

Launch day

Fluence(JAXA)Fluence(AE8)SSN

話の流れ

技術データ取得装置(TEDA)の概要と成果 bull 主な成果 bull 不具合解析例

宇宙天気のリスクと対策 bull 宇宙環境による衛星システムへの影響 bull 宇宙環境を原因とする不具合の割合推移部位 bull 静止軌道不具合 bull 対策

今後必要な観測項目

まとめ

2003年10月 みどり号の全損事故 (複合現象)

極域のオーロラ帯を通過中に電力ハー

ネスを巻いているMLIが高エネルギー電

子により帯電

MLIが接地されていなかったため内側

のハーネスとの間に1kV以上の電位差が

発生

MLI内のガス密度が発電開始に伴う温度

上昇により上昇

ハーネス被覆の傷により露出したハーネ

ス芯線とMLI内面の間で放電発生

単発の放電が隣接するハーネスに飛び火

してハーネス間の短絡

アーク放電が次々と伝搬していきハー

ネス全体が焼損

故障推定箇所 (大電力ハーネス部)

bull詳細報告書は文部科学省 宇宙開発委員会のHP参照

httpwwwmextgojpb_menushingiuchuureports04080901htm

bull 人工衛星の電位 bull 人工衛星は電気的に宇宙に浮いている bull 宇宙機構造体が接地点 bull 宇宙機への流入電流と流出電流のバランスによって宇宙機電位が決まる bull 各電流成分は宇宙機電位Vの関数として表され定常状態では式を下式を満たす

衛星帯電の基本式

( ) dtIIIIIIIC

V

dtdVCVIVIVIVIVIVIVI

BPHBSESISEIE

BPHBSESISEIE

int +++++minus=

==+++++minus

1

0)]()()()()()([)(

入射電子電流 ( E I )

後方散乱電子電流 ( BSE I )

入射正イオン電流 ( I I )

入射電子による二次電子電流 ( SE I )

太陽光

入射正イオンによる 二次電子放出電流 ( SI I )

光電子放出電流( PH I )

電荷ビーム放出電流(IB)

bull内部帯電は衛星の外壁を貫通した放射線帯外帯の01MeV以上の電子が内部に侵入

bull基板間や同軸ケーブルの線間等の容量(コンデンサ)や誘電体に帯電 bull接地されてない導体片に帯電

bullその耐圧電圧を超えると その耐圧の弱い箇所 (材質の欠陥や針状突起など の箇所)で放電して故障に至る

内部帯電

(あるエネルギ-以上の粒子が入射光電子なし)

NASA-HDBK-4002より

パドルでの帯電放電メカニズム

宇宙環境の影響により 衛星がマイナス電位に帯電

高エネルギー電子等により カバーガラスはプラスに帯電 衛星とカバーガラスに電位差が生じる

電位差が大きくなると トリプルジャンクション近傍 の電界強度が増大していく

トリプルジャンクションで放電が発生する カバーガラスの帯電が緩和される

+ + + + + + + + + + + + + +

+ + + +

カバーガラス

太陽電池セル

基板(衛星構体)

トリプルジャンクション rArr 導体絶縁体宇宙環境の接点

持続放電

Substrate

Satellite Load

insulation sheet

Solar array cell

Cover glass

Arc current

Electrode

持続放電は衛星の電力消失につながる 持続放電のモードは以下の2通りがある

Substrate

Satellite Load

insulation sheet

Solar array cell

Cover glass

Arc current

Electrode

Solar array cell

Cover glass

セル-基板間短絡 セル間短絡

放電によって太陽電池セルと基板が短絡する 短絡によって負荷に電力が供給されなくなる

放電によって太陽電池セルとセルが短絡する 短絡によって負荷に電力が供給されなくなる

サブストーム(高エネルギー電子)との遭遇

+ + + + + + + +

二次電子光電子による絶縁体の帯電(局所帯電)

電位差発生

逆電位勾配

衛星構体が負に帯電(絶対帯電)

電位

時間

サブストーム

衛星構体 VS

乖離電圧 ∆V

カバーガラスVcg

0 プラズマ電位

軌道別帯電放電現象

トリプルジャンクションで 放電発生

放電発生

静止軌道

+ + + + + + + +

逆電位勾配

軌道帯電放電現象

トリプルジャンクションで 放電発生

極軌道 オーロラ電子(高エネルギー電子)との遭遇

プラズマ流入出による絶縁体の帯電(局所帯電)

電位差発生

衛星構体が負に帯電(絶対帯電)

放電発生

電位

時間

オーロラ電子

衛星構体 乖離電圧 ∆V

カバーガラス

0 プラズマ電位

データ中継技術衛星DRTS (こだま)の不具合

2002年10月 9日 静止軌道に打ち上げ

2003年

3月24日 406JST変化率異常モニタ故障検出(FDIR)

が動作しA系からB系に切り替わった

3月25日 410JSTにB系のみ異常検知

4月 3日 327JSTにB系のみ異常検知

5月28日 124JSTにB系のみ異常検知

6月 6日1537JSTにB系のみ異常検知

ESA

DRTS ESA スパイクノイズと 電子フルエンスの比較(赤の丸が異常検知)

larr閾値

この事実を基に静止軌道における内部帯電警報システムを構築 2004年4月より運用開始

不具合が宇宙環境によるものであるか 判断する際のポイント

不具合の発生した時刻に太陽フレアや磁気嵐等の宇宙天気の大きな変動が起きていれば不具合に関係している可能性が高い但し帯電など放射線の積算的効果の伴う現象については発生から1週間位さかのぼり環境がどのように推移してきたかを考慮する必要がある

磁気嵐が起きると静止軌道に急激な粒子の増加現象が起きこれにより衛星帯電が引き起こされたりする(予測に利用可能)

地方時(真夜中や朝方か)や季節(春秋)を考慮する

低軌道衛星においてはSAA外帯のrdquo角ldquo及び極通過時に不具合

が起きやすいので衛星の位置(緯度経度)が重要

事象を把握する上で単発現象か数回起きている現象か周期

(時間同じ軌道等)的に発生している現象か

話の流れ

技術データ取得装置(TEDA)の概要と成果 bull 主な成果 bull 不具合解析例

宇宙天気のリスクと対策 bull 宇宙環境による衛星システムへの影響 bull 宇宙環境を原因とする不具合の割合推移部位 bull 静止軌道不具合 bull 対策

今後必要な観測項目

まとめ

宇宙天気のリスク -宇宙環境によるシステムへの影響 -

プラズマ (IRI)

帯電 (MUSCAT)

衝突 (AUTODY)

抗力 表面劣化

紫外線X線 中性粒子 (MSIS)

放射線粒子 (AE8AP8JPLSHIELDO

SE-2)

メテオロイドデブリ (MASTER2005

ORDEM)

電離損傷 変位損傷

bull電子回路の劣化 bull光部品の劣化

bull太陽電池セルの劣化

SEU (CREME96)

bullデータエラー bull画像ノイズ

bullシステム停止 bull回路損傷

bull熱的電気的光学的特性の劣化

bull構造の劣化 bullコンタミ

電磁パルス bull電源出力低下

bull損傷

bullトルク bull軌道落下

bull構造 損傷 bull減圧

bull電磁パルス

NASAの報告 -GNampCに注目-

1974年から1994年に起きたNASAと空軍の衛星故障の内20~25が宇宙環境に起因していたと報告

1990年から2001年に米国欧州カナダ日本の企業や政府機関が開発した衛星を調べた過去の宇宙ミション損失の大部分はロケットの失敗であったが1998年衛星損失の大部分は軌道上の衛星障害となっている多くの最近の異常は太陽電池アレイ及びバッテリの危険が増加している静止軌道通信衛星の設計寿命はこのサブシステムの故障の危険が増加している

喪失等の大きな誘導制御(GNampC)の不具合に注目 GNampC不具合の内宇宙環境による 不具合は約3と報告されている

軌道上衛星のタイプ別数

NASAの報告(続き)

衛星設計寿命における不具合発生時期 事故率と軌道

軌道別の衛星数 サブシステム不具合

宇宙環境を原因とする不具合の割合 -JAXAの場合-

2002年~2008年に運用された軌道上不具合情報が比較的充実している11衛星(利用衛星7機科学衛星4機)の結果宇宙環境によるも

のは約15過去のデータよりも割合が少ない

合計83件 合計35件

(1)利用衛星 (2)科学衛星

設計検討 不足 48

製造不良 8

軌道上環境 17

偶発故障 6

調査中 13

原因不明 8

設計検討

不足 61

製造不良 4

軌道上環境 11

偶発故障 6

調査中 9

原因不明 9

不具合発生部位の割合

不具合発生部位の割合

Brent Robertson Eric Stoneking ( 1990-2001NASA Goddard Space Flight Center )

Satellite News Digest -静止軌道不具合-

Satellite News Digest (SND) (http wwwsqt-indexcouk) で1997年~2009年の期間に静止軌道で95件の不具合が報告されている その内運用ミスや設計ミスなどを除くと32件(約33)は宇宙環境によるものであった 過去のデータより割合が多い

Choiら1)はこれら不具合の地方時と季節依存性を確認した その結果2100LT~900LTで約72の不具合が発生し900LT~2100LTは9件(約28)であった またこの9件は全て姿勢制御の不具合だった 静止軌道衛星不具合のほとんどは真夜中と朝方で起きており磁気嵐に伴い磁気圏尾部から注入した粒子による表面帯電が不具合の主原因と結論づけている

1) Ho-sung Choi et al Analysis of GEO spacecraft anomalies Space weather relationships Space Weather Vol 9 S06001

太陽活動と静止軌道衛星不具合例

ANIK-E1E2

ANIK-E1

複数の衛星で故障

Galaxy-15

帯電放電不具合 -ANIK-E1amp2Telstar401-

Jan 1994 ANIK-E1 amp E2事故時の環境 - Joe H Allen

1週間

太陽活動下降時期の電子増加

2MeV以上電子

copyNOAA Web

フラックスが3桁急増

Jan 1997 Telstar401事故時の環境

静止軌道の急激な電子増加

太陽極大期太陽フレアによる衛星障害 - 2003年10月~11月-

10486981048698 永久故障 4 10486981048698 安全モード又は運用を一時停止 31 10486981048698 データ内容の「誤り」の増加搭載コンピュータの誤動作 5

httpwwwsat-ndcomfailures等のデータによる 合計 40件

-Barbieri and Mahmot

米国極軌道気象衛星NOAA-17の改良型マイクロ波観測装置AMSU-A1 (Advanced Microwave Sounding Unit)のスキャナーが永久故障 米国気象衛星GOES -8号のX線センサがOFFになり復帰しなくなった

e-birdに深刻な不具合が発生 不具合は20本のトランスポンダ全てに影響

火星周回中の探査機「マーズオデッセイ (Mars Odyssey)」の観測機器放射線観測装置「Martian Radiation Environment Experiment (MARIE)」が太陽活動の影響により10月28日から適切に作動しなくなった データ中継技術衛星(DRTS)「こだま」 太陽捕捉モードに移行

太陽陽子

帯電放電不具合-Galaxy15(局所的的現象)- 2

5 M

eV

65

MeV

11

5 M

eV

GOES 14 ----- GOES 15 ----- GOES 11 -----

Satellite Locations

Galaxy 15 anomaly

2010年4月5日9時48分UTCは磁気嵐及びCMEが発生するなど宇宙環境は非常に荒れていたGalaxy15衛星は真夜中側に位置し宇宙環境の影響を受けやすい

位置にいたことから宇宙環境による不具合である可能性が高いということで原因追及がなされた高エネルギー粒子が引き起こす代表的な衛星不具合現象として3つ(表面帯電内部帯電SEUシングルイベントバーンアウトSEL)の可能性を検討した

チームの報告書によると磁気圏尾部からの熱電子の流入による放電が原因であったと結論付けられたGalaxy15衛星の近くにはGOES-11衛星が位置していたがGOES-11衛星には不具合を発生しておらず本現象は局所的な現象と推測される

衛星開発段階における対策 JAXAの不具合解析の結論

bull 2002年~2008年に運用された11機の衛星不具合を解析 宇宙環境による不具合は偶発故障のみ(全体の約15)確率的には想定範囲内ではあるがその影響を最小限とするためディレーティング運用モード寿命についての研究に取り組む

bull 設計基準試験の充実検証確認の強化技術成熟度(TRL)評価の徹底各々の境界制約条件の明示化等により検証不足抜けの防止有効なピアレビューに結びつける

冗長系(同じハードウェア機能の冗長)柔軟性の設計(ソフトハードの対応)

bull 従来の故障が起きないようにする設計に対してGOSAT(いぶき)では重要部

品を二重化することにより故障する可能性は上がるが故障しても衛星バスの運用や観測が続行できる可能性がより高くなるように設計した

運用における対応

bull 宇宙天気監視ーロケット打ち上げ及び宇宙飛行士支援 数日前に今後の宇宙環境の推移を把握(MXレベルのフレアの発生確率)

bull X線の増加で太陽フレア発生を検知したら高エネルギー粒子の発生をいつまで 気を付ければ良いか判断(発生位置で大凡を推定するが課題は多い) SPEが発生した場合(特に10MeV以上100MeV 以上の陽

子)最大値フラックス値の推定 ピーク値を予測(特に閾値に近くなった時に重要)

bull 衛星運用 bull 太陽フレア磁気嵐警報(X線陽子及びkpが閾値を超えた

時に警報を発信)2003年10月より運用開始 bull 内部帯電警報(2日後の静止軌道上の高エネルギー電子(>1

Me) の増加を予測し 閾値を超えた時に警報を発信) 2004年4月より運用開始

話の流れ

技術データ取得装置(TEDA)の概要と成果 bull 主な成果 bull 不具合解析例

宇宙天気のリスクと対策 bull 宇宙環境による衛星システムへの影響 bull 宇宙環境を原因とする不具合の割合推移部位 bull 静止軌道不具合 bull 対策

今後必要な観測項目

まとめ

計測対象計測項目 計測対象 粒径100μm以上のデブリメテオロイド 計測項目 デブリ粒径衝突頻度

基本原理

厚さ約125μmの絶縁性のポリイミドフィルム表面に 100μm周期で直線状の細長い導線(太さ50μm)パターンを形成導線の破断を電気的に検知することによりデブリの衝突(貫通)を検知する破断した導線の数導線の幅ピッチからデブリサイズを計測する

微小デブリ計測技術の概要

衝突孔の例(衝突試験ISAS) - 衝突粒子 SUS 309 microm - 衝突速度 52 kms

HTV5号機によるセンサ機能のフライト実証

35cm

46cm

FY2013機能実証モデル

検出線幅 50 μm 検出線間隔 100 μm フィルム厚 lt 20 μm 有感領域 30times33cm 検出線総数 3300本

サイズ 50times39times4 cm (筐体を含む)

重量 約15kg(筐体を含む)

消費電力 2W(最大4W)(他センサ含む)

テレメトリ 02 bps

宇宙環境観測装置KASPERの一部としてデブリセンサSDMを搭載 FY2013に製作開始今年8月に打ち上げ予定)

まとめ(その1)

衛星不具合の主な原因は帯電放電シングルイベント放射線損傷である今後デブリ環境が重要になると予測される

静止軌道では商用衛星が多く運用されており宇宙環境の変動把握は重要この領域で運用する衛星が気を付けなければいけない環境として

1太陽フレアに伴う高エネルギー粒子 2太陽活動下降期による静止軌道電子の増加 3磁気嵐に伴う磁気圏尾部から注入する粒子 などがあげられる

まとめ(その2)

不具合軽減の取り組み bull 開発時は宇宙環境条件(トータルフラックス及び最悪条

件)を明確にし設計(冗長系柔軟性の設計ディレーティング及び運用モード寿命について研究)試験の充実検証の充実を図る

bull 運用段階に入ったならば宇宙環境を監視し警報等で故障を防ぐ

予測課題 bull 太陽フレアに伴う高エネルギー粒子発生後フラックス

ピーク値の推定

bull 衛星により不具合の起きる閾値は異なるが閾値をこえる急激な電子フラックスの増加と継続時間の予測

bull 局所的な磁気嵐に伴う磁気圏尾部から注入する粒子

宇宙環境グループは宇宙ステーションと衛星プロジェクトの安全な遂行に貢献しています

ご静聴ありがとうございました

補足資料

不具合原因の推移 bull 宇宙天気を大きく左右する要因の1つとして約11年の太陽活動変化が挙げられる

bull 太陽活動下降時期(太陽変動CME)と極大期(フレアCME)に衛星で不具合が増加するそれにより不具合原因の割合が変わる

-Koons et al The Impact of the Space Environment on Space Systems Aerospace Corp report no TR-99(1670)-1 20 July 1999 -2009 preliminary study (unpublished)

何故不具合は減らないか

bull 部品 放射線に対する感受性が高くなっている bull 微細化が進み同時にフォールトするノードが増え同時にエ

ラーとなる論理ノードやメモリセルが増加する微細化によってメモリセルは小さくなるので記憶容量当たりでみるとエラーの発生率は下がるしかし半導体チップの記憶容量やゲート数が増えるので半導体チップ当たりのエラー発生率は微細化とともに上昇するまた蓄積電荷が小さくなり感受性が高くなってきている

bull システム 大型化大電力化運用長期化 bull 1990年代末以降静止衛星の電力が10kWレベルになったしか

し設計検証技術データ蓄積が遅れている改善されつつあると推測される

放射線による影響の概要

粒子 エネルギー又はLET

代表的な影響

陽子 100keV-1MeV 1-10MeV 10-100MeV gt50MeV

表面損傷 表面材料と太陽電池の損傷 放射線損傷(電離非電離損傷の両方)センサーへのノイズ シングルイベント効果

電子 10-100keV gt100keV gt1MeV

表面帯電 深部帯電現象(deep-dielectric charging)センサーへのノイズ太陽電池の損傷 放射線損傷(電離)

重イオン gt1MeV-cm2mg シングルイベント効果

注エネルギー及びLETは個々の部品等により異なりますあくまでも目安です

耐放射線設計手順

軌道条件

ミッション期間

環境条件設定

トータルドーズの予測

1MeV電子換算被曝算出

NIELの換算

LETフルエンス算出

陽子フルエンス算出

対  策  の  検  討

対  策  の  検  討

対  策  の  検  討

放射線による劣化率予測

劣化率予測 特性予測

耐性データ

放射線による劣化率予測

耐性データ

劣化率予測アレイ出力劣化予測

感受性データ

シングルイベント発生率予測 致命度解析

衛星内質量分布

(2)

部品材料の選定

他の要因による劣化率予測

(2)(2) (3)

回路設計等NO

OK

アレイ構造 セル選定

他の要因による劣化率予測 アレイ設計(2)

(2) (2) (2) (3)

衛星内質量分布 部品選定(2)

(2) (2)(3)

NO

OK

NO

OK

(1) 環境モデルマージを含む(2) 部品レベルの検討(3) アセンブリレベルでの検討(4) 設計マージン環境モデル   マージを含め大丈夫か

トータルドーズ

太陽電池アレイの劣化

シングルイベント効果

回路設計

補足放射線太陽宇宙線銀河宇宙線

NEILを用いたダメージファクターの算出

対  策  の  検  討

放射線による劣化率予測

劣化率予測 特性予測

耐性データ

(2)

部品材料の選定

他の要因による劣化率予測

(2)(2) (3)

回路設計等NO

OK

衛星内質量分布 半導体デバイスの変位損傷

(1)

(4)

(4)

(4)

(4)

各軌道における放射線環境

1E+10

1E+11

1E+12

1E+13

1E+14

1E+15

1E+16

1E+17

1E+18

1E+19

1E+20

001 010 100 1000

捕捉

電子

の積

分フ

ルエ

ンス

[m

2 ]

エネルギー[MeV]

各軌道における電子捕捉積分フルエンス(3年間)

LEO

EOS GEO

MEO

GTO

GEO 軌道傾斜角 0deg 高度36000km GTO 軌道傾斜角 18deg 高度 360km~36000km MEO 軌道傾斜角 51deg 高度 10000km EOS 軌道傾斜角 98deg 高度705km LEO 軌道傾斜角 29deg 高度 600km

1E+12

1E+13

1E+14

1E+15

1E+16

1E+17

1E+18

1E+19

1E+20

01 10 100 1000

捕捉

陽子の

積分フルエン

ス[

m2 ]

エネルギー[MeV]

各軌道における捕捉陽子積分フルエンス(3年間)

MEO

GTO

GEO

EOS LEO

放射線による部品材料の影響

総照射線量 (TIDTotal Ionising Dose )

電離損傷

バイポーラTrの電流増幅率の低下リーク電流の増大

γ線で評価

トータルドーズ効果

変位損傷 (DDDisplacement Damage )または 非イオン化エネルギー損失 (NIELNon-Ionising Energy

Loss )

変位損傷(格子欠陥の生成)

電荷輸送効率の低下 (CCD)太陽電池の効率低下等

電子陽子により評価

シングルイベント効果

1個の荷電粒子の入射により発生する誤動作

ソフト(Latch-Up Burnout) エラー又は ソフト (Upset) エラー

陽子及び重イオンで評価

トータルドーズ効果

+ - + + - + - + - - + + + + -

ゲート酸化膜

電離

格子欠陥

正電荷捕獲

+ 正孔 - 電子

電極

(Silicon oxidenitride)

荷電粒子

反跳原子

ゲート絶縁膜中に電荷が蓄積することによるMOSトランジスタのしきい電圧(MOSトランジスタがオフからオンに変化するゲート電圧)の変化をもたらすただ

し最近の最先端チップはゲート絶縁膜がきわめて薄くなっているこのためゲート絶縁膜よりもフィールド絶縁膜(隣接するトランジスタを電気的に分離する絶縁膜)での電荷蓄積が相対的には大きな問題になってきている」

シングルイベント効果

メモリセルはNチャンネルとPチャンネルMOSFETより構成されメモリ情報は回路ノード12の電位の

高低により記録している空乏層の広がっているPN接合12の領域に

重イオンが入射した場合電荷の発生と空乏層内への少数キャリアの収集が起こるこの収集電荷量が回路の耐量を越えた場合(c)に示すように反転が起こる(ソフトエラー)一方pウエル-N基板接

合の空乏層内に電荷収集量が起こりえる耐性を越えると寄生的に存在するPNPNサイリスタ構造がオ

ンし電源と基板間に大電流が流れる状態が生じる(ラッチアップ)

シングルイベントメカニズム -陽子と重イオンの違い-

エラー発生率の計算

線エネルギー付与(LET) (linear energy transfer)

電離性放射線が物質中を通過する際飛程の単位長さ当りに平均して失うエネルギーをいう各種の放射線のうちX線γ線はLETが小さいので低LETといいα線中性子線その他重イオン核分裂破片のLETは大きいので高LETという MeVμmMeV(gcm2)やMeV(mgcm2)で表される

南大西洋異常(SAA) bull 地球の自転軸と磁気軸のずれ

darr bull 放射線帯が自転軸に対して非

対称

bull 南大西洋上空では放射線帯内帯が低高度に落ちてきているこの領域を南大西洋異常域(SAA South Atlantic Anomaly)と呼ぶ

bull 地球観測衛星ではSAAで放射線帯陽子の影響を受ける

Single Event Lachup

シングルイベントと陽子分布

MOS-1衛星(高度909km軌道傾斜角99度)で発生したシングルイベントと 陽子30MeV以上の等高線マップを重ね合わせた結果

NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)

bull 入射粒子が電離によらず与える損傷非イオン化損失

低軌道での電子フラックスと 不具合の発生場所

南大西洋異常(SAA)と極の角

高度800kmでの電子フラックス図極の角(polar horn)とSAAを示す

太陽粒子線 bull 太陽高エネルギー粒子線(SPE Solar Proton Events)は太陽フレア とコロナガス噴出 (CMECoronal Mass Ejections )により引き起こされる bull フレアのスペクトルは可変であるためあるエネルギー域における最悪状態イベントは必ずしも別のエネルギー域における最悪条件ではない 1972年8月のイベント 10~70MeVの粒子が最も多かった 1989年10のイベント 1972年8月のイベントに比べ低エネルギー領域 高エネルギー領域が明らかに激しかった

フルエンス 105 to 1011 cm-2

変動期間 1日から数日

ldquoBastiliardquo Solar Event 14 July 2000

Carrington Flare

84

(LW Townseed) Carrington Flare(1859年) Carrington Flare による30MeV以上トータルFluenceを118times109cm-2で規格化 ~1989年フレアの約13倍(シングルイベントの評価で使用) ~1991年フレアの約9倍 2012年7月23日にキャリントンイベントとほぼ同等の爆発現象が太陽あるいは太陽の周りで起きていたということがNASAの太陽観測衛星「STEREO」の解析から発表された

放射線対策 bull 放射線シールドを付加し放射線を減衰させる

bull 放射線耐性の強い部品(SOI(Silicon On Insulator)技術による耐放射線部品)材料に変更する

bull 放射線による損傷を吸収するために回路または構造上のマージンを持たせる bull ソフト的なエラーに対しては エラー検出訂正機能や多数決

機能等でソフト的エラーが起きてもシステムが機能するようにしたフォールトトレラント機能を付けて対処する ICのハード的故障に対しては ラッチアップ耐性の強い部品を選定するしかないが 電流制限回路を付ける対策も採られる パワーMOSFETに対しては部品選定 電源電圧を規格値の半分以下に落とす等の対策を採る

SOI技術

表面帯電への対策例

表面の物体間を導線で結線する

太陽電池のカバーガラスを導電性被膜付き(酸化インジウムITO)にする

熱制御材表面にITOを被覆する

熱制御材は高誘電率のテフロンの使用を避け 高伝導度耐環境性に優れたブラックカプトンを使用

イオンエンジンの中和器で能動帯電制御

内部帯電への対策例

アルミで3mm厚さに相当するシールドで囲む(Faraday Cage)

テフロンやカプトンなどの誘電体材料の内部での使用量を最小限に押さえる

回路基板やコンフォーマルコーティングは誘電体なので電流リークパス(1012Ωcmまたは1012Ωcm2

程度)を必ずつける

特にスポット的な放射線シールドの金属材には必ず電流リークパスをつける

帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備

衛星モデル作成

材料物性テーブル設定

宇宙環境パラメータ設定

Converter

転送ディレクトリ 解析データファイル

転送

解析ディレクトリ生成 解析結果 進行状況チェック ファイル操作

MUSCAT 解析エンジン

解析結果 表示

パラメトリックラン

オプション 解析

大型パネル実験(35mtimes11m) クーポンパネル実験(26cmtimes16cm)

環境模擬試験 環境模擬試験

MUSCATに使用する物性値設計標準制定のための知見などを得ることを目的に軌道上の宇宙環境を模擬した地上試験を行っている これらの試験では放電の発生頻度や電圧閾値放電発生による太陽電池パネルや搭載機器への影響を検証している

放射線計測装置の原理

bull その粒子が物質を通過する際のエネルギー損出率が粒子の電荷(原子番号)Zの二乗に比例すること(Bethe-Blochの式)を利用する

S2

E

ΔE Ersquo

S1 S3

  • 宇宙機の設計のための宇宙環境
  • 話の流れ
  • 話の流れ
  • TEDA(技術データ取得装置)(国産部品の宇宙環境での実証の必要性)
  • ETS-VTEDA(技術データ取得装置)誕生前の部品の宇宙実証の背景
  • スライド番号 6
  • スライド番号 7
  • スライド番号 8
  • スライド番号 9
  • 図6太陽黒点数と静止軌道電子 (>04MeV ) Flux の変動 (ETS-V搭載DOMによる観測)
  • スライド番号 11
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの開発(理研東大と共同で宇宙環境計測の充実)
  • ETS-VI(きく6号)打ち上がったがGEOに行かずGTOに留まる
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの成果
  • スライド番号 15
  • スライド番号 16
  • スライド番号 17
  • ADEOS搭載TEDA(世界2番目の異常宇宙線ACR)
  • BBND (ボナー球中性子検出器)
  • スライド番号 20
  • ISS搭載BBNDの成果(約8か月)
  • スライド番号 22
  • MDS-1搭載放射線吸収線量モニタ(SDOM)
  • 放射線帯変動モデルの開発MDS-1 065 MeV 電子フラックス
  • 変動パラメータの選択 (1 cycle solar activity)
  • 変動パラメータ- Tavg の定義-
  • 065MeV 電子 L値-Tavg マップ
  • 13MeV 陽子 L値-Tavg マップ
  • 電子観測とMDS-1モデルの比較
  • 放射線帯フラックスピークの変動
  • 陽子観測とモデルの比較
  • 電子(035~078MeV) 1日の変動予測GOSAT軌道
  • 電子(035~078MeV) 変動の信頼度水準(1日)GOSAT軌道
  • MDS-1 model と AE-8 modelとの比較1日
  • 話の流れ
  • 2003年10月 みどり号の全損事故(複合現象)
  • 衛星帯電の基本式
  • 内部帯電
  • パドルでの帯電放電メカニズム
  • スライド番号 40
  • スライド番号 41
  • スライド番号 42
  • データ中継技術衛星DRTS (こだま)の不具合
  • DRTS ESA スパイクノイズと電子フルエンスの比較(赤の丸が異常検知)
  • 不具合が宇宙環境によるものであるか判断する際のポイント
  • 話の流れ
  • 宇宙天気のリスク-宇宙環境によるシステムへの影響 -
  • NASAの報告-GNampCに注目-
  • NASAの報告(続き)
  • 宇宙環境を原因とする不具合の割合-JAXAの場合-
  • 不具合発生部位の割合 
  • Satellite News Digest -静止軌道不具合-
  • 太陽活動と静止軌道衛星不具合例
  • スライド番号 54
  • スライド番号 55
  • スライド番号 56
  • 衛星開発段階における対策
  • 運用における対応
  • 話の流れ
  • スライド番号 60
  • スライド番号 61
  • まとめ(その1)
  • まとめ(その2)
  • 宇宙環境グループは宇宙ステーションと衛星プロジェクトの安全な遂行に貢献しています
  • 補足資料
  • 不具合原因の推移
  • 何故不具合は減らないか
  • 放射線による影響の概要
  • 耐放射線設計手順
  • 各軌道における放射線環境
  • 放射線による部品材料の影響
  • トータルドーズ効果
  • シングルイベント効果
  • シングルイベントメカニズム-陽子と重イオンの違い-
  • エラー発生率の計算
  • 線エネルギー付与(LET)(linear energy transfer)
  • 南大西洋異常(SAA)
  • Single Event Lachup
  • シングルイベントと陽子分布
  • NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)
  • 低軌道での電子フラックスと不具合の発生場所
  • 南大西洋異常(SAA)と極の角
  • スライド番号 83
  • Carrington Flare
  • 放射線対策
  • スライド番号 86
  • スライド番号 87
  • 帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備
  • スライド番号 89
  • 放射線計測装置の原理
Page 10: 宇宙機の設計のための宇宙環境の方針から国産部品開発(42品種)が実施された。 . 半導体電子部品は耐放射線性を加味して、人工衛星(特に

図6太陽黒点数と静止軌道電子 (>04MeV ) Flux の変動 (ETS-V搭載DOMによる観測)

bull 1993-1994年にかけ各国の静止衛星で不具合や故障が増加したJAXAではETS-V搭載放射線吸収線量モニタ(DOM)による長期的観測により太陽活動下降期の高エネルギー電子の増加を確認しておりこれにより静止衛星に影響が出たことが明らかとなったなお同様の不具合や故障増加が11年前の太陽活動下降期である1982-1983年にも発生していたことが分かった

bull 現在はこれらの電子の環境でも太陽電池パドル等に不具合が起きらないことを地上試験で確認してきている

静止軌道における 高エネルギー粒子の長期的観測結果と宇宙機への影響

0

20

40

60

80

100

120

140

160

180

1000

3000

5000

7000

9000

11000

13000

15000

17000

1980

1981

1982

1983

1984

1985

1986

1987

1988

1989

1990

1991

1992

1993

1994

1995

1996

1997

太陽黒点数

電子

Flu

x (個

数(cm2strsec))

電子Flux

太陽黒点数

Miyoshi et al[2004]

太陽活動と放射線帯分布の変動

ETS-Ⅵ搭載TEDAの開発 (理研東大と共同で宇宙環境計測の充実)

目的

bull 新たに開発された国産部品材料等の宇宙環境下での劣化特性を同一条件で計測すると共に劣化の原因となる宇宙環境を同時に計測し比較解析する

bull 新規開発の部品材料の宇宙実証データフライト実績を得る

bull 地上試験として行ってきた宇宙環境を模擬した試験方法の検証を行う

bull 帯電現象及びガスジェット等による人工衛星の汚染の経時変化の取得

bull 衛星設計に用いている宇宙環境モデル(放射線磁場等)の検証 bull 宇宙環境に起因する人工衛星の故障や不具合現象の解明

ETS-VI(きく6号)打ち上がったが GEOに行かずGTOに留まる

bull 1994年(平成6年)8月28日16時50分打ち上げ

bull H-IIロケット試験機2号で種子島から打ち上げ

bull アポジエンジン不具合でGTO軌道に留まる

bull 急遽楕円軌道用に新たな制御プログラムを設計製作し地上検証を行った上で衛星にアップロードしこの問題を解決した

bull 最終軌道ペリジ約8600kmアポジ約38600km軌道傾斜角約13度(3日5周期回帰)で2年間運用

bull TEDAのデータ公開で宇宙環境データが役に立つ事を宣伝(SEESを立ち上げデータを公開した)

ETS-Ⅵ搭載TEDAの成果

トータルドーズ劣化や太陽電池劣化は静止衛星で10年かかった同じ評価を1年間でできた

シングルイベントの発生頻度の高度分布が取得できた (高度8千km~3万8千kmの範囲)

バンアレン帯の放射線帯の電子陽子重イオンの高度分布データを取得し放射線帯モデル日本モデルを作成(あけぼの衛星データ含む)

この成果はGTO軌道を最初から狙うMDS-1(つ

ばさ)プロジェクトへとつながった 米国は1990年7月25日CRRESS(Combined Release and Radiation Effects Satellite )衛星を打ち上げ

研究開発の流れ

計測装置開発

データ収集 計画

環境計測

研究試作

衛星への影響解析で必要なデータ及び性能を機器開発に反映する

高エネルギー軽粒子 重イオン 中性子 帯電 原子状酸素 デブリ 新たな現象(問題点)

軌道上不具合評価 宇宙環境モデル

宇宙環境データベース 警報

衛星設計基準

有人活動への反映

宇宙天気予報 システム

国内外機関とのデータ交換

打上げ衛星運用

放射線環境評価(ISOを含む)の見直し 宇宙環境モデルの最適化 効率の良い宇宙機の開発 (シールド厚最適設計) 低コスト化(部品仕様の見直し) 短期間開発(民生品の利用)

フィードバック

成果目標

プロジェクト支援

宇宙環境計測装置(放射線磁場)小型化の流れ

9kg 10cm 10cm 10kg 14W 18W

1cm 52g 480g 1cm 12W以下 15W

磁力計(480g->52g)

みどり2搭載用 つばさかけはしきぼう搭載用 Jason-2GOSAT搭載

ETS-VIII搭載用 QZS搭載用

電子(05~50MeV) 陽子(1~160MeV) α粒子(4~200MeV)

電子(04~5MeV) 陽子(7~48MeV) α粒子(30~140MeV)

plusmn655364096102456nT plusmn655364096nT

16bit 20bit

電子(003~20MeV) 陽子(04~250MeV) α粒子(08~400MeV)

LPT-S 216x182x175 mm 62 kg LPT-E 240x165x 93 mm 28 kg

積算吸収線量計

軽粒子モニタ(10kgー>9kgー>7kg最小2kg)

17times10times5mm749g

ISSKibou(09-)

GEO

LEO

ETS-V (87-97)

ADEOS-II(02-03)

ETS-VIII(06-) DRTS(02- )

STS-89(98)

MDS-1(02-03) ETS-VI(94-96)

ETS-VII (97-99)

宇宙環境計測の流れ ISSUS-Lab(01)

ひまわり1-4(78-99)

ERG(16予定)

ALOS(06-11)

GOSAT(09-)

Jason-2((08-)

Jason-3(15予定)

GTO

QZS(09-)

ADEOS (96-97)

ADEOS搭載TEDA (世界2番目の異常宇宙線ACR)

bull シングルイベント評価のための重イオン観測であったが世界2番目の異常宇宙線を観測することができた

bull 低軌道の衛星は地球磁場が邪魔となって宇宙線(重イオン)を観測するに向いていないと考えられていたが異常宇宙線を観測するのにすぐれていることが明らかとなった

T Kohno et al Radiation Measuremets 30 5 PP639-644

BBND (ボナー球中性子検出器)

bull 1994年(平成6)年7月に中性子計測のために ボナー球ホスウイッチ方式及びシンチレーションファイバーの3種類のセンサの研究をスタート

bull シャトル打ち上げ計画の管理者から搭載装置の検討依頼がありBBNDのSTS-89への搭載が決定した(1997年1月頃)

bull 振動試験で装置内のボルトが外れるという不具合もあったが約1年という非常に短期間で搭載品を開発することができた

bull コスト低減のために構造解析を自前で実施したりデータ処理ソフトウェアも内作した

熱中性子に対して高い感度を持つ6個の3Heガス入り比例計数管で構成して

いる中性子は電荷をもたないのでそれ自身には電離作用がないが軽い原子の3He気体では反跳原子を生じたり中性子の核反応(3He+nrarrp+3H+765KeV)によって荷電粒子を生じるので間接的に電離を起こす下図のように気体中に二つの電極を置き高電圧(1000V)をかけておくと中性子の入

射によって気体中に生じた陽子イオンと電子のイオン対がそれぞれの電極に向かって流動し外部回路に電離電流が流れるこの電気パルスにより中性子を計測する

ボナー球型中性子モニタの概要

Polyethylene Sphere3He proportional Counter

51 φ 51 φ81 φ110 φ150 φ230 φ

Sensor6 Sensor5 Sensor4 Sensor3 Sensor2 Sensor1

Covered by Gadolinium

[mm]3Heガス入り比例計数管の原理

6個のボナー球の断面図

3Heガス入り比例計数管とポリエチレン減速材

H Matsumotoet al Radiation Measurements 33 (2001) 321-333

ISS搭載BBNDの成果(約8か月)

実験期間中の平均的な等価線量等量率 (2001年3月23日~2001年11月14日)

太陽フレア時(2001年11月4日)

等価量等量率の平均は94μSv日で年率に換算すると34mSv年となるこれは地上において自然界から受ける等価線量当量率の約14倍に相当する 実験期間中に多数の太陽フレアが発生した2001年11月4日の太陽フレアにより019mSVの増加を観

測したこれは自然界から受ける等価線量当量率の約1か月分に相当するしかしBBNDの約8か月

の実験期間中の全等価線量当量に対するこの太陽フレアの影響の寄与分は1以下であった また搭載位置による環境の違いも確認された

H Koshiishiet al Radiation Measurements 42(2007) 1510-1520

1)船内の計測結果より低エネルギー側で2~3桁高エネルギー側で1~2桁低い 2)船内より船壁が薄く中性子が少ない環境より自然のアルベド中性子環境に近い

中性子被曝線量の ISS船外(SEDA-AP)と船内(STS-89)の比較

MDS-1搭載放射線吸収線量モニタ(SDOM) SiTungstenAlBGO

② ⑦

⑧⑧

① Collimator ② Window③ SSDs ④ Plastic Scintillator⑤ Anticoincidence Scintillator(ACS)⑥ Beam Stop⑦ Scintillator PMT⑧ ACS PMT

運用期間 2002年2月 ndash 2003年9月 軌道 -軌道傾斜角 285deg 1 lt BB0 le 84 -高度 500 km times 36000km 11 le L le 10 -軌道周期 約10時間35分 -スピンレート 5rpm

計測エネルギー範囲 Electron 04- 9MeV (5bins) Proton 09-210MeV (12bins) He 6-140MeV (4bins) Heavy Ion 15- 60MeVnuc (1bin) G-Factor 001cm2sr

放射線帯変動モデルの開発 MDS-1 065 MeV 電子フラックス

変動パラメータの選択 (1 cycle solar activity)

太陽風速度(SW)

太陽黒点数(R)

Ap指数

F107

変動パラメータ- Tavg の定義-

1日後の予測

パラメータスケールの時間平均 ApTavg SWTavg F107 Tavg

T days

放射線帯の構造は変動パラメータ値の大きさと継続時間に相関がある

065MeV 電子 L値-Tavg マップ

APTavg

SWTavg

13MeV 陽子 L値-Tavg マップ

APTavg

F107Tavg

電子観測とMDS-1モデルの比較

80 175

放射線帯フラックスピークの変動

80orbits (平穏時) 175orbits (擾乱時)

陽子観測とモデルの比較

電子(035~078MeV) 1日の変動予測GOSAT軌道

0

50

100

150

200

250

1E+09

1E+10

1E+11

1E+12

1984 1986 1988 1990 1992 1994 1996 1998 2000 2002 2004 2006 2008

Flue

nce[

ecm

2M

eVd

ay]

Launch day

FluenceSSN

Worst case Nov 12003

電子(035~078MeV) 変動の信頼度水準(1日)GOSAT軌道

00

01

02

03

04

05

06

07

08

09

10

88 90 92 94 96 98 100 102 104 106 108 110 112 114

Con

fiden

ce le

vel

Fluence[LOG10 ecm2MeVday]

AE-8 MAX

AE-8 MIN

MDS-1 model と AE-8 model との比較1日

0

20

40

60

80

100

120

140

160

180

1E+09

1E+10

1E+11

1E+12

1995 1997 1999 2001 2003 2005 2007 2009

Flue

nce[

ecm

2M

eVd

ay]

Launch day

Fluence(JAXA)Fluence(AE8)SSN

話の流れ

技術データ取得装置(TEDA)の概要と成果 bull 主な成果 bull 不具合解析例

宇宙天気のリスクと対策 bull 宇宙環境による衛星システムへの影響 bull 宇宙環境を原因とする不具合の割合推移部位 bull 静止軌道不具合 bull 対策

今後必要な観測項目

まとめ

2003年10月 みどり号の全損事故 (複合現象)

極域のオーロラ帯を通過中に電力ハー

ネスを巻いているMLIが高エネルギー電

子により帯電

MLIが接地されていなかったため内側

のハーネスとの間に1kV以上の電位差が

発生

MLI内のガス密度が発電開始に伴う温度

上昇により上昇

ハーネス被覆の傷により露出したハーネ

ス芯線とMLI内面の間で放電発生

単発の放電が隣接するハーネスに飛び火

してハーネス間の短絡

アーク放電が次々と伝搬していきハー

ネス全体が焼損

故障推定箇所 (大電力ハーネス部)

bull詳細報告書は文部科学省 宇宙開発委員会のHP参照

httpwwwmextgojpb_menushingiuchuureports04080901htm

bull 人工衛星の電位 bull 人工衛星は電気的に宇宙に浮いている bull 宇宙機構造体が接地点 bull 宇宙機への流入電流と流出電流のバランスによって宇宙機電位が決まる bull 各電流成分は宇宙機電位Vの関数として表され定常状態では式を下式を満たす

衛星帯電の基本式

( ) dtIIIIIIIC

V

dtdVCVIVIVIVIVIVIVI

BPHBSESISEIE

BPHBSESISEIE

int +++++minus=

==+++++minus

1

0)]()()()()()([)(

入射電子電流 ( E I )

後方散乱電子電流 ( BSE I )

入射正イオン電流 ( I I )

入射電子による二次電子電流 ( SE I )

太陽光

入射正イオンによる 二次電子放出電流 ( SI I )

光電子放出電流( PH I )

電荷ビーム放出電流(IB)

bull内部帯電は衛星の外壁を貫通した放射線帯外帯の01MeV以上の電子が内部に侵入

bull基板間や同軸ケーブルの線間等の容量(コンデンサ)や誘電体に帯電 bull接地されてない導体片に帯電

bullその耐圧電圧を超えると その耐圧の弱い箇所 (材質の欠陥や針状突起など の箇所)で放電して故障に至る

内部帯電

(あるエネルギ-以上の粒子が入射光電子なし)

NASA-HDBK-4002より

パドルでの帯電放電メカニズム

宇宙環境の影響により 衛星がマイナス電位に帯電

高エネルギー電子等により カバーガラスはプラスに帯電 衛星とカバーガラスに電位差が生じる

電位差が大きくなると トリプルジャンクション近傍 の電界強度が増大していく

トリプルジャンクションで放電が発生する カバーガラスの帯電が緩和される

+ + + + + + + + + + + + + +

+ + + +

カバーガラス

太陽電池セル

基板(衛星構体)

トリプルジャンクション rArr 導体絶縁体宇宙環境の接点

持続放電

Substrate

Satellite Load

insulation sheet

Solar array cell

Cover glass

Arc current

Electrode

持続放電は衛星の電力消失につながる 持続放電のモードは以下の2通りがある

Substrate

Satellite Load

insulation sheet

Solar array cell

Cover glass

Arc current

Electrode

Solar array cell

Cover glass

セル-基板間短絡 セル間短絡

放電によって太陽電池セルと基板が短絡する 短絡によって負荷に電力が供給されなくなる

放電によって太陽電池セルとセルが短絡する 短絡によって負荷に電力が供給されなくなる

サブストーム(高エネルギー電子)との遭遇

+ + + + + + + +

二次電子光電子による絶縁体の帯電(局所帯電)

電位差発生

逆電位勾配

衛星構体が負に帯電(絶対帯電)

電位

時間

サブストーム

衛星構体 VS

乖離電圧 ∆V

カバーガラスVcg

0 プラズマ電位

軌道別帯電放電現象

トリプルジャンクションで 放電発生

放電発生

静止軌道

+ + + + + + + +

逆電位勾配

軌道帯電放電現象

トリプルジャンクションで 放電発生

極軌道 オーロラ電子(高エネルギー電子)との遭遇

プラズマ流入出による絶縁体の帯電(局所帯電)

電位差発生

衛星構体が負に帯電(絶対帯電)

放電発生

電位

時間

オーロラ電子

衛星構体 乖離電圧 ∆V

カバーガラス

0 プラズマ電位

データ中継技術衛星DRTS (こだま)の不具合

2002年10月 9日 静止軌道に打ち上げ

2003年

3月24日 406JST変化率異常モニタ故障検出(FDIR)

が動作しA系からB系に切り替わった

3月25日 410JSTにB系のみ異常検知

4月 3日 327JSTにB系のみ異常検知

5月28日 124JSTにB系のみ異常検知

6月 6日1537JSTにB系のみ異常検知

ESA

DRTS ESA スパイクノイズと 電子フルエンスの比較(赤の丸が異常検知)

larr閾値

この事実を基に静止軌道における内部帯電警報システムを構築 2004年4月より運用開始

不具合が宇宙環境によるものであるか 判断する際のポイント

不具合の発生した時刻に太陽フレアや磁気嵐等の宇宙天気の大きな変動が起きていれば不具合に関係している可能性が高い但し帯電など放射線の積算的効果の伴う現象については発生から1週間位さかのぼり環境がどのように推移してきたかを考慮する必要がある

磁気嵐が起きると静止軌道に急激な粒子の増加現象が起きこれにより衛星帯電が引き起こされたりする(予測に利用可能)

地方時(真夜中や朝方か)や季節(春秋)を考慮する

低軌道衛星においてはSAA外帯のrdquo角ldquo及び極通過時に不具合

が起きやすいので衛星の位置(緯度経度)が重要

事象を把握する上で単発現象か数回起きている現象か周期

(時間同じ軌道等)的に発生している現象か

話の流れ

技術データ取得装置(TEDA)の概要と成果 bull 主な成果 bull 不具合解析例

宇宙天気のリスクと対策 bull 宇宙環境による衛星システムへの影響 bull 宇宙環境を原因とする不具合の割合推移部位 bull 静止軌道不具合 bull 対策

今後必要な観測項目

まとめ

宇宙天気のリスク -宇宙環境によるシステムへの影響 -

プラズマ (IRI)

帯電 (MUSCAT)

衝突 (AUTODY)

抗力 表面劣化

紫外線X線 中性粒子 (MSIS)

放射線粒子 (AE8AP8JPLSHIELDO

SE-2)

メテオロイドデブリ (MASTER2005

ORDEM)

電離損傷 変位損傷

bull電子回路の劣化 bull光部品の劣化

bull太陽電池セルの劣化

SEU (CREME96)

bullデータエラー bull画像ノイズ

bullシステム停止 bull回路損傷

bull熱的電気的光学的特性の劣化

bull構造の劣化 bullコンタミ

電磁パルス bull電源出力低下

bull損傷

bullトルク bull軌道落下

bull構造 損傷 bull減圧

bull電磁パルス

NASAの報告 -GNampCに注目-

1974年から1994年に起きたNASAと空軍の衛星故障の内20~25が宇宙環境に起因していたと報告

1990年から2001年に米国欧州カナダ日本の企業や政府機関が開発した衛星を調べた過去の宇宙ミション損失の大部分はロケットの失敗であったが1998年衛星損失の大部分は軌道上の衛星障害となっている多くの最近の異常は太陽電池アレイ及びバッテリの危険が増加している静止軌道通信衛星の設計寿命はこのサブシステムの故障の危険が増加している

喪失等の大きな誘導制御(GNampC)の不具合に注目 GNampC不具合の内宇宙環境による 不具合は約3と報告されている

軌道上衛星のタイプ別数

NASAの報告(続き)

衛星設計寿命における不具合発生時期 事故率と軌道

軌道別の衛星数 サブシステム不具合

宇宙環境を原因とする不具合の割合 -JAXAの場合-

2002年~2008年に運用された軌道上不具合情報が比較的充実している11衛星(利用衛星7機科学衛星4機)の結果宇宙環境によるも

のは約15過去のデータよりも割合が少ない

合計83件 合計35件

(1)利用衛星 (2)科学衛星

設計検討 不足 48

製造不良 8

軌道上環境 17

偶発故障 6

調査中 13

原因不明 8

設計検討

不足 61

製造不良 4

軌道上環境 11

偶発故障 6

調査中 9

原因不明 9

不具合発生部位の割合

不具合発生部位の割合

Brent Robertson Eric Stoneking ( 1990-2001NASA Goddard Space Flight Center )

Satellite News Digest -静止軌道不具合-

Satellite News Digest (SND) (http wwwsqt-indexcouk) で1997年~2009年の期間に静止軌道で95件の不具合が報告されている その内運用ミスや設計ミスなどを除くと32件(約33)は宇宙環境によるものであった 過去のデータより割合が多い

Choiら1)はこれら不具合の地方時と季節依存性を確認した その結果2100LT~900LTで約72の不具合が発生し900LT~2100LTは9件(約28)であった またこの9件は全て姿勢制御の不具合だった 静止軌道衛星不具合のほとんどは真夜中と朝方で起きており磁気嵐に伴い磁気圏尾部から注入した粒子による表面帯電が不具合の主原因と結論づけている

1) Ho-sung Choi et al Analysis of GEO spacecraft anomalies Space weather relationships Space Weather Vol 9 S06001

太陽活動と静止軌道衛星不具合例

ANIK-E1E2

ANIK-E1

複数の衛星で故障

Galaxy-15

帯電放電不具合 -ANIK-E1amp2Telstar401-

Jan 1994 ANIK-E1 amp E2事故時の環境 - Joe H Allen

1週間

太陽活動下降時期の電子増加

2MeV以上電子

copyNOAA Web

フラックスが3桁急増

Jan 1997 Telstar401事故時の環境

静止軌道の急激な電子増加

太陽極大期太陽フレアによる衛星障害 - 2003年10月~11月-

10486981048698 永久故障 4 10486981048698 安全モード又は運用を一時停止 31 10486981048698 データ内容の「誤り」の増加搭載コンピュータの誤動作 5

httpwwwsat-ndcomfailures等のデータによる 合計 40件

-Barbieri and Mahmot

米国極軌道気象衛星NOAA-17の改良型マイクロ波観測装置AMSU-A1 (Advanced Microwave Sounding Unit)のスキャナーが永久故障 米国気象衛星GOES -8号のX線センサがOFFになり復帰しなくなった

e-birdに深刻な不具合が発生 不具合は20本のトランスポンダ全てに影響

火星周回中の探査機「マーズオデッセイ (Mars Odyssey)」の観測機器放射線観測装置「Martian Radiation Environment Experiment (MARIE)」が太陽活動の影響により10月28日から適切に作動しなくなった データ中継技術衛星(DRTS)「こだま」 太陽捕捉モードに移行

太陽陽子

帯電放電不具合-Galaxy15(局所的的現象)- 2

5 M

eV

65

MeV

11

5 M

eV

GOES 14 ----- GOES 15 ----- GOES 11 -----

Satellite Locations

Galaxy 15 anomaly

2010年4月5日9時48分UTCは磁気嵐及びCMEが発生するなど宇宙環境は非常に荒れていたGalaxy15衛星は真夜中側に位置し宇宙環境の影響を受けやすい

位置にいたことから宇宙環境による不具合である可能性が高いということで原因追及がなされた高エネルギー粒子が引き起こす代表的な衛星不具合現象として3つ(表面帯電内部帯電SEUシングルイベントバーンアウトSEL)の可能性を検討した

チームの報告書によると磁気圏尾部からの熱電子の流入による放電が原因であったと結論付けられたGalaxy15衛星の近くにはGOES-11衛星が位置していたがGOES-11衛星には不具合を発生しておらず本現象は局所的な現象と推測される

衛星開発段階における対策 JAXAの不具合解析の結論

bull 2002年~2008年に運用された11機の衛星不具合を解析 宇宙環境による不具合は偶発故障のみ(全体の約15)確率的には想定範囲内ではあるがその影響を最小限とするためディレーティング運用モード寿命についての研究に取り組む

bull 設計基準試験の充実検証確認の強化技術成熟度(TRL)評価の徹底各々の境界制約条件の明示化等により検証不足抜けの防止有効なピアレビューに結びつける

冗長系(同じハードウェア機能の冗長)柔軟性の設計(ソフトハードの対応)

bull 従来の故障が起きないようにする設計に対してGOSAT(いぶき)では重要部

品を二重化することにより故障する可能性は上がるが故障しても衛星バスの運用や観測が続行できる可能性がより高くなるように設計した

運用における対応

bull 宇宙天気監視ーロケット打ち上げ及び宇宙飛行士支援 数日前に今後の宇宙環境の推移を把握(MXレベルのフレアの発生確率)

bull X線の増加で太陽フレア発生を検知したら高エネルギー粒子の発生をいつまで 気を付ければ良いか判断(発生位置で大凡を推定するが課題は多い) SPEが発生した場合(特に10MeV以上100MeV 以上の陽

子)最大値フラックス値の推定 ピーク値を予測(特に閾値に近くなった時に重要)

bull 衛星運用 bull 太陽フレア磁気嵐警報(X線陽子及びkpが閾値を超えた

時に警報を発信)2003年10月より運用開始 bull 内部帯電警報(2日後の静止軌道上の高エネルギー電子(>1

Me) の増加を予測し 閾値を超えた時に警報を発信) 2004年4月より運用開始

話の流れ

技術データ取得装置(TEDA)の概要と成果 bull 主な成果 bull 不具合解析例

宇宙天気のリスクと対策 bull 宇宙環境による衛星システムへの影響 bull 宇宙環境を原因とする不具合の割合推移部位 bull 静止軌道不具合 bull 対策

今後必要な観測項目

まとめ

計測対象計測項目 計測対象 粒径100μm以上のデブリメテオロイド 計測項目 デブリ粒径衝突頻度

基本原理

厚さ約125μmの絶縁性のポリイミドフィルム表面に 100μm周期で直線状の細長い導線(太さ50μm)パターンを形成導線の破断を電気的に検知することによりデブリの衝突(貫通)を検知する破断した導線の数導線の幅ピッチからデブリサイズを計測する

微小デブリ計測技術の概要

衝突孔の例(衝突試験ISAS) - 衝突粒子 SUS 309 microm - 衝突速度 52 kms

HTV5号機によるセンサ機能のフライト実証

35cm

46cm

FY2013機能実証モデル

検出線幅 50 μm 検出線間隔 100 μm フィルム厚 lt 20 μm 有感領域 30times33cm 検出線総数 3300本

サイズ 50times39times4 cm (筐体を含む)

重量 約15kg(筐体を含む)

消費電力 2W(最大4W)(他センサ含む)

テレメトリ 02 bps

宇宙環境観測装置KASPERの一部としてデブリセンサSDMを搭載 FY2013に製作開始今年8月に打ち上げ予定)

まとめ(その1)

衛星不具合の主な原因は帯電放電シングルイベント放射線損傷である今後デブリ環境が重要になると予測される

静止軌道では商用衛星が多く運用されており宇宙環境の変動把握は重要この領域で運用する衛星が気を付けなければいけない環境として

1太陽フレアに伴う高エネルギー粒子 2太陽活動下降期による静止軌道電子の増加 3磁気嵐に伴う磁気圏尾部から注入する粒子 などがあげられる

まとめ(その2)

不具合軽減の取り組み bull 開発時は宇宙環境条件(トータルフラックス及び最悪条

件)を明確にし設計(冗長系柔軟性の設計ディレーティング及び運用モード寿命について研究)試験の充実検証の充実を図る

bull 運用段階に入ったならば宇宙環境を監視し警報等で故障を防ぐ

予測課題 bull 太陽フレアに伴う高エネルギー粒子発生後フラックス

ピーク値の推定

bull 衛星により不具合の起きる閾値は異なるが閾値をこえる急激な電子フラックスの増加と継続時間の予測

bull 局所的な磁気嵐に伴う磁気圏尾部から注入する粒子

宇宙環境グループは宇宙ステーションと衛星プロジェクトの安全な遂行に貢献しています

ご静聴ありがとうございました

補足資料

不具合原因の推移 bull 宇宙天気を大きく左右する要因の1つとして約11年の太陽活動変化が挙げられる

bull 太陽活動下降時期(太陽変動CME)と極大期(フレアCME)に衛星で不具合が増加するそれにより不具合原因の割合が変わる

-Koons et al The Impact of the Space Environment on Space Systems Aerospace Corp report no TR-99(1670)-1 20 July 1999 -2009 preliminary study (unpublished)

何故不具合は減らないか

bull 部品 放射線に対する感受性が高くなっている bull 微細化が進み同時にフォールトするノードが増え同時にエ

ラーとなる論理ノードやメモリセルが増加する微細化によってメモリセルは小さくなるので記憶容量当たりでみるとエラーの発生率は下がるしかし半導体チップの記憶容量やゲート数が増えるので半導体チップ当たりのエラー発生率は微細化とともに上昇するまた蓄積電荷が小さくなり感受性が高くなってきている

bull システム 大型化大電力化運用長期化 bull 1990年代末以降静止衛星の電力が10kWレベルになったしか

し設計検証技術データ蓄積が遅れている改善されつつあると推測される

放射線による影響の概要

粒子 エネルギー又はLET

代表的な影響

陽子 100keV-1MeV 1-10MeV 10-100MeV gt50MeV

表面損傷 表面材料と太陽電池の損傷 放射線損傷(電離非電離損傷の両方)センサーへのノイズ シングルイベント効果

電子 10-100keV gt100keV gt1MeV

表面帯電 深部帯電現象(deep-dielectric charging)センサーへのノイズ太陽電池の損傷 放射線損傷(電離)

重イオン gt1MeV-cm2mg シングルイベント効果

注エネルギー及びLETは個々の部品等により異なりますあくまでも目安です

耐放射線設計手順

軌道条件

ミッション期間

環境条件設定

トータルドーズの予測

1MeV電子換算被曝算出

NIELの換算

LETフルエンス算出

陽子フルエンス算出

対  策  の  検  討

対  策  の  検  討

対  策  の  検  討

放射線による劣化率予測

劣化率予測 特性予測

耐性データ

放射線による劣化率予測

耐性データ

劣化率予測アレイ出力劣化予測

感受性データ

シングルイベント発生率予測 致命度解析

衛星内質量分布

(2)

部品材料の選定

他の要因による劣化率予測

(2)(2) (3)

回路設計等NO

OK

アレイ構造 セル選定

他の要因による劣化率予測 アレイ設計(2)

(2) (2) (2) (3)

衛星内質量分布 部品選定(2)

(2) (2)(3)

NO

OK

NO

OK

(1) 環境モデルマージを含む(2) 部品レベルの検討(3) アセンブリレベルでの検討(4) 設計マージン環境モデル   マージを含め大丈夫か

トータルドーズ

太陽電池アレイの劣化

シングルイベント効果

回路設計

補足放射線太陽宇宙線銀河宇宙線

NEILを用いたダメージファクターの算出

対  策  の  検  討

放射線による劣化率予測

劣化率予測 特性予測

耐性データ

(2)

部品材料の選定

他の要因による劣化率予測

(2)(2) (3)

回路設計等NO

OK

衛星内質量分布 半導体デバイスの変位損傷

(1)

(4)

(4)

(4)

(4)

各軌道における放射線環境

1E+10

1E+11

1E+12

1E+13

1E+14

1E+15

1E+16

1E+17

1E+18

1E+19

1E+20

001 010 100 1000

捕捉

電子

の積

分フ

ルエ

ンス

[m

2 ]

エネルギー[MeV]

各軌道における電子捕捉積分フルエンス(3年間)

LEO

EOS GEO

MEO

GTO

GEO 軌道傾斜角 0deg 高度36000km GTO 軌道傾斜角 18deg 高度 360km~36000km MEO 軌道傾斜角 51deg 高度 10000km EOS 軌道傾斜角 98deg 高度705km LEO 軌道傾斜角 29deg 高度 600km

1E+12

1E+13

1E+14

1E+15

1E+16

1E+17

1E+18

1E+19

1E+20

01 10 100 1000

捕捉

陽子の

積分フルエン

ス[

m2 ]

エネルギー[MeV]

各軌道における捕捉陽子積分フルエンス(3年間)

MEO

GTO

GEO

EOS LEO

放射線による部品材料の影響

総照射線量 (TIDTotal Ionising Dose )

電離損傷

バイポーラTrの電流増幅率の低下リーク電流の増大

γ線で評価

トータルドーズ効果

変位損傷 (DDDisplacement Damage )または 非イオン化エネルギー損失 (NIELNon-Ionising Energy

Loss )

変位損傷(格子欠陥の生成)

電荷輸送効率の低下 (CCD)太陽電池の効率低下等

電子陽子により評価

シングルイベント効果

1個の荷電粒子の入射により発生する誤動作

ソフト(Latch-Up Burnout) エラー又は ソフト (Upset) エラー

陽子及び重イオンで評価

トータルドーズ効果

+ - + + - + - + - - + + + + -

ゲート酸化膜

電離

格子欠陥

正電荷捕獲

+ 正孔 - 電子

電極

(Silicon oxidenitride)

荷電粒子

反跳原子

ゲート絶縁膜中に電荷が蓄積することによるMOSトランジスタのしきい電圧(MOSトランジスタがオフからオンに変化するゲート電圧)の変化をもたらすただ

し最近の最先端チップはゲート絶縁膜がきわめて薄くなっているこのためゲート絶縁膜よりもフィールド絶縁膜(隣接するトランジスタを電気的に分離する絶縁膜)での電荷蓄積が相対的には大きな問題になってきている」

シングルイベント効果

メモリセルはNチャンネルとPチャンネルMOSFETより構成されメモリ情報は回路ノード12の電位の

高低により記録している空乏層の広がっているPN接合12の領域に

重イオンが入射した場合電荷の発生と空乏層内への少数キャリアの収集が起こるこの収集電荷量が回路の耐量を越えた場合(c)に示すように反転が起こる(ソフトエラー)一方pウエル-N基板接

合の空乏層内に電荷収集量が起こりえる耐性を越えると寄生的に存在するPNPNサイリスタ構造がオ

ンし電源と基板間に大電流が流れる状態が生じる(ラッチアップ)

シングルイベントメカニズム -陽子と重イオンの違い-

エラー発生率の計算

線エネルギー付与(LET) (linear energy transfer)

電離性放射線が物質中を通過する際飛程の単位長さ当りに平均して失うエネルギーをいう各種の放射線のうちX線γ線はLETが小さいので低LETといいα線中性子線その他重イオン核分裂破片のLETは大きいので高LETという MeVμmMeV(gcm2)やMeV(mgcm2)で表される

南大西洋異常(SAA) bull 地球の自転軸と磁気軸のずれ

darr bull 放射線帯が自転軸に対して非

対称

bull 南大西洋上空では放射線帯内帯が低高度に落ちてきているこの領域を南大西洋異常域(SAA South Atlantic Anomaly)と呼ぶ

bull 地球観測衛星ではSAAで放射線帯陽子の影響を受ける

Single Event Lachup

シングルイベントと陽子分布

MOS-1衛星(高度909km軌道傾斜角99度)で発生したシングルイベントと 陽子30MeV以上の等高線マップを重ね合わせた結果

NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)

bull 入射粒子が電離によらず与える損傷非イオン化損失

低軌道での電子フラックスと 不具合の発生場所

南大西洋異常(SAA)と極の角

高度800kmでの電子フラックス図極の角(polar horn)とSAAを示す

太陽粒子線 bull 太陽高エネルギー粒子線(SPE Solar Proton Events)は太陽フレア とコロナガス噴出 (CMECoronal Mass Ejections )により引き起こされる bull フレアのスペクトルは可変であるためあるエネルギー域における最悪状態イベントは必ずしも別のエネルギー域における最悪条件ではない 1972年8月のイベント 10~70MeVの粒子が最も多かった 1989年10のイベント 1972年8月のイベントに比べ低エネルギー領域 高エネルギー領域が明らかに激しかった

フルエンス 105 to 1011 cm-2

変動期間 1日から数日

ldquoBastiliardquo Solar Event 14 July 2000

Carrington Flare

84

(LW Townseed) Carrington Flare(1859年) Carrington Flare による30MeV以上トータルFluenceを118times109cm-2で規格化 ~1989年フレアの約13倍(シングルイベントの評価で使用) ~1991年フレアの約9倍 2012年7月23日にキャリントンイベントとほぼ同等の爆発現象が太陽あるいは太陽の周りで起きていたということがNASAの太陽観測衛星「STEREO」の解析から発表された

放射線対策 bull 放射線シールドを付加し放射線を減衰させる

bull 放射線耐性の強い部品(SOI(Silicon On Insulator)技術による耐放射線部品)材料に変更する

bull 放射線による損傷を吸収するために回路または構造上のマージンを持たせる bull ソフト的なエラーに対しては エラー検出訂正機能や多数決

機能等でソフト的エラーが起きてもシステムが機能するようにしたフォールトトレラント機能を付けて対処する ICのハード的故障に対しては ラッチアップ耐性の強い部品を選定するしかないが 電流制限回路を付ける対策も採られる パワーMOSFETに対しては部品選定 電源電圧を規格値の半分以下に落とす等の対策を採る

SOI技術

表面帯電への対策例

表面の物体間を導線で結線する

太陽電池のカバーガラスを導電性被膜付き(酸化インジウムITO)にする

熱制御材表面にITOを被覆する

熱制御材は高誘電率のテフロンの使用を避け 高伝導度耐環境性に優れたブラックカプトンを使用

イオンエンジンの中和器で能動帯電制御

内部帯電への対策例

アルミで3mm厚さに相当するシールドで囲む(Faraday Cage)

テフロンやカプトンなどの誘電体材料の内部での使用量を最小限に押さえる

回路基板やコンフォーマルコーティングは誘電体なので電流リークパス(1012Ωcmまたは1012Ωcm2

程度)を必ずつける

特にスポット的な放射線シールドの金属材には必ず電流リークパスをつける

帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備

衛星モデル作成

材料物性テーブル設定

宇宙環境パラメータ設定

Converter

転送ディレクトリ 解析データファイル

転送

解析ディレクトリ生成 解析結果 進行状況チェック ファイル操作

MUSCAT 解析エンジン

解析結果 表示

パラメトリックラン

オプション 解析

大型パネル実験(35mtimes11m) クーポンパネル実験(26cmtimes16cm)

環境模擬試験 環境模擬試験

MUSCATに使用する物性値設計標準制定のための知見などを得ることを目的に軌道上の宇宙環境を模擬した地上試験を行っている これらの試験では放電の発生頻度や電圧閾値放電発生による太陽電池パネルや搭載機器への影響を検証している

放射線計測装置の原理

bull その粒子が物質を通過する際のエネルギー損出率が粒子の電荷(原子番号)Zの二乗に比例すること(Bethe-Blochの式)を利用する

S2

E

ΔE Ersquo

S1 S3

  • 宇宙機の設計のための宇宙環境
  • 話の流れ
  • 話の流れ
  • TEDA(技術データ取得装置)(国産部品の宇宙環境での実証の必要性)
  • ETS-VTEDA(技術データ取得装置)誕生前の部品の宇宙実証の背景
  • スライド番号 6
  • スライド番号 7
  • スライド番号 8
  • スライド番号 9
  • 図6太陽黒点数と静止軌道電子 (>04MeV ) Flux の変動 (ETS-V搭載DOMによる観測)
  • スライド番号 11
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの開発(理研東大と共同で宇宙環境計測の充実)
  • ETS-VI(きく6号)打ち上がったがGEOに行かずGTOに留まる
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの成果
  • スライド番号 15
  • スライド番号 16
  • スライド番号 17
  • ADEOS搭載TEDA(世界2番目の異常宇宙線ACR)
  • BBND (ボナー球中性子検出器)
  • スライド番号 20
  • ISS搭載BBNDの成果(約8か月)
  • スライド番号 22
  • MDS-1搭載放射線吸収線量モニタ(SDOM)
  • 放射線帯変動モデルの開発MDS-1 065 MeV 電子フラックス
  • 変動パラメータの選択 (1 cycle solar activity)
  • 変動パラメータ- Tavg の定義-
  • 065MeV 電子 L値-Tavg マップ
  • 13MeV 陽子 L値-Tavg マップ
  • 電子観測とMDS-1モデルの比較
  • 放射線帯フラックスピークの変動
  • 陽子観測とモデルの比較
  • 電子(035~078MeV) 1日の変動予測GOSAT軌道
  • 電子(035~078MeV) 変動の信頼度水準(1日)GOSAT軌道
  • MDS-1 model と AE-8 modelとの比較1日
  • 話の流れ
  • 2003年10月 みどり号の全損事故(複合現象)
  • 衛星帯電の基本式
  • 内部帯電
  • パドルでの帯電放電メカニズム
  • スライド番号 40
  • スライド番号 41
  • スライド番号 42
  • データ中継技術衛星DRTS (こだま)の不具合
  • DRTS ESA スパイクノイズと電子フルエンスの比較(赤の丸が異常検知)
  • 不具合が宇宙環境によるものであるか判断する際のポイント
  • 話の流れ
  • 宇宙天気のリスク-宇宙環境によるシステムへの影響 -
  • NASAの報告-GNampCに注目-
  • NASAの報告(続き)
  • 宇宙環境を原因とする不具合の割合-JAXAの場合-
  • 不具合発生部位の割合 
  • Satellite News Digest -静止軌道不具合-
  • 太陽活動と静止軌道衛星不具合例
  • スライド番号 54
  • スライド番号 55
  • スライド番号 56
  • 衛星開発段階における対策
  • 運用における対応
  • 話の流れ
  • スライド番号 60
  • スライド番号 61
  • まとめ(その1)
  • まとめ(その2)
  • 宇宙環境グループは宇宙ステーションと衛星プロジェクトの安全な遂行に貢献しています
  • 補足資料
  • 不具合原因の推移
  • 何故不具合は減らないか
  • 放射線による影響の概要
  • 耐放射線設計手順
  • 各軌道における放射線環境
  • 放射線による部品材料の影響
  • トータルドーズ効果
  • シングルイベント効果
  • シングルイベントメカニズム-陽子と重イオンの違い-
  • エラー発生率の計算
  • 線エネルギー付与(LET)(linear energy transfer)
  • 南大西洋異常(SAA)
  • Single Event Lachup
  • シングルイベントと陽子分布
  • NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)
  • 低軌道での電子フラックスと不具合の発生場所
  • 南大西洋異常(SAA)と極の角
  • スライド番号 83
  • Carrington Flare
  • 放射線対策
  • スライド番号 86
  • スライド番号 87
  • 帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備
  • スライド番号 89
  • 放射線計測装置の原理
Page 11: 宇宙機の設計のための宇宙環境の方針から国産部品開発(42品種)が実施された。 . 半導体電子部品は耐放射線性を加味して、人工衛星(特に

Miyoshi et al[2004]

太陽活動と放射線帯分布の変動

ETS-Ⅵ搭載TEDAの開発 (理研東大と共同で宇宙環境計測の充実)

目的

bull 新たに開発された国産部品材料等の宇宙環境下での劣化特性を同一条件で計測すると共に劣化の原因となる宇宙環境を同時に計測し比較解析する

bull 新規開発の部品材料の宇宙実証データフライト実績を得る

bull 地上試験として行ってきた宇宙環境を模擬した試験方法の検証を行う

bull 帯電現象及びガスジェット等による人工衛星の汚染の経時変化の取得

bull 衛星設計に用いている宇宙環境モデル(放射線磁場等)の検証 bull 宇宙環境に起因する人工衛星の故障や不具合現象の解明

ETS-VI(きく6号)打ち上がったが GEOに行かずGTOに留まる

bull 1994年(平成6年)8月28日16時50分打ち上げ

bull H-IIロケット試験機2号で種子島から打ち上げ

bull アポジエンジン不具合でGTO軌道に留まる

bull 急遽楕円軌道用に新たな制御プログラムを設計製作し地上検証を行った上で衛星にアップロードしこの問題を解決した

bull 最終軌道ペリジ約8600kmアポジ約38600km軌道傾斜角約13度(3日5周期回帰)で2年間運用

bull TEDAのデータ公開で宇宙環境データが役に立つ事を宣伝(SEESを立ち上げデータを公開した)

ETS-Ⅵ搭載TEDAの成果

トータルドーズ劣化や太陽電池劣化は静止衛星で10年かかった同じ評価を1年間でできた

シングルイベントの発生頻度の高度分布が取得できた (高度8千km~3万8千kmの範囲)

バンアレン帯の放射線帯の電子陽子重イオンの高度分布データを取得し放射線帯モデル日本モデルを作成(あけぼの衛星データ含む)

この成果はGTO軌道を最初から狙うMDS-1(つ

ばさ)プロジェクトへとつながった 米国は1990年7月25日CRRESS(Combined Release and Radiation Effects Satellite )衛星を打ち上げ

研究開発の流れ

計測装置開発

データ収集 計画

環境計測

研究試作

衛星への影響解析で必要なデータ及び性能を機器開発に反映する

高エネルギー軽粒子 重イオン 中性子 帯電 原子状酸素 デブリ 新たな現象(問題点)

軌道上不具合評価 宇宙環境モデル

宇宙環境データベース 警報

衛星設計基準

有人活動への反映

宇宙天気予報 システム

国内外機関とのデータ交換

打上げ衛星運用

放射線環境評価(ISOを含む)の見直し 宇宙環境モデルの最適化 効率の良い宇宙機の開発 (シールド厚最適設計) 低コスト化(部品仕様の見直し) 短期間開発(民生品の利用)

フィードバック

成果目標

プロジェクト支援

宇宙環境計測装置(放射線磁場)小型化の流れ

9kg 10cm 10cm 10kg 14W 18W

1cm 52g 480g 1cm 12W以下 15W

磁力計(480g->52g)

みどり2搭載用 つばさかけはしきぼう搭載用 Jason-2GOSAT搭載

ETS-VIII搭載用 QZS搭載用

電子(05~50MeV) 陽子(1~160MeV) α粒子(4~200MeV)

電子(04~5MeV) 陽子(7~48MeV) α粒子(30~140MeV)

plusmn655364096102456nT plusmn655364096nT

16bit 20bit

電子(003~20MeV) 陽子(04~250MeV) α粒子(08~400MeV)

LPT-S 216x182x175 mm 62 kg LPT-E 240x165x 93 mm 28 kg

積算吸収線量計

軽粒子モニタ(10kgー>9kgー>7kg最小2kg)

17times10times5mm749g

ISSKibou(09-)

GEO

LEO

ETS-V (87-97)

ADEOS-II(02-03)

ETS-VIII(06-) DRTS(02- )

STS-89(98)

MDS-1(02-03) ETS-VI(94-96)

ETS-VII (97-99)

宇宙環境計測の流れ ISSUS-Lab(01)

ひまわり1-4(78-99)

ERG(16予定)

ALOS(06-11)

GOSAT(09-)

Jason-2((08-)

Jason-3(15予定)

GTO

QZS(09-)

ADEOS (96-97)

ADEOS搭載TEDA (世界2番目の異常宇宙線ACR)

bull シングルイベント評価のための重イオン観測であったが世界2番目の異常宇宙線を観測することができた

bull 低軌道の衛星は地球磁場が邪魔となって宇宙線(重イオン)を観測するに向いていないと考えられていたが異常宇宙線を観測するのにすぐれていることが明らかとなった

T Kohno et al Radiation Measuremets 30 5 PP639-644

BBND (ボナー球中性子検出器)

bull 1994年(平成6)年7月に中性子計測のために ボナー球ホスウイッチ方式及びシンチレーションファイバーの3種類のセンサの研究をスタート

bull シャトル打ち上げ計画の管理者から搭載装置の検討依頼がありBBNDのSTS-89への搭載が決定した(1997年1月頃)

bull 振動試験で装置内のボルトが外れるという不具合もあったが約1年という非常に短期間で搭載品を開発することができた

bull コスト低減のために構造解析を自前で実施したりデータ処理ソフトウェアも内作した

熱中性子に対して高い感度を持つ6個の3Heガス入り比例計数管で構成して

いる中性子は電荷をもたないのでそれ自身には電離作用がないが軽い原子の3He気体では反跳原子を生じたり中性子の核反応(3He+nrarrp+3H+765KeV)によって荷電粒子を生じるので間接的に電離を起こす下図のように気体中に二つの電極を置き高電圧(1000V)をかけておくと中性子の入

射によって気体中に生じた陽子イオンと電子のイオン対がそれぞれの電極に向かって流動し外部回路に電離電流が流れるこの電気パルスにより中性子を計測する

ボナー球型中性子モニタの概要

Polyethylene Sphere3He proportional Counter

51 φ 51 φ81 φ110 φ150 φ230 φ

Sensor6 Sensor5 Sensor4 Sensor3 Sensor2 Sensor1

Covered by Gadolinium

[mm]3Heガス入り比例計数管の原理

6個のボナー球の断面図

3Heガス入り比例計数管とポリエチレン減速材

H Matsumotoet al Radiation Measurements 33 (2001) 321-333

ISS搭載BBNDの成果(約8か月)

実験期間中の平均的な等価線量等量率 (2001年3月23日~2001年11月14日)

太陽フレア時(2001年11月4日)

等価量等量率の平均は94μSv日で年率に換算すると34mSv年となるこれは地上において自然界から受ける等価線量当量率の約14倍に相当する 実験期間中に多数の太陽フレアが発生した2001年11月4日の太陽フレアにより019mSVの増加を観

測したこれは自然界から受ける等価線量当量率の約1か月分に相当するしかしBBNDの約8か月

の実験期間中の全等価線量当量に対するこの太陽フレアの影響の寄与分は1以下であった また搭載位置による環境の違いも確認された

H Koshiishiet al Radiation Measurements 42(2007) 1510-1520

1)船内の計測結果より低エネルギー側で2~3桁高エネルギー側で1~2桁低い 2)船内より船壁が薄く中性子が少ない環境より自然のアルベド中性子環境に近い

中性子被曝線量の ISS船外(SEDA-AP)と船内(STS-89)の比較

MDS-1搭載放射線吸収線量モニタ(SDOM) SiTungstenAlBGO

② ⑦

⑧⑧

① Collimator ② Window③ SSDs ④ Plastic Scintillator⑤ Anticoincidence Scintillator(ACS)⑥ Beam Stop⑦ Scintillator PMT⑧ ACS PMT

運用期間 2002年2月 ndash 2003年9月 軌道 -軌道傾斜角 285deg 1 lt BB0 le 84 -高度 500 km times 36000km 11 le L le 10 -軌道周期 約10時間35分 -スピンレート 5rpm

計測エネルギー範囲 Electron 04- 9MeV (5bins) Proton 09-210MeV (12bins) He 6-140MeV (4bins) Heavy Ion 15- 60MeVnuc (1bin) G-Factor 001cm2sr

放射線帯変動モデルの開発 MDS-1 065 MeV 電子フラックス

変動パラメータの選択 (1 cycle solar activity)

太陽風速度(SW)

太陽黒点数(R)

Ap指数

F107

変動パラメータ- Tavg の定義-

1日後の予測

パラメータスケールの時間平均 ApTavg SWTavg F107 Tavg

T days

放射線帯の構造は変動パラメータ値の大きさと継続時間に相関がある

065MeV 電子 L値-Tavg マップ

APTavg

SWTavg

13MeV 陽子 L値-Tavg マップ

APTavg

F107Tavg

電子観測とMDS-1モデルの比較

80 175

放射線帯フラックスピークの変動

80orbits (平穏時) 175orbits (擾乱時)

陽子観測とモデルの比較

電子(035~078MeV) 1日の変動予測GOSAT軌道

0

50

100

150

200

250

1E+09

1E+10

1E+11

1E+12

1984 1986 1988 1990 1992 1994 1996 1998 2000 2002 2004 2006 2008

Flue

nce[

ecm

2M

eVd

ay]

Launch day

FluenceSSN

Worst case Nov 12003

電子(035~078MeV) 変動の信頼度水準(1日)GOSAT軌道

00

01

02

03

04

05

06

07

08

09

10

88 90 92 94 96 98 100 102 104 106 108 110 112 114

Con

fiden

ce le

vel

Fluence[LOG10 ecm2MeVday]

AE-8 MAX

AE-8 MIN

MDS-1 model と AE-8 model との比較1日

0

20

40

60

80

100

120

140

160

180

1E+09

1E+10

1E+11

1E+12

1995 1997 1999 2001 2003 2005 2007 2009

Flue

nce[

ecm

2M

eVd

ay]

Launch day

Fluence(JAXA)Fluence(AE8)SSN

話の流れ

技術データ取得装置(TEDA)の概要と成果 bull 主な成果 bull 不具合解析例

宇宙天気のリスクと対策 bull 宇宙環境による衛星システムへの影響 bull 宇宙環境を原因とする不具合の割合推移部位 bull 静止軌道不具合 bull 対策

今後必要な観測項目

まとめ

2003年10月 みどり号の全損事故 (複合現象)

極域のオーロラ帯を通過中に電力ハー

ネスを巻いているMLIが高エネルギー電

子により帯電

MLIが接地されていなかったため内側

のハーネスとの間に1kV以上の電位差が

発生

MLI内のガス密度が発電開始に伴う温度

上昇により上昇

ハーネス被覆の傷により露出したハーネ

ス芯線とMLI内面の間で放電発生

単発の放電が隣接するハーネスに飛び火

してハーネス間の短絡

アーク放電が次々と伝搬していきハー

ネス全体が焼損

故障推定箇所 (大電力ハーネス部)

bull詳細報告書は文部科学省 宇宙開発委員会のHP参照

httpwwwmextgojpb_menushingiuchuureports04080901htm

bull 人工衛星の電位 bull 人工衛星は電気的に宇宙に浮いている bull 宇宙機構造体が接地点 bull 宇宙機への流入電流と流出電流のバランスによって宇宙機電位が決まる bull 各電流成分は宇宙機電位Vの関数として表され定常状態では式を下式を満たす

衛星帯電の基本式

( ) dtIIIIIIIC

V

dtdVCVIVIVIVIVIVIVI

BPHBSESISEIE

BPHBSESISEIE

int +++++minus=

==+++++minus

1

0)]()()()()()([)(

入射電子電流 ( E I )

後方散乱電子電流 ( BSE I )

入射正イオン電流 ( I I )

入射電子による二次電子電流 ( SE I )

太陽光

入射正イオンによる 二次電子放出電流 ( SI I )

光電子放出電流( PH I )

電荷ビーム放出電流(IB)

bull内部帯電は衛星の外壁を貫通した放射線帯外帯の01MeV以上の電子が内部に侵入

bull基板間や同軸ケーブルの線間等の容量(コンデンサ)や誘電体に帯電 bull接地されてない導体片に帯電

bullその耐圧電圧を超えると その耐圧の弱い箇所 (材質の欠陥や針状突起など の箇所)で放電して故障に至る

内部帯電

(あるエネルギ-以上の粒子が入射光電子なし)

NASA-HDBK-4002より

パドルでの帯電放電メカニズム

宇宙環境の影響により 衛星がマイナス電位に帯電

高エネルギー電子等により カバーガラスはプラスに帯電 衛星とカバーガラスに電位差が生じる

電位差が大きくなると トリプルジャンクション近傍 の電界強度が増大していく

トリプルジャンクションで放電が発生する カバーガラスの帯電が緩和される

+ + + + + + + + + + + + + +

+ + + +

カバーガラス

太陽電池セル

基板(衛星構体)

トリプルジャンクション rArr 導体絶縁体宇宙環境の接点

持続放電

Substrate

Satellite Load

insulation sheet

Solar array cell

Cover glass

Arc current

Electrode

持続放電は衛星の電力消失につながる 持続放電のモードは以下の2通りがある

Substrate

Satellite Load

insulation sheet

Solar array cell

Cover glass

Arc current

Electrode

Solar array cell

Cover glass

セル-基板間短絡 セル間短絡

放電によって太陽電池セルと基板が短絡する 短絡によって負荷に電力が供給されなくなる

放電によって太陽電池セルとセルが短絡する 短絡によって負荷に電力が供給されなくなる

サブストーム(高エネルギー電子)との遭遇

+ + + + + + + +

二次電子光電子による絶縁体の帯電(局所帯電)

電位差発生

逆電位勾配

衛星構体が負に帯電(絶対帯電)

電位

時間

サブストーム

衛星構体 VS

乖離電圧 ∆V

カバーガラスVcg

0 プラズマ電位

軌道別帯電放電現象

トリプルジャンクションで 放電発生

放電発生

静止軌道

+ + + + + + + +

逆電位勾配

軌道帯電放電現象

トリプルジャンクションで 放電発生

極軌道 オーロラ電子(高エネルギー電子)との遭遇

プラズマ流入出による絶縁体の帯電(局所帯電)

電位差発生

衛星構体が負に帯電(絶対帯電)

放電発生

電位

時間

オーロラ電子

衛星構体 乖離電圧 ∆V

カバーガラス

0 プラズマ電位

データ中継技術衛星DRTS (こだま)の不具合

2002年10月 9日 静止軌道に打ち上げ

2003年

3月24日 406JST変化率異常モニタ故障検出(FDIR)

が動作しA系からB系に切り替わった

3月25日 410JSTにB系のみ異常検知

4月 3日 327JSTにB系のみ異常検知

5月28日 124JSTにB系のみ異常検知

6月 6日1537JSTにB系のみ異常検知

ESA

DRTS ESA スパイクノイズと 電子フルエンスの比較(赤の丸が異常検知)

larr閾値

この事実を基に静止軌道における内部帯電警報システムを構築 2004年4月より運用開始

不具合が宇宙環境によるものであるか 判断する際のポイント

不具合の発生した時刻に太陽フレアや磁気嵐等の宇宙天気の大きな変動が起きていれば不具合に関係している可能性が高い但し帯電など放射線の積算的効果の伴う現象については発生から1週間位さかのぼり環境がどのように推移してきたかを考慮する必要がある

磁気嵐が起きると静止軌道に急激な粒子の増加現象が起きこれにより衛星帯電が引き起こされたりする(予測に利用可能)

地方時(真夜中や朝方か)や季節(春秋)を考慮する

低軌道衛星においてはSAA外帯のrdquo角ldquo及び極通過時に不具合

が起きやすいので衛星の位置(緯度経度)が重要

事象を把握する上で単発現象か数回起きている現象か周期

(時間同じ軌道等)的に発生している現象か

話の流れ

技術データ取得装置(TEDA)の概要と成果 bull 主な成果 bull 不具合解析例

宇宙天気のリスクと対策 bull 宇宙環境による衛星システムへの影響 bull 宇宙環境を原因とする不具合の割合推移部位 bull 静止軌道不具合 bull 対策

今後必要な観測項目

まとめ

宇宙天気のリスク -宇宙環境によるシステムへの影響 -

プラズマ (IRI)

帯電 (MUSCAT)

衝突 (AUTODY)

抗力 表面劣化

紫外線X線 中性粒子 (MSIS)

放射線粒子 (AE8AP8JPLSHIELDO

SE-2)

メテオロイドデブリ (MASTER2005

ORDEM)

電離損傷 変位損傷

bull電子回路の劣化 bull光部品の劣化

bull太陽電池セルの劣化

SEU (CREME96)

bullデータエラー bull画像ノイズ

bullシステム停止 bull回路損傷

bull熱的電気的光学的特性の劣化

bull構造の劣化 bullコンタミ

電磁パルス bull電源出力低下

bull損傷

bullトルク bull軌道落下

bull構造 損傷 bull減圧

bull電磁パルス

NASAの報告 -GNampCに注目-

1974年から1994年に起きたNASAと空軍の衛星故障の内20~25が宇宙環境に起因していたと報告

1990年から2001年に米国欧州カナダ日本の企業や政府機関が開発した衛星を調べた過去の宇宙ミション損失の大部分はロケットの失敗であったが1998年衛星損失の大部分は軌道上の衛星障害となっている多くの最近の異常は太陽電池アレイ及びバッテリの危険が増加している静止軌道通信衛星の設計寿命はこのサブシステムの故障の危険が増加している

喪失等の大きな誘導制御(GNampC)の不具合に注目 GNampC不具合の内宇宙環境による 不具合は約3と報告されている

軌道上衛星のタイプ別数

NASAの報告(続き)

衛星設計寿命における不具合発生時期 事故率と軌道

軌道別の衛星数 サブシステム不具合

宇宙環境を原因とする不具合の割合 -JAXAの場合-

2002年~2008年に運用された軌道上不具合情報が比較的充実している11衛星(利用衛星7機科学衛星4機)の結果宇宙環境によるも

のは約15過去のデータよりも割合が少ない

合計83件 合計35件

(1)利用衛星 (2)科学衛星

設計検討 不足 48

製造不良 8

軌道上環境 17

偶発故障 6

調査中 13

原因不明 8

設計検討

不足 61

製造不良 4

軌道上環境 11

偶発故障 6

調査中 9

原因不明 9

不具合発生部位の割合

不具合発生部位の割合

Brent Robertson Eric Stoneking ( 1990-2001NASA Goddard Space Flight Center )

Satellite News Digest -静止軌道不具合-

Satellite News Digest (SND) (http wwwsqt-indexcouk) で1997年~2009年の期間に静止軌道で95件の不具合が報告されている その内運用ミスや設計ミスなどを除くと32件(約33)は宇宙環境によるものであった 過去のデータより割合が多い

Choiら1)はこれら不具合の地方時と季節依存性を確認した その結果2100LT~900LTで約72の不具合が発生し900LT~2100LTは9件(約28)であった またこの9件は全て姿勢制御の不具合だった 静止軌道衛星不具合のほとんどは真夜中と朝方で起きており磁気嵐に伴い磁気圏尾部から注入した粒子による表面帯電が不具合の主原因と結論づけている

1) Ho-sung Choi et al Analysis of GEO spacecraft anomalies Space weather relationships Space Weather Vol 9 S06001

太陽活動と静止軌道衛星不具合例

ANIK-E1E2

ANIK-E1

複数の衛星で故障

Galaxy-15

帯電放電不具合 -ANIK-E1amp2Telstar401-

Jan 1994 ANIK-E1 amp E2事故時の環境 - Joe H Allen

1週間

太陽活動下降時期の電子増加

2MeV以上電子

copyNOAA Web

フラックスが3桁急増

Jan 1997 Telstar401事故時の環境

静止軌道の急激な電子増加

太陽極大期太陽フレアによる衛星障害 - 2003年10月~11月-

10486981048698 永久故障 4 10486981048698 安全モード又は運用を一時停止 31 10486981048698 データ内容の「誤り」の増加搭載コンピュータの誤動作 5

httpwwwsat-ndcomfailures等のデータによる 合計 40件

-Barbieri and Mahmot

米国極軌道気象衛星NOAA-17の改良型マイクロ波観測装置AMSU-A1 (Advanced Microwave Sounding Unit)のスキャナーが永久故障 米国気象衛星GOES -8号のX線センサがOFFになり復帰しなくなった

e-birdに深刻な不具合が発生 不具合は20本のトランスポンダ全てに影響

火星周回中の探査機「マーズオデッセイ (Mars Odyssey)」の観測機器放射線観測装置「Martian Radiation Environment Experiment (MARIE)」が太陽活動の影響により10月28日から適切に作動しなくなった データ中継技術衛星(DRTS)「こだま」 太陽捕捉モードに移行

太陽陽子

帯電放電不具合-Galaxy15(局所的的現象)- 2

5 M

eV

65

MeV

11

5 M

eV

GOES 14 ----- GOES 15 ----- GOES 11 -----

Satellite Locations

Galaxy 15 anomaly

2010年4月5日9時48分UTCは磁気嵐及びCMEが発生するなど宇宙環境は非常に荒れていたGalaxy15衛星は真夜中側に位置し宇宙環境の影響を受けやすい

位置にいたことから宇宙環境による不具合である可能性が高いということで原因追及がなされた高エネルギー粒子が引き起こす代表的な衛星不具合現象として3つ(表面帯電内部帯電SEUシングルイベントバーンアウトSEL)の可能性を検討した

チームの報告書によると磁気圏尾部からの熱電子の流入による放電が原因であったと結論付けられたGalaxy15衛星の近くにはGOES-11衛星が位置していたがGOES-11衛星には不具合を発生しておらず本現象は局所的な現象と推測される

衛星開発段階における対策 JAXAの不具合解析の結論

bull 2002年~2008年に運用された11機の衛星不具合を解析 宇宙環境による不具合は偶発故障のみ(全体の約15)確率的には想定範囲内ではあるがその影響を最小限とするためディレーティング運用モード寿命についての研究に取り組む

bull 設計基準試験の充実検証確認の強化技術成熟度(TRL)評価の徹底各々の境界制約条件の明示化等により検証不足抜けの防止有効なピアレビューに結びつける

冗長系(同じハードウェア機能の冗長)柔軟性の設計(ソフトハードの対応)

bull 従来の故障が起きないようにする設計に対してGOSAT(いぶき)では重要部

品を二重化することにより故障する可能性は上がるが故障しても衛星バスの運用や観測が続行できる可能性がより高くなるように設計した

運用における対応

bull 宇宙天気監視ーロケット打ち上げ及び宇宙飛行士支援 数日前に今後の宇宙環境の推移を把握(MXレベルのフレアの発生確率)

bull X線の増加で太陽フレア発生を検知したら高エネルギー粒子の発生をいつまで 気を付ければ良いか判断(発生位置で大凡を推定するが課題は多い) SPEが発生した場合(特に10MeV以上100MeV 以上の陽

子)最大値フラックス値の推定 ピーク値を予測(特に閾値に近くなった時に重要)

bull 衛星運用 bull 太陽フレア磁気嵐警報(X線陽子及びkpが閾値を超えた

時に警報を発信)2003年10月より運用開始 bull 内部帯電警報(2日後の静止軌道上の高エネルギー電子(>1

Me) の増加を予測し 閾値を超えた時に警報を発信) 2004年4月より運用開始

話の流れ

技術データ取得装置(TEDA)の概要と成果 bull 主な成果 bull 不具合解析例

宇宙天気のリスクと対策 bull 宇宙環境による衛星システムへの影響 bull 宇宙環境を原因とする不具合の割合推移部位 bull 静止軌道不具合 bull 対策

今後必要な観測項目

まとめ

計測対象計測項目 計測対象 粒径100μm以上のデブリメテオロイド 計測項目 デブリ粒径衝突頻度

基本原理

厚さ約125μmの絶縁性のポリイミドフィルム表面に 100μm周期で直線状の細長い導線(太さ50μm)パターンを形成導線の破断を電気的に検知することによりデブリの衝突(貫通)を検知する破断した導線の数導線の幅ピッチからデブリサイズを計測する

微小デブリ計測技術の概要

衝突孔の例(衝突試験ISAS) - 衝突粒子 SUS 309 microm - 衝突速度 52 kms

HTV5号機によるセンサ機能のフライト実証

35cm

46cm

FY2013機能実証モデル

検出線幅 50 μm 検出線間隔 100 μm フィルム厚 lt 20 μm 有感領域 30times33cm 検出線総数 3300本

サイズ 50times39times4 cm (筐体を含む)

重量 約15kg(筐体を含む)

消費電力 2W(最大4W)(他センサ含む)

テレメトリ 02 bps

宇宙環境観測装置KASPERの一部としてデブリセンサSDMを搭載 FY2013に製作開始今年8月に打ち上げ予定)

まとめ(その1)

衛星不具合の主な原因は帯電放電シングルイベント放射線損傷である今後デブリ環境が重要になると予測される

静止軌道では商用衛星が多く運用されており宇宙環境の変動把握は重要この領域で運用する衛星が気を付けなければいけない環境として

1太陽フレアに伴う高エネルギー粒子 2太陽活動下降期による静止軌道電子の増加 3磁気嵐に伴う磁気圏尾部から注入する粒子 などがあげられる

まとめ(その2)

不具合軽減の取り組み bull 開発時は宇宙環境条件(トータルフラックス及び最悪条

件)を明確にし設計(冗長系柔軟性の設計ディレーティング及び運用モード寿命について研究)試験の充実検証の充実を図る

bull 運用段階に入ったならば宇宙環境を監視し警報等で故障を防ぐ

予測課題 bull 太陽フレアに伴う高エネルギー粒子発生後フラックス

ピーク値の推定

bull 衛星により不具合の起きる閾値は異なるが閾値をこえる急激な電子フラックスの増加と継続時間の予測

bull 局所的な磁気嵐に伴う磁気圏尾部から注入する粒子

宇宙環境グループは宇宙ステーションと衛星プロジェクトの安全な遂行に貢献しています

ご静聴ありがとうございました

補足資料

不具合原因の推移 bull 宇宙天気を大きく左右する要因の1つとして約11年の太陽活動変化が挙げられる

bull 太陽活動下降時期(太陽変動CME)と極大期(フレアCME)に衛星で不具合が増加するそれにより不具合原因の割合が変わる

-Koons et al The Impact of the Space Environment on Space Systems Aerospace Corp report no TR-99(1670)-1 20 July 1999 -2009 preliminary study (unpublished)

何故不具合は減らないか

bull 部品 放射線に対する感受性が高くなっている bull 微細化が進み同時にフォールトするノードが増え同時にエ

ラーとなる論理ノードやメモリセルが増加する微細化によってメモリセルは小さくなるので記憶容量当たりでみるとエラーの発生率は下がるしかし半導体チップの記憶容量やゲート数が増えるので半導体チップ当たりのエラー発生率は微細化とともに上昇するまた蓄積電荷が小さくなり感受性が高くなってきている

bull システム 大型化大電力化運用長期化 bull 1990年代末以降静止衛星の電力が10kWレベルになったしか

し設計検証技術データ蓄積が遅れている改善されつつあると推測される

放射線による影響の概要

粒子 エネルギー又はLET

代表的な影響

陽子 100keV-1MeV 1-10MeV 10-100MeV gt50MeV

表面損傷 表面材料と太陽電池の損傷 放射線損傷(電離非電離損傷の両方)センサーへのノイズ シングルイベント効果

電子 10-100keV gt100keV gt1MeV

表面帯電 深部帯電現象(deep-dielectric charging)センサーへのノイズ太陽電池の損傷 放射線損傷(電離)

重イオン gt1MeV-cm2mg シングルイベント効果

注エネルギー及びLETは個々の部品等により異なりますあくまでも目安です

耐放射線設計手順

軌道条件

ミッション期間

環境条件設定

トータルドーズの予測

1MeV電子換算被曝算出

NIELの換算

LETフルエンス算出

陽子フルエンス算出

対  策  の  検  討

対  策  の  検  討

対  策  の  検  討

放射線による劣化率予測

劣化率予測 特性予測

耐性データ

放射線による劣化率予測

耐性データ

劣化率予測アレイ出力劣化予測

感受性データ

シングルイベント発生率予測 致命度解析

衛星内質量分布

(2)

部品材料の選定

他の要因による劣化率予測

(2)(2) (3)

回路設計等NO

OK

アレイ構造 セル選定

他の要因による劣化率予測 アレイ設計(2)

(2) (2) (2) (3)

衛星内質量分布 部品選定(2)

(2) (2)(3)

NO

OK

NO

OK

(1) 環境モデルマージを含む(2) 部品レベルの検討(3) アセンブリレベルでの検討(4) 設計マージン環境モデル   マージを含め大丈夫か

トータルドーズ

太陽電池アレイの劣化

シングルイベント効果

回路設計

補足放射線太陽宇宙線銀河宇宙線

NEILを用いたダメージファクターの算出

対  策  の  検  討

放射線による劣化率予測

劣化率予測 特性予測

耐性データ

(2)

部品材料の選定

他の要因による劣化率予測

(2)(2) (3)

回路設計等NO

OK

衛星内質量分布 半導体デバイスの変位損傷

(1)

(4)

(4)

(4)

(4)

各軌道における放射線環境

1E+10

1E+11

1E+12

1E+13

1E+14

1E+15

1E+16

1E+17

1E+18

1E+19

1E+20

001 010 100 1000

捕捉

電子

の積

分フ

ルエ

ンス

[m

2 ]

エネルギー[MeV]

各軌道における電子捕捉積分フルエンス(3年間)

LEO

EOS GEO

MEO

GTO

GEO 軌道傾斜角 0deg 高度36000km GTO 軌道傾斜角 18deg 高度 360km~36000km MEO 軌道傾斜角 51deg 高度 10000km EOS 軌道傾斜角 98deg 高度705km LEO 軌道傾斜角 29deg 高度 600km

1E+12

1E+13

1E+14

1E+15

1E+16

1E+17

1E+18

1E+19

1E+20

01 10 100 1000

捕捉

陽子の

積分フルエン

ス[

m2 ]

エネルギー[MeV]

各軌道における捕捉陽子積分フルエンス(3年間)

MEO

GTO

GEO

EOS LEO

放射線による部品材料の影響

総照射線量 (TIDTotal Ionising Dose )

電離損傷

バイポーラTrの電流増幅率の低下リーク電流の増大

γ線で評価

トータルドーズ効果

変位損傷 (DDDisplacement Damage )または 非イオン化エネルギー損失 (NIELNon-Ionising Energy

Loss )

変位損傷(格子欠陥の生成)

電荷輸送効率の低下 (CCD)太陽電池の効率低下等

電子陽子により評価

シングルイベント効果

1個の荷電粒子の入射により発生する誤動作

ソフト(Latch-Up Burnout) エラー又は ソフト (Upset) エラー

陽子及び重イオンで評価

トータルドーズ効果

+ - + + - + - + - - + + + + -

ゲート酸化膜

電離

格子欠陥

正電荷捕獲

+ 正孔 - 電子

電極

(Silicon oxidenitride)

荷電粒子

反跳原子

ゲート絶縁膜中に電荷が蓄積することによるMOSトランジスタのしきい電圧(MOSトランジスタがオフからオンに変化するゲート電圧)の変化をもたらすただ

し最近の最先端チップはゲート絶縁膜がきわめて薄くなっているこのためゲート絶縁膜よりもフィールド絶縁膜(隣接するトランジスタを電気的に分離する絶縁膜)での電荷蓄積が相対的には大きな問題になってきている」

シングルイベント効果

メモリセルはNチャンネルとPチャンネルMOSFETより構成されメモリ情報は回路ノード12の電位の

高低により記録している空乏層の広がっているPN接合12の領域に

重イオンが入射した場合電荷の発生と空乏層内への少数キャリアの収集が起こるこの収集電荷量が回路の耐量を越えた場合(c)に示すように反転が起こる(ソフトエラー)一方pウエル-N基板接

合の空乏層内に電荷収集量が起こりえる耐性を越えると寄生的に存在するPNPNサイリスタ構造がオ

ンし電源と基板間に大電流が流れる状態が生じる(ラッチアップ)

シングルイベントメカニズム -陽子と重イオンの違い-

エラー発生率の計算

線エネルギー付与(LET) (linear energy transfer)

電離性放射線が物質中を通過する際飛程の単位長さ当りに平均して失うエネルギーをいう各種の放射線のうちX線γ線はLETが小さいので低LETといいα線中性子線その他重イオン核分裂破片のLETは大きいので高LETという MeVμmMeV(gcm2)やMeV(mgcm2)で表される

南大西洋異常(SAA) bull 地球の自転軸と磁気軸のずれ

darr bull 放射線帯が自転軸に対して非

対称

bull 南大西洋上空では放射線帯内帯が低高度に落ちてきているこの領域を南大西洋異常域(SAA South Atlantic Anomaly)と呼ぶ

bull 地球観測衛星ではSAAで放射線帯陽子の影響を受ける

Single Event Lachup

シングルイベントと陽子分布

MOS-1衛星(高度909km軌道傾斜角99度)で発生したシングルイベントと 陽子30MeV以上の等高線マップを重ね合わせた結果

NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)

bull 入射粒子が電離によらず与える損傷非イオン化損失

低軌道での電子フラックスと 不具合の発生場所

南大西洋異常(SAA)と極の角

高度800kmでの電子フラックス図極の角(polar horn)とSAAを示す

太陽粒子線 bull 太陽高エネルギー粒子線(SPE Solar Proton Events)は太陽フレア とコロナガス噴出 (CMECoronal Mass Ejections )により引き起こされる bull フレアのスペクトルは可変であるためあるエネルギー域における最悪状態イベントは必ずしも別のエネルギー域における最悪条件ではない 1972年8月のイベント 10~70MeVの粒子が最も多かった 1989年10のイベント 1972年8月のイベントに比べ低エネルギー領域 高エネルギー領域が明らかに激しかった

フルエンス 105 to 1011 cm-2

変動期間 1日から数日

ldquoBastiliardquo Solar Event 14 July 2000

Carrington Flare

84

(LW Townseed) Carrington Flare(1859年) Carrington Flare による30MeV以上トータルFluenceを118times109cm-2で規格化 ~1989年フレアの約13倍(シングルイベントの評価で使用) ~1991年フレアの約9倍 2012年7月23日にキャリントンイベントとほぼ同等の爆発現象が太陽あるいは太陽の周りで起きていたということがNASAの太陽観測衛星「STEREO」の解析から発表された

放射線対策 bull 放射線シールドを付加し放射線を減衰させる

bull 放射線耐性の強い部品(SOI(Silicon On Insulator)技術による耐放射線部品)材料に変更する

bull 放射線による損傷を吸収するために回路または構造上のマージンを持たせる bull ソフト的なエラーに対しては エラー検出訂正機能や多数決

機能等でソフト的エラーが起きてもシステムが機能するようにしたフォールトトレラント機能を付けて対処する ICのハード的故障に対しては ラッチアップ耐性の強い部品を選定するしかないが 電流制限回路を付ける対策も採られる パワーMOSFETに対しては部品選定 電源電圧を規格値の半分以下に落とす等の対策を採る

SOI技術

表面帯電への対策例

表面の物体間を導線で結線する

太陽電池のカバーガラスを導電性被膜付き(酸化インジウムITO)にする

熱制御材表面にITOを被覆する

熱制御材は高誘電率のテフロンの使用を避け 高伝導度耐環境性に優れたブラックカプトンを使用

イオンエンジンの中和器で能動帯電制御

内部帯電への対策例

アルミで3mm厚さに相当するシールドで囲む(Faraday Cage)

テフロンやカプトンなどの誘電体材料の内部での使用量を最小限に押さえる

回路基板やコンフォーマルコーティングは誘電体なので電流リークパス(1012Ωcmまたは1012Ωcm2

程度)を必ずつける

特にスポット的な放射線シールドの金属材には必ず電流リークパスをつける

帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備

衛星モデル作成

材料物性テーブル設定

宇宙環境パラメータ設定

Converter

転送ディレクトリ 解析データファイル

転送

解析ディレクトリ生成 解析結果 進行状況チェック ファイル操作

MUSCAT 解析エンジン

解析結果 表示

パラメトリックラン

オプション 解析

大型パネル実験(35mtimes11m) クーポンパネル実験(26cmtimes16cm)

環境模擬試験 環境模擬試験

MUSCATに使用する物性値設計標準制定のための知見などを得ることを目的に軌道上の宇宙環境を模擬した地上試験を行っている これらの試験では放電の発生頻度や電圧閾値放電発生による太陽電池パネルや搭載機器への影響を検証している

放射線計測装置の原理

bull その粒子が物質を通過する際のエネルギー損出率が粒子の電荷(原子番号)Zの二乗に比例すること(Bethe-Blochの式)を利用する

S2

E

ΔE Ersquo

S1 S3

  • 宇宙機の設計のための宇宙環境
  • 話の流れ
  • 話の流れ
  • TEDA(技術データ取得装置)(国産部品の宇宙環境での実証の必要性)
  • ETS-VTEDA(技術データ取得装置)誕生前の部品の宇宙実証の背景
  • スライド番号 6
  • スライド番号 7
  • スライド番号 8
  • スライド番号 9
  • 図6太陽黒点数と静止軌道電子 (>04MeV ) Flux の変動 (ETS-V搭載DOMによる観測)
  • スライド番号 11
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの開発(理研東大と共同で宇宙環境計測の充実)
  • ETS-VI(きく6号)打ち上がったがGEOに行かずGTOに留まる
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの成果
  • スライド番号 15
  • スライド番号 16
  • スライド番号 17
  • ADEOS搭載TEDA(世界2番目の異常宇宙線ACR)
  • BBND (ボナー球中性子検出器)
  • スライド番号 20
  • ISS搭載BBNDの成果(約8か月)
  • スライド番号 22
  • MDS-1搭載放射線吸収線量モニタ(SDOM)
  • 放射線帯変動モデルの開発MDS-1 065 MeV 電子フラックス
  • 変動パラメータの選択 (1 cycle solar activity)
  • 変動パラメータ- Tavg の定義-
  • 065MeV 電子 L値-Tavg マップ
  • 13MeV 陽子 L値-Tavg マップ
  • 電子観測とMDS-1モデルの比較
  • 放射線帯フラックスピークの変動
  • 陽子観測とモデルの比較
  • 電子(035~078MeV) 1日の変動予測GOSAT軌道
  • 電子(035~078MeV) 変動の信頼度水準(1日)GOSAT軌道
  • MDS-1 model と AE-8 modelとの比較1日
  • 話の流れ
  • 2003年10月 みどり号の全損事故(複合現象)
  • 衛星帯電の基本式
  • 内部帯電
  • パドルでの帯電放電メカニズム
  • スライド番号 40
  • スライド番号 41
  • スライド番号 42
  • データ中継技術衛星DRTS (こだま)の不具合
  • DRTS ESA スパイクノイズと電子フルエンスの比較(赤の丸が異常検知)
  • 不具合が宇宙環境によるものであるか判断する際のポイント
  • 話の流れ
  • 宇宙天気のリスク-宇宙環境によるシステムへの影響 -
  • NASAの報告-GNampCに注目-
  • NASAの報告(続き)
  • 宇宙環境を原因とする不具合の割合-JAXAの場合-
  • 不具合発生部位の割合 
  • Satellite News Digest -静止軌道不具合-
  • 太陽活動と静止軌道衛星不具合例
  • スライド番号 54
  • スライド番号 55
  • スライド番号 56
  • 衛星開発段階における対策
  • 運用における対応
  • 話の流れ
  • スライド番号 60
  • スライド番号 61
  • まとめ(その1)
  • まとめ(その2)
  • 宇宙環境グループは宇宙ステーションと衛星プロジェクトの安全な遂行に貢献しています
  • 補足資料
  • 不具合原因の推移
  • 何故不具合は減らないか
  • 放射線による影響の概要
  • 耐放射線設計手順
  • 各軌道における放射線環境
  • 放射線による部品材料の影響
  • トータルドーズ効果
  • シングルイベント効果
  • シングルイベントメカニズム-陽子と重イオンの違い-
  • エラー発生率の計算
  • 線エネルギー付与(LET)(linear energy transfer)
  • 南大西洋異常(SAA)
  • Single Event Lachup
  • シングルイベントと陽子分布
  • NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)
  • 低軌道での電子フラックスと不具合の発生場所
  • 南大西洋異常(SAA)と極の角
  • スライド番号 83
  • Carrington Flare
  • 放射線対策
  • スライド番号 86
  • スライド番号 87
  • 帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備
  • スライド番号 89
  • 放射線計測装置の原理
Page 12: 宇宙機の設計のための宇宙環境の方針から国産部品開発(42品種)が実施された。 . 半導体電子部品は耐放射線性を加味して、人工衛星(特に

ETS-Ⅵ搭載TEDAの開発 (理研東大と共同で宇宙環境計測の充実)

目的

bull 新たに開発された国産部品材料等の宇宙環境下での劣化特性を同一条件で計測すると共に劣化の原因となる宇宙環境を同時に計測し比較解析する

bull 新規開発の部品材料の宇宙実証データフライト実績を得る

bull 地上試験として行ってきた宇宙環境を模擬した試験方法の検証を行う

bull 帯電現象及びガスジェット等による人工衛星の汚染の経時変化の取得

bull 衛星設計に用いている宇宙環境モデル(放射線磁場等)の検証 bull 宇宙環境に起因する人工衛星の故障や不具合現象の解明

ETS-VI(きく6号)打ち上がったが GEOに行かずGTOに留まる

bull 1994年(平成6年)8月28日16時50分打ち上げ

bull H-IIロケット試験機2号で種子島から打ち上げ

bull アポジエンジン不具合でGTO軌道に留まる

bull 急遽楕円軌道用に新たな制御プログラムを設計製作し地上検証を行った上で衛星にアップロードしこの問題を解決した

bull 最終軌道ペリジ約8600kmアポジ約38600km軌道傾斜角約13度(3日5周期回帰)で2年間運用

bull TEDAのデータ公開で宇宙環境データが役に立つ事を宣伝(SEESを立ち上げデータを公開した)

ETS-Ⅵ搭載TEDAの成果

トータルドーズ劣化や太陽電池劣化は静止衛星で10年かかった同じ評価を1年間でできた

シングルイベントの発生頻度の高度分布が取得できた (高度8千km~3万8千kmの範囲)

バンアレン帯の放射線帯の電子陽子重イオンの高度分布データを取得し放射線帯モデル日本モデルを作成(あけぼの衛星データ含む)

この成果はGTO軌道を最初から狙うMDS-1(つ

ばさ)プロジェクトへとつながった 米国は1990年7月25日CRRESS(Combined Release and Radiation Effects Satellite )衛星を打ち上げ

研究開発の流れ

計測装置開発

データ収集 計画

環境計測

研究試作

衛星への影響解析で必要なデータ及び性能を機器開発に反映する

高エネルギー軽粒子 重イオン 中性子 帯電 原子状酸素 デブリ 新たな現象(問題点)

軌道上不具合評価 宇宙環境モデル

宇宙環境データベース 警報

衛星設計基準

有人活動への反映

宇宙天気予報 システム

国内外機関とのデータ交換

打上げ衛星運用

放射線環境評価(ISOを含む)の見直し 宇宙環境モデルの最適化 効率の良い宇宙機の開発 (シールド厚最適設計) 低コスト化(部品仕様の見直し) 短期間開発(民生品の利用)

フィードバック

成果目標

プロジェクト支援

宇宙環境計測装置(放射線磁場)小型化の流れ

9kg 10cm 10cm 10kg 14W 18W

1cm 52g 480g 1cm 12W以下 15W

磁力計(480g->52g)

みどり2搭載用 つばさかけはしきぼう搭載用 Jason-2GOSAT搭載

ETS-VIII搭載用 QZS搭載用

電子(05~50MeV) 陽子(1~160MeV) α粒子(4~200MeV)

電子(04~5MeV) 陽子(7~48MeV) α粒子(30~140MeV)

plusmn655364096102456nT plusmn655364096nT

16bit 20bit

電子(003~20MeV) 陽子(04~250MeV) α粒子(08~400MeV)

LPT-S 216x182x175 mm 62 kg LPT-E 240x165x 93 mm 28 kg

積算吸収線量計

軽粒子モニタ(10kgー>9kgー>7kg最小2kg)

17times10times5mm749g

ISSKibou(09-)

GEO

LEO

ETS-V (87-97)

ADEOS-II(02-03)

ETS-VIII(06-) DRTS(02- )

STS-89(98)

MDS-1(02-03) ETS-VI(94-96)

ETS-VII (97-99)

宇宙環境計測の流れ ISSUS-Lab(01)

ひまわり1-4(78-99)

ERG(16予定)

ALOS(06-11)

GOSAT(09-)

Jason-2((08-)

Jason-3(15予定)

GTO

QZS(09-)

ADEOS (96-97)

ADEOS搭載TEDA (世界2番目の異常宇宙線ACR)

bull シングルイベント評価のための重イオン観測であったが世界2番目の異常宇宙線を観測することができた

bull 低軌道の衛星は地球磁場が邪魔となって宇宙線(重イオン)を観測するに向いていないと考えられていたが異常宇宙線を観測するのにすぐれていることが明らかとなった

T Kohno et al Radiation Measuremets 30 5 PP639-644

BBND (ボナー球中性子検出器)

bull 1994年(平成6)年7月に中性子計測のために ボナー球ホスウイッチ方式及びシンチレーションファイバーの3種類のセンサの研究をスタート

bull シャトル打ち上げ計画の管理者から搭載装置の検討依頼がありBBNDのSTS-89への搭載が決定した(1997年1月頃)

bull 振動試験で装置内のボルトが外れるという不具合もあったが約1年という非常に短期間で搭載品を開発することができた

bull コスト低減のために構造解析を自前で実施したりデータ処理ソフトウェアも内作した

熱中性子に対して高い感度を持つ6個の3Heガス入り比例計数管で構成して

いる中性子は電荷をもたないのでそれ自身には電離作用がないが軽い原子の3He気体では反跳原子を生じたり中性子の核反応(3He+nrarrp+3H+765KeV)によって荷電粒子を生じるので間接的に電離を起こす下図のように気体中に二つの電極を置き高電圧(1000V)をかけておくと中性子の入

射によって気体中に生じた陽子イオンと電子のイオン対がそれぞれの電極に向かって流動し外部回路に電離電流が流れるこの電気パルスにより中性子を計測する

ボナー球型中性子モニタの概要

Polyethylene Sphere3He proportional Counter

51 φ 51 φ81 φ110 φ150 φ230 φ

Sensor6 Sensor5 Sensor4 Sensor3 Sensor2 Sensor1

Covered by Gadolinium

[mm]3Heガス入り比例計数管の原理

6個のボナー球の断面図

3Heガス入り比例計数管とポリエチレン減速材

H Matsumotoet al Radiation Measurements 33 (2001) 321-333

ISS搭載BBNDの成果(約8か月)

実験期間中の平均的な等価線量等量率 (2001年3月23日~2001年11月14日)

太陽フレア時(2001年11月4日)

等価量等量率の平均は94μSv日で年率に換算すると34mSv年となるこれは地上において自然界から受ける等価線量当量率の約14倍に相当する 実験期間中に多数の太陽フレアが発生した2001年11月4日の太陽フレアにより019mSVの増加を観

測したこれは自然界から受ける等価線量当量率の約1か月分に相当するしかしBBNDの約8か月

の実験期間中の全等価線量当量に対するこの太陽フレアの影響の寄与分は1以下であった また搭載位置による環境の違いも確認された

H Koshiishiet al Radiation Measurements 42(2007) 1510-1520

1)船内の計測結果より低エネルギー側で2~3桁高エネルギー側で1~2桁低い 2)船内より船壁が薄く中性子が少ない環境より自然のアルベド中性子環境に近い

中性子被曝線量の ISS船外(SEDA-AP)と船内(STS-89)の比較

MDS-1搭載放射線吸収線量モニタ(SDOM) SiTungstenAlBGO

② ⑦

⑧⑧

① Collimator ② Window③ SSDs ④ Plastic Scintillator⑤ Anticoincidence Scintillator(ACS)⑥ Beam Stop⑦ Scintillator PMT⑧ ACS PMT

運用期間 2002年2月 ndash 2003年9月 軌道 -軌道傾斜角 285deg 1 lt BB0 le 84 -高度 500 km times 36000km 11 le L le 10 -軌道周期 約10時間35分 -スピンレート 5rpm

計測エネルギー範囲 Electron 04- 9MeV (5bins) Proton 09-210MeV (12bins) He 6-140MeV (4bins) Heavy Ion 15- 60MeVnuc (1bin) G-Factor 001cm2sr

放射線帯変動モデルの開発 MDS-1 065 MeV 電子フラックス

変動パラメータの選択 (1 cycle solar activity)

太陽風速度(SW)

太陽黒点数(R)

Ap指数

F107

変動パラメータ- Tavg の定義-

1日後の予測

パラメータスケールの時間平均 ApTavg SWTavg F107 Tavg

T days

放射線帯の構造は変動パラメータ値の大きさと継続時間に相関がある

065MeV 電子 L値-Tavg マップ

APTavg

SWTavg

13MeV 陽子 L値-Tavg マップ

APTavg

F107Tavg

電子観測とMDS-1モデルの比較

80 175

放射線帯フラックスピークの変動

80orbits (平穏時) 175orbits (擾乱時)

陽子観測とモデルの比較

電子(035~078MeV) 1日の変動予測GOSAT軌道

0

50

100

150

200

250

1E+09

1E+10

1E+11

1E+12

1984 1986 1988 1990 1992 1994 1996 1998 2000 2002 2004 2006 2008

Flue

nce[

ecm

2M

eVd

ay]

Launch day

FluenceSSN

Worst case Nov 12003

電子(035~078MeV) 変動の信頼度水準(1日)GOSAT軌道

00

01

02

03

04

05

06

07

08

09

10

88 90 92 94 96 98 100 102 104 106 108 110 112 114

Con

fiden

ce le

vel

Fluence[LOG10 ecm2MeVday]

AE-8 MAX

AE-8 MIN

MDS-1 model と AE-8 model との比較1日

0

20

40

60

80

100

120

140

160

180

1E+09

1E+10

1E+11

1E+12

1995 1997 1999 2001 2003 2005 2007 2009

Flue

nce[

ecm

2M

eVd

ay]

Launch day

Fluence(JAXA)Fluence(AE8)SSN

話の流れ

技術データ取得装置(TEDA)の概要と成果 bull 主な成果 bull 不具合解析例

宇宙天気のリスクと対策 bull 宇宙環境による衛星システムへの影響 bull 宇宙環境を原因とする不具合の割合推移部位 bull 静止軌道不具合 bull 対策

今後必要な観測項目

まとめ

2003年10月 みどり号の全損事故 (複合現象)

極域のオーロラ帯を通過中に電力ハー

ネスを巻いているMLIが高エネルギー電

子により帯電

MLIが接地されていなかったため内側

のハーネスとの間に1kV以上の電位差が

発生

MLI内のガス密度が発電開始に伴う温度

上昇により上昇

ハーネス被覆の傷により露出したハーネ

ス芯線とMLI内面の間で放電発生

単発の放電が隣接するハーネスに飛び火

してハーネス間の短絡

アーク放電が次々と伝搬していきハー

ネス全体が焼損

故障推定箇所 (大電力ハーネス部)

bull詳細報告書は文部科学省 宇宙開発委員会のHP参照

httpwwwmextgojpb_menushingiuchuureports04080901htm

bull 人工衛星の電位 bull 人工衛星は電気的に宇宙に浮いている bull 宇宙機構造体が接地点 bull 宇宙機への流入電流と流出電流のバランスによって宇宙機電位が決まる bull 各電流成分は宇宙機電位Vの関数として表され定常状態では式を下式を満たす

衛星帯電の基本式

( ) dtIIIIIIIC

V

dtdVCVIVIVIVIVIVIVI

BPHBSESISEIE

BPHBSESISEIE

int +++++minus=

==+++++minus

1

0)]()()()()()([)(

入射電子電流 ( E I )

後方散乱電子電流 ( BSE I )

入射正イオン電流 ( I I )

入射電子による二次電子電流 ( SE I )

太陽光

入射正イオンによる 二次電子放出電流 ( SI I )

光電子放出電流( PH I )

電荷ビーム放出電流(IB)

bull内部帯電は衛星の外壁を貫通した放射線帯外帯の01MeV以上の電子が内部に侵入

bull基板間や同軸ケーブルの線間等の容量(コンデンサ)や誘電体に帯電 bull接地されてない導体片に帯電

bullその耐圧電圧を超えると その耐圧の弱い箇所 (材質の欠陥や針状突起など の箇所)で放電して故障に至る

内部帯電

(あるエネルギ-以上の粒子が入射光電子なし)

NASA-HDBK-4002より

パドルでの帯電放電メカニズム

宇宙環境の影響により 衛星がマイナス電位に帯電

高エネルギー電子等により カバーガラスはプラスに帯電 衛星とカバーガラスに電位差が生じる

電位差が大きくなると トリプルジャンクション近傍 の電界強度が増大していく

トリプルジャンクションで放電が発生する カバーガラスの帯電が緩和される

+ + + + + + + + + + + + + +

+ + + +

カバーガラス

太陽電池セル

基板(衛星構体)

トリプルジャンクション rArr 導体絶縁体宇宙環境の接点

持続放電

Substrate

Satellite Load

insulation sheet

Solar array cell

Cover glass

Arc current

Electrode

持続放電は衛星の電力消失につながる 持続放電のモードは以下の2通りがある

Substrate

Satellite Load

insulation sheet

Solar array cell

Cover glass

Arc current

Electrode

Solar array cell

Cover glass

セル-基板間短絡 セル間短絡

放電によって太陽電池セルと基板が短絡する 短絡によって負荷に電力が供給されなくなる

放電によって太陽電池セルとセルが短絡する 短絡によって負荷に電力が供給されなくなる

サブストーム(高エネルギー電子)との遭遇

+ + + + + + + +

二次電子光電子による絶縁体の帯電(局所帯電)

電位差発生

逆電位勾配

衛星構体が負に帯電(絶対帯電)

電位

時間

サブストーム

衛星構体 VS

乖離電圧 ∆V

カバーガラスVcg

0 プラズマ電位

軌道別帯電放電現象

トリプルジャンクションで 放電発生

放電発生

静止軌道

+ + + + + + + +

逆電位勾配

軌道帯電放電現象

トリプルジャンクションで 放電発生

極軌道 オーロラ電子(高エネルギー電子)との遭遇

プラズマ流入出による絶縁体の帯電(局所帯電)

電位差発生

衛星構体が負に帯電(絶対帯電)

放電発生

電位

時間

オーロラ電子

衛星構体 乖離電圧 ∆V

カバーガラス

0 プラズマ電位

データ中継技術衛星DRTS (こだま)の不具合

2002年10月 9日 静止軌道に打ち上げ

2003年

3月24日 406JST変化率異常モニタ故障検出(FDIR)

が動作しA系からB系に切り替わった

3月25日 410JSTにB系のみ異常検知

4月 3日 327JSTにB系のみ異常検知

5月28日 124JSTにB系のみ異常検知

6月 6日1537JSTにB系のみ異常検知

ESA

DRTS ESA スパイクノイズと 電子フルエンスの比較(赤の丸が異常検知)

larr閾値

この事実を基に静止軌道における内部帯電警報システムを構築 2004年4月より運用開始

不具合が宇宙環境によるものであるか 判断する際のポイント

不具合の発生した時刻に太陽フレアや磁気嵐等の宇宙天気の大きな変動が起きていれば不具合に関係している可能性が高い但し帯電など放射線の積算的効果の伴う現象については発生から1週間位さかのぼり環境がどのように推移してきたかを考慮する必要がある

磁気嵐が起きると静止軌道に急激な粒子の増加現象が起きこれにより衛星帯電が引き起こされたりする(予測に利用可能)

地方時(真夜中や朝方か)や季節(春秋)を考慮する

低軌道衛星においてはSAA外帯のrdquo角ldquo及び極通過時に不具合

が起きやすいので衛星の位置(緯度経度)が重要

事象を把握する上で単発現象か数回起きている現象か周期

(時間同じ軌道等)的に発生している現象か

話の流れ

技術データ取得装置(TEDA)の概要と成果 bull 主な成果 bull 不具合解析例

宇宙天気のリスクと対策 bull 宇宙環境による衛星システムへの影響 bull 宇宙環境を原因とする不具合の割合推移部位 bull 静止軌道不具合 bull 対策

今後必要な観測項目

まとめ

宇宙天気のリスク -宇宙環境によるシステムへの影響 -

プラズマ (IRI)

帯電 (MUSCAT)

衝突 (AUTODY)

抗力 表面劣化

紫外線X線 中性粒子 (MSIS)

放射線粒子 (AE8AP8JPLSHIELDO

SE-2)

メテオロイドデブリ (MASTER2005

ORDEM)

電離損傷 変位損傷

bull電子回路の劣化 bull光部品の劣化

bull太陽電池セルの劣化

SEU (CREME96)

bullデータエラー bull画像ノイズ

bullシステム停止 bull回路損傷

bull熱的電気的光学的特性の劣化

bull構造の劣化 bullコンタミ

電磁パルス bull電源出力低下

bull損傷

bullトルク bull軌道落下

bull構造 損傷 bull減圧

bull電磁パルス

NASAの報告 -GNampCに注目-

1974年から1994年に起きたNASAと空軍の衛星故障の内20~25が宇宙環境に起因していたと報告

1990年から2001年に米国欧州カナダ日本の企業や政府機関が開発した衛星を調べた過去の宇宙ミション損失の大部分はロケットの失敗であったが1998年衛星損失の大部分は軌道上の衛星障害となっている多くの最近の異常は太陽電池アレイ及びバッテリの危険が増加している静止軌道通信衛星の設計寿命はこのサブシステムの故障の危険が増加している

喪失等の大きな誘導制御(GNampC)の不具合に注目 GNampC不具合の内宇宙環境による 不具合は約3と報告されている

軌道上衛星のタイプ別数

NASAの報告(続き)

衛星設計寿命における不具合発生時期 事故率と軌道

軌道別の衛星数 サブシステム不具合

宇宙環境を原因とする不具合の割合 -JAXAの場合-

2002年~2008年に運用された軌道上不具合情報が比較的充実している11衛星(利用衛星7機科学衛星4機)の結果宇宙環境によるも

のは約15過去のデータよりも割合が少ない

合計83件 合計35件

(1)利用衛星 (2)科学衛星

設計検討 不足 48

製造不良 8

軌道上環境 17

偶発故障 6

調査中 13

原因不明 8

設計検討

不足 61

製造不良 4

軌道上環境 11

偶発故障 6

調査中 9

原因不明 9

不具合発生部位の割合

不具合発生部位の割合

Brent Robertson Eric Stoneking ( 1990-2001NASA Goddard Space Flight Center )

Satellite News Digest -静止軌道不具合-

Satellite News Digest (SND) (http wwwsqt-indexcouk) で1997年~2009年の期間に静止軌道で95件の不具合が報告されている その内運用ミスや設計ミスなどを除くと32件(約33)は宇宙環境によるものであった 過去のデータより割合が多い

Choiら1)はこれら不具合の地方時と季節依存性を確認した その結果2100LT~900LTで約72の不具合が発生し900LT~2100LTは9件(約28)であった またこの9件は全て姿勢制御の不具合だった 静止軌道衛星不具合のほとんどは真夜中と朝方で起きており磁気嵐に伴い磁気圏尾部から注入した粒子による表面帯電が不具合の主原因と結論づけている

1) Ho-sung Choi et al Analysis of GEO spacecraft anomalies Space weather relationships Space Weather Vol 9 S06001

太陽活動と静止軌道衛星不具合例

ANIK-E1E2

ANIK-E1

複数の衛星で故障

Galaxy-15

帯電放電不具合 -ANIK-E1amp2Telstar401-

Jan 1994 ANIK-E1 amp E2事故時の環境 - Joe H Allen

1週間

太陽活動下降時期の電子増加

2MeV以上電子

copyNOAA Web

フラックスが3桁急増

Jan 1997 Telstar401事故時の環境

静止軌道の急激な電子増加

太陽極大期太陽フレアによる衛星障害 - 2003年10月~11月-

10486981048698 永久故障 4 10486981048698 安全モード又は運用を一時停止 31 10486981048698 データ内容の「誤り」の増加搭載コンピュータの誤動作 5

httpwwwsat-ndcomfailures等のデータによる 合計 40件

-Barbieri and Mahmot

米国極軌道気象衛星NOAA-17の改良型マイクロ波観測装置AMSU-A1 (Advanced Microwave Sounding Unit)のスキャナーが永久故障 米国気象衛星GOES -8号のX線センサがOFFになり復帰しなくなった

e-birdに深刻な不具合が発生 不具合は20本のトランスポンダ全てに影響

火星周回中の探査機「マーズオデッセイ (Mars Odyssey)」の観測機器放射線観測装置「Martian Radiation Environment Experiment (MARIE)」が太陽活動の影響により10月28日から適切に作動しなくなった データ中継技術衛星(DRTS)「こだま」 太陽捕捉モードに移行

太陽陽子

帯電放電不具合-Galaxy15(局所的的現象)- 2

5 M

eV

65

MeV

11

5 M

eV

GOES 14 ----- GOES 15 ----- GOES 11 -----

Satellite Locations

Galaxy 15 anomaly

2010年4月5日9時48分UTCは磁気嵐及びCMEが発生するなど宇宙環境は非常に荒れていたGalaxy15衛星は真夜中側に位置し宇宙環境の影響を受けやすい

位置にいたことから宇宙環境による不具合である可能性が高いということで原因追及がなされた高エネルギー粒子が引き起こす代表的な衛星不具合現象として3つ(表面帯電内部帯電SEUシングルイベントバーンアウトSEL)の可能性を検討した

チームの報告書によると磁気圏尾部からの熱電子の流入による放電が原因であったと結論付けられたGalaxy15衛星の近くにはGOES-11衛星が位置していたがGOES-11衛星には不具合を発生しておらず本現象は局所的な現象と推測される

衛星開発段階における対策 JAXAの不具合解析の結論

bull 2002年~2008年に運用された11機の衛星不具合を解析 宇宙環境による不具合は偶発故障のみ(全体の約15)確率的には想定範囲内ではあるがその影響を最小限とするためディレーティング運用モード寿命についての研究に取り組む

bull 設計基準試験の充実検証確認の強化技術成熟度(TRL)評価の徹底各々の境界制約条件の明示化等により検証不足抜けの防止有効なピアレビューに結びつける

冗長系(同じハードウェア機能の冗長)柔軟性の設計(ソフトハードの対応)

bull 従来の故障が起きないようにする設計に対してGOSAT(いぶき)では重要部

品を二重化することにより故障する可能性は上がるが故障しても衛星バスの運用や観測が続行できる可能性がより高くなるように設計した

運用における対応

bull 宇宙天気監視ーロケット打ち上げ及び宇宙飛行士支援 数日前に今後の宇宙環境の推移を把握(MXレベルのフレアの発生確率)

bull X線の増加で太陽フレア発生を検知したら高エネルギー粒子の発生をいつまで 気を付ければ良いか判断(発生位置で大凡を推定するが課題は多い) SPEが発生した場合(特に10MeV以上100MeV 以上の陽

子)最大値フラックス値の推定 ピーク値を予測(特に閾値に近くなった時に重要)

bull 衛星運用 bull 太陽フレア磁気嵐警報(X線陽子及びkpが閾値を超えた

時に警報を発信)2003年10月より運用開始 bull 内部帯電警報(2日後の静止軌道上の高エネルギー電子(>1

Me) の増加を予測し 閾値を超えた時に警報を発信) 2004年4月より運用開始

話の流れ

技術データ取得装置(TEDA)の概要と成果 bull 主な成果 bull 不具合解析例

宇宙天気のリスクと対策 bull 宇宙環境による衛星システムへの影響 bull 宇宙環境を原因とする不具合の割合推移部位 bull 静止軌道不具合 bull 対策

今後必要な観測項目

まとめ

計測対象計測項目 計測対象 粒径100μm以上のデブリメテオロイド 計測項目 デブリ粒径衝突頻度

基本原理

厚さ約125μmの絶縁性のポリイミドフィルム表面に 100μm周期で直線状の細長い導線(太さ50μm)パターンを形成導線の破断を電気的に検知することによりデブリの衝突(貫通)を検知する破断した導線の数導線の幅ピッチからデブリサイズを計測する

微小デブリ計測技術の概要

衝突孔の例(衝突試験ISAS) - 衝突粒子 SUS 309 microm - 衝突速度 52 kms

HTV5号機によるセンサ機能のフライト実証

35cm

46cm

FY2013機能実証モデル

検出線幅 50 μm 検出線間隔 100 μm フィルム厚 lt 20 μm 有感領域 30times33cm 検出線総数 3300本

サイズ 50times39times4 cm (筐体を含む)

重量 約15kg(筐体を含む)

消費電力 2W(最大4W)(他センサ含む)

テレメトリ 02 bps

宇宙環境観測装置KASPERの一部としてデブリセンサSDMを搭載 FY2013に製作開始今年8月に打ち上げ予定)

まとめ(その1)

衛星不具合の主な原因は帯電放電シングルイベント放射線損傷である今後デブリ環境が重要になると予測される

静止軌道では商用衛星が多く運用されており宇宙環境の変動把握は重要この領域で運用する衛星が気を付けなければいけない環境として

1太陽フレアに伴う高エネルギー粒子 2太陽活動下降期による静止軌道電子の増加 3磁気嵐に伴う磁気圏尾部から注入する粒子 などがあげられる

まとめ(その2)

不具合軽減の取り組み bull 開発時は宇宙環境条件(トータルフラックス及び最悪条

件)を明確にし設計(冗長系柔軟性の設計ディレーティング及び運用モード寿命について研究)試験の充実検証の充実を図る

bull 運用段階に入ったならば宇宙環境を監視し警報等で故障を防ぐ

予測課題 bull 太陽フレアに伴う高エネルギー粒子発生後フラックス

ピーク値の推定

bull 衛星により不具合の起きる閾値は異なるが閾値をこえる急激な電子フラックスの増加と継続時間の予測

bull 局所的な磁気嵐に伴う磁気圏尾部から注入する粒子

宇宙環境グループは宇宙ステーションと衛星プロジェクトの安全な遂行に貢献しています

ご静聴ありがとうございました

補足資料

不具合原因の推移 bull 宇宙天気を大きく左右する要因の1つとして約11年の太陽活動変化が挙げられる

bull 太陽活動下降時期(太陽変動CME)と極大期(フレアCME)に衛星で不具合が増加するそれにより不具合原因の割合が変わる

-Koons et al The Impact of the Space Environment on Space Systems Aerospace Corp report no TR-99(1670)-1 20 July 1999 -2009 preliminary study (unpublished)

何故不具合は減らないか

bull 部品 放射線に対する感受性が高くなっている bull 微細化が進み同時にフォールトするノードが増え同時にエ

ラーとなる論理ノードやメモリセルが増加する微細化によってメモリセルは小さくなるので記憶容量当たりでみるとエラーの発生率は下がるしかし半導体チップの記憶容量やゲート数が増えるので半導体チップ当たりのエラー発生率は微細化とともに上昇するまた蓄積電荷が小さくなり感受性が高くなってきている

bull システム 大型化大電力化運用長期化 bull 1990年代末以降静止衛星の電力が10kWレベルになったしか

し設計検証技術データ蓄積が遅れている改善されつつあると推測される

放射線による影響の概要

粒子 エネルギー又はLET

代表的な影響

陽子 100keV-1MeV 1-10MeV 10-100MeV gt50MeV

表面損傷 表面材料と太陽電池の損傷 放射線損傷(電離非電離損傷の両方)センサーへのノイズ シングルイベント効果

電子 10-100keV gt100keV gt1MeV

表面帯電 深部帯電現象(deep-dielectric charging)センサーへのノイズ太陽電池の損傷 放射線損傷(電離)

重イオン gt1MeV-cm2mg シングルイベント効果

注エネルギー及びLETは個々の部品等により異なりますあくまでも目安です

耐放射線設計手順

軌道条件

ミッション期間

環境条件設定

トータルドーズの予測

1MeV電子換算被曝算出

NIELの換算

LETフルエンス算出

陽子フルエンス算出

対  策  の  検  討

対  策  の  検  討

対  策  の  検  討

放射線による劣化率予測

劣化率予測 特性予測

耐性データ

放射線による劣化率予測

耐性データ

劣化率予測アレイ出力劣化予測

感受性データ

シングルイベント発生率予測 致命度解析

衛星内質量分布

(2)

部品材料の選定

他の要因による劣化率予測

(2)(2) (3)

回路設計等NO

OK

アレイ構造 セル選定

他の要因による劣化率予測 アレイ設計(2)

(2) (2) (2) (3)

衛星内質量分布 部品選定(2)

(2) (2)(3)

NO

OK

NO

OK

(1) 環境モデルマージを含む(2) 部品レベルの検討(3) アセンブリレベルでの検討(4) 設計マージン環境モデル   マージを含め大丈夫か

トータルドーズ

太陽電池アレイの劣化

シングルイベント効果

回路設計

補足放射線太陽宇宙線銀河宇宙線

NEILを用いたダメージファクターの算出

対  策  の  検  討

放射線による劣化率予測

劣化率予測 特性予測

耐性データ

(2)

部品材料の選定

他の要因による劣化率予測

(2)(2) (3)

回路設計等NO

OK

衛星内質量分布 半導体デバイスの変位損傷

(1)

(4)

(4)

(4)

(4)

各軌道における放射線環境

1E+10

1E+11

1E+12

1E+13

1E+14

1E+15

1E+16

1E+17

1E+18

1E+19

1E+20

001 010 100 1000

捕捉

電子

の積

分フ

ルエ

ンス

[m

2 ]

エネルギー[MeV]

各軌道における電子捕捉積分フルエンス(3年間)

LEO

EOS GEO

MEO

GTO

GEO 軌道傾斜角 0deg 高度36000km GTO 軌道傾斜角 18deg 高度 360km~36000km MEO 軌道傾斜角 51deg 高度 10000km EOS 軌道傾斜角 98deg 高度705km LEO 軌道傾斜角 29deg 高度 600km

1E+12

1E+13

1E+14

1E+15

1E+16

1E+17

1E+18

1E+19

1E+20

01 10 100 1000

捕捉

陽子の

積分フルエン

ス[

m2 ]

エネルギー[MeV]

各軌道における捕捉陽子積分フルエンス(3年間)

MEO

GTO

GEO

EOS LEO

放射線による部品材料の影響

総照射線量 (TIDTotal Ionising Dose )

電離損傷

バイポーラTrの電流増幅率の低下リーク電流の増大

γ線で評価

トータルドーズ効果

変位損傷 (DDDisplacement Damage )または 非イオン化エネルギー損失 (NIELNon-Ionising Energy

Loss )

変位損傷(格子欠陥の生成)

電荷輸送効率の低下 (CCD)太陽電池の効率低下等

電子陽子により評価

シングルイベント効果

1個の荷電粒子の入射により発生する誤動作

ソフト(Latch-Up Burnout) エラー又は ソフト (Upset) エラー

陽子及び重イオンで評価

トータルドーズ効果

+ - + + - + - + - - + + + + -

ゲート酸化膜

電離

格子欠陥

正電荷捕獲

+ 正孔 - 電子

電極

(Silicon oxidenitride)

荷電粒子

反跳原子

ゲート絶縁膜中に電荷が蓄積することによるMOSトランジスタのしきい電圧(MOSトランジスタがオフからオンに変化するゲート電圧)の変化をもたらすただ

し最近の最先端チップはゲート絶縁膜がきわめて薄くなっているこのためゲート絶縁膜よりもフィールド絶縁膜(隣接するトランジスタを電気的に分離する絶縁膜)での電荷蓄積が相対的には大きな問題になってきている」

シングルイベント効果

メモリセルはNチャンネルとPチャンネルMOSFETより構成されメモリ情報は回路ノード12の電位の

高低により記録している空乏層の広がっているPN接合12の領域に

重イオンが入射した場合電荷の発生と空乏層内への少数キャリアの収集が起こるこの収集電荷量が回路の耐量を越えた場合(c)に示すように反転が起こる(ソフトエラー)一方pウエル-N基板接

合の空乏層内に電荷収集量が起こりえる耐性を越えると寄生的に存在するPNPNサイリスタ構造がオ

ンし電源と基板間に大電流が流れる状態が生じる(ラッチアップ)

シングルイベントメカニズム -陽子と重イオンの違い-

エラー発生率の計算

線エネルギー付与(LET) (linear energy transfer)

電離性放射線が物質中を通過する際飛程の単位長さ当りに平均して失うエネルギーをいう各種の放射線のうちX線γ線はLETが小さいので低LETといいα線中性子線その他重イオン核分裂破片のLETは大きいので高LETという MeVμmMeV(gcm2)やMeV(mgcm2)で表される

南大西洋異常(SAA) bull 地球の自転軸と磁気軸のずれ

darr bull 放射線帯が自転軸に対して非

対称

bull 南大西洋上空では放射線帯内帯が低高度に落ちてきているこの領域を南大西洋異常域(SAA South Atlantic Anomaly)と呼ぶ

bull 地球観測衛星ではSAAで放射線帯陽子の影響を受ける

Single Event Lachup

シングルイベントと陽子分布

MOS-1衛星(高度909km軌道傾斜角99度)で発生したシングルイベントと 陽子30MeV以上の等高線マップを重ね合わせた結果

NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)

bull 入射粒子が電離によらず与える損傷非イオン化損失

低軌道での電子フラックスと 不具合の発生場所

南大西洋異常(SAA)と極の角

高度800kmでの電子フラックス図極の角(polar horn)とSAAを示す

太陽粒子線 bull 太陽高エネルギー粒子線(SPE Solar Proton Events)は太陽フレア とコロナガス噴出 (CMECoronal Mass Ejections )により引き起こされる bull フレアのスペクトルは可変であるためあるエネルギー域における最悪状態イベントは必ずしも別のエネルギー域における最悪条件ではない 1972年8月のイベント 10~70MeVの粒子が最も多かった 1989年10のイベント 1972年8月のイベントに比べ低エネルギー領域 高エネルギー領域が明らかに激しかった

フルエンス 105 to 1011 cm-2

変動期間 1日から数日

ldquoBastiliardquo Solar Event 14 July 2000

Carrington Flare

84

(LW Townseed) Carrington Flare(1859年) Carrington Flare による30MeV以上トータルFluenceを118times109cm-2で規格化 ~1989年フレアの約13倍(シングルイベントの評価で使用) ~1991年フレアの約9倍 2012年7月23日にキャリントンイベントとほぼ同等の爆発現象が太陽あるいは太陽の周りで起きていたということがNASAの太陽観測衛星「STEREO」の解析から発表された

放射線対策 bull 放射線シールドを付加し放射線を減衰させる

bull 放射線耐性の強い部品(SOI(Silicon On Insulator)技術による耐放射線部品)材料に変更する

bull 放射線による損傷を吸収するために回路または構造上のマージンを持たせる bull ソフト的なエラーに対しては エラー検出訂正機能や多数決

機能等でソフト的エラーが起きてもシステムが機能するようにしたフォールトトレラント機能を付けて対処する ICのハード的故障に対しては ラッチアップ耐性の強い部品を選定するしかないが 電流制限回路を付ける対策も採られる パワーMOSFETに対しては部品選定 電源電圧を規格値の半分以下に落とす等の対策を採る

SOI技術

表面帯電への対策例

表面の物体間を導線で結線する

太陽電池のカバーガラスを導電性被膜付き(酸化インジウムITO)にする

熱制御材表面にITOを被覆する

熱制御材は高誘電率のテフロンの使用を避け 高伝導度耐環境性に優れたブラックカプトンを使用

イオンエンジンの中和器で能動帯電制御

内部帯電への対策例

アルミで3mm厚さに相当するシールドで囲む(Faraday Cage)

テフロンやカプトンなどの誘電体材料の内部での使用量を最小限に押さえる

回路基板やコンフォーマルコーティングは誘電体なので電流リークパス(1012Ωcmまたは1012Ωcm2

程度)を必ずつける

特にスポット的な放射線シールドの金属材には必ず電流リークパスをつける

帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備

衛星モデル作成

材料物性テーブル設定

宇宙環境パラメータ設定

Converter

転送ディレクトリ 解析データファイル

転送

解析ディレクトリ生成 解析結果 進行状況チェック ファイル操作

MUSCAT 解析エンジン

解析結果 表示

パラメトリックラン

オプション 解析

大型パネル実験(35mtimes11m) クーポンパネル実験(26cmtimes16cm)

環境模擬試験 環境模擬試験

MUSCATに使用する物性値設計標準制定のための知見などを得ることを目的に軌道上の宇宙環境を模擬した地上試験を行っている これらの試験では放電の発生頻度や電圧閾値放電発生による太陽電池パネルや搭載機器への影響を検証している

放射線計測装置の原理

bull その粒子が物質を通過する際のエネルギー損出率が粒子の電荷(原子番号)Zの二乗に比例すること(Bethe-Blochの式)を利用する

S2

E

ΔE Ersquo

S1 S3

  • 宇宙機の設計のための宇宙環境
  • 話の流れ
  • 話の流れ
  • TEDA(技術データ取得装置)(国産部品の宇宙環境での実証の必要性)
  • ETS-VTEDA(技術データ取得装置)誕生前の部品の宇宙実証の背景
  • スライド番号 6
  • スライド番号 7
  • スライド番号 8
  • スライド番号 9
  • 図6太陽黒点数と静止軌道電子 (>04MeV ) Flux の変動 (ETS-V搭載DOMによる観測)
  • スライド番号 11
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの開発(理研東大と共同で宇宙環境計測の充実)
  • ETS-VI(きく6号)打ち上がったがGEOに行かずGTOに留まる
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの成果
  • スライド番号 15
  • スライド番号 16
  • スライド番号 17
  • ADEOS搭載TEDA(世界2番目の異常宇宙線ACR)
  • BBND (ボナー球中性子検出器)
  • スライド番号 20
  • ISS搭載BBNDの成果(約8か月)
  • スライド番号 22
  • MDS-1搭載放射線吸収線量モニタ(SDOM)
  • 放射線帯変動モデルの開発MDS-1 065 MeV 電子フラックス
  • 変動パラメータの選択 (1 cycle solar activity)
  • 変動パラメータ- Tavg の定義-
  • 065MeV 電子 L値-Tavg マップ
  • 13MeV 陽子 L値-Tavg マップ
  • 電子観測とMDS-1モデルの比較
  • 放射線帯フラックスピークの変動
  • 陽子観測とモデルの比較
  • 電子(035~078MeV) 1日の変動予測GOSAT軌道
  • 電子(035~078MeV) 変動の信頼度水準(1日)GOSAT軌道
  • MDS-1 model と AE-8 modelとの比較1日
  • 話の流れ
  • 2003年10月 みどり号の全損事故(複合現象)
  • 衛星帯電の基本式
  • 内部帯電
  • パドルでの帯電放電メカニズム
  • スライド番号 40
  • スライド番号 41
  • スライド番号 42
  • データ中継技術衛星DRTS (こだま)の不具合
  • DRTS ESA スパイクノイズと電子フルエンスの比較(赤の丸が異常検知)
  • 不具合が宇宙環境によるものであるか判断する際のポイント
  • 話の流れ
  • 宇宙天気のリスク-宇宙環境によるシステムへの影響 -
  • NASAの報告-GNampCに注目-
  • NASAの報告(続き)
  • 宇宙環境を原因とする不具合の割合-JAXAの場合-
  • 不具合発生部位の割合 
  • Satellite News Digest -静止軌道不具合-
  • 太陽活動と静止軌道衛星不具合例
  • スライド番号 54
  • スライド番号 55
  • スライド番号 56
  • 衛星開発段階における対策
  • 運用における対応
  • 話の流れ
  • スライド番号 60
  • スライド番号 61
  • まとめ(その1)
  • まとめ(その2)
  • 宇宙環境グループは宇宙ステーションと衛星プロジェクトの安全な遂行に貢献しています
  • 補足資料
  • 不具合原因の推移
  • 何故不具合は減らないか
  • 放射線による影響の概要
  • 耐放射線設計手順
  • 各軌道における放射線環境
  • 放射線による部品材料の影響
  • トータルドーズ効果
  • シングルイベント効果
  • シングルイベントメカニズム-陽子と重イオンの違い-
  • エラー発生率の計算
  • 線エネルギー付与(LET)(linear energy transfer)
  • 南大西洋異常(SAA)
  • Single Event Lachup
  • シングルイベントと陽子分布
  • NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)
  • 低軌道での電子フラックスと不具合の発生場所
  • 南大西洋異常(SAA)と極の角
  • スライド番号 83
  • Carrington Flare
  • 放射線対策
  • スライド番号 86
  • スライド番号 87
  • 帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備
  • スライド番号 89
  • 放射線計測装置の原理
Page 13: 宇宙機の設計のための宇宙環境の方針から国産部品開発(42品種)が実施された。 . 半導体電子部品は耐放射線性を加味して、人工衛星(特に

ETS-VI(きく6号)打ち上がったが GEOに行かずGTOに留まる

bull 1994年(平成6年)8月28日16時50分打ち上げ

bull H-IIロケット試験機2号で種子島から打ち上げ

bull アポジエンジン不具合でGTO軌道に留まる

bull 急遽楕円軌道用に新たな制御プログラムを設計製作し地上検証を行った上で衛星にアップロードしこの問題を解決した

bull 最終軌道ペリジ約8600kmアポジ約38600km軌道傾斜角約13度(3日5周期回帰)で2年間運用

bull TEDAのデータ公開で宇宙環境データが役に立つ事を宣伝(SEESを立ち上げデータを公開した)

ETS-Ⅵ搭載TEDAの成果

トータルドーズ劣化や太陽電池劣化は静止衛星で10年かかった同じ評価を1年間でできた

シングルイベントの発生頻度の高度分布が取得できた (高度8千km~3万8千kmの範囲)

バンアレン帯の放射線帯の電子陽子重イオンの高度分布データを取得し放射線帯モデル日本モデルを作成(あけぼの衛星データ含む)

この成果はGTO軌道を最初から狙うMDS-1(つ

ばさ)プロジェクトへとつながった 米国は1990年7月25日CRRESS(Combined Release and Radiation Effects Satellite )衛星を打ち上げ

研究開発の流れ

計測装置開発

データ収集 計画

環境計測

研究試作

衛星への影響解析で必要なデータ及び性能を機器開発に反映する

高エネルギー軽粒子 重イオン 中性子 帯電 原子状酸素 デブリ 新たな現象(問題点)

軌道上不具合評価 宇宙環境モデル

宇宙環境データベース 警報

衛星設計基準

有人活動への反映

宇宙天気予報 システム

国内外機関とのデータ交換

打上げ衛星運用

放射線環境評価(ISOを含む)の見直し 宇宙環境モデルの最適化 効率の良い宇宙機の開発 (シールド厚最適設計) 低コスト化(部品仕様の見直し) 短期間開発(民生品の利用)

フィードバック

成果目標

プロジェクト支援

宇宙環境計測装置(放射線磁場)小型化の流れ

9kg 10cm 10cm 10kg 14W 18W

1cm 52g 480g 1cm 12W以下 15W

磁力計(480g->52g)

みどり2搭載用 つばさかけはしきぼう搭載用 Jason-2GOSAT搭載

ETS-VIII搭載用 QZS搭載用

電子(05~50MeV) 陽子(1~160MeV) α粒子(4~200MeV)

電子(04~5MeV) 陽子(7~48MeV) α粒子(30~140MeV)

plusmn655364096102456nT plusmn655364096nT

16bit 20bit

電子(003~20MeV) 陽子(04~250MeV) α粒子(08~400MeV)

LPT-S 216x182x175 mm 62 kg LPT-E 240x165x 93 mm 28 kg

積算吸収線量計

軽粒子モニタ(10kgー>9kgー>7kg最小2kg)

17times10times5mm749g

ISSKibou(09-)

GEO

LEO

ETS-V (87-97)

ADEOS-II(02-03)

ETS-VIII(06-) DRTS(02- )

STS-89(98)

MDS-1(02-03) ETS-VI(94-96)

ETS-VII (97-99)

宇宙環境計測の流れ ISSUS-Lab(01)

ひまわり1-4(78-99)

ERG(16予定)

ALOS(06-11)

GOSAT(09-)

Jason-2((08-)

Jason-3(15予定)

GTO

QZS(09-)

ADEOS (96-97)

ADEOS搭載TEDA (世界2番目の異常宇宙線ACR)

bull シングルイベント評価のための重イオン観測であったが世界2番目の異常宇宙線を観測することができた

bull 低軌道の衛星は地球磁場が邪魔となって宇宙線(重イオン)を観測するに向いていないと考えられていたが異常宇宙線を観測するのにすぐれていることが明らかとなった

T Kohno et al Radiation Measuremets 30 5 PP639-644

BBND (ボナー球中性子検出器)

bull 1994年(平成6)年7月に中性子計測のために ボナー球ホスウイッチ方式及びシンチレーションファイバーの3種類のセンサの研究をスタート

bull シャトル打ち上げ計画の管理者から搭載装置の検討依頼がありBBNDのSTS-89への搭載が決定した(1997年1月頃)

bull 振動試験で装置内のボルトが外れるという不具合もあったが約1年という非常に短期間で搭載品を開発することができた

bull コスト低減のために構造解析を自前で実施したりデータ処理ソフトウェアも内作した

熱中性子に対して高い感度を持つ6個の3Heガス入り比例計数管で構成して

いる中性子は電荷をもたないのでそれ自身には電離作用がないが軽い原子の3He気体では反跳原子を生じたり中性子の核反応(3He+nrarrp+3H+765KeV)によって荷電粒子を生じるので間接的に電離を起こす下図のように気体中に二つの電極を置き高電圧(1000V)をかけておくと中性子の入

射によって気体中に生じた陽子イオンと電子のイオン対がそれぞれの電極に向かって流動し外部回路に電離電流が流れるこの電気パルスにより中性子を計測する

ボナー球型中性子モニタの概要

Polyethylene Sphere3He proportional Counter

51 φ 51 φ81 φ110 φ150 φ230 φ

Sensor6 Sensor5 Sensor4 Sensor3 Sensor2 Sensor1

Covered by Gadolinium

[mm]3Heガス入り比例計数管の原理

6個のボナー球の断面図

3Heガス入り比例計数管とポリエチレン減速材

H Matsumotoet al Radiation Measurements 33 (2001) 321-333

ISS搭載BBNDの成果(約8か月)

実験期間中の平均的な等価線量等量率 (2001年3月23日~2001年11月14日)

太陽フレア時(2001年11月4日)

等価量等量率の平均は94μSv日で年率に換算すると34mSv年となるこれは地上において自然界から受ける等価線量当量率の約14倍に相当する 実験期間中に多数の太陽フレアが発生した2001年11月4日の太陽フレアにより019mSVの増加を観

測したこれは自然界から受ける等価線量当量率の約1か月分に相当するしかしBBNDの約8か月

の実験期間中の全等価線量当量に対するこの太陽フレアの影響の寄与分は1以下であった また搭載位置による環境の違いも確認された

H Koshiishiet al Radiation Measurements 42(2007) 1510-1520

1)船内の計測結果より低エネルギー側で2~3桁高エネルギー側で1~2桁低い 2)船内より船壁が薄く中性子が少ない環境より自然のアルベド中性子環境に近い

中性子被曝線量の ISS船外(SEDA-AP)と船内(STS-89)の比較

MDS-1搭載放射線吸収線量モニタ(SDOM) SiTungstenAlBGO

② ⑦

⑧⑧

① Collimator ② Window③ SSDs ④ Plastic Scintillator⑤ Anticoincidence Scintillator(ACS)⑥ Beam Stop⑦ Scintillator PMT⑧ ACS PMT

運用期間 2002年2月 ndash 2003年9月 軌道 -軌道傾斜角 285deg 1 lt BB0 le 84 -高度 500 km times 36000km 11 le L le 10 -軌道周期 約10時間35分 -スピンレート 5rpm

計測エネルギー範囲 Electron 04- 9MeV (5bins) Proton 09-210MeV (12bins) He 6-140MeV (4bins) Heavy Ion 15- 60MeVnuc (1bin) G-Factor 001cm2sr

放射線帯変動モデルの開発 MDS-1 065 MeV 電子フラックス

変動パラメータの選択 (1 cycle solar activity)

太陽風速度(SW)

太陽黒点数(R)

Ap指数

F107

変動パラメータ- Tavg の定義-

1日後の予測

パラメータスケールの時間平均 ApTavg SWTavg F107 Tavg

T days

放射線帯の構造は変動パラメータ値の大きさと継続時間に相関がある

065MeV 電子 L値-Tavg マップ

APTavg

SWTavg

13MeV 陽子 L値-Tavg マップ

APTavg

F107Tavg

電子観測とMDS-1モデルの比較

80 175

放射線帯フラックスピークの変動

80orbits (平穏時) 175orbits (擾乱時)

陽子観測とモデルの比較

電子(035~078MeV) 1日の変動予測GOSAT軌道

0

50

100

150

200

250

1E+09

1E+10

1E+11

1E+12

1984 1986 1988 1990 1992 1994 1996 1998 2000 2002 2004 2006 2008

Flue

nce[

ecm

2M

eVd

ay]

Launch day

FluenceSSN

Worst case Nov 12003

電子(035~078MeV) 変動の信頼度水準(1日)GOSAT軌道

00

01

02

03

04

05

06

07

08

09

10

88 90 92 94 96 98 100 102 104 106 108 110 112 114

Con

fiden

ce le

vel

Fluence[LOG10 ecm2MeVday]

AE-8 MAX

AE-8 MIN

MDS-1 model と AE-8 model との比較1日

0

20

40

60

80

100

120

140

160

180

1E+09

1E+10

1E+11

1E+12

1995 1997 1999 2001 2003 2005 2007 2009

Flue

nce[

ecm

2M

eVd

ay]

Launch day

Fluence(JAXA)Fluence(AE8)SSN

話の流れ

技術データ取得装置(TEDA)の概要と成果 bull 主な成果 bull 不具合解析例

宇宙天気のリスクと対策 bull 宇宙環境による衛星システムへの影響 bull 宇宙環境を原因とする不具合の割合推移部位 bull 静止軌道不具合 bull 対策

今後必要な観測項目

まとめ

2003年10月 みどり号の全損事故 (複合現象)

極域のオーロラ帯を通過中に電力ハー

ネスを巻いているMLIが高エネルギー電

子により帯電

MLIが接地されていなかったため内側

のハーネスとの間に1kV以上の電位差が

発生

MLI内のガス密度が発電開始に伴う温度

上昇により上昇

ハーネス被覆の傷により露出したハーネ

ス芯線とMLI内面の間で放電発生

単発の放電が隣接するハーネスに飛び火

してハーネス間の短絡

アーク放電が次々と伝搬していきハー

ネス全体が焼損

故障推定箇所 (大電力ハーネス部)

bull詳細報告書は文部科学省 宇宙開発委員会のHP参照

httpwwwmextgojpb_menushingiuchuureports04080901htm

bull 人工衛星の電位 bull 人工衛星は電気的に宇宙に浮いている bull 宇宙機構造体が接地点 bull 宇宙機への流入電流と流出電流のバランスによって宇宙機電位が決まる bull 各電流成分は宇宙機電位Vの関数として表され定常状態では式を下式を満たす

衛星帯電の基本式

( ) dtIIIIIIIC

V

dtdVCVIVIVIVIVIVIVI

BPHBSESISEIE

BPHBSESISEIE

int +++++minus=

==+++++minus

1

0)]()()()()()([)(

入射電子電流 ( E I )

後方散乱電子電流 ( BSE I )

入射正イオン電流 ( I I )

入射電子による二次電子電流 ( SE I )

太陽光

入射正イオンによる 二次電子放出電流 ( SI I )

光電子放出電流( PH I )

電荷ビーム放出電流(IB)

bull内部帯電は衛星の外壁を貫通した放射線帯外帯の01MeV以上の電子が内部に侵入

bull基板間や同軸ケーブルの線間等の容量(コンデンサ)や誘電体に帯電 bull接地されてない導体片に帯電

bullその耐圧電圧を超えると その耐圧の弱い箇所 (材質の欠陥や針状突起など の箇所)で放電して故障に至る

内部帯電

(あるエネルギ-以上の粒子が入射光電子なし)

NASA-HDBK-4002より

パドルでの帯電放電メカニズム

宇宙環境の影響により 衛星がマイナス電位に帯電

高エネルギー電子等により カバーガラスはプラスに帯電 衛星とカバーガラスに電位差が生じる

電位差が大きくなると トリプルジャンクション近傍 の電界強度が増大していく

トリプルジャンクションで放電が発生する カバーガラスの帯電が緩和される

+ + + + + + + + + + + + + +

+ + + +

カバーガラス

太陽電池セル

基板(衛星構体)

トリプルジャンクション rArr 導体絶縁体宇宙環境の接点

持続放電

Substrate

Satellite Load

insulation sheet

Solar array cell

Cover glass

Arc current

Electrode

持続放電は衛星の電力消失につながる 持続放電のモードは以下の2通りがある

Substrate

Satellite Load

insulation sheet

Solar array cell

Cover glass

Arc current

Electrode

Solar array cell

Cover glass

セル-基板間短絡 セル間短絡

放電によって太陽電池セルと基板が短絡する 短絡によって負荷に電力が供給されなくなる

放電によって太陽電池セルとセルが短絡する 短絡によって負荷に電力が供給されなくなる

サブストーム(高エネルギー電子)との遭遇

+ + + + + + + +

二次電子光電子による絶縁体の帯電(局所帯電)

電位差発生

逆電位勾配

衛星構体が負に帯電(絶対帯電)

電位

時間

サブストーム

衛星構体 VS

乖離電圧 ∆V

カバーガラスVcg

0 プラズマ電位

軌道別帯電放電現象

トリプルジャンクションで 放電発生

放電発生

静止軌道

+ + + + + + + +

逆電位勾配

軌道帯電放電現象

トリプルジャンクションで 放電発生

極軌道 オーロラ電子(高エネルギー電子)との遭遇

プラズマ流入出による絶縁体の帯電(局所帯電)

電位差発生

衛星構体が負に帯電(絶対帯電)

放電発生

電位

時間

オーロラ電子

衛星構体 乖離電圧 ∆V

カバーガラス

0 プラズマ電位

データ中継技術衛星DRTS (こだま)の不具合

2002年10月 9日 静止軌道に打ち上げ

2003年

3月24日 406JST変化率異常モニタ故障検出(FDIR)

が動作しA系からB系に切り替わった

3月25日 410JSTにB系のみ異常検知

4月 3日 327JSTにB系のみ異常検知

5月28日 124JSTにB系のみ異常検知

6月 6日1537JSTにB系のみ異常検知

ESA

DRTS ESA スパイクノイズと 電子フルエンスの比較(赤の丸が異常検知)

larr閾値

この事実を基に静止軌道における内部帯電警報システムを構築 2004年4月より運用開始

不具合が宇宙環境によるものであるか 判断する際のポイント

不具合の発生した時刻に太陽フレアや磁気嵐等の宇宙天気の大きな変動が起きていれば不具合に関係している可能性が高い但し帯電など放射線の積算的効果の伴う現象については発生から1週間位さかのぼり環境がどのように推移してきたかを考慮する必要がある

磁気嵐が起きると静止軌道に急激な粒子の増加現象が起きこれにより衛星帯電が引き起こされたりする(予測に利用可能)

地方時(真夜中や朝方か)や季節(春秋)を考慮する

低軌道衛星においてはSAA外帯のrdquo角ldquo及び極通過時に不具合

が起きやすいので衛星の位置(緯度経度)が重要

事象を把握する上で単発現象か数回起きている現象か周期

(時間同じ軌道等)的に発生している現象か

話の流れ

技術データ取得装置(TEDA)の概要と成果 bull 主な成果 bull 不具合解析例

宇宙天気のリスクと対策 bull 宇宙環境による衛星システムへの影響 bull 宇宙環境を原因とする不具合の割合推移部位 bull 静止軌道不具合 bull 対策

今後必要な観測項目

まとめ

宇宙天気のリスク -宇宙環境によるシステムへの影響 -

プラズマ (IRI)

帯電 (MUSCAT)

衝突 (AUTODY)

抗力 表面劣化

紫外線X線 中性粒子 (MSIS)

放射線粒子 (AE8AP8JPLSHIELDO

SE-2)

メテオロイドデブリ (MASTER2005

ORDEM)

電離損傷 変位損傷

bull電子回路の劣化 bull光部品の劣化

bull太陽電池セルの劣化

SEU (CREME96)

bullデータエラー bull画像ノイズ

bullシステム停止 bull回路損傷

bull熱的電気的光学的特性の劣化

bull構造の劣化 bullコンタミ

電磁パルス bull電源出力低下

bull損傷

bullトルク bull軌道落下

bull構造 損傷 bull減圧

bull電磁パルス

NASAの報告 -GNampCに注目-

1974年から1994年に起きたNASAと空軍の衛星故障の内20~25が宇宙環境に起因していたと報告

1990年から2001年に米国欧州カナダ日本の企業や政府機関が開発した衛星を調べた過去の宇宙ミション損失の大部分はロケットの失敗であったが1998年衛星損失の大部分は軌道上の衛星障害となっている多くの最近の異常は太陽電池アレイ及びバッテリの危険が増加している静止軌道通信衛星の設計寿命はこのサブシステムの故障の危険が増加している

喪失等の大きな誘導制御(GNampC)の不具合に注目 GNampC不具合の内宇宙環境による 不具合は約3と報告されている

軌道上衛星のタイプ別数

NASAの報告(続き)

衛星設計寿命における不具合発生時期 事故率と軌道

軌道別の衛星数 サブシステム不具合

宇宙環境を原因とする不具合の割合 -JAXAの場合-

2002年~2008年に運用された軌道上不具合情報が比較的充実している11衛星(利用衛星7機科学衛星4機)の結果宇宙環境によるも

のは約15過去のデータよりも割合が少ない

合計83件 合計35件

(1)利用衛星 (2)科学衛星

設計検討 不足 48

製造不良 8

軌道上環境 17

偶発故障 6

調査中 13

原因不明 8

設計検討

不足 61

製造不良 4

軌道上環境 11

偶発故障 6

調査中 9

原因不明 9

不具合発生部位の割合

不具合発生部位の割合

Brent Robertson Eric Stoneking ( 1990-2001NASA Goddard Space Flight Center )

Satellite News Digest -静止軌道不具合-

Satellite News Digest (SND) (http wwwsqt-indexcouk) で1997年~2009年の期間に静止軌道で95件の不具合が報告されている その内運用ミスや設計ミスなどを除くと32件(約33)は宇宙環境によるものであった 過去のデータより割合が多い

Choiら1)はこれら不具合の地方時と季節依存性を確認した その結果2100LT~900LTで約72の不具合が発生し900LT~2100LTは9件(約28)であった またこの9件は全て姿勢制御の不具合だった 静止軌道衛星不具合のほとんどは真夜中と朝方で起きており磁気嵐に伴い磁気圏尾部から注入した粒子による表面帯電が不具合の主原因と結論づけている

1) Ho-sung Choi et al Analysis of GEO spacecraft anomalies Space weather relationships Space Weather Vol 9 S06001

太陽活動と静止軌道衛星不具合例

ANIK-E1E2

ANIK-E1

複数の衛星で故障

Galaxy-15

帯電放電不具合 -ANIK-E1amp2Telstar401-

Jan 1994 ANIK-E1 amp E2事故時の環境 - Joe H Allen

1週間

太陽活動下降時期の電子増加

2MeV以上電子

copyNOAA Web

フラックスが3桁急増

Jan 1997 Telstar401事故時の環境

静止軌道の急激な電子増加

太陽極大期太陽フレアによる衛星障害 - 2003年10月~11月-

10486981048698 永久故障 4 10486981048698 安全モード又は運用を一時停止 31 10486981048698 データ内容の「誤り」の増加搭載コンピュータの誤動作 5

httpwwwsat-ndcomfailures等のデータによる 合計 40件

-Barbieri and Mahmot

米国極軌道気象衛星NOAA-17の改良型マイクロ波観測装置AMSU-A1 (Advanced Microwave Sounding Unit)のスキャナーが永久故障 米国気象衛星GOES -8号のX線センサがOFFになり復帰しなくなった

e-birdに深刻な不具合が発生 不具合は20本のトランスポンダ全てに影響

火星周回中の探査機「マーズオデッセイ (Mars Odyssey)」の観測機器放射線観測装置「Martian Radiation Environment Experiment (MARIE)」が太陽活動の影響により10月28日から適切に作動しなくなった データ中継技術衛星(DRTS)「こだま」 太陽捕捉モードに移行

太陽陽子

帯電放電不具合-Galaxy15(局所的的現象)- 2

5 M

eV

65

MeV

11

5 M

eV

GOES 14 ----- GOES 15 ----- GOES 11 -----

Satellite Locations

Galaxy 15 anomaly

2010年4月5日9時48分UTCは磁気嵐及びCMEが発生するなど宇宙環境は非常に荒れていたGalaxy15衛星は真夜中側に位置し宇宙環境の影響を受けやすい

位置にいたことから宇宙環境による不具合である可能性が高いということで原因追及がなされた高エネルギー粒子が引き起こす代表的な衛星不具合現象として3つ(表面帯電内部帯電SEUシングルイベントバーンアウトSEL)の可能性を検討した

チームの報告書によると磁気圏尾部からの熱電子の流入による放電が原因であったと結論付けられたGalaxy15衛星の近くにはGOES-11衛星が位置していたがGOES-11衛星には不具合を発生しておらず本現象は局所的な現象と推測される

衛星開発段階における対策 JAXAの不具合解析の結論

bull 2002年~2008年に運用された11機の衛星不具合を解析 宇宙環境による不具合は偶発故障のみ(全体の約15)確率的には想定範囲内ではあるがその影響を最小限とするためディレーティング運用モード寿命についての研究に取り組む

bull 設計基準試験の充実検証確認の強化技術成熟度(TRL)評価の徹底各々の境界制約条件の明示化等により検証不足抜けの防止有効なピアレビューに結びつける

冗長系(同じハードウェア機能の冗長)柔軟性の設計(ソフトハードの対応)

bull 従来の故障が起きないようにする設計に対してGOSAT(いぶき)では重要部

品を二重化することにより故障する可能性は上がるが故障しても衛星バスの運用や観測が続行できる可能性がより高くなるように設計した

運用における対応

bull 宇宙天気監視ーロケット打ち上げ及び宇宙飛行士支援 数日前に今後の宇宙環境の推移を把握(MXレベルのフレアの発生確率)

bull X線の増加で太陽フレア発生を検知したら高エネルギー粒子の発生をいつまで 気を付ければ良いか判断(発生位置で大凡を推定するが課題は多い) SPEが発生した場合(特に10MeV以上100MeV 以上の陽

子)最大値フラックス値の推定 ピーク値を予測(特に閾値に近くなった時に重要)

bull 衛星運用 bull 太陽フレア磁気嵐警報(X線陽子及びkpが閾値を超えた

時に警報を発信)2003年10月より運用開始 bull 内部帯電警報(2日後の静止軌道上の高エネルギー電子(>1

Me) の増加を予測し 閾値を超えた時に警報を発信) 2004年4月より運用開始

話の流れ

技術データ取得装置(TEDA)の概要と成果 bull 主な成果 bull 不具合解析例

宇宙天気のリスクと対策 bull 宇宙環境による衛星システムへの影響 bull 宇宙環境を原因とする不具合の割合推移部位 bull 静止軌道不具合 bull 対策

今後必要な観測項目

まとめ

計測対象計測項目 計測対象 粒径100μm以上のデブリメテオロイド 計測項目 デブリ粒径衝突頻度

基本原理

厚さ約125μmの絶縁性のポリイミドフィルム表面に 100μm周期で直線状の細長い導線(太さ50μm)パターンを形成導線の破断を電気的に検知することによりデブリの衝突(貫通)を検知する破断した導線の数導線の幅ピッチからデブリサイズを計測する

微小デブリ計測技術の概要

衝突孔の例(衝突試験ISAS) - 衝突粒子 SUS 309 microm - 衝突速度 52 kms

HTV5号機によるセンサ機能のフライト実証

35cm

46cm

FY2013機能実証モデル

検出線幅 50 μm 検出線間隔 100 μm フィルム厚 lt 20 μm 有感領域 30times33cm 検出線総数 3300本

サイズ 50times39times4 cm (筐体を含む)

重量 約15kg(筐体を含む)

消費電力 2W(最大4W)(他センサ含む)

テレメトリ 02 bps

宇宙環境観測装置KASPERの一部としてデブリセンサSDMを搭載 FY2013に製作開始今年8月に打ち上げ予定)

まとめ(その1)

衛星不具合の主な原因は帯電放電シングルイベント放射線損傷である今後デブリ環境が重要になると予測される

静止軌道では商用衛星が多く運用されており宇宙環境の変動把握は重要この領域で運用する衛星が気を付けなければいけない環境として

1太陽フレアに伴う高エネルギー粒子 2太陽活動下降期による静止軌道電子の増加 3磁気嵐に伴う磁気圏尾部から注入する粒子 などがあげられる

まとめ(その2)

不具合軽減の取り組み bull 開発時は宇宙環境条件(トータルフラックス及び最悪条

件)を明確にし設計(冗長系柔軟性の設計ディレーティング及び運用モード寿命について研究)試験の充実検証の充実を図る

bull 運用段階に入ったならば宇宙環境を監視し警報等で故障を防ぐ

予測課題 bull 太陽フレアに伴う高エネルギー粒子発生後フラックス

ピーク値の推定

bull 衛星により不具合の起きる閾値は異なるが閾値をこえる急激な電子フラックスの増加と継続時間の予測

bull 局所的な磁気嵐に伴う磁気圏尾部から注入する粒子

宇宙環境グループは宇宙ステーションと衛星プロジェクトの安全な遂行に貢献しています

ご静聴ありがとうございました

補足資料

不具合原因の推移 bull 宇宙天気を大きく左右する要因の1つとして約11年の太陽活動変化が挙げられる

bull 太陽活動下降時期(太陽変動CME)と極大期(フレアCME)に衛星で不具合が増加するそれにより不具合原因の割合が変わる

-Koons et al The Impact of the Space Environment on Space Systems Aerospace Corp report no TR-99(1670)-1 20 July 1999 -2009 preliminary study (unpublished)

何故不具合は減らないか

bull 部品 放射線に対する感受性が高くなっている bull 微細化が進み同時にフォールトするノードが増え同時にエ

ラーとなる論理ノードやメモリセルが増加する微細化によってメモリセルは小さくなるので記憶容量当たりでみるとエラーの発生率は下がるしかし半導体チップの記憶容量やゲート数が増えるので半導体チップ当たりのエラー発生率は微細化とともに上昇するまた蓄積電荷が小さくなり感受性が高くなってきている

bull システム 大型化大電力化運用長期化 bull 1990年代末以降静止衛星の電力が10kWレベルになったしか

し設計検証技術データ蓄積が遅れている改善されつつあると推測される

放射線による影響の概要

粒子 エネルギー又はLET

代表的な影響

陽子 100keV-1MeV 1-10MeV 10-100MeV gt50MeV

表面損傷 表面材料と太陽電池の損傷 放射線損傷(電離非電離損傷の両方)センサーへのノイズ シングルイベント効果

電子 10-100keV gt100keV gt1MeV

表面帯電 深部帯電現象(deep-dielectric charging)センサーへのノイズ太陽電池の損傷 放射線損傷(電離)

重イオン gt1MeV-cm2mg シングルイベント効果

注エネルギー及びLETは個々の部品等により異なりますあくまでも目安です

耐放射線設計手順

軌道条件

ミッション期間

環境条件設定

トータルドーズの予測

1MeV電子換算被曝算出

NIELの換算

LETフルエンス算出

陽子フルエンス算出

対  策  の  検  討

対  策  の  検  討

対  策  の  検  討

放射線による劣化率予測

劣化率予測 特性予測

耐性データ

放射線による劣化率予測

耐性データ

劣化率予測アレイ出力劣化予測

感受性データ

シングルイベント発生率予測 致命度解析

衛星内質量分布

(2)

部品材料の選定

他の要因による劣化率予測

(2)(2) (3)

回路設計等NO

OK

アレイ構造 セル選定

他の要因による劣化率予測 アレイ設計(2)

(2) (2) (2) (3)

衛星内質量分布 部品選定(2)

(2) (2)(3)

NO

OK

NO

OK

(1) 環境モデルマージを含む(2) 部品レベルの検討(3) アセンブリレベルでの検討(4) 設計マージン環境モデル   マージを含め大丈夫か

トータルドーズ

太陽電池アレイの劣化

シングルイベント効果

回路設計

補足放射線太陽宇宙線銀河宇宙線

NEILを用いたダメージファクターの算出

対  策  の  検  討

放射線による劣化率予測

劣化率予測 特性予測

耐性データ

(2)

部品材料の選定

他の要因による劣化率予測

(2)(2) (3)

回路設計等NO

OK

衛星内質量分布 半導体デバイスの変位損傷

(1)

(4)

(4)

(4)

(4)

各軌道における放射線環境

1E+10

1E+11

1E+12

1E+13

1E+14

1E+15

1E+16

1E+17

1E+18

1E+19

1E+20

001 010 100 1000

捕捉

電子

の積

分フ

ルエ

ンス

[m

2 ]

エネルギー[MeV]

各軌道における電子捕捉積分フルエンス(3年間)

LEO

EOS GEO

MEO

GTO

GEO 軌道傾斜角 0deg 高度36000km GTO 軌道傾斜角 18deg 高度 360km~36000km MEO 軌道傾斜角 51deg 高度 10000km EOS 軌道傾斜角 98deg 高度705km LEO 軌道傾斜角 29deg 高度 600km

1E+12

1E+13

1E+14

1E+15

1E+16

1E+17

1E+18

1E+19

1E+20

01 10 100 1000

捕捉

陽子の

積分フルエン

ス[

m2 ]

エネルギー[MeV]

各軌道における捕捉陽子積分フルエンス(3年間)

MEO

GTO

GEO

EOS LEO

放射線による部品材料の影響

総照射線量 (TIDTotal Ionising Dose )

電離損傷

バイポーラTrの電流増幅率の低下リーク電流の増大

γ線で評価

トータルドーズ効果

変位損傷 (DDDisplacement Damage )または 非イオン化エネルギー損失 (NIELNon-Ionising Energy

Loss )

変位損傷(格子欠陥の生成)

電荷輸送効率の低下 (CCD)太陽電池の効率低下等

電子陽子により評価

シングルイベント効果

1個の荷電粒子の入射により発生する誤動作

ソフト(Latch-Up Burnout) エラー又は ソフト (Upset) エラー

陽子及び重イオンで評価

トータルドーズ効果

+ - + + - + - + - - + + + + -

ゲート酸化膜

電離

格子欠陥

正電荷捕獲

+ 正孔 - 電子

電極

(Silicon oxidenitride)

荷電粒子

反跳原子

ゲート絶縁膜中に電荷が蓄積することによるMOSトランジスタのしきい電圧(MOSトランジスタがオフからオンに変化するゲート電圧)の変化をもたらすただ

し最近の最先端チップはゲート絶縁膜がきわめて薄くなっているこのためゲート絶縁膜よりもフィールド絶縁膜(隣接するトランジスタを電気的に分離する絶縁膜)での電荷蓄積が相対的には大きな問題になってきている」

シングルイベント効果

メモリセルはNチャンネルとPチャンネルMOSFETより構成されメモリ情報は回路ノード12の電位の

高低により記録している空乏層の広がっているPN接合12の領域に

重イオンが入射した場合電荷の発生と空乏層内への少数キャリアの収集が起こるこの収集電荷量が回路の耐量を越えた場合(c)に示すように反転が起こる(ソフトエラー)一方pウエル-N基板接

合の空乏層内に電荷収集量が起こりえる耐性を越えると寄生的に存在するPNPNサイリスタ構造がオ

ンし電源と基板間に大電流が流れる状態が生じる(ラッチアップ)

シングルイベントメカニズム -陽子と重イオンの違い-

エラー発生率の計算

線エネルギー付与(LET) (linear energy transfer)

電離性放射線が物質中を通過する際飛程の単位長さ当りに平均して失うエネルギーをいう各種の放射線のうちX線γ線はLETが小さいので低LETといいα線中性子線その他重イオン核分裂破片のLETは大きいので高LETという MeVμmMeV(gcm2)やMeV(mgcm2)で表される

南大西洋異常(SAA) bull 地球の自転軸と磁気軸のずれ

darr bull 放射線帯が自転軸に対して非

対称

bull 南大西洋上空では放射線帯内帯が低高度に落ちてきているこの領域を南大西洋異常域(SAA South Atlantic Anomaly)と呼ぶ

bull 地球観測衛星ではSAAで放射線帯陽子の影響を受ける

Single Event Lachup

シングルイベントと陽子分布

MOS-1衛星(高度909km軌道傾斜角99度)で発生したシングルイベントと 陽子30MeV以上の等高線マップを重ね合わせた結果

NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)

bull 入射粒子が電離によらず与える損傷非イオン化損失

低軌道での電子フラックスと 不具合の発生場所

南大西洋異常(SAA)と極の角

高度800kmでの電子フラックス図極の角(polar horn)とSAAを示す

太陽粒子線 bull 太陽高エネルギー粒子線(SPE Solar Proton Events)は太陽フレア とコロナガス噴出 (CMECoronal Mass Ejections )により引き起こされる bull フレアのスペクトルは可変であるためあるエネルギー域における最悪状態イベントは必ずしも別のエネルギー域における最悪条件ではない 1972年8月のイベント 10~70MeVの粒子が最も多かった 1989年10のイベント 1972年8月のイベントに比べ低エネルギー領域 高エネルギー領域が明らかに激しかった

フルエンス 105 to 1011 cm-2

変動期間 1日から数日

ldquoBastiliardquo Solar Event 14 July 2000

Carrington Flare

84

(LW Townseed) Carrington Flare(1859年) Carrington Flare による30MeV以上トータルFluenceを118times109cm-2で規格化 ~1989年フレアの約13倍(シングルイベントの評価で使用) ~1991年フレアの約9倍 2012年7月23日にキャリントンイベントとほぼ同等の爆発現象が太陽あるいは太陽の周りで起きていたということがNASAの太陽観測衛星「STEREO」の解析から発表された

放射線対策 bull 放射線シールドを付加し放射線を減衰させる

bull 放射線耐性の強い部品(SOI(Silicon On Insulator)技術による耐放射線部品)材料に変更する

bull 放射線による損傷を吸収するために回路または構造上のマージンを持たせる bull ソフト的なエラーに対しては エラー検出訂正機能や多数決

機能等でソフト的エラーが起きてもシステムが機能するようにしたフォールトトレラント機能を付けて対処する ICのハード的故障に対しては ラッチアップ耐性の強い部品を選定するしかないが 電流制限回路を付ける対策も採られる パワーMOSFETに対しては部品選定 電源電圧を規格値の半分以下に落とす等の対策を採る

SOI技術

表面帯電への対策例

表面の物体間を導線で結線する

太陽電池のカバーガラスを導電性被膜付き(酸化インジウムITO)にする

熱制御材表面にITOを被覆する

熱制御材は高誘電率のテフロンの使用を避け 高伝導度耐環境性に優れたブラックカプトンを使用

イオンエンジンの中和器で能動帯電制御

内部帯電への対策例

アルミで3mm厚さに相当するシールドで囲む(Faraday Cage)

テフロンやカプトンなどの誘電体材料の内部での使用量を最小限に押さえる

回路基板やコンフォーマルコーティングは誘電体なので電流リークパス(1012Ωcmまたは1012Ωcm2

程度)を必ずつける

特にスポット的な放射線シールドの金属材には必ず電流リークパスをつける

帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備

衛星モデル作成

材料物性テーブル設定

宇宙環境パラメータ設定

Converter

転送ディレクトリ 解析データファイル

転送

解析ディレクトリ生成 解析結果 進行状況チェック ファイル操作

MUSCAT 解析エンジン

解析結果 表示

パラメトリックラン

オプション 解析

大型パネル実験(35mtimes11m) クーポンパネル実験(26cmtimes16cm)

環境模擬試験 環境模擬試験

MUSCATに使用する物性値設計標準制定のための知見などを得ることを目的に軌道上の宇宙環境を模擬した地上試験を行っている これらの試験では放電の発生頻度や電圧閾値放電発生による太陽電池パネルや搭載機器への影響を検証している

放射線計測装置の原理

bull その粒子が物質を通過する際のエネルギー損出率が粒子の電荷(原子番号)Zの二乗に比例すること(Bethe-Blochの式)を利用する

S2

E

ΔE Ersquo

S1 S3

  • 宇宙機の設計のための宇宙環境
  • 話の流れ
  • 話の流れ
  • TEDA(技術データ取得装置)(国産部品の宇宙環境での実証の必要性)
  • ETS-VTEDA(技術データ取得装置)誕生前の部品の宇宙実証の背景
  • スライド番号 6
  • スライド番号 7
  • スライド番号 8
  • スライド番号 9
  • 図6太陽黒点数と静止軌道電子 (>04MeV ) Flux の変動 (ETS-V搭載DOMによる観測)
  • スライド番号 11
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの開発(理研東大と共同で宇宙環境計測の充実)
  • ETS-VI(きく6号)打ち上がったがGEOに行かずGTOに留まる
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの成果
  • スライド番号 15
  • スライド番号 16
  • スライド番号 17
  • ADEOS搭載TEDA(世界2番目の異常宇宙線ACR)
  • BBND (ボナー球中性子検出器)
  • スライド番号 20
  • ISS搭載BBNDの成果(約8か月)
  • スライド番号 22
  • MDS-1搭載放射線吸収線量モニタ(SDOM)
  • 放射線帯変動モデルの開発MDS-1 065 MeV 電子フラックス
  • 変動パラメータの選択 (1 cycle solar activity)
  • 変動パラメータ- Tavg の定義-
  • 065MeV 電子 L値-Tavg マップ
  • 13MeV 陽子 L値-Tavg マップ
  • 電子観測とMDS-1モデルの比較
  • 放射線帯フラックスピークの変動
  • 陽子観測とモデルの比較
  • 電子(035~078MeV) 1日の変動予測GOSAT軌道
  • 電子(035~078MeV) 変動の信頼度水準(1日)GOSAT軌道
  • MDS-1 model と AE-8 modelとの比較1日
  • 話の流れ
  • 2003年10月 みどり号の全損事故(複合現象)
  • 衛星帯電の基本式
  • 内部帯電
  • パドルでの帯電放電メカニズム
  • スライド番号 40
  • スライド番号 41
  • スライド番号 42
  • データ中継技術衛星DRTS (こだま)の不具合
  • DRTS ESA スパイクノイズと電子フルエンスの比較(赤の丸が異常検知)
  • 不具合が宇宙環境によるものであるか判断する際のポイント
  • 話の流れ
  • 宇宙天気のリスク-宇宙環境によるシステムへの影響 -
  • NASAの報告-GNampCに注目-
  • NASAの報告(続き)
  • 宇宙環境を原因とする不具合の割合-JAXAの場合-
  • 不具合発生部位の割合 
  • Satellite News Digest -静止軌道不具合-
  • 太陽活動と静止軌道衛星不具合例
  • スライド番号 54
  • スライド番号 55
  • スライド番号 56
  • 衛星開発段階における対策
  • 運用における対応
  • 話の流れ
  • スライド番号 60
  • スライド番号 61
  • まとめ(その1)
  • まとめ(その2)
  • 宇宙環境グループは宇宙ステーションと衛星プロジェクトの安全な遂行に貢献しています
  • 補足資料
  • 不具合原因の推移
  • 何故不具合は減らないか
  • 放射線による影響の概要
  • 耐放射線設計手順
  • 各軌道における放射線環境
  • 放射線による部品材料の影響
  • トータルドーズ効果
  • シングルイベント効果
  • シングルイベントメカニズム-陽子と重イオンの違い-
  • エラー発生率の計算
  • 線エネルギー付与(LET)(linear energy transfer)
  • 南大西洋異常(SAA)
  • Single Event Lachup
  • シングルイベントと陽子分布
  • NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)
  • 低軌道での電子フラックスと不具合の発生場所
  • 南大西洋異常(SAA)と極の角
  • スライド番号 83
  • Carrington Flare
  • 放射線対策
  • スライド番号 86
  • スライド番号 87
  • 帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備
  • スライド番号 89
  • 放射線計測装置の原理
Page 14: 宇宙機の設計のための宇宙環境の方針から国産部品開発(42品種)が実施された。 . 半導体電子部品は耐放射線性を加味して、人工衛星(特に

ETS-Ⅵ搭載TEDAの成果

トータルドーズ劣化や太陽電池劣化は静止衛星で10年かかった同じ評価を1年間でできた

シングルイベントの発生頻度の高度分布が取得できた (高度8千km~3万8千kmの範囲)

バンアレン帯の放射線帯の電子陽子重イオンの高度分布データを取得し放射線帯モデル日本モデルを作成(あけぼの衛星データ含む)

この成果はGTO軌道を最初から狙うMDS-1(つ

ばさ)プロジェクトへとつながった 米国は1990年7月25日CRRESS(Combined Release and Radiation Effects Satellite )衛星を打ち上げ

研究開発の流れ

計測装置開発

データ収集 計画

環境計測

研究試作

衛星への影響解析で必要なデータ及び性能を機器開発に反映する

高エネルギー軽粒子 重イオン 中性子 帯電 原子状酸素 デブリ 新たな現象(問題点)

軌道上不具合評価 宇宙環境モデル

宇宙環境データベース 警報

衛星設計基準

有人活動への反映

宇宙天気予報 システム

国内外機関とのデータ交換

打上げ衛星運用

放射線環境評価(ISOを含む)の見直し 宇宙環境モデルの最適化 効率の良い宇宙機の開発 (シールド厚最適設計) 低コスト化(部品仕様の見直し) 短期間開発(民生品の利用)

フィードバック

成果目標

プロジェクト支援

宇宙環境計測装置(放射線磁場)小型化の流れ

9kg 10cm 10cm 10kg 14W 18W

1cm 52g 480g 1cm 12W以下 15W

磁力計(480g->52g)

みどり2搭載用 つばさかけはしきぼう搭載用 Jason-2GOSAT搭載

ETS-VIII搭載用 QZS搭載用

電子(05~50MeV) 陽子(1~160MeV) α粒子(4~200MeV)

電子(04~5MeV) 陽子(7~48MeV) α粒子(30~140MeV)

plusmn655364096102456nT plusmn655364096nT

16bit 20bit

電子(003~20MeV) 陽子(04~250MeV) α粒子(08~400MeV)

LPT-S 216x182x175 mm 62 kg LPT-E 240x165x 93 mm 28 kg

積算吸収線量計

軽粒子モニタ(10kgー>9kgー>7kg最小2kg)

17times10times5mm749g

ISSKibou(09-)

GEO

LEO

ETS-V (87-97)

ADEOS-II(02-03)

ETS-VIII(06-) DRTS(02- )

STS-89(98)

MDS-1(02-03) ETS-VI(94-96)

ETS-VII (97-99)

宇宙環境計測の流れ ISSUS-Lab(01)

ひまわり1-4(78-99)

ERG(16予定)

ALOS(06-11)

GOSAT(09-)

Jason-2((08-)

Jason-3(15予定)

GTO

QZS(09-)

ADEOS (96-97)

ADEOS搭載TEDA (世界2番目の異常宇宙線ACR)

bull シングルイベント評価のための重イオン観測であったが世界2番目の異常宇宙線を観測することができた

bull 低軌道の衛星は地球磁場が邪魔となって宇宙線(重イオン)を観測するに向いていないと考えられていたが異常宇宙線を観測するのにすぐれていることが明らかとなった

T Kohno et al Radiation Measuremets 30 5 PP639-644

BBND (ボナー球中性子検出器)

bull 1994年(平成6)年7月に中性子計測のために ボナー球ホスウイッチ方式及びシンチレーションファイバーの3種類のセンサの研究をスタート

bull シャトル打ち上げ計画の管理者から搭載装置の検討依頼がありBBNDのSTS-89への搭載が決定した(1997年1月頃)

bull 振動試験で装置内のボルトが外れるという不具合もあったが約1年という非常に短期間で搭載品を開発することができた

bull コスト低減のために構造解析を自前で実施したりデータ処理ソフトウェアも内作した

熱中性子に対して高い感度を持つ6個の3Heガス入り比例計数管で構成して

いる中性子は電荷をもたないのでそれ自身には電離作用がないが軽い原子の3He気体では反跳原子を生じたり中性子の核反応(3He+nrarrp+3H+765KeV)によって荷電粒子を生じるので間接的に電離を起こす下図のように気体中に二つの電極を置き高電圧(1000V)をかけておくと中性子の入

射によって気体中に生じた陽子イオンと電子のイオン対がそれぞれの電極に向かって流動し外部回路に電離電流が流れるこの電気パルスにより中性子を計測する

ボナー球型中性子モニタの概要

Polyethylene Sphere3He proportional Counter

51 φ 51 φ81 φ110 φ150 φ230 φ

Sensor6 Sensor5 Sensor4 Sensor3 Sensor2 Sensor1

Covered by Gadolinium

[mm]3Heガス入り比例計数管の原理

6個のボナー球の断面図

3Heガス入り比例計数管とポリエチレン減速材

H Matsumotoet al Radiation Measurements 33 (2001) 321-333

ISS搭載BBNDの成果(約8か月)

実験期間中の平均的な等価線量等量率 (2001年3月23日~2001年11月14日)

太陽フレア時(2001年11月4日)

等価量等量率の平均は94μSv日で年率に換算すると34mSv年となるこれは地上において自然界から受ける等価線量当量率の約14倍に相当する 実験期間中に多数の太陽フレアが発生した2001年11月4日の太陽フレアにより019mSVの増加を観

測したこれは自然界から受ける等価線量当量率の約1か月分に相当するしかしBBNDの約8か月

の実験期間中の全等価線量当量に対するこの太陽フレアの影響の寄与分は1以下であった また搭載位置による環境の違いも確認された

H Koshiishiet al Radiation Measurements 42(2007) 1510-1520

1)船内の計測結果より低エネルギー側で2~3桁高エネルギー側で1~2桁低い 2)船内より船壁が薄く中性子が少ない環境より自然のアルベド中性子環境に近い

中性子被曝線量の ISS船外(SEDA-AP)と船内(STS-89)の比較

MDS-1搭載放射線吸収線量モニタ(SDOM) SiTungstenAlBGO

② ⑦

⑧⑧

① Collimator ② Window③ SSDs ④ Plastic Scintillator⑤ Anticoincidence Scintillator(ACS)⑥ Beam Stop⑦ Scintillator PMT⑧ ACS PMT

運用期間 2002年2月 ndash 2003年9月 軌道 -軌道傾斜角 285deg 1 lt BB0 le 84 -高度 500 km times 36000km 11 le L le 10 -軌道周期 約10時間35分 -スピンレート 5rpm

計測エネルギー範囲 Electron 04- 9MeV (5bins) Proton 09-210MeV (12bins) He 6-140MeV (4bins) Heavy Ion 15- 60MeVnuc (1bin) G-Factor 001cm2sr

放射線帯変動モデルの開発 MDS-1 065 MeV 電子フラックス

変動パラメータの選択 (1 cycle solar activity)

太陽風速度(SW)

太陽黒点数(R)

Ap指数

F107

変動パラメータ- Tavg の定義-

1日後の予測

パラメータスケールの時間平均 ApTavg SWTavg F107 Tavg

T days

放射線帯の構造は変動パラメータ値の大きさと継続時間に相関がある

065MeV 電子 L値-Tavg マップ

APTavg

SWTavg

13MeV 陽子 L値-Tavg マップ

APTavg

F107Tavg

電子観測とMDS-1モデルの比較

80 175

放射線帯フラックスピークの変動

80orbits (平穏時) 175orbits (擾乱時)

陽子観測とモデルの比較

電子(035~078MeV) 1日の変動予測GOSAT軌道

0

50

100

150

200

250

1E+09

1E+10

1E+11

1E+12

1984 1986 1988 1990 1992 1994 1996 1998 2000 2002 2004 2006 2008

Flue

nce[

ecm

2M

eVd

ay]

Launch day

FluenceSSN

Worst case Nov 12003

電子(035~078MeV) 変動の信頼度水準(1日)GOSAT軌道

00

01

02

03

04

05

06

07

08

09

10

88 90 92 94 96 98 100 102 104 106 108 110 112 114

Con

fiden

ce le

vel

Fluence[LOG10 ecm2MeVday]

AE-8 MAX

AE-8 MIN

MDS-1 model と AE-8 model との比較1日

0

20

40

60

80

100

120

140

160

180

1E+09

1E+10

1E+11

1E+12

1995 1997 1999 2001 2003 2005 2007 2009

Flue

nce[

ecm

2M

eVd

ay]

Launch day

Fluence(JAXA)Fluence(AE8)SSN

話の流れ

技術データ取得装置(TEDA)の概要と成果 bull 主な成果 bull 不具合解析例

宇宙天気のリスクと対策 bull 宇宙環境による衛星システムへの影響 bull 宇宙環境を原因とする不具合の割合推移部位 bull 静止軌道不具合 bull 対策

今後必要な観測項目

まとめ

2003年10月 みどり号の全損事故 (複合現象)

極域のオーロラ帯を通過中に電力ハー

ネスを巻いているMLIが高エネルギー電

子により帯電

MLIが接地されていなかったため内側

のハーネスとの間に1kV以上の電位差が

発生

MLI内のガス密度が発電開始に伴う温度

上昇により上昇

ハーネス被覆の傷により露出したハーネ

ス芯線とMLI内面の間で放電発生

単発の放電が隣接するハーネスに飛び火

してハーネス間の短絡

アーク放電が次々と伝搬していきハー

ネス全体が焼損

故障推定箇所 (大電力ハーネス部)

bull詳細報告書は文部科学省 宇宙開発委員会のHP参照

httpwwwmextgojpb_menushingiuchuureports04080901htm

bull 人工衛星の電位 bull 人工衛星は電気的に宇宙に浮いている bull 宇宙機構造体が接地点 bull 宇宙機への流入電流と流出電流のバランスによって宇宙機電位が決まる bull 各電流成分は宇宙機電位Vの関数として表され定常状態では式を下式を満たす

衛星帯電の基本式

( ) dtIIIIIIIC

V

dtdVCVIVIVIVIVIVIVI

BPHBSESISEIE

BPHBSESISEIE

int +++++minus=

==+++++minus

1

0)]()()()()()([)(

入射電子電流 ( E I )

後方散乱電子電流 ( BSE I )

入射正イオン電流 ( I I )

入射電子による二次電子電流 ( SE I )

太陽光

入射正イオンによる 二次電子放出電流 ( SI I )

光電子放出電流( PH I )

電荷ビーム放出電流(IB)

bull内部帯電は衛星の外壁を貫通した放射線帯外帯の01MeV以上の電子が内部に侵入

bull基板間や同軸ケーブルの線間等の容量(コンデンサ)や誘電体に帯電 bull接地されてない導体片に帯電

bullその耐圧電圧を超えると その耐圧の弱い箇所 (材質の欠陥や針状突起など の箇所)で放電して故障に至る

内部帯電

(あるエネルギ-以上の粒子が入射光電子なし)

NASA-HDBK-4002より

パドルでの帯電放電メカニズム

宇宙環境の影響により 衛星がマイナス電位に帯電

高エネルギー電子等により カバーガラスはプラスに帯電 衛星とカバーガラスに電位差が生じる

電位差が大きくなると トリプルジャンクション近傍 の電界強度が増大していく

トリプルジャンクションで放電が発生する カバーガラスの帯電が緩和される

+ + + + + + + + + + + + + +

+ + + +

カバーガラス

太陽電池セル

基板(衛星構体)

トリプルジャンクション rArr 導体絶縁体宇宙環境の接点

持続放電

Substrate

Satellite Load

insulation sheet

Solar array cell

Cover glass

Arc current

Electrode

持続放電は衛星の電力消失につながる 持続放電のモードは以下の2通りがある

Substrate

Satellite Load

insulation sheet

Solar array cell

Cover glass

Arc current

Electrode

Solar array cell

Cover glass

セル-基板間短絡 セル間短絡

放電によって太陽電池セルと基板が短絡する 短絡によって負荷に電力が供給されなくなる

放電によって太陽電池セルとセルが短絡する 短絡によって負荷に電力が供給されなくなる

サブストーム(高エネルギー電子)との遭遇

+ + + + + + + +

二次電子光電子による絶縁体の帯電(局所帯電)

電位差発生

逆電位勾配

衛星構体が負に帯電(絶対帯電)

電位

時間

サブストーム

衛星構体 VS

乖離電圧 ∆V

カバーガラスVcg

0 プラズマ電位

軌道別帯電放電現象

トリプルジャンクションで 放電発生

放電発生

静止軌道

+ + + + + + + +

逆電位勾配

軌道帯電放電現象

トリプルジャンクションで 放電発生

極軌道 オーロラ電子(高エネルギー電子)との遭遇

プラズマ流入出による絶縁体の帯電(局所帯電)

電位差発生

衛星構体が負に帯電(絶対帯電)

放電発生

電位

時間

オーロラ電子

衛星構体 乖離電圧 ∆V

カバーガラス

0 プラズマ電位

データ中継技術衛星DRTS (こだま)の不具合

2002年10月 9日 静止軌道に打ち上げ

2003年

3月24日 406JST変化率異常モニタ故障検出(FDIR)

が動作しA系からB系に切り替わった

3月25日 410JSTにB系のみ異常検知

4月 3日 327JSTにB系のみ異常検知

5月28日 124JSTにB系のみ異常検知

6月 6日1537JSTにB系のみ異常検知

ESA

DRTS ESA スパイクノイズと 電子フルエンスの比較(赤の丸が異常検知)

larr閾値

この事実を基に静止軌道における内部帯電警報システムを構築 2004年4月より運用開始

不具合が宇宙環境によるものであるか 判断する際のポイント

不具合の発生した時刻に太陽フレアや磁気嵐等の宇宙天気の大きな変動が起きていれば不具合に関係している可能性が高い但し帯電など放射線の積算的効果の伴う現象については発生から1週間位さかのぼり環境がどのように推移してきたかを考慮する必要がある

磁気嵐が起きると静止軌道に急激な粒子の増加現象が起きこれにより衛星帯電が引き起こされたりする(予測に利用可能)

地方時(真夜中や朝方か)や季節(春秋)を考慮する

低軌道衛星においてはSAA外帯のrdquo角ldquo及び極通過時に不具合

が起きやすいので衛星の位置(緯度経度)が重要

事象を把握する上で単発現象か数回起きている現象か周期

(時間同じ軌道等)的に発生している現象か

話の流れ

技術データ取得装置(TEDA)の概要と成果 bull 主な成果 bull 不具合解析例

宇宙天気のリスクと対策 bull 宇宙環境による衛星システムへの影響 bull 宇宙環境を原因とする不具合の割合推移部位 bull 静止軌道不具合 bull 対策

今後必要な観測項目

まとめ

宇宙天気のリスク -宇宙環境によるシステムへの影響 -

プラズマ (IRI)

帯電 (MUSCAT)

衝突 (AUTODY)

抗力 表面劣化

紫外線X線 中性粒子 (MSIS)

放射線粒子 (AE8AP8JPLSHIELDO

SE-2)

メテオロイドデブリ (MASTER2005

ORDEM)

電離損傷 変位損傷

bull電子回路の劣化 bull光部品の劣化

bull太陽電池セルの劣化

SEU (CREME96)

bullデータエラー bull画像ノイズ

bullシステム停止 bull回路損傷

bull熱的電気的光学的特性の劣化

bull構造の劣化 bullコンタミ

電磁パルス bull電源出力低下

bull損傷

bullトルク bull軌道落下

bull構造 損傷 bull減圧

bull電磁パルス

NASAの報告 -GNampCに注目-

1974年から1994年に起きたNASAと空軍の衛星故障の内20~25が宇宙環境に起因していたと報告

1990年から2001年に米国欧州カナダ日本の企業や政府機関が開発した衛星を調べた過去の宇宙ミション損失の大部分はロケットの失敗であったが1998年衛星損失の大部分は軌道上の衛星障害となっている多くの最近の異常は太陽電池アレイ及びバッテリの危険が増加している静止軌道通信衛星の設計寿命はこのサブシステムの故障の危険が増加している

喪失等の大きな誘導制御(GNampC)の不具合に注目 GNampC不具合の内宇宙環境による 不具合は約3と報告されている

軌道上衛星のタイプ別数

NASAの報告(続き)

衛星設計寿命における不具合発生時期 事故率と軌道

軌道別の衛星数 サブシステム不具合

宇宙環境を原因とする不具合の割合 -JAXAの場合-

2002年~2008年に運用された軌道上不具合情報が比較的充実している11衛星(利用衛星7機科学衛星4機)の結果宇宙環境によるも

のは約15過去のデータよりも割合が少ない

合計83件 合計35件

(1)利用衛星 (2)科学衛星

設計検討 不足 48

製造不良 8

軌道上環境 17

偶発故障 6

調査中 13

原因不明 8

設計検討

不足 61

製造不良 4

軌道上環境 11

偶発故障 6

調査中 9

原因不明 9

不具合発生部位の割合

不具合発生部位の割合

Brent Robertson Eric Stoneking ( 1990-2001NASA Goddard Space Flight Center )

Satellite News Digest -静止軌道不具合-

Satellite News Digest (SND) (http wwwsqt-indexcouk) で1997年~2009年の期間に静止軌道で95件の不具合が報告されている その内運用ミスや設計ミスなどを除くと32件(約33)は宇宙環境によるものであった 過去のデータより割合が多い

Choiら1)はこれら不具合の地方時と季節依存性を確認した その結果2100LT~900LTで約72の不具合が発生し900LT~2100LTは9件(約28)であった またこの9件は全て姿勢制御の不具合だった 静止軌道衛星不具合のほとんどは真夜中と朝方で起きており磁気嵐に伴い磁気圏尾部から注入した粒子による表面帯電が不具合の主原因と結論づけている

1) Ho-sung Choi et al Analysis of GEO spacecraft anomalies Space weather relationships Space Weather Vol 9 S06001

太陽活動と静止軌道衛星不具合例

ANIK-E1E2

ANIK-E1

複数の衛星で故障

Galaxy-15

帯電放電不具合 -ANIK-E1amp2Telstar401-

Jan 1994 ANIK-E1 amp E2事故時の環境 - Joe H Allen

1週間

太陽活動下降時期の電子増加

2MeV以上電子

copyNOAA Web

フラックスが3桁急増

Jan 1997 Telstar401事故時の環境

静止軌道の急激な電子増加

太陽極大期太陽フレアによる衛星障害 - 2003年10月~11月-

10486981048698 永久故障 4 10486981048698 安全モード又は運用を一時停止 31 10486981048698 データ内容の「誤り」の増加搭載コンピュータの誤動作 5

httpwwwsat-ndcomfailures等のデータによる 合計 40件

-Barbieri and Mahmot

米国極軌道気象衛星NOAA-17の改良型マイクロ波観測装置AMSU-A1 (Advanced Microwave Sounding Unit)のスキャナーが永久故障 米国気象衛星GOES -8号のX線センサがOFFになり復帰しなくなった

e-birdに深刻な不具合が発生 不具合は20本のトランスポンダ全てに影響

火星周回中の探査機「マーズオデッセイ (Mars Odyssey)」の観測機器放射線観測装置「Martian Radiation Environment Experiment (MARIE)」が太陽活動の影響により10月28日から適切に作動しなくなった データ中継技術衛星(DRTS)「こだま」 太陽捕捉モードに移行

太陽陽子

帯電放電不具合-Galaxy15(局所的的現象)- 2

5 M

eV

65

MeV

11

5 M

eV

GOES 14 ----- GOES 15 ----- GOES 11 -----

Satellite Locations

Galaxy 15 anomaly

2010年4月5日9時48分UTCは磁気嵐及びCMEが発生するなど宇宙環境は非常に荒れていたGalaxy15衛星は真夜中側に位置し宇宙環境の影響を受けやすい

位置にいたことから宇宙環境による不具合である可能性が高いということで原因追及がなされた高エネルギー粒子が引き起こす代表的な衛星不具合現象として3つ(表面帯電内部帯電SEUシングルイベントバーンアウトSEL)の可能性を検討した

チームの報告書によると磁気圏尾部からの熱電子の流入による放電が原因であったと結論付けられたGalaxy15衛星の近くにはGOES-11衛星が位置していたがGOES-11衛星には不具合を発生しておらず本現象は局所的な現象と推測される

衛星開発段階における対策 JAXAの不具合解析の結論

bull 2002年~2008年に運用された11機の衛星不具合を解析 宇宙環境による不具合は偶発故障のみ(全体の約15)確率的には想定範囲内ではあるがその影響を最小限とするためディレーティング運用モード寿命についての研究に取り組む

bull 設計基準試験の充実検証確認の強化技術成熟度(TRL)評価の徹底各々の境界制約条件の明示化等により検証不足抜けの防止有効なピアレビューに結びつける

冗長系(同じハードウェア機能の冗長)柔軟性の設計(ソフトハードの対応)

bull 従来の故障が起きないようにする設計に対してGOSAT(いぶき)では重要部

品を二重化することにより故障する可能性は上がるが故障しても衛星バスの運用や観測が続行できる可能性がより高くなるように設計した

運用における対応

bull 宇宙天気監視ーロケット打ち上げ及び宇宙飛行士支援 数日前に今後の宇宙環境の推移を把握(MXレベルのフレアの発生確率)

bull X線の増加で太陽フレア発生を検知したら高エネルギー粒子の発生をいつまで 気を付ければ良いか判断(発生位置で大凡を推定するが課題は多い) SPEが発生した場合(特に10MeV以上100MeV 以上の陽

子)最大値フラックス値の推定 ピーク値を予測(特に閾値に近くなった時に重要)

bull 衛星運用 bull 太陽フレア磁気嵐警報(X線陽子及びkpが閾値を超えた

時に警報を発信)2003年10月より運用開始 bull 内部帯電警報(2日後の静止軌道上の高エネルギー電子(>1

Me) の増加を予測し 閾値を超えた時に警報を発信) 2004年4月より運用開始

話の流れ

技術データ取得装置(TEDA)の概要と成果 bull 主な成果 bull 不具合解析例

宇宙天気のリスクと対策 bull 宇宙環境による衛星システムへの影響 bull 宇宙環境を原因とする不具合の割合推移部位 bull 静止軌道不具合 bull 対策

今後必要な観測項目

まとめ

計測対象計測項目 計測対象 粒径100μm以上のデブリメテオロイド 計測項目 デブリ粒径衝突頻度

基本原理

厚さ約125μmの絶縁性のポリイミドフィルム表面に 100μm周期で直線状の細長い導線(太さ50μm)パターンを形成導線の破断を電気的に検知することによりデブリの衝突(貫通)を検知する破断した導線の数導線の幅ピッチからデブリサイズを計測する

微小デブリ計測技術の概要

衝突孔の例(衝突試験ISAS) - 衝突粒子 SUS 309 microm - 衝突速度 52 kms

HTV5号機によるセンサ機能のフライト実証

35cm

46cm

FY2013機能実証モデル

検出線幅 50 μm 検出線間隔 100 μm フィルム厚 lt 20 μm 有感領域 30times33cm 検出線総数 3300本

サイズ 50times39times4 cm (筐体を含む)

重量 約15kg(筐体を含む)

消費電力 2W(最大4W)(他センサ含む)

テレメトリ 02 bps

宇宙環境観測装置KASPERの一部としてデブリセンサSDMを搭載 FY2013に製作開始今年8月に打ち上げ予定)

まとめ(その1)

衛星不具合の主な原因は帯電放電シングルイベント放射線損傷である今後デブリ環境が重要になると予測される

静止軌道では商用衛星が多く運用されており宇宙環境の変動把握は重要この領域で運用する衛星が気を付けなければいけない環境として

1太陽フレアに伴う高エネルギー粒子 2太陽活動下降期による静止軌道電子の増加 3磁気嵐に伴う磁気圏尾部から注入する粒子 などがあげられる

まとめ(その2)

不具合軽減の取り組み bull 開発時は宇宙環境条件(トータルフラックス及び最悪条

件)を明確にし設計(冗長系柔軟性の設計ディレーティング及び運用モード寿命について研究)試験の充実検証の充実を図る

bull 運用段階に入ったならば宇宙環境を監視し警報等で故障を防ぐ

予測課題 bull 太陽フレアに伴う高エネルギー粒子発生後フラックス

ピーク値の推定

bull 衛星により不具合の起きる閾値は異なるが閾値をこえる急激な電子フラックスの増加と継続時間の予測

bull 局所的な磁気嵐に伴う磁気圏尾部から注入する粒子

宇宙環境グループは宇宙ステーションと衛星プロジェクトの安全な遂行に貢献しています

ご静聴ありがとうございました

補足資料

不具合原因の推移 bull 宇宙天気を大きく左右する要因の1つとして約11年の太陽活動変化が挙げられる

bull 太陽活動下降時期(太陽変動CME)と極大期(フレアCME)に衛星で不具合が増加するそれにより不具合原因の割合が変わる

-Koons et al The Impact of the Space Environment on Space Systems Aerospace Corp report no TR-99(1670)-1 20 July 1999 -2009 preliminary study (unpublished)

何故不具合は減らないか

bull 部品 放射線に対する感受性が高くなっている bull 微細化が進み同時にフォールトするノードが増え同時にエ

ラーとなる論理ノードやメモリセルが増加する微細化によってメモリセルは小さくなるので記憶容量当たりでみるとエラーの発生率は下がるしかし半導体チップの記憶容量やゲート数が増えるので半導体チップ当たりのエラー発生率は微細化とともに上昇するまた蓄積電荷が小さくなり感受性が高くなってきている

bull システム 大型化大電力化運用長期化 bull 1990年代末以降静止衛星の電力が10kWレベルになったしか

し設計検証技術データ蓄積が遅れている改善されつつあると推測される

放射線による影響の概要

粒子 エネルギー又はLET

代表的な影響

陽子 100keV-1MeV 1-10MeV 10-100MeV gt50MeV

表面損傷 表面材料と太陽電池の損傷 放射線損傷(電離非電離損傷の両方)センサーへのノイズ シングルイベント効果

電子 10-100keV gt100keV gt1MeV

表面帯電 深部帯電現象(deep-dielectric charging)センサーへのノイズ太陽電池の損傷 放射線損傷(電離)

重イオン gt1MeV-cm2mg シングルイベント効果

注エネルギー及びLETは個々の部品等により異なりますあくまでも目安です

耐放射線設計手順

軌道条件

ミッション期間

環境条件設定

トータルドーズの予測

1MeV電子換算被曝算出

NIELの換算

LETフルエンス算出

陽子フルエンス算出

対  策  の  検  討

対  策  の  検  討

対  策  の  検  討

放射線による劣化率予測

劣化率予測 特性予測

耐性データ

放射線による劣化率予測

耐性データ

劣化率予測アレイ出力劣化予測

感受性データ

シングルイベント発生率予測 致命度解析

衛星内質量分布

(2)

部品材料の選定

他の要因による劣化率予測

(2)(2) (3)

回路設計等NO

OK

アレイ構造 セル選定

他の要因による劣化率予測 アレイ設計(2)

(2) (2) (2) (3)

衛星内質量分布 部品選定(2)

(2) (2)(3)

NO

OK

NO

OK

(1) 環境モデルマージを含む(2) 部品レベルの検討(3) アセンブリレベルでの検討(4) 設計マージン環境モデル   マージを含め大丈夫か

トータルドーズ

太陽電池アレイの劣化

シングルイベント効果

回路設計

補足放射線太陽宇宙線銀河宇宙線

NEILを用いたダメージファクターの算出

対  策  の  検  討

放射線による劣化率予測

劣化率予測 特性予測

耐性データ

(2)

部品材料の選定

他の要因による劣化率予測

(2)(2) (3)

回路設計等NO

OK

衛星内質量分布 半導体デバイスの変位損傷

(1)

(4)

(4)

(4)

(4)

各軌道における放射線環境

1E+10

1E+11

1E+12

1E+13

1E+14

1E+15

1E+16

1E+17

1E+18

1E+19

1E+20

001 010 100 1000

捕捉

電子

の積

分フ

ルエ

ンス

[m

2 ]

エネルギー[MeV]

各軌道における電子捕捉積分フルエンス(3年間)

LEO

EOS GEO

MEO

GTO

GEO 軌道傾斜角 0deg 高度36000km GTO 軌道傾斜角 18deg 高度 360km~36000km MEO 軌道傾斜角 51deg 高度 10000km EOS 軌道傾斜角 98deg 高度705km LEO 軌道傾斜角 29deg 高度 600km

1E+12

1E+13

1E+14

1E+15

1E+16

1E+17

1E+18

1E+19

1E+20

01 10 100 1000

捕捉

陽子の

積分フルエン

ス[

m2 ]

エネルギー[MeV]

各軌道における捕捉陽子積分フルエンス(3年間)

MEO

GTO

GEO

EOS LEO

放射線による部品材料の影響

総照射線量 (TIDTotal Ionising Dose )

電離損傷

バイポーラTrの電流増幅率の低下リーク電流の増大

γ線で評価

トータルドーズ効果

変位損傷 (DDDisplacement Damage )または 非イオン化エネルギー損失 (NIELNon-Ionising Energy

Loss )

変位損傷(格子欠陥の生成)

電荷輸送効率の低下 (CCD)太陽電池の効率低下等

電子陽子により評価

シングルイベント効果

1個の荷電粒子の入射により発生する誤動作

ソフト(Latch-Up Burnout) エラー又は ソフト (Upset) エラー

陽子及び重イオンで評価

トータルドーズ効果

+ - + + - + - + - - + + + + -

ゲート酸化膜

電離

格子欠陥

正電荷捕獲

+ 正孔 - 電子

電極

(Silicon oxidenitride)

荷電粒子

反跳原子

ゲート絶縁膜中に電荷が蓄積することによるMOSトランジスタのしきい電圧(MOSトランジスタがオフからオンに変化するゲート電圧)の変化をもたらすただ

し最近の最先端チップはゲート絶縁膜がきわめて薄くなっているこのためゲート絶縁膜よりもフィールド絶縁膜(隣接するトランジスタを電気的に分離する絶縁膜)での電荷蓄積が相対的には大きな問題になってきている」

シングルイベント効果

メモリセルはNチャンネルとPチャンネルMOSFETより構成されメモリ情報は回路ノード12の電位の

高低により記録している空乏層の広がっているPN接合12の領域に

重イオンが入射した場合電荷の発生と空乏層内への少数キャリアの収集が起こるこの収集電荷量が回路の耐量を越えた場合(c)に示すように反転が起こる(ソフトエラー)一方pウエル-N基板接

合の空乏層内に電荷収集量が起こりえる耐性を越えると寄生的に存在するPNPNサイリスタ構造がオ

ンし電源と基板間に大電流が流れる状態が生じる(ラッチアップ)

シングルイベントメカニズム -陽子と重イオンの違い-

エラー発生率の計算

線エネルギー付与(LET) (linear energy transfer)

電離性放射線が物質中を通過する際飛程の単位長さ当りに平均して失うエネルギーをいう各種の放射線のうちX線γ線はLETが小さいので低LETといいα線中性子線その他重イオン核分裂破片のLETは大きいので高LETという MeVμmMeV(gcm2)やMeV(mgcm2)で表される

南大西洋異常(SAA) bull 地球の自転軸と磁気軸のずれ

darr bull 放射線帯が自転軸に対して非

対称

bull 南大西洋上空では放射線帯内帯が低高度に落ちてきているこの領域を南大西洋異常域(SAA South Atlantic Anomaly)と呼ぶ

bull 地球観測衛星ではSAAで放射線帯陽子の影響を受ける

Single Event Lachup

シングルイベントと陽子分布

MOS-1衛星(高度909km軌道傾斜角99度)で発生したシングルイベントと 陽子30MeV以上の等高線マップを重ね合わせた結果

NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)

bull 入射粒子が電離によらず与える損傷非イオン化損失

低軌道での電子フラックスと 不具合の発生場所

南大西洋異常(SAA)と極の角

高度800kmでの電子フラックス図極の角(polar horn)とSAAを示す

太陽粒子線 bull 太陽高エネルギー粒子線(SPE Solar Proton Events)は太陽フレア とコロナガス噴出 (CMECoronal Mass Ejections )により引き起こされる bull フレアのスペクトルは可変であるためあるエネルギー域における最悪状態イベントは必ずしも別のエネルギー域における最悪条件ではない 1972年8月のイベント 10~70MeVの粒子が最も多かった 1989年10のイベント 1972年8月のイベントに比べ低エネルギー領域 高エネルギー領域が明らかに激しかった

フルエンス 105 to 1011 cm-2

変動期間 1日から数日

ldquoBastiliardquo Solar Event 14 July 2000

Carrington Flare

84

(LW Townseed) Carrington Flare(1859年) Carrington Flare による30MeV以上トータルFluenceを118times109cm-2で規格化 ~1989年フレアの約13倍(シングルイベントの評価で使用) ~1991年フレアの約9倍 2012年7月23日にキャリントンイベントとほぼ同等の爆発現象が太陽あるいは太陽の周りで起きていたということがNASAの太陽観測衛星「STEREO」の解析から発表された

放射線対策 bull 放射線シールドを付加し放射線を減衰させる

bull 放射線耐性の強い部品(SOI(Silicon On Insulator)技術による耐放射線部品)材料に変更する

bull 放射線による損傷を吸収するために回路または構造上のマージンを持たせる bull ソフト的なエラーに対しては エラー検出訂正機能や多数決

機能等でソフト的エラーが起きてもシステムが機能するようにしたフォールトトレラント機能を付けて対処する ICのハード的故障に対しては ラッチアップ耐性の強い部品を選定するしかないが 電流制限回路を付ける対策も採られる パワーMOSFETに対しては部品選定 電源電圧を規格値の半分以下に落とす等の対策を採る

SOI技術

表面帯電への対策例

表面の物体間を導線で結線する

太陽電池のカバーガラスを導電性被膜付き(酸化インジウムITO)にする

熱制御材表面にITOを被覆する

熱制御材は高誘電率のテフロンの使用を避け 高伝導度耐環境性に優れたブラックカプトンを使用

イオンエンジンの中和器で能動帯電制御

内部帯電への対策例

アルミで3mm厚さに相当するシールドで囲む(Faraday Cage)

テフロンやカプトンなどの誘電体材料の内部での使用量を最小限に押さえる

回路基板やコンフォーマルコーティングは誘電体なので電流リークパス(1012Ωcmまたは1012Ωcm2

程度)を必ずつける

特にスポット的な放射線シールドの金属材には必ず電流リークパスをつける

帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備

衛星モデル作成

材料物性テーブル設定

宇宙環境パラメータ設定

Converter

転送ディレクトリ 解析データファイル

転送

解析ディレクトリ生成 解析結果 進行状況チェック ファイル操作

MUSCAT 解析エンジン

解析結果 表示

パラメトリックラン

オプション 解析

大型パネル実験(35mtimes11m) クーポンパネル実験(26cmtimes16cm)

環境模擬試験 環境模擬試験

MUSCATに使用する物性値設計標準制定のための知見などを得ることを目的に軌道上の宇宙環境を模擬した地上試験を行っている これらの試験では放電の発生頻度や電圧閾値放電発生による太陽電池パネルや搭載機器への影響を検証している

放射線計測装置の原理

bull その粒子が物質を通過する際のエネルギー損出率が粒子の電荷(原子番号)Zの二乗に比例すること(Bethe-Blochの式)を利用する

S2

E

ΔE Ersquo

S1 S3

  • 宇宙機の設計のための宇宙環境
  • 話の流れ
  • 話の流れ
  • TEDA(技術データ取得装置)(国産部品の宇宙環境での実証の必要性)
  • ETS-VTEDA(技術データ取得装置)誕生前の部品の宇宙実証の背景
  • スライド番号 6
  • スライド番号 7
  • スライド番号 8
  • スライド番号 9
  • 図6太陽黒点数と静止軌道電子 (>04MeV ) Flux の変動 (ETS-V搭載DOMによる観測)
  • スライド番号 11
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの開発(理研東大と共同で宇宙環境計測の充実)
  • ETS-VI(きく6号)打ち上がったがGEOに行かずGTOに留まる
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの成果
  • スライド番号 15
  • スライド番号 16
  • スライド番号 17
  • ADEOS搭載TEDA(世界2番目の異常宇宙線ACR)
  • BBND (ボナー球中性子検出器)
  • スライド番号 20
  • ISS搭載BBNDの成果(約8か月)
  • スライド番号 22
  • MDS-1搭載放射線吸収線量モニタ(SDOM)
  • 放射線帯変動モデルの開発MDS-1 065 MeV 電子フラックス
  • 変動パラメータの選択 (1 cycle solar activity)
  • 変動パラメータ- Tavg の定義-
  • 065MeV 電子 L値-Tavg マップ
  • 13MeV 陽子 L値-Tavg マップ
  • 電子観測とMDS-1モデルの比較
  • 放射線帯フラックスピークの変動
  • 陽子観測とモデルの比較
  • 電子(035~078MeV) 1日の変動予測GOSAT軌道
  • 電子(035~078MeV) 変動の信頼度水準(1日)GOSAT軌道
  • MDS-1 model と AE-8 modelとの比較1日
  • 話の流れ
  • 2003年10月 みどり号の全損事故(複合現象)
  • 衛星帯電の基本式
  • 内部帯電
  • パドルでの帯電放電メカニズム
  • スライド番号 40
  • スライド番号 41
  • スライド番号 42
  • データ中継技術衛星DRTS (こだま)の不具合
  • DRTS ESA スパイクノイズと電子フルエンスの比較(赤の丸が異常検知)
  • 不具合が宇宙環境によるものであるか判断する際のポイント
  • 話の流れ
  • 宇宙天気のリスク-宇宙環境によるシステムへの影響 -
  • NASAの報告-GNampCに注目-
  • NASAの報告(続き)
  • 宇宙環境を原因とする不具合の割合-JAXAの場合-
  • 不具合発生部位の割合 
  • Satellite News Digest -静止軌道不具合-
  • 太陽活動と静止軌道衛星不具合例
  • スライド番号 54
  • スライド番号 55
  • スライド番号 56
  • 衛星開発段階における対策
  • 運用における対応
  • 話の流れ
  • スライド番号 60
  • スライド番号 61
  • まとめ(その1)
  • まとめ(その2)
  • 宇宙環境グループは宇宙ステーションと衛星プロジェクトの安全な遂行に貢献しています
  • 補足資料
  • 不具合原因の推移
  • 何故不具合は減らないか
  • 放射線による影響の概要
  • 耐放射線設計手順
  • 各軌道における放射線環境
  • 放射線による部品材料の影響
  • トータルドーズ効果
  • シングルイベント効果
  • シングルイベントメカニズム-陽子と重イオンの違い-
  • エラー発生率の計算
  • 線エネルギー付与(LET)(linear energy transfer)
  • 南大西洋異常(SAA)
  • Single Event Lachup
  • シングルイベントと陽子分布
  • NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)
  • 低軌道での電子フラックスと不具合の発生場所
  • 南大西洋異常(SAA)と極の角
  • スライド番号 83
  • Carrington Flare
  • 放射線対策
  • スライド番号 86
  • スライド番号 87
  • 帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備
  • スライド番号 89
  • 放射線計測装置の原理
Page 15: 宇宙機の設計のための宇宙環境の方針から国産部品開発(42品種)が実施された。 . 半導体電子部品は耐放射線性を加味して、人工衛星(特に

研究開発の流れ

計測装置開発

データ収集 計画

環境計測

研究試作

衛星への影響解析で必要なデータ及び性能を機器開発に反映する

高エネルギー軽粒子 重イオン 中性子 帯電 原子状酸素 デブリ 新たな現象(問題点)

軌道上不具合評価 宇宙環境モデル

宇宙環境データベース 警報

衛星設計基準

有人活動への反映

宇宙天気予報 システム

国内外機関とのデータ交換

打上げ衛星運用

放射線環境評価(ISOを含む)の見直し 宇宙環境モデルの最適化 効率の良い宇宙機の開発 (シールド厚最適設計) 低コスト化(部品仕様の見直し) 短期間開発(民生品の利用)

フィードバック

成果目標

プロジェクト支援

宇宙環境計測装置(放射線磁場)小型化の流れ

9kg 10cm 10cm 10kg 14W 18W

1cm 52g 480g 1cm 12W以下 15W

磁力計(480g->52g)

みどり2搭載用 つばさかけはしきぼう搭載用 Jason-2GOSAT搭載

ETS-VIII搭載用 QZS搭載用

電子(05~50MeV) 陽子(1~160MeV) α粒子(4~200MeV)

電子(04~5MeV) 陽子(7~48MeV) α粒子(30~140MeV)

plusmn655364096102456nT plusmn655364096nT

16bit 20bit

電子(003~20MeV) 陽子(04~250MeV) α粒子(08~400MeV)

LPT-S 216x182x175 mm 62 kg LPT-E 240x165x 93 mm 28 kg

積算吸収線量計

軽粒子モニタ(10kgー>9kgー>7kg最小2kg)

17times10times5mm749g

ISSKibou(09-)

GEO

LEO

ETS-V (87-97)

ADEOS-II(02-03)

ETS-VIII(06-) DRTS(02- )

STS-89(98)

MDS-1(02-03) ETS-VI(94-96)

ETS-VII (97-99)

宇宙環境計測の流れ ISSUS-Lab(01)

ひまわり1-4(78-99)

ERG(16予定)

ALOS(06-11)

GOSAT(09-)

Jason-2((08-)

Jason-3(15予定)

GTO

QZS(09-)

ADEOS (96-97)

ADEOS搭載TEDA (世界2番目の異常宇宙線ACR)

bull シングルイベント評価のための重イオン観測であったが世界2番目の異常宇宙線を観測することができた

bull 低軌道の衛星は地球磁場が邪魔となって宇宙線(重イオン)を観測するに向いていないと考えられていたが異常宇宙線を観測するのにすぐれていることが明らかとなった

T Kohno et al Radiation Measuremets 30 5 PP639-644

BBND (ボナー球中性子検出器)

bull 1994年(平成6)年7月に中性子計測のために ボナー球ホスウイッチ方式及びシンチレーションファイバーの3種類のセンサの研究をスタート

bull シャトル打ち上げ計画の管理者から搭載装置の検討依頼がありBBNDのSTS-89への搭載が決定した(1997年1月頃)

bull 振動試験で装置内のボルトが外れるという不具合もあったが約1年という非常に短期間で搭載品を開発することができた

bull コスト低減のために構造解析を自前で実施したりデータ処理ソフトウェアも内作した

熱中性子に対して高い感度を持つ6個の3Heガス入り比例計数管で構成して

いる中性子は電荷をもたないのでそれ自身には電離作用がないが軽い原子の3He気体では反跳原子を生じたり中性子の核反応(3He+nrarrp+3H+765KeV)によって荷電粒子を生じるので間接的に電離を起こす下図のように気体中に二つの電極を置き高電圧(1000V)をかけておくと中性子の入

射によって気体中に生じた陽子イオンと電子のイオン対がそれぞれの電極に向かって流動し外部回路に電離電流が流れるこの電気パルスにより中性子を計測する

ボナー球型中性子モニタの概要

Polyethylene Sphere3He proportional Counter

51 φ 51 φ81 φ110 φ150 φ230 φ

Sensor6 Sensor5 Sensor4 Sensor3 Sensor2 Sensor1

Covered by Gadolinium

[mm]3Heガス入り比例計数管の原理

6個のボナー球の断面図

3Heガス入り比例計数管とポリエチレン減速材

H Matsumotoet al Radiation Measurements 33 (2001) 321-333

ISS搭載BBNDの成果(約8か月)

実験期間中の平均的な等価線量等量率 (2001年3月23日~2001年11月14日)

太陽フレア時(2001年11月4日)

等価量等量率の平均は94μSv日で年率に換算すると34mSv年となるこれは地上において自然界から受ける等価線量当量率の約14倍に相当する 実験期間中に多数の太陽フレアが発生した2001年11月4日の太陽フレアにより019mSVの増加を観

測したこれは自然界から受ける等価線量当量率の約1か月分に相当するしかしBBNDの約8か月

の実験期間中の全等価線量当量に対するこの太陽フレアの影響の寄与分は1以下であった また搭載位置による環境の違いも確認された

H Koshiishiet al Radiation Measurements 42(2007) 1510-1520

1)船内の計測結果より低エネルギー側で2~3桁高エネルギー側で1~2桁低い 2)船内より船壁が薄く中性子が少ない環境より自然のアルベド中性子環境に近い

中性子被曝線量の ISS船外(SEDA-AP)と船内(STS-89)の比較

MDS-1搭載放射線吸収線量モニタ(SDOM) SiTungstenAlBGO

② ⑦

⑧⑧

① Collimator ② Window③ SSDs ④ Plastic Scintillator⑤ Anticoincidence Scintillator(ACS)⑥ Beam Stop⑦ Scintillator PMT⑧ ACS PMT

運用期間 2002年2月 ndash 2003年9月 軌道 -軌道傾斜角 285deg 1 lt BB0 le 84 -高度 500 km times 36000km 11 le L le 10 -軌道周期 約10時間35分 -スピンレート 5rpm

計測エネルギー範囲 Electron 04- 9MeV (5bins) Proton 09-210MeV (12bins) He 6-140MeV (4bins) Heavy Ion 15- 60MeVnuc (1bin) G-Factor 001cm2sr

放射線帯変動モデルの開発 MDS-1 065 MeV 電子フラックス

変動パラメータの選択 (1 cycle solar activity)

太陽風速度(SW)

太陽黒点数(R)

Ap指数

F107

変動パラメータ- Tavg の定義-

1日後の予測

パラメータスケールの時間平均 ApTavg SWTavg F107 Tavg

T days

放射線帯の構造は変動パラメータ値の大きさと継続時間に相関がある

065MeV 電子 L値-Tavg マップ

APTavg

SWTavg

13MeV 陽子 L値-Tavg マップ

APTavg

F107Tavg

電子観測とMDS-1モデルの比較

80 175

放射線帯フラックスピークの変動

80orbits (平穏時) 175orbits (擾乱時)

陽子観測とモデルの比較

電子(035~078MeV) 1日の変動予測GOSAT軌道

0

50

100

150

200

250

1E+09

1E+10

1E+11

1E+12

1984 1986 1988 1990 1992 1994 1996 1998 2000 2002 2004 2006 2008

Flue

nce[

ecm

2M

eVd

ay]

Launch day

FluenceSSN

Worst case Nov 12003

電子(035~078MeV) 変動の信頼度水準(1日)GOSAT軌道

00

01

02

03

04

05

06

07

08

09

10

88 90 92 94 96 98 100 102 104 106 108 110 112 114

Con

fiden

ce le

vel

Fluence[LOG10 ecm2MeVday]

AE-8 MAX

AE-8 MIN

MDS-1 model と AE-8 model との比較1日

0

20

40

60

80

100

120

140

160

180

1E+09

1E+10

1E+11

1E+12

1995 1997 1999 2001 2003 2005 2007 2009

Flue

nce[

ecm

2M

eVd

ay]

Launch day

Fluence(JAXA)Fluence(AE8)SSN

話の流れ

技術データ取得装置(TEDA)の概要と成果 bull 主な成果 bull 不具合解析例

宇宙天気のリスクと対策 bull 宇宙環境による衛星システムへの影響 bull 宇宙環境を原因とする不具合の割合推移部位 bull 静止軌道不具合 bull 対策

今後必要な観測項目

まとめ

2003年10月 みどり号の全損事故 (複合現象)

極域のオーロラ帯を通過中に電力ハー

ネスを巻いているMLIが高エネルギー電

子により帯電

MLIが接地されていなかったため内側

のハーネスとの間に1kV以上の電位差が

発生

MLI内のガス密度が発電開始に伴う温度

上昇により上昇

ハーネス被覆の傷により露出したハーネ

ス芯線とMLI内面の間で放電発生

単発の放電が隣接するハーネスに飛び火

してハーネス間の短絡

アーク放電が次々と伝搬していきハー

ネス全体が焼損

故障推定箇所 (大電力ハーネス部)

bull詳細報告書は文部科学省 宇宙開発委員会のHP参照

httpwwwmextgojpb_menushingiuchuureports04080901htm

bull 人工衛星の電位 bull 人工衛星は電気的に宇宙に浮いている bull 宇宙機構造体が接地点 bull 宇宙機への流入電流と流出電流のバランスによって宇宙機電位が決まる bull 各電流成分は宇宙機電位Vの関数として表され定常状態では式を下式を満たす

衛星帯電の基本式

( ) dtIIIIIIIC

V

dtdVCVIVIVIVIVIVIVI

BPHBSESISEIE

BPHBSESISEIE

int +++++minus=

==+++++minus

1

0)]()()()()()([)(

入射電子電流 ( E I )

後方散乱電子電流 ( BSE I )

入射正イオン電流 ( I I )

入射電子による二次電子電流 ( SE I )

太陽光

入射正イオンによる 二次電子放出電流 ( SI I )

光電子放出電流( PH I )

電荷ビーム放出電流(IB)

bull内部帯電は衛星の外壁を貫通した放射線帯外帯の01MeV以上の電子が内部に侵入

bull基板間や同軸ケーブルの線間等の容量(コンデンサ)や誘電体に帯電 bull接地されてない導体片に帯電

bullその耐圧電圧を超えると その耐圧の弱い箇所 (材質の欠陥や針状突起など の箇所)で放電して故障に至る

内部帯電

(あるエネルギ-以上の粒子が入射光電子なし)

NASA-HDBK-4002より

パドルでの帯電放電メカニズム

宇宙環境の影響により 衛星がマイナス電位に帯電

高エネルギー電子等により カバーガラスはプラスに帯電 衛星とカバーガラスに電位差が生じる

電位差が大きくなると トリプルジャンクション近傍 の電界強度が増大していく

トリプルジャンクションで放電が発生する カバーガラスの帯電が緩和される

+ + + + + + + + + + + + + +

+ + + +

カバーガラス

太陽電池セル

基板(衛星構体)

トリプルジャンクション rArr 導体絶縁体宇宙環境の接点

持続放電

Substrate

Satellite Load

insulation sheet

Solar array cell

Cover glass

Arc current

Electrode

持続放電は衛星の電力消失につながる 持続放電のモードは以下の2通りがある

Substrate

Satellite Load

insulation sheet

Solar array cell

Cover glass

Arc current

Electrode

Solar array cell

Cover glass

セル-基板間短絡 セル間短絡

放電によって太陽電池セルと基板が短絡する 短絡によって負荷に電力が供給されなくなる

放電によって太陽電池セルとセルが短絡する 短絡によって負荷に電力が供給されなくなる

サブストーム(高エネルギー電子)との遭遇

+ + + + + + + +

二次電子光電子による絶縁体の帯電(局所帯電)

電位差発生

逆電位勾配

衛星構体が負に帯電(絶対帯電)

電位

時間

サブストーム

衛星構体 VS

乖離電圧 ∆V

カバーガラスVcg

0 プラズマ電位

軌道別帯電放電現象

トリプルジャンクションで 放電発生

放電発生

静止軌道

+ + + + + + + +

逆電位勾配

軌道帯電放電現象

トリプルジャンクションで 放電発生

極軌道 オーロラ電子(高エネルギー電子)との遭遇

プラズマ流入出による絶縁体の帯電(局所帯電)

電位差発生

衛星構体が負に帯電(絶対帯電)

放電発生

電位

時間

オーロラ電子

衛星構体 乖離電圧 ∆V

カバーガラス

0 プラズマ電位

データ中継技術衛星DRTS (こだま)の不具合

2002年10月 9日 静止軌道に打ち上げ

2003年

3月24日 406JST変化率異常モニタ故障検出(FDIR)

が動作しA系からB系に切り替わった

3月25日 410JSTにB系のみ異常検知

4月 3日 327JSTにB系のみ異常検知

5月28日 124JSTにB系のみ異常検知

6月 6日1537JSTにB系のみ異常検知

ESA

DRTS ESA スパイクノイズと 電子フルエンスの比較(赤の丸が異常検知)

larr閾値

この事実を基に静止軌道における内部帯電警報システムを構築 2004年4月より運用開始

不具合が宇宙環境によるものであるか 判断する際のポイント

不具合の発生した時刻に太陽フレアや磁気嵐等の宇宙天気の大きな変動が起きていれば不具合に関係している可能性が高い但し帯電など放射線の積算的効果の伴う現象については発生から1週間位さかのぼり環境がどのように推移してきたかを考慮する必要がある

磁気嵐が起きると静止軌道に急激な粒子の増加現象が起きこれにより衛星帯電が引き起こされたりする(予測に利用可能)

地方時(真夜中や朝方か)や季節(春秋)を考慮する

低軌道衛星においてはSAA外帯のrdquo角ldquo及び極通過時に不具合

が起きやすいので衛星の位置(緯度経度)が重要

事象を把握する上で単発現象か数回起きている現象か周期

(時間同じ軌道等)的に発生している現象か

話の流れ

技術データ取得装置(TEDA)の概要と成果 bull 主な成果 bull 不具合解析例

宇宙天気のリスクと対策 bull 宇宙環境による衛星システムへの影響 bull 宇宙環境を原因とする不具合の割合推移部位 bull 静止軌道不具合 bull 対策

今後必要な観測項目

まとめ

宇宙天気のリスク -宇宙環境によるシステムへの影響 -

プラズマ (IRI)

帯電 (MUSCAT)

衝突 (AUTODY)

抗力 表面劣化

紫外線X線 中性粒子 (MSIS)

放射線粒子 (AE8AP8JPLSHIELDO

SE-2)

メテオロイドデブリ (MASTER2005

ORDEM)

電離損傷 変位損傷

bull電子回路の劣化 bull光部品の劣化

bull太陽電池セルの劣化

SEU (CREME96)

bullデータエラー bull画像ノイズ

bullシステム停止 bull回路損傷

bull熱的電気的光学的特性の劣化

bull構造の劣化 bullコンタミ

電磁パルス bull電源出力低下

bull損傷

bullトルク bull軌道落下

bull構造 損傷 bull減圧

bull電磁パルス

NASAの報告 -GNampCに注目-

1974年から1994年に起きたNASAと空軍の衛星故障の内20~25が宇宙環境に起因していたと報告

1990年から2001年に米国欧州カナダ日本の企業や政府機関が開発した衛星を調べた過去の宇宙ミション損失の大部分はロケットの失敗であったが1998年衛星損失の大部分は軌道上の衛星障害となっている多くの最近の異常は太陽電池アレイ及びバッテリの危険が増加している静止軌道通信衛星の設計寿命はこのサブシステムの故障の危険が増加している

喪失等の大きな誘導制御(GNampC)の不具合に注目 GNampC不具合の内宇宙環境による 不具合は約3と報告されている

軌道上衛星のタイプ別数

NASAの報告(続き)

衛星設計寿命における不具合発生時期 事故率と軌道

軌道別の衛星数 サブシステム不具合

宇宙環境を原因とする不具合の割合 -JAXAの場合-

2002年~2008年に運用された軌道上不具合情報が比較的充実している11衛星(利用衛星7機科学衛星4機)の結果宇宙環境によるも

のは約15過去のデータよりも割合が少ない

合計83件 合計35件

(1)利用衛星 (2)科学衛星

設計検討 不足 48

製造不良 8

軌道上環境 17

偶発故障 6

調査中 13

原因不明 8

設計検討

不足 61

製造不良 4

軌道上環境 11

偶発故障 6

調査中 9

原因不明 9

不具合発生部位の割合

不具合発生部位の割合

Brent Robertson Eric Stoneking ( 1990-2001NASA Goddard Space Flight Center )

Satellite News Digest -静止軌道不具合-

Satellite News Digest (SND) (http wwwsqt-indexcouk) で1997年~2009年の期間に静止軌道で95件の不具合が報告されている その内運用ミスや設計ミスなどを除くと32件(約33)は宇宙環境によるものであった 過去のデータより割合が多い

Choiら1)はこれら不具合の地方時と季節依存性を確認した その結果2100LT~900LTで約72の不具合が発生し900LT~2100LTは9件(約28)であった またこの9件は全て姿勢制御の不具合だった 静止軌道衛星不具合のほとんどは真夜中と朝方で起きており磁気嵐に伴い磁気圏尾部から注入した粒子による表面帯電が不具合の主原因と結論づけている

1) Ho-sung Choi et al Analysis of GEO spacecraft anomalies Space weather relationships Space Weather Vol 9 S06001

太陽活動と静止軌道衛星不具合例

ANIK-E1E2

ANIK-E1

複数の衛星で故障

Galaxy-15

帯電放電不具合 -ANIK-E1amp2Telstar401-

Jan 1994 ANIK-E1 amp E2事故時の環境 - Joe H Allen

1週間

太陽活動下降時期の電子増加

2MeV以上電子

copyNOAA Web

フラックスが3桁急増

Jan 1997 Telstar401事故時の環境

静止軌道の急激な電子増加

太陽極大期太陽フレアによる衛星障害 - 2003年10月~11月-

10486981048698 永久故障 4 10486981048698 安全モード又は運用を一時停止 31 10486981048698 データ内容の「誤り」の増加搭載コンピュータの誤動作 5

httpwwwsat-ndcomfailures等のデータによる 合計 40件

-Barbieri and Mahmot

米国極軌道気象衛星NOAA-17の改良型マイクロ波観測装置AMSU-A1 (Advanced Microwave Sounding Unit)のスキャナーが永久故障 米国気象衛星GOES -8号のX線センサがOFFになり復帰しなくなった

e-birdに深刻な不具合が発生 不具合は20本のトランスポンダ全てに影響

火星周回中の探査機「マーズオデッセイ (Mars Odyssey)」の観測機器放射線観測装置「Martian Radiation Environment Experiment (MARIE)」が太陽活動の影響により10月28日から適切に作動しなくなった データ中継技術衛星(DRTS)「こだま」 太陽捕捉モードに移行

太陽陽子

帯電放電不具合-Galaxy15(局所的的現象)- 2

5 M

eV

65

MeV

11

5 M

eV

GOES 14 ----- GOES 15 ----- GOES 11 -----

Satellite Locations

Galaxy 15 anomaly

2010年4月5日9時48分UTCは磁気嵐及びCMEが発生するなど宇宙環境は非常に荒れていたGalaxy15衛星は真夜中側に位置し宇宙環境の影響を受けやすい

位置にいたことから宇宙環境による不具合である可能性が高いということで原因追及がなされた高エネルギー粒子が引き起こす代表的な衛星不具合現象として3つ(表面帯電内部帯電SEUシングルイベントバーンアウトSEL)の可能性を検討した

チームの報告書によると磁気圏尾部からの熱電子の流入による放電が原因であったと結論付けられたGalaxy15衛星の近くにはGOES-11衛星が位置していたがGOES-11衛星には不具合を発生しておらず本現象は局所的な現象と推測される

衛星開発段階における対策 JAXAの不具合解析の結論

bull 2002年~2008年に運用された11機の衛星不具合を解析 宇宙環境による不具合は偶発故障のみ(全体の約15)確率的には想定範囲内ではあるがその影響を最小限とするためディレーティング運用モード寿命についての研究に取り組む

bull 設計基準試験の充実検証確認の強化技術成熟度(TRL)評価の徹底各々の境界制約条件の明示化等により検証不足抜けの防止有効なピアレビューに結びつける

冗長系(同じハードウェア機能の冗長)柔軟性の設計(ソフトハードの対応)

bull 従来の故障が起きないようにする設計に対してGOSAT(いぶき)では重要部

品を二重化することにより故障する可能性は上がるが故障しても衛星バスの運用や観測が続行できる可能性がより高くなるように設計した

運用における対応

bull 宇宙天気監視ーロケット打ち上げ及び宇宙飛行士支援 数日前に今後の宇宙環境の推移を把握(MXレベルのフレアの発生確率)

bull X線の増加で太陽フレア発生を検知したら高エネルギー粒子の発生をいつまで 気を付ければ良いか判断(発生位置で大凡を推定するが課題は多い) SPEが発生した場合(特に10MeV以上100MeV 以上の陽

子)最大値フラックス値の推定 ピーク値を予測(特に閾値に近くなった時に重要)

bull 衛星運用 bull 太陽フレア磁気嵐警報(X線陽子及びkpが閾値を超えた

時に警報を発信)2003年10月より運用開始 bull 内部帯電警報(2日後の静止軌道上の高エネルギー電子(>1

Me) の増加を予測し 閾値を超えた時に警報を発信) 2004年4月より運用開始

話の流れ

技術データ取得装置(TEDA)の概要と成果 bull 主な成果 bull 不具合解析例

宇宙天気のリスクと対策 bull 宇宙環境による衛星システムへの影響 bull 宇宙環境を原因とする不具合の割合推移部位 bull 静止軌道不具合 bull 対策

今後必要な観測項目

まとめ

計測対象計測項目 計測対象 粒径100μm以上のデブリメテオロイド 計測項目 デブリ粒径衝突頻度

基本原理

厚さ約125μmの絶縁性のポリイミドフィルム表面に 100μm周期で直線状の細長い導線(太さ50μm)パターンを形成導線の破断を電気的に検知することによりデブリの衝突(貫通)を検知する破断した導線の数導線の幅ピッチからデブリサイズを計測する

微小デブリ計測技術の概要

衝突孔の例(衝突試験ISAS) - 衝突粒子 SUS 309 microm - 衝突速度 52 kms

HTV5号機によるセンサ機能のフライト実証

35cm

46cm

FY2013機能実証モデル

検出線幅 50 μm 検出線間隔 100 μm フィルム厚 lt 20 μm 有感領域 30times33cm 検出線総数 3300本

サイズ 50times39times4 cm (筐体を含む)

重量 約15kg(筐体を含む)

消費電力 2W(最大4W)(他センサ含む)

テレメトリ 02 bps

宇宙環境観測装置KASPERの一部としてデブリセンサSDMを搭載 FY2013に製作開始今年8月に打ち上げ予定)

まとめ(その1)

衛星不具合の主な原因は帯電放電シングルイベント放射線損傷である今後デブリ環境が重要になると予測される

静止軌道では商用衛星が多く運用されており宇宙環境の変動把握は重要この領域で運用する衛星が気を付けなければいけない環境として

1太陽フレアに伴う高エネルギー粒子 2太陽活動下降期による静止軌道電子の増加 3磁気嵐に伴う磁気圏尾部から注入する粒子 などがあげられる

まとめ(その2)

不具合軽減の取り組み bull 開発時は宇宙環境条件(トータルフラックス及び最悪条

件)を明確にし設計(冗長系柔軟性の設計ディレーティング及び運用モード寿命について研究)試験の充実検証の充実を図る

bull 運用段階に入ったならば宇宙環境を監視し警報等で故障を防ぐ

予測課題 bull 太陽フレアに伴う高エネルギー粒子発生後フラックス

ピーク値の推定

bull 衛星により不具合の起きる閾値は異なるが閾値をこえる急激な電子フラックスの増加と継続時間の予測

bull 局所的な磁気嵐に伴う磁気圏尾部から注入する粒子

宇宙環境グループは宇宙ステーションと衛星プロジェクトの安全な遂行に貢献しています

ご静聴ありがとうございました

補足資料

不具合原因の推移 bull 宇宙天気を大きく左右する要因の1つとして約11年の太陽活動変化が挙げられる

bull 太陽活動下降時期(太陽変動CME)と極大期(フレアCME)に衛星で不具合が増加するそれにより不具合原因の割合が変わる

-Koons et al The Impact of the Space Environment on Space Systems Aerospace Corp report no TR-99(1670)-1 20 July 1999 -2009 preliminary study (unpublished)

何故不具合は減らないか

bull 部品 放射線に対する感受性が高くなっている bull 微細化が進み同時にフォールトするノードが増え同時にエ

ラーとなる論理ノードやメモリセルが増加する微細化によってメモリセルは小さくなるので記憶容量当たりでみるとエラーの発生率は下がるしかし半導体チップの記憶容量やゲート数が増えるので半導体チップ当たりのエラー発生率は微細化とともに上昇するまた蓄積電荷が小さくなり感受性が高くなってきている

bull システム 大型化大電力化運用長期化 bull 1990年代末以降静止衛星の電力が10kWレベルになったしか

し設計検証技術データ蓄積が遅れている改善されつつあると推測される

放射線による影響の概要

粒子 エネルギー又はLET

代表的な影響

陽子 100keV-1MeV 1-10MeV 10-100MeV gt50MeV

表面損傷 表面材料と太陽電池の損傷 放射線損傷(電離非電離損傷の両方)センサーへのノイズ シングルイベント効果

電子 10-100keV gt100keV gt1MeV

表面帯電 深部帯電現象(deep-dielectric charging)センサーへのノイズ太陽電池の損傷 放射線損傷(電離)

重イオン gt1MeV-cm2mg シングルイベント効果

注エネルギー及びLETは個々の部品等により異なりますあくまでも目安です

耐放射線設計手順

軌道条件

ミッション期間

環境条件設定

トータルドーズの予測

1MeV電子換算被曝算出

NIELの換算

LETフルエンス算出

陽子フルエンス算出

対  策  の  検  討

対  策  の  検  討

対  策  の  検  討

放射線による劣化率予測

劣化率予測 特性予測

耐性データ

放射線による劣化率予測

耐性データ

劣化率予測アレイ出力劣化予測

感受性データ

シングルイベント発生率予測 致命度解析

衛星内質量分布

(2)

部品材料の選定

他の要因による劣化率予測

(2)(2) (3)

回路設計等NO

OK

アレイ構造 セル選定

他の要因による劣化率予測 アレイ設計(2)

(2) (2) (2) (3)

衛星内質量分布 部品選定(2)

(2) (2)(3)

NO

OK

NO

OK

(1) 環境モデルマージを含む(2) 部品レベルの検討(3) アセンブリレベルでの検討(4) 設計マージン環境モデル   マージを含め大丈夫か

トータルドーズ

太陽電池アレイの劣化

シングルイベント効果

回路設計

補足放射線太陽宇宙線銀河宇宙線

NEILを用いたダメージファクターの算出

対  策  の  検  討

放射線による劣化率予測

劣化率予測 特性予測

耐性データ

(2)

部品材料の選定

他の要因による劣化率予測

(2)(2) (3)

回路設計等NO

OK

衛星内質量分布 半導体デバイスの変位損傷

(1)

(4)

(4)

(4)

(4)

各軌道における放射線環境

1E+10

1E+11

1E+12

1E+13

1E+14

1E+15

1E+16

1E+17

1E+18

1E+19

1E+20

001 010 100 1000

捕捉

電子

の積

分フ

ルエ

ンス

[m

2 ]

エネルギー[MeV]

各軌道における電子捕捉積分フルエンス(3年間)

LEO

EOS GEO

MEO

GTO

GEO 軌道傾斜角 0deg 高度36000km GTO 軌道傾斜角 18deg 高度 360km~36000km MEO 軌道傾斜角 51deg 高度 10000km EOS 軌道傾斜角 98deg 高度705km LEO 軌道傾斜角 29deg 高度 600km

1E+12

1E+13

1E+14

1E+15

1E+16

1E+17

1E+18

1E+19

1E+20

01 10 100 1000

捕捉

陽子の

積分フルエン

ス[

m2 ]

エネルギー[MeV]

各軌道における捕捉陽子積分フルエンス(3年間)

MEO

GTO

GEO

EOS LEO

放射線による部品材料の影響

総照射線量 (TIDTotal Ionising Dose )

電離損傷

バイポーラTrの電流増幅率の低下リーク電流の増大

γ線で評価

トータルドーズ効果

変位損傷 (DDDisplacement Damage )または 非イオン化エネルギー損失 (NIELNon-Ionising Energy

Loss )

変位損傷(格子欠陥の生成)

電荷輸送効率の低下 (CCD)太陽電池の効率低下等

電子陽子により評価

シングルイベント効果

1個の荷電粒子の入射により発生する誤動作

ソフト(Latch-Up Burnout) エラー又は ソフト (Upset) エラー

陽子及び重イオンで評価

トータルドーズ効果

+ - + + - + - + - - + + + + -

ゲート酸化膜

電離

格子欠陥

正電荷捕獲

+ 正孔 - 電子

電極

(Silicon oxidenitride)

荷電粒子

反跳原子

ゲート絶縁膜中に電荷が蓄積することによるMOSトランジスタのしきい電圧(MOSトランジスタがオフからオンに変化するゲート電圧)の変化をもたらすただ

し最近の最先端チップはゲート絶縁膜がきわめて薄くなっているこのためゲート絶縁膜よりもフィールド絶縁膜(隣接するトランジスタを電気的に分離する絶縁膜)での電荷蓄積が相対的には大きな問題になってきている」

シングルイベント効果

メモリセルはNチャンネルとPチャンネルMOSFETより構成されメモリ情報は回路ノード12の電位の

高低により記録している空乏層の広がっているPN接合12の領域に

重イオンが入射した場合電荷の発生と空乏層内への少数キャリアの収集が起こるこの収集電荷量が回路の耐量を越えた場合(c)に示すように反転が起こる(ソフトエラー)一方pウエル-N基板接

合の空乏層内に電荷収集量が起こりえる耐性を越えると寄生的に存在するPNPNサイリスタ構造がオ

ンし電源と基板間に大電流が流れる状態が生じる(ラッチアップ)

シングルイベントメカニズム -陽子と重イオンの違い-

エラー発生率の計算

線エネルギー付与(LET) (linear energy transfer)

電離性放射線が物質中を通過する際飛程の単位長さ当りに平均して失うエネルギーをいう各種の放射線のうちX線γ線はLETが小さいので低LETといいα線中性子線その他重イオン核分裂破片のLETは大きいので高LETという MeVμmMeV(gcm2)やMeV(mgcm2)で表される

南大西洋異常(SAA) bull 地球の自転軸と磁気軸のずれ

darr bull 放射線帯が自転軸に対して非

対称

bull 南大西洋上空では放射線帯内帯が低高度に落ちてきているこの領域を南大西洋異常域(SAA South Atlantic Anomaly)と呼ぶ

bull 地球観測衛星ではSAAで放射線帯陽子の影響を受ける

Single Event Lachup

シングルイベントと陽子分布

MOS-1衛星(高度909km軌道傾斜角99度)で発生したシングルイベントと 陽子30MeV以上の等高線マップを重ね合わせた結果

NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)

bull 入射粒子が電離によらず与える損傷非イオン化損失

低軌道での電子フラックスと 不具合の発生場所

南大西洋異常(SAA)と極の角

高度800kmでの電子フラックス図極の角(polar horn)とSAAを示す

太陽粒子線 bull 太陽高エネルギー粒子線(SPE Solar Proton Events)は太陽フレア とコロナガス噴出 (CMECoronal Mass Ejections )により引き起こされる bull フレアのスペクトルは可変であるためあるエネルギー域における最悪状態イベントは必ずしも別のエネルギー域における最悪条件ではない 1972年8月のイベント 10~70MeVの粒子が最も多かった 1989年10のイベント 1972年8月のイベントに比べ低エネルギー領域 高エネルギー領域が明らかに激しかった

フルエンス 105 to 1011 cm-2

変動期間 1日から数日

ldquoBastiliardquo Solar Event 14 July 2000

Carrington Flare

84

(LW Townseed) Carrington Flare(1859年) Carrington Flare による30MeV以上トータルFluenceを118times109cm-2で規格化 ~1989年フレアの約13倍(シングルイベントの評価で使用) ~1991年フレアの約9倍 2012年7月23日にキャリントンイベントとほぼ同等の爆発現象が太陽あるいは太陽の周りで起きていたということがNASAの太陽観測衛星「STEREO」の解析から発表された

放射線対策 bull 放射線シールドを付加し放射線を減衰させる

bull 放射線耐性の強い部品(SOI(Silicon On Insulator)技術による耐放射線部品)材料に変更する

bull 放射線による損傷を吸収するために回路または構造上のマージンを持たせる bull ソフト的なエラーに対しては エラー検出訂正機能や多数決

機能等でソフト的エラーが起きてもシステムが機能するようにしたフォールトトレラント機能を付けて対処する ICのハード的故障に対しては ラッチアップ耐性の強い部品を選定するしかないが 電流制限回路を付ける対策も採られる パワーMOSFETに対しては部品選定 電源電圧を規格値の半分以下に落とす等の対策を採る

SOI技術

表面帯電への対策例

表面の物体間を導線で結線する

太陽電池のカバーガラスを導電性被膜付き(酸化インジウムITO)にする

熱制御材表面にITOを被覆する

熱制御材は高誘電率のテフロンの使用を避け 高伝導度耐環境性に優れたブラックカプトンを使用

イオンエンジンの中和器で能動帯電制御

内部帯電への対策例

アルミで3mm厚さに相当するシールドで囲む(Faraday Cage)

テフロンやカプトンなどの誘電体材料の内部での使用量を最小限に押さえる

回路基板やコンフォーマルコーティングは誘電体なので電流リークパス(1012Ωcmまたは1012Ωcm2

程度)を必ずつける

特にスポット的な放射線シールドの金属材には必ず電流リークパスをつける

帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備

衛星モデル作成

材料物性テーブル設定

宇宙環境パラメータ設定

Converter

転送ディレクトリ 解析データファイル

転送

解析ディレクトリ生成 解析結果 進行状況チェック ファイル操作

MUSCAT 解析エンジン

解析結果 表示

パラメトリックラン

オプション 解析

大型パネル実験(35mtimes11m) クーポンパネル実験(26cmtimes16cm)

環境模擬試験 環境模擬試験

MUSCATに使用する物性値設計標準制定のための知見などを得ることを目的に軌道上の宇宙環境を模擬した地上試験を行っている これらの試験では放電の発生頻度や電圧閾値放電発生による太陽電池パネルや搭載機器への影響を検証している

放射線計測装置の原理

bull その粒子が物質を通過する際のエネルギー損出率が粒子の電荷(原子番号)Zの二乗に比例すること(Bethe-Blochの式)を利用する

S2

E

ΔE Ersquo

S1 S3

  • 宇宙機の設計のための宇宙環境
  • 話の流れ
  • 話の流れ
  • TEDA(技術データ取得装置)(国産部品の宇宙環境での実証の必要性)
  • ETS-VTEDA(技術データ取得装置)誕生前の部品の宇宙実証の背景
  • スライド番号 6
  • スライド番号 7
  • スライド番号 8
  • スライド番号 9
  • 図6太陽黒点数と静止軌道電子 (>04MeV ) Flux の変動 (ETS-V搭載DOMによる観測)
  • スライド番号 11
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの開発(理研東大と共同で宇宙環境計測の充実)
  • ETS-VI(きく6号)打ち上がったがGEOに行かずGTOに留まる
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの成果
  • スライド番号 15
  • スライド番号 16
  • スライド番号 17
  • ADEOS搭載TEDA(世界2番目の異常宇宙線ACR)
  • BBND (ボナー球中性子検出器)
  • スライド番号 20
  • ISS搭載BBNDの成果(約8か月)
  • スライド番号 22
  • MDS-1搭載放射線吸収線量モニタ(SDOM)
  • 放射線帯変動モデルの開発MDS-1 065 MeV 電子フラックス
  • 変動パラメータの選択 (1 cycle solar activity)
  • 変動パラメータ- Tavg の定義-
  • 065MeV 電子 L値-Tavg マップ
  • 13MeV 陽子 L値-Tavg マップ
  • 電子観測とMDS-1モデルの比較
  • 放射線帯フラックスピークの変動
  • 陽子観測とモデルの比較
  • 電子(035~078MeV) 1日の変動予測GOSAT軌道
  • 電子(035~078MeV) 変動の信頼度水準(1日)GOSAT軌道
  • MDS-1 model と AE-8 modelとの比較1日
  • 話の流れ
  • 2003年10月 みどり号の全損事故(複合現象)
  • 衛星帯電の基本式
  • 内部帯電
  • パドルでの帯電放電メカニズム
  • スライド番号 40
  • スライド番号 41
  • スライド番号 42
  • データ中継技術衛星DRTS (こだま)の不具合
  • DRTS ESA スパイクノイズと電子フルエンスの比較(赤の丸が異常検知)
  • 不具合が宇宙環境によるものであるか判断する際のポイント
  • 話の流れ
  • 宇宙天気のリスク-宇宙環境によるシステムへの影響 -
  • NASAの報告-GNampCに注目-
  • NASAの報告(続き)
  • 宇宙環境を原因とする不具合の割合-JAXAの場合-
  • 不具合発生部位の割合 
  • Satellite News Digest -静止軌道不具合-
  • 太陽活動と静止軌道衛星不具合例
  • スライド番号 54
  • スライド番号 55
  • スライド番号 56
  • 衛星開発段階における対策
  • 運用における対応
  • 話の流れ
  • スライド番号 60
  • スライド番号 61
  • まとめ(その1)
  • まとめ(その2)
  • 宇宙環境グループは宇宙ステーションと衛星プロジェクトの安全な遂行に貢献しています
  • 補足資料
  • 不具合原因の推移
  • 何故不具合は減らないか
  • 放射線による影響の概要
  • 耐放射線設計手順
  • 各軌道における放射線環境
  • 放射線による部品材料の影響
  • トータルドーズ効果
  • シングルイベント効果
  • シングルイベントメカニズム-陽子と重イオンの違い-
  • エラー発生率の計算
  • 線エネルギー付与(LET)(linear energy transfer)
  • 南大西洋異常(SAA)
  • Single Event Lachup
  • シングルイベントと陽子分布
  • NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)
  • 低軌道での電子フラックスと不具合の発生場所
  • 南大西洋異常(SAA)と極の角
  • スライド番号 83
  • Carrington Flare
  • 放射線対策
  • スライド番号 86
  • スライド番号 87
  • 帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備
  • スライド番号 89
  • 放射線計測装置の原理
Page 16: 宇宙機の設計のための宇宙環境の方針から国産部品開発(42品種)が実施された。 . 半導体電子部品は耐放射線性を加味して、人工衛星(特に

宇宙環境計測装置(放射線磁場)小型化の流れ

9kg 10cm 10cm 10kg 14W 18W

1cm 52g 480g 1cm 12W以下 15W

磁力計(480g->52g)

みどり2搭載用 つばさかけはしきぼう搭載用 Jason-2GOSAT搭載

ETS-VIII搭載用 QZS搭載用

電子(05~50MeV) 陽子(1~160MeV) α粒子(4~200MeV)

電子(04~5MeV) 陽子(7~48MeV) α粒子(30~140MeV)

plusmn655364096102456nT plusmn655364096nT

16bit 20bit

電子(003~20MeV) 陽子(04~250MeV) α粒子(08~400MeV)

LPT-S 216x182x175 mm 62 kg LPT-E 240x165x 93 mm 28 kg

積算吸収線量計

軽粒子モニタ(10kgー>9kgー>7kg最小2kg)

17times10times5mm749g

ISSKibou(09-)

GEO

LEO

ETS-V (87-97)

ADEOS-II(02-03)

ETS-VIII(06-) DRTS(02- )

STS-89(98)

MDS-1(02-03) ETS-VI(94-96)

ETS-VII (97-99)

宇宙環境計測の流れ ISSUS-Lab(01)

ひまわり1-4(78-99)

ERG(16予定)

ALOS(06-11)

GOSAT(09-)

Jason-2((08-)

Jason-3(15予定)

GTO

QZS(09-)

ADEOS (96-97)

ADEOS搭載TEDA (世界2番目の異常宇宙線ACR)

bull シングルイベント評価のための重イオン観測であったが世界2番目の異常宇宙線を観測することができた

bull 低軌道の衛星は地球磁場が邪魔となって宇宙線(重イオン)を観測するに向いていないと考えられていたが異常宇宙線を観測するのにすぐれていることが明らかとなった

T Kohno et al Radiation Measuremets 30 5 PP639-644

BBND (ボナー球中性子検出器)

bull 1994年(平成6)年7月に中性子計測のために ボナー球ホスウイッチ方式及びシンチレーションファイバーの3種類のセンサの研究をスタート

bull シャトル打ち上げ計画の管理者から搭載装置の検討依頼がありBBNDのSTS-89への搭載が決定した(1997年1月頃)

bull 振動試験で装置内のボルトが外れるという不具合もあったが約1年という非常に短期間で搭載品を開発することができた

bull コスト低減のために構造解析を自前で実施したりデータ処理ソフトウェアも内作した

熱中性子に対して高い感度を持つ6個の3Heガス入り比例計数管で構成して

いる中性子は電荷をもたないのでそれ自身には電離作用がないが軽い原子の3He気体では反跳原子を生じたり中性子の核反応(3He+nrarrp+3H+765KeV)によって荷電粒子を生じるので間接的に電離を起こす下図のように気体中に二つの電極を置き高電圧(1000V)をかけておくと中性子の入

射によって気体中に生じた陽子イオンと電子のイオン対がそれぞれの電極に向かって流動し外部回路に電離電流が流れるこの電気パルスにより中性子を計測する

ボナー球型中性子モニタの概要

Polyethylene Sphere3He proportional Counter

51 φ 51 φ81 φ110 φ150 φ230 φ

Sensor6 Sensor5 Sensor4 Sensor3 Sensor2 Sensor1

Covered by Gadolinium

[mm]3Heガス入り比例計数管の原理

6個のボナー球の断面図

3Heガス入り比例計数管とポリエチレン減速材

H Matsumotoet al Radiation Measurements 33 (2001) 321-333

ISS搭載BBNDの成果(約8か月)

実験期間中の平均的な等価線量等量率 (2001年3月23日~2001年11月14日)

太陽フレア時(2001年11月4日)

等価量等量率の平均は94μSv日で年率に換算すると34mSv年となるこれは地上において自然界から受ける等価線量当量率の約14倍に相当する 実験期間中に多数の太陽フレアが発生した2001年11月4日の太陽フレアにより019mSVの増加を観

測したこれは自然界から受ける等価線量当量率の約1か月分に相当するしかしBBNDの約8か月

の実験期間中の全等価線量当量に対するこの太陽フレアの影響の寄与分は1以下であった また搭載位置による環境の違いも確認された

H Koshiishiet al Radiation Measurements 42(2007) 1510-1520

1)船内の計測結果より低エネルギー側で2~3桁高エネルギー側で1~2桁低い 2)船内より船壁が薄く中性子が少ない環境より自然のアルベド中性子環境に近い

中性子被曝線量の ISS船外(SEDA-AP)と船内(STS-89)の比較

MDS-1搭載放射線吸収線量モニタ(SDOM) SiTungstenAlBGO

② ⑦

⑧⑧

① Collimator ② Window③ SSDs ④ Plastic Scintillator⑤ Anticoincidence Scintillator(ACS)⑥ Beam Stop⑦ Scintillator PMT⑧ ACS PMT

運用期間 2002年2月 ndash 2003年9月 軌道 -軌道傾斜角 285deg 1 lt BB0 le 84 -高度 500 km times 36000km 11 le L le 10 -軌道周期 約10時間35分 -スピンレート 5rpm

計測エネルギー範囲 Electron 04- 9MeV (5bins) Proton 09-210MeV (12bins) He 6-140MeV (4bins) Heavy Ion 15- 60MeVnuc (1bin) G-Factor 001cm2sr

放射線帯変動モデルの開発 MDS-1 065 MeV 電子フラックス

変動パラメータの選択 (1 cycle solar activity)

太陽風速度(SW)

太陽黒点数(R)

Ap指数

F107

変動パラメータ- Tavg の定義-

1日後の予測

パラメータスケールの時間平均 ApTavg SWTavg F107 Tavg

T days

放射線帯の構造は変動パラメータ値の大きさと継続時間に相関がある

065MeV 電子 L値-Tavg マップ

APTavg

SWTavg

13MeV 陽子 L値-Tavg マップ

APTavg

F107Tavg

電子観測とMDS-1モデルの比較

80 175

放射線帯フラックスピークの変動

80orbits (平穏時) 175orbits (擾乱時)

陽子観測とモデルの比較

電子(035~078MeV) 1日の変動予測GOSAT軌道

0

50

100

150

200

250

1E+09

1E+10

1E+11

1E+12

1984 1986 1988 1990 1992 1994 1996 1998 2000 2002 2004 2006 2008

Flue

nce[

ecm

2M

eVd

ay]

Launch day

FluenceSSN

Worst case Nov 12003

電子(035~078MeV) 変動の信頼度水準(1日)GOSAT軌道

00

01

02

03

04

05

06

07

08

09

10

88 90 92 94 96 98 100 102 104 106 108 110 112 114

Con

fiden

ce le

vel

Fluence[LOG10 ecm2MeVday]

AE-8 MAX

AE-8 MIN

MDS-1 model と AE-8 model との比較1日

0

20

40

60

80

100

120

140

160

180

1E+09

1E+10

1E+11

1E+12

1995 1997 1999 2001 2003 2005 2007 2009

Flue

nce[

ecm

2M

eVd

ay]

Launch day

Fluence(JAXA)Fluence(AE8)SSN

話の流れ

技術データ取得装置(TEDA)の概要と成果 bull 主な成果 bull 不具合解析例

宇宙天気のリスクと対策 bull 宇宙環境による衛星システムへの影響 bull 宇宙環境を原因とする不具合の割合推移部位 bull 静止軌道不具合 bull 対策

今後必要な観測項目

まとめ

2003年10月 みどり号の全損事故 (複合現象)

極域のオーロラ帯を通過中に電力ハー

ネスを巻いているMLIが高エネルギー電

子により帯電

MLIが接地されていなかったため内側

のハーネスとの間に1kV以上の電位差が

発生

MLI内のガス密度が発電開始に伴う温度

上昇により上昇

ハーネス被覆の傷により露出したハーネ

ス芯線とMLI内面の間で放電発生

単発の放電が隣接するハーネスに飛び火

してハーネス間の短絡

アーク放電が次々と伝搬していきハー

ネス全体が焼損

故障推定箇所 (大電力ハーネス部)

bull詳細報告書は文部科学省 宇宙開発委員会のHP参照

httpwwwmextgojpb_menushingiuchuureports04080901htm

bull 人工衛星の電位 bull 人工衛星は電気的に宇宙に浮いている bull 宇宙機構造体が接地点 bull 宇宙機への流入電流と流出電流のバランスによって宇宙機電位が決まる bull 各電流成分は宇宙機電位Vの関数として表され定常状態では式を下式を満たす

衛星帯電の基本式

( ) dtIIIIIIIC

V

dtdVCVIVIVIVIVIVIVI

BPHBSESISEIE

BPHBSESISEIE

int +++++minus=

==+++++minus

1

0)]()()()()()([)(

入射電子電流 ( E I )

後方散乱電子電流 ( BSE I )

入射正イオン電流 ( I I )

入射電子による二次電子電流 ( SE I )

太陽光

入射正イオンによる 二次電子放出電流 ( SI I )

光電子放出電流( PH I )

電荷ビーム放出電流(IB)

bull内部帯電は衛星の外壁を貫通した放射線帯外帯の01MeV以上の電子が内部に侵入

bull基板間や同軸ケーブルの線間等の容量(コンデンサ)や誘電体に帯電 bull接地されてない導体片に帯電

bullその耐圧電圧を超えると その耐圧の弱い箇所 (材質の欠陥や針状突起など の箇所)で放電して故障に至る

内部帯電

(あるエネルギ-以上の粒子が入射光電子なし)

NASA-HDBK-4002より

パドルでの帯電放電メカニズム

宇宙環境の影響により 衛星がマイナス電位に帯電

高エネルギー電子等により カバーガラスはプラスに帯電 衛星とカバーガラスに電位差が生じる

電位差が大きくなると トリプルジャンクション近傍 の電界強度が増大していく

トリプルジャンクションで放電が発生する カバーガラスの帯電が緩和される

+ + + + + + + + + + + + + +

+ + + +

カバーガラス

太陽電池セル

基板(衛星構体)

トリプルジャンクション rArr 導体絶縁体宇宙環境の接点

持続放電

Substrate

Satellite Load

insulation sheet

Solar array cell

Cover glass

Arc current

Electrode

持続放電は衛星の電力消失につながる 持続放電のモードは以下の2通りがある

Substrate

Satellite Load

insulation sheet

Solar array cell

Cover glass

Arc current

Electrode

Solar array cell

Cover glass

セル-基板間短絡 セル間短絡

放電によって太陽電池セルと基板が短絡する 短絡によって負荷に電力が供給されなくなる

放電によって太陽電池セルとセルが短絡する 短絡によって負荷に電力が供給されなくなる

サブストーム(高エネルギー電子)との遭遇

+ + + + + + + +

二次電子光電子による絶縁体の帯電(局所帯電)

電位差発生

逆電位勾配

衛星構体が負に帯電(絶対帯電)

電位

時間

サブストーム

衛星構体 VS

乖離電圧 ∆V

カバーガラスVcg

0 プラズマ電位

軌道別帯電放電現象

トリプルジャンクションで 放電発生

放電発生

静止軌道

+ + + + + + + +

逆電位勾配

軌道帯電放電現象

トリプルジャンクションで 放電発生

極軌道 オーロラ電子(高エネルギー電子)との遭遇

プラズマ流入出による絶縁体の帯電(局所帯電)

電位差発生

衛星構体が負に帯電(絶対帯電)

放電発生

電位

時間

オーロラ電子

衛星構体 乖離電圧 ∆V

カバーガラス

0 プラズマ電位

データ中継技術衛星DRTS (こだま)の不具合

2002年10月 9日 静止軌道に打ち上げ

2003年

3月24日 406JST変化率異常モニタ故障検出(FDIR)

が動作しA系からB系に切り替わった

3月25日 410JSTにB系のみ異常検知

4月 3日 327JSTにB系のみ異常検知

5月28日 124JSTにB系のみ異常検知

6月 6日1537JSTにB系のみ異常検知

ESA

DRTS ESA スパイクノイズと 電子フルエンスの比較(赤の丸が異常検知)

larr閾値

この事実を基に静止軌道における内部帯電警報システムを構築 2004年4月より運用開始

不具合が宇宙環境によるものであるか 判断する際のポイント

不具合の発生した時刻に太陽フレアや磁気嵐等の宇宙天気の大きな変動が起きていれば不具合に関係している可能性が高い但し帯電など放射線の積算的効果の伴う現象については発生から1週間位さかのぼり環境がどのように推移してきたかを考慮する必要がある

磁気嵐が起きると静止軌道に急激な粒子の増加現象が起きこれにより衛星帯電が引き起こされたりする(予測に利用可能)

地方時(真夜中や朝方か)や季節(春秋)を考慮する

低軌道衛星においてはSAA外帯のrdquo角ldquo及び極通過時に不具合

が起きやすいので衛星の位置(緯度経度)が重要

事象を把握する上で単発現象か数回起きている現象か周期

(時間同じ軌道等)的に発生している現象か

話の流れ

技術データ取得装置(TEDA)の概要と成果 bull 主な成果 bull 不具合解析例

宇宙天気のリスクと対策 bull 宇宙環境による衛星システムへの影響 bull 宇宙環境を原因とする不具合の割合推移部位 bull 静止軌道不具合 bull 対策

今後必要な観測項目

まとめ

宇宙天気のリスク -宇宙環境によるシステムへの影響 -

プラズマ (IRI)

帯電 (MUSCAT)

衝突 (AUTODY)

抗力 表面劣化

紫外線X線 中性粒子 (MSIS)

放射線粒子 (AE8AP8JPLSHIELDO

SE-2)

メテオロイドデブリ (MASTER2005

ORDEM)

電離損傷 変位損傷

bull電子回路の劣化 bull光部品の劣化

bull太陽電池セルの劣化

SEU (CREME96)

bullデータエラー bull画像ノイズ

bullシステム停止 bull回路損傷

bull熱的電気的光学的特性の劣化

bull構造の劣化 bullコンタミ

電磁パルス bull電源出力低下

bull損傷

bullトルク bull軌道落下

bull構造 損傷 bull減圧

bull電磁パルス

NASAの報告 -GNampCに注目-

1974年から1994年に起きたNASAと空軍の衛星故障の内20~25が宇宙環境に起因していたと報告

1990年から2001年に米国欧州カナダ日本の企業や政府機関が開発した衛星を調べた過去の宇宙ミション損失の大部分はロケットの失敗であったが1998年衛星損失の大部分は軌道上の衛星障害となっている多くの最近の異常は太陽電池アレイ及びバッテリの危険が増加している静止軌道通信衛星の設計寿命はこのサブシステムの故障の危険が増加している

喪失等の大きな誘導制御(GNampC)の不具合に注目 GNampC不具合の内宇宙環境による 不具合は約3と報告されている

軌道上衛星のタイプ別数

NASAの報告(続き)

衛星設計寿命における不具合発生時期 事故率と軌道

軌道別の衛星数 サブシステム不具合

宇宙環境を原因とする不具合の割合 -JAXAの場合-

2002年~2008年に運用された軌道上不具合情報が比較的充実している11衛星(利用衛星7機科学衛星4機)の結果宇宙環境によるも

のは約15過去のデータよりも割合が少ない

合計83件 合計35件

(1)利用衛星 (2)科学衛星

設計検討 不足 48

製造不良 8

軌道上環境 17

偶発故障 6

調査中 13

原因不明 8

設計検討

不足 61

製造不良 4

軌道上環境 11

偶発故障 6

調査中 9

原因不明 9

不具合発生部位の割合

不具合発生部位の割合

Brent Robertson Eric Stoneking ( 1990-2001NASA Goddard Space Flight Center )

Satellite News Digest -静止軌道不具合-

Satellite News Digest (SND) (http wwwsqt-indexcouk) で1997年~2009年の期間に静止軌道で95件の不具合が報告されている その内運用ミスや設計ミスなどを除くと32件(約33)は宇宙環境によるものであった 過去のデータより割合が多い

Choiら1)はこれら不具合の地方時と季節依存性を確認した その結果2100LT~900LTで約72の不具合が発生し900LT~2100LTは9件(約28)であった またこの9件は全て姿勢制御の不具合だった 静止軌道衛星不具合のほとんどは真夜中と朝方で起きており磁気嵐に伴い磁気圏尾部から注入した粒子による表面帯電が不具合の主原因と結論づけている

1) Ho-sung Choi et al Analysis of GEO spacecraft anomalies Space weather relationships Space Weather Vol 9 S06001

太陽活動と静止軌道衛星不具合例

ANIK-E1E2

ANIK-E1

複数の衛星で故障

Galaxy-15

帯電放電不具合 -ANIK-E1amp2Telstar401-

Jan 1994 ANIK-E1 amp E2事故時の環境 - Joe H Allen

1週間

太陽活動下降時期の電子増加

2MeV以上電子

copyNOAA Web

フラックスが3桁急増

Jan 1997 Telstar401事故時の環境

静止軌道の急激な電子増加

太陽極大期太陽フレアによる衛星障害 - 2003年10月~11月-

10486981048698 永久故障 4 10486981048698 安全モード又は運用を一時停止 31 10486981048698 データ内容の「誤り」の増加搭載コンピュータの誤動作 5

httpwwwsat-ndcomfailures等のデータによる 合計 40件

-Barbieri and Mahmot

米国極軌道気象衛星NOAA-17の改良型マイクロ波観測装置AMSU-A1 (Advanced Microwave Sounding Unit)のスキャナーが永久故障 米国気象衛星GOES -8号のX線センサがOFFになり復帰しなくなった

e-birdに深刻な不具合が発生 不具合は20本のトランスポンダ全てに影響

火星周回中の探査機「マーズオデッセイ (Mars Odyssey)」の観測機器放射線観測装置「Martian Radiation Environment Experiment (MARIE)」が太陽活動の影響により10月28日から適切に作動しなくなった データ中継技術衛星(DRTS)「こだま」 太陽捕捉モードに移行

太陽陽子

帯電放電不具合-Galaxy15(局所的的現象)- 2

5 M

eV

65

MeV

11

5 M

eV

GOES 14 ----- GOES 15 ----- GOES 11 -----

Satellite Locations

Galaxy 15 anomaly

2010年4月5日9時48分UTCは磁気嵐及びCMEが発生するなど宇宙環境は非常に荒れていたGalaxy15衛星は真夜中側に位置し宇宙環境の影響を受けやすい

位置にいたことから宇宙環境による不具合である可能性が高いということで原因追及がなされた高エネルギー粒子が引き起こす代表的な衛星不具合現象として3つ(表面帯電内部帯電SEUシングルイベントバーンアウトSEL)の可能性を検討した

チームの報告書によると磁気圏尾部からの熱電子の流入による放電が原因であったと結論付けられたGalaxy15衛星の近くにはGOES-11衛星が位置していたがGOES-11衛星には不具合を発生しておらず本現象は局所的な現象と推測される

衛星開発段階における対策 JAXAの不具合解析の結論

bull 2002年~2008年に運用された11機の衛星不具合を解析 宇宙環境による不具合は偶発故障のみ(全体の約15)確率的には想定範囲内ではあるがその影響を最小限とするためディレーティング運用モード寿命についての研究に取り組む

bull 設計基準試験の充実検証確認の強化技術成熟度(TRL)評価の徹底各々の境界制約条件の明示化等により検証不足抜けの防止有効なピアレビューに結びつける

冗長系(同じハードウェア機能の冗長)柔軟性の設計(ソフトハードの対応)

bull 従来の故障が起きないようにする設計に対してGOSAT(いぶき)では重要部

品を二重化することにより故障する可能性は上がるが故障しても衛星バスの運用や観測が続行できる可能性がより高くなるように設計した

運用における対応

bull 宇宙天気監視ーロケット打ち上げ及び宇宙飛行士支援 数日前に今後の宇宙環境の推移を把握(MXレベルのフレアの発生確率)

bull X線の増加で太陽フレア発生を検知したら高エネルギー粒子の発生をいつまで 気を付ければ良いか判断(発生位置で大凡を推定するが課題は多い) SPEが発生した場合(特に10MeV以上100MeV 以上の陽

子)最大値フラックス値の推定 ピーク値を予測(特に閾値に近くなった時に重要)

bull 衛星運用 bull 太陽フレア磁気嵐警報(X線陽子及びkpが閾値を超えた

時に警報を発信)2003年10月より運用開始 bull 内部帯電警報(2日後の静止軌道上の高エネルギー電子(>1

Me) の増加を予測し 閾値を超えた時に警報を発信) 2004年4月より運用開始

話の流れ

技術データ取得装置(TEDA)の概要と成果 bull 主な成果 bull 不具合解析例

宇宙天気のリスクと対策 bull 宇宙環境による衛星システムへの影響 bull 宇宙環境を原因とする不具合の割合推移部位 bull 静止軌道不具合 bull 対策

今後必要な観測項目

まとめ

計測対象計測項目 計測対象 粒径100μm以上のデブリメテオロイド 計測項目 デブリ粒径衝突頻度

基本原理

厚さ約125μmの絶縁性のポリイミドフィルム表面に 100μm周期で直線状の細長い導線(太さ50μm)パターンを形成導線の破断を電気的に検知することによりデブリの衝突(貫通)を検知する破断した導線の数導線の幅ピッチからデブリサイズを計測する

微小デブリ計測技術の概要

衝突孔の例(衝突試験ISAS) - 衝突粒子 SUS 309 microm - 衝突速度 52 kms

HTV5号機によるセンサ機能のフライト実証

35cm

46cm

FY2013機能実証モデル

検出線幅 50 μm 検出線間隔 100 μm フィルム厚 lt 20 μm 有感領域 30times33cm 検出線総数 3300本

サイズ 50times39times4 cm (筐体を含む)

重量 約15kg(筐体を含む)

消費電力 2W(最大4W)(他センサ含む)

テレメトリ 02 bps

宇宙環境観測装置KASPERの一部としてデブリセンサSDMを搭載 FY2013に製作開始今年8月に打ち上げ予定)

まとめ(その1)

衛星不具合の主な原因は帯電放電シングルイベント放射線損傷である今後デブリ環境が重要になると予測される

静止軌道では商用衛星が多く運用されており宇宙環境の変動把握は重要この領域で運用する衛星が気を付けなければいけない環境として

1太陽フレアに伴う高エネルギー粒子 2太陽活動下降期による静止軌道電子の増加 3磁気嵐に伴う磁気圏尾部から注入する粒子 などがあげられる

まとめ(その2)

不具合軽減の取り組み bull 開発時は宇宙環境条件(トータルフラックス及び最悪条

件)を明確にし設計(冗長系柔軟性の設計ディレーティング及び運用モード寿命について研究)試験の充実検証の充実を図る

bull 運用段階に入ったならば宇宙環境を監視し警報等で故障を防ぐ

予測課題 bull 太陽フレアに伴う高エネルギー粒子発生後フラックス

ピーク値の推定

bull 衛星により不具合の起きる閾値は異なるが閾値をこえる急激な電子フラックスの増加と継続時間の予測

bull 局所的な磁気嵐に伴う磁気圏尾部から注入する粒子

宇宙環境グループは宇宙ステーションと衛星プロジェクトの安全な遂行に貢献しています

ご静聴ありがとうございました

補足資料

不具合原因の推移 bull 宇宙天気を大きく左右する要因の1つとして約11年の太陽活動変化が挙げられる

bull 太陽活動下降時期(太陽変動CME)と極大期(フレアCME)に衛星で不具合が増加するそれにより不具合原因の割合が変わる

-Koons et al The Impact of the Space Environment on Space Systems Aerospace Corp report no TR-99(1670)-1 20 July 1999 -2009 preliminary study (unpublished)

何故不具合は減らないか

bull 部品 放射線に対する感受性が高くなっている bull 微細化が進み同時にフォールトするノードが増え同時にエ

ラーとなる論理ノードやメモリセルが増加する微細化によってメモリセルは小さくなるので記憶容量当たりでみるとエラーの発生率は下がるしかし半導体チップの記憶容量やゲート数が増えるので半導体チップ当たりのエラー発生率は微細化とともに上昇するまた蓄積電荷が小さくなり感受性が高くなってきている

bull システム 大型化大電力化運用長期化 bull 1990年代末以降静止衛星の電力が10kWレベルになったしか

し設計検証技術データ蓄積が遅れている改善されつつあると推測される

放射線による影響の概要

粒子 エネルギー又はLET

代表的な影響

陽子 100keV-1MeV 1-10MeV 10-100MeV gt50MeV

表面損傷 表面材料と太陽電池の損傷 放射線損傷(電離非電離損傷の両方)センサーへのノイズ シングルイベント効果

電子 10-100keV gt100keV gt1MeV

表面帯電 深部帯電現象(deep-dielectric charging)センサーへのノイズ太陽電池の損傷 放射線損傷(電離)

重イオン gt1MeV-cm2mg シングルイベント効果

注エネルギー及びLETは個々の部品等により異なりますあくまでも目安です

耐放射線設計手順

軌道条件

ミッション期間

環境条件設定

トータルドーズの予測

1MeV電子換算被曝算出

NIELの換算

LETフルエンス算出

陽子フルエンス算出

対  策  の  検  討

対  策  の  検  討

対  策  の  検  討

放射線による劣化率予測

劣化率予測 特性予測

耐性データ

放射線による劣化率予測

耐性データ

劣化率予測アレイ出力劣化予測

感受性データ

シングルイベント発生率予測 致命度解析

衛星内質量分布

(2)

部品材料の選定

他の要因による劣化率予測

(2)(2) (3)

回路設計等NO

OK

アレイ構造 セル選定

他の要因による劣化率予測 アレイ設計(2)

(2) (2) (2) (3)

衛星内質量分布 部品選定(2)

(2) (2)(3)

NO

OK

NO

OK

(1) 環境モデルマージを含む(2) 部品レベルの検討(3) アセンブリレベルでの検討(4) 設計マージン環境モデル   マージを含め大丈夫か

トータルドーズ

太陽電池アレイの劣化

シングルイベント効果

回路設計

補足放射線太陽宇宙線銀河宇宙線

NEILを用いたダメージファクターの算出

対  策  の  検  討

放射線による劣化率予測

劣化率予測 特性予測

耐性データ

(2)

部品材料の選定

他の要因による劣化率予測

(2)(2) (3)

回路設計等NO

OK

衛星内質量分布 半導体デバイスの変位損傷

(1)

(4)

(4)

(4)

(4)

各軌道における放射線環境

1E+10

1E+11

1E+12

1E+13

1E+14

1E+15

1E+16

1E+17

1E+18

1E+19

1E+20

001 010 100 1000

捕捉

電子

の積

分フ

ルエ

ンス

[m

2 ]

エネルギー[MeV]

各軌道における電子捕捉積分フルエンス(3年間)

LEO

EOS GEO

MEO

GTO

GEO 軌道傾斜角 0deg 高度36000km GTO 軌道傾斜角 18deg 高度 360km~36000km MEO 軌道傾斜角 51deg 高度 10000km EOS 軌道傾斜角 98deg 高度705km LEO 軌道傾斜角 29deg 高度 600km

1E+12

1E+13

1E+14

1E+15

1E+16

1E+17

1E+18

1E+19

1E+20

01 10 100 1000

捕捉

陽子の

積分フルエン

ス[

m2 ]

エネルギー[MeV]

各軌道における捕捉陽子積分フルエンス(3年間)

MEO

GTO

GEO

EOS LEO

放射線による部品材料の影響

総照射線量 (TIDTotal Ionising Dose )

電離損傷

バイポーラTrの電流増幅率の低下リーク電流の増大

γ線で評価

トータルドーズ効果

変位損傷 (DDDisplacement Damage )または 非イオン化エネルギー損失 (NIELNon-Ionising Energy

Loss )

変位損傷(格子欠陥の生成)

電荷輸送効率の低下 (CCD)太陽電池の効率低下等

電子陽子により評価

シングルイベント効果

1個の荷電粒子の入射により発生する誤動作

ソフト(Latch-Up Burnout) エラー又は ソフト (Upset) エラー

陽子及び重イオンで評価

トータルドーズ効果

+ - + + - + - + - - + + + + -

ゲート酸化膜

電離

格子欠陥

正電荷捕獲

+ 正孔 - 電子

電極

(Silicon oxidenitride)

荷電粒子

反跳原子

ゲート絶縁膜中に電荷が蓄積することによるMOSトランジスタのしきい電圧(MOSトランジスタがオフからオンに変化するゲート電圧)の変化をもたらすただ

し最近の最先端チップはゲート絶縁膜がきわめて薄くなっているこのためゲート絶縁膜よりもフィールド絶縁膜(隣接するトランジスタを電気的に分離する絶縁膜)での電荷蓄積が相対的には大きな問題になってきている」

シングルイベント効果

メモリセルはNチャンネルとPチャンネルMOSFETより構成されメモリ情報は回路ノード12の電位の

高低により記録している空乏層の広がっているPN接合12の領域に

重イオンが入射した場合電荷の発生と空乏層内への少数キャリアの収集が起こるこの収集電荷量が回路の耐量を越えた場合(c)に示すように反転が起こる(ソフトエラー)一方pウエル-N基板接

合の空乏層内に電荷収集量が起こりえる耐性を越えると寄生的に存在するPNPNサイリスタ構造がオ

ンし電源と基板間に大電流が流れる状態が生じる(ラッチアップ)

シングルイベントメカニズム -陽子と重イオンの違い-

エラー発生率の計算

線エネルギー付与(LET) (linear energy transfer)

電離性放射線が物質中を通過する際飛程の単位長さ当りに平均して失うエネルギーをいう各種の放射線のうちX線γ線はLETが小さいので低LETといいα線中性子線その他重イオン核分裂破片のLETは大きいので高LETという MeVμmMeV(gcm2)やMeV(mgcm2)で表される

南大西洋異常(SAA) bull 地球の自転軸と磁気軸のずれ

darr bull 放射線帯が自転軸に対して非

対称

bull 南大西洋上空では放射線帯内帯が低高度に落ちてきているこの領域を南大西洋異常域(SAA South Atlantic Anomaly)と呼ぶ

bull 地球観測衛星ではSAAで放射線帯陽子の影響を受ける

Single Event Lachup

シングルイベントと陽子分布

MOS-1衛星(高度909km軌道傾斜角99度)で発生したシングルイベントと 陽子30MeV以上の等高線マップを重ね合わせた結果

NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)

bull 入射粒子が電離によらず与える損傷非イオン化損失

低軌道での電子フラックスと 不具合の発生場所

南大西洋異常(SAA)と極の角

高度800kmでの電子フラックス図極の角(polar horn)とSAAを示す

太陽粒子線 bull 太陽高エネルギー粒子線(SPE Solar Proton Events)は太陽フレア とコロナガス噴出 (CMECoronal Mass Ejections )により引き起こされる bull フレアのスペクトルは可変であるためあるエネルギー域における最悪状態イベントは必ずしも別のエネルギー域における最悪条件ではない 1972年8月のイベント 10~70MeVの粒子が最も多かった 1989年10のイベント 1972年8月のイベントに比べ低エネルギー領域 高エネルギー領域が明らかに激しかった

フルエンス 105 to 1011 cm-2

変動期間 1日から数日

ldquoBastiliardquo Solar Event 14 July 2000

Carrington Flare

84

(LW Townseed) Carrington Flare(1859年) Carrington Flare による30MeV以上トータルFluenceを118times109cm-2で規格化 ~1989年フレアの約13倍(シングルイベントの評価で使用) ~1991年フレアの約9倍 2012年7月23日にキャリントンイベントとほぼ同等の爆発現象が太陽あるいは太陽の周りで起きていたということがNASAの太陽観測衛星「STEREO」の解析から発表された

放射線対策 bull 放射線シールドを付加し放射線を減衰させる

bull 放射線耐性の強い部品(SOI(Silicon On Insulator)技術による耐放射線部品)材料に変更する

bull 放射線による損傷を吸収するために回路または構造上のマージンを持たせる bull ソフト的なエラーに対しては エラー検出訂正機能や多数決

機能等でソフト的エラーが起きてもシステムが機能するようにしたフォールトトレラント機能を付けて対処する ICのハード的故障に対しては ラッチアップ耐性の強い部品を選定するしかないが 電流制限回路を付ける対策も採られる パワーMOSFETに対しては部品選定 電源電圧を規格値の半分以下に落とす等の対策を採る

SOI技術

表面帯電への対策例

表面の物体間を導線で結線する

太陽電池のカバーガラスを導電性被膜付き(酸化インジウムITO)にする

熱制御材表面にITOを被覆する

熱制御材は高誘電率のテフロンの使用を避け 高伝導度耐環境性に優れたブラックカプトンを使用

イオンエンジンの中和器で能動帯電制御

内部帯電への対策例

アルミで3mm厚さに相当するシールドで囲む(Faraday Cage)

テフロンやカプトンなどの誘電体材料の内部での使用量を最小限に押さえる

回路基板やコンフォーマルコーティングは誘電体なので電流リークパス(1012Ωcmまたは1012Ωcm2

程度)を必ずつける

特にスポット的な放射線シールドの金属材には必ず電流リークパスをつける

帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備

衛星モデル作成

材料物性テーブル設定

宇宙環境パラメータ設定

Converter

転送ディレクトリ 解析データファイル

転送

解析ディレクトリ生成 解析結果 進行状況チェック ファイル操作

MUSCAT 解析エンジン

解析結果 表示

パラメトリックラン

オプション 解析

大型パネル実験(35mtimes11m) クーポンパネル実験(26cmtimes16cm)

環境模擬試験 環境模擬試験

MUSCATに使用する物性値設計標準制定のための知見などを得ることを目的に軌道上の宇宙環境を模擬した地上試験を行っている これらの試験では放電の発生頻度や電圧閾値放電発生による太陽電池パネルや搭載機器への影響を検証している

放射線計測装置の原理

bull その粒子が物質を通過する際のエネルギー損出率が粒子の電荷(原子番号)Zの二乗に比例すること(Bethe-Blochの式)を利用する

S2

E

ΔE Ersquo

S1 S3

  • 宇宙機の設計のための宇宙環境
  • 話の流れ
  • 話の流れ
  • TEDA(技術データ取得装置)(国産部品の宇宙環境での実証の必要性)
  • ETS-VTEDA(技術データ取得装置)誕生前の部品の宇宙実証の背景
  • スライド番号 6
  • スライド番号 7
  • スライド番号 8
  • スライド番号 9
  • 図6太陽黒点数と静止軌道電子 (>04MeV ) Flux の変動 (ETS-V搭載DOMによる観測)
  • スライド番号 11
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの開発(理研東大と共同で宇宙環境計測の充実)
  • ETS-VI(きく6号)打ち上がったがGEOに行かずGTOに留まる
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの成果
  • スライド番号 15
  • スライド番号 16
  • スライド番号 17
  • ADEOS搭載TEDA(世界2番目の異常宇宙線ACR)
  • BBND (ボナー球中性子検出器)
  • スライド番号 20
  • ISS搭載BBNDの成果(約8か月)
  • スライド番号 22
  • MDS-1搭載放射線吸収線量モニタ(SDOM)
  • 放射線帯変動モデルの開発MDS-1 065 MeV 電子フラックス
  • 変動パラメータの選択 (1 cycle solar activity)
  • 変動パラメータ- Tavg の定義-
  • 065MeV 電子 L値-Tavg マップ
  • 13MeV 陽子 L値-Tavg マップ
  • 電子観測とMDS-1モデルの比較
  • 放射線帯フラックスピークの変動
  • 陽子観測とモデルの比較
  • 電子(035~078MeV) 1日の変動予測GOSAT軌道
  • 電子(035~078MeV) 変動の信頼度水準(1日)GOSAT軌道
  • MDS-1 model と AE-8 modelとの比較1日
  • 話の流れ
  • 2003年10月 みどり号の全損事故(複合現象)
  • 衛星帯電の基本式
  • 内部帯電
  • パドルでの帯電放電メカニズム
  • スライド番号 40
  • スライド番号 41
  • スライド番号 42
  • データ中継技術衛星DRTS (こだま)の不具合
  • DRTS ESA スパイクノイズと電子フルエンスの比較(赤の丸が異常検知)
  • 不具合が宇宙環境によるものであるか判断する際のポイント
  • 話の流れ
  • 宇宙天気のリスク-宇宙環境によるシステムへの影響 -
  • NASAの報告-GNampCに注目-
  • NASAの報告(続き)
  • 宇宙環境を原因とする不具合の割合-JAXAの場合-
  • 不具合発生部位の割合 
  • Satellite News Digest -静止軌道不具合-
  • 太陽活動と静止軌道衛星不具合例
  • スライド番号 54
  • スライド番号 55
  • スライド番号 56
  • 衛星開発段階における対策
  • 運用における対応
  • 話の流れ
  • スライド番号 60
  • スライド番号 61
  • まとめ(その1)
  • まとめ(その2)
  • 宇宙環境グループは宇宙ステーションと衛星プロジェクトの安全な遂行に貢献しています
  • 補足資料
  • 不具合原因の推移
  • 何故不具合は減らないか
  • 放射線による影響の概要
  • 耐放射線設計手順
  • 各軌道における放射線環境
  • 放射線による部品材料の影響
  • トータルドーズ効果
  • シングルイベント効果
  • シングルイベントメカニズム-陽子と重イオンの違い-
  • エラー発生率の計算
  • 線エネルギー付与(LET)(linear energy transfer)
  • 南大西洋異常(SAA)
  • Single Event Lachup
  • シングルイベントと陽子分布
  • NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)
  • 低軌道での電子フラックスと不具合の発生場所
  • 南大西洋異常(SAA)と極の角
  • スライド番号 83
  • Carrington Flare
  • 放射線対策
  • スライド番号 86
  • スライド番号 87
  • 帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備
  • スライド番号 89
  • 放射線計測装置の原理
Page 17: 宇宙機の設計のための宇宙環境の方針から国産部品開発(42品種)が実施された。 . 半導体電子部品は耐放射線性を加味して、人工衛星(特に

ISSKibou(09-)

GEO

LEO

ETS-V (87-97)

ADEOS-II(02-03)

ETS-VIII(06-) DRTS(02- )

STS-89(98)

MDS-1(02-03) ETS-VI(94-96)

ETS-VII (97-99)

宇宙環境計測の流れ ISSUS-Lab(01)

ひまわり1-4(78-99)

ERG(16予定)

ALOS(06-11)

GOSAT(09-)

Jason-2((08-)

Jason-3(15予定)

GTO

QZS(09-)

ADEOS (96-97)

ADEOS搭載TEDA (世界2番目の異常宇宙線ACR)

bull シングルイベント評価のための重イオン観測であったが世界2番目の異常宇宙線を観測することができた

bull 低軌道の衛星は地球磁場が邪魔となって宇宙線(重イオン)を観測するに向いていないと考えられていたが異常宇宙線を観測するのにすぐれていることが明らかとなった

T Kohno et al Radiation Measuremets 30 5 PP639-644

BBND (ボナー球中性子検出器)

bull 1994年(平成6)年7月に中性子計測のために ボナー球ホスウイッチ方式及びシンチレーションファイバーの3種類のセンサの研究をスタート

bull シャトル打ち上げ計画の管理者から搭載装置の検討依頼がありBBNDのSTS-89への搭載が決定した(1997年1月頃)

bull 振動試験で装置内のボルトが外れるという不具合もあったが約1年という非常に短期間で搭載品を開発することができた

bull コスト低減のために構造解析を自前で実施したりデータ処理ソフトウェアも内作した

熱中性子に対して高い感度を持つ6個の3Heガス入り比例計数管で構成して

いる中性子は電荷をもたないのでそれ自身には電離作用がないが軽い原子の3He気体では反跳原子を生じたり中性子の核反応(3He+nrarrp+3H+765KeV)によって荷電粒子を生じるので間接的に電離を起こす下図のように気体中に二つの電極を置き高電圧(1000V)をかけておくと中性子の入

射によって気体中に生じた陽子イオンと電子のイオン対がそれぞれの電極に向かって流動し外部回路に電離電流が流れるこの電気パルスにより中性子を計測する

ボナー球型中性子モニタの概要

Polyethylene Sphere3He proportional Counter

51 φ 51 φ81 φ110 φ150 φ230 φ

Sensor6 Sensor5 Sensor4 Sensor3 Sensor2 Sensor1

Covered by Gadolinium

[mm]3Heガス入り比例計数管の原理

6個のボナー球の断面図

3Heガス入り比例計数管とポリエチレン減速材

H Matsumotoet al Radiation Measurements 33 (2001) 321-333

ISS搭載BBNDの成果(約8か月)

実験期間中の平均的な等価線量等量率 (2001年3月23日~2001年11月14日)

太陽フレア時(2001年11月4日)

等価量等量率の平均は94μSv日で年率に換算すると34mSv年となるこれは地上において自然界から受ける等価線量当量率の約14倍に相当する 実験期間中に多数の太陽フレアが発生した2001年11月4日の太陽フレアにより019mSVの増加を観

測したこれは自然界から受ける等価線量当量率の約1か月分に相当するしかしBBNDの約8か月

の実験期間中の全等価線量当量に対するこの太陽フレアの影響の寄与分は1以下であった また搭載位置による環境の違いも確認された

H Koshiishiet al Radiation Measurements 42(2007) 1510-1520

1)船内の計測結果より低エネルギー側で2~3桁高エネルギー側で1~2桁低い 2)船内より船壁が薄く中性子が少ない環境より自然のアルベド中性子環境に近い

中性子被曝線量の ISS船外(SEDA-AP)と船内(STS-89)の比較

MDS-1搭載放射線吸収線量モニタ(SDOM) SiTungstenAlBGO

② ⑦

⑧⑧

① Collimator ② Window③ SSDs ④ Plastic Scintillator⑤ Anticoincidence Scintillator(ACS)⑥ Beam Stop⑦ Scintillator PMT⑧ ACS PMT

運用期間 2002年2月 ndash 2003年9月 軌道 -軌道傾斜角 285deg 1 lt BB0 le 84 -高度 500 km times 36000km 11 le L le 10 -軌道周期 約10時間35分 -スピンレート 5rpm

計測エネルギー範囲 Electron 04- 9MeV (5bins) Proton 09-210MeV (12bins) He 6-140MeV (4bins) Heavy Ion 15- 60MeVnuc (1bin) G-Factor 001cm2sr

放射線帯変動モデルの開発 MDS-1 065 MeV 電子フラックス

変動パラメータの選択 (1 cycle solar activity)

太陽風速度(SW)

太陽黒点数(R)

Ap指数

F107

変動パラメータ- Tavg の定義-

1日後の予測

パラメータスケールの時間平均 ApTavg SWTavg F107 Tavg

T days

放射線帯の構造は変動パラメータ値の大きさと継続時間に相関がある

065MeV 電子 L値-Tavg マップ

APTavg

SWTavg

13MeV 陽子 L値-Tavg マップ

APTavg

F107Tavg

電子観測とMDS-1モデルの比較

80 175

放射線帯フラックスピークの変動

80orbits (平穏時) 175orbits (擾乱時)

陽子観測とモデルの比較

電子(035~078MeV) 1日の変動予測GOSAT軌道

0

50

100

150

200

250

1E+09

1E+10

1E+11

1E+12

1984 1986 1988 1990 1992 1994 1996 1998 2000 2002 2004 2006 2008

Flue

nce[

ecm

2M

eVd

ay]

Launch day

FluenceSSN

Worst case Nov 12003

電子(035~078MeV) 変動の信頼度水準(1日)GOSAT軌道

00

01

02

03

04

05

06

07

08

09

10

88 90 92 94 96 98 100 102 104 106 108 110 112 114

Con

fiden

ce le

vel

Fluence[LOG10 ecm2MeVday]

AE-8 MAX

AE-8 MIN

MDS-1 model と AE-8 model との比較1日

0

20

40

60

80

100

120

140

160

180

1E+09

1E+10

1E+11

1E+12

1995 1997 1999 2001 2003 2005 2007 2009

Flue

nce[

ecm

2M

eVd

ay]

Launch day

Fluence(JAXA)Fluence(AE8)SSN

話の流れ

技術データ取得装置(TEDA)の概要と成果 bull 主な成果 bull 不具合解析例

宇宙天気のリスクと対策 bull 宇宙環境による衛星システムへの影響 bull 宇宙環境を原因とする不具合の割合推移部位 bull 静止軌道不具合 bull 対策

今後必要な観測項目

まとめ

2003年10月 みどり号の全損事故 (複合現象)

極域のオーロラ帯を通過中に電力ハー

ネスを巻いているMLIが高エネルギー電

子により帯電

MLIが接地されていなかったため内側

のハーネスとの間に1kV以上の電位差が

発生

MLI内のガス密度が発電開始に伴う温度

上昇により上昇

ハーネス被覆の傷により露出したハーネ

ス芯線とMLI内面の間で放電発生

単発の放電が隣接するハーネスに飛び火

してハーネス間の短絡

アーク放電が次々と伝搬していきハー

ネス全体が焼損

故障推定箇所 (大電力ハーネス部)

bull詳細報告書は文部科学省 宇宙開発委員会のHP参照

httpwwwmextgojpb_menushingiuchuureports04080901htm

bull 人工衛星の電位 bull 人工衛星は電気的に宇宙に浮いている bull 宇宙機構造体が接地点 bull 宇宙機への流入電流と流出電流のバランスによって宇宙機電位が決まる bull 各電流成分は宇宙機電位Vの関数として表され定常状態では式を下式を満たす

衛星帯電の基本式

( ) dtIIIIIIIC

V

dtdVCVIVIVIVIVIVIVI

BPHBSESISEIE

BPHBSESISEIE

int +++++minus=

==+++++minus

1

0)]()()()()()([)(

入射電子電流 ( E I )

後方散乱電子電流 ( BSE I )

入射正イオン電流 ( I I )

入射電子による二次電子電流 ( SE I )

太陽光

入射正イオンによる 二次電子放出電流 ( SI I )

光電子放出電流( PH I )

電荷ビーム放出電流(IB)

bull内部帯電は衛星の外壁を貫通した放射線帯外帯の01MeV以上の電子が内部に侵入

bull基板間や同軸ケーブルの線間等の容量(コンデンサ)や誘電体に帯電 bull接地されてない導体片に帯電

bullその耐圧電圧を超えると その耐圧の弱い箇所 (材質の欠陥や針状突起など の箇所)で放電して故障に至る

内部帯電

(あるエネルギ-以上の粒子が入射光電子なし)

NASA-HDBK-4002より

パドルでの帯電放電メカニズム

宇宙環境の影響により 衛星がマイナス電位に帯電

高エネルギー電子等により カバーガラスはプラスに帯電 衛星とカバーガラスに電位差が生じる

電位差が大きくなると トリプルジャンクション近傍 の電界強度が増大していく

トリプルジャンクションで放電が発生する カバーガラスの帯電が緩和される

+ + + + + + + + + + + + + +

+ + + +

カバーガラス

太陽電池セル

基板(衛星構体)

トリプルジャンクション rArr 導体絶縁体宇宙環境の接点

持続放電

Substrate

Satellite Load

insulation sheet

Solar array cell

Cover glass

Arc current

Electrode

持続放電は衛星の電力消失につながる 持続放電のモードは以下の2通りがある

Substrate

Satellite Load

insulation sheet

Solar array cell

Cover glass

Arc current

Electrode

Solar array cell

Cover glass

セル-基板間短絡 セル間短絡

放電によって太陽電池セルと基板が短絡する 短絡によって負荷に電力が供給されなくなる

放電によって太陽電池セルとセルが短絡する 短絡によって負荷に電力が供給されなくなる

サブストーム(高エネルギー電子)との遭遇

+ + + + + + + +

二次電子光電子による絶縁体の帯電(局所帯電)

電位差発生

逆電位勾配

衛星構体が負に帯電(絶対帯電)

電位

時間

サブストーム

衛星構体 VS

乖離電圧 ∆V

カバーガラスVcg

0 プラズマ電位

軌道別帯電放電現象

トリプルジャンクションで 放電発生

放電発生

静止軌道

+ + + + + + + +

逆電位勾配

軌道帯電放電現象

トリプルジャンクションで 放電発生

極軌道 オーロラ電子(高エネルギー電子)との遭遇

プラズマ流入出による絶縁体の帯電(局所帯電)

電位差発生

衛星構体が負に帯電(絶対帯電)

放電発生

電位

時間

オーロラ電子

衛星構体 乖離電圧 ∆V

カバーガラス

0 プラズマ電位

データ中継技術衛星DRTS (こだま)の不具合

2002年10月 9日 静止軌道に打ち上げ

2003年

3月24日 406JST変化率異常モニタ故障検出(FDIR)

が動作しA系からB系に切り替わった

3月25日 410JSTにB系のみ異常検知

4月 3日 327JSTにB系のみ異常検知

5月28日 124JSTにB系のみ異常検知

6月 6日1537JSTにB系のみ異常検知

ESA

DRTS ESA スパイクノイズと 電子フルエンスの比較(赤の丸が異常検知)

larr閾値

この事実を基に静止軌道における内部帯電警報システムを構築 2004年4月より運用開始

不具合が宇宙環境によるものであるか 判断する際のポイント

不具合の発生した時刻に太陽フレアや磁気嵐等の宇宙天気の大きな変動が起きていれば不具合に関係している可能性が高い但し帯電など放射線の積算的効果の伴う現象については発生から1週間位さかのぼり環境がどのように推移してきたかを考慮する必要がある

磁気嵐が起きると静止軌道に急激な粒子の増加現象が起きこれにより衛星帯電が引き起こされたりする(予測に利用可能)

地方時(真夜中や朝方か)や季節(春秋)を考慮する

低軌道衛星においてはSAA外帯のrdquo角ldquo及び極通過時に不具合

が起きやすいので衛星の位置(緯度経度)が重要

事象を把握する上で単発現象か数回起きている現象か周期

(時間同じ軌道等)的に発生している現象か

話の流れ

技術データ取得装置(TEDA)の概要と成果 bull 主な成果 bull 不具合解析例

宇宙天気のリスクと対策 bull 宇宙環境による衛星システムへの影響 bull 宇宙環境を原因とする不具合の割合推移部位 bull 静止軌道不具合 bull 対策

今後必要な観測項目

まとめ

宇宙天気のリスク -宇宙環境によるシステムへの影響 -

プラズマ (IRI)

帯電 (MUSCAT)

衝突 (AUTODY)

抗力 表面劣化

紫外線X線 中性粒子 (MSIS)

放射線粒子 (AE8AP8JPLSHIELDO

SE-2)

メテオロイドデブリ (MASTER2005

ORDEM)

電離損傷 変位損傷

bull電子回路の劣化 bull光部品の劣化

bull太陽電池セルの劣化

SEU (CREME96)

bullデータエラー bull画像ノイズ

bullシステム停止 bull回路損傷

bull熱的電気的光学的特性の劣化

bull構造の劣化 bullコンタミ

電磁パルス bull電源出力低下

bull損傷

bullトルク bull軌道落下

bull構造 損傷 bull減圧

bull電磁パルス

NASAの報告 -GNampCに注目-

1974年から1994年に起きたNASAと空軍の衛星故障の内20~25が宇宙環境に起因していたと報告

1990年から2001年に米国欧州カナダ日本の企業や政府機関が開発した衛星を調べた過去の宇宙ミション損失の大部分はロケットの失敗であったが1998年衛星損失の大部分は軌道上の衛星障害となっている多くの最近の異常は太陽電池アレイ及びバッテリの危険が増加している静止軌道通信衛星の設計寿命はこのサブシステムの故障の危険が増加している

喪失等の大きな誘導制御(GNampC)の不具合に注目 GNampC不具合の内宇宙環境による 不具合は約3と報告されている

軌道上衛星のタイプ別数

NASAの報告(続き)

衛星設計寿命における不具合発生時期 事故率と軌道

軌道別の衛星数 サブシステム不具合

宇宙環境を原因とする不具合の割合 -JAXAの場合-

2002年~2008年に運用された軌道上不具合情報が比較的充実している11衛星(利用衛星7機科学衛星4機)の結果宇宙環境によるも

のは約15過去のデータよりも割合が少ない

合計83件 合計35件

(1)利用衛星 (2)科学衛星

設計検討 不足 48

製造不良 8

軌道上環境 17

偶発故障 6

調査中 13

原因不明 8

設計検討

不足 61

製造不良 4

軌道上環境 11

偶発故障 6

調査中 9

原因不明 9

不具合発生部位の割合

不具合発生部位の割合

Brent Robertson Eric Stoneking ( 1990-2001NASA Goddard Space Flight Center )

Satellite News Digest -静止軌道不具合-

Satellite News Digest (SND) (http wwwsqt-indexcouk) で1997年~2009年の期間に静止軌道で95件の不具合が報告されている その内運用ミスや設計ミスなどを除くと32件(約33)は宇宙環境によるものであった 過去のデータより割合が多い

Choiら1)はこれら不具合の地方時と季節依存性を確認した その結果2100LT~900LTで約72の不具合が発生し900LT~2100LTは9件(約28)であった またこの9件は全て姿勢制御の不具合だった 静止軌道衛星不具合のほとんどは真夜中と朝方で起きており磁気嵐に伴い磁気圏尾部から注入した粒子による表面帯電が不具合の主原因と結論づけている

1) Ho-sung Choi et al Analysis of GEO spacecraft anomalies Space weather relationships Space Weather Vol 9 S06001

太陽活動と静止軌道衛星不具合例

ANIK-E1E2

ANIK-E1

複数の衛星で故障

Galaxy-15

帯電放電不具合 -ANIK-E1amp2Telstar401-

Jan 1994 ANIK-E1 amp E2事故時の環境 - Joe H Allen

1週間

太陽活動下降時期の電子増加

2MeV以上電子

copyNOAA Web

フラックスが3桁急増

Jan 1997 Telstar401事故時の環境

静止軌道の急激な電子増加

太陽極大期太陽フレアによる衛星障害 - 2003年10月~11月-

10486981048698 永久故障 4 10486981048698 安全モード又は運用を一時停止 31 10486981048698 データ内容の「誤り」の増加搭載コンピュータの誤動作 5

httpwwwsat-ndcomfailures等のデータによる 合計 40件

-Barbieri and Mahmot

米国極軌道気象衛星NOAA-17の改良型マイクロ波観測装置AMSU-A1 (Advanced Microwave Sounding Unit)のスキャナーが永久故障 米国気象衛星GOES -8号のX線センサがOFFになり復帰しなくなった

e-birdに深刻な不具合が発生 不具合は20本のトランスポンダ全てに影響

火星周回中の探査機「マーズオデッセイ (Mars Odyssey)」の観測機器放射線観測装置「Martian Radiation Environment Experiment (MARIE)」が太陽活動の影響により10月28日から適切に作動しなくなった データ中継技術衛星(DRTS)「こだま」 太陽捕捉モードに移行

太陽陽子

帯電放電不具合-Galaxy15(局所的的現象)- 2

5 M

eV

65

MeV

11

5 M

eV

GOES 14 ----- GOES 15 ----- GOES 11 -----

Satellite Locations

Galaxy 15 anomaly

2010年4月5日9時48分UTCは磁気嵐及びCMEが発生するなど宇宙環境は非常に荒れていたGalaxy15衛星は真夜中側に位置し宇宙環境の影響を受けやすい

位置にいたことから宇宙環境による不具合である可能性が高いということで原因追及がなされた高エネルギー粒子が引き起こす代表的な衛星不具合現象として3つ(表面帯電内部帯電SEUシングルイベントバーンアウトSEL)の可能性を検討した

チームの報告書によると磁気圏尾部からの熱電子の流入による放電が原因であったと結論付けられたGalaxy15衛星の近くにはGOES-11衛星が位置していたがGOES-11衛星には不具合を発生しておらず本現象は局所的な現象と推測される

衛星開発段階における対策 JAXAの不具合解析の結論

bull 2002年~2008年に運用された11機の衛星不具合を解析 宇宙環境による不具合は偶発故障のみ(全体の約15)確率的には想定範囲内ではあるがその影響を最小限とするためディレーティング運用モード寿命についての研究に取り組む

bull 設計基準試験の充実検証確認の強化技術成熟度(TRL)評価の徹底各々の境界制約条件の明示化等により検証不足抜けの防止有効なピアレビューに結びつける

冗長系(同じハードウェア機能の冗長)柔軟性の設計(ソフトハードの対応)

bull 従来の故障が起きないようにする設計に対してGOSAT(いぶき)では重要部

品を二重化することにより故障する可能性は上がるが故障しても衛星バスの運用や観測が続行できる可能性がより高くなるように設計した

運用における対応

bull 宇宙天気監視ーロケット打ち上げ及び宇宙飛行士支援 数日前に今後の宇宙環境の推移を把握(MXレベルのフレアの発生確率)

bull X線の増加で太陽フレア発生を検知したら高エネルギー粒子の発生をいつまで 気を付ければ良いか判断(発生位置で大凡を推定するが課題は多い) SPEが発生した場合(特に10MeV以上100MeV 以上の陽

子)最大値フラックス値の推定 ピーク値を予測(特に閾値に近くなった時に重要)

bull 衛星運用 bull 太陽フレア磁気嵐警報(X線陽子及びkpが閾値を超えた

時に警報を発信)2003年10月より運用開始 bull 内部帯電警報(2日後の静止軌道上の高エネルギー電子(>1

Me) の増加を予測し 閾値を超えた時に警報を発信) 2004年4月より運用開始

話の流れ

技術データ取得装置(TEDA)の概要と成果 bull 主な成果 bull 不具合解析例

宇宙天気のリスクと対策 bull 宇宙環境による衛星システムへの影響 bull 宇宙環境を原因とする不具合の割合推移部位 bull 静止軌道不具合 bull 対策

今後必要な観測項目

まとめ

計測対象計測項目 計測対象 粒径100μm以上のデブリメテオロイド 計測項目 デブリ粒径衝突頻度

基本原理

厚さ約125μmの絶縁性のポリイミドフィルム表面に 100μm周期で直線状の細長い導線(太さ50μm)パターンを形成導線の破断を電気的に検知することによりデブリの衝突(貫通)を検知する破断した導線の数導線の幅ピッチからデブリサイズを計測する

微小デブリ計測技術の概要

衝突孔の例(衝突試験ISAS) - 衝突粒子 SUS 309 microm - 衝突速度 52 kms

HTV5号機によるセンサ機能のフライト実証

35cm

46cm

FY2013機能実証モデル

検出線幅 50 μm 検出線間隔 100 μm フィルム厚 lt 20 μm 有感領域 30times33cm 検出線総数 3300本

サイズ 50times39times4 cm (筐体を含む)

重量 約15kg(筐体を含む)

消費電力 2W(最大4W)(他センサ含む)

テレメトリ 02 bps

宇宙環境観測装置KASPERの一部としてデブリセンサSDMを搭載 FY2013に製作開始今年8月に打ち上げ予定)

まとめ(その1)

衛星不具合の主な原因は帯電放電シングルイベント放射線損傷である今後デブリ環境が重要になると予測される

静止軌道では商用衛星が多く運用されており宇宙環境の変動把握は重要この領域で運用する衛星が気を付けなければいけない環境として

1太陽フレアに伴う高エネルギー粒子 2太陽活動下降期による静止軌道電子の増加 3磁気嵐に伴う磁気圏尾部から注入する粒子 などがあげられる

まとめ(その2)

不具合軽減の取り組み bull 開発時は宇宙環境条件(トータルフラックス及び最悪条

件)を明確にし設計(冗長系柔軟性の設計ディレーティング及び運用モード寿命について研究)試験の充実検証の充実を図る

bull 運用段階に入ったならば宇宙環境を監視し警報等で故障を防ぐ

予測課題 bull 太陽フレアに伴う高エネルギー粒子発生後フラックス

ピーク値の推定

bull 衛星により不具合の起きる閾値は異なるが閾値をこえる急激な電子フラックスの増加と継続時間の予測

bull 局所的な磁気嵐に伴う磁気圏尾部から注入する粒子

宇宙環境グループは宇宙ステーションと衛星プロジェクトの安全な遂行に貢献しています

ご静聴ありがとうございました

補足資料

不具合原因の推移 bull 宇宙天気を大きく左右する要因の1つとして約11年の太陽活動変化が挙げられる

bull 太陽活動下降時期(太陽変動CME)と極大期(フレアCME)に衛星で不具合が増加するそれにより不具合原因の割合が変わる

-Koons et al The Impact of the Space Environment on Space Systems Aerospace Corp report no TR-99(1670)-1 20 July 1999 -2009 preliminary study (unpublished)

何故不具合は減らないか

bull 部品 放射線に対する感受性が高くなっている bull 微細化が進み同時にフォールトするノードが増え同時にエ

ラーとなる論理ノードやメモリセルが増加する微細化によってメモリセルは小さくなるので記憶容量当たりでみるとエラーの発生率は下がるしかし半導体チップの記憶容量やゲート数が増えるので半導体チップ当たりのエラー発生率は微細化とともに上昇するまた蓄積電荷が小さくなり感受性が高くなってきている

bull システム 大型化大電力化運用長期化 bull 1990年代末以降静止衛星の電力が10kWレベルになったしか

し設計検証技術データ蓄積が遅れている改善されつつあると推測される

放射線による影響の概要

粒子 エネルギー又はLET

代表的な影響

陽子 100keV-1MeV 1-10MeV 10-100MeV gt50MeV

表面損傷 表面材料と太陽電池の損傷 放射線損傷(電離非電離損傷の両方)センサーへのノイズ シングルイベント効果

電子 10-100keV gt100keV gt1MeV

表面帯電 深部帯電現象(deep-dielectric charging)センサーへのノイズ太陽電池の損傷 放射線損傷(電離)

重イオン gt1MeV-cm2mg シングルイベント効果

注エネルギー及びLETは個々の部品等により異なりますあくまでも目安です

耐放射線設計手順

軌道条件

ミッション期間

環境条件設定

トータルドーズの予測

1MeV電子換算被曝算出

NIELの換算

LETフルエンス算出

陽子フルエンス算出

対  策  の  検  討

対  策  の  検  討

対  策  の  検  討

放射線による劣化率予測

劣化率予測 特性予測

耐性データ

放射線による劣化率予測

耐性データ

劣化率予測アレイ出力劣化予測

感受性データ

シングルイベント発生率予測 致命度解析

衛星内質量分布

(2)

部品材料の選定

他の要因による劣化率予測

(2)(2) (3)

回路設計等NO

OK

アレイ構造 セル選定

他の要因による劣化率予測 アレイ設計(2)

(2) (2) (2) (3)

衛星内質量分布 部品選定(2)

(2) (2)(3)

NO

OK

NO

OK

(1) 環境モデルマージを含む(2) 部品レベルの検討(3) アセンブリレベルでの検討(4) 設計マージン環境モデル   マージを含め大丈夫か

トータルドーズ

太陽電池アレイの劣化

シングルイベント効果

回路設計

補足放射線太陽宇宙線銀河宇宙線

NEILを用いたダメージファクターの算出

対  策  の  検  討

放射線による劣化率予測

劣化率予測 特性予測

耐性データ

(2)

部品材料の選定

他の要因による劣化率予測

(2)(2) (3)

回路設計等NO

OK

衛星内質量分布 半導体デバイスの変位損傷

(1)

(4)

(4)

(4)

(4)

各軌道における放射線環境

1E+10

1E+11

1E+12

1E+13

1E+14

1E+15

1E+16

1E+17

1E+18

1E+19

1E+20

001 010 100 1000

捕捉

電子

の積

分フ

ルエ

ンス

[m

2 ]

エネルギー[MeV]

各軌道における電子捕捉積分フルエンス(3年間)

LEO

EOS GEO

MEO

GTO

GEO 軌道傾斜角 0deg 高度36000km GTO 軌道傾斜角 18deg 高度 360km~36000km MEO 軌道傾斜角 51deg 高度 10000km EOS 軌道傾斜角 98deg 高度705km LEO 軌道傾斜角 29deg 高度 600km

1E+12

1E+13

1E+14

1E+15

1E+16

1E+17

1E+18

1E+19

1E+20

01 10 100 1000

捕捉

陽子の

積分フルエン

ス[

m2 ]

エネルギー[MeV]

各軌道における捕捉陽子積分フルエンス(3年間)

MEO

GTO

GEO

EOS LEO

放射線による部品材料の影響

総照射線量 (TIDTotal Ionising Dose )

電離損傷

バイポーラTrの電流増幅率の低下リーク電流の増大

γ線で評価

トータルドーズ効果

変位損傷 (DDDisplacement Damage )または 非イオン化エネルギー損失 (NIELNon-Ionising Energy

Loss )

変位損傷(格子欠陥の生成)

電荷輸送効率の低下 (CCD)太陽電池の効率低下等

電子陽子により評価

シングルイベント効果

1個の荷電粒子の入射により発生する誤動作

ソフト(Latch-Up Burnout) エラー又は ソフト (Upset) エラー

陽子及び重イオンで評価

トータルドーズ効果

+ - + + - + - + - - + + + + -

ゲート酸化膜

電離

格子欠陥

正電荷捕獲

+ 正孔 - 電子

電極

(Silicon oxidenitride)

荷電粒子

反跳原子

ゲート絶縁膜中に電荷が蓄積することによるMOSトランジスタのしきい電圧(MOSトランジスタがオフからオンに変化するゲート電圧)の変化をもたらすただ

し最近の最先端チップはゲート絶縁膜がきわめて薄くなっているこのためゲート絶縁膜よりもフィールド絶縁膜(隣接するトランジスタを電気的に分離する絶縁膜)での電荷蓄積が相対的には大きな問題になってきている」

シングルイベント効果

メモリセルはNチャンネルとPチャンネルMOSFETより構成されメモリ情報は回路ノード12の電位の

高低により記録している空乏層の広がっているPN接合12の領域に

重イオンが入射した場合電荷の発生と空乏層内への少数キャリアの収集が起こるこの収集電荷量が回路の耐量を越えた場合(c)に示すように反転が起こる(ソフトエラー)一方pウエル-N基板接

合の空乏層内に電荷収集量が起こりえる耐性を越えると寄生的に存在するPNPNサイリスタ構造がオ

ンし電源と基板間に大電流が流れる状態が生じる(ラッチアップ)

シングルイベントメカニズム -陽子と重イオンの違い-

エラー発生率の計算

線エネルギー付与(LET) (linear energy transfer)

電離性放射線が物質中を通過する際飛程の単位長さ当りに平均して失うエネルギーをいう各種の放射線のうちX線γ線はLETが小さいので低LETといいα線中性子線その他重イオン核分裂破片のLETは大きいので高LETという MeVμmMeV(gcm2)やMeV(mgcm2)で表される

南大西洋異常(SAA) bull 地球の自転軸と磁気軸のずれ

darr bull 放射線帯が自転軸に対して非

対称

bull 南大西洋上空では放射線帯内帯が低高度に落ちてきているこの領域を南大西洋異常域(SAA South Atlantic Anomaly)と呼ぶ

bull 地球観測衛星ではSAAで放射線帯陽子の影響を受ける

Single Event Lachup

シングルイベントと陽子分布

MOS-1衛星(高度909km軌道傾斜角99度)で発生したシングルイベントと 陽子30MeV以上の等高線マップを重ね合わせた結果

NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)

bull 入射粒子が電離によらず与える損傷非イオン化損失

低軌道での電子フラックスと 不具合の発生場所

南大西洋異常(SAA)と極の角

高度800kmでの電子フラックス図極の角(polar horn)とSAAを示す

太陽粒子線 bull 太陽高エネルギー粒子線(SPE Solar Proton Events)は太陽フレア とコロナガス噴出 (CMECoronal Mass Ejections )により引き起こされる bull フレアのスペクトルは可変であるためあるエネルギー域における最悪状態イベントは必ずしも別のエネルギー域における最悪条件ではない 1972年8月のイベント 10~70MeVの粒子が最も多かった 1989年10のイベント 1972年8月のイベントに比べ低エネルギー領域 高エネルギー領域が明らかに激しかった

フルエンス 105 to 1011 cm-2

変動期間 1日から数日

ldquoBastiliardquo Solar Event 14 July 2000

Carrington Flare

84

(LW Townseed) Carrington Flare(1859年) Carrington Flare による30MeV以上トータルFluenceを118times109cm-2で規格化 ~1989年フレアの約13倍(シングルイベントの評価で使用) ~1991年フレアの約9倍 2012年7月23日にキャリントンイベントとほぼ同等の爆発現象が太陽あるいは太陽の周りで起きていたということがNASAの太陽観測衛星「STEREO」の解析から発表された

放射線対策 bull 放射線シールドを付加し放射線を減衰させる

bull 放射線耐性の強い部品(SOI(Silicon On Insulator)技術による耐放射線部品)材料に変更する

bull 放射線による損傷を吸収するために回路または構造上のマージンを持たせる bull ソフト的なエラーに対しては エラー検出訂正機能や多数決

機能等でソフト的エラーが起きてもシステムが機能するようにしたフォールトトレラント機能を付けて対処する ICのハード的故障に対しては ラッチアップ耐性の強い部品を選定するしかないが 電流制限回路を付ける対策も採られる パワーMOSFETに対しては部品選定 電源電圧を規格値の半分以下に落とす等の対策を採る

SOI技術

表面帯電への対策例

表面の物体間を導線で結線する

太陽電池のカバーガラスを導電性被膜付き(酸化インジウムITO)にする

熱制御材表面にITOを被覆する

熱制御材は高誘電率のテフロンの使用を避け 高伝導度耐環境性に優れたブラックカプトンを使用

イオンエンジンの中和器で能動帯電制御

内部帯電への対策例

アルミで3mm厚さに相当するシールドで囲む(Faraday Cage)

テフロンやカプトンなどの誘電体材料の内部での使用量を最小限に押さえる

回路基板やコンフォーマルコーティングは誘電体なので電流リークパス(1012Ωcmまたは1012Ωcm2

程度)を必ずつける

特にスポット的な放射線シールドの金属材には必ず電流リークパスをつける

帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備

衛星モデル作成

材料物性テーブル設定

宇宙環境パラメータ設定

Converter

転送ディレクトリ 解析データファイル

転送

解析ディレクトリ生成 解析結果 進行状況チェック ファイル操作

MUSCAT 解析エンジン

解析結果 表示

パラメトリックラン

オプション 解析

大型パネル実験(35mtimes11m) クーポンパネル実験(26cmtimes16cm)

環境模擬試験 環境模擬試験

MUSCATに使用する物性値設計標準制定のための知見などを得ることを目的に軌道上の宇宙環境を模擬した地上試験を行っている これらの試験では放電の発生頻度や電圧閾値放電発生による太陽電池パネルや搭載機器への影響を検証している

放射線計測装置の原理

bull その粒子が物質を通過する際のエネルギー損出率が粒子の電荷(原子番号)Zの二乗に比例すること(Bethe-Blochの式)を利用する

S2

E

ΔE Ersquo

S1 S3

  • 宇宙機の設計のための宇宙環境
  • 話の流れ
  • 話の流れ
  • TEDA(技術データ取得装置)(国産部品の宇宙環境での実証の必要性)
  • ETS-VTEDA(技術データ取得装置)誕生前の部品の宇宙実証の背景
  • スライド番号 6
  • スライド番号 7
  • スライド番号 8
  • スライド番号 9
  • 図6太陽黒点数と静止軌道電子 (>04MeV ) Flux の変動 (ETS-V搭載DOMによる観測)
  • スライド番号 11
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの開発(理研東大と共同で宇宙環境計測の充実)
  • ETS-VI(きく6号)打ち上がったがGEOに行かずGTOに留まる
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの成果
  • スライド番号 15
  • スライド番号 16
  • スライド番号 17
  • ADEOS搭載TEDA(世界2番目の異常宇宙線ACR)
  • BBND (ボナー球中性子検出器)
  • スライド番号 20
  • ISS搭載BBNDの成果(約8か月)
  • スライド番号 22
  • MDS-1搭載放射線吸収線量モニタ(SDOM)
  • 放射線帯変動モデルの開発MDS-1 065 MeV 電子フラックス
  • 変動パラメータの選択 (1 cycle solar activity)
  • 変動パラメータ- Tavg の定義-
  • 065MeV 電子 L値-Tavg マップ
  • 13MeV 陽子 L値-Tavg マップ
  • 電子観測とMDS-1モデルの比較
  • 放射線帯フラックスピークの変動
  • 陽子観測とモデルの比較
  • 電子(035~078MeV) 1日の変動予測GOSAT軌道
  • 電子(035~078MeV) 変動の信頼度水準(1日)GOSAT軌道
  • MDS-1 model と AE-8 modelとの比較1日
  • 話の流れ
  • 2003年10月 みどり号の全損事故(複合現象)
  • 衛星帯電の基本式
  • 内部帯電
  • パドルでの帯電放電メカニズム
  • スライド番号 40
  • スライド番号 41
  • スライド番号 42
  • データ中継技術衛星DRTS (こだま)の不具合
  • DRTS ESA スパイクノイズと電子フルエンスの比較(赤の丸が異常検知)
  • 不具合が宇宙環境によるものであるか判断する際のポイント
  • 話の流れ
  • 宇宙天気のリスク-宇宙環境によるシステムへの影響 -
  • NASAの報告-GNampCに注目-
  • NASAの報告(続き)
  • 宇宙環境を原因とする不具合の割合-JAXAの場合-
  • 不具合発生部位の割合 
  • Satellite News Digest -静止軌道不具合-
  • 太陽活動と静止軌道衛星不具合例
  • スライド番号 54
  • スライド番号 55
  • スライド番号 56
  • 衛星開発段階における対策
  • 運用における対応
  • 話の流れ
  • スライド番号 60
  • スライド番号 61
  • まとめ(その1)
  • まとめ(その2)
  • 宇宙環境グループは宇宙ステーションと衛星プロジェクトの安全な遂行に貢献しています
  • 補足資料
  • 不具合原因の推移
  • 何故不具合は減らないか
  • 放射線による影響の概要
  • 耐放射線設計手順
  • 各軌道における放射線環境
  • 放射線による部品材料の影響
  • トータルドーズ効果
  • シングルイベント効果
  • シングルイベントメカニズム-陽子と重イオンの違い-
  • エラー発生率の計算
  • 線エネルギー付与(LET)(linear energy transfer)
  • 南大西洋異常(SAA)
  • Single Event Lachup
  • シングルイベントと陽子分布
  • NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)
  • 低軌道での電子フラックスと不具合の発生場所
  • 南大西洋異常(SAA)と極の角
  • スライド番号 83
  • Carrington Flare
  • 放射線対策
  • スライド番号 86
  • スライド番号 87
  • 帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備
  • スライド番号 89
  • 放射線計測装置の原理
Page 18: 宇宙機の設計のための宇宙環境の方針から国産部品開発(42品種)が実施された。 . 半導体電子部品は耐放射線性を加味して、人工衛星(特に

ADEOS搭載TEDA (世界2番目の異常宇宙線ACR)

bull シングルイベント評価のための重イオン観測であったが世界2番目の異常宇宙線を観測することができた

bull 低軌道の衛星は地球磁場が邪魔となって宇宙線(重イオン)を観測するに向いていないと考えられていたが異常宇宙線を観測するのにすぐれていることが明らかとなった

T Kohno et al Radiation Measuremets 30 5 PP639-644

BBND (ボナー球中性子検出器)

bull 1994年(平成6)年7月に中性子計測のために ボナー球ホスウイッチ方式及びシンチレーションファイバーの3種類のセンサの研究をスタート

bull シャトル打ち上げ計画の管理者から搭載装置の検討依頼がありBBNDのSTS-89への搭載が決定した(1997年1月頃)

bull 振動試験で装置内のボルトが外れるという不具合もあったが約1年という非常に短期間で搭載品を開発することができた

bull コスト低減のために構造解析を自前で実施したりデータ処理ソフトウェアも内作した

熱中性子に対して高い感度を持つ6個の3Heガス入り比例計数管で構成して

いる中性子は電荷をもたないのでそれ自身には電離作用がないが軽い原子の3He気体では反跳原子を生じたり中性子の核反応(3He+nrarrp+3H+765KeV)によって荷電粒子を生じるので間接的に電離を起こす下図のように気体中に二つの電極を置き高電圧(1000V)をかけておくと中性子の入

射によって気体中に生じた陽子イオンと電子のイオン対がそれぞれの電極に向かって流動し外部回路に電離電流が流れるこの電気パルスにより中性子を計測する

ボナー球型中性子モニタの概要

Polyethylene Sphere3He proportional Counter

51 φ 51 φ81 φ110 φ150 φ230 φ

Sensor6 Sensor5 Sensor4 Sensor3 Sensor2 Sensor1

Covered by Gadolinium

[mm]3Heガス入り比例計数管の原理

6個のボナー球の断面図

3Heガス入り比例計数管とポリエチレン減速材

H Matsumotoet al Radiation Measurements 33 (2001) 321-333

ISS搭載BBNDの成果(約8か月)

実験期間中の平均的な等価線量等量率 (2001年3月23日~2001年11月14日)

太陽フレア時(2001年11月4日)

等価量等量率の平均は94μSv日で年率に換算すると34mSv年となるこれは地上において自然界から受ける等価線量当量率の約14倍に相当する 実験期間中に多数の太陽フレアが発生した2001年11月4日の太陽フレアにより019mSVの増加を観

測したこれは自然界から受ける等価線量当量率の約1か月分に相当するしかしBBNDの約8か月

の実験期間中の全等価線量当量に対するこの太陽フレアの影響の寄与分は1以下であった また搭載位置による環境の違いも確認された

H Koshiishiet al Radiation Measurements 42(2007) 1510-1520

1)船内の計測結果より低エネルギー側で2~3桁高エネルギー側で1~2桁低い 2)船内より船壁が薄く中性子が少ない環境より自然のアルベド中性子環境に近い

中性子被曝線量の ISS船外(SEDA-AP)と船内(STS-89)の比較

MDS-1搭載放射線吸収線量モニタ(SDOM) SiTungstenAlBGO

② ⑦

⑧⑧

① Collimator ② Window③ SSDs ④ Plastic Scintillator⑤ Anticoincidence Scintillator(ACS)⑥ Beam Stop⑦ Scintillator PMT⑧ ACS PMT

運用期間 2002年2月 ndash 2003年9月 軌道 -軌道傾斜角 285deg 1 lt BB0 le 84 -高度 500 km times 36000km 11 le L le 10 -軌道周期 約10時間35分 -スピンレート 5rpm

計測エネルギー範囲 Electron 04- 9MeV (5bins) Proton 09-210MeV (12bins) He 6-140MeV (4bins) Heavy Ion 15- 60MeVnuc (1bin) G-Factor 001cm2sr

放射線帯変動モデルの開発 MDS-1 065 MeV 電子フラックス

変動パラメータの選択 (1 cycle solar activity)

太陽風速度(SW)

太陽黒点数(R)

Ap指数

F107

変動パラメータ- Tavg の定義-

1日後の予測

パラメータスケールの時間平均 ApTavg SWTavg F107 Tavg

T days

放射線帯の構造は変動パラメータ値の大きさと継続時間に相関がある

065MeV 電子 L値-Tavg マップ

APTavg

SWTavg

13MeV 陽子 L値-Tavg マップ

APTavg

F107Tavg

電子観測とMDS-1モデルの比較

80 175

放射線帯フラックスピークの変動

80orbits (平穏時) 175orbits (擾乱時)

陽子観測とモデルの比較

電子(035~078MeV) 1日の変動予測GOSAT軌道

0

50

100

150

200

250

1E+09

1E+10

1E+11

1E+12

1984 1986 1988 1990 1992 1994 1996 1998 2000 2002 2004 2006 2008

Flue

nce[

ecm

2M

eVd

ay]

Launch day

FluenceSSN

Worst case Nov 12003

電子(035~078MeV) 変動の信頼度水準(1日)GOSAT軌道

00

01

02

03

04

05

06

07

08

09

10

88 90 92 94 96 98 100 102 104 106 108 110 112 114

Con

fiden

ce le

vel

Fluence[LOG10 ecm2MeVday]

AE-8 MAX

AE-8 MIN

MDS-1 model と AE-8 model との比較1日

0

20

40

60

80

100

120

140

160

180

1E+09

1E+10

1E+11

1E+12

1995 1997 1999 2001 2003 2005 2007 2009

Flue

nce[

ecm

2M

eVd

ay]

Launch day

Fluence(JAXA)Fluence(AE8)SSN

話の流れ

技術データ取得装置(TEDA)の概要と成果 bull 主な成果 bull 不具合解析例

宇宙天気のリスクと対策 bull 宇宙環境による衛星システムへの影響 bull 宇宙環境を原因とする不具合の割合推移部位 bull 静止軌道不具合 bull 対策

今後必要な観測項目

まとめ

2003年10月 みどり号の全損事故 (複合現象)

極域のオーロラ帯を通過中に電力ハー

ネスを巻いているMLIが高エネルギー電

子により帯電

MLIが接地されていなかったため内側

のハーネスとの間に1kV以上の電位差が

発生

MLI内のガス密度が発電開始に伴う温度

上昇により上昇

ハーネス被覆の傷により露出したハーネ

ス芯線とMLI内面の間で放電発生

単発の放電が隣接するハーネスに飛び火

してハーネス間の短絡

アーク放電が次々と伝搬していきハー

ネス全体が焼損

故障推定箇所 (大電力ハーネス部)

bull詳細報告書は文部科学省 宇宙開発委員会のHP参照

httpwwwmextgojpb_menushingiuchuureports04080901htm

bull 人工衛星の電位 bull 人工衛星は電気的に宇宙に浮いている bull 宇宙機構造体が接地点 bull 宇宙機への流入電流と流出電流のバランスによって宇宙機電位が決まる bull 各電流成分は宇宙機電位Vの関数として表され定常状態では式を下式を満たす

衛星帯電の基本式

( ) dtIIIIIIIC

V

dtdVCVIVIVIVIVIVIVI

BPHBSESISEIE

BPHBSESISEIE

int +++++minus=

==+++++minus

1

0)]()()()()()([)(

入射電子電流 ( E I )

後方散乱電子電流 ( BSE I )

入射正イオン電流 ( I I )

入射電子による二次電子電流 ( SE I )

太陽光

入射正イオンによる 二次電子放出電流 ( SI I )

光電子放出電流( PH I )

電荷ビーム放出電流(IB)

bull内部帯電は衛星の外壁を貫通した放射線帯外帯の01MeV以上の電子が内部に侵入

bull基板間や同軸ケーブルの線間等の容量(コンデンサ)や誘電体に帯電 bull接地されてない導体片に帯電

bullその耐圧電圧を超えると その耐圧の弱い箇所 (材質の欠陥や針状突起など の箇所)で放電して故障に至る

内部帯電

(あるエネルギ-以上の粒子が入射光電子なし)

NASA-HDBK-4002より

パドルでの帯電放電メカニズム

宇宙環境の影響により 衛星がマイナス電位に帯電

高エネルギー電子等により カバーガラスはプラスに帯電 衛星とカバーガラスに電位差が生じる

電位差が大きくなると トリプルジャンクション近傍 の電界強度が増大していく

トリプルジャンクションで放電が発生する カバーガラスの帯電が緩和される

+ + + + + + + + + + + + + +

+ + + +

カバーガラス

太陽電池セル

基板(衛星構体)

トリプルジャンクション rArr 導体絶縁体宇宙環境の接点

持続放電

Substrate

Satellite Load

insulation sheet

Solar array cell

Cover glass

Arc current

Electrode

持続放電は衛星の電力消失につながる 持続放電のモードは以下の2通りがある

Substrate

Satellite Load

insulation sheet

Solar array cell

Cover glass

Arc current

Electrode

Solar array cell

Cover glass

セル-基板間短絡 セル間短絡

放電によって太陽電池セルと基板が短絡する 短絡によって負荷に電力が供給されなくなる

放電によって太陽電池セルとセルが短絡する 短絡によって負荷に電力が供給されなくなる

サブストーム(高エネルギー電子)との遭遇

+ + + + + + + +

二次電子光電子による絶縁体の帯電(局所帯電)

電位差発生

逆電位勾配

衛星構体が負に帯電(絶対帯電)

電位

時間

サブストーム

衛星構体 VS

乖離電圧 ∆V

カバーガラスVcg

0 プラズマ電位

軌道別帯電放電現象

トリプルジャンクションで 放電発生

放電発生

静止軌道

+ + + + + + + +

逆電位勾配

軌道帯電放電現象

トリプルジャンクションで 放電発生

極軌道 オーロラ電子(高エネルギー電子)との遭遇

プラズマ流入出による絶縁体の帯電(局所帯電)

電位差発生

衛星構体が負に帯電(絶対帯電)

放電発生

電位

時間

オーロラ電子

衛星構体 乖離電圧 ∆V

カバーガラス

0 プラズマ電位

データ中継技術衛星DRTS (こだま)の不具合

2002年10月 9日 静止軌道に打ち上げ

2003年

3月24日 406JST変化率異常モニタ故障検出(FDIR)

が動作しA系からB系に切り替わった

3月25日 410JSTにB系のみ異常検知

4月 3日 327JSTにB系のみ異常検知

5月28日 124JSTにB系のみ異常検知

6月 6日1537JSTにB系のみ異常検知

ESA

DRTS ESA スパイクノイズと 電子フルエンスの比較(赤の丸が異常検知)

larr閾値

この事実を基に静止軌道における内部帯電警報システムを構築 2004年4月より運用開始

不具合が宇宙環境によるものであるか 判断する際のポイント

不具合の発生した時刻に太陽フレアや磁気嵐等の宇宙天気の大きな変動が起きていれば不具合に関係している可能性が高い但し帯電など放射線の積算的効果の伴う現象については発生から1週間位さかのぼり環境がどのように推移してきたかを考慮する必要がある

磁気嵐が起きると静止軌道に急激な粒子の増加現象が起きこれにより衛星帯電が引き起こされたりする(予測に利用可能)

地方時(真夜中や朝方か)や季節(春秋)を考慮する

低軌道衛星においてはSAA外帯のrdquo角ldquo及び極通過時に不具合

が起きやすいので衛星の位置(緯度経度)が重要

事象を把握する上で単発現象か数回起きている現象か周期

(時間同じ軌道等)的に発生している現象か

話の流れ

技術データ取得装置(TEDA)の概要と成果 bull 主な成果 bull 不具合解析例

宇宙天気のリスクと対策 bull 宇宙環境による衛星システムへの影響 bull 宇宙環境を原因とする不具合の割合推移部位 bull 静止軌道不具合 bull 対策

今後必要な観測項目

まとめ

宇宙天気のリスク -宇宙環境によるシステムへの影響 -

プラズマ (IRI)

帯電 (MUSCAT)

衝突 (AUTODY)

抗力 表面劣化

紫外線X線 中性粒子 (MSIS)

放射線粒子 (AE8AP8JPLSHIELDO

SE-2)

メテオロイドデブリ (MASTER2005

ORDEM)

電離損傷 変位損傷

bull電子回路の劣化 bull光部品の劣化

bull太陽電池セルの劣化

SEU (CREME96)

bullデータエラー bull画像ノイズ

bullシステム停止 bull回路損傷

bull熱的電気的光学的特性の劣化

bull構造の劣化 bullコンタミ

電磁パルス bull電源出力低下

bull損傷

bullトルク bull軌道落下

bull構造 損傷 bull減圧

bull電磁パルス

NASAの報告 -GNampCに注目-

1974年から1994年に起きたNASAと空軍の衛星故障の内20~25が宇宙環境に起因していたと報告

1990年から2001年に米国欧州カナダ日本の企業や政府機関が開発した衛星を調べた過去の宇宙ミション損失の大部分はロケットの失敗であったが1998年衛星損失の大部分は軌道上の衛星障害となっている多くの最近の異常は太陽電池アレイ及びバッテリの危険が増加している静止軌道通信衛星の設計寿命はこのサブシステムの故障の危険が増加している

喪失等の大きな誘導制御(GNampC)の不具合に注目 GNampC不具合の内宇宙環境による 不具合は約3と報告されている

軌道上衛星のタイプ別数

NASAの報告(続き)

衛星設計寿命における不具合発生時期 事故率と軌道

軌道別の衛星数 サブシステム不具合

宇宙環境を原因とする不具合の割合 -JAXAの場合-

2002年~2008年に運用された軌道上不具合情報が比較的充実している11衛星(利用衛星7機科学衛星4機)の結果宇宙環境によるも

のは約15過去のデータよりも割合が少ない

合計83件 合計35件

(1)利用衛星 (2)科学衛星

設計検討 不足 48

製造不良 8

軌道上環境 17

偶発故障 6

調査中 13

原因不明 8

設計検討

不足 61

製造不良 4

軌道上環境 11

偶発故障 6

調査中 9

原因不明 9

不具合発生部位の割合

不具合発生部位の割合

Brent Robertson Eric Stoneking ( 1990-2001NASA Goddard Space Flight Center )

Satellite News Digest -静止軌道不具合-

Satellite News Digest (SND) (http wwwsqt-indexcouk) で1997年~2009年の期間に静止軌道で95件の不具合が報告されている その内運用ミスや設計ミスなどを除くと32件(約33)は宇宙環境によるものであった 過去のデータより割合が多い

Choiら1)はこれら不具合の地方時と季節依存性を確認した その結果2100LT~900LTで約72の不具合が発生し900LT~2100LTは9件(約28)であった またこの9件は全て姿勢制御の不具合だった 静止軌道衛星不具合のほとんどは真夜中と朝方で起きており磁気嵐に伴い磁気圏尾部から注入した粒子による表面帯電が不具合の主原因と結論づけている

1) Ho-sung Choi et al Analysis of GEO spacecraft anomalies Space weather relationships Space Weather Vol 9 S06001

太陽活動と静止軌道衛星不具合例

ANIK-E1E2

ANIK-E1

複数の衛星で故障

Galaxy-15

帯電放電不具合 -ANIK-E1amp2Telstar401-

Jan 1994 ANIK-E1 amp E2事故時の環境 - Joe H Allen

1週間

太陽活動下降時期の電子増加

2MeV以上電子

copyNOAA Web

フラックスが3桁急増

Jan 1997 Telstar401事故時の環境

静止軌道の急激な電子増加

太陽極大期太陽フレアによる衛星障害 - 2003年10月~11月-

10486981048698 永久故障 4 10486981048698 安全モード又は運用を一時停止 31 10486981048698 データ内容の「誤り」の増加搭載コンピュータの誤動作 5

httpwwwsat-ndcomfailures等のデータによる 合計 40件

-Barbieri and Mahmot

米国極軌道気象衛星NOAA-17の改良型マイクロ波観測装置AMSU-A1 (Advanced Microwave Sounding Unit)のスキャナーが永久故障 米国気象衛星GOES -8号のX線センサがOFFになり復帰しなくなった

e-birdに深刻な不具合が発生 不具合は20本のトランスポンダ全てに影響

火星周回中の探査機「マーズオデッセイ (Mars Odyssey)」の観測機器放射線観測装置「Martian Radiation Environment Experiment (MARIE)」が太陽活動の影響により10月28日から適切に作動しなくなった データ中継技術衛星(DRTS)「こだま」 太陽捕捉モードに移行

太陽陽子

帯電放電不具合-Galaxy15(局所的的現象)- 2

5 M

eV

65

MeV

11

5 M

eV

GOES 14 ----- GOES 15 ----- GOES 11 -----

Satellite Locations

Galaxy 15 anomaly

2010年4月5日9時48分UTCは磁気嵐及びCMEが発生するなど宇宙環境は非常に荒れていたGalaxy15衛星は真夜中側に位置し宇宙環境の影響を受けやすい

位置にいたことから宇宙環境による不具合である可能性が高いということで原因追及がなされた高エネルギー粒子が引き起こす代表的な衛星不具合現象として3つ(表面帯電内部帯電SEUシングルイベントバーンアウトSEL)の可能性を検討した

チームの報告書によると磁気圏尾部からの熱電子の流入による放電が原因であったと結論付けられたGalaxy15衛星の近くにはGOES-11衛星が位置していたがGOES-11衛星には不具合を発生しておらず本現象は局所的な現象と推測される

衛星開発段階における対策 JAXAの不具合解析の結論

bull 2002年~2008年に運用された11機の衛星不具合を解析 宇宙環境による不具合は偶発故障のみ(全体の約15)確率的には想定範囲内ではあるがその影響を最小限とするためディレーティング運用モード寿命についての研究に取り組む

bull 設計基準試験の充実検証確認の強化技術成熟度(TRL)評価の徹底各々の境界制約条件の明示化等により検証不足抜けの防止有効なピアレビューに結びつける

冗長系(同じハードウェア機能の冗長)柔軟性の設計(ソフトハードの対応)

bull 従来の故障が起きないようにする設計に対してGOSAT(いぶき)では重要部

品を二重化することにより故障する可能性は上がるが故障しても衛星バスの運用や観測が続行できる可能性がより高くなるように設計した

運用における対応

bull 宇宙天気監視ーロケット打ち上げ及び宇宙飛行士支援 数日前に今後の宇宙環境の推移を把握(MXレベルのフレアの発生確率)

bull X線の増加で太陽フレア発生を検知したら高エネルギー粒子の発生をいつまで 気を付ければ良いか判断(発生位置で大凡を推定するが課題は多い) SPEが発生した場合(特に10MeV以上100MeV 以上の陽

子)最大値フラックス値の推定 ピーク値を予測(特に閾値に近くなった時に重要)

bull 衛星運用 bull 太陽フレア磁気嵐警報(X線陽子及びkpが閾値を超えた

時に警報を発信)2003年10月より運用開始 bull 内部帯電警報(2日後の静止軌道上の高エネルギー電子(>1

Me) の増加を予測し 閾値を超えた時に警報を発信) 2004年4月より運用開始

話の流れ

技術データ取得装置(TEDA)の概要と成果 bull 主な成果 bull 不具合解析例

宇宙天気のリスクと対策 bull 宇宙環境による衛星システムへの影響 bull 宇宙環境を原因とする不具合の割合推移部位 bull 静止軌道不具合 bull 対策

今後必要な観測項目

まとめ

計測対象計測項目 計測対象 粒径100μm以上のデブリメテオロイド 計測項目 デブリ粒径衝突頻度

基本原理

厚さ約125μmの絶縁性のポリイミドフィルム表面に 100μm周期で直線状の細長い導線(太さ50μm)パターンを形成導線の破断を電気的に検知することによりデブリの衝突(貫通)を検知する破断した導線の数導線の幅ピッチからデブリサイズを計測する

微小デブリ計測技術の概要

衝突孔の例(衝突試験ISAS) - 衝突粒子 SUS 309 microm - 衝突速度 52 kms

HTV5号機によるセンサ機能のフライト実証

35cm

46cm

FY2013機能実証モデル

検出線幅 50 μm 検出線間隔 100 μm フィルム厚 lt 20 μm 有感領域 30times33cm 検出線総数 3300本

サイズ 50times39times4 cm (筐体を含む)

重量 約15kg(筐体を含む)

消費電力 2W(最大4W)(他センサ含む)

テレメトリ 02 bps

宇宙環境観測装置KASPERの一部としてデブリセンサSDMを搭載 FY2013に製作開始今年8月に打ち上げ予定)

まとめ(その1)

衛星不具合の主な原因は帯電放電シングルイベント放射線損傷である今後デブリ環境が重要になると予測される

静止軌道では商用衛星が多く運用されており宇宙環境の変動把握は重要この領域で運用する衛星が気を付けなければいけない環境として

1太陽フレアに伴う高エネルギー粒子 2太陽活動下降期による静止軌道電子の増加 3磁気嵐に伴う磁気圏尾部から注入する粒子 などがあげられる

まとめ(その2)

不具合軽減の取り組み bull 開発時は宇宙環境条件(トータルフラックス及び最悪条

件)を明確にし設計(冗長系柔軟性の設計ディレーティング及び運用モード寿命について研究)試験の充実検証の充実を図る

bull 運用段階に入ったならば宇宙環境を監視し警報等で故障を防ぐ

予測課題 bull 太陽フレアに伴う高エネルギー粒子発生後フラックス

ピーク値の推定

bull 衛星により不具合の起きる閾値は異なるが閾値をこえる急激な電子フラックスの増加と継続時間の予測

bull 局所的な磁気嵐に伴う磁気圏尾部から注入する粒子

宇宙環境グループは宇宙ステーションと衛星プロジェクトの安全な遂行に貢献しています

ご静聴ありがとうございました

補足資料

不具合原因の推移 bull 宇宙天気を大きく左右する要因の1つとして約11年の太陽活動変化が挙げられる

bull 太陽活動下降時期(太陽変動CME)と極大期(フレアCME)に衛星で不具合が増加するそれにより不具合原因の割合が変わる

-Koons et al The Impact of the Space Environment on Space Systems Aerospace Corp report no TR-99(1670)-1 20 July 1999 -2009 preliminary study (unpublished)

何故不具合は減らないか

bull 部品 放射線に対する感受性が高くなっている bull 微細化が進み同時にフォールトするノードが増え同時にエ

ラーとなる論理ノードやメモリセルが増加する微細化によってメモリセルは小さくなるので記憶容量当たりでみるとエラーの発生率は下がるしかし半導体チップの記憶容量やゲート数が増えるので半導体チップ当たりのエラー発生率は微細化とともに上昇するまた蓄積電荷が小さくなり感受性が高くなってきている

bull システム 大型化大電力化運用長期化 bull 1990年代末以降静止衛星の電力が10kWレベルになったしか

し設計検証技術データ蓄積が遅れている改善されつつあると推測される

放射線による影響の概要

粒子 エネルギー又はLET

代表的な影響

陽子 100keV-1MeV 1-10MeV 10-100MeV gt50MeV

表面損傷 表面材料と太陽電池の損傷 放射線損傷(電離非電離損傷の両方)センサーへのノイズ シングルイベント効果

電子 10-100keV gt100keV gt1MeV

表面帯電 深部帯電現象(deep-dielectric charging)センサーへのノイズ太陽電池の損傷 放射線損傷(電離)

重イオン gt1MeV-cm2mg シングルイベント効果

注エネルギー及びLETは個々の部品等により異なりますあくまでも目安です

耐放射線設計手順

軌道条件

ミッション期間

環境条件設定

トータルドーズの予測

1MeV電子換算被曝算出

NIELの換算

LETフルエンス算出

陽子フルエンス算出

対  策  の  検  討

対  策  の  検  討

対  策  の  検  討

放射線による劣化率予測

劣化率予測 特性予測

耐性データ

放射線による劣化率予測

耐性データ

劣化率予測アレイ出力劣化予測

感受性データ

シングルイベント発生率予測 致命度解析

衛星内質量分布

(2)

部品材料の選定

他の要因による劣化率予測

(2)(2) (3)

回路設計等NO

OK

アレイ構造 セル選定

他の要因による劣化率予測 アレイ設計(2)

(2) (2) (2) (3)

衛星内質量分布 部品選定(2)

(2) (2)(3)

NO

OK

NO

OK

(1) 環境モデルマージを含む(2) 部品レベルの検討(3) アセンブリレベルでの検討(4) 設計マージン環境モデル   マージを含め大丈夫か

トータルドーズ

太陽電池アレイの劣化

シングルイベント効果

回路設計

補足放射線太陽宇宙線銀河宇宙線

NEILを用いたダメージファクターの算出

対  策  の  検  討

放射線による劣化率予測

劣化率予測 特性予測

耐性データ

(2)

部品材料の選定

他の要因による劣化率予測

(2)(2) (3)

回路設計等NO

OK

衛星内質量分布 半導体デバイスの変位損傷

(1)

(4)

(4)

(4)

(4)

各軌道における放射線環境

1E+10

1E+11

1E+12

1E+13

1E+14

1E+15

1E+16

1E+17

1E+18

1E+19

1E+20

001 010 100 1000

捕捉

電子

の積

分フ

ルエ

ンス

[m

2 ]

エネルギー[MeV]

各軌道における電子捕捉積分フルエンス(3年間)

LEO

EOS GEO

MEO

GTO

GEO 軌道傾斜角 0deg 高度36000km GTO 軌道傾斜角 18deg 高度 360km~36000km MEO 軌道傾斜角 51deg 高度 10000km EOS 軌道傾斜角 98deg 高度705km LEO 軌道傾斜角 29deg 高度 600km

1E+12

1E+13

1E+14

1E+15

1E+16

1E+17

1E+18

1E+19

1E+20

01 10 100 1000

捕捉

陽子の

積分フルエン

ス[

m2 ]

エネルギー[MeV]

各軌道における捕捉陽子積分フルエンス(3年間)

MEO

GTO

GEO

EOS LEO

放射線による部品材料の影響

総照射線量 (TIDTotal Ionising Dose )

電離損傷

バイポーラTrの電流増幅率の低下リーク電流の増大

γ線で評価

トータルドーズ効果

変位損傷 (DDDisplacement Damage )または 非イオン化エネルギー損失 (NIELNon-Ionising Energy

Loss )

変位損傷(格子欠陥の生成)

電荷輸送効率の低下 (CCD)太陽電池の効率低下等

電子陽子により評価

シングルイベント効果

1個の荷電粒子の入射により発生する誤動作

ソフト(Latch-Up Burnout) エラー又は ソフト (Upset) エラー

陽子及び重イオンで評価

トータルドーズ効果

+ - + + - + - + - - + + + + -

ゲート酸化膜

電離

格子欠陥

正電荷捕獲

+ 正孔 - 電子

電極

(Silicon oxidenitride)

荷電粒子

反跳原子

ゲート絶縁膜中に電荷が蓄積することによるMOSトランジスタのしきい電圧(MOSトランジスタがオフからオンに変化するゲート電圧)の変化をもたらすただ

し最近の最先端チップはゲート絶縁膜がきわめて薄くなっているこのためゲート絶縁膜よりもフィールド絶縁膜(隣接するトランジスタを電気的に分離する絶縁膜)での電荷蓄積が相対的には大きな問題になってきている」

シングルイベント効果

メモリセルはNチャンネルとPチャンネルMOSFETより構成されメモリ情報は回路ノード12の電位の

高低により記録している空乏層の広がっているPN接合12の領域に

重イオンが入射した場合電荷の発生と空乏層内への少数キャリアの収集が起こるこの収集電荷量が回路の耐量を越えた場合(c)に示すように反転が起こる(ソフトエラー)一方pウエル-N基板接

合の空乏層内に電荷収集量が起こりえる耐性を越えると寄生的に存在するPNPNサイリスタ構造がオ

ンし電源と基板間に大電流が流れる状態が生じる(ラッチアップ)

シングルイベントメカニズム -陽子と重イオンの違い-

エラー発生率の計算

線エネルギー付与(LET) (linear energy transfer)

電離性放射線が物質中を通過する際飛程の単位長さ当りに平均して失うエネルギーをいう各種の放射線のうちX線γ線はLETが小さいので低LETといいα線中性子線その他重イオン核分裂破片のLETは大きいので高LETという MeVμmMeV(gcm2)やMeV(mgcm2)で表される

南大西洋異常(SAA) bull 地球の自転軸と磁気軸のずれ

darr bull 放射線帯が自転軸に対して非

対称

bull 南大西洋上空では放射線帯内帯が低高度に落ちてきているこの領域を南大西洋異常域(SAA South Atlantic Anomaly)と呼ぶ

bull 地球観測衛星ではSAAで放射線帯陽子の影響を受ける

Single Event Lachup

シングルイベントと陽子分布

MOS-1衛星(高度909km軌道傾斜角99度)で発生したシングルイベントと 陽子30MeV以上の等高線マップを重ね合わせた結果

NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)

bull 入射粒子が電離によらず与える損傷非イオン化損失

低軌道での電子フラックスと 不具合の発生場所

南大西洋異常(SAA)と極の角

高度800kmでの電子フラックス図極の角(polar horn)とSAAを示す

太陽粒子線 bull 太陽高エネルギー粒子線(SPE Solar Proton Events)は太陽フレア とコロナガス噴出 (CMECoronal Mass Ejections )により引き起こされる bull フレアのスペクトルは可変であるためあるエネルギー域における最悪状態イベントは必ずしも別のエネルギー域における最悪条件ではない 1972年8月のイベント 10~70MeVの粒子が最も多かった 1989年10のイベント 1972年8月のイベントに比べ低エネルギー領域 高エネルギー領域が明らかに激しかった

フルエンス 105 to 1011 cm-2

変動期間 1日から数日

ldquoBastiliardquo Solar Event 14 July 2000

Carrington Flare

84

(LW Townseed) Carrington Flare(1859年) Carrington Flare による30MeV以上トータルFluenceを118times109cm-2で規格化 ~1989年フレアの約13倍(シングルイベントの評価で使用) ~1991年フレアの約9倍 2012年7月23日にキャリントンイベントとほぼ同等の爆発現象が太陽あるいは太陽の周りで起きていたということがNASAの太陽観測衛星「STEREO」の解析から発表された

放射線対策 bull 放射線シールドを付加し放射線を減衰させる

bull 放射線耐性の強い部品(SOI(Silicon On Insulator)技術による耐放射線部品)材料に変更する

bull 放射線による損傷を吸収するために回路または構造上のマージンを持たせる bull ソフト的なエラーに対しては エラー検出訂正機能や多数決

機能等でソフト的エラーが起きてもシステムが機能するようにしたフォールトトレラント機能を付けて対処する ICのハード的故障に対しては ラッチアップ耐性の強い部品を選定するしかないが 電流制限回路を付ける対策も採られる パワーMOSFETに対しては部品選定 電源電圧を規格値の半分以下に落とす等の対策を採る

SOI技術

表面帯電への対策例

表面の物体間を導線で結線する

太陽電池のカバーガラスを導電性被膜付き(酸化インジウムITO)にする

熱制御材表面にITOを被覆する

熱制御材は高誘電率のテフロンの使用を避け 高伝導度耐環境性に優れたブラックカプトンを使用

イオンエンジンの中和器で能動帯電制御

内部帯電への対策例

アルミで3mm厚さに相当するシールドで囲む(Faraday Cage)

テフロンやカプトンなどの誘電体材料の内部での使用量を最小限に押さえる

回路基板やコンフォーマルコーティングは誘電体なので電流リークパス(1012Ωcmまたは1012Ωcm2

程度)を必ずつける

特にスポット的な放射線シールドの金属材には必ず電流リークパスをつける

帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備

衛星モデル作成

材料物性テーブル設定

宇宙環境パラメータ設定

Converter

転送ディレクトリ 解析データファイル

転送

解析ディレクトリ生成 解析結果 進行状況チェック ファイル操作

MUSCAT 解析エンジン

解析結果 表示

パラメトリックラン

オプション 解析

大型パネル実験(35mtimes11m) クーポンパネル実験(26cmtimes16cm)

環境模擬試験 環境模擬試験

MUSCATに使用する物性値設計標準制定のための知見などを得ることを目的に軌道上の宇宙環境を模擬した地上試験を行っている これらの試験では放電の発生頻度や電圧閾値放電発生による太陽電池パネルや搭載機器への影響を検証している

放射線計測装置の原理

bull その粒子が物質を通過する際のエネルギー損出率が粒子の電荷(原子番号)Zの二乗に比例すること(Bethe-Blochの式)を利用する

S2

E

ΔE Ersquo

S1 S3

  • 宇宙機の設計のための宇宙環境
  • 話の流れ
  • 話の流れ
  • TEDA(技術データ取得装置)(国産部品の宇宙環境での実証の必要性)
  • ETS-VTEDA(技術データ取得装置)誕生前の部品の宇宙実証の背景
  • スライド番号 6
  • スライド番号 7
  • スライド番号 8
  • スライド番号 9
  • 図6太陽黒点数と静止軌道電子 (>04MeV ) Flux の変動 (ETS-V搭載DOMによる観測)
  • スライド番号 11
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの開発(理研東大と共同で宇宙環境計測の充実)
  • ETS-VI(きく6号)打ち上がったがGEOに行かずGTOに留まる
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの成果
  • スライド番号 15
  • スライド番号 16
  • スライド番号 17
  • ADEOS搭載TEDA(世界2番目の異常宇宙線ACR)
  • BBND (ボナー球中性子検出器)
  • スライド番号 20
  • ISS搭載BBNDの成果(約8か月)
  • スライド番号 22
  • MDS-1搭載放射線吸収線量モニタ(SDOM)
  • 放射線帯変動モデルの開発MDS-1 065 MeV 電子フラックス
  • 変動パラメータの選択 (1 cycle solar activity)
  • 変動パラメータ- Tavg の定義-
  • 065MeV 電子 L値-Tavg マップ
  • 13MeV 陽子 L値-Tavg マップ
  • 電子観測とMDS-1モデルの比較
  • 放射線帯フラックスピークの変動
  • 陽子観測とモデルの比較
  • 電子(035~078MeV) 1日の変動予測GOSAT軌道
  • 電子(035~078MeV) 変動の信頼度水準(1日)GOSAT軌道
  • MDS-1 model と AE-8 modelとの比較1日
  • 話の流れ
  • 2003年10月 みどり号の全損事故(複合現象)
  • 衛星帯電の基本式
  • 内部帯電
  • パドルでの帯電放電メカニズム
  • スライド番号 40
  • スライド番号 41
  • スライド番号 42
  • データ中継技術衛星DRTS (こだま)の不具合
  • DRTS ESA スパイクノイズと電子フルエンスの比較(赤の丸が異常検知)
  • 不具合が宇宙環境によるものであるか判断する際のポイント
  • 話の流れ
  • 宇宙天気のリスク-宇宙環境によるシステムへの影響 -
  • NASAの報告-GNampCに注目-
  • NASAの報告(続き)
  • 宇宙環境を原因とする不具合の割合-JAXAの場合-
  • 不具合発生部位の割合 
  • Satellite News Digest -静止軌道不具合-
  • 太陽活動と静止軌道衛星不具合例
  • スライド番号 54
  • スライド番号 55
  • スライド番号 56
  • 衛星開発段階における対策
  • 運用における対応
  • 話の流れ
  • スライド番号 60
  • スライド番号 61
  • まとめ(その1)
  • まとめ(その2)
  • 宇宙環境グループは宇宙ステーションと衛星プロジェクトの安全な遂行に貢献しています
  • 補足資料
  • 不具合原因の推移
  • 何故不具合は減らないか
  • 放射線による影響の概要
  • 耐放射線設計手順
  • 各軌道における放射線環境
  • 放射線による部品材料の影響
  • トータルドーズ効果
  • シングルイベント効果
  • シングルイベントメカニズム-陽子と重イオンの違い-
  • エラー発生率の計算
  • 線エネルギー付与(LET)(linear energy transfer)
  • 南大西洋異常(SAA)
  • Single Event Lachup
  • シングルイベントと陽子分布
  • NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)
  • 低軌道での電子フラックスと不具合の発生場所
  • 南大西洋異常(SAA)と極の角
  • スライド番号 83
  • Carrington Flare
  • 放射線対策
  • スライド番号 86
  • スライド番号 87
  • 帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備
  • スライド番号 89
  • 放射線計測装置の原理
Page 19: 宇宙機の設計のための宇宙環境の方針から国産部品開発(42品種)が実施された。 . 半導体電子部品は耐放射線性を加味して、人工衛星(特に

BBND (ボナー球中性子検出器)

bull 1994年(平成6)年7月に中性子計測のために ボナー球ホスウイッチ方式及びシンチレーションファイバーの3種類のセンサの研究をスタート

bull シャトル打ち上げ計画の管理者から搭載装置の検討依頼がありBBNDのSTS-89への搭載が決定した(1997年1月頃)

bull 振動試験で装置内のボルトが外れるという不具合もあったが約1年という非常に短期間で搭載品を開発することができた

bull コスト低減のために構造解析を自前で実施したりデータ処理ソフトウェアも内作した

熱中性子に対して高い感度を持つ6個の3Heガス入り比例計数管で構成して

いる中性子は電荷をもたないのでそれ自身には電離作用がないが軽い原子の3He気体では反跳原子を生じたり中性子の核反応(3He+nrarrp+3H+765KeV)によって荷電粒子を生じるので間接的に電離を起こす下図のように気体中に二つの電極を置き高電圧(1000V)をかけておくと中性子の入

射によって気体中に生じた陽子イオンと電子のイオン対がそれぞれの電極に向かって流動し外部回路に電離電流が流れるこの電気パルスにより中性子を計測する

ボナー球型中性子モニタの概要

Polyethylene Sphere3He proportional Counter

51 φ 51 φ81 φ110 φ150 φ230 φ

Sensor6 Sensor5 Sensor4 Sensor3 Sensor2 Sensor1

Covered by Gadolinium

[mm]3Heガス入り比例計数管の原理

6個のボナー球の断面図

3Heガス入り比例計数管とポリエチレン減速材

H Matsumotoet al Radiation Measurements 33 (2001) 321-333

ISS搭載BBNDの成果(約8か月)

実験期間中の平均的な等価線量等量率 (2001年3月23日~2001年11月14日)

太陽フレア時(2001年11月4日)

等価量等量率の平均は94μSv日で年率に換算すると34mSv年となるこれは地上において自然界から受ける等価線量当量率の約14倍に相当する 実験期間中に多数の太陽フレアが発生した2001年11月4日の太陽フレアにより019mSVの増加を観

測したこれは自然界から受ける等価線量当量率の約1か月分に相当するしかしBBNDの約8か月

の実験期間中の全等価線量当量に対するこの太陽フレアの影響の寄与分は1以下であった また搭載位置による環境の違いも確認された

H Koshiishiet al Radiation Measurements 42(2007) 1510-1520

1)船内の計測結果より低エネルギー側で2~3桁高エネルギー側で1~2桁低い 2)船内より船壁が薄く中性子が少ない環境より自然のアルベド中性子環境に近い

中性子被曝線量の ISS船外(SEDA-AP)と船内(STS-89)の比較

MDS-1搭載放射線吸収線量モニタ(SDOM) SiTungstenAlBGO

② ⑦

⑧⑧

① Collimator ② Window③ SSDs ④ Plastic Scintillator⑤ Anticoincidence Scintillator(ACS)⑥ Beam Stop⑦ Scintillator PMT⑧ ACS PMT

運用期間 2002年2月 ndash 2003年9月 軌道 -軌道傾斜角 285deg 1 lt BB0 le 84 -高度 500 km times 36000km 11 le L le 10 -軌道周期 約10時間35分 -スピンレート 5rpm

計測エネルギー範囲 Electron 04- 9MeV (5bins) Proton 09-210MeV (12bins) He 6-140MeV (4bins) Heavy Ion 15- 60MeVnuc (1bin) G-Factor 001cm2sr

放射線帯変動モデルの開発 MDS-1 065 MeV 電子フラックス

変動パラメータの選択 (1 cycle solar activity)

太陽風速度(SW)

太陽黒点数(R)

Ap指数

F107

変動パラメータ- Tavg の定義-

1日後の予測

パラメータスケールの時間平均 ApTavg SWTavg F107 Tavg

T days

放射線帯の構造は変動パラメータ値の大きさと継続時間に相関がある

065MeV 電子 L値-Tavg マップ

APTavg

SWTavg

13MeV 陽子 L値-Tavg マップ

APTavg

F107Tavg

電子観測とMDS-1モデルの比較

80 175

放射線帯フラックスピークの変動

80orbits (平穏時) 175orbits (擾乱時)

陽子観測とモデルの比較

電子(035~078MeV) 1日の変動予測GOSAT軌道

0

50

100

150

200

250

1E+09

1E+10

1E+11

1E+12

1984 1986 1988 1990 1992 1994 1996 1998 2000 2002 2004 2006 2008

Flue

nce[

ecm

2M

eVd

ay]

Launch day

FluenceSSN

Worst case Nov 12003

電子(035~078MeV) 変動の信頼度水準(1日)GOSAT軌道

00

01

02

03

04

05

06

07

08

09

10

88 90 92 94 96 98 100 102 104 106 108 110 112 114

Con

fiden

ce le

vel

Fluence[LOG10 ecm2MeVday]

AE-8 MAX

AE-8 MIN

MDS-1 model と AE-8 model との比較1日

0

20

40

60

80

100

120

140

160

180

1E+09

1E+10

1E+11

1E+12

1995 1997 1999 2001 2003 2005 2007 2009

Flue

nce[

ecm

2M

eVd

ay]

Launch day

Fluence(JAXA)Fluence(AE8)SSN

話の流れ

技術データ取得装置(TEDA)の概要と成果 bull 主な成果 bull 不具合解析例

宇宙天気のリスクと対策 bull 宇宙環境による衛星システムへの影響 bull 宇宙環境を原因とする不具合の割合推移部位 bull 静止軌道不具合 bull 対策

今後必要な観測項目

まとめ

2003年10月 みどり号の全損事故 (複合現象)

極域のオーロラ帯を通過中に電力ハー

ネスを巻いているMLIが高エネルギー電

子により帯電

MLIが接地されていなかったため内側

のハーネスとの間に1kV以上の電位差が

発生

MLI内のガス密度が発電開始に伴う温度

上昇により上昇

ハーネス被覆の傷により露出したハーネ

ス芯線とMLI内面の間で放電発生

単発の放電が隣接するハーネスに飛び火

してハーネス間の短絡

アーク放電が次々と伝搬していきハー

ネス全体が焼損

故障推定箇所 (大電力ハーネス部)

bull詳細報告書は文部科学省 宇宙開発委員会のHP参照

httpwwwmextgojpb_menushingiuchuureports04080901htm

bull 人工衛星の電位 bull 人工衛星は電気的に宇宙に浮いている bull 宇宙機構造体が接地点 bull 宇宙機への流入電流と流出電流のバランスによって宇宙機電位が決まる bull 各電流成分は宇宙機電位Vの関数として表され定常状態では式を下式を満たす

衛星帯電の基本式

( ) dtIIIIIIIC

V

dtdVCVIVIVIVIVIVIVI

BPHBSESISEIE

BPHBSESISEIE

int +++++minus=

==+++++minus

1

0)]()()()()()([)(

入射電子電流 ( E I )

後方散乱電子電流 ( BSE I )

入射正イオン電流 ( I I )

入射電子による二次電子電流 ( SE I )

太陽光

入射正イオンによる 二次電子放出電流 ( SI I )

光電子放出電流( PH I )

電荷ビーム放出電流(IB)

bull内部帯電は衛星の外壁を貫通した放射線帯外帯の01MeV以上の電子が内部に侵入

bull基板間や同軸ケーブルの線間等の容量(コンデンサ)や誘電体に帯電 bull接地されてない導体片に帯電

bullその耐圧電圧を超えると その耐圧の弱い箇所 (材質の欠陥や針状突起など の箇所)で放電して故障に至る

内部帯電

(あるエネルギ-以上の粒子が入射光電子なし)

NASA-HDBK-4002より

パドルでの帯電放電メカニズム

宇宙環境の影響により 衛星がマイナス電位に帯電

高エネルギー電子等により カバーガラスはプラスに帯電 衛星とカバーガラスに電位差が生じる

電位差が大きくなると トリプルジャンクション近傍 の電界強度が増大していく

トリプルジャンクションで放電が発生する カバーガラスの帯電が緩和される

+ + + + + + + + + + + + + +

+ + + +

カバーガラス

太陽電池セル

基板(衛星構体)

トリプルジャンクション rArr 導体絶縁体宇宙環境の接点

持続放電

Substrate

Satellite Load

insulation sheet

Solar array cell

Cover glass

Arc current

Electrode

持続放電は衛星の電力消失につながる 持続放電のモードは以下の2通りがある

Substrate

Satellite Load

insulation sheet

Solar array cell

Cover glass

Arc current

Electrode

Solar array cell

Cover glass

セル-基板間短絡 セル間短絡

放電によって太陽電池セルと基板が短絡する 短絡によって負荷に電力が供給されなくなる

放電によって太陽電池セルとセルが短絡する 短絡によって負荷に電力が供給されなくなる

サブストーム(高エネルギー電子)との遭遇

+ + + + + + + +

二次電子光電子による絶縁体の帯電(局所帯電)

電位差発生

逆電位勾配

衛星構体が負に帯電(絶対帯電)

電位

時間

サブストーム

衛星構体 VS

乖離電圧 ∆V

カバーガラスVcg

0 プラズマ電位

軌道別帯電放電現象

トリプルジャンクションで 放電発生

放電発生

静止軌道

+ + + + + + + +

逆電位勾配

軌道帯電放電現象

トリプルジャンクションで 放電発生

極軌道 オーロラ電子(高エネルギー電子)との遭遇

プラズマ流入出による絶縁体の帯電(局所帯電)

電位差発生

衛星構体が負に帯電(絶対帯電)

放電発生

電位

時間

オーロラ電子

衛星構体 乖離電圧 ∆V

カバーガラス

0 プラズマ電位

データ中継技術衛星DRTS (こだま)の不具合

2002年10月 9日 静止軌道に打ち上げ

2003年

3月24日 406JST変化率異常モニタ故障検出(FDIR)

が動作しA系からB系に切り替わった

3月25日 410JSTにB系のみ異常検知

4月 3日 327JSTにB系のみ異常検知

5月28日 124JSTにB系のみ異常検知

6月 6日1537JSTにB系のみ異常検知

ESA

DRTS ESA スパイクノイズと 電子フルエンスの比較(赤の丸が異常検知)

larr閾値

この事実を基に静止軌道における内部帯電警報システムを構築 2004年4月より運用開始

不具合が宇宙環境によるものであるか 判断する際のポイント

不具合の発生した時刻に太陽フレアや磁気嵐等の宇宙天気の大きな変動が起きていれば不具合に関係している可能性が高い但し帯電など放射線の積算的効果の伴う現象については発生から1週間位さかのぼり環境がどのように推移してきたかを考慮する必要がある

磁気嵐が起きると静止軌道に急激な粒子の増加現象が起きこれにより衛星帯電が引き起こされたりする(予測に利用可能)

地方時(真夜中や朝方か)や季節(春秋)を考慮する

低軌道衛星においてはSAA外帯のrdquo角ldquo及び極通過時に不具合

が起きやすいので衛星の位置(緯度経度)が重要

事象を把握する上で単発現象か数回起きている現象か周期

(時間同じ軌道等)的に発生している現象か

話の流れ

技術データ取得装置(TEDA)の概要と成果 bull 主な成果 bull 不具合解析例

宇宙天気のリスクと対策 bull 宇宙環境による衛星システムへの影響 bull 宇宙環境を原因とする不具合の割合推移部位 bull 静止軌道不具合 bull 対策

今後必要な観測項目

まとめ

宇宙天気のリスク -宇宙環境によるシステムへの影響 -

プラズマ (IRI)

帯電 (MUSCAT)

衝突 (AUTODY)

抗力 表面劣化

紫外線X線 中性粒子 (MSIS)

放射線粒子 (AE8AP8JPLSHIELDO

SE-2)

メテオロイドデブリ (MASTER2005

ORDEM)

電離損傷 変位損傷

bull電子回路の劣化 bull光部品の劣化

bull太陽電池セルの劣化

SEU (CREME96)

bullデータエラー bull画像ノイズ

bullシステム停止 bull回路損傷

bull熱的電気的光学的特性の劣化

bull構造の劣化 bullコンタミ

電磁パルス bull電源出力低下

bull損傷

bullトルク bull軌道落下

bull構造 損傷 bull減圧

bull電磁パルス

NASAの報告 -GNampCに注目-

1974年から1994年に起きたNASAと空軍の衛星故障の内20~25が宇宙環境に起因していたと報告

1990年から2001年に米国欧州カナダ日本の企業や政府機関が開発した衛星を調べた過去の宇宙ミション損失の大部分はロケットの失敗であったが1998年衛星損失の大部分は軌道上の衛星障害となっている多くの最近の異常は太陽電池アレイ及びバッテリの危険が増加している静止軌道通信衛星の設計寿命はこのサブシステムの故障の危険が増加している

喪失等の大きな誘導制御(GNampC)の不具合に注目 GNampC不具合の内宇宙環境による 不具合は約3と報告されている

軌道上衛星のタイプ別数

NASAの報告(続き)

衛星設計寿命における不具合発生時期 事故率と軌道

軌道別の衛星数 サブシステム不具合

宇宙環境を原因とする不具合の割合 -JAXAの場合-

2002年~2008年に運用された軌道上不具合情報が比較的充実している11衛星(利用衛星7機科学衛星4機)の結果宇宙環境によるも

のは約15過去のデータよりも割合が少ない

合計83件 合計35件

(1)利用衛星 (2)科学衛星

設計検討 不足 48

製造不良 8

軌道上環境 17

偶発故障 6

調査中 13

原因不明 8

設計検討

不足 61

製造不良 4

軌道上環境 11

偶発故障 6

調査中 9

原因不明 9

不具合発生部位の割合

不具合発生部位の割合

Brent Robertson Eric Stoneking ( 1990-2001NASA Goddard Space Flight Center )

Satellite News Digest -静止軌道不具合-

Satellite News Digest (SND) (http wwwsqt-indexcouk) で1997年~2009年の期間に静止軌道で95件の不具合が報告されている その内運用ミスや設計ミスなどを除くと32件(約33)は宇宙環境によるものであった 過去のデータより割合が多い

Choiら1)はこれら不具合の地方時と季節依存性を確認した その結果2100LT~900LTで約72の不具合が発生し900LT~2100LTは9件(約28)であった またこの9件は全て姿勢制御の不具合だった 静止軌道衛星不具合のほとんどは真夜中と朝方で起きており磁気嵐に伴い磁気圏尾部から注入した粒子による表面帯電が不具合の主原因と結論づけている

1) Ho-sung Choi et al Analysis of GEO spacecraft anomalies Space weather relationships Space Weather Vol 9 S06001

太陽活動と静止軌道衛星不具合例

ANIK-E1E2

ANIK-E1

複数の衛星で故障

Galaxy-15

帯電放電不具合 -ANIK-E1amp2Telstar401-

Jan 1994 ANIK-E1 amp E2事故時の環境 - Joe H Allen

1週間

太陽活動下降時期の電子増加

2MeV以上電子

copyNOAA Web

フラックスが3桁急増

Jan 1997 Telstar401事故時の環境

静止軌道の急激な電子増加

太陽極大期太陽フレアによる衛星障害 - 2003年10月~11月-

10486981048698 永久故障 4 10486981048698 安全モード又は運用を一時停止 31 10486981048698 データ内容の「誤り」の増加搭載コンピュータの誤動作 5

httpwwwsat-ndcomfailures等のデータによる 合計 40件

-Barbieri and Mahmot

米国極軌道気象衛星NOAA-17の改良型マイクロ波観測装置AMSU-A1 (Advanced Microwave Sounding Unit)のスキャナーが永久故障 米国気象衛星GOES -8号のX線センサがOFFになり復帰しなくなった

e-birdに深刻な不具合が発生 不具合は20本のトランスポンダ全てに影響

火星周回中の探査機「マーズオデッセイ (Mars Odyssey)」の観測機器放射線観測装置「Martian Radiation Environment Experiment (MARIE)」が太陽活動の影響により10月28日から適切に作動しなくなった データ中継技術衛星(DRTS)「こだま」 太陽捕捉モードに移行

太陽陽子

帯電放電不具合-Galaxy15(局所的的現象)- 2

5 M

eV

65

MeV

11

5 M

eV

GOES 14 ----- GOES 15 ----- GOES 11 -----

Satellite Locations

Galaxy 15 anomaly

2010年4月5日9時48分UTCは磁気嵐及びCMEが発生するなど宇宙環境は非常に荒れていたGalaxy15衛星は真夜中側に位置し宇宙環境の影響を受けやすい

位置にいたことから宇宙環境による不具合である可能性が高いということで原因追及がなされた高エネルギー粒子が引き起こす代表的な衛星不具合現象として3つ(表面帯電内部帯電SEUシングルイベントバーンアウトSEL)の可能性を検討した

チームの報告書によると磁気圏尾部からの熱電子の流入による放電が原因であったと結論付けられたGalaxy15衛星の近くにはGOES-11衛星が位置していたがGOES-11衛星には不具合を発生しておらず本現象は局所的な現象と推測される

衛星開発段階における対策 JAXAの不具合解析の結論

bull 2002年~2008年に運用された11機の衛星不具合を解析 宇宙環境による不具合は偶発故障のみ(全体の約15)確率的には想定範囲内ではあるがその影響を最小限とするためディレーティング運用モード寿命についての研究に取り組む

bull 設計基準試験の充実検証確認の強化技術成熟度(TRL)評価の徹底各々の境界制約条件の明示化等により検証不足抜けの防止有効なピアレビューに結びつける

冗長系(同じハードウェア機能の冗長)柔軟性の設計(ソフトハードの対応)

bull 従来の故障が起きないようにする設計に対してGOSAT(いぶき)では重要部

品を二重化することにより故障する可能性は上がるが故障しても衛星バスの運用や観測が続行できる可能性がより高くなるように設計した

運用における対応

bull 宇宙天気監視ーロケット打ち上げ及び宇宙飛行士支援 数日前に今後の宇宙環境の推移を把握(MXレベルのフレアの発生確率)

bull X線の増加で太陽フレア発生を検知したら高エネルギー粒子の発生をいつまで 気を付ければ良いか判断(発生位置で大凡を推定するが課題は多い) SPEが発生した場合(特に10MeV以上100MeV 以上の陽

子)最大値フラックス値の推定 ピーク値を予測(特に閾値に近くなった時に重要)

bull 衛星運用 bull 太陽フレア磁気嵐警報(X線陽子及びkpが閾値を超えた

時に警報を発信)2003年10月より運用開始 bull 内部帯電警報(2日後の静止軌道上の高エネルギー電子(>1

Me) の増加を予測し 閾値を超えた時に警報を発信) 2004年4月より運用開始

話の流れ

技術データ取得装置(TEDA)の概要と成果 bull 主な成果 bull 不具合解析例

宇宙天気のリスクと対策 bull 宇宙環境による衛星システムへの影響 bull 宇宙環境を原因とする不具合の割合推移部位 bull 静止軌道不具合 bull 対策

今後必要な観測項目

まとめ

計測対象計測項目 計測対象 粒径100μm以上のデブリメテオロイド 計測項目 デブリ粒径衝突頻度

基本原理

厚さ約125μmの絶縁性のポリイミドフィルム表面に 100μm周期で直線状の細長い導線(太さ50μm)パターンを形成導線の破断を電気的に検知することによりデブリの衝突(貫通)を検知する破断した導線の数導線の幅ピッチからデブリサイズを計測する

微小デブリ計測技術の概要

衝突孔の例(衝突試験ISAS) - 衝突粒子 SUS 309 microm - 衝突速度 52 kms

HTV5号機によるセンサ機能のフライト実証

35cm

46cm

FY2013機能実証モデル

検出線幅 50 μm 検出線間隔 100 μm フィルム厚 lt 20 μm 有感領域 30times33cm 検出線総数 3300本

サイズ 50times39times4 cm (筐体を含む)

重量 約15kg(筐体を含む)

消費電力 2W(最大4W)(他センサ含む)

テレメトリ 02 bps

宇宙環境観測装置KASPERの一部としてデブリセンサSDMを搭載 FY2013に製作開始今年8月に打ち上げ予定)

まとめ(その1)

衛星不具合の主な原因は帯電放電シングルイベント放射線損傷である今後デブリ環境が重要になると予測される

静止軌道では商用衛星が多く運用されており宇宙環境の変動把握は重要この領域で運用する衛星が気を付けなければいけない環境として

1太陽フレアに伴う高エネルギー粒子 2太陽活動下降期による静止軌道電子の増加 3磁気嵐に伴う磁気圏尾部から注入する粒子 などがあげられる

まとめ(その2)

不具合軽減の取り組み bull 開発時は宇宙環境条件(トータルフラックス及び最悪条

件)を明確にし設計(冗長系柔軟性の設計ディレーティング及び運用モード寿命について研究)試験の充実検証の充実を図る

bull 運用段階に入ったならば宇宙環境を監視し警報等で故障を防ぐ

予測課題 bull 太陽フレアに伴う高エネルギー粒子発生後フラックス

ピーク値の推定

bull 衛星により不具合の起きる閾値は異なるが閾値をこえる急激な電子フラックスの増加と継続時間の予測

bull 局所的な磁気嵐に伴う磁気圏尾部から注入する粒子

宇宙環境グループは宇宙ステーションと衛星プロジェクトの安全な遂行に貢献しています

ご静聴ありがとうございました

補足資料

不具合原因の推移 bull 宇宙天気を大きく左右する要因の1つとして約11年の太陽活動変化が挙げられる

bull 太陽活動下降時期(太陽変動CME)と極大期(フレアCME)に衛星で不具合が増加するそれにより不具合原因の割合が変わる

-Koons et al The Impact of the Space Environment on Space Systems Aerospace Corp report no TR-99(1670)-1 20 July 1999 -2009 preliminary study (unpublished)

何故不具合は減らないか

bull 部品 放射線に対する感受性が高くなっている bull 微細化が進み同時にフォールトするノードが増え同時にエ

ラーとなる論理ノードやメモリセルが増加する微細化によってメモリセルは小さくなるので記憶容量当たりでみるとエラーの発生率は下がるしかし半導体チップの記憶容量やゲート数が増えるので半導体チップ当たりのエラー発生率は微細化とともに上昇するまた蓄積電荷が小さくなり感受性が高くなってきている

bull システム 大型化大電力化運用長期化 bull 1990年代末以降静止衛星の電力が10kWレベルになったしか

し設計検証技術データ蓄積が遅れている改善されつつあると推測される

放射線による影響の概要

粒子 エネルギー又はLET

代表的な影響

陽子 100keV-1MeV 1-10MeV 10-100MeV gt50MeV

表面損傷 表面材料と太陽電池の損傷 放射線損傷(電離非電離損傷の両方)センサーへのノイズ シングルイベント効果

電子 10-100keV gt100keV gt1MeV

表面帯電 深部帯電現象(deep-dielectric charging)センサーへのノイズ太陽電池の損傷 放射線損傷(電離)

重イオン gt1MeV-cm2mg シングルイベント効果

注エネルギー及びLETは個々の部品等により異なりますあくまでも目安です

耐放射線設計手順

軌道条件

ミッション期間

環境条件設定

トータルドーズの予測

1MeV電子換算被曝算出

NIELの換算

LETフルエンス算出

陽子フルエンス算出

対  策  の  検  討

対  策  の  検  討

対  策  の  検  討

放射線による劣化率予測

劣化率予測 特性予測

耐性データ

放射線による劣化率予測

耐性データ

劣化率予測アレイ出力劣化予測

感受性データ

シングルイベント発生率予測 致命度解析

衛星内質量分布

(2)

部品材料の選定

他の要因による劣化率予測

(2)(2) (3)

回路設計等NO

OK

アレイ構造 セル選定

他の要因による劣化率予測 アレイ設計(2)

(2) (2) (2) (3)

衛星内質量分布 部品選定(2)

(2) (2)(3)

NO

OK

NO

OK

(1) 環境モデルマージを含む(2) 部品レベルの検討(3) アセンブリレベルでの検討(4) 設計マージン環境モデル   マージを含め大丈夫か

トータルドーズ

太陽電池アレイの劣化

シングルイベント効果

回路設計

補足放射線太陽宇宙線銀河宇宙線

NEILを用いたダメージファクターの算出

対  策  の  検  討

放射線による劣化率予測

劣化率予測 特性予測

耐性データ

(2)

部品材料の選定

他の要因による劣化率予測

(2)(2) (3)

回路設計等NO

OK

衛星内質量分布 半導体デバイスの変位損傷

(1)

(4)

(4)

(4)

(4)

各軌道における放射線環境

1E+10

1E+11

1E+12

1E+13

1E+14

1E+15

1E+16

1E+17

1E+18

1E+19

1E+20

001 010 100 1000

捕捉

電子

の積

分フ

ルエ

ンス

[m

2 ]

エネルギー[MeV]

各軌道における電子捕捉積分フルエンス(3年間)

LEO

EOS GEO

MEO

GTO

GEO 軌道傾斜角 0deg 高度36000km GTO 軌道傾斜角 18deg 高度 360km~36000km MEO 軌道傾斜角 51deg 高度 10000km EOS 軌道傾斜角 98deg 高度705km LEO 軌道傾斜角 29deg 高度 600km

1E+12

1E+13

1E+14

1E+15

1E+16

1E+17

1E+18

1E+19

1E+20

01 10 100 1000

捕捉

陽子の

積分フルエン

ス[

m2 ]

エネルギー[MeV]

各軌道における捕捉陽子積分フルエンス(3年間)

MEO

GTO

GEO

EOS LEO

放射線による部品材料の影響

総照射線量 (TIDTotal Ionising Dose )

電離損傷

バイポーラTrの電流増幅率の低下リーク電流の増大

γ線で評価

トータルドーズ効果

変位損傷 (DDDisplacement Damage )または 非イオン化エネルギー損失 (NIELNon-Ionising Energy

Loss )

変位損傷(格子欠陥の生成)

電荷輸送効率の低下 (CCD)太陽電池の効率低下等

電子陽子により評価

シングルイベント効果

1個の荷電粒子の入射により発生する誤動作

ソフト(Latch-Up Burnout) エラー又は ソフト (Upset) エラー

陽子及び重イオンで評価

トータルドーズ効果

+ - + + - + - + - - + + + + -

ゲート酸化膜

電離

格子欠陥

正電荷捕獲

+ 正孔 - 電子

電極

(Silicon oxidenitride)

荷電粒子

反跳原子

ゲート絶縁膜中に電荷が蓄積することによるMOSトランジスタのしきい電圧(MOSトランジスタがオフからオンに変化するゲート電圧)の変化をもたらすただ

し最近の最先端チップはゲート絶縁膜がきわめて薄くなっているこのためゲート絶縁膜よりもフィールド絶縁膜(隣接するトランジスタを電気的に分離する絶縁膜)での電荷蓄積が相対的には大きな問題になってきている」

シングルイベント効果

メモリセルはNチャンネルとPチャンネルMOSFETより構成されメモリ情報は回路ノード12の電位の

高低により記録している空乏層の広がっているPN接合12の領域に

重イオンが入射した場合電荷の発生と空乏層内への少数キャリアの収集が起こるこの収集電荷量が回路の耐量を越えた場合(c)に示すように反転が起こる(ソフトエラー)一方pウエル-N基板接

合の空乏層内に電荷収集量が起こりえる耐性を越えると寄生的に存在するPNPNサイリスタ構造がオ

ンし電源と基板間に大電流が流れる状態が生じる(ラッチアップ)

シングルイベントメカニズム -陽子と重イオンの違い-

エラー発生率の計算

線エネルギー付与(LET) (linear energy transfer)

電離性放射線が物質中を通過する際飛程の単位長さ当りに平均して失うエネルギーをいう各種の放射線のうちX線γ線はLETが小さいので低LETといいα線中性子線その他重イオン核分裂破片のLETは大きいので高LETという MeVμmMeV(gcm2)やMeV(mgcm2)で表される

南大西洋異常(SAA) bull 地球の自転軸と磁気軸のずれ

darr bull 放射線帯が自転軸に対して非

対称

bull 南大西洋上空では放射線帯内帯が低高度に落ちてきているこの領域を南大西洋異常域(SAA South Atlantic Anomaly)と呼ぶ

bull 地球観測衛星ではSAAで放射線帯陽子の影響を受ける

Single Event Lachup

シングルイベントと陽子分布

MOS-1衛星(高度909km軌道傾斜角99度)で発生したシングルイベントと 陽子30MeV以上の等高線マップを重ね合わせた結果

NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)

bull 入射粒子が電離によらず与える損傷非イオン化損失

低軌道での電子フラックスと 不具合の発生場所

南大西洋異常(SAA)と極の角

高度800kmでの電子フラックス図極の角(polar horn)とSAAを示す

太陽粒子線 bull 太陽高エネルギー粒子線(SPE Solar Proton Events)は太陽フレア とコロナガス噴出 (CMECoronal Mass Ejections )により引き起こされる bull フレアのスペクトルは可変であるためあるエネルギー域における最悪状態イベントは必ずしも別のエネルギー域における最悪条件ではない 1972年8月のイベント 10~70MeVの粒子が最も多かった 1989年10のイベント 1972年8月のイベントに比べ低エネルギー領域 高エネルギー領域が明らかに激しかった

フルエンス 105 to 1011 cm-2

変動期間 1日から数日

ldquoBastiliardquo Solar Event 14 July 2000

Carrington Flare

84

(LW Townseed) Carrington Flare(1859年) Carrington Flare による30MeV以上トータルFluenceを118times109cm-2で規格化 ~1989年フレアの約13倍(シングルイベントの評価で使用) ~1991年フレアの約9倍 2012年7月23日にキャリントンイベントとほぼ同等の爆発現象が太陽あるいは太陽の周りで起きていたということがNASAの太陽観測衛星「STEREO」の解析から発表された

放射線対策 bull 放射線シールドを付加し放射線を減衰させる

bull 放射線耐性の強い部品(SOI(Silicon On Insulator)技術による耐放射線部品)材料に変更する

bull 放射線による損傷を吸収するために回路または構造上のマージンを持たせる bull ソフト的なエラーに対しては エラー検出訂正機能や多数決

機能等でソフト的エラーが起きてもシステムが機能するようにしたフォールトトレラント機能を付けて対処する ICのハード的故障に対しては ラッチアップ耐性の強い部品を選定するしかないが 電流制限回路を付ける対策も採られる パワーMOSFETに対しては部品選定 電源電圧を規格値の半分以下に落とす等の対策を採る

SOI技術

表面帯電への対策例

表面の物体間を導線で結線する

太陽電池のカバーガラスを導電性被膜付き(酸化インジウムITO)にする

熱制御材表面にITOを被覆する

熱制御材は高誘電率のテフロンの使用を避け 高伝導度耐環境性に優れたブラックカプトンを使用

イオンエンジンの中和器で能動帯電制御

内部帯電への対策例

アルミで3mm厚さに相当するシールドで囲む(Faraday Cage)

テフロンやカプトンなどの誘電体材料の内部での使用量を最小限に押さえる

回路基板やコンフォーマルコーティングは誘電体なので電流リークパス(1012Ωcmまたは1012Ωcm2

程度)を必ずつける

特にスポット的な放射線シールドの金属材には必ず電流リークパスをつける

帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備

衛星モデル作成

材料物性テーブル設定

宇宙環境パラメータ設定

Converter

転送ディレクトリ 解析データファイル

転送

解析ディレクトリ生成 解析結果 進行状況チェック ファイル操作

MUSCAT 解析エンジン

解析結果 表示

パラメトリックラン

オプション 解析

大型パネル実験(35mtimes11m) クーポンパネル実験(26cmtimes16cm)

環境模擬試験 環境模擬試験

MUSCATに使用する物性値設計標準制定のための知見などを得ることを目的に軌道上の宇宙環境を模擬した地上試験を行っている これらの試験では放電の発生頻度や電圧閾値放電発生による太陽電池パネルや搭載機器への影響を検証している

放射線計測装置の原理

bull その粒子が物質を通過する際のエネルギー損出率が粒子の電荷(原子番号)Zの二乗に比例すること(Bethe-Blochの式)を利用する

S2

E

ΔE Ersquo

S1 S3

  • 宇宙機の設計のための宇宙環境
  • 話の流れ
  • 話の流れ
  • TEDA(技術データ取得装置)(国産部品の宇宙環境での実証の必要性)
  • ETS-VTEDA(技術データ取得装置)誕生前の部品の宇宙実証の背景
  • スライド番号 6
  • スライド番号 7
  • スライド番号 8
  • スライド番号 9
  • 図6太陽黒点数と静止軌道電子 (>04MeV ) Flux の変動 (ETS-V搭載DOMによる観測)
  • スライド番号 11
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの開発(理研東大と共同で宇宙環境計測の充実)
  • ETS-VI(きく6号)打ち上がったがGEOに行かずGTOに留まる
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの成果
  • スライド番号 15
  • スライド番号 16
  • スライド番号 17
  • ADEOS搭載TEDA(世界2番目の異常宇宙線ACR)
  • BBND (ボナー球中性子検出器)
  • スライド番号 20
  • ISS搭載BBNDの成果(約8か月)
  • スライド番号 22
  • MDS-1搭載放射線吸収線量モニタ(SDOM)
  • 放射線帯変動モデルの開発MDS-1 065 MeV 電子フラックス
  • 変動パラメータの選択 (1 cycle solar activity)
  • 変動パラメータ- Tavg の定義-
  • 065MeV 電子 L値-Tavg マップ
  • 13MeV 陽子 L値-Tavg マップ
  • 電子観測とMDS-1モデルの比較
  • 放射線帯フラックスピークの変動
  • 陽子観測とモデルの比較
  • 電子(035~078MeV) 1日の変動予測GOSAT軌道
  • 電子(035~078MeV) 変動の信頼度水準(1日)GOSAT軌道
  • MDS-1 model と AE-8 modelとの比較1日
  • 話の流れ
  • 2003年10月 みどり号の全損事故(複合現象)
  • 衛星帯電の基本式
  • 内部帯電
  • パドルでの帯電放電メカニズム
  • スライド番号 40
  • スライド番号 41
  • スライド番号 42
  • データ中継技術衛星DRTS (こだま)の不具合
  • DRTS ESA スパイクノイズと電子フルエンスの比較(赤の丸が異常検知)
  • 不具合が宇宙環境によるものであるか判断する際のポイント
  • 話の流れ
  • 宇宙天気のリスク-宇宙環境によるシステムへの影響 -
  • NASAの報告-GNampCに注目-
  • NASAの報告(続き)
  • 宇宙環境を原因とする不具合の割合-JAXAの場合-
  • 不具合発生部位の割合 
  • Satellite News Digest -静止軌道不具合-
  • 太陽活動と静止軌道衛星不具合例
  • スライド番号 54
  • スライド番号 55
  • スライド番号 56
  • 衛星開発段階における対策
  • 運用における対応
  • 話の流れ
  • スライド番号 60
  • スライド番号 61
  • まとめ(その1)
  • まとめ(その2)
  • 宇宙環境グループは宇宙ステーションと衛星プロジェクトの安全な遂行に貢献しています
  • 補足資料
  • 不具合原因の推移
  • 何故不具合は減らないか
  • 放射線による影響の概要
  • 耐放射線設計手順
  • 各軌道における放射線環境
  • 放射線による部品材料の影響
  • トータルドーズ効果
  • シングルイベント効果
  • シングルイベントメカニズム-陽子と重イオンの違い-
  • エラー発生率の計算
  • 線エネルギー付与(LET)(linear energy transfer)
  • 南大西洋異常(SAA)
  • Single Event Lachup
  • シングルイベントと陽子分布
  • NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)
  • 低軌道での電子フラックスと不具合の発生場所
  • 南大西洋異常(SAA)と極の角
  • スライド番号 83
  • Carrington Flare
  • 放射線対策
  • スライド番号 86
  • スライド番号 87
  • 帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備
  • スライド番号 89
  • 放射線計測装置の原理
Page 20: 宇宙機の設計のための宇宙環境の方針から国産部品開発(42品種)が実施された。 . 半導体電子部品は耐放射線性を加味して、人工衛星(特に

熱中性子に対して高い感度を持つ6個の3Heガス入り比例計数管で構成して

いる中性子は電荷をもたないのでそれ自身には電離作用がないが軽い原子の3He気体では反跳原子を生じたり中性子の核反応(3He+nrarrp+3H+765KeV)によって荷電粒子を生じるので間接的に電離を起こす下図のように気体中に二つの電極を置き高電圧(1000V)をかけておくと中性子の入

射によって気体中に生じた陽子イオンと電子のイオン対がそれぞれの電極に向かって流動し外部回路に電離電流が流れるこの電気パルスにより中性子を計測する

ボナー球型中性子モニタの概要

Polyethylene Sphere3He proportional Counter

51 φ 51 φ81 φ110 φ150 φ230 φ

Sensor6 Sensor5 Sensor4 Sensor3 Sensor2 Sensor1

Covered by Gadolinium

[mm]3Heガス入り比例計数管の原理

6個のボナー球の断面図

3Heガス入り比例計数管とポリエチレン減速材

H Matsumotoet al Radiation Measurements 33 (2001) 321-333

ISS搭載BBNDの成果(約8か月)

実験期間中の平均的な等価線量等量率 (2001年3月23日~2001年11月14日)

太陽フレア時(2001年11月4日)

等価量等量率の平均は94μSv日で年率に換算すると34mSv年となるこれは地上において自然界から受ける等価線量当量率の約14倍に相当する 実験期間中に多数の太陽フレアが発生した2001年11月4日の太陽フレアにより019mSVの増加を観

測したこれは自然界から受ける等価線量当量率の約1か月分に相当するしかしBBNDの約8か月

の実験期間中の全等価線量当量に対するこの太陽フレアの影響の寄与分は1以下であった また搭載位置による環境の違いも確認された

H Koshiishiet al Radiation Measurements 42(2007) 1510-1520

1)船内の計測結果より低エネルギー側で2~3桁高エネルギー側で1~2桁低い 2)船内より船壁が薄く中性子が少ない環境より自然のアルベド中性子環境に近い

中性子被曝線量の ISS船外(SEDA-AP)と船内(STS-89)の比較

MDS-1搭載放射線吸収線量モニタ(SDOM) SiTungstenAlBGO

② ⑦

⑧⑧

① Collimator ② Window③ SSDs ④ Plastic Scintillator⑤ Anticoincidence Scintillator(ACS)⑥ Beam Stop⑦ Scintillator PMT⑧ ACS PMT

運用期間 2002年2月 ndash 2003年9月 軌道 -軌道傾斜角 285deg 1 lt BB0 le 84 -高度 500 km times 36000km 11 le L le 10 -軌道周期 約10時間35分 -スピンレート 5rpm

計測エネルギー範囲 Electron 04- 9MeV (5bins) Proton 09-210MeV (12bins) He 6-140MeV (4bins) Heavy Ion 15- 60MeVnuc (1bin) G-Factor 001cm2sr

放射線帯変動モデルの開発 MDS-1 065 MeV 電子フラックス

変動パラメータの選択 (1 cycle solar activity)

太陽風速度(SW)

太陽黒点数(R)

Ap指数

F107

変動パラメータ- Tavg の定義-

1日後の予測

パラメータスケールの時間平均 ApTavg SWTavg F107 Tavg

T days

放射線帯の構造は変動パラメータ値の大きさと継続時間に相関がある

065MeV 電子 L値-Tavg マップ

APTavg

SWTavg

13MeV 陽子 L値-Tavg マップ

APTavg

F107Tavg

電子観測とMDS-1モデルの比較

80 175

放射線帯フラックスピークの変動

80orbits (平穏時) 175orbits (擾乱時)

陽子観測とモデルの比較

電子(035~078MeV) 1日の変動予測GOSAT軌道

0

50

100

150

200

250

1E+09

1E+10

1E+11

1E+12

1984 1986 1988 1990 1992 1994 1996 1998 2000 2002 2004 2006 2008

Flue

nce[

ecm

2M

eVd

ay]

Launch day

FluenceSSN

Worst case Nov 12003

電子(035~078MeV) 変動の信頼度水準(1日)GOSAT軌道

00

01

02

03

04

05

06

07

08

09

10

88 90 92 94 96 98 100 102 104 106 108 110 112 114

Con

fiden

ce le

vel

Fluence[LOG10 ecm2MeVday]

AE-8 MAX

AE-8 MIN

MDS-1 model と AE-8 model との比較1日

0

20

40

60

80

100

120

140

160

180

1E+09

1E+10

1E+11

1E+12

1995 1997 1999 2001 2003 2005 2007 2009

Flue

nce[

ecm

2M

eVd

ay]

Launch day

Fluence(JAXA)Fluence(AE8)SSN

話の流れ

技術データ取得装置(TEDA)の概要と成果 bull 主な成果 bull 不具合解析例

宇宙天気のリスクと対策 bull 宇宙環境による衛星システムへの影響 bull 宇宙環境を原因とする不具合の割合推移部位 bull 静止軌道不具合 bull 対策

今後必要な観測項目

まとめ

2003年10月 みどり号の全損事故 (複合現象)

極域のオーロラ帯を通過中に電力ハー

ネスを巻いているMLIが高エネルギー電

子により帯電

MLIが接地されていなかったため内側

のハーネスとの間に1kV以上の電位差が

発生

MLI内のガス密度が発電開始に伴う温度

上昇により上昇

ハーネス被覆の傷により露出したハーネ

ス芯線とMLI内面の間で放電発生

単発の放電が隣接するハーネスに飛び火

してハーネス間の短絡

アーク放電が次々と伝搬していきハー

ネス全体が焼損

故障推定箇所 (大電力ハーネス部)

bull詳細報告書は文部科学省 宇宙開発委員会のHP参照

httpwwwmextgojpb_menushingiuchuureports04080901htm

bull 人工衛星の電位 bull 人工衛星は電気的に宇宙に浮いている bull 宇宙機構造体が接地点 bull 宇宙機への流入電流と流出電流のバランスによって宇宙機電位が決まる bull 各電流成分は宇宙機電位Vの関数として表され定常状態では式を下式を満たす

衛星帯電の基本式

( ) dtIIIIIIIC

V

dtdVCVIVIVIVIVIVIVI

BPHBSESISEIE

BPHBSESISEIE

int +++++minus=

==+++++minus

1

0)]()()()()()([)(

入射電子電流 ( E I )

後方散乱電子電流 ( BSE I )

入射正イオン電流 ( I I )

入射電子による二次電子電流 ( SE I )

太陽光

入射正イオンによる 二次電子放出電流 ( SI I )

光電子放出電流( PH I )

電荷ビーム放出電流(IB)

bull内部帯電は衛星の外壁を貫通した放射線帯外帯の01MeV以上の電子が内部に侵入

bull基板間や同軸ケーブルの線間等の容量(コンデンサ)や誘電体に帯電 bull接地されてない導体片に帯電

bullその耐圧電圧を超えると その耐圧の弱い箇所 (材質の欠陥や針状突起など の箇所)で放電して故障に至る

内部帯電

(あるエネルギ-以上の粒子が入射光電子なし)

NASA-HDBK-4002より

パドルでの帯電放電メカニズム

宇宙環境の影響により 衛星がマイナス電位に帯電

高エネルギー電子等により カバーガラスはプラスに帯電 衛星とカバーガラスに電位差が生じる

電位差が大きくなると トリプルジャンクション近傍 の電界強度が増大していく

トリプルジャンクションで放電が発生する カバーガラスの帯電が緩和される

+ + + + + + + + + + + + + +

+ + + +

カバーガラス

太陽電池セル

基板(衛星構体)

トリプルジャンクション rArr 導体絶縁体宇宙環境の接点

持続放電

Substrate

Satellite Load

insulation sheet

Solar array cell

Cover glass

Arc current

Electrode

持続放電は衛星の電力消失につながる 持続放電のモードは以下の2通りがある

Substrate

Satellite Load

insulation sheet

Solar array cell

Cover glass

Arc current

Electrode

Solar array cell

Cover glass

セル-基板間短絡 セル間短絡

放電によって太陽電池セルと基板が短絡する 短絡によって負荷に電力が供給されなくなる

放電によって太陽電池セルとセルが短絡する 短絡によって負荷に電力が供給されなくなる

サブストーム(高エネルギー電子)との遭遇

+ + + + + + + +

二次電子光電子による絶縁体の帯電(局所帯電)

電位差発生

逆電位勾配

衛星構体が負に帯電(絶対帯電)

電位

時間

サブストーム

衛星構体 VS

乖離電圧 ∆V

カバーガラスVcg

0 プラズマ電位

軌道別帯電放電現象

トリプルジャンクションで 放電発生

放電発生

静止軌道

+ + + + + + + +

逆電位勾配

軌道帯電放電現象

トリプルジャンクションで 放電発生

極軌道 オーロラ電子(高エネルギー電子)との遭遇

プラズマ流入出による絶縁体の帯電(局所帯電)

電位差発生

衛星構体が負に帯電(絶対帯電)

放電発生

電位

時間

オーロラ電子

衛星構体 乖離電圧 ∆V

カバーガラス

0 プラズマ電位

データ中継技術衛星DRTS (こだま)の不具合

2002年10月 9日 静止軌道に打ち上げ

2003年

3月24日 406JST変化率異常モニタ故障検出(FDIR)

が動作しA系からB系に切り替わった

3月25日 410JSTにB系のみ異常検知

4月 3日 327JSTにB系のみ異常検知

5月28日 124JSTにB系のみ異常検知

6月 6日1537JSTにB系のみ異常検知

ESA

DRTS ESA スパイクノイズと 電子フルエンスの比較(赤の丸が異常検知)

larr閾値

この事実を基に静止軌道における内部帯電警報システムを構築 2004年4月より運用開始

不具合が宇宙環境によるものであるか 判断する際のポイント

不具合の発生した時刻に太陽フレアや磁気嵐等の宇宙天気の大きな変動が起きていれば不具合に関係している可能性が高い但し帯電など放射線の積算的効果の伴う現象については発生から1週間位さかのぼり環境がどのように推移してきたかを考慮する必要がある

磁気嵐が起きると静止軌道に急激な粒子の増加現象が起きこれにより衛星帯電が引き起こされたりする(予測に利用可能)

地方時(真夜中や朝方か)や季節(春秋)を考慮する

低軌道衛星においてはSAA外帯のrdquo角ldquo及び極通過時に不具合

が起きやすいので衛星の位置(緯度経度)が重要

事象を把握する上で単発現象か数回起きている現象か周期

(時間同じ軌道等)的に発生している現象か

話の流れ

技術データ取得装置(TEDA)の概要と成果 bull 主な成果 bull 不具合解析例

宇宙天気のリスクと対策 bull 宇宙環境による衛星システムへの影響 bull 宇宙環境を原因とする不具合の割合推移部位 bull 静止軌道不具合 bull 対策

今後必要な観測項目

まとめ

宇宙天気のリスク -宇宙環境によるシステムへの影響 -

プラズマ (IRI)

帯電 (MUSCAT)

衝突 (AUTODY)

抗力 表面劣化

紫外線X線 中性粒子 (MSIS)

放射線粒子 (AE8AP8JPLSHIELDO

SE-2)

メテオロイドデブリ (MASTER2005

ORDEM)

電離損傷 変位損傷

bull電子回路の劣化 bull光部品の劣化

bull太陽電池セルの劣化

SEU (CREME96)

bullデータエラー bull画像ノイズ

bullシステム停止 bull回路損傷

bull熱的電気的光学的特性の劣化

bull構造の劣化 bullコンタミ

電磁パルス bull電源出力低下

bull損傷

bullトルク bull軌道落下

bull構造 損傷 bull減圧

bull電磁パルス

NASAの報告 -GNampCに注目-

1974年から1994年に起きたNASAと空軍の衛星故障の内20~25が宇宙環境に起因していたと報告

1990年から2001年に米国欧州カナダ日本の企業や政府機関が開発した衛星を調べた過去の宇宙ミション損失の大部分はロケットの失敗であったが1998年衛星損失の大部分は軌道上の衛星障害となっている多くの最近の異常は太陽電池アレイ及びバッテリの危険が増加している静止軌道通信衛星の設計寿命はこのサブシステムの故障の危険が増加している

喪失等の大きな誘導制御(GNampC)の不具合に注目 GNampC不具合の内宇宙環境による 不具合は約3と報告されている

軌道上衛星のタイプ別数

NASAの報告(続き)

衛星設計寿命における不具合発生時期 事故率と軌道

軌道別の衛星数 サブシステム不具合

宇宙環境を原因とする不具合の割合 -JAXAの場合-

2002年~2008年に運用された軌道上不具合情報が比較的充実している11衛星(利用衛星7機科学衛星4機)の結果宇宙環境によるも

のは約15過去のデータよりも割合が少ない

合計83件 合計35件

(1)利用衛星 (2)科学衛星

設計検討 不足 48

製造不良 8

軌道上環境 17

偶発故障 6

調査中 13

原因不明 8

設計検討

不足 61

製造不良 4

軌道上環境 11

偶発故障 6

調査中 9

原因不明 9

不具合発生部位の割合

不具合発生部位の割合

Brent Robertson Eric Stoneking ( 1990-2001NASA Goddard Space Flight Center )

Satellite News Digest -静止軌道不具合-

Satellite News Digest (SND) (http wwwsqt-indexcouk) で1997年~2009年の期間に静止軌道で95件の不具合が報告されている その内運用ミスや設計ミスなどを除くと32件(約33)は宇宙環境によるものであった 過去のデータより割合が多い

Choiら1)はこれら不具合の地方時と季節依存性を確認した その結果2100LT~900LTで約72の不具合が発生し900LT~2100LTは9件(約28)であった またこの9件は全て姿勢制御の不具合だった 静止軌道衛星不具合のほとんどは真夜中と朝方で起きており磁気嵐に伴い磁気圏尾部から注入した粒子による表面帯電が不具合の主原因と結論づけている

1) Ho-sung Choi et al Analysis of GEO spacecraft anomalies Space weather relationships Space Weather Vol 9 S06001

太陽活動と静止軌道衛星不具合例

ANIK-E1E2

ANIK-E1

複数の衛星で故障

Galaxy-15

帯電放電不具合 -ANIK-E1amp2Telstar401-

Jan 1994 ANIK-E1 amp E2事故時の環境 - Joe H Allen

1週間

太陽活動下降時期の電子増加

2MeV以上電子

copyNOAA Web

フラックスが3桁急増

Jan 1997 Telstar401事故時の環境

静止軌道の急激な電子増加

太陽極大期太陽フレアによる衛星障害 - 2003年10月~11月-

10486981048698 永久故障 4 10486981048698 安全モード又は運用を一時停止 31 10486981048698 データ内容の「誤り」の増加搭載コンピュータの誤動作 5

httpwwwsat-ndcomfailures等のデータによる 合計 40件

-Barbieri and Mahmot

米国極軌道気象衛星NOAA-17の改良型マイクロ波観測装置AMSU-A1 (Advanced Microwave Sounding Unit)のスキャナーが永久故障 米国気象衛星GOES -8号のX線センサがOFFになり復帰しなくなった

e-birdに深刻な不具合が発生 不具合は20本のトランスポンダ全てに影響

火星周回中の探査機「マーズオデッセイ (Mars Odyssey)」の観測機器放射線観測装置「Martian Radiation Environment Experiment (MARIE)」が太陽活動の影響により10月28日から適切に作動しなくなった データ中継技術衛星(DRTS)「こだま」 太陽捕捉モードに移行

太陽陽子

帯電放電不具合-Galaxy15(局所的的現象)- 2

5 M

eV

65

MeV

11

5 M

eV

GOES 14 ----- GOES 15 ----- GOES 11 -----

Satellite Locations

Galaxy 15 anomaly

2010年4月5日9時48分UTCは磁気嵐及びCMEが発生するなど宇宙環境は非常に荒れていたGalaxy15衛星は真夜中側に位置し宇宙環境の影響を受けやすい

位置にいたことから宇宙環境による不具合である可能性が高いということで原因追及がなされた高エネルギー粒子が引き起こす代表的な衛星不具合現象として3つ(表面帯電内部帯電SEUシングルイベントバーンアウトSEL)の可能性を検討した

チームの報告書によると磁気圏尾部からの熱電子の流入による放電が原因であったと結論付けられたGalaxy15衛星の近くにはGOES-11衛星が位置していたがGOES-11衛星には不具合を発生しておらず本現象は局所的な現象と推測される

衛星開発段階における対策 JAXAの不具合解析の結論

bull 2002年~2008年に運用された11機の衛星不具合を解析 宇宙環境による不具合は偶発故障のみ(全体の約15)確率的には想定範囲内ではあるがその影響を最小限とするためディレーティング運用モード寿命についての研究に取り組む

bull 設計基準試験の充実検証確認の強化技術成熟度(TRL)評価の徹底各々の境界制約条件の明示化等により検証不足抜けの防止有効なピアレビューに結びつける

冗長系(同じハードウェア機能の冗長)柔軟性の設計(ソフトハードの対応)

bull 従来の故障が起きないようにする設計に対してGOSAT(いぶき)では重要部

品を二重化することにより故障する可能性は上がるが故障しても衛星バスの運用や観測が続行できる可能性がより高くなるように設計した

運用における対応

bull 宇宙天気監視ーロケット打ち上げ及び宇宙飛行士支援 数日前に今後の宇宙環境の推移を把握(MXレベルのフレアの発生確率)

bull X線の増加で太陽フレア発生を検知したら高エネルギー粒子の発生をいつまで 気を付ければ良いか判断(発生位置で大凡を推定するが課題は多い) SPEが発生した場合(特に10MeV以上100MeV 以上の陽

子)最大値フラックス値の推定 ピーク値を予測(特に閾値に近くなった時に重要)

bull 衛星運用 bull 太陽フレア磁気嵐警報(X線陽子及びkpが閾値を超えた

時に警報を発信)2003年10月より運用開始 bull 内部帯電警報(2日後の静止軌道上の高エネルギー電子(>1

Me) の増加を予測し 閾値を超えた時に警報を発信) 2004年4月より運用開始

話の流れ

技術データ取得装置(TEDA)の概要と成果 bull 主な成果 bull 不具合解析例

宇宙天気のリスクと対策 bull 宇宙環境による衛星システムへの影響 bull 宇宙環境を原因とする不具合の割合推移部位 bull 静止軌道不具合 bull 対策

今後必要な観測項目

まとめ

計測対象計測項目 計測対象 粒径100μm以上のデブリメテオロイド 計測項目 デブリ粒径衝突頻度

基本原理

厚さ約125μmの絶縁性のポリイミドフィルム表面に 100μm周期で直線状の細長い導線(太さ50μm)パターンを形成導線の破断を電気的に検知することによりデブリの衝突(貫通)を検知する破断した導線の数導線の幅ピッチからデブリサイズを計測する

微小デブリ計測技術の概要

衝突孔の例(衝突試験ISAS) - 衝突粒子 SUS 309 microm - 衝突速度 52 kms

HTV5号機によるセンサ機能のフライト実証

35cm

46cm

FY2013機能実証モデル

検出線幅 50 μm 検出線間隔 100 μm フィルム厚 lt 20 μm 有感領域 30times33cm 検出線総数 3300本

サイズ 50times39times4 cm (筐体を含む)

重量 約15kg(筐体を含む)

消費電力 2W(最大4W)(他センサ含む)

テレメトリ 02 bps

宇宙環境観測装置KASPERの一部としてデブリセンサSDMを搭載 FY2013に製作開始今年8月に打ち上げ予定)

まとめ(その1)

衛星不具合の主な原因は帯電放電シングルイベント放射線損傷である今後デブリ環境が重要になると予測される

静止軌道では商用衛星が多く運用されており宇宙環境の変動把握は重要この領域で運用する衛星が気を付けなければいけない環境として

1太陽フレアに伴う高エネルギー粒子 2太陽活動下降期による静止軌道電子の増加 3磁気嵐に伴う磁気圏尾部から注入する粒子 などがあげられる

まとめ(その2)

不具合軽減の取り組み bull 開発時は宇宙環境条件(トータルフラックス及び最悪条

件)を明確にし設計(冗長系柔軟性の設計ディレーティング及び運用モード寿命について研究)試験の充実検証の充実を図る

bull 運用段階に入ったならば宇宙環境を監視し警報等で故障を防ぐ

予測課題 bull 太陽フレアに伴う高エネルギー粒子発生後フラックス

ピーク値の推定

bull 衛星により不具合の起きる閾値は異なるが閾値をこえる急激な電子フラックスの増加と継続時間の予測

bull 局所的な磁気嵐に伴う磁気圏尾部から注入する粒子

宇宙環境グループは宇宙ステーションと衛星プロジェクトの安全な遂行に貢献しています

ご静聴ありがとうございました

補足資料

不具合原因の推移 bull 宇宙天気を大きく左右する要因の1つとして約11年の太陽活動変化が挙げられる

bull 太陽活動下降時期(太陽変動CME)と極大期(フレアCME)に衛星で不具合が増加するそれにより不具合原因の割合が変わる

-Koons et al The Impact of the Space Environment on Space Systems Aerospace Corp report no TR-99(1670)-1 20 July 1999 -2009 preliminary study (unpublished)

何故不具合は減らないか

bull 部品 放射線に対する感受性が高くなっている bull 微細化が進み同時にフォールトするノードが増え同時にエ

ラーとなる論理ノードやメモリセルが増加する微細化によってメモリセルは小さくなるので記憶容量当たりでみるとエラーの発生率は下がるしかし半導体チップの記憶容量やゲート数が増えるので半導体チップ当たりのエラー発生率は微細化とともに上昇するまた蓄積電荷が小さくなり感受性が高くなってきている

bull システム 大型化大電力化運用長期化 bull 1990年代末以降静止衛星の電力が10kWレベルになったしか

し設計検証技術データ蓄積が遅れている改善されつつあると推測される

放射線による影響の概要

粒子 エネルギー又はLET

代表的な影響

陽子 100keV-1MeV 1-10MeV 10-100MeV gt50MeV

表面損傷 表面材料と太陽電池の損傷 放射線損傷(電離非電離損傷の両方)センサーへのノイズ シングルイベント効果

電子 10-100keV gt100keV gt1MeV

表面帯電 深部帯電現象(deep-dielectric charging)センサーへのノイズ太陽電池の損傷 放射線損傷(電離)

重イオン gt1MeV-cm2mg シングルイベント効果

注エネルギー及びLETは個々の部品等により異なりますあくまでも目安です

耐放射線設計手順

軌道条件

ミッション期間

環境条件設定

トータルドーズの予測

1MeV電子換算被曝算出

NIELの換算

LETフルエンス算出

陽子フルエンス算出

対  策  の  検  討

対  策  の  検  討

対  策  の  検  討

放射線による劣化率予測

劣化率予測 特性予測

耐性データ

放射線による劣化率予測

耐性データ

劣化率予測アレイ出力劣化予測

感受性データ

シングルイベント発生率予測 致命度解析

衛星内質量分布

(2)

部品材料の選定

他の要因による劣化率予測

(2)(2) (3)

回路設計等NO

OK

アレイ構造 セル選定

他の要因による劣化率予測 アレイ設計(2)

(2) (2) (2) (3)

衛星内質量分布 部品選定(2)

(2) (2)(3)

NO

OK

NO

OK

(1) 環境モデルマージを含む(2) 部品レベルの検討(3) アセンブリレベルでの検討(4) 設計マージン環境モデル   マージを含め大丈夫か

トータルドーズ

太陽電池アレイの劣化

シングルイベント効果

回路設計

補足放射線太陽宇宙線銀河宇宙線

NEILを用いたダメージファクターの算出

対  策  の  検  討

放射線による劣化率予測

劣化率予測 特性予測

耐性データ

(2)

部品材料の選定

他の要因による劣化率予測

(2)(2) (3)

回路設計等NO

OK

衛星内質量分布 半導体デバイスの変位損傷

(1)

(4)

(4)

(4)

(4)

各軌道における放射線環境

1E+10

1E+11

1E+12

1E+13

1E+14

1E+15

1E+16

1E+17

1E+18

1E+19

1E+20

001 010 100 1000

捕捉

電子

の積

分フ

ルエ

ンス

[m

2 ]

エネルギー[MeV]

各軌道における電子捕捉積分フルエンス(3年間)

LEO

EOS GEO

MEO

GTO

GEO 軌道傾斜角 0deg 高度36000km GTO 軌道傾斜角 18deg 高度 360km~36000km MEO 軌道傾斜角 51deg 高度 10000km EOS 軌道傾斜角 98deg 高度705km LEO 軌道傾斜角 29deg 高度 600km

1E+12

1E+13

1E+14

1E+15

1E+16

1E+17

1E+18

1E+19

1E+20

01 10 100 1000

捕捉

陽子の

積分フルエン

ス[

m2 ]

エネルギー[MeV]

各軌道における捕捉陽子積分フルエンス(3年間)

MEO

GTO

GEO

EOS LEO

放射線による部品材料の影響

総照射線量 (TIDTotal Ionising Dose )

電離損傷

バイポーラTrの電流増幅率の低下リーク電流の増大

γ線で評価

トータルドーズ効果

変位損傷 (DDDisplacement Damage )または 非イオン化エネルギー損失 (NIELNon-Ionising Energy

Loss )

変位損傷(格子欠陥の生成)

電荷輸送効率の低下 (CCD)太陽電池の効率低下等

電子陽子により評価

シングルイベント効果

1個の荷電粒子の入射により発生する誤動作

ソフト(Latch-Up Burnout) エラー又は ソフト (Upset) エラー

陽子及び重イオンで評価

トータルドーズ効果

+ - + + - + - + - - + + + + -

ゲート酸化膜

電離

格子欠陥

正電荷捕獲

+ 正孔 - 電子

電極

(Silicon oxidenitride)

荷電粒子

反跳原子

ゲート絶縁膜中に電荷が蓄積することによるMOSトランジスタのしきい電圧(MOSトランジスタがオフからオンに変化するゲート電圧)の変化をもたらすただ

し最近の最先端チップはゲート絶縁膜がきわめて薄くなっているこのためゲート絶縁膜よりもフィールド絶縁膜(隣接するトランジスタを電気的に分離する絶縁膜)での電荷蓄積が相対的には大きな問題になってきている」

シングルイベント効果

メモリセルはNチャンネルとPチャンネルMOSFETより構成されメモリ情報は回路ノード12の電位の

高低により記録している空乏層の広がっているPN接合12の領域に

重イオンが入射した場合電荷の発生と空乏層内への少数キャリアの収集が起こるこの収集電荷量が回路の耐量を越えた場合(c)に示すように反転が起こる(ソフトエラー)一方pウエル-N基板接

合の空乏層内に電荷収集量が起こりえる耐性を越えると寄生的に存在するPNPNサイリスタ構造がオ

ンし電源と基板間に大電流が流れる状態が生じる(ラッチアップ)

シングルイベントメカニズム -陽子と重イオンの違い-

エラー発生率の計算

線エネルギー付与(LET) (linear energy transfer)

電離性放射線が物質中を通過する際飛程の単位長さ当りに平均して失うエネルギーをいう各種の放射線のうちX線γ線はLETが小さいので低LETといいα線中性子線その他重イオン核分裂破片のLETは大きいので高LETという MeVμmMeV(gcm2)やMeV(mgcm2)で表される

南大西洋異常(SAA) bull 地球の自転軸と磁気軸のずれ

darr bull 放射線帯が自転軸に対して非

対称

bull 南大西洋上空では放射線帯内帯が低高度に落ちてきているこの領域を南大西洋異常域(SAA South Atlantic Anomaly)と呼ぶ

bull 地球観測衛星ではSAAで放射線帯陽子の影響を受ける

Single Event Lachup

シングルイベントと陽子分布

MOS-1衛星(高度909km軌道傾斜角99度)で発生したシングルイベントと 陽子30MeV以上の等高線マップを重ね合わせた結果

NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)

bull 入射粒子が電離によらず与える損傷非イオン化損失

低軌道での電子フラックスと 不具合の発生場所

南大西洋異常(SAA)と極の角

高度800kmでの電子フラックス図極の角(polar horn)とSAAを示す

太陽粒子線 bull 太陽高エネルギー粒子線(SPE Solar Proton Events)は太陽フレア とコロナガス噴出 (CMECoronal Mass Ejections )により引き起こされる bull フレアのスペクトルは可変であるためあるエネルギー域における最悪状態イベントは必ずしも別のエネルギー域における最悪条件ではない 1972年8月のイベント 10~70MeVの粒子が最も多かった 1989年10のイベント 1972年8月のイベントに比べ低エネルギー領域 高エネルギー領域が明らかに激しかった

フルエンス 105 to 1011 cm-2

変動期間 1日から数日

ldquoBastiliardquo Solar Event 14 July 2000

Carrington Flare

84

(LW Townseed) Carrington Flare(1859年) Carrington Flare による30MeV以上トータルFluenceを118times109cm-2で規格化 ~1989年フレアの約13倍(シングルイベントの評価で使用) ~1991年フレアの約9倍 2012年7月23日にキャリントンイベントとほぼ同等の爆発現象が太陽あるいは太陽の周りで起きていたということがNASAの太陽観測衛星「STEREO」の解析から発表された

放射線対策 bull 放射線シールドを付加し放射線を減衰させる

bull 放射線耐性の強い部品(SOI(Silicon On Insulator)技術による耐放射線部品)材料に変更する

bull 放射線による損傷を吸収するために回路または構造上のマージンを持たせる bull ソフト的なエラーに対しては エラー検出訂正機能や多数決

機能等でソフト的エラーが起きてもシステムが機能するようにしたフォールトトレラント機能を付けて対処する ICのハード的故障に対しては ラッチアップ耐性の強い部品を選定するしかないが 電流制限回路を付ける対策も採られる パワーMOSFETに対しては部品選定 電源電圧を規格値の半分以下に落とす等の対策を採る

SOI技術

表面帯電への対策例

表面の物体間を導線で結線する

太陽電池のカバーガラスを導電性被膜付き(酸化インジウムITO)にする

熱制御材表面にITOを被覆する

熱制御材は高誘電率のテフロンの使用を避け 高伝導度耐環境性に優れたブラックカプトンを使用

イオンエンジンの中和器で能動帯電制御

内部帯電への対策例

アルミで3mm厚さに相当するシールドで囲む(Faraday Cage)

テフロンやカプトンなどの誘電体材料の内部での使用量を最小限に押さえる

回路基板やコンフォーマルコーティングは誘電体なので電流リークパス(1012Ωcmまたは1012Ωcm2

程度)を必ずつける

特にスポット的な放射線シールドの金属材には必ず電流リークパスをつける

帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備

衛星モデル作成

材料物性テーブル設定

宇宙環境パラメータ設定

Converter

転送ディレクトリ 解析データファイル

転送

解析ディレクトリ生成 解析結果 進行状況チェック ファイル操作

MUSCAT 解析エンジン

解析結果 表示

パラメトリックラン

オプション 解析

大型パネル実験(35mtimes11m) クーポンパネル実験(26cmtimes16cm)

環境模擬試験 環境模擬試験

MUSCATに使用する物性値設計標準制定のための知見などを得ることを目的に軌道上の宇宙環境を模擬した地上試験を行っている これらの試験では放電の発生頻度や電圧閾値放電発生による太陽電池パネルや搭載機器への影響を検証している

放射線計測装置の原理

bull その粒子が物質を通過する際のエネルギー損出率が粒子の電荷(原子番号)Zの二乗に比例すること(Bethe-Blochの式)を利用する

S2

E

ΔE Ersquo

S1 S3

  • 宇宙機の設計のための宇宙環境
  • 話の流れ
  • 話の流れ
  • TEDA(技術データ取得装置)(国産部品の宇宙環境での実証の必要性)
  • ETS-VTEDA(技術データ取得装置)誕生前の部品の宇宙実証の背景
  • スライド番号 6
  • スライド番号 7
  • スライド番号 8
  • スライド番号 9
  • 図6太陽黒点数と静止軌道電子 (>04MeV ) Flux の変動 (ETS-V搭載DOMによる観測)
  • スライド番号 11
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの開発(理研東大と共同で宇宙環境計測の充実)
  • ETS-VI(きく6号)打ち上がったがGEOに行かずGTOに留まる
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの成果
  • スライド番号 15
  • スライド番号 16
  • スライド番号 17
  • ADEOS搭載TEDA(世界2番目の異常宇宙線ACR)
  • BBND (ボナー球中性子検出器)
  • スライド番号 20
  • ISS搭載BBNDの成果(約8か月)
  • スライド番号 22
  • MDS-1搭載放射線吸収線量モニタ(SDOM)
  • 放射線帯変動モデルの開発MDS-1 065 MeV 電子フラックス
  • 変動パラメータの選択 (1 cycle solar activity)
  • 変動パラメータ- Tavg の定義-
  • 065MeV 電子 L値-Tavg マップ
  • 13MeV 陽子 L値-Tavg マップ
  • 電子観測とMDS-1モデルの比較
  • 放射線帯フラックスピークの変動
  • 陽子観測とモデルの比較
  • 電子(035~078MeV) 1日の変動予測GOSAT軌道
  • 電子(035~078MeV) 変動の信頼度水準(1日)GOSAT軌道
  • MDS-1 model と AE-8 modelとの比較1日
  • 話の流れ
  • 2003年10月 みどり号の全損事故(複合現象)
  • 衛星帯電の基本式
  • 内部帯電
  • パドルでの帯電放電メカニズム
  • スライド番号 40
  • スライド番号 41
  • スライド番号 42
  • データ中継技術衛星DRTS (こだま)の不具合
  • DRTS ESA スパイクノイズと電子フルエンスの比較(赤の丸が異常検知)
  • 不具合が宇宙環境によるものであるか判断する際のポイント
  • 話の流れ
  • 宇宙天気のリスク-宇宙環境によるシステムへの影響 -
  • NASAの報告-GNampCに注目-
  • NASAの報告(続き)
  • 宇宙環境を原因とする不具合の割合-JAXAの場合-
  • 不具合発生部位の割合 
  • Satellite News Digest -静止軌道不具合-
  • 太陽活動と静止軌道衛星不具合例
  • スライド番号 54
  • スライド番号 55
  • スライド番号 56
  • 衛星開発段階における対策
  • 運用における対応
  • 話の流れ
  • スライド番号 60
  • スライド番号 61
  • まとめ(その1)
  • まとめ(その2)
  • 宇宙環境グループは宇宙ステーションと衛星プロジェクトの安全な遂行に貢献しています
  • 補足資料
  • 不具合原因の推移
  • 何故不具合は減らないか
  • 放射線による影響の概要
  • 耐放射線設計手順
  • 各軌道における放射線環境
  • 放射線による部品材料の影響
  • トータルドーズ効果
  • シングルイベント効果
  • シングルイベントメカニズム-陽子と重イオンの違い-
  • エラー発生率の計算
  • 線エネルギー付与(LET)(linear energy transfer)
  • 南大西洋異常(SAA)
  • Single Event Lachup
  • シングルイベントと陽子分布
  • NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)
  • 低軌道での電子フラックスと不具合の発生場所
  • 南大西洋異常(SAA)と極の角
  • スライド番号 83
  • Carrington Flare
  • 放射線対策
  • スライド番号 86
  • スライド番号 87
  • 帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備
  • スライド番号 89
  • 放射線計測装置の原理
Page 21: 宇宙機の設計のための宇宙環境の方針から国産部品開発(42品種)が実施された。 . 半導体電子部品は耐放射線性を加味して、人工衛星(特に

ISS搭載BBNDの成果(約8か月)

実験期間中の平均的な等価線量等量率 (2001年3月23日~2001年11月14日)

太陽フレア時(2001年11月4日)

等価量等量率の平均は94μSv日で年率に換算すると34mSv年となるこれは地上において自然界から受ける等価線量当量率の約14倍に相当する 実験期間中に多数の太陽フレアが発生した2001年11月4日の太陽フレアにより019mSVの増加を観

測したこれは自然界から受ける等価線量当量率の約1か月分に相当するしかしBBNDの約8か月

の実験期間中の全等価線量当量に対するこの太陽フレアの影響の寄与分は1以下であった また搭載位置による環境の違いも確認された

H Koshiishiet al Radiation Measurements 42(2007) 1510-1520

1)船内の計測結果より低エネルギー側で2~3桁高エネルギー側で1~2桁低い 2)船内より船壁が薄く中性子が少ない環境より自然のアルベド中性子環境に近い

中性子被曝線量の ISS船外(SEDA-AP)と船内(STS-89)の比較

MDS-1搭載放射線吸収線量モニタ(SDOM) SiTungstenAlBGO

② ⑦

⑧⑧

① Collimator ② Window③ SSDs ④ Plastic Scintillator⑤ Anticoincidence Scintillator(ACS)⑥ Beam Stop⑦ Scintillator PMT⑧ ACS PMT

運用期間 2002年2月 ndash 2003年9月 軌道 -軌道傾斜角 285deg 1 lt BB0 le 84 -高度 500 km times 36000km 11 le L le 10 -軌道周期 約10時間35分 -スピンレート 5rpm

計測エネルギー範囲 Electron 04- 9MeV (5bins) Proton 09-210MeV (12bins) He 6-140MeV (4bins) Heavy Ion 15- 60MeVnuc (1bin) G-Factor 001cm2sr

放射線帯変動モデルの開発 MDS-1 065 MeV 電子フラックス

変動パラメータの選択 (1 cycle solar activity)

太陽風速度(SW)

太陽黒点数(R)

Ap指数

F107

変動パラメータ- Tavg の定義-

1日後の予測

パラメータスケールの時間平均 ApTavg SWTavg F107 Tavg

T days

放射線帯の構造は変動パラメータ値の大きさと継続時間に相関がある

065MeV 電子 L値-Tavg マップ

APTavg

SWTavg

13MeV 陽子 L値-Tavg マップ

APTavg

F107Tavg

電子観測とMDS-1モデルの比較

80 175

放射線帯フラックスピークの変動

80orbits (平穏時) 175orbits (擾乱時)

陽子観測とモデルの比較

電子(035~078MeV) 1日の変動予測GOSAT軌道

0

50

100

150

200

250

1E+09

1E+10

1E+11

1E+12

1984 1986 1988 1990 1992 1994 1996 1998 2000 2002 2004 2006 2008

Flue

nce[

ecm

2M

eVd

ay]

Launch day

FluenceSSN

Worst case Nov 12003

電子(035~078MeV) 変動の信頼度水準(1日)GOSAT軌道

00

01

02

03

04

05

06

07

08

09

10

88 90 92 94 96 98 100 102 104 106 108 110 112 114

Con

fiden

ce le

vel

Fluence[LOG10 ecm2MeVday]

AE-8 MAX

AE-8 MIN

MDS-1 model と AE-8 model との比較1日

0

20

40

60

80

100

120

140

160

180

1E+09

1E+10

1E+11

1E+12

1995 1997 1999 2001 2003 2005 2007 2009

Flue

nce[

ecm

2M

eVd

ay]

Launch day

Fluence(JAXA)Fluence(AE8)SSN

話の流れ

技術データ取得装置(TEDA)の概要と成果 bull 主な成果 bull 不具合解析例

宇宙天気のリスクと対策 bull 宇宙環境による衛星システムへの影響 bull 宇宙環境を原因とする不具合の割合推移部位 bull 静止軌道不具合 bull 対策

今後必要な観測項目

まとめ

2003年10月 みどり号の全損事故 (複合現象)

極域のオーロラ帯を通過中に電力ハー

ネスを巻いているMLIが高エネルギー電

子により帯電

MLIが接地されていなかったため内側

のハーネスとの間に1kV以上の電位差が

発生

MLI内のガス密度が発電開始に伴う温度

上昇により上昇

ハーネス被覆の傷により露出したハーネ

ス芯線とMLI内面の間で放電発生

単発の放電が隣接するハーネスに飛び火

してハーネス間の短絡

アーク放電が次々と伝搬していきハー

ネス全体が焼損

故障推定箇所 (大電力ハーネス部)

bull詳細報告書は文部科学省 宇宙開発委員会のHP参照

httpwwwmextgojpb_menushingiuchuureports04080901htm

bull 人工衛星の電位 bull 人工衛星は電気的に宇宙に浮いている bull 宇宙機構造体が接地点 bull 宇宙機への流入電流と流出電流のバランスによって宇宙機電位が決まる bull 各電流成分は宇宙機電位Vの関数として表され定常状態では式を下式を満たす

衛星帯電の基本式

( ) dtIIIIIIIC

V

dtdVCVIVIVIVIVIVIVI

BPHBSESISEIE

BPHBSESISEIE

int +++++minus=

==+++++minus

1

0)]()()()()()([)(

入射電子電流 ( E I )

後方散乱電子電流 ( BSE I )

入射正イオン電流 ( I I )

入射電子による二次電子電流 ( SE I )

太陽光

入射正イオンによる 二次電子放出電流 ( SI I )

光電子放出電流( PH I )

電荷ビーム放出電流(IB)

bull内部帯電は衛星の外壁を貫通した放射線帯外帯の01MeV以上の電子が内部に侵入

bull基板間や同軸ケーブルの線間等の容量(コンデンサ)や誘電体に帯電 bull接地されてない導体片に帯電

bullその耐圧電圧を超えると その耐圧の弱い箇所 (材質の欠陥や針状突起など の箇所)で放電して故障に至る

内部帯電

(あるエネルギ-以上の粒子が入射光電子なし)

NASA-HDBK-4002より

パドルでの帯電放電メカニズム

宇宙環境の影響により 衛星がマイナス電位に帯電

高エネルギー電子等により カバーガラスはプラスに帯電 衛星とカバーガラスに電位差が生じる

電位差が大きくなると トリプルジャンクション近傍 の電界強度が増大していく

トリプルジャンクションで放電が発生する カバーガラスの帯電が緩和される

+ + + + + + + + + + + + + +

+ + + +

カバーガラス

太陽電池セル

基板(衛星構体)

トリプルジャンクション rArr 導体絶縁体宇宙環境の接点

持続放電

Substrate

Satellite Load

insulation sheet

Solar array cell

Cover glass

Arc current

Electrode

持続放電は衛星の電力消失につながる 持続放電のモードは以下の2通りがある

Substrate

Satellite Load

insulation sheet

Solar array cell

Cover glass

Arc current

Electrode

Solar array cell

Cover glass

セル-基板間短絡 セル間短絡

放電によって太陽電池セルと基板が短絡する 短絡によって負荷に電力が供給されなくなる

放電によって太陽電池セルとセルが短絡する 短絡によって負荷に電力が供給されなくなる

サブストーム(高エネルギー電子)との遭遇

+ + + + + + + +

二次電子光電子による絶縁体の帯電(局所帯電)

電位差発生

逆電位勾配

衛星構体が負に帯電(絶対帯電)

電位

時間

サブストーム

衛星構体 VS

乖離電圧 ∆V

カバーガラスVcg

0 プラズマ電位

軌道別帯電放電現象

トリプルジャンクションで 放電発生

放電発生

静止軌道

+ + + + + + + +

逆電位勾配

軌道帯電放電現象

トリプルジャンクションで 放電発生

極軌道 オーロラ電子(高エネルギー電子)との遭遇

プラズマ流入出による絶縁体の帯電(局所帯電)

電位差発生

衛星構体が負に帯電(絶対帯電)

放電発生

電位

時間

オーロラ電子

衛星構体 乖離電圧 ∆V

カバーガラス

0 プラズマ電位

データ中継技術衛星DRTS (こだま)の不具合

2002年10月 9日 静止軌道に打ち上げ

2003年

3月24日 406JST変化率異常モニタ故障検出(FDIR)

が動作しA系からB系に切り替わった

3月25日 410JSTにB系のみ異常検知

4月 3日 327JSTにB系のみ異常検知

5月28日 124JSTにB系のみ異常検知

6月 6日1537JSTにB系のみ異常検知

ESA

DRTS ESA スパイクノイズと 電子フルエンスの比較(赤の丸が異常検知)

larr閾値

この事実を基に静止軌道における内部帯電警報システムを構築 2004年4月より運用開始

不具合が宇宙環境によるものであるか 判断する際のポイント

不具合の発生した時刻に太陽フレアや磁気嵐等の宇宙天気の大きな変動が起きていれば不具合に関係している可能性が高い但し帯電など放射線の積算的効果の伴う現象については発生から1週間位さかのぼり環境がどのように推移してきたかを考慮する必要がある

磁気嵐が起きると静止軌道に急激な粒子の増加現象が起きこれにより衛星帯電が引き起こされたりする(予測に利用可能)

地方時(真夜中や朝方か)や季節(春秋)を考慮する

低軌道衛星においてはSAA外帯のrdquo角ldquo及び極通過時に不具合

が起きやすいので衛星の位置(緯度経度)が重要

事象を把握する上で単発現象か数回起きている現象か周期

(時間同じ軌道等)的に発生している現象か

話の流れ

技術データ取得装置(TEDA)の概要と成果 bull 主な成果 bull 不具合解析例

宇宙天気のリスクと対策 bull 宇宙環境による衛星システムへの影響 bull 宇宙環境を原因とする不具合の割合推移部位 bull 静止軌道不具合 bull 対策

今後必要な観測項目

まとめ

宇宙天気のリスク -宇宙環境によるシステムへの影響 -

プラズマ (IRI)

帯電 (MUSCAT)

衝突 (AUTODY)

抗力 表面劣化

紫外線X線 中性粒子 (MSIS)

放射線粒子 (AE8AP8JPLSHIELDO

SE-2)

メテオロイドデブリ (MASTER2005

ORDEM)

電離損傷 変位損傷

bull電子回路の劣化 bull光部品の劣化

bull太陽電池セルの劣化

SEU (CREME96)

bullデータエラー bull画像ノイズ

bullシステム停止 bull回路損傷

bull熱的電気的光学的特性の劣化

bull構造の劣化 bullコンタミ

電磁パルス bull電源出力低下

bull損傷

bullトルク bull軌道落下

bull構造 損傷 bull減圧

bull電磁パルス

NASAの報告 -GNampCに注目-

1974年から1994年に起きたNASAと空軍の衛星故障の内20~25が宇宙環境に起因していたと報告

1990年から2001年に米国欧州カナダ日本の企業や政府機関が開発した衛星を調べた過去の宇宙ミション損失の大部分はロケットの失敗であったが1998年衛星損失の大部分は軌道上の衛星障害となっている多くの最近の異常は太陽電池アレイ及びバッテリの危険が増加している静止軌道通信衛星の設計寿命はこのサブシステムの故障の危険が増加している

喪失等の大きな誘導制御(GNampC)の不具合に注目 GNampC不具合の内宇宙環境による 不具合は約3と報告されている

軌道上衛星のタイプ別数

NASAの報告(続き)

衛星設計寿命における不具合発生時期 事故率と軌道

軌道別の衛星数 サブシステム不具合

宇宙環境を原因とする不具合の割合 -JAXAの場合-

2002年~2008年に運用された軌道上不具合情報が比較的充実している11衛星(利用衛星7機科学衛星4機)の結果宇宙環境によるも

のは約15過去のデータよりも割合が少ない

合計83件 合計35件

(1)利用衛星 (2)科学衛星

設計検討 不足 48

製造不良 8

軌道上環境 17

偶発故障 6

調査中 13

原因不明 8

設計検討

不足 61

製造不良 4

軌道上環境 11

偶発故障 6

調査中 9

原因不明 9

不具合発生部位の割合

不具合発生部位の割合

Brent Robertson Eric Stoneking ( 1990-2001NASA Goddard Space Flight Center )

Satellite News Digest -静止軌道不具合-

Satellite News Digest (SND) (http wwwsqt-indexcouk) で1997年~2009年の期間に静止軌道で95件の不具合が報告されている その内運用ミスや設計ミスなどを除くと32件(約33)は宇宙環境によるものであった 過去のデータより割合が多い

Choiら1)はこれら不具合の地方時と季節依存性を確認した その結果2100LT~900LTで約72の不具合が発生し900LT~2100LTは9件(約28)であった またこの9件は全て姿勢制御の不具合だった 静止軌道衛星不具合のほとんどは真夜中と朝方で起きており磁気嵐に伴い磁気圏尾部から注入した粒子による表面帯電が不具合の主原因と結論づけている

1) Ho-sung Choi et al Analysis of GEO spacecraft anomalies Space weather relationships Space Weather Vol 9 S06001

太陽活動と静止軌道衛星不具合例

ANIK-E1E2

ANIK-E1

複数の衛星で故障

Galaxy-15

帯電放電不具合 -ANIK-E1amp2Telstar401-

Jan 1994 ANIK-E1 amp E2事故時の環境 - Joe H Allen

1週間

太陽活動下降時期の電子増加

2MeV以上電子

copyNOAA Web

フラックスが3桁急増

Jan 1997 Telstar401事故時の環境

静止軌道の急激な電子増加

太陽極大期太陽フレアによる衛星障害 - 2003年10月~11月-

10486981048698 永久故障 4 10486981048698 安全モード又は運用を一時停止 31 10486981048698 データ内容の「誤り」の増加搭載コンピュータの誤動作 5

httpwwwsat-ndcomfailures等のデータによる 合計 40件

-Barbieri and Mahmot

米国極軌道気象衛星NOAA-17の改良型マイクロ波観測装置AMSU-A1 (Advanced Microwave Sounding Unit)のスキャナーが永久故障 米国気象衛星GOES -8号のX線センサがOFFになり復帰しなくなった

e-birdに深刻な不具合が発生 不具合は20本のトランスポンダ全てに影響

火星周回中の探査機「マーズオデッセイ (Mars Odyssey)」の観測機器放射線観測装置「Martian Radiation Environment Experiment (MARIE)」が太陽活動の影響により10月28日から適切に作動しなくなった データ中継技術衛星(DRTS)「こだま」 太陽捕捉モードに移行

太陽陽子

帯電放電不具合-Galaxy15(局所的的現象)- 2

5 M

eV

65

MeV

11

5 M

eV

GOES 14 ----- GOES 15 ----- GOES 11 -----

Satellite Locations

Galaxy 15 anomaly

2010年4月5日9時48分UTCは磁気嵐及びCMEが発生するなど宇宙環境は非常に荒れていたGalaxy15衛星は真夜中側に位置し宇宙環境の影響を受けやすい

位置にいたことから宇宙環境による不具合である可能性が高いということで原因追及がなされた高エネルギー粒子が引き起こす代表的な衛星不具合現象として3つ(表面帯電内部帯電SEUシングルイベントバーンアウトSEL)の可能性を検討した

チームの報告書によると磁気圏尾部からの熱電子の流入による放電が原因であったと結論付けられたGalaxy15衛星の近くにはGOES-11衛星が位置していたがGOES-11衛星には不具合を発生しておらず本現象は局所的な現象と推測される

衛星開発段階における対策 JAXAの不具合解析の結論

bull 2002年~2008年に運用された11機の衛星不具合を解析 宇宙環境による不具合は偶発故障のみ(全体の約15)確率的には想定範囲内ではあるがその影響を最小限とするためディレーティング運用モード寿命についての研究に取り組む

bull 設計基準試験の充実検証確認の強化技術成熟度(TRL)評価の徹底各々の境界制約条件の明示化等により検証不足抜けの防止有効なピアレビューに結びつける

冗長系(同じハードウェア機能の冗長)柔軟性の設計(ソフトハードの対応)

bull 従来の故障が起きないようにする設計に対してGOSAT(いぶき)では重要部

品を二重化することにより故障する可能性は上がるが故障しても衛星バスの運用や観測が続行できる可能性がより高くなるように設計した

運用における対応

bull 宇宙天気監視ーロケット打ち上げ及び宇宙飛行士支援 数日前に今後の宇宙環境の推移を把握(MXレベルのフレアの発生確率)

bull X線の増加で太陽フレア発生を検知したら高エネルギー粒子の発生をいつまで 気を付ければ良いか判断(発生位置で大凡を推定するが課題は多い) SPEが発生した場合(特に10MeV以上100MeV 以上の陽

子)最大値フラックス値の推定 ピーク値を予測(特に閾値に近くなった時に重要)

bull 衛星運用 bull 太陽フレア磁気嵐警報(X線陽子及びkpが閾値を超えた

時に警報を発信)2003年10月より運用開始 bull 内部帯電警報(2日後の静止軌道上の高エネルギー電子(>1

Me) の増加を予測し 閾値を超えた時に警報を発信) 2004年4月より運用開始

話の流れ

技術データ取得装置(TEDA)の概要と成果 bull 主な成果 bull 不具合解析例

宇宙天気のリスクと対策 bull 宇宙環境による衛星システムへの影響 bull 宇宙環境を原因とする不具合の割合推移部位 bull 静止軌道不具合 bull 対策

今後必要な観測項目

まとめ

計測対象計測項目 計測対象 粒径100μm以上のデブリメテオロイド 計測項目 デブリ粒径衝突頻度

基本原理

厚さ約125μmの絶縁性のポリイミドフィルム表面に 100μm周期で直線状の細長い導線(太さ50μm)パターンを形成導線の破断を電気的に検知することによりデブリの衝突(貫通)を検知する破断した導線の数導線の幅ピッチからデブリサイズを計測する

微小デブリ計測技術の概要

衝突孔の例(衝突試験ISAS) - 衝突粒子 SUS 309 microm - 衝突速度 52 kms

HTV5号機によるセンサ機能のフライト実証

35cm

46cm

FY2013機能実証モデル

検出線幅 50 μm 検出線間隔 100 μm フィルム厚 lt 20 μm 有感領域 30times33cm 検出線総数 3300本

サイズ 50times39times4 cm (筐体を含む)

重量 約15kg(筐体を含む)

消費電力 2W(最大4W)(他センサ含む)

テレメトリ 02 bps

宇宙環境観測装置KASPERの一部としてデブリセンサSDMを搭載 FY2013に製作開始今年8月に打ち上げ予定)

まとめ(その1)

衛星不具合の主な原因は帯電放電シングルイベント放射線損傷である今後デブリ環境が重要になると予測される

静止軌道では商用衛星が多く運用されており宇宙環境の変動把握は重要この領域で運用する衛星が気を付けなければいけない環境として

1太陽フレアに伴う高エネルギー粒子 2太陽活動下降期による静止軌道電子の増加 3磁気嵐に伴う磁気圏尾部から注入する粒子 などがあげられる

まとめ(その2)

不具合軽減の取り組み bull 開発時は宇宙環境条件(トータルフラックス及び最悪条

件)を明確にし設計(冗長系柔軟性の設計ディレーティング及び運用モード寿命について研究)試験の充実検証の充実を図る

bull 運用段階に入ったならば宇宙環境を監視し警報等で故障を防ぐ

予測課題 bull 太陽フレアに伴う高エネルギー粒子発生後フラックス

ピーク値の推定

bull 衛星により不具合の起きる閾値は異なるが閾値をこえる急激な電子フラックスの増加と継続時間の予測

bull 局所的な磁気嵐に伴う磁気圏尾部から注入する粒子

宇宙環境グループは宇宙ステーションと衛星プロジェクトの安全な遂行に貢献しています

ご静聴ありがとうございました

補足資料

不具合原因の推移 bull 宇宙天気を大きく左右する要因の1つとして約11年の太陽活動変化が挙げられる

bull 太陽活動下降時期(太陽変動CME)と極大期(フレアCME)に衛星で不具合が増加するそれにより不具合原因の割合が変わる

-Koons et al The Impact of the Space Environment on Space Systems Aerospace Corp report no TR-99(1670)-1 20 July 1999 -2009 preliminary study (unpublished)

何故不具合は減らないか

bull 部品 放射線に対する感受性が高くなっている bull 微細化が進み同時にフォールトするノードが増え同時にエ

ラーとなる論理ノードやメモリセルが増加する微細化によってメモリセルは小さくなるので記憶容量当たりでみるとエラーの発生率は下がるしかし半導体チップの記憶容量やゲート数が増えるので半導体チップ当たりのエラー発生率は微細化とともに上昇するまた蓄積電荷が小さくなり感受性が高くなってきている

bull システム 大型化大電力化運用長期化 bull 1990年代末以降静止衛星の電力が10kWレベルになったしか

し設計検証技術データ蓄積が遅れている改善されつつあると推測される

放射線による影響の概要

粒子 エネルギー又はLET

代表的な影響

陽子 100keV-1MeV 1-10MeV 10-100MeV gt50MeV

表面損傷 表面材料と太陽電池の損傷 放射線損傷(電離非電離損傷の両方)センサーへのノイズ シングルイベント効果

電子 10-100keV gt100keV gt1MeV

表面帯電 深部帯電現象(deep-dielectric charging)センサーへのノイズ太陽電池の損傷 放射線損傷(電離)

重イオン gt1MeV-cm2mg シングルイベント効果

注エネルギー及びLETは個々の部品等により異なりますあくまでも目安です

耐放射線設計手順

軌道条件

ミッション期間

環境条件設定

トータルドーズの予測

1MeV電子換算被曝算出

NIELの換算

LETフルエンス算出

陽子フルエンス算出

対  策  の  検  討

対  策  の  検  討

対  策  の  検  討

放射線による劣化率予測

劣化率予測 特性予測

耐性データ

放射線による劣化率予測

耐性データ

劣化率予測アレイ出力劣化予測

感受性データ

シングルイベント発生率予測 致命度解析

衛星内質量分布

(2)

部品材料の選定

他の要因による劣化率予測

(2)(2) (3)

回路設計等NO

OK

アレイ構造 セル選定

他の要因による劣化率予測 アレイ設計(2)

(2) (2) (2) (3)

衛星内質量分布 部品選定(2)

(2) (2)(3)

NO

OK

NO

OK

(1) 環境モデルマージを含む(2) 部品レベルの検討(3) アセンブリレベルでの検討(4) 設計マージン環境モデル   マージを含め大丈夫か

トータルドーズ

太陽電池アレイの劣化

シングルイベント効果

回路設計

補足放射線太陽宇宙線銀河宇宙線

NEILを用いたダメージファクターの算出

対  策  の  検  討

放射線による劣化率予測

劣化率予測 特性予測

耐性データ

(2)

部品材料の選定

他の要因による劣化率予測

(2)(2) (3)

回路設計等NO

OK

衛星内質量分布 半導体デバイスの変位損傷

(1)

(4)

(4)

(4)

(4)

各軌道における放射線環境

1E+10

1E+11

1E+12

1E+13

1E+14

1E+15

1E+16

1E+17

1E+18

1E+19

1E+20

001 010 100 1000

捕捉

電子

の積

分フ

ルエ

ンス

[m

2 ]

エネルギー[MeV]

各軌道における電子捕捉積分フルエンス(3年間)

LEO

EOS GEO

MEO

GTO

GEO 軌道傾斜角 0deg 高度36000km GTO 軌道傾斜角 18deg 高度 360km~36000km MEO 軌道傾斜角 51deg 高度 10000km EOS 軌道傾斜角 98deg 高度705km LEO 軌道傾斜角 29deg 高度 600km

1E+12

1E+13

1E+14

1E+15

1E+16

1E+17

1E+18

1E+19

1E+20

01 10 100 1000

捕捉

陽子の

積分フルエン

ス[

m2 ]

エネルギー[MeV]

各軌道における捕捉陽子積分フルエンス(3年間)

MEO

GTO

GEO

EOS LEO

放射線による部品材料の影響

総照射線量 (TIDTotal Ionising Dose )

電離損傷

バイポーラTrの電流増幅率の低下リーク電流の増大

γ線で評価

トータルドーズ効果

変位損傷 (DDDisplacement Damage )または 非イオン化エネルギー損失 (NIELNon-Ionising Energy

Loss )

変位損傷(格子欠陥の生成)

電荷輸送効率の低下 (CCD)太陽電池の効率低下等

電子陽子により評価

シングルイベント効果

1個の荷電粒子の入射により発生する誤動作

ソフト(Latch-Up Burnout) エラー又は ソフト (Upset) エラー

陽子及び重イオンで評価

トータルドーズ効果

+ - + + - + - + - - + + + + -

ゲート酸化膜

電離

格子欠陥

正電荷捕獲

+ 正孔 - 電子

電極

(Silicon oxidenitride)

荷電粒子

反跳原子

ゲート絶縁膜中に電荷が蓄積することによるMOSトランジスタのしきい電圧(MOSトランジスタがオフからオンに変化するゲート電圧)の変化をもたらすただ

し最近の最先端チップはゲート絶縁膜がきわめて薄くなっているこのためゲート絶縁膜よりもフィールド絶縁膜(隣接するトランジスタを電気的に分離する絶縁膜)での電荷蓄積が相対的には大きな問題になってきている」

シングルイベント効果

メモリセルはNチャンネルとPチャンネルMOSFETより構成されメモリ情報は回路ノード12の電位の

高低により記録している空乏層の広がっているPN接合12の領域に

重イオンが入射した場合電荷の発生と空乏層内への少数キャリアの収集が起こるこの収集電荷量が回路の耐量を越えた場合(c)に示すように反転が起こる(ソフトエラー)一方pウエル-N基板接

合の空乏層内に電荷収集量が起こりえる耐性を越えると寄生的に存在するPNPNサイリスタ構造がオ

ンし電源と基板間に大電流が流れる状態が生じる(ラッチアップ)

シングルイベントメカニズム -陽子と重イオンの違い-

エラー発生率の計算

線エネルギー付与(LET) (linear energy transfer)

電離性放射線が物質中を通過する際飛程の単位長さ当りに平均して失うエネルギーをいう各種の放射線のうちX線γ線はLETが小さいので低LETといいα線中性子線その他重イオン核分裂破片のLETは大きいので高LETという MeVμmMeV(gcm2)やMeV(mgcm2)で表される

南大西洋異常(SAA) bull 地球の自転軸と磁気軸のずれ

darr bull 放射線帯が自転軸に対して非

対称

bull 南大西洋上空では放射線帯内帯が低高度に落ちてきているこの領域を南大西洋異常域(SAA South Atlantic Anomaly)と呼ぶ

bull 地球観測衛星ではSAAで放射線帯陽子の影響を受ける

Single Event Lachup

シングルイベントと陽子分布

MOS-1衛星(高度909km軌道傾斜角99度)で発生したシングルイベントと 陽子30MeV以上の等高線マップを重ね合わせた結果

NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)

bull 入射粒子が電離によらず与える損傷非イオン化損失

低軌道での電子フラックスと 不具合の発生場所

南大西洋異常(SAA)と極の角

高度800kmでの電子フラックス図極の角(polar horn)とSAAを示す

太陽粒子線 bull 太陽高エネルギー粒子線(SPE Solar Proton Events)は太陽フレア とコロナガス噴出 (CMECoronal Mass Ejections )により引き起こされる bull フレアのスペクトルは可変であるためあるエネルギー域における最悪状態イベントは必ずしも別のエネルギー域における最悪条件ではない 1972年8月のイベント 10~70MeVの粒子が最も多かった 1989年10のイベント 1972年8月のイベントに比べ低エネルギー領域 高エネルギー領域が明らかに激しかった

フルエンス 105 to 1011 cm-2

変動期間 1日から数日

ldquoBastiliardquo Solar Event 14 July 2000

Carrington Flare

84

(LW Townseed) Carrington Flare(1859年) Carrington Flare による30MeV以上トータルFluenceを118times109cm-2で規格化 ~1989年フレアの約13倍(シングルイベントの評価で使用) ~1991年フレアの約9倍 2012年7月23日にキャリントンイベントとほぼ同等の爆発現象が太陽あるいは太陽の周りで起きていたということがNASAの太陽観測衛星「STEREO」の解析から発表された

放射線対策 bull 放射線シールドを付加し放射線を減衰させる

bull 放射線耐性の強い部品(SOI(Silicon On Insulator)技術による耐放射線部品)材料に変更する

bull 放射線による損傷を吸収するために回路または構造上のマージンを持たせる bull ソフト的なエラーに対しては エラー検出訂正機能や多数決

機能等でソフト的エラーが起きてもシステムが機能するようにしたフォールトトレラント機能を付けて対処する ICのハード的故障に対しては ラッチアップ耐性の強い部品を選定するしかないが 電流制限回路を付ける対策も採られる パワーMOSFETに対しては部品選定 電源電圧を規格値の半分以下に落とす等の対策を採る

SOI技術

表面帯電への対策例

表面の物体間を導線で結線する

太陽電池のカバーガラスを導電性被膜付き(酸化インジウムITO)にする

熱制御材表面にITOを被覆する

熱制御材は高誘電率のテフロンの使用を避け 高伝導度耐環境性に優れたブラックカプトンを使用

イオンエンジンの中和器で能動帯電制御

内部帯電への対策例

アルミで3mm厚さに相当するシールドで囲む(Faraday Cage)

テフロンやカプトンなどの誘電体材料の内部での使用量を最小限に押さえる

回路基板やコンフォーマルコーティングは誘電体なので電流リークパス(1012Ωcmまたは1012Ωcm2

程度)を必ずつける

特にスポット的な放射線シールドの金属材には必ず電流リークパスをつける

帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備

衛星モデル作成

材料物性テーブル設定

宇宙環境パラメータ設定

Converter

転送ディレクトリ 解析データファイル

転送

解析ディレクトリ生成 解析結果 進行状況チェック ファイル操作

MUSCAT 解析エンジン

解析結果 表示

パラメトリックラン

オプション 解析

大型パネル実験(35mtimes11m) クーポンパネル実験(26cmtimes16cm)

環境模擬試験 環境模擬試験

MUSCATに使用する物性値設計標準制定のための知見などを得ることを目的に軌道上の宇宙環境を模擬した地上試験を行っている これらの試験では放電の発生頻度や電圧閾値放電発生による太陽電池パネルや搭載機器への影響を検証している

放射線計測装置の原理

bull その粒子が物質を通過する際のエネルギー損出率が粒子の電荷(原子番号)Zの二乗に比例すること(Bethe-Blochの式)を利用する

S2

E

ΔE Ersquo

S1 S3

  • 宇宙機の設計のための宇宙環境
  • 話の流れ
  • 話の流れ
  • TEDA(技術データ取得装置)(国産部品の宇宙環境での実証の必要性)
  • ETS-VTEDA(技術データ取得装置)誕生前の部品の宇宙実証の背景
  • スライド番号 6
  • スライド番号 7
  • スライド番号 8
  • スライド番号 9
  • 図6太陽黒点数と静止軌道電子 (>04MeV ) Flux の変動 (ETS-V搭載DOMによる観測)
  • スライド番号 11
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの開発(理研東大と共同で宇宙環境計測の充実)
  • ETS-VI(きく6号)打ち上がったがGEOに行かずGTOに留まる
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの成果
  • スライド番号 15
  • スライド番号 16
  • スライド番号 17
  • ADEOS搭載TEDA(世界2番目の異常宇宙線ACR)
  • BBND (ボナー球中性子検出器)
  • スライド番号 20
  • ISS搭載BBNDの成果(約8か月)
  • スライド番号 22
  • MDS-1搭載放射線吸収線量モニタ(SDOM)
  • 放射線帯変動モデルの開発MDS-1 065 MeV 電子フラックス
  • 変動パラメータの選択 (1 cycle solar activity)
  • 変動パラメータ- Tavg の定義-
  • 065MeV 電子 L値-Tavg マップ
  • 13MeV 陽子 L値-Tavg マップ
  • 電子観測とMDS-1モデルの比較
  • 放射線帯フラックスピークの変動
  • 陽子観測とモデルの比較
  • 電子(035~078MeV) 1日の変動予測GOSAT軌道
  • 電子(035~078MeV) 変動の信頼度水準(1日)GOSAT軌道
  • MDS-1 model と AE-8 modelとの比較1日
  • 話の流れ
  • 2003年10月 みどり号の全損事故(複合現象)
  • 衛星帯電の基本式
  • 内部帯電
  • パドルでの帯電放電メカニズム
  • スライド番号 40
  • スライド番号 41
  • スライド番号 42
  • データ中継技術衛星DRTS (こだま)の不具合
  • DRTS ESA スパイクノイズと電子フルエンスの比較(赤の丸が異常検知)
  • 不具合が宇宙環境によるものであるか判断する際のポイント
  • 話の流れ
  • 宇宙天気のリスク-宇宙環境によるシステムへの影響 -
  • NASAの報告-GNampCに注目-
  • NASAの報告(続き)
  • 宇宙環境を原因とする不具合の割合-JAXAの場合-
  • 不具合発生部位の割合 
  • Satellite News Digest -静止軌道不具合-
  • 太陽活動と静止軌道衛星不具合例
  • スライド番号 54
  • スライド番号 55
  • スライド番号 56
  • 衛星開発段階における対策
  • 運用における対応
  • 話の流れ
  • スライド番号 60
  • スライド番号 61
  • まとめ(その1)
  • まとめ(その2)
  • 宇宙環境グループは宇宙ステーションと衛星プロジェクトの安全な遂行に貢献しています
  • 補足資料
  • 不具合原因の推移
  • 何故不具合は減らないか
  • 放射線による影響の概要
  • 耐放射線設計手順
  • 各軌道における放射線環境
  • 放射線による部品材料の影響
  • トータルドーズ効果
  • シングルイベント効果
  • シングルイベントメカニズム-陽子と重イオンの違い-
  • エラー発生率の計算
  • 線エネルギー付与(LET)(linear energy transfer)
  • 南大西洋異常(SAA)
  • Single Event Lachup
  • シングルイベントと陽子分布
  • NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)
  • 低軌道での電子フラックスと不具合の発生場所
  • 南大西洋異常(SAA)と極の角
  • スライド番号 83
  • Carrington Flare
  • 放射線対策
  • スライド番号 86
  • スライド番号 87
  • 帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備
  • スライド番号 89
  • 放射線計測装置の原理
Page 22: 宇宙機の設計のための宇宙環境の方針から国産部品開発(42品種)が実施された。 . 半導体電子部品は耐放射線性を加味して、人工衛星(特に

1)船内の計測結果より低エネルギー側で2~3桁高エネルギー側で1~2桁低い 2)船内より船壁が薄く中性子が少ない環境より自然のアルベド中性子環境に近い

中性子被曝線量の ISS船外(SEDA-AP)と船内(STS-89)の比較

MDS-1搭載放射線吸収線量モニタ(SDOM) SiTungstenAlBGO

② ⑦

⑧⑧

① Collimator ② Window③ SSDs ④ Plastic Scintillator⑤ Anticoincidence Scintillator(ACS)⑥ Beam Stop⑦ Scintillator PMT⑧ ACS PMT

運用期間 2002年2月 ndash 2003年9月 軌道 -軌道傾斜角 285deg 1 lt BB0 le 84 -高度 500 km times 36000km 11 le L le 10 -軌道周期 約10時間35分 -スピンレート 5rpm

計測エネルギー範囲 Electron 04- 9MeV (5bins) Proton 09-210MeV (12bins) He 6-140MeV (4bins) Heavy Ion 15- 60MeVnuc (1bin) G-Factor 001cm2sr

放射線帯変動モデルの開発 MDS-1 065 MeV 電子フラックス

変動パラメータの選択 (1 cycle solar activity)

太陽風速度(SW)

太陽黒点数(R)

Ap指数

F107

変動パラメータ- Tavg の定義-

1日後の予測

パラメータスケールの時間平均 ApTavg SWTavg F107 Tavg

T days

放射線帯の構造は変動パラメータ値の大きさと継続時間に相関がある

065MeV 電子 L値-Tavg マップ

APTavg

SWTavg

13MeV 陽子 L値-Tavg マップ

APTavg

F107Tavg

電子観測とMDS-1モデルの比較

80 175

放射線帯フラックスピークの変動

80orbits (平穏時) 175orbits (擾乱時)

陽子観測とモデルの比較

電子(035~078MeV) 1日の変動予測GOSAT軌道

0

50

100

150

200

250

1E+09

1E+10

1E+11

1E+12

1984 1986 1988 1990 1992 1994 1996 1998 2000 2002 2004 2006 2008

Flue

nce[

ecm

2M

eVd

ay]

Launch day

FluenceSSN

Worst case Nov 12003

電子(035~078MeV) 変動の信頼度水準(1日)GOSAT軌道

00

01

02

03

04

05

06

07

08

09

10

88 90 92 94 96 98 100 102 104 106 108 110 112 114

Con

fiden

ce le

vel

Fluence[LOG10 ecm2MeVday]

AE-8 MAX

AE-8 MIN

MDS-1 model と AE-8 model との比較1日

0

20

40

60

80

100

120

140

160

180

1E+09

1E+10

1E+11

1E+12

1995 1997 1999 2001 2003 2005 2007 2009

Flue

nce[

ecm

2M

eVd

ay]

Launch day

Fluence(JAXA)Fluence(AE8)SSN

話の流れ

技術データ取得装置(TEDA)の概要と成果 bull 主な成果 bull 不具合解析例

宇宙天気のリスクと対策 bull 宇宙環境による衛星システムへの影響 bull 宇宙環境を原因とする不具合の割合推移部位 bull 静止軌道不具合 bull 対策

今後必要な観測項目

まとめ

2003年10月 みどり号の全損事故 (複合現象)

極域のオーロラ帯を通過中に電力ハー

ネスを巻いているMLIが高エネルギー電

子により帯電

MLIが接地されていなかったため内側

のハーネスとの間に1kV以上の電位差が

発生

MLI内のガス密度が発電開始に伴う温度

上昇により上昇

ハーネス被覆の傷により露出したハーネ

ス芯線とMLI内面の間で放電発生

単発の放電が隣接するハーネスに飛び火

してハーネス間の短絡

アーク放電が次々と伝搬していきハー

ネス全体が焼損

故障推定箇所 (大電力ハーネス部)

bull詳細報告書は文部科学省 宇宙開発委員会のHP参照

httpwwwmextgojpb_menushingiuchuureports04080901htm

bull 人工衛星の電位 bull 人工衛星は電気的に宇宙に浮いている bull 宇宙機構造体が接地点 bull 宇宙機への流入電流と流出電流のバランスによって宇宙機電位が決まる bull 各電流成分は宇宙機電位Vの関数として表され定常状態では式を下式を満たす

衛星帯電の基本式

( ) dtIIIIIIIC

V

dtdVCVIVIVIVIVIVIVI

BPHBSESISEIE

BPHBSESISEIE

int +++++minus=

==+++++minus

1

0)]()()()()()([)(

入射電子電流 ( E I )

後方散乱電子電流 ( BSE I )

入射正イオン電流 ( I I )

入射電子による二次電子電流 ( SE I )

太陽光

入射正イオンによる 二次電子放出電流 ( SI I )

光電子放出電流( PH I )

電荷ビーム放出電流(IB)

bull内部帯電は衛星の外壁を貫通した放射線帯外帯の01MeV以上の電子が内部に侵入

bull基板間や同軸ケーブルの線間等の容量(コンデンサ)や誘電体に帯電 bull接地されてない導体片に帯電

bullその耐圧電圧を超えると その耐圧の弱い箇所 (材質の欠陥や針状突起など の箇所)で放電して故障に至る

内部帯電

(あるエネルギ-以上の粒子が入射光電子なし)

NASA-HDBK-4002より

パドルでの帯電放電メカニズム

宇宙環境の影響により 衛星がマイナス電位に帯電

高エネルギー電子等により カバーガラスはプラスに帯電 衛星とカバーガラスに電位差が生じる

電位差が大きくなると トリプルジャンクション近傍 の電界強度が増大していく

トリプルジャンクションで放電が発生する カバーガラスの帯電が緩和される

+ + + + + + + + + + + + + +

+ + + +

カバーガラス

太陽電池セル

基板(衛星構体)

トリプルジャンクション rArr 導体絶縁体宇宙環境の接点

持続放電

Substrate

Satellite Load

insulation sheet

Solar array cell

Cover glass

Arc current

Electrode

持続放電は衛星の電力消失につながる 持続放電のモードは以下の2通りがある

Substrate

Satellite Load

insulation sheet

Solar array cell

Cover glass

Arc current

Electrode

Solar array cell

Cover glass

セル-基板間短絡 セル間短絡

放電によって太陽電池セルと基板が短絡する 短絡によって負荷に電力が供給されなくなる

放電によって太陽電池セルとセルが短絡する 短絡によって負荷に電力が供給されなくなる

サブストーム(高エネルギー電子)との遭遇

+ + + + + + + +

二次電子光電子による絶縁体の帯電(局所帯電)

電位差発生

逆電位勾配

衛星構体が負に帯電(絶対帯電)

電位

時間

サブストーム

衛星構体 VS

乖離電圧 ∆V

カバーガラスVcg

0 プラズマ電位

軌道別帯電放電現象

トリプルジャンクションで 放電発生

放電発生

静止軌道

+ + + + + + + +

逆電位勾配

軌道帯電放電現象

トリプルジャンクションで 放電発生

極軌道 オーロラ電子(高エネルギー電子)との遭遇

プラズマ流入出による絶縁体の帯電(局所帯電)

電位差発生

衛星構体が負に帯電(絶対帯電)

放電発生

電位

時間

オーロラ電子

衛星構体 乖離電圧 ∆V

カバーガラス

0 プラズマ電位

データ中継技術衛星DRTS (こだま)の不具合

2002年10月 9日 静止軌道に打ち上げ

2003年

3月24日 406JST変化率異常モニタ故障検出(FDIR)

が動作しA系からB系に切り替わった

3月25日 410JSTにB系のみ異常検知

4月 3日 327JSTにB系のみ異常検知

5月28日 124JSTにB系のみ異常検知

6月 6日1537JSTにB系のみ異常検知

ESA

DRTS ESA スパイクノイズと 電子フルエンスの比較(赤の丸が異常検知)

larr閾値

この事実を基に静止軌道における内部帯電警報システムを構築 2004年4月より運用開始

不具合が宇宙環境によるものであるか 判断する際のポイント

不具合の発生した時刻に太陽フレアや磁気嵐等の宇宙天気の大きな変動が起きていれば不具合に関係している可能性が高い但し帯電など放射線の積算的効果の伴う現象については発生から1週間位さかのぼり環境がどのように推移してきたかを考慮する必要がある

磁気嵐が起きると静止軌道に急激な粒子の増加現象が起きこれにより衛星帯電が引き起こされたりする(予測に利用可能)

地方時(真夜中や朝方か)や季節(春秋)を考慮する

低軌道衛星においてはSAA外帯のrdquo角ldquo及び極通過時に不具合

が起きやすいので衛星の位置(緯度経度)が重要

事象を把握する上で単発現象か数回起きている現象か周期

(時間同じ軌道等)的に発生している現象か

話の流れ

技術データ取得装置(TEDA)の概要と成果 bull 主な成果 bull 不具合解析例

宇宙天気のリスクと対策 bull 宇宙環境による衛星システムへの影響 bull 宇宙環境を原因とする不具合の割合推移部位 bull 静止軌道不具合 bull 対策

今後必要な観測項目

まとめ

宇宙天気のリスク -宇宙環境によるシステムへの影響 -

プラズマ (IRI)

帯電 (MUSCAT)

衝突 (AUTODY)

抗力 表面劣化

紫外線X線 中性粒子 (MSIS)

放射線粒子 (AE8AP8JPLSHIELDO

SE-2)

メテオロイドデブリ (MASTER2005

ORDEM)

電離損傷 変位損傷

bull電子回路の劣化 bull光部品の劣化

bull太陽電池セルの劣化

SEU (CREME96)

bullデータエラー bull画像ノイズ

bullシステム停止 bull回路損傷

bull熱的電気的光学的特性の劣化

bull構造の劣化 bullコンタミ

電磁パルス bull電源出力低下

bull損傷

bullトルク bull軌道落下

bull構造 損傷 bull減圧

bull電磁パルス

NASAの報告 -GNampCに注目-

1974年から1994年に起きたNASAと空軍の衛星故障の内20~25が宇宙環境に起因していたと報告

1990年から2001年に米国欧州カナダ日本の企業や政府機関が開発した衛星を調べた過去の宇宙ミション損失の大部分はロケットの失敗であったが1998年衛星損失の大部分は軌道上の衛星障害となっている多くの最近の異常は太陽電池アレイ及びバッテリの危険が増加している静止軌道通信衛星の設計寿命はこのサブシステムの故障の危険が増加している

喪失等の大きな誘導制御(GNampC)の不具合に注目 GNampC不具合の内宇宙環境による 不具合は約3と報告されている

軌道上衛星のタイプ別数

NASAの報告(続き)

衛星設計寿命における不具合発生時期 事故率と軌道

軌道別の衛星数 サブシステム不具合

宇宙環境を原因とする不具合の割合 -JAXAの場合-

2002年~2008年に運用された軌道上不具合情報が比較的充実している11衛星(利用衛星7機科学衛星4機)の結果宇宙環境によるも

のは約15過去のデータよりも割合が少ない

合計83件 合計35件

(1)利用衛星 (2)科学衛星

設計検討 不足 48

製造不良 8

軌道上環境 17

偶発故障 6

調査中 13

原因不明 8

設計検討

不足 61

製造不良 4

軌道上環境 11

偶発故障 6

調査中 9

原因不明 9

不具合発生部位の割合

不具合発生部位の割合

Brent Robertson Eric Stoneking ( 1990-2001NASA Goddard Space Flight Center )

Satellite News Digest -静止軌道不具合-

Satellite News Digest (SND) (http wwwsqt-indexcouk) で1997年~2009年の期間に静止軌道で95件の不具合が報告されている その内運用ミスや設計ミスなどを除くと32件(約33)は宇宙環境によるものであった 過去のデータより割合が多い

Choiら1)はこれら不具合の地方時と季節依存性を確認した その結果2100LT~900LTで約72の不具合が発生し900LT~2100LTは9件(約28)であった またこの9件は全て姿勢制御の不具合だった 静止軌道衛星不具合のほとんどは真夜中と朝方で起きており磁気嵐に伴い磁気圏尾部から注入した粒子による表面帯電が不具合の主原因と結論づけている

1) Ho-sung Choi et al Analysis of GEO spacecraft anomalies Space weather relationships Space Weather Vol 9 S06001

太陽活動と静止軌道衛星不具合例

ANIK-E1E2

ANIK-E1

複数の衛星で故障

Galaxy-15

帯電放電不具合 -ANIK-E1amp2Telstar401-

Jan 1994 ANIK-E1 amp E2事故時の環境 - Joe H Allen

1週間

太陽活動下降時期の電子増加

2MeV以上電子

copyNOAA Web

フラックスが3桁急増

Jan 1997 Telstar401事故時の環境

静止軌道の急激な電子増加

太陽極大期太陽フレアによる衛星障害 - 2003年10月~11月-

10486981048698 永久故障 4 10486981048698 安全モード又は運用を一時停止 31 10486981048698 データ内容の「誤り」の増加搭載コンピュータの誤動作 5

httpwwwsat-ndcomfailures等のデータによる 合計 40件

-Barbieri and Mahmot

米国極軌道気象衛星NOAA-17の改良型マイクロ波観測装置AMSU-A1 (Advanced Microwave Sounding Unit)のスキャナーが永久故障 米国気象衛星GOES -8号のX線センサがOFFになり復帰しなくなった

e-birdに深刻な不具合が発生 不具合は20本のトランスポンダ全てに影響

火星周回中の探査機「マーズオデッセイ (Mars Odyssey)」の観測機器放射線観測装置「Martian Radiation Environment Experiment (MARIE)」が太陽活動の影響により10月28日から適切に作動しなくなった データ中継技術衛星(DRTS)「こだま」 太陽捕捉モードに移行

太陽陽子

帯電放電不具合-Galaxy15(局所的的現象)- 2

5 M

eV

65

MeV

11

5 M

eV

GOES 14 ----- GOES 15 ----- GOES 11 -----

Satellite Locations

Galaxy 15 anomaly

2010年4月5日9時48分UTCは磁気嵐及びCMEが発生するなど宇宙環境は非常に荒れていたGalaxy15衛星は真夜中側に位置し宇宙環境の影響を受けやすい

位置にいたことから宇宙環境による不具合である可能性が高いということで原因追及がなされた高エネルギー粒子が引き起こす代表的な衛星不具合現象として3つ(表面帯電内部帯電SEUシングルイベントバーンアウトSEL)の可能性を検討した

チームの報告書によると磁気圏尾部からの熱電子の流入による放電が原因であったと結論付けられたGalaxy15衛星の近くにはGOES-11衛星が位置していたがGOES-11衛星には不具合を発生しておらず本現象は局所的な現象と推測される

衛星開発段階における対策 JAXAの不具合解析の結論

bull 2002年~2008年に運用された11機の衛星不具合を解析 宇宙環境による不具合は偶発故障のみ(全体の約15)確率的には想定範囲内ではあるがその影響を最小限とするためディレーティング運用モード寿命についての研究に取り組む

bull 設計基準試験の充実検証確認の強化技術成熟度(TRL)評価の徹底各々の境界制約条件の明示化等により検証不足抜けの防止有効なピアレビューに結びつける

冗長系(同じハードウェア機能の冗長)柔軟性の設計(ソフトハードの対応)

bull 従来の故障が起きないようにする設計に対してGOSAT(いぶき)では重要部

品を二重化することにより故障する可能性は上がるが故障しても衛星バスの運用や観測が続行できる可能性がより高くなるように設計した

運用における対応

bull 宇宙天気監視ーロケット打ち上げ及び宇宙飛行士支援 数日前に今後の宇宙環境の推移を把握(MXレベルのフレアの発生確率)

bull X線の増加で太陽フレア発生を検知したら高エネルギー粒子の発生をいつまで 気を付ければ良いか判断(発生位置で大凡を推定するが課題は多い) SPEが発生した場合(特に10MeV以上100MeV 以上の陽

子)最大値フラックス値の推定 ピーク値を予測(特に閾値に近くなった時に重要)

bull 衛星運用 bull 太陽フレア磁気嵐警報(X線陽子及びkpが閾値を超えた

時に警報を発信)2003年10月より運用開始 bull 内部帯電警報(2日後の静止軌道上の高エネルギー電子(>1

Me) の増加を予測し 閾値を超えた時に警報を発信) 2004年4月より運用開始

話の流れ

技術データ取得装置(TEDA)の概要と成果 bull 主な成果 bull 不具合解析例

宇宙天気のリスクと対策 bull 宇宙環境による衛星システムへの影響 bull 宇宙環境を原因とする不具合の割合推移部位 bull 静止軌道不具合 bull 対策

今後必要な観測項目

まとめ

計測対象計測項目 計測対象 粒径100μm以上のデブリメテオロイド 計測項目 デブリ粒径衝突頻度

基本原理

厚さ約125μmの絶縁性のポリイミドフィルム表面に 100μm周期で直線状の細長い導線(太さ50μm)パターンを形成導線の破断を電気的に検知することによりデブリの衝突(貫通)を検知する破断した導線の数導線の幅ピッチからデブリサイズを計測する

微小デブリ計測技術の概要

衝突孔の例(衝突試験ISAS) - 衝突粒子 SUS 309 microm - 衝突速度 52 kms

HTV5号機によるセンサ機能のフライト実証

35cm

46cm

FY2013機能実証モデル

検出線幅 50 μm 検出線間隔 100 μm フィルム厚 lt 20 μm 有感領域 30times33cm 検出線総数 3300本

サイズ 50times39times4 cm (筐体を含む)

重量 約15kg(筐体を含む)

消費電力 2W(最大4W)(他センサ含む)

テレメトリ 02 bps

宇宙環境観測装置KASPERの一部としてデブリセンサSDMを搭載 FY2013に製作開始今年8月に打ち上げ予定)

まとめ(その1)

衛星不具合の主な原因は帯電放電シングルイベント放射線損傷である今後デブリ環境が重要になると予測される

静止軌道では商用衛星が多く運用されており宇宙環境の変動把握は重要この領域で運用する衛星が気を付けなければいけない環境として

1太陽フレアに伴う高エネルギー粒子 2太陽活動下降期による静止軌道電子の増加 3磁気嵐に伴う磁気圏尾部から注入する粒子 などがあげられる

まとめ(その2)

不具合軽減の取り組み bull 開発時は宇宙環境条件(トータルフラックス及び最悪条

件)を明確にし設計(冗長系柔軟性の設計ディレーティング及び運用モード寿命について研究)試験の充実検証の充実を図る

bull 運用段階に入ったならば宇宙環境を監視し警報等で故障を防ぐ

予測課題 bull 太陽フレアに伴う高エネルギー粒子発生後フラックス

ピーク値の推定

bull 衛星により不具合の起きる閾値は異なるが閾値をこえる急激な電子フラックスの増加と継続時間の予測

bull 局所的な磁気嵐に伴う磁気圏尾部から注入する粒子

宇宙環境グループは宇宙ステーションと衛星プロジェクトの安全な遂行に貢献しています

ご静聴ありがとうございました

補足資料

不具合原因の推移 bull 宇宙天気を大きく左右する要因の1つとして約11年の太陽活動変化が挙げられる

bull 太陽活動下降時期(太陽変動CME)と極大期(フレアCME)に衛星で不具合が増加するそれにより不具合原因の割合が変わる

-Koons et al The Impact of the Space Environment on Space Systems Aerospace Corp report no TR-99(1670)-1 20 July 1999 -2009 preliminary study (unpublished)

何故不具合は減らないか

bull 部品 放射線に対する感受性が高くなっている bull 微細化が進み同時にフォールトするノードが増え同時にエ

ラーとなる論理ノードやメモリセルが増加する微細化によってメモリセルは小さくなるので記憶容量当たりでみるとエラーの発生率は下がるしかし半導体チップの記憶容量やゲート数が増えるので半導体チップ当たりのエラー発生率は微細化とともに上昇するまた蓄積電荷が小さくなり感受性が高くなってきている

bull システム 大型化大電力化運用長期化 bull 1990年代末以降静止衛星の電力が10kWレベルになったしか

し設計検証技術データ蓄積が遅れている改善されつつあると推測される

放射線による影響の概要

粒子 エネルギー又はLET

代表的な影響

陽子 100keV-1MeV 1-10MeV 10-100MeV gt50MeV

表面損傷 表面材料と太陽電池の損傷 放射線損傷(電離非電離損傷の両方)センサーへのノイズ シングルイベント効果

電子 10-100keV gt100keV gt1MeV

表面帯電 深部帯電現象(deep-dielectric charging)センサーへのノイズ太陽電池の損傷 放射線損傷(電離)

重イオン gt1MeV-cm2mg シングルイベント効果

注エネルギー及びLETは個々の部品等により異なりますあくまでも目安です

耐放射線設計手順

軌道条件

ミッション期間

環境条件設定

トータルドーズの予測

1MeV電子換算被曝算出

NIELの換算

LETフルエンス算出

陽子フルエンス算出

対  策  の  検  討

対  策  の  検  討

対  策  の  検  討

放射線による劣化率予測

劣化率予測 特性予測

耐性データ

放射線による劣化率予測

耐性データ

劣化率予測アレイ出力劣化予測

感受性データ

シングルイベント発生率予測 致命度解析

衛星内質量分布

(2)

部品材料の選定

他の要因による劣化率予測

(2)(2) (3)

回路設計等NO

OK

アレイ構造 セル選定

他の要因による劣化率予測 アレイ設計(2)

(2) (2) (2) (3)

衛星内質量分布 部品選定(2)

(2) (2)(3)

NO

OK

NO

OK

(1) 環境モデルマージを含む(2) 部品レベルの検討(3) アセンブリレベルでの検討(4) 設計マージン環境モデル   マージを含め大丈夫か

トータルドーズ

太陽電池アレイの劣化

シングルイベント効果

回路設計

補足放射線太陽宇宙線銀河宇宙線

NEILを用いたダメージファクターの算出

対  策  の  検  討

放射線による劣化率予測

劣化率予測 特性予測

耐性データ

(2)

部品材料の選定

他の要因による劣化率予測

(2)(2) (3)

回路設計等NO

OK

衛星内質量分布 半導体デバイスの変位損傷

(1)

(4)

(4)

(4)

(4)

各軌道における放射線環境

1E+10

1E+11

1E+12

1E+13

1E+14

1E+15

1E+16

1E+17

1E+18

1E+19

1E+20

001 010 100 1000

捕捉

電子

の積

分フ

ルエ

ンス

[m

2 ]

エネルギー[MeV]

各軌道における電子捕捉積分フルエンス(3年間)

LEO

EOS GEO

MEO

GTO

GEO 軌道傾斜角 0deg 高度36000km GTO 軌道傾斜角 18deg 高度 360km~36000km MEO 軌道傾斜角 51deg 高度 10000km EOS 軌道傾斜角 98deg 高度705km LEO 軌道傾斜角 29deg 高度 600km

1E+12

1E+13

1E+14

1E+15

1E+16

1E+17

1E+18

1E+19

1E+20

01 10 100 1000

捕捉

陽子の

積分フルエン

ス[

m2 ]

エネルギー[MeV]

各軌道における捕捉陽子積分フルエンス(3年間)

MEO

GTO

GEO

EOS LEO

放射線による部品材料の影響

総照射線量 (TIDTotal Ionising Dose )

電離損傷

バイポーラTrの電流増幅率の低下リーク電流の増大

γ線で評価

トータルドーズ効果

変位損傷 (DDDisplacement Damage )または 非イオン化エネルギー損失 (NIELNon-Ionising Energy

Loss )

変位損傷(格子欠陥の生成)

電荷輸送効率の低下 (CCD)太陽電池の効率低下等

電子陽子により評価

シングルイベント効果

1個の荷電粒子の入射により発生する誤動作

ソフト(Latch-Up Burnout) エラー又は ソフト (Upset) エラー

陽子及び重イオンで評価

トータルドーズ効果

+ - + + - + - + - - + + + + -

ゲート酸化膜

電離

格子欠陥

正電荷捕獲

+ 正孔 - 電子

電極

(Silicon oxidenitride)

荷電粒子

反跳原子

ゲート絶縁膜中に電荷が蓄積することによるMOSトランジスタのしきい電圧(MOSトランジスタがオフからオンに変化するゲート電圧)の変化をもたらすただ

し最近の最先端チップはゲート絶縁膜がきわめて薄くなっているこのためゲート絶縁膜よりもフィールド絶縁膜(隣接するトランジスタを電気的に分離する絶縁膜)での電荷蓄積が相対的には大きな問題になってきている」

シングルイベント効果

メモリセルはNチャンネルとPチャンネルMOSFETより構成されメモリ情報は回路ノード12の電位の

高低により記録している空乏層の広がっているPN接合12の領域に

重イオンが入射した場合電荷の発生と空乏層内への少数キャリアの収集が起こるこの収集電荷量が回路の耐量を越えた場合(c)に示すように反転が起こる(ソフトエラー)一方pウエル-N基板接

合の空乏層内に電荷収集量が起こりえる耐性を越えると寄生的に存在するPNPNサイリスタ構造がオ

ンし電源と基板間に大電流が流れる状態が生じる(ラッチアップ)

シングルイベントメカニズム -陽子と重イオンの違い-

エラー発生率の計算

線エネルギー付与(LET) (linear energy transfer)

電離性放射線が物質中を通過する際飛程の単位長さ当りに平均して失うエネルギーをいう各種の放射線のうちX線γ線はLETが小さいので低LETといいα線中性子線その他重イオン核分裂破片のLETは大きいので高LETという MeVμmMeV(gcm2)やMeV(mgcm2)で表される

南大西洋異常(SAA) bull 地球の自転軸と磁気軸のずれ

darr bull 放射線帯が自転軸に対して非

対称

bull 南大西洋上空では放射線帯内帯が低高度に落ちてきているこの領域を南大西洋異常域(SAA South Atlantic Anomaly)と呼ぶ

bull 地球観測衛星ではSAAで放射線帯陽子の影響を受ける

Single Event Lachup

シングルイベントと陽子分布

MOS-1衛星(高度909km軌道傾斜角99度)で発生したシングルイベントと 陽子30MeV以上の等高線マップを重ね合わせた結果

NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)

bull 入射粒子が電離によらず与える損傷非イオン化損失

低軌道での電子フラックスと 不具合の発生場所

南大西洋異常(SAA)と極の角

高度800kmでの電子フラックス図極の角(polar horn)とSAAを示す

太陽粒子線 bull 太陽高エネルギー粒子線(SPE Solar Proton Events)は太陽フレア とコロナガス噴出 (CMECoronal Mass Ejections )により引き起こされる bull フレアのスペクトルは可変であるためあるエネルギー域における最悪状態イベントは必ずしも別のエネルギー域における最悪条件ではない 1972年8月のイベント 10~70MeVの粒子が最も多かった 1989年10のイベント 1972年8月のイベントに比べ低エネルギー領域 高エネルギー領域が明らかに激しかった

フルエンス 105 to 1011 cm-2

変動期間 1日から数日

ldquoBastiliardquo Solar Event 14 July 2000

Carrington Flare

84

(LW Townseed) Carrington Flare(1859年) Carrington Flare による30MeV以上トータルFluenceを118times109cm-2で規格化 ~1989年フレアの約13倍(シングルイベントの評価で使用) ~1991年フレアの約9倍 2012年7月23日にキャリントンイベントとほぼ同等の爆発現象が太陽あるいは太陽の周りで起きていたということがNASAの太陽観測衛星「STEREO」の解析から発表された

放射線対策 bull 放射線シールドを付加し放射線を減衰させる

bull 放射線耐性の強い部品(SOI(Silicon On Insulator)技術による耐放射線部品)材料に変更する

bull 放射線による損傷を吸収するために回路または構造上のマージンを持たせる bull ソフト的なエラーに対しては エラー検出訂正機能や多数決

機能等でソフト的エラーが起きてもシステムが機能するようにしたフォールトトレラント機能を付けて対処する ICのハード的故障に対しては ラッチアップ耐性の強い部品を選定するしかないが 電流制限回路を付ける対策も採られる パワーMOSFETに対しては部品選定 電源電圧を規格値の半分以下に落とす等の対策を採る

SOI技術

表面帯電への対策例

表面の物体間を導線で結線する

太陽電池のカバーガラスを導電性被膜付き(酸化インジウムITO)にする

熱制御材表面にITOを被覆する

熱制御材は高誘電率のテフロンの使用を避け 高伝導度耐環境性に優れたブラックカプトンを使用

イオンエンジンの中和器で能動帯電制御

内部帯電への対策例

アルミで3mm厚さに相当するシールドで囲む(Faraday Cage)

テフロンやカプトンなどの誘電体材料の内部での使用量を最小限に押さえる

回路基板やコンフォーマルコーティングは誘電体なので電流リークパス(1012Ωcmまたは1012Ωcm2

程度)を必ずつける

特にスポット的な放射線シールドの金属材には必ず電流リークパスをつける

帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備

衛星モデル作成

材料物性テーブル設定

宇宙環境パラメータ設定

Converter

転送ディレクトリ 解析データファイル

転送

解析ディレクトリ生成 解析結果 進行状況チェック ファイル操作

MUSCAT 解析エンジン

解析結果 表示

パラメトリックラン

オプション 解析

大型パネル実験(35mtimes11m) クーポンパネル実験(26cmtimes16cm)

環境模擬試験 環境模擬試験

MUSCATに使用する物性値設計標準制定のための知見などを得ることを目的に軌道上の宇宙環境を模擬した地上試験を行っている これらの試験では放電の発生頻度や電圧閾値放電発生による太陽電池パネルや搭載機器への影響を検証している

放射線計測装置の原理

bull その粒子が物質を通過する際のエネルギー損出率が粒子の電荷(原子番号)Zの二乗に比例すること(Bethe-Blochの式)を利用する

S2

E

ΔE Ersquo

S1 S3

  • 宇宙機の設計のための宇宙環境
  • 話の流れ
  • 話の流れ
  • TEDA(技術データ取得装置)(国産部品の宇宙環境での実証の必要性)
  • ETS-VTEDA(技術データ取得装置)誕生前の部品の宇宙実証の背景
  • スライド番号 6
  • スライド番号 7
  • スライド番号 8
  • スライド番号 9
  • 図6太陽黒点数と静止軌道電子 (>04MeV ) Flux の変動 (ETS-V搭載DOMによる観測)
  • スライド番号 11
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの開発(理研東大と共同で宇宙環境計測の充実)
  • ETS-VI(きく6号)打ち上がったがGEOに行かずGTOに留まる
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの成果
  • スライド番号 15
  • スライド番号 16
  • スライド番号 17
  • ADEOS搭載TEDA(世界2番目の異常宇宙線ACR)
  • BBND (ボナー球中性子検出器)
  • スライド番号 20
  • ISS搭載BBNDの成果(約8か月)
  • スライド番号 22
  • MDS-1搭載放射線吸収線量モニタ(SDOM)
  • 放射線帯変動モデルの開発MDS-1 065 MeV 電子フラックス
  • 変動パラメータの選択 (1 cycle solar activity)
  • 変動パラメータ- Tavg の定義-
  • 065MeV 電子 L値-Tavg マップ
  • 13MeV 陽子 L値-Tavg マップ
  • 電子観測とMDS-1モデルの比較
  • 放射線帯フラックスピークの変動
  • 陽子観測とモデルの比較
  • 電子(035~078MeV) 1日の変動予測GOSAT軌道
  • 電子(035~078MeV) 変動の信頼度水準(1日)GOSAT軌道
  • MDS-1 model と AE-8 modelとの比較1日
  • 話の流れ
  • 2003年10月 みどり号の全損事故(複合現象)
  • 衛星帯電の基本式
  • 内部帯電
  • パドルでの帯電放電メカニズム
  • スライド番号 40
  • スライド番号 41
  • スライド番号 42
  • データ中継技術衛星DRTS (こだま)の不具合
  • DRTS ESA スパイクノイズと電子フルエンスの比較(赤の丸が異常検知)
  • 不具合が宇宙環境によるものであるか判断する際のポイント
  • 話の流れ
  • 宇宙天気のリスク-宇宙環境によるシステムへの影響 -
  • NASAの報告-GNampCに注目-
  • NASAの報告(続き)
  • 宇宙環境を原因とする不具合の割合-JAXAの場合-
  • 不具合発生部位の割合 
  • Satellite News Digest -静止軌道不具合-
  • 太陽活動と静止軌道衛星不具合例
  • スライド番号 54
  • スライド番号 55
  • スライド番号 56
  • 衛星開発段階における対策
  • 運用における対応
  • 話の流れ
  • スライド番号 60
  • スライド番号 61
  • まとめ(その1)
  • まとめ(その2)
  • 宇宙環境グループは宇宙ステーションと衛星プロジェクトの安全な遂行に貢献しています
  • 補足資料
  • 不具合原因の推移
  • 何故不具合は減らないか
  • 放射線による影響の概要
  • 耐放射線設計手順
  • 各軌道における放射線環境
  • 放射線による部品材料の影響
  • トータルドーズ効果
  • シングルイベント効果
  • シングルイベントメカニズム-陽子と重イオンの違い-
  • エラー発生率の計算
  • 線エネルギー付与(LET)(linear energy transfer)
  • 南大西洋異常(SAA)
  • Single Event Lachup
  • シングルイベントと陽子分布
  • NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)
  • 低軌道での電子フラックスと不具合の発生場所
  • 南大西洋異常(SAA)と極の角
  • スライド番号 83
  • Carrington Flare
  • 放射線対策
  • スライド番号 86
  • スライド番号 87
  • 帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備
  • スライド番号 89
  • 放射線計測装置の原理
Page 23: 宇宙機の設計のための宇宙環境の方針から国産部品開発(42品種)が実施された。 . 半導体電子部品は耐放射線性を加味して、人工衛星(特に

MDS-1搭載放射線吸収線量モニタ(SDOM) SiTungstenAlBGO

② ⑦

⑧⑧

① Collimator ② Window③ SSDs ④ Plastic Scintillator⑤ Anticoincidence Scintillator(ACS)⑥ Beam Stop⑦ Scintillator PMT⑧ ACS PMT

運用期間 2002年2月 ndash 2003年9月 軌道 -軌道傾斜角 285deg 1 lt BB0 le 84 -高度 500 km times 36000km 11 le L le 10 -軌道周期 約10時間35分 -スピンレート 5rpm

計測エネルギー範囲 Electron 04- 9MeV (5bins) Proton 09-210MeV (12bins) He 6-140MeV (4bins) Heavy Ion 15- 60MeVnuc (1bin) G-Factor 001cm2sr

放射線帯変動モデルの開発 MDS-1 065 MeV 電子フラックス

変動パラメータの選択 (1 cycle solar activity)

太陽風速度(SW)

太陽黒点数(R)

Ap指数

F107

変動パラメータ- Tavg の定義-

1日後の予測

パラメータスケールの時間平均 ApTavg SWTavg F107 Tavg

T days

放射線帯の構造は変動パラメータ値の大きさと継続時間に相関がある

065MeV 電子 L値-Tavg マップ

APTavg

SWTavg

13MeV 陽子 L値-Tavg マップ

APTavg

F107Tavg

電子観測とMDS-1モデルの比較

80 175

放射線帯フラックスピークの変動

80orbits (平穏時) 175orbits (擾乱時)

陽子観測とモデルの比較

電子(035~078MeV) 1日の変動予測GOSAT軌道

0

50

100

150

200

250

1E+09

1E+10

1E+11

1E+12

1984 1986 1988 1990 1992 1994 1996 1998 2000 2002 2004 2006 2008

Flue

nce[

ecm

2M

eVd

ay]

Launch day

FluenceSSN

Worst case Nov 12003

電子(035~078MeV) 変動の信頼度水準(1日)GOSAT軌道

00

01

02

03

04

05

06

07

08

09

10

88 90 92 94 96 98 100 102 104 106 108 110 112 114

Con

fiden

ce le

vel

Fluence[LOG10 ecm2MeVday]

AE-8 MAX

AE-8 MIN

MDS-1 model と AE-8 model との比較1日

0

20

40

60

80

100

120

140

160

180

1E+09

1E+10

1E+11

1E+12

1995 1997 1999 2001 2003 2005 2007 2009

Flue

nce[

ecm

2M

eVd

ay]

Launch day

Fluence(JAXA)Fluence(AE8)SSN

話の流れ

技術データ取得装置(TEDA)の概要と成果 bull 主な成果 bull 不具合解析例

宇宙天気のリスクと対策 bull 宇宙環境による衛星システムへの影響 bull 宇宙環境を原因とする不具合の割合推移部位 bull 静止軌道不具合 bull 対策

今後必要な観測項目

まとめ

2003年10月 みどり号の全損事故 (複合現象)

極域のオーロラ帯を通過中に電力ハー

ネスを巻いているMLIが高エネルギー電

子により帯電

MLIが接地されていなかったため内側

のハーネスとの間に1kV以上の電位差が

発生

MLI内のガス密度が発電開始に伴う温度

上昇により上昇

ハーネス被覆の傷により露出したハーネ

ス芯線とMLI内面の間で放電発生

単発の放電が隣接するハーネスに飛び火

してハーネス間の短絡

アーク放電が次々と伝搬していきハー

ネス全体が焼損

故障推定箇所 (大電力ハーネス部)

bull詳細報告書は文部科学省 宇宙開発委員会のHP参照

httpwwwmextgojpb_menushingiuchuureports04080901htm

bull 人工衛星の電位 bull 人工衛星は電気的に宇宙に浮いている bull 宇宙機構造体が接地点 bull 宇宙機への流入電流と流出電流のバランスによって宇宙機電位が決まる bull 各電流成分は宇宙機電位Vの関数として表され定常状態では式を下式を満たす

衛星帯電の基本式

( ) dtIIIIIIIC

V

dtdVCVIVIVIVIVIVIVI

BPHBSESISEIE

BPHBSESISEIE

int +++++minus=

==+++++minus

1

0)]()()()()()([)(

入射電子電流 ( E I )

後方散乱電子電流 ( BSE I )

入射正イオン電流 ( I I )

入射電子による二次電子電流 ( SE I )

太陽光

入射正イオンによる 二次電子放出電流 ( SI I )

光電子放出電流( PH I )

電荷ビーム放出電流(IB)

bull内部帯電は衛星の外壁を貫通した放射線帯外帯の01MeV以上の電子が内部に侵入

bull基板間や同軸ケーブルの線間等の容量(コンデンサ)や誘電体に帯電 bull接地されてない導体片に帯電

bullその耐圧電圧を超えると その耐圧の弱い箇所 (材質の欠陥や針状突起など の箇所)で放電して故障に至る

内部帯電

(あるエネルギ-以上の粒子が入射光電子なし)

NASA-HDBK-4002より

パドルでの帯電放電メカニズム

宇宙環境の影響により 衛星がマイナス電位に帯電

高エネルギー電子等により カバーガラスはプラスに帯電 衛星とカバーガラスに電位差が生じる

電位差が大きくなると トリプルジャンクション近傍 の電界強度が増大していく

トリプルジャンクションで放電が発生する カバーガラスの帯電が緩和される

+ + + + + + + + + + + + + +

+ + + +

カバーガラス

太陽電池セル

基板(衛星構体)

トリプルジャンクション rArr 導体絶縁体宇宙環境の接点

持続放電

Substrate

Satellite Load

insulation sheet

Solar array cell

Cover glass

Arc current

Electrode

持続放電は衛星の電力消失につながる 持続放電のモードは以下の2通りがある

Substrate

Satellite Load

insulation sheet

Solar array cell

Cover glass

Arc current

Electrode

Solar array cell

Cover glass

セル-基板間短絡 セル間短絡

放電によって太陽電池セルと基板が短絡する 短絡によって負荷に電力が供給されなくなる

放電によって太陽電池セルとセルが短絡する 短絡によって負荷に電力が供給されなくなる

サブストーム(高エネルギー電子)との遭遇

+ + + + + + + +

二次電子光電子による絶縁体の帯電(局所帯電)

電位差発生

逆電位勾配

衛星構体が負に帯電(絶対帯電)

電位

時間

サブストーム

衛星構体 VS

乖離電圧 ∆V

カバーガラスVcg

0 プラズマ電位

軌道別帯電放電現象

トリプルジャンクションで 放電発生

放電発生

静止軌道

+ + + + + + + +

逆電位勾配

軌道帯電放電現象

トリプルジャンクションで 放電発生

極軌道 オーロラ電子(高エネルギー電子)との遭遇

プラズマ流入出による絶縁体の帯電(局所帯電)

電位差発生

衛星構体が負に帯電(絶対帯電)

放電発生

電位

時間

オーロラ電子

衛星構体 乖離電圧 ∆V

カバーガラス

0 プラズマ電位

データ中継技術衛星DRTS (こだま)の不具合

2002年10月 9日 静止軌道に打ち上げ

2003年

3月24日 406JST変化率異常モニタ故障検出(FDIR)

が動作しA系からB系に切り替わった

3月25日 410JSTにB系のみ異常検知

4月 3日 327JSTにB系のみ異常検知

5月28日 124JSTにB系のみ異常検知

6月 6日1537JSTにB系のみ異常検知

ESA

DRTS ESA スパイクノイズと 電子フルエンスの比較(赤の丸が異常検知)

larr閾値

この事実を基に静止軌道における内部帯電警報システムを構築 2004年4月より運用開始

不具合が宇宙環境によるものであるか 判断する際のポイント

不具合の発生した時刻に太陽フレアや磁気嵐等の宇宙天気の大きな変動が起きていれば不具合に関係している可能性が高い但し帯電など放射線の積算的効果の伴う現象については発生から1週間位さかのぼり環境がどのように推移してきたかを考慮する必要がある

磁気嵐が起きると静止軌道に急激な粒子の増加現象が起きこれにより衛星帯電が引き起こされたりする(予測に利用可能)

地方時(真夜中や朝方か)や季節(春秋)を考慮する

低軌道衛星においてはSAA外帯のrdquo角ldquo及び極通過時に不具合

が起きやすいので衛星の位置(緯度経度)が重要

事象を把握する上で単発現象か数回起きている現象か周期

(時間同じ軌道等)的に発生している現象か

話の流れ

技術データ取得装置(TEDA)の概要と成果 bull 主な成果 bull 不具合解析例

宇宙天気のリスクと対策 bull 宇宙環境による衛星システムへの影響 bull 宇宙環境を原因とする不具合の割合推移部位 bull 静止軌道不具合 bull 対策

今後必要な観測項目

まとめ

宇宙天気のリスク -宇宙環境によるシステムへの影響 -

プラズマ (IRI)

帯電 (MUSCAT)

衝突 (AUTODY)

抗力 表面劣化

紫外線X線 中性粒子 (MSIS)

放射線粒子 (AE8AP8JPLSHIELDO

SE-2)

メテオロイドデブリ (MASTER2005

ORDEM)

電離損傷 変位損傷

bull電子回路の劣化 bull光部品の劣化

bull太陽電池セルの劣化

SEU (CREME96)

bullデータエラー bull画像ノイズ

bullシステム停止 bull回路損傷

bull熱的電気的光学的特性の劣化

bull構造の劣化 bullコンタミ

電磁パルス bull電源出力低下

bull損傷

bullトルク bull軌道落下

bull構造 損傷 bull減圧

bull電磁パルス

NASAの報告 -GNampCに注目-

1974年から1994年に起きたNASAと空軍の衛星故障の内20~25が宇宙環境に起因していたと報告

1990年から2001年に米国欧州カナダ日本の企業や政府機関が開発した衛星を調べた過去の宇宙ミション損失の大部分はロケットの失敗であったが1998年衛星損失の大部分は軌道上の衛星障害となっている多くの最近の異常は太陽電池アレイ及びバッテリの危険が増加している静止軌道通信衛星の設計寿命はこのサブシステムの故障の危険が増加している

喪失等の大きな誘導制御(GNampC)の不具合に注目 GNampC不具合の内宇宙環境による 不具合は約3と報告されている

軌道上衛星のタイプ別数

NASAの報告(続き)

衛星設計寿命における不具合発生時期 事故率と軌道

軌道別の衛星数 サブシステム不具合

宇宙環境を原因とする不具合の割合 -JAXAの場合-

2002年~2008年に運用された軌道上不具合情報が比較的充実している11衛星(利用衛星7機科学衛星4機)の結果宇宙環境によるも

のは約15過去のデータよりも割合が少ない

合計83件 合計35件

(1)利用衛星 (2)科学衛星

設計検討 不足 48

製造不良 8

軌道上環境 17

偶発故障 6

調査中 13

原因不明 8

設計検討

不足 61

製造不良 4

軌道上環境 11

偶発故障 6

調査中 9

原因不明 9

不具合発生部位の割合

不具合発生部位の割合

Brent Robertson Eric Stoneking ( 1990-2001NASA Goddard Space Flight Center )

Satellite News Digest -静止軌道不具合-

Satellite News Digest (SND) (http wwwsqt-indexcouk) で1997年~2009年の期間に静止軌道で95件の不具合が報告されている その内運用ミスや設計ミスなどを除くと32件(約33)は宇宙環境によるものであった 過去のデータより割合が多い

Choiら1)はこれら不具合の地方時と季節依存性を確認した その結果2100LT~900LTで約72の不具合が発生し900LT~2100LTは9件(約28)であった またこの9件は全て姿勢制御の不具合だった 静止軌道衛星不具合のほとんどは真夜中と朝方で起きており磁気嵐に伴い磁気圏尾部から注入した粒子による表面帯電が不具合の主原因と結論づけている

1) Ho-sung Choi et al Analysis of GEO spacecraft anomalies Space weather relationships Space Weather Vol 9 S06001

太陽活動と静止軌道衛星不具合例

ANIK-E1E2

ANIK-E1

複数の衛星で故障

Galaxy-15

帯電放電不具合 -ANIK-E1amp2Telstar401-

Jan 1994 ANIK-E1 amp E2事故時の環境 - Joe H Allen

1週間

太陽活動下降時期の電子増加

2MeV以上電子

copyNOAA Web

フラックスが3桁急増

Jan 1997 Telstar401事故時の環境

静止軌道の急激な電子増加

太陽極大期太陽フレアによる衛星障害 - 2003年10月~11月-

10486981048698 永久故障 4 10486981048698 安全モード又は運用を一時停止 31 10486981048698 データ内容の「誤り」の増加搭載コンピュータの誤動作 5

httpwwwsat-ndcomfailures等のデータによる 合計 40件

-Barbieri and Mahmot

米国極軌道気象衛星NOAA-17の改良型マイクロ波観測装置AMSU-A1 (Advanced Microwave Sounding Unit)のスキャナーが永久故障 米国気象衛星GOES -8号のX線センサがOFFになり復帰しなくなった

e-birdに深刻な不具合が発生 不具合は20本のトランスポンダ全てに影響

火星周回中の探査機「マーズオデッセイ (Mars Odyssey)」の観測機器放射線観測装置「Martian Radiation Environment Experiment (MARIE)」が太陽活動の影響により10月28日から適切に作動しなくなった データ中継技術衛星(DRTS)「こだま」 太陽捕捉モードに移行

太陽陽子

帯電放電不具合-Galaxy15(局所的的現象)- 2

5 M

eV

65

MeV

11

5 M

eV

GOES 14 ----- GOES 15 ----- GOES 11 -----

Satellite Locations

Galaxy 15 anomaly

2010年4月5日9時48分UTCは磁気嵐及びCMEが発生するなど宇宙環境は非常に荒れていたGalaxy15衛星は真夜中側に位置し宇宙環境の影響を受けやすい

位置にいたことから宇宙環境による不具合である可能性が高いということで原因追及がなされた高エネルギー粒子が引き起こす代表的な衛星不具合現象として3つ(表面帯電内部帯電SEUシングルイベントバーンアウトSEL)の可能性を検討した

チームの報告書によると磁気圏尾部からの熱電子の流入による放電が原因であったと結論付けられたGalaxy15衛星の近くにはGOES-11衛星が位置していたがGOES-11衛星には不具合を発生しておらず本現象は局所的な現象と推測される

衛星開発段階における対策 JAXAの不具合解析の結論

bull 2002年~2008年に運用された11機の衛星不具合を解析 宇宙環境による不具合は偶発故障のみ(全体の約15)確率的には想定範囲内ではあるがその影響を最小限とするためディレーティング運用モード寿命についての研究に取り組む

bull 設計基準試験の充実検証確認の強化技術成熟度(TRL)評価の徹底各々の境界制約条件の明示化等により検証不足抜けの防止有効なピアレビューに結びつける

冗長系(同じハードウェア機能の冗長)柔軟性の設計(ソフトハードの対応)

bull 従来の故障が起きないようにする設計に対してGOSAT(いぶき)では重要部

品を二重化することにより故障する可能性は上がるが故障しても衛星バスの運用や観測が続行できる可能性がより高くなるように設計した

運用における対応

bull 宇宙天気監視ーロケット打ち上げ及び宇宙飛行士支援 数日前に今後の宇宙環境の推移を把握(MXレベルのフレアの発生確率)

bull X線の増加で太陽フレア発生を検知したら高エネルギー粒子の発生をいつまで 気を付ければ良いか判断(発生位置で大凡を推定するが課題は多い) SPEが発生した場合(特に10MeV以上100MeV 以上の陽

子)最大値フラックス値の推定 ピーク値を予測(特に閾値に近くなった時に重要)

bull 衛星運用 bull 太陽フレア磁気嵐警報(X線陽子及びkpが閾値を超えた

時に警報を発信)2003年10月より運用開始 bull 内部帯電警報(2日後の静止軌道上の高エネルギー電子(>1

Me) の増加を予測し 閾値を超えた時に警報を発信) 2004年4月より運用開始

話の流れ

技術データ取得装置(TEDA)の概要と成果 bull 主な成果 bull 不具合解析例

宇宙天気のリスクと対策 bull 宇宙環境による衛星システムへの影響 bull 宇宙環境を原因とする不具合の割合推移部位 bull 静止軌道不具合 bull 対策

今後必要な観測項目

まとめ

計測対象計測項目 計測対象 粒径100μm以上のデブリメテオロイド 計測項目 デブリ粒径衝突頻度

基本原理

厚さ約125μmの絶縁性のポリイミドフィルム表面に 100μm周期で直線状の細長い導線(太さ50μm)パターンを形成導線の破断を電気的に検知することによりデブリの衝突(貫通)を検知する破断した導線の数導線の幅ピッチからデブリサイズを計測する

微小デブリ計測技術の概要

衝突孔の例(衝突試験ISAS) - 衝突粒子 SUS 309 microm - 衝突速度 52 kms

HTV5号機によるセンサ機能のフライト実証

35cm

46cm

FY2013機能実証モデル

検出線幅 50 μm 検出線間隔 100 μm フィルム厚 lt 20 μm 有感領域 30times33cm 検出線総数 3300本

サイズ 50times39times4 cm (筐体を含む)

重量 約15kg(筐体を含む)

消費電力 2W(最大4W)(他センサ含む)

テレメトリ 02 bps

宇宙環境観測装置KASPERの一部としてデブリセンサSDMを搭載 FY2013に製作開始今年8月に打ち上げ予定)

まとめ(その1)

衛星不具合の主な原因は帯電放電シングルイベント放射線損傷である今後デブリ環境が重要になると予測される

静止軌道では商用衛星が多く運用されており宇宙環境の変動把握は重要この領域で運用する衛星が気を付けなければいけない環境として

1太陽フレアに伴う高エネルギー粒子 2太陽活動下降期による静止軌道電子の増加 3磁気嵐に伴う磁気圏尾部から注入する粒子 などがあげられる

まとめ(その2)

不具合軽減の取り組み bull 開発時は宇宙環境条件(トータルフラックス及び最悪条

件)を明確にし設計(冗長系柔軟性の設計ディレーティング及び運用モード寿命について研究)試験の充実検証の充実を図る

bull 運用段階に入ったならば宇宙環境を監視し警報等で故障を防ぐ

予測課題 bull 太陽フレアに伴う高エネルギー粒子発生後フラックス

ピーク値の推定

bull 衛星により不具合の起きる閾値は異なるが閾値をこえる急激な電子フラックスの増加と継続時間の予測

bull 局所的な磁気嵐に伴う磁気圏尾部から注入する粒子

宇宙環境グループは宇宙ステーションと衛星プロジェクトの安全な遂行に貢献しています

ご静聴ありがとうございました

補足資料

不具合原因の推移 bull 宇宙天気を大きく左右する要因の1つとして約11年の太陽活動変化が挙げられる

bull 太陽活動下降時期(太陽変動CME)と極大期(フレアCME)に衛星で不具合が増加するそれにより不具合原因の割合が変わる

-Koons et al The Impact of the Space Environment on Space Systems Aerospace Corp report no TR-99(1670)-1 20 July 1999 -2009 preliminary study (unpublished)

何故不具合は減らないか

bull 部品 放射線に対する感受性が高くなっている bull 微細化が進み同時にフォールトするノードが増え同時にエ

ラーとなる論理ノードやメモリセルが増加する微細化によってメモリセルは小さくなるので記憶容量当たりでみるとエラーの発生率は下がるしかし半導体チップの記憶容量やゲート数が増えるので半導体チップ当たりのエラー発生率は微細化とともに上昇するまた蓄積電荷が小さくなり感受性が高くなってきている

bull システム 大型化大電力化運用長期化 bull 1990年代末以降静止衛星の電力が10kWレベルになったしか

し設計検証技術データ蓄積が遅れている改善されつつあると推測される

放射線による影響の概要

粒子 エネルギー又はLET

代表的な影響

陽子 100keV-1MeV 1-10MeV 10-100MeV gt50MeV

表面損傷 表面材料と太陽電池の損傷 放射線損傷(電離非電離損傷の両方)センサーへのノイズ シングルイベント効果

電子 10-100keV gt100keV gt1MeV

表面帯電 深部帯電現象(deep-dielectric charging)センサーへのノイズ太陽電池の損傷 放射線損傷(電離)

重イオン gt1MeV-cm2mg シングルイベント効果

注エネルギー及びLETは個々の部品等により異なりますあくまでも目安です

耐放射線設計手順

軌道条件

ミッション期間

環境条件設定

トータルドーズの予測

1MeV電子換算被曝算出

NIELの換算

LETフルエンス算出

陽子フルエンス算出

対  策  の  検  討

対  策  の  検  討

対  策  の  検  討

放射線による劣化率予測

劣化率予測 特性予測

耐性データ

放射線による劣化率予測

耐性データ

劣化率予測アレイ出力劣化予測

感受性データ

シングルイベント発生率予測 致命度解析

衛星内質量分布

(2)

部品材料の選定

他の要因による劣化率予測

(2)(2) (3)

回路設計等NO

OK

アレイ構造 セル選定

他の要因による劣化率予測 アレイ設計(2)

(2) (2) (2) (3)

衛星内質量分布 部品選定(2)

(2) (2)(3)

NO

OK

NO

OK

(1) 環境モデルマージを含む(2) 部品レベルの検討(3) アセンブリレベルでの検討(4) 設計マージン環境モデル   マージを含め大丈夫か

トータルドーズ

太陽電池アレイの劣化

シングルイベント効果

回路設計

補足放射線太陽宇宙線銀河宇宙線

NEILを用いたダメージファクターの算出

対  策  の  検  討

放射線による劣化率予測

劣化率予測 特性予測

耐性データ

(2)

部品材料の選定

他の要因による劣化率予測

(2)(2) (3)

回路設計等NO

OK

衛星内質量分布 半導体デバイスの変位損傷

(1)

(4)

(4)

(4)

(4)

各軌道における放射線環境

1E+10

1E+11

1E+12

1E+13

1E+14

1E+15

1E+16

1E+17

1E+18

1E+19

1E+20

001 010 100 1000

捕捉

電子

の積

分フ

ルエ

ンス

[m

2 ]

エネルギー[MeV]

各軌道における電子捕捉積分フルエンス(3年間)

LEO

EOS GEO

MEO

GTO

GEO 軌道傾斜角 0deg 高度36000km GTO 軌道傾斜角 18deg 高度 360km~36000km MEO 軌道傾斜角 51deg 高度 10000km EOS 軌道傾斜角 98deg 高度705km LEO 軌道傾斜角 29deg 高度 600km

1E+12

1E+13

1E+14

1E+15

1E+16

1E+17

1E+18

1E+19

1E+20

01 10 100 1000

捕捉

陽子の

積分フルエン

ス[

m2 ]

エネルギー[MeV]

各軌道における捕捉陽子積分フルエンス(3年間)

MEO

GTO

GEO

EOS LEO

放射線による部品材料の影響

総照射線量 (TIDTotal Ionising Dose )

電離損傷

バイポーラTrの電流増幅率の低下リーク電流の増大

γ線で評価

トータルドーズ効果

変位損傷 (DDDisplacement Damage )または 非イオン化エネルギー損失 (NIELNon-Ionising Energy

Loss )

変位損傷(格子欠陥の生成)

電荷輸送効率の低下 (CCD)太陽電池の効率低下等

電子陽子により評価

シングルイベント効果

1個の荷電粒子の入射により発生する誤動作

ソフト(Latch-Up Burnout) エラー又は ソフト (Upset) エラー

陽子及び重イオンで評価

トータルドーズ効果

+ - + + - + - + - - + + + + -

ゲート酸化膜

電離

格子欠陥

正電荷捕獲

+ 正孔 - 電子

電極

(Silicon oxidenitride)

荷電粒子

反跳原子

ゲート絶縁膜中に電荷が蓄積することによるMOSトランジスタのしきい電圧(MOSトランジスタがオフからオンに変化するゲート電圧)の変化をもたらすただ

し最近の最先端チップはゲート絶縁膜がきわめて薄くなっているこのためゲート絶縁膜よりもフィールド絶縁膜(隣接するトランジスタを電気的に分離する絶縁膜)での電荷蓄積が相対的には大きな問題になってきている」

シングルイベント効果

メモリセルはNチャンネルとPチャンネルMOSFETより構成されメモリ情報は回路ノード12の電位の

高低により記録している空乏層の広がっているPN接合12の領域に

重イオンが入射した場合電荷の発生と空乏層内への少数キャリアの収集が起こるこの収集電荷量が回路の耐量を越えた場合(c)に示すように反転が起こる(ソフトエラー)一方pウエル-N基板接

合の空乏層内に電荷収集量が起こりえる耐性を越えると寄生的に存在するPNPNサイリスタ構造がオ

ンし電源と基板間に大電流が流れる状態が生じる(ラッチアップ)

シングルイベントメカニズム -陽子と重イオンの違い-

エラー発生率の計算

線エネルギー付与(LET) (linear energy transfer)

電離性放射線が物質中を通過する際飛程の単位長さ当りに平均して失うエネルギーをいう各種の放射線のうちX線γ線はLETが小さいので低LETといいα線中性子線その他重イオン核分裂破片のLETは大きいので高LETという MeVμmMeV(gcm2)やMeV(mgcm2)で表される

南大西洋異常(SAA) bull 地球の自転軸と磁気軸のずれ

darr bull 放射線帯が自転軸に対して非

対称

bull 南大西洋上空では放射線帯内帯が低高度に落ちてきているこの領域を南大西洋異常域(SAA South Atlantic Anomaly)と呼ぶ

bull 地球観測衛星ではSAAで放射線帯陽子の影響を受ける

Single Event Lachup

シングルイベントと陽子分布

MOS-1衛星(高度909km軌道傾斜角99度)で発生したシングルイベントと 陽子30MeV以上の等高線マップを重ね合わせた結果

NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)

bull 入射粒子が電離によらず与える損傷非イオン化損失

低軌道での電子フラックスと 不具合の発生場所

南大西洋異常(SAA)と極の角

高度800kmでの電子フラックス図極の角(polar horn)とSAAを示す

太陽粒子線 bull 太陽高エネルギー粒子線(SPE Solar Proton Events)は太陽フレア とコロナガス噴出 (CMECoronal Mass Ejections )により引き起こされる bull フレアのスペクトルは可変であるためあるエネルギー域における最悪状態イベントは必ずしも別のエネルギー域における最悪条件ではない 1972年8月のイベント 10~70MeVの粒子が最も多かった 1989年10のイベント 1972年8月のイベントに比べ低エネルギー領域 高エネルギー領域が明らかに激しかった

フルエンス 105 to 1011 cm-2

変動期間 1日から数日

ldquoBastiliardquo Solar Event 14 July 2000

Carrington Flare

84

(LW Townseed) Carrington Flare(1859年) Carrington Flare による30MeV以上トータルFluenceを118times109cm-2で規格化 ~1989年フレアの約13倍(シングルイベントの評価で使用) ~1991年フレアの約9倍 2012年7月23日にキャリントンイベントとほぼ同等の爆発現象が太陽あるいは太陽の周りで起きていたということがNASAの太陽観測衛星「STEREO」の解析から発表された

放射線対策 bull 放射線シールドを付加し放射線を減衰させる

bull 放射線耐性の強い部品(SOI(Silicon On Insulator)技術による耐放射線部品)材料に変更する

bull 放射線による損傷を吸収するために回路または構造上のマージンを持たせる bull ソフト的なエラーに対しては エラー検出訂正機能や多数決

機能等でソフト的エラーが起きてもシステムが機能するようにしたフォールトトレラント機能を付けて対処する ICのハード的故障に対しては ラッチアップ耐性の強い部品を選定するしかないが 電流制限回路を付ける対策も採られる パワーMOSFETに対しては部品選定 電源電圧を規格値の半分以下に落とす等の対策を採る

SOI技術

表面帯電への対策例

表面の物体間を導線で結線する

太陽電池のカバーガラスを導電性被膜付き(酸化インジウムITO)にする

熱制御材表面にITOを被覆する

熱制御材は高誘電率のテフロンの使用を避け 高伝導度耐環境性に優れたブラックカプトンを使用

イオンエンジンの中和器で能動帯電制御

内部帯電への対策例

アルミで3mm厚さに相当するシールドで囲む(Faraday Cage)

テフロンやカプトンなどの誘電体材料の内部での使用量を最小限に押さえる

回路基板やコンフォーマルコーティングは誘電体なので電流リークパス(1012Ωcmまたは1012Ωcm2

程度)を必ずつける

特にスポット的な放射線シールドの金属材には必ず電流リークパスをつける

帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備

衛星モデル作成

材料物性テーブル設定

宇宙環境パラメータ設定

Converter

転送ディレクトリ 解析データファイル

転送

解析ディレクトリ生成 解析結果 進行状況チェック ファイル操作

MUSCAT 解析エンジン

解析結果 表示

パラメトリックラン

オプション 解析

大型パネル実験(35mtimes11m) クーポンパネル実験(26cmtimes16cm)

環境模擬試験 環境模擬試験

MUSCATに使用する物性値設計標準制定のための知見などを得ることを目的に軌道上の宇宙環境を模擬した地上試験を行っている これらの試験では放電の発生頻度や電圧閾値放電発生による太陽電池パネルや搭載機器への影響を検証している

放射線計測装置の原理

bull その粒子が物質を通過する際のエネルギー損出率が粒子の電荷(原子番号)Zの二乗に比例すること(Bethe-Blochの式)を利用する

S2

E

ΔE Ersquo

S1 S3

  • 宇宙機の設計のための宇宙環境
  • 話の流れ
  • 話の流れ
  • TEDA(技術データ取得装置)(国産部品の宇宙環境での実証の必要性)
  • ETS-VTEDA(技術データ取得装置)誕生前の部品の宇宙実証の背景
  • スライド番号 6
  • スライド番号 7
  • スライド番号 8
  • スライド番号 9
  • 図6太陽黒点数と静止軌道電子 (>04MeV ) Flux の変動 (ETS-V搭載DOMによる観測)
  • スライド番号 11
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの開発(理研東大と共同で宇宙環境計測の充実)
  • ETS-VI(きく6号)打ち上がったがGEOに行かずGTOに留まる
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの成果
  • スライド番号 15
  • スライド番号 16
  • スライド番号 17
  • ADEOS搭載TEDA(世界2番目の異常宇宙線ACR)
  • BBND (ボナー球中性子検出器)
  • スライド番号 20
  • ISS搭載BBNDの成果(約8か月)
  • スライド番号 22
  • MDS-1搭載放射線吸収線量モニタ(SDOM)
  • 放射線帯変動モデルの開発MDS-1 065 MeV 電子フラックス
  • 変動パラメータの選択 (1 cycle solar activity)
  • 変動パラメータ- Tavg の定義-
  • 065MeV 電子 L値-Tavg マップ
  • 13MeV 陽子 L値-Tavg マップ
  • 電子観測とMDS-1モデルの比較
  • 放射線帯フラックスピークの変動
  • 陽子観測とモデルの比較
  • 電子(035~078MeV) 1日の変動予測GOSAT軌道
  • 電子(035~078MeV) 変動の信頼度水準(1日)GOSAT軌道
  • MDS-1 model と AE-8 modelとの比較1日
  • 話の流れ
  • 2003年10月 みどり号の全損事故(複合現象)
  • 衛星帯電の基本式
  • 内部帯電
  • パドルでの帯電放電メカニズム
  • スライド番号 40
  • スライド番号 41
  • スライド番号 42
  • データ中継技術衛星DRTS (こだま)の不具合
  • DRTS ESA スパイクノイズと電子フルエンスの比較(赤の丸が異常検知)
  • 不具合が宇宙環境によるものであるか判断する際のポイント
  • 話の流れ
  • 宇宙天気のリスク-宇宙環境によるシステムへの影響 -
  • NASAの報告-GNampCに注目-
  • NASAの報告(続き)
  • 宇宙環境を原因とする不具合の割合-JAXAの場合-
  • 不具合発生部位の割合 
  • Satellite News Digest -静止軌道不具合-
  • 太陽活動と静止軌道衛星不具合例
  • スライド番号 54
  • スライド番号 55
  • スライド番号 56
  • 衛星開発段階における対策
  • 運用における対応
  • 話の流れ
  • スライド番号 60
  • スライド番号 61
  • まとめ(その1)
  • まとめ(その2)
  • 宇宙環境グループは宇宙ステーションと衛星プロジェクトの安全な遂行に貢献しています
  • 補足資料
  • 不具合原因の推移
  • 何故不具合は減らないか
  • 放射線による影響の概要
  • 耐放射線設計手順
  • 各軌道における放射線環境
  • 放射線による部品材料の影響
  • トータルドーズ効果
  • シングルイベント効果
  • シングルイベントメカニズム-陽子と重イオンの違い-
  • エラー発生率の計算
  • 線エネルギー付与(LET)(linear energy transfer)
  • 南大西洋異常(SAA)
  • Single Event Lachup
  • シングルイベントと陽子分布
  • NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)
  • 低軌道での電子フラックスと不具合の発生場所
  • 南大西洋異常(SAA)と極の角
  • スライド番号 83
  • Carrington Flare
  • 放射線対策
  • スライド番号 86
  • スライド番号 87
  • 帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備
  • スライド番号 89
  • 放射線計測装置の原理
Page 24: 宇宙機の設計のための宇宙環境の方針から国産部品開発(42品種)が実施された。 . 半導体電子部品は耐放射線性を加味して、人工衛星(特に

放射線帯変動モデルの開発 MDS-1 065 MeV 電子フラックス

変動パラメータの選択 (1 cycle solar activity)

太陽風速度(SW)

太陽黒点数(R)

Ap指数

F107

変動パラメータ- Tavg の定義-

1日後の予測

パラメータスケールの時間平均 ApTavg SWTavg F107 Tavg

T days

放射線帯の構造は変動パラメータ値の大きさと継続時間に相関がある

065MeV 電子 L値-Tavg マップ

APTavg

SWTavg

13MeV 陽子 L値-Tavg マップ

APTavg

F107Tavg

電子観測とMDS-1モデルの比較

80 175

放射線帯フラックスピークの変動

80orbits (平穏時) 175orbits (擾乱時)

陽子観測とモデルの比較

電子(035~078MeV) 1日の変動予測GOSAT軌道

0

50

100

150

200

250

1E+09

1E+10

1E+11

1E+12

1984 1986 1988 1990 1992 1994 1996 1998 2000 2002 2004 2006 2008

Flue

nce[

ecm

2M

eVd

ay]

Launch day

FluenceSSN

Worst case Nov 12003

電子(035~078MeV) 変動の信頼度水準(1日)GOSAT軌道

00

01

02

03

04

05

06

07

08

09

10

88 90 92 94 96 98 100 102 104 106 108 110 112 114

Con

fiden

ce le

vel

Fluence[LOG10 ecm2MeVday]

AE-8 MAX

AE-8 MIN

MDS-1 model と AE-8 model との比較1日

0

20

40

60

80

100

120

140

160

180

1E+09

1E+10

1E+11

1E+12

1995 1997 1999 2001 2003 2005 2007 2009

Flue

nce[

ecm

2M

eVd

ay]

Launch day

Fluence(JAXA)Fluence(AE8)SSN

話の流れ

技術データ取得装置(TEDA)の概要と成果 bull 主な成果 bull 不具合解析例

宇宙天気のリスクと対策 bull 宇宙環境による衛星システムへの影響 bull 宇宙環境を原因とする不具合の割合推移部位 bull 静止軌道不具合 bull 対策

今後必要な観測項目

まとめ

2003年10月 みどり号の全損事故 (複合現象)

極域のオーロラ帯を通過中に電力ハー

ネスを巻いているMLIが高エネルギー電

子により帯電

MLIが接地されていなかったため内側

のハーネスとの間に1kV以上の電位差が

発生

MLI内のガス密度が発電開始に伴う温度

上昇により上昇

ハーネス被覆の傷により露出したハーネ

ス芯線とMLI内面の間で放電発生

単発の放電が隣接するハーネスに飛び火

してハーネス間の短絡

アーク放電が次々と伝搬していきハー

ネス全体が焼損

故障推定箇所 (大電力ハーネス部)

bull詳細報告書は文部科学省 宇宙開発委員会のHP参照

httpwwwmextgojpb_menushingiuchuureports04080901htm

bull 人工衛星の電位 bull 人工衛星は電気的に宇宙に浮いている bull 宇宙機構造体が接地点 bull 宇宙機への流入電流と流出電流のバランスによって宇宙機電位が決まる bull 各電流成分は宇宙機電位Vの関数として表され定常状態では式を下式を満たす

衛星帯電の基本式

( ) dtIIIIIIIC

V

dtdVCVIVIVIVIVIVIVI

BPHBSESISEIE

BPHBSESISEIE

int +++++minus=

==+++++minus

1

0)]()()()()()([)(

入射電子電流 ( E I )

後方散乱電子電流 ( BSE I )

入射正イオン電流 ( I I )

入射電子による二次電子電流 ( SE I )

太陽光

入射正イオンによる 二次電子放出電流 ( SI I )

光電子放出電流( PH I )

電荷ビーム放出電流(IB)

bull内部帯電は衛星の外壁を貫通した放射線帯外帯の01MeV以上の電子が内部に侵入

bull基板間や同軸ケーブルの線間等の容量(コンデンサ)や誘電体に帯電 bull接地されてない導体片に帯電

bullその耐圧電圧を超えると その耐圧の弱い箇所 (材質の欠陥や針状突起など の箇所)で放電して故障に至る

内部帯電

(あるエネルギ-以上の粒子が入射光電子なし)

NASA-HDBK-4002より

パドルでの帯電放電メカニズム

宇宙環境の影響により 衛星がマイナス電位に帯電

高エネルギー電子等により カバーガラスはプラスに帯電 衛星とカバーガラスに電位差が生じる

電位差が大きくなると トリプルジャンクション近傍 の電界強度が増大していく

トリプルジャンクションで放電が発生する カバーガラスの帯電が緩和される

+ + + + + + + + + + + + + +

+ + + +

カバーガラス

太陽電池セル

基板(衛星構体)

トリプルジャンクション rArr 導体絶縁体宇宙環境の接点

持続放電

Substrate

Satellite Load

insulation sheet

Solar array cell

Cover glass

Arc current

Electrode

持続放電は衛星の電力消失につながる 持続放電のモードは以下の2通りがある

Substrate

Satellite Load

insulation sheet

Solar array cell

Cover glass

Arc current

Electrode

Solar array cell

Cover glass

セル-基板間短絡 セル間短絡

放電によって太陽電池セルと基板が短絡する 短絡によって負荷に電力が供給されなくなる

放電によって太陽電池セルとセルが短絡する 短絡によって負荷に電力が供給されなくなる

サブストーム(高エネルギー電子)との遭遇

+ + + + + + + +

二次電子光電子による絶縁体の帯電(局所帯電)

電位差発生

逆電位勾配

衛星構体が負に帯電(絶対帯電)

電位

時間

サブストーム

衛星構体 VS

乖離電圧 ∆V

カバーガラスVcg

0 プラズマ電位

軌道別帯電放電現象

トリプルジャンクションで 放電発生

放電発生

静止軌道

+ + + + + + + +

逆電位勾配

軌道帯電放電現象

トリプルジャンクションで 放電発生

極軌道 オーロラ電子(高エネルギー電子)との遭遇

プラズマ流入出による絶縁体の帯電(局所帯電)

電位差発生

衛星構体が負に帯電(絶対帯電)

放電発生

電位

時間

オーロラ電子

衛星構体 乖離電圧 ∆V

カバーガラス

0 プラズマ電位

データ中継技術衛星DRTS (こだま)の不具合

2002年10月 9日 静止軌道に打ち上げ

2003年

3月24日 406JST変化率異常モニタ故障検出(FDIR)

が動作しA系からB系に切り替わった

3月25日 410JSTにB系のみ異常検知

4月 3日 327JSTにB系のみ異常検知

5月28日 124JSTにB系のみ異常検知

6月 6日1537JSTにB系のみ異常検知

ESA

DRTS ESA スパイクノイズと 電子フルエンスの比較(赤の丸が異常検知)

larr閾値

この事実を基に静止軌道における内部帯電警報システムを構築 2004年4月より運用開始

不具合が宇宙環境によるものであるか 判断する際のポイント

不具合の発生した時刻に太陽フレアや磁気嵐等の宇宙天気の大きな変動が起きていれば不具合に関係している可能性が高い但し帯電など放射線の積算的効果の伴う現象については発生から1週間位さかのぼり環境がどのように推移してきたかを考慮する必要がある

磁気嵐が起きると静止軌道に急激な粒子の増加現象が起きこれにより衛星帯電が引き起こされたりする(予測に利用可能)

地方時(真夜中や朝方か)や季節(春秋)を考慮する

低軌道衛星においてはSAA外帯のrdquo角ldquo及び極通過時に不具合

が起きやすいので衛星の位置(緯度経度)が重要

事象を把握する上で単発現象か数回起きている現象か周期

(時間同じ軌道等)的に発生している現象か

話の流れ

技術データ取得装置(TEDA)の概要と成果 bull 主な成果 bull 不具合解析例

宇宙天気のリスクと対策 bull 宇宙環境による衛星システムへの影響 bull 宇宙環境を原因とする不具合の割合推移部位 bull 静止軌道不具合 bull 対策

今後必要な観測項目

まとめ

宇宙天気のリスク -宇宙環境によるシステムへの影響 -

プラズマ (IRI)

帯電 (MUSCAT)

衝突 (AUTODY)

抗力 表面劣化

紫外線X線 中性粒子 (MSIS)

放射線粒子 (AE8AP8JPLSHIELDO

SE-2)

メテオロイドデブリ (MASTER2005

ORDEM)

電離損傷 変位損傷

bull電子回路の劣化 bull光部品の劣化

bull太陽電池セルの劣化

SEU (CREME96)

bullデータエラー bull画像ノイズ

bullシステム停止 bull回路損傷

bull熱的電気的光学的特性の劣化

bull構造の劣化 bullコンタミ

電磁パルス bull電源出力低下

bull損傷

bullトルク bull軌道落下

bull構造 損傷 bull減圧

bull電磁パルス

NASAの報告 -GNampCに注目-

1974年から1994年に起きたNASAと空軍の衛星故障の内20~25が宇宙環境に起因していたと報告

1990年から2001年に米国欧州カナダ日本の企業や政府機関が開発した衛星を調べた過去の宇宙ミション損失の大部分はロケットの失敗であったが1998年衛星損失の大部分は軌道上の衛星障害となっている多くの最近の異常は太陽電池アレイ及びバッテリの危険が増加している静止軌道通信衛星の設計寿命はこのサブシステムの故障の危険が増加している

喪失等の大きな誘導制御(GNampC)の不具合に注目 GNampC不具合の内宇宙環境による 不具合は約3と報告されている

軌道上衛星のタイプ別数

NASAの報告(続き)

衛星設計寿命における不具合発生時期 事故率と軌道

軌道別の衛星数 サブシステム不具合

宇宙環境を原因とする不具合の割合 -JAXAの場合-

2002年~2008年に運用された軌道上不具合情報が比較的充実している11衛星(利用衛星7機科学衛星4機)の結果宇宙環境によるも

のは約15過去のデータよりも割合が少ない

合計83件 合計35件

(1)利用衛星 (2)科学衛星

設計検討 不足 48

製造不良 8

軌道上環境 17

偶発故障 6

調査中 13

原因不明 8

設計検討

不足 61

製造不良 4

軌道上環境 11

偶発故障 6

調査中 9

原因不明 9

不具合発生部位の割合

不具合発生部位の割合

Brent Robertson Eric Stoneking ( 1990-2001NASA Goddard Space Flight Center )

Satellite News Digest -静止軌道不具合-

Satellite News Digest (SND) (http wwwsqt-indexcouk) で1997年~2009年の期間に静止軌道で95件の不具合が報告されている その内運用ミスや設計ミスなどを除くと32件(約33)は宇宙環境によるものであった 過去のデータより割合が多い

Choiら1)はこれら不具合の地方時と季節依存性を確認した その結果2100LT~900LTで約72の不具合が発生し900LT~2100LTは9件(約28)であった またこの9件は全て姿勢制御の不具合だった 静止軌道衛星不具合のほとんどは真夜中と朝方で起きており磁気嵐に伴い磁気圏尾部から注入した粒子による表面帯電が不具合の主原因と結論づけている

1) Ho-sung Choi et al Analysis of GEO spacecraft anomalies Space weather relationships Space Weather Vol 9 S06001

太陽活動と静止軌道衛星不具合例

ANIK-E1E2

ANIK-E1

複数の衛星で故障

Galaxy-15

帯電放電不具合 -ANIK-E1amp2Telstar401-

Jan 1994 ANIK-E1 amp E2事故時の環境 - Joe H Allen

1週間

太陽活動下降時期の電子増加

2MeV以上電子

copyNOAA Web

フラックスが3桁急増

Jan 1997 Telstar401事故時の環境

静止軌道の急激な電子増加

太陽極大期太陽フレアによる衛星障害 - 2003年10月~11月-

10486981048698 永久故障 4 10486981048698 安全モード又は運用を一時停止 31 10486981048698 データ内容の「誤り」の増加搭載コンピュータの誤動作 5

httpwwwsat-ndcomfailures等のデータによる 合計 40件

-Barbieri and Mahmot

米国極軌道気象衛星NOAA-17の改良型マイクロ波観測装置AMSU-A1 (Advanced Microwave Sounding Unit)のスキャナーが永久故障 米国気象衛星GOES -8号のX線センサがOFFになり復帰しなくなった

e-birdに深刻な不具合が発生 不具合は20本のトランスポンダ全てに影響

火星周回中の探査機「マーズオデッセイ (Mars Odyssey)」の観測機器放射線観測装置「Martian Radiation Environment Experiment (MARIE)」が太陽活動の影響により10月28日から適切に作動しなくなった データ中継技術衛星(DRTS)「こだま」 太陽捕捉モードに移行

太陽陽子

帯電放電不具合-Galaxy15(局所的的現象)- 2

5 M

eV

65

MeV

11

5 M

eV

GOES 14 ----- GOES 15 ----- GOES 11 -----

Satellite Locations

Galaxy 15 anomaly

2010年4月5日9時48分UTCは磁気嵐及びCMEが発生するなど宇宙環境は非常に荒れていたGalaxy15衛星は真夜中側に位置し宇宙環境の影響を受けやすい

位置にいたことから宇宙環境による不具合である可能性が高いということで原因追及がなされた高エネルギー粒子が引き起こす代表的な衛星不具合現象として3つ(表面帯電内部帯電SEUシングルイベントバーンアウトSEL)の可能性を検討した

チームの報告書によると磁気圏尾部からの熱電子の流入による放電が原因であったと結論付けられたGalaxy15衛星の近くにはGOES-11衛星が位置していたがGOES-11衛星には不具合を発生しておらず本現象は局所的な現象と推測される

衛星開発段階における対策 JAXAの不具合解析の結論

bull 2002年~2008年に運用された11機の衛星不具合を解析 宇宙環境による不具合は偶発故障のみ(全体の約15)確率的には想定範囲内ではあるがその影響を最小限とするためディレーティング運用モード寿命についての研究に取り組む

bull 設計基準試験の充実検証確認の強化技術成熟度(TRL)評価の徹底各々の境界制約条件の明示化等により検証不足抜けの防止有効なピアレビューに結びつける

冗長系(同じハードウェア機能の冗長)柔軟性の設計(ソフトハードの対応)

bull 従来の故障が起きないようにする設計に対してGOSAT(いぶき)では重要部

品を二重化することにより故障する可能性は上がるが故障しても衛星バスの運用や観測が続行できる可能性がより高くなるように設計した

運用における対応

bull 宇宙天気監視ーロケット打ち上げ及び宇宙飛行士支援 数日前に今後の宇宙環境の推移を把握(MXレベルのフレアの発生確率)

bull X線の増加で太陽フレア発生を検知したら高エネルギー粒子の発生をいつまで 気を付ければ良いか判断(発生位置で大凡を推定するが課題は多い) SPEが発生した場合(特に10MeV以上100MeV 以上の陽

子)最大値フラックス値の推定 ピーク値を予測(特に閾値に近くなった時に重要)

bull 衛星運用 bull 太陽フレア磁気嵐警報(X線陽子及びkpが閾値を超えた

時に警報を発信)2003年10月より運用開始 bull 内部帯電警報(2日後の静止軌道上の高エネルギー電子(>1

Me) の増加を予測し 閾値を超えた時に警報を発信) 2004年4月より運用開始

話の流れ

技術データ取得装置(TEDA)の概要と成果 bull 主な成果 bull 不具合解析例

宇宙天気のリスクと対策 bull 宇宙環境による衛星システムへの影響 bull 宇宙環境を原因とする不具合の割合推移部位 bull 静止軌道不具合 bull 対策

今後必要な観測項目

まとめ

計測対象計測項目 計測対象 粒径100μm以上のデブリメテオロイド 計測項目 デブリ粒径衝突頻度

基本原理

厚さ約125μmの絶縁性のポリイミドフィルム表面に 100μm周期で直線状の細長い導線(太さ50μm)パターンを形成導線の破断を電気的に検知することによりデブリの衝突(貫通)を検知する破断した導線の数導線の幅ピッチからデブリサイズを計測する

微小デブリ計測技術の概要

衝突孔の例(衝突試験ISAS) - 衝突粒子 SUS 309 microm - 衝突速度 52 kms

HTV5号機によるセンサ機能のフライト実証

35cm

46cm

FY2013機能実証モデル

検出線幅 50 μm 検出線間隔 100 μm フィルム厚 lt 20 μm 有感領域 30times33cm 検出線総数 3300本

サイズ 50times39times4 cm (筐体を含む)

重量 約15kg(筐体を含む)

消費電力 2W(最大4W)(他センサ含む)

テレメトリ 02 bps

宇宙環境観測装置KASPERの一部としてデブリセンサSDMを搭載 FY2013に製作開始今年8月に打ち上げ予定)

まとめ(その1)

衛星不具合の主な原因は帯電放電シングルイベント放射線損傷である今後デブリ環境が重要になると予測される

静止軌道では商用衛星が多く運用されており宇宙環境の変動把握は重要この領域で運用する衛星が気を付けなければいけない環境として

1太陽フレアに伴う高エネルギー粒子 2太陽活動下降期による静止軌道電子の増加 3磁気嵐に伴う磁気圏尾部から注入する粒子 などがあげられる

まとめ(その2)

不具合軽減の取り組み bull 開発時は宇宙環境条件(トータルフラックス及び最悪条

件)を明確にし設計(冗長系柔軟性の設計ディレーティング及び運用モード寿命について研究)試験の充実検証の充実を図る

bull 運用段階に入ったならば宇宙環境を監視し警報等で故障を防ぐ

予測課題 bull 太陽フレアに伴う高エネルギー粒子発生後フラックス

ピーク値の推定

bull 衛星により不具合の起きる閾値は異なるが閾値をこえる急激な電子フラックスの増加と継続時間の予測

bull 局所的な磁気嵐に伴う磁気圏尾部から注入する粒子

宇宙環境グループは宇宙ステーションと衛星プロジェクトの安全な遂行に貢献しています

ご静聴ありがとうございました

補足資料

不具合原因の推移 bull 宇宙天気を大きく左右する要因の1つとして約11年の太陽活動変化が挙げられる

bull 太陽活動下降時期(太陽変動CME)と極大期(フレアCME)に衛星で不具合が増加するそれにより不具合原因の割合が変わる

-Koons et al The Impact of the Space Environment on Space Systems Aerospace Corp report no TR-99(1670)-1 20 July 1999 -2009 preliminary study (unpublished)

何故不具合は減らないか

bull 部品 放射線に対する感受性が高くなっている bull 微細化が進み同時にフォールトするノードが増え同時にエ

ラーとなる論理ノードやメモリセルが増加する微細化によってメモリセルは小さくなるので記憶容量当たりでみるとエラーの発生率は下がるしかし半導体チップの記憶容量やゲート数が増えるので半導体チップ当たりのエラー発生率は微細化とともに上昇するまた蓄積電荷が小さくなり感受性が高くなってきている

bull システム 大型化大電力化運用長期化 bull 1990年代末以降静止衛星の電力が10kWレベルになったしか

し設計検証技術データ蓄積が遅れている改善されつつあると推測される

放射線による影響の概要

粒子 エネルギー又はLET

代表的な影響

陽子 100keV-1MeV 1-10MeV 10-100MeV gt50MeV

表面損傷 表面材料と太陽電池の損傷 放射線損傷(電離非電離損傷の両方)センサーへのノイズ シングルイベント効果

電子 10-100keV gt100keV gt1MeV

表面帯電 深部帯電現象(deep-dielectric charging)センサーへのノイズ太陽電池の損傷 放射線損傷(電離)

重イオン gt1MeV-cm2mg シングルイベント効果

注エネルギー及びLETは個々の部品等により異なりますあくまでも目安です

耐放射線設計手順

軌道条件

ミッション期間

環境条件設定

トータルドーズの予測

1MeV電子換算被曝算出

NIELの換算

LETフルエンス算出

陽子フルエンス算出

対  策  の  検  討

対  策  の  検  討

対  策  の  検  討

放射線による劣化率予測

劣化率予測 特性予測

耐性データ

放射線による劣化率予測

耐性データ

劣化率予測アレイ出力劣化予測

感受性データ

シングルイベント発生率予測 致命度解析

衛星内質量分布

(2)

部品材料の選定

他の要因による劣化率予測

(2)(2) (3)

回路設計等NO

OK

アレイ構造 セル選定

他の要因による劣化率予測 アレイ設計(2)

(2) (2) (2) (3)

衛星内質量分布 部品選定(2)

(2) (2)(3)

NO

OK

NO

OK

(1) 環境モデルマージを含む(2) 部品レベルの検討(3) アセンブリレベルでの検討(4) 設計マージン環境モデル   マージを含め大丈夫か

トータルドーズ

太陽電池アレイの劣化

シングルイベント効果

回路設計

補足放射線太陽宇宙線銀河宇宙線

NEILを用いたダメージファクターの算出

対  策  の  検  討

放射線による劣化率予測

劣化率予測 特性予測

耐性データ

(2)

部品材料の選定

他の要因による劣化率予測

(2)(2) (3)

回路設計等NO

OK

衛星内質量分布 半導体デバイスの変位損傷

(1)

(4)

(4)

(4)

(4)

各軌道における放射線環境

1E+10

1E+11

1E+12

1E+13

1E+14

1E+15

1E+16

1E+17

1E+18

1E+19

1E+20

001 010 100 1000

捕捉

電子

の積

分フ

ルエ

ンス

[m

2 ]

エネルギー[MeV]

各軌道における電子捕捉積分フルエンス(3年間)

LEO

EOS GEO

MEO

GTO

GEO 軌道傾斜角 0deg 高度36000km GTO 軌道傾斜角 18deg 高度 360km~36000km MEO 軌道傾斜角 51deg 高度 10000km EOS 軌道傾斜角 98deg 高度705km LEO 軌道傾斜角 29deg 高度 600km

1E+12

1E+13

1E+14

1E+15

1E+16

1E+17

1E+18

1E+19

1E+20

01 10 100 1000

捕捉

陽子の

積分フルエン

ス[

m2 ]

エネルギー[MeV]

各軌道における捕捉陽子積分フルエンス(3年間)

MEO

GTO

GEO

EOS LEO

放射線による部品材料の影響

総照射線量 (TIDTotal Ionising Dose )

電離損傷

バイポーラTrの電流増幅率の低下リーク電流の増大

γ線で評価

トータルドーズ効果

変位損傷 (DDDisplacement Damage )または 非イオン化エネルギー損失 (NIELNon-Ionising Energy

Loss )

変位損傷(格子欠陥の生成)

電荷輸送効率の低下 (CCD)太陽電池の効率低下等

電子陽子により評価

シングルイベント効果

1個の荷電粒子の入射により発生する誤動作

ソフト(Latch-Up Burnout) エラー又は ソフト (Upset) エラー

陽子及び重イオンで評価

トータルドーズ効果

+ - + + - + - + - - + + + + -

ゲート酸化膜

電離

格子欠陥

正電荷捕獲

+ 正孔 - 電子

電極

(Silicon oxidenitride)

荷電粒子

反跳原子

ゲート絶縁膜中に電荷が蓄積することによるMOSトランジスタのしきい電圧(MOSトランジスタがオフからオンに変化するゲート電圧)の変化をもたらすただ

し最近の最先端チップはゲート絶縁膜がきわめて薄くなっているこのためゲート絶縁膜よりもフィールド絶縁膜(隣接するトランジスタを電気的に分離する絶縁膜)での電荷蓄積が相対的には大きな問題になってきている」

シングルイベント効果

メモリセルはNチャンネルとPチャンネルMOSFETより構成されメモリ情報は回路ノード12の電位の

高低により記録している空乏層の広がっているPN接合12の領域に

重イオンが入射した場合電荷の発生と空乏層内への少数キャリアの収集が起こるこの収集電荷量が回路の耐量を越えた場合(c)に示すように反転が起こる(ソフトエラー)一方pウエル-N基板接

合の空乏層内に電荷収集量が起こりえる耐性を越えると寄生的に存在するPNPNサイリスタ構造がオ

ンし電源と基板間に大電流が流れる状態が生じる(ラッチアップ)

シングルイベントメカニズム -陽子と重イオンの違い-

エラー発生率の計算

線エネルギー付与(LET) (linear energy transfer)

電離性放射線が物質中を通過する際飛程の単位長さ当りに平均して失うエネルギーをいう各種の放射線のうちX線γ線はLETが小さいので低LETといいα線中性子線その他重イオン核分裂破片のLETは大きいので高LETという MeVμmMeV(gcm2)やMeV(mgcm2)で表される

南大西洋異常(SAA) bull 地球の自転軸と磁気軸のずれ

darr bull 放射線帯が自転軸に対して非

対称

bull 南大西洋上空では放射線帯内帯が低高度に落ちてきているこの領域を南大西洋異常域(SAA South Atlantic Anomaly)と呼ぶ

bull 地球観測衛星ではSAAで放射線帯陽子の影響を受ける

Single Event Lachup

シングルイベントと陽子分布

MOS-1衛星(高度909km軌道傾斜角99度)で発生したシングルイベントと 陽子30MeV以上の等高線マップを重ね合わせた結果

NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)

bull 入射粒子が電離によらず与える損傷非イオン化損失

低軌道での電子フラックスと 不具合の発生場所

南大西洋異常(SAA)と極の角

高度800kmでの電子フラックス図極の角(polar horn)とSAAを示す

太陽粒子線 bull 太陽高エネルギー粒子線(SPE Solar Proton Events)は太陽フレア とコロナガス噴出 (CMECoronal Mass Ejections )により引き起こされる bull フレアのスペクトルは可変であるためあるエネルギー域における最悪状態イベントは必ずしも別のエネルギー域における最悪条件ではない 1972年8月のイベント 10~70MeVの粒子が最も多かった 1989年10のイベント 1972年8月のイベントに比べ低エネルギー領域 高エネルギー領域が明らかに激しかった

フルエンス 105 to 1011 cm-2

変動期間 1日から数日

ldquoBastiliardquo Solar Event 14 July 2000

Carrington Flare

84

(LW Townseed) Carrington Flare(1859年) Carrington Flare による30MeV以上トータルFluenceを118times109cm-2で規格化 ~1989年フレアの約13倍(シングルイベントの評価で使用) ~1991年フレアの約9倍 2012年7月23日にキャリントンイベントとほぼ同等の爆発現象が太陽あるいは太陽の周りで起きていたということがNASAの太陽観測衛星「STEREO」の解析から発表された

放射線対策 bull 放射線シールドを付加し放射線を減衰させる

bull 放射線耐性の強い部品(SOI(Silicon On Insulator)技術による耐放射線部品)材料に変更する

bull 放射線による損傷を吸収するために回路または構造上のマージンを持たせる bull ソフト的なエラーに対しては エラー検出訂正機能や多数決

機能等でソフト的エラーが起きてもシステムが機能するようにしたフォールトトレラント機能を付けて対処する ICのハード的故障に対しては ラッチアップ耐性の強い部品を選定するしかないが 電流制限回路を付ける対策も採られる パワーMOSFETに対しては部品選定 電源電圧を規格値の半分以下に落とす等の対策を採る

SOI技術

表面帯電への対策例

表面の物体間を導線で結線する

太陽電池のカバーガラスを導電性被膜付き(酸化インジウムITO)にする

熱制御材表面にITOを被覆する

熱制御材は高誘電率のテフロンの使用を避け 高伝導度耐環境性に優れたブラックカプトンを使用

イオンエンジンの中和器で能動帯電制御

内部帯電への対策例

アルミで3mm厚さに相当するシールドで囲む(Faraday Cage)

テフロンやカプトンなどの誘電体材料の内部での使用量を最小限に押さえる

回路基板やコンフォーマルコーティングは誘電体なので電流リークパス(1012Ωcmまたは1012Ωcm2

程度)を必ずつける

特にスポット的な放射線シールドの金属材には必ず電流リークパスをつける

帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備

衛星モデル作成

材料物性テーブル設定

宇宙環境パラメータ設定

Converter

転送ディレクトリ 解析データファイル

転送

解析ディレクトリ生成 解析結果 進行状況チェック ファイル操作

MUSCAT 解析エンジン

解析結果 表示

パラメトリックラン

オプション 解析

大型パネル実験(35mtimes11m) クーポンパネル実験(26cmtimes16cm)

環境模擬試験 環境模擬試験

MUSCATに使用する物性値設計標準制定のための知見などを得ることを目的に軌道上の宇宙環境を模擬した地上試験を行っている これらの試験では放電の発生頻度や電圧閾値放電発生による太陽電池パネルや搭載機器への影響を検証している

放射線計測装置の原理

bull その粒子が物質を通過する際のエネルギー損出率が粒子の電荷(原子番号)Zの二乗に比例すること(Bethe-Blochの式)を利用する

S2

E

ΔE Ersquo

S1 S3

  • 宇宙機の設計のための宇宙環境
  • 話の流れ
  • 話の流れ
  • TEDA(技術データ取得装置)(国産部品の宇宙環境での実証の必要性)
  • ETS-VTEDA(技術データ取得装置)誕生前の部品の宇宙実証の背景
  • スライド番号 6
  • スライド番号 7
  • スライド番号 8
  • スライド番号 9
  • 図6太陽黒点数と静止軌道電子 (>04MeV ) Flux の変動 (ETS-V搭載DOMによる観測)
  • スライド番号 11
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの開発(理研東大と共同で宇宙環境計測の充実)
  • ETS-VI(きく6号)打ち上がったがGEOに行かずGTOに留まる
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの成果
  • スライド番号 15
  • スライド番号 16
  • スライド番号 17
  • ADEOS搭載TEDA(世界2番目の異常宇宙線ACR)
  • BBND (ボナー球中性子検出器)
  • スライド番号 20
  • ISS搭載BBNDの成果(約8か月)
  • スライド番号 22
  • MDS-1搭載放射線吸収線量モニタ(SDOM)
  • 放射線帯変動モデルの開発MDS-1 065 MeV 電子フラックス
  • 変動パラメータの選択 (1 cycle solar activity)
  • 変動パラメータ- Tavg の定義-
  • 065MeV 電子 L値-Tavg マップ
  • 13MeV 陽子 L値-Tavg マップ
  • 電子観測とMDS-1モデルの比較
  • 放射線帯フラックスピークの変動
  • 陽子観測とモデルの比較
  • 電子(035~078MeV) 1日の変動予測GOSAT軌道
  • 電子(035~078MeV) 変動の信頼度水準(1日)GOSAT軌道
  • MDS-1 model と AE-8 modelとの比較1日
  • 話の流れ
  • 2003年10月 みどり号の全損事故(複合現象)
  • 衛星帯電の基本式
  • 内部帯電
  • パドルでの帯電放電メカニズム
  • スライド番号 40
  • スライド番号 41
  • スライド番号 42
  • データ中継技術衛星DRTS (こだま)の不具合
  • DRTS ESA スパイクノイズと電子フルエンスの比較(赤の丸が異常検知)
  • 不具合が宇宙環境によるものであるか判断する際のポイント
  • 話の流れ
  • 宇宙天気のリスク-宇宙環境によるシステムへの影響 -
  • NASAの報告-GNampCに注目-
  • NASAの報告(続き)
  • 宇宙環境を原因とする不具合の割合-JAXAの場合-
  • 不具合発生部位の割合 
  • Satellite News Digest -静止軌道不具合-
  • 太陽活動と静止軌道衛星不具合例
  • スライド番号 54
  • スライド番号 55
  • スライド番号 56
  • 衛星開発段階における対策
  • 運用における対応
  • 話の流れ
  • スライド番号 60
  • スライド番号 61
  • まとめ(その1)
  • まとめ(その2)
  • 宇宙環境グループは宇宙ステーションと衛星プロジェクトの安全な遂行に貢献しています
  • 補足資料
  • 不具合原因の推移
  • 何故不具合は減らないか
  • 放射線による影響の概要
  • 耐放射線設計手順
  • 各軌道における放射線環境
  • 放射線による部品材料の影響
  • トータルドーズ効果
  • シングルイベント効果
  • シングルイベントメカニズム-陽子と重イオンの違い-
  • エラー発生率の計算
  • 線エネルギー付与(LET)(linear energy transfer)
  • 南大西洋異常(SAA)
  • Single Event Lachup
  • シングルイベントと陽子分布
  • NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)
  • 低軌道での電子フラックスと不具合の発生場所
  • 南大西洋異常(SAA)と極の角
  • スライド番号 83
  • Carrington Flare
  • 放射線対策
  • スライド番号 86
  • スライド番号 87
  • 帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備
  • スライド番号 89
  • 放射線計測装置の原理
Page 25: 宇宙機の設計のための宇宙環境の方針から国産部品開発(42品種)が実施された。 . 半導体電子部品は耐放射線性を加味して、人工衛星(特に

変動パラメータの選択 (1 cycle solar activity)

太陽風速度(SW)

太陽黒点数(R)

Ap指数

F107

変動パラメータ- Tavg の定義-

1日後の予測

パラメータスケールの時間平均 ApTavg SWTavg F107 Tavg

T days

放射線帯の構造は変動パラメータ値の大きさと継続時間に相関がある

065MeV 電子 L値-Tavg マップ

APTavg

SWTavg

13MeV 陽子 L値-Tavg マップ

APTavg

F107Tavg

電子観測とMDS-1モデルの比較

80 175

放射線帯フラックスピークの変動

80orbits (平穏時) 175orbits (擾乱時)

陽子観測とモデルの比較

電子(035~078MeV) 1日の変動予測GOSAT軌道

0

50

100

150

200

250

1E+09

1E+10

1E+11

1E+12

1984 1986 1988 1990 1992 1994 1996 1998 2000 2002 2004 2006 2008

Flue

nce[

ecm

2M

eVd

ay]

Launch day

FluenceSSN

Worst case Nov 12003

電子(035~078MeV) 変動の信頼度水準(1日)GOSAT軌道

00

01

02

03

04

05

06

07

08

09

10

88 90 92 94 96 98 100 102 104 106 108 110 112 114

Con

fiden

ce le

vel

Fluence[LOG10 ecm2MeVday]

AE-8 MAX

AE-8 MIN

MDS-1 model と AE-8 model との比較1日

0

20

40

60

80

100

120

140

160

180

1E+09

1E+10

1E+11

1E+12

1995 1997 1999 2001 2003 2005 2007 2009

Flue

nce[

ecm

2M

eVd

ay]

Launch day

Fluence(JAXA)Fluence(AE8)SSN

話の流れ

技術データ取得装置(TEDA)の概要と成果 bull 主な成果 bull 不具合解析例

宇宙天気のリスクと対策 bull 宇宙環境による衛星システムへの影響 bull 宇宙環境を原因とする不具合の割合推移部位 bull 静止軌道不具合 bull 対策

今後必要な観測項目

まとめ

2003年10月 みどり号の全損事故 (複合現象)

極域のオーロラ帯を通過中に電力ハー

ネスを巻いているMLIが高エネルギー電

子により帯電

MLIが接地されていなかったため内側

のハーネスとの間に1kV以上の電位差が

発生

MLI内のガス密度が発電開始に伴う温度

上昇により上昇

ハーネス被覆の傷により露出したハーネ

ス芯線とMLI内面の間で放電発生

単発の放電が隣接するハーネスに飛び火

してハーネス間の短絡

アーク放電が次々と伝搬していきハー

ネス全体が焼損

故障推定箇所 (大電力ハーネス部)

bull詳細報告書は文部科学省 宇宙開発委員会のHP参照

httpwwwmextgojpb_menushingiuchuureports04080901htm

bull 人工衛星の電位 bull 人工衛星は電気的に宇宙に浮いている bull 宇宙機構造体が接地点 bull 宇宙機への流入電流と流出電流のバランスによって宇宙機電位が決まる bull 各電流成分は宇宙機電位Vの関数として表され定常状態では式を下式を満たす

衛星帯電の基本式

( ) dtIIIIIIIC

V

dtdVCVIVIVIVIVIVIVI

BPHBSESISEIE

BPHBSESISEIE

int +++++minus=

==+++++minus

1

0)]()()()()()([)(

入射電子電流 ( E I )

後方散乱電子電流 ( BSE I )

入射正イオン電流 ( I I )

入射電子による二次電子電流 ( SE I )

太陽光

入射正イオンによる 二次電子放出電流 ( SI I )

光電子放出電流( PH I )

電荷ビーム放出電流(IB)

bull内部帯電は衛星の外壁を貫通した放射線帯外帯の01MeV以上の電子が内部に侵入

bull基板間や同軸ケーブルの線間等の容量(コンデンサ)や誘電体に帯電 bull接地されてない導体片に帯電

bullその耐圧電圧を超えると その耐圧の弱い箇所 (材質の欠陥や針状突起など の箇所)で放電して故障に至る

内部帯電

(あるエネルギ-以上の粒子が入射光電子なし)

NASA-HDBK-4002より

パドルでの帯電放電メカニズム

宇宙環境の影響により 衛星がマイナス電位に帯電

高エネルギー電子等により カバーガラスはプラスに帯電 衛星とカバーガラスに電位差が生じる

電位差が大きくなると トリプルジャンクション近傍 の電界強度が増大していく

トリプルジャンクションで放電が発生する カバーガラスの帯電が緩和される

+ + + + + + + + + + + + + +

+ + + +

カバーガラス

太陽電池セル

基板(衛星構体)

トリプルジャンクション rArr 導体絶縁体宇宙環境の接点

持続放電

Substrate

Satellite Load

insulation sheet

Solar array cell

Cover glass

Arc current

Electrode

持続放電は衛星の電力消失につながる 持続放電のモードは以下の2通りがある

Substrate

Satellite Load

insulation sheet

Solar array cell

Cover glass

Arc current

Electrode

Solar array cell

Cover glass

セル-基板間短絡 セル間短絡

放電によって太陽電池セルと基板が短絡する 短絡によって負荷に電力が供給されなくなる

放電によって太陽電池セルとセルが短絡する 短絡によって負荷に電力が供給されなくなる

サブストーム(高エネルギー電子)との遭遇

+ + + + + + + +

二次電子光電子による絶縁体の帯電(局所帯電)

電位差発生

逆電位勾配

衛星構体が負に帯電(絶対帯電)

電位

時間

サブストーム

衛星構体 VS

乖離電圧 ∆V

カバーガラスVcg

0 プラズマ電位

軌道別帯電放電現象

トリプルジャンクションで 放電発生

放電発生

静止軌道

+ + + + + + + +

逆電位勾配

軌道帯電放電現象

トリプルジャンクションで 放電発生

極軌道 オーロラ電子(高エネルギー電子)との遭遇

プラズマ流入出による絶縁体の帯電(局所帯電)

電位差発生

衛星構体が負に帯電(絶対帯電)

放電発生

電位

時間

オーロラ電子

衛星構体 乖離電圧 ∆V

カバーガラス

0 プラズマ電位

データ中継技術衛星DRTS (こだま)の不具合

2002年10月 9日 静止軌道に打ち上げ

2003年

3月24日 406JST変化率異常モニタ故障検出(FDIR)

が動作しA系からB系に切り替わった

3月25日 410JSTにB系のみ異常検知

4月 3日 327JSTにB系のみ異常検知

5月28日 124JSTにB系のみ異常検知

6月 6日1537JSTにB系のみ異常検知

ESA

DRTS ESA スパイクノイズと 電子フルエンスの比較(赤の丸が異常検知)

larr閾値

この事実を基に静止軌道における内部帯電警報システムを構築 2004年4月より運用開始

不具合が宇宙環境によるものであるか 判断する際のポイント

不具合の発生した時刻に太陽フレアや磁気嵐等の宇宙天気の大きな変動が起きていれば不具合に関係している可能性が高い但し帯電など放射線の積算的効果の伴う現象については発生から1週間位さかのぼり環境がどのように推移してきたかを考慮する必要がある

磁気嵐が起きると静止軌道に急激な粒子の増加現象が起きこれにより衛星帯電が引き起こされたりする(予測に利用可能)

地方時(真夜中や朝方か)や季節(春秋)を考慮する

低軌道衛星においてはSAA外帯のrdquo角ldquo及び極通過時に不具合

が起きやすいので衛星の位置(緯度経度)が重要

事象を把握する上で単発現象か数回起きている現象か周期

(時間同じ軌道等)的に発生している現象か

話の流れ

技術データ取得装置(TEDA)の概要と成果 bull 主な成果 bull 不具合解析例

宇宙天気のリスクと対策 bull 宇宙環境による衛星システムへの影響 bull 宇宙環境を原因とする不具合の割合推移部位 bull 静止軌道不具合 bull 対策

今後必要な観測項目

まとめ

宇宙天気のリスク -宇宙環境によるシステムへの影響 -

プラズマ (IRI)

帯電 (MUSCAT)

衝突 (AUTODY)

抗力 表面劣化

紫外線X線 中性粒子 (MSIS)

放射線粒子 (AE8AP8JPLSHIELDO

SE-2)

メテオロイドデブリ (MASTER2005

ORDEM)

電離損傷 変位損傷

bull電子回路の劣化 bull光部品の劣化

bull太陽電池セルの劣化

SEU (CREME96)

bullデータエラー bull画像ノイズ

bullシステム停止 bull回路損傷

bull熱的電気的光学的特性の劣化

bull構造の劣化 bullコンタミ

電磁パルス bull電源出力低下

bull損傷

bullトルク bull軌道落下

bull構造 損傷 bull減圧

bull電磁パルス

NASAの報告 -GNampCに注目-

1974年から1994年に起きたNASAと空軍の衛星故障の内20~25が宇宙環境に起因していたと報告

1990年から2001年に米国欧州カナダ日本の企業や政府機関が開発した衛星を調べた過去の宇宙ミション損失の大部分はロケットの失敗であったが1998年衛星損失の大部分は軌道上の衛星障害となっている多くの最近の異常は太陽電池アレイ及びバッテリの危険が増加している静止軌道通信衛星の設計寿命はこのサブシステムの故障の危険が増加している

喪失等の大きな誘導制御(GNampC)の不具合に注目 GNampC不具合の内宇宙環境による 不具合は約3と報告されている

軌道上衛星のタイプ別数

NASAの報告(続き)

衛星設計寿命における不具合発生時期 事故率と軌道

軌道別の衛星数 サブシステム不具合

宇宙環境を原因とする不具合の割合 -JAXAの場合-

2002年~2008年に運用された軌道上不具合情報が比較的充実している11衛星(利用衛星7機科学衛星4機)の結果宇宙環境によるも

のは約15過去のデータよりも割合が少ない

合計83件 合計35件

(1)利用衛星 (2)科学衛星

設計検討 不足 48

製造不良 8

軌道上環境 17

偶発故障 6

調査中 13

原因不明 8

設計検討

不足 61

製造不良 4

軌道上環境 11

偶発故障 6

調査中 9

原因不明 9

不具合発生部位の割合

不具合発生部位の割合

Brent Robertson Eric Stoneking ( 1990-2001NASA Goddard Space Flight Center )

Satellite News Digest -静止軌道不具合-

Satellite News Digest (SND) (http wwwsqt-indexcouk) で1997年~2009年の期間に静止軌道で95件の不具合が報告されている その内運用ミスや設計ミスなどを除くと32件(約33)は宇宙環境によるものであった 過去のデータより割合が多い

Choiら1)はこれら不具合の地方時と季節依存性を確認した その結果2100LT~900LTで約72の不具合が発生し900LT~2100LTは9件(約28)であった またこの9件は全て姿勢制御の不具合だった 静止軌道衛星不具合のほとんどは真夜中と朝方で起きており磁気嵐に伴い磁気圏尾部から注入した粒子による表面帯電が不具合の主原因と結論づけている

1) Ho-sung Choi et al Analysis of GEO spacecraft anomalies Space weather relationships Space Weather Vol 9 S06001

太陽活動と静止軌道衛星不具合例

ANIK-E1E2

ANIK-E1

複数の衛星で故障

Galaxy-15

帯電放電不具合 -ANIK-E1amp2Telstar401-

Jan 1994 ANIK-E1 amp E2事故時の環境 - Joe H Allen

1週間

太陽活動下降時期の電子増加

2MeV以上電子

copyNOAA Web

フラックスが3桁急増

Jan 1997 Telstar401事故時の環境

静止軌道の急激な電子増加

太陽極大期太陽フレアによる衛星障害 - 2003年10月~11月-

10486981048698 永久故障 4 10486981048698 安全モード又は運用を一時停止 31 10486981048698 データ内容の「誤り」の増加搭載コンピュータの誤動作 5

httpwwwsat-ndcomfailures等のデータによる 合計 40件

-Barbieri and Mahmot

米国極軌道気象衛星NOAA-17の改良型マイクロ波観測装置AMSU-A1 (Advanced Microwave Sounding Unit)のスキャナーが永久故障 米国気象衛星GOES -8号のX線センサがOFFになり復帰しなくなった

e-birdに深刻な不具合が発生 不具合は20本のトランスポンダ全てに影響

火星周回中の探査機「マーズオデッセイ (Mars Odyssey)」の観測機器放射線観測装置「Martian Radiation Environment Experiment (MARIE)」が太陽活動の影響により10月28日から適切に作動しなくなった データ中継技術衛星(DRTS)「こだま」 太陽捕捉モードに移行

太陽陽子

帯電放電不具合-Galaxy15(局所的的現象)- 2

5 M

eV

65

MeV

11

5 M

eV

GOES 14 ----- GOES 15 ----- GOES 11 -----

Satellite Locations

Galaxy 15 anomaly

2010年4月5日9時48分UTCは磁気嵐及びCMEが発生するなど宇宙環境は非常に荒れていたGalaxy15衛星は真夜中側に位置し宇宙環境の影響を受けやすい

位置にいたことから宇宙環境による不具合である可能性が高いということで原因追及がなされた高エネルギー粒子が引き起こす代表的な衛星不具合現象として3つ(表面帯電内部帯電SEUシングルイベントバーンアウトSEL)の可能性を検討した

チームの報告書によると磁気圏尾部からの熱電子の流入による放電が原因であったと結論付けられたGalaxy15衛星の近くにはGOES-11衛星が位置していたがGOES-11衛星には不具合を発生しておらず本現象は局所的な現象と推測される

衛星開発段階における対策 JAXAの不具合解析の結論

bull 2002年~2008年に運用された11機の衛星不具合を解析 宇宙環境による不具合は偶発故障のみ(全体の約15)確率的には想定範囲内ではあるがその影響を最小限とするためディレーティング運用モード寿命についての研究に取り組む

bull 設計基準試験の充実検証確認の強化技術成熟度(TRL)評価の徹底各々の境界制約条件の明示化等により検証不足抜けの防止有効なピアレビューに結びつける

冗長系(同じハードウェア機能の冗長)柔軟性の設計(ソフトハードの対応)

bull 従来の故障が起きないようにする設計に対してGOSAT(いぶき)では重要部

品を二重化することにより故障する可能性は上がるが故障しても衛星バスの運用や観測が続行できる可能性がより高くなるように設計した

運用における対応

bull 宇宙天気監視ーロケット打ち上げ及び宇宙飛行士支援 数日前に今後の宇宙環境の推移を把握(MXレベルのフレアの発生確率)

bull X線の増加で太陽フレア発生を検知したら高エネルギー粒子の発生をいつまで 気を付ければ良いか判断(発生位置で大凡を推定するが課題は多い) SPEが発生した場合(特に10MeV以上100MeV 以上の陽

子)最大値フラックス値の推定 ピーク値を予測(特に閾値に近くなった時に重要)

bull 衛星運用 bull 太陽フレア磁気嵐警報(X線陽子及びkpが閾値を超えた

時に警報を発信)2003年10月より運用開始 bull 内部帯電警報(2日後の静止軌道上の高エネルギー電子(>1

Me) の増加を予測し 閾値を超えた時に警報を発信) 2004年4月より運用開始

話の流れ

技術データ取得装置(TEDA)の概要と成果 bull 主な成果 bull 不具合解析例

宇宙天気のリスクと対策 bull 宇宙環境による衛星システムへの影響 bull 宇宙環境を原因とする不具合の割合推移部位 bull 静止軌道不具合 bull 対策

今後必要な観測項目

まとめ

計測対象計測項目 計測対象 粒径100μm以上のデブリメテオロイド 計測項目 デブリ粒径衝突頻度

基本原理

厚さ約125μmの絶縁性のポリイミドフィルム表面に 100μm周期で直線状の細長い導線(太さ50μm)パターンを形成導線の破断を電気的に検知することによりデブリの衝突(貫通)を検知する破断した導線の数導線の幅ピッチからデブリサイズを計測する

微小デブリ計測技術の概要

衝突孔の例(衝突試験ISAS) - 衝突粒子 SUS 309 microm - 衝突速度 52 kms

HTV5号機によるセンサ機能のフライト実証

35cm

46cm

FY2013機能実証モデル

検出線幅 50 μm 検出線間隔 100 μm フィルム厚 lt 20 μm 有感領域 30times33cm 検出線総数 3300本

サイズ 50times39times4 cm (筐体を含む)

重量 約15kg(筐体を含む)

消費電力 2W(最大4W)(他センサ含む)

テレメトリ 02 bps

宇宙環境観測装置KASPERの一部としてデブリセンサSDMを搭載 FY2013に製作開始今年8月に打ち上げ予定)

まとめ(その1)

衛星不具合の主な原因は帯電放電シングルイベント放射線損傷である今後デブリ環境が重要になると予測される

静止軌道では商用衛星が多く運用されており宇宙環境の変動把握は重要この領域で運用する衛星が気を付けなければいけない環境として

1太陽フレアに伴う高エネルギー粒子 2太陽活動下降期による静止軌道電子の増加 3磁気嵐に伴う磁気圏尾部から注入する粒子 などがあげられる

まとめ(その2)

不具合軽減の取り組み bull 開発時は宇宙環境条件(トータルフラックス及び最悪条

件)を明確にし設計(冗長系柔軟性の設計ディレーティング及び運用モード寿命について研究)試験の充実検証の充実を図る

bull 運用段階に入ったならば宇宙環境を監視し警報等で故障を防ぐ

予測課題 bull 太陽フレアに伴う高エネルギー粒子発生後フラックス

ピーク値の推定

bull 衛星により不具合の起きる閾値は異なるが閾値をこえる急激な電子フラックスの増加と継続時間の予測

bull 局所的な磁気嵐に伴う磁気圏尾部から注入する粒子

宇宙環境グループは宇宙ステーションと衛星プロジェクトの安全な遂行に貢献しています

ご静聴ありがとうございました

補足資料

不具合原因の推移 bull 宇宙天気を大きく左右する要因の1つとして約11年の太陽活動変化が挙げられる

bull 太陽活動下降時期(太陽変動CME)と極大期(フレアCME)に衛星で不具合が増加するそれにより不具合原因の割合が変わる

-Koons et al The Impact of the Space Environment on Space Systems Aerospace Corp report no TR-99(1670)-1 20 July 1999 -2009 preliminary study (unpublished)

何故不具合は減らないか

bull 部品 放射線に対する感受性が高くなっている bull 微細化が進み同時にフォールトするノードが増え同時にエ

ラーとなる論理ノードやメモリセルが増加する微細化によってメモリセルは小さくなるので記憶容量当たりでみるとエラーの発生率は下がるしかし半導体チップの記憶容量やゲート数が増えるので半導体チップ当たりのエラー発生率は微細化とともに上昇するまた蓄積電荷が小さくなり感受性が高くなってきている

bull システム 大型化大電力化運用長期化 bull 1990年代末以降静止衛星の電力が10kWレベルになったしか

し設計検証技術データ蓄積が遅れている改善されつつあると推測される

放射線による影響の概要

粒子 エネルギー又はLET

代表的な影響

陽子 100keV-1MeV 1-10MeV 10-100MeV gt50MeV

表面損傷 表面材料と太陽電池の損傷 放射線損傷(電離非電離損傷の両方)センサーへのノイズ シングルイベント効果

電子 10-100keV gt100keV gt1MeV

表面帯電 深部帯電現象(deep-dielectric charging)センサーへのノイズ太陽電池の損傷 放射線損傷(電離)

重イオン gt1MeV-cm2mg シングルイベント効果

注エネルギー及びLETは個々の部品等により異なりますあくまでも目安です

耐放射線設計手順

軌道条件

ミッション期間

環境条件設定

トータルドーズの予測

1MeV電子換算被曝算出

NIELの換算

LETフルエンス算出

陽子フルエンス算出

対  策  の  検  討

対  策  の  検  討

対  策  の  検  討

放射線による劣化率予測

劣化率予測 特性予測

耐性データ

放射線による劣化率予測

耐性データ

劣化率予測アレイ出力劣化予測

感受性データ

シングルイベント発生率予測 致命度解析

衛星内質量分布

(2)

部品材料の選定

他の要因による劣化率予測

(2)(2) (3)

回路設計等NO

OK

アレイ構造 セル選定

他の要因による劣化率予測 アレイ設計(2)

(2) (2) (2) (3)

衛星内質量分布 部品選定(2)

(2) (2)(3)

NO

OK

NO

OK

(1) 環境モデルマージを含む(2) 部品レベルの検討(3) アセンブリレベルでの検討(4) 設計マージン環境モデル   マージを含め大丈夫か

トータルドーズ

太陽電池アレイの劣化

シングルイベント効果

回路設計

補足放射線太陽宇宙線銀河宇宙線

NEILを用いたダメージファクターの算出

対  策  の  検  討

放射線による劣化率予測

劣化率予測 特性予測

耐性データ

(2)

部品材料の選定

他の要因による劣化率予測

(2)(2) (3)

回路設計等NO

OK

衛星内質量分布 半導体デバイスの変位損傷

(1)

(4)

(4)

(4)

(4)

各軌道における放射線環境

1E+10

1E+11

1E+12

1E+13

1E+14

1E+15

1E+16

1E+17

1E+18

1E+19

1E+20

001 010 100 1000

捕捉

電子

の積

分フ

ルエ

ンス

[m

2 ]

エネルギー[MeV]

各軌道における電子捕捉積分フルエンス(3年間)

LEO

EOS GEO

MEO

GTO

GEO 軌道傾斜角 0deg 高度36000km GTO 軌道傾斜角 18deg 高度 360km~36000km MEO 軌道傾斜角 51deg 高度 10000km EOS 軌道傾斜角 98deg 高度705km LEO 軌道傾斜角 29deg 高度 600km

1E+12

1E+13

1E+14

1E+15

1E+16

1E+17

1E+18

1E+19

1E+20

01 10 100 1000

捕捉

陽子の

積分フルエン

ス[

m2 ]

エネルギー[MeV]

各軌道における捕捉陽子積分フルエンス(3年間)

MEO

GTO

GEO

EOS LEO

放射線による部品材料の影響

総照射線量 (TIDTotal Ionising Dose )

電離損傷

バイポーラTrの電流増幅率の低下リーク電流の増大

γ線で評価

トータルドーズ効果

変位損傷 (DDDisplacement Damage )または 非イオン化エネルギー損失 (NIELNon-Ionising Energy

Loss )

変位損傷(格子欠陥の生成)

電荷輸送効率の低下 (CCD)太陽電池の効率低下等

電子陽子により評価

シングルイベント効果

1個の荷電粒子の入射により発生する誤動作

ソフト(Latch-Up Burnout) エラー又は ソフト (Upset) エラー

陽子及び重イオンで評価

トータルドーズ効果

+ - + + - + - + - - + + + + -

ゲート酸化膜

電離

格子欠陥

正電荷捕獲

+ 正孔 - 電子

電極

(Silicon oxidenitride)

荷電粒子

反跳原子

ゲート絶縁膜中に電荷が蓄積することによるMOSトランジスタのしきい電圧(MOSトランジスタがオフからオンに変化するゲート電圧)の変化をもたらすただ

し最近の最先端チップはゲート絶縁膜がきわめて薄くなっているこのためゲート絶縁膜よりもフィールド絶縁膜(隣接するトランジスタを電気的に分離する絶縁膜)での電荷蓄積が相対的には大きな問題になってきている」

シングルイベント効果

メモリセルはNチャンネルとPチャンネルMOSFETより構成されメモリ情報は回路ノード12の電位の

高低により記録している空乏層の広がっているPN接合12の領域に

重イオンが入射した場合電荷の発生と空乏層内への少数キャリアの収集が起こるこの収集電荷量が回路の耐量を越えた場合(c)に示すように反転が起こる(ソフトエラー)一方pウエル-N基板接

合の空乏層内に電荷収集量が起こりえる耐性を越えると寄生的に存在するPNPNサイリスタ構造がオ

ンし電源と基板間に大電流が流れる状態が生じる(ラッチアップ)

シングルイベントメカニズム -陽子と重イオンの違い-

エラー発生率の計算

線エネルギー付与(LET) (linear energy transfer)

電離性放射線が物質中を通過する際飛程の単位長さ当りに平均して失うエネルギーをいう各種の放射線のうちX線γ線はLETが小さいので低LETといいα線中性子線その他重イオン核分裂破片のLETは大きいので高LETという MeVμmMeV(gcm2)やMeV(mgcm2)で表される

南大西洋異常(SAA) bull 地球の自転軸と磁気軸のずれ

darr bull 放射線帯が自転軸に対して非

対称

bull 南大西洋上空では放射線帯内帯が低高度に落ちてきているこの領域を南大西洋異常域(SAA South Atlantic Anomaly)と呼ぶ

bull 地球観測衛星ではSAAで放射線帯陽子の影響を受ける

Single Event Lachup

シングルイベントと陽子分布

MOS-1衛星(高度909km軌道傾斜角99度)で発生したシングルイベントと 陽子30MeV以上の等高線マップを重ね合わせた結果

NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)

bull 入射粒子が電離によらず与える損傷非イオン化損失

低軌道での電子フラックスと 不具合の発生場所

南大西洋異常(SAA)と極の角

高度800kmでの電子フラックス図極の角(polar horn)とSAAを示す

太陽粒子線 bull 太陽高エネルギー粒子線(SPE Solar Proton Events)は太陽フレア とコロナガス噴出 (CMECoronal Mass Ejections )により引き起こされる bull フレアのスペクトルは可変であるためあるエネルギー域における最悪状態イベントは必ずしも別のエネルギー域における最悪条件ではない 1972年8月のイベント 10~70MeVの粒子が最も多かった 1989年10のイベント 1972年8月のイベントに比べ低エネルギー領域 高エネルギー領域が明らかに激しかった

フルエンス 105 to 1011 cm-2

変動期間 1日から数日

ldquoBastiliardquo Solar Event 14 July 2000

Carrington Flare

84

(LW Townseed) Carrington Flare(1859年) Carrington Flare による30MeV以上トータルFluenceを118times109cm-2で規格化 ~1989年フレアの約13倍(シングルイベントの評価で使用) ~1991年フレアの約9倍 2012年7月23日にキャリントンイベントとほぼ同等の爆発現象が太陽あるいは太陽の周りで起きていたということがNASAの太陽観測衛星「STEREO」の解析から発表された

放射線対策 bull 放射線シールドを付加し放射線を減衰させる

bull 放射線耐性の強い部品(SOI(Silicon On Insulator)技術による耐放射線部品)材料に変更する

bull 放射線による損傷を吸収するために回路または構造上のマージンを持たせる bull ソフト的なエラーに対しては エラー検出訂正機能や多数決

機能等でソフト的エラーが起きてもシステムが機能するようにしたフォールトトレラント機能を付けて対処する ICのハード的故障に対しては ラッチアップ耐性の強い部品を選定するしかないが 電流制限回路を付ける対策も採られる パワーMOSFETに対しては部品選定 電源電圧を規格値の半分以下に落とす等の対策を採る

SOI技術

表面帯電への対策例

表面の物体間を導線で結線する

太陽電池のカバーガラスを導電性被膜付き(酸化インジウムITO)にする

熱制御材表面にITOを被覆する

熱制御材は高誘電率のテフロンの使用を避け 高伝導度耐環境性に優れたブラックカプトンを使用

イオンエンジンの中和器で能動帯電制御

内部帯電への対策例

アルミで3mm厚さに相当するシールドで囲む(Faraday Cage)

テフロンやカプトンなどの誘電体材料の内部での使用量を最小限に押さえる

回路基板やコンフォーマルコーティングは誘電体なので電流リークパス(1012Ωcmまたは1012Ωcm2

程度)を必ずつける

特にスポット的な放射線シールドの金属材には必ず電流リークパスをつける

帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備

衛星モデル作成

材料物性テーブル設定

宇宙環境パラメータ設定

Converter

転送ディレクトリ 解析データファイル

転送

解析ディレクトリ生成 解析結果 進行状況チェック ファイル操作

MUSCAT 解析エンジン

解析結果 表示

パラメトリックラン

オプション 解析

大型パネル実験(35mtimes11m) クーポンパネル実験(26cmtimes16cm)

環境模擬試験 環境模擬試験

MUSCATに使用する物性値設計標準制定のための知見などを得ることを目的に軌道上の宇宙環境を模擬した地上試験を行っている これらの試験では放電の発生頻度や電圧閾値放電発生による太陽電池パネルや搭載機器への影響を検証している

放射線計測装置の原理

bull その粒子が物質を通過する際のエネルギー損出率が粒子の電荷(原子番号)Zの二乗に比例すること(Bethe-Blochの式)を利用する

S2

E

ΔE Ersquo

S1 S3

  • 宇宙機の設計のための宇宙環境
  • 話の流れ
  • 話の流れ
  • TEDA(技術データ取得装置)(国産部品の宇宙環境での実証の必要性)
  • ETS-VTEDA(技術データ取得装置)誕生前の部品の宇宙実証の背景
  • スライド番号 6
  • スライド番号 7
  • スライド番号 8
  • スライド番号 9
  • 図6太陽黒点数と静止軌道電子 (>04MeV ) Flux の変動 (ETS-V搭載DOMによる観測)
  • スライド番号 11
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの開発(理研東大と共同で宇宙環境計測の充実)
  • ETS-VI(きく6号)打ち上がったがGEOに行かずGTOに留まる
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの成果
  • スライド番号 15
  • スライド番号 16
  • スライド番号 17
  • ADEOS搭載TEDA(世界2番目の異常宇宙線ACR)
  • BBND (ボナー球中性子検出器)
  • スライド番号 20
  • ISS搭載BBNDの成果(約8か月)
  • スライド番号 22
  • MDS-1搭載放射線吸収線量モニタ(SDOM)
  • 放射線帯変動モデルの開発MDS-1 065 MeV 電子フラックス
  • 変動パラメータの選択 (1 cycle solar activity)
  • 変動パラメータ- Tavg の定義-
  • 065MeV 電子 L値-Tavg マップ
  • 13MeV 陽子 L値-Tavg マップ
  • 電子観測とMDS-1モデルの比較
  • 放射線帯フラックスピークの変動
  • 陽子観測とモデルの比較
  • 電子(035~078MeV) 1日の変動予測GOSAT軌道
  • 電子(035~078MeV) 変動の信頼度水準(1日)GOSAT軌道
  • MDS-1 model と AE-8 modelとの比較1日
  • 話の流れ
  • 2003年10月 みどり号の全損事故(複合現象)
  • 衛星帯電の基本式
  • 内部帯電
  • パドルでの帯電放電メカニズム
  • スライド番号 40
  • スライド番号 41
  • スライド番号 42
  • データ中継技術衛星DRTS (こだま)の不具合
  • DRTS ESA スパイクノイズと電子フルエンスの比較(赤の丸が異常検知)
  • 不具合が宇宙環境によるものであるか判断する際のポイント
  • 話の流れ
  • 宇宙天気のリスク-宇宙環境によるシステムへの影響 -
  • NASAの報告-GNampCに注目-
  • NASAの報告(続き)
  • 宇宙環境を原因とする不具合の割合-JAXAの場合-
  • 不具合発生部位の割合 
  • Satellite News Digest -静止軌道不具合-
  • 太陽活動と静止軌道衛星不具合例
  • スライド番号 54
  • スライド番号 55
  • スライド番号 56
  • 衛星開発段階における対策
  • 運用における対応
  • 話の流れ
  • スライド番号 60
  • スライド番号 61
  • まとめ(その1)
  • まとめ(その2)
  • 宇宙環境グループは宇宙ステーションと衛星プロジェクトの安全な遂行に貢献しています
  • 補足資料
  • 不具合原因の推移
  • 何故不具合は減らないか
  • 放射線による影響の概要
  • 耐放射線設計手順
  • 各軌道における放射線環境
  • 放射線による部品材料の影響
  • トータルドーズ効果
  • シングルイベント効果
  • シングルイベントメカニズム-陽子と重イオンの違い-
  • エラー発生率の計算
  • 線エネルギー付与(LET)(linear energy transfer)
  • 南大西洋異常(SAA)
  • Single Event Lachup
  • シングルイベントと陽子分布
  • NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)
  • 低軌道での電子フラックスと不具合の発生場所
  • 南大西洋異常(SAA)と極の角
  • スライド番号 83
  • Carrington Flare
  • 放射線対策
  • スライド番号 86
  • スライド番号 87
  • 帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備
  • スライド番号 89
  • 放射線計測装置の原理
Page 26: 宇宙機の設計のための宇宙環境の方針から国産部品開発(42品種)が実施された。 . 半導体電子部品は耐放射線性を加味して、人工衛星(特に

変動パラメータ- Tavg の定義-

1日後の予測

パラメータスケールの時間平均 ApTavg SWTavg F107 Tavg

T days

放射線帯の構造は変動パラメータ値の大きさと継続時間に相関がある

065MeV 電子 L値-Tavg マップ

APTavg

SWTavg

13MeV 陽子 L値-Tavg マップ

APTavg

F107Tavg

電子観測とMDS-1モデルの比較

80 175

放射線帯フラックスピークの変動

80orbits (平穏時) 175orbits (擾乱時)

陽子観測とモデルの比較

電子(035~078MeV) 1日の変動予測GOSAT軌道

0

50

100

150

200

250

1E+09

1E+10

1E+11

1E+12

1984 1986 1988 1990 1992 1994 1996 1998 2000 2002 2004 2006 2008

Flue

nce[

ecm

2M

eVd

ay]

Launch day

FluenceSSN

Worst case Nov 12003

電子(035~078MeV) 変動の信頼度水準(1日)GOSAT軌道

00

01

02

03

04

05

06

07

08

09

10

88 90 92 94 96 98 100 102 104 106 108 110 112 114

Con

fiden

ce le

vel

Fluence[LOG10 ecm2MeVday]

AE-8 MAX

AE-8 MIN

MDS-1 model と AE-8 model との比較1日

0

20

40

60

80

100

120

140

160

180

1E+09

1E+10

1E+11

1E+12

1995 1997 1999 2001 2003 2005 2007 2009

Flue

nce[

ecm

2M

eVd

ay]

Launch day

Fluence(JAXA)Fluence(AE8)SSN

話の流れ

技術データ取得装置(TEDA)の概要と成果 bull 主な成果 bull 不具合解析例

宇宙天気のリスクと対策 bull 宇宙環境による衛星システムへの影響 bull 宇宙環境を原因とする不具合の割合推移部位 bull 静止軌道不具合 bull 対策

今後必要な観測項目

まとめ

2003年10月 みどり号の全損事故 (複合現象)

極域のオーロラ帯を通過中に電力ハー

ネスを巻いているMLIが高エネルギー電

子により帯電

MLIが接地されていなかったため内側

のハーネスとの間に1kV以上の電位差が

発生

MLI内のガス密度が発電開始に伴う温度

上昇により上昇

ハーネス被覆の傷により露出したハーネ

ス芯線とMLI内面の間で放電発生

単発の放電が隣接するハーネスに飛び火

してハーネス間の短絡

アーク放電が次々と伝搬していきハー

ネス全体が焼損

故障推定箇所 (大電力ハーネス部)

bull詳細報告書は文部科学省 宇宙開発委員会のHP参照

httpwwwmextgojpb_menushingiuchuureports04080901htm

bull 人工衛星の電位 bull 人工衛星は電気的に宇宙に浮いている bull 宇宙機構造体が接地点 bull 宇宙機への流入電流と流出電流のバランスによって宇宙機電位が決まる bull 各電流成分は宇宙機電位Vの関数として表され定常状態では式を下式を満たす

衛星帯電の基本式

( ) dtIIIIIIIC

V

dtdVCVIVIVIVIVIVIVI

BPHBSESISEIE

BPHBSESISEIE

int +++++minus=

==+++++minus

1

0)]()()()()()([)(

入射電子電流 ( E I )

後方散乱電子電流 ( BSE I )

入射正イオン電流 ( I I )

入射電子による二次電子電流 ( SE I )

太陽光

入射正イオンによる 二次電子放出電流 ( SI I )

光電子放出電流( PH I )

電荷ビーム放出電流(IB)

bull内部帯電は衛星の外壁を貫通した放射線帯外帯の01MeV以上の電子が内部に侵入

bull基板間や同軸ケーブルの線間等の容量(コンデンサ)や誘電体に帯電 bull接地されてない導体片に帯電

bullその耐圧電圧を超えると その耐圧の弱い箇所 (材質の欠陥や針状突起など の箇所)で放電して故障に至る

内部帯電

(あるエネルギ-以上の粒子が入射光電子なし)

NASA-HDBK-4002より

パドルでの帯電放電メカニズム

宇宙環境の影響により 衛星がマイナス電位に帯電

高エネルギー電子等により カバーガラスはプラスに帯電 衛星とカバーガラスに電位差が生じる

電位差が大きくなると トリプルジャンクション近傍 の電界強度が増大していく

トリプルジャンクションで放電が発生する カバーガラスの帯電が緩和される

+ + + + + + + + + + + + + +

+ + + +

カバーガラス

太陽電池セル

基板(衛星構体)

トリプルジャンクション rArr 導体絶縁体宇宙環境の接点

持続放電

Substrate

Satellite Load

insulation sheet

Solar array cell

Cover glass

Arc current

Electrode

持続放電は衛星の電力消失につながる 持続放電のモードは以下の2通りがある

Substrate

Satellite Load

insulation sheet

Solar array cell

Cover glass

Arc current

Electrode

Solar array cell

Cover glass

セル-基板間短絡 セル間短絡

放電によって太陽電池セルと基板が短絡する 短絡によって負荷に電力が供給されなくなる

放電によって太陽電池セルとセルが短絡する 短絡によって負荷に電力が供給されなくなる

サブストーム(高エネルギー電子)との遭遇

+ + + + + + + +

二次電子光電子による絶縁体の帯電(局所帯電)

電位差発生

逆電位勾配

衛星構体が負に帯電(絶対帯電)

電位

時間

サブストーム

衛星構体 VS

乖離電圧 ∆V

カバーガラスVcg

0 プラズマ電位

軌道別帯電放電現象

トリプルジャンクションで 放電発生

放電発生

静止軌道

+ + + + + + + +

逆電位勾配

軌道帯電放電現象

トリプルジャンクションで 放電発生

極軌道 オーロラ電子(高エネルギー電子)との遭遇

プラズマ流入出による絶縁体の帯電(局所帯電)

電位差発生

衛星構体が負に帯電(絶対帯電)

放電発生

電位

時間

オーロラ電子

衛星構体 乖離電圧 ∆V

カバーガラス

0 プラズマ電位

データ中継技術衛星DRTS (こだま)の不具合

2002年10月 9日 静止軌道に打ち上げ

2003年

3月24日 406JST変化率異常モニタ故障検出(FDIR)

が動作しA系からB系に切り替わった

3月25日 410JSTにB系のみ異常検知

4月 3日 327JSTにB系のみ異常検知

5月28日 124JSTにB系のみ異常検知

6月 6日1537JSTにB系のみ異常検知

ESA

DRTS ESA スパイクノイズと 電子フルエンスの比較(赤の丸が異常検知)

larr閾値

この事実を基に静止軌道における内部帯電警報システムを構築 2004年4月より運用開始

不具合が宇宙環境によるものであるか 判断する際のポイント

不具合の発生した時刻に太陽フレアや磁気嵐等の宇宙天気の大きな変動が起きていれば不具合に関係している可能性が高い但し帯電など放射線の積算的効果の伴う現象については発生から1週間位さかのぼり環境がどのように推移してきたかを考慮する必要がある

磁気嵐が起きると静止軌道に急激な粒子の増加現象が起きこれにより衛星帯電が引き起こされたりする(予測に利用可能)

地方時(真夜中や朝方か)や季節(春秋)を考慮する

低軌道衛星においてはSAA外帯のrdquo角ldquo及び極通過時に不具合

が起きやすいので衛星の位置(緯度経度)が重要

事象を把握する上で単発現象か数回起きている現象か周期

(時間同じ軌道等)的に発生している現象か

話の流れ

技術データ取得装置(TEDA)の概要と成果 bull 主な成果 bull 不具合解析例

宇宙天気のリスクと対策 bull 宇宙環境による衛星システムへの影響 bull 宇宙環境を原因とする不具合の割合推移部位 bull 静止軌道不具合 bull 対策

今後必要な観測項目

まとめ

宇宙天気のリスク -宇宙環境によるシステムへの影響 -

プラズマ (IRI)

帯電 (MUSCAT)

衝突 (AUTODY)

抗力 表面劣化

紫外線X線 中性粒子 (MSIS)

放射線粒子 (AE8AP8JPLSHIELDO

SE-2)

メテオロイドデブリ (MASTER2005

ORDEM)

電離損傷 変位損傷

bull電子回路の劣化 bull光部品の劣化

bull太陽電池セルの劣化

SEU (CREME96)

bullデータエラー bull画像ノイズ

bullシステム停止 bull回路損傷

bull熱的電気的光学的特性の劣化

bull構造の劣化 bullコンタミ

電磁パルス bull電源出力低下

bull損傷

bullトルク bull軌道落下

bull構造 損傷 bull減圧

bull電磁パルス

NASAの報告 -GNampCに注目-

1974年から1994年に起きたNASAと空軍の衛星故障の内20~25が宇宙環境に起因していたと報告

1990年から2001年に米国欧州カナダ日本の企業や政府機関が開発した衛星を調べた過去の宇宙ミション損失の大部分はロケットの失敗であったが1998年衛星損失の大部分は軌道上の衛星障害となっている多くの最近の異常は太陽電池アレイ及びバッテリの危険が増加している静止軌道通信衛星の設計寿命はこのサブシステムの故障の危険が増加している

喪失等の大きな誘導制御(GNampC)の不具合に注目 GNampC不具合の内宇宙環境による 不具合は約3と報告されている

軌道上衛星のタイプ別数

NASAの報告(続き)

衛星設計寿命における不具合発生時期 事故率と軌道

軌道別の衛星数 サブシステム不具合

宇宙環境を原因とする不具合の割合 -JAXAの場合-

2002年~2008年に運用された軌道上不具合情報が比較的充実している11衛星(利用衛星7機科学衛星4機)の結果宇宙環境によるも

のは約15過去のデータよりも割合が少ない

合計83件 合計35件

(1)利用衛星 (2)科学衛星

設計検討 不足 48

製造不良 8

軌道上環境 17

偶発故障 6

調査中 13

原因不明 8

設計検討

不足 61

製造不良 4

軌道上環境 11

偶発故障 6

調査中 9

原因不明 9

不具合発生部位の割合

不具合発生部位の割合

Brent Robertson Eric Stoneking ( 1990-2001NASA Goddard Space Flight Center )

Satellite News Digest -静止軌道不具合-

Satellite News Digest (SND) (http wwwsqt-indexcouk) で1997年~2009年の期間に静止軌道で95件の不具合が報告されている その内運用ミスや設計ミスなどを除くと32件(約33)は宇宙環境によるものであった 過去のデータより割合が多い

Choiら1)はこれら不具合の地方時と季節依存性を確認した その結果2100LT~900LTで約72の不具合が発生し900LT~2100LTは9件(約28)であった またこの9件は全て姿勢制御の不具合だった 静止軌道衛星不具合のほとんどは真夜中と朝方で起きており磁気嵐に伴い磁気圏尾部から注入した粒子による表面帯電が不具合の主原因と結論づけている

1) Ho-sung Choi et al Analysis of GEO spacecraft anomalies Space weather relationships Space Weather Vol 9 S06001

太陽活動と静止軌道衛星不具合例

ANIK-E1E2

ANIK-E1

複数の衛星で故障

Galaxy-15

帯電放電不具合 -ANIK-E1amp2Telstar401-

Jan 1994 ANIK-E1 amp E2事故時の環境 - Joe H Allen

1週間

太陽活動下降時期の電子増加

2MeV以上電子

copyNOAA Web

フラックスが3桁急増

Jan 1997 Telstar401事故時の環境

静止軌道の急激な電子増加

太陽極大期太陽フレアによる衛星障害 - 2003年10月~11月-

10486981048698 永久故障 4 10486981048698 安全モード又は運用を一時停止 31 10486981048698 データ内容の「誤り」の増加搭載コンピュータの誤動作 5

httpwwwsat-ndcomfailures等のデータによる 合計 40件

-Barbieri and Mahmot

米国極軌道気象衛星NOAA-17の改良型マイクロ波観測装置AMSU-A1 (Advanced Microwave Sounding Unit)のスキャナーが永久故障 米国気象衛星GOES -8号のX線センサがOFFになり復帰しなくなった

e-birdに深刻な不具合が発生 不具合は20本のトランスポンダ全てに影響

火星周回中の探査機「マーズオデッセイ (Mars Odyssey)」の観測機器放射線観測装置「Martian Radiation Environment Experiment (MARIE)」が太陽活動の影響により10月28日から適切に作動しなくなった データ中継技術衛星(DRTS)「こだま」 太陽捕捉モードに移行

太陽陽子

帯電放電不具合-Galaxy15(局所的的現象)- 2

5 M

eV

65

MeV

11

5 M

eV

GOES 14 ----- GOES 15 ----- GOES 11 -----

Satellite Locations

Galaxy 15 anomaly

2010年4月5日9時48分UTCは磁気嵐及びCMEが発生するなど宇宙環境は非常に荒れていたGalaxy15衛星は真夜中側に位置し宇宙環境の影響を受けやすい

位置にいたことから宇宙環境による不具合である可能性が高いということで原因追及がなされた高エネルギー粒子が引き起こす代表的な衛星不具合現象として3つ(表面帯電内部帯電SEUシングルイベントバーンアウトSEL)の可能性を検討した

チームの報告書によると磁気圏尾部からの熱電子の流入による放電が原因であったと結論付けられたGalaxy15衛星の近くにはGOES-11衛星が位置していたがGOES-11衛星には不具合を発生しておらず本現象は局所的な現象と推測される

衛星開発段階における対策 JAXAの不具合解析の結論

bull 2002年~2008年に運用された11機の衛星不具合を解析 宇宙環境による不具合は偶発故障のみ(全体の約15)確率的には想定範囲内ではあるがその影響を最小限とするためディレーティング運用モード寿命についての研究に取り組む

bull 設計基準試験の充実検証確認の強化技術成熟度(TRL)評価の徹底各々の境界制約条件の明示化等により検証不足抜けの防止有効なピアレビューに結びつける

冗長系(同じハードウェア機能の冗長)柔軟性の設計(ソフトハードの対応)

bull 従来の故障が起きないようにする設計に対してGOSAT(いぶき)では重要部

品を二重化することにより故障する可能性は上がるが故障しても衛星バスの運用や観測が続行できる可能性がより高くなるように設計した

運用における対応

bull 宇宙天気監視ーロケット打ち上げ及び宇宙飛行士支援 数日前に今後の宇宙環境の推移を把握(MXレベルのフレアの発生確率)

bull X線の増加で太陽フレア発生を検知したら高エネルギー粒子の発生をいつまで 気を付ければ良いか判断(発生位置で大凡を推定するが課題は多い) SPEが発生した場合(特に10MeV以上100MeV 以上の陽

子)最大値フラックス値の推定 ピーク値を予測(特に閾値に近くなった時に重要)

bull 衛星運用 bull 太陽フレア磁気嵐警報(X線陽子及びkpが閾値を超えた

時に警報を発信)2003年10月より運用開始 bull 内部帯電警報(2日後の静止軌道上の高エネルギー電子(>1

Me) の増加を予測し 閾値を超えた時に警報を発信) 2004年4月より運用開始

話の流れ

技術データ取得装置(TEDA)の概要と成果 bull 主な成果 bull 不具合解析例

宇宙天気のリスクと対策 bull 宇宙環境による衛星システムへの影響 bull 宇宙環境を原因とする不具合の割合推移部位 bull 静止軌道不具合 bull 対策

今後必要な観測項目

まとめ

計測対象計測項目 計測対象 粒径100μm以上のデブリメテオロイド 計測項目 デブリ粒径衝突頻度

基本原理

厚さ約125μmの絶縁性のポリイミドフィルム表面に 100μm周期で直線状の細長い導線(太さ50μm)パターンを形成導線の破断を電気的に検知することによりデブリの衝突(貫通)を検知する破断した導線の数導線の幅ピッチからデブリサイズを計測する

微小デブリ計測技術の概要

衝突孔の例(衝突試験ISAS) - 衝突粒子 SUS 309 microm - 衝突速度 52 kms

HTV5号機によるセンサ機能のフライト実証

35cm

46cm

FY2013機能実証モデル

検出線幅 50 μm 検出線間隔 100 μm フィルム厚 lt 20 μm 有感領域 30times33cm 検出線総数 3300本

サイズ 50times39times4 cm (筐体を含む)

重量 約15kg(筐体を含む)

消費電力 2W(最大4W)(他センサ含む)

テレメトリ 02 bps

宇宙環境観測装置KASPERの一部としてデブリセンサSDMを搭載 FY2013に製作開始今年8月に打ち上げ予定)

まとめ(その1)

衛星不具合の主な原因は帯電放電シングルイベント放射線損傷である今後デブリ環境が重要になると予測される

静止軌道では商用衛星が多く運用されており宇宙環境の変動把握は重要この領域で運用する衛星が気を付けなければいけない環境として

1太陽フレアに伴う高エネルギー粒子 2太陽活動下降期による静止軌道電子の増加 3磁気嵐に伴う磁気圏尾部から注入する粒子 などがあげられる

まとめ(その2)

不具合軽減の取り組み bull 開発時は宇宙環境条件(トータルフラックス及び最悪条

件)を明確にし設計(冗長系柔軟性の設計ディレーティング及び運用モード寿命について研究)試験の充実検証の充実を図る

bull 運用段階に入ったならば宇宙環境を監視し警報等で故障を防ぐ

予測課題 bull 太陽フレアに伴う高エネルギー粒子発生後フラックス

ピーク値の推定

bull 衛星により不具合の起きる閾値は異なるが閾値をこえる急激な電子フラックスの増加と継続時間の予測

bull 局所的な磁気嵐に伴う磁気圏尾部から注入する粒子

宇宙環境グループは宇宙ステーションと衛星プロジェクトの安全な遂行に貢献しています

ご静聴ありがとうございました

補足資料

不具合原因の推移 bull 宇宙天気を大きく左右する要因の1つとして約11年の太陽活動変化が挙げられる

bull 太陽活動下降時期(太陽変動CME)と極大期(フレアCME)に衛星で不具合が増加するそれにより不具合原因の割合が変わる

-Koons et al The Impact of the Space Environment on Space Systems Aerospace Corp report no TR-99(1670)-1 20 July 1999 -2009 preliminary study (unpublished)

何故不具合は減らないか

bull 部品 放射線に対する感受性が高くなっている bull 微細化が進み同時にフォールトするノードが増え同時にエ

ラーとなる論理ノードやメモリセルが増加する微細化によってメモリセルは小さくなるので記憶容量当たりでみるとエラーの発生率は下がるしかし半導体チップの記憶容量やゲート数が増えるので半導体チップ当たりのエラー発生率は微細化とともに上昇するまた蓄積電荷が小さくなり感受性が高くなってきている

bull システム 大型化大電力化運用長期化 bull 1990年代末以降静止衛星の電力が10kWレベルになったしか

し設計検証技術データ蓄積が遅れている改善されつつあると推測される

放射線による影響の概要

粒子 エネルギー又はLET

代表的な影響

陽子 100keV-1MeV 1-10MeV 10-100MeV gt50MeV

表面損傷 表面材料と太陽電池の損傷 放射線損傷(電離非電離損傷の両方)センサーへのノイズ シングルイベント効果

電子 10-100keV gt100keV gt1MeV

表面帯電 深部帯電現象(deep-dielectric charging)センサーへのノイズ太陽電池の損傷 放射線損傷(電離)

重イオン gt1MeV-cm2mg シングルイベント効果

注エネルギー及びLETは個々の部品等により異なりますあくまでも目安です

耐放射線設計手順

軌道条件

ミッション期間

環境条件設定

トータルドーズの予測

1MeV電子換算被曝算出

NIELの換算

LETフルエンス算出

陽子フルエンス算出

対  策  の  検  討

対  策  の  検  討

対  策  の  検  討

放射線による劣化率予測

劣化率予測 特性予測

耐性データ

放射線による劣化率予測

耐性データ

劣化率予測アレイ出力劣化予測

感受性データ

シングルイベント発生率予測 致命度解析

衛星内質量分布

(2)

部品材料の選定

他の要因による劣化率予測

(2)(2) (3)

回路設計等NO

OK

アレイ構造 セル選定

他の要因による劣化率予測 アレイ設計(2)

(2) (2) (2) (3)

衛星内質量分布 部品選定(2)

(2) (2)(3)

NO

OK

NO

OK

(1) 環境モデルマージを含む(2) 部品レベルの検討(3) アセンブリレベルでの検討(4) 設計マージン環境モデル   マージを含め大丈夫か

トータルドーズ

太陽電池アレイの劣化

シングルイベント効果

回路設計

補足放射線太陽宇宙線銀河宇宙線

NEILを用いたダメージファクターの算出

対  策  の  検  討

放射線による劣化率予測

劣化率予測 特性予測

耐性データ

(2)

部品材料の選定

他の要因による劣化率予測

(2)(2) (3)

回路設計等NO

OK

衛星内質量分布 半導体デバイスの変位損傷

(1)

(4)

(4)

(4)

(4)

各軌道における放射線環境

1E+10

1E+11

1E+12

1E+13

1E+14

1E+15

1E+16

1E+17

1E+18

1E+19

1E+20

001 010 100 1000

捕捉

電子

の積

分フ

ルエ

ンス

[m

2 ]

エネルギー[MeV]

各軌道における電子捕捉積分フルエンス(3年間)

LEO

EOS GEO

MEO

GTO

GEO 軌道傾斜角 0deg 高度36000km GTO 軌道傾斜角 18deg 高度 360km~36000km MEO 軌道傾斜角 51deg 高度 10000km EOS 軌道傾斜角 98deg 高度705km LEO 軌道傾斜角 29deg 高度 600km

1E+12

1E+13

1E+14

1E+15

1E+16

1E+17

1E+18

1E+19

1E+20

01 10 100 1000

捕捉

陽子の

積分フルエン

ス[

m2 ]

エネルギー[MeV]

各軌道における捕捉陽子積分フルエンス(3年間)

MEO

GTO

GEO

EOS LEO

放射線による部品材料の影響

総照射線量 (TIDTotal Ionising Dose )

電離損傷

バイポーラTrの電流増幅率の低下リーク電流の増大

γ線で評価

トータルドーズ効果

変位損傷 (DDDisplacement Damage )または 非イオン化エネルギー損失 (NIELNon-Ionising Energy

Loss )

変位損傷(格子欠陥の生成)

電荷輸送効率の低下 (CCD)太陽電池の効率低下等

電子陽子により評価

シングルイベント効果

1個の荷電粒子の入射により発生する誤動作

ソフト(Latch-Up Burnout) エラー又は ソフト (Upset) エラー

陽子及び重イオンで評価

トータルドーズ効果

+ - + + - + - + - - + + + + -

ゲート酸化膜

電離

格子欠陥

正電荷捕獲

+ 正孔 - 電子

電極

(Silicon oxidenitride)

荷電粒子

反跳原子

ゲート絶縁膜中に電荷が蓄積することによるMOSトランジスタのしきい電圧(MOSトランジスタがオフからオンに変化するゲート電圧)の変化をもたらすただ

し最近の最先端チップはゲート絶縁膜がきわめて薄くなっているこのためゲート絶縁膜よりもフィールド絶縁膜(隣接するトランジスタを電気的に分離する絶縁膜)での電荷蓄積が相対的には大きな問題になってきている」

シングルイベント効果

メモリセルはNチャンネルとPチャンネルMOSFETより構成されメモリ情報は回路ノード12の電位の

高低により記録している空乏層の広がっているPN接合12の領域に

重イオンが入射した場合電荷の発生と空乏層内への少数キャリアの収集が起こるこの収集電荷量が回路の耐量を越えた場合(c)に示すように反転が起こる(ソフトエラー)一方pウエル-N基板接

合の空乏層内に電荷収集量が起こりえる耐性を越えると寄生的に存在するPNPNサイリスタ構造がオ

ンし電源と基板間に大電流が流れる状態が生じる(ラッチアップ)

シングルイベントメカニズム -陽子と重イオンの違い-

エラー発生率の計算

線エネルギー付与(LET) (linear energy transfer)

電離性放射線が物質中を通過する際飛程の単位長さ当りに平均して失うエネルギーをいう各種の放射線のうちX線γ線はLETが小さいので低LETといいα線中性子線その他重イオン核分裂破片のLETは大きいので高LETという MeVμmMeV(gcm2)やMeV(mgcm2)で表される

南大西洋異常(SAA) bull 地球の自転軸と磁気軸のずれ

darr bull 放射線帯が自転軸に対して非

対称

bull 南大西洋上空では放射線帯内帯が低高度に落ちてきているこの領域を南大西洋異常域(SAA South Atlantic Anomaly)と呼ぶ

bull 地球観測衛星ではSAAで放射線帯陽子の影響を受ける

Single Event Lachup

シングルイベントと陽子分布

MOS-1衛星(高度909km軌道傾斜角99度)で発生したシングルイベントと 陽子30MeV以上の等高線マップを重ね合わせた結果

NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)

bull 入射粒子が電離によらず与える損傷非イオン化損失

低軌道での電子フラックスと 不具合の発生場所

南大西洋異常(SAA)と極の角

高度800kmでの電子フラックス図極の角(polar horn)とSAAを示す

太陽粒子線 bull 太陽高エネルギー粒子線(SPE Solar Proton Events)は太陽フレア とコロナガス噴出 (CMECoronal Mass Ejections )により引き起こされる bull フレアのスペクトルは可変であるためあるエネルギー域における最悪状態イベントは必ずしも別のエネルギー域における最悪条件ではない 1972年8月のイベント 10~70MeVの粒子が最も多かった 1989年10のイベント 1972年8月のイベントに比べ低エネルギー領域 高エネルギー領域が明らかに激しかった

フルエンス 105 to 1011 cm-2

変動期間 1日から数日

ldquoBastiliardquo Solar Event 14 July 2000

Carrington Flare

84

(LW Townseed) Carrington Flare(1859年) Carrington Flare による30MeV以上トータルFluenceを118times109cm-2で規格化 ~1989年フレアの約13倍(シングルイベントの評価で使用) ~1991年フレアの約9倍 2012年7月23日にキャリントンイベントとほぼ同等の爆発現象が太陽あるいは太陽の周りで起きていたということがNASAの太陽観測衛星「STEREO」の解析から発表された

放射線対策 bull 放射線シールドを付加し放射線を減衰させる

bull 放射線耐性の強い部品(SOI(Silicon On Insulator)技術による耐放射線部品)材料に変更する

bull 放射線による損傷を吸収するために回路または構造上のマージンを持たせる bull ソフト的なエラーに対しては エラー検出訂正機能や多数決

機能等でソフト的エラーが起きてもシステムが機能するようにしたフォールトトレラント機能を付けて対処する ICのハード的故障に対しては ラッチアップ耐性の強い部品を選定するしかないが 電流制限回路を付ける対策も採られる パワーMOSFETに対しては部品選定 電源電圧を規格値の半分以下に落とす等の対策を採る

SOI技術

表面帯電への対策例

表面の物体間を導線で結線する

太陽電池のカバーガラスを導電性被膜付き(酸化インジウムITO)にする

熱制御材表面にITOを被覆する

熱制御材は高誘電率のテフロンの使用を避け 高伝導度耐環境性に優れたブラックカプトンを使用

イオンエンジンの中和器で能動帯電制御

内部帯電への対策例

アルミで3mm厚さに相当するシールドで囲む(Faraday Cage)

テフロンやカプトンなどの誘電体材料の内部での使用量を最小限に押さえる

回路基板やコンフォーマルコーティングは誘電体なので電流リークパス(1012Ωcmまたは1012Ωcm2

程度)を必ずつける

特にスポット的な放射線シールドの金属材には必ず電流リークパスをつける

帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備

衛星モデル作成

材料物性テーブル設定

宇宙環境パラメータ設定

Converter

転送ディレクトリ 解析データファイル

転送

解析ディレクトリ生成 解析結果 進行状況チェック ファイル操作

MUSCAT 解析エンジン

解析結果 表示

パラメトリックラン

オプション 解析

大型パネル実験(35mtimes11m) クーポンパネル実験(26cmtimes16cm)

環境模擬試験 環境模擬試験

MUSCATに使用する物性値設計標準制定のための知見などを得ることを目的に軌道上の宇宙環境を模擬した地上試験を行っている これらの試験では放電の発生頻度や電圧閾値放電発生による太陽電池パネルや搭載機器への影響を検証している

放射線計測装置の原理

bull その粒子が物質を通過する際のエネルギー損出率が粒子の電荷(原子番号)Zの二乗に比例すること(Bethe-Blochの式)を利用する

S2

E

ΔE Ersquo

S1 S3

  • 宇宙機の設計のための宇宙環境
  • 話の流れ
  • 話の流れ
  • TEDA(技術データ取得装置)(国産部品の宇宙環境での実証の必要性)
  • ETS-VTEDA(技術データ取得装置)誕生前の部品の宇宙実証の背景
  • スライド番号 6
  • スライド番号 7
  • スライド番号 8
  • スライド番号 9
  • 図6太陽黒点数と静止軌道電子 (>04MeV ) Flux の変動 (ETS-V搭載DOMによる観測)
  • スライド番号 11
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの開発(理研東大と共同で宇宙環境計測の充実)
  • ETS-VI(きく6号)打ち上がったがGEOに行かずGTOに留まる
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの成果
  • スライド番号 15
  • スライド番号 16
  • スライド番号 17
  • ADEOS搭載TEDA(世界2番目の異常宇宙線ACR)
  • BBND (ボナー球中性子検出器)
  • スライド番号 20
  • ISS搭載BBNDの成果(約8か月)
  • スライド番号 22
  • MDS-1搭載放射線吸収線量モニタ(SDOM)
  • 放射線帯変動モデルの開発MDS-1 065 MeV 電子フラックス
  • 変動パラメータの選択 (1 cycle solar activity)
  • 変動パラメータ- Tavg の定義-
  • 065MeV 電子 L値-Tavg マップ
  • 13MeV 陽子 L値-Tavg マップ
  • 電子観測とMDS-1モデルの比較
  • 放射線帯フラックスピークの変動
  • 陽子観測とモデルの比較
  • 電子(035~078MeV) 1日の変動予測GOSAT軌道
  • 電子(035~078MeV) 変動の信頼度水準(1日)GOSAT軌道
  • MDS-1 model と AE-8 modelとの比較1日
  • 話の流れ
  • 2003年10月 みどり号の全損事故(複合現象)
  • 衛星帯電の基本式
  • 内部帯電
  • パドルでの帯電放電メカニズム
  • スライド番号 40
  • スライド番号 41
  • スライド番号 42
  • データ中継技術衛星DRTS (こだま)の不具合
  • DRTS ESA スパイクノイズと電子フルエンスの比較(赤の丸が異常検知)
  • 不具合が宇宙環境によるものであるか判断する際のポイント
  • 話の流れ
  • 宇宙天気のリスク-宇宙環境によるシステムへの影響 -
  • NASAの報告-GNampCに注目-
  • NASAの報告(続き)
  • 宇宙環境を原因とする不具合の割合-JAXAの場合-
  • 不具合発生部位の割合 
  • Satellite News Digest -静止軌道不具合-
  • 太陽活動と静止軌道衛星不具合例
  • スライド番号 54
  • スライド番号 55
  • スライド番号 56
  • 衛星開発段階における対策
  • 運用における対応
  • 話の流れ
  • スライド番号 60
  • スライド番号 61
  • まとめ(その1)
  • まとめ(その2)
  • 宇宙環境グループは宇宙ステーションと衛星プロジェクトの安全な遂行に貢献しています
  • 補足資料
  • 不具合原因の推移
  • 何故不具合は減らないか
  • 放射線による影響の概要
  • 耐放射線設計手順
  • 各軌道における放射線環境
  • 放射線による部品材料の影響
  • トータルドーズ効果
  • シングルイベント効果
  • シングルイベントメカニズム-陽子と重イオンの違い-
  • エラー発生率の計算
  • 線エネルギー付与(LET)(linear energy transfer)
  • 南大西洋異常(SAA)
  • Single Event Lachup
  • シングルイベントと陽子分布
  • NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)
  • 低軌道での電子フラックスと不具合の発生場所
  • 南大西洋異常(SAA)と極の角
  • スライド番号 83
  • Carrington Flare
  • 放射線対策
  • スライド番号 86
  • スライド番号 87
  • 帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備
  • スライド番号 89
  • 放射線計測装置の原理
Page 27: 宇宙機の設計のための宇宙環境の方針から国産部品開発(42品種)が実施された。 . 半導体電子部品は耐放射線性を加味して、人工衛星(特に

065MeV 電子 L値-Tavg マップ

APTavg

SWTavg

13MeV 陽子 L値-Tavg マップ

APTavg

F107Tavg

電子観測とMDS-1モデルの比較

80 175

放射線帯フラックスピークの変動

80orbits (平穏時) 175orbits (擾乱時)

陽子観測とモデルの比較

電子(035~078MeV) 1日の変動予測GOSAT軌道

0

50

100

150

200

250

1E+09

1E+10

1E+11

1E+12

1984 1986 1988 1990 1992 1994 1996 1998 2000 2002 2004 2006 2008

Flue

nce[

ecm

2M

eVd

ay]

Launch day

FluenceSSN

Worst case Nov 12003

電子(035~078MeV) 変動の信頼度水準(1日)GOSAT軌道

00

01

02

03

04

05

06

07

08

09

10

88 90 92 94 96 98 100 102 104 106 108 110 112 114

Con

fiden

ce le

vel

Fluence[LOG10 ecm2MeVday]

AE-8 MAX

AE-8 MIN

MDS-1 model と AE-8 model との比較1日

0

20

40

60

80

100

120

140

160

180

1E+09

1E+10

1E+11

1E+12

1995 1997 1999 2001 2003 2005 2007 2009

Flue

nce[

ecm

2M

eVd

ay]

Launch day

Fluence(JAXA)Fluence(AE8)SSN

話の流れ

技術データ取得装置(TEDA)の概要と成果 bull 主な成果 bull 不具合解析例

宇宙天気のリスクと対策 bull 宇宙環境による衛星システムへの影響 bull 宇宙環境を原因とする不具合の割合推移部位 bull 静止軌道不具合 bull 対策

今後必要な観測項目

まとめ

2003年10月 みどり号の全損事故 (複合現象)

極域のオーロラ帯を通過中に電力ハー

ネスを巻いているMLIが高エネルギー電

子により帯電

MLIが接地されていなかったため内側

のハーネスとの間に1kV以上の電位差が

発生

MLI内のガス密度が発電開始に伴う温度

上昇により上昇

ハーネス被覆の傷により露出したハーネ

ス芯線とMLI内面の間で放電発生

単発の放電が隣接するハーネスに飛び火

してハーネス間の短絡

アーク放電が次々と伝搬していきハー

ネス全体が焼損

故障推定箇所 (大電力ハーネス部)

bull詳細報告書は文部科学省 宇宙開発委員会のHP参照

httpwwwmextgojpb_menushingiuchuureports04080901htm

bull 人工衛星の電位 bull 人工衛星は電気的に宇宙に浮いている bull 宇宙機構造体が接地点 bull 宇宙機への流入電流と流出電流のバランスによって宇宙機電位が決まる bull 各電流成分は宇宙機電位Vの関数として表され定常状態では式を下式を満たす

衛星帯電の基本式

( ) dtIIIIIIIC

V

dtdVCVIVIVIVIVIVIVI

BPHBSESISEIE

BPHBSESISEIE

int +++++minus=

==+++++minus

1

0)]()()()()()([)(

入射電子電流 ( E I )

後方散乱電子電流 ( BSE I )

入射正イオン電流 ( I I )

入射電子による二次電子電流 ( SE I )

太陽光

入射正イオンによる 二次電子放出電流 ( SI I )

光電子放出電流( PH I )

電荷ビーム放出電流(IB)

bull内部帯電は衛星の外壁を貫通した放射線帯外帯の01MeV以上の電子が内部に侵入

bull基板間や同軸ケーブルの線間等の容量(コンデンサ)や誘電体に帯電 bull接地されてない導体片に帯電

bullその耐圧電圧を超えると その耐圧の弱い箇所 (材質の欠陥や針状突起など の箇所)で放電して故障に至る

内部帯電

(あるエネルギ-以上の粒子が入射光電子なし)

NASA-HDBK-4002より

パドルでの帯電放電メカニズム

宇宙環境の影響により 衛星がマイナス電位に帯電

高エネルギー電子等により カバーガラスはプラスに帯電 衛星とカバーガラスに電位差が生じる

電位差が大きくなると トリプルジャンクション近傍 の電界強度が増大していく

トリプルジャンクションで放電が発生する カバーガラスの帯電が緩和される

+ + + + + + + + + + + + + +

+ + + +

カバーガラス

太陽電池セル

基板(衛星構体)

トリプルジャンクション rArr 導体絶縁体宇宙環境の接点

持続放電

Substrate

Satellite Load

insulation sheet

Solar array cell

Cover glass

Arc current

Electrode

持続放電は衛星の電力消失につながる 持続放電のモードは以下の2通りがある

Substrate

Satellite Load

insulation sheet

Solar array cell

Cover glass

Arc current

Electrode

Solar array cell

Cover glass

セル-基板間短絡 セル間短絡

放電によって太陽電池セルと基板が短絡する 短絡によって負荷に電力が供給されなくなる

放電によって太陽電池セルとセルが短絡する 短絡によって負荷に電力が供給されなくなる

サブストーム(高エネルギー電子)との遭遇

+ + + + + + + +

二次電子光電子による絶縁体の帯電(局所帯電)

電位差発生

逆電位勾配

衛星構体が負に帯電(絶対帯電)

電位

時間

サブストーム

衛星構体 VS

乖離電圧 ∆V

カバーガラスVcg

0 プラズマ電位

軌道別帯電放電現象

トリプルジャンクションで 放電発生

放電発生

静止軌道

+ + + + + + + +

逆電位勾配

軌道帯電放電現象

トリプルジャンクションで 放電発生

極軌道 オーロラ電子(高エネルギー電子)との遭遇

プラズマ流入出による絶縁体の帯電(局所帯電)

電位差発生

衛星構体が負に帯電(絶対帯電)

放電発生

電位

時間

オーロラ電子

衛星構体 乖離電圧 ∆V

カバーガラス

0 プラズマ電位

データ中継技術衛星DRTS (こだま)の不具合

2002年10月 9日 静止軌道に打ち上げ

2003年

3月24日 406JST変化率異常モニタ故障検出(FDIR)

が動作しA系からB系に切り替わった

3月25日 410JSTにB系のみ異常検知

4月 3日 327JSTにB系のみ異常検知

5月28日 124JSTにB系のみ異常検知

6月 6日1537JSTにB系のみ異常検知

ESA

DRTS ESA スパイクノイズと 電子フルエンスの比較(赤の丸が異常検知)

larr閾値

この事実を基に静止軌道における内部帯電警報システムを構築 2004年4月より運用開始

不具合が宇宙環境によるものであるか 判断する際のポイント

不具合の発生した時刻に太陽フレアや磁気嵐等の宇宙天気の大きな変動が起きていれば不具合に関係している可能性が高い但し帯電など放射線の積算的効果の伴う現象については発生から1週間位さかのぼり環境がどのように推移してきたかを考慮する必要がある

磁気嵐が起きると静止軌道に急激な粒子の増加現象が起きこれにより衛星帯電が引き起こされたりする(予測に利用可能)

地方時(真夜中や朝方か)や季節(春秋)を考慮する

低軌道衛星においてはSAA外帯のrdquo角ldquo及び極通過時に不具合

が起きやすいので衛星の位置(緯度経度)が重要

事象を把握する上で単発現象か数回起きている現象か周期

(時間同じ軌道等)的に発生している現象か

話の流れ

技術データ取得装置(TEDA)の概要と成果 bull 主な成果 bull 不具合解析例

宇宙天気のリスクと対策 bull 宇宙環境による衛星システムへの影響 bull 宇宙環境を原因とする不具合の割合推移部位 bull 静止軌道不具合 bull 対策

今後必要な観測項目

まとめ

宇宙天気のリスク -宇宙環境によるシステムへの影響 -

プラズマ (IRI)

帯電 (MUSCAT)

衝突 (AUTODY)

抗力 表面劣化

紫外線X線 中性粒子 (MSIS)

放射線粒子 (AE8AP8JPLSHIELDO

SE-2)

メテオロイドデブリ (MASTER2005

ORDEM)

電離損傷 変位損傷

bull電子回路の劣化 bull光部品の劣化

bull太陽電池セルの劣化

SEU (CREME96)

bullデータエラー bull画像ノイズ

bullシステム停止 bull回路損傷

bull熱的電気的光学的特性の劣化

bull構造の劣化 bullコンタミ

電磁パルス bull電源出力低下

bull損傷

bullトルク bull軌道落下

bull構造 損傷 bull減圧

bull電磁パルス

NASAの報告 -GNampCに注目-

1974年から1994年に起きたNASAと空軍の衛星故障の内20~25が宇宙環境に起因していたと報告

1990年から2001年に米国欧州カナダ日本の企業や政府機関が開発した衛星を調べた過去の宇宙ミション損失の大部分はロケットの失敗であったが1998年衛星損失の大部分は軌道上の衛星障害となっている多くの最近の異常は太陽電池アレイ及びバッテリの危険が増加している静止軌道通信衛星の設計寿命はこのサブシステムの故障の危険が増加している

喪失等の大きな誘導制御(GNampC)の不具合に注目 GNampC不具合の内宇宙環境による 不具合は約3と報告されている

軌道上衛星のタイプ別数

NASAの報告(続き)

衛星設計寿命における不具合発生時期 事故率と軌道

軌道別の衛星数 サブシステム不具合

宇宙環境を原因とする不具合の割合 -JAXAの場合-

2002年~2008年に運用された軌道上不具合情報が比較的充実している11衛星(利用衛星7機科学衛星4機)の結果宇宙環境によるも

のは約15過去のデータよりも割合が少ない

合計83件 合計35件

(1)利用衛星 (2)科学衛星

設計検討 不足 48

製造不良 8

軌道上環境 17

偶発故障 6

調査中 13

原因不明 8

設計検討

不足 61

製造不良 4

軌道上環境 11

偶発故障 6

調査中 9

原因不明 9

不具合発生部位の割合

不具合発生部位の割合

Brent Robertson Eric Stoneking ( 1990-2001NASA Goddard Space Flight Center )

Satellite News Digest -静止軌道不具合-

Satellite News Digest (SND) (http wwwsqt-indexcouk) で1997年~2009年の期間に静止軌道で95件の不具合が報告されている その内運用ミスや設計ミスなどを除くと32件(約33)は宇宙環境によるものであった 過去のデータより割合が多い

Choiら1)はこれら不具合の地方時と季節依存性を確認した その結果2100LT~900LTで約72の不具合が発生し900LT~2100LTは9件(約28)であった またこの9件は全て姿勢制御の不具合だった 静止軌道衛星不具合のほとんどは真夜中と朝方で起きており磁気嵐に伴い磁気圏尾部から注入した粒子による表面帯電が不具合の主原因と結論づけている

1) Ho-sung Choi et al Analysis of GEO spacecraft anomalies Space weather relationships Space Weather Vol 9 S06001

太陽活動と静止軌道衛星不具合例

ANIK-E1E2

ANIK-E1

複数の衛星で故障

Galaxy-15

帯電放電不具合 -ANIK-E1amp2Telstar401-

Jan 1994 ANIK-E1 amp E2事故時の環境 - Joe H Allen

1週間

太陽活動下降時期の電子増加

2MeV以上電子

copyNOAA Web

フラックスが3桁急増

Jan 1997 Telstar401事故時の環境

静止軌道の急激な電子増加

太陽極大期太陽フレアによる衛星障害 - 2003年10月~11月-

10486981048698 永久故障 4 10486981048698 安全モード又は運用を一時停止 31 10486981048698 データ内容の「誤り」の増加搭載コンピュータの誤動作 5

httpwwwsat-ndcomfailures等のデータによる 合計 40件

-Barbieri and Mahmot

米国極軌道気象衛星NOAA-17の改良型マイクロ波観測装置AMSU-A1 (Advanced Microwave Sounding Unit)のスキャナーが永久故障 米国気象衛星GOES -8号のX線センサがOFFになり復帰しなくなった

e-birdに深刻な不具合が発生 不具合は20本のトランスポンダ全てに影響

火星周回中の探査機「マーズオデッセイ (Mars Odyssey)」の観測機器放射線観測装置「Martian Radiation Environment Experiment (MARIE)」が太陽活動の影響により10月28日から適切に作動しなくなった データ中継技術衛星(DRTS)「こだま」 太陽捕捉モードに移行

太陽陽子

帯電放電不具合-Galaxy15(局所的的現象)- 2

5 M

eV

65

MeV

11

5 M

eV

GOES 14 ----- GOES 15 ----- GOES 11 -----

Satellite Locations

Galaxy 15 anomaly

2010年4月5日9時48分UTCは磁気嵐及びCMEが発生するなど宇宙環境は非常に荒れていたGalaxy15衛星は真夜中側に位置し宇宙環境の影響を受けやすい

位置にいたことから宇宙環境による不具合である可能性が高いということで原因追及がなされた高エネルギー粒子が引き起こす代表的な衛星不具合現象として3つ(表面帯電内部帯電SEUシングルイベントバーンアウトSEL)の可能性を検討した

チームの報告書によると磁気圏尾部からの熱電子の流入による放電が原因であったと結論付けられたGalaxy15衛星の近くにはGOES-11衛星が位置していたがGOES-11衛星には不具合を発生しておらず本現象は局所的な現象と推測される

衛星開発段階における対策 JAXAの不具合解析の結論

bull 2002年~2008年に運用された11機の衛星不具合を解析 宇宙環境による不具合は偶発故障のみ(全体の約15)確率的には想定範囲内ではあるがその影響を最小限とするためディレーティング運用モード寿命についての研究に取り組む

bull 設計基準試験の充実検証確認の強化技術成熟度(TRL)評価の徹底各々の境界制約条件の明示化等により検証不足抜けの防止有効なピアレビューに結びつける

冗長系(同じハードウェア機能の冗長)柔軟性の設計(ソフトハードの対応)

bull 従来の故障が起きないようにする設計に対してGOSAT(いぶき)では重要部

品を二重化することにより故障する可能性は上がるが故障しても衛星バスの運用や観測が続行できる可能性がより高くなるように設計した

運用における対応

bull 宇宙天気監視ーロケット打ち上げ及び宇宙飛行士支援 数日前に今後の宇宙環境の推移を把握(MXレベルのフレアの発生確率)

bull X線の増加で太陽フレア発生を検知したら高エネルギー粒子の発生をいつまで 気を付ければ良いか判断(発生位置で大凡を推定するが課題は多い) SPEが発生した場合(特に10MeV以上100MeV 以上の陽

子)最大値フラックス値の推定 ピーク値を予測(特に閾値に近くなった時に重要)

bull 衛星運用 bull 太陽フレア磁気嵐警報(X線陽子及びkpが閾値を超えた

時に警報を発信)2003年10月より運用開始 bull 内部帯電警報(2日後の静止軌道上の高エネルギー電子(>1

Me) の増加を予測し 閾値を超えた時に警報を発信) 2004年4月より運用開始

話の流れ

技術データ取得装置(TEDA)の概要と成果 bull 主な成果 bull 不具合解析例

宇宙天気のリスクと対策 bull 宇宙環境による衛星システムへの影響 bull 宇宙環境を原因とする不具合の割合推移部位 bull 静止軌道不具合 bull 対策

今後必要な観測項目

まとめ

計測対象計測項目 計測対象 粒径100μm以上のデブリメテオロイド 計測項目 デブリ粒径衝突頻度

基本原理

厚さ約125μmの絶縁性のポリイミドフィルム表面に 100μm周期で直線状の細長い導線(太さ50μm)パターンを形成導線の破断を電気的に検知することによりデブリの衝突(貫通)を検知する破断した導線の数導線の幅ピッチからデブリサイズを計測する

微小デブリ計測技術の概要

衝突孔の例(衝突試験ISAS) - 衝突粒子 SUS 309 microm - 衝突速度 52 kms

HTV5号機によるセンサ機能のフライト実証

35cm

46cm

FY2013機能実証モデル

検出線幅 50 μm 検出線間隔 100 μm フィルム厚 lt 20 μm 有感領域 30times33cm 検出線総数 3300本

サイズ 50times39times4 cm (筐体を含む)

重量 約15kg(筐体を含む)

消費電力 2W(最大4W)(他センサ含む)

テレメトリ 02 bps

宇宙環境観測装置KASPERの一部としてデブリセンサSDMを搭載 FY2013に製作開始今年8月に打ち上げ予定)

まとめ(その1)

衛星不具合の主な原因は帯電放電シングルイベント放射線損傷である今後デブリ環境が重要になると予測される

静止軌道では商用衛星が多く運用されており宇宙環境の変動把握は重要この領域で運用する衛星が気を付けなければいけない環境として

1太陽フレアに伴う高エネルギー粒子 2太陽活動下降期による静止軌道電子の増加 3磁気嵐に伴う磁気圏尾部から注入する粒子 などがあげられる

まとめ(その2)

不具合軽減の取り組み bull 開発時は宇宙環境条件(トータルフラックス及び最悪条

件)を明確にし設計(冗長系柔軟性の設計ディレーティング及び運用モード寿命について研究)試験の充実検証の充実を図る

bull 運用段階に入ったならば宇宙環境を監視し警報等で故障を防ぐ

予測課題 bull 太陽フレアに伴う高エネルギー粒子発生後フラックス

ピーク値の推定

bull 衛星により不具合の起きる閾値は異なるが閾値をこえる急激な電子フラックスの増加と継続時間の予測

bull 局所的な磁気嵐に伴う磁気圏尾部から注入する粒子

宇宙環境グループは宇宙ステーションと衛星プロジェクトの安全な遂行に貢献しています

ご静聴ありがとうございました

補足資料

不具合原因の推移 bull 宇宙天気を大きく左右する要因の1つとして約11年の太陽活動変化が挙げられる

bull 太陽活動下降時期(太陽変動CME)と極大期(フレアCME)に衛星で不具合が増加するそれにより不具合原因の割合が変わる

-Koons et al The Impact of the Space Environment on Space Systems Aerospace Corp report no TR-99(1670)-1 20 July 1999 -2009 preliminary study (unpublished)

何故不具合は減らないか

bull 部品 放射線に対する感受性が高くなっている bull 微細化が進み同時にフォールトするノードが増え同時にエ

ラーとなる論理ノードやメモリセルが増加する微細化によってメモリセルは小さくなるので記憶容量当たりでみるとエラーの発生率は下がるしかし半導体チップの記憶容量やゲート数が増えるので半導体チップ当たりのエラー発生率は微細化とともに上昇するまた蓄積電荷が小さくなり感受性が高くなってきている

bull システム 大型化大電力化運用長期化 bull 1990年代末以降静止衛星の電力が10kWレベルになったしか

し設計検証技術データ蓄積が遅れている改善されつつあると推測される

放射線による影響の概要

粒子 エネルギー又はLET

代表的な影響

陽子 100keV-1MeV 1-10MeV 10-100MeV gt50MeV

表面損傷 表面材料と太陽電池の損傷 放射線損傷(電離非電離損傷の両方)センサーへのノイズ シングルイベント効果

電子 10-100keV gt100keV gt1MeV

表面帯電 深部帯電現象(deep-dielectric charging)センサーへのノイズ太陽電池の損傷 放射線損傷(電離)

重イオン gt1MeV-cm2mg シングルイベント効果

注エネルギー及びLETは個々の部品等により異なりますあくまでも目安です

耐放射線設計手順

軌道条件

ミッション期間

環境条件設定

トータルドーズの予測

1MeV電子換算被曝算出

NIELの換算

LETフルエンス算出

陽子フルエンス算出

対  策  の  検  討

対  策  の  検  討

対  策  の  検  討

放射線による劣化率予測

劣化率予測 特性予測

耐性データ

放射線による劣化率予測

耐性データ

劣化率予測アレイ出力劣化予測

感受性データ

シングルイベント発生率予測 致命度解析

衛星内質量分布

(2)

部品材料の選定

他の要因による劣化率予測

(2)(2) (3)

回路設計等NO

OK

アレイ構造 セル選定

他の要因による劣化率予測 アレイ設計(2)

(2) (2) (2) (3)

衛星内質量分布 部品選定(2)

(2) (2)(3)

NO

OK

NO

OK

(1) 環境モデルマージを含む(2) 部品レベルの検討(3) アセンブリレベルでの検討(4) 設計マージン環境モデル   マージを含め大丈夫か

トータルドーズ

太陽電池アレイの劣化

シングルイベント効果

回路設計

補足放射線太陽宇宙線銀河宇宙線

NEILを用いたダメージファクターの算出

対  策  の  検  討

放射線による劣化率予測

劣化率予測 特性予測

耐性データ

(2)

部品材料の選定

他の要因による劣化率予測

(2)(2) (3)

回路設計等NO

OK

衛星内質量分布 半導体デバイスの変位損傷

(1)

(4)

(4)

(4)

(4)

各軌道における放射線環境

1E+10

1E+11

1E+12

1E+13

1E+14

1E+15

1E+16

1E+17

1E+18

1E+19

1E+20

001 010 100 1000

捕捉

電子

の積

分フ

ルエ

ンス

[m

2 ]

エネルギー[MeV]

各軌道における電子捕捉積分フルエンス(3年間)

LEO

EOS GEO

MEO

GTO

GEO 軌道傾斜角 0deg 高度36000km GTO 軌道傾斜角 18deg 高度 360km~36000km MEO 軌道傾斜角 51deg 高度 10000km EOS 軌道傾斜角 98deg 高度705km LEO 軌道傾斜角 29deg 高度 600km

1E+12

1E+13

1E+14

1E+15

1E+16

1E+17

1E+18

1E+19

1E+20

01 10 100 1000

捕捉

陽子の

積分フルエン

ス[

m2 ]

エネルギー[MeV]

各軌道における捕捉陽子積分フルエンス(3年間)

MEO

GTO

GEO

EOS LEO

放射線による部品材料の影響

総照射線量 (TIDTotal Ionising Dose )

電離損傷

バイポーラTrの電流増幅率の低下リーク電流の増大

γ線で評価

トータルドーズ効果

変位損傷 (DDDisplacement Damage )または 非イオン化エネルギー損失 (NIELNon-Ionising Energy

Loss )

変位損傷(格子欠陥の生成)

電荷輸送効率の低下 (CCD)太陽電池の効率低下等

電子陽子により評価

シングルイベント効果

1個の荷電粒子の入射により発生する誤動作

ソフト(Latch-Up Burnout) エラー又は ソフト (Upset) エラー

陽子及び重イオンで評価

トータルドーズ効果

+ - + + - + - + - - + + + + -

ゲート酸化膜

電離

格子欠陥

正電荷捕獲

+ 正孔 - 電子

電極

(Silicon oxidenitride)

荷電粒子

反跳原子

ゲート絶縁膜中に電荷が蓄積することによるMOSトランジスタのしきい電圧(MOSトランジスタがオフからオンに変化するゲート電圧)の変化をもたらすただ

し最近の最先端チップはゲート絶縁膜がきわめて薄くなっているこのためゲート絶縁膜よりもフィールド絶縁膜(隣接するトランジスタを電気的に分離する絶縁膜)での電荷蓄積が相対的には大きな問題になってきている」

シングルイベント効果

メモリセルはNチャンネルとPチャンネルMOSFETより構成されメモリ情報は回路ノード12の電位の

高低により記録している空乏層の広がっているPN接合12の領域に

重イオンが入射した場合電荷の発生と空乏層内への少数キャリアの収集が起こるこの収集電荷量が回路の耐量を越えた場合(c)に示すように反転が起こる(ソフトエラー)一方pウエル-N基板接

合の空乏層内に電荷収集量が起こりえる耐性を越えると寄生的に存在するPNPNサイリスタ構造がオ

ンし電源と基板間に大電流が流れる状態が生じる(ラッチアップ)

シングルイベントメカニズム -陽子と重イオンの違い-

エラー発生率の計算

線エネルギー付与(LET) (linear energy transfer)

電離性放射線が物質中を通過する際飛程の単位長さ当りに平均して失うエネルギーをいう各種の放射線のうちX線γ線はLETが小さいので低LETといいα線中性子線その他重イオン核分裂破片のLETは大きいので高LETという MeVμmMeV(gcm2)やMeV(mgcm2)で表される

南大西洋異常(SAA) bull 地球の自転軸と磁気軸のずれ

darr bull 放射線帯が自転軸に対して非

対称

bull 南大西洋上空では放射線帯内帯が低高度に落ちてきているこの領域を南大西洋異常域(SAA South Atlantic Anomaly)と呼ぶ

bull 地球観測衛星ではSAAで放射線帯陽子の影響を受ける

Single Event Lachup

シングルイベントと陽子分布

MOS-1衛星(高度909km軌道傾斜角99度)で発生したシングルイベントと 陽子30MeV以上の等高線マップを重ね合わせた結果

NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)

bull 入射粒子が電離によらず与える損傷非イオン化損失

低軌道での電子フラックスと 不具合の発生場所

南大西洋異常(SAA)と極の角

高度800kmでの電子フラックス図極の角(polar horn)とSAAを示す

太陽粒子線 bull 太陽高エネルギー粒子線(SPE Solar Proton Events)は太陽フレア とコロナガス噴出 (CMECoronal Mass Ejections )により引き起こされる bull フレアのスペクトルは可変であるためあるエネルギー域における最悪状態イベントは必ずしも別のエネルギー域における最悪条件ではない 1972年8月のイベント 10~70MeVの粒子が最も多かった 1989年10のイベント 1972年8月のイベントに比べ低エネルギー領域 高エネルギー領域が明らかに激しかった

フルエンス 105 to 1011 cm-2

変動期間 1日から数日

ldquoBastiliardquo Solar Event 14 July 2000

Carrington Flare

84

(LW Townseed) Carrington Flare(1859年) Carrington Flare による30MeV以上トータルFluenceを118times109cm-2で規格化 ~1989年フレアの約13倍(シングルイベントの評価で使用) ~1991年フレアの約9倍 2012年7月23日にキャリントンイベントとほぼ同等の爆発現象が太陽あるいは太陽の周りで起きていたということがNASAの太陽観測衛星「STEREO」の解析から発表された

放射線対策 bull 放射線シールドを付加し放射線を減衰させる

bull 放射線耐性の強い部品(SOI(Silicon On Insulator)技術による耐放射線部品)材料に変更する

bull 放射線による損傷を吸収するために回路または構造上のマージンを持たせる bull ソフト的なエラーに対しては エラー検出訂正機能や多数決

機能等でソフト的エラーが起きてもシステムが機能するようにしたフォールトトレラント機能を付けて対処する ICのハード的故障に対しては ラッチアップ耐性の強い部品を選定するしかないが 電流制限回路を付ける対策も採られる パワーMOSFETに対しては部品選定 電源電圧を規格値の半分以下に落とす等の対策を採る

SOI技術

表面帯電への対策例

表面の物体間を導線で結線する

太陽電池のカバーガラスを導電性被膜付き(酸化インジウムITO)にする

熱制御材表面にITOを被覆する

熱制御材は高誘電率のテフロンの使用を避け 高伝導度耐環境性に優れたブラックカプトンを使用

イオンエンジンの中和器で能動帯電制御

内部帯電への対策例

アルミで3mm厚さに相当するシールドで囲む(Faraday Cage)

テフロンやカプトンなどの誘電体材料の内部での使用量を最小限に押さえる

回路基板やコンフォーマルコーティングは誘電体なので電流リークパス(1012Ωcmまたは1012Ωcm2

程度)を必ずつける

特にスポット的な放射線シールドの金属材には必ず電流リークパスをつける

帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備

衛星モデル作成

材料物性テーブル設定

宇宙環境パラメータ設定

Converter

転送ディレクトリ 解析データファイル

転送

解析ディレクトリ生成 解析結果 進行状況チェック ファイル操作

MUSCAT 解析エンジン

解析結果 表示

パラメトリックラン

オプション 解析

大型パネル実験(35mtimes11m) クーポンパネル実験(26cmtimes16cm)

環境模擬試験 環境模擬試験

MUSCATに使用する物性値設計標準制定のための知見などを得ることを目的に軌道上の宇宙環境を模擬した地上試験を行っている これらの試験では放電の発生頻度や電圧閾値放電発生による太陽電池パネルや搭載機器への影響を検証している

放射線計測装置の原理

bull その粒子が物質を通過する際のエネルギー損出率が粒子の電荷(原子番号)Zの二乗に比例すること(Bethe-Blochの式)を利用する

S2

E

ΔE Ersquo

S1 S3

  • 宇宙機の設計のための宇宙環境
  • 話の流れ
  • 話の流れ
  • TEDA(技術データ取得装置)(国産部品の宇宙環境での実証の必要性)
  • ETS-VTEDA(技術データ取得装置)誕生前の部品の宇宙実証の背景
  • スライド番号 6
  • スライド番号 7
  • スライド番号 8
  • スライド番号 9
  • 図6太陽黒点数と静止軌道電子 (>04MeV ) Flux の変動 (ETS-V搭載DOMによる観測)
  • スライド番号 11
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの開発(理研東大と共同で宇宙環境計測の充実)
  • ETS-VI(きく6号)打ち上がったがGEOに行かずGTOに留まる
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの成果
  • スライド番号 15
  • スライド番号 16
  • スライド番号 17
  • ADEOS搭載TEDA(世界2番目の異常宇宙線ACR)
  • BBND (ボナー球中性子検出器)
  • スライド番号 20
  • ISS搭載BBNDの成果(約8か月)
  • スライド番号 22
  • MDS-1搭載放射線吸収線量モニタ(SDOM)
  • 放射線帯変動モデルの開発MDS-1 065 MeV 電子フラックス
  • 変動パラメータの選択 (1 cycle solar activity)
  • 変動パラメータ- Tavg の定義-
  • 065MeV 電子 L値-Tavg マップ
  • 13MeV 陽子 L値-Tavg マップ
  • 電子観測とMDS-1モデルの比較
  • 放射線帯フラックスピークの変動
  • 陽子観測とモデルの比較
  • 電子(035~078MeV) 1日の変動予測GOSAT軌道
  • 電子(035~078MeV) 変動の信頼度水準(1日)GOSAT軌道
  • MDS-1 model と AE-8 modelとの比較1日
  • 話の流れ
  • 2003年10月 みどり号の全損事故(複合現象)
  • 衛星帯電の基本式
  • 内部帯電
  • パドルでの帯電放電メカニズム
  • スライド番号 40
  • スライド番号 41
  • スライド番号 42
  • データ中継技術衛星DRTS (こだま)の不具合
  • DRTS ESA スパイクノイズと電子フルエンスの比較(赤の丸が異常検知)
  • 不具合が宇宙環境によるものであるか判断する際のポイント
  • 話の流れ
  • 宇宙天気のリスク-宇宙環境によるシステムへの影響 -
  • NASAの報告-GNampCに注目-
  • NASAの報告(続き)
  • 宇宙環境を原因とする不具合の割合-JAXAの場合-
  • 不具合発生部位の割合 
  • Satellite News Digest -静止軌道不具合-
  • 太陽活動と静止軌道衛星不具合例
  • スライド番号 54
  • スライド番号 55
  • スライド番号 56
  • 衛星開発段階における対策
  • 運用における対応
  • 話の流れ
  • スライド番号 60
  • スライド番号 61
  • まとめ(その1)
  • まとめ(その2)
  • 宇宙環境グループは宇宙ステーションと衛星プロジェクトの安全な遂行に貢献しています
  • 補足資料
  • 不具合原因の推移
  • 何故不具合は減らないか
  • 放射線による影響の概要
  • 耐放射線設計手順
  • 各軌道における放射線環境
  • 放射線による部品材料の影響
  • トータルドーズ効果
  • シングルイベント効果
  • シングルイベントメカニズム-陽子と重イオンの違い-
  • エラー発生率の計算
  • 線エネルギー付与(LET)(linear energy transfer)
  • 南大西洋異常(SAA)
  • Single Event Lachup
  • シングルイベントと陽子分布
  • NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)
  • 低軌道での電子フラックスと不具合の発生場所
  • 南大西洋異常(SAA)と極の角
  • スライド番号 83
  • Carrington Flare
  • 放射線対策
  • スライド番号 86
  • スライド番号 87
  • 帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備
  • スライド番号 89
  • 放射線計測装置の原理
Page 28: 宇宙機の設計のための宇宙環境の方針から国産部品開発(42品種)が実施された。 . 半導体電子部品は耐放射線性を加味して、人工衛星(特に

13MeV 陽子 L値-Tavg マップ

APTavg

F107Tavg

電子観測とMDS-1モデルの比較

80 175

放射線帯フラックスピークの変動

80orbits (平穏時) 175orbits (擾乱時)

陽子観測とモデルの比較

電子(035~078MeV) 1日の変動予測GOSAT軌道

0

50

100

150

200

250

1E+09

1E+10

1E+11

1E+12

1984 1986 1988 1990 1992 1994 1996 1998 2000 2002 2004 2006 2008

Flue

nce[

ecm

2M

eVd

ay]

Launch day

FluenceSSN

Worst case Nov 12003

電子(035~078MeV) 変動の信頼度水準(1日)GOSAT軌道

00

01

02

03

04

05

06

07

08

09

10

88 90 92 94 96 98 100 102 104 106 108 110 112 114

Con

fiden

ce le

vel

Fluence[LOG10 ecm2MeVday]

AE-8 MAX

AE-8 MIN

MDS-1 model と AE-8 model との比較1日

0

20

40

60

80

100

120

140

160

180

1E+09

1E+10

1E+11

1E+12

1995 1997 1999 2001 2003 2005 2007 2009

Flue

nce[

ecm

2M

eVd

ay]

Launch day

Fluence(JAXA)Fluence(AE8)SSN

話の流れ

技術データ取得装置(TEDA)の概要と成果 bull 主な成果 bull 不具合解析例

宇宙天気のリスクと対策 bull 宇宙環境による衛星システムへの影響 bull 宇宙環境を原因とする不具合の割合推移部位 bull 静止軌道不具合 bull 対策

今後必要な観測項目

まとめ

2003年10月 みどり号の全損事故 (複合現象)

極域のオーロラ帯を通過中に電力ハー

ネスを巻いているMLIが高エネルギー電

子により帯電

MLIが接地されていなかったため内側

のハーネスとの間に1kV以上の電位差が

発生

MLI内のガス密度が発電開始に伴う温度

上昇により上昇

ハーネス被覆の傷により露出したハーネ

ス芯線とMLI内面の間で放電発生

単発の放電が隣接するハーネスに飛び火

してハーネス間の短絡

アーク放電が次々と伝搬していきハー

ネス全体が焼損

故障推定箇所 (大電力ハーネス部)

bull詳細報告書は文部科学省 宇宙開発委員会のHP参照

httpwwwmextgojpb_menushingiuchuureports04080901htm

bull 人工衛星の電位 bull 人工衛星は電気的に宇宙に浮いている bull 宇宙機構造体が接地点 bull 宇宙機への流入電流と流出電流のバランスによって宇宙機電位が決まる bull 各電流成分は宇宙機電位Vの関数として表され定常状態では式を下式を満たす

衛星帯電の基本式

( ) dtIIIIIIIC

V

dtdVCVIVIVIVIVIVIVI

BPHBSESISEIE

BPHBSESISEIE

int +++++minus=

==+++++minus

1

0)]()()()()()([)(

入射電子電流 ( E I )

後方散乱電子電流 ( BSE I )

入射正イオン電流 ( I I )

入射電子による二次電子電流 ( SE I )

太陽光

入射正イオンによる 二次電子放出電流 ( SI I )

光電子放出電流( PH I )

電荷ビーム放出電流(IB)

bull内部帯電は衛星の外壁を貫通した放射線帯外帯の01MeV以上の電子が内部に侵入

bull基板間や同軸ケーブルの線間等の容量(コンデンサ)や誘電体に帯電 bull接地されてない導体片に帯電

bullその耐圧電圧を超えると その耐圧の弱い箇所 (材質の欠陥や針状突起など の箇所)で放電して故障に至る

内部帯電

(あるエネルギ-以上の粒子が入射光電子なし)

NASA-HDBK-4002より

パドルでの帯電放電メカニズム

宇宙環境の影響により 衛星がマイナス電位に帯電

高エネルギー電子等により カバーガラスはプラスに帯電 衛星とカバーガラスに電位差が生じる

電位差が大きくなると トリプルジャンクション近傍 の電界強度が増大していく

トリプルジャンクションで放電が発生する カバーガラスの帯電が緩和される

+ + + + + + + + + + + + + +

+ + + +

カバーガラス

太陽電池セル

基板(衛星構体)

トリプルジャンクション rArr 導体絶縁体宇宙環境の接点

持続放電

Substrate

Satellite Load

insulation sheet

Solar array cell

Cover glass

Arc current

Electrode

持続放電は衛星の電力消失につながる 持続放電のモードは以下の2通りがある

Substrate

Satellite Load

insulation sheet

Solar array cell

Cover glass

Arc current

Electrode

Solar array cell

Cover glass

セル-基板間短絡 セル間短絡

放電によって太陽電池セルと基板が短絡する 短絡によって負荷に電力が供給されなくなる

放電によって太陽電池セルとセルが短絡する 短絡によって負荷に電力が供給されなくなる

サブストーム(高エネルギー電子)との遭遇

+ + + + + + + +

二次電子光電子による絶縁体の帯電(局所帯電)

電位差発生

逆電位勾配

衛星構体が負に帯電(絶対帯電)

電位

時間

サブストーム

衛星構体 VS

乖離電圧 ∆V

カバーガラスVcg

0 プラズマ電位

軌道別帯電放電現象

トリプルジャンクションで 放電発生

放電発生

静止軌道

+ + + + + + + +

逆電位勾配

軌道帯電放電現象

トリプルジャンクションで 放電発生

極軌道 オーロラ電子(高エネルギー電子)との遭遇

プラズマ流入出による絶縁体の帯電(局所帯電)

電位差発生

衛星構体が負に帯電(絶対帯電)

放電発生

電位

時間

オーロラ電子

衛星構体 乖離電圧 ∆V

カバーガラス

0 プラズマ電位

データ中継技術衛星DRTS (こだま)の不具合

2002年10月 9日 静止軌道に打ち上げ

2003年

3月24日 406JST変化率異常モニタ故障検出(FDIR)

が動作しA系からB系に切り替わった

3月25日 410JSTにB系のみ異常検知

4月 3日 327JSTにB系のみ異常検知

5月28日 124JSTにB系のみ異常検知

6月 6日1537JSTにB系のみ異常検知

ESA

DRTS ESA スパイクノイズと 電子フルエンスの比較(赤の丸が異常検知)

larr閾値

この事実を基に静止軌道における内部帯電警報システムを構築 2004年4月より運用開始

不具合が宇宙環境によるものであるか 判断する際のポイント

不具合の発生した時刻に太陽フレアや磁気嵐等の宇宙天気の大きな変動が起きていれば不具合に関係している可能性が高い但し帯電など放射線の積算的効果の伴う現象については発生から1週間位さかのぼり環境がどのように推移してきたかを考慮する必要がある

磁気嵐が起きると静止軌道に急激な粒子の増加現象が起きこれにより衛星帯電が引き起こされたりする(予測に利用可能)

地方時(真夜中や朝方か)や季節(春秋)を考慮する

低軌道衛星においてはSAA外帯のrdquo角ldquo及び極通過時に不具合

が起きやすいので衛星の位置(緯度経度)が重要

事象を把握する上で単発現象か数回起きている現象か周期

(時間同じ軌道等)的に発生している現象か

話の流れ

技術データ取得装置(TEDA)の概要と成果 bull 主な成果 bull 不具合解析例

宇宙天気のリスクと対策 bull 宇宙環境による衛星システムへの影響 bull 宇宙環境を原因とする不具合の割合推移部位 bull 静止軌道不具合 bull 対策

今後必要な観測項目

まとめ

宇宙天気のリスク -宇宙環境によるシステムへの影響 -

プラズマ (IRI)

帯電 (MUSCAT)

衝突 (AUTODY)

抗力 表面劣化

紫外線X線 中性粒子 (MSIS)

放射線粒子 (AE8AP8JPLSHIELDO

SE-2)

メテオロイドデブリ (MASTER2005

ORDEM)

電離損傷 変位損傷

bull電子回路の劣化 bull光部品の劣化

bull太陽電池セルの劣化

SEU (CREME96)

bullデータエラー bull画像ノイズ

bullシステム停止 bull回路損傷

bull熱的電気的光学的特性の劣化

bull構造の劣化 bullコンタミ

電磁パルス bull電源出力低下

bull損傷

bullトルク bull軌道落下

bull構造 損傷 bull減圧

bull電磁パルス

NASAの報告 -GNampCに注目-

1974年から1994年に起きたNASAと空軍の衛星故障の内20~25が宇宙環境に起因していたと報告

1990年から2001年に米国欧州カナダ日本の企業や政府機関が開発した衛星を調べた過去の宇宙ミション損失の大部分はロケットの失敗であったが1998年衛星損失の大部分は軌道上の衛星障害となっている多くの最近の異常は太陽電池アレイ及びバッテリの危険が増加している静止軌道通信衛星の設計寿命はこのサブシステムの故障の危険が増加している

喪失等の大きな誘導制御(GNampC)の不具合に注目 GNampC不具合の内宇宙環境による 不具合は約3と報告されている

軌道上衛星のタイプ別数

NASAの報告(続き)

衛星設計寿命における不具合発生時期 事故率と軌道

軌道別の衛星数 サブシステム不具合

宇宙環境を原因とする不具合の割合 -JAXAの場合-

2002年~2008年に運用された軌道上不具合情報が比較的充実している11衛星(利用衛星7機科学衛星4機)の結果宇宙環境によるも

のは約15過去のデータよりも割合が少ない

合計83件 合計35件

(1)利用衛星 (2)科学衛星

設計検討 不足 48

製造不良 8

軌道上環境 17

偶発故障 6

調査中 13

原因不明 8

設計検討

不足 61

製造不良 4

軌道上環境 11

偶発故障 6

調査中 9

原因不明 9

不具合発生部位の割合

不具合発生部位の割合

Brent Robertson Eric Stoneking ( 1990-2001NASA Goddard Space Flight Center )

Satellite News Digest -静止軌道不具合-

Satellite News Digest (SND) (http wwwsqt-indexcouk) で1997年~2009年の期間に静止軌道で95件の不具合が報告されている その内運用ミスや設計ミスなどを除くと32件(約33)は宇宙環境によるものであった 過去のデータより割合が多い

Choiら1)はこれら不具合の地方時と季節依存性を確認した その結果2100LT~900LTで約72の不具合が発生し900LT~2100LTは9件(約28)であった またこの9件は全て姿勢制御の不具合だった 静止軌道衛星不具合のほとんどは真夜中と朝方で起きており磁気嵐に伴い磁気圏尾部から注入した粒子による表面帯電が不具合の主原因と結論づけている

1) Ho-sung Choi et al Analysis of GEO spacecraft anomalies Space weather relationships Space Weather Vol 9 S06001

太陽活動と静止軌道衛星不具合例

ANIK-E1E2

ANIK-E1

複数の衛星で故障

Galaxy-15

帯電放電不具合 -ANIK-E1amp2Telstar401-

Jan 1994 ANIK-E1 amp E2事故時の環境 - Joe H Allen

1週間

太陽活動下降時期の電子増加

2MeV以上電子

copyNOAA Web

フラックスが3桁急増

Jan 1997 Telstar401事故時の環境

静止軌道の急激な電子増加

太陽極大期太陽フレアによる衛星障害 - 2003年10月~11月-

10486981048698 永久故障 4 10486981048698 安全モード又は運用を一時停止 31 10486981048698 データ内容の「誤り」の増加搭載コンピュータの誤動作 5

httpwwwsat-ndcomfailures等のデータによる 合計 40件

-Barbieri and Mahmot

米国極軌道気象衛星NOAA-17の改良型マイクロ波観測装置AMSU-A1 (Advanced Microwave Sounding Unit)のスキャナーが永久故障 米国気象衛星GOES -8号のX線センサがOFFになり復帰しなくなった

e-birdに深刻な不具合が発生 不具合は20本のトランスポンダ全てに影響

火星周回中の探査機「マーズオデッセイ (Mars Odyssey)」の観測機器放射線観測装置「Martian Radiation Environment Experiment (MARIE)」が太陽活動の影響により10月28日から適切に作動しなくなった データ中継技術衛星(DRTS)「こだま」 太陽捕捉モードに移行

太陽陽子

帯電放電不具合-Galaxy15(局所的的現象)- 2

5 M

eV

65

MeV

11

5 M

eV

GOES 14 ----- GOES 15 ----- GOES 11 -----

Satellite Locations

Galaxy 15 anomaly

2010年4月5日9時48分UTCは磁気嵐及びCMEが発生するなど宇宙環境は非常に荒れていたGalaxy15衛星は真夜中側に位置し宇宙環境の影響を受けやすい

位置にいたことから宇宙環境による不具合である可能性が高いということで原因追及がなされた高エネルギー粒子が引き起こす代表的な衛星不具合現象として3つ(表面帯電内部帯電SEUシングルイベントバーンアウトSEL)の可能性を検討した

チームの報告書によると磁気圏尾部からの熱電子の流入による放電が原因であったと結論付けられたGalaxy15衛星の近くにはGOES-11衛星が位置していたがGOES-11衛星には不具合を発生しておらず本現象は局所的な現象と推測される

衛星開発段階における対策 JAXAの不具合解析の結論

bull 2002年~2008年に運用された11機の衛星不具合を解析 宇宙環境による不具合は偶発故障のみ(全体の約15)確率的には想定範囲内ではあるがその影響を最小限とするためディレーティング運用モード寿命についての研究に取り組む

bull 設計基準試験の充実検証確認の強化技術成熟度(TRL)評価の徹底各々の境界制約条件の明示化等により検証不足抜けの防止有効なピアレビューに結びつける

冗長系(同じハードウェア機能の冗長)柔軟性の設計(ソフトハードの対応)

bull 従来の故障が起きないようにする設計に対してGOSAT(いぶき)では重要部

品を二重化することにより故障する可能性は上がるが故障しても衛星バスの運用や観測が続行できる可能性がより高くなるように設計した

運用における対応

bull 宇宙天気監視ーロケット打ち上げ及び宇宙飛行士支援 数日前に今後の宇宙環境の推移を把握(MXレベルのフレアの発生確率)

bull X線の増加で太陽フレア発生を検知したら高エネルギー粒子の発生をいつまで 気を付ければ良いか判断(発生位置で大凡を推定するが課題は多い) SPEが発生した場合(特に10MeV以上100MeV 以上の陽

子)最大値フラックス値の推定 ピーク値を予測(特に閾値に近くなった時に重要)

bull 衛星運用 bull 太陽フレア磁気嵐警報(X線陽子及びkpが閾値を超えた

時に警報を発信)2003年10月より運用開始 bull 内部帯電警報(2日後の静止軌道上の高エネルギー電子(>1

Me) の増加を予測し 閾値を超えた時に警報を発信) 2004年4月より運用開始

話の流れ

技術データ取得装置(TEDA)の概要と成果 bull 主な成果 bull 不具合解析例

宇宙天気のリスクと対策 bull 宇宙環境による衛星システムへの影響 bull 宇宙環境を原因とする不具合の割合推移部位 bull 静止軌道不具合 bull 対策

今後必要な観測項目

まとめ

計測対象計測項目 計測対象 粒径100μm以上のデブリメテオロイド 計測項目 デブリ粒径衝突頻度

基本原理

厚さ約125μmの絶縁性のポリイミドフィルム表面に 100μm周期で直線状の細長い導線(太さ50μm)パターンを形成導線の破断を電気的に検知することによりデブリの衝突(貫通)を検知する破断した導線の数導線の幅ピッチからデブリサイズを計測する

微小デブリ計測技術の概要

衝突孔の例(衝突試験ISAS) - 衝突粒子 SUS 309 microm - 衝突速度 52 kms

HTV5号機によるセンサ機能のフライト実証

35cm

46cm

FY2013機能実証モデル

検出線幅 50 μm 検出線間隔 100 μm フィルム厚 lt 20 μm 有感領域 30times33cm 検出線総数 3300本

サイズ 50times39times4 cm (筐体を含む)

重量 約15kg(筐体を含む)

消費電力 2W(最大4W)(他センサ含む)

テレメトリ 02 bps

宇宙環境観測装置KASPERの一部としてデブリセンサSDMを搭載 FY2013に製作開始今年8月に打ち上げ予定)

まとめ(その1)

衛星不具合の主な原因は帯電放電シングルイベント放射線損傷である今後デブリ環境が重要になると予測される

静止軌道では商用衛星が多く運用されており宇宙環境の変動把握は重要この領域で運用する衛星が気を付けなければいけない環境として

1太陽フレアに伴う高エネルギー粒子 2太陽活動下降期による静止軌道電子の増加 3磁気嵐に伴う磁気圏尾部から注入する粒子 などがあげられる

まとめ(その2)

不具合軽減の取り組み bull 開発時は宇宙環境条件(トータルフラックス及び最悪条

件)を明確にし設計(冗長系柔軟性の設計ディレーティング及び運用モード寿命について研究)試験の充実検証の充実を図る

bull 運用段階に入ったならば宇宙環境を監視し警報等で故障を防ぐ

予測課題 bull 太陽フレアに伴う高エネルギー粒子発生後フラックス

ピーク値の推定

bull 衛星により不具合の起きる閾値は異なるが閾値をこえる急激な電子フラックスの増加と継続時間の予測

bull 局所的な磁気嵐に伴う磁気圏尾部から注入する粒子

宇宙環境グループは宇宙ステーションと衛星プロジェクトの安全な遂行に貢献しています

ご静聴ありがとうございました

補足資料

不具合原因の推移 bull 宇宙天気を大きく左右する要因の1つとして約11年の太陽活動変化が挙げられる

bull 太陽活動下降時期(太陽変動CME)と極大期(フレアCME)に衛星で不具合が増加するそれにより不具合原因の割合が変わる

-Koons et al The Impact of the Space Environment on Space Systems Aerospace Corp report no TR-99(1670)-1 20 July 1999 -2009 preliminary study (unpublished)

何故不具合は減らないか

bull 部品 放射線に対する感受性が高くなっている bull 微細化が進み同時にフォールトするノードが増え同時にエ

ラーとなる論理ノードやメモリセルが増加する微細化によってメモリセルは小さくなるので記憶容量当たりでみるとエラーの発生率は下がるしかし半導体チップの記憶容量やゲート数が増えるので半導体チップ当たりのエラー発生率は微細化とともに上昇するまた蓄積電荷が小さくなり感受性が高くなってきている

bull システム 大型化大電力化運用長期化 bull 1990年代末以降静止衛星の電力が10kWレベルになったしか

し設計検証技術データ蓄積が遅れている改善されつつあると推測される

放射線による影響の概要

粒子 エネルギー又はLET

代表的な影響

陽子 100keV-1MeV 1-10MeV 10-100MeV gt50MeV

表面損傷 表面材料と太陽電池の損傷 放射線損傷(電離非電離損傷の両方)センサーへのノイズ シングルイベント効果

電子 10-100keV gt100keV gt1MeV

表面帯電 深部帯電現象(deep-dielectric charging)センサーへのノイズ太陽電池の損傷 放射線損傷(電離)

重イオン gt1MeV-cm2mg シングルイベント効果

注エネルギー及びLETは個々の部品等により異なりますあくまでも目安です

耐放射線設計手順

軌道条件

ミッション期間

環境条件設定

トータルドーズの予測

1MeV電子換算被曝算出

NIELの換算

LETフルエンス算出

陽子フルエンス算出

対  策  の  検  討

対  策  の  検  討

対  策  の  検  討

放射線による劣化率予測

劣化率予測 特性予測

耐性データ

放射線による劣化率予測

耐性データ

劣化率予測アレイ出力劣化予測

感受性データ

シングルイベント発生率予測 致命度解析

衛星内質量分布

(2)

部品材料の選定

他の要因による劣化率予測

(2)(2) (3)

回路設計等NO

OK

アレイ構造 セル選定

他の要因による劣化率予測 アレイ設計(2)

(2) (2) (2) (3)

衛星内質量分布 部品選定(2)

(2) (2)(3)

NO

OK

NO

OK

(1) 環境モデルマージを含む(2) 部品レベルの検討(3) アセンブリレベルでの検討(4) 設計マージン環境モデル   マージを含め大丈夫か

トータルドーズ

太陽電池アレイの劣化

シングルイベント効果

回路設計

補足放射線太陽宇宙線銀河宇宙線

NEILを用いたダメージファクターの算出

対  策  の  検  討

放射線による劣化率予測

劣化率予測 特性予測

耐性データ

(2)

部品材料の選定

他の要因による劣化率予測

(2)(2) (3)

回路設計等NO

OK

衛星内質量分布 半導体デバイスの変位損傷

(1)

(4)

(4)

(4)

(4)

各軌道における放射線環境

1E+10

1E+11

1E+12

1E+13

1E+14

1E+15

1E+16

1E+17

1E+18

1E+19

1E+20

001 010 100 1000

捕捉

電子

の積

分フ

ルエ

ンス

[m

2 ]

エネルギー[MeV]

各軌道における電子捕捉積分フルエンス(3年間)

LEO

EOS GEO

MEO

GTO

GEO 軌道傾斜角 0deg 高度36000km GTO 軌道傾斜角 18deg 高度 360km~36000km MEO 軌道傾斜角 51deg 高度 10000km EOS 軌道傾斜角 98deg 高度705km LEO 軌道傾斜角 29deg 高度 600km

1E+12

1E+13

1E+14

1E+15

1E+16

1E+17

1E+18

1E+19

1E+20

01 10 100 1000

捕捉

陽子の

積分フルエン

ス[

m2 ]

エネルギー[MeV]

各軌道における捕捉陽子積分フルエンス(3年間)

MEO

GTO

GEO

EOS LEO

放射線による部品材料の影響

総照射線量 (TIDTotal Ionising Dose )

電離損傷

バイポーラTrの電流増幅率の低下リーク電流の増大

γ線で評価

トータルドーズ効果

変位損傷 (DDDisplacement Damage )または 非イオン化エネルギー損失 (NIELNon-Ionising Energy

Loss )

変位損傷(格子欠陥の生成)

電荷輸送効率の低下 (CCD)太陽電池の効率低下等

電子陽子により評価

シングルイベント効果

1個の荷電粒子の入射により発生する誤動作

ソフト(Latch-Up Burnout) エラー又は ソフト (Upset) エラー

陽子及び重イオンで評価

トータルドーズ効果

+ - + + - + - + - - + + + + -

ゲート酸化膜

電離

格子欠陥

正電荷捕獲

+ 正孔 - 電子

電極

(Silicon oxidenitride)

荷電粒子

反跳原子

ゲート絶縁膜中に電荷が蓄積することによるMOSトランジスタのしきい電圧(MOSトランジスタがオフからオンに変化するゲート電圧)の変化をもたらすただ

し最近の最先端チップはゲート絶縁膜がきわめて薄くなっているこのためゲート絶縁膜よりもフィールド絶縁膜(隣接するトランジスタを電気的に分離する絶縁膜)での電荷蓄積が相対的には大きな問題になってきている」

シングルイベント効果

メモリセルはNチャンネルとPチャンネルMOSFETより構成されメモリ情報は回路ノード12の電位の

高低により記録している空乏層の広がっているPN接合12の領域に

重イオンが入射した場合電荷の発生と空乏層内への少数キャリアの収集が起こるこの収集電荷量が回路の耐量を越えた場合(c)に示すように反転が起こる(ソフトエラー)一方pウエル-N基板接

合の空乏層内に電荷収集量が起こりえる耐性を越えると寄生的に存在するPNPNサイリスタ構造がオ

ンし電源と基板間に大電流が流れる状態が生じる(ラッチアップ)

シングルイベントメカニズム -陽子と重イオンの違い-

エラー発生率の計算

線エネルギー付与(LET) (linear energy transfer)

電離性放射線が物質中を通過する際飛程の単位長さ当りに平均して失うエネルギーをいう各種の放射線のうちX線γ線はLETが小さいので低LETといいα線中性子線その他重イオン核分裂破片のLETは大きいので高LETという MeVμmMeV(gcm2)やMeV(mgcm2)で表される

南大西洋異常(SAA) bull 地球の自転軸と磁気軸のずれ

darr bull 放射線帯が自転軸に対して非

対称

bull 南大西洋上空では放射線帯内帯が低高度に落ちてきているこの領域を南大西洋異常域(SAA South Atlantic Anomaly)と呼ぶ

bull 地球観測衛星ではSAAで放射線帯陽子の影響を受ける

Single Event Lachup

シングルイベントと陽子分布

MOS-1衛星(高度909km軌道傾斜角99度)で発生したシングルイベントと 陽子30MeV以上の等高線マップを重ね合わせた結果

NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)

bull 入射粒子が電離によらず与える損傷非イオン化損失

低軌道での電子フラックスと 不具合の発生場所

南大西洋異常(SAA)と極の角

高度800kmでの電子フラックス図極の角(polar horn)とSAAを示す

太陽粒子線 bull 太陽高エネルギー粒子線(SPE Solar Proton Events)は太陽フレア とコロナガス噴出 (CMECoronal Mass Ejections )により引き起こされる bull フレアのスペクトルは可変であるためあるエネルギー域における最悪状態イベントは必ずしも別のエネルギー域における最悪条件ではない 1972年8月のイベント 10~70MeVの粒子が最も多かった 1989年10のイベント 1972年8月のイベントに比べ低エネルギー領域 高エネルギー領域が明らかに激しかった

フルエンス 105 to 1011 cm-2

変動期間 1日から数日

ldquoBastiliardquo Solar Event 14 July 2000

Carrington Flare

84

(LW Townseed) Carrington Flare(1859年) Carrington Flare による30MeV以上トータルFluenceを118times109cm-2で規格化 ~1989年フレアの約13倍(シングルイベントの評価で使用) ~1991年フレアの約9倍 2012年7月23日にキャリントンイベントとほぼ同等の爆発現象が太陽あるいは太陽の周りで起きていたということがNASAの太陽観測衛星「STEREO」の解析から発表された

放射線対策 bull 放射線シールドを付加し放射線を減衰させる

bull 放射線耐性の強い部品(SOI(Silicon On Insulator)技術による耐放射線部品)材料に変更する

bull 放射線による損傷を吸収するために回路または構造上のマージンを持たせる bull ソフト的なエラーに対しては エラー検出訂正機能や多数決

機能等でソフト的エラーが起きてもシステムが機能するようにしたフォールトトレラント機能を付けて対処する ICのハード的故障に対しては ラッチアップ耐性の強い部品を選定するしかないが 電流制限回路を付ける対策も採られる パワーMOSFETに対しては部品選定 電源電圧を規格値の半分以下に落とす等の対策を採る

SOI技術

表面帯電への対策例

表面の物体間を導線で結線する

太陽電池のカバーガラスを導電性被膜付き(酸化インジウムITO)にする

熱制御材表面にITOを被覆する

熱制御材は高誘電率のテフロンの使用を避け 高伝導度耐環境性に優れたブラックカプトンを使用

イオンエンジンの中和器で能動帯電制御

内部帯電への対策例

アルミで3mm厚さに相当するシールドで囲む(Faraday Cage)

テフロンやカプトンなどの誘電体材料の内部での使用量を最小限に押さえる

回路基板やコンフォーマルコーティングは誘電体なので電流リークパス(1012Ωcmまたは1012Ωcm2

程度)を必ずつける

特にスポット的な放射線シールドの金属材には必ず電流リークパスをつける

帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備

衛星モデル作成

材料物性テーブル設定

宇宙環境パラメータ設定

Converter

転送ディレクトリ 解析データファイル

転送

解析ディレクトリ生成 解析結果 進行状況チェック ファイル操作

MUSCAT 解析エンジン

解析結果 表示

パラメトリックラン

オプション 解析

大型パネル実験(35mtimes11m) クーポンパネル実験(26cmtimes16cm)

環境模擬試験 環境模擬試験

MUSCATに使用する物性値設計標準制定のための知見などを得ることを目的に軌道上の宇宙環境を模擬した地上試験を行っている これらの試験では放電の発生頻度や電圧閾値放電発生による太陽電池パネルや搭載機器への影響を検証している

放射線計測装置の原理

bull その粒子が物質を通過する際のエネルギー損出率が粒子の電荷(原子番号)Zの二乗に比例すること(Bethe-Blochの式)を利用する

S2

E

ΔE Ersquo

S1 S3

  • 宇宙機の設計のための宇宙環境
  • 話の流れ
  • 話の流れ
  • TEDA(技術データ取得装置)(国産部品の宇宙環境での実証の必要性)
  • ETS-VTEDA(技術データ取得装置)誕生前の部品の宇宙実証の背景
  • スライド番号 6
  • スライド番号 7
  • スライド番号 8
  • スライド番号 9
  • 図6太陽黒点数と静止軌道電子 (>04MeV ) Flux の変動 (ETS-V搭載DOMによる観測)
  • スライド番号 11
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの開発(理研東大と共同で宇宙環境計測の充実)
  • ETS-VI(きく6号)打ち上がったがGEOに行かずGTOに留まる
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの成果
  • スライド番号 15
  • スライド番号 16
  • スライド番号 17
  • ADEOS搭載TEDA(世界2番目の異常宇宙線ACR)
  • BBND (ボナー球中性子検出器)
  • スライド番号 20
  • ISS搭載BBNDの成果(約8か月)
  • スライド番号 22
  • MDS-1搭載放射線吸収線量モニタ(SDOM)
  • 放射線帯変動モデルの開発MDS-1 065 MeV 電子フラックス
  • 変動パラメータの選択 (1 cycle solar activity)
  • 変動パラメータ- Tavg の定義-
  • 065MeV 電子 L値-Tavg マップ
  • 13MeV 陽子 L値-Tavg マップ
  • 電子観測とMDS-1モデルの比較
  • 放射線帯フラックスピークの変動
  • 陽子観測とモデルの比較
  • 電子(035~078MeV) 1日の変動予測GOSAT軌道
  • 電子(035~078MeV) 変動の信頼度水準(1日)GOSAT軌道
  • MDS-1 model と AE-8 modelとの比較1日
  • 話の流れ
  • 2003年10月 みどり号の全損事故(複合現象)
  • 衛星帯電の基本式
  • 内部帯電
  • パドルでの帯電放電メカニズム
  • スライド番号 40
  • スライド番号 41
  • スライド番号 42
  • データ中継技術衛星DRTS (こだま)の不具合
  • DRTS ESA スパイクノイズと電子フルエンスの比較(赤の丸が異常検知)
  • 不具合が宇宙環境によるものであるか判断する際のポイント
  • 話の流れ
  • 宇宙天気のリスク-宇宙環境によるシステムへの影響 -
  • NASAの報告-GNampCに注目-
  • NASAの報告(続き)
  • 宇宙環境を原因とする不具合の割合-JAXAの場合-
  • 不具合発生部位の割合 
  • Satellite News Digest -静止軌道不具合-
  • 太陽活動と静止軌道衛星不具合例
  • スライド番号 54
  • スライド番号 55
  • スライド番号 56
  • 衛星開発段階における対策
  • 運用における対応
  • 話の流れ
  • スライド番号 60
  • スライド番号 61
  • まとめ(その1)
  • まとめ(その2)
  • 宇宙環境グループは宇宙ステーションと衛星プロジェクトの安全な遂行に貢献しています
  • 補足資料
  • 不具合原因の推移
  • 何故不具合は減らないか
  • 放射線による影響の概要
  • 耐放射線設計手順
  • 各軌道における放射線環境
  • 放射線による部品材料の影響
  • トータルドーズ効果
  • シングルイベント効果
  • シングルイベントメカニズム-陽子と重イオンの違い-
  • エラー発生率の計算
  • 線エネルギー付与(LET)(linear energy transfer)
  • 南大西洋異常(SAA)
  • Single Event Lachup
  • シングルイベントと陽子分布
  • NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)
  • 低軌道での電子フラックスと不具合の発生場所
  • 南大西洋異常(SAA)と極の角
  • スライド番号 83
  • Carrington Flare
  • 放射線対策
  • スライド番号 86
  • スライド番号 87
  • 帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備
  • スライド番号 89
  • 放射線計測装置の原理
Page 29: 宇宙機の設計のための宇宙環境の方針から国産部品開発(42品種)が実施された。 . 半導体電子部品は耐放射線性を加味して、人工衛星(特に

電子観測とMDS-1モデルの比較

80 175

放射線帯フラックスピークの変動

80orbits (平穏時) 175orbits (擾乱時)

陽子観測とモデルの比較

電子(035~078MeV) 1日の変動予測GOSAT軌道

0

50

100

150

200

250

1E+09

1E+10

1E+11

1E+12

1984 1986 1988 1990 1992 1994 1996 1998 2000 2002 2004 2006 2008

Flue

nce[

ecm

2M

eVd

ay]

Launch day

FluenceSSN

Worst case Nov 12003

電子(035~078MeV) 変動の信頼度水準(1日)GOSAT軌道

00

01

02

03

04

05

06

07

08

09

10

88 90 92 94 96 98 100 102 104 106 108 110 112 114

Con

fiden

ce le

vel

Fluence[LOG10 ecm2MeVday]

AE-8 MAX

AE-8 MIN

MDS-1 model と AE-8 model との比較1日

0

20

40

60

80

100

120

140

160

180

1E+09

1E+10

1E+11

1E+12

1995 1997 1999 2001 2003 2005 2007 2009

Flue

nce[

ecm

2M

eVd

ay]

Launch day

Fluence(JAXA)Fluence(AE8)SSN

話の流れ

技術データ取得装置(TEDA)の概要と成果 bull 主な成果 bull 不具合解析例

宇宙天気のリスクと対策 bull 宇宙環境による衛星システムへの影響 bull 宇宙環境を原因とする不具合の割合推移部位 bull 静止軌道不具合 bull 対策

今後必要な観測項目

まとめ

2003年10月 みどり号の全損事故 (複合現象)

極域のオーロラ帯を通過中に電力ハー

ネスを巻いているMLIが高エネルギー電

子により帯電

MLIが接地されていなかったため内側

のハーネスとの間に1kV以上の電位差が

発生

MLI内のガス密度が発電開始に伴う温度

上昇により上昇

ハーネス被覆の傷により露出したハーネ

ス芯線とMLI内面の間で放電発生

単発の放電が隣接するハーネスに飛び火

してハーネス間の短絡

アーク放電が次々と伝搬していきハー

ネス全体が焼損

故障推定箇所 (大電力ハーネス部)

bull詳細報告書は文部科学省 宇宙開発委員会のHP参照

httpwwwmextgojpb_menushingiuchuureports04080901htm

bull 人工衛星の電位 bull 人工衛星は電気的に宇宙に浮いている bull 宇宙機構造体が接地点 bull 宇宙機への流入電流と流出電流のバランスによって宇宙機電位が決まる bull 各電流成分は宇宙機電位Vの関数として表され定常状態では式を下式を満たす

衛星帯電の基本式

( ) dtIIIIIIIC

V

dtdVCVIVIVIVIVIVIVI

BPHBSESISEIE

BPHBSESISEIE

int +++++minus=

==+++++minus

1

0)]()()()()()([)(

入射電子電流 ( E I )

後方散乱電子電流 ( BSE I )

入射正イオン電流 ( I I )

入射電子による二次電子電流 ( SE I )

太陽光

入射正イオンによる 二次電子放出電流 ( SI I )

光電子放出電流( PH I )

電荷ビーム放出電流(IB)

bull内部帯電は衛星の外壁を貫通した放射線帯外帯の01MeV以上の電子が内部に侵入

bull基板間や同軸ケーブルの線間等の容量(コンデンサ)や誘電体に帯電 bull接地されてない導体片に帯電

bullその耐圧電圧を超えると その耐圧の弱い箇所 (材質の欠陥や針状突起など の箇所)で放電して故障に至る

内部帯電

(あるエネルギ-以上の粒子が入射光電子なし)

NASA-HDBK-4002より

パドルでの帯電放電メカニズム

宇宙環境の影響により 衛星がマイナス電位に帯電

高エネルギー電子等により カバーガラスはプラスに帯電 衛星とカバーガラスに電位差が生じる

電位差が大きくなると トリプルジャンクション近傍 の電界強度が増大していく

トリプルジャンクションで放電が発生する カバーガラスの帯電が緩和される

+ + + + + + + + + + + + + +

+ + + +

カバーガラス

太陽電池セル

基板(衛星構体)

トリプルジャンクション rArr 導体絶縁体宇宙環境の接点

持続放電

Substrate

Satellite Load

insulation sheet

Solar array cell

Cover glass

Arc current

Electrode

持続放電は衛星の電力消失につながる 持続放電のモードは以下の2通りがある

Substrate

Satellite Load

insulation sheet

Solar array cell

Cover glass

Arc current

Electrode

Solar array cell

Cover glass

セル-基板間短絡 セル間短絡

放電によって太陽電池セルと基板が短絡する 短絡によって負荷に電力が供給されなくなる

放電によって太陽電池セルとセルが短絡する 短絡によって負荷に電力が供給されなくなる

サブストーム(高エネルギー電子)との遭遇

+ + + + + + + +

二次電子光電子による絶縁体の帯電(局所帯電)

電位差発生

逆電位勾配

衛星構体が負に帯電(絶対帯電)

電位

時間

サブストーム

衛星構体 VS

乖離電圧 ∆V

カバーガラスVcg

0 プラズマ電位

軌道別帯電放電現象

トリプルジャンクションで 放電発生

放電発生

静止軌道

+ + + + + + + +

逆電位勾配

軌道帯電放電現象

トリプルジャンクションで 放電発生

極軌道 オーロラ電子(高エネルギー電子)との遭遇

プラズマ流入出による絶縁体の帯電(局所帯電)

電位差発生

衛星構体が負に帯電(絶対帯電)

放電発生

電位

時間

オーロラ電子

衛星構体 乖離電圧 ∆V

カバーガラス

0 プラズマ電位

データ中継技術衛星DRTS (こだま)の不具合

2002年10月 9日 静止軌道に打ち上げ

2003年

3月24日 406JST変化率異常モニタ故障検出(FDIR)

が動作しA系からB系に切り替わった

3月25日 410JSTにB系のみ異常検知

4月 3日 327JSTにB系のみ異常検知

5月28日 124JSTにB系のみ異常検知

6月 6日1537JSTにB系のみ異常検知

ESA

DRTS ESA スパイクノイズと 電子フルエンスの比較(赤の丸が異常検知)

larr閾値

この事実を基に静止軌道における内部帯電警報システムを構築 2004年4月より運用開始

不具合が宇宙環境によるものであるか 判断する際のポイント

不具合の発生した時刻に太陽フレアや磁気嵐等の宇宙天気の大きな変動が起きていれば不具合に関係している可能性が高い但し帯電など放射線の積算的効果の伴う現象については発生から1週間位さかのぼり環境がどのように推移してきたかを考慮する必要がある

磁気嵐が起きると静止軌道に急激な粒子の増加現象が起きこれにより衛星帯電が引き起こされたりする(予測に利用可能)

地方時(真夜中や朝方か)や季節(春秋)を考慮する

低軌道衛星においてはSAA外帯のrdquo角ldquo及び極通過時に不具合

が起きやすいので衛星の位置(緯度経度)が重要

事象を把握する上で単発現象か数回起きている現象か周期

(時間同じ軌道等)的に発生している現象か

話の流れ

技術データ取得装置(TEDA)の概要と成果 bull 主な成果 bull 不具合解析例

宇宙天気のリスクと対策 bull 宇宙環境による衛星システムへの影響 bull 宇宙環境を原因とする不具合の割合推移部位 bull 静止軌道不具合 bull 対策

今後必要な観測項目

まとめ

宇宙天気のリスク -宇宙環境によるシステムへの影響 -

プラズマ (IRI)

帯電 (MUSCAT)

衝突 (AUTODY)

抗力 表面劣化

紫外線X線 中性粒子 (MSIS)

放射線粒子 (AE8AP8JPLSHIELDO

SE-2)

メテオロイドデブリ (MASTER2005

ORDEM)

電離損傷 変位損傷

bull電子回路の劣化 bull光部品の劣化

bull太陽電池セルの劣化

SEU (CREME96)

bullデータエラー bull画像ノイズ

bullシステム停止 bull回路損傷

bull熱的電気的光学的特性の劣化

bull構造の劣化 bullコンタミ

電磁パルス bull電源出力低下

bull損傷

bullトルク bull軌道落下

bull構造 損傷 bull減圧

bull電磁パルス

NASAの報告 -GNampCに注目-

1974年から1994年に起きたNASAと空軍の衛星故障の内20~25が宇宙環境に起因していたと報告

1990年から2001年に米国欧州カナダ日本の企業や政府機関が開発した衛星を調べた過去の宇宙ミション損失の大部分はロケットの失敗であったが1998年衛星損失の大部分は軌道上の衛星障害となっている多くの最近の異常は太陽電池アレイ及びバッテリの危険が増加している静止軌道通信衛星の設計寿命はこのサブシステムの故障の危険が増加している

喪失等の大きな誘導制御(GNampC)の不具合に注目 GNampC不具合の内宇宙環境による 不具合は約3と報告されている

軌道上衛星のタイプ別数

NASAの報告(続き)

衛星設計寿命における不具合発生時期 事故率と軌道

軌道別の衛星数 サブシステム不具合

宇宙環境を原因とする不具合の割合 -JAXAの場合-

2002年~2008年に運用された軌道上不具合情報が比較的充実している11衛星(利用衛星7機科学衛星4機)の結果宇宙環境によるも

のは約15過去のデータよりも割合が少ない

合計83件 合計35件

(1)利用衛星 (2)科学衛星

設計検討 不足 48

製造不良 8

軌道上環境 17

偶発故障 6

調査中 13

原因不明 8

設計検討

不足 61

製造不良 4

軌道上環境 11

偶発故障 6

調査中 9

原因不明 9

不具合発生部位の割合

不具合発生部位の割合

Brent Robertson Eric Stoneking ( 1990-2001NASA Goddard Space Flight Center )

Satellite News Digest -静止軌道不具合-

Satellite News Digest (SND) (http wwwsqt-indexcouk) で1997年~2009年の期間に静止軌道で95件の不具合が報告されている その内運用ミスや設計ミスなどを除くと32件(約33)は宇宙環境によるものであった 過去のデータより割合が多い

Choiら1)はこれら不具合の地方時と季節依存性を確認した その結果2100LT~900LTで約72の不具合が発生し900LT~2100LTは9件(約28)であった またこの9件は全て姿勢制御の不具合だった 静止軌道衛星不具合のほとんどは真夜中と朝方で起きており磁気嵐に伴い磁気圏尾部から注入した粒子による表面帯電が不具合の主原因と結論づけている

1) Ho-sung Choi et al Analysis of GEO spacecraft anomalies Space weather relationships Space Weather Vol 9 S06001

太陽活動と静止軌道衛星不具合例

ANIK-E1E2

ANIK-E1

複数の衛星で故障

Galaxy-15

帯電放電不具合 -ANIK-E1amp2Telstar401-

Jan 1994 ANIK-E1 amp E2事故時の環境 - Joe H Allen

1週間

太陽活動下降時期の電子増加

2MeV以上電子

copyNOAA Web

フラックスが3桁急増

Jan 1997 Telstar401事故時の環境

静止軌道の急激な電子増加

太陽極大期太陽フレアによる衛星障害 - 2003年10月~11月-

10486981048698 永久故障 4 10486981048698 安全モード又は運用を一時停止 31 10486981048698 データ内容の「誤り」の増加搭載コンピュータの誤動作 5

httpwwwsat-ndcomfailures等のデータによる 合計 40件

-Barbieri and Mahmot

米国極軌道気象衛星NOAA-17の改良型マイクロ波観測装置AMSU-A1 (Advanced Microwave Sounding Unit)のスキャナーが永久故障 米国気象衛星GOES -8号のX線センサがOFFになり復帰しなくなった

e-birdに深刻な不具合が発生 不具合は20本のトランスポンダ全てに影響

火星周回中の探査機「マーズオデッセイ (Mars Odyssey)」の観測機器放射線観測装置「Martian Radiation Environment Experiment (MARIE)」が太陽活動の影響により10月28日から適切に作動しなくなった データ中継技術衛星(DRTS)「こだま」 太陽捕捉モードに移行

太陽陽子

帯電放電不具合-Galaxy15(局所的的現象)- 2

5 M

eV

65

MeV

11

5 M

eV

GOES 14 ----- GOES 15 ----- GOES 11 -----

Satellite Locations

Galaxy 15 anomaly

2010年4月5日9時48分UTCは磁気嵐及びCMEが発生するなど宇宙環境は非常に荒れていたGalaxy15衛星は真夜中側に位置し宇宙環境の影響を受けやすい

位置にいたことから宇宙環境による不具合である可能性が高いということで原因追及がなされた高エネルギー粒子が引き起こす代表的な衛星不具合現象として3つ(表面帯電内部帯電SEUシングルイベントバーンアウトSEL)の可能性を検討した

チームの報告書によると磁気圏尾部からの熱電子の流入による放電が原因であったと結論付けられたGalaxy15衛星の近くにはGOES-11衛星が位置していたがGOES-11衛星には不具合を発生しておらず本現象は局所的な現象と推測される

衛星開発段階における対策 JAXAの不具合解析の結論

bull 2002年~2008年に運用された11機の衛星不具合を解析 宇宙環境による不具合は偶発故障のみ(全体の約15)確率的には想定範囲内ではあるがその影響を最小限とするためディレーティング運用モード寿命についての研究に取り組む

bull 設計基準試験の充実検証確認の強化技術成熟度(TRL)評価の徹底各々の境界制約条件の明示化等により検証不足抜けの防止有効なピアレビューに結びつける

冗長系(同じハードウェア機能の冗長)柔軟性の設計(ソフトハードの対応)

bull 従来の故障が起きないようにする設計に対してGOSAT(いぶき)では重要部

品を二重化することにより故障する可能性は上がるが故障しても衛星バスの運用や観測が続行できる可能性がより高くなるように設計した

運用における対応

bull 宇宙天気監視ーロケット打ち上げ及び宇宙飛行士支援 数日前に今後の宇宙環境の推移を把握(MXレベルのフレアの発生確率)

bull X線の増加で太陽フレア発生を検知したら高エネルギー粒子の発生をいつまで 気を付ければ良いか判断(発生位置で大凡を推定するが課題は多い) SPEが発生した場合(特に10MeV以上100MeV 以上の陽

子)最大値フラックス値の推定 ピーク値を予測(特に閾値に近くなった時に重要)

bull 衛星運用 bull 太陽フレア磁気嵐警報(X線陽子及びkpが閾値を超えた

時に警報を発信)2003年10月より運用開始 bull 内部帯電警報(2日後の静止軌道上の高エネルギー電子(>1

Me) の増加を予測し 閾値を超えた時に警報を発信) 2004年4月より運用開始

話の流れ

技術データ取得装置(TEDA)の概要と成果 bull 主な成果 bull 不具合解析例

宇宙天気のリスクと対策 bull 宇宙環境による衛星システムへの影響 bull 宇宙環境を原因とする不具合の割合推移部位 bull 静止軌道不具合 bull 対策

今後必要な観測項目

まとめ

計測対象計測項目 計測対象 粒径100μm以上のデブリメテオロイド 計測項目 デブリ粒径衝突頻度

基本原理

厚さ約125μmの絶縁性のポリイミドフィルム表面に 100μm周期で直線状の細長い導線(太さ50μm)パターンを形成導線の破断を電気的に検知することによりデブリの衝突(貫通)を検知する破断した導線の数導線の幅ピッチからデブリサイズを計測する

微小デブリ計測技術の概要

衝突孔の例(衝突試験ISAS) - 衝突粒子 SUS 309 microm - 衝突速度 52 kms

HTV5号機によるセンサ機能のフライト実証

35cm

46cm

FY2013機能実証モデル

検出線幅 50 μm 検出線間隔 100 μm フィルム厚 lt 20 μm 有感領域 30times33cm 検出線総数 3300本

サイズ 50times39times4 cm (筐体を含む)

重量 約15kg(筐体を含む)

消費電力 2W(最大4W)(他センサ含む)

テレメトリ 02 bps

宇宙環境観測装置KASPERの一部としてデブリセンサSDMを搭載 FY2013に製作開始今年8月に打ち上げ予定)

まとめ(その1)

衛星不具合の主な原因は帯電放電シングルイベント放射線損傷である今後デブリ環境が重要になると予測される

静止軌道では商用衛星が多く運用されており宇宙環境の変動把握は重要この領域で運用する衛星が気を付けなければいけない環境として

1太陽フレアに伴う高エネルギー粒子 2太陽活動下降期による静止軌道電子の増加 3磁気嵐に伴う磁気圏尾部から注入する粒子 などがあげられる

まとめ(その2)

不具合軽減の取り組み bull 開発時は宇宙環境条件(トータルフラックス及び最悪条

件)を明確にし設計(冗長系柔軟性の設計ディレーティング及び運用モード寿命について研究)試験の充実検証の充実を図る

bull 運用段階に入ったならば宇宙環境を監視し警報等で故障を防ぐ

予測課題 bull 太陽フレアに伴う高エネルギー粒子発生後フラックス

ピーク値の推定

bull 衛星により不具合の起きる閾値は異なるが閾値をこえる急激な電子フラックスの増加と継続時間の予測

bull 局所的な磁気嵐に伴う磁気圏尾部から注入する粒子

宇宙環境グループは宇宙ステーションと衛星プロジェクトの安全な遂行に貢献しています

ご静聴ありがとうございました

補足資料

不具合原因の推移 bull 宇宙天気を大きく左右する要因の1つとして約11年の太陽活動変化が挙げられる

bull 太陽活動下降時期(太陽変動CME)と極大期(フレアCME)に衛星で不具合が増加するそれにより不具合原因の割合が変わる

-Koons et al The Impact of the Space Environment on Space Systems Aerospace Corp report no TR-99(1670)-1 20 July 1999 -2009 preliminary study (unpublished)

何故不具合は減らないか

bull 部品 放射線に対する感受性が高くなっている bull 微細化が進み同時にフォールトするノードが増え同時にエ

ラーとなる論理ノードやメモリセルが増加する微細化によってメモリセルは小さくなるので記憶容量当たりでみるとエラーの発生率は下がるしかし半導体チップの記憶容量やゲート数が増えるので半導体チップ当たりのエラー発生率は微細化とともに上昇するまた蓄積電荷が小さくなり感受性が高くなってきている

bull システム 大型化大電力化運用長期化 bull 1990年代末以降静止衛星の電力が10kWレベルになったしか

し設計検証技術データ蓄積が遅れている改善されつつあると推測される

放射線による影響の概要

粒子 エネルギー又はLET

代表的な影響

陽子 100keV-1MeV 1-10MeV 10-100MeV gt50MeV

表面損傷 表面材料と太陽電池の損傷 放射線損傷(電離非電離損傷の両方)センサーへのノイズ シングルイベント効果

電子 10-100keV gt100keV gt1MeV

表面帯電 深部帯電現象(deep-dielectric charging)センサーへのノイズ太陽電池の損傷 放射線損傷(電離)

重イオン gt1MeV-cm2mg シングルイベント効果

注エネルギー及びLETは個々の部品等により異なりますあくまでも目安です

耐放射線設計手順

軌道条件

ミッション期間

環境条件設定

トータルドーズの予測

1MeV電子換算被曝算出

NIELの換算

LETフルエンス算出

陽子フルエンス算出

対  策  の  検  討

対  策  の  検  討

対  策  の  検  討

放射線による劣化率予測

劣化率予測 特性予測

耐性データ

放射線による劣化率予測

耐性データ

劣化率予測アレイ出力劣化予測

感受性データ

シングルイベント発生率予測 致命度解析

衛星内質量分布

(2)

部品材料の選定

他の要因による劣化率予測

(2)(2) (3)

回路設計等NO

OK

アレイ構造 セル選定

他の要因による劣化率予測 アレイ設計(2)

(2) (2) (2) (3)

衛星内質量分布 部品選定(2)

(2) (2)(3)

NO

OK

NO

OK

(1) 環境モデルマージを含む(2) 部品レベルの検討(3) アセンブリレベルでの検討(4) 設計マージン環境モデル   マージを含め大丈夫か

トータルドーズ

太陽電池アレイの劣化

シングルイベント効果

回路設計

補足放射線太陽宇宙線銀河宇宙線

NEILを用いたダメージファクターの算出

対  策  の  検  討

放射線による劣化率予測

劣化率予測 特性予測

耐性データ

(2)

部品材料の選定

他の要因による劣化率予測

(2)(2) (3)

回路設計等NO

OK

衛星内質量分布 半導体デバイスの変位損傷

(1)

(4)

(4)

(4)

(4)

各軌道における放射線環境

1E+10

1E+11

1E+12

1E+13

1E+14

1E+15

1E+16

1E+17

1E+18

1E+19

1E+20

001 010 100 1000

捕捉

電子

の積

分フ

ルエ

ンス

[m

2 ]

エネルギー[MeV]

各軌道における電子捕捉積分フルエンス(3年間)

LEO

EOS GEO

MEO

GTO

GEO 軌道傾斜角 0deg 高度36000km GTO 軌道傾斜角 18deg 高度 360km~36000km MEO 軌道傾斜角 51deg 高度 10000km EOS 軌道傾斜角 98deg 高度705km LEO 軌道傾斜角 29deg 高度 600km

1E+12

1E+13

1E+14

1E+15

1E+16

1E+17

1E+18

1E+19

1E+20

01 10 100 1000

捕捉

陽子の

積分フルエン

ス[

m2 ]

エネルギー[MeV]

各軌道における捕捉陽子積分フルエンス(3年間)

MEO

GTO

GEO

EOS LEO

放射線による部品材料の影響

総照射線量 (TIDTotal Ionising Dose )

電離損傷

バイポーラTrの電流増幅率の低下リーク電流の増大

γ線で評価

トータルドーズ効果

変位損傷 (DDDisplacement Damage )または 非イオン化エネルギー損失 (NIELNon-Ionising Energy

Loss )

変位損傷(格子欠陥の生成)

電荷輸送効率の低下 (CCD)太陽電池の効率低下等

電子陽子により評価

シングルイベント効果

1個の荷電粒子の入射により発生する誤動作

ソフト(Latch-Up Burnout) エラー又は ソフト (Upset) エラー

陽子及び重イオンで評価

トータルドーズ効果

+ - + + - + - + - - + + + + -

ゲート酸化膜

電離

格子欠陥

正電荷捕獲

+ 正孔 - 電子

電極

(Silicon oxidenitride)

荷電粒子

反跳原子

ゲート絶縁膜中に電荷が蓄積することによるMOSトランジスタのしきい電圧(MOSトランジスタがオフからオンに変化するゲート電圧)の変化をもたらすただ

し最近の最先端チップはゲート絶縁膜がきわめて薄くなっているこのためゲート絶縁膜よりもフィールド絶縁膜(隣接するトランジスタを電気的に分離する絶縁膜)での電荷蓄積が相対的には大きな問題になってきている」

シングルイベント効果

メモリセルはNチャンネルとPチャンネルMOSFETより構成されメモリ情報は回路ノード12の電位の

高低により記録している空乏層の広がっているPN接合12の領域に

重イオンが入射した場合電荷の発生と空乏層内への少数キャリアの収集が起こるこの収集電荷量が回路の耐量を越えた場合(c)に示すように反転が起こる(ソフトエラー)一方pウエル-N基板接

合の空乏層内に電荷収集量が起こりえる耐性を越えると寄生的に存在するPNPNサイリスタ構造がオ

ンし電源と基板間に大電流が流れる状態が生じる(ラッチアップ)

シングルイベントメカニズム -陽子と重イオンの違い-

エラー発生率の計算

線エネルギー付与(LET) (linear energy transfer)

電離性放射線が物質中を通過する際飛程の単位長さ当りに平均して失うエネルギーをいう各種の放射線のうちX線γ線はLETが小さいので低LETといいα線中性子線その他重イオン核分裂破片のLETは大きいので高LETという MeVμmMeV(gcm2)やMeV(mgcm2)で表される

南大西洋異常(SAA) bull 地球の自転軸と磁気軸のずれ

darr bull 放射線帯が自転軸に対して非

対称

bull 南大西洋上空では放射線帯内帯が低高度に落ちてきているこの領域を南大西洋異常域(SAA South Atlantic Anomaly)と呼ぶ

bull 地球観測衛星ではSAAで放射線帯陽子の影響を受ける

Single Event Lachup

シングルイベントと陽子分布

MOS-1衛星(高度909km軌道傾斜角99度)で発生したシングルイベントと 陽子30MeV以上の等高線マップを重ね合わせた結果

NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)

bull 入射粒子が電離によらず与える損傷非イオン化損失

低軌道での電子フラックスと 不具合の発生場所

南大西洋異常(SAA)と極の角

高度800kmでの電子フラックス図極の角(polar horn)とSAAを示す

太陽粒子線 bull 太陽高エネルギー粒子線(SPE Solar Proton Events)は太陽フレア とコロナガス噴出 (CMECoronal Mass Ejections )により引き起こされる bull フレアのスペクトルは可変であるためあるエネルギー域における最悪状態イベントは必ずしも別のエネルギー域における最悪条件ではない 1972年8月のイベント 10~70MeVの粒子が最も多かった 1989年10のイベント 1972年8月のイベントに比べ低エネルギー領域 高エネルギー領域が明らかに激しかった

フルエンス 105 to 1011 cm-2

変動期間 1日から数日

ldquoBastiliardquo Solar Event 14 July 2000

Carrington Flare

84

(LW Townseed) Carrington Flare(1859年) Carrington Flare による30MeV以上トータルFluenceを118times109cm-2で規格化 ~1989年フレアの約13倍(シングルイベントの評価で使用) ~1991年フレアの約9倍 2012年7月23日にキャリントンイベントとほぼ同等の爆発現象が太陽あるいは太陽の周りで起きていたということがNASAの太陽観測衛星「STEREO」の解析から発表された

放射線対策 bull 放射線シールドを付加し放射線を減衰させる

bull 放射線耐性の強い部品(SOI(Silicon On Insulator)技術による耐放射線部品)材料に変更する

bull 放射線による損傷を吸収するために回路または構造上のマージンを持たせる bull ソフト的なエラーに対しては エラー検出訂正機能や多数決

機能等でソフト的エラーが起きてもシステムが機能するようにしたフォールトトレラント機能を付けて対処する ICのハード的故障に対しては ラッチアップ耐性の強い部品を選定するしかないが 電流制限回路を付ける対策も採られる パワーMOSFETに対しては部品選定 電源電圧を規格値の半分以下に落とす等の対策を採る

SOI技術

表面帯電への対策例

表面の物体間を導線で結線する

太陽電池のカバーガラスを導電性被膜付き(酸化インジウムITO)にする

熱制御材表面にITOを被覆する

熱制御材は高誘電率のテフロンの使用を避け 高伝導度耐環境性に優れたブラックカプトンを使用

イオンエンジンの中和器で能動帯電制御

内部帯電への対策例

アルミで3mm厚さに相当するシールドで囲む(Faraday Cage)

テフロンやカプトンなどの誘電体材料の内部での使用量を最小限に押さえる

回路基板やコンフォーマルコーティングは誘電体なので電流リークパス(1012Ωcmまたは1012Ωcm2

程度)を必ずつける

特にスポット的な放射線シールドの金属材には必ず電流リークパスをつける

帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備

衛星モデル作成

材料物性テーブル設定

宇宙環境パラメータ設定

Converter

転送ディレクトリ 解析データファイル

転送

解析ディレクトリ生成 解析結果 進行状況チェック ファイル操作

MUSCAT 解析エンジン

解析結果 表示

パラメトリックラン

オプション 解析

大型パネル実験(35mtimes11m) クーポンパネル実験(26cmtimes16cm)

環境模擬試験 環境模擬試験

MUSCATに使用する物性値設計標準制定のための知見などを得ることを目的に軌道上の宇宙環境を模擬した地上試験を行っている これらの試験では放電の発生頻度や電圧閾値放電発生による太陽電池パネルや搭載機器への影響を検証している

放射線計測装置の原理

bull その粒子が物質を通過する際のエネルギー損出率が粒子の電荷(原子番号)Zの二乗に比例すること(Bethe-Blochの式)を利用する

S2

E

ΔE Ersquo

S1 S3

  • 宇宙機の設計のための宇宙環境
  • 話の流れ
  • 話の流れ
  • TEDA(技術データ取得装置)(国産部品の宇宙環境での実証の必要性)
  • ETS-VTEDA(技術データ取得装置)誕生前の部品の宇宙実証の背景
  • スライド番号 6
  • スライド番号 7
  • スライド番号 8
  • スライド番号 9
  • 図6太陽黒点数と静止軌道電子 (>04MeV ) Flux の変動 (ETS-V搭載DOMによる観測)
  • スライド番号 11
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの開発(理研東大と共同で宇宙環境計測の充実)
  • ETS-VI(きく6号)打ち上がったがGEOに行かずGTOに留まる
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの成果
  • スライド番号 15
  • スライド番号 16
  • スライド番号 17
  • ADEOS搭載TEDA(世界2番目の異常宇宙線ACR)
  • BBND (ボナー球中性子検出器)
  • スライド番号 20
  • ISS搭載BBNDの成果(約8か月)
  • スライド番号 22
  • MDS-1搭載放射線吸収線量モニタ(SDOM)
  • 放射線帯変動モデルの開発MDS-1 065 MeV 電子フラックス
  • 変動パラメータの選択 (1 cycle solar activity)
  • 変動パラメータ- Tavg の定義-
  • 065MeV 電子 L値-Tavg マップ
  • 13MeV 陽子 L値-Tavg マップ
  • 電子観測とMDS-1モデルの比較
  • 放射線帯フラックスピークの変動
  • 陽子観測とモデルの比較
  • 電子(035~078MeV) 1日の変動予測GOSAT軌道
  • 電子(035~078MeV) 変動の信頼度水準(1日)GOSAT軌道
  • MDS-1 model と AE-8 modelとの比較1日
  • 話の流れ
  • 2003年10月 みどり号の全損事故(複合現象)
  • 衛星帯電の基本式
  • 内部帯電
  • パドルでの帯電放電メカニズム
  • スライド番号 40
  • スライド番号 41
  • スライド番号 42
  • データ中継技術衛星DRTS (こだま)の不具合
  • DRTS ESA スパイクノイズと電子フルエンスの比較(赤の丸が異常検知)
  • 不具合が宇宙環境によるものであるか判断する際のポイント
  • 話の流れ
  • 宇宙天気のリスク-宇宙環境によるシステムへの影響 -
  • NASAの報告-GNampCに注目-
  • NASAの報告(続き)
  • 宇宙環境を原因とする不具合の割合-JAXAの場合-
  • 不具合発生部位の割合 
  • Satellite News Digest -静止軌道不具合-
  • 太陽活動と静止軌道衛星不具合例
  • スライド番号 54
  • スライド番号 55
  • スライド番号 56
  • 衛星開発段階における対策
  • 運用における対応
  • 話の流れ
  • スライド番号 60
  • スライド番号 61
  • まとめ(その1)
  • まとめ(その2)
  • 宇宙環境グループは宇宙ステーションと衛星プロジェクトの安全な遂行に貢献しています
  • 補足資料
  • 不具合原因の推移
  • 何故不具合は減らないか
  • 放射線による影響の概要
  • 耐放射線設計手順
  • 各軌道における放射線環境
  • 放射線による部品材料の影響
  • トータルドーズ効果
  • シングルイベント効果
  • シングルイベントメカニズム-陽子と重イオンの違い-
  • エラー発生率の計算
  • 線エネルギー付与(LET)(linear energy transfer)
  • 南大西洋異常(SAA)
  • Single Event Lachup
  • シングルイベントと陽子分布
  • NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)
  • 低軌道での電子フラックスと不具合の発生場所
  • 南大西洋異常(SAA)と極の角
  • スライド番号 83
  • Carrington Flare
  • 放射線対策
  • スライド番号 86
  • スライド番号 87
  • 帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備
  • スライド番号 89
  • 放射線計測装置の原理
Page 30: 宇宙機の設計のための宇宙環境の方針から国産部品開発(42品種)が実施された。 . 半導体電子部品は耐放射線性を加味して、人工衛星(特に

放射線帯フラックスピークの変動

80orbits (平穏時) 175orbits (擾乱時)

陽子観測とモデルの比較

電子(035~078MeV) 1日の変動予測GOSAT軌道

0

50

100

150

200

250

1E+09

1E+10

1E+11

1E+12

1984 1986 1988 1990 1992 1994 1996 1998 2000 2002 2004 2006 2008

Flue

nce[

ecm

2M

eVd

ay]

Launch day

FluenceSSN

Worst case Nov 12003

電子(035~078MeV) 変動の信頼度水準(1日)GOSAT軌道

00

01

02

03

04

05

06

07

08

09

10

88 90 92 94 96 98 100 102 104 106 108 110 112 114

Con

fiden

ce le

vel

Fluence[LOG10 ecm2MeVday]

AE-8 MAX

AE-8 MIN

MDS-1 model と AE-8 model との比較1日

0

20

40

60

80

100

120

140

160

180

1E+09

1E+10

1E+11

1E+12

1995 1997 1999 2001 2003 2005 2007 2009

Flue

nce[

ecm

2M

eVd

ay]

Launch day

Fluence(JAXA)Fluence(AE8)SSN

話の流れ

技術データ取得装置(TEDA)の概要と成果 bull 主な成果 bull 不具合解析例

宇宙天気のリスクと対策 bull 宇宙環境による衛星システムへの影響 bull 宇宙環境を原因とする不具合の割合推移部位 bull 静止軌道不具合 bull 対策

今後必要な観測項目

まとめ

2003年10月 みどり号の全損事故 (複合現象)

極域のオーロラ帯を通過中に電力ハー

ネスを巻いているMLIが高エネルギー電

子により帯電

MLIが接地されていなかったため内側

のハーネスとの間に1kV以上の電位差が

発生

MLI内のガス密度が発電開始に伴う温度

上昇により上昇

ハーネス被覆の傷により露出したハーネ

ス芯線とMLI内面の間で放電発生

単発の放電が隣接するハーネスに飛び火

してハーネス間の短絡

アーク放電が次々と伝搬していきハー

ネス全体が焼損

故障推定箇所 (大電力ハーネス部)

bull詳細報告書は文部科学省 宇宙開発委員会のHP参照

httpwwwmextgojpb_menushingiuchuureports04080901htm

bull 人工衛星の電位 bull 人工衛星は電気的に宇宙に浮いている bull 宇宙機構造体が接地点 bull 宇宙機への流入電流と流出電流のバランスによって宇宙機電位が決まる bull 各電流成分は宇宙機電位Vの関数として表され定常状態では式を下式を満たす

衛星帯電の基本式

( ) dtIIIIIIIC

V

dtdVCVIVIVIVIVIVIVI

BPHBSESISEIE

BPHBSESISEIE

int +++++minus=

==+++++minus

1

0)]()()()()()([)(

入射電子電流 ( E I )

後方散乱電子電流 ( BSE I )

入射正イオン電流 ( I I )

入射電子による二次電子電流 ( SE I )

太陽光

入射正イオンによる 二次電子放出電流 ( SI I )

光電子放出電流( PH I )

電荷ビーム放出電流(IB)

bull内部帯電は衛星の外壁を貫通した放射線帯外帯の01MeV以上の電子が内部に侵入

bull基板間や同軸ケーブルの線間等の容量(コンデンサ)や誘電体に帯電 bull接地されてない導体片に帯電

bullその耐圧電圧を超えると その耐圧の弱い箇所 (材質の欠陥や針状突起など の箇所)で放電して故障に至る

内部帯電

(あるエネルギ-以上の粒子が入射光電子なし)

NASA-HDBK-4002より

パドルでの帯電放電メカニズム

宇宙環境の影響により 衛星がマイナス電位に帯電

高エネルギー電子等により カバーガラスはプラスに帯電 衛星とカバーガラスに電位差が生じる

電位差が大きくなると トリプルジャンクション近傍 の電界強度が増大していく

トリプルジャンクションで放電が発生する カバーガラスの帯電が緩和される

+ + + + + + + + + + + + + +

+ + + +

カバーガラス

太陽電池セル

基板(衛星構体)

トリプルジャンクション rArr 導体絶縁体宇宙環境の接点

持続放電

Substrate

Satellite Load

insulation sheet

Solar array cell

Cover glass

Arc current

Electrode

持続放電は衛星の電力消失につながる 持続放電のモードは以下の2通りがある

Substrate

Satellite Load

insulation sheet

Solar array cell

Cover glass

Arc current

Electrode

Solar array cell

Cover glass

セル-基板間短絡 セル間短絡

放電によって太陽電池セルと基板が短絡する 短絡によって負荷に電力が供給されなくなる

放電によって太陽電池セルとセルが短絡する 短絡によって負荷に電力が供給されなくなる

サブストーム(高エネルギー電子)との遭遇

+ + + + + + + +

二次電子光電子による絶縁体の帯電(局所帯電)

電位差発生

逆電位勾配

衛星構体が負に帯電(絶対帯電)

電位

時間

サブストーム

衛星構体 VS

乖離電圧 ∆V

カバーガラスVcg

0 プラズマ電位

軌道別帯電放電現象

トリプルジャンクションで 放電発生

放電発生

静止軌道

+ + + + + + + +

逆電位勾配

軌道帯電放電現象

トリプルジャンクションで 放電発生

極軌道 オーロラ電子(高エネルギー電子)との遭遇

プラズマ流入出による絶縁体の帯電(局所帯電)

電位差発生

衛星構体が負に帯電(絶対帯電)

放電発生

電位

時間

オーロラ電子

衛星構体 乖離電圧 ∆V

カバーガラス

0 プラズマ電位

データ中継技術衛星DRTS (こだま)の不具合

2002年10月 9日 静止軌道に打ち上げ

2003年

3月24日 406JST変化率異常モニタ故障検出(FDIR)

が動作しA系からB系に切り替わった

3月25日 410JSTにB系のみ異常検知

4月 3日 327JSTにB系のみ異常検知

5月28日 124JSTにB系のみ異常検知

6月 6日1537JSTにB系のみ異常検知

ESA

DRTS ESA スパイクノイズと 電子フルエンスの比較(赤の丸が異常検知)

larr閾値

この事実を基に静止軌道における内部帯電警報システムを構築 2004年4月より運用開始

不具合が宇宙環境によるものであるか 判断する際のポイント

不具合の発生した時刻に太陽フレアや磁気嵐等の宇宙天気の大きな変動が起きていれば不具合に関係している可能性が高い但し帯電など放射線の積算的効果の伴う現象については発生から1週間位さかのぼり環境がどのように推移してきたかを考慮する必要がある

磁気嵐が起きると静止軌道に急激な粒子の増加現象が起きこれにより衛星帯電が引き起こされたりする(予測に利用可能)

地方時(真夜中や朝方か)や季節(春秋)を考慮する

低軌道衛星においてはSAA外帯のrdquo角ldquo及び極通過時に不具合

が起きやすいので衛星の位置(緯度経度)が重要

事象を把握する上で単発現象か数回起きている現象か周期

(時間同じ軌道等)的に発生している現象か

話の流れ

技術データ取得装置(TEDA)の概要と成果 bull 主な成果 bull 不具合解析例

宇宙天気のリスクと対策 bull 宇宙環境による衛星システムへの影響 bull 宇宙環境を原因とする不具合の割合推移部位 bull 静止軌道不具合 bull 対策

今後必要な観測項目

まとめ

宇宙天気のリスク -宇宙環境によるシステムへの影響 -

プラズマ (IRI)

帯電 (MUSCAT)

衝突 (AUTODY)

抗力 表面劣化

紫外線X線 中性粒子 (MSIS)

放射線粒子 (AE8AP8JPLSHIELDO

SE-2)

メテオロイドデブリ (MASTER2005

ORDEM)

電離損傷 変位損傷

bull電子回路の劣化 bull光部品の劣化

bull太陽電池セルの劣化

SEU (CREME96)

bullデータエラー bull画像ノイズ

bullシステム停止 bull回路損傷

bull熱的電気的光学的特性の劣化

bull構造の劣化 bullコンタミ

電磁パルス bull電源出力低下

bull損傷

bullトルク bull軌道落下

bull構造 損傷 bull減圧

bull電磁パルス

NASAの報告 -GNampCに注目-

1974年から1994年に起きたNASAと空軍の衛星故障の内20~25が宇宙環境に起因していたと報告

1990年から2001年に米国欧州カナダ日本の企業や政府機関が開発した衛星を調べた過去の宇宙ミション損失の大部分はロケットの失敗であったが1998年衛星損失の大部分は軌道上の衛星障害となっている多くの最近の異常は太陽電池アレイ及びバッテリの危険が増加している静止軌道通信衛星の設計寿命はこのサブシステムの故障の危険が増加している

喪失等の大きな誘導制御(GNampC)の不具合に注目 GNampC不具合の内宇宙環境による 不具合は約3と報告されている

軌道上衛星のタイプ別数

NASAの報告(続き)

衛星設計寿命における不具合発生時期 事故率と軌道

軌道別の衛星数 サブシステム不具合

宇宙環境を原因とする不具合の割合 -JAXAの場合-

2002年~2008年に運用された軌道上不具合情報が比較的充実している11衛星(利用衛星7機科学衛星4機)の結果宇宙環境によるも

のは約15過去のデータよりも割合が少ない

合計83件 合計35件

(1)利用衛星 (2)科学衛星

設計検討 不足 48

製造不良 8

軌道上環境 17

偶発故障 6

調査中 13

原因不明 8

設計検討

不足 61

製造不良 4

軌道上環境 11

偶発故障 6

調査中 9

原因不明 9

不具合発生部位の割合

不具合発生部位の割合

Brent Robertson Eric Stoneking ( 1990-2001NASA Goddard Space Flight Center )

Satellite News Digest -静止軌道不具合-

Satellite News Digest (SND) (http wwwsqt-indexcouk) で1997年~2009年の期間に静止軌道で95件の不具合が報告されている その内運用ミスや設計ミスなどを除くと32件(約33)は宇宙環境によるものであった 過去のデータより割合が多い

Choiら1)はこれら不具合の地方時と季節依存性を確認した その結果2100LT~900LTで約72の不具合が発生し900LT~2100LTは9件(約28)であった またこの9件は全て姿勢制御の不具合だった 静止軌道衛星不具合のほとんどは真夜中と朝方で起きており磁気嵐に伴い磁気圏尾部から注入した粒子による表面帯電が不具合の主原因と結論づけている

1) Ho-sung Choi et al Analysis of GEO spacecraft anomalies Space weather relationships Space Weather Vol 9 S06001

太陽活動と静止軌道衛星不具合例

ANIK-E1E2

ANIK-E1

複数の衛星で故障

Galaxy-15

帯電放電不具合 -ANIK-E1amp2Telstar401-

Jan 1994 ANIK-E1 amp E2事故時の環境 - Joe H Allen

1週間

太陽活動下降時期の電子増加

2MeV以上電子

copyNOAA Web

フラックスが3桁急増

Jan 1997 Telstar401事故時の環境

静止軌道の急激な電子増加

太陽極大期太陽フレアによる衛星障害 - 2003年10月~11月-

10486981048698 永久故障 4 10486981048698 安全モード又は運用を一時停止 31 10486981048698 データ内容の「誤り」の増加搭載コンピュータの誤動作 5

httpwwwsat-ndcomfailures等のデータによる 合計 40件

-Barbieri and Mahmot

米国極軌道気象衛星NOAA-17の改良型マイクロ波観測装置AMSU-A1 (Advanced Microwave Sounding Unit)のスキャナーが永久故障 米国気象衛星GOES -8号のX線センサがOFFになり復帰しなくなった

e-birdに深刻な不具合が発生 不具合は20本のトランスポンダ全てに影響

火星周回中の探査機「マーズオデッセイ (Mars Odyssey)」の観測機器放射線観測装置「Martian Radiation Environment Experiment (MARIE)」が太陽活動の影響により10月28日から適切に作動しなくなった データ中継技術衛星(DRTS)「こだま」 太陽捕捉モードに移行

太陽陽子

帯電放電不具合-Galaxy15(局所的的現象)- 2

5 M

eV

65

MeV

11

5 M

eV

GOES 14 ----- GOES 15 ----- GOES 11 -----

Satellite Locations

Galaxy 15 anomaly

2010年4月5日9時48分UTCは磁気嵐及びCMEが発生するなど宇宙環境は非常に荒れていたGalaxy15衛星は真夜中側に位置し宇宙環境の影響を受けやすい

位置にいたことから宇宙環境による不具合である可能性が高いということで原因追及がなされた高エネルギー粒子が引き起こす代表的な衛星不具合現象として3つ(表面帯電内部帯電SEUシングルイベントバーンアウトSEL)の可能性を検討した

チームの報告書によると磁気圏尾部からの熱電子の流入による放電が原因であったと結論付けられたGalaxy15衛星の近くにはGOES-11衛星が位置していたがGOES-11衛星には不具合を発生しておらず本現象は局所的な現象と推測される

衛星開発段階における対策 JAXAの不具合解析の結論

bull 2002年~2008年に運用された11機の衛星不具合を解析 宇宙環境による不具合は偶発故障のみ(全体の約15)確率的には想定範囲内ではあるがその影響を最小限とするためディレーティング運用モード寿命についての研究に取り組む

bull 設計基準試験の充実検証確認の強化技術成熟度(TRL)評価の徹底各々の境界制約条件の明示化等により検証不足抜けの防止有効なピアレビューに結びつける

冗長系(同じハードウェア機能の冗長)柔軟性の設計(ソフトハードの対応)

bull 従来の故障が起きないようにする設計に対してGOSAT(いぶき)では重要部

品を二重化することにより故障する可能性は上がるが故障しても衛星バスの運用や観測が続行できる可能性がより高くなるように設計した

運用における対応

bull 宇宙天気監視ーロケット打ち上げ及び宇宙飛行士支援 数日前に今後の宇宙環境の推移を把握(MXレベルのフレアの発生確率)

bull X線の増加で太陽フレア発生を検知したら高エネルギー粒子の発生をいつまで 気を付ければ良いか判断(発生位置で大凡を推定するが課題は多い) SPEが発生した場合(特に10MeV以上100MeV 以上の陽

子)最大値フラックス値の推定 ピーク値を予測(特に閾値に近くなった時に重要)

bull 衛星運用 bull 太陽フレア磁気嵐警報(X線陽子及びkpが閾値を超えた

時に警報を発信)2003年10月より運用開始 bull 内部帯電警報(2日後の静止軌道上の高エネルギー電子(>1

Me) の増加を予測し 閾値を超えた時に警報を発信) 2004年4月より運用開始

話の流れ

技術データ取得装置(TEDA)の概要と成果 bull 主な成果 bull 不具合解析例

宇宙天気のリスクと対策 bull 宇宙環境による衛星システムへの影響 bull 宇宙環境を原因とする不具合の割合推移部位 bull 静止軌道不具合 bull 対策

今後必要な観測項目

まとめ

計測対象計測項目 計測対象 粒径100μm以上のデブリメテオロイド 計測項目 デブリ粒径衝突頻度

基本原理

厚さ約125μmの絶縁性のポリイミドフィルム表面に 100μm周期で直線状の細長い導線(太さ50μm)パターンを形成導線の破断を電気的に検知することによりデブリの衝突(貫通)を検知する破断した導線の数導線の幅ピッチからデブリサイズを計測する

微小デブリ計測技術の概要

衝突孔の例(衝突試験ISAS) - 衝突粒子 SUS 309 microm - 衝突速度 52 kms

HTV5号機によるセンサ機能のフライト実証

35cm

46cm

FY2013機能実証モデル

検出線幅 50 μm 検出線間隔 100 μm フィルム厚 lt 20 μm 有感領域 30times33cm 検出線総数 3300本

サイズ 50times39times4 cm (筐体を含む)

重量 約15kg(筐体を含む)

消費電力 2W(最大4W)(他センサ含む)

テレメトリ 02 bps

宇宙環境観測装置KASPERの一部としてデブリセンサSDMを搭載 FY2013に製作開始今年8月に打ち上げ予定)

まとめ(その1)

衛星不具合の主な原因は帯電放電シングルイベント放射線損傷である今後デブリ環境が重要になると予測される

静止軌道では商用衛星が多く運用されており宇宙環境の変動把握は重要この領域で運用する衛星が気を付けなければいけない環境として

1太陽フレアに伴う高エネルギー粒子 2太陽活動下降期による静止軌道電子の増加 3磁気嵐に伴う磁気圏尾部から注入する粒子 などがあげられる

まとめ(その2)

不具合軽減の取り組み bull 開発時は宇宙環境条件(トータルフラックス及び最悪条

件)を明確にし設計(冗長系柔軟性の設計ディレーティング及び運用モード寿命について研究)試験の充実検証の充実を図る

bull 運用段階に入ったならば宇宙環境を監視し警報等で故障を防ぐ

予測課題 bull 太陽フレアに伴う高エネルギー粒子発生後フラックス

ピーク値の推定

bull 衛星により不具合の起きる閾値は異なるが閾値をこえる急激な電子フラックスの増加と継続時間の予測

bull 局所的な磁気嵐に伴う磁気圏尾部から注入する粒子

宇宙環境グループは宇宙ステーションと衛星プロジェクトの安全な遂行に貢献しています

ご静聴ありがとうございました

補足資料

不具合原因の推移 bull 宇宙天気を大きく左右する要因の1つとして約11年の太陽活動変化が挙げられる

bull 太陽活動下降時期(太陽変動CME)と極大期(フレアCME)に衛星で不具合が増加するそれにより不具合原因の割合が変わる

-Koons et al The Impact of the Space Environment on Space Systems Aerospace Corp report no TR-99(1670)-1 20 July 1999 -2009 preliminary study (unpublished)

何故不具合は減らないか

bull 部品 放射線に対する感受性が高くなっている bull 微細化が進み同時にフォールトするノードが増え同時にエ

ラーとなる論理ノードやメモリセルが増加する微細化によってメモリセルは小さくなるので記憶容量当たりでみるとエラーの発生率は下がるしかし半導体チップの記憶容量やゲート数が増えるので半導体チップ当たりのエラー発生率は微細化とともに上昇するまた蓄積電荷が小さくなり感受性が高くなってきている

bull システム 大型化大電力化運用長期化 bull 1990年代末以降静止衛星の電力が10kWレベルになったしか

し設計検証技術データ蓄積が遅れている改善されつつあると推測される

放射線による影響の概要

粒子 エネルギー又はLET

代表的な影響

陽子 100keV-1MeV 1-10MeV 10-100MeV gt50MeV

表面損傷 表面材料と太陽電池の損傷 放射線損傷(電離非電離損傷の両方)センサーへのノイズ シングルイベント効果

電子 10-100keV gt100keV gt1MeV

表面帯電 深部帯電現象(deep-dielectric charging)センサーへのノイズ太陽電池の損傷 放射線損傷(電離)

重イオン gt1MeV-cm2mg シングルイベント効果

注エネルギー及びLETは個々の部品等により異なりますあくまでも目安です

耐放射線設計手順

軌道条件

ミッション期間

環境条件設定

トータルドーズの予測

1MeV電子換算被曝算出

NIELの換算

LETフルエンス算出

陽子フルエンス算出

対  策  の  検  討

対  策  の  検  討

対  策  の  検  討

放射線による劣化率予測

劣化率予測 特性予測

耐性データ

放射線による劣化率予測

耐性データ

劣化率予測アレイ出力劣化予測

感受性データ

シングルイベント発生率予測 致命度解析

衛星内質量分布

(2)

部品材料の選定

他の要因による劣化率予測

(2)(2) (3)

回路設計等NO

OK

アレイ構造 セル選定

他の要因による劣化率予測 アレイ設計(2)

(2) (2) (2) (3)

衛星内質量分布 部品選定(2)

(2) (2)(3)

NO

OK

NO

OK

(1) 環境モデルマージを含む(2) 部品レベルの検討(3) アセンブリレベルでの検討(4) 設計マージン環境モデル   マージを含め大丈夫か

トータルドーズ

太陽電池アレイの劣化

シングルイベント効果

回路設計

補足放射線太陽宇宙線銀河宇宙線

NEILを用いたダメージファクターの算出

対  策  の  検  討

放射線による劣化率予測

劣化率予測 特性予測

耐性データ

(2)

部品材料の選定

他の要因による劣化率予測

(2)(2) (3)

回路設計等NO

OK

衛星内質量分布 半導体デバイスの変位損傷

(1)

(4)

(4)

(4)

(4)

各軌道における放射線環境

1E+10

1E+11

1E+12

1E+13

1E+14

1E+15

1E+16

1E+17

1E+18

1E+19

1E+20

001 010 100 1000

捕捉

電子

の積

分フ

ルエ

ンス

[m

2 ]

エネルギー[MeV]

各軌道における電子捕捉積分フルエンス(3年間)

LEO

EOS GEO

MEO

GTO

GEO 軌道傾斜角 0deg 高度36000km GTO 軌道傾斜角 18deg 高度 360km~36000km MEO 軌道傾斜角 51deg 高度 10000km EOS 軌道傾斜角 98deg 高度705km LEO 軌道傾斜角 29deg 高度 600km

1E+12

1E+13

1E+14

1E+15

1E+16

1E+17

1E+18

1E+19

1E+20

01 10 100 1000

捕捉

陽子の

積分フルエン

ス[

m2 ]

エネルギー[MeV]

各軌道における捕捉陽子積分フルエンス(3年間)

MEO

GTO

GEO

EOS LEO

放射線による部品材料の影響

総照射線量 (TIDTotal Ionising Dose )

電離損傷

バイポーラTrの電流増幅率の低下リーク電流の増大

γ線で評価

トータルドーズ効果

変位損傷 (DDDisplacement Damage )または 非イオン化エネルギー損失 (NIELNon-Ionising Energy

Loss )

変位損傷(格子欠陥の生成)

電荷輸送効率の低下 (CCD)太陽電池の効率低下等

電子陽子により評価

シングルイベント効果

1個の荷電粒子の入射により発生する誤動作

ソフト(Latch-Up Burnout) エラー又は ソフト (Upset) エラー

陽子及び重イオンで評価

トータルドーズ効果

+ - + + - + - + - - + + + + -

ゲート酸化膜

電離

格子欠陥

正電荷捕獲

+ 正孔 - 電子

電極

(Silicon oxidenitride)

荷電粒子

反跳原子

ゲート絶縁膜中に電荷が蓄積することによるMOSトランジスタのしきい電圧(MOSトランジスタがオフからオンに変化するゲート電圧)の変化をもたらすただ

し最近の最先端チップはゲート絶縁膜がきわめて薄くなっているこのためゲート絶縁膜よりもフィールド絶縁膜(隣接するトランジスタを電気的に分離する絶縁膜)での電荷蓄積が相対的には大きな問題になってきている」

シングルイベント効果

メモリセルはNチャンネルとPチャンネルMOSFETより構成されメモリ情報は回路ノード12の電位の

高低により記録している空乏層の広がっているPN接合12の領域に

重イオンが入射した場合電荷の発生と空乏層内への少数キャリアの収集が起こるこの収集電荷量が回路の耐量を越えた場合(c)に示すように反転が起こる(ソフトエラー)一方pウエル-N基板接

合の空乏層内に電荷収集量が起こりえる耐性を越えると寄生的に存在するPNPNサイリスタ構造がオ

ンし電源と基板間に大電流が流れる状態が生じる(ラッチアップ)

シングルイベントメカニズム -陽子と重イオンの違い-

エラー発生率の計算

線エネルギー付与(LET) (linear energy transfer)

電離性放射線が物質中を通過する際飛程の単位長さ当りに平均して失うエネルギーをいう各種の放射線のうちX線γ線はLETが小さいので低LETといいα線中性子線その他重イオン核分裂破片のLETは大きいので高LETという MeVμmMeV(gcm2)やMeV(mgcm2)で表される

南大西洋異常(SAA) bull 地球の自転軸と磁気軸のずれ

darr bull 放射線帯が自転軸に対して非

対称

bull 南大西洋上空では放射線帯内帯が低高度に落ちてきているこの領域を南大西洋異常域(SAA South Atlantic Anomaly)と呼ぶ

bull 地球観測衛星ではSAAで放射線帯陽子の影響を受ける

Single Event Lachup

シングルイベントと陽子分布

MOS-1衛星(高度909km軌道傾斜角99度)で発生したシングルイベントと 陽子30MeV以上の等高線マップを重ね合わせた結果

NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)

bull 入射粒子が電離によらず与える損傷非イオン化損失

低軌道での電子フラックスと 不具合の発生場所

南大西洋異常(SAA)と極の角

高度800kmでの電子フラックス図極の角(polar horn)とSAAを示す

太陽粒子線 bull 太陽高エネルギー粒子線(SPE Solar Proton Events)は太陽フレア とコロナガス噴出 (CMECoronal Mass Ejections )により引き起こされる bull フレアのスペクトルは可変であるためあるエネルギー域における最悪状態イベントは必ずしも別のエネルギー域における最悪条件ではない 1972年8月のイベント 10~70MeVの粒子が最も多かった 1989年10のイベント 1972年8月のイベントに比べ低エネルギー領域 高エネルギー領域が明らかに激しかった

フルエンス 105 to 1011 cm-2

変動期間 1日から数日

ldquoBastiliardquo Solar Event 14 July 2000

Carrington Flare

84

(LW Townseed) Carrington Flare(1859年) Carrington Flare による30MeV以上トータルFluenceを118times109cm-2で規格化 ~1989年フレアの約13倍(シングルイベントの評価で使用) ~1991年フレアの約9倍 2012年7月23日にキャリントンイベントとほぼ同等の爆発現象が太陽あるいは太陽の周りで起きていたということがNASAの太陽観測衛星「STEREO」の解析から発表された

放射線対策 bull 放射線シールドを付加し放射線を減衰させる

bull 放射線耐性の強い部品(SOI(Silicon On Insulator)技術による耐放射線部品)材料に変更する

bull 放射線による損傷を吸収するために回路または構造上のマージンを持たせる bull ソフト的なエラーに対しては エラー検出訂正機能や多数決

機能等でソフト的エラーが起きてもシステムが機能するようにしたフォールトトレラント機能を付けて対処する ICのハード的故障に対しては ラッチアップ耐性の強い部品を選定するしかないが 電流制限回路を付ける対策も採られる パワーMOSFETに対しては部品選定 電源電圧を規格値の半分以下に落とす等の対策を採る

SOI技術

表面帯電への対策例

表面の物体間を導線で結線する

太陽電池のカバーガラスを導電性被膜付き(酸化インジウムITO)にする

熱制御材表面にITOを被覆する

熱制御材は高誘電率のテフロンの使用を避け 高伝導度耐環境性に優れたブラックカプトンを使用

イオンエンジンの中和器で能動帯電制御

内部帯電への対策例

アルミで3mm厚さに相当するシールドで囲む(Faraday Cage)

テフロンやカプトンなどの誘電体材料の内部での使用量を最小限に押さえる

回路基板やコンフォーマルコーティングは誘電体なので電流リークパス(1012Ωcmまたは1012Ωcm2

程度)を必ずつける

特にスポット的な放射線シールドの金属材には必ず電流リークパスをつける

帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備

衛星モデル作成

材料物性テーブル設定

宇宙環境パラメータ設定

Converter

転送ディレクトリ 解析データファイル

転送

解析ディレクトリ生成 解析結果 進行状況チェック ファイル操作

MUSCAT 解析エンジン

解析結果 表示

パラメトリックラン

オプション 解析

大型パネル実験(35mtimes11m) クーポンパネル実験(26cmtimes16cm)

環境模擬試験 環境模擬試験

MUSCATに使用する物性値設計標準制定のための知見などを得ることを目的に軌道上の宇宙環境を模擬した地上試験を行っている これらの試験では放電の発生頻度や電圧閾値放電発生による太陽電池パネルや搭載機器への影響を検証している

放射線計測装置の原理

bull その粒子が物質を通過する際のエネルギー損出率が粒子の電荷(原子番号)Zの二乗に比例すること(Bethe-Blochの式)を利用する

S2

E

ΔE Ersquo

S1 S3

  • 宇宙機の設計のための宇宙環境
  • 話の流れ
  • 話の流れ
  • TEDA(技術データ取得装置)(国産部品の宇宙環境での実証の必要性)
  • ETS-VTEDA(技術データ取得装置)誕生前の部品の宇宙実証の背景
  • スライド番号 6
  • スライド番号 7
  • スライド番号 8
  • スライド番号 9
  • 図6太陽黒点数と静止軌道電子 (>04MeV ) Flux の変動 (ETS-V搭載DOMによる観測)
  • スライド番号 11
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの開発(理研東大と共同で宇宙環境計測の充実)
  • ETS-VI(きく6号)打ち上がったがGEOに行かずGTOに留まる
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの成果
  • スライド番号 15
  • スライド番号 16
  • スライド番号 17
  • ADEOS搭載TEDA(世界2番目の異常宇宙線ACR)
  • BBND (ボナー球中性子検出器)
  • スライド番号 20
  • ISS搭載BBNDの成果(約8か月)
  • スライド番号 22
  • MDS-1搭載放射線吸収線量モニタ(SDOM)
  • 放射線帯変動モデルの開発MDS-1 065 MeV 電子フラックス
  • 変動パラメータの選択 (1 cycle solar activity)
  • 変動パラメータ- Tavg の定義-
  • 065MeV 電子 L値-Tavg マップ
  • 13MeV 陽子 L値-Tavg マップ
  • 電子観測とMDS-1モデルの比較
  • 放射線帯フラックスピークの変動
  • 陽子観測とモデルの比較
  • 電子(035~078MeV) 1日の変動予測GOSAT軌道
  • 電子(035~078MeV) 変動の信頼度水準(1日)GOSAT軌道
  • MDS-1 model と AE-8 modelとの比較1日
  • 話の流れ
  • 2003年10月 みどり号の全損事故(複合現象)
  • 衛星帯電の基本式
  • 内部帯電
  • パドルでの帯電放電メカニズム
  • スライド番号 40
  • スライド番号 41
  • スライド番号 42
  • データ中継技術衛星DRTS (こだま)の不具合
  • DRTS ESA スパイクノイズと電子フルエンスの比較(赤の丸が異常検知)
  • 不具合が宇宙環境によるものであるか判断する際のポイント
  • 話の流れ
  • 宇宙天気のリスク-宇宙環境によるシステムへの影響 -
  • NASAの報告-GNampCに注目-
  • NASAの報告(続き)
  • 宇宙環境を原因とする不具合の割合-JAXAの場合-
  • 不具合発生部位の割合 
  • Satellite News Digest -静止軌道不具合-
  • 太陽活動と静止軌道衛星不具合例
  • スライド番号 54
  • スライド番号 55
  • スライド番号 56
  • 衛星開発段階における対策
  • 運用における対応
  • 話の流れ
  • スライド番号 60
  • スライド番号 61
  • まとめ(その1)
  • まとめ(その2)
  • 宇宙環境グループは宇宙ステーションと衛星プロジェクトの安全な遂行に貢献しています
  • 補足資料
  • 不具合原因の推移
  • 何故不具合は減らないか
  • 放射線による影響の概要
  • 耐放射線設計手順
  • 各軌道における放射線環境
  • 放射線による部品材料の影響
  • トータルドーズ効果
  • シングルイベント効果
  • シングルイベントメカニズム-陽子と重イオンの違い-
  • エラー発生率の計算
  • 線エネルギー付与(LET)(linear energy transfer)
  • 南大西洋異常(SAA)
  • Single Event Lachup
  • シングルイベントと陽子分布
  • NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)
  • 低軌道での電子フラックスと不具合の発生場所
  • 南大西洋異常(SAA)と極の角
  • スライド番号 83
  • Carrington Flare
  • 放射線対策
  • スライド番号 86
  • スライド番号 87
  • 帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備
  • スライド番号 89
  • 放射線計測装置の原理
Page 31: 宇宙機の設計のための宇宙環境の方針から国産部品開発(42品種)が実施された。 . 半導体電子部品は耐放射線性を加味して、人工衛星(特に

陽子観測とモデルの比較

電子(035~078MeV) 1日の変動予測GOSAT軌道

0

50

100

150

200

250

1E+09

1E+10

1E+11

1E+12

1984 1986 1988 1990 1992 1994 1996 1998 2000 2002 2004 2006 2008

Flue

nce[

ecm

2M

eVd

ay]

Launch day

FluenceSSN

Worst case Nov 12003

電子(035~078MeV) 変動の信頼度水準(1日)GOSAT軌道

00

01

02

03

04

05

06

07

08

09

10

88 90 92 94 96 98 100 102 104 106 108 110 112 114

Con

fiden

ce le

vel

Fluence[LOG10 ecm2MeVday]

AE-8 MAX

AE-8 MIN

MDS-1 model と AE-8 model との比較1日

0

20

40

60

80

100

120

140

160

180

1E+09

1E+10

1E+11

1E+12

1995 1997 1999 2001 2003 2005 2007 2009

Flue

nce[

ecm

2M

eVd

ay]

Launch day

Fluence(JAXA)Fluence(AE8)SSN

話の流れ

技術データ取得装置(TEDA)の概要と成果 bull 主な成果 bull 不具合解析例

宇宙天気のリスクと対策 bull 宇宙環境による衛星システムへの影響 bull 宇宙環境を原因とする不具合の割合推移部位 bull 静止軌道不具合 bull 対策

今後必要な観測項目

まとめ

2003年10月 みどり号の全損事故 (複合現象)

極域のオーロラ帯を通過中に電力ハー

ネスを巻いているMLIが高エネルギー電

子により帯電

MLIが接地されていなかったため内側

のハーネスとの間に1kV以上の電位差が

発生

MLI内のガス密度が発電開始に伴う温度

上昇により上昇

ハーネス被覆の傷により露出したハーネ

ス芯線とMLI内面の間で放電発生

単発の放電が隣接するハーネスに飛び火

してハーネス間の短絡

アーク放電が次々と伝搬していきハー

ネス全体が焼損

故障推定箇所 (大電力ハーネス部)

bull詳細報告書は文部科学省 宇宙開発委員会のHP参照

httpwwwmextgojpb_menushingiuchuureports04080901htm

bull 人工衛星の電位 bull 人工衛星は電気的に宇宙に浮いている bull 宇宙機構造体が接地点 bull 宇宙機への流入電流と流出電流のバランスによって宇宙機電位が決まる bull 各電流成分は宇宙機電位Vの関数として表され定常状態では式を下式を満たす

衛星帯電の基本式

( ) dtIIIIIIIC

V

dtdVCVIVIVIVIVIVIVI

BPHBSESISEIE

BPHBSESISEIE

int +++++minus=

==+++++minus

1

0)]()()()()()([)(

入射電子電流 ( E I )

後方散乱電子電流 ( BSE I )

入射正イオン電流 ( I I )

入射電子による二次電子電流 ( SE I )

太陽光

入射正イオンによる 二次電子放出電流 ( SI I )

光電子放出電流( PH I )

電荷ビーム放出電流(IB)

bull内部帯電は衛星の外壁を貫通した放射線帯外帯の01MeV以上の電子が内部に侵入

bull基板間や同軸ケーブルの線間等の容量(コンデンサ)や誘電体に帯電 bull接地されてない導体片に帯電

bullその耐圧電圧を超えると その耐圧の弱い箇所 (材質の欠陥や針状突起など の箇所)で放電して故障に至る

内部帯電

(あるエネルギ-以上の粒子が入射光電子なし)

NASA-HDBK-4002より

パドルでの帯電放電メカニズム

宇宙環境の影響により 衛星がマイナス電位に帯電

高エネルギー電子等により カバーガラスはプラスに帯電 衛星とカバーガラスに電位差が生じる

電位差が大きくなると トリプルジャンクション近傍 の電界強度が増大していく

トリプルジャンクションで放電が発生する カバーガラスの帯電が緩和される

+ + + + + + + + + + + + + +

+ + + +

カバーガラス

太陽電池セル

基板(衛星構体)

トリプルジャンクション rArr 導体絶縁体宇宙環境の接点

持続放電

Substrate

Satellite Load

insulation sheet

Solar array cell

Cover glass

Arc current

Electrode

持続放電は衛星の電力消失につながる 持続放電のモードは以下の2通りがある

Substrate

Satellite Load

insulation sheet

Solar array cell

Cover glass

Arc current

Electrode

Solar array cell

Cover glass

セル-基板間短絡 セル間短絡

放電によって太陽電池セルと基板が短絡する 短絡によって負荷に電力が供給されなくなる

放電によって太陽電池セルとセルが短絡する 短絡によって負荷に電力が供給されなくなる

サブストーム(高エネルギー電子)との遭遇

+ + + + + + + +

二次電子光電子による絶縁体の帯電(局所帯電)

電位差発生

逆電位勾配

衛星構体が負に帯電(絶対帯電)

電位

時間

サブストーム

衛星構体 VS

乖離電圧 ∆V

カバーガラスVcg

0 プラズマ電位

軌道別帯電放電現象

トリプルジャンクションで 放電発生

放電発生

静止軌道

+ + + + + + + +

逆電位勾配

軌道帯電放電現象

トリプルジャンクションで 放電発生

極軌道 オーロラ電子(高エネルギー電子)との遭遇

プラズマ流入出による絶縁体の帯電(局所帯電)

電位差発生

衛星構体が負に帯電(絶対帯電)

放電発生

電位

時間

オーロラ電子

衛星構体 乖離電圧 ∆V

カバーガラス

0 プラズマ電位

データ中継技術衛星DRTS (こだま)の不具合

2002年10月 9日 静止軌道に打ち上げ

2003年

3月24日 406JST変化率異常モニタ故障検出(FDIR)

が動作しA系からB系に切り替わった

3月25日 410JSTにB系のみ異常検知

4月 3日 327JSTにB系のみ異常検知

5月28日 124JSTにB系のみ異常検知

6月 6日1537JSTにB系のみ異常検知

ESA

DRTS ESA スパイクノイズと 電子フルエンスの比較(赤の丸が異常検知)

larr閾値

この事実を基に静止軌道における内部帯電警報システムを構築 2004年4月より運用開始

不具合が宇宙環境によるものであるか 判断する際のポイント

不具合の発生した時刻に太陽フレアや磁気嵐等の宇宙天気の大きな変動が起きていれば不具合に関係している可能性が高い但し帯電など放射線の積算的効果の伴う現象については発生から1週間位さかのぼり環境がどのように推移してきたかを考慮する必要がある

磁気嵐が起きると静止軌道に急激な粒子の増加現象が起きこれにより衛星帯電が引き起こされたりする(予測に利用可能)

地方時(真夜中や朝方か)や季節(春秋)を考慮する

低軌道衛星においてはSAA外帯のrdquo角ldquo及び極通過時に不具合

が起きやすいので衛星の位置(緯度経度)が重要

事象を把握する上で単発現象か数回起きている現象か周期

(時間同じ軌道等)的に発生している現象か

話の流れ

技術データ取得装置(TEDA)の概要と成果 bull 主な成果 bull 不具合解析例

宇宙天気のリスクと対策 bull 宇宙環境による衛星システムへの影響 bull 宇宙環境を原因とする不具合の割合推移部位 bull 静止軌道不具合 bull 対策

今後必要な観測項目

まとめ

宇宙天気のリスク -宇宙環境によるシステムへの影響 -

プラズマ (IRI)

帯電 (MUSCAT)

衝突 (AUTODY)

抗力 表面劣化

紫外線X線 中性粒子 (MSIS)

放射線粒子 (AE8AP8JPLSHIELDO

SE-2)

メテオロイドデブリ (MASTER2005

ORDEM)

電離損傷 変位損傷

bull電子回路の劣化 bull光部品の劣化

bull太陽電池セルの劣化

SEU (CREME96)

bullデータエラー bull画像ノイズ

bullシステム停止 bull回路損傷

bull熱的電気的光学的特性の劣化

bull構造の劣化 bullコンタミ

電磁パルス bull電源出力低下

bull損傷

bullトルク bull軌道落下

bull構造 損傷 bull減圧

bull電磁パルス

NASAの報告 -GNampCに注目-

1974年から1994年に起きたNASAと空軍の衛星故障の内20~25が宇宙環境に起因していたと報告

1990年から2001年に米国欧州カナダ日本の企業や政府機関が開発した衛星を調べた過去の宇宙ミション損失の大部分はロケットの失敗であったが1998年衛星損失の大部分は軌道上の衛星障害となっている多くの最近の異常は太陽電池アレイ及びバッテリの危険が増加している静止軌道通信衛星の設計寿命はこのサブシステムの故障の危険が増加している

喪失等の大きな誘導制御(GNampC)の不具合に注目 GNampC不具合の内宇宙環境による 不具合は約3と報告されている

軌道上衛星のタイプ別数

NASAの報告(続き)

衛星設計寿命における不具合発生時期 事故率と軌道

軌道別の衛星数 サブシステム不具合

宇宙環境を原因とする不具合の割合 -JAXAの場合-

2002年~2008年に運用された軌道上不具合情報が比較的充実している11衛星(利用衛星7機科学衛星4機)の結果宇宙環境によるも

のは約15過去のデータよりも割合が少ない

合計83件 合計35件

(1)利用衛星 (2)科学衛星

設計検討 不足 48

製造不良 8

軌道上環境 17

偶発故障 6

調査中 13

原因不明 8

設計検討

不足 61

製造不良 4

軌道上環境 11

偶発故障 6

調査中 9

原因不明 9

不具合発生部位の割合

不具合発生部位の割合

Brent Robertson Eric Stoneking ( 1990-2001NASA Goddard Space Flight Center )

Satellite News Digest -静止軌道不具合-

Satellite News Digest (SND) (http wwwsqt-indexcouk) で1997年~2009年の期間に静止軌道で95件の不具合が報告されている その内運用ミスや設計ミスなどを除くと32件(約33)は宇宙環境によるものであった 過去のデータより割合が多い

Choiら1)はこれら不具合の地方時と季節依存性を確認した その結果2100LT~900LTで約72の不具合が発生し900LT~2100LTは9件(約28)であった またこの9件は全て姿勢制御の不具合だった 静止軌道衛星不具合のほとんどは真夜中と朝方で起きており磁気嵐に伴い磁気圏尾部から注入した粒子による表面帯電が不具合の主原因と結論づけている

1) Ho-sung Choi et al Analysis of GEO spacecraft anomalies Space weather relationships Space Weather Vol 9 S06001

太陽活動と静止軌道衛星不具合例

ANIK-E1E2

ANIK-E1

複数の衛星で故障

Galaxy-15

帯電放電不具合 -ANIK-E1amp2Telstar401-

Jan 1994 ANIK-E1 amp E2事故時の環境 - Joe H Allen

1週間

太陽活動下降時期の電子増加

2MeV以上電子

copyNOAA Web

フラックスが3桁急増

Jan 1997 Telstar401事故時の環境

静止軌道の急激な電子増加

太陽極大期太陽フレアによる衛星障害 - 2003年10月~11月-

10486981048698 永久故障 4 10486981048698 安全モード又は運用を一時停止 31 10486981048698 データ内容の「誤り」の増加搭載コンピュータの誤動作 5

httpwwwsat-ndcomfailures等のデータによる 合計 40件

-Barbieri and Mahmot

米国極軌道気象衛星NOAA-17の改良型マイクロ波観測装置AMSU-A1 (Advanced Microwave Sounding Unit)のスキャナーが永久故障 米国気象衛星GOES -8号のX線センサがOFFになり復帰しなくなった

e-birdに深刻な不具合が発生 不具合は20本のトランスポンダ全てに影響

火星周回中の探査機「マーズオデッセイ (Mars Odyssey)」の観測機器放射線観測装置「Martian Radiation Environment Experiment (MARIE)」が太陽活動の影響により10月28日から適切に作動しなくなった データ中継技術衛星(DRTS)「こだま」 太陽捕捉モードに移行

太陽陽子

帯電放電不具合-Galaxy15(局所的的現象)- 2

5 M

eV

65

MeV

11

5 M

eV

GOES 14 ----- GOES 15 ----- GOES 11 -----

Satellite Locations

Galaxy 15 anomaly

2010年4月5日9時48分UTCは磁気嵐及びCMEが発生するなど宇宙環境は非常に荒れていたGalaxy15衛星は真夜中側に位置し宇宙環境の影響を受けやすい

位置にいたことから宇宙環境による不具合である可能性が高いということで原因追及がなされた高エネルギー粒子が引き起こす代表的な衛星不具合現象として3つ(表面帯電内部帯電SEUシングルイベントバーンアウトSEL)の可能性を検討した

チームの報告書によると磁気圏尾部からの熱電子の流入による放電が原因であったと結論付けられたGalaxy15衛星の近くにはGOES-11衛星が位置していたがGOES-11衛星には不具合を発生しておらず本現象は局所的な現象と推測される

衛星開発段階における対策 JAXAの不具合解析の結論

bull 2002年~2008年に運用された11機の衛星不具合を解析 宇宙環境による不具合は偶発故障のみ(全体の約15)確率的には想定範囲内ではあるがその影響を最小限とするためディレーティング運用モード寿命についての研究に取り組む

bull 設計基準試験の充実検証確認の強化技術成熟度(TRL)評価の徹底各々の境界制約条件の明示化等により検証不足抜けの防止有効なピアレビューに結びつける

冗長系(同じハードウェア機能の冗長)柔軟性の設計(ソフトハードの対応)

bull 従来の故障が起きないようにする設計に対してGOSAT(いぶき)では重要部

品を二重化することにより故障する可能性は上がるが故障しても衛星バスの運用や観測が続行できる可能性がより高くなるように設計した

運用における対応

bull 宇宙天気監視ーロケット打ち上げ及び宇宙飛行士支援 数日前に今後の宇宙環境の推移を把握(MXレベルのフレアの発生確率)

bull X線の増加で太陽フレア発生を検知したら高エネルギー粒子の発生をいつまで 気を付ければ良いか判断(発生位置で大凡を推定するが課題は多い) SPEが発生した場合(特に10MeV以上100MeV 以上の陽

子)最大値フラックス値の推定 ピーク値を予測(特に閾値に近くなった時に重要)

bull 衛星運用 bull 太陽フレア磁気嵐警報(X線陽子及びkpが閾値を超えた

時に警報を発信)2003年10月より運用開始 bull 内部帯電警報(2日後の静止軌道上の高エネルギー電子(>1

Me) の増加を予測し 閾値を超えた時に警報を発信) 2004年4月より運用開始

話の流れ

技術データ取得装置(TEDA)の概要と成果 bull 主な成果 bull 不具合解析例

宇宙天気のリスクと対策 bull 宇宙環境による衛星システムへの影響 bull 宇宙環境を原因とする不具合の割合推移部位 bull 静止軌道不具合 bull 対策

今後必要な観測項目

まとめ

計測対象計測項目 計測対象 粒径100μm以上のデブリメテオロイド 計測項目 デブリ粒径衝突頻度

基本原理

厚さ約125μmの絶縁性のポリイミドフィルム表面に 100μm周期で直線状の細長い導線(太さ50μm)パターンを形成導線の破断を電気的に検知することによりデブリの衝突(貫通)を検知する破断した導線の数導線の幅ピッチからデブリサイズを計測する

微小デブリ計測技術の概要

衝突孔の例(衝突試験ISAS) - 衝突粒子 SUS 309 microm - 衝突速度 52 kms

HTV5号機によるセンサ機能のフライト実証

35cm

46cm

FY2013機能実証モデル

検出線幅 50 μm 検出線間隔 100 μm フィルム厚 lt 20 μm 有感領域 30times33cm 検出線総数 3300本

サイズ 50times39times4 cm (筐体を含む)

重量 約15kg(筐体を含む)

消費電力 2W(最大4W)(他センサ含む)

テレメトリ 02 bps

宇宙環境観測装置KASPERの一部としてデブリセンサSDMを搭載 FY2013に製作開始今年8月に打ち上げ予定)

まとめ(その1)

衛星不具合の主な原因は帯電放電シングルイベント放射線損傷である今後デブリ環境が重要になると予測される

静止軌道では商用衛星が多く運用されており宇宙環境の変動把握は重要この領域で運用する衛星が気を付けなければいけない環境として

1太陽フレアに伴う高エネルギー粒子 2太陽活動下降期による静止軌道電子の増加 3磁気嵐に伴う磁気圏尾部から注入する粒子 などがあげられる

まとめ(その2)

不具合軽減の取り組み bull 開発時は宇宙環境条件(トータルフラックス及び最悪条

件)を明確にし設計(冗長系柔軟性の設計ディレーティング及び運用モード寿命について研究)試験の充実検証の充実を図る

bull 運用段階に入ったならば宇宙環境を監視し警報等で故障を防ぐ

予測課題 bull 太陽フレアに伴う高エネルギー粒子発生後フラックス

ピーク値の推定

bull 衛星により不具合の起きる閾値は異なるが閾値をこえる急激な電子フラックスの増加と継続時間の予測

bull 局所的な磁気嵐に伴う磁気圏尾部から注入する粒子

宇宙環境グループは宇宙ステーションと衛星プロジェクトの安全な遂行に貢献しています

ご静聴ありがとうございました

補足資料

不具合原因の推移 bull 宇宙天気を大きく左右する要因の1つとして約11年の太陽活動変化が挙げられる

bull 太陽活動下降時期(太陽変動CME)と極大期(フレアCME)に衛星で不具合が増加するそれにより不具合原因の割合が変わる

-Koons et al The Impact of the Space Environment on Space Systems Aerospace Corp report no TR-99(1670)-1 20 July 1999 -2009 preliminary study (unpublished)

何故不具合は減らないか

bull 部品 放射線に対する感受性が高くなっている bull 微細化が進み同時にフォールトするノードが増え同時にエ

ラーとなる論理ノードやメモリセルが増加する微細化によってメモリセルは小さくなるので記憶容量当たりでみるとエラーの発生率は下がるしかし半導体チップの記憶容量やゲート数が増えるので半導体チップ当たりのエラー発生率は微細化とともに上昇するまた蓄積電荷が小さくなり感受性が高くなってきている

bull システム 大型化大電力化運用長期化 bull 1990年代末以降静止衛星の電力が10kWレベルになったしか

し設計検証技術データ蓄積が遅れている改善されつつあると推測される

放射線による影響の概要

粒子 エネルギー又はLET

代表的な影響

陽子 100keV-1MeV 1-10MeV 10-100MeV gt50MeV

表面損傷 表面材料と太陽電池の損傷 放射線損傷(電離非電離損傷の両方)センサーへのノイズ シングルイベント効果

電子 10-100keV gt100keV gt1MeV

表面帯電 深部帯電現象(deep-dielectric charging)センサーへのノイズ太陽電池の損傷 放射線損傷(電離)

重イオン gt1MeV-cm2mg シングルイベント効果

注エネルギー及びLETは個々の部品等により異なりますあくまでも目安です

耐放射線設計手順

軌道条件

ミッション期間

環境条件設定

トータルドーズの予測

1MeV電子換算被曝算出

NIELの換算

LETフルエンス算出

陽子フルエンス算出

対  策  の  検  討

対  策  の  検  討

対  策  の  検  討

放射線による劣化率予測

劣化率予測 特性予測

耐性データ

放射線による劣化率予測

耐性データ

劣化率予測アレイ出力劣化予測

感受性データ

シングルイベント発生率予測 致命度解析

衛星内質量分布

(2)

部品材料の選定

他の要因による劣化率予測

(2)(2) (3)

回路設計等NO

OK

アレイ構造 セル選定

他の要因による劣化率予測 アレイ設計(2)

(2) (2) (2) (3)

衛星内質量分布 部品選定(2)

(2) (2)(3)

NO

OK

NO

OK

(1) 環境モデルマージを含む(2) 部品レベルの検討(3) アセンブリレベルでの検討(4) 設計マージン環境モデル   マージを含め大丈夫か

トータルドーズ

太陽電池アレイの劣化

シングルイベント効果

回路設計

補足放射線太陽宇宙線銀河宇宙線

NEILを用いたダメージファクターの算出

対  策  の  検  討

放射線による劣化率予測

劣化率予測 特性予測

耐性データ

(2)

部品材料の選定

他の要因による劣化率予測

(2)(2) (3)

回路設計等NO

OK

衛星内質量分布 半導体デバイスの変位損傷

(1)

(4)

(4)

(4)

(4)

各軌道における放射線環境

1E+10

1E+11

1E+12

1E+13

1E+14

1E+15

1E+16

1E+17

1E+18

1E+19

1E+20

001 010 100 1000

捕捉

電子

の積

分フ

ルエ

ンス

[m

2 ]

エネルギー[MeV]

各軌道における電子捕捉積分フルエンス(3年間)

LEO

EOS GEO

MEO

GTO

GEO 軌道傾斜角 0deg 高度36000km GTO 軌道傾斜角 18deg 高度 360km~36000km MEO 軌道傾斜角 51deg 高度 10000km EOS 軌道傾斜角 98deg 高度705km LEO 軌道傾斜角 29deg 高度 600km

1E+12

1E+13

1E+14

1E+15

1E+16

1E+17

1E+18

1E+19

1E+20

01 10 100 1000

捕捉

陽子の

積分フルエン

ス[

m2 ]

エネルギー[MeV]

各軌道における捕捉陽子積分フルエンス(3年間)

MEO

GTO

GEO

EOS LEO

放射線による部品材料の影響

総照射線量 (TIDTotal Ionising Dose )

電離損傷

バイポーラTrの電流増幅率の低下リーク電流の増大

γ線で評価

トータルドーズ効果

変位損傷 (DDDisplacement Damage )または 非イオン化エネルギー損失 (NIELNon-Ionising Energy

Loss )

変位損傷(格子欠陥の生成)

電荷輸送効率の低下 (CCD)太陽電池の効率低下等

電子陽子により評価

シングルイベント効果

1個の荷電粒子の入射により発生する誤動作

ソフト(Latch-Up Burnout) エラー又は ソフト (Upset) エラー

陽子及び重イオンで評価

トータルドーズ効果

+ - + + - + - + - - + + + + -

ゲート酸化膜

電離

格子欠陥

正電荷捕獲

+ 正孔 - 電子

電極

(Silicon oxidenitride)

荷電粒子

反跳原子

ゲート絶縁膜中に電荷が蓄積することによるMOSトランジスタのしきい電圧(MOSトランジスタがオフからオンに変化するゲート電圧)の変化をもたらすただ

し最近の最先端チップはゲート絶縁膜がきわめて薄くなっているこのためゲート絶縁膜よりもフィールド絶縁膜(隣接するトランジスタを電気的に分離する絶縁膜)での電荷蓄積が相対的には大きな問題になってきている」

シングルイベント効果

メモリセルはNチャンネルとPチャンネルMOSFETより構成されメモリ情報は回路ノード12の電位の

高低により記録している空乏層の広がっているPN接合12の領域に

重イオンが入射した場合電荷の発生と空乏層内への少数キャリアの収集が起こるこの収集電荷量が回路の耐量を越えた場合(c)に示すように反転が起こる(ソフトエラー)一方pウエル-N基板接

合の空乏層内に電荷収集量が起こりえる耐性を越えると寄生的に存在するPNPNサイリスタ構造がオ

ンし電源と基板間に大電流が流れる状態が生じる(ラッチアップ)

シングルイベントメカニズム -陽子と重イオンの違い-

エラー発生率の計算

線エネルギー付与(LET) (linear energy transfer)

電離性放射線が物質中を通過する際飛程の単位長さ当りに平均して失うエネルギーをいう各種の放射線のうちX線γ線はLETが小さいので低LETといいα線中性子線その他重イオン核分裂破片のLETは大きいので高LETという MeVμmMeV(gcm2)やMeV(mgcm2)で表される

南大西洋異常(SAA) bull 地球の自転軸と磁気軸のずれ

darr bull 放射線帯が自転軸に対して非

対称

bull 南大西洋上空では放射線帯内帯が低高度に落ちてきているこの領域を南大西洋異常域(SAA South Atlantic Anomaly)と呼ぶ

bull 地球観測衛星ではSAAで放射線帯陽子の影響を受ける

Single Event Lachup

シングルイベントと陽子分布

MOS-1衛星(高度909km軌道傾斜角99度)で発生したシングルイベントと 陽子30MeV以上の等高線マップを重ね合わせた結果

NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)

bull 入射粒子が電離によらず与える損傷非イオン化損失

低軌道での電子フラックスと 不具合の発生場所

南大西洋異常(SAA)と極の角

高度800kmでの電子フラックス図極の角(polar horn)とSAAを示す

太陽粒子線 bull 太陽高エネルギー粒子線(SPE Solar Proton Events)は太陽フレア とコロナガス噴出 (CMECoronal Mass Ejections )により引き起こされる bull フレアのスペクトルは可変であるためあるエネルギー域における最悪状態イベントは必ずしも別のエネルギー域における最悪条件ではない 1972年8月のイベント 10~70MeVの粒子が最も多かった 1989年10のイベント 1972年8月のイベントに比べ低エネルギー領域 高エネルギー領域が明らかに激しかった

フルエンス 105 to 1011 cm-2

変動期間 1日から数日

ldquoBastiliardquo Solar Event 14 July 2000

Carrington Flare

84

(LW Townseed) Carrington Flare(1859年) Carrington Flare による30MeV以上トータルFluenceを118times109cm-2で規格化 ~1989年フレアの約13倍(シングルイベントの評価で使用) ~1991年フレアの約9倍 2012年7月23日にキャリントンイベントとほぼ同等の爆発現象が太陽あるいは太陽の周りで起きていたということがNASAの太陽観測衛星「STEREO」の解析から発表された

放射線対策 bull 放射線シールドを付加し放射線を減衰させる

bull 放射線耐性の強い部品(SOI(Silicon On Insulator)技術による耐放射線部品)材料に変更する

bull 放射線による損傷を吸収するために回路または構造上のマージンを持たせる bull ソフト的なエラーに対しては エラー検出訂正機能や多数決

機能等でソフト的エラーが起きてもシステムが機能するようにしたフォールトトレラント機能を付けて対処する ICのハード的故障に対しては ラッチアップ耐性の強い部品を選定するしかないが 電流制限回路を付ける対策も採られる パワーMOSFETに対しては部品選定 電源電圧を規格値の半分以下に落とす等の対策を採る

SOI技術

表面帯電への対策例

表面の物体間を導線で結線する

太陽電池のカバーガラスを導電性被膜付き(酸化インジウムITO)にする

熱制御材表面にITOを被覆する

熱制御材は高誘電率のテフロンの使用を避け 高伝導度耐環境性に優れたブラックカプトンを使用

イオンエンジンの中和器で能動帯電制御

内部帯電への対策例

アルミで3mm厚さに相当するシールドで囲む(Faraday Cage)

テフロンやカプトンなどの誘電体材料の内部での使用量を最小限に押さえる

回路基板やコンフォーマルコーティングは誘電体なので電流リークパス(1012Ωcmまたは1012Ωcm2

程度)を必ずつける

特にスポット的な放射線シールドの金属材には必ず電流リークパスをつける

帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備

衛星モデル作成

材料物性テーブル設定

宇宙環境パラメータ設定

Converter

転送ディレクトリ 解析データファイル

転送

解析ディレクトリ生成 解析結果 進行状況チェック ファイル操作

MUSCAT 解析エンジン

解析結果 表示

パラメトリックラン

オプション 解析

大型パネル実験(35mtimes11m) クーポンパネル実験(26cmtimes16cm)

環境模擬試験 環境模擬試験

MUSCATに使用する物性値設計標準制定のための知見などを得ることを目的に軌道上の宇宙環境を模擬した地上試験を行っている これらの試験では放電の発生頻度や電圧閾値放電発生による太陽電池パネルや搭載機器への影響を検証している

放射線計測装置の原理

bull その粒子が物質を通過する際のエネルギー損出率が粒子の電荷(原子番号)Zの二乗に比例すること(Bethe-Blochの式)を利用する

S2

E

ΔE Ersquo

S1 S3

  • 宇宙機の設計のための宇宙環境
  • 話の流れ
  • 話の流れ
  • TEDA(技術データ取得装置)(国産部品の宇宙環境での実証の必要性)
  • ETS-VTEDA(技術データ取得装置)誕生前の部品の宇宙実証の背景
  • スライド番号 6
  • スライド番号 7
  • スライド番号 8
  • スライド番号 9
  • 図6太陽黒点数と静止軌道電子 (>04MeV ) Flux の変動 (ETS-V搭載DOMによる観測)
  • スライド番号 11
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの開発(理研東大と共同で宇宙環境計測の充実)
  • ETS-VI(きく6号)打ち上がったがGEOに行かずGTOに留まる
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの成果
  • スライド番号 15
  • スライド番号 16
  • スライド番号 17
  • ADEOS搭載TEDA(世界2番目の異常宇宙線ACR)
  • BBND (ボナー球中性子検出器)
  • スライド番号 20
  • ISS搭載BBNDの成果(約8か月)
  • スライド番号 22
  • MDS-1搭載放射線吸収線量モニタ(SDOM)
  • 放射線帯変動モデルの開発MDS-1 065 MeV 電子フラックス
  • 変動パラメータの選択 (1 cycle solar activity)
  • 変動パラメータ- Tavg の定義-
  • 065MeV 電子 L値-Tavg マップ
  • 13MeV 陽子 L値-Tavg マップ
  • 電子観測とMDS-1モデルの比較
  • 放射線帯フラックスピークの変動
  • 陽子観測とモデルの比較
  • 電子(035~078MeV) 1日の変動予測GOSAT軌道
  • 電子(035~078MeV) 変動の信頼度水準(1日)GOSAT軌道
  • MDS-1 model と AE-8 modelとの比較1日
  • 話の流れ
  • 2003年10月 みどり号の全損事故(複合現象)
  • 衛星帯電の基本式
  • 内部帯電
  • パドルでの帯電放電メカニズム
  • スライド番号 40
  • スライド番号 41
  • スライド番号 42
  • データ中継技術衛星DRTS (こだま)の不具合
  • DRTS ESA スパイクノイズと電子フルエンスの比較(赤の丸が異常検知)
  • 不具合が宇宙環境によるものであるか判断する際のポイント
  • 話の流れ
  • 宇宙天気のリスク-宇宙環境によるシステムへの影響 -
  • NASAの報告-GNampCに注目-
  • NASAの報告(続き)
  • 宇宙環境を原因とする不具合の割合-JAXAの場合-
  • 不具合発生部位の割合 
  • Satellite News Digest -静止軌道不具合-
  • 太陽活動と静止軌道衛星不具合例
  • スライド番号 54
  • スライド番号 55
  • スライド番号 56
  • 衛星開発段階における対策
  • 運用における対応
  • 話の流れ
  • スライド番号 60
  • スライド番号 61
  • まとめ(その1)
  • まとめ(その2)
  • 宇宙環境グループは宇宙ステーションと衛星プロジェクトの安全な遂行に貢献しています
  • 補足資料
  • 不具合原因の推移
  • 何故不具合は減らないか
  • 放射線による影響の概要
  • 耐放射線設計手順
  • 各軌道における放射線環境
  • 放射線による部品材料の影響
  • トータルドーズ効果
  • シングルイベント効果
  • シングルイベントメカニズム-陽子と重イオンの違い-
  • エラー発生率の計算
  • 線エネルギー付与(LET)(linear energy transfer)
  • 南大西洋異常(SAA)
  • Single Event Lachup
  • シングルイベントと陽子分布
  • NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)
  • 低軌道での電子フラックスと不具合の発生場所
  • 南大西洋異常(SAA)と極の角
  • スライド番号 83
  • Carrington Flare
  • 放射線対策
  • スライド番号 86
  • スライド番号 87
  • 帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備
  • スライド番号 89
  • 放射線計測装置の原理
Page 32: 宇宙機の設計のための宇宙環境の方針から国産部品開発(42品種)が実施された。 . 半導体電子部品は耐放射線性を加味して、人工衛星(特に

電子(035~078MeV) 1日の変動予測GOSAT軌道

0

50

100

150

200

250

1E+09

1E+10

1E+11

1E+12

1984 1986 1988 1990 1992 1994 1996 1998 2000 2002 2004 2006 2008

Flue

nce[

ecm

2M

eVd

ay]

Launch day

FluenceSSN

Worst case Nov 12003

電子(035~078MeV) 変動の信頼度水準(1日)GOSAT軌道

00

01

02

03

04

05

06

07

08

09

10

88 90 92 94 96 98 100 102 104 106 108 110 112 114

Con

fiden

ce le

vel

Fluence[LOG10 ecm2MeVday]

AE-8 MAX

AE-8 MIN

MDS-1 model と AE-8 model との比較1日

0

20

40

60

80

100

120

140

160

180

1E+09

1E+10

1E+11

1E+12

1995 1997 1999 2001 2003 2005 2007 2009

Flue

nce[

ecm

2M

eVd

ay]

Launch day

Fluence(JAXA)Fluence(AE8)SSN

話の流れ

技術データ取得装置(TEDA)の概要と成果 bull 主な成果 bull 不具合解析例

宇宙天気のリスクと対策 bull 宇宙環境による衛星システムへの影響 bull 宇宙環境を原因とする不具合の割合推移部位 bull 静止軌道不具合 bull 対策

今後必要な観測項目

まとめ

2003年10月 みどり号の全損事故 (複合現象)

極域のオーロラ帯を通過中に電力ハー

ネスを巻いているMLIが高エネルギー電

子により帯電

MLIが接地されていなかったため内側

のハーネスとの間に1kV以上の電位差が

発生

MLI内のガス密度が発電開始に伴う温度

上昇により上昇

ハーネス被覆の傷により露出したハーネ

ス芯線とMLI内面の間で放電発生

単発の放電が隣接するハーネスに飛び火

してハーネス間の短絡

アーク放電が次々と伝搬していきハー

ネス全体が焼損

故障推定箇所 (大電力ハーネス部)

bull詳細報告書は文部科学省 宇宙開発委員会のHP参照

httpwwwmextgojpb_menushingiuchuureports04080901htm

bull 人工衛星の電位 bull 人工衛星は電気的に宇宙に浮いている bull 宇宙機構造体が接地点 bull 宇宙機への流入電流と流出電流のバランスによって宇宙機電位が決まる bull 各電流成分は宇宙機電位Vの関数として表され定常状態では式を下式を満たす

衛星帯電の基本式

( ) dtIIIIIIIC

V

dtdVCVIVIVIVIVIVIVI

BPHBSESISEIE

BPHBSESISEIE

int +++++minus=

==+++++minus

1

0)]()()()()()([)(

入射電子電流 ( E I )

後方散乱電子電流 ( BSE I )

入射正イオン電流 ( I I )

入射電子による二次電子電流 ( SE I )

太陽光

入射正イオンによる 二次電子放出電流 ( SI I )

光電子放出電流( PH I )

電荷ビーム放出電流(IB)

bull内部帯電は衛星の外壁を貫通した放射線帯外帯の01MeV以上の電子が内部に侵入

bull基板間や同軸ケーブルの線間等の容量(コンデンサ)や誘電体に帯電 bull接地されてない導体片に帯電

bullその耐圧電圧を超えると その耐圧の弱い箇所 (材質の欠陥や針状突起など の箇所)で放電して故障に至る

内部帯電

(あるエネルギ-以上の粒子が入射光電子なし)

NASA-HDBK-4002より

パドルでの帯電放電メカニズム

宇宙環境の影響により 衛星がマイナス電位に帯電

高エネルギー電子等により カバーガラスはプラスに帯電 衛星とカバーガラスに電位差が生じる

電位差が大きくなると トリプルジャンクション近傍 の電界強度が増大していく

トリプルジャンクションで放電が発生する カバーガラスの帯電が緩和される

+ + + + + + + + + + + + + +

+ + + +

カバーガラス

太陽電池セル

基板(衛星構体)

トリプルジャンクション rArr 導体絶縁体宇宙環境の接点

持続放電

Substrate

Satellite Load

insulation sheet

Solar array cell

Cover glass

Arc current

Electrode

持続放電は衛星の電力消失につながる 持続放電のモードは以下の2通りがある

Substrate

Satellite Load

insulation sheet

Solar array cell

Cover glass

Arc current

Electrode

Solar array cell

Cover glass

セル-基板間短絡 セル間短絡

放電によって太陽電池セルと基板が短絡する 短絡によって負荷に電力が供給されなくなる

放電によって太陽電池セルとセルが短絡する 短絡によって負荷に電力が供給されなくなる

サブストーム(高エネルギー電子)との遭遇

+ + + + + + + +

二次電子光電子による絶縁体の帯電(局所帯電)

電位差発生

逆電位勾配

衛星構体が負に帯電(絶対帯電)

電位

時間

サブストーム

衛星構体 VS

乖離電圧 ∆V

カバーガラスVcg

0 プラズマ電位

軌道別帯電放電現象

トリプルジャンクションで 放電発生

放電発生

静止軌道

+ + + + + + + +

逆電位勾配

軌道帯電放電現象

トリプルジャンクションで 放電発生

極軌道 オーロラ電子(高エネルギー電子)との遭遇

プラズマ流入出による絶縁体の帯電(局所帯電)

電位差発生

衛星構体が負に帯電(絶対帯電)

放電発生

電位

時間

オーロラ電子

衛星構体 乖離電圧 ∆V

カバーガラス

0 プラズマ電位

データ中継技術衛星DRTS (こだま)の不具合

2002年10月 9日 静止軌道に打ち上げ

2003年

3月24日 406JST変化率異常モニタ故障検出(FDIR)

が動作しA系からB系に切り替わった

3月25日 410JSTにB系のみ異常検知

4月 3日 327JSTにB系のみ異常検知

5月28日 124JSTにB系のみ異常検知

6月 6日1537JSTにB系のみ異常検知

ESA

DRTS ESA スパイクノイズと 電子フルエンスの比較(赤の丸が異常検知)

larr閾値

この事実を基に静止軌道における内部帯電警報システムを構築 2004年4月より運用開始

不具合が宇宙環境によるものであるか 判断する際のポイント

不具合の発生した時刻に太陽フレアや磁気嵐等の宇宙天気の大きな変動が起きていれば不具合に関係している可能性が高い但し帯電など放射線の積算的効果の伴う現象については発生から1週間位さかのぼり環境がどのように推移してきたかを考慮する必要がある

磁気嵐が起きると静止軌道に急激な粒子の増加現象が起きこれにより衛星帯電が引き起こされたりする(予測に利用可能)

地方時(真夜中や朝方か)や季節(春秋)を考慮する

低軌道衛星においてはSAA外帯のrdquo角ldquo及び極通過時に不具合

が起きやすいので衛星の位置(緯度経度)が重要

事象を把握する上で単発現象か数回起きている現象か周期

(時間同じ軌道等)的に発生している現象か

話の流れ

技術データ取得装置(TEDA)の概要と成果 bull 主な成果 bull 不具合解析例

宇宙天気のリスクと対策 bull 宇宙環境による衛星システムへの影響 bull 宇宙環境を原因とする不具合の割合推移部位 bull 静止軌道不具合 bull 対策

今後必要な観測項目

まとめ

宇宙天気のリスク -宇宙環境によるシステムへの影響 -

プラズマ (IRI)

帯電 (MUSCAT)

衝突 (AUTODY)

抗力 表面劣化

紫外線X線 中性粒子 (MSIS)

放射線粒子 (AE8AP8JPLSHIELDO

SE-2)

メテオロイドデブリ (MASTER2005

ORDEM)

電離損傷 変位損傷

bull電子回路の劣化 bull光部品の劣化

bull太陽電池セルの劣化

SEU (CREME96)

bullデータエラー bull画像ノイズ

bullシステム停止 bull回路損傷

bull熱的電気的光学的特性の劣化

bull構造の劣化 bullコンタミ

電磁パルス bull電源出力低下

bull損傷

bullトルク bull軌道落下

bull構造 損傷 bull減圧

bull電磁パルス

NASAの報告 -GNampCに注目-

1974年から1994年に起きたNASAと空軍の衛星故障の内20~25が宇宙環境に起因していたと報告

1990年から2001年に米国欧州カナダ日本の企業や政府機関が開発した衛星を調べた過去の宇宙ミション損失の大部分はロケットの失敗であったが1998年衛星損失の大部分は軌道上の衛星障害となっている多くの最近の異常は太陽電池アレイ及びバッテリの危険が増加している静止軌道通信衛星の設計寿命はこのサブシステムの故障の危険が増加している

喪失等の大きな誘導制御(GNampC)の不具合に注目 GNampC不具合の内宇宙環境による 不具合は約3と報告されている

軌道上衛星のタイプ別数

NASAの報告(続き)

衛星設計寿命における不具合発生時期 事故率と軌道

軌道別の衛星数 サブシステム不具合

宇宙環境を原因とする不具合の割合 -JAXAの場合-

2002年~2008年に運用された軌道上不具合情報が比較的充実している11衛星(利用衛星7機科学衛星4機)の結果宇宙環境によるも

のは約15過去のデータよりも割合が少ない

合計83件 合計35件

(1)利用衛星 (2)科学衛星

設計検討 不足 48

製造不良 8

軌道上環境 17

偶発故障 6

調査中 13

原因不明 8

設計検討

不足 61

製造不良 4

軌道上環境 11

偶発故障 6

調査中 9

原因不明 9

不具合発生部位の割合

不具合発生部位の割合

Brent Robertson Eric Stoneking ( 1990-2001NASA Goddard Space Flight Center )

Satellite News Digest -静止軌道不具合-

Satellite News Digest (SND) (http wwwsqt-indexcouk) で1997年~2009年の期間に静止軌道で95件の不具合が報告されている その内運用ミスや設計ミスなどを除くと32件(約33)は宇宙環境によるものであった 過去のデータより割合が多い

Choiら1)はこれら不具合の地方時と季節依存性を確認した その結果2100LT~900LTで約72の不具合が発生し900LT~2100LTは9件(約28)であった またこの9件は全て姿勢制御の不具合だった 静止軌道衛星不具合のほとんどは真夜中と朝方で起きており磁気嵐に伴い磁気圏尾部から注入した粒子による表面帯電が不具合の主原因と結論づけている

1) Ho-sung Choi et al Analysis of GEO spacecraft anomalies Space weather relationships Space Weather Vol 9 S06001

太陽活動と静止軌道衛星不具合例

ANIK-E1E2

ANIK-E1

複数の衛星で故障

Galaxy-15

帯電放電不具合 -ANIK-E1amp2Telstar401-

Jan 1994 ANIK-E1 amp E2事故時の環境 - Joe H Allen

1週間

太陽活動下降時期の電子増加

2MeV以上電子

copyNOAA Web

フラックスが3桁急増

Jan 1997 Telstar401事故時の環境

静止軌道の急激な電子増加

太陽極大期太陽フレアによる衛星障害 - 2003年10月~11月-

10486981048698 永久故障 4 10486981048698 安全モード又は運用を一時停止 31 10486981048698 データ内容の「誤り」の増加搭載コンピュータの誤動作 5

httpwwwsat-ndcomfailures等のデータによる 合計 40件

-Barbieri and Mahmot

米国極軌道気象衛星NOAA-17の改良型マイクロ波観測装置AMSU-A1 (Advanced Microwave Sounding Unit)のスキャナーが永久故障 米国気象衛星GOES -8号のX線センサがOFFになり復帰しなくなった

e-birdに深刻な不具合が発生 不具合は20本のトランスポンダ全てに影響

火星周回中の探査機「マーズオデッセイ (Mars Odyssey)」の観測機器放射線観測装置「Martian Radiation Environment Experiment (MARIE)」が太陽活動の影響により10月28日から適切に作動しなくなった データ中継技術衛星(DRTS)「こだま」 太陽捕捉モードに移行

太陽陽子

帯電放電不具合-Galaxy15(局所的的現象)- 2

5 M

eV

65

MeV

11

5 M

eV

GOES 14 ----- GOES 15 ----- GOES 11 -----

Satellite Locations

Galaxy 15 anomaly

2010年4月5日9時48分UTCは磁気嵐及びCMEが発生するなど宇宙環境は非常に荒れていたGalaxy15衛星は真夜中側に位置し宇宙環境の影響を受けやすい

位置にいたことから宇宙環境による不具合である可能性が高いということで原因追及がなされた高エネルギー粒子が引き起こす代表的な衛星不具合現象として3つ(表面帯電内部帯電SEUシングルイベントバーンアウトSEL)の可能性を検討した

チームの報告書によると磁気圏尾部からの熱電子の流入による放電が原因であったと結論付けられたGalaxy15衛星の近くにはGOES-11衛星が位置していたがGOES-11衛星には不具合を発生しておらず本現象は局所的な現象と推測される

衛星開発段階における対策 JAXAの不具合解析の結論

bull 2002年~2008年に運用された11機の衛星不具合を解析 宇宙環境による不具合は偶発故障のみ(全体の約15)確率的には想定範囲内ではあるがその影響を最小限とするためディレーティング運用モード寿命についての研究に取り組む

bull 設計基準試験の充実検証確認の強化技術成熟度(TRL)評価の徹底各々の境界制約条件の明示化等により検証不足抜けの防止有効なピアレビューに結びつける

冗長系(同じハードウェア機能の冗長)柔軟性の設計(ソフトハードの対応)

bull 従来の故障が起きないようにする設計に対してGOSAT(いぶき)では重要部

品を二重化することにより故障する可能性は上がるが故障しても衛星バスの運用や観測が続行できる可能性がより高くなるように設計した

運用における対応

bull 宇宙天気監視ーロケット打ち上げ及び宇宙飛行士支援 数日前に今後の宇宙環境の推移を把握(MXレベルのフレアの発生確率)

bull X線の増加で太陽フレア発生を検知したら高エネルギー粒子の発生をいつまで 気を付ければ良いか判断(発生位置で大凡を推定するが課題は多い) SPEが発生した場合(特に10MeV以上100MeV 以上の陽

子)最大値フラックス値の推定 ピーク値を予測(特に閾値に近くなった時に重要)

bull 衛星運用 bull 太陽フレア磁気嵐警報(X線陽子及びkpが閾値を超えた

時に警報を発信)2003年10月より運用開始 bull 内部帯電警報(2日後の静止軌道上の高エネルギー電子(>1

Me) の増加を予測し 閾値を超えた時に警報を発信) 2004年4月より運用開始

話の流れ

技術データ取得装置(TEDA)の概要と成果 bull 主な成果 bull 不具合解析例

宇宙天気のリスクと対策 bull 宇宙環境による衛星システムへの影響 bull 宇宙環境を原因とする不具合の割合推移部位 bull 静止軌道不具合 bull 対策

今後必要な観測項目

まとめ

計測対象計測項目 計測対象 粒径100μm以上のデブリメテオロイド 計測項目 デブリ粒径衝突頻度

基本原理

厚さ約125μmの絶縁性のポリイミドフィルム表面に 100μm周期で直線状の細長い導線(太さ50μm)パターンを形成導線の破断を電気的に検知することによりデブリの衝突(貫通)を検知する破断した導線の数導線の幅ピッチからデブリサイズを計測する

微小デブリ計測技術の概要

衝突孔の例(衝突試験ISAS) - 衝突粒子 SUS 309 microm - 衝突速度 52 kms

HTV5号機によるセンサ機能のフライト実証

35cm

46cm

FY2013機能実証モデル

検出線幅 50 μm 検出線間隔 100 μm フィルム厚 lt 20 μm 有感領域 30times33cm 検出線総数 3300本

サイズ 50times39times4 cm (筐体を含む)

重量 約15kg(筐体を含む)

消費電力 2W(最大4W)(他センサ含む)

テレメトリ 02 bps

宇宙環境観測装置KASPERの一部としてデブリセンサSDMを搭載 FY2013に製作開始今年8月に打ち上げ予定)

まとめ(その1)

衛星不具合の主な原因は帯電放電シングルイベント放射線損傷である今後デブリ環境が重要になると予測される

静止軌道では商用衛星が多く運用されており宇宙環境の変動把握は重要この領域で運用する衛星が気を付けなければいけない環境として

1太陽フレアに伴う高エネルギー粒子 2太陽活動下降期による静止軌道電子の増加 3磁気嵐に伴う磁気圏尾部から注入する粒子 などがあげられる

まとめ(その2)

不具合軽減の取り組み bull 開発時は宇宙環境条件(トータルフラックス及び最悪条

件)を明確にし設計(冗長系柔軟性の設計ディレーティング及び運用モード寿命について研究)試験の充実検証の充実を図る

bull 運用段階に入ったならば宇宙環境を監視し警報等で故障を防ぐ

予測課題 bull 太陽フレアに伴う高エネルギー粒子発生後フラックス

ピーク値の推定

bull 衛星により不具合の起きる閾値は異なるが閾値をこえる急激な電子フラックスの増加と継続時間の予測

bull 局所的な磁気嵐に伴う磁気圏尾部から注入する粒子

宇宙環境グループは宇宙ステーションと衛星プロジェクトの安全な遂行に貢献しています

ご静聴ありがとうございました

補足資料

不具合原因の推移 bull 宇宙天気を大きく左右する要因の1つとして約11年の太陽活動変化が挙げられる

bull 太陽活動下降時期(太陽変動CME)と極大期(フレアCME)に衛星で不具合が増加するそれにより不具合原因の割合が変わる

-Koons et al The Impact of the Space Environment on Space Systems Aerospace Corp report no TR-99(1670)-1 20 July 1999 -2009 preliminary study (unpublished)

何故不具合は減らないか

bull 部品 放射線に対する感受性が高くなっている bull 微細化が進み同時にフォールトするノードが増え同時にエ

ラーとなる論理ノードやメモリセルが増加する微細化によってメモリセルは小さくなるので記憶容量当たりでみるとエラーの発生率は下がるしかし半導体チップの記憶容量やゲート数が増えるので半導体チップ当たりのエラー発生率は微細化とともに上昇するまた蓄積電荷が小さくなり感受性が高くなってきている

bull システム 大型化大電力化運用長期化 bull 1990年代末以降静止衛星の電力が10kWレベルになったしか

し設計検証技術データ蓄積が遅れている改善されつつあると推測される

放射線による影響の概要

粒子 エネルギー又はLET

代表的な影響

陽子 100keV-1MeV 1-10MeV 10-100MeV gt50MeV

表面損傷 表面材料と太陽電池の損傷 放射線損傷(電離非電離損傷の両方)センサーへのノイズ シングルイベント効果

電子 10-100keV gt100keV gt1MeV

表面帯電 深部帯電現象(deep-dielectric charging)センサーへのノイズ太陽電池の損傷 放射線損傷(電離)

重イオン gt1MeV-cm2mg シングルイベント効果

注エネルギー及びLETは個々の部品等により異なりますあくまでも目安です

耐放射線設計手順

軌道条件

ミッション期間

環境条件設定

トータルドーズの予測

1MeV電子換算被曝算出

NIELの換算

LETフルエンス算出

陽子フルエンス算出

対  策  の  検  討

対  策  の  検  討

対  策  の  検  討

放射線による劣化率予測

劣化率予測 特性予測

耐性データ

放射線による劣化率予測

耐性データ

劣化率予測アレイ出力劣化予測

感受性データ

シングルイベント発生率予測 致命度解析

衛星内質量分布

(2)

部品材料の選定

他の要因による劣化率予測

(2)(2) (3)

回路設計等NO

OK

アレイ構造 セル選定

他の要因による劣化率予測 アレイ設計(2)

(2) (2) (2) (3)

衛星内質量分布 部品選定(2)

(2) (2)(3)

NO

OK

NO

OK

(1) 環境モデルマージを含む(2) 部品レベルの検討(3) アセンブリレベルでの検討(4) 設計マージン環境モデル   マージを含め大丈夫か

トータルドーズ

太陽電池アレイの劣化

シングルイベント効果

回路設計

補足放射線太陽宇宙線銀河宇宙線

NEILを用いたダメージファクターの算出

対  策  の  検  討

放射線による劣化率予測

劣化率予測 特性予測

耐性データ

(2)

部品材料の選定

他の要因による劣化率予測

(2)(2) (3)

回路設計等NO

OK

衛星内質量分布 半導体デバイスの変位損傷

(1)

(4)

(4)

(4)

(4)

各軌道における放射線環境

1E+10

1E+11

1E+12

1E+13

1E+14

1E+15

1E+16

1E+17

1E+18

1E+19

1E+20

001 010 100 1000

捕捉

電子

の積

分フ

ルエ

ンス

[m

2 ]

エネルギー[MeV]

各軌道における電子捕捉積分フルエンス(3年間)

LEO

EOS GEO

MEO

GTO

GEO 軌道傾斜角 0deg 高度36000km GTO 軌道傾斜角 18deg 高度 360km~36000km MEO 軌道傾斜角 51deg 高度 10000km EOS 軌道傾斜角 98deg 高度705km LEO 軌道傾斜角 29deg 高度 600km

1E+12

1E+13

1E+14

1E+15

1E+16

1E+17

1E+18

1E+19

1E+20

01 10 100 1000

捕捉

陽子の

積分フルエン

ス[

m2 ]

エネルギー[MeV]

各軌道における捕捉陽子積分フルエンス(3年間)

MEO

GTO

GEO

EOS LEO

放射線による部品材料の影響

総照射線量 (TIDTotal Ionising Dose )

電離損傷

バイポーラTrの電流増幅率の低下リーク電流の増大

γ線で評価

トータルドーズ効果

変位損傷 (DDDisplacement Damage )または 非イオン化エネルギー損失 (NIELNon-Ionising Energy

Loss )

変位損傷(格子欠陥の生成)

電荷輸送効率の低下 (CCD)太陽電池の効率低下等

電子陽子により評価

シングルイベント効果

1個の荷電粒子の入射により発生する誤動作

ソフト(Latch-Up Burnout) エラー又は ソフト (Upset) エラー

陽子及び重イオンで評価

トータルドーズ効果

+ - + + - + - + - - + + + + -

ゲート酸化膜

電離

格子欠陥

正電荷捕獲

+ 正孔 - 電子

電極

(Silicon oxidenitride)

荷電粒子

反跳原子

ゲート絶縁膜中に電荷が蓄積することによるMOSトランジスタのしきい電圧(MOSトランジスタがオフからオンに変化するゲート電圧)の変化をもたらすただ

し最近の最先端チップはゲート絶縁膜がきわめて薄くなっているこのためゲート絶縁膜よりもフィールド絶縁膜(隣接するトランジスタを電気的に分離する絶縁膜)での電荷蓄積が相対的には大きな問題になってきている」

シングルイベント効果

メモリセルはNチャンネルとPチャンネルMOSFETより構成されメモリ情報は回路ノード12の電位の

高低により記録している空乏層の広がっているPN接合12の領域に

重イオンが入射した場合電荷の発生と空乏層内への少数キャリアの収集が起こるこの収集電荷量が回路の耐量を越えた場合(c)に示すように反転が起こる(ソフトエラー)一方pウエル-N基板接

合の空乏層内に電荷収集量が起こりえる耐性を越えると寄生的に存在するPNPNサイリスタ構造がオ

ンし電源と基板間に大電流が流れる状態が生じる(ラッチアップ)

シングルイベントメカニズム -陽子と重イオンの違い-

エラー発生率の計算

線エネルギー付与(LET) (linear energy transfer)

電離性放射線が物質中を通過する際飛程の単位長さ当りに平均して失うエネルギーをいう各種の放射線のうちX線γ線はLETが小さいので低LETといいα線中性子線その他重イオン核分裂破片のLETは大きいので高LETという MeVμmMeV(gcm2)やMeV(mgcm2)で表される

南大西洋異常(SAA) bull 地球の自転軸と磁気軸のずれ

darr bull 放射線帯が自転軸に対して非

対称

bull 南大西洋上空では放射線帯内帯が低高度に落ちてきているこの領域を南大西洋異常域(SAA South Atlantic Anomaly)と呼ぶ

bull 地球観測衛星ではSAAで放射線帯陽子の影響を受ける

Single Event Lachup

シングルイベントと陽子分布

MOS-1衛星(高度909km軌道傾斜角99度)で発生したシングルイベントと 陽子30MeV以上の等高線マップを重ね合わせた結果

NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)

bull 入射粒子が電離によらず与える損傷非イオン化損失

低軌道での電子フラックスと 不具合の発生場所

南大西洋異常(SAA)と極の角

高度800kmでの電子フラックス図極の角(polar horn)とSAAを示す

太陽粒子線 bull 太陽高エネルギー粒子線(SPE Solar Proton Events)は太陽フレア とコロナガス噴出 (CMECoronal Mass Ejections )により引き起こされる bull フレアのスペクトルは可変であるためあるエネルギー域における最悪状態イベントは必ずしも別のエネルギー域における最悪条件ではない 1972年8月のイベント 10~70MeVの粒子が最も多かった 1989年10のイベント 1972年8月のイベントに比べ低エネルギー領域 高エネルギー領域が明らかに激しかった

フルエンス 105 to 1011 cm-2

変動期間 1日から数日

ldquoBastiliardquo Solar Event 14 July 2000

Carrington Flare

84

(LW Townseed) Carrington Flare(1859年) Carrington Flare による30MeV以上トータルFluenceを118times109cm-2で規格化 ~1989年フレアの約13倍(シングルイベントの評価で使用) ~1991年フレアの約9倍 2012年7月23日にキャリントンイベントとほぼ同等の爆発現象が太陽あるいは太陽の周りで起きていたということがNASAの太陽観測衛星「STEREO」の解析から発表された

放射線対策 bull 放射線シールドを付加し放射線を減衰させる

bull 放射線耐性の強い部品(SOI(Silicon On Insulator)技術による耐放射線部品)材料に変更する

bull 放射線による損傷を吸収するために回路または構造上のマージンを持たせる bull ソフト的なエラーに対しては エラー検出訂正機能や多数決

機能等でソフト的エラーが起きてもシステムが機能するようにしたフォールトトレラント機能を付けて対処する ICのハード的故障に対しては ラッチアップ耐性の強い部品を選定するしかないが 電流制限回路を付ける対策も採られる パワーMOSFETに対しては部品選定 電源電圧を規格値の半分以下に落とす等の対策を採る

SOI技術

表面帯電への対策例

表面の物体間を導線で結線する

太陽電池のカバーガラスを導電性被膜付き(酸化インジウムITO)にする

熱制御材表面にITOを被覆する

熱制御材は高誘電率のテフロンの使用を避け 高伝導度耐環境性に優れたブラックカプトンを使用

イオンエンジンの中和器で能動帯電制御

内部帯電への対策例

アルミで3mm厚さに相当するシールドで囲む(Faraday Cage)

テフロンやカプトンなどの誘電体材料の内部での使用量を最小限に押さえる

回路基板やコンフォーマルコーティングは誘電体なので電流リークパス(1012Ωcmまたは1012Ωcm2

程度)を必ずつける

特にスポット的な放射線シールドの金属材には必ず電流リークパスをつける

帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備

衛星モデル作成

材料物性テーブル設定

宇宙環境パラメータ設定

Converter

転送ディレクトリ 解析データファイル

転送

解析ディレクトリ生成 解析結果 進行状況チェック ファイル操作

MUSCAT 解析エンジン

解析結果 表示

パラメトリックラン

オプション 解析

大型パネル実験(35mtimes11m) クーポンパネル実験(26cmtimes16cm)

環境模擬試験 環境模擬試験

MUSCATに使用する物性値設計標準制定のための知見などを得ることを目的に軌道上の宇宙環境を模擬した地上試験を行っている これらの試験では放電の発生頻度や電圧閾値放電発生による太陽電池パネルや搭載機器への影響を検証している

放射線計測装置の原理

bull その粒子が物質を通過する際のエネルギー損出率が粒子の電荷(原子番号)Zの二乗に比例すること(Bethe-Blochの式)を利用する

S2

E

ΔE Ersquo

S1 S3

  • 宇宙機の設計のための宇宙環境
  • 話の流れ
  • 話の流れ
  • TEDA(技術データ取得装置)(国産部品の宇宙環境での実証の必要性)
  • ETS-VTEDA(技術データ取得装置)誕生前の部品の宇宙実証の背景
  • スライド番号 6
  • スライド番号 7
  • スライド番号 8
  • スライド番号 9
  • 図6太陽黒点数と静止軌道電子 (>04MeV ) Flux の変動 (ETS-V搭載DOMによる観測)
  • スライド番号 11
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの開発(理研東大と共同で宇宙環境計測の充実)
  • ETS-VI(きく6号)打ち上がったがGEOに行かずGTOに留まる
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの成果
  • スライド番号 15
  • スライド番号 16
  • スライド番号 17
  • ADEOS搭載TEDA(世界2番目の異常宇宙線ACR)
  • BBND (ボナー球中性子検出器)
  • スライド番号 20
  • ISS搭載BBNDの成果(約8か月)
  • スライド番号 22
  • MDS-1搭載放射線吸収線量モニタ(SDOM)
  • 放射線帯変動モデルの開発MDS-1 065 MeV 電子フラックス
  • 変動パラメータの選択 (1 cycle solar activity)
  • 変動パラメータ- Tavg の定義-
  • 065MeV 電子 L値-Tavg マップ
  • 13MeV 陽子 L値-Tavg マップ
  • 電子観測とMDS-1モデルの比較
  • 放射線帯フラックスピークの変動
  • 陽子観測とモデルの比較
  • 電子(035~078MeV) 1日の変動予測GOSAT軌道
  • 電子(035~078MeV) 変動の信頼度水準(1日)GOSAT軌道
  • MDS-1 model と AE-8 modelとの比較1日
  • 話の流れ
  • 2003年10月 みどり号の全損事故(複合現象)
  • 衛星帯電の基本式
  • 内部帯電
  • パドルでの帯電放電メカニズム
  • スライド番号 40
  • スライド番号 41
  • スライド番号 42
  • データ中継技術衛星DRTS (こだま)の不具合
  • DRTS ESA スパイクノイズと電子フルエンスの比較(赤の丸が異常検知)
  • 不具合が宇宙環境によるものであるか判断する際のポイント
  • 話の流れ
  • 宇宙天気のリスク-宇宙環境によるシステムへの影響 -
  • NASAの報告-GNampCに注目-
  • NASAの報告(続き)
  • 宇宙環境を原因とする不具合の割合-JAXAの場合-
  • 不具合発生部位の割合 
  • Satellite News Digest -静止軌道不具合-
  • 太陽活動と静止軌道衛星不具合例
  • スライド番号 54
  • スライド番号 55
  • スライド番号 56
  • 衛星開発段階における対策
  • 運用における対応
  • 話の流れ
  • スライド番号 60
  • スライド番号 61
  • まとめ(その1)
  • まとめ(その2)
  • 宇宙環境グループは宇宙ステーションと衛星プロジェクトの安全な遂行に貢献しています
  • 補足資料
  • 不具合原因の推移
  • 何故不具合は減らないか
  • 放射線による影響の概要
  • 耐放射線設計手順
  • 各軌道における放射線環境
  • 放射線による部品材料の影響
  • トータルドーズ効果
  • シングルイベント効果
  • シングルイベントメカニズム-陽子と重イオンの違い-
  • エラー発生率の計算
  • 線エネルギー付与(LET)(linear energy transfer)
  • 南大西洋異常(SAA)
  • Single Event Lachup
  • シングルイベントと陽子分布
  • NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)
  • 低軌道での電子フラックスと不具合の発生場所
  • 南大西洋異常(SAA)と極の角
  • スライド番号 83
  • Carrington Flare
  • 放射線対策
  • スライド番号 86
  • スライド番号 87
  • 帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備
  • スライド番号 89
  • 放射線計測装置の原理
Page 33: 宇宙機の設計のための宇宙環境の方針から国産部品開発(42品種)が実施された。 . 半導体電子部品は耐放射線性を加味して、人工衛星(特に

電子(035~078MeV) 変動の信頼度水準(1日)GOSAT軌道

00

01

02

03

04

05

06

07

08

09

10

88 90 92 94 96 98 100 102 104 106 108 110 112 114

Con

fiden

ce le

vel

Fluence[LOG10 ecm2MeVday]

AE-8 MAX

AE-8 MIN

MDS-1 model と AE-8 model との比較1日

0

20

40

60

80

100

120

140

160

180

1E+09

1E+10

1E+11

1E+12

1995 1997 1999 2001 2003 2005 2007 2009

Flue

nce[

ecm

2M

eVd

ay]

Launch day

Fluence(JAXA)Fluence(AE8)SSN

話の流れ

技術データ取得装置(TEDA)の概要と成果 bull 主な成果 bull 不具合解析例

宇宙天気のリスクと対策 bull 宇宙環境による衛星システムへの影響 bull 宇宙環境を原因とする不具合の割合推移部位 bull 静止軌道不具合 bull 対策

今後必要な観測項目

まとめ

2003年10月 みどり号の全損事故 (複合現象)

極域のオーロラ帯を通過中に電力ハー

ネスを巻いているMLIが高エネルギー電

子により帯電

MLIが接地されていなかったため内側

のハーネスとの間に1kV以上の電位差が

発生

MLI内のガス密度が発電開始に伴う温度

上昇により上昇

ハーネス被覆の傷により露出したハーネ

ス芯線とMLI内面の間で放電発生

単発の放電が隣接するハーネスに飛び火

してハーネス間の短絡

アーク放電が次々と伝搬していきハー

ネス全体が焼損

故障推定箇所 (大電力ハーネス部)

bull詳細報告書は文部科学省 宇宙開発委員会のHP参照

httpwwwmextgojpb_menushingiuchuureports04080901htm

bull 人工衛星の電位 bull 人工衛星は電気的に宇宙に浮いている bull 宇宙機構造体が接地点 bull 宇宙機への流入電流と流出電流のバランスによって宇宙機電位が決まる bull 各電流成分は宇宙機電位Vの関数として表され定常状態では式を下式を満たす

衛星帯電の基本式

( ) dtIIIIIIIC

V

dtdVCVIVIVIVIVIVIVI

BPHBSESISEIE

BPHBSESISEIE

int +++++minus=

==+++++minus

1

0)]()()()()()([)(

入射電子電流 ( E I )

後方散乱電子電流 ( BSE I )

入射正イオン電流 ( I I )

入射電子による二次電子電流 ( SE I )

太陽光

入射正イオンによる 二次電子放出電流 ( SI I )

光電子放出電流( PH I )

電荷ビーム放出電流(IB)

bull内部帯電は衛星の外壁を貫通した放射線帯外帯の01MeV以上の電子が内部に侵入

bull基板間や同軸ケーブルの線間等の容量(コンデンサ)や誘電体に帯電 bull接地されてない導体片に帯電

bullその耐圧電圧を超えると その耐圧の弱い箇所 (材質の欠陥や針状突起など の箇所)で放電して故障に至る

内部帯電

(あるエネルギ-以上の粒子が入射光電子なし)

NASA-HDBK-4002より

パドルでの帯電放電メカニズム

宇宙環境の影響により 衛星がマイナス電位に帯電

高エネルギー電子等により カバーガラスはプラスに帯電 衛星とカバーガラスに電位差が生じる

電位差が大きくなると トリプルジャンクション近傍 の電界強度が増大していく

トリプルジャンクションで放電が発生する カバーガラスの帯電が緩和される

+ + + + + + + + + + + + + +

+ + + +

カバーガラス

太陽電池セル

基板(衛星構体)

トリプルジャンクション rArr 導体絶縁体宇宙環境の接点

持続放電

Substrate

Satellite Load

insulation sheet

Solar array cell

Cover glass

Arc current

Electrode

持続放電は衛星の電力消失につながる 持続放電のモードは以下の2通りがある

Substrate

Satellite Load

insulation sheet

Solar array cell

Cover glass

Arc current

Electrode

Solar array cell

Cover glass

セル-基板間短絡 セル間短絡

放電によって太陽電池セルと基板が短絡する 短絡によって負荷に電力が供給されなくなる

放電によって太陽電池セルとセルが短絡する 短絡によって負荷に電力が供給されなくなる

サブストーム(高エネルギー電子)との遭遇

+ + + + + + + +

二次電子光電子による絶縁体の帯電(局所帯電)

電位差発生

逆電位勾配

衛星構体が負に帯電(絶対帯電)

電位

時間

サブストーム

衛星構体 VS

乖離電圧 ∆V

カバーガラスVcg

0 プラズマ電位

軌道別帯電放電現象

トリプルジャンクションで 放電発生

放電発生

静止軌道

+ + + + + + + +

逆電位勾配

軌道帯電放電現象

トリプルジャンクションで 放電発生

極軌道 オーロラ電子(高エネルギー電子)との遭遇

プラズマ流入出による絶縁体の帯電(局所帯電)

電位差発生

衛星構体が負に帯電(絶対帯電)

放電発生

電位

時間

オーロラ電子

衛星構体 乖離電圧 ∆V

カバーガラス

0 プラズマ電位

データ中継技術衛星DRTS (こだま)の不具合

2002年10月 9日 静止軌道に打ち上げ

2003年

3月24日 406JST変化率異常モニタ故障検出(FDIR)

が動作しA系からB系に切り替わった

3月25日 410JSTにB系のみ異常検知

4月 3日 327JSTにB系のみ異常検知

5月28日 124JSTにB系のみ異常検知

6月 6日1537JSTにB系のみ異常検知

ESA

DRTS ESA スパイクノイズと 電子フルエンスの比較(赤の丸が異常検知)

larr閾値

この事実を基に静止軌道における内部帯電警報システムを構築 2004年4月より運用開始

不具合が宇宙環境によるものであるか 判断する際のポイント

不具合の発生した時刻に太陽フレアや磁気嵐等の宇宙天気の大きな変動が起きていれば不具合に関係している可能性が高い但し帯電など放射線の積算的効果の伴う現象については発生から1週間位さかのぼり環境がどのように推移してきたかを考慮する必要がある

磁気嵐が起きると静止軌道に急激な粒子の増加現象が起きこれにより衛星帯電が引き起こされたりする(予測に利用可能)

地方時(真夜中や朝方か)や季節(春秋)を考慮する

低軌道衛星においてはSAA外帯のrdquo角ldquo及び極通過時に不具合

が起きやすいので衛星の位置(緯度経度)が重要

事象を把握する上で単発現象か数回起きている現象か周期

(時間同じ軌道等)的に発生している現象か

話の流れ

技術データ取得装置(TEDA)の概要と成果 bull 主な成果 bull 不具合解析例

宇宙天気のリスクと対策 bull 宇宙環境による衛星システムへの影響 bull 宇宙環境を原因とする不具合の割合推移部位 bull 静止軌道不具合 bull 対策

今後必要な観測項目

まとめ

宇宙天気のリスク -宇宙環境によるシステムへの影響 -

プラズマ (IRI)

帯電 (MUSCAT)

衝突 (AUTODY)

抗力 表面劣化

紫外線X線 中性粒子 (MSIS)

放射線粒子 (AE8AP8JPLSHIELDO

SE-2)

メテオロイドデブリ (MASTER2005

ORDEM)

電離損傷 変位損傷

bull電子回路の劣化 bull光部品の劣化

bull太陽電池セルの劣化

SEU (CREME96)

bullデータエラー bull画像ノイズ

bullシステム停止 bull回路損傷

bull熱的電気的光学的特性の劣化

bull構造の劣化 bullコンタミ

電磁パルス bull電源出力低下

bull損傷

bullトルク bull軌道落下

bull構造 損傷 bull減圧

bull電磁パルス

NASAの報告 -GNampCに注目-

1974年から1994年に起きたNASAと空軍の衛星故障の内20~25が宇宙環境に起因していたと報告

1990年から2001年に米国欧州カナダ日本の企業や政府機関が開発した衛星を調べた過去の宇宙ミション損失の大部分はロケットの失敗であったが1998年衛星損失の大部分は軌道上の衛星障害となっている多くの最近の異常は太陽電池アレイ及びバッテリの危険が増加している静止軌道通信衛星の設計寿命はこのサブシステムの故障の危険が増加している

喪失等の大きな誘導制御(GNampC)の不具合に注目 GNampC不具合の内宇宙環境による 不具合は約3と報告されている

軌道上衛星のタイプ別数

NASAの報告(続き)

衛星設計寿命における不具合発生時期 事故率と軌道

軌道別の衛星数 サブシステム不具合

宇宙環境を原因とする不具合の割合 -JAXAの場合-

2002年~2008年に運用された軌道上不具合情報が比較的充実している11衛星(利用衛星7機科学衛星4機)の結果宇宙環境によるも

のは約15過去のデータよりも割合が少ない

合計83件 合計35件

(1)利用衛星 (2)科学衛星

設計検討 不足 48

製造不良 8

軌道上環境 17

偶発故障 6

調査中 13

原因不明 8

設計検討

不足 61

製造不良 4

軌道上環境 11

偶発故障 6

調査中 9

原因不明 9

不具合発生部位の割合

不具合発生部位の割合

Brent Robertson Eric Stoneking ( 1990-2001NASA Goddard Space Flight Center )

Satellite News Digest -静止軌道不具合-

Satellite News Digest (SND) (http wwwsqt-indexcouk) で1997年~2009年の期間に静止軌道で95件の不具合が報告されている その内運用ミスや設計ミスなどを除くと32件(約33)は宇宙環境によるものであった 過去のデータより割合が多い

Choiら1)はこれら不具合の地方時と季節依存性を確認した その結果2100LT~900LTで約72の不具合が発生し900LT~2100LTは9件(約28)であった またこの9件は全て姿勢制御の不具合だった 静止軌道衛星不具合のほとんどは真夜中と朝方で起きており磁気嵐に伴い磁気圏尾部から注入した粒子による表面帯電が不具合の主原因と結論づけている

1) Ho-sung Choi et al Analysis of GEO spacecraft anomalies Space weather relationships Space Weather Vol 9 S06001

太陽活動と静止軌道衛星不具合例

ANIK-E1E2

ANIK-E1

複数の衛星で故障

Galaxy-15

帯電放電不具合 -ANIK-E1amp2Telstar401-

Jan 1994 ANIK-E1 amp E2事故時の環境 - Joe H Allen

1週間

太陽活動下降時期の電子増加

2MeV以上電子

copyNOAA Web

フラックスが3桁急増

Jan 1997 Telstar401事故時の環境

静止軌道の急激な電子増加

太陽極大期太陽フレアによる衛星障害 - 2003年10月~11月-

10486981048698 永久故障 4 10486981048698 安全モード又は運用を一時停止 31 10486981048698 データ内容の「誤り」の増加搭載コンピュータの誤動作 5

httpwwwsat-ndcomfailures等のデータによる 合計 40件

-Barbieri and Mahmot

米国極軌道気象衛星NOAA-17の改良型マイクロ波観測装置AMSU-A1 (Advanced Microwave Sounding Unit)のスキャナーが永久故障 米国気象衛星GOES -8号のX線センサがOFFになり復帰しなくなった

e-birdに深刻な不具合が発生 不具合は20本のトランスポンダ全てに影響

火星周回中の探査機「マーズオデッセイ (Mars Odyssey)」の観測機器放射線観測装置「Martian Radiation Environment Experiment (MARIE)」が太陽活動の影響により10月28日から適切に作動しなくなった データ中継技術衛星(DRTS)「こだま」 太陽捕捉モードに移行

太陽陽子

帯電放電不具合-Galaxy15(局所的的現象)- 2

5 M

eV

65

MeV

11

5 M

eV

GOES 14 ----- GOES 15 ----- GOES 11 -----

Satellite Locations

Galaxy 15 anomaly

2010年4月5日9時48分UTCは磁気嵐及びCMEが発生するなど宇宙環境は非常に荒れていたGalaxy15衛星は真夜中側に位置し宇宙環境の影響を受けやすい

位置にいたことから宇宙環境による不具合である可能性が高いということで原因追及がなされた高エネルギー粒子が引き起こす代表的な衛星不具合現象として3つ(表面帯電内部帯電SEUシングルイベントバーンアウトSEL)の可能性を検討した

チームの報告書によると磁気圏尾部からの熱電子の流入による放電が原因であったと結論付けられたGalaxy15衛星の近くにはGOES-11衛星が位置していたがGOES-11衛星には不具合を発生しておらず本現象は局所的な現象と推測される

衛星開発段階における対策 JAXAの不具合解析の結論

bull 2002年~2008年に運用された11機の衛星不具合を解析 宇宙環境による不具合は偶発故障のみ(全体の約15)確率的には想定範囲内ではあるがその影響を最小限とするためディレーティング運用モード寿命についての研究に取り組む

bull 設計基準試験の充実検証確認の強化技術成熟度(TRL)評価の徹底各々の境界制約条件の明示化等により検証不足抜けの防止有効なピアレビューに結びつける

冗長系(同じハードウェア機能の冗長)柔軟性の設計(ソフトハードの対応)

bull 従来の故障が起きないようにする設計に対してGOSAT(いぶき)では重要部

品を二重化することにより故障する可能性は上がるが故障しても衛星バスの運用や観測が続行できる可能性がより高くなるように設計した

運用における対応

bull 宇宙天気監視ーロケット打ち上げ及び宇宙飛行士支援 数日前に今後の宇宙環境の推移を把握(MXレベルのフレアの発生確率)

bull X線の増加で太陽フレア発生を検知したら高エネルギー粒子の発生をいつまで 気を付ければ良いか判断(発生位置で大凡を推定するが課題は多い) SPEが発生した場合(特に10MeV以上100MeV 以上の陽

子)最大値フラックス値の推定 ピーク値を予測(特に閾値に近くなった時に重要)

bull 衛星運用 bull 太陽フレア磁気嵐警報(X線陽子及びkpが閾値を超えた

時に警報を発信)2003年10月より運用開始 bull 内部帯電警報(2日後の静止軌道上の高エネルギー電子(>1

Me) の増加を予測し 閾値を超えた時に警報を発信) 2004年4月より運用開始

話の流れ

技術データ取得装置(TEDA)の概要と成果 bull 主な成果 bull 不具合解析例

宇宙天気のリスクと対策 bull 宇宙環境による衛星システムへの影響 bull 宇宙環境を原因とする不具合の割合推移部位 bull 静止軌道不具合 bull 対策

今後必要な観測項目

まとめ

計測対象計測項目 計測対象 粒径100μm以上のデブリメテオロイド 計測項目 デブリ粒径衝突頻度

基本原理

厚さ約125μmの絶縁性のポリイミドフィルム表面に 100μm周期で直線状の細長い導線(太さ50μm)パターンを形成導線の破断を電気的に検知することによりデブリの衝突(貫通)を検知する破断した導線の数導線の幅ピッチからデブリサイズを計測する

微小デブリ計測技術の概要

衝突孔の例(衝突試験ISAS) - 衝突粒子 SUS 309 microm - 衝突速度 52 kms

HTV5号機によるセンサ機能のフライト実証

35cm

46cm

FY2013機能実証モデル

検出線幅 50 μm 検出線間隔 100 μm フィルム厚 lt 20 μm 有感領域 30times33cm 検出線総数 3300本

サイズ 50times39times4 cm (筐体を含む)

重量 約15kg(筐体を含む)

消費電力 2W(最大4W)(他センサ含む)

テレメトリ 02 bps

宇宙環境観測装置KASPERの一部としてデブリセンサSDMを搭載 FY2013に製作開始今年8月に打ち上げ予定)

まとめ(その1)

衛星不具合の主な原因は帯電放電シングルイベント放射線損傷である今後デブリ環境が重要になると予測される

静止軌道では商用衛星が多く運用されており宇宙環境の変動把握は重要この領域で運用する衛星が気を付けなければいけない環境として

1太陽フレアに伴う高エネルギー粒子 2太陽活動下降期による静止軌道電子の増加 3磁気嵐に伴う磁気圏尾部から注入する粒子 などがあげられる

まとめ(その2)

不具合軽減の取り組み bull 開発時は宇宙環境条件(トータルフラックス及び最悪条

件)を明確にし設計(冗長系柔軟性の設計ディレーティング及び運用モード寿命について研究)試験の充実検証の充実を図る

bull 運用段階に入ったならば宇宙環境を監視し警報等で故障を防ぐ

予測課題 bull 太陽フレアに伴う高エネルギー粒子発生後フラックス

ピーク値の推定

bull 衛星により不具合の起きる閾値は異なるが閾値をこえる急激な電子フラックスの増加と継続時間の予測

bull 局所的な磁気嵐に伴う磁気圏尾部から注入する粒子

宇宙環境グループは宇宙ステーションと衛星プロジェクトの安全な遂行に貢献しています

ご静聴ありがとうございました

補足資料

不具合原因の推移 bull 宇宙天気を大きく左右する要因の1つとして約11年の太陽活動変化が挙げられる

bull 太陽活動下降時期(太陽変動CME)と極大期(フレアCME)に衛星で不具合が増加するそれにより不具合原因の割合が変わる

-Koons et al The Impact of the Space Environment on Space Systems Aerospace Corp report no TR-99(1670)-1 20 July 1999 -2009 preliminary study (unpublished)

何故不具合は減らないか

bull 部品 放射線に対する感受性が高くなっている bull 微細化が進み同時にフォールトするノードが増え同時にエ

ラーとなる論理ノードやメモリセルが増加する微細化によってメモリセルは小さくなるので記憶容量当たりでみるとエラーの発生率は下がるしかし半導体チップの記憶容量やゲート数が増えるので半導体チップ当たりのエラー発生率は微細化とともに上昇するまた蓄積電荷が小さくなり感受性が高くなってきている

bull システム 大型化大電力化運用長期化 bull 1990年代末以降静止衛星の電力が10kWレベルになったしか

し設計検証技術データ蓄積が遅れている改善されつつあると推測される

放射線による影響の概要

粒子 エネルギー又はLET

代表的な影響

陽子 100keV-1MeV 1-10MeV 10-100MeV gt50MeV

表面損傷 表面材料と太陽電池の損傷 放射線損傷(電離非電離損傷の両方)センサーへのノイズ シングルイベント効果

電子 10-100keV gt100keV gt1MeV

表面帯電 深部帯電現象(deep-dielectric charging)センサーへのノイズ太陽電池の損傷 放射線損傷(電離)

重イオン gt1MeV-cm2mg シングルイベント効果

注エネルギー及びLETは個々の部品等により異なりますあくまでも目安です

耐放射線設計手順

軌道条件

ミッション期間

環境条件設定

トータルドーズの予測

1MeV電子換算被曝算出

NIELの換算

LETフルエンス算出

陽子フルエンス算出

対  策  の  検  討

対  策  の  検  討

対  策  の  検  討

放射線による劣化率予測

劣化率予測 特性予測

耐性データ

放射線による劣化率予測

耐性データ

劣化率予測アレイ出力劣化予測

感受性データ

シングルイベント発生率予測 致命度解析

衛星内質量分布

(2)

部品材料の選定

他の要因による劣化率予測

(2)(2) (3)

回路設計等NO

OK

アレイ構造 セル選定

他の要因による劣化率予測 アレイ設計(2)

(2) (2) (2) (3)

衛星内質量分布 部品選定(2)

(2) (2)(3)

NO

OK

NO

OK

(1) 環境モデルマージを含む(2) 部品レベルの検討(3) アセンブリレベルでの検討(4) 設計マージン環境モデル   マージを含め大丈夫か

トータルドーズ

太陽電池アレイの劣化

シングルイベント効果

回路設計

補足放射線太陽宇宙線銀河宇宙線

NEILを用いたダメージファクターの算出

対  策  の  検  討

放射線による劣化率予測

劣化率予測 特性予測

耐性データ

(2)

部品材料の選定

他の要因による劣化率予測

(2)(2) (3)

回路設計等NO

OK

衛星内質量分布 半導体デバイスの変位損傷

(1)

(4)

(4)

(4)

(4)

各軌道における放射線環境

1E+10

1E+11

1E+12

1E+13

1E+14

1E+15

1E+16

1E+17

1E+18

1E+19

1E+20

001 010 100 1000

捕捉

電子

の積

分フ

ルエ

ンス

[m

2 ]

エネルギー[MeV]

各軌道における電子捕捉積分フルエンス(3年間)

LEO

EOS GEO

MEO

GTO

GEO 軌道傾斜角 0deg 高度36000km GTO 軌道傾斜角 18deg 高度 360km~36000km MEO 軌道傾斜角 51deg 高度 10000km EOS 軌道傾斜角 98deg 高度705km LEO 軌道傾斜角 29deg 高度 600km

1E+12

1E+13

1E+14

1E+15

1E+16

1E+17

1E+18

1E+19

1E+20

01 10 100 1000

捕捉

陽子の

積分フルエン

ス[

m2 ]

エネルギー[MeV]

各軌道における捕捉陽子積分フルエンス(3年間)

MEO

GTO

GEO

EOS LEO

放射線による部品材料の影響

総照射線量 (TIDTotal Ionising Dose )

電離損傷

バイポーラTrの電流増幅率の低下リーク電流の増大

γ線で評価

トータルドーズ効果

変位損傷 (DDDisplacement Damage )または 非イオン化エネルギー損失 (NIELNon-Ionising Energy

Loss )

変位損傷(格子欠陥の生成)

電荷輸送効率の低下 (CCD)太陽電池の効率低下等

電子陽子により評価

シングルイベント効果

1個の荷電粒子の入射により発生する誤動作

ソフト(Latch-Up Burnout) エラー又は ソフト (Upset) エラー

陽子及び重イオンで評価

トータルドーズ効果

+ - + + - + - + - - + + + + -

ゲート酸化膜

電離

格子欠陥

正電荷捕獲

+ 正孔 - 電子

電極

(Silicon oxidenitride)

荷電粒子

反跳原子

ゲート絶縁膜中に電荷が蓄積することによるMOSトランジスタのしきい電圧(MOSトランジスタがオフからオンに変化するゲート電圧)の変化をもたらすただ

し最近の最先端チップはゲート絶縁膜がきわめて薄くなっているこのためゲート絶縁膜よりもフィールド絶縁膜(隣接するトランジスタを電気的に分離する絶縁膜)での電荷蓄積が相対的には大きな問題になってきている」

シングルイベント効果

メモリセルはNチャンネルとPチャンネルMOSFETより構成されメモリ情報は回路ノード12の電位の

高低により記録している空乏層の広がっているPN接合12の領域に

重イオンが入射した場合電荷の発生と空乏層内への少数キャリアの収集が起こるこの収集電荷量が回路の耐量を越えた場合(c)に示すように反転が起こる(ソフトエラー)一方pウエル-N基板接

合の空乏層内に電荷収集量が起こりえる耐性を越えると寄生的に存在するPNPNサイリスタ構造がオ

ンし電源と基板間に大電流が流れる状態が生じる(ラッチアップ)

シングルイベントメカニズム -陽子と重イオンの違い-

エラー発生率の計算

線エネルギー付与(LET) (linear energy transfer)

電離性放射線が物質中を通過する際飛程の単位長さ当りに平均して失うエネルギーをいう各種の放射線のうちX線γ線はLETが小さいので低LETといいα線中性子線その他重イオン核分裂破片のLETは大きいので高LETという MeVμmMeV(gcm2)やMeV(mgcm2)で表される

南大西洋異常(SAA) bull 地球の自転軸と磁気軸のずれ

darr bull 放射線帯が自転軸に対して非

対称

bull 南大西洋上空では放射線帯内帯が低高度に落ちてきているこの領域を南大西洋異常域(SAA South Atlantic Anomaly)と呼ぶ

bull 地球観測衛星ではSAAで放射線帯陽子の影響を受ける

Single Event Lachup

シングルイベントと陽子分布

MOS-1衛星(高度909km軌道傾斜角99度)で発生したシングルイベントと 陽子30MeV以上の等高線マップを重ね合わせた結果

NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)

bull 入射粒子が電離によらず与える損傷非イオン化損失

低軌道での電子フラックスと 不具合の発生場所

南大西洋異常(SAA)と極の角

高度800kmでの電子フラックス図極の角(polar horn)とSAAを示す

太陽粒子線 bull 太陽高エネルギー粒子線(SPE Solar Proton Events)は太陽フレア とコロナガス噴出 (CMECoronal Mass Ejections )により引き起こされる bull フレアのスペクトルは可変であるためあるエネルギー域における最悪状態イベントは必ずしも別のエネルギー域における最悪条件ではない 1972年8月のイベント 10~70MeVの粒子が最も多かった 1989年10のイベント 1972年8月のイベントに比べ低エネルギー領域 高エネルギー領域が明らかに激しかった

フルエンス 105 to 1011 cm-2

変動期間 1日から数日

ldquoBastiliardquo Solar Event 14 July 2000

Carrington Flare

84

(LW Townseed) Carrington Flare(1859年) Carrington Flare による30MeV以上トータルFluenceを118times109cm-2で規格化 ~1989年フレアの約13倍(シングルイベントの評価で使用) ~1991年フレアの約9倍 2012年7月23日にキャリントンイベントとほぼ同等の爆発現象が太陽あるいは太陽の周りで起きていたということがNASAの太陽観測衛星「STEREO」の解析から発表された

放射線対策 bull 放射線シールドを付加し放射線を減衰させる

bull 放射線耐性の強い部品(SOI(Silicon On Insulator)技術による耐放射線部品)材料に変更する

bull 放射線による損傷を吸収するために回路または構造上のマージンを持たせる bull ソフト的なエラーに対しては エラー検出訂正機能や多数決

機能等でソフト的エラーが起きてもシステムが機能するようにしたフォールトトレラント機能を付けて対処する ICのハード的故障に対しては ラッチアップ耐性の強い部品を選定するしかないが 電流制限回路を付ける対策も採られる パワーMOSFETに対しては部品選定 電源電圧を規格値の半分以下に落とす等の対策を採る

SOI技術

表面帯電への対策例

表面の物体間を導線で結線する

太陽電池のカバーガラスを導電性被膜付き(酸化インジウムITO)にする

熱制御材表面にITOを被覆する

熱制御材は高誘電率のテフロンの使用を避け 高伝導度耐環境性に優れたブラックカプトンを使用

イオンエンジンの中和器で能動帯電制御

内部帯電への対策例

アルミで3mm厚さに相当するシールドで囲む(Faraday Cage)

テフロンやカプトンなどの誘電体材料の内部での使用量を最小限に押さえる

回路基板やコンフォーマルコーティングは誘電体なので電流リークパス(1012Ωcmまたは1012Ωcm2

程度)を必ずつける

特にスポット的な放射線シールドの金属材には必ず電流リークパスをつける

帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備

衛星モデル作成

材料物性テーブル設定

宇宙環境パラメータ設定

Converter

転送ディレクトリ 解析データファイル

転送

解析ディレクトリ生成 解析結果 進行状況チェック ファイル操作

MUSCAT 解析エンジン

解析結果 表示

パラメトリックラン

オプション 解析

大型パネル実験(35mtimes11m) クーポンパネル実験(26cmtimes16cm)

環境模擬試験 環境模擬試験

MUSCATに使用する物性値設計標準制定のための知見などを得ることを目的に軌道上の宇宙環境を模擬した地上試験を行っている これらの試験では放電の発生頻度や電圧閾値放電発生による太陽電池パネルや搭載機器への影響を検証している

放射線計測装置の原理

bull その粒子が物質を通過する際のエネルギー損出率が粒子の電荷(原子番号)Zの二乗に比例すること(Bethe-Blochの式)を利用する

S2

E

ΔE Ersquo

S1 S3

  • 宇宙機の設計のための宇宙環境
  • 話の流れ
  • 話の流れ
  • TEDA(技術データ取得装置)(国産部品の宇宙環境での実証の必要性)
  • ETS-VTEDA(技術データ取得装置)誕生前の部品の宇宙実証の背景
  • スライド番号 6
  • スライド番号 7
  • スライド番号 8
  • スライド番号 9
  • 図6太陽黒点数と静止軌道電子 (>04MeV ) Flux の変動 (ETS-V搭載DOMによる観測)
  • スライド番号 11
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの開発(理研東大と共同で宇宙環境計測の充実)
  • ETS-VI(きく6号)打ち上がったがGEOに行かずGTOに留まる
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの成果
  • スライド番号 15
  • スライド番号 16
  • スライド番号 17
  • ADEOS搭載TEDA(世界2番目の異常宇宙線ACR)
  • BBND (ボナー球中性子検出器)
  • スライド番号 20
  • ISS搭載BBNDの成果(約8か月)
  • スライド番号 22
  • MDS-1搭載放射線吸収線量モニタ(SDOM)
  • 放射線帯変動モデルの開発MDS-1 065 MeV 電子フラックス
  • 変動パラメータの選択 (1 cycle solar activity)
  • 変動パラメータ- Tavg の定義-
  • 065MeV 電子 L値-Tavg マップ
  • 13MeV 陽子 L値-Tavg マップ
  • 電子観測とMDS-1モデルの比較
  • 放射線帯フラックスピークの変動
  • 陽子観測とモデルの比較
  • 電子(035~078MeV) 1日の変動予測GOSAT軌道
  • 電子(035~078MeV) 変動の信頼度水準(1日)GOSAT軌道
  • MDS-1 model と AE-8 modelとの比較1日
  • 話の流れ
  • 2003年10月 みどり号の全損事故(複合現象)
  • 衛星帯電の基本式
  • 内部帯電
  • パドルでの帯電放電メカニズム
  • スライド番号 40
  • スライド番号 41
  • スライド番号 42
  • データ中継技術衛星DRTS (こだま)の不具合
  • DRTS ESA スパイクノイズと電子フルエンスの比較(赤の丸が異常検知)
  • 不具合が宇宙環境によるものであるか判断する際のポイント
  • 話の流れ
  • 宇宙天気のリスク-宇宙環境によるシステムへの影響 -
  • NASAの報告-GNampCに注目-
  • NASAの報告(続き)
  • 宇宙環境を原因とする不具合の割合-JAXAの場合-
  • 不具合発生部位の割合 
  • Satellite News Digest -静止軌道不具合-
  • 太陽活動と静止軌道衛星不具合例
  • スライド番号 54
  • スライド番号 55
  • スライド番号 56
  • 衛星開発段階における対策
  • 運用における対応
  • 話の流れ
  • スライド番号 60
  • スライド番号 61
  • まとめ(その1)
  • まとめ(その2)
  • 宇宙環境グループは宇宙ステーションと衛星プロジェクトの安全な遂行に貢献しています
  • 補足資料
  • 不具合原因の推移
  • 何故不具合は減らないか
  • 放射線による影響の概要
  • 耐放射線設計手順
  • 各軌道における放射線環境
  • 放射線による部品材料の影響
  • トータルドーズ効果
  • シングルイベント効果
  • シングルイベントメカニズム-陽子と重イオンの違い-
  • エラー発生率の計算
  • 線エネルギー付与(LET)(linear energy transfer)
  • 南大西洋異常(SAA)
  • Single Event Lachup
  • シングルイベントと陽子分布
  • NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)
  • 低軌道での電子フラックスと不具合の発生場所
  • 南大西洋異常(SAA)と極の角
  • スライド番号 83
  • Carrington Flare
  • 放射線対策
  • スライド番号 86
  • スライド番号 87
  • 帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備
  • スライド番号 89
  • 放射線計測装置の原理
Page 34: 宇宙機の設計のための宇宙環境の方針から国産部品開発(42品種)が実施された。 . 半導体電子部品は耐放射線性を加味して、人工衛星(特に

MDS-1 model と AE-8 model との比較1日

0

20

40

60

80

100

120

140

160

180

1E+09

1E+10

1E+11

1E+12

1995 1997 1999 2001 2003 2005 2007 2009

Flue

nce[

ecm

2M

eVd

ay]

Launch day

Fluence(JAXA)Fluence(AE8)SSN

話の流れ

技術データ取得装置(TEDA)の概要と成果 bull 主な成果 bull 不具合解析例

宇宙天気のリスクと対策 bull 宇宙環境による衛星システムへの影響 bull 宇宙環境を原因とする不具合の割合推移部位 bull 静止軌道不具合 bull 対策

今後必要な観測項目

まとめ

2003年10月 みどり号の全損事故 (複合現象)

極域のオーロラ帯を通過中に電力ハー

ネスを巻いているMLIが高エネルギー電

子により帯電

MLIが接地されていなかったため内側

のハーネスとの間に1kV以上の電位差が

発生

MLI内のガス密度が発電開始に伴う温度

上昇により上昇

ハーネス被覆の傷により露出したハーネ

ス芯線とMLI内面の間で放電発生

単発の放電が隣接するハーネスに飛び火

してハーネス間の短絡

アーク放電が次々と伝搬していきハー

ネス全体が焼損

故障推定箇所 (大電力ハーネス部)

bull詳細報告書は文部科学省 宇宙開発委員会のHP参照

httpwwwmextgojpb_menushingiuchuureports04080901htm

bull 人工衛星の電位 bull 人工衛星は電気的に宇宙に浮いている bull 宇宙機構造体が接地点 bull 宇宙機への流入電流と流出電流のバランスによって宇宙機電位が決まる bull 各電流成分は宇宙機電位Vの関数として表され定常状態では式を下式を満たす

衛星帯電の基本式

( ) dtIIIIIIIC

V

dtdVCVIVIVIVIVIVIVI

BPHBSESISEIE

BPHBSESISEIE

int +++++minus=

==+++++minus

1

0)]()()()()()([)(

入射電子電流 ( E I )

後方散乱電子電流 ( BSE I )

入射正イオン電流 ( I I )

入射電子による二次電子電流 ( SE I )

太陽光

入射正イオンによる 二次電子放出電流 ( SI I )

光電子放出電流( PH I )

電荷ビーム放出電流(IB)

bull内部帯電は衛星の外壁を貫通した放射線帯外帯の01MeV以上の電子が内部に侵入

bull基板間や同軸ケーブルの線間等の容量(コンデンサ)や誘電体に帯電 bull接地されてない導体片に帯電

bullその耐圧電圧を超えると その耐圧の弱い箇所 (材質の欠陥や針状突起など の箇所)で放電して故障に至る

内部帯電

(あるエネルギ-以上の粒子が入射光電子なし)

NASA-HDBK-4002より

パドルでの帯電放電メカニズム

宇宙環境の影響により 衛星がマイナス電位に帯電

高エネルギー電子等により カバーガラスはプラスに帯電 衛星とカバーガラスに電位差が生じる

電位差が大きくなると トリプルジャンクション近傍 の電界強度が増大していく

トリプルジャンクションで放電が発生する カバーガラスの帯電が緩和される

+ + + + + + + + + + + + + +

+ + + +

カバーガラス

太陽電池セル

基板(衛星構体)

トリプルジャンクション rArr 導体絶縁体宇宙環境の接点

持続放電

Substrate

Satellite Load

insulation sheet

Solar array cell

Cover glass

Arc current

Electrode

持続放電は衛星の電力消失につながる 持続放電のモードは以下の2通りがある

Substrate

Satellite Load

insulation sheet

Solar array cell

Cover glass

Arc current

Electrode

Solar array cell

Cover glass

セル-基板間短絡 セル間短絡

放電によって太陽電池セルと基板が短絡する 短絡によって負荷に電力が供給されなくなる

放電によって太陽電池セルとセルが短絡する 短絡によって負荷に電力が供給されなくなる

サブストーム(高エネルギー電子)との遭遇

+ + + + + + + +

二次電子光電子による絶縁体の帯電(局所帯電)

電位差発生

逆電位勾配

衛星構体が負に帯電(絶対帯電)

電位

時間

サブストーム

衛星構体 VS

乖離電圧 ∆V

カバーガラスVcg

0 プラズマ電位

軌道別帯電放電現象

トリプルジャンクションで 放電発生

放電発生

静止軌道

+ + + + + + + +

逆電位勾配

軌道帯電放電現象

トリプルジャンクションで 放電発生

極軌道 オーロラ電子(高エネルギー電子)との遭遇

プラズマ流入出による絶縁体の帯電(局所帯電)

電位差発生

衛星構体が負に帯電(絶対帯電)

放電発生

電位

時間

オーロラ電子

衛星構体 乖離電圧 ∆V

カバーガラス

0 プラズマ電位

データ中継技術衛星DRTS (こだま)の不具合

2002年10月 9日 静止軌道に打ち上げ

2003年

3月24日 406JST変化率異常モニタ故障検出(FDIR)

が動作しA系からB系に切り替わった

3月25日 410JSTにB系のみ異常検知

4月 3日 327JSTにB系のみ異常検知

5月28日 124JSTにB系のみ異常検知

6月 6日1537JSTにB系のみ異常検知

ESA

DRTS ESA スパイクノイズと 電子フルエンスの比較(赤の丸が異常検知)

larr閾値

この事実を基に静止軌道における内部帯電警報システムを構築 2004年4月より運用開始

不具合が宇宙環境によるものであるか 判断する際のポイント

不具合の発生した時刻に太陽フレアや磁気嵐等の宇宙天気の大きな変動が起きていれば不具合に関係している可能性が高い但し帯電など放射線の積算的効果の伴う現象については発生から1週間位さかのぼり環境がどのように推移してきたかを考慮する必要がある

磁気嵐が起きると静止軌道に急激な粒子の増加現象が起きこれにより衛星帯電が引き起こされたりする(予測に利用可能)

地方時(真夜中や朝方か)や季節(春秋)を考慮する

低軌道衛星においてはSAA外帯のrdquo角ldquo及び極通過時に不具合

が起きやすいので衛星の位置(緯度経度)が重要

事象を把握する上で単発現象か数回起きている現象か周期

(時間同じ軌道等)的に発生している現象か

話の流れ

技術データ取得装置(TEDA)の概要と成果 bull 主な成果 bull 不具合解析例

宇宙天気のリスクと対策 bull 宇宙環境による衛星システムへの影響 bull 宇宙環境を原因とする不具合の割合推移部位 bull 静止軌道不具合 bull 対策

今後必要な観測項目

まとめ

宇宙天気のリスク -宇宙環境によるシステムへの影響 -

プラズマ (IRI)

帯電 (MUSCAT)

衝突 (AUTODY)

抗力 表面劣化

紫外線X線 中性粒子 (MSIS)

放射線粒子 (AE8AP8JPLSHIELDO

SE-2)

メテオロイドデブリ (MASTER2005

ORDEM)

電離損傷 変位損傷

bull電子回路の劣化 bull光部品の劣化

bull太陽電池セルの劣化

SEU (CREME96)

bullデータエラー bull画像ノイズ

bullシステム停止 bull回路損傷

bull熱的電気的光学的特性の劣化

bull構造の劣化 bullコンタミ

電磁パルス bull電源出力低下

bull損傷

bullトルク bull軌道落下

bull構造 損傷 bull減圧

bull電磁パルス

NASAの報告 -GNampCに注目-

1974年から1994年に起きたNASAと空軍の衛星故障の内20~25が宇宙環境に起因していたと報告

1990年から2001年に米国欧州カナダ日本の企業や政府機関が開発した衛星を調べた過去の宇宙ミション損失の大部分はロケットの失敗であったが1998年衛星損失の大部分は軌道上の衛星障害となっている多くの最近の異常は太陽電池アレイ及びバッテリの危険が増加している静止軌道通信衛星の設計寿命はこのサブシステムの故障の危険が増加している

喪失等の大きな誘導制御(GNampC)の不具合に注目 GNampC不具合の内宇宙環境による 不具合は約3と報告されている

軌道上衛星のタイプ別数

NASAの報告(続き)

衛星設計寿命における不具合発生時期 事故率と軌道

軌道別の衛星数 サブシステム不具合

宇宙環境を原因とする不具合の割合 -JAXAの場合-

2002年~2008年に運用された軌道上不具合情報が比較的充実している11衛星(利用衛星7機科学衛星4機)の結果宇宙環境によるも

のは約15過去のデータよりも割合が少ない

合計83件 合計35件

(1)利用衛星 (2)科学衛星

設計検討 不足 48

製造不良 8

軌道上環境 17

偶発故障 6

調査中 13

原因不明 8

設計検討

不足 61

製造不良 4

軌道上環境 11

偶発故障 6

調査中 9

原因不明 9

不具合発生部位の割合

不具合発生部位の割合

Brent Robertson Eric Stoneking ( 1990-2001NASA Goddard Space Flight Center )

Satellite News Digest -静止軌道不具合-

Satellite News Digest (SND) (http wwwsqt-indexcouk) で1997年~2009年の期間に静止軌道で95件の不具合が報告されている その内運用ミスや設計ミスなどを除くと32件(約33)は宇宙環境によるものであった 過去のデータより割合が多い

Choiら1)はこれら不具合の地方時と季節依存性を確認した その結果2100LT~900LTで約72の不具合が発生し900LT~2100LTは9件(約28)であった またこの9件は全て姿勢制御の不具合だった 静止軌道衛星不具合のほとんどは真夜中と朝方で起きており磁気嵐に伴い磁気圏尾部から注入した粒子による表面帯電が不具合の主原因と結論づけている

1) Ho-sung Choi et al Analysis of GEO spacecraft anomalies Space weather relationships Space Weather Vol 9 S06001

太陽活動と静止軌道衛星不具合例

ANIK-E1E2

ANIK-E1

複数の衛星で故障

Galaxy-15

帯電放電不具合 -ANIK-E1amp2Telstar401-

Jan 1994 ANIK-E1 amp E2事故時の環境 - Joe H Allen

1週間

太陽活動下降時期の電子増加

2MeV以上電子

copyNOAA Web

フラックスが3桁急増

Jan 1997 Telstar401事故時の環境

静止軌道の急激な電子増加

太陽極大期太陽フレアによる衛星障害 - 2003年10月~11月-

10486981048698 永久故障 4 10486981048698 安全モード又は運用を一時停止 31 10486981048698 データ内容の「誤り」の増加搭載コンピュータの誤動作 5

httpwwwsat-ndcomfailures等のデータによる 合計 40件

-Barbieri and Mahmot

米国極軌道気象衛星NOAA-17の改良型マイクロ波観測装置AMSU-A1 (Advanced Microwave Sounding Unit)のスキャナーが永久故障 米国気象衛星GOES -8号のX線センサがOFFになり復帰しなくなった

e-birdに深刻な不具合が発生 不具合は20本のトランスポンダ全てに影響

火星周回中の探査機「マーズオデッセイ (Mars Odyssey)」の観測機器放射線観測装置「Martian Radiation Environment Experiment (MARIE)」が太陽活動の影響により10月28日から適切に作動しなくなった データ中継技術衛星(DRTS)「こだま」 太陽捕捉モードに移行

太陽陽子

帯電放電不具合-Galaxy15(局所的的現象)- 2

5 M

eV

65

MeV

11

5 M

eV

GOES 14 ----- GOES 15 ----- GOES 11 -----

Satellite Locations

Galaxy 15 anomaly

2010年4月5日9時48分UTCは磁気嵐及びCMEが発生するなど宇宙環境は非常に荒れていたGalaxy15衛星は真夜中側に位置し宇宙環境の影響を受けやすい

位置にいたことから宇宙環境による不具合である可能性が高いということで原因追及がなされた高エネルギー粒子が引き起こす代表的な衛星不具合現象として3つ(表面帯電内部帯電SEUシングルイベントバーンアウトSEL)の可能性を検討した

チームの報告書によると磁気圏尾部からの熱電子の流入による放電が原因であったと結論付けられたGalaxy15衛星の近くにはGOES-11衛星が位置していたがGOES-11衛星には不具合を発生しておらず本現象は局所的な現象と推測される

衛星開発段階における対策 JAXAの不具合解析の結論

bull 2002年~2008年に運用された11機の衛星不具合を解析 宇宙環境による不具合は偶発故障のみ(全体の約15)確率的には想定範囲内ではあるがその影響を最小限とするためディレーティング運用モード寿命についての研究に取り組む

bull 設計基準試験の充実検証確認の強化技術成熟度(TRL)評価の徹底各々の境界制約条件の明示化等により検証不足抜けの防止有効なピアレビューに結びつける

冗長系(同じハードウェア機能の冗長)柔軟性の設計(ソフトハードの対応)

bull 従来の故障が起きないようにする設計に対してGOSAT(いぶき)では重要部

品を二重化することにより故障する可能性は上がるが故障しても衛星バスの運用や観測が続行できる可能性がより高くなるように設計した

運用における対応

bull 宇宙天気監視ーロケット打ち上げ及び宇宙飛行士支援 数日前に今後の宇宙環境の推移を把握(MXレベルのフレアの発生確率)

bull X線の増加で太陽フレア発生を検知したら高エネルギー粒子の発生をいつまで 気を付ければ良いか判断(発生位置で大凡を推定するが課題は多い) SPEが発生した場合(特に10MeV以上100MeV 以上の陽

子)最大値フラックス値の推定 ピーク値を予測(特に閾値に近くなった時に重要)

bull 衛星運用 bull 太陽フレア磁気嵐警報(X線陽子及びkpが閾値を超えた

時に警報を発信)2003年10月より運用開始 bull 内部帯電警報(2日後の静止軌道上の高エネルギー電子(>1

Me) の増加を予測し 閾値を超えた時に警報を発信) 2004年4月より運用開始

話の流れ

技術データ取得装置(TEDA)の概要と成果 bull 主な成果 bull 不具合解析例

宇宙天気のリスクと対策 bull 宇宙環境による衛星システムへの影響 bull 宇宙環境を原因とする不具合の割合推移部位 bull 静止軌道不具合 bull 対策

今後必要な観測項目

まとめ

計測対象計測項目 計測対象 粒径100μm以上のデブリメテオロイド 計測項目 デブリ粒径衝突頻度

基本原理

厚さ約125μmの絶縁性のポリイミドフィルム表面に 100μm周期で直線状の細長い導線(太さ50μm)パターンを形成導線の破断を電気的に検知することによりデブリの衝突(貫通)を検知する破断した導線の数導線の幅ピッチからデブリサイズを計測する

微小デブリ計測技術の概要

衝突孔の例(衝突試験ISAS) - 衝突粒子 SUS 309 microm - 衝突速度 52 kms

HTV5号機によるセンサ機能のフライト実証

35cm

46cm

FY2013機能実証モデル

検出線幅 50 μm 検出線間隔 100 μm フィルム厚 lt 20 μm 有感領域 30times33cm 検出線総数 3300本

サイズ 50times39times4 cm (筐体を含む)

重量 約15kg(筐体を含む)

消費電力 2W(最大4W)(他センサ含む)

テレメトリ 02 bps

宇宙環境観測装置KASPERの一部としてデブリセンサSDMを搭載 FY2013に製作開始今年8月に打ち上げ予定)

まとめ(その1)

衛星不具合の主な原因は帯電放電シングルイベント放射線損傷である今後デブリ環境が重要になると予測される

静止軌道では商用衛星が多く運用されており宇宙環境の変動把握は重要この領域で運用する衛星が気を付けなければいけない環境として

1太陽フレアに伴う高エネルギー粒子 2太陽活動下降期による静止軌道電子の増加 3磁気嵐に伴う磁気圏尾部から注入する粒子 などがあげられる

まとめ(その2)

不具合軽減の取り組み bull 開発時は宇宙環境条件(トータルフラックス及び最悪条

件)を明確にし設計(冗長系柔軟性の設計ディレーティング及び運用モード寿命について研究)試験の充実検証の充実を図る

bull 運用段階に入ったならば宇宙環境を監視し警報等で故障を防ぐ

予測課題 bull 太陽フレアに伴う高エネルギー粒子発生後フラックス

ピーク値の推定

bull 衛星により不具合の起きる閾値は異なるが閾値をこえる急激な電子フラックスの増加と継続時間の予測

bull 局所的な磁気嵐に伴う磁気圏尾部から注入する粒子

宇宙環境グループは宇宙ステーションと衛星プロジェクトの安全な遂行に貢献しています

ご静聴ありがとうございました

補足資料

不具合原因の推移 bull 宇宙天気を大きく左右する要因の1つとして約11年の太陽活動変化が挙げられる

bull 太陽活動下降時期(太陽変動CME)と極大期(フレアCME)に衛星で不具合が増加するそれにより不具合原因の割合が変わる

-Koons et al The Impact of the Space Environment on Space Systems Aerospace Corp report no TR-99(1670)-1 20 July 1999 -2009 preliminary study (unpublished)

何故不具合は減らないか

bull 部品 放射線に対する感受性が高くなっている bull 微細化が進み同時にフォールトするノードが増え同時にエ

ラーとなる論理ノードやメモリセルが増加する微細化によってメモリセルは小さくなるので記憶容量当たりでみるとエラーの発生率は下がるしかし半導体チップの記憶容量やゲート数が増えるので半導体チップ当たりのエラー発生率は微細化とともに上昇するまた蓄積電荷が小さくなり感受性が高くなってきている

bull システム 大型化大電力化運用長期化 bull 1990年代末以降静止衛星の電力が10kWレベルになったしか

し設計検証技術データ蓄積が遅れている改善されつつあると推測される

放射線による影響の概要

粒子 エネルギー又はLET

代表的な影響

陽子 100keV-1MeV 1-10MeV 10-100MeV gt50MeV

表面損傷 表面材料と太陽電池の損傷 放射線損傷(電離非電離損傷の両方)センサーへのノイズ シングルイベント効果

電子 10-100keV gt100keV gt1MeV

表面帯電 深部帯電現象(deep-dielectric charging)センサーへのノイズ太陽電池の損傷 放射線損傷(電離)

重イオン gt1MeV-cm2mg シングルイベント効果

注エネルギー及びLETは個々の部品等により異なりますあくまでも目安です

耐放射線設計手順

軌道条件

ミッション期間

環境条件設定

トータルドーズの予測

1MeV電子換算被曝算出

NIELの換算

LETフルエンス算出

陽子フルエンス算出

対  策  の  検  討

対  策  の  検  討

対  策  の  検  討

放射線による劣化率予測

劣化率予測 特性予測

耐性データ

放射線による劣化率予測

耐性データ

劣化率予測アレイ出力劣化予測

感受性データ

シングルイベント発生率予測 致命度解析

衛星内質量分布

(2)

部品材料の選定

他の要因による劣化率予測

(2)(2) (3)

回路設計等NO

OK

アレイ構造 セル選定

他の要因による劣化率予測 アレイ設計(2)

(2) (2) (2) (3)

衛星内質量分布 部品選定(2)

(2) (2)(3)

NO

OK

NO

OK

(1) 環境モデルマージを含む(2) 部品レベルの検討(3) アセンブリレベルでの検討(4) 設計マージン環境モデル   マージを含め大丈夫か

トータルドーズ

太陽電池アレイの劣化

シングルイベント効果

回路設計

補足放射線太陽宇宙線銀河宇宙線

NEILを用いたダメージファクターの算出

対  策  の  検  討

放射線による劣化率予測

劣化率予測 特性予測

耐性データ

(2)

部品材料の選定

他の要因による劣化率予測

(2)(2) (3)

回路設計等NO

OK

衛星内質量分布 半導体デバイスの変位損傷

(1)

(4)

(4)

(4)

(4)

各軌道における放射線環境

1E+10

1E+11

1E+12

1E+13

1E+14

1E+15

1E+16

1E+17

1E+18

1E+19

1E+20

001 010 100 1000

捕捉

電子

の積

分フ

ルエ

ンス

[m

2 ]

エネルギー[MeV]

各軌道における電子捕捉積分フルエンス(3年間)

LEO

EOS GEO

MEO

GTO

GEO 軌道傾斜角 0deg 高度36000km GTO 軌道傾斜角 18deg 高度 360km~36000km MEO 軌道傾斜角 51deg 高度 10000km EOS 軌道傾斜角 98deg 高度705km LEO 軌道傾斜角 29deg 高度 600km

1E+12

1E+13

1E+14

1E+15

1E+16

1E+17

1E+18

1E+19

1E+20

01 10 100 1000

捕捉

陽子の

積分フルエン

ス[

m2 ]

エネルギー[MeV]

各軌道における捕捉陽子積分フルエンス(3年間)

MEO

GTO

GEO

EOS LEO

放射線による部品材料の影響

総照射線量 (TIDTotal Ionising Dose )

電離損傷

バイポーラTrの電流増幅率の低下リーク電流の増大

γ線で評価

トータルドーズ効果

変位損傷 (DDDisplacement Damage )または 非イオン化エネルギー損失 (NIELNon-Ionising Energy

Loss )

変位損傷(格子欠陥の生成)

電荷輸送効率の低下 (CCD)太陽電池の効率低下等

電子陽子により評価

シングルイベント効果

1個の荷電粒子の入射により発生する誤動作

ソフト(Latch-Up Burnout) エラー又は ソフト (Upset) エラー

陽子及び重イオンで評価

トータルドーズ効果

+ - + + - + - + - - + + + + -

ゲート酸化膜

電離

格子欠陥

正電荷捕獲

+ 正孔 - 電子

電極

(Silicon oxidenitride)

荷電粒子

反跳原子

ゲート絶縁膜中に電荷が蓄積することによるMOSトランジスタのしきい電圧(MOSトランジスタがオフからオンに変化するゲート電圧)の変化をもたらすただ

し最近の最先端チップはゲート絶縁膜がきわめて薄くなっているこのためゲート絶縁膜よりもフィールド絶縁膜(隣接するトランジスタを電気的に分離する絶縁膜)での電荷蓄積が相対的には大きな問題になってきている」

シングルイベント効果

メモリセルはNチャンネルとPチャンネルMOSFETより構成されメモリ情報は回路ノード12の電位の

高低により記録している空乏層の広がっているPN接合12の領域に

重イオンが入射した場合電荷の発生と空乏層内への少数キャリアの収集が起こるこの収集電荷量が回路の耐量を越えた場合(c)に示すように反転が起こる(ソフトエラー)一方pウエル-N基板接

合の空乏層内に電荷収集量が起こりえる耐性を越えると寄生的に存在するPNPNサイリスタ構造がオ

ンし電源と基板間に大電流が流れる状態が生じる(ラッチアップ)

シングルイベントメカニズム -陽子と重イオンの違い-

エラー発生率の計算

線エネルギー付与(LET) (linear energy transfer)

電離性放射線が物質中を通過する際飛程の単位長さ当りに平均して失うエネルギーをいう各種の放射線のうちX線γ線はLETが小さいので低LETといいα線中性子線その他重イオン核分裂破片のLETは大きいので高LETという MeVμmMeV(gcm2)やMeV(mgcm2)で表される

南大西洋異常(SAA) bull 地球の自転軸と磁気軸のずれ

darr bull 放射線帯が自転軸に対して非

対称

bull 南大西洋上空では放射線帯内帯が低高度に落ちてきているこの領域を南大西洋異常域(SAA South Atlantic Anomaly)と呼ぶ

bull 地球観測衛星ではSAAで放射線帯陽子の影響を受ける

Single Event Lachup

シングルイベントと陽子分布

MOS-1衛星(高度909km軌道傾斜角99度)で発生したシングルイベントと 陽子30MeV以上の等高線マップを重ね合わせた結果

NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)

bull 入射粒子が電離によらず与える損傷非イオン化損失

低軌道での電子フラックスと 不具合の発生場所

南大西洋異常(SAA)と極の角

高度800kmでの電子フラックス図極の角(polar horn)とSAAを示す

太陽粒子線 bull 太陽高エネルギー粒子線(SPE Solar Proton Events)は太陽フレア とコロナガス噴出 (CMECoronal Mass Ejections )により引き起こされる bull フレアのスペクトルは可変であるためあるエネルギー域における最悪状態イベントは必ずしも別のエネルギー域における最悪条件ではない 1972年8月のイベント 10~70MeVの粒子が最も多かった 1989年10のイベント 1972年8月のイベントに比べ低エネルギー領域 高エネルギー領域が明らかに激しかった

フルエンス 105 to 1011 cm-2

変動期間 1日から数日

ldquoBastiliardquo Solar Event 14 July 2000

Carrington Flare

84

(LW Townseed) Carrington Flare(1859年) Carrington Flare による30MeV以上トータルFluenceを118times109cm-2で規格化 ~1989年フレアの約13倍(シングルイベントの評価で使用) ~1991年フレアの約9倍 2012年7月23日にキャリントンイベントとほぼ同等の爆発現象が太陽あるいは太陽の周りで起きていたということがNASAの太陽観測衛星「STEREO」の解析から発表された

放射線対策 bull 放射線シールドを付加し放射線を減衰させる

bull 放射線耐性の強い部品(SOI(Silicon On Insulator)技術による耐放射線部品)材料に変更する

bull 放射線による損傷を吸収するために回路または構造上のマージンを持たせる bull ソフト的なエラーに対しては エラー検出訂正機能や多数決

機能等でソフト的エラーが起きてもシステムが機能するようにしたフォールトトレラント機能を付けて対処する ICのハード的故障に対しては ラッチアップ耐性の強い部品を選定するしかないが 電流制限回路を付ける対策も採られる パワーMOSFETに対しては部品選定 電源電圧を規格値の半分以下に落とす等の対策を採る

SOI技術

表面帯電への対策例

表面の物体間を導線で結線する

太陽電池のカバーガラスを導電性被膜付き(酸化インジウムITO)にする

熱制御材表面にITOを被覆する

熱制御材は高誘電率のテフロンの使用を避け 高伝導度耐環境性に優れたブラックカプトンを使用

イオンエンジンの中和器で能動帯電制御

内部帯電への対策例

アルミで3mm厚さに相当するシールドで囲む(Faraday Cage)

テフロンやカプトンなどの誘電体材料の内部での使用量を最小限に押さえる

回路基板やコンフォーマルコーティングは誘電体なので電流リークパス(1012Ωcmまたは1012Ωcm2

程度)を必ずつける

特にスポット的な放射線シールドの金属材には必ず電流リークパスをつける

帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備

衛星モデル作成

材料物性テーブル設定

宇宙環境パラメータ設定

Converter

転送ディレクトリ 解析データファイル

転送

解析ディレクトリ生成 解析結果 進行状況チェック ファイル操作

MUSCAT 解析エンジン

解析結果 表示

パラメトリックラン

オプション 解析

大型パネル実験(35mtimes11m) クーポンパネル実験(26cmtimes16cm)

環境模擬試験 環境模擬試験

MUSCATに使用する物性値設計標準制定のための知見などを得ることを目的に軌道上の宇宙環境を模擬した地上試験を行っている これらの試験では放電の発生頻度や電圧閾値放電発生による太陽電池パネルや搭載機器への影響を検証している

放射線計測装置の原理

bull その粒子が物質を通過する際のエネルギー損出率が粒子の電荷(原子番号)Zの二乗に比例すること(Bethe-Blochの式)を利用する

S2

E

ΔE Ersquo

S1 S3

  • 宇宙機の設計のための宇宙環境
  • 話の流れ
  • 話の流れ
  • TEDA(技術データ取得装置)(国産部品の宇宙環境での実証の必要性)
  • ETS-VTEDA(技術データ取得装置)誕生前の部品の宇宙実証の背景
  • スライド番号 6
  • スライド番号 7
  • スライド番号 8
  • スライド番号 9
  • 図6太陽黒点数と静止軌道電子 (>04MeV ) Flux の変動 (ETS-V搭載DOMによる観測)
  • スライド番号 11
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの開発(理研東大と共同で宇宙環境計測の充実)
  • ETS-VI(きく6号)打ち上がったがGEOに行かずGTOに留まる
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの成果
  • スライド番号 15
  • スライド番号 16
  • スライド番号 17
  • ADEOS搭載TEDA(世界2番目の異常宇宙線ACR)
  • BBND (ボナー球中性子検出器)
  • スライド番号 20
  • ISS搭載BBNDの成果(約8か月)
  • スライド番号 22
  • MDS-1搭載放射線吸収線量モニタ(SDOM)
  • 放射線帯変動モデルの開発MDS-1 065 MeV 電子フラックス
  • 変動パラメータの選択 (1 cycle solar activity)
  • 変動パラメータ- Tavg の定義-
  • 065MeV 電子 L値-Tavg マップ
  • 13MeV 陽子 L値-Tavg マップ
  • 電子観測とMDS-1モデルの比較
  • 放射線帯フラックスピークの変動
  • 陽子観測とモデルの比較
  • 電子(035~078MeV) 1日の変動予測GOSAT軌道
  • 電子(035~078MeV) 変動の信頼度水準(1日)GOSAT軌道
  • MDS-1 model と AE-8 modelとの比較1日
  • 話の流れ
  • 2003年10月 みどり号の全損事故(複合現象)
  • 衛星帯電の基本式
  • 内部帯電
  • パドルでの帯電放電メカニズム
  • スライド番号 40
  • スライド番号 41
  • スライド番号 42
  • データ中継技術衛星DRTS (こだま)の不具合
  • DRTS ESA スパイクノイズと電子フルエンスの比較(赤の丸が異常検知)
  • 不具合が宇宙環境によるものであるか判断する際のポイント
  • 話の流れ
  • 宇宙天気のリスク-宇宙環境によるシステムへの影響 -
  • NASAの報告-GNampCに注目-
  • NASAの報告(続き)
  • 宇宙環境を原因とする不具合の割合-JAXAの場合-
  • 不具合発生部位の割合 
  • Satellite News Digest -静止軌道不具合-
  • 太陽活動と静止軌道衛星不具合例
  • スライド番号 54
  • スライド番号 55
  • スライド番号 56
  • 衛星開発段階における対策
  • 運用における対応
  • 話の流れ
  • スライド番号 60
  • スライド番号 61
  • まとめ(その1)
  • まとめ(その2)
  • 宇宙環境グループは宇宙ステーションと衛星プロジェクトの安全な遂行に貢献しています
  • 補足資料
  • 不具合原因の推移
  • 何故不具合は減らないか
  • 放射線による影響の概要
  • 耐放射線設計手順
  • 各軌道における放射線環境
  • 放射線による部品材料の影響
  • トータルドーズ効果
  • シングルイベント効果
  • シングルイベントメカニズム-陽子と重イオンの違い-
  • エラー発生率の計算
  • 線エネルギー付与(LET)(linear energy transfer)
  • 南大西洋異常(SAA)
  • Single Event Lachup
  • シングルイベントと陽子分布
  • NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)
  • 低軌道での電子フラックスと不具合の発生場所
  • 南大西洋異常(SAA)と極の角
  • スライド番号 83
  • Carrington Flare
  • 放射線対策
  • スライド番号 86
  • スライド番号 87
  • 帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備
  • スライド番号 89
  • 放射線計測装置の原理
Page 35: 宇宙機の設計のための宇宙環境の方針から国産部品開発(42品種)が実施された。 . 半導体電子部品は耐放射線性を加味して、人工衛星(特に

話の流れ

技術データ取得装置(TEDA)の概要と成果 bull 主な成果 bull 不具合解析例

宇宙天気のリスクと対策 bull 宇宙環境による衛星システムへの影響 bull 宇宙環境を原因とする不具合の割合推移部位 bull 静止軌道不具合 bull 対策

今後必要な観測項目

まとめ

2003年10月 みどり号の全損事故 (複合現象)

極域のオーロラ帯を通過中に電力ハー

ネスを巻いているMLIが高エネルギー電

子により帯電

MLIが接地されていなかったため内側

のハーネスとの間に1kV以上の電位差が

発生

MLI内のガス密度が発電開始に伴う温度

上昇により上昇

ハーネス被覆の傷により露出したハーネ

ス芯線とMLI内面の間で放電発生

単発の放電が隣接するハーネスに飛び火

してハーネス間の短絡

アーク放電が次々と伝搬していきハー

ネス全体が焼損

故障推定箇所 (大電力ハーネス部)

bull詳細報告書は文部科学省 宇宙開発委員会のHP参照

httpwwwmextgojpb_menushingiuchuureports04080901htm

bull 人工衛星の電位 bull 人工衛星は電気的に宇宙に浮いている bull 宇宙機構造体が接地点 bull 宇宙機への流入電流と流出電流のバランスによって宇宙機電位が決まる bull 各電流成分は宇宙機電位Vの関数として表され定常状態では式を下式を満たす

衛星帯電の基本式

( ) dtIIIIIIIC

V

dtdVCVIVIVIVIVIVIVI

BPHBSESISEIE

BPHBSESISEIE

int +++++minus=

==+++++minus

1

0)]()()()()()([)(

入射電子電流 ( E I )

後方散乱電子電流 ( BSE I )

入射正イオン電流 ( I I )

入射電子による二次電子電流 ( SE I )

太陽光

入射正イオンによる 二次電子放出電流 ( SI I )

光電子放出電流( PH I )

電荷ビーム放出電流(IB)

bull内部帯電は衛星の外壁を貫通した放射線帯外帯の01MeV以上の電子が内部に侵入

bull基板間や同軸ケーブルの線間等の容量(コンデンサ)や誘電体に帯電 bull接地されてない導体片に帯電

bullその耐圧電圧を超えると その耐圧の弱い箇所 (材質の欠陥や針状突起など の箇所)で放電して故障に至る

内部帯電

(あるエネルギ-以上の粒子が入射光電子なし)

NASA-HDBK-4002より

パドルでの帯電放電メカニズム

宇宙環境の影響により 衛星がマイナス電位に帯電

高エネルギー電子等により カバーガラスはプラスに帯電 衛星とカバーガラスに電位差が生じる

電位差が大きくなると トリプルジャンクション近傍 の電界強度が増大していく

トリプルジャンクションで放電が発生する カバーガラスの帯電が緩和される

+ + + + + + + + + + + + + +

+ + + +

カバーガラス

太陽電池セル

基板(衛星構体)

トリプルジャンクション rArr 導体絶縁体宇宙環境の接点

持続放電

Substrate

Satellite Load

insulation sheet

Solar array cell

Cover glass

Arc current

Electrode

持続放電は衛星の電力消失につながる 持続放電のモードは以下の2通りがある

Substrate

Satellite Load

insulation sheet

Solar array cell

Cover glass

Arc current

Electrode

Solar array cell

Cover glass

セル-基板間短絡 セル間短絡

放電によって太陽電池セルと基板が短絡する 短絡によって負荷に電力が供給されなくなる

放電によって太陽電池セルとセルが短絡する 短絡によって負荷に電力が供給されなくなる

サブストーム(高エネルギー電子)との遭遇

+ + + + + + + +

二次電子光電子による絶縁体の帯電(局所帯電)

電位差発生

逆電位勾配

衛星構体が負に帯電(絶対帯電)

電位

時間

サブストーム

衛星構体 VS

乖離電圧 ∆V

カバーガラスVcg

0 プラズマ電位

軌道別帯電放電現象

トリプルジャンクションで 放電発生

放電発生

静止軌道

+ + + + + + + +

逆電位勾配

軌道帯電放電現象

トリプルジャンクションで 放電発生

極軌道 オーロラ電子(高エネルギー電子)との遭遇

プラズマ流入出による絶縁体の帯電(局所帯電)

電位差発生

衛星構体が負に帯電(絶対帯電)

放電発生

電位

時間

オーロラ電子

衛星構体 乖離電圧 ∆V

カバーガラス

0 プラズマ電位

データ中継技術衛星DRTS (こだま)の不具合

2002年10月 9日 静止軌道に打ち上げ

2003年

3月24日 406JST変化率異常モニタ故障検出(FDIR)

が動作しA系からB系に切り替わった

3月25日 410JSTにB系のみ異常検知

4月 3日 327JSTにB系のみ異常検知

5月28日 124JSTにB系のみ異常検知

6月 6日1537JSTにB系のみ異常検知

ESA

DRTS ESA スパイクノイズと 電子フルエンスの比較(赤の丸が異常検知)

larr閾値

この事実を基に静止軌道における内部帯電警報システムを構築 2004年4月より運用開始

不具合が宇宙環境によるものであるか 判断する際のポイント

不具合の発生した時刻に太陽フレアや磁気嵐等の宇宙天気の大きな変動が起きていれば不具合に関係している可能性が高い但し帯電など放射線の積算的効果の伴う現象については発生から1週間位さかのぼり環境がどのように推移してきたかを考慮する必要がある

磁気嵐が起きると静止軌道に急激な粒子の増加現象が起きこれにより衛星帯電が引き起こされたりする(予測に利用可能)

地方時(真夜中や朝方か)や季節(春秋)を考慮する

低軌道衛星においてはSAA外帯のrdquo角ldquo及び極通過時に不具合

が起きやすいので衛星の位置(緯度経度)が重要

事象を把握する上で単発現象か数回起きている現象か周期

(時間同じ軌道等)的に発生している現象か

話の流れ

技術データ取得装置(TEDA)の概要と成果 bull 主な成果 bull 不具合解析例

宇宙天気のリスクと対策 bull 宇宙環境による衛星システムへの影響 bull 宇宙環境を原因とする不具合の割合推移部位 bull 静止軌道不具合 bull 対策

今後必要な観測項目

まとめ

宇宙天気のリスク -宇宙環境によるシステムへの影響 -

プラズマ (IRI)

帯電 (MUSCAT)

衝突 (AUTODY)

抗力 表面劣化

紫外線X線 中性粒子 (MSIS)

放射線粒子 (AE8AP8JPLSHIELDO

SE-2)

メテオロイドデブリ (MASTER2005

ORDEM)

電離損傷 変位損傷

bull電子回路の劣化 bull光部品の劣化

bull太陽電池セルの劣化

SEU (CREME96)

bullデータエラー bull画像ノイズ

bullシステム停止 bull回路損傷

bull熱的電気的光学的特性の劣化

bull構造の劣化 bullコンタミ

電磁パルス bull電源出力低下

bull損傷

bullトルク bull軌道落下

bull構造 損傷 bull減圧

bull電磁パルス

NASAの報告 -GNampCに注目-

1974年から1994年に起きたNASAと空軍の衛星故障の内20~25が宇宙環境に起因していたと報告

1990年から2001年に米国欧州カナダ日本の企業や政府機関が開発した衛星を調べた過去の宇宙ミション損失の大部分はロケットの失敗であったが1998年衛星損失の大部分は軌道上の衛星障害となっている多くの最近の異常は太陽電池アレイ及びバッテリの危険が増加している静止軌道通信衛星の設計寿命はこのサブシステムの故障の危険が増加している

喪失等の大きな誘導制御(GNampC)の不具合に注目 GNampC不具合の内宇宙環境による 不具合は約3と報告されている

軌道上衛星のタイプ別数

NASAの報告(続き)

衛星設計寿命における不具合発生時期 事故率と軌道

軌道別の衛星数 サブシステム不具合

宇宙環境を原因とする不具合の割合 -JAXAの場合-

2002年~2008年に運用された軌道上不具合情報が比較的充実している11衛星(利用衛星7機科学衛星4機)の結果宇宙環境によるも

のは約15過去のデータよりも割合が少ない

合計83件 合計35件

(1)利用衛星 (2)科学衛星

設計検討 不足 48

製造不良 8

軌道上環境 17

偶発故障 6

調査中 13

原因不明 8

設計検討

不足 61

製造不良 4

軌道上環境 11

偶発故障 6

調査中 9

原因不明 9

不具合発生部位の割合

不具合発生部位の割合

Brent Robertson Eric Stoneking ( 1990-2001NASA Goddard Space Flight Center )

Satellite News Digest -静止軌道不具合-

Satellite News Digest (SND) (http wwwsqt-indexcouk) で1997年~2009年の期間に静止軌道で95件の不具合が報告されている その内運用ミスや設計ミスなどを除くと32件(約33)は宇宙環境によるものであった 過去のデータより割合が多い

Choiら1)はこれら不具合の地方時と季節依存性を確認した その結果2100LT~900LTで約72の不具合が発生し900LT~2100LTは9件(約28)であった またこの9件は全て姿勢制御の不具合だった 静止軌道衛星不具合のほとんどは真夜中と朝方で起きており磁気嵐に伴い磁気圏尾部から注入した粒子による表面帯電が不具合の主原因と結論づけている

1) Ho-sung Choi et al Analysis of GEO spacecraft anomalies Space weather relationships Space Weather Vol 9 S06001

太陽活動と静止軌道衛星不具合例

ANIK-E1E2

ANIK-E1

複数の衛星で故障

Galaxy-15

帯電放電不具合 -ANIK-E1amp2Telstar401-

Jan 1994 ANIK-E1 amp E2事故時の環境 - Joe H Allen

1週間

太陽活動下降時期の電子増加

2MeV以上電子

copyNOAA Web

フラックスが3桁急増

Jan 1997 Telstar401事故時の環境

静止軌道の急激な電子増加

太陽極大期太陽フレアによる衛星障害 - 2003年10月~11月-

10486981048698 永久故障 4 10486981048698 安全モード又は運用を一時停止 31 10486981048698 データ内容の「誤り」の増加搭載コンピュータの誤動作 5

httpwwwsat-ndcomfailures等のデータによる 合計 40件

-Barbieri and Mahmot

米国極軌道気象衛星NOAA-17の改良型マイクロ波観測装置AMSU-A1 (Advanced Microwave Sounding Unit)のスキャナーが永久故障 米国気象衛星GOES -8号のX線センサがOFFになり復帰しなくなった

e-birdに深刻な不具合が発生 不具合は20本のトランスポンダ全てに影響

火星周回中の探査機「マーズオデッセイ (Mars Odyssey)」の観測機器放射線観測装置「Martian Radiation Environment Experiment (MARIE)」が太陽活動の影響により10月28日から適切に作動しなくなった データ中継技術衛星(DRTS)「こだま」 太陽捕捉モードに移行

太陽陽子

帯電放電不具合-Galaxy15(局所的的現象)- 2

5 M

eV

65

MeV

11

5 M

eV

GOES 14 ----- GOES 15 ----- GOES 11 -----

Satellite Locations

Galaxy 15 anomaly

2010年4月5日9時48分UTCは磁気嵐及びCMEが発生するなど宇宙環境は非常に荒れていたGalaxy15衛星は真夜中側に位置し宇宙環境の影響を受けやすい

位置にいたことから宇宙環境による不具合である可能性が高いということで原因追及がなされた高エネルギー粒子が引き起こす代表的な衛星不具合現象として3つ(表面帯電内部帯電SEUシングルイベントバーンアウトSEL)の可能性を検討した

チームの報告書によると磁気圏尾部からの熱電子の流入による放電が原因であったと結論付けられたGalaxy15衛星の近くにはGOES-11衛星が位置していたがGOES-11衛星には不具合を発生しておらず本現象は局所的な現象と推測される

衛星開発段階における対策 JAXAの不具合解析の結論

bull 2002年~2008年に運用された11機の衛星不具合を解析 宇宙環境による不具合は偶発故障のみ(全体の約15)確率的には想定範囲内ではあるがその影響を最小限とするためディレーティング運用モード寿命についての研究に取り組む

bull 設計基準試験の充実検証確認の強化技術成熟度(TRL)評価の徹底各々の境界制約条件の明示化等により検証不足抜けの防止有効なピアレビューに結びつける

冗長系(同じハードウェア機能の冗長)柔軟性の設計(ソフトハードの対応)

bull 従来の故障が起きないようにする設計に対してGOSAT(いぶき)では重要部

品を二重化することにより故障する可能性は上がるが故障しても衛星バスの運用や観測が続行できる可能性がより高くなるように設計した

運用における対応

bull 宇宙天気監視ーロケット打ち上げ及び宇宙飛行士支援 数日前に今後の宇宙環境の推移を把握(MXレベルのフレアの発生確率)

bull X線の増加で太陽フレア発生を検知したら高エネルギー粒子の発生をいつまで 気を付ければ良いか判断(発生位置で大凡を推定するが課題は多い) SPEが発生した場合(特に10MeV以上100MeV 以上の陽

子)最大値フラックス値の推定 ピーク値を予測(特に閾値に近くなった時に重要)

bull 衛星運用 bull 太陽フレア磁気嵐警報(X線陽子及びkpが閾値を超えた

時に警報を発信)2003年10月より運用開始 bull 内部帯電警報(2日後の静止軌道上の高エネルギー電子(>1

Me) の増加を予測し 閾値を超えた時に警報を発信) 2004年4月より運用開始

話の流れ

技術データ取得装置(TEDA)の概要と成果 bull 主な成果 bull 不具合解析例

宇宙天気のリスクと対策 bull 宇宙環境による衛星システムへの影響 bull 宇宙環境を原因とする不具合の割合推移部位 bull 静止軌道不具合 bull 対策

今後必要な観測項目

まとめ

計測対象計測項目 計測対象 粒径100μm以上のデブリメテオロイド 計測項目 デブリ粒径衝突頻度

基本原理

厚さ約125μmの絶縁性のポリイミドフィルム表面に 100μm周期で直線状の細長い導線(太さ50μm)パターンを形成導線の破断を電気的に検知することによりデブリの衝突(貫通)を検知する破断した導線の数導線の幅ピッチからデブリサイズを計測する

微小デブリ計測技術の概要

衝突孔の例(衝突試験ISAS) - 衝突粒子 SUS 309 microm - 衝突速度 52 kms

HTV5号機によるセンサ機能のフライト実証

35cm

46cm

FY2013機能実証モデル

検出線幅 50 μm 検出線間隔 100 μm フィルム厚 lt 20 μm 有感領域 30times33cm 検出線総数 3300本

サイズ 50times39times4 cm (筐体を含む)

重量 約15kg(筐体を含む)

消費電力 2W(最大4W)(他センサ含む)

テレメトリ 02 bps

宇宙環境観測装置KASPERの一部としてデブリセンサSDMを搭載 FY2013に製作開始今年8月に打ち上げ予定)

まとめ(その1)

衛星不具合の主な原因は帯電放電シングルイベント放射線損傷である今後デブリ環境が重要になると予測される

静止軌道では商用衛星が多く運用されており宇宙環境の変動把握は重要この領域で運用する衛星が気を付けなければいけない環境として

1太陽フレアに伴う高エネルギー粒子 2太陽活動下降期による静止軌道電子の増加 3磁気嵐に伴う磁気圏尾部から注入する粒子 などがあげられる

まとめ(その2)

不具合軽減の取り組み bull 開発時は宇宙環境条件(トータルフラックス及び最悪条

件)を明確にし設計(冗長系柔軟性の設計ディレーティング及び運用モード寿命について研究)試験の充実検証の充実を図る

bull 運用段階に入ったならば宇宙環境を監視し警報等で故障を防ぐ

予測課題 bull 太陽フレアに伴う高エネルギー粒子発生後フラックス

ピーク値の推定

bull 衛星により不具合の起きる閾値は異なるが閾値をこえる急激な電子フラックスの増加と継続時間の予測

bull 局所的な磁気嵐に伴う磁気圏尾部から注入する粒子

宇宙環境グループは宇宙ステーションと衛星プロジェクトの安全な遂行に貢献しています

ご静聴ありがとうございました

補足資料

不具合原因の推移 bull 宇宙天気を大きく左右する要因の1つとして約11年の太陽活動変化が挙げられる

bull 太陽活動下降時期(太陽変動CME)と極大期(フレアCME)に衛星で不具合が増加するそれにより不具合原因の割合が変わる

-Koons et al The Impact of the Space Environment on Space Systems Aerospace Corp report no TR-99(1670)-1 20 July 1999 -2009 preliminary study (unpublished)

何故不具合は減らないか

bull 部品 放射線に対する感受性が高くなっている bull 微細化が進み同時にフォールトするノードが増え同時にエ

ラーとなる論理ノードやメモリセルが増加する微細化によってメモリセルは小さくなるので記憶容量当たりでみるとエラーの発生率は下がるしかし半導体チップの記憶容量やゲート数が増えるので半導体チップ当たりのエラー発生率は微細化とともに上昇するまた蓄積電荷が小さくなり感受性が高くなってきている

bull システム 大型化大電力化運用長期化 bull 1990年代末以降静止衛星の電力が10kWレベルになったしか

し設計検証技術データ蓄積が遅れている改善されつつあると推測される

放射線による影響の概要

粒子 エネルギー又はLET

代表的な影響

陽子 100keV-1MeV 1-10MeV 10-100MeV gt50MeV

表面損傷 表面材料と太陽電池の損傷 放射線損傷(電離非電離損傷の両方)センサーへのノイズ シングルイベント効果

電子 10-100keV gt100keV gt1MeV

表面帯電 深部帯電現象(deep-dielectric charging)センサーへのノイズ太陽電池の損傷 放射線損傷(電離)

重イオン gt1MeV-cm2mg シングルイベント効果

注エネルギー及びLETは個々の部品等により異なりますあくまでも目安です

耐放射線設計手順

軌道条件

ミッション期間

環境条件設定

トータルドーズの予測

1MeV電子換算被曝算出

NIELの換算

LETフルエンス算出

陽子フルエンス算出

対  策  の  検  討

対  策  の  検  討

対  策  の  検  討

放射線による劣化率予測

劣化率予測 特性予測

耐性データ

放射線による劣化率予測

耐性データ

劣化率予測アレイ出力劣化予測

感受性データ

シングルイベント発生率予測 致命度解析

衛星内質量分布

(2)

部品材料の選定

他の要因による劣化率予測

(2)(2) (3)

回路設計等NO

OK

アレイ構造 セル選定

他の要因による劣化率予測 アレイ設計(2)

(2) (2) (2) (3)

衛星内質量分布 部品選定(2)

(2) (2)(3)

NO

OK

NO

OK

(1) 環境モデルマージを含む(2) 部品レベルの検討(3) アセンブリレベルでの検討(4) 設計マージン環境モデル   マージを含め大丈夫か

トータルドーズ

太陽電池アレイの劣化

シングルイベント効果

回路設計

補足放射線太陽宇宙線銀河宇宙線

NEILを用いたダメージファクターの算出

対  策  の  検  討

放射線による劣化率予測

劣化率予測 特性予測

耐性データ

(2)

部品材料の選定

他の要因による劣化率予測

(2)(2) (3)

回路設計等NO

OK

衛星内質量分布 半導体デバイスの変位損傷

(1)

(4)

(4)

(4)

(4)

各軌道における放射線環境

1E+10

1E+11

1E+12

1E+13

1E+14

1E+15

1E+16

1E+17

1E+18

1E+19

1E+20

001 010 100 1000

捕捉

電子

の積

分フ

ルエ

ンス

[m

2 ]

エネルギー[MeV]

各軌道における電子捕捉積分フルエンス(3年間)

LEO

EOS GEO

MEO

GTO

GEO 軌道傾斜角 0deg 高度36000km GTO 軌道傾斜角 18deg 高度 360km~36000km MEO 軌道傾斜角 51deg 高度 10000km EOS 軌道傾斜角 98deg 高度705km LEO 軌道傾斜角 29deg 高度 600km

1E+12

1E+13

1E+14

1E+15

1E+16

1E+17

1E+18

1E+19

1E+20

01 10 100 1000

捕捉

陽子の

積分フルエン

ス[

m2 ]

エネルギー[MeV]

各軌道における捕捉陽子積分フルエンス(3年間)

MEO

GTO

GEO

EOS LEO

放射線による部品材料の影響

総照射線量 (TIDTotal Ionising Dose )

電離損傷

バイポーラTrの電流増幅率の低下リーク電流の増大

γ線で評価

トータルドーズ効果

変位損傷 (DDDisplacement Damage )または 非イオン化エネルギー損失 (NIELNon-Ionising Energy

Loss )

変位損傷(格子欠陥の生成)

電荷輸送効率の低下 (CCD)太陽電池の効率低下等

電子陽子により評価

シングルイベント効果

1個の荷電粒子の入射により発生する誤動作

ソフト(Latch-Up Burnout) エラー又は ソフト (Upset) エラー

陽子及び重イオンで評価

トータルドーズ効果

+ - + + - + - + - - + + + + -

ゲート酸化膜

電離

格子欠陥

正電荷捕獲

+ 正孔 - 電子

電極

(Silicon oxidenitride)

荷電粒子

反跳原子

ゲート絶縁膜中に電荷が蓄積することによるMOSトランジスタのしきい電圧(MOSトランジスタがオフからオンに変化するゲート電圧)の変化をもたらすただ

し最近の最先端チップはゲート絶縁膜がきわめて薄くなっているこのためゲート絶縁膜よりもフィールド絶縁膜(隣接するトランジスタを電気的に分離する絶縁膜)での電荷蓄積が相対的には大きな問題になってきている」

シングルイベント効果

メモリセルはNチャンネルとPチャンネルMOSFETより構成されメモリ情報は回路ノード12の電位の

高低により記録している空乏層の広がっているPN接合12の領域に

重イオンが入射した場合電荷の発生と空乏層内への少数キャリアの収集が起こるこの収集電荷量が回路の耐量を越えた場合(c)に示すように反転が起こる(ソフトエラー)一方pウエル-N基板接

合の空乏層内に電荷収集量が起こりえる耐性を越えると寄生的に存在するPNPNサイリスタ構造がオ

ンし電源と基板間に大電流が流れる状態が生じる(ラッチアップ)

シングルイベントメカニズム -陽子と重イオンの違い-

エラー発生率の計算

線エネルギー付与(LET) (linear energy transfer)

電離性放射線が物質中を通過する際飛程の単位長さ当りに平均して失うエネルギーをいう各種の放射線のうちX線γ線はLETが小さいので低LETといいα線中性子線その他重イオン核分裂破片のLETは大きいので高LETという MeVμmMeV(gcm2)やMeV(mgcm2)で表される

南大西洋異常(SAA) bull 地球の自転軸と磁気軸のずれ

darr bull 放射線帯が自転軸に対して非

対称

bull 南大西洋上空では放射線帯内帯が低高度に落ちてきているこの領域を南大西洋異常域(SAA South Atlantic Anomaly)と呼ぶ

bull 地球観測衛星ではSAAで放射線帯陽子の影響を受ける

Single Event Lachup

シングルイベントと陽子分布

MOS-1衛星(高度909km軌道傾斜角99度)で発生したシングルイベントと 陽子30MeV以上の等高線マップを重ね合わせた結果

NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)

bull 入射粒子が電離によらず与える損傷非イオン化損失

低軌道での電子フラックスと 不具合の発生場所

南大西洋異常(SAA)と極の角

高度800kmでの電子フラックス図極の角(polar horn)とSAAを示す

太陽粒子線 bull 太陽高エネルギー粒子線(SPE Solar Proton Events)は太陽フレア とコロナガス噴出 (CMECoronal Mass Ejections )により引き起こされる bull フレアのスペクトルは可変であるためあるエネルギー域における最悪状態イベントは必ずしも別のエネルギー域における最悪条件ではない 1972年8月のイベント 10~70MeVの粒子が最も多かった 1989年10のイベント 1972年8月のイベントに比べ低エネルギー領域 高エネルギー領域が明らかに激しかった

フルエンス 105 to 1011 cm-2

変動期間 1日から数日

ldquoBastiliardquo Solar Event 14 July 2000

Carrington Flare

84

(LW Townseed) Carrington Flare(1859年) Carrington Flare による30MeV以上トータルFluenceを118times109cm-2で規格化 ~1989年フレアの約13倍(シングルイベントの評価で使用) ~1991年フレアの約9倍 2012年7月23日にキャリントンイベントとほぼ同等の爆発現象が太陽あるいは太陽の周りで起きていたということがNASAの太陽観測衛星「STEREO」の解析から発表された

放射線対策 bull 放射線シールドを付加し放射線を減衰させる

bull 放射線耐性の強い部品(SOI(Silicon On Insulator)技術による耐放射線部品)材料に変更する

bull 放射線による損傷を吸収するために回路または構造上のマージンを持たせる bull ソフト的なエラーに対しては エラー検出訂正機能や多数決

機能等でソフト的エラーが起きてもシステムが機能するようにしたフォールトトレラント機能を付けて対処する ICのハード的故障に対しては ラッチアップ耐性の強い部品を選定するしかないが 電流制限回路を付ける対策も採られる パワーMOSFETに対しては部品選定 電源電圧を規格値の半分以下に落とす等の対策を採る

SOI技術

表面帯電への対策例

表面の物体間を導線で結線する

太陽電池のカバーガラスを導電性被膜付き(酸化インジウムITO)にする

熱制御材表面にITOを被覆する

熱制御材は高誘電率のテフロンの使用を避け 高伝導度耐環境性に優れたブラックカプトンを使用

イオンエンジンの中和器で能動帯電制御

内部帯電への対策例

アルミで3mm厚さに相当するシールドで囲む(Faraday Cage)

テフロンやカプトンなどの誘電体材料の内部での使用量を最小限に押さえる

回路基板やコンフォーマルコーティングは誘電体なので電流リークパス(1012Ωcmまたは1012Ωcm2

程度)を必ずつける

特にスポット的な放射線シールドの金属材には必ず電流リークパスをつける

帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備

衛星モデル作成

材料物性テーブル設定

宇宙環境パラメータ設定

Converter

転送ディレクトリ 解析データファイル

転送

解析ディレクトリ生成 解析結果 進行状況チェック ファイル操作

MUSCAT 解析エンジン

解析結果 表示

パラメトリックラン

オプション 解析

大型パネル実験(35mtimes11m) クーポンパネル実験(26cmtimes16cm)

環境模擬試験 環境模擬試験

MUSCATに使用する物性値設計標準制定のための知見などを得ることを目的に軌道上の宇宙環境を模擬した地上試験を行っている これらの試験では放電の発生頻度や電圧閾値放電発生による太陽電池パネルや搭載機器への影響を検証している

放射線計測装置の原理

bull その粒子が物質を通過する際のエネルギー損出率が粒子の電荷(原子番号)Zの二乗に比例すること(Bethe-Blochの式)を利用する

S2

E

ΔE Ersquo

S1 S3

  • 宇宙機の設計のための宇宙環境
  • 話の流れ
  • 話の流れ
  • TEDA(技術データ取得装置)(国産部品の宇宙環境での実証の必要性)
  • ETS-VTEDA(技術データ取得装置)誕生前の部品の宇宙実証の背景
  • スライド番号 6
  • スライド番号 7
  • スライド番号 8
  • スライド番号 9
  • 図6太陽黒点数と静止軌道電子 (>04MeV ) Flux の変動 (ETS-V搭載DOMによる観測)
  • スライド番号 11
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの開発(理研東大と共同で宇宙環境計測の充実)
  • ETS-VI(きく6号)打ち上がったがGEOに行かずGTOに留まる
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの成果
  • スライド番号 15
  • スライド番号 16
  • スライド番号 17
  • ADEOS搭載TEDA(世界2番目の異常宇宙線ACR)
  • BBND (ボナー球中性子検出器)
  • スライド番号 20
  • ISS搭載BBNDの成果(約8か月)
  • スライド番号 22
  • MDS-1搭載放射線吸収線量モニタ(SDOM)
  • 放射線帯変動モデルの開発MDS-1 065 MeV 電子フラックス
  • 変動パラメータの選択 (1 cycle solar activity)
  • 変動パラメータ- Tavg の定義-
  • 065MeV 電子 L値-Tavg マップ
  • 13MeV 陽子 L値-Tavg マップ
  • 電子観測とMDS-1モデルの比較
  • 放射線帯フラックスピークの変動
  • 陽子観測とモデルの比較
  • 電子(035~078MeV) 1日の変動予測GOSAT軌道
  • 電子(035~078MeV) 変動の信頼度水準(1日)GOSAT軌道
  • MDS-1 model と AE-8 modelとの比較1日
  • 話の流れ
  • 2003年10月 みどり号の全損事故(複合現象)
  • 衛星帯電の基本式
  • 内部帯電
  • パドルでの帯電放電メカニズム
  • スライド番号 40
  • スライド番号 41
  • スライド番号 42
  • データ中継技術衛星DRTS (こだま)の不具合
  • DRTS ESA スパイクノイズと電子フルエンスの比較(赤の丸が異常検知)
  • 不具合が宇宙環境によるものであるか判断する際のポイント
  • 話の流れ
  • 宇宙天気のリスク-宇宙環境によるシステムへの影響 -
  • NASAの報告-GNampCに注目-
  • NASAの報告(続き)
  • 宇宙環境を原因とする不具合の割合-JAXAの場合-
  • 不具合発生部位の割合 
  • Satellite News Digest -静止軌道不具合-
  • 太陽活動と静止軌道衛星不具合例
  • スライド番号 54
  • スライド番号 55
  • スライド番号 56
  • 衛星開発段階における対策
  • 運用における対応
  • 話の流れ
  • スライド番号 60
  • スライド番号 61
  • まとめ(その1)
  • まとめ(その2)
  • 宇宙環境グループは宇宙ステーションと衛星プロジェクトの安全な遂行に貢献しています
  • 補足資料
  • 不具合原因の推移
  • 何故不具合は減らないか
  • 放射線による影響の概要
  • 耐放射線設計手順
  • 各軌道における放射線環境
  • 放射線による部品材料の影響
  • トータルドーズ効果
  • シングルイベント効果
  • シングルイベントメカニズム-陽子と重イオンの違い-
  • エラー発生率の計算
  • 線エネルギー付与(LET)(linear energy transfer)
  • 南大西洋異常(SAA)
  • Single Event Lachup
  • シングルイベントと陽子分布
  • NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)
  • 低軌道での電子フラックスと不具合の発生場所
  • 南大西洋異常(SAA)と極の角
  • スライド番号 83
  • Carrington Flare
  • 放射線対策
  • スライド番号 86
  • スライド番号 87
  • 帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備
  • スライド番号 89
  • 放射線計測装置の原理
Page 36: 宇宙機の設計のための宇宙環境の方針から国産部品開発(42品種)が実施された。 . 半導体電子部品は耐放射線性を加味して、人工衛星(特に

2003年10月 みどり号の全損事故 (複合現象)

極域のオーロラ帯を通過中に電力ハー

ネスを巻いているMLIが高エネルギー電

子により帯電

MLIが接地されていなかったため内側

のハーネスとの間に1kV以上の電位差が

発生

MLI内のガス密度が発電開始に伴う温度

上昇により上昇

ハーネス被覆の傷により露出したハーネ

ス芯線とMLI内面の間で放電発生

単発の放電が隣接するハーネスに飛び火

してハーネス間の短絡

アーク放電が次々と伝搬していきハー

ネス全体が焼損

故障推定箇所 (大電力ハーネス部)

bull詳細報告書は文部科学省 宇宙開発委員会のHP参照

httpwwwmextgojpb_menushingiuchuureports04080901htm

bull 人工衛星の電位 bull 人工衛星は電気的に宇宙に浮いている bull 宇宙機構造体が接地点 bull 宇宙機への流入電流と流出電流のバランスによって宇宙機電位が決まる bull 各電流成分は宇宙機電位Vの関数として表され定常状態では式を下式を満たす

衛星帯電の基本式

( ) dtIIIIIIIC

V

dtdVCVIVIVIVIVIVIVI

BPHBSESISEIE

BPHBSESISEIE

int +++++minus=

==+++++minus

1

0)]()()()()()([)(

入射電子電流 ( E I )

後方散乱電子電流 ( BSE I )

入射正イオン電流 ( I I )

入射電子による二次電子電流 ( SE I )

太陽光

入射正イオンによる 二次電子放出電流 ( SI I )

光電子放出電流( PH I )

電荷ビーム放出電流(IB)

bull内部帯電は衛星の外壁を貫通した放射線帯外帯の01MeV以上の電子が内部に侵入

bull基板間や同軸ケーブルの線間等の容量(コンデンサ)や誘電体に帯電 bull接地されてない導体片に帯電

bullその耐圧電圧を超えると その耐圧の弱い箇所 (材質の欠陥や針状突起など の箇所)で放電して故障に至る

内部帯電

(あるエネルギ-以上の粒子が入射光電子なし)

NASA-HDBK-4002より

パドルでの帯電放電メカニズム

宇宙環境の影響により 衛星がマイナス電位に帯電

高エネルギー電子等により カバーガラスはプラスに帯電 衛星とカバーガラスに電位差が生じる

電位差が大きくなると トリプルジャンクション近傍 の電界強度が増大していく

トリプルジャンクションで放電が発生する カバーガラスの帯電が緩和される

+ + + + + + + + + + + + + +

+ + + +

カバーガラス

太陽電池セル

基板(衛星構体)

トリプルジャンクション rArr 導体絶縁体宇宙環境の接点

持続放電

Substrate

Satellite Load

insulation sheet

Solar array cell

Cover glass

Arc current

Electrode

持続放電は衛星の電力消失につながる 持続放電のモードは以下の2通りがある

Substrate

Satellite Load

insulation sheet

Solar array cell

Cover glass

Arc current

Electrode

Solar array cell

Cover glass

セル-基板間短絡 セル間短絡

放電によって太陽電池セルと基板が短絡する 短絡によって負荷に電力が供給されなくなる

放電によって太陽電池セルとセルが短絡する 短絡によって負荷に電力が供給されなくなる

サブストーム(高エネルギー電子)との遭遇

+ + + + + + + +

二次電子光電子による絶縁体の帯電(局所帯電)

電位差発生

逆電位勾配

衛星構体が負に帯電(絶対帯電)

電位

時間

サブストーム

衛星構体 VS

乖離電圧 ∆V

カバーガラスVcg

0 プラズマ電位

軌道別帯電放電現象

トリプルジャンクションで 放電発生

放電発生

静止軌道

+ + + + + + + +

逆電位勾配

軌道帯電放電現象

トリプルジャンクションで 放電発生

極軌道 オーロラ電子(高エネルギー電子)との遭遇

プラズマ流入出による絶縁体の帯電(局所帯電)

電位差発生

衛星構体が負に帯電(絶対帯電)

放電発生

電位

時間

オーロラ電子

衛星構体 乖離電圧 ∆V

カバーガラス

0 プラズマ電位

データ中継技術衛星DRTS (こだま)の不具合

2002年10月 9日 静止軌道に打ち上げ

2003年

3月24日 406JST変化率異常モニタ故障検出(FDIR)

が動作しA系からB系に切り替わった

3月25日 410JSTにB系のみ異常検知

4月 3日 327JSTにB系のみ異常検知

5月28日 124JSTにB系のみ異常検知

6月 6日1537JSTにB系のみ異常検知

ESA

DRTS ESA スパイクノイズと 電子フルエンスの比較(赤の丸が異常検知)

larr閾値

この事実を基に静止軌道における内部帯電警報システムを構築 2004年4月より運用開始

不具合が宇宙環境によるものであるか 判断する際のポイント

不具合の発生した時刻に太陽フレアや磁気嵐等の宇宙天気の大きな変動が起きていれば不具合に関係している可能性が高い但し帯電など放射線の積算的効果の伴う現象については発生から1週間位さかのぼり環境がどのように推移してきたかを考慮する必要がある

磁気嵐が起きると静止軌道に急激な粒子の増加現象が起きこれにより衛星帯電が引き起こされたりする(予測に利用可能)

地方時(真夜中や朝方か)や季節(春秋)を考慮する

低軌道衛星においてはSAA外帯のrdquo角ldquo及び極通過時に不具合

が起きやすいので衛星の位置(緯度経度)が重要

事象を把握する上で単発現象か数回起きている現象か周期

(時間同じ軌道等)的に発生している現象か

話の流れ

技術データ取得装置(TEDA)の概要と成果 bull 主な成果 bull 不具合解析例

宇宙天気のリスクと対策 bull 宇宙環境による衛星システムへの影響 bull 宇宙環境を原因とする不具合の割合推移部位 bull 静止軌道不具合 bull 対策

今後必要な観測項目

まとめ

宇宙天気のリスク -宇宙環境によるシステムへの影響 -

プラズマ (IRI)

帯電 (MUSCAT)

衝突 (AUTODY)

抗力 表面劣化

紫外線X線 中性粒子 (MSIS)

放射線粒子 (AE8AP8JPLSHIELDO

SE-2)

メテオロイドデブリ (MASTER2005

ORDEM)

電離損傷 変位損傷

bull電子回路の劣化 bull光部品の劣化

bull太陽電池セルの劣化

SEU (CREME96)

bullデータエラー bull画像ノイズ

bullシステム停止 bull回路損傷

bull熱的電気的光学的特性の劣化

bull構造の劣化 bullコンタミ

電磁パルス bull電源出力低下

bull損傷

bullトルク bull軌道落下

bull構造 損傷 bull減圧

bull電磁パルス

NASAの報告 -GNampCに注目-

1974年から1994年に起きたNASAと空軍の衛星故障の内20~25が宇宙環境に起因していたと報告

1990年から2001年に米国欧州カナダ日本の企業や政府機関が開発した衛星を調べた過去の宇宙ミション損失の大部分はロケットの失敗であったが1998年衛星損失の大部分は軌道上の衛星障害となっている多くの最近の異常は太陽電池アレイ及びバッテリの危険が増加している静止軌道通信衛星の設計寿命はこのサブシステムの故障の危険が増加している

喪失等の大きな誘導制御(GNampC)の不具合に注目 GNampC不具合の内宇宙環境による 不具合は約3と報告されている

軌道上衛星のタイプ別数

NASAの報告(続き)

衛星設計寿命における不具合発生時期 事故率と軌道

軌道別の衛星数 サブシステム不具合

宇宙環境を原因とする不具合の割合 -JAXAの場合-

2002年~2008年に運用された軌道上不具合情報が比較的充実している11衛星(利用衛星7機科学衛星4機)の結果宇宙環境によるも

のは約15過去のデータよりも割合が少ない

合計83件 合計35件

(1)利用衛星 (2)科学衛星

設計検討 不足 48

製造不良 8

軌道上環境 17

偶発故障 6

調査中 13

原因不明 8

設計検討

不足 61

製造不良 4

軌道上環境 11

偶発故障 6

調査中 9

原因不明 9

不具合発生部位の割合

不具合発生部位の割合

Brent Robertson Eric Stoneking ( 1990-2001NASA Goddard Space Flight Center )

Satellite News Digest -静止軌道不具合-

Satellite News Digest (SND) (http wwwsqt-indexcouk) で1997年~2009年の期間に静止軌道で95件の不具合が報告されている その内運用ミスや設計ミスなどを除くと32件(約33)は宇宙環境によるものであった 過去のデータより割合が多い

Choiら1)はこれら不具合の地方時と季節依存性を確認した その結果2100LT~900LTで約72の不具合が発生し900LT~2100LTは9件(約28)であった またこの9件は全て姿勢制御の不具合だった 静止軌道衛星不具合のほとんどは真夜中と朝方で起きており磁気嵐に伴い磁気圏尾部から注入した粒子による表面帯電が不具合の主原因と結論づけている

1) Ho-sung Choi et al Analysis of GEO spacecraft anomalies Space weather relationships Space Weather Vol 9 S06001

太陽活動と静止軌道衛星不具合例

ANIK-E1E2

ANIK-E1

複数の衛星で故障

Galaxy-15

帯電放電不具合 -ANIK-E1amp2Telstar401-

Jan 1994 ANIK-E1 amp E2事故時の環境 - Joe H Allen

1週間

太陽活動下降時期の電子増加

2MeV以上電子

copyNOAA Web

フラックスが3桁急増

Jan 1997 Telstar401事故時の環境

静止軌道の急激な電子増加

太陽極大期太陽フレアによる衛星障害 - 2003年10月~11月-

10486981048698 永久故障 4 10486981048698 安全モード又は運用を一時停止 31 10486981048698 データ内容の「誤り」の増加搭載コンピュータの誤動作 5

httpwwwsat-ndcomfailures等のデータによる 合計 40件

-Barbieri and Mahmot

米国極軌道気象衛星NOAA-17の改良型マイクロ波観測装置AMSU-A1 (Advanced Microwave Sounding Unit)のスキャナーが永久故障 米国気象衛星GOES -8号のX線センサがOFFになり復帰しなくなった

e-birdに深刻な不具合が発生 不具合は20本のトランスポンダ全てに影響

火星周回中の探査機「マーズオデッセイ (Mars Odyssey)」の観測機器放射線観測装置「Martian Radiation Environment Experiment (MARIE)」が太陽活動の影響により10月28日から適切に作動しなくなった データ中継技術衛星(DRTS)「こだま」 太陽捕捉モードに移行

太陽陽子

帯電放電不具合-Galaxy15(局所的的現象)- 2

5 M

eV

65

MeV

11

5 M

eV

GOES 14 ----- GOES 15 ----- GOES 11 -----

Satellite Locations

Galaxy 15 anomaly

2010年4月5日9時48分UTCは磁気嵐及びCMEが発生するなど宇宙環境は非常に荒れていたGalaxy15衛星は真夜中側に位置し宇宙環境の影響を受けやすい

位置にいたことから宇宙環境による不具合である可能性が高いということで原因追及がなされた高エネルギー粒子が引き起こす代表的な衛星不具合現象として3つ(表面帯電内部帯電SEUシングルイベントバーンアウトSEL)の可能性を検討した

チームの報告書によると磁気圏尾部からの熱電子の流入による放電が原因であったと結論付けられたGalaxy15衛星の近くにはGOES-11衛星が位置していたがGOES-11衛星には不具合を発生しておらず本現象は局所的な現象と推測される

衛星開発段階における対策 JAXAの不具合解析の結論

bull 2002年~2008年に運用された11機の衛星不具合を解析 宇宙環境による不具合は偶発故障のみ(全体の約15)確率的には想定範囲内ではあるがその影響を最小限とするためディレーティング運用モード寿命についての研究に取り組む

bull 設計基準試験の充実検証確認の強化技術成熟度(TRL)評価の徹底各々の境界制約条件の明示化等により検証不足抜けの防止有効なピアレビューに結びつける

冗長系(同じハードウェア機能の冗長)柔軟性の設計(ソフトハードの対応)

bull 従来の故障が起きないようにする設計に対してGOSAT(いぶき)では重要部

品を二重化することにより故障する可能性は上がるが故障しても衛星バスの運用や観測が続行できる可能性がより高くなるように設計した

運用における対応

bull 宇宙天気監視ーロケット打ち上げ及び宇宙飛行士支援 数日前に今後の宇宙環境の推移を把握(MXレベルのフレアの発生確率)

bull X線の増加で太陽フレア発生を検知したら高エネルギー粒子の発生をいつまで 気を付ければ良いか判断(発生位置で大凡を推定するが課題は多い) SPEが発生した場合(特に10MeV以上100MeV 以上の陽

子)最大値フラックス値の推定 ピーク値を予測(特に閾値に近くなった時に重要)

bull 衛星運用 bull 太陽フレア磁気嵐警報(X線陽子及びkpが閾値を超えた

時に警報を発信)2003年10月より運用開始 bull 内部帯電警報(2日後の静止軌道上の高エネルギー電子(>1

Me) の増加を予測し 閾値を超えた時に警報を発信) 2004年4月より運用開始

話の流れ

技術データ取得装置(TEDA)の概要と成果 bull 主な成果 bull 不具合解析例

宇宙天気のリスクと対策 bull 宇宙環境による衛星システムへの影響 bull 宇宙環境を原因とする不具合の割合推移部位 bull 静止軌道不具合 bull 対策

今後必要な観測項目

まとめ

計測対象計測項目 計測対象 粒径100μm以上のデブリメテオロイド 計測項目 デブリ粒径衝突頻度

基本原理

厚さ約125μmの絶縁性のポリイミドフィルム表面に 100μm周期で直線状の細長い導線(太さ50μm)パターンを形成導線の破断を電気的に検知することによりデブリの衝突(貫通)を検知する破断した導線の数導線の幅ピッチからデブリサイズを計測する

微小デブリ計測技術の概要

衝突孔の例(衝突試験ISAS) - 衝突粒子 SUS 309 microm - 衝突速度 52 kms

HTV5号機によるセンサ機能のフライト実証

35cm

46cm

FY2013機能実証モデル

検出線幅 50 μm 検出線間隔 100 μm フィルム厚 lt 20 μm 有感領域 30times33cm 検出線総数 3300本

サイズ 50times39times4 cm (筐体を含む)

重量 約15kg(筐体を含む)

消費電力 2W(最大4W)(他センサ含む)

テレメトリ 02 bps

宇宙環境観測装置KASPERの一部としてデブリセンサSDMを搭載 FY2013に製作開始今年8月に打ち上げ予定)

まとめ(その1)

衛星不具合の主な原因は帯電放電シングルイベント放射線損傷である今後デブリ環境が重要になると予測される

静止軌道では商用衛星が多く運用されており宇宙環境の変動把握は重要この領域で運用する衛星が気を付けなければいけない環境として

1太陽フレアに伴う高エネルギー粒子 2太陽活動下降期による静止軌道電子の増加 3磁気嵐に伴う磁気圏尾部から注入する粒子 などがあげられる

まとめ(その2)

不具合軽減の取り組み bull 開発時は宇宙環境条件(トータルフラックス及び最悪条

件)を明確にし設計(冗長系柔軟性の設計ディレーティング及び運用モード寿命について研究)試験の充実検証の充実を図る

bull 運用段階に入ったならば宇宙環境を監視し警報等で故障を防ぐ

予測課題 bull 太陽フレアに伴う高エネルギー粒子発生後フラックス

ピーク値の推定

bull 衛星により不具合の起きる閾値は異なるが閾値をこえる急激な電子フラックスの増加と継続時間の予測

bull 局所的な磁気嵐に伴う磁気圏尾部から注入する粒子

宇宙環境グループは宇宙ステーションと衛星プロジェクトの安全な遂行に貢献しています

ご静聴ありがとうございました

補足資料

不具合原因の推移 bull 宇宙天気を大きく左右する要因の1つとして約11年の太陽活動変化が挙げられる

bull 太陽活動下降時期(太陽変動CME)と極大期(フレアCME)に衛星で不具合が増加するそれにより不具合原因の割合が変わる

-Koons et al The Impact of the Space Environment on Space Systems Aerospace Corp report no TR-99(1670)-1 20 July 1999 -2009 preliminary study (unpublished)

何故不具合は減らないか

bull 部品 放射線に対する感受性が高くなっている bull 微細化が進み同時にフォールトするノードが増え同時にエ

ラーとなる論理ノードやメモリセルが増加する微細化によってメモリセルは小さくなるので記憶容量当たりでみるとエラーの発生率は下がるしかし半導体チップの記憶容量やゲート数が増えるので半導体チップ当たりのエラー発生率は微細化とともに上昇するまた蓄積電荷が小さくなり感受性が高くなってきている

bull システム 大型化大電力化運用長期化 bull 1990年代末以降静止衛星の電力が10kWレベルになったしか

し設計検証技術データ蓄積が遅れている改善されつつあると推測される

放射線による影響の概要

粒子 エネルギー又はLET

代表的な影響

陽子 100keV-1MeV 1-10MeV 10-100MeV gt50MeV

表面損傷 表面材料と太陽電池の損傷 放射線損傷(電離非電離損傷の両方)センサーへのノイズ シングルイベント効果

電子 10-100keV gt100keV gt1MeV

表面帯電 深部帯電現象(deep-dielectric charging)センサーへのノイズ太陽電池の損傷 放射線損傷(電離)

重イオン gt1MeV-cm2mg シングルイベント効果

注エネルギー及びLETは個々の部品等により異なりますあくまでも目安です

耐放射線設計手順

軌道条件

ミッション期間

環境条件設定

トータルドーズの予測

1MeV電子換算被曝算出

NIELの換算

LETフルエンス算出

陽子フルエンス算出

対  策  の  検  討

対  策  の  検  討

対  策  の  検  討

放射線による劣化率予測

劣化率予測 特性予測

耐性データ

放射線による劣化率予測

耐性データ

劣化率予測アレイ出力劣化予測

感受性データ

シングルイベント発生率予測 致命度解析

衛星内質量分布

(2)

部品材料の選定

他の要因による劣化率予測

(2)(2) (3)

回路設計等NO

OK

アレイ構造 セル選定

他の要因による劣化率予測 アレイ設計(2)

(2) (2) (2) (3)

衛星内質量分布 部品選定(2)

(2) (2)(3)

NO

OK

NO

OK

(1) 環境モデルマージを含む(2) 部品レベルの検討(3) アセンブリレベルでの検討(4) 設計マージン環境モデル   マージを含め大丈夫か

トータルドーズ

太陽電池アレイの劣化

シングルイベント効果

回路設計

補足放射線太陽宇宙線銀河宇宙線

NEILを用いたダメージファクターの算出

対  策  の  検  討

放射線による劣化率予測

劣化率予測 特性予測

耐性データ

(2)

部品材料の選定

他の要因による劣化率予測

(2)(2) (3)

回路設計等NO

OK

衛星内質量分布 半導体デバイスの変位損傷

(1)

(4)

(4)

(4)

(4)

各軌道における放射線環境

1E+10

1E+11

1E+12

1E+13

1E+14

1E+15

1E+16

1E+17

1E+18

1E+19

1E+20

001 010 100 1000

捕捉

電子

の積

分フ

ルエ

ンス

[m

2 ]

エネルギー[MeV]

各軌道における電子捕捉積分フルエンス(3年間)

LEO

EOS GEO

MEO

GTO

GEO 軌道傾斜角 0deg 高度36000km GTO 軌道傾斜角 18deg 高度 360km~36000km MEO 軌道傾斜角 51deg 高度 10000km EOS 軌道傾斜角 98deg 高度705km LEO 軌道傾斜角 29deg 高度 600km

1E+12

1E+13

1E+14

1E+15

1E+16

1E+17

1E+18

1E+19

1E+20

01 10 100 1000

捕捉

陽子の

積分フルエン

ス[

m2 ]

エネルギー[MeV]

各軌道における捕捉陽子積分フルエンス(3年間)

MEO

GTO

GEO

EOS LEO

放射線による部品材料の影響

総照射線量 (TIDTotal Ionising Dose )

電離損傷

バイポーラTrの電流増幅率の低下リーク電流の増大

γ線で評価

トータルドーズ効果

変位損傷 (DDDisplacement Damage )または 非イオン化エネルギー損失 (NIELNon-Ionising Energy

Loss )

変位損傷(格子欠陥の生成)

電荷輸送効率の低下 (CCD)太陽電池の効率低下等

電子陽子により評価

シングルイベント効果

1個の荷電粒子の入射により発生する誤動作

ソフト(Latch-Up Burnout) エラー又は ソフト (Upset) エラー

陽子及び重イオンで評価

トータルドーズ効果

+ - + + - + - + - - + + + + -

ゲート酸化膜

電離

格子欠陥

正電荷捕獲

+ 正孔 - 電子

電極

(Silicon oxidenitride)

荷電粒子

反跳原子

ゲート絶縁膜中に電荷が蓄積することによるMOSトランジスタのしきい電圧(MOSトランジスタがオフからオンに変化するゲート電圧)の変化をもたらすただ

し最近の最先端チップはゲート絶縁膜がきわめて薄くなっているこのためゲート絶縁膜よりもフィールド絶縁膜(隣接するトランジスタを電気的に分離する絶縁膜)での電荷蓄積が相対的には大きな問題になってきている」

シングルイベント効果

メモリセルはNチャンネルとPチャンネルMOSFETより構成されメモリ情報は回路ノード12の電位の

高低により記録している空乏層の広がっているPN接合12の領域に

重イオンが入射した場合電荷の発生と空乏層内への少数キャリアの収集が起こるこの収集電荷量が回路の耐量を越えた場合(c)に示すように反転が起こる(ソフトエラー)一方pウエル-N基板接

合の空乏層内に電荷収集量が起こりえる耐性を越えると寄生的に存在するPNPNサイリスタ構造がオ

ンし電源と基板間に大電流が流れる状態が生じる(ラッチアップ)

シングルイベントメカニズム -陽子と重イオンの違い-

エラー発生率の計算

線エネルギー付与(LET) (linear energy transfer)

電離性放射線が物質中を通過する際飛程の単位長さ当りに平均して失うエネルギーをいう各種の放射線のうちX線γ線はLETが小さいので低LETといいα線中性子線その他重イオン核分裂破片のLETは大きいので高LETという MeVμmMeV(gcm2)やMeV(mgcm2)で表される

南大西洋異常(SAA) bull 地球の自転軸と磁気軸のずれ

darr bull 放射線帯が自転軸に対して非

対称

bull 南大西洋上空では放射線帯内帯が低高度に落ちてきているこの領域を南大西洋異常域(SAA South Atlantic Anomaly)と呼ぶ

bull 地球観測衛星ではSAAで放射線帯陽子の影響を受ける

Single Event Lachup

シングルイベントと陽子分布

MOS-1衛星(高度909km軌道傾斜角99度)で発生したシングルイベントと 陽子30MeV以上の等高線マップを重ね合わせた結果

NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)

bull 入射粒子が電離によらず与える損傷非イオン化損失

低軌道での電子フラックスと 不具合の発生場所

南大西洋異常(SAA)と極の角

高度800kmでの電子フラックス図極の角(polar horn)とSAAを示す

太陽粒子線 bull 太陽高エネルギー粒子線(SPE Solar Proton Events)は太陽フレア とコロナガス噴出 (CMECoronal Mass Ejections )により引き起こされる bull フレアのスペクトルは可変であるためあるエネルギー域における最悪状態イベントは必ずしも別のエネルギー域における最悪条件ではない 1972年8月のイベント 10~70MeVの粒子が最も多かった 1989年10のイベント 1972年8月のイベントに比べ低エネルギー領域 高エネルギー領域が明らかに激しかった

フルエンス 105 to 1011 cm-2

変動期間 1日から数日

ldquoBastiliardquo Solar Event 14 July 2000

Carrington Flare

84

(LW Townseed) Carrington Flare(1859年) Carrington Flare による30MeV以上トータルFluenceを118times109cm-2で規格化 ~1989年フレアの約13倍(シングルイベントの評価で使用) ~1991年フレアの約9倍 2012年7月23日にキャリントンイベントとほぼ同等の爆発現象が太陽あるいは太陽の周りで起きていたということがNASAの太陽観測衛星「STEREO」の解析から発表された

放射線対策 bull 放射線シールドを付加し放射線を減衰させる

bull 放射線耐性の強い部品(SOI(Silicon On Insulator)技術による耐放射線部品)材料に変更する

bull 放射線による損傷を吸収するために回路または構造上のマージンを持たせる bull ソフト的なエラーに対しては エラー検出訂正機能や多数決

機能等でソフト的エラーが起きてもシステムが機能するようにしたフォールトトレラント機能を付けて対処する ICのハード的故障に対しては ラッチアップ耐性の強い部品を選定するしかないが 電流制限回路を付ける対策も採られる パワーMOSFETに対しては部品選定 電源電圧を規格値の半分以下に落とす等の対策を採る

SOI技術

表面帯電への対策例

表面の物体間を導線で結線する

太陽電池のカバーガラスを導電性被膜付き(酸化インジウムITO)にする

熱制御材表面にITOを被覆する

熱制御材は高誘電率のテフロンの使用を避け 高伝導度耐環境性に優れたブラックカプトンを使用

イオンエンジンの中和器で能動帯電制御

内部帯電への対策例

アルミで3mm厚さに相当するシールドで囲む(Faraday Cage)

テフロンやカプトンなどの誘電体材料の内部での使用量を最小限に押さえる

回路基板やコンフォーマルコーティングは誘電体なので電流リークパス(1012Ωcmまたは1012Ωcm2

程度)を必ずつける

特にスポット的な放射線シールドの金属材には必ず電流リークパスをつける

帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備

衛星モデル作成

材料物性テーブル設定

宇宙環境パラメータ設定

Converter

転送ディレクトリ 解析データファイル

転送

解析ディレクトリ生成 解析結果 進行状況チェック ファイル操作

MUSCAT 解析エンジン

解析結果 表示

パラメトリックラン

オプション 解析

大型パネル実験(35mtimes11m) クーポンパネル実験(26cmtimes16cm)

環境模擬試験 環境模擬試験

MUSCATに使用する物性値設計標準制定のための知見などを得ることを目的に軌道上の宇宙環境を模擬した地上試験を行っている これらの試験では放電の発生頻度や電圧閾値放電発生による太陽電池パネルや搭載機器への影響を検証している

放射線計測装置の原理

bull その粒子が物質を通過する際のエネルギー損出率が粒子の電荷(原子番号)Zの二乗に比例すること(Bethe-Blochの式)を利用する

S2

E

ΔE Ersquo

S1 S3

  • 宇宙機の設計のための宇宙環境
  • 話の流れ
  • 話の流れ
  • TEDA(技術データ取得装置)(国産部品の宇宙環境での実証の必要性)
  • ETS-VTEDA(技術データ取得装置)誕生前の部品の宇宙実証の背景
  • スライド番号 6
  • スライド番号 7
  • スライド番号 8
  • スライド番号 9
  • 図6太陽黒点数と静止軌道電子 (>04MeV ) Flux の変動 (ETS-V搭載DOMによる観測)
  • スライド番号 11
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの開発(理研東大と共同で宇宙環境計測の充実)
  • ETS-VI(きく6号)打ち上がったがGEOに行かずGTOに留まる
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの成果
  • スライド番号 15
  • スライド番号 16
  • スライド番号 17
  • ADEOS搭載TEDA(世界2番目の異常宇宙線ACR)
  • BBND (ボナー球中性子検出器)
  • スライド番号 20
  • ISS搭載BBNDの成果(約8か月)
  • スライド番号 22
  • MDS-1搭載放射線吸収線量モニタ(SDOM)
  • 放射線帯変動モデルの開発MDS-1 065 MeV 電子フラックス
  • 変動パラメータの選択 (1 cycle solar activity)
  • 変動パラメータ- Tavg の定義-
  • 065MeV 電子 L値-Tavg マップ
  • 13MeV 陽子 L値-Tavg マップ
  • 電子観測とMDS-1モデルの比較
  • 放射線帯フラックスピークの変動
  • 陽子観測とモデルの比較
  • 電子(035~078MeV) 1日の変動予測GOSAT軌道
  • 電子(035~078MeV) 変動の信頼度水準(1日)GOSAT軌道
  • MDS-1 model と AE-8 modelとの比較1日
  • 話の流れ
  • 2003年10月 みどり号の全損事故(複合現象)
  • 衛星帯電の基本式
  • 内部帯電
  • パドルでの帯電放電メカニズム
  • スライド番号 40
  • スライド番号 41
  • スライド番号 42
  • データ中継技術衛星DRTS (こだま)の不具合
  • DRTS ESA スパイクノイズと電子フルエンスの比較(赤の丸が異常検知)
  • 不具合が宇宙環境によるものであるか判断する際のポイント
  • 話の流れ
  • 宇宙天気のリスク-宇宙環境によるシステムへの影響 -
  • NASAの報告-GNampCに注目-
  • NASAの報告(続き)
  • 宇宙環境を原因とする不具合の割合-JAXAの場合-
  • 不具合発生部位の割合 
  • Satellite News Digest -静止軌道不具合-
  • 太陽活動と静止軌道衛星不具合例
  • スライド番号 54
  • スライド番号 55
  • スライド番号 56
  • 衛星開発段階における対策
  • 運用における対応
  • 話の流れ
  • スライド番号 60
  • スライド番号 61
  • まとめ(その1)
  • まとめ(その2)
  • 宇宙環境グループは宇宙ステーションと衛星プロジェクトの安全な遂行に貢献しています
  • 補足資料
  • 不具合原因の推移
  • 何故不具合は減らないか
  • 放射線による影響の概要
  • 耐放射線設計手順
  • 各軌道における放射線環境
  • 放射線による部品材料の影響
  • トータルドーズ効果
  • シングルイベント効果
  • シングルイベントメカニズム-陽子と重イオンの違い-
  • エラー発生率の計算
  • 線エネルギー付与(LET)(linear energy transfer)
  • 南大西洋異常(SAA)
  • Single Event Lachup
  • シングルイベントと陽子分布
  • NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)
  • 低軌道での電子フラックスと不具合の発生場所
  • 南大西洋異常(SAA)と極の角
  • スライド番号 83
  • Carrington Flare
  • 放射線対策
  • スライド番号 86
  • スライド番号 87
  • 帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備
  • スライド番号 89
  • 放射線計測装置の原理
Page 37: 宇宙機の設計のための宇宙環境の方針から国産部品開発(42品種)が実施された。 . 半導体電子部品は耐放射線性を加味して、人工衛星(特に

bull 人工衛星の電位 bull 人工衛星は電気的に宇宙に浮いている bull 宇宙機構造体が接地点 bull 宇宙機への流入電流と流出電流のバランスによって宇宙機電位が決まる bull 各電流成分は宇宙機電位Vの関数として表され定常状態では式を下式を満たす

衛星帯電の基本式

( ) dtIIIIIIIC

V

dtdVCVIVIVIVIVIVIVI

BPHBSESISEIE

BPHBSESISEIE

int +++++minus=

==+++++minus

1

0)]()()()()()([)(

入射電子電流 ( E I )

後方散乱電子電流 ( BSE I )

入射正イオン電流 ( I I )

入射電子による二次電子電流 ( SE I )

太陽光

入射正イオンによる 二次電子放出電流 ( SI I )

光電子放出電流( PH I )

電荷ビーム放出電流(IB)

bull内部帯電は衛星の外壁を貫通した放射線帯外帯の01MeV以上の電子が内部に侵入

bull基板間や同軸ケーブルの線間等の容量(コンデンサ)や誘電体に帯電 bull接地されてない導体片に帯電

bullその耐圧電圧を超えると その耐圧の弱い箇所 (材質の欠陥や針状突起など の箇所)で放電して故障に至る

内部帯電

(あるエネルギ-以上の粒子が入射光電子なし)

NASA-HDBK-4002より

パドルでの帯電放電メカニズム

宇宙環境の影響により 衛星がマイナス電位に帯電

高エネルギー電子等により カバーガラスはプラスに帯電 衛星とカバーガラスに電位差が生じる

電位差が大きくなると トリプルジャンクション近傍 の電界強度が増大していく

トリプルジャンクションで放電が発生する カバーガラスの帯電が緩和される

+ + + + + + + + + + + + + +

+ + + +

カバーガラス

太陽電池セル

基板(衛星構体)

トリプルジャンクション rArr 導体絶縁体宇宙環境の接点

持続放電

Substrate

Satellite Load

insulation sheet

Solar array cell

Cover glass

Arc current

Electrode

持続放電は衛星の電力消失につながる 持続放電のモードは以下の2通りがある

Substrate

Satellite Load

insulation sheet

Solar array cell

Cover glass

Arc current

Electrode

Solar array cell

Cover glass

セル-基板間短絡 セル間短絡

放電によって太陽電池セルと基板が短絡する 短絡によって負荷に電力が供給されなくなる

放電によって太陽電池セルとセルが短絡する 短絡によって負荷に電力が供給されなくなる

サブストーム(高エネルギー電子)との遭遇

+ + + + + + + +

二次電子光電子による絶縁体の帯電(局所帯電)

電位差発生

逆電位勾配

衛星構体が負に帯電(絶対帯電)

電位

時間

サブストーム

衛星構体 VS

乖離電圧 ∆V

カバーガラスVcg

0 プラズマ電位

軌道別帯電放電現象

トリプルジャンクションで 放電発生

放電発生

静止軌道

+ + + + + + + +

逆電位勾配

軌道帯電放電現象

トリプルジャンクションで 放電発生

極軌道 オーロラ電子(高エネルギー電子)との遭遇

プラズマ流入出による絶縁体の帯電(局所帯電)

電位差発生

衛星構体が負に帯電(絶対帯電)

放電発生

電位

時間

オーロラ電子

衛星構体 乖離電圧 ∆V

カバーガラス

0 プラズマ電位

データ中継技術衛星DRTS (こだま)の不具合

2002年10月 9日 静止軌道に打ち上げ

2003年

3月24日 406JST変化率異常モニタ故障検出(FDIR)

が動作しA系からB系に切り替わった

3月25日 410JSTにB系のみ異常検知

4月 3日 327JSTにB系のみ異常検知

5月28日 124JSTにB系のみ異常検知

6月 6日1537JSTにB系のみ異常検知

ESA

DRTS ESA スパイクノイズと 電子フルエンスの比較(赤の丸が異常検知)

larr閾値

この事実を基に静止軌道における内部帯電警報システムを構築 2004年4月より運用開始

不具合が宇宙環境によるものであるか 判断する際のポイント

不具合の発生した時刻に太陽フレアや磁気嵐等の宇宙天気の大きな変動が起きていれば不具合に関係している可能性が高い但し帯電など放射線の積算的効果の伴う現象については発生から1週間位さかのぼり環境がどのように推移してきたかを考慮する必要がある

磁気嵐が起きると静止軌道に急激な粒子の増加現象が起きこれにより衛星帯電が引き起こされたりする(予測に利用可能)

地方時(真夜中や朝方か)や季節(春秋)を考慮する

低軌道衛星においてはSAA外帯のrdquo角ldquo及び極通過時に不具合

が起きやすいので衛星の位置(緯度経度)が重要

事象を把握する上で単発現象か数回起きている現象か周期

(時間同じ軌道等)的に発生している現象か

話の流れ

技術データ取得装置(TEDA)の概要と成果 bull 主な成果 bull 不具合解析例

宇宙天気のリスクと対策 bull 宇宙環境による衛星システムへの影響 bull 宇宙環境を原因とする不具合の割合推移部位 bull 静止軌道不具合 bull 対策

今後必要な観測項目

まとめ

宇宙天気のリスク -宇宙環境によるシステムへの影響 -

プラズマ (IRI)

帯電 (MUSCAT)

衝突 (AUTODY)

抗力 表面劣化

紫外線X線 中性粒子 (MSIS)

放射線粒子 (AE8AP8JPLSHIELDO

SE-2)

メテオロイドデブリ (MASTER2005

ORDEM)

電離損傷 変位損傷

bull電子回路の劣化 bull光部品の劣化

bull太陽電池セルの劣化

SEU (CREME96)

bullデータエラー bull画像ノイズ

bullシステム停止 bull回路損傷

bull熱的電気的光学的特性の劣化

bull構造の劣化 bullコンタミ

電磁パルス bull電源出力低下

bull損傷

bullトルク bull軌道落下

bull構造 損傷 bull減圧

bull電磁パルス

NASAの報告 -GNampCに注目-

1974年から1994年に起きたNASAと空軍の衛星故障の内20~25が宇宙環境に起因していたと報告

1990年から2001年に米国欧州カナダ日本の企業や政府機関が開発した衛星を調べた過去の宇宙ミション損失の大部分はロケットの失敗であったが1998年衛星損失の大部分は軌道上の衛星障害となっている多くの最近の異常は太陽電池アレイ及びバッテリの危険が増加している静止軌道通信衛星の設計寿命はこのサブシステムの故障の危険が増加している

喪失等の大きな誘導制御(GNampC)の不具合に注目 GNampC不具合の内宇宙環境による 不具合は約3と報告されている

軌道上衛星のタイプ別数

NASAの報告(続き)

衛星設計寿命における不具合発生時期 事故率と軌道

軌道別の衛星数 サブシステム不具合

宇宙環境を原因とする不具合の割合 -JAXAの場合-

2002年~2008年に運用された軌道上不具合情報が比較的充実している11衛星(利用衛星7機科学衛星4機)の結果宇宙環境によるも

のは約15過去のデータよりも割合が少ない

合計83件 合計35件

(1)利用衛星 (2)科学衛星

設計検討 不足 48

製造不良 8

軌道上環境 17

偶発故障 6

調査中 13

原因不明 8

設計検討

不足 61

製造不良 4

軌道上環境 11

偶発故障 6

調査中 9

原因不明 9

不具合発生部位の割合

不具合発生部位の割合

Brent Robertson Eric Stoneking ( 1990-2001NASA Goddard Space Flight Center )

Satellite News Digest -静止軌道不具合-

Satellite News Digest (SND) (http wwwsqt-indexcouk) で1997年~2009年の期間に静止軌道で95件の不具合が報告されている その内運用ミスや設計ミスなどを除くと32件(約33)は宇宙環境によるものであった 過去のデータより割合が多い

Choiら1)はこれら不具合の地方時と季節依存性を確認した その結果2100LT~900LTで約72の不具合が発生し900LT~2100LTは9件(約28)であった またこの9件は全て姿勢制御の不具合だった 静止軌道衛星不具合のほとんどは真夜中と朝方で起きており磁気嵐に伴い磁気圏尾部から注入した粒子による表面帯電が不具合の主原因と結論づけている

1) Ho-sung Choi et al Analysis of GEO spacecraft anomalies Space weather relationships Space Weather Vol 9 S06001

太陽活動と静止軌道衛星不具合例

ANIK-E1E2

ANIK-E1

複数の衛星で故障

Galaxy-15

帯電放電不具合 -ANIK-E1amp2Telstar401-

Jan 1994 ANIK-E1 amp E2事故時の環境 - Joe H Allen

1週間

太陽活動下降時期の電子増加

2MeV以上電子

copyNOAA Web

フラックスが3桁急増

Jan 1997 Telstar401事故時の環境

静止軌道の急激な電子増加

太陽極大期太陽フレアによる衛星障害 - 2003年10月~11月-

10486981048698 永久故障 4 10486981048698 安全モード又は運用を一時停止 31 10486981048698 データ内容の「誤り」の増加搭載コンピュータの誤動作 5

httpwwwsat-ndcomfailures等のデータによる 合計 40件

-Barbieri and Mahmot

米国極軌道気象衛星NOAA-17の改良型マイクロ波観測装置AMSU-A1 (Advanced Microwave Sounding Unit)のスキャナーが永久故障 米国気象衛星GOES -8号のX線センサがOFFになり復帰しなくなった

e-birdに深刻な不具合が発生 不具合は20本のトランスポンダ全てに影響

火星周回中の探査機「マーズオデッセイ (Mars Odyssey)」の観測機器放射線観測装置「Martian Radiation Environment Experiment (MARIE)」が太陽活動の影響により10月28日から適切に作動しなくなった データ中継技術衛星(DRTS)「こだま」 太陽捕捉モードに移行

太陽陽子

帯電放電不具合-Galaxy15(局所的的現象)- 2

5 M

eV

65

MeV

11

5 M

eV

GOES 14 ----- GOES 15 ----- GOES 11 -----

Satellite Locations

Galaxy 15 anomaly

2010年4月5日9時48分UTCは磁気嵐及びCMEが発生するなど宇宙環境は非常に荒れていたGalaxy15衛星は真夜中側に位置し宇宙環境の影響を受けやすい

位置にいたことから宇宙環境による不具合である可能性が高いということで原因追及がなされた高エネルギー粒子が引き起こす代表的な衛星不具合現象として3つ(表面帯電内部帯電SEUシングルイベントバーンアウトSEL)の可能性を検討した

チームの報告書によると磁気圏尾部からの熱電子の流入による放電が原因であったと結論付けられたGalaxy15衛星の近くにはGOES-11衛星が位置していたがGOES-11衛星には不具合を発生しておらず本現象は局所的な現象と推測される

衛星開発段階における対策 JAXAの不具合解析の結論

bull 2002年~2008年に運用された11機の衛星不具合を解析 宇宙環境による不具合は偶発故障のみ(全体の約15)確率的には想定範囲内ではあるがその影響を最小限とするためディレーティング運用モード寿命についての研究に取り組む

bull 設計基準試験の充実検証確認の強化技術成熟度(TRL)評価の徹底各々の境界制約条件の明示化等により検証不足抜けの防止有効なピアレビューに結びつける

冗長系(同じハードウェア機能の冗長)柔軟性の設計(ソフトハードの対応)

bull 従来の故障が起きないようにする設計に対してGOSAT(いぶき)では重要部

品を二重化することにより故障する可能性は上がるが故障しても衛星バスの運用や観測が続行できる可能性がより高くなるように設計した

運用における対応

bull 宇宙天気監視ーロケット打ち上げ及び宇宙飛行士支援 数日前に今後の宇宙環境の推移を把握(MXレベルのフレアの発生確率)

bull X線の増加で太陽フレア発生を検知したら高エネルギー粒子の発生をいつまで 気を付ければ良いか判断(発生位置で大凡を推定するが課題は多い) SPEが発生した場合(特に10MeV以上100MeV 以上の陽

子)最大値フラックス値の推定 ピーク値を予測(特に閾値に近くなった時に重要)

bull 衛星運用 bull 太陽フレア磁気嵐警報(X線陽子及びkpが閾値を超えた

時に警報を発信)2003年10月より運用開始 bull 内部帯電警報(2日後の静止軌道上の高エネルギー電子(>1

Me) の増加を予測し 閾値を超えた時に警報を発信) 2004年4月より運用開始

話の流れ

技術データ取得装置(TEDA)の概要と成果 bull 主な成果 bull 不具合解析例

宇宙天気のリスクと対策 bull 宇宙環境による衛星システムへの影響 bull 宇宙環境を原因とする不具合の割合推移部位 bull 静止軌道不具合 bull 対策

今後必要な観測項目

まとめ

計測対象計測項目 計測対象 粒径100μm以上のデブリメテオロイド 計測項目 デブリ粒径衝突頻度

基本原理

厚さ約125μmの絶縁性のポリイミドフィルム表面に 100μm周期で直線状の細長い導線(太さ50μm)パターンを形成導線の破断を電気的に検知することによりデブリの衝突(貫通)を検知する破断した導線の数導線の幅ピッチからデブリサイズを計測する

微小デブリ計測技術の概要

衝突孔の例(衝突試験ISAS) - 衝突粒子 SUS 309 microm - 衝突速度 52 kms

HTV5号機によるセンサ機能のフライト実証

35cm

46cm

FY2013機能実証モデル

検出線幅 50 μm 検出線間隔 100 μm フィルム厚 lt 20 μm 有感領域 30times33cm 検出線総数 3300本

サイズ 50times39times4 cm (筐体を含む)

重量 約15kg(筐体を含む)

消費電力 2W(最大4W)(他センサ含む)

テレメトリ 02 bps

宇宙環境観測装置KASPERの一部としてデブリセンサSDMを搭載 FY2013に製作開始今年8月に打ち上げ予定)

まとめ(その1)

衛星不具合の主な原因は帯電放電シングルイベント放射線損傷である今後デブリ環境が重要になると予測される

静止軌道では商用衛星が多く運用されており宇宙環境の変動把握は重要この領域で運用する衛星が気を付けなければいけない環境として

1太陽フレアに伴う高エネルギー粒子 2太陽活動下降期による静止軌道電子の増加 3磁気嵐に伴う磁気圏尾部から注入する粒子 などがあげられる

まとめ(その2)

不具合軽減の取り組み bull 開発時は宇宙環境条件(トータルフラックス及び最悪条

件)を明確にし設計(冗長系柔軟性の設計ディレーティング及び運用モード寿命について研究)試験の充実検証の充実を図る

bull 運用段階に入ったならば宇宙環境を監視し警報等で故障を防ぐ

予測課題 bull 太陽フレアに伴う高エネルギー粒子発生後フラックス

ピーク値の推定

bull 衛星により不具合の起きる閾値は異なるが閾値をこえる急激な電子フラックスの増加と継続時間の予測

bull 局所的な磁気嵐に伴う磁気圏尾部から注入する粒子

宇宙環境グループは宇宙ステーションと衛星プロジェクトの安全な遂行に貢献しています

ご静聴ありがとうございました

補足資料

不具合原因の推移 bull 宇宙天気を大きく左右する要因の1つとして約11年の太陽活動変化が挙げられる

bull 太陽活動下降時期(太陽変動CME)と極大期(フレアCME)に衛星で不具合が増加するそれにより不具合原因の割合が変わる

-Koons et al The Impact of the Space Environment on Space Systems Aerospace Corp report no TR-99(1670)-1 20 July 1999 -2009 preliminary study (unpublished)

何故不具合は減らないか

bull 部品 放射線に対する感受性が高くなっている bull 微細化が進み同時にフォールトするノードが増え同時にエ

ラーとなる論理ノードやメモリセルが増加する微細化によってメモリセルは小さくなるので記憶容量当たりでみるとエラーの発生率は下がるしかし半導体チップの記憶容量やゲート数が増えるので半導体チップ当たりのエラー発生率は微細化とともに上昇するまた蓄積電荷が小さくなり感受性が高くなってきている

bull システム 大型化大電力化運用長期化 bull 1990年代末以降静止衛星の電力が10kWレベルになったしか

し設計検証技術データ蓄積が遅れている改善されつつあると推測される

放射線による影響の概要

粒子 エネルギー又はLET

代表的な影響

陽子 100keV-1MeV 1-10MeV 10-100MeV gt50MeV

表面損傷 表面材料と太陽電池の損傷 放射線損傷(電離非電離損傷の両方)センサーへのノイズ シングルイベント効果

電子 10-100keV gt100keV gt1MeV

表面帯電 深部帯電現象(deep-dielectric charging)センサーへのノイズ太陽電池の損傷 放射線損傷(電離)

重イオン gt1MeV-cm2mg シングルイベント効果

注エネルギー及びLETは個々の部品等により異なりますあくまでも目安です

耐放射線設計手順

軌道条件

ミッション期間

環境条件設定

トータルドーズの予測

1MeV電子換算被曝算出

NIELの換算

LETフルエンス算出

陽子フルエンス算出

対  策  の  検  討

対  策  の  検  討

対  策  の  検  討

放射線による劣化率予測

劣化率予測 特性予測

耐性データ

放射線による劣化率予測

耐性データ

劣化率予測アレイ出力劣化予測

感受性データ

シングルイベント発生率予測 致命度解析

衛星内質量分布

(2)

部品材料の選定

他の要因による劣化率予測

(2)(2) (3)

回路設計等NO

OK

アレイ構造 セル選定

他の要因による劣化率予測 アレイ設計(2)

(2) (2) (2) (3)

衛星内質量分布 部品選定(2)

(2) (2)(3)

NO

OK

NO

OK

(1) 環境モデルマージを含む(2) 部品レベルの検討(3) アセンブリレベルでの検討(4) 設計マージン環境モデル   マージを含め大丈夫か

トータルドーズ

太陽電池アレイの劣化

シングルイベント効果

回路設計

補足放射線太陽宇宙線銀河宇宙線

NEILを用いたダメージファクターの算出

対  策  の  検  討

放射線による劣化率予測

劣化率予測 特性予測

耐性データ

(2)

部品材料の選定

他の要因による劣化率予測

(2)(2) (3)

回路設計等NO

OK

衛星内質量分布 半導体デバイスの変位損傷

(1)

(4)

(4)

(4)

(4)

各軌道における放射線環境

1E+10

1E+11

1E+12

1E+13

1E+14

1E+15

1E+16

1E+17

1E+18

1E+19

1E+20

001 010 100 1000

捕捉

電子

の積

分フ

ルエ

ンス

[m

2 ]

エネルギー[MeV]

各軌道における電子捕捉積分フルエンス(3年間)

LEO

EOS GEO

MEO

GTO

GEO 軌道傾斜角 0deg 高度36000km GTO 軌道傾斜角 18deg 高度 360km~36000km MEO 軌道傾斜角 51deg 高度 10000km EOS 軌道傾斜角 98deg 高度705km LEO 軌道傾斜角 29deg 高度 600km

1E+12

1E+13

1E+14

1E+15

1E+16

1E+17

1E+18

1E+19

1E+20

01 10 100 1000

捕捉

陽子の

積分フルエン

ス[

m2 ]

エネルギー[MeV]

各軌道における捕捉陽子積分フルエンス(3年間)

MEO

GTO

GEO

EOS LEO

放射線による部品材料の影響

総照射線量 (TIDTotal Ionising Dose )

電離損傷

バイポーラTrの電流増幅率の低下リーク電流の増大

γ線で評価

トータルドーズ効果

変位損傷 (DDDisplacement Damage )または 非イオン化エネルギー損失 (NIELNon-Ionising Energy

Loss )

変位損傷(格子欠陥の生成)

電荷輸送効率の低下 (CCD)太陽電池の効率低下等

電子陽子により評価

シングルイベント効果

1個の荷電粒子の入射により発生する誤動作

ソフト(Latch-Up Burnout) エラー又は ソフト (Upset) エラー

陽子及び重イオンで評価

トータルドーズ効果

+ - + + - + - + - - + + + + -

ゲート酸化膜

電離

格子欠陥

正電荷捕獲

+ 正孔 - 電子

電極

(Silicon oxidenitride)

荷電粒子

反跳原子

ゲート絶縁膜中に電荷が蓄積することによるMOSトランジスタのしきい電圧(MOSトランジスタがオフからオンに変化するゲート電圧)の変化をもたらすただ

し最近の最先端チップはゲート絶縁膜がきわめて薄くなっているこのためゲート絶縁膜よりもフィールド絶縁膜(隣接するトランジスタを電気的に分離する絶縁膜)での電荷蓄積が相対的には大きな問題になってきている」

シングルイベント効果

メモリセルはNチャンネルとPチャンネルMOSFETより構成されメモリ情報は回路ノード12の電位の

高低により記録している空乏層の広がっているPN接合12の領域に

重イオンが入射した場合電荷の発生と空乏層内への少数キャリアの収集が起こるこの収集電荷量が回路の耐量を越えた場合(c)に示すように反転が起こる(ソフトエラー)一方pウエル-N基板接

合の空乏層内に電荷収集量が起こりえる耐性を越えると寄生的に存在するPNPNサイリスタ構造がオ

ンし電源と基板間に大電流が流れる状態が生じる(ラッチアップ)

シングルイベントメカニズム -陽子と重イオンの違い-

エラー発生率の計算

線エネルギー付与(LET) (linear energy transfer)

電離性放射線が物質中を通過する際飛程の単位長さ当りに平均して失うエネルギーをいう各種の放射線のうちX線γ線はLETが小さいので低LETといいα線中性子線その他重イオン核分裂破片のLETは大きいので高LETという MeVμmMeV(gcm2)やMeV(mgcm2)で表される

南大西洋異常(SAA) bull 地球の自転軸と磁気軸のずれ

darr bull 放射線帯が自転軸に対して非

対称

bull 南大西洋上空では放射線帯内帯が低高度に落ちてきているこの領域を南大西洋異常域(SAA South Atlantic Anomaly)と呼ぶ

bull 地球観測衛星ではSAAで放射線帯陽子の影響を受ける

Single Event Lachup

シングルイベントと陽子分布

MOS-1衛星(高度909km軌道傾斜角99度)で発生したシングルイベントと 陽子30MeV以上の等高線マップを重ね合わせた結果

NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)

bull 入射粒子が電離によらず与える損傷非イオン化損失

低軌道での電子フラックスと 不具合の発生場所

南大西洋異常(SAA)と極の角

高度800kmでの電子フラックス図極の角(polar horn)とSAAを示す

太陽粒子線 bull 太陽高エネルギー粒子線(SPE Solar Proton Events)は太陽フレア とコロナガス噴出 (CMECoronal Mass Ejections )により引き起こされる bull フレアのスペクトルは可変であるためあるエネルギー域における最悪状態イベントは必ずしも別のエネルギー域における最悪条件ではない 1972年8月のイベント 10~70MeVの粒子が最も多かった 1989年10のイベント 1972年8月のイベントに比べ低エネルギー領域 高エネルギー領域が明らかに激しかった

フルエンス 105 to 1011 cm-2

変動期間 1日から数日

ldquoBastiliardquo Solar Event 14 July 2000

Carrington Flare

84

(LW Townseed) Carrington Flare(1859年) Carrington Flare による30MeV以上トータルFluenceを118times109cm-2で規格化 ~1989年フレアの約13倍(シングルイベントの評価で使用) ~1991年フレアの約9倍 2012年7月23日にキャリントンイベントとほぼ同等の爆発現象が太陽あるいは太陽の周りで起きていたということがNASAの太陽観測衛星「STEREO」の解析から発表された

放射線対策 bull 放射線シールドを付加し放射線を減衰させる

bull 放射線耐性の強い部品(SOI(Silicon On Insulator)技術による耐放射線部品)材料に変更する

bull 放射線による損傷を吸収するために回路または構造上のマージンを持たせる bull ソフト的なエラーに対しては エラー検出訂正機能や多数決

機能等でソフト的エラーが起きてもシステムが機能するようにしたフォールトトレラント機能を付けて対処する ICのハード的故障に対しては ラッチアップ耐性の強い部品を選定するしかないが 電流制限回路を付ける対策も採られる パワーMOSFETに対しては部品選定 電源電圧を規格値の半分以下に落とす等の対策を採る

SOI技術

表面帯電への対策例

表面の物体間を導線で結線する

太陽電池のカバーガラスを導電性被膜付き(酸化インジウムITO)にする

熱制御材表面にITOを被覆する

熱制御材は高誘電率のテフロンの使用を避け 高伝導度耐環境性に優れたブラックカプトンを使用

イオンエンジンの中和器で能動帯電制御

内部帯電への対策例

アルミで3mm厚さに相当するシールドで囲む(Faraday Cage)

テフロンやカプトンなどの誘電体材料の内部での使用量を最小限に押さえる

回路基板やコンフォーマルコーティングは誘電体なので電流リークパス(1012Ωcmまたは1012Ωcm2

程度)を必ずつける

特にスポット的な放射線シールドの金属材には必ず電流リークパスをつける

帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備

衛星モデル作成

材料物性テーブル設定

宇宙環境パラメータ設定

Converter

転送ディレクトリ 解析データファイル

転送

解析ディレクトリ生成 解析結果 進行状況チェック ファイル操作

MUSCAT 解析エンジン

解析結果 表示

パラメトリックラン

オプション 解析

大型パネル実験(35mtimes11m) クーポンパネル実験(26cmtimes16cm)

環境模擬試験 環境模擬試験

MUSCATに使用する物性値設計標準制定のための知見などを得ることを目的に軌道上の宇宙環境を模擬した地上試験を行っている これらの試験では放電の発生頻度や電圧閾値放電発生による太陽電池パネルや搭載機器への影響を検証している

放射線計測装置の原理

bull その粒子が物質を通過する際のエネルギー損出率が粒子の電荷(原子番号)Zの二乗に比例すること(Bethe-Blochの式)を利用する

S2

E

ΔE Ersquo

S1 S3

  • 宇宙機の設計のための宇宙環境
  • 話の流れ
  • 話の流れ
  • TEDA(技術データ取得装置)(国産部品の宇宙環境での実証の必要性)
  • ETS-VTEDA(技術データ取得装置)誕生前の部品の宇宙実証の背景
  • スライド番号 6
  • スライド番号 7
  • スライド番号 8
  • スライド番号 9
  • 図6太陽黒点数と静止軌道電子 (>04MeV ) Flux の変動 (ETS-V搭載DOMによる観測)
  • スライド番号 11
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの開発(理研東大と共同で宇宙環境計測の充実)
  • ETS-VI(きく6号)打ち上がったがGEOに行かずGTOに留まる
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの成果
  • スライド番号 15
  • スライド番号 16
  • スライド番号 17
  • ADEOS搭載TEDA(世界2番目の異常宇宙線ACR)
  • BBND (ボナー球中性子検出器)
  • スライド番号 20
  • ISS搭載BBNDの成果(約8か月)
  • スライド番号 22
  • MDS-1搭載放射線吸収線量モニタ(SDOM)
  • 放射線帯変動モデルの開発MDS-1 065 MeV 電子フラックス
  • 変動パラメータの選択 (1 cycle solar activity)
  • 変動パラメータ- Tavg の定義-
  • 065MeV 電子 L値-Tavg マップ
  • 13MeV 陽子 L値-Tavg マップ
  • 電子観測とMDS-1モデルの比較
  • 放射線帯フラックスピークの変動
  • 陽子観測とモデルの比較
  • 電子(035~078MeV) 1日の変動予測GOSAT軌道
  • 電子(035~078MeV) 変動の信頼度水準(1日)GOSAT軌道
  • MDS-1 model と AE-8 modelとの比較1日
  • 話の流れ
  • 2003年10月 みどり号の全損事故(複合現象)
  • 衛星帯電の基本式
  • 内部帯電
  • パドルでの帯電放電メカニズム
  • スライド番号 40
  • スライド番号 41
  • スライド番号 42
  • データ中継技術衛星DRTS (こだま)の不具合
  • DRTS ESA スパイクノイズと電子フルエンスの比較(赤の丸が異常検知)
  • 不具合が宇宙環境によるものであるか判断する際のポイント
  • 話の流れ
  • 宇宙天気のリスク-宇宙環境によるシステムへの影響 -
  • NASAの報告-GNampCに注目-
  • NASAの報告(続き)
  • 宇宙環境を原因とする不具合の割合-JAXAの場合-
  • 不具合発生部位の割合 
  • Satellite News Digest -静止軌道不具合-
  • 太陽活動と静止軌道衛星不具合例
  • スライド番号 54
  • スライド番号 55
  • スライド番号 56
  • 衛星開発段階における対策
  • 運用における対応
  • 話の流れ
  • スライド番号 60
  • スライド番号 61
  • まとめ(その1)
  • まとめ(その2)
  • 宇宙環境グループは宇宙ステーションと衛星プロジェクトの安全な遂行に貢献しています
  • 補足資料
  • 不具合原因の推移
  • 何故不具合は減らないか
  • 放射線による影響の概要
  • 耐放射線設計手順
  • 各軌道における放射線環境
  • 放射線による部品材料の影響
  • トータルドーズ効果
  • シングルイベント効果
  • シングルイベントメカニズム-陽子と重イオンの違い-
  • エラー発生率の計算
  • 線エネルギー付与(LET)(linear energy transfer)
  • 南大西洋異常(SAA)
  • Single Event Lachup
  • シングルイベントと陽子分布
  • NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)
  • 低軌道での電子フラックスと不具合の発生場所
  • 南大西洋異常(SAA)と極の角
  • スライド番号 83
  • Carrington Flare
  • 放射線対策
  • スライド番号 86
  • スライド番号 87
  • 帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備
  • スライド番号 89
  • 放射線計測装置の原理
Page 38: 宇宙機の設計のための宇宙環境の方針から国産部品開発(42品種)が実施された。 . 半導体電子部品は耐放射線性を加味して、人工衛星(特に

bull内部帯電は衛星の外壁を貫通した放射線帯外帯の01MeV以上の電子が内部に侵入

bull基板間や同軸ケーブルの線間等の容量(コンデンサ)や誘電体に帯電 bull接地されてない導体片に帯電

bullその耐圧電圧を超えると その耐圧の弱い箇所 (材質の欠陥や針状突起など の箇所)で放電して故障に至る

内部帯電

(あるエネルギ-以上の粒子が入射光電子なし)

NASA-HDBK-4002より

パドルでの帯電放電メカニズム

宇宙環境の影響により 衛星がマイナス電位に帯電

高エネルギー電子等により カバーガラスはプラスに帯電 衛星とカバーガラスに電位差が生じる

電位差が大きくなると トリプルジャンクション近傍 の電界強度が増大していく

トリプルジャンクションで放電が発生する カバーガラスの帯電が緩和される

+ + + + + + + + + + + + + +

+ + + +

カバーガラス

太陽電池セル

基板(衛星構体)

トリプルジャンクション rArr 導体絶縁体宇宙環境の接点

持続放電

Substrate

Satellite Load

insulation sheet

Solar array cell

Cover glass

Arc current

Electrode

持続放電は衛星の電力消失につながる 持続放電のモードは以下の2通りがある

Substrate

Satellite Load

insulation sheet

Solar array cell

Cover glass

Arc current

Electrode

Solar array cell

Cover glass

セル-基板間短絡 セル間短絡

放電によって太陽電池セルと基板が短絡する 短絡によって負荷に電力が供給されなくなる

放電によって太陽電池セルとセルが短絡する 短絡によって負荷に電力が供給されなくなる

サブストーム(高エネルギー電子)との遭遇

+ + + + + + + +

二次電子光電子による絶縁体の帯電(局所帯電)

電位差発生

逆電位勾配

衛星構体が負に帯電(絶対帯電)

電位

時間

サブストーム

衛星構体 VS

乖離電圧 ∆V

カバーガラスVcg

0 プラズマ電位

軌道別帯電放電現象

トリプルジャンクションで 放電発生

放電発生

静止軌道

+ + + + + + + +

逆電位勾配

軌道帯電放電現象

トリプルジャンクションで 放電発生

極軌道 オーロラ電子(高エネルギー電子)との遭遇

プラズマ流入出による絶縁体の帯電(局所帯電)

電位差発生

衛星構体が負に帯電(絶対帯電)

放電発生

電位

時間

オーロラ電子

衛星構体 乖離電圧 ∆V

カバーガラス

0 プラズマ電位

データ中継技術衛星DRTS (こだま)の不具合

2002年10月 9日 静止軌道に打ち上げ

2003年

3月24日 406JST変化率異常モニタ故障検出(FDIR)

が動作しA系からB系に切り替わった

3月25日 410JSTにB系のみ異常検知

4月 3日 327JSTにB系のみ異常検知

5月28日 124JSTにB系のみ異常検知

6月 6日1537JSTにB系のみ異常検知

ESA

DRTS ESA スパイクノイズと 電子フルエンスの比較(赤の丸が異常検知)

larr閾値

この事実を基に静止軌道における内部帯電警報システムを構築 2004年4月より運用開始

不具合が宇宙環境によるものであるか 判断する際のポイント

不具合の発生した時刻に太陽フレアや磁気嵐等の宇宙天気の大きな変動が起きていれば不具合に関係している可能性が高い但し帯電など放射線の積算的効果の伴う現象については発生から1週間位さかのぼり環境がどのように推移してきたかを考慮する必要がある

磁気嵐が起きると静止軌道に急激な粒子の増加現象が起きこれにより衛星帯電が引き起こされたりする(予測に利用可能)

地方時(真夜中や朝方か)や季節(春秋)を考慮する

低軌道衛星においてはSAA外帯のrdquo角ldquo及び極通過時に不具合

が起きやすいので衛星の位置(緯度経度)が重要

事象を把握する上で単発現象か数回起きている現象か周期

(時間同じ軌道等)的に発生している現象か

話の流れ

技術データ取得装置(TEDA)の概要と成果 bull 主な成果 bull 不具合解析例

宇宙天気のリスクと対策 bull 宇宙環境による衛星システムへの影響 bull 宇宙環境を原因とする不具合の割合推移部位 bull 静止軌道不具合 bull 対策

今後必要な観測項目

まとめ

宇宙天気のリスク -宇宙環境によるシステムへの影響 -

プラズマ (IRI)

帯電 (MUSCAT)

衝突 (AUTODY)

抗力 表面劣化

紫外線X線 中性粒子 (MSIS)

放射線粒子 (AE8AP8JPLSHIELDO

SE-2)

メテオロイドデブリ (MASTER2005

ORDEM)

電離損傷 変位損傷

bull電子回路の劣化 bull光部品の劣化

bull太陽電池セルの劣化

SEU (CREME96)

bullデータエラー bull画像ノイズ

bullシステム停止 bull回路損傷

bull熱的電気的光学的特性の劣化

bull構造の劣化 bullコンタミ

電磁パルス bull電源出力低下

bull損傷

bullトルク bull軌道落下

bull構造 損傷 bull減圧

bull電磁パルス

NASAの報告 -GNampCに注目-

1974年から1994年に起きたNASAと空軍の衛星故障の内20~25が宇宙環境に起因していたと報告

1990年から2001年に米国欧州カナダ日本の企業や政府機関が開発した衛星を調べた過去の宇宙ミション損失の大部分はロケットの失敗であったが1998年衛星損失の大部分は軌道上の衛星障害となっている多くの最近の異常は太陽電池アレイ及びバッテリの危険が増加している静止軌道通信衛星の設計寿命はこのサブシステムの故障の危険が増加している

喪失等の大きな誘導制御(GNampC)の不具合に注目 GNampC不具合の内宇宙環境による 不具合は約3と報告されている

軌道上衛星のタイプ別数

NASAの報告(続き)

衛星設計寿命における不具合発生時期 事故率と軌道

軌道別の衛星数 サブシステム不具合

宇宙環境を原因とする不具合の割合 -JAXAの場合-

2002年~2008年に運用された軌道上不具合情報が比較的充実している11衛星(利用衛星7機科学衛星4機)の結果宇宙環境によるも

のは約15過去のデータよりも割合が少ない

合計83件 合計35件

(1)利用衛星 (2)科学衛星

設計検討 不足 48

製造不良 8

軌道上環境 17

偶発故障 6

調査中 13

原因不明 8

設計検討

不足 61

製造不良 4

軌道上環境 11

偶発故障 6

調査中 9

原因不明 9

不具合発生部位の割合

不具合発生部位の割合

Brent Robertson Eric Stoneking ( 1990-2001NASA Goddard Space Flight Center )

Satellite News Digest -静止軌道不具合-

Satellite News Digest (SND) (http wwwsqt-indexcouk) で1997年~2009年の期間に静止軌道で95件の不具合が報告されている その内運用ミスや設計ミスなどを除くと32件(約33)は宇宙環境によるものであった 過去のデータより割合が多い

Choiら1)はこれら不具合の地方時と季節依存性を確認した その結果2100LT~900LTで約72の不具合が発生し900LT~2100LTは9件(約28)であった またこの9件は全て姿勢制御の不具合だった 静止軌道衛星不具合のほとんどは真夜中と朝方で起きており磁気嵐に伴い磁気圏尾部から注入した粒子による表面帯電が不具合の主原因と結論づけている

1) Ho-sung Choi et al Analysis of GEO spacecraft anomalies Space weather relationships Space Weather Vol 9 S06001

太陽活動と静止軌道衛星不具合例

ANIK-E1E2

ANIK-E1

複数の衛星で故障

Galaxy-15

帯電放電不具合 -ANIK-E1amp2Telstar401-

Jan 1994 ANIK-E1 amp E2事故時の環境 - Joe H Allen

1週間

太陽活動下降時期の電子増加

2MeV以上電子

copyNOAA Web

フラックスが3桁急増

Jan 1997 Telstar401事故時の環境

静止軌道の急激な電子増加

太陽極大期太陽フレアによる衛星障害 - 2003年10月~11月-

10486981048698 永久故障 4 10486981048698 安全モード又は運用を一時停止 31 10486981048698 データ内容の「誤り」の増加搭載コンピュータの誤動作 5

httpwwwsat-ndcomfailures等のデータによる 合計 40件

-Barbieri and Mahmot

米国極軌道気象衛星NOAA-17の改良型マイクロ波観測装置AMSU-A1 (Advanced Microwave Sounding Unit)のスキャナーが永久故障 米国気象衛星GOES -8号のX線センサがOFFになり復帰しなくなった

e-birdに深刻な不具合が発生 不具合は20本のトランスポンダ全てに影響

火星周回中の探査機「マーズオデッセイ (Mars Odyssey)」の観測機器放射線観測装置「Martian Radiation Environment Experiment (MARIE)」が太陽活動の影響により10月28日から適切に作動しなくなった データ中継技術衛星(DRTS)「こだま」 太陽捕捉モードに移行

太陽陽子

帯電放電不具合-Galaxy15(局所的的現象)- 2

5 M

eV

65

MeV

11

5 M

eV

GOES 14 ----- GOES 15 ----- GOES 11 -----

Satellite Locations

Galaxy 15 anomaly

2010年4月5日9時48分UTCは磁気嵐及びCMEが発生するなど宇宙環境は非常に荒れていたGalaxy15衛星は真夜中側に位置し宇宙環境の影響を受けやすい

位置にいたことから宇宙環境による不具合である可能性が高いということで原因追及がなされた高エネルギー粒子が引き起こす代表的な衛星不具合現象として3つ(表面帯電内部帯電SEUシングルイベントバーンアウトSEL)の可能性を検討した

チームの報告書によると磁気圏尾部からの熱電子の流入による放電が原因であったと結論付けられたGalaxy15衛星の近くにはGOES-11衛星が位置していたがGOES-11衛星には不具合を発生しておらず本現象は局所的な現象と推測される

衛星開発段階における対策 JAXAの不具合解析の結論

bull 2002年~2008年に運用された11機の衛星不具合を解析 宇宙環境による不具合は偶発故障のみ(全体の約15)確率的には想定範囲内ではあるがその影響を最小限とするためディレーティング運用モード寿命についての研究に取り組む

bull 設計基準試験の充実検証確認の強化技術成熟度(TRL)評価の徹底各々の境界制約条件の明示化等により検証不足抜けの防止有効なピアレビューに結びつける

冗長系(同じハードウェア機能の冗長)柔軟性の設計(ソフトハードの対応)

bull 従来の故障が起きないようにする設計に対してGOSAT(いぶき)では重要部

品を二重化することにより故障する可能性は上がるが故障しても衛星バスの運用や観測が続行できる可能性がより高くなるように設計した

運用における対応

bull 宇宙天気監視ーロケット打ち上げ及び宇宙飛行士支援 数日前に今後の宇宙環境の推移を把握(MXレベルのフレアの発生確率)

bull X線の増加で太陽フレア発生を検知したら高エネルギー粒子の発生をいつまで 気を付ければ良いか判断(発生位置で大凡を推定するが課題は多い) SPEが発生した場合(特に10MeV以上100MeV 以上の陽

子)最大値フラックス値の推定 ピーク値を予測(特に閾値に近くなった時に重要)

bull 衛星運用 bull 太陽フレア磁気嵐警報(X線陽子及びkpが閾値を超えた

時に警報を発信)2003年10月より運用開始 bull 内部帯電警報(2日後の静止軌道上の高エネルギー電子(>1

Me) の増加を予測し 閾値を超えた時に警報を発信) 2004年4月より運用開始

話の流れ

技術データ取得装置(TEDA)の概要と成果 bull 主な成果 bull 不具合解析例

宇宙天気のリスクと対策 bull 宇宙環境による衛星システムへの影響 bull 宇宙環境を原因とする不具合の割合推移部位 bull 静止軌道不具合 bull 対策

今後必要な観測項目

まとめ

計測対象計測項目 計測対象 粒径100μm以上のデブリメテオロイド 計測項目 デブリ粒径衝突頻度

基本原理

厚さ約125μmの絶縁性のポリイミドフィルム表面に 100μm周期で直線状の細長い導線(太さ50μm)パターンを形成導線の破断を電気的に検知することによりデブリの衝突(貫通)を検知する破断した導線の数導線の幅ピッチからデブリサイズを計測する

微小デブリ計測技術の概要

衝突孔の例(衝突試験ISAS) - 衝突粒子 SUS 309 microm - 衝突速度 52 kms

HTV5号機によるセンサ機能のフライト実証

35cm

46cm

FY2013機能実証モデル

検出線幅 50 μm 検出線間隔 100 μm フィルム厚 lt 20 μm 有感領域 30times33cm 検出線総数 3300本

サイズ 50times39times4 cm (筐体を含む)

重量 約15kg(筐体を含む)

消費電力 2W(最大4W)(他センサ含む)

テレメトリ 02 bps

宇宙環境観測装置KASPERの一部としてデブリセンサSDMを搭載 FY2013に製作開始今年8月に打ち上げ予定)

まとめ(その1)

衛星不具合の主な原因は帯電放電シングルイベント放射線損傷である今後デブリ環境が重要になると予測される

静止軌道では商用衛星が多く運用されており宇宙環境の変動把握は重要この領域で運用する衛星が気を付けなければいけない環境として

1太陽フレアに伴う高エネルギー粒子 2太陽活動下降期による静止軌道電子の増加 3磁気嵐に伴う磁気圏尾部から注入する粒子 などがあげられる

まとめ(その2)

不具合軽減の取り組み bull 開発時は宇宙環境条件(トータルフラックス及び最悪条

件)を明確にし設計(冗長系柔軟性の設計ディレーティング及び運用モード寿命について研究)試験の充実検証の充実を図る

bull 運用段階に入ったならば宇宙環境を監視し警報等で故障を防ぐ

予測課題 bull 太陽フレアに伴う高エネルギー粒子発生後フラックス

ピーク値の推定

bull 衛星により不具合の起きる閾値は異なるが閾値をこえる急激な電子フラックスの増加と継続時間の予測

bull 局所的な磁気嵐に伴う磁気圏尾部から注入する粒子

宇宙環境グループは宇宙ステーションと衛星プロジェクトの安全な遂行に貢献しています

ご静聴ありがとうございました

補足資料

不具合原因の推移 bull 宇宙天気を大きく左右する要因の1つとして約11年の太陽活動変化が挙げられる

bull 太陽活動下降時期(太陽変動CME)と極大期(フレアCME)に衛星で不具合が増加するそれにより不具合原因の割合が変わる

-Koons et al The Impact of the Space Environment on Space Systems Aerospace Corp report no TR-99(1670)-1 20 July 1999 -2009 preliminary study (unpublished)

何故不具合は減らないか

bull 部品 放射線に対する感受性が高くなっている bull 微細化が進み同時にフォールトするノードが増え同時にエ

ラーとなる論理ノードやメモリセルが増加する微細化によってメモリセルは小さくなるので記憶容量当たりでみるとエラーの発生率は下がるしかし半導体チップの記憶容量やゲート数が増えるので半導体チップ当たりのエラー発生率は微細化とともに上昇するまた蓄積電荷が小さくなり感受性が高くなってきている

bull システム 大型化大電力化運用長期化 bull 1990年代末以降静止衛星の電力が10kWレベルになったしか

し設計検証技術データ蓄積が遅れている改善されつつあると推測される

放射線による影響の概要

粒子 エネルギー又はLET

代表的な影響

陽子 100keV-1MeV 1-10MeV 10-100MeV gt50MeV

表面損傷 表面材料と太陽電池の損傷 放射線損傷(電離非電離損傷の両方)センサーへのノイズ シングルイベント効果

電子 10-100keV gt100keV gt1MeV

表面帯電 深部帯電現象(deep-dielectric charging)センサーへのノイズ太陽電池の損傷 放射線損傷(電離)

重イオン gt1MeV-cm2mg シングルイベント効果

注エネルギー及びLETは個々の部品等により異なりますあくまでも目安です

耐放射線設計手順

軌道条件

ミッション期間

環境条件設定

トータルドーズの予測

1MeV電子換算被曝算出

NIELの換算

LETフルエンス算出

陽子フルエンス算出

対  策  の  検  討

対  策  の  検  討

対  策  の  検  討

放射線による劣化率予測

劣化率予測 特性予測

耐性データ

放射線による劣化率予測

耐性データ

劣化率予測アレイ出力劣化予測

感受性データ

シングルイベント発生率予測 致命度解析

衛星内質量分布

(2)

部品材料の選定

他の要因による劣化率予測

(2)(2) (3)

回路設計等NO

OK

アレイ構造 セル選定

他の要因による劣化率予測 アレイ設計(2)

(2) (2) (2) (3)

衛星内質量分布 部品選定(2)

(2) (2)(3)

NO

OK

NO

OK

(1) 環境モデルマージを含む(2) 部品レベルの検討(3) アセンブリレベルでの検討(4) 設計マージン環境モデル   マージを含め大丈夫か

トータルドーズ

太陽電池アレイの劣化

シングルイベント効果

回路設計

補足放射線太陽宇宙線銀河宇宙線

NEILを用いたダメージファクターの算出

対  策  の  検  討

放射線による劣化率予測

劣化率予測 特性予測

耐性データ

(2)

部品材料の選定

他の要因による劣化率予測

(2)(2) (3)

回路設計等NO

OK

衛星内質量分布 半導体デバイスの変位損傷

(1)

(4)

(4)

(4)

(4)

各軌道における放射線環境

1E+10

1E+11

1E+12

1E+13

1E+14

1E+15

1E+16

1E+17

1E+18

1E+19

1E+20

001 010 100 1000

捕捉

電子

の積

分フ

ルエ

ンス

[m

2 ]

エネルギー[MeV]

各軌道における電子捕捉積分フルエンス(3年間)

LEO

EOS GEO

MEO

GTO

GEO 軌道傾斜角 0deg 高度36000km GTO 軌道傾斜角 18deg 高度 360km~36000km MEO 軌道傾斜角 51deg 高度 10000km EOS 軌道傾斜角 98deg 高度705km LEO 軌道傾斜角 29deg 高度 600km

1E+12

1E+13

1E+14

1E+15

1E+16

1E+17

1E+18

1E+19

1E+20

01 10 100 1000

捕捉

陽子の

積分フルエン

ス[

m2 ]

エネルギー[MeV]

各軌道における捕捉陽子積分フルエンス(3年間)

MEO

GTO

GEO

EOS LEO

放射線による部品材料の影響

総照射線量 (TIDTotal Ionising Dose )

電離損傷

バイポーラTrの電流増幅率の低下リーク電流の増大

γ線で評価

トータルドーズ効果

変位損傷 (DDDisplacement Damage )または 非イオン化エネルギー損失 (NIELNon-Ionising Energy

Loss )

変位損傷(格子欠陥の生成)

電荷輸送効率の低下 (CCD)太陽電池の効率低下等

電子陽子により評価

シングルイベント効果

1個の荷電粒子の入射により発生する誤動作

ソフト(Latch-Up Burnout) エラー又は ソフト (Upset) エラー

陽子及び重イオンで評価

トータルドーズ効果

+ - + + - + - + - - + + + + -

ゲート酸化膜

電離

格子欠陥

正電荷捕獲

+ 正孔 - 電子

電極

(Silicon oxidenitride)

荷電粒子

反跳原子

ゲート絶縁膜中に電荷が蓄積することによるMOSトランジスタのしきい電圧(MOSトランジスタがオフからオンに変化するゲート電圧)の変化をもたらすただ

し最近の最先端チップはゲート絶縁膜がきわめて薄くなっているこのためゲート絶縁膜よりもフィールド絶縁膜(隣接するトランジスタを電気的に分離する絶縁膜)での電荷蓄積が相対的には大きな問題になってきている」

シングルイベント効果

メモリセルはNチャンネルとPチャンネルMOSFETより構成されメモリ情報は回路ノード12の電位の

高低により記録している空乏層の広がっているPN接合12の領域に

重イオンが入射した場合電荷の発生と空乏層内への少数キャリアの収集が起こるこの収集電荷量が回路の耐量を越えた場合(c)に示すように反転が起こる(ソフトエラー)一方pウエル-N基板接

合の空乏層内に電荷収集量が起こりえる耐性を越えると寄生的に存在するPNPNサイリスタ構造がオ

ンし電源と基板間に大電流が流れる状態が生じる(ラッチアップ)

シングルイベントメカニズム -陽子と重イオンの違い-

エラー発生率の計算

線エネルギー付与(LET) (linear energy transfer)

電離性放射線が物質中を通過する際飛程の単位長さ当りに平均して失うエネルギーをいう各種の放射線のうちX線γ線はLETが小さいので低LETといいα線中性子線その他重イオン核分裂破片のLETは大きいので高LETという MeVμmMeV(gcm2)やMeV(mgcm2)で表される

南大西洋異常(SAA) bull 地球の自転軸と磁気軸のずれ

darr bull 放射線帯が自転軸に対して非

対称

bull 南大西洋上空では放射線帯内帯が低高度に落ちてきているこの領域を南大西洋異常域(SAA South Atlantic Anomaly)と呼ぶ

bull 地球観測衛星ではSAAで放射線帯陽子の影響を受ける

Single Event Lachup

シングルイベントと陽子分布

MOS-1衛星(高度909km軌道傾斜角99度)で発生したシングルイベントと 陽子30MeV以上の等高線マップを重ね合わせた結果

NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)

bull 入射粒子が電離によらず与える損傷非イオン化損失

低軌道での電子フラックスと 不具合の発生場所

南大西洋異常(SAA)と極の角

高度800kmでの電子フラックス図極の角(polar horn)とSAAを示す

太陽粒子線 bull 太陽高エネルギー粒子線(SPE Solar Proton Events)は太陽フレア とコロナガス噴出 (CMECoronal Mass Ejections )により引き起こされる bull フレアのスペクトルは可変であるためあるエネルギー域における最悪状態イベントは必ずしも別のエネルギー域における最悪条件ではない 1972年8月のイベント 10~70MeVの粒子が最も多かった 1989年10のイベント 1972年8月のイベントに比べ低エネルギー領域 高エネルギー領域が明らかに激しかった

フルエンス 105 to 1011 cm-2

変動期間 1日から数日

ldquoBastiliardquo Solar Event 14 July 2000

Carrington Flare

84

(LW Townseed) Carrington Flare(1859年) Carrington Flare による30MeV以上トータルFluenceを118times109cm-2で規格化 ~1989年フレアの約13倍(シングルイベントの評価で使用) ~1991年フレアの約9倍 2012年7月23日にキャリントンイベントとほぼ同等の爆発現象が太陽あるいは太陽の周りで起きていたということがNASAの太陽観測衛星「STEREO」の解析から発表された

放射線対策 bull 放射線シールドを付加し放射線を減衰させる

bull 放射線耐性の強い部品(SOI(Silicon On Insulator)技術による耐放射線部品)材料に変更する

bull 放射線による損傷を吸収するために回路または構造上のマージンを持たせる bull ソフト的なエラーに対しては エラー検出訂正機能や多数決

機能等でソフト的エラーが起きてもシステムが機能するようにしたフォールトトレラント機能を付けて対処する ICのハード的故障に対しては ラッチアップ耐性の強い部品を選定するしかないが 電流制限回路を付ける対策も採られる パワーMOSFETに対しては部品選定 電源電圧を規格値の半分以下に落とす等の対策を採る

SOI技術

表面帯電への対策例

表面の物体間を導線で結線する

太陽電池のカバーガラスを導電性被膜付き(酸化インジウムITO)にする

熱制御材表面にITOを被覆する

熱制御材は高誘電率のテフロンの使用を避け 高伝導度耐環境性に優れたブラックカプトンを使用

イオンエンジンの中和器で能動帯電制御

内部帯電への対策例

アルミで3mm厚さに相当するシールドで囲む(Faraday Cage)

テフロンやカプトンなどの誘電体材料の内部での使用量を最小限に押さえる

回路基板やコンフォーマルコーティングは誘電体なので電流リークパス(1012Ωcmまたは1012Ωcm2

程度)を必ずつける

特にスポット的な放射線シールドの金属材には必ず電流リークパスをつける

帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備

衛星モデル作成

材料物性テーブル設定

宇宙環境パラメータ設定

Converter

転送ディレクトリ 解析データファイル

転送

解析ディレクトリ生成 解析結果 進行状況チェック ファイル操作

MUSCAT 解析エンジン

解析結果 表示

パラメトリックラン

オプション 解析

大型パネル実験(35mtimes11m) クーポンパネル実験(26cmtimes16cm)

環境模擬試験 環境模擬試験

MUSCATに使用する物性値設計標準制定のための知見などを得ることを目的に軌道上の宇宙環境を模擬した地上試験を行っている これらの試験では放電の発生頻度や電圧閾値放電発生による太陽電池パネルや搭載機器への影響を検証している

放射線計測装置の原理

bull その粒子が物質を通過する際のエネルギー損出率が粒子の電荷(原子番号)Zの二乗に比例すること(Bethe-Blochの式)を利用する

S2

E

ΔE Ersquo

S1 S3

  • 宇宙機の設計のための宇宙環境
  • 話の流れ
  • 話の流れ
  • TEDA(技術データ取得装置)(国産部品の宇宙環境での実証の必要性)
  • ETS-VTEDA(技術データ取得装置)誕生前の部品の宇宙実証の背景
  • スライド番号 6
  • スライド番号 7
  • スライド番号 8
  • スライド番号 9
  • 図6太陽黒点数と静止軌道電子 (>04MeV ) Flux の変動 (ETS-V搭載DOMによる観測)
  • スライド番号 11
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの開発(理研東大と共同で宇宙環境計測の充実)
  • ETS-VI(きく6号)打ち上がったがGEOに行かずGTOに留まる
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの成果
  • スライド番号 15
  • スライド番号 16
  • スライド番号 17
  • ADEOS搭載TEDA(世界2番目の異常宇宙線ACR)
  • BBND (ボナー球中性子検出器)
  • スライド番号 20
  • ISS搭載BBNDの成果(約8か月)
  • スライド番号 22
  • MDS-1搭載放射線吸収線量モニタ(SDOM)
  • 放射線帯変動モデルの開発MDS-1 065 MeV 電子フラックス
  • 変動パラメータの選択 (1 cycle solar activity)
  • 変動パラメータ- Tavg の定義-
  • 065MeV 電子 L値-Tavg マップ
  • 13MeV 陽子 L値-Tavg マップ
  • 電子観測とMDS-1モデルの比較
  • 放射線帯フラックスピークの変動
  • 陽子観測とモデルの比較
  • 電子(035~078MeV) 1日の変動予測GOSAT軌道
  • 電子(035~078MeV) 変動の信頼度水準(1日)GOSAT軌道
  • MDS-1 model と AE-8 modelとの比較1日
  • 話の流れ
  • 2003年10月 みどり号の全損事故(複合現象)
  • 衛星帯電の基本式
  • 内部帯電
  • パドルでの帯電放電メカニズム
  • スライド番号 40
  • スライド番号 41
  • スライド番号 42
  • データ中継技術衛星DRTS (こだま)の不具合
  • DRTS ESA スパイクノイズと電子フルエンスの比較(赤の丸が異常検知)
  • 不具合が宇宙環境によるものであるか判断する際のポイント
  • 話の流れ
  • 宇宙天気のリスク-宇宙環境によるシステムへの影響 -
  • NASAの報告-GNampCに注目-
  • NASAの報告(続き)
  • 宇宙環境を原因とする不具合の割合-JAXAの場合-
  • 不具合発生部位の割合 
  • Satellite News Digest -静止軌道不具合-
  • 太陽活動と静止軌道衛星不具合例
  • スライド番号 54
  • スライド番号 55
  • スライド番号 56
  • 衛星開発段階における対策
  • 運用における対応
  • 話の流れ
  • スライド番号 60
  • スライド番号 61
  • まとめ(その1)
  • まとめ(その2)
  • 宇宙環境グループは宇宙ステーションと衛星プロジェクトの安全な遂行に貢献しています
  • 補足資料
  • 不具合原因の推移
  • 何故不具合は減らないか
  • 放射線による影響の概要
  • 耐放射線設計手順
  • 各軌道における放射線環境
  • 放射線による部品材料の影響
  • トータルドーズ効果
  • シングルイベント効果
  • シングルイベントメカニズム-陽子と重イオンの違い-
  • エラー発生率の計算
  • 線エネルギー付与(LET)(linear energy transfer)
  • 南大西洋異常(SAA)
  • Single Event Lachup
  • シングルイベントと陽子分布
  • NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)
  • 低軌道での電子フラックスと不具合の発生場所
  • 南大西洋異常(SAA)と極の角
  • スライド番号 83
  • Carrington Flare
  • 放射線対策
  • スライド番号 86
  • スライド番号 87
  • 帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備
  • スライド番号 89
  • 放射線計測装置の原理
Page 39: 宇宙機の設計のための宇宙環境の方針から国産部品開発(42品種)が実施された。 . 半導体電子部品は耐放射線性を加味して、人工衛星(特に

パドルでの帯電放電メカニズム

宇宙環境の影響により 衛星がマイナス電位に帯電

高エネルギー電子等により カバーガラスはプラスに帯電 衛星とカバーガラスに電位差が生じる

電位差が大きくなると トリプルジャンクション近傍 の電界強度が増大していく

トリプルジャンクションで放電が発生する カバーガラスの帯電が緩和される

+ + + + + + + + + + + + + +

+ + + +

カバーガラス

太陽電池セル

基板(衛星構体)

トリプルジャンクション rArr 導体絶縁体宇宙環境の接点

持続放電

Substrate

Satellite Load

insulation sheet

Solar array cell

Cover glass

Arc current

Electrode

持続放電は衛星の電力消失につながる 持続放電のモードは以下の2通りがある

Substrate

Satellite Load

insulation sheet

Solar array cell

Cover glass

Arc current

Electrode

Solar array cell

Cover glass

セル-基板間短絡 セル間短絡

放電によって太陽電池セルと基板が短絡する 短絡によって負荷に電力が供給されなくなる

放電によって太陽電池セルとセルが短絡する 短絡によって負荷に電力が供給されなくなる

サブストーム(高エネルギー電子)との遭遇

+ + + + + + + +

二次電子光電子による絶縁体の帯電(局所帯電)

電位差発生

逆電位勾配

衛星構体が負に帯電(絶対帯電)

電位

時間

サブストーム

衛星構体 VS

乖離電圧 ∆V

カバーガラスVcg

0 プラズマ電位

軌道別帯電放電現象

トリプルジャンクションで 放電発生

放電発生

静止軌道

+ + + + + + + +

逆電位勾配

軌道帯電放電現象

トリプルジャンクションで 放電発生

極軌道 オーロラ電子(高エネルギー電子)との遭遇

プラズマ流入出による絶縁体の帯電(局所帯電)

電位差発生

衛星構体が負に帯電(絶対帯電)

放電発生

電位

時間

オーロラ電子

衛星構体 乖離電圧 ∆V

カバーガラス

0 プラズマ電位

データ中継技術衛星DRTS (こだま)の不具合

2002年10月 9日 静止軌道に打ち上げ

2003年

3月24日 406JST変化率異常モニタ故障検出(FDIR)

が動作しA系からB系に切り替わった

3月25日 410JSTにB系のみ異常検知

4月 3日 327JSTにB系のみ異常検知

5月28日 124JSTにB系のみ異常検知

6月 6日1537JSTにB系のみ異常検知

ESA

DRTS ESA スパイクノイズと 電子フルエンスの比較(赤の丸が異常検知)

larr閾値

この事実を基に静止軌道における内部帯電警報システムを構築 2004年4月より運用開始

不具合が宇宙環境によるものであるか 判断する際のポイント

不具合の発生した時刻に太陽フレアや磁気嵐等の宇宙天気の大きな変動が起きていれば不具合に関係している可能性が高い但し帯電など放射線の積算的効果の伴う現象については発生から1週間位さかのぼり環境がどのように推移してきたかを考慮する必要がある

磁気嵐が起きると静止軌道に急激な粒子の増加現象が起きこれにより衛星帯電が引き起こされたりする(予測に利用可能)

地方時(真夜中や朝方か)や季節(春秋)を考慮する

低軌道衛星においてはSAA外帯のrdquo角ldquo及び極通過時に不具合

が起きやすいので衛星の位置(緯度経度)が重要

事象を把握する上で単発現象か数回起きている現象か周期

(時間同じ軌道等)的に発生している現象か

話の流れ

技術データ取得装置(TEDA)の概要と成果 bull 主な成果 bull 不具合解析例

宇宙天気のリスクと対策 bull 宇宙環境による衛星システムへの影響 bull 宇宙環境を原因とする不具合の割合推移部位 bull 静止軌道不具合 bull 対策

今後必要な観測項目

まとめ

宇宙天気のリスク -宇宙環境によるシステムへの影響 -

プラズマ (IRI)

帯電 (MUSCAT)

衝突 (AUTODY)

抗力 表面劣化

紫外線X線 中性粒子 (MSIS)

放射線粒子 (AE8AP8JPLSHIELDO

SE-2)

メテオロイドデブリ (MASTER2005

ORDEM)

電離損傷 変位損傷

bull電子回路の劣化 bull光部品の劣化

bull太陽電池セルの劣化

SEU (CREME96)

bullデータエラー bull画像ノイズ

bullシステム停止 bull回路損傷

bull熱的電気的光学的特性の劣化

bull構造の劣化 bullコンタミ

電磁パルス bull電源出力低下

bull損傷

bullトルク bull軌道落下

bull構造 損傷 bull減圧

bull電磁パルス

NASAの報告 -GNampCに注目-

1974年から1994年に起きたNASAと空軍の衛星故障の内20~25が宇宙環境に起因していたと報告

1990年から2001年に米国欧州カナダ日本の企業や政府機関が開発した衛星を調べた過去の宇宙ミション損失の大部分はロケットの失敗であったが1998年衛星損失の大部分は軌道上の衛星障害となっている多くの最近の異常は太陽電池アレイ及びバッテリの危険が増加している静止軌道通信衛星の設計寿命はこのサブシステムの故障の危険が増加している

喪失等の大きな誘導制御(GNampC)の不具合に注目 GNampC不具合の内宇宙環境による 不具合は約3と報告されている

軌道上衛星のタイプ別数

NASAの報告(続き)

衛星設計寿命における不具合発生時期 事故率と軌道

軌道別の衛星数 サブシステム不具合

宇宙環境を原因とする不具合の割合 -JAXAの場合-

2002年~2008年に運用された軌道上不具合情報が比較的充実している11衛星(利用衛星7機科学衛星4機)の結果宇宙環境によるも

のは約15過去のデータよりも割合が少ない

合計83件 合計35件

(1)利用衛星 (2)科学衛星

設計検討 不足 48

製造不良 8

軌道上環境 17

偶発故障 6

調査中 13

原因不明 8

設計検討

不足 61

製造不良 4

軌道上環境 11

偶発故障 6

調査中 9

原因不明 9

不具合発生部位の割合

不具合発生部位の割合

Brent Robertson Eric Stoneking ( 1990-2001NASA Goddard Space Flight Center )

Satellite News Digest -静止軌道不具合-

Satellite News Digest (SND) (http wwwsqt-indexcouk) で1997年~2009年の期間に静止軌道で95件の不具合が報告されている その内運用ミスや設計ミスなどを除くと32件(約33)は宇宙環境によるものであった 過去のデータより割合が多い

Choiら1)はこれら不具合の地方時と季節依存性を確認した その結果2100LT~900LTで約72の不具合が発生し900LT~2100LTは9件(約28)であった またこの9件は全て姿勢制御の不具合だった 静止軌道衛星不具合のほとんどは真夜中と朝方で起きており磁気嵐に伴い磁気圏尾部から注入した粒子による表面帯電が不具合の主原因と結論づけている

1) Ho-sung Choi et al Analysis of GEO spacecraft anomalies Space weather relationships Space Weather Vol 9 S06001

太陽活動と静止軌道衛星不具合例

ANIK-E1E2

ANIK-E1

複数の衛星で故障

Galaxy-15

帯電放電不具合 -ANIK-E1amp2Telstar401-

Jan 1994 ANIK-E1 amp E2事故時の環境 - Joe H Allen

1週間

太陽活動下降時期の電子増加

2MeV以上電子

copyNOAA Web

フラックスが3桁急増

Jan 1997 Telstar401事故時の環境

静止軌道の急激な電子増加

太陽極大期太陽フレアによる衛星障害 - 2003年10月~11月-

10486981048698 永久故障 4 10486981048698 安全モード又は運用を一時停止 31 10486981048698 データ内容の「誤り」の増加搭載コンピュータの誤動作 5

httpwwwsat-ndcomfailures等のデータによる 合計 40件

-Barbieri and Mahmot

米国極軌道気象衛星NOAA-17の改良型マイクロ波観測装置AMSU-A1 (Advanced Microwave Sounding Unit)のスキャナーが永久故障 米国気象衛星GOES -8号のX線センサがOFFになり復帰しなくなった

e-birdに深刻な不具合が発生 不具合は20本のトランスポンダ全てに影響

火星周回中の探査機「マーズオデッセイ (Mars Odyssey)」の観測機器放射線観測装置「Martian Radiation Environment Experiment (MARIE)」が太陽活動の影響により10月28日から適切に作動しなくなった データ中継技術衛星(DRTS)「こだま」 太陽捕捉モードに移行

太陽陽子

帯電放電不具合-Galaxy15(局所的的現象)- 2

5 M

eV

65

MeV

11

5 M

eV

GOES 14 ----- GOES 15 ----- GOES 11 -----

Satellite Locations

Galaxy 15 anomaly

2010年4月5日9時48分UTCは磁気嵐及びCMEが発生するなど宇宙環境は非常に荒れていたGalaxy15衛星は真夜中側に位置し宇宙環境の影響を受けやすい

位置にいたことから宇宙環境による不具合である可能性が高いということで原因追及がなされた高エネルギー粒子が引き起こす代表的な衛星不具合現象として3つ(表面帯電内部帯電SEUシングルイベントバーンアウトSEL)の可能性を検討した

チームの報告書によると磁気圏尾部からの熱電子の流入による放電が原因であったと結論付けられたGalaxy15衛星の近くにはGOES-11衛星が位置していたがGOES-11衛星には不具合を発生しておらず本現象は局所的な現象と推測される

衛星開発段階における対策 JAXAの不具合解析の結論

bull 2002年~2008年に運用された11機の衛星不具合を解析 宇宙環境による不具合は偶発故障のみ(全体の約15)確率的には想定範囲内ではあるがその影響を最小限とするためディレーティング運用モード寿命についての研究に取り組む

bull 設計基準試験の充実検証確認の強化技術成熟度(TRL)評価の徹底各々の境界制約条件の明示化等により検証不足抜けの防止有効なピアレビューに結びつける

冗長系(同じハードウェア機能の冗長)柔軟性の設計(ソフトハードの対応)

bull 従来の故障が起きないようにする設計に対してGOSAT(いぶき)では重要部

品を二重化することにより故障する可能性は上がるが故障しても衛星バスの運用や観測が続行できる可能性がより高くなるように設計した

運用における対応

bull 宇宙天気監視ーロケット打ち上げ及び宇宙飛行士支援 数日前に今後の宇宙環境の推移を把握(MXレベルのフレアの発生確率)

bull X線の増加で太陽フレア発生を検知したら高エネルギー粒子の発生をいつまで 気を付ければ良いか判断(発生位置で大凡を推定するが課題は多い) SPEが発生した場合(特に10MeV以上100MeV 以上の陽

子)最大値フラックス値の推定 ピーク値を予測(特に閾値に近くなった時に重要)

bull 衛星運用 bull 太陽フレア磁気嵐警報(X線陽子及びkpが閾値を超えた

時に警報を発信)2003年10月より運用開始 bull 内部帯電警報(2日後の静止軌道上の高エネルギー電子(>1

Me) の増加を予測し 閾値を超えた時に警報を発信) 2004年4月より運用開始

話の流れ

技術データ取得装置(TEDA)の概要と成果 bull 主な成果 bull 不具合解析例

宇宙天気のリスクと対策 bull 宇宙環境による衛星システムへの影響 bull 宇宙環境を原因とする不具合の割合推移部位 bull 静止軌道不具合 bull 対策

今後必要な観測項目

まとめ

計測対象計測項目 計測対象 粒径100μm以上のデブリメテオロイド 計測項目 デブリ粒径衝突頻度

基本原理

厚さ約125μmの絶縁性のポリイミドフィルム表面に 100μm周期で直線状の細長い導線(太さ50μm)パターンを形成導線の破断を電気的に検知することによりデブリの衝突(貫通)を検知する破断した導線の数導線の幅ピッチからデブリサイズを計測する

微小デブリ計測技術の概要

衝突孔の例(衝突試験ISAS) - 衝突粒子 SUS 309 microm - 衝突速度 52 kms

HTV5号機によるセンサ機能のフライト実証

35cm

46cm

FY2013機能実証モデル

検出線幅 50 μm 検出線間隔 100 μm フィルム厚 lt 20 μm 有感領域 30times33cm 検出線総数 3300本

サイズ 50times39times4 cm (筐体を含む)

重量 約15kg(筐体を含む)

消費電力 2W(最大4W)(他センサ含む)

テレメトリ 02 bps

宇宙環境観測装置KASPERの一部としてデブリセンサSDMを搭載 FY2013に製作開始今年8月に打ち上げ予定)

まとめ(その1)

衛星不具合の主な原因は帯電放電シングルイベント放射線損傷である今後デブリ環境が重要になると予測される

静止軌道では商用衛星が多く運用されており宇宙環境の変動把握は重要この領域で運用する衛星が気を付けなければいけない環境として

1太陽フレアに伴う高エネルギー粒子 2太陽活動下降期による静止軌道電子の増加 3磁気嵐に伴う磁気圏尾部から注入する粒子 などがあげられる

まとめ(その2)

不具合軽減の取り組み bull 開発時は宇宙環境条件(トータルフラックス及び最悪条

件)を明確にし設計(冗長系柔軟性の設計ディレーティング及び運用モード寿命について研究)試験の充実検証の充実を図る

bull 運用段階に入ったならば宇宙環境を監視し警報等で故障を防ぐ

予測課題 bull 太陽フレアに伴う高エネルギー粒子発生後フラックス

ピーク値の推定

bull 衛星により不具合の起きる閾値は異なるが閾値をこえる急激な電子フラックスの増加と継続時間の予測

bull 局所的な磁気嵐に伴う磁気圏尾部から注入する粒子

宇宙環境グループは宇宙ステーションと衛星プロジェクトの安全な遂行に貢献しています

ご静聴ありがとうございました

補足資料

不具合原因の推移 bull 宇宙天気を大きく左右する要因の1つとして約11年の太陽活動変化が挙げられる

bull 太陽活動下降時期(太陽変動CME)と極大期(フレアCME)に衛星で不具合が増加するそれにより不具合原因の割合が変わる

-Koons et al The Impact of the Space Environment on Space Systems Aerospace Corp report no TR-99(1670)-1 20 July 1999 -2009 preliminary study (unpublished)

何故不具合は減らないか

bull 部品 放射線に対する感受性が高くなっている bull 微細化が進み同時にフォールトするノードが増え同時にエ

ラーとなる論理ノードやメモリセルが増加する微細化によってメモリセルは小さくなるので記憶容量当たりでみるとエラーの発生率は下がるしかし半導体チップの記憶容量やゲート数が増えるので半導体チップ当たりのエラー発生率は微細化とともに上昇するまた蓄積電荷が小さくなり感受性が高くなってきている

bull システム 大型化大電力化運用長期化 bull 1990年代末以降静止衛星の電力が10kWレベルになったしか

し設計検証技術データ蓄積が遅れている改善されつつあると推測される

放射線による影響の概要

粒子 エネルギー又はLET

代表的な影響

陽子 100keV-1MeV 1-10MeV 10-100MeV gt50MeV

表面損傷 表面材料と太陽電池の損傷 放射線損傷(電離非電離損傷の両方)センサーへのノイズ シングルイベント効果

電子 10-100keV gt100keV gt1MeV

表面帯電 深部帯電現象(deep-dielectric charging)センサーへのノイズ太陽電池の損傷 放射線損傷(電離)

重イオン gt1MeV-cm2mg シングルイベント効果

注エネルギー及びLETは個々の部品等により異なりますあくまでも目安です

耐放射線設計手順

軌道条件

ミッション期間

環境条件設定

トータルドーズの予測

1MeV電子換算被曝算出

NIELの換算

LETフルエンス算出

陽子フルエンス算出

対  策  の  検  討

対  策  の  検  討

対  策  の  検  討

放射線による劣化率予測

劣化率予測 特性予測

耐性データ

放射線による劣化率予測

耐性データ

劣化率予測アレイ出力劣化予測

感受性データ

シングルイベント発生率予測 致命度解析

衛星内質量分布

(2)

部品材料の選定

他の要因による劣化率予測

(2)(2) (3)

回路設計等NO

OK

アレイ構造 セル選定

他の要因による劣化率予測 アレイ設計(2)

(2) (2) (2) (3)

衛星内質量分布 部品選定(2)

(2) (2)(3)

NO

OK

NO

OK

(1) 環境モデルマージを含む(2) 部品レベルの検討(3) アセンブリレベルでの検討(4) 設計マージン環境モデル   マージを含め大丈夫か

トータルドーズ

太陽電池アレイの劣化

シングルイベント効果

回路設計

補足放射線太陽宇宙線銀河宇宙線

NEILを用いたダメージファクターの算出

対  策  の  検  討

放射線による劣化率予測

劣化率予測 特性予測

耐性データ

(2)

部品材料の選定

他の要因による劣化率予測

(2)(2) (3)

回路設計等NO

OK

衛星内質量分布 半導体デバイスの変位損傷

(1)

(4)

(4)

(4)

(4)

各軌道における放射線環境

1E+10

1E+11

1E+12

1E+13

1E+14

1E+15

1E+16

1E+17

1E+18

1E+19

1E+20

001 010 100 1000

捕捉

電子

の積

分フ

ルエ

ンス

[m

2 ]

エネルギー[MeV]

各軌道における電子捕捉積分フルエンス(3年間)

LEO

EOS GEO

MEO

GTO

GEO 軌道傾斜角 0deg 高度36000km GTO 軌道傾斜角 18deg 高度 360km~36000km MEO 軌道傾斜角 51deg 高度 10000km EOS 軌道傾斜角 98deg 高度705km LEO 軌道傾斜角 29deg 高度 600km

1E+12

1E+13

1E+14

1E+15

1E+16

1E+17

1E+18

1E+19

1E+20

01 10 100 1000

捕捉

陽子の

積分フルエン

ス[

m2 ]

エネルギー[MeV]

各軌道における捕捉陽子積分フルエンス(3年間)

MEO

GTO

GEO

EOS LEO

放射線による部品材料の影響

総照射線量 (TIDTotal Ionising Dose )

電離損傷

バイポーラTrの電流増幅率の低下リーク電流の増大

γ線で評価

トータルドーズ効果

変位損傷 (DDDisplacement Damage )または 非イオン化エネルギー損失 (NIELNon-Ionising Energy

Loss )

変位損傷(格子欠陥の生成)

電荷輸送効率の低下 (CCD)太陽電池の効率低下等

電子陽子により評価

シングルイベント効果

1個の荷電粒子の入射により発生する誤動作

ソフト(Latch-Up Burnout) エラー又は ソフト (Upset) エラー

陽子及び重イオンで評価

トータルドーズ効果

+ - + + - + - + - - + + + + -

ゲート酸化膜

電離

格子欠陥

正電荷捕獲

+ 正孔 - 電子

電極

(Silicon oxidenitride)

荷電粒子

反跳原子

ゲート絶縁膜中に電荷が蓄積することによるMOSトランジスタのしきい電圧(MOSトランジスタがオフからオンに変化するゲート電圧)の変化をもたらすただ

し最近の最先端チップはゲート絶縁膜がきわめて薄くなっているこのためゲート絶縁膜よりもフィールド絶縁膜(隣接するトランジスタを電気的に分離する絶縁膜)での電荷蓄積が相対的には大きな問題になってきている」

シングルイベント効果

メモリセルはNチャンネルとPチャンネルMOSFETより構成されメモリ情報は回路ノード12の電位の

高低により記録している空乏層の広がっているPN接合12の領域に

重イオンが入射した場合電荷の発生と空乏層内への少数キャリアの収集が起こるこの収集電荷量が回路の耐量を越えた場合(c)に示すように反転が起こる(ソフトエラー)一方pウエル-N基板接

合の空乏層内に電荷収集量が起こりえる耐性を越えると寄生的に存在するPNPNサイリスタ構造がオ

ンし電源と基板間に大電流が流れる状態が生じる(ラッチアップ)

シングルイベントメカニズム -陽子と重イオンの違い-

エラー発生率の計算

線エネルギー付与(LET) (linear energy transfer)

電離性放射線が物質中を通過する際飛程の単位長さ当りに平均して失うエネルギーをいう各種の放射線のうちX線γ線はLETが小さいので低LETといいα線中性子線その他重イオン核分裂破片のLETは大きいので高LETという MeVμmMeV(gcm2)やMeV(mgcm2)で表される

南大西洋異常(SAA) bull 地球の自転軸と磁気軸のずれ

darr bull 放射線帯が自転軸に対して非

対称

bull 南大西洋上空では放射線帯内帯が低高度に落ちてきているこの領域を南大西洋異常域(SAA South Atlantic Anomaly)と呼ぶ

bull 地球観測衛星ではSAAで放射線帯陽子の影響を受ける

Single Event Lachup

シングルイベントと陽子分布

MOS-1衛星(高度909km軌道傾斜角99度)で発生したシングルイベントと 陽子30MeV以上の等高線マップを重ね合わせた結果

NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)

bull 入射粒子が電離によらず与える損傷非イオン化損失

低軌道での電子フラックスと 不具合の発生場所

南大西洋異常(SAA)と極の角

高度800kmでの電子フラックス図極の角(polar horn)とSAAを示す

太陽粒子線 bull 太陽高エネルギー粒子線(SPE Solar Proton Events)は太陽フレア とコロナガス噴出 (CMECoronal Mass Ejections )により引き起こされる bull フレアのスペクトルは可変であるためあるエネルギー域における最悪状態イベントは必ずしも別のエネルギー域における最悪条件ではない 1972年8月のイベント 10~70MeVの粒子が最も多かった 1989年10のイベント 1972年8月のイベントに比べ低エネルギー領域 高エネルギー領域が明らかに激しかった

フルエンス 105 to 1011 cm-2

変動期間 1日から数日

ldquoBastiliardquo Solar Event 14 July 2000

Carrington Flare

84

(LW Townseed) Carrington Flare(1859年) Carrington Flare による30MeV以上トータルFluenceを118times109cm-2で規格化 ~1989年フレアの約13倍(シングルイベントの評価で使用) ~1991年フレアの約9倍 2012年7月23日にキャリントンイベントとほぼ同等の爆発現象が太陽あるいは太陽の周りで起きていたということがNASAの太陽観測衛星「STEREO」の解析から発表された

放射線対策 bull 放射線シールドを付加し放射線を減衰させる

bull 放射線耐性の強い部品(SOI(Silicon On Insulator)技術による耐放射線部品)材料に変更する

bull 放射線による損傷を吸収するために回路または構造上のマージンを持たせる bull ソフト的なエラーに対しては エラー検出訂正機能や多数決

機能等でソフト的エラーが起きてもシステムが機能するようにしたフォールトトレラント機能を付けて対処する ICのハード的故障に対しては ラッチアップ耐性の強い部品を選定するしかないが 電流制限回路を付ける対策も採られる パワーMOSFETに対しては部品選定 電源電圧を規格値の半分以下に落とす等の対策を採る

SOI技術

表面帯電への対策例

表面の物体間を導線で結線する

太陽電池のカバーガラスを導電性被膜付き(酸化インジウムITO)にする

熱制御材表面にITOを被覆する

熱制御材は高誘電率のテフロンの使用を避け 高伝導度耐環境性に優れたブラックカプトンを使用

イオンエンジンの中和器で能動帯電制御

内部帯電への対策例

アルミで3mm厚さに相当するシールドで囲む(Faraday Cage)

テフロンやカプトンなどの誘電体材料の内部での使用量を最小限に押さえる

回路基板やコンフォーマルコーティングは誘電体なので電流リークパス(1012Ωcmまたは1012Ωcm2

程度)を必ずつける

特にスポット的な放射線シールドの金属材には必ず電流リークパスをつける

帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備

衛星モデル作成

材料物性テーブル設定

宇宙環境パラメータ設定

Converter

転送ディレクトリ 解析データファイル

転送

解析ディレクトリ生成 解析結果 進行状況チェック ファイル操作

MUSCAT 解析エンジン

解析結果 表示

パラメトリックラン

オプション 解析

大型パネル実験(35mtimes11m) クーポンパネル実験(26cmtimes16cm)

環境模擬試験 環境模擬試験

MUSCATに使用する物性値設計標準制定のための知見などを得ることを目的に軌道上の宇宙環境を模擬した地上試験を行っている これらの試験では放電の発生頻度や電圧閾値放電発生による太陽電池パネルや搭載機器への影響を検証している

放射線計測装置の原理

bull その粒子が物質を通過する際のエネルギー損出率が粒子の電荷(原子番号)Zの二乗に比例すること(Bethe-Blochの式)を利用する

S2

E

ΔE Ersquo

S1 S3

  • 宇宙機の設計のための宇宙環境
  • 話の流れ
  • 話の流れ
  • TEDA(技術データ取得装置)(国産部品の宇宙環境での実証の必要性)
  • ETS-VTEDA(技術データ取得装置)誕生前の部品の宇宙実証の背景
  • スライド番号 6
  • スライド番号 7
  • スライド番号 8
  • スライド番号 9
  • 図6太陽黒点数と静止軌道電子 (>04MeV ) Flux の変動 (ETS-V搭載DOMによる観測)
  • スライド番号 11
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの開発(理研東大と共同で宇宙環境計測の充実)
  • ETS-VI(きく6号)打ち上がったがGEOに行かずGTOに留まる
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの成果
  • スライド番号 15
  • スライド番号 16
  • スライド番号 17
  • ADEOS搭載TEDA(世界2番目の異常宇宙線ACR)
  • BBND (ボナー球中性子検出器)
  • スライド番号 20
  • ISS搭載BBNDの成果(約8か月)
  • スライド番号 22
  • MDS-1搭載放射線吸収線量モニタ(SDOM)
  • 放射線帯変動モデルの開発MDS-1 065 MeV 電子フラックス
  • 変動パラメータの選択 (1 cycle solar activity)
  • 変動パラメータ- Tavg の定義-
  • 065MeV 電子 L値-Tavg マップ
  • 13MeV 陽子 L値-Tavg マップ
  • 電子観測とMDS-1モデルの比較
  • 放射線帯フラックスピークの変動
  • 陽子観測とモデルの比較
  • 電子(035~078MeV) 1日の変動予測GOSAT軌道
  • 電子(035~078MeV) 変動の信頼度水準(1日)GOSAT軌道
  • MDS-1 model と AE-8 modelとの比較1日
  • 話の流れ
  • 2003年10月 みどり号の全損事故(複合現象)
  • 衛星帯電の基本式
  • 内部帯電
  • パドルでの帯電放電メカニズム
  • スライド番号 40
  • スライド番号 41
  • スライド番号 42
  • データ中継技術衛星DRTS (こだま)の不具合
  • DRTS ESA スパイクノイズと電子フルエンスの比較(赤の丸が異常検知)
  • 不具合が宇宙環境によるものであるか判断する際のポイント
  • 話の流れ
  • 宇宙天気のリスク-宇宙環境によるシステムへの影響 -
  • NASAの報告-GNampCに注目-
  • NASAの報告(続き)
  • 宇宙環境を原因とする不具合の割合-JAXAの場合-
  • 不具合発生部位の割合 
  • Satellite News Digest -静止軌道不具合-
  • 太陽活動と静止軌道衛星不具合例
  • スライド番号 54
  • スライド番号 55
  • スライド番号 56
  • 衛星開発段階における対策
  • 運用における対応
  • 話の流れ
  • スライド番号 60
  • スライド番号 61
  • まとめ(その1)
  • まとめ(その2)
  • 宇宙環境グループは宇宙ステーションと衛星プロジェクトの安全な遂行に貢献しています
  • 補足資料
  • 不具合原因の推移
  • 何故不具合は減らないか
  • 放射線による影響の概要
  • 耐放射線設計手順
  • 各軌道における放射線環境
  • 放射線による部品材料の影響
  • トータルドーズ効果
  • シングルイベント効果
  • シングルイベントメカニズム-陽子と重イオンの違い-
  • エラー発生率の計算
  • 線エネルギー付与(LET)(linear energy transfer)
  • 南大西洋異常(SAA)
  • Single Event Lachup
  • シングルイベントと陽子分布
  • NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)
  • 低軌道での電子フラックスと不具合の発生場所
  • 南大西洋異常(SAA)と極の角
  • スライド番号 83
  • Carrington Flare
  • 放射線対策
  • スライド番号 86
  • スライド番号 87
  • 帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備
  • スライド番号 89
  • 放射線計測装置の原理
Page 40: 宇宙機の設計のための宇宙環境の方針から国産部品開発(42品種)が実施された。 . 半導体電子部品は耐放射線性を加味して、人工衛星(特に

持続放電

Substrate

Satellite Load

insulation sheet

Solar array cell

Cover glass

Arc current

Electrode

持続放電は衛星の電力消失につながる 持続放電のモードは以下の2通りがある

Substrate

Satellite Load

insulation sheet

Solar array cell

Cover glass

Arc current

Electrode

Solar array cell

Cover glass

セル-基板間短絡 セル間短絡

放電によって太陽電池セルと基板が短絡する 短絡によって負荷に電力が供給されなくなる

放電によって太陽電池セルとセルが短絡する 短絡によって負荷に電力が供給されなくなる

サブストーム(高エネルギー電子)との遭遇

+ + + + + + + +

二次電子光電子による絶縁体の帯電(局所帯電)

電位差発生

逆電位勾配

衛星構体が負に帯電(絶対帯電)

電位

時間

サブストーム

衛星構体 VS

乖離電圧 ∆V

カバーガラスVcg

0 プラズマ電位

軌道別帯電放電現象

トリプルジャンクションで 放電発生

放電発生

静止軌道

+ + + + + + + +

逆電位勾配

軌道帯電放電現象

トリプルジャンクションで 放電発生

極軌道 オーロラ電子(高エネルギー電子)との遭遇

プラズマ流入出による絶縁体の帯電(局所帯電)

電位差発生

衛星構体が負に帯電(絶対帯電)

放電発生

電位

時間

オーロラ電子

衛星構体 乖離電圧 ∆V

カバーガラス

0 プラズマ電位

データ中継技術衛星DRTS (こだま)の不具合

2002年10月 9日 静止軌道に打ち上げ

2003年

3月24日 406JST変化率異常モニタ故障検出(FDIR)

が動作しA系からB系に切り替わった

3月25日 410JSTにB系のみ異常検知

4月 3日 327JSTにB系のみ異常検知

5月28日 124JSTにB系のみ異常検知

6月 6日1537JSTにB系のみ異常検知

ESA

DRTS ESA スパイクノイズと 電子フルエンスの比較(赤の丸が異常検知)

larr閾値

この事実を基に静止軌道における内部帯電警報システムを構築 2004年4月より運用開始

不具合が宇宙環境によるものであるか 判断する際のポイント

不具合の発生した時刻に太陽フレアや磁気嵐等の宇宙天気の大きな変動が起きていれば不具合に関係している可能性が高い但し帯電など放射線の積算的効果の伴う現象については発生から1週間位さかのぼり環境がどのように推移してきたかを考慮する必要がある

磁気嵐が起きると静止軌道に急激な粒子の増加現象が起きこれにより衛星帯電が引き起こされたりする(予測に利用可能)

地方時(真夜中や朝方か)や季節(春秋)を考慮する

低軌道衛星においてはSAA外帯のrdquo角ldquo及び極通過時に不具合

が起きやすいので衛星の位置(緯度経度)が重要

事象を把握する上で単発現象か数回起きている現象か周期

(時間同じ軌道等)的に発生している現象か

話の流れ

技術データ取得装置(TEDA)の概要と成果 bull 主な成果 bull 不具合解析例

宇宙天気のリスクと対策 bull 宇宙環境による衛星システムへの影響 bull 宇宙環境を原因とする不具合の割合推移部位 bull 静止軌道不具合 bull 対策

今後必要な観測項目

まとめ

宇宙天気のリスク -宇宙環境によるシステムへの影響 -

プラズマ (IRI)

帯電 (MUSCAT)

衝突 (AUTODY)

抗力 表面劣化

紫外線X線 中性粒子 (MSIS)

放射線粒子 (AE8AP8JPLSHIELDO

SE-2)

メテオロイドデブリ (MASTER2005

ORDEM)

電離損傷 変位損傷

bull電子回路の劣化 bull光部品の劣化

bull太陽電池セルの劣化

SEU (CREME96)

bullデータエラー bull画像ノイズ

bullシステム停止 bull回路損傷

bull熱的電気的光学的特性の劣化

bull構造の劣化 bullコンタミ

電磁パルス bull電源出力低下

bull損傷

bullトルク bull軌道落下

bull構造 損傷 bull減圧

bull電磁パルス

NASAの報告 -GNampCに注目-

1974年から1994年に起きたNASAと空軍の衛星故障の内20~25が宇宙環境に起因していたと報告

1990年から2001年に米国欧州カナダ日本の企業や政府機関が開発した衛星を調べた過去の宇宙ミション損失の大部分はロケットの失敗であったが1998年衛星損失の大部分は軌道上の衛星障害となっている多くの最近の異常は太陽電池アレイ及びバッテリの危険が増加している静止軌道通信衛星の設計寿命はこのサブシステムの故障の危険が増加している

喪失等の大きな誘導制御(GNampC)の不具合に注目 GNampC不具合の内宇宙環境による 不具合は約3と報告されている

軌道上衛星のタイプ別数

NASAの報告(続き)

衛星設計寿命における不具合発生時期 事故率と軌道

軌道別の衛星数 サブシステム不具合

宇宙環境を原因とする不具合の割合 -JAXAの場合-

2002年~2008年に運用された軌道上不具合情報が比較的充実している11衛星(利用衛星7機科学衛星4機)の結果宇宙環境によるも

のは約15過去のデータよりも割合が少ない

合計83件 合計35件

(1)利用衛星 (2)科学衛星

設計検討 不足 48

製造不良 8

軌道上環境 17

偶発故障 6

調査中 13

原因不明 8

設計検討

不足 61

製造不良 4

軌道上環境 11

偶発故障 6

調査中 9

原因不明 9

不具合発生部位の割合

不具合発生部位の割合

Brent Robertson Eric Stoneking ( 1990-2001NASA Goddard Space Flight Center )

Satellite News Digest -静止軌道不具合-

Satellite News Digest (SND) (http wwwsqt-indexcouk) で1997年~2009年の期間に静止軌道で95件の不具合が報告されている その内運用ミスや設計ミスなどを除くと32件(約33)は宇宙環境によるものであった 過去のデータより割合が多い

Choiら1)はこれら不具合の地方時と季節依存性を確認した その結果2100LT~900LTで約72の不具合が発生し900LT~2100LTは9件(約28)であった またこの9件は全て姿勢制御の不具合だった 静止軌道衛星不具合のほとんどは真夜中と朝方で起きており磁気嵐に伴い磁気圏尾部から注入した粒子による表面帯電が不具合の主原因と結論づけている

1) Ho-sung Choi et al Analysis of GEO spacecraft anomalies Space weather relationships Space Weather Vol 9 S06001

太陽活動と静止軌道衛星不具合例

ANIK-E1E2

ANIK-E1

複数の衛星で故障

Galaxy-15

帯電放電不具合 -ANIK-E1amp2Telstar401-

Jan 1994 ANIK-E1 amp E2事故時の環境 - Joe H Allen

1週間

太陽活動下降時期の電子増加

2MeV以上電子

copyNOAA Web

フラックスが3桁急増

Jan 1997 Telstar401事故時の環境

静止軌道の急激な電子増加

太陽極大期太陽フレアによる衛星障害 - 2003年10月~11月-

10486981048698 永久故障 4 10486981048698 安全モード又は運用を一時停止 31 10486981048698 データ内容の「誤り」の増加搭載コンピュータの誤動作 5

httpwwwsat-ndcomfailures等のデータによる 合計 40件

-Barbieri and Mahmot

米国極軌道気象衛星NOAA-17の改良型マイクロ波観測装置AMSU-A1 (Advanced Microwave Sounding Unit)のスキャナーが永久故障 米国気象衛星GOES -8号のX線センサがOFFになり復帰しなくなった

e-birdに深刻な不具合が発生 不具合は20本のトランスポンダ全てに影響

火星周回中の探査機「マーズオデッセイ (Mars Odyssey)」の観測機器放射線観測装置「Martian Radiation Environment Experiment (MARIE)」が太陽活動の影響により10月28日から適切に作動しなくなった データ中継技術衛星(DRTS)「こだま」 太陽捕捉モードに移行

太陽陽子

帯電放電不具合-Galaxy15(局所的的現象)- 2

5 M

eV

65

MeV

11

5 M

eV

GOES 14 ----- GOES 15 ----- GOES 11 -----

Satellite Locations

Galaxy 15 anomaly

2010年4月5日9時48分UTCは磁気嵐及びCMEが発生するなど宇宙環境は非常に荒れていたGalaxy15衛星は真夜中側に位置し宇宙環境の影響を受けやすい

位置にいたことから宇宙環境による不具合である可能性が高いということで原因追及がなされた高エネルギー粒子が引き起こす代表的な衛星不具合現象として3つ(表面帯電内部帯電SEUシングルイベントバーンアウトSEL)の可能性を検討した

チームの報告書によると磁気圏尾部からの熱電子の流入による放電が原因であったと結論付けられたGalaxy15衛星の近くにはGOES-11衛星が位置していたがGOES-11衛星には不具合を発生しておらず本現象は局所的な現象と推測される

衛星開発段階における対策 JAXAの不具合解析の結論

bull 2002年~2008年に運用された11機の衛星不具合を解析 宇宙環境による不具合は偶発故障のみ(全体の約15)確率的には想定範囲内ではあるがその影響を最小限とするためディレーティング運用モード寿命についての研究に取り組む

bull 設計基準試験の充実検証確認の強化技術成熟度(TRL)評価の徹底各々の境界制約条件の明示化等により検証不足抜けの防止有効なピアレビューに結びつける

冗長系(同じハードウェア機能の冗長)柔軟性の設計(ソフトハードの対応)

bull 従来の故障が起きないようにする設計に対してGOSAT(いぶき)では重要部

品を二重化することにより故障する可能性は上がるが故障しても衛星バスの運用や観測が続行できる可能性がより高くなるように設計した

運用における対応

bull 宇宙天気監視ーロケット打ち上げ及び宇宙飛行士支援 数日前に今後の宇宙環境の推移を把握(MXレベルのフレアの発生確率)

bull X線の増加で太陽フレア発生を検知したら高エネルギー粒子の発生をいつまで 気を付ければ良いか判断(発生位置で大凡を推定するが課題は多い) SPEが発生した場合(特に10MeV以上100MeV 以上の陽

子)最大値フラックス値の推定 ピーク値を予測(特に閾値に近くなった時に重要)

bull 衛星運用 bull 太陽フレア磁気嵐警報(X線陽子及びkpが閾値を超えた

時に警報を発信)2003年10月より運用開始 bull 内部帯電警報(2日後の静止軌道上の高エネルギー電子(>1

Me) の増加を予測し 閾値を超えた時に警報を発信) 2004年4月より運用開始

話の流れ

技術データ取得装置(TEDA)の概要と成果 bull 主な成果 bull 不具合解析例

宇宙天気のリスクと対策 bull 宇宙環境による衛星システムへの影響 bull 宇宙環境を原因とする不具合の割合推移部位 bull 静止軌道不具合 bull 対策

今後必要な観測項目

まとめ

計測対象計測項目 計測対象 粒径100μm以上のデブリメテオロイド 計測項目 デブリ粒径衝突頻度

基本原理

厚さ約125μmの絶縁性のポリイミドフィルム表面に 100μm周期で直線状の細長い導線(太さ50μm)パターンを形成導線の破断を電気的に検知することによりデブリの衝突(貫通)を検知する破断した導線の数導線の幅ピッチからデブリサイズを計測する

微小デブリ計測技術の概要

衝突孔の例(衝突試験ISAS) - 衝突粒子 SUS 309 microm - 衝突速度 52 kms

HTV5号機によるセンサ機能のフライト実証

35cm

46cm

FY2013機能実証モデル

検出線幅 50 μm 検出線間隔 100 μm フィルム厚 lt 20 μm 有感領域 30times33cm 検出線総数 3300本

サイズ 50times39times4 cm (筐体を含む)

重量 約15kg(筐体を含む)

消費電力 2W(最大4W)(他センサ含む)

テレメトリ 02 bps

宇宙環境観測装置KASPERの一部としてデブリセンサSDMを搭載 FY2013に製作開始今年8月に打ち上げ予定)

まとめ(その1)

衛星不具合の主な原因は帯電放電シングルイベント放射線損傷である今後デブリ環境が重要になると予測される

静止軌道では商用衛星が多く運用されており宇宙環境の変動把握は重要この領域で運用する衛星が気を付けなければいけない環境として

1太陽フレアに伴う高エネルギー粒子 2太陽活動下降期による静止軌道電子の増加 3磁気嵐に伴う磁気圏尾部から注入する粒子 などがあげられる

まとめ(その2)

不具合軽減の取り組み bull 開発時は宇宙環境条件(トータルフラックス及び最悪条

件)を明確にし設計(冗長系柔軟性の設計ディレーティング及び運用モード寿命について研究)試験の充実検証の充実を図る

bull 運用段階に入ったならば宇宙環境を監視し警報等で故障を防ぐ

予測課題 bull 太陽フレアに伴う高エネルギー粒子発生後フラックス

ピーク値の推定

bull 衛星により不具合の起きる閾値は異なるが閾値をこえる急激な電子フラックスの増加と継続時間の予測

bull 局所的な磁気嵐に伴う磁気圏尾部から注入する粒子

宇宙環境グループは宇宙ステーションと衛星プロジェクトの安全な遂行に貢献しています

ご静聴ありがとうございました

補足資料

不具合原因の推移 bull 宇宙天気を大きく左右する要因の1つとして約11年の太陽活動変化が挙げられる

bull 太陽活動下降時期(太陽変動CME)と極大期(フレアCME)に衛星で不具合が増加するそれにより不具合原因の割合が変わる

-Koons et al The Impact of the Space Environment on Space Systems Aerospace Corp report no TR-99(1670)-1 20 July 1999 -2009 preliminary study (unpublished)

何故不具合は減らないか

bull 部品 放射線に対する感受性が高くなっている bull 微細化が進み同時にフォールトするノードが増え同時にエ

ラーとなる論理ノードやメモリセルが増加する微細化によってメモリセルは小さくなるので記憶容量当たりでみるとエラーの発生率は下がるしかし半導体チップの記憶容量やゲート数が増えるので半導体チップ当たりのエラー発生率は微細化とともに上昇するまた蓄積電荷が小さくなり感受性が高くなってきている

bull システム 大型化大電力化運用長期化 bull 1990年代末以降静止衛星の電力が10kWレベルになったしか

し設計検証技術データ蓄積が遅れている改善されつつあると推測される

放射線による影響の概要

粒子 エネルギー又はLET

代表的な影響

陽子 100keV-1MeV 1-10MeV 10-100MeV gt50MeV

表面損傷 表面材料と太陽電池の損傷 放射線損傷(電離非電離損傷の両方)センサーへのノイズ シングルイベント効果

電子 10-100keV gt100keV gt1MeV

表面帯電 深部帯電現象(deep-dielectric charging)センサーへのノイズ太陽電池の損傷 放射線損傷(電離)

重イオン gt1MeV-cm2mg シングルイベント効果

注エネルギー及びLETは個々の部品等により異なりますあくまでも目安です

耐放射線設計手順

軌道条件

ミッション期間

環境条件設定

トータルドーズの予測

1MeV電子換算被曝算出

NIELの換算

LETフルエンス算出

陽子フルエンス算出

対  策  の  検  討

対  策  の  検  討

対  策  の  検  討

放射線による劣化率予測

劣化率予測 特性予測

耐性データ

放射線による劣化率予測

耐性データ

劣化率予測アレイ出力劣化予測

感受性データ

シングルイベント発生率予測 致命度解析

衛星内質量分布

(2)

部品材料の選定

他の要因による劣化率予測

(2)(2) (3)

回路設計等NO

OK

アレイ構造 セル選定

他の要因による劣化率予測 アレイ設計(2)

(2) (2) (2) (3)

衛星内質量分布 部品選定(2)

(2) (2)(3)

NO

OK

NO

OK

(1) 環境モデルマージを含む(2) 部品レベルの検討(3) アセンブリレベルでの検討(4) 設計マージン環境モデル   マージを含め大丈夫か

トータルドーズ

太陽電池アレイの劣化

シングルイベント効果

回路設計

補足放射線太陽宇宙線銀河宇宙線

NEILを用いたダメージファクターの算出

対  策  の  検  討

放射線による劣化率予測

劣化率予測 特性予測

耐性データ

(2)

部品材料の選定

他の要因による劣化率予測

(2)(2) (3)

回路設計等NO

OK

衛星内質量分布 半導体デバイスの変位損傷

(1)

(4)

(4)

(4)

(4)

各軌道における放射線環境

1E+10

1E+11

1E+12

1E+13

1E+14

1E+15

1E+16

1E+17

1E+18

1E+19

1E+20

001 010 100 1000

捕捉

電子

の積

分フ

ルエ

ンス

[m

2 ]

エネルギー[MeV]

各軌道における電子捕捉積分フルエンス(3年間)

LEO

EOS GEO

MEO

GTO

GEO 軌道傾斜角 0deg 高度36000km GTO 軌道傾斜角 18deg 高度 360km~36000km MEO 軌道傾斜角 51deg 高度 10000km EOS 軌道傾斜角 98deg 高度705km LEO 軌道傾斜角 29deg 高度 600km

1E+12

1E+13

1E+14

1E+15

1E+16

1E+17

1E+18

1E+19

1E+20

01 10 100 1000

捕捉

陽子の

積分フルエン

ス[

m2 ]

エネルギー[MeV]

各軌道における捕捉陽子積分フルエンス(3年間)

MEO

GTO

GEO

EOS LEO

放射線による部品材料の影響

総照射線量 (TIDTotal Ionising Dose )

電離損傷

バイポーラTrの電流増幅率の低下リーク電流の増大

γ線で評価

トータルドーズ効果

変位損傷 (DDDisplacement Damage )または 非イオン化エネルギー損失 (NIELNon-Ionising Energy

Loss )

変位損傷(格子欠陥の生成)

電荷輸送効率の低下 (CCD)太陽電池の効率低下等

電子陽子により評価

シングルイベント効果

1個の荷電粒子の入射により発生する誤動作

ソフト(Latch-Up Burnout) エラー又は ソフト (Upset) エラー

陽子及び重イオンで評価

トータルドーズ効果

+ - + + - + - + - - + + + + -

ゲート酸化膜

電離

格子欠陥

正電荷捕獲

+ 正孔 - 電子

電極

(Silicon oxidenitride)

荷電粒子

反跳原子

ゲート絶縁膜中に電荷が蓄積することによるMOSトランジスタのしきい電圧(MOSトランジスタがオフからオンに変化するゲート電圧)の変化をもたらすただ

し最近の最先端チップはゲート絶縁膜がきわめて薄くなっているこのためゲート絶縁膜よりもフィールド絶縁膜(隣接するトランジスタを電気的に分離する絶縁膜)での電荷蓄積が相対的には大きな問題になってきている」

シングルイベント効果

メモリセルはNチャンネルとPチャンネルMOSFETより構成されメモリ情報は回路ノード12の電位の

高低により記録している空乏層の広がっているPN接合12の領域に

重イオンが入射した場合電荷の発生と空乏層内への少数キャリアの収集が起こるこの収集電荷量が回路の耐量を越えた場合(c)に示すように反転が起こる(ソフトエラー)一方pウエル-N基板接

合の空乏層内に電荷収集量が起こりえる耐性を越えると寄生的に存在するPNPNサイリスタ構造がオ

ンし電源と基板間に大電流が流れる状態が生じる(ラッチアップ)

シングルイベントメカニズム -陽子と重イオンの違い-

エラー発生率の計算

線エネルギー付与(LET) (linear energy transfer)

電離性放射線が物質中を通過する際飛程の単位長さ当りに平均して失うエネルギーをいう各種の放射線のうちX線γ線はLETが小さいので低LETといいα線中性子線その他重イオン核分裂破片のLETは大きいので高LETという MeVμmMeV(gcm2)やMeV(mgcm2)で表される

南大西洋異常(SAA) bull 地球の自転軸と磁気軸のずれ

darr bull 放射線帯が自転軸に対して非

対称

bull 南大西洋上空では放射線帯内帯が低高度に落ちてきているこの領域を南大西洋異常域(SAA South Atlantic Anomaly)と呼ぶ

bull 地球観測衛星ではSAAで放射線帯陽子の影響を受ける

Single Event Lachup

シングルイベントと陽子分布

MOS-1衛星(高度909km軌道傾斜角99度)で発生したシングルイベントと 陽子30MeV以上の等高線マップを重ね合わせた結果

NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)

bull 入射粒子が電離によらず与える損傷非イオン化損失

低軌道での電子フラックスと 不具合の発生場所

南大西洋異常(SAA)と極の角

高度800kmでの電子フラックス図極の角(polar horn)とSAAを示す

太陽粒子線 bull 太陽高エネルギー粒子線(SPE Solar Proton Events)は太陽フレア とコロナガス噴出 (CMECoronal Mass Ejections )により引き起こされる bull フレアのスペクトルは可変であるためあるエネルギー域における最悪状態イベントは必ずしも別のエネルギー域における最悪条件ではない 1972年8月のイベント 10~70MeVの粒子が最も多かった 1989年10のイベント 1972年8月のイベントに比べ低エネルギー領域 高エネルギー領域が明らかに激しかった

フルエンス 105 to 1011 cm-2

変動期間 1日から数日

ldquoBastiliardquo Solar Event 14 July 2000

Carrington Flare

84

(LW Townseed) Carrington Flare(1859年) Carrington Flare による30MeV以上トータルFluenceを118times109cm-2で規格化 ~1989年フレアの約13倍(シングルイベントの評価で使用) ~1991年フレアの約9倍 2012年7月23日にキャリントンイベントとほぼ同等の爆発現象が太陽あるいは太陽の周りで起きていたということがNASAの太陽観測衛星「STEREO」の解析から発表された

放射線対策 bull 放射線シールドを付加し放射線を減衰させる

bull 放射線耐性の強い部品(SOI(Silicon On Insulator)技術による耐放射線部品)材料に変更する

bull 放射線による損傷を吸収するために回路または構造上のマージンを持たせる bull ソフト的なエラーに対しては エラー検出訂正機能や多数決

機能等でソフト的エラーが起きてもシステムが機能するようにしたフォールトトレラント機能を付けて対処する ICのハード的故障に対しては ラッチアップ耐性の強い部品を選定するしかないが 電流制限回路を付ける対策も採られる パワーMOSFETに対しては部品選定 電源電圧を規格値の半分以下に落とす等の対策を採る

SOI技術

表面帯電への対策例

表面の物体間を導線で結線する

太陽電池のカバーガラスを導電性被膜付き(酸化インジウムITO)にする

熱制御材表面にITOを被覆する

熱制御材は高誘電率のテフロンの使用を避け 高伝導度耐環境性に優れたブラックカプトンを使用

イオンエンジンの中和器で能動帯電制御

内部帯電への対策例

アルミで3mm厚さに相当するシールドで囲む(Faraday Cage)

テフロンやカプトンなどの誘電体材料の内部での使用量を最小限に押さえる

回路基板やコンフォーマルコーティングは誘電体なので電流リークパス(1012Ωcmまたは1012Ωcm2

程度)を必ずつける

特にスポット的な放射線シールドの金属材には必ず電流リークパスをつける

帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備

衛星モデル作成

材料物性テーブル設定

宇宙環境パラメータ設定

Converter

転送ディレクトリ 解析データファイル

転送

解析ディレクトリ生成 解析結果 進行状況チェック ファイル操作

MUSCAT 解析エンジン

解析結果 表示

パラメトリックラン

オプション 解析

大型パネル実験(35mtimes11m) クーポンパネル実験(26cmtimes16cm)

環境模擬試験 環境模擬試験

MUSCATに使用する物性値設計標準制定のための知見などを得ることを目的に軌道上の宇宙環境を模擬した地上試験を行っている これらの試験では放電の発生頻度や電圧閾値放電発生による太陽電池パネルや搭載機器への影響を検証している

放射線計測装置の原理

bull その粒子が物質を通過する際のエネルギー損出率が粒子の電荷(原子番号)Zの二乗に比例すること(Bethe-Blochの式)を利用する

S2

E

ΔE Ersquo

S1 S3

  • 宇宙機の設計のための宇宙環境
  • 話の流れ
  • 話の流れ
  • TEDA(技術データ取得装置)(国産部品の宇宙環境での実証の必要性)
  • ETS-VTEDA(技術データ取得装置)誕生前の部品の宇宙実証の背景
  • スライド番号 6
  • スライド番号 7
  • スライド番号 8
  • スライド番号 9
  • 図6太陽黒点数と静止軌道電子 (>04MeV ) Flux の変動 (ETS-V搭載DOMによる観測)
  • スライド番号 11
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの開発(理研東大と共同で宇宙環境計測の充実)
  • ETS-VI(きく6号)打ち上がったがGEOに行かずGTOに留まる
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの成果
  • スライド番号 15
  • スライド番号 16
  • スライド番号 17
  • ADEOS搭載TEDA(世界2番目の異常宇宙線ACR)
  • BBND (ボナー球中性子検出器)
  • スライド番号 20
  • ISS搭載BBNDの成果(約8か月)
  • スライド番号 22
  • MDS-1搭載放射線吸収線量モニタ(SDOM)
  • 放射線帯変動モデルの開発MDS-1 065 MeV 電子フラックス
  • 変動パラメータの選択 (1 cycle solar activity)
  • 変動パラメータ- Tavg の定義-
  • 065MeV 電子 L値-Tavg マップ
  • 13MeV 陽子 L値-Tavg マップ
  • 電子観測とMDS-1モデルの比較
  • 放射線帯フラックスピークの変動
  • 陽子観測とモデルの比較
  • 電子(035~078MeV) 1日の変動予測GOSAT軌道
  • 電子(035~078MeV) 変動の信頼度水準(1日)GOSAT軌道
  • MDS-1 model と AE-8 modelとの比較1日
  • 話の流れ
  • 2003年10月 みどり号の全損事故(複合現象)
  • 衛星帯電の基本式
  • 内部帯電
  • パドルでの帯電放電メカニズム
  • スライド番号 40
  • スライド番号 41
  • スライド番号 42
  • データ中継技術衛星DRTS (こだま)の不具合
  • DRTS ESA スパイクノイズと電子フルエンスの比較(赤の丸が異常検知)
  • 不具合が宇宙環境によるものであるか判断する際のポイント
  • 話の流れ
  • 宇宙天気のリスク-宇宙環境によるシステムへの影響 -
  • NASAの報告-GNampCに注目-
  • NASAの報告(続き)
  • 宇宙環境を原因とする不具合の割合-JAXAの場合-
  • 不具合発生部位の割合 
  • Satellite News Digest -静止軌道不具合-
  • 太陽活動と静止軌道衛星不具合例
  • スライド番号 54
  • スライド番号 55
  • スライド番号 56
  • 衛星開発段階における対策
  • 運用における対応
  • 話の流れ
  • スライド番号 60
  • スライド番号 61
  • まとめ(その1)
  • まとめ(その2)
  • 宇宙環境グループは宇宙ステーションと衛星プロジェクトの安全な遂行に貢献しています
  • 補足資料
  • 不具合原因の推移
  • 何故不具合は減らないか
  • 放射線による影響の概要
  • 耐放射線設計手順
  • 各軌道における放射線環境
  • 放射線による部品材料の影響
  • トータルドーズ効果
  • シングルイベント効果
  • シングルイベントメカニズム-陽子と重イオンの違い-
  • エラー発生率の計算
  • 線エネルギー付与(LET)(linear energy transfer)
  • 南大西洋異常(SAA)
  • Single Event Lachup
  • シングルイベントと陽子分布
  • NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)
  • 低軌道での電子フラックスと不具合の発生場所
  • 南大西洋異常(SAA)と極の角
  • スライド番号 83
  • Carrington Flare
  • 放射線対策
  • スライド番号 86
  • スライド番号 87
  • 帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備
  • スライド番号 89
  • 放射線計測装置の原理
Page 41: 宇宙機の設計のための宇宙環境の方針から国産部品開発(42品種)が実施された。 . 半導体電子部品は耐放射線性を加味して、人工衛星(特に

サブストーム(高エネルギー電子)との遭遇

+ + + + + + + +

二次電子光電子による絶縁体の帯電(局所帯電)

電位差発生

逆電位勾配

衛星構体が負に帯電(絶対帯電)

電位

時間

サブストーム

衛星構体 VS

乖離電圧 ∆V

カバーガラスVcg

0 プラズマ電位

軌道別帯電放電現象

トリプルジャンクションで 放電発生

放電発生

静止軌道

+ + + + + + + +

逆電位勾配

軌道帯電放電現象

トリプルジャンクションで 放電発生

極軌道 オーロラ電子(高エネルギー電子)との遭遇

プラズマ流入出による絶縁体の帯電(局所帯電)

電位差発生

衛星構体が負に帯電(絶対帯電)

放電発生

電位

時間

オーロラ電子

衛星構体 乖離電圧 ∆V

カバーガラス

0 プラズマ電位

データ中継技術衛星DRTS (こだま)の不具合

2002年10月 9日 静止軌道に打ち上げ

2003年

3月24日 406JST変化率異常モニタ故障検出(FDIR)

が動作しA系からB系に切り替わった

3月25日 410JSTにB系のみ異常検知

4月 3日 327JSTにB系のみ異常検知

5月28日 124JSTにB系のみ異常検知

6月 6日1537JSTにB系のみ異常検知

ESA

DRTS ESA スパイクノイズと 電子フルエンスの比較(赤の丸が異常検知)

larr閾値

この事実を基に静止軌道における内部帯電警報システムを構築 2004年4月より運用開始

不具合が宇宙環境によるものであるか 判断する際のポイント

不具合の発生した時刻に太陽フレアや磁気嵐等の宇宙天気の大きな変動が起きていれば不具合に関係している可能性が高い但し帯電など放射線の積算的効果の伴う現象については発生から1週間位さかのぼり環境がどのように推移してきたかを考慮する必要がある

磁気嵐が起きると静止軌道に急激な粒子の増加現象が起きこれにより衛星帯電が引き起こされたりする(予測に利用可能)

地方時(真夜中や朝方か)や季節(春秋)を考慮する

低軌道衛星においてはSAA外帯のrdquo角ldquo及び極通過時に不具合

が起きやすいので衛星の位置(緯度経度)が重要

事象を把握する上で単発現象か数回起きている現象か周期

(時間同じ軌道等)的に発生している現象か

話の流れ

技術データ取得装置(TEDA)の概要と成果 bull 主な成果 bull 不具合解析例

宇宙天気のリスクと対策 bull 宇宙環境による衛星システムへの影響 bull 宇宙環境を原因とする不具合の割合推移部位 bull 静止軌道不具合 bull 対策

今後必要な観測項目

まとめ

宇宙天気のリスク -宇宙環境によるシステムへの影響 -

プラズマ (IRI)

帯電 (MUSCAT)

衝突 (AUTODY)

抗力 表面劣化

紫外線X線 中性粒子 (MSIS)

放射線粒子 (AE8AP8JPLSHIELDO

SE-2)

メテオロイドデブリ (MASTER2005

ORDEM)

電離損傷 変位損傷

bull電子回路の劣化 bull光部品の劣化

bull太陽電池セルの劣化

SEU (CREME96)

bullデータエラー bull画像ノイズ

bullシステム停止 bull回路損傷

bull熱的電気的光学的特性の劣化

bull構造の劣化 bullコンタミ

電磁パルス bull電源出力低下

bull損傷

bullトルク bull軌道落下

bull構造 損傷 bull減圧

bull電磁パルス

NASAの報告 -GNampCに注目-

1974年から1994年に起きたNASAと空軍の衛星故障の内20~25が宇宙環境に起因していたと報告

1990年から2001年に米国欧州カナダ日本の企業や政府機関が開発した衛星を調べた過去の宇宙ミション損失の大部分はロケットの失敗であったが1998年衛星損失の大部分は軌道上の衛星障害となっている多くの最近の異常は太陽電池アレイ及びバッテリの危険が増加している静止軌道通信衛星の設計寿命はこのサブシステムの故障の危険が増加している

喪失等の大きな誘導制御(GNampC)の不具合に注目 GNampC不具合の内宇宙環境による 不具合は約3と報告されている

軌道上衛星のタイプ別数

NASAの報告(続き)

衛星設計寿命における不具合発生時期 事故率と軌道

軌道別の衛星数 サブシステム不具合

宇宙環境を原因とする不具合の割合 -JAXAの場合-

2002年~2008年に運用された軌道上不具合情報が比較的充実している11衛星(利用衛星7機科学衛星4機)の結果宇宙環境によるも

のは約15過去のデータよりも割合が少ない

合計83件 合計35件

(1)利用衛星 (2)科学衛星

設計検討 不足 48

製造不良 8

軌道上環境 17

偶発故障 6

調査中 13

原因不明 8

設計検討

不足 61

製造不良 4

軌道上環境 11

偶発故障 6

調査中 9

原因不明 9

不具合発生部位の割合

不具合発生部位の割合

Brent Robertson Eric Stoneking ( 1990-2001NASA Goddard Space Flight Center )

Satellite News Digest -静止軌道不具合-

Satellite News Digest (SND) (http wwwsqt-indexcouk) で1997年~2009年の期間に静止軌道で95件の不具合が報告されている その内運用ミスや設計ミスなどを除くと32件(約33)は宇宙環境によるものであった 過去のデータより割合が多い

Choiら1)はこれら不具合の地方時と季節依存性を確認した その結果2100LT~900LTで約72の不具合が発生し900LT~2100LTは9件(約28)であった またこの9件は全て姿勢制御の不具合だった 静止軌道衛星不具合のほとんどは真夜中と朝方で起きており磁気嵐に伴い磁気圏尾部から注入した粒子による表面帯電が不具合の主原因と結論づけている

1) Ho-sung Choi et al Analysis of GEO spacecraft anomalies Space weather relationships Space Weather Vol 9 S06001

太陽活動と静止軌道衛星不具合例

ANIK-E1E2

ANIK-E1

複数の衛星で故障

Galaxy-15

帯電放電不具合 -ANIK-E1amp2Telstar401-

Jan 1994 ANIK-E1 amp E2事故時の環境 - Joe H Allen

1週間

太陽活動下降時期の電子増加

2MeV以上電子

copyNOAA Web

フラックスが3桁急増

Jan 1997 Telstar401事故時の環境

静止軌道の急激な電子増加

太陽極大期太陽フレアによる衛星障害 - 2003年10月~11月-

10486981048698 永久故障 4 10486981048698 安全モード又は運用を一時停止 31 10486981048698 データ内容の「誤り」の増加搭載コンピュータの誤動作 5

httpwwwsat-ndcomfailures等のデータによる 合計 40件

-Barbieri and Mahmot

米国極軌道気象衛星NOAA-17の改良型マイクロ波観測装置AMSU-A1 (Advanced Microwave Sounding Unit)のスキャナーが永久故障 米国気象衛星GOES -8号のX線センサがOFFになり復帰しなくなった

e-birdに深刻な不具合が発生 不具合は20本のトランスポンダ全てに影響

火星周回中の探査機「マーズオデッセイ (Mars Odyssey)」の観測機器放射線観測装置「Martian Radiation Environment Experiment (MARIE)」が太陽活動の影響により10月28日から適切に作動しなくなった データ中継技術衛星(DRTS)「こだま」 太陽捕捉モードに移行

太陽陽子

帯電放電不具合-Galaxy15(局所的的現象)- 2

5 M

eV

65

MeV

11

5 M

eV

GOES 14 ----- GOES 15 ----- GOES 11 -----

Satellite Locations

Galaxy 15 anomaly

2010年4月5日9時48分UTCは磁気嵐及びCMEが発生するなど宇宙環境は非常に荒れていたGalaxy15衛星は真夜中側に位置し宇宙環境の影響を受けやすい

位置にいたことから宇宙環境による不具合である可能性が高いということで原因追及がなされた高エネルギー粒子が引き起こす代表的な衛星不具合現象として3つ(表面帯電内部帯電SEUシングルイベントバーンアウトSEL)の可能性を検討した

チームの報告書によると磁気圏尾部からの熱電子の流入による放電が原因であったと結論付けられたGalaxy15衛星の近くにはGOES-11衛星が位置していたがGOES-11衛星には不具合を発生しておらず本現象は局所的な現象と推測される

衛星開発段階における対策 JAXAの不具合解析の結論

bull 2002年~2008年に運用された11機の衛星不具合を解析 宇宙環境による不具合は偶発故障のみ(全体の約15)確率的には想定範囲内ではあるがその影響を最小限とするためディレーティング運用モード寿命についての研究に取り組む

bull 設計基準試験の充実検証確認の強化技術成熟度(TRL)評価の徹底各々の境界制約条件の明示化等により検証不足抜けの防止有効なピアレビューに結びつける

冗長系(同じハードウェア機能の冗長)柔軟性の設計(ソフトハードの対応)

bull 従来の故障が起きないようにする設計に対してGOSAT(いぶき)では重要部

品を二重化することにより故障する可能性は上がるが故障しても衛星バスの運用や観測が続行できる可能性がより高くなるように設計した

運用における対応

bull 宇宙天気監視ーロケット打ち上げ及び宇宙飛行士支援 数日前に今後の宇宙環境の推移を把握(MXレベルのフレアの発生確率)

bull X線の増加で太陽フレア発生を検知したら高エネルギー粒子の発生をいつまで 気を付ければ良いか判断(発生位置で大凡を推定するが課題は多い) SPEが発生した場合(特に10MeV以上100MeV 以上の陽

子)最大値フラックス値の推定 ピーク値を予測(特に閾値に近くなった時に重要)

bull 衛星運用 bull 太陽フレア磁気嵐警報(X線陽子及びkpが閾値を超えた

時に警報を発信)2003年10月より運用開始 bull 内部帯電警報(2日後の静止軌道上の高エネルギー電子(>1

Me) の増加を予測し 閾値を超えた時に警報を発信) 2004年4月より運用開始

話の流れ

技術データ取得装置(TEDA)の概要と成果 bull 主な成果 bull 不具合解析例

宇宙天気のリスクと対策 bull 宇宙環境による衛星システムへの影響 bull 宇宙環境を原因とする不具合の割合推移部位 bull 静止軌道不具合 bull 対策

今後必要な観測項目

まとめ

計測対象計測項目 計測対象 粒径100μm以上のデブリメテオロイド 計測項目 デブリ粒径衝突頻度

基本原理

厚さ約125μmの絶縁性のポリイミドフィルム表面に 100μm周期で直線状の細長い導線(太さ50μm)パターンを形成導線の破断を電気的に検知することによりデブリの衝突(貫通)を検知する破断した導線の数導線の幅ピッチからデブリサイズを計測する

微小デブリ計測技術の概要

衝突孔の例(衝突試験ISAS) - 衝突粒子 SUS 309 microm - 衝突速度 52 kms

HTV5号機によるセンサ機能のフライト実証

35cm

46cm

FY2013機能実証モデル

検出線幅 50 μm 検出線間隔 100 μm フィルム厚 lt 20 μm 有感領域 30times33cm 検出線総数 3300本

サイズ 50times39times4 cm (筐体を含む)

重量 約15kg(筐体を含む)

消費電力 2W(最大4W)(他センサ含む)

テレメトリ 02 bps

宇宙環境観測装置KASPERの一部としてデブリセンサSDMを搭載 FY2013に製作開始今年8月に打ち上げ予定)

まとめ(その1)

衛星不具合の主な原因は帯電放電シングルイベント放射線損傷である今後デブリ環境が重要になると予測される

静止軌道では商用衛星が多く運用されており宇宙環境の変動把握は重要この領域で運用する衛星が気を付けなければいけない環境として

1太陽フレアに伴う高エネルギー粒子 2太陽活動下降期による静止軌道電子の増加 3磁気嵐に伴う磁気圏尾部から注入する粒子 などがあげられる

まとめ(その2)

不具合軽減の取り組み bull 開発時は宇宙環境条件(トータルフラックス及び最悪条

件)を明確にし設計(冗長系柔軟性の設計ディレーティング及び運用モード寿命について研究)試験の充実検証の充実を図る

bull 運用段階に入ったならば宇宙環境を監視し警報等で故障を防ぐ

予測課題 bull 太陽フレアに伴う高エネルギー粒子発生後フラックス

ピーク値の推定

bull 衛星により不具合の起きる閾値は異なるが閾値をこえる急激な電子フラックスの増加と継続時間の予測

bull 局所的な磁気嵐に伴う磁気圏尾部から注入する粒子

宇宙環境グループは宇宙ステーションと衛星プロジェクトの安全な遂行に貢献しています

ご静聴ありがとうございました

補足資料

不具合原因の推移 bull 宇宙天気を大きく左右する要因の1つとして約11年の太陽活動変化が挙げられる

bull 太陽活動下降時期(太陽変動CME)と極大期(フレアCME)に衛星で不具合が増加するそれにより不具合原因の割合が変わる

-Koons et al The Impact of the Space Environment on Space Systems Aerospace Corp report no TR-99(1670)-1 20 July 1999 -2009 preliminary study (unpublished)

何故不具合は減らないか

bull 部品 放射線に対する感受性が高くなっている bull 微細化が進み同時にフォールトするノードが増え同時にエ

ラーとなる論理ノードやメモリセルが増加する微細化によってメモリセルは小さくなるので記憶容量当たりでみるとエラーの発生率は下がるしかし半導体チップの記憶容量やゲート数が増えるので半導体チップ当たりのエラー発生率は微細化とともに上昇するまた蓄積電荷が小さくなり感受性が高くなってきている

bull システム 大型化大電力化運用長期化 bull 1990年代末以降静止衛星の電力が10kWレベルになったしか

し設計検証技術データ蓄積が遅れている改善されつつあると推測される

放射線による影響の概要

粒子 エネルギー又はLET

代表的な影響

陽子 100keV-1MeV 1-10MeV 10-100MeV gt50MeV

表面損傷 表面材料と太陽電池の損傷 放射線損傷(電離非電離損傷の両方)センサーへのノイズ シングルイベント効果

電子 10-100keV gt100keV gt1MeV

表面帯電 深部帯電現象(deep-dielectric charging)センサーへのノイズ太陽電池の損傷 放射線損傷(電離)

重イオン gt1MeV-cm2mg シングルイベント効果

注エネルギー及びLETは個々の部品等により異なりますあくまでも目安です

耐放射線設計手順

軌道条件

ミッション期間

環境条件設定

トータルドーズの予測

1MeV電子換算被曝算出

NIELの換算

LETフルエンス算出

陽子フルエンス算出

対  策  の  検  討

対  策  の  検  討

対  策  の  検  討

放射線による劣化率予測

劣化率予測 特性予測

耐性データ

放射線による劣化率予測

耐性データ

劣化率予測アレイ出力劣化予測

感受性データ

シングルイベント発生率予測 致命度解析

衛星内質量分布

(2)

部品材料の選定

他の要因による劣化率予測

(2)(2) (3)

回路設計等NO

OK

アレイ構造 セル選定

他の要因による劣化率予測 アレイ設計(2)

(2) (2) (2) (3)

衛星内質量分布 部品選定(2)

(2) (2)(3)

NO

OK

NO

OK

(1) 環境モデルマージを含む(2) 部品レベルの検討(3) アセンブリレベルでの検討(4) 設計マージン環境モデル   マージを含め大丈夫か

トータルドーズ

太陽電池アレイの劣化

シングルイベント効果

回路設計

補足放射線太陽宇宙線銀河宇宙線

NEILを用いたダメージファクターの算出

対  策  の  検  討

放射線による劣化率予測

劣化率予測 特性予測

耐性データ

(2)

部品材料の選定

他の要因による劣化率予測

(2)(2) (3)

回路設計等NO

OK

衛星内質量分布 半導体デバイスの変位損傷

(1)

(4)

(4)

(4)

(4)

各軌道における放射線環境

1E+10

1E+11

1E+12

1E+13

1E+14

1E+15

1E+16

1E+17

1E+18

1E+19

1E+20

001 010 100 1000

捕捉

電子

の積

分フ

ルエ

ンス

[m

2 ]

エネルギー[MeV]

各軌道における電子捕捉積分フルエンス(3年間)

LEO

EOS GEO

MEO

GTO

GEO 軌道傾斜角 0deg 高度36000km GTO 軌道傾斜角 18deg 高度 360km~36000km MEO 軌道傾斜角 51deg 高度 10000km EOS 軌道傾斜角 98deg 高度705km LEO 軌道傾斜角 29deg 高度 600km

1E+12

1E+13

1E+14

1E+15

1E+16

1E+17

1E+18

1E+19

1E+20

01 10 100 1000

捕捉

陽子の

積分フルエン

ス[

m2 ]

エネルギー[MeV]

各軌道における捕捉陽子積分フルエンス(3年間)

MEO

GTO

GEO

EOS LEO

放射線による部品材料の影響

総照射線量 (TIDTotal Ionising Dose )

電離損傷

バイポーラTrの電流増幅率の低下リーク電流の増大

γ線で評価

トータルドーズ効果

変位損傷 (DDDisplacement Damage )または 非イオン化エネルギー損失 (NIELNon-Ionising Energy

Loss )

変位損傷(格子欠陥の生成)

電荷輸送効率の低下 (CCD)太陽電池の効率低下等

電子陽子により評価

シングルイベント効果

1個の荷電粒子の入射により発生する誤動作

ソフト(Latch-Up Burnout) エラー又は ソフト (Upset) エラー

陽子及び重イオンで評価

トータルドーズ効果

+ - + + - + - + - - + + + + -

ゲート酸化膜

電離

格子欠陥

正電荷捕獲

+ 正孔 - 電子

電極

(Silicon oxidenitride)

荷電粒子

反跳原子

ゲート絶縁膜中に電荷が蓄積することによるMOSトランジスタのしきい電圧(MOSトランジスタがオフからオンに変化するゲート電圧)の変化をもたらすただ

し最近の最先端チップはゲート絶縁膜がきわめて薄くなっているこのためゲート絶縁膜よりもフィールド絶縁膜(隣接するトランジスタを電気的に分離する絶縁膜)での電荷蓄積が相対的には大きな問題になってきている」

シングルイベント効果

メモリセルはNチャンネルとPチャンネルMOSFETより構成されメモリ情報は回路ノード12の電位の

高低により記録している空乏層の広がっているPN接合12の領域に

重イオンが入射した場合電荷の発生と空乏層内への少数キャリアの収集が起こるこの収集電荷量が回路の耐量を越えた場合(c)に示すように反転が起こる(ソフトエラー)一方pウエル-N基板接

合の空乏層内に電荷収集量が起こりえる耐性を越えると寄生的に存在するPNPNサイリスタ構造がオ

ンし電源と基板間に大電流が流れる状態が生じる(ラッチアップ)

シングルイベントメカニズム -陽子と重イオンの違い-

エラー発生率の計算

線エネルギー付与(LET) (linear energy transfer)

電離性放射線が物質中を通過する際飛程の単位長さ当りに平均して失うエネルギーをいう各種の放射線のうちX線γ線はLETが小さいので低LETといいα線中性子線その他重イオン核分裂破片のLETは大きいので高LETという MeVμmMeV(gcm2)やMeV(mgcm2)で表される

南大西洋異常(SAA) bull 地球の自転軸と磁気軸のずれ

darr bull 放射線帯が自転軸に対して非

対称

bull 南大西洋上空では放射線帯内帯が低高度に落ちてきているこの領域を南大西洋異常域(SAA South Atlantic Anomaly)と呼ぶ

bull 地球観測衛星ではSAAで放射線帯陽子の影響を受ける

Single Event Lachup

シングルイベントと陽子分布

MOS-1衛星(高度909km軌道傾斜角99度)で発生したシングルイベントと 陽子30MeV以上の等高線マップを重ね合わせた結果

NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)

bull 入射粒子が電離によらず与える損傷非イオン化損失

低軌道での電子フラックスと 不具合の発生場所

南大西洋異常(SAA)と極の角

高度800kmでの電子フラックス図極の角(polar horn)とSAAを示す

太陽粒子線 bull 太陽高エネルギー粒子線(SPE Solar Proton Events)は太陽フレア とコロナガス噴出 (CMECoronal Mass Ejections )により引き起こされる bull フレアのスペクトルは可変であるためあるエネルギー域における最悪状態イベントは必ずしも別のエネルギー域における最悪条件ではない 1972年8月のイベント 10~70MeVの粒子が最も多かった 1989年10のイベント 1972年8月のイベントに比べ低エネルギー領域 高エネルギー領域が明らかに激しかった

フルエンス 105 to 1011 cm-2

変動期間 1日から数日

ldquoBastiliardquo Solar Event 14 July 2000

Carrington Flare

84

(LW Townseed) Carrington Flare(1859年) Carrington Flare による30MeV以上トータルFluenceを118times109cm-2で規格化 ~1989年フレアの約13倍(シングルイベントの評価で使用) ~1991年フレアの約9倍 2012年7月23日にキャリントンイベントとほぼ同等の爆発現象が太陽あるいは太陽の周りで起きていたということがNASAの太陽観測衛星「STEREO」の解析から発表された

放射線対策 bull 放射線シールドを付加し放射線を減衰させる

bull 放射線耐性の強い部品(SOI(Silicon On Insulator)技術による耐放射線部品)材料に変更する

bull 放射線による損傷を吸収するために回路または構造上のマージンを持たせる bull ソフト的なエラーに対しては エラー検出訂正機能や多数決

機能等でソフト的エラーが起きてもシステムが機能するようにしたフォールトトレラント機能を付けて対処する ICのハード的故障に対しては ラッチアップ耐性の強い部品を選定するしかないが 電流制限回路を付ける対策も採られる パワーMOSFETに対しては部品選定 電源電圧を規格値の半分以下に落とす等の対策を採る

SOI技術

表面帯電への対策例

表面の物体間を導線で結線する

太陽電池のカバーガラスを導電性被膜付き(酸化インジウムITO)にする

熱制御材表面にITOを被覆する

熱制御材は高誘電率のテフロンの使用を避け 高伝導度耐環境性に優れたブラックカプトンを使用

イオンエンジンの中和器で能動帯電制御

内部帯電への対策例

アルミで3mm厚さに相当するシールドで囲む(Faraday Cage)

テフロンやカプトンなどの誘電体材料の内部での使用量を最小限に押さえる

回路基板やコンフォーマルコーティングは誘電体なので電流リークパス(1012Ωcmまたは1012Ωcm2

程度)を必ずつける

特にスポット的な放射線シールドの金属材には必ず電流リークパスをつける

帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備

衛星モデル作成

材料物性テーブル設定

宇宙環境パラメータ設定

Converter

転送ディレクトリ 解析データファイル

転送

解析ディレクトリ生成 解析結果 進行状況チェック ファイル操作

MUSCAT 解析エンジン

解析結果 表示

パラメトリックラン

オプション 解析

大型パネル実験(35mtimes11m) クーポンパネル実験(26cmtimes16cm)

環境模擬試験 環境模擬試験

MUSCATに使用する物性値設計標準制定のための知見などを得ることを目的に軌道上の宇宙環境を模擬した地上試験を行っている これらの試験では放電の発生頻度や電圧閾値放電発生による太陽電池パネルや搭載機器への影響を検証している

放射線計測装置の原理

bull その粒子が物質を通過する際のエネルギー損出率が粒子の電荷(原子番号)Zの二乗に比例すること(Bethe-Blochの式)を利用する

S2

E

ΔE Ersquo

S1 S3

  • 宇宙機の設計のための宇宙環境
  • 話の流れ
  • 話の流れ
  • TEDA(技術データ取得装置)(国産部品の宇宙環境での実証の必要性)
  • ETS-VTEDA(技術データ取得装置)誕生前の部品の宇宙実証の背景
  • スライド番号 6
  • スライド番号 7
  • スライド番号 8
  • スライド番号 9
  • 図6太陽黒点数と静止軌道電子 (>04MeV ) Flux の変動 (ETS-V搭載DOMによる観測)
  • スライド番号 11
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの開発(理研東大と共同で宇宙環境計測の充実)
  • ETS-VI(きく6号)打ち上がったがGEOに行かずGTOに留まる
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの成果
  • スライド番号 15
  • スライド番号 16
  • スライド番号 17
  • ADEOS搭載TEDA(世界2番目の異常宇宙線ACR)
  • BBND (ボナー球中性子検出器)
  • スライド番号 20
  • ISS搭載BBNDの成果(約8か月)
  • スライド番号 22
  • MDS-1搭載放射線吸収線量モニタ(SDOM)
  • 放射線帯変動モデルの開発MDS-1 065 MeV 電子フラックス
  • 変動パラメータの選択 (1 cycle solar activity)
  • 変動パラメータ- Tavg の定義-
  • 065MeV 電子 L値-Tavg マップ
  • 13MeV 陽子 L値-Tavg マップ
  • 電子観測とMDS-1モデルの比較
  • 放射線帯フラックスピークの変動
  • 陽子観測とモデルの比較
  • 電子(035~078MeV) 1日の変動予測GOSAT軌道
  • 電子(035~078MeV) 変動の信頼度水準(1日)GOSAT軌道
  • MDS-1 model と AE-8 modelとの比較1日
  • 話の流れ
  • 2003年10月 みどり号の全損事故(複合現象)
  • 衛星帯電の基本式
  • 内部帯電
  • パドルでの帯電放電メカニズム
  • スライド番号 40
  • スライド番号 41
  • スライド番号 42
  • データ中継技術衛星DRTS (こだま)の不具合
  • DRTS ESA スパイクノイズと電子フルエンスの比較(赤の丸が異常検知)
  • 不具合が宇宙環境によるものであるか判断する際のポイント
  • 話の流れ
  • 宇宙天気のリスク-宇宙環境によるシステムへの影響 -
  • NASAの報告-GNampCに注目-
  • NASAの報告(続き)
  • 宇宙環境を原因とする不具合の割合-JAXAの場合-
  • 不具合発生部位の割合 
  • Satellite News Digest -静止軌道不具合-
  • 太陽活動と静止軌道衛星不具合例
  • スライド番号 54
  • スライド番号 55
  • スライド番号 56
  • 衛星開発段階における対策
  • 運用における対応
  • 話の流れ
  • スライド番号 60
  • スライド番号 61
  • まとめ(その1)
  • まとめ(その2)
  • 宇宙環境グループは宇宙ステーションと衛星プロジェクトの安全な遂行に貢献しています
  • 補足資料
  • 不具合原因の推移
  • 何故不具合は減らないか
  • 放射線による影響の概要
  • 耐放射線設計手順
  • 各軌道における放射線環境
  • 放射線による部品材料の影響
  • トータルドーズ効果
  • シングルイベント効果
  • シングルイベントメカニズム-陽子と重イオンの違い-
  • エラー発生率の計算
  • 線エネルギー付与(LET)(linear energy transfer)
  • 南大西洋異常(SAA)
  • Single Event Lachup
  • シングルイベントと陽子分布
  • NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)
  • 低軌道での電子フラックスと不具合の発生場所
  • 南大西洋異常(SAA)と極の角
  • スライド番号 83
  • Carrington Flare
  • 放射線対策
  • スライド番号 86
  • スライド番号 87
  • 帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備
  • スライド番号 89
  • 放射線計測装置の原理
Page 42: 宇宙機の設計のための宇宙環境の方針から国産部品開発(42品種)が実施された。 . 半導体電子部品は耐放射線性を加味して、人工衛星(特に

+ + + + + + + +

逆電位勾配

軌道帯電放電現象

トリプルジャンクションで 放電発生

極軌道 オーロラ電子(高エネルギー電子)との遭遇

プラズマ流入出による絶縁体の帯電(局所帯電)

電位差発生

衛星構体が負に帯電(絶対帯電)

放電発生

電位

時間

オーロラ電子

衛星構体 乖離電圧 ∆V

カバーガラス

0 プラズマ電位

データ中継技術衛星DRTS (こだま)の不具合

2002年10月 9日 静止軌道に打ち上げ

2003年

3月24日 406JST変化率異常モニタ故障検出(FDIR)

が動作しA系からB系に切り替わった

3月25日 410JSTにB系のみ異常検知

4月 3日 327JSTにB系のみ異常検知

5月28日 124JSTにB系のみ異常検知

6月 6日1537JSTにB系のみ異常検知

ESA

DRTS ESA スパイクノイズと 電子フルエンスの比較(赤の丸が異常検知)

larr閾値

この事実を基に静止軌道における内部帯電警報システムを構築 2004年4月より運用開始

不具合が宇宙環境によるものであるか 判断する際のポイント

不具合の発生した時刻に太陽フレアや磁気嵐等の宇宙天気の大きな変動が起きていれば不具合に関係している可能性が高い但し帯電など放射線の積算的効果の伴う現象については発生から1週間位さかのぼり環境がどのように推移してきたかを考慮する必要がある

磁気嵐が起きると静止軌道に急激な粒子の増加現象が起きこれにより衛星帯電が引き起こされたりする(予測に利用可能)

地方時(真夜中や朝方か)や季節(春秋)を考慮する

低軌道衛星においてはSAA外帯のrdquo角ldquo及び極通過時に不具合

が起きやすいので衛星の位置(緯度経度)が重要

事象を把握する上で単発現象か数回起きている現象か周期

(時間同じ軌道等)的に発生している現象か

話の流れ

技術データ取得装置(TEDA)の概要と成果 bull 主な成果 bull 不具合解析例

宇宙天気のリスクと対策 bull 宇宙環境による衛星システムへの影響 bull 宇宙環境を原因とする不具合の割合推移部位 bull 静止軌道不具合 bull 対策

今後必要な観測項目

まとめ

宇宙天気のリスク -宇宙環境によるシステムへの影響 -

プラズマ (IRI)

帯電 (MUSCAT)

衝突 (AUTODY)

抗力 表面劣化

紫外線X線 中性粒子 (MSIS)

放射線粒子 (AE8AP8JPLSHIELDO

SE-2)

メテオロイドデブリ (MASTER2005

ORDEM)

電離損傷 変位損傷

bull電子回路の劣化 bull光部品の劣化

bull太陽電池セルの劣化

SEU (CREME96)

bullデータエラー bull画像ノイズ

bullシステム停止 bull回路損傷

bull熱的電気的光学的特性の劣化

bull構造の劣化 bullコンタミ

電磁パルス bull電源出力低下

bull損傷

bullトルク bull軌道落下

bull構造 損傷 bull減圧

bull電磁パルス

NASAの報告 -GNampCに注目-

1974年から1994年に起きたNASAと空軍の衛星故障の内20~25が宇宙環境に起因していたと報告

1990年から2001年に米国欧州カナダ日本の企業や政府機関が開発した衛星を調べた過去の宇宙ミション損失の大部分はロケットの失敗であったが1998年衛星損失の大部分は軌道上の衛星障害となっている多くの最近の異常は太陽電池アレイ及びバッテリの危険が増加している静止軌道通信衛星の設計寿命はこのサブシステムの故障の危険が増加している

喪失等の大きな誘導制御(GNampC)の不具合に注目 GNampC不具合の内宇宙環境による 不具合は約3と報告されている

軌道上衛星のタイプ別数

NASAの報告(続き)

衛星設計寿命における不具合発生時期 事故率と軌道

軌道別の衛星数 サブシステム不具合

宇宙環境を原因とする不具合の割合 -JAXAの場合-

2002年~2008年に運用された軌道上不具合情報が比較的充実している11衛星(利用衛星7機科学衛星4機)の結果宇宙環境によるも

のは約15過去のデータよりも割合が少ない

合計83件 合計35件

(1)利用衛星 (2)科学衛星

設計検討 不足 48

製造不良 8

軌道上環境 17

偶発故障 6

調査中 13

原因不明 8

設計検討

不足 61

製造不良 4

軌道上環境 11

偶発故障 6

調査中 9

原因不明 9

不具合発生部位の割合

不具合発生部位の割合

Brent Robertson Eric Stoneking ( 1990-2001NASA Goddard Space Flight Center )

Satellite News Digest -静止軌道不具合-

Satellite News Digest (SND) (http wwwsqt-indexcouk) で1997年~2009年の期間に静止軌道で95件の不具合が報告されている その内運用ミスや設計ミスなどを除くと32件(約33)は宇宙環境によるものであった 過去のデータより割合が多い

Choiら1)はこれら不具合の地方時と季節依存性を確認した その結果2100LT~900LTで約72の不具合が発生し900LT~2100LTは9件(約28)であった またこの9件は全て姿勢制御の不具合だった 静止軌道衛星不具合のほとんどは真夜中と朝方で起きており磁気嵐に伴い磁気圏尾部から注入した粒子による表面帯電が不具合の主原因と結論づけている

1) Ho-sung Choi et al Analysis of GEO spacecraft anomalies Space weather relationships Space Weather Vol 9 S06001

太陽活動と静止軌道衛星不具合例

ANIK-E1E2

ANIK-E1

複数の衛星で故障

Galaxy-15

帯電放電不具合 -ANIK-E1amp2Telstar401-

Jan 1994 ANIK-E1 amp E2事故時の環境 - Joe H Allen

1週間

太陽活動下降時期の電子増加

2MeV以上電子

copyNOAA Web

フラックスが3桁急増

Jan 1997 Telstar401事故時の環境

静止軌道の急激な電子増加

太陽極大期太陽フレアによる衛星障害 - 2003年10月~11月-

10486981048698 永久故障 4 10486981048698 安全モード又は運用を一時停止 31 10486981048698 データ内容の「誤り」の増加搭載コンピュータの誤動作 5

httpwwwsat-ndcomfailures等のデータによる 合計 40件

-Barbieri and Mahmot

米国極軌道気象衛星NOAA-17の改良型マイクロ波観測装置AMSU-A1 (Advanced Microwave Sounding Unit)のスキャナーが永久故障 米国気象衛星GOES -8号のX線センサがOFFになり復帰しなくなった

e-birdに深刻な不具合が発生 不具合は20本のトランスポンダ全てに影響

火星周回中の探査機「マーズオデッセイ (Mars Odyssey)」の観測機器放射線観測装置「Martian Radiation Environment Experiment (MARIE)」が太陽活動の影響により10月28日から適切に作動しなくなった データ中継技術衛星(DRTS)「こだま」 太陽捕捉モードに移行

太陽陽子

帯電放電不具合-Galaxy15(局所的的現象)- 2

5 M

eV

65

MeV

11

5 M

eV

GOES 14 ----- GOES 15 ----- GOES 11 -----

Satellite Locations

Galaxy 15 anomaly

2010年4月5日9時48分UTCは磁気嵐及びCMEが発生するなど宇宙環境は非常に荒れていたGalaxy15衛星は真夜中側に位置し宇宙環境の影響を受けやすい

位置にいたことから宇宙環境による不具合である可能性が高いということで原因追及がなされた高エネルギー粒子が引き起こす代表的な衛星不具合現象として3つ(表面帯電内部帯電SEUシングルイベントバーンアウトSEL)の可能性を検討した

チームの報告書によると磁気圏尾部からの熱電子の流入による放電が原因であったと結論付けられたGalaxy15衛星の近くにはGOES-11衛星が位置していたがGOES-11衛星には不具合を発生しておらず本現象は局所的な現象と推測される

衛星開発段階における対策 JAXAの不具合解析の結論

bull 2002年~2008年に運用された11機の衛星不具合を解析 宇宙環境による不具合は偶発故障のみ(全体の約15)確率的には想定範囲内ではあるがその影響を最小限とするためディレーティング運用モード寿命についての研究に取り組む

bull 設計基準試験の充実検証確認の強化技術成熟度(TRL)評価の徹底各々の境界制約条件の明示化等により検証不足抜けの防止有効なピアレビューに結びつける

冗長系(同じハードウェア機能の冗長)柔軟性の設計(ソフトハードの対応)

bull 従来の故障が起きないようにする設計に対してGOSAT(いぶき)では重要部

品を二重化することにより故障する可能性は上がるが故障しても衛星バスの運用や観測が続行できる可能性がより高くなるように設計した

運用における対応

bull 宇宙天気監視ーロケット打ち上げ及び宇宙飛行士支援 数日前に今後の宇宙環境の推移を把握(MXレベルのフレアの発生確率)

bull X線の増加で太陽フレア発生を検知したら高エネルギー粒子の発生をいつまで 気を付ければ良いか判断(発生位置で大凡を推定するが課題は多い) SPEが発生した場合(特に10MeV以上100MeV 以上の陽

子)最大値フラックス値の推定 ピーク値を予測(特に閾値に近くなった時に重要)

bull 衛星運用 bull 太陽フレア磁気嵐警報(X線陽子及びkpが閾値を超えた

時に警報を発信)2003年10月より運用開始 bull 内部帯電警報(2日後の静止軌道上の高エネルギー電子(>1

Me) の増加を予測し 閾値を超えた時に警報を発信) 2004年4月より運用開始

話の流れ

技術データ取得装置(TEDA)の概要と成果 bull 主な成果 bull 不具合解析例

宇宙天気のリスクと対策 bull 宇宙環境による衛星システムへの影響 bull 宇宙環境を原因とする不具合の割合推移部位 bull 静止軌道不具合 bull 対策

今後必要な観測項目

まとめ

計測対象計測項目 計測対象 粒径100μm以上のデブリメテオロイド 計測項目 デブリ粒径衝突頻度

基本原理

厚さ約125μmの絶縁性のポリイミドフィルム表面に 100μm周期で直線状の細長い導線(太さ50μm)パターンを形成導線の破断を電気的に検知することによりデブリの衝突(貫通)を検知する破断した導線の数導線の幅ピッチからデブリサイズを計測する

微小デブリ計測技術の概要

衝突孔の例(衝突試験ISAS) - 衝突粒子 SUS 309 microm - 衝突速度 52 kms

HTV5号機によるセンサ機能のフライト実証

35cm

46cm

FY2013機能実証モデル

検出線幅 50 μm 検出線間隔 100 μm フィルム厚 lt 20 μm 有感領域 30times33cm 検出線総数 3300本

サイズ 50times39times4 cm (筐体を含む)

重量 約15kg(筐体を含む)

消費電力 2W(最大4W)(他センサ含む)

テレメトリ 02 bps

宇宙環境観測装置KASPERの一部としてデブリセンサSDMを搭載 FY2013に製作開始今年8月に打ち上げ予定)

まとめ(その1)

衛星不具合の主な原因は帯電放電シングルイベント放射線損傷である今後デブリ環境が重要になると予測される

静止軌道では商用衛星が多く運用されており宇宙環境の変動把握は重要この領域で運用する衛星が気を付けなければいけない環境として

1太陽フレアに伴う高エネルギー粒子 2太陽活動下降期による静止軌道電子の増加 3磁気嵐に伴う磁気圏尾部から注入する粒子 などがあげられる

まとめ(その2)

不具合軽減の取り組み bull 開発時は宇宙環境条件(トータルフラックス及び最悪条

件)を明確にし設計(冗長系柔軟性の設計ディレーティング及び運用モード寿命について研究)試験の充実検証の充実を図る

bull 運用段階に入ったならば宇宙環境を監視し警報等で故障を防ぐ

予測課題 bull 太陽フレアに伴う高エネルギー粒子発生後フラックス

ピーク値の推定

bull 衛星により不具合の起きる閾値は異なるが閾値をこえる急激な電子フラックスの増加と継続時間の予測

bull 局所的な磁気嵐に伴う磁気圏尾部から注入する粒子

宇宙環境グループは宇宙ステーションと衛星プロジェクトの安全な遂行に貢献しています

ご静聴ありがとうございました

補足資料

不具合原因の推移 bull 宇宙天気を大きく左右する要因の1つとして約11年の太陽活動変化が挙げられる

bull 太陽活動下降時期(太陽変動CME)と極大期(フレアCME)に衛星で不具合が増加するそれにより不具合原因の割合が変わる

-Koons et al The Impact of the Space Environment on Space Systems Aerospace Corp report no TR-99(1670)-1 20 July 1999 -2009 preliminary study (unpublished)

何故不具合は減らないか

bull 部品 放射線に対する感受性が高くなっている bull 微細化が進み同時にフォールトするノードが増え同時にエ

ラーとなる論理ノードやメモリセルが増加する微細化によってメモリセルは小さくなるので記憶容量当たりでみるとエラーの発生率は下がるしかし半導体チップの記憶容量やゲート数が増えるので半導体チップ当たりのエラー発生率は微細化とともに上昇するまた蓄積電荷が小さくなり感受性が高くなってきている

bull システム 大型化大電力化運用長期化 bull 1990年代末以降静止衛星の電力が10kWレベルになったしか

し設計検証技術データ蓄積が遅れている改善されつつあると推測される

放射線による影響の概要

粒子 エネルギー又はLET

代表的な影響

陽子 100keV-1MeV 1-10MeV 10-100MeV gt50MeV

表面損傷 表面材料と太陽電池の損傷 放射線損傷(電離非電離損傷の両方)センサーへのノイズ シングルイベント効果

電子 10-100keV gt100keV gt1MeV

表面帯電 深部帯電現象(deep-dielectric charging)センサーへのノイズ太陽電池の損傷 放射線損傷(電離)

重イオン gt1MeV-cm2mg シングルイベント効果

注エネルギー及びLETは個々の部品等により異なりますあくまでも目安です

耐放射線設計手順

軌道条件

ミッション期間

環境条件設定

トータルドーズの予測

1MeV電子換算被曝算出

NIELの換算

LETフルエンス算出

陽子フルエンス算出

対  策  の  検  討

対  策  の  検  討

対  策  の  検  討

放射線による劣化率予測

劣化率予測 特性予測

耐性データ

放射線による劣化率予測

耐性データ

劣化率予測アレイ出力劣化予測

感受性データ

シングルイベント発生率予測 致命度解析

衛星内質量分布

(2)

部品材料の選定

他の要因による劣化率予測

(2)(2) (3)

回路設計等NO

OK

アレイ構造 セル選定

他の要因による劣化率予測 アレイ設計(2)

(2) (2) (2) (3)

衛星内質量分布 部品選定(2)

(2) (2)(3)

NO

OK

NO

OK

(1) 環境モデルマージを含む(2) 部品レベルの検討(3) アセンブリレベルでの検討(4) 設計マージン環境モデル   マージを含め大丈夫か

トータルドーズ

太陽電池アレイの劣化

シングルイベント効果

回路設計

補足放射線太陽宇宙線銀河宇宙線

NEILを用いたダメージファクターの算出

対  策  の  検  討

放射線による劣化率予測

劣化率予測 特性予測

耐性データ

(2)

部品材料の選定

他の要因による劣化率予測

(2)(2) (3)

回路設計等NO

OK

衛星内質量分布 半導体デバイスの変位損傷

(1)

(4)

(4)

(4)

(4)

各軌道における放射線環境

1E+10

1E+11

1E+12

1E+13

1E+14

1E+15

1E+16

1E+17

1E+18

1E+19

1E+20

001 010 100 1000

捕捉

電子

の積

分フ

ルエ

ンス

[m

2 ]

エネルギー[MeV]

各軌道における電子捕捉積分フルエンス(3年間)

LEO

EOS GEO

MEO

GTO

GEO 軌道傾斜角 0deg 高度36000km GTO 軌道傾斜角 18deg 高度 360km~36000km MEO 軌道傾斜角 51deg 高度 10000km EOS 軌道傾斜角 98deg 高度705km LEO 軌道傾斜角 29deg 高度 600km

1E+12

1E+13

1E+14

1E+15

1E+16

1E+17

1E+18

1E+19

1E+20

01 10 100 1000

捕捉

陽子の

積分フルエン

ス[

m2 ]

エネルギー[MeV]

各軌道における捕捉陽子積分フルエンス(3年間)

MEO

GTO

GEO

EOS LEO

放射線による部品材料の影響

総照射線量 (TIDTotal Ionising Dose )

電離損傷

バイポーラTrの電流増幅率の低下リーク電流の増大

γ線で評価

トータルドーズ効果

変位損傷 (DDDisplacement Damage )または 非イオン化エネルギー損失 (NIELNon-Ionising Energy

Loss )

変位損傷(格子欠陥の生成)

電荷輸送効率の低下 (CCD)太陽電池の効率低下等

電子陽子により評価

シングルイベント効果

1個の荷電粒子の入射により発生する誤動作

ソフト(Latch-Up Burnout) エラー又は ソフト (Upset) エラー

陽子及び重イオンで評価

トータルドーズ効果

+ - + + - + - + - - + + + + -

ゲート酸化膜

電離

格子欠陥

正電荷捕獲

+ 正孔 - 電子

電極

(Silicon oxidenitride)

荷電粒子

反跳原子

ゲート絶縁膜中に電荷が蓄積することによるMOSトランジスタのしきい電圧(MOSトランジスタがオフからオンに変化するゲート電圧)の変化をもたらすただ

し最近の最先端チップはゲート絶縁膜がきわめて薄くなっているこのためゲート絶縁膜よりもフィールド絶縁膜(隣接するトランジスタを電気的に分離する絶縁膜)での電荷蓄積が相対的には大きな問題になってきている」

シングルイベント効果

メモリセルはNチャンネルとPチャンネルMOSFETより構成されメモリ情報は回路ノード12の電位の

高低により記録している空乏層の広がっているPN接合12の領域に

重イオンが入射した場合電荷の発生と空乏層内への少数キャリアの収集が起こるこの収集電荷量が回路の耐量を越えた場合(c)に示すように反転が起こる(ソフトエラー)一方pウエル-N基板接

合の空乏層内に電荷収集量が起こりえる耐性を越えると寄生的に存在するPNPNサイリスタ構造がオ

ンし電源と基板間に大電流が流れる状態が生じる(ラッチアップ)

シングルイベントメカニズム -陽子と重イオンの違い-

エラー発生率の計算

線エネルギー付与(LET) (linear energy transfer)

電離性放射線が物質中を通過する際飛程の単位長さ当りに平均して失うエネルギーをいう各種の放射線のうちX線γ線はLETが小さいので低LETといいα線中性子線その他重イオン核分裂破片のLETは大きいので高LETという MeVμmMeV(gcm2)やMeV(mgcm2)で表される

南大西洋異常(SAA) bull 地球の自転軸と磁気軸のずれ

darr bull 放射線帯が自転軸に対して非

対称

bull 南大西洋上空では放射線帯内帯が低高度に落ちてきているこの領域を南大西洋異常域(SAA South Atlantic Anomaly)と呼ぶ

bull 地球観測衛星ではSAAで放射線帯陽子の影響を受ける

Single Event Lachup

シングルイベントと陽子分布

MOS-1衛星(高度909km軌道傾斜角99度)で発生したシングルイベントと 陽子30MeV以上の等高線マップを重ね合わせた結果

NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)

bull 入射粒子が電離によらず与える損傷非イオン化損失

低軌道での電子フラックスと 不具合の発生場所

南大西洋異常(SAA)と極の角

高度800kmでの電子フラックス図極の角(polar horn)とSAAを示す

太陽粒子線 bull 太陽高エネルギー粒子線(SPE Solar Proton Events)は太陽フレア とコロナガス噴出 (CMECoronal Mass Ejections )により引き起こされる bull フレアのスペクトルは可変であるためあるエネルギー域における最悪状態イベントは必ずしも別のエネルギー域における最悪条件ではない 1972年8月のイベント 10~70MeVの粒子が最も多かった 1989年10のイベント 1972年8月のイベントに比べ低エネルギー領域 高エネルギー領域が明らかに激しかった

フルエンス 105 to 1011 cm-2

変動期間 1日から数日

ldquoBastiliardquo Solar Event 14 July 2000

Carrington Flare

84

(LW Townseed) Carrington Flare(1859年) Carrington Flare による30MeV以上トータルFluenceを118times109cm-2で規格化 ~1989年フレアの約13倍(シングルイベントの評価で使用) ~1991年フレアの約9倍 2012年7月23日にキャリントンイベントとほぼ同等の爆発現象が太陽あるいは太陽の周りで起きていたということがNASAの太陽観測衛星「STEREO」の解析から発表された

放射線対策 bull 放射線シールドを付加し放射線を減衰させる

bull 放射線耐性の強い部品(SOI(Silicon On Insulator)技術による耐放射線部品)材料に変更する

bull 放射線による損傷を吸収するために回路または構造上のマージンを持たせる bull ソフト的なエラーに対しては エラー検出訂正機能や多数決

機能等でソフト的エラーが起きてもシステムが機能するようにしたフォールトトレラント機能を付けて対処する ICのハード的故障に対しては ラッチアップ耐性の強い部品を選定するしかないが 電流制限回路を付ける対策も採られる パワーMOSFETに対しては部品選定 電源電圧を規格値の半分以下に落とす等の対策を採る

SOI技術

表面帯電への対策例

表面の物体間を導線で結線する

太陽電池のカバーガラスを導電性被膜付き(酸化インジウムITO)にする

熱制御材表面にITOを被覆する

熱制御材は高誘電率のテフロンの使用を避け 高伝導度耐環境性に優れたブラックカプトンを使用

イオンエンジンの中和器で能動帯電制御

内部帯電への対策例

アルミで3mm厚さに相当するシールドで囲む(Faraday Cage)

テフロンやカプトンなどの誘電体材料の内部での使用量を最小限に押さえる

回路基板やコンフォーマルコーティングは誘電体なので電流リークパス(1012Ωcmまたは1012Ωcm2

程度)を必ずつける

特にスポット的な放射線シールドの金属材には必ず電流リークパスをつける

帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備

衛星モデル作成

材料物性テーブル設定

宇宙環境パラメータ設定

Converter

転送ディレクトリ 解析データファイル

転送

解析ディレクトリ生成 解析結果 進行状況チェック ファイル操作

MUSCAT 解析エンジン

解析結果 表示

パラメトリックラン

オプション 解析

大型パネル実験(35mtimes11m) クーポンパネル実験(26cmtimes16cm)

環境模擬試験 環境模擬試験

MUSCATに使用する物性値設計標準制定のための知見などを得ることを目的に軌道上の宇宙環境を模擬した地上試験を行っている これらの試験では放電の発生頻度や電圧閾値放電発生による太陽電池パネルや搭載機器への影響を検証している

放射線計測装置の原理

bull その粒子が物質を通過する際のエネルギー損出率が粒子の電荷(原子番号)Zの二乗に比例すること(Bethe-Blochの式)を利用する

S2

E

ΔE Ersquo

S1 S3

  • 宇宙機の設計のための宇宙環境
  • 話の流れ
  • 話の流れ
  • TEDA(技術データ取得装置)(国産部品の宇宙環境での実証の必要性)
  • ETS-VTEDA(技術データ取得装置)誕生前の部品の宇宙実証の背景
  • スライド番号 6
  • スライド番号 7
  • スライド番号 8
  • スライド番号 9
  • 図6太陽黒点数と静止軌道電子 (>04MeV ) Flux の変動 (ETS-V搭載DOMによる観測)
  • スライド番号 11
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの開発(理研東大と共同で宇宙環境計測の充実)
  • ETS-VI(きく6号)打ち上がったがGEOに行かずGTOに留まる
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの成果
  • スライド番号 15
  • スライド番号 16
  • スライド番号 17
  • ADEOS搭載TEDA(世界2番目の異常宇宙線ACR)
  • BBND (ボナー球中性子検出器)
  • スライド番号 20
  • ISS搭載BBNDの成果(約8か月)
  • スライド番号 22
  • MDS-1搭載放射線吸収線量モニタ(SDOM)
  • 放射線帯変動モデルの開発MDS-1 065 MeV 電子フラックス
  • 変動パラメータの選択 (1 cycle solar activity)
  • 変動パラメータ- Tavg の定義-
  • 065MeV 電子 L値-Tavg マップ
  • 13MeV 陽子 L値-Tavg マップ
  • 電子観測とMDS-1モデルの比較
  • 放射線帯フラックスピークの変動
  • 陽子観測とモデルの比較
  • 電子(035~078MeV) 1日の変動予測GOSAT軌道
  • 電子(035~078MeV) 変動の信頼度水準(1日)GOSAT軌道
  • MDS-1 model と AE-8 modelとの比較1日
  • 話の流れ
  • 2003年10月 みどり号の全損事故(複合現象)
  • 衛星帯電の基本式
  • 内部帯電
  • パドルでの帯電放電メカニズム
  • スライド番号 40
  • スライド番号 41
  • スライド番号 42
  • データ中継技術衛星DRTS (こだま)の不具合
  • DRTS ESA スパイクノイズと電子フルエンスの比較(赤の丸が異常検知)
  • 不具合が宇宙環境によるものであるか判断する際のポイント
  • 話の流れ
  • 宇宙天気のリスク-宇宙環境によるシステムへの影響 -
  • NASAの報告-GNampCに注目-
  • NASAの報告(続き)
  • 宇宙環境を原因とする不具合の割合-JAXAの場合-
  • 不具合発生部位の割合 
  • Satellite News Digest -静止軌道不具合-
  • 太陽活動と静止軌道衛星不具合例
  • スライド番号 54
  • スライド番号 55
  • スライド番号 56
  • 衛星開発段階における対策
  • 運用における対応
  • 話の流れ
  • スライド番号 60
  • スライド番号 61
  • まとめ(その1)
  • まとめ(その2)
  • 宇宙環境グループは宇宙ステーションと衛星プロジェクトの安全な遂行に貢献しています
  • 補足資料
  • 不具合原因の推移
  • 何故不具合は減らないか
  • 放射線による影響の概要
  • 耐放射線設計手順
  • 各軌道における放射線環境
  • 放射線による部品材料の影響
  • トータルドーズ効果
  • シングルイベント効果
  • シングルイベントメカニズム-陽子と重イオンの違い-
  • エラー発生率の計算
  • 線エネルギー付与(LET)(linear energy transfer)
  • 南大西洋異常(SAA)
  • Single Event Lachup
  • シングルイベントと陽子分布
  • NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)
  • 低軌道での電子フラックスと不具合の発生場所
  • 南大西洋異常(SAA)と極の角
  • スライド番号 83
  • Carrington Flare
  • 放射線対策
  • スライド番号 86
  • スライド番号 87
  • 帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備
  • スライド番号 89
  • 放射線計測装置の原理
Page 43: 宇宙機の設計のための宇宙環境の方針から国産部品開発(42品種)が実施された。 . 半導体電子部品は耐放射線性を加味して、人工衛星(特に

データ中継技術衛星DRTS (こだま)の不具合

2002年10月 9日 静止軌道に打ち上げ

2003年

3月24日 406JST変化率異常モニタ故障検出(FDIR)

が動作しA系からB系に切り替わった

3月25日 410JSTにB系のみ異常検知

4月 3日 327JSTにB系のみ異常検知

5月28日 124JSTにB系のみ異常検知

6月 6日1537JSTにB系のみ異常検知

ESA

DRTS ESA スパイクノイズと 電子フルエンスの比較(赤の丸が異常検知)

larr閾値

この事実を基に静止軌道における内部帯電警報システムを構築 2004年4月より運用開始

不具合が宇宙環境によるものであるか 判断する際のポイント

不具合の発生した時刻に太陽フレアや磁気嵐等の宇宙天気の大きな変動が起きていれば不具合に関係している可能性が高い但し帯電など放射線の積算的効果の伴う現象については発生から1週間位さかのぼり環境がどのように推移してきたかを考慮する必要がある

磁気嵐が起きると静止軌道に急激な粒子の増加現象が起きこれにより衛星帯電が引き起こされたりする(予測に利用可能)

地方時(真夜中や朝方か)や季節(春秋)を考慮する

低軌道衛星においてはSAA外帯のrdquo角ldquo及び極通過時に不具合

が起きやすいので衛星の位置(緯度経度)が重要

事象を把握する上で単発現象か数回起きている現象か周期

(時間同じ軌道等)的に発生している現象か

話の流れ

技術データ取得装置(TEDA)の概要と成果 bull 主な成果 bull 不具合解析例

宇宙天気のリスクと対策 bull 宇宙環境による衛星システムへの影響 bull 宇宙環境を原因とする不具合の割合推移部位 bull 静止軌道不具合 bull 対策

今後必要な観測項目

まとめ

宇宙天気のリスク -宇宙環境によるシステムへの影響 -

プラズマ (IRI)

帯電 (MUSCAT)

衝突 (AUTODY)

抗力 表面劣化

紫外線X線 中性粒子 (MSIS)

放射線粒子 (AE8AP8JPLSHIELDO

SE-2)

メテオロイドデブリ (MASTER2005

ORDEM)

電離損傷 変位損傷

bull電子回路の劣化 bull光部品の劣化

bull太陽電池セルの劣化

SEU (CREME96)

bullデータエラー bull画像ノイズ

bullシステム停止 bull回路損傷

bull熱的電気的光学的特性の劣化

bull構造の劣化 bullコンタミ

電磁パルス bull電源出力低下

bull損傷

bullトルク bull軌道落下

bull構造 損傷 bull減圧

bull電磁パルス

NASAの報告 -GNampCに注目-

1974年から1994年に起きたNASAと空軍の衛星故障の内20~25が宇宙環境に起因していたと報告

1990年から2001年に米国欧州カナダ日本の企業や政府機関が開発した衛星を調べた過去の宇宙ミション損失の大部分はロケットの失敗であったが1998年衛星損失の大部分は軌道上の衛星障害となっている多くの最近の異常は太陽電池アレイ及びバッテリの危険が増加している静止軌道通信衛星の設計寿命はこのサブシステムの故障の危険が増加している

喪失等の大きな誘導制御(GNampC)の不具合に注目 GNampC不具合の内宇宙環境による 不具合は約3と報告されている

軌道上衛星のタイプ別数

NASAの報告(続き)

衛星設計寿命における不具合発生時期 事故率と軌道

軌道別の衛星数 サブシステム不具合

宇宙環境を原因とする不具合の割合 -JAXAの場合-

2002年~2008年に運用された軌道上不具合情報が比較的充実している11衛星(利用衛星7機科学衛星4機)の結果宇宙環境によるも

のは約15過去のデータよりも割合が少ない

合計83件 合計35件

(1)利用衛星 (2)科学衛星

設計検討 不足 48

製造不良 8

軌道上環境 17

偶発故障 6

調査中 13

原因不明 8

設計検討

不足 61

製造不良 4

軌道上環境 11

偶発故障 6

調査中 9

原因不明 9

不具合発生部位の割合

不具合発生部位の割合

Brent Robertson Eric Stoneking ( 1990-2001NASA Goddard Space Flight Center )

Satellite News Digest -静止軌道不具合-

Satellite News Digest (SND) (http wwwsqt-indexcouk) で1997年~2009年の期間に静止軌道で95件の不具合が報告されている その内運用ミスや設計ミスなどを除くと32件(約33)は宇宙環境によるものであった 過去のデータより割合が多い

Choiら1)はこれら不具合の地方時と季節依存性を確認した その結果2100LT~900LTで約72の不具合が発生し900LT~2100LTは9件(約28)であった またこの9件は全て姿勢制御の不具合だった 静止軌道衛星不具合のほとんどは真夜中と朝方で起きており磁気嵐に伴い磁気圏尾部から注入した粒子による表面帯電が不具合の主原因と結論づけている

1) Ho-sung Choi et al Analysis of GEO spacecraft anomalies Space weather relationships Space Weather Vol 9 S06001

太陽活動と静止軌道衛星不具合例

ANIK-E1E2

ANIK-E1

複数の衛星で故障

Galaxy-15

帯電放電不具合 -ANIK-E1amp2Telstar401-

Jan 1994 ANIK-E1 amp E2事故時の環境 - Joe H Allen

1週間

太陽活動下降時期の電子増加

2MeV以上電子

copyNOAA Web

フラックスが3桁急増

Jan 1997 Telstar401事故時の環境

静止軌道の急激な電子増加

太陽極大期太陽フレアによる衛星障害 - 2003年10月~11月-

10486981048698 永久故障 4 10486981048698 安全モード又は運用を一時停止 31 10486981048698 データ内容の「誤り」の増加搭載コンピュータの誤動作 5

httpwwwsat-ndcomfailures等のデータによる 合計 40件

-Barbieri and Mahmot

米国極軌道気象衛星NOAA-17の改良型マイクロ波観測装置AMSU-A1 (Advanced Microwave Sounding Unit)のスキャナーが永久故障 米国気象衛星GOES -8号のX線センサがOFFになり復帰しなくなった

e-birdに深刻な不具合が発生 不具合は20本のトランスポンダ全てに影響

火星周回中の探査機「マーズオデッセイ (Mars Odyssey)」の観測機器放射線観測装置「Martian Radiation Environment Experiment (MARIE)」が太陽活動の影響により10月28日から適切に作動しなくなった データ中継技術衛星(DRTS)「こだま」 太陽捕捉モードに移行

太陽陽子

帯電放電不具合-Galaxy15(局所的的現象)- 2

5 M

eV

65

MeV

11

5 M

eV

GOES 14 ----- GOES 15 ----- GOES 11 -----

Satellite Locations

Galaxy 15 anomaly

2010年4月5日9時48分UTCは磁気嵐及びCMEが発生するなど宇宙環境は非常に荒れていたGalaxy15衛星は真夜中側に位置し宇宙環境の影響を受けやすい

位置にいたことから宇宙環境による不具合である可能性が高いということで原因追及がなされた高エネルギー粒子が引き起こす代表的な衛星不具合現象として3つ(表面帯電内部帯電SEUシングルイベントバーンアウトSEL)の可能性を検討した

チームの報告書によると磁気圏尾部からの熱電子の流入による放電が原因であったと結論付けられたGalaxy15衛星の近くにはGOES-11衛星が位置していたがGOES-11衛星には不具合を発生しておらず本現象は局所的な現象と推測される

衛星開発段階における対策 JAXAの不具合解析の結論

bull 2002年~2008年に運用された11機の衛星不具合を解析 宇宙環境による不具合は偶発故障のみ(全体の約15)確率的には想定範囲内ではあるがその影響を最小限とするためディレーティング運用モード寿命についての研究に取り組む

bull 設計基準試験の充実検証確認の強化技術成熟度(TRL)評価の徹底各々の境界制約条件の明示化等により検証不足抜けの防止有効なピアレビューに結びつける

冗長系(同じハードウェア機能の冗長)柔軟性の設計(ソフトハードの対応)

bull 従来の故障が起きないようにする設計に対してGOSAT(いぶき)では重要部

品を二重化することにより故障する可能性は上がるが故障しても衛星バスの運用や観測が続行できる可能性がより高くなるように設計した

運用における対応

bull 宇宙天気監視ーロケット打ち上げ及び宇宙飛行士支援 数日前に今後の宇宙環境の推移を把握(MXレベルのフレアの発生確率)

bull X線の増加で太陽フレア発生を検知したら高エネルギー粒子の発生をいつまで 気を付ければ良いか判断(発生位置で大凡を推定するが課題は多い) SPEが発生した場合(特に10MeV以上100MeV 以上の陽

子)最大値フラックス値の推定 ピーク値を予測(特に閾値に近くなった時に重要)

bull 衛星運用 bull 太陽フレア磁気嵐警報(X線陽子及びkpが閾値を超えた

時に警報を発信)2003年10月より運用開始 bull 内部帯電警報(2日後の静止軌道上の高エネルギー電子(>1

Me) の増加を予測し 閾値を超えた時に警報を発信) 2004年4月より運用開始

話の流れ

技術データ取得装置(TEDA)の概要と成果 bull 主な成果 bull 不具合解析例

宇宙天気のリスクと対策 bull 宇宙環境による衛星システムへの影響 bull 宇宙環境を原因とする不具合の割合推移部位 bull 静止軌道不具合 bull 対策

今後必要な観測項目

まとめ

計測対象計測項目 計測対象 粒径100μm以上のデブリメテオロイド 計測項目 デブリ粒径衝突頻度

基本原理

厚さ約125μmの絶縁性のポリイミドフィルム表面に 100μm周期で直線状の細長い導線(太さ50μm)パターンを形成導線の破断を電気的に検知することによりデブリの衝突(貫通)を検知する破断した導線の数導線の幅ピッチからデブリサイズを計測する

微小デブリ計測技術の概要

衝突孔の例(衝突試験ISAS) - 衝突粒子 SUS 309 microm - 衝突速度 52 kms

HTV5号機によるセンサ機能のフライト実証

35cm

46cm

FY2013機能実証モデル

検出線幅 50 μm 検出線間隔 100 μm フィルム厚 lt 20 μm 有感領域 30times33cm 検出線総数 3300本

サイズ 50times39times4 cm (筐体を含む)

重量 約15kg(筐体を含む)

消費電力 2W(最大4W)(他センサ含む)

テレメトリ 02 bps

宇宙環境観測装置KASPERの一部としてデブリセンサSDMを搭載 FY2013に製作開始今年8月に打ち上げ予定)

まとめ(その1)

衛星不具合の主な原因は帯電放電シングルイベント放射線損傷である今後デブリ環境が重要になると予測される

静止軌道では商用衛星が多く運用されており宇宙環境の変動把握は重要この領域で運用する衛星が気を付けなければいけない環境として

1太陽フレアに伴う高エネルギー粒子 2太陽活動下降期による静止軌道電子の増加 3磁気嵐に伴う磁気圏尾部から注入する粒子 などがあげられる

まとめ(その2)

不具合軽減の取り組み bull 開発時は宇宙環境条件(トータルフラックス及び最悪条

件)を明確にし設計(冗長系柔軟性の設計ディレーティング及び運用モード寿命について研究)試験の充実検証の充実を図る

bull 運用段階に入ったならば宇宙環境を監視し警報等で故障を防ぐ

予測課題 bull 太陽フレアに伴う高エネルギー粒子発生後フラックス

ピーク値の推定

bull 衛星により不具合の起きる閾値は異なるが閾値をこえる急激な電子フラックスの増加と継続時間の予測

bull 局所的な磁気嵐に伴う磁気圏尾部から注入する粒子

宇宙環境グループは宇宙ステーションと衛星プロジェクトの安全な遂行に貢献しています

ご静聴ありがとうございました

補足資料

不具合原因の推移 bull 宇宙天気を大きく左右する要因の1つとして約11年の太陽活動変化が挙げられる

bull 太陽活動下降時期(太陽変動CME)と極大期(フレアCME)に衛星で不具合が増加するそれにより不具合原因の割合が変わる

-Koons et al The Impact of the Space Environment on Space Systems Aerospace Corp report no TR-99(1670)-1 20 July 1999 -2009 preliminary study (unpublished)

何故不具合は減らないか

bull 部品 放射線に対する感受性が高くなっている bull 微細化が進み同時にフォールトするノードが増え同時にエ

ラーとなる論理ノードやメモリセルが増加する微細化によってメモリセルは小さくなるので記憶容量当たりでみるとエラーの発生率は下がるしかし半導体チップの記憶容量やゲート数が増えるので半導体チップ当たりのエラー発生率は微細化とともに上昇するまた蓄積電荷が小さくなり感受性が高くなってきている

bull システム 大型化大電力化運用長期化 bull 1990年代末以降静止衛星の電力が10kWレベルになったしか

し設計検証技術データ蓄積が遅れている改善されつつあると推測される

放射線による影響の概要

粒子 エネルギー又はLET

代表的な影響

陽子 100keV-1MeV 1-10MeV 10-100MeV gt50MeV

表面損傷 表面材料と太陽電池の損傷 放射線損傷(電離非電離損傷の両方)センサーへのノイズ シングルイベント効果

電子 10-100keV gt100keV gt1MeV

表面帯電 深部帯電現象(deep-dielectric charging)センサーへのノイズ太陽電池の損傷 放射線損傷(電離)

重イオン gt1MeV-cm2mg シングルイベント効果

注エネルギー及びLETは個々の部品等により異なりますあくまでも目安です

耐放射線設計手順

軌道条件

ミッション期間

環境条件設定

トータルドーズの予測

1MeV電子換算被曝算出

NIELの換算

LETフルエンス算出

陽子フルエンス算出

対  策  の  検  討

対  策  の  検  討

対  策  の  検  討

放射線による劣化率予測

劣化率予測 特性予測

耐性データ

放射線による劣化率予測

耐性データ

劣化率予測アレイ出力劣化予測

感受性データ

シングルイベント発生率予測 致命度解析

衛星内質量分布

(2)

部品材料の選定

他の要因による劣化率予測

(2)(2) (3)

回路設計等NO

OK

アレイ構造 セル選定

他の要因による劣化率予測 アレイ設計(2)

(2) (2) (2) (3)

衛星内質量分布 部品選定(2)

(2) (2)(3)

NO

OK

NO

OK

(1) 環境モデルマージを含む(2) 部品レベルの検討(3) アセンブリレベルでの検討(4) 設計マージン環境モデル   マージを含め大丈夫か

トータルドーズ

太陽電池アレイの劣化

シングルイベント効果

回路設計

補足放射線太陽宇宙線銀河宇宙線

NEILを用いたダメージファクターの算出

対  策  の  検  討

放射線による劣化率予測

劣化率予測 特性予測

耐性データ

(2)

部品材料の選定

他の要因による劣化率予測

(2)(2) (3)

回路設計等NO

OK

衛星内質量分布 半導体デバイスの変位損傷

(1)

(4)

(4)

(4)

(4)

各軌道における放射線環境

1E+10

1E+11

1E+12

1E+13

1E+14

1E+15

1E+16

1E+17

1E+18

1E+19

1E+20

001 010 100 1000

捕捉

電子

の積

分フ

ルエ

ンス

[m

2 ]

エネルギー[MeV]

各軌道における電子捕捉積分フルエンス(3年間)

LEO

EOS GEO

MEO

GTO

GEO 軌道傾斜角 0deg 高度36000km GTO 軌道傾斜角 18deg 高度 360km~36000km MEO 軌道傾斜角 51deg 高度 10000km EOS 軌道傾斜角 98deg 高度705km LEO 軌道傾斜角 29deg 高度 600km

1E+12

1E+13

1E+14

1E+15

1E+16

1E+17

1E+18

1E+19

1E+20

01 10 100 1000

捕捉

陽子の

積分フルエン

ス[

m2 ]

エネルギー[MeV]

各軌道における捕捉陽子積分フルエンス(3年間)

MEO

GTO

GEO

EOS LEO

放射線による部品材料の影響

総照射線量 (TIDTotal Ionising Dose )

電離損傷

バイポーラTrの電流増幅率の低下リーク電流の増大

γ線で評価

トータルドーズ効果

変位損傷 (DDDisplacement Damage )または 非イオン化エネルギー損失 (NIELNon-Ionising Energy

Loss )

変位損傷(格子欠陥の生成)

電荷輸送効率の低下 (CCD)太陽電池の効率低下等

電子陽子により評価

シングルイベント効果

1個の荷電粒子の入射により発生する誤動作

ソフト(Latch-Up Burnout) エラー又は ソフト (Upset) エラー

陽子及び重イオンで評価

トータルドーズ効果

+ - + + - + - + - - + + + + -

ゲート酸化膜

電離

格子欠陥

正電荷捕獲

+ 正孔 - 電子

電極

(Silicon oxidenitride)

荷電粒子

反跳原子

ゲート絶縁膜中に電荷が蓄積することによるMOSトランジスタのしきい電圧(MOSトランジスタがオフからオンに変化するゲート電圧)の変化をもたらすただ

し最近の最先端チップはゲート絶縁膜がきわめて薄くなっているこのためゲート絶縁膜よりもフィールド絶縁膜(隣接するトランジスタを電気的に分離する絶縁膜)での電荷蓄積が相対的には大きな問題になってきている」

シングルイベント効果

メモリセルはNチャンネルとPチャンネルMOSFETより構成されメモリ情報は回路ノード12の電位の

高低により記録している空乏層の広がっているPN接合12の領域に

重イオンが入射した場合電荷の発生と空乏層内への少数キャリアの収集が起こるこの収集電荷量が回路の耐量を越えた場合(c)に示すように反転が起こる(ソフトエラー)一方pウエル-N基板接

合の空乏層内に電荷収集量が起こりえる耐性を越えると寄生的に存在するPNPNサイリスタ構造がオ

ンし電源と基板間に大電流が流れる状態が生じる(ラッチアップ)

シングルイベントメカニズム -陽子と重イオンの違い-

エラー発生率の計算

線エネルギー付与(LET) (linear energy transfer)

電離性放射線が物質中を通過する際飛程の単位長さ当りに平均して失うエネルギーをいう各種の放射線のうちX線γ線はLETが小さいので低LETといいα線中性子線その他重イオン核分裂破片のLETは大きいので高LETという MeVμmMeV(gcm2)やMeV(mgcm2)で表される

南大西洋異常(SAA) bull 地球の自転軸と磁気軸のずれ

darr bull 放射線帯が自転軸に対して非

対称

bull 南大西洋上空では放射線帯内帯が低高度に落ちてきているこの領域を南大西洋異常域(SAA South Atlantic Anomaly)と呼ぶ

bull 地球観測衛星ではSAAで放射線帯陽子の影響を受ける

Single Event Lachup

シングルイベントと陽子分布

MOS-1衛星(高度909km軌道傾斜角99度)で発生したシングルイベントと 陽子30MeV以上の等高線マップを重ね合わせた結果

NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)

bull 入射粒子が電離によらず与える損傷非イオン化損失

低軌道での電子フラックスと 不具合の発生場所

南大西洋異常(SAA)と極の角

高度800kmでの電子フラックス図極の角(polar horn)とSAAを示す

太陽粒子線 bull 太陽高エネルギー粒子線(SPE Solar Proton Events)は太陽フレア とコロナガス噴出 (CMECoronal Mass Ejections )により引き起こされる bull フレアのスペクトルは可変であるためあるエネルギー域における最悪状態イベントは必ずしも別のエネルギー域における最悪条件ではない 1972年8月のイベント 10~70MeVの粒子が最も多かった 1989年10のイベント 1972年8月のイベントに比べ低エネルギー領域 高エネルギー領域が明らかに激しかった

フルエンス 105 to 1011 cm-2

変動期間 1日から数日

ldquoBastiliardquo Solar Event 14 July 2000

Carrington Flare

84

(LW Townseed) Carrington Flare(1859年) Carrington Flare による30MeV以上トータルFluenceを118times109cm-2で規格化 ~1989年フレアの約13倍(シングルイベントの評価で使用) ~1991年フレアの約9倍 2012年7月23日にキャリントンイベントとほぼ同等の爆発現象が太陽あるいは太陽の周りで起きていたということがNASAの太陽観測衛星「STEREO」の解析から発表された

放射線対策 bull 放射線シールドを付加し放射線を減衰させる

bull 放射線耐性の強い部品(SOI(Silicon On Insulator)技術による耐放射線部品)材料に変更する

bull 放射線による損傷を吸収するために回路または構造上のマージンを持たせる bull ソフト的なエラーに対しては エラー検出訂正機能や多数決

機能等でソフト的エラーが起きてもシステムが機能するようにしたフォールトトレラント機能を付けて対処する ICのハード的故障に対しては ラッチアップ耐性の強い部品を選定するしかないが 電流制限回路を付ける対策も採られる パワーMOSFETに対しては部品選定 電源電圧を規格値の半分以下に落とす等の対策を採る

SOI技術

表面帯電への対策例

表面の物体間を導線で結線する

太陽電池のカバーガラスを導電性被膜付き(酸化インジウムITO)にする

熱制御材表面にITOを被覆する

熱制御材は高誘電率のテフロンの使用を避け 高伝導度耐環境性に優れたブラックカプトンを使用

イオンエンジンの中和器で能動帯電制御

内部帯電への対策例

アルミで3mm厚さに相当するシールドで囲む(Faraday Cage)

テフロンやカプトンなどの誘電体材料の内部での使用量を最小限に押さえる

回路基板やコンフォーマルコーティングは誘電体なので電流リークパス(1012Ωcmまたは1012Ωcm2

程度)を必ずつける

特にスポット的な放射線シールドの金属材には必ず電流リークパスをつける

帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備

衛星モデル作成

材料物性テーブル設定

宇宙環境パラメータ設定

Converter

転送ディレクトリ 解析データファイル

転送

解析ディレクトリ生成 解析結果 進行状況チェック ファイル操作

MUSCAT 解析エンジン

解析結果 表示

パラメトリックラン

オプション 解析

大型パネル実験(35mtimes11m) クーポンパネル実験(26cmtimes16cm)

環境模擬試験 環境模擬試験

MUSCATに使用する物性値設計標準制定のための知見などを得ることを目的に軌道上の宇宙環境を模擬した地上試験を行っている これらの試験では放電の発生頻度や電圧閾値放電発生による太陽電池パネルや搭載機器への影響を検証している

放射線計測装置の原理

bull その粒子が物質を通過する際のエネルギー損出率が粒子の電荷(原子番号)Zの二乗に比例すること(Bethe-Blochの式)を利用する

S2

E

ΔE Ersquo

S1 S3

  • 宇宙機の設計のための宇宙環境
  • 話の流れ
  • 話の流れ
  • TEDA(技術データ取得装置)(国産部品の宇宙環境での実証の必要性)
  • ETS-VTEDA(技術データ取得装置)誕生前の部品の宇宙実証の背景
  • スライド番号 6
  • スライド番号 7
  • スライド番号 8
  • スライド番号 9
  • 図6太陽黒点数と静止軌道電子 (>04MeV ) Flux の変動 (ETS-V搭載DOMによる観測)
  • スライド番号 11
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの開発(理研東大と共同で宇宙環境計測の充実)
  • ETS-VI(きく6号)打ち上がったがGEOに行かずGTOに留まる
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの成果
  • スライド番号 15
  • スライド番号 16
  • スライド番号 17
  • ADEOS搭載TEDA(世界2番目の異常宇宙線ACR)
  • BBND (ボナー球中性子検出器)
  • スライド番号 20
  • ISS搭載BBNDの成果(約8か月)
  • スライド番号 22
  • MDS-1搭載放射線吸収線量モニタ(SDOM)
  • 放射線帯変動モデルの開発MDS-1 065 MeV 電子フラックス
  • 変動パラメータの選択 (1 cycle solar activity)
  • 変動パラメータ- Tavg の定義-
  • 065MeV 電子 L値-Tavg マップ
  • 13MeV 陽子 L値-Tavg マップ
  • 電子観測とMDS-1モデルの比較
  • 放射線帯フラックスピークの変動
  • 陽子観測とモデルの比較
  • 電子(035~078MeV) 1日の変動予測GOSAT軌道
  • 電子(035~078MeV) 変動の信頼度水準(1日)GOSAT軌道
  • MDS-1 model と AE-8 modelとの比較1日
  • 話の流れ
  • 2003年10月 みどり号の全損事故(複合現象)
  • 衛星帯電の基本式
  • 内部帯電
  • パドルでの帯電放電メカニズム
  • スライド番号 40
  • スライド番号 41
  • スライド番号 42
  • データ中継技術衛星DRTS (こだま)の不具合
  • DRTS ESA スパイクノイズと電子フルエンスの比較(赤の丸が異常検知)
  • 不具合が宇宙環境によるものであるか判断する際のポイント
  • 話の流れ
  • 宇宙天気のリスク-宇宙環境によるシステムへの影響 -
  • NASAの報告-GNampCに注目-
  • NASAの報告(続き)
  • 宇宙環境を原因とする不具合の割合-JAXAの場合-
  • 不具合発生部位の割合 
  • Satellite News Digest -静止軌道不具合-
  • 太陽活動と静止軌道衛星不具合例
  • スライド番号 54
  • スライド番号 55
  • スライド番号 56
  • 衛星開発段階における対策
  • 運用における対応
  • 話の流れ
  • スライド番号 60
  • スライド番号 61
  • まとめ(その1)
  • まとめ(その2)
  • 宇宙環境グループは宇宙ステーションと衛星プロジェクトの安全な遂行に貢献しています
  • 補足資料
  • 不具合原因の推移
  • 何故不具合は減らないか
  • 放射線による影響の概要
  • 耐放射線設計手順
  • 各軌道における放射線環境
  • 放射線による部品材料の影響
  • トータルドーズ効果
  • シングルイベント効果
  • シングルイベントメカニズム-陽子と重イオンの違い-
  • エラー発生率の計算
  • 線エネルギー付与(LET)(linear energy transfer)
  • 南大西洋異常(SAA)
  • Single Event Lachup
  • シングルイベントと陽子分布
  • NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)
  • 低軌道での電子フラックスと不具合の発生場所
  • 南大西洋異常(SAA)と極の角
  • スライド番号 83
  • Carrington Flare
  • 放射線対策
  • スライド番号 86
  • スライド番号 87
  • 帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備
  • スライド番号 89
  • 放射線計測装置の原理
Page 44: 宇宙機の設計のための宇宙環境の方針から国産部品開発(42品種)が実施された。 . 半導体電子部品は耐放射線性を加味して、人工衛星(特に

DRTS ESA スパイクノイズと 電子フルエンスの比較(赤の丸が異常検知)

larr閾値

この事実を基に静止軌道における内部帯電警報システムを構築 2004年4月より運用開始

不具合が宇宙環境によるものであるか 判断する際のポイント

不具合の発生した時刻に太陽フレアや磁気嵐等の宇宙天気の大きな変動が起きていれば不具合に関係している可能性が高い但し帯電など放射線の積算的効果の伴う現象については発生から1週間位さかのぼり環境がどのように推移してきたかを考慮する必要がある

磁気嵐が起きると静止軌道に急激な粒子の増加現象が起きこれにより衛星帯電が引き起こされたりする(予測に利用可能)

地方時(真夜中や朝方か)や季節(春秋)を考慮する

低軌道衛星においてはSAA外帯のrdquo角ldquo及び極通過時に不具合

が起きやすいので衛星の位置(緯度経度)が重要

事象を把握する上で単発現象か数回起きている現象か周期

(時間同じ軌道等)的に発生している現象か

話の流れ

技術データ取得装置(TEDA)の概要と成果 bull 主な成果 bull 不具合解析例

宇宙天気のリスクと対策 bull 宇宙環境による衛星システムへの影響 bull 宇宙環境を原因とする不具合の割合推移部位 bull 静止軌道不具合 bull 対策

今後必要な観測項目

まとめ

宇宙天気のリスク -宇宙環境によるシステムへの影響 -

プラズマ (IRI)

帯電 (MUSCAT)

衝突 (AUTODY)

抗力 表面劣化

紫外線X線 中性粒子 (MSIS)

放射線粒子 (AE8AP8JPLSHIELDO

SE-2)

メテオロイドデブリ (MASTER2005

ORDEM)

電離損傷 変位損傷

bull電子回路の劣化 bull光部品の劣化

bull太陽電池セルの劣化

SEU (CREME96)

bullデータエラー bull画像ノイズ

bullシステム停止 bull回路損傷

bull熱的電気的光学的特性の劣化

bull構造の劣化 bullコンタミ

電磁パルス bull電源出力低下

bull損傷

bullトルク bull軌道落下

bull構造 損傷 bull減圧

bull電磁パルス

NASAの報告 -GNampCに注目-

1974年から1994年に起きたNASAと空軍の衛星故障の内20~25が宇宙環境に起因していたと報告

1990年から2001年に米国欧州カナダ日本の企業や政府機関が開発した衛星を調べた過去の宇宙ミション損失の大部分はロケットの失敗であったが1998年衛星損失の大部分は軌道上の衛星障害となっている多くの最近の異常は太陽電池アレイ及びバッテリの危険が増加している静止軌道通信衛星の設計寿命はこのサブシステムの故障の危険が増加している

喪失等の大きな誘導制御(GNampC)の不具合に注目 GNampC不具合の内宇宙環境による 不具合は約3と報告されている

軌道上衛星のタイプ別数

NASAの報告(続き)

衛星設計寿命における不具合発生時期 事故率と軌道

軌道別の衛星数 サブシステム不具合

宇宙環境を原因とする不具合の割合 -JAXAの場合-

2002年~2008年に運用された軌道上不具合情報が比較的充実している11衛星(利用衛星7機科学衛星4機)の結果宇宙環境によるも

のは約15過去のデータよりも割合が少ない

合計83件 合計35件

(1)利用衛星 (2)科学衛星

設計検討 不足 48

製造不良 8

軌道上環境 17

偶発故障 6

調査中 13

原因不明 8

設計検討

不足 61

製造不良 4

軌道上環境 11

偶発故障 6

調査中 9

原因不明 9

不具合発生部位の割合

不具合発生部位の割合

Brent Robertson Eric Stoneking ( 1990-2001NASA Goddard Space Flight Center )

Satellite News Digest -静止軌道不具合-

Satellite News Digest (SND) (http wwwsqt-indexcouk) で1997年~2009年の期間に静止軌道で95件の不具合が報告されている その内運用ミスや設計ミスなどを除くと32件(約33)は宇宙環境によるものであった 過去のデータより割合が多い

Choiら1)はこれら不具合の地方時と季節依存性を確認した その結果2100LT~900LTで約72の不具合が発生し900LT~2100LTは9件(約28)であった またこの9件は全て姿勢制御の不具合だった 静止軌道衛星不具合のほとんどは真夜中と朝方で起きており磁気嵐に伴い磁気圏尾部から注入した粒子による表面帯電が不具合の主原因と結論づけている

1) Ho-sung Choi et al Analysis of GEO spacecraft anomalies Space weather relationships Space Weather Vol 9 S06001

太陽活動と静止軌道衛星不具合例

ANIK-E1E2

ANIK-E1

複数の衛星で故障

Galaxy-15

帯電放電不具合 -ANIK-E1amp2Telstar401-

Jan 1994 ANIK-E1 amp E2事故時の環境 - Joe H Allen

1週間

太陽活動下降時期の電子増加

2MeV以上電子

copyNOAA Web

フラックスが3桁急増

Jan 1997 Telstar401事故時の環境

静止軌道の急激な電子増加

太陽極大期太陽フレアによる衛星障害 - 2003年10月~11月-

10486981048698 永久故障 4 10486981048698 安全モード又は運用を一時停止 31 10486981048698 データ内容の「誤り」の増加搭載コンピュータの誤動作 5

httpwwwsat-ndcomfailures等のデータによる 合計 40件

-Barbieri and Mahmot

米国極軌道気象衛星NOAA-17の改良型マイクロ波観測装置AMSU-A1 (Advanced Microwave Sounding Unit)のスキャナーが永久故障 米国気象衛星GOES -8号のX線センサがOFFになり復帰しなくなった

e-birdに深刻な不具合が発生 不具合は20本のトランスポンダ全てに影響

火星周回中の探査機「マーズオデッセイ (Mars Odyssey)」の観測機器放射線観測装置「Martian Radiation Environment Experiment (MARIE)」が太陽活動の影響により10月28日から適切に作動しなくなった データ中継技術衛星(DRTS)「こだま」 太陽捕捉モードに移行

太陽陽子

帯電放電不具合-Galaxy15(局所的的現象)- 2

5 M

eV

65

MeV

11

5 M

eV

GOES 14 ----- GOES 15 ----- GOES 11 -----

Satellite Locations

Galaxy 15 anomaly

2010年4月5日9時48分UTCは磁気嵐及びCMEが発生するなど宇宙環境は非常に荒れていたGalaxy15衛星は真夜中側に位置し宇宙環境の影響を受けやすい

位置にいたことから宇宙環境による不具合である可能性が高いということで原因追及がなされた高エネルギー粒子が引き起こす代表的な衛星不具合現象として3つ(表面帯電内部帯電SEUシングルイベントバーンアウトSEL)の可能性を検討した

チームの報告書によると磁気圏尾部からの熱電子の流入による放電が原因であったと結論付けられたGalaxy15衛星の近くにはGOES-11衛星が位置していたがGOES-11衛星には不具合を発生しておらず本現象は局所的な現象と推測される

衛星開発段階における対策 JAXAの不具合解析の結論

bull 2002年~2008年に運用された11機の衛星不具合を解析 宇宙環境による不具合は偶発故障のみ(全体の約15)確率的には想定範囲内ではあるがその影響を最小限とするためディレーティング運用モード寿命についての研究に取り組む

bull 設計基準試験の充実検証確認の強化技術成熟度(TRL)評価の徹底各々の境界制約条件の明示化等により検証不足抜けの防止有効なピアレビューに結びつける

冗長系(同じハードウェア機能の冗長)柔軟性の設計(ソフトハードの対応)

bull 従来の故障が起きないようにする設計に対してGOSAT(いぶき)では重要部

品を二重化することにより故障する可能性は上がるが故障しても衛星バスの運用や観測が続行できる可能性がより高くなるように設計した

運用における対応

bull 宇宙天気監視ーロケット打ち上げ及び宇宙飛行士支援 数日前に今後の宇宙環境の推移を把握(MXレベルのフレアの発生確率)

bull X線の増加で太陽フレア発生を検知したら高エネルギー粒子の発生をいつまで 気を付ければ良いか判断(発生位置で大凡を推定するが課題は多い) SPEが発生した場合(特に10MeV以上100MeV 以上の陽

子)最大値フラックス値の推定 ピーク値を予測(特に閾値に近くなった時に重要)

bull 衛星運用 bull 太陽フレア磁気嵐警報(X線陽子及びkpが閾値を超えた

時に警報を発信)2003年10月より運用開始 bull 内部帯電警報(2日後の静止軌道上の高エネルギー電子(>1

Me) の増加を予測し 閾値を超えた時に警報を発信) 2004年4月より運用開始

話の流れ

技術データ取得装置(TEDA)の概要と成果 bull 主な成果 bull 不具合解析例

宇宙天気のリスクと対策 bull 宇宙環境による衛星システムへの影響 bull 宇宙環境を原因とする不具合の割合推移部位 bull 静止軌道不具合 bull 対策

今後必要な観測項目

まとめ

計測対象計測項目 計測対象 粒径100μm以上のデブリメテオロイド 計測項目 デブリ粒径衝突頻度

基本原理

厚さ約125μmの絶縁性のポリイミドフィルム表面に 100μm周期で直線状の細長い導線(太さ50μm)パターンを形成導線の破断を電気的に検知することによりデブリの衝突(貫通)を検知する破断した導線の数導線の幅ピッチからデブリサイズを計測する

微小デブリ計測技術の概要

衝突孔の例(衝突試験ISAS) - 衝突粒子 SUS 309 microm - 衝突速度 52 kms

HTV5号機によるセンサ機能のフライト実証

35cm

46cm

FY2013機能実証モデル

検出線幅 50 μm 検出線間隔 100 μm フィルム厚 lt 20 μm 有感領域 30times33cm 検出線総数 3300本

サイズ 50times39times4 cm (筐体を含む)

重量 約15kg(筐体を含む)

消費電力 2W(最大4W)(他センサ含む)

テレメトリ 02 bps

宇宙環境観測装置KASPERの一部としてデブリセンサSDMを搭載 FY2013に製作開始今年8月に打ち上げ予定)

まとめ(その1)

衛星不具合の主な原因は帯電放電シングルイベント放射線損傷である今後デブリ環境が重要になると予測される

静止軌道では商用衛星が多く運用されており宇宙環境の変動把握は重要この領域で運用する衛星が気を付けなければいけない環境として

1太陽フレアに伴う高エネルギー粒子 2太陽活動下降期による静止軌道電子の増加 3磁気嵐に伴う磁気圏尾部から注入する粒子 などがあげられる

まとめ(その2)

不具合軽減の取り組み bull 開発時は宇宙環境条件(トータルフラックス及び最悪条

件)を明確にし設計(冗長系柔軟性の設計ディレーティング及び運用モード寿命について研究)試験の充実検証の充実を図る

bull 運用段階に入ったならば宇宙環境を監視し警報等で故障を防ぐ

予測課題 bull 太陽フレアに伴う高エネルギー粒子発生後フラックス

ピーク値の推定

bull 衛星により不具合の起きる閾値は異なるが閾値をこえる急激な電子フラックスの増加と継続時間の予測

bull 局所的な磁気嵐に伴う磁気圏尾部から注入する粒子

宇宙環境グループは宇宙ステーションと衛星プロジェクトの安全な遂行に貢献しています

ご静聴ありがとうございました

補足資料

不具合原因の推移 bull 宇宙天気を大きく左右する要因の1つとして約11年の太陽活動変化が挙げられる

bull 太陽活動下降時期(太陽変動CME)と極大期(フレアCME)に衛星で不具合が増加するそれにより不具合原因の割合が変わる

-Koons et al The Impact of the Space Environment on Space Systems Aerospace Corp report no TR-99(1670)-1 20 July 1999 -2009 preliminary study (unpublished)

何故不具合は減らないか

bull 部品 放射線に対する感受性が高くなっている bull 微細化が進み同時にフォールトするノードが増え同時にエ

ラーとなる論理ノードやメモリセルが増加する微細化によってメモリセルは小さくなるので記憶容量当たりでみるとエラーの発生率は下がるしかし半導体チップの記憶容量やゲート数が増えるので半導体チップ当たりのエラー発生率は微細化とともに上昇するまた蓄積電荷が小さくなり感受性が高くなってきている

bull システム 大型化大電力化運用長期化 bull 1990年代末以降静止衛星の電力が10kWレベルになったしか

し設計検証技術データ蓄積が遅れている改善されつつあると推測される

放射線による影響の概要

粒子 エネルギー又はLET

代表的な影響

陽子 100keV-1MeV 1-10MeV 10-100MeV gt50MeV

表面損傷 表面材料と太陽電池の損傷 放射線損傷(電離非電離損傷の両方)センサーへのノイズ シングルイベント効果

電子 10-100keV gt100keV gt1MeV

表面帯電 深部帯電現象(deep-dielectric charging)センサーへのノイズ太陽電池の損傷 放射線損傷(電離)

重イオン gt1MeV-cm2mg シングルイベント効果

注エネルギー及びLETは個々の部品等により異なりますあくまでも目安です

耐放射線設計手順

軌道条件

ミッション期間

環境条件設定

トータルドーズの予測

1MeV電子換算被曝算出

NIELの換算

LETフルエンス算出

陽子フルエンス算出

対  策  の  検  討

対  策  の  検  討

対  策  の  検  討

放射線による劣化率予測

劣化率予測 特性予測

耐性データ

放射線による劣化率予測

耐性データ

劣化率予測アレイ出力劣化予測

感受性データ

シングルイベント発生率予測 致命度解析

衛星内質量分布

(2)

部品材料の選定

他の要因による劣化率予測

(2)(2) (3)

回路設計等NO

OK

アレイ構造 セル選定

他の要因による劣化率予測 アレイ設計(2)

(2) (2) (2) (3)

衛星内質量分布 部品選定(2)

(2) (2)(3)

NO

OK

NO

OK

(1) 環境モデルマージを含む(2) 部品レベルの検討(3) アセンブリレベルでの検討(4) 設計マージン環境モデル   マージを含め大丈夫か

トータルドーズ

太陽電池アレイの劣化

シングルイベント効果

回路設計

補足放射線太陽宇宙線銀河宇宙線

NEILを用いたダメージファクターの算出

対  策  の  検  討

放射線による劣化率予測

劣化率予測 特性予測

耐性データ

(2)

部品材料の選定

他の要因による劣化率予測

(2)(2) (3)

回路設計等NO

OK

衛星内質量分布 半導体デバイスの変位損傷

(1)

(4)

(4)

(4)

(4)

各軌道における放射線環境

1E+10

1E+11

1E+12

1E+13

1E+14

1E+15

1E+16

1E+17

1E+18

1E+19

1E+20

001 010 100 1000

捕捉

電子

の積

分フ

ルエ

ンス

[m

2 ]

エネルギー[MeV]

各軌道における電子捕捉積分フルエンス(3年間)

LEO

EOS GEO

MEO

GTO

GEO 軌道傾斜角 0deg 高度36000km GTO 軌道傾斜角 18deg 高度 360km~36000km MEO 軌道傾斜角 51deg 高度 10000km EOS 軌道傾斜角 98deg 高度705km LEO 軌道傾斜角 29deg 高度 600km

1E+12

1E+13

1E+14

1E+15

1E+16

1E+17

1E+18

1E+19

1E+20

01 10 100 1000

捕捉

陽子の

積分フルエン

ス[

m2 ]

エネルギー[MeV]

各軌道における捕捉陽子積分フルエンス(3年間)

MEO

GTO

GEO

EOS LEO

放射線による部品材料の影響

総照射線量 (TIDTotal Ionising Dose )

電離損傷

バイポーラTrの電流増幅率の低下リーク電流の増大

γ線で評価

トータルドーズ効果

変位損傷 (DDDisplacement Damage )または 非イオン化エネルギー損失 (NIELNon-Ionising Energy

Loss )

変位損傷(格子欠陥の生成)

電荷輸送効率の低下 (CCD)太陽電池の効率低下等

電子陽子により評価

シングルイベント効果

1個の荷電粒子の入射により発生する誤動作

ソフト(Latch-Up Burnout) エラー又は ソフト (Upset) エラー

陽子及び重イオンで評価

トータルドーズ効果

+ - + + - + - + - - + + + + -

ゲート酸化膜

電離

格子欠陥

正電荷捕獲

+ 正孔 - 電子

電極

(Silicon oxidenitride)

荷電粒子

反跳原子

ゲート絶縁膜中に電荷が蓄積することによるMOSトランジスタのしきい電圧(MOSトランジスタがオフからオンに変化するゲート電圧)の変化をもたらすただ

し最近の最先端チップはゲート絶縁膜がきわめて薄くなっているこのためゲート絶縁膜よりもフィールド絶縁膜(隣接するトランジスタを電気的に分離する絶縁膜)での電荷蓄積が相対的には大きな問題になってきている」

シングルイベント効果

メモリセルはNチャンネルとPチャンネルMOSFETより構成されメモリ情報は回路ノード12の電位の

高低により記録している空乏層の広がっているPN接合12の領域に

重イオンが入射した場合電荷の発生と空乏層内への少数キャリアの収集が起こるこの収集電荷量が回路の耐量を越えた場合(c)に示すように反転が起こる(ソフトエラー)一方pウエル-N基板接

合の空乏層内に電荷収集量が起こりえる耐性を越えると寄生的に存在するPNPNサイリスタ構造がオ

ンし電源と基板間に大電流が流れる状態が生じる(ラッチアップ)

シングルイベントメカニズム -陽子と重イオンの違い-

エラー発生率の計算

線エネルギー付与(LET) (linear energy transfer)

電離性放射線が物質中を通過する際飛程の単位長さ当りに平均して失うエネルギーをいう各種の放射線のうちX線γ線はLETが小さいので低LETといいα線中性子線その他重イオン核分裂破片のLETは大きいので高LETという MeVμmMeV(gcm2)やMeV(mgcm2)で表される

南大西洋異常(SAA) bull 地球の自転軸と磁気軸のずれ

darr bull 放射線帯が自転軸に対して非

対称

bull 南大西洋上空では放射線帯内帯が低高度に落ちてきているこの領域を南大西洋異常域(SAA South Atlantic Anomaly)と呼ぶ

bull 地球観測衛星ではSAAで放射線帯陽子の影響を受ける

Single Event Lachup

シングルイベントと陽子分布

MOS-1衛星(高度909km軌道傾斜角99度)で発生したシングルイベントと 陽子30MeV以上の等高線マップを重ね合わせた結果

NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)

bull 入射粒子が電離によらず与える損傷非イオン化損失

低軌道での電子フラックスと 不具合の発生場所

南大西洋異常(SAA)と極の角

高度800kmでの電子フラックス図極の角(polar horn)とSAAを示す

太陽粒子線 bull 太陽高エネルギー粒子線(SPE Solar Proton Events)は太陽フレア とコロナガス噴出 (CMECoronal Mass Ejections )により引き起こされる bull フレアのスペクトルは可変であるためあるエネルギー域における最悪状態イベントは必ずしも別のエネルギー域における最悪条件ではない 1972年8月のイベント 10~70MeVの粒子が最も多かった 1989年10のイベント 1972年8月のイベントに比べ低エネルギー領域 高エネルギー領域が明らかに激しかった

フルエンス 105 to 1011 cm-2

変動期間 1日から数日

ldquoBastiliardquo Solar Event 14 July 2000

Carrington Flare

84

(LW Townseed) Carrington Flare(1859年) Carrington Flare による30MeV以上トータルFluenceを118times109cm-2で規格化 ~1989年フレアの約13倍(シングルイベントの評価で使用) ~1991年フレアの約9倍 2012年7月23日にキャリントンイベントとほぼ同等の爆発現象が太陽あるいは太陽の周りで起きていたということがNASAの太陽観測衛星「STEREO」の解析から発表された

放射線対策 bull 放射線シールドを付加し放射線を減衰させる

bull 放射線耐性の強い部品(SOI(Silicon On Insulator)技術による耐放射線部品)材料に変更する

bull 放射線による損傷を吸収するために回路または構造上のマージンを持たせる bull ソフト的なエラーに対しては エラー検出訂正機能や多数決

機能等でソフト的エラーが起きてもシステムが機能するようにしたフォールトトレラント機能を付けて対処する ICのハード的故障に対しては ラッチアップ耐性の強い部品を選定するしかないが 電流制限回路を付ける対策も採られる パワーMOSFETに対しては部品選定 電源電圧を規格値の半分以下に落とす等の対策を採る

SOI技術

表面帯電への対策例

表面の物体間を導線で結線する

太陽電池のカバーガラスを導電性被膜付き(酸化インジウムITO)にする

熱制御材表面にITOを被覆する

熱制御材は高誘電率のテフロンの使用を避け 高伝導度耐環境性に優れたブラックカプトンを使用

イオンエンジンの中和器で能動帯電制御

内部帯電への対策例

アルミで3mm厚さに相当するシールドで囲む(Faraday Cage)

テフロンやカプトンなどの誘電体材料の内部での使用量を最小限に押さえる

回路基板やコンフォーマルコーティングは誘電体なので電流リークパス(1012Ωcmまたは1012Ωcm2

程度)を必ずつける

特にスポット的な放射線シールドの金属材には必ず電流リークパスをつける

帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備

衛星モデル作成

材料物性テーブル設定

宇宙環境パラメータ設定

Converter

転送ディレクトリ 解析データファイル

転送

解析ディレクトリ生成 解析結果 進行状況チェック ファイル操作

MUSCAT 解析エンジン

解析結果 表示

パラメトリックラン

オプション 解析

大型パネル実験(35mtimes11m) クーポンパネル実験(26cmtimes16cm)

環境模擬試験 環境模擬試験

MUSCATに使用する物性値設計標準制定のための知見などを得ることを目的に軌道上の宇宙環境を模擬した地上試験を行っている これらの試験では放電の発生頻度や電圧閾値放電発生による太陽電池パネルや搭載機器への影響を検証している

放射線計測装置の原理

bull その粒子が物質を通過する際のエネルギー損出率が粒子の電荷(原子番号)Zの二乗に比例すること(Bethe-Blochの式)を利用する

S2

E

ΔE Ersquo

S1 S3

  • 宇宙機の設計のための宇宙環境
  • 話の流れ
  • 話の流れ
  • TEDA(技術データ取得装置)(国産部品の宇宙環境での実証の必要性)
  • ETS-VTEDA(技術データ取得装置)誕生前の部品の宇宙実証の背景
  • スライド番号 6
  • スライド番号 7
  • スライド番号 8
  • スライド番号 9
  • 図6太陽黒点数と静止軌道電子 (>04MeV ) Flux の変動 (ETS-V搭載DOMによる観測)
  • スライド番号 11
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの開発(理研東大と共同で宇宙環境計測の充実)
  • ETS-VI(きく6号)打ち上がったがGEOに行かずGTOに留まる
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの成果
  • スライド番号 15
  • スライド番号 16
  • スライド番号 17
  • ADEOS搭載TEDA(世界2番目の異常宇宙線ACR)
  • BBND (ボナー球中性子検出器)
  • スライド番号 20
  • ISS搭載BBNDの成果(約8か月)
  • スライド番号 22
  • MDS-1搭載放射線吸収線量モニタ(SDOM)
  • 放射線帯変動モデルの開発MDS-1 065 MeV 電子フラックス
  • 変動パラメータの選択 (1 cycle solar activity)
  • 変動パラメータ- Tavg の定義-
  • 065MeV 電子 L値-Tavg マップ
  • 13MeV 陽子 L値-Tavg マップ
  • 電子観測とMDS-1モデルの比較
  • 放射線帯フラックスピークの変動
  • 陽子観測とモデルの比較
  • 電子(035~078MeV) 1日の変動予測GOSAT軌道
  • 電子(035~078MeV) 変動の信頼度水準(1日)GOSAT軌道
  • MDS-1 model と AE-8 modelとの比較1日
  • 話の流れ
  • 2003年10月 みどり号の全損事故(複合現象)
  • 衛星帯電の基本式
  • 内部帯電
  • パドルでの帯電放電メカニズム
  • スライド番号 40
  • スライド番号 41
  • スライド番号 42
  • データ中継技術衛星DRTS (こだま)の不具合
  • DRTS ESA スパイクノイズと電子フルエンスの比較(赤の丸が異常検知)
  • 不具合が宇宙環境によるものであるか判断する際のポイント
  • 話の流れ
  • 宇宙天気のリスク-宇宙環境によるシステムへの影響 -
  • NASAの報告-GNampCに注目-
  • NASAの報告(続き)
  • 宇宙環境を原因とする不具合の割合-JAXAの場合-
  • 不具合発生部位の割合 
  • Satellite News Digest -静止軌道不具合-
  • 太陽活動と静止軌道衛星不具合例
  • スライド番号 54
  • スライド番号 55
  • スライド番号 56
  • 衛星開発段階における対策
  • 運用における対応
  • 話の流れ
  • スライド番号 60
  • スライド番号 61
  • まとめ(その1)
  • まとめ(その2)
  • 宇宙環境グループは宇宙ステーションと衛星プロジェクトの安全な遂行に貢献しています
  • 補足資料
  • 不具合原因の推移
  • 何故不具合は減らないか
  • 放射線による影響の概要
  • 耐放射線設計手順
  • 各軌道における放射線環境
  • 放射線による部品材料の影響
  • トータルドーズ効果
  • シングルイベント効果
  • シングルイベントメカニズム-陽子と重イオンの違い-
  • エラー発生率の計算
  • 線エネルギー付与(LET)(linear energy transfer)
  • 南大西洋異常(SAA)
  • Single Event Lachup
  • シングルイベントと陽子分布
  • NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)
  • 低軌道での電子フラックスと不具合の発生場所
  • 南大西洋異常(SAA)と極の角
  • スライド番号 83
  • Carrington Flare
  • 放射線対策
  • スライド番号 86
  • スライド番号 87
  • 帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備
  • スライド番号 89
  • 放射線計測装置の原理
Page 45: 宇宙機の設計のための宇宙環境の方針から国産部品開発(42品種)が実施された。 . 半導体電子部品は耐放射線性を加味して、人工衛星(特に

不具合が宇宙環境によるものであるか 判断する際のポイント

不具合の発生した時刻に太陽フレアや磁気嵐等の宇宙天気の大きな変動が起きていれば不具合に関係している可能性が高い但し帯電など放射線の積算的効果の伴う現象については発生から1週間位さかのぼり環境がどのように推移してきたかを考慮する必要がある

磁気嵐が起きると静止軌道に急激な粒子の増加現象が起きこれにより衛星帯電が引き起こされたりする(予測に利用可能)

地方時(真夜中や朝方か)や季節(春秋)を考慮する

低軌道衛星においてはSAA外帯のrdquo角ldquo及び極通過時に不具合

が起きやすいので衛星の位置(緯度経度)が重要

事象を把握する上で単発現象か数回起きている現象か周期

(時間同じ軌道等)的に発生している現象か

話の流れ

技術データ取得装置(TEDA)の概要と成果 bull 主な成果 bull 不具合解析例

宇宙天気のリスクと対策 bull 宇宙環境による衛星システムへの影響 bull 宇宙環境を原因とする不具合の割合推移部位 bull 静止軌道不具合 bull 対策

今後必要な観測項目

まとめ

宇宙天気のリスク -宇宙環境によるシステムへの影響 -

プラズマ (IRI)

帯電 (MUSCAT)

衝突 (AUTODY)

抗力 表面劣化

紫外線X線 中性粒子 (MSIS)

放射線粒子 (AE8AP8JPLSHIELDO

SE-2)

メテオロイドデブリ (MASTER2005

ORDEM)

電離損傷 変位損傷

bull電子回路の劣化 bull光部品の劣化

bull太陽電池セルの劣化

SEU (CREME96)

bullデータエラー bull画像ノイズ

bullシステム停止 bull回路損傷

bull熱的電気的光学的特性の劣化

bull構造の劣化 bullコンタミ

電磁パルス bull電源出力低下

bull損傷

bullトルク bull軌道落下

bull構造 損傷 bull減圧

bull電磁パルス

NASAの報告 -GNampCに注目-

1974年から1994年に起きたNASAと空軍の衛星故障の内20~25が宇宙環境に起因していたと報告

1990年から2001年に米国欧州カナダ日本の企業や政府機関が開発した衛星を調べた過去の宇宙ミション損失の大部分はロケットの失敗であったが1998年衛星損失の大部分は軌道上の衛星障害となっている多くの最近の異常は太陽電池アレイ及びバッテリの危険が増加している静止軌道通信衛星の設計寿命はこのサブシステムの故障の危険が増加している

喪失等の大きな誘導制御(GNampC)の不具合に注目 GNampC不具合の内宇宙環境による 不具合は約3と報告されている

軌道上衛星のタイプ別数

NASAの報告(続き)

衛星設計寿命における不具合発生時期 事故率と軌道

軌道別の衛星数 サブシステム不具合

宇宙環境を原因とする不具合の割合 -JAXAの場合-

2002年~2008年に運用された軌道上不具合情報が比較的充実している11衛星(利用衛星7機科学衛星4機)の結果宇宙環境によるも

のは約15過去のデータよりも割合が少ない

合計83件 合計35件

(1)利用衛星 (2)科学衛星

設計検討 不足 48

製造不良 8

軌道上環境 17

偶発故障 6

調査中 13

原因不明 8

設計検討

不足 61

製造不良 4

軌道上環境 11

偶発故障 6

調査中 9

原因不明 9

不具合発生部位の割合

不具合発生部位の割合

Brent Robertson Eric Stoneking ( 1990-2001NASA Goddard Space Flight Center )

Satellite News Digest -静止軌道不具合-

Satellite News Digest (SND) (http wwwsqt-indexcouk) で1997年~2009年の期間に静止軌道で95件の不具合が報告されている その内運用ミスや設計ミスなどを除くと32件(約33)は宇宙環境によるものであった 過去のデータより割合が多い

Choiら1)はこれら不具合の地方時と季節依存性を確認した その結果2100LT~900LTで約72の不具合が発生し900LT~2100LTは9件(約28)であった またこの9件は全て姿勢制御の不具合だった 静止軌道衛星不具合のほとんどは真夜中と朝方で起きており磁気嵐に伴い磁気圏尾部から注入した粒子による表面帯電が不具合の主原因と結論づけている

1) Ho-sung Choi et al Analysis of GEO spacecraft anomalies Space weather relationships Space Weather Vol 9 S06001

太陽活動と静止軌道衛星不具合例

ANIK-E1E2

ANIK-E1

複数の衛星で故障

Galaxy-15

帯電放電不具合 -ANIK-E1amp2Telstar401-

Jan 1994 ANIK-E1 amp E2事故時の環境 - Joe H Allen

1週間

太陽活動下降時期の電子増加

2MeV以上電子

copyNOAA Web

フラックスが3桁急増

Jan 1997 Telstar401事故時の環境

静止軌道の急激な電子増加

太陽極大期太陽フレアによる衛星障害 - 2003年10月~11月-

10486981048698 永久故障 4 10486981048698 安全モード又は運用を一時停止 31 10486981048698 データ内容の「誤り」の増加搭載コンピュータの誤動作 5

httpwwwsat-ndcomfailures等のデータによる 合計 40件

-Barbieri and Mahmot

米国極軌道気象衛星NOAA-17の改良型マイクロ波観測装置AMSU-A1 (Advanced Microwave Sounding Unit)のスキャナーが永久故障 米国気象衛星GOES -8号のX線センサがOFFになり復帰しなくなった

e-birdに深刻な不具合が発生 不具合は20本のトランスポンダ全てに影響

火星周回中の探査機「マーズオデッセイ (Mars Odyssey)」の観測機器放射線観測装置「Martian Radiation Environment Experiment (MARIE)」が太陽活動の影響により10月28日から適切に作動しなくなった データ中継技術衛星(DRTS)「こだま」 太陽捕捉モードに移行

太陽陽子

帯電放電不具合-Galaxy15(局所的的現象)- 2

5 M

eV

65

MeV

11

5 M

eV

GOES 14 ----- GOES 15 ----- GOES 11 -----

Satellite Locations

Galaxy 15 anomaly

2010年4月5日9時48分UTCは磁気嵐及びCMEが発生するなど宇宙環境は非常に荒れていたGalaxy15衛星は真夜中側に位置し宇宙環境の影響を受けやすい

位置にいたことから宇宙環境による不具合である可能性が高いということで原因追及がなされた高エネルギー粒子が引き起こす代表的な衛星不具合現象として3つ(表面帯電内部帯電SEUシングルイベントバーンアウトSEL)の可能性を検討した

チームの報告書によると磁気圏尾部からの熱電子の流入による放電が原因であったと結論付けられたGalaxy15衛星の近くにはGOES-11衛星が位置していたがGOES-11衛星には不具合を発生しておらず本現象は局所的な現象と推測される

衛星開発段階における対策 JAXAの不具合解析の結論

bull 2002年~2008年に運用された11機の衛星不具合を解析 宇宙環境による不具合は偶発故障のみ(全体の約15)確率的には想定範囲内ではあるがその影響を最小限とするためディレーティング運用モード寿命についての研究に取り組む

bull 設計基準試験の充実検証確認の強化技術成熟度(TRL)評価の徹底各々の境界制約条件の明示化等により検証不足抜けの防止有効なピアレビューに結びつける

冗長系(同じハードウェア機能の冗長)柔軟性の設計(ソフトハードの対応)

bull 従来の故障が起きないようにする設計に対してGOSAT(いぶき)では重要部

品を二重化することにより故障する可能性は上がるが故障しても衛星バスの運用や観測が続行できる可能性がより高くなるように設計した

運用における対応

bull 宇宙天気監視ーロケット打ち上げ及び宇宙飛行士支援 数日前に今後の宇宙環境の推移を把握(MXレベルのフレアの発生確率)

bull X線の増加で太陽フレア発生を検知したら高エネルギー粒子の発生をいつまで 気を付ければ良いか判断(発生位置で大凡を推定するが課題は多い) SPEが発生した場合(特に10MeV以上100MeV 以上の陽

子)最大値フラックス値の推定 ピーク値を予測(特に閾値に近くなった時に重要)

bull 衛星運用 bull 太陽フレア磁気嵐警報(X線陽子及びkpが閾値を超えた

時に警報を発信)2003年10月より運用開始 bull 内部帯電警報(2日後の静止軌道上の高エネルギー電子(>1

Me) の増加を予測し 閾値を超えた時に警報を発信) 2004年4月より運用開始

話の流れ

技術データ取得装置(TEDA)の概要と成果 bull 主な成果 bull 不具合解析例

宇宙天気のリスクと対策 bull 宇宙環境による衛星システムへの影響 bull 宇宙環境を原因とする不具合の割合推移部位 bull 静止軌道不具合 bull 対策

今後必要な観測項目

まとめ

計測対象計測項目 計測対象 粒径100μm以上のデブリメテオロイド 計測項目 デブリ粒径衝突頻度

基本原理

厚さ約125μmの絶縁性のポリイミドフィルム表面に 100μm周期で直線状の細長い導線(太さ50μm)パターンを形成導線の破断を電気的に検知することによりデブリの衝突(貫通)を検知する破断した導線の数導線の幅ピッチからデブリサイズを計測する

微小デブリ計測技術の概要

衝突孔の例(衝突試験ISAS) - 衝突粒子 SUS 309 microm - 衝突速度 52 kms

HTV5号機によるセンサ機能のフライト実証

35cm

46cm

FY2013機能実証モデル

検出線幅 50 μm 検出線間隔 100 μm フィルム厚 lt 20 μm 有感領域 30times33cm 検出線総数 3300本

サイズ 50times39times4 cm (筐体を含む)

重量 約15kg(筐体を含む)

消費電力 2W(最大4W)(他センサ含む)

テレメトリ 02 bps

宇宙環境観測装置KASPERの一部としてデブリセンサSDMを搭載 FY2013に製作開始今年8月に打ち上げ予定)

まとめ(その1)

衛星不具合の主な原因は帯電放電シングルイベント放射線損傷である今後デブリ環境が重要になると予測される

静止軌道では商用衛星が多く運用されており宇宙環境の変動把握は重要この領域で運用する衛星が気を付けなければいけない環境として

1太陽フレアに伴う高エネルギー粒子 2太陽活動下降期による静止軌道電子の増加 3磁気嵐に伴う磁気圏尾部から注入する粒子 などがあげられる

まとめ(その2)

不具合軽減の取り組み bull 開発時は宇宙環境条件(トータルフラックス及び最悪条

件)を明確にし設計(冗長系柔軟性の設計ディレーティング及び運用モード寿命について研究)試験の充実検証の充実を図る

bull 運用段階に入ったならば宇宙環境を監視し警報等で故障を防ぐ

予測課題 bull 太陽フレアに伴う高エネルギー粒子発生後フラックス

ピーク値の推定

bull 衛星により不具合の起きる閾値は異なるが閾値をこえる急激な電子フラックスの増加と継続時間の予測

bull 局所的な磁気嵐に伴う磁気圏尾部から注入する粒子

宇宙環境グループは宇宙ステーションと衛星プロジェクトの安全な遂行に貢献しています

ご静聴ありがとうございました

補足資料

不具合原因の推移 bull 宇宙天気を大きく左右する要因の1つとして約11年の太陽活動変化が挙げられる

bull 太陽活動下降時期(太陽変動CME)と極大期(フレアCME)に衛星で不具合が増加するそれにより不具合原因の割合が変わる

-Koons et al The Impact of the Space Environment on Space Systems Aerospace Corp report no TR-99(1670)-1 20 July 1999 -2009 preliminary study (unpublished)

何故不具合は減らないか

bull 部品 放射線に対する感受性が高くなっている bull 微細化が進み同時にフォールトするノードが増え同時にエ

ラーとなる論理ノードやメモリセルが増加する微細化によってメモリセルは小さくなるので記憶容量当たりでみるとエラーの発生率は下がるしかし半導体チップの記憶容量やゲート数が増えるので半導体チップ当たりのエラー発生率は微細化とともに上昇するまた蓄積電荷が小さくなり感受性が高くなってきている

bull システム 大型化大電力化運用長期化 bull 1990年代末以降静止衛星の電力が10kWレベルになったしか

し設計検証技術データ蓄積が遅れている改善されつつあると推測される

放射線による影響の概要

粒子 エネルギー又はLET

代表的な影響

陽子 100keV-1MeV 1-10MeV 10-100MeV gt50MeV

表面損傷 表面材料と太陽電池の損傷 放射線損傷(電離非電離損傷の両方)センサーへのノイズ シングルイベント効果

電子 10-100keV gt100keV gt1MeV

表面帯電 深部帯電現象(deep-dielectric charging)センサーへのノイズ太陽電池の損傷 放射線損傷(電離)

重イオン gt1MeV-cm2mg シングルイベント効果

注エネルギー及びLETは個々の部品等により異なりますあくまでも目安です

耐放射線設計手順

軌道条件

ミッション期間

環境条件設定

トータルドーズの予測

1MeV電子換算被曝算出

NIELの換算

LETフルエンス算出

陽子フルエンス算出

対  策  の  検  討

対  策  の  検  討

対  策  の  検  討

放射線による劣化率予測

劣化率予測 特性予測

耐性データ

放射線による劣化率予測

耐性データ

劣化率予測アレイ出力劣化予測

感受性データ

シングルイベント発生率予測 致命度解析

衛星内質量分布

(2)

部品材料の選定

他の要因による劣化率予測

(2)(2) (3)

回路設計等NO

OK

アレイ構造 セル選定

他の要因による劣化率予測 アレイ設計(2)

(2) (2) (2) (3)

衛星内質量分布 部品選定(2)

(2) (2)(3)

NO

OK

NO

OK

(1) 環境モデルマージを含む(2) 部品レベルの検討(3) アセンブリレベルでの検討(4) 設計マージン環境モデル   マージを含め大丈夫か

トータルドーズ

太陽電池アレイの劣化

シングルイベント効果

回路設計

補足放射線太陽宇宙線銀河宇宙線

NEILを用いたダメージファクターの算出

対  策  の  検  討

放射線による劣化率予測

劣化率予測 特性予測

耐性データ

(2)

部品材料の選定

他の要因による劣化率予測

(2)(2) (3)

回路設計等NO

OK

衛星内質量分布 半導体デバイスの変位損傷

(1)

(4)

(4)

(4)

(4)

各軌道における放射線環境

1E+10

1E+11

1E+12

1E+13

1E+14

1E+15

1E+16

1E+17

1E+18

1E+19

1E+20

001 010 100 1000

捕捉

電子

の積

分フ

ルエ

ンス

[m

2 ]

エネルギー[MeV]

各軌道における電子捕捉積分フルエンス(3年間)

LEO

EOS GEO

MEO

GTO

GEO 軌道傾斜角 0deg 高度36000km GTO 軌道傾斜角 18deg 高度 360km~36000km MEO 軌道傾斜角 51deg 高度 10000km EOS 軌道傾斜角 98deg 高度705km LEO 軌道傾斜角 29deg 高度 600km

1E+12

1E+13

1E+14

1E+15

1E+16

1E+17

1E+18

1E+19

1E+20

01 10 100 1000

捕捉

陽子の

積分フルエン

ス[

m2 ]

エネルギー[MeV]

各軌道における捕捉陽子積分フルエンス(3年間)

MEO

GTO

GEO

EOS LEO

放射線による部品材料の影響

総照射線量 (TIDTotal Ionising Dose )

電離損傷

バイポーラTrの電流増幅率の低下リーク電流の増大

γ線で評価

トータルドーズ効果

変位損傷 (DDDisplacement Damage )または 非イオン化エネルギー損失 (NIELNon-Ionising Energy

Loss )

変位損傷(格子欠陥の生成)

電荷輸送効率の低下 (CCD)太陽電池の効率低下等

電子陽子により評価

シングルイベント効果

1個の荷電粒子の入射により発生する誤動作

ソフト(Latch-Up Burnout) エラー又は ソフト (Upset) エラー

陽子及び重イオンで評価

トータルドーズ効果

+ - + + - + - + - - + + + + -

ゲート酸化膜

電離

格子欠陥

正電荷捕獲

+ 正孔 - 電子

電極

(Silicon oxidenitride)

荷電粒子

反跳原子

ゲート絶縁膜中に電荷が蓄積することによるMOSトランジスタのしきい電圧(MOSトランジスタがオフからオンに変化するゲート電圧)の変化をもたらすただ

し最近の最先端チップはゲート絶縁膜がきわめて薄くなっているこのためゲート絶縁膜よりもフィールド絶縁膜(隣接するトランジスタを電気的に分離する絶縁膜)での電荷蓄積が相対的には大きな問題になってきている」

シングルイベント効果

メモリセルはNチャンネルとPチャンネルMOSFETより構成されメモリ情報は回路ノード12の電位の

高低により記録している空乏層の広がっているPN接合12の領域に

重イオンが入射した場合電荷の発生と空乏層内への少数キャリアの収集が起こるこの収集電荷量が回路の耐量を越えた場合(c)に示すように反転が起こる(ソフトエラー)一方pウエル-N基板接

合の空乏層内に電荷収集量が起こりえる耐性を越えると寄生的に存在するPNPNサイリスタ構造がオ

ンし電源と基板間に大電流が流れる状態が生じる(ラッチアップ)

シングルイベントメカニズム -陽子と重イオンの違い-

エラー発生率の計算

線エネルギー付与(LET) (linear energy transfer)

電離性放射線が物質中を通過する際飛程の単位長さ当りに平均して失うエネルギーをいう各種の放射線のうちX線γ線はLETが小さいので低LETといいα線中性子線その他重イオン核分裂破片のLETは大きいので高LETという MeVμmMeV(gcm2)やMeV(mgcm2)で表される

南大西洋異常(SAA) bull 地球の自転軸と磁気軸のずれ

darr bull 放射線帯が自転軸に対して非

対称

bull 南大西洋上空では放射線帯内帯が低高度に落ちてきているこの領域を南大西洋異常域(SAA South Atlantic Anomaly)と呼ぶ

bull 地球観測衛星ではSAAで放射線帯陽子の影響を受ける

Single Event Lachup

シングルイベントと陽子分布

MOS-1衛星(高度909km軌道傾斜角99度)で発生したシングルイベントと 陽子30MeV以上の等高線マップを重ね合わせた結果

NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)

bull 入射粒子が電離によらず与える損傷非イオン化損失

低軌道での電子フラックスと 不具合の発生場所

南大西洋異常(SAA)と極の角

高度800kmでの電子フラックス図極の角(polar horn)とSAAを示す

太陽粒子線 bull 太陽高エネルギー粒子線(SPE Solar Proton Events)は太陽フレア とコロナガス噴出 (CMECoronal Mass Ejections )により引き起こされる bull フレアのスペクトルは可変であるためあるエネルギー域における最悪状態イベントは必ずしも別のエネルギー域における最悪条件ではない 1972年8月のイベント 10~70MeVの粒子が最も多かった 1989年10のイベント 1972年8月のイベントに比べ低エネルギー領域 高エネルギー領域が明らかに激しかった

フルエンス 105 to 1011 cm-2

変動期間 1日から数日

ldquoBastiliardquo Solar Event 14 July 2000

Carrington Flare

84

(LW Townseed) Carrington Flare(1859年) Carrington Flare による30MeV以上トータルFluenceを118times109cm-2で規格化 ~1989年フレアの約13倍(シングルイベントの評価で使用) ~1991年フレアの約9倍 2012年7月23日にキャリントンイベントとほぼ同等の爆発現象が太陽あるいは太陽の周りで起きていたということがNASAの太陽観測衛星「STEREO」の解析から発表された

放射線対策 bull 放射線シールドを付加し放射線を減衰させる

bull 放射線耐性の強い部品(SOI(Silicon On Insulator)技術による耐放射線部品)材料に変更する

bull 放射線による損傷を吸収するために回路または構造上のマージンを持たせる bull ソフト的なエラーに対しては エラー検出訂正機能や多数決

機能等でソフト的エラーが起きてもシステムが機能するようにしたフォールトトレラント機能を付けて対処する ICのハード的故障に対しては ラッチアップ耐性の強い部品を選定するしかないが 電流制限回路を付ける対策も採られる パワーMOSFETに対しては部品選定 電源電圧を規格値の半分以下に落とす等の対策を採る

SOI技術

表面帯電への対策例

表面の物体間を導線で結線する

太陽電池のカバーガラスを導電性被膜付き(酸化インジウムITO)にする

熱制御材表面にITOを被覆する

熱制御材は高誘電率のテフロンの使用を避け 高伝導度耐環境性に優れたブラックカプトンを使用

イオンエンジンの中和器で能動帯電制御

内部帯電への対策例

アルミで3mm厚さに相当するシールドで囲む(Faraday Cage)

テフロンやカプトンなどの誘電体材料の内部での使用量を最小限に押さえる

回路基板やコンフォーマルコーティングは誘電体なので電流リークパス(1012Ωcmまたは1012Ωcm2

程度)を必ずつける

特にスポット的な放射線シールドの金属材には必ず電流リークパスをつける

帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備

衛星モデル作成

材料物性テーブル設定

宇宙環境パラメータ設定

Converter

転送ディレクトリ 解析データファイル

転送

解析ディレクトリ生成 解析結果 進行状況チェック ファイル操作

MUSCAT 解析エンジン

解析結果 表示

パラメトリックラン

オプション 解析

大型パネル実験(35mtimes11m) クーポンパネル実験(26cmtimes16cm)

環境模擬試験 環境模擬試験

MUSCATに使用する物性値設計標準制定のための知見などを得ることを目的に軌道上の宇宙環境を模擬した地上試験を行っている これらの試験では放電の発生頻度や電圧閾値放電発生による太陽電池パネルや搭載機器への影響を検証している

放射線計測装置の原理

bull その粒子が物質を通過する際のエネルギー損出率が粒子の電荷(原子番号)Zの二乗に比例すること(Bethe-Blochの式)を利用する

S2

E

ΔE Ersquo

S1 S3

  • 宇宙機の設計のための宇宙環境
  • 話の流れ
  • 話の流れ
  • TEDA(技術データ取得装置)(国産部品の宇宙環境での実証の必要性)
  • ETS-VTEDA(技術データ取得装置)誕生前の部品の宇宙実証の背景
  • スライド番号 6
  • スライド番号 7
  • スライド番号 8
  • スライド番号 9
  • 図6太陽黒点数と静止軌道電子 (>04MeV ) Flux の変動 (ETS-V搭載DOMによる観測)
  • スライド番号 11
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの開発(理研東大と共同で宇宙環境計測の充実)
  • ETS-VI(きく6号)打ち上がったがGEOに行かずGTOに留まる
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの成果
  • スライド番号 15
  • スライド番号 16
  • スライド番号 17
  • ADEOS搭載TEDA(世界2番目の異常宇宙線ACR)
  • BBND (ボナー球中性子検出器)
  • スライド番号 20
  • ISS搭載BBNDの成果(約8か月)
  • スライド番号 22
  • MDS-1搭載放射線吸収線量モニタ(SDOM)
  • 放射線帯変動モデルの開発MDS-1 065 MeV 電子フラックス
  • 変動パラメータの選択 (1 cycle solar activity)
  • 変動パラメータ- Tavg の定義-
  • 065MeV 電子 L値-Tavg マップ
  • 13MeV 陽子 L値-Tavg マップ
  • 電子観測とMDS-1モデルの比較
  • 放射線帯フラックスピークの変動
  • 陽子観測とモデルの比較
  • 電子(035~078MeV) 1日の変動予測GOSAT軌道
  • 電子(035~078MeV) 変動の信頼度水準(1日)GOSAT軌道
  • MDS-1 model と AE-8 modelとの比較1日
  • 話の流れ
  • 2003年10月 みどり号の全損事故(複合現象)
  • 衛星帯電の基本式
  • 内部帯電
  • パドルでの帯電放電メカニズム
  • スライド番号 40
  • スライド番号 41
  • スライド番号 42
  • データ中継技術衛星DRTS (こだま)の不具合
  • DRTS ESA スパイクノイズと電子フルエンスの比較(赤の丸が異常検知)
  • 不具合が宇宙環境によるものであるか判断する際のポイント
  • 話の流れ
  • 宇宙天気のリスク-宇宙環境によるシステムへの影響 -
  • NASAの報告-GNampCに注目-
  • NASAの報告(続き)
  • 宇宙環境を原因とする不具合の割合-JAXAの場合-
  • 不具合発生部位の割合 
  • Satellite News Digest -静止軌道不具合-
  • 太陽活動と静止軌道衛星不具合例
  • スライド番号 54
  • スライド番号 55
  • スライド番号 56
  • 衛星開発段階における対策
  • 運用における対応
  • 話の流れ
  • スライド番号 60
  • スライド番号 61
  • まとめ(その1)
  • まとめ(その2)
  • 宇宙環境グループは宇宙ステーションと衛星プロジェクトの安全な遂行に貢献しています
  • 補足資料
  • 不具合原因の推移
  • 何故不具合は減らないか
  • 放射線による影響の概要
  • 耐放射線設計手順
  • 各軌道における放射線環境
  • 放射線による部品材料の影響
  • トータルドーズ効果
  • シングルイベント効果
  • シングルイベントメカニズム-陽子と重イオンの違い-
  • エラー発生率の計算
  • 線エネルギー付与(LET)(linear energy transfer)
  • 南大西洋異常(SAA)
  • Single Event Lachup
  • シングルイベントと陽子分布
  • NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)
  • 低軌道での電子フラックスと不具合の発生場所
  • 南大西洋異常(SAA)と極の角
  • スライド番号 83
  • Carrington Flare
  • 放射線対策
  • スライド番号 86
  • スライド番号 87
  • 帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備
  • スライド番号 89
  • 放射線計測装置の原理
Page 46: 宇宙機の設計のための宇宙環境の方針から国産部品開発(42品種)が実施された。 . 半導体電子部品は耐放射線性を加味して、人工衛星(特に

話の流れ

技術データ取得装置(TEDA)の概要と成果 bull 主な成果 bull 不具合解析例

宇宙天気のリスクと対策 bull 宇宙環境による衛星システムへの影響 bull 宇宙環境を原因とする不具合の割合推移部位 bull 静止軌道不具合 bull 対策

今後必要な観測項目

まとめ

宇宙天気のリスク -宇宙環境によるシステムへの影響 -

プラズマ (IRI)

帯電 (MUSCAT)

衝突 (AUTODY)

抗力 表面劣化

紫外線X線 中性粒子 (MSIS)

放射線粒子 (AE8AP8JPLSHIELDO

SE-2)

メテオロイドデブリ (MASTER2005

ORDEM)

電離損傷 変位損傷

bull電子回路の劣化 bull光部品の劣化

bull太陽電池セルの劣化

SEU (CREME96)

bullデータエラー bull画像ノイズ

bullシステム停止 bull回路損傷

bull熱的電気的光学的特性の劣化

bull構造の劣化 bullコンタミ

電磁パルス bull電源出力低下

bull損傷

bullトルク bull軌道落下

bull構造 損傷 bull減圧

bull電磁パルス

NASAの報告 -GNampCに注目-

1974年から1994年に起きたNASAと空軍の衛星故障の内20~25が宇宙環境に起因していたと報告

1990年から2001年に米国欧州カナダ日本の企業や政府機関が開発した衛星を調べた過去の宇宙ミション損失の大部分はロケットの失敗であったが1998年衛星損失の大部分は軌道上の衛星障害となっている多くの最近の異常は太陽電池アレイ及びバッテリの危険が増加している静止軌道通信衛星の設計寿命はこのサブシステムの故障の危険が増加している

喪失等の大きな誘導制御(GNampC)の不具合に注目 GNampC不具合の内宇宙環境による 不具合は約3と報告されている

軌道上衛星のタイプ別数

NASAの報告(続き)

衛星設計寿命における不具合発生時期 事故率と軌道

軌道別の衛星数 サブシステム不具合

宇宙環境を原因とする不具合の割合 -JAXAの場合-

2002年~2008年に運用された軌道上不具合情報が比較的充実している11衛星(利用衛星7機科学衛星4機)の結果宇宙環境によるも

のは約15過去のデータよりも割合が少ない

合計83件 合計35件

(1)利用衛星 (2)科学衛星

設計検討 不足 48

製造不良 8

軌道上環境 17

偶発故障 6

調査中 13

原因不明 8

設計検討

不足 61

製造不良 4

軌道上環境 11

偶発故障 6

調査中 9

原因不明 9

不具合発生部位の割合

不具合発生部位の割合

Brent Robertson Eric Stoneking ( 1990-2001NASA Goddard Space Flight Center )

Satellite News Digest -静止軌道不具合-

Satellite News Digest (SND) (http wwwsqt-indexcouk) で1997年~2009年の期間に静止軌道で95件の不具合が報告されている その内運用ミスや設計ミスなどを除くと32件(約33)は宇宙環境によるものであった 過去のデータより割合が多い

Choiら1)はこれら不具合の地方時と季節依存性を確認した その結果2100LT~900LTで約72の不具合が発生し900LT~2100LTは9件(約28)であった またこの9件は全て姿勢制御の不具合だった 静止軌道衛星不具合のほとんどは真夜中と朝方で起きており磁気嵐に伴い磁気圏尾部から注入した粒子による表面帯電が不具合の主原因と結論づけている

1) Ho-sung Choi et al Analysis of GEO spacecraft anomalies Space weather relationships Space Weather Vol 9 S06001

太陽活動と静止軌道衛星不具合例

ANIK-E1E2

ANIK-E1

複数の衛星で故障

Galaxy-15

帯電放電不具合 -ANIK-E1amp2Telstar401-

Jan 1994 ANIK-E1 amp E2事故時の環境 - Joe H Allen

1週間

太陽活動下降時期の電子増加

2MeV以上電子

copyNOAA Web

フラックスが3桁急増

Jan 1997 Telstar401事故時の環境

静止軌道の急激な電子増加

太陽極大期太陽フレアによる衛星障害 - 2003年10月~11月-

10486981048698 永久故障 4 10486981048698 安全モード又は運用を一時停止 31 10486981048698 データ内容の「誤り」の増加搭載コンピュータの誤動作 5

httpwwwsat-ndcomfailures等のデータによる 合計 40件

-Barbieri and Mahmot

米国極軌道気象衛星NOAA-17の改良型マイクロ波観測装置AMSU-A1 (Advanced Microwave Sounding Unit)のスキャナーが永久故障 米国気象衛星GOES -8号のX線センサがOFFになり復帰しなくなった

e-birdに深刻な不具合が発生 不具合は20本のトランスポンダ全てに影響

火星周回中の探査機「マーズオデッセイ (Mars Odyssey)」の観測機器放射線観測装置「Martian Radiation Environment Experiment (MARIE)」が太陽活動の影響により10月28日から適切に作動しなくなった データ中継技術衛星(DRTS)「こだま」 太陽捕捉モードに移行

太陽陽子

帯電放電不具合-Galaxy15(局所的的現象)- 2

5 M

eV

65

MeV

11

5 M

eV

GOES 14 ----- GOES 15 ----- GOES 11 -----

Satellite Locations

Galaxy 15 anomaly

2010年4月5日9時48分UTCは磁気嵐及びCMEが発生するなど宇宙環境は非常に荒れていたGalaxy15衛星は真夜中側に位置し宇宙環境の影響を受けやすい

位置にいたことから宇宙環境による不具合である可能性が高いということで原因追及がなされた高エネルギー粒子が引き起こす代表的な衛星不具合現象として3つ(表面帯電内部帯電SEUシングルイベントバーンアウトSEL)の可能性を検討した

チームの報告書によると磁気圏尾部からの熱電子の流入による放電が原因であったと結論付けられたGalaxy15衛星の近くにはGOES-11衛星が位置していたがGOES-11衛星には不具合を発生しておらず本現象は局所的な現象と推測される

衛星開発段階における対策 JAXAの不具合解析の結論

bull 2002年~2008年に運用された11機の衛星不具合を解析 宇宙環境による不具合は偶発故障のみ(全体の約15)確率的には想定範囲内ではあるがその影響を最小限とするためディレーティング運用モード寿命についての研究に取り組む

bull 設計基準試験の充実検証確認の強化技術成熟度(TRL)評価の徹底各々の境界制約条件の明示化等により検証不足抜けの防止有効なピアレビューに結びつける

冗長系(同じハードウェア機能の冗長)柔軟性の設計(ソフトハードの対応)

bull 従来の故障が起きないようにする設計に対してGOSAT(いぶき)では重要部

品を二重化することにより故障する可能性は上がるが故障しても衛星バスの運用や観測が続行できる可能性がより高くなるように設計した

運用における対応

bull 宇宙天気監視ーロケット打ち上げ及び宇宙飛行士支援 数日前に今後の宇宙環境の推移を把握(MXレベルのフレアの発生確率)

bull X線の増加で太陽フレア発生を検知したら高エネルギー粒子の発生をいつまで 気を付ければ良いか判断(発生位置で大凡を推定するが課題は多い) SPEが発生した場合(特に10MeV以上100MeV 以上の陽

子)最大値フラックス値の推定 ピーク値を予測(特に閾値に近くなった時に重要)

bull 衛星運用 bull 太陽フレア磁気嵐警報(X線陽子及びkpが閾値を超えた

時に警報を発信)2003年10月より運用開始 bull 内部帯電警報(2日後の静止軌道上の高エネルギー電子(>1

Me) の増加を予測し 閾値を超えた時に警報を発信) 2004年4月より運用開始

話の流れ

技術データ取得装置(TEDA)の概要と成果 bull 主な成果 bull 不具合解析例

宇宙天気のリスクと対策 bull 宇宙環境による衛星システムへの影響 bull 宇宙環境を原因とする不具合の割合推移部位 bull 静止軌道不具合 bull 対策

今後必要な観測項目

まとめ

計測対象計測項目 計測対象 粒径100μm以上のデブリメテオロイド 計測項目 デブリ粒径衝突頻度

基本原理

厚さ約125μmの絶縁性のポリイミドフィルム表面に 100μm周期で直線状の細長い導線(太さ50μm)パターンを形成導線の破断を電気的に検知することによりデブリの衝突(貫通)を検知する破断した導線の数導線の幅ピッチからデブリサイズを計測する

微小デブリ計測技術の概要

衝突孔の例(衝突試験ISAS) - 衝突粒子 SUS 309 microm - 衝突速度 52 kms

HTV5号機によるセンサ機能のフライト実証

35cm

46cm

FY2013機能実証モデル

検出線幅 50 μm 検出線間隔 100 μm フィルム厚 lt 20 μm 有感領域 30times33cm 検出線総数 3300本

サイズ 50times39times4 cm (筐体を含む)

重量 約15kg(筐体を含む)

消費電力 2W(最大4W)(他センサ含む)

テレメトリ 02 bps

宇宙環境観測装置KASPERの一部としてデブリセンサSDMを搭載 FY2013に製作開始今年8月に打ち上げ予定)

まとめ(その1)

衛星不具合の主な原因は帯電放電シングルイベント放射線損傷である今後デブリ環境が重要になると予測される

静止軌道では商用衛星が多く運用されており宇宙環境の変動把握は重要この領域で運用する衛星が気を付けなければいけない環境として

1太陽フレアに伴う高エネルギー粒子 2太陽活動下降期による静止軌道電子の増加 3磁気嵐に伴う磁気圏尾部から注入する粒子 などがあげられる

まとめ(その2)

不具合軽減の取り組み bull 開発時は宇宙環境条件(トータルフラックス及び最悪条

件)を明確にし設計(冗長系柔軟性の設計ディレーティング及び運用モード寿命について研究)試験の充実検証の充実を図る

bull 運用段階に入ったならば宇宙環境を監視し警報等で故障を防ぐ

予測課題 bull 太陽フレアに伴う高エネルギー粒子発生後フラックス

ピーク値の推定

bull 衛星により不具合の起きる閾値は異なるが閾値をこえる急激な電子フラックスの増加と継続時間の予測

bull 局所的な磁気嵐に伴う磁気圏尾部から注入する粒子

宇宙環境グループは宇宙ステーションと衛星プロジェクトの安全な遂行に貢献しています

ご静聴ありがとうございました

補足資料

不具合原因の推移 bull 宇宙天気を大きく左右する要因の1つとして約11年の太陽活動変化が挙げられる

bull 太陽活動下降時期(太陽変動CME)と極大期(フレアCME)に衛星で不具合が増加するそれにより不具合原因の割合が変わる

-Koons et al The Impact of the Space Environment on Space Systems Aerospace Corp report no TR-99(1670)-1 20 July 1999 -2009 preliminary study (unpublished)

何故不具合は減らないか

bull 部品 放射線に対する感受性が高くなっている bull 微細化が進み同時にフォールトするノードが増え同時にエ

ラーとなる論理ノードやメモリセルが増加する微細化によってメモリセルは小さくなるので記憶容量当たりでみるとエラーの発生率は下がるしかし半導体チップの記憶容量やゲート数が増えるので半導体チップ当たりのエラー発生率は微細化とともに上昇するまた蓄積電荷が小さくなり感受性が高くなってきている

bull システム 大型化大電力化運用長期化 bull 1990年代末以降静止衛星の電力が10kWレベルになったしか

し設計検証技術データ蓄積が遅れている改善されつつあると推測される

放射線による影響の概要

粒子 エネルギー又はLET

代表的な影響

陽子 100keV-1MeV 1-10MeV 10-100MeV gt50MeV

表面損傷 表面材料と太陽電池の損傷 放射線損傷(電離非電離損傷の両方)センサーへのノイズ シングルイベント効果

電子 10-100keV gt100keV gt1MeV

表面帯電 深部帯電現象(deep-dielectric charging)センサーへのノイズ太陽電池の損傷 放射線損傷(電離)

重イオン gt1MeV-cm2mg シングルイベント効果

注エネルギー及びLETは個々の部品等により異なりますあくまでも目安です

耐放射線設計手順

軌道条件

ミッション期間

環境条件設定

トータルドーズの予測

1MeV電子換算被曝算出

NIELの換算

LETフルエンス算出

陽子フルエンス算出

対  策  の  検  討

対  策  の  検  討

対  策  の  検  討

放射線による劣化率予測

劣化率予測 特性予測

耐性データ

放射線による劣化率予測

耐性データ

劣化率予測アレイ出力劣化予測

感受性データ

シングルイベント発生率予測 致命度解析

衛星内質量分布

(2)

部品材料の選定

他の要因による劣化率予測

(2)(2) (3)

回路設計等NO

OK

アレイ構造 セル選定

他の要因による劣化率予測 アレイ設計(2)

(2) (2) (2) (3)

衛星内質量分布 部品選定(2)

(2) (2)(3)

NO

OK

NO

OK

(1) 環境モデルマージを含む(2) 部品レベルの検討(3) アセンブリレベルでの検討(4) 設計マージン環境モデル   マージを含め大丈夫か

トータルドーズ

太陽電池アレイの劣化

シングルイベント効果

回路設計

補足放射線太陽宇宙線銀河宇宙線

NEILを用いたダメージファクターの算出

対  策  の  検  討

放射線による劣化率予測

劣化率予測 特性予測

耐性データ

(2)

部品材料の選定

他の要因による劣化率予測

(2)(2) (3)

回路設計等NO

OK

衛星内質量分布 半導体デバイスの変位損傷

(1)

(4)

(4)

(4)

(4)

各軌道における放射線環境

1E+10

1E+11

1E+12

1E+13

1E+14

1E+15

1E+16

1E+17

1E+18

1E+19

1E+20

001 010 100 1000

捕捉

電子

の積

分フ

ルエ

ンス

[m

2 ]

エネルギー[MeV]

各軌道における電子捕捉積分フルエンス(3年間)

LEO

EOS GEO

MEO

GTO

GEO 軌道傾斜角 0deg 高度36000km GTO 軌道傾斜角 18deg 高度 360km~36000km MEO 軌道傾斜角 51deg 高度 10000km EOS 軌道傾斜角 98deg 高度705km LEO 軌道傾斜角 29deg 高度 600km

1E+12

1E+13

1E+14

1E+15

1E+16

1E+17

1E+18

1E+19

1E+20

01 10 100 1000

捕捉

陽子の

積分フルエン

ス[

m2 ]

エネルギー[MeV]

各軌道における捕捉陽子積分フルエンス(3年間)

MEO

GTO

GEO

EOS LEO

放射線による部品材料の影響

総照射線量 (TIDTotal Ionising Dose )

電離損傷

バイポーラTrの電流増幅率の低下リーク電流の増大

γ線で評価

トータルドーズ効果

変位損傷 (DDDisplacement Damage )または 非イオン化エネルギー損失 (NIELNon-Ionising Energy

Loss )

変位損傷(格子欠陥の生成)

電荷輸送効率の低下 (CCD)太陽電池の効率低下等

電子陽子により評価

シングルイベント効果

1個の荷電粒子の入射により発生する誤動作

ソフト(Latch-Up Burnout) エラー又は ソフト (Upset) エラー

陽子及び重イオンで評価

トータルドーズ効果

+ - + + - + - + - - + + + + -

ゲート酸化膜

電離

格子欠陥

正電荷捕獲

+ 正孔 - 電子

電極

(Silicon oxidenitride)

荷電粒子

反跳原子

ゲート絶縁膜中に電荷が蓄積することによるMOSトランジスタのしきい電圧(MOSトランジスタがオフからオンに変化するゲート電圧)の変化をもたらすただ

し最近の最先端チップはゲート絶縁膜がきわめて薄くなっているこのためゲート絶縁膜よりもフィールド絶縁膜(隣接するトランジスタを電気的に分離する絶縁膜)での電荷蓄積が相対的には大きな問題になってきている」

シングルイベント効果

メモリセルはNチャンネルとPチャンネルMOSFETより構成されメモリ情報は回路ノード12の電位の

高低により記録している空乏層の広がっているPN接合12の領域に

重イオンが入射した場合電荷の発生と空乏層内への少数キャリアの収集が起こるこの収集電荷量が回路の耐量を越えた場合(c)に示すように反転が起こる(ソフトエラー)一方pウエル-N基板接

合の空乏層内に電荷収集量が起こりえる耐性を越えると寄生的に存在するPNPNサイリスタ構造がオ

ンし電源と基板間に大電流が流れる状態が生じる(ラッチアップ)

シングルイベントメカニズム -陽子と重イオンの違い-

エラー発生率の計算

線エネルギー付与(LET) (linear energy transfer)

電離性放射線が物質中を通過する際飛程の単位長さ当りに平均して失うエネルギーをいう各種の放射線のうちX線γ線はLETが小さいので低LETといいα線中性子線その他重イオン核分裂破片のLETは大きいので高LETという MeVμmMeV(gcm2)やMeV(mgcm2)で表される

南大西洋異常(SAA) bull 地球の自転軸と磁気軸のずれ

darr bull 放射線帯が自転軸に対して非

対称

bull 南大西洋上空では放射線帯内帯が低高度に落ちてきているこの領域を南大西洋異常域(SAA South Atlantic Anomaly)と呼ぶ

bull 地球観測衛星ではSAAで放射線帯陽子の影響を受ける

Single Event Lachup

シングルイベントと陽子分布

MOS-1衛星(高度909km軌道傾斜角99度)で発生したシングルイベントと 陽子30MeV以上の等高線マップを重ね合わせた結果

NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)

bull 入射粒子が電離によらず与える損傷非イオン化損失

低軌道での電子フラックスと 不具合の発生場所

南大西洋異常(SAA)と極の角

高度800kmでの電子フラックス図極の角(polar horn)とSAAを示す

太陽粒子線 bull 太陽高エネルギー粒子線(SPE Solar Proton Events)は太陽フレア とコロナガス噴出 (CMECoronal Mass Ejections )により引き起こされる bull フレアのスペクトルは可変であるためあるエネルギー域における最悪状態イベントは必ずしも別のエネルギー域における最悪条件ではない 1972年8月のイベント 10~70MeVの粒子が最も多かった 1989年10のイベント 1972年8月のイベントに比べ低エネルギー領域 高エネルギー領域が明らかに激しかった

フルエンス 105 to 1011 cm-2

変動期間 1日から数日

ldquoBastiliardquo Solar Event 14 July 2000

Carrington Flare

84

(LW Townseed) Carrington Flare(1859年) Carrington Flare による30MeV以上トータルFluenceを118times109cm-2で規格化 ~1989年フレアの約13倍(シングルイベントの評価で使用) ~1991年フレアの約9倍 2012年7月23日にキャリントンイベントとほぼ同等の爆発現象が太陽あるいは太陽の周りで起きていたということがNASAの太陽観測衛星「STEREO」の解析から発表された

放射線対策 bull 放射線シールドを付加し放射線を減衰させる

bull 放射線耐性の強い部品(SOI(Silicon On Insulator)技術による耐放射線部品)材料に変更する

bull 放射線による損傷を吸収するために回路または構造上のマージンを持たせる bull ソフト的なエラーに対しては エラー検出訂正機能や多数決

機能等でソフト的エラーが起きてもシステムが機能するようにしたフォールトトレラント機能を付けて対処する ICのハード的故障に対しては ラッチアップ耐性の強い部品を選定するしかないが 電流制限回路を付ける対策も採られる パワーMOSFETに対しては部品選定 電源電圧を規格値の半分以下に落とす等の対策を採る

SOI技術

表面帯電への対策例

表面の物体間を導線で結線する

太陽電池のカバーガラスを導電性被膜付き(酸化インジウムITO)にする

熱制御材表面にITOを被覆する

熱制御材は高誘電率のテフロンの使用を避け 高伝導度耐環境性に優れたブラックカプトンを使用

イオンエンジンの中和器で能動帯電制御

内部帯電への対策例

アルミで3mm厚さに相当するシールドで囲む(Faraday Cage)

テフロンやカプトンなどの誘電体材料の内部での使用量を最小限に押さえる

回路基板やコンフォーマルコーティングは誘電体なので電流リークパス(1012Ωcmまたは1012Ωcm2

程度)を必ずつける

特にスポット的な放射線シールドの金属材には必ず電流リークパスをつける

帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備

衛星モデル作成

材料物性テーブル設定

宇宙環境パラメータ設定

Converter

転送ディレクトリ 解析データファイル

転送

解析ディレクトリ生成 解析結果 進行状況チェック ファイル操作

MUSCAT 解析エンジン

解析結果 表示

パラメトリックラン

オプション 解析

大型パネル実験(35mtimes11m) クーポンパネル実験(26cmtimes16cm)

環境模擬試験 環境模擬試験

MUSCATに使用する物性値設計標準制定のための知見などを得ることを目的に軌道上の宇宙環境を模擬した地上試験を行っている これらの試験では放電の発生頻度や電圧閾値放電発生による太陽電池パネルや搭載機器への影響を検証している

放射線計測装置の原理

bull その粒子が物質を通過する際のエネルギー損出率が粒子の電荷(原子番号)Zの二乗に比例すること(Bethe-Blochの式)を利用する

S2

E

ΔE Ersquo

S1 S3

  • 宇宙機の設計のための宇宙環境
  • 話の流れ
  • 話の流れ
  • TEDA(技術データ取得装置)(国産部品の宇宙環境での実証の必要性)
  • ETS-VTEDA(技術データ取得装置)誕生前の部品の宇宙実証の背景
  • スライド番号 6
  • スライド番号 7
  • スライド番号 8
  • スライド番号 9
  • 図6太陽黒点数と静止軌道電子 (>04MeV ) Flux の変動 (ETS-V搭載DOMによる観測)
  • スライド番号 11
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの開発(理研東大と共同で宇宙環境計測の充実)
  • ETS-VI(きく6号)打ち上がったがGEOに行かずGTOに留まる
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの成果
  • スライド番号 15
  • スライド番号 16
  • スライド番号 17
  • ADEOS搭載TEDA(世界2番目の異常宇宙線ACR)
  • BBND (ボナー球中性子検出器)
  • スライド番号 20
  • ISS搭載BBNDの成果(約8か月)
  • スライド番号 22
  • MDS-1搭載放射線吸収線量モニタ(SDOM)
  • 放射線帯変動モデルの開発MDS-1 065 MeV 電子フラックス
  • 変動パラメータの選択 (1 cycle solar activity)
  • 変動パラメータ- Tavg の定義-
  • 065MeV 電子 L値-Tavg マップ
  • 13MeV 陽子 L値-Tavg マップ
  • 電子観測とMDS-1モデルの比較
  • 放射線帯フラックスピークの変動
  • 陽子観測とモデルの比較
  • 電子(035~078MeV) 1日の変動予測GOSAT軌道
  • 電子(035~078MeV) 変動の信頼度水準(1日)GOSAT軌道
  • MDS-1 model と AE-8 modelとの比較1日
  • 話の流れ
  • 2003年10月 みどり号の全損事故(複合現象)
  • 衛星帯電の基本式
  • 内部帯電
  • パドルでの帯電放電メカニズム
  • スライド番号 40
  • スライド番号 41
  • スライド番号 42
  • データ中継技術衛星DRTS (こだま)の不具合
  • DRTS ESA スパイクノイズと電子フルエンスの比較(赤の丸が異常検知)
  • 不具合が宇宙環境によるものであるか判断する際のポイント
  • 話の流れ
  • 宇宙天気のリスク-宇宙環境によるシステムへの影響 -
  • NASAの報告-GNampCに注目-
  • NASAの報告(続き)
  • 宇宙環境を原因とする不具合の割合-JAXAの場合-
  • 不具合発生部位の割合 
  • Satellite News Digest -静止軌道不具合-
  • 太陽活動と静止軌道衛星不具合例
  • スライド番号 54
  • スライド番号 55
  • スライド番号 56
  • 衛星開発段階における対策
  • 運用における対応
  • 話の流れ
  • スライド番号 60
  • スライド番号 61
  • まとめ(その1)
  • まとめ(その2)
  • 宇宙環境グループは宇宙ステーションと衛星プロジェクトの安全な遂行に貢献しています
  • 補足資料
  • 不具合原因の推移
  • 何故不具合は減らないか
  • 放射線による影響の概要
  • 耐放射線設計手順
  • 各軌道における放射線環境
  • 放射線による部品材料の影響
  • トータルドーズ効果
  • シングルイベント効果
  • シングルイベントメカニズム-陽子と重イオンの違い-
  • エラー発生率の計算
  • 線エネルギー付与(LET)(linear energy transfer)
  • 南大西洋異常(SAA)
  • Single Event Lachup
  • シングルイベントと陽子分布
  • NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)
  • 低軌道での電子フラックスと不具合の発生場所
  • 南大西洋異常(SAA)と極の角
  • スライド番号 83
  • Carrington Flare
  • 放射線対策
  • スライド番号 86
  • スライド番号 87
  • 帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備
  • スライド番号 89
  • 放射線計測装置の原理
Page 47: 宇宙機の設計のための宇宙環境の方針から国産部品開発(42品種)が実施された。 . 半導体電子部品は耐放射線性を加味して、人工衛星(特に

宇宙天気のリスク -宇宙環境によるシステムへの影響 -

プラズマ (IRI)

帯電 (MUSCAT)

衝突 (AUTODY)

抗力 表面劣化

紫外線X線 中性粒子 (MSIS)

放射線粒子 (AE8AP8JPLSHIELDO

SE-2)

メテオロイドデブリ (MASTER2005

ORDEM)

電離損傷 変位損傷

bull電子回路の劣化 bull光部品の劣化

bull太陽電池セルの劣化

SEU (CREME96)

bullデータエラー bull画像ノイズ

bullシステム停止 bull回路損傷

bull熱的電気的光学的特性の劣化

bull構造の劣化 bullコンタミ

電磁パルス bull電源出力低下

bull損傷

bullトルク bull軌道落下

bull構造 損傷 bull減圧

bull電磁パルス

NASAの報告 -GNampCに注目-

1974年から1994年に起きたNASAと空軍の衛星故障の内20~25が宇宙環境に起因していたと報告

1990年から2001年に米国欧州カナダ日本の企業や政府機関が開発した衛星を調べた過去の宇宙ミション損失の大部分はロケットの失敗であったが1998年衛星損失の大部分は軌道上の衛星障害となっている多くの最近の異常は太陽電池アレイ及びバッテリの危険が増加している静止軌道通信衛星の設計寿命はこのサブシステムの故障の危険が増加している

喪失等の大きな誘導制御(GNampC)の不具合に注目 GNampC不具合の内宇宙環境による 不具合は約3と報告されている

軌道上衛星のタイプ別数

NASAの報告(続き)

衛星設計寿命における不具合発生時期 事故率と軌道

軌道別の衛星数 サブシステム不具合

宇宙環境を原因とする不具合の割合 -JAXAの場合-

2002年~2008年に運用された軌道上不具合情報が比較的充実している11衛星(利用衛星7機科学衛星4機)の結果宇宙環境によるも

のは約15過去のデータよりも割合が少ない

合計83件 合計35件

(1)利用衛星 (2)科学衛星

設計検討 不足 48

製造不良 8

軌道上環境 17

偶発故障 6

調査中 13

原因不明 8

設計検討

不足 61

製造不良 4

軌道上環境 11

偶発故障 6

調査中 9

原因不明 9

不具合発生部位の割合

不具合発生部位の割合

Brent Robertson Eric Stoneking ( 1990-2001NASA Goddard Space Flight Center )

Satellite News Digest -静止軌道不具合-

Satellite News Digest (SND) (http wwwsqt-indexcouk) で1997年~2009年の期間に静止軌道で95件の不具合が報告されている その内運用ミスや設計ミスなどを除くと32件(約33)は宇宙環境によるものであった 過去のデータより割合が多い

Choiら1)はこれら不具合の地方時と季節依存性を確認した その結果2100LT~900LTで約72の不具合が発生し900LT~2100LTは9件(約28)であった またこの9件は全て姿勢制御の不具合だった 静止軌道衛星不具合のほとんどは真夜中と朝方で起きており磁気嵐に伴い磁気圏尾部から注入した粒子による表面帯電が不具合の主原因と結論づけている

1) Ho-sung Choi et al Analysis of GEO spacecraft anomalies Space weather relationships Space Weather Vol 9 S06001

太陽活動と静止軌道衛星不具合例

ANIK-E1E2

ANIK-E1

複数の衛星で故障

Galaxy-15

帯電放電不具合 -ANIK-E1amp2Telstar401-

Jan 1994 ANIK-E1 amp E2事故時の環境 - Joe H Allen

1週間

太陽活動下降時期の電子増加

2MeV以上電子

copyNOAA Web

フラックスが3桁急増

Jan 1997 Telstar401事故時の環境

静止軌道の急激な電子増加

太陽極大期太陽フレアによる衛星障害 - 2003年10月~11月-

10486981048698 永久故障 4 10486981048698 安全モード又は運用を一時停止 31 10486981048698 データ内容の「誤り」の増加搭載コンピュータの誤動作 5

httpwwwsat-ndcomfailures等のデータによる 合計 40件

-Barbieri and Mahmot

米国極軌道気象衛星NOAA-17の改良型マイクロ波観測装置AMSU-A1 (Advanced Microwave Sounding Unit)のスキャナーが永久故障 米国気象衛星GOES -8号のX線センサがOFFになり復帰しなくなった

e-birdに深刻な不具合が発生 不具合は20本のトランスポンダ全てに影響

火星周回中の探査機「マーズオデッセイ (Mars Odyssey)」の観測機器放射線観測装置「Martian Radiation Environment Experiment (MARIE)」が太陽活動の影響により10月28日から適切に作動しなくなった データ中継技術衛星(DRTS)「こだま」 太陽捕捉モードに移行

太陽陽子

帯電放電不具合-Galaxy15(局所的的現象)- 2

5 M

eV

65

MeV

11

5 M

eV

GOES 14 ----- GOES 15 ----- GOES 11 -----

Satellite Locations

Galaxy 15 anomaly

2010年4月5日9時48分UTCは磁気嵐及びCMEが発生するなど宇宙環境は非常に荒れていたGalaxy15衛星は真夜中側に位置し宇宙環境の影響を受けやすい

位置にいたことから宇宙環境による不具合である可能性が高いということで原因追及がなされた高エネルギー粒子が引き起こす代表的な衛星不具合現象として3つ(表面帯電内部帯電SEUシングルイベントバーンアウトSEL)の可能性を検討した

チームの報告書によると磁気圏尾部からの熱電子の流入による放電が原因であったと結論付けられたGalaxy15衛星の近くにはGOES-11衛星が位置していたがGOES-11衛星には不具合を発生しておらず本現象は局所的な現象と推測される

衛星開発段階における対策 JAXAの不具合解析の結論

bull 2002年~2008年に運用された11機の衛星不具合を解析 宇宙環境による不具合は偶発故障のみ(全体の約15)確率的には想定範囲内ではあるがその影響を最小限とするためディレーティング運用モード寿命についての研究に取り組む

bull 設計基準試験の充実検証確認の強化技術成熟度(TRL)評価の徹底各々の境界制約条件の明示化等により検証不足抜けの防止有効なピアレビューに結びつける

冗長系(同じハードウェア機能の冗長)柔軟性の設計(ソフトハードの対応)

bull 従来の故障が起きないようにする設計に対してGOSAT(いぶき)では重要部

品を二重化することにより故障する可能性は上がるが故障しても衛星バスの運用や観測が続行できる可能性がより高くなるように設計した

運用における対応

bull 宇宙天気監視ーロケット打ち上げ及び宇宙飛行士支援 数日前に今後の宇宙環境の推移を把握(MXレベルのフレアの発生確率)

bull X線の増加で太陽フレア発生を検知したら高エネルギー粒子の発生をいつまで 気を付ければ良いか判断(発生位置で大凡を推定するが課題は多い) SPEが発生した場合(特に10MeV以上100MeV 以上の陽

子)最大値フラックス値の推定 ピーク値を予測(特に閾値に近くなった時に重要)

bull 衛星運用 bull 太陽フレア磁気嵐警報(X線陽子及びkpが閾値を超えた

時に警報を発信)2003年10月より運用開始 bull 内部帯電警報(2日後の静止軌道上の高エネルギー電子(>1

Me) の増加を予測し 閾値を超えた時に警報を発信) 2004年4月より運用開始

話の流れ

技術データ取得装置(TEDA)の概要と成果 bull 主な成果 bull 不具合解析例

宇宙天気のリスクと対策 bull 宇宙環境による衛星システムへの影響 bull 宇宙環境を原因とする不具合の割合推移部位 bull 静止軌道不具合 bull 対策

今後必要な観測項目

まとめ

計測対象計測項目 計測対象 粒径100μm以上のデブリメテオロイド 計測項目 デブリ粒径衝突頻度

基本原理

厚さ約125μmの絶縁性のポリイミドフィルム表面に 100μm周期で直線状の細長い導線(太さ50μm)パターンを形成導線の破断を電気的に検知することによりデブリの衝突(貫通)を検知する破断した導線の数導線の幅ピッチからデブリサイズを計測する

微小デブリ計測技術の概要

衝突孔の例(衝突試験ISAS) - 衝突粒子 SUS 309 microm - 衝突速度 52 kms

HTV5号機によるセンサ機能のフライト実証

35cm

46cm

FY2013機能実証モデル

検出線幅 50 μm 検出線間隔 100 μm フィルム厚 lt 20 μm 有感領域 30times33cm 検出線総数 3300本

サイズ 50times39times4 cm (筐体を含む)

重量 約15kg(筐体を含む)

消費電力 2W(最大4W)(他センサ含む)

テレメトリ 02 bps

宇宙環境観測装置KASPERの一部としてデブリセンサSDMを搭載 FY2013に製作開始今年8月に打ち上げ予定)

まとめ(その1)

衛星不具合の主な原因は帯電放電シングルイベント放射線損傷である今後デブリ環境が重要になると予測される

静止軌道では商用衛星が多く運用されており宇宙環境の変動把握は重要この領域で運用する衛星が気を付けなければいけない環境として

1太陽フレアに伴う高エネルギー粒子 2太陽活動下降期による静止軌道電子の増加 3磁気嵐に伴う磁気圏尾部から注入する粒子 などがあげられる

まとめ(その2)

不具合軽減の取り組み bull 開発時は宇宙環境条件(トータルフラックス及び最悪条

件)を明確にし設計(冗長系柔軟性の設計ディレーティング及び運用モード寿命について研究)試験の充実検証の充実を図る

bull 運用段階に入ったならば宇宙環境を監視し警報等で故障を防ぐ

予測課題 bull 太陽フレアに伴う高エネルギー粒子発生後フラックス

ピーク値の推定

bull 衛星により不具合の起きる閾値は異なるが閾値をこえる急激な電子フラックスの増加と継続時間の予測

bull 局所的な磁気嵐に伴う磁気圏尾部から注入する粒子

宇宙環境グループは宇宙ステーションと衛星プロジェクトの安全な遂行に貢献しています

ご静聴ありがとうございました

補足資料

不具合原因の推移 bull 宇宙天気を大きく左右する要因の1つとして約11年の太陽活動変化が挙げられる

bull 太陽活動下降時期(太陽変動CME)と極大期(フレアCME)に衛星で不具合が増加するそれにより不具合原因の割合が変わる

-Koons et al The Impact of the Space Environment on Space Systems Aerospace Corp report no TR-99(1670)-1 20 July 1999 -2009 preliminary study (unpublished)

何故不具合は減らないか

bull 部品 放射線に対する感受性が高くなっている bull 微細化が進み同時にフォールトするノードが増え同時にエ

ラーとなる論理ノードやメモリセルが増加する微細化によってメモリセルは小さくなるので記憶容量当たりでみるとエラーの発生率は下がるしかし半導体チップの記憶容量やゲート数が増えるので半導体チップ当たりのエラー発生率は微細化とともに上昇するまた蓄積電荷が小さくなり感受性が高くなってきている

bull システム 大型化大電力化運用長期化 bull 1990年代末以降静止衛星の電力が10kWレベルになったしか

し設計検証技術データ蓄積が遅れている改善されつつあると推測される

放射線による影響の概要

粒子 エネルギー又はLET

代表的な影響

陽子 100keV-1MeV 1-10MeV 10-100MeV gt50MeV

表面損傷 表面材料と太陽電池の損傷 放射線損傷(電離非電離損傷の両方)センサーへのノイズ シングルイベント効果

電子 10-100keV gt100keV gt1MeV

表面帯電 深部帯電現象(deep-dielectric charging)センサーへのノイズ太陽電池の損傷 放射線損傷(電離)

重イオン gt1MeV-cm2mg シングルイベント効果

注エネルギー及びLETは個々の部品等により異なりますあくまでも目安です

耐放射線設計手順

軌道条件

ミッション期間

環境条件設定

トータルドーズの予測

1MeV電子換算被曝算出

NIELの換算

LETフルエンス算出

陽子フルエンス算出

対  策  の  検  討

対  策  の  検  討

対  策  の  検  討

放射線による劣化率予測

劣化率予測 特性予測

耐性データ

放射線による劣化率予測

耐性データ

劣化率予測アレイ出力劣化予測

感受性データ

シングルイベント発生率予測 致命度解析

衛星内質量分布

(2)

部品材料の選定

他の要因による劣化率予測

(2)(2) (3)

回路設計等NO

OK

アレイ構造 セル選定

他の要因による劣化率予測 アレイ設計(2)

(2) (2) (2) (3)

衛星内質量分布 部品選定(2)

(2) (2)(3)

NO

OK

NO

OK

(1) 環境モデルマージを含む(2) 部品レベルの検討(3) アセンブリレベルでの検討(4) 設計マージン環境モデル   マージを含め大丈夫か

トータルドーズ

太陽電池アレイの劣化

シングルイベント効果

回路設計

補足放射線太陽宇宙線銀河宇宙線

NEILを用いたダメージファクターの算出

対  策  の  検  討

放射線による劣化率予測

劣化率予測 特性予測

耐性データ

(2)

部品材料の選定

他の要因による劣化率予測

(2)(2) (3)

回路設計等NO

OK

衛星内質量分布 半導体デバイスの変位損傷

(1)

(4)

(4)

(4)

(4)

各軌道における放射線環境

1E+10

1E+11

1E+12

1E+13

1E+14

1E+15

1E+16

1E+17

1E+18

1E+19

1E+20

001 010 100 1000

捕捉

電子

の積

分フ

ルエ

ンス

[m

2 ]

エネルギー[MeV]

各軌道における電子捕捉積分フルエンス(3年間)

LEO

EOS GEO

MEO

GTO

GEO 軌道傾斜角 0deg 高度36000km GTO 軌道傾斜角 18deg 高度 360km~36000km MEO 軌道傾斜角 51deg 高度 10000km EOS 軌道傾斜角 98deg 高度705km LEO 軌道傾斜角 29deg 高度 600km

1E+12

1E+13

1E+14

1E+15

1E+16

1E+17

1E+18

1E+19

1E+20

01 10 100 1000

捕捉

陽子の

積分フルエン

ス[

m2 ]

エネルギー[MeV]

各軌道における捕捉陽子積分フルエンス(3年間)

MEO

GTO

GEO

EOS LEO

放射線による部品材料の影響

総照射線量 (TIDTotal Ionising Dose )

電離損傷

バイポーラTrの電流増幅率の低下リーク電流の増大

γ線で評価

トータルドーズ効果

変位損傷 (DDDisplacement Damage )または 非イオン化エネルギー損失 (NIELNon-Ionising Energy

Loss )

変位損傷(格子欠陥の生成)

電荷輸送効率の低下 (CCD)太陽電池の効率低下等

電子陽子により評価

シングルイベント効果

1個の荷電粒子の入射により発生する誤動作

ソフト(Latch-Up Burnout) エラー又は ソフト (Upset) エラー

陽子及び重イオンで評価

トータルドーズ効果

+ - + + - + - + - - + + + + -

ゲート酸化膜

電離

格子欠陥

正電荷捕獲

+ 正孔 - 電子

電極

(Silicon oxidenitride)

荷電粒子

反跳原子

ゲート絶縁膜中に電荷が蓄積することによるMOSトランジスタのしきい電圧(MOSトランジスタがオフからオンに変化するゲート電圧)の変化をもたらすただ

し最近の最先端チップはゲート絶縁膜がきわめて薄くなっているこのためゲート絶縁膜よりもフィールド絶縁膜(隣接するトランジスタを電気的に分離する絶縁膜)での電荷蓄積が相対的には大きな問題になってきている」

シングルイベント効果

メモリセルはNチャンネルとPチャンネルMOSFETより構成されメモリ情報は回路ノード12の電位の

高低により記録している空乏層の広がっているPN接合12の領域に

重イオンが入射した場合電荷の発生と空乏層内への少数キャリアの収集が起こるこの収集電荷量が回路の耐量を越えた場合(c)に示すように反転が起こる(ソフトエラー)一方pウエル-N基板接

合の空乏層内に電荷収集量が起こりえる耐性を越えると寄生的に存在するPNPNサイリスタ構造がオ

ンし電源と基板間に大電流が流れる状態が生じる(ラッチアップ)

シングルイベントメカニズム -陽子と重イオンの違い-

エラー発生率の計算

線エネルギー付与(LET) (linear energy transfer)

電離性放射線が物質中を通過する際飛程の単位長さ当りに平均して失うエネルギーをいう各種の放射線のうちX線γ線はLETが小さいので低LETといいα線中性子線その他重イオン核分裂破片のLETは大きいので高LETという MeVμmMeV(gcm2)やMeV(mgcm2)で表される

南大西洋異常(SAA) bull 地球の自転軸と磁気軸のずれ

darr bull 放射線帯が自転軸に対して非

対称

bull 南大西洋上空では放射線帯内帯が低高度に落ちてきているこの領域を南大西洋異常域(SAA South Atlantic Anomaly)と呼ぶ

bull 地球観測衛星ではSAAで放射線帯陽子の影響を受ける

Single Event Lachup

シングルイベントと陽子分布

MOS-1衛星(高度909km軌道傾斜角99度)で発生したシングルイベントと 陽子30MeV以上の等高線マップを重ね合わせた結果

NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)

bull 入射粒子が電離によらず与える損傷非イオン化損失

低軌道での電子フラックスと 不具合の発生場所

南大西洋異常(SAA)と極の角

高度800kmでの電子フラックス図極の角(polar horn)とSAAを示す

太陽粒子線 bull 太陽高エネルギー粒子線(SPE Solar Proton Events)は太陽フレア とコロナガス噴出 (CMECoronal Mass Ejections )により引き起こされる bull フレアのスペクトルは可変であるためあるエネルギー域における最悪状態イベントは必ずしも別のエネルギー域における最悪条件ではない 1972年8月のイベント 10~70MeVの粒子が最も多かった 1989年10のイベント 1972年8月のイベントに比べ低エネルギー領域 高エネルギー領域が明らかに激しかった

フルエンス 105 to 1011 cm-2

変動期間 1日から数日

ldquoBastiliardquo Solar Event 14 July 2000

Carrington Flare

84

(LW Townseed) Carrington Flare(1859年) Carrington Flare による30MeV以上トータルFluenceを118times109cm-2で規格化 ~1989年フレアの約13倍(シングルイベントの評価で使用) ~1991年フレアの約9倍 2012年7月23日にキャリントンイベントとほぼ同等の爆発現象が太陽あるいは太陽の周りで起きていたということがNASAの太陽観測衛星「STEREO」の解析から発表された

放射線対策 bull 放射線シールドを付加し放射線を減衰させる

bull 放射線耐性の強い部品(SOI(Silicon On Insulator)技術による耐放射線部品)材料に変更する

bull 放射線による損傷を吸収するために回路または構造上のマージンを持たせる bull ソフト的なエラーに対しては エラー検出訂正機能や多数決

機能等でソフト的エラーが起きてもシステムが機能するようにしたフォールトトレラント機能を付けて対処する ICのハード的故障に対しては ラッチアップ耐性の強い部品を選定するしかないが 電流制限回路を付ける対策も採られる パワーMOSFETに対しては部品選定 電源電圧を規格値の半分以下に落とす等の対策を採る

SOI技術

表面帯電への対策例

表面の物体間を導線で結線する

太陽電池のカバーガラスを導電性被膜付き(酸化インジウムITO)にする

熱制御材表面にITOを被覆する

熱制御材は高誘電率のテフロンの使用を避け 高伝導度耐環境性に優れたブラックカプトンを使用

イオンエンジンの中和器で能動帯電制御

内部帯電への対策例

アルミで3mm厚さに相当するシールドで囲む(Faraday Cage)

テフロンやカプトンなどの誘電体材料の内部での使用量を最小限に押さえる

回路基板やコンフォーマルコーティングは誘電体なので電流リークパス(1012Ωcmまたは1012Ωcm2

程度)を必ずつける

特にスポット的な放射線シールドの金属材には必ず電流リークパスをつける

帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備

衛星モデル作成

材料物性テーブル設定

宇宙環境パラメータ設定

Converter

転送ディレクトリ 解析データファイル

転送

解析ディレクトリ生成 解析結果 進行状況チェック ファイル操作

MUSCAT 解析エンジン

解析結果 表示

パラメトリックラン

オプション 解析

大型パネル実験(35mtimes11m) クーポンパネル実験(26cmtimes16cm)

環境模擬試験 環境模擬試験

MUSCATに使用する物性値設計標準制定のための知見などを得ることを目的に軌道上の宇宙環境を模擬した地上試験を行っている これらの試験では放電の発生頻度や電圧閾値放電発生による太陽電池パネルや搭載機器への影響を検証している

放射線計測装置の原理

bull その粒子が物質を通過する際のエネルギー損出率が粒子の電荷(原子番号)Zの二乗に比例すること(Bethe-Blochの式)を利用する

S2

E

ΔE Ersquo

S1 S3

  • 宇宙機の設計のための宇宙環境
  • 話の流れ
  • 話の流れ
  • TEDA(技術データ取得装置)(国産部品の宇宙環境での実証の必要性)
  • ETS-VTEDA(技術データ取得装置)誕生前の部品の宇宙実証の背景
  • スライド番号 6
  • スライド番号 7
  • スライド番号 8
  • スライド番号 9
  • 図6太陽黒点数と静止軌道電子 (>04MeV ) Flux の変動 (ETS-V搭載DOMによる観測)
  • スライド番号 11
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの開発(理研東大と共同で宇宙環境計測の充実)
  • ETS-VI(きく6号)打ち上がったがGEOに行かずGTOに留まる
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの成果
  • スライド番号 15
  • スライド番号 16
  • スライド番号 17
  • ADEOS搭載TEDA(世界2番目の異常宇宙線ACR)
  • BBND (ボナー球中性子検出器)
  • スライド番号 20
  • ISS搭載BBNDの成果(約8か月)
  • スライド番号 22
  • MDS-1搭載放射線吸収線量モニタ(SDOM)
  • 放射線帯変動モデルの開発MDS-1 065 MeV 電子フラックス
  • 変動パラメータの選択 (1 cycle solar activity)
  • 変動パラメータ- Tavg の定義-
  • 065MeV 電子 L値-Tavg マップ
  • 13MeV 陽子 L値-Tavg マップ
  • 電子観測とMDS-1モデルの比較
  • 放射線帯フラックスピークの変動
  • 陽子観測とモデルの比較
  • 電子(035~078MeV) 1日の変動予測GOSAT軌道
  • 電子(035~078MeV) 変動の信頼度水準(1日)GOSAT軌道
  • MDS-1 model と AE-8 modelとの比較1日
  • 話の流れ
  • 2003年10月 みどり号の全損事故(複合現象)
  • 衛星帯電の基本式
  • 内部帯電
  • パドルでの帯電放電メカニズム
  • スライド番号 40
  • スライド番号 41
  • スライド番号 42
  • データ中継技術衛星DRTS (こだま)の不具合
  • DRTS ESA スパイクノイズと電子フルエンスの比較(赤の丸が異常検知)
  • 不具合が宇宙環境によるものであるか判断する際のポイント
  • 話の流れ
  • 宇宙天気のリスク-宇宙環境によるシステムへの影響 -
  • NASAの報告-GNampCに注目-
  • NASAの報告(続き)
  • 宇宙環境を原因とする不具合の割合-JAXAの場合-
  • 不具合発生部位の割合 
  • Satellite News Digest -静止軌道不具合-
  • 太陽活動と静止軌道衛星不具合例
  • スライド番号 54
  • スライド番号 55
  • スライド番号 56
  • 衛星開発段階における対策
  • 運用における対応
  • 話の流れ
  • スライド番号 60
  • スライド番号 61
  • まとめ(その1)
  • まとめ(その2)
  • 宇宙環境グループは宇宙ステーションと衛星プロジェクトの安全な遂行に貢献しています
  • 補足資料
  • 不具合原因の推移
  • 何故不具合は減らないか
  • 放射線による影響の概要
  • 耐放射線設計手順
  • 各軌道における放射線環境
  • 放射線による部品材料の影響
  • トータルドーズ効果
  • シングルイベント効果
  • シングルイベントメカニズム-陽子と重イオンの違い-
  • エラー発生率の計算
  • 線エネルギー付与(LET)(linear energy transfer)
  • 南大西洋異常(SAA)
  • Single Event Lachup
  • シングルイベントと陽子分布
  • NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)
  • 低軌道での電子フラックスと不具合の発生場所
  • 南大西洋異常(SAA)と極の角
  • スライド番号 83
  • Carrington Flare
  • 放射線対策
  • スライド番号 86
  • スライド番号 87
  • 帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備
  • スライド番号 89
  • 放射線計測装置の原理
Page 48: 宇宙機の設計のための宇宙環境の方針から国産部品開発(42品種)が実施された。 . 半導体電子部品は耐放射線性を加味して、人工衛星(特に

NASAの報告 -GNampCに注目-

1974年から1994年に起きたNASAと空軍の衛星故障の内20~25が宇宙環境に起因していたと報告

1990年から2001年に米国欧州カナダ日本の企業や政府機関が開発した衛星を調べた過去の宇宙ミション損失の大部分はロケットの失敗であったが1998年衛星損失の大部分は軌道上の衛星障害となっている多くの最近の異常は太陽電池アレイ及びバッテリの危険が増加している静止軌道通信衛星の設計寿命はこのサブシステムの故障の危険が増加している

喪失等の大きな誘導制御(GNampC)の不具合に注目 GNampC不具合の内宇宙環境による 不具合は約3と報告されている

軌道上衛星のタイプ別数

NASAの報告(続き)

衛星設計寿命における不具合発生時期 事故率と軌道

軌道別の衛星数 サブシステム不具合

宇宙環境を原因とする不具合の割合 -JAXAの場合-

2002年~2008年に運用された軌道上不具合情報が比較的充実している11衛星(利用衛星7機科学衛星4機)の結果宇宙環境によるも

のは約15過去のデータよりも割合が少ない

合計83件 合計35件

(1)利用衛星 (2)科学衛星

設計検討 不足 48

製造不良 8

軌道上環境 17

偶発故障 6

調査中 13

原因不明 8

設計検討

不足 61

製造不良 4

軌道上環境 11

偶発故障 6

調査中 9

原因不明 9

不具合発生部位の割合

不具合発生部位の割合

Brent Robertson Eric Stoneking ( 1990-2001NASA Goddard Space Flight Center )

Satellite News Digest -静止軌道不具合-

Satellite News Digest (SND) (http wwwsqt-indexcouk) で1997年~2009年の期間に静止軌道で95件の不具合が報告されている その内運用ミスや設計ミスなどを除くと32件(約33)は宇宙環境によるものであった 過去のデータより割合が多い

Choiら1)はこれら不具合の地方時と季節依存性を確認した その結果2100LT~900LTで約72の不具合が発生し900LT~2100LTは9件(約28)であった またこの9件は全て姿勢制御の不具合だった 静止軌道衛星不具合のほとんどは真夜中と朝方で起きており磁気嵐に伴い磁気圏尾部から注入した粒子による表面帯電が不具合の主原因と結論づけている

1) Ho-sung Choi et al Analysis of GEO spacecraft anomalies Space weather relationships Space Weather Vol 9 S06001

太陽活動と静止軌道衛星不具合例

ANIK-E1E2

ANIK-E1

複数の衛星で故障

Galaxy-15

帯電放電不具合 -ANIK-E1amp2Telstar401-

Jan 1994 ANIK-E1 amp E2事故時の環境 - Joe H Allen

1週間

太陽活動下降時期の電子増加

2MeV以上電子

copyNOAA Web

フラックスが3桁急増

Jan 1997 Telstar401事故時の環境

静止軌道の急激な電子増加

太陽極大期太陽フレアによる衛星障害 - 2003年10月~11月-

10486981048698 永久故障 4 10486981048698 安全モード又は運用を一時停止 31 10486981048698 データ内容の「誤り」の増加搭載コンピュータの誤動作 5

httpwwwsat-ndcomfailures等のデータによる 合計 40件

-Barbieri and Mahmot

米国極軌道気象衛星NOAA-17の改良型マイクロ波観測装置AMSU-A1 (Advanced Microwave Sounding Unit)のスキャナーが永久故障 米国気象衛星GOES -8号のX線センサがOFFになり復帰しなくなった

e-birdに深刻な不具合が発生 不具合は20本のトランスポンダ全てに影響

火星周回中の探査機「マーズオデッセイ (Mars Odyssey)」の観測機器放射線観測装置「Martian Radiation Environment Experiment (MARIE)」が太陽活動の影響により10月28日から適切に作動しなくなった データ中継技術衛星(DRTS)「こだま」 太陽捕捉モードに移行

太陽陽子

帯電放電不具合-Galaxy15(局所的的現象)- 2

5 M

eV

65

MeV

11

5 M

eV

GOES 14 ----- GOES 15 ----- GOES 11 -----

Satellite Locations

Galaxy 15 anomaly

2010年4月5日9時48分UTCは磁気嵐及びCMEが発生するなど宇宙環境は非常に荒れていたGalaxy15衛星は真夜中側に位置し宇宙環境の影響を受けやすい

位置にいたことから宇宙環境による不具合である可能性が高いということで原因追及がなされた高エネルギー粒子が引き起こす代表的な衛星不具合現象として3つ(表面帯電内部帯電SEUシングルイベントバーンアウトSEL)の可能性を検討した

チームの報告書によると磁気圏尾部からの熱電子の流入による放電が原因であったと結論付けられたGalaxy15衛星の近くにはGOES-11衛星が位置していたがGOES-11衛星には不具合を発生しておらず本現象は局所的な現象と推測される

衛星開発段階における対策 JAXAの不具合解析の結論

bull 2002年~2008年に運用された11機の衛星不具合を解析 宇宙環境による不具合は偶発故障のみ(全体の約15)確率的には想定範囲内ではあるがその影響を最小限とするためディレーティング運用モード寿命についての研究に取り組む

bull 設計基準試験の充実検証確認の強化技術成熟度(TRL)評価の徹底各々の境界制約条件の明示化等により検証不足抜けの防止有効なピアレビューに結びつける

冗長系(同じハードウェア機能の冗長)柔軟性の設計(ソフトハードの対応)

bull 従来の故障が起きないようにする設計に対してGOSAT(いぶき)では重要部

品を二重化することにより故障する可能性は上がるが故障しても衛星バスの運用や観測が続行できる可能性がより高くなるように設計した

運用における対応

bull 宇宙天気監視ーロケット打ち上げ及び宇宙飛行士支援 数日前に今後の宇宙環境の推移を把握(MXレベルのフレアの発生確率)

bull X線の増加で太陽フレア発生を検知したら高エネルギー粒子の発生をいつまで 気を付ければ良いか判断(発生位置で大凡を推定するが課題は多い) SPEが発生した場合(特に10MeV以上100MeV 以上の陽

子)最大値フラックス値の推定 ピーク値を予測(特に閾値に近くなった時に重要)

bull 衛星運用 bull 太陽フレア磁気嵐警報(X線陽子及びkpが閾値を超えた

時に警報を発信)2003年10月より運用開始 bull 内部帯電警報(2日後の静止軌道上の高エネルギー電子(>1

Me) の増加を予測し 閾値を超えた時に警報を発信) 2004年4月より運用開始

話の流れ

技術データ取得装置(TEDA)の概要と成果 bull 主な成果 bull 不具合解析例

宇宙天気のリスクと対策 bull 宇宙環境による衛星システムへの影響 bull 宇宙環境を原因とする不具合の割合推移部位 bull 静止軌道不具合 bull 対策

今後必要な観測項目

まとめ

計測対象計測項目 計測対象 粒径100μm以上のデブリメテオロイド 計測項目 デブリ粒径衝突頻度

基本原理

厚さ約125μmの絶縁性のポリイミドフィルム表面に 100μm周期で直線状の細長い導線(太さ50μm)パターンを形成導線の破断を電気的に検知することによりデブリの衝突(貫通)を検知する破断した導線の数導線の幅ピッチからデブリサイズを計測する

微小デブリ計測技術の概要

衝突孔の例(衝突試験ISAS) - 衝突粒子 SUS 309 microm - 衝突速度 52 kms

HTV5号機によるセンサ機能のフライト実証

35cm

46cm

FY2013機能実証モデル

検出線幅 50 μm 検出線間隔 100 μm フィルム厚 lt 20 μm 有感領域 30times33cm 検出線総数 3300本

サイズ 50times39times4 cm (筐体を含む)

重量 約15kg(筐体を含む)

消費電力 2W(最大4W)(他センサ含む)

テレメトリ 02 bps

宇宙環境観測装置KASPERの一部としてデブリセンサSDMを搭載 FY2013に製作開始今年8月に打ち上げ予定)

まとめ(その1)

衛星不具合の主な原因は帯電放電シングルイベント放射線損傷である今後デブリ環境が重要になると予測される

静止軌道では商用衛星が多く運用されており宇宙環境の変動把握は重要この領域で運用する衛星が気を付けなければいけない環境として

1太陽フレアに伴う高エネルギー粒子 2太陽活動下降期による静止軌道電子の増加 3磁気嵐に伴う磁気圏尾部から注入する粒子 などがあげられる

まとめ(その2)

不具合軽減の取り組み bull 開発時は宇宙環境条件(トータルフラックス及び最悪条

件)を明確にし設計(冗長系柔軟性の設計ディレーティング及び運用モード寿命について研究)試験の充実検証の充実を図る

bull 運用段階に入ったならば宇宙環境を監視し警報等で故障を防ぐ

予測課題 bull 太陽フレアに伴う高エネルギー粒子発生後フラックス

ピーク値の推定

bull 衛星により不具合の起きる閾値は異なるが閾値をこえる急激な電子フラックスの増加と継続時間の予測

bull 局所的な磁気嵐に伴う磁気圏尾部から注入する粒子

宇宙環境グループは宇宙ステーションと衛星プロジェクトの安全な遂行に貢献しています

ご静聴ありがとうございました

補足資料

不具合原因の推移 bull 宇宙天気を大きく左右する要因の1つとして約11年の太陽活動変化が挙げられる

bull 太陽活動下降時期(太陽変動CME)と極大期(フレアCME)に衛星で不具合が増加するそれにより不具合原因の割合が変わる

-Koons et al The Impact of the Space Environment on Space Systems Aerospace Corp report no TR-99(1670)-1 20 July 1999 -2009 preliminary study (unpublished)

何故不具合は減らないか

bull 部品 放射線に対する感受性が高くなっている bull 微細化が進み同時にフォールトするノードが増え同時にエ

ラーとなる論理ノードやメモリセルが増加する微細化によってメモリセルは小さくなるので記憶容量当たりでみるとエラーの発生率は下がるしかし半導体チップの記憶容量やゲート数が増えるので半導体チップ当たりのエラー発生率は微細化とともに上昇するまた蓄積電荷が小さくなり感受性が高くなってきている

bull システム 大型化大電力化運用長期化 bull 1990年代末以降静止衛星の電力が10kWレベルになったしか

し設計検証技術データ蓄積が遅れている改善されつつあると推測される

放射線による影響の概要

粒子 エネルギー又はLET

代表的な影響

陽子 100keV-1MeV 1-10MeV 10-100MeV gt50MeV

表面損傷 表面材料と太陽電池の損傷 放射線損傷(電離非電離損傷の両方)センサーへのノイズ シングルイベント効果

電子 10-100keV gt100keV gt1MeV

表面帯電 深部帯電現象(deep-dielectric charging)センサーへのノイズ太陽電池の損傷 放射線損傷(電離)

重イオン gt1MeV-cm2mg シングルイベント効果

注エネルギー及びLETは個々の部品等により異なりますあくまでも目安です

耐放射線設計手順

軌道条件

ミッション期間

環境条件設定

トータルドーズの予測

1MeV電子換算被曝算出

NIELの換算

LETフルエンス算出

陽子フルエンス算出

対  策  の  検  討

対  策  の  検  討

対  策  の  検  討

放射線による劣化率予測

劣化率予測 特性予測

耐性データ

放射線による劣化率予測

耐性データ

劣化率予測アレイ出力劣化予測

感受性データ

シングルイベント発生率予測 致命度解析

衛星内質量分布

(2)

部品材料の選定

他の要因による劣化率予測

(2)(2) (3)

回路設計等NO

OK

アレイ構造 セル選定

他の要因による劣化率予測 アレイ設計(2)

(2) (2) (2) (3)

衛星内質量分布 部品選定(2)

(2) (2)(3)

NO

OK

NO

OK

(1) 環境モデルマージを含む(2) 部品レベルの検討(3) アセンブリレベルでの検討(4) 設計マージン環境モデル   マージを含め大丈夫か

トータルドーズ

太陽電池アレイの劣化

シングルイベント効果

回路設計

補足放射線太陽宇宙線銀河宇宙線

NEILを用いたダメージファクターの算出

対  策  の  検  討

放射線による劣化率予測

劣化率予測 特性予測

耐性データ

(2)

部品材料の選定

他の要因による劣化率予測

(2)(2) (3)

回路設計等NO

OK

衛星内質量分布 半導体デバイスの変位損傷

(1)

(4)

(4)

(4)

(4)

各軌道における放射線環境

1E+10

1E+11

1E+12

1E+13

1E+14

1E+15

1E+16

1E+17

1E+18

1E+19

1E+20

001 010 100 1000

捕捉

電子

の積

分フ

ルエ

ンス

[m

2 ]

エネルギー[MeV]

各軌道における電子捕捉積分フルエンス(3年間)

LEO

EOS GEO

MEO

GTO

GEO 軌道傾斜角 0deg 高度36000km GTO 軌道傾斜角 18deg 高度 360km~36000km MEO 軌道傾斜角 51deg 高度 10000km EOS 軌道傾斜角 98deg 高度705km LEO 軌道傾斜角 29deg 高度 600km

1E+12

1E+13

1E+14

1E+15

1E+16

1E+17

1E+18

1E+19

1E+20

01 10 100 1000

捕捉

陽子の

積分フルエン

ス[

m2 ]

エネルギー[MeV]

各軌道における捕捉陽子積分フルエンス(3年間)

MEO

GTO

GEO

EOS LEO

放射線による部品材料の影響

総照射線量 (TIDTotal Ionising Dose )

電離損傷

バイポーラTrの電流増幅率の低下リーク電流の増大

γ線で評価

トータルドーズ効果

変位損傷 (DDDisplacement Damage )または 非イオン化エネルギー損失 (NIELNon-Ionising Energy

Loss )

変位損傷(格子欠陥の生成)

電荷輸送効率の低下 (CCD)太陽電池の効率低下等

電子陽子により評価

シングルイベント効果

1個の荷電粒子の入射により発生する誤動作

ソフト(Latch-Up Burnout) エラー又は ソフト (Upset) エラー

陽子及び重イオンで評価

トータルドーズ効果

+ - + + - + - + - - + + + + -

ゲート酸化膜

電離

格子欠陥

正電荷捕獲

+ 正孔 - 電子

電極

(Silicon oxidenitride)

荷電粒子

反跳原子

ゲート絶縁膜中に電荷が蓄積することによるMOSトランジスタのしきい電圧(MOSトランジスタがオフからオンに変化するゲート電圧)の変化をもたらすただ

し最近の最先端チップはゲート絶縁膜がきわめて薄くなっているこのためゲート絶縁膜よりもフィールド絶縁膜(隣接するトランジスタを電気的に分離する絶縁膜)での電荷蓄積が相対的には大きな問題になってきている」

シングルイベント効果

メモリセルはNチャンネルとPチャンネルMOSFETより構成されメモリ情報は回路ノード12の電位の

高低により記録している空乏層の広がっているPN接合12の領域に

重イオンが入射した場合電荷の発生と空乏層内への少数キャリアの収集が起こるこの収集電荷量が回路の耐量を越えた場合(c)に示すように反転が起こる(ソフトエラー)一方pウエル-N基板接

合の空乏層内に電荷収集量が起こりえる耐性を越えると寄生的に存在するPNPNサイリスタ構造がオ

ンし電源と基板間に大電流が流れる状態が生じる(ラッチアップ)

シングルイベントメカニズム -陽子と重イオンの違い-

エラー発生率の計算

線エネルギー付与(LET) (linear energy transfer)

電離性放射線が物質中を通過する際飛程の単位長さ当りに平均して失うエネルギーをいう各種の放射線のうちX線γ線はLETが小さいので低LETといいα線中性子線その他重イオン核分裂破片のLETは大きいので高LETという MeVμmMeV(gcm2)やMeV(mgcm2)で表される

南大西洋異常(SAA) bull 地球の自転軸と磁気軸のずれ

darr bull 放射線帯が自転軸に対して非

対称

bull 南大西洋上空では放射線帯内帯が低高度に落ちてきているこの領域を南大西洋異常域(SAA South Atlantic Anomaly)と呼ぶ

bull 地球観測衛星ではSAAで放射線帯陽子の影響を受ける

Single Event Lachup

シングルイベントと陽子分布

MOS-1衛星(高度909km軌道傾斜角99度)で発生したシングルイベントと 陽子30MeV以上の等高線マップを重ね合わせた結果

NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)

bull 入射粒子が電離によらず与える損傷非イオン化損失

低軌道での電子フラックスと 不具合の発生場所

南大西洋異常(SAA)と極の角

高度800kmでの電子フラックス図極の角(polar horn)とSAAを示す

太陽粒子線 bull 太陽高エネルギー粒子線(SPE Solar Proton Events)は太陽フレア とコロナガス噴出 (CMECoronal Mass Ejections )により引き起こされる bull フレアのスペクトルは可変であるためあるエネルギー域における最悪状態イベントは必ずしも別のエネルギー域における最悪条件ではない 1972年8月のイベント 10~70MeVの粒子が最も多かった 1989年10のイベント 1972年8月のイベントに比べ低エネルギー領域 高エネルギー領域が明らかに激しかった

フルエンス 105 to 1011 cm-2

変動期間 1日から数日

ldquoBastiliardquo Solar Event 14 July 2000

Carrington Flare

84

(LW Townseed) Carrington Flare(1859年) Carrington Flare による30MeV以上トータルFluenceを118times109cm-2で規格化 ~1989年フレアの約13倍(シングルイベントの評価で使用) ~1991年フレアの約9倍 2012年7月23日にキャリントンイベントとほぼ同等の爆発現象が太陽あるいは太陽の周りで起きていたということがNASAの太陽観測衛星「STEREO」の解析から発表された

放射線対策 bull 放射線シールドを付加し放射線を減衰させる

bull 放射線耐性の強い部品(SOI(Silicon On Insulator)技術による耐放射線部品)材料に変更する

bull 放射線による損傷を吸収するために回路または構造上のマージンを持たせる bull ソフト的なエラーに対しては エラー検出訂正機能や多数決

機能等でソフト的エラーが起きてもシステムが機能するようにしたフォールトトレラント機能を付けて対処する ICのハード的故障に対しては ラッチアップ耐性の強い部品を選定するしかないが 電流制限回路を付ける対策も採られる パワーMOSFETに対しては部品選定 電源電圧を規格値の半分以下に落とす等の対策を採る

SOI技術

表面帯電への対策例

表面の物体間を導線で結線する

太陽電池のカバーガラスを導電性被膜付き(酸化インジウムITO)にする

熱制御材表面にITOを被覆する

熱制御材は高誘電率のテフロンの使用を避け 高伝導度耐環境性に優れたブラックカプトンを使用

イオンエンジンの中和器で能動帯電制御

内部帯電への対策例

アルミで3mm厚さに相当するシールドで囲む(Faraday Cage)

テフロンやカプトンなどの誘電体材料の内部での使用量を最小限に押さえる

回路基板やコンフォーマルコーティングは誘電体なので電流リークパス(1012Ωcmまたは1012Ωcm2

程度)を必ずつける

特にスポット的な放射線シールドの金属材には必ず電流リークパスをつける

帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備

衛星モデル作成

材料物性テーブル設定

宇宙環境パラメータ設定

Converter

転送ディレクトリ 解析データファイル

転送

解析ディレクトリ生成 解析結果 進行状況チェック ファイル操作

MUSCAT 解析エンジン

解析結果 表示

パラメトリックラン

オプション 解析

大型パネル実験(35mtimes11m) クーポンパネル実験(26cmtimes16cm)

環境模擬試験 環境模擬試験

MUSCATに使用する物性値設計標準制定のための知見などを得ることを目的に軌道上の宇宙環境を模擬した地上試験を行っている これらの試験では放電の発生頻度や電圧閾値放電発生による太陽電池パネルや搭載機器への影響を検証している

放射線計測装置の原理

bull その粒子が物質を通過する際のエネルギー損出率が粒子の電荷(原子番号)Zの二乗に比例すること(Bethe-Blochの式)を利用する

S2

E

ΔE Ersquo

S1 S3

  • 宇宙機の設計のための宇宙環境
  • 話の流れ
  • 話の流れ
  • TEDA(技術データ取得装置)(国産部品の宇宙環境での実証の必要性)
  • ETS-VTEDA(技術データ取得装置)誕生前の部品の宇宙実証の背景
  • スライド番号 6
  • スライド番号 7
  • スライド番号 8
  • スライド番号 9
  • 図6太陽黒点数と静止軌道電子 (>04MeV ) Flux の変動 (ETS-V搭載DOMによる観測)
  • スライド番号 11
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの開発(理研東大と共同で宇宙環境計測の充実)
  • ETS-VI(きく6号)打ち上がったがGEOに行かずGTOに留まる
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの成果
  • スライド番号 15
  • スライド番号 16
  • スライド番号 17
  • ADEOS搭載TEDA(世界2番目の異常宇宙線ACR)
  • BBND (ボナー球中性子検出器)
  • スライド番号 20
  • ISS搭載BBNDの成果(約8か月)
  • スライド番号 22
  • MDS-1搭載放射線吸収線量モニタ(SDOM)
  • 放射線帯変動モデルの開発MDS-1 065 MeV 電子フラックス
  • 変動パラメータの選択 (1 cycle solar activity)
  • 変動パラメータ- Tavg の定義-
  • 065MeV 電子 L値-Tavg マップ
  • 13MeV 陽子 L値-Tavg マップ
  • 電子観測とMDS-1モデルの比較
  • 放射線帯フラックスピークの変動
  • 陽子観測とモデルの比較
  • 電子(035~078MeV) 1日の変動予測GOSAT軌道
  • 電子(035~078MeV) 変動の信頼度水準(1日)GOSAT軌道
  • MDS-1 model と AE-8 modelとの比較1日
  • 話の流れ
  • 2003年10月 みどり号の全損事故(複合現象)
  • 衛星帯電の基本式
  • 内部帯電
  • パドルでの帯電放電メカニズム
  • スライド番号 40
  • スライド番号 41
  • スライド番号 42
  • データ中継技術衛星DRTS (こだま)の不具合
  • DRTS ESA スパイクノイズと電子フルエンスの比較(赤の丸が異常検知)
  • 不具合が宇宙環境によるものであるか判断する際のポイント
  • 話の流れ
  • 宇宙天気のリスク-宇宙環境によるシステムへの影響 -
  • NASAの報告-GNampCに注目-
  • NASAの報告(続き)
  • 宇宙環境を原因とする不具合の割合-JAXAの場合-
  • 不具合発生部位の割合 
  • Satellite News Digest -静止軌道不具合-
  • 太陽活動と静止軌道衛星不具合例
  • スライド番号 54
  • スライド番号 55
  • スライド番号 56
  • 衛星開発段階における対策
  • 運用における対応
  • 話の流れ
  • スライド番号 60
  • スライド番号 61
  • まとめ(その1)
  • まとめ(その2)
  • 宇宙環境グループは宇宙ステーションと衛星プロジェクトの安全な遂行に貢献しています
  • 補足資料
  • 不具合原因の推移
  • 何故不具合は減らないか
  • 放射線による影響の概要
  • 耐放射線設計手順
  • 各軌道における放射線環境
  • 放射線による部品材料の影響
  • トータルドーズ効果
  • シングルイベント効果
  • シングルイベントメカニズム-陽子と重イオンの違い-
  • エラー発生率の計算
  • 線エネルギー付与(LET)(linear energy transfer)
  • 南大西洋異常(SAA)
  • Single Event Lachup
  • シングルイベントと陽子分布
  • NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)
  • 低軌道での電子フラックスと不具合の発生場所
  • 南大西洋異常(SAA)と極の角
  • スライド番号 83
  • Carrington Flare
  • 放射線対策
  • スライド番号 86
  • スライド番号 87
  • 帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備
  • スライド番号 89
  • 放射線計測装置の原理
Page 49: 宇宙機の設計のための宇宙環境の方針から国産部品開発(42品種)が実施された。 . 半導体電子部品は耐放射線性を加味して、人工衛星(特に

NASAの報告(続き)

衛星設計寿命における不具合発生時期 事故率と軌道

軌道別の衛星数 サブシステム不具合

宇宙環境を原因とする不具合の割合 -JAXAの場合-

2002年~2008年に運用された軌道上不具合情報が比較的充実している11衛星(利用衛星7機科学衛星4機)の結果宇宙環境によるも

のは約15過去のデータよりも割合が少ない

合計83件 合計35件

(1)利用衛星 (2)科学衛星

設計検討 不足 48

製造不良 8

軌道上環境 17

偶発故障 6

調査中 13

原因不明 8

設計検討

不足 61

製造不良 4

軌道上環境 11

偶発故障 6

調査中 9

原因不明 9

不具合発生部位の割合

不具合発生部位の割合

Brent Robertson Eric Stoneking ( 1990-2001NASA Goddard Space Flight Center )

Satellite News Digest -静止軌道不具合-

Satellite News Digest (SND) (http wwwsqt-indexcouk) で1997年~2009年の期間に静止軌道で95件の不具合が報告されている その内運用ミスや設計ミスなどを除くと32件(約33)は宇宙環境によるものであった 過去のデータより割合が多い

Choiら1)はこれら不具合の地方時と季節依存性を確認した その結果2100LT~900LTで約72の不具合が発生し900LT~2100LTは9件(約28)であった またこの9件は全て姿勢制御の不具合だった 静止軌道衛星不具合のほとんどは真夜中と朝方で起きており磁気嵐に伴い磁気圏尾部から注入した粒子による表面帯電が不具合の主原因と結論づけている

1) Ho-sung Choi et al Analysis of GEO spacecraft anomalies Space weather relationships Space Weather Vol 9 S06001

太陽活動と静止軌道衛星不具合例

ANIK-E1E2

ANIK-E1

複数の衛星で故障

Galaxy-15

帯電放電不具合 -ANIK-E1amp2Telstar401-

Jan 1994 ANIK-E1 amp E2事故時の環境 - Joe H Allen

1週間

太陽活動下降時期の電子増加

2MeV以上電子

copyNOAA Web

フラックスが3桁急増

Jan 1997 Telstar401事故時の環境

静止軌道の急激な電子増加

太陽極大期太陽フレアによる衛星障害 - 2003年10月~11月-

10486981048698 永久故障 4 10486981048698 安全モード又は運用を一時停止 31 10486981048698 データ内容の「誤り」の増加搭載コンピュータの誤動作 5

httpwwwsat-ndcomfailures等のデータによる 合計 40件

-Barbieri and Mahmot

米国極軌道気象衛星NOAA-17の改良型マイクロ波観測装置AMSU-A1 (Advanced Microwave Sounding Unit)のスキャナーが永久故障 米国気象衛星GOES -8号のX線センサがOFFになり復帰しなくなった

e-birdに深刻な不具合が発生 不具合は20本のトランスポンダ全てに影響

火星周回中の探査機「マーズオデッセイ (Mars Odyssey)」の観測機器放射線観測装置「Martian Radiation Environment Experiment (MARIE)」が太陽活動の影響により10月28日から適切に作動しなくなった データ中継技術衛星(DRTS)「こだま」 太陽捕捉モードに移行

太陽陽子

帯電放電不具合-Galaxy15(局所的的現象)- 2

5 M

eV

65

MeV

11

5 M

eV

GOES 14 ----- GOES 15 ----- GOES 11 -----

Satellite Locations

Galaxy 15 anomaly

2010年4月5日9時48分UTCは磁気嵐及びCMEが発生するなど宇宙環境は非常に荒れていたGalaxy15衛星は真夜中側に位置し宇宙環境の影響を受けやすい

位置にいたことから宇宙環境による不具合である可能性が高いということで原因追及がなされた高エネルギー粒子が引き起こす代表的な衛星不具合現象として3つ(表面帯電内部帯電SEUシングルイベントバーンアウトSEL)の可能性を検討した

チームの報告書によると磁気圏尾部からの熱電子の流入による放電が原因であったと結論付けられたGalaxy15衛星の近くにはGOES-11衛星が位置していたがGOES-11衛星には不具合を発生しておらず本現象は局所的な現象と推測される

衛星開発段階における対策 JAXAの不具合解析の結論

bull 2002年~2008年に運用された11機の衛星不具合を解析 宇宙環境による不具合は偶発故障のみ(全体の約15)確率的には想定範囲内ではあるがその影響を最小限とするためディレーティング運用モード寿命についての研究に取り組む

bull 設計基準試験の充実検証確認の強化技術成熟度(TRL)評価の徹底各々の境界制約条件の明示化等により検証不足抜けの防止有効なピアレビューに結びつける

冗長系(同じハードウェア機能の冗長)柔軟性の設計(ソフトハードの対応)

bull 従来の故障が起きないようにする設計に対してGOSAT(いぶき)では重要部

品を二重化することにより故障する可能性は上がるが故障しても衛星バスの運用や観測が続行できる可能性がより高くなるように設計した

運用における対応

bull 宇宙天気監視ーロケット打ち上げ及び宇宙飛行士支援 数日前に今後の宇宙環境の推移を把握(MXレベルのフレアの発生確率)

bull X線の増加で太陽フレア発生を検知したら高エネルギー粒子の発生をいつまで 気を付ければ良いか判断(発生位置で大凡を推定するが課題は多い) SPEが発生した場合(特に10MeV以上100MeV 以上の陽

子)最大値フラックス値の推定 ピーク値を予測(特に閾値に近くなった時に重要)

bull 衛星運用 bull 太陽フレア磁気嵐警報(X線陽子及びkpが閾値を超えた

時に警報を発信)2003年10月より運用開始 bull 内部帯電警報(2日後の静止軌道上の高エネルギー電子(>1

Me) の増加を予測し 閾値を超えた時に警報を発信) 2004年4月より運用開始

話の流れ

技術データ取得装置(TEDA)の概要と成果 bull 主な成果 bull 不具合解析例

宇宙天気のリスクと対策 bull 宇宙環境による衛星システムへの影響 bull 宇宙環境を原因とする不具合の割合推移部位 bull 静止軌道不具合 bull 対策

今後必要な観測項目

まとめ

計測対象計測項目 計測対象 粒径100μm以上のデブリメテオロイド 計測項目 デブリ粒径衝突頻度

基本原理

厚さ約125μmの絶縁性のポリイミドフィルム表面に 100μm周期で直線状の細長い導線(太さ50μm)パターンを形成導線の破断を電気的に検知することによりデブリの衝突(貫通)を検知する破断した導線の数導線の幅ピッチからデブリサイズを計測する

微小デブリ計測技術の概要

衝突孔の例(衝突試験ISAS) - 衝突粒子 SUS 309 microm - 衝突速度 52 kms

HTV5号機によるセンサ機能のフライト実証

35cm

46cm

FY2013機能実証モデル

検出線幅 50 μm 検出線間隔 100 μm フィルム厚 lt 20 μm 有感領域 30times33cm 検出線総数 3300本

サイズ 50times39times4 cm (筐体を含む)

重量 約15kg(筐体を含む)

消費電力 2W(最大4W)(他センサ含む)

テレメトリ 02 bps

宇宙環境観測装置KASPERの一部としてデブリセンサSDMを搭載 FY2013に製作開始今年8月に打ち上げ予定)

まとめ(その1)

衛星不具合の主な原因は帯電放電シングルイベント放射線損傷である今後デブリ環境が重要になると予測される

静止軌道では商用衛星が多く運用されており宇宙環境の変動把握は重要この領域で運用する衛星が気を付けなければいけない環境として

1太陽フレアに伴う高エネルギー粒子 2太陽活動下降期による静止軌道電子の増加 3磁気嵐に伴う磁気圏尾部から注入する粒子 などがあげられる

まとめ(その2)

不具合軽減の取り組み bull 開発時は宇宙環境条件(トータルフラックス及び最悪条

件)を明確にし設計(冗長系柔軟性の設計ディレーティング及び運用モード寿命について研究)試験の充実検証の充実を図る

bull 運用段階に入ったならば宇宙環境を監視し警報等で故障を防ぐ

予測課題 bull 太陽フレアに伴う高エネルギー粒子発生後フラックス

ピーク値の推定

bull 衛星により不具合の起きる閾値は異なるが閾値をこえる急激な電子フラックスの増加と継続時間の予測

bull 局所的な磁気嵐に伴う磁気圏尾部から注入する粒子

宇宙環境グループは宇宙ステーションと衛星プロジェクトの安全な遂行に貢献しています

ご静聴ありがとうございました

補足資料

不具合原因の推移 bull 宇宙天気を大きく左右する要因の1つとして約11年の太陽活動変化が挙げられる

bull 太陽活動下降時期(太陽変動CME)と極大期(フレアCME)に衛星で不具合が増加するそれにより不具合原因の割合が変わる

-Koons et al The Impact of the Space Environment on Space Systems Aerospace Corp report no TR-99(1670)-1 20 July 1999 -2009 preliminary study (unpublished)

何故不具合は減らないか

bull 部品 放射線に対する感受性が高くなっている bull 微細化が進み同時にフォールトするノードが増え同時にエ

ラーとなる論理ノードやメモリセルが増加する微細化によってメモリセルは小さくなるので記憶容量当たりでみるとエラーの発生率は下がるしかし半導体チップの記憶容量やゲート数が増えるので半導体チップ当たりのエラー発生率は微細化とともに上昇するまた蓄積電荷が小さくなり感受性が高くなってきている

bull システム 大型化大電力化運用長期化 bull 1990年代末以降静止衛星の電力が10kWレベルになったしか

し設計検証技術データ蓄積が遅れている改善されつつあると推測される

放射線による影響の概要

粒子 エネルギー又はLET

代表的な影響

陽子 100keV-1MeV 1-10MeV 10-100MeV gt50MeV

表面損傷 表面材料と太陽電池の損傷 放射線損傷(電離非電離損傷の両方)センサーへのノイズ シングルイベント効果

電子 10-100keV gt100keV gt1MeV

表面帯電 深部帯電現象(deep-dielectric charging)センサーへのノイズ太陽電池の損傷 放射線損傷(電離)

重イオン gt1MeV-cm2mg シングルイベント効果

注エネルギー及びLETは個々の部品等により異なりますあくまでも目安です

耐放射線設計手順

軌道条件

ミッション期間

環境条件設定

トータルドーズの予測

1MeV電子換算被曝算出

NIELの換算

LETフルエンス算出

陽子フルエンス算出

対  策  の  検  討

対  策  の  検  討

対  策  の  検  討

放射線による劣化率予測

劣化率予測 特性予測

耐性データ

放射線による劣化率予測

耐性データ

劣化率予測アレイ出力劣化予測

感受性データ

シングルイベント発生率予測 致命度解析

衛星内質量分布

(2)

部品材料の選定

他の要因による劣化率予測

(2)(2) (3)

回路設計等NO

OK

アレイ構造 セル選定

他の要因による劣化率予測 アレイ設計(2)

(2) (2) (2) (3)

衛星内質量分布 部品選定(2)

(2) (2)(3)

NO

OK

NO

OK

(1) 環境モデルマージを含む(2) 部品レベルの検討(3) アセンブリレベルでの検討(4) 設計マージン環境モデル   マージを含め大丈夫か

トータルドーズ

太陽電池アレイの劣化

シングルイベント効果

回路設計

補足放射線太陽宇宙線銀河宇宙線

NEILを用いたダメージファクターの算出

対  策  の  検  討

放射線による劣化率予測

劣化率予測 特性予測

耐性データ

(2)

部品材料の選定

他の要因による劣化率予測

(2)(2) (3)

回路設計等NO

OK

衛星内質量分布 半導体デバイスの変位損傷

(1)

(4)

(4)

(4)

(4)

各軌道における放射線環境

1E+10

1E+11

1E+12

1E+13

1E+14

1E+15

1E+16

1E+17

1E+18

1E+19

1E+20

001 010 100 1000

捕捉

電子

の積

分フ

ルエ

ンス

[m

2 ]

エネルギー[MeV]

各軌道における電子捕捉積分フルエンス(3年間)

LEO

EOS GEO

MEO

GTO

GEO 軌道傾斜角 0deg 高度36000km GTO 軌道傾斜角 18deg 高度 360km~36000km MEO 軌道傾斜角 51deg 高度 10000km EOS 軌道傾斜角 98deg 高度705km LEO 軌道傾斜角 29deg 高度 600km

1E+12

1E+13

1E+14

1E+15

1E+16

1E+17

1E+18

1E+19

1E+20

01 10 100 1000

捕捉

陽子の

積分フルエン

ス[

m2 ]

エネルギー[MeV]

各軌道における捕捉陽子積分フルエンス(3年間)

MEO

GTO

GEO

EOS LEO

放射線による部品材料の影響

総照射線量 (TIDTotal Ionising Dose )

電離損傷

バイポーラTrの電流増幅率の低下リーク電流の増大

γ線で評価

トータルドーズ効果

変位損傷 (DDDisplacement Damage )または 非イオン化エネルギー損失 (NIELNon-Ionising Energy

Loss )

変位損傷(格子欠陥の生成)

電荷輸送効率の低下 (CCD)太陽電池の効率低下等

電子陽子により評価

シングルイベント効果

1個の荷電粒子の入射により発生する誤動作

ソフト(Latch-Up Burnout) エラー又は ソフト (Upset) エラー

陽子及び重イオンで評価

トータルドーズ効果

+ - + + - + - + - - + + + + -

ゲート酸化膜

電離

格子欠陥

正電荷捕獲

+ 正孔 - 電子

電極

(Silicon oxidenitride)

荷電粒子

反跳原子

ゲート絶縁膜中に電荷が蓄積することによるMOSトランジスタのしきい電圧(MOSトランジスタがオフからオンに変化するゲート電圧)の変化をもたらすただ

し最近の最先端チップはゲート絶縁膜がきわめて薄くなっているこのためゲート絶縁膜よりもフィールド絶縁膜(隣接するトランジスタを電気的に分離する絶縁膜)での電荷蓄積が相対的には大きな問題になってきている」

シングルイベント効果

メモリセルはNチャンネルとPチャンネルMOSFETより構成されメモリ情報は回路ノード12の電位の

高低により記録している空乏層の広がっているPN接合12の領域に

重イオンが入射した場合電荷の発生と空乏層内への少数キャリアの収集が起こるこの収集電荷量が回路の耐量を越えた場合(c)に示すように反転が起こる(ソフトエラー)一方pウエル-N基板接

合の空乏層内に電荷収集量が起こりえる耐性を越えると寄生的に存在するPNPNサイリスタ構造がオ

ンし電源と基板間に大電流が流れる状態が生じる(ラッチアップ)

シングルイベントメカニズム -陽子と重イオンの違い-

エラー発生率の計算

線エネルギー付与(LET) (linear energy transfer)

電離性放射線が物質中を通過する際飛程の単位長さ当りに平均して失うエネルギーをいう各種の放射線のうちX線γ線はLETが小さいので低LETといいα線中性子線その他重イオン核分裂破片のLETは大きいので高LETという MeVμmMeV(gcm2)やMeV(mgcm2)で表される

南大西洋異常(SAA) bull 地球の自転軸と磁気軸のずれ

darr bull 放射線帯が自転軸に対して非

対称

bull 南大西洋上空では放射線帯内帯が低高度に落ちてきているこの領域を南大西洋異常域(SAA South Atlantic Anomaly)と呼ぶ

bull 地球観測衛星ではSAAで放射線帯陽子の影響を受ける

Single Event Lachup

シングルイベントと陽子分布

MOS-1衛星(高度909km軌道傾斜角99度)で発生したシングルイベントと 陽子30MeV以上の等高線マップを重ね合わせた結果

NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)

bull 入射粒子が電離によらず与える損傷非イオン化損失

低軌道での電子フラックスと 不具合の発生場所

南大西洋異常(SAA)と極の角

高度800kmでの電子フラックス図極の角(polar horn)とSAAを示す

太陽粒子線 bull 太陽高エネルギー粒子線(SPE Solar Proton Events)は太陽フレア とコロナガス噴出 (CMECoronal Mass Ejections )により引き起こされる bull フレアのスペクトルは可変であるためあるエネルギー域における最悪状態イベントは必ずしも別のエネルギー域における最悪条件ではない 1972年8月のイベント 10~70MeVの粒子が最も多かった 1989年10のイベント 1972年8月のイベントに比べ低エネルギー領域 高エネルギー領域が明らかに激しかった

フルエンス 105 to 1011 cm-2

変動期間 1日から数日

ldquoBastiliardquo Solar Event 14 July 2000

Carrington Flare

84

(LW Townseed) Carrington Flare(1859年) Carrington Flare による30MeV以上トータルFluenceを118times109cm-2で規格化 ~1989年フレアの約13倍(シングルイベントの評価で使用) ~1991年フレアの約9倍 2012年7月23日にキャリントンイベントとほぼ同等の爆発現象が太陽あるいは太陽の周りで起きていたということがNASAの太陽観測衛星「STEREO」の解析から発表された

放射線対策 bull 放射線シールドを付加し放射線を減衰させる

bull 放射線耐性の強い部品(SOI(Silicon On Insulator)技術による耐放射線部品)材料に変更する

bull 放射線による損傷を吸収するために回路または構造上のマージンを持たせる bull ソフト的なエラーに対しては エラー検出訂正機能や多数決

機能等でソフト的エラーが起きてもシステムが機能するようにしたフォールトトレラント機能を付けて対処する ICのハード的故障に対しては ラッチアップ耐性の強い部品を選定するしかないが 電流制限回路を付ける対策も採られる パワーMOSFETに対しては部品選定 電源電圧を規格値の半分以下に落とす等の対策を採る

SOI技術

表面帯電への対策例

表面の物体間を導線で結線する

太陽電池のカバーガラスを導電性被膜付き(酸化インジウムITO)にする

熱制御材表面にITOを被覆する

熱制御材は高誘電率のテフロンの使用を避け 高伝導度耐環境性に優れたブラックカプトンを使用

イオンエンジンの中和器で能動帯電制御

内部帯電への対策例

アルミで3mm厚さに相当するシールドで囲む(Faraday Cage)

テフロンやカプトンなどの誘電体材料の内部での使用量を最小限に押さえる

回路基板やコンフォーマルコーティングは誘電体なので電流リークパス(1012Ωcmまたは1012Ωcm2

程度)を必ずつける

特にスポット的な放射線シールドの金属材には必ず電流リークパスをつける

帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備

衛星モデル作成

材料物性テーブル設定

宇宙環境パラメータ設定

Converter

転送ディレクトリ 解析データファイル

転送

解析ディレクトリ生成 解析結果 進行状況チェック ファイル操作

MUSCAT 解析エンジン

解析結果 表示

パラメトリックラン

オプション 解析

大型パネル実験(35mtimes11m) クーポンパネル実験(26cmtimes16cm)

環境模擬試験 環境模擬試験

MUSCATに使用する物性値設計標準制定のための知見などを得ることを目的に軌道上の宇宙環境を模擬した地上試験を行っている これらの試験では放電の発生頻度や電圧閾値放電発生による太陽電池パネルや搭載機器への影響を検証している

放射線計測装置の原理

bull その粒子が物質を通過する際のエネルギー損出率が粒子の電荷(原子番号)Zの二乗に比例すること(Bethe-Blochの式)を利用する

S2

E

ΔE Ersquo

S1 S3

  • 宇宙機の設計のための宇宙環境
  • 話の流れ
  • 話の流れ
  • TEDA(技術データ取得装置)(国産部品の宇宙環境での実証の必要性)
  • ETS-VTEDA(技術データ取得装置)誕生前の部品の宇宙実証の背景
  • スライド番号 6
  • スライド番号 7
  • スライド番号 8
  • スライド番号 9
  • 図6太陽黒点数と静止軌道電子 (>04MeV ) Flux の変動 (ETS-V搭載DOMによる観測)
  • スライド番号 11
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの開発(理研東大と共同で宇宙環境計測の充実)
  • ETS-VI(きく6号)打ち上がったがGEOに行かずGTOに留まる
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの成果
  • スライド番号 15
  • スライド番号 16
  • スライド番号 17
  • ADEOS搭載TEDA(世界2番目の異常宇宙線ACR)
  • BBND (ボナー球中性子検出器)
  • スライド番号 20
  • ISS搭載BBNDの成果(約8か月)
  • スライド番号 22
  • MDS-1搭載放射線吸収線量モニタ(SDOM)
  • 放射線帯変動モデルの開発MDS-1 065 MeV 電子フラックス
  • 変動パラメータの選択 (1 cycle solar activity)
  • 変動パラメータ- Tavg の定義-
  • 065MeV 電子 L値-Tavg マップ
  • 13MeV 陽子 L値-Tavg マップ
  • 電子観測とMDS-1モデルの比較
  • 放射線帯フラックスピークの変動
  • 陽子観測とモデルの比較
  • 電子(035~078MeV) 1日の変動予測GOSAT軌道
  • 電子(035~078MeV) 変動の信頼度水準(1日)GOSAT軌道
  • MDS-1 model と AE-8 modelとの比較1日
  • 話の流れ
  • 2003年10月 みどり号の全損事故(複合現象)
  • 衛星帯電の基本式
  • 内部帯電
  • パドルでの帯電放電メカニズム
  • スライド番号 40
  • スライド番号 41
  • スライド番号 42
  • データ中継技術衛星DRTS (こだま)の不具合
  • DRTS ESA スパイクノイズと電子フルエンスの比較(赤の丸が異常検知)
  • 不具合が宇宙環境によるものであるか判断する際のポイント
  • 話の流れ
  • 宇宙天気のリスク-宇宙環境によるシステムへの影響 -
  • NASAの報告-GNampCに注目-
  • NASAの報告(続き)
  • 宇宙環境を原因とする不具合の割合-JAXAの場合-
  • 不具合発生部位の割合 
  • Satellite News Digest -静止軌道不具合-
  • 太陽活動と静止軌道衛星不具合例
  • スライド番号 54
  • スライド番号 55
  • スライド番号 56
  • 衛星開発段階における対策
  • 運用における対応
  • 話の流れ
  • スライド番号 60
  • スライド番号 61
  • まとめ(その1)
  • まとめ(その2)
  • 宇宙環境グループは宇宙ステーションと衛星プロジェクトの安全な遂行に貢献しています
  • 補足資料
  • 不具合原因の推移
  • 何故不具合は減らないか
  • 放射線による影響の概要
  • 耐放射線設計手順
  • 各軌道における放射線環境
  • 放射線による部品材料の影響
  • トータルドーズ効果
  • シングルイベント効果
  • シングルイベントメカニズム-陽子と重イオンの違い-
  • エラー発生率の計算
  • 線エネルギー付与(LET)(linear energy transfer)
  • 南大西洋異常(SAA)
  • Single Event Lachup
  • シングルイベントと陽子分布
  • NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)
  • 低軌道での電子フラックスと不具合の発生場所
  • 南大西洋異常(SAA)と極の角
  • スライド番号 83
  • Carrington Flare
  • 放射線対策
  • スライド番号 86
  • スライド番号 87
  • 帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備
  • スライド番号 89
  • 放射線計測装置の原理
Page 50: 宇宙機の設計のための宇宙環境の方針から国産部品開発(42品種)が実施された。 . 半導体電子部品は耐放射線性を加味して、人工衛星(特に

宇宙環境を原因とする不具合の割合 -JAXAの場合-

2002年~2008年に運用された軌道上不具合情報が比較的充実している11衛星(利用衛星7機科学衛星4機)の結果宇宙環境によるも

のは約15過去のデータよりも割合が少ない

合計83件 合計35件

(1)利用衛星 (2)科学衛星

設計検討 不足 48

製造不良 8

軌道上環境 17

偶発故障 6

調査中 13

原因不明 8

設計検討

不足 61

製造不良 4

軌道上環境 11

偶発故障 6

調査中 9

原因不明 9

不具合発生部位の割合

不具合発生部位の割合

Brent Robertson Eric Stoneking ( 1990-2001NASA Goddard Space Flight Center )

Satellite News Digest -静止軌道不具合-

Satellite News Digest (SND) (http wwwsqt-indexcouk) で1997年~2009年の期間に静止軌道で95件の不具合が報告されている その内運用ミスや設計ミスなどを除くと32件(約33)は宇宙環境によるものであった 過去のデータより割合が多い

Choiら1)はこれら不具合の地方時と季節依存性を確認した その結果2100LT~900LTで約72の不具合が発生し900LT~2100LTは9件(約28)であった またこの9件は全て姿勢制御の不具合だった 静止軌道衛星不具合のほとんどは真夜中と朝方で起きており磁気嵐に伴い磁気圏尾部から注入した粒子による表面帯電が不具合の主原因と結論づけている

1) Ho-sung Choi et al Analysis of GEO spacecraft anomalies Space weather relationships Space Weather Vol 9 S06001

太陽活動と静止軌道衛星不具合例

ANIK-E1E2

ANIK-E1

複数の衛星で故障

Galaxy-15

帯電放電不具合 -ANIK-E1amp2Telstar401-

Jan 1994 ANIK-E1 amp E2事故時の環境 - Joe H Allen

1週間

太陽活動下降時期の電子増加

2MeV以上電子

copyNOAA Web

フラックスが3桁急増

Jan 1997 Telstar401事故時の環境

静止軌道の急激な電子増加

太陽極大期太陽フレアによる衛星障害 - 2003年10月~11月-

10486981048698 永久故障 4 10486981048698 安全モード又は運用を一時停止 31 10486981048698 データ内容の「誤り」の増加搭載コンピュータの誤動作 5

httpwwwsat-ndcomfailures等のデータによる 合計 40件

-Barbieri and Mahmot

米国極軌道気象衛星NOAA-17の改良型マイクロ波観測装置AMSU-A1 (Advanced Microwave Sounding Unit)のスキャナーが永久故障 米国気象衛星GOES -8号のX線センサがOFFになり復帰しなくなった

e-birdに深刻な不具合が発生 不具合は20本のトランスポンダ全てに影響

火星周回中の探査機「マーズオデッセイ (Mars Odyssey)」の観測機器放射線観測装置「Martian Radiation Environment Experiment (MARIE)」が太陽活動の影響により10月28日から適切に作動しなくなった データ中継技術衛星(DRTS)「こだま」 太陽捕捉モードに移行

太陽陽子

帯電放電不具合-Galaxy15(局所的的現象)- 2

5 M

eV

65

MeV

11

5 M

eV

GOES 14 ----- GOES 15 ----- GOES 11 -----

Satellite Locations

Galaxy 15 anomaly

2010年4月5日9時48分UTCは磁気嵐及びCMEが発生するなど宇宙環境は非常に荒れていたGalaxy15衛星は真夜中側に位置し宇宙環境の影響を受けやすい

位置にいたことから宇宙環境による不具合である可能性が高いということで原因追及がなされた高エネルギー粒子が引き起こす代表的な衛星不具合現象として3つ(表面帯電内部帯電SEUシングルイベントバーンアウトSEL)の可能性を検討した

チームの報告書によると磁気圏尾部からの熱電子の流入による放電が原因であったと結論付けられたGalaxy15衛星の近くにはGOES-11衛星が位置していたがGOES-11衛星には不具合を発生しておらず本現象は局所的な現象と推測される

衛星開発段階における対策 JAXAの不具合解析の結論

bull 2002年~2008年に運用された11機の衛星不具合を解析 宇宙環境による不具合は偶発故障のみ(全体の約15)確率的には想定範囲内ではあるがその影響を最小限とするためディレーティング運用モード寿命についての研究に取り組む

bull 設計基準試験の充実検証確認の強化技術成熟度(TRL)評価の徹底各々の境界制約条件の明示化等により検証不足抜けの防止有効なピアレビューに結びつける

冗長系(同じハードウェア機能の冗長)柔軟性の設計(ソフトハードの対応)

bull 従来の故障が起きないようにする設計に対してGOSAT(いぶき)では重要部

品を二重化することにより故障する可能性は上がるが故障しても衛星バスの運用や観測が続行できる可能性がより高くなるように設計した

運用における対応

bull 宇宙天気監視ーロケット打ち上げ及び宇宙飛行士支援 数日前に今後の宇宙環境の推移を把握(MXレベルのフレアの発生確率)

bull X線の増加で太陽フレア発生を検知したら高エネルギー粒子の発生をいつまで 気を付ければ良いか判断(発生位置で大凡を推定するが課題は多い) SPEが発生した場合(特に10MeV以上100MeV 以上の陽

子)最大値フラックス値の推定 ピーク値を予測(特に閾値に近くなった時に重要)

bull 衛星運用 bull 太陽フレア磁気嵐警報(X線陽子及びkpが閾値を超えた

時に警報を発信)2003年10月より運用開始 bull 内部帯電警報(2日後の静止軌道上の高エネルギー電子(>1

Me) の増加を予測し 閾値を超えた時に警報を発信) 2004年4月より運用開始

話の流れ

技術データ取得装置(TEDA)の概要と成果 bull 主な成果 bull 不具合解析例

宇宙天気のリスクと対策 bull 宇宙環境による衛星システムへの影響 bull 宇宙環境を原因とする不具合の割合推移部位 bull 静止軌道不具合 bull 対策

今後必要な観測項目

まとめ

計測対象計測項目 計測対象 粒径100μm以上のデブリメテオロイド 計測項目 デブリ粒径衝突頻度

基本原理

厚さ約125μmの絶縁性のポリイミドフィルム表面に 100μm周期で直線状の細長い導線(太さ50μm)パターンを形成導線の破断を電気的に検知することによりデブリの衝突(貫通)を検知する破断した導線の数導線の幅ピッチからデブリサイズを計測する

微小デブリ計測技術の概要

衝突孔の例(衝突試験ISAS) - 衝突粒子 SUS 309 microm - 衝突速度 52 kms

HTV5号機によるセンサ機能のフライト実証

35cm

46cm

FY2013機能実証モデル

検出線幅 50 μm 検出線間隔 100 μm フィルム厚 lt 20 μm 有感領域 30times33cm 検出線総数 3300本

サイズ 50times39times4 cm (筐体を含む)

重量 約15kg(筐体を含む)

消費電力 2W(最大4W)(他センサ含む)

テレメトリ 02 bps

宇宙環境観測装置KASPERの一部としてデブリセンサSDMを搭載 FY2013に製作開始今年8月に打ち上げ予定)

まとめ(その1)

衛星不具合の主な原因は帯電放電シングルイベント放射線損傷である今後デブリ環境が重要になると予測される

静止軌道では商用衛星が多く運用されており宇宙環境の変動把握は重要この領域で運用する衛星が気を付けなければいけない環境として

1太陽フレアに伴う高エネルギー粒子 2太陽活動下降期による静止軌道電子の増加 3磁気嵐に伴う磁気圏尾部から注入する粒子 などがあげられる

まとめ(その2)

不具合軽減の取り組み bull 開発時は宇宙環境条件(トータルフラックス及び最悪条

件)を明確にし設計(冗長系柔軟性の設計ディレーティング及び運用モード寿命について研究)試験の充実検証の充実を図る

bull 運用段階に入ったならば宇宙環境を監視し警報等で故障を防ぐ

予測課題 bull 太陽フレアに伴う高エネルギー粒子発生後フラックス

ピーク値の推定

bull 衛星により不具合の起きる閾値は異なるが閾値をこえる急激な電子フラックスの増加と継続時間の予測

bull 局所的な磁気嵐に伴う磁気圏尾部から注入する粒子

宇宙環境グループは宇宙ステーションと衛星プロジェクトの安全な遂行に貢献しています

ご静聴ありがとうございました

補足資料

不具合原因の推移 bull 宇宙天気を大きく左右する要因の1つとして約11年の太陽活動変化が挙げられる

bull 太陽活動下降時期(太陽変動CME)と極大期(フレアCME)に衛星で不具合が増加するそれにより不具合原因の割合が変わる

-Koons et al The Impact of the Space Environment on Space Systems Aerospace Corp report no TR-99(1670)-1 20 July 1999 -2009 preliminary study (unpublished)

何故不具合は減らないか

bull 部品 放射線に対する感受性が高くなっている bull 微細化が進み同時にフォールトするノードが増え同時にエ

ラーとなる論理ノードやメモリセルが増加する微細化によってメモリセルは小さくなるので記憶容量当たりでみるとエラーの発生率は下がるしかし半導体チップの記憶容量やゲート数が増えるので半導体チップ当たりのエラー発生率は微細化とともに上昇するまた蓄積電荷が小さくなり感受性が高くなってきている

bull システム 大型化大電力化運用長期化 bull 1990年代末以降静止衛星の電力が10kWレベルになったしか

し設計検証技術データ蓄積が遅れている改善されつつあると推測される

放射線による影響の概要

粒子 エネルギー又はLET

代表的な影響

陽子 100keV-1MeV 1-10MeV 10-100MeV gt50MeV

表面損傷 表面材料と太陽電池の損傷 放射線損傷(電離非電離損傷の両方)センサーへのノイズ シングルイベント効果

電子 10-100keV gt100keV gt1MeV

表面帯電 深部帯電現象(deep-dielectric charging)センサーへのノイズ太陽電池の損傷 放射線損傷(電離)

重イオン gt1MeV-cm2mg シングルイベント効果

注エネルギー及びLETは個々の部品等により異なりますあくまでも目安です

耐放射線設計手順

軌道条件

ミッション期間

環境条件設定

トータルドーズの予測

1MeV電子換算被曝算出

NIELの換算

LETフルエンス算出

陽子フルエンス算出

対  策  の  検  討

対  策  の  検  討

対  策  の  検  討

放射線による劣化率予測

劣化率予測 特性予測

耐性データ

放射線による劣化率予測

耐性データ

劣化率予測アレイ出力劣化予測

感受性データ

シングルイベント発生率予測 致命度解析

衛星内質量分布

(2)

部品材料の選定

他の要因による劣化率予測

(2)(2) (3)

回路設計等NO

OK

アレイ構造 セル選定

他の要因による劣化率予測 アレイ設計(2)

(2) (2) (2) (3)

衛星内質量分布 部品選定(2)

(2) (2)(3)

NO

OK

NO

OK

(1) 環境モデルマージを含む(2) 部品レベルの検討(3) アセンブリレベルでの検討(4) 設計マージン環境モデル   マージを含め大丈夫か

トータルドーズ

太陽電池アレイの劣化

シングルイベント効果

回路設計

補足放射線太陽宇宙線銀河宇宙線

NEILを用いたダメージファクターの算出

対  策  の  検  討

放射線による劣化率予測

劣化率予測 特性予測

耐性データ

(2)

部品材料の選定

他の要因による劣化率予測

(2)(2) (3)

回路設計等NO

OK

衛星内質量分布 半導体デバイスの変位損傷

(1)

(4)

(4)

(4)

(4)

各軌道における放射線環境

1E+10

1E+11

1E+12

1E+13

1E+14

1E+15

1E+16

1E+17

1E+18

1E+19

1E+20

001 010 100 1000

捕捉

電子

の積

分フ

ルエ

ンス

[m

2 ]

エネルギー[MeV]

各軌道における電子捕捉積分フルエンス(3年間)

LEO

EOS GEO

MEO

GTO

GEO 軌道傾斜角 0deg 高度36000km GTO 軌道傾斜角 18deg 高度 360km~36000km MEO 軌道傾斜角 51deg 高度 10000km EOS 軌道傾斜角 98deg 高度705km LEO 軌道傾斜角 29deg 高度 600km

1E+12

1E+13

1E+14

1E+15

1E+16

1E+17

1E+18

1E+19

1E+20

01 10 100 1000

捕捉

陽子の

積分フルエン

ス[

m2 ]

エネルギー[MeV]

各軌道における捕捉陽子積分フルエンス(3年間)

MEO

GTO

GEO

EOS LEO

放射線による部品材料の影響

総照射線量 (TIDTotal Ionising Dose )

電離損傷

バイポーラTrの電流増幅率の低下リーク電流の増大

γ線で評価

トータルドーズ効果

変位損傷 (DDDisplacement Damage )または 非イオン化エネルギー損失 (NIELNon-Ionising Energy

Loss )

変位損傷(格子欠陥の生成)

電荷輸送効率の低下 (CCD)太陽電池の効率低下等

電子陽子により評価

シングルイベント効果

1個の荷電粒子の入射により発生する誤動作

ソフト(Latch-Up Burnout) エラー又は ソフト (Upset) エラー

陽子及び重イオンで評価

トータルドーズ効果

+ - + + - + - + - - + + + + -

ゲート酸化膜

電離

格子欠陥

正電荷捕獲

+ 正孔 - 電子

電極

(Silicon oxidenitride)

荷電粒子

反跳原子

ゲート絶縁膜中に電荷が蓄積することによるMOSトランジスタのしきい電圧(MOSトランジスタがオフからオンに変化するゲート電圧)の変化をもたらすただ

し最近の最先端チップはゲート絶縁膜がきわめて薄くなっているこのためゲート絶縁膜よりもフィールド絶縁膜(隣接するトランジスタを電気的に分離する絶縁膜)での電荷蓄積が相対的には大きな問題になってきている」

シングルイベント効果

メモリセルはNチャンネルとPチャンネルMOSFETより構成されメモリ情報は回路ノード12の電位の

高低により記録している空乏層の広がっているPN接合12の領域に

重イオンが入射した場合電荷の発生と空乏層内への少数キャリアの収集が起こるこの収集電荷量が回路の耐量を越えた場合(c)に示すように反転が起こる(ソフトエラー)一方pウエル-N基板接

合の空乏層内に電荷収集量が起こりえる耐性を越えると寄生的に存在するPNPNサイリスタ構造がオ

ンし電源と基板間に大電流が流れる状態が生じる(ラッチアップ)

シングルイベントメカニズム -陽子と重イオンの違い-

エラー発生率の計算

線エネルギー付与(LET) (linear energy transfer)

電離性放射線が物質中を通過する際飛程の単位長さ当りに平均して失うエネルギーをいう各種の放射線のうちX線γ線はLETが小さいので低LETといいα線中性子線その他重イオン核分裂破片のLETは大きいので高LETという MeVμmMeV(gcm2)やMeV(mgcm2)で表される

南大西洋異常(SAA) bull 地球の自転軸と磁気軸のずれ

darr bull 放射線帯が自転軸に対して非

対称

bull 南大西洋上空では放射線帯内帯が低高度に落ちてきているこの領域を南大西洋異常域(SAA South Atlantic Anomaly)と呼ぶ

bull 地球観測衛星ではSAAで放射線帯陽子の影響を受ける

Single Event Lachup

シングルイベントと陽子分布

MOS-1衛星(高度909km軌道傾斜角99度)で発生したシングルイベントと 陽子30MeV以上の等高線マップを重ね合わせた結果

NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)

bull 入射粒子が電離によらず与える損傷非イオン化損失

低軌道での電子フラックスと 不具合の発生場所

南大西洋異常(SAA)と極の角

高度800kmでの電子フラックス図極の角(polar horn)とSAAを示す

太陽粒子線 bull 太陽高エネルギー粒子線(SPE Solar Proton Events)は太陽フレア とコロナガス噴出 (CMECoronal Mass Ejections )により引き起こされる bull フレアのスペクトルは可変であるためあるエネルギー域における最悪状態イベントは必ずしも別のエネルギー域における最悪条件ではない 1972年8月のイベント 10~70MeVの粒子が最も多かった 1989年10のイベント 1972年8月のイベントに比べ低エネルギー領域 高エネルギー領域が明らかに激しかった

フルエンス 105 to 1011 cm-2

変動期間 1日から数日

ldquoBastiliardquo Solar Event 14 July 2000

Carrington Flare

84

(LW Townseed) Carrington Flare(1859年) Carrington Flare による30MeV以上トータルFluenceを118times109cm-2で規格化 ~1989年フレアの約13倍(シングルイベントの評価で使用) ~1991年フレアの約9倍 2012年7月23日にキャリントンイベントとほぼ同等の爆発現象が太陽あるいは太陽の周りで起きていたということがNASAの太陽観測衛星「STEREO」の解析から発表された

放射線対策 bull 放射線シールドを付加し放射線を減衰させる

bull 放射線耐性の強い部品(SOI(Silicon On Insulator)技術による耐放射線部品)材料に変更する

bull 放射線による損傷を吸収するために回路または構造上のマージンを持たせる bull ソフト的なエラーに対しては エラー検出訂正機能や多数決

機能等でソフト的エラーが起きてもシステムが機能するようにしたフォールトトレラント機能を付けて対処する ICのハード的故障に対しては ラッチアップ耐性の強い部品を選定するしかないが 電流制限回路を付ける対策も採られる パワーMOSFETに対しては部品選定 電源電圧を規格値の半分以下に落とす等の対策を採る

SOI技術

表面帯電への対策例

表面の物体間を導線で結線する

太陽電池のカバーガラスを導電性被膜付き(酸化インジウムITO)にする

熱制御材表面にITOを被覆する

熱制御材は高誘電率のテフロンの使用を避け 高伝導度耐環境性に優れたブラックカプトンを使用

イオンエンジンの中和器で能動帯電制御

内部帯電への対策例

アルミで3mm厚さに相当するシールドで囲む(Faraday Cage)

テフロンやカプトンなどの誘電体材料の内部での使用量を最小限に押さえる

回路基板やコンフォーマルコーティングは誘電体なので電流リークパス(1012Ωcmまたは1012Ωcm2

程度)を必ずつける

特にスポット的な放射線シールドの金属材には必ず電流リークパスをつける

帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備

衛星モデル作成

材料物性テーブル設定

宇宙環境パラメータ設定

Converter

転送ディレクトリ 解析データファイル

転送

解析ディレクトリ生成 解析結果 進行状況チェック ファイル操作

MUSCAT 解析エンジン

解析結果 表示

パラメトリックラン

オプション 解析

大型パネル実験(35mtimes11m) クーポンパネル実験(26cmtimes16cm)

環境模擬試験 環境模擬試験

MUSCATに使用する物性値設計標準制定のための知見などを得ることを目的に軌道上の宇宙環境を模擬した地上試験を行っている これらの試験では放電の発生頻度や電圧閾値放電発生による太陽電池パネルや搭載機器への影響を検証している

放射線計測装置の原理

bull その粒子が物質を通過する際のエネルギー損出率が粒子の電荷(原子番号)Zの二乗に比例すること(Bethe-Blochの式)を利用する

S2

E

ΔE Ersquo

S1 S3

  • 宇宙機の設計のための宇宙環境
  • 話の流れ
  • 話の流れ
  • TEDA(技術データ取得装置)(国産部品の宇宙環境での実証の必要性)
  • ETS-VTEDA(技術データ取得装置)誕生前の部品の宇宙実証の背景
  • スライド番号 6
  • スライド番号 7
  • スライド番号 8
  • スライド番号 9
  • 図6太陽黒点数と静止軌道電子 (>04MeV ) Flux の変動 (ETS-V搭載DOMによる観測)
  • スライド番号 11
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの開発(理研東大と共同で宇宙環境計測の充実)
  • ETS-VI(きく6号)打ち上がったがGEOに行かずGTOに留まる
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの成果
  • スライド番号 15
  • スライド番号 16
  • スライド番号 17
  • ADEOS搭載TEDA(世界2番目の異常宇宙線ACR)
  • BBND (ボナー球中性子検出器)
  • スライド番号 20
  • ISS搭載BBNDの成果(約8か月)
  • スライド番号 22
  • MDS-1搭載放射線吸収線量モニタ(SDOM)
  • 放射線帯変動モデルの開発MDS-1 065 MeV 電子フラックス
  • 変動パラメータの選択 (1 cycle solar activity)
  • 変動パラメータ- Tavg の定義-
  • 065MeV 電子 L値-Tavg マップ
  • 13MeV 陽子 L値-Tavg マップ
  • 電子観測とMDS-1モデルの比較
  • 放射線帯フラックスピークの変動
  • 陽子観測とモデルの比較
  • 電子(035~078MeV) 1日の変動予測GOSAT軌道
  • 電子(035~078MeV) 変動の信頼度水準(1日)GOSAT軌道
  • MDS-1 model と AE-8 modelとの比較1日
  • 話の流れ
  • 2003年10月 みどり号の全損事故(複合現象)
  • 衛星帯電の基本式
  • 内部帯電
  • パドルでの帯電放電メカニズム
  • スライド番号 40
  • スライド番号 41
  • スライド番号 42
  • データ中継技術衛星DRTS (こだま)の不具合
  • DRTS ESA スパイクノイズと電子フルエンスの比較(赤の丸が異常検知)
  • 不具合が宇宙環境によるものであるか判断する際のポイント
  • 話の流れ
  • 宇宙天気のリスク-宇宙環境によるシステムへの影響 -
  • NASAの報告-GNampCに注目-
  • NASAの報告(続き)
  • 宇宙環境を原因とする不具合の割合-JAXAの場合-
  • 不具合発生部位の割合 
  • Satellite News Digest -静止軌道不具合-
  • 太陽活動と静止軌道衛星不具合例
  • スライド番号 54
  • スライド番号 55
  • スライド番号 56
  • 衛星開発段階における対策
  • 運用における対応
  • 話の流れ
  • スライド番号 60
  • スライド番号 61
  • まとめ(その1)
  • まとめ(その2)
  • 宇宙環境グループは宇宙ステーションと衛星プロジェクトの安全な遂行に貢献しています
  • 補足資料
  • 不具合原因の推移
  • 何故不具合は減らないか
  • 放射線による影響の概要
  • 耐放射線設計手順
  • 各軌道における放射線環境
  • 放射線による部品材料の影響
  • トータルドーズ効果
  • シングルイベント効果
  • シングルイベントメカニズム-陽子と重イオンの違い-
  • エラー発生率の計算
  • 線エネルギー付与(LET)(linear energy transfer)
  • 南大西洋異常(SAA)
  • Single Event Lachup
  • シングルイベントと陽子分布
  • NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)
  • 低軌道での電子フラックスと不具合の発生場所
  • 南大西洋異常(SAA)と極の角
  • スライド番号 83
  • Carrington Flare
  • 放射線対策
  • スライド番号 86
  • スライド番号 87
  • 帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備
  • スライド番号 89
  • 放射線計測装置の原理
Page 51: 宇宙機の設計のための宇宙環境の方針から国産部品開発(42品種)が実施された。 . 半導体電子部品は耐放射線性を加味して、人工衛星(特に

不具合発生部位の割合

不具合発生部位の割合

Brent Robertson Eric Stoneking ( 1990-2001NASA Goddard Space Flight Center )

Satellite News Digest -静止軌道不具合-

Satellite News Digest (SND) (http wwwsqt-indexcouk) で1997年~2009年の期間に静止軌道で95件の不具合が報告されている その内運用ミスや設計ミスなどを除くと32件(約33)は宇宙環境によるものであった 過去のデータより割合が多い

Choiら1)はこれら不具合の地方時と季節依存性を確認した その結果2100LT~900LTで約72の不具合が発生し900LT~2100LTは9件(約28)であった またこの9件は全て姿勢制御の不具合だった 静止軌道衛星不具合のほとんどは真夜中と朝方で起きており磁気嵐に伴い磁気圏尾部から注入した粒子による表面帯電が不具合の主原因と結論づけている

1) Ho-sung Choi et al Analysis of GEO spacecraft anomalies Space weather relationships Space Weather Vol 9 S06001

太陽活動と静止軌道衛星不具合例

ANIK-E1E2

ANIK-E1

複数の衛星で故障

Galaxy-15

帯電放電不具合 -ANIK-E1amp2Telstar401-

Jan 1994 ANIK-E1 amp E2事故時の環境 - Joe H Allen

1週間

太陽活動下降時期の電子増加

2MeV以上電子

copyNOAA Web

フラックスが3桁急増

Jan 1997 Telstar401事故時の環境

静止軌道の急激な電子増加

太陽極大期太陽フレアによる衛星障害 - 2003年10月~11月-

10486981048698 永久故障 4 10486981048698 安全モード又は運用を一時停止 31 10486981048698 データ内容の「誤り」の増加搭載コンピュータの誤動作 5

httpwwwsat-ndcomfailures等のデータによる 合計 40件

-Barbieri and Mahmot

米国極軌道気象衛星NOAA-17の改良型マイクロ波観測装置AMSU-A1 (Advanced Microwave Sounding Unit)のスキャナーが永久故障 米国気象衛星GOES -8号のX線センサがOFFになり復帰しなくなった

e-birdに深刻な不具合が発生 不具合は20本のトランスポンダ全てに影響

火星周回中の探査機「マーズオデッセイ (Mars Odyssey)」の観測機器放射線観測装置「Martian Radiation Environment Experiment (MARIE)」が太陽活動の影響により10月28日から適切に作動しなくなった データ中継技術衛星(DRTS)「こだま」 太陽捕捉モードに移行

太陽陽子

帯電放電不具合-Galaxy15(局所的的現象)- 2

5 M

eV

65

MeV

11

5 M

eV

GOES 14 ----- GOES 15 ----- GOES 11 -----

Satellite Locations

Galaxy 15 anomaly

2010年4月5日9時48分UTCは磁気嵐及びCMEが発生するなど宇宙環境は非常に荒れていたGalaxy15衛星は真夜中側に位置し宇宙環境の影響を受けやすい

位置にいたことから宇宙環境による不具合である可能性が高いということで原因追及がなされた高エネルギー粒子が引き起こす代表的な衛星不具合現象として3つ(表面帯電内部帯電SEUシングルイベントバーンアウトSEL)の可能性を検討した

チームの報告書によると磁気圏尾部からの熱電子の流入による放電が原因であったと結論付けられたGalaxy15衛星の近くにはGOES-11衛星が位置していたがGOES-11衛星には不具合を発生しておらず本現象は局所的な現象と推測される

衛星開発段階における対策 JAXAの不具合解析の結論

bull 2002年~2008年に運用された11機の衛星不具合を解析 宇宙環境による不具合は偶発故障のみ(全体の約15)確率的には想定範囲内ではあるがその影響を最小限とするためディレーティング運用モード寿命についての研究に取り組む

bull 設計基準試験の充実検証確認の強化技術成熟度(TRL)評価の徹底各々の境界制約条件の明示化等により検証不足抜けの防止有効なピアレビューに結びつける

冗長系(同じハードウェア機能の冗長)柔軟性の設計(ソフトハードの対応)

bull 従来の故障が起きないようにする設計に対してGOSAT(いぶき)では重要部

品を二重化することにより故障する可能性は上がるが故障しても衛星バスの運用や観測が続行できる可能性がより高くなるように設計した

運用における対応

bull 宇宙天気監視ーロケット打ち上げ及び宇宙飛行士支援 数日前に今後の宇宙環境の推移を把握(MXレベルのフレアの発生確率)

bull X線の増加で太陽フレア発生を検知したら高エネルギー粒子の発生をいつまで 気を付ければ良いか判断(発生位置で大凡を推定するが課題は多い) SPEが発生した場合(特に10MeV以上100MeV 以上の陽

子)最大値フラックス値の推定 ピーク値を予測(特に閾値に近くなった時に重要)

bull 衛星運用 bull 太陽フレア磁気嵐警報(X線陽子及びkpが閾値を超えた

時に警報を発信)2003年10月より運用開始 bull 内部帯電警報(2日後の静止軌道上の高エネルギー電子(>1

Me) の増加を予測し 閾値を超えた時に警報を発信) 2004年4月より運用開始

話の流れ

技術データ取得装置(TEDA)の概要と成果 bull 主な成果 bull 不具合解析例

宇宙天気のリスクと対策 bull 宇宙環境による衛星システムへの影響 bull 宇宙環境を原因とする不具合の割合推移部位 bull 静止軌道不具合 bull 対策

今後必要な観測項目

まとめ

計測対象計測項目 計測対象 粒径100μm以上のデブリメテオロイド 計測項目 デブリ粒径衝突頻度

基本原理

厚さ約125μmの絶縁性のポリイミドフィルム表面に 100μm周期で直線状の細長い導線(太さ50μm)パターンを形成導線の破断を電気的に検知することによりデブリの衝突(貫通)を検知する破断した導線の数導線の幅ピッチからデブリサイズを計測する

微小デブリ計測技術の概要

衝突孔の例(衝突試験ISAS) - 衝突粒子 SUS 309 microm - 衝突速度 52 kms

HTV5号機によるセンサ機能のフライト実証

35cm

46cm

FY2013機能実証モデル

検出線幅 50 μm 検出線間隔 100 μm フィルム厚 lt 20 μm 有感領域 30times33cm 検出線総数 3300本

サイズ 50times39times4 cm (筐体を含む)

重量 約15kg(筐体を含む)

消費電力 2W(最大4W)(他センサ含む)

テレメトリ 02 bps

宇宙環境観測装置KASPERの一部としてデブリセンサSDMを搭載 FY2013に製作開始今年8月に打ち上げ予定)

まとめ(その1)

衛星不具合の主な原因は帯電放電シングルイベント放射線損傷である今後デブリ環境が重要になると予測される

静止軌道では商用衛星が多く運用されており宇宙環境の変動把握は重要この領域で運用する衛星が気を付けなければいけない環境として

1太陽フレアに伴う高エネルギー粒子 2太陽活動下降期による静止軌道電子の増加 3磁気嵐に伴う磁気圏尾部から注入する粒子 などがあげられる

まとめ(その2)

不具合軽減の取り組み bull 開発時は宇宙環境条件(トータルフラックス及び最悪条

件)を明確にし設計(冗長系柔軟性の設計ディレーティング及び運用モード寿命について研究)試験の充実検証の充実を図る

bull 運用段階に入ったならば宇宙環境を監視し警報等で故障を防ぐ

予測課題 bull 太陽フレアに伴う高エネルギー粒子発生後フラックス

ピーク値の推定

bull 衛星により不具合の起きる閾値は異なるが閾値をこえる急激な電子フラックスの増加と継続時間の予測

bull 局所的な磁気嵐に伴う磁気圏尾部から注入する粒子

宇宙環境グループは宇宙ステーションと衛星プロジェクトの安全な遂行に貢献しています

ご静聴ありがとうございました

補足資料

不具合原因の推移 bull 宇宙天気を大きく左右する要因の1つとして約11年の太陽活動変化が挙げられる

bull 太陽活動下降時期(太陽変動CME)と極大期(フレアCME)に衛星で不具合が増加するそれにより不具合原因の割合が変わる

-Koons et al The Impact of the Space Environment on Space Systems Aerospace Corp report no TR-99(1670)-1 20 July 1999 -2009 preliminary study (unpublished)

何故不具合は減らないか

bull 部品 放射線に対する感受性が高くなっている bull 微細化が進み同時にフォールトするノードが増え同時にエ

ラーとなる論理ノードやメモリセルが増加する微細化によってメモリセルは小さくなるので記憶容量当たりでみるとエラーの発生率は下がるしかし半導体チップの記憶容量やゲート数が増えるので半導体チップ当たりのエラー発生率は微細化とともに上昇するまた蓄積電荷が小さくなり感受性が高くなってきている

bull システム 大型化大電力化運用長期化 bull 1990年代末以降静止衛星の電力が10kWレベルになったしか

し設計検証技術データ蓄積が遅れている改善されつつあると推測される

放射線による影響の概要

粒子 エネルギー又はLET

代表的な影響

陽子 100keV-1MeV 1-10MeV 10-100MeV gt50MeV

表面損傷 表面材料と太陽電池の損傷 放射線損傷(電離非電離損傷の両方)センサーへのノイズ シングルイベント効果

電子 10-100keV gt100keV gt1MeV

表面帯電 深部帯電現象(deep-dielectric charging)センサーへのノイズ太陽電池の損傷 放射線損傷(電離)

重イオン gt1MeV-cm2mg シングルイベント効果

注エネルギー及びLETは個々の部品等により異なりますあくまでも目安です

耐放射線設計手順

軌道条件

ミッション期間

環境条件設定

トータルドーズの予測

1MeV電子換算被曝算出

NIELの換算

LETフルエンス算出

陽子フルエンス算出

対  策  の  検  討

対  策  の  検  討

対  策  の  検  討

放射線による劣化率予測

劣化率予測 特性予測

耐性データ

放射線による劣化率予測

耐性データ

劣化率予測アレイ出力劣化予測

感受性データ

シングルイベント発生率予測 致命度解析

衛星内質量分布

(2)

部品材料の選定

他の要因による劣化率予測

(2)(2) (3)

回路設計等NO

OK

アレイ構造 セル選定

他の要因による劣化率予測 アレイ設計(2)

(2) (2) (2) (3)

衛星内質量分布 部品選定(2)

(2) (2)(3)

NO

OK

NO

OK

(1) 環境モデルマージを含む(2) 部品レベルの検討(3) アセンブリレベルでの検討(4) 設計マージン環境モデル   マージを含め大丈夫か

トータルドーズ

太陽電池アレイの劣化

シングルイベント効果

回路設計

補足放射線太陽宇宙線銀河宇宙線

NEILを用いたダメージファクターの算出

対  策  の  検  討

放射線による劣化率予測

劣化率予測 特性予測

耐性データ

(2)

部品材料の選定

他の要因による劣化率予測

(2)(2) (3)

回路設計等NO

OK

衛星内質量分布 半導体デバイスの変位損傷

(1)

(4)

(4)

(4)

(4)

各軌道における放射線環境

1E+10

1E+11

1E+12

1E+13

1E+14

1E+15

1E+16

1E+17

1E+18

1E+19

1E+20

001 010 100 1000

捕捉

電子

の積

分フ

ルエ

ンス

[m

2 ]

エネルギー[MeV]

各軌道における電子捕捉積分フルエンス(3年間)

LEO

EOS GEO

MEO

GTO

GEO 軌道傾斜角 0deg 高度36000km GTO 軌道傾斜角 18deg 高度 360km~36000km MEO 軌道傾斜角 51deg 高度 10000km EOS 軌道傾斜角 98deg 高度705km LEO 軌道傾斜角 29deg 高度 600km

1E+12

1E+13

1E+14

1E+15

1E+16

1E+17

1E+18

1E+19

1E+20

01 10 100 1000

捕捉

陽子の

積分フルエン

ス[

m2 ]

エネルギー[MeV]

各軌道における捕捉陽子積分フルエンス(3年間)

MEO

GTO

GEO

EOS LEO

放射線による部品材料の影響

総照射線量 (TIDTotal Ionising Dose )

電離損傷

バイポーラTrの電流増幅率の低下リーク電流の増大

γ線で評価

トータルドーズ効果

変位損傷 (DDDisplacement Damage )または 非イオン化エネルギー損失 (NIELNon-Ionising Energy

Loss )

変位損傷(格子欠陥の生成)

電荷輸送効率の低下 (CCD)太陽電池の効率低下等

電子陽子により評価

シングルイベント効果

1個の荷電粒子の入射により発生する誤動作

ソフト(Latch-Up Burnout) エラー又は ソフト (Upset) エラー

陽子及び重イオンで評価

トータルドーズ効果

+ - + + - + - + - - + + + + -

ゲート酸化膜

電離

格子欠陥

正電荷捕獲

+ 正孔 - 電子

電極

(Silicon oxidenitride)

荷電粒子

反跳原子

ゲート絶縁膜中に電荷が蓄積することによるMOSトランジスタのしきい電圧(MOSトランジスタがオフからオンに変化するゲート電圧)の変化をもたらすただ

し最近の最先端チップはゲート絶縁膜がきわめて薄くなっているこのためゲート絶縁膜よりもフィールド絶縁膜(隣接するトランジスタを電気的に分離する絶縁膜)での電荷蓄積が相対的には大きな問題になってきている」

シングルイベント効果

メモリセルはNチャンネルとPチャンネルMOSFETより構成されメモリ情報は回路ノード12の電位の

高低により記録している空乏層の広がっているPN接合12の領域に

重イオンが入射した場合電荷の発生と空乏層内への少数キャリアの収集が起こるこの収集電荷量が回路の耐量を越えた場合(c)に示すように反転が起こる(ソフトエラー)一方pウエル-N基板接

合の空乏層内に電荷収集量が起こりえる耐性を越えると寄生的に存在するPNPNサイリスタ構造がオ

ンし電源と基板間に大電流が流れる状態が生じる(ラッチアップ)

シングルイベントメカニズム -陽子と重イオンの違い-

エラー発生率の計算

線エネルギー付与(LET) (linear energy transfer)

電離性放射線が物質中を通過する際飛程の単位長さ当りに平均して失うエネルギーをいう各種の放射線のうちX線γ線はLETが小さいので低LETといいα線中性子線その他重イオン核分裂破片のLETは大きいので高LETという MeVμmMeV(gcm2)やMeV(mgcm2)で表される

南大西洋異常(SAA) bull 地球の自転軸と磁気軸のずれ

darr bull 放射線帯が自転軸に対して非

対称

bull 南大西洋上空では放射線帯内帯が低高度に落ちてきているこの領域を南大西洋異常域(SAA South Atlantic Anomaly)と呼ぶ

bull 地球観測衛星ではSAAで放射線帯陽子の影響を受ける

Single Event Lachup

シングルイベントと陽子分布

MOS-1衛星(高度909km軌道傾斜角99度)で発生したシングルイベントと 陽子30MeV以上の等高線マップを重ね合わせた結果

NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)

bull 入射粒子が電離によらず与える損傷非イオン化損失

低軌道での電子フラックスと 不具合の発生場所

南大西洋異常(SAA)と極の角

高度800kmでの電子フラックス図極の角(polar horn)とSAAを示す

太陽粒子線 bull 太陽高エネルギー粒子線(SPE Solar Proton Events)は太陽フレア とコロナガス噴出 (CMECoronal Mass Ejections )により引き起こされる bull フレアのスペクトルは可変であるためあるエネルギー域における最悪状態イベントは必ずしも別のエネルギー域における最悪条件ではない 1972年8月のイベント 10~70MeVの粒子が最も多かった 1989年10のイベント 1972年8月のイベントに比べ低エネルギー領域 高エネルギー領域が明らかに激しかった

フルエンス 105 to 1011 cm-2

変動期間 1日から数日

ldquoBastiliardquo Solar Event 14 July 2000

Carrington Flare

84

(LW Townseed) Carrington Flare(1859年) Carrington Flare による30MeV以上トータルFluenceを118times109cm-2で規格化 ~1989年フレアの約13倍(シングルイベントの評価で使用) ~1991年フレアの約9倍 2012年7月23日にキャリントンイベントとほぼ同等の爆発現象が太陽あるいは太陽の周りで起きていたということがNASAの太陽観測衛星「STEREO」の解析から発表された

放射線対策 bull 放射線シールドを付加し放射線を減衰させる

bull 放射線耐性の強い部品(SOI(Silicon On Insulator)技術による耐放射線部品)材料に変更する

bull 放射線による損傷を吸収するために回路または構造上のマージンを持たせる bull ソフト的なエラーに対しては エラー検出訂正機能や多数決

機能等でソフト的エラーが起きてもシステムが機能するようにしたフォールトトレラント機能を付けて対処する ICのハード的故障に対しては ラッチアップ耐性の強い部品を選定するしかないが 電流制限回路を付ける対策も採られる パワーMOSFETに対しては部品選定 電源電圧を規格値の半分以下に落とす等の対策を採る

SOI技術

表面帯電への対策例

表面の物体間を導線で結線する

太陽電池のカバーガラスを導電性被膜付き(酸化インジウムITO)にする

熱制御材表面にITOを被覆する

熱制御材は高誘電率のテフロンの使用を避け 高伝導度耐環境性に優れたブラックカプトンを使用

イオンエンジンの中和器で能動帯電制御

内部帯電への対策例

アルミで3mm厚さに相当するシールドで囲む(Faraday Cage)

テフロンやカプトンなどの誘電体材料の内部での使用量を最小限に押さえる

回路基板やコンフォーマルコーティングは誘電体なので電流リークパス(1012Ωcmまたは1012Ωcm2

程度)を必ずつける

特にスポット的な放射線シールドの金属材には必ず電流リークパスをつける

帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備

衛星モデル作成

材料物性テーブル設定

宇宙環境パラメータ設定

Converter

転送ディレクトリ 解析データファイル

転送

解析ディレクトリ生成 解析結果 進行状況チェック ファイル操作

MUSCAT 解析エンジン

解析結果 表示

パラメトリックラン

オプション 解析

大型パネル実験(35mtimes11m) クーポンパネル実験(26cmtimes16cm)

環境模擬試験 環境模擬試験

MUSCATに使用する物性値設計標準制定のための知見などを得ることを目的に軌道上の宇宙環境を模擬した地上試験を行っている これらの試験では放電の発生頻度や電圧閾値放電発生による太陽電池パネルや搭載機器への影響を検証している

放射線計測装置の原理

bull その粒子が物質を通過する際のエネルギー損出率が粒子の電荷(原子番号)Zの二乗に比例すること(Bethe-Blochの式)を利用する

S2

E

ΔE Ersquo

S1 S3

  • 宇宙機の設計のための宇宙環境
  • 話の流れ
  • 話の流れ
  • TEDA(技術データ取得装置)(国産部品の宇宙環境での実証の必要性)
  • ETS-VTEDA(技術データ取得装置)誕生前の部品の宇宙実証の背景
  • スライド番号 6
  • スライド番号 7
  • スライド番号 8
  • スライド番号 9
  • 図6太陽黒点数と静止軌道電子 (>04MeV ) Flux の変動 (ETS-V搭載DOMによる観測)
  • スライド番号 11
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの開発(理研東大と共同で宇宙環境計測の充実)
  • ETS-VI(きく6号)打ち上がったがGEOに行かずGTOに留まる
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの成果
  • スライド番号 15
  • スライド番号 16
  • スライド番号 17
  • ADEOS搭載TEDA(世界2番目の異常宇宙線ACR)
  • BBND (ボナー球中性子検出器)
  • スライド番号 20
  • ISS搭載BBNDの成果(約8か月)
  • スライド番号 22
  • MDS-1搭載放射線吸収線量モニタ(SDOM)
  • 放射線帯変動モデルの開発MDS-1 065 MeV 電子フラックス
  • 変動パラメータの選択 (1 cycle solar activity)
  • 変動パラメータ- Tavg の定義-
  • 065MeV 電子 L値-Tavg マップ
  • 13MeV 陽子 L値-Tavg マップ
  • 電子観測とMDS-1モデルの比較
  • 放射線帯フラックスピークの変動
  • 陽子観測とモデルの比較
  • 電子(035~078MeV) 1日の変動予測GOSAT軌道
  • 電子(035~078MeV) 変動の信頼度水準(1日)GOSAT軌道
  • MDS-1 model と AE-8 modelとの比較1日
  • 話の流れ
  • 2003年10月 みどり号の全損事故(複合現象)
  • 衛星帯電の基本式
  • 内部帯電
  • パドルでの帯電放電メカニズム
  • スライド番号 40
  • スライド番号 41
  • スライド番号 42
  • データ中継技術衛星DRTS (こだま)の不具合
  • DRTS ESA スパイクノイズと電子フルエンスの比較(赤の丸が異常検知)
  • 不具合が宇宙環境によるものであるか判断する際のポイント
  • 話の流れ
  • 宇宙天気のリスク-宇宙環境によるシステムへの影響 -
  • NASAの報告-GNampCに注目-
  • NASAの報告(続き)
  • 宇宙環境を原因とする不具合の割合-JAXAの場合-
  • 不具合発生部位の割合 
  • Satellite News Digest -静止軌道不具合-
  • 太陽活動と静止軌道衛星不具合例
  • スライド番号 54
  • スライド番号 55
  • スライド番号 56
  • 衛星開発段階における対策
  • 運用における対応
  • 話の流れ
  • スライド番号 60
  • スライド番号 61
  • まとめ(その1)
  • まとめ(その2)
  • 宇宙環境グループは宇宙ステーションと衛星プロジェクトの安全な遂行に貢献しています
  • 補足資料
  • 不具合原因の推移
  • 何故不具合は減らないか
  • 放射線による影響の概要
  • 耐放射線設計手順
  • 各軌道における放射線環境
  • 放射線による部品材料の影響
  • トータルドーズ効果
  • シングルイベント効果
  • シングルイベントメカニズム-陽子と重イオンの違い-
  • エラー発生率の計算
  • 線エネルギー付与(LET)(linear energy transfer)
  • 南大西洋異常(SAA)
  • Single Event Lachup
  • シングルイベントと陽子分布
  • NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)
  • 低軌道での電子フラックスと不具合の発生場所
  • 南大西洋異常(SAA)と極の角
  • スライド番号 83
  • Carrington Flare
  • 放射線対策
  • スライド番号 86
  • スライド番号 87
  • 帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備
  • スライド番号 89
  • 放射線計測装置の原理
Page 52: 宇宙機の設計のための宇宙環境の方針から国産部品開発(42品種)が実施された。 . 半導体電子部品は耐放射線性を加味して、人工衛星(特に

Satellite News Digest -静止軌道不具合-

Satellite News Digest (SND) (http wwwsqt-indexcouk) で1997年~2009年の期間に静止軌道で95件の不具合が報告されている その内運用ミスや設計ミスなどを除くと32件(約33)は宇宙環境によるものであった 過去のデータより割合が多い

Choiら1)はこれら不具合の地方時と季節依存性を確認した その結果2100LT~900LTで約72の不具合が発生し900LT~2100LTは9件(約28)であった またこの9件は全て姿勢制御の不具合だった 静止軌道衛星不具合のほとんどは真夜中と朝方で起きており磁気嵐に伴い磁気圏尾部から注入した粒子による表面帯電が不具合の主原因と結論づけている

1) Ho-sung Choi et al Analysis of GEO spacecraft anomalies Space weather relationships Space Weather Vol 9 S06001

太陽活動と静止軌道衛星不具合例

ANIK-E1E2

ANIK-E1

複数の衛星で故障

Galaxy-15

帯電放電不具合 -ANIK-E1amp2Telstar401-

Jan 1994 ANIK-E1 amp E2事故時の環境 - Joe H Allen

1週間

太陽活動下降時期の電子増加

2MeV以上電子

copyNOAA Web

フラックスが3桁急増

Jan 1997 Telstar401事故時の環境

静止軌道の急激な電子増加

太陽極大期太陽フレアによる衛星障害 - 2003年10月~11月-

10486981048698 永久故障 4 10486981048698 安全モード又は運用を一時停止 31 10486981048698 データ内容の「誤り」の増加搭載コンピュータの誤動作 5

httpwwwsat-ndcomfailures等のデータによる 合計 40件

-Barbieri and Mahmot

米国極軌道気象衛星NOAA-17の改良型マイクロ波観測装置AMSU-A1 (Advanced Microwave Sounding Unit)のスキャナーが永久故障 米国気象衛星GOES -8号のX線センサがOFFになり復帰しなくなった

e-birdに深刻な不具合が発生 不具合は20本のトランスポンダ全てに影響

火星周回中の探査機「マーズオデッセイ (Mars Odyssey)」の観測機器放射線観測装置「Martian Radiation Environment Experiment (MARIE)」が太陽活動の影響により10月28日から適切に作動しなくなった データ中継技術衛星(DRTS)「こだま」 太陽捕捉モードに移行

太陽陽子

帯電放電不具合-Galaxy15(局所的的現象)- 2

5 M

eV

65

MeV

11

5 M

eV

GOES 14 ----- GOES 15 ----- GOES 11 -----

Satellite Locations

Galaxy 15 anomaly

2010年4月5日9時48分UTCは磁気嵐及びCMEが発生するなど宇宙環境は非常に荒れていたGalaxy15衛星は真夜中側に位置し宇宙環境の影響を受けやすい

位置にいたことから宇宙環境による不具合である可能性が高いということで原因追及がなされた高エネルギー粒子が引き起こす代表的な衛星不具合現象として3つ(表面帯電内部帯電SEUシングルイベントバーンアウトSEL)の可能性を検討した

チームの報告書によると磁気圏尾部からの熱電子の流入による放電が原因であったと結論付けられたGalaxy15衛星の近くにはGOES-11衛星が位置していたがGOES-11衛星には不具合を発生しておらず本現象は局所的な現象と推測される

衛星開発段階における対策 JAXAの不具合解析の結論

bull 2002年~2008年に運用された11機の衛星不具合を解析 宇宙環境による不具合は偶発故障のみ(全体の約15)確率的には想定範囲内ではあるがその影響を最小限とするためディレーティング運用モード寿命についての研究に取り組む

bull 設計基準試験の充実検証確認の強化技術成熟度(TRL)評価の徹底各々の境界制約条件の明示化等により検証不足抜けの防止有効なピアレビューに結びつける

冗長系(同じハードウェア機能の冗長)柔軟性の設計(ソフトハードの対応)

bull 従来の故障が起きないようにする設計に対してGOSAT(いぶき)では重要部

品を二重化することにより故障する可能性は上がるが故障しても衛星バスの運用や観測が続行できる可能性がより高くなるように設計した

運用における対応

bull 宇宙天気監視ーロケット打ち上げ及び宇宙飛行士支援 数日前に今後の宇宙環境の推移を把握(MXレベルのフレアの発生確率)

bull X線の増加で太陽フレア発生を検知したら高エネルギー粒子の発生をいつまで 気を付ければ良いか判断(発生位置で大凡を推定するが課題は多い) SPEが発生した場合(特に10MeV以上100MeV 以上の陽

子)最大値フラックス値の推定 ピーク値を予測(特に閾値に近くなった時に重要)

bull 衛星運用 bull 太陽フレア磁気嵐警報(X線陽子及びkpが閾値を超えた

時に警報を発信)2003年10月より運用開始 bull 内部帯電警報(2日後の静止軌道上の高エネルギー電子(>1

Me) の増加を予測し 閾値を超えた時に警報を発信) 2004年4月より運用開始

話の流れ

技術データ取得装置(TEDA)の概要と成果 bull 主な成果 bull 不具合解析例

宇宙天気のリスクと対策 bull 宇宙環境による衛星システムへの影響 bull 宇宙環境を原因とする不具合の割合推移部位 bull 静止軌道不具合 bull 対策

今後必要な観測項目

まとめ

計測対象計測項目 計測対象 粒径100μm以上のデブリメテオロイド 計測項目 デブリ粒径衝突頻度

基本原理

厚さ約125μmの絶縁性のポリイミドフィルム表面に 100μm周期で直線状の細長い導線(太さ50μm)パターンを形成導線の破断を電気的に検知することによりデブリの衝突(貫通)を検知する破断した導線の数導線の幅ピッチからデブリサイズを計測する

微小デブリ計測技術の概要

衝突孔の例(衝突試験ISAS) - 衝突粒子 SUS 309 microm - 衝突速度 52 kms

HTV5号機によるセンサ機能のフライト実証

35cm

46cm

FY2013機能実証モデル

検出線幅 50 μm 検出線間隔 100 μm フィルム厚 lt 20 μm 有感領域 30times33cm 検出線総数 3300本

サイズ 50times39times4 cm (筐体を含む)

重量 約15kg(筐体を含む)

消費電力 2W(最大4W)(他センサ含む)

テレメトリ 02 bps

宇宙環境観測装置KASPERの一部としてデブリセンサSDMを搭載 FY2013に製作開始今年8月に打ち上げ予定)

まとめ(その1)

衛星不具合の主な原因は帯電放電シングルイベント放射線損傷である今後デブリ環境が重要になると予測される

静止軌道では商用衛星が多く運用されており宇宙環境の変動把握は重要この領域で運用する衛星が気を付けなければいけない環境として

1太陽フレアに伴う高エネルギー粒子 2太陽活動下降期による静止軌道電子の増加 3磁気嵐に伴う磁気圏尾部から注入する粒子 などがあげられる

まとめ(その2)

不具合軽減の取り組み bull 開発時は宇宙環境条件(トータルフラックス及び最悪条

件)を明確にし設計(冗長系柔軟性の設計ディレーティング及び運用モード寿命について研究)試験の充実検証の充実を図る

bull 運用段階に入ったならば宇宙環境を監視し警報等で故障を防ぐ

予測課題 bull 太陽フレアに伴う高エネルギー粒子発生後フラックス

ピーク値の推定

bull 衛星により不具合の起きる閾値は異なるが閾値をこえる急激な電子フラックスの増加と継続時間の予測

bull 局所的な磁気嵐に伴う磁気圏尾部から注入する粒子

宇宙環境グループは宇宙ステーションと衛星プロジェクトの安全な遂行に貢献しています

ご静聴ありがとうございました

補足資料

不具合原因の推移 bull 宇宙天気を大きく左右する要因の1つとして約11年の太陽活動変化が挙げられる

bull 太陽活動下降時期(太陽変動CME)と極大期(フレアCME)に衛星で不具合が増加するそれにより不具合原因の割合が変わる

-Koons et al The Impact of the Space Environment on Space Systems Aerospace Corp report no TR-99(1670)-1 20 July 1999 -2009 preliminary study (unpublished)

何故不具合は減らないか

bull 部品 放射線に対する感受性が高くなっている bull 微細化が進み同時にフォールトするノードが増え同時にエ

ラーとなる論理ノードやメモリセルが増加する微細化によってメモリセルは小さくなるので記憶容量当たりでみるとエラーの発生率は下がるしかし半導体チップの記憶容量やゲート数が増えるので半導体チップ当たりのエラー発生率は微細化とともに上昇するまた蓄積電荷が小さくなり感受性が高くなってきている

bull システム 大型化大電力化運用長期化 bull 1990年代末以降静止衛星の電力が10kWレベルになったしか

し設計検証技術データ蓄積が遅れている改善されつつあると推測される

放射線による影響の概要

粒子 エネルギー又はLET

代表的な影響

陽子 100keV-1MeV 1-10MeV 10-100MeV gt50MeV

表面損傷 表面材料と太陽電池の損傷 放射線損傷(電離非電離損傷の両方)センサーへのノイズ シングルイベント効果

電子 10-100keV gt100keV gt1MeV

表面帯電 深部帯電現象(deep-dielectric charging)センサーへのノイズ太陽電池の損傷 放射線損傷(電離)

重イオン gt1MeV-cm2mg シングルイベント効果

注エネルギー及びLETは個々の部品等により異なりますあくまでも目安です

耐放射線設計手順

軌道条件

ミッション期間

環境条件設定

トータルドーズの予測

1MeV電子換算被曝算出

NIELの換算

LETフルエンス算出

陽子フルエンス算出

対  策  の  検  討

対  策  の  検  討

対  策  の  検  討

放射線による劣化率予測

劣化率予測 特性予測

耐性データ

放射線による劣化率予測

耐性データ

劣化率予測アレイ出力劣化予測

感受性データ

シングルイベント発生率予測 致命度解析

衛星内質量分布

(2)

部品材料の選定

他の要因による劣化率予測

(2)(2) (3)

回路設計等NO

OK

アレイ構造 セル選定

他の要因による劣化率予測 アレイ設計(2)

(2) (2) (2) (3)

衛星内質量分布 部品選定(2)

(2) (2)(3)

NO

OK

NO

OK

(1) 環境モデルマージを含む(2) 部品レベルの検討(3) アセンブリレベルでの検討(4) 設計マージン環境モデル   マージを含め大丈夫か

トータルドーズ

太陽電池アレイの劣化

シングルイベント効果

回路設計

補足放射線太陽宇宙線銀河宇宙線

NEILを用いたダメージファクターの算出

対  策  の  検  討

放射線による劣化率予測

劣化率予測 特性予測

耐性データ

(2)

部品材料の選定

他の要因による劣化率予測

(2)(2) (3)

回路設計等NO

OK

衛星内質量分布 半導体デバイスの変位損傷

(1)

(4)

(4)

(4)

(4)

各軌道における放射線環境

1E+10

1E+11

1E+12

1E+13

1E+14

1E+15

1E+16

1E+17

1E+18

1E+19

1E+20

001 010 100 1000

捕捉

電子

の積

分フ

ルエ

ンス

[m

2 ]

エネルギー[MeV]

各軌道における電子捕捉積分フルエンス(3年間)

LEO

EOS GEO

MEO

GTO

GEO 軌道傾斜角 0deg 高度36000km GTO 軌道傾斜角 18deg 高度 360km~36000km MEO 軌道傾斜角 51deg 高度 10000km EOS 軌道傾斜角 98deg 高度705km LEO 軌道傾斜角 29deg 高度 600km

1E+12

1E+13

1E+14

1E+15

1E+16

1E+17

1E+18

1E+19

1E+20

01 10 100 1000

捕捉

陽子の

積分フルエン

ス[

m2 ]

エネルギー[MeV]

各軌道における捕捉陽子積分フルエンス(3年間)

MEO

GTO

GEO

EOS LEO

放射線による部品材料の影響

総照射線量 (TIDTotal Ionising Dose )

電離損傷

バイポーラTrの電流増幅率の低下リーク電流の増大

γ線で評価

トータルドーズ効果

変位損傷 (DDDisplacement Damage )または 非イオン化エネルギー損失 (NIELNon-Ionising Energy

Loss )

変位損傷(格子欠陥の生成)

電荷輸送効率の低下 (CCD)太陽電池の効率低下等

電子陽子により評価

シングルイベント効果

1個の荷電粒子の入射により発生する誤動作

ソフト(Latch-Up Burnout) エラー又は ソフト (Upset) エラー

陽子及び重イオンで評価

トータルドーズ効果

+ - + + - + - + - - + + + + -

ゲート酸化膜

電離

格子欠陥

正電荷捕獲

+ 正孔 - 電子

電極

(Silicon oxidenitride)

荷電粒子

反跳原子

ゲート絶縁膜中に電荷が蓄積することによるMOSトランジスタのしきい電圧(MOSトランジスタがオフからオンに変化するゲート電圧)の変化をもたらすただ

し最近の最先端チップはゲート絶縁膜がきわめて薄くなっているこのためゲート絶縁膜よりもフィールド絶縁膜(隣接するトランジスタを電気的に分離する絶縁膜)での電荷蓄積が相対的には大きな問題になってきている」

シングルイベント効果

メモリセルはNチャンネルとPチャンネルMOSFETより構成されメモリ情報は回路ノード12の電位の

高低により記録している空乏層の広がっているPN接合12の領域に

重イオンが入射した場合電荷の発生と空乏層内への少数キャリアの収集が起こるこの収集電荷量が回路の耐量を越えた場合(c)に示すように反転が起こる(ソフトエラー)一方pウエル-N基板接

合の空乏層内に電荷収集量が起こりえる耐性を越えると寄生的に存在するPNPNサイリスタ構造がオ

ンし電源と基板間に大電流が流れる状態が生じる(ラッチアップ)

シングルイベントメカニズム -陽子と重イオンの違い-

エラー発生率の計算

線エネルギー付与(LET) (linear energy transfer)

電離性放射線が物質中を通過する際飛程の単位長さ当りに平均して失うエネルギーをいう各種の放射線のうちX線γ線はLETが小さいので低LETといいα線中性子線その他重イオン核分裂破片のLETは大きいので高LETという MeVμmMeV(gcm2)やMeV(mgcm2)で表される

南大西洋異常(SAA) bull 地球の自転軸と磁気軸のずれ

darr bull 放射線帯が自転軸に対して非

対称

bull 南大西洋上空では放射線帯内帯が低高度に落ちてきているこの領域を南大西洋異常域(SAA South Atlantic Anomaly)と呼ぶ

bull 地球観測衛星ではSAAで放射線帯陽子の影響を受ける

Single Event Lachup

シングルイベントと陽子分布

MOS-1衛星(高度909km軌道傾斜角99度)で発生したシングルイベントと 陽子30MeV以上の等高線マップを重ね合わせた結果

NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)

bull 入射粒子が電離によらず与える損傷非イオン化損失

低軌道での電子フラックスと 不具合の発生場所

南大西洋異常(SAA)と極の角

高度800kmでの電子フラックス図極の角(polar horn)とSAAを示す

太陽粒子線 bull 太陽高エネルギー粒子線(SPE Solar Proton Events)は太陽フレア とコロナガス噴出 (CMECoronal Mass Ejections )により引き起こされる bull フレアのスペクトルは可変であるためあるエネルギー域における最悪状態イベントは必ずしも別のエネルギー域における最悪条件ではない 1972年8月のイベント 10~70MeVの粒子が最も多かった 1989年10のイベント 1972年8月のイベントに比べ低エネルギー領域 高エネルギー領域が明らかに激しかった

フルエンス 105 to 1011 cm-2

変動期間 1日から数日

ldquoBastiliardquo Solar Event 14 July 2000

Carrington Flare

84

(LW Townseed) Carrington Flare(1859年) Carrington Flare による30MeV以上トータルFluenceを118times109cm-2で規格化 ~1989年フレアの約13倍(シングルイベントの評価で使用) ~1991年フレアの約9倍 2012年7月23日にキャリントンイベントとほぼ同等の爆発現象が太陽あるいは太陽の周りで起きていたということがNASAの太陽観測衛星「STEREO」の解析から発表された

放射線対策 bull 放射線シールドを付加し放射線を減衰させる

bull 放射線耐性の強い部品(SOI(Silicon On Insulator)技術による耐放射線部品)材料に変更する

bull 放射線による損傷を吸収するために回路または構造上のマージンを持たせる bull ソフト的なエラーに対しては エラー検出訂正機能や多数決

機能等でソフト的エラーが起きてもシステムが機能するようにしたフォールトトレラント機能を付けて対処する ICのハード的故障に対しては ラッチアップ耐性の強い部品を選定するしかないが 電流制限回路を付ける対策も採られる パワーMOSFETに対しては部品選定 電源電圧を規格値の半分以下に落とす等の対策を採る

SOI技術

表面帯電への対策例

表面の物体間を導線で結線する

太陽電池のカバーガラスを導電性被膜付き(酸化インジウムITO)にする

熱制御材表面にITOを被覆する

熱制御材は高誘電率のテフロンの使用を避け 高伝導度耐環境性に優れたブラックカプトンを使用

イオンエンジンの中和器で能動帯電制御

内部帯電への対策例

アルミで3mm厚さに相当するシールドで囲む(Faraday Cage)

テフロンやカプトンなどの誘電体材料の内部での使用量を最小限に押さえる

回路基板やコンフォーマルコーティングは誘電体なので電流リークパス(1012Ωcmまたは1012Ωcm2

程度)を必ずつける

特にスポット的な放射線シールドの金属材には必ず電流リークパスをつける

帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備

衛星モデル作成

材料物性テーブル設定

宇宙環境パラメータ設定

Converter

転送ディレクトリ 解析データファイル

転送

解析ディレクトリ生成 解析結果 進行状況チェック ファイル操作

MUSCAT 解析エンジン

解析結果 表示

パラメトリックラン

オプション 解析

大型パネル実験(35mtimes11m) クーポンパネル実験(26cmtimes16cm)

環境模擬試験 環境模擬試験

MUSCATに使用する物性値設計標準制定のための知見などを得ることを目的に軌道上の宇宙環境を模擬した地上試験を行っている これらの試験では放電の発生頻度や電圧閾値放電発生による太陽電池パネルや搭載機器への影響を検証している

放射線計測装置の原理

bull その粒子が物質を通過する際のエネルギー損出率が粒子の電荷(原子番号)Zの二乗に比例すること(Bethe-Blochの式)を利用する

S2

E

ΔE Ersquo

S1 S3

  • 宇宙機の設計のための宇宙環境
  • 話の流れ
  • 話の流れ
  • TEDA(技術データ取得装置)(国産部品の宇宙環境での実証の必要性)
  • ETS-VTEDA(技術データ取得装置)誕生前の部品の宇宙実証の背景
  • スライド番号 6
  • スライド番号 7
  • スライド番号 8
  • スライド番号 9
  • 図6太陽黒点数と静止軌道電子 (>04MeV ) Flux の変動 (ETS-V搭載DOMによる観測)
  • スライド番号 11
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの開発(理研東大と共同で宇宙環境計測の充実)
  • ETS-VI(きく6号)打ち上がったがGEOに行かずGTOに留まる
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの成果
  • スライド番号 15
  • スライド番号 16
  • スライド番号 17
  • ADEOS搭載TEDA(世界2番目の異常宇宙線ACR)
  • BBND (ボナー球中性子検出器)
  • スライド番号 20
  • ISS搭載BBNDの成果(約8か月)
  • スライド番号 22
  • MDS-1搭載放射線吸収線量モニタ(SDOM)
  • 放射線帯変動モデルの開発MDS-1 065 MeV 電子フラックス
  • 変動パラメータの選択 (1 cycle solar activity)
  • 変動パラメータ- Tavg の定義-
  • 065MeV 電子 L値-Tavg マップ
  • 13MeV 陽子 L値-Tavg マップ
  • 電子観測とMDS-1モデルの比較
  • 放射線帯フラックスピークの変動
  • 陽子観測とモデルの比較
  • 電子(035~078MeV) 1日の変動予測GOSAT軌道
  • 電子(035~078MeV) 変動の信頼度水準(1日)GOSAT軌道
  • MDS-1 model と AE-8 modelとの比較1日
  • 話の流れ
  • 2003年10月 みどり号の全損事故(複合現象)
  • 衛星帯電の基本式
  • 内部帯電
  • パドルでの帯電放電メカニズム
  • スライド番号 40
  • スライド番号 41
  • スライド番号 42
  • データ中継技術衛星DRTS (こだま)の不具合
  • DRTS ESA スパイクノイズと電子フルエンスの比較(赤の丸が異常検知)
  • 不具合が宇宙環境によるものであるか判断する際のポイント
  • 話の流れ
  • 宇宙天気のリスク-宇宙環境によるシステムへの影響 -
  • NASAの報告-GNampCに注目-
  • NASAの報告(続き)
  • 宇宙環境を原因とする不具合の割合-JAXAの場合-
  • 不具合発生部位の割合 
  • Satellite News Digest -静止軌道不具合-
  • 太陽活動と静止軌道衛星不具合例
  • スライド番号 54
  • スライド番号 55
  • スライド番号 56
  • 衛星開発段階における対策
  • 運用における対応
  • 話の流れ
  • スライド番号 60
  • スライド番号 61
  • まとめ(その1)
  • まとめ(その2)
  • 宇宙環境グループは宇宙ステーションと衛星プロジェクトの安全な遂行に貢献しています
  • 補足資料
  • 不具合原因の推移
  • 何故不具合は減らないか
  • 放射線による影響の概要
  • 耐放射線設計手順
  • 各軌道における放射線環境
  • 放射線による部品材料の影響
  • トータルドーズ効果
  • シングルイベント効果
  • シングルイベントメカニズム-陽子と重イオンの違い-
  • エラー発生率の計算
  • 線エネルギー付与(LET)(linear energy transfer)
  • 南大西洋異常(SAA)
  • Single Event Lachup
  • シングルイベントと陽子分布
  • NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)
  • 低軌道での電子フラックスと不具合の発生場所
  • 南大西洋異常(SAA)と極の角
  • スライド番号 83
  • Carrington Flare
  • 放射線対策
  • スライド番号 86
  • スライド番号 87
  • 帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備
  • スライド番号 89
  • 放射線計測装置の原理
Page 53: 宇宙機の設計のための宇宙環境の方針から国産部品開発(42品種)が実施された。 . 半導体電子部品は耐放射線性を加味して、人工衛星(特に

太陽活動と静止軌道衛星不具合例

ANIK-E1E2

ANIK-E1

複数の衛星で故障

Galaxy-15

帯電放電不具合 -ANIK-E1amp2Telstar401-

Jan 1994 ANIK-E1 amp E2事故時の環境 - Joe H Allen

1週間

太陽活動下降時期の電子増加

2MeV以上電子

copyNOAA Web

フラックスが3桁急増

Jan 1997 Telstar401事故時の環境

静止軌道の急激な電子増加

太陽極大期太陽フレアによる衛星障害 - 2003年10月~11月-

10486981048698 永久故障 4 10486981048698 安全モード又は運用を一時停止 31 10486981048698 データ内容の「誤り」の増加搭載コンピュータの誤動作 5

httpwwwsat-ndcomfailures等のデータによる 合計 40件

-Barbieri and Mahmot

米国極軌道気象衛星NOAA-17の改良型マイクロ波観測装置AMSU-A1 (Advanced Microwave Sounding Unit)のスキャナーが永久故障 米国気象衛星GOES -8号のX線センサがOFFになり復帰しなくなった

e-birdに深刻な不具合が発生 不具合は20本のトランスポンダ全てに影響

火星周回中の探査機「マーズオデッセイ (Mars Odyssey)」の観測機器放射線観測装置「Martian Radiation Environment Experiment (MARIE)」が太陽活動の影響により10月28日から適切に作動しなくなった データ中継技術衛星(DRTS)「こだま」 太陽捕捉モードに移行

太陽陽子

帯電放電不具合-Galaxy15(局所的的現象)- 2

5 M

eV

65

MeV

11

5 M

eV

GOES 14 ----- GOES 15 ----- GOES 11 -----

Satellite Locations

Galaxy 15 anomaly

2010年4月5日9時48分UTCは磁気嵐及びCMEが発生するなど宇宙環境は非常に荒れていたGalaxy15衛星は真夜中側に位置し宇宙環境の影響を受けやすい

位置にいたことから宇宙環境による不具合である可能性が高いということで原因追及がなされた高エネルギー粒子が引き起こす代表的な衛星不具合現象として3つ(表面帯電内部帯電SEUシングルイベントバーンアウトSEL)の可能性を検討した

チームの報告書によると磁気圏尾部からの熱電子の流入による放電が原因であったと結論付けられたGalaxy15衛星の近くにはGOES-11衛星が位置していたがGOES-11衛星には不具合を発生しておらず本現象は局所的な現象と推測される

衛星開発段階における対策 JAXAの不具合解析の結論

bull 2002年~2008年に運用された11機の衛星不具合を解析 宇宙環境による不具合は偶発故障のみ(全体の約15)確率的には想定範囲内ではあるがその影響を最小限とするためディレーティング運用モード寿命についての研究に取り組む

bull 設計基準試験の充実検証確認の強化技術成熟度(TRL)評価の徹底各々の境界制約条件の明示化等により検証不足抜けの防止有効なピアレビューに結びつける

冗長系(同じハードウェア機能の冗長)柔軟性の設計(ソフトハードの対応)

bull 従来の故障が起きないようにする設計に対してGOSAT(いぶき)では重要部

品を二重化することにより故障する可能性は上がるが故障しても衛星バスの運用や観測が続行できる可能性がより高くなるように設計した

運用における対応

bull 宇宙天気監視ーロケット打ち上げ及び宇宙飛行士支援 数日前に今後の宇宙環境の推移を把握(MXレベルのフレアの発生確率)

bull X線の増加で太陽フレア発生を検知したら高エネルギー粒子の発生をいつまで 気を付ければ良いか判断(発生位置で大凡を推定するが課題は多い) SPEが発生した場合(特に10MeV以上100MeV 以上の陽

子)最大値フラックス値の推定 ピーク値を予測(特に閾値に近くなった時に重要)

bull 衛星運用 bull 太陽フレア磁気嵐警報(X線陽子及びkpが閾値を超えた

時に警報を発信)2003年10月より運用開始 bull 内部帯電警報(2日後の静止軌道上の高エネルギー電子(>1

Me) の増加を予測し 閾値を超えた時に警報を発信) 2004年4月より運用開始

話の流れ

技術データ取得装置(TEDA)の概要と成果 bull 主な成果 bull 不具合解析例

宇宙天気のリスクと対策 bull 宇宙環境による衛星システムへの影響 bull 宇宙環境を原因とする不具合の割合推移部位 bull 静止軌道不具合 bull 対策

今後必要な観測項目

まとめ

計測対象計測項目 計測対象 粒径100μm以上のデブリメテオロイド 計測項目 デブリ粒径衝突頻度

基本原理

厚さ約125μmの絶縁性のポリイミドフィルム表面に 100μm周期で直線状の細長い導線(太さ50μm)パターンを形成導線の破断を電気的に検知することによりデブリの衝突(貫通)を検知する破断した導線の数導線の幅ピッチからデブリサイズを計測する

微小デブリ計測技術の概要

衝突孔の例(衝突試験ISAS) - 衝突粒子 SUS 309 microm - 衝突速度 52 kms

HTV5号機によるセンサ機能のフライト実証

35cm

46cm

FY2013機能実証モデル

検出線幅 50 μm 検出線間隔 100 μm フィルム厚 lt 20 μm 有感領域 30times33cm 検出線総数 3300本

サイズ 50times39times4 cm (筐体を含む)

重量 約15kg(筐体を含む)

消費電力 2W(最大4W)(他センサ含む)

テレメトリ 02 bps

宇宙環境観測装置KASPERの一部としてデブリセンサSDMを搭載 FY2013に製作開始今年8月に打ち上げ予定)

まとめ(その1)

衛星不具合の主な原因は帯電放電シングルイベント放射線損傷である今後デブリ環境が重要になると予測される

静止軌道では商用衛星が多く運用されており宇宙環境の変動把握は重要この領域で運用する衛星が気を付けなければいけない環境として

1太陽フレアに伴う高エネルギー粒子 2太陽活動下降期による静止軌道電子の増加 3磁気嵐に伴う磁気圏尾部から注入する粒子 などがあげられる

まとめ(その2)

不具合軽減の取り組み bull 開発時は宇宙環境条件(トータルフラックス及び最悪条

件)を明確にし設計(冗長系柔軟性の設計ディレーティング及び運用モード寿命について研究)試験の充実検証の充実を図る

bull 運用段階に入ったならば宇宙環境を監視し警報等で故障を防ぐ

予測課題 bull 太陽フレアに伴う高エネルギー粒子発生後フラックス

ピーク値の推定

bull 衛星により不具合の起きる閾値は異なるが閾値をこえる急激な電子フラックスの増加と継続時間の予測

bull 局所的な磁気嵐に伴う磁気圏尾部から注入する粒子

宇宙環境グループは宇宙ステーションと衛星プロジェクトの安全な遂行に貢献しています

ご静聴ありがとうございました

補足資料

不具合原因の推移 bull 宇宙天気を大きく左右する要因の1つとして約11年の太陽活動変化が挙げられる

bull 太陽活動下降時期(太陽変動CME)と極大期(フレアCME)に衛星で不具合が増加するそれにより不具合原因の割合が変わる

-Koons et al The Impact of the Space Environment on Space Systems Aerospace Corp report no TR-99(1670)-1 20 July 1999 -2009 preliminary study (unpublished)

何故不具合は減らないか

bull 部品 放射線に対する感受性が高くなっている bull 微細化が進み同時にフォールトするノードが増え同時にエ

ラーとなる論理ノードやメモリセルが増加する微細化によってメモリセルは小さくなるので記憶容量当たりでみるとエラーの発生率は下がるしかし半導体チップの記憶容量やゲート数が増えるので半導体チップ当たりのエラー発生率は微細化とともに上昇するまた蓄積電荷が小さくなり感受性が高くなってきている

bull システム 大型化大電力化運用長期化 bull 1990年代末以降静止衛星の電力が10kWレベルになったしか

し設計検証技術データ蓄積が遅れている改善されつつあると推測される

放射線による影響の概要

粒子 エネルギー又はLET

代表的な影響

陽子 100keV-1MeV 1-10MeV 10-100MeV gt50MeV

表面損傷 表面材料と太陽電池の損傷 放射線損傷(電離非電離損傷の両方)センサーへのノイズ シングルイベント効果

電子 10-100keV gt100keV gt1MeV

表面帯電 深部帯電現象(deep-dielectric charging)センサーへのノイズ太陽電池の損傷 放射線損傷(電離)

重イオン gt1MeV-cm2mg シングルイベント効果

注エネルギー及びLETは個々の部品等により異なりますあくまでも目安です

耐放射線設計手順

軌道条件

ミッション期間

環境条件設定

トータルドーズの予測

1MeV電子換算被曝算出

NIELの換算

LETフルエンス算出

陽子フルエンス算出

対  策  の  検  討

対  策  の  検  討

対  策  の  検  討

放射線による劣化率予測

劣化率予測 特性予測

耐性データ

放射線による劣化率予測

耐性データ

劣化率予測アレイ出力劣化予測

感受性データ

シングルイベント発生率予測 致命度解析

衛星内質量分布

(2)

部品材料の選定

他の要因による劣化率予測

(2)(2) (3)

回路設計等NO

OK

アレイ構造 セル選定

他の要因による劣化率予測 アレイ設計(2)

(2) (2) (2) (3)

衛星内質量分布 部品選定(2)

(2) (2)(3)

NO

OK

NO

OK

(1) 環境モデルマージを含む(2) 部品レベルの検討(3) アセンブリレベルでの検討(4) 設計マージン環境モデル   マージを含め大丈夫か

トータルドーズ

太陽電池アレイの劣化

シングルイベント効果

回路設計

補足放射線太陽宇宙線銀河宇宙線

NEILを用いたダメージファクターの算出

対  策  の  検  討

放射線による劣化率予測

劣化率予測 特性予測

耐性データ

(2)

部品材料の選定

他の要因による劣化率予測

(2)(2) (3)

回路設計等NO

OK

衛星内質量分布 半導体デバイスの変位損傷

(1)

(4)

(4)

(4)

(4)

各軌道における放射線環境

1E+10

1E+11

1E+12

1E+13

1E+14

1E+15

1E+16

1E+17

1E+18

1E+19

1E+20

001 010 100 1000

捕捉

電子

の積

分フ

ルエ

ンス

[m

2 ]

エネルギー[MeV]

各軌道における電子捕捉積分フルエンス(3年間)

LEO

EOS GEO

MEO

GTO

GEO 軌道傾斜角 0deg 高度36000km GTO 軌道傾斜角 18deg 高度 360km~36000km MEO 軌道傾斜角 51deg 高度 10000km EOS 軌道傾斜角 98deg 高度705km LEO 軌道傾斜角 29deg 高度 600km

1E+12

1E+13

1E+14

1E+15

1E+16

1E+17

1E+18

1E+19

1E+20

01 10 100 1000

捕捉

陽子の

積分フルエン

ス[

m2 ]

エネルギー[MeV]

各軌道における捕捉陽子積分フルエンス(3年間)

MEO

GTO

GEO

EOS LEO

放射線による部品材料の影響

総照射線量 (TIDTotal Ionising Dose )

電離損傷

バイポーラTrの電流増幅率の低下リーク電流の増大

γ線で評価

トータルドーズ効果

変位損傷 (DDDisplacement Damage )または 非イオン化エネルギー損失 (NIELNon-Ionising Energy

Loss )

変位損傷(格子欠陥の生成)

電荷輸送効率の低下 (CCD)太陽電池の効率低下等

電子陽子により評価

シングルイベント効果

1個の荷電粒子の入射により発生する誤動作

ソフト(Latch-Up Burnout) エラー又は ソフト (Upset) エラー

陽子及び重イオンで評価

トータルドーズ効果

+ - + + - + - + - - + + + + -

ゲート酸化膜

電離

格子欠陥

正電荷捕獲

+ 正孔 - 電子

電極

(Silicon oxidenitride)

荷電粒子

反跳原子

ゲート絶縁膜中に電荷が蓄積することによるMOSトランジスタのしきい電圧(MOSトランジスタがオフからオンに変化するゲート電圧)の変化をもたらすただ

し最近の最先端チップはゲート絶縁膜がきわめて薄くなっているこのためゲート絶縁膜よりもフィールド絶縁膜(隣接するトランジスタを電気的に分離する絶縁膜)での電荷蓄積が相対的には大きな問題になってきている」

シングルイベント効果

メモリセルはNチャンネルとPチャンネルMOSFETより構成されメモリ情報は回路ノード12の電位の

高低により記録している空乏層の広がっているPN接合12の領域に

重イオンが入射した場合電荷の発生と空乏層内への少数キャリアの収集が起こるこの収集電荷量が回路の耐量を越えた場合(c)に示すように反転が起こる(ソフトエラー)一方pウエル-N基板接

合の空乏層内に電荷収集量が起こりえる耐性を越えると寄生的に存在するPNPNサイリスタ構造がオ

ンし電源と基板間に大電流が流れる状態が生じる(ラッチアップ)

シングルイベントメカニズム -陽子と重イオンの違い-

エラー発生率の計算

線エネルギー付与(LET) (linear energy transfer)

電離性放射線が物質中を通過する際飛程の単位長さ当りに平均して失うエネルギーをいう各種の放射線のうちX線γ線はLETが小さいので低LETといいα線中性子線その他重イオン核分裂破片のLETは大きいので高LETという MeVμmMeV(gcm2)やMeV(mgcm2)で表される

南大西洋異常(SAA) bull 地球の自転軸と磁気軸のずれ

darr bull 放射線帯が自転軸に対して非

対称

bull 南大西洋上空では放射線帯内帯が低高度に落ちてきているこの領域を南大西洋異常域(SAA South Atlantic Anomaly)と呼ぶ

bull 地球観測衛星ではSAAで放射線帯陽子の影響を受ける

Single Event Lachup

シングルイベントと陽子分布

MOS-1衛星(高度909km軌道傾斜角99度)で発生したシングルイベントと 陽子30MeV以上の等高線マップを重ね合わせた結果

NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)

bull 入射粒子が電離によらず与える損傷非イオン化損失

低軌道での電子フラックスと 不具合の発生場所

南大西洋異常(SAA)と極の角

高度800kmでの電子フラックス図極の角(polar horn)とSAAを示す

太陽粒子線 bull 太陽高エネルギー粒子線(SPE Solar Proton Events)は太陽フレア とコロナガス噴出 (CMECoronal Mass Ejections )により引き起こされる bull フレアのスペクトルは可変であるためあるエネルギー域における最悪状態イベントは必ずしも別のエネルギー域における最悪条件ではない 1972年8月のイベント 10~70MeVの粒子が最も多かった 1989年10のイベント 1972年8月のイベントに比べ低エネルギー領域 高エネルギー領域が明らかに激しかった

フルエンス 105 to 1011 cm-2

変動期間 1日から数日

ldquoBastiliardquo Solar Event 14 July 2000

Carrington Flare

84

(LW Townseed) Carrington Flare(1859年) Carrington Flare による30MeV以上トータルFluenceを118times109cm-2で規格化 ~1989年フレアの約13倍(シングルイベントの評価で使用) ~1991年フレアの約9倍 2012年7月23日にキャリントンイベントとほぼ同等の爆発現象が太陽あるいは太陽の周りで起きていたということがNASAの太陽観測衛星「STEREO」の解析から発表された

放射線対策 bull 放射線シールドを付加し放射線を減衰させる

bull 放射線耐性の強い部品(SOI(Silicon On Insulator)技術による耐放射線部品)材料に変更する

bull 放射線による損傷を吸収するために回路または構造上のマージンを持たせる bull ソフト的なエラーに対しては エラー検出訂正機能や多数決

機能等でソフト的エラーが起きてもシステムが機能するようにしたフォールトトレラント機能を付けて対処する ICのハード的故障に対しては ラッチアップ耐性の強い部品を選定するしかないが 電流制限回路を付ける対策も採られる パワーMOSFETに対しては部品選定 電源電圧を規格値の半分以下に落とす等の対策を採る

SOI技術

表面帯電への対策例

表面の物体間を導線で結線する

太陽電池のカバーガラスを導電性被膜付き(酸化インジウムITO)にする

熱制御材表面にITOを被覆する

熱制御材は高誘電率のテフロンの使用を避け 高伝導度耐環境性に優れたブラックカプトンを使用

イオンエンジンの中和器で能動帯電制御

内部帯電への対策例

アルミで3mm厚さに相当するシールドで囲む(Faraday Cage)

テフロンやカプトンなどの誘電体材料の内部での使用量を最小限に押さえる

回路基板やコンフォーマルコーティングは誘電体なので電流リークパス(1012Ωcmまたは1012Ωcm2

程度)を必ずつける

特にスポット的な放射線シールドの金属材には必ず電流リークパスをつける

帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備

衛星モデル作成

材料物性テーブル設定

宇宙環境パラメータ設定

Converter

転送ディレクトリ 解析データファイル

転送

解析ディレクトリ生成 解析結果 進行状況チェック ファイル操作

MUSCAT 解析エンジン

解析結果 表示

パラメトリックラン

オプション 解析

大型パネル実験(35mtimes11m) クーポンパネル実験(26cmtimes16cm)

環境模擬試験 環境模擬試験

MUSCATに使用する物性値設計標準制定のための知見などを得ることを目的に軌道上の宇宙環境を模擬した地上試験を行っている これらの試験では放電の発生頻度や電圧閾値放電発生による太陽電池パネルや搭載機器への影響を検証している

放射線計測装置の原理

bull その粒子が物質を通過する際のエネルギー損出率が粒子の電荷(原子番号)Zの二乗に比例すること(Bethe-Blochの式)を利用する

S2

E

ΔE Ersquo

S1 S3

  • 宇宙機の設計のための宇宙環境
  • 話の流れ
  • 話の流れ
  • TEDA(技術データ取得装置)(国産部品の宇宙環境での実証の必要性)
  • ETS-VTEDA(技術データ取得装置)誕生前の部品の宇宙実証の背景
  • スライド番号 6
  • スライド番号 7
  • スライド番号 8
  • スライド番号 9
  • 図6太陽黒点数と静止軌道電子 (>04MeV ) Flux の変動 (ETS-V搭載DOMによる観測)
  • スライド番号 11
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの開発(理研東大と共同で宇宙環境計測の充実)
  • ETS-VI(きく6号)打ち上がったがGEOに行かずGTOに留まる
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの成果
  • スライド番号 15
  • スライド番号 16
  • スライド番号 17
  • ADEOS搭載TEDA(世界2番目の異常宇宙線ACR)
  • BBND (ボナー球中性子検出器)
  • スライド番号 20
  • ISS搭載BBNDの成果(約8か月)
  • スライド番号 22
  • MDS-1搭載放射線吸収線量モニタ(SDOM)
  • 放射線帯変動モデルの開発MDS-1 065 MeV 電子フラックス
  • 変動パラメータの選択 (1 cycle solar activity)
  • 変動パラメータ- Tavg の定義-
  • 065MeV 電子 L値-Tavg マップ
  • 13MeV 陽子 L値-Tavg マップ
  • 電子観測とMDS-1モデルの比較
  • 放射線帯フラックスピークの変動
  • 陽子観測とモデルの比較
  • 電子(035~078MeV) 1日の変動予測GOSAT軌道
  • 電子(035~078MeV) 変動の信頼度水準(1日)GOSAT軌道
  • MDS-1 model と AE-8 modelとの比較1日
  • 話の流れ
  • 2003年10月 みどり号の全損事故(複合現象)
  • 衛星帯電の基本式
  • 内部帯電
  • パドルでの帯電放電メカニズム
  • スライド番号 40
  • スライド番号 41
  • スライド番号 42
  • データ中継技術衛星DRTS (こだま)の不具合
  • DRTS ESA スパイクノイズと電子フルエンスの比較(赤の丸が異常検知)
  • 不具合が宇宙環境によるものであるか判断する際のポイント
  • 話の流れ
  • 宇宙天気のリスク-宇宙環境によるシステムへの影響 -
  • NASAの報告-GNampCに注目-
  • NASAの報告(続き)
  • 宇宙環境を原因とする不具合の割合-JAXAの場合-
  • 不具合発生部位の割合 
  • Satellite News Digest -静止軌道不具合-
  • 太陽活動と静止軌道衛星不具合例
  • スライド番号 54
  • スライド番号 55
  • スライド番号 56
  • 衛星開発段階における対策
  • 運用における対応
  • 話の流れ
  • スライド番号 60
  • スライド番号 61
  • まとめ(その1)
  • まとめ(その2)
  • 宇宙環境グループは宇宙ステーションと衛星プロジェクトの安全な遂行に貢献しています
  • 補足資料
  • 不具合原因の推移
  • 何故不具合は減らないか
  • 放射線による影響の概要
  • 耐放射線設計手順
  • 各軌道における放射線環境
  • 放射線による部品材料の影響
  • トータルドーズ効果
  • シングルイベント効果
  • シングルイベントメカニズム-陽子と重イオンの違い-
  • エラー発生率の計算
  • 線エネルギー付与(LET)(linear energy transfer)
  • 南大西洋異常(SAA)
  • Single Event Lachup
  • シングルイベントと陽子分布
  • NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)
  • 低軌道での電子フラックスと不具合の発生場所
  • 南大西洋異常(SAA)と極の角
  • スライド番号 83
  • Carrington Flare
  • 放射線対策
  • スライド番号 86
  • スライド番号 87
  • 帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備
  • スライド番号 89
  • 放射線計測装置の原理
Page 54: 宇宙機の設計のための宇宙環境の方針から国産部品開発(42品種)が実施された。 . 半導体電子部品は耐放射線性を加味して、人工衛星(特に

帯電放電不具合 -ANIK-E1amp2Telstar401-

Jan 1994 ANIK-E1 amp E2事故時の環境 - Joe H Allen

1週間

太陽活動下降時期の電子増加

2MeV以上電子

copyNOAA Web

フラックスが3桁急増

Jan 1997 Telstar401事故時の環境

静止軌道の急激な電子増加

太陽極大期太陽フレアによる衛星障害 - 2003年10月~11月-

10486981048698 永久故障 4 10486981048698 安全モード又は運用を一時停止 31 10486981048698 データ内容の「誤り」の増加搭載コンピュータの誤動作 5

httpwwwsat-ndcomfailures等のデータによる 合計 40件

-Barbieri and Mahmot

米国極軌道気象衛星NOAA-17の改良型マイクロ波観測装置AMSU-A1 (Advanced Microwave Sounding Unit)のスキャナーが永久故障 米国気象衛星GOES -8号のX線センサがOFFになり復帰しなくなった

e-birdに深刻な不具合が発生 不具合は20本のトランスポンダ全てに影響

火星周回中の探査機「マーズオデッセイ (Mars Odyssey)」の観測機器放射線観測装置「Martian Radiation Environment Experiment (MARIE)」が太陽活動の影響により10月28日から適切に作動しなくなった データ中継技術衛星(DRTS)「こだま」 太陽捕捉モードに移行

太陽陽子

帯電放電不具合-Galaxy15(局所的的現象)- 2

5 M

eV

65

MeV

11

5 M

eV

GOES 14 ----- GOES 15 ----- GOES 11 -----

Satellite Locations

Galaxy 15 anomaly

2010年4月5日9時48分UTCは磁気嵐及びCMEが発生するなど宇宙環境は非常に荒れていたGalaxy15衛星は真夜中側に位置し宇宙環境の影響を受けやすい

位置にいたことから宇宙環境による不具合である可能性が高いということで原因追及がなされた高エネルギー粒子が引き起こす代表的な衛星不具合現象として3つ(表面帯電内部帯電SEUシングルイベントバーンアウトSEL)の可能性を検討した

チームの報告書によると磁気圏尾部からの熱電子の流入による放電が原因であったと結論付けられたGalaxy15衛星の近くにはGOES-11衛星が位置していたがGOES-11衛星には不具合を発生しておらず本現象は局所的な現象と推測される

衛星開発段階における対策 JAXAの不具合解析の結論

bull 2002年~2008年に運用された11機の衛星不具合を解析 宇宙環境による不具合は偶発故障のみ(全体の約15)確率的には想定範囲内ではあるがその影響を最小限とするためディレーティング運用モード寿命についての研究に取り組む

bull 設計基準試験の充実検証確認の強化技術成熟度(TRL)評価の徹底各々の境界制約条件の明示化等により検証不足抜けの防止有効なピアレビューに結びつける

冗長系(同じハードウェア機能の冗長)柔軟性の設計(ソフトハードの対応)

bull 従来の故障が起きないようにする設計に対してGOSAT(いぶき)では重要部

品を二重化することにより故障する可能性は上がるが故障しても衛星バスの運用や観測が続行できる可能性がより高くなるように設計した

運用における対応

bull 宇宙天気監視ーロケット打ち上げ及び宇宙飛行士支援 数日前に今後の宇宙環境の推移を把握(MXレベルのフレアの発生確率)

bull X線の増加で太陽フレア発生を検知したら高エネルギー粒子の発生をいつまで 気を付ければ良いか判断(発生位置で大凡を推定するが課題は多い) SPEが発生した場合(特に10MeV以上100MeV 以上の陽

子)最大値フラックス値の推定 ピーク値を予測(特に閾値に近くなった時に重要)

bull 衛星運用 bull 太陽フレア磁気嵐警報(X線陽子及びkpが閾値を超えた

時に警報を発信)2003年10月より運用開始 bull 内部帯電警報(2日後の静止軌道上の高エネルギー電子(>1

Me) の増加を予測し 閾値を超えた時に警報を発信) 2004年4月より運用開始

話の流れ

技術データ取得装置(TEDA)の概要と成果 bull 主な成果 bull 不具合解析例

宇宙天気のリスクと対策 bull 宇宙環境による衛星システムへの影響 bull 宇宙環境を原因とする不具合の割合推移部位 bull 静止軌道不具合 bull 対策

今後必要な観測項目

まとめ

計測対象計測項目 計測対象 粒径100μm以上のデブリメテオロイド 計測項目 デブリ粒径衝突頻度

基本原理

厚さ約125μmの絶縁性のポリイミドフィルム表面に 100μm周期で直線状の細長い導線(太さ50μm)パターンを形成導線の破断を電気的に検知することによりデブリの衝突(貫通)を検知する破断した導線の数導線の幅ピッチからデブリサイズを計測する

微小デブリ計測技術の概要

衝突孔の例(衝突試験ISAS) - 衝突粒子 SUS 309 microm - 衝突速度 52 kms

HTV5号機によるセンサ機能のフライト実証

35cm

46cm

FY2013機能実証モデル

検出線幅 50 μm 検出線間隔 100 μm フィルム厚 lt 20 μm 有感領域 30times33cm 検出線総数 3300本

サイズ 50times39times4 cm (筐体を含む)

重量 約15kg(筐体を含む)

消費電力 2W(最大4W)(他センサ含む)

テレメトリ 02 bps

宇宙環境観測装置KASPERの一部としてデブリセンサSDMを搭載 FY2013に製作開始今年8月に打ち上げ予定)

まとめ(その1)

衛星不具合の主な原因は帯電放電シングルイベント放射線損傷である今後デブリ環境が重要になると予測される

静止軌道では商用衛星が多く運用されており宇宙環境の変動把握は重要この領域で運用する衛星が気を付けなければいけない環境として

1太陽フレアに伴う高エネルギー粒子 2太陽活動下降期による静止軌道電子の増加 3磁気嵐に伴う磁気圏尾部から注入する粒子 などがあげられる

まとめ(その2)

不具合軽減の取り組み bull 開発時は宇宙環境条件(トータルフラックス及び最悪条

件)を明確にし設計(冗長系柔軟性の設計ディレーティング及び運用モード寿命について研究)試験の充実検証の充実を図る

bull 運用段階に入ったならば宇宙環境を監視し警報等で故障を防ぐ

予測課題 bull 太陽フレアに伴う高エネルギー粒子発生後フラックス

ピーク値の推定

bull 衛星により不具合の起きる閾値は異なるが閾値をこえる急激な電子フラックスの増加と継続時間の予測

bull 局所的な磁気嵐に伴う磁気圏尾部から注入する粒子

宇宙環境グループは宇宙ステーションと衛星プロジェクトの安全な遂行に貢献しています

ご静聴ありがとうございました

補足資料

不具合原因の推移 bull 宇宙天気を大きく左右する要因の1つとして約11年の太陽活動変化が挙げられる

bull 太陽活動下降時期(太陽変動CME)と極大期(フレアCME)に衛星で不具合が増加するそれにより不具合原因の割合が変わる

-Koons et al The Impact of the Space Environment on Space Systems Aerospace Corp report no TR-99(1670)-1 20 July 1999 -2009 preliminary study (unpublished)

何故不具合は減らないか

bull 部品 放射線に対する感受性が高くなっている bull 微細化が進み同時にフォールトするノードが増え同時にエ

ラーとなる論理ノードやメモリセルが増加する微細化によってメモリセルは小さくなるので記憶容量当たりでみるとエラーの発生率は下がるしかし半導体チップの記憶容量やゲート数が増えるので半導体チップ当たりのエラー発生率は微細化とともに上昇するまた蓄積電荷が小さくなり感受性が高くなってきている

bull システム 大型化大電力化運用長期化 bull 1990年代末以降静止衛星の電力が10kWレベルになったしか

し設計検証技術データ蓄積が遅れている改善されつつあると推測される

放射線による影響の概要

粒子 エネルギー又はLET

代表的な影響

陽子 100keV-1MeV 1-10MeV 10-100MeV gt50MeV

表面損傷 表面材料と太陽電池の損傷 放射線損傷(電離非電離損傷の両方)センサーへのノイズ シングルイベント効果

電子 10-100keV gt100keV gt1MeV

表面帯電 深部帯電現象(deep-dielectric charging)センサーへのノイズ太陽電池の損傷 放射線損傷(電離)

重イオン gt1MeV-cm2mg シングルイベント効果

注エネルギー及びLETは個々の部品等により異なりますあくまでも目安です

耐放射線設計手順

軌道条件

ミッション期間

環境条件設定

トータルドーズの予測

1MeV電子換算被曝算出

NIELの換算

LETフルエンス算出

陽子フルエンス算出

対  策  の  検  討

対  策  の  検  討

対  策  の  検  討

放射線による劣化率予測

劣化率予測 特性予測

耐性データ

放射線による劣化率予測

耐性データ

劣化率予測アレイ出力劣化予測

感受性データ

シングルイベント発生率予測 致命度解析

衛星内質量分布

(2)

部品材料の選定

他の要因による劣化率予測

(2)(2) (3)

回路設計等NO

OK

アレイ構造 セル選定

他の要因による劣化率予測 アレイ設計(2)

(2) (2) (2) (3)

衛星内質量分布 部品選定(2)

(2) (2)(3)

NO

OK

NO

OK

(1) 環境モデルマージを含む(2) 部品レベルの検討(3) アセンブリレベルでの検討(4) 設計マージン環境モデル   マージを含め大丈夫か

トータルドーズ

太陽電池アレイの劣化

シングルイベント効果

回路設計

補足放射線太陽宇宙線銀河宇宙線

NEILを用いたダメージファクターの算出

対  策  の  検  討

放射線による劣化率予測

劣化率予測 特性予測

耐性データ

(2)

部品材料の選定

他の要因による劣化率予測

(2)(2) (3)

回路設計等NO

OK

衛星内質量分布 半導体デバイスの変位損傷

(1)

(4)

(4)

(4)

(4)

各軌道における放射線環境

1E+10

1E+11

1E+12

1E+13

1E+14

1E+15

1E+16

1E+17

1E+18

1E+19

1E+20

001 010 100 1000

捕捉

電子

の積

分フ

ルエ

ンス

[m

2 ]

エネルギー[MeV]

各軌道における電子捕捉積分フルエンス(3年間)

LEO

EOS GEO

MEO

GTO

GEO 軌道傾斜角 0deg 高度36000km GTO 軌道傾斜角 18deg 高度 360km~36000km MEO 軌道傾斜角 51deg 高度 10000km EOS 軌道傾斜角 98deg 高度705km LEO 軌道傾斜角 29deg 高度 600km

1E+12

1E+13

1E+14

1E+15

1E+16

1E+17

1E+18

1E+19

1E+20

01 10 100 1000

捕捉

陽子の

積分フルエン

ス[

m2 ]

エネルギー[MeV]

各軌道における捕捉陽子積分フルエンス(3年間)

MEO

GTO

GEO

EOS LEO

放射線による部品材料の影響

総照射線量 (TIDTotal Ionising Dose )

電離損傷

バイポーラTrの電流増幅率の低下リーク電流の増大

γ線で評価

トータルドーズ効果

変位損傷 (DDDisplacement Damage )または 非イオン化エネルギー損失 (NIELNon-Ionising Energy

Loss )

変位損傷(格子欠陥の生成)

電荷輸送効率の低下 (CCD)太陽電池の効率低下等

電子陽子により評価

シングルイベント効果

1個の荷電粒子の入射により発生する誤動作

ソフト(Latch-Up Burnout) エラー又は ソフト (Upset) エラー

陽子及び重イオンで評価

トータルドーズ効果

+ - + + - + - + - - + + + + -

ゲート酸化膜

電離

格子欠陥

正電荷捕獲

+ 正孔 - 電子

電極

(Silicon oxidenitride)

荷電粒子

反跳原子

ゲート絶縁膜中に電荷が蓄積することによるMOSトランジスタのしきい電圧(MOSトランジスタがオフからオンに変化するゲート電圧)の変化をもたらすただ

し最近の最先端チップはゲート絶縁膜がきわめて薄くなっているこのためゲート絶縁膜よりもフィールド絶縁膜(隣接するトランジスタを電気的に分離する絶縁膜)での電荷蓄積が相対的には大きな問題になってきている」

シングルイベント効果

メモリセルはNチャンネルとPチャンネルMOSFETより構成されメモリ情報は回路ノード12の電位の

高低により記録している空乏層の広がっているPN接合12の領域に

重イオンが入射した場合電荷の発生と空乏層内への少数キャリアの収集が起こるこの収集電荷量が回路の耐量を越えた場合(c)に示すように反転が起こる(ソフトエラー)一方pウエル-N基板接

合の空乏層内に電荷収集量が起こりえる耐性を越えると寄生的に存在するPNPNサイリスタ構造がオ

ンし電源と基板間に大電流が流れる状態が生じる(ラッチアップ)

シングルイベントメカニズム -陽子と重イオンの違い-

エラー発生率の計算

線エネルギー付与(LET) (linear energy transfer)

電離性放射線が物質中を通過する際飛程の単位長さ当りに平均して失うエネルギーをいう各種の放射線のうちX線γ線はLETが小さいので低LETといいα線中性子線その他重イオン核分裂破片のLETは大きいので高LETという MeVμmMeV(gcm2)やMeV(mgcm2)で表される

南大西洋異常(SAA) bull 地球の自転軸と磁気軸のずれ

darr bull 放射線帯が自転軸に対して非

対称

bull 南大西洋上空では放射線帯内帯が低高度に落ちてきているこの領域を南大西洋異常域(SAA South Atlantic Anomaly)と呼ぶ

bull 地球観測衛星ではSAAで放射線帯陽子の影響を受ける

Single Event Lachup

シングルイベントと陽子分布

MOS-1衛星(高度909km軌道傾斜角99度)で発生したシングルイベントと 陽子30MeV以上の等高線マップを重ね合わせた結果

NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)

bull 入射粒子が電離によらず与える損傷非イオン化損失

低軌道での電子フラックスと 不具合の発生場所

南大西洋異常(SAA)と極の角

高度800kmでの電子フラックス図極の角(polar horn)とSAAを示す

太陽粒子線 bull 太陽高エネルギー粒子線(SPE Solar Proton Events)は太陽フレア とコロナガス噴出 (CMECoronal Mass Ejections )により引き起こされる bull フレアのスペクトルは可変であるためあるエネルギー域における最悪状態イベントは必ずしも別のエネルギー域における最悪条件ではない 1972年8月のイベント 10~70MeVの粒子が最も多かった 1989年10のイベント 1972年8月のイベントに比べ低エネルギー領域 高エネルギー領域が明らかに激しかった

フルエンス 105 to 1011 cm-2

変動期間 1日から数日

ldquoBastiliardquo Solar Event 14 July 2000

Carrington Flare

84

(LW Townseed) Carrington Flare(1859年) Carrington Flare による30MeV以上トータルFluenceを118times109cm-2で規格化 ~1989年フレアの約13倍(シングルイベントの評価で使用) ~1991年フレアの約9倍 2012年7月23日にキャリントンイベントとほぼ同等の爆発現象が太陽あるいは太陽の周りで起きていたということがNASAの太陽観測衛星「STEREO」の解析から発表された

放射線対策 bull 放射線シールドを付加し放射線を減衰させる

bull 放射線耐性の強い部品(SOI(Silicon On Insulator)技術による耐放射線部品)材料に変更する

bull 放射線による損傷を吸収するために回路または構造上のマージンを持たせる bull ソフト的なエラーに対しては エラー検出訂正機能や多数決

機能等でソフト的エラーが起きてもシステムが機能するようにしたフォールトトレラント機能を付けて対処する ICのハード的故障に対しては ラッチアップ耐性の強い部品を選定するしかないが 電流制限回路を付ける対策も採られる パワーMOSFETに対しては部品選定 電源電圧を規格値の半分以下に落とす等の対策を採る

SOI技術

表面帯電への対策例

表面の物体間を導線で結線する

太陽電池のカバーガラスを導電性被膜付き(酸化インジウムITO)にする

熱制御材表面にITOを被覆する

熱制御材は高誘電率のテフロンの使用を避け 高伝導度耐環境性に優れたブラックカプトンを使用

イオンエンジンの中和器で能動帯電制御

内部帯電への対策例

アルミで3mm厚さに相当するシールドで囲む(Faraday Cage)

テフロンやカプトンなどの誘電体材料の内部での使用量を最小限に押さえる

回路基板やコンフォーマルコーティングは誘電体なので電流リークパス(1012Ωcmまたは1012Ωcm2

程度)を必ずつける

特にスポット的な放射線シールドの金属材には必ず電流リークパスをつける

帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備

衛星モデル作成

材料物性テーブル設定

宇宙環境パラメータ設定

Converter

転送ディレクトリ 解析データファイル

転送

解析ディレクトリ生成 解析結果 進行状況チェック ファイル操作

MUSCAT 解析エンジン

解析結果 表示

パラメトリックラン

オプション 解析

大型パネル実験(35mtimes11m) クーポンパネル実験(26cmtimes16cm)

環境模擬試験 環境模擬試験

MUSCATに使用する物性値設計標準制定のための知見などを得ることを目的に軌道上の宇宙環境を模擬した地上試験を行っている これらの試験では放電の発生頻度や電圧閾値放電発生による太陽電池パネルや搭載機器への影響を検証している

放射線計測装置の原理

bull その粒子が物質を通過する際のエネルギー損出率が粒子の電荷(原子番号)Zの二乗に比例すること(Bethe-Blochの式)を利用する

S2

E

ΔE Ersquo

S1 S3

  • 宇宙機の設計のための宇宙環境
  • 話の流れ
  • 話の流れ
  • TEDA(技術データ取得装置)(国産部品の宇宙環境での実証の必要性)
  • ETS-VTEDA(技術データ取得装置)誕生前の部品の宇宙実証の背景
  • スライド番号 6
  • スライド番号 7
  • スライド番号 8
  • スライド番号 9
  • 図6太陽黒点数と静止軌道電子 (>04MeV ) Flux の変動 (ETS-V搭載DOMによる観測)
  • スライド番号 11
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの開発(理研東大と共同で宇宙環境計測の充実)
  • ETS-VI(きく6号)打ち上がったがGEOに行かずGTOに留まる
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの成果
  • スライド番号 15
  • スライド番号 16
  • スライド番号 17
  • ADEOS搭載TEDA(世界2番目の異常宇宙線ACR)
  • BBND (ボナー球中性子検出器)
  • スライド番号 20
  • ISS搭載BBNDの成果(約8か月)
  • スライド番号 22
  • MDS-1搭載放射線吸収線量モニタ(SDOM)
  • 放射線帯変動モデルの開発MDS-1 065 MeV 電子フラックス
  • 変動パラメータの選択 (1 cycle solar activity)
  • 変動パラメータ- Tavg の定義-
  • 065MeV 電子 L値-Tavg マップ
  • 13MeV 陽子 L値-Tavg マップ
  • 電子観測とMDS-1モデルの比較
  • 放射線帯フラックスピークの変動
  • 陽子観測とモデルの比較
  • 電子(035~078MeV) 1日の変動予測GOSAT軌道
  • 電子(035~078MeV) 変動の信頼度水準(1日)GOSAT軌道
  • MDS-1 model と AE-8 modelとの比較1日
  • 話の流れ
  • 2003年10月 みどり号の全損事故(複合現象)
  • 衛星帯電の基本式
  • 内部帯電
  • パドルでの帯電放電メカニズム
  • スライド番号 40
  • スライド番号 41
  • スライド番号 42
  • データ中継技術衛星DRTS (こだま)の不具合
  • DRTS ESA スパイクノイズと電子フルエンスの比較(赤の丸が異常検知)
  • 不具合が宇宙環境によるものであるか判断する際のポイント
  • 話の流れ
  • 宇宙天気のリスク-宇宙環境によるシステムへの影響 -
  • NASAの報告-GNampCに注目-
  • NASAの報告(続き)
  • 宇宙環境を原因とする不具合の割合-JAXAの場合-
  • 不具合発生部位の割合 
  • Satellite News Digest -静止軌道不具合-
  • 太陽活動と静止軌道衛星不具合例
  • スライド番号 54
  • スライド番号 55
  • スライド番号 56
  • 衛星開発段階における対策
  • 運用における対応
  • 話の流れ
  • スライド番号 60
  • スライド番号 61
  • まとめ(その1)
  • まとめ(その2)
  • 宇宙環境グループは宇宙ステーションと衛星プロジェクトの安全な遂行に貢献しています
  • 補足資料
  • 不具合原因の推移
  • 何故不具合は減らないか
  • 放射線による影響の概要
  • 耐放射線設計手順
  • 各軌道における放射線環境
  • 放射線による部品材料の影響
  • トータルドーズ効果
  • シングルイベント効果
  • シングルイベントメカニズム-陽子と重イオンの違い-
  • エラー発生率の計算
  • 線エネルギー付与(LET)(linear energy transfer)
  • 南大西洋異常(SAA)
  • Single Event Lachup
  • シングルイベントと陽子分布
  • NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)
  • 低軌道での電子フラックスと不具合の発生場所
  • 南大西洋異常(SAA)と極の角
  • スライド番号 83
  • Carrington Flare
  • 放射線対策
  • スライド番号 86
  • スライド番号 87
  • 帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備
  • スライド番号 89
  • 放射線計測装置の原理
Page 55: 宇宙機の設計のための宇宙環境の方針から国産部品開発(42品種)が実施された。 . 半導体電子部品は耐放射線性を加味して、人工衛星(特に

太陽極大期太陽フレアによる衛星障害 - 2003年10月~11月-

10486981048698 永久故障 4 10486981048698 安全モード又は運用を一時停止 31 10486981048698 データ内容の「誤り」の増加搭載コンピュータの誤動作 5

httpwwwsat-ndcomfailures等のデータによる 合計 40件

-Barbieri and Mahmot

米国極軌道気象衛星NOAA-17の改良型マイクロ波観測装置AMSU-A1 (Advanced Microwave Sounding Unit)のスキャナーが永久故障 米国気象衛星GOES -8号のX線センサがOFFになり復帰しなくなった

e-birdに深刻な不具合が発生 不具合は20本のトランスポンダ全てに影響

火星周回中の探査機「マーズオデッセイ (Mars Odyssey)」の観測機器放射線観測装置「Martian Radiation Environment Experiment (MARIE)」が太陽活動の影響により10月28日から適切に作動しなくなった データ中継技術衛星(DRTS)「こだま」 太陽捕捉モードに移行

太陽陽子

帯電放電不具合-Galaxy15(局所的的現象)- 2

5 M

eV

65

MeV

11

5 M

eV

GOES 14 ----- GOES 15 ----- GOES 11 -----

Satellite Locations

Galaxy 15 anomaly

2010年4月5日9時48分UTCは磁気嵐及びCMEが発生するなど宇宙環境は非常に荒れていたGalaxy15衛星は真夜中側に位置し宇宙環境の影響を受けやすい

位置にいたことから宇宙環境による不具合である可能性が高いということで原因追及がなされた高エネルギー粒子が引き起こす代表的な衛星不具合現象として3つ(表面帯電内部帯電SEUシングルイベントバーンアウトSEL)の可能性を検討した

チームの報告書によると磁気圏尾部からの熱電子の流入による放電が原因であったと結論付けられたGalaxy15衛星の近くにはGOES-11衛星が位置していたがGOES-11衛星には不具合を発生しておらず本現象は局所的な現象と推測される

衛星開発段階における対策 JAXAの不具合解析の結論

bull 2002年~2008年に運用された11機の衛星不具合を解析 宇宙環境による不具合は偶発故障のみ(全体の約15)確率的には想定範囲内ではあるがその影響を最小限とするためディレーティング運用モード寿命についての研究に取り組む

bull 設計基準試験の充実検証確認の強化技術成熟度(TRL)評価の徹底各々の境界制約条件の明示化等により検証不足抜けの防止有効なピアレビューに結びつける

冗長系(同じハードウェア機能の冗長)柔軟性の設計(ソフトハードの対応)

bull 従来の故障が起きないようにする設計に対してGOSAT(いぶき)では重要部

品を二重化することにより故障する可能性は上がるが故障しても衛星バスの運用や観測が続行できる可能性がより高くなるように設計した

運用における対応

bull 宇宙天気監視ーロケット打ち上げ及び宇宙飛行士支援 数日前に今後の宇宙環境の推移を把握(MXレベルのフレアの発生確率)

bull X線の増加で太陽フレア発生を検知したら高エネルギー粒子の発生をいつまで 気を付ければ良いか判断(発生位置で大凡を推定するが課題は多い) SPEが発生した場合(特に10MeV以上100MeV 以上の陽

子)最大値フラックス値の推定 ピーク値を予測(特に閾値に近くなった時に重要)

bull 衛星運用 bull 太陽フレア磁気嵐警報(X線陽子及びkpが閾値を超えた

時に警報を発信)2003年10月より運用開始 bull 内部帯電警報(2日後の静止軌道上の高エネルギー電子(>1

Me) の増加を予測し 閾値を超えた時に警報を発信) 2004年4月より運用開始

話の流れ

技術データ取得装置(TEDA)の概要と成果 bull 主な成果 bull 不具合解析例

宇宙天気のリスクと対策 bull 宇宙環境による衛星システムへの影響 bull 宇宙環境を原因とする不具合の割合推移部位 bull 静止軌道不具合 bull 対策

今後必要な観測項目

まとめ

計測対象計測項目 計測対象 粒径100μm以上のデブリメテオロイド 計測項目 デブリ粒径衝突頻度

基本原理

厚さ約125μmの絶縁性のポリイミドフィルム表面に 100μm周期で直線状の細長い導線(太さ50μm)パターンを形成導線の破断を電気的に検知することによりデブリの衝突(貫通)を検知する破断した導線の数導線の幅ピッチからデブリサイズを計測する

微小デブリ計測技術の概要

衝突孔の例(衝突試験ISAS) - 衝突粒子 SUS 309 microm - 衝突速度 52 kms

HTV5号機によるセンサ機能のフライト実証

35cm

46cm

FY2013機能実証モデル

検出線幅 50 μm 検出線間隔 100 μm フィルム厚 lt 20 μm 有感領域 30times33cm 検出線総数 3300本

サイズ 50times39times4 cm (筐体を含む)

重量 約15kg(筐体を含む)

消費電力 2W(最大4W)(他センサ含む)

テレメトリ 02 bps

宇宙環境観測装置KASPERの一部としてデブリセンサSDMを搭載 FY2013に製作開始今年8月に打ち上げ予定)

まとめ(その1)

衛星不具合の主な原因は帯電放電シングルイベント放射線損傷である今後デブリ環境が重要になると予測される

静止軌道では商用衛星が多く運用されており宇宙環境の変動把握は重要この領域で運用する衛星が気を付けなければいけない環境として

1太陽フレアに伴う高エネルギー粒子 2太陽活動下降期による静止軌道電子の増加 3磁気嵐に伴う磁気圏尾部から注入する粒子 などがあげられる

まとめ(その2)

不具合軽減の取り組み bull 開発時は宇宙環境条件(トータルフラックス及び最悪条

件)を明確にし設計(冗長系柔軟性の設計ディレーティング及び運用モード寿命について研究)試験の充実検証の充実を図る

bull 運用段階に入ったならば宇宙環境を監視し警報等で故障を防ぐ

予測課題 bull 太陽フレアに伴う高エネルギー粒子発生後フラックス

ピーク値の推定

bull 衛星により不具合の起きる閾値は異なるが閾値をこえる急激な電子フラックスの増加と継続時間の予測

bull 局所的な磁気嵐に伴う磁気圏尾部から注入する粒子

宇宙環境グループは宇宙ステーションと衛星プロジェクトの安全な遂行に貢献しています

ご静聴ありがとうございました

補足資料

不具合原因の推移 bull 宇宙天気を大きく左右する要因の1つとして約11年の太陽活動変化が挙げられる

bull 太陽活動下降時期(太陽変動CME)と極大期(フレアCME)に衛星で不具合が増加するそれにより不具合原因の割合が変わる

-Koons et al The Impact of the Space Environment on Space Systems Aerospace Corp report no TR-99(1670)-1 20 July 1999 -2009 preliminary study (unpublished)

何故不具合は減らないか

bull 部品 放射線に対する感受性が高くなっている bull 微細化が進み同時にフォールトするノードが増え同時にエ

ラーとなる論理ノードやメモリセルが増加する微細化によってメモリセルは小さくなるので記憶容量当たりでみるとエラーの発生率は下がるしかし半導体チップの記憶容量やゲート数が増えるので半導体チップ当たりのエラー発生率は微細化とともに上昇するまた蓄積電荷が小さくなり感受性が高くなってきている

bull システム 大型化大電力化運用長期化 bull 1990年代末以降静止衛星の電力が10kWレベルになったしか

し設計検証技術データ蓄積が遅れている改善されつつあると推測される

放射線による影響の概要

粒子 エネルギー又はLET

代表的な影響

陽子 100keV-1MeV 1-10MeV 10-100MeV gt50MeV

表面損傷 表面材料と太陽電池の損傷 放射線損傷(電離非電離損傷の両方)センサーへのノイズ シングルイベント効果

電子 10-100keV gt100keV gt1MeV

表面帯電 深部帯電現象(deep-dielectric charging)センサーへのノイズ太陽電池の損傷 放射線損傷(電離)

重イオン gt1MeV-cm2mg シングルイベント効果

注エネルギー及びLETは個々の部品等により異なりますあくまでも目安です

耐放射線設計手順

軌道条件

ミッション期間

環境条件設定

トータルドーズの予測

1MeV電子換算被曝算出

NIELの換算

LETフルエンス算出

陽子フルエンス算出

対  策  の  検  討

対  策  の  検  討

対  策  の  検  討

放射線による劣化率予測

劣化率予測 特性予測

耐性データ

放射線による劣化率予測

耐性データ

劣化率予測アレイ出力劣化予測

感受性データ

シングルイベント発生率予測 致命度解析

衛星内質量分布

(2)

部品材料の選定

他の要因による劣化率予測

(2)(2) (3)

回路設計等NO

OK

アレイ構造 セル選定

他の要因による劣化率予測 アレイ設計(2)

(2) (2) (2) (3)

衛星内質量分布 部品選定(2)

(2) (2)(3)

NO

OK

NO

OK

(1) 環境モデルマージを含む(2) 部品レベルの検討(3) アセンブリレベルでの検討(4) 設計マージン環境モデル   マージを含め大丈夫か

トータルドーズ

太陽電池アレイの劣化

シングルイベント効果

回路設計

補足放射線太陽宇宙線銀河宇宙線

NEILを用いたダメージファクターの算出

対  策  の  検  討

放射線による劣化率予測

劣化率予測 特性予測

耐性データ

(2)

部品材料の選定

他の要因による劣化率予測

(2)(2) (3)

回路設計等NO

OK

衛星内質量分布 半導体デバイスの変位損傷

(1)

(4)

(4)

(4)

(4)

各軌道における放射線環境

1E+10

1E+11

1E+12

1E+13

1E+14

1E+15

1E+16

1E+17

1E+18

1E+19

1E+20

001 010 100 1000

捕捉

電子

の積

分フ

ルエ

ンス

[m

2 ]

エネルギー[MeV]

各軌道における電子捕捉積分フルエンス(3年間)

LEO

EOS GEO

MEO

GTO

GEO 軌道傾斜角 0deg 高度36000km GTO 軌道傾斜角 18deg 高度 360km~36000km MEO 軌道傾斜角 51deg 高度 10000km EOS 軌道傾斜角 98deg 高度705km LEO 軌道傾斜角 29deg 高度 600km

1E+12

1E+13

1E+14

1E+15

1E+16

1E+17

1E+18

1E+19

1E+20

01 10 100 1000

捕捉

陽子の

積分フルエン

ス[

m2 ]

エネルギー[MeV]

各軌道における捕捉陽子積分フルエンス(3年間)

MEO

GTO

GEO

EOS LEO

放射線による部品材料の影響

総照射線量 (TIDTotal Ionising Dose )

電離損傷

バイポーラTrの電流増幅率の低下リーク電流の増大

γ線で評価

トータルドーズ効果

変位損傷 (DDDisplacement Damage )または 非イオン化エネルギー損失 (NIELNon-Ionising Energy

Loss )

変位損傷(格子欠陥の生成)

電荷輸送効率の低下 (CCD)太陽電池の効率低下等

電子陽子により評価

シングルイベント効果

1個の荷電粒子の入射により発生する誤動作

ソフト(Latch-Up Burnout) エラー又は ソフト (Upset) エラー

陽子及び重イオンで評価

トータルドーズ効果

+ - + + - + - + - - + + + + -

ゲート酸化膜

電離

格子欠陥

正電荷捕獲

+ 正孔 - 電子

電極

(Silicon oxidenitride)

荷電粒子

反跳原子

ゲート絶縁膜中に電荷が蓄積することによるMOSトランジスタのしきい電圧(MOSトランジスタがオフからオンに変化するゲート電圧)の変化をもたらすただ

し最近の最先端チップはゲート絶縁膜がきわめて薄くなっているこのためゲート絶縁膜よりもフィールド絶縁膜(隣接するトランジスタを電気的に分離する絶縁膜)での電荷蓄積が相対的には大きな問題になってきている」

シングルイベント効果

メモリセルはNチャンネルとPチャンネルMOSFETより構成されメモリ情報は回路ノード12の電位の

高低により記録している空乏層の広がっているPN接合12の領域に

重イオンが入射した場合電荷の発生と空乏層内への少数キャリアの収集が起こるこの収集電荷量が回路の耐量を越えた場合(c)に示すように反転が起こる(ソフトエラー)一方pウエル-N基板接

合の空乏層内に電荷収集量が起こりえる耐性を越えると寄生的に存在するPNPNサイリスタ構造がオ

ンし電源と基板間に大電流が流れる状態が生じる(ラッチアップ)

シングルイベントメカニズム -陽子と重イオンの違い-

エラー発生率の計算

線エネルギー付与(LET) (linear energy transfer)

電離性放射線が物質中を通過する際飛程の単位長さ当りに平均して失うエネルギーをいう各種の放射線のうちX線γ線はLETが小さいので低LETといいα線中性子線その他重イオン核分裂破片のLETは大きいので高LETという MeVμmMeV(gcm2)やMeV(mgcm2)で表される

南大西洋異常(SAA) bull 地球の自転軸と磁気軸のずれ

darr bull 放射線帯が自転軸に対して非

対称

bull 南大西洋上空では放射線帯内帯が低高度に落ちてきているこの領域を南大西洋異常域(SAA South Atlantic Anomaly)と呼ぶ

bull 地球観測衛星ではSAAで放射線帯陽子の影響を受ける

Single Event Lachup

シングルイベントと陽子分布

MOS-1衛星(高度909km軌道傾斜角99度)で発生したシングルイベントと 陽子30MeV以上の等高線マップを重ね合わせた結果

NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)

bull 入射粒子が電離によらず与える損傷非イオン化損失

低軌道での電子フラックスと 不具合の発生場所

南大西洋異常(SAA)と極の角

高度800kmでの電子フラックス図極の角(polar horn)とSAAを示す

太陽粒子線 bull 太陽高エネルギー粒子線(SPE Solar Proton Events)は太陽フレア とコロナガス噴出 (CMECoronal Mass Ejections )により引き起こされる bull フレアのスペクトルは可変であるためあるエネルギー域における最悪状態イベントは必ずしも別のエネルギー域における最悪条件ではない 1972年8月のイベント 10~70MeVの粒子が最も多かった 1989年10のイベント 1972年8月のイベントに比べ低エネルギー領域 高エネルギー領域が明らかに激しかった

フルエンス 105 to 1011 cm-2

変動期間 1日から数日

ldquoBastiliardquo Solar Event 14 July 2000

Carrington Flare

84

(LW Townseed) Carrington Flare(1859年) Carrington Flare による30MeV以上トータルFluenceを118times109cm-2で規格化 ~1989年フレアの約13倍(シングルイベントの評価で使用) ~1991年フレアの約9倍 2012年7月23日にキャリントンイベントとほぼ同等の爆発現象が太陽あるいは太陽の周りで起きていたということがNASAの太陽観測衛星「STEREO」の解析から発表された

放射線対策 bull 放射線シールドを付加し放射線を減衰させる

bull 放射線耐性の強い部品(SOI(Silicon On Insulator)技術による耐放射線部品)材料に変更する

bull 放射線による損傷を吸収するために回路または構造上のマージンを持たせる bull ソフト的なエラーに対しては エラー検出訂正機能や多数決

機能等でソフト的エラーが起きてもシステムが機能するようにしたフォールトトレラント機能を付けて対処する ICのハード的故障に対しては ラッチアップ耐性の強い部品を選定するしかないが 電流制限回路を付ける対策も採られる パワーMOSFETに対しては部品選定 電源電圧を規格値の半分以下に落とす等の対策を採る

SOI技術

表面帯電への対策例

表面の物体間を導線で結線する

太陽電池のカバーガラスを導電性被膜付き(酸化インジウムITO)にする

熱制御材表面にITOを被覆する

熱制御材は高誘電率のテフロンの使用を避け 高伝導度耐環境性に優れたブラックカプトンを使用

イオンエンジンの中和器で能動帯電制御

内部帯電への対策例

アルミで3mm厚さに相当するシールドで囲む(Faraday Cage)

テフロンやカプトンなどの誘電体材料の内部での使用量を最小限に押さえる

回路基板やコンフォーマルコーティングは誘電体なので電流リークパス(1012Ωcmまたは1012Ωcm2

程度)を必ずつける

特にスポット的な放射線シールドの金属材には必ず電流リークパスをつける

帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備

衛星モデル作成

材料物性テーブル設定

宇宙環境パラメータ設定

Converter

転送ディレクトリ 解析データファイル

転送

解析ディレクトリ生成 解析結果 進行状況チェック ファイル操作

MUSCAT 解析エンジン

解析結果 表示

パラメトリックラン

オプション 解析

大型パネル実験(35mtimes11m) クーポンパネル実験(26cmtimes16cm)

環境模擬試験 環境模擬試験

MUSCATに使用する物性値設計標準制定のための知見などを得ることを目的に軌道上の宇宙環境を模擬した地上試験を行っている これらの試験では放電の発生頻度や電圧閾値放電発生による太陽電池パネルや搭載機器への影響を検証している

放射線計測装置の原理

bull その粒子が物質を通過する際のエネルギー損出率が粒子の電荷(原子番号)Zの二乗に比例すること(Bethe-Blochの式)を利用する

S2

E

ΔE Ersquo

S1 S3

  • 宇宙機の設計のための宇宙環境
  • 話の流れ
  • 話の流れ
  • TEDA(技術データ取得装置)(国産部品の宇宙環境での実証の必要性)
  • ETS-VTEDA(技術データ取得装置)誕生前の部品の宇宙実証の背景
  • スライド番号 6
  • スライド番号 7
  • スライド番号 8
  • スライド番号 9
  • 図6太陽黒点数と静止軌道電子 (>04MeV ) Flux の変動 (ETS-V搭載DOMによる観測)
  • スライド番号 11
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの開発(理研東大と共同で宇宙環境計測の充実)
  • ETS-VI(きく6号)打ち上がったがGEOに行かずGTOに留まる
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの成果
  • スライド番号 15
  • スライド番号 16
  • スライド番号 17
  • ADEOS搭載TEDA(世界2番目の異常宇宙線ACR)
  • BBND (ボナー球中性子検出器)
  • スライド番号 20
  • ISS搭載BBNDの成果(約8か月)
  • スライド番号 22
  • MDS-1搭載放射線吸収線量モニタ(SDOM)
  • 放射線帯変動モデルの開発MDS-1 065 MeV 電子フラックス
  • 変動パラメータの選択 (1 cycle solar activity)
  • 変動パラメータ- Tavg の定義-
  • 065MeV 電子 L値-Tavg マップ
  • 13MeV 陽子 L値-Tavg マップ
  • 電子観測とMDS-1モデルの比較
  • 放射線帯フラックスピークの変動
  • 陽子観測とモデルの比較
  • 電子(035~078MeV) 1日の変動予測GOSAT軌道
  • 電子(035~078MeV) 変動の信頼度水準(1日)GOSAT軌道
  • MDS-1 model と AE-8 modelとの比較1日
  • 話の流れ
  • 2003年10月 みどり号の全損事故(複合現象)
  • 衛星帯電の基本式
  • 内部帯電
  • パドルでの帯電放電メカニズム
  • スライド番号 40
  • スライド番号 41
  • スライド番号 42
  • データ中継技術衛星DRTS (こだま)の不具合
  • DRTS ESA スパイクノイズと電子フルエンスの比較(赤の丸が異常検知)
  • 不具合が宇宙環境によるものであるか判断する際のポイント
  • 話の流れ
  • 宇宙天気のリスク-宇宙環境によるシステムへの影響 -
  • NASAの報告-GNampCに注目-
  • NASAの報告(続き)
  • 宇宙環境を原因とする不具合の割合-JAXAの場合-
  • 不具合発生部位の割合 
  • Satellite News Digest -静止軌道不具合-
  • 太陽活動と静止軌道衛星不具合例
  • スライド番号 54
  • スライド番号 55
  • スライド番号 56
  • 衛星開発段階における対策
  • 運用における対応
  • 話の流れ
  • スライド番号 60
  • スライド番号 61
  • まとめ(その1)
  • まとめ(その2)
  • 宇宙環境グループは宇宙ステーションと衛星プロジェクトの安全な遂行に貢献しています
  • 補足資料
  • 不具合原因の推移
  • 何故不具合は減らないか
  • 放射線による影響の概要
  • 耐放射線設計手順
  • 各軌道における放射線環境
  • 放射線による部品材料の影響
  • トータルドーズ効果
  • シングルイベント効果
  • シングルイベントメカニズム-陽子と重イオンの違い-
  • エラー発生率の計算
  • 線エネルギー付与(LET)(linear energy transfer)
  • 南大西洋異常(SAA)
  • Single Event Lachup
  • シングルイベントと陽子分布
  • NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)
  • 低軌道での電子フラックスと不具合の発生場所
  • 南大西洋異常(SAA)と極の角
  • スライド番号 83
  • Carrington Flare
  • 放射線対策
  • スライド番号 86
  • スライド番号 87
  • 帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備
  • スライド番号 89
  • 放射線計測装置の原理
Page 56: 宇宙機の設計のための宇宙環境の方針から国産部品開発(42品種)が実施された。 . 半導体電子部品は耐放射線性を加味して、人工衛星(特に

帯電放電不具合-Galaxy15(局所的的現象)- 2

5 M

eV

65

MeV

11

5 M

eV

GOES 14 ----- GOES 15 ----- GOES 11 -----

Satellite Locations

Galaxy 15 anomaly

2010年4月5日9時48分UTCは磁気嵐及びCMEが発生するなど宇宙環境は非常に荒れていたGalaxy15衛星は真夜中側に位置し宇宙環境の影響を受けやすい

位置にいたことから宇宙環境による不具合である可能性が高いということで原因追及がなされた高エネルギー粒子が引き起こす代表的な衛星不具合現象として3つ(表面帯電内部帯電SEUシングルイベントバーンアウトSEL)の可能性を検討した

チームの報告書によると磁気圏尾部からの熱電子の流入による放電が原因であったと結論付けられたGalaxy15衛星の近くにはGOES-11衛星が位置していたがGOES-11衛星には不具合を発生しておらず本現象は局所的な現象と推測される

衛星開発段階における対策 JAXAの不具合解析の結論

bull 2002年~2008年に運用された11機の衛星不具合を解析 宇宙環境による不具合は偶発故障のみ(全体の約15)確率的には想定範囲内ではあるがその影響を最小限とするためディレーティング運用モード寿命についての研究に取り組む

bull 設計基準試験の充実検証確認の強化技術成熟度(TRL)評価の徹底各々の境界制約条件の明示化等により検証不足抜けの防止有効なピアレビューに結びつける

冗長系(同じハードウェア機能の冗長)柔軟性の設計(ソフトハードの対応)

bull 従来の故障が起きないようにする設計に対してGOSAT(いぶき)では重要部

品を二重化することにより故障する可能性は上がるが故障しても衛星バスの運用や観測が続行できる可能性がより高くなるように設計した

運用における対応

bull 宇宙天気監視ーロケット打ち上げ及び宇宙飛行士支援 数日前に今後の宇宙環境の推移を把握(MXレベルのフレアの発生確率)

bull X線の増加で太陽フレア発生を検知したら高エネルギー粒子の発生をいつまで 気を付ければ良いか判断(発生位置で大凡を推定するが課題は多い) SPEが発生した場合(特に10MeV以上100MeV 以上の陽

子)最大値フラックス値の推定 ピーク値を予測(特に閾値に近くなった時に重要)

bull 衛星運用 bull 太陽フレア磁気嵐警報(X線陽子及びkpが閾値を超えた

時に警報を発信)2003年10月より運用開始 bull 内部帯電警報(2日後の静止軌道上の高エネルギー電子(>1

Me) の増加を予測し 閾値を超えた時に警報を発信) 2004年4月より運用開始

話の流れ

技術データ取得装置(TEDA)の概要と成果 bull 主な成果 bull 不具合解析例

宇宙天気のリスクと対策 bull 宇宙環境による衛星システムへの影響 bull 宇宙環境を原因とする不具合の割合推移部位 bull 静止軌道不具合 bull 対策

今後必要な観測項目

まとめ

計測対象計測項目 計測対象 粒径100μm以上のデブリメテオロイド 計測項目 デブリ粒径衝突頻度

基本原理

厚さ約125μmの絶縁性のポリイミドフィルム表面に 100μm周期で直線状の細長い導線(太さ50μm)パターンを形成導線の破断を電気的に検知することによりデブリの衝突(貫通)を検知する破断した導線の数導線の幅ピッチからデブリサイズを計測する

微小デブリ計測技術の概要

衝突孔の例(衝突試験ISAS) - 衝突粒子 SUS 309 microm - 衝突速度 52 kms

HTV5号機によるセンサ機能のフライト実証

35cm

46cm

FY2013機能実証モデル

検出線幅 50 μm 検出線間隔 100 μm フィルム厚 lt 20 μm 有感領域 30times33cm 検出線総数 3300本

サイズ 50times39times4 cm (筐体を含む)

重量 約15kg(筐体を含む)

消費電力 2W(最大4W)(他センサ含む)

テレメトリ 02 bps

宇宙環境観測装置KASPERの一部としてデブリセンサSDMを搭載 FY2013に製作開始今年8月に打ち上げ予定)

まとめ(その1)

衛星不具合の主な原因は帯電放電シングルイベント放射線損傷である今後デブリ環境が重要になると予測される

静止軌道では商用衛星が多く運用されており宇宙環境の変動把握は重要この領域で運用する衛星が気を付けなければいけない環境として

1太陽フレアに伴う高エネルギー粒子 2太陽活動下降期による静止軌道電子の増加 3磁気嵐に伴う磁気圏尾部から注入する粒子 などがあげられる

まとめ(その2)

不具合軽減の取り組み bull 開発時は宇宙環境条件(トータルフラックス及び最悪条

件)を明確にし設計(冗長系柔軟性の設計ディレーティング及び運用モード寿命について研究)試験の充実検証の充実を図る

bull 運用段階に入ったならば宇宙環境を監視し警報等で故障を防ぐ

予測課題 bull 太陽フレアに伴う高エネルギー粒子発生後フラックス

ピーク値の推定

bull 衛星により不具合の起きる閾値は異なるが閾値をこえる急激な電子フラックスの増加と継続時間の予測

bull 局所的な磁気嵐に伴う磁気圏尾部から注入する粒子

宇宙環境グループは宇宙ステーションと衛星プロジェクトの安全な遂行に貢献しています

ご静聴ありがとうございました

補足資料

不具合原因の推移 bull 宇宙天気を大きく左右する要因の1つとして約11年の太陽活動変化が挙げられる

bull 太陽活動下降時期(太陽変動CME)と極大期(フレアCME)に衛星で不具合が増加するそれにより不具合原因の割合が変わる

-Koons et al The Impact of the Space Environment on Space Systems Aerospace Corp report no TR-99(1670)-1 20 July 1999 -2009 preliminary study (unpublished)

何故不具合は減らないか

bull 部品 放射線に対する感受性が高くなっている bull 微細化が進み同時にフォールトするノードが増え同時にエ

ラーとなる論理ノードやメモリセルが増加する微細化によってメモリセルは小さくなるので記憶容量当たりでみるとエラーの発生率は下がるしかし半導体チップの記憶容量やゲート数が増えるので半導体チップ当たりのエラー発生率は微細化とともに上昇するまた蓄積電荷が小さくなり感受性が高くなってきている

bull システム 大型化大電力化運用長期化 bull 1990年代末以降静止衛星の電力が10kWレベルになったしか

し設計検証技術データ蓄積が遅れている改善されつつあると推測される

放射線による影響の概要

粒子 エネルギー又はLET

代表的な影響

陽子 100keV-1MeV 1-10MeV 10-100MeV gt50MeV

表面損傷 表面材料と太陽電池の損傷 放射線損傷(電離非電離損傷の両方)センサーへのノイズ シングルイベント効果

電子 10-100keV gt100keV gt1MeV

表面帯電 深部帯電現象(deep-dielectric charging)センサーへのノイズ太陽電池の損傷 放射線損傷(電離)

重イオン gt1MeV-cm2mg シングルイベント効果

注エネルギー及びLETは個々の部品等により異なりますあくまでも目安です

耐放射線設計手順

軌道条件

ミッション期間

環境条件設定

トータルドーズの予測

1MeV電子換算被曝算出

NIELの換算

LETフルエンス算出

陽子フルエンス算出

対  策  の  検  討

対  策  の  検  討

対  策  の  検  討

放射線による劣化率予測

劣化率予測 特性予測

耐性データ

放射線による劣化率予測

耐性データ

劣化率予測アレイ出力劣化予測

感受性データ

シングルイベント発生率予測 致命度解析

衛星内質量分布

(2)

部品材料の選定

他の要因による劣化率予測

(2)(2) (3)

回路設計等NO

OK

アレイ構造 セル選定

他の要因による劣化率予測 アレイ設計(2)

(2) (2) (2) (3)

衛星内質量分布 部品選定(2)

(2) (2)(3)

NO

OK

NO

OK

(1) 環境モデルマージを含む(2) 部品レベルの検討(3) アセンブリレベルでの検討(4) 設計マージン環境モデル   マージを含め大丈夫か

トータルドーズ

太陽電池アレイの劣化

シングルイベント効果

回路設計

補足放射線太陽宇宙線銀河宇宙線

NEILを用いたダメージファクターの算出

対  策  の  検  討

放射線による劣化率予測

劣化率予測 特性予測

耐性データ

(2)

部品材料の選定

他の要因による劣化率予測

(2)(2) (3)

回路設計等NO

OK

衛星内質量分布 半導体デバイスの変位損傷

(1)

(4)

(4)

(4)

(4)

各軌道における放射線環境

1E+10

1E+11

1E+12

1E+13

1E+14

1E+15

1E+16

1E+17

1E+18

1E+19

1E+20

001 010 100 1000

捕捉

電子

の積

分フ

ルエ

ンス

[m

2 ]

エネルギー[MeV]

各軌道における電子捕捉積分フルエンス(3年間)

LEO

EOS GEO

MEO

GTO

GEO 軌道傾斜角 0deg 高度36000km GTO 軌道傾斜角 18deg 高度 360km~36000km MEO 軌道傾斜角 51deg 高度 10000km EOS 軌道傾斜角 98deg 高度705km LEO 軌道傾斜角 29deg 高度 600km

1E+12

1E+13

1E+14

1E+15

1E+16

1E+17

1E+18

1E+19

1E+20

01 10 100 1000

捕捉

陽子の

積分フルエン

ス[

m2 ]

エネルギー[MeV]

各軌道における捕捉陽子積分フルエンス(3年間)

MEO

GTO

GEO

EOS LEO

放射線による部品材料の影響

総照射線量 (TIDTotal Ionising Dose )

電離損傷

バイポーラTrの電流増幅率の低下リーク電流の増大

γ線で評価

トータルドーズ効果

変位損傷 (DDDisplacement Damage )または 非イオン化エネルギー損失 (NIELNon-Ionising Energy

Loss )

変位損傷(格子欠陥の生成)

電荷輸送効率の低下 (CCD)太陽電池の効率低下等

電子陽子により評価

シングルイベント効果

1個の荷電粒子の入射により発生する誤動作

ソフト(Latch-Up Burnout) エラー又は ソフト (Upset) エラー

陽子及び重イオンで評価

トータルドーズ効果

+ - + + - + - + - - + + + + -

ゲート酸化膜

電離

格子欠陥

正電荷捕獲

+ 正孔 - 電子

電極

(Silicon oxidenitride)

荷電粒子

反跳原子

ゲート絶縁膜中に電荷が蓄積することによるMOSトランジスタのしきい電圧(MOSトランジスタがオフからオンに変化するゲート電圧)の変化をもたらすただ

し最近の最先端チップはゲート絶縁膜がきわめて薄くなっているこのためゲート絶縁膜よりもフィールド絶縁膜(隣接するトランジスタを電気的に分離する絶縁膜)での電荷蓄積が相対的には大きな問題になってきている」

シングルイベント効果

メモリセルはNチャンネルとPチャンネルMOSFETより構成されメモリ情報は回路ノード12の電位の

高低により記録している空乏層の広がっているPN接合12の領域に

重イオンが入射した場合電荷の発生と空乏層内への少数キャリアの収集が起こるこの収集電荷量が回路の耐量を越えた場合(c)に示すように反転が起こる(ソフトエラー)一方pウエル-N基板接

合の空乏層内に電荷収集量が起こりえる耐性を越えると寄生的に存在するPNPNサイリスタ構造がオ

ンし電源と基板間に大電流が流れる状態が生じる(ラッチアップ)

シングルイベントメカニズム -陽子と重イオンの違い-

エラー発生率の計算

線エネルギー付与(LET) (linear energy transfer)

電離性放射線が物質中を通過する際飛程の単位長さ当りに平均して失うエネルギーをいう各種の放射線のうちX線γ線はLETが小さいので低LETといいα線中性子線その他重イオン核分裂破片のLETは大きいので高LETという MeVμmMeV(gcm2)やMeV(mgcm2)で表される

南大西洋異常(SAA) bull 地球の自転軸と磁気軸のずれ

darr bull 放射線帯が自転軸に対して非

対称

bull 南大西洋上空では放射線帯内帯が低高度に落ちてきているこの領域を南大西洋異常域(SAA South Atlantic Anomaly)と呼ぶ

bull 地球観測衛星ではSAAで放射線帯陽子の影響を受ける

Single Event Lachup

シングルイベントと陽子分布

MOS-1衛星(高度909km軌道傾斜角99度)で発生したシングルイベントと 陽子30MeV以上の等高線マップを重ね合わせた結果

NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)

bull 入射粒子が電離によらず与える損傷非イオン化損失

低軌道での電子フラックスと 不具合の発生場所

南大西洋異常(SAA)と極の角

高度800kmでの電子フラックス図極の角(polar horn)とSAAを示す

太陽粒子線 bull 太陽高エネルギー粒子線(SPE Solar Proton Events)は太陽フレア とコロナガス噴出 (CMECoronal Mass Ejections )により引き起こされる bull フレアのスペクトルは可変であるためあるエネルギー域における最悪状態イベントは必ずしも別のエネルギー域における最悪条件ではない 1972年8月のイベント 10~70MeVの粒子が最も多かった 1989年10のイベント 1972年8月のイベントに比べ低エネルギー領域 高エネルギー領域が明らかに激しかった

フルエンス 105 to 1011 cm-2

変動期間 1日から数日

ldquoBastiliardquo Solar Event 14 July 2000

Carrington Flare

84

(LW Townseed) Carrington Flare(1859年) Carrington Flare による30MeV以上トータルFluenceを118times109cm-2で規格化 ~1989年フレアの約13倍(シングルイベントの評価で使用) ~1991年フレアの約9倍 2012年7月23日にキャリントンイベントとほぼ同等の爆発現象が太陽あるいは太陽の周りで起きていたということがNASAの太陽観測衛星「STEREO」の解析から発表された

放射線対策 bull 放射線シールドを付加し放射線を減衰させる

bull 放射線耐性の強い部品(SOI(Silicon On Insulator)技術による耐放射線部品)材料に変更する

bull 放射線による損傷を吸収するために回路または構造上のマージンを持たせる bull ソフト的なエラーに対しては エラー検出訂正機能や多数決

機能等でソフト的エラーが起きてもシステムが機能するようにしたフォールトトレラント機能を付けて対処する ICのハード的故障に対しては ラッチアップ耐性の強い部品を選定するしかないが 電流制限回路を付ける対策も採られる パワーMOSFETに対しては部品選定 電源電圧を規格値の半分以下に落とす等の対策を採る

SOI技術

表面帯電への対策例

表面の物体間を導線で結線する

太陽電池のカバーガラスを導電性被膜付き(酸化インジウムITO)にする

熱制御材表面にITOを被覆する

熱制御材は高誘電率のテフロンの使用を避け 高伝導度耐環境性に優れたブラックカプトンを使用

イオンエンジンの中和器で能動帯電制御

内部帯電への対策例

アルミで3mm厚さに相当するシールドで囲む(Faraday Cage)

テフロンやカプトンなどの誘電体材料の内部での使用量を最小限に押さえる

回路基板やコンフォーマルコーティングは誘電体なので電流リークパス(1012Ωcmまたは1012Ωcm2

程度)を必ずつける

特にスポット的な放射線シールドの金属材には必ず電流リークパスをつける

帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備

衛星モデル作成

材料物性テーブル設定

宇宙環境パラメータ設定

Converter

転送ディレクトリ 解析データファイル

転送

解析ディレクトリ生成 解析結果 進行状況チェック ファイル操作

MUSCAT 解析エンジン

解析結果 表示

パラメトリックラン

オプション 解析

大型パネル実験(35mtimes11m) クーポンパネル実験(26cmtimes16cm)

環境模擬試験 環境模擬試験

MUSCATに使用する物性値設計標準制定のための知見などを得ることを目的に軌道上の宇宙環境を模擬した地上試験を行っている これらの試験では放電の発生頻度や電圧閾値放電発生による太陽電池パネルや搭載機器への影響を検証している

放射線計測装置の原理

bull その粒子が物質を通過する際のエネルギー損出率が粒子の電荷(原子番号)Zの二乗に比例すること(Bethe-Blochの式)を利用する

S2

E

ΔE Ersquo

S1 S3

  • 宇宙機の設計のための宇宙環境
  • 話の流れ
  • 話の流れ
  • TEDA(技術データ取得装置)(国産部品の宇宙環境での実証の必要性)
  • ETS-VTEDA(技術データ取得装置)誕生前の部品の宇宙実証の背景
  • スライド番号 6
  • スライド番号 7
  • スライド番号 8
  • スライド番号 9
  • 図6太陽黒点数と静止軌道電子 (>04MeV ) Flux の変動 (ETS-V搭載DOMによる観測)
  • スライド番号 11
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの開発(理研東大と共同で宇宙環境計測の充実)
  • ETS-VI(きく6号)打ち上がったがGEOに行かずGTOに留まる
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの成果
  • スライド番号 15
  • スライド番号 16
  • スライド番号 17
  • ADEOS搭載TEDA(世界2番目の異常宇宙線ACR)
  • BBND (ボナー球中性子検出器)
  • スライド番号 20
  • ISS搭載BBNDの成果(約8か月)
  • スライド番号 22
  • MDS-1搭載放射線吸収線量モニタ(SDOM)
  • 放射線帯変動モデルの開発MDS-1 065 MeV 電子フラックス
  • 変動パラメータの選択 (1 cycle solar activity)
  • 変動パラメータ- Tavg の定義-
  • 065MeV 電子 L値-Tavg マップ
  • 13MeV 陽子 L値-Tavg マップ
  • 電子観測とMDS-1モデルの比較
  • 放射線帯フラックスピークの変動
  • 陽子観測とモデルの比較
  • 電子(035~078MeV) 1日の変動予測GOSAT軌道
  • 電子(035~078MeV) 変動の信頼度水準(1日)GOSAT軌道
  • MDS-1 model と AE-8 modelとの比較1日
  • 話の流れ
  • 2003年10月 みどり号の全損事故(複合現象)
  • 衛星帯電の基本式
  • 内部帯電
  • パドルでの帯電放電メカニズム
  • スライド番号 40
  • スライド番号 41
  • スライド番号 42
  • データ中継技術衛星DRTS (こだま)の不具合
  • DRTS ESA スパイクノイズと電子フルエンスの比較(赤の丸が異常検知)
  • 不具合が宇宙環境によるものであるか判断する際のポイント
  • 話の流れ
  • 宇宙天気のリスク-宇宙環境によるシステムへの影響 -
  • NASAの報告-GNampCに注目-
  • NASAの報告(続き)
  • 宇宙環境を原因とする不具合の割合-JAXAの場合-
  • 不具合発生部位の割合 
  • Satellite News Digest -静止軌道不具合-
  • 太陽活動と静止軌道衛星不具合例
  • スライド番号 54
  • スライド番号 55
  • スライド番号 56
  • 衛星開発段階における対策
  • 運用における対応
  • 話の流れ
  • スライド番号 60
  • スライド番号 61
  • まとめ(その1)
  • まとめ(その2)
  • 宇宙環境グループは宇宙ステーションと衛星プロジェクトの安全な遂行に貢献しています
  • 補足資料
  • 不具合原因の推移
  • 何故不具合は減らないか
  • 放射線による影響の概要
  • 耐放射線設計手順
  • 各軌道における放射線環境
  • 放射線による部品材料の影響
  • トータルドーズ効果
  • シングルイベント効果
  • シングルイベントメカニズム-陽子と重イオンの違い-
  • エラー発生率の計算
  • 線エネルギー付与(LET)(linear energy transfer)
  • 南大西洋異常(SAA)
  • Single Event Lachup
  • シングルイベントと陽子分布
  • NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)
  • 低軌道での電子フラックスと不具合の発生場所
  • 南大西洋異常(SAA)と極の角
  • スライド番号 83
  • Carrington Flare
  • 放射線対策
  • スライド番号 86
  • スライド番号 87
  • 帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備
  • スライド番号 89
  • 放射線計測装置の原理
Page 57: 宇宙機の設計のための宇宙環境の方針から国産部品開発(42品種)が実施された。 . 半導体電子部品は耐放射線性を加味して、人工衛星(特に

衛星開発段階における対策 JAXAの不具合解析の結論

bull 2002年~2008年に運用された11機の衛星不具合を解析 宇宙環境による不具合は偶発故障のみ(全体の約15)確率的には想定範囲内ではあるがその影響を最小限とするためディレーティング運用モード寿命についての研究に取り組む

bull 設計基準試験の充実検証確認の強化技術成熟度(TRL)評価の徹底各々の境界制約条件の明示化等により検証不足抜けの防止有効なピアレビューに結びつける

冗長系(同じハードウェア機能の冗長)柔軟性の設計(ソフトハードの対応)

bull 従来の故障が起きないようにする設計に対してGOSAT(いぶき)では重要部

品を二重化することにより故障する可能性は上がるが故障しても衛星バスの運用や観測が続行できる可能性がより高くなるように設計した

運用における対応

bull 宇宙天気監視ーロケット打ち上げ及び宇宙飛行士支援 数日前に今後の宇宙環境の推移を把握(MXレベルのフレアの発生確率)

bull X線の増加で太陽フレア発生を検知したら高エネルギー粒子の発生をいつまで 気を付ければ良いか判断(発生位置で大凡を推定するが課題は多い) SPEが発生した場合(特に10MeV以上100MeV 以上の陽

子)最大値フラックス値の推定 ピーク値を予測(特に閾値に近くなった時に重要)

bull 衛星運用 bull 太陽フレア磁気嵐警報(X線陽子及びkpが閾値を超えた

時に警報を発信)2003年10月より運用開始 bull 内部帯電警報(2日後の静止軌道上の高エネルギー電子(>1

Me) の増加を予測し 閾値を超えた時に警報を発信) 2004年4月より運用開始

話の流れ

技術データ取得装置(TEDA)の概要と成果 bull 主な成果 bull 不具合解析例

宇宙天気のリスクと対策 bull 宇宙環境による衛星システムへの影響 bull 宇宙環境を原因とする不具合の割合推移部位 bull 静止軌道不具合 bull 対策

今後必要な観測項目

まとめ

計測対象計測項目 計測対象 粒径100μm以上のデブリメテオロイド 計測項目 デブリ粒径衝突頻度

基本原理

厚さ約125μmの絶縁性のポリイミドフィルム表面に 100μm周期で直線状の細長い導線(太さ50μm)パターンを形成導線の破断を電気的に検知することによりデブリの衝突(貫通)を検知する破断した導線の数導線の幅ピッチからデブリサイズを計測する

微小デブリ計測技術の概要

衝突孔の例(衝突試験ISAS) - 衝突粒子 SUS 309 microm - 衝突速度 52 kms

HTV5号機によるセンサ機能のフライト実証

35cm

46cm

FY2013機能実証モデル

検出線幅 50 μm 検出線間隔 100 μm フィルム厚 lt 20 μm 有感領域 30times33cm 検出線総数 3300本

サイズ 50times39times4 cm (筐体を含む)

重量 約15kg(筐体を含む)

消費電力 2W(最大4W)(他センサ含む)

テレメトリ 02 bps

宇宙環境観測装置KASPERの一部としてデブリセンサSDMを搭載 FY2013に製作開始今年8月に打ち上げ予定)

まとめ(その1)

衛星不具合の主な原因は帯電放電シングルイベント放射線損傷である今後デブリ環境が重要になると予測される

静止軌道では商用衛星が多く運用されており宇宙環境の変動把握は重要この領域で運用する衛星が気を付けなければいけない環境として

1太陽フレアに伴う高エネルギー粒子 2太陽活動下降期による静止軌道電子の増加 3磁気嵐に伴う磁気圏尾部から注入する粒子 などがあげられる

まとめ(その2)

不具合軽減の取り組み bull 開発時は宇宙環境条件(トータルフラックス及び最悪条

件)を明確にし設計(冗長系柔軟性の設計ディレーティング及び運用モード寿命について研究)試験の充実検証の充実を図る

bull 運用段階に入ったならば宇宙環境を監視し警報等で故障を防ぐ

予測課題 bull 太陽フレアに伴う高エネルギー粒子発生後フラックス

ピーク値の推定

bull 衛星により不具合の起きる閾値は異なるが閾値をこえる急激な電子フラックスの増加と継続時間の予測

bull 局所的な磁気嵐に伴う磁気圏尾部から注入する粒子

宇宙環境グループは宇宙ステーションと衛星プロジェクトの安全な遂行に貢献しています

ご静聴ありがとうございました

補足資料

不具合原因の推移 bull 宇宙天気を大きく左右する要因の1つとして約11年の太陽活動変化が挙げられる

bull 太陽活動下降時期(太陽変動CME)と極大期(フレアCME)に衛星で不具合が増加するそれにより不具合原因の割合が変わる

-Koons et al The Impact of the Space Environment on Space Systems Aerospace Corp report no TR-99(1670)-1 20 July 1999 -2009 preliminary study (unpublished)

何故不具合は減らないか

bull 部品 放射線に対する感受性が高くなっている bull 微細化が進み同時にフォールトするノードが増え同時にエ

ラーとなる論理ノードやメモリセルが増加する微細化によってメモリセルは小さくなるので記憶容量当たりでみるとエラーの発生率は下がるしかし半導体チップの記憶容量やゲート数が増えるので半導体チップ当たりのエラー発生率は微細化とともに上昇するまた蓄積電荷が小さくなり感受性が高くなってきている

bull システム 大型化大電力化運用長期化 bull 1990年代末以降静止衛星の電力が10kWレベルになったしか

し設計検証技術データ蓄積が遅れている改善されつつあると推測される

放射線による影響の概要

粒子 エネルギー又はLET

代表的な影響

陽子 100keV-1MeV 1-10MeV 10-100MeV gt50MeV

表面損傷 表面材料と太陽電池の損傷 放射線損傷(電離非電離損傷の両方)センサーへのノイズ シングルイベント効果

電子 10-100keV gt100keV gt1MeV

表面帯電 深部帯電現象(deep-dielectric charging)センサーへのノイズ太陽電池の損傷 放射線損傷(電離)

重イオン gt1MeV-cm2mg シングルイベント効果

注エネルギー及びLETは個々の部品等により異なりますあくまでも目安です

耐放射線設計手順

軌道条件

ミッション期間

環境条件設定

トータルドーズの予測

1MeV電子換算被曝算出

NIELの換算

LETフルエンス算出

陽子フルエンス算出

対  策  の  検  討

対  策  の  検  討

対  策  の  検  討

放射線による劣化率予測

劣化率予測 特性予測

耐性データ

放射線による劣化率予測

耐性データ

劣化率予測アレイ出力劣化予測

感受性データ

シングルイベント発生率予測 致命度解析

衛星内質量分布

(2)

部品材料の選定

他の要因による劣化率予測

(2)(2) (3)

回路設計等NO

OK

アレイ構造 セル選定

他の要因による劣化率予測 アレイ設計(2)

(2) (2) (2) (3)

衛星内質量分布 部品選定(2)

(2) (2)(3)

NO

OK

NO

OK

(1) 環境モデルマージを含む(2) 部品レベルの検討(3) アセンブリレベルでの検討(4) 設計マージン環境モデル   マージを含め大丈夫か

トータルドーズ

太陽電池アレイの劣化

シングルイベント効果

回路設計

補足放射線太陽宇宙線銀河宇宙線

NEILを用いたダメージファクターの算出

対  策  の  検  討

放射線による劣化率予測

劣化率予測 特性予測

耐性データ

(2)

部品材料の選定

他の要因による劣化率予測

(2)(2) (3)

回路設計等NO

OK

衛星内質量分布 半導体デバイスの変位損傷

(1)

(4)

(4)

(4)

(4)

各軌道における放射線環境

1E+10

1E+11

1E+12

1E+13

1E+14

1E+15

1E+16

1E+17

1E+18

1E+19

1E+20

001 010 100 1000

捕捉

電子

の積

分フ

ルエ

ンス

[m

2 ]

エネルギー[MeV]

各軌道における電子捕捉積分フルエンス(3年間)

LEO

EOS GEO

MEO

GTO

GEO 軌道傾斜角 0deg 高度36000km GTO 軌道傾斜角 18deg 高度 360km~36000km MEO 軌道傾斜角 51deg 高度 10000km EOS 軌道傾斜角 98deg 高度705km LEO 軌道傾斜角 29deg 高度 600km

1E+12

1E+13

1E+14

1E+15

1E+16

1E+17

1E+18

1E+19

1E+20

01 10 100 1000

捕捉

陽子の

積分フルエン

ス[

m2 ]

エネルギー[MeV]

各軌道における捕捉陽子積分フルエンス(3年間)

MEO

GTO

GEO

EOS LEO

放射線による部品材料の影響

総照射線量 (TIDTotal Ionising Dose )

電離損傷

バイポーラTrの電流増幅率の低下リーク電流の増大

γ線で評価

トータルドーズ効果

変位損傷 (DDDisplacement Damage )または 非イオン化エネルギー損失 (NIELNon-Ionising Energy

Loss )

変位損傷(格子欠陥の生成)

電荷輸送効率の低下 (CCD)太陽電池の効率低下等

電子陽子により評価

シングルイベント効果

1個の荷電粒子の入射により発生する誤動作

ソフト(Latch-Up Burnout) エラー又は ソフト (Upset) エラー

陽子及び重イオンで評価

トータルドーズ効果

+ - + + - + - + - - + + + + -

ゲート酸化膜

電離

格子欠陥

正電荷捕獲

+ 正孔 - 電子

電極

(Silicon oxidenitride)

荷電粒子

反跳原子

ゲート絶縁膜中に電荷が蓄積することによるMOSトランジスタのしきい電圧(MOSトランジスタがオフからオンに変化するゲート電圧)の変化をもたらすただ

し最近の最先端チップはゲート絶縁膜がきわめて薄くなっているこのためゲート絶縁膜よりもフィールド絶縁膜(隣接するトランジスタを電気的に分離する絶縁膜)での電荷蓄積が相対的には大きな問題になってきている」

シングルイベント効果

メモリセルはNチャンネルとPチャンネルMOSFETより構成されメモリ情報は回路ノード12の電位の

高低により記録している空乏層の広がっているPN接合12の領域に

重イオンが入射した場合電荷の発生と空乏層内への少数キャリアの収集が起こるこの収集電荷量が回路の耐量を越えた場合(c)に示すように反転が起こる(ソフトエラー)一方pウエル-N基板接

合の空乏層内に電荷収集量が起こりえる耐性を越えると寄生的に存在するPNPNサイリスタ構造がオ

ンし電源と基板間に大電流が流れる状態が生じる(ラッチアップ)

シングルイベントメカニズム -陽子と重イオンの違い-

エラー発生率の計算

線エネルギー付与(LET) (linear energy transfer)

電離性放射線が物質中を通過する際飛程の単位長さ当りに平均して失うエネルギーをいう各種の放射線のうちX線γ線はLETが小さいので低LETといいα線中性子線その他重イオン核分裂破片のLETは大きいので高LETという MeVμmMeV(gcm2)やMeV(mgcm2)で表される

南大西洋異常(SAA) bull 地球の自転軸と磁気軸のずれ

darr bull 放射線帯が自転軸に対して非

対称

bull 南大西洋上空では放射線帯内帯が低高度に落ちてきているこの領域を南大西洋異常域(SAA South Atlantic Anomaly)と呼ぶ

bull 地球観測衛星ではSAAで放射線帯陽子の影響を受ける

Single Event Lachup

シングルイベントと陽子分布

MOS-1衛星(高度909km軌道傾斜角99度)で発生したシングルイベントと 陽子30MeV以上の等高線マップを重ね合わせた結果

NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)

bull 入射粒子が電離によらず与える損傷非イオン化損失

低軌道での電子フラックスと 不具合の発生場所

南大西洋異常(SAA)と極の角

高度800kmでの電子フラックス図極の角(polar horn)とSAAを示す

太陽粒子線 bull 太陽高エネルギー粒子線(SPE Solar Proton Events)は太陽フレア とコロナガス噴出 (CMECoronal Mass Ejections )により引き起こされる bull フレアのスペクトルは可変であるためあるエネルギー域における最悪状態イベントは必ずしも別のエネルギー域における最悪条件ではない 1972年8月のイベント 10~70MeVの粒子が最も多かった 1989年10のイベント 1972年8月のイベントに比べ低エネルギー領域 高エネルギー領域が明らかに激しかった

フルエンス 105 to 1011 cm-2

変動期間 1日から数日

ldquoBastiliardquo Solar Event 14 July 2000

Carrington Flare

84

(LW Townseed) Carrington Flare(1859年) Carrington Flare による30MeV以上トータルFluenceを118times109cm-2で規格化 ~1989年フレアの約13倍(シングルイベントの評価で使用) ~1991年フレアの約9倍 2012年7月23日にキャリントンイベントとほぼ同等の爆発現象が太陽あるいは太陽の周りで起きていたということがNASAの太陽観測衛星「STEREO」の解析から発表された

放射線対策 bull 放射線シールドを付加し放射線を減衰させる

bull 放射線耐性の強い部品(SOI(Silicon On Insulator)技術による耐放射線部品)材料に変更する

bull 放射線による損傷を吸収するために回路または構造上のマージンを持たせる bull ソフト的なエラーに対しては エラー検出訂正機能や多数決

機能等でソフト的エラーが起きてもシステムが機能するようにしたフォールトトレラント機能を付けて対処する ICのハード的故障に対しては ラッチアップ耐性の強い部品を選定するしかないが 電流制限回路を付ける対策も採られる パワーMOSFETに対しては部品選定 電源電圧を規格値の半分以下に落とす等の対策を採る

SOI技術

表面帯電への対策例

表面の物体間を導線で結線する

太陽電池のカバーガラスを導電性被膜付き(酸化インジウムITO)にする

熱制御材表面にITOを被覆する

熱制御材は高誘電率のテフロンの使用を避け 高伝導度耐環境性に優れたブラックカプトンを使用

イオンエンジンの中和器で能動帯電制御

内部帯電への対策例

アルミで3mm厚さに相当するシールドで囲む(Faraday Cage)

テフロンやカプトンなどの誘電体材料の内部での使用量を最小限に押さえる

回路基板やコンフォーマルコーティングは誘電体なので電流リークパス(1012Ωcmまたは1012Ωcm2

程度)を必ずつける

特にスポット的な放射線シールドの金属材には必ず電流リークパスをつける

帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備

衛星モデル作成

材料物性テーブル設定

宇宙環境パラメータ設定

Converter

転送ディレクトリ 解析データファイル

転送

解析ディレクトリ生成 解析結果 進行状況チェック ファイル操作

MUSCAT 解析エンジン

解析結果 表示

パラメトリックラン

オプション 解析

大型パネル実験(35mtimes11m) クーポンパネル実験(26cmtimes16cm)

環境模擬試験 環境模擬試験

MUSCATに使用する物性値設計標準制定のための知見などを得ることを目的に軌道上の宇宙環境を模擬した地上試験を行っている これらの試験では放電の発生頻度や電圧閾値放電発生による太陽電池パネルや搭載機器への影響を検証している

放射線計測装置の原理

bull その粒子が物質を通過する際のエネルギー損出率が粒子の電荷(原子番号)Zの二乗に比例すること(Bethe-Blochの式)を利用する

S2

E

ΔE Ersquo

S1 S3

  • 宇宙機の設計のための宇宙環境
  • 話の流れ
  • 話の流れ
  • TEDA(技術データ取得装置)(国産部品の宇宙環境での実証の必要性)
  • ETS-VTEDA(技術データ取得装置)誕生前の部品の宇宙実証の背景
  • スライド番号 6
  • スライド番号 7
  • スライド番号 8
  • スライド番号 9
  • 図6太陽黒点数と静止軌道電子 (>04MeV ) Flux の変動 (ETS-V搭載DOMによる観測)
  • スライド番号 11
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの開発(理研東大と共同で宇宙環境計測の充実)
  • ETS-VI(きく6号)打ち上がったがGEOに行かずGTOに留まる
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの成果
  • スライド番号 15
  • スライド番号 16
  • スライド番号 17
  • ADEOS搭載TEDA(世界2番目の異常宇宙線ACR)
  • BBND (ボナー球中性子検出器)
  • スライド番号 20
  • ISS搭載BBNDの成果(約8か月)
  • スライド番号 22
  • MDS-1搭載放射線吸収線量モニタ(SDOM)
  • 放射線帯変動モデルの開発MDS-1 065 MeV 電子フラックス
  • 変動パラメータの選択 (1 cycle solar activity)
  • 変動パラメータ- Tavg の定義-
  • 065MeV 電子 L値-Tavg マップ
  • 13MeV 陽子 L値-Tavg マップ
  • 電子観測とMDS-1モデルの比較
  • 放射線帯フラックスピークの変動
  • 陽子観測とモデルの比較
  • 電子(035~078MeV) 1日の変動予測GOSAT軌道
  • 電子(035~078MeV) 変動の信頼度水準(1日)GOSAT軌道
  • MDS-1 model と AE-8 modelとの比較1日
  • 話の流れ
  • 2003年10月 みどり号の全損事故(複合現象)
  • 衛星帯電の基本式
  • 内部帯電
  • パドルでの帯電放電メカニズム
  • スライド番号 40
  • スライド番号 41
  • スライド番号 42
  • データ中継技術衛星DRTS (こだま)の不具合
  • DRTS ESA スパイクノイズと電子フルエンスの比較(赤の丸が異常検知)
  • 不具合が宇宙環境によるものであるか判断する際のポイント
  • 話の流れ
  • 宇宙天気のリスク-宇宙環境によるシステムへの影響 -
  • NASAの報告-GNampCに注目-
  • NASAの報告(続き)
  • 宇宙環境を原因とする不具合の割合-JAXAの場合-
  • 不具合発生部位の割合 
  • Satellite News Digest -静止軌道不具合-
  • 太陽活動と静止軌道衛星不具合例
  • スライド番号 54
  • スライド番号 55
  • スライド番号 56
  • 衛星開発段階における対策
  • 運用における対応
  • 話の流れ
  • スライド番号 60
  • スライド番号 61
  • まとめ(その1)
  • まとめ(その2)
  • 宇宙環境グループは宇宙ステーションと衛星プロジェクトの安全な遂行に貢献しています
  • 補足資料
  • 不具合原因の推移
  • 何故不具合は減らないか
  • 放射線による影響の概要
  • 耐放射線設計手順
  • 各軌道における放射線環境
  • 放射線による部品材料の影響
  • トータルドーズ効果
  • シングルイベント効果
  • シングルイベントメカニズム-陽子と重イオンの違い-
  • エラー発生率の計算
  • 線エネルギー付与(LET)(linear energy transfer)
  • 南大西洋異常(SAA)
  • Single Event Lachup
  • シングルイベントと陽子分布
  • NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)
  • 低軌道での電子フラックスと不具合の発生場所
  • 南大西洋異常(SAA)と極の角
  • スライド番号 83
  • Carrington Flare
  • 放射線対策
  • スライド番号 86
  • スライド番号 87
  • 帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備
  • スライド番号 89
  • 放射線計測装置の原理
Page 58: 宇宙機の設計のための宇宙環境の方針から国産部品開発(42品種)が実施された。 . 半導体電子部品は耐放射線性を加味して、人工衛星(特に

運用における対応

bull 宇宙天気監視ーロケット打ち上げ及び宇宙飛行士支援 数日前に今後の宇宙環境の推移を把握(MXレベルのフレアの発生確率)

bull X線の増加で太陽フレア発生を検知したら高エネルギー粒子の発生をいつまで 気を付ければ良いか判断(発生位置で大凡を推定するが課題は多い) SPEが発生した場合(特に10MeV以上100MeV 以上の陽

子)最大値フラックス値の推定 ピーク値を予測(特に閾値に近くなった時に重要)

bull 衛星運用 bull 太陽フレア磁気嵐警報(X線陽子及びkpが閾値を超えた

時に警報を発信)2003年10月より運用開始 bull 内部帯電警報(2日後の静止軌道上の高エネルギー電子(>1

Me) の増加を予測し 閾値を超えた時に警報を発信) 2004年4月より運用開始

話の流れ

技術データ取得装置(TEDA)の概要と成果 bull 主な成果 bull 不具合解析例

宇宙天気のリスクと対策 bull 宇宙環境による衛星システムへの影響 bull 宇宙環境を原因とする不具合の割合推移部位 bull 静止軌道不具合 bull 対策

今後必要な観測項目

まとめ

計測対象計測項目 計測対象 粒径100μm以上のデブリメテオロイド 計測項目 デブリ粒径衝突頻度

基本原理

厚さ約125μmの絶縁性のポリイミドフィルム表面に 100μm周期で直線状の細長い導線(太さ50μm)パターンを形成導線の破断を電気的に検知することによりデブリの衝突(貫通)を検知する破断した導線の数導線の幅ピッチからデブリサイズを計測する

微小デブリ計測技術の概要

衝突孔の例(衝突試験ISAS) - 衝突粒子 SUS 309 microm - 衝突速度 52 kms

HTV5号機によるセンサ機能のフライト実証

35cm

46cm

FY2013機能実証モデル

検出線幅 50 μm 検出線間隔 100 μm フィルム厚 lt 20 μm 有感領域 30times33cm 検出線総数 3300本

サイズ 50times39times4 cm (筐体を含む)

重量 約15kg(筐体を含む)

消費電力 2W(最大4W)(他センサ含む)

テレメトリ 02 bps

宇宙環境観測装置KASPERの一部としてデブリセンサSDMを搭載 FY2013に製作開始今年8月に打ち上げ予定)

まとめ(その1)

衛星不具合の主な原因は帯電放電シングルイベント放射線損傷である今後デブリ環境が重要になると予測される

静止軌道では商用衛星が多く運用されており宇宙環境の変動把握は重要この領域で運用する衛星が気を付けなければいけない環境として

1太陽フレアに伴う高エネルギー粒子 2太陽活動下降期による静止軌道電子の増加 3磁気嵐に伴う磁気圏尾部から注入する粒子 などがあげられる

まとめ(その2)

不具合軽減の取り組み bull 開発時は宇宙環境条件(トータルフラックス及び最悪条

件)を明確にし設計(冗長系柔軟性の設計ディレーティング及び運用モード寿命について研究)試験の充実検証の充実を図る

bull 運用段階に入ったならば宇宙環境を監視し警報等で故障を防ぐ

予測課題 bull 太陽フレアに伴う高エネルギー粒子発生後フラックス

ピーク値の推定

bull 衛星により不具合の起きる閾値は異なるが閾値をこえる急激な電子フラックスの増加と継続時間の予測

bull 局所的な磁気嵐に伴う磁気圏尾部から注入する粒子

宇宙環境グループは宇宙ステーションと衛星プロジェクトの安全な遂行に貢献しています

ご静聴ありがとうございました

補足資料

不具合原因の推移 bull 宇宙天気を大きく左右する要因の1つとして約11年の太陽活動変化が挙げられる

bull 太陽活動下降時期(太陽変動CME)と極大期(フレアCME)に衛星で不具合が増加するそれにより不具合原因の割合が変わる

-Koons et al The Impact of the Space Environment on Space Systems Aerospace Corp report no TR-99(1670)-1 20 July 1999 -2009 preliminary study (unpublished)

何故不具合は減らないか

bull 部品 放射線に対する感受性が高くなっている bull 微細化が進み同時にフォールトするノードが増え同時にエ

ラーとなる論理ノードやメモリセルが増加する微細化によってメモリセルは小さくなるので記憶容量当たりでみるとエラーの発生率は下がるしかし半導体チップの記憶容量やゲート数が増えるので半導体チップ当たりのエラー発生率は微細化とともに上昇するまた蓄積電荷が小さくなり感受性が高くなってきている

bull システム 大型化大電力化運用長期化 bull 1990年代末以降静止衛星の電力が10kWレベルになったしか

し設計検証技術データ蓄積が遅れている改善されつつあると推測される

放射線による影響の概要

粒子 エネルギー又はLET

代表的な影響

陽子 100keV-1MeV 1-10MeV 10-100MeV gt50MeV

表面損傷 表面材料と太陽電池の損傷 放射線損傷(電離非電離損傷の両方)センサーへのノイズ シングルイベント効果

電子 10-100keV gt100keV gt1MeV

表面帯電 深部帯電現象(deep-dielectric charging)センサーへのノイズ太陽電池の損傷 放射線損傷(電離)

重イオン gt1MeV-cm2mg シングルイベント効果

注エネルギー及びLETは個々の部品等により異なりますあくまでも目安です

耐放射線設計手順

軌道条件

ミッション期間

環境条件設定

トータルドーズの予測

1MeV電子換算被曝算出

NIELの換算

LETフルエンス算出

陽子フルエンス算出

対  策  の  検  討

対  策  の  検  討

対  策  の  検  討

放射線による劣化率予測

劣化率予測 特性予測

耐性データ

放射線による劣化率予測

耐性データ

劣化率予測アレイ出力劣化予測

感受性データ

シングルイベント発生率予測 致命度解析

衛星内質量分布

(2)

部品材料の選定

他の要因による劣化率予測

(2)(2) (3)

回路設計等NO

OK

アレイ構造 セル選定

他の要因による劣化率予測 アレイ設計(2)

(2) (2) (2) (3)

衛星内質量分布 部品選定(2)

(2) (2)(3)

NO

OK

NO

OK

(1) 環境モデルマージを含む(2) 部品レベルの検討(3) アセンブリレベルでの検討(4) 設計マージン環境モデル   マージを含め大丈夫か

トータルドーズ

太陽電池アレイの劣化

シングルイベント効果

回路設計

補足放射線太陽宇宙線銀河宇宙線

NEILを用いたダメージファクターの算出

対  策  の  検  討

放射線による劣化率予測

劣化率予測 特性予測

耐性データ

(2)

部品材料の選定

他の要因による劣化率予測

(2)(2) (3)

回路設計等NO

OK

衛星内質量分布 半導体デバイスの変位損傷

(1)

(4)

(4)

(4)

(4)

各軌道における放射線環境

1E+10

1E+11

1E+12

1E+13

1E+14

1E+15

1E+16

1E+17

1E+18

1E+19

1E+20

001 010 100 1000

捕捉

電子

の積

分フ

ルエ

ンス

[m

2 ]

エネルギー[MeV]

各軌道における電子捕捉積分フルエンス(3年間)

LEO

EOS GEO

MEO

GTO

GEO 軌道傾斜角 0deg 高度36000km GTO 軌道傾斜角 18deg 高度 360km~36000km MEO 軌道傾斜角 51deg 高度 10000km EOS 軌道傾斜角 98deg 高度705km LEO 軌道傾斜角 29deg 高度 600km

1E+12

1E+13

1E+14

1E+15

1E+16

1E+17

1E+18

1E+19

1E+20

01 10 100 1000

捕捉

陽子の

積分フルエン

ス[

m2 ]

エネルギー[MeV]

各軌道における捕捉陽子積分フルエンス(3年間)

MEO

GTO

GEO

EOS LEO

放射線による部品材料の影響

総照射線量 (TIDTotal Ionising Dose )

電離損傷

バイポーラTrの電流増幅率の低下リーク電流の増大

γ線で評価

トータルドーズ効果

変位損傷 (DDDisplacement Damage )または 非イオン化エネルギー損失 (NIELNon-Ionising Energy

Loss )

変位損傷(格子欠陥の生成)

電荷輸送効率の低下 (CCD)太陽電池の効率低下等

電子陽子により評価

シングルイベント効果

1個の荷電粒子の入射により発生する誤動作

ソフト(Latch-Up Burnout) エラー又は ソフト (Upset) エラー

陽子及び重イオンで評価

トータルドーズ効果

+ - + + - + - + - - + + + + -

ゲート酸化膜

電離

格子欠陥

正電荷捕獲

+ 正孔 - 電子

電極

(Silicon oxidenitride)

荷電粒子

反跳原子

ゲート絶縁膜中に電荷が蓄積することによるMOSトランジスタのしきい電圧(MOSトランジスタがオフからオンに変化するゲート電圧)の変化をもたらすただ

し最近の最先端チップはゲート絶縁膜がきわめて薄くなっているこのためゲート絶縁膜よりもフィールド絶縁膜(隣接するトランジスタを電気的に分離する絶縁膜)での電荷蓄積が相対的には大きな問題になってきている」

シングルイベント効果

メモリセルはNチャンネルとPチャンネルMOSFETより構成されメモリ情報は回路ノード12の電位の

高低により記録している空乏層の広がっているPN接合12の領域に

重イオンが入射した場合電荷の発生と空乏層内への少数キャリアの収集が起こるこの収集電荷量が回路の耐量を越えた場合(c)に示すように反転が起こる(ソフトエラー)一方pウエル-N基板接

合の空乏層内に電荷収集量が起こりえる耐性を越えると寄生的に存在するPNPNサイリスタ構造がオ

ンし電源と基板間に大電流が流れる状態が生じる(ラッチアップ)

シングルイベントメカニズム -陽子と重イオンの違い-

エラー発生率の計算

線エネルギー付与(LET) (linear energy transfer)

電離性放射線が物質中を通過する際飛程の単位長さ当りに平均して失うエネルギーをいう各種の放射線のうちX線γ線はLETが小さいので低LETといいα線中性子線その他重イオン核分裂破片のLETは大きいので高LETという MeVμmMeV(gcm2)やMeV(mgcm2)で表される

南大西洋異常(SAA) bull 地球の自転軸と磁気軸のずれ

darr bull 放射線帯が自転軸に対して非

対称

bull 南大西洋上空では放射線帯内帯が低高度に落ちてきているこの領域を南大西洋異常域(SAA South Atlantic Anomaly)と呼ぶ

bull 地球観測衛星ではSAAで放射線帯陽子の影響を受ける

Single Event Lachup

シングルイベントと陽子分布

MOS-1衛星(高度909km軌道傾斜角99度)で発生したシングルイベントと 陽子30MeV以上の等高線マップを重ね合わせた結果

NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)

bull 入射粒子が電離によらず与える損傷非イオン化損失

低軌道での電子フラックスと 不具合の発生場所

南大西洋異常(SAA)と極の角

高度800kmでの電子フラックス図極の角(polar horn)とSAAを示す

太陽粒子線 bull 太陽高エネルギー粒子線(SPE Solar Proton Events)は太陽フレア とコロナガス噴出 (CMECoronal Mass Ejections )により引き起こされる bull フレアのスペクトルは可変であるためあるエネルギー域における最悪状態イベントは必ずしも別のエネルギー域における最悪条件ではない 1972年8月のイベント 10~70MeVの粒子が最も多かった 1989年10のイベント 1972年8月のイベントに比べ低エネルギー領域 高エネルギー領域が明らかに激しかった

フルエンス 105 to 1011 cm-2

変動期間 1日から数日

ldquoBastiliardquo Solar Event 14 July 2000

Carrington Flare

84

(LW Townseed) Carrington Flare(1859年) Carrington Flare による30MeV以上トータルFluenceを118times109cm-2で規格化 ~1989年フレアの約13倍(シングルイベントの評価で使用) ~1991年フレアの約9倍 2012年7月23日にキャリントンイベントとほぼ同等の爆発現象が太陽あるいは太陽の周りで起きていたということがNASAの太陽観測衛星「STEREO」の解析から発表された

放射線対策 bull 放射線シールドを付加し放射線を減衰させる

bull 放射線耐性の強い部品(SOI(Silicon On Insulator)技術による耐放射線部品)材料に変更する

bull 放射線による損傷を吸収するために回路または構造上のマージンを持たせる bull ソフト的なエラーに対しては エラー検出訂正機能や多数決

機能等でソフト的エラーが起きてもシステムが機能するようにしたフォールトトレラント機能を付けて対処する ICのハード的故障に対しては ラッチアップ耐性の強い部品を選定するしかないが 電流制限回路を付ける対策も採られる パワーMOSFETに対しては部品選定 電源電圧を規格値の半分以下に落とす等の対策を採る

SOI技術

表面帯電への対策例

表面の物体間を導線で結線する

太陽電池のカバーガラスを導電性被膜付き(酸化インジウムITO)にする

熱制御材表面にITOを被覆する

熱制御材は高誘電率のテフロンの使用を避け 高伝導度耐環境性に優れたブラックカプトンを使用

イオンエンジンの中和器で能動帯電制御

内部帯電への対策例

アルミで3mm厚さに相当するシールドで囲む(Faraday Cage)

テフロンやカプトンなどの誘電体材料の内部での使用量を最小限に押さえる

回路基板やコンフォーマルコーティングは誘電体なので電流リークパス(1012Ωcmまたは1012Ωcm2

程度)を必ずつける

特にスポット的な放射線シールドの金属材には必ず電流リークパスをつける

帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備

衛星モデル作成

材料物性テーブル設定

宇宙環境パラメータ設定

Converter

転送ディレクトリ 解析データファイル

転送

解析ディレクトリ生成 解析結果 進行状況チェック ファイル操作

MUSCAT 解析エンジン

解析結果 表示

パラメトリックラン

オプション 解析

大型パネル実験(35mtimes11m) クーポンパネル実験(26cmtimes16cm)

環境模擬試験 環境模擬試験

MUSCATに使用する物性値設計標準制定のための知見などを得ることを目的に軌道上の宇宙環境を模擬した地上試験を行っている これらの試験では放電の発生頻度や電圧閾値放電発生による太陽電池パネルや搭載機器への影響を検証している

放射線計測装置の原理

bull その粒子が物質を通過する際のエネルギー損出率が粒子の電荷(原子番号)Zの二乗に比例すること(Bethe-Blochの式)を利用する

S2

E

ΔE Ersquo

S1 S3

  • 宇宙機の設計のための宇宙環境
  • 話の流れ
  • 話の流れ
  • TEDA(技術データ取得装置)(国産部品の宇宙環境での実証の必要性)
  • ETS-VTEDA(技術データ取得装置)誕生前の部品の宇宙実証の背景
  • スライド番号 6
  • スライド番号 7
  • スライド番号 8
  • スライド番号 9
  • 図6太陽黒点数と静止軌道電子 (>04MeV ) Flux の変動 (ETS-V搭載DOMによる観測)
  • スライド番号 11
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの開発(理研東大と共同で宇宙環境計測の充実)
  • ETS-VI(きく6号)打ち上がったがGEOに行かずGTOに留まる
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの成果
  • スライド番号 15
  • スライド番号 16
  • スライド番号 17
  • ADEOS搭載TEDA(世界2番目の異常宇宙線ACR)
  • BBND (ボナー球中性子検出器)
  • スライド番号 20
  • ISS搭載BBNDの成果(約8か月)
  • スライド番号 22
  • MDS-1搭載放射線吸収線量モニタ(SDOM)
  • 放射線帯変動モデルの開発MDS-1 065 MeV 電子フラックス
  • 変動パラメータの選択 (1 cycle solar activity)
  • 変動パラメータ- Tavg の定義-
  • 065MeV 電子 L値-Tavg マップ
  • 13MeV 陽子 L値-Tavg マップ
  • 電子観測とMDS-1モデルの比較
  • 放射線帯フラックスピークの変動
  • 陽子観測とモデルの比較
  • 電子(035~078MeV) 1日の変動予測GOSAT軌道
  • 電子(035~078MeV) 変動の信頼度水準(1日)GOSAT軌道
  • MDS-1 model と AE-8 modelとの比較1日
  • 話の流れ
  • 2003年10月 みどり号の全損事故(複合現象)
  • 衛星帯電の基本式
  • 内部帯電
  • パドルでの帯電放電メカニズム
  • スライド番号 40
  • スライド番号 41
  • スライド番号 42
  • データ中継技術衛星DRTS (こだま)の不具合
  • DRTS ESA スパイクノイズと電子フルエンスの比較(赤の丸が異常検知)
  • 不具合が宇宙環境によるものであるか判断する際のポイント
  • 話の流れ
  • 宇宙天気のリスク-宇宙環境によるシステムへの影響 -
  • NASAの報告-GNampCに注目-
  • NASAの報告(続き)
  • 宇宙環境を原因とする不具合の割合-JAXAの場合-
  • 不具合発生部位の割合 
  • Satellite News Digest -静止軌道不具合-
  • 太陽活動と静止軌道衛星不具合例
  • スライド番号 54
  • スライド番号 55
  • スライド番号 56
  • 衛星開発段階における対策
  • 運用における対応
  • 話の流れ
  • スライド番号 60
  • スライド番号 61
  • まとめ(その1)
  • まとめ(その2)
  • 宇宙環境グループは宇宙ステーションと衛星プロジェクトの安全な遂行に貢献しています
  • 補足資料
  • 不具合原因の推移
  • 何故不具合は減らないか
  • 放射線による影響の概要
  • 耐放射線設計手順
  • 各軌道における放射線環境
  • 放射線による部品材料の影響
  • トータルドーズ効果
  • シングルイベント効果
  • シングルイベントメカニズム-陽子と重イオンの違い-
  • エラー発生率の計算
  • 線エネルギー付与(LET)(linear energy transfer)
  • 南大西洋異常(SAA)
  • Single Event Lachup
  • シングルイベントと陽子分布
  • NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)
  • 低軌道での電子フラックスと不具合の発生場所
  • 南大西洋異常(SAA)と極の角
  • スライド番号 83
  • Carrington Flare
  • 放射線対策
  • スライド番号 86
  • スライド番号 87
  • 帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備
  • スライド番号 89
  • 放射線計測装置の原理
Page 59: 宇宙機の設計のための宇宙環境の方針から国産部品開発(42品種)が実施された。 . 半導体電子部品は耐放射線性を加味して、人工衛星(特に

話の流れ

技術データ取得装置(TEDA)の概要と成果 bull 主な成果 bull 不具合解析例

宇宙天気のリスクと対策 bull 宇宙環境による衛星システムへの影響 bull 宇宙環境を原因とする不具合の割合推移部位 bull 静止軌道不具合 bull 対策

今後必要な観測項目

まとめ

計測対象計測項目 計測対象 粒径100μm以上のデブリメテオロイド 計測項目 デブリ粒径衝突頻度

基本原理

厚さ約125μmの絶縁性のポリイミドフィルム表面に 100μm周期で直線状の細長い導線(太さ50μm)パターンを形成導線の破断を電気的に検知することによりデブリの衝突(貫通)を検知する破断した導線の数導線の幅ピッチからデブリサイズを計測する

微小デブリ計測技術の概要

衝突孔の例(衝突試験ISAS) - 衝突粒子 SUS 309 microm - 衝突速度 52 kms

HTV5号機によるセンサ機能のフライト実証

35cm

46cm

FY2013機能実証モデル

検出線幅 50 μm 検出線間隔 100 μm フィルム厚 lt 20 μm 有感領域 30times33cm 検出線総数 3300本

サイズ 50times39times4 cm (筐体を含む)

重量 約15kg(筐体を含む)

消費電力 2W(最大4W)(他センサ含む)

テレメトリ 02 bps

宇宙環境観測装置KASPERの一部としてデブリセンサSDMを搭載 FY2013に製作開始今年8月に打ち上げ予定)

まとめ(その1)

衛星不具合の主な原因は帯電放電シングルイベント放射線損傷である今後デブリ環境が重要になると予測される

静止軌道では商用衛星が多く運用されており宇宙環境の変動把握は重要この領域で運用する衛星が気を付けなければいけない環境として

1太陽フレアに伴う高エネルギー粒子 2太陽活動下降期による静止軌道電子の増加 3磁気嵐に伴う磁気圏尾部から注入する粒子 などがあげられる

まとめ(その2)

不具合軽減の取り組み bull 開発時は宇宙環境条件(トータルフラックス及び最悪条

件)を明確にし設計(冗長系柔軟性の設計ディレーティング及び運用モード寿命について研究)試験の充実検証の充実を図る

bull 運用段階に入ったならば宇宙環境を監視し警報等で故障を防ぐ

予測課題 bull 太陽フレアに伴う高エネルギー粒子発生後フラックス

ピーク値の推定

bull 衛星により不具合の起きる閾値は異なるが閾値をこえる急激な電子フラックスの増加と継続時間の予測

bull 局所的な磁気嵐に伴う磁気圏尾部から注入する粒子

宇宙環境グループは宇宙ステーションと衛星プロジェクトの安全な遂行に貢献しています

ご静聴ありがとうございました

補足資料

不具合原因の推移 bull 宇宙天気を大きく左右する要因の1つとして約11年の太陽活動変化が挙げられる

bull 太陽活動下降時期(太陽変動CME)と極大期(フレアCME)に衛星で不具合が増加するそれにより不具合原因の割合が変わる

-Koons et al The Impact of the Space Environment on Space Systems Aerospace Corp report no TR-99(1670)-1 20 July 1999 -2009 preliminary study (unpublished)

何故不具合は減らないか

bull 部品 放射線に対する感受性が高くなっている bull 微細化が進み同時にフォールトするノードが増え同時にエ

ラーとなる論理ノードやメモリセルが増加する微細化によってメモリセルは小さくなるので記憶容量当たりでみるとエラーの発生率は下がるしかし半導体チップの記憶容量やゲート数が増えるので半導体チップ当たりのエラー発生率は微細化とともに上昇するまた蓄積電荷が小さくなり感受性が高くなってきている

bull システム 大型化大電力化運用長期化 bull 1990年代末以降静止衛星の電力が10kWレベルになったしか

し設計検証技術データ蓄積が遅れている改善されつつあると推測される

放射線による影響の概要

粒子 エネルギー又はLET

代表的な影響

陽子 100keV-1MeV 1-10MeV 10-100MeV gt50MeV

表面損傷 表面材料と太陽電池の損傷 放射線損傷(電離非電離損傷の両方)センサーへのノイズ シングルイベント効果

電子 10-100keV gt100keV gt1MeV

表面帯電 深部帯電現象(deep-dielectric charging)センサーへのノイズ太陽電池の損傷 放射線損傷(電離)

重イオン gt1MeV-cm2mg シングルイベント効果

注エネルギー及びLETは個々の部品等により異なりますあくまでも目安です

耐放射線設計手順

軌道条件

ミッション期間

環境条件設定

トータルドーズの予測

1MeV電子換算被曝算出

NIELの換算

LETフルエンス算出

陽子フルエンス算出

対  策  の  検  討

対  策  の  検  討

対  策  の  検  討

放射線による劣化率予測

劣化率予測 特性予測

耐性データ

放射線による劣化率予測

耐性データ

劣化率予測アレイ出力劣化予測

感受性データ

シングルイベント発生率予測 致命度解析

衛星内質量分布

(2)

部品材料の選定

他の要因による劣化率予測

(2)(2) (3)

回路設計等NO

OK

アレイ構造 セル選定

他の要因による劣化率予測 アレイ設計(2)

(2) (2) (2) (3)

衛星内質量分布 部品選定(2)

(2) (2)(3)

NO

OK

NO

OK

(1) 環境モデルマージを含む(2) 部品レベルの検討(3) アセンブリレベルでの検討(4) 設計マージン環境モデル   マージを含め大丈夫か

トータルドーズ

太陽電池アレイの劣化

シングルイベント効果

回路設計

補足放射線太陽宇宙線銀河宇宙線

NEILを用いたダメージファクターの算出

対  策  の  検  討

放射線による劣化率予測

劣化率予測 特性予測

耐性データ

(2)

部品材料の選定

他の要因による劣化率予測

(2)(2) (3)

回路設計等NO

OK

衛星内質量分布 半導体デバイスの変位損傷

(1)

(4)

(4)

(4)

(4)

各軌道における放射線環境

1E+10

1E+11

1E+12

1E+13

1E+14

1E+15

1E+16

1E+17

1E+18

1E+19

1E+20

001 010 100 1000

捕捉

電子

の積

分フ

ルエ

ンス

[m

2 ]

エネルギー[MeV]

各軌道における電子捕捉積分フルエンス(3年間)

LEO

EOS GEO

MEO

GTO

GEO 軌道傾斜角 0deg 高度36000km GTO 軌道傾斜角 18deg 高度 360km~36000km MEO 軌道傾斜角 51deg 高度 10000km EOS 軌道傾斜角 98deg 高度705km LEO 軌道傾斜角 29deg 高度 600km

1E+12

1E+13

1E+14

1E+15

1E+16

1E+17

1E+18

1E+19

1E+20

01 10 100 1000

捕捉

陽子の

積分フルエン

ス[

m2 ]

エネルギー[MeV]

各軌道における捕捉陽子積分フルエンス(3年間)

MEO

GTO

GEO

EOS LEO

放射線による部品材料の影響

総照射線量 (TIDTotal Ionising Dose )

電離損傷

バイポーラTrの電流増幅率の低下リーク電流の増大

γ線で評価

トータルドーズ効果

変位損傷 (DDDisplacement Damage )または 非イオン化エネルギー損失 (NIELNon-Ionising Energy

Loss )

変位損傷(格子欠陥の生成)

電荷輸送効率の低下 (CCD)太陽電池の効率低下等

電子陽子により評価

シングルイベント効果

1個の荷電粒子の入射により発生する誤動作

ソフト(Latch-Up Burnout) エラー又は ソフト (Upset) エラー

陽子及び重イオンで評価

トータルドーズ効果

+ - + + - + - + - - + + + + -

ゲート酸化膜

電離

格子欠陥

正電荷捕獲

+ 正孔 - 電子

電極

(Silicon oxidenitride)

荷電粒子

反跳原子

ゲート絶縁膜中に電荷が蓄積することによるMOSトランジスタのしきい電圧(MOSトランジスタがオフからオンに変化するゲート電圧)の変化をもたらすただ

し最近の最先端チップはゲート絶縁膜がきわめて薄くなっているこのためゲート絶縁膜よりもフィールド絶縁膜(隣接するトランジスタを電気的に分離する絶縁膜)での電荷蓄積が相対的には大きな問題になってきている」

シングルイベント効果

メモリセルはNチャンネルとPチャンネルMOSFETより構成されメモリ情報は回路ノード12の電位の

高低により記録している空乏層の広がっているPN接合12の領域に

重イオンが入射した場合電荷の発生と空乏層内への少数キャリアの収集が起こるこの収集電荷量が回路の耐量を越えた場合(c)に示すように反転が起こる(ソフトエラー)一方pウエル-N基板接

合の空乏層内に電荷収集量が起こりえる耐性を越えると寄生的に存在するPNPNサイリスタ構造がオ

ンし電源と基板間に大電流が流れる状態が生じる(ラッチアップ)

シングルイベントメカニズム -陽子と重イオンの違い-

エラー発生率の計算

線エネルギー付与(LET) (linear energy transfer)

電離性放射線が物質中を通過する際飛程の単位長さ当りに平均して失うエネルギーをいう各種の放射線のうちX線γ線はLETが小さいので低LETといいα線中性子線その他重イオン核分裂破片のLETは大きいので高LETという MeVμmMeV(gcm2)やMeV(mgcm2)で表される

南大西洋異常(SAA) bull 地球の自転軸と磁気軸のずれ

darr bull 放射線帯が自転軸に対して非

対称

bull 南大西洋上空では放射線帯内帯が低高度に落ちてきているこの領域を南大西洋異常域(SAA South Atlantic Anomaly)と呼ぶ

bull 地球観測衛星ではSAAで放射線帯陽子の影響を受ける

Single Event Lachup

シングルイベントと陽子分布

MOS-1衛星(高度909km軌道傾斜角99度)で発生したシングルイベントと 陽子30MeV以上の等高線マップを重ね合わせた結果

NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)

bull 入射粒子が電離によらず与える損傷非イオン化損失

低軌道での電子フラックスと 不具合の発生場所

南大西洋異常(SAA)と極の角

高度800kmでの電子フラックス図極の角(polar horn)とSAAを示す

太陽粒子線 bull 太陽高エネルギー粒子線(SPE Solar Proton Events)は太陽フレア とコロナガス噴出 (CMECoronal Mass Ejections )により引き起こされる bull フレアのスペクトルは可変であるためあるエネルギー域における最悪状態イベントは必ずしも別のエネルギー域における最悪条件ではない 1972年8月のイベント 10~70MeVの粒子が最も多かった 1989年10のイベント 1972年8月のイベントに比べ低エネルギー領域 高エネルギー領域が明らかに激しかった

フルエンス 105 to 1011 cm-2

変動期間 1日から数日

ldquoBastiliardquo Solar Event 14 July 2000

Carrington Flare

84

(LW Townseed) Carrington Flare(1859年) Carrington Flare による30MeV以上トータルFluenceを118times109cm-2で規格化 ~1989年フレアの約13倍(シングルイベントの評価で使用) ~1991年フレアの約9倍 2012年7月23日にキャリントンイベントとほぼ同等の爆発現象が太陽あるいは太陽の周りで起きていたということがNASAの太陽観測衛星「STEREO」の解析から発表された

放射線対策 bull 放射線シールドを付加し放射線を減衰させる

bull 放射線耐性の強い部品(SOI(Silicon On Insulator)技術による耐放射線部品)材料に変更する

bull 放射線による損傷を吸収するために回路または構造上のマージンを持たせる bull ソフト的なエラーに対しては エラー検出訂正機能や多数決

機能等でソフト的エラーが起きてもシステムが機能するようにしたフォールトトレラント機能を付けて対処する ICのハード的故障に対しては ラッチアップ耐性の強い部品を選定するしかないが 電流制限回路を付ける対策も採られる パワーMOSFETに対しては部品選定 電源電圧を規格値の半分以下に落とす等の対策を採る

SOI技術

表面帯電への対策例

表面の物体間を導線で結線する

太陽電池のカバーガラスを導電性被膜付き(酸化インジウムITO)にする

熱制御材表面にITOを被覆する

熱制御材は高誘電率のテフロンの使用を避け 高伝導度耐環境性に優れたブラックカプトンを使用

イオンエンジンの中和器で能動帯電制御

内部帯電への対策例

アルミで3mm厚さに相当するシールドで囲む(Faraday Cage)

テフロンやカプトンなどの誘電体材料の内部での使用量を最小限に押さえる

回路基板やコンフォーマルコーティングは誘電体なので電流リークパス(1012Ωcmまたは1012Ωcm2

程度)を必ずつける

特にスポット的な放射線シールドの金属材には必ず電流リークパスをつける

帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備

衛星モデル作成

材料物性テーブル設定

宇宙環境パラメータ設定

Converter

転送ディレクトリ 解析データファイル

転送

解析ディレクトリ生成 解析結果 進行状況チェック ファイル操作

MUSCAT 解析エンジン

解析結果 表示

パラメトリックラン

オプション 解析

大型パネル実験(35mtimes11m) クーポンパネル実験(26cmtimes16cm)

環境模擬試験 環境模擬試験

MUSCATに使用する物性値設計標準制定のための知見などを得ることを目的に軌道上の宇宙環境を模擬した地上試験を行っている これらの試験では放電の発生頻度や電圧閾値放電発生による太陽電池パネルや搭載機器への影響を検証している

放射線計測装置の原理

bull その粒子が物質を通過する際のエネルギー損出率が粒子の電荷(原子番号)Zの二乗に比例すること(Bethe-Blochの式)を利用する

S2

E

ΔE Ersquo

S1 S3

  • 宇宙機の設計のための宇宙環境
  • 話の流れ
  • 話の流れ
  • TEDA(技術データ取得装置)(国産部品の宇宙環境での実証の必要性)
  • ETS-VTEDA(技術データ取得装置)誕生前の部品の宇宙実証の背景
  • スライド番号 6
  • スライド番号 7
  • スライド番号 8
  • スライド番号 9
  • 図6太陽黒点数と静止軌道電子 (>04MeV ) Flux の変動 (ETS-V搭載DOMによる観測)
  • スライド番号 11
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの開発(理研東大と共同で宇宙環境計測の充実)
  • ETS-VI(きく6号)打ち上がったがGEOに行かずGTOに留まる
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの成果
  • スライド番号 15
  • スライド番号 16
  • スライド番号 17
  • ADEOS搭載TEDA(世界2番目の異常宇宙線ACR)
  • BBND (ボナー球中性子検出器)
  • スライド番号 20
  • ISS搭載BBNDの成果(約8か月)
  • スライド番号 22
  • MDS-1搭載放射線吸収線量モニタ(SDOM)
  • 放射線帯変動モデルの開発MDS-1 065 MeV 電子フラックス
  • 変動パラメータの選択 (1 cycle solar activity)
  • 変動パラメータ- Tavg の定義-
  • 065MeV 電子 L値-Tavg マップ
  • 13MeV 陽子 L値-Tavg マップ
  • 電子観測とMDS-1モデルの比較
  • 放射線帯フラックスピークの変動
  • 陽子観測とモデルの比較
  • 電子(035~078MeV) 1日の変動予測GOSAT軌道
  • 電子(035~078MeV) 変動の信頼度水準(1日)GOSAT軌道
  • MDS-1 model と AE-8 modelとの比較1日
  • 話の流れ
  • 2003年10月 みどり号の全損事故(複合現象)
  • 衛星帯電の基本式
  • 内部帯電
  • パドルでの帯電放電メカニズム
  • スライド番号 40
  • スライド番号 41
  • スライド番号 42
  • データ中継技術衛星DRTS (こだま)の不具合
  • DRTS ESA スパイクノイズと電子フルエンスの比較(赤の丸が異常検知)
  • 不具合が宇宙環境によるものであるか判断する際のポイント
  • 話の流れ
  • 宇宙天気のリスク-宇宙環境によるシステムへの影響 -
  • NASAの報告-GNampCに注目-
  • NASAの報告(続き)
  • 宇宙環境を原因とする不具合の割合-JAXAの場合-
  • 不具合発生部位の割合 
  • Satellite News Digest -静止軌道不具合-
  • 太陽活動と静止軌道衛星不具合例
  • スライド番号 54
  • スライド番号 55
  • スライド番号 56
  • 衛星開発段階における対策
  • 運用における対応
  • 話の流れ
  • スライド番号 60
  • スライド番号 61
  • まとめ(その1)
  • まとめ(その2)
  • 宇宙環境グループは宇宙ステーションと衛星プロジェクトの安全な遂行に貢献しています
  • 補足資料
  • 不具合原因の推移
  • 何故不具合は減らないか
  • 放射線による影響の概要
  • 耐放射線設計手順
  • 各軌道における放射線環境
  • 放射線による部品材料の影響
  • トータルドーズ効果
  • シングルイベント効果
  • シングルイベントメカニズム-陽子と重イオンの違い-
  • エラー発生率の計算
  • 線エネルギー付与(LET)(linear energy transfer)
  • 南大西洋異常(SAA)
  • Single Event Lachup
  • シングルイベントと陽子分布
  • NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)
  • 低軌道での電子フラックスと不具合の発生場所
  • 南大西洋異常(SAA)と極の角
  • スライド番号 83
  • Carrington Flare
  • 放射線対策
  • スライド番号 86
  • スライド番号 87
  • 帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備
  • スライド番号 89
  • 放射線計測装置の原理
Page 60: 宇宙機の設計のための宇宙環境の方針から国産部品開発(42品種)が実施された。 . 半導体電子部品は耐放射線性を加味して、人工衛星(特に

計測対象計測項目 計測対象 粒径100μm以上のデブリメテオロイド 計測項目 デブリ粒径衝突頻度

基本原理

厚さ約125μmの絶縁性のポリイミドフィルム表面に 100μm周期で直線状の細長い導線(太さ50μm)パターンを形成導線の破断を電気的に検知することによりデブリの衝突(貫通)を検知する破断した導線の数導線の幅ピッチからデブリサイズを計測する

微小デブリ計測技術の概要

衝突孔の例(衝突試験ISAS) - 衝突粒子 SUS 309 microm - 衝突速度 52 kms

HTV5号機によるセンサ機能のフライト実証

35cm

46cm

FY2013機能実証モデル

検出線幅 50 μm 検出線間隔 100 μm フィルム厚 lt 20 μm 有感領域 30times33cm 検出線総数 3300本

サイズ 50times39times4 cm (筐体を含む)

重量 約15kg(筐体を含む)

消費電力 2W(最大4W)(他センサ含む)

テレメトリ 02 bps

宇宙環境観測装置KASPERの一部としてデブリセンサSDMを搭載 FY2013に製作開始今年8月に打ち上げ予定)

まとめ(その1)

衛星不具合の主な原因は帯電放電シングルイベント放射線損傷である今後デブリ環境が重要になると予測される

静止軌道では商用衛星が多く運用されており宇宙環境の変動把握は重要この領域で運用する衛星が気を付けなければいけない環境として

1太陽フレアに伴う高エネルギー粒子 2太陽活動下降期による静止軌道電子の増加 3磁気嵐に伴う磁気圏尾部から注入する粒子 などがあげられる

まとめ(その2)

不具合軽減の取り組み bull 開発時は宇宙環境条件(トータルフラックス及び最悪条

件)を明確にし設計(冗長系柔軟性の設計ディレーティング及び運用モード寿命について研究)試験の充実検証の充実を図る

bull 運用段階に入ったならば宇宙環境を監視し警報等で故障を防ぐ

予測課題 bull 太陽フレアに伴う高エネルギー粒子発生後フラックス

ピーク値の推定

bull 衛星により不具合の起きる閾値は異なるが閾値をこえる急激な電子フラックスの増加と継続時間の予測

bull 局所的な磁気嵐に伴う磁気圏尾部から注入する粒子

宇宙環境グループは宇宙ステーションと衛星プロジェクトの安全な遂行に貢献しています

ご静聴ありがとうございました

補足資料

不具合原因の推移 bull 宇宙天気を大きく左右する要因の1つとして約11年の太陽活動変化が挙げられる

bull 太陽活動下降時期(太陽変動CME)と極大期(フレアCME)に衛星で不具合が増加するそれにより不具合原因の割合が変わる

-Koons et al The Impact of the Space Environment on Space Systems Aerospace Corp report no TR-99(1670)-1 20 July 1999 -2009 preliminary study (unpublished)

何故不具合は減らないか

bull 部品 放射線に対する感受性が高くなっている bull 微細化が進み同時にフォールトするノードが増え同時にエ

ラーとなる論理ノードやメモリセルが増加する微細化によってメモリセルは小さくなるので記憶容量当たりでみるとエラーの発生率は下がるしかし半導体チップの記憶容量やゲート数が増えるので半導体チップ当たりのエラー発生率は微細化とともに上昇するまた蓄積電荷が小さくなり感受性が高くなってきている

bull システム 大型化大電力化運用長期化 bull 1990年代末以降静止衛星の電力が10kWレベルになったしか

し設計検証技術データ蓄積が遅れている改善されつつあると推測される

放射線による影響の概要

粒子 エネルギー又はLET

代表的な影響

陽子 100keV-1MeV 1-10MeV 10-100MeV gt50MeV

表面損傷 表面材料と太陽電池の損傷 放射線損傷(電離非電離損傷の両方)センサーへのノイズ シングルイベント効果

電子 10-100keV gt100keV gt1MeV

表面帯電 深部帯電現象(deep-dielectric charging)センサーへのノイズ太陽電池の損傷 放射線損傷(電離)

重イオン gt1MeV-cm2mg シングルイベント効果

注エネルギー及びLETは個々の部品等により異なりますあくまでも目安です

耐放射線設計手順

軌道条件

ミッション期間

環境条件設定

トータルドーズの予測

1MeV電子換算被曝算出

NIELの換算

LETフルエンス算出

陽子フルエンス算出

対  策  の  検  討

対  策  の  検  討

対  策  の  検  討

放射線による劣化率予測

劣化率予測 特性予測

耐性データ

放射線による劣化率予測

耐性データ

劣化率予測アレイ出力劣化予測

感受性データ

シングルイベント発生率予測 致命度解析

衛星内質量分布

(2)

部品材料の選定

他の要因による劣化率予測

(2)(2) (3)

回路設計等NO

OK

アレイ構造 セル選定

他の要因による劣化率予測 アレイ設計(2)

(2) (2) (2) (3)

衛星内質量分布 部品選定(2)

(2) (2)(3)

NO

OK

NO

OK

(1) 環境モデルマージを含む(2) 部品レベルの検討(3) アセンブリレベルでの検討(4) 設計マージン環境モデル   マージを含め大丈夫か

トータルドーズ

太陽電池アレイの劣化

シングルイベント効果

回路設計

補足放射線太陽宇宙線銀河宇宙線

NEILを用いたダメージファクターの算出

対  策  の  検  討

放射線による劣化率予測

劣化率予測 特性予測

耐性データ

(2)

部品材料の選定

他の要因による劣化率予測

(2)(2) (3)

回路設計等NO

OK

衛星内質量分布 半導体デバイスの変位損傷

(1)

(4)

(4)

(4)

(4)

各軌道における放射線環境

1E+10

1E+11

1E+12

1E+13

1E+14

1E+15

1E+16

1E+17

1E+18

1E+19

1E+20

001 010 100 1000

捕捉

電子

の積

分フ

ルエ

ンス

[m

2 ]

エネルギー[MeV]

各軌道における電子捕捉積分フルエンス(3年間)

LEO

EOS GEO

MEO

GTO

GEO 軌道傾斜角 0deg 高度36000km GTO 軌道傾斜角 18deg 高度 360km~36000km MEO 軌道傾斜角 51deg 高度 10000km EOS 軌道傾斜角 98deg 高度705km LEO 軌道傾斜角 29deg 高度 600km

1E+12

1E+13

1E+14

1E+15

1E+16

1E+17

1E+18

1E+19

1E+20

01 10 100 1000

捕捉

陽子の

積分フルエン

ス[

m2 ]

エネルギー[MeV]

各軌道における捕捉陽子積分フルエンス(3年間)

MEO

GTO

GEO

EOS LEO

放射線による部品材料の影響

総照射線量 (TIDTotal Ionising Dose )

電離損傷

バイポーラTrの電流増幅率の低下リーク電流の増大

γ線で評価

トータルドーズ効果

変位損傷 (DDDisplacement Damage )または 非イオン化エネルギー損失 (NIELNon-Ionising Energy

Loss )

変位損傷(格子欠陥の生成)

電荷輸送効率の低下 (CCD)太陽電池の効率低下等

電子陽子により評価

シングルイベント効果

1個の荷電粒子の入射により発生する誤動作

ソフト(Latch-Up Burnout) エラー又は ソフト (Upset) エラー

陽子及び重イオンで評価

トータルドーズ効果

+ - + + - + - + - - + + + + -

ゲート酸化膜

電離

格子欠陥

正電荷捕獲

+ 正孔 - 電子

電極

(Silicon oxidenitride)

荷電粒子

反跳原子

ゲート絶縁膜中に電荷が蓄積することによるMOSトランジスタのしきい電圧(MOSトランジスタがオフからオンに変化するゲート電圧)の変化をもたらすただ

し最近の最先端チップはゲート絶縁膜がきわめて薄くなっているこのためゲート絶縁膜よりもフィールド絶縁膜(隣接するトランジスタを電気的に分離する絶縁膜)での電荷蓄積が相対的には大きな問題になってきている」

シングルイベント効果

メモリセルはNチャンネルとPチャンネルMOSFETより構成されメモリ情報は回路ノード12の電位の

高低により記録している空乏層の広がっているPN接合12の領域に

重イオンが入射した場合電荷の発生と空乏層内への少数キャリアの収集が起こるこの収集電荷量が回路の耐量を越えた場合(c)に示すように反転が起こる(ソフトエラー)一方pウエル-N基板接

合の空乏層内に電荷収集量が起こりえる耐性を越えると寄生的に存在するPNPNサイリスタ構造がオ

ンし電源と基板間に大電流が流れる状態が生じる(ラッチアップ)

シングルイベントメカニズム -陽子と重イオンの違い-

エラー発生率の計算

線エネルギー付与(LET) (linear energy transfer)

電離性放射線が物質中を通過する際飛程の単位長さ当りに平均して失うエネルギーをいう各種の放射線のうちX線γ線はLETが小さいので低LETといいα線中性子線その他重イオン核分裂破片のLETは大きいので高LETという MeVμmMeV(gcm2)やMeV(mgcm2)で表される

南大西洋異常(SAA) bull 地球の自転軸と磁気軸のずれ

darr bull 放射線帯が自転軸に対して非

対称

bull 南大西洋上空では放射線帯内帯が低高度に落ちてきているこの領域を南大西洋異常域(SAA South Atlantic Anomaly)と呼ぶ

bull 地球観測衛星ではSAAで放射線帯陽子の影響を受ける

Single Event Lachup

シングルイベントと陽子分布

MOS-1衛星(高度909km軌道傾斜角99度)で発生したシングルイベントと 陽子30MeV以上の等高線マップを重ね合わせた結果

NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)

bull 入射粒子が電離によらず与える損傷非イオン化損失

低軌道での電子フラックスと 不具合の発生場所

南大西洋異常(SAA)と極の角

高度800kmでの電子フラックス図極の角(polar horn)とSAAを示す

太陽粒子線 bull 太陽高エネルギー粒子線(SPE Solar Proton Events)は太陽フレア とコロナガス噴出 (CMECoronal Mass Ejections )により引き起こされる bull フレアのスペクトルは可変であるためあるエネルギー域における最悪状態イベントは必ずしも別のエネルギー域における最悪条件ではない 1972年8月のイベント 10~70MeVの粒子が最も多かった 1989年10のイベント 1972年8月のイベントに比べ低エネルギー領域 高エネルギー領域が明らかに激しかった

フルエンス 105 to 1011 cm-2

変動期間 1日から数日

ldquoBastiliardquo Solar Event 14 July 2000

Carrington Flare

84

(LW Townseed) Carrington Flare(1859年) Carrington Flare による30MeV以上トータルFluenceを118times109cm-2で規格化 ~1989年フレアの約13倍(シングルイベントの評価で使用) ~1991年フレアの約9倍 2012年7月23日にキャリントンイベントとほぼ同等の爆発現象が太陽あるいは太陽の周りで起きていたということがNASAの太陽観測衛星「STEREO」の解析から発表された

放射線対策 bull 放射線シールドを付加し放射線を減衰させる

bull 放射線耐性の強い部品(SOI(Silicon On Insulator)技術による耐放射線部品)材料に変更する

bull 放射線による損傷を吸収するために回路または構造上のマージンを持たせる bull ソフト的なエラーに対しては エラー検出訂正機能や多数決

機能等でソフト的エラーが起きてもシステムが機能するようにしたフォールトトレラント機能を付けて対処する ICのハード的故障に対しては ラッチアップ耐性の強い部品を選定するしかないが 電流制限回路を付ける対策も採られる パワーMOSFETに対しては部品選定 電源電圧を規格値の半分以下に落とす等の対策を採る

SOI技術

表面帯電への対策例

表面の物体間を導線で結線する

太陽電池のカバーガラスを導電性被膜付き(酸化インジウムITO)にする

熱制御材表面にITOを被覆する

熱制御材は高誘電率のテフロンの使用を避け 高伝導度耐環境性に優れたブラックカプトンを使用

イオンエンジンの中和器で能動帯電制御

内部帯電への対策例

アルミで3mm厚さに相当するシールドで囲む(Faraday Cage)

テフロンやカプトンなどの誘電体材料の内部での使用量を最小限に押さえる

回路基板やコンフォーマルコーティングは誘電体なので電流リークパス(1012Ωcmまたは1012Ωcm2

程度)を必ずつける

特にスポット的な放射線シールドの金属材には必ず電流リークパスをつける

帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備

衛星モデル作成

材料物性テーブル設定

宇宙環境パラメータ設定

Converter

転送ディレクトリ 解析データファイル

転送

解析ディレクトリ生成 解析結果 進行状況チェック ファイル操作

MUSCAT 解析エンジン

解析結果 表示

パラメトリックラン

オプション 解析

大型パネル実験(35mtimes11m) クーポンパネル実験(26cmtimes16cm)

環境模擬試験 環境模擬試験

MUSCATに使用する物性値設計標準制定のための知見などを得ることを目的に軌道上の宇宙環境を模擬した地上試験を行っている これらの試験では放電の発生頻度や電圧閾値放電発生による太陽電池パネルや搭載機器への影響を検証している

放射線計測装置の原理

bull その粒子が物質を通過する際のエネルギー損出率が粒子の電荷(原子番号)Zの二乗に比例すること(Bethe-Blochの式)を利用する

S2

E

ΔE Ersquo

S1 S3

  • 宇宙機の設計のための宇宙環境
  • 話の流れ
  • 話の流れ
  • TEDA(技術データ取得装置)(国産部品の宇宙環境での実証の必要性)
  • ETS-VTEDA(技術データ取得装置)誕生前の部品の宇宙実証の背景
  • スライド番号 6
  • スライド番号 7
  • スライド番号 8
  • スライド番号 9
  • 図6太陽黒点数と静止軌道電子 (>04MeV ) Flux の変動 (ETS-V搭載DOMによる観測)
  • スライド番号 11
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの開発(理研東大と共同で宇宙環境計測の充実)
  • ETS-VI(きく6号)打ち上がったがGEOに行かずGTOに留まる
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの成果
  • スライド番号 15
  • スライド番号 16
  • スライド番号 17
  • ADEOS搭載TEDA(世界2番目の異常宇宙線ACR)
  • BBND (ボナー球中性子検出器)
  • スライド番号 20
  • ISS搭載BBNDの成果(約8か月)
  • スライド番号 22
  • MDS-1搭載放射線吸収線量モニタ(SDOM)
  • 放射線帯変動モデルの開発MDS-1 065 MeV 電子フラックス
  • 変動パラメータの選択 (1 cycle solar activity)
  • 変動パラメータ- Tavg の定義-
  • 065MeV 電子 L値-Tavg マップ
  • 13MeV 陽子 L値-Tavg マップ
  • 電子観測とMDS-1モデルの比較
  • 放射線帯フラックスピークの変動
  • 陽子観測とモデルの比較
  • 電子(035~078MeV) 1日の変動予測GOSAT軌道
  • 電子(035~078MeV) 変動の信頼度水準(1日)GOSAT軌道
  • MDS-1 model と AE-8 modelとの比較1日
  • 話の流れ
  • 2003年10月 みどり号の全損事故(複合現象)
  • 衛星帯電の基本式
  • 内部帯電
  • パドルでの帯電放電メカニズム
  • スライド番号 40
  • スライド番号 41
  • スライド番号 42
  • データ中継技術衛星DRTS (こだま)の不具合
  • DRTS ESA スパイクノイズと電子フルエンスの比較(赤の丸が異常検知)
  • 不具合が宇宙環境によるものであるか判断する際のポイント
  • 話の流れ
  • 宇宙天気のリスク-宇宙環境によるシステムへの影響 -
  • NASAの報告-GNampCに注目-
  • NASAの報告(続き)
  • 宇宙環境を原因とする不具合の割合-JAXAの場合-
  • 不具合発生部位の割合 
  • Satellite News Digest -静止軌道不具合-
  • 太陽活動と静止軌道衛星不具合例
  • スライド番号 54
  • スライド番号 55
  • スライド番号 56
  • 衛星開発段階における対策
  • 運用における対応
  • 話の流れ
  • スライド番号 60
  • スライド番号 61
  • まとめ(その1)
  • まとめ(その2)
  • 宇宙環境グループは宇宙ステーションと衛星プロジェクトの安全な遂行に貢献しています
  • 補足資料
  • 不具合原因の推移
  • 何故不具合は減らないか
  • 放射線による影響の概要
  • 耐放射線設計手順
  • 各軌道における放射線環境
  • 放射線による部品材料の影響
  • トータルドーズ効果
  • シングルイベント効果
  • シングルイベントメカニズム-陽子と重イオンの違い-
  • エラー発生率の計算
  • 線エネルギー付与(LET)(linear energy transfer)
  • 南大西洋異常(SAA)
  • Single Event Lachup
  • シングルイベントと陽子分布
  • NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)
  • 低軌道での電子フラックスと不具合の発生場所
  • 南大西洋異常(SAA)と極の角
  • スライド番号 83
  • Carrington Flare
  • 放射線対策
  • スライド番号 86
  • スライド番号 87
  • 帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備
  • スライド番号 89
  • 放射線計測装置の原理
Page 61: 宇宙機の設計のための宇宙環境の方針から国産部品開発(42品種)が実施された。 . 半導体電子部品は耐放射線性を加味して、人工衛星(特に

HTV5号機によるセンサ機能のフライト実証

35cm

46cm

FY2013機能実証モデル

検出線幅 50 μm 検出線間隔 100 μm フィルム厚 lt 20 μm 有感領域 30times33cm 検出線総数 3300本

サイズ 50times39times4 cm (筐体を含む)

重量 約15kg(筐体を含む)

消費電力 2W(最大4W)(他センサ含む)

テレメトリ 02 bps

宇宙環境観測装置KASPERの一部としてデブリセンサSDMを搭載 FY2013に製作開始今年8月に打ち上げ予定)

まとめ(その1)

衛星不具合の主な原因は帯電放電シングルイベント放射線損傷である今後デブリ環境が重要になると予測される

静止軌道では商用衛星が多く運用されており宇宙環境の変動把握は重要この領域で運用する衛星が気を付けなければいけない環境として

1太陽フレアに伴う高エネルギー粒子 2太陽活動下降期による静止軌道電子の増加 3磁気嵐に伴う磁気圏尾部から注入する粒子 などがあげられる

まとめ(その2)

不具合軽減の取り組み bull 開発時は宇宙環境条件(トータルフラックス及び最悪条

件)を明確にし設計(冗長系柔軟性の設計ディレーティング及び運用モード寿命について研究)試験の充実検証の充実を図る

bull 運用段階に入ったならば宇宙環境を監視し警報等で故障を防ぐ

予測課題 bull 太陽フレアに伴う高エネルギー粒子発生後フラックス

ピーク値の推定

bull 衛星により不具合の起きる閾値は異なるが閾値をこえる急激な電子フラックスの増加と継続時間の予測

bull 局所的な磁気嵐に伴う磁気圏尾部から注入する粒子

宇宙環境グループは宇宙ステーションと衛星プロジェクトの安全な遂行に貢献しています

ご静聴ありがとうございました

補足資料

不具合原因の推移 bull 宇宙天気を大きく左右する要因の1つとして約11年の太陽活動変化が挙げられる

bull 太陽活動下降時期(太陽変動CME)と極大期(フレアCME)に衛星で不具合が増加するそれにより不具合原因の割合が変わる

-Koons et al The Impact of the Space Environment on Space Systems Aerospace Corp report no TR-99(1670)-1 20 July 1999 -2009 preliminary study (unpublished)

何故不具合は減らないか

bull 部品 放射線に対する感受性が高くなっている bull 微細化が進み同時にフォールトするノードが増え同時にエ

ラーとなる論理ノードやメモリセルが増加する微細化によってメモリセルは小さくなるので記憶容量当たりでみるとエラーの発生率は下がるしかし半導体チップの記憶容量やゲート数が増えるので半導体チップ当たりのエラー発生率は微細化とともに上昇するまた蓄積電荷が小さくなり感受性が高くなってきている

bull システム 大型化大電力化運用長期化 bull 1990年代末以降静止衛星の電力が10kWレベルになったしか

し設計検証技術データ蓄積が遅れている改善されつつあると推測される

放射線による影響の概要

粒子 エネルギー又はLET

代表的な影響

陽子 100keV-1MeV 1-10MeV 10-100MeV gt50MeV

表面損傷 表面材料と太陽電池の損傷 放射線損傷(電離非電離損傷の両方)センサーへのノイズ シングルイベント効果

電子 10-100keV gt100keV gt1MeV

表面帯電 深部帯電現象(deep-dielectric charging)センサーへのノイズ太陽電池の損傷 放射線損傷(電離)

重イオン gt1MeV-cm2mg シングルイベント効果

注エネルギー及びLETは個々の部品等により異なりますあくまでも目安です

耐放射線設計手順

軌道条件

ミッション期間

環境条件設定

トータルドーズの予測

1MeV電子換算被曝算出

NIELの換算

LETフルエンス算出

陽子フルエンス算出

対  策  の  検  討

対  策  の  検  討

対  策  の  検  討

放射線による劣化率予測

劣化率予測 特性予測

耐性データ

放射線による劣化率予測

耐性データ

劣化率予測アレイ出力劣化予測

感受性データ

シングルイベント発生率予測 致命度解析

衛星内質量分布

(2)

部品材料の選定

他の要因による劣化率予測

(2)(2) (3)

回路設計等NO

OK

アレイ構造 セル選定

他の要因による劣化率予測 アレイ設計(2)

(2) (2) (2) (3)

衛星内質量分布 部品選定(2)

(2) (2)(3)

NO

OK

NO

OK

(1) 環境モデルマージを含む(2) 部品レベルの検討(3) アセンブリレベルでの検討(4) 設計マージン環境モデル   マージを含め大丈夫か

トータルドーズ

太陽電池アレイの劣化

シングルイベント効果

回路設計

補足放射線太陽宇宙線銀河宇宙線

NEILを用いたダメージファクターの算出

対  策  の  検  討

放射線による劣化率予測

劣化率予測 特性予測

耐性データ

(2)

部品材料の選定

他の要因による劣化率予測

(2)(2) (3)

回路設計等NO

OK

衛星内質量分布 半導体デバイスの変位損傷

(1)

(4)

(4)

(4)

(4)

各軌道における放射線環境

1E+10

1E+11

1E+12

1E+13

1E+14

1E+15

1E+16

1E+17

1E+18

1E+19

1E+20

001 010 100 1000

捕捉

電子

の積

分フ

ルエ

ンス

[m

2 ]

エネルギー[MeV]

各軌道における電子捕捉積分フルエンス(3年間)

LEO

EOS GEO

MEO

GTO

GEO 軌道傾斜角 0deg 高度36000km GTO 軌道傾斜角 18deg 高度 360km~36000km MEO 軌道傾斜角 51deg 高度 10000km EOS 軌道傾斜角 98deg 高度705km LEO 軌道傾斜角 29deg 高度 600km

1E+12

1E+13

1E+14

1E+15

1E+16

1E+17

1E+18

1E+19

1E+20

01 10 100 1000

捕捉

陽子の

積分フルエン

ス[

m2 ]

エネルギー[MeV]

各軌道における捕捉陽子積分フルエンス(3年間)

MEO

GTO

GEO

EOS LEO

放射線による部品材料の影響

総照射線量 (TIDTotal Ionising Dose )

電離損傷

バイポーラTrの電流増幅率の低下リーク電流の増大

γ線で評価

トータルドーズ効果

変位損傷 (DDDisplacement Damage )または 非イオン化エネルギー損失 (NIELNon-Ionising Energy

Loss )

変位損傷(格子欠陥の生成)

電荷輸送効率の低下 (CCD)太陽電池の効率低下等

電子陽子により評価

シングルイベント効果

1個の荷電粒子の入射により発生する誤動作

ソフト(Latch-Up Burnout) エラー又は ソフト (Upset) エラー

陽子及び重イオンで評価

トータルドーズ効果

+ - + + - + - + - - + + + + -

ゲート酸化膜

電離

格子欠陥

正電荷捕獲

+ 正孔 - 電子

電極

(Silicon oxidenitride)

荷電粒子

反跳原子

ゲート絶縁膜中に電荷が蓄積することによるMOSトランジスタのしきい電圧(MOSトランジスタがオフからオンに変化するゲート電圧)の変化をもたらすただ

し最近の最先端チップはゲート絶縁膜がきわめて薄くなっているこのためゲート絶縁膜よりもフィールド絶縁膜(隣接するトランジスタを電気的に分離する絶縁膜)での電荷蓄積が相対的には大きな問題になってきている」

シングルイベント効果

メモリセルはNチャンネルとPチャンネルMOSFETより構成されメモリ情報は回路ノード12の電位の

高低により記録している空乏層の広がっているPN接合12の領域に

重イオンが入射した場合電荷の発生と空乏層内への少数キャリアの収集が起こるこの収集電荷量が回路の耐量を越えた場合(c)に示すように反転が起こる(ソフトエラー)一方pウエル-N基板接

合の空乏層内に電荷収集量が起こりえる耐性を越えると寄生的に存在するPNPNサイリスタ構造がオ

ンし電源と基板間に大電流が流れる状態が生じる(ラッチアップ)

シングルイベントメカニズム -陽子と重イオンの違い-

エラー発生率の計算

線エネルギー付与(LET) (linear energy transfer)

電離性放射線が物質中を通過する際飛程の単位長さ当りに平均して失うエネルギーをいう各種の放射線のうちX線γ線はLETが小さいので低LETといいα線中性子線その他重イオン核分裂破片のLETは大きいので高LETという MeVμmMeV(gcm2)やMeV(mgcm2)で表される

南大西洋異常(SAA) bull 地球の自転軸と磁気軸のずれ

darr bull 放射線帯が自転軸に対して非

対称

bull 南大西洋上空では放射線帯内帯が低高度に落ちてきているこの領域を南大西洋異常域(SAA South Atlantic Anomaly)と呼ぶ

bull 地球観測衛星ではSAAで放射線帯陽子の影響を受ける

Single Event Lachup

シングルイベントと陽子分布

MOS-1衛星(高度909km軌道傾斜角99度)で発生したシングルイベントと 陽子30MeV以上の等高線マップを重ね合わせた結果

NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)

bull 入射粒子が電離によらず与える損傷非イオン化損失

低軌道での電子フラックスと 不具合の発生場所

南大西洋異常(SAA)と極の角

高度800kmでの電子フラックス図極の角(polar horn)とSAAを示す

太陽粒子線 bull 太陽高エネルギー粒子線(SPE Solar Proton Events)は太陽フレア とコロナガス噴出 (CMECoronal Mass Ejections )により引き起こされる bull フレアのスペクトルは可変であるためあるエネルギー域における最悪状態イベントは必ずしも別のエネルギー域における最悪条件ではない 1972年8月のイベント 10~70MeVの粒子が最も多かった 1989年10のイベント 1972年8月のイベントに比べ低エネルギー領域 高エネルギー領域が明らかに激しかった

フルエンス 105 to 1011 cm-2

変動期間 1日から数日

ldquoBastiliardquo Solar Event 14 July 2000

Carrington Flare

84

(LW Townseed) Carrington Flare(1859年) Carrington Flare による30MeV以上トータルFluenceを118times109cm-2で規格化 ~1989年フレアの約13倍(シングルイベントの評価で使用) ~1991年フレアの約9倍 2012年7月23日にキャリントンイベントとほぼ同等の爆発現象が太陽あるいは太陽の周りで起きていたということがNASAの太陽観測衛星「STEREO」の解析から発表された

放射線対策 bull 放射線シールドを付加し放射線を減衰させる

bull 放射線耐性の強い部品(SOI(Silicon On Insulator)技術による耐放射線部品)材料に変更する

bull 放射線による損傷を吸収するために回路または構造上のマージンを持たせる bull ソフト的なエラーに対しては エラー検出訂正機能や多数決

機能等でソフト的エラーが起きてもシステムが機能するようにしたフォールトトレラント機能を付けて対処する ICのハード的故障に対しては ラッチアップ耐性の強い部品を選定するしかないが 電流制限回路を付ける対策も採られる パワーMOSFETに対しては部品選定 電源電圧を規格値の半分以下に落とす等の対策を採る

SOI技術

表面帯電への対策例

表面の物体間を導線で結線する

太陽電池のカバーガラスを導電性被膜付き(酸化インジウムITO)にする

熱制御材表面にITOを被覆する

熱制御材は高誘電率のテフロンの使用を避け 高伝導度耐環境性に優れたブラックカプトンを使用

イオンエンジンの中和器で能動帯電制御

内部帯電への対策例

アルミで3mm厚さに相当するシールドで囲む(Faraday Cage)

テフロンやカプトンなどの誘電体材料の内部での使用量を最小限に押さえる

回路基板やコンフォーマルコーティングは誘電体なので電流リークパス(1012Ωcmまたは1012Ωcm2

程度)を必ずつける

特にスポット的な放射線シールドの金属材には必ず電流リークパスをつける

帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備

衛星モデル作成

材料物性テーブル設定

宇宙環境パラメータ設定

Converter

転送ディレクトリ 解析データファイル

転送

解析ディレクトリ生成 解析結果 進行状況チェック ファイル操作

MUSCAT 解析エンジン

解析結果 表示

パラメトリックラン

オプション 解析

大型パネル実験(35mtimes11m) クーポンパネル実験(26cmtimes16cm)

環境模擬試験 環境模擬試験

MUSCATに使用する物性値設計標準制定のための知見などを得ることを目的に軌道上の宇宙環境を模擬した地上試験を行っている これらの試験では放電の発生頻度や電圧閾値放電発生による太陽電池パネルや搭載機器への影響を検証している

放射線計測装置の原理

bull その粒子が物質を通過する際のエネルギー損出率が粒子の電荷(原子番号)Zの二乗に比例すること(Bethe-Blochの式)を利用する

S2

E

ΔE Ersquo

S1 S3

  • 宇宙機の設計のための宇宙環境
  • 話の流れ
  • 話の流れ
  • TEDA(技術データ取得装置)(国産部品の宇宙環境での実証の必要性)
  • ETS-VTEDA(技術データ取得装置)誕生前の部品の宇宙実証の背景
  • スライド番号 6
  • スライド番号 7
  • スライド番号 8
  • スライド番号 9
  • 図6太陽黒点数と静止軌道電子 (>04MeV ) Flux の変動 (ETS-V搭載DOMによる観測)
  • スライド番号 11
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの開発(理研東大と共同で宇宙環境計測の充実)
  • ETS-VI(きく6号)打ち上がったがGEOに行かずGTOに留まる
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの成果
  • スライド番号 15
  • スライド番号 16
  • スライド番号 17
  • ADEOS搭載TEDA(世界2番目の異常宇宙線ACR)
  • BBND (ボナー球中性子検出器)
  • スライド番号 20
  • ISS搭載BBNDの成果(約8か月)
  • スライド番号 22
  • MDS-1搭載放射線吸収線量モニタ(SDOM)
  • 放射線帯変動モデルの開発MDS-1 065 MeV 電子フラックス
  • 変動パラメータの選択 (1 cycle solar activity)
  • 変動パラメータ- Tavg の定義-
  • 065MeV 電子 L値-Tavg マップ
  • 13MeV 陽子 L値-Tavg マップ
  • 電子観測とMDS-1モデルの比較
  • 放射線帯フラックスピークの変動
  • 陽子観測とモデルの比較
  • 電子(035~078MeV) 1日の変動予測GOSAT軌道
  • 電子(035~078MeV) 変動の信頼度水準(1日)GOSAT軌道
  • MDS-1 model と AE-8 modelとの比較1日
  • 話の流れ
  • 2003年10月 みどり号の全損事故(複合現象)
  • 衛星帯電の基本式
  • 内部帯電
  • パドルでの帯電放電メカニズム
  • スライド番号 40
  • スライド番号 41
  • スライド番号 42
  • データ中継技術衛星DRTS (こだま)の不具合
  • DRTS ESA スパイクノイズと電子フルエンスの比較(赤の丸が異常検知)
  • 不具合が宇宙環境によるものであるか判断する際のポイント
  • 話の流れ
  • 宇宙天気のリスク-宇宙環境によるシステムへの影響 -
  • NASAの報告-GNampCに注目-
  • NASAの報告(続き)
  • 宇宙環境を原因とする不具合の割合-JAXAの場合-
  • 不具合発生部位の割合 
  • Satellite News Digest -静止軌道不具合-
  • 太陽活動と静止軌道衛星不具合例
  • スライド番号 54
  • スライド番号 55
  • スライド番号 56
  • 衛星開発段階における対策
  • 運用における対応
  • 話の流れ
  • スライド番号 60
  • スライド番号 61
  • まとめ(その1)
  • まとめ(その2)
  • 宇宙環境グループは宇宙ステーションと衛星プロジェクトの安全な遂行に貢献しています
  • 補足資料
  • 不具合原因の推移
  • 何故不具合は減らないか
  • 放射線による影響の概要
  • 耐放射線設計手順
  • 各軌道における放射線環境
  • 放射線による部品材料の影響
  • トータルドーズ効果
  • シングルイベント効果
  • シングルイベントメカニズム-陽子と重イオンの違い-
  • エラー発生率の計算
  • 線エネルギー付与(LET)(linear energy transfer)
  • 南大西洋異常(SAA)
  • Single Event Lachup
  • シングルイベントと陽子分布
  • NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)
  • 低軌道での電子フラックスと不具合の発生場所
  • 南大西洋異常(SAA)と極の角
  • スライド番号 83
  • Carrington Flare
  • 放射線対策
  • スライド番号 86
  • スライド番号 87
  • 帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備
  • スライド番号 89
  • 放射線計測装置の原理
Page 62: 宇宙機の設計のための宇宙環境の方針から国産部品開発(42品種)が実施された。 . 半導体電子部品は耐放射線性を加味して、人工衛星(特に

まとめ(その1)

衛星不具合の主な原因は帯電放電シングルイベント放射線損傷である今後デブリ環境が重要になると予測される

静止軌道では商用衛星が多く運用されており宇宙環境の変動把握は重要この領域で運用する衛星が気を付けなければいけない環境として

1太陽フレアに伴う高エネルギー粒子 2太陽活動下降期による静止軌道電子の増加 3磁気嵐に伴う磁気圏尾部から注入する粒子 などがあげられる

まとめ(その2)

不具合軽減の取り組み bull 開発時は宇宙環境条件(トータルフラックス及び最悪条

件)を明確にし設計(冗長系柔軟性の設計ディレーティング及び運用モード寿命について研究)試験の充実検証の充実を図る

bull 運用段階に入ったならば宇宙環境を監視し警報等で故障を防ぐ

予測課題 bull 太陽フレアに伴う高エネルギー粒子発生後フラックス

ピーク値の推定

bull 衛星により不具合の起きる閾値は異なるが閾値をこえる急激な電子フラックスの増加と継続時間の予測

bull 局所的な磁気嵐に伴う磁気圏尾部から注入する粒子

宇宙環境グループは宇宙ステーションと衛星プロジェクトの安全な遂行に貢献しています

ご静聴ありがとうございました

補足資料

不具合原因の推移 bull 宇宙天気を大きく左右する要因の1つとして約11年の太陽活動変化が挙げられる

bull 太陽活動下降時期(太陽変動CME)と極大期(フレアCME)に衛星で不具合が増加するそれにより不具合原因の割合が変わる

-Koons et al The Impact of the Space Environment on Space Systems Aerospace Corp report no TR-99(1670)-1 20 July 1999 -2009 preliminary study (unpublished)

何故不具合は減らないか

bull 部品 放射線に対する感受性が高くなっている bull 微細化が進み同時にフォールトするノードが増え同時にエ

ラーとなる論理ノードやメモリセルが増加する微細化によってメモリセルは小さくなるので記憶容量当たりでみるとエラーの発生率は下がるしかし半導体チップの記憶容量やゲート数が増えるので半導体チップ当たりのエラー発生率は微細化とともに上昇するまた蓄積電荷が小さくなり感受性が高くなってきている

bull システム 大型化大電力化運用長期化 bull 1990年代末以降静止衛星の電力が10kWレベルになったしか

し設計検証技術データ蓄積が遅れている改善されつつあると推測される

放射線による影響の概要

粒子 エネルギー又はLET

代表的な影響

陽子 100keV-1MeV 1-10MeV 10-100MeV gt50MeV

表面損傷 表面材料と太陽電池の損傷 放射線損傷(電離非電離損傷の両方)センサーへのノイズ シングルイベント効果

電子 10-100keV gt100keV gt1MeV

表面帯電 深部帯電現象(deep-dielectric charging)センサーへのノイズ太陽電池の損傷 放射線損傷(電離)

重イオン gt1MeV-cm2mg シングルイベント効果

注エネルギー及びLETは個々の部品等により異なりますあくまでも目安です

耐放射線設計手順

軌道条件

ミッション期間

環境条件設定

トータルドーズの予測

1MeV電子換算被曝算出

NIELの換算

LETフルエンス算出

陽子フルエンス算出

対  策  の  検  討

対  策  の  検  討

対  策  の  検  討

放射線による劣化率予測

劣化率予測 特性予測

耐性データ

放射線による劣化率予測

耐性データ

劣化率予測アレイ出力劣化予測

感受性データ

シングルイベント発生率予測 致命度解析

衛星内質量分布

(2)

部品材料の選定

他の要因による劣化率予測

(2)(2) (3)

回路設計等NO

OK

アレイ構造 セル選定

他の要因による劣化率予測 アレイ設計(2)

(2) (2) (2) (3)

衛星内質量分布 部品選定(2)

(2) (2)(3)

NO

OK

NO

OK

(1) 環境モデルマージを含む(2) 部品レベルの検討(3) アセンブリレベルでの検討(4) 設計マージン環境モデル   マージを含め大丈夫か

トータルドーズ

太陽電池アレイの劣化

シングルイベント効果

回路設計

補足放射線太陽宇宙線銀河宇宙線

NEILを用いたダメージファクターの算出

対  策  の  検  討

放射線による劣化率予測

劣化率予測 特性予測

耐性データ

(2)

部品材料の選定

他の要因による劣化率予測

(2)(2) (3)

回路設計等NO

OK

衛星内質量分布 半導体デバイスの変位損傷

(1)

(4)

(4)

(4)

(4)

各軌道における放射線環境

1E+10

1E+11

1E+12

1E+13

1E+14

1E+15

1E+16

1E+17

1E+18

1E+19

1E+20

001 010 100 1000

捕捉

電子

の積

分フ

ルエ

ンス

[m

2 ]

エネルギー[MeV]

各軌道における電子捕捉積分フルエンス(3年間)

LEO

EOS GEO

MEO

GTO

GEO 軌道傾斜角 0deg 高度36000km GTO 軌道傾斜角 18deg 高度 360km~36000km MEO 軌道傾斜角 51deg 高度 10000km EOS 軌道傾斜角 98deg 高度705km LEO 軌道傾斜角 29deg 高度 600km

1E+12

1E+13

1E+14

1E+15

1E+16

1E+17

1E+18

1E+19

1E+20

01 10 100 1000

捕捉

陽子の

積分フルエン

ス[

m2 ]

エネルギー[MeV]

各軌道における捕捉陽子積分フルエンス(3年間)

MEO

GTO

GEO

EOS LEO

放射線による部品材料の影響

総照射線量 (TIDTotal Ionising Dose )

電離損傷

バイポーラTrの電流増幅率の低下リーク電流の増大

γ線で評価

トータルドーズ効果

変位損傷 (DDDisplacement Damage )または 非イオン化エネルギー損失 (NIELNon-Ionising Energy

Loss )

変位損傷(格子欠陥の生成)

電荷輸送効率の低下 (CCD)太陽電池の効率低下等

電子陽子により評価

シングルイベント効果

1個の荷電粒子の入射により発生する誤動作

ソフト(Latch-Up Burnout) エラー又は ソフト (Upset) エラー

陽子及び重イオンで評価

トータルドーズ効果

+ - + + - + - + - - + + + + -

ゲート酸化膜

電離

格子欠陥

正電荷捕獲

+ 正孔 - 電子

電極

(Silicon oxidenitride)

荷電粒子

反跳原子

ゲート絶縁膜中に電荷が蓄積することによるMOSトランジスタのしきい電圧(MOSトランジスタがオフからオンに変化するゲート電圧)の変化をもたらすただ

し最近の最先端チップはゲート絶縁膜がきわめて薄くなっているこのためゲート絶縁膜よりもフィールド絶縁膜(隣接するトランジスタを電気的に分離する絶縁膜)での電荷蓄積が相対的には大きな問題になってきている」

シングルイベント効果

メモリセルはNチャンネルとPチャンネルMOSFETより構成されメモリ情報は回路ノード12の電位の

高低により記録している空乏層の広がっているPN接合12の領域に

重イオンが入射した場合電荷の発生と空乏層内への少数キャリアの収集が起こるこの収集電荷量が回路の耐量を越えた場合(c)に示すように反転が起こる(ソフトエラー)一方pウエル-N基板接

合の空乏層内に電荷収集量が起こりえる耐性を越えると寄生的に存在するPNPNサイリスタ構造がオ

ンし電源と基板間に大電流が流れる状態が生じる(ラッチアップ)

シングルイベントメカニズム -陽子と重イオンの違い-

エラー発生率の計算

線エネルギー付与(LET) (linear energy transfer)

電離性放射線が物質中を通過する際飛程の単位長さ当りに平均して失うエネルギーをいう各種の放射線のうちX線γ線はLETが小さいので低LETといいα線中性子線その他重イオン核分裂破片のLETは大きいので高LETという MeVμmMeV(gcm2)やMeV(mgcm2)で表される

南大西洋異常(SAA) bull 地球の自転軸と磁気軸のずれ

darr bull 放射線帯が自転軸に対して非

対称

bull 南大西洋上空では放射線帯内帯が低高度に落ちてきているこの領域を南大西洋異常域(SAA South Atlantic Anomaly)と呼ぶ

bull 地球観測衛星ではSAAで放射線帯陽子の影響を受ける

Single Event Lachup

シングルイベントと陽子分布

MOS-1衛星(高度909km軌道傾斜角99度)で発生したシングルイベントと 陽子30MeV以上の等高線マップを重ね合わせた結果

NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)

bull 入射粒子が電離によらず与える損傷非イオン化損失

低軌道での電子フラックスと 不具合の発生場所

南大西洋異常(SAA)と極の角

高度800kmでの電子フラックス図極の角(polar horn)とSAAを示す

太陽粒子線 bull 太陽高エネルギー粒子線(SPE Solar Proton Events)は太陽フレア とコロナガス噴出 (CMECoronal Mass Ejections )により引き起こされる bull フレアのスペクトルは可変であるためあるエネルギー域における最悪状態イベントは必ずしも別のエネルギー域における最悪条件ではない 1972年8月のイベント 10~70MeVの粒子が最も多かった 1989年10のイベント 1972年8月のイベントに比べ低エネルギー領域 高エネルギー領域が明らかに激しかった

フルエンス 105 to 1011 cm-2

変動期間 1日から数日

ldquoBastiliardquo Solar Event 14 July 2000

Carrington Flare

84

(LW Townseed) Carrington Flare(1859年) Carrington Flare による30MeV以上トータルFluenceを118times109cm-2で規格化 ~1989年フレアの約13倍(シングルイベントの評価で使用) ~1991年フレアの約9倍 2012年7月23日にキャリントンイベントとほぼ同等の爆発現象が太陽あるいは太陽の周りで起きていたということがNASAの太陽観測衛星「STEREO」の解析から発表された

放射線対策 bull 放射線シールドを付加し放射線を減衰させる

bull 放射線耐性の強い部品(SOI(Silicon On Insulator)技術による耐放射線部品)材料に変更する

bull 放射線による損傷を吸収するために回路または構造上のマージンを持たせる bull ソフト的なエラーに対しては エラー検出訂正機能や多数決

機能等でソフト的エラーが起きてもシステムが機能するようにしたフォールトトレラント機能を付けて対処する ICのハード的故障に対しては ラッチアップ耐性の強い部品を選定するしかないが 電流制限回路を付ける対策も採られる パワーMOSFETに対しては部品選定 電源電圧を規格値の半分以下に落とす等の対策を採る

SOI技術

表面帯電への対策例

表面の物体間を導線で結線する

太陽電池のカバーガラスを導電性被膜付き(酸化インジウムITO)にする

熱制御材表面にITOを被覆する

熱制御材は高誘電率のテフロンの使用を避け 高伝導度耐環境性に優れたブラックカプトンを使用

イオンエンジンの中和器で能動帯電制御

内部帯電への対策例

アルミで3mm厚さに相当するシールドで囲む(Faraday Cage)

テフロンやカプトンなどの誘電体材料の内部での使用量を最小限に押さえる

回路基板やコンフォーマルコーティングは誘電体なので電流リークパス(1012Ωcmまたは1012Ωcm2

程度)を必ずつける

特にスポット的な放射線シールドの金属材には必ず電流リークパスをつける

帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備

衛星モデル作成

材料物性テーブル設定

宇宙環境パラメータ設定

Converter

転送ディレクトリ 解析データファイル

転送

解析ディレクトリ生成 解析結果 進行状況チェック ファイル操作

MUSCAT 解析エンジン

解析結果 表示

パラメトリックラン

オプション 解析

大型パネル実験(35mtimes11m) クーポンパネル実験(26cmtimes16cm)

環境模擬試験 環境模擬試験

MUSCATに使用する物性値設計標準制定のための知見などを得ることを目的に軌道上の宇宙環境を模擬した地上試験を行っている これらの試験では放電の発生頻度や電圧閾値放電発生による太陽電池パネルや搭載機器への影響を検証している

放射線計測装置の原理

bull その粒子が物質を通過する際のエネルギー損出率が粒子の電荷(原子番号)Zの二乗に比例すること(Bethe-Blochの式)を利用する

S2

E

ΔE Ersquo

S1 S3

  • 宇宙機の設計のための宇宙環境
  • 話の流れ
  • 話の流れ
  • TEDA(技術データ取得装置)(国産部品の宇宙環境での実証の必要性)
  • ETS-VTEDA(技術データ取得装置)誕生前の部品の宇宙実証の背景
  • スライド番号 6
  • スライド番号 7
  • スライド番号 8
  • スライド番号 9
  • 図6太陽黒点数と静止軌道電子 (>04MeV ) Flux の変動 (ETS-V搭載DOMによる観測)
  • スライド番号 11
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの開発(理研東大と共同で宇宙環境計測の充実)
  • ETS-VI(きく6号)打ち上がったがGEOに行かずGTOに留まる
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの成果
  • スライド番号 15
  • スライド番号 16
  • スライド番号 17
  • ADEOS搭載TEDA(世界2番目の異常宇宙線ACR)
  • BBND (ボナー球中性子検出器)
  • スライド番号 20
  • ISS搭載BBNDの成果(約8か月)
  • スライド番号 22
  • MDS-1搭載放射線吸収線量モニタ(SDOM)
  • 放射線帯変動モデルの開発MDS-1 065 MeV 電子フラックス
  • 変動パラメータの選択 (1 cycle solar activity)
  • 変動パラメータ- Tavg の定義-
  • 065MeV 電子 L値-Tavg マップ
  • 13MeV 陽子 L値-Tavg マップ
  • 電子観測とMDS-1モデルの比較
  • 放射線帯フラックスピークの変動
  • 陽子観測とモデルの比較
  • 電子(035~078MeV) 1日の変動予測GOSAT軌道
  • 電子(035~078MeV) 変動の信頼度水準(1日)GOSAT軌道
  • MDS-1 model と AE-8 modelとの比較1日
  • 話の流れ
  • 2003年10月 みどり号の全損事故(複合現象)
  • 衛星帯電の基本式
  • 内部帯電
  • パドルでの帯電放電メカニズム
  • スライド番号 40
  • スライド番号 41
  • スライド番号 42
  • データ中継技術衛星DRTS (こだま)の不具合
  • DRTS ESA スパイクノイズと電子フルエンスの比較(赤の丸が異常検知)
  • 不具合が宇宙環境によるものであるか判断する際のポイント
  • 話の流れ
  • 宇宙天気のリスク-宇宙環境によるシステムへの影響 -
  • NASAの報告-GNampCに注目-
  • NASAの報告(続き)
  • 宇宙環境を原因とする不具合の割合-JAXAの場合-
  • 不具合発生部位の割合 
  • Satellite News Digest -静止軌道不具合-
  • 太陽活動と静止軌道衛星不具合例
  • スライド番号 54
  • スライド番号 55
  • スライド番号 56
  • 衛星開発段階における対策
  • 運用における対応
  • 話の流れ
  • スライド番号 60
  • スライド番号 61
  • まとめ(その1)
  • まとめ(その2)
  • 宇宙環境グループは宇宙ステーションと衛星プロジェクトの安全な遂行に貢献しています
  • 補足資料
  • 不具合原因の推移
  • 何故不具合は減らないか
  • 放射線による影響の概要
  • 耐放射線設計手順
  • 各軌道における放射線環境
  • 放射線による部品材料の影響
  • トータルドーズ効果
  • シングルイベント効果
  • シングルイベントメカニズム-陽子と重イオンの違い-
  • エラー発生率の計算
  • 線エネルギー付与(LET)(linear energy transfer)
  • 南大西洋異常(SAA)
  • Single Event Lachup
  • シングルイベントと陽子分布
  • NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)
  • 低軌道での電子フラックスと不具合の発生場所
  • 南大西洋異常(SAA)と極の角
  • スライド番号 83
  • Carrington Flare
  • 放射線対策
  • スライド番号 86
  • スライド番号 87
  • 帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備
  • スライド番号 89
  • 放射線計測装置の原理
Page 63: 宇宙機の設計のための宇宙環境の方針から国産部品開発(42品種)が実施された。 . 半導体電子部品は耐放射線性を加味して、人工衛星(特に

まとめ(その2)

不具合軽減の取り組み bull 開発時は宇宙環境条件(トータルフラックス及び最悪条

件)を明確にし設計(冗長系柔軟性の設計ディレーティング及び運用モード寿命について研究)試験の充実検証の充実を図る

bull 運用段階に入ったならば宇宙環境を監視し警報等で故障を防ぐ

予測課題 bull 太陽フレアに伴う高エネルギー粒子発生後フラックス

ピーク値の推定

bull 衛星により不具合の起きる閾値は異なるが閾値をこえる急激な電子フラックスの増加と継続時間の予測

bull 局所的な磁気嵐に伴う磁気圏尾部から注入する粒子

宇宙環境グループは宇宙ステーションと衛星プロジェクトの安全な遂行に貢献しています

ご静聴ありがとうございました

補足資料

不具合原因の推移 bull 宇宙天気を大きく左右する要因の1つとして約11年の太陽活動変化が挙げられる

bull 太陽活動下降時期(太陽変動CME)と極大期(フレアCME)に衛星で不具合が増加するそれにより不具合原因の割合が変わる

-Koons et al The Impact of the Space Environment on Space Systems Aerospace Corp report no TR-99(1670)-1 20 July 1999 -2009 preliminary study (unpublished)

何故不具合は減らないか

bull 部品 放射線に対する感受性が高くなっている bull 微細化が進み同時にフォールトするノードが増え同時にエ

ラーとなる論理ノードやメモリセルが増加する微細化によってメモリセルは小さくなるので記憶容量当たりでみるとエラーの発生率は下がるしかし半導体チップの記憶容量やゲート数が増えるので半導体チップ当たりのエラー発生率は微細化とともに上昇するまた蓄積電荷が小さくなり感受性が高くなってきている

bull システム 大型化大電力化運用長期化 bull 1990年代末以降静止衛星の電力が10kWレベルになったしか

し設計検証技術データ蓄積が遅れている改善されつつあると推測される

放射線による影響の概要

粒子 エネルギー又はLET

代表的な影響

陽子 100keV-1MeV 1-10MeV 10-100MeV gt50MeV

表面損傷 表面材料と太陽電池の損傷 放射線損傷(電離非電離損傷の両方)センサーへのノイズ シングルイベント効果

電子 10-100keV gt100keV gt1MeV

表面帯電 深部帯電現象(deep-dielectric charging)センサーへのノイズ太陽電池の損傷 放射線損傷(電離)

重イオン gt1MeV-cm2mg シングルイベント効果

注エネルギー及びLETは個々の部品等により異なりますあくまでも目安です

耐放射線設計手順

軌道条件

ミッション期間

環境条件設定

トータルドーズの予測

1MeV電子換算被曝算出

NIELの換算

LETフルエンス算出

陽子フルエンス算出

対  策  の  検  討

対  策  の  検  討

対  策  の  検  討

放射線による劣化率予測

劣化率予測 特性予測

耐性データ

放射線による劣化率予測

耐性データ

劣化率予測アレイ出力劣化予測

感受性データ

シングルイベント発生率予測 致命度解析

衛星内質量分布

(2)

部品材料の選定

他の要因による劣化率予測

(2)(2) (3)

回路設計等NO

OK

アレイ構造 セル選定

他の要因による劣化率予測 アレイ設計(2)

(2) (2) (2) (3)

衛星内質量分布 部品選定(2)

(2) (2)(3)

NO

OK

NO

OK

(1) 環境モデルマージを含む(2) 部品レベルの検討(3) アセンブリレベルでの検討(4) 設計マージン環境モデル   マージを含め大丈夫か

トータルドーズ

太陽電池アレイの劣化

シングルイベント効果

回路設計

補足放射線太陽宇宙線銀河宇宙線

NEILを用いたダメージファクターの算出

対  策  の  検  討

放射線による劣化率予測

劣化率予測 特性予測

耐性データ

(2)

部品材料の選定

他の要因による劣化率予測

(2)(2) (3)

回路設計等NO

OK

衛星内質量分布 半導体デバイスの変位損傷

(1)

(4)

(4)

(4)

(4)

各軌道における放射線環境

1E+10

1E+11

1E+12

1E+13

1E+14

1E+15

1E+16

1E+17

1E+18

1E+19

1E+20

001 010 100 1000

捕捉

電子

の積

分フ

ルエ

ンス

[m

2 ]

エネルギー[MeV]

各軌道における電子捕捉積分フルエンス(3年間)

LEO

EOS GEO

MEO

GTO

GEO 軌道傾斜角 0deg 高度36000km GTO 軌道傾斜角 18deg 高度 360km~36000km MEO 軌道傾斜角 51deg 高度 10000km EOS 軌道傾斜角 98deg 高度705km LEO 軌道傾斜角 29deg 高度 600km

1E+12

1E+13

1E+14

1E+15

1E+16

1E+17

1E+18

1E+19

1E+20

01 10 100 1000

捕捉

陽子の

積分フルエン

ス[

m2 ]

エネルギー[MeV]

各軌道における捕捉陽子積分フルエンス(3年間)

MEO

GTO

GEO

EOS LEO

放射線による部品材料の影響

総照射線量 (TIDTotal Ionising Dose )

電離損傷

バイポーラTrの電流増幅率の低下リーク電流の増大

γ線で評価

トータルドーズ効果

変位損傷 (DDDisplacement Damage )または 非イオン化エネルギー損失 (NIELNon-Ionising Energy

Loss )

変位損傷(格子欠陥の生成)

電荷輸送効率の低下 (CCD)太陽電池の効率低下等

電子陽子により評価

シングルイベント効果

1個の荷電粒子の入射により発生する誤動作

ソフト(Latch-Up Burnout) エラー又は ソフト (Upset) エラー

陽子及び重イオンで評価

トータルドーズ効果

+ - + + - + - + - - + + + + -

ゲート酸化膜

電離

格子欠陥

正電荷捕獲

+ 正孔 - 電子

電極

(Silicon oxidenitride)

荷電粒子

反跳原子

ゲート絶縁膜中に電荷が蓄積することによるMOSトランジスタのしきい電圧(MOSトランジスタがオフからオンに変化するゲート電圧)の変化をもたらすただ

し最近の最先端チップはゲート絶縁膜がきわめて薄くなっているこのためゲート絶縁膜よりもフィールド絶縁膜(隣接するトランジスタを電気的に分離する絶縁膜)での電荷蓄積が相対的には大きな問題になってきている」

シングルイベント効果

メモリセルはNチャンネルとPチャンネルMOSFETより構成されメモリ情報は回路ノード12の電位の

高低により記録している空乏層の広がっているPN接合12の領域に

重イオンが入射した場合電荷の発生と空乏層内への少数キャリアの収集が起こるこの収集電荷量が回路の耐量を越えた場合(c)に示すように反転が起こる(ソフトエラー)一方pウエル-N基板接

合の空乏層内に電荷収集量が起こりえる耐性を越えると寄生的に存在するPNPNサイリスタ構造がオ

ンし電源と基板間に大電流が流れる状態が生じる(ラッチアップ)

シングルイベントメカニズム -陽子と重イオンの違い-

エラー発生率の計算

線エネルギー付与(LET) (linear energy transfer)

電離性放射線が物質中を通過する際飛程の単位長さ当りに平均して失うエネルギーをいう各種の放射線のうちX線γ線はLETが小さいので低LETといいα線中性子線その他重イオン核分裂破片のLETは大きいので高LETという MeVμmMeV(gcm2)やMeV(mgcm2)で表される

南大西洋異常(SAA) bull 地球の自転軸と磁気軸のずれ

darr bull 放射線帯が自転軸に対して非

対称

bull 南大西洋上空では放射線帯内帯が低高度に落ちてきているこの領域を南大西洋異常域(SAA South Atlantic Anomaly)と呼ぶ

bull 地球観測衛星ではSAAで放射線帯陽子の影響を受ける

Single Event Lachup

シングルイベントと陽子分布

MOS-1衛星(高度909km軌道傾斜角99度)で発生したシングルイベントと 陽子30MeV以上の等高線マップを重ね合わせた結果

NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)

bull 入射粒子が電離によらず与える損傷非イオン化損失

低軌道での電子フラックスと 不具合の発生場所

南大西洋異常(SAA)と極の角

高度800kmでの電子フラックス図極の角(polar horn)とSAAを示す

太陽粒子線 bull 太陽高エネルギー粒子線(SPE Solar Proton Events)は太陽フレア とコロナガス噴出 (CMECoronal Mass Ejections )により引き起こされる bull フレアのスペクトルは可変であるためあるエネルギー域における最悪状態イベントは必ずしも別のエネルギー域における最悪条件ではない 1972年8月のイベント 10~70MeVの粒子が最も多かった 1989年10のイベント 1972年8月のイベントに比べ低エネルギー領域 高エネルギー領域が明らかに激しかった

フルエンス 105 to 1011 cm-2

変動期間 1日から数日

ldquoBastiliardquo Solar Event 14 July 2000

Carrington Flare

84

(LW Townseed) Carrington Flare(1859年) Carrington Flare による30MeV以上トータルFluenceを118times109cm-2で規格化 ~1989年フレアの約13倍(シングルイベントの評価で使用) ~1991年フレアの約9倍 2012年7月23日にキャリントンイベントとほぼ同等の爆発現象が太陽あるいは太陽の周りで起きていたということがNASAの太陽観測衛星「STEREO」の解析から発表された

放射線対策 bull 放射線シールドを付加し放射線を減衰させる

bull 放射線耐性の強い部品(SOI(Silicon On Insulator)技術による耐放射線部品)材料に変更する

bull 放射線による損傷を吸収するために回路または構造上のマージンを持たせる bull ソフト的なエラーに対しては エラー検出訂正機能や多数決

機能等でソフト的エラーが起きてもシステムが機能するようにしたフォールトトレラント機能を付けて対処する ICのハード的故障に対しては ラッチアップ耐性の強い部品を選定するしかないが 電流制限回路を付ける対策も採られる パワーMOSFETに対しては部品選定 電源電圧を規格値の半分以下に落とす等の対策を採る

SOI技術

表面帯電への対策例

表面の物体間を導線で結線する

太陽電池のカバーガラスを導電性被膜付き(酸化インジウムITO)にする

熱制御材表面にITOを被覆する

熱制御材は高誘電率のテフロンの使用を避け 高伝導度耐環境性に優れたブラックカプトンを使用

イオンエンジンの中和器で能動帯電制御

内部帯電への対策例

アルミで3mm厚さに相当するシールドで囲む(Faraday Cage)

テフロンやカプトンなどの誘電体材料の内部での使用量を最小限に押さえる

回路基板やコンフォーマルコーティングは誘電体なので電流リークパス(1012Ωcmまたは1012Ωcm2

程度)を必ずつける

特にスポット的な放射線シールドの金属材には必ず電流リークパスをつける

帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備

衛星モデル作成

材料物性テーブル設定

宇宙環境パラメータ設定

Converter

転送ディレクトリ 解析データファイル

転送

解析ディレクトリ生成 解析結果 進行状況チェック ファイル操作

MUSCAT 解析エンジン

解析結果 表示

パラメトリックラン

オプション 解析

大型パネル実験(35mtimes11m) クーポンパネル実験(26cmtimes16cm)

環境模擬試験 環境模擬試験

MUSCATに使用する物性値設計標準制定のための知見などを得ることを目的に軌道上の宇宙環境を模擬した地上試験を行っている これらの試験では放電の発生頻度や電圧閾値放電発生による太陽電池パネルや搭載機器への影響を検証している

放射線計測装置の原理

bull その粒子が物質を通過する際のエネルギー損出率が粒子の電荷(原子番号)Zの二乗に比例すること(Bethe-Blochの式)を利用する

S2

E

ΔE Ersquo

S1 S3

  • 宇宙機の設計のための宇宙環境
  • 話の流れ
  • 話の流れ
  • TEDA(技術データ取得装置)(国産部品の宇宙環境での実証の必要性)
  • ETS-VTEDA(技術データ取得装置)誕生前の部品の宇宙実証の背景
  • スライド番号 6
  • スライド番号 7
  • スライド番号 8
  • スライド番号 9
  • 図6太陽黒点数と静止軌道電子 (>04MeV ) Flux の変動 (ETS-V搭載DOMによる観測)
  • スライド番号 11
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの開発(理研東大と共同で宇宙環境計測の充実)
  • ETS-VI(きく6号)打ち上がったがGEOに行かずGTOに留まる
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの成果
  • スライド番号 15
  • スライド番号 16
  • スライド番号 17
  • ADEOS搭載TEDA(世界2番目の異常宇宙線ACR)
  • BBND (ボナー球中性子検出器)
  • スライド番号 20
  • ISS搭載BBNDの成果(約8か月)
  • スライド番号 22
  • MDS-1搭載放射線吸収線量モニタ(SDOM)
  • 放射線帯変動モデルの開発MDS-1 065 MeV 電子フラックス
  • 変動パラメータの選択 (1 cycle solar activity)
  • 変動パラメータ- Tavg の定義-
  • 065MeV 電子 L値-Tavg マップ
  • 13MeV 陽子 L値-Tavg マップ
  • 電子観測とMDS-1モデルの比較
  • 放射線帯フラックスピークの変動
  • 陽子観測とモデルの比較
  • 電子(035~078MeV) 1日の変動予測GOSAT軌道
  • 電子(035~078MeV) 変動の信頼度水準(1日)GOSAT軌道
  • MDS-1 model と AE-8 modelとの比較1日
  • 話の流れ
  • 2003年10月 みどり号の全損事故(複合現象)
  • 衛星帯電の基本式
  • 内部帯電
  • パドルでの帯電放電メカニズム
  • スライド番号 40
  • スライド番号 41
  • スライド番号 42
  • データ中継技術衛星DRTS (こだま)の不具合
  • DRTS ESA スパイクノイズと電子フルエンスの比較(赤の丸が異常検知)
  • 不具合が宇宙環境によるものであるか判断する際のポイント
  • 話の流れ
  • 宇宙天気のリスク-宇宙環境によるシステムへの影響 -
  • NASAの報告-GNampCに注目-
  • NASAの報告(続き)
  • 宇宙環境を原因とする不具合の割合-JAXAの場合-
  • 不具合発生部位の割合 
  • Satellite News Digest -静止軌道不具合-
  • 太陽活動と静止軌道衛星不具合例
  • スライド番号 54
  • スライド番号 55
  • スライド番号 56
  • 衛星開発段階における対策
  • 運用における対応
  • 話の流れ
  • スライド番号 60
  • スライド番号 61
  • まとめ(その1)
  • まとめ(その2)
  • 宇宙環境グループは宇宙ステーションと衛星プロジェクトの安全な遂行に貢献しています
  • 補足資料
  • 不具合原因の推移
  • 何故不具合は減らないか
  • 放射線による影響の概要
  • 耐放射線設計手順
  • 各軌道における放射線環境
  • 放射線による部品材料の影響
  • トータルドーズ効果
  • シングルイベント効果
  • シングルイベントメカニズム-陽子と重イオンの違い-
  • エラー発生率の計算
  • 線エネルギー付与(LET)(linear energy transfer)
  • 南大西洋異常(SAA)
  • Single Event Lachup
  • シングルイベントと陽子分布
  • NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)
  • 低軌道での電子フラックスと不具合の発生場所
  • 南大西洋異常(SAA)と極の角
  • スライド番号 83
  • Carrington Flare
  • 放射線対策
  • スライド番号 86
  • スライド番号 87
  • 帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備
  • スライド番号 89
  • 放射線計測装置の原理
Page 64: 宇宙機の設計のための宇宙環境の方針から国産部品開発(42品種)が実施された。 . 半導体電子部品は耐放射線性を加味して、人工衛星(特に

宇宙環境グループは宇宙ステーションと衛星プロジェクトの安全な遂行に貢献しています

ご静聴ありがとうございました

補足資料

不具合原因の推移 bull 宇宙天気を大きく左右する要因の1つとして約11年の太陽活動変化が挙げられる

bull 太陽活動下降時期(太陽変動CME)と極大期(フレアCME)に衛星で不具合が増加するそれにより不具合原因の割合が変わる

-Koons et al The Impact of the Space Environment on Space Systems Aerospace Corp report no TR-99(1670)-1 20 July 1999 -2009 preliminary study (unpublished)

何故不具合は減らないか

bull 部品 放射線に対する感受性が高くなっている bull 微細化が進み同時にフォールトするノードが増え同時にエ

ラーとなる論理ノードやメモリセルが増加する微細化によってメモリセルは小さくなるので記憶容量当たりでみるとエラーの発生率は下がるしかし半導体チップの記憶容量やゲート数が増えるので半導体チップ当たりのエラー発生率は微細化とともに上昇するまた蓄積電荷が小さくなり感受性が高くなってきている

bull システム 大型化大電力化運用長期化 bull 1990年代末以降静止衛星の電力が10kWレベルになったしか

し設計検証技術データ蓄積が遅れている改善されつつあると推測される

放射線による影響の概要

粒子 エネルギー又はLET

代表的な影響

陽子 100keV-1MeV 1-10MeV 10-100MeV gt50MeV

表面損傷 表面材料と太陽電池の損傷 放射線損傷(電離非電離損傷の両方)センサーへのノイズ シングルイベント効果

電子 10-100keV gt100keV gt1MeV

表面帯電 深部帯電現象(deep-dielectric charging)センサーへのノイズ太陽電池の損傷 放射線損傷(電離)

重イオン gt1MeV-cm2mg シングルイベント効果

注エネルギー及びLETは個々の部品等により異なりますあくまでも目安です

耐放射線設計手順

軌道条件

ミッション期間

環境条件設定

トータルドーズの予測

1MeV電子換算被曝算出

NIELの換算

LETフルエンス算出

陽子フルエンス算出

対  策  の  検  討

対  策  の  検  討

対  策  の  検  討

放射線による劣化率予測

劣化率予測 特性予測

耐性データ

放射線による劣化率予測

耐性データ

劣化率予測アレイ出力劣化予測

感受性データ

シングルイベント発生率予測 致命度解析

衛星内質量分布

(2)

部品材料の選定

他の要因による劣化率予測

(2)(2) (3)

回路設計等NO

OK

アレイ構造 セル選定

他の要因による劣化率予測 アレイ設計(2)

(2) (2) (2) (3)

衛星内質量分布 部品選定(2)

(2) (2)(3)

NO

OK

NO

OK

(1) 環境モデルマージを含む(2) 部品レベルの検討(3) アセンブリレベルでの検討(4) 設計マージン環境モデル   マージを含め大丈夫か

トータルドーズ

太陽電池アレイの劣化

シングルイベント効果

回路設計

補足放射線太陽宇宙線銀河宇宙線

NEILを用いたダメージファクターの算出

対  策  の  検  討

放射線による劣化率予測

劣化率予測 特性予測

耐性データ

(2)

部品材料の選定

他の要因による劣化率予測

(2)(2) (3)

回路設計等NO

OK

衛星内質量分布 半導体デバイスの変位損傷

(1)

(4)

(4)

(4)

(4)

各軌道における放射線環境

1E+10

1E+11

1E+12

1E+13

1E+14

1E+15

1E+16

1E+17

1E+18

1E+19

1E+20

001 010 100 1000

捕捉

電子

の積

分フ

ルエ

ンス

[m

2 ]

エネルギー[MeV]

各軌道における電子捕捉積分フルエンス(3年間)

LEO

EOS GEO

MEO

GTO

GEO 軌道傾斜角 0deg 高度36000km GTO 軌道傾斜角 18deg 高度 360km~36000km MEO 軌道傾斜角 51deg 高度 10000km EOS 軌道傾斜角 98deg 高度705km LEO 軌道傾斜角 29deg 高度 600km

1E+12

1E+13

1E+14

1E+15

1E+16

1E+17

1E+18

1E+19

1E+20

01 10 100 1000

捕捉

陽子の

積分フルエン

ス[

m2 ]

エネルギー[MeV]

各軌道における捕捉陽子積分フルエンス(3年間)

MEO

GTO

GEO

EOS LEO

放射線による部品材料の影響

総照射線量 (TIDTotal Ionising Dose )

電離損傷

バイポーラTrの電流増幅率の低下リーク電流の増大

γ線で評価

トータルドーズ効果

変位損傷 (DDDisplacement Damage )または 非イオン化エネルギー損失 (NIELNon-Ionising Energy

Loss )

変位損傷(格子欠陥の生成)

電荷輸送効率の低下 (CCD)太陽電池の効率低下等

電子陽子により評価

シングルイベント効果

1個の荷電粒子の入射により発生する誤動作

ソフト(Latch-Up Burnout) エラー又は ソフト (Upset) エラー

陽子及び重イオンで評価

トータルドーズ効果

+ - + + - + - + - - + + + + -

ゲート酸化膜

電離

格子欠陥

正電荷捕獲

+ 正孔 - 電子

電極

(Silicon oxidenitride)

荷電粒子

反跳原子

ゲート絶縁膜中に電荷が蓄積することによるMOSトランジスタのしきい電圧(MOSトランジスタがオフからオンに変化するゲート電圧)の変化をもたらすただ

し最近の最先端チップはゲート絶縁膜がきわめて薄くなっているこのためゲート絶縁膜よりもフィールド絶縁膜(隣接するトランジスタを電気的に分離する絶縁膜)での電荷蓄積が相対的には大きな問題になってきている」

シングルイベント効果

メモリセルはNチャンネルとPチャンネルMOSFETより構成されメモリ情報は回路ノード12の電位の

高低により記録している空乏層の広がっているPN接合12の領域に

重イオンが入射した場合電荷の発生と空乏層内への少数キャリアの収集が起こるこの収集電荷量が回路の耐量を越えた場合(c)に示すように反転が起こる(ソフトエラー)一方pウエル-N基板接

合の空乏層内に電荷収集量が起こりえる耐性を越えると寄生的に存在するPNPNサイリスタ構造がオ

ンし電源と基板間に大電流が流れる状態が生じる(ラッチアップ)

シングルイベントメカニズム -陽子と重イオンの違い-

エラー発生率の計算

線エネルギー付与(LET) (linear energy transfer)

電離性放射線が物質中を通過する際飛程の単位長さ当りに平均して失うエネルギーをいう各種の放射線のうちX線γ線はLETが小さいので低LETといいα線中性子線その他重イオン核分裂破片のLETは大きいので高LETという MeVμmMeV(gcm2)やMeV(mgcm2)で表される

南大西洋異常(SAA) bull 地球の自転軸と磁気軸のずれ

darr bull 放射線帯が自転軸に対して非

対称

bull 南大西洋上空では放射線帯内帯が低高度に落ちてきているこの領域を南大西洋異常域(SAA South Atlantic Anomaly)と呼ぶ

bull 地球観測衛星ではSAAで放射線帯陽子の影響を受ける

Single Event Lachup

シングルイベントと陽子分布

MOS-1衛星(高度909km軌道傾斜角99度)で発生したシングルイベントと 陽子30MeV以上の等高線マップを重ね合わせた結果

NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)

bull 入射粒子が電離によらず与える損傷非イオン化損失

低軌道での電子フラックスと 不具合の発生場所

南大西洋異常(SAA)と極の角

高度800kmでの電子フラックス図極の角(polar horn)とSAAを示す

太陽粒子線 bull 太陽高エネルギー粒子線(SPE Solar Proton Events)は太陽フレア とコロナガス噴出 (CMECoronal Mass Ejections )により引き起こされる bull フレアのスペクトルは可変であるためあるエネルギー域における最悪状態イベントは必ずしも別のエネルギー域における最悪条件ではない 1972年8月のイベント 10~70MeVの粒子が最も多かった 1989年10のイベント 1972年8月のイベントに比べ低エネルギー領域 高エネルギー領域が明らかに激しかった

フルエンス 105 to 1011 cm-2

変動期間 1日から数日

ldquoBastiliardquo Solar Event 14 July 2000

Carrington Flare

84

(LW Townseed) Carrington Flare(1859年) Carrington Flare による30MeV以上トータルFluenceを118times109cm-2で規格化 ~1989年フレアの約13倍(シングルイベントの評価で使用) ~1991年フレアの約9倍 2012年7月23日にキャリントンイベントとほぼ同等の爆発現象が太陽あるいは太陽の周りで起きていたということがNASAの太陽観測衛星「STEREO」の解析から発表された

放射線対策 bull 放射線シールドを付加し放射線を減衰させる

bull 放射線耐性の強い部品(SOI(Silicon On Insulator)技術による耐放射線部品)材料に変更する

bull 放射線による損傷を吸収するために回路または構造上のマージンを持たせる bull ソフト的なエラーに対しては エラー検出訂正機能や多数決

機能等でソフト的エラーが起きてもシステムが機能するようにしたフォールトトレラント機能を付けて対処する ICのハード的故障に対しては ラッチアップ耐性の強い部品を選定するしかないが 電流制限回路を付ける対策も採られる パワーMOSFETに対しては部品選定 電源電圧を規格値の半分以下に落とす等の対策を採る

SOI技術

表面帯電への対策例

表面の物体間を導線で結線する

太陽電池のカバーガラスを導電性被膜付き(酸化インジウムITO)にする

熱制御材表面にITOを被覆する

熱制御材は高誘電率のテフロンの使用を避け 高伝導度耐環境性に優れたブラックカプトンを使用

イオンエンジンの中和器で能動帯電制御

内部帯電への対策例

アルミで3mm厚さに相当するシールドで囲む(Faraday Cage)

テフロンやカプトンなどの誘電体材料の内部での使用量を最小限に押さえる

回路基板やコンフォーマルコーティングは誘電体なので電流リークパス(1012Ωcmまたは1012Ωcm2

程度)を必ずつける

特にスポット的な放射線シールドの金属材には必ず電流リークパスをつける

帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備

衛星モデル作成

材料物性テーブル設定

宇宙環境パラメータ設定

Converter

転送ディレクトリ 解析データファイル

転送

解析ディレクトリ生成 解析結果 進行状況チェック ファイル操作

MUSCAT 解析エンジン

解析結果 表示

パラメトリックラン

オプション 解析

大型パネル実験(35mtimes11m) クーポンパネル実験(26cmtimes16cm)

環境模擬試験 環境模擬試験

MUSCATに使用する物性値設計標準制定のための知見などを得ることを目的に軌道上の宇宙環境を模擬した地上試験を行っている これらの試験では放電の発生頻度や電圧閾値放電発生による太陽電池パネルや搭載機器への影響を検証している

放射線計測装置の原理

bull その粒子が物質を通過する際のエネルギー損出率が粒子の電荷(原子番号)Zの二乗に比例すること(Bethe-Blochの式)を利用する

S2

E

ΔE Ersquo

S1 S3

  • 宇宙機の設計のための宇宙環境
  • 話の流れ
  • 話の流れ
  • TEDA(技術データ取得装置)(国産部品の宇宙環境での実証の必要性)
  • ETS-VTEDA(技術データ取得装置)誕生前の部品の宇宙実証の背景
  • スライド番号 6
  • スライド番号 7
  • スライド番号 8
  • スライド番号 9
  • 図6太陽黒点数と静止軌道電子 (>04MeV ) Flux の変動 (ETS-V搭載DOMによる観測)
  • スライド番号 11
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの開発(理研東大と共同で宇宙環境計測の充実)
  • ETS-VI(きく6号)打ち上がったがGEOに行かずGTOに留まる
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの成果
  • スライド番号 15
  • スライド番号 16
  • スライド番号 17
  • ADEOS搭載TEDA(世界2番目の異常宇宙線ACR)
  • BBND (ボナー球中性子検出器)
  • スライド番号 20
  • ISS搭載BBNDの成果(約8か月)
  • スライド番号 22
  • MDS-1搭載放射線吸収線量モニタ(SDOM)
  • 放射線帯変動モデルの開発MDS-1 065 MeV 電子フラックス
  • 変動パラメータの選択 (1 cycle solar activity)
  • 変動パラメータ- Tavg の定義-
  • 065MeV 電子 L値-Tavg マップ
  • 13MeV 陽子 L値-Tavg マップ
  • 電子観測とMDS-1モデルの比較
  • 放射線帯フラックスピークの変動
  • 陽子観測とモデルの比較
  • 電子(035~078MeV) 1日の変動予測GOSAT軌道
  • 電子(035~078MeV) 変動の信頼度水準(1日)GOSAT軌道
  • MDS-1 model と AE-8 modelとの比較1日
  • 話の流れ
  • 2003年10月 みどり号の全損事故(複合現象)
  • 衛星帯電の基本式
  • 内部帯電
  • パドルでの帯電放電メカニズム
  • スライド番号 40
  • スライド番号 41
  • スライド番号 42
  • データ中継技術衛星DRTS (こだま)の不具合
  • DRTS ESA スパイクノイズと電子フルエンスの比較(赤の丸が異常検知)
  • 不具合が宇宙環境によるものであるか判断する際のポイント
  • 話の流れ
  • 宇宙天気のリスク-宇宙環境によるシステムへの影響 -
  • NASAの報告-GNampCに注目-
  • NASAの報告(続き)
  • 宇宙環境を原因とする不具合の割合-JAXAの場合-
  • 不具合発生部位の割合 
  • Satellite News Digest -静止軌道不具合-
  • 太陽活動と静止軌道衛星不具合例
  • スライド番号 54
  • スライド番号 55
  • スライド番号 56
  • 衛星開発段階における対策
  • 運用における対応
  • 話の流れ
  • スライド番号 60
  • スライド番号 61
  • まとめ(その1)
  • まとめ(その2)
  • 宇宙環境グループは宇宙ステーションと衛星プロジェクトの安全な遂行に貢献しています
  • 補足資料
  • 不具合原因の推移
  • 何故不具合は減らないか
  • 放射線による影響の概要
  • 耐放射線設計手順
  • 各軌道における放射線環境
  • 放射線による部品材料の影響
  • トータルドーズ効果
  • シングルイベント効果
  • シングルイベントメカニズム-陽子と重イオンの違い-
  • エラー発生率の計算
  • 線エネルギー付与(LET)(linear energy transfer)
  • 南大西洋異常(SAA)
  • Single Event Lachup
  • シングルイベントと陽子分布
  • NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)
  • 低軌道での電子フラックスと不具合の発生場所
  • 南大西洋異常(SAA)と極の角
  • スライド番号 83
  • Carrington Flare
  • 放射線対策
  • スライド番号 86
  • スライド番号 87
  • 帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備
  • スライド番号 89
  • 放射線計測装置の原理
Page 65: 宇宙機の設計のための宇宙環境の方針から国産部品開発(42品種)が実施された。 . 半導体電子部品は耐放射線性を加味して、人工衛星(特に

補足資料

不具合原因の推移 bull 宇宙天気を大きく左右する要因の1つとして約11年の太陽活動変化が挙げられる

bull 太陽活動下降時期(太陽変動CME)と極大期(フレアCME)に衛星で不具合が増加するそれにより不具合原因の割合が変わる

-Koons et al The Impact of the Space Environment on Space Systems Aerospace Corp report no TR-99(1670)-1 20 July 1999 -2009 preliminary study (unpublished)

何故不具合は減らないか

bull 部品 放射線に対する感受性が高くなっている bull 微細化が進み同時にフォールトするノードが増え同時にエ

ラーとなる論理ノードやメモリセルが増加する微細化によってメモリセルは小さくなるので記憶容量当たりでみるとエラーの発生率は下がるしかし半導体チップの記憶容量やゲート数が増えるので半導体チップ当たりのエラー発生率は微細化とともに上昇するまた蓄積電荷が小さくなり感受性が高くなってきている

bull システム 大型化大電力化運用長期化 bull 1990年代末以降静止衛星の電力が10kWレベルになったしか

し設計検証技術データ蓄積が遅れている改善されつつあると推測される

放射線による影響の概要

粒子 エネルギー又はLET

代表的な影響

陽子 100keV-1MeV 1-10MeV 10-100MeV gt50MeV

表面損傷 表面材料と太陽電池の損傷 放射線損傷(電離非電離損傷の両方)センサーへのノイズ シングルイベント効果

電子 10-100keV gt100keV gt1MeV

表面帯電 深部帯電現象(deep-dielectric charging)センサーへのノイズ太陽電池の損傷 放射線損傷(電離)

重イオン gt1MeV-cm2mg シングルイベント効果

注エネルギー及びLETは個々の部品等により異なりますあくまでも目安です

耐放射線設計手順

軌道条件

ミッション期間

環境条件設定

トータルドーズの予測

1MeV電子換算被曝算出

NIELの換算

LETフルエンス算出

陽子フルエンス算出

対  策  の  検  討

対  策  の  検  討

対  策  の  検  討

放射線による劣化率予測

劣化率予測 特性予測

耐性データ

放射線による劣化率予測

耐性データ

劣化率予測アレイ出力劣化予測

感受性データ

シングルイベント発生率予測 致命度解析

衛星内質量分布

(2)

部品材料の選定

他の要因による劣化率予測

(2)(2) (3)

回路設計等NO

OK

アレイ構造 セル選定

他の要因による劣化率予測 アレイ設計(2)

(2) (2) (2) (3)

衛星内質量分布 部品選定(2)

(2) (2)(3)

NO

OK

NO

OK

(1) 環境モデルマージを含む(2) 部品レベルの検討(3) アセンブリレベルでの検討(4) 設計マージン環境モデル   マージを含め大丈夫か

トータルドーズ

太陽電池アレイの劣化

シングルイベント効果

回路設計

補足放射線太陽宇宙線銀河宇宙線

NEILを用いたダメージファクターの算出

対  策  の  検  討

放射線による劣化率予測

劣化率予測 特性予測

耐性データ

(2)

部品材料の選定

他の要因による劣化率予測

(2)(2) (3)

回路設計等NO

OK

衛星内質量分布 半導体デバイスの変位損傷

(1)

(4)

(4)

(4)

(4)

各軌道における放射線環境

1E+10

1E+11

1E+12

1E+13

1E+14

1E+15

1E+16

1E+17

1E+18

1E+19

1E+20

001 010 100 1000

捕捉

電子

の積

分フ

ルエ

ンス

[m

2 ]

エネルギー[MeV]

各軌道における電子捕捉積分フルエンス(3年間)

LEO

EOS GEO

MEO

GTO

GEO 軌道傾斜角 0deg 高度36000km GTO 軌道傾斜角 18deg 高度 360km~36000km MEO 軌道傾斜角 51deg 高度 10000km EOS 軌道傾斜角 98deg 高度705km LEO 軌道傾斜角 29deg 高度 600km

1E+12

1E+13

1E+14

1E+15

1E+16

1E+17

1E+18

1E+19

1E+20

01 10 100 1000

捕捉

陽子の

積分フルエン

ス[

m2 ]

エネルギー[MeV]

各軌道における捕捉陽子積分フルエンス(3年間)

MEO

GTO

GEO

EOS LEO

放射線による部品材料の影響

総照射線量 (TIDTotal Ionising Dose )

電離損傷

バイポーラTrの電流増幅率の低下リーク電流の増大

γ線で評価

トータルドーズ効果

変位損傷 (DDDisplacement Damage )または 非イオン化エネルギー損失 (NIELNon-Ionising Energy

Loss )

変位損傷(格子欠陥の生成)

電荷輸送効率の低下 (CCD)太陽電池の効率低下等

電子陽子により評価

シングルイベント効果

1個の荷電粒子の入射により発生する誤動作

ソフト(Latch-Up Burnout) エラー又は ソフト (Upset) エラー

陽子及び重イオンで評価

トータルドーズ効果

+ - + + - + - + - - + + + + -

ゲート酸化膜

電離

格子欠陥

正電荷捕獲

+ 正孔 - 電子

電極

(Silicon oxidenitride)

荷電粒子

反跳原子

ゲート絶縁膜中に電荷が蓄積することによるMOSトランジスタのしきい電圧(MOSトランジスタがオフからオンに変化するゲート電圧)の変化をもたらすただ

し最近の最先端チップはゲート絶縁膜がきわめて薄くなっているこのためゲート絶縁膜よりもフィールド絶縁膜(隣接するトランジスタを電気的に分離する絶縁膜)での電荷蓄積が相対的には大きな問題になってきている」

シングルイベント効果

メモリセルはNチャンネルとPチャンネルMOSFETより構成されメモリ情報は回路ノード12の電位の

高低により記録している空乏層の広がっているPN接合12の領域に

重イオンが入射した場合電荷の発生と空乏層内への少数キャリアの収集が起こるこの収集電荷量が回路の耐量を越えた場合(c)に示すように反転が起こる(ソフトエラー)一方pウエル-N基板接

合の空乏層内に電荷収集量が起こりえる耐性を越えると寄生的に存在するPNPNサイリスタ構造がオ

ンし電源と基板間に大電流が流れる状態が生じる(ラッチアップ)

シングルイベントメカニズム -陽子と重イオンの違い-

エラー発生率の計算

線エネルギー付与(LET) (linear energy transfer)

電離性放射線が物質中を通過する際飛程の単位長さ当りに平均して失うエネルギーをいう各種の放射線のうちX線γ線はLETが小さいので低LETといいα線中性子線その他重イオン核分裂破片のLETは大きいので高LETという MeVμmMeV(gcm2)やMeV(mgcm2)で表される

南大西洋異常(SAA) bull 地球の自転軸と磁気軸のずれ

darr bull 放射線帯が自転軸に対して非

対称

bull 南大西洋上空では放射線帯内帯が低高度に落ちてきているこの領域を南大西洋異常域(SAA South Atlantic Anomaly)と呼ぶ

bull 地球観測衛星ではSAAで放射線帯陽子の影響を受ける

Single Event Lachup

シングルイベントと陽子分布

MOS-1衛星(高度909km軌道傾斜角99度)で発生したシングルイベントと 陽子30MeV以上の等高線マップを重ね合わせた結果

NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)

bull 入射粒子が電離によらず与える損傷非イオン化損失

低軌道での電子フラックスと 不具合の発生場所

南大西洋異常(SAA)と極の角

高度800kmでの電子フラックス図極の角(polar horn)とSAAを示す

太陽粒子線 bull 太陽高エネルギー粒子線(SPE Solar Proton Events)は太陽フレア とコロナガス噴出 (CMECoronal Mass Ejections )により引き起こされる bull フレアのスペクトルは可変であるためあるエネルギー域における最悪状態イベントは必ずしも別のエネルギー域における最悪条件ではない 1972年8月のイベント 10~70MeVの粒子が最も多かった 1989年10のイベント 1972年8月のイベントに比べ低エネルギー領域 高エネルギー領域が明らかに激しかった

フルエンス 105 to 1011 cm-2

変動期間 1日から数日

ldquoBastiliardquo Solar Event 14 July 2000

Carrington Flare

84

(LW Townseed) Carrington Flare(1859年) Carrington Flare による30MeV以上トータルFluenceを118times109cm-2で規格化 ~1989年フレアの約13倍(シングルイベントの評価で使用) ~1991年フレアの約9倍 2012年7月23日にキャリントンイベントとほぼ同等の爆発現象が太陽あるいは太陽の周りで起きていたということがNASAの太陽観測衛星「STEREO」の解析から発表された

放射線対策 bull 放射線シールドを付加し放射線を減衰させる

bull 放射線耐性の強い部品(SOI(Silicon On Insulator)技術による耐放射線部品)材料に変更する

bull 放射線による損傷を吸収するために回路または構造上のマージンを持たせる bull ソフト的なエラーに対しては エラー検出訂正機能や多数決

機能等でソフト的エラーが起きてもシステムが機能するようにしたフォールトトレラント機能を付けて対処する ICのハード的故障に対しては ラッチアップ耐性の強い部品を選定するしかないが 電流制限回路を付ける対策も採られる パワーMOSFETに対しては部品選定 電源電圧を規格値の半分以下に落とす等の対策を採る

SOI技術

表面帯電への対策例

表面の物体間を導線で結線する

太陽電池のカバーガラスを導電性被膜付き(酸化インジウムITO)にする

熱制御材表面にITOを被覆する

熱制御材は高誘電率のテフロンの使用を避け 高伝導度耐環境性に優れたブラックカプトンを使用

イオンエンジンの中和器で能動帯電制御

内部帯電への対策例

アルミで3mm厚さに相当するシールドで囲む(Faraday Cage)

テフロンやカプトンなどの誘電体材料の内部での使用量を最小限に押さえる

回路基板やコンフォーマルコーティングは誘電体なので電流リークパス(1012Ωcmまたは1012Ωcm2

程度)を必ずつける

特にスポット的な放射線シールドの金属材には必ず電流リークパスをつける

帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備

衛星モデル作成

材料物性テーブル設定

宇宙環境パラメータ設定

Converter

転送ディレクトリ 解析データファイル

転送

解析ディレクトリ生成 解析結果 進行状況チェック ファイル操作

MUSCAT 解析エンジン

解析結果 表示

パラメトリックラン

オプション 解析

大型パネル実験(35mtimes11m) クーポンパネル実験(26cmtimes16cm)

環境模擬試験 環境模擬試験

MUSCATに使用する物性値設計標準制定のための知見などを得ることを目的に軌道上の宇宙環境を模擬した地上試験を行っている これらの試験では放電の発生頻度や電圧閾値放電発生による太陽電池パネルや搭載機器への影響を検証している

放射線計測装置の原理

bull その粒子が物質を通過する際のエネルギー損出率が粒子の電荷(原子番号)Zの二乗に比例すること(Bethe-Blochの式)を利用する

S2

E

ΔE Ersquo

S1 S3

  • 宇宙機の設計のための宇宙環境
  • 話の流れ
  • 話の流れ
  • TEDA(技術データ取得装置)(国産部品の宇宙環境での実証の必要性)
  • ETS-VTEDA(技術データ取得装置)誕生前の部品の宇宙実証の背景
  • スライド番号 6
  • スライド番号 7
  • スライド番号 8
  • スライド番号 9
  • 図6太陽黒点数と静止軌道電子 (>04MeV ) Flux の変動 (ETS-V搭載DOMによる観測)
  • スライド番号 11
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの開発(理研東大と共同で宇宙環境計測の充実)
  • ETS-VI(きく6号)打ち上がったがGEOに行かずGTOに留まる
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの成果
  • スライド番号 15
  • スライド番号 16
  • スライド番号 17
  • ADEOS搭載TEDA(世界2番目の異常宇宙線ACR)
  • BBND (ボナー球中性子検出器)
  • スライド番号 20
  • ISS搭載BBNDの成果(約8か月)
  • スライド番号 22
  • MDS-1搭載放射線吸収線量モニタ(SDOM)
  • 放射線帯変動モデルの開発MDS-1 065 MeV 電子フラックス
  • 変動パラメータの選択 (1 cycle solar activity)
  • 変動パラメータ- Tavg の定義-
  • 065MeV 電子 L値-Tavg マップ
  • 13MeV 陽子 L値-Tavg マップ
  • 電子観測とMDS-1モデルの比較
  • 放射線帯フラックスピークの変動
  • 陽子観測とモデルの比較
  • 電子(035~078MeV) 1日の変動予測GOSAT軌道
  • 電子(035~078MeV) 変動の信頼度水準(1日)GOSAT軌道
  • MDS-1 model と AE-8 modelとの比較1日
  • 話の流れ
  • 2003年10月 みどり号の全損事故(複合現象)
  • 衛星帯電の基本式
  • 内部帯電
  • パドルでの帯電放電メカニズム
  • スライド番号 40
  • スライド番号 41
  • スライド番号 42
  • データ中継技術衛星DRTS (こだま)の不具合
  • DRTS ESA スパイクノイズと電子フルエンスの比較(赤の丸が異常検知)
  • 不具合が宇宙環境によるものであるか判断する際のポイント
  • 話の流れ
  • 宇宙天気のリスク-宇宙環境によるシステムへの影響 -
  • NASAの報告-GNampCに注目-
  • NASAの報告(続き)
  • 宇宙環境を原因とする不具合の割合-JAXAの場合-
  • 不具合発生部位の割合 
  • Satellite News Digest -静止軌道不具合-
  • 太陽活動と静止軌道衛星不具合例
  • スライド番号 54
  • スライド番号 55
  • スライド番号 56
  • 衛星開発段階における対策
  • 運用における対応
  • 話の流れ
  • スライド番号 60
  • スライド番号 61
  • まとめ(その1)
  • まとめ(その2)
  • 宇宙環境グループは宇宙ステーションと衛星プロジェクトの安全な遂行に貢献しています
  • 補足資料
  • 不具合原因の推移
  • 何故不具合は減らないか
  • 放射線による影響の概要
  • 耐放射線設計手順
  • 各軌道における放射線環境
  • 放射線による部品材料の影響
  • トータルドーズ効果
  • シングルイベント効果
  • シングルイベントメカニズム-陽子と重イオンの違い-
  • エラー発生率の計算
  • 線エネルギー付与(LET)(linear energy transfer)
  • 南大西洋異常(SAA)
  • Single Event Lachup
  • シングルイベントと陽子分布
  • NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)
  • 低軌道での電子フラックスと不具合の発生場所
  • 南大西洋異常(SAA)と極の角
  • スライド番号 83
  • Carrington Flare
  • 放射線対策
  • スライド番号 86
  • スライド番号 87
  • 帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備
  • スライド番号 89
  • 放射線計測装置の原理
Page 66: 宇宙機の設計のための宇宙環境の方針から国産部品開発(42品種)が実施された。 . 半導体電子部品は耐放射線性を加味して、人工衛星(特に

不具合原因の推移 bull 宇宙天気を大きく左右する要因の1つとして約11年の太陽活動変化が挙げられる

bull 太陽活動下降時期(太陽変動CME)と極大期(フレアCME)に衛星で不具合が増加するそれにより不具合原因の割合が変わる

-Koons et al The Impact of the Space Environment on Space Systems Aerospace Corp report no TR-99(1670)-1 20 July 1999 -2009 preliminary study (unpublished)

何故不具合は減らないか

bull 部品 放射線に対する感受性が高くなっている bull 微細化が進み同時にフォールトするノードが増え同時にエ

ラーとなる論理ノードやメモリセルが増加する微細化によってメモリセルは小さくなるので記憶容量当たりでみるとエラーの発生率は下がるしかし半導体チップの記憶容量やゲート数が増えるので半導体チップ当たりのエラー発生率は微細化とともに上昇するまた蓄積電荷が小さくなり感受性が高くなってきている

bull システム 大型化大電力化運用長期化 bull 1990年代末以降静止衛星の電力が10kWレベルになったしか

し設計検証技術データ蓄積が遅れている改善されつつあると推測される

放射線による影響の概要

粒子 エネルギー又はLET

代表的な影響

陽子 100keV-1MeV 1-10MeV 10-100MeV gt50MeV

表面損傷 表面材料と太陽電池の損傷 放射線損傷(電離非電離損傷の両方)センサーへのノイズ シングルイベント効果

電子 10-100keV gt100keV gt1MeV

表面帯電 深部帯電現象(deep-dielectric charging)センサーへのノイズ太陽電池の損傷 放射線損傷(電離)

重イオン gt1MeV-cm2mg シングルイベント効果

注エネルギー及びLETは個々の部品等により異なりますあくまでも目安です

耐放射線設計手順

軌道条件

ミッション期間

環境条件設定

トータルドーズの予測

1MeV電子換算被曝算出

NIELの換算

LETフルエンス算出

陽子フルエンス算出

対  策  の  検  討

対  策  の  検  討

対  策  の  検  討

放射線による劣化率予測

劣化率予測 特性予測

耐性データ

放射線による劣化率予測

耐性データ

劣化率予測アレイ出力劣化予測

感受性データ

シングルイベント発生率予測 致命度解析

衛星内質量分布

(2)

部品材料の選定

他の要因による劣化率予測

(2)(2) (3)

回路設計等NO

OK

アレイ構造 セル選定

他の要因による劣化率予測 アレイ設計(2)

(2) (2) (2) (3)

衛星内質量分布 部品選定(2)

(2) (2)(3)

NO

OK

NO

OK

(1) 環境モデルマージを含む(2) 部品レベルの検討(3) アセンブリレベルでの検討(4) 設計マージン環境モデル   マージを含め大丈夫か

トータルドーズ

太陽電池アレイの劣化

シングルイベント効果

回路設計

補足放射線太陽宇宙線銀河宇宙線

NEILを用いたダメージファクターの算出

対  策  の  検  討

放射線による劣化率予測

劣化率予測 特性予測

耐性データ

(2)

部品材料の選定

他の要因による劣化率予測

(2)(2) (3)

回路設計等NO

OK

衛星内質量分布 半導体デバイスの変位損傷

(1)

(4)

(4)

(4)

(4)

各軌道における放射線環境

1E+10

1E+11

1E+12

1E+13

1E+14

1E+15

1E+16

1E+17

1E+18

1E+19

1E+20

001 010 100 1000

捕捉

電子

の積

分フ

ルエ

ンス

[m

2 ]

エネルギー[MeV]

各軌道における電子捕捉積分フルエンス(3年間)

LEO

EOS GEO

MEO

GTO

GEO 軌道傾斜角 0deg 高度36000km GTO 軌道傾斜角 18deg 高度 360km~36000km MEO 軌道傾斜角 51deg 高度 10000km EOS 軌道傾斜角 98deg 高度705km LEO 軌道傾斜角 29deg 高度 600km

1E+12

1E+13

1E+14

1E+15

1E+16

1E+17

1E+18

1E+19

1E+20

01 10 100 1000

捕捉

陽子の

積分フルエン

ス[

m2 ]

エネルギー[MeV]

各軌道における捕捉陽子積分フルエンス(3年間)

MEO

GTO

GEO

EOS LEO

放射線による部品材料の影響

総照射線量 (TIDTotal Ionising Dose )

電離損傷

バイポーラTrの電流増幅率の低下リーク電流の増大

γ線で評価

トータルドーズ効果

変位損傷 (DDDisplacement Damage )または 非イオン化エネルギー損失 (NIELNon-Ionising Energy

Loss )

変位損傷(格子欠陥の生成)

電荷輸送効率の低下 (CCD)太陽電池の効率低下等

電子陽子により評価

シングルイベント効果

1個の荷電粒子の入射により発生する誤動作

ソフト(Latch-Up Burnout) エラー又は ソフト (Upset) エラー

陽子及び重イオンで評価

トータルドーズ効果

+ - + + - + - + - - + + + + -

ゲート酸化膜

電離

格子欠陥

正電荷捕獲

+ 正孔 - 電子

電極

(Silicon oxidenitride)

荷電粒子

反跳原子

ゲート絶縁膜中に電荷が蓄積することによるMOSトランジスタのしきい電圧(MOSトランジスタがオフからオンに変化するゲート電圧)の変化をもたらすただ

し最近の最先端チップはゲート絶縁膜がきわめて薄くなっているこのためゲート絶縁膜よりもフィールド絶縁膜(隣接するトランジスタを電気的に分離する絶縁膜)での電荷蓄積が相対的には大きな問題になってきている」

シングルイベント効果

メモリセルはNチャンネルとPチャンネルMOSFETより構成されメモリ情報は回路ノード12の電位の

高低により記録している空乏層の広がっているPN接合12の領域に

重イオンが入射した場合電荷の発生と空乏層内への少数キャリアの収集が起こるこの収集電荷量が回路の耐量を越えた場合(c)に示すように反転が起こる(ソフトエラー)一方pウエル-N基板接

合の空乏層内に電荷収集量が起こりえる耐性を越えると寄生的に存在するPNPNサイリスタ構造がオ

ンし電源と基板間に大電流が流れる状態が生じる(ラッチアップ)

シングルイベントメカニズム -陽子と重イオンの違い-

エラー発生率の計算

線エネルギー付与(LET) (linear energy transfer)

電離性放射線が物質中を通過する際飛程の単位長さ当りに平均して失うエネルギーをいう各種の放射線のうちX線γ線はLETが小さいので低LETといいα線中性子線その他重イオン核分裂破片のLETは大きいので高LETという MeVμmMeV(gcm2)やMeV(mgcm2)で表される

南大西洋異常(SAA) bull 地球の自転軸と磁気軸のずれ

darr bull 放射線帯が自転軸に対して非

対称

bull 南大西洋上空では放射線帯内帯が低高度に落ちてきているこの領域を南大西洋異常域(SAA South Atlantic Anomaly)と呼ぶ

bull 地球観測衛星ではSAAで放射線帯陽子の影響を受ける

Single Event Lachup

シングルイベントと陽子分布

MOS-1衛星(高度909km軌道傾斜角99度)で発生したシングルイベントと 陽子30MeV以上の等高線マップを重ね合わせた結果

NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)

bull 入射粒子が電離によらず与える損傷非イオン化損失

低軌道での電子フラックスと 不具合の発生場所

南大西洋異常(SAA)と極の角

高度800kmでの電子フラックス図極の角(polar horn)とSAAを示す

太陽粒子線 bull 太陽高エネルギー粒子線(SPE Solar Proton Events)は太陽フレア とコロナガス噴出 (CMECoronal Mass Ejections )により引き起こされる bull フレアのスペクトルは可変であるためあるエネルギー域における最悪状態イベントは必ずしも別のエネルギー域における最悪条件ではない 1972年8月のイベント 10~70MeVの粒子が最も多かった 1989年10のイベント 1972年8月のイベントに比べ低エネルギー領域 高エネルギー領域が明らかに激しかった

フルエンス 105 to 1011 cm-2

変動期間 1日から数日

ldquoBastiliardquo Solar Event 14 July 2000

Carrington Flare

84

(LW Townseed) Carrington Flare(1859年) Carrington Flare による30MeV以上トータルFluenceを118times109cm-2で規格化 ~1989年フレアの約13倍(シングルイベントの評価で使用) ~1991年フレアの約9倍 2012年7月23日にキャリントンイベントとほぼ同等の爆発現象が太陽あるいは太陽の周りで起きていたということがNASAの太陽観測衛星「STEREO」の解析から発表された

放射線対策 bull 放射線シールドを付加し放射線を減衰させる

bull 放射線耐性の強い部品(SOI(Silicon On Insulator)技術による耐放射線部品)材料に変更する

bull 放射線による損傷を吸収するために回路または構造上のマージンを持たせる bull ソフト的なエラーに対しては エラー検出訂正機能や多数決

機能等でソフト的エラーが起きてもシステムが機能するようにしたフォールトトレラント機能を付けて対処する ICのハード的故障に対しては ラッチアップ耐性の強い部品を選定するしかないが 電流制限回路を付ける対策も採られる パワーMOSFETに対しては部品選定 電源電圧を規格値の半分以下に落とす等の対策を採る

SOI技術

表面帯電への対策例

表面の物体間を導線で結線する

太陽電池のカバーガラスを導電性被膜付き(酸化インジウムITO)にする

熱制御材表面にITOを被覆する

熱制御材は高誘電率のテフロンの使用を避け 高伝導度耐環境性に優れたブラックカプトンを使用

イオンエンジンの中和器で能動帯電制御

内部帯電への対策例

アルミで3mm厚さに相当するシールドで囲む(Faraday Cage)

テフロンやカプトンなどの誘電体材料の内部での使用量を最小限に押さえる

回路基板やコンフォーマルコーティングは誘電体なので電流リークパス(1012Ωcmまたは1012Ωcm2

程度)を必ずつける

特にスポット的な放射線シールドの金属材には必ず電流リークパスをつける

帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備

衛星モデル作成

材料物性テーブル設定

宇宙環境パラメータ設定

Converter

転送ディレクトリ 解析データファイル

転送

解析ディレクトリ生成 解析結果 進行状況チェック ファイル操作

MUSCAT 解析エンジン

解析結果 表示

パラメトリックラン

オプション 解析

大型パネル実験(35mtimes11m) クーポンパネル実験(26cmtimes16cm)

環境模擬試験 環境模擬試験

MUSCATに使用する物性値設計標準制定のための知見などを得ることを目的に軌道上の宇宙環境を模擬した地上試験を行っている これらの試験では放電の発生頻度や電圧閾値放電発生による太陽電池パネルや搭載機器への影響を検証している

放射線計測装置の原理

bull その粒子が物質を通過する際のエネルギー損出率が粒子の電荷(原子番号)Zの二乗に比例すること(Bethe-Blochの式)を利用する

S2

E

ΔE Ersquo

S1 S3

  • 宇宙機の設計のための宇宙環境
  • 話の流れ
  • 話の流れ
  • TEDA(技術データ取得装置)(国産部品の宇宙環境での実証の必要性)
  • ETS-VTEDA(技術データ取得装置)誕生前の部品の宇宙実証の背景
  • スライド番号 6
  • スライド番号 7
  • スライド番号 8
  • スライド番号 9
  • 図6太陽黒点数と静止軌道電子 (>04MeV ) Flux の変動 (ETS-V搭載DOMによる観測)
  • スライド番号 11
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの開発(理研東大と共同で宇宙環境計測の充実)
  • ETS-VI(きく6号)打ち上がったがGEOに行かずGTOに留まる
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの成果
  • スライド番号 15
  • スライド番号 16
  • スライド番号 17
  • ADEOS搭載TEDA(世界2番目の異常宇宙線ACR)
  • BBND (ボナー球中性子検出器)
  • スライド番号 20
  • ISS搭載BBNDの成果(約8か月)
  • スライド番号 22
  • MDS-1搭載放射線吸収線量モニタ(SDOM)
  • 放射線帯変動モデルの開発MDS-1 065 MeV 電子フラックス
  • 変動パラメータの選択 (1 cycle solar activity)
  • 変動パラメータ- Tavg の定義-
  • 065MeV 電子 L値-Tavg マップ
  • 13MeV 陽子 L値-Tavg マップ
  • 電子観測とMDS-1モデルの比較
  • 放射線帯フラックスピークの変動
  • 陽子観測とモデルの比較
  • 電子(035~078MeV) 1日の変動予測GOSAT軌道
  • 電子(035~078MeV) 変動の信頼度水準(1日)GOSAT軌道
  • MDS-1 model と AE-8 modelとの比較1日
  • 話の流れ
  • 2003年10月 みどり号の全損事故(複合現象)
  • 衛星帯電の基本式
  • 内部帯電
  • パドルでの帯電放電メカニズム
  • スライド番号 40
  • スライド番号 41
  • スライド番号 42
  • データ中継技術衛星DRTS (こだま)の不具合
  • DRTS ESA スパイクノイズと電子フルエンスの比較(赤の丸が異常検知)
  • 不具合が宇宙環境によるものであるか判断する際のポイント
  • 話の流れ
  • 宇宙天気のリスク-宇宙環境によるシステムへの影響 -
  • NASAの報告-GNampCに注目-
  • NASAの報告(続き)
  • 宇宙環境を原因とする不具合の割合-JAXAの場合-
  • 不具合発生部位の割合 
  • Satellite News Digest -静止軌道不具合-
  • 太陽活動と静止軌道衛星不具合例
  • スライド番号 54
  • スライド番号 55
  • スライド番号 56
  • 衛星開発段階における対策
  • 運用における対応
  • 話の流れ
  • スライド番号 60
  • スライド番号 61
  • まとめ(その1)
  • まとめ(その2)
  • 宇宙環境グループは宇宙ステーションと衛星プロジェクトの安全な遂行に貢献しています
  • 補足資料
  • 不具合原因の推移
  • 何故不具合は減らないか
  • 放射線による影響の概要
  • 耐放射線設計手順
  • 各軌道における放射線環境
  • 放射線による部品材料の影響
  • トータルドーズ効果
  • シングルイベント効果
  • シングルイベントメカニズム-陽子と重イオンの違い-
  • エラー発生率の計算
  • 線エネルギー付与(LET)(linear energy transfer)
  • 南大西洋異常(SAA)
  • Single Event Lachup
  • シングルイベントと陽子分布
  • NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)
  • 低軌道での電子フラックスと不具合の発生場所
  • 南大西洋異常(SAA)と極の角
  • スライド番号 83
  • Carrington Flare
  • 放射線対策
  • スライド番号 86
  • スライド番号 87
  • 帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備
  • スライド番号 89
  • 放射線計測装置の原理
Page 67: 宇宙機の設計のための宇宙環境の方針から国産部品開発(42品種)が実施された。 . 半導体電子部品は耐放射線性を加味して、人工衛星(特に

何故不具合は減らないか

bull 部品 放射線に対する感受性が高くなっている bull 微細化が進み同時にフォールトするノードが増え同時にエ

ラーとなる論理ノードやメモリセルが増加する微細化によってメモリセルは小さくなるので記憶容量当たりでみるとエラーの発生率は下がるしかし半導体チップの記憶容量やゲート数が増えるので半導体チップ当たりのエラー発生率は微細化とともに上昇するまた蓄積電荷が小さくなり感受性が高くなってきている

bull システム 大型化大電力化運用長期化 bull 1990年代末以降静止衛星の電力が10kWレベルになったしか

し設計検証技術データ蓄積が遅れている改善されつつあると推測される

放射線による影響の概要

粒子 エネルギー又はLET

代表的な影響

陽子 100keV-1MeV 1-10MeV 10-100MeV gt50MeV

表面損傷 表面材料と太陽電池の損傷 放射線損傷(電離非電離損傷の両方)センサーへのノイズ シングルイベント効果

電子 10-100keV gt100keV gt1MeV

表面帯電 深部帯電現象(deep-dielectric charging)センサーへのノイズ太陽電池の損傷 放射線損傷(電離)

重イオン gt1MeV-cm2mg シングルイベント効果

注エネルギー及びLETは個々の部品等により異なりますあくまでも目安です

耐放射線設計手順

軌道条件

ミッション期間

環境条件設定

トータルドーズの予測

1MeV電子換算被曝算出

NIELの換算

LETフルエンス算出

陽子フルエンス算出

対  策  の  検  討

対  策  の  検  討

対  策  の  検  討

放射線による劣化率予測

劣化率予測 特性予測

耐性データ

放射線による劣化率予測

耐性データ

劣化率予測アレイ出力劣化予測

感受性データ

シングルイベント発生率予測 致命度解析

衛星内質量分布

(2)

部品材料の選定

他の要因による劣化率予測

(2)(2) (3)

回路設計等NO

OK

アレイ構造 セル選定

他の要因による劣化率予測 アレイ設計(2)

(2) (2) (2) (3)

衛星内質量分布 部品選定(2)

(2) (2)(3)

NO

OK

NO

OK

(1) 環境モデルマージを含む(2) 部品レベルの検討(3) アセンブリレベルでの検討(4) 設計マージン環境モデル   マージを含め大丈夫か

トータルドーズ

太陽電池アレイの劣化

シングルイベント効果

回路設計

補足放射線太陽宇宙線銀河宇宙線

NEILを用いたダメージファクターの算出

対  策  の  検  討

放射線による劣化率予測

劣化率予測 特性予測

耐性データ

(2)

部品材料の選定

他の要因による劣化率予測

(2)(2) (3)

回路設計等NO

OK

衛星内質量分布 半導体デバイスの変位損傷

(1)

(4)

(4)

(4)

(4)

各軌道における放射線環境

1E+10

1E+11

1E+12

1E+13

1E+14

1E+15

1E+16

1E+17

1E+18

1E+19

1E+20

001 010 100 1000

捕捉

電子

の積

分フ

ルエ

ンス

[m

2 ]

エネルギー[MeV]

各軌道における電子捕捉積分フルエンス(3年間)

LEO

EOS GEO

MEO

GTO

GEO 軌道傾斜角 0deg 高度36000km GTO 軌道傾斜角 18deg 高度 360km~36000km MEO 軌道傾斜角 51deg 高度 10000km EOS 軌道傾斜角 98deg 高度705km LEO 軌道傾斜角 29deg 高度 600km

1E+12

1E+13

1E+14

1E+15

1E+16

1E+17

1E+18

1E+19

1E+20

01 10 100 1000

捕捉

陽子の

積分フルエン

ス[

m2 ]

エネルギー[MeV]

各軌道における捕捉陽子積分フルエンス(3年間)

MEO

GTO

GEO

EOS LEO

放射線による部品材料の影響

総照射線量 (TIDTotal Ionising Dose )

電離損傷

バイポーラTrの電流増幅率の低下リーク電流の増大

γ線で評価

トータルドーズ効果

変位損傷 (DDDisplacement Damage )または 非イオン化エネルギー損失 (NIELNon-Ionising Energy

Loss )

変位損傷(格子欠陥の生成)

電荷輸送効率の低下 (CCD)太陽電池の効率低下等

電子陽子により評価

シングルイベント効果

1個の荷電粒子の入射により発生する誤動作

ソフト(Latch-Up Burnout) エラー又は ソフト (Upset) エラー

陽子及び重イオンで評価

トータルドーズ効果

+ - + + - + - + - - + + + + -

ゲート酸化膜

電離

格子欠陥

正電荷捕獲

+ 正孔 - 電子

電極

(Silicon oxidenitride)

荷電粒子

反跳原子

ゲート絶縁膜中に電荷が蓄積することによるMOSトランジスタのしきい電圧(MOSトランジスタがオフからオンに変化するゲート電圧)の変化をもたらすただ

し最近の最先端チップはゲート絶縁膜がきわめて薄くなっているこのためゲート絶縁膜よりもフィールド絶縁膜(隣接するトランジスタを電気的に分離する絶縁膜)での電荷蓄積が相対的には大きな問題になってきている」

シングルイベント効果

メモリセルはNチャンネルとPチャンネルMOSFETより構成されメモリ情報は回路ノード12の電位の

高低により記録している空乏層の広がっているPN接合12の領域に

重イオンが入射した場合電荷の発生と空乏層内への少数キャリアの収集が起こるこの収集電荷量が回路の耐量を越えた場合(c)に示すように反転が起こる(ソフトエラー)一方pウエル-N基板接

合の空乏層内に電荷収集量が起こりえる耐性を越えると寄生的に存在するPNPNサイリスタ構造がオ

ンし電源と基板間に大電流が流れる状態が生じる(ラッチアップ)

シングルイベントメカニズム -陽子と重イオンの違い-

エラー発生率の計算

線エネルギー付与(LET) (linear energy transfer)

電離性放射線が物質中を通過する際飛程の単位長さ当りに平均して失うエネルギーをいう各種の放射線のうちX線γ線はLETが小さいので低LETといいα線中性子線その他重イオン核分裂破片のLETは大きいので高LETという MeVμmMeV(gcm2)やMeV(mgcm2)で表される

南大西洋異常(SAA) bull 地球の自転軸と磁気軸のずれ

darr bull 放射線帯が自転軸に対して非

対称

bull 南大西洋上空では放射線帯内帯が低高度に落ちてきているこの領域を南大西洋異常域(SAA South Atlantic Anomaly)と呼ぶ

bull 地球観測衛星ではSAAで放射線帯陽子の影響を受ける

Single Event Lachup

シングルイベントと陽子分布

MOS-1衛星(高度909km軌道傾斜角99度)で発生したシングルイベントと 陽子30MeV以上の等高線マップを重ね合わせた結果

NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)

bull 入射粒子が電離によらず与える損傷非イオン化損失

低軌道での電子フラックスと 不具合の発生場所

南大西洋異常(SAA)と極の角

高度800kmでの電子フラックス図極の角(polar horn)とSAAを示す

太陽粒子線 bull 太陽高エネルギー粒子線(SPE Solar Proton Events)は太陽フレア とコロナガス噴出 (CMECoronal Mass Ejections )により引き起こされる bull フレアのスペクトルは可変であるためあるエネルギー域における最悪状態イベントは必ずしも別のエネルギー域における最悪条件ではない 1972年8月のイベント 10~70MeVの粒子が最も多かった 1989年10のイベント 1972年8月のイベントに比べ低エネルギー領域 高エネルギー領域が明らかに激しかった

フルエンス 105 to 1011 cm-2

変動期間 1日から数日

ldquoBastiliardquo Solar Event 14 July 2000

Carrington Flare

84

(LW Townseed) Carrington Flare(1859年) Carrington Flare による30MeV以上トータルFluenceを118times109cm-2で規格化 ~1989年フレアの約13倍(シングルイベントの評価で使用) ~1991年フレアの約9倍 2012年7月23日にキャリントンイベントとほぼ同等の爆発現象が太陽あるいは太陽の周りで起きていたということがNASAの太陽観測衛星「STEREO」の解析から発表された

放射線対策 bull 放射線シールドを付加し放射線を減衰させる

bull 放射線耐性の強い部品(SOI(Silicon On Insulator)技術による耐放射線部品)材料に変更する

bull 放射線による損傷を吸収するために回路または構造上のマージンを持たせる bull ソフト的なエラーに対しては エラー検出訂正機能や多数決

機能等でソフト的エラーが起きてもシステムが機能するようにしたフォールトトレラント機能を付けて対処する ICのハード的故障に対しては ラッチアップ耐性の強い部品を選定するしかないが 電流制限回路を付ける対策も採られる パワーMOSFETに対しては部品選定 電源電圧を規格値の半分以下に落とす等の対策を採る

SOI技術

表面帯電への対策例

表面の物体間を導線で結線する

太陽電池のカバーガラスを導電性被膜付き(酸化インジウムITO)にする

熱制御材表面にITOを被覆する

熱制御材は高誘電率のテフロンの使用を避け 高伝導度耐環境性に優れたブラックカプトンを使用

イオンエンジンの中和器で能動帯電制御

内部帯電への対策例

アルミで3mm厚さに相当するシールドで囲む(Faraday Cage)

テフロンやカプトンなどの誘電体材料の内部での使用量を最小限に押さえる

回路基板やコンフォーマルコーティングは誘電体なので電流リークパス(1012Ωcmまたは1012Ωcm2

程度)を必ずつける

特にスポット的な放射線シールドの金属材には必ず電流リークパスをつける

帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備

衛星モデル作成

材料物性テーブル設定

宇宙環境パラメータ設定

Converter

転送ディレクトリ 解析データファイル

転送

解析ディレクトリ生成 解析結果 進行状況チェック ファイル操作

MUSCAT 解析エンジン

解析結果 表示

パラメトリックラン

オプション 解析

大型パネル実験(35mtimes11m) クーポンパネル実験(26cmtimes16cm)

環境模擬試験 環境模擬試験

MUSCATに使用する物性値設計標準制定のための知見などを得ることを目的に軌道上の宇宙環境を模擬した地上試験を行っている これらの試験では放電の発生頻度や電圧閾値放電発生による太陽電池パネルや搭載機器への影響を検証している

放射線計測装置の原理

bull その粒子が物質を通過する際のエネルギー損出率が粒子の電荷(原子番号)Zの二乗に比例すること(Bethe-Blochの式)を利用する

S2

E

ΔE Ersquo

S1 S3

  • 宇宙機の設計のための宇宙環境
  • 話の流れ
  • 話の流れ
  • TEDA(技術データ取得装置)(国産部品の宇宙環境での実証の必要性)
  • ETS-VTEDA(技術データ取得装置)誕生前の部品の宇宙実証の背景
  • スライド番号 6
  • スライド番号 7
  • スライド番号 8
  • スライド番号 9
  • 図6太陽黒点数と静止軌道電子 (>04MeV ) Flux の変動 (ETS-V搭載DOMによる観測)
  • スライド番号 11
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの開発(理研東大と共同で宇宙環境計測の充実)
  • ETS-VI(きく6号)打ち上がったがGEOに行かずGTOに留まる
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの成果
  • スライド番号 15
  • スライド番号 16
  • スライド番号 17
  • ADEOS搭載TEDA(世界2番目の異常宇宙線ACR)
  • BBND (ボナー球中性子検出器)
  • スライド番号 20
  • ISS搭載BBNDの成果(約8か月)
  • スライド番号 22
  • MDS-1搭載放射線吸収線量モニタ(SDOM)
  • 放射線帯変動モデルの開発MDS-1 065 MeV 電子フラックス
  • 変動パラメータの選択 (1 cycle solar activity)
  • 変動パラメータ- Tavg の定義-
  • 065MeV 電子 L値-Tavg マップ
  • 13MeV 陽子 L値-Tavg マップ
  • 電子観測とMDS-1モデルの比較
  • 放射線帯フラックスピークの変動
  • 陽子観測とモデルの比較
  • 電子(035~078MeV) 1日の変動予測GOSAT軌道
  • 電子(035~078MeV) 変動の信頼度水準(1日)GOSAT軌道
  • MDS-1 model と AE-8 modelとの比較1日
  • 話の流れ
  • 2003年10月 みどり号の全損事故(複合現象)
  • 衛星帯電の基本式
  • 内部帯電
  • パドルでの帯電放電メカニズム
  • スライド番号 40
  • スライド番号 41
  • スライド番号 42
  • データ中継技術衛星DRTS (こだま)の不具合
  • DRTS ESA スパイクノイズと電子フルエンスの比較(赤の丸が異常検知)
  • 不具合が宇宙環境によるものであるか判断する際のポイント
  • 話の流れ
  • 宇宙天気のリスク-宇宙環境によるシステムへの影響 -
  • NASAの報告-GNampCに注目-
  • NASAの報告(続き)
  • 宇宙環境を原因とする不具合の割合-JAXAの場合-
  • 不具合発生部位の割合 
  • Satellite News Digest -静止軌道不具合-
  • 太陽活動と静止軌道衛星不具合例
  • スライド番号 54
  • スライド番号 55
  • スライド番号 56
  • 衛星開発段階における対策
  • 運用における対応
  • 話の流れ
  • スライド番号 60
  • スライド番号 61
  • まとめ(その1)
  • まとめ(その2)
  • 宇宙環境グループは宇宙ステーションと衛星プロジェクトの安全な遂行に貢献しています
  • 補足資料
  • 不具合原因の推移
  • 何故不具合は減らないか
  • 放射線による影響の概要
  • 耐放射線設計手順
  • 各軌道における放射線環境
  • 放射線による部品材料の影響
  • トータルドーズ効果
  • シングルイベント効果
  • シングルイベントメカニズム-陽子と重イオンの違い-
  • エラー発生率の計算
  • 線エネルギー付与(LET)(linear energy transfer)
  • 南大西洋異常(SAA)
  • Single Event Lachup
  • シングルイベントと陽子分布
  • NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)
  • 低軌道での電子フラックスと不具合の発生場所
  • 南大西洋異常(SAA)と極の角
  • スライド番号 83
  • Carrington Flare
  • 放射線対策
  • スライド番号 86
  • スライド番号 87
  • 帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備
  • スライド番号 89
  • 放射線計測装置の原理
Page 68: 宇宙機の設計のための宇宙環境の方針から国産部品開発(42品種)が実施された。 . 半導体電子部品は耐放射線性を加味して、人工衛星(特に

放射線による影響の概要

粒子 エネルギー又はLET

代表的な影響

陽子 100keV-1MeV 1-10MeV 10-100MeV gt50MeV

表面損傷 表面材料と太陽電池の損傷 放射線損傷(電離非電離損傷の両方)センサーへのノイズ シングルイベント効果

電子 10-100keV gt100keV gt1MeV

表面帯電 深部帯電現象(deep-dielectric charging)センサーへのノイズ太陽電池の損傷 放射線損傷(電離)

重イオン gt1MeV-cm2mg シングルイベント効果

注エネルギー及びLETは個々の部品等により異なりますあくまでも目安です

耐放射線設計手順

軌道条件

ミッション期間

環境条件設定

トータルドーズの予測

1MeV電子換算被曝算出

NIELの換算

LETフルエンス算出

陽子フルエンス算出

対  策  の  検  討

対  策  の  検  討

対  策  の  検  討

放射線による劣化率予測

劣化率予測 特性予測

耐性データ

放射線による劣化率予測

耐性データ

劣化率予測アレイ出力劣化予測

感受性データ

シングルイベント発生率予測 致命度解析

衛星内質量分布

(2)

部品材料の選定

他の要因による劣化率予測

(2)(2) (3)

回路設計等NO

OK

アレイ構造 セル選定

他の要因による劣化率予測 アレイ設計(2)

(2) (2) (2) (3)

衛星内質量分布 部品選定(2)

(2) (2)(3)

NO

OK

NO

OK

(1) 環境モデルマージを含む(2) 部品レベルの検討(3) アセンブリレベルでの検討(4) 設計マージン環境モデル   マージを含め大丈夫か

トータルドーズ

太陽電池アレイの劣化

シングルイベント効果

回路設計

補足放射線太陽宇宙線銀河宇宙線

NEILを用いたダメージファクターの算出

対  策  の  検  討

放射線による劣化率予測

劣化率予測 特性予測

耐性データ

(2)

部品材料の選定

他の要因による劣化率予測

(2)(2) (3)

回路設計等NO

OK

衛星内質量分布 半導体デバイスの変位損傷

(1)

(4)

(4)

(4)

(4)

各軌道における放射線環境

1E+10

1E+11

1E+12

1E+13

1E+14

1E+15

1E+16

1E+17

1E+18

1E+19

1E+20

001 010 100 1000

捕捉

電子

の積

分フ

ルエ

ンス

[m

2 ]

エネルギー[MeV]

各軌道における電子捕捉積分フルエンス(3年間)

LEO

EOS GEO

MEO

GTO

GEO 軌道傾斜角 0deg 高度36000km GTO 軌道傾斜角 18deg 高度 360km~36000km MEO 軌道傾斜角 51deg 高度 10000km EOS 軌道傾斜角 98deg 高度705km LEO 軌道傾斜角 29deg 高度 600km

1E+12

1E+13

1E+14

1E+15

1E+16

1E+17

1E+18

1E+19

1E+20

01 10 100 1000

捕捉

陽子の

積分フルエン

ス[

m2 ]

エネルギー[MeV]

各軌道における捕捉陽子積分フルエンス(3年間)

MEO

GTO

GEO

EOS LEO

放射線による部品材料の影響

総照射線量 (TIDTotal Ionising Dose )

電離損傷

バイポーラTrの電流増幅率の低下リーク電流の増大

γ線で評価

トータルドーズ効果

変位損傷 (DDDisplacement Damage )または 非イオン化エネルギー損失 (NIELNon-Ionising Energy

Loss )

変位損傷(格子欠陥の生成)

電荷輸送効率の低下 (CCD)太陽電池の効率低下等

電子陽子により評価

シングルイベント効果

1個の荷電粒子の入射により発生する誤動作

ソフト(Latch-Up Burnout) エラー又は ソフト (Upset) エラー

陽子及び重イオンで評価

トータルドーズ効果

+ - + + - + - + - - + + + + -

ゲート酸化膜

電離

格子欠陥

正電荷捕獲

+ 正孔 - 電子

電極

(Silicon oxidenitride)

荷電粒子

反跳原子

ゲート絶縁膜中に電荷が蓄積することによるMOSトランジスタのしきい電圧(MOSトランジスタがオフからオンに変化するゲート電圧)の変化をもたらすただ

し最近の最先端チップはゲート絶縁膜がきわめて薄くなっているこのためゲート絶縁膜よりもフィールド絶縁膜(隣接するトランジスタを電気的に分離する絶縁膜)での電荷蓄積が相対的には大きな問題になってきている」

シングルイベント効果

メモリセルはNチャンネルとPチャンネルMOSFETより構成されメモリ情報は回路ノード12の電位の

高低により記録している空乏層の広がっているPN接合12の領域に

重イオンが入射した場合電荷の発生と空乏層内への少数キャリアの収集が起こるこの収集電荷量が回路の耐量を越えた場合(c)に示すように反転が起こる(ソフトエラー)一方pウエル-N基板接

合の空乏層内に電荷収集量が起こりえる耐性を越えると寄生的に存在するPNPNサイリスタ構造がオ

ンし電源と基板間に大電流が流れる状態が生じる(ラッチアップ)

シングルイベントメカニズム -陽子と重イオンの違い-

エラー発生率の計算

線エネルギー付与(LET) (linear energy transfer)

電離性放射線が物質中を通過する際飛程の単位長さ当りに平均して失うエネルギーをいう各種の放射線のうちX線γ線はLETが小さいので低LETといいα線中性子線その他重イオン核分裂破片のLETは大きいので高LETという MeVμmMeV(gcm2)やMeV(mgcm2)で表される

南大西洋異常(SAA) bull 地球の自転軸と磁気軸のずれ

darr bull 放射線帯が自転軸に対して非

対称

bull 南大西洋上空では放射線帯内帯が低高度に落ちてきているこの領域を南大西洋異常域(SAA South Atlantic Anomaly)と呼ぶ

bull 地球観測衛星ではSAAで放射線帯陽子の影響を受ける

Single Event Lachup

シングルイベントと陽子分布

MOS-1衛星(高度909km軌道傾斜角99度)で発生したシングルイベントと 陽子30MeV以上の等高線マップを重ね合わせた結果

NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)

bull 入射粒子が電離によらず与える損傷非イオン化損失

低軌道での電子フラックスと 不具合の発生場所

南大西洋異常(SAA)と極の角

高度800kmでの電子フラックス図極の角(polar horn)とSAAを示す

太陽粒子線 bull 太陽高エネルギー粒子線(SPE Solar Proton Events)は太陽フレア とコロナガス噴出 (CMECoronal Mass Ejections )により引き起こされる bull フレアのスペクトルは可変であるためあるエネルギー域における最悪状態イベントは必ずしも別のエネルギー域における最悪条件ではない 1972年8月のイベント 10~70MeVの粒子が最も多かった 1989年10のイベント 1972年8月のイベントに比べ低エネルギー領域 高エネルギー領域が明らかに激しかった

フルエンス 105 to 1011 cm-2

変動期間 1日から数日

ldquoBastiliardquo Solar Event 14 July 2000

Carrington Flare

84

(LW Townseed) Carrington Flare(1859年) Carrington Flare による30MeV以上トータルFluenceを118times109cm-2で規格化 ~1989年フレアの約13倍(シングルイベントの評価で使用) ~1991年フレアの約9倍 2012年7月23日にキャリントンイベントとほぼ同等の爆発現象が太陽あるいは太陽の周りで起きていたということがNASAの太陽観測衛星「STEREO」の解析から発表された

放射線対策 bull 放射線シールドを付加し放射線を減衰させる

bull 放射線耐性の強い部品(SOI(Silicon On Insulator)技術による耐放射線部品)材料に変更する

bull 放射線による損傷を吸収するために回路または構造上のマージンを持たせる bull ソフト的なエラーに対しては エラー検出訂正機能や多数決

機能等でソフト的エラーが起きてもシステムが機能するようにしたフォールトトレラント機能を付けて対処する ICのハード的故障に対しては ラッチアップ耐性の強い部品を選定するしかないが 電流制限回路を付ける対策も採られる パワーMOSFETに対しては部品選定 電源電圧を規格値の半分以下に落とす等の対策を採る

SOI技術

表面帯電への対策例

表面の物体間を導線で結線する

太陽電池のカバーガラスを導電性被膜付き(酸化インジウムITO)にする

熱制御材表面にITOを被覆する

熱制御材は高誘電率のテフロンの使用を避け 高伝導度耐環境性に優れたブラックカプトンを使用

イオンエンジンの中和器で能動帯電制御

内部帯電への対策例

アルミで3mm厚さに相当するシールドで囲む(Faraday Cage)

テフロンやカプトンなどの誘電体材料の内部での使用量を最小限に押さえる

回路基板やコンフォーマルコーティングは誘電体なので電流リークパス(1012Ωcmまたは1012Ωcm2

程度)を必ずつける

特にスポット的な放射線シールドの金属材には必ず電流リークパスをつける

帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備

衛星モデル作成

材料物性テーブル設定

宇宙環境パラメータ設定

Converter

転送ディレクトリ 解析データファイル

転送

解析ディレクトリ生成 解析結果 進行状況チェック ファイル操作

MUSCAT 解析エンジン

解析結果 表示

パラメトリックラン

オプション 解析

大型パネル実験(35mtimes11m) クーポンパネル実験(26cmtimes16cm)

環境模擬試験 環境模擬試験

MUSCATに使用する物性値設計標準制定のための知見などを得ることを目的に軌道上の宇宙環境を模擬した地上試験を行っている これらの試験では放電の発生頻度や電圧閾値放電発生による太陽電池パネルや搭載機器への影響を検証している

放射線計測装置の原理

bull その粒子が物質を通過する際のエネルギー損出率が粒子の電荷(原子番号)Zの二乗に比例すること(Bethe-Blochの式)を利用する

S2

E

ΔE Ersquo

S1 S3

  • 宇宙機の設計のための宇宙環境
  • 話の流れ
  • 話の流れ
  • TEDA(技術データ取得装置)(国産部品の宇宙環境での実証の必要性)
  • ETS-VTEDA(技術データ取得装置)誕生前の部品の宇宙実証の背景
  • スライド番号 6
  • スライド番号 7
  • スライド番号 8
  • スライド番号 9
  • 図6太陽黒点数と静止軌道電子 (>04MeV ) Flux の変動 (ETS-V搭載DOMによる観測)
  • スライド番号 11
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの開発(理研東大と共同で宇宙環境計測の充実)
  • ETS-VI(きく6号)打ち上がったがGEOに行かずGTOに留まる
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの成果
  • スライド番号 15
  • スライド番号 16
  • スライド番号 17
  • ADEOS搭載TEDA(世界2番目の異常宇宙線ACR)
  • BBND (ボナー球中性子検出器)
  • スライド番号 20
  • ISS搭載BBNDの成果(約8か月)
  • スライド番号 22
  • MDS-1搭載放射線吸収線量モニタ(SDOM)
  • 放射線帯変動モデルの開発MDS-1 065 MeV 電子フラックス
  • 変動パラメータの選択 (1 cycle solar activity)
  • 変動パラメータ- Tavg の定義-
  • 065MeV 電子 L値-Tavg マップ
  • 13MeV 陽子 L値-Tavg マップ
  • 電子観測とMDS-1モデルの比較
  • 放射線帯フラックスピークの変動
  • 陽子観測とモデルの比較
  • 電子(035~078MeV) 1日の変動予測GOSAT軌道
  • 電子(035~078MeV) 変動の信頼度水準(1日)GOSAT軌道
  • MDS-1 model と AE-8 modelとの比較1日
  • 話の流れ
  • 2003年10月 みどり号の全損事故(複合現象)
  • 衛星帯電の基本式
  • 内部帯電
  • パドルでの帯電放電メカニズム
  • スライド番号 40
  • スライド番号 41
  • スライド番号 42
  • データ中継技術衛星DRTS (こだま)の不具合
  • DRTS ESA スパイクノイズと電子フルエンスの比較(赤の丸が異常検知)
  • 不具合が宇宙環境によるものであるか判断する際のポイント
  • 話の流れ
  • 宇宙天気のリスク-宇宙環境によるシステムへの影響 -
  • NASAの報告-GNampCに注目-
  • NASAの報告(続き)
  • 宇宙環境を原因とする不具合の割合-JAXAの場合-
  • 不具合発生部位の割合 
  • Satellite News Digest -静止軌道不具合-
  • 太陽活動と静止軌道衛星不具合例
  • スライド番号 54
  • スライド番号 55
  • スライド番号 56
  • 衛星開発段階における対策
  • 運用における対応
  • 話の流れ
  • スライド番号 60
  • スライド番号 61
  • まとめ(その1)
  • まとめ(その2)
  • 宇宙環境グループは宇宙ステーションと衛星プロジェクトの安全な遂行に貢献しています
  • 補足資料
  • 不具合原因の推移
  • 何故不具合は減らないか
  • 放射線による影響の概要
  • 耐放射線設計手順
  • 各軌道における放射線環境
  • 放射線による部品材料の影響
  • トータルドーズ効果
  • シングルイベント効果
  • シングルイベントメカニズム-陽子と重イオンの違い-
  • エラー発生率の計算
  • 線エネルギー付与(LET)(linear energy transfer)
  • 南大西洋異常(SAA)
  • Single Event Lachup
  • シングルイベントと陽子分布
  • NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)
  • 低軌道での電子フラックスと不具合の発生場所
  • 南大西洋異常(SAA)と極の角
  • スライド番号 83
  • Carrington Flare
  • 放射線対策
  • スライド番号 86
  • スライド番号 87
  • 帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備
  • スライド番号 89
  • 放射線計測装置の原理
Page 69: 宇宙機の設計のための宇宙環境の方針から国産部品開発(42品種)が実施された。 . 半導体電子部品は耐放射線性を加味して、人工衛星(特に

耐放射線設計手順

軌道条件

ミッション期間

環境条件設定

トータルドーズの予測

1MeV電子換算被曝算出

NIELの換算

LETフルエンス算出

陽子フルエンス算出

対  策  の  検  討

対  策  の  検  討

対  策  の  検  討

放射線による劣化率予測

劣化率予測 特性予測

耐性データ

放射線による劣化率予測

耐性データ

劣化率予測アレイ出力劣化予測

感受性データ

シングルイベント発生率予測 致命度解析

衛星内質量分布

(2)

部品材料の選定

他の要因による劣化率予測

(2)(2) (3)

回路設計等NO

OK

アレイ構造 セル選定

他の要因による劣化率予測 アレイ設計(2)

(2) (2) (2) (3)

衛星内質量分布 部品選定(2)

(2) (2)(3)

NO

OK

NO

OK

(1) 環境モデルマージを含む(2) 部品レベルの検討(3) アセンブリレベルでの検討(4) 設計マージン環境モデル   マージを含め大丈夫か

トータルドーズ

太陽電池アレイの劣化

シングルイベント効果

回路設計

補足放射線太陽宇宙線銀河宇宙線

NEILを用いたダメージファクターの算出

対  策  の  検  討

放射線による劣化率予測

劣化率予測 特性予測

耐性データ

(2)

部品材料の選定

他の要因による劣化率予測

(2)(2) (3)

回路設計等NO

OK

衛星内質量分布 半導体デバイスの変位損傷

(1)

(4)

(4)

(4)

(4)

各軌道における放射線環境

1E+10

1E+11

1E+12

1E+13

1E+14

1E+15

1E+16

1E+17

1E+18

1E+19

1E+20

001 010 100 1000

捕捉

電子

の積

分フ

ルエ

ンス

[m

2 ]

エネルギー[MeV]

各軌道における電子捕捉積分フルエンス(3年間)

LEO

EOS GEO

MEO

GTO

GEO 軌道傾斜角 0deg 高度36000km GTO 軌道傾斜角 18deg 高度 360km~36000km MEO 軌道傾斜角 51deg 高度 10000km EOS 軌道傾斜角 98deg 高度705km LEO 軌道傾斜角 29deg 高度 600km

1E+12

1E+13

1E+14

1E+15

1E+16

1E+17

1E+18

1E+19

1E+20

01 10 100 1000

捕捉

陽子の

積分フルエン

ス[

m2 ]

エネルギー[MeV]

各軌道における捕捉陽子積分フルエンス(3年間)

MEO

GTO

GEO

EOS LEO

放射線による部品材料の影響

総照射線量 (TIDTotal Ionising Dose )

電離損傷

バイポーラTrの電流増幅率の低下リーク電流の増大

γ線で評価

トータルドーズ効果

変位損傷 (DDDisplacement Damage )または 非イオン化エネルギー損失 (NIELNon-Ionising Energy

Loss )

変位損傷(格子欠陥の生成)

電荷輸送効率の低下 (CCD)太陽電池の効率低下等

電子陽子により評価

シングルイベント効果

1個の荷電粒子の入射により発生する誤動作

ソフト(Latch-Up Burnout) エラー又は ソフト (Upset) エラー

陽子及び重イオンで評価

トータルドーズ効果

+ - + + - + - + - - + + + + -

ゲート酸化膜

電離

格子欠陥

正電荷捕獲

+ 正孔 - 電子

電極

(Silicon oxidenitride)

荷電粒子

反跳原子

ゲート絶縁膜中に電荷が蓄積することによるMOSトランジスタのしきい電圧(MOSトランジスタがオフからオンに変化するゲート電圧)の変化をもたらすただ

し最近の最先端チップはゲート絶縁膜がきわめて薄くなっているこのためゲート絶縁膜よりもフィールド絶縁膜(隣接するトランジスタを電気的に分離する絶縁膜)での電荷蓄積が相対的には大きな問題になってきている」

シングルイベント効果

メモリセルはNチャンネルとPチャンネルMOSFETより構成されメモリ情報は回路ノード12の電位の

高低により記録している空乏層の広がっているPN接合12の領域に

重イオンが入射した場合電荷の発生と空乏層内への少数キャリアの収集が起こるこの収集電荷量が回路の耐量を越えた場合(c)に示すように反転が起こる(ソフトエラー)一方pウエル-N基板接

合の空乏層内に電荷収集量が起こりえる耐性を越えると寄生的に存在するPNPNサイリスタ構造がオ

ンし電源と基板間に大電流が流れる状態が生じる(ラッチアップ)

シングルイベントメカニズム -陽子と重イオンの違い-

エラー発生率の計算

線エネルギー付与(LET) (linear energy transfer)

電離性放射線が物質中を通過する際飛程の単位長さ当りに平均して失うエネルギーをいう各種の放射線のうちX線γ線はLETが小さいので低LETといいα線中性子線その他重イオン核分裂破片のLETは大きいので高LETという MeVμmMeV(gcm2)やMeV(mgcm2)で表される

南大西洋異常(SAA) bull 地球の自転軸と磁気軸のずれ

darr bull 放射線帯が自転軸に対して非

対称

bull 南大西洋上空では放射線帯内帯が低高度に落ちてきているこの領域を南大西洋異常域(SAA South Atlantic Anomaly)と呼ぶ

bull 地球観測衛星ではSAAで放射線帯陽子の影響を受ける

Single Event Lachup

シングルイベントと陽子分布

MOS-1衛星(高度909km軌道傾斜角99度)で発生したシングルイベントと 陽子30MeV以上の等高線マップを重ね合わせた結果

NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)

bull 入射粒子が電離によらず与える損傷非イオン化損失

低軌道での電子フラックスと 不具合の発生場所

南大西洋異常(SAA)と極の角

高度800kmでの電子フラックス図極の角(polar horn)とSAAを示す

太陽粒子線 bull 太陽高エネルギー粒子線(SPE Solar Proton Events)は太陽フレア とコロナガス噴出 (CMECoronal Mass Ejections )により引き起こされる bull フレアのスペクトルは可変であるためあるエネルギー域における最悪状態イベントは必ずしも別のエネルギー域における最悪条件ではない 1972年8月のイベント 10~70MeVの粒子が最も多かった 1989年10のイベント 1972年8月のイベントに比べ低エネルギー領域 高エネルギー領域が明らかに激しかった

フルエンス 105 to 1011 cm-2

変動期間 1日から数日

ldquoBastiliardquo Solar Event 14 July 2000

Carrington Flare

84

(LW Townseed) Carrington Flare(1859年) Carrington Flare による30MeV以上トータルFluenceを118times109cm-2で規格化 ~1989年フレアの約13倍(シングルイベントの評価で使用) ~1991年フレアの約9倍 2012年7月23日にキャリントンイベントとほぼ同等の爆発現象が太陽あるいは太陽の周りで起きていたということがNASAの太陽観測衛星「STEREO」の解析から発表された

放射線対策 bull 放射線シールドを付加し放射線を減衰させる

bull 放射線耐性の強い部品(SOI(Silicon On Insulator)技術による耐放射線部品)材料に変更する

bull 放射線による損傷を吸収するために回路または構造上のマージンを持たせる bull ソフト的なエラーに対しては エラー検出訂正機能や多数決

機能等でソフト的エラーが起きてもシステムが機能するようにしたフォールトトレラント機能を付けて対処する ICのハード的故障に対しては ラッチアップ耐性の強い部品を選定するしかないが 電流制限回路を付ける対策も採られる パワーMOSFETに対しては部品選定 電源電圧を規格値の半分以下に落とす等の対策を採る

SOI技術

表面帯電への対策例

表面の物体間を導線で結線する

太陽電池のカバーガラスを導電性被膜付き(酸化インジウムITO)にする

熱制御材表面にITOを被覆する

熱制御材は高誘電率のテフロンの使用を避け 高伝導度耐環境性に優れたブラックカプトンを使用

イオンエンジンの中和器で能動帯電制御

内部帯電への対策例

アルミで3mm厚さに相当するシールドで囲む(Faraday Cage)

テフロンやカプトンなどの誘電体材料の内部での使用量を最小限に押さえる

回路基板やコンフォーマルコーティングは誘電体なので電流リークパス(1012Ωcmまたは1012Ωcm2

程度)を必ずつける

特にスポット的な放射線シールドの金属材には必ず電流リークパスをつける

帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備

衛星モデル作成

材料物性テーブル設定

宇宙環境パラメータ設定

Converter

転送ディレクトリ 解析データファイル

転送

解析ディレクトリ生成 解析結果 進行状況チェック ファイル操作

MUSCAT 解析エンジン

解析結果 表示

パラメトリックラン

オプション 解析

大型パネル実験(35mtimes11m) クーポンパネル実験(26cmtimes16cm)

環境模擬試験 環境模擬試験

MUSCATに使用する物性値設計標準制定のための知見などを得ることを目的に軌道上の宇宙環境を模擬した地上試験を行っている これらの試験では放電の発生頻度や電圧閾値放電発生による太陽電池パネルや搭載機器への影響を検証している

放射線計測装置の原理

bull その粒子が物質を通過する際のエネルギー損出率が粒子の電荷(原子番号)Zの二乗に比例すること(Bethe-Blochの式)を利用する

S2

E

ΔE Ersquo

S1 S3

  • 宇宙機の設計のための宇宙環境
  • 話の流れ
  • 話の流れ
  • TEDA(技術データ取得装置)(国産部品の宇宙環境での実証の必要性)
  • ETS-VTEDA(技術データ取得装置)誕生前の部品の宇宙実証の背景
  • スライド番号 6
  • スライド番号 7
  • スライド番号 8
  • スライド番号 9
  • 図6太陽黒点数と静止軌道電子 (>04MeV ) Flux の変動 (ETS-V搭載DOMによる観測)
  • スライド番号 11
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの開発(理研東大と共同で宇宙環境計測の充実)
  • ETS-VI(きく6号)打ち上がったがGEOに行かずGTOに留まる
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの成果
  • スライド番号 15
  • スライド番号 16
  • スライド番号 17
  • ADEOS搭載TEDA(世界2番目の異常宇宙線ACR)
  • BBND (ボナー球中性子検出器)
  • スライド番号 20
  • ISS搭載BBNDの成果(約8か月)
  • スライド番号 22
  • MDS-1搭載放射線吸収線量モニタ(SDOM)
  • 放射線帯変動モデルの開発MDS-1 065 MeV 電子フラックス
  • 変動パラメータの選択 (1 cycle solar activity)
  • 変動パラメータ- Tavg の定義-
  • 065MeV 電子 L値-Tavg マップ
  • 13MeV 陽子 L値-Tavg マップ
  • 電子観測とMDS-1モデルの比較
  • 放射線帯フラックスピークの変動
  • 陽子観測とモデルの比較
  • 電子(035~078MeV) 1日の変動予測GOSAT軌道
  • 電子(035~078MeV) 変動の信頼度水準(1日)GOSAT軌道
  • MDS-1 model と AE-8 modelとの比較1日
  • 話の流れ
  • 2003年10月 みどり号の全損事故(複合現象)
  • 衛星帯電の基本式
  • 内部帯電
  • パドルでの帯電放電メカニズム
  • スライド番号 40
  • スライド番号 41
  • スライド番号 42
  • データ中継技術衛星DRTS (こだま)の不具合
  • DRTS ESA スパイクノイズと電子フルエンスの比較(赤の丸が異常検知)
  • 不具合が宇宙環境によるものであるか判断する際のポイント
  • 話の流れ
  • 宇宙天気のリスク-宇宙環境によるシステムへの影響 -
  • NASAの報告-GNampCに注目-
  • NASAの報告(続き)
  • 宇宙環境を原因とする不具合の割合-JAXAの場合-
  • 不具合発生部位の割合 
  • Satellite News Digest -静止軌道不具合-
  • 太陽活動と静止軌道衛星不具合例
  • スライド番号 54
  • スライド番号 55
  • スライド番号 56
  • 衛星開発段階における対策
  • 運用における対応
  • 話の流れ
  • スライド番号 60
  • スライド番号 61
  • まとめ(その1)
  • まとめ(その2)
  • 宇宙環境グループは宇宙ステーションと衛星プロジェクトの安全な遂行に貢献しています
  • 補足資料
  • 不具合原因の推移
  • 何故不具合は減らないか
  • 放射線による影響の概要
  • 耐放射線設計手順
  • 各軌道における放射線環境
  • 放射線による部品材料の影響
  • トータルドーズ効果
  • シングルイベント効果
  • シングルイベントメカニズム-陽子と重イオンの違い-
  • エラー発生率の計算
  • 線エネルギー付与(LET)(linear energy transfer)
  • 南大西洋異常(SAA)
  • Single Event Lachup
  • シングルイベントと陽子分布
  • NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)
  • 低軌道での電子フラックスと不具合の発生場所
  • 南大西洋異常(SAA)と極の角
  • スライド番号 83
  • Carrington Flare
  • 放射線対策
  • スライド番号 86
  • スライド番号 87
  • 帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備
  • スライド番号 89
  • 放射線計測装置の原理
Page 70: 宇宙機の設計のための宇宙環境の方針から国産部品開発(42品種)が実施された。 . 半導体電子部品は耐放射線性を加味して、人工衛星(特に

各軌道における放射線環境

1E+10

1E+11

1E+12

1E+13

1E+14

1E+15

1E+16

1E+17

1E+18

1E+19

1E+20

001 010 100 1000

捕捉

電子

の積

分フ

ルエ

ンス

[m

2 ]

エネルギー[MeV]

各軌道における電子捕捉積分フルエンス(3年間)

LEO

EOS GEO

MEO

GTO

GEO 軌道傾斜角 0deg 高度36000km GTO 軌道傾斜角 18deg 高度 360km~36000km MEO 軌道傾斜角 51deg 高度 10000km EOS 軌道傾斜角 98deg 高度705km LEO 軌道傾斜角 29deg 高度 600km

1E+12

1E+13

1E+14

1E+15

1E+16

1E+17

1E+18

1E+19

1E+20

01 10 100 1000

捕捉

陽子の

積分フルエン

ス[

m2 ]

エネルギー[MeV]

各軌道における捕捉陽子積分フルエンス(3年間)

MEO

GTO

GEO

EOS LEO

放射線による部品材料の影響

総照射線量 (TIDTotal Ionising Dose )

電離損傷

バイポーラTrの電流増幅率の低下リーク電流の増大

γ線で評価

トータルドーズ効果

変位損傷 (DDDisplacement Damage )または 非イオン化エネルギー損失 (NIELNon-Ionising Energy

Loss )

変位損傷(格子欠陥の生成)

電荷輸送効率の低下 (CCD)太陽電池の効率低下等

電子陽子により評価

シングルイベント効果

1個の荷電粒子の入射により発生する誤動作

ソフト(Latch-Up Burnout) エラー又は ソフト (Upset) エラー

陽子及び重イオンで評価

トータルドーズ効果

+ - + + - + - + - - + + + + -

ゲート酸化膜

電離

格子欠陥

正電荷捕獲

+ 正孔 - 電子

電極

(Silicon oxidenitride)

荷電粒子

反跳原子

ゲート絶縁膜中に電荷が蓄積することによるMOSトランジスタのしきい電圧(MOSトランジスタがオフからオンに変化するゲート電圧)の変化をもたらすただ

し最近の最先端チップはゲート絶縁膜がきわめて薄くなっているこのためゲート絶縁膜よりもフィールド絶縁膜(隣接するトランジスタを電気的に分離する絶縁膜)での電荷蓄積が相対的には大きな問題になってきている」

シングルイベント効果

メモリセルはNチャンネルとPチャンネルMOSFETより構成されメモリ情報は回路ノード12の電位の

高低により記録している空乏層の広がっているPN接合12の領域に

重イオンが入射した場合電荷の発生と空乏層内への少数キャリアの収集が起こるこの収集電荷量が回路の耐量を越えた場合(c)に示すように反転が起こる(ソフトエラー)一方pウエル-N基板接

合の空乏層内に電荷収集量が起こりえる耐性を越えると寄生的に存在するPNPNサイリスタ構造がオ

ンし電源と基板間に大電流が流れる状態が生じる(ラッチアップ)

シングルイベントメカニズム -陽子と重イオンの違い-

エラー発生率の計算

線エネルギー付与(LET) (linear energy transfer)

電離性放射線が物質中を通過する際飛程の単位長さ当りに平均して失うエネルギーをいう各種の放射線のうちX線γ線はLETが小さいので低LETといいα線中性子線その他重イオン核分裂破片のLETは大きいので高LETという MeVμmMeV(gcm2)やMeV(mgcm2)で表される

南大西洋異常(SAA) bull 地球の自転軸と磁気軸のずれ

darr bull 放射線帯が自転軸に対して非

対称

bull 南大西洋上空では放射線帯内帯が低高度に落ちてきているこの領域を南大西洋異常域(SAA South Atlantic Anomaly)と呼ぶ

bull 地球観測衛星ではSAAで放射線帯陽子の影響を受ける

Single Event Lachup

シングルイベントと陽子分布

MOS-1衛星(高度909km軌道傾斜角99度)で発生したシングルイベントと 陽子30MeV以上の等高線マップを重ね合わせた結果

NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)

bull 入射粒子が電離によらず与える損傷非イオン化損失

低軌道での電子フラックスと 不具合の発生場所

南大西洋異常(SAA)と極の角

高度800kmでの電子フラックス図極の角(polar horn)とSAAを示す

太陽粒子線 bull 太陽高エネルギー粒子線(SPE Solar Proton Events)は太陽フレア とコロナガス噴出 (CMECoronal Mass Ejections )により引き起こされる bull フレアのスペクトルは可変であるためあるエネルギー域における最悪状態イベントは必ずしも別のエネルギー域における最悪条件ではない 1972年8月のイベント 10~70MeVの粒子が最も多かった 1989年10のイベント 1972年8月のイベントに比べ低エネルギー領域 高エネルギー領域が明らかに激しかった

フルエンス 105 to 1011 cm-2

変動期間 1日から数日

ldquoBastiliardquo Solar Event 14 July 2000

Carrington Flare

84

(LW Townseed) Carrington Flare(1859年) Carrington Flare による30MeV以上トータルFluenceを118times109cm-2で規格化 ~1989年フレアの約13倍(シングルイベントの評価で使用) ~1991年フレアの約9倍 2012年7月23日にキャリントンイベントとほぼ同等の爆発現象が太陽あるいは太陽の周りで起きていたということがNASAの太陽観測衛星「STEREO」の解析から発表された

放射線対策 bull 放射線シールドを付加し放射線を減衰させる

bull 放射線耐性の強い部品(SOI(Silicon On Insulator)技術による耐放射線部品)材料に変更する

bull 放射線による損傷を吸収するために回路または構造上のマージンを持たせる bull ソフト的なエラーに対しては エラー検出訂正機能や多数決

機能等でソフト的エラーが起きてもシステムが機能するようにしたフォールトトレラント機能を付けて対処する ICのハード的故障に対しては ラッチアップ耐性の強い部品を選定するしかないが 電流制限回路を付ける対策も採られる パワーMOSFETに対しては部品選定 電源電圧を規格値の半分以下に落とす等の対策を採る

SOI技術

表面帯電への対策例

表面の物体間を導線で結線する

太陽電池のカバーガラスを導電性被膜付き(酸化インジウムITO)にする

熱制御材表面にITOを被覆する

熱制御材は高誘電率のテフロンの使用を避け 高伝導度耐環境性に優れたブラックカプトンを使用

イオンエンジンの中和器で能動帯電制御

内部帯電への対策例

アルミで3mm厚さに相当するシールドで囲む(Faraday Cage)

テフロンやカプトンなどの誘電体材料の内部での使用量を最小限に押さえる

回路基板やコンフォーマルコーティングは誘電体なので電流リークパス(1012Ωcmまたは1012Ωcm2

程度)を必ずつける

特にスポット的な放射線シールドの金属材には必ず電流リークパスをつける

帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備

衛星モデル作成

材料物性テーブル設定

宇宙環境パラメータ設定

Converter

転送ディレクトリ 解析データファイル

転送

解析ディレクトリ生成 解析結果 進行状況チェック ファイル操作

MUSCAT 解析エンジン

解析結果 表示

パラメトリックラン

オプション 解析

大型パネル実験(35mtimes11m) クーポンパネル実験(26cmtimes16cm)

環境模擬試験 環境模擬試験

MUSCATに使用する物性値設計標準制定のための知見などを得ることを目的に軌道上の宇宙環境を模擬した地上試験を行っている これらの試験では放電の発生頻度や電圧閾値放電発生による太陽電池パネルや搭載機器への影響を検証している

放射線計測装置の原理

bull その粒子が物質を通過する際のエネルギー損出率が粒子の電荷(原子番号)Zの二乗に比例すること(Bethe-Blochの式)を利用する

S2

E

ΔE Ersquo

S1 S3

  • 宇宙機の設計のための宇宙環境
  • 話の流れ
  • 話の流れ
  • TEDA(技術データ取得装置)(国産部品の宇宙環境での実証の必要性)
  • ETS-VTEDA(技術データ取得装置)誕生前の部品の宇宙実証の背景
  • スライド番号 6
  • スライド番号 7
  • スライド番号 8
  • スライド番号 9
  • 図6太陽黒点数と静止軌道電子 (>04MeV ) Flux の変動 (ETS-V搭載DOMによる観測)
  • スライド番号 11
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの開発(理研東大と共同で宇宙環境計測の充実)
  • ETS-VI(きく6号)打ち上がったがGEOに行かずGTOに留まる
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの成果
  • スライド番号 15
  • スライド番号 16
  • スライド番号 17
  • ADEOS搭載TEDA(世界2番目の異常宇宙線ACR)
  • BBND (ボナー球中性子検出器)
  • スライド番号 20
  • ISS搭載BBNDの成果(約8か月)
  • スライド番号 22
  • MDS-1搭載放射線吸収線量モニタ(SDOM)
  • 放射線帯変動モデルの開発MDS-1 065 MeV 電子フラックス
  • 変動パラメータの選択 (1 cycle solar activity)
  • 変動パラメータ- Tavg の定義-
  • 065MeV 電子 L値-Tavg マップ
  • 13MeV 陽子 L値-Tavg マップ
  • 電子観測とMDS-1モデルの比較
  • 放射線帯フラックスピークの変動
  • 陽子観測とモデルの比較
  • 電子(035~078MeV) 1日の変動予測GOSAT軌道
  • 電子(035~078MeV) 変動の信頼度水準(1日)GOSAT軌道
  • MDS-1 model と AE-8 modelとの比較1日
  • 話の流れ
  • 2003年10月 みどり号の全損事故(複合現象)
  • 衛星帯電の基本式
  • 内部帯電
  • パドルでの帯電放電メカニズム
  • スライド番号 40
  • スライド番号 41
  • スライド番号 42
  • データ中継技術衛星DRTS (こだま)の不具合
  • DRTS ESA スパイクノイズと電子フルエンスの比較(赤の丸が異常検知)
  • 不具合が宇宙環境によるものであるか判断する際のポイント
  • 話の流れ
  • 宇宙天気のリスク-宇宙環境によるシステムへの影響 -
  • NASAの報告-GNampCに注目-
  • NASAの報告(続き)
  • 宇宙環境を原因とする不具合の割合-JAXAの場合-
  • 不具合発生部位の割合 
  • Satellite News Digest -静止軌道不具合-
  • 太陽活動と静止軌道衛星不具合例
  • スライド番号 54
  • スライド番号 55
  • スライド番号 56
  • 衛星開発段階における対策
  • 運用における対応
  • 話の流れ
  • スライド番号 60
  • スライド番号 61
  • まとめ(その1)
  • まとめ(その2)
  • 宇宙環境グループは宇宙ステーションと衛星プロジェクトの安全な遂行に貢献しています
  • 補足資料
  • 不具合原因の推移
  • 何故不具合は減らないか
  • 放射線による影響の概要
  • 耐放射線設計手順
  • 各軌道における放射線環境
  • 放射線による部品材料の影響
  • トータルドーズ効果
  • シングルイベント効果
  • シングルイベントメカニズム-陽子と重イオンの違い-
  • エラー発生率の計算
  • 線エネルギー付与(LET)(linear energy transfer)
  • 南大西洋異常(SAA)
  • Single Event Lachup
  • シングルイベントと陽子分布
  • NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)
  • 低軌道での電子フラックスと不具合の発生場所
  • 南大西洋異常(SAA)と極の角
  • スライド番号 83
  • Carrington Flare
  • 放射線対策
  • スライド番号 86
  • スライド番号 87
  • 帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備
  • スライド番号 89
  • 放射線計測装置の原理
Page 71: 宇宙機の設計のための宇宙環境の方針から国産部品開発(42品種)が実施された。 . 半導体電子部品は耐放射線性を加味して、人工衛星(特に

放射線による部品材料の影響

総照射線量 (TIDTotal Ionising Dose )

電離損傷

バイポーラTrの電流増幅率の低下リーク電流の増大

γ線で評価

トータルドーズ効果

変位損傷 (DDDisplacement Damage )または 非イオン化エネルギー損失 (NIELNon-Ionising Energy

Loss )

変位損傷(格子欠陥の生成)

電荷輸送効率の低下 (CCD)太陽電池の効率低下等

電子陽子により評価

シングルイベント効果

1個の荷電粒子の入射により発生する誤動作

ソフト(Latch-Up Burnout) エラー又は ソフト (Upset) エラー

陽子及び重イオンで評価

トータルドーズ効果

+ - + + - + - + - - + + + + -

ゲート酸化膜

電離

格子欠陥

正電荷捕獲

+ 正孔 - 電子

電極

(Silicon oxidenitride)

荷電粒子

反跳原子

ゲート絶縁膜中に電荷が蓄積することによるMOSトランジスタのしきい電圧(MOSトランジスタがオフからオンに変化するゲート電圧)の変化をもたらすただ

し最近の最先端チップはゲート絶縁膜がきわめて薄くなっているこのためゲート絶縁膜よりもフィールド絶縁膜(隣接するトランジスタを電気的に分離する絶縁膜)での電荷蓄積が相対的には大きな問題になってきている」

シングルイベント効果

メモリセルはNチャンネルとPチャンネルMOSFETより構成されメモリ情報は回路ノード12の電位の

高低により記録している空乏層の広がっているPN接合12の領域に

重イオンが入射した場合電荷の発生と空乏層内への少数キャリアの収集が起こるこの収集電荷量が回路の耐量を越えた場合(c)に示すように反転が起こる(ソフトエラー)一方pウエル-N基板接

合の空乏層内に電荷収集量が起こりえる耐性を越えると寄生的に存在するPNPNサイリスタ構造がオ

ンし電源と基板間に大電流が流れる状態が生じる(ラッチアップ)

シングルイベントメカニズム -陽子と重イオンの違い-

エラー発生率の計算

線エネルギー付与(LET) (linear energy transfer)

電離性放射線が物質中を通過する際飛程の単位長さ当りに平均して失うエネルギーをいう各種の放射線のうちX線γ線はLETが小さいので低LETといいα線中性子線その他重イオン核分裂破片のLETは大きいので高LETという MeVμmMeV(gcm2)やMeV(mgcm2)で表される

南大西洋異常(SAA) bull 地球の自転軸と磁気軸のずれ

darr bull 放射線帯が自転軸に対して非

対称

bull 南大西洋上空では放射線帯内帯が低高度に落ちてきているこの領域を南大西洋異常域(SAA South Atlantic Anomaly)と呼ぶ

bull 地球観測衛星ではSAAで放射線帯陽子の影響を受ける

Single Event Lachup

シングルイベントと陽子分布

MOS-1衛星(高度909km軌道傾斜角99度)で発生したシングルイベントと 陽子30MeV以上の等高線マップを重ね合わせた結果

NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)

bull 入射粒子が電離によらず与える損傷非イオン化損失

低軌道での電子フラックスと 不具合の発生場所

南大西洋異常(SAA)と極の角

高度800kmでの電子フラックス図極の角(polar horn)とSAAを示す

太陽粒子線 bull 太陽高エネルギー粒子線(SPE Solar Proton Events)は太陽フレア とコロナガス噴出 (CMECoronal Mass Ejections )により引き起こされる bull フレアのスペクトルは可変であるためあるエネルギー域における最悪状態イベントは必ずしも別のエネルギー域における最悪条件ではない 1972年8月のイベント 10~70MeVの粒子が最も多かった 1989年10のイベント 1972年8月のイベントに比べ低エネルギー領域 高エネルギー領域が明らかに激しかった

フルエンス 105 to 1011 cm-2

変動期間 1日から数日

ldquoBastiliardquo Solar Event 14 July 2000

Carrington Flare

84

(LW Townseed) Carrington Flare(1859年) Carrington Flare による30MeV以上トータルFluenceを118times109cm-2で規格化 ~1989年フレアの約13倍(シングルイベントの評価で使用) ~1991年フレアの約9倍 2012年7月23日にキャリントンイベントとほぼ同等の爆発現象が太陽あるいは太陽の周りで起きていたということがNASAの太陽観測衛星「STEREO」の解析から発表された

放射線対策 bull 放射線シールドを付加し放射線を減衰させる

bull 放射線耐性の強い部品(SOI(Silicon On Insulator)技術による耐放射線部品)材料に変更する

bull 放射線による損傷を吸収するために回路または構造上のマージンを持たせる bull ソフト的なエラーに対しては エラー検出訂正機能や多数決

機能等でソフト的エラーが起きてもシステムが機能するようにしたフォールトトレラント機能を付けて対処する ICのハード的故障に対しては ラッチアップ耐性の強い部品を選定するしかないが 電流制限回路を付ける対策も採られる パワーMOSFETに対しては部品選定 電源電圧を規格値の半分以下に落とす等の対策を採る

SOI技術

表面帯電への対策例

表面の物体間を導線で結線する

太陽電池のカバーガラスを導電性被膜付き(酸化インジウムITO)にする

熱制御材表面にITOを被覆する

熱制御材は高誘電率のテフロンの使用を避け 高伝導度耐環境性に優れたブラックカプトンを使用

イオンエンジンの中和器で能動帯電制御

内部帯電への対策例

アルミで3mm厚さに相当するシールドで囲む(Faraday Cage)

テフロンやカプトンなどの誘電体材料の内部での使用量を最小限に押さえる

回路基板やコンフォーマルコーティングは誘電体なので電流リークパス(1012Ωcmまたは1012Ωcm2

程度)を必ずつける

特にスポット的な放射線シールドの金属材には必ず電流リークパスをつける

帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備

衛星モデル作成

材料物性テーブル設定

宇宙環境パラメータ設定

Converter

転送ディレクトリ 解析データファイル

転送

解析ディレクトリ生成 解析結果 進行状況チェック ファイル操作

MUSCAT 解析エンジン

解析結果 表示

パラメトリックラン

オプション 解析

大型パネル実験(35mtimes11m) クーポンパネル実験(26cmtimes16cm)

環境模擬試験 環境模擬試験

MUSCATに使用する物性値設計標準制定のための知見などを得ることを目的に軌道上の宇宙環境を模擬した地上試験を行っている これらの試験では放電の発生頻度や電圧閾値放電発生による太陽電池パネルや搭載機器への影響を検証している

放射線計測装置の原理

bull その粒子が物質を通過する際のエネルギー損出率が粒子の電荷(原子番号)Zの二乗に比例すること(Bethe-Blochの式)を利用する

S2

E

ΔE Ersquo

S1 S3

  • 宇宙機の設計のための宇宙環境
  • 話の流れ
  • 話の流れ
  • TEDA(技術データ取得装置)(国産部品の宇宙環境での実証の必要性)
  • ETS-VTEDA(技術データ取得装置)誕生前の部品の宇宙実証の背景
  • スライド番号 6
  • スライド番号 7
  • スライド番号 8
  • スライド番号 9
  • 図6太陽黒点数と静止軌道電子 (>04MeV ) Flux の変動 (ETS-V搭載DOMによる観測)
  • スライド番号 11
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの開発(理研東大と共同で宇宙環境計測の充実)
  • ETS-VI(きく6号)打ち上がったがGEOに行かずGTOに留まる
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの成果
  • スライド番号 15
  • スライド番号 16
  • スライド番号 17
  • ADEOS搭載TEDA(世界2番目の異常宇宙線ACR)
  • BBND (ボナー球中性子検出器)
  • スライド番号 20
  • ISS搭載BBNDの成果(約8か月)
  • スライド番号 22
  • MDS-1搭載放射線吸収線量モニタ(SDOM)
  • 放射線帯変動モデルの開発MDS-1 065 MeV 電子フラックス
  • 変動パラメータの選択 (1 cycle solar activity)
  • 変動パラメータ- Tavg の定義-
  • 065MeV 電子 L値-Tavg マップ
  • 13MeV 陽子 L値-Tavg マップ
  • 電子観測とMDS-1モデルの比較
  • 放射線帯フラックスピークの変動
  • 陽子観測とモデルの比較
  • 電子(035~078MeV) 1日の変動予測GOSAT軌道
  • 電子(035~078MeV) 変動の信頼度水準(1日)GOSAT軌道
  • MDS-1 model と AE-8 modelとの比較1日
  • 話の流れ
  • 2003年10月 みどり号の全損事故(複合現象)
  • 衛星帯電の基本式
  • 内部帯電
  • パドルでの帯電放電メカニズム
  • スライド番号 40
  • スライド番号 41
  • スライド番号 42
  • データ中継技術衛星DRTS (こだま)の不具合
  • DRTS ESA スパイクノイズと電子フルエンスの比較(赤の丸が異常検知)
  • 不具合が宇宙環境によるものであるか判断する際のポイント
  • 話の流れ
  • 宇宙天気のリスク-宇宙環境によるシステムへの影響 -
  • NASAの報告-GNampCに注目-
  • NASAの報告(続き)
  • 宇宙環境を原因とする不具合の割合-JAXAの場合-
  • 不具合発生部位の割合 
  • Satellite News Digest -静止軌道不具合-
  • 太陽活動と静止軌道衛星不具合例
  • スライド番号 54
  • スライド番号 55
  • スライド番号 56
  • 衛星開発段階における対策
  • 運用における対応
  • 話の流れ
  • スライド番号 60
  • スライド番号 61
  • まとめ(その1)
  • まとめ(その2)
  • 宇宙環境グループは宇宙ステーションと衛星プロジェクトの安全な遂行に貢献しています
  • 補足資料
  • 不具合原因の推移
  • 何故不具合は減らないか
  • 放射線による影響の概要
  • 耐放射線設計手順
  • 各軌道における放射線環境
  • 放射線による部品材料の影響
  • トータルドーズ効果
  • シングルイベント効果
  • シングルイベントメカニズム-陽子と重イオンの違い-
  • エラー発生率の計算
  • 線エネルギー付与(LET)(linear energy transfer)
  • 南大西洋異常(SAA)
  • Single Event Lachup
  • シングルイベントと陽子分布
  • NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)
  • 低軌道での電子フラックスと不具合の発生場所
  • 南大西洋異常(SAA)と極の角
  • スライド番号 83
  • Carrington Flare
  • 放射線対策
  • スライド番号 86
  • スライド番号 87
  • 帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備
  • スライド番号 89
  • 放射線計測装置の原理
Page 72: 宇宙機の設計のための宇宙環境の方針から国産部品開発(42品種)が実施された。 . 半導体電子部品は耐放射線性を加味して、人工衛星(特に

トータルドーズ効果

+ - + + - + - + - - + + + + -

ゲート酸化膜

電離

格子欠陥

正電荷捕獲

+ 正孔 - 電子

電極

(Silicon oxidenitride)

荷電粒子

反跳原子

ゲート絶縁膜中に電荷が蓄積することによるMOSトランジスタのしきい電圧(MOSトランジスタがオフからオンに変化するゲート電圧)の変化をもたらすただ

し最近の最先端チップはゲート絶縁膜がきわめて薄くなっているこのためゲート絶縁膜よりもフィールド絶縁膜(隣接するトランジスタを電気的に分離する絶縁膜)での電荷蓄積が相対的には大きな問題になってきている」

シングルイベント効果

メモリセルはNチャンネルとPチャンネルMOSFETより構成されメモリ情報は回路ノード12の電位の

高低により記録している空乏層の広がっているPN接合12の領域に

重イオンが入射した場合電荷の発生と空乏層内への少数キャリアの収集が起こるこの収集電荷量が回路の耐量を越えた場合(c)に示すように反転が起こる(ソフトエラー)一方pウエル-N基板接

合の空乏層内に電荷収集量が起こりえる耐性を越えると寄生的に存在するPNPNサイリスタ構造がオ

ンし電源と基板間に大電流が流れる状態が生じる(ラッチアップ)

シングルイベントメカニズム -陽子と重イオンの違い-

エラー発生率の計算

線エネルギー付与(LET) (linear energy transfer)

電離性放射線が物質中を通過する際飛程の単位長さ当りに平均して失うエネルギーをいう各種の放射線のうちX線γ線はLETが小さいので低LETといいα線中性子線その他重イオン核分裂破片のLETは大きいので高LETという MeVμmMeV(gcm2)やMeV(mgcm2)で表される

南大西洋異常(SAA) bull 地球の自転軸と磁気軸のずれ

darr bull 放射線帯が自転軸に対して非

対称

bull 南大西洋上空では放射線帯内帯が低高度に落ちてきているこの領域を南大西洋異常域(SAA South Atlantic Anomaly)と呼ぶ

bull 地球観測衛星ではSAAで放射線帯陽子の影響を受ける

Single Event Lachup

シングルイベントと陽子分布

MOS-1衛星(高度909km軌道傾斜角99度)で発生したシングルイベントと 陽子30MeV以上の等高線マップを重ね合わせた結果

NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)

bull 入射粒子が電離によらず与える損傷非イオン化損失

低軌道での電子フラックスと 不具合の発生場所

南大西洋異常(SAA)と極の角

高度800kmでの電子フラックス図極の角(polar horn)とSAAを示す

太陽粒子線 bull 太陽高エネルギー粒子線(SPE Solar Proton Events)は太陽フレア とコロナガス噴出 (CMECoronal Mass Ejections )により引き起こされる bull フレアのスペクトルは可変であるためあるエネルギー域における最悪状態イベントは必ずしも別のエネルギー域における最悪条件ではない 1972年8月のイベント 10~70MeVの粒子が最も多かった 1989年10のイベント 1972年8月のイベントに比べ低エネルギー領域 高エネルギー領域が明らかに激しかった

フルエンス 105 to 1011 cm-2

変動期間 1日から数日

ldquoBastiliardquo Solar Event 14 July 2000

Carrington Flare

84

(LW Townseed) Carrington Flare(1859年) Carrington Flare による30MeV以上トータルFluenceを118times109cm-2で規格化 ~1989年フレアの約13倍(シングルイベントの評価で使用) ~1991年フレアの約9倍 2012年7月23日にキャリントンイベントとほぼ同等の爆発現象が太陽あるいは太陽の周りで起きていたということがNASAの太陽観測衛星「STEREO」の解析から発表された

放射線対策 bull 放射線シールドを付加し放射線を減衰させる

bull 放射線耐性の強い部品(SOI(Silicon On Insulator)技術による耐放射線部品)材料に変更する

bull 放射線による損傷を吸収するために回路または構造上のマージンを持たせる bull ソフト的なエラーに対しては エラー検出訂正機能や多数決

機能等でソフト的エラーが起きてもシステムが機能するようにしたフォールトトレラント機能を付けて対処する ICのハード的故障に対しては ラッチアップ耐性の強い部品を選定するしかないが 電流制限回路を付ける対策も採られる パワーMOSFETに対しては部品選定 電源電圧を規格値の半分以下に落とす等の対策を採る

SOI技術

表面帯電への対策例

表面の物体間を導線で結線する

太陽電池のカバーガラスを導電性被膜付き(酸化インジウムITO)にする

熱制御材表面にITOを被覆する

熱制御材は高誘電率のテフロンの使用を避け 高伝導度耐環境性に優れたブラックカプトンを使用

イオンエンジンの中和器で能動帯電制御

内部帯電への対策例

アルミで3mm厚さに相当するシールドで囲む(Faraday Cage)

テフロンやカプトンなどの誘電体材料の内部での使用量を最小限に押さえる

回路基板やコンフォーマルコーティングは誘電体なので電流リークパス(1012Ωcmまたは1012Ωcm2

程度)を必ずつける

特にスポット的な放射線シールドの金属材には必ず電流リークパスをつける

帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備

衛星モデル作成

材料物性テーブル設定

宇宙環境パラメータ設定

Converter

転送ディレクトリ 解析データファイル

転送

解析ディレクトリ生成 解析結果 進行状況チェック ファイル操作

MUSCAT 解析エンジン

解析結果 表示

パラメトリックラン

オプション 解析

大型パネル実験(35mtimes11m) クーポンパネル実験(26cmtimes16cm)

環境模擬試験 環境模擬試験

MUSCATに使用する物性値設計標準制定のための知見などを得ることを目的に軌道上の宇宙環境を模擬した地上試験を行っている これらの試験では放電の発生頻度や電圧閾値放電発生による太陽電池パネルや搭載機器への影響を検証している

放射線計測装置の原理

bull その粒子が物質を通過する際のエネルギー損出率が粒子の電荷(原子番号)Zの二乗に比例すること(Bethe-Blochの式)を利用する

S2

E

ΔE Ersquo

S1 S3

  • 宇宙機の設計のための宇宙環境
  • 話の流れ
  • 話の流れ
  • TEDA(技術データ取得装置)(国産部品の宇宙環境での実証の必要性)
  • ETS-VTEDA(技術データ取得装置)誕生前の部品の宇宙実証の背景
  • スライド番号 6
  • スライド番号 7
  • スライド番号 8
  • スライド番号 9
  • 図6太陽黒点数と静止軌道電子 (>04MeV ) Flux の変動 (ETS-V搭載DOMによる観測)
  • スライド番号 11
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの開発(理研東大と共同で宇宙環境計測の充実)
  • ETS-VI(きく6号)打ち上がったがGEOに行かずGTOに留まる
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの成果
  • スライド番号 15
  • スライド番号 16
  • スライド番号 17
  • ADEOS搭載TEDA(世界2番目の異常宇宙線ACR)
  • BBND (ボナー球中性子検出器)
  • スライド番号 20
  • ISS搭載BBNDの成果(約8か月)
  • スライド番号 22
  • MDS-1搭載放射線吸収線量モニタ(SDOM)
  • 放射線帯変動モデルの開発MDS-1 065 MeV 電子フラックス
  • 変動パラメータの選択 (1 cycle solar activity)
  • 変動パラメータ- Tavg の定義-
  • 065MeV 電子 L値-Tavg マップ
  • 13MeV 陽子 L値-Tavg マップ
  • 電子観測とMDS-1モデルの比較
  • 放射線帯フラックスピークの変動
  • 陽子観測とモデルの比較
  • 電子(035~078MeV) 1日の変動予測GOSAT軌道
  • 電子(035~078MeV) 変動の信頼度水準(1日)GOSAT軌道
  • MDS-1 model と AE-8 modelとの比較1日
  • 話の流れ
  • 2003年10月 みどり号の全損事故(複合現象)
  • 衛星帯電の基本式
  • 内部帯電
  • パドルでの帯電放電メカニズム
  • スライド番号 40
  • スライド番号 41
  • スライド番号 42
  • データ中継技術衛星DRTS (こだま)の不具合
  • DRTS ESA スパイクノイズと電子フルエンスの比較(赤の丸が異常検知)
  • 不具合が宇宙環境によるものであるか判断する際のポイント
  • 話の流れ
  • 宇宙天気のリスク-宇宙環境によるシステムへの影響 -
  • NASAの報告-GNampCに注目-
  • NASAの報告(続き)
  • 宇宙環境を原因とする不具合の割合-JAXAの場合-
  • 不具合発生部位の割合 
  • Satellite News Digest -静止軌道不具合-
  • 太陽活動と静止軌道衛星不具合例
  • スライド番号 54
  • スライド番号 55
  • スライド番号 56
  • 衛星開発段階における対策
  • 運用における対応
  • 話の流れ
  • スライド番号 60
  • スライド番号 61
  • まとめ(その1)
  • まとめ(その2)
  • 宇宙環境グループは宇宙ステーションと衛星プロジェクトの安全な遂行に貢献しています
  • 補足資料
  • 不具合原因の推移
  • 何故不具合は減らないか
  • 放射線による影響の概要
  • 耐放射線設計手順
  • 各軌道における放射線環境
  • 放射線による部品材料の影響
  • トータルドーズ効果
  • シングルイベント効果
  • シングルイベントメカニズム-陽子と重イオンの違い-
  • エラー発生率の計算
  • 線エネルギー付与(LET)(linear energy transfer)
  • 南大西洋異常(SAA)
  • Single Event Lachup
  • シングルイベントと陽子分布
  • NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)
  • 低軌道での電子フラックスと不具合の発生場所
  • 南大西洋異常(SAA)と極の角
  • スライド番号 83
  • Carrington Flare
  • 放射線対策
  • スライド番号 86
  • スライド番号 87
  • 帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備
  • スライド番号 89
  • 放射線計測装置の原理
Page 73: 宇宙機の設計のための宇宙環境の方針から国産部品開発(42品種)が実施された。 . 半導体電子部品は耐放射線性を加味して、人工衛星(特に

シングルイベント効果

メモリセルはNチャンネルとPチャンネルMOSFETより構成されメモリ情報は回路ノード12の電位の

高低により記録している空乏層の広がっているPN接合12の領域に

重イオンが入射した場合電荷の発生と空乏層内への少数キャリアの収集が起こるこの収集電荷量が回路の耐量を越えた場合(c)に示すように反転が起こる(ソフトエラー)一方pウエル-N基板接

合の空乏層内に電荷収集量が起こりえる耐性を越えると寄生的に存在するPNPNサイリスタ構造がオ

ンし電源と基板間に大電流が流れる状態が生じる(ラッチアップ)

シングルイベントメカニズム -陽子と重イオンの違い-

エラー発生率の計算

線エネルギー付与(LET) (linear energy transfer)

電離性放射線が物質中を通過する際飛程の単位長さ当りに平均して失うエネルギーをいう各種の放射線のうちX線γ線はLETが小さいので低LETといいα線中性子線その他重イオン核分裂破片のLETは大きいので高LETという MeVμmMeV(gcm2)やMeV(mgcm2)で表される

南大西洋異常(SAA) bull 地球の自転軸と磁気軸のずれ

darr bull 放射線帯が自転軸に対して非

対称

bull 南大西洋上空では放射線帯内帯が低高度に落ちてきているこの領域を南大西洋異常域(SAA South Atlantic Anomaly)と呼ぶ

bull 地球観測衛星ではSAAで放射線帯陽子の影響を受ける

Single Event Lachup

シングルイベントと陽子分布

MOS-1衛星(高度909km軌道傾斜角99度)で発生したシングルイベントと 陽子30MeV以上の等高線マップを重ね合わせた結果

NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)

bull 入射粒子が電離によらず与える損傷非イオン化損失

低軌道での電子フラックスと 不具合の発生場所

南大西洋異常(SAA)と極の角

高度800kmでの電子フラックス図極の角(polar horn)とSAAを示す

太陽粒子線 bull 太陽高エネルギー粒子線(SPE Solar Proton Events)は太陽フレア とコロナガス噴出 (CMECoronal Mass Ejections )により引き起こされる bull フレアのスペクトルは可変であるためあるエネルギー域における最悪状態イベントは必ずしも別のエネルギー域における最悪条件ではない 1972年8月のイベント 10~70MeVの粒子が最も多かった 1989年10のイベント 1972年8月のイベントに比べ低エネルギー領域 高エネルギー領域が明らかに激しかった

フルエンス 105 to 1011 cm-2

変動期間 1日から数日

ldquoBastiliardquo Solar Event 14 July 2000

Carrington Flare

84

(LW Townseed) Carrington Flare(1859年) Carrington Flare による30MeV以上トータルFluenceを118times109cm-2で規格化 ~1989年フレアの約13倍(シングルイベントの評価で使用) ~1991年フレアの約9倍 2012年7月23日にキャリントンイベントとほぼ同等の爆発現象が太陽あるいは太陽の周りで起きていたということがNASAの太陽観測衛星「STEREO」の解析から発表された

放射線対策 bull 放射線シールドを付加し放射線を減衰させる

bull 放射線耐性の強い部品(SOI(Silicon On Insulator)技術による耐放射線部品)材料に変更する

bull 放射線による損傷を吸収するために回路または構造上のマージンを持たせる bull ソフト的なエラーに対しては エラー検出訂正機能や多数決

機能等でソフト的エラーが起きてもシステムが機能するようにしたフォールトトレラント機能を付けて対処する ICのハード的故障に対しては ラッチアップ耐性の強い部品を選定するしかないが 電流制限回路を付ける対策も採られる パワーMOSFETに対しては部品選定 電源電圧を規格値の半分以下に落とす等の対策を採る

SOI技術

表面帯電への対策例

表面の物体間を導線で結線する

太陽電池のカバーガラスを導電性被膜付き(酸化インジウムITO)にする

熱制御材表面にITOを被覆する

熱制御材は高誘電率のテフロンの使用を避け 高伝導度耐環境性に優れたブラックカプトンを使用

イオンエンジンの中和器で能動帯電制御

内部帯電への対策例

アルミで3mm厚さに相当するシールドで囲む(Faraday Cage)

テフロンやカプトンなどの誘電体材料の内部での使用量を最小限に押さえる

回路基板やコンフォーマルコーティングは誘電体なので電流リークパス(1012Ωcmまたは1012Ωcm2

程度)を必ずつける

特にスポット的な放射線シールドの金属材には必ず電流リークパスをつける

帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備

衛星モデル作成

材料物性テーブル設定

宇宙環境パラメータ設定

Converter

転送ディレクトリ 解析データファイル

転送

解析ディレクトリ生成 解析結果 進行状況チェック ファイル操作

MUSCAT 解析エンジン

解析結果 表示

パラメトリックラン

オプション 解析

大型パネル実験(35mtimes11m) クーポンパネル実験(26cmtimes16cm)

環境模擬試験 環境模擬試験

MUSCATに使用する物性値設計標準制定のための知見などを得ることを目的に軌道上の宇宙環境を模擬した地上試験を行っている これらの試験では放電の発生頻度や電圧閾値放電発生による太陽電池パネルや搭載機器への影響を検証している

放射線計測装置の原理

bull その粒子が物質を通過する際のエネルギー損出率が粒子の電荷(原子番号)Zの二乗に比例すること(Bethe-Blochの式)を利用する

S2

E

ΔE Ersquo

S1 S3

  • 宇宙機の設計のための宇宙環境
  • 話の流れ
  • 話の流れ
  • TEDA(技術データ取得装置)(国産部品の宇宙環境での実証の必要性)
  • ETS-VTEDA(技術データ取得装置)誕生前の部品の宇宙実証の背景
  • スライド番号 6
  • スライド番号 7
  • スライド番号 8
  • スライド番号 9
  • 図6太陽黒点数と静止軌道電子 (>04MeV ) Flux の変動 (ETS-V搭載DOMによる観測)
  • スライド番号 11
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの開発(理研東大と共同で宇宙環境計測の充実)
  • ETS-VI(きく6号)打ち上がったがGEOに行かずGTOに留まる
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの成果
  • スライド番号 15
  • スライド番号 16
  • スライド番号 17
  • ADEOS搭載TEDA(世界2番目の異常宇宙線ACR)
  • BBND (ボナー球中性子検出器)
  • スライド番号 20
  • ISS搭載BBNDの成果(約8か月)
  • スライド番号 22
  • MDS-1搭載放射線吸収線量モニタ(SDOM)
  • 放射線帯変動モデルの開発MDS-1 065 MeV 電子フラックス
  • 変動パラメータの選択 (1 cycle solar activity)
  • 変動パラメータ- Tavg の定義-
  • 065MeV 電子 L値-Tavg マップ
  • 13MeV 陽子 L値-Tavg マップ
  • 電子観測とMDS-1モデルの比較
  • 放射線帯フラックスピークの変動
  • 陽子観測とモデルの比較
  • 電子(035~078MeV) 1日の変動予測GOSAT軌道
  • 電子(035~078MeV) 変動の信頼度水準(1日)GOSAT軌道
  • MDS-1 model と AE-8 modelとの比較1日
  • 話の流れ
  • 2003年10月 みどり号の全損事故(複合現象)
  • 衛星帯電の基本式
  • 内部帯電
  • パドルでの帯電放電メカニズム
  • スライド番号 40
  • スライド番号 41
  • スライド番号 42
  • データ中継技術衛星DRTS (こだま)の不具合
  • DRTS ESA スパイクノイズと電子フルエンスの比較(赤の丸が異常検知)
  • 不具合が宇宙環境によるものであるか判断する際のポイント
  • 話の流れ
  • 宇宙天気のリスク-宇宙環境によるシステムへの影響 -
  • NASAの報告-GNampCに注目-
  • NASAの報告(続き)
  • 宇宙環境を原因とする不具合の割合-JAXAの場合-
  • 不具合発生部位の割合 
  • Satellite News Digest -静止軌道不具合-
  • 太陽活動と静止軌道衛星不具合例
  • スライド番号 54
  • スライド番号 55
  • スライド番号 56
  • 衛星開発段階における対策
  • 運用における対応
  • 話の流れ
  • スライド番号 60
  • スライド番号 61
  • まとめ(その1)
  • まとめ(その2)
  • 宇宙環境グループは宇宙ステーションと衛星プロジェクトの安全な遂行に貢献しています
  • 補足資料
  • 不具合原因の推移
  • 何故不具合は減らないか
  • 放射線による影響の概要
  • 耐放射線設計手順
  • 各軌道における放射線環境
  • 放射線による部品材料の影響
  • トータルドーズ効果
  • シングルイベント効果
  • シングルイベントメカニズム-陽子と重イオンの違い-
  • エラー発生率の計算
  • 線エネルギー付与(LET)(linear energy transfer)
  • 南大西洋異常(SAA)
  • Single Event Lachup
  • シングルイベントと陽子分布
  • NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)
  • 低軌道での電子フラックスと不具合の発生場所
  • 南大西洋異常(SAA)と極の角
  • スライド番号 83
  • Carrington Flare
  • 放射線対策
  • スライド番号 86
  • スライド番号 87
  • 帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備
  • スライド番号 89
  • 放射線計測装置の原理
Page 74: 宇宙機の設計のための宇宙環境の方針から国産部品開発(42品種)が実施された。 . 半導体電子部品は耐放射線性を加味して、人工衛星(特に

シングルイベントメカニズム -陽子と重イオンの違い-

エラー発生率の計算

線エネルギー付与(LET) (linear energy transfer)

電離性放射線が物質中を通過する際飛程の単位長さ当りに平均して失うエネルギーをいう各種の放射線のうちX線γ線はLETが小さいので低LETといいα線中性子線その他重イオン核分裂破片のLETは大きいので高LETという MeVμmMeV(gcm2)やMeV(mgcm2)で表される

南大西洋異常(SAA) bull 地球の自転軸と磁気軸のずれ

darr bull 放射線帯が自転軸に対して非

対称

bull 南大西洋上空では放射線帯内帯が低高度に落ちてきているこの領域を南大西洋異常域(SAA South Atlantic Anomaly)と呼ぶ

bull 地球観測衛星ではSAAで放射線帯陽子の影響を受ける

Single Event Lachup

シングルイベントと陽子分布

MOS-1衛星(高度909km軌道傾斜角99度)で発生したシングルイベントと 陽子30MeV以上の等高線マップを重ね合わせた結果

NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)

bull 入射粒子が電離によらず与える損傷非イオン化損失

低軌道での電子フラックスと 不具合の発生場所

南大西洋異常(SAA)と極の角

高度800kmでの電子フラックス図極の角(polar horn)とSAAを示す

太陽粒子線 bull 太陽高エネルギー粒子線(SPE Solar Proton Events)は太陽フレア とコロナガス噴出 (CMECoronal Mass Ejections )により引き起こされる bull フレアのスペクトルは可変であるためあるエネルギー域における最悪状態イベントは必ずしも別のエネルギー域における最悪条件ではない 1972年8月のイベント 10~70MeVの粒子が最も多かった 1989年10のイベント 1972年8月のイベントに比べ低エネルギー領域 高エネルギー領域が明らかに激しかった

フルエンス 105 to 1011 cm-2

変動期間 1日から数日

ldquoBastiliardquo Solar Event 14 July 2000

Carrington Flare

84

(LW Townseed) Carrington Flare(1859年) Carrington Flare による30MeV以上トータルFluenceを118times109cm-2で規格化 ~1989年フレアの約13倍(シングルイベントの評価で使用) ~1991年フレアの約9倍 2012年7月23日にキャリントンイベントとほぼ同等の爆発現象が太陽あるいは太陽の周りで起きていたということがNASAの太陽観測衛星「STEREO」の解析から発表された

放射線対策 bull 放射線シールドを付加し放射線を減衰させる

bull 放射線耐性の強い部品(SOI(Silicon On Insulator)技術による耐放射線部品)材料に変更する

bull 放射線による損傷を吸収するために回路または構造上のマージンを持たせる bull ソフト的なエラーに対しては エラー検出訂正機能や多数決

機能等でソフト的エラーが起きてもシステムが機能するようにしたフォールトトレラント機能を付けて対処する ICのハード的故障に対しては ラッチアップ耐性の強い部品を選定するしかないが 電流制限回路を付ける対策も採られる パワーMOSFETに対しては部品選定 電源電圧を規格値の半分以下に落とす等の対策を採る

SOI技術

表面帯電への対策例

表面の物体間を導線で結線する

太陽電池のカバーガラスを導電性被膜付き(酸化インジウムITO)にする

熱制御材表面にITOを被覆する

熱制御材は高誘電率のテフロンの使用を避け 高伝導度耐環境性に優れたブラックカプトンを使用

イオンエンジンの中和器で能動帯電制御

内部帯電への対策例

アルミで3mm厚さに相当するシールドで囲む(Faraday Cage)

テフロンやカプトンなどの誘電体材料の内部での使用量を最小限に押さえる

回路基板やコンフォーマルコーティングは誘電体なので電流リークパス(1012Ωcmまたは1012Ωcm2

程度)を必ずつける

特にスポット的な放射線シールドの金属材には必ず電流リークパスをつける

帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備

衛星モデル作成

材料物性テーブル設定

宇宙環境パラメータ設定

Converter

転送ディレクトリ 解析データファイル

転送

解析ディレクトリ生成 解析結果 進行状況チェック ファイル操作

MUSCAT 解析エンジン

解析結果 表示

パラメトリックラン

オプション 解析

大型パネル実験(35mtimes11m) クーポンパネル実験(26cmtimes16cm)

環境模擬試験 環境模擬試験

MUSCATに使用する物性値設計標準制定のための知見などを得ることを目的に軌道上の宇宙環境を模擬した地上試験を行っている これらの試験では放電の発生頻度や電圧閾値放電発生による太陽電池パネルや搭載機器への影響を検証している

放射線計測装置の原理

bull その粒子が物質を通過する際のエネルギー損出率が粒子の電荷(原子番号)Zの二乗に比例すること(Bethe-Blochの式)を利用する

S2

E

ΔE Ersquo

S1 S3

  • 宇宙機の設計のための宇宙環境
  • 話の流れ
  • 話の流れ
  • TEDA(技術データ取得装置)(国産部品の宇宙環境での実証の必要性)
  • ETS-VTEDA(技術データ取得装置)誕生前の部品の宇宙実証の背景
  • スライド番号 6
  • スライド番号 7
  • スライド番号 8
  • スライド番号 9
  • 図6太陽黒点数と静止軌道電子 (>04MeV ) Flux の変動 (ETS-V搭載DOMによる観測)
  • スライド番号 11
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの開発(理研東大と共同で宇宙環境計測の充実)
  • ETS-VI(きく6号)打ち上がったがGEOに行かずGTOに留まる
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの成果
  • スライド番号 15
  • スライド番号 16
  • スライド番号 17
  • ADEOS搭載TEDA(世界2番目の異常宇宙線ACR)
  • BBND (ボナー球中性子検出器)
  • スライド番号 20
  • ISS搭載BBNDの成果(約8か月)
  • スライド番号 22
  • MDS-1搭載放射線吸収線量モニタ(SDOM)
  • 放射線帯変動モデルの開発MDS-1 065 MeV 電子フラックス
  • 変動パラメータの選択 (1 cycle solar activity)
  • 変動パラメータ- Tavg の定義-
  • 065MeV 電子 L値-Tavg マップ
  • 13MeV 陽子 L値-Tavg マップ
  • 電子観測とMDS-1モデルの比較
  • 放射線帯フラックスピークの変動
  • 陽子観測とモデルの比較
  • 電子(035~078MeV) 1日の変動予測GOSAT軌道
  • 電子(035~078MeV) 変動の信頼度水準(1日)GOSAT軌道
  • MDS-1 model と AE-8 modelとの比較1日
  • 話の流れ
  • 2003年10月 みどり号の全損事故(複合現象)
  • 衛星帯電の基本式
  • 内部帯電
  • パドルでの帯電放電メカニズム
  • スライド番号 40
  • スライド番号 41
  • スライド番号 42
  • データ中継技術衛星DRTS (こだま)の不具合
  • DRTS ESA スパイクノイズと電子フルエンスの比較(赤の丸が異常検知)
  • 不具合が宇宙環境によるものであるか判断する際のポイント
  • 話の流れ
  • 宇宙天気のリスク-宇宙環境によるシステムへの影響 -
  • NASAの報告-GNampCに注目-
  • NASAの報告(続き)
  • 宇宙環境を原因とする不具合の割合-JAXAの場合-
  • 不具合発生部位の割合 
  • Satellite News Digest -静止軌道不具合-
  • 太陽活動と静止軌道衛星不具合例
  • スライド番号 54
  • スライド番号 55
  • スライド番号 56
  • 衛星開発段階における対策
  • 運用における対応
  • 話の流れ
  • スライド番号 60
  • スライド番号 61
  • まとめ(その1)
  • まとめ(その2)
  • 宇宙環境グループは宇宙ステーションと衛星プロジェクトの安全な遂行に貢献しています
  • 補足資料
  • 不具合原因の推移
  • 何故不具合は減らないか
  • 放射線による影響の概要
  • 耐放射線設計手順
  • 各軌道における放射線環境
  • 放射線による部品材料の影響
  • トータルドーズ効果
  • シングルイベント効果
  • シングルイベントメカニズム-陽子と重イオンの違い-
  • エラー発生率の計算
  • 線エネルギー付与(LET)(linear energy transfer)
  • 南大西洋異常(SAA)
  • Single Event Lachup
  • シングルイベントと陽子分布
  • NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)
  • 低軌道での電子フラックスと不具合の発生場所
  • 南大西洋異常(SAA)と極の角
  • スライド番号 83
  • Carrington Flare
  • 放射線対策
  • スライド番号 86
  • スライド番号 87
  • 帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備
  • スライド番号 89
  • 放射線計測装置の原理
Page 75: 宇宙機の設計のための宇宙環境の方針から国産部品開発(42品種)が実施された。 . 半導体電子部品は耐放射線性を加味して、人工衛星(特に

エラー発生率の計算

線エネルギー付与(LET) (linear energy transfer)

電離性放射線が物質中を通過する際飛程の単位長さ当りに平均して失うエネルギーをいう各種の放射線のうちX線γ線はLETが小さいので低LETといいα線中性子線その他重イオン核分裂破片のLETは大きいので高LETという MeVμmMeV(gcm2)やMeV(mgcm2)で表される

南大西洋異常(SAA) bull 地球の自転軸と磁気軸のずれ

darr bull 放射線帯が自転軸に対して非

対称

bull 南大西洋上空では放射線帯内帯が低高度に落ちてきているこの領域を南大西洋異常域(SAA South Atlantic Anomaly)と呼ぶ

bull 地球観測衛星ではSAAで放射線帯陽子の影響を受ける

Single Event Lachup

シングルイベントと陽子分布

MOS-1衛星(高度909km軌道傾斜角99度)で発生したシングルイベントと 陽子30MeV以上の等高線マップを重ね合わせた結果

NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)

bull 入射粒子が電離によらず与える損傷非イオン化損失

低軌道での電子フラックスと 不具合の発生場所

南大西洋異常(SAA)と極の角

高度800kmでの電子フラックス図極の角(polar horn)とSAAを示す

太陽粒子線 bull 太陽高エネルギー粒子線(SPE Solar Proton Events)は太陽フレア とコロナガス噴出 (CMECoronal Mass Ejections )により引き起こされる bull フレアのスペクトルは可変であるためあるエネルギー域における最悪状態イベントは必ずしも別のエネルギー域における最悪条件ではない 1972年8月のイベント 10~70MeVの粒子が最も多かった 1989年10のイベント 1972年8月のイベントに比べ低エネルギー領域 高エネルギー領域が明らかに激しかった

フルエンス 105 to 1011 cm-2

変動期間 1日から数日

ldquoBastiliardquo Solar Event 14 July 2000

Carrington Flare

84

(LW Townseed) Carrington Flare(1859年) Carrington Flare による30MeV以上トータルFluenceを118times109cm-2で規格化 ~1989年フレアの約13倍(シングルイベントの評価で使用) ~1991年フレアの約9倍 2012年7月23日にキャリントンイベントとほぼ同等の爆発現象が太陽あるいは太陽の周りで起きていたということがNASAの太陽観測衛星「STEREO」の解析から発表された

放射線対策 bull 放射線シールドを付加し放射線を減衰させる

bull 放射線耐性の強い部品(SOI(Silicon On Insulator)技術による耐放射線部品)材料に変更する

bull 放射線による損傷を吸収するために回路または構造上のマージンを持たせる bull ソフト的なエラーに対しては エラー検出訂正機能や多数決

機能等でソフト的エラーが起きてもシステムが機能するようにしたフォールトトレラント機能を付けて対処する ICのハード的故障に対しては ラッチアップ耐性の強い部品を選定するしかないが 電流制限回路を付ける対策も採られる パワーMOSFETに対しては部品選定 電源電圧を規格値の半分以下に落とす等の対策を採る

SOI技術

表面帯電への対策例

表面の物体間を導線で結線する

太陽電池のカバーガラスを導電性被膜付き(酸化インジウムITO)にする

熱制御材表面にITOを被覆する

熱制御材は高誘電率のテフロンの使用を避け 高伝導度耐環境性に優れたブラックカプトンを使用

イオンエンジンの中和器で能動帯電制御

内部帯電への対策例

アルミで3mm厚さに相当するシールドで囲む(Faraday Cage)

テフロンやカプトンなどの誘電体材料の内部での使用量を最小限に押さえる

回路基板やコンフォーマルコーティングは誘電体なので電流リークパス(1012Ωcmまたは1012Ωcm2

程度)を必ずつける

特にスポット的な放射線シールドの金属材には必ず電流リークパスをつける

帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備

衛星モデル作成

材料物性テーブル設定

宇宙環境パラメータ設定

Converter

転送ディレクトリ 解析データファイル

転送

解析ディレクトリ生成 解析結果 進行状況チェック ファイル操作

MUSCAT 解析エンジン

解析結果 表示

パラメトリックラン

オプション 解析

大型パネル実験(35mtimes11m) クーポンパネル実験(26cmtimes16cm)

環境模擬試験 環境模擬試験

MUSCATに使用する物性値設計標準制定のための知見などを得ることを目的に軌道上の宇宙環境を模擬した地上試験を行っている これらの試験では放電の発生頻度や電圧閾値放電発生による太陽電池パネルや搭載機器への影響を検証している

放射線計測装置の原理

bull その粒子が物質を通過する際のエネルギー損出率が粒子の電荷(原子番号)Zの二乗に比例すること(Bethe-Blochの式)を利用する

S2

E

ΔE Ersquo

S1 S3

  • 宇宙機の設計のための宇宙環境
  • 話の流れ
  • 話の流れ
  • TEDA(技術データ取得装置)(国産部品の宇宙環境での実証の必要性)
  • ETS-VTEDA(技術データ取得装置)誕生前の部品の宇宙実証の背景
  • スライド番号 6
  • スライド番号 7
  • スライド番号 8
  • スライド番号 9
  • 図6太陽黒点数と静止軌道電子 (>04MeV ) Flux の変動 (ETS-V搭載DOMによる観測)
  • スライド番号 11
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの開発(理研東大と共同で宇宙環境計測の充実)
  • ETS-VI(きく6号)打ち上がったがGEOに行かずGTOに留まる
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの成果
  • スライド番号 15
  • スライド番号 16
  • スライド番号 17
  • ADEOS搭載TEDA(世界2番目の異常宇宙線ACR)
  • BBND (ボナー球中性子検出器)
  • スライド番号 20
  • ISS搭載BBNDの成果(約8か月)
  • スライド番号 22
  • MDS-1搭載放射線吸収線量モニタ(SDOM)
  • 放射線帯変動モデルの開発MDS-1 065 MeV 電子フラックス
  • 変動パラメータの選択 (1 cycle solar activity)
  • 変動パラメータ- Tavg の定義-
  • 065MeV 電子 L値-Tavg マップ
  • 13MeV 陽子 L値-Tavg マップ
  • 電子観測とMDS-1モデルの比較
  • 放射線帯フラックスピークの変動
  • 陽子観測とモデルの比較
  • 電子(035~078MeV) 1日の変動予測GOSAT軌道
  • 電子(035~078MeV) 変動の信頼度水準(1日)GOSAT軌道
  • MDS-1 model と AE-8 modelとの比較1日
  • 話の流れ
  • 2003年10月 みどり号の全損事故(複合現象)
  • 衛星帯電の基本式
  • 内部帯電
  • パドルでの帯電放電メカニズム
  • スライド番号 40
  • スライド番号 41
  • スライド番号 42
  • データ中継技術衛星DRTS (こだま)の不具合
  • DRTS ESA スパイクノイズと電子フルエンスの比較(赤の丸が異常検知)
  • 不具合が宇宙環境によるものであるか判断する際のポイント
  • 話の流れ
  • 宇宙天気のリスク-宇宙環境によるシステムへの影響 -
  • NASAの報告-GNampCに注目-
  • NASAの報告(続き)
  • 宇宙環境を原因とする不具合の割合-JAXAの場合-
  • 不具合発生部位の割合 
  • Satellite News Digest -静止軌道不具合-
  • 太陽活動と静止軌道衛星不具合例
  • スライド番号 54
  • スライド番号 55
  • スライド番号 56
  • 衛星開発段階における対策
  • 運用における対応
  • 話の流れ
  • スライド番号 60
  • スライド番号 61
  • まとめ(その1)
  • まとめ(その2)
  • 宇宙環境グループは宇宙ステーションと衛星プロジェクトの安全な遂行に貢献しています
  • 補足資料
  • 不具合原因の推移
  • 何故不具合は減らないか
  • 放射線による影響の概要
  • 耐放射線設計手順
  • 各軌道における放射線環境
  • 放射線による部品材料の影響
  • トータルドーズ効果
  • シングルイベント効果
  • シングルイベントメカニズム-陽子と重イオンの違い-
  • エラー発生率の計算
  • 線エネルギー付与(LET)(linear energy transfer)
  • 南大西洋異常(SAA)
  • Single Event Lachup
  • シングルイベントと陽子分布
  • NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)
  • 低軌道での電子フラックスと不具合の発生場所
  • 南大西洋異常(SAA)と極の角
  • スライド番号 83
  • Carrington Flare
  • 放射線対策
  • スライド番号 86
  • スライド番号 87
  • 帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備
  • スライド番号 89
  • 放射線計測装置の原理
Page 76: 宇宙機の設計のための宇宙環境の方針から国産部品開発(42品種)が実施された。 . 半導体電子部品は耐放射線性を加味して、人工衛星(特に

線エネルギー付与(LET) (linear energy transfer)

電離性放射線が物質中を通過する際飛程の単位長さ当りに平均して失うエネルギーをいう各種の放射線のうちX線γ線はLETが小さいので低LETといいα線中性子線その他重イオン核分裂破片のLETは大きいので高LETという MeVμmMeV(gcm2)やMeV(mgcm2)で表される

南大西洋異常(SAA) bull 地球の自転軸と磁気軸のずれ

darr bull 放射線帯が自転軸に対して非

対称

bull 南大西洋上空では放射線帯内帯が低高度に落ちてきているこの領域を南大西洋異常域(SAA South Atlantic Anomaly)と呼ぶ

bull 地球観測衛星ではSAAで放射線帯陽子の影響を受ける

Single Event Lachup

シングルイベントと陽子分布

MOS-1衛星(高度909km軌道傾斜角99度)で発生したシングルイベントと 陽子30MeV以上の等高線マップを重ね合わせた結果

NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)

bull 入射粒子が電離によらず与える損傷非イオン化損失

低軌道での電子フラックスと 不具合の発生場所

南大西洋異常(SAA)と極の角

高度800kmでの電子フラックス図極の角(polar horn)とSAAを示す

太陽粒子線 bull 太陽高エネルギー粒子線(SPE Solar Proton Events)は太陽フレア とコロナガス噴出 (CMECoronal Mass Ejections )により引き起こされる bull フレアのスペクトルは可変であるためあるエネルギー域における最悪状態イベントは必ずしも別のエネルギー域における最悪条件ではない 1972年8月のイベント 10~70MeVの粒子が最も多かった 1989年10のイベント 1972年8月のイベントに比べ低エネルギー領域 高エネルギー領域が明らかに激しかった

フルエンス 105 to 1011 cm-2

変動期間 1日から数日

ldquoBastiliardquo Solar Event 14 July 2000

Carrington Flare

84

(LW Townseed) Carrington Flare(1859年) Carrington Flare による30MeV以上トータルFluenceを118times109cm-2で規格化 ~1989年フレアの約13倍(シングルイベントの評価で使用) ~1991年フレアの約9倍 2012年7月23日にキャリントンイベントとほぼ同等の爆発現象が太陽あるいは太陽の周りで起きていたということがNASAの太陽観測衛星「STEREO」の解析から発表された

放射線対策 bull 放射線シールドを付加し放射線を減衰させる

bull 放射線耐性の強い部品(SOI(Silicon On Insulator)技術による耐放射線部品)材料に変更する

bull 放射線による損傷を吸収するために回路または構造上のマージンを持たせる bull ソフト的なエラーに対しては エラー検出訂正機能や多数決

機能等でソフト的エラーが起きてもシステムが機能するようにしたフォールトトレラント機能を付けて対処する ICのハード的故障に対しては ラッチアップ耐性の強い部品を選定するしかないが 電流制限回路を付ける対策も採られる パワーMOSFETに対しては部品選定 電源電圧を規格値の半分以下に落とす等の対策を採る

SOI技術

表面帯電への対策例

表面の物体間を導線で結線する

太陽電池のカバーガラスを導電性被膜付き(酸化インジウムITO)にする

熱制御材表面にITOを被覆する

熱制御材は高誘電率のテフロンの使用を避け 高伝導度耐環境性に優れたブラックカプトンを使用

イオンエンジンの中和器で能動帯電制御

内部帯電への対策例

アルミで3mm厚さに相当するシールドで囲む(Faraday Cage)

テフロンやカプトンなどの誘電体材料の内部での使用量を最小限に押さえる

回路基板やコンフォーマルコーティングは誘電体なので電流リークパス(1012Ωcmまたは1012Ωcm2

程度)を必ずつける

特にスポット的な放射線シールドの金属材には必ず電流リークパスをつける

帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備

衛星モデル作成

材料物性テーブル設定

宇宙環境パラメータ設定

Converter

転送ディレクトリ 解析データファイル

転送

解析ディレクトリ生成 解析結果 進行状況チェック ファイル操作

MUSCAT 解析エンジン

解析結果 表示

パラメトリックラン

オプション 解析

大型パネル実験(35mtimes11m) クーポンパネル実験(26cmtimes16cm)

環境模擬試験 環境模擬試験

MUSCATに使用する物性値設計標準制定のための知見などを得ることを目的に軌道上の宇宙環境を模擬した地上試験を行っている これらの試験では放電の発生頻度や電圧閾値放電発生による太陽電池パネルや搭載機器への影響を検証している

放射線計測装置の原理

bull その粒子が物質を通過する際のエネルギー損出率が粒子の電荷(原子番号)Zの二乗に比例すること(Bethe-Blochの式)を利用する

S2

E

ΔE Ersquo

S1 S3

  • 宇宙機の設計のための宇宙環境
  • 話の流れ
  • 話の流れ
  • TEDA(技術データ取得装置)(国産部品の宇宙環境での実証の必要性)
  • ETS-VTEDA(技術データ取得装置)誕生前の部品の宇宙実証の背景
  • スライド番号 6
  • スライド番号 7
  • スライド番号 8
  • スライド番号 9
  • 図6太陽黒点数と静止軌道電子 (>04MeV ) Flux の変動 (ETS-V搭載DOMによる観測)
  • スライド番号 11
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの開発(理研東大と共同で宇宙環境計測の充実)
  • ETS-VI(きく6号)打ち上がったがGEOに行かずGTOに留まる
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの成果
  • スライド番号 15
  • スライド番号 16
  • スライド番号 17
  • ADEOS搭載TEDA(世界2番目の異常宇宙線ACR)
  • BBND (ボナー球中性子検出器)
  • スライド番号 20
  • ISS搭載BBNDの成果(約8か月)
  • スライド番号 22
  • MDS-1搭載放射線吸収線量モニタ(SDOM)
  • 放射線帯変動モデルの開発MDS-1 065 MeV 電子フラックス
  • 変動パラメータの選択 (1 cycle solar activity)
  • 変動パラメータ- Tavg の定義-
  • 065MeV 電子 L値-Tavg マップ
  • 13MeV 陽子 L値-Tavg マップ
  • 電子観測とMDS-1モデルの比較
  • 放射線帯フラックスピークの変動
  • 陽子観測とモデルの比較
  • 電子(035~078MeV) 1日の変動予測GOSAT軌道
  • 電子(035~078MeV) 変動の信頼度水準(1日)GOSAT軌道
  • MDS-1 model と AE-8 modelとの比較1日
  • 話の流れ
  • 2003年10月 みどり号の全損事故(複合現象)
  • 衛星帯電の基本式
  • 内部帯電
  • パドルでの帯電放電メカニズム
  • スライド番号 40
  • スライド番号 41
  • スライド番号 42
  • データ中継技術衛星DRTS (こだま)の不具合
  • DRTS ESA スパイクノイズと電子フルエンスの比較(赤の丸が異常検知)
  • 不具合が宇宙環境によるものであるか判断する際のポイント
  • 話の流れ
  • 宇宙天気のリスク-宇宙環境によるシステムへの影響 -
  • NASAの報告-GNampCに注目-
  • NASAの報告(続き)
  • 宇宙環境を原因とする不具合の割合-JAXAの場合-
  • 不具合発生部位の割合 
  • Satellite News Digest -静止軌道不具合-
  • 太陽活動と静止軌道衛星不具合例
  • スライド番号 54
  • スライド番号 55
  • スライド番号 56
  • 衛星開発段階における対策
  • 運用における対応
  • 話の流れ
  • スライド番号 60
  • スライド番号 61
  • まとめ(その1)
  • まとめ(その2)
  • 宇宙環境グループは宇宙ステーションと衛星プロジェクトの安全な遂行に貢献しています
  • 補足資料
  • 不具合原因の推移
  • 何故不具合は減らないか
  • 放射線による影響の概要
  • 耐放射線設計手順
  • 各軌道における放射線環境
  • 放射線による部品材料の影響
  • トータルドーズ効果
  • シングルイベント効果
  • シングルイベントメカニズム-陽子と重イオンの違い-
  • エラー発生率の計算
  • 線エネルギー付与(LET)(linear energy transfer)
  • 南大西洋異常(SAA)
  • Single Event Lachup
  • シングルイベントと陽子分布
  • NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)
  • 低軌道での電子フラックスと不具合の発生場所
  • 南大西洋異常(SAA)と極の角
  • スライド番号 83
  • Carrington Flare
  • 放射線対策
  • スライド番号 86
  • スライド番号 87
  • 帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備
  • スライド番号 89
  • 放射線計測装置の原理
Page 77: 宇宙機の設計のための宇宙環境の方針から国産部品開発(42品種)が実施された。 . 半導体電子部品は耐放射線性を加味して、人工衛星(特に

南大西洋異常(SAA) bull 地球の自転軸と磁気軸のずれ

darr bull 放射線帯が自転軸に対して非

対称

bull 南大西洋上空では放射線帯内帯が低高度に落ちてきているこの領域を南大西洋異常域(SAA South Atlantic Anomaly)と呼ぶ

bull 地球観測衛星ではSAAで放射線帯陽子の影響を受ける

Single Event Lachup

シングルイベントと陽子分布

MOS-1衛星(高度909km軌道傾斜角99度)で発生したシングルイベントと 陽子30MeV以上の等高線マップを重ね合わせた結果

NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)

bull 入射粒子が電離によらず与える損傷非イオン化損失

低軌道での電子フラックスと 不具合の発生場所

南大西洋異常(SAA)と極の角

高度800kmでの電子フラックス図極の角(polar horn)とSAAを示す

太陽粒子線 bull 太陽高エネルギー粒子線(SPE Solar Proton Events)は太陽フレア とコロナガス噴出 (CMECoronal Mass Ejections )により引き起こされる bull フレアのスペクトルは可変であるためあるエネルギー域における最悪状態イベントは必ずしも別のエネルギー域における最悪条件ではない 1972年8月のイベント 10~70MeVの粒子が最も多かった 1989年10のイベント 1972年8月のイベントに比べ低エネルギー領域 高エネルギー領域が明らかに激しかった

フルエンス 105 to 1011 cm-2

変動期間 1日から数日

ldquoBastiliardquo Solar Event 14 July 2000

Carrington Flare

84

(LW Townseed) Carrington Flare(1859年) Carrington Flare による30MeV以上トータルFluenceを118times109cm-2で規格化 ~1989年フレアの約13倍(シングルイベントの評価で使用) ~1991年フレアの約9倍 2012年7月23日にキャリントンイベントとほぼ同等の爆発現象が太陽あるいは太陽の周りで起きていたということがNASAの太陽観測衛星「STEREO」の解析から発表された

放射線対策 bull 放射線シールドを付加し放射線を減衰させる

bull 放射線耐性の強い部品(SOI(Silicon On Insulator)技術による耐放射線部品)材料に変更する

bull 放射線による損傷を吸収するために回路または構造上のマージンを持たせる bull ソフト的なエラーに対しては エラー検出訂正機能や多数決

機能等でソフト的エラーが起きてもシステムが機能するようにしたフォールトトレラント機能を付けて対処する ICのハード的故障に対しては ラッチアップ耐性の強い部品を選定するしかないが 電流制限回路を付ける対策も採られる パワーMOSFETに対しては部品選定 電源電圧を規格値の半分以下に落とす等の対策を採る

SOI技術

表面帯電への対策例

表面の物体間を導線で結線する

太陽電池のカバーガラスを導電性被膜付き(酸化インジウムITO)にする

熱制御材表面にITOを被覆する

熱制御材は高誘電率のテフロンの使用を避け 高伝導度耐環境性に優れたブラックカプトンを使用

イオンエンジンの中和器で能動帯電制御

内部帯電への対策例

アルミで3mm厚さに相当するシールドで囲む(Faraday Cage)

テフロンやカプトンなどの誘電体材料の内部での使用量を最小限に押さえる

回路基板やコンフォーマルコーティングは誘電体なので電流リークパス(1012Ωcmまたは1012Ωcm2

程度)を必ずつける

特にスポット的な放射線シールドの金属材には必ず電流リークパスをつける

帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備

衛星モデル作成

材料物性テーブル設定

宇宙環境パラメータ設定

Converter

転送ディレクトリ 解析データファイル

転送

解析ディレクトリ生成 解析結果 進行状況チェック ファイル操作

MUSCAT 解析エンジン

解析結果 表示

パラメトリックラン

オプション 解析

大型パネル実験(35mtimes11m) クーポンパネル実験(26cmtimes16cm)

環境模擬試験 環境模擬試験

MUSCATに使用する物性値設計標準制定のための知見などを得ることを目的に軌道上の宇宙環境を模擬した地上試験を行っている これらの試験では放電の発生頻度や電圧閾値放電発生による太陽電池パネルや搭載機器への影響を検証している

放射線計測装置の原理

bull その粒子が物質を通過する際のエネルギー損出率が粒子の電荷(原子番号)Zの二乗に比例すること(Bethe-Blochの式)を利用する

S2

E

ΔE Ersquo

S1 S3

  • 宇宙機の設計のための宇宙環境
  • 話の流れ
  • 話の流れ
  • TEDA(技術データ取得装置)(国産部品の宇宙環境での実証の必要性)
  • ETS-VTEDA(技術データ取得装置)誕生前の部品の宇宙実証の背景
  • スライド番号 6
  • スライド番号 7
  • スライド番号 8
  • スライド番号 9
  • 図6太陽黒点数と静止軌道電子 (>04MeV ) Flux の変動 (ETS-V搭載DOMによる観測)
  • スライド番号 11
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの開発(理研東大と共同で宇宙環境計測の充実)
  • ETS-VI(きく6号)打ち上がったがGEOに行かずGTOに留まる
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの成果
  • スライド番号 15
  • スライド番号 16
  • スライド番号 17
  • ADEOS搭載TEDA(世界2番目の異常宇宙線ACR)
  • BBND (ボナー球中性子検出器)
  • スライド番号 20
  • ISS搭載BBNDの成果(約8か月)
  • スライド番号 22
  • MDS-1搭載放射線吸収線量モニタ(SDOM)
  • 放射線帯変動モデルの開発MDS-1 065 MeV 電子フラックス
  • 変動パラメータの選択 (1 cycle solar activity)
  • 変動パラメータ- Tavg の定義-
  • 065MeV 電子 L値-Tavg マップ
  • 13MeV 陽子 L値-Tavg マップ
  • 電子観測とMDS-1モデルの比較
  • 放射線帯フラックスピークの変動
  • 陽子観測とモデルの比較
  • 電子(035~078MeV) 1日の変動予測GOSAT軌道
  • 電子(035~078MeV) 変動の信頼度水準(1日)GOSAT軌道
  • MDS-1 model と AE-8 modelとの比較1日
  • 話の流れ
  • 2003年10月 みどり号の全損事故(複合現象)
  • 衛星帯電の基本式
  • 内部帯電
  • パドルでの帯電放電メカニズム
  • スライド番号 40
  • スライド番号 41
  • スライド番号 42
  • データ中継技術衛星DRTS (こだま)の不具合
  • DRTS ESA スパイクノイズと電子フルエンスの比較(赤の丸が異常検知)
  • 不具合が宇宙環境によるものであるか判断する際のポイント
  • 話の流れ
  • 宇宙天気のリスク-宇宙環境によるシステムへの影響 -
  • NASAの報告-GNampCに注目-
  • NASAの報告(続き)
  • 宇宙環境を原因とする不具合の割合-JAXAの場合-
  • 不具合発生部位の割合 
  • Satellite News Digest -静止軌道不具合-
  • 太陽活動と静止軌道衛星不具合例
  • スライド番号 54
  • スライド番号 55
  • スライド番号 56
  • 衛星開発段階における対策
  • 運用における対応
  • 話の流れ
  • スライド番号 60
  • スライド番号 61
  • まとめ(その1)
  • まとめ(その2)
  • 宇宙環境グループは宇宙ステーションと衛星プロジェクトの安全な遂行に貢献しています
  • 補足資料
  • 不具合原因の推移
  • 何故不具合は減らないか
  • 放射線による影響の概要
  • 耐放射線設計手順
  • 各軌道における放射線環境
  • 放射線による部品材料の影響
  • トータルドーズ効果
  • シングルイベント効果
  • シングルイベントメカニズム-陽子と重イオンの違い-
  • エラー発生率の計算
  • 線エネルギー付与(LET)(linear energy transfer)
  • 南大西洋異常(SAA)
  • Single Event Lachup
  • シングルイベントと陽子分布
  • NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)
  • 低軌道での電子フラックスと不具合の発生場所
  • 南大西洋異常(SAA)と極の角
  • スライド番号 83
  • Carrington Flare
  • 放射線対策
  • スライド番号 86
  • スライド番号 87
  • 帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備
  • スライド番号 89
  • 放射線計測装置の原理
Page 78: 宇宙機の設計のための宇宙環境の方針から国産部品開発(42品種)が実施された。 . 半導体電子部品は耐放射線性を加味して、人工衛星(特に

Single Event Lachup

シングルイベントと陽子分布

MOS-1衛星(高度909km軌道傾斜角99度)で発生したシングルイベントと 陽子30MeV以上の等高線マップを重ね合わせた結果

NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)

bull 入射粒子が電離によらず与える損傷非イオン化損失

低軌道での電子フラックスと 不具合の発生場所

南大西洋異常(SAA)と極の角

高度800kmでの電子フラックス図極の角(polar horn)とSAAを示す

太陽粒子線 bull 太陽高エネルギー粒子線(SPE Solar Proton Events)は太陽フレア とコロナガス噴出 (CMECoronal Mass Ejections )により引き起こされる bull フレアのスペクトルは可変であるためあるエネルギー域における最悪状態イベントは必ずしも別のエネルギー域における最悪条件ではない 1972年8月のイベント 10~70MeVの粒子が最も多かった 1989年10のイベント 1972年8月のイベントに比べ低エネルギー領域 高エネルギー領域が明らかに激しかった

フルエンス 105 to 1011 cm-2

変動期間 1日から数日

ldquoBastiliardquo Solar Event 14 July 2000

Carrington Flare

84

(LW Townseed) Carrington Flare(1859年) Carrington Flare による30MeV以上トータルFluenceを118times109cm-2で規格化 ~1989年フレアの約13倍(シングルイベントの評価で使用) ~1991年フレアの約9倍 2012年7月23日にキャリントンイベントとほぼ同等の爆発現象が太陽あるいは太陽の周りで起きていたということがNASAの太陽観測衛星「STEREO」の解析から発表された

放射線対策 bull 放射線シールドを付加し放射線を減衰させる

bull 放射線耐性の強い部品(SOI(Silicon On Insulator)技術による耐放射線部品)材料に変更する

bull 放射線による損傷を吸収するために回路または構造上のマージンを持たせる bull ソフト的なエラーに対しては エラー検出訂正機能や多数決

機能等でソフト的エラーが起きてもシステムが機能するようにしたフォールトトレラント機能を付けて対処する ICのハード的故障に対しては ラッチアップ耐性の強い部品を選定するしかないが 電流制限回路を付ける対策も採られる パワーMOSFETに対しては部品選定 電源電圧を規格値の半分以下に落とす等の対策を採る

SOI技術

表面帯電への対策例

表面の物体間を導線で結線する

太陽電池のカバーガラスを導電性被膜付き(酸化インジウムITO)にする

熱制御材表面にITOを被覆する

熱制御材は高誘電率のテフロンの使用を避け 高伝導度耐環境性に優れたブラックカプトンを使用

イオンエンジンの中和器で能動帯電制御

内部帯電への対策例

アルミで3mm厚さに相当するシールドで囲む(Faraday Cage)

テフロンやカプトンなどの誘電体材料の内部での使用量を最小限に押さえる

回路基板やコンフォーマルコーティングは誘電体なので電流リークパス(1012Ωcmまたは1012Ωcm2

程度)を必ずつける

特にスポット的な放射線シールドの金属材には必ず電流リークパスをつける

帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備

衛星モデル作成

材料物性テーブル設定

宇宙環境パラメータ設定

Converter

転送ディレクトリ 解析データファイル

転送

解析ディレクトリ生成 解析結果 進行状況チェック ファイル操作

MUSCAT 解析エンジン

解析結果 表示

パラメトリックラン

オプション 解析

大型パネル実験(35mtimes11m) クーポンパネル実験(26cmtimes16cm)

環境模擬試験 環境模擬試験

MUSCATに使用する物性値設計標準制定のための知見などを得ることを目的に軌道上の宇宙環境を模擬した地上試験を行っている これらの試験では放電の発生頻度や電圧閾値放電発生による太陽電池パネルや搭載機器への影響を検証している

放射線計測装置の原理

bull その粒子が物質を通過する際のエネルギー損出率が粒子の電荷(原子番号)Zの二乗に比例すること(Bethe-Blochの式)を利用する

S2

E

ΔE Ersquo

S1 S3

  • 宇宙機の設計のための宇宙環境
  • 話の流れ
  • 話の流れ
  • TEDA(技術データ取得装置)(国産部品の宇宙環境での実証の必要性)
  • ETS-VTEDA(技術データ取得装置)誕生前の部品の宇宙実証の背景
  • スライド番号 6
  • スライド番号 7
  • スライド番号 8
  • スライド番号 9
  • 図6太陽黒点数と静止軌道電子 (>04MeV ) Flux の変動 (ETS-V搭載DOMによる観測)
  • スライド番号 11
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの開発(理研東大と共同で宇宙環境計測の充実)
  • ETS-VI(きく6号)打ち上がったがGEOに行かずGTOに留まる
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの成果
  • スライド番号 15
  • スライド番号 16
  • スライド番号 17
  • ADEOS搭載TEDA(世界2番目の異常宇宙線ACR)
  • BBND (ボナー球中性子検出器)
  • スライド番号 20
  • ISS搭載BBNDの成果(約8か月)
  • スライド番号 22
  • MDS-1搭載放射線吸収線量モニタ(SDOM)
  • 放射線帯変動モデルの開発MDS-1 065 MeV 電子フラックス
  • 変動パラメータの選択 (1 cycle solar activity)
  • 変動パラメータ- Tavg の定義-
  • 065MeV 電子 L値-Tavg マップ
  • 13MeV 陽子 L値-Tavg マップ
  • 電子観測とMDS-1モデルの比較
  • 放射線帯フラックスピークの変動
  • 陽子観測とモデルの比較
  • 電子(035~078MeV) 1日の変動予測GOSAT軌道
  • 電子(035~078MeV) 変動の信頼度水準(1日)GOSAT軌道
  • MDS-1 model と AE-8 modelとの比較1日
  • 話の流れ
  • 2003年10月 みどり号の全損事故(複合現象)
  • 衛星帯電の基本式
  • 内部帯電
  • パドルでの帯電放電メカニズム
  • スライド番号 40
  • スライド番号 41
  • スライド番号 42
  • データ中継技術衛星DRTS (こだま)の不具合
  • DRTS ESA スパイクノイズと電子フルエンスの比較(赤の丸が異常検知)
  • 不具合が宇宙環境によるものであるか判断する際のポイント
  • 話の流れ
  • 宇宙天気のリスク-宇宙環境によるシステムへの影響 -
  • NASAの報告-GNampCに注目-
  • NASAの報告(続き)
  • 宇宙環境を原因とする不具合の割合-JAXAの場合-
  • 不具合発生部位の割合 
  • Satellite News Digest -静止軌道不具合-
  • 太陽活動と静止軌道衛星不具合例
  • スライド番号 54
  • スライド番号 55
  • スライド番号 56
  • 衛星開発段階における対策
  • 運用における対応
  • 話の流れ
  • スライド番号 60
  • スライド番号 61
  • まとめ(その1)
  • まとめ(その2)
  • 宇宙環境グループは宇宙ステーションと衛星プロジェクトの安全な遂行に貢献しています
  • 補足資料
  • 不具合原因の推移
  • 何故不具合は減らないか
  • 放射線による影響の概要
  • 耐放射線設計手順
  • 各軌道における放射線環境
  • 放射線による部品材料の影響
  • トータルドーズ効果
  • シングルイベント効果
  • シングルイベントメカニズム-陽子と重イオンの違い-
  • エラー発生率の計算
  • 線エネルギー付与(LET)(linear energy transfer)
  • 南大西洋異常(SAA)
  • Single Event Lachup
  • シングルイベントと陽子分布
  • NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)
  • 低軌道での電子フラックスと不具合の発生場所
  • 南大西洋異常(SAA)と極の角
  • スライド番号 83
  • Carrington Flare
  • 放射線対策
  • スライド番号 86
  • スライド番号 87
  • 帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備
  • スライド番号 89
  • 放射線計測装置の原理
Page 79: 宇宙機の設計のための宇宙環境の方針から国産部品開発(42品種)が実施された。 . 半導体電子部品は耐放射線性を加味して、人工衛星(特に

シングルイベントと陽子分布

MOS-1衛星(高度909km軌道傾斜角99度)で発生したシングルイベントと 陽子30MeV以上の等高線マップを重ね合わせた結果

NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)

bull 入射粒子が電離によらず与える損傷非イオン化損失

低軌道での電子フラックスと 不具合の発生場所

南大西洋異常(SAA)と極の角

高度800kmでの電子フラックス図極の角(polar horn)とSAAを示す

太陽粒子線 bull 太陽高エネルギー粒子線(SPE Solar Proton Events)は太陽フレア とコロナガス噴出 (CMECoronal Mass Ejections )により引き起こされる bull フレアのスペクトルは可変であるためあるエネルギー域における最悪状態イベントは必ずしも別のエネルギー域における最悪条件ではない 1972年8月のイベント 10~70MeVの粒子が最も多かった 1989年10のイベント 1972年8月のイベントに比べ低エネルギー領域 高エネルギー領域が明らかに激しかった

フルエンス 105 to 1011 cm-2

変動期間 1日から数日

ldquoBastiliardquo Solar Event 14 July 2000

Carrington Flare

84

(LW Townseed) Carrington Flare(1859年) Carrington Flare による30MeV以上トータルFluenceを118times109cm-2で規格化 ~1989年フレアの約13倍(シングルイベントの評価で使用) ~1991年フレアの約9倍 2012年7月23日にキャリントンイベントとほぼ同等の爆発現象が太陽あるいは太陽の周りで起きていたということがNASAの太陽観測衛星「STEREO」の解析から発表された

放射線対策 bull 放射線シールドを付加し放射線を減衰させる

bull 放射線耐性の強い部品(SOI(Silicon On Insulator)技術による耐放射線部品)材料に変更する

bull 放射線による損傷を吸収するために回路または構造上のマージンを持たせる bull ソフト的なエラーに対しては エラー検出訂正機能や多数決

機能等でソフト的エラーが起きてもシステムが機能するようにしたフォールトトレラント機能を付けて対処する ICのハード的故障に対しては ラッチアップ耐性の強い部品を選定するしかないが 電流制限回路を付ける対策も採られる パワーMOSFETに対しては部品選定 電源電圧を規格値の半分以下に落とす等の対策を採る

SOI技術

表面帯電への対策例

表面の物体間を導線で結線する

太陽電池のカバーガラスを導電性被膜付き(酸化インジウムITO)にする

熱制御材表面にITOを被覆する

熱制御材は高誘電率のテフロンの使用を避け 高伝導度耐環境性に優れたブラックカプトンを使用

イオンエンジンの中和器で能動帯電制御

内部帯電への対策例

アルミで3mm厚さに相当するシールドで囲む(Faraday Cage)

テフロンやカプトンなどの誘電体材料の内部での使用量を最小限に押さえる

回路基板やコンフォーマルコーティングは誘電体なので電流リークパス(1012Ωcmまたは1012Ωcm2

程度)を必ずつける

特にスポット的な放射線シールドの金属材には必ず電流リークパスをつける

帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備

衛星モデル作成

材料物性テーブル設定

宇宙環境パラメータ設定

Converter

転送ディレクトリ 解析データファイル

転送

解析ディレクトリ生成 解析結果 進行状況チェック ファイル操作

MUSCAT 解析エンジン

解析結果 表示

パラメトリックラン

オプション 解析

大型パネル実験(35mtimes11m) クーポンパネル実験(26cmtimes16cm)

環境模擬試験 環境模擬試験

MUSCATに使用する物性値設計標準制定のための知見などを得ることを目的に軌道上の宇宙環境を模擬した地上試験を行っている これらの試験では放電の発生頻度や電圧閾値放電発生による太陽電池パネルや搭載機器への影響を検証している

放射線計測装置の原理

bull その粒子が物質を通過する際のエネルギー損出率が粒子の電荷(原子番号)Zの二乗に比例すること(Bethe-Blochの式)を利用する

S2

E

ΔE Ersquo

S1 S3

  • 宇宙機の設計のための宇宙環境
  • 話の流れ
  • 話の流れ
  • TEDA(技術データ取得装置)(国産部品の宇宙環境での実証の必要性)
  • ETS-VTEDA(技術データ取得装置)誕生前の部品の宇宙実証の背景
  • スライド番号 6
  • スライド番号 7
  • スライド番号 8
  • スライド番号 9
  • 図6太陽黒点数と静止軌道電子 (>04MeV ) Flux の変動 (ETS-V搭載DOMによる観測)
  • スライド番号 11
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの開発(理研東大と共同で宇宙環境計測の充実)
  • ETS-VI(きく6号)打ち上がったがGEOに行かずGTOに留まる
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの成果
  • スライド番号 15
  • スライド番号 16
  • スライド番号 17
  • ADEOS搭載TEDA(世界2番目の異常宇宙線ACR)
  • BBND (ボナー球中性子検出器)
  • スライド番号 20
  • ISS搭載BBNDの成果(約8か月)
  • スライド番号 22
  • MDS-1搭載放射線吸収線量モニタ(SDOM)
  • 放射線帯変動モデルの開発MDS-1 065 MeV 電子フラックス
  • 変動パラメータの選択 (1 cycle solar activity)
  • 変動パラメータ- Tavg の定義-
  • 065MeV 電子 L値-Tavg マップ
  • 13MeV 陽子 L値-Tavg マップ
  • 電子観測とMDS-1モデルの比較
  • 放射線帯フラックスピークの変動
  • 陽子観測とモデルの比較
  • 電子(035~078MeV) 1日の変動予測GOSAT軌道
  • 電子(035~078MeV) 変動の信頼度水準(1日)GOSAT軌道
  • MDS-1 model と AE-8 modelとの比較1日
  • 話の流れ
  • 2003年10月 みどり号の全損事故(複合現象)
  • 衛星帯電の基本式
  • 内部帯電
  • パドルでの帯電放電メカニズム
  • スライド番号 40
  • スライド番号 41
  • スライド番号 42
  • データ中継技術衛星DRTS (こだま)の不具合
  • DRTS ESA スパイクノイズと電子フルエンスの比較(赤の丸が異常検知)
  • 不具合が宇宙環境によるものであるか判断する際のポイント
  • 話の流れ
  • 宇宙天気のリスク-宇宙環境によるシステムへの影響 -
  • NASAの報告-GNampCに注目-
  • NASAの報告(続き)
  • 宇宙環境を原因とする不具合の割合-JAXAの場合-
  • 不具合発生部位の割合 
  • Satellite News Digest -静止軌道不具合-
  • 太陽活動と静止軌道衛星不具合例
  • スライド番号 54
  • スライド番号 55
  • スライド番号 56
  • 衛星開発段階における対策
  • 運用における対応
  • 話の流れ
  • スライド番号 60
  • スライド番号 61
  • まとめ(その1)
  • まとめ(その2)
  • 宇宙環境グループは宇宙ステーションと衛星プロジェクトの安全な遂行に貢献しています
  • 補足資料
  • 不具合原因の推移
  • 何故不具合は減らないか
  • 放射線による影響の概要
  • 耐放射線設計手順
  • 各軌道における放射線環境
  • 放射線による部品材料の影響
  • トータルドーズ効果
  • シングルイベント効果
  • シングルイベントメカニズム-陽子と重イオンの違い-
  • エラー発生率の計算
  • 線エネルギー付与(LET)(linear energy transfer)
  • 南大西洋異常(SAA)
  • Single Event Lachup
  • シングルイベントと陽子分布
  • NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)
  • 低軌道での電子フラックスと不具合の発生場所
  • 南大西洋異常(SAA)と極の角
  • スライド番号 83
  • Carrington Flare
  • 放射線対策
  • スライド番号 86
  • スライド番号 87
  • 帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備
  • スライド番号 89
  • 放射線計測装置の原理
Page 80: 宇宙機の設計のための宇宙環境の方針から国産部品開発(42品種)が実施された。 . 半導体電子部品は耐放射線性を加味して、人工衛星(特に

NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)

bull 入射粒子が電離によらず与える損傷非イオン化損失

低軌道での電子フラックスと 不具合の発生場所

南大西洋異常(SAA)と極の角

高度800kmでの電子フラックス図極の角(polar horn)とSAAを示す

太陽粒子線 bull 太陽高エネルギー粒子線(SPE Solar Proton Events)は太陽フレア とコロナガス噴出 (CMECoronal Mass Ejections )により引き起こされる bull フレアのスペクトルは可変であるためあるエネルギー域における最悪状態イベントは必ずしも別のエネルギー域における最悪条件ではない 1972年8月のイベント 10~70MeVの粒子が最も多かった 1989年10のイベント 1972年8月のイベントに比べ低エネルギー領域 高エネルギー領域が明らかに激しかった

フルエンス 105 to 1011 cm-2

変動期間 1日から数日

ldquoBastiliardquo Solar Event 14 July 2000

Carrington Flare

84

(LW Townseed) Carrington Flare(1859年) Carrington Flare による30MeV以上トータルFluenceを118times109cm-2で規格化 ~1989年フレアの約13倍(シングルイベントの評価で使用) ~1991年フレアの約9倍 2012年7月23日にキャリントンイベントとほぼ同等の爆発現象が太陽あるいは太陽の周りで起きていたということがNASAの太陽観測衛星「STEREO」の解析から発表された

放射線対策 bull 放射線シールドを付加し放射線を減衰させる

bull 放射線耐性の強い部品(SOI(Silicon On Insulator)技術による耐放射線部品)材料に変更する

bull 放射線による損傷を吸収するために回路または構造上のマージンを持たせる bull ソフト的なエラーに対しては エラー検出訂正機能や多数決

機能等でソフト的エラーが起きてもシステムが機能するようにしたフォールトトレラント機能を付けて対処する ICのハード的故障に対しては ラッチアップ耐性の強い部品を選定するしかないが 電流制限回路を付ける対策も採られる パワーMOSFETに対しては部品選定 電源電圧を規格値の半分以下に落とす等の対策を採る

SOI技術

表面帯電への対策例

表面の物体間を導線で結線する

太陽電池のカバーガラスを導電性被膜付き(酸化インジウムITO)にする

熱制御材表面にITOを被覆する

熱制御材は高誘電率のテフロンの使用を避け 高伝導度耐環境性に優れたブラックカプトンを使用

イオンエンジンの中和器で能動帯電制御

内部帯電への対策例

アルミで3mm厚さに相当するシールドで囲む(Faraday Cage)

テフロンやカプトンなどの誘電体材料の内部での使用量を最小限に押さえる

回路基板やコンフォーマルコーティングは誘電体なので電流リークパス(1012Ωcmまたは1012Ωcm2

程度)を必ずつける

特にスポット的な放射線シールドの金属材には必ず電流リークパスをつける

帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備

衛星モデル作成

材料物性テーブル設定

宇宙環境パラメータ設定

Converter

転送ディレクトリ 解析データファイル

転送

解析ディレクトリ生成 解析結果 進行状況チェック ファイル操作

MUSCAT 解析エンジン

解析結果 表示

パラメトリックラン

オプション 解析

大型パネル実験(35mtimes11m) クーポンパネル実験(26cmtimes16cm)

環境模擬試験 環境模擬試験

MUSCATに使用する物性値設計標準制定のための知見などを得ることを目的に軌道上の宇宙環境を模擬した地上試験を行っている これらの試験では放電の発生頻度や電圧閾値放電発生による太陽電池パネルや搭載機器への影響を検証している

放射線計測装置の原理

bull その粒子が物質を通過する際のエネルギー損出率が粒子の電荷(原子番号)Zの二乗に比例すること(Bethe-Blochの式)を利用する

S2

E

ΔE Ersquo

S1 S3

  • 宇宙機の設計のための宇宙環境
  • 話の流れ
  • 話の流れ
  • TEDA(技術データ取得装置)(国産部品の宇宙環境での実証の必要性)
  • ETS-VTEDA(技術データ取得装置)誕生前の部品の宇宙実証の背景
  • スライド番号 6
  • スライド番号 7
  • スライド番号 8
  • スライド番号 9
  • 図6太陽黒点数と静止軌道電子 (>04MeV ) Flux の変動 (ETS-V搭載DOMによる観測)
  • スライド番号 11
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの開発(理研東大と共同で宇宙環境計測の充実)
  • ETS-VI(きく6号)打ち上がったがGEOに行かずGTOに留まる
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの成果
  • スライド番号 15
  • スライド番号 16
  • スライド番号 17
  • ADEOS搭載TEDA(世界2番目の異常宇宙線ACR)
  • BBND (ボナー球中性子検出器)
  • スライド番号 20
  • ISS搭載BBNDの成果(約8か月)
  • スライド番号 22
  • MDS-1搭載放射線吸収線量モニタ(SDOM)
  • 放射線帯変動モデルの開発MDS-1 065 MeV 電子フラックス
  • 変動パラメータの選択 (1 cycle solar activity)
  • 変動パラメータ- Tavg の定義-
  • 065MeV 電子 L値-Tavg マップ
  • 13MeV 陽子 L値-Tavg マップ
  • 電子観測とMDS-1モデルの比較
  • 放射線帯フラックスピークの変動
  • 陽子観測とモデルの比較
  • 電子(035~078MeV) 1日の変動予測GOSAT軌道
  • 電子(035~078MeV) 変動の信頼度水準(1日)GOSAT軌道
  • MDS-1 model と AE-8 modelとの比較1日
  • 話の流れ
  • 2003年10月 みどり号の全損事故(複合現象)
  • 衛星帯電の基本式
  • 内部帯電
  • パドルでの帯電放電メカニズム
  • スライド番号 40
  • スライド番号 41
  • スライド番号 42
  • データ中継技術衛星DRTS (こだま)の不具合
  • DRTS ESA スパイクノイズと電子フルエンスの比較(赤の丸が異常検知)
  • 不具合が宇宙環境によるものであるか判断する際のポイント
  • 話の流れ
  • 宇宙天気のリスク-宇宙環境によるシステムへの影響 -
  • NASAの報告-GNampCに注目-
  • NASAの報告(続き)
  • 宇宙環境を原因とする不具合の割合-JAXAの場合-
  • 不具合発生部位の割合 
  • Satellite News Digest -静止軌道不具合-
  • 太陽活動と静止軌道衛星不具合例
  • スライド番号 54
  • スライド番号 55
  • スライド番号 56
  • 衛星開発段階における対策
  • 運用における対応
  • 話の流れ
  • スライド番号 60
  • スライド番号 61
  • まとめ(その1)
  • まとめ(その2)
  • 宇宙環境グループは宇宙ステーションと衛星プロジェクトの安全な遂行に貢献しています
  • 補足資料
  • 不具合原因の推移
  • 何故不具合は減らないか
  • 放射線による影響の概要
  • 耐放射線設計手順
  • 各軌道における放射線環境
  • 放射線による部品材料の影響
  • トータルドーズ効果
  • シングルイベント効果
  • シングルイベントメカニズム-陽子と重イオンの違い-
  • エラー発生率の計算
  • 線エネルギー付与(LET)(linear energy transfer)
  • 南大西洋異常(SAA)
  • Single Event Lachup
  • シングルイベントと陽子分布
  • NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)
  • 低軌道での電子フラックスと不具合の発生場所
  • 南大西洋異常(SAA)と極の角
  • スライド番号 83
  • Carrington Flare
  • 放射線対策
  • スライド番号 86
  • スライド番号 87
  • 帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備
  • スライド番号 89
  • 放射線計測装置の原理
Page 81: 宇宙機の設計のための宇宙環境の方針から国産部品開発(42品種)が実施された。 . 半導体電子部品は耐放射線性を加味して、人工衛星(特に

低軌道での電子フラックスと 不具合の発生場所

南大西洋異常(SAA)と極の角

高度800kmでの電子フラックス図極の角(polar horn)とSAAを示す

太陽粒子線 bull 太陽高エネルギー粒子線(SPE Solar Proton Events)は太陽フレア とコロナガス噴出 (CMECoronal Mass Ejections )により引き起こされる bull フレアのスペクトルは可変であるためあるエネルギー域における最悪状態イベントは必ずしも別のエネルギー域における最悪条件ではない 1972年8月のイベント 10~70MeVの粒子が最も多かった 1989年10のイベント 1972年8月のイベントに比べ低エネルギー領域 高エネルギー領域が明らかに激しかった

フルエンス 105 to 1011 cm-2

変動期間 1日から数日

ldquoBastiliardquo Solar Event 14 July 2000

Carrington Flare

84

(LW Townseed) Carrington Flare(1859年) Carrington Flare による30MeV以上トータルFluenceを118times109cm-2で規格化 ~1989年フレアの約13倍(シングルイベントの評価で使用) ~1991年フレアの約9倍 2012年7月23日にキャリントンイベントとほぼ同等の爆発現象が太陽あるいは太陽の周りで起きていたということがNASAの太陽観測衛星「STEREO」の解析から発表された

放射線対策 bull 放射線シールドを付加し放射線を減衰させる

bull 放射線耐性の強い部品(SOI(Silicon On Insulator)技術による耐放射線部品)材料に変更する

bull 放射線による損傷を吸収するために回路または構造上のマージンを持たせる bull ソフト的なエラーに対しては エラー検出訂正機能や多数決

機能等でソフト的エラーが起きてもシステムが機能するようにしたフォールトトレラント機能を付けて対処する ICのハード的故障に対しては ラッチアップ耐性の強い部品を選定するしかないが 電流制限回路を付ける対策も採られる パワーMOSFETに対しては部品選定 電源電圧を規格値の半分以下に落とす等の対策を採る

SOI技術

表面帯電への対策例

表面の物体間を導線で結線する

太陽電池のカバーガラスを導電性被膜付き(酸化インジウムITO)にする

熱制御材表面にITOを被覆する

熱制御材は高誘電率のテフロンの使用を避け 高伝導度耐環境性に優れたブラックカプトンを使用

イオンエンジンの中和器で能動帯電制御

内部帯電への対策例

アルミで3mm厚さに相当するシールドで囲む(Faraday Cage)

テフロンやカプトンなどの誘電体材料の内部での使用量を最小限に押さえる

回路基板やコンフォーマルコーティングは誘電体なので電流リークパス(1012Ωcmまたは1012Ωcm2

程度)を必ずつける

特にスポット的な放射線シールドの金属材には必ず電流リークパスをつける

帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備

衛星モデル作成

材料物性テーブル設定

宇宙環境パラメータ設定

Converter

転送ディレクトリ 解析データファイル

転送

解析ディレクトリ生成 解析結果 進行状況チェック ファイル操作

MUSCAT 解析エンジン

解析結果 表示

パラメトリックラン

オプション 解析

大型パネル実験(35mtimes11m) クーポンパネル実験(26cmtimes16cm)

環境模擬試験 環境模擬試験

MUSCATに使用する物性値設計標準制定のための知見などを得ることを目的に軌道上の宇宙環境を模擬した地上試験を行っている これらの試験では放電の発生頻度や電圧閾値放電発生による太陽電池パネルや搭載機器への影響を検証している

放射線計測装置の原理

bull その粒子が物質を通過する際のエネルギー損出率が粒子の電荷(原子番号)Zの二乗に比例すること(Bethe-Blochの式)を利用する

S2

E

ΔE Ersquo

S1 S3

  • 宇宙機の設計のための宇宙環境
  • 話の流れ
  • 話の流れ
  • TEDA(技術データ取得装置)(国産部品の宇宙環境での実証の必要性)
  • ETS-VTEDA(技術データ取得装置)誕生前の部品の宇宙実証の背景
  • スライド番号 6
  • スライド番号 7
  • スライド番号 8
  • スライド番号 9
  • 図6太陽黒点数と静止軌道電子 (>04MeV ) Flux の変動 (ETS-V搭載DOMによる観測)
  • スライド番号 11
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの開発(理研東大と共同で宇宙環境計測の充実)
  • ETS-VI(きく6号)打ち上がったがGEOに行かずGTOに留まる
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの成果
  • スライド番号 15
  • スライド番号 16
  • スライド番号 17
  • ADEOS搭載TEDA(世界2番目の異常宇宙線ACR)
  • BBND (ボナー球中性子検出器)
  • スライド番号 20
  • ISS搭載BBNDの成果(約8か月)
  • スライド番号 22
  • MDS-1搭載放射線吸収線量モニタ(SDOM)
  • 放射線帯変動モデルの開発MDS-1 065 MeV 電子フラックス
  • 変動パラメータの選択 (1 cycle solar activity)
  • 変動パラメータ- Tavg の定義-
  • 065MeV 電子 L値-Tavg マップ
  • 13MeV 陽子 L値-Tavg マップ
  • 電子観測とMDS-1モデルの比較
  • 放射線帯フラックスピークの変動
  • 陽子観測とモデルの比較
  • 電子(035~078MeV) 1日の変動予測GOSAT軌道
  • 電子(035~078MeV) 変動の信頼度水準(1日)GOSAT軌道
  • MDS-1 model と AE-8 modelとの比較1日
  • 話の流れ
  • 2003年10月 みどり号の全損事故(複合現象)
  • 衛星帯電の基本式
  • 内部帯電
  • パドルでの帯電放電メカニズム
  • スライド番号 40
  • スライド番号 41
  • スライド番号 42
  • データ中継技術衛星DRTS (こだま)の不具合
  • DRTS ESA スパイクノイズと電子フルエンスの比較(赤の丸が異常検知)
  • 不具合が宇宙環境によるものであるか判断する際のポイント
  • 話の流れ
  • 宇宙天気のリスク-宇宙環境によるシステムへの影響 -
  • NASAの報告-GNampCに注目-
  • NASAの報告(続き)
  • 宇宙環境を原因とする不具合の割合-JAXAの場合-
  • 不具合発生部位の割合 
  • Satellite News Digest -静止軌道不具合-
  • 太陽活動と静止軌道衛星不具合例
  • スライド番号 54
  • スライド番号 55
  • スライド番号 56
  • 衛星開発段階における対策
  • 運用における対応
  • 話の流れ
  • スライド番号 60
  • スライド番号 61
  • まとめ(その1)
  • まとめ(その2)
  • 宇宙環境グループは宇宙ステーションと衛星プロジェクトの安全な遂行に貢献しています
  • 補足資料
  • 不具合原因の推移
  • 何故不具合は減らないか
  • 放射線による影響の概要
  • 耐放射線設計手順
  • 各軌道における放射線環境
  • 放射線による部品材料の影響
  • トータルドーズ効果
  • シングルイベント効果
  • シングルイベントメカニズム-陽子と重イオンの違い-
  • エラー発生率の計算
  • 線エネルギー付与(LET)(linear energy transfer)
  • 南大西洋異常(SAA)
  • Single Event Lachup
  • シングルイベントと陽子分布
  • NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)
  • 低軌道での電子フラックスと不具合の発生場所
  • 南大西洋異常(SAA)と極の角
  • スライド番号 83
  • Carrington Flare
  • 放射線対策
  • スライド番号 86
  • スライド番号 87
  • 帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備
  • スライド番号 89
  • 放射線計測装置の原理
Page 82: 宇宙機の設計のための宇宙環境の方針から国産部品開発(42品種)が実施された。 . 半導体電子部品は耐放射線性を加味して、人工衛星(特に

南大西洋異常(SAA)と極の角

高度800kmでの電子フラックス図極の角(polar horn)とSAAを示す

太陽粒子線 bull 太陽高エネルギー粒子線(SPE Solar Proton Events)は太陽フレア とコロナガス噴出 (CMECoronal Mass Ejections )により引き起こされる bull フレアのスペクトルは可変であるためあるエネルギー域における最悪状態イベントは必ずしも別のエネルギー域における最悪条件ではない 1972年8月のイベント 10~70MeVの粒子が最も多かった 1989年10のイベント 1972年8月のイベントに比べ低エネルギー領域 高エネルギー領域が明らかに激しかった

フルエンス 105 to 1011 cm-2

変動期間 1日から数日

ldquoBastiliardquo Solar Event 14 July 2000

Carrington Flare

84

(LW Townseed) Carrington Flare(1859年) Carrington Flare による30MeV以上トータルFluenceを118times109cm-2で規格化 ~1989年フレアの約13倍(シングルイベントの評価で使用) ~1991年フレアの約9倍 2012年7月23日にキャリントンイベントとほぼ同等の爆発現象が太陽あるいは太陽の周りで起きていたということがNASAの太陽観測衛星「STEREO」の解析から発表された

放射線対策 bull 放射線シールドを付加し放射線を減衰させる

bull 放射線耐性の強い部品(SOI(Silicon On Insulator)技術による耐放射線部品)材料に変更する

bull 放射線による損傷を吸収するために回路または構造上のマージンを持たせる bull ソフト的なエラーに対しては エラー検出訂正機能や多数決

機能等でソフト的エラーが起きてもシステムが機能するようにしたフォールトトレラント機能を付けて対処する ICのハード的故障に対しては ラッチアップ耐性の強い部品を選定するしかないが 電流制限回路を付ける対策も採られる パワーMOSFETに対しては部品選定 電源電圧を規格値の半分以下に落とす等の対策を採る

SOI技術

表面帯電への対策例

表面の物体間を導線で結線する

太陽電池のカバーガラスを導電性被膜付き(酸化インジウムITO)にする

熱制御材表面にITOを被覆する

熱制御材は高誘電率のテフロンの使用を避け 高伝導度耐環境性に優れたブラックカプトンを使用

イオンエンジンの中和器で能動帯電制御

内部帯電への対策例

アルミで3mm厚さに相当するシールドで囲む(Faraday Cage)

テフロンやカプトンなどの誘電体材料の内部での使用量を最小限に押さえる

回路基板やコンフォーマルコーティングは誘電体なので電流リークパス(1012Ωcmまたは1012Ωcm2

程度)を必ずつける

特にスポット的な放射線シールドの金属材には必ず電流リークパスをつける

帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備

衛星モデル作成

材料物性テーブル設定

宇宙環境パラメータ設定

Converter

転送ディレクトリ 解析データファイル

転送

解析ディレクトリ生成 解析結果 進行状況チェック ファイル操作

MUSCAT 解析エンジン

解析結果 表示

パラメトリックラン

オプション 解析

大型パネル実験(35mtimes11m) クーポンパネル実験(26cmtimes16cm)

環境模擬試験 環境模擬試験

MUSCATに使用する物性値設計標準制定のための知見などを得ることを目的に軌道上の宇宙環境を模擬した地上試験を行っている これらの試験では放電の発生頻度や電圧閾値放電発生による太陽電池パネルや搭載機器への影響を検証している

放射線計測装置の原理

bull その粒子が物質を通過する際のエネルギー損出率が粒子の電荷(原子番号)Zの二乗に比例すること(Bethe-Blochの式)を利用する

S2

E

ΔE Ersquo

S1 S3

  • 宇宙機の設計のための宇宙環境
  • 話の流れ
  • 話の流れ
  • TEDA(技術データ取得装置)(国産部品の宇宙環境での実証の必要性)
  • ETS-VTEDA(技術データ取得装置)誕生前の部品の宇宙実証の背景
  • スライド番号 6
  • スライド番号 7
  • スライド番号 8
  • スライド番号 9
  • 図6太陽黒点数と静止軌道電子 (>04MeV ) Flux の変動 (ETS-V搭載DOMによる観測)
  • スライド番号 11
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの開発(理研東大と共同で宇宙環境計測の充実)
  • ETS-VI(きく6号)打ち上がったがGEOに行かずGTOに留まる
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの成果
  • スライド番号 15
  • スライド番号 16
  • スライド番号 17
  • ADEOS搭載TEDA(世界2番目の異常宇宙線ACR)
  • BBND (ボナー球中性子検出器)
  • スライド番号 20
  • ISS搭載BBNDの成果(約8か月)
  • スライド番号 22
  • MDS-1搭載放射線吸収線量モニタ(SDOM)
  • 放射線帯変動モデルの開発MDS-1 065 MeV 電子フラックス
  • 変動パラメータの選択 (1 cycle solar activity)
  • 変動パラメータ- Tavg の定義-
  • 065MeV 電子 L値-Tavg マップ
  • 13MeV 陽子 L値-Tavg マップ
  • 電子観測とMDS-1モデルの比較
  • 放射線帯フラックスピークの変動
  • 陽子観測とモデルの比較
  • 電子(035~078MeV) 1日の変動予測GOSAT軌道
  • 電子(035~078MeV) 変動の信頼度水準(1日)GOSAT軌道
  • MDS-1 model と AE-8 modelとの比較1日
  • 話の流れ
  • 2003年10月 みどり号の全損事故(複合現象)
  • 衛星帯電の基本式
  • 内部帯電
  • パドルでの帯電放電メカニズム
  • スライド番号 40
  • スライド番号 41
  • スライド番号 42
  • データ中継技術衛星DRTS (こだま)の不具合
  • DRTS ESA スパイクノイズと電子フルエンスの比較(赤の丸が異常検知)
  • 不具合が宇宙環境によるものであるか判断する際のポイント
  • 話の流れ
  • 宇宙天気のリスク-宇宙環境によるシステムへの影響 -
  • NASAの報告-GNampCに注目-
  • NASAの報告(続き)
  • 宇宙環境を原因とする不具合の割合-JAXAの場合-
  • 不具合発生部位の割合 
  • Satellite News Digest -静止軌道不具合-
  • 太陽活動と静止軌道衛星不具合例
  • スライド番号 54
  • スライド番号 55
  • スライド番号 56
  • 衛星開発段階における対策
  • 運用における対応
  • 話の流れ
  • スライド番号 60
  • スライド番号 61
  • まとめ(その1)
  • まとめ(その2)
  • 宇宙環境グループは宇宙ステーションと衛星プロジェクトの安全な遂行に貢献しています
  • 補足資料
  • 不具合原因の推移
  • 何故不具合は減らないか
  • 放射線による影響の概要
  • 耐放射線設計手順
  • 各軌道における放射線環境
  • 放射線による部品材料の影響
  • トータルドーズ効果
  • シングルイベント効果
  • シングルイベントメカニズム-陽子と重イオンの違い-
  • エラー発生率の計算
  • 線エネルギー付与(LET)(linear energy transfer)
  • 南大西洋異常(SAA)
  • Single Event Lachup
  • シングルイベントと陽子分布
  • NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)
  • 低軌道での電子フラックスと不具合の発生場所
  • 南大西洋異常(SAA)と極の角
  • スライド番号 83
  • Carrington Flare
  • 放射線対策
  • スライド番号 86
  • スライド番号 87
  • 帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備
  • スライド番号 89
  • 放射線計測装置の原理
Page 83: 宇宙機の設計のための宇宙環境の方針から国産部品開発(42品種)が実施された。 . 半導体電子部品は耐放射線性を加味して、人工衛星(特に

太陽粒子線 bull 太陽高エネルギー粒子線(SPE Solar Proton Events)は太陽フレア とコロナガス噴出 (CMECoronal Mass Ejections )により引き起こされる bull フレアのスペクトルは可変であるためあるエネルギー域における最悪状態イベントは必ずしも別のエネルギー域における最悪条件ではない 1972年8月のイベント 10~70MeVの粒子が最も多かった 1989年10のイベント 1972年8月のイベントに比べ低エネルギー領域 高エネルギー領域が明らかに激しかった

フルエンス 105 to 1011 cm-2

変動期間 1日から数日

ldquoBastiliardquo Solar Event 14 July 2000

Carrington Flare

84

(LW Townseed) Carrington Flare(1859年) Carrington Flare による30MeV以上トータルFluenceを118times109cm-2で規格化 ~1989年フレアの約13倍(シングルイベントの評価で使用) ~1991年フレアの約9倍 2012年7月23日にキャリントンイベントとほぼ同等の爆発現象が太陽あるいは太陽の周りで起きていたということがNASAの太陽観測衛星「STEREO」の解析から発表された

放射線対策 bull 放射線シールドを付加し放射線を減衰させる

bull 放射線耐性の強い部品(SOI(Silicon On Insulator)技術による耐放射線部品)材料に変更する

bull 放射線による損傷を吸収するために回路または構造上のマージンを持たせる bull ソフト的なエラーに対しては エラー検出訂正機能や多数決

機能等でソフト的エラーが起きてもシステムが機能するようにしたフォールトトレラント機能を付けて対処する ICのハード的故障に対しては ラッチアップ耐性の強い部品を選定するしかないが 電流制限回路を付ける対策も採られる パワーMOSFETに対しては部品選定 電源電圧を規格値の半分以下に落とす等の対策を採る

SOI技術

表面帯電への対策例

表面の物体間を導線で結線する

太陽電池のカバーガラスを導電性被膜付き(酸化インジウムITO)にする

熱制御材表面にITOを被覆する

熱制御材は高誘電率のテフロンの使用を避け 高伝導度耐環境性に優れたブラックカプトンを使用

イオンエンジンの中和器で能動帯電制御

内部帯電への対策例

アルミで3mm厚さに相当するシールドで囲む(Faraday Cage)

テフロンやカプトンなどの誘電体材料の内部での使用量を最小限に押さえる

回路基板やコンフォーマルコーティングは誘電体なので電流リークパス(1012Ωcmまたは1012Ωcm2

程度)を必ずつける

特にスポット的な放射線シールドの金属材には必ず電流リークパスをつける

帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備

衛星モデル作成

材料物性テーブル設定

宇宙環境パラメータ設定

Converter

転送ディレクトリ 解析データファイル

転送

解析ディレクトリ生成 解析結果 進行状況チェック ファイル操作

MUSCAT 解析エンジン

解析結果 表示

パラメトリックラン

オプション 解析

大型パネル実験(35mtimes11m) クーポンパネル実験(26cmtimes16cm)

環境模擬試験 環境模擬試験

MUSCATに使用する物性値設計標準制定のための知見などを得ることを目的に軌道上の宇宙環境を模擬した地上試験を行っている これらの試験では放電の発生頻度や電圧閾値放電発生による太陽電池パネルや搭載機器への影響を検証している

放射線計測装置の原理

bull その粒子が物質を通過する際のエネルギー損出率が粒子の電荷(原子番号)Zの二乗に比例すること(Bethe-Blochの式)を利用する

S2

E

ΔE Ersquo

S1 S3

  • 宇宙機の設計のための宇宙環境
  • 話の流れ
  • 話の流れ
  • TEDA(技術データ取得装置)(国産部品の宇宙環境での実証の必要性)
  • ETS-VTEDA(技術データ取得装置)誕生前の部品の宇宙実証の背景
  • スライド番号 6
  • スライド番号 7
  • スライド番号 8
  • スライド番号 9
  • 図6太陽黒点数と静止軌道電子 (>04MeV ) Flux の変動 (ETS-V搭載DOMによる観測)
  • スライド番号 11
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの開発(理研東大と共同で宇宙環境計測の充実)
  • ETS-VI(きく6号)打ち上がったがGEOに行かずGTOに留まる
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの成果
  • スライド番号 15
  • スライド番号 16
  • スライド番号 17
  • ADEOS搭載TEDA(世界2番目の異常宇宙線ACR)
  • BBND (ボナー球中性子検出器)
  • スライド番号 20
  • ISS搭載BBNDの成果(約8か月)
  • スライド番号 22
  • MDS-1搭載放射線吸収線量モニタ(SDOM)
  • 放射線帯変動モデルの開発MDS-1 065 MeV 電子フラックス
  • 変動パラメータの選択 (1 cycle solar activity)
  • 変動パラメータ- Tavg の定義-
  • 065MeV 電子 L値-Tavg マップ
  • 13MeV 陽子 L値-Tavg マップ
  • 電子観測とMDS-1モデルの比較
  • 放射線帯フラックスピークの変動
  • 陽子観測とモデルの比較
  • 電子(035~078MeV) 1日の変動予測GOSAT軌道
  • 電子(035~078MeV) 変動の信頼度水準(1日)GOSAT軌道
  • MDS-1 model と AE-8 modelとの比較1日
  • 話の流れ
  • 2003年10月 みどり号の全損事故(複合現象)
  • 衛星帯電の基本式
  • 内部帯電
  • パドルでの帯電放電メカニズム
  • スライド番号 40
  • スライド番号 41
  • スライド番号 42
  • データ中継技術衛星DRTS (こだま)の不具合
  • DRTS ESA スパイクノイズと電子フルエンスの比較(赤の丸が異常検知)
  • 不具合が宇宙環境によるものであるか判断する際のポイント
  • 話の流れ
  • 宇宙天気のリスク-宇宙環境によるシステムへの影響 -
  • NASAの報告-GNampCに注目-
  • NASAの報告(続き)
  • 宇宙環境を原因とする不具合の割合-JAXAの場合-
  • 不具合発生部位の割合 
  • Satellite News Digest -静止軌道不具合-
  • 太陽活動と静止軌道衛星不具合例
  • スライド番号 54
  • スライド番号 55
  • スライド番号 56
  • 衛星開発段階における対策
  • 運用における対応
  • 話の流れ
  • スライド番号 60
  • スライド番号 61
  • まとめ(その1)
  • まとめ(その2)
  • 宇宙環境グループは宇宙ステーションと衛星プロジェクトの安全な遂行に貢献しています
  • 補足資料
  • 不具合原因の推移
  • 何故不具合は減らないか
  • 放射線による影響の概要
  • 耐放射線設計手順
  • 各軌道における放射線環境
  • 放射線による部品材料の影響
  • トータルドーズ効果
  • シングルイベント効果
  • シングルイベントメカニズム-陽子と重イオンの違い-
  • エラー発生率の計算
  • 線エネルギー付与(LET)(linear energy transfer)
  • 南大西洋異常(SAA)
  • Single Event Lachup
  • シングルイベントと陽子分布
  • NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)
  • 低軌道での電子フラックスと不具合の発生場所
  • 南大西洋異常(SAA)と極の角
  • スライド番号 83
  • Carrington Flare
  • 放射線対策
  • スライド番号 86
  • スライド番号 87
  • 帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備
  • スライド番号 89
  • 放射線計測装置の原理
Page 84: 宇宙機の設計のための宇宙環境の方針から国産部品開発(42品種)が実施された。 . 半導体電子部品は耐放射線性を加味して、人工衛星(特に

Carrington Flare

84

(LW Townseed) Carrington Flare(1859年) Carrington Flare による30MeV以上トータルFluenceを118times109cm-2で規格化 ~1989年フレアの約13倍(シングルイベントの評価で使用) ~1991年フレアの約9倍 2012年7月23日にキャリントンイベントとほぼ同等の爆発現象が太陽あるいは太陽の周りで起きていたということがNASAの太陽観測衛星「STEREO」の解析から発表された

放射線対策 bull 放射線シールドを付加し放射線を減衰させる

bull 放射線耐性の強い部品(SOI(Silicon On Insulator)技術による耐放射線部品)材料に変更する

bull 放射線による損傷を吸収するために回路または構造上のマージンを持たせる bull ソフト的なエラーに対しては エラー検出訂正機能や多数決

機能等でソフト的エラーが起きてもシステムが機能するようにしたフォールトトレラント機能を付けて対処する ICのハード的故障に対しては ラッチアップ耐性の強い部品を選定するしかないが 電流制限回路を付ける対策も採られる パワーMOSFETに対しては部品選定 電源電圧を規格値の半分以下に落とす等の対策を採る

SOI技術

表面帯電への対策例

表面の物体間を導線で結線する

太陽電池のカバーガラスを導電性被膜付き(酸化インジウムITO)にする

熱制御材表面にITOを被覆する

熱制御材は高誘電率のテフロンの使用を避け 高伝導度耐環境性に優れたブラックカプトンを使用

イオンエンジンの中和器で能動帯電制御

内部帯電への対策例

アルミで3mm厚さに相当するシールドで囲む(Faraday Cage)

テフロンやカプトンなどの誘電体材料の内部での使用量を最小限に押さえる

回路基板やコンフォーマルコーティングは誘電体なので電流リークパス(1012Ωcmまたは1012Ωcm2

程度)を必ずつける

特にスポット的な放射線シールドの金属材には必ず電流リークパスをつける

帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備

衛星モデル作成

材料物性テーブル設定

宇宙環境パラメータ設定

Converter

転送ディレクトリ 解析データファイル

転送

解析ディレクトリ生成 解析結果 進行状況チェック ファイル操作

MUSCAT 解析エンジン

解析結果 表示

パラメトリックラン

オプション 解析

大型パネル実験(35mtimes11m) クーポンパネル実験(26cmtimes16cm)

環境模擬試験 環境模擬試験

MUSCATに使用する物性値設計標準制定のための知見などを得ることを目的に軌道上の宇宙環境を模擬した地上試験を行っている これらの試験では放電の発生頻度や電圧閾値放電発生による太陽電池パネルや搭載機器への影響を検証している

放射線計測装置の原理

bull その粒子が物質を通過する際のエネルギー損出率が粒子の電荷(原子番号)Zの二乗に比例すること(Bethe-Blochの式)を利用する

S2

E

ΔE Ersquo

S1 S3

  • 宇宙機の設計のための宇宙環境
  • 話の流れ
  • 話の流れ
  • TEDA(技術データ取得装置)(国産部品の宇宙環境での実証の必要性)
  • ETS-VTEDA(技術データ取得装置)誕生前の部品の宇宙実証の背景
  • スライド番号 6
  • スライド番号 7
  • スライド番号 8
  • スライド番号 9
  • 図6太陽黒点数と静止軌道電子 (>04MeV ) Flux の変動 (ETS-V搭載DOMによる観測)
  • スライド番号 11
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの開発(理研東大と共同で宇宙環境計測の充実)
  • ETS-VI(きく6号)打ち上がったがGEOに行かずGTOに留まる
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの成果
  • スライド番号 15
  • スライド番号 16
  • スライド番号 17
  • ADEOS搭載TEDA(世界2番目の異常宇宙線ACR)
  • BBND (ボナー球中性子検出器)
  • スライド番号 20
  • ISS搭載BBNDの成果(約8か月)
  • スライド番号 22
  • MDS-1搭載放射線吸収線量モニタ(SDOM)
  • 放射線帯変動モデルの開発MDS-1 065 MeV 電子フラックス
  • 変動パラメータの選択 (1 cycle solar activity)
  • 変動パラメータ- Tavg の定義-
  • 065MeV 電子 L値-Tavg マップ
  • 13MeV 陽子 L値-Tavg マップ
  • 電子観測とMDS-1モデルの比較
  • 放射線帯フラックスピークの変動
  • 陽子観測とモデルの比較
  • 電子(035~078MeV) 1日の変動予測GOSAT軌道
  • 電子(035~078MeV) 変動の信頼度水準(1日)GOSAT軌道
  • MDS-1 model と AE-8 modelとの比較1日
  • 話の流れ
  • 2003年10月 みどり号の全損事故(複合現象)
  • 衛星帯電の基本式
  • 内部帯電
  • パドルでの帯電放電メカニズム
  • スライド番号 40
  • スライド番号 41
  • スライド番号 42
  • データ中継技術衛星DRTS (こだま)の不具合
  • DRTS ESA スパイクノイズと電子フルエンスの比較(赤の丸が異常検知)
  • 不具合が宇宙環境によるものであるか判断する際のポイント
  • 話の流れ
  • 宇宙天気のリスク-宇宙環境によるシステムへの影響 -
  • NASAの報告-GNampCに注目-
  • NASAの報告(続き)
  • 宇宙環境を原因とする不具合の割合-JAXAの場合-
  • 不具合発生部位の割合 
  • Satellite News Digest -静止軌道不具合-
  • 太陽活動と静止軌道衛星不具合例
  • スライド番号 54
  • スライド番号 55
  • スライド番号 56
  • 衛星開発段階における対策
  • 運用における対応
  • 話の流れ
  • スライド番号 60
  • スライド番号 61
  • まとめ(その1)
  • まとめ(その2)
  • 宇宙環境グループは宇宙ステーションと衛星プロジェクトの安全な遂行に貢献しています
  • 補足資料
  • 不具合原因の推移
  • 何故不具合は減らないか
  • 放射線による影響の概要
  • 耐放射線設計手順
  • 各軌道における放射線環境
  • 放射線による部品材料の影響
  • トータルドーズ効果
  • シングルイベント効果
  • シングルイベントメカニズム-陽子と重イオンの違い-
  • エラー発生率の計算
  • 線エネルギー付与(LET)(linear energy transfer)
  • 南大西洋異常(SAA)
  • Single Event Lachup
  • シングルイベントと陽子分布
  • NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)
  • 低軌道での電子フラックスと不具合の発生場所
  • 南大西洋異常(SAA)と極の角
  • スライド番号 83
  • Carrington Flare
  • 放射線対策
  • スライド番号 86
  • スライド番号 87
  • 帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備
  • スライド番号 89
  • 放射線計測装置の原理
Page 85: 宇宙機の設計のための宇宙環境の方針から国産部品開発(42品種)が実施された。 . 半導体電子部品は耐放射線性を加味して、人工衛星(特に

放射線対策 bull 放射線シールドを付加し放射線を減衰させる

bull 放射線耐性の強い部品(SOI(Silicon On Insulator)技術による耐放射線部品)材料に変更する

bull 放射線による損傷を吸収するために回路または構造上のマージンを持たせる bull ソフト的なエラーに対しては エラー検出訂正機能や多数決

機能等でソフト的エラーが起きてもシステムが機能するようにしたフォールトトレラント機能を付けて対処する ICのハード的故障に対しては ラッチアップ耐性の強い部品を選定するしかないが 電流制限回路を付ける対策も採られる パワーMOSFETに対しては部品選定 電源電圧を規格値の半分以下に落とす等の対策を採る

SOI技術

表面帯電への対策例

表面の物体間を導線で結線する

太陽電池のカバーガラスを導電性被膜付き(酸化インジウムITO)にする

熱制御材表面にITOを被覆する

熱制御材は高誘電率のテフロンの使用を避け 高伝導度耐環境性に優れたブラックカプトンを使用

イオンエンジンの中和器で能動帯電制御

内部帯電への対策例

アルミで3mm厚さに相当するシールドで囲む(Faraday Cage)

テフロンやカプトンなどの誘電体材料の内部での使用量を最小限に押さえる

回路基板やコンフォーマルコーティングは誘電体なので電流リークパス(1012Ωcmまたは1012Ωcm2

程度)を必ずつける

特にスポット的な放射線シールドの金属材には必ず電流リークパスをつける

帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備

衛星モデル作成

材料物性テーブル設定

宇宙環境パラメータ設定

Converter

転送ディレクトリ 解析データファイル

転送

解析ディレクトリ生成 解析結果 進行状況チェック ファイル操作

MUSCAT 解析エンジン

解析結果 表示

パラメトリックラン

オプション 解析

大型パネル実験(35mtimes11m) クーポンパネル実験(26cmtimes16cm)

環境模擬試験 環境模擬試験

MUSCATに使用する物性値設計標準制定のための知見などを得ることを目的に軌道上の宇宙環境を模擬した地上試験を行っている これらの試験では放電の発生頻度や電圧閾値放電発生による太陽電池パネルや搭載機器への影響を検証している

放射線計測装置の原理

bull その粒子が物質を通過する際のエネルギー損出率が粒子の電荷(原子番号)Zの二乗に比例すること(Bethe-Blochの式)を利用する

S2

E

ΔE Ersquo

S1 S3

  • 宇宙機の設計のための宇宙環境
  • 話の流れ
  • 話の流れ
  • TEDA(技術データ取得装置)(国産部品の宇宙環境での実証の必要性)
  • ETS-VTEDA(技術データ取得装置)誕生前の部品の宇宙実証の背景
  • スライド番号 6
  • スライド番号 7
  • スライド番号 8
  • スライド番号 9
  • 図6太陽黒点数と静止軌道電子 (>04MeV ) Flux の変動 (ETS-V搭載DOMによる観測)
  • スライド番号 11
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの開発(理研東大と共同で宇宙環境計測の充実)
  • ETS-VI(きく6号)打ち上がったがGEOに行かずGTOに留まる
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの成果
  • スライド番号 15
  • スライド番号 16
  • スライド番号 17
  • ADEOS搭載TEDA(世界2番目の異常宇宙線ACR)
  • BBND (ボナー球中性子検出器)
  • スライド番号 20
  • ISS搭載BBNDの成果(約8か月)
  • スライド番号 22
  • MDS-1搭載放射線吸収線量モニタ(SDOM)
  • 放射線帯変動モデルの開発MDS-1 065 MeV 電子フラックス
  • 変動パラメータの選択 (1 cycle solar activity)
  • 変動パラメータ- Tavg の定義-
  • 065MeV 電子 L値-Tavg マップ
  • 13MeV 陽子 L値-Tavg マップ
  • 電子観測とMDS-1モデルの比較
  • 放射線帯フラックスピークの変動
  • 陽子観測とモデルの比較
  • 電子(035~078MeV) 1日の変動予測GOSAT軌道
  • 電子(035~078MeV) 変動の信頼度水準(1日)GOSAT軌道
  • MDS-1 model と AE-8 modelとの比較1日
  • 話の流れ
  • 2003年10月 みどり号の全損事故(複合現象)
  • 衛星帯電の基本式
  • 内部帯電
  • パドルでの帯電放電メカニズム
  • スライド番号 40
  • スライド番号 41
  • スライド番号 42
  • データ中継技術衛星DRTS (こだま)の不具合
  • DRTS ESA スパイクノイズと電子フルエンスの比較(赤の丸が異常検知)
  • 不具合が宇宙環境によるものであるか判断する際のポイント
  • 話の流れ
  • 宇宙天気のリスク-宇宙環境によるシステムへの影響 -
  • NASAの報告-GNampCに注目-
  • NASAの報告(続き)
  • 宇宙環境を原因とする不具合の割合-JAXAの場合-
  • 不具合発生部位の割合 
  • Satellite News Digest -静止軌道不具合-
  • 太陽活動と静止軌道衛星不具合例
  • スライド番号 54
  • スライド番号 55
  • スライド番号 56
  • 衛星開発段階における対策
  • 運用における対応
  • 話の流れ
  • スライド番号 60
  • スライド番号 61
  • まとめ(その1)
  • まとめ(その2)
  • 宇宙環境グループは宇宙ステーションと衛星プロジェクトの安全な遂行に貢献しています
  • 補足資料
  • 不具合原因の推移
  • 何故不具合は減らないか
  • 放射線による影響の概要
  • 耐放射線設計手順
  • 各軌道における放射線環境
  • 放射線による部品材料の影響
  • トータルドーズ効果
  • シングルイベント効果
  • シングルイベントメカニズム-陽子と重イオンの違い-
  • エラー発生率の計算
  • 線エネルギー付与(LET)(linear energy transfer)
  • 南大西洋異常(SAA)
  • Single Event Lachup
  • シングルイベントと陽子分布
  • NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)
  • 低軌道での電子フラックスと不具合の発生場所
  • 南大西洋異常(SAA)と極の角
  • スライド番号 83
  • Carrington Flare
  • 放射線対策
  • スライド番号 86
  • スライド番号 87
  • 帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備
  • スライド番号 89
  • 放射線計測装置の原理
Page 86: 宇宙機の設計のための宇宙環境の方針から国産部品開発(42品種)が実施された。 . 半導体電子部品は耐放射線性を加味して、人工衛星(特に

表面帯電への対策例

表面の物体間を導線で結線する

太陽電池のカバーガラスを導電性被膜付き(酸化インジウムITO)にする

熱制御材表面にITOを被覆する

熱制御材は高誘電率のテフロンの使用を避け 高伝導度耐環境性に優れたブラックカプトンを使用

イオンエンジンの中和器で能動帯電制御

内部帯電への対策例

アルミで3mm厚さに相当するシールドで囲む(Faraday Cage)

テフロンやカプトンなどの誘電体材料の内部での使用量を最小限に押さえる

回路基板やコンフォーマルコーティングは誘電体なので電流リークパス(1012Ωcmまたは1012Ωcm2

程度)を必ずつける

特にスポット的な放射線シールドの金属材には必ず電流リークパスをつける

帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備

衛星モデル作成

材料物性テーブル設定

宇宙環境パラメータ設定

Converter

転送ディレクトリ 解析データファイル

転送

解析ディレクトリ生成 解析結果 進行状況チェック ファイル操作

MUSCAT 解析エンジン

解析結果 表示

パラメトリックラン

オプション 解析

大型パネル実験(35mtimes11m) クーポンパネル実験(26cmtimes16cm)

環境模擬試験 環境模擬試験

MUSCATに使用する物性値設計標準制定のための知見などを得ることを目的に軌道上の宇宙環境を模擬した地上試験を行っている これらの試験では放電の発生頻度や電圧閾値放電発生による太陽電池パネルや搭載機器への影響を検証している

放射線計測装置の原理

bull その粒子が物質を通過する際のエネルギー損出率が粒子の電荷(原子番号)Zの二乗に比例すること(Bethe-Blochの式)を利用する

S2

E

ΔE Ersquo

S1 S3

  • 宇宙機の設計のための宇宙環境
  • 話の流れ
  • 話の流れ
  • TEDA(技術データ取得装置)(国産部品の宇宙環境での実証の必要性)
  • ETS-VTEDA(技術データ取得装置)誕生前の部品の宇宙実証の背景
  • スライド番号 6
  • スライド番号 7
  • スライド番号 8
  • スライド番号 9
  • 図6太陽黒点数と静止軌道電子 (>04MeV ) Flux の変動 (ETS-V搭載DOMによる観測)
  • スライド番号 11
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの開発(理研東大と共同で宇宙環境計測の充実)
  • ETS-VI(きく6号)打ち上がったがGEOに行かずGTOに留まる
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの成果
  • スライド番号 15
  • スライド番号 16
  • スライド番号 17
  • ADEOS搭載TEDA(世界2番目の異常宇宙線ACR)
  • BBND (ボナー球中性子検出器)
  • スライド番号 20
  • ISS搭載BBNDの成果(約8か月)
  • スライド番号 22
  • MDS-1搭載放射線吸収線量モニタ(SDOM)
  • 放射線帯変動モデルの開発MDS-1 065 MeV 電子フラックス
  • 変動パラメータの選択 (1 cycle solar activity)
  • 変動パラメータ- Tavg の定義-
  • 065MeV 電子 L値-Tavg マップ
  • 13MeV 陽子 L値-Tavg マップ
  • 電子観測とMDS-1モデルの比較
  • 放射線帯フラックスピークの変動
  • 陽子観測とモデルの比較
  • 電子(035~078MeV) 1日の変動予測GOSAT軌道
  • 電子(035~078MeV) 変動の信頼度水準(1日)GOSAT軌道
  • MDS-1 model と AE-8 modelとの比較1日
  • 話の流れ
  • 2003年10月 みどり号の全損事故(複合現象)
  • 衛星帯電の基本式
  • 内部帯電
  • パドルでの帯電放電メカニズム
  • スライド番号 40
  • スライド番号 41
  • スライド番号 42
  • データ中継技術衛星DRTS (こだま)の不具合
  • DRTS ESA スパイクノイズと電子フルエンスの比較(赤の丸が異常検知)
  • 不具合が宇宙環境によるものであるか判断する際のポイント
  • 話の流れ
  • 宇宙天気のリスク-宇宙環境によるシステムへの影響 -
  • NASAの報告-GNampCに注目-
  • NASAの報告(続き)
  • 宇宙環境を原因とする不具合の割合-JAXAの場合-
  • 不具合発生部位の割合 
  • Satellite News Digest -静止軌道不具合-
  • 太陽活動と静止軌道衛星不具合例
  • スライド番号 54
  • スライド番号 55
  • スライド番号 56
  • 衛星開発段階における対策
  • 運用における対応
  • 話の流れ
  • スライド番号 60
  • スライド番号 61
  • まとめ(その1)
  • まとめ(その2)
  • 宇宙環境グループは宇宙ステーションと衛星プロジェクトの安全な遂行に貢献しています
  • 補足資料
  • 不具合原因の推移
  • 何故不具合は減らないか
  • 放射線による影響の概要
  • 耐放射線設計手順
  • 各軌道における放射線環境
  • 放射線による部品材料の影響
  • トータルドーズ効果
  • シングルイベント効果
  • シングルイベントメカニズム-陽子と重イオンの違い-
  • エラー発生率の計算
  • 線エネルギー付与(LET)(linear energy transfer)
  • 南大西洋異常(SAA)
  • Single Event Lachup
  • シングルイベントと陽子分布
  • NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)
  • 低軌道での電子フラックスと不具合の発生場所
  • 南大西洋異常(SAA)と極の角
  • スライド番号 83
  • Carrington Flare
  • 放射線対策
  • スライド番号 86
  • スライド番号 87
  • 帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備
  • スライド番号 89
  • 放射線計測装置の原理
Page 87: 宇宙機の設計のための宇宙環境の方針から国産部品開発(42品種)が実施された。 . 半導体電子部品は耐放射線性を加味して、人工衛星(特に

内部帯電への対策例

アルミで3mm厚さに相当するシールドで囲む(Faraday Cage)

テフロンやカプトンなどの誘電体材料の内部での使用量を最小限に押さえる

回路基板やコンフォーマルコーティングは誘電体なので電流リークパス(1012Ωcmまたは1012Ωcm2

程度)を必ずつける

特にスポット的な放射線シールドの金属材には必ず電流リークパスをつける

帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備

衛星モデル作成

材料物性テーブル設定

宇宙環境パラメータ設定

Converter

転送ディレクトリ 解析データファイル

転送

解析ディレクトリ生成 解析結果 進行状況チェック ファイル操作

MUSCAT 解析エンジン

解析結果 表示

パラメトリックラン

オプション 解析

大型パネル実験(35mtimes11m) クーポンパネル実験(26cmtimes16cm)

環境模擬試験 環境模擬試験

MUSCATに使用する物性値設計標準制定のための知見などを得ることを目的に軌道上の宇宙環境を模擬した地上試験を行っている これらの試験では放電の発生頻度や電圧閾値放電発生による太陽電池パネルや搭載機器への影響を検証している

放射線計測装置の原理

bull その粒子が物質を通過する際のエネルギー損出率が粒子の電荷(原子番号)Zの二乗に比例すること(Bethe-Blochの式)を利用する

S2

E

ΔE Ersquo

S1 S3

  • 宇宙機の設計のための宇宙環境
  • 話の流れ
  • 話の流れ
  • TEDA(技術データ取得装置)(国産部品の宇宙環境での実証の必要性)
  • ETS-VTEDA(技術データ取得装置)誕生前の部品の宇宙実証の背景
  • スライド番号 6
  • スライド番号 7
  • スライド番号 8
  • スライド番号 9
  • 図6太陽黒点数と静止軌道電子 (>04MeV ) Flux の変動 (ETS-V搭載DOMによる観測)
  • スライド番号 11
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの開発(理研東大と共同で宇宙環境計測の充実)
  • ETS-VI(きく6号)打ち上がったがGEOに行かずGTOに留まる
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの成果
  • スライド番号 15
  • スライド番号 16
  • スライド番号 17
  • ADEOS搭載TEDA(世界2番目の異常宇宙線ACR)
  • BBND (ボナー球中性子検出器)
  • スライド番号 20
  • ISS搭載BBNDの成果(約8か月)
  • スライド番号 22
  • MDS-1搭載放射線吸収線量モニタ(SDOM)
  • 放射線帯変動モデルの開発MDS-1 065 MeV 電子フラックス
  • 変動パラメータの選択 (1 cycle solar activity)
  • 変動パラメータ- Tavg の定義-
  • 065MeV 電子 L値-Tavg マップ
  • 13MeV 陽子 L値-Tavg マップ
  • 電子観測とMDS-1モデルの比較
  • 放射線帯フラックスピークの変動
  • 陽子観測とモデルの比較
  • 電子(035~078MeV) 1日の変動予測GOSAT軌道
  • 電子(035~078MeV) 変動の信頼度水準(1日)GOSAT軌道
  • MDS-1 model と AE-8 modelとの比較1日
  • 話の流れ
  • 2003年10月 みどり号の全損事故(複合現象)
  • 衛星帯電の基本式
  • 内部帯電
  • パドルでの帯電放電メカニズム
  • スライド番号 40
  • スライド番号 41
  • スライド番号 42
  • データ中継技術衛星DRTS (こだま)の不具合
  • DRTS ESA スパイクノイズと電子フルエンスの比較(赤の丸が異常検知)
  • 不具合が宇宙環境によるものであるか判断する際のポイント
  • 話の流れ
  • 宇宙天気のリスク-宇宙環境によるシステムへの影響 -
  • NASAの報告-GNampCに注目-
  • NASAの報告(続き)
  • 宇宙環境を原因とする不具合の割合-JAXAの場合-
  • 不具合発生部位の割合 
  • Satellite News Digest -静止軌道不具合-
  • 太陽活動と静止軌道衛星不具合例
  • スライド番号 54
  • スライド番号 55
  • スライド番号 56
  • 衛星開発段階における対策
  • 運用における対応
  • 話の流れ
  • スライド番号 60
  • スライド番号 61
  • まとめ(その1)
  • まとめ(その2)
  • 宇宙環境グループは宇宙ステーションと衛星プロジェクトの安全な遂行に貢献しています
  • 補足資料
  • 不具合原因の推移
  • 何故不具合は減らないか
  • 放射線による影響の概要
  • 耐放射線設計手順
  • 各軌道における放射線環境
  • 放射線による部品材料の影響
  • トータルドーズ効果
  • シングルイベント効果
  • シングルイベントメカニズム-陽子と重イオンの違い-
  • エラー発生率の計算
  • 線エネルギー付与(LET)(linear energy transfer)
  • 南大西洋異常(SAA)
  • Single Event Lachup
  • シングルイベントと陽子分布
  • NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)
  • 低軌道での電子フラックスと不具合の発生場所
  • 南大西洋異常(SAA)と極の角
  • スライド番号 83
  • Carrington Flare
  • 放射線対策
  • スライド番号 86
  • スライド番号 87
  • 帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備
  • スライド番号 89
  • 放射線計測装置の原理
Page 88: 宇宙機の設計のための宇宙環境の方針から国産部品開発(42品種)が実施された。 . 半導体電子部品は耐放射線性を加味して、人工衛星(特に

帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備

衛星モデル作成

材料物性テーブル設定

宇宙環境パラメータ設定

Converter

転送ディレクトリ 解析データファイル

転送

解析ディレクトリ生成 解析結果 進行状況チェック ファイル操作

MUSCAT 解析エンジン

解析結果 表示

パラメトリックラン

オプション 解析

大型パネル実験(35mtimes11m) クーポンパネル実験(26cmtimes16cm)

環境模擬試験 環境模擬試験

MUSCATに使用する物性値設計標準制定のための知見などを得ることを目的に軌道上の宇宙環境を模擬した地上試験を行っている これらの試験では放電の発生頻度や電圧閾値放電発生による太陽電池パネルや搭載機器への影響を検証している

放射線計測装置の原理

bull その粒子が物質を通過する際のエネルギー損出率が粒子の電荷(原子番号)Zの二乗に比例すること(Bethe-Blochの式)を利用する

S2

E

ΔE Ersquo

S1 S3

  • 宇宙機の設計のための宇宙環境
  • 話の流れ
  • 話の流れ
  • TEDA(技術データ取得装置)(国産部品の宇宙環境での実証の必要性)
  • ETS-VTEDA(技術データ取得装置)誕生前の部品の宇宙実証の背景
  • スライド番号 6
  • スライド番号 7
  • スライド番号 8
  • スライド番号 9
  • 図6太陽黒点数と静止軌道電子 (>04MeV ) Flux の変動 (ETS-V搭載DOMによる観測)
  • スライド番号 11
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの開発(理研東大と共同で宇宙環境計測の充実)
  • ETS-VI(きく6号)打ち上がったがGEOに行かずGTOに留まる
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの成果
  • スライド番号 15
  • スライド番号 16
  • スライド番号 17
  • ADEOS搭載TEDA(世界2番目の異常宇宙線ACR)
  • BBND (ボナー球中性子検出器)
  • スライド番号 20
  • ISS搭載BBNDの成果(約8か月)
  • スライド番号 22
  • MDS-1搭載放射線吸収線量モニタ(SDOM)
  • 放射線帯変動モデルの開発MDS-1 065 MeV 電子フラックス
  • 変動パラメータの選択 (1 cycle solar activity)
  • 変動パラメータ- Tavg の定義-
  • 065MeV 電子 L値-Tavg マップ
  • 13MeV 陽子 L値-Tavg マップ
  • 電子観測とMDS-1モデルの比較
  • 放射線帯フラックスピークの変動
  • 陽子観測とモデルの比較
  • 電子(035~078MeV) 1日の変動予測GOSAT軌道
  • 電子(035~078MeV) 変動の信頼度水準(1日)GOSAT軌道
  • MDS-1 model と AE-8 modelとの比較1日
  • 話の流れ
  • 2003年10月 みどり号の全損事故(複合現象)
  • 衛星帯電の基本式
  • 内部帯電
  • パドルでの帯電放電メカニズム
  • スライド番号 40
  • スライド番号 41
  • スライド番号 42
  • データ中継技術衛星DRTS (こだま)の不具合
  • DRTS ESA スパイクノイズと電子フルエンスの比較(赤の丸が異常検知)
  • 不具合が宇宙環境によるものであるか判断する際のポイント
  • 話の流れ
  • 宇宙天気のリスク-宇宙環境によるシステムへの影響 -
  • NASAの報告-GNampCに注目-
  • NASAの報告(続き)
  • 宇宙環境を原因とする不具合の割合-JAXAの場合-
  • 不具合発生部位の割合 
  • Satellite News Digest -静止軌道不具合-
  • 太陽活動と静止軌道衛星不具合例
  • スライド番号 54
  • スライド番号 55
  • スライド番号 56
  • 衛星開発段階における対策
  • 運用における対応
  • 話の流れ
  • スライド番号 60
  • スライド番号 61
  • まとめ(その1)
  • まとめ(その2)
  • 宇宙環境グループは宇宙ステーションと衛星プロジェクトの安全な遂行に貢献しています
  • 補足資料
  • 不具合原因の推移
  • 何故不具合は減らないか
  • 放射線による影響の概要
  • 耐放射線設計手順
  • 各軌道における放射線環境
  • 放射線による部品材料の影響
  • トータルドーズ効果
  • シングルイベント効果
  • シングルイベントメカニズム-陽子と重イオンの違い-
  • エラー発生率の計算
  • 線エネルギー付与(LET)(linear energy transfer)
  • 南大西洋異常(SAA)
  • Single Event Lachup
  • シングルイベントと陽子分布
  • NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)
  • 低軌道での電子フラックスと不具合の発生場所
  • 南大西洋異常(SAA)と極の角
  • スライド番号 83
  • Carrington Flare
  • 放射線対策
  • スライド番号 86
  • スライド番号 87
  • 帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備
  • スライド番号 89
  • 放射線計測装置の原理
Page 89: 宇宙機の設計のための宇宙環境の方針から国産部品開発(42品種)が実施された。 . 半導体電子部品は耐放射線性を加味して、人工衛星(特に

大型パネル実験(35mtimes11m) クーポンパネル実験(26cmtimes16cm)

環境模擬試験 環境模擬試験

MUSCATに使用する物性値設計標準制定のための知見などを得ることを目的に軌道上の宇宙環境を模擬した地上試験を行っている これらの試験では放電の発生頻度や電圧閾値放電発生による太陽電池パネルや搭載機器への影響を検証している

放射線計測装置の原理

bull その粒子が物質を通過する際のエネルギー損出率が粒子の電荷(原子番号)Zの二乗に比例すること(Bethe-Blochの式)を利用する

S2

E

ΔE Ersquo

S1 S3

  • 宇宙機の設計のための宇宙環境
  • 話の流れ
  • 話の流れ
  • TEDA(技術データ取得装置)(国産部品の宇宙環境での実証の必要性)
  • ETS-VTEDA(技術データ取得装置)誕生前の部品の宇宙実証の背景
  • スライド番号 6
  • スライド番号 7
  • スライド番号 8
  • スライド番号 9
  • 図6太陽黒点数と静止軌道電子 (>04MeV ) Flux の変動 (ETS-V搭載DOMによる観測)
  • スライド番号 11
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの開発(理研東大と共同で宇宙環境計測の充実)
  • ETS-VI(きく6号)打ち上がったがGEOに行かずGTOに留まる
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの成果
  • スライド番号 15
  • スライド番号 16
  • スライド番号 17
  • ADEOS搭載TEDA(世界2番目の異常宇宙線ACR)
  • BBND (ボナー球中性子検出器)
  • スライド番号 20
  • ISS搭載BBNDの成果(約8か月)
  • スライド番号 22
  • MDS-1搭載放射線吸収線量モニタ(SDOM)
  • 放射線帯変動モデルの開発MDS-1 065 MeV 電子フラックス
  • 変動パラメータの選択 (1 cycle solar activity)
  • 変動パラメータ- Tavg の定義-
  • 065MeV 電子 L値-Tavg マップ
  • 13MeV 陽子 L値-Tavg マップ
  • 電子観測とMDS-1モデルの比較
  • 放射線帯フラックスピークの変動
  • 陽子観測とモデルの比較
  • 電子(035~078MeV) 1日の変動予測GOSAT軌道
  • 電子(035~078MeV) 変動の信頼度水準(1日)GOSAT軌道
  • MDS-1 model と AE-8 modelとの比較1日
  • 話の流れ
  • 2003年10月 みどり号の全損事故(複合現象)
  • 衛星帯電の基本式
  • 内部帯電
  • パドルでの帯電放電メカニズム
  • スライド番号 40
  • スライド番号 41
  • スライド番号 42
  • データ中継技術衛星DRTS (こだま)の不具合
  • DRTS ESA スパイクノイズと電子フルエンスの比較(赤の丸が異常検知)
  • 不具合が宇宙環境によるものであるか判断する際のポイント
  • 話の流れ
  • 宇宙天気のリスク-宇宙環境によるシステムへの影響 -
  • NASAの報告-GNampCに注目-
  • NASAの報告(続き)
  • 宇宙環境を原因とする不具合の割合-JAXAの場合-
  • 不具合発生部位の割合 
  • Satellite News Digest -静止軌道不具合-
  • 太陽活動と静止軌道衛星不具合例
  • スライド番号 54
  • スライド番号 55
  • スライド番号 56
  • 衛星開発段階における対策
  • 運用における対応
  • 話の流れ
  • スライド番号 60
  • スライド番号 61
  • まとめ(その1)
  • まとめ(その2)
  • 宇宙環境グループは宇宙ステーションと衛星プロジェクトの安全な遂行に貢献しています
  • 補足資料
  • 不具合原因の推移
  • 何故不具合は減らないか
  • 放射線による影響の概要
  • 耐放射線設計手順
  • 各軌道における放射線環境
  • 放射線による部品材料の影響
  • トータルドーズ効果
  • シングルイベント効果
  • シングルイベントメカニズム-陽子と重イオンの違い-
  • エラー発生率の計算
  • 線エネルギー付与(LET)(linear energy transfer)
  • 南大西洋異常(SAA)
  • Single Event Lachup
  • シングルイベントと陽子分布
  • NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)
  • 低軌道での電子フラックスと不具合の発生場所
  • 南大西洋異常(SAA)と極の角
  • スライド番号 83
  • Carrington Flare
  • 放射線対策
  • スライド番号 86
  • スライド番号 87
  • 帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備
  • スライド番号 89
  • 放射線計測装置の原理
Page 90: 宇宙機の設計のための宇宙環境の方針から国産部品開発(42品種)が実施された。 . 半導体電子部品は耐放射線性を加味して、人工衛星(特に

放射線計測装置の原理

bull その粒子が物質を通過する際のエネルギー損出率が粒子の電荷(原子番号)Zの二乗に比例すること(Bethe-Blochの式)を利用する

S2

E

ΔE Ersquo

S1 S3

  • 宇宙機の設計のための宇宙環境
  • 話の流れ
  • 話の流れ
  • TEDA(技術データ取得装置)(国産部品の宇宙環境での実証の必要性)
  • ETS-VTEDA(技術データ取得装置)誕生前の部品の宇宙実証の背景
  • スライド番号 6
  • スライド番号 7
  • スライド番号 8
  • スライド番号 9
  • 図6太陽黒点数と静止軌道電子 (>04MeV ) Flux の変動 (ETS-V搭載DOMによる観測)
  • スライド番号 11
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの開発(理研東大と共同で宇宙環境計測の充実)
  • ETS-VI(きく6号)打ち上がったがGEOに行かずGTOに留まる
  • ETS-Ⅵ搭載TEDAの成果
  • スライド番号 15
  • スライド番号 16
  • スライド番号 17
  • ADEOS搭載TEDA(世界2番目の異常宇宙線ACR)
  • BBND (ボナー球中性子検出器)
  • スライド番号 20
  • ISS搭載BBNDの成果(約8か月)
  • スライド番号 22
  • MDS-1搭載放射線吸収線量モニタ(SDOM)
  • 放射線帯変動モデルの開発MDS-1 065 MeV 電子フラックス
  • 変動パラメータの選択 (1 cycle solar activity)
  • 変動パラメータ- Tavg の定義-
  • 065MeV 電子 L値-Tavg マップ
  • 13MeV 陽子 L値-Tavg マップ
  • 電子観測とMDS-1モデルの比較
  • 放射線帯フラックスピークの変動
  • 陽子観測とモデルの比較
  • 電子(035~078MeV) 1日の変動予測GOSAT軌道
  • 電子(035~078MeV) 変動の信頼度水準(1日)GOSAT軌道
  • MDS-1 model と AE-8 modelとの比較1日
  • 話の流れ
  • 2003年10月 みどり号の全損事故(複合現象)
  • 衛星帯電の基本式
  • 内部帯電
  • パドルでの帯電放電メカニズム
  • スライド番号 40
  • スライド番号 41
  • スライド番号 42
  • データ中継技術衛星DRTS (こだま)の不具合
  • DRTS ESA スパイクノイズと電子フルエンスの比較(赤の丸が異常検知)
  • 不具合が宇宙環境によるものであるか判断する際のポイント
  • 話の流れ
  • 宇宙天気のリスク-宇宙環境によるシステムへの影響 -
  • NASAの報告-GNampCに注目-
  • NASAの報告(続き)
  • 宇宙環境を原因とする不具合の割合-JAXAの場合-
  • 不具合発生部位の割合 
  • Satellite News Digest -静止軌道不具合-
  • 太陽活動と静止軌道衛星不具合例
  • スライド番号 54
  • スライド番号 55
  • スライド番号 56
  • 衛星開発段階における対策
  • 運用における対応
  • 話の流れ
  • スライド番号 60
  • スライド番号 61
  • まとめ(その1)
  • まとめ(その2)
  • 宇宙環境グループは宇宙ステーションと衛星プロジェクトの安全な遂行に貢献しています
  • 補足資料
  • 不具合原因の推移
  • 何故不具合は減らないか
  • 放射線による影響の概要
  • 耐放射線設計手順
  • 各軌道における放射線環境
  • 放射線による部品材料の影響
  • トータルドーズ効果
  • シングルイベント効果
  • シングルイベントメカニズム-陽子と重イオンの違い-
  • エラー発生率の計算
  • 線エネルギー付与(LET)(linear energy transfer)
  • 南大西洋異常(SAA)
  • Single Event Lachup
  • シングルイベントと陽子分布
  • NEIL(Non-Ionizing Energy Loss)
  • 低軌道での電子フラックスと不具合の発生場所
  • 南大西洋異常(SAA)と極の角
  • スライド番号 83
  • Carrington Flare
  • 放射線対策
  • スライド番号 86
  • スライド番号 87
  • 帯電解析(MUSCAT)ソフトウェア整備
  • スライド番号 89
  • 放射線計測装置の原理