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� 東北大学大学院教育学研究科研究年報 第60集・第2号(2012年)
本稿では,自閉症スペクトラム障害児における障害特性の1つである社会性の障害と密接に関連
すると考えられる他者の意図を理解する能力や操作する能力に関する先行研究を概観した。その結
果,他者意図理解に関する先行研究は乳児期から児童期にかけて発達的な検討がなされている一方
で,児童期における他者意図操作に関しては先行研究が十分ではなく,さらなる知見の蓄積が必要
であることが明らかとなった。その際の1つの視点として,他者を欺く行為に焦点を当て先行知見
の整理を行った結果,欺き行為が可能となる時期を巡り,用いるパラダイムや注目する行動の違い
により定型発達児,自閉症スペクトラム障害児の両者において一致した見解が得られていないこと
が明らかとなった。また,欺き行為と関連する認知的処理過程に関しては,定型発達者を対象に実
行機能との関連から検討されているが,定型発達児,自閉症スペクトラム障害児においては実証的
な検証が必要であることが明らかとなった。
キーワード:自閉症スペクトラム障害,他者意図理解,他者意図操作,実行機能,欺き
1.はじめに 自閉症スペクトラム障害(以下,ASD)は社会性の障害,コミュニケーション障害,想像力の障害
という3つの特徴を有する障害で,自閉性障害,アスペルガー障害や高機能自閉性障害を1つの連続
体上に位置する障害として位置づけられる(Wing�&�Gould,1979)。ASD の中心となる自閉性障害
は Kanner(1943)以来,その原因論をめぐって2度の転回があった。1度目の転回は,自閉性障害
を心因性による後天的な社会性障害とみる立場(Bettelheim,1967)から,器質的障害による先天的
な言語・認知的障害とする考えが提出されたことによる(Rutter,1964)。Rutter は,言語コミュニ
ケーションの障害を自閉性障害の1次障害とみなし,その結果として対人関係障害が生じると考え
た。しかし,後の研究(Rutter�&�Lockyer,1967)により,言語能力が向上しても依然として社会性
の障害を示す事例や,高い言語能力を有しつつも社会的な困難さを有する事例などから,言語障害
を1次障害とする見方は否定されることとなった。ここで Rutter�&�Lockyer,(1967)は,言語能力
を IQ から捉えており,Rutter のいう認知とは全般的な認知能力を指すと考えられる。全般的な認
自閉症スペクトラム障害児の他者意図理解および
操作についての研究動向―欺き行為に焦点をあてて―
横 田 晋 務*
田 中 真 理**
*教育学研究科 博士課程後期/日本学術振興会特別研究員**教育学研究科 准教授
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自閉症スペクトラム障害児の他者意図理解および操作についての研究動向
知機能ではなく,特異的な認知機能に焦点を当てた自閉性障害の原因論の捉え方として,他者の心
的状態を理解する枠組みである心の理論(Premack�&�Woodruff,1978)が障害されているとする「心
の理論欠損仮説」(Baron-Cohen,Leslie�&�Frith,1985)が挙げられる。この仮説をもとに,心の理
論課題を用いた研究が数多くなされているが,心の理論を扱った研究では,必ず一定の割合で課題
を通過する対象児が存在する(Baron-Cohen,1989)。したがって,この心の理論欠損仮説も自閉性
障害の原因論としては不十分であると考えられる。さらに,この仮説では,自閉性障害の特性であ
る行動,興味,および活動の限定された反復的で常同的な様式を説明することができないことも指
摘されている。このような認知説への批判をもとに,2度目の転回として情動説が提唱された。情
動説では,自閉性障害児は先天的に他者との間に情動的なコミュニケーションを行う能力に欠陥が
ある(Hobson,1989)とされ,情動障害をその1次障害と考えられている。情動説では,この考え方
をもとに,子どもとその療育者との情動的なコミュニケーションに焦点が当てられている。
さらに,近年では,従来の心理学的な手法に加え,脳神経科学的技術の向上により,脳の形態学的
な研究から,ASD 児における白質の発達異常やその他の多くの領域における形態異常が明らかに
さ れ て お り(Brun,Nicolson,Lepore,Chou,Vidal,Devito,Drost,Williamson,Rajakumar,
Toga,&�Thompson,2009;Courchesne,Press,&�Yeung-Courchesne,1993),これらの形態学的
異常から ASD 児の認知的,行動的特異性が論じられている(Brun�et�al.,2009)。さらに,ASD 児
で は ミ ラ ー ニ ュ ー ロ ン の 機 能 不 全 が 指 摘 さ れ て い る(Oberman,Hubbard,McCleery,
Altschuler,Ramachandran,&�Pineda,2005)。ミラーニューロンとは,対象者がある特定の行動
をしている時にも,その行動を見ている時にも発火するニューロンであり,この神経群と,模倣や
共感,心の理論の理解といった能力との関連が示唆されている(Perkins,Stokes,McGillivray,&�
Bittar,2009)。これらのことをふまえると,ASD 児は,脳の形態異常および機能異常により社会性
の障害に代表される障害特性を持つと考えられる。したがって,ASD 児は定型発達児とは異なる
特異的な認知特性を有すると考えられ,彼らの認知特性に焦点を当てて障害特性を検討することが
重要であると考えられる。ASD における社会性の障害を考える場合,信念,意図,情動といった心
的状態の理解における困難さを検討することが必要だろう。心的状態とは,その人物の行動に影響
を与える要因である(Frith�&�Frith,2006)。その人物が有するある種の信念や願望は意図的な行
動を引き起こす原因となり,その行動の結果(信念や願望が満たされるか否か)によって満足や不満
といった様々な感情経験をすることとなる(Wellman�&�Lagattuta,2000)。したがって,他者とコ
ミュニケーションをする際には他者の心的状態に関する理解を行い,行動を予測することや,その
理解に基づいて自分の行動を調節していくことが必要となる。これらのことを踏まえ,本稿では,
他者意図を理解する認知的機能を他者との相互作用を行う際の基盤となる機能であると位置づけ,
他者意図を理解する能力の発達に焦点を当てる。
これまで扱われている他者意図に関する研究は,他者の意図を理解する能力に焦点を当てた研究
と,理解した他者の意図を操作する能力に焦点を当てた研究の2つに大別することができる。他者
意図理解に関する行動は,他者の意図や心的状態を理解する能力に関連する視線検出(Baron-
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Cohen,1995),共同注意(Tomasello,Carpenter,Call,Behne,&�Moll,2005など),模倣(Meltzoff�
&�Moore,1977など),心の理論(Baron-Cohen�et�al.,1985)といった行動から検討されており,他者
意図操作に関する行動としてはからかい(Striano�&�Vaish,2006),欺き(Chandler,Fritz,&�
Hala,1989)が挙げられる。そこで本稿では,ASD 児の他者意図理解に関する発達過程を明らかに
するために,主に乳児期から児童期における他者意図理解に関する研究と他者意図操作に関する研
究動向を概観し,知見の整理および今後の展望について検討を行うことを目的とする。
2.乳児期における他者意図理解および操作に関する心理学的研究2-1.乳児期における他者意図理解について
乳児期における他者意図理解に関連する行動としては,指さし行動に代表される共同注意行動が
挙げられる。共同注意は,子どもの後の語彙や社会的スキルの獲得,他者理解の発達における基礎
を提供するものとして注目が集まっている(常田,2007)。共同注意は,指さし,視線追従,社会的
参照といった行動が含まれる。共同注意を初めて報告した Scaife�&�Bruner(1975)は,乳児と顔を
見合わせている相手が頭と目を同時に目標物の方向に回転させたときに生じる乳児の視線の後追い
現象である視覚的行動注意を取り上げた。これ以降,共同注意の定義を巡っては,「他者が見てい
るところを見ること」と狭義に定義をする立場(Butterworth�&�Jarrett,1991)と,より注意の共有
性に焦点を当て,他者の注意の状況をモニタリングした上で相手が注意を向ける対象に自らも注意
を向ける行為として定義する立場(Tomasello,et�al.,2005)が存在する。近年では,多くの研究者
が Tomasello�et�al.(2005)の定義を採用している(例えば,Kaplan�&�Hafner,2006;Bruinsma,
2005;菅井,秋田,横山,野澤,2010など)。psycINFO により論文検索を行ったところ,joint�
attention�&�child で251件,2000年から2010年では181件の先行研究が抽出された。この結果により,
共同注意に関する研究は,過去10年間に集中していることが推察される。この181件の先行研究に
ついてレビュー論文や母親の特性(子どもに対する敏感性,不安,鬱傾向など)に焦点を当てたもの
(Schechter,Willheim,Hinojosa,Scholfield-Kleinman,Turner,McCaw,Zeanah,&�Myers,
2010;Matatyaho�&�Gogate,2008など)を除外し,58件を抽出した。この58件における対象別の内
訳は,定型発達児を対象とした研究は26件,ASD 児を対象とした研究は32件,低出生体重児,
ASD 児のきょうだい児などリスク児を対象とした研究は3件であった。定型発達児を対象とした
26件は,以下の4種類の研究に分類することが出来る。すなわち,子どもの後の共同注意行動に影
響を与える因子を検討した研究(Gaffan,Martins,Healy,&�Murray,2010;Vaughan,Mundy,
Block,Burnette,Delgado,Gomez,�Meyer,Neal,&�Pomares,2003),共同注意がその後の発達
(言語能力,社会性)に与える影響を検討した研究(Van�Hecke,Mundy,Acra,Block,Delgado,
Parlade,Meyer,Neal�&�Pomares,2007など),養育者や子ども同士のやりとりのタイプと共同注
意との関連を扱った研究(Franco,Perucchini�&�March,2009;矢藤,2000など),子どもの共同注
意行動の発達的変容について扱った研究(常田,2007;Tremblay�&�Rovira,2007など)である。本
稿では,他者意図理解の発達過程に焦点を当てるため,これら4種類の研究のうち,発達的変容につ
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自閉症スペクトラム障害児の他者意図理解および操作についての研究動向
いて扱った研究を概観する。発達的変容について扱った上記2つの先行研究における対象年齢は2 ヶ
月から9 ヶ月児の縦断的研究(常田,2007),3 ヶ月児と6 ヶ月児の横断的研究(Tremblay�&�Rovira,
2007)であり,乳児期における共同注意行動を網羅的に検討したとは言い難い。そこで,本稿では,
乳児期における共同注意行動の発達的変容について網羅的に扱った大神らの一連の研究(村上・大
神,2007,黒木・大神,2003,大神,2002)を元に他者意図理解の発達過程を概観する。彼らは,8 ~
18 ヵ月の定型発達児を持つ保護者を対象に,共同注意に関する17項目の質問紙を実施した。その
結果,0:9ころに他者の視線を追従する行為がみられるようになり,0:10 ~ 0:11にかけて他者の
指さしの理解,1:0 ~ 1:1で指さし行動の産出が始まることが明らかとなった。大神らは,さらに,
指さし行動をその機能から,要求,叙述,応答の3種類に分け,各指さし行動の産出時期についても
言及している。それによれば,1:0 ~ 1:1でみられる指さし行動は要求の機能を持つものであり,1:
1 ~ 1:2では他者と一緒にものをみるために他者の注意を引く機能を持つ叙述の指さしがみられる
ようになる。その後1:3の終わりになると,他者とのやりとりの中で指示に対する答えの手段とし
ての機能を持つ応答の指さしが出現するとしている。
指さし行動に代表される共同注意は,“ 人-人-もの ” という三項関係の中で発現する。このよ
うな三項関係は,言語獲得や他者とのやりとりを行う際に重要なスキルである(Van�Hecke�et�al.,
2007)。三項関係の発達的変容に関して,Tomassello�et�al.(2005)は,他者の意図を理解した上で
やりとりが可能となるまでの段階として,以下の3段階を想定している。すなわち,①二項関係
(dyadic�engagement):行動と情動の共有,②三項関係(triadic�engagement):目的と互いの認識の
共有,③調整関係(collaborative�engagement):意図の共有と注意の共有である。
①二項関係の段階(0:9頃)は,自分と他者の二者が関係の中に含まれる。例として,大人と子ど
もが見つめ合うといった社会的な相互交渉が挙げられる。この行為には,お互いが行為の主体であ
ることの理解だけでなく,情動を共有する動機と能力があるということを理解することが必要とな
る。この時期は大神らの研究結果では,視線追従行動がみられるようになる時期であり,他者の意
図に気づき始めた時期であると考えられる。
②三項関係の段階(1:2頃)では,人は目的を達成する方向に行動することを理解し,その目的を
共有することが出来るようになる。それによって子ども,大人,対象物という三者関係を築き,物
の授受,キャッチボールといった遊びが出来るようになる。子どもの視線は三項関係を形成する他
者の視線の先へと向かうようになり,共同注意が成立する。
③調整関係の段階(1:6頃)では,②の段階で成立した三項関係が質的な変化を遂げ,子どもが積
極的に大人の行動や注意を導き始める。それは,他者が共有された目標に対してどのように行動す
るのかということが理解できるようになり,それを今までの三項関係に応用することが出来るよう
になるためであるとしている。この時期は,大神らの研究結果では,相手をからかう行動がみられ
るようになる時期であり,これらの行動は,他者の情動状態を自らが意図する方向へと導く行動で
あると考えられ,他者の意図を操作する行動であると考えられる。
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2-2.乳児期における他者意図操作について
乳幼児期における他者意図理解,操作の発達を扱った黒木・大神(2003),大神(2002)は,この時
期にみられ始めるからかい行為は他者の意図を理解し,他者の行動を予測する認知的能力が必要と
される行為であると位置づけており,他者の意図を理解し,操作する行動であると考えられる。また,
この時期にみられるからかい行為は,心の理論の発達起源の1つとして注目されているため,本研
究においても幼児期における他者意図操作を代表する行動として,からかい行為を取り上げる。か
らかい行為は,1歳頃からみられ始める他者の心的状態を自分が意図したように変化させる行動で
あると考えられ,発達初期にみられる他者意図操作に関連する行動であると考えられる。からかい
行為に関して,psycINFO による論文検索の結果,“teasing” で217件,2000年から2010年では177
件の先行研究が抽出された。これらの先行研究のうちその多くが,学校や職場での「いじめ」に関す
る研究(Jerome,2006;Hogh,Henriksson,Burr,2005など)や幼少期のいじめられた経験が青年
期の心理的状態(鬱や不安症)に与える影響(Ledley,Storch,Coles,Heimberg,Moser,&�
Bravata,2006;Strawser,Storch,&�Roberti,2005など)を扱っている。抽出された177件のうち,
発達的研究はわずか5件であり,そのうち乳児期を対象とした研究は1件(Striano�&�Vaish,2006)
のみであった。Striano�&�Vaish(2006)は,7 ヶ月児と9 ヶ月児を対象として,子どもがからかわれ
た時の反応について比較を行っており,からかい行為の発現時期に関しては言及されていない。こ
れらの結果より,乳児期におけるからかい行為に関しては近年の研究知見の蓄積が十分ではないと
考えられる。2000年以前にからかい行為の発現時期について言及した研究としては Dunn(1988)
が挙げられる。Dunn(1988)は,家庭でのきょうだいのやりとり,特にいさかい場面を観察し,1歳
台児は,兄や姉との喧嘩で相手を困らせるために大事にしているものを壊す,好きなものを取り上
げる,嫌いなものを提示するといった行動を示すことを明らかにした。このようなからかい行為は,
いさかい場面では,相手を心理的におとしめたり,否定的な状況に操作するという意味を持つ。し
たがって,からかい行為は,相手の心的状態や意図を推測し,自分の意図する方向へと操作するた
めの行動であると考えられる。
以上の研究知見をまとめると,乳児期における他者意図理解の発達は,共同注意や指さしの産出
といった行動がみられるようになり,他者が自分とは異なる意図を持つ行為主体であるということ
に気づくことに特徴付けられる。また,他者意図操作に関しては,からかい行為がみられる時期で
あり,他者の意図への気づきをやりとりに用いて自らが意図する方向に他者の意図や心的状態を導
こうとする能力の萌芽期であると考えられる。しかし,この時期の他者意図操作の発達過程を明ら
かにした実証的研究は少なく,さらなる知見の蓄積が望まれる。
3.幼児期,児童期における他者意図理解および操作に関する心理学的研究3-1.幼児期における他者意図理解について
これまでは,主に乳児期における他者意図理解の発達について論じてきた。幼児期における他者
意図理解の能力は,他者の誤信念の理解に代表される心の理論の獲得が大きな指標となる。心の理
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自閉症スペクトラム障害児の他者意図理解および操作についての研究動向
論(Theory�of�mind)という用語を最初に使用したのは Premack�&�Woodruf(1978)である。彼らは,
1頭のチンパンジーを用いて実験を行い,そのチンパンジーがある状況におかれた人間の行動を見
て,その人間の考えを推測できるかどうかを検討した。具体的には,檻に入っていて,扉を開けよ
うとするが,扉が開かずに困っている人や,天井にあるバナナに手が届かずに困っている人などの
いくつかのビデオをチンパンジーに見せる。ビデオの人物が困っている状態の静止画像を見せなが
ら,その課題を解決するための道具の写真をいくつか目の前において見せ,チンパンジーがどの写
真を選ぶかを調べた。その結果,チンパンジーはある状況下での人間の行動を見て,その状況で人
間が考えるであろう志向内容と密接に関連する道具の写真を示した。この一連の結果から,
Premack�&�Woodruf(1978)は,チンパンジーが直接観察できない人間の心の内容を推測できたこ
とにより,チンパンジーは心の状態を読み取るある種の推論形式を持っていると結論付けた。
これ以降,心の理論研究は,大きく4つの分野,すなわち,哲学的研究,霊長類研究,発達心理学
研究,自閉症研究からなされるようになった(子安・木下,1997)。心の理論の獲得時期に関して,
Wimmer�&�Perner(1983)は,他者の事実とは異なる間違った信念(誤信念)の理解を問うストーリー
課題を用いて検討を行った。実験に用いられたのはマクシ課題と呼ばれるもので,対象児は以下の
ような物語を,人形を用いた劇として見せられた。物語の主人公マクシは,戸棚 X にチョコレート
を置く。彼が居ない間に彼の母親が戸棚 X から戸棚 Y にチョコレートを移し換えてしまう。劇が
終わった後に,対象児はマクシが帰ってきたときにチョコレートを探すのはどこかを答えなければ
ならない。正答のためには,自分が知っている事実(チョコレートは戸棚 Y にある)とは別に,対象
児がマクシの誤信念(チョコレートは戸棚 X にある)を表象することが必要となる。Wimmer�&�
Perner(1983)がこの課題を4歳から9歳の子ども36人に実施した結果,3~4歳以前の対象児は誤信
念課題を理解しておらず,4~6歳の対象児では,約半数が理解していた。そして,6~9歳の対象児の
ほとんどが,人形が持っていると想定できる誤信念を指摘できた。彼らは,これらの結果から,子
どもは4~6歳の間に「心の理論」の能力を身につけるようになると主張した。これ以降,心の理論に
関する研究は様々なバリエーションのパラダイムを用いて検討がなされている。Prener,Leekam,
&�Wimmer(1987)は,自己信念変革課題としてスマーティ課題を考案した。この課題は,スマーティ
という対象児にとってなじみのあるチョコレートの箱を提示し,「この箱の中には何が入っている
と思うか」と尋ねる。大半の対象児はチョコレートが入っていると答えるが,実際にはチョコレー
トではなく,鉛筆が入っている。その後,「ここに何が入っていたと思ったか」という自己の信念を
確認し,次に「~(友達の名前)はこの中に何が入っていると思うか」と尋ねる課題である。この結果,
3歳児は自分の過去の信念を正確に答えることはできても,他者の信念を考えることができないこ
とを明らかにした。さらに,スマーティ課題と同様の課題構造を有しているものとして,Flavell,
Flavell,&�Green(1983)は,見かけと本質の異なるもの(例えば,岩のように見えるがスポンジで
できている物)について見かけと本当の区別課題を実施した。対象児は,見かけと本質の異なる物
を見せられ,それが何に見えるかを質問される。その後,本当はスポンジでできているということ
を確認し,「目で見たときには何に見えるか」,「本当は何か」ということを確認した。この2つの質
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問のうち,前者は,本当はスポンジでできているということを知らない場合を想定して答えなけれ
ばならず,スマーティ課題における「友達は箱の中に何が入っていると思うか」という質問と同様の
能力が求められていると考えられる。この課題を3 ~ 5歳児に実施した結果,3歳児では両方の質
問に対してスポンジと答え,4,5歳児は前者の質問には岩,後者にはスポンジと答えることから,4
歳頃に見かけと本質の区別が可能になると結論づけている。また,彼らは見かけと本質の区別は,
自身の心的状態を表象する能力が必要であるとしている。スマーティ課題と見かけと本当の区別課
題との相関を検討した Gopnik�&�Astington(1988)は,両者の間に有意な正の相関を見いだしてお
り,この結果からも,Perner�et�al.(1987)の課題と Flavell�et�al.(1983)の課題は同様の能力を検
討したものであると考えることができる。
以上のように,幼児期を対象とした心の理論研究は,他者の心的状態のうちでも特に信念(主に
誤信念課題)や他者や自己の知識状態の違い(主にスマーティ課題)に焦点が当てられている。前述
のように,乳児期では,他者の意図や注意に気づくことができるようになると考えられ,それに続
くこの時期は他者の信念というより詳細な心的状態を理解する時期であると考えられる。
3-2.児童期における他者意図理解について
児童期を対象とした他者意図理解に関する先行研究は,2次的信念の理解やより日常的な場面に
おける他者の心的状態理解といった他者の信念理解の深化に特徴付けられる。
2次的信念とは,マクシ課題で捉えられるような “A は○○だと(誤って)信じている ” という相
手の信念の状態(1次的信念)の理解ではなく,“B は○○だと思っている,と A は(誤って)信じて
いる ” という相手(A)における第三者である B の心的状態の理解についての信念である。この2次
的信念について Perner�&�Wimmer(1985)は,“ メアリーはジョンがアイスクリーム屋さんは公園
にいると思っている,と思っている ” というメアリーの2次的誤信念を問うアイスクリーム課題を
考案し,5歳から10歳児を対象に実験を行った。その結果,5歳児では19%が通過したことに対し,
6歳以降では60%以上が通過することを明らかにした。このことから,2次的信念の理解は6歳から
7歳にかけて発達するとしている。
さらに,日常的な場面における他者意図理解を検討した Happé(1994)は日常的な場面を描いた
<変わったストーリー課題(strange�stories)>を作成した。この課題には,日常的なコミュニケー
ションでよく用いられるような比喩的言い回しや冗談,嘘,皮肉といった字義通りではないストー
リーが用いられている。対象者は,24の短い物語を聞き,その後で,「それは本当のことでしたか?
X(人物)は何と言ったのですか?」という理解を検査する質問と,「X はなぜそういったのですか?」
という理由を確かめる質問に回答した。課題を自閉症者と知的障害者,健常成人と6 ~ 9歳児に実
施し,比較検討を行なった。その結果,6 ~ 9歳児は健常成人と同程度の課題成績を示したことが
明らかとなった。
以上をまとめると,他者意図理解に関連する能力は,視線追従,共同注意といった行動に代表さ
れる他者の意図や注意の状態に気づく能力を基盤として,その後,心の理論研究に基づく他者の意
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自閉症スペクトラム障害児の他者意図理解および操作についての研究動向
図や心的状態といったより複雑な他者の意図を理解する能力と,からかい行為のように他者の行動
や反応を予測し,自分の行動を調節することによって他者意図を操作する能力の2つの方向に発達
していくと考えられる。これまで,心の理論に代表される他者意図を理解する能力については,上
述のように多くの研究知見が提出され,児童期までの発達過程が明らかにされている。次節では他
者意図を操作する能力に焦点を当て,先行研究を概観する。
3-3.幼児期・児童期における他者意図操作について
乳児期における他者意図操作に関する行動として,本稿では,からかい行為に焦点を当てた。
Reddy(1991)は,からかい行為とふり遊び,欺き行動との関連を指摘している。欺き行為は,自分
と欺く対象である他者の心的状態を適切に理解することが必要であること(Talwar,Gordon,&�
Lee,2007),さらに,欺かれた他者の心的状態・行動がどのように変化するかという理解を踏まえて,
他者に事実とは異なることを信じさせることが必要な行為である。欺かれた他者の心的状態や行動
を適切に理解するためには,この時期に発達する心の理論の能力が関連しており,このことから幼
児期・児童期における他者意図操作を捉える上で重要な行動であると考えられる。psycINFO によ
る2000年から2010年の論文件数は,“deception�&�child” で134件にのぼる。欺き行為に関する先
行研究は大別すると,欺きの表出に関するものと,理解に関するものの2つがある。前者では
Talwar�&�Lee(2008),Talwar�et�al.(2007),�Hughes(1998),Chandler�et�al.(1989),Lewis,
Stanger,Sullivan(1989)などが挙げられる。一方,後者の研究は,おもに社会心理学の領域におい
て研究されている(Ford,1996;Barnes,1994)。本稿では,他者意図の操作に関する行為として欺
きの表出に関する先行研究の概観を行う。
欺き行為に関する先行研究において扱われている欺き行為は,以下の2つに大別することができ
る。すなわち,どのような欺き行為かという点から,単に相手に対して情報を与えないようにする
ために事実を隠す行為である「隠蔽の欺き」を扱った研究(Lewis�et�al.,1989;Talwar�&�Lee,
2008)と何らかの利益を得るために誤情報を与える行為である「戦略的欺き」を扱った研究
(Chandlere�et�al.,1989;Sodian,Taylor,Harris,&�Perner,1991;Peskin,1992)である。これら
の欺きは,禁止された行為をしてしまったことを隠すために事実とは異なる情報を相手に与えるこ
とができるか否かという構造を用いた誘惑抵抗パラダイム(temptation�resistance�paradigm)や,
ものを相手に見つからないように隠すことができるか否かなどといったゲームの文脈の中で捉えら
れている。
これら2つの欺き行為の違いとして,隠蔽の欺きは,自己と他者の知識の程度の理解(自分が知っ
ていることと他者が知っていることの違い)を逆手にとって情報を隠しておくことで他者の意図・
行動を操作することが可能となるが,戦略的欺きは,それに加え,誤情報を与えることによって他
者の意図・行動を操作することが必要となる。したがって,戦略的欺きは,欺かれた他者の心的状
態がどのように変化し,行動するのかという隠蔽の欺きよりも高度な他者意図理解をし,自分の行
動を調節する必要があると考えられる。これらのことから,他者の意図を積極的に操作しようとす
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る戦略的欺きを行える用になる段階の前に,他者の知識と自己の知識の差を単純に利用しようとす
る隠蔽の欺きを行う段階があると考えられる。
また,欺きを捉える課題構造の違いとしては,欺き行為を行う際の自発性の違いが挙げられる。
ゲーム文脈を用いた課題では,子どもは実験者から欺かなくてはならないことを教示され,他者を
欺くことが明示されている状況で欺きを行うが,誘惑抵抗パラダイムでは,子どもは実験室に魅力
的な玩具などと共に残され,実験者がいない間に玩具を見たり触ったりしてはいけないという指示
を与えられる。実験者が退室している間,多くの子どもは誘惑に負け,玩具を見たり,触ったりし
てしまう。その後,実験者が入室し,子どもに玩具を見たり触ったりしたかどうかを問うという形
式である。このような自分の過ちを隠すための欺きは,子どもが最も早く行い始める種類の欺きで
あるとされ,子どもが日常的に体験する状況に近い(Talwar�&�Lee,2008)と考えられるため,より
自然な状況における子どもの欺きを捉えることができるとされている(Evans,Xu,&�Lee,
2011)。
これら2つの他者を欺く行為はいつから可能になるかということに関して,誘惑抵抗パラダイム
において隠蔽の欺きを扱った Lewis�et�al.(1989)は,3歳児で38%が隠蔽の欺きが可能であると述
べている。この結果について Polak�&�Harris(1999)は,Lewis�et�al.(1989)の対象児が玩具を見
たかどうかの質問に対して否定した行動について以下の問題を指摘している。すなわち,①対象児
が誘惑に負けて玩具を見たという事実を禁止された行動として認識できていなかった可能性,②玩
具を見たという事実を覚えていることができなかった可能性,③玩具を見たということを対象児が
見たとして分類していない可能性である。彼らはこれらの可能性が捨てられない限り,欺こうとす
る意図を議論することができないとし,実験者が退室する際に,玩具を触ることを許容される条件
(許容条件)と禁止される条件(禁止条件)の2条件を設定した。これらの課題を3歳~ 5歳児72名に
行った結果,許容条件における20名の対象児は玩具を触ったかという質問に対して自分が実際に
行った行動(触った場合には触った,触らなかった場合には触らなかった)を答えることができた。
一方,禁止条件においては,全52名中,玩具に触らなかった24名の対象児は質問に対して適切に否
定し,禁止事項を守らずに玩具に触った28名の対象児のうち23名は隠蔽の欺きを行った。また3歳
児よりも5歳児がより欺き行為を行うことを明らかにした。Polak�&�Harris(1999)の結果は,対象
児が禁止された行為を行ったという記憶の下に欺きを行ったと考えられ,誘惑抵抗パラダイムにお
ける隠蔽の欺きは3歳頃から芽生え初め,年齢が上がるにつれて多くの子どもが欺き行為を行うこ
とができると考えられる。しかし,彼らの課題では,対象児がどのような意図の下に禁止された行
為をしてしまったことを否定したのかという点に関しては明らかにされておらず,厳密な意味で欺
き行為を行っていたかどうかについては疑念が残る。
次に,ゲーム文脈を用いた先行研究においては,隠蔽の欺きと戦略的欺きが区別されておらず,
これら2つの欺きがともに欺きの一方略として同等に扱われている。ゲーム文脈を用いた研究は,
Chandler�et�al.(1989)に端を発する。彼らは,歩くとその軌跡が盤面に残ってしまう人形を用いて
宝物を複数の箱のどこかに隠すという課題構造を用いた。この構造では,ボールは常に人形が運ば
― ―332
自閉症スペクトラム障害児の他者意図理解および操作についての研究動向
なければならず,対象児は競争相手となる実験者にどの箱にボールを隠したのか分からないように
することが求められる。人形が歩くと足跡がついてしまうため,何も手を加えなければボールが入っ
た箱に向かって足跡が残ってしまうことになる。そこで,競争相手を欺くために,足跡を消したり,
実際はボールが入っていない箱へ足跡を残すといった欺きの行為ができるかどうかということを検
証した結果,2歳6カ月から欺き行為が可能であるとしている。前述のように,欺き行為は,他者の
行動や知識の程度の理解といった他者意図理解に関する能力が必要とされるため,この結果から彼
らは,誤信念課題で捉えられる心の理論の能力は言語能力に多分に依存した能力であり,この欺き
課題を誤信念課題に変わる心の理論課題として利用することを提唱している。これに対して,同様
の課題構造で,子どもにとってより親和性の高い材料を用いて欺き行為を捉えた Sodian�et�al.
(1991)は,Chandler�et�al.(1989)における欺き行為は,他者の信念を操作することの理解を伴わず
に反応していた可能性を指摘し,“ 欺かれた他者がどの箱を見るか ”,“ どこに入っていると思うか ”
という他者意図の理解を問う質問を導入した。また,欺く意図が対象児自身にあるのかどうかを評
価するため,宝物が見つかるようにする協働条件と,宝物を見つからないようにする競争条件を導
入し,欺き方略を使い分けることができるかどうかを検証した。その結果,Sodian�et�al.(1991)は,
3歳までは,協働相手に対しても,競争相手同様に欺き方略を用いてしまうことが明らかとなり,欺
き行為が可能となる時期に関しては4歳以降と結論付けている。
Peskin(1992)は,Chandler�et�al.(1989)や Sodian�et�al.(1991)は物を隠すという狭い能力しか扱っ
ておらず,他者の知識状態の理解を検討するためには,物ではなく,情報の隠匿について検討する
必要があるとして,自分の嗜好を抑制することで,他者の行動を操作し欺く行動を捉えた。用いら
れた実験は,対象児と競争相手との駆け引き場面を設定し,2つの物のうちどちらかを選ぶという
構造である。対象児は先にどちらの物が欲しいかを選択し,競争相手は,必ず対象児が選んだ物を
取ってしまうという条件が設定された。したがって,対象児が自分が本当に欲しい物を得るために
は,自分が欲しいと思っているものとは別の物を選択する必要がある。この実験を3歳から5歳児
に実施したところ,通過率は3歳児が約30%,4歳児は約60%,5歳児は約80%であった。このこと
から,4歳~ 5歳にかけて情報を隠匿することによって他者を欺く行為が可能になることを明らか
にしている。このように,ゲーム文脈を用いた研究では,4歳以前から欺きが可能となるという立
場(Chandler�et�al.,1989)と,4歳以降に可能となる立場(Sodian�et�al.,1991)の2つに大きく分かれ
ており,一貫した知見が得られていない。この理由として,Chandler�et�al.(1989)は足跡を別の箱
に残す,もしくはすべての足跡を消すといった物理的な操作のみを対象にしていることに対し,
Sodian�et�al.(1991),Peskin(1992)は他者の意図や知識の程度の理解が必要とされる状況におい
て欺き行為を行っているという違いが考えられる。したがって,他者の意図や知識の程度を理解し
た上での欺き行為は4歳~ 5歳にかけて可能となると考えることができるだろう。
児童期における欺き行為に関しては,戦略的な欺きの中でも,以前に自分が行った欺きとつじつ
まを合わせながら行う振る舞いに焦点が当てられている(Evans�&�Lee,2011;V.�Talwar�&�Lee,
2002;Victoria�Talwar�&�Lee,2008)。(Victoria�Talwar�&�Lee,2008)は,誘惑抵抗課題を用いて,
― ―333
� 東北大学大学院教育学研究科研究年報 第60集・第2号(2012年)
3歳~ 8歳の定型発達児を対象に,つじつまを合わせるために,クイズの答えを覗き,答えを知って
しまっているが,知らないふりをしてクイズに答えることができるかどうかを検討した。その結果,
5歳以下では答えに関する知識を有していることを隠蔽することができないが,6歳以上では,大半
が知識を隠蔽して行動することが可能であるとしている。また,欺きの能力を捉える課題に加え,
誤信念課題として1次および,2次の誤信念課題が実施された。その結果,初めに自分の行動を否定
するための嘘は1次の誤信念理解と,その後のつじつまを合わせるための振る舞いは年齢,2次の誤
信念理解と関連があることが明らかにされた。以上を踏まえると,心の理論の能力と欺き行為とは
密接に関連しており,発達に伴い,高次の他者意図理解が可能になるにしたがって,他者の意図を
操作する能力においてもより自分の欺きが発覚しないように振る舞うことが可能になると考えられ
る。
4.ASD 児における他者意図理解・他者意図操作に関する先行研究4-1.他者意図理解に関する先行研究
ASD 児を対象とした他者意図理解に関する行動として,視線追従行動,共同注意,心の理論を扱っ
た先行研究を取り上げる。視線追従に関する先行研究は2000年から2010年において31件
(psycINFO:“eye�contact/eye�direction/gaze� following/visual� attention/visual�perception�&�
autism�&�child”),うちレビュー論文,書籍を除外すると,22件が抽出された。これらの先行研究は,
ASD 児の視線追従行動に対し何らかの介入を行った研究(例えば Cummings�&Williams,2000;
Morrison,2000など)と,ASD 児の視線追従行動を定型発達児と比較した研究(Riby�&�Doherty,
2009;Webster�&�Potter,2008など)に分類することが出来る。本稿では,ASD 児の他者意図理解
の特性に焦点を当てるため,後者に分類される先行研究を概観する。
比較研究に分類される先行研究は,視線追従能力に障害がないとする立場と,統制群と比較して
障害されているとする立場が存在する。前者の立場を取る先行研究として Riby�&�Doherty(2009)
は,写真刺激中の人物が見ている物を同定する課題を用いて自閉性障害児と,非言語性能力をマッ
チングした定型発達児との正答率,および刺激提示中の視線パターンの比較検討を行った。その結
果,両群間に正答率の差異は認められなかったものの,視線パターンに差異があることを見出して
いる。定型発達児は人物の視線と視線方向の物体の間を行き来するように見ることに対し,自閉性
障害児は人物の視線方向以外の物体に目を向け,最終的に視線方向の物体に行き着くように見てい
た。これらのことから,視線方向の理解に関して ASD 児は理解することは可能であるが,理解の
過程が定型発達児と異なることが予想される。
一方,後者の研究としては Leekam,Baron-Cohen,Perrett,Milders,Brown(1997)が挙げら
れる。彼らは,自閉性障害児,ダウン症児,定型発達児を対象として視線モニタリング課題と視点
取得課題の2つの課題を行った。視線モニタリング課題は,他者の視線および頭の動きの変化に伴っ
て自発的に視線を追従することが求められる課題である。視点取得課題は他者からの見え方を推測
する課題である。これら2つの課題を実施した結果,ダウン症児,および定型発達児は両課題を通
― ―334
自閉症スペクトラム障害児の他者意図理解および操作についての研究動向
過したことに対し,自閉性障害児は視点取得課題を成功するが,視線モニタリング課題には失敗し
た。つまり,他者の視線方向をこれらの研究結果を併せると,Riby�&�Doherty(2009)では,視線
方向の物体を特定するという教示の元に課題遂行していることに対し,Leekam�et�al.(1997)では,
視線追従をするということを明示されていない。したがって,ASD 児は自発的に行うという点に
おいて特異性があると考えられる。
次に,共同注意に関する先行研究は,2000年から2010年において66件(psycINFO:�“joint�
attention�&�child�&�autism”),うちレビュー論文,書籍を除外すると32件が抽出された。これらの
先行研究は,①介入による共同注意行動の変容に焦点を当てた研究(Walberg,Jennifer,&�Craig-
Unkefer,2010;Hannah,2010など),②共同注意行動とこだわり行動,後の言語能力などの関連を
扱った縦断的研究(Arora,2008;Boucher,2008;Kuhn,2007など),③定型発達児やダウン症児と
比較検討を行った研究(Adamson,McArthur,Markov,Dunbar,&�Bakeman,2001;Leekam,
Lopez,Moore,2000)に分類される。
統制群との比較を行った③に分類される先行研究として,Adamson�et�al.(2001)は,25 ~ 45 ヶ
月の ASD 児と18 ~ 21 ヶ月の定型発達児の母親とのやりとりにおける母親からの共同注意要請に
対する反応を比較した結果,ASD 児は定型発達児と比べて,母親からの要請に気づくこと,要請を
受け入れることが少なく,要請を拒否することが多いことが明らかとなった。このことから,ASD
児は他者の注意をモニタリングすることが困難であると考えられる。
さらに共同注意能力の指標となる指さし行為に関して扱った別府(1996)は,指さし理解に必要と
される能力として,①指すものと指されるものの関係(「能記―所記」関係)の理解,②対象を相手と
共有する目的の理解を挙げ,自閉性障害児では①の能力は有するが,②の能力に困難さがあるとい
うことを仮定した。その上で,①の能力を測るために後方の指さし理解を取り上げ,②の能力を測
るために指さしによって後方を振り返った後に注意を共有したことを確認する共有確認行動の有無
を問題とした。そして,健常児群では0:5 ~ 0:8歳児12名,0:9 ~ 1:0歳児11名,1:1 ~ 1:4歳
児17名,1:5 ~ 1:8歳児13名の計53名,自閉性障害児群では,CA3:5 ~ 6:6および新版 K 式発
達検査の言語・社会領域(L-S)の発達年齢0:8 ~ 1:9の23名を対象として実験を行った。その結果,
後方の指さし理解において,健常児では,1:1歳を境に,自閉性障害児では L-S の発達年齢1:0を
境に後方の指さし理解が確認され,発達年齢との連関が示された。また,共有確認行動では,自閉
性障害児はほとんど見られないことを明らかにした。
以上から,ASD 児においては,他者の注意状況を自発的にモニタリングしようとする行動や,自
分の興味や関心を他者と共有しようとする欲求に乏しいことが考えられ,ASD 児の共同注意行動
は,定型発達児とは異なった特異的な発達をしていることが示唆される。
共同注意行動の後に発達するとされる心の理論について扱った研究として,1次の信念理解につ
いては Baron-Cohen,Leslie�&�Frith(1985),2次の信念理解については Baron-Cohen(1989),よ
り日常的な文脈における心の理論を扱った研究としては Happé(1994)が挙げられる。1次の信念
理解を扱った Baron-Cohen�et�al.(1985)は,Wimmer�et�al.(1983)で用いられた誤信念課題のパラ
― ―335
� 東北大学大学院教育学研究科研究年報 第60集・第2号(2012年)
ダイムを用いて,この課題に命名の質問,記憶の質問を追加した誤信念課題(サリーとアン課題)を
作成し,この課題をダウン症児,定型発達児,他の2群に比べて言語精神年齢の高い自閉性障害児に
行った。その結果,全ての対象児が,命名の質問,事実に関する質問,記憶に関する質問に正しく答
えることが出来た一方で,信念に関する質問では,定型発達児の85%,ダウン症児の86%が正答し
たが,自閉性障害児児では,20%のみが正答した。事実に関する質問,記憶に関する質問に対する
回答に群間で差が見られなかったことから,彼らは,自閉性障害児は課題要求や教示を理解できな
かったわけではなく,自分が知っていることと,人形が知っていることとの違いを認識していなかっ
たと結論付けている。そして,こうした結果を踏まえ,自閉症性障害児における心の理論の障害を
原因として位置づけた。
しかし,Baron-Cohen(1989)は,Baron-Cohen�et�al.(1985)において,誤信念課題を通過した自
閉性障害児を説明することが出来ないとして,誤信念課題に通過した自閉性障害児が他の自閉性障
害児の中でもっとも年長であったことから,誤信念課題における自閉性障害児の不通過を,心の理
論における特異的発達遅滞説から説明している。このことの理由として,第1に自閉性障害児の心
の理論の障害は,ダウン症児群が示すような全般的な発達遅滞とは関連していない特異的なもので
あるということ,第2に,先の研究において課題に通過した自閉性障害児の存在に着目すると,最も
低いレベルの心の理論が,自閉性障害児でも最終的には発達する可能性があるということから心の
理論の欠如ではなく,その発達が遅滞していると考えられることを挙げた。
この仮説を基に,低いレベルの心の理論をもつ自閉症児のサブグループ(サリーとアン課題を通
過したグループ)も,高いレベルの心の理論を通過できないと推測し,1次の信念の理解よりも高次
な2次の信念の理解について検討を行った。この仮説を検討するため,Baron-Cohen(1989)は,1
次の信念の理解が可能な自閉性障害児,ダウン症児,定型発達児を対象とし,2次の誤信念課題(ア
イスクリーム課題)を行った。その結果,定型発達児の90%とダウン症児の60%がこの課題に通過
したが,自閉性障害児群では誰一人としてこの課題を通過することが出来なかった。これらのこと
から,ASD 児では,定型発達児において,4歳頃に獲得するとされる1次の心の理論の獲得が生活
年齢的にも,言語精神年齢的にも遅滞しているという点,2次の心の理論獲得には多くの困難が生
じることが明らかとなった。
4-2.他者意図操作に関する先行研究
ASD 児における欺きを扱った研究は,Yirmiya,Solomonica-Levi,&�Shulman(1996),Sodian�
&�Frith(1992),Baron-Cohen(1992)が挙げられるが,いずれの研究も自閉性障害児と知的障害(以
下,MR)児,定型発達児との比較を通して自閉性障害児のパフォーマンスの低さを指摘している。
Yirmiya�et�al.(1996)は,ゲーム文脈を用いた構造において,Chandler�et�al.(1989)の手続きを踏
襲しつつ言語的な複雑さをより軽減した方法を考案した。さらに,欺き行為が他者の信念に与える
影響を捉える質問として,欺かれた人がどの箱を探すと思うかという質問を導入した。この課題を,
VMA5:6 ~ 14:6でマッチングした自閉性障害児と MR 児,健常児に実施した。その結果,偽装し
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自閉症スペクトラム障害児の他者意図理解および操作についての研究動向
た足跡をつける,もしくは足跡をすべて消して嘘を教えるという行動では自閉性障害児と MR 児に
有意差はなく,健常児と比べて自閉性障害児,MR 児は有意に劣っていること,また欺き行為を行っ
た対象児のうち,自分の欺きの行為が他者の信念に与える影響の理解ができた自閉性障害児は,健
常児,MR 児と比べて有意に少ないことが明らかとなった。これらのことから,自閉性障害児にとっ
て自分の行動が他者の意図にどのような影響を与えるかという他者意図理解の困難さが欺き行為の
困難さに起因していることが考えられる。Yirmiya�et�al.(1996)は対象群間の比較から ASD 児に
欺き行為の困難さを指摘しているが,ASD 児において他者を欺く行為がどのように発達していく
のかという群内の変化に関しては捉えられていない。さらに,前述のように ASD 児に対しても隠
蔽の欺きと戦略的欺きを区別せずに検討を行っているという問題がある。
ASD 児における欺き行為が可能となる時期に関して,Sodian�&�Frith(1992)は物理的な操作を
加える(箱に鍵をかける)ことによって他者にお菓子を取られないようにする物理的妨害条件と事
実とは異なる情報を教えることによってお菓子を取られないようにする欺き条件,および各条件に
ついて箱を1つ用いる one-box 課題,2つ用いる two-boxes 課題を設定した。one-box 課題における
欺き条件では,お菓子が入っている箱に対して入っていないと答えなければならないため,この欺
きは隠蔽の欺きの能力を捉えていると考えられ,two-boxes 課題では,お菓子が入っていない箱を
指さすことから戦略的欺きの能力を捉えていると考えられる。これらの課題を自閉性障害児
(VMA4:0 ~ 12:0),MR(VMA4:0以下~ 7:0),定型発達児(CA3:1 ~ 5:1)に対し実施し,各
対象群を VMA レベルで4群に分け,群間比較した。結果,自閉性障害児では,VMA7:0 ~ 12:0
で60%が one-box 課題欺き条件を通過すること,two-boxes 課題では定型発達児よりも自閉性障害
児,MR 児の通過者が少ないことを明らかにした。このことから,ASD 児においては,VMA が欺
きを用いることに影響を与えていることが推察され,VMA7:0ほどで自分と他者の知識状態が異
なることを理解し,他者意図を操作するためにその理解を用いることができるようになると予想さ
れる。また,定型発達児において検討されている高次の欺き行為に関しては,先行研究において検
討がなされていない。
以上のように,ASD 児における欺きに関する先行研究では,ゲーム文脈を用いた課題において
隠蔽の欺き,および戦略的欺きの両方で ASD 児の困難さが明らかにされているが,自閉性障害児
における誘惑抵抗パラダイムを用いた研究は見当たらない。前述のように,誘惑抵抗パラダイムで
捉えられる欺きは,子どもが日常よく体験する文脈であり,自発的に欺きを行う能力を捉えること
が出来ると考えられる。視線追従に関する先行研究を概観した結果,ASD 児における特異性として,
視線追従や視線方向の検出を行う能力を有していつつも自発的にそれを用いることに困難さがある
ということが明らかとなった。したがって,欺きに関しても,自発的に有している能力を用いるこ
とに特異性があると考えられるため,誘惑抵抗パラダイムを用いて ASD 児の欺き行為を検討する
ことに意義があると考えられる。
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� 東北大学大学院教育学研究科研究年報 第60集・第2号(2012年)
4-3.他者意図操作に関する認知的処理機能に関して
前節では,ASD 児を対象とした他者意図操作,特に欺き行為に焦点を当てて検討を行い,定型発
達児,MR 児との比較から ASD 児が,他者を欺く行為に関して困難さを有していることが明らか
になった。では,ASD 児が欺き行為に困難さを有するのはどのような要因からなのだろうか。
欺き行為と関連する要因に関する先行研究では,主に実行機能との関連から検討がなされている。
実行機能とは,目的のために適切な問題解決の方法を維持する能力,プランニング,衝動の統制,優
勢であるが妥当でない反応の抑制,組織的探究,思考や行為の柔軟性などの情報能力など(楯・新井,
2002)を含む概念である。欺きと実行機能との関連を検討した Hughes(1998)は,実行機能を3つ
の機能から捉えている。すなわち,作業記憶(working�memory),抑制機能(inhibitory�control),注
意の柔軟性(attentional�flexibility)である。その上で,心の理論課題(誤信念予想,誤信念説明),欺
き課題(one-box,penny-hiding 課題)とこれら3つの実行機能との関連を検討した。その結果,作業
記憶と抑制機能は年齢の上昇とともに得点が増加すること,抑制機能と作業記憶は心の理論の課題
成績と相関関係にあること,欺き課題の成績に影響を与える変数としては抑制機能が挙げられるこ
とが明らかとなった。この結果から,欺き行為には抑制機能の発達が重要であること,さらに,欺
き行為には他者意図理解が必要となるため,必然的に,作業記憶との関連があることが示唆される。
Walczyk,Roper,Seemann,&�Humphrey(2003)は,真実反応と欺き反応における反応時間の差
異からワーキングメモリーと反応抑制が関連する励起(activation),決定(decision),構成
(construction)と い う3つ の コ ン ポ ー ネ ン ト か ら な る ADCM(The�Activation-Decision-
Construction�Model)を提唱している。このモデルは,欺き行為の内的過程(他者意図理解や行為の
選択など)と実行機能との包括的な関連を示したものといえる。Evans�&�Lee(2011)や Walczyk�
et�al.(2003)では,このモデルを用いて欺きと実行機能との関連が検討しているが,これらの先行
研究では学齢期から成人を対象としており,幼児において同様のモデルが適応できるかは明らかで
はない。また,ASD 児の実行機能に関する先行研究では,認知的柔軟性,プランニング(Bennetto,
Pennington�&�Rogers,1993;Ozonoff,1995など),反応の抑制,作動記憶(Goldberg,Mostofsky,
Cutting,Mahone,Astor,Denckla,&�Landa,2005;Ozonoff�&�Jensen,1999;Ozonoff�&�Robin,
1994)のいずれにおいても困難さを有する結果が導き出されている。前述のように,これらのうち,
抑制機能や作業記憶は欺き行為に関連する認知的処理機能である。したがって,ASD 児における
欺き行為の困難さは,これらの認知的処理機能の困難さに起因すると考えられる。
5.脳科学的研究における他者意図操作の研究動向 欺き行為に関する心理学的研究の先行知見をまとめると,ASD 児では,定型発達児と比較して
欺き行為が可能となる時期が遅れること,ASD 児は欺き行為の要因となる実行機能おいて定型発
達児よりも低い成績を示すということが明らかとなった。これらのことから,ASD 児の欺き行為
の困難さは実行機能の困難さに起因すると考えることができる。しかし,ここで1つの問題が挙げ
られる。心理学的研究では,実行機能を捉えるための別の課題を実施し,その課題成績と欺き行為
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自閉症スペクトラム障害児の他者意図理解および操作についての研究動向
との関連を捉えており,それぞれ別の課題から捉えられた欺き能力と実行機能能力との関連から検
討されている。したがって,実際に欺き行為を行っている時にどのような認知的機能が用いられて
いるのかという点に踏み込むことができていない。ASD 児の欺き行為の困難さを解明し,支援方
略を考案するためには,ASD 児が欺き課題に対してどのような認知的処理を行っているのかとい
うことや,定型発達児との比較からその方略の違いを明らかにすることが重要であると考えられる。
そのためには,実際に課題を行っている際の認知的処理を捉えることが必要となる。そのための手
法の1つとして,脳における認知的処理活動を測定することができる機能的磁気共鳴画像法(以下,
fMRI)が挙げられる。
欺き行為を扱った fMRI 研究(Table�1)は,欺きを行っている際の脳活動から,欺きを弁別しよう
とすることを目的とした研究が多く見受けられる。また,その多くが健常成人を対象としており定
型発達児や ASD 児を対象とした研究は見当たらない。欺き行為を扱った先行研究で用いられてい
る代表的なパラダイムは,犯人にしか知り得ない情報とそうでない情報を混ぜて提示し,それらの
質問間での反応の違いから欺き行為を特定しようとする有罪知識質問法(guilty�knowledge�test;
GKT)や裁決質問法(concealed� information�task;CIT)といった刑事捜査に用いられる方法を応用
したもの(Langleben,Schroeder,Maldjian,Gur,McDonald,Ragland,O’Brien,&�Childress,
2002;Langleben,Loughead,Bilker,Ruparel,Childress,Busch,&�Gur,2005など)や,対象者に
擬似的な罪を犯してもらう擬似的犯罪(mock�sabotage�crime)(Kozel,Johnson,Mu,Grenesko,
Laken,&�George,2005;Kozel,Johnson,Grenesko,Laken,Kose,Lu,Pollina,Ryan,&�
George,2009),言 葉 の 再 認 課 題(Abe,Okuda,Suzuki,Sasaki,Matsuda,Mori,Tsukada,&�
Fujii,2008),自分の過去の出来事に嘘をつく課題(Spence,Kaylor-Hughes,Farrow,&�Wilkinson,
2001),記憶障害を装って質問に答えさせる課題(Lee,2005)など様々なパラダイムが用いられてい
る。
これらの先行研究の結果は必ずしも一致していないが,共通して賦活が見られる領域としては,
帯状回(cingulate�cortex),腹外側前頭前野(ventrolateral�prefrontal�cortex;VLPFC),背外側前頭
前野(dorsolateral�prefrontal�cortex;DLPFC)が挙げられる。これらの賦活領域は主に反応抑制に
関連する領域である(Kozel�et�al,2005)。Abe,Suzuki,Tsukiura,Mori,Yamaguchi,Itoh,&�
Fujii�(2005)は,これらの領域のうち,特に帯状回は主に優勢な反応を抑制する機能を担っており,
腹外側前頭前野は欺き反応を産出する機能を担っていることを明らかにしている。また,記憶障害
を装って質問に答える課題を行った Lee,Liu,Tan,Chan,Mahankali,Feng,Hou,Fox,&�
Gao(2002)は,欺き行為に関する神経回路に関して,前頭前野 - 下頭頂葉 - 皮質下ネットワークを
想定している。彼らによれば,前頭前野はワーキングメモリ,方略の選択に関わる領域であり,下
頭頂葉は正誤の判断,皮質下領域は反応抑制に関連するとされる。
しかし,これらの先行研究はいずれも,「MRU 装置外にいる実験者に欺いていることが知られな
いように」という教示がなされており,欺く対象が限定されていないという点と,すべて隠蔽の欺き
を扱っているという問題点がある。社会的文脈における欺きは,欺く相手が何を知っており何を知
― ―339
� 東北大学大学院教育学研究科研究年報 第60集・第2号(2012年)
らないかといった知識の程度の理解や相手の反応を予測する過程が重要となる。したがって,これ
らの先行研究の知見には他者の存在を考慮する過程が抜け落ちていると考えられよう。
欺く他者を限定した中での欺き行為を扱った研究としては,Carrion,Keenan,Sebanz(2010)
が挙げられる。彼らは,事象関連電位(event-related�brain�potentials;ERP)を用いて,対面した相
手に嘘が見破られないようにするという課題中の N450成分の検討を行った。課題条件として(ⅰ)
真実を伝えるように教示される条件,(ⅱ)真実とは異なることを伝えるように教示される条件,(ⅲ)
教示はなく欺こうと真実を伝える条件,(ⅳ)教示はなく欺こうと真実とは異なることを伝える条
件が設定された。その結果,相手を欺こうとする意図がある場合(ⅱ,ⅲ,ⅳ)には欺こうとする意
図がない場合(ⅰ)と比べて,N450成分の振幅が大きいことが明らかとなった。つまり,真実を伝
えるか真実とは異なることを伝えるかという点では N450成分に違いはなく,相手の心的状態を考
慮し,欺こうとする意図によって N450成分の違いが導かれたと考えられる。N450成分は葛藤処理
などの認知的機能との関連が示唆されており,前帯状回の活動を反映しているとされる(West,
Bowry,&�McConville,2004;West,Jakubek,Wymbs,Perry,&�Moore,2005)。
このように,欺きの文脈に他者の存在が含まれることで,相手の心的状態を考慮するという過程
Table 1 欺き行為に関する fMRI 研究
課題の種類 著者 出版年 賦活領減(欺き反応で強く賦活)
guilty�knowledge�test
Langleben�et�al. 2002 ACC,�SFG,�anterior�parietal�cortex
Kozel�et�al. 2004 right�orbitofrontal.�inferior�frontal,�middle�frontal�cortex,cingulate�gyrus,�left�middle�frontal
Phan�et�al. 2005 VLPCF,�DLPFC,�DMPFC,�STS,
Langleben�et�al. 2005 DLPFC,�ACC,�left�IFG,�insula,�parietal�cortex.�precuneus,thalamus
Davatzikos�et�al 2005inferior�&� superior� FG,� superior� temporal�&� inferior�parietalgyri,�bilateral�pericentral,�right�cerebellum,�striatum,temporoparietal�parietal�cortex
Gamer�et�al. 2007 right�IFG,�mid-cingulate,�right�inferior�frontal,�insula
Hakun�et�al. 2008 left�IFG,�prefrontal�&�parietal,�ACC,�MTG
mock�sabotage�scenarioKozel�et�al. 2005 DLPFC,�ACC,�MTG,�inferior�OFG
Mohamed�et�al. 2006 ACC,�MTG,�FFG,�insula,�hippocampus
過去の出来事
Spens�et�al. 2001 DLPFC,�VLPFC,�ACC,�MPFC
Lee�et�al. 2002 bilateral�prefrontal,�frontal,�parietal,�temporal,�caudate,�leftposterior�cingulate
Nunez�et�al. 2005 ACC,�caudate,�thalamic�nuclie,�DLPFC
Spens�et�al. 2008 VLPFC
記憶障害を装う Lee�et�al. 2005 Bilateral�DLPFC,�cingulate,�SMG,�parietal
言葉の再認 Abe�et�al. 2008覚えていたように装う :�left�prefrontal�coftex覚えていないように装う :�right�anterior�hippocampus2種類の嘘共通 :�prefrontal
― ―340
自閉症スペクトラム障害児の他者意図理解および操作についての研究動向
が含まれるようになり,より社会的文脈に近い形で欺き行為を捉えることができるようになると考
えられる。現在,欺く他者を限定した中での欺きを扱った研究は Carrion�et�al.(2010)のみであり,
fMRI を用いた研究は見当たらない。fMRI を用いた研究を行うことにより,より詳細に欺き行為に
関連する認知的処理の様相を捉えることができると考えられる。
6.展望 本稿では,乳児期,幼児期,児童期における他者意図理解,および他者意図操作に関する発達過程
について概観してきた。その結果,定型発達児,ASD 児に共通して他者意図理解に関する先行研
究は,乳児期から児童期にかけて,共同注意や心の理論などの点から研究の蓄積がみられた一方で,
児童期における他者意図操作に関しては,先行研究が十分ではなく,さらなる知見の蓄積が必要で
あることが明らかとなった。その際の1つの視点として本稿では,他者を欺く行為に焦点を当て,
先行知見の整理を行った。他者を欺く行為に関しては,その可能となる時期を巡り,2歳半から可
能とする立場と4歳以降に可能となるとする立場が存在しており,一致した見解が得られていない。
見解の一致が得られない理由としては,欺き行為の定義の違いが挙げられる。欺き行為の定義に関
しては,Lewis�et�al.(1989)が捉えたような単に事実を否定することで他者の心的状態を操作しよ
うとする隠蔽の欺きと Sodian�et�al.(1991)積極的に誤情報を与えることにより操作を行う戦略的
欺きに分けられ,これら2つの欺きのうち,戦略的欺きは,欺き反応を産出することが求められるた
め,より高度な欺きであると考えられる。したがって,これらの欺きを明確に区別した上で,それ
ぞれの可能となる時期を特定することで,発達過程の軌跡を描くことができると考えられる。さら
に,ASD 児を対象とした先行研究では,主にゲームを用いた実験パラダイムが用いられ,定型発達
児,MR 児との比較からその困難さが明らかとなっているが,より日常的な文脈に近いと考えられ
る誘惑抵抗パラダイムを用いた検討がなされていない。また,欺き行為を可能とさせる要因に関し
ては,心理学的研究により実行機能との関連が示唆されており,脳科学的研究による知見において
も実行機能に関する脳領域の賦活がみられている。しかし,脳科学的先行研究においては,欺く対
象を限定し,その対象の心的状態を考慮に入れた社会的文脈を含む欺き行為に関しては検討がなさ
れていない。社会的文脈を含む欺き行為における脳の神経基盤を解明することにより,欺き行為に
関する認知的処理過程を明らかにすることができると考えられる。
社会的文脈における欺き行為の認知的処理過程に関して,これまで明らかになっている研究知見
をまとめると,まず,他者を欺くためには,他者の心的状態の理解が必要となる。そのためには,他
者の視線や意図を検出し,共同注意を行う必要があるだろう(Baron-Cohen,1995)。Frith�&�Frith
(2007)によると,共同注意までの過程は無意識的,自動的になされるとされているため,その後に,
他者の知識の程度を推測し,知識状態との関連から他者の意図を推測する過程が考えられる。次の
過程として,Lee�et�al.(2000)の欺き行為産出の過程から,適切な方略の選択,それと同時に優勢
な反応を抑制する働きが行われると考えられる。以上のモデルは,理論的なモデルであり,このモ
デルに基づく実証的な検討が必要だろう。さらに,定型発達児と ASD 児の認知的処理過程を比較
― ―341
� 東北大学大学院教育学研究科研究年報 第60集・第2号(2012年)
することにより,ASD 児の他者意図操作における困難さの要因を明らかにする上で有効な知見を
得ることができるだろう。
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自閉症スペクトラム障害児の他者意図理解および操作についての研究動向
� In�the�present�review,�we�focused�on�the�development�and�cognitive�processes�of�the�abilities�
to�understand�and�manipulate�others’�mental� states,�which�are�closely� related� to� the� social�
impairment�of�autism�spectrum�disorder.�Although�many�previous�studies�have�been�conducted�
on�children�to�investigate�the�ability�to�understand�others’�mental�state�from�infants�to�school�age�
children,�only� few�studies�have� focused�on� investigating�the�ability�to�manipulate,�especially� in�
early�childhood.�Moreover,�we�focused�on�the�deceptive�behavior�among�such�children,�which�is�
related�to� the�ability� to�manipulate�others’�mental�states.�As�a�result,�according�to� the�age�of�
onset,�there�has�been�contradictory�argument�that�is�the�early�onset�view�and�the�late�onset�view�
in�normally�developing�children.� In�children�with�autism�spectrum�disorder,�although�previous�
studies�concluded�that�these�children�perform�more�poorly�than�normally�developing�children,�it�
is� still� unclear�at�what�age�does� these�children�develop� the�ability� to�deceive�other�people.�
Moreover,�we�assumed� that� in�order� to� investigate� these�children’s�ability� to�use�deceptive�
behavior�in�daily�life,�we�should�apply�the�temptation�resistance�paradigm,�which�allowed�us�to�
investigate�deceptive�ability� in�more�natural� conditions.� In� the�cognitive�process,� executive�
functions�are�closely�related�to�deceptive�behavior.�A�model�of�cognitive�processing�for�adults�has�
been�developed,�but�a�model�pertaining�to�the�cognitive�processing�of�children’s�capability�has�not�
been�developed.�Future�research�should�focus�on�such�a�cognitive�processing�model�in�order�to�
clarify�the�cognitive�traits�of�children�with�autism�spectrum�disorder.
Keywords:�autism�spectrum�disorder,�understanding�others’�mental�states,�manipulating�others’�
mental�states,�deception,�executive�function
The� review�on� the�understanding�and�manipulating�others’�
mental�states�in�children�with�autism�spectrum�disorder.
Susumu�Yokota(Student,�Graduate�School�of�Education,�Tohoku�University�/�JSPS�Research�Fellow)
Mari�Tanaka(Associate�Professor,�Graduate�School�of�Education,�Tohoku�University)