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2018 年(平成 30 年)1 月 18 日(木) 地方行政 第 3 種郵便物認可 2 201611 26VS 1VS 2VS 3稿3231VS 123220168Zatowa表 地域ブランドと、ぼったくりの違い3タイプ タイプ1 地域ブランドの前提となるビジネスの 基本を知らないので、価値を創れていない タイプ2 価値はあるが、顧客に「伝わらない」 タイプ3 価値はあるが、場所の選定に失敗している (相応しい場所を選ぶと成功できる) ふさわ

長野県下諏訪町で2016年 自分のために真面目な人は、失敗に気が付けない 地域ブランド …hisashige.iinaa.net/hisashige032.pdf · 海外著名ブランド品の価格は、激安な量住し、海外著名ブランド品を輸入販売する店を起

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Page 1: 長野県下諏訪町で2016年 自分のために真面目な人は、失敗に気が付けない 地域ブランド …hisashige.iinaa.net/hisashige032.pdf · 海外著名ブランド品の価格は、激安な量住し、海外著名ブランド品を輸入販売する店を起

2018年(平成30年)1月18日(木) 地方行政 第3種郵便物認可 2

自分のために真面目な人は、失敗に気が付けない

 長野県下諏訪町で2016年11月の2日間に実

践したアドバイス業務を題材とした地方創生策

(主に人口減少対策)の考察、第6回である。

 今回のテーマ「地域ブランドと、ぼったくりは

紙一重」にまつわるトラブルは、全国各地で見ら

れ、地方創生に重要な論点だが、ほとんど公にな

らない。理由は二つあるが、いずれも根本的な問

題は「提供者=自分の都合を優先した、顧客目線

の欠如」にある。

 第一の理由は、自治体など「地域ブランド化を

推進して売る側は、価値があるから、高い価格で

売るのは当然と真面目に考える」が、顧客目線や

同業者目線には「そんな価値は無い。ぼったくり

だ! と考える」という目線・立場の違いである。

 第二の理由は、自治体など地域ブランド化を推

進して売る側は、すごく真面目に考えるが故に

「それは顧客目線で見れば、ぼったくりだ!」と

いう不都合な真実を、誰

も指摘できない。

 そう、自分のために真

面目な人ほど、自分の失

敗に気が付けないし、失

敗を指摘されると激怒す

る。だから皆、指摘しな

いで放置しておく。

 しかし、私は原因を分

類・分析した上で、解決

策を示す。今回のテーマ

「地域ブランドと、ぼっ

たくりは紙一重」で失敗

する原因は、表のように

三つに分類できる。

価値があれば「改善」 VS 価値が無いなら「改革」

 拙著「競わない地方創生」は、この解決策を次

のように記す。

 「1は改革が必要 VS 2は改善でよい VS 

3は働く・住む場を変える転職・移住で解決」

 本稿は下諏訪町を例に、3類型を解説する。

 まず、2と3は「価値はある」ので、解決策は

改善や転職・移住という簡単な方法で済む。地方

都市は、この移住ニーズを地方創生に活い

かしたい。

 一方、1は現在「価値が無い」ので、小手先な

改善や場所の変更では何ら解決できない。価値を

創造する根本的な改革が必要となる。

 価値があれば「改善でよい」 VS 価値が無い

なら「改革が必要」という違いに気が付くこと

は(1・2・3全ての者にとって)極めて重要だ。

なぜなら、違いによって、解決策は全く違うから

である。違いにより解決策は違うことが分かる、

2の事例から考察しよう。

激安な量販店と比較して「ぼったくり」

 北澤佳奈子氏は2016年8月、京都から下諏

訪町へ移住して「Zatowa(ザトワ)椅子張

地域ブランドと、ぼったくりは紙一重~下諏訪町編⑥

起業の成功は、地域選びで決まる~選ばれる地域と方法

久繁哲之介

地域再生プランナー

木曜連載

働き方と、意識を改革せよ㉜

表 地域ブランドと、ぼったくりの違い3タイプ

タイプ1 地域ブランドの前提となるビジネスの基本を知らないので、価値を創れていない

タイプ2 価値はあるが、顧客に「伝わらない」タイプ3 価値はあるが、場所の選定に失敗している

(相応しい場所を選ぶと成功できる)ふさわ

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3 2018年(平成30年)1月18日(木) 地方行政 第3種郵便物認可

り店」を起業した。

 おかみさん会など地元市民の世話焼きにより、

起業直後から受注と問い合わせが殺到する。以上

の話は第28回(2017年12月14日号)で詳解し

た。ここからは新しい話で今回の本題である。

 北澤氏は私に次のような悩みを打ち明けてくれ

た。「問い合わせた顧客に価格を伝えたら『椅子

を張り替えるだけで、そんなに高いの? ニトリ

なら新品をその半額で買えるのに、ぼったくりだ

な』と、何回か言われて、すごくショックです」

 価格だけで消費するか否かを判断する顧客が多

いのは、あらゆるビジネスに共通する悩みである。

この悩みへの対応は、主体により次のように違う。

 (1)�

役所:悩みの理由は価格だから、プレミ

アム商品券などで、価格の差を補う。

 (2)�

商工会議所:同じ悩みを抱える零細事業

者を会員化して、相互取引(互恵取引)

で助け合う。

 (3)�

私:本連載で繰り返し「①価値を創り→

②その価値が分かる顧客に絞り→③価値

が伝わる」という、価値3段階プロセス

を提唱している。

価値3段階プロセス=久繁理論は、こう使う

 奇遇にも、この3者が北澤氏の悩みを聞いて

いた(写真1)。下諏訪商工会議所の課長(以下、

課長)と、北澤氏(以下、北澤)と私の会話を紹

介しよう。

 課長「会議所に入会しませんか? 会員は同じ

ような悩みを抱える個人事業者が多く、相互取引

で助け合うことができます。入会してくれるなら、

会議所に破れた椅子とソファが幾つかあるので、

入会したらすぐ、仕事をあげますよ」

 北澤「(いきなりの勧誘にどん引きしつつ、女

性らしい口調で)お仕事だけ頂けませんか?」

 課長「駄目です。会議所の仕事は会員にのみ出

します。会員になれば、仕事をもらえるし、情報

も入るし、メリットは沢た

くさん山ある。入会しましょう」

 北澤「……」(仕事をあげるという上から目線

および強引な勧誘に一層、どん引きして無言で助

けを求めるように私を見詰める)

 私「顧客や仕事を紹介し合う意義は確かにある。

でも、今の北澤さんに最も必要なのは、価値が伝

わる仕組みを創ること。伝わる仕組みを創らない

と、ずっ

と価格で

悩み続け

る。高く

売るため

に、伝わ

る仕組み

を一緒に

考えまし

ょう」

 以下は

その要旨

である。

ビジネスも、恋愛も「自分軸×他人軸」で考える

 起業で成功する方法は「ビジネス力(自分軸)

×地域選定力(他人軸)」の2軸マトリクスで考

えると分かりやすい。

 成功する方法を、自分軸と他人軸で考えるのは、

恋愛と同じ。

 恋愛は「自分の魅力や相手への希望(自分軸)

×相性(他人軸)」で考える。掛け算だから、片

方でもダメなら、成果はゼロ(縁がない)。両方

良ければ、大成功(熱愛)。これは誰にでも分かる。

 タイプ2(価値はあるが、顧客に「伝わらな

い」)の北澤氏は「ビジネス力は乏しいが VS 

地域選定は成功」型(以下、北澤型):欠点は自

分軸にあるので、自分が成長すれば、成功できる。

 タイプ3(価値はあるが、場所の選定に失敗)

のZ氏(後述)は逆に「ビジネス力はあるが×地

域選定に失敗」型(以下、Z型):欠点は他人軸

にあるので、地域(恋愛なら相手)を代える。

 好業績な企業が、ある地方に出店したが利益が

出ず、すぐ撤退するのはZ型の典型例と言える。

 選ばれる地域側を主語に換言すれば、地方創生

は、選ばれる地域になることが大切、である。

自分の労働や思いは、顧客の価値ではない

 北澤型は周囲から応援・紹介されるので「顧客

の数には恵まれるが×顧客の質は悪い(例:価格

写真1 Zatowa椅子張り店で左から筆者、北澤氏、下諏訪町移住定住促進室長の清水氏。足だけ見えるのが商工会議所課長

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2018年(平成30年)1月18日(木) 地方行政 第3種郵便物認可 4

の安さだけで判断)」という特性が強い。

 だから、北澤型には商工会議所が提案する「顧

客を紹介し合う」は解決策にならない。

 適切な解決策は北澤氏が「ビジネスの基本を知

らない」という自分軸の原因分析から始めよう。

 Zatowa椅子張り店という会社名は、椅子

の張り替えに特化している、という事業内容=労

働内容そのもの。会社のWeb(https://zatow

a.jimdo.com

/

)も冒頭のメッセージが「椅子、張

り替えてみませんか?」という北澤氏の労働内容

で、続くメッセージも「人の数だけ椅子はありま

す。そんな椅子たちを応援します」という北澤氏

の思い。

 情報発信の主語=目線は、いつも自分。これで

は役所の情報発信と同様、顧客目線ではない。

 北澤氏の労働内容や思いに、顧客の価値と関心

は無い。価値が顧客に全く伝わらないから、顧客

は価格だけで判断しようとする。

 役所の広報も恋愛も、自分の思いを一方的に伝

える(押し付ける)と、確実に嫌われる。

 相手の価値・関心を探り、先に相手のニーズに

応えることが成功の鍵となる。

 顧客の価値は何だろう? 顧客の価値=気持ち

は「自分の体に長い時間触れていた椅子への愛

着・思い出を大切にしたい」だと思う。

 だからこそ顧客は、新品に安く買い替えるので

はなく、他店の2倍以上の価格で張り替える。で

あれば「あなたの体に長く触れていた(あなたを

支えてくれた)椅子への愛着を繋つな

ぐ(事業)」と

いうような顧客を主語にしたメッセージに変えま

しょう。

どこで輝くか~価値ある者が最も考えるべきこと

 Z型(ビジネス力はあるが×地域選定に失敗

型)の説明に移ろう。Z氏の話は「地域選定に失

敗(地域に軋あ

つれき轢

・しがらみがある)」という事情

から「名前は仮名、業種と時期は不特定」とする。

 Z氏は大都市から下諏訪町の御田町商店街に移

住し、海外著名ブランド品を輸入販売する店を起

業した。海外著名ブランド品の価格は、激安な量

販店の類似品と比べると、10倍は高い。

 Z氏が「ビジネス力はある」と私が評価する基

準は、海外著名ブランド品を輸入販売する権利を

得た点と、Z氏のWeb内容にある。

 地域外の著名ブランド品を「価値があると認め

る」か、認めない上に「ぼったくりと批判する」

かの差は、人の価値観や地域の特性による。

 価値3段階プロセスの②=価値が分かる顧客に

絞る重要性がここにある。価値(ブランド)が分

からない者に、ブランドは猫に小判なので、地域

(恋愛なら相手)を代えるしかない。

 Z氏の起業後すぐ、下諏訪町では「Z氏の商品

は、ぼったくり」という噂う

わさが

流れた。いきなり悪

い噂が流れる理由には、Z氏の「移住の作法」も

ある。

 御田町商店街への移住・起業は、次の作法が不

文律化している、と第28回で説明した。

 移住希望者は商店街の「おかみさん会による面

接的な相談を経て、双方が好意を共有すると、北

澤氏のように、世話を焼いてもらえて、移住・起

業が成功する」(以下、下諏訪移住の不文律)。

 地方小都市には、こうした不文律な儀礼が(程

度の差はあるが)存在する。これを私は「地方の

濃いコミュニティー」と定義し、コミュニティー

の「しがらみを価値へ変える」方法を本連載で提

唱している。

 今回、新たな違う政策(以下、当政策=地域ブ

ランド政策)を提唱したい。

 Z氏のように、地方小都市の不文律な儀礼を知

らない(から実践しない)で移住して、辛つ

い経験

をする若者を生まない・守る政策である。

 当政策は、地方側の地域ブランドを棄損させな

いためにも重要だ。なぜなら、前回も説明したが

昨今、地方小都市の不文律な儀礼を知らないで移

住して、失敗する女性と若者が非常に増えている。

 地域内では、不文律を守らないで移住した側が

村八分の如ご

く叩た

かれる。しかし、世間から叩かれ

るのは、地方(自治体)側である。

 自治体は、不文律な儀礼を知っているのに、人

口欲しさに、良い面だけを美化して伝えるな! 

と叩かれ、移住者が来なくなるだろう。

 当政策=地域ブランド政策が成功する鍵を、①

下諏訪町が既に実践する政策と、②新たに実践す

べき政策に分けて解説しよう。まず①を列記する。

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5 2018年(平成30年)1月18日(木) 地方行政 第3種郵便物認可

 1.�公的機関(町、商工会議所など)は移住希

望者を町案内時、おかみさん会の店へ自然

な形で連れて行く(不文律の連携)

 2.�

移住定住促進室は移住希望者へ、おかみさ

ん会からの面接結果に応じた対応を取る

 3.�

2は高い能力が必要(公務員では実践が困

難)なので、町の移住定住促進室は全員が

民間からの転職者を抜ば

ってき擢

(注)

 (注)=移住定住促進室長の清水活則氏(写真

1。1975年生まれ)は「我が町に向いていな

い移住希望者へ、『あなたは我が町に向いていな

い』とは言えないので、移住して失敗する者は出

る。どうしたらよいか?」と、私へ悩みを打ち明

けた。この原因は①の政策も不文律だから「伝わ

らない=伝えにくい」という結果が生じる。解決

策、すなわち②は不文律の公開となり、その方法

を以下で論じる。

ブランドは個性~個性が伝わると、人は集まる

 青木悟・下諏訪町長(現在4期)は私との懇談

時「御田町ブランド」という言葉を多用しながら

「おかみさん会が移住者を見る目は確か」という

①の話をした(写真2)。すなわち、①は「御田

町ブランドという地域ブランドを創り・守る」政

策と位置付けることができる。

 本連載は「首長の好み(多用する言葉)が、そ

の都市および部下=公務員を変える」事実を考察

してきたが、下諏訪町も然し

りである。

 青木町長は御田町商店街を、町の公式Web

「町長のひとりごと 2016年2月26日」で次

のように語る。

 「『御田町スタイル』がまさに全国ブランドと

なって若者を集めてくれている(中略)御田町ブ

ランドが下諏訪というブランドに広がってくれた

ら嬉う

しい」

ダミー

 ダミー

 ダミー

 ダミー

 ダミー

 ダミー

 ダミー

 ダミー

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 ダミー

 ダミー

 ダミー

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2018年(平成30年)1月18日(木) 地方行政 第3種郵便物認可 6

 青木町長

は「ブラン

ドという言

葉を漠然と

多用」する

結果、部下

も「ブラン

ドという言

葉を漠然と

多用」する。

取材者も

「漠然とし

たブランド」という言葉で町を語る。例えば、経

済産業省2013年度がんばる商店街30選も、御

田町商店街を「若い出店者が集積する(中略)ブ

ランド化に成功した」と絶賛する。

 ネット上で公開される役所のこうした良い面だ

けを美化する情報を見れば、Z氏など若者は御田

町に移住・ブランドの起業をしたくなるだろう。

 成功を夢見る者(特に若者)はネットで情報を

探し、すぐ行動するので、一言でいいから「下諏

訪移住の不文律」を語る責任が役所にはある。下

諏訪町の「町長のひとりごと」はその最適な媒体

と言える。

 ブランドは「漠然と語らず、移住・起業してほ

しい人・業種の個性を具体的に語る」ことが、真

のブランド化への必須条件となる。

 そう、ブランドとは明確な個性のことである。

 東京なら、起業する業種を決めると、その業種

で成功しやすい地域・場所が誰でも分かる(よう

に、地域ブランド化されている)。

 東京の下町(主に台東区)で例を挙げよう。料

理道具なら、かっぱ橋。オートバイなら、上野。

風俗店なら、吉原。駄菓子なら、日暮里。歴史観

光の浅草や谷根千。

 まちづくりのエセ専門家が、よく「まちは多様

な業種の店が混在すべき」と、時代錯誤で間違っ

たことを言う。下町の例を顧客目線で見れば「ま

ちは個性化(ブランド化)すべき」と分かる。

 顧客目線とは、ある商品が欲しい時、この地域

へ行けばよいと分かること。ネットで事前に調べ

ることが当たり前な現代は、どんな価値があるか

事前に分からない地域に、人は集まらない。

 東京の明確で個性的な地域ブランド化は、起業

者側と顧客側の双方にメリットが大きい。観光の

集客効果も高い。この相乗効果で、東京は起業者

と移住者と観光者の全てを集める。東京が一極集

中で繁栄する理由の一つがここにある。

 一方、地方の多くは個性が無い。節操も無い。

 人口を増やしたいので、誰でもいいから移住し

てくれ! という人口減少対策は通用しない。

 正しい政策の手順は次の通り。

 ①�

来てほしい者を明確に絞り込んでから、

 ②�

こういう人に移住してほしい。理由は、我が

地域がこんな地域だから。という情報発信

 我が地域を先に売り込む、逆の順番では、伝わ

らない。理由は先述したように、自分のことを先

に一方的に伝えると「伝わらない」こと。相手の

価値・関心事を先に言う順番が大切である。

 個性は地域で一つに限定しなくてもよい。例え

ば、宇都宮市は「ギョーザ×カクテル×ジャズ」

と、三つの冠を付す。

私が編集者と協働した「書籍ブランド化」を公開

 拙著「地域再生の罠わ

」は「宇都宮に移住して日

本一のバーテンダーに輝いた女性」の話で始まる。

実は、この話は書籍発売の直前まで、2章に配置

していたが、編集者が直前に私へ「この話は、地

域再生とは違う顧客層の心に刺さる、と確信する

出来事があった。申し訳ないが久繁さん、書き直

してほしい」と言う。書き直した結果、この話は

今も、地方大学入試の小論文試験で頻出される、

大学が授業で使用する等、拙著は13刷のロングセ

ラーとなっている。

 編集者の狙いは「地方大学の先生(顧客1)の

心に刺さる→顧客1が、学生(顧客2)に読ませ

る」ことにあった。このように、顧客1が顧客2

に商品を推奨してくれる商品が、ブランドになる。

 先生方は、拙著を読み「地方は無個性だから衰

退した。地方創生の鍵は個性化(ブランド化)に

あり、ブランドは人が創造する」という私の理念

に共感し、学生に創造を期待するのだろう。

写真2 下諏訪町長室にて左から、津村朋信・下諏訪商工会議所副会頭、青木町長、筆者