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アジアにおける金融協力の推進 ~日本とアジアの成長基盤の更なる強化に向けて~ 20183関税・外国為替等審議会 外国為替等分科会 配布資料 資料2

アジアにおける金融協力の推進...2011 2014 AMROの国際機関化 (サーベイランスと CMIMの支援) 1997‐98 アジア通貨危機 CMI創設 CMIマルチ化

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アジアにおける金融協力の推進

~日本とアジアの成長基盤の更なる強化に向けて~

2018年3月

関税・外国為替等審議会 外国為替等分科会 配布資料 資料2

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目次

1

1.全体像

2.アジアにおけるセーフティネットの充実

3.円とアジア通貨の利用拡大に向けた取組

4.クロスボーダー決済におけるフィンテックの活用

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1. 全体像

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~成長戦略としてのアジア国際金融インフラの強化~

1.全体像(円とアジア通貨の更なる利便性向上策の検討)

日本企業のアジア進出の拡大

◯ 対外直接投資残高は急増。(2010年末:68兆円 → 2016年末:154兆円)

背景

アジアにおいて円の利便性を向上させるとともに、中長期的視点に立って日本において、

また日本企業にとってアジア通貨を使いやすくするインフラ整備を行っていく必要。

円とアジア通貨の利便性向上策の検討

円利用の伸び悩み・制約

◯ 貿易取引における円の利用割合は横ばい。(日本の輸出入において、円建て比率は輸

出4割弱、輸入2割強で推移)

◯ 円のアジア送金において、当日中に入金されないなどの制約。

アジア通貨の利用拡大の動き

◯ 現地通貨の使用義務化などドル脱却の動き。

◯ 現地通貨決済促進の動き(タイ・インドネシア・マレーシア)。

◯ 東南アジアの現地通貨建て債券市場は拡大。(債券残高、2002年末:2,700億ドル → 2017年末:1兆2,260億ドル)

東京市場の活性化に向けた議論

◯ 世界で も早く開く主要市場。

◯ 日本企業の外貨建て資金調達ニーズは増大。(外貨建て債券発行額、2010年:2.4兆円 → 2017年:9.6兆円)

◯ 家計の金融資産1,845兆円。日本の機関投資家の外貨建て投資需要も大きい。

セーフティネットの充実

・ASEANに対するスワップ取極の拡充

(ドルのみならず円も供給可)

・災害リスクへの対応

円・アジア通貨の直接交換市場の拡大

アジア現地通貨建て取引、資金調達の促進

・現地通貨スワップ

・中央銀行による日本国債のクロスボー

ダー担保活用

・ASEAN+3のクロスボーダーDVPリンク

(CSD‐RTGSリンク)

円決済のグローバル化・円為替取引の効率化

アジアにおける円の更なる浸透

(国内・国外のシームレスな円の決済環

境の整備等)

東京市場の多通貨決済化の検討

クロスボーダー決済におけるフィンテック

の活用

日本企業・金融機関の競争力向上、

アジアの通貨金融ハブとしての東京市場の発展

主要課題

3

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2. アジアにおけるセーフティネットの充実

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(2‐1) セーフティネットの全体像

○ 日本は、アジアのセーフティネット構築への取組として、金融セーフティネットに加え、災害リスクに対するセーフティネットに注力している。

近の取組

1.AMROとIMFの間でのMOU締結

2 .CMIMとIMFの連携強化

3 .新型BSAの締結

自然災害セーフティネット

近の取組

1.アジア太平洋地域におけるPCRAFI(ピクラフィ)

2 .ASEAN+3におけるSEADRIF(シードリフ)

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ASEAN諸国にとっての金融セーフティネット

(注): 2017年2月時点。地域とは、CMIM及びASEAN Swap Arrangementの合計値。

(出所): National central banks, IMF, AMRO staff calculations

6

(出所): Bank of England; Central Bank websites; RFA annual reports; and IMF staff estimates.1/ 上限が設定されていないスワップ取極は、過去の利用状況等をベースにした想定値。

2/ 上限が設定されているスワップ取極はCMIMを除いた値。

グローバル金融セーフティネットの規模と構成

(2‐2) グローバル金融セーフティネット(GFSN)の規模拡大

◯ グローバル金融セーフティネット(GFSN)は、世界金融危機後、急速に拡大。

◯ GFSNの構成についても、IMF支援、地域金融取極(CMIM等)、二国間通貨スワップ取極(BSA) 、外貨準備

等、多様化されつつある。

タイ フィリピンインドネシア

外貨準備

マレーシア

二国間 地域 IMF

(10億ドル)

8,000

6,000

10,000

14,000

12,000

1,000

2,000

3,000

4,000

4,000

2,000

0 01995 1997 1999 2001 2003 2005 2007 2009 2011 2013 2015

外貨準備(右軸)

(10億ドル)

二国間スワップ取極(unlimited)1

二国間スワップ取極(limited) 2

地域金融取極

IMF(借入)

IMF(クォータ)

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(2‐3)CMIM及びAMROの発展

7

◯ ASEAN+3における地域金融協力は二国間の取組(BSA)からマルチ(CMIM)の枠組みへと深化。

◯ その深化の過程で、ASEAN+3地域経済のサーベイランスを行うとともに、CMIMの実施を支援する法

人としてAMRO(ASEAN+3 Macroeconomic Research Office)が設立。その後、国際機関化。

2000 2005 2016

2008‐09世界金融危機

2010

AMROカンパニーの設立

(CMIMのサーベイランスユニット)

20142011

AMROの国際機関化(サーベイランスと

CMIMの支援)

1997‐98アジア通貨危機

CMI創設 CMIマルチ化CMIM

機能強化

16のBSAに署名

ASEAN(5)+3間(395億ドル)

ASEAN(5)+3間のBSAのネットワーク

CMI→CMIMASEAN(10)+3間(1200億ドル)

一本の契約下での多国間の枠組み

・規模の倍増(1200億ドル→2400億ドル)

・危機予防機能の追加(CMIM‐PL)・IMFデリンク割合の引き上げ(20%→30%)

BSAのネットワーク

断片的なものから集合的なものに

CMIM(Chiang Mai Initiative Multilateralization)

AMROがASEAN+3のマルチ化のスキームを支援

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(2‐4)流動性支援とサーベイランス

流動性支援

‐ スワップ取引/スワップラインの設定手

続と必要条件

‐ 適格性やコンディショナリティ

‐ 取引条件(期間, 利子, 更新等 etc.)

サーベイランスとCMIM支援

‐ 加盟国経済のサーベイランス

‐ リスクと脆弱性の特定

‐ CMIM発動時の事務局支援

‐ 信託基金によるTA

CMIM(チェンマイ・イニシアティブ)

(Chiang Mai Initiative Multilateralization)AMRO

(ASEAN+3 Macroeconomic Research Office)

‐ 契約書による合意(CMIM契約)      ‐ 投票に基づく集団的意思決定(発動には

2/3の投票権が必要)

‐ 条約に基づくASEAN+3地域の国際機関(AMRO 協定) 

‐ 50 人のスタッフ (約6割がエコノミスト)※2017年時点

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(2‐5) IMFとRFA( Regional Financial Arrangement )等の連携強化の必要性

◯ 過去の金融危機対応時には、IMFではない機関による支援が重要な役割を果たしている。

◯ 金融危機対応においては、IMF支援のみでは十分ではなく、CMIMや二国間通貨スワップ取極(BSA)

といったIMF以外の金融セーフティネットの役割や、IMFとRFAとの連携が重要。

モンゴルの危機対応

0.44

5.19

0.

1.5

3.

4.5

6.

Mongolia (2017)

IMF Others

(出所): IMF, European Financial Stability Fund (EFSF)

欧州債務危機対応

(10億ドル)(10億ドル)

エジプトの危機対応

(10億ユーロ)

アイルランド ポルトガル スペイン キプロス ギリシャⅠ ギリシャⅡ ギリシャⅢ

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(2‐6) IMFとRFAsとの連携

10

*1. Collaboration between Regional Financing Arrangements and the IMF (IMF, 2017.7)

2017年7月のIMF理事会は、IMFと地域金融取極(RFAs,Regional Financing Arrangements)との連携

に関わる理事会ペーパーを承認*1。 IMFとRFAsの連携強化に向けて、過去の教訓と運用原則、そし

て今後の連携強化に向けた具体的な提案がなされた。

IMFは今後の連携強化に向けて、IMFとRFAsとの職員交流等を含めた能力構築、互いのサーベイラン

スに相互参加できる仕組み、負担共有(Burden‐Sharing)などを検討したうえで、厳格なルールではな

く、運用原則に基づいたプログラムデザイン構築を目指す方向性。

(参考)IMFとRFAsとの連携強化の運用原則(Operation Principles)

各々の独立性を担保すべき

サーベイランスや融資において、各々の組織のマンデート及びテクニカルな専門性を重視すべき

連携は早期かつ継続的に行うべき

1つの支援プログラムとしてポリシーの一貫性を担保すべき

IMFとRFAsとの協働において、RFAとIMF間、RFAs間のいずれも差別しない

IMF資金の優先弁済権を尊重すべき

2017年10月には、IMFとAMROとの間で、互いのサーベイランスミッションへの参加、スタッフ交換、共

同セミナー・研究などの連携促進を協力分野としたMOUが署名された。

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(2‐7) IMFとCMIMとの連携強化

11

IMFとASEAN+3地域金融協力のイメージ

IMF

CMIM BSAs

外貨準備

◯ チェンマイイニシアティブは、IMFとの合同テストラン等を通じて、連携強化に取り組んでいる。

現在議論されている主な課題

・CMIMとIMFの早期の情報共有の在り方

・政策の一貫性 等

IMFとの合同テストランの取組

・CMIMの発動に係る一連の手続の

実効性を検証するために模擬危機シナリオを設定し、IMFとの連携プロセス等をテスト。

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(2‐8)日本のASEANとのBSA一覧表

(2018年3月12日現在)

インドネシア フィリピン シンガポール タイ

契約当事者日本財務省

とインドネシア中央銀行

日本財務省と

フィリピン中央銀行

日本財務省と

シンガポール通貨監督庁

日本財務省と

タイ中央銀行

契約日 2016.12.12 2017.10.6 2015.5.21 2017.5.5

双方向 or 片方向 片方向 双方向 双方向 双方向

使用通貨 米ドル⇔ルピア

米ドル・日本円⇔ペソ(フィリピン要請時)

米ドル⇔日本円(日本要請時)

米ドル⇔自国通貨 米ドル⇔自国通貨

スワップ額

日→尼:227.6億㌦ 日→比:120億㌦相当 日→星 :30億㌦ 日→泰:30億㌦

― 比→日: 5億㌦ 星→日: 10億㌦ 泰→日:30億㌦

IMFデリンク割合(備考) 30% 40% 30% 30%

備考IMF支援プログラムがない状態で引き出すことができるスワップ額の割合。全額を引き出すには、IMFプログラムの存在が必要。

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○ 旧来の日本の二国間通貨スワップ取極(BSA)は危機時にドルを供給する仕組み。○ これを円で引き出し可能とすることをASEAN諸国に提案(日ASEAN財務大臣・中央銀行総裁会議)。<趣旨・背景>

① ASEAN金融統合や日本企業の進出が進む中、アジア唯一のハードカレンシーである円の調達をしやすくすることで、中期的なドル依存の低減を促し、域内の金融安定に貢献する

② ASEAN諸国には円に対する一定のニーズがある○ これを受け、具体的には既存のBSA(ドル建て)について、円でも引き出し可能とすることを提案。○ 2017年10月6日に日フィリピンBSAについて以上新提案を含めたものを改正した上で延長。

<旧来> <新型>100%

30%

CMIMリンク

IMFリンク

CMIMリンク

IMFリンク

円で引き出し可能とする

0%

ドル建て ※40%

現行BSA締結国インドネシア、フィリピン、シンガポール、タイ

計407.6億ドル(約4.5兆円)

※IMFプログラムなしに発動できる割合(CMIMリンク)を30%から40%に引き上げる。

13

(2‐9) これまでのBSAと新型BSA(フィリピン)

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(2‐10) アジアにおける災害リスク

14

■アジアの災害リスク

• ASEAN諸国において、地震、津波、台風、洪水など様々な災害リスクに晒されており、自然災害は相当な経済損失をもたらしている。

• 自然災害の影響は、経済規模によって異なるが、低所得国においては、経済・社会全体(特に貧困層)に対する悪影響が生じ得ることが懸念される。

出典:世界銀行. 2012. Advancing Disaster Risk Financing and Insurance in ASEAN Member States

ASEAN10か国の自然災害による損害状況(1996‐2010)

0

200

400

600

800

1000

1200

1400

1600

1800

2000

0.0

0.1

0.2

0.3

0.4

0.5

0.6

0.7

0.8

0.9

1.0

Brunei Cambodia Indonesia Lao PDR Malaysia Myanmar Philippine Singapore Thailand Vietnam

経済

損失

(100

万ド

ル)

経済

損失

(対GDP

)

% of GDP Annual Expected Loss (US$ million)

タイラオスブルネイ インドネシアカンボジア ミャンマーマレーシア シンガポールフィリピン ベトナム

経済損失(100万ドル)[右軸]

対GDP経済損失比率(倍)[左軸]

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(2‐11)太平洋自然災害リスク保険(PCRAFI)概要

15

■太平洋自然災害リスク保険(PCRAFI)の現状

• 参加国はサモア、トンガ、バヌアツ、マーシャル諸島、クック諸島の5か国。ドナーは日本、ドイツ、イギリス、アメリカの4か国。

• 2013年1月から開始したパイロット期間を経て、2016年11月、クック諸島に設立された保険会社を中心とした新たな保険プログラムが本格稼働(主な保険対象はサイクロン・地震等)。

• 過去の保険金支払い実績は以下3件。

– 2014年1月: 127万ドル⇒トンガ(大型サイクロン)

– 2015年3月: 190万ドル⇒バヌアツ(サイクロン・パム)

– 2018年2月: 350万ドル⇒トンガ(サイクロン・ギータ)

ドナー国(日・独・英・米)

世界銀行

PCRAFIマルチドナー

信託基金

再保険市場

トラスティ サモア、トンガ、バヌアツ、

マーシャル諸島、クック諸島

資金拠出 出資

保険料

保険金

再保険料

再保険金

太平洋諸国

PCRAFI 技術支援プログラム

PCRAFIファシリティ

評議会

理事会

グループ保険会社

技術支援

技術支援

出資

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(2‐12) 東南アジア災害リスク保険ファシリティ(SEADRIF)の創設

16

■東南アジア災害リスクファシリティ(SEADRIF)

• アジア初の地域災害リスクプールであり、カンボジア、ラオス、ミャンマーの災害リスク(主に洪水)を補償し、再保険市場へリスクを移転する。

• 保険金は、事前に合意したトリガーに基づき、迅速に被災国へ支払われる。

• 2019年の設立・稼働に向け、日本・世銀による資金支援・技術支援のもと、各国及び世銀にて詳細を検討中。

ドナー国

世界銀行

SEADRIFマルチドナー

信託基金

SEADRIF災害リスクプール

再保険市場

トラスティ

カンボジアラオス

ミャンマー

資金拠出 資金拠出

保険料

保険金

再保険料

再保険金

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(2‐13) 日本が推進する災害リスク保険の特徴

17

■災害リスク保険の特徴

• 迅速に被災国の財政補てんを行う。

• 「低頻度・大規模被害」災害の資金需要に対応。

復興・再建目的

高 頻度/小 被害規模

低 頻度/大 被害規模

緊急資金調達

目的

公有財産保険

住宅・事業保険

予防的クレジット

基金・予備費等

【リスク移転】

リスクを自ら保有せず保険市場等へ移転する

【リスク保有】

一定の範囲内でリスクを受容する

緊急資金対応

保険スキームを活用

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世界金融危機後、グローバル金融セーフティネット(GFSN)は、急速に拡大しているものの、IMF支援のみでは必ずしも十分な備えとは言えず、地域金融取極(RFAs)の重要性が高まっている。

東南アジアにおいては、AMRO(ASEAN+3 Macroeconomic Research Office)に支えられたCMIM(Chiang Mai Initiative Multilateralization)が地域金融セーフティネットの中核である。現在、テストラン等を通じて、IMFとCMIMの情報共有の円滑化など、連携強化の取組が進められている。

アジアにおいては、自然災害がもたらす経済への悪影響にも留意する必要がある。自然災害リスクに対しては、保険メカニズムを活用しながら、迅速に被災国への財政補てんを行う仕組みを整備することが有用と考えられる。

2. アジアにおけるセーフティネットの充実 まとめ

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3.円とアジア通貨の利用拡大に向けた取組

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(3‐1)円とアジア通貨の利用拡大に向けた取組の全体像

○ 日本は、円とアジア通貨の利用拡大に向けては、円・アジア通貨の直接交換市場の拡大、現地通貨建て債券市場育成に向けた取組に積極的に関与。

ASEANにおける現地通貨利用拡大の動き

• LCSFの拡大

• タイバーツ・円の直接交換取引拡大に向けた泰中央銀行とのMOCの締結

• 邦銀によるパンダ債の発行

• JBICによる現地通貨建て融資

現地通貨建て債券市場の育成に向けた取組

• ABOによる情報発信

• ABMFの開催

• Good Practicesの集約

• 技術支援

• CGIFの増資

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(3‐2)現地通貨の利用拡大の動き

21(出所)BNMプレスリリース(2017年12月)をもとに作成

タイ(BOT)

マレーシア(BNM)

インドネシア(BI)

2017年12月MOU署名

Bank of Tokyo‐Mitsubishi UFJ Malaysia Berhad

Bank of Ayudhya PCL (“Krungsri”)

■LCSF (Local Currency Settlement Framework)について

• 2017年12月、BOT(タイ中銀)、BNM(マレーシア中銀)及びBI(インドネシア中銀)の3カ国でLCSF(Local Currency Settlement Framework)を発表。

• タイ・マレーシア・インドネシアの3カ国における各二国間の指定された銀行間において、現地通貨の利用規制を緩和することにより、貿易及び投資における現地通貨建て決済を促進させるもの。ASEAN金融統合も視野に入れた取組。各二国間ごとに指定銀行が5行~7行と異なる。例えば、タイ-マレーシア間は7行ずつ銀行が指定され、アユタヤ銀行(三菱東京UFJ銀行が75%超出資)とBTMUマレーシアが指定されている等、日系銀行も本枠組みに関与。

• 当初は、タイ-マレーシア間で行われてきた物とサービスの貿易のみを対象とした現地通貨建て決済促進の取組として開始されたが、今般、取引対象(投資等を追加)及び指定取扱銀行の拡大(3行から7行)がなされたことに加え、新たにインドネシアも枠組みに参加(当面は貿易のみ)。

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(3‐3)タイバーツの利用拡大の動き

• タイバーツは、特に対ASEAN各国との貿易取引で多く使用されており、2017年第4四半期の数値ではASEAN向け輸出の25%、輸入の14%がバーツでの受払いとなっている。また、その割合は輸出入ともに中期的に上昇傾向にある。

• こうした背景の1つには、カンボジアやラオスとの国境付近での取引でバーツが使用されており、両国国内でもバーツを使用できる地域が広がっていることがあると考えられる。近年タイ政府は、労働力の確保や地域の活性化を図るため、国境付近にSEZを設ける取組を行っているが、こうした取組の進展度合いやタイ企業のASEAN各国への活発な進出が更に続けば、今後更にバーツの使用範囲が拡大する可能性もある。

0

20

40

60

80

100

1997年 2009年 2014年 2017年

タイのASEANからの輸入の支払い通貨別割

合(%)の推移

米ドル 日本円 タイバーツ 星ドル そのほか

0

20

40

60

80

100

1997年 2009年 2014年 2017年

タイのASEAN向け輸出の受取通貨別割合(%)

の推移

米ドル 日本円 タイバーツ 星ドル そのほか

(出所)タイ中央銀行

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(3‐4)タイバーツ・円の直接交換

23

企業 Y企業 X

インターバンク市場

銀行 B銀行 A

円建輸出契約締結

日本円支払い

企業サイド

銀行サイド

バーツドル

円 ドル

インターバンク市場直接交換市場

円 バーツ日本 タイ

バーツ円

◯ 2017年9月に、円=バーツ直接交換市場が創設。

創設

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(3‐5)タイ中央銀行との現地通貨の利用促進に関する協力覚書

24

◯ 2018年3月9日に、タイ中央銀行と現地通貨の利用促進に関する協力覚書(Memorandum of Cooperation : MOC)を締結し、報道発表。

◯ MOCでは、日泰間の為替取引の促進、及び関連規制緩和も含めた施策実施に向けて、①円=バー

ツの直接取引に関するレート表示や銀行間市場における取引の促進、②定期的な協議の実施等日泰当局間の協力体制強化、等に合意。

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(3‐6)邦銀による中国パンダ債の発行

25

*1. 監査監督上の協力:両国の監査法人に対する監督当局が、相互主義等の原則の下、必要な範囲内で監督上の情報交換を行うことを可能にするもの。

出所: 金融庁HP等をもとに作成

◯ 2017年12月22日に監査監督上の協力*1に関する書簡を中華人民共和国財政部と交換。

◯ これにより、日本企業の中国本土におけるパンダ債(中国本土で非居住者が発行する人民元建て債

券)発行に必要な環境整備が進展。

◯ 2018年1月16日、三菱東京UFJ銀行とみずほ銀行は、中国市場でそれぞれ人民元建て債券(パンダ

債)をそれぞれ、10億人民元、5億人民元発行。

・越智隆雄内閣府副大臣と史耀斌中国財政部副部長が会談を行い書簡の交換を行った際の様子(2017年12月22日)

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0

2

4

6

8

10

12

14

16

18

0

20

40

60

80

100

120

140

160

2012年度 2013年度 2014年度 2015年度 2016年度

JBICのアジア現地通貨建て出融資実績

金額 件数

(億円) (件)

タイの発電事業者

JBIC

③支出(資材の購入

等)

④収入(電力料金)

タイの現地金融機関

①タイバーツ建ての長期借入

②タイバーツ建ての長期融資

収入・支出ともにタイバーツ建てが主

⇓タイバーツ建ての

資金需要大

タイの現地企業等

タイの電気利用者

⑥タイバーツ建ての借入返済

⑤タイバーツ建ての融資返済

【JBICによる現地金融機関からの長期借入のイメージ】

26

◯ JBICは、日本企業の海外展開事業に対して、アジア現地通貨建てでの出融資を実施。2016年のJBIC法改正では、途上国向けのインフラ事業等で需要の大きい現地通貨建て出融資を促進すべく、JBICの

現地通貨調達方法として、民間銀行からの現地通貨建て長期借入を解禁。

(3‐7) JBICによる現地通貨建て融資

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(3‐8)現地通貨拡大のメリット

27

*1. リーマンショック時(2008年)からテーパリング危機時(2013年)の期間におけるLCBMの発行量の増加分と名目為替レートへの影響との関係は、ASEAN諸国を除けば、LCBM発行量が大きいほど、名目為替レートへの影響が小さい。

出所: “Do Local Currency Bond Markets Enhance Financial Stability? Some Empirical Evidence”(October 2017) 「Donghyun Park (ADB) 」

◯ 現地通貨建て債券(Local Currency Bond Market:LCBM)の発行量が増加するほど、危機時における

名目為替レートの下落が小さい*1とのリサーチ結果が発表されている。LCBMの発行拡大は、外的ショッ

クに対する耐性(resilience)を高める上で今後とも重要な政策課題と考えられる。

【LCBM発行額(対GDP比)】 【LCBM増加量と名目為替レートへの影響との関係】

Turkey

South Africa

Argentina

Brazil

Colombia Mexico

Peru

Israel

Lebanon

India

Indonesia

Korea, Republic of

Malaysia

Pakistan

PhilippinesThailand

Russian Federation

China, P.R.: Mainland

Czech Republic

Latvia

Hungary

Lithuania Croatia

Poland

‐60%

‐50%

‐40%

‐30%

‐20%

‐10%

0%‐10% ‐5% 0% 5% 10% 15% 20% 25% 30% 35%

小←

危機

時の

名目

為替

レー

トへ

の影

響→

大(Differen

ce of %

 cha

nges in

 Nom

inal Excha

nge Ra

te)

小←現地通貨建て債券市場の増加率→大(Increase in size of Local Currency Bond Markets(LCBM))

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(3‐9)現地通貨建て債券市場の育成

【ABMI(アジア債券市場育成イニシアティブ)とは】

◯ABMIは、ASEAN+3地域金融協力の枠組みの一環として2002年に開始。

◯1997年のアジア通貨危機の一因となった通貨と期間のダブルミスマッチ解消を目的に、ASEAN+3の現

地通貨建て債券市場の育成に取り組むもの。

目的 主な活動

現地通貨建て債券発行の促進 信用保証・投資ファシリティ(CGIF)による保証業務

現地通貨建て債券への需要の喚起機関投資家向けホームページ「Asian Bonds Online」上で、取引量や国債イールドカーブ等の各種情報を随時発信

規制枠組みの改善クロスボーダー取引の活性化を主眼に官民の専門家で市場慣行の標準化や規制の調和化を議論するASEAN+3 Bond Market Forum(ABMF)の開催

債券市場関連インフラの改善域内のクロスボーダー資金・証券決済インフラを検討するであるCross‐border Settlement Infrastructure Forum(CSIF)の開催

ASEAN+3域内当局の能力強化 ASEAN+3域内当局で能力強化のための技術支援を実施

域外への知見共有国債市場が未発展なASEAN域外国等への知見共有を目的に、タ

イ、インドネシア、マレーシア、ベトナムの債券市場発展の過程で得た重要な要素をGood Practicesとして集約した。

28

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(3‐10)現地通貨建て債券市場の規模

出所: Asian Bonds Online, IMF WEO

【拡大する債券市場規模】

◯ 東南アジア各国の現地通貨建て債券市場は拡大しており、2017年には債券残高約1.2兆ドル。ABMIが創設された2002年から比べると、ASEAN6の債券発行高は約4.5倍の規模。

◯ 国債の海外保有比の太宗は欧米の投資家と見込まれるが、今後アジア通貨の自由化が進展すれ

ば、アジア域内のクロスボーダーでの国債保有が拡大することも想定される。

【現地通貨建て債券市場の債券残高(米ドル換算)】 【海外投資家の国債保有比率(%)】

国債(LCY)の海外投資家保有額(USD) + 国債(FCY)発行額(USD)

     国債(LCY)発行額(USD) + 国債(FCY)発行額(USD)

(出所)Asian Bonds Online

(注)国債の海外投資家保有率=  として算出。

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

2004/12

2005/6

2005/12

2006/6

2006/12

2007/6

2007/12

2008/6

2008/12

2009/6

2009/12

2010/6

2010/12

2011/6

2011/12

2012/6

2012/12

2013/6

2013/12

2014/6

2014/12

2015/6

2015/12

2016/6

2016/12

2017/6

インドネシア

韓国

マレーシア

タイ

29

0

0.5

1

1.5

2

2.5

3

0

200

400

600

800

1000

1200

1400

97 98 99 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17

(10億米㌦) インドネシア(左軸)

マレーシア(左軸)

フィリピン(左軸)

シンガポール(左軸)

タイ(左軸)

ベトナム(左軸)

ASEAN6名目GDP合計値

(右軸)

1,226

4.5倍

270

(注) ASEAN6の債券残高は2017年9月末時点の数値、名目GDP値は、2016年が基準(WEO)。

(兆米㌦)

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2004年、域内の債券市場に関する情報やABMIの活動を紹介するウェブサイトとして、ADBの支援を得て開設されたウェブサイト。2016年のアクセス数は2011年に比べて約2.3倍に増加。ABOは日本の拠出により運営。

各国の債券発行額やYield Curve等の各種情報を随時更新。四半期ごとに各国の債券市場をレビューするAsia Bond Monitorを公表。

地域の債券市場に注目したサイトは他地域でも見られないものとして高く評価されており、アジアに関するレポートでは頻繁に引用されている。

Asian Bonds Online(ABO)

2018年2月1日、カンボジアとミャンマーのBond Market Guide(公的な承認を得た初め

ての市場情報)を発刊し、これまで累計11カ国・地域を発刊。

2017年、ASEANの現地通貨建

て国債市場における流動性に関するサーベイを実施(4点満点で評価)。

(出所)Asian Bonds Online 2017 Local Currency Bond Market Liquidity Survey

0

0.5

1

1.5

2

2.5

3

3.5

4投資家の多様性

市場アクセス

外為規制

資金調達

税制

資金・債券決済

ヘッジ取引(デリ

バティブ)

透明性

現地通貨建て国債市場に関するサーベイ結果

インドネシア

マレーシア

フィリピン

タイ

30

(3‐11)Asian Bonds Online(ABO)による情報発信

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○ ABMF(ASEAN+3 Bond Market Forum)とは、2010年に創設されたADB主催の官民合同のフォーラム

で、これまで計27回開催。

〇 各国市場の規制、制度を詳細に説明するAsian Bond Market Guideの発刊のほか、債券発行手続や

共通書面による社債発行の域内標準化を目的としたAMBIF(ASEAN+3 Multi‐currency Bond Issuance 

Framework)債を奨励。2015年9月にみずほ銀行がタイで発行。

○ ABMFの参加者は、(i)ASEAN+3政府機関, (ii)ASEAN+3決済機構, (iii)グローバル金融機関等が参加。

現在は、新たにASEAN+3域外国が参加するための規則をASEAN+3で策定中。

官民合同フォーラム (ABMF)

ASEAN+3 財務省・中銀

証券決済機関(保振など)

銀行・証券・関連団体

システム開発会社

グローバルカストディアン

SWIFT

31

(3‐12) ABMFの 近の動き

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○ Good Practicesは、国債市場が未発展なASEAN域内諸国やASEAN域外国への知見共有を目的に、タ

イ、インドネシア、マレーシア、ベトナムの債券市場発展の過程において特に重要な要素を研究・集約

したもの。

○ いずれも、ADBのウェブサイトで閲覧可能。

債券市場先進国

債券市場未発展国

ASEAN+3

発展支援

発展支援

Inputs

知見共有

知見共有

ABMIGood 

Practices

中南米

アフリカ

中央アジア

他地域(1) 発行体、市場参加者(機関投資家・個人

投資家・債券取引仲介業者)及び当局との連携が重要。

(2) トレーディングや決済のプラットフォームの構築(カストディアンの存在)も欠かせない。

(3) 債券市場関連の制度面・税制などのルールの整備も必要。

国債市場の発展に必要な要素

32

(3‐13) 国債市場発展のためのGood Practices

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○ インフラの整備や産業の発展

に伴う資金調達の需要が高まっ

ている一方、国内の金融機関の

資金仲介機能が乏しい。

○ カンボジアやラオスではドル

化が進んでおり、金利機能が働

かない面がある。

カンボジア ラオス ミャンマー

現状 10年以上、国

債・社債発行の実績なし

短中期国債(1~5年)の発行

タイ・シンガポール市場での国債・社債発行増加(タイでは8億㌦<2015年>)

短中期国債(1~5年)の発行

中銀システム(CBM‐NET)による

国債決済稼働(2016年)

課題 IDA 優遇金利国から2020年代

に卒業と見込まれ、資金調達の多様化が急務

対外債務のドル建て割合は59.8%と高い(2015年、IMFレポート)

現地通貨建て銀行金利、国債クーポンともに市場金利となっていない

国債発行額の対GDP比は4%と低い

国債保有の95%

が銀行セクターであり、保険会社の規模が小さい

足もとの技術支援等(ABMI,CGIF)

技術支援(国債発行計画の策定など)

CGIF保証により、

久しぶりの現地通貨建て社債案件組成中(金融機関債)

技術支援(国債市場ロードマップ策定、公的債務管理の強化など)

CGIF保証の現地通

貨建て社債発行待ち(水力発電会社)

技術支援を組成中

出所: 国際通貨研究所、野村総研、大和総研33

(3‐14) カンボジア、ラオス、ミャンマー債券市場に対する技術支援

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(3‐15)CGIFの概要

34

○ASEAN+3域内で、債券発行による資金調達が困難な企業の信用力を高め、現地通貨建て債券発行を円滑化することを目的に設立された機関。

○当初7億ドル規模で、2010年11月にADBの信託基金として設立。Standard & Poor’sより、AAの格付を取得。(注)日本はJBICを通じて2億ドル出資(28.6%)。その他、中国2億ドル(28.6%)、韓国1億ドル(14.3%)、ADB1.3億ドル(18.6%)、ASEAN全体で0.7億ドル(10%)。

○2013年4月以降、全14件の保証案件を実施。

○2013年11月、保証可能額の拡大を決定( 大17.5億ドル)。

※出資額7億ドルを変更せず、レバレッジを2.5倍に拡大。

○2017年12月、保証残高は11.13億ドル(14社)。

○2014年12月に保証したベトナム食品・飲料の製造・卸売業(保証規模1億ドル、保証期間10年)は、その後CGIFの保証なしに社債を発行するなど政策効果を上げつつある。

(総額7億ドル)

(例)電力、運輸、通信等、中長期の

資金を必要とするプロジェクト

CGIF

ASEAN+3各国

ADB

出資

現地通貨建て債券発行 資金調達

保証

投資家

アジアの企業

保証料

(ADBの信託基金)

投資

投資

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(3‐16)CGIFによる民間資金動員の規模

35

出所: OECD「Amounts mobilized from the private Sector by Official  Development Finance Institutions, July 2017」

【民間資金動員の規模 (2012~2015年) 】

◯ CGIFの保証による民間資金動員規模は、2013年に保証開始したにもかかわらず、開発金

融機関では世界銀行、アフリカ開発銀行に次いで、第3位。(2013~2016年の実績で見ると

アフリカ開発銀行を抜き2位となる見込み)

◯ 国別では、シンガポールを筆頭に、ベトナム、タイ、フィリピン、インドネシアの市場に展開。

World Bank$16,683M

AfDB$817M

CGIF$631.8M

PIDG$530.7M ADB EBRD

$456.2M  $433.6M

EIB$150M

MIGA$11,850M

IDA$2,303M

IFC$1,285M

IBRD$1,243M

保証による民間資金動員(2012‐2015)

CGIF$409M(2016年)

2013~2016年で見

ると、相当のプレゼンスを発揮

保証(開発金融機関)19,702M24%

保証(二国間機関)16,191M20%

その他45,170M56%

民間資金動員 全体実績

(2012‐2015)

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(3‐17)CGIFの保証実績等

36

【CGIF保証実績(全件)】

137

371

73

123

409

050

100150200250300350400450

2013 2014 2015 2016 2017

各年ごとの保証額(発行市場別)

シンガポール

ベトナム

タイ

フィリピン

インドネシア

百万ドル

実績累計(グロス)

年別内訳

2013 2014 2015 2016 2017

保証額(百万ドル) 1,113 123 371 137 409 73

償還済 258 123 135 ‐ ‐ ‐

保証件数 14 2 4 1 5 2

償還済 4 2 2 ‐ ‐ ‐

保証可能枠700

保証可能枠1750

123494 631

1040 11132件

6件7件

12件

14件

0件

2件

4件

6件

8件

10件

12件

14件

16件

0200400600800

10001200140016001800

2013 2014 2015 2016 2017

保証額及び保証件数の累計推移(グロス)

保証可能枠 保証額累計 件数累計

百万ドル

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(3‐18)CGIFの増資

37

【CGIFの課題】

◯ ポートフォリオ管理・リスク管理

保証可能額の拡大により、CGIFの保証案件の更なる増進が見込まれる一方、適切な

ポートフォリオ運営が求められ、リスク管理機能の強化が求められる。

◯厳格な案件精査

現地通貨建て債券市場の育成に資する案件に保証をしていくとともに、より厳格にセー

フガード基準等の適用を行う必要。

【増資の状況】

◯2017年12月、CGIF出資者の賛成多数をもって増資が議決された。

現在 増資後

総出資額(百万ドル) 700 1,200うち日本出資分 200 342.8

レバレッジ・レシオ 2.5 2.5以上

保証可能額(百万ドル) 1,750 3,000以上

増資により保証可能額も拡充

更なる保証拡大へ

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38

3.円とアジア通貨の利用拡大に向けた取組 まとめ

アジアでは、現地通貨建ての決済を促進する動きが見られる。

こうした中、円とタイバーツの間では、直接交換の仕組みが開始された。タイ(中銀)との間では、直接交換取引の拡大に向けて協力を強化することで合意をしている。

現地通貨建て債券市場が拡大するほど、危機時において為替の下落幅は小さい、という分析結果が示されており、アジアにおいて現地通貨の利用を拡大していくことは、危機への耐性を高めると考えられる。

ABMI(アジア債券市場育成イニシアティブ)において、投資家向け情報発信を充実さ

せるなどの取組により、アジアにおいて現地通貨建て債券市場は着実に拡大している。

現地通貨建て債券の保証を行うCGIFについては、民間資金の動員という点で着実な効果を上げている。昨年、増資が合意されており、今後、保証枠が拡大する見通し。

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4.クロスボーダー決済におけるフィンテックの活用

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(4‐1)クロスボーダー決済の課題とフィンテックの活用

○ クロスボーダー決済では、送金に要する時間や手数料等が課題として指摘されている。

○ スマートフォン、ビッグデータ分析、分散型台帳技術(DLT: Distributed Ledger Technology)などの新し

い情報技術が発展する中、発達した決済システムが存在する先進国と決済システムが未成熟な途上国それぞれの実情に応じて、これらを活用して決済を効率化しようという動き。

○ 官民様々なレベルでフィンテックの研究が進められている。

送金時間の短縮送金手数料の

低減・透明性向上決済システムの

効率化

クロスボーダー決済の課題

• Alipay、WeChatPay(中国)等の発展・拡大

• PayNow(星)とPromptPay(泰)の相互接続

• TIPSによる24時間/365日送金(ユーロシステム)

電子小口決済の活用

• UBS(スイス)等によるUtility Settlement Coin• Ripple(米)における分散型台帳技術の活用

• 星中銀・加中銀における共同プロジェクト

銀行間決済への分散型台帳技術

(DLT)の活用

40(注)下線部はクロスボーダー決済における取組。

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(4‐2)電子小口決済の活用事例①

41

• 中国のAlipay(アリババグループ)やWeChatPay(テンセント社)は、QRコードで決済を完了させるサービス。利便性に加えて導入コストが低く、ユーザー数はそれぞれ5億人(Alipay)、9億人(WeChatPay)を超える。

• 両サービスはいずれも銀行ではない主体が提供。アリババグループやテンセント社は情報サービス全般を提供しており、決済サービスで収益を上げるのではなく、決済サービスで得た情報を他のサービスで活用するというビジネスモデル。個人の消費性向に関するビッグデータを活用したサービスを提供することで強固な収益基盤を構築。

• 中国以外にも、インドやケニア等、現金以外の決済手段が未成熟な国々を中心に、銀行ではない主体が電子決済サービスを提供する例が急速に増加。

①民間の活用事例(中国:Alipay・WeChatPay)

QRコードで決済

ビッグデータ

広告保険

金融

集約したビッグデータを他のサービスで活用

電子商取引

<Alipay・WeChatPayのイメージ>

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(4‐3)電子小口決済の活用事例②

42

• 2017年7月、シンガポールの大手民間銀行7行が、国内の電子小口決済サービス(PayNow)を立ち上げ。同サービスでは、受取人の携帯電話番号等を入力することで送金が可能。

• タイにおいても既に同様のサービス(PromptPay)が導入されている。

• 2017年11月に開催されたフィンテック・フェスティバル(星)において、星中銀は、PayNowとPromptPayの相互接続の検討を開始すると発表。クロスボーダー決済を見据え、泰中銀と連携して検討を進めていく予定。

②民間と中央銀行の活用事例(シンガポール・タイ)

PromptPay電話番号等で送金が可能

PayNow電話番号等で送金が可能 電話番号等で

送金可能に

<PayNowとPromptPayの相互接続のイメージ>

【シンガポール】 【タイ】

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(4‐4)電子小口決済の活用事例③

43

• 2017年6月、ユーロシステムは、ユーロ圏内における24時間/365日の小口決済のインフラであるTIPS(TARGET Instant Payments Settlement)に係る構想を発表。

• 圏内の銀行間決済システムに24時間/365日接続可能な小口専用の決済インフラ(TIPS)を構築し、夜間や銀行休業日の取引でも銀行間決済におけるファイナリティを実現することで、リスクを軽減。

• 2018年11月のサービス開始を予定しており、携帯電話番号による送金のほか、ユーロ以外の通貨の取引にも拡大する可能性。

③中央銀行の活用事例(ユーロシステム:TIPS)

(出所)ユーロシステムHPより

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(4‐5)銀行間決済における分散型台帳技術(DLT)の活用

○ 分散型台帳技術(DLT: Distributed Ledger Technology)は、複数の関係者が、ネットワークを介して電子上の情報(台帳)を常時共有・承認・管理するスキーム。

○ 同一の台帳が複数存在するため、中央の台帳を管理するよりも、システムの可用性(availability)・改

ざん耐性が高いことが利点とされており、関係者間での情報共有・管理が必要とされる場面における活用が期待される。

○ 銀行間決済においては、決済に参加する主体を限定できるため、分散型台帳技術による情報の共有を比較的安価かつ頑健に行うことができる可能性。国内決済のみならず、クロスボーダー決済においても、分散型台帳技術を銀行間決済に活用する実験的な取組が行われている。

44

<銀行間決済における分散型台帳技術(DLT)の活用のイメージ>

取引情報を中央管理主体(中銀等)の台帳上で管理。台帳が一つしか存在しないため、台帳の可用性・改ざん耐性を確保するためのコストが必要。

取引情報が記録された同一の台帳を各主体(各国中銀・民間銀行等)が共有。同一の台帳が複数存在するため、台帳の可用性・改ざん耐性の確保が低コストで可能。

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(4‐6)銀行間決済における分散型台帳技術(DLT)活用に係るプロジェクトの例

45

• Utility Settlement Coinは、銀行間決済の効率化を目指し、検討が進められているトークン。民間銀行が発行し、中銀において価値を保証する仕組み。

• UBS(スイス)を中心に、ドイツ銀行やサンタンデール銀行(西)、バンク・オブ・ニューヨーク・メロン(米)等が検討に参加。邦銀では三菱東京UFJ銀行が参画。

①Utility Settlement Coin

• Rippleは、Ripple社(米)によって開発されている、分散型台帳技術を利用した決済ネットワーク。(ネットワーク上で利用されるトークンであるRipple(XRP)は仮想通貨の一つ。)

• 銀行間のクロスボーダー決済に係るコスト削減を目指し、決済に必要な情報の共有に分散型台帳技術を活用。

②Ripple

• カナダ中銀・シンガポール中銀は、より安価かつ頑健な決済システムの実現を目指し、国内の銀行間決済に分散型台帳技術を活用するプロジェクトをそれぞれ実施。

• 2017年11月に開催されたフィンテック・フェスティバル(星)において、両中銀が分散型台帳技術の活用に係る共同プロジェクトを開始すると発表。クロスボーダー決済への分散型台帳技術の活用について検討を開始。

③カナダ中銀・シンガポール中銀

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4.クロスボーダー決済におけるフィンテックの活用 まとめ

クロスボーダー決済では、送金に要する時間や手数料等が課題として指摘されている。

新しい情報技術が発展する中、発達した決済システムが存在する先進国と決済システムが未成熟な途上国それぞれの実情に応じて、これらを活用して決済を効率化しようという動きが見られる。

①電子小口決済では、非銀行主体による決済ビジネスへの参入が見られるほか、金融セクターにおいても決済の利便性を向上しようという取組が見られる。

②官民様々なレベルで、新しい情報技術の一つである分散型台帳技術(DLT)を銀行間のクロスボーダー決済に利用しようという取組が見られる。

クロスボーダー決済にフィンテックを活用し、その利便性を向上することで、円とアジア通貨の更なる利便性向上に資する可能性。他方、フィンテックが金融セクターの在り方を大きく変えることで、これまでとは異なる形でリスクが現れてくる可能性。

フィンテックの可能性を成長と利用者の利便性向上に適切に生かすためにも、イノベーション促進とリスクのモニタリング管理の両面に目を配りながら、動向を注視。