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機械設計製図 (第十一回目:ねじの基本知識及び製図法)

機械設計製図 (第十一回目:ねじの基本知識及び ...ecs.riko.shimane-u.ac.jp/~shutingli/MD10.pdf3.ねじのピッチ、リードと条数 • ピッチ:ねじ山間の距離P

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機械設計製図

(第十一回目:ねじの基本知識及び製図法)

1.ねじのつる巻線

リード:𝑙リード角:𝛼基礎円筒直径:𝑑

つる巻線

2.三角ねじの断面形状及び各部の名称

めねじ

おねじ ピッチ:Pとがり山の高さ:H=0.866025P

ひっかかりの高さ:H1=0.541266P

おねじの外径 :d(呼び径)おねじの有効径:d2=d-0.649519P

おねじの谷の径:d1=d-1.082532P

めねじの谷の径:D=d

めねじの有効径:D2=d2

めねじの内径: D1=d1

ピッチ

参考書:図学(つるまき線面)太い実線=基準山形

めねじ

めねじ谷底

おねじ

山頂

フランク角𝛼

フランク角𝛼

ピッチ(𝑝)

おねじ

谷の径𝐷

3.ねじのピッチ、リードと条数

• ピッチ:ねじ山間の距離P• リード:ねじが1回転した時に軸方法に進む距離L• 条数:ねじは1回転にピッチの分だけ進む。これは1ピッチの間に1条の螺旋があるためであり,これを一条ねじという(図(a))。この場合,ねじを1回転させた時に進む距離として定義されるリードは,ピッチに等しい。一方,1ピッチの間に2条あるいは3条の螺旋があるねじもある(図(b))。これを多条ねじといい,この場合のリードはピッチの条数倍となる。

(a) 一条ねじ (b) 二条ねじ

ピッチピッチ=リード

1条の螺旋 2条の螺旋

4.平行ねじとテーパねじ

• 平行ねじ:円筒の外面または内面に作られたねじ(図(a))用途:一般的な機械。

• テーパねじ:円すいの外面または内面に作られたねじ(図(b))用途:水道管、ガス管などの配管(密封が必要な場所)

図(a) 平行ねじ 図(b)テーパねじ

右ねじ 左ねじ あまり使わない殆どの場合

ACW:反時計まわりCW:時計回り

• 左に回転させて前に進む• 右に回転させると前に進む。

5.右ねじと左ねじ

6.三角ねじの分類

(1)メートルねじ

(2)ユニファイねじ

(3)管(くだ)用ねじ

ねじ山の角度=60°; ピッチを(mm)で表示

並目ねじ:ねじ山、リード角は通常のものである細目ねじ:ねじ山、リード角は小さくしたものである(緩み対策に効く)

ねじ山の角度=60°; ピッチは1インチ当たりの山数で表示。

並目ねじと細目ねじがある。航空機使用に限定。

ねじ山の角度=55°; ピッチは1インチ当たりの山数で表示。

7.図面におけるねじの表記法

ねじの種類 ねじの種類と記号 ねじの表し方の例

メートル並目ねじ

メートル細目ねじM M8

M8×1

ミニチュアねじ S S0.5

ユニファイ並目ねじ

ユニファイ細目ねじUNCUNF

3/8-16 UNCNo.8-36 UNF

メートル台形ねじ Tr Tr10×2

管用テーパねじ

テーパおねじ R R3/4

テーパめねじ Rc Rc3/4

平行めねじ Rp Rp3/4

管用平行ねじ G、PT G1/2

8.ねじの用途・特徴

9.ナット、ボルトと座金の種類

ナット:4種類 座金

平座金

ばね座金

歯付き座金

六角ボルト

六角穴付きボルト

ボルト:2種類

10.ボルト・ナットの使い方

通しボルト 押さえボルト 植込みボルト

一般には、ボルトは表面処理をしたものが用いられる。表面処理はJIS B 1044規定されている。

座金(緩み防止)

使用例1: 通しボルトでの締結構造

固定型軸継手の例

インロー

使用例2: 押さえボルトでの締結構造

減速機の例

11.ボルトの緩み対策

通しボルト 押えボルト 植込みボルト

平座金(緩み防止)

部品1

部品2

部品1

部品2

部品1

部品2

部品2にねじ

部品2にねじ

ねじのゆるみ対策法一覧

二重ナット

平座金 ばね座金

勾配座金 溝付きナット

スプリングナット

折り曲げる

舌付き座金

舌付き座金

ダブルナットによる緩み止め

緩み止め 低ナットを下に 荷重でボルト軸方向には引

張力がかかる.この荷重を引受けるのが上側ナットである

ねじの力学

ねじの力学モデル

ナットに締め付けトルクTを加えると、めねじがおねじの回りを軸力Fを受けて回転することになる。

ねじの等価力学モデル

(リード角)

𝜷

(軸力)

締付けトルクT 押し上げる力P 軸力F

T

ピッチ

リード

(軸力)

めねじ おねじ

斜面に平行な力: sincos FPS

cossin FPN 斜面に垂直な力:

(1)

(2)

NS 押し上げられる条件: (3)

tan (摩擦角度)

cossintansincos FPFP

締める(押し上げる)場合:

)costan(sin)sintan(cos FP

sintancos

costansin

FP

)tan( FP

ねじの等価力学モデル(締める場合)

(4)

既知:FとP; 傾斜角(リード角)=𝜷; 摩擦係数𝝁

緩める(押し下げる)場合:

斜面に平行な力:

sincos FPS

cossin FPN

斜面に垂直な力:

(1)

(2)

NS 緩められる条件: (3)

cossintansincos FPFP

)costansin()sintan(cos FP

sintancos

costansin

FP

(4)

(5)

(6)

(7)

締め付けられたねじが自然に緩まないための条件:

)tan( FP

(8)

ねじの等価力学モデル(緩める場合)

ねじの破損と強度計算

ねじの強度計算1.おねじ軸の引張強度

2.ねじ山のせん断破壊強度

T

W

F

a

S SA

W *

W: おねじの軸荷重(軸力)AS: おねじの有効断面積𝜎𝑎: ねじ軸の許容引張応力𝜎∗: 基準の強さSF : 安全率

(1)

おねじ

めねじせん断破壊

め(ね)ねじのせん断応力<許容応力

3.ねじ面の接触面圧強度

aqzdd

W

))(4/(2

1

2(3)

(2)

z:負荷能力のあるねじ山の数

4.ねじ締結体の疲れ強さの向上対策

• ボルト締結体の破損の大部分は疲れに起因するため、耐疲れ設計が重要である。

• ボルトの疲れ破壊:

① ナット側で荷重がかかり始める部分、即ち、ナット端面の第一山部の折損(65%)

② 不完全ねじ部、即ち、ねじ切り始め部(20%)

③ ボルト頭部下丸み部(15%)

疲れ強さの向上対策:各山部荷重分担の均一化。

ねじ山数 P1 P2 P3 P4 P5 P6 P7 P8 P9 P10

6 33.7 22.9 15.8 11.4 8.7 7.5

8 33.3 22.3 15.0 10.2 7.0 5.0 3.9 3.3

10 33.1 22.2 14.9 10.0 6.7 4.6 3.1 2.3 1.6 1.5

ねじ山の荷重分担率(全体100%)

ナット端面の第一山部

ねじの締め付け

1.ボルトの系列及び強度区分

基準T系列 0.5T系列 1.8T系列 2.4T系列

適用ねじ(強度区分)

4.6~6.8 8.8~12.9 10.9~12.9

材質SSSCSUS

CR(黄銅)CB(銅)AB(アルミ)

SCrSNCSCM

SCr, SNCSCM, SNCM

軸応力 [N/mm2]標準値

最大~最小210

300~160105

150~80380

540~290500

710~380

適用区分

一般の締付けトルク。できる限り、また断りのない限りこの系列を用いる

ねじ、雌ねじ、締付け体に銅、アルミ、プラスチックなどを用いた時、ダイカスト部品、プラスチック部品

特殊鋼を用いた強力ねじ継ぎ手、特にボルトに付加的な動荷重のかかる場合

特殊鋼を用いた強力ねじ継ぎ手、特にボルトに付加的な動荷重のかかる場合(摩擦接合)

用途 一般 電子部品 車両、エンジン 建設

2.ボルトの締め付け方法(対角線法)

1

① ボルトを対角線的順序(図2参照)で締め付けることが推奨される

② 1回目は規定トルクの50%程度で順番に締め付ける

③ 2回目は75%程度のトルクで順番に締め付ける

④ 3回目は規定トルクで順番に締め付ける

2

3

4

5

6

7 8

図2 ボルトの締め付け順番

量産品の場合

電動トルクレンチ

インパクトレンチ

出典:https://www.uedakanamono.co.jp/blog/impact-driver

充電インパクトドライバー

3.ボルトの締付けトルク

4.締付け用工具:トルクレンチ

小型トルクレンチのメータ

手動トルクレンチ

電動トルクレンチ

手動トルクレンチの使い方

量産品に使用しない。(トルク管理できない)

• 部品を固定するために、ボルトに適切な締め付け力を与えることが必要である。この締め付け力を軸力と呼ばれる。

• ボルトの締め付け管理について、本来は軸力管理を行うべきであるが、軸力を測定するのが困難なため、代用特性として、締付け管理や作業が容易にできるトルク法で管理を行う。

5.ボルトの締め付けと軸力

6.締付けトルクと軸力の関係式

T = 𝐹𝑓{𝑑22(

𝜇

cos𝛼+ tan𝛽) + 𝜇𝑛

𝑑𝑛2} ÷ 1000

𝐾 =1

𝑑{𝑑22(

𝜇

cos 𝛼+ tan𝛽) + 𝜇𝑛

𝑑𝑛2}

T:締付けトルク「N.m」𝐹𝑓:軸力 「N」

𝑑2:有効径 「mm」𝑑𝑛:座部有効径 「mm」𝜇:ねじ部摩擦係数 「mm」𝜇𝑛:座部摩擦係数 「mm」𝛼:ねじ山の半角(ISOねじ30°)

𝛽:リード角𝑑:ねじの呼び径 「mm」

T = 𝐾 ∙ 𝑑 ∙ 𝐹𝑓

締付けトルクの計算式:

(K:トルク係数)

ねじ部の摩擦 座部の摩擦

トルク係数Kの参考値

トルク係数 K最小値~平均値~最大値

摩擦係数 μ最小値~平均値~最大値

一般機械スピンドル油マシン油タービン油シリンダー油

0.14~0.20~0.260.10~0.15~0.20

低摩擦用油脂二硫化モリブデンワックス系油脂

0.10~0.15~0.20 0.067~0.10~0.14

Fcon軸力安定化剤

0.16~0.18~0.20 0.12~0.135~0.15

7.ボルトの許容伝達トルクの計算

D1

T

摩擦力Fピンの併用

D2

8.ボルト締結部の許容伝達トルクの計算式

ここで𝑇1:ボルトの許容伝達トルク(kgf-mm)𝐹: ボルトの締付力(kgf)𝐷1:ボルト取付けP.C.D(mm)𝜇: 摩擦係数𝜇 = 0.15(合せ面が脱脂)𝑛1:ボルト本数

(2)ピンのみの許容伝達トルク

ここで𝑇2:ピンの許容伝達トルク(kgf-mm)𝑑: ピン径(mm)𝜏: ピン許容せん断応力(kgf/mm2)「𝜏=20、ピン材質、S45C-Q」

𝐷2:ピン取付けP.C.D.(mm)𝑛2:ピン数

𝑇 = 𝑇1 + 𝑇2

(1)ボルトのみの許容伝達トルク

(3)(ボルト+ピン)の許容伝達トルクT:

(1) (2)

(3)

𝑇1 = 𝐹 ×𝐷12× 𝜇 × 𝑛1 𝑇2 =

𝜋 × 𝑑2

4× 𝜏 ×

𝐷22× 𝑛2

ねじの製図法

めねじの作図例

めねじの谷めねじの山

ハッチングは、ねじの山径まで記入する。

ピッチ

P=ピッチ

中心線

ボルト及びねじ穴、下穴の寸法関係

鋼・鋳鋼の場合:H=1~0.8d

L=d

L1=L+2~10mm

C=2mm

L L1

dC

鋳鉄の場合:H=1.5d

L=1.5~1.3d

軽合金・青銅の場合:H=2~1.5d

L=2d

Hd

ボルト・ねじ穴の製図法1

押さえボルト

頭を沈める場合(座繰り) 頭が漏出する場合

ボルト・ねじ穴の製図法2

植込みボルト通しボルト

①呼び径=d② M12(直径12mmの並目メートルねじ)③ M12×1.75(細目メートルねじ)表記:𝒅 × 𝒑(ピッチ)

④M12×35 (35はピッチではなく,長さである)

5, 6, 8, 10, 12, 14, 16, 20, 25, 30, 35, 40, 45, 50, 55, 60, 65, 70, 75, 80, 85, 90, 100, 110, 120, 130, 140, 150, 160, 180, 190, 200, 220, 240, 260, 280, 300, 25, 350, 375, 440

ボルトの長さ(ねじの首下):

ボルトの表記

ボルトの略画法おねじの作図例

ボルトの作図法(JIS規格)

ナットの略画法

小ねじと小ボルトの略画法、ねじの種類

穴、ねじの表記法(2010年~)

M6以下は引出線

おねじ めねじ

M5

M8

18

22

Φ6.8

方法① 方法②

方法③ 方法④

止まり穴 通し穴

ザグリ穴皿ザグリ穴

ねじ・穴の正面図

皿ザグリ穴

ザグリ穴

多数の同じ径のねじ、穴の場合

ねじ

ナットの向き

おねじの谷の径(d1),めねじの内径(D1)の描き方

ナットの向きは平面上で対角線の向きに合わせる.

d=Dd1=0.8DD1=0.8D

例えば、D,dが20なら,h=2mm

ボルト貫通の取付穴の余裕

バーリング部の有効ねじ数

バーリング部の有効ねじ山数は最低でも3~3.5山にする

(バーリングとは:薄板にめねじを作る方法)

ボルトを通す貫通穴は,ボルト呼び径より1mm程度大きくする(JIS B 1001) 一般に,この程度の隙間

で加工されている

穴径=(ボルト径+1)mm

最低3~3.5山

おねじ・めねじの逃げ(ぬすみ)

ねじの逃げまたはぬすみとは,おねじとめねじのピッチの1.5~2倍の長さを谷

径または山径になるまで削り,不完全ねじ部を無くす方法である.これは,ねじ部の先の部分にほかの部品を密着させるための機能を持つ.

ねじの逃げ(ぬすみ) ねじピッチの1.5~2倍

ねじの加工

ねじの加工工程

下穴の加工 ねじ切り

Step1 Step2

Step1 Step2

方法1:ダイスとタップによる加工(小さいねじ)おねじの加工:ダイス めねじの加工:タップ

ダイスによるねじ切り

タップとダイス• 小さいめねじを作る時はタップと呼ばれる工具を使う。

• 手順としては,最初に適切な大きさ,深さの下穴をあけ,タップをゆっくりと時計回りに回してねじを切る。

• タップは先端部がとがっているため,下穴の深さぎりぎりまでねじを切ることはできない。また,タップの長さに制限があるため,タップの長さよりも深いねじを切ることはできない。設計時にはこれらの制限に注意しなければならない。

• おねじを切る工具はダイスである。使用方法はタップの場合とほぼ同じであり,ダイスを材料にまっすぐ当て,ゆっくりと時計回りに回してねじを切る。

(b) タップによるねじ切り(a) タップ

方法2: 旋盤によるねじ加工

逃げ溝逃げ溝

おねじの旋削加工

めねじの旋削加工

チップ

ホルド

方法3:ねじの転造(量産品用)

• 量産ねじやボルトは,転造加工により作られている

• 転造とは,外周がねじ状の2つ

のダイスの間にねじ素材を挟み,ダイスに圧力を加えながら素材を回転させてねじ山を付ける加工

• 転造されたねじは,切削されたねじと比べて、塑性変形を受けているため、強度が高い。また加工能率がよく、低コスト化が可能

ねじの転造加工原理

ねじの転造機械

小ネジ ビス 座金組込ネジ いたずら防止ネジ

TPネジ

ボルト 六角ナット

タッピングネジ ピアス

座金・ワッシャー

ムラコシ製品

マイクロネジ タップタイト

キャップボルト

平リベット穴

緩み止めナット

建材用スクリュー ドリル&ドライブ

セルフタッピング

ナット

カーナビ盗難防止ネジ

参考資料:小ねじと小ボルトの種類と名称

転造ネジ切り加工3

ねじ切り工具

旋盤でねじ加工 転造ネジ切り加工2

ねじの転造1

面取り、穴の加工、丸棒の切断

ねじの加工(Youtube画像)