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軽量耐熱複合材CMC技術開発の概要について
平成21年12月7日
株式会社IHI
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目 次
1. 軽量耐熱複合材CMC技術開発の概要
2. 事業の目的・政策的位置付け
3. 目標
4. 成果、目標の達成度
5. 事業化、波及効果
6. 研究開発マネジメント・体制等
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1.軽量耐熱複合材CMC技術開発の概要
概概概概 要要要要
実施期間実施期間実施期間実施期間
予算総額予算総額予算総額予算総額
実実実実 施施施施 者者者者
軽量耐熱材料であるCMC(Ceramic Matrix Composites )の航空
エンジンのタービン部への適用を目指し、開発難易度が高い代表部品であるタービン静翼を取り上げ、複雑形状織物、成型法の最適化を図り、適切な製造プロセスを確立させる。また、CMCタービン静翼の温度分布を推定し、解析で発生応力の評価を実施して、既存タービン静翼と比較し30%以上軽量化の成立性を確認する。
平成20年度~平成22年度 (3年間)
これまでの合計1.95億円(平成20年度:1億円、平成21年度:0.95億円)
株式会社IHI岩手大学(共同研究)
プロジェクトプロジェクトプロジェクトプロジェクトリーダーリーダーリーダーリーダー
株式会社IHI 航空宇宙事業本部 技術開発センター材料技術部 部長 荒井 幹也
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軽量耐熱材料であるCMCを適用してタービン静翼タービン静翼等のエンジン高温部品の耐熱温度を約200℃約200℃上昇上昇させることにより熱効率が向上し、エンジン重量も低減することで、より少ない燃料で必要な推力が得られる。これらのエンジン性能の向上により、今後着実に伸びると予想される航空輸送において、喫緊の課題とされる地球温暖化対策に貢献する地球温暖化対策に貢献する技術開発を目指す。日本独自日本独自の軽量耐熱材料を持つことは、日本の航空産業の国際国際競争力確保の競争力確保の鍵鍵となる。
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2.事業の目的・政策的な位置付け
<目的>本事業では、1300℃の耐熱性1300℃の耐熱性を有し、かつ金属材料よりも軽量なCMC(CMC(Ceramic Matrix Ceramic Matrix
CompositeCompositess))を航空機用エンジンに適用することで、高性能化、軽量化等を図り、省エネルギーに省エネルギーに
資する資することを目的とする。
CMC(Ceramic Matrix Composites)とは、セラミックス基複合材セラミックス基複合材の略で、セラミックの脆さを克服するために髪の毛ほどの細いセラミックの繊維をマトリクス(母材)で強化した複合材である。
本材料は、ニッケル基合金より、軽量(密度は約軽量(密度は約1/41/4))かつ耐熱性(耐熱性(200200℃℃向向上上))に優れる。将来の航空エンジン用耐熱材として最も期待される材料の一つ。
なお、材質は繊維もマトリクスも炭化ケイ素(炭化ケイ素(SiCSiC))である。繊維は、東北大で開発され、世界で日本の2社(日本カーボン、宇部興産)日本の2社(日本カーボン、宇部興産)しかしか製造できない。
海外では日本から繊維供給を受け、米国のGE社米国のGE社、、仏国のSNECMA社仏国のSNECMA社がCMCの実用化を目指して開発しているが、平成平成2121年年66月月ファンボローエアショーで、GE社によるe-core開発のアナウンス以降、CFM社(両社の合弁会社)による民間エンジンへのCMC実用化研究が加速している。CMC実用化研究が加速している。
SiC繊維の外観
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<政策的な位置付け>
2.事業の目的・政策的な位置付け
本研究開発は、経済産業省の「航空機・宇宙産業イノベーションプログラム」のもとで実施され、以下の施策に位置づけられている 。
○第3期科学技術基本計画(2006年3月閣議決定)本研究開発は、分野別推進戦略では、中長期的に技術を育成するための課題として航航
空機関連先進要素技術空機関連先進要素技術に挙げられ、戦略重点科学技術戦略重点科学技術に指定されている。
○新経済成長戦略改訂版(2008年9月閣議決定)よりエネルギー消費の少ない輸送システムを実現するため、次世代航空機を含む省エ省エ
ネ型交通機関の普及・開発加速等を推進ネ型交通機関の普及・開発加速等を推進することとされている。また、「環境エネルギー技術革新計画」(2008年5月総合科学技術会議決定)及び「Cool Earth - エネルギー技術革新計画」の実現に向け、低燃費・低騒音航空機を含む革新的技術の開発を適切に推進革新的技術の開発を適切に推進することとされている。
経済産業省の航空機分野の技術戦略マップの中で、「国際共同開発における地位の維持・拡大では、必要な要素技術での優位性を獲得し、質の面でもより高度な役割を担うこ必要な要素技術での優位性を獲得し、質の面でもより高度な役割を担うことと」とされている。この目指すべき方向性のもと定められた「航空機分野の導入シナリオ」に本研究開発は適切に位置付けられている。(次頁参照)
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3.目標
耐熱性が1300℃と高く軽量なセラミックス基複合材(CMC)を航空エンジンに適用し、高温部の冷却空気量を削減するとともに軽量化を図ることにより、エンジンの大幅な燃費改善を目指す。また、温度・応力解析によりタービン静翼として成立性の目処を得、従来部品に対し、重量を30%以上軽量化する。
<全体目標>
本研究開発の次のステップであるエンジン実証試験へ進むため、CMC静翼の構造成立性確認が必要
製造性、材料データ、冷却性能試験結果を反映してCMC静翼構造を設定し、温度・応力解析により30%以30%以上軽量化上軽量化の成立性に目処
(3)成立性の確認
CMCは熱伝導率が低く製造性からも制約が多いため、CMC独自のCMC独自の最適冷却構造最適冷却構造が必要。構造成立性の目処を得るためには、その冷却性能データが必要。
CMCに適した冷却構造を選定冷却構造を選定し、その冷却性能データを取得
(2)冷却構造の検討
要素技術(課題) 目標・指標 妥当性・設定理由・根拠等
(1)複雑形状成型法の開発 タービン静翼タービン静翼のの試作試作とと、タービン静翼に適した複雑形状織物複雑形状織物成型成型技術技術および高効率含浸法高効率含浸法をを確立確立
タービン静翼はタービン静翼はエンジン部品の中でも形状が最も複雑最も複雑であり、この試作に成功することで他の部品の成型が可能
<要素技術目標>
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3.目標の妥当性
・1300℃の耐熱性と301300℃の耐熱性と30%%の軽量化の軽量化は、大幅な燃料使用量の削減につながる。(図1参照)
・タービン静翼は、他の部品と比較し冷却構造も含め最も複雑形状最も複雑形状である。(図2参照)
図2 部品例
タービンタービンタービンタービン静翼静翼静翼静翼タービンタービンタービンタービン静翼静翼静翼静翼 シュラウド 燃焼器ライナ
燃費改善による省エネ効果:日本のエアラインの年間燃料使用料は1千万k
l程度であり、本研究成果等により5~6%燃費5~6%燃費が向上すると、20302030年には年には年間年間1010万klの燃料万klの燃料使用量使用量削減削減に繋がる。(タービン静翼、シュラウ
ド、燃焼器ライナなどの静止部への適用の場合)
図1 CMCを適用した場合のメリット (出典;GE社論文)
注)右端はCMCの耐熱温度を1300℃、中2つは1200℃とした場合
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スケジュール
要素技術(課題)/年度
平成22年度
(1)複雑形状成型法の開発
(2)冷却構造の検討
(3)成立性の確認
平成20年度 平成21年度
含浸法の最適化
分割・一体織物試作
中空翼構造の検討
冷却孔の検討
材料試験
供試体試作
冷却性能試験準備 冷却性能試験
冷却・構造設計/解析
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4. 成果、目標の達成度
達成複雑形状の織物試作と一部取得した材料基礎データ材料基礎データを基にCMC静翼の概略概略構造構造を設定
製造性、材料データ、冷却性能試験結果を反映してCMC静翼構造を設定し、温度・応力解析により30%以上軽量化の成立性に目処
[中間]CMCの製造性、材料基礎データ、冷却方式によりCMC静翼の概略構造を設定
(3)成立性の確認
達成冷却孔加工試験を実施し冷却孔加工試験を実施し、、詳細な冷却基礎データを取得。CMC翼に適した中空翼構造を選定中空翼構造を選定
CMCに適した冷却構造を選定し、その冷却性能データを取得
[中間]CMC静翼に適した冷却構造を検討し、中空翼構造中空翼構造をを選定選定
(2)冷却構造の検討
達成分割分割型型・一体・一体型2種類の型2種類の織物織物をを試作試作して、して、課題を抽出し、大きな問題が無いことを確認高効率含浸法については、含浸試験含浸試験を完了し、を完了し、プロセスパラメータと含浸率の関係を把握。これにより複雑形複雑形状への適用に目処状への適用に目処
タービン静翼の試作と、タービン静翼に適した複雑形状織物成型技術および高効率含浸法を確立
[中間] 織物試作による課題抽出と単純形状での含浸試験により、高効率含浸法の複雑形状への適用に目処複雑形状への適用に目処
(1)複雑形状成型法の開発
達成度(中間)
成果(中間)
目標・指標要素技術(課題)
各課題の中間目標は達成し、全体目標を達成できる見通しである。全体目標を達成できる見通しである。
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4.主な成果
冷却性能試験機概略
材料データ取得例
荷重
荷重
CMC供試体
レーザーによる冷却孔加工試験
概略構造例
③③③③成立性成立性成立性成立性のののの確認確認確認確認
中空翼構造の検討
②②②②冷却構造冷却構造冷却構造冷却構造のののの検討検討検討検討
繊維束(灰色部)
含浸粉末(白色部)
未含浸(黒色部)
原料粉末の含浸量(白色部)を改
善できる含浸パラメータを把握
<観察断面>
織物試作織物試作
①①①①複雑形状成型法複雑形状成型法複雑形状成型法複雑形状成型法のののの開発開発開発開発
一体型分割型(3タイプを検討)
インサート
CMC翼のインピンジ冷却方法
冷却孔の検討
固相含浸法最適化
含浸パラメータ
調整
ピン型 固定バンド型 ワイヤー型
インサート+フィルムを選定
室温引張試験(基礎データ取得)
加工条件設定
CMC静翼概略構造設定
概略構造設定
CMC供試体
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5.事業化、波及効果<事業化(実機適用)までのステップ>
本研究開発にて、CMCの事業化の鍵となる複雑形状成型技術は開発でき、他の航空エンジン部品への展開は可能となる。今後、部品設計・解析・製造・耐環境コーティング(EBC)開発を並行して進め、デモエンジンによる実証を行った後、材料データベース取得、実部品設計・製造、エンジン耐久試験等を行ない、実機適用フェーズに移行する。
TR
L:Technolo
gyR
ead
iness
Leve
l技
術の
成熟
度
<部品試作>
<部品設計>
飛行試験
型式承認
開発期間
<材料試験>
本研究開発範囲
本研究開発終了時本研究開発終了時本研究開発終了時本研究開発終了時のののの到達点到達点到達点到達点
製造工程確立
製造工程確立
<冷却性能試験>
材料データ取得
要素試験
今後今後今後今後のののの課題課題課題課題
材料データベース取得実部品設計・製造エンジン耐久試験
素材開発特性評価
素材開発特性評価
耐環境コーティング(EBC)開発
部品設計・解析部品製造
荷重
荷重
CMC供試体
デモエンジン実証
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5. 事業化、波及効果<波及効果>
タービン動翼への適用により、回転系全体の重量低減を図ることにつながり、大きな効果が期待できる。成型は大きな問題は無いが、実用化のためには、CMC独自のダブテール部(動翼とディスクの接触部)設計・製造技術、ラビング試験(動翼とシュラウドとの接触試験)等の課題解決が必要である。
他産業への技術波及効果として、発電用ガスタービン高温部品、自動車のブレーキディスク、ロケット、飛しょう体のノズル、外壁、核融合炉の炉壁が挙げられる。
発電用発電用発電用発電用ガスタービンガスタービンガスタービンガスタービン高温部品高温部品高温部品高温部品
自動車自動車自動車自動車ののののブレーキディスクブレーキディスクブレーキディスクブレーキディスク
外壁外壁外壁外壁
ノズルノズルノズルノズル
核融合炉核融合炉核融合炉核融合炉 炉壁材炉壁材炉壁材炉壁材
出典;JAXA HP
出展;三菱重工(株)技報
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6. 研究開発マネジメント・体制等
株式会社IHI株式会社IHI研究開発責任者:
株式会社IHI 航空宇宙事業本部技術開発センター 材料技術部部長 荒井 幹也
経済産業省
岩手大学岩手大学 船崎教授船崎教授共同研究
委託
全体全体全体全体とりまとめとりまとめとりまとめとりまとめ全体全体全体全体とりまとめとりまとめとりまとめとりまとめ複雑形状成型法の開発冷却構造の検討、成立性の確認
外注
冷却性能評価
村田機械村田機械村田機械村田機械村田機械村田機械村田機械村田機械株式会社株式会社株式会社株式会社株式会社株式会社株式会社株式会社**
複雑形状複雑形状複雑形状複雑形状複雑形状複雑形状複雑形状複雑形状織物製作織物製作織物製作織物製作織物製作織物製作織物製作織物製作
日本カーボン株式会社他
繊維供給・検査
その他
構造解析伝熱解析
冷却性能試験設計
株式会社IHI検査計測
CMC成形固相含浸
株式会社超高温材料研究所
材料試験
<体制>
*注)国内で唯一SiC繊維をブレイド織りする技術を保有し、ESPRプロジェクトで大型の
一体型静翼用織物を成型した実績があり、複雑織物技術では国際的にもトップクラスである。