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27 原  著 聖マリアンナ医科大学雑誌 Vol. 42, pp. 27–35, 2014 高齢者に対する筋力トレーニング指導の効果 マリアンナ筋力アップ教室の試みふじ ひろ なお たて いし けい すけ てら わき ふみ とう たつ しろ さとし よし あつ ひろ よし おか ひろ たか てら うち こう しゃ はる 受付 平成 25 12 27 抄  録 近年わが国は超高齢社会に入り疾病外傷の治療よりもその予防が重要となってきてい 本研究の目的は高齢者に対する筋力トレーニング指導が筋力および身体機能に及ぼす 影響について検討することである対象は,「マリアンナ筋力アップ教室に参加した高齢者 210 男性 99 女性 111 70.0±3.3 であった指導内容は椅子を使った スクワットつま先立ち股関節 伸展および 股関節外転の 4 種類の筋力トレーニング 1 10 13 セット3 日を推 ),およびストレッチであり教室は2 週間に 1 3 ヵ月間行った教室の第 1 初日と第 6 最終日にはA. CS-30 テストB. 開眼片足起立時間C. 長座体前屈を測定し男女別および年齢別 6069 7079 の経時的な評価を行ったその結果CS-30 テスト長座体前屈は全体および男女別年齢別の全てにおいて1 回よりも第 6 回が有意に高値を示し開眼片足起立時間も年齢別の 6069 歳以外は全て有 意に長くなった本教室における筋力トレーニング指導にて下肢筋力バランス能力および柔軟性が有意 に向上し今回の運動指導内容は高齢者の筋力身体機能の向上に効果的でありロコモ対策 としても有用と考えられた索引用語 高齢者筋力トレーニングロコモティブ転倒 聖マリアンナ医科大学 スポーツ医学講座 緒  言 近年わが国は超高齢社会に入り疾病外傷の 増加 1–2によって高齢者における生活の質の低下介護等の問題が社会的に大きくクローズアップさ れているまたそれに伴う国民医療費の高騰が国家レベルでの深刻な問題となっている厚生労働 省は昨今の国民の健康づくりに関する政策におい 疾病外傷の治療から予防へと大きく 方向転換しロコモティブシンドローム ロコモ運動器不安定症等の予防を含め高齢者の筋力低 下に対する対策を特に重要視している 3–4現在日本各地の市町村においては高齢者の健 康増進を目的としたいわゆる健康教室が数多く 開催されている我々も 2007 4 月より川崎市と の連携で地域の高齢者を対象としたマリアンナ 27

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原  著 聖マリアンナ医科大学雑誌Vol. 42, pp. 27–35, 2014

高齢者に対する筋力トレーニング指導の効果―マリアンナ筋力アップ教室の試み―

藤ふじ

谷や

 博ひろ

人と

   油ゆ

井い

 直なお

子こ

   立たて

石いし

 圭けい

祐すけ

   谷や

田た

部べ

かか

なな

かか

寺てら

脇わき

 史ふみ

子こ

   伊い

藤とう

 龍たつ

登と

   木き

城しろ

  智さとし

   吉よし

田だ

 篤あつ

弘ひろ

吉よし

岡おか

 広ひろ

孝たか

   寺てら

内うち

  昂こう

   武む

者しゃ

 春はる

樹き

(受付:平成 25年 12月 27日)

抄  録近年,わが国は超高齢社会に入り,疾病,外傷の治療よりもその予防が重要となってきている。本研究の目的は,高齢者に対する筋力トレーニング指導が,筋力および身体機能に及ぼす影響について検討することである。対象は,「マリアンナ筋力アップ教室」に参加した高齢者 210人(男性 99人,女性 111人,

70.0±3.3歳)であった。指導内容は,椅子を使った ① スクワット,② つま先立ち,③ 股関節伸展,および ④ 股関節外転の 4種類の筋力トレーニング(1日 10回 1~3セット,週 3日を推奨),およびストレッチであり,教室は,2週間に 1回,3ヵ月間行った。教室の第 1回(初日)と第 6回(最終日)には,A. CS-30テスト,B. 開眼片足起立時間,C. 長座体前屈を測定し,全体,男女別,および年齢別(60~69歳,70~79歳)の経時的な評価を行った。その結果,CS-30テスト,長座体前屈は,全体,および男女別,年齢別の全てにおいて,第

1回よりも第 6回が有意に高値を示し,開眼片足起立時間も,年齢別の 60~69歳以外は全て有意に長くなった。本教室における筋力トレーニング指導にて,下肢筋力,バランス能力,および柔軟性が有意に向上し,今回の運動指導内容は,高齢者の筋力,身体機能の向上に効果的でありロコモ対策としても有用と考えられた。

索引用語高齢者,筋力,トレーニング,ロコモティブ,転倒

聖マリアンナ医科大学 スポーツ医学講座

緒  言

近年,わが国は超高齢社会に入り,疾病,外傷の増加1–2)によって,高齢者における生活の質の低下,介護,等の問題が社会的に大きくクローズアップされている。また,それに伴う国民医療費の高騰が,国家レベルでの深刻な問題となっている。厚生労働

省は,昨今の国民の健康づくりに関する政策において,疾病,外傷の「治療」から「予防」へと大きく方向転換し,ロコモティブシンドローム(ロコモ)や運動器不安定症,等の予防を含め,高齢者の筋力低下に対する対策を特に重要視している3–4)。現在,日本各地の市町村においては,高齢者の健康増進を目的としたいわゆる「健康教室」が数多く開催されている。我々も 2007年 4月より川崎市との連携で,地域の高齢者を対象とした「マリアンナ

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藤谷博人 油井直子 ら

筋力アップ教室」を開催し,高齢者の筋力の向上を支援してきた。本研究の目的は, 本教室で行われている筋力トレーニング指導が,高齢者の筋力,および身体機能に及ぼす効果について検討することである。

対象および方法

本研究は,聖マリアンナ医科大学倫理委員会(承認番号: 2118)の承認を得て実施された。

1. 対象対象は 2007年から 2011年の 5年間に「マリアンナ筋力アップ教室(第 1~10回)」に参加した高齢者239人のうち,体力テストの全データを有する 210

人である。平均年齢は 70.0±3.3歳(60~79歳)で,その内訳は,男性 99人(平均年齢 70.0±3.5歳),女性 111人(平均年齢 69.9±3.1歳)であった。

2. マリアンナ筋力アップ教室本教室は,川崎市教育委員会との連携事業で,「健康な脚作り」のコンセプトのもと,2週間に 1回(約2時間),計 6回の 3ヵ月間のコース(春,秋の年 2

期)として開催している(図 1)。参加者は毎回 20~25人程度とし,安全かつ簡便な筋力トレーニング,およびストレッチを中心に指導を行った。本教室の詳細は表 1の如くであるが,教室の初日と最終日には,体力テストを実施して客観的評価を行い,結果は各参加者に即日フィードバックした。また安全面の配慮として,事前に参加者の健康診断書を当講座

の医師がチェックし参加の可否を決定し,また参加者は全員,傷害保険に加入した。

3. 筋力トレーニング筋力トレーニングの方法は図 2の如くで,場所を

とらずに椅子を使って自宅でも簡単にできる ① スクワット,② つま先立ち,③ 股関節伸展,および ④

股関節外転,の 4種類を基本とした。いずれも下肢の筋(大腿四頭筋,大殿筋,ハムストリング,下腿三頭筋,長・短腓骨筋,後脛骨筋,大腿筋膜張筋,縫工筋,中殿筋,小殿筋)をターゲットにしたトレーニングであり,基本的に各自が自宅にて行うことを前提にし,体調に合わせ無理をしない範囲で原則として週 3日以上(1日に,10回を 1~3セット)実施するよう推奨した。なお,筋力トレーニングを安全かつ効果的に行うために,その前後にはストレッチ(大腿前面,大腿後面,下腿後面,腰背部)を必ず行うよう指導を徹底した。

4. 評価教室の 1回目(初日)および 6回目(最終日)にお

いて,参加者の筋力および身体機能を評価するために,A. CS(chair stand)-30テスト(回),B. 開眼片足起立時間(秒),C. 長座体前屈(cm),を実施した。本研究ではこれらの結果を,a. 全体,そして b. 男

女別,c. 年齢別(60~69歳,および 70~79歳)に分けて検討を行った。

5. 統計学的検討統計学的検討には,対応の無い t検定を用い危険図 1 マリアンナ筋力アップ教室

6 3 ( )220 2560 ( )

( )

(4 )3

10 1 3 /3,800 ( )

1 6

表 1 マリアンナ筋力アップ教室の内容

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29高齢者への筋力トレーニング指導効果

率 1%をもって有意とした。

結  果

参加者の週当たりのトレーニング実施日数は,全体では5.7±1.1日であった。また男性は5.7±1.2日,女性は 5.7±1.0日であり,60~69歳では 5.6±1.0

日,70~79歳では 5.8±1.2日であった。

A. CS-30テスト全体としては図 3–aの如く,1回目は 22.8±5.7回であったが,6回目は 30.0±17.9回と有意な増加を

示した(p<0.0001)。男女別(図 3–b)の評価では,男性,女性ともに 1

回目から 6回目にかけてそれぞれ有意に増加した(p

<0.001,p<0.0001)。また年齢別(図 3–c)でも,60~69歳,70~79歳においてそれぞれ同様に有意な増加が観察された(p

<0.001,p<0.001)。

B. 開眼片足起立時間全体(図 4–a)では,1回目は 74.8±43.5秒であ

り,6回目は 84.9±40.7秒となり有意な増加を認め

図 2 筋力トレーニング(網掛け部は対象筋を示す。)

図 3–a CS-30テスト(全体)

( )

p<0.0001

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藤谷博人 油井直子 ら

( ) ( )

p<0.001 p<0.0001図 3–b CS-30テスト(男女別)

( () )

p<0.001図 3–c CS-30テスト(年齢別)

図 4–a 開眼片足起立時間(全体)

( )

p<0.0001

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31高齢者への筋力トレーニング指導効果

( ) ( )

p<0.01 p<0.001図 4–b 開眼片足起立時間(男女別)

( ) ( )

p<0.001図 4–c 開眼片足起立時間(年齢別)

た(p<0.0001)。男女別(図 4–b)では,男性,女性ともに 1回目から 6回目にかけてそれぞれ有意に増加した(p<0.01,p<0.001)。年齢別(図 4–c)では,70~79歳においてのみ有意な増加が認められた(p<0.001)。

C. 長座体前屈図 5–aの如く全体としては,1回目が 35.4±9.5

cm,6回目は 38.1±8.9 cmと有意な増加がみられた(p<0.0001)。男女別(図 5–b)では,男性および女性において 1

回目から 6回目にかけてそれぞれ有意に増加した(p

<0.0001,p<0.0001)。年齢別(図 5–c)においても,60~69歳,および

70~79歳にてそれぞれ同様に有意な増加が観察され

た(p<0.001,p<0.001)。

考  察

一般に,ヒトの筋力は加齢によって低下することが知られている5–8)。また部位的には,下肢の方が上肢よりも,早い年齢から筋力が低下することが明らかとなっており9–10),福永11)は,20歳を基準にすると,肘屈曲筋力は 60歳では約 80%となるが,膝屈曲筋力は 60歳で約 60%まで低下すると報告している。高齢者における下肢筋力の低下は,生活行動範囲の縮小,スポーツ活動の制限,等のいわゆる生活の質の低下を招き,さらに転倒による大腿骨頚部骨折,脊椎圧迫骨折での長期入院,要介護,寝たきり,等の深刻な状況に陥ることから12–14),高齢者に対する下肢筋力トレーニングは,超高齢社会を迎えた本邦

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藤谷博人 油井直子 ら

(cm) (cm)

p<0.0001図 5–b 長座体前屈(男女別)

(cm)(cm)

p<0.001図 5–c 長座体前屈(年齢別)

図 5–a 長座体前屈(全体)

(cm)

p<0.0001

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33高齢者への筋力トレーニング指導効果

においては必要不可欠と考える。高齢者を対象にした筋力トレーニングの効果については,多くの先行研究がみられる。久野15)は,過去の膨大な文献を検証し,一定のトレーニング時間が維持されれば若年者と同様,高齢者でも筋肥大による筋力増加がみられるとしている。また後藤16)は,老化した骨格筋に,筋再生に中心的な役割りを持つサテライト細胞が残存していれば,これがトレーニングにより活性化するため,筋肥大はいかなる年齢にでも起こり得るとしている。近年,「健康教室」における筋力トレーニング指導が高齢者の身体機能に及ぼす影響について,さまざまな研究報告がみられている。吉田ら17)は,地域高齢者を対象に,5ヵ月間に計

10回,ストレッチ,筋力訓練,サイドステップ,ラダートレーニング,踏み台昇降を指導した結果,膝伸展筋力,長座体前屈,およびサイドステップが有意に改善したと述べている。また牧内ら18)は,虚弱高齢者に対し,10種類の運動種目を,月 1回の 4ヵ月間の集団指導,および週 1回の訪問ヘルパーとの運動実施(20~40分間)を行った結果,開眼片足立ち,最大 1歩幅は,男女とも有意に向上したと報告している。そして武藤ら19)は,転倒予防教室参加者に対して,ストレッチ,筋力訓練,ボール運動・ダンス他の運動遊び,プール歩行を,8週間で計 6回(各 2時間 30分)行った結果,教室修了時には,歩行速度,最大 1歩幅,開眼片足立ちが有意に改善したとしている。しかしながら,このような多くの先行研究における運動指導の内容,すなわち筋力トレーニングの組み合わせ,頻度,期間,等は実にさまざまである。我々は,諸家の研究内容を参考にしつつも,高齢者にも安全で簡便な下肢筋力アップに必要と考えられる最小限の筋力トレーニングの 4種類を選定し,また安全面に配慮したストレッチと組み合わせた運動指導メニューを独自に作成し実施した。その結果,CS-30テスト,開眼片足起立時間,および長座体前屈の有意な増加が,全体,男女別,そして年齢別(60

~69歳,70~79歳)においてもそのほとんどに認められた。CS-30テストは,下肢筋力を評価する方法として日本人にも適合可能な指標であり20–21),開眼片足起立時間は下肢筋力およびバランス能力を22–23),長座体前屈は柔軟性を評価する指標として一般に広く使用されている17)24–25)。

以上のことより,今回実施した4種類の筋力トレーニング(図 2)とストレッチを週 5.7日,3ヵ月間継続すれば,高齢者においても下肢筋力が増加し,バランス能,および柔軟性も向上することが具体的に示された。また,我々の指導したトレーニングは椅子 1つでできるシンプルなものであり,異なる運動形態が多数混在する諸家の健康教室のメニューよりも高齢者にとって取り組みやすいものと考えた。「マリアンナ筋力アップ教室」における筋力トレーニング指導は,高齢者の筋力および身体機能の向上に効果的であり,今後も継続した取り組みが必要である26–28)。そして,このような地域高齢者への運動指導は,医科大学の地域貢献という見地からも非常に重要と考えられた。

結  語

1. 高齢者に対する筋力トレーニングの指導の効果について検討を行った。2. 「マリアンナ筋力アップ教室」で指導した筋力トレーニングは,高齢者の下肢筋力,バランス能,柔軟性において有意な向上が認められた。

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35高齢者への筋力トレーニング指導効果

Abstract

Effects of Strength Training for Elderly People

Experiments of Marianna Strength Improvement Class

Hiroto Fujiya, Naoko Yui, Keisuke Tateishi, Kanaka Yatabe, Fumiko Terawaki, Tatsuto Ito,Satoshi Kishiro, Atsuhiro Yoshida, Hirotaka Yoshioka, Koh Terauchi, and Haruki Musha

In recent years, Japan has become a super-aging society, and prevention of injuries is becoming even more important than treatment itself. The purpose of this study is to investigate how strength training for elderly peo-ple can affect their muscle strength and physical functions.

The study subjects were 210 elderly people who participated in the “Marianna Strength Improvement Class” (99 males, 111 females; 70.0±3.3 years). The class contents consisted of 4 types of strength training using chairs, including: ① squatting; ② standing on tiptoe; ③ extension of the hip joint; and ④ abduction of the hip joint (performed 10 times a day in sets of 1 to 3; 3 days per week was recommended) and stretching. The class was held one day every other week for 3 months. We measured A: CS-30 tests, B: the amount of time standing on one foot with eyes open, and C: long seat body antefl exion in the 1st class (fi rst day) and the 6th class (fi nal day), and carried out chronological assessments of performance overall, by gender, and by age bracket (60 to 69 years and 70 to 79 years).

The results showed that scores for the CS-30 tests and long seat body antefl exion in the 6th class were sig-nifi cantly higher than those in the 1st class for performance overall, by gender, and by age bracket. In addition, the amount of time standing on one foot with eyes open was also signifi cantly longer in the 6th class than the 1st class, except for subjects aged 60 to 69 years.

The present study demonstrated that the lower-limb muscle strength, the ability to balance, and fl exibility were signifi cantly improved by the strength training in this class, and that this exercise menu had a benefi cial effect on the muscle strength and physical functions of elderly people.

Department of Sports Medicine, St. Marianna University School of Medicine

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