17
Vol.22 No.119 解説 電波研究所季報 高騒音下の音声の性質と雑音レベルの低減 高杉敏男* 鈴木誠)!.:ネ (昭拘151 5 17 日受浬) September 1976 pp. 197-213 CHARACTERISTICSOFSPEECHINAMBIENTNOISE ENVIRONMENTANDREDUCTIONOFNOISE LEVELINSPEECHCOMMUNICATION By ToshioT AKASUGIandJoujiSUZUKI A noiseenvironmentsurroundingustendstowardincreasinggraduallyduetocivilization deve- lopment. Ontheotherhand,ascientificpursuitof taking away or reducing the noise is also carriedoutwithoutceasedaybyday. It iswellknownthatthehighnoiselevelgives an audi- toryobstacleandinterruptsthespeechcommunicationofhuman. Thispaperdescribestheutteranteandlisteningofspeechinhighnoiseenvironment,thetrans- ducersforobtainingintelligiblespeechinnoise,andtherecentresearchesand problems included intheimprovementofsignaltonoiseratiobasedonthedi erenceincharacteristicsbetween the signalandthenoise. Thispaperiscomposedofthefollowing : 1. Introduction 2. Noiseandarticulationofsp ch 3. Utilizationofthetransducerinnoiseenvironment 4. Noiselevelreductionofspeechbysignalprocessing 5. Conclusions 目次 1. まえがき…………...・H ・--…・…-----……一. 198 2. 音声の了解性と騒音…… .... H ・-……………… 198 2.1 騒音レベルと騒音の評価…… .... H ・--… 198 2.2 騒音,雑音と音声…--………・……・…… 199 3. 騒音環境におけるトランスデューサの活用…… 200 事通信機器部音声研究室 197 3. 1 指向性マイクロホン………...・H ・-………..201 3. 2 Bodyvibrationの利用………ー……一..202 3.2.1 骨導音声とその利用 3.2.2 耳孔マイクロホン 3.2.3 咽喉マイクロホン(Throat microphone) 3.3 各トランスデューサの比較一…ー・……ー 203 4. 信号処理による雑音レベルの低誠一...・H ・...・H 204

高騒音下の音声の性質と雑音レベルの低減 - NICTVol. 22 No. 119 解説 電波研究所季報 高騒音下の音声の性質と雑音レベルの低減 高杉敏男*

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Vol. 22 No. 119

解 説

電波研究所 季報

高騒音下の音声の性質と雑音レベルの低減

高杉敏男* 鈴木誠)!.:ネ

(昭拘151年5月17日受浬)

September 1976

pp. 197-213

CHARACTERISTICS OF SPEECH IN AMBIENT NOISE

ENVIRONMENT AND REDUCTION OF NOISE

LEVEL IN SPEECH COMMUNICATION

By

Toshio T AKASUGI and Jouji SUZUKI

A noise environment surrounding us tends toward increasing gradually due to civilization deve-

lopment. On the other hand, a scientific pursuit of taking away or reducing the noise is also

carried out without cease day by day. It is well known that the high noise level gives an audi-

tory obstacle and interrupts the speech communication of human.

This paper describes the utterante and listening of speech in high noise environment, the trans-

ducers for obtaining intelligible speech in noise, and the recent researches and problems included

in the improvement of signal to noise ratio based on the di妊erencein characteristics between the

signal and the noise.

This paper is composed of the following :

1. Introduction

2. Noise and articulation of sp目 ch

3. Utilization of the transducer in noise environment

4. Noise level reduction of speech by signal processing

5. Conclusions

目次

1. まえがき…………...・ H ・--…・…-----……一. 198

2. 音声の了解性と騒音……....・ H ・-……………… 198

2.1 騒音レベルと騒音の評価……....・ H ・--… 198

2.2 騒音,雑音と音声…--………・……・…… 199

3. 騒音環境におけるトランスデューサの活用…… 200

事通信機器部音声研究室

197

3. 1 指向性マイクロホン………...・ H ・-………..201

3. 2 Body vibrationの利用………ー……一..202

3.2.1 骨導音声とその利用

3.2.2 耳孔マイクロホン

3.2.3 咽喉マイクロホン(Throat

microphone)

3.3 各トランスデューサの比較一…ー・……ー 203

4. 信号処理による雑音レベルの低誠一...・ H ・...・ H ・204

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198

4.1 相関関数による雑音低減...・ H ・-…………..204

4.1.1 S PAC

4.1.2 パイスペクトJレ法

4.1.3 相関ポコーダ

4.1.4 s p 0 c 4.2 適合フィルタによる雑音低減・・ H ・H ・-……・ 207

4. 2. 1 WienerフィJレタ

4.2.2 非線形適合フィルタ

4. 2. 3 Kalmanフィルタ法

4.3 非線形処理による雑音低減….......・ H ・-….208

4. 3. 1 Homomorphicボコーダ

4.3.2 スペクトJレシャープニング法

4.3.3 カクテル・パーティ方式

4.4 音部分類方式による雑音低減…....・ H ・......209

4.5 まとめ...・ H ・---………・・……....・ H ・--… 210

5. あとがき………・----……・-……・…ー…・… 210

参考文献……-……-…・・・……-…・…… 211

1. まえがき

自動車,列車,航空機などの交通騒音を始めとして,

工場騒音,工事現場などの高騒音の環境が増大しつつあ

る。騒音は,レベルが高かったり,長時間暴露されてい

ると生理的障害を生じるだけでなく,心理的苦痛が大き

し社会的にも重大な問題になっている。一方,高騒音

環境は円滑な音声通信を妨げ,乙のような環境下におけ

る業務の遂行にも障害を与えている。乙れらの問題を解

決するためには,騒音レベルを減らすζとが先決である

が,騒音源の制御,遮音は一朝一夕lζ達成されるもので

はない。

と乙ろで,騒音による音声通信の障害,音声の了解性

や明りょう度と騒音の関係については,断片的lζ報告さ

れているに過ぎない。第2章ではできるだけ乙れらを統

括して,騒音下の音声のききとり,発声の性質(ききと

りに及ぼす)を明らかにする。

高騒音環境で音声通信を確保するため,あるいはでき

るだけ良好な通話品質を得るために,古くから特殊なマ

イク(ピックアップ)により,騒音の影響を軽減すると

とが工夫されている。乙れらには指向性マイク(接話マ

イク), II困!咲マイク, 11:孔マイク,加速度計の利用など

がある。第3章で,乙れらの原理と特徴,性能について

調査するとともに考察を加える。

一方,騒音レベルの増大に起因する音声のSN比の劣

化は,電気通信で生じるフェージング,混信,雑音,伝

送システムの不備などによる通話品質の劣化と共通した

問題である。と乙ろで,音声波形信号のSN比や通話品

質を,簡単に改善するととはできない。 AGC!とより系

電 波 研 究 所 季 報

利得を安定化してレベルの変動を少なくしたり,インパ

ルス性雑音のレベルの変動を少なくしたり,インパルス

性雑音のレベルを制限するリミッタや, LPF, BPF,

BE Fなどを利用して混信や雑音をできるだけ除去し

て,聞き易くする努力を行う程度である。と乙ろで,レ

ーダやディジタル符号伝送などでは,信号の性質が明ら

かであるため,相関技術や matchedfilterなどを用い

てSN比の改善を行っている。音声の場合にも,音声と

雑音の性質の差iζ着目すると,雑音レベルを減少し,

SN比を改善する可能性がある。 ζの発想lと基づく手訟

を信号処理(signalprocessing)による SN比の改善

法とよぷ乙とにする。

信号処理による音声のSN比改善の研究の歴史は浅

い。幾つかの方式が提案されているが,系統的な手法が

確立されるには至らず,定量的な評価もほとんど行われ

てはいない。第4章では,各方式について,その原理,

特徴を概説するとともに,問題点について考察を加え

る。

2. 音声の了解性と騒音

2. I 騒音レベルと騒音の評価cu,但1

音圧レベル(記号はSP L (sound pressure level),

O. 0002 μbar=l0-16 watt/cm2= O dB)と主観的な音の

大きさの関係は, Fletcher-Munsonの聡感曲線(等感

度曲線)としてよく知られている。 Is Oでは,乙れを

修正した曲線を使用している(第1図)。一方,音の大

きさは心理量で, SP Lが adBの lOOOHzの純音と

同じ大きさに感じる音を, aホン(phon)として表す。

騒音レベル(soundlevel)は騒音計の指示の読みで,

J I Sではホンであるが,最近では dBが用いられ,国

際的lζはdBを使用しなければならない問。騒音計は,

無指向性音圧型マイクロンを用い,一般に3種類(A,

B, C)の聴!長補正回路がある。 Aは40, Bは70ホンの

等感度曲線lと対応し, Cは平坦な周波数特性である。音

120

100

事80

) ω

出蜘 40

20

。L

20 100 5001000 5000 10000 周波数(Hz)

第 1図 Fletcher-Munsonによる等感度曲線

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Vol. 22 No. 119 September 1976

第1表騒音の大きさと音圧

騒音の程度 音Ho(dB)x 例

130 ジェ yト機

耳を捜する 120 大砲の音

110 i弐筒

非常にうるさい 100 地下鉄内

90 にぎやかな街

うるさい 80 うるさい事務所

70 タイプライターの背

60 普通の工場

静か 50 静かな工均

40 普通の居間

かすか 30 図書館

20 問畑

非常にかすか 10~ O 深Lil,良好な音響室

* SL(A)よりも数dB~lOdB高い

圧レベルl乙従って補正!ill路を切り換えて使用したが,最

近はA特性のみを使用する方向にある。との場合,記号

としては SL, SL (A), Lなどが用いられ,単位は

dBまたは dB(A)で表示される。

音圧レベルと騒音の関係について,一般的な例を第1

表l乙示すm。

人聞に対して,騒音はいろいろな障害を与える。生則

的な聴力障害もあり,会話lζ対する妨害,勉強や作業の

能率の妨害,一般の生活の妨害などがあげられよう。 ζ

れらは,心理的,主観的な要因により支配される乙とが

多いため,単純にSLで評価するととはできない。した

がって,騒音レベル,騒音のスペクトル分布,時間分

布,相対的な変化などから算出する多くの評価指数が提

案されている。幾っかを列記すると, NC(noise crite-

ria), NR (noise rating), NRN (NR number), SIL

(speech interference level), Leq (equivalent sound

level), Ldn (day-night average sound level), TNI

(traffic noise index), PNL (perceived noise level),

ECPNL (equivalent continuous PNL), WECPNL

(weighted ECPNL), NNI(noise and number in-

dex), EPNL (e任ectivePNL), PNLT (tone corre-

cted PNL), TNEL (total noise exposure level)な

どがあげられる。

N CやNRなどは騒音をオクターブ分析し,長大を示

すレベJレを評価するもので,周波数分割jの方法や評fdliの

重みが異なる。これらは,建築音響や遮音の評価に用い

られる。

SI Lは,三つのオクターブバンドの音圧レベルの算

術平均で,音声lζ対する妨害度を示すものとして提案さ

たれ。乙の場合にも,分析フィルタの周波数分割IC幾つ

199

かの提案がある。

TN Iは,騒音レベルの時間分布の10%,90%値から

算出する指数で,自動車騒音の評価のために提案された

が使用例は少ない。

PN Lの系統は航空機騒音の評価l乙用いられる。離着

陸時の音を113オクタープ分析し,そのレベルを評価し

て指数を求めるが,騒音の継続時間, 1日の回数,昼夜

の差などの考慮,重みのっけ方により上記のように多く

の指数が提案されている。

最近は,騒音レベルの分布の中央値から算出した Leq

が,加算性のある指数として推奨されている個}。なお,

L伽は夜間IC重みをつけた Leqである。

乙のように多くの指数が提案されている乙とは,心理

量lζ対応する騒音の評価指数を,物理的lと求める乙とが

いかに難しいかを示している【針。いづれにしても,単一

の指数ですべて騒音を評価するととは困難で,それぞれ

の騒音環境や目的によって,異なった指数が必要であろ

う。また,それぞれの場で統一した指数が用いられるよ

うになるまでには, 日時や納得される法規制を要しょ

つ。2.2 騒音,雑音と音声

SN比と音声の了解性(1児りょう性)については古く

から研究が行われている。しかし,これらの研究の多く

は電話ーによる伝送や通常の通信を対象としているため,

40~8倒BSP Lの音声を対象としている。その一例を

第2図lζ示す刷。乙の図でも明らかなように,音声の聴

取にはある程度の音圧レベルが必要であり,一般の会話

音声の音庄レベソレ 60dBで,明りょう度はほぼ上限IC達

する。また, SN比が低い(- 5dB以下)ときは,音

100

5

.80

~ ) ω

ぷ制官’f、吋 40PEE幅州首

20

。20 40 60

音声の音庄レベル(dB)司自

第2図 音庄レベJレ, SN比と単音明りょう皮の関係巾(雑音・は白色雑音)

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200

圧を下げた方が明りょう度がやや高くなる。

高騒音中での音声の認識については,園内にはほとん

ど資料がない。音声レベル 7回BSP L,騒音レベル90

dB で音節明りょう度は o~ぢの報告がある問。

1957年から58年にかけて,高騒音下の音声のききとり

と発声について,一連の研究発表が米国で行われた。(8-171

とれらは主として,航空機,戦車などの通信を念頭にお

いたものである。主な結果を要約して,以下lζ示す。な

お,特lと断らない限り白色雑音(騒音)についての実験

結果によるとととする。

(1) s p Lと単語了解度 (Pw)本

騒音がなければ, 130dBSP Lでも ρwはほとんど

低下しない刷。

音声のSN比が低い場合や,音声にひずみ(クリッピ

ングや帯域の制限)があると, 90dBSP L以上で, S

p Lの増加とともに ρwが低下する同13,1710 その例を

第3図iと示す刷。

(2)騒音の暴露時間と ρw

SN比がOdB以下のとき,長示時間が長くなる(分

単位)と ρwが低下する。 1おdBSP L以上ではその

効果が大きい問。

(3) クリッピングの効果

騒音レベルが90,1おdBのとき, SN比一10~lOdB

の信号についてクリッピングを行い,クリッピングを行

う前と同じSp Lで聞いた場合, ρw』ζ大きな変化はな

いll7l0

尖頭電力を制限したイヤホン系を用い, 120dBSP L

以上の騒音環境で音声をきくときは,クリツピングして

実効電カを増す方が了解性は高い(2Sl

(4) 高騒音レベJレと発声努力

騒音レベルの増大lζ伴い,発声レベルも自然に増加す

る。しかし,前者が80から 11倒BSPL になったと

100ト " " 吉弘 誕 3‘,a

。 55 。

) 語尾 80 。 。。

員E藍 ω . 。10

-. . SN比

トE掛量、40 ・(担)

• 0

" 20 ’‘ " " ~ -5

u 70 80 90 100 110 120 130 140 音声の音圧レベル(dB)

第3図高音場における音声の了解性

*米国では,音声の了解性の尺度として, phoneticallyba-lanced monosyllabic words list (PB list)の正解率を用いるζとが多い。 ζれを単語了解皮 (pw)とする。

電 波 研 究 所 季 報

き,後者は90から 97dBSPL程度で, SN比は低下す

るuo,u】。

(5)発声努力(vocaleffort)と ρw

SN比が同じで発声努力の異なる音声の場合,発声努

力の低い音声の方が了解性はよい。例えば,受聴者の

SN比を一定とし,平均の発声努力が 94dBと lOOdB

の音声の了解性を比較すると,大声で発声した場合の文

章の了解性は平均して20%低いM 。

高騒音環境では,聴覚の保護,音声の了解性改善のため

に耳栓,耳おおい(earmuff, ear protector, ear gu-

ard, ear defenderなどとよばれる)の使用が有効であ

る181制。イヤホンの外部lζ耳おおいをつけたり,受話器

と一体化して耳おおいが作られた場合は,受信信号はそ

のまま聴取されるのに反して,音場としての騒音レベル

は耳おおいの減衰特性に応じて減少し,伝達された音声

のSN比は改善される。第4図lζ市販品の耳おおいの減

衰特性を示すll8)。

一方, 11倒BSPLを越す音場で聴取するときは,耳

栓などを利用して, SPLを低くして聴取する方が了解

性は増す。例えば,レベルが 130dB,SN比OdBのと

き,耳栓の使用iとより ρwが30%上昇した実験例があ

るllll。なお,耳おおいには装着したままで直通(減表な

し)にできるものもある。また,航空母艦などでは全面

マスクのプロテクターも使用されている問、

本章lと関連する一連の研究が行われた時代には,信号

処理による SN比の改善は行われていない。クリッピン

グiとより,ピークレベルを制限して聴覚を保護したり,

通話中の雑音レベルの変化が通話の妨害になる乙とか

ら,雑音レベルを AGCにより一定化して聞き易くす

る川程度のととしか行われていない。

/ 「

|/ 、、、

ν/

/

ω

50

(伺唱)判明幅制帽

10

0 . 1 . 2 . 5 1 2 5 10

J胡i度数(kHz)

第4図耳おおいの減衰特性の例

3. 騒音環境におけるトランスデューサ

の活用

高騒音環境で発声するとき,マイクロホンを始めとす

る各種のトランスデューサを工夫して, SN比のよい音

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Vol. 22 No. 119 September 1976

声信号を得る努力が古くから試みられた。ととでは3 各

種の トランスデューサと,通常のマイクロホンとは異な

る音声信号のピックアップ方式について, その考え方

(原理),特徴,性能についてとりまとめる。

3. l 指向性マイクロホン

指向性のマイクロホンが,無指向性の音圧型マイクロ

ホンより環境騒音の影響?を受け~qf'い ζ とは, 古くからよ

く知られている。特l乙 圧力傾皮(gradient) ~\'!.のマ イ ク

ロホンは,指向性と近接効果の両者を利j刊できるため,

SN 比改善の効果が大きい(19,201。

一言一一一一ー +r

。日

/'','vri;

!T~ 5閃 l主力修iJ.![J¥<!7イクの応tl'HI事l

圧力傾皮l¥'l.7イタの原l'I!図を第5図lζ示す。長さ dの

何のlh央lζ,千fxh Wi :fi11 Sのタイヤフラムがああとする。

感度 Gは,近似的lζ第(1)式で示される。

G=ll • 2π斗∞= k~豆三1豆cos 0 ... (

c 1 )

Iは波長,cは音速, hは定数である。なお, Gは周

波数lζ比例して上昇し,指向特·t~I:は第 6 図で、示される。

(¥(¥ -r,》と外J

!Tl 6図圧力傾皮型7 イクの指向性

と乙ろで,音波は,音源から矧測点までの距離が速い

ときは平面i波とみなされ,近いときは球面放である。従

って,音源からの距離により,dIC)せする音庄の容与が

異なる。球面波音源からの距離を γとすると,圧力傾度

型マイクロホンの球面波と平而ii!i.の正面感度の比 rは第

(2)式で表される。

r=平面波IC.対する感度球面波lζ対する感度

= [~+ ( d d )γ2 d+ァ\、2(ア+d)sin2c

・・(2)

rは, d,rが小さい程大きい。一般に, dは一定で

凶’U

10

~ -10

文一20

201

思 -30~ど02 似 .l 2 . 4 I 2 4 10 20

周波数(kHz)

第 7図圧力修1皮型7 イクの中')J'tl:の例

第8図圧力{官i瓜:型伎話マイクを{1/liえた

騒音環境JTlヘッドセッ ト

あるため, rはァ l乙反比例する。ま た,周波数が低く

なる程, Tは増す。ζれらが近接効果といわれる。圧力

傾皮型7 イクロホ ンの周波数特性の実視lj例と理論値を第

7 1~11ζ示す (1 9) 0

圧力傾度型7 イクロホンの特性を生かすためには,ア

を小さく一定K保つ必要がある。従って,へ y ドセ y ト

とー休IC.して使用する ζ とが多い(第8図)。極端な使用

法としては,唇に接触して用いられ,乙の場合はリップ

マイクと呼ばれている。

圧力傾度型マイクロホンでは, コンデンサ ~\1, 動屯

型,電磁裂,圧電11'!.など各蔽の トランスデューサが用い

られる。基本的な周波数特性は,とれらの素子と設計に

よって支配されるが,放送用の高品質の7 イクも製作さ

れている。

米|到には,抜高マイ クと打の周りのノ イズシーノレ ドを

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202

。(:用した実験例がある 124,2九 137dBSPLのジェッ トノ

イズのi:jJで, 15dBの SN比が得られ,同織の日騒音ιj:i

でとの音声を聞いて も,40~7096の単語了解度が('.}.ら

れ124)'十 分実用IC供せると している。また, 同じ7 イ

クをj干jし、た月ljの実験では, 135dBのジエy卜ノ イズ1j:i

で, SN比は 20dB, Rhyme words表で 9296の1T:W1{

If* をf与ている 125)

3. 2 Body vibrationの,舌用

戸部振illlJIζよる有声音源,声jf[のせばめで生じた乱流

による無声音源は, 声道で共振したあとに唇,又はl;~孔

から空中!<::放射され,音波と しての音声になる。と ζ ろ

で, Fi道の共振に伴い声道~tも共振し, IJ..ilζil.i'iifu:·「iそ介

して音声波形信号が伝わる。とれが,匂-伝導(boneco-

nduction)といわれ,’i"J・伝託手lとよる音声信号は’!1・羽音声

と呼ばれる。また,声道地の振動から音波の放射も行わ

れる。乙れらの,音声による bodyvibrationを利用し

た騒背環境用の トランスデューサとして,’円・j淳首“1:1のピ

ックアップ, H肉II侠マイ ク,工|干しマイク(什;;:;i科;nピック

アップの-FRであるが別に取り扱う)が 1Jf4J'~ されてい

る。

ζの方式では,空気とil.i'i主主’円(あるいは}ti道峨)のイ

ンピーダンスの差が,騒音E刈Eで発声されたf'l}iの SN

i七の改~'\'·Iζ利用される。

3.2. 1 骨導音声とその利月]

ITJ.i叢’内・の各位ifi:,n囚頭などについて, 舟音の発l'grle伴

う振動レベノレの測定が行われている 122,24, 26)。 ζのj易合,

トランスデューサとしては’円J品受話器122),クリスタノレマ

イク削,加速度振動子(加速度ピックアップ)闘が用い

られる。振動レベルは,気管外崎(咽il}i)がもっとも高

く,あど骨ーが乙れにつぎ,得!や乙めかみなどは低い。乙

れらの間のレベノレ差は 20dBICも達する。しかし,振動

レベルと音節lljjりょう度 ρsのl悶の相関は低い。加速度

振動子を用いた実験では,千事1の 戸sがもっとも高くて90

96,あどとII図頭は6096でもっとも低い問。

ところで,頭蓋骨-の機械イン ピ ダンスは 106[CGSJ

12 1 ) , 声道壁は103,一方,加速度振動子は10•附,空気は

10-2のオーダーである。したがって,音波としての騒音

は,加速度振動子ではピックアップされ難い。

騒音レベル SOdBのとき8096の ρsが, llOdBのとき

でも6096は l;f られると報~I;- されている問。 しかし,筆

者の実験では, ’i"J·導音声は l~I 然·r1uζ之しく , }Ju i必皮振動

子の公J・'f" (一定のj主で[bうする必裂がある〕にやや問題

がある。骨導音声の品質の劣化の原因については, 十分

検討されてはいなし、。骨導音声の信号レベルは,声道内

の音圧に支配される ζ と,声道各部からトランスデュー

本 PBlist による単結了解度よりも;:~jい正解ヰzがのられる。

電波研究 所 季報

ν織を

耳s9関 1・1・導 7"i"II ピックアップとして汀]• 、 られた

加速度仮動子(/,;)と’:・pg.受話以(イ{)

サIC可fる径路が幾つもあるととなどが,唇,山孔から放

射された音声とは異なった・rLI::買になる原因であろう。

:m 9図iζ,’i"J・導マイクとして流用された1111.iili皮振動了

と , ’門噂受話~~の写TIを示す。

3.2.2 羽.干しマイクロホン(イヤマイク)

~·:j騒千f Fではイヤマイクや工|衿がl応111呆謎のために有

効であり,通話のためにはイヤホンやヘットセァトが必

要である。同じ発:思から,工i干し挿入引のマイクが,1,く巧

2認された問。 最近は,采子の進歩lζ伴い,エレクトレ

ットコンデンサや,加速度振動子のイヤマイクが開発さ

;:fllO限|加速度振動子製イヤ7 イク(左側2例,いづ

れも慶応病院耳必科提供〕と小型イヤホーン

ケース

第11図 )J日j主J.l!'.j炭!fi!J子明イヤ7 イクとそのう主:n

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Vol. 22 No. 119 September 1976

100

nU

9

(求)

ハυn

U

8

7

ι也市川吋

PS申卦

60 100 110 80 90

l耳困騒官レベル(dB)

立'\12ぼ| J;';Jl/11版??レベノレと iJ11jfilJ.(£ j民主IJ 了eの'}~:n位向

れた(28,29)。 百十il[IJJ刊の振動子を問いた実験も行われてい

る1271。

加速度振動子主lのイヤマイ クの写只を節目図lζ,その

構造と談者の状態を穿m図lζ示す。イヤマイクの場合lζ

も,’門ー伝i与による音声信号を検1・1・,している乙とになる。

したがって,装ぞjlC際して外耳道内で・ffllliiJi骨lζマイク を

卜分lζ段l~ltさせる必要がある。 振動の伝搬の機構につい

ては明確ではない。また,マイクの設計,製作ーも試行fi','

誤(l'JIC行一われている段階である。

イヤマイクとして製作された場合の定量的な評価は報

f与されていないが,計測用の加速度振動子を利用した場

介,n九時買1¥fllζ装若したときよりも|リIりょう皮は低い(第

12図参照) 1271。

なお, 屯l1及型やコンデンサ11~.イヤマイク 1281 のように,

音圧型のイヤマイクの場合は,その IDJ1作は不明確であ

り,音圧としての騒音の影響を受け易いと考えられる。

接話マイクよりも,低い SN比しかi号られないとの報告

がある(331:主参照) (241

3. 2. 3 JI悶II侯7イクロ ホン (Throatmicrophone)

古くから,航空機,工事現場などで用いられ,現在で

も空港等で使用されている。 i咽II侯壁(気管外壁)の振動

から直接電圧に変換する方式と,音圧型マイクを密着し

て使用する方式とがある。後者の場合は音場としての騒

音の妨害を少なくするため,音響的シーノレドが必要であ

る。トランスデューサの形式には,電磁型,勤電型1311,

圧電型,カーボン型など各磁のものがある。市販されて

いるIll);!喉7 イクの写真を第13図に示す。しかし,どの方

式によっても得られる音声の品質には大差ーがなく,了解

性も低いと考えられる。例えば, 3.1. 1で述べたよう

に,加速度振動子を用いた実験では,'f'ii¥i)Iりlりょう度は

前額の骨導音声よりも低く,約6096であった 12610騒音環

境における了解度(|リjりょう度)についての実験例は見

い出せなかった。

と乙ろで,声帯附近の頚部IC密若したマイクロホンで

ピックアップされる信号(気管外壁波)は,音声研究で

広く利用されている。気管外壁波は芦,H;振動に相関が深

203

第13図波打した明1~~7 イタ

く,音声波形によるよりも抗木Ji'ij校数のJ11!i'1\が容易であ

り1321,発声努力をよく示しているためである。気管外壁

i!Ji.と音声波形周波数スペクトノレを比絞した実験による

と,気管外壁は遮断周波数 450Hz程度,減衰特別_24dB

!octのフィノレタと近似(l'Jにみなされる 13310 Jl!);jll{:k?イク

の装計{立川では声道の共振よりも戸,!日振動がピックアッ

プされ易いとと,気管外唱が LPF と勺fl!日である乙とを

考応すると,JI閃ll()i? イクによる首ニ戸Iの品質が怒し了航’

・t'i:.が低いととは当然といえよう。

3. 3 各トランスデューサの比較

とζで納介した名トランスデューサlζ関して,定量的

lζ比較検汗した例は少なし、。その保劣を論じるととは区l

刻lであるが,SN比lζ関しては簡単な資料があるので,

乙れを第14図に示す(2410ζζで, M-55は音響シーノレド

イ、j・の接話マイク, PDR-8は勤電型のイヤホン(外耳用)

を7 イクとして使用, D-98はMl総器用のイヤホンを羽

子Lマイクとして使用, VMlは振動マイクを前額部IC装

若した場合である。なお,乙の場合,耳孔マイクは3.2

2で納介したものよりtic能的には劣ると考えられる。

50

M-55 40

30

唱 20

ま4Bi 10

。-10

VM-1 PDR-8

-20 .05 . 1 . 2 . 5 1 2 5 10

周波数(kHz)

第14図 lOOdBのジェットノイズ,.,.,の発声(母音〔z〕)

をl型NI類のトランスデュ サでピックアップした助作のオククープバンド毎の SN比

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204 電波研究所季報

第2表騒音環境用トランスデューサの比較

トランスデューサ 周波数特性 守ランク?* 環SN境比でののよ了い解性 騒おけ音る潔実境験例に 装着法 その他

(24) 音圧傾度型 良 通常のマイク 137 dB

へγドホンとセット.唇にでき 理論的に

平 坦 放送用もあり接話マイク (A) と同む Pw=70% るだけ近づけて 設計される。

セットする。

鍋 四 ヘルメットとセ骨導マイク Iiぽ平坦 ひずみあり 110 dB

(加速度型) (補償付) (E) Ps=90%

Ps=60% ット.圧を一定に保つ。

間 E司イヤマイク ひずみあり 100 dB イヤホンと同等,

(加速度型)不 日月

(C) Ps’=90%

Ps’=85% 外耳道に密着。

不明りょう 白血 古くから使用さ

司君喉マイク LP F的 、Ps=60% バンドれているが,性能は明らかでな(D) p。

* 筆者らによる主観的評価。Pw:単語了解度(英絡), Ps:音節明りょう度, Ps’:単音明りょう度。PsとPs’のには,近似的に P5=100-2(100-Ps’)の関係がある。

今までの実験例,筆者らの簡単な実験をもとに,各ト

ランスデューサの比較表を作製した。とれを第2表Iと示

すが,音質lζ関する評価は,祭者らによる板めて主観的

なものである。特lζ骨導マイクの瀞価は,明りょう度に

関する実験結果剛と異なる。乙れには,装着法,周波

数特性の補償にも問題があると考えられる。明りょう

度,了解度の例は各実験どとに条件が異なり,尺度も異

なるので,簡単に比較はできない。総合的に判断する

と,接話マイクが最も性能がよいように考えられる。

今後は,各トランスデューサについて,音質,使用可

能な騒音レベルと明りょう度,使用の容易さ,コストな

どを考慮した,系統的な実験と総合的評価を行う必要が

ある。

4. 信号処理による雑音レベルの低減

との章では,信号と騒音の性質の差 lζ着目した処理

法,すなわち,信号処理による騒音(以後,雑音)レベ

ルの低減,及び, SN比の改善方式について述べる。現

在まで発表された信号処理による雑音レベル低減方式は

次の4つに分類できる。

(1)相関関数を利用する方法

(2)適合型フィル夕方式

(3)非線形処理による方法

(4)音声認識を利用する処理方式

乙とでは,乙れらの方式の原理,及び,特徴と問題

点,また,雑音低減効果について解説する。

4. 1 相関関数酬による雑音低減

今,入力 f(t)を音声信号 s(t)Iζ 白色雑音 n(めが

:亙じようしたもの(以後, f(t)=s(t) +n(t)を音声雑音

信号と呼ぶ)とすると, その短時間自己相関関数回目

以•)は第(3)式で与えられる。

伊('!")=÷L/C似t一•)h (の

=÷tooゆ (tー州制

+÷too [s(似tーの+s(t一切(t)

+n(t)n(t-•)]h(t)dt ……(3)

乙乙で, h(t)は時刻ll0~Tまでの値1の窓関数であ

る。このように,第(3)式の第1項から,信号成分の相関

関数は入力の音声信号と同じ周波数成分から構成され,

その相関波形のエネルギは変化しないのに反し,第2項

の雑音成分のエネルギは,信号と雑音自身は無相関であ

るという性質から,積分時間 Tが長いほど小さくな

る。相対的に,雑音低減, SN比の改善が期待できる。

乙れが,相関関数を用いた雑音低減の原理である。

乙の観点から,最近開発された SPAC (Speech Pro-

cessing by use of Auto-Correlation function)酬,

SPOC (Speech Processing by use of crOss-Correla-

tion function) <371 があり,更に,多数のデータについ

てスペクトJレ上で平均化を行い,原信号のスペクトル成

分のみを推定し,雑音低減を行うパイスペクトル法t聞

がある。また,狭帯域伝送方式の一つにボコーダがある

が,との内,相関ボコーダ側は上述と同じ原理から雑

音低減に有効と考えられる。

しかし,自己相関による処理の場合は,振幅2乗波が

生じ,ひずみの原因となる。その為,乙のひずみを除去

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する前処理(スペクトル領域での Rooter),又は,後処

理が必要である。他のチャンネルボコーダ1401,ホルマン

トボコーダ(41)も同様の効果が期待できる。

4.1.1 SPAC

第15図lζSPACの処理過程を示す。とのSPACの特

徴は,波形の一周期 Tpを相関関数上のピークから決定

し,一周期lζ相当する相関波形を切り出し, 2次的雑音

が生じないように接続するととにある。また,•= 0附

近(•= 0も含める)の点を除いて切り出しが行われて

おり,雑音エネルギが処理波形lと重じようする作用は取

り除かれている。

次lと, n,時聞を経過した入力について,相関関数の

計算が行われる。乙の操作では, Tpが真のピッチ周期

の整数倍のときは誤りでなく,また Tplζ誤りがあって

も音質の低下への寄与は比較的少ない。

通話品質についての定量的な評価はないが,入力の

SN 比が OdB の音声雑音信号は,~理.後, 5~ 7dB

程度のSN比の改善効果があるζとが頭論的,実験的lと

計算されている同刷。

4.1.2 パイスペクトル法

今,入力音声信号を s(t)とすると

s(t) = I: Ak cos {2Trkfa(t-t’)-Ok) ・・仏)

-EJ

&L

,f

、ga

Rooter

Tpだけf(t)をシフト

短時間自己相関関数

<pの計算

周期Tpの決定一周期の波形

の切出し

g(t) 相関波形の接続

第15図 SPA Cの原開

却5

第3表 X,Y点におけるパイスベクトルの振幅と位相

振幅 {立 相

X点でのパイスペクトル x,x,x.叶 一仇-rp,十仇+IBx (kf., If,)

Y点でのパイスベクトルY,Y,Y,., 一供一例+仇+I

Bv (kf・'If,)

7ロスパイスベクトルX, Y,X,φ’ 一仇-tp,+仇令1

Cxvx (kfゐ If,) +2ntf,(t忠一ty)

s(t)のパイスペクトル B,は第(5)式で表される。

B,(kfo, lfo) =E {Ak•A1 •Am exp

[ -j(2Trkfot’+0k)-j(2πlんt’+81)

-j(2irmfot'+Om)]) ・…・(5)

パイスペクトルでは, m=k+lであるから

B,(kfo,lfo)=I;l;Ak•A1•Ak+l exp

[ -j(Ok+Oi-Ok+i)] ……(6)

第(6)式からパイスペクトJレの意味は, Akと AA:+!のた

たみ込み積分を更に A1によって集合平均した乙とにな

る。また, f(t)=s(の+n(t)のパイスペクトルは各波形

のパイスペクトJレの和になる乙とが知られている。

B1(ん/2)=Bs(fi./2) +Bn(ん/2) … … (7)

右辺の第2項は,第(3)式の右辺の第2項より,小さくな

るはずであり,雑音低減効果は高いと考えられる。

次lと,空間的A点, B点で得られたパイスペクトルと

少ロスパイスペクトJレの振幅と位相を第3表に示す。

x, y点の位栢差は

Phase[Cx, Y, xゅん,lfo)]-Phase[Bx(好んがみ]

=2πlfa(tx-ty) ……(8)

tx, tyは信号源から信号がx.y点への到着時間と

考えると,乙れより,信号源の方向が決定でき,また,

位相と鍍幅から信号源の大きさも決定できる。

乙の方式の特徴を下記lζ示す。

(1)信号源の方向と大きさを決定できる。

(2)位相項より信号の基本周波数が決定できる。

しかし,(2)は音声のような複合波や,音声雑音信号か

らの検出は難しいと考えられる刷。また,計算lζ莫大な

演算時間を費すが,長時間一定の波形と考えられる脳波

や心臓鼓動の分析には有効であろう附。

4.1.3 相関ボコーダ

自己相関ボコーダの原理を第16図に示す。その雑音低

減の原理は第(3)式と同様である。

SPACとの大きな違いは,別lζピッチ抽出と音源励振

部を持つζ と,•= O 附近(•= 0も含める〉の値を必要

とするζとである。そのため,処理波形lζ雑音のエネル

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206

ギの重じようが起乙り,それだけ品質劣化が起とってい

ると考えられる。また,音声雑音信号から適切なピッチ

抽出とピッチパルス列の合成は非常に難ししその抽出

の不的確さも再生音声の品質劣化iζ大きな影響を与えて

いる(46】。同じ SN比の音声雑音信号の処理を SPACと

相関ボコーダで比較したとき,上述の点により, SPAC

の処理音声は品質,雑音低減の点で勝っていた。

入力が音声雑音信号による実験では,分析部のチャン

ネル数は 30,LPFのしゃ断周波数は 25Hzが適当とさ

れ,ピッチパルス励援部のそれも,同じく 25Hzと評価

された(46)。 なお,相関ボゴーダとSPA Cの中間的方

法も実験されている。{叩

4. 1. 4 SPOC <37>

SPACの変形として相互相関関数を用利した SPOC

がある。音声の零交差波形が原音声の情報を保存し,了

解性が失われないととは良く知られている。そ乙で,今

入力信号 s(t)を第(9)式で示すと,その零交差波y(t)は

第制式で定義される。

s(t) =acos(wt+O) ・・・(9)

y(t)= I:と盟主制飽(wt+o) …--剛,. 2n-1

n=l,2,3,……

s(t)と y(t)の短時間相互相関関数 1Jf('r)は第(II)式で

表される。

時)=封~""s(のy(tーτ)h(のa=a cos wr H ・H ・仰

とのように,相互相関処理により,入力信号が再現でき

入力音声

ピッチ抽出

電 波 研 究 所 季 報

入力 I£(1)

T, T,だけ£(1)をシフト

零交差波へ変換相互相関関数ψ(吟の計算

ψ(r)

l周期の波形の切出し1周期T,の決定

相関波形の接続

g(t)

第17図 SPOCの原理

る。ただ,音声のような複合波に対して,解析的iζIJf(r)

を求めるととはできないが,第(11)式と同様に入力信号が

再現できると考えられる。第17図lζSPOCの処理過程

を示す。

入力波形とその零交差波形とで相互相関関数を計算

し,あとは SPACと同様の方法で一周期の抽出と切り

出し,出力波形の接続が行われている。それによる SN

比の改善効果は,試聴試験の結果, ほぼ SPACと同様

の評価を得た。また, SPOCの利点は前処理のイコライ

ザ(Rooter)が不用で,相関関数の計算も SPACより

簡単である。コストの点でも有利である。しかし, SN

励振源

Rooter 遅延線

L

P

F

完全反射 遅延線

第16図相関ポコータの原理

再生音声

9' (n-1)

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Vol. 22 No. 119 September 1976 207

cL=s,+1101 出力~ • g;

/ W(z)

雑音n Iii I 適合型フィルタ

(ADF)

" J

第18閃迎合剤フィJレタのJJ;i到!

比のよい音声に対しては,処理音声の品質は SPACよ

りやや劣る問。

4.2 適合フィルタによる雑音低減

予測波形と現:(F.の入力波形聞で残差エネルギを最小!と

するととにより,等倒的lと雑音のエネルギを最小lζし,

雑音レベル低減を行うのが適合塑フィルタによる雑音低

減方式である。第18図!と原邦.を示す。

出力は g;第(12)式になる。

gj=Sj+旬。j-Jj ……(12)

Kiの分散を最小にするようなのを得るため, ADF

(ADaptive Filter)を操作する。

E[g/J =E[s/] +E[(noi-YJ)2] +2E[si(n町一Y;)J

・・・・・U3J

Sjは no;とYilζは無相関なので

E[g;2] =E[s;2] +E[(n0J-YJ)2] ・…・・(14)

目的とする minE[g12]は第凶式より minE[(noJ-

Yi)2] Iζ外ならない。

min E[g;2]=E[s12]+min E[(no;-YJ)2] ……回

第(12)式より g;-SJ=no1-Y;となり,出力最小は雑音

電力最小を意味する。今,入力が一定の時,出力をその

一定値lζ近ずければ近ずけるほどSN比は高くなる酬。

乙の思想に立脚した方式として, 古くは Wienerフ

ィルタ酬があり,現在では,自動制御理論を音声のス

ペクトル情報の表示に利用した KalmanフィJレタ酬に

よる雑音レベル低減も考えられている。

4. 2. 1 Wienerフィルタ

Wienerフィルタの原理は,第18図をそのまま用いて

説明できる。目的は,残差エネルギが最小になるように

ADFの伝達関数 W(z)を求めるものである。

今, n;の自己相関関数 <pnn(k),n1とめの相互相

関関数 ipna(k)を第(I印式lζ示す。

伊nn(k)=E[n1nJ+k]

伊吋(k)=E[nidJ+k] 6

、Etf-

また, Yiは W(z)のインパルスレスポンス w(j),

的のコンポルーション⑧で第(l司式lζ示される。

Jj=W(j)⑧nj -…・・(I司

更に,

min E[gJ2]=min E[(dj Yi)2]= O ……(I曲

第(I国式を満足するような関係式を第(!日式,第(I司式を使っ

て求めると

w(k)@'{'nn(k) ='{'nil (k) …--側

第(I曲式[ま

W(z)==φ叫(z)Iφ,,,,(z) ・・・剛

すなわち,最適な W(z)は雑音と信号の相互電力スペ

クトルを雑音の電カスペクトルで除する乙とによって求

まる。しかしながら,乙の方法は,音声lζ主じようした

雑音と何らかの相関のある雑音入力を必要とする。入力

が音声雑音信号のときの適応は難しい。

4.2.2 非線形適合フィルタ削

第19図lζ原理図を示す。入力は音声雑音信号である。

乙の方式で最も問題となる操作は φ••(f)の決定であ

る。今,音声と雑音とは無相関と考えると入力の電力ス

ペクトルは音声成分と雑音成分の電力スペクトルの和と

して書き表される。そ乙で,入力の電力スペクトルにい

き値を設け,そのレベJレを越えるスペクトルを音声成分

の電力スペクトJレと想定している。

しかしながら,乙のような非線形処理が原因で,単音

明りょう度が回数%の音声雑音信号(約 S!N=-lOdB)

は処理後,波形上での改善は明らかであるにもかかわら

ず,明りょう度は数分6落ちる結果になっている。

4. 2. 3 Kalmanフィルタ法

今,入力の音声雑音信号をβ=Si+niとし, Kalman

フィルタ理論を用いて Sι の推定量Lを求める。

Xi+11i=φ'Xi1 i )

XiJi=Xi1i-1+k(J1-hTx11i-1) ~…··(21)

Si=hTXi I i-1 )

乙とで, x;11は音声スペクトJレを n個の極と m個

の零点から成る有理関数で表示した場合,その係数をJfl

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却8

入力

出力

時間窓Hamming

電力スペクトル4'ss {f)+φnn{f)

雑音低減φSS (f)

第19図非線形適合フィルタによる雑音低減法

いたシステムの状態ベクトルで, t時点までのデータを

使って得た状態ベクトルの推定値である。 kは重み関

数, φは状態遷移行列で第凶式l乙示される。 hTは観測

データの行列表示である。

φ=/。 、I Q IπーI I ・・・担割

I 6 I \一α1一 αγ・・・・・ーα,d

αは有理関数の分母の係数である。第20図に Kalman

篭波研究所季報

出カ

第20図 Kalmanフィルタによる雑音低減の原理

フィルタの原理を示す(52)。ととろで, φは音声スペク

トルを近似している自己回帰係数から成り, その意味

で,音声雑音信号のスペクトJレから平滑によって音声信

号のみのスペクトル検出が行われている。従来の音声分

析に用いられた手法と同じであるが,異なる操作は重み

関数 kへの入力であり,雑音が重じようした信号から

状態ベクトルの推定精度の良し慈しが,雑音低減効果を

決定している。

乙の手法による SN比三亨 3dBの音声雑音信号の雑音

低減効果は,発声区間で 0~5dBの改善,休止区間で

15~20dBの改善が報告側されているが,処理音声の品

質はいま一歩のととろである。

4.3 非線形処理によQ雑音低減

4.1, 4. 2の処理方式は,音声と雑音を単なる電圧の

変化として捕え,互いに無相関という立場で,より音声

信号の特徴を強める方法で雑音低減を行ってきた。それ

ゆえ,入力信号が音声でない場合でも応用できる方式が

含まれている。と乙では,音声信号の音響的情報(ピッ

チ,スペクトル) Iζ注目し,それらの情報を再合成して

雑音低減を行う 2つの方法ともう 1つの非線形処理方式

を紹介する。初めは Homomorphicボコーダ酬であ

る。乙れは複素ケプストラムからピッチ抽出とスペクト

ルの平滑,及び,ホルマント周波数の抽出を行い,得ら

れた情報から音声波形を合成して雑音低減を行ってい

る。 2番目はもっと簡単で,音声雑音信号のスペクトJレ

領域で,ある時間内のいき値を設け,乙のいき値を信号

と雑音レベルの頻度分布から決定しながら雑音低減を行

うスペクトJレシャプニング法問lである。最後に4つの入

第21図 Homomorphicボコーダによる雑音低減の原理

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力に含まれる信号以外の雑音を相殺作用によって除去す

る非線形雑音低減方式(S71(乙乙では,カクテルパーティ

方式と名付けo)を紹介する。

4. 3. 1 Homomorphicボコーダ

原理を第21図lζ示す。 2度目のフーリェ変換で得られ

る複素ケプストラムにはピッチ情報が明確に現れる。こ

れを1つの情報とし,残りを逆フーリェ変換する乙とに

より音声のスペクトル包絡が得られる。とこからホルマ

ント情報を取り出し,先のピッチ情報と合せて合成すれ

ば雑音低減された音声信号が復元できる刷。乙乙では,

雑音低減効果を高めるため,ホルマント周波数の帯域幅

を通常より低めに設定している。問題はSN比の低い場

合, 2つの情報の検出が不正確になる可能性が高いと思

われる。定量的な品質評価は報告されていない。

4.3.2 スペクトルシャープニング法

第22図lζ原理を示す。スペクト Jレ処理部では音声雑音

2つの曲線の交差点を最適いき値と決定

第22図 スベクトルシャープニング法の原理

Ml Cl s,+n,

MIC2

s1+n2・

MIC3

MIC4

209

信号のスベクトルレベルと休止区間で得た雑音のスペク

トJレレベルの頻度分布曲線を求める。次lζ2つの曲線の

交差点を最適いき値と定め,とのいき値を越えたものを

音声のスペクトJレと考え,逆フーリェより波形を復元し

ている。しかしながら,非線形処理lとより,波形接続部

で不連続になり,また, 4.2.2の思想と同等と考える

と,処理音声の品質は期待できない。

4.3.3 カクテル・パーティ方式(S7)

第泊図lζ原理を示す。乙とで, 山 ,++n2+=s,+を(n1+n2+ ln1-n21)である。今, 10×12フィートの4

隅にマイクを置き,中心を信号源としたとき,一般に雑

音源が中心から離れる程,雑音低減効果は大きい。白色

雑音の実験では最大 6dB程度の雑音低減が報告されて

いる。乙の方式では,多数の音声の中から,特定の話者

の音声を強調する乙とができるが,マイクの設置位置に

制約があり,原理からみても高い雑音低減効果は期待で

きない。

4.4 音韻分類方式による雑音低減側

乙の方式は音声認識の立場から,雑音低減問題を考え

ている。処理方法は初め,音声を音凱グループ別lζ分類

し,その分類に適したフィJレタを通すととにより音声情

報のみを残し,雑音低減を行う方式である。種々の実験

のあとの最終的な音韻分類器と ζの方式の原理を第24図

IC示す。入力の音声雑音信号は,音削区分器と音韻分類

器により 3種類のフィルタのどれかに割り当てられる。

第24図音韻分類型雑音低減方式

s,+n,•+n,+

一In1•+n2+-n,+ーn,• I

第23図 カクテルパーティ方式による雑音除去の原理

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210 電 波 研 究 所 季 報

第4表各方式の雑音低減効巣の比較

方式 方式名 入ン力ネチiv数ャ 利用する音声の性質 処:II時間 ハードウェ 錐音低減効果 処の理品音声質実用性 特徴と問題点7の製作

SPAC 1 準周期性 大 容易 (5~中7dB) 良好 大 相関関数の接続

m I 1 パイ l又は2 準 周 期 性 膨大 難 大 * 中 雑処理音時源探聞知大も可能

関 スベクトル法

関 m閑ボコーダ 1 準有声l,胡無期声の性別 大 やや難 中 やや良好 基品本質周を波支数配の抽出精度が

SPOC 1 準周期性. 大 容易 SPACよ大り やや良好 大 相関関教の接続いくらか 装置が比較的簡単

適合型

Wiener 2 無 * * 申 申 雑信音号のと性雑音質のの入利用力が別個フィルタ

非線形適合 音音声スベクトル差と雑(品) 方非線式の形処容理易にきよるひずみフ フィルタ 1 スペクトルの 容易 やや不良

イJv

Kalman 声道の共振変化特 音方式声分の析複.雑伝さ送方式の応用タ フィルタ 1 性とその 大 難 中 やや不良

非 Homomorダphic 1 準周期性と中 錐 * ** 音方式声分の析複.雑合さ成系の応用

ボコー ホルマント周波数線

苦手スベクトル 1 音音声スペクトル差と雑 容易 中 *申 中 簡非線単形処理によるひずみシTープニング法 スベクトルの

理 カクテル・ 4 無 容易 * 特能定のマ話イ者ク音の声設定の検位置出可パーティ法

音声認識 音韻分類法 1 音韻にtよ構造るスペクトル の差 * 難 * 事 高声度のに認疑識問手法の応用

+ハードウェアで実験された方式はない。ここでは, FFT処理装置は簡単に得られるものとする。++方向探知の場合 *不明。 **やや不良と思われる。

一番上の破裂音フィルタは,破裂音が現れる前iζ短い休

止区間を与えるだけである。 SN比が- SdBの音声の

場合,単語了解度は処理前の509ぢが処理後749的ζ上昇し

た結果が示されている。しかしながら,雑音の重じよう

した音声で,音韻区分と音部1グループへの分類lζ非常に

大きな困難性が伴うと考えられる。

4.5 まとめ

第4表iζ,と乙で紹介した信号処理による雑音低減方

式の特徴を示す。乙の表中で,結果が明確に得られてい

ないものでも,方式と処理手順から想像し,結果を書き

入れている。種身の実験結果から,雑音低減効果,処理

音声の品質がよく,実用性の高い方式は SPAC,及び,

SPOCと考えられる。なお,実験例は見出せなかった

が, LPC(線形予測符号化)の応用や他のボコーダによ

る実験,検討も必要であろう。

乙ζでは,入力信号を音声lζとり,通信凶線(例えば

FM波+雑音)における雑音低減{聞は取り扱っていな

い。この方面の調査,研究もと乙で解説した方式との比

較,また,相互の共通点と相違点を知る上で重要であ

り,更に,方式の互換性を検討するうえでも,意義があ

る。

あとがき

本稿は,音声通信における雑音レベル低減のプロジェ

クトの着手にあたってとりまとめたものである。今まで

この問題に関して,音声研究者が本格的lζ研究した例は

少ない。特に,系統的なトランスデューサの比較,信号

処理による SN比改善効果の定量的な評価は,是非とも

実行しなければならない。なお,信号処理lと関しては,

本稿で取りあげた方法以外にも多くの検討すべき手法が

あると思われる。

信号処理による SN比の改善は,騒音環境下の音声通

信だけでなく,一般の音声通信の通話品質の改善lζ適用

するととができる。乙れは,無線通信の場合には,単lζ

通話品質の改善だけでなく,音声の伝送帯域幅の節減,

サーピスエリヤの拡大,送信電力の節約などにも寄与す

ることができる。音声研究室のプロジェクトとしては,

信号処理による方法lζ重点をi置いて,研究開発を進める

予定である。

終わりに,イヤマイクの試作品を提供された小野博氏

(慶応病院耳鼻科)乙の研究の機会を与えられるととも

に,いろいろ御指導,御援助を頂く村主行康通信機器部

長l乙謝意を表する。

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Vol. 22 No. 119 September 1976

追記

昭51年春の音響学会研究発表会で,本解説をfill足する

発表があったので(60),簡単に紹介する。

(1)騒音ぷ'1境ιjJで,耳おおいを使用 した場合の騒音レ

ベノレの低減,受聴音節IYjりょ う度の上封の実験的検

討刷,

(2)高分子圧電体を用いた加速度振動子型イヤマイク

の試作(621

(3) 非線形適合フィノレタ法 15 1)の改良 : 入力信号を1!!€

声,わたり,定'/ j;母音区Jtf]Iζ区分したあとにそれぞ

れ異なった処丑llを行った結果, SN比 3dBの音声

の音節l別りょ う度は4596か ら 53~ぢIC上昇{刷 。

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