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551.577(522) 九州における大気の構造と雲の性質* 朗** 要旨:航空予報上必要な雲底,雲頂高度や雲厚などについての予報資料ははなはだ少ない.そこで福岡と 鹿児島における3~6年間の高層資料を活用して九州上における (1)雲のできやすい高度,(2)雲のでき にくい高度,(3)異常乾燥しやすい高度,(4)雲底と雲頂の高度別出現度数分布,(5)雲厚,(6)沈降性逆 転と雲頂および前線性逆転と前線の傾き,(7)層別気温逓減率による不安定層と雲厚,(8)OOC高度の度数 分布の差異と局地的異常気象との関係等について調べた. その結果九州上では4~5月に4000m以上の厚い雲が一一番多く,前線の傾きが一番急で,700~300m 間の不安定度が一番大きく,0。C高度傾度も一番急となりやすいこと等がわかった.したがって,九州上で は4~5月に不安定で,対流性の厚い雲ができやすく,雷や強雨,乱気流,ひょう等の局地的異常気象が比 較的多くできやすい. 1. まえがき 航空予報では雲底.雲頂高度あるいは乱気流や着氷高 度等についての量的予報が要求されているが,その客観 予報のための基礎となる雲や不安定層の高度,着氷高度 等の調査資料があまりない.すなわち.雲底についての シー・メーターの資料もまだ少ないし,航空機からの観 測報告等もこの種のメソ的気候的調査のためには余りに も少なすぎる.したがって.雲についての立体的気候的 な諸性質についてあまり知られないまま予報がなされて いる.そこで,Aerological Dataの3~6年間の資料 により,九州上の北と南を代表する福岡と鹿児島の地点 について,ラジオゾンデの湿度と気温の観測資料を活用 し,高度は気圧高度をそのまま用いて.客観的な資料に よる雲の立体的気候的性質ならびに九州上における地形 および季節の特徴と雲の特質との関係等について調べ た. 2.雲のできやすい高度 福岡と鹿児島の3年間のゾンデ資料によって,湿度が 91%以上の部分は雲が存在したか,できやすい高度とし て,月別・高度別(気圧で表現)における91%以上の出 現率分布図を作ると第1図のようになり,雲のできやす い高度がわかる. (1)福岡の真冬は800mb高度,5~8月には900mb *Character of Cloud and Stmcture of Atmo. sphere in Kyushu **S.Yamada,福岡航空測候所 一1968年4月8日受理一 1968年9月 高度付近に下層雲がでぎやすく,40%前後の出現率を示 し,冬の600mb以上には雲ができにくく,500mb では5%以下の出現率しかない. 一方,鹿児島も傾向としては福岡と同様であるが,一 般に下層雲の出現高度が福岡より低く,特に6~9月は 940mbが40%以上の出現率を示す.また,鹿児島は7 ~8月を除く他の月の500mb以上の高度における雲の 出現率が福岡より大きい傾向にある. (2)季節の変り目の3,4月や9,10月および鹿児島 の2月や11月には各種機構の雲ができやすいので,各高 度の出現率がおおむね20%前後で,真冬のような特に下 層雲が出現しやすい特定高度というのがあまり顕著に出 ていない.ただし,両地とも春秋にはおおむね夏冬の中 間の850mb高度付近に下層雲が出来やすい傾向はあり, 下層雲の出現高度は地上湿度の年変化と逆位相の年変化 を示している. (3)中層雲は,4~6月と8~9月ごろ500~6 高度に出現しやすく20%前後の出現率を示し,真夏ほど 高い所に出来やすい傾向がある.なお,鹿児島では2月 と3月にも中層雲のやや目立つた出現高度がある. (4)福岡は下層雲の出現高度が比較的一定している が,鹿児島は成雲機構の種類が多いらしく,出現高度の 幅が広く,雲の厚さも厚い傾向にある. (5)西新は平地にあるので地形上昇による雲の影響が あまり目立たないが,吉野は海抜280mの台地の上にあ るので,その台地の地形上昇による雲と推定される940 mb高度の雲が全年を通じて出来やすい傾向を示す. 25

九州における大気の構造と雲の性質* · (6)700mbと600mb高度における雲のできやすい確 率としては福岡・鹿児島とも4月が最も大きく,次いで

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Page 1: 九州における大気の構造と雲の性質* · (6)700mbと600mb高度における雲のできやすい確 率としては福岡・鹿児島とも4月が最も大きく,次いで

551.577(522)

九州における大気の構造と雲の性質*

山 田 朗**

 要旨:航空予報上必要な雲底,雲頂高度や雲厚などについての予報資料ははなはだ少ない.そこで福岡と

鹿児島における3~6年間の高層資料を活用して九州上における (1)雲のできやすい高度,(2)雲のでき

にくい高度,(3)異常乾燥しやすい高度,(4)雲底と雲頂の高度別出現度数分布,(5)雲厚,(6)沈降性逆

転と雲頂および前線性逆転と前線の傾き,(7)層別気温逓減率による不安定層と雲厚,(8)OOC高度の度数

分布の差異と局地的異常気象との関係等について調べた.

 その結果九州上では4~5月に4000m以上の厚い雲が一一番多く,前線の傾きが一番急で,700~300mb層

間の不安定度が一番大きく,0。C高度傾度も一番急となりやすいこと等がわかった.したがって,九州上で

は4~5月に不安定で,対流性の厚い雲ができやすく,雷や強雨,乱気流,ひょう等の局地的異常気象が比

較的多くできやすい.

 1. まえがき

 航空予報では雲底.雲頂高度あるいは乱気流や着氷高

度等についての量的予報が要求されているが,その客観

予報のための基礎となる雲や不安定層の高度,着氷高度

等の調査資料があまりない.すなわち.雲底についての

シー・メーターの資料もまだ少ないし,航空機からの観

測報告等もこの種のメソ的気候的調査のためには余りに

も少なすぎる.したがって.雲についての立体的気候的

な諸性質についてあまり知られないまま予報がなされて

いる.そこで,Aerological Dataの3~6年間の資料

により,九州上の北と南を代表する福岡と鹿児島の地点

について,ラジオゾンデの湿度と気温の観測資料を活用

し,高度は気圧高度をそのまま用いて.客観的な資料に

よる雲の立体的気候的性質ならびに九州上における地形

および季節の特徴と雲の特質との関係等について調べた.

 2.雲のできやすい高度

 福岡と鹿児島の3年間のゾンデ資料によって,湿度が

91%以上の部分は雲が存在したか,できやすい高度とし

て,月別・高度別(気圧で表現)における91%以上の出

現率分布図を作ると第1図のようになり,雲のできやす

い高度がわかる.

 (1)福岡の真冬は800mb高度,5~8月には900mb

*Character of Cloud and Stmcture of Atmo.

 sphere in Kyushu

**S.Yamada,福岡航空測候所

 一1968年4月8日受理一

1968年9月

高度付近に下層雲がでぎやすく,40%前後の出現率を示

し,冬の600mb以上には雲ができにくく,500mb以上

では5%以下の出現率しかない.

 一方,鹿児島も傾向としては福岡と同様であるが,一

般に下層雲の出現高度が福岡より低く,特に6~9月は

940mbが40%以上の出現率を示す.また,鹿児島は7

~8月を除く他の月の500mb以上の高度における雲の

出現率が福岡より大きい傾向にある.

 (2)季節の変り目の3,4月や9,10月および鹿児島

の2月や11月には各種機構の雲ができやすいので,各高

度の出現率がおおむね20%前後で,真冬のような特に下

層雲が出現しやすい特定高度というのがあまり顕著に出

ていない.ただし,両地とも春秋にはおおむね夏冬の中

間の850mb高度付近に下層雲が出来やすい傾向はあり,

下層雲の出現高度は地上湿度の年変化と逆位相の年変化

を示している.

 (3)中層雲は,4~6月と8~9月ごろ500~600mb

高度に出現しやすく20%前後の出現率を示し,真夏ほど

高い所に出来やすい傾向がある.なお,鹿児島では2月

と3月にも中層雲のやや目立つた出現高度がある.

 (4)福岡は下層雲の出現高度が比較的一定している

が,鹿児島は成雲機構の種類が多いらしく,出現高度の

幅が広く,雲の厚さも厚い傾向にある.

 (5)西新は平地にあるので地形上昇による雲の影響が

あまり目立たないが,吉野は海抜280mの台地の上にあ

るので,その台地の地形上昇による雲と推定される940

mb高度の雲が全年を通じて出来やすい傾向を示す.

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Page 2: 九州における大気の構造と雲の性質* · (6)700mbと600mb高度における雲のできやすい確 率としては福岡・鹿児島とも4月が最も大きく,次いで

584

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Page 3: 九州における大気の構造と雲の性質* · (6)700mbと600mb高度における雲のできやすい確 率としては福岡・鹿児島とも4月が最も大きく,次いで

九州における大気の構造と雲の性質

 (6)700mbと600mb高度における雲のできやすい確

率としては福岡・鹿児島とも4月が最も大きく,次いで

5月であり,500mb高度では鹿児島が6月,福岡が7

月に最大である.すなわち,6,000mくらいに達する雲

は梅雨期に多いが,3,000~4,000mの高さの雲は春に多

いという特徴がある.

 (7)要約すると,九州上では冬は2,000m,夏は1,000

m付近の雲が多く,中層雲は4~9月ごろ5,000m付近

に出ることが多く,それらの高度も年変化している.

 3.雲のできやすい高度と雲のできにくい高度および

異常乾燥高度の高度別出現率

 福岡と鹿児島の3年間のゾンデ資料から,湿度91%以

上を雲のできやすい高度,80%以下を雲のできにくい高

度,50%以下を異常乾燥の高度として出現率を季節別・

定圧面高度別に求めると,第1表のようになる.

 (1)雲のできやすい高度では,冬は800mbが多く30

%前後も出現し,500mbでは10%以下の出現率となる.

その他の季節では900mbが最も雲が出来やすく,夏は

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第2図 湿度50%以下の’高度別出現度数分布

    実線は福岡・破線は鹿児島

1968年9月

・585

 40%以上も出現するが,春は30%,秋は24%程度とな

  る.冬以外では各季節とも高度とともに出現率は減少

  し,500mbでは10%近くになり,気温の低い季節ほど

 中上層での出現率は少ない.ただし春は600~700mb高

 度の出現が一年中でいちばん多い.

  (2)雲のできにくい高度では,900mbは夏が30%く

  らいしかないのに対し,その他の季節は50%台で半分以

 上は雲がでぎていないとみなされ,高度とともにその確

 率は増加して,700mb高度以上では暖候期で70%以上,

 寒候期には80~90%は雲がないといえる.

   (3)異常韓燥の出現率では9COmbの低層においては

 当然夏に少なく5%で,春には25%ぐらいになるが,

 800mbでは夏が20%,他の季節は40~50%となり,高

 度とともに出現率を増し,600mb以上では夏で40%以

 上,冬では70%前後の出現率となる.そして,第2図に

 示すように,春秋特に秋において800mb高度付近から

  の異常乾燥の急増が顕著で,移動性高気圧や中緯度高圧

 帯中での沈降による乾燥が800mb高度付近まで及ぶこ

  とが多いことを示す.すなわち,夏以外3,000m以上で

  は半分以上が異常乾燥の湿度50%以下のときである.

  4. 福岡における雲底高度と雲頂高度の特徴

  湿度が90%以上になった高度を雲底高度とし湿度が81

  %以上から急に30%以上乾燥したか,または沈降性逆転

 層を伴った高度を雲頂高度として,それぞれの月別出現

  高度の度数分布図を作ると第3図のようになる.いずれ

  も,おおむね孤立した度数の山を作り,各月ごとに雲

 底,雲頂の特にできやすい高度があり,その両者の山の

 間隔をとれば雲の平均的な厚さも推定できる.

   (1)すなわち,福岡の冬の雲底は1,500mくらいが多

  く,夏は600mくらいが多い.

   (2)雲頂は真冬と真夏以外は2,000mくらいが顕著

  で,1月と8月は3,000mくらいが多く,春から夏は対

 流性の雲が出来やすいので,出現高度の度数の山が相対

 的に低く幅広い山を作るが,その山は820mbから700

 mbの間である.

   (3)3月から10月の間には中層雲の雲底高度と雲頂高

 度の山が認められ,その高度も太陽高度の高い6月を最

 高とする年変化をしている傾向を示し,その雲厚は600

’ mくらいが多いことを示す.ただし,雲頂のとり方か

  らして,この雲頂高度や雲厚は大ぎ目となっているかも

 知れない.しかし,航空で必要なのは雲頂面の凸凹にお

 ける平均高度ではなく,その最高の高度の方が要求され

  る場合が多いから,ここでは大き目のとりかたをした.

27

Page 4: 九州における大気の構造と雲の性質* · (6)700mbと600mb高度における雲のできやすい確 率としては福岡・鹿児島とも4月が最も大きく,次いで

386

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実線は雲底・破線は雲頂

 5.雲厚の季節による特性

 年のくせを少なくするために6年間のゾンデの湿度資

料を用いて福岡と鹿児島における700mb以下に雲底を

もつと推定される場合の雲厚(湿度90%以上の層の上限

と下限の気圧差で表現)について月別雲厚別出現度数を

求めると第4図のようになる.

 (1)両地とも夏以外は200~300mの薄い雲の出現が

圧倒的に多く.夏は400~900mの雲が多く,春の鹿児

島も900mくらいまでの雲厚が比較的多い.ただし,夏

はやはり2,000mくらいの厚さの雲もやや多くなっている.

 (2)これを雲厚別の出現率で比較すると第5図のよう

に夏の7,8月は両地とも1,000m以下の雲が約50%出

現し,1,000~2,000mの雲が約20%,2,000~4,000mの

雲は約10%となり,4,000m以上の厚さの雲は約5%し

かない.ただし,鹿児島は1,000~4,000mの厚さの雲

が福岡より出現率で約10%多い.

 (3)7月以降2月までは,4,000m以上の厚い雲は両

地とも2~6%くらいしか出現しないが,3~6月は10

28

%前後の出現率となり,特に鹿児島では4月,福岡では、

5月が4,000m以上の厚い雲の出現のいちばん多い月と

なる.このことは当管内の名瀬を除く26官署がすべてそ

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第4図 雲の厚さ別出現度数分布    実線は福岡・破線は鹿児島

、天気”1968年9月

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Page 5: 九州における大気の構造と雲の性質* · (6)700mbと600mb高度における雲のできやすい確 率としては福岡・鹿児島とも4月が最も大きく,次いで

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第5図

九州における大気の構造と雲の性質

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福岡と鹿児島における出現率比較

実線は福岡・破線は鹿児島

の累年統計による雷日数において,4月が5月の2倍く

らい多く,4月の27か所の合計雷日数が45.9日に対し,

5月は19.4日で,3月が20.6日であることなどと一致

し,春には対流不安定になることが多く,界雷やひょう等

の強い対流雲の発達も予想以上に多いことと関連する.

 (4)また,4,000m以上の厚い雲が4月・5月には7

月・8月の福岡では2倍以上,鹿児島では3倍くらい出

現している.すなわち,4・5月は真夏よりも厚い雲が

できやすい.ただし,1,000~2,000mの厚さの雲は7

~8月に最多で,冬の2倍くらい,2,000~4,000mの

厚さの雲も鹿児島では5~8月の暖候期に11・12・2月

の2~3倍の出現率である.(ただし,ゾンデ観測は9h

と21hだけであるから日中の資料は含まれていない)

 (5)この雲厚と目降水量との関係では,やはり雲厚の

厚いほど降水量も多い傾向にあり,日降水量50mm以

上の場合はほとんど雲厚が4,000m以上であった.

1968年9月

387

 (6)雲層数と日降水量との関係では,19mm以下の小

雨のときと60mm以上の大雨のとぎに単層の雲である

場合が多く,中間の並雨では数層の雲の場合のことがや

や多い.すなわち,弱い雨は一般に比較的薄い単層の雲

から,また強い雨は鉛直に発達した厚い単層の雲から降

り,中強度の雨は数層に重なった雲から降ることが相対

的に多いようである.

 6.沈降性逆転と雲頂および前線性逆転と前線の傾斜

 前線性逆転による雨の寒冷気内における降下は悪視程

と低シーリングを伴い,沈降性逆転層には薄い雲層やヘ

ィズ層を伴いやすい.また逆転層の高さや前線の傾きは

雲底・雲頂の高さを予想する資料等となる.

 そこで,福岡と鹿児島のゾンデ資料から気温が高さと

共に上昇するか,等温の場合の上限を逆転層高度とし,

その高度における湿度が80%以上の場合を前線性逆転,

80%未満の場合を沈降性逆転と区別して300mb高度ま

でについて調べ,両者の季節別高度別出現度数分布図を

両地について図示すると,第6図と第7図のようになる.

 (1)第6図の沈降性逆転では,西新と吉野の海抜高度

が違うので(吉野=280m),接地逆転の出現高度や季節

別出現度数分布に両地間の差異がかなりある.たとえ

ば,接地逆転は西新が吉野の2倍以上出現する.

 (2)900mb高度以上では両地間にあまり大ぎな差異

はなく,冬は800mb高度,秋には760mb高度,春は

700~820mb付近,夏は760~860mb高度くらいに沈降

性逆転が現われやすく,冬と秋はその特性が顕著である

が,春と夏はその出現高度がそれほど一定しない.

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第6図 福岡(実線)と鹿児島(破線)における

    沈降性逆転層の高度分布

29

Page 6: 九州における大気の構造と雲の性質* · (6)700mbと600mb高度における雲のできやすい確 率としては福岡・鹿児島とも4月が最も大きく,次いで

388

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九州における大気の構造と雲の性質

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第7図福岡(実線)と鹿児島(破線)における    前線性逆転層の高度分布

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 (3)このため沈降性逆転のできているときの雲頂高度

は冬は800mb,春は800mbと700mb,秋は750mbく

らいの高度となりやすいことになり,第3節の(3)の異

常乾燥高度や第4節の雲頂高度の結果と符合する.

 (4)第7図の前線性逆転においても,接地逆転はやは

り福岡に多い傾向にあるが,沈降性ほど大きな差異はな

く,冬は同’じくらいで両地点の海抜高度よりやや大ぎい

高度差がでているだけであり,夏と秋には福岡の方に多

い.ただし,春は福岡の前線性最下層逆転の高度がやや

高く,秋には鹿児島の高度がかなり高い傾向がある.

 (5)冬には鹿児島が820mbと720mbに出現度数の

“』があるのに対し,福岡は780mbと660mbにあり,

両地間に400~600mくらいの高度差がある.

 (6)春は両地とも接地逆転が不明瞭であるが,900mb

高度では大きな出現の山があり,次の山は鹿児島が720

mbに対し,福岡が620mbで両地ともその第2の山も

顕著で,両地間の高度差は1,200mくらいある.

 (7)夏も本邦南岸沿いの梅雨前線の傾ぎとしてとる

と,鹿児島の860mbに対して福岡は760mb高度の山

となり,両地間の高度差は1,000mとなる.

 (8)秋は目立った山はないが強いてとると,鹿児島の

740mbに対し福岡の640mb,および鹿児島の600mbに

対し福岡の480mbとなり,それぞれ1,000mと1,200m

くらいの高度差ということになる.

 (9)以上の高度差は100mbが1,000mとしての概算

であるが,夏以外の季節では,鹿児島は720~740mb高

30

度と580~600mb高度にそれぞれ出現が多く,それに対

して福岡は620~660mb高度と480~500mb高度くらい

に山がある.

 (10)この鹿児島における第1の前線性逆転の高度が

年間を通じて同じ3,000m付近に現われやすいというこ

とは,年間を通じて本邦南岸沿いの前線がほぽ同じ位置

にでぎ,冬から春にその傾向が顕著で,鹿児島までの前

線の傾斜は年間を通じて余り変化しないことを示す.

 (11)一方,福岡の前線性逆転も春にいちばん顕著で

高度が高く,冬と秋はやや低いことから,一般には九州

本土上での前線の傾きは1/200くらいのゆるいものであ

るが,冬はなおゆるやかで6/2,000くらいとな:り,春の傾

ぎがいちばん大きく強くなりやすいことを推定させる.

 (12)また,鹿児島の第2の逆転層が各季節とも600~

400mb高度に認められるのは,名瀬付近に南下し停滞す

ることの多い前線の場合の前線面と推定される.

 (13)以上前線の傾きを前線が九州南岸沖に東西に伸

びている場合の経度方向だけの傾斜について論じたが,

実際は低気圧が東シナ海から近づくときなどの温暖前線

が五島方面から南東に向けて九州南岸沖に伸びている場

合もあるから,そのような場合が結果的に福岡・鹿児島

間の前線面高度の差を小さくしている影響もあることを

考慮しなければならない.

 7. 層別気温逓減率による不安定層と雲厚

 Aerological Dataの1956~60年における福岡と鹿児

島の5年平均,および比較のための1961~65年における

福岡の5年平均によって月別時別の3層間(900~800

mb,850~500mb,700~300mb)の気温差を図示する

と第8図下半のようになる.この図により気温逓減率の

日変化は鹿児島より福岡に大ぎい傾向があり,特に900

~800mb層において鹿児島が年の半分は日変化をほと

んど示さないのに対し,福岡は11月と12月を除くすべて

の月にかなりの日変化を示し,特に気温の高い6~9月

には0,5。~1,40Cも21hの方が大きい.

 また,850~500mbと700~300mb間においても21h

は9hより0.50C前後大きい場合が多い.すなわち,こ

れらの層では9hより21hの方が不安定になりやすい.

 この第8図で目立った特徴は2か月週期がきれいに出

ていることであり,特に850~500mbの福岡の逓減率に

顕著である.

 なお,この層別気温逓減率の年変化は900~800mb間

では小さく,その振幅は2。C以下であるが,850~500

mb間では50Cくらいとなり,700~300mb間では7~

、天気”15.9.

Page 7: 九州における大気の構造と雲の性質* · (6)700mbと600mb高度における雲のできやすい確 率としては福岡・鹿児島とも4月が最も大きく,次いで

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九州における大気の構造と雲の性質

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 実線は福岡・破線は鹿児島・点線は

 1961~65年の福岡

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80Cで,1961~65年の福岡では1~4月間に10。C近く

も大きくなっている.この700~300mb間で1月の真冬

から4月の春にかけ急速に気温逓減率が増大し,福岡・

鹿児島とも年間でこの4月に逓減率が最大となることに

、は大きな関心が持たれる.しかも900~800mb層間では

3~4月が年間でいちばん逓減率が小さい.すなわち,

4月ごろは下層はいちばん安定化するが,中上層は最も

不安定化する時期ということになる.このことは九州で

の雷雲の特性等と一致し,4月ごろ中上層の寒気移流に

より特に強い鉛直不安定となることが多く,厚い高い雲

の発生が多くなり,熱雷以外の発雷や集中豪雨等がこの

時期に比較的に多いことをよく説明する.

 これらの変化が1956~60年だけの現象であるかもしれ

ないという疑念に対して1961~65年の福岡の資料を加え

た.また,比較のため1,000~900mb,1,000~850mb,

1968年9月

589

および850~200mbの3層間についても年変化と日変化

を図示したものが第8図の上半である.

 これによると,接地気層である1,000~900mb層の気

温差では1956~60年間および1961~65年間とも4月~10

月の高温期間は21hの方が逓減率は小さく,11月~3月

の低温期間は21hの方が大ぎい.すなわち,日出のおそ

い冬は9hの接地気温がまだ低いために9hは21hよ

り安定であるが,暖候期の9hには日射によって気温が

上昇しているころとなるので逆に9hの方が不安定にな

ることを示し,その傾向は1,000~850mb層をとづても

その両5年間とも同様である.

 しかし,85Gmb以上の層では(850~500mbと700~

300mbおよび850~200mbの各層間とも)年間を通’じ

てすべて21hの方が9hより逓減率が大ぎい.これは

ゾンデの気温測器における日射の影響も多少あるのかも

しれないが,850mb以下の暖候期には21hの方がかな

り大幅に小さい逓減率を示す事実からして現実の日変化

もあると考えられ,850mb以上では21hの方が不安定

になると考えられる.すなわち,21hは下層が安定,中

上層が不安定であり,中上層の寒気移流による大規模な

対流が起こりやすいことを示し,九州本士上での強雨が

21hごろ出やすいこと等と符合する.

 一方,最下層の1,000~900mb層および1,000~850

mb層においては両5年間とも4~6月に逓減率が小さ

く,特に21hに小さく安定である.このことは4~6月

の夜間から朝にかけ九州各地とも特に悪視程・低シーリ

ングの多いこととも一致し,この季節の大気最下層が逆

転層等も形成しやすい安定な成層条件にあり,夜から朝

にかけて強くなることと符合する.

 8.福岡と鹿児島の0。C高度の比較

 着氷は0。C層に近い過冷却水滴の雲中を飛ぶときが,

含水量多く水滴は大きいから多量に付着しやすい.この

ため,その0。C層の高度を高い精度で予報することが,

着氷予報上必要となる.そこで,基礎資料として福岡と

鹿児島における0。C層の出現高度の月別高度別出現率

分布図を求めると,第9図のようになる.

 この図から5~9月の暖候期は両地ともおおむね正規

分布をなし,6~9月は福岡の方が鹿児島より20mbく

らい低い高度に0。C層が現われやすいことなどがわか

る.5月にはその差が最大となって50mbくらいとな

る.一方,10月~4月の寒候期には正規分布がくずれ,

第1の出現率(%)の山より80~140mb低い低層に第

2の山が現われやすく,特に福岡においてその傾向が顕

31

Page 8: 九州における大気の構造と雲の性質* · (6)700mbと600mb高度における雲のできやすい確 率としては福岡・鹿児島とも4月が最も大きく,次いで

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著である.すなわち,寒気移流がきいたとき福岡では約

1,000m低い層にOOCが現われやすいのに対し,鹿児

島の方は11月のように500mくらい低いか2,000mも

低かったりしやすい傾向がある.また,この資料は春秋

の候に寒気移流による0。C高度変化の顕著なことが多

く,その影響は北部九州に顕著で,それに伴う0。C層

の高度変化も季節によりおおむね一定しやすい傾向にあ

ることを暗示する.一方,暖気移流によるOOC層の上

昇は1月と3月の冬期に現われている程度で寒気移流ほ

ど顕著でない.

 かつ,福岡・鹿児島の高度差が4~5月に最も大きく

なりやすいことは第5節での雲厚の最大月や第6節(11)

の前線の傾き,および第7節の700~300mb層における

最大の不安定と一致し,4~5月の九州上空に気温傾

度・高度傾度の急な場合が現われやすいことを物語り,

強い不連続・強いシャー・強い不安定層の存在が多く,

雷や乱気流を始め局地的異常気象等を発生しやすい不安

定エネルギーの大きい場合が多いことを示すものと考え

32

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 9. あとがき

 以上から九州では冬は2,000m,夏は1,000m高度付

近に雲ができやすく,冬には5,000m以上に雲のできる

ことは10%以下しかないが,3~4,000mの雲は夏より

も春に多い.雲厚は冬や秋に薄く2~500mくらいのも

のが多く,4,000m以上の厚い雲は(9時と21時のゾン

デ資料では)福岡・鹿児島とも4~5月に最も多い.

また,4~5月は700~300mbの中上層が一番不安定

で,900~800mbの下層は一番安定である.前線性逆転

の高さの差からする九州上の前線の傾きも春に一番大ぎ

く,OOC高度の福岡・鹿児島間の高度差も4~5月に顕

著で大きい.これらは九州各地で4月の雷日数が3月や

5月の2倍あり,このころ強雨や乱気流・ひょう等の対流

性の局地的異常気象が比較的多く,地上では各空港とも

悪視程や低シーリングが多いことの原因となっている.

 この調査には中尾陽子嬢の大きな協力を受けた.記し

て謝意を表する.

嘩天気”15.9,