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-2- 帝国書院『中学生の公民(最新版)』 人権についての見方や考え方やその技能を学ぶ 筑波大学教授 江口勇治 人権についての見方や考え方をみんなで 学ぶことの必要性 みんなの周りに、昔の専制君主(人の支配)の ように自分勝手な乱暴者がいるとします。彼はあ る日突然「私の許可なく、喋ってはいけない」と 言い出しました。ところがみんなは、それは「君 が決めることではない。みんなで決めることだ。 また喋ってはいけないとすれば、みんなで決める ことができない。意見を言うことは、自分でみん なのことや自分のことを考えるときには絶対に必 要だ」と声を上げ、みんなが自分たちのたいせつ な決まりや方針を決める社会(民主主義)が必要 だということを学びました。そしてそのようなた いせつなみんなの権利(人権)や責任を文書(憲 法)に残し、将来もこの原則(立憲主義、議会 制)から考えてもらうことにし、国民主権と法の 支配を実現させました。 ところが、ある日その国の言葉がよくわからな い人がやってきて「私はうまく表現できないが、 私の意見も聞いてほしい」と訴えました。すると その訴えに共感して「みんなが決めたことでも、 それがいつも正しいとは限らないかもしれない、 少数派の人の考えにも耳を傾けよう」となりまし た。少数派の意見にも配慮することは、社会がよ りよくなるために必要と考えたからです。これが 国民主権と基本的人権の関係ではないでしょうか。 そしてこれを歴史的にわかるように工夫してい るのが「2.基本的人権の歩み」です。 このように人権の見方や考え方の理解では、日 本ばかりでなく他の国の歴史や現代の新しい動き を利用して学ぶことが必要なのです。 ところで日本国憲法では政府が国民のためにや べきことや国民に対してやってはいけないことな どを一般的に規定していますが、だからといって 人権の侵害がなくなることはありません。そこで 憲法の規定や国際的な人権保障の規定をみんなで まず理解することが必要ですが、あわせて自分た ちの権利は自分たちで守るという視点に立って守 るための技能を磨くことも欠かしてはいけません。 身近な差別や偏見を解決する技能を磨く 人権の多くは相手の立場になったとき、自分 でもきっとそう思うとみんなが納得したものです (立場の互換性)。でも気づかないうちに自分の目 線だけでは、相手の人としての尊厳や個性を踏み にじることがあります。たとえば「第3部 第2 章 人権を考える」「1.偏見や差別」の「こんな 場面を見かけませんか」は私たちの身の周りで生 じていることです。 帝国書院『中学生の公民(最新版)』p.98~99

人権についての見方や考え方やその技能を学ぶ · 人権についての見方や考え方やその技能を学ぶ 筑波大学教授 江口勇治 £人権についての見方や考え方をみんなで

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帝国書院『中学生の公民(最新版)』

人権についての見方や考え方やその技能を学ぶ筑波大学教授 江口勇治

人権についての見方や考え方をみんなで

学ぶことの必要性

 みんなの周りに、昔の専制君主(人の支配)の

ように自分勝手な乱暴者がいるとします。彼はあ

る日突然「私の許可なく、喋ってはいけない」と

言い出しました。ところがみんなは、それは「君

が決めることではない。みんなで決めることだ。

また喋ってはいけないとすれば、みんなで決める

ことができない。意見を言うことは、自分でみん

なのことや自分のことを考えるときには絶対に必

要だ」と声を上げ、みんなが自分たちのたいせつ

な決まりや方針を決める社会(民主主義)が必要

だということを学びました。そしてそのようなた

いせつなみんなの権利(人権)や責任を文書(憲

法)に残し、将来もこの原則(立憲主義、議会

制)から考えてもらうことにし、国民主権と法の

支配を実現させました。

 ところが、ある日その国の言葉がよくわからな

い人がやってきて「私はうまく表現できないが、

私の意見も聞いてほしい」と訴えました。すると

その訴えに共感して「みんなが決めたことでも、

それがいつも正しいとは限らないかもしれない、

少数派の人の考えにも耳を傾けよう」となりまし

た。少数派の意見にも配慮することは、社会がよ

りよくなるために必要と考えたからです。これが

国民主権と基本的人権の関係ではないでしょうか。

 そしてこれを歴史的にわかるように工夫してい

るのが「2.基本的人権の歩み」です。

 このように人権の見方や考え方の理解では、日

本ばかりでなく他の国の歴史や現代の新しい動き

を利用して学ぶことが必要なのです。

 ところで日本国憲法では政府が国民のためにや

べきことや国民に対してやってはいけないことな

どを一般的に規定していますが、だからといって

人権の侵害がなくなることはありません。そこで

憲法の規定や国際的な人権保障の規定をみんなで

まず理解することが必要ですが、あわせて自分た

ちの権利は自分たちで守るという視点に立って守

るための技能を磨くことも欠かしてはいけません。

身近な差別や偏見を解決する技能を磨く

 人権の多くは相手の立場になったとき、自分

でもきっとそう思うとみんなが納得したものです

(立場の互換性)。でも気づかないうちに自分の目

線だけでは、相手の人としての尊厳や個性を踏み

にじることがあります。たとえば「第3部 第2

章 人権を考える」「1.偏見や差別」の「こんな

場面を見かけませんか」は私たちの身の周りで生

じていることです。

帝国書院『中学生の公民(最新版)』p.98 ~ 99

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 これらの生徒のセリフの中で、事実を誇張した

り自分の都合に合わせて人を勝手に判断する何げ

ない発言をマークさせてみてはどうでしょうか。

 このように他者をその人として認める感性や感

覚が、生活の中で実践されることがまず人権の技

能を磨くはじめの一歩だと思います。

 また差別や偏見を解消し、自由で公正な社会を

実現するうえでは、ささいな侵害でもお互いが声

をあげみんなに伝える必要があります。自由権、

平等権、社会権の意義をみんなが形式的には理解

していても、社会が複雑で多様化するにつれ、権

利と権利の衝突が日常化し、どの権利を擁護する

ことが社会にとってよいことなのかよくわからな

くなってきました。そんな時には「自分のことは

自分で決めたいと声を上げる」「みんなのことはみ

んなで決めるべきだと主張する」といった原則に

立ち返ることがたいせつなのです。

 たとえば「あなたはどっち?」では「個人の自

由か、公共の福祉か」が争われていますが、争点

帝国書院『中学生の公民(最新版)』p.106

を明らかにし、生徒にそ

れぞれの立場から主張さ

せて、両者の主張の妥当

性を、生徒全員で議論さ

せるのも一手です。いろ

んな意見がでてまとまら

ないかもしれませんが、

それでもそんな活動から、

冷静に判断する技能(能

力)が育っていくでしょ

う。

新しい権利は各人

およびみんなが考え

るもの

 人権とは、もともと社

会をより開かれたものに

していく複数的なもので

す。そのため「さまざま

な新しい人権」が今日で

は主張され、一般的に人

人はそのような権利も認

めるべきではないだろう

かとみんなが考えはじめ

ました。

帝国書院『中学生の公民(最新版)』p.115

 新しい人権として示されているものを、その人

の立場になっても、そうした主張を訴えられる側

になっても、「たいせつなこと」として認められる

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されているのです。たとえば「第1部 第2章 

個人と社会生活を考えよう」の「4.よりよいく

らしのために」では、あるマンションで起きた人

間の権利衝突や紛争を、当事者みんなで解決する

私的自治の原則から、みんなで話し合い、よいル

ール(法)を決めることで、公正な解決を実現し

てみようとなっています。

帝国書院『中学生の公民(最新版)』p.119

かどうか、話し合ってみましょう。

 また新しい権利は司法の場で決まっていく性質

もあるため、人権の擁護を裁判所に求めることも

増えてきました。

 しかし基本的には現在および将来にわたってこ

れらの権利はたいせつなのであると考え、それを

守る責任を各人がそれぞれに考えてみることが必

要なのです。人権や権利はよく義務や責任との関

係でも考えられるように、実はバラ色の天から下

りてきた恵みではないのです。暴君を排除したよ

うに、苦労して人々が獲得してきたものです。そ

してみんなでやってよいこと、やっていけないこ

とを、各人に課したのです。たとえば自分で決め

てよい範囲と自分では決めてはいけない範囲をわ

きまえること、勝手な濫用は戒めること、またお

かすことのできないものとしてそれを守る責務が

各人にあることを決めたのです。そのため人権は、

日常の生活の中でたえず反省的に考えなければな

らないものなのです。

人権の見方や考え方はどこでも学べること

 『中学校学習指導要領解説-社会科』では「個

人の尊厳と人権の尊重の意義、とくに自由・権利

と責任・義務の関係を広い視野から正しく認識さ

せ」「国民主権を担う公民として必要な基礎的教養

を培う」ということを基本的な視点にして、それ

ぞれの指導内容と全体との有機的な関連を図る必

要がある」として、個人の尊厳・人権・国民主権

を、どの内容の学習でも題材として筋として通し

てほしいとしています。そのため教科書のどの項

目でも程度の差はあれ、人権が学べるように工夫

帝国書院『中学生の公民(最新版)』p.34

 こうしたいろいろな内容を通じて、人権を学ぶ

ことは、人権学習の基本だと思います。

 その他の章でも、学習では「相手の立場に立っ

てみるとどうなるか考えて、みんなが必要だと思

っていることは、法や司法を通じて、政治を通じ

て実現しよう」という方向で学べるようになって

います。このような視点に立って、身の周りの問

題や紛争を解決する見方や考え方および技能をみ

んなで学ぶことが、実は人権を確かなものにする

ことになるのではと考えます。

 なお中学校の人権では、あまりむずかしい問題

ではなく、学習することで問題がある程度解決で

きるのではと実感できる教材をもっと取り扱うこ

とが必要ではないでしょうか。たとえば「第2部

 第4章 福祉社会と財政」の「2.ともに生き

る社会に向かって」と「3.福祉社会を実現する

ために」などはその好例ではないでしょうか。「と

もに生き、お互いがその人なりの尊厳をまっとう

できる」ことを、体験的に実感できることが人権

の定着につながることをもっと思い起こす必要を

感じます。

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栃木県那須郡西那須野町立三島中学校 山本英明

わたしの授業実践

日本国憲法を学ぶ~憲法改正について考えよう~

はじめに

 日本国憲法が制定されて間もなく60年を迎えよ

うとしている。この憲法によって私たちの生活が

守られ、人間らしい生活を送ることができていこ

とを、私たちはあまり意識しないまま暮らしてい

るといってよい。憲法に保障された基本的人権の

理念は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成

果であり、過去いくたの試練に堪えてきた価値あ

るものであり、自由で幸福な人間らしい生活を願

う人々にとって、広く支持され得る普遍的な内容

をもっている。しかし、その間、急激な社会の変

化にともなって、憲法の基本的原則や、そこに保

障された人権のみでは対応できなくなってきてい

ることも周知の事実である。近年の改憲論議は、

そういうところから起こっているものと思われる。

 そこで、今回の授業では、日本国憲法の基本的

原則やそこで保障されている人権の内容について

学ばせ、その上で、生徒たちに、現代の社会にお

いて自分たちの権利を保障する最高法規としての

憲法はどうあるべきかについて、さまざまな憲法

改正試案を検討し、それぞれのよさや問題点など

について話し合う活動を通して、社会的な見方・

考え方を養いたいと考えた。

単元の目標と指導計画

<目標> (◎は第11時~第12時に関わる重点目標)

観     点 目                       標社 会 的 事 象 へ の関 心・ 意 欲・ 態 度

①わが国の政治が日本国憲法に基づいて行われていることに関心をもち、日本国憲法の基本原則やそれに基づく政治について意欲的に調べることができる。②基本的人権で保障されている各権利を人間尊重の視点で考え、民主的な社会生活の実現に向けて行動しようとする意欲をもつことができる。今日の憲法改正問題に関心をもち、現代社会と日本国憲法の溝を埋める方策を建設的に考えようとすることができる。

社会的な思考・判断 ①共生社会おいて、各種の人権問題を人間尊重の立場から多面的・多角的に考察できる。②日本国憲法に基づく政治により、国民の自由と権利が守られ、民主政治が行われるということについて、多面的・多角的に考えることができる。◎③民主的な社会生活を営むために、日本国憲法を改正すべきかどうかをさまざまな憲法改正試案を比較検討することによって考え、自由・権利と責任・義務の関係をふまえ、公正に判断することができる。

資料活用の技能・表現 ①基本的人権に関わるさまざまな資料から、現代社会で問題になっているさまざまな事象をとらえたり、それらについて追究し、考察した過程や結果をまとめることができる。◎②さまざまな憲法改正試案の中から、自分の考えを深めるために役立つ情報を適切に選択し、自分の考えを裏付ける資料として活用することができる。

社会的事象についての知 識 ・ 理 解

①人間尊重の考えに立った日本国憲法と、その人権保障のあり方について理解し、その知識を身につけることができる。②国民主権と平和主義が人権尊重とともに基本的原則とされている意義について理解し、その知識を身につけることができる。③天皇の地位と天皇の国事行為について、国民主権と関連させながら理解できる。

<指導計画>          :本時 (p.○は帝国書院『中学生の公民(最新版)』の関連ページ)

時 間 学 習 事 項 学  習  内  容第1時 日本国憲法とわたしたち

 (p.96~97)・身近な決まり ・法の目的・憲法の最高法規性

第2時 基本的人権の歩み (p.98~99)

・人権獲得の歴史・基本的人権の意義

第3時 国民主権と憲法 (p.100~101)

・日本国憲法の誕生 ・国民主権と天皇・前文に見る国民主権 ・憲法改正

第4時 平和主義をつらぬくために (p.102~105)

・平和主義 ・自衛隊と日本国憲法・非核三原則 ・日米安全保障条約と自衛隊

第5~ 8時

日本国憲法に保障された人権について調べよう (p.106~117、120~121)

・平等権、自由権、社会権、参政権、請求権について、その内容や、今日的な問題となっている点を調べて発表する。・公共の福祉・国民の三大義務

第9時 新しい人権 (p.118~119)

・憲法で明文保障されていない新しい人権について具体的場面から考える。(環境権・知る権利・プライバシーの権利・自己決定権など)

第10時 国際社会と人権 (p.121、176~177)

・国際社会における人権問題・国際的な人権に関する条約等

第11~ 12時

現代社会と日本国憲法~憲法改正について考えよう~

・憲法にある基本的人権と現実との間をどのように埋めればよいか、その方法として憲法改正が必要かどうかを考える。

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授業の実際(第11時・第12時)

(導入 第11時:5分)

T:今まで日本国憲法に保障されてきたさまざま

な人権について考えてきましたが、それぞれに

いろいろな問題を抱えていることがわかったと

思います。憲法はこのままでこれらの問題を解

決していけるのでしょうか?(と言って、憲法

 改正の世論調査のグラフを見せ考えさせる)

S1:もうそろそろ、憲法は改正した方がいいと

思う。平和主義の学習の時に、自衛隊をイラク

に派遣するのは憲法9条に反すると思ったから。

S2:今の憲法でも生活上大きな問題がなければ、

わざわざ変えなくてもいいんじゃないかな?

T:ほかのみんなはどう思った?今までの人権の

学習を思い出してみて、憲法を改正した方がい

いと思う人?改正しなくてもいいと思う人?

(挙手でその数を確認する。改正した方がいい

がやや多かった)

T:最近は憲法改正の動きがさまざまな方面から

検討されています。今日は1990年代から最近発

表された多くの憲法改正案を比較検討して、ど

ういう案が望ましいか、また、本当に憲法改正

が必要かどうか、考えていきたいと思います。

(展開1 第11時:30分)

 憲法全文について比較検討するのでなく、検討

する項目を絞って、現在の憲法の文言とさまざま

な改正案の文言とをを掲載したワークシートを用

意し、5人ずつのグループを作って検討させた。

 検討する項目は以下七つの項目とした。グルー

プの数に合わせたということもあるが、生徒たち

のそれまでの憲法学習での既有知識を生かすこと

ができると考えたからである。

 ①天皇制と日本国憲法

 ②平等権と日本国憲法

 ③自由権と日本国憲法

 ④社会権と日本国憲法

 ⑤参政権・請求権と日本国憲法

 ⑥新しい人権と日本国憲法

 ⑦平和主義と日本国憲法

 ワークシート内には、さまざまな改正試案の中

からできるだけ意見の異なったものや改正案とし

て方向性は同じだが、考え方が違うと思われるも

のを選ぶよう配慮した。そうすることで、生徒た

ちが多様な見方・考え方をもつ一助になると考え

た。

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(展開2 第11時:15分+第12時:15分)

 班で検討した結果を、全体に発表する(各班5

分程度)。発表に際しては、発表班には①それぞ

れの試案の特徴、㈪どの試案が自分たちの考えと

一致するか、㈫その理由の3点を必ず入れた上で

発表させ、発表を聞く側には、各班の発表の要旨

をまとめたワークシートを印刷配布し、それにメ

モを取らせながら発表を聞くよう促した。

(展開3 第12時・25分)

各班の発表をもとに、教師が司会者となって、

各項目について自由討論の時間を設けた。自由討

論なので出された意見は多岐にわたっていたが、

以下にいくつかの例を示す。

(まとめ 第12時・10分)

 憲法改正問題について、話し合ってきた内容や

調べたことがらなどを元に、最後に、憲法を改正

すべきかどうか、そしてその理由について、個人

で考えたことをワークシートにまとめさせた。そ

して、この授業についての感想を書いてもらった。

▼社会権と日本国憲法について意見を述べた生徒

生存権の具体的内容について、憲法に書ききれないこ

ともあると思うので、新たに法律を作った方がいいの

ではないか。「桶川事件」のおばあさんのような状況

にしないためにも、健康で文化的な最低限度の生活は

どんなものかを、明記した方がいい。

▼新しい人権(プライバシーの権利)について意見を述べた生徒

ダイレクトメールが知らない所から届いたり、ハガキ

やEメールで変な請求が来るオレオレ詐欺などの被害

をみていると、自分に関する個人情報がいろいろなと

ころから漏れているのだと思う。そういう犯罪を未然

に防ぐためにも、個人情報を保護できる十分な手段が

とられるべきだと思う。憲法上も明確にプライバシー

の権利を書くべきで、その上でいろいろな法律も考え

ていくべきだと思う。

▼平和主義について意見を述べた生徒

日本国憲法の平和主義は、世界に誇れるものだと思う。

第9条の中身は大きく変える必要がない。国際社会の

中で日本は、不戦の意味について訴える必要があるの

で、変えなくてもいいのではないかと思う。自衛隊も、

外国の復興支援に協力するだけに限定して、日本の国

内の災害復旧と同じような活動をすれば、憲法に違反

することにはならないと思うので、法律の解釈でそれ

は十分やっていけるのではないか。

▼憲法改正そのものについて意見を述べた生徒

憲法の作られ方は、確かにアメリカ中心に行われたも

のかもしれないが、その内容が優れたものであれば、

あえて変える必要はない。憲法の基本原則を変えるよ

うな改正には賛成できない。

▼生徒の感想から

…(中略)…憲法改正について僕たちも真剣に考えな

ければならないと思った。基本的人権は時代とともに

その内容も変化するので、憲法の解釈だけでは 問題

が解決できない面もあることがわかった。…

(中略)…平和主義の考え方も、国際貢献が必要な日

本に合うように憲法の条文を変えることも必要ではな

いだろうか。しかし、戦争をしないという考え方は変

えてほしくない。なぜならば、平和があっての僕たち

の生活であり、人権の保障がされるからだ。

今後の課題

 憲法改正の問題を、生徒たちの目線から考えさ

せることを意図して授業を仕組んでみたものの、

内容が大変難解な部分を含んでいるために、教材

化が大変むずかしかった。しかし、話し合いにい

たるまでの1単位時間の授業で「考える」場面を

必ず設けるようにしたため、生徒たちは日本国憲

法と現実社会の溝がある事実を十分にとらえた上

で、憲法を改正すべきなのか、現在の憲法を生か

していくべきかを真剣に議論できたことが大変有

意義であった。

 今回は、憲法改正について「自由討論」という

形式を採ったが、何か一つのテーマに絞って、デ

ィベート形式の授業を行ったり、パネルディスカ

ッション形式の授業に発展させることも可能であ

ると思う。いずれにしても、限られた時間の中で

話し合いになる資料を検討させなければならない

ので、基礎となる資料などは、教師側で準備する

必要があると思う。また、教師側で資料をわかり

やすく加工し、提示できれば、生徒の思考にも幅

ができたり、多様性が生まれるものと思う。今後

も公民的分野の学習においては、各単元において、

評価の重点化を図って、教材づくりや授業展開の

組み立てをしていきたいと考える。

〈参考文献〉大野一夫著『公民の授業65時間』(1998年、地歴社)、渡辺治編著『憲法改正の争点・資料で読む改憲論の歴史』(2002年、旬報社)他

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長野県松本市立丸ノ内中学校 黒沢幸喜

わたしの授業実践

「選挙と選挙をめぐる問題点」の学習~「公民的資質の基礎」を養う“選挙ゲーム”の試み~

帝国書院『中学生の公民(最新版)』p.152,155

はじめに

 「…、国際社会に生きる民主的、平和的な国家・

社会の形成者として必要な公民的資質の基礎を養

う」と学習指導要領の中学校社会科の目標に記さ

れている。

 本校社会科教科会では「公民的資質」を“社会

的事象を多面的・多角的にとらえ、正しい判断と

正しい行動がとれる資質”と考えている。その資

質向上のために、1年次より段階的に問題解決学

習を仕組み、社会的事象に対して個の思考を広げ

ながら深める機会を設けてきている。

 ところで、「投票」という行為を考えてみると、

さまざまな社会的事象に対して関心を寄せ、あら

ゆる側面から情報を収集・処理することが必要と

なる。また、そうすることにより、諸問題への自

らの考えを持つことができ、候補者(政党)の公

約と照らし合わせながら判断し、投票している。

 このように、「投票」という行為はまさしく「公

民的資質」に裏づけされた“判断”のもとに行わ

れる行為であり、その行為が正しく行われること

が民主国家の発展に大きく関わっている。したが

って、将来自分の考えと判断で、主体的に選挙と

いう制度に関わっていける生徒に育てることが、

学習指導要領「中学校社会科の目標」の究極の

「ねらい」ではないかと考えている。

 以上のことから、「選挙と選挙をめぐる問題点」

の授業を、「公民的資質の基礎」を養う総まとめの

時間として位置づけたい。単なる選挙制度のしく

みや問題点をつかませるばかりではなく、「選挙」

を疑似体験(選挙ゲーム)をすることにより、そ

れまで培ってきた「学び方」を総動員させながら、

学習を深めることができるのではないかと考えた。

また、思考を練り上げ、判断する経験を積ませる

ことは、社会的事象をより身近に引き寄せ、主体

的に社会を歩むための視点を与えることができる

のではないかと考え、「選挙ゲーム」を授業の柱に

据えた展開案を作成してみることにした。

「選挙ゲーム」を柱とした授業展開

(1)「選挙ゲーム」

 帝国書院『中学生の公民(最新版)』p.152, 154

を参考にしながら展開案を作成することにした。

 教科書では、

  ○公約づくり

  ○グループづくりと立候補者の決定

  ○立会演説会と政策討論会の実施

  ○投票並びに開票

  ○選挙ゲームの結果についての考察

という流れで展開が仕組まれている。

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 新聞記事などで国政を振り返らせながら「公約

づくり」を疑似体験することは、それまでに培っ

た既習知識を使いながら、それらを互いに関連づ

けたり統合したりする作業が期待できる。これは

社会的事象を多面的・多角的にとらえるために必

要な作業であり、個の思考をより確かなものにす

るための大切な学習過程であると考える。また、

各々の公約をまとめグループ分けすることは、生

徒たちには理解しにくい「政党」の概念を体験的

に学ぶことができるのではないだろうか。

(2)「選挙」に関する生徒の意識調査

 展開案を作成するにあたり、「選挙」に関する

生徒の意識を調査することにした。以下、その結

果である。

 ○20歳になったら選挙に積極的に行くか?

   行く…73%  行かない…27%

 ○「行く」理由 

 ・自分たちの生活に関わることだから。 

 ・国民の一人として当然だから。

 ・若者の投票率が下がってきているから。

 ○「行かない」理由

 ・仕事をしていれば時間に余裕がないから。

 ・誰が当選しても今の政治は変わらないから。

 ・(政治に)関心がないから。

帝国書院『中学生の公民(最新版)』p.152

 ○投票率を上げるにはどうしたらよいか?

・投票できる場所を増やす。

・自宅からでも投票できるようにする。

・若者をターゲットにしたイベントとタイアッ

プする。

・特典をつける。

・選挙の大切さをしっかり教える。

・選挙に行かない人に罰則を与える。

・今の政治を画期的に変えてくれる人が出馬す

ればいい。

 生徒たちは1年次の「身近な地域」において、

市内の再開発の現状とこれからの街づくりについ

帝国書院『中学生の公民(最新版)』p.152

て追究し、住民の声を最大限取り入れようと努力

している行政の姿を学習した。またそれらの活動

団体に自分たちの考えを伝えることを通して、市

政に関わる体験をしてきた。さらに「都道府県の

調査」の単元において「沖縄県」を取り上げ、米

軍基地縮小と地域の活性化に揺れる沖縄県民の姿

に触れ、国政や市政に主体的に関わっていくこと

の大切さを学んできた。約7割の生徒が「選挙」

に積極的に行くと答えているのは、それらの学

習の成果と考えることができるのではないだろう

か。

 しかし、約3割の生徒が「行かない」と答えて

おり、さまざまな社会的事象への関心を高めると

同時に、国政や市政へ関わることの認識をより深

く掘り下げていく必要があるように思う。

 また投票率を上げるために、「イベントとタイ

アップする」とか「特典をつける」など、いわゆ

る「エサで釣る」手法が提案されており、民主国

家における「選挙」の目的と意義を確実にとらえ

させる必要性があるように感じた。

 以上、このような生徒の実態を踏まえ、“選挙

ゲーム”を柱とした「選挙と選挙をめぐる問題点」

の展開を考えることにした。

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(3)選挙ゲームを柱とした「選挙と選挙をめぐる問題点」の単元スケッチ

まとめ(授業を展開するにあたって)

 「選挙ゲーム」における“公約づくり”の場面

は、現在の社会情勢と絡めながら、既習知識(経

済活動、平和主義、社会権、福祉社会と年金など)

を関連させ、総合的に思考を深めることができる

点で、“公民的資質の基礎”を構築するための“鍵”

になるものと思われる。また、“政策討論会”と称

して行う意見交換の場面では、お互いのやりとり

を聞き合う中で、それまでの学習を振り返り、必

要感を持ちながら、より確かな思考を構築するた

めに有効であると考える。そのためにも、既習事

項を整理し、まとめる時間を保障する必要がある

だろう。

 さて、この展開の続きは「選挙をめぐる問題

点」の学習である。“ねばり強い追究心”を喚起す

るためにも、「選挙ゲーム」を通じて生じた生徒の

素朴な疑問を大切にし、生徒の意識に沿った展開

を心がけるようにしたい。

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わたしの評価方法

静岡県浜北市立北部中学校 小畑多佳子

指導に生きる評価をめざして~自己評価と補充・深化学習~

はじめに

 評価を考えるとき、「指導と評価の一体化」「指導

に生きる評価」が大切であるといわれる。毎時間

生徒の実態や現状を的確にとらえ、それに合った

指導の手立てを取るために、自己評価表を使って

1時間の授業の理解度を確認し、授業内容をまと

めたり、疑問点を記入したりするようにした。し

かし授業の中では理解をしていても、時間がたつ

と、忘れてしまったり、わからなくなってしまっ

たりする場合が多い。そのため、単元末に補充・

深化学習を行うことが理想であるが、現実には時

間的制約もあり、各単元末での実施は難しい。そ

こで経済分野全体の学習のまとめとして補充・深

化学習に取り組んだ。

年間指導計画・自己評価表 等

 年間指導計画に基づいて、自己評価表を作成し

た。その際毎時間の授業で押さえるべき、基礎・

基本を生徒にも明確に提示した。経済分野では、

単元を①消費者②企業③政府の三つに構成した。

三つの単元のスタートでは、経済分野に関する自

己課題を設定し、追究活動を行った。また三つの

単元のまとめとして、各単元の基礎・基本にかか

わる用語を中心に確認テストを行った。そして自

分で学習内容の定着度を判断した上で、補充・深

化学習に自己選択で取り組んだ。

<資料1 年間指導計画(②企業)>

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(1)本時の目標

<補充コース>経済に関する基本的な語句を用い

て、市場経済の仕組み、税の仕組みと意義など

について、自分の言葉でワークシートにまとめ

る。 (知識・理解)

<深化コース>自分の学習課題の解決を図るた

め、複数の資料を用いたり、既習事項と関連付

けたりしながらレポートを完成する。

(思考・判断)

(2)授業構想

 本時は、補充・深化学習の2時間目に当たる。

 (中略)経済分野の形成的評価を基に、生徒自

身が次の2つのコースの中から選択をする。

A:経済の学習を教科担任や級友と一緒に振り返

る(補充)コース

B:経済の学習をはじめるときに抱いた疑問=学

習課題のうち、授業の中で解決が不十分だと

<資料2 自己評価表 ③政府> <資料3 確認テスト ③政府>

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思われる課題を自分の力で解決していく

(深化)コース

 コース選択に当たっては、生徒自身の希望を尊

重するが、個別にカウンセリングを行うことで、

より適切なコース選択ができるようにし、A(補

充)コースの生徒には、特に「わかった!」とい

う思いを、B(深化)コースの生徒には、「やって

みた!」「できた!」という思いを味わわせたい。

また、 A(補充)コースの1時間目は教師主導の

学習を行うが、2時間目に当たる本時は、少しず

つ生徒の主体的な学習になるように、ヒントカー

ドやワークシートなどを用意したり、キーワード

を示したりするというように支援を最小限にとど

めたい。B(深化)コースについては、1時間目の

取組のようすをみながらヒントカードを用意する

が、生徒ができるだけ主体的に支援を求めること

ができるように励ましていきたい。

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おわりに

 自己評価表を用いることで、生徒は1時間の自

分を評価し、自分の学習の到達度を知ることがで

きた。教師は、生徒一人ひとりの努力を認め、個

に応じたアドバイスや励ましの言葉かけをするこ

とができた。また、経

済分野全体を振り返る

学習を行ったことは、

単なる補充学習にとど

まらず、経済分野にお

ける単元と単元との関

連性に気付くことがで

きたり、次の政治分野

の学習に対する関心を

高めたりすることにつ

ながった。そうした点

で「指導に生きる評価」

となった反面、深化学

習に対する支援の工夫

が十分でなく、生徒の

主体性にまかせ過ぎた

という課題が残った。深化学習や発展的な学習は、

扱いが難しい反面、生徒の学習意欲を高めたり、

生徒自身の学力を向上させたりするための大きな

可能性をもっている。今後十分な力をもった生徒

の力を一層伸ばすための深化学習や発展的な学習

を工夫していきたい。

<資料6 A (補充)コースのまとめワークシート>

(3)学習過程<資料4 活動案> <資料5 用語集 ③政府>

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帝国書院『中学生の公民(最新版)』p.146 ~ 147 ワークシート第3部 私たちの民主政治 4章 国の政治を知ろう 4 人権を守る裁判所

人権を守る裁判所

ワーク1   裁判の意義について考えよう。

《再審無罪判決の事件の一覧表》

被告人(逮捕時の年齢)

事件発生 逮捕 起訴容疑 1審死刑判決

控訴審死刑判決

上告審死刑判決

再審無罪判決

免田  事件

免田栄(23 歳)

194812.29

19491.13

強盗殺人19503.23

19513.19

195112.25

19837.15

財田川 事件

谷口繁義(19 歳)

19502.28

19504.1

強盗殺人19521.25

19566.8

19571.22

19843.12

島田  事件

赤堀政夫(25 歳)

19543.10

19545.24

殺人19585.23

19602.17

196012.15

19891.31

松山  事件

斎藤幸夫(24 歳)

195510.18

195512.2

強盗殺人及び放火

195710.29

19595.26

196011.1

19847.11

1.右の図中(  )にあはてまる語句を記入しよう。

2.刑事事件について、裁判の流れを右の図中に赤ペン

でなぞってみよう。

3.逮捕から再審での無罪判決までの年月を計算してみ

よう。(15日以上は切り上げ、未満は切り捨て)

○免田事件   約   年   か月

○財田川事件  約   年   か月

○島田事件   約   年   か月

○松山事件   約   年   か月

4.刑事補償請求による補償額を計算してみよう。

○免田事件 1日の補償額 7,200円

補償金額総額        円

○島田事件 1日の補償額 9,400円

補償金額総額        円

5.裁判を受ける権利や刑事補償請求権を保障した日本国憲法の条文を書き出してみよう。

第32条[ ]第40条[ ]

6.日本の裁判が三審制や判決が確定した後も再審請求のしくみをとっている理由を考えよう。

[ ]

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ワーク2   違憲立法審査権について考えよう。

判 例・・・1973年、最高裁判所は刑法第200条に対して違憲判決を出した。

刑法第199条 人を殺した者は、死刑又は無期若しくは三年以上の懲役に処する。

刑法第200条 自己又は配偶者の直系尊属を殺した者は、死刑又は無期懲役に処する。

1.日本国憲法第14条第1項(法の下の平等)を書き出してみよう。

[ ]2.刑法第200条が違憲とされたことをあなたはどう考えますか。自分の考えをまとめてみよう。

[ ]ワーク3   裁判員制度について考えよう。

裁判員制度とは・・・

 国民から無作為に選ばれた裁判員が、殺人、傷害致死などの重大事件の地方裁判所における刑

事裁判で裁判官と一緒に裁判をするという制度です。裁判員は裁判官と一緒に被告人が有罪か無

罪かを決め、被告人が有罪であると判断した場合には刑の種類と重さを決めます。裁判員に選ば

れたら、基本的に拒否することはできません。この裁判員制度は、平成21年5月までにスタート

します。

1.あなたは将来、裁判員をやってみたいですか。    はい      いいえ

  その理由は

[ ]2.裁判員制度の導入には、どのようなメリットがあるか考えよう。

[ ]3.あなたが将来、裁判員に選ばれた場合、どんなことを不安に思うか予想してみよう。

[ ]