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病院概要
職員数:1119(医師151名 看護師556名)
病床数470床 診療科33科 平均在院日数12.21日
一般入院基本科7対1
(透析室 看護師14名 臨床工学技士9名 看護補助員1名 クラーク1名 ほか)
総血液浄化件数 10,530件(入院透析2,410件、外来透析8.120件)
外来維持透析患者数 60人前後
新規透析導入症例 44人/年 平成26年度
1.はじめに
透析療法は食事や日常的な事が体調に大きく影響を及ぼすため自分の事は自分で管理すると言う事が
とても大切である。
そのため「体の事は医師や看護師におまかせ。」というのではなく体の調子を整える。体力をつける。
異常を早く見つけるといった事を自分で考えていく必要がある。
透析療法に必要なシャントとは上腕の動脈と静脈を吻合しているので血流が豊富である。
その分リスクも伴うが透析患者にとっては命綱ともいえる。
今回、その命綱にスタッフ・患者自身が関心を持てるような取り組みについて考え、実践したことで
双方が成長できた活動について報告する。
2.サークル紹介
VA(バスキュラーアクセス)チーム のメンバーが主体である。毎日諸
先輩方の指導を受けながら日々穿刺技術を磨いている。
(自分です)
【名前の由来】
シャントを通る力強い血流をスリルと呼んでいる。
スリルの”強い弱い”を指先で感じながら穿刺する。
そう!それもスリル だからチーム名もスリルくらぶとした。
透析患者におけるシャント肢のセルフケア向上を目指して
シャント ちゃんと チラッと!大作戦
地方独立行政法人 那覇市立病院 透析室 三浦みうら
和孝かずたか
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3.テーマの選定
<テーマの選定理由>
透析を導入した時点で渡されるパンフレットの
最初のページには「セルフケアが大切である」と
書かれているが実際は慢性の経過をたどるため、
いつの間にか慣れが生じシャント肢のセルフケアに
対する指導ができない雰囲気になっていた。
今回QC活動として取り組み、職員患者双方が
成長できるようなテーマになると考え選定した。
4.活動計画
5.現状把握
現状把握①(手洗い→腕洗いの現状調査)
透析室看護師+臨床工学技士 計19名
外来患者55名を対象にアンケート調査を実施
日頃、清潔には心掛けているが、透析室での
手洗いは2割ほどだった。
・「みんな洗っていない」
・「家で洗ってきたから綺麗」など意見があった。
現状把握②ATP測定器を使用して手洗いの効果を確認(5名で実験)
結果→
ただ「腕を洗いましょう!」では説得力が弱いので、どの程度 細菌がいるのか確認してみた。
結果:手洗い前後でATPの数が半数にまで減少していた。
76%
7% 11% 5%
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シャント肢の清潔をこころがけている
してる 時々 してない その他
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現況把握③(スリル・音の確認をどれくらいできているか)
↓患者がスリルを確認しているか否かを確認した結果 ↓スタッフによる確認
現状把握④止血ベルトと用手圧迫止血の現状調査
※(止血ベルトの使用は禁忌ではないが、当院では用手圧迫を推奨している)
↓日頃の習慣 ↓透析終了後の止血方法
現状把握⑤透析時間と、スタッフの観察時間
• 透析日週3回 (月 水 金)平均4時間透析を受けている。
• 穿刺までの時間平均15分 その間に観察 透析中も適時観察はしている
月曜日から次の透析日の水曜日まで 2日間 48時間は自分で管理しなければならない。
日頃のセルフケアが大切!「 時間にしたら職員はチラットしかみていませんよ!」
6.目標設定
① 患者が透析室で腕洗いをする→20%から50%まで増やす
② 患者がスリルの範囲を伝えることができる→53%から70%まで増やす
③ 透析後用手止血率を18%から50%まで増やす
ベルトによる止血 (止血ベルト使用)
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7.要因の解析
8.対策の検討
9.対策の実施
①毎週末に右の評価項目に従い指導開始
「QC活動の一環です”シャントのセルフケア”
自分のシャントにもう少し興味をもってほしい。
大切にして欲しい。という思いはスタッフ共通のねがいです。
以下の項目をチェックしながら
少しでもセルフケア向上につなげませんか!
1人ではできません。協力お願いします。」
質問要望などは三浦までとした。
方法/評価日:毎週 金・土の週末に評価。
・それ以外の日に評価しても可
・方法:評価がない場合は次の透析日に評価して下さい。
・止血方法は以下参考に職員間で統一した方法で行いましょう。
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②ポスター掲示と患者指導(左:ポスター 右:指導風景)
↓用手圧迫止血方法を指導中 穿刺前にスリルの範囲を聞いている場面↓
↑穿刺前に更衣室で手洗い実践中
掲示している手洗いポスターの変更
↓掲示物を新規作成 ↓一般的な手洗いの掲示物を中止
③洗面台変更
・手洗いスペースを広げ
上腕まで洗える環境を整えた
・理学療法士に設置の高さのアドバイ ス
で調整した。
・車いすでも対応できる標準的な
高さに設定した。
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10.効果の確認
①シャント腕洗いの変化 ※タオルペーパー使用量の変化
②スリル確認実施率の変化 ③用手自己止血率の変化
<有形効果>
1. シャントの腕洗いが20%から80%へ増加した。
2. シャントのスリル確認実施率が53%から80%へ増加した。
3. 透析後の用手自己止血の実施率が18%から80%へ増加した。
<無形・波及効果>
1. 患者が自己止血を行うことで、スタッフは早く次の業務へ移ることができるようになった。
2. 患者の皮膚の状態が改善した例があった。
3. スタッフの意識改革につながり、積極的に指導するようになっている。
4. 今後の新規導入患者へは、最初からシャントセルフケアの指導をしっかり行うことにより、
定着できると考える。
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アンケート調査より
【スタッフからの声】
・QC活動を行って、断然良かったと思います。第一に患者の保清に対する意識向上と、毎日自分のスリルの確認を
して自分のシャントを大切にする気持ちが見えてきたと思います。又、職員の意識改革にもなっています。
・患者さんがシャントの清潔管理についてより意識するようになったと思います。酒精綿が茶色になる患者をあまり
見かけなくなりました。きちんと手洗いしてくれているのだと思います。
【患者からの声】
今まで「わからない」「しらない」「こわい」という声が多かった。
QC活動後は「シャントの音は変わらないよ。」穿刺前に、「ここからここまであるよ。」
血管をなぞるように3本の指で教えてくれるようになった。
11.標準化と管理の徹底
シャントセルフケアの実施率は大幅に向上したが、標準化と今後の管理と定着が重要だと考える。
12.反省と今後の課題
週末に行っている「腕洗い・スリルの確認・用手止血 」のチェックと個別指導で、ここまで目標が達成するとは、予測
できなかった。特に用手止血がここまで浸透したのは驚きである。止血ベルトを否定しているではなく、時に私も使
用する。災害時には止血ベルトを利用し、よりスピーディーに抜針作業しなければならない時もある。頑なに「止血
ベルトは使いません。」という指導ではなく、「いつでも使っていいんだよ」と言う雰囲気作りもよかったと考えら
れる。
今は、“シャント”肢を“ちゃんと”自己管理しています。
“チラット”みてもとても綺麗になっているのが良くわかる。
QC“大作戦”スリルくらぶの活動として PDCAサイクルを回し続けていきたいと考える。