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-30- 尾道市立大学は地域の皆さんとの文化交流の場を目的として、教員の専門分野を活か したワークショップや、学生・教員の研究成果を市民に公開する講座を開いています。 ※本書には平成25年度と平成26年度に行われました「教員ワークショップ」「美術講 座」「コンピュータ公開講座」「公開研究発表会」「出張講座」各回の要旨を掲載して おります。 公開講座について

公開講座についてharp.lib.hiroshima-u.ac.jp/onomichi-u/file/12367... · ミングの基本について実習しながら学んでもらいました。 タイムスケジュール:

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尾道市立大学は地域の皆さんとの文化交流の場を目的として、教員の専門分野を活かしたワークショップや、学生・教員の研究成果を市民に公開する講座を開いています。

※本書には平成25年度と平成26年度に行われました「教員ワークショップ」「美術講座」「コンピュータ公開講座」「公開研究発表会」「出張講座」各回の要旨を掲載しております。

公開講座について

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教員ワークショップ

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絵巻物勧奨ワークショップ「ひもとき、ひらく、平治物語絵巻」平成25年5月25日開催 美術学科准教授 市川 彰

「平治物語絵巻 三条殿夜討巻」を取り上げる今回のワークショップ。みなさんと一緒に、次の三つを行っていきます。まず、「平治の乱」「平治物語」そして「平治物語絵巻」の内容について少しばかり「知る」こと。次いで、絵巻物を「ひもとき、ひらく」ことを通じて「触れる」こと。そして、平治物語絵巻を目で、耳で、さらに手で「楽しむ」こと。ワークショップが終わった時、もしかすると新しいものの見方を得ることができているかもしれません。

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教員ワークショップ

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2013年度から地域総合センター主催による「尾道学講座」は講座名を「尾道市立大学講座」と変更した。これにより従来の尾道ゆかりのテーマを中心とした講演だけでなく、教員の専門分野を活かした市民参加によるワークショップなども取り入れることで、より広い意味での学問の魅力を多くの市民へ伝えることのできる講座として生まれ変わったのである。その第2回として7月6日(土)に「街かど文化館」(現、尾道市立大学サテライトスタジオ)で一般市民を対象としたワークショップを行った。尾道のランドマークでもあり地域資源とでも言うべきクレーンを、さまざまな木材パーツを組み合わせて制作するというものである。広報としては市役所、各報道記者クラブ、市立図書館や尾道ケーブルテレビへの出演など広範囲に参加者募集をした。告知のタイミングが遅れたことと、「こうほうおのみち」の記事に画像が掲載されなかったことなど幾つかの要因が重なったため、最終的に市内の一般参加者が無しという結果になった。内訳は以下の通り。一般(市外)1名、大学関係者2名、学生10名。また参加のきっかけは大学ホームページ、フェイスブックなどネットによるものが有効回答数全体の6割以上であり、この結果からも広報告知の効果的な発信の仕方が今後の課題の一つであると言えるであろう。

ワークショップ当日の流れとしては、13時から簡単な事前レクチャーをした後、各自制作を進めた。本学木工技術指導員の松本祐助先生に電動工具の補助をしていただき、大学院生1名のヘルパーを加えて、参加者のイメージに沿った制作が出来るようにスタッフの準備を整えた。約3時間という短い時間ではあった

オブジェ制作ワークショップ「Onomichi Dockyard CRANE~クレーンを作る~」平成25年7月6日開催 美術学科教授 野崎 眞澄

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教員ワークショップ

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が、参加者はそれぞれ思い思いのオリジナルクレーンを制作出来たようである。最後に全員の作品を模造紙の簡易ホリゾントの上に並べ、各自で作品撮影をして16時に無事ワークショップは終了した。 初めての試みということで、さらに詰めていかなければならない様々な課題が浮き彫りにされたワーク

ショップではあったが、参加者からは概ね好意的な意見が多数であった。今後はこれらの課題をクリアしながら、より多くの人が楽しめるワークショップとなるように継続できたらと思っている。

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美術講座

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講 座 名: 美術学科公開講座タイトル: 古典模写の体験「鳥獣人物戯画」日  時: 2013年9月25日(水)~ 27日(金)3日間      10:00 ~ 17:00(間に昼休憩あり)場  所: D棟 3階日本画1教室対 象 者: 一般受 講 料: 2,000円(本美濃紙、しょうふ糊、膠等の材料費)      その他に 墨、硯、先のきく細筆、を各自で用意してもらう。申込方法: 往復はがき(今回、持参物が多いので電話受付を無しにした)告知方法: 大学ホームページ、広報おのみち参加者数: 8名(尾道、三原、府中、福山)講  師: 日本画教員(吉原、小田野、中村)、アシスタント(山梨)T   A: 模写コースを専攻している大学院生2名      (体験者のみでは難しい作業があるので、学生スタッフを配置)

目  的:  大学には様々な古典模本があり、中でも「鳥獣人物戯画」は日本画を学ぶ学生が最初に取り組む古典模写として、多くの大学で使用される題材である。模写を通じて古典に親しんでもらうとともに、大学で日本画を学ぶ学生の雰囲気を感じてもらいたい。

内  容:  授業で行われる古典模写と同じ行程で行った。日数は少ないのでサイズを絞り、用意された用紙内で行う。

       また、学生のように高い作品完成度や技術を求めない。「鳥獣人物戯画」の作品自体や絵巻物という形態に触れ、古典模写の意義を知り、模写行程を体験することに重点を置く。

【1日目】  ドーサ引き、道具作り、仮張り、上げ写し、説明等       用紙は薄美濃紙。授業で使われているものと同じ。2014年11月ユネスコ無

形文化財に登録された紙でもある。また、刷毛や仮張りや糊といった道具は日本で昔から使われてきたもので、特に専門性の高い道具である。古典模写を通して、日本の伝統文化や技術を肌で感じてもらった。

古典模写の体験「鳥獣人物戯画」平成25年9月25日~ 27日開催  芸術文化学部美術学科日本画コース

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美術講座

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【2日目】  上げ写し       鳥獣人物戯画甲巻・乙巻の2本を広

げ、好きな画面を選択してもらう。関連書籍等も用意。1人、2~3場面を模写。

【3日目】  裏打ち、仮張り、講評       出来上がった作品を並べて鑑賞会と講

評会。模写をすることで作者の筆使いや、作品の成り立ちを考えるきっかけとなった。また模写した場面への愛着も増すので、これを期に作品への更なる関心を抱いてくれたようであった。

配 布 物 : 模写について・鳥獣人物戯画について・道具の説明・スケジュール、をA3に纏めたものを配付。

そ の 他 : 日本美術への関心の強い日本画経験者の参加者が多く、興味深く模本を観る人が多かった。個人では所持できない大学ならではの道具や模本に触れてもらえたことに、地域の方が学校を垣間見る機会となれたと思う。

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平成25年度コンピューター公開講座

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予定帳を作る平成26年3月14日開催 美術学科准教授 高岡 陽

定員:20名(応募者多数の場合は抽選)講師:高岡 陽(尾道市立大学芸術文化学部美術学科准教授)講師アシスタント:喜來詩織(尾道市立大学美術研究科大学院1年生・2013年度)講義内容:Illustratorを使用して予定帳をデザインする

予約者:受講者:使用教室:尾道市立大学D棟2階 デザイン3教室、CG実習室使用コンピュータ:Apple iMac使用アプリケーション:IllustratorCS6使用用具(和綴じ):製本用穴あけポンチ、製本針、目玉クリップ、下敷用ボール紙使用素材(和綴じ):用紙=モンテシオン+ブンペル、刺繍糸

講座内容(講座当日詳細):午前中に、制作する予定帳の表紙を草案し、Illustratorの簡単な使用方法を紹介・講義。午後からは、Illustratorを使用して予定帳の表紙デザインを仕上げ、用意しておいたと中身のフォーマットとを合わせて出力し、それを和綴じによる製本で予定帳を完成させた。最後にソフトの解説と完成品の講評を行った。

タイムスケジュール:10:30 ~ 草案11:30 ~ コンピュータ(Mac)使用説明12:00 ~ 13:00 昼食13:00 ~ Illustratorを利用しての編集制作15:00 ~ 和綴じ製本16:00 ~ まとめと解説・講評

幅広い年第に受講いただいた。受講者は、熱心に作業を行っており、成果物を持ち帰っていただいたことも好評であった。

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平成25年度コンピューター公開講座

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定員:30名(応募者多数の場合は抽選)講師:有吉 勇介(尾道市立大学経済情報学部准教授)講師アシスタント:本山(情報処理研究センター)、学生アルバイト2名講義内容:Excelのマクロ機能を使って、処理の自動化とプログラミングの基礎を学ぶ予約者:30名受講者:24名使用教室:尾道市立大学C棟2階 C3教室(PC演習室)使用コンピュータ:Windows PC使用アプリケーション:Excel

講座内容(講座当日詳細):午前中は、まず、表計算ソフトExcelの概要を確認し、次に、処理を自動化するマクロ機能の基本を説明し、実際に簡単な処理のマクロを作成する実習をしてもらいました。最後に、Excel での作業を自動化するためのプログラミング言語であるVBAを紹介しました。午後からは、実際にExcelでVBAを使って簡単なプログラミングの実習をしました。「セルに値を表示する」「日ごとに集計する」「合格者を数える」等の簡単なプログラムの作成と解説を行い、プロシージャ・代入・変数・条件判定・ループなどプログラミングの基本について実習しながら学んでもらいました。

タイムスケジュール:10:00 ~ Excelの基本、マクロの作成と実行、VBAの概要12:00 ~ 13:00 昼食13:00 ~  VBAによるプログラム作成。VBAプログラムと作成と実行、プロシー

ジャ、代入、変数、条件判定、ループなど

ほとんどの受講者は、Excelの表計算機能は使ったことがあるが、マクロやVBAについては聞いたことはあるが使ったことはないという方々でした。この公開講座で使ってみるきっかけが作れて良かったという感想を数多くいただきました。また、上級編も行って欲しいという意欲的な感想も多くいただきました。

表計算ソフトとプログラミング平成26年3月16日開催 経済情報学科教授 有吉 勇介

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平成26年度コンピューター公開講座

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表計算ソフト(Excel)を使って○×ゲームを作ろう平成27年2月15日開催 経済情報学科准教授 本田 治

定員:30名(応募者多数の場合は抽選)講師:本田 治(尾道市立大学経済情報学部准教授)講義内容:Excelに備わっている機能VBAを使ってゲームを作ることで、プログラミングの基礎を学ぶ。予約者:13名受講者:13名使用教室:尾道市立大学C棟2階 C3教室(PC演習室)使用コンピュータ:Windows PC使用アプリケーション:Excel

講座内容:コンピュータ公開講座は、Excelに備わっているプログラミング言語VBAを用い、プログラミングの基礎やコンピューターゲームにおけるコンピュータの思考方法について講義形と実習で進められた。プログラミングの基礎として、変数や配列変数、繰り返し文や条件分岐文などの制御文、関数や手続きの作成と呼び出しなどに加え、セルに値を入力したり、ボタンを配置したりなどのExcelの制御方法についても学んだ。次に、学んだとこを用いて、人間対人間、人間対コンピュータ(ただし弱い)で対戦できる○×ゲーム(3目並べ)を作成した。最後に、より強いコンピュータを作るため、ゲームプログラミングで用いられるmini-max法や場面の評価関数の作り方などを学んだ。講座の時間が短かったこともあり、どこまで○×ゲームが作れたかは参加者によって異なってはいたものの、自身で作成した○×ゲームと参考用の完成版○×ゲームを持ち帰って講座は終了した。

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平成26年度コンピューター公開講座

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定員:20名(応募者多数の場合は抽選)講師:高岡 陽(尾道市立大学芸術文化学部美術学科准教授)講師アシスタント:(尾道市立大学美術研究科大学院1年生・2014年度)講義内容:PhotshopとIllustratorを使用して自分の考えたマークをデザインする

予約者:受講者:使用教室:尾道市立大学D棟2階 デザイン3教室、CG実習室使用コンピュータ:Apple iMac使用アプリケーション:IllustratorCS6、PhotoshopCS6

講座内容(講座当日詳細):午前中に、自分の名前をテーマにしたマークを草案し、PhotoshopとIllustratorの簡単な使用方法を紹介・講義の後、自分の草案をコンピュータでスキャニングした。午後からは、PhotshopとIllustratorを使用して、デザインを仕上げて出力。データをpdfフォーマットで保存し持ち帰っていただいた。最後にソフトの解説と完成品の講評を行った。

タイムスケジュール:10:30 ~ 草案11:30 ~ 草案をスキャニングしてコンピュータデータにする12:00 ~ 13:00 昼食13:00 ~ Illustratorでデータをパス化13:30 ~ Illustratorによるデザインの仕上げと出力、pdfデータの書き出し15:00 ~ まとめと解説・講評

2013年度に引き続き、幅広い年代・性別に受講いただいた。受講者は熱心に作業を行っており、内容は好評だったが、時間をもう少し長めに設定すれば良かったかもしれない。

マークを作ろう平成27年2月22日開催 美術学科准教授 高岡 陽

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公開研究発表会

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藤井研究室公開研究報告会道成寺縁起絵巻を読み解く―安珍・清姫伝説を追って―平成27年3月7日開催 藤井研究室・尾道市立大学伝承文化研究会

 2014年度末、藤井研究室・尾道市立大学伝承文化研究会は公開研究報告会をおこないました。ここでは、大学院生をはじめ学部生を含む10名の学生会員が研究資料とスライドを用いて、日頃読み進めてきた絵巻『道成寺縁起』に関する研究成果を一般の方々に御紹介しました。内容は歌舞伎や能の演目とも深く結びつき、和歌山県の伝説「安珍清姫」としても知られていますが、発表では平安時代の絵を持たない文献資料を含めて、近しい内容を持つ資料3作品(大日本国法華経験記、今昔物語集、元亨釈書)や、別系統の伝本である絵巻『ひだか川』を比較し、

絵と物語の相関性、竜や蛇に関する検証、結末に見る宗教性などに言及しながら、物語を伝える絵巻の魅力を分かりやすく御説明しました。大正時代に建てられた議場という独特の雰囲気の中で本学の教

育研究の様子を御覧いただくことができ、有意義な報告会となりました。なお、この報告会に関連する研究資料は本学・サテライトスタジオで展示することとなり、これに対しても多数のお問い合わせを頂きました。

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出張講座

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第一回出張講座「因島のカラス神事 ―宮島と熊野を結ぶ祭祀―」第二回出張講座「瀬戸内海のカラス神事」 日本文学科准教授 藤井 佐美(司会・解説)

大学院生 栢木 希望(発表報告)

 出張講座は本学でも初の試みで、旧尾道市街地での公開講座とは異なり、第1回は因島、第2回は向島で開催しました。いずれも、日本文学科で民俗学・伝承文学を研究領域とする藤井研究室における研究成果の御紹介です。講座では教員が司会と解説を、研究室所属の大学院生が調査研究報告をおこないました。計2回の講座とも大勢の方々に御参加いただいたこともあって、大学での教育研究の成果を地域の方々と共有でき、また貴重な御意見や御感想も寄せられ、大変有意義な

内容となりました。 神聖視されていた烏をめぐる祭祀の在り方には、直接的に神事(信仰)に支えられてきた側面と、家々の伝承に関わる民間の事例があります。調査報告者である大学院生は嚴島神社の祭祀として知られる御鳥喰神事の研究過程で、瀬戸内地方の御鳥喰神事に注目し、特に因島のフィールドワークを丹念におこなった成果を御紹介しました。同内容は日本民俗学会談話会(東京)において、瀬戸内海における貴重な伝承事例として発表しました。→研究内容は本会誌所収、栢木希望の報告論文参照。

第一回 平成25年8月3日開催第二回 平成26年2月1日開催