17
重度障害を抱える子と親に とっての8050問題 社会福祉法人東京緑新会 多摩療護園 園長 (東京都自立支援協議会 委員) 平 井

重度障害を抱える子と親に とっての8050問題...③ 晩婚化により、今後は少しづつ4080問題に近づく (4)進む利用者の重度・高齢・病弱化と医療的ケア

  • Upload
    others

  • View
    0

  • Download
    0

Embed Size (px)

Citation preview

  • 重度障害を抱える子と親にとっての8050問題

    社会福祉法人東京緑新会 多摩療護園 園長 (東京都自立支援協議会 委員)

    平 井 寛

  • 1972年旧療護施設制度開始と同時に開設

    された多摩療護園(所在地*東京都日野市)

  • ☆ 障害を抱える子と親の場合「引きこもり、生活困窮」のイメージ

    と違い複合的な課題が多い

    (1)入所問題に絡む様々な課題 ● 重度身障の施設入所待機者は毎年ピークで300人、実際の

    入所は1割ほど

    ● 重症心身障害児・者の待機者は約600人、知的障害者の待

    機者は1,000人存在すると言われている

    (2)東京から追われる重度障害者 「身障の場合、支援区分6であっても、支援にかなりの困難性を伴うか、親が高齢、病気等の状況がないと、都内施設に入所推薦する水準に達しない」➡そのため、他県施設に入所の方が後を絶たない

    1 重い障害を抱える方々の 8050問題は深刻

  • ・・・・変わったこと、変わらないこと

    (3)平均寿命の延びが変化をもたらした

    ① 30~40年前は親御さんが他界され、兄弟など他の

    家族が介護をしているか、社会的入院が多かった

    ② 今も昔も、障害を抱える子供を、親の寿命が尽きる直

    前まで介護するケースはなくならない

    ③ 晩婚化により、今後は少しづつ4080問題に近づく

    (4)進む利用者の重度・高齢・病弱化と医療的ケア

    「障害種別を越えて重度化が進行し、施設は地域に向けて、

    さらなるセーフティネット機能の強化が求められている」

  • 地域在宅の困難事態が現れている

    1.25

    2.02

    2.52

    2.09

    2.22

    2.37

    1

    1.5

    2

    2.5

    3

    2010 2013 2017

    都内療護回答95%:利用者1人当たり医療的ケア指数の推移

    通所

    表1入所と通所の医療的ケア量の動き 急速に伸びた通所者の医療的ケア

    主な医療的ケア項目に対して、気管切開からの吸引10点を基準に

    比較点数表を作成し、入所と通所の医療的ケア量を7年間で3回求めたものです。各年4月1日現在の利用人員が対象(回答率95%)

    (東京都身体障害者施設協議会)

    入所

  • 医療的ケア量の指数化について

    手技 点数

    気管切開からの吸引 10点

    人工呼吸器管理 9点

    気切を除く鼻腔等吸引 6点

    胃ろう等経管栄養 6点

    酸素 6.5点

    人工肛門パウチ・膀胱ろう等管理

    5点

    膀胱留置バルーンカテーテル管理

    5.5点

    導尿全介助 8点

    手技は、複数施設で確認した右の主な医療的ケアを対象に、その合計点数を利用者数で割って指数化する

    ⇒それによって、各施設1人当たりの医療的ケア量が分かり、比較可能という試みである

  • ・・・・入所に関する事例について

    (5)様々な理由や思いから入所支援を断ることも

    事例1:

    「今がベストと入所決定を断る80代両親」

    事例2:

    「自身の最期まで離れたくなかった母親」

    事例3:

    「親しか本人を守れないという意識」

  • (1)身体障害(障害・年代)

    2 地域での相談支援 を通じた様々な事例

    調査:2017年4月

    身体障害

    のみ 42

    重 心 16

    精神障害

    重複 2

    利用者の障害状況

    0~19歳

    まで 4

    20代 10

    30代 12

    40代 9

    50代 10

    60代 15

    利用者の年代

    単位:人 単位:人

  • 介護者の年齢層が高くなっている

    (2)身体障害(介護者の年代・利用者の居所)

    自宅で家族

    と暮らす

    35

    施設入所 15

    独居 10

    利用者の居所

    40代 3

    50代 18

    60代 10 70代 4

    80~90代 10

    不在・死亡 15

    介護者の年代

    単位:人 単位:人

  • (3)身体障害者・計画相談を担当して

    ※重症心身障害児・者、遷延性意識障害の利用が多い特徴

    知的障害手帳を持たない身体重複障害児・者が多い

    重度で0歳児のお子さんへの利用計画が増える傾向にある

    60代利用者は⇒主たる介護者不在、または死亡が多い

    家族と暮らす40~50代利用者の介護者は⇒70代で4人

    80代8人、90代2人

    全利用者の母親の出産時平均年齢は31.3歳⇒ほぼ子供が40代後半で80歳に到達

    身体障害児・者の相談支援実態例から見えるもの

  • (4)身体障害事例

    事例1:Aさん 「50代の中途障害者で80代の母親が介助。通所先で 異変に気づく」 事例2:Bさん 「70代半ばの在宅酸素を使う母親が主たる介護者」 事例3:Cさん 「50代と80代の親子が共に障害を受容できず、福祉 サービスを否定的に」 事例4:Dさん 「本人は入所推薦されても入所できず、80代の母親が 課題を抱える家族全員に対応」

    身体障害分野の事例

  • (5)知的障害(障害・年代)

    知的障害分野

    10代 16

    20代 26 30代 18

    40代 8

    50代 10

    60代 3

    利用者の年代

    知的障害 63

    身体障害 重複 7

    精神障害

    重複 7

    視覚障害 重複 1

    精神

    ・発達障害

    3

    利用者の障害状況

    単位:人

    調査:2017年10月

    単位:人

  • (6)知的障害(介護者の年代・利用者の居所)

    知的障害分野も親の高齢化が進行

    30代 9

    40代 14

    50代 24 60代 11

    70代・80代

    8

    不在・死亡

    15

    介護者の年代

    親と同居

    41

    施設入所

    13

    グループ

    ホーム

    25

    独居

    2

    利用者の居所

    単位:人 単位:人

  • 相談支援において留意すべき知的障害を抱える人と親のライフステージ

    (7)知的障害を抱える人の人生・生活の分岐点 介護保険

    地域生活が困難になるタイミング 総合福祉法

    児童福祉法

    0 1 3 4 6 8 13 15 18 20 25 30 35 38 40 50 55 60 65 70 80

    出生前

    出生

    高齢出産↓

    乳幼児療育手帳

    保育園自閉症特徴

    幼稚園

    小学校

    学童終了放課後デイ利用

    開始

    中学校

    高校障害支援区分

    高校卒業進路選択施設は児童部退所

    障害年金手当

    親がそろそろ退職に

    権利擁護や相続問題

    体力能力低下

    介護保険利用可

    親の入院や認知症

    本人退職

    介護保険へ移行特養などへの移動

    両親、場合によれば兄弟も死亡

    終末期の支援

    30 31 33 34 36 38 43 45 48 50 55 60 65 68 70 80 85 90 95

    40 41 43 44 46 48 53 55 58 60 65 70 75 78 80 90 95 100 105

    30歳で出産の親の年

    40歳で出産の親の年

    本人の年齢

    ライフイベント

    出生前

    染色体検査

    18歳~

    児童施設入所者は、一度出される。児

    から成人へのエスカレーター入所は出

    来ない

    18歳:進路先が見つからない

    愛の手帳の更新が出来ない

    3歳頃

    自閉症スペクト

    ラムの特徴発現

    18歳から20歳まで

    障害年金がまだないため、経済

    的に厳しい時期

    乳幼児期

    シェイキング等の虐待

    学童期から高

    校生くらいまで

    (主に男子)

    親子のパワー

    バランス逆転

    学校の選択

    20歳から30歳くらいまで

    東京の入所施設、グループホーム探

    しと順番待ち。なかなか空きはでない。

    40~50歳

    親が80代になり認

    知症や入院で支援者

    不在、急遽施設入所

    (東京を離れる)とな

    る等。引き籠っていた

    知的発達障害の50

    歳代の子供が「発見」

    されることがある

    60~70歳

    高齢になり

    医療的ケア度

    が高くなると

    入院・特養等

    20歳:障害年金や手当

    が取れない

    40歳頃

    本人の体

    力、能力

    の低下:

    通所先の

    変更 65歳~

    介護保険優先で

    自己負担増

    35歳頃

    親が定年退職。権利擁護、

    相続問題の検討

    60~70歳くらい

    後見人不在で、

    本人と面識のない

    遠い親戚しかいな

    い等、種々の判断

    に困る

    1歳~就学前

    検診での指摘

    親の障害受容困難

    18歳:卒業後の環境の急変

  • 現在81名の知的障害者の計画相談を担当 事例1:Eさん 「3人で暮らしていたが、本人以外の2人が相次いで施設入所」 事例2:Fさん 「本人が施設生活を嫌がり、80代の母親は困惑」 事例3:Gさん 「認知症の両親と家事が苦手な本人が困窮の中、同居」 事例4:Hさん 「両親が死亡し、引きこもりの兄と知的障害の本人残される」

    ・・・・・・・知的障害分野の事例

  • (1)潜在化していた事柄が一挙に噴出した8050問題

    ① 本人と親にとって、抱える課題が解決しないまま最終

    段階に来てしまった。残された時間は少ない

    ② 本人の重度化と親の高齢化が同時に来る困難さ

    ③ 全般的な支援資源の不足、サー ビスの自治体間格差

    (2)どのようなことが必要なのか? ① 寄り添いながら相談が可能なケアコミュニティづくり

    ② 早い段階から種まき、支援サービス利用体験の推進

    ③ 制度・種別を越えた連携・協働の継続支援ネットワーク

    ④ ライフステージに沿った集中的な支援体制の強化

    ⑤ 身近な地域で最重度者を含む生活支援拠点づくり

    3 課題への模索・・・・・・・・・・・・・

  • ご清聴ありがとうございました

    団塊世代が後期高齢者になるのも目前・・・・「取り組もう 8050問題」