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植物工場における栽培環境の自動制御システムの構築 植物工場は、栽培棟1,280㎡、高さ6mの鉄骨造りで、つり下げ式ベンチで3,000株を栽培する。 循環型空調システムや遮光カーテンにより、季節と時間帯によって変化する温度や湿度、二酸化炭 素などを光合成に適した環境になるよう管理・調節。 発光ダイオード(LED)ランプで樹間補光による光合成量の増加と収量の検証を行う。 循環型養液システムにより、季節や生育ステージによって変化する植物の養水分量を調節。 動力は主に電気で、太陽光パネルと風力発電も利用する。 【取組主体】(株)サイエンス・クリエイト(愛知県豊橋市) システム概要 勘と経験頼りだった農業を、ITを活用することにより安定的な生産を確立し、誰でも就農できるよう後 継者の育成にもつなげたいと思案。 農業とITの融合、高付加価値型農業への展開を目的に平成13年にIT農業研究会を発足。 平成24年7月、経済産業省の補助金を受けてトマトの植物工場を完成させる。 国産品種のトマトでは確立されていない、1,000㎡当たり年間50トンの生産技術開発を目指す。 現在の収量は1,000㎡当たり年間40トンまで上がってきている。これを50トンまで増やしていくことが当 面の課題である。 消費者の方に、植物工場の野菜として広く認知され、ブランド化を目指していきたい。 導入経緯・背景 効果・課題等 循環型空調システム 循環型養液システム 太陽光と風力発電 パイプを使って養分を供給 発光ダイオード(LED)で補光 農業・生産

農業・生産 植物工場における栽培環境の自動制御シ …...植物工場における栽培環境の自動制御システムの構築 ・ 植物工場は、栽培棟1,280

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Page 1: 農業・生産 植物工場における栽培環境の自動制御シ …...植物工場における栽培環境の自動制御システムの構築 ・ 植物工場は、栽培棟1,280

植物工場における栽培環境の自動制御システムの構築

・ 植物工場は、栽培棟1,280㎡、高さ6mの鉄骨造りで、つり下げ式ベンチで3,000株を栽培する。

・ 循環型空調システムや遮光カーテンにより、季節と時間帯によって変化する温度や湿度、二酸化炭

素などを光合成に適した環境になるよう管理・調節。

・ 発光ダイオード(LED)ランプで樹間補光による光合成量の増加と収量の検証を行う。

・ 循環型養液システムにより、季節や生育ステージによって変化する植物の養水分量を調節。

・ 動力は主に電気で、太陽光パネルと風力発電も利用する。

【取組主体】(株)サイエンス・クリエイト(愛知県豊橋市)

システム概要

・ 勘と経験頼りだった農業を、ITを活用することにより安定的な生産を確立し、誰でも就農できるよう後

継者の育成にもつなげたいと思案。

・ 農業とITの融合、高付加価値型農業への展開を目的に平成13年にIT農業研究会を発足。

・ 平成24年7月、経済産業省の補助金を受けてトマトの植物工場を完成させる。

・ 国産品種のトマトでは確立されていない、1,000㎡当たり年間50トンの生産技術開発を目指す。

・ 現在の収量は1,000㎡当たり年間40トンまで上がってきている。これを50トンまで増やしていくことが当

面の課題である。

・ 消費者の方に、植物工場の野菜として広く認知され、ブランド化を目指していきたい。

導入経緯・背景

効果・課題等

循環型空調システム 循環型養液システム

太陽光と風力発電 パイプを使って養分を供給 発光ダイオード(LED)で補光

農業・生産

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Page 2: 農業・生産 植物工場における栽培環境の自動制御シ …...植物工場における栽培環境の自動制御システムの構築 ・ 植物工場は、栽培棟1,280

①匠が持っている農業技術データを基に日照量や二酸化炭素濃度、室内温度などハウス内の環境制 御(自動窓開閉・散水)を行う設備の導入 ②タブレットを使った生産管理システム

イチゴのハウス生産における 栽培環境の自動制御システムの構築

【農業生産法人 株式会社GRA】(宮城県)

システム概要

○ 平成24年設立。経営耕地面積はいちご1.1ha、トマト0.2ha。 ○ 地元出身で都内のITベンチャー企業の社長が東日本大震災を契機とし、被災地である山元町をいち ごの一大産地にすべく立ち上がった。 ○ 震災後すぐに試行錯誤を繰り返しながら、平成24年7月に農業生産法人を立ち上げ、効率的な生産 を目指し、施設園芸技術の進んでいるオランダからハウス制御設備を輸入し、使い始めている。 ○ 農林水産省の研究委託事業の実験圃場である。

○ 匠が持っている農業の暗黙知を形式知にすること(平準化)及び遠隔地でもハウスや作物の状況を 把握できる農業を目指して活動をしている。 ○ 作業記録のユーザーインターフェースは、農作業の現場ではまだまだ使いずらい点がある。今後、改 良および他の仕組み(製品)も試験運用し、使いやすい物にしていく。

導入経緯・背景

農業・生産・野菜

導入者コメント(効果・課題等)

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Page 3: 農業・生産 植物工場における栽培環境の自動制御シ …...植物工場における栽培環境の自動制御システムの構築 ・ 植物工場は、栽培棟1,280

○ 対象作物をてん菜とばれいしょとして土壌のバラツキに対応した化学肥料投入量の可変コントロー ルを行う。まず空撮用の産業無人ヘリコプター(衛星では天候などの要因でタイムリーに撮影出来 ないため)で、ほ場区画ごとの土壌のバラツキをリモートセンシング、その後土壌のバラツキに対応 した可変施肥マップを作成(腐植含量から窒素肥沃度を表現)、可変施肥マップのデータを自動可 変施肥機にインポートして可変施肥を実施する。

ばれいしょなどの生産における可変施肥管理 による化学肥料低減のためのシステムの構築

【有限会社 テクノ・ファーム】(北海道)

システム概要

○ 親会社である(株)ズコーシャがIT農業の技術開発に着手。 ○ 平成10年に三菱商事・道内研究者(大学・公試)・(株)ズコーシャで高解像度衛星(イコノス)を活用し た精密農業の基本調査を実施し、その後(株)ズコーシャはIT農業関連技術の開発を目的とし、農林 水産省や経済産業省の各種補助事業に認定を受ける。 ○ 平成15年IT農業実践と自然冷熱活用を目的の一つとするパイロット農場(テクノ・ファーム)を設立。 経営耕地面積は45ha(ばれいしょ20ha、ながいも、小豆、てん菜)。 ○ 平成18年「IT活用型営農成果重視事業」(農林水産省)の認定を機会に実証開始。

○ 施肥コスト低減、収量維持・品質向上(ばれいしょ:規格内品、てん菜:根中糖分)、環境保全(化学 肥料のほ場外流出削減)を目指す。 ○ 施肥コスト低減が実証された(窒素投入量が慣行と比較して平均30%低減(最大50%)) ○ 収量維持・品質向上:ばれいしょは、肥料の投入量を低減するも収量は現状維持。てん菜は、根重の 均一化と根中糖分量の向上を確認。 ○ 生産者を中心とした展示会などでの評判が良好。 ○ 本システムの導入・運用には、可変施肥マップ作成費(3,500円/10a)と自動可変施肥機(200万円)が 必要となる。特に農家にとって自動可変施肥機の初期費用が課題であり、IT農業実現を目指す農家 への機械類購入補助制度(例えば自動可変施肥機の購入に対する補助など)があるといい。 ○ (株)ズコーシャと協力しながら、可変施肥マップやそれ以外の農家が必要とする各種農業情報をク ラウドで提供できるシステムを開発したい。(例えば、病害虫予測マップ、土壌水分予測マップ、収量 予測マップなど)

導入経緯・背景

農業・販売・野菜

導入者コメント(効果・課題等)

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① Webカメラを使い圃場と作物の状態を遠隔地にて映像確認。 ② ハウスのセンサーに手作りの制御盤(軽コスト化)を取り付けて携帯電話で窓の上げ下げなどの操 作も可能。

トマトのハウス生産における 簡易で安価なシステムの構築

【有限会社 アグリフューチャー】(宮城県)

システム概要

○ 平成24年設立。5年後に経営耕地面積220a(葉菜120a、トマト100a)を目標。 ○ IT企業からの新規就農の際に、農業現場が経験と勘に頼っており、無駄の多さを肌で感じていて、 作業を合理化できないかと考えていた。 ○ 東北大学、東北学院大学とつながりがあり、相談したことを契機として、「東北スマートアグリカル チャー研究会」が発足、その研究会の活動としてスタート。

○ 既存のITを組み合わせて(特許でなく実用新案程度のもの)、安価で生産者のちょっとした作業の 補助になることを期待している。 ○ 放射線量計やEC計の数値を携帯電話のカメラで撮影することでOCR化し、位置データと一緒に クラウド上に蓄積・マッピングするシステムを、「東北スマートアグリカルチャー研究会」において 現在開発中。

導入経緯・背景

農業・生産・野菜

導入者コメント(効果・課題等)

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ハンディーターミナルを使用した栽培管理履歴システムの構築

・ 事前にパソコンで必要な農作業や日程を入力し、栽培開始時に栽培ロットごとに識別するための無

線自動識別(RFID)技術を使うICタグを付け、タグに専用のハンディターミナルをかざせば、その日にそ

の棚で必要な作業を把握できると共に作業実績を手軽に収集できる。

・ 端末には生育状況の入力も可能で、作業情報と観察情報を蓄積していけば、事後に生育遅れの原

因分析などに役立てられる。

・ 平成24年6月からは同社の安城工場(同県安城市)にテストプラントを作り、野菜の水耕栽培を開始、

同工場では現在「ツブリナ」と呼ばれる機能性野菜を栽培し、地元を中心としたスーパー等に出荷して

いる。

・ また、静岡県の富士工場は25年1月に稼働を開始、グリーンリーフやサラダ菜などのレタス類を栽培

し、4月から出荷している。

【取組主体】小林クリエイト(株)(愛知県刈谷市)システム概要

・ 食と農が大きく注目されている中で、安心・安全な食べ物を提供できないかと考え、遊休工場を活用

した水耕栽培の植物工場であれば、印刷物の製造販売を手掛ける同社がこれまで培ってきたもの作り

のノウハウや品質保証の仕組みを生かせると検討。

・ ほ場・植物工場などを訪問した際に、農業界も変革の波(6次産業化推進・JGAP制定・就農者不足

等)にさらされていることを確認。これらの背景には、「人手作業からの脱却」、「生産物の取り扱い履歴

の収集」という潜在的ニーズ(ICT目線)があると理解し、これに応えるため、印刷物の製造販売や情報

システムを手がける同社の、自動車産業を中心とした工業系製造業の工程管理で使用している技術を、

農業の生育管理の分野において有効に活用できないかと思案。

・ 平成24年、生育管理システム「agis(エイジス)」の製造・販売を開始。

・ 「agis(エイジス)」システムによるPDCAサイクル(工程設定→実績収集→実績共有→履歴分析)を

続けることで、①顧客への品質・サービスの向上、②仕事のムダ・ムリ・ムラの排除、③作業者の改善

意識の育成といった効果がある。(例えば、トレーサビリティ実現、ノウハウの数値化・定量化、栽培手

順の見直し、手書き伝票の廃止、作業進捗(納期照会)の早期化・省力化が図られる。)

・ 「agis(エイジス)」システムにより得られた情報で、設備制御(植物栽培システム・植物コンベア)やF

Aロボット(搬送ロボット・選別/仕分装置)を制御することも目標。

導入経緯・背景

効果・課題等

農業・生産

専用のハンディターミナルを使い、タグを読み取る

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① 専用タブレット端末を活用し作業現場において作業実績を入力。 ② 農薬の希釈倍率の計算にも活用できるほか、作業履歴から農薬や肥料の使用回数がチェック可能。

③ 専用タブレットのデータをパソコンに移行し、ローソン本社との情報共有に活用。

タブレット端末を活用した 営農支援システムの構築

【農業生産法人 株式会社ローソンファーム千葉】(千葉県)

システム概要

○ 設立は平成22年。経営耕地面積は約6ha。こまつな、ほうれんそう、だいこん、にんじん等を生産。 ○ ローソン本社が全国各地のローソンファームの栽培履歴や作業情報の状況を一括管理する目的で 平成24年から「営農支援システム」を導入。

○ 肥料・農薬の誤使用の回避や生育に関する課題の共有に役立っており、さらには作業実績等を 蓄積することにより、社員の効率的な技術育成に寄与。

○ 現場においてタブレット端末で作業実績を確認・入力できるので、作業ミスや入力漏れがなくなった。

○ ローソン本社でも作業履歴を一括管理・チェックできるため、ブランドの維持、向上につながっている。

○ 現在、地区名や所有者名により、ほ場を特定する仕組みになっている。今後の規模拡大の可能性も 考慮し、地図等を活用して直感でほ場を特定できる仕組みを期待。

○ ローソン本社としては、効率的な店舗への供給調整ができるよう、精度の高い収穫量予想が可能と なるまで情報の精度が上がることを期待。 ○ 今後、写真を添付できる機能や試験場の病害虫データ等とのリンク機能が追加されることを期待。 ○ 将来的には蓄積したデータを分析し、病害虫対策や作業計画の立案への活用も視野に入れている。

導入経緯・背景

農業・生産・野菜

導入者コメント(効果・課題等)

専用タブレット端末 作物選択画面 圃場選択画面

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① 農業現場の見える化を目指し、クラウド環境を利用した営農計画・作業日誌・栽培履歴などを簡 易入力出来るシステム。 ② 作物の生育に関する情報(普及センターと連携)や気象情報といったもの全てがインターネット上 から見られるようにしている。

JGAPに対応した農作業管理のための 記帳システムの構築

【有限会社 興農社】(北海道)

システム概要

○ 平成14年設立、経営耕地面積は165ha(麦、てん菜、ばれいしょ、豆類、かぼちゃ等)。 ○ 法人化し従業員が増加する過程の中で、各自の情報共有、連携を強化し、チーム力を十分に発揮 する手段が無いかと模索していた。また価格低迷の中、付加価値をつけるために、自社内での PDCAサイクルの構築、さらにJGAP認定取得後の帳票のペーパーレス化、これらを解決・導入する ためにはITシステムが必要と考えた。 ○ JGAP取得に当たり、従業員の意識を向上させ、認証に必要な作業を行う動機付けをねらった。 また、同時に適切な作業や作物の管理体制をアピールし、自社の付加価値向上による収益増を目 標とした。

○ 作業情報は、実施したスタッフによって写真付きで記録、データが蓄積され、誰もがいつでも閲覧 が可能。 ○ 過去データ、作業予定表により、次に何をすれば良いかを事前に理解し行動できる。 ○ スタッフがデータを見ながら相談し、作業日の予測・資材の使用実績から使用量予測が可能となった。 ○ GAP導入により、有利に販売できるシーンもでてきた。 ○ JGAP認証基準対応を目指して開発しており、通常の入力をしておけば、監査前にあわてて資料を 集めるといったことがない。 ○ ITの導入が宣伝効果となり、視察、異業種交流が増えた。 ○ 気象などの情報と連動した生育予測が今後の課題。 ○ 気象、地図、農薬基準などのデータベースが無償で容易に使えると良い。 ○ 本システムの早期汎用化を目指したい。 ○ 蓄積されたデータを活用することによる、後継者育成など農業全体の技術向上に役立てたい。

導入経緯・背景

農業・生産

導入者コメント(効果・課題等)

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① 環境制御(ハウス内環境のセンシング)による作物に適した環境の整備(実証実験中:2件) ② 農薬散布記録をタブレット端末を使ってシステムに記帳(実証実験中)

トマトのハウス生産における農作業管理のためのシステムの構築

【八代地域農業協同組合】(熊本県)

システム概要

○ 平成7年設立。受託販売品取扱高は223億円(うち、トマト87億円)。 ○ 10a当たりの収量及び品質・食味(食味については感覚)の生産者間格差があること。 ○ 資材・燃油などを始めとした生産コストの高騰により、1作の失敗で今後の営農活動を左右しかね ない大きな損失を被る可能性があること。 ○ 紙ベースで営農日誌の記帳を行っていたため、紛失や記載漏れが発生する可能性があること。 ○ ハウス内での記帳作業は困難であるため、時間的なロスが発生すること。 ○ 記帳された紙面にてチェック・データ化する作業が必要となること。 (システム導入の必要性) ① 安定的な農業経営を行うため、10a当たりの収穫の増加、品質・食味向上に伴う販売単位の底上 げし、農業所得の向上を行う必要がある。 ② ハウス内において作物に適した環境整備を行い、10a当たりの収量と品質・食味の向上を図る。 ③ 記帳作業とチェック・データ化を簡易にし、紛失と記帳漏れがないような取組と、トレーサビリティに 対する啓発を行う必要がある。

○ 病害虫発生情報や市況・気象情報周知の迅速化を期待している。 ○ センシングについては実証中であり、効果はまだ出ていないが、農業協同組合の生産者間で栽培ノ ウハウの情報が共有され、技術の底上げに期待している。 ○ 農薬散布記録の記帳についても、開発元と協議しながらより利用しやすいシステムへ調整しながら 試験的に運用を開始しているところ。 ○ 操作の面で、不慣れな方がいるので直感的に使えるような操作性になると良い。 ○ システムの初期導入費用や月々の使用料について、国や県などから助成や補助があると良い。 ○ 蓄積したデータを使って「知見・ルール」(特に栽培面のノウハウ)を見い出し、技術の継承や営農指導 に役立てたい。

導入経緯・背景

農業・生産

導入者コメント(効果・課題等)

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① 温度・湿度などのセンシングデータが現場パソコンのデータベースに蓄積し、ハウス内や自宅のパソ コンからリアルタイムに閲覧。また過去の温度や湿度などの履歴も表示。そのデータや他の設備の データを参考にハウス内のトマトの成育を管理。 (温湿度センサーを温室内に25カ所設置し空間の温湿度分布がわかる) ② 井出農園とシステム開発企業でデータを共有して相互に情報交換。

トマトのハウス生産におけるデータの蓄積・分析

【井出農園】(神奈川県)

システム概要

○ 昭和60年設立。経営耕地面積はトマトハウス80a、露地野菜3ha。現在では食品スーパーの契約農 園として全数食品スーパーに出荷。 ○ 就農当初から、経験と勘に頼っている農業には、ITが必要であると感じており、データの蓄積ができ ればと感じていた。 ○ システム開発企業からデータ収集システムの共同研究提案の話があり、取組むこととした。全面ガラ スのハウスとビニール製のハウスではそれぞれ特性があり、外気温との差などから、こまめな制御 が必要であった。 ○ 特に自分の所のガラスハウスは特注に近く、当初は想定外な事象が発生していたため、これまでは、 これらの制御も、経験による所が大きかったが、センサーを導入することで、客観的な判断ができな いかと考えていた。

○ 今後、蓄積されたデータを元に生育の状態にどう影響するか分析。それぞれの環境にあったハウス 施設制御をする。多くのデータを蓄積することにより、生育データモデルを作る。生育データの活用に より、農作物の安定供給を可能とし、価格安定につなげる。他者と情報共有も検討。 ○ 遠隔管理が可能なので、自宅からもハウスの状況がわかる。 ○ 体感による思い込みとセンサーの値の乖離を実感した。自分の感覚で「大丈夫だろう」と思っている ことが意外にもセンサーの値は感覚と違う値であることもある。思い込みや勘に頼る事のリスクがわ かり、その結果収穫量増加に貢献している。 ○ 生育データの標準モデル化に向けて、他の多くの生産者から情報(センサー値など)の収集を政府の 方で進めて欲しい。

導入経緯・背景

農業・生産・野菜

導入者コメント(効果・課題等)

センサー設置状況

表計算ソフト画面

温室設置のパソコン

ハウス外観

システム開発企業(表計算ソフト) (表計算ソフト)

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① トラクターに自動操舵を行うシステム機器を取り付け。 ② 高性能ジャイロ(車両の姿勢を検知する計測器)とGPSのガイダンス情報を利用して、設定されたガ イダンスラインに沿って、自動でハンドルを操舵する。これにより、ほ場での無駄な動きやオーバー ラップが減ることで、資材の無駄が減り、作業効率が向上。

トラクターのGPS制御システムの導入

【中出農場】(北海道)

システム概要

○ 平成3年設立(平成16年導入)、経営耕地面積は47ha(小麦、てん菜、大豆等)。 ○ アメリカ・欧州などの農業機械展(2004年アメリカ農機具展示会(CA州)など)を頻繁に視察し、北海道 農業にもGPSを使った制御機器が使えると感じ、導入を決めた。 ○ 始めた当時は、酪農(搾乳)をしていたので、ガイダンスで牧草畑の施肥作業や牧草畑の刈り取り作 業などに使用。

○ ガイダンス自動操舵による、作業効率の向上が目的。 ○ 春・秋は種作業及び収穫作業を絶対精度(既知点からの補正観測情報を携帯電話や無線無を利用 して移動局に送信し、移動局の位置をリアルタイムで測定する方法)による正確なラインで実施。 ○ 作物の防除作業において、オーバーラップを防ぎ、重複散布を無くす。また、てん菜の根腐れ病の防 除などで、作条をピンポイントで防除する。 ○ 導入当初は、日本のGPSガイダンスの補正情報が、海上保安庁のビーコンであり、それを使ってい たが非常に精度が悪く作業が困難な事が多かった。その後、MSAS(運輸多目的衛星用衛星航法補 強システム情報衛星)の活用で精度が確保されてから(平成19年9月27日MSAS供用開始),GPSガイ ダンスが農業に少しずつ利用され始めた。 ○ GPSガイダンスに、まだ多くの農業者(特にベテランの農業者)は、投資に積極的ではないが、若い農 業者は興味を持ち始めている。また、GPSガイダンスの利用者は、効果を感じ、さらなる作業精度を 求め、よく作業セッティングの質問がきている。 ○ 草地では目標物が無く、さらに畑が傾斜・不整形なことが多く、目視作業では作業が困難なことが多 い、そのため畜産関係者での利用が増えている。 ○ 農業用データ通信において、専用の周波数帯が無いため、絶対精度が普及しない。従って農業用 データ通信(周波数枠)を確保して欲しい。 ○ 政府で測位精度を確保して欲しい。(準天頂衛星みちびきを使った高精度ガイダンスに期待)。 ○ 防除機・肥料散布機とGPSと組み合わせて、さらに効率良く作業したい。 ○ GPSガイダンスの情報にさらに様々な情報の付加やGPSガイダンスとライムスプレッダー使用により、 産業廃棄物(ライムケーキ・コンポスト・スラグ)での経費節約を図りたい。 ○ コントラクター作業(請負作業)が、多くなる見込みであり、GPSガイダンスの必要性は増加する。

導入経緯・背景

農業・生産

導入者コメント(効果・課題等)

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作業場で使える糖度や熟度の測定器開発

・ 果物に光を当て、拡散する光を検出して糖度や熟度などの客観的なデータを検出。

(ハンディ型と卓上型とある)

・ これまで経験や勘に頼っていた農作業の現場に、客観的なデータに基づいた選別工程を導入。

・ 価格は従来の他社製品と比べて、30万円からと1/3以下に抑えた。

【取組主体】千代田電子工業(株)(愛知県豊川市)

システム概要

・ 円高対策やコスト競争力の向上を狙った取引先企業の海外生産移転が進む中、同社は「国内生産

の空洞化対策」が重要と考え、平成17年頃から新事業の創出に取り組んだ。

・ 試行錯誤を重ね、果物の糖度や熟度を測る測定器「おいし果」を開発。

・ 平成24年度までの販売台数は約100台である。販売先(実績)は、国(研究機関)・JA・農家各3分の

1ずつの販売となり、農家への普及が進んでいる。

・ 平成25年度は200台以上の販売が目標。

・ 同社は、農業とは無縁の会社であるため知名度がない。その対策として、幕張メッセ(国際農業資材

XPO))・東京ビックサイト(アグロ・イノベーション)への出展及び販売網を整備(代理店を増やす)する。

・ 今秋には、「おいし果」改良版の販売、来年度は4項目表示可能(糖度・硬度・酸度・でんぷん)装置

を販売する計画。また2年後は、小型で糖度のみ計測(携帯電話サイズ)の廉価版(20万円以下)を

販売する予定。

導入経緯・背景

効果・課題等

農業・生産

ハンディ型 卓上型

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農産物直売所におけるPOSレジシステム、販売管理システムの導入

・ 出荷者は、POS端末機で商品名等を入力し、バーコードシールを作成、貼付、陳列。

・ 販売時にレジでバーコードシールを読み取り、出荷者別に販売数量・売上げ金額をシステム集計。

・ 出荷者は、「産直品売上げ情報発信メール(筆柿の里幸田・売上報告メール)」を使ってパソコンや携

帯電話で売れ行き状況の確認が可能となり、生鮮産直品のタイムリーな品揃えや販売強化が図られる。

・ 出荷者の出荷農産物の栽培日誌・防除日誌を職員が確認、

出荷登録データに追加し、 この出荷登録データが一定期間

を経過し、追加の報告・確認及び登録が行われないと、登録

した出荷者の商品はレジを通すことができなくなるよう制御。

【取組主体】道の駅「筆柿の里幸田」(愛知県額田郡)

システム概要

・ 平成21年度の直売所の運営にあたり、直産農産物の商品管理等の労力・経費の負担軽減を検討し、

各方面から情報収集したところ、「POSシステム」と「産直品売上げ情報発信メール」の存在を知り、施

設の開設にあわせて導入。

・ 商品の当日の販売状況が出荷者自身へリアルタイムに伝わり、翌日の収穫・出荷等農作業の計画・

効率化が図られる。

・ 出荷者と販売所との相互の商品管理が可能となり、タイムセールを含め活気ある売り場が確立され

ることにより売上げ向上につながる。

・ 「産直品売上げ情報発信メール」を出荷者それぞれの希望時間に発信することにより、出荷者が何が

いつ頃どれだけ売れているかが分かり好評で、5年目になって定着してきた。(例えば、午前中に出荷

し、昼メールを確認し、状況によって午後も出荷したり、翌日は出荷量を増やしたりと、各出荷者が判

断している。)

・ システムの保守契約は年間365日の契約であり、経費が高額である。

・ 大口出荷者だけでなく全出荷者に広げるとともに、売上げ状況を確認するだけでなく、更なる活用を

させる取組が必要と考えている。

導入経緯・背景

効果・課題等

農業・販売

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<POSレジシステム> ① 生産者自らが直売所に設置したパソコンに商品名、価格等を入力し、バーコードを出力。

② 袋詰めした商品にバーコードを貼り店頭に陳列。

③ 売れ行き情報が畑にいる生産者に届くようになっており、1日3回程度の搬入がある。 <トレーサビリティシステム> ○ 商品に貼られたバーコードを読み込むことにより、生産者が予め入力した生産者情報、写真、 使用した農薬等を閲覧することができる。

野菜直売所におけるPOSレジシステム、 トレーサビリティシステムの導入

【株式会社びわこだいなか愛菜館】(滋賀県)

システム概要

○ 平成10年に大中町の有志6戸が中心となり、直売所「愛菜館」を開店。

○ 平成20年に構成農家4戸が取締役となり法人化。「株式会社びわこだいなか愛菜館」の設立を機に 「POSレジシステム」と「トレーサビリティシステム」を導入。

【POSレジシステム】 ○ 売れ行き情報を見て、随時、農家から追加搬入があるため、欠品を防ぐことができる。

○ 入力操作等が使いやすく工夫されており、操作が困難な農家はほとんどいないとのこと。 【 トレーサビリティシステム】 ○ 消費者は、導入直後は閲覧していたものの、徐々に減っていった。消費者は使用した農薬の種類を 知りたいわけではなく、もっと付加価値のある情報(こだわりの栽培方法等)を掲載する必要がある のではと感じており、更なる情報発信が今後の課題。

導入経緯・背景

農業・販売

市販のものを購入

導入者コメント(効果・課題等)

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・ 生産者がパソコン及びFAXを利用して出荷予約を行う。

・ 予約された農産物のバーコードは自宅のFAX等に自動発給されるため、商品に貼付した状態で直売

所に農産物を搬入、店頭に並べる。

・ 直売所では販売した商品がレジを通過する毎にデータがPOSシステムに蓄積され、データベースと

して活用。

・ 生産者は1時間毎に更新される売上データをもとに携帯電話で売上案内サービスを受ける。

・ 直売所店内に設置されている1台のライブカメラで直売所の様子をインターネットでリアルタイム視聴

することが可能であり、店内の様子を把握。

・ 消費者はライブカメラにより品揃えの確認やクレール平田のHPに公開された情報により、その日に

直売所へ出荷された単価、数量など、店頭情報や売れ筋情報を確認可能。

農産物直売所IT活用型支援システムの導入

【取組主体】道の駅「クレール平田」(岐阜県海津市)

システム概要

・ 平成12年1月にオープンした道の駅「クレール平田」は、販売の効率化などを目的としたPOSシス

テムを導入していたが、活用はレジ入力作業の省力化、支払い集計等にとどまっていた。

・ 14年7月に対面による「顔の見える農産物販売」の必要性を検討し、「農産物直売所IT活用型支援

システム」を導入した。

・ 導入当初は、売上高や会員数も増加していたものの、近年では売上高は横ばい、会員数は高齢者

のリタイヤ等により減少。

・ トレーサビリティなど栽培履歴や付加情報を発信したいが、システム上の問題や導入資金の課題が

ある。(現在は手書きレシピで対応している生産者もいる。)

・ 高齢者の離農と農地の管理、新たな会員(担い手)の不足、高齢会員のPC等操作などが課題。

導入経緯・背景

効果・課題等

直売所の天井に取り付けられているライブカメラ 商品に添付したバーコードラベル

農業・販売

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フェイスブックで情報収集、新商品の開発販売

・ 濃厚な口当たりの抹茶味とほうじ茶味と紅茶味の3種類のアイスが完成。

・ レトロ調のフタのデザイン画と印刷はフェイスブックで友人になった業者にそれぞれ依頼し、「プレミア

ム濃香アイス」の名前で平成24年4月から販売。

【取組主体】 尾張一宮 お茶の福壽園(愛知県一宮市)

概要

・ 平成23年夏、同社が扱う製品でアイスクリームを作ろうと思い立ち、交流サイト「フェイスブック」の友

人たちに相談すると続々と情報が集まり、その友人から推薦された業者に依頼し、新商品の開発へと

結びついた。

・ 「フェイスブック」は密度の濃い交流ができる。サイトで親しくなっていたので、実際に会って話をしても

スムーズに話が進んだ。「フェイスブック」を商売や事業に活用することで、情報交換や人脈づくりにも役

立ち、利用者同士の交流会も盛んで、新しい街おこしの形となることを期待。

・ この商品の開発により、「お茶屋さん」と言う敷居の高いところに、今までに訪れたことのない客層が

気軽に入ってこられるようになった。

・ さらに、地元のケーブルテレビに掲載されたこともあり、客層が変化するとともに、50%程来客数が増

加。

・ 現在、より集客できる方法やホームページの改良を考えている。

導入経緯・背景

効果・課題等

農業・販売

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① 地区の4カ所に機器を設置し、獣が実際に出没している場所に「檻・アニマルセンサー」、出入り口と 思われる場所に「獣感知装置」、獣道と思われる場所に「トレールカメラ(赤外線カメラ)」を設置

② クラウドシステムによりデータを情報センターで蓄積し、農家のパソコン・携帯電話にメール配信

鳥獣害対策における遠隔監視のための クラウドシステムの構築

【塩尻市北小野上田区】(長野県)

システム概要

○ 経営耕地面積は約29ha(水稲約28ha、露地野菜約1ha)、水稲の8割が販売用で露地野菜は自家 用。主力の水稲において、収穫時期の水田に「イノシシ」が入り込むと臭いが付着し、販売不可能に なるため、非常に痛手。 ○ 今までは一部で「電気柵」等での対策を行ったが、これでは地域全体で対策に向かう姿勢が取れな いために、現在は地域全体で、集落の農地に「虎ロープ」を張り巡らせているが効果は限定的。 特に平成24年は、夏前からイノシシが出没し始めており、頭を悩ませていた。 ○ 同地区のIT企業に勤める方から、「鳥獣害対策」を研究している「ITアグリ研究会(塩尻インキュベー ションプラザ)」を紹介され、同研究会で開発した鳥獣害対策クラウドシステムをモニターとして実証実 験することになった。

○ システムにより鳥獣が「どこから出没するのか」を知り、市や猟友会に場所を知らせることで、罠にか かる確率が高まることを期待。事実、システム設置後に3頭のイノシシを捕獲した。 ○ 「トレールカメラ(赤外線カメラ)」にてイノシシを撮影、「獣感知装置」にて出没時間が判明し、これによ り住民に「注意喚起」ができた。 ○ 視覚的にデータが残ることで、市や猟友会に「具体的」に話すための材料になるのと同時に鳥獣対策 への取組に、地域の生産者が積極的に参加するようになった。 ○ 機器を移動すると、どこに置いた機器が反応したのかわからなくなるので、すべての機器にカメラと GPSが搭載されていると良い。 ○ 実証実験の結果、平成24年度は今回の対策によって、ほ場被害が大幅に軽減され、収穫量もアッ プした。

導入経緯・背景

農業・生産

導入者コメント(効果・課題等)

アニマルセンサー

獣感知装置

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鳥獣害対策における遠隔監視システムの構築

・ 農業総合試験場が開発した新型わな「おりべえ」は、5m四方の囲いわなで、外部から赤外線カメ

ラで監視し、動物が中に入ると音で知らせる。モニター画像で群れ全体が入ったのを確認し、スイッチ

を押すと、上部に格納された落とし扉が作動し、四方を囲んで捕獲する。

・ わなの入り口は大きく、見通せるため、動物に警戒 される心配も少ない。

・ 「おりべえ」の名称は、檻付きで扉が下りて塀状になるわなから命名、一式70万円で販売(設置費

別)。

【取組主体】愛知県農業総合試験場(愛知県長久手市)

システム概要

・ 県内の農作物被害は毎年増加しており、平成23年度のイノシシ・シカ被害は1億5千万円に上り、19

年度の3倍以上となっている。従来の箱わなでは群れの一部しか捕獲できず、逃げた動物が警戒心を

強くして、わなに掛かりにくくなる欠点があり、捕獲された動物が、わなの中から外が見えるために脱出

しようと暴れ、食肉としての味が落ちる問題もあった。

・ その対策として、県内の民間会社2社と共同で群れ全体を一網打尽にできるイノシシ・シカ捕獲用の

愛知式全方位開放型檻付き囲いわな「おりべえ」を開発。

・ 農業総合試験場では平成23年4月から1年間、岡崎市内で実験。わな9回の作動でイノシシ15頭、シ

カ5頭を捕獲。一度に6頭のイノシシを捕獲したこともあった。扉に囲まれて外が見えないため、捕獲後

も暴れることが少なく、獣体を傷つけない。

・ 「おりべえ」は経験の少ない人でも安全に操作できる。

・ 捕獲日は捕獲者の都合に合わせて決め、全頭捕獲ができる。

・ 遠隔操作は「おりべえ」から電波が届く300m以内で行なう必要があるため、より遠くから操作ができる

よう電話回線の利用も検討している。

導入経緯・背景

効果・課題等

農業・生産

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鳥獣害対策における遠隔監視システムの構築

・ ニホンジカは柵沿いに歩く習性があることから、集落の周りに張り巡らされた進入防止柵の一部を取

り除き、檻まで進入路を新設し、わなの中に牧草などの餌を用意しておびき寄せる。

・ 8m四方で高さ2mの囲いわなの上部にカメラを設置し、パソコンや多機能携帯電話などから24時間

監視出来ることから、ニホンジカが檻の中に入ったことを確認し、端末の画面を操作し、入り口の上部

に巻き付けられている扉が閉まる。

・ 太陽光とバッテリーを電源としている。

【取組主体】大台町滝広区「和会」(三重県多気郡)

システム概要

・ 中山間地に位置する大台町滝広区は、シカ、イノシシ、サルによる農作物の被害に悩んでおり、対策

が大きな課題となっていた。

・ シカのより効果的な捕獲方法を検討していた県の農業試験場は、野生動物の捕獲装置を製造販売

する会社「アイエスイー」の囲いわなを活用したより効果的な捕獲方法を実験するため協力先を探して

いたところ、獣害対策に積極的に取り組んでいる同地区の住民グループ「和(なごみ)会」を大台町役場

から紹介されたことがきっかけとなり、平成24年9月から同地区に害獣遠隔監視・操作システム「まる

三重ホカクン」を導入。

・ これまでのわなやセンサーによる捕獲方法は通常1頭毎の捕獲だが、カメラによる常時監視と録画

が可能となり、狙った個体や複数頭あるいは群れ毎の捕獲が可能となった。

・ 地区が一体となって獣害対策に取り組むようになり、また、捕獲した獣に対する助成金を獣害対策経

費、他県の視察や地区の親睦のために利用しており、集落の絆が強くなった。

・ 夜行性のシカの監視等に対応するため、シカがわなに入ったことをセンサーが感知し、担当者にメー

ルが入る機能が追加されたため、本年度からその効果について実験を開始。

・ 現在のわなは固定式で大きいため、季節による餌場の移動に対応できず捕獲効率が悪いため、移

動可能な組立式のわなの改良により、季節に応じた効率的な捕獲の可能性を検証していく。

・ 獣害に苦慮している農家は多く、こういった装置を普及していくためには、多くの人に見てもらい、効

果を実感してもらうことが必要と考えている。

導入経緯・背景

効果・課題等

農業・生産

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