43
173 4 平面図形・空間図形の計量 前章で学んだ三角比は,図形の長さ・面積を求めるために有効である.そこ で,この章の前半では,三角比を用いた平面・空間図形の計量を主に考える. また,章の後半では,図形の面積比・体積比と,球を取り上げる. § 4.1 三角比の応用 ここでは,三角形の分析を行うための基本ツールである,正弦定理や余弦定理 などを学ぶ. 4.1.1 三角形の面積と三角比 ここでは,4ABC の面積を,2 辺の長さ ab と,その間の角度 θ を用いて表すことを 考えてみよう.左の図は θ が鋭角の場合,右の図は θ が鈍角の場合を表している. h h a b a b A B C A B C H H 0 θ θ 180 -θ 上の図の三角形において,底辺を a とすれば高さは h であるから,三角形の面積 S どちらも S = ah 2 である. ここで高さ h は,左の図では,4ACH に着目すれば h = b sin θ である(『三角比と辺の長 さ』(p.156) を利用).また,右の図でも 4ACH 0 に着目して h = b sin(180 - θ) = b sin θ ←『180 - θ の三角比』(p.167)

平面図形・空間図形の計量 - Amazon Web Services...174 第4 章 平面図形・空間図形の計量 である.すなわち,左右どちらの場合でも高さはh =

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173

第 4章

平面図形・空間図形の計量

前章で学んだ三角比は,図形の長さ・面積を求めるために有効である.そこ

で,この章の前半では,三角比を用いた平面・空間図形の計量を主に考える.

また,章の後半では,図形の面積比・体積比と,球を取り上げる.

§ 4.1

三角比の応用

ここでは,三角形の分析を行うための基本ツールである,正弦定理や余弦定理

などを学ぶ.

4.1.1 三角形の面積と三角比 

ここでは,4ABCの面積を,2辺の長さ a,bと,その間の角度 θ を用いて表すことを

考えてみよう.左の図は θが鋭角の場合,右の図は θが鈍角の場合を表している.

h h

a

b

a

b

A

BC

A

BCH H′θ

θ180◦−θ

上の図の三角形において,底辺を aとすれば高さは hであるから,三角形の面積 Sは

どちらも S =ah2である.

ここで高さ hは,左の図では,4ACHに着目すれば h = bsinθである(『三角比と辺の長

さ』(p.156)を利用).また,右の図でも 4ACH′ に着目して

h = bsin(180◦ − θ) = bsinθ ←『180◦ − θの三角比』(p.167)

174 第 4章 平面図形・空間図形の計量

である.すなわち,左右どちらの場合でも高さは h = bsinθとなり

S =(底辺)×(高さ)

2=

ah2

=a · bsinθ

2=

12

absinθ

と 1つの式で表すことができる(これは,θ = 90◦ の直角三角形の場合も含んでいる).

a

b

a

b

θθ

三角形の面積

右図の三角形の面積 Sは

S =12

absinθ

で表せる.

aを底辺とみれば bsinθが高さを表し,bを底辺とみれば asinθが高さを表す.

4.1.2 正弦定理 

三角形の 3つの頂点を通る円を,その三角形の外接円 (circumscribed circle)という*1.

1つの三角形に対し,外接円は 1つに定まる.

いま,右図のような三角形とその外接円を考える.

a

A

このとき,外接円の半径を Rとすると

asinA

= 2R

が成り立つ.これを,正弦定理 (sine theorem)という.

この式が成り立つことを,Aが鋭角,直角,鈍角の場合

に分けて,以下に見ていこう.

i) Aが鋭角のとき

右図は 4ABCとその外接円Oである.円Oに直径 BD a

A B

C

O

Aを引くと,右下図のようになる.

このとき,線分 BD は円の直径なので,∠BCD = 90◦.

a2R

A B

C

O

D

A

Dつまり,右図の 4DBCは直角三角形となるから sinD =

a2Rである.円周角の定理より A = Dであるから

sinA =a

2R⇔ a

sinA= 2R

となり成立.

*1 詳しくは,FTEXT数学 B で取り扱う.

– www.ftext.org –

4.1 三角比の応用 175

ii) Aが直角のとき

sinA = 1,a = 2Rであるから

a = 2R

A B

C

O

asinA

=a1

= 2R

となり成立.

iii) Aが鈍角のとき

4ABC に外接する円に,直径 BD を引くと,

a

2R

A B

C O

D

A

D右欄外の図のようになる.

いま,右図の 4DBCは直角三角形となるから

sinD =a

2R· · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · 1©

である.さらに

A = ∠DAC + ∠DAB

= ∠DBC + ∠DCB (いずれも,円周角の定理)

= 180◦ − D (4DCBに着目)

である*2ので,『180◦ − θの三角比』(p.167)から,sinA = sin(180◦ − D) = sinDとわ

かる.これと 1©から

sinA =a

2R⇔ a

sinA= 2R

となり成立.

正弦定理

4ABCにおいて

a

c

b

A B

C

A

C

B

asinA

=b

sinB=

csinC

= 2R

が成り立つ.

ただし,Rは 4ABCの外接円の半径とする.

正弦定理の使い方は主に 2つある.

1つは, asinA

=b

sinBの関係から,辺の長さや角度を求めることである.た

とえば,2つの角と 1つの辺がわかれば,この関係式からもう 1つの辺の長さ

が計算できる.

そしてもう 1つの使い方は,三角形の・外・接・円・の半径 Rを求めることである.内

接円ではないので注意しよう(内接円の半径については p.193を参照のこと).

*2 一般に,円に内接する四角形においては,向かい合う 2角の和は 180◦ となる.この性質については,『円に内接する四角形』(p.194)において別証明も与え,より詳しく学ぶ.

– www.ftext.org –

176 第 4章 平面図形・空間図形の計量

【例題:正弦定理の利用~その 1~】¶ ³

4ABCにおいて,a = 12,A = 45◦,B = 60◦ のとき,bの値を求めよ.また,4ABC

の外接円の半径を求めよ.

µ ´【解答】

正弦定理より,a

sinA=

bsinB

であるから J A

BC12

60◦

45◦

b =asinBsinA

=12 sin 60◦

sin 45◦=

12×√

32√

22

= 6√

6

同じく正弦定理より,2R =a

sinAであるから

R =a

2 sinA=

122 sin 45◦

=12

2×√

22

=12√

2= 6√

2

上の問題は計算するだけで答えを導けるが,あくまで図形問題である.図形の

問題では,図を描いてから問題を解くと,ミスがあっても発見しやすい.

【例題:正弦定理の利用~その 2~】¶ ³

4ABCにおいて,各辺の長さが a : b : c = 2 : 4 : 5であるとき,sinA : sinB : sinC

の値を求めよ.

µ ´【解答】

4ABCの外接円の半径を Rとすると,正弦定理より J

B

A

C

5

2

4a = 2RsinA,b = 2RsinB,c = 2RsinC

であるから

2RsinA : 2RsinB : 2RsinC = 2 : 4 : 5

∴ sin A : sin B : sin C = 2 : 4 : 5

4.1.3 第 1余弦定理 

右図のような三角形の 2つの角と 2辺の長さの間に次の関係式が成り立つ.

c

ab

A B

c = bcosA + acosB

これを,第 1余弦定理 (first cosine theorem)という.

この式が成り立つことを,Aが鋭角,直角,鈍角の場

合に分けて,以下に見ていこう.

– www.ftext.org –

4.1 三角比の応用 177

i) Aが鋭角のとき

線分 AB 上に,右図のように垂線 CHをひくと

c

ab

A B

C

H

(右辺)= bcosA + acosB

= AH + BH

= AB = c =(左辺)

となり成立.

ii) Aが直角のとき

A = 90◦ より,cosA = 0となるので

c

ab

A B

C

(右辺)= b

0︷︸︸︷cosA +acosB

= acosB

= c =(左辺)

となり成立.

【 暗記:第 1余弦定理の導出】¶ ³

上の続きとして,Aが鈍角のときも第 1余弦定理が成り立つことを証明せよ.µ ´【解答】

直線 AB 上に,右欄外の図のように垂線 CHをひくと J

c

a

b

A B

C

H

(右辺)= bcosA + acosB

= − bcos(180◦ − A) + acosB

= − AH + BH

= BH − AH = AB = c =(左辺) �

第 1余弦定理

4ABCにおいて

c

ab

A B

C

A

C

B

c = bcosA + acosB

b = acosC + ccosA

a = ccosB + bcosC

が成り立つ.

この定理は,ある角から見たときに左右 2

bcosA acosB

ab

A B

つの辺を向かいの辺に押しつぶす感じで覚

えると良い.

また,上の暗記例題のように自分で垂線の

引けるならば,公式を覚えなくてもよい.

– www.ftext.org –

178 第 4章 平面図形・空間図形の計量

4.1.4 第 2余弦定理(余弦定理) 

三角形の 1つの角と 3辺の長さの間に次の関係式が成り立つ.

c

ab

θ

a2 = b2 + c2 − 2bccosθ

これを,第 2余弦定理 (second cosine thorem)と

いい,単に余弦定理 (cosine thorem)というときに

はこちらを指す.この式が成り立つことを,Aが

鋭角,直角,鈍角の場合に分けて,以下に見てい

こう.

i) Aが鋭角のとき

線分 AB 上に,右図のように垂線 CHをひき,

c

ab

A B

C

H

4BCHに三平方の定理を用いると

(左辺)= a2 = BC2 = CH2 + BH2

= (bsinA)2 + (c− bcosA)2

= b2 sin2 A + c2 − 2bccosA + b2 cos2 A

= b2(sin2 A + cos2 A) + c2 − 2bccosA

= b2 + c2 − 2bccosA =(右辺)

となり成立.

ii) Aが直角のとき

A = 90◦ より,cosA = 0となるので

c

ab

A B

C

(左辺)= a2 = BC2 = CA2 + AB2

= b2 + c2

= b2 + c2 − 2bccosA︸︷︷︸0

=(右辺)

となり成立.

【 暗記:余弦定理の導出】¶ ³

上の続きとして,Aが鈍角のときも余弦定理が成り立つことを証明せよ.µ ´【解答】

直線 AB 上に,右欄外の図のように垂線 CHをひき, J

c

a

b

A B

C

H

4BCHに三平方の定理を用いると

(左辺)= a2 = BC2 = CH2 + BH2

– www.ftext.org –

4.1 三角比の応用 179

= {bsin(180◦ − A)}2 + {c + bcos(180◦ − A)}2

= (bsinA)2 + (c− bcosA)2 J『180◦ − θ の三角比』(p.167)

= b2 sin2 A + c2 − 2bccosA + b2 cos2 A

= b2(sin2 A + cos2 A) + c2 − 2bccosA J『三角比の相互関係 ii)』(p.163)

= b2 + c2 − 2bccosA

となり成立. �

c

ab

A B

C

A

C

B

第 2余弦定理(余弦定理)

4ABCにおいて

a2 = b2 + c2 − 2bccosA

b2 = c2 + a2 − 2cacosB

c2 = a2 + b2 − 2abcosC

が成り立つ.

ここから次の事実が導かれる.

Aが鋭角 ⇔ cosA > 0 ⇔ a2 < b2 + c2

Aが直角 ⇔ cosA = 0 ⇔ a2 = b2 + c2

Aが鈍角 ⇔ cosA < 0 ⇔ a2 > b2 + c2

特に,Aが直角のときは,三平方の定理に一致する.

余弦定理の主な使い方は,a2 = b2 + c2 − 2bccosAなどの関係式から,辺の長

さや角度を求めることである.余弦定理は・3・辺・と・1・角・に・つ・い・て・成・り・立・つ・関・係・式

であることに注意しよう.たとえば,2つの辺と 1つの角がわかれば,この関

係式からもう 1つの辺の長さが計算できるという具合である.

【例題:余弦定理の利用~その1~】¶ ³

4ABCにおいて,b = 3,c = 4√

2,A = 45◦ のとき,aの値を求めよ.µ ´【解答】

点 A からみる余弦定理より J

A B

C

45◦

a3

4√

2a2 = b2 + c2 − 2abcosA

= 32 +(4√

2)2 − 2 · 3 · 4

√2 cos 45◦

= 9 + 32− 24√

2×√

22

= 17

よって,a =√

17である.

– www.ftext.org –

180 第 4章 平面図形・空間図形の計量

■余弦定理で角(の余弦)を求める

この(第 2)余弦定理は,3つの辺から 1つの角度を求めるためによく用いられる.たと

えば,角 Aの大きさを求めるには,公式 a2 = b2 + c2 − 2bccosAを用いればよい.

また,公式 a2 = b2 + c2 − 2bccosAを cosAについて解けば,

2bccosA = b2 + c2 − a2 ⇔ cosA =b2 + c2 − a2

2bc

となる.同様に

cosB =c2 + a2 − b2

2ca, cosC =

a2 + b2 − c2

2ab

である.この式は,角度を求めるときに便利である.

この形で余弦定理を覚えてもよい.各自の覚えやすい方で覚え,もう一方へ変

形できれば十分である.

【例題:余弦定理の利用~その2~】¶ ³

4ABCにおいて,a =√

21,b = 4,c = 5のとき,Aの値を求めよ.また,cosBを

求めよ.

µ ´【解答】

4ABC に点 A からみる余弦定理を用いると,cosA =

b2 + c2 − a2

2bc.これより J A

B C√21

5 4cosA =

42 + 52 −(√

21)2

2 · 4 · 5 =12

よって,A = 60◦ となる.

同じく余弦定理を用いると,cosB =c2 + a2 − b2

2ca.こ

れより

cosB =52 +

(√21

)2 − 42

2 · 5 · √21

=30

10√

21=

√217

Jちなみに,√

217; 0.655である

ので,p.229の表より B ; 49◦ である.

– www.ftext.org –

4.2 平面図形の計量 181

§ 4.2

平面図形の計量

ここではまず,三角形の形状や大きさが決まるための条件を整理し,その後,

今まで学んできたことの実地訓練として,平面図形の具体的な計量を行う.こ

のセクションの終わりには,平面図形に関する有名な定理も紹介する.

4.2.1 三角形の決定 

■三角形の合同

2つの図形が合同 (congruence)であるとは,「空間的な回転・平行移動によって 2つの

図形が完全に重なる」ことである.

2つの三角形の場合は,3辺と 3つの内角がすべて一致すれば合同である.しかし,実

際には,中学校でも学習したように,三角形の合同条件 (conditions of congruence)

1) 1辺とその両端の角が等しい(2角きょう

夾辺相等)

2) 2辺とその間の角が等しい(2辺きょう

夾角相等)

3) 3辺が等しい(3辺相等)

のいずれかが成り立てば十分である.

■三角形の決定条件

「三角形が決定する」とは,「3辺と 3つの内角が決まった値をもつこと」である.

たとえば,三角形の 3つの内角が 40◦,60◦,80◦ と与えられても,辺の長さはわからな

いので,この三角形は決定しない.しかし,さらにどこか 1辺の長さが与えられれば,こ

の三角形は決定する.

三角形を決定するための条件は,上の合同条件 1)~3)に対応して,3つの場合がある.

i) 1辺とその両端の角が与えられた場合

ii) 2辺とその間の角が与えられた場合

iii) 3辺が与えられた場合

たとえば,i) の条件で三角形を 2つ描けば,その 2つの三角形は合同条件 1)によって合

同であり,3辺と 3つの内角において違いはありえない.ii), iii) も同様である.

また,常にではないが

iv) 2辺とその間でない角が与えられた場合

でも,三角形を決定する場合がある.

– www.ftext.org –

182 第 4章 平面図形・空間図形の計量

以下では,これらの情報が与えられ三角形が決定したとき,残りの辺と角を求める方法

を考えてみよう.

【例題:1辺とその両端の角が与えられた場合】¶ ³

(1) A = 60◦,B = 75◦,AB = 2である三角形において,C,a,bを求めよ.

(2) A = 60◦,B = 45◦,AB = 2である三角形において,C,a,bを求めよ.µ ´【解答】

(1) 三角形の内角の和は 180◦ なので J

2

ab

A B

C

60◦ 75◦

CC = 180◦ − (60◦ + 75◦) = 45◦

また,正弦定理a

sinA=

csinC

を用いて

a =csinAsinC

=2 sin 60◦sin 45◦

=2 ·

√3

2√2

2

=2√

3√2

=√

6 J『複分数*3』(p.4)

また,点 Bからみる第 1余弦定理 b = acosC + ccosAを J 

2

√6b

A B

C

60◦

45◦用いて

b =√

6 cos 45◦ + 2 cos 60◦ =√

3 + 1

【別解:75◦ の三角比 (p.171参照)を覚えている場合】

正弦定理b

sinB=

csinC

より

b =2 sin 75◦sin 45◦

=2 ·

√6+√

24√

22

=√

3 + 1

(2) 三角形の内角の和は 180◦ なので J

2

ab

A B

C

60◦ 45◦

CC = 180◦ − (60◦ + 45◦) = 75◦

また,正弦定理a

sinA=

bsinB

を用いて

asin 60◦

=b

sin 45◦⇔ a√

32

=b√2

2

⇔ a =

√3

2√2

2

b =

√3√2

b · · · · · · 1©

また,点 Cからみる第 1余弦定理 c = acosB+ bcosAを J

2

ab

A B

C

60◦ 45◦用いて

*3 §4.2『平面図形の計量』,§4.3『空間図形の計量』においては,複雑な式計算が必要なこともある.これを正確に行うために参照すべきページを,このように記しておく.学習にあたって活用してほしい.

– www.ftext.org –

4.2 平面図形の計量 183

2 = bcos 60◦ + acos 45◦ ⇔ 2 =b2

+

√2a2

⇔ 4 = b +√

2a · · · · · · 2©

1©を 2©に代入して

4 = b +√

2 ·√

3√2

b ⇔ 4 =(1 +√

3)b

⇔ b =4

1 +√

3= 2√

3− 2 J『分母の有理化』(p.21)

1©に代入して,a = 3√

2−√

6となる.

【別解:75◦ の三角比 (p.171参照)を覚えている場合】

正弦定理a

sinA=

bsinB

=c

sinCより

a =csinAsinC

=2 sin 60◦sin 75◦

=2 ·

√3

2√6+√

24

=4√

3√6 +√

2= 3√

2−√

6

b =csinBsinC

=2 sin 45◦sin 75◦

=2 ·

√2

2√6+√

24

=4√

2√6 +√

2= 2√

3− 2

【例題:2辺とその間の角が与えられた場合】¶ ³

(1) A = 45◦,b =√

6,c =√

3 + 1である三角形において,a,B,Cを求めよ.

(2) A = 75◦,b =√

6,c = 2である三角形において,a,B,C を求めよ.ただし,

cos 75◦ =

√6− √2

4である.

µ ´【解答】

(1) 点 A からみる余弦定理 a2 = b2 + c2 − 2bccosAを用 J 

√3 + 1

a√

6

A B

C

45◦ B

C

いて

a2 =√

62 +(√

3 + 1)2 − 2

√6(√

3 + 1)cos 45◦

= 6 + 4 + 2√

3− 2√

6(√

3 + 1)·√

22

= 10+ 2√

3− 2√

3(√

3 + 1)

= 4

より,a = 2となる.

また,点 Bからみる余弦定理 b2 = c2 + a2 − 2cacosB

– www.ftext.org –

184 第 4章 平面図形・空間図形の計量

を用いて J正弦定理を用いた場合は

sinB =bsinA

a=

√6 sin 45◦

2

=

√6 ·√

22

2=

√3

2

より,B = 60◦ または 120◦ となり,Bが 1つに定まらない.

cosB =c2 + a2 − b2

2ca=

(√3 + 1

)2+ 22 −

(√6)2

2(√

3 + 1)· 2

=4 + 2

√3 + 4− 6

4(√

3 + 1) =

2(√

3 + 1)

4(√

3 + 1) =

12

より,B = 60◦ となる.

三角形の内角の和は 180◦ なので

C = 180◦ − (45◦ + 60◦) = 75◦

(2) 点 A からみる余弦定理 a2 = b2 + c2 − 2bccosAを用 J

2

a√6

A B

C

75◦ B

Cいて

a2 =√

62 + 22 − 2√

6 · 2 cos 75◦

= 10− 2√

6 · 2 ·√

6− √24

= 10−√

6(√

6−√

2)

= 4 + 2√

3 =(√

3 + 1)2

J『2重根号』(p.33)

より,a =√

3 + 1となる.

また,点 B からみる余弦定理 b2 = c2 + a2 − 2cacosB

を用いて J正弦定理を用いた場合は

sinB =bsinA

a=

√6 sin 75◦√

3 + 1

=

√6 ·√

6 +√

24√

3 + 1=

√3

2

より,B = 60◦ または 120◦ となるが,B = 120◦ とすると,三角形の内角の和が 180◦ であることに矛盾するので,B = 60◦

とわかる.

cosB =22 +

(√3 + 1

)2 −(√

6)2

2 · 2(√

3 + 1) =

2(√

3 + 1)

4(√

3 + 1)

=12

より,B = 60◦ となる.

三角形の内角の和は 180◦ なので

C = 180◦ − (75◦ + 60◦) = 45◦

(1),(2)のいずれの場合も,角 Bを求めるときに正弦定理・余弦定理のどちら

も使えた.しかし,正弦定理においては,右欄外の注のように 2つの角度が答

えとして現れ,一方,余弦定理においては 1つの角度が答えに定まった.

つまり,正弦定理・余弦定理の・両・方・が・使・え・る・場・合は,余弦定理を用いるとよい.

【例題:3辺が与えられた場合】¶ ³

(1) a = 2,b =√

6,c =√

3 + 1である三角形において,A,B,Cを求めよ.

(2) a = 2,b =√

6 +√

2,c =√

6 +√

2である三角形において,A,B,Cを求めよ.µ ´

– www.ftext.org –

4.2 平面図形の計量 185

【解答】

(1) 点 A からみる余弦定理 a2 = b2 + c2 − 2bccosAを用いて J 

√3 + 1

2√

6

A B

C

A B

C

cosA =b2 + c2 − a2

2bc=

(√6)2

+(√

3 + 1)2 − 22

2 · √6(√

3 + 1)

=6 + 4 + 2

√3− 4

2(3√

2 +√

6)

=6 + 2

√3

2(3√

2 +√

6) =

3 +√

3

3√

2 +√

6Jもし

3 +√

3

3√

2 +√

6=

3 +√

3√2(3 +√

3)

に気がつけば計算は易しい

が,気がつくのは難しい.

気がつかない場合は,こ

のように『分母の有理化』

(p.21)を行うしかない.

=

(3 +√

3) (

3√

2− √6)

18− 6

=9√

2− 3√

6 + 3√

6− 3√

212

=6√

212

=

√2

2

よって,A = 45◦ となる.

また,点 Bからみる余弦定理 b2 = c2 + a2 − 2cacosBを用

いて

cosB =c2 + a2 − b2

2ca

=

(√3 + 1

)2+ 22 −

(√6)2

2(√

3 + 1)· 2

=4 + 2

√3 + 4− 6

4(√

3 + 1) =

2(√

3 + 1)

4(√

3 + 1) =

12

J分母の 4(√

3 + 1) は展開しない方がよい.この問

いのように約分できるこ

ともあるし,そうでなくて

も,分母の有理化を容易に

行える.

より,B = 60◦ となる.

三角形の内角の和は 180◦ なので

C = 180◦ − (45◦ + 60◦) = 75◦

(2) 点 A からみる余弦定理 a2 = b2 + c2 − 2bccosAを用いて J 

√6 +√

2

2

√6 +√

2

A B

C

A B

CcosA =b2 + c2 − a2

2bc

=

(√6 +√

2)2

+(√

6 +√

2)2 − 22

2(√

6 +√

2) (√

6 +√

2)

=2(√

6 +√

2)2 − 4

2(√

6 +√

2)2

= 1− 2(√6 +√

2)2

J2(√

6 +√

2)2 − 4

2(√

6 +√

2)2

の分母・分子にある 2乗を展開しても良いが,計算は

ややこしくなる.

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186 第 4章 平面図形・空間図形の計量

= 1− 28 + 4

√3

= 1− 14 + 2

√3

= 1− 4− 2√

316− 12

=

√3

2

より,A = 30◦ となる.

ここで,b = c =√

6+√

2より 4ABCは二等辺三角形であ

るから,B = Cなので

B = C =180◦ − A

2= 75◦

■2辺とその間でない角が与えられた場合

2辺とその間でない角が与えられた場合は,三角形がただ 1つ決定するとは限らない.

たとえば,b,cと Bが与えられている場合を考えてみよう.

Bを鋭角としたとき*4,bの値によって次の 4つの場合があるとわかる.このとき,点

A を中心とする半径 bの円を考えるとわかりやすい.

i) c 5 bの場合

4ABCは 1つだけ存在する.

c

b

A B

C

B

ii) csin B < b < cの場合

2つの 4ABCが存在する.

c

b

A B

C

C

B

iii) csin B = bの場合

4ABCは 1つだけ存在する.

このとき,4ABC は C = 90◦ の直角三

角形となる.

c

b

A B

C

B

iv) b < csin Bの場合

このような三角形は存在しない.

cA BB

以上の条件に注意しながら,次の例題をみてみよう.

*4 Bが鈍角のときは,b > cであれば常に 4ABC は 1つに定まり,b 5 cであれば存在しない.余力のある人は考えてみよう.

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4.2 平面図形の計量 187

解く前に図を必ず描き,答えが何通りありそうか,見通しを立てるようにし

よう.

【例題:2辺とその間でない角が与えられた場合】¶ ³

(1) A = 30◦,a =√

2,b = 2である三角形において,B,C,cを求めよ.

(2) A = 45◦,a = 2,b =√

2である三角形において,B,C,cを求めよ.µ ´【解答】

(1) 正弦定理 asinA

=b

sinBを用いて

J 

c

√22

A B

C

30◦ B

CsinB =2 sin 30◦√

2=

2 · 12√2

=

√2

2

より,B = 45◦または 135◦ となる.

i) B = 45◦ のとき Jこのときは,下の図のようになっている.

c

√22

A B

C

30◦ 45◦

C

三角形の内角の和は 180◦ なので

C = 180◦ − (30◦ + 45◦) = 105◦

また,点 Cからみる第 1余弦定理

c = bcosA + acosBより

c = 2 cos 30◦ +√

2 cos 45◦

= 2 ·√

32

+√

2 ·√

22

=√

3 + 1

ii) B = 135◦ のとき Jこのときは,下の図のようになっている.

c

√2

2

A B

C

30◦135◦

C

三角形の内角の和は 180◦ なので

C = 180◦ − (30◦ + 135◦) = 15◦

また,点 Cからみた第 1余弦定理

c = bcosA + acosBより

c = 2 cos 30◦ +√

2 cos 135◦

= 2 ·√

32

+√

2 ·(−√

22

)=√

3− 1

この問では,下図のように 2つ

√22

A B

C

B30◦ 45◦

135◦

|| ||

の場合がある.

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188 第 4章 平面図形・空間図形の計量

(2) 正弦定理 asinA

=b

sinBを用いて J 

c

2√

2

A B

C

45◦ B

CsinB =

√2 sin 45◦

2=

√2 ·

√2

2

2=

12

より,B = 30◦ または 150◦ となるが,B = 150◦ のと

きは,A+ B = 45◦ + 150◦ > 180◦ となって不適.よっ

て,B = 30◦ となる.

三角形の内角の和は 180◦ なので

C = 180◦ − (45◦ + 30◦) = 105◦

また,点Cからみる第 1余弦定理 c = bcosA+acosB

より

c =√

2 cos 45◦ + 2 cos 30◦ =√

2 ·√

22

+ 2 ·√

32

= 1 +√

3

【例題:四角形の計量】¶ ³

四角形 ABCD において,AB = 5,BC = 8,

5

8

5

A

B C

D

60◦

45◦CD = 5,∠ABC = 60◦,∠CAD = 45◦ のとき,次

の問に答えよ.

(1) ACの長さを求めよ.

(2) AD の長さを求めよ.

(3) 四角形 ABCDの面積を求めよ.µ ´【解答】

(1) 4ABCに ∠ABCからみる余弦定理 J 2辺とその間の角が与えられている

5

8

A

B C

60◦

AC2 = AB2 + BC2 − 2 · AB · BC cos∠ABCを用いて

AC2 = 52 + 82 − 2 · 5 · 8 cos 60◦

= 25+ 64− 80 · 12

= 49

よって,AC = 7である.

(2) 4CADに ∠CADからみる余弦定理 J 2辺とその間でない角が与えられている

75

A

C

D

45◦

DC2 = AD2 + AC2 − 2 · AD · AC cos∠CADを用いて

52 = AD2 + 72 − 2 · AD · 7 cos 45◦

⇔ 25 = AD2 + 49− 2 · 7 ·√

22

AD

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4.2 平面図形の計量 189

⇔ AD2 − 7√

2AD + 24 = 0

2次方程式の解の公式より

AD =7√

2±√(

7√

2)2 − 4 · 24

2

=7√

2± √98− 962

=7√

2± √22

= 3√

2 または 4√

2

(3) 4ABCの面積を S1,4CADの面積を S2とすると

S1 =12· AB · BC sin∠ABC

=12· 5 · 8 ·

√3

2= 10

√3

S2 =12

AC · AD sin∠CAD

=12· 7 · AD ·

√2

2

つまり,AD = 3√

2のときは S2 =212,AD = 4

√2

のときは S2 = 14.

四角形 ABCDの面積は S1 + S2に等しいので,

AD = 3√

2のときは 10√

3 +212

AD = 4√

2のときは 10√

3 + 14

が求める答えになる.

この問では下の図のように 2つの場合がある.

5

8

3√

24√

2

5

A

B C

DD

60◦

45◦

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190 第 4章 平面図形・空間図形の計量

4.2.2 平面図形におけるいくつかの定理 

ここでは,平面図形に関して覚えておくべき定理を紹介する.三角形の決定条件を頭に

浮かべながら,以下の例題を見てみよう.

【例題:二等辺三角形を分割する線の長さ】¶ ³

右図のような二等辺三角形 ABC において

a a

b c

A

B CD

次の問に答えよ.ただし b > cとする.

(1) AD の長さを求めよ.

(2) cos∠ABD の値を求めよ.µ ´【解答】

(1) ∠ABD = ∠ACD = θとおき,AD = xとおく.4ABD J 

a a

b c

x

A

B CDθ θ

に ∠ABD からみる余弦定理を用いると

cosθ =a2 + b2 − x2

2ab· · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · 1©

4ACDに ∠ACDからみる余弦定理を用いると

cosθ =a2 + c2 − x2

2ac· · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · 2©

1©, 2©より

a2 + b2 − x2

2ab=

a2 + c2 − x2

2ac

⇔ c(a2 + b2 − x2) = b(a2 + c2 − x2)

⇔ (b− c)x2 = ba2 + bc2 − ca2 − cb2

⇔ (b− c)x2 = a2(b− c) − bc(b− c)

⇔ (b− c)x2 = (a2 − bc)(b− c)

b > cより b , cなので,両辺を (b− c)で割って Jこの問題の結果は,b = c のとき

も成立する.ただし,解答の方法

ではうまくいかず,三平方の定理

などを使うことになる.x2 = a2 − bc ∴ x =

√a2 − bc

(2) (1)で求めた x =√

a2 − bcを 1©に代入して J別解として,以下のように補助線を引いて,導くこともできる.

a

a

b + c

θ

A

B C

cosθ =a2 + b2 − (a2 − bc)

2ab=

b2 + bc2ab

=b + c2a

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4.2 平面図形の計量 191

【 暗記:角の 2等分線の定理】¶ ³

4ABCにおいて,∠A の 2等分線と辺 BCとの交点を Dとする.A

B CD

θ θ(1) 4ABD と 4ACD の面積を考えることによって,

AB:AC = BD : DCが成り立つことを証明せよ.

(2) AB = a,AC = b,BD = c,CD = dとするとき,

AD =√

ab− cdと表せることを示せ.µ ´【解答】

(1) 4ABD,4ACDの面積をそれぞれ S1,S2とすると

S1 =12

AB · AD sinθ , S2 =12

AD · AC sinθ J『 三 角 形 の 面 積 』(p.174)

と表せるので,S1:S2 = AB:AC · · · · · · · · 1©また,A から辺 BCに下ろした垂線 AH の長さを hとおくと J

A

B CD HS1 =

12

BD · h , S2 =12

DC · h

と表せるので,S1:S2 = BD:DC · · · · · · · · 2©1©, 2©より AB:AC = BD : DC � Jこれは S1 : S2 にも等

しい.(2) まず a , bとする.AD = xとおき,4ABD と 4ACDに余弦

定理を用いると

(cosθ =) x2 + a2 − c2

2xa=

x2 + b2 − d2

2xb

⇔ b(x2 + a2 − c2) = a(x2 + b2 − d2)

⇔ (a− b)x2 = ab(a− b) − (bc2 − ad2)

⇔ (a− b)x2 = ab(a− b) − (adc− bcd) J (1) より a : b = c : d,つまり ad = bc がいえる⇔ (a− b)x2 = ab(a− b) − cd(a− b)

x2 = ab− cd ∴ x =√

ab− cd J両辺を (a−b)で割った

a = bのときは c = d,∠ADC = 90◦ となる.4ABD に三平方

の定理を用いて AD =√

a2 − c2 =√

ab− cd �

角の 2等分線の定理

4ABCにおいて,∠A の 2等分線と辺 BCとの A

B CD

• •交点を Dとするとき

AB:AC = BD : DC (= 4ABD : 4ADC)

が成り立つ.

つまり,角の 2等分線によって,上の 2辺の比と下の線分の比が一致する.

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192 第 4章 平面図形・空間図形の計量

【 暗記:四角形の対角線と面積の関係】¶ ³

2つの対角線の長さが a,bで,そのなす角が θA

B

C D

Pa b

θ

である,右図のような四角形の面積 Sを求めよ.

µ ´【解答】

4ABP,4BCP,4CDP,4DAPの面積を,それぞれ S1,

S2,S3,S4とおくと

S1 =12

AP · BP sinθ J『三角形の面積』(p.174)

S2 =12

BP · CP sin(180◦ − θ)

=12

BP · CP sinθ J『180◦ − θ の三角比』(p.167)

S3 =12

CP· DP sinθ

S4 =12

DP · AP sin(180◦ − θ)

=12

DP · AP sinθ

となるから

S = S1 + S2 + S3 + S4

=12

(AP · BP+ BP · CP+ CP· DP+ DP · AP) sinθ

=12

{BP · (AP + CP)+ DP · (CP+ AP)

}sinθ

=12

(AP + CP) (BP+ DP) sinθ

=12

AC · BD sinθ =12

absinθ �

四角形の対角線と面積の関係

右図のような四角形の 2つの対角線の長さが a,b,

a bθ

そのなす角が θのとき,この四角形の面積 Sは

S =12

absinθ

となる.

この例題は,等積変形を駆使して解くこともできる.

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4.2 平面図形の計量 193

【 暗記:内接円の半径を求める】¶ ³

三角形の 3つの辺すべてに接する円を,その三角形の内接円 (inscribed circle)とい

A B

C

I

r

ab

c

う.1つの三角形に対し,内接円は 1つに定まる*5.

b = 4,c = 5,A = 60◦ である 4ABCについて,内接円

の半径を r とする.

(1) aの値を求めよ. (2) 4ABCの面積を求めよ.

(3) 4ABCの内接円の半径を求めよ.µ ´【解答】

(1) 点 A からみる余弦定理より

a2 = b2 + c2 − 2abcosA

= 42 + 52 − 2 · 4 · 5 cos 60◦

= 16+ 25− 40× 12

= 21

よって,a =√

21である.

(2) S =12

bcsinA =12· 4 · 5 sin 60◦ = 5

√3 J『三角形の面積』(p.174)

(3) 内接円の中心を I とすると,4ABI,4BCI,4CAI の面積は

それぞれ12

cr,12

ar,12

brとなるから,4ABCの面積 SはJそれぞれ,AB,BC,CAを底辺とみて,内接円の

半径を高さにとった.S =12

ar +12

br +12

cr =12

r(a + b + c) · · · · · · 3©

とも表せる.よって (2)と 3©より

r =2S

a + b + c=

2 · 5√3√21+ 4 + 5

=10√

3√21+ 9

=3√

3−√

72

三角形の内接円と面積の関係

三角形の面積 Sは,内接円の半径 r を用いて

A B

C

I

r

ab

c

S =12

r(a + b + c)

と表すことができる.ここで a,b,cは各辺の

長さを表す.

この公式は,必要なときに導くことができれば十分である.ただし,三角形と

その内接円を見たら「三角形の面積は計算できる」と連想できるようにしよう.

*5 内接円については,FTEXT数学 B で詳しく取り扱う.

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194 第 4章 平面図形・空間図形の計量

【 暗記:円に内接する四角形】¶ ³

円に内接する四角形 ABCDにおいて,AB = 4,A

B C

DBC = 5,CD = 3,DA = 3とする.

(1) A + C = 180◦ を示せ.

(2) cosA = − cosCを示せ.

(3) 対角線 BDの長さを求めよ.

(4) 四角形 ABCDの面積を求めよ.µ ´【解答】

(1) 中心角は円周角の 2倍なので J『正弦定理』(p.175)の証明 iii) の中で,別の方法で証明した.

A

B C

D

α

β

Aは右欄外の図の 12αと等しく,

Cは右欄外の図の 12βと等しい.

よって,A + C =12

(α + β) = 180◦ �

(2) (1)より,A = 180◦ −Cであるので

cosA = cos (180◦ − A) = − cosC � J『180◦ − θ の三角比』(p.167)

(3) 4ABD に点 A からみる余弦定理を用いて

BD2 = 42 + 32 − 2 · 4 · 3 cosA

= 25− 24 cosA · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · 1©

4CBDに点 Cからみる余弦定理を用いて

BD2 = 52 + 32 − 2 · 5 · 3 cosC

= 34− 30 cosC · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · 2©

1©, 2©,cosA = − cosCより

25− 24 cosA = 34+ 30 cosA

⇔ cosA = − 954

= − 16

これを 1©に代入して

BD2 = 25− 24 ·(− 1

6

)= 29

BD > 0であるので,BD =√

29と分かる.

(4) sinA =√

1− cos2 A =

√356より

4ABD =12· 4 · 3 ·

√356

=√

35 J『三角形の面積』(p.174)

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4.2 平面図形の計量 195

また,sinC = sin (180◦ − A) = sinAより J『180◦ − θ の三角比』(p.167)

4CBD =12· 5 · 3 ·

√356

=54

√35 J『三角形の面積』(p.174)

よって,求める面積は√

35+54

√35 =

94

√35

円に内接する四角形の向かい合う角

円に内接する四角形において,以下が成立する. A

B C

D• A + C = 180◦ (⇔ ∠A =(∠Cの外角))

• cosA = − cosC

• sinA = sinC

B, Dについても同様である.

四角形が円に内接している場合は,たいてい,次の関係のうちいくつかを使う.

• 円周角の定理• 中心角が円周角の 2倍(特に,直径に対する円周角は 90◦)

• 上で学んだ,向かい合う角の関係

【 暗記:トレミーの定理】¶ ³

右図のように,四角形 ABCDが円に内接している.

A

B

C D

AB = a,BC = b,CD = c,DA = dとするとき,以

下の式を示せ.

(1) (ad+ bc)BD2 = (ab+ cd)(ac+ bd)

(2) AC · BD = ac+ bdµ ´【解答】

(1) 4ABD に ∠BAD からみる余弦定理を用いると

cos∠BAD =a2 + d2 − BD2

2ad· · · · · · 1©

4CBDに ∠BCDからみる余弦定理を用いると

cos∠BCD =b2 + c2 − BD2

2bc· · · · · · 2©

− cos∠BAD = cos∠BCDであるので, 1©, 2©より

− a2 + d2 − BD2

2ad=

b2 + c2 − BD2

2bc

⇔ bc(BD2 − a2 − d2) = ad(b2 + c2 − BD2) J両辺に 2ad · bcをかけた

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196 第 4章 平面図形・空間図形の計量

⇔ (ad+ bc)BD2 = ad(b2 + c2) + bc(a2 + d2)

= ab(bd+ ac) + cd(ac+ bd)

= (ab+ cd)(ac+ bd) �

(2) cos∠ABC = − cos∠ADCより

− a2 + b2 − AC2

2ab=

c2 + d2 − AC2

2cd

(1)と同じように整頓すれば

(ab+ cd)AC2 = cd(a2 + b2) + ab(c2 + d2)

⇔ (ab+ cd)AC2 = (ad+ bc)(ac+ bd)

これと (1)の結果より J左辺どうし,右辺どうしを掛け合わせた

(ad+ bc)BD2 × (ab+ cd)AC2

= (ab+ cd)(ac+ bd) × (ad+ bc)(ac+ bd)

⇔ BD2 · AC2 = (ac+ bd)2

∴ BD · AC = (ac+ bd) �

§ 4.3

空間図形の計量

空間図形は,自分が求めたい長さ・角度に関連する面だけを取り出し,平面図

形の問題へと帰着させて考える.時には,立体の切り口を考える必要がある.

この際,p.181などに注意しながら三角形を選ぶことが重要になってくる.

以下では,代表的な空間図形について考えてみよう.

4.3.1 直角が 1つの頂点に集まった四面体 

四面体の頂点の 1つに,2つ以上直角を含む場合は比較的簡単である.図形を切ること

なく,どれかの面を取り出して考えればたいていうまくいくからである*6.

1 つの頂点に直角が 3 つ集まった三角錐のことを直角三角錐 (rectangular triangular

pyramid)という.

*6 平面に対し,異なる 2方向から直角である線分は,平面に対し垂線になっていることに注意すればよい.

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4.3 空間図形の計量 197

【例題:直角三角錐の計量】¶ ³

右の図のように,∠AOB = ∠BOC = ∠COA = 90◦ の

2

3

6O

A

B

C

直角三角錐 OABCにおいて,次の問に答えよ.ただ

し,OA = 2,OB = 3,OC = 6とする.

(1) 辺 AB,BC,CAの長さをそれぞれ求めよ.

(2) ∠ACB = θとするとき,cosθの値を求めよ.

(3) 4ABCの面積 Sを求めよ.µ ´【解答】

(1) 4OAB,4OBC,4OCAそれぞれに,三平方の定理を

用いて

AB =√

13 , BC = 3√

5 , CA = 2√

10

(2) 4ABCに ∠ACBからみる余弦定理を用いて

cosθ =CA2 + CB2 − AB2

2CA · CB

=40+ 45− 13

2 · 2√10 · 3√5=

3√

25

(3) (2)より

sinθ =√

1− cos2 θ

=

√1−

(3√

25

)2

=

√1− 18

25=

√7

5

だから,(1)より 4ABCの面積 Sは

S =12

CA · CB sinθ

=12· 2√

10 · 3√

5 ·√

75

= 3√

14

この問において,4OAB,4OBC,4OCAの面積をそれぞれ S1,S2,S3とお

くと

S12 + S2

2 + S32 = S2

が成り立っているのが確認できる.この関係は,一般の直角三角錐で成り立

ち,三平方の定理の空間版といえるものである.

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198 第 4章 平面図形・空間図形の計量

【例題:山の高さを求める】¶ ³

ある山から真北の地点 A と,真東の地点 Bがあり,この 2点は 4 km離れており,共

に標高 200 mである.地点 A から山の頂上を見上げると 45◦の高さであった.次に,

地点 Bから山の頂上を見上げると 30◦ の高さであった.この山の高さは何 kmか.µ ´

方角に注意しながら,文章の内容を図で表そう.

【解答】

山の頂上を T,山の頂上から真下にある標高 200 mの

点を Oとして問題を図に描けば,右欄外のようになる. J

4kmx km

O

A

B

T

30◦

45◦山の高さを求めるには,OTの長さを求めればよい.

OTの高さを x kmとおく.4OTAを点 A から見ると

tan 45◦ =x

OA⇔ OA = x · · · · · · 3©

4OTBを点 Bから見ると

tan 30◦ =x

OB⇔ OB =

√3x · · · · · · 4©

4AOB における三平方の定理 AO2 + BO2 = AB2 に 3©,4©,AB = 4を代入して

x2 +(√

3x)2

= 42 ⇔ x = 2

と解ける.つまり,山の高さは 2 km+ 200 m= 2.2 kmで

ある.

【例題:三角錐の計量】¶ ³

右図のような三角錐 OABCにおいて,次の問に答

6

O

A

B

C60◦ 75◦

45◦

えよ.

(1) 辺 OBの長さを求めよ.

(2) 辺 OAの長さを求めよ.

(3) 辺 ACの長さを求めよ.

(4) ∠ABC = θとするとき,cosθの値を求めよ.µ ´【解答】

(1) 4OBCに正弦定理を用いて J

B

O

C75◦ 45◦

60◦

6

OBsin 45◦

=6

sin 60◦

⇔ OB =sin 45◦sin 60◦

× 6 =

√2

2√3

2

× 6 = 2√

6

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4.3 空間図形の計量 199

(2) OA = OB sin 60◦ = 2√

6 ·√

32

= 3√

2

(3) まず,4OBCに ∠OBCからみる第 1 余弦定理を用 J 62

√6

O C

B

60◦ 45◦

70◦いて

OC = BO cos∠BOC+ BC cos∠BCO

= 2√

6 cos 60◦ + 6 cos 45◦

= 2√

6 · 12

+ 6 ·√

22

=√

6 + 3√

2

これより,4OACに三平方の定理を用いて

AC =√

OC2 −OA2 =

√(√6 + 3

√2)2 −

(3√

2)2

=

√6 + 12

√3 J

√6 + 12

√3 はこれ以上簡単にな

らない

(4) まず,AB = OB cos 60◦ = 2√

6· 12

=√

6.これより,

4ABCに ∠ABCからみる余弦定理を用いて J

B

A

C

6

√6

√6 + 12

√3

cosθ =AB2 + BC2 − AC2

2AB · BC

=6 + 36−

(6 + 12

√3)

2 · √6 · 6=

√6−√

22

4.3.2 正多面体 

空間図形において,全ての面が合同な正多角形からなり,各頂点に集まる辺の数が全て

等しい多面体のことを正多面体 (regular polyhedron)という*7.

正多面体は

i) 正四面体

ii) 正六面体(立方体)

iii) 正八面体

iv) 正十二面体

v) 正二十面体

の 5つしかないことが知られている*8.

*7 たとえば,正四面体は正多面体であるが,正四面体 2つを重ねてできる六面体は,頂点に集まる辺の数が3つの場合と 4つの場合があるので,正多面体ではない.

*8 輪郭がへこんでいる多面体は,おう

凹多面体 (concave polyhedron)といい,

普通の多面体であるとつ

凸多面体 (convex polyhedron)とは区別する.凹多面体も多面体に含めると,正多面体は全部で 9つあることが知られている.右の図は,正凹多面体の 1つである.

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200 第 4章 平面図形・空間図形の計量

正多面体にはたくさんの二等辺三角形がある.それを上手に生かした切り口を

考えよう.

【例題:正四面体の計量】¶ ³

右下図のように,1辺の長さが 1である正四面体 ABCDについて以下の問に答えよ.

1

A

B

C

D

(1) 4BCDの面積 Sを求めよ.

(2) 頂点 A から 4BCDに下ろした垂線の足を H を

するとき,AH の長さを求めよ.

(p.214に,この問題の続きがある.)µ ´【解答】

(1) ∠CBD = 60◦ であるから

S =12

BD · BC sin 60◦ J『三角形の面積』(p.174)

=12· 1 · 1 ·

√3

2=

√3

4

(2) まず,辺 BC の中点を M とおくと,AM ⊥ BC, J

1

A

B

C

D

MDM ⊥ BCとなり,H は,A から MD におろした垂

線の足であるとわかる.

まず,4ABM に三平方の定理を用いて J

1

A

B

C

D

M

AM2 = AB2 − BM2 = 12 −(

12

)2=

34

よって,AM =

√3

2.同様に,DM =

√3

2である.

次に,∠AMD = θ とおくと,4AMD に点 M からみ

る余弦定理 J

√3

21||

||

A

M D

AD2 = MA2 + MD2 − 2MA ·MD cosθを用いて

cosθ =MA2 + MD2 − AD2

2MA ·MD

=

34 + 3

4 − 12

2( √

32

)2=

13

であり,sin2 θ + cos2 θ = 1より J『三角比の相互関係』(p.163)

sinθ =√

1− cos2 θ =

√1−

(13

)2=

2√

23

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4.3 空間図形の計量 201

よって,AH の長さは J

1

A

B

C

D

MH

AH = AM sin θ =

√3

2· 2√

23

=

√6

3

【別解:Hが 4BCDの重心であることを使う】

まず,辺 BCの中点を M とおくと,AM ⊥ BCとな

るので,4ABM に三平方の定理を用いて

AM2 = AB2 − BM2 = 12 −(

12

)2=

34

よって,AM =

√3

2.同様に,DM =

√3

2である. Jここまでは上の解答と共通

次に,正四面体の対称性から,点 Hは 4BCDの重心

となるので MH : HD = 1 : 2,つまり

MH =13

DM =

√3

6

最後に,4AMH に三平方の定理を用いて J

1

A

B

C

D

MH

AH2 = AM2 −MH2 =34− 3

36

=27− 3

36=

23

よって,AH =

√23

=

√6

3となる.

4.3.3 正多角錐 

空間図形において,底面が正多角形で,側

面が二等辺三角形で作られ,側面の頂点が

一点に集まっている多面体のことを正多角

錐 (regular pyramid)という(正角錐ともい

う).底面が正 n角形の正多角錐のことを正

n角錐といい,nは 3以上の自然数をとり

うる.

右の図は正三角錐と正四角錐である.底面の形状がわかり易いように底面を上にして

ある.

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202 第 4章 平面図形・空間図形の計量

【例題:正四角錐の計量】¶ ³

右図のように,底面の 1辺の長さが 2,高さ OHが 1である正四角錐 OABCDにつ

1

2

O

A

B

C

D

H

いて以下の問に答えよ.

(1) 底面と側面のなす角 αを求めよ.

(2) A から辺 OBに下ろした垂線 AE の長さを

求めよ.

(3) 隣り合う 2つの側面のなす角 βを求めよ.

µ ´【解答】

(1) 辺 AB の中点を M とおくと,4OAB,4HAB は共 J 

1

2

O

A

B

C

D

M H

に二等辺三角形であるから,OM ⊥ AB,HM ⊥ AB

である.よって,∠OMHが底面と側面のなす角 αで

ある.

いま,直角三角形 OMHにおいて,OH = HM = 1よ

り,α = 45◦ となる.これは,他の側面についても同

様である.

(2) ∠OBA = θとおくと,三平方の定理より J 

E

θ

O

A

B

C

DOB =

√OH2 + BH2 =

√12 +

(√2)2

=√

3

OM =√

2

である.4OBMに着目して,sinθ =OMOB

=

√2√3

=

√6

3となる.ここで,4ABE に着目すれば,AE =

AB sinθ = 2 ·√

63

=2√

63である.

(3) 4OAB ≡ 4OCBであり,AE ⊥ OBより,CE⊥ OB. J 

E

O

A

B

C

D

よって,∠AECが求める角 βである.

4AECに ∠AECからみる余弦定理を用いると

cosβ =AE2 + CE2 − AC2

2AE · CE=

2AE2 − AC2

2AE2

= 1−(2√

2)2

2(

2√

63

)2= − 1

2

よって,β = 120◦ となる.

正多角錐においては,頂点からの垂線の足が,底面の中心(対角線の交点)にく

る.よって,底面の対角線を通る平面などに着目するとよい.

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4.4 図形の面積比・体積比 203

§ 4.4

図形の面積比・体積比

三角比は,計算という側面から図形問題を扱うことを可能にする,強力な道具

である.しかし,その道具に頼りすぎると,合同・相似など,図形の視覚的な

側面が見えにくくなる.

この節では,図形の視覚的な側面に注目するため,一旦三角比を離れ,平面・

空間図形の面積比・体積比を中心に考える.

4.4.1 相似について 

2つの図形が相似 (similar)であるとは,「一方の図形を,ある 1点に対して拡大・縮小

すれば,他方の図形と合同*9になる」関係のことをいった.

これらの定義は,空間図形の相似についても当てはまる.

O

A

B

C

D

S

T

O S T

A

B

C

D

O

STA

B

C

D相似な二つの図形の,対応する辺の長さの比を相似比 (ratio of similitude)という*10.

たとえば,上の図において,図形 Sと図形 Tはいずれも相似である.また,Sと Tの

相似比はいずれも AB : CDに等しい.というのも,S上の線分 AB を Oについて拡大す

ると,いずれも T上の線分 CDに一致するからである.

*9 合同については,p.181を参照のこと.*10 三角形の相似については,中学校でも学習したように,次のいずれかが成り立てばよい.

• 対応する三辺の長さの比が,全て等しい.• 対応する二辺の長さの比が等しく,その間の角の大きさも等しい.• 対応する二角の大きさが等しい.

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204 第 4章 平面図形・空間図形の計量

【例題:相似について】¶ ³

以下の,相似に関する文章は正しいか,間違いか.図を描いて考えなさい.

また,(1)~(3)が正しい場合は,2つの図形の何の比が相似比に一致するか答えな

さい.

(1) どのような 2つの正方形も,相似である.

(2) どのような 2つの円も,相似である.

(3) どのような 2つの直方体も,相似である.

(4) 2つの立体 Sと Tが相似ならば,Sの表面と Tの表面は互いに相似である.µ ´【解答】

(1) 正しい.また,1辺の長さの比が相似比に一致する.

(2) 正しい.また,半径の比が相似比に一致する.

(3) 間違い.たとえば,右

の直方体2つは相似で

はない(高さのみが異

なっている).

(4) 正しい.Sの全体が拡大・縮小されて Tになるのだから,S J前ページのうち,立体図形のものを参考にするこ

と.の一部分を拡大・縮小しても Tのある一部になる.

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4.4 図形の面積比・体積比 205

4.4.2 平面図形の面積比 

■相似でない2つの三角形の面積比

まず,右の三角形 M,Nの面積比を考えてみよう.

面積を考えるときは,どこを底辺におくかに

M NB

A

CD

E

= =

2© 2

3

よって,難易度が大きく変わってくる.

この場合は,M の底辺を BD,Nの底辺を CD

とおけば,M,Nの底辺の長さは等しくなり,簡

単になる.

底辺をこのようにおけば,M の高さの 32倍

が,Nの高さになる.

つまり,M の面積を 32倍

MB

D

E

=

底辺は同じ

高さは32倍

=⇒面積は

32倍

N

A

CD =

すると Nの面積に等しい.

よって,M,Nの面積比は

2 : 3である.

B

A

CD

E3©

1 2

MN

次に,右の三角形 M,N の面積比を考え

てみよう.M の底辺を BD,Nの底辺を CD

とすると,

M の底辺の長さを 21倍すると Nの底

辺の長さ

M の高さを 47倍すると Nの高さ

になる.

B

A

D

1

M

底辺は21倍

高さは47倍

=⇒面積は

21× 4

7倍

CD

E

4©2

N

つまり,Mの面積を 21× 4

7=

87倍すると Nの面積に等しい.

よって,M,Nの面積比は 8 : 7

である.

【例題:平面図形の線分の比】¶ ³

ABCD において,辺 BC上に Eを,辺 CD上に Fをとり,BE : EC = 1 : 2,

DF : FC= 2 : 1とする( は「平行四辺形」を表す).

(1) 問題を図示せよ. (2) 4FECと 4DECの面積比を求めよ.

(3) 4FBCと 4DECの面積比を求めよ.

(4) 4FECと ABCDの面積比を求めよ.µ ´

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206 第 4章 平面図形・空間図形の計量

【解答】

(1) A

B C

D

E

F

1© 2©

2

1

(2) 底辺を ECとすれば, J DCと ECを底辺と考えた場合は,高さ

が等しくなる.

C

D

E

F

2

1

底辺は同じ

高さは31倍

=⇒面積は

31倍

C

D

E

3

なので,面積比は 1 : 3である.

(3) 4FBCの底辺を BC,4DECの底辺を ECとすれば, J 4FBC の 底 辺 を

FC,4DEC の底辺を DC としてもよい.

B C

F

3©1

底辺は23倍

高さは31倍

=⇒面積は

23× 3

1倍 C

D

E 2©

3

なので,面積比は 1 : 2である.

(4) 4FEC3倍−→ 4DEC

((2)より

)32倍

−→ 4DBC

底辺を EC,BCにとれば,底

辺は32倍,高さは等しい

2倍−→ ABCD J 4FEC

32倍

−→ 4FBC3 倍−→ 4DBC2 倍−→ ABCD

でもよい.

よって 4FECの 3× 32× 2 = 9倍が ABCDの面積になるの

で,4FECと ABCDの面積比は 1 : 9である.

■相似な平面図形の面積比

相似比がm : nである,2つの三角形の面積比を考

M Nm©

n©えてみよう.

左の図からわかるように,

M の底辺の長さを nm倍すれば Nの底辺の長さ

M の高さを nm倍すれば Nの高さ

当然ながら,底辺・高さの比はいずれも等しい.

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4.4 図形の面積比・体積比 207

つまり,Mの面積を nm× n

m=

M

底辺はnm倍

高さはnm倍

=⇒面積は

nm× n

m倍

N

(nm

)2倍すると N の面積に等し

い.

よって,M,Nの面積比は

1 :(

nm

)2= m2 : n2である.

一般に,どんな平面図形においても,次のことが成り立つ.

相似な平面図形の面積比

相似比が m : nである2つの平面図形について,その面積比は m2 : n2である.

【例題:相似な図形の相似比】¶ ³

右の図において,AD : DB = 1 : 2,AE : EC = 1 : 2で

B

A

C

D E

F

あるとする.

(1) 相似な三角形の組を 2つ見つけ(証明は無くてよい),

それぞれについて面積の比を求めよ.

(2) 4DEFと 4ABCの面積比を求めよ.µ ´【解答】

(1) 4ADEと 4ABCについて, J念のため,証明をつけておく.

AD : AB = AE : AC = 1 : 3,∠A は共通

であるので,4ADE∽4ABC.

相似比は 1 : 3,面積比は 12 : 32 = 1 : 9である. J相似比が m : nのとき,面積比は

m2 : n2また,4ADE∽4ABC より ∠ADE = ∠ABC である

ので DE // BC,ここから 4FDE∽4FBC. J 4ADE∽4ABC を 証 明 せ ず

AD : DB = AE : ECから DE //

BCを導いても構わない.相似比は DE : BC = 1 : 3,面積比は 12 : 32 = 1 : 9

である.

(2) 4DEF の面積を S とおく.このとき,(1) より

4FBC = 9Sである.また

EF : FB= 1 : 3より 4DBF = 3S

DF : FC= 1 : 3より 4EFC= 3S Jどちらも,高さが等しいので,底辺の比がそのまま面積比になる.であるので,四角形 DECB = S+3S+3S+9S = 16S.

ここで,(1)より 4ADE : 4ABC = 1 : 9より

四角形 DECB :4ABC = 8 : 9

となるので,4ABC = 16S × 98

= 18S.

よって,4DEF と 4ABC の面積比は S : 18S =

1 : 18.

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208 第 4章 平面図形・空間図形の計量

4.4.3 空間図形の表面積・体積の比 

■相似な空間図形

相似比が m : nである,2つの相似な三角錐 S,Tについて,表面積比と体積比を考え

てみよう.

p.4で考えたように,2つの立体が相似な

O

STA

B

C

D

m©n©

らば,その表面の図形は互いに相似である.

左の Sと T について考えれば,Sのどの

表面の図形をとっても,Tの表面のある図形

と相似比が m : nであり,面積比は m2 : n2

に等しい.

つまり,Sの4つの表面の図形の面積を S1,S2,S3,S4とおけば,Tの4つの表面の

図形の面積はn2

m2S1,

n2

m2S2,

n2

m2S3,

n2

m2S4となるので

( Sの表面積 ) : ( Tの表面積 ) = (S1 + S2 + S3 + S4) :{

n2

m2(S1 + S2 + S3 + S4)

}

= 1 :(

n2

m2

)= m2 : n2

となる.

次に体積比を考えよう.

STA

B

C

D

底面はn2

m2倍

高さはnm倍

=⇒体積は

n2

m2× n

m倍

上で考えたように,Sの底面積の n2

m2倍

が Tの底面積になる.

また,Sの高さの nm倍が Tの高さ.

体積は,13×(底面積)×(高さ)で求めら

れるので,Sの体積を n2

m2× n

m=

n3

m3倍す

ると Tの体積に等しい.よって,S,Tの体積比は m3 : n3である.

一般に,どんな空間図形においても,次のことが成り立つ.

相似な立体図形の表面積比・体積比

相似比が m : nである2つの立体図形について,

(1) それぞれの表面をなす図形は相似であり,その相似比は m : nである.

(2) 表面積比は m2 : n2である.

(3) 体積比は m3 : n3である.

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4.4 図形の面積比・体積比 209

【例題:相似な図形の相似比】¶ ³

右図のような円錐 T を切り,上にできた円錐

を Sとする.

(1) Sと Tは相似である.相似比を求めよ.

(2) Sと Tの表面積比を求めよ.

(3) T から Sを除いた図形を U とする.Sと

Uの体積比を求めよ.

ST

µ ´【解答】

(1) 母線の長さの比から,3 : 5

(2) (1)より,表面積比は 32 : 52 = 9 : 25 J相似比が m : nのとき,表面積比

は m2 : n2

(3) (1)より,Sと Tの体積比は 33 : 53 = 27 : 125 J相似比が m : nのとき,体積比はm3 : n3.また,Sと U は相似ではないことに注意.

つまり,Sと Uの体積比は 27 : (125− 27) = 27 : 98

【例題:空間図形の表面積比と体積比】¶ ³

正四面体のそれぞれの辺の中点を結ぶと,正八面

体ができる.このとき,つぎの問に答えよ.

(1) この正四面体と正八面体の表面積比を求めよ.

(2) この正四面体と正八面体の体積比を求めよ.

A

B

C

D

µ ´【解答】

(1) まず,正四面体の 1つの面も,正八面体の 1つの面も正三角

形であり,互いに相似である.相似比は 2 : 1であるから,

面積比は 22 : 12 = 4 : 1である. J相似比が m : n のとき,

面積比は m2 : n2正四面体の 1つの面の面積を Sとすると,正四面体の表面

積は 4S,正八面体の表面積は 8×(

S4

)= 2Sである. J正八面体は,その名の通

り 8 枚の正三角形から成っている.

よって,求める比は 4S : 2S = 2 : 1である.

(2) 正八面体は,もとの正四面体から 4つの小さい正四面体を

除いたものである.

もとの正四面体と小さい正四面体の相似比は 2 : 1だから,

体積比は 23 : 13 = 8 : 1,つまり,正四面体の体積を Vとす J相似比が m : n のとき,体積比は m3 : n3

ると小さい正四面体の体積はV8.

よって,正八面体の体積は V − 4×(

V8

)=

V2となり,求め

る比は V : V2

= 2 : 1である.

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210 第 4章 平面図形・空間図形の計量

§ 4.5

円を空間に広げたものが球,と考えてよい.

球は,最も美しい図形の 1つとして,古来から人々の興味を惹いてきた.

4.5.1 球の性質 

球には以下の性質がある.

• 球を平面で切れば,その切り口は必ず円である.

• 中心を通るどの直線,平面に対しても,球は対称である.

• Oを中心とする球が,球面上の点 Tで平面・直線と接するとき,直線 OTはその平

面・直線と直交する.

T

OO

T

これらは,球の定義*11と三平方の定理から証明することができる(ここでは省略する).

*11「点 Oを中心とする半径 r の球」は「点 Oから距離 r にある空間上の点を全て集めてできる図形」と定義できる.また,FTEXT数学 II において球面の方程式を学ぶ.

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4.5 球 211

【例題:球と円柱】¶ ³

右の図において,円柱から半球 Tを除いた

図形を Sとする.0 < x < r のとき

(1) 高さ xの平面で半球 T を切ったとき

の,切り口の円の半径を求めよ.

(2) 高さ xの平面による,Sの断面積を求

めよ.r

xr

S

Tµ ´【解答】

(1) 底面に垂直な平面で立体を半分に切れば,左 J

r

xr

x r

H

O

A

r

xr

x r

の断面図となる.

高さ x の平面によ

る半球 T の切り口

は,左図の線分 HA

を半径とした円に

なるので,線分 HA の長さを求めればよい.

よって,求める長さは J 4OHA に三平方の定理を用いる.

HA =√

OA2 −OH2 =√

r2 − x2

(2) 求める面積は, J

r

xr√

r2 − x2

「高さ xの平面による円柱の切り口の面積」

(これは半径 r の円)

から

「高さ xの平面による半球 Tの切り口の面積」

(これは半径√

r2 − x2の円)

を引けばよいので,求める面積は

πr2 − π(√

r2 − x2)2

= πr2 − π(r2 − x2)

= πx2

「どの高さでも断面積が等しい⇔体積が等しい」という事実*12と上の例題か

ら,半径 r の球の体積を求めることができる.

上の例題において,底面の半径 r,高さ r の円錐を Uとすると,高さ xにおけ

る Uの断面積は Sと等しく πx2になる,つまり,Sと Uは体積が等しく

(半球 Tの体積)=(円柱の体積)−(Uの体積)= πr3 − 13πr3 =

23πr3

と計算できる.この Tの体積を 2倍して,半径 r の球の体積 43πr3を得る.

*12 FTEXT数学 III で学ぶ積分によって証明される.

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212 第 4章 平面図形・空間図形の計量

4.5.2 球の表面積と体積 

半径 r の球の体積,表面積は次のようになる*13.

球の表面積・体積

半径 r の球について, 表面積は 4πr2, 体積は43πr3 である.

「表面積を表す 4πr2 の r2 をr3

3におきかえると,体積を表す

43πr3 になる」

と覚えると良い.

【例題:球の表面積,体積】¶ ³

(1) 半径 4 cmの球の,表面積と体積をそれぞれ求めよ.

(2) 1辺 8 cmの立方体の表面積と直径 10 cmの球の表面積では,どちらが大きいか.

(3) 1辺 10 cmの立方体に高さ 9 cmまで水を入れてある.この水の中に半径 3 cmの

球を静かに入れると,何 cm3の水があふれるか.ただし,表面張力は考えない.

µ ´【解答】

(1) 表面積は 4π · 42 = 64π cm2

体積は43π · 43 =

2563

π cm3

(2) 1辺 8cmの立方体の表面積は,6× 82 = 384 cm2 J 1辺 8cmの立方体の表面は,1辺8cmの正方形 6枚でできている.直径 10 cmの球の半径は 5 cmなので,表面積は

4π · 52 = 100π ; 100× 3.14 = 314 cm2 J π = 3.14159265· · ·

よって,1辺 8 cmの立方体の表面積の方が大きい.

(3) 水中に入れた球の体積は

43π · 33 = 36π cm3

なので,水の体積と球の体積の和は

10 · 10 · 9 + 36π = 900+ 36π cm3

である.実際には 103 = 1000 cm3 しか入らないの

で,あふれる水の体積は

(900+ 36π) − 1000= 36π − 100 cm3

*13 FTEXT数学 III の微積分を用いて,これらの計算ができる.体積については,前のページのようにして計算できる.

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4.5 球 213

4.5.3 球を含んだ空間図形 

空間図形に球を含む場合も,§4.3「空間図形の計量」で学んだように,ある平面のみに

着目して考えるとよい.

このとき,特に,「球と他の図形の接点」を結んだ平面に着目するとよい.

【例題:円錐と内接球】¶ ³

底面の半径が 4,母線の長さが 10の円錐がある.

O1

O2

10

4

(1) この円錐に内接する球 O1の半径を求めよ.

(2) 球 O1 の上に外接し,さらに円錐に内接する球

O2の半径を求めよ.

ただし,球 O1,O2 とも,半径はできるだけ大きく

なるようにする.

µ ´【解答】

円錐の頂点を A,球 O1,O2の中心をそれぞれ P,Qと

し,A から底面に下ろした垂線の足を Hとする.このと

き,線分 AH は P,Qを通る.

(1) 直線 AH を含むように,この立体図形を縦に垂直に

切る.すると,断面図は右欄外の図のようになり,球 J

A

B CH

Q

P

1010

8

r1

O1の断面は,4ABCの内接円になる.

4ABCの面積を S,球 O1の半径 r1とすると

S =12

(10+ 10+ 8)r1 · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · 1©

が成り立つ. J『内接円の半径 (p.193)』

面積 Sは,AH =√

102 − 42 = 2√

21より

S =12· 8 · 2

√21 = 8

√21

であるので,これを 1©に代入して

8√

21 =12

(10+ 10+ 8)r1

∴ r1 =814

√21 =

47

√21

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214 第 4章 平面図形・空間図形の計量

(2) (1)と同じ断面を考え,右欄外の図のように Eをとる JA

B CH

Q

P

E

r1

10

4

r2

と 4AQE∽4ACHである.

よって,球 O2の半径を r2とすれば

AQ : QE = AC : CH

(AH − 2r1 − r2) : r2 = 105 : 42

2(2√

21− 87

√21− r2

)= 5r2

127

√21 = 7r2

∴ r2 =1249

√21

この問題の (2)には次のような別解がある.

A

H′

Qr2

A

B CH

H′

Pr1

球 O1,O2の接点を H′ とし,右のように

断面図を 2つ考える.すると,左図を A

について拡大したものが右図になる.

2つの断面図の相似比は

AH′ : AH =

(2√

21− 87

√21

): 2√

21

= 3 : 7

である.ここから,r2 =37

r1 =1249

√21.

ここでは断面が相似であることを使っているが,2つの断面図のもとになる立

体をそれぞれ考えても,やはり互いに相似である.

【例題:正四面体と内接球・外接球】¶ ³

p.200と同じく,四面体 ABCDを 1辺の長さが 1の正四面体とするとき

(3) 正四面体 ABCDに内接する球の半径を求めよ.

(4) 正四面体 ABCDに外接する球の半径を求めよ.

ただし,p.200の (1),(2)の結果は用いてよい.

4BCDの面積 S =

√3

4

頂点 A から 4BCDに下ろした垂線の足を Hをするとき,AH=

√6

3µ ´

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4.5 球 215

【解答】

(3) 内接球の中心の点をOとし,その半径を r とおく.こ

のとき,正四面体は 4つの正三角錐 OABC,OACD,

OADB,OBCDに分けることができる.これらの正 J 

1

A

B

C

DO

三角錐の体積は,どれも13×S× r であるから,正四

面体 ABCDの体積 Vは

V = 4× 13·√

34

r =

√3r3

· · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · 2©

また,(1),(2)より正四面体 ABCDの体積 Vは

V =13× S × AH =

13·√

34·√

63

=

√2

12· · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · 3©

よって, 2©, 3©より Jこのやり方は,平面上の三角形における,内接円の半径の導き方

(p.193)と同じ発想である.√

3r3

=

√2

12⇔ r =

√6

12

(4) M を辺 BCの中点にとり,H,H′ を右図のようにと

る.図形の対称性から,外接球の中心 Oは AH 上お J 

1

A

B

C

DH′

HM

Oよび DH′ 上にあるのがわかる.

Hは 4BCDの重心だから

DH = DM × 23

=

√3

2× 2

3=

√3

3

となる.同様に,AH′ =

√3

3である. J MH =

√AM2 −MH2 から計算し

てもよい.ここで,AO= r とおくと,4AH′O∽4AHM より J

MD

A

H

OH′

√3

3

√3

3

AH : AO = AH : AM

∴√

33

: r =

√6

3:

√3

2

⇔√

63

r =12

⇔ r =3

2√

6=

√6

4

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