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1 3 ICT 分野におけるカリキュラム、資格、BOK および タスクプロフィールの相互関係分析 本章の内容は以下の論文を元に加筆・修正したものである. Tetsuro Kakeshita, Mika Ohtsuki, Relationship Analysis among Curriculum, Qualification, BOK and Task Profile in ICT Field, 3rd 2015 IEEE Int. Conf. on MOOCs, Innovation and Technology in Education (MITE), pp. 117-122. 2015 10 月). 概要 ICT は社会、経済、学術等の多くの場面で活用されている。教育機関や企業は、教育、人 材育成および専門家に対する公正な評価を行うために、互いに協力して一貫性のあるエコ システムを構築することを期待されている。本章では、ICT 分野の大学学部レベルの教育 カリキュラム、ICT 資格、ICT 分野の BOK(知識体系)および様々なタスクプロフィール の間の関連を分析する。これらは高度 ICT 人材の育成および評価のための主要な要素であ る。そのため、これらは上記のエコシステムの中に矛盾なく組み込む必要がある。様々な 取り組みの間の関係を分析する取り組みは、ステークホルダを含む関係者の相互理解を促 進し、大規模なエコシステムを構築するための最初のステップとなることが期待される。 本章の分析は我々が先行論文にて提案してきた ICTBOK および、 IPA (情報処理推進機構) 2014 年に提案した i コンピテンシ・ディクショナリ(iCD)を活用しておこなわれた。 我々は ICTBOK の領域と知識項目の用語を用いて、様々な取り組みにおいて求められる知 識とスキルの要求レベルと共に、重要度を明確化する。 キーワード 教育の質保証、情報教育カリキュラム、 ICT 資格、知識体系、タスクプロフィール、 ICTBOKi コンピテシ・ディクショナリ、関係分析、重要度分析、要求分析

佐賀大学情報部門CS研究室 - ICT BOK および タスク ...SWEBOK ガイド[10]は、IEEE-CS により、ソフトウェア工学の基礎を構成する知識体 系として開発された。SWEBOK

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1

第 3 章

ICT 分野におけるカリキュラム、資格、BOK および

タスクプロフィールの相互関係分析

本章の内容は以下の論文を元に加筆・修正したものである. Tetsuro Kakeshita, Mika Ohtsuki, Relationship Analysis among Curriculum, Qualification, BOK and Task Profile in ICT Field, 3rd 2015 IEEE Int. Conf. on MOOCs, Innovation and Technology in Education (MITE), pp. 117-122. (2015 年 10 月).

概要 ICT は社会、経済、学術等の多くの場面で活用されている。教育機関や企業は、教育、人

材育成および専門家に対する公正な評価を行うために、互いに協力して一貫性のあるエコ

システムを構築することを期待されている。本章では、ICT 分野の大学学部レベルの教育

カリキュラム、ICT 資格、ICT 分野の BOK(知識体系)および様々なタスクプロフィール

の間の関連を分析する。これらは高度 ICT 人材の育成および評価のための主要な要素であ

る。そのため、これらは上記のエコシステムの中に矛盾なく組み込む必要がある。様々な

取り組みの間の関係を分析する取り組みは、ステークホルダを含む関係者の相互理解を促

進し、大規模なエコシステムを構築するための最初のステップとなることが期待される。

本章の分析は我々が先行論文にて提案してきた ICTBOK および、IPA(情報処理推進機構)

が 2014 年に提案した i コンピテンシ・ディクショナリ(iCD)を活用しておこなわれた。

我々は ICTBOK の領域と知識項目の用語を用いて、様々な取り組みにおいて求められる知

識とスキルの要求レベルと共に、重要度を明確化する。 キーワード 教育の質保証、情報教育カリキュラム、ICT 資格、知識体系、タスクプロフィール、ICTBOK、

i コンピテシ・ディクショナリ、関係分析、重要度分析、要求分析

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2

1.はじめに

ICT は社会、経済、学術および教育組織の多くの場面で活用されている。日本政府や産

業界は、ICT を様々なビジネスモデルや我々の日常生活のワークフローを変革するイノベ

ーションドライバとして期待している[1]。最新の国勢調査によると、日本では 250 万人の

技術者が働いている。IPA が発行している IT 人材白書によると、そのうち 100 万人が、ICT技術者と見積もられている。このように、ICT 技術者が技術者全体の中で大きな割合を占

めている状況は、基本的に諸外国においても同様である。 ICT を活用して価値を創造し、社会やビジネスにおけるイノベーションを起こすために

は高度な能力が必要になる。そのため、高度 ICT 人材の育成は、日本だけでなく諸外国に

おいても重要な課題である。 高度 ICT 人材を育成するためには、高校や中学校等における情報リテラシー教育、大学

等における情報教育(一般の学生を対象としたリテラシー教育と情報専門学科における情

報専門教育や研究・PBL 等を通じた教育など)、企業等における IT 人材育成(研修や実務

を通じた育成)および IT 人材の評価、IT 人材の能力を評価するための資格制度などが互い

に連携して一貫性のあるエコシステムを構築する必要がある。しかし、現状では、様々な

学校教育、企業における人材育成、IT 資格の多くが独立に設計および運営されているのが

一般的である。そのため、一貫性のあるエコシステムを構築するにあたっては、それらの

取り組みの運営主体間の相互理解および協調が基盤となる。 本論文で我々は、高度 ICT 人材の育成および評価のための様々な取り組みの関係を分析

する。分析対象の取り組みは以下の 4 分野である。 1. 大学レベルの情報教育カリキュラム 2. ICT 分野の資格制度 3. ICT 領域の BOK(知識体系) 4. ICT 領域の様々なタスク 本章で取り組んだ取り組み間の関係分析は、様々な組織間の相互理解に向けた最初のス

テップである。これを通じて、関連組織間の協調が促進されることを期待している。 我々はこれまでの論文で提案した ICTBOK[2]と IPA(情報処理推進機構)が 2014 年に

提案した i コンピテンシ・ディクショナリ(iCD) [3]を関係分析のために活用する。ICTBOKは一貫性のある知識項目の体系を提供する。iCD は上に挙げた様々な活動の間の関係を定

義している。iCD の知識項目は相互に排他的な形態では定義されていないため、まず、

ICTBOK の知識と iCD の知識項目間の対応付けを行う。このような形で ICTBOK を活用

することで、知識項目間の MECE(Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive)な

関係を確保することができ、様々な取り組みを公平に比較できる。

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3

本章は以下のように構成されている。2 節では関係分析および比較の対象とする取り組み

の概要を紹介する。ICTBOK および iCD については 3 節で説明する。この 3 節ではまた、

ICTBOK と iCD の間の対応付けを行う。4 節では、3 節で定義した対応関係を活用して各

種の取り組みにおける ICTBOK 知識項目毎の重要度の分布を調べる。また、情報処理技術

者試験とタスクプロフィールについては、ICTBOK 知識項目毎の要求レベル分析も併せて

行う。 2.比較の対象とする取り組みの概要 本節で我々は、関係分析の対象とする取り組みに関する概要を紹介する。

A.情報教育カリキュラム J07

J07[4]は ICT 領域の 6 つのサブドメインで構成された大学レベルの情報専門教育カリキ

ュラム標準である。それらのサブドメインは、コンピュータ科学(J07-CS), コンピュー

タエンジニアリング(J07-CE), ソフトウェアエンジニアリング(J07-SE), 情報システ

ム(J07-IS), インフォメーションテクノロジー(J07-IT)および一般情報処理教育(J07-GE) である。J07 は情報処理学会が、ACM、IEEE Computer Society (IEEE-CS)および AIPにより開発された Computing Curricula 2005 を参考に提案したカリキュラム標準である。

J07 は、6 つのサブドメインのそれぞれに対して以下に列挙する知識体系(BOK)を定義

している。本研究では、これらの知識体系を J07 に関する比較対象とする。 J07-CSBOK J07-CEBOK J07-SEBOK J07-ISBOK J07-ITBOK J07-GEBOK

B.情報処理技術者試験

情報処理技術者試験[5]は、経済産業省が管轄する情報処理推進機構(IPA)により運営さ

れている IT に関する国家試験である。毎年、約 40 万人の技術者がこの試験を受験してい

る。情報処理技術者試験は、一般の IT 利用者を対象として IT を利活用するための共通的

基礎知識を問うレベル 1 試験から、情報処理技術者を対象として高度な知識・技能を問う

レベル 4 試験まで様々なレベルの受験者に、以下に挙げる 12 の試験カテゴリを提供してい

る。本研究では、これらの試験カテゴリを情報処理技術者試験に関する比較対象とする1。

1 平成 28 年度から開始された「情報セキュリティマネジメント試験」は比較対象に含めて

いない。

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4

IT パスポート試験(レベル 1) 基本情報技術者試験(レベル 2) 応用情報技術者試験(レベル 3) IT サービスマネージャ試験(レベル 4) IT ストラテジスト試験(レベル 4) エンベデッドシステムスペシャリスト試験(レベル 4) システムアーキテクト試験(レベル 4) システム監査技術者試験(レベル 4) データベーススペシャリスト試験(レベル 4) ネットワークスペシャリスト試験(レベル 4) プロジェクトマネージャ試験(レベル 4) 情報セキュリティスペシャリスト試験(レベル 4)

C.技術士資格

技術士[6]は文部科学省が所管する資格試験である。この資格試験は工学領域の広い範囲

をカバーしているが、本論文で我々は IT 分野(情報工学分野)についてのみ議論する。最

近、政府のワーキンググループが技術士(情報工学)のための知識体系(BOK)を策定し

たため、分析のためにはこの BOK を活用する。この BOK は、J07 と同様、CS, CE, SE, IS, IT の 5 つの領域から構成されている。このうち、CS はすべての受験者に必須である。受験

者は残り 4 つの領域からひとつを選ばなくてはならない。本研究では以下に挙げる 4 種類

の試験科目の組み合わせを技術士(情報工学)に関する比較対象とする。 技術士試験(CS+CE) 技術士試験(CS+SE) 技術士試験(CS+IS) 技術士試験(CS+IT)

D. IT 技術者のための様々なスキル標準: ITSS, ETSS and UISS

IT スキル標準[7] (ITSS)は SI 事業を営む典型的な IT ベンダーで働く様々なタイプの

IT 技術者に要求される能力を定義している。組み込みスキル標準[8] (ETSS)は組み込み

ソフトウェア技術者のために開発された。情報システムユーザースキル標準[9] (UISS)は情報システムユーザのために定義されている。これらのスキル標準は一貫性のある BOK(知識体系、Body of Knowledge)をそれぞれの対象ユーザに提供している。これらは IPAにより維持管理されており、情報処理技術者試験とも対応付けられている。本研究では、

これらのスキル標準が定義する知識体系(BOK)を比較対象とする。 IT スキル標準(ITSS) 組み込みスキル標準(ETSS)

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情報システムユーザースキル標準(UISS)

E.様々な BOK

ICT 分野では、J07-BOK や ITSS、ETSS、UISS 以外にも、多数の知識体系が策定され

ている。これらの多くは、各種の IT 資格の一部として策定されていることが多いため、本

研究では、比較の対象として挙げている。 SWEBOK ガイド[10]は、IEEE-CS により、ソフトウェア工学の基礎を構成する知識体

系として開発された。SWEBOK ガイドは第 3 版が 2015 年に ISO 化されているが、本研究

では iCD に定義されている第 2 版を分析する。なお、IEEE-CS は、SWEBOK 第 3 版に基

づいた資格制度の提供を開始した。 PMBOK[11]はプロジェクト管理の BOK のデファクトスタンダードとして良く知られて

いる。PMP 資格試験は PMBOK に基づいている。 本研究では、以下に挙げる知識体系(BOK)を比較対象とする。 SWEBOK(Software Engineering Body of Knowledge) PMBOK(Project Management Body of Knowledge) BABOK(Business Analysis Body of Knowledge) CBOK(Global Internal Audit Common Body of Knowledge) DMBOK(Data Management Body of Knowledge) ITIL-CSI(Information Technology Infrastructure Library - Continual Service

Improvement、継続的サービス改善) ITIL-SD(ITIL – Service Design、サービスデザイン) ITIL-SO(ITIL – Service Operation、サービスオペレーション) ITIL-SS(ITIL – Service Strategy、サービスストラテジ) ITIL-ST(ITIL – Service Transition、サービストランジション) ITS REBOK(Requirement Engineering Body of Knowledge) SABOK(Strategy and Analysis Body of Knowledge) SQuBOK(Software Quality Body of Knowledge) SSUG(Skill Standard User’s Group Body of Knowledge)

F.タスクプロフィール

タスクは、典型的には複数の知識やスキルから構成される複合的な業務であり、スキル

はある知識を実行する基本的な作業のことである。ISO/IEC 12207, 15288 および 2914 の

ような様々な ISO/IEC のプロセス標準が、ソフトウェア工学およびシステム工学領域にお

ける様々なタスクを定義している。タスクプロフィールは、関連するタスクの集まりであ

り、ICT 専門家に期待される個別の役割を表している。

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6

本研究では、次ページから始める表に示すタスクプロフィールを比較対象とする。

TP グル

ープ タスクプロフィール 説明

ビジネ

スタイ

プ別

自社向け情報シス

テム開発・保守・運

自社向けシステムの開発・保守・運用を担う部門(IT/非 IT 企

業の情報システム部門)に関連するタスク

システム受託開発 アプリケーションシステムおよび基盤システムの受託開発を

担う企業に関連するタスク

ソフトウェア製品

開発 ソフトウェア製品の企画・開発・販売を担う企業に関連するタ

スク

組込みソフトウェ

ア開発 組込みソフトウェアの開発を担う企業に関連するタスク

Web サイト構築・

運用 顧客の Web サイトの構築および運用を担う企業に関連するタ

スク

システム運用サー

ビス(運用業務受

託)

顧客のシステム運用業務を受託して実施する企業に関連する

タスク

システム運用サー

ビス(データセンタ

運営)

自社のデータセンタ施設を持ち、顧客のシステム運用業務を受

託して実施する企業に関連するタスク

IT コンサルティン

グ IT コンサルティング(戦略、企画)を担う企業に関連するタ

スク

開発対

象別 アプリケーション

システム アプリケーションシステム開発に関連するタスク

基盤システム プラットフォーム、ネットワーク、データベース等の基盤シス

テム(インフラ)構築に関連するタスク

ソフトウェア製品 製品として販売されるソフトウェア(組込みソフトウェアを除

く)に関連するタスク

組込みソフトウェ

ア 自動車、家電製品、各種機械等に組み込まれるソフトウェアの

開発に関連するタスク

Web サイト 企業ホームページ、EC 等の Web サイト開発に関連するタス

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TP グル

ープ タスクプロフィール 説明

開発手

法別 ウォーターフォー

ル ウォーターフォール型の開発に関連するタスク

アジャイル アジャイル型の開発に関連するタスク

パッケージ利用 アプリケーションシステムの開発において、ERP パッケージ

(部品としてのパッケージは除く)を適用する場合に関連する

タスク

クラウ

ドビジ

ネス

クラウドビジネス

クリエイト クラウドサービスの価値を活かして、社内外、業界外等幅広い

プレーヤーやステークホルダと協業し、新ビジネスを創造した

り、又は既存ビジネスの付加価値向上等に寄与する人材に必要

なタスク

クラウドビジネス

アーキテクト 多種多様なクラウドサービスを吟味・選択して、顧客・自社が

目指すビジネス、サービスを具現化する人材に必要なタスク

クラウドアーキテ

クト 顧客・自社クラウドサービスを企画、構築、運用、改善のライ

フサイクル全般にわたり実現する人材に必要なタスク

データ

サイエ

ンス

ビジネスアナリス

ト 利用者(顧客)の目的に応じたデータ活用施策、計画を具体化

し、活用のためのプロセス/システムを確立する人材に必要な

タスク

データ解析スペシ

ャリスト データ活用の目的に適うデータ要件を具体化し、各種統計解析

手法に基づくデータ解析を通じて、データ活用システムのモデ

ル作成とチューニングを行う人材に必要なタスク

データ活用システ

ムエンジニア データ活用の目的に則して、利用データソース加工、

BI/Analytics ツールを含むデータ活用システムの構築と運用

を担う人材に必要なタスク

情報セ

キュリ

ティ関

連業務

コンサルタント(情

報リスクマネジメ

ント)

以下の業務を遂行する人材に必要なタスクビジネス機能内で

情報マネジメントが適切に実現される土台としての組織体制

の整備や組織内の各種ルール整備等に関する支援を担う。組織

ガバナンスやリスクマネジメント、コンプライアンス等に関す

る領域において、IT ソリューションを前提としたコンサルテ

ィングを行う。

IT アーキテクト

(セキュリティア

ーキテクチャ)

以下の業務を遂行する人材に必要なタスク強固なセキュリテ

ィ対策が求められる情報システムのアーキテクチャの設計を

担う役割。システムの企画・開発・構築・運用の各工程におい

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TP グル

ープ タスクプロフィール 説明

て、情報セキュリティ対策が十分に機能し、維持されることを

担保する組織設計、ルール設計、プロセス設計もあわせて行う。

セキュリティアド

ミニストレータ(情

報セキュリティア

ドミニストレータ)

以下の業務を遂行する人材に必要なタスク自社の情報セキュ

リティ戦略やポリシーの策定等を推進する役割。戦略策定のほ

か、戦略実行体制の確立や開発組織の統括も担う。また、企業

内のセキュリティ業務全体を俯瞰し、アウトソース等のリソー

ス配分の判断・決定も行う。

セキュリティアド

ミニストレータ(ISセキュリティアド

ミニストレータ)

以下の業務を遂行する人材に必要なタスク自社の情報セキュ

リティ対策の具体化や実施を統括する役割。企業全体としての

情報セキュリティ戦略やポリシーを具体的な計画や手順に落

とし込み、対策の立案や実施(指示・統括)、その見直しなど

を行う。また、利用者に対する教育等も実施する。

セキュリティアド

ミニストレータ(イ

ンシデントハンド

ラ)

以下の業務を遂行する人材に必要なタスク自社内のセキュリ

ティインシデント発生直後の初動対応(被害拡大防止策の実

施)や被害からの復旧業務の実施において、自らあるいは適切

な対応者をアサインして対応にあたる役割。被害の拡大防止の

ために、適切かつ迅速な対応が求められる。

セキュリティマネ

ージャ(組込みセキ

ュリティ)

製品に関するリスク対応の観点に基づき、機能安全を含む製品

のセキュリティの側面から、企画・開発・製造・保守などにわ

たるセキュリティライフサイクルを統括し責任をもつ人材に

必要なタスク

IT スペシャリスト

(セキュリティ) 情報システムの設計・開発・運用において、情報セキュリティ

に関する高い専門性を発揮するスペシャリストに必要なタス

クセキュリティインシデントが発生した際は、高度な技術的ス

キルを駆使して原因の究明や復旧対応等も担う。

プログ

ラムマ

ネジメ

ント

プログラムマネー

ジャ IT 戦略の実現に向けて、事業の IT化、情報基盤整備等のプロ

グラム(複数の個別プロジェクト)の状況把握、リスク分析、

並びに対策の検討と実施推進を行う人材に必要なタスク

戦略的

職務 IT ストラテジプラ

ンニング 企業の経営戦略と整合した IT 戦略・計画の策定と評価および

IT ガバナンスの推進を行う。

ビジネスリレーシ 事業部門の事業戦略と整合した IT 戦略・計画の策定と評価を

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9

TP グル

ープ タスクプロフィール 説明

ョンシップマネジ

メント 行う。

テクニカルマネジ

メント 企業全体の IT 戦略・計画と整合したテクニカルアーキテクチ

ャの統括と全体最適化を行う。

ビジネスストラテ

ジプランニング 企業全体の IT 戦略に基づき、各事業部門の企画担当、IT 化担

当と協業した事業部門の IT 戦略・計画の策定、並びにその評

価を行う。

情報ストラテジプ

ランニング 企業が保有する様々な情報・データを収集・統合して分析し、

経営戦略・事業戦略立案のインプットとなるインサイト(洞察、

見識)を導き出す。

企画・開

発・運用

職務

ビジネスアナリシ

ス 担当事業のビジネスの側面から IT に関するニーズを把握、分

析し、適切な IT ソリューションを企画、提案する。

プロジェクトマネ

ジメント システム開発プロジェクトの計画立案とプロジェクト実行管

理、並びに評価(個別プロジェクトの管理)を行う。

IT アーキテクチャ

デザイン アプリケーションシステム、基盤システム、システム運用の自

社の現状と最新技術動向を把握し、標準化と啓発活動を推進し

て品質の向上と効率化を促す。

アプリケーション

デザイン 企画された IT ソリューションの実装として、個別のアプリケ

ーションシステムの開発を行う。

テクニカルエンジ

ニアリング 企画された IT ソリューションの実装として、テクニカルアー

キテクチャの設計、DB、ネットワーク、基盤システムの構築

を行う。

IT サービスマネジ

メント システム運用サービス管理(個別システムの運用設計、運用評

価と改善)、システム運用業務、並びにアプリケーション保守

(小規模なエンハンスを含む)を行う。

Web プロデュース Web サイト全体の管理者(またはその補佐)として、Web サ

イトの開発、運用、管理を行う。

特定職

務 プログラムマネジ

メント 企業の経営戦略の実現に向けて、事業の IT化、情報基盤整備

等のプログラム(複数の個別プロジェクト)の状況把握、リス

ク分析、並びに対策の検討と実施推進を行う。

セキュリティマネ

ジメント 企業の経営戦略に基づき、情報資産に対する社内外からの脅威

やリスクへの対応に責任を持つ。

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10

TP グル

ープ タスクプロフィール 説明

DR/BCP 事業継続計画の IT 領域に関わる計画策定から遂行までの責任

を持つ。

リスクマネジメン

ト IT 領域に関わるリスク管理、並びにコンプライアンス管理の

方針策定、体制の整備から実施、改善までの責任を持つ。

システム監査 IT 機能が適切かつ健全に運営されるよう、その監査の計画、

遂行に責任を持つ。

人材開発 IT 部門の人的資源確保のために、人材育成施策の企画、遂行

に責任を持つ。

アウトソース統括 IT 領域に関わるアウトソースとの適切な契約関係を実現、維

持するために、契約業務全般の基準・ルール等の整備や維持管

理に責任を持つ。

中小規

模ビジ

ネス推

ストラテジックプ

ランナ 企業や部門の戦略策定、予算管理、事業企画を実施する。市場

開拓や事業戦略等の総合的な経営戦略をリードし、企業の発展

に寄与する

ビジネスプロデュ

ーサ 顧客ニーズや技術動向を踏まえてシステムやサービスを企画

し、提案、導入まで責任を持つ。自身が市場開拓のセールスと

して、また顧客との接点となるプロジェクトマネージャとし

て、プロジェクトを遂行するための一連の業務を執り行う。

プロジェクトディ

レクタ プロジェクトの立上げ、計画策定、遂行を統括し、契約上の納

入物に責任を持つ。プロジェクトに関する総合的なマネジメン

トを行い、戦略的な業務展開をリードする。

システムコンサル

タント 顧客のビジネス上の課題を IT を活用して解決するための助

言・提案を行う。顧客の経営戦略を推進するために、顧客業務

を分析して経営上の課題を見つけ出し、解決に向けて最適なシ

ステム導入の具体的なプランを立てた上で、総合的なソリュー

ションを提案する。

IT アーキテクト ビジネス上の問題解決や新手法開発のために、システム全体を

俯瞰したアーキテクチャを設計する。顧客の要求を満たすアー

キテクチャデザインを行い、システムの設計、開発において技

術面で総合的にリードする。

IT マイスタ(ネッ

トワーク) ネットワーク技術に習熟し、システム設計、導入およびテスト

を実施する。

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TP グル

ープ タスクプロフィール 説明

IT マイスタ(デー

タベース) データベース技術に習熟し、システム設計、導入およびテスト

を実施する。

IT マイスタ(セキ

ュリティ) セキュリティ技術に習熟し、システム設計、導入およびテスト

を実施する。

IT マイスタ(プラ

ットフォーム) OS・ミドルウェア・運用技術に習熟し、システム設計、導入

およびテストを実施する。

IT マイスタ(アプ

リケーション) プログラミング・ソフトウェアエンジニアリングに習熟し、シ

ステム設計、導入およびテストを実施する。

ソリューションセ

ールス パッケージソフトやソリューションに関する知識を持ち、顧客

の経営状況や業界動向、課題やニーズを把握した上で、システ

ム導入を提案する。

システムコンシェ

ルジュ ハードウェア、ソフトウェア、パッケージソフト、ソリューシ

ョンの運用・保守において、顧客の立場に立ったサービスの提

供に努め、顧客満足を得る。

3.ICTBOK と i コンピテンシ・ディクショナリを使用した対応分析

ICTBOK[2]および i コンピテンシ・ディクショナリ[3](iCD)は 2 節で紹介した様々な

活動の間の関係を分析するために活用する。図 1に iCDの構造と ICTBOKとの関係を示す。

iCD では、タスク、スキル、知識を用いて IT 人材の能力を表現している。スキルは授業や

セミナー等で指導可能な単純な作業を行う能力である。これに対してタスクは実務におけ

る業務に対応しており、一般には複数のスキルや知識を組み合わせて遂行する必要がある。 iCD では、情報処理技術者試験の各試験区分および 2 節の A、B、D で示した各種のスキ

ル標準や知識体系(BOK)をスキルと対応付けることで関連を示している。また、2 節で

示した各種のタスクプロフィールを分析してタスクディクショナリと対応づけている。 一方、iCD の知識項目においては用語が統一されていないため、異なるタスクプロフィ

ールや知識体系の間では異なる名称の知識項目が互いに重複した意味を表す場合がある。

このことは知識体系等の相互比較を行う際に問題となるため、我々が先に提案した知識体

系 ICTBOK と iCD の知識の間で対応付けを行うことで相互比較が行えるようにする。 また、技術士(情報工学)の知識体系は iCD には含まれていないため、技術士 BOK は

別に定義し、ICTBOK と対応づけた。これにより、技術士(情報工学)も含む取り組み間

の相互比較が行えるように工夫した。

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図 1 i コンピテンシ・ディクショナリの構造と ICTBOK との関係

A.ICTBOK

ICT 共通知識体系(ICTBOK) は 2 節で紹介した J07 の 6 領域および 3 つのスキル標

準を分析して定義したものである。ICTBOK は様々なカテゴリの職業とレベルを持つ ICT技術者の知識とスキルを統一的に表現するために策定された。ICTBOK はまた、ICT 分野

の教育プログラムの達成度や要求を表現するのにも使用される。ICTBOK は 7 つのカテゴ

リ、23 の領域および 155 の知識項目から構成されている。これらのカテゴリと領域の概要

を表 1 に示す。各領域に付された値は、その領域に含まれる知識項目の数である。

表 1 ICTBOK の構成

カテゴリ 領域

コンピュータサイエ

ンスの基礎 情報の基礎理論(7)、数学・応用数学(5)、コンピュータアーキ

テクチャ(9)、ハードウェア(7)、オペレーティングシステム(5)

メディアと HCI マルチメディア処理(8)、ヒューマンインタフェイス(3)、ユー

ザビリティ(2)、知的システム(6)

タスクプロフィール名

中区分 大区分

タスクプロフィール

評価基準

第3レベルカテゴリ 第2レベルカテゴリ 第1レベルカテゴリ

タスク

第2レベルカテゴリ 第1レベルカテゴリ

スキル領域名

スキル

知識項目名

(FK) スキル領域名

知識

スキルレベル

試験区分

情報処理技術者試験

iCDタスクディクショナリ

iCD スキルディクショナリ

中区分

知識項目名

大区分

ICTBOK知識項目名

期待されるレベル 中区分 大区分

技術士BOK

BOK名称

知識体系(BOK)

P

期待され

るレベル

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カテゴリ 領域

ネットワークとセキ

ュリティ 通信システム(9)、情報ネットワーク(6)、ウェブ技術(8)、セ

キュリティ(6)

ソフトウェア開発 データベース(10)、アルゴリズムとデータ構造(5)、プログラ

ミング(5)、ソフトウェア工学・システム開発(11) 情報システム プロジェクトマネジメント(6)、システム運用・評価(8) ビジネス ビジネス、経営(8)、コミュニケーション(5)、情報社会と倫理 (4) ジェネリックスキル 振る舞い(3)、思考(3)、チームワーク(6)

B.ICTBOK と技術士の BOK 間の対応付け分析

技術士(情報工学)の BOK は 5 つの大区分、52 の中区分、319 の知識項目から構成さ

れている。我々はこれらの知識項目と ICTBOK の知識項目との対応付けを手動で行った。

我々はまた、対応する知識とスキルレベルを定義しているそれぞれの知識項目の要求レベ

ルを分析した。対応付けの正確性を期すため、政府の BOK ワーキンググループの座長に対

応付けの結果をレビューして頂いた。 D.i コンピテンシ・ディクショナリ(iCD)

iCD は ICT 技術者の能力を図 1 の二つのディクショナリに示すようなタスク、スキルお

よび知識を用いて定義している。iCD のスキルディクショナリでは 423 項目のスキルと

8255 項目の知識項目およびそれらの間の関係を定義している。iCD タスクディクショナリ

は 507 項目のタスクを定義している。それぞれのタスクはスキルディクショナリにある一

つ以上のスキルに対応付けられている。この関連したタスクは ICT 技術者の主な役割と対

応づけられた 61 のタスクプロフィールにグループ化されている。 iCD のスキル群は、図 1 に示すように、様々なタスク、情報処理技術者試験のカテゴリ

および BOK 群を分析することで列挙されている。図 1 の注釈にあるように、iCD は J07の 6 領域、3 つのスキル標準、SWEBOK および PMBOK を含む 25 の BOK 群を含む。こ

のことは、iCD のスキルと知識は様々な粒度のレベルから構成されており、またそれらの

間に重複があることを示唆している。 D.ICTBOK と iCD の知識項目の対応付け

ICTBOK の知識項目は相互排他(MECE)条件を満たすように定義されている。しかし、

上述したように iCD の知識項目は相互排他的ではない。我々は iCD に登録されている知識

体系等の相互関連を分析するために、iCD の知識項目を ICTBOK と対応付けることで二つ

の BOK 間の関連を定義する。その結果、様々な知識項目、タスクプロフィール、スキルお

よび職業の間の関連を明確化することができた。 最初に、我々は iCD のスキル項目と ICTBOK の項目の間の対応付けを定義した。363 の

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スキル項目が ICTBOK の項目と一意に対応付けられた。それぞれの知識項目は iCD のスキ

ル項目に対応しているため、iCD の 6974 の知識項目は一意に ICTBOK の項目へ対応付け

られた。さらに、我々は iCD の残った 1281 の知識項目を ICTBOK の項目と手作業で対応

付けた。iCDの知識項目のほとんどが ICTBOKの1項目と対応づけられた。複数の ICTBOK項目に対応付けられた iCD の知識項目の数は 20 個未満である。そのような場合、我々は、

対応を定義するために候補となる ICTBOK の項目からひとつをランダムに選択した。iCDにおいてそのようなケースは稀なため、ランダム選択による対応付け全体に対する影響は

少ないと考えられる。 上述した対応付け作業の詳細を付録 3.1「iCD と ICTBOK との対応付け」に示す。

4.カリキュラム、資格、BOK およびタスクプロフィールの分析 本節で我々は、2 節で説明した様々な取り組みについての重要度を分析する。この分析結

果を図 2 から図 5 に示す。この分布は ICTBOK の用語で記述されているので、様々な取り

組みの間の関係を簡単に把握できる。重要度の値は、それぞれの取り組みにおいて ICTBOKの各領域に対応している iCD の知識項目の数に基づいて計算されている。スキルと知識の

粒度にはばらつきがあるが、個別の取り組みについて考えると、粒度はおおむね同じであ

る。そのため、重要度は知識項目数の比率を計算することで見積もることができる。 これと併せて、情報処理技術者試験とタスクプロフィールについては、求められる知識・

スキルレベルの分析も行った。分析結果の詳細は、付録 3.2~3.5 に示す。 A.J07 各領域と様々な BOK の重要度分析

図 2 に、J07 の 5 つの領域の重要度分布を示す。我々はこれまでの論文で同様の分布の

分析を行ったことがあるが、図 2 の結果はそれとは多少異なっている。これは、iCD が主

に ICT 企業の視点で開発されているためである。 図 4 に、3 つのスキル標準と良く知られた 2 つの BOK の重要度分布を示す。ETSS は組

み込みソフトウェアを開発するためのものであるため、ハードウェアとコンピュータネッ

トワークに焦点を置いている。SWEBOKおよびPMBOKがカバーしている領域は狭いが、

これら 2 つの知識体系が特定の領域に集中しているためである。 J07 各領域における ICTBOK 知識項目毎の重要度分布を付録 3.2「カリキュラム標準 J07

各領域の重要度分布」に示す。また、各種知識体系における重要度分布を付録 3.3「各種知

識体系(BOK)の重要度分布」に示す。

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J07-CS J07-CE J07-SE

図 2.J07 各領域の重要度分布

0% 10% 20%

情報の基礎理論

数学・応用数学

コンピュータアーキテクチャ

ハードウエア

オペレーティングシステム

マルチメディア処理

ヒューマンインタフェイス

ユーザビリティ

知的システム

通信システム

情報ネットワーク

ウェブ技術

セキュリティ

データベース

アルゴリズムとデータ構造

プログラミング

ソフトウエア工学・システム…

プロジェクトマネジメント

システム運用・評価

ビジネス、経営

コミュニケーション

情報社会と倫理

社会人基礎力

0% 10% 20% 30%

情報の基礎理論

数学・応用数学

ータアーキテクチャ

ハードウエア

ーティングシステム

ルチメディア処理

マンインタフェイス

ユーザビリティ

知的システム

通信システム

情報ネットワーク

ウェブ技術

セキュリティ

データベース

ズムとデータ構造

プログラミング

ア工学・システム…

ェクトマネジメント

ステム運用・評価

ビジネス、経営

コミュニケーション

情報社会と倫理

社会人基礎力

0% 10% 20% 30% 40%

情報の基礎理論

数学・応用数学

タアーキテクチャ

ハードウエア

ティングシステム

ルチメディア処理

ンインタフェイス

ユーザビリティ

知的システム

通信システム

情報ネットワーク

ウェブ技術

セキュリティ

データベース

ムとデータ構造

プログラミング

ア工学・システム…

クトマネジメント

ステム運用・評価

ビジネス、経営

ミュニケーション

情報社会と倫理

社会人基礎力

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J07-IS J07-IT

図 2.J07 各領域の重要度分布(続き)

0% 10% 20% 30%

情報の基礎理論

数学・応用数学

コンピュータアーキテクチャ

ハードウエア

オペレーティングシステム

マルチメディア処理

ヒューマンインタフェイス

ユーザビリティ

知的システム

通信システム

情報ネットワーク

ウェブ技術

セキュリティ

データベース

アルゴリズムとデータ構造

プログラミング

ソフトウエア工学・システム…

プロジェクトマネジメント

システム運用・評価

ビジネス、経営

コミュニケーション

情報社会と倫理

社会人基礎力

0% 10% 20% 30% 40%

情報の基礎理論

数学・応用数学

タアーキテクチャ

ハードウエア

ティングシステム

ルチメディア処理

ンインタフェイス

ユーザビリティ

知的システム

通信システム

情報ネットワーク

ウェブ技術

セキュリティ

データベース

ムとデータ構造

プログラミング

ア工学・システム…

クトマネジメント

テム運用・評価

ビジネス、経営

ミュニケーション

情報社会と倫理

社会人基礎力

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情報処理技術者試験 技術士(CS+CE) 技術士(CS+SE)

図 3. 情報処理技術者試験および技術士資格の重要度分布

0% 10% 20% 30%

情報の基礎理論

数学・応用数学

コンピュータアーキテクチャ

ハードウエア

オペレーティングシステム

マルチメディア処理

ヒューマンインタフェイス

ユーザビリティ

知的システム

通信システム

情報ネットワーク

ウェブ技術

セキュリティ

データベース

アルゴリズムとデータ構造

プログラミング

ソフトウエア工学・システム…

プロジェクトマネジメント

システム運用・評価

ビジネス、経営

コミュニケーション

情報社会と倫理

社会人基礎力

0% 10% 20% 30%

情報の基礎理論

数学・応用数学

タアーキテクチャ

ハードウエア

ティングシステム

ルチメディア処理

ンインタフェイス

ユーザビリティ

知的システム

通信システム

情報ネットワーク

ウェブ技術

セキュリティ

データベース

ムとデータ構造

プログラミング

ア工学・システム…

クトマネジメント

ステム運用・評価

ビジネス、経営

ミュニケーション

情報社会と倫理

社会人基礎力

0% 10% 20% 30% 40%

情報の基礎理論

数学・応用数学

タアーキテクチャ

ハードウエア

ティングシステム

ルチメディア処理

マンインタフェイス

ユーザビリティ

知的システム

通信システム

情報ネットワーク

ウェブ技術

セキュリティ

データベース

ズムとデータ構造

プログラミング

ア工学・システム…

ェクトマネジメント

ステム運用・評価

ビジネス、経営

ミュニケーション

情報社会と倫理

社会人基礎力

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技術士(CS+IS) 技術士(CS+IT)

図 3. 情報処理技術者試験および技術士資格の重要度分布(続き)

0% 10% 20%

情報の基礎理論

数学・応用数学

コンピュータアーキテクチャ

ハードウエア

オペレーティングシステム

マルチメディア処理

ヒューマンインタフェイス

ユーザビリティ

知的システム

通信システム

情報ネットワーク

ウェブ技術

セキュリティ

データベース

アルゴリズムとデータ構造

プログラミング

ソフトウエア工学・システム…

プロジェクトマネジメント

システム運用・評価

ビジネス、経営

コミュニケーション

情報社会と倫理

社会人基礎力

0% 10% 20%

情報の基礎理論

数学・応用数学

ータアーキテクチャ

ハードウエア

ーティングシステム

ルチメディア処理

マンインタフェイス

ユーザビリティ

知的システム

通信システム

情報ネットワーク

ウェブ技術

セキュリティ

データベース

ズムとデータ構造

プログラミング

ア工学・システム…

ェクトマネジメント

ステム運用・評価

ビジネス、経営

コミュニケーション

情報社会と倫理

社会人基礎力

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B.技術士資格の重要度分析

図 3 は情報処理技術者試験の知識体系と技術士の 4 つの選択科目の重要度分布を示して

いる。技術士の重要度分布は 3 節の B で説明した対応関係に基づいて算出した。ICTBOKの領域に対応している知識項目の数が各ドメインの重要度を計算するのに使われている。

図 2 の J07-XX の分布と技術士(CS+XX)の重要度分布を比較してみると興味深い。対応

する分布の間に類似性があることがわかるだろう。このことは、J07 と技術士資格が一貫性

を持って設計されていることを示している。

B.情報処理技術者試験における重要度および要求レベルの分析

情報処理技術者試験自体は 12個の試験区分を持つが、知識体系は共通である。そのため、

図 3 の重要度分析は 1 つにまとめた。 iCD では、情報処理技術者試験の各試験区分についてスキル項目毎の知識・スキルの要

求レベルを示している。これを ICTBOK の知識項目と対応付けることで、試験区分毎の要

求レベルの差を詳細に分析できる。表 2 に知識やスキルに対するレベルの定義を示す。 情報処理技術者試験の各試験区分における ICTBOK 知識項目毎の重要度分布および要求

レベルの詳細を付録 3.3「情報処理技術者試験・各試験区分の重要度分布」に示す。

表 2 要求レベルの定義 レベル 知識 スキル

0 その項目の内容は知らなくても良い. その項目の内容は実行できなくて

も良い.

1 その項目の内容がおおむね理解でき

る.(講義等で履修) その項目の内容は実行できなくて

も良い.(講義等で履修)

2 その項目の内容がおおむね説明でき

る.(講義等で履修) 具体的な指示が与えられれば実行

できる.(演習,実験等)

3 その項目の内容を使った議論に参加で

きる.(卒論等) 大まかな指示が与えられれば実行

できる.(卒論等)

4 その項目の概念を問題解決に使える.

(修論等) 作業を独力で実行できる程度に習

熟している.(修論等) 5 (未使用) その技術を他者に指導できる.

C.iCD タスクプロフィールの分析

iCD には 61 のタスクプロフィールが含まれている。図 5 にその中の 5 つのタスクプロフ

ィールの重要度分布を示す。タスクプロフィールは、ビジネス創成から実際のソフトウェ

ア開発までの様々なステージから選んだ。ビジネスと管理者の重要度はタスクプロフィー

ルの中でも同様に高いことが見て取れる。これは、多くの ICT の役割や職種についての最

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近の傾向である。 iCD では、各タスクプロフィールについて期待されるレベルのデータを示している。情

報処理技術者試験の要求レベル分析と同様、これを ICTBOK の知識項目と対応付けること

で、タスクプロフィール毎の要求レベルの差を詳細に分析できる。 iCD で定義された各タスクプロフィールにおける ICTBOK 知識項目毎の重要度分布およ

び要求レベルの詳細を付録 3.5「i コンピテンシ・ディクショナリ(iCD)タスクプロフィ

ールの重要度分布」に示す。

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ETSS ITSS UISS

図 4. 様々な知識体系(BOK)の重要度分布

0% 10% 20% 30%

情報の基礎理論

数学・応用数学

コンピュータアーキテクチャ

ハードウエア

オペレーティングシステム

マルチメディア処理

ヒューマンインタフェイス

ユーザビリティ

知的システム

通信システム

情報ネットワーク

ウェブ技術

セキュリティ

データベース

アルゴリズムとデータ構造

プログラミング

ソフトウエア工学・システム…

プロジェクトマネジメント

システム運用・評価

ビジネス、経営

コミュニケーション

情報社会と倫理

社会人基礎力

0% 10% 20% 30%

情報の基礎理論

数学・応用数学

タアーキテクチャ

ハードウエア

ティングシステム

ルチメディア処理

ンインタフェイス

ユーザビリティ

知的システム

通信システム

情報ネットワーク

ウェブ技術

セキュリティ

データベース

ズムとデータ構造

プログラミング

ア工学・システム…

ェクトマネジメント

ステム運用・評価

ビジネス、経営

ミュニケーション

情報社会と倫理

社会人基礎力

0% 10% 20% 30%

情報の基礎理論

数学・応用数学

ータアーキテクチャ

ハードウエア

ーティングシステム

マルチメディア処理

マンインタフェイス

ユーザビリティ

知的システム

通信システム

情報ネットワーク

ウェブ技術

セキュリティ

データベース

ズムとデータ構造

プログラミング

エア工学・システム…

ジェクトマネジメント

システム運用・評価

ビジネス、経営

コミュニケーション

情報社会と倫理

社会人基礎力

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SWEBOK PMBOK

図 4. 様々な知識体系(BOK)の重要度分布(続き)

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60%

情報の基礎理論

数学・応用数学

コンピュータアーキテクチャ

ハードウエア

オペレーティングシステム

マルチメディア処理

ヒューマンインタフェイス

ユーザビリティ

知的システム

通信システム

情報ネットワーク

ウェブ技術

セキュリティ

データベース

アルゴリズムとデータ構造

プログラミング

ソフトウエア工学・システム…

プロジェクトマネジメント

システム運用・評価

ビジネス、経営

コミュニケーション

情報社会と倫理

社会人基礎力

0% 20% 40% 60% 80% 100%

情報の基礎理論

数学・応用数学

ータアーキテクチャ

ハードウエア

ーティングシステム

マルチメディア処理

マンインタフェイス

ユーザビリティ

知的システム

通信システム

情報ネットワーク

ウェブ技術

セキュリティ

データベース

ズムとデータ構造

プログラミング

エア工学・システム…

ジェクトマネジメント

システム運用・評価

ビジネス、経営

コミュニケーション

情報社会と倫理

社会人基礎力

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クラウドビジネスクリエーション ビジネスプロデューサ データサイエンティスト

図 5. 様々なタスクプロフィールの重要度分布

0% 10% 20% 30% 40% 50%

情報の基礎理論

数学・応用数学

コンピュータアーキテクチャ

ハードウエア

オペレーティングシステム

マルチメディア処理

ヒューマンインタフェイス

ユーザビリティ

知的システム

通信システム

情報ネットワーク

ウェブ技術

セキュリティ

データベース

アルゴリズムとデータ構造

プログラミング

ソフトウエア工学・システム…

プロジェクトマネジメント

システム運用・評価

ビジネス、経営

コミュニケーション

情報社会と倫理

社会人基礎力

0% 10% 20% 30% 40%

情報の基礎理論

数学・応用数学

タアーキテクチャ

ハードウエア

ティングシステム

ルチメディア処理

マンインタフェイス

ユーザビリティ

知的システム

通信システム

情報ネットワーク

ウェブ技術

セキュリティ

データベース

ズムとデータ構造

プログラミング

ア工学・システム…

ェクトマネジメント

ステム運用・評価

ビジネス、経営

コミュニケーション

情報社会と倫理

社会人基礎力

0% 10% 20% 30% 40%

情報の基礎理論

数学・応用数学

ータアーキテクチャ

ハードウエア

ーティングシステム

マルチメディア処理

マンインタフェイス

ユーザビリティ

知的システム

通信システム

情報ネットワーク

ウェブ技術

セキュリティ

データベース

ズムとデータ構造

プログラミング

エア工学・システム…

ェクトマネジメント

ステム運用・評価

ビジネス、経営

コミュニケーション

情報社会と倫理

社会人基礎力

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セキュリティスペシャリスト システム受託開発

図 5. 様々なタスクプロフィールの重要度分布(続き)

0% 10% 20% 30%

情報の基礎理論

数学・応用数学

コンピュータアーキテクチャ

ハードウエア

オペレーティングシステム

マルチメディア処理

ヒューマンインタフェイス

ユーザビリティ

知的システム

通信システム

情報ネットワーク

ウェブ技術

セキュリティ

データベース

アルゴリズムとデータ構造

プログラミング

ソフトウエア工学・システム…

プロジェクトマネジメント

システム運用・評価

ビジネス、経営

コミュニケーション

情報社会と倫理

社会人基礎力

0% 10% 20% 30%

情報の基礎理論

数学・応用数学

タアーキテクチャ

ハードウエア

ティングシステム

ルチメディア処理

マンインタフェイス

ユーザビリティ

知的システム

通信システム

情報ネットワーク

ウェブ技術

セキュリティ

データベース

ズムとデータ構造

プログラミング

ア工学・システム…

ェクトマネジメント

ステム運用・評価

ビジネス、経営

コミュニケーション

情報社会と倫理

社会人基礎力

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5.おわりに 本章では、情報教育カリキュラム標準 J07、ICT 資格、BOK および ICT 領域のタスクプ

ロフィールについて詳細な重要度分布の分析をおこなった。また、情報処理技術者試験の

各試験区分と iCD で定義されている 61 のタスクプロフィールのそれぞれについて、知識及

びスキルに対する要求レベルを詳細に示した。この分析結果は、様々な活動を容易に比較

できるように、ICTBOK の知識項目を用いて表現されている。このような比較と関係分析

は、異なる組織間の相互理解と協力の基盤となる。異なる活動の間にミスマッチが発見さ

れれば、その活動に携わる組織は、改善を検討することができる。 ICT を専門とする学生や ICT プロフェッショナルもまた、彼らが興味を持つ様々な活動

の間の関係を理解することで、彼らの現在の達成度レベルと彼らが計画しているキャリア

プランを考慮した適切な教育・訓練の手法を選ぶことができる。 本章の付録で示す詳細分析データは、様々な立場からの興味を持つ個人ユーザや組織の

アセスメントのためのリファレンスとして活用できる。 参考文献 [1] 閣議決定,“世界最先端 IT 国家創造宣言”, 2015. [2] 掛下哲郎,山本真司, “IT 分野のスキル標準を用いた知識・スキル項目の体系化と教育プ

ログラムの分析事例”, 情報処理学会論文誌, Vol. 49, No. 10, pp. 3377-3387, 2008. [3] IPA, “i-コンピテンシ・ディクショナリ (iCD)”, 2014.

https://www.ipa.go.jp/jinzai/hrd/i_competency_dictionary/index.html [4] 情報処理学会, “情報専門学科におけるカリキュラム標準 J07”, 2009.

http://www.ipsj.or.jp/annai/committee/education/j07/ed_j07.html [5] 情報処理技術者試験, https://www.jitec.ipa.go.jp/ [6] 技術士資格, https://www.engineer.or.jp/sub02/ [7] IPA, “IT スキル標準 (ITSS)”, 2012. http://www.ipa.go.jp/jinzai/itss/download.html [8] IPA, “組み込みスキル標準 (ETSS)”, 2008.

https://www.ipa.go.jp/sec/softwareengineering/std/download.html [9] IPA, “情報システムユーザースキル標準 (UISS)”, 2010.

https://www.ipa.go.jp/jinzai/itss/uiss/uiss_download_Ver2_2.html [10] IEEE Computer Society, “SWEBOK V3 Guide”, 2015.

http://www.computer.org/web/swebok/v3-guide [11] A Guide to the Project Management Body of Knowledge: PMBOK Guide (5th-Ed.),

Project Management Institute, 2013.