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2019年10月 2019年10月 RENGO WAGE REPORT 連合・賃金レポート 2019 <サマリー版>

連合・賃金レポート2019...「連合・賃金レポート2019 サマリー版」の刊行にあたって 「連合・賃金レポート2019 サマリー版」をお届けします。

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Page 1: 連合・賃金レポート2019...「連合・賃金レポート2019 サマリー版」の刊行にあたって 「連合・賃金レポート2019 サマリー版」をお届けします。

2019年10月2019年10月

RENGO WAGE REPORT

連合・賃金レポート2019<サマリー版>

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「連合・賃金レポート2019 サマリー版」の刊行にあたって

「連合・賃金レポート 2019 サマリー版」をお届けします。

連合は 1996 年から、春季生活闘争の基礎資料として、厚生労働省公表の「賃金構

造基本統計調査」(賃金センサス)を独自に分析した「連合・賃金レポート」を発行

しています。2016 からは、その年の重要ポイントを一目で把握していただき、また

賃金担当者の入門書として活用いただくべく、「サマリー版」も発行してきました。

本年の「サマリー版」は、厚生労働省が 2019 年 3 月 29 日に公表した 2018 年賃金

センサス(2018 年 6 月分の賃金等を調査)を分析しました。

2020 春季生活闘争においては引き続き、「賃金水準の追求」に重点を置いていま

す。賃金水準を追求するためには、自社の賃金実態を把握することが重要ですが、

そのためには「平均賃金」と「個別賃金」の違いを知らなければなりません。本「サ

マリー版」は、この二つの違いを解説した上で、これまでの推移や、企業規模・産

業ごとの水準、男女間や役職間の賃金格差などを分析しています。

本年は、賃金分散を男女別にみたうえで男女間の賃金差を分析するなど、賃金の

男女差を厚めに取り扱っています。「企業規模間格差」「雇用形態間格差」と並ぶ格

差の側面である男女間の賃金差について、理解を深めていただく一助となれば幸い

です。

なお「連合・賃金レポート 2019」本冊では、連合結成 30 周年に合わせ、賃金と

雇用の 30 年を振り返った分析を行っています。11 月初旬に連合ホームページの

「2020 春季生活闘争」に掲載いたしますので、あわせてご活用ください。

作成にあたっては、コム情報センタの尾上友章さんにご協力をいただきました。

御礼と合わせ、申し添えます。

2019 年 10 月末日

連合 総合政策推進局長

冨田 珠代

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< 目 次 > 1 平均賃金と個別賃金

賃金比較の基本は「個別賃金」比較で、「平均賃金」比較ではありません。

2 産業別の平均賃金と個別賃金 平均賃金が高いのに個別賃金はそれほどでもない産業があります。

3 産業別の所定内賃金ランキング トップ3は航空、証券、電気でした。

4 産業別賃金ポジションの推移 小売と銀行のポジション低下傾向が顕著です。

5 企業規模別ポジションと規模間格差の推移 製造業では企業規模間の賃金格差拡大が進行してきました。

6 平均賃金と個別賃金の水準推移 長期賃金デフレの期間、平均賃金は横ばいでしたが、個別賃金は低下傾向をたどりました。

7 平均賃金と個別賃金の水準推移 4産業の事例 「電機」「小売業」と「鉄鋼」「鉄道」の推移は対照的です。

8 一時金・賞与の現状と推移 長期デフレの期間、一時金・賞与は所定内賃金を上回るペースで低下を続けました。

9 標準労働者の賃金カーブ 標準労働者の規模間・学歴間の賃金差は、30歳以降次第に拡大します。

10 産業別生涯賃金ランキング 一時金・賞与まで含めた男女別の生涯賃金ランキングです。

11 組合員賃金水準の推計 部課長を除外して、組合員の賃金水準を推計しています。

12 賃上げと個別賃金水準 賃上げしたのに個別賃金が上がらないのはどうしてでしょうか。

13 「1年・1歳間差」の計測 回帰分析の手法で産業別に賃金の「1年・1歳間差」を推計しています。

14 「1年・1歳間差額」と賃上げ額、個別賃金水準の推移 定昇込み賃上げ額が「1年・1歳間差額」を上回ったとき、個別賃金水準は上昇します。

15 男性の賃金分散 平均値だけではなく、賃金分散にも目を向けましょう。

16 女性の賃金分散 35歳の賃金分散は、男性では拡大傾向、女性では縮小傾向です。

17 男女間の賃金差 昇進差まで含めた男女間賃金格差は17.8%ですが、同一役職で比較すると差は10%程度です。

18 役職昇進の状況 50-54歳の役職者比率は、男性46.1%、女性は14.2%です。

19 役職間賃金差の現状と推移 2000年以降、役職者と非役職者の賃金差は拡大に向かいます。

20 60歳台人員と賃金 55-59歳と比べると、60-64歳の所定内賃金は3割減です。

21 雇用形態別の賃金カーブ 正社員-派遣-契約社員-短時間労働者の賃金序列が形成されています。

22 地域別の賃金 1996年以降、東京はポジション上昇、大阪は下降という状況です。

23 地域別の短時間労働者時給と最賃 最賃に押し上げられるように、短時間労働者時給は上昇傾向です。

1 本冊子で紹介する平均賃金、平均年齢、パーシェ指数は、20項を除きすべて60歳以上を除外して計算しています。

除外する理由は、多くの場合60歳以上に対しては一般とは異なる賃金制度が適用されていること、そして高年齢者雇用

制度普及以前の集計表との連続性が保てることです。

2 本冊子は連合ホームページに掲載している「連合・賃金レポート2019」の別冊という位置付けで編集しています。本冊

子の脚注等で『レポート』とあるのは、「連合・賃金レポート2019」のことです。あわせてご参照ください。

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1 平均賃金と個別賃金 この冊子の一番のテーマは賃金水準の比較である。比較に際しては「パーシェ式」といわれる手法

で計算した「個別賃金比較指数」を用いる。なぜ「平均賃金比較」ではなく「パーシェ比較」なのか。まずそこから始めよう。1-1図では2018年の男性大卒者の年齢階層別所定内賃金(産業計企業規模計)を21年前の1997年水準と比較している。1997年は⽇本の個別賃金水準が最⾼値を記録し、⻑期にわたる賃金デフレが始まる直前の年である。2本の折れ線は両年の所定内賃金であり、細線は1997年、太線は2018年である。タテ棒は各階層の1997年を100とした比較結果であり、100以下の指数は2018年の方が低位であることを示す。20歳台では指数が100を上回っているが、30歳以上ではすべて100以下であり、全体的には「2018年は21年前より水準が下がった」という判断ができそうである。しかし平均賃金(60歳未満・右端のタテ棒)では、1997年39万7000円、2018年40万200円、指数101.3となり、「2018

年の方が⾼水準」という正反対の結論となってしまう。もう一つの例が2018年大卒者の男女比較を行った1-2図である。細線は男性、太線が女性で45歳以上の比較指数は73前後である。しかし平均賃金の比較指数は71.8であり、どの年齢層より大きな差となってしまう。

このように平均賃金による比較は時としてまったく実感にそぐわない結果を導き出す。グラフの右から2番目のタテ棒がパーシェ比較指数である。21

年前との比較では93.2、男女比較では83.1と想定内の結果となる。なぜ平均賃金比較との間に大きなギャップがあるのか。それは1-3図で示した年齢階層別構成の違いで説明できる。2018年男性は1997年の男性や2018年の女性と比べると、40歳以上中⾼年層のウエイトが大きい。この⾼年齢層が平均賃金を押し上げた結果、実感にそぐわない比較結果となってしまうのである。

※ パーシェ式の計算方法は『レポート』参考4。

1-1図 1997年と2018年の賃金比較

0

5

10

15

20

25

30

20-

24

25-

29

30-

34

35-

39

40-

44

45-

49

50-

54

55-

59

1997年男大卒

2018年男大卒

2018年女大卒

1-3図 年齢階層別構成の対比

1-2図 2018年の男女間賃金比較

男性大卒/産業計規模計/1997年=100 大卒/産業計規模計/比較指数は男性=100

107.2

101.6

95.9

93.1

92.6 90.9 91.689.1

93.2

101.3

70

80

90

100

110

120

130

1500

2000

2500

3000

3500

4000

4500

5000

5500

6000

6500比較指数百円 比較指数(右目盛り)

1997年(左目盛り)2018年(左目盛り)

97.393.8

85.580.577.9

73.2 73.2 73.1

83.1

71.8

50

60

70

80

90

100

110

120

130

1500

2000

2500

3000

3500

4000

4500

5000

5500

6000比較指数百円 比較指数(右目盛り)

男性(左目盛り)女性(左目盛り)

-1-

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2 産業別の平均賃金と個別賃金 平均賃金比較と個別賃金比較では産業別にどの程度のズレがあるのか。それをみたのが2図であり、

2018年の産業別所定内賃金について計測している。タテ軸が平均賃金、ヨコ軸がパーシェ式で計算した個別賃金であり、ともに産業計を100とした比較指数である。右方ほど個別賃金水準が⾼く、上方ほど平均賃金が⾼い産業ということになる。右上に各種商品卸売業(総合商社)が位置するが、その座標は(125.1、141.8)で、産業計より個別賃金は25.1ポイント⾼く、平均賃金は41.8ポイント⾼いことを示しており、両指数の間に16.7ポイントのギャップ(平均賃金指数マイナス個別賃金指数の算式で計算)がある。左下には繊維工業(84.0、72.4)が位置し、ギャップはマイナス11.6である。座標(70、70)と(130、130)を結ぶナナメ線を引いているが、これより上方にあれば個別賃金指数よりも平均賃金指数が⾼い、つまり⾼学歴者構成比が⾼い、あるいは平均年齢が⾼いことによって平均賃金が個別賃金以上に押し上げられていることを示している。

情報サービス業(ソフトウェア業)と鉄鋼業の個別賃金指数はともに104台でほぼ同じであるが、平均賃金指数は情報サービス業117.2、鉄鋼業99.2で18ポイントの差がある。この差は情報サービス業で大卒者比率(69.8%、鉄鋼業19.2%)と平均年齢(39.2歳、鉄鋼業38.3歳)が⾼いことによって、平均賃金が押し上げられた結果と考えられる。また情報通信機器製造業と化学工業の平均賃金指数はともにほぼ114であるが、個別賃金指数は化学110.2、情報通信機器製造業102.5で7.7ポイントの差がある。これは情報通信機器製造業が大卒者比率(44.6%、化学は40.1%)、平均年齢(43.3歳、化学は40.7

歳)がともに⾼いことによるものと思われる。

※ 産業別の個別賃金指数の推移は『レポート』2-1表、平均賃金推移は4-1表。

2図 2018年の産業別平均賃金指数と個別賃金指数

鉱業採石総合工事

設備工事

食料品製造

飲料たばこ

繊維工業

パルプ紙

印刷

化学

石油製品

プラスチック

ゴム窯業 鉄鋼非鉄

金属製品

はん用機器生産用機器

電子部品

電気機器

情報通信機器

輸送用機器

ガス水道

通信

情報サービス

情報制作

鉄道

道路旅客道路貨物

各種商品卸売

各種商品小売

衣服小売飲食料品小売

機械器具小売

銀行

協同組織金融

保険

不動産取引

広告

宿泊飲食店

娯楽

学校教育

医療

介護

廃棄物処理

70

80

90

100

110

120

130

140

150

70 75 80 85 90 95 100 105 110 115 120 125 130

平均賃金指数

個別賃金指数

タテ軸は平均値比較指数、ヨコ軸はパーシェ式(性・学歴・年齢をコントロール)で算出した個別賃金指数/規模計/産業計=100

-2-

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3 産業別の所定内賃金ランキング 3図はパーシェ式によって算出した2018年の個別賃金水準ランキング(所定内賃金、産業計規模計

=100)で、左側が企業規模計、右側が1000人以上規模である。規模計のトップ5産業は航空、証券(金融証券取引業)、電気、放送、通信で、下位は道路旅客、飲食料品小売、繊維工業、食料品製造、宿泊である。ここでは一時金・賞与が算入されていないが、10項ではそれを算入した生涯賃金のランキングを掲載しており、そこでは総合商社がトップである。

※ 『レポート』2章では、各産業の一時金・賞与と年間賃金のポジションも掲載している。

<企業規模計> <1000人以上規模>

193.2 158.9

151.3 151.2 151.1 147.0

139.9 139.9

127.5 125.4 123.6 122.1 120.5 120.4 119.7 119.3 118.3 117.2 116.9 115.8 114.1 113.4 113.2 113.1 112.3 111.7 111.3 111.1 110.3 110.1 109.8 109.5 109.0 108.1 107.7 107.3 105.6 105.2 105.0 104.7 104.1 102.1 101.5 100.9 97.9 94.9 94.4 93.4 92.9 92.1 90.3 89.5 88.3 86.5 85.3

0 50 100 150 200

航空放送

鉱業採石情報制作

証券電気

総合商社広告

石油製品ガス

総合工事医療通信化学

学校教育保険

電気機器鉄道

飲料たばこ輸送用機器

鉄鋼卸売計

銀行設備工事

非鉄はん用機器

窯業不動産取引業務用機器

電子部品情報通信機器

生産用機器ゴム

繊維工業協同組織金融情報サービスプラスチック

不動産管理職別工事

水道金属製品

印刷パルプ紙

娯楽機械器具小売

介護各種商品小売

宿泊衣服小売

飲食店食料品製造

道路貨物廃棄物処理

飲食料品小売道路旅客

161.5 159.4

145.5 133.9

125.5 125.1

117.6 115.2 114.6 114.4 113.0 112.3 112.2 110.2 110.2 108.5 107.8 107.5 105.9 105.6 104.8 104.3 103.4 103.4 103.1 102.9 102.5 102.4 101.5 101.2 101.1 100.6 100.1 99.1 98.2 97.4 96.6 96.2 93.8 93.2 92.8 92.6 92.4 92.4 91.9 91.7 90.4 89.4 88.8 86.5 86.4 84.8 84.0 83.7

74.8

0 50 100 150 200

航空証券電気放送通信

総合商社保険ガス

情報制作鉄道銀行広告医療化学

学校教育石油製品

不動産取引鉱業採石総合工事

輸送用機器情報サービス

鉄鋼設備工事電気機器職別工事

卸売計情報通信機器

はん用機器電子部品

不動産管理業務用機器

協同組織金融水道非鉄

機械器具小売ゴム

生産用機器飲料たばこ

窯業衣服小売

廃棄物処理パルプ紙

プラスチック各種商品小売

娯楽金属製品

飲食店介護印刷

道路貨物宿泊

食料品製造繊維工業

飲食料品小売道路旅客

3図 2018年の産業別の賃金ランキング

性、学歴、年齢構成をコントロールしたパーシェ式で算出した個別賃金指数/産業計規模計=100

-3-

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タテ軸は1988年、ヨコ軸は2018年の産業計規模計を100とした賃金ポジション(性・学歴・年齢をコントロール)

鉱業採石総合工事

職別工事

設備工事

食料品製造

飲料たばこ

繊維工業

パルプ紙

化学

プラスチック

ゴム

窯業

鉄鋼

非鉄金属製品

電機3産業

輸送用機器

水道

情報サービス

鉄道

道路貨物

卸売計

各種商品小売

衣服小売

飲食料品小売

機械器具小売

銀行

協同組織金融

保険

不動産

広告

宿泊

飲食店

娯楽

医療

介護

80

90

100

110

120

130

140

80 85 90 95 100 105 110 115 120

賃金ポジション1988年

賃金ポジション2018年

4 産業別賃金ポジションの推移 4-1図はタテ軸に30年前の1988年の個別賃金指数、ヨコ軸に2018年の指数をとった散布図である。右

方ほど2018年の水準が⾼く、上方ほど30年前の水準が⾼いことを示している。右上方に保険業が位置しているが、座標は(117.6、137.4)であるから、30年間にほぼ20ポイント低下したことになる。保険業賃金の絶対水準が20ポイント下がったというのではなく、相対的なポジションが20ポイント下がったということである。散布図にナナメ線を引いているが、医療のように線上に位置する場合は両年のポジションは同じ、上方にあれば30年前のポジションの方が⾼く、下方にあれば現在のポジションの方が⾼い産業ということになる。まずナナメ線より下方、2018年ポジションの方が⾼い産業からみていくと、製造業業種とくに輸送用機器など外需依存度が⾼い業種が多く含まれていることに気がつく。同じ製造業でも内需依存型の食料品や紙・パルプなど5業種は上方に位置し、30年前のポジションの方が⾼くなっている。他に上方に位置するのは小売、金融、宿泊、飲食店、道路運送など非製造業(内需産業)が中心である。

4-2図は4産業のポジション推移を示し、製造業は緩やかな上昇傾向、総合工事業(ゼネコン)は2012年以降上昇、銀行と小売は一貫して低下傾向にある。

※ 『レポート』2章では26の産業・業種(規模計と1000人以上規模)についてポジション推移を追っている。

4-1図 1988年と2018年の産業別賃金ポジション

4-2図 4産業のポジション推移

90

95

100

105

110

115

120

125

130

135

1985 88 91 94 97 00 03 06 09 12 15 2018

製造業計

総合工事業

小売業計

銀行業

-4-

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5 企業規模別ポジションと規模間格差の推移 5図は、企業規模別のポジションと規模間の格差推移を追ったグラフである。上段図は産業計につ

いてであるが、3本の折れ線は各年産業計規模計を100として計算した大企業(1000人以上規模)、中企業(100〜999人規模)、小企業(10〜99人規模)の比較指数であり、2018年はそれぞれ109.6、96.2、90.9である。タテ棒を2本描いているが、グレーが大企業と中企業の差(2018年は13.4)、白が大企業と小企業の差(2018年は18.7)である。産業計各規模の全体的な傾向は「横ばい」といえそうである。バブル経済やリーマンショック後に大企業が若干ポジションを下げ、その分規模間の差が縮小しているが、規模間格差も全体的には横ばい状態である。

下段左図「製造業」に目を移すと、ここでははっきりとした規模間格差拡大傾向を読み取ることができる。格差拡大の時期は1995年から2004年にかけてであり、大企業と小企業の差は17.9から24.7へ6.8ポイント拡大している。大企業と中企業の差も4.9ポイントの拡大である。格差が拡大したのは、中小規模が下がったのではなく、大企業がポジションを上げたことが原因である。2005年以降の格差はほぼ横ばい状態である。下段右図小売業では2000年まで大企業は右下がり、中小は横ばいで規模間格差は縮小傾向をたどる。2000年以降は中小も右下がりとなるが大企業もそれ以上にペースで下げ続けたため、規模間格差は縮小を続け、2017年と2018年には大企業が中規模を下回る「逆格差」が出現している。

※ 『レポート』4章では 10 の産業・業種について規模間賃金差の推移を追っている。

5図 企業規模別ポジションと規模間格差の推移

<製造業> <小売業>

16 16

0

10

20

30

40

50

60

60

65

70

75

80

85

90

95

100

105

110

115

120

1985 88 91 94 97 00 03 06 09 12 15 2018

ポジション指数 規模間格差

大中差大小差大企業中企業小企業

(10)

0

10

20

30

40

50

60

60

65

70

75

80

85

90

95

100

105

110

115

120

1985 88 91 94 97 00 03 06 09 12 15 2018

ポジション指数 規模間格差

大中差大小差大企業中企業小企業

所定内賃金についてパーシェ式で算出/各年の産業計規模計=100

<産業計>

0

10

20

30

40

50

60

60

65

70

75

80

85

90

95

100

105

110

115

120

1985 88 91 94 97 00 03 06 09 12 15 2018

ポジション指数 規模間格差

大中差 大小差

大企業 中企業

小企業

-5-

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ヨコ軸は個別賃金上昇率、タテ軸は平均賃金上昇率/単位:%

産業計 総合工事

職別工事

設備工事

食料品製造

飲料たばこ

繊維工業

パルプ紙

化学プラスチック ゴム

窯業

鉄鋼

非鉄

金属製品

電機3産業

輸送用機器

電気

情報サービス

鉄道

道路貨物

卸売計

小売計

各種商品小売

衣服小売飲食料品小売

機械器具小売

銀行

協同組織金融

保険

不動産

広告

宿泊飲食店

娯楽

医療

介護

-10

-5

0

5

10

15

20

25

-14 -12 -10 -8 -6 -4 -2 0 2

平均賃金上昇率(%)

個別賃金上昇率(%)

6 平均賃金と個別賃金の水準推移 3項から5項までは産業別規模別賃金の相対的ポジション推移を見てきたが、この項と次項では絶対

水準の推移を見ていく。産業計規模計についての6-1図で、細線は平均賃金指数、太線はパーシェ式で計算した個別賃金指数であり、いずれも1997年水準を100とした比較指数である。折れ線の右上がりは絶対水準の上昇、右下がりは低下を示す。1997年までは2本の折れ線はともに急激な右上がりであるが、それ以降、2本の乖離が顕著となる。2013年までの16年間、平均賃金はほぼ横ばいなのに対し個別賃金は低下の一途をたどる。2014年以降はいずれもゆるやかな上昇である。2018年の指数は平均賃金102.8、個別賃金94.2であるから、1997年から2018年までの通算で、平均賃金は2.8%増、個別賃金は5.8%減である。二つの指数差(ギャップ)8.6ポイントの最大要因は⾼年齢化である。6-1図タテ棒が平均年齢で、1997年から2018年まで38.3歳から40.5歳へ2.2歳の上昇である。⾼年齢化で⾼賃金層が増大し平均賃金が押し上げられたのである。ギャップ8.6ポイントは「⾼年齢化によるコスト増分」ということができる。

6-2図は各産業の21年間の平均賃金上昇率と個別賃金上昇率を対比した散布図である。上方ほど平均賃金の伸びが大きく、右方ほど個別賃金の上昇が大きい(下降幅が小さい)。ヨコ軸がゼロ以上、つまり個別賃金が上昇した産業は鉄鋼、鉄道、保険の3産業だけである。個別賃金上昇が平均賃金上昇を上回る(ナナメ線より下)のは鉄道と鉄鋼の2産業のみで、大半の産業はナナメ線より上、つまり平均賃金上昇が個別賃金上昇を上回っている状況である。

※ 平均賃金推移と個別賃金推移は『レポート』4-1 表、4-3 表。平均年齢推移は 1-7 表。

6-1図 平均賃金、個別賃金、平均年齢の推移

<産業計規模計>

34

35

36

37

38

39

40

41

42

43

44

65

70

75

80

85

90

95

100

105

110

1985 88 91 94 97 00 03 06 09 12 15 2018

平均年齢指数

平均年齢(右目盛)

平均賃金指数

個別賃金指数

6-2図 1997年から2018年までの平均賃金上昇率と個別賃金上昇率

-6-

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7 平均賃金と個別賃金の水準推移 4産業の事例 前ページの散布図で特徴的だった4産業について、平均賃金、個別賃金、平均年齢の推移を示したの

が7図である。上段の電機3産業(電子部品、電気機器、情報通信機器を合算)は2本の折れ線の大きな乖離が特徴的である。2018年の指数は平均賃金112.1、個別賃金93.2で、ギャップは18.9ポイント。一人あたり賃金原資を12.1%増大させたのに個別賃金は6.8%低下したということであり、その最大原因は平均年齢4.8歳の上昇である。小売業計の2018年個別賃金指数は90.1、平均賃金は100.0で下がっていないのに、平均年齢4.6歳の上昇のため、個別賃金は10%下がってしまったということである。

下段図は上段図とまったく異なった様相となっている。まず平均年齢が右下がりで若年化の傾向にあること。そして1997年以降の折れ線は太線(個別賃金)が細線(平均賃金)より上方にあること。2018年の鉄鋼業の指数は平均賃金94.8、個別賃金100.3でギャップはマイナス5.5。賃金原資を5.2%減少させながら個別賃金は0.3%上昇させたことになる。鉄道業では個別賃金水準は現状維持だったのに、賃金原資は3.6%縮減されている。こうしたことが可能だったのは、ともに3.7歳平均年齢が低下したことによる。この鉄鋼業と鉄道業は石炭業とともに戦後復興の主役だったため他産業よりほぼ10

年早い1960年頃の採用者が団塊を形成しており、その世代のリタイアとともに若返りが始まったのである。このような傾向は現段階では他に見当たらないが、多くの産業で若返りが始まって、個別賃金水準の行方に大きな影響を及ぼすことも、今後の若年者の採用者数次第ではあるが、想定される。

7図 4産業の平均年齢、平均賃金、個別賃金の推移

※ 『レポート』4章では 18 の産業・業種について本項のグラフを作成している。

<電機3産業> <小売業計>

<鉄鋼業> <鉄道業>

32

33

34

35

36

37

38

39

40

41

42

43

44

65

70

75

80

85

90

95

100

105

110

115

1985 88 91 94 97 00 03 06 09 12 15 2018

年齢指数

平均年齢(右目盛)平均賃金指数個別賃金指数

32

33

34

35

36

37

38

39

40

41

42

43

44

65

70

75

80

85

90

95

100

105

110

115

1985 88 91 94 97 00 03 06 09 12 15 2018

年齢指数

平均年齢(右目盛)平均賃金指数個別賃金指数

32

33

34

35

36

37

38

39

40

41

42

43

44

65

70

75

80

85

90

95

100

105

110

115

1985 88 91 94 97 00 03 06 09 12 15 2018

年齢指数

平均年齢(右目盛)平均賃金指数個別賃金指数

32

33

34

35

36

37

38

39

40

41

42

43

44

65

70

75

80

85

90

95

100

105

110

115

1985 88 91 94 97 00 03 06 09 12 15 2018

年齢指数

平均年齢(右目盛)平均賃金指数個別賃金指数

-7-

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7.355.38

5.265.215.215.18

4.964.944.884.83

3.063.02

2.662.582.54

2.412.352.322.25

2.12

0 2 4 6 8

総合商社証券放送ガス鉄道化学銀行

輸送用機器はん用機器

情報通信機器

職別工事印刷

衣服小売廃棄物処理道路旅客

娯楽宿泊

飲食料品小売道路貨物飲食店

<産業別> <規模別>

2.0

2.5

3.0

3.5

4.0

4.5

1985 88 91 94 97 00 03 06 09 12 15 2018

月数

産業計

製造業

小売業

1.0

1.5

2.0

2.5

3.0

3.5

4.0

4.5

5.0

5.5

1985 88 91 94 97 00 03 06 09 12 15 2018

月数

1000人以上規模

100~999人規模

10~99人規模

パーシェ式で算出/産業計規模計/1997年水準=100

60

65

70

75

80

85

90

95

100

105

110

1985 88 91 94 97 00 03 06 09 12 15 2018

所定内賃金

一時金・賞与

年間賃金

8 一時金・賞与の現状と推移 8-1図は所定内賃金、一時金・賞与、年間賃金(所定内×12+年間一時金・賞与)の推移を、1997年

を100としたパーシェ式で計算した結果である。一時金・賞与水準のピークはバブル景気の余韻がまだ残る1992年(賃金センサスでは「調査前年に支払われた一時金・賞与」を調査しているので、支払い年は1991年)であった。以後20年間にわたり低下傾向が続く。1997年から2012年まで15年間の低下幅は、所定内賃金が7.1%、一時金・賞与31.7%、年間賃金は13.1%である。8-2図は2018年一時金・賞与支払い月数の上位10産業と下位10産業を示したもので、トップは総合商社、最下位は飲食店である。

8-3左図で産業別支払い月数推移をみると、2000年までほぼ同一だった製造業と小売業が大きく乖離していく。2000年から2005年までの小売業の落ち込みはきわめて急速である。8-3右図企業規模別にみると3本の折れ線は右下がりの平行線を描いている。1000人以上は5ヵ月から4ヵ月、100〜999人規模は4ヵ月から3ヵ月、10〜99人規模は3ヵ月から2ヵ月と、いずれも1ヵ月の低下である。

8-1図 一時金・賞与と年間賃金の水準推移 8-2図 産業別の一時金・賞与支払い月数

8-3図 平均一時金・賞与支払月数の推移

※ 支払い月数は、『勤続1年以上の平均一時金・賞与÷平均所定内』の算式で計算している。

-8-

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<性学歴別> 産業計規模計 <企業規模別> 大卒/産業計

<産業別> 男性大卒/1000人以上規模 <製造業 性・職種別> 高卒/1000人以上規模

1000

2000

3000

4000

5000

6000

7000

18 21 24 27 30 33 36 39 42 45 48 51 54 57

百円男性高卒

女性高卒

男性大卒

女性大卒

1000

2000

3000

4000

5000

6000

7000

18 21 24 27 30 33 36 39 42 45 48 51 54 57

百円

規模計1000人以上規模100~999人規模10~99人規模

1000

2000

3000

4000

5000

6000

7000

18 21 24 27 30 33 36 39 42 45 48 51 54 57

百円

男事務技術

男生産

女事務技術

女生産

1000

2000

3000

4000

5000

6000

7000

8000

18 21 24 27 30 33 36 39 42 45 48 51 54 57

百円

製造業計

銀行業

小売業計

電気業

9 標準労働者の賃金カーブ 回帰分析という手法を使うと、「賃金センサス」の5歳5年キザミデータから1歳1年キザミの賃

金を推計することができる。9図はその推計値を使って標準労働者の賃金カーブを比較したものである。性学歴別では、女性大卒者は40歳まで男性⾼卒者とほぼ同水準、それ以降の年齢で直線的な昇給を続け、男性大卒者に迫っていく。男性大卒者の企業規模別では50歳台でフラットになる点は共通しており、規模間の水準差は30歳台後半以降顕著になっていく。

男性大卒者の産業別では、電気業と銀行業は40歳までほぼ同水準であるが、以降の年齢で電気業が直線的昇給を続けるのに対し、銀行業では50歳台で急落する傾向となっている。製造業⾼卒者の性・職種別では、男性の事務技術と生産は32歳頃までほぼ同水準で、以降は年齢とともに差が拡大する傾向となっている。女性ではほぼ2万円の差が40歳台半ばまで続いている。

9図 2018年の標準者賃金カーブ

※ 回帰分析の手法は『レポート』<参考5>で解説。5章と6章で年齢別推計値を掲載している。

-9-

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10 産業別生涯賃金ランキング 7節と8節で紹介した回帰分析の手法で推計した標準者賃金を60歳まで足し上げると、生涯賃金推計

値となる。10図は男女の大卒者についての計算結果であり、所定内賃金と一時金・賞与の合計額である。男性の最上段産業計で三つの数字(単位百万円)が記されているが、279は所定内と一時金・賞与の合計額、201は生涯所定内、78は生涯一時金・賞与である。医療が低位に位置しているが、基礎データの制約で22歳入職者について集計しており、修学期間6年の医師、薬剤師が含まれていないことによるものである。男性トップは総合商社で4億7700万、女性トップは放送の3億7800万円である。

10図 大卒者の生涯賃金ランキング

※ 『レポート』5章では高卒者の生涯賃金も掲載している。

単位:百万円

<男性> <女性>

201 269 296

343 275 271

244 240

205 250

232 233 224 223 215 219 214 208 211 216 229

204 195 200 203 198 197 205 198 198 199 198 190 192 186 189 186 185 186 188 188 182 177 176 182 173 172 168 165 166 170 164 160 158 161

144 124

78 207 144

96 128 123

104 98

126 78

93 87 92 92 97 89 94 99 92 85 68

86 93 87 82 87 86 77 84 81 80 80

82 72 76 70 68 68 63 56 54 58 61 58 52 58 51 55 55 54 43

40 40 41 36

43 32

0 100 200 300 400 500

産業計 279総合商社 477

証券 439航空 439放送 403保険 393

鉱業採石 348広告 338

石油製品 331電気 329

不動産取引 325鉄道 320

不動産管理 316総合工事 315

化学 312銀行 308鉄鋼 308

輸送用機器 307ガス 303通信 301

情報制作 297電気機器 291設備工事 288

窯業 286卸売計 285ゴム 285

はん用機器 284学校教育 282電子部品 281

情報通信機器 280非鉄 279

業務用機器 278飲料たばこ 272

情報サービス 264生産用機器 262パルプ紙 259繊維工業 253

協同組織金融 252職別工事 249

娯楽 244医療 242

食料品製造 240水道 238

プラスチック 234各種商品小売 233

金属製品 231道路貨物 224

廃棄物処理 223機械器具小売 220

介護 219衣服小売 213

印刷 204飲食料品小売 200

宿泊 200飲食店 197

道路旅客 187宿泊 155

所定内

一時金・賞与

169 262

178 213

193 210

197 187 197 207 202 213

181 184 184 176 176 177 171 176 175 167 187

169 171 169 163 165 167 162 163 153 160 155 155 149 153 158 164 159 150 144 153

140 144 148 143 163

147 139 145 148

132 143 133 137 135

62 116

127 85

92 73

84 92 81 61 66 53

84 71 69 74 72 67 73 68 68 75 54

69 65 67 69 67 59 64 61

64 56 60 57 58 53 48 39 42 51 55 46

52 47 42 46 25

40 46 38 34

48 34 44 40 40

0 100 200 300 400

産業計 231放送 378

総合商社 305航空 298通信 285鉄道 283証券 281

輸送用機器 279化学 278

情報制作 268電気 267

飲食店 266保険 264

情報通信機器 255学校教育 254電気機器 250

電機3産業 248広告 245ガス 244

生産用機器 244電子部品 243

飲料たばこ 243パルプ紙 241

業務用機器 238情報サービス 236

製造業計 235総合工事 233

卸売計 232水道 226銀行 225

不動産取引 224ゴム 217非鉄 217窯業 214

協同組織金融 211はん用機器 207

不動産 207医療 207

プラスチック 202娯楽 201

不動産管理 201鉄鋼 199介護 199

設備工事 192職別工事 191

飲食料品小売 190金属製品 189道路旅客 188

各種商品小売 187食料品製造 185

印刷 183衣服小売 182

廃棄物処理 180宿泊 177

繊維工業 177道路貨物 176

機械器具小売 175

-10-

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産業計

<男性・企業規模計> <女性・企業規模計>

<男性・1000人以上規模> <女性・1000人以上規模>

1000

2000

3000

4000

5000

6000

7000

18 21 24 27 30 33 36 39 42 45 48 51 54 57

百円

高卒全従業員・含通勤手当高卒組合員・除通勤手当大卒全従業員・含通勤手当大卒組合員・除通勤手当

1000

2000

3000

4000

5000

6000

7000

18 21 24 27 30 33 36 39 42 45 48 51 54 57

百円

高卒全従業員・含通勤手当高卒組合員・除通勤手当大卒全従業員・含通勤手当大卒組合員・除通勤手当

1000

2000

3000

4000

5000

6000

7000

18 21 24 27 30 33 36 39 42 45 48 51 54 57

百円

高卒全従業員・含通勤手当高卒組合員・除通勤手当大卒全従業員・含通勤手当大卒組合員・除通勤手当

1000

2000

3000

4000

5000

6000

7000

18 21 24 27 30 33 36 39 42 45 48 51 54 57

百円

高卒全従業員・含通勤手当高卒組合員・除通勤手当大卒全従業員・含通勤手当大卒組合員・除通勤手当

11 組合員賃金水準の推計 労働組合が「賃金センサス」のデータを活用しようとしたとき2つの使いにくさに直面する。一つ

はほとんどの集計表が1歳キザミではなく5歳キザミ階層別で行われていること。二つは集計されている賃金が部課⻑を含めた賃金で、通勤手当まで含まれており、水準が⾼すぎること。この2つの問題を解決するため作成したのが『レポート』資料編に掲載する年齢勤続年数別の「組合員賃金推計値表」である(作成方法は『レポート』<参考6>)。11図ではそれを全従業員の推計結果と対比しているが、役職者比率の相違を反映して、若年層より⾼年層、女性より男性、⾼卒者よりも大卒者で乖離が大きくなっている。

11図 全従業員と組合員の賃金推計値対比図

※ 『レポート』5章では組合員限定の年齢ポイント別賃金を掲載している。

産業計

-11-

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293

295

297

299

301

303

305

33歳 34歳 35歳

現行昇給線賃上げ後昇給線

千円Bさん現行水準

Aさん賃上げ後Aさん現行水準

Cさん現行水準

Cさん賃上げ後

12 賃上げと個別賃金水準 6項で⽇本の個別賃金水準は1997年をピークとして2013年まで低下局面にあったことを指摘した。

その間の賃上げ額(厚生労働省「賃金引上げ等の実態に関する調査」。この調査では賃金カットや賃上げ見送りも含め集計されている)は最低でも3064円で、マイナスの数字になったことはない。なぜ賃上げが実施されてきたのに個別賃金水準は下がってきたのか。12図で説明しよう。Aさんは34歳勤続16年で、賃金は30万円。Bさんは1年先輩で35歳、賃金は30万5000円。CさんはAさんの1年後輩で33

歳、賃金は29万5000円である。3人の年齢と賃金を図にプロットして結んでみると、「現行昇給線」と記した直線となり、この企業の「1年・1歳間差額」は5000円ということになる。3月の賃上げ交渉が「定昇込み3000円引き上げ」で妥結したとしよう。それによって35歳になったAさんは30万3000円となり、34歳になったCさんは29万8000円となる。

AさんとCさんの「個人別賃金(個別賃金ではない!)」は確かに3000円上昇しているが、この企業の賃金水準が3000円上昇したのかといえばそうではない。賃上げ前35歳(Bさん)の水準は30万5000

円だったのであり、新35歳(Aさん)の水準は30万3000円であるから、この企業の賃金水準は2000円下がったことになる。

つまり、この企業の賃金水準が上昇したかどうかの判断は、たとえば「35歳賃金」のように条件を特定した個別賃金が前年と比べて上昇したのかどうかによって判断されなければならない。どのような場合にこの企業の賃金水準が上がるかといえば、定昇込み賃上げ額が「1年・1歳間差額」の5000円を上回った場合である。たとえば6000円の賃上げならば、Aさんの新賃金は30万6000円となり、Bさんの現行水準を1000円上回り、この企業の35歳個別賃金は前年比で1000円上昇したことになる。

⽇本全体の個別賃金水準が1997年から2013年までの16年間低下傾向にあったのは、賃下げが行われたからではなく、定昇込み賃上げ額が平均的な「1年・1歳間差額」を下回ったことが原因なのである。

12図 賃上げと個別賃金 図解

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13 「1年・1歳間差」の計測 前項では、定昇込み賃上げ額が平均的な「1年・1歳間差額」を上回ったとき、個別賃金水準が上昇

するということを、ひとつの企業を例にとって説明した。⽇本の被雇用者全体の個別賃金上昇についても同じで、「平均的な1年・1歳間差額」を「平均的な定昇込み賃上げ額」が上回ったときに、⽇本全体の個別賃金上昇が実現するのである。

では「平均的な1年・1歳間差額」は何円なのか。それについて全産業を網羅した調査はないが、9項と11項で紹介した回帰分析結果を応用すれば推計することはできる。具体的には『レポート』資料編で例示した性学歴別の「年齢勤続年数別賃金推計値表」をまず作成し、1年・1歳間差額を年齢勤続年数毎に求め、人員ウエイトを加味して加重平均値を求める方法である。この方法で2018年の「1年・1歳間差額」を計算した結果が13-1図であり、産業計規模計では4337円となる。つまり平均の定昇込み賃上げ額が4337円を超えれば、⽇本全体の個別賃金水準が上昇するのである。1000人以上規模は5957円、10〜99人規模は3049円である。産業別(すべて規模計、金額の⾼い順に並び替え)では最も⾼額なのは放送で11491円、低額は道路旅客で1341円となっている。

規模別にみると、個別賃金水準の維持に必要な定昇込み賃上げ額は、10-99人規模では3049円であるのに、1000

人以上規模では5957円が必要ということにも注目しておきたい。

13-2図は産業計の「1年・1歳間差額」推移である。2000

年以降、各規模とも低下傾向をたどっている。賃金カーブが「寝てきた」ということである。

※ 産業別の「1年・1歳間差額」は『レポート』12-3表、「1年・1歳間差額」推移は12-2表参照。

組合員基本賃金/産業計

3000

3500

4000

4500

5000

5500

6000

6500

7000

7500

8000

1985 88 91 94 97 00 03 06 09 12 15 2018

円 企業規模計

1000人以上規模

100~999人規模

10~99人規模

組合員基本賃金/単位:円

4,337 5,957

3,781 3,049

11,491 11,097

8,521 7,553 7,502 7,455 7,398 7,234 7,136 7,073

6,357 6,338 6,090 6,020 5,999

5,587 5,365 5,239 5,049 5,000 4,941 4,805 4,716 4,707 4,707 4,678 4,610 4,540 4,529 4,456 4,435 4,344 4,333 4,299 4,252 4,246 4,205 4,165 3,988 3,804 3,716 3,700 3,606 3,496 3,461 3,378 3,354 3,238 3,073 3,046 2,978 2,884 2,655 2,610

1,964 1,779

1,341

※産業計規模計

1000人以上100-999人

10-99人※産業別

放送航空

総合商社証券

学校教育情報制作

電気ガス

石油製品保険広告通信鉄道化学

不動産銀行

不動産管理情報サービス

業務用機器卸売計

輸送用機器水道

はん用機器鉱業採石

鉄鋼職別工事総合工事電気機器

情報通信機器設備工事

非鉄ゴム

衣服小売生産用機器

娯楽飲料たばこ電機3産業

協同組織金融金属製品電子部品パルプ紙

機械器具小売プラスチック

医療介護窯業

小売計宿泊

食料品製造各種商品小売

印刷廃棄物処理

飲食料品小売飲食店

繊維工業道路貨物道路旅客

13-1図 産業別の1年・1歳間差額

13-2図 「1年・1歳間差額」の規模別推移

-13-

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14 「1年・1歳間差額」と賃上げ額、個別賃金水準の推移 前項では「定昇込み賃上げ額」が「1年・1歳間差額」を上回れば個別賃金水準が上昇し、下回れば

下降すると述べてきた。そのことを20年間のデータで確かめてみよう。

14図上段は産業計規模計について1999年以降の経過を示したグラフである。白のタテ棒は前年の「1

年・1歳間差額」、グレーのタテ棒は定昇込み賃上げ額推移(厚生労働省「賃金引き上げに関する実態調査」)である。2本のタテ棒の背比べをしてみると、2013年まで賃上げ額の方が下回っている。1999

年の例では、賃上げ額4591円が、前年賃上げ後の1年・1歳間差額5701円より1110円低くなっている。この現象が2013年まで続き、その結果、折れ線で示す個別賃金水準(1997年=100)は右下がりが続く。

2014年以降背比べで逆転がおこり、賃上げ額の方が⾼くなる。2018年は賃上げ額5675円が1年・1歳間差額4474円を1200円上回る。その結果、個別賃金折れ線は2014年以降右上がりに転じる。下段図は1000人以上規模についての推移図であるが、上段図と同様、2014年以降、賃上げ額が1年・1歳間差額を上回るようになり、個別賃金水準が上昇に転じていることがわかる。

14図 賃上げ額、1年・1歳間差額、個別賃金指数の推移

※ 「1年・1歳間差額」推移は『レポート』12-2 表、個別賃金水準推移は 4-2 表参照。

<産業計・企業規模計>

<産業計・1000人以上規模>

90

91

92

93

94

95

96

97

98

99

100

0

1000

2000

3000

4000

5000

6000

7000

8000

9000

1999 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 2019

指数円

前年の1年・1歳間差額(左軸)

賃上げ額(左軸)

水準指数(右軸)

90

92

94

96

98

100

102

0

1000

2000

3000

4000

5000

6000

7000

8000

9000

1999 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 2019

指数円

前年の1年・1歳間差額(左軸)

賃上げ額(左軸)

水準指数(右軸)

-14-

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15 男性の賃金分散 35歳の平均賃金が同じ35万円だったとしても、「上は40万で下は30万」のケースと「上は50万で下

は20万」のケースでは相当に意味合いが異なる。これは「賃金分散」といわれる問題であり、15-1図は男性35−39歳層の賃金分散を産業別に示した箱ひげ図である。線分の上端は第9十分位(100人いたとして上から10番目)、下端は第1十分位(下から10番目)、箱上端は第3四分位(上から25番目)下端は第1四分位(下から25番目)、●は中央値(真ん中)、○は平均値で、中央値順に並び替えている。

分散が大きい産業として証券業、航空運輸、医療業をあげることができるが、証券業は成果給によるもの、航空運輸と医療はパイロットと医師の存在によるものと考えられる。平均値と中央値に着目すると、中央値に比べ平均値の方が産業間のばらつきが大きいことがわかる。これは平均値が産業内の⾼水準者に引っ張り上げられることによるものであり、その影響をそれほど受けない中央値の方が「相場」の判断にふさわしい指標である。57

産業のうち42産業の中央値が26〜36万円の幅に収まっており、それが30歳代後半の賃金相場ということができる。「分散係数」が0.3以下で分散が小さい産業は、電気、鉄道、水道、鉄鋼、非鉄、介護、パルプ紙の7産業である。

15-2図は産業計35歳賃金の分散推移である3本の折れ線は、第9十分位、中央値、第1十分位の1997年を100とした時系列指数、タテ棒は各年の分散係数である。

15-1図 男性35-39歳所定内賃金の産業別分散状況

※ 分散係数の計算式は(第9十分位-第1十分位)/中央値/2。産業別の 35-39 歳分散状況は『レポート』7-5-1 表、

分散推移は 7-3 表。

15-2図 35歳特性値と分散係数の推移

0.2

0.3

0.4

0.5

0.6

60

65

70

75

80

85

90

95

100

105

110

115

120

1985 88 91 94 97 00 03 06 09 12 15 2018

指数 分散係数

分散係数

D9(第9十分位)

ME(中央値)

D1(第1十分位)

1000

2000

3000

4000

5000

6000

7000

8000

9000

1000

2000

3000

4000

5000

6000

7000

8000

9000

産業計

証券保険銀行総合商社

航空通信放送学校教育

電気広告ガス協同組織金融

鉄道不動産取引

情報制作

石油製品

情報サービス

卸売計

不動産管理

情報通信機器

水道化学総合工事

職別工事

衣服小売

電子部品

医療設備工事

はん用機器

輸送用機器

各種商品小売

電気機器

娯楽鉄鋼機械器具小売

業務用機器

ゴム郵便局

非鉄飲料たばこ

生産用機器

飲食店

繊維工業

飲食料品小売

プラスチック

窯業金属製品

介護パルプ紙

印刷道路貨物

宿泊食料品製造

廃棄物処理業

道路旅客

百円

-15-

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16 女性の賃金分散 女性35-39歳賃金の産業別分散状況をみたのが16-1図である。分散が大きい産業は証券業、総合商社、

保険の3産業で、いずれも分散係数は0.7以上である。反対に分散が小さい産業としては協同組織金融(信用金庫、信用組合など)、設備工事、機械器具販売、鉄鋼、金属製品、印刷、紙パルプの7産業が0.3以下の分散係数である。54産業のうち42産業の中央値が20万円台であり、それが30歳代後半女性の賃金相場ということができる。

16-2図は女性35歳賃金の分散特性値推移である。15-2図の男性版と比べて、注目すべき相違点がある。まず2000年から2013年までの期間、男性では三本の折れ線が乖離し、低賃金層では水準低下、⾼賃金層では横ばいないし若干の低下という傾向をたどったのに対し、女性では⾼賃金層、低賃金層ともに横ばい状態だったことである。その結果、分散係数は男性では増大、女性では横ばいという経過をたどる。次に2014年以降の時期、男性の3本の折れ線は平行状態を保ったまま右上がりに転じるが、女性では2014年以降低賃金層で⾼く、⾼賃金層で低い上昇率を示す。そのため賃金格差は大幅に縮小し分散係数も急低下する。30年前の分散係数が男性0.36で女性が0.48であるように、もともと女性の方が大きい分散であった。⾼卒初任給に近い低賃金層の大量存在することが大きな分散係数の原因であった。2014

年以降、低賃金層の水準上昇が顕著となり分散係数が急低下する。2018年の分散係数は0.38

で、男性と同じである。

16-1図 女性35-39歳所定内賃金の産業別分散状況

※ 産業別の女性35-39歳分散状況は『レポート』7-5-2表、分散推移は7-4表。

16-2図 女性35歳特性値と分散係数の推移

0.2

0.3

0.4

0.5

0.6

60

65

70

75

80

85

90

95

100

105

110

115

120

1985 88 91 94 97 00 03 06 09 12 15 2018

指数 分散係数

分散係数

D9(第9十分位)

ME(中央値)

D1(第1十分位)

1000

2000

3000

4000

5000

6000

7000

8000

9000

1000

2000

3000

4000

5000

6000

7000

8000

9000

産業計

証券航空鉄道

情報制作

電気放送水道

学校教育

銀行

情報サービス

ガス医療協同組織金融

広告

通信化学総合商社

不動産取引

卸売計

不動産管理

総合工事

輸送用機器

設備工事

機械器具小売

はん用機器

保険郵便局

介護

鉄鋼娯楽宿泊

飲料たばこ

電子部品

情報通信機器

生産用機器

電気機器

金属製品

窯業

非鉄職別工事

衣服小売

印刷

飲食店

廃棄物処理業

道路旅客

各種商品小売

業務用機器

プラスチック

パルプ紙

道路貨物

ゴム食料品製造

飲食料品小売

繊維工業

百円

-16-

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17 男女間の賃金差 女性の平均所定内賃金は24万9900円で、男性平均34万3500円を100とすれば72.8、男女差は27.2ポイ

ントとなる。しかし学歴、年齢、勤続年数をコントロールしたパーシェ式による個別賃金比較指数は82.2で男女差は17.8ポイント、平均賃金比較より10ポイント小さな差となる。

17-1図は様々に計算されるパーシェ比較指数である。賃金の種類別では「一時金・賞与」は所定内より若干大きな差となっている。学歴別では⾼学歴層で小さな差で、企業別には大きな差はないが、100-999人規模で差はもっとも小さい。正社員に限定して比較してみると比較指数は85.4で、全フルタイム労働者の比較より3.2ポイント狭まる。なによりも注目すべきは同役職間で男女比較を行うと、男女間の差がさらに小さくなることである。非役職者は88.1、課⻑級90.6、部⻑級92.8などほぼ10ポイントの差である。つまり17.8ポイントの男女差の相当部分が役職者比率差の反映と考えることができる。

産業別にみると、製造業、小売業計、銀行業、飲食店はいずれも77前後の比較指数である。鉄道業と宿泊業で格差が小さいのは、男女差が小さい20歳台女性の構成比が⾼いことによる。

17-2図は女性比較指数の推移を学歴別に追ったものである。学歴計では1985年の73.6から2018年の82.2まで8.6ポイントの格差縮小であるが、うち2005年までの20年間については、大卒者と⾼卒者の比較指数は若干の右下がり傾向であることに注目しておきたい。学歴計だけが右上がりだったのは、格差の小さい⾼学歴者の構成比が増大したことによるものなのである。17-3図で示すように女性労働者に占める短大・大学卒業者の比率は1985年の18.7%から2018年の60.3%まで3倍以上に増大している。

17-1図 男女間比較指数の諸相 17-2図 学歴別男女間比較指数の推移

17-3図 女性労働者の短大大卒者比率の推移

※ 産業別規模別の男女格差とその推移は、『レポート』第8章。

女性賃金水準指数/男性水準=100

82.2 77.8

81.4

76.2 77.3

85.3 84.8

82.6 83.8

79.5

85.4 85.0

92.8 90.6 90.9

88.1

76.377.9

76.577.7

90.389.9

84.4

60 70 80 90 100

所定内一時金

年間賃金

<学歴別>中学卒高校卒

短大卒大学卒

<企業規模別>1000人以上規模

100~999人規模10~99人規模

<雇用形態別>

正社員非正規社員<役職別>

部長級課長級係長級

非役職<産業別>

製造業小売業

銀行業飲食店介護

鉄道宿泊業

65

70

75

80

85

90

85 88 91 94 97 00 03 06 09 12 15 18

学歴計大卒者短卒者高卒者

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

85 88 91 94 97 00 03 06 09 12 15 18

短大⾼専卒大学大学院卒

-17-

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男性大卒/100人以上規模/産業計 100人以上規模/産業計

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

85 88 91 94 97 00 03 06 09 12 15 18

課⻑級部⻑級

0

2

4

6

8

10

12

14

16

18

20

1985 88 91 94 97 00 03 06 09 12 15 2018

係長級

課長級

部長級

18 役職昇進の状況 役職者比率が最も⾼いのは50歳台前半で、男性では46.1%、部課⻑に限れば25.9%の構成比である

(18-1図)。50歳台前半女性では役職者比率14.2%、部課⻑比率は5.6%である。大卒者に限定して50歳台前半の部課⻑比率をみると、男性では37.6%、女性では13.4%である。男性大卒50歳台前半層の部課⻑比率を追ったのが18-2図で、年々低下する傾向にある。1985年には53.9%だったものが98年に5割を、2017年には4割を切っている。

18-3図は役職者に占める女性比率の推移である。1985年には係⻑級3.8%、課⻑級1.6%、部⻑級1.0%であったものが、2018年にはそれぞれ18.2%、11.1%、6.3%にまで増加している。

18-1図 年齢階層別の役職者比率

18-2図 50-54歳の部課長比推移 18-3図 役職者の女性比率推移

※ 役職者比率の企業規模別詳細は、『レポート』第11章。

100人以上規模/産業計学歴計

<男性> <女性>

0% 20% 40% 60% 80% 100%

20~24歳

25~29歳

30~34歳

35~39歳

40~44歳

45~49歳

50~54歳

55~59歳

部長課長係長他職階非役職

0% 20% 40% 60% 80% 100%

20~24歳

25~29歳

30~34歳

35~39歳

40~44歳

45~49歳

50~54歳

55~59歳

部長課長係長他職階非役職

-18-

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19 役職間賃金差の現状と推移 19-1図は役職別の賃金カーブである。45歳の役職者と非役職者の賃金差は、男性⾼卒では課⻑級10

万円、部⻑級16万円であり、大卒者では課⻑級12万円、部⻑級20万円である。19-2図は役職間賃金差の推移を追ったグラフで、各年の非役職者を100としたパーシェ式で算出している。傾向はきわめて明瞭で、80年代から90年代にかけては平行線であったものが、部⻑級は2000年頃から、課⻑級は2003

年頃から右上がりに転じる。新自由主義・グローバリズムの風潮のなかで90年代後半以降、上場企業の役員報酬が上昇を始め、社内バランスの都合でまず部⻑に、そして課⻑に波及していったものと考えられる。

昇進の如何によって生涯賃金にどれくらいの差があるのかを試算した結果が19-3図である。生涯非役職であった場合は2億7560万円、その水準を100とすると、課⻑まで昇進する場合は3億1560万円で指数114.5、部⻑まで昇進の場合は3億3420万円 で指数121.3である。 19-1図 役職別の賃金カーブ

19-2図 役職間賃金格差の推移 19-3図 昇進モデル別生涯賃金

男性大卒/100人以上規模/産業計/単位:1000万円

<所定内賃金>

単位:1000万円

所定内 一時金・超勤 計 指数

役職昇進なし 18.29 7.00 2.27 27.56 100.0

昇進モデル1 21.72 8.72 1.13 31.56 114.5

昇進モデル2 22.98 9.35 1.10 33.42 121.3

昇進モデル1:30歳係長、40歳課長昇進

昇進モデル2:30歳係長、40歳課長、50歳部長昇進

役職ごとのパーシェ指数/各年の産業計100人以上規模の非役職者=100

100

110

120

130

140

150

160

170

1985 88 91 94 97 00 03 06 09 12 15 2018

部長級+課長級部長級課長級係長級

0 10 20 30 40

役職昇進なし

100.0

昇進モデル1

114.5

昇進モデル2

121.3

所定内 一時金・賞与 超勤

所定内賃金/100人以上規模/産業計

<男性高卒> <男性大卒>

1000

2000

3000

4000

5000

6000

7000

8000

18 21 24 27 30 33 36 39 42 45 48 51 54 57

百円

部長級

課長級

係長級

非役職

1000

2000

3000

4000

5000

6000

7000

8000

18 21 24 27 30 33 36 39 42 45 48 51 54 57

百円

部長級

課長級

係長級

非役職

※ 役職別の賃金比較の詳細は『レポート』11-5表。

-19-

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対定年前比率は、「60-64歳賃金」÷「55-59歳賃金」

<データソース>産業別の60歳代比率は「連合・賃金レポート」18-1表、対定年前比率推移は18-4表。

産業計鉱業採石

総合工事

職別工事

設備工事

食料品製造

飲料たばこ

繊維工業

パルプ紙

印刷

化学

石油製品プラスチック

ゴム

窯業

鉄鋼

非鉄

金属製品

はん用機器生産用機器

業務用機器

電子部品 電気機器

情報通信機器

輸送用機器

電気ガス

水道

通信

放送

情報サービス

情報制作鉄道

道路旅客 道路貨物

卸売計

各種商品小売

衣服小売

飲食料品小売 機械器具小売

銀行

協同組織金融

保険不動産取引

不動産賃貸管理

広告

宿泊

飲食店

娯楽

介護

廃棄物処理

40

50

60

70

80

90

2000 2200 2400 2600 2800 3000 3200 3400 3600 3800 4000

対定年前比率 %

平均所定内賃金 単位:100円

20 60歳台人員と賃金 「65歳までの雇用義務化」を盛り込んだ⾼齢者雇用安定法が改正(2004年)される2年以前、2002年

頃から60-64歳労働者が増大し始めた。65-69歳層の増大は2012年以降である。20-1図は産業別の60歳台比率で、構成比10%以上22産業、5%未満9産業を表示している。産業計は10.3%で、最⾼は道路旅客運送業の50.3%、最低は情報サービス業(ソフトウェア業)の2.5%である。なお構成比の計算はフルタイム労働者について「60歳台人員÷60歳未満人員」の算式で計算しており、道路旅客の過半数が60歳台ということではない。

20-2図は60-64歳層の所定内賃金について、ヨコ軸に賃金額、タテ軸に55-59歳賃金に対する比率を産業別に示した散布図である。右方ほど賃金が⾼く、上方ほど55-59歳層賃金に対する比率が⾼いことになる。保険業と情報サービス業が36万円以上の⾼水準、道路旅客、飲食料品小売、食料品製造が24万円以下の低水準となっている。タテ軸に着目すると道路旅客、道路貨物、廃棄物処理、介護、飲食店、職別工事、衣服小売の7産業が80%以上の対定年前比率となっている。

20-2図 60-64歳層の賃金と対定年前比率

※ 65-69歳層賃金の状況、60歳台賃金と人員の推移は『レポート』15章

20-1図 60歳台の人員比率

60歳台が10%以上と5%未満を表示

0 10 20 30 40 50 60

産業計 10.3道路旅客 50.9

不動産管理 27.8鉱業採石 20.5総合工事 18.7学校教育 18.6職別工事 15.4

廃棄物処理 15.1保険 15.0宿泊 14.3

繊維工業 14.3窯業 13.9

石油製品 13.4設備工事 12.6道路貨物 12.6

通信 12.2ガス 11.5

食料品製造 11.3水道 10.7

金属製品 10.1

航空 4.9機械器具小売 4.6

鉄道 4.4広告 4.3放送 4.1

電子部品 4.1衣服小売 3.5

電気 3.4情報サービス 2.5

60-64歳

65-69歳

-20-

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産業計規模計

<時間あたり所定内賃金・男性> <時間あたり所定内賃金・女性>

500

1000

1500

2000

2500

3000

-19 20

-24

25

-29

30

-34

35

-39

40

-44

45

-49

50

-54

55

-59

年齢

正社員派遣契約社員短時間労働者

500

1000

1500

2000

2500

3000

-19 20

-24

25

-29

30

-34

35

-39

40

-44

45

-49

50

-54

55

-59

年齢

正社員派遣契約社員短時間労働者

21 雇用形態別の賃金カーブ

21-1図は労働力調査から2018年の年齢階層別の雇用形態別構成比をみたグラフである。正社員比率に着目すると、男性では25-34歳86%、35-54歳91%、55-64歳71%、女性では25-34歳62%、35-44歳48%、45-54歳42%、55-64歳32%となっている。

21-2図は男女別に正社員、派遣、契約社員(非正規フルタイム)、短時間労働者の時間あたり所定内賃金を対比したグラフである。派遣労働者は、賃金センサスの「職業紹介・労働者派遣業」の集計値を活用している。男女いずれも25歳以上の階層で「正社員−派遣−契約社員−短時間労働者」という序列が形成されている。派遣は40歳代前半までゆるやかに昇給しているが、契約社員と短時間労働者では特に女性で30歳以降の昇給はみられず、むしろ右下がり傾向である。35-39歳の正社員、派遣、契約、短時間労働者の比較指数は、男性100対65対58対51、女性100対70対63対59である。

21-1図 年齢階層別の雇用形態別比率

21-2図 雇用形態別の時間賃金カーブ

※ 契約社員についての詳細な分析は『レポート』16章

労働力調査

<男性> <女性>

30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%

15~24歳

15~24歳

除在学中

25~34歳

35~44歳

45~54歳

55~64歳

正社員

契約社員等

短時間労働者

派遣社員

アルバイト

30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%

15~24歳

15~24歳

除在学中

25~34歳

35~44歳

45~54歳

55~64歳

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22 地域別の賃金 22-1図は産業計男性学歴計所定内賃金についての都道府県ランキングである。全国計を100とした

パーシェ式で計算している。トップは東京で指数122.9、2位が大阪で107.3。東京と大阪の間には15.6

ポイントもの大きな差がある。3位は神奈川、4位は愛知で、この4都府県のみが100を上回る指数である。95から100までに位置するのは13府県でいずれも東名阪隣接地域と、広島、福岡の地方中核都市を擁する地域である。80以下は、⻘森、秋⽥、宮崎、沖縄、⼭形の5県となっている。

22-2図はトップ4都府県と3ブロックのポジション推移図である。上段規模計からみていくと「東京は上昇、大阪は下降、他は横ばい」という図となっている。1996年頃から東京のポジション上昇と大阪の低下が顕著な傾向となっていく。1995年には9.0ポイントだった両者の差は、2018年には16.2ポイントにまで拡大する。神奈川、愛知はわずかに上昇、他の3ブロックは横ばいである。

下段図は10-99人規模の推移図であるが、ここでは東京横ばい、大阪、神奈川、愛知、北関東は低下、中国と東北は横ばいとなっている。

22-1図 所定内賃金ランキング 22-2図 地域別賃金ポジションの推移

※ 地域別賃金とその推移については『レポート』18章。

男性パーシェ指数/全国計=100 <産業計規模計>

<産業計10~99人規模>

77.578.478.879.779.980.480.681.882.883.283.483.684.784.985.286.386.887.188.189.689.889.990.590.591.292.092.592.692.792.995.195.595.795.896.196.296.396.796.897.097.198.198.4

104.4106.9107.3 122.9

70 80 90 100 110 120 130

青森秋田宮崎沖縄山形岩手島根鳥取長崎熊本高知

鹿児島佐賀愛媛新潟徳島大分福島

北海道石川

和歌山福井長野山口富山香川宮城山梨群馬岡山福岡奈良静岡岐阜千葉栃木京都広島兵庫滋賀埼玉茨城三重愛知

神奈川大阪東京

80

85

90

95

100

105

110

115

120

125

130

1985 88 91 94 97 00 03 06 09 12 15 2018

東京 大阪神奈川 愛知北関東甲信 中国東北

70

75

80

85

90

95

100

105

110

115

120

125

1985 88 91 94 97 00 03 06 09 12 15 2018

東京 大阪神奈川 愛知北関東甲信 中国東北

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卸売業小売業女性35-39歳一般=100%

10191179

111911091063105310481038103810281025101810041001995990980979968968967966965960959954954954949948944931928926921910908907897891890890888885879873864848

1506 1854

1615 1528

1510 1531 1491 1499

1409 1446

1227 1393 1432

1283 1304 1267 1365

1313 1361 1389

1321 1128

1364 1635

1338 1326

1237 1345

1082 1284 1282

1035 1204

1111 1192

1155 1175

1148 1039 1048 1086 1066

1275 1060

1232 1164 1232

1118

全国計 68%

大阪 69%

三重 70%

愛知 70%

兵庫 74%

滋賀 84%

奈良 70%

富山 76%

茨城 72%

群馬 71%

石川 73%

岐阜 71%

栃木 72%

⻑野 77%

福井 88%

広島 74%

山口 77%

高知 77%

島根 77%

愛媛 86%

秋田 82%

和歌山 70%

福島 71%

熊本 70%400

500

600

700

800

900

1000

1100

1200

1985 88 91 94 97 00 03 06 09 12 15 2018

東北東京近畿中国九州沖縄最賃加重平均

50

55

60

65

70

75

80

85

90

95

100

65707580859095100105110115120125130135

1985 88 91 94 97 00 03 06 09 12 15 2018

時系列指数(1997年=100) 時給比較指数

平均時給比較指数(右軸)女子高卒35歳標労(左軸)短時間労働者時給(左軸)最賃加重平均(左軸)

23 地域別の短時間労働者時給と最賃 23-1図のタテ棒は、女性一般労働者平均時間あたり賃金を100とした、平均短時間労働者時給(卸売

業小売業)比較指数の推移である。「2003年まで右下がりで格差拡大、以後横ばいから右上がり」という傾向である。「一般対短時間労働者」の賃金差が論じられるとき、この指標が多く用いられる。しかしこれは、一般労働者の時短と⾼学歴化⾼年齢化による平均賃金上昇が作用した指標であることに留意する必要がある。23-1図の3本の折れ線は、1997年水準を100とした女性短時間労働者時給(卸売業小売業)、地域最賃加重平均、一般労働者個別賃金(女性⾼卒35歳標準労働者)の指数推移を示している。一般労働者は1997年をピークに右下がりであるが、短時間労働者時給は一貫した右上がりである。つまり賃金上昇率の比較では、明らかに短時間労働者時給に軍配があがるのである。それをさらに上回る上昇率を示しているのは、2007年以降の最低賃金である。23-2図でブロック別に短時間労働者時給推移をみると、2007年以降、すべての地域で急上昇している。23-

3図では、卸売業小売業の短時間労働者と35-39歳一般労働者の時給対比を都道府県別に行っている。3つの数字が記入されているが、全国計の1019円は短時間労働者時給、1506円は35-39歳一般労働者の時間あたり所定内賃金、68%は一般に対する短時間労働者賃金比率(1019÷1506)である。賃金比率に着目すると64%(東京)から90%(岩手)の間に分布している。 23-1図 最賃と短時間労働者時給の推移

23-2図 ブロック別短時間労働者時給と最賃の推移

23-3図 都道府県別短時間労働者時給対比

※ 短時間労働者の人員と時給の推移は『レポート』17章。

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連合・賃金レポート2019 <サマリー版>

■発 行 日 2019年10月

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RENGO WAGE REPORT 2019年10月