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1.石垣と伝統的建造物が残る島 高見島は多度津港の北西約7kmの海上にある島で、竜王山(標
高:304m)を中心にした南北に細長い島です。高見島では、建久年間(1190~1199年)に備中児島(現岡山県倉敷市児島)からの移住が集落の始まりと伝えられています1)。南面に位置する浦集落(写真1)は、高い石垣を階段状に築いた本瓦葺きの集落で、国の伝統的建造物群の指定候補地に名前があがったこともあります2)。 瀬戸内海の眺望に加えて、石垣と狭い路地、古い家並みが残る
高見島は、映画「男はつらいよ」や「瀬戸内少年野球団」、近年では「機関車先生」のロケ地となりました。
2.地形と地質 高見島は竜王山を中心に、南北に長い楕円形をした島です。
高見島の基盤岩は花崗岩類で、沿岸部に沿って中粒の花崗岩が露出し、山頂を取り囲むように板状節理の発達した讃岐岩質安山岩(両輝石安山岩)が分布しています(図1)。竜王山の山頂部には火山角礫岩が分布し平坦面が残っていることから、山頂の安山岩は溶岩層である可能性が高いと思われます。しかし、露頭がほとんどないため高見山がビュートか火山岩頸か判断できません(図2)。
参考文献:
1)香川県政策部政策課「島ネッ島」ホームページ:http://www.town.tadotsu.kagawa.jp/event/takamijima/index.htm
2)瀬戸内海歴史民俗資料館だより 第 63 号「島を訪ねる⑫高見島(多度津町)」:http://www.kanrin-maru.org/material/material_image/
060331takamiisland.pdf
3)長谷川修一,斉藤実:讃岐平野の生いたち-第一瀬戸内累層群以降を中心に-,アーバンクボタ No.28, pp.52-59,1989.
4)斎藤潤:瀬戸内海の今を歩く第 46 号佐柳島・高見島,季刊しま 232,118-133,2013. m
5)香川県教育委員会ホームページ:http://www.pref.kagawa.jp/kenkyoui/bunka/dosuru/5-6bunkazaiitiran/tennenn.ht
6)香川県環境森林部「香川のみどり百選」ホームページ: http://www.pref.kagawa.lg.jp/kankyo/shizen/guidemap/select/setouchi/16.htm
讃岐ジオサイト(23) 高見島
図3 高見山案内図(基図は国土地理院 25000「岡山及び丸亀」を使用)
図1 高見山の地質(基図は国土地理院数値地図 25000「岡山及び丸亀」を使用,地質図は長谷川・斉藤(1989)3)に基づき作成)
図2 高見山の地質断面図(A-A’断面)
A A’
① ビュート説(溶岩に覆われたと推定)
②火山岩頸説(溶岩が貫入したと推定)
A A’
写真1 浦集落の野面積み石垣 ①高見島フェリー発着場
②高見小中学校跡
③浦集落の石垣
④大聖寺
⑤讃岐岩質安山岩の転石
⑥段々畑の石垣
⑦竜王社
⑧安山岩の積石
⑨山頂の三角点
⑩浜の共同墓地
⑪高見八幡宮
⑫西浦大師
[作成] 香川大学工学部安全システム建設工学科 長谷川研究室 (長谷川修一,鶴田聖子)
香川県高松市林町 2217-20 TEL:087-864-2155,URL:http://www.eng.kagawa-u.ac.jp/~hasegawa/
* この地図は国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図 25000(地図画像)を複製したものである。(承認番号 平 24 四複、第 60 号)
許可なく複製を禁ずる。
3.高見島のジオサイト
⑩浜の共同墓地 高見島の共同墓地は両墓制で、亡骸を埋葬する「埋め墓」と普段お参りするための「詣り墓」に別れています。墓地には天霧石によく似た凝灰岩製の五輪塔がありますが、説明の石碑によると由来などは不明とのことです。
①高見島フェリー発着場
高見島フェリー待合所の横には高見島の
案内板があります。
④大聖寺
大聖寺は浦集落の高所にある寺院で、不動明王を本尊としています。大聖寺の石段が作られたのは寛政時代、常夜灯は文化2年の作で、鐘楼門で屋根を支えている力士像が珍しいとのことです 4)。本堂の横には豊島石製の手洗い桶があり、その土台の柱状のサヌキトイド(玄武岩?)はどこから持ってきたのでしょうか。
②高見小中学校跡
山頂への登山道の入口に県指定天然記念
物高見島竜王宮社叢の説明板があります。
③浦集落の石垣
浦集落は、昭和 50 年頃文化庁の伝統的建造物群保存地区
調査地に選ばれたこともある見事な石垣集落の景観が残っ
ています 2)。石垣は讃岐岩質安山岩の野面積みを主体とし
ていますが、花崗岩の切石を使った立派な石垣もあり、高
度な石積の技術が島にあったことがうかがえます。大聖寺
への道沿いには文化の年号の入った花崗岩製の常夜灯があ
ります。
⑤讃岐岩質安山岩の転石
登山道沿いには板状節理のみられる讃岐岩質安山岩の岩塊(転石)が落ちており、標高 150mより上に安山岩が分布しているようです。「太閤の腰掛石」の名前がついた転石もあります。
⑥段々畑の石垣
標高 200m付近まで、段々畑跡の石垣が残っています。段々畑は戦時中に開拓され、戦後は除虫菊が栽培されましたが、今は林に戻ってしまいました。斜面では、安山岩由来の崩積土が、花崗岩を覆っています。段々畑の石垣にはこの安山岩が使われています。
⑨山頂三角点
山頂の三角点(標高 297m)は、安山岩の石積に囲まれた平地にあります。ここは昔、神社の跡だったようです。
⑦竜王社
竜王山の山頂には竜王社があり、昭和 30 年頃まで雨乞いの風習が残っていたそうです。照葉樹林の高木を主体とした竜王社の社叢は香川県指定の天然記念物(1988 年)です 5)。社叢のある標高 304mの山頂には讃岐岩質安山岩(塊状溶岩)と火山角礫岩の岩塊が集積しています。
⑧安山岩の積石
山頂には安山岩の積石や火山角礫岩の巨石が点在しています。
⑪高見八幡宮 高見八幡宮は、慶長2年(1597年)の建立と伝えられる高見島の氏神です。鳥居手前にある石仏は、かつては島の周囲を巡るように配置されていましたが、現在は高潮などの災害を懸念して、高台に数番ずつ集められています2)。
⑫西浦大師 高見島の海岸線に沿って、基盤の花崗岩が露出しています。八幡神社から海岸沿いの道路を西に進むと道路の行き止まりに、西浦大師があります。ここには大師の御影が映るとされる巨石が祀られています。