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1 金属材料のナノ組織解析 物質・材料研究機構 材料研究所 宝野和博 1. ナノ組織制御金属 金属材料は溶解鋳造に始まり、熱処理、塑性加工など、複雑なプロセスを経て最終形状に仕上 げられていくために半導体やセラミクスなどと比べて、微細組織が極めて複雑で非周期的である。 多くの金属材料は2つ以上の相から構成される複相組織が複雑に絡み合っており、単相合金であ っても加工熱処理によって結晶粒を制御した組織に仕上げられている。金属材料の力学特性や磁 気特性はこのような微細組織によって大きく変化するので、金属に強度、機能特性を与えるため に微細組織制御は古くから利用されてきた。 金属材料の微細組織にはミクロからナノと様々なスケールのものがあるが、従来の材料では多 くの場合ミクロサイズの組織を制御して力学特性や磁気特性を制御していた。ところが近年、超 急冷法や強加工法など過酷なプロセス条件を用いて金属材料の微細組織をナノスケールで制御す る試みが行われるようになり、ナノ組織をもつ材料で従来の金属材料では実現できなかったよう な優れた磁気特性や力学特性が得られることが見いだされた。このように微細組織をナノスケー ル化することにより従来材料を凌駕する特性の得られる金属系材料をナノ組織金属と呼ぶ。最近 では、ナノ組織を持つ金属系材料は経済産業省のプロジェクトで名付けられた「ナノメタル」と いう名称で呼ばれることが多くなっており、ナノメタルは一般的な呼称としても定着しつつある。 以下ではこのようなナノ組織金属材料で使われているさまざまな金属のナノ組織の例をを見てみ よう。 図1 金属材料でみられる様々なナノ組織 図1に示されるように、金属材料のナノ組織は、 (a) 合金中の溶質原子がクラスター形成したナ ノクラスター、(b) 過飽和な溶質原子がナノスケールで析出したナノ析出物、(c) 結晶粒のサイズ がナノスケールまで微細化されたナノ結晶、 (d) 複相のナノ結晶から構成されるナノコンポジット、 (e) ナノコンポジットを創成する先駆段階として使用されるアモルファス、(f) それを結晶化した ナノ結晶・アモルファスコンポジット、 (g) ナノ金属粒子を分散させたナノグラニュラー薄膜、 (f) 2種類以上の金属層を積層させたナノ多層膜などに分類できる。これらのナノ組織を特殊なプロ セスや相変態を用いて形成させて、従来のミクロな微細組織から構成される材料では達成できな いレベルの高強度や高機能を実現しているのがナノ組織金属材料の特徴といえる。 図1(a), (b)のような時効析出や相変態のような自発的な組織化により得られたナノ組織は時効 硬化型のアルミニウム合金や鉄鋼材料でも使われてきたが、最近のアプローチは従来のプロセス では使われなかったようなきわめて急速な凝集、凝固反応を使って極度に非平衡な組織を造った

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金属材料のナノ組織解析

物質・材料研究機構 材料研究所 宝野和博

1. ナノ組織制御金属

金属材料は溶解鋳造に始まり、熱処理、塑性加工など、複雑なプロセスを経て最終形状に仕上

げられていくために半導体やセラミクスなどと比べて、微細組織が極めて複雑で非周期的である。

多くの金属材料は2つ以上の相から構成される複相組織が複雑に絡み合っており、単相合金であ

っても加工熱処理によって結晶粒を制御した組織に仕上げられている。金属材料の力学特性や磁

気特性はこのような微細組織によって大きく変化するので、金属に強度、機能特性を与えるため

に微細組織制御は古くから利用されてきた。 金属材料の微細組織にはミクロからナノと様々なスケールのものがあるが、従来の材料では多

くの場合ミクロサイズの組織を制御して力学特性や磁気特性を制御していた。ところが近年、超

急冷法や強加工法など過酷なプロセス条件を用いて金属材料の微細組織をナノスケールで制御す

る試みが行われるようになり、ナノ組織をもつ材料で従来の金属材料では実現できなかったよう

な優れた磁気特性や力学特性が得られることが見いだされた。このように微細組織をナノスケー

ル化することにより従来材料を凌駕する特性の得られる金属系材料をナノ組織金属と呼ぶ。最近

では、ナノ組織を持つ金属系材料は経済産業省のプロジェクトで名付けられた「ナノメタル」と

いう名称で呼ばれることが多くなっており、ナノメタルは一般的な呼称としても定着しつつある。

以下ではこのようなナノ組織金属材料で使われているさまざまな金属のナノ組織の例をを見てみ

よう。

図1 金属材料でみられる様々なナノ組織

図1に示されるように、金属材料のナノ組織は、(a) 合金中の溶質原子がクラスター形成したナノクラスター、(b) 過飽和な溶質原子がナノスケールで析出したナノ析出物、(c) 結晶粒のサイズがナノスケールまで微細化されたナノ結晶、(d) 複相のナノ結晶から構成されるナノコンポジット、(e) ナノコンポジットを創成する先駆段階として使用されるアモルファス、(f) それを結晶化したナノ結晶・アモルファスコンポジット、(g) ナノ金属粒子を分散させたナノグラニュラー薄膜、(f) 2種類以上の金属層を積層させたナノ多層膜などに分類できる。これらのナノ組織を特殊なプロ

セスや相変態を用いて形成させて、従来のミクロな微細組織から構成される材料では達成できな

いレベルの高強度や高機能を実現しているのがナノ組織金属材料の特徴といえる。 図1(a), (b)のような時効析出や相変態のような自発的な組織化により得られたナノ組織は時効硬化型のアルミニウム合金や鉄鋼材料でも使われてきたが、最近のアプローチは従来のプロセス

では使われなかったようなきわめて急速な凝集、凝固反応を使って極度に非平衡な組織を造った

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り、従来の手法では到達できなかったような高い歪みの加工を加えるなどの新しい手法を使って

人為的にナノ組織を造ろうとすることである。これによって、従来材料にはみられなかったよう

なナノ組織が実現されるようになり、新しい材料特性が実現されるようになってきた。以下具体

的に金属に非平衡プロセスを導入して作製されるナノ組織の例を述べる。 1.1 ガス凝集法

Heガス中で金属を蒸発させ凝集させたナノ粒子を液体窒素で冷却した基板に堆積し、そこから掻き取ったナノ微粉末を固化成形することによりバルク状ナノ結晶金属を作製する方法で、ナノ

メタル研究の創始者として知られる Gleiterらによって考案された 1)。ガス凝集法で作製されるナ

ノ結晶金属では結晶粒のサイズが 5 - 25 nmにまで微細化されるので、結晶の体積に対する結晶粒界の比率が通常の金属と比較にならない程高くなる。このため従来の金属材料とは異なる物性が

現れるのではないかと期待され、様々な物性測定が行われた。一般に結晶粒が小さくなると金属

材料の強度は結晶粒径の 1/2乗に反比例して上昇することがHall-Petchの法則として知られているが、ガス凝集法により作製されたナノ結晶を用いた実験によると、10 nm 程度よりも結晶粒径が小さくなると Hall-Petch 則が成り立たなくなり、逆に強度が低下するという新しい現象も見いだされた 2)。但し、ガス中凝集法では酸化されやすい金属で良質のナノ結晶金属を作製することは

困難で、このために金や銀などの貴金属のナノ結晶金属を用いて基礎物性の研究が行われただけ

で 3)、この手法による実用材料の開発には至っていない。 1.2 メッキ法

メッキ法を用いると比較的簡便にナノ結晶金属を作製することができる 4)。上述のガス中凝集

法と異なり微粉末を固める必要がないので、充填率の高いナノ結晶金属ができる。数時間から1

日程度の電着で 2 mm 程度の板材を作製することも可能で、実用的なサイズにスケールアップする技術的障害は比較的少ない。電着法で作製したナノ結晶銅は通常の金属に比較して著しく低い

加工硬化しか示さず、室温で 5000%程度にまで圧延できることが発表されている 5)。これは塑性

変形が通常の転位の運動によるものではなく結晶粒界での滑りに大きな原因があるためであると

説明されている。 また最近では垂直磁気記録媒体の下地層として使われる軟磁性材料の厚膜などの創製法としても注目されている。スパッター法では厚膜を製造することが困難であるが、メッ

キ法では比較的迅速に安価に厚膜を製造することができるという利点がある。 1.3 液体急冷法

溶融合金を結晶の核生成が起こる速度よりも急速に冷却すると液体状態が凍結された固体、つ

まりアモルファス合金が得られることがある(図 1(e))。すべての合金でアモルファス固体が実現されるわけではないが、負の混合エネルギーを持つ合金系で液相が比較的低温まで安定な共晶組

成を選ぶとアモルファス相が得られることが多い。このようなアモルファス合金は溶湯を急速に

回転する銅ロールに吹き付けることによって厚さ 20 µm程度の連続テープとして得られる。また最近では比較的低い冷却速度でもアモルファス状態の得られる合金が Pd, Zr系合金で見いだされ、これらは通常の溶解鋳造法でバルク状のアモルファス合金を得ることができるので、バルクアモ

ルファス合金と呼ばれている。これらの合金は例外なく昇温過程で結晶化の前にガラス遷移を示

すので、金属ガラスとも呼ばれている。 アモルファス相は熱的に準安定な状態であり、温度を上げるとより安定な状態、つまり結晶に

変態する。一定の条件を満たす組成のアモルファス合金で結晶化後にナノ結晶組織が得られる(図

1(f))。多くの場合、ナノ結晶は残存するアモルファス母相中に分散したナノ結晶・アモルファス複合組織となる。このようなナノコンポジット組織はアモルファス中にすでに大量の不均一核生

成サイトが存在しているかナノ結晶の均一核生成速度が著しく速い場合と、結晶化後に結晶粒の

成長速度が遅いという条件が満たされたときに実現される。 アモルファス合金のナノ結晶化を用いて開発された最も有名な材料がファインメットと呼ばれ

る Fe基のナノ結晶軟磁性材料である 6)。図2に見られるように、10 nm程度の結晶粒がアモルファス母相中から結晶化してできた複相組織で、ランダム配向したナノ結晶粒の磁化が交換結合す

ることによりナノ結晶の結晶磁気異方性が平均化される軟磁性化する材料である。さらにアモル

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ファスの結晶化を用いて軟磁性相と硬質磁性層をナノスケールで分散させたナノコンポ ジット磁石と呼ばれる材料も開発途上にあり実用化が期待されている 8)。またナノ結晶化されたアモル

ファス合金の中で著しく高強度化するものもある。Al-希土類元素-遷移金属元素から構成されるアモルファスアルミニウム合金を部分的に結晶化してナノ結晶組織を形成すると、強度が 1,500 MPa に達するような例も報告されている 9)。これらの例にみられるように、アモルファス相のナノ結

晶化を利用することにより高特性の磁性材料や高強度材料を開発できる可能性がある。

図 2 Fe73.5Si13.5B9Nb3Cu1軟磁性ナノ結晶合金の TEMによる明視野像と高分解能電子顕微鏡像 7)

1.4 強歪加工法

金属材料に高い歪の塑性加工を加えると結晶粒や2相組織が微細化される。2相組織に強歪み

加工を加えて組織をナノスケール化して超高強度を実現した代表的な例がピアノ線である 11)。こ

の材料は 100 年以上にわたって使われている工業材料であるが、現在においても大量生産されている工業材料中でもっとも強い材料であり、研究室レベルでは 5 GPa を超える強度の極微細線も試作されている。ピアノ線は炭素を 0.8 - 1.0%程度含む高炭素鋼を熱処理してパーライト組織という純鉄と鉄の炭化物との層状組織を得て、それを線引きにより強加工したもので、2相層状組織

がナノスケールに微細化されると同時に、炭化物も加工中にナノスケールに粉砕され、それが部

分的に分解して炭素がフェライト中に固溶することが近年明らかになってきている 12)。また Cuに Nb, Cr, Agなど固溶しない元素を加えて2相組織を作り、それを線引き加工してナノ複合組織とし高強度と導電性を兼ね備えた導線も開発されている。 線引き加工ではバルク状の材料を作ることができないので、最近ではバルク材料に強歪み加工

を加える様々な加工法が工夫されて、バルク材料の組織をナノスケールにまで微細化する試みが

盛んに行われている。ロシアで開発された Equal Angular Channel Extrusion (ECAE)法と呼ばれる手法は金型に穿孔された同じ断面の折れ曲がった導管中に丸棒(または角材)を押し込んで、折れ

曲がりのところで材料に剪断変形を加える手法で、試料の断面形状を変えることなく何度も同じ

加工を繰り返すことができる 12)。折れ曲がり角が 90度であれば1回金型を通過させる毎に歪み率1 の剪断加工を加えることができ、これを繰り返すと繰り返し回数分の歪みを同一形状の試料に加えられる。このような方法だと、バルク状の試料に強歪加工を加えることができて、結晶粒の

図3 伸線加工されたパーライト鋼線の典型的な TEM像と (b) 全歪 6.8まで ARB加工されたAg-39.9Cu共晶合金。ARB加工された Cu-Ag合金では剪断帯による不均一変形がみられる。

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サイズをナノレベルにまで微細化することが可能である。このようにナノサイズの結晶粒を持つ

材料は Hall-Petch の法則にしたがって高強度を示したり、超塑性現象が現れたりする。そのほかにも丸棒の間に板状試料を押し挟みながら回転を加える torsion straining法 13)、圧延した板材を積

み重ねて何度も圧延を繰り返す Accumulative roll-bonding (ARB)法 14)などが提案されており、実験

室規模でのナノ結晶材料の作製が行われている。 図3に強歪み加工により作製された2相ナノ組織の例として、(a)伸線加工により作製されたパーライト鋼線と(b) ARB法により強歪み加工されたAg-39.9at.%Cu共晶合金のTEM像をしめす 15)。

異なった加工法で作製された2相材料であるが、微細組織は非常に類似している。パーライト鋼

線ではフェライトとセメンタイトのナノラメラー組織が、ARBによる Ag-Cu共晶合金では AgとCuのナノラメラー組織が観察される。アトムプローブによる解析により、このような強加工材料ではセメンタイトの部分的な分解や炭素のフェライトへの固溶、Agと Cuの合金化など、興味済み加工特有の非平衡組織が形成されていることが分かっている。 1.5 粉末冶金的手法

メカニカルミリングと呼ばれる手法はドラム状の容器に金属のボールと金属粉をいれてこの容

器を連続的に回転させることにより金属粉に繰り返し金属ボールからの衝撃を与える加工法で、

2種類以上の金属粉を混ぜ合わせた場合にはメカニカルアロイングと呼ばれる 16)。この手法を使

うとナノ結晶組織を粉末中に作ったり、平衡状態で固溶しない元素同士でも強制的に合金を作っ

たり、或いは微細粒組織にナノスケールの酸化物を分散させたりすることができる。また合金元

素の組み合わせによってはアモルファス合金粉末を作製することも可能である。 また液体金属をアルゴンガスジェットで噴射するガスアトマイズ法を用いると急冷凝固微粉末

を作製することができる。ガスアトマイズ法により作製した粉末を固化成形、押し出し加工でバ

ルク状の微結晶材料を製造する方法は、一般的な粉末冶金的手法で特に新しいわけではないが、

最近ヘリウムガスを用いることによりアトマイズプロセスにおける急冷速度を従来手法により得

られるものよりも著しく高める試みもなされている。河村らは粉末作製から固化形成するまで試

料を大気にさらさない高清浄雰囲気クローズド P/Mシステムを開発し、反応性が高いために元来粉末法に向かない Mg 合金微粉末を固化成形してナノ結晶組織をもつバルク状 Mg 合金を開発した 17)。このナノ結晶 Mg 合金は極めて高い強度と延性を兼ね備える Mg 合金として注目されている。 1.6 薄膜ナノ組織

Co-Al や Co-Si など酸素と親和力の強い元素を含む合金を酸素中でスパッターしたり蒸着したりすると Co などの強磁性ナノ粒子がアモルファス酸化物中に分散されたナノグラニュラー組織(図 1(g))を形成することができる。このような組織で酸化物と磁性相の体積分率をうまく制御すると高周波特性の優れた高い電気抵抗値を持つ軟磁性材料、トンネルタイプの磁気抵抗(TMR)を示す超常磁性膜や、磁気記録媒体に適した孤立強磁性粒子分散膜を作製することができるので、

実用的に非常に高い関心が持たれている 18)。一般にスパッター膜はナノスケールの微結晶で構成

されているので、表面に硬度の高いナノ結晶窒化物などをコーティングすることができ、工具な

どに利用されている。またスパッター法や分子線エピタキシー法を使って金属多層膜(図 1(f))を作製して、新規な磁気特性や高強度を実現したコーティング材料、さらには X線全反射のための材料開発を模索する研究も行われている。 また電子ビーム溶解で大量に金属を蒸発させて基板に金属を堆積させる連続蒸着法でアルミニ

ウムの 2 mm 程度のアルミニウム合金の薄板を製造するプロセスも開発されている。元来固溶しない遷移金属元素を大量に過飽和に固溶させることによってアルミニウム合金で 1000 MPa を超える強度が報告されているが 19)、コスト的な面で実用化には至っていない。 2. ナノ組織金属の特性

先に述べたように金属材料の微細組織をナノスケール化すると、従来の金属系材料で得られな

かったような特異な物性が現れることがある。ここでは一例として力学特性と磁気特性の例を紹

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介する。 2.1 力学特性

図 4 に示すように金属材料の強度、変形挙動は結晶粒径によって大きく変化する。Region I の結晶粒径がマクロスケールである場合には、強度は Hall-Petch 則に従って結晶粒の微細化とともに高くなる。またこの領域では加工により材料は高い加工硬化を示し、強度的には高くないが優

れた延性がある。破壊様式は粒内破壊が支配的である。Region IIのサブミクロン領域では強度はHall-Petch則に従うが、延性と加工硬化度は低下してくる。破壊も粒界破壊の確率が増え、変形は局所的な剪断変形が支配的となる。Region IIIのナノ結晶領域では粒界滑りによる変形が支配的となり、このために加工硬化が起こらなくなる。先に述べた電着したナノ結晶 Cuの室温における超塑性変形はこのようなメカニズムで起こっている 5)。またこの領域では粒径が微細になると強度

が低下する逆 Hall-Petch 現象が観察される。さらに結晶粒が小さくなると、もはや結晶ではなくアモルファスまたは金属ガラスとなる。アモルファス固体では変形は転位の運動によって起こら

ず加工硬化は現れず、材料は本質的に脆性である。変形はアモルファス中に局所的に剪断帯が伝

播することにより起こり、剪断帯の発生と伝搬をうまく制御することにより金属ガラスにもある

程度の延性を持たせることができる。このように結晶粒の微細化により、従来のマクロ組織では

発現しなかったようなユニークな力学特性が発現するので、低コストでバルク材のスケールアッ

プができれば新しい工業材料の開発に繋がる可能性がある。

図 4 金属材料の変形機構・力学特性の結晶粒径依存性 (T. G. Niehによる)

2.2 磁気特性

磁気特性の粒子サイズ依存性も前述の強度のサイズ依存性に似ている。図 5(a)に孤立した強磁性粒子の保磁力と粒子サイズの関係を模式的に示している。強磁性粒子のサイズが減少すると磁

化反転のための核生成頻度が小さくなるので、保磁力は粒子のサイズとともに増加する。粒径が

単磁区粒子サイズになると、個々の強磁性粒子が単磁区粒となり、保磁力が最大となる。これよ

りサイズが減少すると、磁化反転が熱擾乱により起こりはじめて保磁力が減少し、最終的に保磁

力の発生しない超常磁性状態となる。 粒子間が磁気的に結合している場合でも同様の変化がみられる。図 5(b)に示されるように、粒径が大きいと磁壁移動のピニングサイトとなる結晶粒径の密度が減少するので、粒径が大きくな

るほど保磁力が下がる。このとき保磁力は結晶粒径 1/D に比例して減少する。結晶粒が減少すると磁壁の頻度が高くなるので保磁力は増加するが、粒径が交換結合長 lex=(A/<K>)1/2以下になると、

個々の結晶粒が交換相互作用により結合し、隣り合う結晶粒間で磁化の方向が揃う。ここで Aは交換スティフネス係数で、<K>は平均結晶磁気異方性である。このとき、結晶磁気異方性の平均化が起こるようになり、保磁力は結晶粒の D6に比例して変化する。この原理を使ったのが前述の

ナノ結晶軟磁性材料である。ナノコンポジット磁石においても結晶粒径が交換結合長以下になる

と軟磁性相と硬質磁性相が交換結合するので、スプリングバック効果やレマネンスエンハンスメ

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ントなどの交換結合ナノ結晶特有の現象が発現し、磁化挙動に大きな変化が現れる。このように

ナノ組織化により磁気的にもユニークな特性が得られるようになる。

図 5 保磁力の結晶粒径依存性。(a)は磁気的に孤立した粒子、(b)は磁気的に結合した粒子から構成された材料の挙動 3 ナノ組織解析

ナノ組織金属では特性がナノ組織のサイズ、構成相、界面構造や局所組成により大きく変化す

る。このためナノ組織金属材料の開発にはナノ組織を原子レベルで解析し、各合金元素がナノ組

織形成に果たす役割を解明したり、ナノ組織と特性の因果関係を解明することが重要である。 金属系材料のナノ組織解析には広く透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscopy, TEM)が活用されている。図 6 (a)に示すように、最先端の電子顕微鏡では高分解能電子顕微鏡(High Resolution Electron Microscopy, HREM)により結晶の原子配列を反映した像が得らればかりではなく、電子線回折を活用することによりナノ領域の構造解析も可能となってきている。一方、ナノ

組織の組成に関する情報も、エネルギー分散 X線分光(Energy Dispersive X-ray Spectroscopy, EDS)や電子エネルギー損失分光(Electron Energy Loss Spectroscopy, EELS)、走査型透過電子顕微鏡(Scanning Transmission Electron Microscopy, STEM)の暗視野像のコントラストが原子の質量に敏感に変化することを利用した広角度散乱暗視野(High Angle Annular Dark Field, HAADF)法などを用いてナノ領域の局所的な組成に関する情報も得られるようになってきている。電界放射型電子銃

図 6 最新の分析電子顕微鏡の機能の模式図(a)とナノ粒子を含む電子顕微鏡用薄膜試料と電子線の関係を示した模式図

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を搭載した TEMが普及したことにより、このような手法を用いた TEMによる局所組成解析の分解能は原子面間隔に迫っている。ところが、3次元構造を有するナノメタルの構造は、多くの場

合図 6 (b)に示されるように母相中に分散したナノ粒子であり、TEM試料の厚さが 20 nm程度であることを考慮すると、サブナノスケールに収束された電子線を用いても、そこから得られる EDSや EELS のスペクトラムは母相の情報を含んでおり、ナノ粒子の組成やナノ粒子と母相の界面濃度変化を TEMで定量的に評価することは困難である。このような母相中に微細に分散した金属系ナノ粒子の組成解析に最適な手法が3次元アトムプローブ(3DAP)である 20)。 図 7に 3DAPの原理が模式的に示されている。試料は電解研磨などにより作製した先端の直径が 100 nm程度の非常に先鋭な針状試料である。このような針状試料に高電圧(5 - 15 kV)を加えると、試料表面は非常に高い電界にさらされ、これによって試料表面の原子が原子面の端から順次

イオン化される。このような現象を電界蒸発とよんでいる。アトムプローブでは試料に加えた静

電圧の 20%程度のピークを持つ 10 nm程度の幅のパルスを加えて、これに同期的に原子のイオン化を行う。パルスを加えてからイオンが検出器に到達するまので飛行時間を測定して、

m/n=2e(Vdc+αVp)t2/l2の式から質量を決定する。ここで mは質量、nはイオンの価数、eは電子の電荷、Vdcは試料に加えられた静電圧、Vpはパルス電圧、αはパルス因子、tは飛行時間、lは飛行距離である。パルス電圧により電界蒸発するイオンはパルスのピーク値から低エネルギー側に 20-40 eV程度分散するので、それを補正するためにリフレクトロンと呼ばれる静電反射板を用いてエネルギー補償を行い高い質量分解能を実現している。図 7 に示されるように、電界蒸発した正のイオンは針状の試料表面から放射状に広がる電界に加速されて、リフレクトロンに入射する。 リフレクトロンを通過したイオンは位置敏感型検出器(position sensitive detector)に到達し、そこで個々のイオンの飛行時間を測定すると同時に入射イオンの検出器上での(x,y)座標を測定する。この位置測定には検出器上の電荷を測定する方式、CCDカメラで蛍光板上の輝点の位置を測定する方式、検出器に到達したイオンから電極までの電荷の伝達速度の差を測定する遅延線方式が考案

されており、現在稼働している 3DAPではこの3つの方式のいずれかの検出器が用いられている。このように 3DAP では個々のイオンの質量電荷比と座標を決定することができるので、このデータから直接2次元の原子マップを描くことができる。原子は試料の最表面からしかイオン化され

ないので、このような最表面層からの2次元原子マップを連続的に収集すると、表面から順次試

料の深さ方向への原子も検出することができ、それらの座標と質量のデータから原子位置を3次

元的に再構成することができる。例えば、n個の原子を収集したとき試料の長さが d nm短くなったとすると、i個めに検出された原子の2次元座標 (xi, yi)の3次元座標は(xi, yi, di/n)となり、全ての原子の3次元座標が決まる。これを3次元可視化ソフトにより再現すると、3次元実空間での

原子マップを描くことができる。100 nm程度の直径の針状試料から原子を一つずつ数えているので、3DAPで分析できる領域には必然的に制約があり、典型的な分析領域は 20 nm × 20 nm × 200 nm程度の極めて小さな体積である。3DAP では飛行時間型質量分析により元素を同定するので、軽元素でも定量的に分析できる。実用金属材料には C, B, N, Oなどの軽元素が含まれている場合が多く、しかもこれらの元素が特性に大きな影響をあたえるので、軽元素をサブナノメーターの分

解能で検出できる 3DAPの実用的価値は大きい。

図 7 エネルギー補償型3次元アトムプローブの原理の模式図

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3DAP によりナノコンポジット組織を解析した例を図 8 に示す 21)。ナノ組織の特徴を直感的に

捉えられるように、同じ試料の TEMによる明視野像を併せて示している。この組織の特徴はアモルファス相を結晶化することによりアモルファス母相中にナノ結晶が形成することで、合金組成

は Nd4.5Fe76.8B18.5Cu0.2であり、最終的には Fe3B/Nd2Fe14Bというナノコンポジット磁石組織が形成する。Cuの微量添加によってナノコンポジット組織が微細化され、それに伴って磁石特性が改善されるのが特徴である。TEM像ではコントラストの無いアモルファス母相中に微細なナノ結晶が分散している様子が観察される。このナノ結晶は Fe3B相で、この相には Ndが固溶することができないので、結晶化の進行にともなって Nd原子は Fe3B相から排除されアモルファス相中に濃化するる。3DAPによる元素マップでは 17 × 17 × 56 nm3の領域内での Ndと Cu原子の存在位置が各々小さい点と大きい点で表示されている。Fe3B 相は元素マップで Nd 原子の密度が低い中空状の球状の空間として観察される。大きい黒い点が集まっている部分が Cu原子の集合体(クラスター)であり、注意して観察すると個々の Cu原子クラスターに接触して Fe3Bのナノ結晶が観察されている。このことから Cuクラスターが Fe3B結晶粒の不均一核生成サイトとして作用してナノ結晶化が進行したという知見がえられる。このような原子クラスターに関する情報は他の解析手

法では得ることが不可能で、3DAP による解析によって始めてナノ組織形成のメカニズムが解明された。

図 8 Nd4.5Fe76.8B18.5Cu0.2アモルファス合金を結晶化させて得られた Fe3Bのナノ結晶組織と3次元アトムプローブによる Ndと Cuの原子マッピング。黒い球は個々の Cu原子、点は Nd原子 21) 構造用アルミニウム合金の強化は過飽和固溶体の時効析出によって行われている。このためア

ルミニウム合金の時効析出の研究は 60年代に盛んに行われたが、当時は原子レベルでナノスケールの析出物を解析する手法がなかったために、現在でも時効析出とそれを応用した析出強化のメ

カニズムについて多くの未解決の問題が残されている。近年、自動車、航空機などの輸送機器の

軽量化の要求が高まってきたことにより、最近アルミニウム合金やマグネシウム合金の時効析出

の研究が再度クローズアップされるようになってきた。このような観点からアルミニウム合金の

図 9 Al-2.5Cu-0.5Si-0.5Ge (at.%)合金中に観察される Cuの板状ナノ析出物と、図中に示した選択領域から決定した Cuの濃度プロファイル 22)

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ナノ析出物の解析例を一つ紹介する。図 9 は Al-Cu-Ge-Si 合金に析出した Cu のナノ析出物(GPゾーン)の 3DAPによる Cuマップである 20)。分析面は(011)面であり、2つのバリアントの{001}面に板状に析出した Cuの GPゾーンが明瞭に観察されている。このマッピングの中で、GPゾーンに垂直な方向に解析領域を設定し、析出物の板面に垂直に濃度解析したのが図 5(b)の濃度プロファイルである。このように分析領域中の任意の領域から濃度解析の領域を選択することにより、

ナノスケールのほぼ単原子面に集合した原子クラスターからでも濃度測定を行える。アルミニウ

ム合金やマグネシウム合金ではこのような基本的な合金系に微量元素を加えることにより大きく

時効析出過程が変化するので、微量元素の時効過程でのクラスター形成や偏析挙動の解析に応用

すると他の手法では得られないようなユニークな情報を得ることができる。これらの例について

はすでに多くの解析記事で紹介しているので詳細については参考文献 23,24)を参考にされたい。 本講座の受講者の多くは鉄鋼材料関係者であろうから、ここで少し鉄鋼材料の解析例も紹介し

ておきたい。鉄鋼材料でも高強度を目指すとき時効析出の応用は極めて有効である。マルテンサ

イト鋼はそれ自体高強度の材料であるが、その内部にナノスケールの析出物を分散させることに

よりさらに高強度化を実現することができる。PHスレンレス鋼はマルテンサイトステンレス鋼にCuや Alなどの溶質元素を数%添加した材料で、Cu添加の場合には Cuの析出物が、Al添加の場合にはステンレス鋼中のNiとの間でB2構造を持つNiAl金属間化合物相がナノスケールで析出し、これが著しい時効硬化に寄与する。図 10は 13Cr-8Ni-2.5Mo-1Alの組成を持つ PHマルテンサイト系ステンレス鋼を 510°C 1 hの条件で焼き戻した組織の TEM観察結果である。ラス状のマルテンサイトを B2の規則格子反射で励起させた暗視野像で観察すると、マルテンサイト母相中に非常に微細な析出分が分散していることが確認される。しかしこのような微細析出物を定量的に解析す

ることは TEMでは非常に困難である。高分解能電子顕微鏡観察を行うと B2構造を持つ析出物が観察されるが、析出物の数密度やその濃度を正確に評価することは難しい。図 11 はこの材料を450°Cで等温時効したときに観察されるAl原子の分布の変化を示した3次元アトムプローブによる元素マップである。個々の点は Al原子一個に相当する。時効後 0.5 hで Al濃度に揺らぎが観察され、4 h後には Al濃度の高いナノスケールの領域が高密度で発達していることが観察される。4 h後には 2 nm程度の Al濃度の高い(NiAl)球状の析出物が 1024/m3程度の高密度で観察され、それ

が 500 h 後には粗大化している。この濃度マップをみて明らかなのは、析出において核生成と粗大化を識別することは不可能で、濃度揺らぎの発達とともに析出物は連続的に粗大化しているこ

とである。この時効過程で硬さは連続的に上昇しつづけており、析出物密度が最も高いところで

ピーク硬さが現れる訳ではない。また図 11 (b)はこの間に観察される析出物内の Alの濃度変化で、析出物の成長とともに Al濃度が NiAlの化学量論組成である 50at.%に連続的に近づいている。本解析でアトムプローブの真価を発揮した結果が図 12 に示されている。図 11 で観察される多数の析出物の一つに着目して、その周囲の元素分布とそこからえられた積分濃度プロファイルを示し

たものである。積分濃度プロファイルは検出された溶質原子数を検出された全原子数の関数とし

図 10 510°Cで 4 h焼き戻された 13Cr-8Ni-2.5Mo-1Al析出硬化型マルテンサイトステンレス鋼の電子顕微鏡明視野像、制限視野回折パターン、B2の規則反射で励起された暗視野像、高分解能電子顕微鏡像 25)

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てプロットした図で、その傾きが溶質原子の局所濃度に相当する。この図から Mo 原子がNiAl/matrix界面に偏析していることが明らかであり、このようなオーバーサイズの溶質原子が析出物/母相界面に偏析することにより NiAl粒子の成長を抑制していると考えられる。 以上の例にみられるように、3DAP は母相に埋もれたナノ粒子の濃度も定量的に評価することができるので、所謂ナノメタルの微細組織解析に極めて有効な手法である。現在、収束イオンビ

ーム法(FIB)の発達によって、薄膜や異相界面、結晶粒界などからでも FIM試料を作製することが可能となってきており、3DAPの応用範囲は今後飛躍的に広まるものと予想される。 金属系材料のナノ組織解析については、物質・材料研究機構ナノ組織解析グループのホームペ

ージで多くの例が紹介されているので、併せて参考にされたい 26)。 参考文献 1) H. Gleiter, Prog. Mater. Sci. 33, 223 (1989). 2) A. H. Chokshi, A. Rosen, J. Karch, and H. Gleiter, Scripta Metall. 23, 1679 (1989). 3) R. Birringer, Mater. Sci. Eng. A117, 33 (1989). 4) G. Palumbo, S. J. Thorpe, and K. T. Aust, Scripta Metall. Mater. 24, 1347 (1990). 5) L. Lu, M. L. Sui, and K. Lu, Science 287, 1463 (2000). 6) Y. Yoshizawa, S. Oguma, and K. Yamauchi, J. Appl. Phys. 64, 6044 (1988). 7) K. Hono, K. Hiraga, Q. Wang, A. Inoue, and T. Sakurai, Acta metall. mater. 40, 2137 (1992). 8) H. A. Davis, J. Magn. Magn. Mater. 157/158, 11 (1996).

図 11 450°Cで等温時効された 13Cr-8Ni-2.5Mo-1Al析出硬化型マルテンサイトステンレス鋼中の Al原子の3次元アトムプローブによる Al原子マップと NiAl析出物中の Alの濃度プロファイル 25)

図9 NiAl とマルテンサイト母相の3次元原子マップと積分濃度プロファイル。Mo がNiAl/matrix界面に偏析している 25)

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9) Y. H. Kim, A. Inoue, and T. Masumoto, Mater. Trans. JIM, 32, 599 (1991). 10) A. Inoue, H. Kimura, K. Sasamori, T. Masumoto, Mater. Trans. JIM 36, 1219 (1995). 11) 樽井敏三:まてりあ 39, 235 (2000). 12) 宝野和博:まてりあ 39, 230 (2000). 13) R. Z. Valiev, R. K. Islamgaliev and I. V. Alexandrov, Prog. Mater. Sci. 45, 103 (2000). 14) Y. Saito, H. Utsunomiya, N. Tsuji, and T. Sakai, Acta mater. 47, 579 (1999). 15) 大崎智、筑波大学大学院数理物質科学研究科物質創製先端科学専攻修士論文、(2002) 16) C. C. Koch, Nanostruct. Mater. 2, 109 (1993). 17) 川村能人、井上明久:金属 71, 497 (2001). 18) K. Hono and M. Ohnuma, in "Magnetic Nanostructures" edited by H. S. Nalwa, American

Scientific Publishers, 2002, pp. 327. 19) H. Sasaki, K. Kita, J. Nagahora, A. Inoue, Mater. Trans. 42, 1561 (2001). 20) M. K. Miller, Atom probe tomography: analysis at the atomic level, Kluwer Academic, New York,

2000. 21) D. H. Ping, K. Hono, H. Kanekiyo, and S. Hirosawa, J. Appl. Phys. 85, 2448 (1999). 22) 本間智之、筑波大学大学院数理物質科学研究科物質創製先端科学専攻修士論文、(2002) 23) 宝野和博、村山光弘:まてりあ 38, 563 (1999). 24) 宝野和博:金属 73, 201 (2003). 25) D. H. Ping, M. Ohnuma, K. Hono, Y. Hirakawa, and Y. Kadoya, 2004 Spring Meeting of Iron and

Steel Institute of Japan. 26) http://www.nims.go.jp/apfim/index_j.html