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小学校外国語活動におけるコミュニケーションへの 関心・意欲を高める活動の研究 -コミュニケーションの場面や働きを意識した活動の工夫を通して- 研究の概要 キーワード Ⅰ 主題設定の理由 1 小学校外国語活動の全面実施に向けて 2 小学校外国語活動のねらいについて

小学校外国語活動におけるコミュニケーションへの 関心・意 …...小学校外国語活動におけるコミュニケーションへの 関心・意欲を高める活動の研究

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    小学校外国語活動におけるコミュニケーションへの

    関心・意欲を高める活動の研究

    -コミュニケーションの場面や働きを意識した活動の工夫を通して-

    研究の概要この研究は,小学校外国語活動において,児童のコミュニケーションへの関心・意欲を高めるために,コミュニケーションの場面やコミュニケーションの働きを意識した活動(具体的にはゲーム・クイズ)を積極的に取り入れ,その活動の有効性を確かめるとともに,より効果を上げるための工夫を探るものである。外国語活動が目指すコミュニケーションを図る力とは何か,ゲーム・クイズの外国語活動における活用の在り方についても明らかにした。キーワード関心・意欲・態度 コミュニケーションの場面,働き インフォメーション・ギャップゲーム・クイズⅠ 主題設定の理由

    1 小学校外国語活動の全面実施に向けて平成20年3月に新しい小学校学習指導要領が告示され,小学校5,6年生での外国語活動が必修化されることになった。小学校外国語活動は,研究開発学校での英語教育,「総合的な学習の時間」における国際理解の学習の一環としての外国語会話等,そして,今回の領域としての必修化という経緯をたどってきている。今までの小学校英語活動は,ともするとパターン・プラクティス(文型練習),会話表現の暗記,フォニックス(文字と発音の関係),文字指導などの行き過ぎた指導があったのではないかと言われている。児童の負担になっていたり,ALTなどにお任せの指導になってしまったりと課題も多かった。その点からも,今回の小学校外国語活動としてのねらいをしっかり把握し,中学校の外国語科(英語科)との違いを明確にとらえ,小学生にふさわしい活動としていくことが求められている。本主題を設定する上で,まずは,「中学校の英語教育の前倒しでないとはどういうことなのか」,「体験的に言語や文化について理解していくということはどういうことなのか」を明らかにしていきたい。さらに,中心的目標である,「コミュニケーションへの関心・意欲を高めるための活動はどうあるべきか」に迫る。小学校外国語活動は,平成21年,22年度の2年間の移行期間を経て,平成23年度より全面実施される。体験することを大切にしながら,生きた活動として児童に働きかけていくことが,まず第一歩であるだろう。文部科学省の調査(平成21年4月1日時点での予定)で,移行期間中である平成21年度の外国語活動の全国公立小学校での実施率は97.8%で,年間の授業時数の平均は,5,6年生それぞれで,約28.2時間である。多くの小学校が全面実施を見すえ,取組を開始している。2 小学校外国語活動のねらいについて小学校学習指導要領では「外国語活動」の目標を次のように示している。外国語を通じて,言語や文化について体験的に理解を深め,積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度の育成を図り,外国語の音声や基本的な表現に慣れ親しませながら,コミュニケーション能力の素地を養う。 ※アンダーラインは筆者この目標は,下記の3つのポイントから成りたっている。(1)外国語を通じて,言語や文化について体験的に理解を深める。(2)外国語を通じて,積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度の育成を図る。(3)外国語を通じて,外国語の音声や基本的な表現に慣れ親しませる。この3つのポイントを「外国語を通じて」体験的に行い,「コミュニケーション能力の素地を養う」ことにつなげることが述べられている。

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    中学校学習指導要領外国語科の目標は,次のようになっている。外国語を通じて,言語や文化に対する理解を深め,積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度の育成を図り,聞くこと,話すこと,読むこと,書くことなどのコミュニケーション能力の基礎を養う。 ※アンダーラインは筆者小学校に外国語活動が導入され,特に音声面を中心として外国語を用いたコミュニケーション能力の素地が育成されることになる。そのため,中学校段階では,4技能を明示することにより,小学校における外国語活動で育まれた素地の上に,これら4つの技能をバランスよく育成することの必要性が強調されている。中学校においては,文字の学習,発音,フォニックス,知識としての文法,語彙ご いの学習など教科として学ぶことをふまえ,それらの基礎的な部分を習得していく必要がある。いわば,スキル(技能)ベースでの学習も求められるわけである。これに対して,小学校外国語活動では,スキル向上ではなく体験を重視していく。小学校では,意味を中心にとらえ,コミュニケーションを体験することから始まり,中学校,高校では,言語形式を学ぶ部分の割合が増えていくことになる。以上のような,小中のねらいの違いを明確に把握し,小学校外国語活動としてふさわしい活動はどのようなものであるのか明らかにしていきたい。3 コミュニケーションの場面と働きについて小学校外国語活動及び中学校外国語科,いずれも学習指導要領の中で,「コミュニケーションの場面」,「コミュニケーションの働き」について具体例が示されている。英語(外国語)にふれるとき,単に知識として覚える,表面上理解するということではなく,英語が使われる場面,働きを切り離して考えるべきではない。示されている具体例は,日常の授業において,コミュニケーションの場面の設定や,コミュニケーションの働きを意識した指導を行う際の手がかりとなる。小学校外国語活動の場面としては,「特有の表現がよく使われる場面」と「児童の身近な暮らしにかかわる場面」の2つに分けて述べられている。「コミュニケーションの働き」とは,コミュニケーションを図ることで達成できることを表し,「相手との関係を円滑にする」,「気持ちを伝える」,「事実を伝える」,「考えや意図を伝える」,「相手の行動を促す」などである。これら,場面,働きを明確に意識しながら活動を設定して,より身近で,自然な英語(外国語)との体験的なふれ合いを作り上げていくことが大切である。逆に言うならば,場面,働きを意識しないコミュニケーションはあり得ないと言ってもよいのかもしれない。〔コミュニケーションの場面の例〕 〔コミュニケーションの働きの例〕○特有の表現がよく使われる場面 ・相手との関係を円滑にする・あいさつ ・自己紹介 ・買い物 ・気持ちを伝える・食事 ・道案内 など ・事実を伝える○児童の身近な暮らしにかかわる場面 ・考えや意図を伝える・家庭での生活 ・学校での学習や活動 ・相手の行動を促す・地域の行事 ・子どもの遊び など など―小学校学習指導要領外国語活動より―以上のような考えをもとに,具体的には,ゲーム・クイズを中心に扱いながら,コミュニケーションの場面や働きを意識した活動の工夫を行うことで,児童のコミュニケーションへの関心・意欲を高めさせたいという願いから,本主題を設定した。Ⅱ 研究のねらい外国語活動において,児童のコミュニケーションへの関心・意欲を高めるために,ゲーム・クイズ

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    の活動を中心にすえた工夫にはどのようなものがあるのか,明らかにする。インフォメーション・ギャップ(情報の差)を効果的に生かし,児童が興味をもって活動に臨むための具体的な方法(教師側の発問,励ましのことばの工夫も含む)を洗い出したい。その過程では,コミュニケーションの場面,コミュニケーションの働きを自然な形でとらえさせながら,コミュニケーションそのものを体験させたい。本研究の構想図を下記に示す。インフォメーション・ギャップ → ゲーム・クイズの効果的な取り入れ ← ゲーム・クイズを行うの活用 〔教師側の発問,励ましのことば等〕 楽しさの活用場面 → ← 働き〔コミュニケーションの必然性の発生〕コミュニケーションへの関心・意欲の高まりⅢ 研究の基本的な考え方

    1 コミュニケーションについてコミュニケーションとはいったい何なのか。本研究の中でも,そのとらえ方が基本となる。その定義について考えてみたい。国語辞典で調べると次のように定義されている。「社会生活を営む人間の間に行われる知覚・感情・思考の伝達。言語・文字その他視覚・聴覚に訴える各種のものを媒介とする」(広辞苑)ことばを使って(コミュニケーションとして)他の人々とかかわりをもつことは,生きていく上で不可欠であり,自分を表現し,相手を理解し,異なった価値観を認識しながら,さまざまなことを共有していく活動である。実際のコミュニケーションで伝えられる「意味」には,ことばそのもの以上のメッセージが含まれているとよく言われる。例えば,ある街角で通りすがりの人に,“Do you livenear here?”と問われた場合,“Yes, I do.”で終わってしまったのでは,コミュニケーションとは言えないだろう。相手は,この近くに住んでいる人であれば,道をたずねたいという思いで,“Doyou live near here?”と聞いたのであって,“Yes, I do.”から一歩進んで,「何かお困りならどうぞ」といったやりとりを期待している。同じように,“Do you have a pen?”という文は,多くのケースで,ただ「持っているかどうか」をたずねる文ではなく,「持っていたら貸してもらえませんか」という依頼表現であることが多い。コミュニケーションを支えるコミュニケーション能力とは何かということについては,現在では,以下の4つの要素から構成されているという考え方が定着している。①文法能力(文や文章を作り出す能力)②社会言語学的能力(発話の適切さを判断できる能力)③談話能力(文レベルではなく文章の構成にかかわる能力)④方略的能力(語彙力などの不足等を補ってコミュニケーションを続けていく能力)ご い コミュニケーションの発達(Savignon, 1983 より)アメリカの言語学者,Savignonはこの4つの構成要素が,学習段階が進むにつれて,その割合が変化するものであるととらえている。この4つの構成要素を明確に分析し,コミュニケーションを行うための必須条件として,具体的な活動において,工夫して取り入れていくべきである。小学校における外国語活動がその4つの要素のどの部分を,どれくらいの割合で児童に体験させていくのか考えていくことが必要である。やはり,小学校においては,②,④を主に意識して扱っていくべきであろう。

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    2 ゲームやクイズについて児童にとって,ゲームやクイズは楽しい活動である。しかし,単に楽しいで終わってはいけない。人間には誰にも,「知らないことを知りたい」,「未知の世界をのぞきたい」という知的欲求がある。特にゲーム・クイズはこうした動機付けに効果がある。また,ゲーム・クイズを行うことで,コミュニケーションの方法や諸外国の文化を,興味をもたせながら自然に伝えることも可能である。遊びの要素もあり,児童は楽しみながら活動する。例えば,ゲーム・クイズを通してコミュニケーションへの関心・意欲を高めさせたいと考えるとき,一方的に回答などをさせるだけでなく,いかに児童に「ゲーム・クイズを作りたい」,「ゲーム・クイズをやりたい」,「こんなことに驚かせてやりたい」などと思わせるかが重要である。そこに英語(外国語)を使う場面を作り,児童が自然に取り組むようしていけば,必然性のあるコミュニケーションの場が生まれてくると考える。今回扱う授業の単元は,文部科学省発行の「英語ノート1」(5年生用)から,Lesson7 「What'sthis? クイズ大会をしよう」である。クイズ(含むゲーム)形式の活動を通して,友達とコミュニケーションを図る楽しさを体験するとともに,漢字や英語を提示し比較させることで,日本と外国の文化的な違いや類似性にも気付かせたい。以上のことをふまえ,コミュニケーションとは何か,また,そのコミュニケーションを支える力に,外国語活動におけるゲーム・クイズがどうかかわりをもって,児童へ効果的に働きかけていくか,具体的な効果を実際の授業の中から探っていく。Ⅳ 研究の内容と方法

    1 研究の内容下記,(1)から(5)の工夫を取り入れた研究授業の実施(1)外国語活動におけるゲーム・クイズの有効性とその取り入れ方の工夫(2)コミュニケーションの場面や働きを意識した活動の工夫(3)コミュニケーションを図ろうとする必然性を生み出す工夫(4)教師側の発問,励ましのことばによる児童の意欲付け,自信を付けさせるための工夫(5)上記4項目を効果的に生かした,コミュニケーションへの関心・意欲・態度を高める工夫2 研究の方法○授業研究ア 研究の対象 小学校5年生28人(1学級)イ 事前調査 事前アンケートの実施(10月中旬)ウ 授業実施 クイズ大会をしよう 時期:10月下旬~11月下旬 5時間(45分授業×5回)エ 検証のための資料事前・事後アンケート,授業観察 各時間のふりかえりカード(自己評価カード),ワークシートの記入内容,授業者(HRT:学級担任,ALT:外国語指導助手)の感想,授業参観者(協力員,外部ALT等)の感想など3 授業実践より 第5学年外国語活動学習指導案1 単元名 クイズ大会をしよう2 単元について本単元では,“What's this?”という基本的な表現を使って,視覚,聴覚,触覚などを情報のヒントにした,いろいろなクイズを児童に考えさせる。グループで協力する場面を作りながら,個々の児童が,「楽しかった」と感じるとともに,「自分にもできた」という達成感が味わえるようにサポートしていく。具体的な英語表現として,既習表現の“What's this?”を扱う。自然な形で使う場面として,「部分絵カード・ゲーム」「シルエット・クイズ」「ブラック・ボックス・クイズ」などのゲーム・クイ

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    ズを出し合う活動を行う。第5時では,グループで考えたクイズを扱う「クイズ大会」を行わせる。お互いに協力し合い,「英語を使ったクイズをすることができた」と一人一人の児童が実感をもてるようにしたい。また,「海月(クラゲ)」や「海星(ヒトデ)」などの二字熟語を取り上げ,それらは何を表しているか考えるクイズを行う。水族館の様子の絵を使って,jellyfish やstarfish を導入した後で,再度,同じ英語を出させるための工夫として,漢字を用いることで児童の知的好奇心を高め,併せてことばの面白さにも気付かせ,文化的な面からのアプローチも行う。インフォメーション・ギャップを効果的に使うことに心がけ,コミュニケーションの場面,コミュニケーションの働きを意識的にクイズに入れていく。3 単元の目標(1)“What's this? ”の表現や既習の単語などを使ってのやりとりを楽しむ。(2)英語を使ってクイズ大会をする。(3)日本と外国の文化の違いに気付く。4 単元の評価規準と学習活動における具体の評価規準コミュニケーションへの 外国語の音声や基本的な 言語や文化についての関心・意欲・態度 表現に慣れ親しむ 体験的理解単 ・教師や友達とのやりとり ・英語の音声やリズムに慣れ親 ・英語と日本語との違いを元 (質問含む)に対して答え しんでいる。 通して,漢字の成り立ちの ようと努力している。 ・何かをたずねる“What's this?” の面白さを知る。評 ・班単位の活動で,班員と の表現に親しんでいる。価 ともに,意欲的に活動に ・ヒントの英語表現(Up/ Down/規 取り組んでいる。 Right/ Left, please.…)に親準 しんでいる。①部分絵カード・ゲームの ①日本語と英語の音の違いに気 ①漢字の成り立ちの面白さ学 活動に積極的に取り組ん 付く。 に気付く。習 でいる。 ②What's this? の表現に親しん ②日本と外国の(文化の)違活 ②水族館の絵を活用して, でいる。 いを知る。動 どんな魚がいるか,何人 ③ヒントの英語表現に親しんでに 人がいるかなどの質問に いる。お 答えている。け ③前にいる児童に質問したる り,ブラック・ボックス具 の中の物を予想して答え体 たりしようとしている。の ④積極的に,各種クイズの ブラック・ボックス評 やり方等に親しんでいる。価 ⑤班の話し合い活動(クイ規 ズ作り)に積極的に参加準 している。⑥積極的にクイズ大会に参加している。(出題者側,回答者側) シルエット・クイズ 教室の様子5 指導と評価の計画 ※関:関心・意欲・態度 慣:慣れ親しむ 体:体験的理解時 学習の流れ 評価規準 評価方法○導入〔ゲーム・クイズを知る〕・部分絵カードを見せて,それが何の一部か答える。 関① 発言,行動観察第 ・水族館の絵を活用して,どんな魚がいるか,何人の人 関② 発言,行動観察1 がいるかなどの質問に答える。時 ・日本語と英語の音の違いに気付く。 慣① 発言,行動観察・漢字の成り立ちのおもしろさに気付く。 体① 発言,行動観察

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    ※ふりかえりカード○展開1〔ゲーム・クイズの確認1〕第 ・What's this? の表現に親しむ。 慣② 発言,行動観察2 ・前にいる児童に質問したり,ブラック・ボックスの中 関③ 発表,行動観察時 の物を予想して答えたりする。 ※ふりかえりカード○展開2〔ゲーム・クイズの確認2〕第 ・ヒントの英語表現(Up/ Down/ Right / Left, please. 慣③ 発表,行動観察3 …)に親しむ。時 ・日本と外国の(文化の)違いを知る。 体② 行動観察※ふりかえりカード○展開3〔ゲーム・クイズ作り〕第 ・積極的に,各種クイズのやり方等に親しむ。 関④ 行動観察4 ・班の話し合い活動(クイズ作り)に積極的に参加す 関⑤ 行動観察時 る。 ※ふりかえりカード第 ○まとめ(発展)〔クイズ大会の実施〕5 ・積極的にクイズ大会に参加する。(出題,回答) 関⑥ 発表・行動観察時 ※ふりかえりカード※ふりかえりカードは,児童が授業全般の自己評価を行うもの6 展開(第4時):簡略版本時の目標○ 英語を使った各種ゲーム・クイズに親しみ,そのやり方の確認を行う。○ 積極的にクイズ作りの話し合いに参加する。過 指導上の留意点 教程 児童の活動 学級担任の活動 ALTの活動 ◎評価の観点 材あ ・ あいさつをする。 ・あいさつをする。 Hello, everyone. ・一人一人の児童い How are you? とあいさつをする。さ Hi. Hello. I'm ・アイ・コンタクつ fine/great/hungry/ How's the weather トを行いながら(6) happy. today? あいさつする。自由な雰囲気作りウ 教師自ら楽しく,前向きに 外国語活動教室に来ォ 児童への励まし る各児童と,ALT| TTの活用 は握手をしながら英ム ・授業開始時,外国語活動教室へ移動して 語であいさつを毎回ア きた児童個々に,ALTが握手をしなが 行っている。 絵カッ ら,あいさつをする。その後,ALT, ードプ HRT二人で全体にあいさつをする。 ・身近な話題から入る。・クイズ・ゲームに関係する表現を使いながら,簡単なフリー・トークを行う。(学校の周りの紅葉がきれいだったことから,What color do you like? などの表現を入れながら会話をしていく。)復 活動1 ・その場で,必然 絵カ習 ・部分絵カード・ ・テンポよくクイズを行っていく。 的に言いたくな ード(8) ゲームやシルエ る表現なども気前 ット・クイズ, ・過去3時間で行ったやり方,表現等を使 軽に確認をして プロ時 ブラック・ボッ いながら,児童が楽しく臨めるように行 いく。 ジェの クス・クイズを う。 ◎積極的に,各種 クタ確 行う。 クイズのやり方 ー

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    認 に親しむ。 (写真を -関④ 提示)す シルエット・クイズる どこかで見たキャ 部分絵当てクイズ 実物等ラクターも登場 少しずつ見せていく。HRT,ALTの表情が生き生きとしてブラック・ボックス いて,児童をグイグ・クイズに児童は興 イ引きつけていた。味津々でした。 青と赤の役割吹き出吹き出しの小パネル しの小パネルです。には,児童各自が言 場面と役割がよく分いたいことを自由に かる。挙げていた。展 活動2開 ・持ち寄ったシル ・児童が自分たちで,ペアでクイズを行う ・児童の質問に答(22) エット・クイズ ことに対して積極的にバック・アップを えていく。をペアで出し合 する。 ・英語を使うことう。(相手を代 に対して,積極えて行う。) 的に励ましていく。ペア(2名),班(6「何のシルエット 名),赤・白組(各1か分かるかな?」 4名)とさまざまな「意外とシルエッ 小グループを活用すトにすると難し る。いな!」活動3・班ごとクイズ作 ・班ごとの話し合いに,必要に応じて質問 ・自由に考えさせりを行う。 に答えたり,アドバイスを行ったりする。 る。・アイディアを大切にさせる。「クイズづくりは ・質問に答える。なかなか難しい。 ・相談にのる。でも,楽しい ◎班の話し合い活な!」 動(クイズ作り)に積極的に参加している。-関⑤(5) Torrejon's Time ・日本と米国の文化の違いの一例を紹介す ・日本と米国の文・ALTのトレホ る。(英語を中心に使いながら) 化の違いを意識 電子文 ン先生の話を聞 ・HRTは必要に応じ,サポートする。 させる。 黒板

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    化 く。 (写の (内容) ・英語の音,アク 真等違 ALTからの紹介タ 日米の違い(本単元での4つ目) セントにも注意 の紹い イム:児童は毎回と ◇ テストの解答の丸付けの記号の違 させる。 介)を ても楽しみにしてい い。英語圏では,あっている場合, ・日本と外国の(文知 る。 ○は使わずに 印を使うことが一般 化の)違いを知る 的である。 る。「へえ~。そうなんだ!」児童の驚きの声ま ・ふりかえりをする。 ・児童の意欲面を中 All of you did a ・具体的に児童の ふりかと 心に,よかった点 good job. Your よかった点を評 えりカめ を誉める。 pronunciation is 価する。 ードwonderful.あい ・あいさつをする。 ・あいさつをする。 ・あいさつをする。 ・元気よく行う。さ Good-bye. Good-bye. Good-bye.つ See you. See you. See you.(4)Ⅴ 研究の結果と考察

    1 授業で実際に行ったゲーム・クイズの考察(5時間全体)今回の授業の中で,実際に行ったゲーム・クイズについて,授業中の様子を含めて考察してみたい。・キーワード・ゲームキーワードを決めておき,そのキーワードが聞こえたら,素早くさまざまな反応をするゲームである。今回の研究でも何回か取り入れた。児童が楽しく集中して聞き取ろうとすることがまず利点としてあげられる。単なる繰り返しではなく,そこには児童の意欲が生まれる。動作を伴うことも活動の効果を上げている。いわゆる,TPR(トータル・フィジカル・リスポンス:全身反応法)の要素が入ることになる。サイモン・セズ・ゲーム,カルタ取りゲームなどにつなげ,バラエティに富んだ活動に仕組みやすい。今回の授業の中でも,ペアになりキーワードが聞こえたら素早く2人の間に置いた英語ノートにタッチした。(消しゴムを取らせてもよい。)・部分絵カード・クイズあるものの絵(写真など)の全体ではなく,部分を提示して,それが何かを当てるクイズである。インフォメーション・ギャップを効果的に利用して,興味深く児童を活動に参加させることができた。今回の授業の中でも複数回取り入れた。インフォメーション・ギャップを作り出すために,簡単には分からないものを用意してみたが,HRTとの話し合いで,ある程度答えが予想できるもの(難しすぎないもの),児童に馴染みのあるものの方が,児童がクイズに乗ってくるのではないかというHRTの提案があった。基本的には全ての教科を教えていて,児童の実態をよくつかんでいるHRTが,提示するアイディア作成には大変適していることを再認識した。提示の仕方を工夫することで,効果的なインフォメーション・ギャップを作り出せることにも気づいた。電子黒板を利用しての,部分絵の提示も当然効果的であったが,黒板に絵カードを貼り,その上から絵を隠すもの(画用紙,磁石のついたカード等)を使い,その隠すカードをずらすことで,その絵の英語名を答えていくという形は大いに児童の興味を引いた。児童はヒントを何回も要求していた。そこには,クイズではあるが,「コミュニケーションの場面」,「コミュニケーションの働き」の活用があった。この場面で,児童は一生懸命に解答を見つけようとして,“Hint, please.”(ヒントをください),“Up, Down, Left,Right, please.”(上に,下に,左に,右に動かしてください),“That's right.”(その通り),“That's wrong.”(違います),“○○?”(○○ですか)…と,その場面の中で,多くの英語を実際

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    に使おうとしていた。コミュニケーションの働きの面からも,「相手の行動を促したい」,「伝えたい」といった,必然性の中からのつぶやきが出ていた。・シルエット・クイズ部分絵カード・クイズに近いが,子どもたちに気軽に作成させることができるクイズである。児童に大変好評であった。普段見慣れたものでも,シルエットにすると,立体から平面に移すこともあり,意外な発見もある。部分絵カード・クイズと同様に,余り複雑にしすぎないことが大切である。むしろ,難しすぎない方がゲームとして楽しめる効果的なシルエットを作ることができるかもしれない。それほど時間をかけずに準備でき,効果が大きいクイズである。今回の授業の中では,児童は教室内にある備え付けの扇風機や,授業の様子を録画しているビデオのカメラなどにも着目して,シルエットを作成していた。すぐには,答えが出ない場合も当然あり,多くの英語でのやりとりがそこには自然に生まれていた。・漢字当てクイズ今回の授業の単元の第1時で扱ったクイズである。本単元の具体の評価規準としてもかかわっている。「漢字の成り立ちの面白さに気付く」というねらいである。また,ALTにも同時に考えてもらうことで,やりとりの中から,英語のアルファベットとはまた違った漢字の面白さを,児童は感じることができた。そこには,文化の違いの面白さが多分にあったのではないだろうか。「海星」,「海老」,「海月」の題材も面白く,海老を扱ったときには,女の児童が,「腰が曲がっているから」といったことをALTに伝え,みんなで納得し,共感した雰囲気が教室に広がった。子どもたちは異文化に大変興味をもっている。2 必然性の生み出しについて(本単元の実践を通して)部分絵カード・クイズにおいて,「絵を隠しているものをどかして欲しい」,「何の絵かはっきり見たい」と児童は必然的に思う。「周りのみんなより早く答えたい」という気持ちも強いことが表情からもうかがえ,絵を隠しているパネルを「右に」,「左に」,「下に」動かして欲しいという思いが間違いなくその場にある。そして,“Right, please.”,“Left, please.”,“Down, please.”と,児童自身の思考を通して,英語のことばとして,上記のような「依頼」の発話がされていた。英語に関しては,ごく単純でやさしい2語文程度のものが中心であったが,コミュニケーションの実体験をその場面で行っているため,その充実感は大変大きいものがあったことがふりかえりカードなどからうかがえた。ペーパー上で,これらの英語を暗唱してドリル的に繰り返していくこととは大きな違いがある。もちろん,すべての表現をこのような形で体験的に扱っていくことは無理かもしれないが,体験を第一に考え,そのような場を数多く設定してあげることで,違う表現での活用においても,その体験が大きく生きてくるだろうし,自信にもつながる。少なくとも,このような実体験を伴わなければ,真のコミュニケーションとしての英語の運用は望めないであろう。児童各自がシルエット・クイズを作るおりに,「こんな言い方を使いたいな」,「こんな質問をしてみたいな」,「分かりません」,「ヒントをください」,「私にやらせてください」といった,その場面で使いたい英語を,日本語でもよいので書くスペースをワークシートに設けた。そこには,各自の必然性から生まれてくるさまざまなつぶやきが表れている。下記にいくつか紹介したい。(一部英語略)「分からない」(I don't know.) 「どこにあったの,教えて」 「ここたのしいよ」 「どんな形」 「あれは何ですか」 「答えは何ですか」 「日本で作られたものだよ」 「○○さんに尋ねてみよう」「ぼくがやりたい」(I'll do it. Let me do it.) 「あそこにあるよ」(Over there.) 「その問題いいね」 「むずかしいよ」(Difficult.)「いっしょにやろうよ」「センプーキは英語で何て言うんですか」「ガラスは英語ではなんて言うの」「英語で言って」「これは何色ですか」(What color?) 「もっとヒント,ちょうだい」(More hints,please.) など児童は,授業の中では,HRT,ALTに教えてもらいながら,その場に果敢に挑戦していた。その挑戦は決して無理のない,自然な欲求のような気がした。児童のアンケート結果からも活動に対する,意欲,充実感をうかがうことができた。

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    3 事前事後アンケートより(図1)外国語活動の時間は楽しいか。 (人) 授業の楽しさについてのアンケートである。事前には「いいえ」と回答した児童が一人いたが,事後においては0人,「はい」という回答数が伸びている。実際には普段から外国語活動の授業に楽しく臨んでいる児童が多く,指導したHRT,ALTとのよい人間関係ができている様子がうかがえていた。今回の単元では,特に主体的にゲーム・クイズに取り組んだことが,児童にとって好印象となったことが,自由記述から読み取れる。(図2)英語(外国語)で話ができたらよいと思うか。(人)事前,事後ともに「いいえ」は0人で,やはり,実際に英語(外国語)で話をしたいという児童は多く,ことばとしての外国語活動のもつ面の強さを感じる。恥ずかしさもあるが,本当のところでは,多くの児童が英語でのコミュニケーションを望んでいることが自由記述から分かる。事後では,28人中25人が英語(外国語)を話したいという高い割合である。(図3)外国のことに興味があるか。 (人) 事前,事後の結果に違いはなく,「はい」が16名,「いいえ」0名だった。ただし,事後アンケートの自由記述の中で,授業で行ったような文化的な違いを積極的に知りたいという意見が多かった。具体的には,「外国の習慣や行事を知りたい」,「外国の食べ物を知りたい」,「外国の学校についてもっと知りたい」等さまざまな記述が見られた。実際のALTやHRTなどが,感じたことを通しての,感想,驚きなどに強い興味をもっていることが授業の中からうかがえた。また,外国という枠にとらわれず,「違い」,「意外なこと」など幅広く興味をもっているようである。◇事前アンケート自由記述よりやはり,今までの授業の中で,クイズ・ゲームが印象深かったことが述べられている。さらに,さまざまなクイズ・ゲームを紹介していくと,活動の幅,興味付けも高まると感じた。また,日本と外国の文化の違い,ALTの感じている生の感想を聞きたいという児童が多くいた。外国語活動で苦手なことは,「発表すること」,「英語の発音」,「話すこと」などが何人かの児童から述べられていた。恥ずかしがらずに,人前で話したり,英語で伝えたりすることに努力をしたいという前向きな姿勢が印象的であった。HRTの日頃の指導のよい面が出ていると強く感じた。◇事後アンケート自由記述より「今回の授業で楽しかったことは?」の質問に対して,「クイズづくり,クイズ大会」,「みんなで一生懸命にやったシルエット・クイズ」,「全部楽しかった」など,主体的に活動に取り組んだこと

    はい ふつう いいえ 事前事後051015202530 事前事後

    はい ふつう いいえ 事前事後05101520 事前事後

    はい ふつう いいえ 事前事後0510152025 事前事後

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    の充実感をもった児童が多かった。4 毎時間行った,ふりかえりカードより(図4)楽しく活動できたか。 (人) 5回とも「楽しく活動できた(はい)」の割合が高い。5回の授業の中で,回を重ねるごとに割合が上がっていったという形ではなく,全般的に毎回高く,前向きな授業への取組がうかがえる。第2時において全員が「はい」という回答だったのは,ブラック・ボックス・クイズが行われて,大変授業が盛り上がったためと思われる。ブラック・ボックス・クイズでは,箱が置かれたときから児童は大変興味をもっていた。(図5)一生懸命に聞くことができたか。 (人) 第3時から5時に向けて「はい」の割合が上がってきている。これは,第5時のクイズ大会を実際に行う活動に向けて,徐々にクイズの出し方を体験したり,その場において必然的に言いたいことをたずねたりすることなど,授業の中で児童が主体的に活動にかかわっていたためと思われる。「聞きたいことがある」から一生懸命に聞こうとする自然な環境,必然がそこに生まれていた。

    (図6)自分から進んで話すことができたか。 (人) 他の質問に比べて「はい」の割合が,やや低い。これは,人の話を聞いたり,活動に一生懸命に取り組むことはできても,進んで話すことまでの行動には,やや自信がないことの表れであると思われる。この自主性については,多くの児童が前向きに取り組もうという気持ちが普段からあることが,アンケートの自由記述に表れていた。ただし,第5時の「クイズ大会をしよう」では,「はい」の割合に高い伸びがみられる。その場の学びだけでなく,積極的に話そうとする姿勢が授業からうかがえた。第1時では漢字クイズ導入もあり,発表する機会が多く,「はい」の割合がある程度高い。(図7)友達や先生となかよく活動できたか。 (人) コミュニケーションとしての思いやり,人とのかかわりへの前向きさなどをみることができる質問である。いずれも「はい」の回答が多く,一人ではなく,相手がありコミュニケーションが成立することや,コミュニケーションへの前向きさが,よい方向に出ていると言えるだろう。相手の立場に立って考えたり,相手の言わんとしていることを推測したりする体験の積み重ねを,今後も大切にしていきたい。

    051015202530

    第1時 第2時 第3時 第4時 第5時はいふつういいえ

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    第1時 第2時 第3時 第4時 第5時はいふつういいえ

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    第1時 第2時 第3時 第4時 第5時はいふつういいえ

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    第1時 第2時 第3時 第4時 第5時はいふつういいえ

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    (図8)相手の目を見てしっかりと話すことができたか。(人)日本人にとっては,やや,苦手な部分である。文化の違いもそこにはある。「しっかり相手の目を見て話す」ということを努力目標としている児童も多く,外国語に親しむ場面では,アイ・コンタクトは大切なことを把握しつつあるようである。ALTなどとのかかわり合いで,肌で感じ始めている。HRTの日常の,地道な取組が少しずつ成果を上げている様子が授業を参観していて感じられた。◇ふりかえりカード自由記述より(抜粋)※①:第1時 ②:第2時 ③:第3時 ④:第4時 ⑤:第5時〔楽しさ〕・ゲーム(漢字クイズなど)や英語のリズムが楽しかったです。①・チャンツは英語が覚えやすくなるから楽しかったです。①・アメリカの学校の様子が分かり,とても楽しかったです。②・ポケモンのシルエットがあって,ものすごく楽しかった。今度は私もシルエット・クイズを出したいです。②・自分でクイズを作るのは,とても楽しかったです。③・テストの○つけの仕方がちがっておもしろかったです。④・ゲームで箱の中に「携帯」や「メンコ」を入れて楽しかったです。④・僕の班のブラック・ボックス・ゲームでは,ほとんどの人がヒントをほしがっていなかったので,余り楽しくなかったです。④・マルセロ先生に,地球儀は英語で何というか教えてもらえてよかったです。④・いつもと違って外国の先生や日本の先生がたくさんいて,いつもよりあいさつなどをたくさんできてよかったです。⑤・今日はたくさんの先生が来たので,問題を出すための準備をすっごくはりきってやりました。⑤・英語の先生がほめてくれてうれしかったです。⑤〔自分から進んで〕・毎回やっているマルセロ先生とのあいさつも自分の体調を伝えられるようになりました。①・部分絵カード・クイズでは発言ができました。②・最初のあいさつがいつもワンパターンなので,もうちょっと違うあいさつをしたいです。③・自分から英語を話すのが苦手なので,英語をしっかりと覚えたいです。⑤・今回は自分から発言できなかったので,次はたくさん発言をしていきたいです。②・意見が言えてよかったです。②〔相手の目を見て〕・日本と外国では,ことばが違っても,相手の目を見て言えば,ことばが通じていると感じました。①〔~したい〕・信号機の違いのような,他の国の日本と違うことをもっと知りたいです。①・外国と日本との違いをたくさん知りたいです。②・大学のことも知りたいです。②・今度,家でもゲームをやってみたいと思いました。②・「分かりません」の英語を聞きたかったです。③・シルエット・クイズをやってすごく面白かったです。次はもっと難しい問題を考えたいです。④・折り紙を切って貼って,色々なシルエットクイズを作ってみたいです。④・今日は英語の先生が5人勉強を一緒にやりました。また,みんなでクイズをやりたいです。⑤〔仲よく・思いやり〕

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    ・友達,先生と仲良く活動できてよかったです。③・英語をもっと知って,外国の人とも仲良くしたいと思いました。④・自分のシルエットは「簡単かなあ」とおもっていたけれど,「意外と難しかったよ」とみんなが言ったので,びっくりしました。⑤〔その他〕・国による違いがいっぱいあるんだなあと思いました。①・マルセロ先生がけん玉の名前を当てたところがすごいと思いました。②・「ぼくに指名をしてください」という英語を知ることができました。②・シルエット・クイズ2枚目の時,みんながレベルアップして,前よりずっと難しかったです。④・ブラックボックスクイズで,久しぶりに「重い」,「軽い」の英語を教えてもらいました。④・今日は思い出になりました。⑤◇ストレスをできるだけ取り除く(自信を付けさせる)ことについてみんなの前で発表すること,自分の思いを伝えること,答えを言うこと,いずれもどの児童にとっても簡単なことではない。そこには,ストレスがつきまとう。積極的にゲーム・クイズを利用したいものである。ゲーム・クイズでは,子どもたちの素直な気持ちが出やすく,楽しさもあり,発表ということにはとらわれずに,自由に活動できる。また,ペア,グループなどの小グループの設定もしやすく,ストレスをさほど感じさせずに,取り組みやすい形にもっていくことができる。「すばらしい!みんなで拍手」,「Good. スタンディング・オベーション(ウェーブ)をやろう」など,HRTのタイミングのよい励ましが,常に活動の中にあったことが印象的であった。小学校外国語活動でねらいとする関心・意欲を高めることも,このような雰囲気,形態を作りながら,児童に地道に自信を付けさせていくいくことが大きな働きかけとなる。今回の授業においても,普段はなかなか自ら発言することのなかった児童も,外国語活動のゲーム・クイズの中で,意欲的に取り組んでいた。◇授業を行ったHRTの感想(抜粋)・「活動」と英語学習との関連①主要表現が“What's this?”に絞られていたことにより,子どもたちには,同一表現を毎時間意識させることが意図的にできた。さらに,主要表現は変えずに,毎時間「クイズの種類」を変えていくことが可能であり,子どもの集中力や関心を持続させるのに有効な学習内容である。②主要表現とそれに付随して引き出していく「関連表現」は,子どもたちの活動を円滑にするために不可欠となる。活動の中で自然な形で子どもたちの方から必要だと気づかせる働きかけが「HRTの意識の中に指導技術」として大切である。(ア 使いたくなる イ 知りたくなる ウ 質問と受け答えとしての会話の成立を図れること…話せた・聞けたの実感を生む…HRTとして常に意識している点)この場合,HRTは,英語表現に精通している必要はなく,この活動を通して,どんな表現や言い方がALTから聞き出せるか,その授業の中で常にタイミングをはかる必要があり,まずは「自分もこの言い方が使えたらいい」と思う表現を子どもの代わりに代弁してサンプルを示すことである。その後は,学習の中や,学習感想などの中,子どもからの声を授業に反映していくと,参加意識が高まる。(例)関連表現 当たり(正解だよ) おしい 残念でした もう一回お願い分からないよ ヒントくれない? 次の人はだれ? etc. ※アンダーラインはHRT◇授業を行ったALTの感想(抜粋)In the end, I felt that most of the students had grasped the words we were tryingto impart upon them, but were in a way utilizing them on their own. That, to me, isreally the essence of learning a new language:taking something unknown and in turnmaking it one's own.*grasp:つかむ *impart:伝える *utilizize:使う *in turn:順に児童が英語(単語)を自分のものとしていく過程にふれ,新しいことばを習う本質について述べている。今回の授業からその一端がうかがえたことに言及している。 ※アンダーラインは筆者

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    ◇授業に参加した研究協力員の先生方の感想(抜粋)・児童のモティべーションが高まっていた。語りたい,言いたいという気持ちの高まりを喚起することができた授業であった。・“What's this?”というフレーズに関して,児童が,指導者から言わされている感覚をもつことなく,自発的に“What's this?”を何度も繰り返して発話していた。・児童が思わず自発的に発話してしまうような場を授業の中に位置付けていたことがクイズの効果であると感じた。・授業者が常にゆったりと構え,少しでも英語を使っている児童を大いに誉め,自信をもたせていたことがすばらしかった。◇授業に参加したALTの感想(児童にとっては初めて会うALT)(抜粋)The homeroom teacher had a very creative teaching tool that was simple yeteffective. He had made small chalkboards in the shape of speech bubbles that he wouldwrite down words or phrases in English for the students to say.*effective:効果的である吹き出しのセリフ記入パネルの効果等について述べている。 ※アンダーラインは筆者◇教材・教具の魅力について今回の単元で使用した主な教材・教具について,その内容と効果について簡単に分析してみたい。・ワークシート2種類①「絶対使ってみるよ,この言い方」シート,②「友達とシルエット・クイズをやってみよう」シート ※詳しくはCD補助資料参照※いずれも,日本語での記入OKで,自由にアイディア,言いたいことを書き込んだり,シルエットを描いたりできるワークシート。・「英語ノート1」準拠ICT教材チャンツの音源や,教材の視覚的提示が自由にできるもの。今回の授業は,基本的には「英語ノート1」をベースに行っているため,多くの部分が活用できた。・絵カード一部,HRT自作の絵カードもあったが,市販の絵カードを積極的に活用した。提示方法の工夫で,市販の絵カードでもバラエティに富んだ活用が可能であった。スモール絵カードとして名刺大のもの,掲示用の絵カード(大)と基本的には同じ絵で,併用しながら使うことで,キーワード・ゲーム,カルタ取りゲームなど活用範囲は広くなる。・吹き出しのセリフ記入パネル(マグネット式)国語科用に市販されているものである。黒板に貼り,対話する形で色の違ったパネルを使い,やりとりが分かりやすく提示できていた。児童にとって,実際に言おうとすることが,視覚的にイメージでき,コミュケーションの役割,場を理解させるのに大変効果的であった。・多目的スペース,広い空間(教材・教具とは言えないかもしれないが)児童用の机のない,椅子だけの部屋。自由な空間作り,グループ編成がやりやすかった。すべての学校において,常設できるわけではないが,こういった部屋があると,活動の幅が広がると思われる。新鮮で自由な雰囲気を作り出しやすく,場の設定が自由にできる。・BGMストレスの緩和にもつながる。今回の授業でも,活動のBGMとして何回か使用した。教材・教具をどう活用するかについては,子どもの実態をよく知っているHRTの役割が大きい。どのような教材・教具を,どのようにタイミングで,どう活用するか,HRTが積極的に計画していくとよい。Ⅵ 研究のまとめと今後の課題本研究では,ゲーム・クイズを通して児童のコミュニケーションへの関心・意欲をいかに高めることができるかを考察してきた。まず,考えなければいけないことは,ゲーム・クイズそのものがもっている楽しさ,興味深さを効果的に利用することである。これらの活動では,児童の気持ちが解放された状態で,英語(外国語)にふれ,英語(外国語)を使うことができる。その効果は,児童のアンケートの記述からもいくつか把握できた。ゲーム・クイズの特性を生かした上で,次のことに留意し

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    ていくことが大切であることが分かった。〔確認できたこと(成果)〕①そのゲーム・クイズ活動のねらいを毎回きちんとおさえること。②一単位時間だけでなく,単元,1か月,学期,年間というスパン(時間・期間)の中で,その活動が果たしている役割をしっかりおさえること。③同じ形のクイズ・ゲームであっても,提示方法,実施方法等の検討を積極的に行い,ねらいに基づいた活動の高まり,児童の意欲の継続を図ること。④活動時の児童個々のストレスをできるだけ取り除く努力をし,積極的に励まし,自信をもたせる工夫を日頃から行っていくこと。⑤児童が受け身でなく,主体的に取り組む活動を取り入れ,コミュニケーションの相手を意識し,自分の頭で考えたり,発信したりできる機会を積極的に作ること。(「コミュニケーションの場面」,「コミュニケーションの働き」を主体的に体験できる貴重な時間であるととらえる。)上記①にかかわり,今回の授業では,スキル(技能)習得を目指した授業ではなかったことがしっかりおさえられていた。「楽しむ,親しむ」授業であることが児童に浸透していた。単に楽しかったで終わらないためにも,その活動のねらいが何であるのか,まず,考えなければいけない。②にかかわり,小学校外国語活動においては,中学校の外国語科と違い,言語材料が先にあるのではなく,コミュニケーション活動を先に考えていくことが一般的であろう。この点については,外国語活動の特徴といってもよいと思われる。その点からもある程度のスパンの中で,例えばゲーム・クイズをどのような種類をどういった形で,何回くらい取り入れていくのかという見通し(あるいは継続した各授業の振り返り)が大切である。英語圏などを中心として外国語教育に用いられているテキストなども,活動のねらい,形態等細かな分析がされていることが一般的である。Aims Skills-speakingLanguage-asking questions, giving reasonsOther-observationLevel IntermediateOrganization Groups of six to seven students eachPreparation NoneTime 10-15 minutesProcedure Step1:The student are divided into groups.….Keep Talking: Communicative fluency activities for language teaching(Kippel,1991より)上記のような視点でゲーム・クイズが分析されている。ただし,この例のSkillsという表記には注意したい。外国語活動においてはスキルの獲得ではないことをおさえておく必要がある。③にかかわり,同じ形のクイズ・ゲームであっても教師側の提示の仕方,グループ形態を変えるなど,ちょっとした工夫で児童の意欲を高めることが可能である。部分絵当てクイズなど,パワーポイントでの提示,黒板を使いながらの提示等,児童の関心は大変高かった。④にかかわり,今回の授業実践から,HRT,ALTの「明るい雰囲気」,「英語(外国語)を楽しんで使おうとする姿勢」が児童によく浸透していた。児童は恥ずかしがらず,いやがらず活動に参加していた。英語(外国語)を好意的に,かつ,無理のないように受け入れさせようとする指導者側の姿勢があった。このことはコミュニケーションへの関心・意欲を高める上での,大きなポイントである。また,HRTが児童に自信をもたせるための働きかけを積極的に行っていた。「よくできましたね」,「がんばりましたね」,「大きな声で言えましたね」,「すごいアイデアだね。先生も気付かなかった」,「すごい。はい,みんなで拍手!」「素晴らしい。みんなでスタンディング・オベーション(ウェーブ)をやろう」など,学級担任ならではの,効果的な心にしみる励ましを随所で行い,児童もその励ましを素直に受け止めていた。⑤にかかわり,児童自らが考案したゲーム・クイズを自分たちで出題することで,回答者にゲーム・クイズに対して愛着と親近感があった。(他人から与えられたゲーム・クイズを,ただ単に,真似して言う(言わされる)という形ではなかった。活動に児童の思い入れがあることは,主体的な取組を目指す上で,とても大きな影響を及ぼす。ゲーム・クイズを中心に扱いながら,コミュニケーションの場面,働きを意識して活動を行ってきた。そこからは,必然性,インフォメーション・ギャップ,自信などの大切なポイントを再確認することができた。

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    今回,ゲーム・クイズを主に活用しながら,児童の関心・意欲をいかに高めるかの研究の一実践を行った。いくつかの具体的な工夫の一端を示すことができたのではないかと考える。研究を通して最も強く感じたことは,指導するHRT(TTの時には,ALTの先生も含め)の,子どもの実態に即した,アイディア,励まし,人間関係の構築などが,外国語活動で大きなウェイトを占めるということである。外国語活動は,やはり,HRTが主体となってかかわっていくことが必要である。今後の課題としては,下記の4項目を挙げたい。多くの授業実践の中から,アイディアを共有していくことが大切だと考える。〔今後の課題〕(1)児童がゲーム・クイズの活動に,さらに主体的に取り組む工夫の研究(2)HRT単独の授業,HRT・ALTのTTの授業等さまざまな形態における,ゲーム・クイズの活動の提示方法,組み立て方の研究(3)ゲーム・クイズの活動の教材をいかに効率よく準備していくかの研究(4)年間を見通したゲーム・クイズの活動と他の学習活動とのバランスの在り方の研究最後に,この研究が,今後の外国語活動の実践に少しでも役に立つことを願うとともに,協力をいただいた研究協力校及び研究協力員の先生方に,心より感謝したい。引用・参考文献・文部科学省 (2008). 小学校学習指導要領-外国語活動-・文部科学省 (2008). 中学校学習指導要領-外国語-・文部科学省 (2009). 高等学校学習指導要領-外国語-・文部科学省 (2009). 『英語ノート1』・文部科学省 (2009). 『英語ノート指導資料1』・松川禮子・大城賢(共編著). (2008).『小学校外国語活動実践マニュアル』 旺文社・Savingnon, S.J.(1983). Communicative Competence:Theory and Classroom Practice.Reading, MA:Addison Wesley.・Kippel, F.(1991). Keep Talking:Communicative fluency activities for language teaching.Cambridge. Cambridge University Press.・菅正隆 (編著). (2008). 『小学校英語活動ガイドブック』 ぎょうせい・吉田研作.(2006). 『新しい英語教育へのチャレンジ』 くもん出版・田中武夫・田中知聡.(2003). 『「自己表現活動」を取り入れた英語授業』 大修館書店・田中武夫・田中知聡.(2009). 『英語教師のための発問テクニック』 大修館書店・クラッシェン/テレル著 藤森和子訳. (1986).『ナチュラル・アプローチのすすめ』 大修館書店・東後勝明. (1993). 『英会話 最後の挑戦-コミュニカティブ・アプローチによる最新学習法-』 講談社・松川禮子・大下邦彦. (2007). 『小学校英語と中学校英語を結ぶ-英語教育における小中連携-』高陵社書店・白井恭弘.(2008). 『外国語学習の科学』 岩波書店・白井恭弘.(2004). 『外国語学習に成功する人,しない人』 岩波書店研究協力校・韮崎市立韮崎北西小学校 校長 平賀 光研究協力員 平成21年度 山梨県総合教育センター・韮崎市立韮崎北西小学校 教諭 小池 礼治・笛吹市立境川小学校 教諭 堀田 誠 執 筆 者 研修主事 坂本 祐二・南アルプス市立南湖小学校 教諭 湯泉 恵美子