31
全般的な研究開発成果 通信ネットワーク技術 帯域保証、高速通信の核となる光、ワイヤレス、衛星などのネットワーク基盤を実現する技術 G-NW-1 G-NW-2 G-NW-3 G-NW-4 G-NW-5 G-NW-6 G-NW-7 G-NW-8 G-NW-9 G-NW-10 G-NW-11 G-NW-12 G-NW-13 G-NW-14 G-NW-15 FTTHFTTC 中高速IPアクセス(メタル) 離島向けアクセス 維持・高度化(アクセス) 光アクセスシステム技術 電話系高度インテリジェントネットワーク IPネットワーク 維持・高度化(電話網:ノード) ネットワーク制御サーバ技術 光ネットワーク(リンク) 超高速・超広帯域化 離島/災害対策用通信(海底光ケーブルシステム) 離島/災害対策用通信(インフラ衛星通信システム) リング形波長多重システム(リンク) リンク装置維持・高度化 目次 G-NW-16 G-NW-17 G-NW-18 G-NW-19 G-NW-20 G-NW-21 G-NW-22 G-NW-23 G-NW-24 G-NW-25 G-NW-26 G-NW-27 G-NW-28 G-NW-29 G-NW-30 ネットワーク装置・サーバ関連OpS り障範囲・原因箇所特定システム トラヒック設計・管理・制御技術 ネットワーク品質設計管理技術 基盤設備施工技術(曲げフリー光ファイバコード) 光ケーブルの保守・運用技術 基盤設備の維持・高度化(巨視的超音波RC劣化診断システム) 基盤設備の維持・高度化(積雪地域用マンホール鉄蓋の開発) 基盤設備の維持・高度化(通信地下設備の耐震技術) 基盤設備の維持・高度化(風圧荷重低減設計技術) 超大容量新光伝送路 光配線法(光アクセス設備) 未来ネットワーク(フォトニックネットワーク) 次世代超高速・大容量伝送用光デバイス 通信EMC技術

通信ネットワーク技術 - NTT · 2019-09-02 · 既存設備(メタル線)を利用した安価なadslは、昨今のインターネット通信の爆発的な需要に

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全般的な研究開発成果

通信ネットワーク技術

帯域保証、高速通信の核となる光、ワイヤレス、衛星などのネットワーク基盤を実現する技術

G-NW-1

G-NW-2

G-NW-3

G-NW-4

G-NW-5

G-NW-6

G-NW-7

G-NW-8

G-NW-9

G-NW-10

G-NW-11

G-NW-12

G-NW-13

G-NW-14

G-NW-15

FTTH/FTTC

中高速IPアクセス(メタル)

離島向けアクセス

維持・高度化(アクセス)

光アクセスシステム技術

電話系高度インテリジェントネットワーク

IPネットワーク

維持・高度化(電話網:ノード)

ネットワーク制御サーバ技術

光ネットワーク(リンク)

超高速・超広帯域化

離島/災害対策用通信(海底光ケーブルシステム)

離島/災害対策用通信(インフラ衛星通信システム)

リング形波長多重システム(リンク)

リンク装置維持・高度化

目次 G-NW-16

G-NW-17

G-NW-18

G-NW-19

G-NW-20

G-NW-21

G-NW-22

G-NW-23

G-NW-24

G-NW-25

G-NW-26

G-NW-27

G-NW-28

G-NW-29

G-NW-30

ネットワーク装置・サーバ関連OpS

り障範囲・原因箇所特定システム

トラヒック設計・管理・制御技術

ネットワーク品質設計管理技術

基盤設備施工技術(曲げフリー光ファイバコード)

光ケーブルの保守・運用技術

基盤設備の維持・高度化(巨視的超音波RC劣化診断システム)

基盤設備の維持・高度化(積雪地域用マンホール鉄蓋の開発)

基盤設備の維持・高度化(通信地下設備の耐震技術)

基盤設備の維持・高度化(風圧荷重低減設計技術)

超大容量新光伝送路

光配線法(光アクセス設備)

未来ネットワーク(フォトニックネットワーク)

次世代超高速・大容量伝送用光デバイス

通信EMC技術

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NTT研究開発この一年(2012年報)

通信ネットワーク技術 全般的な 研究開発成果

FTTH/FTTC

概 要

G-NW-1

アクセス系においては、より高速で、距離に依存しない安定品質が求められており、多様なお

客さまのご要望に効率的に即応できるよう、従来のメタルから光アクセスネットワークへの移

行を進めています。そのため、光ファイバによる高速アクセスに関する研究開発に取り組み、

経済的な光伝送/システム構成技術、および多様な光アクセスシステムの展開を支えるオペ

レーション技術などの研究開発も行っています。

複数のお客さまで光ファイバを共有可能な光アクセス技術(PON*1技術)を確立し、FTTH*2方

式による低料金で、かつ安定した100M~1Gbit/sクラスのブロードバンドアクセスサービスの

提供を実現しています。また、従来メタルケーブルで提供してきたサービスについても、すでに

FTTC*3方式によるサービス提供を実現しています。

*1 PON: Passive Optical Network *2 FTTH: Fiber To The Home *3 FTTC: Fiber To The Curb

●光アクセスネットワークの構築例

電話網

光宅内装置

光局内装置

光アクセス網制御監視システム

交換機

光ファイバ メタルケーブル

監視制御網

光所外装置

光アクセス ネットワーク

FTTH

FTTC

地域IP網など

NTT収容ビル 光アクセス網におけるサービス監視制御技術の開発

光アクセスによるブロードバンド/既存サービス提供技術の開発

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通信ネットワーク技術 全般的な 研究開発成果

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NTT研究開発この一年(2012年報)

中高速IPアクセス(メタル)

概 要

G-NW-2

アクセス系ネットワークにおいて、現在約700万回線を収容するADSL*1は、1.5M、8M、12M、

24M、40M、さらに上り5M/下り47Mのサービスを展開しており、NTTでは、ユーザのニーズに

応えるため高速化、長延化に関する技術の確立と効率的なフィールド運用を行っています。

既存設備(メタル線)を利用した安価なADSLは、昨今のインターネット通信の爆発的な需要に

応えるシステムです。2000年の1.5Mサービス提供開始から2004年の上り5M/下り47M

サービスに至るまで、高速化および長延化に関する技術の向上と並行して、NTTでは、日本の

ISDN方式(TCM-ISDN*2方式)への影響を抑える伝送方式の検討、標準化について貢献し、

相互接続性の確認なども併せて実施してきました。さらに、既存の電話サービスとの親和性を

高めています。また、上り5M/下り47Mサービスにおいては、接続モードを多数導入している

ことから、ユーザにとって最適なモードで接続することが可能です。

*1 ADSL: Asymmetric Digital Subscriber Line *2 TCM-ISDN: Time Compression Multiplexing-Integrated Services Digital Network

●DSLサービスの設備構成例

エンドユーザ

振り分け

ADSL モデム

ISP #A

ISP #C

ISP #B

電話網

NTT収容ビル

DSLAM

監視制御網

NE-OpS

交換機

0 4 26

PO

TS

Power

周波数 【kHz】

ADSL信号

UNI

NNI

NNI

NNI

スプリッタ

スプリッタ

DSLAM: Digital Subscriber Line Access Multiplexer ISP: Internet Services Provider NE-OpS: Network Element-Operation System POTS: Plain Old Telephone Service

:ルータ

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離島向けアクセス

概 要

G-NW-3

遠隔励起増幅技術と波長多重技術を組み合わせ、無中継伝送距離と伝送容量を拡大した

「離島通信用海底ケーブルシステム」を開発しました。

具体的には、海底ケーブルの途中に光ファイバアンプを配置し、陸揚ビルからその海底光ケー

ブルを通じて励起光(波長1.48μm)を送り、当該アンプを動作させることで信号光(波長

1.55μm帯)のパワーを増幅し、従来よりも伝送距離を延ばしています。また、この励起光は

ラマン光増幅の効果も誘導するため、より一層長い距離を伝送することができます。さらに、

信号光を波長多重することで、大容量化を実現させています。

このシステムを実現するため、信号光と励起光の波長帯において低損失で、かつ大光パワー

(1W程度)での光ファイバ長期信頼性を有する海底光ケーブルを開発しました。これにより、

信頼性のある長距離の無中継伝送システムが実現されました。

また、海底光ケーブルを確実に建設・保守するため、遠隔励起増幅方式に対応した成端・試

験システムを開発しました。本システムは、大パワー信号光が通る海底光ケーブルを安全に成

端するとともに、従来より長延化された海底ケーブルを両陸揚ビルから試験・監視します。

●遠隔励起増幅と波長多重を用いたシステムの構成

開発した低損失海底光ケーブル 低損失光ファイバ (0.185dB/km以下:波長1.55μm帯)

光ユニット

コンパウンド

鋼線

銅パイプ

PEシース

信号

光パ

ワー

光ファイバアンプ (接続函内)

励起光 1.48 μ m 信号光 1.55 μ m 帯

ラマン増幅

距 離

光ファイバによる増幅

成端・試験システム

送信

受信 励起光源

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維持・高度化(アクセス)

概 要

G-NW-4

将来の高速広帯域サービスへの対応、および老朽化したメタリック設備による電話サービスを

更改するために、NTTでは、これまで光ファイバを用いたアクセスシステムの研究開発を世界

に先駆けて進め、また、実運用システムとして導入を進めてきました。これらシステムは、現在、

NTTのアクセスネットワークの基盤となっており、システムの安定した維持と高度化のための研

究開発を進めています。

電話サービスの安定した維持のためには、すでに導入されたシステムの定常的な保守が必要

です。これまで、導入されたすべてのシステムに対し、不具合や故障時のシステムの解析を

行い、より安定したシステムとするための改良を行っています。

早期に導入されたシステムには陳腐化しているものがあり、また部品枯渇により維持が困難

となっている装置も存在します。現在、これらシステムを安定運用するため、旧式の初期型シ

ステムを現行型システムへ移行することを進めています。移行にあたり、これまで収容していた

装置のインタフェースやサービスを移行先の装置でも利用できるように新たな機能を追加して

います。また、システムの安定した保守運用を可能とするために、技術革新に伴い旧式化した

部品を新たな部品へ代用可能とするために、基板レベルでの装置の再設計を行っています。

●アクセスネットワークの構成例

RT: Remote Terminal(屋外やユーザビル内に設置される光・電気信号変換装置) CT: Central Terminal(設備センター内に設置される光・電気信号変換装置) ONU: Optical Network Unit(宅内、屋外に設置される光・電気信号変換装置) OLT: Optical Line Terminal(設備センター内に設置される光・電気信号変換装置) LXM: Line Cross Connect Module(CTやOLTなどの電話回線信号を交換機などのノードへ接続する装置)

屋外装置など

CT

アクセスネットワーク

光ファイバ

光ファイバ

光ファイバ

専用線ノード

装置など

初期型 LXM

NTT設備センター

現行 LXM

電話系交換機

など

RT

ONU

ONU

ONU

ONU

ONU

ONU

OLT

OLT

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光アクセスシステム技術

概 要

G-NW-5

複数のお客さまで光ファイバを共有可能な光アクセスシステム技術にPON方式がありますが、

そのPON方式の一つとして、GE-PON*1(ギガビットイーサPON)技術を確立しています。GE-

PONは、IEEE*2(米国電気電子技術者協会)のタスクフォースにおいて、標準化された高速光

アクセス方式です。将来のブロードバンド需要に応えられる広帯域なアクセスパスを確保する

とともに、LANで普及しているEthernet技術を活用することによる大幅なコストダウンを実現し

ています。

(1)NTT局内に設置されるOLT*3、およびお客さま宅に設置されるONU*4にて構成されるシス

テムです。

(2)局内装置、および光ファイバを最大32のユーザで共有する方式のため、経済的にアクセ

ス系の光化を実現できます。

(3)最大1Gbit/s(ギガビット毎秒)のアクセス速度を有するアクセスシステムのため、高速/

広帯域なアクセス回線を提供可能です。

(4)1つのPONシステムに32ユーザが接続された場合でも、最大帯域設定により、ヘビーユー

ザの影響を最小限に留めることが可能です。

(5)IEEE 802.3ahに準拠しており、マルチベンダ接続が可能です。

(6)汎用的なEthernet技術を利用しているため、イーサネット系サービスとの親和性が高い

です。

*1 GE-PON: Gigabit Ethernet-Passive Optical Network *2 IEEE: The Institute of Electrical and Electronics Engineers, Inc. *3 OLT: Optical Line Terminal *4 ONU: Optical Network Unit

●GE-PONを用いた光アクセスシステムの設備構成例

OLT

光スプリッタ

コンテンツ サーバ

PC

IP電話

お客さま宅 NTT局 上下1Gbit/s

ONU

:VoIP-TA、ルータなど

最大32分岐

インターネット

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NTT研究開発この一年(2012年報)

電話系高度インテリジェントネットワーク

概 要

G-NW-6

電話系高度インテリジェントネットワーク(高度IN)は、さまざまな通信サービスを早期に安く提

供するために、サービスの提供に必要な共通機能をプラットフォームとして構築し、サービス特

有の処理をこのプラットフォーム上のソフトウェアとしてパッケージ化します。また、このサービス

特有の処理用ソフトウェアを自動生成する環境を用意し、従来の通信サービス開発に比べて

大幅に開発工数を削減可能としています。

近年、社会生活の多様化が進展するに伴い、通信においても多様なサービスを早期に、かつ

低コストで提供できる仕組みが求められています。高度インテリジェントネットワーク(高度IN)

ではこの要求に応えるため、まず、ネットワーク内でサービス特有機能を高機能系ノードとして

交換機から分離します。そして、サービス特有処理をSLP*1、MLP*2、OLP*3といった独立した

ソフトウェアとしてこの高機能系ノードに集中配備し、ノード間の通信インタフェースをサービス

に依存しない規定としています。これにより、高機能系ノード内に閉じてサービスの追加/変

更ができ、低コストでサービス提供ができるようになります。さらに、サービス生成環境という

SLP、MLP、OLPを自動的に生成できる仕組みを提供していますので、サービスの開発期間が

大幅に短縮でき、サービスを必要なときにタイムリーに提供できます。

これまで、高度INは固定電話網のサービス提供用プラットフォームとして、さまざまなサービス

に導入されています。

*1 SLP: Service Logic Program *2 MLP: Management Logic Program *3 OLP: Operation Logic Program

●高度INシステムの概要

GUI: Graphical User Interface SMS: Service Management System TMN: Telecommunication Management Network MHN-SCP: Multimedia Handling Node-Service Control Point MHN-SCP-OpS: MHN-SCP-Operation System INAP: Intelligent Network Application Protocol CAP: CAMEL Application Part IROS: Interface for Realtime Operating System SA: Service Agent BCSM: Basic Call State Model

高機能系ノード

SMS

MHN-SCP-OpS

MHN-SCP

交換機

・ 高度なGUIによるサービス仕様入力 ・ カスタマイズドサービス定義 ・ 設計/変換知識データベースを用いた各種

サー ビス固有ソフトウェア(SLP, MLP, OLP)の自動生成検証

SCE

カスタマ 端末

交換機における基本呼処理をBCSMによりモデル化

GUI

MLP/OLP

SLP

外部サーバ(SAなど) IP連携

・ サービス共通なプラットフォームとSLPを用いたサービス制御

・ 国際標準プロトコル(INAP, CAP)による交換機との接続

・ 標準OSインタフェース(IROS)

・ 広域設備オペレーション ・ ソフトウェアオペレーション ・ 標準保守運用インタフェース(TMN)

カスタマコントロール

・ サービス共通なプラットフォームとMLP, OLPを用いたサービス管理・オペレーション

・ 標準保守運用インタフェース(TMN) ・ 24時間連続運転

情 報転送網

ダウンロード

インターネット

共通線信号網

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IPネットワーク

概 要

G-NW-7

次世代ネットワークのIPネットワークでは、光アクセスを利用したブロードバンドユーザが数千万規模となることを見据えた拡張性、さまざまなアプリケーションを各々の要求品質で提供するための品質制御、不正アクセスなどを抑止する高いセキュリティが求められることから、次のような技術が重要となります。

(1)大規模ネットワークを考慮した階層化によるシンプルなネットワーク構成と、IPv4/IPv6*

デュアル体系を具備した拡張性のあるネットワークデザイン

(2)ネットワーク帯域をセッション単位に管理し、必要な都度リソース割り当てを行うことによる通信品質制御機能

(3)事業者間接続のためのセキュリティ機能

NTT研究所では、上記(1)(2)(3)の実現に向けて、IPネットワークのデザインの研究開発を進めるとともに、IPネットワークの主な構成要素である大容量コアルータ、サービスエッジ、ゲートウェイ群の研究開発を進めています。

具体的には、IPネットワークでは、大容量コアルータとサービスエッジからなる階層化構成、およびネットワークとしての冗長化構成を採用することによるシンプルかつ高信頼な網構成の実現、IPv4とIPv6で同一の論理構成とルーティング方式をとることによるIPv6の普及を見越した拡張性のあるルーティングデザイン、ネットワーク的な冗長化を行うことによる大規模かつ高信頼なマルチキャストルーティング方式、IPパケットの転送優先制御を利用することによるさまざまな通信サービスに対応した品質クラスの提供などについて、研究開発を進めています。

大容量コアルータでは、Tbit/s級への拡張性と装置内の冗長化構成、IPパケットの転送優先制御機能などについて、研究開発を進めています。

サービスエッジでは、サービス制御層のサーバと連携した、受付制御機能、およびトラヒック監視制御機能から成り立つエンドツーエンドの通信品質制御機能、優先度の高い通信品質への不正アクセス制御機能などについて、研究開発を進めています。

ゲートウェイ群では、他網接続時に必要となるセキュリティ機能、通信品質制御機能などについて、研究開発を進めています。

* IPv4/IPv6: Internet Protocol version 4/Internet Protocol version 6

● 次世代ネットワークのIPネットワーク

アプリケーションサーバ群

サービス制御層サーバ群

GE-PON

ONU

GE-PON

コアネットワーク層(IPネットワーク)

ゲート ウェイ群

SNI =

ONU

HGW HGW

ISP

他IP 電話

NNI

= UNI

IP 電話

情報 家電

リンク系装置

アクセスネットワーク層

大容量 コアルータ

サービス エッジ

サービス エッジ

大容量 コアルータ PSTN

= UNI

SNI: Application Server-Network Interface PSTN: Public Switched Telephone Network GE-PON: Gigabit Ethernet-Passive Optical Network UNI: User-Network Interface

ISP: Internet Service Provider NNI: Network-Network Interface ONU: Optical Network Unit HGW: Home Gateway

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維持・高度化(電話網:ノード)

概 要

G-NW-8

電話網のノードに関するハードウェアにおいて発生した問題に対する原因調査、解析、対処・

検討などの維持管理技術開発を行っています。

電話網のノード(加入者交換機および中継交換機)は、通信インフラの基盤を構成する主要

装置であり、NTTグループで数千台が稼動しており、これを維持することが課題です。

このため、ノードのハードウェアにおいて、問題が発生した場合、仕様にかかわる問題点の解

析および対処法の検討・確認を行うとともに、研究所の試験環境における再現検証などを実

施しています。これにより迅速な正常動作回復につなげています。

一方、他事業者との接続やVoIP*網との接続にあたって、新規装置とノードとの接続が発生す

る場合には、接続正常性を確保するため、仕様確認や動作確認検証などを実施しています。

* VoIP: Voice over Internet Protocol

●維持・高度化の取り組み概要

注)ノード間にある伝送装置などの記載を 省略しています

ノード(中継交換機)

ノード(加入者交換機)

他事業者網やVoIP網

問題点の解析・対処

試験環境での再現検証

他網との動作確認検証

ノード(加入者交換機)

お客さま(電話) お客さま(電話)

NTT電話網

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ネットワーク制御サーバ技術

概 要

G-NW-9

次世代ネットワークにおけるネットワーク制御サーバ群は、国際標準に準拠した技術を適用し、

オープンなインタフェースの提供、アプリケーションに応じた通信品質の確保による高品質な

音声・映像のインタラクティブ通信、コンテンツ配信のユニキャスト通信・マルチキャスト通信の

制御を実現します。

また、セキュリティ確保や数千万の利用に適用可能な処理能力と拡張性を確保するとともに、

従来の電話網で培ったノウハウを適用して、安心・安全なサービスの提供に向けて取り組んで

います。

具体的には、セッション制御サーバなどがサービスエッジやゲートウェイと連携することなどに

より、

(1)発信者のなりすまし防止などのセキュリティ対策

(2)通信開始時にネットワークリソースの過不足を判断、適切な帯域を予約・確保する受付制

御機能

(3)異常トラヒックなどがネットワークへ流入するのを防ぐ通信トラヒック制御機能

などを実現する基盤技術の研究開発を行っています。

また、システムの信頼性向上に向けては、既存電話交換機の技術ノウハウを生かし、大容量

サーバの安定運転、性能・収容能力向上に向けた評価、冗長化と局所修正によるサービス無

中断のシステムソフトウェア入れ換え・故障時のハード交換の技術、災害からの復旧時間短縮

技術、さらに、通信が集中した際のトラヒック制御による安定運転・重要通信の確保技術など

の研究開発を進めています。

●次世代ネットワークにおけるネットワーク制御サーバ技術

SNI: Application Server-Network Interface ISP: Internet Service Provider PSTN: Public Switched Telephone Network NNI: Network-Network Interface GE-PON: Gigabit Ethernet-Passive Optical Network ONU: Optical Network Unit UNI: User-Network Interface HGW: Home Gateway

技術項目の図版(写真/図表)

次世代ネットワーク

IP電話 HGW

GE-PON

ONU

情報家電

アプリケーション サーバ

IP電話 HGW

GE-PON

ONU

情報家電

SNI =

PSTN

他IP 電話

NNI

= UNI

コアネットワーク層

サービス制御層

プラットフォーム・アプリケーションサーバ群

・・・

ISP

各種ネットワーク制御 サーバ

セッション制御 サーバ

アクセスネットワーク層

リンク系装置

ネットワーク制御サーバ技術

連携による通信トラヒック制御

アプリケーション サーバ

コア ルータ

コア ルータ

ゲート ウェイ群

サービス エッジ

サービス エッジ

= UNI

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光ネットワーク(リンク)

概 要

G-NW-10

大容量光クロスコネクト装置は、大容量化するIP需要に対応するために、従来の電気的クロ

スコネクト技術の限界を超えるTbit/s超級のクロスコネクトを経済的に実現するものです。

近年、高速大容量信号を柔軟に設定解除/経路変更したいというニーズが顕在化してきま

した。このニーズを満足させ、経済的なネットワークを構築できるような光クロスコネクト装置と

その適用による光ネットワーク技術を開発しています。大容量光クロスコネクト装置(OXC*1)

は、コアスイッチファブリックに大規模光スイッチを採用し、数百規模の10Gbit/から

100Gbit/s級信号光を電気レベルではなく、光のままクロスコネクトすることが可能で、装置

の小型化、低消費電力化に有利です。それぞれの光クロスコネクト装置は、光ファイバ伝送路、

もしくは既設DWDM*2伝送路を介して接続され、任意の2つの光クロスコネクト装置間に光パ

スを張り、ルータや既存SDH*3伝送装置、および交換機などと接続することが可能です。光パ

スの冗長方式は、故障時に信号復旧を高速で実施できる1+1光プロテクションなどにより、

50ms以下での現用系/予備系パスの切り替えが可能です。複数の光クロスコネクト装置お

よび光パスは、監視制御装置により、DCN*4を介して、遠隔監視制御することが可能です。

*1 OXC: Optical Cross Connect *2 DWDM: Dense Wavelength Division Multiplexing *3 SDH: Synchronous Digital Hierarchy *4 DCN: Data Communications Network

●光ネットワークシステムへの適用例

ルータ

OXC

監視制御装置

遠隔光パス監視制御

・10Gbit/sの光パスを提供 ・50ms以内での光パス救済

ルータ OXC

OXC

OXC

OXC

:光パス

:光パス切替 光パス切替:

DCN

ルータ

ルータ

交換機

交換機

交換機

SDH装置

SDH装置

SDH装置

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通信ネットワーク技術 全般的な 研究開発成果

超高速・超広帯域化

概 要

G-NW-11

次世代光ネットワークのバックボーン、およびメトロポリタン網の経済化を目的として、NTTで

開発・導入した40Gbit/s光リンクシステムのさらなる性能向上をめざし、100Gbit/s級の超

高速多重伝送技術や、1本の光ファイバへ収容する信号波長数を増加し、長距離を伝送する

大容量化波長多重技術(WDM*)/長距離化伝送技術の研究を行っています。また、低速か

ら10Gクラスの高速広帯域な大容量パスまでの多様なトラヒックを柔軟かつ経済的に収容す

るための多重化端局構成技術の研究も行っています。これらのリンク系コア技術を基に、リン

クシステムを実用化していきます。

次世代の光バックボーンネットワークにおいては、従来の1桁~2桁大きいトラヒックが予想さ

れています。また、ユーザから要求されるサービスも一層多様化することが予想されます。これ

らの大容量で多様なトラヒックをハンドリングできる通信ネットワークを低イニシャルコスト、低

運用コストで実現するため、100Gbit/s超高速伝送技術や、波長多重分離技術によるさらな

る大容量化・長距離化技術の確立をめざしています。また、実用化するアプリケーションや光

ファイバなどの導入条件を考慮しつつ、実用化に必要な機能も併せて検討しています。

超高速多重信号を長距離伝送するには、減少した光信号の増幅だけでなく、伝送路で発生

する波長分散、および偏波分散の影響や非線形現象を考慮した伝送路設計が必要です。そ

こで、変調方式や伝送路(光ファイバ)パラメータなどを基に、伝送路設計技術の検討を進め

ています。また、ラマン増幅などの光増幅技術を駆使した低雑音・広帯域光増幅システムの検

討も進めています。さらに、多種多様なトラヒックを効率良く収容する多重化端局構成技術の

高機能化の検討も進めています。

* WDM: Wavelength Division Multiplexing

●次世代コアネットワーク実現へ向けたリンクシステムの研究開発

光ファイバ

超高速 送信器

超高速受信器

TX RX

波長MUX 波長DEMUX

光増幅中継器

次世代ネットワークへ向けた基盤研究

超高速光伝送

広帯域光増幅

柔軟なシステムアーキテクチャ

超高速大容量WDMシステム

NTT局

NTT局

NTT局

WDM端局装置

リンクシステムの開発

光増幅中継器 WDM端局装置

基盤技術

端局構成技術

光増幅中継器

TX

TX

TX

RX

RX

RX

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通信ネットワーク技術 全般的な 研究開発成果

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NTT研究開発この一年(2012年報)

離島/災害対策用通信(海底光ケーブルシステム)

概 要

G-NW-12

離島通信などへの適用を目的とし、経済的な大容量海底光ケーブルシステムの研究開発を

行っています。従来、陸上から電気を海底光増幅中継器に供給する海底光ケーブルシステム

が実用化されていましたが、ラマン増幅を併用した遠隔励起光増幅WDM*技術(NTT特許)を

適用して、電気給電を用いない経済的な長距離大容量海底光ケーブルシステムの開発を

行っています。

海底光ケーブルシステムは、長距離大容量通信を実現する方式として、従来から盛んに研究

開発されてきています。これまで、太平洋横断など超長距離の通信を目的に、海底に設置し

た光増幅中継器に陸上から電気を供給する光増幅中継技術が研究され、この技術を適用し

た海底光増幅中継ケーブルシステムが実用化されてきました。この海底光増幅中継ケーブル

システムは、励起光源を内蔵する高信頼な海底光増幅中継器が必要なため、経済的なシス

テム建設が困難でした。

NTT研究所では、陸上から海底光ケーブルを介して高出力励起光を海底中継器に供給する

遠隔励起光増幅技術の研究を行っており、約350km離れた離島間の通信が可能な、電気給

電を用いない経済的な海底光ケーブルシステムが実用化されています。

* WDM: Wavelength Division Multiplexing

●海底ケーブルシステム構成

陸揚局

陸揚局

送信装置

励起光源

エルビウムドーブ ファイバ(EDF)

海底光ケーブル

拡大構成図

励起光

受信装置

海底光増幅中継器

陸揚局 陸揚局

受信装置 拡大構成図

給電装置

電流

海底光増幅中継器

従来方式

新規方式

海底光ケーブル

励起光源 励起光

送信装置

給電装置

エルビウムドーブ ファイバ(EDF)

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通信ネットワーク技術 全般的な 研究開発成果

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離島/災害対策用通信(インフラ衛星通信システム)

概 要

G-NW-13

衛星通信は、広域性、高信頼性および回線作成の迅速性という特徴を有している通信方式です。

NTTでは、公衆系サービスを地理的制限なく、安心してご利用いただけるよう、光ファイバなど

有線系インフラ整備が困難な離島通信や災害時の通信手段として衛星通信システムを活用

しており、衛星通信システムの一層の効率化、高度化を図る研究開発を推進しています。

具体的には、通信衛星による離島通信、災害対策通信として、周波数利用効率の向上、通信

回線の大容量化を実現したインフラ衛星通信システムがあります。

本システムは、1台の変復調装置で複数波の同時送受信が可能なグループ変復調装置と

離島通信、災害対策通信などの複数システムで衛星中継器などのリソース共用を可能とする

インフラ衛星通信監視制御システムにより実現されています。

グループ変復調装置は、多重処理型ターボ符復号技術を採用することにより強力な誤り訂正

を行い、設備の小型化、中継器の利用効率の向上を図っています。離島通信においては、

装置1台で1.5Mbit/s伝送路を最大11回線(双方向)収容することができます。災害対策

通信においては、可搬局より128kbit/s~1.5Mbit/sの情報速度を複数回線設定でき、基地

局は、1台で最大50局の可搬局と同時通信を行うことができます。

インフラ衛星通信監視制御システムは、回線設定制御、伝送路切替制御、中継器などの

リソース管理、地球局装置の監視制御を行っており、リソース管理技術により、同一の衛星

中継器帯域を複数のシステムで共用することを可能としています。

さらに、災害時においてより迅速に臨時通信回線を確保することをめざした小型衛星通信

地球局を新たに開発しました。本装置は、従来の可搬局に比べ小型・軽量化するとともに、

アンテナを分割収容可能とすることで可搬性を向上させています。また、通信衛星を自動で

捕捉する機能や遠隔で回線開通試験を行う機能を具備することで、熟練したスキルを要する

ことなく、迅速に衛星回線を開通させることが可能となります。

●インフラ衛星通信システムの構成例

GM: Group Modem PSTN: Public Switched Telephone Network

統制局 (副)

統制局 (正)

PSTN

グループ変復調装置

インフラ衛星通信 監視制御システム

:離島通信

:災害対策通信

:監視制御システム

離島通信(予備)

1.5Mbit/s×11回線/中継器

衛星A 衛星B

IP網

伝送装置

GM

伝送装置

災害対策通信

離島通信(現用)

離島局

社内IP網

制御局 基地局

GM

GM

臨時回線

可搬局

小型衛星通信地球局

128kbit/s~1.5Mbit/s

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リング形波長多重システム(リンク)

概 要

G-NW-14

多様なトラヒックを収容できる柔軟な次世代ネットワークを経済的に構築するため、伝送容量

のさらなる拡大、光ファイバの利用効率の向上などを目的として、光ADM*システムの研究

開発を行ってきました。

IP装置などからの急増しつつあるトラヒックを、経済的かつ効率的に収容するために、波長

多重技術を利用した光ADMシステムを開発しました。光ADMシステムでは、これまでと比較

して、飛躍的な伝送容量の拡大、光ファイバの利用効率の向上が図られています。さらに、

光ADMシステムとIP装置などを接続するための光インタフェースの長距離化開発を実現し、

一層の設備投資抑制を可能にしました。

* 光ADM: 光Add Drop Multiplexer

●光ADMシステムの概要

NE-OSS: Network Element-Operation Support System DCN: Data Communication Network

IP 装置

光ADM

光ADM

光ADM

光ADM

IP 装置

DCN

IP 装置

各種インタフェース

光ADM

光ADM

光ADM NE-OSS

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リンク装置維持・高度化

概 要

G-NW-15

電話網に使用されている既存リンク系システムの維持のための各種研究開発を実施しています。

既存リンク装置維持は、現在フィールドに導入・運用されている既存のリンク系システムに

ついて、故障・不具合が発生した場合の復旧支援、原因解析、および事業会社からの各種の

問い合わせに関する技術支援を実施することを通じて、運用されているシステムについて

改善すべき問題、新規にシステム開発を行う場合の改善すべき課題の抽出を行っています。

これら抽出した情報については、既存システムの改造を行うことはもとより、新たなシステムの

開発を行うときにもフィードバックが行われ、より良いシステムを提供していきます。

なお、維持対象システムは、大きくは右図に示す通りです。

このうち、網同期に必要となるクロックを今後も安定的に供給するため、イーサネット上で

周波数同期を実現するシンクロナスイーサネット技術を適用した、CPM*システムを開発し、

現行クロックパス網と同等のクロック伝送品質を実現しています。

●維持対象システム

NE-OSS: Network Element-Operation Support System クロックOSS: クロックOperation Support System DCN: Data Communications Network ADM: Add Drop Multiplexer * CPM: Clock Path Module

ADM

ADMリング

DCN

新ノード D70

ADM

DSM ATM D60

DCN

海底 システム

NE-OSS NE-OSS クロック OSS

DCN

局内IF(50M/150M)

ADM ADM

クロック 供給装置

CPM

CPM

クロック 供給装置

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ネットワーク装置・サーバ関連OpS

概 要

G-NW-16

ネットワーク装置・サーバ関連OpS*は、次世代のキャリアネットワークを構成するネットワーク装

置とサービス制御層サーバ群の装置レベル、およびネットワークレベルの保守、運用を支援す

るオペレーションシステムです。

キャリアネットワークのオペレーションシステムには、大規模なノードの運用管理とともに、ノード

と同様な高信頼性も要求されます。また、経済的なシステム構築を行うため、共通のハード仕

様やオープンソースソフトウェアを採用し、標準的なプロトコルを用いて、ネットワーク装置や

サービス制御サーバ、ほかのオペレーションシステムと接続、連携しています。

(1)ネットワーク装置関連OpS

ネットワーク装置の監視制御を行うOpSです。高信頼のネットワーク装置の監視制御を行うた

め、ネットワーク装置と同等の高信頼化機能を持ち、標準のネットワーク管理プロトコルとミド

ルウェアを採用し、監視制御機能を効率的に開発しています。

また、上位のOpSからのサービスオーダーに対応したネットワーク機器の設定や、ネットワーク

の構成管理に対応したネットワーク機器のConfig(設定データファイル)の作成を支援し、設定

更新を行って、迅速なサービス設定やネットワークの構成設定を実現します。

(2)サーバ関連OpS

前項のOpSと同様な高信頼化機能を具備し、サービス制御サーバ群を効率的に運用するため

に、以下の業務を支援する機能を実現しています。

・各サーバ装置のファイルの更新やパッチの適用、ファイルのバックアップを自動化し、保守作

業を省力化します。

・各サーバ装置のトラヒック、負荷情報などを監視し、輻輳制御を行い、ネットワークの輻輳の

波及を防止します。

・各装置間の導通試験の手順を遠隔から自動化し、迅速な故障の切り分けを行って、ネット

ワークの故障時間を短縮します。

・各種装置のトラヒックを収集、集計し、ネットワークの効率的な設計に役立てます。

●ネットワーク装置、サーバ関連OpSの位置付けと構成

上位OpS

ネットワーク装置関連OpS

サービス制御層サーバ群 ネットワーク装置

監視制御網

サーバ関連OpS

* OpS: Operation System

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り障範囲・原因箇所特定システム

概 要

G-NW-17

NGNなどIP網の大規模化・複雑化が進んでおり、障害がネットワーク・サービスに及ぼす影響

は大きくなっている。一方で、ネットワーク監視機能の大容量化は進んでおらず、大規模網に

おける障害に対して、その障害発生箇所・影響範囲を把握することが難しくなっています。り

障範囲・原因箇所特定システムは、そのような大規模IP網における障害発生箇所、影響範囲

を迅速に特定することを実現するシステムです。

数万装置規模のIP網で、り障範囲・原因箇所を特定することを実現するには、まずネットワー

クを構成する各機器の正常性(疎通性)を高速に確認できることが必要であり、次に障害発

生時には、それがネットワーク構成上どのように影響を及ぼしているかが把握できる必要があ

ります。本成果では、ネットワーク機器数万装置の疎通を1分以内に確認する技術として、「高

速多量導通試験技術(高速Ping)」を確立、さらに数万装置のネットワーク構成を5分以内に

収集する「高速トポロジー収集技術(高速Traceroute)」を確立しました。り障範囲・原因箇所

特定システムは、両技術を連携させることで実現しており、高速Tracerouteのトポロジー結果

と高速Pingの障害情報を重ね合わせることで、障害の原因箇所、その障害影響範囲を短時

間で特定することを可能としています。

本技術は廉価な1台のWS上で実行可能であり、監視稼働コストを削減すると同時に、監視シ

ステムの導入コスト削減が期待できます。

●り障範囲・原因箇所特定システムの実行イメージ

高速Ping 機能部

り障範囲・原因箇所特定システム

高速 Traceroute

機能部

り障範囲・原因 箇所特定部

NG

NG

NG

OK

OK

OK

・・・

大規模IP網における障害箇所・り障範囲を迅速に特定

NWの全ルータをPing監視

NWトポロジー情報を収集

両情報を重ね合わせることで、障害の原因箇所、その影響範囲を特定、提示する。

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トラヒック設計・管理・制御技術

概 要

G-NW-18

ネットワーク上の通信データの流れを(通信)トラヒックといいます。このトラヒックを、通信サー

ビスや利用するアプリケーションに応じて、適切にネットワークに流したり、必要十分な通信リ

ソースを確保したりするために重要となる技術が、トラヒック設計・管理・制御技術です。これ

らの技術を、さまざまなネットワークやサービス、例えば、電話網、IP網、映像配信サービス、

モバイル端末向けサービスに適用することにより、今後の多彩なアプリケーションや多種類の

クラスを含むサービスを効率良く提供することが可能になります。

ユーザ・サービスの品質要求を満足しつつ、経済的なネットワークを実現し、保守運用性の

向上も図る、トラヒック設計・管理・制御に関する以下の研究開発を行っています。

(1)品質条件を満たした多様なサービスを提供するためのトラヒックや需要の変動を吸収する

統合管理型ネットワークを実現するためのトラヒック設計・ネットワーク設備設計技術

(2)ネットワーク構成装置類の負荷状況の管理、不正トラヒックや異常トラヒックを検知する

トラヒック測定・分析技術

(3)障害発生などにより生じるトラヒック輻輳に対して、右図のようなネットワーク構成装置類

から成る情報伝達層と、ユーザ間で情報を送受するアプリケーション層の両者のプロトコル

を連携させることにより、ネットワークのボトルネック発生を防ぐトラヒック管理制御技術

●通信トラヒックの効率的な疎通のためのトラヒック設計・管理・制御技術

【アプリケーション層】

エッジノード

コアノード 制御ノード

負荷管理

異常トラヒック管理

設備設計

マルチサービス トラヒックモデル

トラヒック

トラヒック

トラヒック

機能連携

【情報伝達層】

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ネットワーク品質設計管理技術

概 要

G-NW-19

お客さまに良好な品質で経済的なサービスを提供するためのネットワーク品質技術の研究開

発を進めています。具体的には、①お客さまが実感する品質を定量化する品質評価・推定技

術、②品質目標を満たすようネットワークと端末の性能・機能条件を定める品質設計技術、③

サービス中の品質レベルの維持向上を図る品質管理技術、の研究開発に取り組んでいます。

ネットワークサービス品質は、主にお客さまが音声・映像メディアを聴いたり観たときに感じる

品質(これを主観品質と呼びます)によって表現されます。サービス提供に際しては、主観品質

を適切に反映する品質評価技術に基づいてネットワークや機器を設計・設定する品質設計技

術と、この品質をサービス提供中にも維持するための品質管理技術が重要となります。

NTT研究所では、これらサービスの机上検討段階・実機検証段階、およびサービス提供中の

品質管理段階に適用する以下の品質評価・設計・管理技術を開発しています。

(1)音声・映像信号の物理測定から主観品質を推定し、効率的な品質評価を可能にする「客

観品質評価技術」

(2)音声・映像通信の品質劣化要因(符号化、パケット損失、遅延、エコー)から総合的な会

話品質の推定を可能とする「総合品質推定技術」と、これに基づく「品質設計技術」

(3)ネットワークや機器の使用状態からユーザ実感に即した品質を推定し、提供中のサービス

の品質を維持する「品質管理技術」

●サービス品質に関わる技術課題の位置付け(IP電話サービスの例)

MOS: Mean Opinion Score(平均オピニオン評点) VoIP アダプタ: Voice over IP アダプタ MG: Media Gateway

符号化歪

ネットワーク パケット損失

ネットワーク遅延

エコー消去量

劣化要因

ネットワーク 設計管理項目

遅延 エコー 音質 音量

お客さまが実感する品質 会話MOS 受聴MOS

回線使用率

総合品質推定

パケット損失率 IPパケット遅延

遅延ゆらぎ

IPネットワーク

端末設計/ 設定項目

端末パラメータ

ネットワーク パラメータ

端末バッファ溢れ 端末バッファ遅延

・・・

・・・

符号化方式

揺らぎ吸収バッファ長

パケットサイズ

・・・

主観品質評価 客観品質評価

品質管理

VoIP アダプタ

品質設計

MG

一般電話網

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基盤設備施工技術(曲げフリー光ファイバコード)

概 要

G-NW-20

光サービスの急速な普及に伴い、一般の家庭内での光ファイバ配線が急増しています。今後、

さらに光ファイバ回線が大量に開通する中で、お客さまに十分に満足していただけるように配

線するために、簡単かつ美しく光ファイバを配線できる方法が望まれています。

これらの要望に対応するため、「曲げ」「折り」「結び」を自在とし、メタルコード同様に取り扱え

る「曲げフリー光ファイバコード」を開発しました。

「曲げフリー光ファイバコード」は、曲げに強い「ホーリーファイバ*1」とそれを保護する「コード被

覆部」、および「防塵機能付きコネクタ」から構成されています。

ホーリーファイバは、コア部の周りのクラッド部に空孔を設けた構造の、空孔アシスト型ファイ

バを使用し、飛躍的な許容曲率半径の縮小化を実現しました。

コード被覆部は外径を4mmφとし、曲げたり、踏みつけても中の光ファイバへの負担を軽減す

る構造としています。また、取り扱い性が悪くならないように、しなやかに曲がる柔軟な材料を

採用し、光ファイバの余長部分を結んだり束ねたりしても、解いたときにコードに癖がつきにく

い点も特徴の一つです。防塵機能付きコネクタは、シャッタ機構により光ファイバ先端を保護

する防塵機能などを有し、かつ標準化されたSCコネクタとも互換性があり、容易な着脱も可

能です。

「曲げフリー光ファイバコード」は、家庭内に光コンセント*2さえあれば、特別な光の専門知識が

なくても取り扱いが可能です。平成18年4月よりBフレッツサービスにおいて、標準的な宅内

配線形態として実施中です。

●曲げフリー光ファイバコードの適用例

PC

折り返し状態 直角曲げ状態

光コンセント (露出タイプ) ONU

束ね状態

曲げフリー光ファイバコード

結び状態

<参考>空孔アシスト型ファイバの断面図

空孔 コア部

クラッド部 ONU: Optical Network Unit

トレイレスONU

*1 ホーリーファイバ:空孔構造を有する光ファイバの総称です。代表例に空孔アシスト型(高屈折率コア、 数個の空孔)、フォトニック結晶型(石英ガラスコア、数十個の空孔)、フォトニックバンドキャップ型 (中空コア、数十個の空孔)などがあります。

*2 光コンセント:光のコネクタインタフェースを有し、スイッチボックスにはめこむ「埋め込みタイプ」と壁面に設置する「露出タイプ」があります。

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通信ネットワーク技術 全般的な 研究開発成果

光ケーブルの保守・運用技術

概 要

G-NW-21

フレッツネクスト(NGN)や映像配信サービスなど、サービスの多様化・ユーザ数の拡大に伴い、

大量光設備の維持運用技術の高度化が求められています。そこで、多様なサービス提供時に

開通・保守運用コストを削減する技術、および設備の信頼性を向上させる技術を開発してい

ます。

(1)光線路試験システム

本システムは、試験用通信ネットワークで接続された操作端末の試験指示に基づき、通信設

備ビル内に設置された光試験モジュール(OTM*1)を制御し、OTMからの試験光はファイバセレ

クタと呼ばれる光スイッチで目的の光ファイバに接続され、光カプラを介して光ファイバ内に挿

入します。お客さま宅の端末部分には、試験光を遮断する光フィルタを挿入しているため、通

信サービスに影響を与えることなく試験可能です。また、光ケーブル接続部の浸水を検出でき

ます。また、小規模ビルには小規模ビル用のファイバセレクタを設置し、大規模ビルのOTMで

光試験を行うことができます。

(2)所内光配線技術

光ケーブルのコード部の曲げ故障を抑制するため、曲げ損失が小さい光ファイバを用いた局

内光ケーブルを実現しました。

(3)光配線切替技術

作業現場で把握が困難なお客さまのサービス利用状況確認、施工後の心線接続状況の確認

など、ONU*2のフレーム信号をモニタするツールを用いた切替工事作業手順を確立しました。

*1 OTM: Optical Testing Module *2 ONU: Optical Network Unit

●光ケーブルの保守・運用技術

OLT: Optical Line Terminal IDM: Integrated Distribution Modules

ファイバセレクタ

浸水検知モジュール

IDM

光ケーブル

操作端末

OTM

光カプラ 光ジャンパユニット

お客さま宅

ファイバセレクタ

光フィルタ

OLT

保守拠点

接続部

浸水検知モジュール

接続部

大規模ビル

小規模ビル

OLT

所外光スプリッタ

試験 OK!

空孔アシスト型光ファイバを適用し、曲げ損失を抑制

モニタツール

誤切断の防止、切替接続後の正常性 確認が可能

試験用通信 ネットワーク

伝送

ONU

ONU

ONU

装置

外 被

0.9mmオーバコート

抗張力体 (ケプラ)

コア

クラッド

空孔

空孔アシスト型光ファイバ

OLT

切替えユーザ

光スプリッタ O NU

O NU

モニタツール

OLT

切り替えユーザ

光スプリッタ O NU

O NU

モニタツール

所内光配線技術

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基盤設備の維持・高度化(巨視的超音波RC劣化診断システム)

概 要

G-NW-22

社会基盤設備の維持管理においては、設備の劣化状況を正確に点検診断し、タイムリーに

補修、または補強することが求められています。その際には「設備の状況」を効率良く正確に

把握することが品質面、コスト面からも非常に重要となります。

このため、劣化した設備を傷つけることなく、短時間で正確に点検診断を行うことができる

「巨視的超音波*RC劣化診断システム」を開発しました。

巨視的超音波RC劣化診断装置は、医療分野などで使われている超音波計測技術を応用開

発したコンクリート構造物の非破壊点検診断装置です。

現在は、NTTの通信ネットワークを支えるトンネル設備などの精密点検診断に利用され、コン

クリート構造物を内科的に点検・診断する装置として活用しています。

技術的な特徴は、以下の通りです。

(1)高い測定精度

反射波を測定する際に、プローブと呼ばれる2個の探触子(送信・受信)をコンクリ―トの表面

で移動させながら計測します。数千回に及ぶ平均化処理と周波数フィルタによって、受信した

散乱波のノイズを除去して、目的とする反射波のみを明敏化します。

(2)簡易な操作性

計測時の初期設定や計測波形の認識を自動化することで、作業時間の短縮、測定者の技術

レベルの違いによる測定誤差を排除しました。

(3)コンパクトな装置

小型軽量化、防滴構造、バッテリー方式により、狭い所への持ち運びが容易で、かつ高湿度

環境での使用を可能としました。

●巨視的超音波RC劣化診断装置 ●計測状況

●装置仕様

●測定シーン

項目 仕 様

電源

重量

使用環境

リチウムバッテリー×2本 [連続使用時間 4時間/1本] AC電源アダプタ

本体装置 2.5kg [トランク収納時全重量 10kg]

仕様温度0~40℃、防滴

・ ひび割れ深さ ・ 空洞(内部割れ) ・ 鉄筋被り (二重鉄筋の被りを含む) ・ 鋼材位置 ・ コンクリート厚さ ・ 圧縮強度

●計測項目

鉄筋

内部 割れ

トンネル 建 物

ひび割れ 【

鉄筋 鉄筋

【 空洞・ 剥離 計測 】

【鉄筋かぶり計測】

鉄筋

* 巨視的超音波法: コンクリートから反射される散乱現象の生じている波を散乱波のままマクロ的(巨視的)に受信し、受信波に含まれる目的外の散乱波(反射波)を低減除去することにより、目的とする反射波を明敏化する計測技術。

鉄筋 ひび割れ

【ひび割れ深さ計測】 【空洞・はく離計測】

コンクリート

【圧縮強度計測】

鉄筋

【鉄筋かぶり計測】

【コンクリート厚さ計測】

コンクリート

空洞・ジャンカ 【空洞・はく離計測】

バッテリー

探触子

本体装置

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基盤設備の維持・高度化(積雪地域用マンホール鉄蓋の開発)

概 要

G-NW-23

積雪地域では、冬季道路交通を確保するために、除雪車(写真-1)が通行しますが、マン

ホール鉄蓋の周辺舗装が摩耗して削れていた場合、マンホール鉄蓋の受枠が路面より突き

出た状態となり、マンホール受枠に除雪車のブレードが衝突して受枠が破損してしまう(図-

1)ばかりか、除雪車の運転者にも強い衝撃を与えてしまう恐れがあります。

そのため、安全に除雪作業が可能で、除雪車のブレードの衝撃に対する耐久性に優れた積雪

地域用マンホール鉄蓋が求められていました。

積雪地域用マンホール鉄蓋(図-2)は、一般地域用マンホール鉄蓋(図-3)と同じく、ダクタイ

ル鋳鉄製です。上蓋と受枠には勾配受け構造を採用し、除雪車の衝撃回避機能を付加した

構造となっています。図-4は積雪地域用マンホール鉄蓋のイメージ図です。

積雪地域用マンホール鉄蓋の特徴は、次の通りです。

(1)受枠の衝突回避機能(受枠スロープ)

マンホール受枠に対し円周状にスロープを持たせることにより、あらゆる方向からの除雪作業

において、除雪車ブレードの衝突を回避する機能を持っています。(図-5)

(2)上蓋の衝突回避機能(上蓋スロープ)

受枠と同様に上蓋にも円周上に面取りを実施し、除雪車ブレードの衝突を回避する機能を

持っています。

積雪地域用マンホール鉄蓋の開発により、積雪地域における鉄蓋の更改サイクルが大幅に

長くなり、メンテナンスにかかるコストが削減できることが期待されます。

●積雪地域用マンホール鉄蓋について

除雪車のブレード

受枠スロープ 上蓋

断面図 受枠

上蓋

受枠

断面図

写真-1 除雪車の概要

図-4 積雪地域用マンホール鉄蓋

図-3 一般地域用マンホール鉄蓋の概要 図-2 積雪地域用マンホール鉄蓋の概要

図-1 鉄蓋損傷のメカニズム

図-5 損傷回避のメカニズム

摩耗した 路面

除雪車のブレード

一般地域用 鉄蓋断面

損傷発生

摩耗した 路面

除雪車のブレード スロープにより損傷回避

積雪地域用 鉄蓋断面

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通信ネットワーク技術 全般的な 研究開発成果

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NTT研究開発この一年(2012年報)

基盤設備の維持・高度化(通信地下設備の耐震技術)

概 要

G-NW-24

NTTでは、既応地震による被害経験を教訓に、これまでも継続して、地下設備の耐震技術の

開発により、ネットワークの信頼性向上を図っています。

今般の東日本大震災においても、既設設備の耐震性向上を図る開発に取り組み、復興対策

として事業導入しています。

また、今後予測される地震による設備被害に対し、耐震技術を効率的・効果的に導入するた

めに、地下設備の耐震性評価技術を開発し導入しています。

(1)通信地下設備の耐震技術

とう道は、レベル2地震動の大規模地震にも耐えられるよう設計されています。阪神・淡路大

震災において、接続部に漏水・出水が発生したため、接続部をフレキシブル化することでさら

なる信頼性向上を図りました。

管路は、地震や地盤変状、液状化により破損する可能性があるため、接続部を可動構造とす

ることで、耐震性能の向上を図っています。

マンホールは、ダクト部のコンクリート塊のはく離による通信ケーブルの損傷を防止するため、

スチールファイバコンクリートを採用し、耐荷力向上を図りました。また、グラベルドレーン工法

により、液状化による浮き上がりを防止しています。

既設管路の耐震対策として「ケーブル収容管再生技術」を開発し、導入しています。自立強

度のあるライニング材を管内に形成することにより、老朽劣化管路の永続的な利用と耐震性

向上を図ることができます。

(2)地下設備耐震性評価

膨大な地下設備の耐震対策を限りある予算の中でプライオリティを付け、効率的、効果的に

実施するためのツールとして、地下設備耐震性評価技術を開発しています。

事前に地震に対する弱点を把握し、効果的な設備更改に活用するとともに、地震発生後の

被害調査計画の策定や復旧計画の策定の際に、効率的な復旧を可能とします。

●通信地下設備の耐震技術

被災シミュレーション

【被災設備の判定表示】

・マンホール区間単位で被災確率の高い区間を色別表示

地震データ

地盤データ

設備データ

NTTビル

地盤の液状化 液状化なし 液状化

設備被災確率

0.0≦X<0.1 0.1≦X<0.2 0.2≦X<0.3 0.3≦X<0.4 0.4≦X<1.0

被災確率が低い区間

被災確率が 高い区間

●地下設備耐震性評価技術

ダクトスリーブ 管路差し込み継手 管路離脱防止継手

地下管路の可動構造 グラベルドレーン

浮上防止用砕石層

シールドとう道

とう道接続部のフレキシブル化

既設ケーブル

新設ケーブル

開削とう道

ダクト部スチール ファイバコンクリート

ケーブル収容管再生技術

錆・腐食などにより老朽劣化した地下管路を、ケーブルを収容したまま、非開削により管路内面から補修・再生し、経済的に永続化する技術

液状化地盤

立坑

MH MH MH

開削とう道

橋梁添架設備

NTT ビル

お客さま ビル

シールドとう道 一般地盤

MH:マンホール HH:ハンドホール

HH

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通信ネットワーク技術 全般的な 研究開発成果

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NTT研究開発この一年(2012年報)

基盤設備の維持・高度化(風圧荷重低減設計技術)

概 要

G-NW-25

架空線路構造物とは、地上において通信線(ケーブルなど)を支持する設備をいい、具体的に

は右図に示す通り、電柱、つり線・支持線、支線などから構成されています。

架空線路構造物に加わる主な荷重には、①ケーブル張力、②風圧荷重の2種類があります。

ケーブル張力はケーブル線条方向に加わる力で、架空線路の起終点にある電柱において、

支線により張力を受け持ちバランスを取るように設計を行っています。

風圧荷重は、ケーブル線条の垂直方向に加わる力で、ケーブルなどに加わる風圧荷重に電

柱の強度および地盤支持力が耐えられるように設計を行っています。風圧荷重は、架空線路

構造物が建設される場所の気象条件により、甲種、乙種および丙種風圧荷重に分類されま

す。

(1)甲種風圧荷重:風速約40m/sにおける風圧力

(2)乙種風圧荷重:積雪地帯での風速28m/sにおける風圧力

(3)丙種風圧荷重:風速約28m/sにおける風圧力

風圧荷重設計技術の開発では、電柱、つり線・支持線などの架空線路構造物を個別に扱う

のではなく、全体を系として捉えて解析を行い、設備設計に反映しています。

●架空線路構造物の概要

支線

つり線・ 支持線

②風圧荷重 ①ケーブル張力

電柱 電柱

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通信ネットワーク技術 全般的な 研究開発成果

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NTT研究開発この一年(2012年報)

超大容量新光伝送路

概 要

G-NW-26

超大容量の伝送媒体を実現することを目的として、各種の新しい構造の光ファイバ伝送路の

研究開発を進めています。

光ファイバは、成長を続けるIT社会を支えるインフラの構成要素として広く使われており、基幹

系ネットワークのみならず、アクセス系ネットワークへとその適用領域が拡大しています。しかし、

石英系ガラスに添加物を加えて導波路構造を形成する従来の光ファイバでは、光学特性上、

現行の波長域での光通信の大容量化が極限状態にあります。そのため、バックボーンの超大

容量化を目指して、従来の光ファイバよりも優れた伝送特性や曲げ特性を備えたホーリーファ

イバや高性能石英系ファイバの研究開発を進め、数々の先導的な成果を挙げています。

中でも、数十個の空孔を設けたフォトニック結晶型光ファイバ(PCF*)では、着実に低損失化

を実現しています。このファイバは、極めて広い波長域での単一モード動作や曲げ損失が事実

上ゼロにできるなどの特徴を持ち、可視域から近赤外域までの波長を用いた超大容量光通

信を予感させる期待の光ファイバです。NTTは、2003年3月には、波長1.55μm帯における

低損失の世界新記録0.37dB/kmを樹立し、さらに同年9月には、0.28dB/km、2007年9月

には、0.18dB/kmを達成して、自らの記録を塗り替えるなど、従来の石英系光ファイバの最

低損失値0.15dB/kmに迫る勢いで、将来のホーリーファイバの導入に向けて、研究開発を進

めています。

* PCF: Photonic Crystal Fiber

●ホーリーファイバの構造例

空孔

クラッド部

コア部

世界で最も低損失なPCFを実現

0.1

1

10

100

2000 2001 2002 2003

240 dB/km : サザンプトン大学

80 dB/km : バース大学

3.2 dB/km : NTT

1 dB/km : NTT

0.28 dB/km : NTT

損失

(dB/km

0.58 dB/km : ブレーズフォトニクス

石英ガラス固有の損失

2007

0.18 dB/km : NTT

2.6 dB/km : コーニング

コア部 (光が閉じ込められている)

●フォトニック結晶型光ファイバ(PCF)の低損失化の推移

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通信ネットワーク技術 全般的な 研究開発成果

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NTT研究開発この一年(2012年報)

光配線法(光アクセス設備)

概 要

G-NW-27

アクセス系通信ネットワークは、NTTビル内に設置されるサービス提供システムやお客さま宅に

設置されるサービス端末、およびお客さま宅とNTTビルを結ぶケーブルなどの所外設備から構

成されます。

このうち、お客さま宅とNTTビルを結ぶケーブル(所外設備)の光化にあたっては、光伝送シス

テムの技術条件や光ファイバの特性に基づいて実施するばかりでなく、お客さま需要への即

応ならびに新サービスへの柔軟な対応も求められています。

光配線法は、光伝送システムの技術条件を踏まえ、光アクセス設備の構成(OLT*1/光ケー

ブル/スプリッタ/ONU*2 など)、および光損失などを考慮した光ケーブルの適正な構築方法

を確立し、お客さまへ安価で高品質なサービスを提供するものです。

NTTの光アクセス設備は、右図に示すように幹線系設備(主として地下)と配線系設備(主と

して架空)から構成されています。

幹線系/配線系の光ケーブルでは、前述の技術条件のほか、基盤設備(とう道/マンホール

/電柱など)の利用やお客さま需要も見込んだ設備構築、さらには構築後の効率的な活用が

重要となります。

光配線法の開発では、このような諸条件を変化させてシミュレーションを行い、設備構築に反

映しています。

*1 OLT: Optical Line Terminal *2 ONU: Optical Network Unit

●光アクセス系設備の構成(GE-PON*の例)

* GE-PON:分岐スプリッタを用いて1心の光ファイバに複数のお客さまを収容することができるシステム

幹線系設備 配線系設備

NTTビル

サービス 端末

サービス 提供

システム

とう道 マンホール

電柱

GE-PON

OLT

光ケーブル

光クロージャ

スプリッタ

光アクセス設備

所外設備

宅内 設備

所内 設備

中継系設備

き線点

お客さま宅

ONU

NTTビル

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NTT研究開発この一年(2012年報)

(1) 多値変調信号(例: 64QAM)

X-偏波 Y-偏波

未来ネットワーク(フォトニックネットワーク)

概 要

G-NW-28

インターネットにおける高精細な動画配信などコンテンツの大容量化に伴い、近年通信トラヒック

は年率約40%増の飛躍的な増大を続けています。NTT研究所では、その増大する通信トラヒック

に対応するフォトニックネットワーク実現に必要な研究開発に取り組んでいます。

ポイントとなる技術は以下の3つです。

(1)送信信号には、QAM*1などの多値変調方式を採用し、偏波多重方式と組み合わせて、

1波長当たりのシンボルレートを低減しました。電気信号速度の負荷が軽減すると同時に、

光スペクトル帯域が狭くなり、高い周波数利用効率を達成することができます。

(2)受信部では、コヒーレント受信とデジタル信号処理技術を用いています。コヒーレント受信は、

従来のNRZ*2信号の直接受信に比べて受信感度が3dB以上向上します。高速な光信号は、

光ファイバを伝播する過程で波長分散および偏波モード分散による波形歪みを受け、伝送

距離が制限される要因となりますが、デジタル信号処理技術による歪補償を行い、性能を

大幅に向上させることができます。

(3)中継部では、超広帯域光増幅技術を用いることで、波長多重数を増加させることができます。

光増幅中継においては、分布ラマン増幅を用いることで、低雑音化を図ると同時に、光強度が

高まるために発生する非線形光学効果を抑圧することができます。

本技術は、高速大容量なフォトニックネットワークを構築するための有望な技術として期待

されています。

*1 QAM: Quadrature Amplitude Modulation *2 NRZ: Non Return to Zero

●超大容量光伝送実験(例)

ルータ/L2-SW

伝送ノード装置

LAN LAN

波長多重伝送路

長距離大容量ネットワーク (OTN)

(2) 102.3Tbit/s-240km伝送実験例

after 240km

10

9

8

7

6

16201600158015601540

波長 (nm)

Q値

(dB)

Q-limit of 6.75 dB(20% overhead hard decision FEC)

C帯 98チャネル L+帯 126チャネル

after 240km

10

9

8

7

6

16201600158015601540

波長 (nm)

Q値

(dB)

Q-limit of 6.75 dB(20% overhead hard decision FEC)

C帯 98チャネル L+帯 126チャネル

本技術の適用先

合波器

分波器

広帯域 光増幅器

送信信号

波長多重システム

光ファイバ

受信信号

中継部 送信部 受信部

多値変調信号

数10~100Tbit/s

λN

λ1 λ1

λN

デジタル 信号処理

送信信号 受信信号

240 km

(20 %

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NTT研究開発この一年(2012年報)

次世代超高速・大容量伝送用光デバイス

概 要

G-NW-29

近年のFTTH、映像サービス、モバイル端末の急速な普及に伴い通信ネットワークのトラヒック

は急増しており、超高速・大容量な伝送技術が強く求められています。それを実現するための

キーデバイスとして、1波長当たり100Gbit/sや、さらに高速な400Gbit/s、1Tbit/sの超高速

多値信号に対応可能な光送信用デバイス、受信用デバイスが必要とされています。また、

これらの高速光信号が100波長多重された超大容量伝送路から構成される光ネットワーク

を効率的に運用できる高機能光スイッチも併せて求められています。

NTT研究所ではシステム・ネットワーク研究から各種部品研究まで、幅広く研究開発を行って

いるため、将来のネットワーク実現に向けて必要とされる光デバイスをタイムリーに実現できる

という強みがあります。そのような強みを生かして実現したデバイスを紹介します。

(1)送信用光デバイス:

超高速伝送用光信号の生成に必要な、波長調整が容易な狭線幅波長可変レーザや、高機能・高性能な各種変調器を実現可能な石英-LNハイブリッド集積技術を開発し、実際の100Gbit/s以上の送信デバイスに応用しています。

(2)受信用光デバイス: 光学特性と量産性に優れる石英系プレーナ光波回路(PLC*1)の光信号処理回路、独自技術のInP HBT*2を用いた広帯域なトランスインピーダンスアンプICを集積して、小型PLC集積型光受信器を開発しています。

(3)次世代ROADM*3デバイス: 石英系PLCを差異化/優位化技術として、光信号を方路や波長によらず、柔軟に接続するための高機能光スイッチの小型化・集積化を進めています。

*1 PLC: Planar Lightwave Circuit *2 HBT: Heterojunction Bipolar Transistor *3 ROADM: Reconfigurable Optical Add/Drop Multiplexing

λn

送信器

λ1

受信器

λn

λ1

次世

RO

ADM

送信用デバイス

集積光受信器

石英系PLCを 用いた光偏波・ 位相制御回路

PLC配線モジュールを 用いた小型ROADMボード 1チップ集積化 スプリット&セレクトスイッチ

受信用デバイス

次世代ROADMデバイス

InP HBT ICを用いた制御機能付き

TIA技術

石英-LNハイブリッド集積技術を用いた 高機能変調器の例(64QAM変調器)

狭線幅波長可変レーザ

●大容量フォトニックネットワーク波長多重伝送システム (100Gbit、 ポスト100Gbit/s/ch)

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NTT研究開発この一年(2012年報)

通信ネットワーク技術 全般的な 研究開発成果

通信EMC技術

概 要

G-NW-30

インターネットに代表されるICT技術の進展によって、私たちの周りで使われる情報通信機器はます

ます増え、これらの機器の動作に伴って放出される不要電磁波の量も年々増加していく傾向にあ

ります。一方、通信の多様化と高速化や省エネルギーの進展により、機器内部の駆動電圧・信号レ

ベルは年々低下傾向にあります。こうした状況で何の対策もしなければ、不要な電磁波による電

波障害の増加、情報通信機器の外部からの電磁ノイズや雷などによる故障の多発を招いてしまい

ます。そこで通信を安定して提供することを目的として、ほかの機器に電磁的な影響を与えず、か

つほかの機器の電磁ノイズや雷などから通信機器を守るため、「通信EMC技術(EMC:電磁両立

性)」の研究開発を進めています。例えば、端末の雷害対策技術の研究開発では、光ファイバを用

いた通信の普及に伴って発生している従来とは異なるメカニズムの雷害を防止するため、端末の

各ポートの過電圧耐力を向上させる技術を検討しています。また、ノイズ分離・識別技術では、機

器に影響を及ぼしている電磁ノイズを、従来の波形解析技術と比較して精度良く分離・解析する

技術の検討を行っています。

(1)端末の雷害対策技術

従来、端末の雷害の主原因は、屋外に通じる電源線や通信線に誘導する雷サージでした。しかし、

通信回線が光化されたことにより、建物内のネットワーク構成に起因する、これまでとは異なるメカ

ニズムの雷害が発生しています。こうした雷害を低減するために、電源や通信ポートそれぞれの過

電圧耐力を向上させるとともに、ポート間の耐力を適切に設計および対策することで、雷害を低減

する技術を開発しています。

(2)ノイズ分離・識別技術

インバータ電源などを使用する機器の増加に伴い、電話機などの通信装置に異音が混入したり、通

信速度が低下するなどの問題が発生しています。こうしたスイッチングノイズはさまざまな機器から発

生し、これまで故障原因の特定は技術者の経験に頼っていました。ノイズ分離・識別技術は、さまざ

まな電磁ノイズや信号が合わさった波形データから、独自の波形分離・解析技術(時変極解析技術)

を用いて、信号と電磁ノイズの分離、電磁ノイズ発生源の識別(機器特定)を行うものです。電磁ノイ

ズ源の探索ツールや、消費電力波形に基づく機器識別技術への応用に向け、開発を進めています。

雷サージ、静電気などに よる機器の破壊、誤動作

電気通信設備からの 伝導・放射妨害波

通信装置相互間の 雑音干渉

外来雑音による伝送品質 劣化、機器の誤動作

課題:EMC評価・対策技術、電磁環境設計技術、雷防護技術の開発

無線設備

通信装置

通信線

街灯 CB無線

工場 電気鉄道 病院

放送波

電力線

●ノイズ分離・識別技術

●通信を取り巻く電磁環境とEMCへの課題

分電盤

電流センサ

電流センサの波形から複数の機器の出す電磁ノイズ成分を分析

少数のセンサで機器 (電磁ノイズ源)を識別

各ポートの耐力向上とポート-ポート間の保護協調

雷害の低減

●端末の雷害対策技術

LANポート

TELポート

過電流 電源ポート

ポート間の 保護協調 技術

各ポートの耐力向上技術