1
0.14 0.12 0.10 0.08 0.06 0.04 0.02 0.00 electron energy distribution 40 35 30 25 20 15 10 5 0 electron energy [eV] SS HOS 0.14 0.12 0.10 0.08 0.06 0.04 0.02 0.00 electron energy distribution 40 35 30 25 20 15 10 5 0 electron energy [eV] SS HOS sample value average value 2-1. 高次のサンプリング(Higher Order Sampling:HOS) これらの技術を適切に制御して使用するためには,放電の性質の理解 が必要 気体放電プラズマの応用分野 ガスレーザ,プラズマディスプレイ,プラズマCVD,半導体プラズマプロセシング,有害化学物質の除去など 背景 気体放電プラズマ中には様々な種類の粒子が存在し,これらの粒子によって放電が維持されるが,特に, 電子群の性質 が放電の性質を決定付ける 放電の性質 理由① 電子 は気体放電プラズマを構成する粒子(中性気体分子(原子),励起分子, 正イオン,ラジカル,光子等)の中で最も質量が小さく,電界によって容易に 加速され高エネルギー状態になり,他の粒子に大きな影響を及ぼすため 理由② 気体放電プラズマを構成する各粒子は,中性気体分子(原子)に電子 が衝突す ることによって生成されるため 気体放電プラズマ中の電子群の性質は,電子スオームパラメータによって表さ れ,これは電子エネルギー分布 から計算される 電子群の性質 電子エネルギー分布 を知ることは放電の性質を知ることに等しい コンピュータを用いたシミュレーション方法の一つであるモンテカルロシミュレーションによって, 電子のエネルギーをサンプリング し,電子エネルギー分布を得る 電子エネルギー分布の計算方法 エネルギーの範囲を微小区間(bin)に区切り,各bin内のエネルギー を持った電子数をカウントし,そのヒストグラムを作成して電子 エネルギー分布を表現する 詳細な電子エネルギー分布を求めるため には,bin密に しなければならない 統計変動を低減させるには追跡電子数 の増加が必要となる 高次のサンプリングと平滑化スプライン [2] を用い,オーバーラップサンプリングを行わ ずに 計算時間の増加を抑えつつ,詳細な電子エネルギー分布を求める方法を開発した 本研究で開発した方法は,高次のサンプリング 平滑化スプライン との2つの部分から構成される ここでは,第9項目までを考慮したLegendre多項式を用いて電子の密度勾配を表現している Legendre多項式 2 2 1 1 0 0 ) ( ) ( ) ( f P f P f P f i 1 0 P 1 P 2 / ) 1 3 ( 2 2 P 2 / ) ( 2 / ) ( 1 1 i i i i i N j P f 1 0 0 2 1 i N j P f 1 1 1 2 3 i N j P f 1 2 2 2 5 ibinの番号を表す N i は区間 i i+1 に含まれる電子数を表す 平滑化スプラインを用いて,全てのbinに対する電子エネルギー分布が連続性を持つようにつなぐ HOSでは,bin毎に独立して多項式を求めるため,binの境界では電子エネルギー分布の連 続性が保証されない データ点の補間を行う関数式 n点のデータ点に対する(2m-1)次の平滑化スプライン m n i i i m x N b x p x f 1 1 ) ( ) ( ) ( m i i j j j i m j i x P x x x N ) ( ) ( ) ( , 1 2 P m-1 (x)m-1次以下の多項式を表す b i はデータ点の座標および優先度の設定に よって定まる係数 ) ( ) ( ) ( 0 ) ( 1 2 1 2 j m j j m j x x x x x x x x ) ( ) ( ) ( ) )( ( ) ( 1 1 1 , m j j j j j i j i j j j i x x x x x x x x x x x P 本シミュレーションは下記の条件を用いて行い,SST(steady state Townsent)実験の平衡条件における電子 エネルギー分布を求めた 対象ガス CF4 0 , 1 Torr換算電界E/p 400 Td 初期電子数n 0 10 3 個および10 6 電極 2.0 cm間隔, 電子の完全吸収壁 サンプリングのbinD HOS → 10 eV, SS → 0.02 eV サンプリングのエネルギー範囲 040 eV HOSによって得られた電子エネル ギー分布は,SSによって得られた 電子エネルギー分布の存在する範 囲から大きく外れることがないた め,矛盾しない値であることがわ かる 多数の点に対して平滑化スプライ ンを求めることは難しいので,各 bin当り20点の標本値(sample value) を抽出して平滑化スプラインを求 める 拡大図から,binの境界においては, 不連続になっていることがわかる 今回得られた結果を,n 0 =10 6 に増加 させたときのSSによって得られた電 子エネルギー分布(統計変動が十分 小さい)と併せて示す 両者の曲線が非常に良く一致してい ることがわかる HOSとスプライン関数を用いることにより,計算時間の増加を抑えつつ, 詳細な電子エネルギー分布が得られることがわかった binの境界においては,各binでサ ンプリングされる電子数の重みを つけて平均した値(average value)境界での標本値としている 全エネルギーにわたって連続した電 子エネルギー分布が得られることが わかる HOSと平滑化スプラインの組合わせによる電子エネルギー分布の新しいサンプリング技法を開発した Legendre多項式を用いることによって,各binにおける電子数の密度勾配を詳細に表現することができた bin毎に20点の電子エネルギー分布の値を標本値として抽出し,この標本値に対して平滑化スプラインを適用することで,全エネルギー範囲にわたって連続した電子エネルギー分布が得られた 今回の方法によって得られた結果を,追跡電子数を増加させ統計変動が十分小さい場合のSSによって得られた電子エネルギー分布と比較すると,非常に良く一致することがわかった HOSにおけるbin幅(D =10 eV)) 1. はじめに 目的 2. 計算方法 3. 計算条件 2-2. 平滑化スプライン SSと異なり,bin内における電子エネルギー分布の詳細な変化を表現でき るので,bin幅を広げることが可能 bin幅を広く設定することができるので,1つのbin当りにサンプリン グされる電子数が減尐せず,統計変動は増加 しない 4. 計算結果 4-1. HOSおよびSSで得られた電子エネルギー分布 4-2. HOSの標本値抽出 滑らかさを考慮しているため,全て の標本値を忠実に通過しているわけ ではないことがわかる 4-3. 標本値に対する平滑化スプライン(present)の適用 4-4. SSとの比較 5. まとめ 0.14 0.12 0.10 0.08 0.06 0.04 0.02 0.00 electron energy distribution 40 35 30 25 20 15 10 5 0 electron energy [eV] present SS ( D =0.02eV n 0 =10 6 ) [2] 吉村 和美 他:「パソコンによるスプライン関数」,東京電機大学出版局 (1988) [1] Peter L. G. Ventzek et al. : J. Appl. Phys. 75. 15. 3785 (1994) 0.14 0.12 0.10 0.08 0.06 0.04 0.02 0.00 electron energy distribution 40 35 30 25 20 15 10 5 0 electron energy [eV] sample value average value present 統計変動が増加する 計算時間が増加する 問題点 従来のサンプリング技法(Standard Sampling:SS) Ventzek [1] らが提案したサンプリング技法であり,高次のサンプリングとそのオーバーラップサ ンプリング によって,計算時間の増加を抑えつつ詳細な電子エネルギー分布を求める方法 LPWS(Legendre Polynomial Weighted Sampling) 高次のサンプリングを使用することで,計算時間の増加を抑えることが できるが,binの境界で電子エネルギー分布が不連続になるので,binオーバーラップさせながらサンプリング して重ね合わせることにより, 全エネルギー範囲にわたって連続した 電子エネルギー分布を得る したがって,追跡電子数を増やす必要がなくなるため,計算 時間の増加を抑えることができる 高次のサンプリングとスプラインを用いた電子エネルギー分布のサンプリング Development of novel sampling technique of electron energy distribution using higher order sampling and spline 木村 太朗 * ,佐 藤 孝 紀,伊 藤 秀 範 (室蘭工業大学) オーバーラップさせることによって,計算に無駄が生じること サンプリングされる電子数の差によって,bin毎に電子エネルギー分布の信頼性が異なるの だが,その点が考慮されていないこと 問題点 多項式を用いて各bin内における電子数の密度勾配を表現 する方法 「データ点を忠実に通過すること」および「得られる関数が滑らかであること」のうち, どちらを優先 するかについて,自由に設定することができるという特徴をもつ

高次のサンプリングとスプラインを用いた電子エネルギー分布の …€¦ · electron energy [eV] SS HOS 0.14 0.12 0.10 0.08 0.06 0.04 0.02 0.00 n 0 5 10 15

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Page 1: 高次のサンプリングとスプラインを用いた電子エネルギー分布の …€¦ · electron energy [eV] SS HOS 0.14 0.12 0.10 0.08 0.06 0.04 0.02 0.00 n 0 5 10 15

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elec

tron e

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gy d

istr

ibuti

on

4035302520151050

electron energy [eV]

SSHOSsample value

average value

2-1. 高次のサンプリング(Higher Order Sampling:HOS)

これらの技術を適切に制御して使用するためには,放電の性質の理解が必要

気体放電プラズマの応用分野

ガスレーザ,プラズマディスプレイ,プラズマCVD,半導体プラズマプロセシング,有害化学物質の除去など

背景

気体放電プラズマ中には様々な種類の粒子が存在し,これらの粒子によって放電が維持されるが,特に,電子群の性質が放電の性質を決定付ける

放電の性質

理由① 電子は気体放電プラズマを構成する粒子(中性気体分子(原子),励起分子,

正イオン,ラジカル,光子等)の中で最も質量が小さく,電界によって容易に加速され高エネルギー状態になり,他の粒子に大きな影響を及ぼすため

理由② 気体放電プラズマを構成する各粒子は,中性気体分子(原子)に電子が衝突することによって生成されるため

気体放電プラズマ中の電子群の性質は,電子スオームパラメータによって表され,これは電子エネルギー分布から計算される

電子群の性質

電子エネルギー分布を知ることは放電の性質を知ることに等しい

コンピュータを用いたシミュレーション方法の一つであるモンテカルロシミュレーションによって,電子のエネルギーをサンプリングし,電子エネルギー分布を得る

電子エネルギー分布の計算方法

エネルギーの範囲を微小区間(bin)に区切り,各bin内のエネルギー

を持った電子数をカウントし,そのヒストグラムを作成して電子エネルギー分布を表現する

詳細な電子エネルギー分布を求めるためには,binを密にしなければならない

統計変動を低減させるには追跡電子数の増加が必要となる

高次のサンプリングと平滑化スプライン[2]を用い,オーバーラップサンプリングを行わずに計算時間の増加を抑えつつ,詳細な電子エネルギー分布を求める方法を開発した

本研究で開発した方法は,高次のサンプリングと平滑化スプラインとの2つの部分から構成される

ここでは,第9項目までを考慮したLegendre多項式を用いて電子の密度勾配を表現している

Legendre多項式

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iはbinの番号を表す

Niは区間i ~i+1 に含まれる電子数を表す

平滑化スプラインを用いて,全てのbinに対する電子エネルギー分布が連続性を持つようにつなぐ

HOSでは,bin毎に独立して多項式を求めるため,binの境界では電子エネルギー分布の連続性が保証されない

データ点の補間を行う関数式

n点のデータ点に対する(2m-1)次の平滑化スプライン

mn

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iim xNbxpxf

1

1 )()()(

mi

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Pm-1(x)はm-1次以下の多項式を表す

biはデータ点の座標および優先度の設定によって定まる係数

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xxxx

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1

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xxxxxxxP

本シミュレーションは下記の条件を用いて行い,SST(steady state Townsent)実験の平衡条件における電子エネルギー分布を求めた

対象ガス CF4 (0 ℃, 1 Torr)

換算電界E/p 400 Td

初期電子数n0 103 個および106 個

電極 2.0 cm間隔, 電子の完全吸収壁

サンプリングのbin幅D HOS → 10 eV, SS → 0.02 eV

サンプリングのエネルギー範囲 0~40 eV

HOSによって得られた電子エネルギー分布は,SSによって得られた

電子エネルギー分布の存在する範囲から大きく外れることがないため,矛盾しない値であることがわかる

多数の点に対して平滑化スプラインを求めることは難しいので,各bin当り20点の標本値(sample value)

を抽出して平滑化スプラインを求める

拡大図から,binの境界においては,不連続になっていることがわかる

今回得られた結果を,n0 =106に増加させたときのSSによって得られた電

子エネルギー分布(統計変動が十分小さい)と併せて示す

両者の曲線が非常に良く一致していることがわかる

HOSとスプライン関数を用いることにより,計算時間の増加を抑えつつ,詳細な電子エネルギー分布が得られることがわかった

binの境界においては,各binでサ

ンプリングされる電子数の重みをつけて平均した値(average value)を境界での標本値としている

全エネルギーにわたって連続した電子エネルギー分布が得られることがわかる

HOSと平滑化スプラインの組合わせによる電子エネルギー分布の新しいサンプリング技法を開発した

Legendre多項式を用いることによって,各binにおける電子数の密度勾配を詳細に表現することができた

各bin毎に20点の電子エネルギー分布の値を標本値として抽出し,この標本値に対して平滑化スプラインを適用することで,全エネルギー範囲にわたって連続した電子エネルギー分布が得られた

今回の方法によって得られた結果を,追跡電子数を増加させ統計変動が十分小さい場合のSSによって得られた電子エネルギー分布と比較すると,非常に良く一致することがわかった

( はHOSにおけるbin幅(D =10

eV))

1. はじめに

目的

2. 計算方法

3. 計算条件

2-2. 平滑化スプライン

SSと異なり,bin内における電子エネルギー分布の詳細な変化を表現できるので,bin幅を広げることが可能

bin幅を広く設定することができるので,1つのbin当りにサンプリングされる電子数が減尐せず,統計変動は増加しない

4. 計算結果

4-1. HOSおよびSSで得られた電子エネルギー分布

4-2. HOSの標本値抽出

滑らかさを考慮しているため,全ての標本値を忠実に通過しているわけではないことがわかる

4-3. 標本値に対する平滑化スプライン(present)の適用

4-4. SSとの比較

5. まとめ

0.14

0.12

0.10

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on

4035302520151050electron energy [eV]

present

SS (D=0.02eV n0=106 )

[2] 吉村和美他:「パソコンによるスプライン関数」,東京電機大学出版局 (1988)[1] Peter L. G. Ventzek et al. : J. Appl. Phys. 75. 15. 3785 (1994)

0.14

0.12

0.10

0.08

0.06

0.04

0.02

0.00

elec

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ener

gy d

istr

ibut

ion

4035302520151050

electron energy [eV]

sample value

average value

present

統計変動が増加する 計算時間が増加する

問題点

従来のサンプリング技法(Standard Sampling:SS)

Ventzek[1]らが提案したサンプリング技法であり,高次のサンプリングとそのオーバーラップサンプリングによって,計算時間の増加を抑えつつ詳細な電子エネルギー分布を求める方法

LPWS(Legendre Polynomial Weighted Sampling)法

高次のサンプリングを使用することで,計算時間の増加を抑えることができるが,binの境界で電子エネルギー分布が不連続になるので,binを

オーバーラップさせながらサンプリングして重ね合わせることにより,全エネルギー範囲にわたって連続した電子エネルギー分布を得る

したがって,追跡電子数を増やす必要がなくなるため,計算時間の増加を抑えることができる

高次のサンプリングとスプラインを用いた電子エネルギー分布のサンプリングDevelopment of novel sampling technique of electron energy distribution using higher order sampling and spline

木村 太朗* ,佐藤 孝 紀,伊藤 秀 範 (室蘭工業大学)

オーバーラップさせることによって,計算に無駄が生じること サンプリングされる電子数の差によって,bin毎に電子エネルギー分布の信頼性が異なるの

だが,その点が考慮されていないこと

問題点

多項式を用いて各bin内における電子数の密度勾配を表現する方法

「データ点を忠実に通過すること」および「得られる関数が滑らかであること」のうち,どちらを優先するかについて,自由に設定することができるという特徴をもつ