4
No.145 台湾での加工食品(お菓子や飲料)の 参入・展開に関する一考察 台湾には日本関連の食品・飲料が多く流通している。地方の中小企業がこの分野で後発参入する際、 物産展や博覧会への参加後、どのような展開をすべきか悩みが多い。台湾では日本を前面に出したドラッ グストアの出 店ラッシュや、W e b による取 扱 量の大 幅な増 加が見られることから、市 場の成 長とともに 販 売を拡 大できるよう、うまくマーケットを見 極めて対 応する必 要がある。 台湾で日常的となった日本の食品 日本からの飲食店の進出ラッシュが衰えを知らな い。表–1で取り上げた3つの麺チェーン店は、い ずれも出店から2年足らずであるが、店舗数を拡大 し好評を博している。アンケート結果からも、台湾 人が最も好きな外国料理は日本料理であることが明 確である(図–1)。 図 ‒1 日本食品に対する消費者意識アンケート調査 ~台湾~ 2013年3月 日本貿易振興機構(ジェトロ)農林水産・食品部 公益財団法人交流協会 台北事務所(前研修生) 木部 匡之 都市部においては、外食店のほか、デパート、 スーパー、コンビニといった小売店舗も数多くあ り、日本商品(お菓子や飲料)も取り扱われている。 従来、様々な日本の商品を購入したい場合は、デ パートへ足を運ぶ必要があった。しかし、現在は デパートまで足を運ばなくても、コンビニ、スー パー、雑貨店など、街の至る所で日本商品を購入で きる。特に都市部においてコンビニは非常に多く、 16 BUSINESS SUPPORT FUKUOKA 2014.6

台湾での加工食品(お菓子や飲料)の 参入・展開に関する一考察 · た、「ブランド力のある生鮮品であれば話を聞くが、 加工商品は無数のインポーターから何でも仕入れる

  • Upload
    others

  • View
    0

  • Download
    0

Embed Size (px)

Citation preview

Page 1: 台湾での加工食品(お菓子や飲料)の 参入・展開に関する一考察 · た、「ブランド力のある生鮮品であれば話を聞くが、 加工商品は無数のインポーターから何でも仕入れる

No.145

台湾での加工食品(お菓子や飲料)の参入・展開に関する一考察

 台湾には日本関連の食品・飲料が多く流通している。地方の中小企業がこの分野で後発参入する際、物産展や博覧会への参加後、どのような展開をすべきか悩みが多い。台湾では日本を前面に出したドラッグストアの出店ラッシュや、Webによる取扱量の大幅な増加が見られることから、市場の成長とともに販売を拡大できるよう、うまくマーケットを見極めて対応する必要がある。

台湾で日常的となった日本の食品1

 日本からの飲食店の進出ラッシュが衰えを知らな

い。表–1で取り上げた3つの麺チェーン店は、い

ずれも出店から2年足らずであるが、店舗数を拡大

し好評を博している。アンケート結果からも、台湾

人が最も好きな外国料理は日本料理であることが明

確である(図–1)。

図‒1 日本食品に対する消費者意識アンケート調査 ~台湾~2013年3月 日本貿易振興機構(ジェトロ)農林水産・食品部

公益財団法人交流協会台北事務所(前研修生)

木部 匡之

 都市部においては、外食店のほか、デパート、

スーパー、コンビニといった小売店舗も数多くあ

り、日本商品(お菓子や飲料)も取り扱われている。

従来、様々な日本の商品を購入したい場合は、デ

パートへ足を運ぶ必要があった。しかし、現在は

デパートまで足を運ばなくても、コンビニ、スー

パー、雑貨店など、街の至る所で日本商品を購入で

きる。特に都市部においてコンビニは非常に多く、

16 BUSINESS SUPPORT FUKUOKA 2014.6

Page 2: 台湾での加工食品(お菓子や飲料)の 参入・展開に関する一考察 · た、「ブランド力のある生鮮品であれば話を聞くが、 加工商品は無数のインポーターから何でも仕入れる

大手4社だけで台湾全体で約1万店舗にのぼる(表

–2)。

これから台湾に参入・展開を考える食品企業はどのように攻めるべきか?

 直接台湾の消費者に接して反応を見極めたい場合

は、デパート等での「日本物産展」への出展が近道

だ。主催者が広告宣伝も一括して行い、デパートの

集客力により一定の集客が見込める。経済団体、銀

行、地方自治体等、輸出入業者など、様々なプレイ

ヤーが主催している。

 バイヤーと出会う機会を探したい企業は、台湾で

開催される食品見本市に出展するのも一つの方法

である。毎年6月に台北市内で開催される「Food�

Taipei1」は、毎年JETROがジャパンパビリオ

ンを設けて窓口になっているため参加し易い。台湾

で成功するために出展者は台湾市場に合わせたPR

を行っているので、他社の出展状況を見ることで台

湾市場への売り込み方を学ぶ機会にもなる。

 これら物産展や博覧会への出展は最初の一歩とし

ては良い。しかし、「どの輸入業者と手を組めば良い

か?」、「輸入業者と提携したが、取引量や売上が伸

びない」など、取引先に関する質問や悩みも耳にする。

 一方で小売業者に直接売り込みに行った場合の多

くは、「日本で売れていますか?日本で売れている

ものであればぜひ取り扱いたい。」と言われる。ま

た、「ブランド力のある生鮮品であれば話を聞くが、

加工商品は無数のインポーターから何でも仕入れる

ことが可能であるため興味が無い」といった声もあ

る。このように、小売店ごとに日本商品に関する関

心に大きな差があるため、予め情報を収集した上で

営業活動に行くのが良い。日本の大手メーカーの商

品が日本のように充実した品揃えの中、地方の中小

企業が後発で参入するにはハードルが高いのが現実

だ。このような状況から、これから成長する小売・

流通チャネルを見極め、成長チャネルに売り込みを

行うことが重要だと思われる。

成長する流通チャネルの一例3

(1)日本商品を前面に出したドラッグストアの出現

 台北市内を歩いていると、この1、2年、「日本」

の看板を掲げた薬局を多く目にするようになった。

店舗に入ると殆どが日本商品であることに加え、一

般の薬局と異なり薬以外の日本の商品が数多く品揃

えされている。

①日薬本舗

 2年間で13店舗を展開し、急成長している。経

営者は約30年間医薬品関連業務に従事し、日本、

表‒1 日系ラーメン・麺店の店舗数(2/26現在)表‒2 台湾のコンビニの数

筆者調べ

17BUSINESS SUPPORT FUKUOKA 2014.6情報取引推進課 TEL:092-622-6680お問い合わせ

Page 3: 台湾での加工食品(お菓子や飲料)の 参入・展開に関する一考察 · た、「ブランド力のある生鮮品であれば話を聞くが、 加工商品は無数のインポーターから何でも仕入れる

台湾の医薬業界や薬局に大きなパイプを有する。日

本のドラッグストア、具体的にはマツモトキヨシが

目指すモデルとの事。店の入り口は、日本のお菓

子・飲料で占められている。商品は基本的に全て日

本ブランドであり、更に9割以上を日本製とし、日

本の商品のニーズにワンストップで対応できる店舗

作りを目指している。今後、2ヶ月に1店舗のペー

スで直営出店を計画している。

②日本薬粧堂

 台北市内に現在2店舗を展開。日本人が台湾人と

共同で経営しており、長く医薬品ビジネスに携わっ

た経験を生かしている。日本のフランチャイズ方式

でこれから2ヶ月に1店舗のペースで店舗拡大を考

えている。

 これらのドラッグストアの商品は「薬(+健康食

品)」、「生活用品」、「食品・飲料」がそれぞれ3割ず

つであり、薬局や、化粧品・生活用品・健康食品を

中心とした小売店舗2とは品揃えが大きく異なる。

日本で25年ほど前に出現した「ドラッグストア」

という小売業態がこれから台湾に本格的に普及し、

「従来からの薬だけを扱っている薬局は無くなって

いくだろう」と両社のトップは同じように語った。

日本の地方からの食品や飲料の売り込みは大いに歓

迎し、製造元から直接仕入れることも検討したいと

話す。このような新しい販売チャネルには食品や飲

料の参入する余地が大きいと思われる。

(2)取扱量が急拡大するネットショッピング

 台湾ではネットショッピングが盛んであり、消費

者は多様な商品をネットにて購入している。大手サ

イトの中で唯一上場企業が運営するPChome24h

購物は、発注から24時間以内に商品を届けること

が特徴である(図–4)。品目は多く100万点以上

を有し、中でも食品関係はこの3年間の販売状況が

好調とのこと(表–3)。販売強化のため、2010年

末に「輸入おやつ館」と「輸入飲料館」のカテゴリを

新設し、商品数、売上高は毎年増加している。商品

の8割は日本からの輸入商品であるため、2012年

年初には「日本食品館」を新設した。

 24時間以内に届けるシステムは、食品や飲料と

いった日々の生活に不可欠なものを必要な分だけ購

入するのに最適であり、店舗を圧倒する品揃えか

ら、今後も利用者・売上げが増えていくと予想され

る。

図‒2 日薬本舗の店舗の外観

図‒3 日本薬粧堂の店舗の外観

18 BUSINESS SUPPORT FUKUOKA 2014.6

Page 4: 台湾での加工食品(お菓子や飲料)の 参入・展開に関する一考察 · た、「ブランド力のある生鮮品であれば話を聞くが、 加工商品は無数のインポーターから何でも仕入れる

まとめ4

 台湾では日本からの輸入食品を購入するチャネル

が変わりつつある。従来の品揃え豊富なデパートか

ら、少量を取り揃えどこにでもあるコンビニへ、購

入の場は広がった。そして現在、日本のドラッグス

トアとほぼ同様の形態で、日本の看板を掲げた店舗

が多数出現し注目を集めている。日本の薬は非常に

人気であり、これらのドラッグストアには日本の薬

の愛用者が集まる。店内には薬以外にも、日本のお

菓子や飲料が豊富に並ぶ。今後、店舗数が増えてい

くに従い、日本の輸入食品の小売チャネルとして大

きなボリュームを持つことが予想される。日本の地

域限定の商品に興味を持つ台湾人も多く、地方の中

小企業にとってもチャンスと考える。

 親日で日本の食品を好む台湾マーケットである

が、食品や飲料製造の中小企業が既存の販売チャネ

ルに後発参入するのは容易ではない。一方で、日本

食品の販売量が今後も大幅に増加する見込みのある

ドラッグストアやWebチャネルでは取り扱う商品

を増やしたいニーズが強く、このような流通チャネ

ルにタイミングよく参入できれば、成功する可能性

は高いと考える。

1�台湾最大の食品見本市であり、前回の来場者数は

65,123人、出展者数は997社にのぼる。2�台湾にはCOSMED(コスメド)、WATSONS

(ワトソンズ)といったチェーン店が数多くある。

図‒4 PChome24購物のWebサイト

表‒3 PChomeの商品数・売上額の対前年比  PChomeからのヒヤリングによる

*本レポートは平成 26年3月に作成したものです

19BUSINESS SUPPORT FUKUOKA 2014.6情報取引推進課 TEL:092-622-6680お問い合わせ

海外事務所設置状況についてのお知らせ 本県では、中国(上海・香港)、米国(サンフランシスコ)、タイ(バンコク)に県独自の海外事務所を設置しています。また、欧州および韓国においては、現地在住のコンサルタント等に業務を委託しています。各海外事務所および現地コンサルタント等は県内中小企業の皆さんの国際業務の支援をいたします。活用につきましては、お気軽にご相談・ご利用ください。

連絡先福岡県商工部商工政策課(担当:山田・前田)TEL(092)643-3434 FAX(092)643-3417公益財団法人福岡県中小企業振興センター(担当:前田)TEL(092)622-6680 FAX(092)624-3300