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111 110 レスパスビジョンは主にCM、映画、PVのポスト プロダクションを手掛ける。最近では上で紹介した DITシステムも活用し、デジタルシネマ制作の収録 からポスプロまで関わっている。写真左からビジュ アルエフェクト部門の長島正弘氏、須賀努氏、久保 江陽介氏。今後は4K対応のモニターについても検討 していくという。 カラーマネージメントモニターEIZO ColerEdge CG246。キャリブレーションセンサー内蔵。24.1 型のIPSノングレアタイプの液晶を採用。推奨 解像度はDVI、DisplayPortで1920×1200画素。入 力端子は、DisplayPort×1(HDCP 対応 )、DVI-I 29 ピ ン ×1(HDCP 対 応 )、HDMI×1(HDCP 対 応 )。ラ インナップとして27型の CG277もある。 ColorEdge CGシリーズにはSDI 入力がないので、ブラックマジッ クデザインのHD Link Proで10bit 信 号 の ま ま DisplayPort に 変 換 し て入力する。 レスパスビジョンの DIT(デジタル・イメージ・テクニ シャンの略)システムは、撮影現場でVE的な信号の 管理をするだけでなく、カラーグレーディングをした り、3D-LUTをあてて現場で色を確認し、ポストプロ ダクションに繋ぐ役割を果たす。そのモニターとして CG246が使われており、マスモニエミュレーションで 有機ELのマスモニ、ソニーのBVM-E250Aに合わせ込 んでいる。またフリーのプラグインを利用することで ColorEdgeで読める3D-LUTも作ることもできる。その 性能も良く、ColorEdgeはモニター兼LUT-BOXとして もコストパフォーマンスが高い。Mac Proはホコリを 吸い込まないようにネットが貼られていたり、簡単に 蓋が閉じて撤収が素早くできるように工夫されていた。 EIZO ColorEdge CGシリーズが簡易「マスモニ」になる! グレーディングソフトDaVinci Resolveを表示しているシステムに、EIZO ColorEdge 付属のカラーマネージメントソフトColorNavigatorを立ち上げたところ。 取材に協力していただいたレスパスビジョン。これ までColorEdgeは導入していたが、最近マスモニエ ミュレーションを試して、その有用性に気がついた。 リファレンスはBVM-A20F1M(右から2つめ)。 レスパスビジョンのDITシステム 色の規格・色域について どれを基準にすべきか? CG制作や写真、印刷関連など画像の 色や階調を厳密に管理するプロフェッ ショナルの間で定番になっているのが EIZOのカラーマネージメントモニター ColorEdgeシリーズだ。映像制作分野に おいてもPC モニターとして使っている 人は多いはず。中でもColorEdgeのCG シリーズは、映像制作分野を想定し、映 像関連の機能が充実してきている。た と え ば HDMI 入 力 時 の1080/24p に も 対応し、また代表的な放送規格で定 められた色域・ガンマを再現するEBU、 Rec.709、DCIモードを備え、前面のボタ ンで切り替えて使うことができる。 しかし映像制作で最終的に放送、映 画、ソフトパッケージ化する業務の場合、 映像用モニターで確認するというのは 必須。ポストプロダクションではマス ターモニター(マスモニ)でチェックする。 そのマスモニは業界定番としてソニー のBVMシリーズが使われており、現在 は有機ELタイプ(BVM-E250A)に置き 換わってきているが、今だにCRTのマ スモニがベースであり、有機ELも従来 の CRT のマスモニに近づけているほど。 現場では、制作用のPCモニターとマ スモニは、「そもそも色は合わないもの」 という了解があった。しかしそれでは 効率が悪い。何とかマスモニの再現に 近づけようという努力をする人もいた が、マスモニ自体にクセがあったり、分 光特性にも違いがあるので、同じ数値 にしても合わない。そのクセの部分も 含めて合わせ込もうというのが、「マス モニ」エミュレーションという発想だ。 もともとEIZOのColorEdge CGシリー ズはデバイスエミュレーションという 機能が使える。これはiPadやサイネー ジ用のディスプレイなど、プロファイ ルを配っていなく基準がないディスプ レイに対し、外付けのセンサーでそれ を測定し、ColorEdge側に読み込み、疑 似再現(エミュレーション)することで、 最終イメージを確認するための機能 だった。これをマスターモニターに適 用しようということである。 エミュレーションに必要なものは、 合わせたいマスモニ、対応のColorEdge CG シ リ ー ズ、対 応 の 分 光 特 性 タ イ プ セン サ ー(i1 Pro2など )、ColorEdge 付属のカラーマネージメントソフト ColorNavigator を 入 れ た PC(Win/Mac) のみ。ユーザー自身の作業でそれが可 能になる(手順は次ページ参照)。 今回、マスモニエミューレションの 作業を見せていただいたポストプロ ダクションのレスパスビジョンでは、 CG246を 導 入 し、有 機 EL の マ ス モ ニ BVM-E250Aをエミュレーションしてい た。たとえばオートデスクの Flame の部 屋で、そのサブシステムとしてFlare用 (SDI出力が出ない)のモニターとして CG246を使えば、作業効率はかなり良 くなる。これまで制作用に様々なモニ ターを使ってきたが、それをCG246に 置き換えていくという(レスパスビジョ ン・久保江氏)。 あくまで簡易とは言え、これまでまっ たく合っていなかった色や階調が1つ のモニター(しかもマスモニからすると 桁違いに低価格)で確認できるという ことは画期的と言えるだろう。 業種 機材 プロファイル 推奨 映画制作 映画館 DCI、REC DCI HDTV Rec.709 CM 制作 HDTV Rec.709 Rec.709 ゲーム制作 HDTV Rec.709 Rec.709 PC モニター sRGB スマホ 機種ごと 写真・販促物 制作 印刷媒体 AdobeRGB AdobeRGB 規格 内容(規定する団体) AdobeRGB アドビシステムズが定義した色空間 sRGB 国際電気標準会議(IEC)によって規定 REC709(ITU-R) HDTVスタジオの国際規格 DCI デジタルシネマ上映配給規格 SMPTE-C 米国映画テレビ技術者協会 EBU 欧州放送連合 EIZO ColorEdge CGシリーズの問い合わせ、ご購入については株式会社ライトアップまで http://www.light-up.co.jp/ TEL03-3401-8504 マスモニ エミュレーション機能を試す ▲▶動画が様々な用途に使われていく現在、色の規 格と色域、プロファイルを知っておくことは重要。 用途に合わせて正しくモニタリングする必要がある。

EIZO ColorEdge CGシリーズが簡易「マスモニ」に …...グレーディングソフトDaVinci Resolveを表示しているシステムに、EIZO ColorEdge付属のカラーマネージメントソフトColorNavigatorを立ち上げたところ。取材に協力していただいたレスパスビジョン。これ

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Page 1: EIZO ColorEdge CGシリーズが簡易「マスモニ」に …...グレーディングソフトDaVinci Resolveを表示しているシステムに、EIZO ColorEdge付属のカラーマネージメントソフトColorNavigatorを立ち上げたところ。取材に協力していただいたレスパスビジョン。これ

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▲レスパスビジョンは主にCM、映画、PVのポストプロダクションを手掛ける。最近では上で紹介したDITシステムも活用し、デジタルシネマ制作の収録からポスプロまで関わっている。写真左からビジュアルエフェクト部門の長島正弘氏、須賀努氏、久保江陽介氏。今後は4K対応のモニターについても検討していくという。

カラーマネージメントモニターEIZO ColerEdge CG246。キャリブレーションセンサー内蔵。24.1型のIPSノングレアタイプの液晶を採用。推奨解像度はDVI、DisplayPortで1920×1200画素。入力端子は、DisplayPort×1(HDCP対応)、DVI-I 29ピン×1(HDCP 対応 )、HDMI×1(HDCP 対応 )。ラインナップとして27型のCG277もある。

◀ColorEdge CGシリーズにはSDI 入力がないので、ブラックマジックデザインのHD Link Proで10bit信号のままDisplayPortに変換して入力する。

レスパスビジョンのDIT(デジタル・イメージ・テクニシャンの略)システムは、撮影現場でVE的な信号の管理をするだけでなく、カラーグレーディングをしたり、3D-LUTをあてて現場で色を確認し、ポストプロダクションに繋ぐ役割を果たす。そのモニターとしてCG246が使われており、マスモニエミュレーションで有機ELのマスモニ、ソニーのBVM-E250Aに合わせ込んでいる。またフリーのプラグインを利用することでColorEdgeで読める3D-LUTも作ることもできる。その性能も良く、ColorEdgeはモニター兼LUT-BOXとしてもコストパフォーマンスが高い。Mac Proはホコリを吸い込まないようにネットが貼られていたり、簡単に蓋が閉じて撤収が素早くできるように工夫されていた。

EIZO ColorEdge CGシリーズが簡易「マスモニ」になる!

グレーディングソフトDaVinci Resolveを表示しているシステムに、EIZO ColorEdge付属のカラーマネージメントソフトColorNavigatorを立ち上げたところ。

取材に協力していただいたレスパスビジョン。これまでColorEdgeは導入していたが、最近マスモニエミュレーションを試して、その有用性に気がついた。リファレンスはBVM-A20F1M(右から2つめ)。

レスパスビジョンのDITシステム

色の規格・色域について どれを基準にすべきか?

 CG制作や写真、印刷関連など画像の色や階調を厳密に管理するプロフェッショナルの間で定番になっているのがEIZOのカラーマネージメントモニターColorEdgeシリーズだ。映像制作分野においてもPCモニターとして使っている人は多いはず。中でもColorEdgeのCGシリーズは、映像制作分野を想定し、映像関連の機能が充実してきている。たと え ば HDMI 入 力 時 の1080/24p に も対応し、また代表的な放送規格で定められた色域・ガンマを再現するEBU、Rec.709、DCIモードを備え、前面のボタンで切り替えて使うことができる。 しかし映像制作で最終的に放送、映画、ソフトパッケージ化する業務の場合、映像用モニターで確認するというのは必須。ポストプロダクションではマスターモニター(マスモニ)でチェックする。

そのマスモニは業界定番としてソニーのBVMシリーズが使われており、現在は有機 ELタイプ(BVM-E250A)に置き換わってきているが、今だにCRTのマスモニがベースであり、有機ELも従来のCRTのマスモニに近づけているほど。 現場では、制作用のPCモニターとマスモニは、「そもそも色は合わないもの」という了解があった。しかしそれでは効率が悪い。何とかマスモニの再現に近づけようという努力をする人もいたが、マスモニ自体にクセがあったり、分光特性にも違いがあるので、同じ数値にしても合わない。そのクセの部分も含めて合わせ込もうというのが、「マスモニ」エミュレーションという発想だ。 もともとEIZOのColorEdge CGシリーズはデバイスエミュレーションという機能が使える。これはiPadやサイネー

ジ用のディスプレイなど、プロファイルを配っていなく基準がないディスプレイに対し、外付けのセンサーでそれを測定し、ColorEdge 側に読み込み、疑似再現(エミュレーション)することで、最終イメージを確認するための機能だった。これをマスターモニターに適用しようということである。 エミュレーションに必要なものは、合わせたいマスモニ、対応のColorEdge CG シ リ ー ズ、対 応 の 分 光 特 性 タ イプ セン サ ー(i1 Pro2など )、ColorEdge付属のカラーマネージメントソフトColorNavigator を 入 れ た PC(Win/Mac)のみ。ユーザー自身の作業でそれが可能になる(手順は次ページ参照)。 今回、マスモニエミューレションの作業を見せていただいたポストプロダクションのレスパスビジョンでは、CG246を導入し、有機 EL のマスモニBVM-E250Aをエミュレーションしていた。たとえばオートデスクのFlameの部

屋で、そのサブシステムとしてFlare用(SDI出力が出ない)のモニターとして

CG246を使えば、作業効率はかなり良くなる。これまで制作用に様々なモニターを使ってきたが、それをCG246に置き換えていくという(レスパスビジョン・久保江氏)。 あくまで簡易とは言え、これまでまったく合っていなかった色や階調が1つのモニター(しかもマスモニからすると桁違いに低価格)で確認できるということは画期的と言えるだろう。

業種 機材 プロファイル 推奨

映画制作映画館 DCI、REC

DCIHDTV Rec.709

CM制作 HDTV Rec.709 Rec.709

ゲーム制作

HDTV Rec.709

Rec.709PCモニター sRGB

スマホ 機種ごと

写真・販促物制作 印刷媒体 AdobeRGB AdobeRGB

規格 内容(規定する団体)AdobeRGB アドビシステムズが定義した色空間

sRGB 国際電気標準会議(IEC)によって規定

REC709(ITU-R) HDTVスタジオの国際規格

DCI デジタルシネマ上映配給規格

SMPTE-C 米国映画テレビ技術者協会

EBU 欧州放送連合

EIZO ColorEdge CGシリーズの問い合わせ、ご購入については株式会社ライトアップまで http://www.light-up.co.jp/ TEL03-3401-8504

「マスモニ」エミュレーション機能を試す

▲▶動画が様々な用途に使われていく現在、色の規格と色域、プロファイルを知っておくことは重要。用途に合わせて正しくモニタリングする必要がある。

Page 2: EIZO ColorEdge CGシリーズが簡易「マスモニ」に …...グレーディングソフトDaVinci Resolveを表示しているシステムに、EIZO ColorEdge付属のカラーマネージメントソフトColorNavigatorを立ち上げたところ。取材に協力していただいたレスパスビジョン。これ

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ブラウザに指定のアドレスを入力し、マスモニに表示させ、その特性を測定器(i1 Pro 2)で測る。

トップメニューの「高度な機能」から「タブレット/表示装置のICCプロファイル作成」を選択する。

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ColorEdgeとColorNavigatorを入れたPC(Mac)をUSBケーブルで接続して作業する

測定パッチは11×11×11の標準精度を選択。これで1時間程度かかるが、それよりも精度を上げても時間に見合うだけの効果は得られない。

測定器はi1Pro 2を使うので、それを選択する。

測定結果が出るので「プロファイルを保存」を選択。 「調整目標を作成」から、「プロファイルを読み込む」を選択。

マスモニを測定して作ったプロファイルを選択する。

プロファイルをカスタマイズする。本体側を調整するための測定器は、本体に内蔵するものでよい。

本体のセンサーが出て、自動で計測を始める。

モニターの調整結果が出る。

マスモニとColorEdgeを比較してみて、さらに追い込む必要がある場合は、「手動調整」を選択する。

後は目で見ながら追い込んで行く。

本体前面のカラーモード選択ボタンで呼び出すことができる。ここでは8-CAL(DP)として登録されている。

「マスモニ」エミュレーションの設定手順