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No.2015-00 平成 27 3 9 各科 診療科長 病棟・外来医長 病棟・外来師長 各位 病院長 佐多 竹良 病理・臨床検査・輸血部 部長 尾辻 臨床検査に係わる共用基準範囲の変更について 臨床検査値の「基準範囲」については施設毎に様々な基準が採用され共通の基準範囲は ありませんでした。 一方、病病・病診連携の推進により患者の検査結果情報の共有化とともに「基準範囲」 の共通化も望まれています。 今回、福岡県医師会において JCCLS(日本臨床検査標準協議会)の共用基準範囲の採用を 推奨する旨の通知があり、当院でも採用が病院運営会議にて承認されました。 つきましては、本年 4 1 日を目途に現行の基準範囲から「JCCLS (日本臨床検査標準 協議会)共用基準範囲」に変更いたしますので、ご理解とご協力の程よろしくお願い申し 上げます。 尚、詳細については別添の「共用基準範囲と現行の基準範囲の比較表」をご覧下さい。 対象項目と注意点 対象項目は生化学・血液・一部免疫の項目の全40項目 測定機器・試薬の変更はありません 過去のデータも含め一連で時系列表示での参照が可能です 採用以前の LowHigh 表示は過去の基準値のまま表記します 共用基準範囲は 3 種類の大規模な基準個体検査値データ(日本臨床衛生検査技師会、 IFCC 市原プロジェクト、福岡県五病院会)をもとに作成されており全国で共用 できる基準範囲となっています

臨床検査に係わる共用基準範囲の変更について - …HDL-コレステロール HDL-C mg/dL クレアチン・ホスホキナーゼ CK U/L 40 96 アラニンアミノトランスフェラーゼ

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Page 1: 臨床検査に係わる共用基準範囲の変更について - …HDL-コレステロール HDL-C mg/dL クレアチン・ホスホキナーゼ CK U/L 40 96 アラニンアミノトランスフェラーゼ

No.2015-00

平成 27 年 3 月 9 日

各科

診療科長

病棟・外来医長

病棟・外来師長 各位

病院長 佐多 竹良

病理・臨床検査・輸血部

部長 尾辻 豊

臨床検査に係わる共用基準範囲の変更について

臨床検査値の「基準範囲」については施設毎に様々な基準が採用され共通の基準範囲は

ありませんでした。

一方、病病・病診連携の推進により患者の検査結果情報の共有化とともに「基準範囲」

の共通化も望まれています。

今回、福岡県医師会において JCCLS(日本臨床検査標準協議会)の共用基準範囲の採用を

推奨する旨の通知があり、当院でも採用が病院運営会議にて承認されました。

つきましては、本年 4 月 1 日を目途に現行の基準範囲から「JCCLS(日本臨床検査標準

協議会)共用基準範囲」に変更いたしますので、ご理解とご協力の程よろしくお願い申し

上げます。

尚、詳細については別添の「共用基準範囲と現行の基準範囲の比較表」をご覧下さい。

対象項目と注意点

対象項目は生化学・血液・一部免疫の項目の全40項目

測定機器・試薬の変更はありません

過去のデータも含め一連で時系列表示での参照が可能です

採用以前の Low、High 表示は過去の基準値のまま表記します

共用基準範囲は 3 種類の大規模な基準個体検査値データ(日本臨床衛生検査技師会、

IFCC 市原プロジェクト、福岡県五病院会)をもとに作成されており全国で共用

できる基準範囲となっています

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下限 上限 下限 上限M 3.5 9.1F 3.5 9.5M 4.35 5.55 4.27 5.58F 3.86 4.92 3.75 5.14M 13.7 16.8 13.6 17.2F 11.6 14.8 10.6 15.4M 40.7 50.1 41.1 51.3F 35.1 44.4 34.5 46.6M 86.2 100.6F 82.2 99M 28.5 33.4F 26.1 32.6M 31.8 34.8F 31.8 34.0M 157 340F 164 376

総蛋白 TP g/dL 6.6 8.1 6.7 8.3アルブミン ALB g/dL 4.1 5.1 4.0 5.0

アルブミン・グロブリン比 A/G 1.32 2.23 - -尿素窒素 UN mg/dL 8 20 8 22

M 0.65 1.07 0.6 1.1F 0.46 0.79 0.4 0.7M 3.7 7.8 3.6 8.0F 2.6 5.5 2.3 5.5

ナトリウム Na mmol/L 138 145 138 146カリウム K mmol/L 3.6 4.8 3.6 4.9クロール Cl mmol/L 101 108 99 109

カルシウム Ca mg/dL 8.8 10.1 8.7 10.3無機リン IP mg/dL 2.7 4.6 2.5 4.7

グルコース GLU mg/dL 73 109 80 112M 40 234 38 207F 30 117 30 137

総コレステロール TC mg/dL 142 248 128 256M 38 90F 48 103

LDL-コレステロール LDL-C mg/dL 65 163 70 139総ビリルビン TB mg/dL 0.4 1.5 0.2 1.5

アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ AST U/L 13 30 13 33M 10 42 8 42F 7 23 6 27

乳酸脱水素酵素 LD U/L 124 222 119 229アルカリホスファターゼ ALP U/L 106 322 115 359

M 13 64F 9 32M 240 486F 201 421

アミラーゼ AMY U/L 44 132 42 132M 59 248 62 287F 41 153 45 163

C反応性蛋白 CRP mg/dL 0.00 0.14 0.0 0.2M 80 140F 60 140M 780 1600F 850 1700

免疫グロブリン(IgA) IgA mg/dL 93 393 120 410M 33 183 40 200F 50 269 40 280

補体蛋白(C3) C3 mg/dL 73 138 70 128補体蛋白(C4) C4 mg/dL 11 31 12 31

ヘモグロビンA1c HbA1c %(NGSP) 4.9 6.0 4.6 6.2

赤血球数 RBC 106/μL

JCCLS共用基準範囲と現行基準範囲の比較

項目名称 項目 単位 性別共用基準範囲 現行基準範囲

白血球数 WBC 103/μL 3.3 8.6

ヘモグロビン Hb g/dL

ヘマトクリット Ht %

平均赤血球血色素量 MCH pg 27.5 33.2

平均赤血球容積 MCV fL 83.6 98.2

血小板数 PLT 103/μL 158 348

平均赤血球血色素濃度 MCHC %→g/dL 31.7 35.3

クレアチニン CRE mg/dL

尿酸 UA mg/dL

中性脂肪 TG mg/dL

HDL-コレステロール HDL-C mg/dL

クレアチン・ホスホキナーゼ CK U/L

40 96

アラニンアミノトランスフェラーゼ ALT U/L

γ-グルタミールトランスペプチダーゼ γGT U/L 10 47

コリンエステラーゼ ChE U/L 214 466

40 188

免疫グロブリン(IgG) IgG mg/dL 861 1747

免疫グロブリン(IgM) IgM mg/dL

鉄 Fe μg/dL

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共用基準範囲の採用について

1.臨床検査値のこれまで

臨床検査値は客観的な医学情報として活用されており、その結果の解釈や判断の基準となる指標と

して基準範囲があります。

しかし、その設定や利用において施設毎に様々な方法が採用されていました。

近年、日常的に利用される生化学的血液検査の項目を中心に測定値や測定方法が統一化され、各施設

で採用されるに至り、全国的な精度管理調査において施設間での測定値の差がほぼ解消される状況と

なってきました。

一方、我が国では医療機関の機能分担と連携(病病連携・病診連携)が進められ、医療機関の間での

患者の検査情報の共有化が期待され、測定方法の統一化と共に基準範囲の共用化が望まれています。

そこで JCCLS(日本臨床検査標準協議会)では 3 種類の健常者の大規模調査データを基に生化学・

血液検査の 40 項目について共用基準範囲案を策定し、各種学術団体、業界団体に広く意見を求め、

それらの意見を反映させた JCCLS 共用基準範囲が公開されました。

2.共用基準範囲の採用

今回、福岡県医師会において JCCLS の共用基準範囲の採用を推奨する旨の通知があり、当院にお

いても病院運営会議にて採用が承認されました。

つきましては、本年 4 月 1 日より現行の基準範囲から「JCCLS 共用基準範囲」に変更いたしますの

で、ご理解とご協力の程よろしくお願い申し上げます。

3.資 料

1)共用基準範囲作成の基となった 3 種類の健常者の大規模調査

多施設共同で十分数の健常者を一定の基準で募り、信頼性の高い基準範囲を設定することが必要とな

り以下の様な調査が実施されました

①国際臨床化学連合(IFCC)がアジア地域で共用可能な基準範囲の設定を目指した大規模な調査

(2009)

②日本臨床衛生検査技師会の多施設共同調査

③福岡県の5病院会による多施設共同調査

国内で標準化の達成されたものを中心に頻用される 40 検査項目について、3調査のデータを統合し、

日本国内で共通に利用可能な基準範囲の設定したものを共用基準範囲案とし、各種学術団体、業界団体

の意見も反映させ完成したものが JCCLS(日本臨床検査標準協議会)共用基準範囲であり、日本医師会を

はじめとする関連団体の賛同を得てリリースされました。

これら 3 つのプロジェクトはいずれも基準範囲作成のために同意書・問診書を取った基準個体から得られた、標準化または標準対

応された測定方法によるデータを元に、明確な一次除外基準に加え、脂質異常症、糖尿病、貧血、アルコール性肝障害など、潜在

病態を除外するための二次除外基準を設けて基準範囲設定値を最適化しています。

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共用基準範囲が幅広く利用されることで、病病・病診連携における患者の検査結果情報の共有化に寄

与する事が期待されます。

2)基準範囲と臨床診断値(予防医学基準値)

基準範囲とは

基準範囲は一定の基準を満たす健常者(基準個体)の測定値分布の中央 95%の区間であり測定値を解

釈する際の目安となる値です。

基準範囲定義の概念図

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臨床判断値(予防医学基準値)とは

臨床判断値(予防医学基準値など)は特定の病態(動脈硬化性疾患、内臓脂肪症候群など)に対し

て診断基準としてや予防医学的な観点から早期介入の目安として設定された値です。この臨床判断値

が基準範囲に混入していることがしばしば誤解のもとになっていました。臨床判断値は疫学的研究等

に裏打ちされた、ある特定の病態には意味がある数値ですが、その特定な病態以外においては使用さ

れることが想定されていない数値です。

臨床診断値(予防医学基準値等)

今回の共用基準範囲の採用は臨床判断値の利用を決して制限するものではありません。

3)JCCLS(日本臨床検査標準協議会)とは

日本臨床検査標準協議会(JCCLS)は、日本における臨床検査の標準化と質的改善を目的とし 1985 年、発起学

会 4 団体を含む 14 学会と 8 協会団体が加盟し発足致しました。

現在、特定非営利活動法人として特別会員 9 団体(厚労省、経産省他官公庁)、正会員 31 団体(学会、協会等)、

賛助会員 46 社(企業)で構成されており、合計 20 の専門委員会が組織され、それらの専門委員会によって 30 以

上の臨床検査の標準化に関する指針文書が作成され、承認されています。