3
1沿GI2GI21GIGI1GIGI22GI11GI80 C軟弱地盤における小型コンパクトな 深層混合処理工法(GI コラム工法) 松尾建設株式会社 土木営業技術本部 技術部 統括 真崎 照吉 粉体系 グラウト噴射系 高圧噴射式 エアー・グラウト噴射系 (流体切削) 水・エアー・グラウト噴射系 深層混合処理工法の分類 :小 改良径φ1,000従 来 工 法:大型地盤改良機による施工 打設長 10m< (三点支持式杭打機等) 二軸施工 多軸施工 (G :G round I mprovement 図 1  GIコラム工法の位置付け 表 1  従来工法とGIコラム工法の比較 従来工法 大型施工機 GIコラム工法 小型施工機 メリット 機体質量 80ton級  21.5ton  運送費の縮減 施工足場養生費の縮減 狭隘な場所での施工が可能 複数台投入による工期短縮が可能 機体の安定度が高い 組立・解体 コスト大 コスト小さ 組立・解体費の縮減 機械損料 高い 安い 施工費の縮減 リーダー長 24m 10.7m 安定度が高い 最大打設長 20m 20m 同等 φ1,600 φ1,600 同等 施工機全景GI-80C  施工機全景GI-130C 写真 1 80 土地改良 290号 2015.7

軟弱地盤における小型コンパクトな 深層混合処理工法(G I ...dokaikyo.or.jp/back_number/kaishi_new/290t_12.pdf技 術 紹 介 樋管工(一基)等である。この内、樋管構造物の基礎として深層混合処理

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Page 1: 軟弱地盤における小型コンパクトな 深層混合処理工法(G I ...dokaikyo.or.jp/back_number/kaishi_new/290t_12.pdf技 術 紹 介 樋管工(一基)等である。この内、樋管構造物の基礎として深層混合処理

技 術 紹 介

技 術 紹 介

1

佐賀平野の軟弱地盤対策

 

有明海に面した地域は、日本でも有

数の軟弱地盤地域であり、九州地区の

特殊土で海成粘土である「有明粘土層」

が厚く堆積しています。佐賀平野も有

明海に面しており、その土層構成は、

海岸付近では、表層から有明粘土層が、

内陸部では非海成粘土である「蓮池層」

の下位に「有明粘土層」が堆積した構

成となっています。

 

佐賀平野(佐賀県)におけるクリー

クや樋管等のほ場整備工事や現在工事中の有明海

沿岸道路でも、道路盛土本体の滑り防止、沈下低

減や水路、道路ボックスカルバートの基礎として、

軟弱地盤処理が重要な課題となっています。

 

本報では、軟弱地盤対策技術として、コンパク

トな機械攪拌式スラリー系深層混合処理工法

(GIコラム工法)について紹介します。

2

GIコラム工法の概要

2・1

 GIコラム工法の位置付け

 

深層混合処理工法としての、GIコラム工法の

位置付けを図1に示します。

 

GIコラム工法は、深層混合処理工法の内、機

械攪拌式スラリー系深層混合処理処理工法に位置

し、その中でも、単軸施工の小型専用改良機に位

置付けされます。小型の単軸施工機械は、戸建住

宅等の基礎として、数多くの工法が存在しますが、

当GIコラム工

法は、小型でも

改良深度や改良

径で大型並みの

能力を有した工

法です。

2・2

 従来工

法との比較と

特徴

 

一般的な大型

施工機による従

来工法とGIコ

ラム工法の比較

を表1に、また、

写真1に施工機

械(GI-

80C、

軟弱地盤における小型コンパクトな深層混合処理工法(GIコラム工法)

松尾建設株式会社土木営業技術本部 技術部 統括 真崎 照吉

スラリー系

機械撹拌式

粉体系

深層混合処理工法

グラウト噴射系

高圧噴射式 エアー・グラウト噴射系

(流体切削) 水・エアー・グラウト噴射系

深層混合処理工法の分類

GIコラム工法:小型地盤改良機による施工単軸施工改良径φ1,000< 従来工法:大型地盤改良機による施工

スラリー系 打設長 10m< (三点支持式杭打機等)

二軸施工

多軸施工 ( G I :Ground Improvement )

図 1 GIコラム工法の位置付け

表 1 従来工法とGIコラム工法の比較従来工法大型施工機

GIコラム工法小型施工機 メリット

機 体 質 量

80ton級  21.5ton  運送費の縮減施工足場養生費の縮減狭隘な場所での施工が可能複数台投入による工期短縮が可能機体の安定度が高い

組立・解体 コスト大 コスト小さ 組立・解体費の縮減機 械 損 料 高い 安い 施工費の縮減リーダー長 24m 10.7m 安定度が高い最大打設長 20m 20m 同等改 良 径 φ1,600 φ1,600 同等

   

施工機全景GI-80C  施工機全景GI-130C

写真 1

80 土地改良 290号 2015.7●

Page 2: 軟弱地盤における小型コンパクトな 深層混合処理工法(G I ...dokaikyo.or.jp/back_number/kaishi_new/290t_12.pdf技 術 紹 介 樋管工(一基)等である。この内、樋管構造物の基礎として深層混合処理

技 術 紹 介

樋管工(一基)等である。

 

この内、樋管構造物の基礎として深層混合処理

工法を施工しています。

3・2

 樋管部の深層混合処理工法内容

 

樋管部の地盤は、N値三の軟弱な腐植土、砂質

土、砂混じり粘土が堆積しており、その内、樋管

基礎下には緩い砂質土、砂混じり粘土が約三m弱

残存することになり、樋管の支持力確保と沈下防

止を目的に深層混合処理工法が計画されています。

 

樋管基礎部の深層混合処理改良体の配置図を図

5に、改良体の仕様を表3に示します。

3・3

 GIコラム工法の施工結果

 

樋管部施工域は旧田面で施工足場が軟

弱であり、支持力

的な問題、また、

打設長も比較的短

く、ロッド長が調

整でき施工機の転

倒等に配慮できる

小型の施工機に適した場所です。

 

写真2に樋管部におけるGIコラム工法の施工

状況、写真3に掘削後の改良体頭部の状況、写真

4に改良体から採取したオールコア状況を示しま

す。

 

また、図6に施工後の改良体の品質管理結果と

して、材齢二十八日のチェックボーリングによる

一軸圧縮強度を示します。

 

図6において、一軸圧縮強度q

u28

がσck

(300kN/㎡

)を下回っている箇所が一ポイント見

られますが、σ

ck

の八五%を満足し、平均強度が

σck

を満足しておるため、品質上の問題はないも

のと判断されます。

4

コンパクト化目指して開発

 

深層混合処理工法は、改良材の状況(スラリー、

粉体)や打設深度、単軸・複数軸によって、多種

多様の工法が有ります。当GIコラム工法は、狭

隘域での施工、大型機並みの能力、運搬等を含め

たコスト面を考慮し、軟弱地盤に建設する道路や

構造物の基礎処理工法として、コンパクト化を目

指して開発された工法です。今年、NETISに

おいて(活用促進技術QS-

100022-

VE)に登録され、現在、十数社によるGIコラム

研究会として広い範囲での活動を目指しています。

 

さいごに、本資料をまとめるにあたり、ご協力

頂いた佐賀県中部農林事務所、GIコラム研究会

メンバーに感謝いたします。

《参考資料》

(1)GIコラム工法カタログ 

GIコラム研究会

(2)

陸上工事における深層混合処理工法 

設計・施工

マニュアル 

改訂版 

平成十六年三月 

財団法人

土木研究センター

図 4 工事場所(グーグルより)

地盤改良(スラリー攪拌工) φ1200 N=20本 改良率 36% 現場一軸圧縮強度 σck=300kN/m2

改良体

(平面図) (断面図)

(土質柱状図)

図 5 樋管基礎部の深層混合処理改良体 配置図

表 3 樋管基礎部の改良仕様

改良体径 本数打設長

改良率 配合量(Uスタビラー 10)

一軸圧縮強度σck (kN/㎡)空内部 改良部

φ1200㎜ 20本 2.25m 2.70m 36% 100kg/㎥ 300以上

写真 2 施工状況 写真 3 改良体頭部状況

写真 4 チェックボーリングのオールコア状況

-3.0

-2.5

-2.0

-1.5

-1.0

-0.5

00 500 1000 1500 2000

改良

体天端からの深度

(m)

一軸圧縮強度 qu28 (kN/m2)

qu28

σck 改

図 6  改良体の一軸圧縮強度qu28の結果

GI-

130C)の姿図を示します。

 

GIコラム工法は従来工法と比較し、軽量コン

パクトであるが、従来工法と同等の施工能力を有

した工法で、その特徴を以下に記載します。

①施工機重量は従来工法の大型機に比べ、約1/4

と軽量である。

従来工法と改良径、改良長で同等の施工能力を

有している。

小型の施工機であり、狭隘な場所での施工が可

能である。

攪拌ロッドの継足し施工により上空制限がある

場所での施工も可能である。

小型の施工機であり、従来工法に比べ、運搬費、

組立・解体コストが小さい。

小型に加えロッド回転駆動部が下方にあり、施

工中の施工機の安定度が高い。

2・3

 GIコラム工法の施工能力

 

GIコラム工法の標準的な機械仕様と施工能力

を表2に示します。

 

小型機であるがロッド駆動機構に図2に示すセ

ンターホール型オーガーヘッドを用いることによ

り、図3に示すように最大改良径φ一六〇〇㎜、

最大改良長二〇mの施工が可能となり、軟弱層が

厚い場所での適用や経済性の面で効果が期待でき

ます。

2・4

 施工支援・管理システム

 

施工機の操作室には、モニターを設置しており、

一つは、操縦者が打設する改良杭の設計仕様情報

と施工中の施工データをリアルタイムに確認し安

定した品質を確保する施工支援システム、もう一

つとして最終的な改良杭の施工データと施工記録

を確認する施工管理システムを搭載しています。

3

GIコラム工法の施工例

 

GIコラム工法は、有明沿岸道路の沈下対策や

ボックスカルバート基礎として多方面に採用され

ています。ここでは、水路部の樋門構造物基礎と

して採用された事例を紹介します。

3・1

 工事概要

 

工事場所は、図4に示す佐賀市北部の田園地帯

で耕作地、水路が入り組んだ場所です。

 

工事概要は、「ほ場整備事業」として、ほ場整

備工(約一二ha)、用水路工、畦畔工(約

三三〇〇m)、パイプライン工(約一七〇〇m)、

表 2 GIコラム工法の標準的機械仕様と標準能力

MODEL GI-130C-HT-K GI-130C-HT-KF GI-80C-HT-KⅡ GI-80C-HT-KF

スピンドル内径 175㎜ 175㎜ 175㎜ 175㎜

スピンドル回転数 0~ 69min-1 0 ~ 69min-1 0 ~ 80min-1 2 ~ 55min-1

スピンドルトルク 0~ 71.2kN・m(7,265kgf・m) 0~ 71.2kN・m 0 ~ 45.2kN・m 19.6 ~ 58.8kN・m

最大給圧力 83.3kN(8,500kgf) 132.5kN(13,500kgf) 83.3kN(8,500kgf) 103.0kN(10,500kgf)

フィードストローク 5,500㎜(最長改良長20m) 5,500㎜ 5,000㎜ 5,000㎜

フィードスピード 0~ 5m/min 0 ~ 3.0(早送り:4.5)m/min 0 ~ 7m/min 0 ~ 5m/min

エンジン出力 96.5kW/2,200min-1 96.5kW/2,200min-1 78.1kW/2,200min-1 78.1kW/2,200min-1

運搬時寸法(L×W×H) 8,830×2,490×3,050㎜ 8,830×2,490×3,050㎜ 8,116×2,380×2,960㎜ 8,090×2,380×2,900㎜

運搬時質量 21,500㎏ 24,450㎏ 16,100㎏ 17,600㎏

チャックピース

チャックボデー

ピストン

皿バネ

ロッド

GI-130C-HT-K

図 2 センターホール型オーガーヘッド

(粘性土地盤) (砂質土地盤)

20.0

15.013.5 GI-130C

10.0

GI-80C

5.0

0.0

   φ800   φ1000   φ1200   φ1400   φ1600

  ( 砂質土 2≦N<6の場合 )

改 良 径 (mm)

改 良 長

GI-130C

GI-80C

20.0

15.013.5

10.0

GI-80C

5.0

0.0

   φ800   φ1000   φ1200   φ1400   φ1600

  ( 砂質土 6≦N<11の場合 )

改 良 径 (mm)

改 良 長

GI-130C

GI-80C

20.0

15.013.5

10.0

GI-80C

5.0

0.0

   φ800   φ1000   φ1200   φ1400   φ1600

  ( 砂質土 11≦N<15の場合 )

改 良 径 (mm)

改 良 長

GI-130C

GI-80C

20.0

15.013.5 GI-130C

10.0

GI-80C

5.0

0.0

   φ800   φ1000   φ1200   φ1400   φ1600

  ( 粘性土 6≦N<8 の場合 )

改 良 径 (mm)

改 良 長

GI-130C

GI-80C

20.0

15.013.5 GI-130C

10.0

GI-80C

5.0

0.0

   φ800   φ1000   φ1200   φ1400   φ1600

  ( 粘性土 2≦N<6の場合 )

改 良 径 (mm)

改 良 長

GI-130C

GI-80C

20.0

15.013.5 GI-130C

10.0

GI-80C

5.0

0.0

   φ800   φ1000   φ1200   φ1400   φ1600

  ( 粘性土 0≦N<2の場合 )

改 良 径 (mm)

改 良 長

GI-130C

GI-80C

図 3 GIコラム工法の標準的施工能力

81土地改良 290号 2015.7 ●

Page 3: 軟弱地盤における小型コンパクトな 深層混合処理工法(G I ...dokaikyo.or.jp/back_number/kaishi_new/290t_12.pdf技 術 紹 介 樋管工(一基)等である。この内、樋管構造物の基礎として深層混合処理

技 術 紹 介

樋管工(一基)等である。

 

この内、樋管構造物の基礎として深層混合処理

工法を施工しています。

3・2

 樋管部の深層混合処理工法内容

 

樋管部の地盤は、N値三の軟弱な腐植土、砂質

土、砂混じり粘土が堆積しており、その内、樋管

基礎下には緩い砂質土、砂混じり粘土が約三m弱

残存することになり、樋管の支持力確保と沈下防

止を目的に深層混合処理工法が計画されています。

 

樋管基礎部の深層混合処理改良体の配置図を図

5に、改良体の仕様を表3に示します。

3・3

 GIコラム工法の施工結果

 

樋管部施工域は旧田面で施工足場が軟

弱であり、支持力

的な問題、また、

打設長も比較的短

く、ロッド長が調

整でき施工機の転

倒等に配慮できる

小型の施工機に適した場所です。

 

写真2に樋管部におけるGIコラム工法の施工

状況、写真3に掘削後の改良体頭部の状況、写真

4に改良体から採取したオールコア状況を示しま

す。

 

また、図6に施工後の改良体の品質管理結果と

して、材齢二十八日のチェックボーリングによる

一軸圧縮強度を示します。

 

図6において、一軸圧縮強度q

u28

がσck

(300kN/㎡

)を下回っている箇所が一ポイント見

られますが、σ

ck

の八五%を満足し、平均強度が

σck

を満足しておるため、品質上の問題はないも

のと判断されます。

4

コンパクト化目指して開発

 

深層混合処理工法は、改良材の状況(スラリー、

粉体)や打設深度、単軸・複数軸によって、多種

多様の工法が有ります。当GIコラム工法は、狭

隘域での施工、大型機並みの能力、運搬等を含め

たコスト面を考慮し、軟弱地盤に建設する道路や

構造物の基礎処理工法として、コンパクト化を目

指して開発された工法です。今年、NETISに

おいて(活用促進技術QS-

100022-

VE)に登録され、現在、十数社によるGIコラム

研究会として広い範囲での活動を目指しています。

 

さいごに、本資料をまとめるにあたり、ご協力

頂いた佐賀県中部農林事務所、GIコラム研究会

メンバーに感謝いたします。

《参考資料》

(1)GIコラム工法カタログ 

GIコラム研究会

(2)

陸上工事における深層混合処理工法 

設計・施工

マニュアル 

改訂版 

平成十六年三月 

財団法人

土木研究センター

図 4 工事場所(グーグルより)

地盤改良(スラリー攪拌工) φ1200 N=20本 改良率 36% 現場一軸圧縮強度 σck=300kN/m2

改良体

(平面図) (断面図)

(土質柱状図)

図 5 樋管基礎部の深層混合処理改良体 配置図

表 3 樋管基礎部の改良仕様

改良体径 本数打設長

改良率 配合量(Uスタビラー 10)

一軸圧縮強度σck (kN/㎡)空内部 改良部

φ1200㎜ 20本 2.25m 2.70m 36% 100kg/㎥ 300以上

写真 2 施工状況 写真 3 改良体頭部状況

写真 4 チェックボーリングのオールコア状況

-3.0

-2.5

-2.0

-1.5

-1.0

-0.5

00 500 1000 1500 2000

改良

体天端からの深度

(m)

一軸圧縮強度 qu28 (kN/m2)

qu28

σck 改

図 6  改良体の一軸圧縮強度qu28の結果

82 土地改良 290号 2015.7●