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112012.12
□□ □□
□□ □□
○
○
【図1】家庭菜園でのスイカの栽培暦
生育特性
スイカは、アフリカが原産地で、高
温・強日射を好みます。発芽適温25〜
30℃、生育適温は25℃前後で、霜にあ
うと枯死します。開花期には最低気温
が13℃以上必要で、これより低温にな
ると花粉が出にくくなり、着果が不安
定になります。反対に、開花期以降の
気温が高く、晴天が続くと、人間が交
配をしなくてもミツバチが媒介して次
々と着果します。
好適土壌㏗は5〜6·
5で、酸性土
壌でも比較的よく生育します。また、
土壌の乾燥に強い半面、湿害を受けや
すいため、水はけのよい土壌が適しま
す。強い光を好むので、日当たりのよ
い場所を選びましょう。
栽培のポイントは、交配前に適度な
草勢にして確実に着果させること、そ
の後は収穫まで草勢を維持する肥培管
理と整枝・誘引です。次ページの栽培
方法で詳しくご紹介しましょう。
おすすめ品種
大玉では、赤肉で、甘くてシャリ感
があり空洞果になりにくい「
秀山」や、
楕円形で甘みが強い「紅まくら」、小
玉では、赤肉で変形果や裂果になりに
くく、シャリシャリと食味がよい「
紅
しずく」などがおすすめです。小玉は、
大玉に比べて着果負担が小さいので栽
培しやすく、2番果を収穫することも
可能です。
甘くみずみずしい果汁がいっぱいのスイカとメロンは、暑い夏に涼味をもたらすごちそうです。大きな実の収穫は、達成感も抜群!家庭菜園でぜひ育ててみたいという方もたくさんいらっしゃるでしょう。そこで今回は、タネまきから育苗、収穫までを詳しくご紹介します。気になる品種のタネを早めに準備して、夏の菜園計画に加えてみてください。
栽培暦
晩霜がなくなり、地温が15℃を超え
るころから定植できます。中間地や暖
地の露地栽培では、【図1】のように
5月上旬以降に定植します。5月上旬
ごろにタネをまけば、梅雨明け近くに
交配期となります。この時期の栽培で
は、親づるを5〜6節で摘芯し、伸び
てきた子づるを配置すれば、あとは整
枝も誘引も交配も行わない放任栽培も
可能で、お盆前後に立派な果実を収穫
することも難しくありません。
楕円形がユニークな「紅まくら」。
変形果や裂果になりにくい「紅しずく」。
シャリシャリ感がおいしく甘い「秀山」。
1979年千葉県入庁、千葉県農業試験場、同県野菜担当農業専門技術員などを経て、現在、千葉県農林総合研究センター生産技術部長。農学博士。主な著書に「家庭菜園レベルアップ教室根菜Ⅰ」(農文協)、「野菜づくり 畑の教科書」(監修・家の光協会)など多数。
川かわ
城し ろ
英ひ で
夫お
千葉県農林総合研究センター生産技術部長
月旬 3 4 5 6 7 8品種 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下
小玉・大玉
○:タネまき ▽:定植 ☆:交配 □:収穫※収穫期は小玉の場合を記載。大玉は、小玉より収穫期が1週間ほど遅くなる。
育ててみたい人気果菜にチャレンジ!
スイカタネまきは3月下旬~5
月上旬。収穫まで草勢を
キープすることが大切!
&
12 2012.12
【写真10】つる先で草勢を判断。
【写真1】ポットの底に不織布などを敷く。
【写真5】本葉4~5枚のころ、根鉢ができ定植できる。
【写真3】タネを1穴に1粒ずつまく。
【写真7】十分に吸水させたら畑に定植する。
【写真2】培養土を詰めて、2~3つのまき穴をあける。
【写真6】定植前にポットごと水につけてたっぷり吸水させる。
【写真4】指先で土を寄せて、覆土する。
【写真8】気温が低い時期には肥料袋などのポリ袋で囲い保温する。
【写真9】4本整枝の誘引の方法。
1㎡当たり完熟堆肥を2㎏苦土石灰 100 g有機配合肥料などでチッソ、リン酸、カリを各成分量で大玉は16 g 、小玉では12 g
タネまき前に芽出しをすれば、発芽を早く揃えることができます。湿らせたガーゼでタネを包んでポリ袋に入れ、これを人肌くらいの温度で管理し、夜は暖かい浴室などに置いておきます。このようにして3~4日後に、芽が出始めたらまきます。9~10.5㎝のポットに培養土を詰め、タネを2~3粒、深さ1㎝ほどにまき、覆ふく
土ど
して水やりします【写真1~4】。温度が低いようならタネをまいたポットを大きめのポリ袋に入れて、日光が当たる部屋の窓際に置くなど、発芽適温に近づけるようにします。発芽後は、土が乾いたら晴天の午前中に水やりします。
①育苗
②畑の準備定植の1カ月ほど前に1㎡当たり完熟堆
たい
肥ひ
を2㎏、苦土石灰 100g 、有機配合肥料などでチッソ、リン酸、カリを各成分量で大玉は16 g 、小玉では12 g を目安に施用します。三要素が各8%の肥料の場合、元肥全量で、大玉では 200 g 、小玉では 150 g を施して耕します。チッソが多すぎると、草勢が強くなり着果不良を招くので注意してください。定植の1週間前に幅70~ 100 ㎝、高さ10㎝の畝をつくり、地温を高めるためにポリフィルムでマルチをしておきます【図2】。
③定植とその後の管理根鉢ができる本葉4~5枚になった苗を定植します【写真5】。定植は、風のない晴天日に行い、定植前には培養土に水をたっぷりと含ませます【写真6~7】。株間は、子づる1本当たり20㎝ほど確保できるようにし、1株から子づるを4本出す場合は80㎝、5本出す場合は 100 ㎝とします。気温が低ければ、定植後10日ほど株をポリ袋などで囲って保温するとよいでしょう【写真8】。
活着後、5~6節で親づるを摘芯し、子づるが50㎝ほどになったら、生育のよいものを4本残して他は元から摘みとります。子づるの各節から出る着果節より下の孫づるは、小さいうちにかきとります。子づるが1mほどに伸びたら、つる先を20㎝ほどの間隔で一方向に誘引します【写真9】。子づるが畝の外に伸びる前に、通路にわらなどを敷きます。子づるには、7~8節あたりに雌花の1番花がつき、以後5~6節おきに雌花がつきます。1番花に着果させると早く収穫できますが、小玉や変形果になりやすいので、17~22節につく3番花か、その後の4番花に着果させるのがおすすめです。
その後の整枝・誘引は【図3】のように行います。3番花が咲く2~3日前に、着果節までの孫づるを摘みとります。草勢は、つる先をみて診断しますが、交配前にはつるがタバコくらいの太さで、先が軽く上を向いているのがよい状態です【写真10】。
【図2】畑の準備
【図3】子づる4本整枝2果どり栽培の場合
親づるを5~6節で摘芯
着果節位より上の孫づるは放任しておく
着果節位(17~22節)
枝元~17節までは交配前に孫づるを除去する
低節位に着果したものや形の悪い果実を摘果
15
161718192021
摘果
摘果整枝
スイカの栽培方法
幅70~ 100 ㎝
高さ10㎝ 定植の1週間前に畝をつくってポリマルチを張っておく。
〈1週間前〉
有機配合肥料
〈1カ月前〉 苦土石灰完熟堆肥
1㎡
132012.12
【写真14】梅雨明けごろの日焼けを防ぐために果実に日よけをする。
右上:ノーネット系の 「かわい~ナ」。左上:ノーネット系の 「アリス」。左下:ネット系の 「パンナ」。
【写真15】果実が大きくなったら、音の確認や試し切りで熟度を確認する。
【写真13】甘いスイカにするポイントは、収穫期まで草勢を維持すること。
【写真12】 テニスボール大になったら摘果し、縦長の果実を残す。
アリス かわい~ナ
パンナ
【写真11】柱頭に花粉がたっぷりつくように雄花をこすりつける。
□○ □
○ □□
○ □□
摘果後、つる先の通路に速効性肥料を、三要素各成分で1㎡当たり5 gほど施用します【写真13】。ただ、交配時につる先が太くて上を向き、つる先から雌花まで70㎝以上ある草勢が強い状態の場合は、追肥は不要です。収穫の7~10日ほど前になったら、果実の向きを変えて光が当たっていない部分に光を当てると、果実全体が均一に着色します。なお、梅雨明けごろに強い日射を受けると果実が日焼けすることがあります。これを防止するためには、葉やわらなどで果実を覆うとよいでしょう【写真14】。病気では、雨が多いと、炭そ病やつる枯病が発生しやすいので、交配後から2~3回、ベルクート水和剤などを散布します。アブラムシを見つけたら、モスピラン水溶剤などで防除します。
い品種です。ネット系では、緑肉
の「パンナ」などがおすすめです。
ネットがきれいに発生し、果実は
糖度が高く、日もちのよい品種で
す。
る土壌㏗は6〜6·
5で、日当た
りのよい場所を選びましょう。
おすすめ品種
メロンには、果面にネットの出
ないノーネット系と、ネットが出
るネット系があります。ノーネッ
ト系では、病気に強くて作りやす
く、果皮が乳白色の「かわい〜ナ」
や、果重が1㎏ほどで白皮の甘み
が強い「アリス」などがおすすめ
です。「かわい〜ナ」は果重が1
個300gほどと小型で、1株か
ら10〜20果収穫できます。整枝作
業が容易で、収穫期を判定しやす
生育特性
原産地は北アフリカとインドと
される高温性の野菜で、発芽適温
は25〜30℃、生育適温は昼温25〜
28℃、夜温18〜20℃で、降霜にあ
うと凍害を受けます。湿度が低く、
昼夜の温度差が大きいと甘いメロ
ンができます。露地栽培では、晩
霜の危険がなくなり地温が16℃を
超える時期に植え付けます。
土質は特に選びませんが、湿害
に弱く、着果後30日以降に水分が
過剰に吸収されると、果実の糖度
が低下したり割れやすくなるため、
排水のよい土壌が適します。適す
栽培暦
3月下旬〜4月
中旬にタネをまけ
ば、7月中旬〜8
月にかけて収穫で
きます【図3】。
風雨にさらされる
と病害や果実障害
を受けやすいネッ
ト系は、トンネル
栽培にすれば格段
に安定します。
予定した節に雌花が咲いたら、交配を行います。開花している雄花を摘み取り、花粉がたっぷりつくように雌花の柱頭にこすりつけます【写真11】。交配は、午前9時ごろまでに済ませるようにし、収穫の目安となるように雌花の近くに交配日を書いたラベルをつけておきます。着果した果実がテニスボール大になったら、大玉では2つるで1果、小玉は4つるで3果を目安に摘果します。縦長で形の整った果実を残しましょう【写真12】。温度が高いと次々に着果してどれも大きくなりますが、着果数が多いと糖度が低くなるので、思いきって摘果しましょう。また、果実が土に触れていると腐敗しやすいので、敷きわらか玉敷き皿などに載せます。
【図3】家庭菜園でのメロンの栽培暦
栽培方法 月旬 2 3 4 5 6 7 8品種 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下
ノーネット系
ネット系
ノーネット系
露地栽培(ホットキャップ被覆)
露地栽培
④収穫交配から収穫までの期間は、小玉では6月開花で30~35日、7月開花で27~32日、大玉では小玉に7~10日をプラスした日数が目安です。着果節の巻きヒゲの枯れ込みや、果実を軽くたたいてポンポンと弾むような音がしたら果実の試し切りを行い、熟度を確認してから収穫します【写真15】。収穫期になると、再びつる先に雌花が咲きだして着果します。茎葉がしっかりしていれば、2番果を収穫することもできます。
メロン過湿に弱いので排水のよい土壌で育てる
○:タネまき ▽:定植
U
:ホットキャップ被覆 ☆:交配 □:収穫
14 2012.12
【写真18】子づるが伸びたら揃ったものを2~3本にする。
【写真17】本葉3~4枚のころに定植する。
【写真19】子づるを誘引する(2本仕立て)。
【写真16】子葉展開~本葉1枚のころに1本に間引く。
【図4】畑の準備
メロンの栽培方法
1㎡当たり完熟堆肥を2㎏苦土石灰 100 g有機配合肥料などでチッソ、リン酸、カリを各成分12 g
育苗は、タネの芽出しも含めて、スイカと同様にポットに2~3粒まき、子葉展開~本葉1枚までに1本に間引きます【写真16】。その後はスイカと同様に管理します(p.12参照)。
①育苗
定植の1カ月ほど前に1㎡当たり完熟堆肥を2㎏、苦土石灰 100g 、有機配合肥料などでチッソ、リン酸、カリを各成分量で12 gを目安に施用します。三要素が各8%の肥料の場合、元肥全量で150 g を施して耕します。定植の1週間前に幅70~ 100 ㎝、高さ10㎝の畝をつくり、地温を高めるためにポリフィルムでマルチをします【図4】。トンネル被覆をする場合は、畝をつくってマルチをしたら、直ちにトンネル被覆をして地温を上げておきます。
②畑の準備
育苗日数30~40日、本葉3~4枚の苗を、株間は80㎝で、スイカに準じて定植し、ホットキャップをかぶせます。【写真17】。活着したら本葉を4枚残して摘芯します。ホットキャップは定植後2~3週間したら除去します。
子づるが50㎝ほどになったら、ノーネット系では2~3本、ネット系では2本残して、ほかは元から摘みとります【写真18】。
③定植とその後の管理
「かわい~ナ」などのノーネット系は交配後45~50日、「パンナ」などのネット系では交配後53~55日で収穫となります。果実周辺の葉枯れ、ヘタ部のネットの盛り上がり、ヘタに離層ができることなどが収穫の目安です。試し切りをして、甘くなっていることを確認してから収穫しましょう。
④収穫
子づるが1mほどに伸びたら、一方向に誘引します【写真19】。ノーネット系では子づるの6~10節【図5】、ネット系では11~15節から出る孫づるを2節で摘芯し【図6】、孫づるの1節目につく雌花に交配して着果させます。着果節位以下の子づるから出る孫づるは、早めにかきとり、子づるは25節前後で摘芯します。摘芯後に着果節より上の節から伸びる孫づるは、草勢を維持するために、ネット系では3~4本残し、ほかは摘みとります。ノーネット系では、着果節より上の節の孫づるは放任します。子づるが通路に伸び出す前に、通路に敷きわらをしておきます。
メロンは1つの花に雄しべと雌しべがあるため、開花したら雄しべで雌しべを軽くなでるようにして交配し、花の近くに交配日を記したラベルをつけます。ミツバチが働いていれば交配は不要です。交配後、10日ほどして果実が鶏卵大になった時に、ネット系は長卵形で傷のない果実を子づる1本当たり2果、ノーネット系では3果残して、ほかは摘果します。ただし、果実が小さい「かわい~ナ」は摘果せず、すべて収穫します。トンネルをした場合、中の気温が30℃を超えたら換気します。最低気温が14℃を超えたら、夜間も裾を10㎝ほど開け、交配後は雨をよける程度にします。病気では、うどんこ病やつる枯病などが発生しやすいので、交配後から2~3回、ベルクート水和剤などを散布します。アブラムシは見つけたら、モスピラン水溶剤などで防除します。
【図5】ノーネット系メロンの仕立て方
【図6】ネット系メロンの仕立て方
678910
子づるが1m位になったころ、5節までの孫づるは早めに除去する。
親づるを本葉4枚で摘芯し、伸びてきた子づるを2~3本にする。
6節から連続着果させる。6~10節目の孫づるは2節で摘芯した方が着果がよくなる。鶏卵大の時に1つる3果に摘果する。ただし「かわい~ナ」は摘果しない。
子づるは25節前後で摘芯する。「かわい~ナ」は放任でもよい。
着果節位までの孫づるは早めに除去する。
11~15節の孫づるに着果させる。摘果は鶏卵大のころに行い、同時に花弁も除去する。
交配までにとれる孫づるは早めに除去するか、もしくは1葉摘芯する。
子づるの先端は交配の2~3日前に25節前後で摘芯する。
形のいい果実を1つる2果残して他は摘果する。
子づるの先端の孫づる3本は遊びづるとして放任する。遊びづるの生長点の状態で草勢を判断する。
幅70~ 100 ㎝
高さ10㎝ 定植の1週間前に畝をつくってポリマルチを張っておく。
〈1週間前〉
有機配合肥料
〈1カ月前〉 苦土石灰完熟堆肥
◀◀◀スイカ、メロンのタネはp.69で販売。
1㎡