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サンフランシスコ事務所長 徳永 博昭 海外駐在員レポート No.199 (写真1)商品の場所を確認できる店舗内ナビアプリ (写真2)D2Cスタイルの商品 米国における小売業界の動向について 1 はじめに 米国の小売業にとって、11月末の感謝祭から年末の クリスマスが一番の稼ぎ時である。各店は「ブラックフ ライデー」と称する大規模なセールを実施しており、近 年はオンラインで「サイバーマンデー」と称したセールも 行われている。2017年のサイバーマンデーの売上は65 億9,000万ドルで、ブラックフライデ ー の 売 上50億 3,000万ドルを上回っており、オンラインでの購入が増加 していることが分かる。 2 既存小売店の現状 米国では、オンラインショップの台頭により、2017年 に約8,000店もの小売店が閉店したといわれている。し かし、生鮮食品店やディスカウントストアなど、一部で売 上を維持している店舗も存在する。これらの店舗は、① 低価格(低所得層をターゲットにした価格設定)、②製 品・オペレーション(幅広い品揃え、ユニークな商品開 発)、③カスタマーエクスペリエンス(斬新な店舗レイア ウト、顧客ごとにカスタマイズしたサービス提供)など、 独自の手法で顧客獲得に努めている。(写真1) 3 リテール・スタートアップ オンラインショップとの競争にさらされている既存小売 店の課題を解決すべく、AR(拡張現実)を利用した試 着、AIによる購買予測、IoT を活 用した価 格 のトラッキン グ・分析など、IT技術を駆使 したスタートアップがここ数年 で多く誕生している。また、膨 大なオンライン購入データを活 用した商品企画により、製造 から販売までを一貫して行 い、低価格で提供するD2C (Direct-to-Consumer)ス タイルのスタートアップも頭角を現しつつある。(写真2) 一方、食料品など店頭購入が主体となる小売分野を 狙い、Amazonのようなオンラインショップが実店舗を 構える逆の動きも出てきている。 今後の小売業界は、求める商品を買い手が生産者に 直接提案したり、買い手ごとにカスタマイズされた商品 を売り手が提供するなど、従来よりもさらに買い手が主 体となる小売モデルへと変わっていくと考えられる。 4 おわりに このような米国での小売業界の動向は、今後日本で も浸透する可能性が高いと思われる。このため、既存 小売店のオンライン化はもちろんのこと、消費者の購買 プロセスに合わせ、ITを駆使した新しい仕組みをつくる ことが不可欠と言える。しかし、既存小売店がこれらを 迅速に実現させるには、相当な資金と時間、そしてノウ ハウが必要となるため、それらを提供しているスタート アップとの協業も有益であると考える。 購入したい商品によって、オンライン・オフラインを巧 みに使い分ける消費者が、今後日本でも増えると予想さ れる中で、あらゆる販売・流通チャネルなどを統合した 「オムニチャネル戦略」の重要性が増して来るのではな いか。 この分野での取り組みに関心があれば、当事務所に お問い合わせをいただければ幸甚である。 福岡県サンフランシスコ事務所 E‐mail U R L 徳永 博昭(とくなが ひろあき) 440 N. Wolfe Rd.Sunnyvale, CA 94085 +1-408-524-4251 [email protected] http://www.myfukuoka.com お問い合わせ 情報取引推進課 TEL:092-622-6680 BUSINESS SUPPORT FUKUOKA 2018.12 11

海外駐在員レポート No.199 「衛生管理・生産管理を目で見て学 … · 2018. 12. 12. · サンフランシスコ事務所長 徳永 博昭 海外駐在員レポートNo.199

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Page 1: 海外駐在員レポート No.199 「衛生管理・生産管理を目で見て学 … · 2018. 12. 12. · サンフランシスコ事務所長 徳永 博昭 海外駐在員レポートNo.199

6次産業化・農商工連携サポートセンター

サンフランシスコ事務所長徳永 博昭

海外駐在員レポート No.199

(写真1)商品の場所を確認できる店舗内ナビアプリ (写真2)D2Cスタイルの商品

米国における小売業界の動向について1 はじめに 米国の小売業にとって、11月末の感謝祭から年末のクリスマスが一番の稼ぎ時である。各店は「ブラックフライデー」と称する大規模なセールを実施しており、近年はオンラインで「サイバーマンデー」と称したセールも行われている。2017年のサイバーマンデーの売上は65億9,000万ドルで、ブラックフライデーの売上50億3,000万ドルを上回っており、オンラインでの購入が増加していることが分かる。

2 既存小売店の現状 米国では、オンラインショップの台頭により、2017年に約8,000店もの小売店が閉店したといわれている。しかし、生鮮食品店やディスカウントストアなど、一部で売上を維持している店舗も存在する。これらの店舗は、①低価格(低所得層をターゲットにした価格設定)、②製品・オペレーション(幅広い品揃え、ユニークな商品開発)、③カスタマーエクスペリエンス(斬新な店舗レイアウト、顧客ごとにカスタマイズしたサービス提供)など、独自の手法で顧客獲得に努めている。(写真1)

3 リテール・スタートアップ オンラインショップとの競争にさらされている既存小売店の課題を解決すべく、AR(拡張現実)を利用した試着、AIによる購買予測、IoTを活用した価格のトラッキング・分析など、IT技術を駆使したスタートアップがここ数年で多く誕生している。また、膨大なオンライン購入データを活用した商品企画により、製造から販売までを一貫して行い、低価格で提供するD2C(Direct-to-Consumer)ス

タイルのスタートアップも頭角を現しつつある。(写真2) 一方、食料品など店頭購入が主体となる小売分野を狙い、Amazonのようなオンラインショップが実店舗を構える逆の動きも出てきている。 今後の小売業界は、求める商品を買い手が生産者に直接提案したり、買い手ごとにカスタマイズされた商品を売り手が提供するなど、従来よりもさらに買い手が主体となる小売モデルへと変わっていくと考えられる。

4 おわりに このような米国での小売業界の動向は、今後日本でも浸透する可能性が高いと思われる。このため、既存小売店のオンライン化はもちろんのこと、消費者の購買プロセスに合わせ、ITを駆使した新しい仕組みをつくることが不可欠と言える。しかし、既存小売店がこれらを迅速に実現させるには、相当な資金と時間、そしてノウハウが必要となるため、それらを提供しているスタートアップとの協業も有益であると考える。 購入したい商品によって、オンライン・オフラインを巧みに使い分ける消費者が、今後日本でも増えると予想される中で、あらゆる販売・流通チャネルなどを統合した「オムニチャネル戦略」の重要性が増して来るのではないか。 この分野での取り組みに関心があれば、当事務所にお問い合わせをいただければ幸甚である。

 平成30年11月5日(月)、6次産業化、農商工連携に取り組んでいる事業者向けに、加工場視察研修を実施しました。今回は、久留米市田主丸町でいちじく、柿等を栽培し、加工品を製造・販売している株式会社農業都市デザインシステム研究所様を視察させていただきました。 同社の「とよみつひめ」は、無農薬、有機栽培で糖度17度以上、皮ごとそのまま食べられるのが特徴です。今年は、株式会社五十二萬石本舗へセミドライ「とよみつひめ」を納品し、「いちじく大福」が発売されました。 当日は、井上社長から、納品先の指導にもとづき、衛生環境の整備及び製造マニュアル、衛生管理記録表等の作成・実施を進めた点について、実際の様式や使用方法を示しながら説明していただきました。納品先仕様の商品規格書の提出を求められた際は、6次産業化プランナーの支援により作成することができ、取引がスムーズに進んだということです。 また、10年前に就農した井上社長の6次産業化に対する考え方や加工場の必要性、さらにGAP、HACCPへの取り組みが企業価値を高め、商談を有利に進められることなど熱心に語っていただきました。 参加者からは、「計画をしっかり作り込むことの大切さを学べた」「栽培技術の習得、6次産業総合化計画への取り組み、特色ある商品開発等について行政・研究機関の協力を得ながら進めているのが参考になった」等大好評でした。

 次回の視察は、来年2月に宮若市で実施します。6次産業化で加工場を計画中、あるいは運営されている方は、品質管理、生産管理のご参考になると思います。ぜひご参加ください。

【次回視察内容】  日 時 平成31年2月4日(月)10:00~ 12:00  視察先 千石屋(米粉焼きドーナツ、カステラの製造)  住 所 宮若市沼口66-1  定 員 5名  申込先 ふくおか6次産業化・農商工連携サポートセンター TEL 092-622-7575

「衛生管理・生産管理を目で見て学ぶ!加工場視察研修」開催報告

加工場内での様子 参加者8名に説明 11月には女性新規就農者が入社。GAP、HACCPを担当する。

株式会社農業都市デザインシステム研究所

・福岡県ブランド果樹のいちじく「とよみつひめ」、種なしでスッキリした甘みの柿「秋王」を栽培し、その果実を使った冷凍商品、セミドライ商品、コンフィチュールを製造・販売・農林水産省6次産業化総合化事業計画認定、福岡県GAP認証、福岡県経営革新計画承認事業者

福岡県サンフランシスコ事務所所 長所 在 地

T E LE‐mailU R L

徳永 博昭(とくなが ひろあき)440 N. Wolfe Rd.Sunnyvale, CA 94085

[email protected]://www.myfukuoka.com

お問い合わせ 情報取引推進課 TEL:092-622-6680

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