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付録-Ⅰ 土木CAD製図ガイド(案) 付録-Ⅰ 土木CAD製図ガイド(案) 1.CADシステムの構成 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1-1 ハードウェア ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1-2 ソフトウェア ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2.CADの基本機能概要 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2-1 基本設定 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2-2 基本操作 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2-3 作図機能 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2-4 編集機能 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3.土木CADに要求される仕様 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3-1 CADとしての基本機能 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3-2 土木から見た機能 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3-3 最近のコンピュータ・CAD技術からの機能 ・・・・・・・・・・・・ 付録Ⅰ- 10 4.土木構造物のCAD製図手法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 11 4-1 CADシステムの基本設定 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 11 4-2 一般事項 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 13 4-3 鋼構造物特有の表現 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 13 4-4 コンクリート構造物特有の表現 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 付録Ⅰ 14 5.土木CADの運用 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 15 5-1 部品ライブラリの利用 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 15 5-2 CAD用作図言語の利用 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 18 5-3 自動設計プログラムと CAD ファイルの連携 ・・・・・・・・・・・・・・ 付録Ⅰ- 20 5-4 ラスターCADの利用 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 27 5-5 ネットワーク環境での運用 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 28

付録-Ⅰ 土木CAD製図ガイド(案) 付録-Ⅰ 土木CAD製図 ... - JSCE · 2008. 8. 29. · 付録-Ⅰ 土木CAD製図ガイド(案) 付録-Ⅰ-2 4)スキャナ

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  • 付録-Ⅰ 土木CAD製図ガイド(案)

      付録-Ⅰ 土木CAD製図ガイド(案)

          1.CADシステムの構成 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 付録Ⅰ-1

            1-1 ハードウェア ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 付録Ⅰ-1

            1-2 ソフトウェア ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 付録Ⅰ-2

          2.CADの基本機能概要 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 付録Ⅰ-3

            2-1 基本設定 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 付録Ⅰ-3

            2-2 基本操作 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 付録Ⅰ-3

            2-3 作図機能 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 付録Ⅰ-4

            2-4 編集機能 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 付録Ⅰ-5

          3.土木CADに要求される仕様 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 付録Ⅰ-6

            3-1 CADとしての基本機能 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 付録Ⅰ-6

            3-2 土木から見た機能 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 付録Ⅰ-7

            3-3 最近のコンピュータ・CAD技術からの機能 ・・・・・・・・・・・・ 付録Ⅰ-10

          4.土木構造物のCAD製図手法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 付録Ⅰ-11

            4-1 CADシステムの基本設定 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 付録Ⅰ-11

            4-2 一般事項 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 付録Ⅰ- 13

            4-3 鋼構造物特有の表現 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 付録Ⅰ-13

            4-4 コンクリート構造物特有の表現 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 付録Ⅰ-14

          5.土木CADの運用 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 付録Ⅰ- 15

            5-1 部品ライブラリの利用 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 付録Ⅰ-15

            5-2 CAD用作図言語の利用 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 付録Ⅰ-18

            5-3 自動設計プログラムとCADファイルの連携 ・・・・・・・・・・・・・・ 付録Ⅰ-20

            5-4 ラスターCADの利用 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 付録Ⅰ-27

            5-5 ネットワーク環境での運用 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 付録Ⅰ-28

  • 付録-Ⅰ- 1

    1.CADシステムの構成

     CADシステムは一般に図-付録-Ⅰ.1に示すようなハードウェア機器とコンピュータに内蔵さ

    れたソフトウェアから構成される。ここではまず、CADに関するハードウェアとソフトウェアの概

    要を示す。

    図-付Ⅰ.1 CADシステムの構成

    1-1 ハードウェア

    1)コンピュータ本体

     2次元CADではパソコンのスピードと容量で十分である。ワークステーション(EWS、

    GWS)上のCADは EWS CADと呼ばれ、3次元CADやCG、プレ/ポスト機能を組み込

    んだ構造解析などで使用される。

     GWSとは、CPUとは別に、3次元グラフィック専用チップを備え、フレームバッファを

    複数持つワークステーションの高性能機種をいう。幾何計算処理(座標計算、クリッピング、

    輝度計算)やレンダリング処理(ピクセル値計算、隠線・隠面処理)を3次元グラフィック専

    用チップでハード的に処理する。CPUよりもグラフィックスチップの性能が重要である。

    2)ディスプレイ

     出力装置としては、CADでは高解像度が必要であるので、マルチスキャンディスプレイの

    17インチから21インチが使用される。

     解像度は、Windows CADでは 800×600、1024×768、1280×1024、EWS CADでは 1280×

    1024 が一般的である。Macintosh ではスクリーンサイズと解像度が一致しており 21 インチで

    1152×870(72dot/inch)である。

    3)キーボード、マウス、タブレット、デジタイザ

     入力装置としては、キーボードとマウスの組み合わせが一般的である。GUIのメニューで

    マウスの使用が増えたが、座標値の入力や、コマンド入力、文字入力などキーボードの利用も

    多い。タブレットやデジタイザは場所をとるため、近年はあまり使われなくなった。

  • 付録-Ⅰ 土木CAD製図ガイド(案)

    付録-Ⅰ-2

    4)スキャナ

     地形図の入力や既存の手書き図面の読み込みにはスキャナーが使用される。

    5)記憶装置(FD,HD,MO,PD,Zip)

     CADファイルは数百キロ~1メガバイト/1図面にもなるため、大容量のハードディスク

    が使用される。また補助記憶装置も大容量なものが必要である。

    6)プロッタ

     ペンプロッタとペンレスプロッタ(ラスタプロッタ)に大別される。最近はインクジェット

    方式の安価で高性能なプロッタが出回っている。

    7)ネットワーク関連装置

     CADデータは大容量となるため、フロッピーディスクなどの小容量の記憶媒体を介して

    データを伝達することは非効率的である。Ethernet などによるLANを構築することにより高

    速なデータ転送が可能となる。また、プリンタやプロッタを共有する場合にも必要である。

    1-2 ソフトウェア

    1)OS

     パソコンの2次元CADは、Windows95またはWindowsNT 上で動作するものが一般的である。

    MS-DOS から発展したものと UNIX から移植されたものがある。パソコンでのCGは Macintosh

    が多く利用されている。EWSはUNIX系のOSがほとんどである。

    2)CADソフト

     大別して、2次元CAD、3次元CAD、CGに分類される。2次元CADは、汎用CAD

    ソフトと専用CADソフトに分類され、用途別に多種多様なCADがある。さらに、最近では、

    汎用CADソフトに専用機能をカスタマイズして付加したCADが市販されている。

  • 付録-Ⅰ- 3

    2.CADの基本機能概要

     CADソフトは、おおむね次のような機能から構成されている。

    • 基本設定

    • 基本操作

    • 作図機能

    • 編集機能

     以下、順に機能や操作について概要を示す。

    2-1 基本設定

    1)用紙サイズ

     CAD作画では縮尺を考えず実寸で書くので、用紙サイズはぺ-バー出力時の問題となる。

    2)縮尺

     はじめに縮尺を決めるのが一般的である。レイヤー単位で設定する場合と、オブジェクト単

    位で設定する場合がある。縮尺は、自動寸法表示に影響する。

    3)線種、文字種

     使用する線種、線の太さ、文字のフォントなどを決める。

    4)作図単位

     mmまたはmやインチなど自由に設定できる。

    5)レイヤー

     CAD特有の管理で、設定された画層(レイヤー)に対して、可視/不可視と編集可/不可

    の組み合わせで以下のように区別して使用する。

     ①編集可能なレイヤー

     ②編集はできないが、図形のスナップが可能なレイヤー(トレースに使用する)

     ③編集もスナップもできないが可視化されているレイヤー(図面枠等に使用する)

     ④不可視で図形も認識されないレイヤー

    CADにより、②と③の区別がないものがある。

    6)寸法線の種類

     寸法線の端種(矢印など)や寸法値の表示位置を決定する。

     寸法値の単位、小数点以下の桁数や、角度、径の表示スタイルなども指定する。

    7)グリッド

     グリッド線のピッチ等を指定する。描画時の吸着やスナップに影響する。

    2-2 基本操作

    1)ファイル操作

     ファイルの入出力(OSと関係する)。プレビュー。ドキュメント管理。

    2)画面操作

     拡大、縮小、上下左右の移動、全画面表示、前画面表示、再描画など。

  • 付録-Ⅰ 土木CAD製図ガイド(案)

    付録-Ⅰ-4

    3)UNDO/REDO

     UNDO は、一つ前の操作の取り消しが可能なものや、操作履歴を持ち何段にもさかのぼって取

    り消し可能なものがある。REDO は、取り消しの取り消し、すなわち取り消しを元にに戻す機能

    である。

    4)座標値の入カ

     マウスによる指定。既存の図形点のスナップ(下記参照)による入力。絶対座標による入力。

    既存点からの相対距離による入力など。

    5)スナップ(ヒット、ピック)

     既存図形の端点、中点や、2線の交点、円の中心や接線、グリッド上の点などの座標値を正

    確に読み取り、新しい図形の作図に使用するCAD特有の機態である。

     モード切替えによるもの、特殊キーを押しながらマウスで近傍をクリックするもの、マウス

    の右ボタンを使用するものなど様々であるが、ほとんどのCADで使用可能であり、CAD製

    図を効率よく行なうために必要な機能である。

    6)メニュー、アイコン、キー入力などのカスタマイズ

     よく使用するコマンドやメニューを、使用者がまとめて登録する機能である。

    7)計測

     2点間距離、経路長、円の半径、角度の計測や、面積の計算。

    8)確認(図形リスト)

     図形の属性(線種、レイヤー、縮尺など)の確認。

    2-3 作図機能

    1)基本図形

    • 直線(折れ線、平行線、水平線、垂直線、垂線、接線など)

    • 四角形

    • 多角形

    • 円、楕円(円弧、楕円弧を含む)

    • 自由曲線(ベジェ曲線、スプライン曲線)

    • ハッチング

    • 分割線

    2)文字

     位置、方向、大きさを自由に変更できる。文字の形状はプロッタにより左右される。

    3)寸法線

     たいていのCADは、水平寸法、垂直寸法、平行寸法などの自動寸法入力機能を備えている。

    4)テンプレート

     図面枠、表題欄など図面に共通のベースをファイルに登録しておき、新規作成時に呼び出す。

     基本設定をファイルに登録しておく。

     部品のライブラリ登録と呼び出し。

  • 付録-Ⅰ- 5

    2-4 編集機能

     CADソフトが持っている編集機能は多岐にわたるが、ここでは一般的なものを記す。

    1)移動

    作図された図形または図形の構成要素の一部の位置を移動させる。図や図面のレイアウトを

    整えるために使用する。

    2)削除

     作図された図形または図形の構成要素の一部を削除する。

    3)回転

     作図された図形または図形の構成要素の一部を、任意位置を中心に回転移動させる。

    4)反転(ミラー)

     作図された図形または図形の構成要素の一部を、任意軸に対して反転移動させる。

    5)複写

     作図された図形または図形の構成要素の一部を、任意位置に複写する。CADソフトによっ

    ては、回転・反転を同時に行いながら複写する機能をもっている。

    6)オフセット

     作図された図形または図形の構成要素の一部を元にし、そこから一定間隔離れた図形を作図

    する。

    7)線の延長、短縮

     作図された線を、線の方向性を保持したまま指定された任意軸まで延長・短縮する。

    8)図形の変形(ストレッチ)

     他の部分との連結関係(位置情報)を変えずに図形の一部を移動させ、図形そのものを変形

    させる。

    9)面取り

     交差する2つの線を、その交点から指定された距離で切り取り、切り取られた端点同士を新

    しい線または円弧で滑らかに結合する(角面取りと丸面取り)。

    11)トリム

     互いに接している、または交差している図形において、一方の線(円、円弧)で他方を切り

    取る。壁などの交差している線を仕上げる場合に使用する。

  • 付録-Ⅰ 土木CAD製図ガイド(案)

    付録-Ⅰ-6

    3.土木CADに要求される機能(2D製図)

    3-1 CADとしての基本機能

    1)直線(連続線・平行線)・円(円弧・楕円)・多角形・文字列の基本図形の作図機能

     これらの基本図形が描けない製図CADはない(これらの機能がないと製図CADとは言えな

    い)。しかしここで大切なのは、作画後も連続線分は連続線分として扱える等、後々の修正に対

    しても対応できるようなデータ構造や機能である。

    2)線修正・コピー・移動・回転・消去の基本編集機能

     製図CADの最も特長的であるこれらの機能を有することは、設計変更に容易に対応できる

    ということである。また、手書きの製図が「描き加えていく」のに対して、製図CADは「不要な

    部分を消す」ことも重要なので、この機能が充実しているCADがより使いやすいといえよう。

    3)レイヤー・線属性・文字属性の要素属性設定・変更

     レイヤーについて、その使用できる数についてはそれほど多数のレイヤーは必要ないと思わ

    れる。レイヤー単位で移動・削除・表示ができる機能が重要である。

     線属性には線種(実線、破線、点線、一点鎖線、二点鎖線)、線幅、線色がある。これらを設

    定できることはもちろん、モノクロプロッタ出力時には線色を無視する等、それらの属性を必

    要に応じて on/off できる機能が必要である。また、現在のCADではディスプレイと図面で、

    表示したときに差異が生じる場合があるが、作業効率を考えた場合には、この点についてはや

    むをえないと考える(もちろん、図面出力時には正確に表現されていなくてはならない)。

     文字属性には文字幅、文字高、フォントがある。文字幅及び高さについては、最終出力する

    図面上の大きさで指定できなくてはならない。現在の縮尺に応じて文字高を変えることは不便

    である。また、プロポーショナルフォントは出力時にイメージが変わるので禁止とする。

    4)図面呼出し、ライブラリ呼出し・登録機能

     既存図面の活用を行う意味で、ライブラリ化された標準図面を呼び出す機能は必要であろう。

    その図面がパラメトリック化されていて、数値を変えると関連するすべての寸法が変更できる

    と良いが、他CADとのデータの互換性は損なわれる。

     また、土木構造物の場合は特殊な記号を用いることも多いので、それらを部品化しておくと

    便利が良い。

    5)グループ化・グループ解除機能

     作業を効率化する上で、必要に応じて要素をグループ化したり、そのグループを解除できる

    ことは必要である。また、グループを階層構造にできると都合の良い場面が多々あるので、こ

    れもぜひ欲しい機能である。

    6)数値・座標値入力、グリッド・スナップ固定、補助線作画等の補助作図機能

     これらの機能はCADの特色を生かし、かつCAD製図をより容易にする機能として一般的

    に普及しているので、製図CADとしての必要条件と言っても過言ではない。

  • 付録-Ⅰ- 7

    3-2 土木から見た機能

    1)地形データを扱えること

     現状では、現況の地形データは紙の図面で提供されることが多い。これをCAD上で扱うため

    には、まずスキャナーなどで電子情報に変換する必要がある。ここで変換されたデータはラス

    ターデータなので、CADで扱うためには①ラスターデータをCADで直接読み込む方法、②ラ

    スターデータをベクターデータに変換して読み込む方法、の 2 通り考えられる。①の方法はCA

    Dにラスターを読み込んだり、ラスタープロッタに出力する機能が必要である(CAD上でラス

    ターを編集する必要はないが、読み込み時に大きさ・位置・角度を指定できること)。②の方法では、

    CAD外部でベクター変換をかければCAD本体で変換機能を持つ必要はない。しかし、変換後

    のベクターデータはかなり図形要素数が増えるので、大量の要素を扱えることがCADに要求さ

    れる。

    図-付Ⅰ.2 地形データの入力例

     さらに進めれば、ラスター→ベクター変化時に文字およびシンボルの自動認識、連続線分を曲

    線に自動変換などの機能が精度よくできるようになれば、ラスターもより扱いやすくなる。

    2)クロソイド・スプライン等の特殊図形の作図機能

     土木図面ではクロソイドの出現頻度はかなり高い。これらの特殊図形、及びその平行線が描け

    ることは必要である。ただ、図形要素としてこれらの特殊図形を持つ必要はない。

    3)寸法線・鉄筋引き出し線・土質柱状図等の土木製図用図形の作図機能

    例えば寸法線などは一般の製図CADではほとんど作画可能だが、現在

    の土木製図基準に適合した寸法線を描けるCADとなるとその数は激減す

    る。また、土質柱状図の土質記号をCADで作画するのは大変である。

    しかし、このような現状に対して、土木製図基準についても見直しを行

    い、CADで製図するのに都合の良い表現に変更する必要がある。

                                    図-付Ⅰ.3 土質柱状図

  • 付録-Ⅰ 土木CAD製図ガイド(案)

    付録-Ⅰ-8

    4)距離や面積の測定・座標値計算の計測機能

     現状では図面から積算する場合は多々あ

    り、そのようなときにCAD上で計測でき

    ると大変便利である。ただ、CAD上(=コ

    ンピュータ上)での計算は人間が行う計算と

    方法が異なる場合があり、またブラック

    ボックス化されているので結果に対する検

    証に問題点が残る。              図-付Ⅰ.4 体積計算例(土工計算)

    5)大座標・小座標・図面座標、測量系・数学系の複数座標系を扱う機能

     一例として現況地形図の上に構造物を描く場

    合を考える。まず平面図を図面上に配置すると

    きには、図面の横-縦方向を X-Y 軸とした座標系

    (図面座標)で行うほうが扱いやすい。次に道路

    線形の線を作画するが、道路線形は公共座標系

    (大座標)で計算されているので、直接そのデー

    タを入力したい。最後に構造物を作画するが、

    構造物は三面図関係が維持できる座標系で取り

    扱いたい。このように、複数の座標系を切り替

    えて作画した方が便利な場合もある。

                            図-付Ⅰ.5 図面座標、公共座標、小座標

    6)縮尺に依存しない図形を扱う機能

     前述の文字サイズや寸法矢印の大きさ、寸法線の間隔などは、最終成果品の図面上での大きさ

    で指定した方が都合が良い。これらを切り替えて使うことはCAD製図をより便利にする。

    7)異縮尺の図面の混在機能

     現状の土木図面をそのままCADで描こうとすると、必ずこの機能が必要になる。しかし、縮

    尺というものはあくまでも出力イメージの図面に対するものであるから、出力時の環境に合わせ

    て自由に設定及び図面のレイアウトができることが望ましい。但し、これには前述の縮尺に依存

    しない図形を簡単に扱えることが前提となる。

    8)用紙サイズを設定する機能、長尺図面作図機能

     これも現状の製図を考えると必要となる機能ではある。しかし、何がなんでも 1 枚の図面に収

    めるという従来の考え方から、CADデータをベースに必要なときに必要な部分だけ出図すると

    いう考え方であれば、この機能は不要である。

  • 付録-Ⅰ- 9

    9)他のCADとのデータ互換機能

    すべてのCADデータが同じフォー

    マットになれば全く問題はない。しか

    し現実的には各CADに機能差がある

    のと同様フォーマットにも差がある

    (同じCADでも Version によって互

    換性がない場合もある)。この差をど

    のように吸収していくかが今後の課題

    と言えよう。                   図-付Ⅰ.6 CADデータの互換

    10)倍精度実数演算機能

     大座標などではかなり大きな座標値を扱う事になるので、これらを問題なく処理するために

    は倍精度実数演算が必要である。

    11)非図形属性付加機能

     図形データとしては有限長の線分でも、

    その線が鉄筋を表す線分ならば、そこには

    鉄筋の種類・材質・鉄筋径などの情報が含ま

    れており、そこから材料などの集計を行う。

    したがって、図形要素にこれらの非図形属

    性を付加することにより、CAD上で材料

    の集計を行う事が可能になる。

     さらに、一つのグループ化された図形要

    素に、非図形属性を付加することも同様の

    理由で必要である。

                          図-付Ⅰ.7 非図形属性の値の例(鉄筋加工図)

  • 付録-Ⅰ 土木CAD製図ガイド(案)

    付録-Ⅰ-10

    3-3 最近のコンピュータ・CAD技術からの機能

    1)ネットワーク対応機能

     ファイル共有レベルでのネットワーク利用は既にかなり普及している。これからはインター

    ネットを用いてデータをやり取りしたり、物理的に離れた所で同時進行で製図作業を行う(一つ

    のデータファイルを同時に編集する)、といったことが考えられる。

    2)ユーザーマクロ・ユーザカスタマイズ機能・パラメトリック図形定義

     これらはCADをよりパワフルなツールと

    する。ただ、現状では多くのユーザにとって

    ユーザーマクロやカスタマイズはとても便利

    であるが、パラメトリック図形はプログラミ

    ング言語を用いてシステムを開発すると同程

    度の難易度がある。また、これらの機能につ

    いてもCADデータと同様に、各CADに対

    してニュートラルなカスタマイズ言語のよう

    なものが存在すると、より使いやすい環境が

    構築できるのではないか(実現性には問題が

    ある)。

                              図-付Ⅰ.8 パラメトリック図形例

    3)カラー出力機能

     カラーの出力機器が以前に比べてかなり低価格になっている。線も従来の実線や一点鎖線等

    の線質で分ける場合に比べて、カラーの方が一目見てわかりやすく、CADで使用したペンの

    色をそのまま出図することができる。

    4)CAD以外とのデータ連動機能

     例えば、計算書にCADで作った図面の一部をダイレクトに貼り付ける。CADで図面を修正する

    と、その計算書の図面も同時に修正できる。

    ※MS-Windows(95)では OLE(Object Linking and Embedding)(Ⅱ)、DDE(Dynamic Data Exchange)とし

    て実現している

                  図-付Ⅰ.9 表計算ソフトとの連動例

  • 付録-Ⅰ- 11

    4.土木構造物のCAD製図手法

    ここでは、CADを用いて土木構造物の製図を行う場合の提案を中心に述べることとする。

     土木製図基準で規定されている製図手法は、たいていのCADにおいてほとんど実現可能であるの

    で、他者とCADファイルを受け渡しするなど、CADデータの有効活用を進めるうえでのガイドラ

    インとして参考にしていただきたい。

    4-1 CADシステムの基本設定

    1)基本設定の概要

     CADソフトによって多少の違いはあるが、CADソフトを使用する前には、以下のような基本設

    定を行う必要がある。

    • 入出力機器の設定

     使用するコンピュータ・システムに合わせて、入出力に使用する周辺機器をCADソフ

    トに登録し、周辺機器にあわせたデバイスドライバを設定する。また、周辺機器そのもの

    の使用条件設定(プロッタの場合は通信条件設定)を行わなければならない場合もある。

    • ファイル管理用の設定

     CADソフトは、図面ファイル・部品ファイルなど、各種ファイルの管理を専用のディ

    レクトリやホルダを用いて行う場合が多い。これらのファイルの保管場所を使用者のコン

    ピュータ・システムに合わせて設定する。

    • 作図条件の設定

    図形(図面)を作図する場合の条件設定は、CADソフト自身に設定するものと、CA

    Dファイル自身に設定するものがある。

    一般には、新規図面を作成する場合の初期値をCADソフト自身(またはマスター図面

    ファイル)に設定し、その図面上で変更された条件はCADファイル自身に登録される。

    2)標準的な設定の必要性

    市販CADソフトが数十種類あるように、CADシステムを導入したコンピュータ・システムの環

    境も千差万別である。また、入出力機器の設定やファイル管理用の設定は、各使用者毎のコンピュー

    タ・システムによって異なる場合が多い。

    同一企業や団体・グループでは、CADデータの有効活用を進めるうえで標準的なCADシステム

    を規定している場合も多い。またCADデータの標準フォーマットが規定されていない現状では、A

    utoCADのDXF形式がCADデータ交換・互換をするうえでの標準的なフォーマットとして一

    般ユーザの間で流通しているが、DXF形式にも数種類のバージョンが存在している。DXF形式を

    利用する場合においても、一定のルールに基づいた作図条件の設定を行った方がCADデータ交換・

    互換を効率的に進められる。

    3)作図条件の提案

    • レイヤーの扱い

    レイヤーは、CADシステムに取り入られている標準的な機能であるが、その使い方は

    各使用者の判断に任されている。1人だけが使用する図面であれば、その使用者が使い易

    いように設定すれば良いが、業務においてはデータ交換・互換、共通した作業性を確保す

  • 付録-Ⅰ 土木CAD製図ガイド(案)

    付録-Ⅰ-12

    るために、ルールが必要である。そこで以下のような分類を行い作図種別や内容毎にレイ

    ヤーを分けて作図することを参考にしていただきたい。

    また必要があれば、構造物をコンクリートや鉄筋、鋼板など材質毎にさらに分ける。

     レイヤー名称については、名称として漢字が使えないものもあるので、できるだけ半角

    英数文字で統一した方が良い。

    図-付Ⅰ.10 レイヤー分類の参考例

    • 線種の扱い

     線種は、できるだけ標準の線種を使用し、ペン番号や線色を構造線や鉄筋・寸法線と

    いった種別毎に統一して使用する。また、レイヤー毎に使用するペン番号や線色を設定し

    ておき、それらの対応表をあらかじめ作成しておくとデータ互換時の資料となる。

    • 文字の扱い

    使用フォントも共通性の高いものを利用し、縦横比1:1程度の固定ピッチのものが望

    ましい。また、JISコード以外の外字の使用は避けるようにする。

    文字の基準位置(作図基点)も、いろいろな位置を設定することができるようになって

    いるが、同一図面内では左下を文字基点とするなど、できる限り統一する。

    図面タイトルや寸法値など、文字の出力時のサイズも用途毎に予め決めておく。

    • 寸法線・引き出し線の扱い

    寸法線を用いる場合は、構造線から何 mm 離して、何 cm の位置に寸法値を書くのかを決

    めておく。また寸法線で用いられる矢印部の形状も決めておく。

    引き出し線も同様にし、引き出し時の線の角度もなるべく統一する。

    寸法線コマンドを持っているCADがほとんどであるが、描かれた寸法線(寸法値含

    む)は、“寸法線”という属性を持つものと、作図作業後に“線分と数値”に分けて扱うな

    ど、CADソフトによって扱い方が異なるので、寸法値連動機能を犠牲にすれば、CAD

    データ互換性は高まる(データ互換を行うCADによる)。

    • 図形のグループ化の扱い

     作図・編集作業において、複数の図形をグループ化して扱うことは、作業の効率化につ

    ながるが、反面グループ化されたままでは最悪の場合CADデータ互換時に情報が欠落す

    構造物

    タイトル、枠

    文字、記号

    寸法線

    材料

    構造物

    構造物

  • 付録-Ⅰ- 13

    る可能性もある。よって、グループ化された図形はそのままグループ解除を行うか、別レ

    イヤーを設定してグループ解除を行うようにする。

     CADデータを受け渡す場合のデータ互換性の保持をするための方法については、本書以外にも参

    考文献が出版され、詳しい解説が行われているものもあるので、所属企業・団体・グループでの標準

    作図条件を設定していただきたい。

    4-2 一般事項

    • CAD製図での縮尺の考え方

     1枚の図面は各種の図の集合体であるので、実際に"図面"として扱う場合には使用目的

    に応じた"図の縮尺"を考えなければならない。しかし、図単位で構造物・地形など"物体"

    を扱う時はすべて"実寸"を用い、寸法線・引き出し線など"物体の諸数値"を扱う時は、使

    用目的に応じた紙面上の大きさで扱う。

     よって、文字サイズを紙面上サイズで扱えることができるCADソフトが望ましい。

    • 省略作図の禁止

     対象な構造物(または対象と扱える部分)を手描きで製図する場合は、作業の効率化の

    ために部分的に作図を省略していたが、CADで製図する場合は、CAD以外での属性

    データの利用を考慮し、省略作図は行わない。

    • 表の扱い

    図面には図形以外の数表(設計条件表や鉄筋表など)も表現するのが、DXF形式のみ

    でCADデータ交換をする場合は、数表であっても“図”として作図する。

    最近の Windows 版CADでは、OLE機能で表計算ソフトのデータをCAD張り付ける

    ことができるが、CADデータ交換の有無を考えて使用する。

    4-3 鋼構造物特有の表現

    • 板の寸法表現

     原則的に禁止とする。(現状でもあまり用いられていない)

    • 断面表示

     スマッジングやハッチングは、CAD及び出力機器が対応しているのであれば利用して

    もよい。ただ、データを他のCADに持っていくときには注意すること。

    • ボルト記号

     現実として工場締めと現場締めを区別する必要がないので、塗り潰しは行わなくてよい。

    • 溶接記号

     各パターンをシンボル化して利用する。パターン自体を変える(簡略化する)事は制作現

    場の混乱を招くので行わない。

    • 表面仕上げの図示

     各パターンをシンボル化して利用する。

  • 付録-Ⅰ 土木CAD製図ガイド(案)

    付録-Ⅰ-14

    • 省略作図の禁止

     横構、トラスなどでの中間省略作図は行わない。省略したトラスの中間部に断面を描く

    書き方は止め、部材に番号を付け図面の別の部分に断面を作画する。

     また、上下・左右で異なる断面を描くことも止める。

    • 括弧書き寸法の禁止

     括弧書きで補助的に寸法を表示させることは行わない。

    • 同一図面内の異縮尺の禁止

     桁の添接部だけ大縮尺で描くようなことはやらない。異なるスケールの図面は必ず他の

    場所に描く。

    4-4 コンクリート構造物特有の表現

    • 鉄筋・PC鋼材の表現

    図面の使用目的に応じて、図中に表示・非表示される。また、形状も一部省略されて表

    現される。“鉄筋・PC鋼材の配筋・配置”は、構造図・配筋図・PC鋼材配置図などで、

    それらの“加工寸法”は鉄筋加工図やPC鋼材形状図で表す。

    • 配筋図・PC鋼材配置図

     構造図として同時に描かれることもあり、さらに切断面(側面図、平面図、断面図)で

    表現される。

    • 鉄筋加工図・PC鋼材形状図

     加工形状(寸法)を詳細に表すために用いられ、それらの数値は、数量表としても図面

    に記載する。加工図や形状図での寸法値が数量表に連動できれば作業効率は向上する。

  • 付録-Ⅰ- 15

    5.土木CADの運用

    5-1 部品ライブラリの利用

    1)部品(CAD用シンボル)ライブラリの活用

     非常に操作性の良い製図CADであっても、施工計画などの図面の全てを作図していては作業効率はあ

    がらない。このような場合に活躍するのがCAD部品ライブラリである。特に、重機類、JIS 製品などの

    部品ライブラリは製図CADの作業効率向上に有効である。

    図-付Ⅰ.11 重機等の部品ライブラリの例

     図-付Ⅰ.11は、重機等の部品ライブラリの例、図-付Ⅰ.12は部品ライブラリを活用して重機部品

    などを配置するだけで施工計画図を作成した例であり、施工計画の早期策定に大きく寄与しているものと

    考える。

     部品ライブラリの活用を考慮したCADシステムでは、

      ◆部品呼び出し機能

      ◆プロッタ出力機能

      ◆プリンタ出力機能

     の3つの周辺機能を用意すれば効率化は図れる。但し、利用可能な部品ライブラリが用意されてい

    ることが必要なことは言うまでもない。

     図-付Ⅰ.13は部品ライブラリ活用システムのシステム構成例である。

  • 付録-Ⅰ 土木CAD製図ガイド(案)

    付録-Ⅰ-16

    図-付Ⅰ.12 重機部品などの配置による施工計画図作成例

    部品データライブラリ

    作図装置

    出図装置X-Y プロッタ

    出図装置静電プリンタ

    図-付Ⅰ.13 部品ライブラリ活用システムのシステム構成例

    2)部品(CAD用シンボル)ライブラリの整備

     部品ライブラリの整備を考えると土木分野の現状は大変遅れていると言わざるを得ない。すでに建

    築分野では、陶器メーカなどが自社製品のCAD部品ライブラリを提供している例はあるが、土木分

    野ではいくつかの機関が自組織で部品ライブラリを整備しているのみある。

  • 付録-Ⅰ- 17

     部品ライブラリは、図面枠・表題など機関に依存する部品から、JIS(日本工業規格)に定められ

    ているコンクリート製品や鋼材など寸法諸元が明確な部品もあり、ビティー建枠などの仮設材、ある

    いは点景的な人や樹木もあり画一的な使用が難しい面もある。しかし、施工会社それも施工の最前線

    の建設事務所に於いて最も利用価値あろうと考えられるのが各種建設機械である。

     業界全体での利活用を考慮すると、部品データを使う上で、部品の主要仕様・諸元と幅・長さ・高

    さなど部品データそのものに関する情報が必要であり、部品データの著作権を明確にするための、作

    成日、作成者、作成機関、更新日、更新者、更新機関などの部品データの管理・履歴情報が必要とな

    り、部品そのものを登録するためには最低20種類程度の付加情報が必要と考えられる。

     例えば、建設機械価格表(財算法人建設物価調査会 1997 年 6 月発行)の目次項目を見るとブル

    ドーザから草刈機まで118項目あり、掲載機械数は6,000 弱(推定)である。これらの建設機械を部

    品ライブラリとしてメーカ提供あるいはメーカと公的機関との共同開発による提供(無償あるいは低

    価格)が実現する事になれば、土木CADの活用は一段と進むものと考える。

    但 し、仮に実現するとしても、ただのCAD部品としてではなく、前述のように建設機械データ

    ベース的な発想に切り替え、検索用キーワードを付加することを忘れないようにしたい。

  • 付録-Ⅰ 土木CAD製図ガイド(案)

    付録-Ⅰ-18

    5-2 CAD用作図言語の利用

    1) AutoLISP

     AutoLISP プログラムは、AutoLISP のインタープリタとしての AutoCAD 介して動作するプログラム

    であり、言語体系はLISP言語の「サブセット」である。AutoCAD 上でインタープリタ形式で実行

    されるので、テキストエディタを用いて AutoLISP プログラムを記述し、すぐ AutoCAD 上で実行する

    ことができる。バグがあった場合も再びエディタに戻って修正し、再実行が容易に行える。

    AutoLISP についてはある程度の数の参考文献が出版されているので、プログラミングの経験が無

    い人であっても、それらを応用してCADカスタマイズの第一歩を体験することが可能である。

     図-付Ⅰ.14は、AutoCAD 付属のマニュアルで AutoLISP の例として紹介されている「庭の小径」

    である(マニュアルに詳しく紹介されているので、プログラム本体は省略した)。

    図-付Ⅰ.14 AutoLISPの例として紹介されている「庭の小径」

                参考文献:AutoLISP入門、オートデスク社

                     新版AutoCADプロフェッショナルテクニック、JICC出版局

    2)MDL(MicroStationカスタマイズ言語)

     特徴  C言語をほぼ100%サポート(関数、記述方法等)+独自の関数群

         システム開発レベルでのカスタマイズ言語

    カスタマイズ例(多角形要素を作成)

    void create_element( ← 関数宣言

    MSElement *elm ← パラメータ(要素型のポインタ)

    )

    {

    Dpoint3d pt[7]; ← ワーク変数(3次元点型)

    memset( pt, 0, sizeof(pt) ); ← 変数0クリア(c言語関数サポート)

  • 付録-Ⅰ- 19

    pt[0].x = pt[0].y = 0.0; ← 座標値定義

    pt[1].x = 0.0; pt[1].y = 1000.0;

    (省略)

    mdlShape_create( elm, NULL, pt, 7, 0 ); ← 6つの頂点を持つ多角形要素を作成

    }

    ○補足説明

    ・MSElement,Dpoint3d型はMDL固有の型、mdlShape_create()は MDL固有の関数である。

    ・2 次元の要素を作成する場合でも、3 次元点型(Dpoint3d)を用いて、z 座標は 0 にしておかなくてはな

    らない。

    3)MiniPASCAL(MiniCad用マクロ言語)

     マッキントッシュ用のCADとして代表的な MiniCad にも、インタプリタ形式の MiniPASCAL が搭載

    されている。図-付Ⅰ.15は、座標値データをMiniPASCALを用いて作図した例である。

    図-付Ⅰ.15 座標値データをMiniPASCALを用いて作図した例

  • 付録-Ⅰ 土木CAD製図ガイド(案)

    付録-Ⅰ-20

    5-3 自動設計プログラムとCADファイルの連携

     都市部では近年、鋼床版箱桁橋のような複雑な線形を持つ橋梁が多く見られる。これらの橋梁では、

    厳密な3次元線形計算に基づく形状決定と3次元立体解析による断面力解析に裏付けられた、設計・

    製図による構造物の製作と架設が必要である。そこで、以下のコンセプトに基づいて、昨今のパーソ

    ナルコンピュータの能力を最大限に活用した、WindowsNT 上で作動し、線形情報と構造解析のデータ

    を一貫して利用する、対話形式、バッチ処理の双方に対応した鋼箱桁自動設計システムでの幾何情報

    の取り扱いと、プロットファイルとして作成される断面形状図などのファイルのCAD への取り込みに

    ついて簡単に紹介する。

    必要最小限のデータをファイルに持たせ、情報量の肥大化やデータ間の重複や矛盾を避ける。

    高速な CPU の能力を利用して、少ないファイル情報から必要な情報を作成する強力なアルゴリズ

    ムを持つ幾何ライブラリと、これを可視化して形状確認を容易にするグラフィックライブラリを

    作成する。

    設計や製図で、幾何情報ならびに構造解析情報を最大限に活用してデータ入力の手間を省く。

    1)モデル化

     3次元情報を扱うには大別して、

    ①3面図から3次元モデルを起こす

    ②基本図形(プリミティブ)からモデルを組み立てる

    の方法がある。

     建築では平面の間取図を基準にして壁や屋根のデータを与えることで3次元のパースを作成できる。

    また、工業製品では基本図形から3次元モデルを組み立てて、設計から製造まで一貫したモデルとし

    て使用できる。しかし、橋梁上部構造では以下のような理由から、いわゆる汎用3次元CAD とは別の

    新たなモデル化の手法が必要となる。

    平面は通常ねじれた曲面であり、間取図に相当する基準となるフラットな平面は存在しない。

    投影面だけでななく、特定の曲面で展開した側面図や折れ線で展開した横断面図が必要である。

     したがって、線形要素(平面、縦横断)に基づいた線形計算とは別に、X、Y、Z 座標と距離や接線角

    など橋梁形状の認識に必要な最小限のデータをファイルに持たせ、DB 化されたモデルではなく強力

    なアルゴリズムにより形状を把握する形式としている。

    2)幾何計算ライブラリとグラフィックライブリ

     上記の限られた基本データから橋梁幾何情報を作成するためには、3 次元の情報を自在に取り扱う

    汎用的な幾何ライブラリが必要である。これは、線形計算では線形要素を取り扱う計算をおこない、

    以降の計算では、別途すべて3次のスムージング曲線で取り扱うことで対処する。

     また、幾何計算の結果は数値だけでなく、平面図、側面図、断面図などで確認できなければならな

    い。パーソナルコンピュータでは、アニメーションやプレゼンテーション用として OpenGL などのグ

    ラフィックライブラリがあるが、鋼橋の図形情報の表現としては2次元の線画のほうが都合がよい。

    そこで、Windows の API を使用した GKS に準拠したグラフィックライブラリを独自に作成して描画プ

  • 付録-Ⅰ- 21

    ログラムで使用している。

    3)鋼床版のリブ、継手配置や桁高計算

     鋼床版橋では、縦リブ横リブの配置や縦横の継手位置の決定が必要不可欠である。また、各種の桁

    高変化に対処できる桁高計算も重要である。これらは従来は線形計算を利用したり、大縮尺の平面図

    から手作業で行なっていたものである。これらの作業はこのシステムでは、グラフィックディスプレ

    イを見ながら対話形式で実行できる。

    4)設計製図での利用やCADへの連動

     線形計算、桁高計算、リブ、継手配置の情報は、設計計算や図面作成に反映されてこそ威力を発揮

    する。このシステムでは、設計計算と図面作成にこの幾何情報を最大限に活用する自動設計・製図シ

    ステムとなっている。これにより、形状認識のための情報作成の手間が省け生産性は大幅に向上する。

    図面だけでなく、設計では各種の形状図を作成して設計者が形状を把握できるようにしている。この

    図面はDXFファイルを介して、レイヤーやグループ情報を考慮してCAD や設計計算書に取り込んで利

    用することが可能である。

    5)システム動作環境

     システム構成は表5-1に示すとおりである。

              表-付Ⅰ.1 システム動作環境例

    ハードウェア(設計) パーソナルコンピュータ(Pentium 90MHz 以上)

    ハードウェア(製図) パーソナルコンピュータ(Pentium 166MHz 以上)

    OS Windows NT 4.0/3.51

    メモリ(設計) 32MB以上(推奨48MB以上)

    メモリ(製図) 64MB以上(推奨128MB以上)

    ディスプレイ 17インチ以上(1024x768以上の解像度が必要)

    ハードディスク 20MB~200MB程度の作業領域が必要

    プリンタ、プロッタ Canon LASER SHOT、セイコー電子工業DSCANなど

    製図CAD AutoCAD R13J、Mini Cad6 for Windowsなど

  • 付録-Ⅰ 土木CAD製図ガイド(案)

    付録-Ⅰ-22

    6)プログラム構成

     プログラム構成は表5-2に示すとおりである。

              表-付Ⅰ.2 プログラム構成例

    製図システム

    リブ、継手配置

    材料計算

    AutoCAD

    プロッター出力

    ディスプレイ表示

    プロット(ZDRAFT)

    プロッター出力

    ディスプレイ表示

    設計システム

    鋼床版の設計(DECK)(縦リブ、横リブ、ブラケット)

    製図システムへ

    断面力連動(GFORCE,JSP)

    断面力補間係数作成(HFORCE)

    断面力ファイル

    リブ配置(ZBAT)

    プリント(ZPR)

    桁高計算(ZWEB)

    SPACER

    リブ配置検討CAD

    DWGファイル

    鋼床版図 主桁図 ダイヤフラム図 横桁図 横リブ図 ブラケット図 ........

    鋼箱桁(鋼床版、RC床版)の自動設計・製図システム プログラム構成

    製図用データ編集

    横桁の設計(CBEAM)

    外縦桁の設計(OUTSTR)

    断面構成図(DIAPLOT)

    ダイヤフラム設計(GDIA)

    継手設計(GJOINT)

    補剛材設計(GSTIFF)

    主桁+温度差応力度照査(GTEMP)

    主桁+床組応力度照査(GFLOOR)

    幾何情報PDSK

    線形連動(ZGLINE)

    LINER GRID

    線形計算 格子計算 立体解析

    主桁断面の設計(GSECT)

  • 付録-Ⅰ- 23

    7)DXFファイルによるデータ受け渡し(プロットファイルとDXFファイル)

     DXFフォーマットに変換する際の方式と問題点

    破線、一点鎖線は縮尺を考慮してピッチを決定し、一本の線としてグループ化している。

    プロットファイルでは、半角、全角文字の区別をしているが、変換時はすべて全角とする。

    タイトル、記号、構造物、寸法線などにレイヤーを分離している。

    AutoCAD では線幅を認識できないが、線幅を色で識別し、これから AutoCAD のマクロを使用して

    線幅を復活できる。

    DXFファイルでは、座標値は16桁程度の倍精度を確保できるが、CAD上での距離の精度はおちる。

    これは、プロットファイルのデータが単精度であるのが問題で、倍精度とすれば解決する。

     入力データファイル、幾何マスターファイル、および図5-2 に表示した平面図1図面あたりのファ

    イルのデータ量を参考までに表5-3に示す。ファイルはすべてテキストファイルである。

     グループやレイヤーを考慮しても容量はそれほど増ない。しかし、DXF ファイルの容量は 2MB を超

    える(DWG ファイルでも 1MB を超える)ので、フロッピーディスクや通信手段を利用してファイル転

    送するには、LHAなどのファイル圧縮ツールが必須であるといえる。

                  表-付Ⅰ.3 ファイルの容量

    DXFファイルファイル 容量(行数) LHA で圧縮

    時の容量

    DWGファイル

    で保存 グループ レイヤー

    入力データファイル 36 KB( 1510)

    幾何マスターファイル 1.131 MB( 21729) 323 KB

    プロットファイル 0.879 MB( 38302) 244 KB

    DXFファイルA 2.700 MB( 371370) 361 KB 1.563 MB あり あり

    DXFファイルB 2.619 MB( 360112) 357 KB 1.423 MB なし あり

    DXFファイルC 2.543 MB( 371320) 363 KB 1.562 MB あり なし

    DXFファイルD 2.465 MB( 360062) 358 KB 1.422 MB なし なし

    8)DXFフォーマットファイルのAutoCADへの取り込み

     リブ継手配置による平面図、側面図、断面図などを DXF フォーマット変換して AutoCAD LT に取り

    込んだ状態を図 5-1から図 5-4 に示す。設計プログラムから出力された断面形状図についても同様

    にDXF フォーマットを介して設計計算書などへ取り込むことができる。また、プロットファイル専用

    のビューワーからクリップボードを介して設計計算書などへ取り込むこともできるようになっている。

  • 付録-Ⅰ 土木CAD製図ガイド(案)

    付録-Ⅰ-24

        図-付Ⅰ.16 線形計算から主桁線、横桁線などを連動した状態の平面図

        図-付Ⅰ.17 縦、横リブ線、縦、横継手線を配置した後の平面図

  • 付録-Ⅰ- 25

        図-付Ⅰ.18 縦、横リブ線、縦、横継手線を配置した後の主桁側面図

        図-付Ⅰ.19 縦、横リブ線、縦、横継手線を配置した後の断面図

  • 付録-Ⅰ 土木CAD製図ガイド(案)

    付録-Ⅰ-26

     DXF ファイルを読み込むと図 5-5 のようにグループ化した寸法線()とともに寸法値が欠落し

    てしまうCADがある。また、グループ化された図形以外の情報も欠落してしまうCADがある。

     一方、レイヤーについては、たいていのCADで認識できるようである。

     図-付Ⅰ.20 図-付Ⅰ.19と同じDXFファイルでグループ化された図形が欠落する場合

  • 付録-Ⅰ- 27

    5-4 ラスターCADの利用

     従前の2次元CADの概念は、2次元CAD=ベクターCADつまり線情報に基づいたCADを指

    していたが、ラスターCADつまり点情報に基づいたCADがコンピュータ機器の低価格化とともに

    普及しつつある。

     例えば、工事の現況図面をオートスキャナーなどで読みとり、当該工事計画に直接関係しない部分

    は、ラスターデータとして保存しベクター化を省略し設計を進める上で準備段階の迅速化を推進する

    ツールとして成長する可能性が大きい。(図-付Ⅰ.21)

    図-付Ⅰ.21 ラスターデータとベクターデータが混在した図面例

     実際にはラスターデータとベクターデータの両データを同時に扱えるCADシステム上で活用を進

    める。その特徴は

    • 手書き図面もCADデータとして扱える。

    • ベクターCADも同時に使えれば線情報に全てのデータを変換する必要がない。

    といった長所がある反面、

    • 読み込んだ図面そのままでは図面ファイルの容量が非常に大きいためイメージデータを圧

    縮する必要がある(例:A 0図面で約3 MB 程度)。

    という短所があり、コンピュータのメインメモリを 30MB 程度以上追加しないと動作しない場合もあ

    る。

     ラスターCADのイメージデータは基本的には写真などのカラー画像と同一であるがモノクロ画像

  • 付録-Ⅰ 土木CAD製図ガイド(案)

    付録-Ⅰ-28

    でも充分活用できるため、ファイル容量は少なくてすむ。

     また、イメージデータは 300~400dpi((dot per inch)程度の解像度で読み込むことが多く、

    TIFF(Tag Image File Format) や CCITT(International Telegraph and Telephone Consultive

    Committee)をはじめとする圧縮画像フォーマットにより読み込み/書き込みが行われている。

    5-5 ネットワーク環境での運用

     ネットワークを利用してCAD情報を活用し、図面作成の生産性を向上させるためには、図面デー

    タの一元管理や周辺機器の共有化を図るための機能や、セキュリティを確保するための機能が必要と

    なる。現段階ではネットワークの利用に十分耐えうる機能をサポートしたソフトウエアはあまり見あ

    たらないが、排他制御・図面管理などのネットワーク機能を有し、かつ、Windows対応のCA

    Dソフトが開発され、他のアプリケーションとのインターフェースもとれるようになってきた。

     通信を使ってCADデータを別の設計者に渡し、承認や修正をさせる「設計者間だけのコミュニ

    ケーション」は従来から行われてきた。インタ-ネットの進展とともに、これまで特定の担当者間で

    行っていたデータ交換も、プロジェクトの参加者全体でデータを共有できるようになってきた。この

    場合ドキュメント類はすべてHTMLといった、OSやアプリケーションから独立したデータファイ

    ルとして共有される。また、CADデータも何らかの共通形式に変換され、CADソフトを持たない

    ユーザでもその内容が見られるようになっている。

     インターネトの利用を前提としたCADデータの利用技術として特に注目される技術には、

    AutoCAD のインターネット利用機能がある。AutoCAD のメーカである米オートデスク社では、イン

    ターネットを最重要課題の一つと位置づけて、次々と新しい技術を発表している。

    ① その第1弾として今年春に発表したのが[Whip!」ブラウザである。これは、AutoCAD の図

    面データをDWFというファイル形式でセーブすると、どのインターネットブラウザ上でも読めるよ

    うになる仕組みである。ユーザはプラグインソフトをダウンロードして自分のブラウザに組み込めば

    よい。CAD図面がベクター情報として表示されるので、拡大、縮小はもちろん可能であり、イン

    ターネット的な利用方法であるホットリンクのボタンを組み込んだりできる。

    ② そして、オートデスクがインターネット対応の第2弾として発表した、AutoCAD のネイティブ

    ファイルであるDWG形式を直接ブラウザで読むプラグインである。DWFではレイヤー情報などは

    省略されていたが(その分、データ量はDWGに比べ1/6程度に減量できる)、この方式では

    AutoCADのフルデータが(AutoCADを持たないユーザでも)ブラウザ上で直接表示可能になる。

     DWGがブラウザで読め、FTPサーバが直接利用できるようになれば、設計者は殆ど意識せずに

    インターネット環境を利用することができるようになるであろう。

    表紙小委員会構成目次活動報告研究の目的研究の範囲と経緯

    基礎技術分科会土木CADの現状土木CAD製図ガイドの提案今後の展望

    応用研究分科会はじめになぜCAD導入かコンピュータ支援技術これからの土木CADおわりに

    CAD製図ガイド(案)CADシステム構成基本機能概要要求される仕様構造物のCAD製図手法土木CADの運用

    CADメーカヒアリングCADソフト概要基本機能

    活動経過小委員会主査会議分科会