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山間急傾斜地水田における圃場整備計画の基本的考え方と 計画事例 誌名 誌名 信州大学農学部紀要 ISSN ISSN 05830621 著者 著者 千野, 敦義 木村, 和弘 内川, 義行 巻/号 巻/号 30巻2号 掲載ページ 掲載ページ p. 125-169 発行年月 発行年月 1993年12月 農林水産省 農林水産技術会議事務局筑波産学連携支援センター Tsukuba Business-Academia Cooperation Support Center, Agriculture, Forestry and Fisheries Research Council Secretariat

山間急傾斜地水田における圃場整備計画の基本的考え方と 計 …山間急傾斜地水田における圃場整備計画の基本的考え方と 計画事例 誌名

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  • 山間急傾斜地水田における圃場整備計画の基本的考え方と計画事例

    誌名誌名 信州大学農学部紀要

    ISSNISSN 05830621

    著者著者千野, 敦義木村, 和弘内川, 義行

    巻/号巻/号 30巻2号

    掲載ページ掲載ページ p. 125-169

    発行年月発行年月 1993年12月

    農林水産省 農林水産技術会議事務局筑波産学連携支援センターTsukuba Business-Academia Cooperation Support Center, Agriculture, Forestry and Fisheries Research CouncilSecretariat

  • 山間急傾斜地水田における圃場整備計画の

    基本的考え方と計画事例

    千野敦義・木村和弘・内川義行

    信州大学農学部農業工学研究室

    125

    The Fundamental Way and Case Studies of Land Consolidation Planning

    on Paddy Fields in Steep Sloping Area

    Atsuyoshi CHINO, Kazuhiro KIMURA and Y oshiyuki U CHIKA W A

    Laboratory of Agricultural Engineering, Department of Forest Science, Faculty of Agriculture, Shinshu University

    Summary

    The waste of cultivated land is increasing with years. Recently, the land consolida-

    tion which is countermeasure to waste of land has been expanded to paddy field in steep

    sloping area in mountainous village. However, when the same arrangement of lot form

    for fiat area are adopted to steep sloping area, several problems will occur.

    In the present paper, we proposed the fundamental way of land consolidation

    planning in steep sloping area and were developed the method and technique to support

    the consolidation planning.

    These are as follows: 1) The method of classification of paddy field for whole

    village consolidation planning. 2) The method of famer's participation to consolidation

    planning and the technique to support them. 3) Adopttion of “Contour Form", applicable

    to lot form according to in geographical feature. 4) Arrangement of lot form for safer

    tractor passage. 5) Form of levee slope for safer and more efficient weeding work.

    And we tried to apply our propositions to the cases of several villages.

    (J our. Fac. Agric. Shinshu Univ. 30: 125-169, 1993)

    Key words: steep sloping area, paddy field, land consolidation, planning

    1 . はじ め に

    中山間地域の活性化が農政の大きな課題になり,山間急傾斜地での圃場整備も注目される

    ようになってきた。山間急傾斜地水田の圃場整備は,平坦地のように効率的な農作業の追求

    のためだけに機能するのではなく,そこでの水田の保全や農家の定住に大きく機能するo 現

    1993年 9月30日 受 付

  • 126 信州大学農学部紀要第30巻第2号(1993)

    在,山間地域の水田では,荒廃化が著しく進み,もはや個々の農家の対応は困難で,地域的

    ・集団的対応が必要になっているo 圃場整備した水田では,荒廃地の発生は極めて少ないた

    め,山間地域の市町村では,荒廃化への対応という目的で圃場整備に取組むところも多くな

    った。山間急傾斜地の圃場整備では,平坦地で一般化している生産技術を取り入れるという

    側面よりも,小規模区画でも荒廃化を防止し耕地の保全,水田の維持という面が強調されて

    きたので、ある 1)。

    各地で実施されている圃場整備では,工費の軽減等を求めて種々の工夫がなされている。

    しかし,それらは極めて地域的,現状対応的で,平坦地の長方形区画を基本として改善が行

    われている場合が多い。

    筆者らは,今まで、山間急傾斜地で、適合する圃場整備工法や急傾斜地で、の計画提示手法につ

    いて検討を行ってきた。木村は,急傾斜地に適合する区画形態として等高線型区画を示し,

    形状条件を示してきた1)2)% また,千野は,急傾斜地の圃場整備計画におけるパソコンの利

    用を提案し,詳細な数値地形モテ、ルの開発を行った4)九この数値地形モデ、ルにより,従来

    の煩雑な計算過程が簡略化でき,各種整備工法の対比が容易になった。さらに,この数値地

    形モデ、ノレの利用により等高線型区画の利点を活かし,安全性を考慮した区画配置へ維持管

    理労働を軽減する区画配置等の計画提示が可能になった。

    本報では,従来から筆者らが主張してきた山間急傾斜地の水田圃場整備計画の基本的考え

    方と,この考え方によって計画した長野県内での圃場整備計画の事例を示し,従来の手法に

    よる計画との対比を行った。

    本報の構成は以下の通りである。 nでは現在の山間急傾斜地の圃場整備の問題点と新たな考え方を示し, 111では筆者らが提案してきた整備に当たっての基本的事項を示す。 IV,Vで

    は, 111で提案した方式を取り入れるために開発したり,提案している技術について述べる D

    これらの技術が形成されてはじめて111の導入が可能になる。 VI,VIIではVまでを踏まえて作

    成された計画事例を示すD

    さて,本題に入る前に本文作成の経過を述べておく。従来からの研究をふまえて,千野と

    木村は,山間急傾斜地水田の圃場整備計画のマニュアル作りを企画し,千野の開発した数値

    地形モデ、ノレを用いて長野県を中心に各地で圃場整備計画に関与し,計画事例の蓄積に努めて

    きた。さらに大学院生の内川を中心に農業工学研究室の専攻生の協力を得て,農家と共に現

    地の測量から始める手づくりの圃場整備計画を長野県長谷村で実施し,農家の計画参加のあ

    り方を検討してきた。これらの地区の中には,筆者らの提案した計画を基本に実施計画が作

    成され,施工されようとする地区もでてきた。

    これらの結果を踏まえマニュアル作りに着手しようとした矢先,平成 5年 4月27日,千野

    は農業施設工学の現場での講義中,事故で殉職された。千野の意志を継ぎ,今まで、行ってき

    た作業をまとめることにし,木村と内川が本文をとりまとめた。

    II. 山間急傾斜地の圃場整備の問題点と新たな考え方

    1. 山間地域での整備上の問題

    青・壮年農業就業者の減少,高齢化が進行する山間地域の市町村では,圃場整備を荒廃化

  • 千野ら:急傾斜地水田の圃場整備計画の基本的考え方と計画事例 127

    防止のためと位置づけ,さらに村づくりの基盤として位置づけて整備に着手するところも多

    くなってきた。農業の主体が変化する中で,整備後営農形態も大きく変化する。こうした状

    況の基で,従来の生産性向上の観点だけでなく,維持管理の省力化や安全な農作業環境を確

    保する等の新たな観点、からの圃場整備が要求されている。

    傾斜が急で地形の複雑な地区での圃場整備は,乗用型農業機械の導入を可能にし,農家の

    苦汗労働を解消し,生産性も大きく向上する。しかし,既に整備をされた区画をみると,以

    下のような問題も存在している。

    ①現在の急傾斜地の圃場整備では,平坦地と同様な整備方式が導入される場合が多いD そ

    のため区画間段差の発生,巨大な進入路,急勾配道路の形成などが見られ,作業環境として

    の安全性や維持管理の問題を引き起こしている。

    ②農業就業者の減少,高齢化の進行により,従来共同作業として行われてきた水路や道路

    の維持管理作業の組放化が進行している D また,個別農家が行ってきた畦畔法面の除草作業

    も,重労働で危険を伴うため次第にその遂行が困難になっている D その結果,農家の維持管

    理によって形成されてきた農村景観も変化している D さらに整備地では見られないが,未整

    備地では耕作放棄,荒廃化が急増しており,水田の持つ国土保全機能の低下も懸念されるo

    こうした状況に対応するために維持管理労働を軽減する土木的対策がとられてきたが〈表

    1 ),さらに省力化を進める新たな方策が検討されなければならなくなっている O

    ③整備された水田では,乗用型の農作業機械が導入されるようになった。これら機械のオ

    ベレータも高齢者が多い。急勾配道路や進入路の周辺においては農作業時の危険が増大し,

    トラクタの転倒・転落等の農作業事故も発生している。事故被災者の多くが高齢者である。

    区画や道路周辺では,至るところで事故の危険や作業に支障が発生する可能性があり(表

    2),これらの危険の解消を目指した方策が検討されなければならない。

    表1. 維持管理法方法の変化と対応方法

    作業の精 組

    現状の方法 作 業 の 内庁、?

    廿農業土木的対応

    ① 通常の維持|作物成育に関する作業以外のもので道路や水路を維持

    管理方法 |するための作業:用水源・水路の維持管理,床締,畦

    畔の締固め,畦塗り,畦畔の除草,水路・道路法面の

    除草,降雨時の排水操作,道路の維持管理等。

    ② 粗放的な方|現状を維持しつつ労働力の減少の中で維持管理作業の|道路の舗装化,

    法 |変更:例えば主要部分を占める除草方法の変更,機械|水路のコンク

    的草刈りから除草剤使用への転換,道路・水路の維持|リート化等に

    管理作業の外注化文は市町村による維持管理の発生等。|よる維持管理

    ③ 他の土地利|現在の維持管理方法の根本的変更:例えば水田から手 l労働の軽減。用へ転換する|のかからない放牧による草地利用への変更による作業

    方法 |の軽減。

    ④ 荒廃化 |従来の維持管理作業の放棄。

    (注〉 文献 7)より引用

  • 128

    検討対象場所

    区画

    農道|

    信州大学農学部紀要第30巻第2号 (1993)

    表2 区画及び農道周辺での事故の危険及ひや作業への支障

    対象の関連!要素 l 内

    ~

    廿 事故や作業への支障状況

    1. 区画配置 i①長方形 ②平行四辺形一一一「農業機械の旋回困難,機械利用困難,・形状 !③三角形 ④等高線型一一一ート一手作業の発生

    !⑤不整形一一一一一一一一一一l

    2. 区画規模|①狭小一一一一一一一一一一一一農業機械利用の困難3. 畦 畔 i①高さ ②幅一一一一一一一一一農業機械の乗り上げによる転倒・転落4. 法 面!①高さ ②法面勾配一一一一一十・除草作業の困難,作業中の転倒・転落

    ③小段の有無一

    5. 進入路!①配置一一一一一一一一一一一一隅作業の発生

    ②勾配 ③段差一-

    l④幅員一一一一一一一一一一一十ー農業機械の転倒・転落

    !⑤舗装一一一一一一一一一一一ト農業機械のスリップ

    !⑥安全施設-

    1. 配 置 i① 2区画 1道路一一一一一一r--i--進入路の発生に伴う諸問題l② 1区画 1道路一

    ③区画との接合一一一一一一L一一農業機械の転倒・転落

    2. 形 状 i①勾配②幅員一一一一一一一一農業機械の脱輪,転倒・転落スリップ3. 路 面|①舗装の有無一一一一一一一一一農業機械のスリップ4. 安全施設!①ガードレール一一一一一一一一-機械の転落

    ②カーブミラー一一一一一一--rー農業機械,作業機の衝突

    ③隅切り一一一一一一一

    (注〉 文献 8) より引用

    2. 新たな観点での圃場整備の要求

    今後の山間急傾斜地の圃場整備では,従来から検討された土工量,工費を軽減するといっ

    た観点の他に,前節で述べた安全性の確保,維持管理労働を軽減する整備方式が求められて

    いるD それらは図 1のようにまとめられるD

    従来あまり考慮されなかった維持管理作業を省力化するための整備,安全な農作業環境の

    ための整備,さらに環境保全を考慮した整備などが重要な課題となり,そのための技術的対

    応が求められている D

    これらの整備は,手法的にも相互に関係し,個別の部分的な改善だけでは問題解決になり

    得ない場合も多い。問題の発生原因を明らかにし,区画配置や道路配置等の計画など総合的

    に検討されて問題解決が図られねばならなくなっている。

    111. 急傾斜地水田の圃場整備計画作成の基本事項と課題

    Hで示した整備の考え方のうち,直ちに導入すべきと考えた事項は, (1)圃場整備計画提示

    に関するもの, (2)圃場整備技術に関するもので,それらは表 3に示す項目であるo ここでは

    (1)(2)の課題について概略述べることにする。

  • 千野ら:急傾斜地水田の圃場整備計画の基本的考え方と計画事例

    -区画閣の段差・道路と田面の大きい段差・巨大な進入路・区画規模の小型化・区画形状.広大な畦畔法面.急勾配道路・その他

    図1. 今後求められる急傾斜地圃場整備技術

    (注〉 文献9)の図を一部改めた。

    表3. 急傾斜地水田の圃場整備計画で考慮すべき項目

    (1) 圃場整備計画提示に関するもの

    ① 全村の水田団地を対象とする圃場整備計画の作成

    (水田団地の区分による圃場整備対象地の選定〉

    ② 農家の理解し易い計画図の作成

    ③ 団地単位の圃場整備計画への農家の参加

    (2) 圃場整備技術に関するもの① 地形・傾斜に適合する区画配置(等高線型区画の採用〉

    ② 安全性を考慮した区画配置

    i )進入路を解消する区画配置, ii)急勾配道路の解消

    ③ 維持管理労働,特に畦畔法面の除草を軽減する区画配置,法面形状

    i )労働軽減や安全性が向上する畦畔法面形状の形成

    ii)除草面積が軽減する区画配置(小排水路の暗渠化の検討〉

    1. 圃場整備計画提示に関するもの

    (1) 全体の水田団地の区分とそこでの課題

    129

    圃場整備事業は農家の申請事業であり,市町村担当者は農家からの申請を受けて事業化す

    るのが一般的である D しかし,山間急傾斜地の水田では,農家からの申請を待っていたので

    は,その聞に荒廃化が進み圃場整備も実施できず,荒廃化を防止することは困難になる。山

    間地域では,積極的に市町村が全村の圃場整備計画をたて,圃場整備を推進させることが必

    要と考える。

  • 130 信州大学農学部紀要第30巻第 2号 (1993)

    ?, . . . ~O. . . . lp~ .. ,1,50, .., ~OIpm

    図2. 従来の計画平面図の例

    (現況図に計画の区画割が記入されている〉

    そのためには,次のことが

    必要になろう口①全体の水田

    団地に対して,例えば「整備

    する団地Jr整備しない団地」等の区分を行い,この区分に

    基づいて圃場整備を行うこと

    が必要である D このために,

    どのような指標で水田団地を

    区分するのか,また農家が納

    得する指標は何にか,等を提

    示することが必要になってい

    る。②「整備しない団地」に

    区分された団地に対しても,

    そのまま放置するのではなく

    全村の土地利用計画の中に位

    置付けたアフターケアが必要

    になっている D ④水田団地の

    分級に際しては,地域を熟知

    している市町村担当者の役割を明確にすることが重要である。

    (2) 農家の計画への参加とそのための支援システムの必要性

    整備を必要とする団地で農家が十分納得する計画を樹立するには,市町村担当者は勿論の

    こと,農家の計画への参加も必要になる。この前提となるのが,農家が理解しやすい計画図

    の作成である D 従来のような平面図でなく,つぶれ地や区画間段差等がわかる計画図の作成

    が求められる。現在,農家に示される圃場整備の計画平面図は,単に区画割りを示すだけの

    ものが多く,つぶれ地の状況や法面の大きさ・形状といった情報は示されていない(図 2)。

    平坦地であれば,現況図に区画割りを書き込んだ計画平面図でも,農家は理解できるo しか

    し,地形が複雑な急傾斜地では,現況図に区画割りが書き込まれただけでは,技術者であっ

    ても完成後の姿を思い浮かべるのはなかなか難しい。ましてや一般の農家では不可能に近い。

    現状では,畦畔法面等が入った図面が示されるのは確定測量が終わった後である。今後は,

    従来の現況図に区画割りを記載した程度の計画平面図の脱却が必要で,つぶれ地の大きさや

    法面の段差がわかる計画図の作成,さらには鳥轍図等を用いた立体視できる計画図の作成が

    求められる。計画段階で完成後の姿が示されれば,農家も計画案に対して積極的に意見や提

    案をすることができ,計画段階からの参加が可能になる。そして,農家の計画への参加がそ

    の地域で目指す農業のための圃場作りを可能にするであろう。

    2. 圃場整備技術に関する課題

    今後の山間急傾斜地の圃場整備技術の課題は,以下の通りである。

    ①山間地域の地形,傾斜に適合する区画形態は等高線型区画であると筆者らは考えている。

    等高線型区画は,従来土工量や工費の軽減が利点として強調されてきた。しかし,この採用

  • 千野ら:急傾斜地水田の圃場整備計画の基本的考え方と計画事例 131

    に当たっては i)作業性が阻害されずに, ii)安全性が確保され,特に進入路の解消を可

    能にし, iii)除草面積の軽減にもつながる O さらにiv)将来の区画拡大にも対応できる,と

    いう利点、をも含めて検討されなければならない。

    ②安全性を考慮した区画配置では,道路から田面への進入時の安全の確保のために,道路

    と田面の段差の解消(その結果,進入路が解消する〉が検討されねばならなし、。

    ③維持管理労働,特に急傾斜地域で問題になっている畦畔除草を軽減する方法の検討が必

    要になる。それは i)労働軽減や安全性を向上させる畦畔法面の形成, ii)除草面積を縮

    小する区画配置の形成の検討である。

    IV. 新たな圃場整備計画の方法と技術

    1. 全村圃場整備計画のための団地区分の指標としての荒廃率10)11)

    筆者らは荒廃地の発生原因を素因と誘因に分け説明し,拡大の過程においても素因が影響

    していることを明らかにしてきた注九農地の荒廃化は,素因としての耕地条件の劣悪さや誘

    因としての農家を取り巻く社会経済的条件を統合した動きである D

    本節では水田団地の区分指標として「団地の荒廃率(荒廃率=団地内の荒廃地面積/団地

    面積)J(以下,荒廃率という〉を提案するが,これは団地の傾斜や面積等を前提として,団

    地内の自然条件や農家等の社会経済的条件を総合化した指標である D ここでは荒廃率ごとの

    圃場整備実施の可能性を示し,荒廃率ごとの土地利用形態を示す。これによって整備すべき

    団地等の区分ができると考えるo

    (1) 荒廃率と圃場整備実施の可能性

    急傾斜地水田が保全され耕作が継続されるためには,未整備のままでは困難で,圃場整備

    が必要となる D そのため,区分では第一に「ただちに圃場整備を必要とする団地はどこか」

    が検討されなければならない。

    団地内の荒廃率をもとに,農家の意識,従来の市町村の対応をふまえて圃場整備の可能性

    を区分すると表 4のようになるo

    1) 荒廃率10%未満の団地 現在荒廃地が存在しないか,又は荒廃率10%未満の団地で

    は,荒廃地発生の要因としての素因・誘因がないことを示している D その団地は,①整備が

    行われたところ,②未整備であるが道路条件や区画条件がよいところ,③農家の労働力条件

    等がよいところ,④共同的な維持管理体制が整っているところ,等であるo

    2) 荒廃率25'"'-'30%の団地 この段階で,各農家から「何とかしてほしい」との声が強

    まる。これは,荒廃地に対して農家の意識に変化が生じるためで,荒廃地の量的問題から質

    的問題への転換を意味する。荒廃率25%未満では荒廃地の発生に対する驚きと困った問題と

    の認識はあるものの,何とか耕作継続農家で個別的対応が可能と考えられている D しかし荒

    廃率25'"'-'30%になると農家から「個々の農家では対応が出来ぬJrこれ以上になると全てが荒廃化してしまう」という声が上がる。これは耕作継続農家の労力的・経済的負担を限界と

    感じ始めることから生じるものである。耕作継続農家は,隣接する荒廃地からの直接的影響

    への対応と同時に地域全体または団地内の道路・水路等の維持管理労働の増加にも対応しな

    ければならない。労力的・経済的負担の限界が,荒廃率25'"'-'30%の状態である。

  • 132

    荒廃率(%)

    信州大学農学部紀要第30巻第2号 (1993)

    表4. 荒廃率と圃場整備への農家の意識および区分

    農家意識

    しまう

    2')何とかしようr-i個別対応

    Lii集団的対応

    何と;維持

    n荒廃地所有農家は圃場整備希望せず

    ②耕作継続農家は圃場整備は

    困難とあきらめ

    従来の市町村の対応

    圃場整備

    対象外

    団地区分

    n当分の聞は荒廃化が考えられない団地

    "2)今後荒廃化する可能

    性のある団地

    3)集団的圃場整備動機

    形成限界

    4')個別整備段階

    5)集団的整備

    困難段階

    〈注 1) 栄村では荒廃化の著しいところでも,数枚~十数枚の区画を合併する村単事業を創設している 10)。

    (注 2) 文献 7) より引用

    3) 荒廃率50%以上の団地 この段階の団地で,団地全体を対象として聞場整備が行わ

    れた事例を筆者らは知らなし、。この段階では,耕作継続農家は将来の農業継続に不安を抱い

    ている D 特に道路・水路等の維持管理をどうするかという不安が大きいD 荒廃化水田を所有

    する人達の割合が過半数を占めているところでは,耕作継続農家はもはや圃場整備は困難だ

    とあきらめているo そこでは荒廃地所有農家を取り込んで圃場整備事業を実施することは難

    しい。

    以上から圃場整備を行うには,荒廃率が25"-'30%の段階で圃場整備動機を形成させるよう

    に市町村が働きかけをする必要があろう D

    (2) 荒廃率からみた団地の土地利用区分

    荒廃率による圃場整備実施の可能性をふまえると,荒廃率の増加に対応した土地利用形態

    として,表 5のような区分が考えられる。

    ①荒廃地の存在しない団地;この段階では水田は耕作に供され,維持管理も行われている D

    水路・道路等施設の維持管理も集落や共同の作業組織のもとで行われる D

    ②荒廃率25"-'30%以上の団地;この段階の団地は,部分的荒廃地が発生するが,水田での

    耕作は継続される。水田としての共同的な維持管理は,耕作継続農家によって行われるが,

    この段階を越えて荒廃率が高くなると耕作継続農家による維持管理が困難になる。維持管理

    の粗放化が生じ,作業の外注化や行政による管理が必要になるo

    ③荒廃率50%以上の団地;水田での耕作も継続されるが,耕作継続農家の周辺の荒廃化に

    由来する維持管理労働は限界に達する。従来からの維持管理方法の全面的変更がもとめられ

    る段階である。ここでは水田から手のかからない放牧による草地利用や林野的利用等への変

    更も考えられる。このような草地利用,放牧利用さらには林野的利用等に供される農地は,

    一定の面積を有する集団的団地において可能であろう。孤立的に存在する荒廃地の利用は困

  • 千野ら:急傾斜地水田の圃場整備計画の基本的考え方と計画事例 133

    表5. 荒廃率による土地利用の区分

    荒廃率(%) 土地利用の可能性 経営主体(可能性を含む〉 共同作業〈維持管理〉

    トー「一水田での耕作

    継続段階 →国別農家 トイ固別農家による 水田規模拡大可能 共同作業による対応 と

    (通常管理〉 ト主25-----30 ←一ー 一一委託等による

    管理の一一一ト一 森林組合等への委託50 戸(一林地利用

    一(林地〉

    水田として一草地利用 農協・市町村の管理

    の管理困難

    100 放置

    (注〉 文献 7) より引用

    難で,農地周辺の里山部分との一体的な利用を行うためには,一定の面積の確保が必要だろう。

    以上の荒廃率と圃場整備実施の可能性,土地利用形態が明らかになれば,荒廃率を基準と

    して圃場整備対象地を選定することも可能になれさらに他の土地利用への転換を促進させ

    る基準にもなろう D

    2. 農家に理解しやすい計画図の作成5)

    (1) 求められる計画図ここで、はノミソコンを利用した農家に理解しやすい計画図の作成方法について述べるo 農家

    に理解し易い図面は,①区画,畦畔法面等を表示した現況図および計画平面図,②現況およ

    び計画の鳥敵図,③現況土地利用図やそれに伴う土地利用別面積,④土地所有図,等である D

    これらの図面等の作成の条件は,①区画配置や形状の変更が容易に行えること,③地形の

    複雑なところで土工量や畦畔法面のつぶれ地等の計算が正確かつ簡単にできること,⑪計画

    図,特に鳥轍図が見やすいこと,の 3点であるD

    ①,③が求められるのは,区画規模,形状,配置の変更によって,しばしば土工量や工事

    費の大幅な軽減につながれ区画規模や形状等の変更(例えば長方形区画から等高線型区画

    への変更等〉に際して,諸計算が容易に行えなければならないためである。これにより複数

    の計画案の比較検討が容易になると同時に,農家から提案される計画修正意見への対応も容

    易になり,農家の納得を得やすくなる。また,⑪は,複雑な地形では対象地域全域を把握す

    るために,鳥敵図の視点の位置を変えなければならず,視点、の位置の変更,使用目的に合っ

    た高さ比に変えられることが求められる。

    (2) 用いる機器計画図作成に用いたパソコンは,計算本体に HP9000モデ、/レ330(メモリー 4MB,使用

    言語はベーシック),インクジェット式およびペイントジェット式プリンタ,小型タプレツ

    トのデジタイザ (38.4x 38 . 4cm)およびXYプロッタ (A3版〉である。(3) 計画図の作成手順

  • 134 信州大学農学部紀要第30巻第2号(1993)

    (注1) 入力するデータの種類

    (1) デジタイザーより入力するもの等高線水田区画道路,水路,河川,家屋等構造物の形状・配置

    (2) キーボードより入力するもの水田区画の番号田面標高土地利用区分作目区分耕地の状況土地所有区分

    (注 2) 出力可能な現況平面図の種類

    等高線図道・水路配置図現況水田配置図畦畔法面表示図土地利用図土地所有図家屋配置図

    図3. 計画平面図および鳥撒図作成のフローチャート

    計画図の作成は,図 3に示す手Jl贋で行う o

    1) 計画平面図および鳥敵図に必要なデータ データは可能な限りアナログデータをデ

    ジタイザーからそのまま入力し,データの作成および入力における労力軽減を図るo 現況図

    等に使用する現況データ等は図 2に併記した。

    2) 土工量と計画田面高の計算 土工量と田面標高の主な計算方法は,①加重平均法と

    ②格子分割法である 1九地形が複雑な急傾斜地では,②により格子の大きさをかえることに

    よって正確な土工量と図面標高を得る。しかし,①に比して計算時聞が長くなるため,②の

    方法の簡便法として,格子中央点、〈重心点〉をその格子の平均高とし土工量を算出する方法

    (以下,簡易格子分割法と呼ぶ〉が用いられているD

    ここでは簡易格子分割法により田面標高および土工量を計算した。格子の細分割は,計算

    機の利用によって,斜面が変化しないような適正な格子の分割が可能となり,格子分割法の

    隅点算出法と同程度の精度の計算結果を得ることができる。さらに分割数を任意に変化させ,

    多くの試算をすることが可能になった。

    この簡易格子分割法による土工量と計画田面高の計算手順は,以下の通りである。

    ①計画する水田の各区画ごとに,切盛法面を垂直と仮定して,やや大きめ(実寸で約 5

    m間隔程度〉の格子に分割し,基準高以上の体積を計算し,土量の変化率を考慮して切盛

    土量が等しくなる地盤高を算出するo

    ②各水田の地盤高と計画道路・水路高等との段差を求め,この段差に対じて指定した法面

    勾配を与えて「つぶれ地」を計算し,水張部の形状を決定する。

    ③水張部の形状をもとに,①よりも細かく (2""-'3 m間隔〉格子に分割して再計算を行

  • 千野ら:急傾斜地水田の圃場整備計画の基本的考え方と計画事例 135

    い,計画切盛土量と計画田面高を決定するD

    3) 現況図および畦畔・法面等を記載した計画平面図の表示 現況図は使用目的に応じ

    任意の区域の位置および大きさを示すとともに,必要とする項目を分類し判別して,出力で

    きるようにした。このようにして作成された図面は珊章以降で示した。

    土地利用図や土地所有図では,図とは別に地目別,所有者別の面積等を一覧表として表示

    できるし,またつぶれ地や畦畔法面部分等の面積も一覧表として表示することが可能である D

    計画平面図には,前項の計算を行って得られた法面や畦畔部分が記載される。なお,法面

    勾配は法面の高さや土質により変化させて入力することが可能である D

    (4) 鳥撒図の作成手順

    1) 作成方法 鳥撒図として出力する範囲を定めた後,分割する格子数を任意に設定す

    る。なお, X軸と Y軸方向の格子幅はほぼ等間隔にする。格子数が多くなれば地形変化をよ

    り正確に表現できるが,計算時間は長くなるo

    本方法では格子線上の中点に測点、をとり地形の変化をより正確に表現しようと試みた。

    種々の格子間隔で計算した結果,計算時間に比して地形が正しく表現されるには,格子の幅

    を表示図面上で 1'"'-'1.5cm間隔にとることが必要である。

    各格子および中点における標高は,先の現況図からデジタイザで入力された等高線および

    水田地盤高から算定した。また,水田等の重ね合わせにより生ずる隠線の処理を行うため,

    格子線と交差する水田畦畔,道路等の境界線の座標点も算出した。

    2) 鳥轍図の表示 鳥敵図により地形を表現する方法は,①等高線法と②メッシュ法が

    あるが,前者は,等高線上での地形の変化を正確に表すことができ,山岳のような自然地形

    を表現することに適している。後者は,地形の勾配,方向等を表現するのに適するほか,計

    画された構造物等を重ね合わせて表現する場合に適している。

    本法では,①②の両方法で表現することが可能であるが,圃場整備計画図の場合,従前の

    水田区画と重ね合わせて示す場合があることを考慮、Lて,メッシュ法による表現が適してい

    ると考えられる。

    また,地区全体の地形変化を明確にするためには,視点を移動させることも必要である。

    本法で、はどの地点へも視点を移動で、き,さらに高さ比も変化させることができ,使用目的に

    適した図が出力で、きるように工夫した。

    V. 安全性等を考慮、した急傾斜地の園場整備技術

    1. 地形条件に適する等高線型区画設定のための基礎条件

    (1) 現在の急傾斜地の整備方式1)

    現在,山間急傾斜地で行われている整備事例を見ると,長方形区画を採用している地区が

    多い。傾斜地に適合する方法としては,等高線型区画や耕区拡大型区画があるが,これらの

    事例は極めて少ない。

    各地で行われている整備事例を地形条件に応じて分類すると,①平坦地で一般化している

    方式の延長として,長辺を直線化して区画を拡大する長方形区画,②長辺を等高線に合わせ

    て区画を拡大し,傾斜地に適合する等高線型区画,の二つに分けられる〈図 4)。図中,斜線で

  • -t251道路方式

    111ATIE-道路

    i

    E

    -

    第30巻第 2号(1993)信州大学農学部紀要136

    (注)..-aグは現在採用されている整備方式を示す.

    図4. 圃場整備方式の類型化

    示した区画形態が現在多く採用されている方法である。各整備方式の特徴を表6に示した。

    多くの地区では,傾斜が1/10以上でも長方形区画が採用され,そこでは傾斜や地形の変化

    に応じて区画形態や配置を変え,即ち長方形区画C,Dとして対応してきた。一方,等高線

    型区画や耕区拡大型区画は,長方形区画による平坦地技術の流れとは直接的な結びつきなく,

    導入されている D 長方形区画の導入できない地形の複雑な急傾斜地で採用されているに過ぎ

    ず,現状では長方形区画の補完的役割しか与えられなかった。

    現在傾斜地の圃場整備で生じている問題の多くは,画一的に長方形区画を採用することに

    よって生じており,これらを解決するためには等高線型区画が傾斜地技術として位置づけら

    れねばならないだろう。

    (2) 長方形区画によって生じる区画間段差1)

    急傾斜地では地形が一様なところは少なく,多くは湾曲している。このようなところに平

    坦地と同様な長方形区画を配置すると,区画間の段差は,①短辺方向の区画間,②長辺方向

    で排水路を挟む区画聞及び③長辺方向で道路を挟む区画聞の 3ヵ所で生じる(図 5:図 4の

    長方形区画Bに当たる〉。

    従来,長方形区画において,①の短辺方向の区画問段差については検討が行われており,

    区画短辺を縮小するといった対応がとられている。しかし,地形の湾曲に対する対応はほと

    んど行われなかった。湾曲が大きいところにも,長い直線の長辺が設置されたため,区画間

    段差は大きなものとなった。この長辺方向の区画間段差のうち,③の道路面と田面の段差に

    よって進入路が必要になる。

    (3) 等高線型区画による区画間段差の解消と作業性の向上条件

    等高線型区画は区画長辺を等高線に沿って湾曲又は曲折させて配置するため,地形の湾曲

    のあるところでの区画配置を容易にし,長方形区画で生じた長辺方向の区画間段差(図 5の

  • 137 千野ら:急傾斜地水田の圃場整備計画の基本的考え方と計画事例

    各整備方式の特徴とその形態表6.

    盟国

    己一回

    ID 徴

    ① 平坦地と同様な碁盤目状形態

    ② 区画は長方形区画

    ③ 区画短辺に道水路が接する 2区画 1道路方式の配置

    ④ 区画間段差は長辺沿いの区画聞で生じる。

    ①地形の湾曲したところで長方形区画の設

    置。

    ② 区画間段差は,短辺方向で接する区画間,

    長辺方向で接する区画間,及び道路と接する

    区画聞の 3か所。③ 進入路が必要

    ① 道路と田面との段差が大きい時,等高線が

    湾曲する分だけ区画をずらして配置して,段

    差を減じようとするもの。

    長方形

    区画 A

    B

    画長

    長方形

    区画 C

    整備方式

    i昌 司i① 等高線の湾曲が著しい地区での適用

    ② 1区画 1道路方式とし,長方形区画Bで生じた道路と田面との段差を減じようとするも

    の。

    D

    画長

    r~同:l:① 区画長辺を等高線に沿わせて,曲線または

    折線とする区画

    ②傾斜地に適合し,ることヵ:で、きる。

    ③ 区画は不定形

    ① ② ③ ④

    つぶれ地や土工量を減じ

    既存区画法面の利用

    田面差の少ない区画の合併を基本

    出来るかぎり既存道水路の利用

    区画は不定形

    耕区拡大

    型区画

    ②及び③の段差〉を解消すること

    が可能である D これにより長方形

    区画で生じたつぶれ地や土工量を

    軽減でき,傾斜地に適合的な工法

    となる。しかし,湾曲の著しいと

    ころで湾曲に忠実に区画を配置す

    ると曲折部が急角度になって,代

    かきや田植え等の作業に支障を生

    じる。このため,等高線型区画で

    は安全性と作業性が低下しないよ

    うに,次の条件を具備することが

    必要である。①区画の短辺の幅が

    (ω)

    難車図

    (2) 横断図

    図5. 長方形区画による段差の発生

    ① 短辺方向の区画間段差

    ② 長辺方向の排水路を挟む区画間段差

    ③長辺方向の道路を挟む区画間段差

  • 138 信州大学農学部紀要第30巻第2号(1993)

    一定であること,②区画の曲折部の形状があまり急角度にならないこと(乗用型 5条植え田

    植機を基準にすると150。以上,曲率半径10m以上とすること〉。

    2. 安全性を向上させるための条件

    (1) 進入路の実態と耕作者の危険感13)

    1) 進入路を必要とする区画と位置 前述のように道路面と区画田面に段差があるとき

    に,進入路が必要になる。道路面が区画短辺に接していれば進入路を必要としないが,道路

    面の位置が図 6の点線内よりはずれると段差を生じ進入路が必要になる。進路面が,田面よ

    り高い位置にある場合は下り進入路が,田面より低い場合は上り進入路が形成される。

    設計基準刊で、は,進入路の幅は4mを標準とし, 2区画で 1ヵ所の場合は 6mとし,勾

    配は32.5%(80)以下とすること,また,進入路の位置は湧水等で地盤の軟弱な場合が多

    い山側畦畔付近をさけ,谷側畦畔寄りの回面と高さが一致する場所に設置することが指示さ

    れている。

    2) 進入路の段差・勾配 現在配置されている進入路は,設計基準の限界勾配32.5%

    (80) を越えるものは僅かで,大部分は設計基準の限度内にあるo 段差 2m以上の進入路

    も各地で見られ,中には最大段差 4mにも達するものもある(写真 1)。段差が 3m以上

    の進入路の多くは,勾配17.6~26.8% 00~150) の範囲内にあれつぶれ地の増加を抑え,

    設計基準の限界勾配内で進入路を設置しようとする傾向が見られる。

    3) 進入路に対する危険感 進入路への進入・退出時及び走行中に危険を感じると指摘

    する耕作者は多い。この危険感は進入路の勾配や田面との段差によって生じている。勾配が

    設計基準の範囲内でも,耕作者の危険感は勾配の増加に伴って増加する。勾配19.4%

    (110)以下の進入路では危険を感じる耕作者の割合は少ないが, 21.3% (20)以上では約

    半数の進入路で危険が訴えられている D

    さらに進入路の勾配だけでなく段差の大きさによっても危険感は増大するD 谷側区画端に

    位置する下り進入路では,道路と田面の段差に下段側区画との段差が加わって耕作者の視野

    に入る段差は増大する D この段差の合計が 3m以上になると危険を指摘する耕作者の声は

    大きくなるo

    進入路を必要としない範囲

    図6. 道路面と進入路の関係

    写真1. 巨大な進入路

  • 千野ら:急傾斜地水田の圃場整備計画の基本的考え方と計画事例 139

    (2) 進入路の発生及び急勾配化する原因6)

    進入路を必要とする道路面と田面との段差が生じる原因は,①地形が湾曲しているところ

    での長方形区画の設置,②道路の縦断勾配と地形勾配との遊離及び③設計施工上の不備によ

    るものの 3点が考えられる。このうち,①及び②が段差発生の主な原因となっている。また,

    進入路が急勾配化する原因としては,①つぶれ地を減少させようとするため,②隅作業(進

    入路が田面内に突き出ると,隅作業を必要とする場所が生じる。隅部分では農業機械の利用

    効率が減じたり,手作業が必要になったりする〉の発生場所を排除しようとするため,③限

    界勾配を32.5%(80) とする設計基準が安易に適用されるため,の 3点が考えられる。

    (3) 進入路を解消した安全な区画配置6)

    以上のように急傾斜地での圃場整備で採用されている長方形区画,それによって生じる進

    入路の存在は,農作業に多くの危険をもたらす。今後の圃場整備においては,安全性が第ー

    に考えられねばならなし、。つぶれ地や土工量を減らし事業費を軽減することだけでなく,安

    全性を向上させることが重要となっているo

    進入路における安全性を向上させる方策は,①進入路の発生を防ぐ区画配置の採用と②発

    生した進入路の改良に分けられるが,ここで、は①について述べる。

    1) 進入路の発生を防くの区画配置……前述のように道路と田面との段差の発生は,主とし

    て地形の湾曲しているところに画一的な長方形区画を配置することにある。長方形区画でも

    傾斜や地形の湾曲に応じて 2区画 1道路方式の区画短辺の位置をずらしたり 1区画 1道路

    方式を採用して極力段差を減じる試みが行われているが〈表 6参照),これらの方式でも段

    差をすべて解消することはできない。

    これに対して区画長辺を等高線に沿わせる等高線型区画は,地形の湾曲しているところで

    の区画配置を容易にし,長方形区画で生じた長辺方向の区画問段差を解消して 2区画 1道

    路方式のもとで道路と各区画を接して配置することが可能になる。

    2) 等高線型区画による進入路の解消の条件・…・・従来から圃場整備における土工量の算定

    は,計画された道路配置のもとで区画内での切盛土量のパランスをとるとし、う方法を基本と

    している D この方式を用いる限り地形の複雑なところでの長方形区画は,区画聞に段差を生

    じてしまう o

    2区画 1道路方式で,進入路を解消するという観点での区画配置は,等高線型区画におい

    て,次の条件を満たして初めて可能になるo

    その条件は,①区画が道路に接すること,②進路を挟む区画聞の段差がないこと,③区画

    間の長辺の畦畔が連続していること,の 3つであるo

    従来,等高線型区画は土工量の減少,事業費の軽減を第一の目的としてきたが,進入路を

    解消し,安全性を確保するという目的が加えられるべきである。

    3) 進入路を解消するための計算方法15) 本方法では前項 2)の3つの条件を満たすた

    めに何度かの試算が必要となる。その方法は次の通りである。①計画された区画形状のもと

    で田面標高の算定(等高線型区画の採用により道路を挟む区画間段差は小さくなる〉及び区

    画間段差が 4m程度に収まるように田面標高又は区画形状を調整する D ②算定された田面

    標高と規定される道路配置で進入路のできない道路縦断勾配を計画する,③道路と田面が接

    しない場合は,道路と田面が接するように計画田面標高を調整する,④その田面標高のもと

  • 140 信州大学農学部紀要第30巻第 2号 (1993)

    での区画毎の土工量を算定する,⑤つぶれ地,土工量等が大きい場合は,再度①より計算を

    繰り返す。以上によって区画配置を決定するo

    3. 除草作業の安全性を考慮、した畦畔法面の形状

    (1) 畦畔法面における除草作業の実態16)

    水田の維持管理作業の一つに畦畔法面の除草がある。山間急傾斜地の水田では広大な法面

    が形成される。従来,畦畔法面は飼料,肥料の供給源として大きな役割を有していたが,現

    在ではこれらの役割も減少し,除草作業自体が重労働で苦痛を伴うものとして農家に認識さ

    れている。また作業者の多くが高齢者で作業の危険度も高まり,事故も多くなった。

    1) 除草機械と作業時期及び除草回数 除草作業の大部分は動力刈払機で行われる。除

    草剤は経済的負担が大きいこと,法面が緩み崩壊を引き起こす危険があること等の理由で,

    ほとんど用いられない。動力刈払機の大部分は肩掛型(手持型〉で,使用回転刃は切込刃よ

    りも,チップソーが多く用いられる。

    除草回数は農家によって異なるが,年間 3'-""'4回程度が多い。除草作業は 3月下句の害

    虫防除の土手焼き以降,田植え前後に 1回目,以後 1'-""'1.5か月毎に稲刈り前まで行われる。

    農家は草丈の状態により作業時期を決め, 30cm程度を目安に除草を行っている。植生の違

    いによって作業時期,回数は異なっているo 農家は重労働の除草作業を軽減するために除草

    回数を減じる傾向にある。そのため長い草丈にも対応でき,切れ味が良く研磨の必要のない

    チップソーが用いられている。その結果,事故の危険性も増大しているo

    2) 除草作業の範囲と作業方法 傾斜地では区画の所有と除草の範囲が若干異なり,図

    7のようにB農家は, c区画の草がB区画の稲生育に支障となるのを防ぐため, c区画の法先からー列幅〈斜面長 1m'-""'1.5m程度〉までの除草を行うのが一般的である口

    動力刈払機による除草方法は①水平刈り,②刈上げ,③刈下げ,④刈上げと刈下げの併用,

    ⑤垂直方向への下り刈りに分けられ(図 8),④の方法が最も多く用いられる。

    (2) 除草作業の身体的負担とその対応17)

    畦畔法面の除草では,除草方法や除草箇所によって身体的負担が異なる D 法面で多く用い

    られる除草方式は,法面上での刈下げ方式,法先部での刈上げ方式の併用であるo

    法面上では,①勾配が急なため足場の確保が難しいこと,②植生が多様なため均一な作業

    が出来ないこと,等によって身体的負担が大きい。また,法先部では,①下部区画に稲が生

    育しているため刈草の落下を防ぐため,刈上げ

    方式が採用されること,②下部区画は湛水して

    おり,足場が不安定になって無理な姿勢で作業

    を行うこと,によって最も身体的負担は大きい。

    これらの身体的負担を軽減するためには,法

    面上での足場の確保のための小段の設置が求め

    られる。また,法先部では,除草方式を最も負担

    の大きい刈上げ方式から刈下げ方式に変えるこ

    とが必要で,そのために小段が必要になる。 図7. 除草範囲

    (3) 安全性と効率化のための畦畔法面形状

  • 141 千野ら:急傾斜地水田の圃場整備計画の基本的考え方と計画事例

    動力刈払機による除草方式の類型化図8.

    -畦畔天端で用いられる。

    -刈払機を振り上げずにすむ

    ため,長辺が長くても疲労

    が少ない。

    -刈下げの惰性で刈刃を足に

    接触させることがなく事故

    防止になる。

    -下部区画への刈草の落下が

    ない。

    ・この方式の採用は少ない。

    特法方式

    水平刈り方式

    刈下げ方式

    刈上げ方式

    方草

    平坦地の除草方式

    j去

    -法面で刈下げ,法先部で刈

    上げが行われる。

    -最も多く行われる方式。

    刈上げ,刈下

    げ併用方式

    -刈払機の振上げがない0

    .往復距離を短くできる。

    ・この方式の採用は少ない。

    垂直下り刈り

    方式

    法面下側の除草可能範囲 -AY'

    0.5m、〆'"λ ム-'片l、ふ、)1日 5m設置 、、法面上側の除草可能範囲

    「ーー占ー~広町、 三法先部への小段の設置 /'

    \1.5~2.0 m

    、/小段から除草作業ので、きる範囲

    図9. 除草作業の効率化・安全化のための

    小段の設置

    m 5.0

    届4.0間

    皇3.0

    2.0

    6.0m

    図10. 小段聞の法面勾配を変えつぶれ地を、

    軽減した例

    5.0 4.0 3.0 2.0

  • 142 信州大学農学部紀要第30巻第2号 (1993)

    除草作業の安全確保のためと作業の効率化のための法面形状として,図 9のような形態が

    考えられる D

    1)法面中段への小段 法面では,刈下げ方式で除草が行われ一般的な刈り幅は

    1.0'"'-'1. 5m程度であるD このため法面中段の小段からの除草範囲は,①上部法面の除草刈

    り下げ幅C1.0'"'-'1.5m)と②下部法面の刈り下げ幅 CO.5m程度〉の合計1.5'"'-'2.0mの範囲

    であるO 除草作業を標準に小段を設定すると 2m以内の間隔での設置が必要である。

    2) 法先小段 畦畔天端から刈り下げ可能な範囲と小段の高さを考えると,段差0.5m

    以上のところでは設置を検討する必要がある。この小段は上部水田の除草作業だけでなく,

    追肥,見回り,防除作業等の下部水田の生産活動にも必要性が高く,農家からの要望も多い。

    (4) 減歩につながらない小段の設置

    小段の設置では,減歩を伴わない形態を工夫することが重要であるo その一例が図10であ

    るD 法面中段の小段の設置によって,法面上での除草作業は回避される。その結果小段聞の

    法面勾配は,安定の範囲内で急勾配化することが可能になるo 従来法面の高さが 3m以上

    では 1: 1.4以上の緩勾配が採用され,これに小段が設置されるとさらにつぶれ地が増加す

    るため,農家からつぶれ地軽減の要望が強かった。これに対応するのがこの方法である D 法

    面中段に小段を設定しでも,小段聞の法面勾配を 1: 1.2とするため,段差が 4mの法面で

    も1: 1.4の法面勾配のときと同様なつぶれ地にとどまることができるo

    VI. 急傾斜地水田の全村圃場整備計画と農家の計画参加事例

    1. 全村の圃場整備計画事例一長野県長谷村の例ー

    山村の市町村では,荒廃化防止のために圃場整備が必要となっても,すぐさま全域の水田

    団地で整備が行われるわけではない。各市町村とも県の長期土地改良計画等で要整備面積の

    算定を行っているが,明確に全域の水田団地の区分を行っているところは少ないし,また整

    備を実施するための長期的プログラムを作成しているところも少ないロ長野県長谷村は,全

    村の水田団地の区分を行し、,それに基づいて圃場整備を行おうとしてきた。

    (1)長谷村での全村圃場整備計画づくり 18)

    1) 長谷村の概況と圃場整備への動き 長谷村は,人口2,568人,耕地率0.8%,水田面

    積170haの典型的な山村であるo 水田は河川沿いの45haを除きすべて1/5'"'-'1/10の急傾斜地

    にあり, 52団地に分かれている D 一戸当り平均経営面積49a,うち水田面積は37aである。

    この村では昭和59年に村の活性化を目指して村づくり委員会が設置され,産業や地域づく

    り等の活動が行われている。そのなかで農業の再生と荒廃化の防止のために圃場整備が重要

    視され,将来とも保全すべき団地を決め整備対象を明確にして圃場整備を進めることにした。

    昭和62年,村づくりの一環として役場職員を中心に県,農協,普及所及び信大の職員をメ

    ンパーとして「小規模基盤整備プロジェクト班(以下,研究班)Jが作られ,圃場整備の検

    討が行われた19)。

    2) 全村圃場整備計画の作成 研究班では次のような検討を行った。①圃場整備の必要

    性,推進上の問題点の検討,②村内の全水田団地の現況把握,③現状をふまえた今後とも水

    田として保全すべき団地と整備すべき団地の選定,④対象団地における区画形状,配置を示

  • 千野ら:急傾斜地水田の圃場整備計画の基本的考え方と計画事例 143

    す圃場整備計画の作成,⑤一部の団地での事業費の算定,⑥圃場整備計画の農家への提示。

    そして,整備工法も i)区画規模は10------20aを基本とし, ii)傾斜が急で地形が複雑な

    ところでは等高線型区画とし, iii)将来の再整備をも考慮、して長辺方向に隣接する区画聞の

    段差を少なくする,ことを基本とした。

    3) 団地区分の方法

    団地区分の基本的考えは以下の通りである。

    ①現存する水田団地は極力保全する。

    ②農道改修や水路改修等の現況対応的な整備は地区全域の圃場整備意欲を減じるため,再

    検討をする。

    ③画場整備は未整備団地の全てに必要だが,すぐさま全団地の整備はできないため, I緊

    急に整備する団地JI当面整備しない団地JI整備せず放置する団地」に区分して整備を行う。

    ④団地区分の基準は以下によった。

    緊急に整備する団地:まとまった概ね 2ha以上の団地で荒廃化が進むことが予想される

    団地。

    当面整備しない団地:戦後開田時に一応の整備がされている団地及び機械作業の可能な団

    地。

    整備せず放置する団地:孤立した小団地で荒廃化が著しく進んだ団地口

    ⑤団地区分の指標として, i)団地規模と ii)荒廃率が採用された。村担当者は,荒廃化

    が進むなかでまとまった団地だけは保全したいとの意向を持っと同時に,荒廃化が進んだ団

    地については,対応しきれないと考えていた。どの程度の荒廃率になれば整備が困難かとい

    う明確な基準はなかったが,所有者や耕作者の状況を把握し圃場整備の可能性の検討を行っ

    た。この結果,荒廃率50%以上の団地は整備せず放置する団地として,整備対象外とした。

    52の団地は図11のように区分し,これをもとに整備を進めようと考えた。

    4) 長谷村における特徴

    現在のところ,この計画に基づ、いて順次整備が行なわれているわけではないが,団地区分

    を行い圃場整備実施の契機にしたという点では稀少な事例である。

    団地区分の指標として,団地規模と荒廃状況が用いられたが,これらの指標は画一的に用

    いられるのではなく,耕作者の状況等を十分把握した上で区分することが重要であった。長

    谷村では農地や農家を熟知している村担当者によって行われた。こうした状況の把握におけ

    る市町村担当者の役割は大きい。

    (2) 荒廃団地の土地利用転換と総合的土地利用計画

    圃場整備対象外となった団地は,従来は全く放置され,農家個別の対応に任されてきた。

    圃場整備対象外の団地に対しては,水田から草地や林地へ,手間のかからない畜産利用や林

    野利用等に積極的に転換することも必要である。

    長谷村に隣接する山間地域では,荒廃化した水田団地を利用して緬羊(サフォーク種〉の

    飼育や里山を利用した鹿飼育を行うところも現れてきた問。そこでは荒廃水田から草地への

    変更と同時に,団地の周囲に牧棚を設けて放牧させ,土手草や雑草等を飼料としている。こ

    の畜産利用では,経営や管理の主体として個別農家だけでなく農協や市町村も考えられ,経

    営的観点、よりも地域の土地管理の観点で位置づけられると考えるo 今まで畜産利用というと

  • 144 信州大学農学部紀要第30巻第 2号 (1993)

    0 2000

    町田緊急に整備する団地

    囚当面整備しない団地

    園整備せず放置する団地

    4ー十一

    至伊那市

    図11. 長谷村の水田団地とその区分(一部〉

    すぐさま経営的観点からの検討に主眼が置かれたが,環境保全的観点としての土地管理も求

    められてこよう。そこでは各種動物,例えば水田畦畔では山羊,荒廃地では綿羊,さらに荒

    廃地から里山では鹿等の多様な動物の導入も可能であろう o これらの動物導入に当たっては,

    さらに検討されねばならない点もあるが,山間地域の土地管理では有効なものと考える。

    さらに荒廃水田の林地利用も周辺の里山との一体的に計画することも必要になる。荒廃水

    田の他の土地利用への転換は,地域全体の総合的土地利用計画に基づいて,利用方策が検討

    されることが重要である。

    2. 園場整備計画への農家の参加 一長谷村溝口地区の事例一

    ここでは農家と筆者らが共同で、計画作成を行っている長野県長谷村溝口地区を事例に,農

    家の計画作成への参加形態と,今後の計画作成における農家,行政(市町村),計画者(コ

    ンサルタント〉の役割について検討する。

    (1) 対象地域の概況

    計画作成地区は,前節の全村圃場整備計画で「緊急に整備すべき団地」に区分された長谷

    村溝口地区の南郷団地である(図12)。南郷団地は三峯川右岸の河岸段丘上に位置し,地形

    勾配は1/5"'-'1/8。地区の総面積は23ha,うち水田は13haである D 現況における水田は212区

    画 1区画当たりの平均面積は6.5a,区画面積10a以下が全区画の80%を越えるO この団地

    の農地所有農家は26戸 1戸当たりの平均所有面積は48.8aである D

    (2) 計画案作成の経過21)

    南郷団地が「緊急に整備すべき団地」に区分されたため,地元の溝口地区ではまず南郷団

    地を整備しようと考えたD 溝口地区では,これを皮切りに将来は溝口地区全ての水田団地の

    整備を行いたいと考え,地区をあげて南郷団地の整備に取り組むことにした。平成 4年,溝

    口地区の水利組合役員注2)を中心に「土地改良研究会(以下,研究会)Jが結成され,筆者ら

    と共に計画案の作成が行われた。現在は,まだ事業化が決まってはいないが,事業化が決ま

    れば計画作成はコンサルタント等によって溝口地区と離れたところで行われるので,事業化

    前に自らの手で計画を作成したいと考えた。

    そこで研究会では,①近傍の急傾斜地整備地区の見学とそこでの問題点の把握,②圃場整

    備への考え方,工法等の勉強会の開催,③地区の状況把握と計画図面作成基礎資料収集のた

  • 千野ら:急傾斜地水田の圃場整備計画の基本的考え方と計画事例

    図12. 長谷村南郷団地の土地利用状況(1992年〉

    口水田

    回転作田

    図畑地

    圃樹園地

    阻荒廃地

    図 宅 地

    臨墓地その他

    145

    めの,地区内全水田の田面標高と土地利用を求める測量,踏査等を行った。これらは全て筆

    者らとの共同作業であった。作成された計画に対して農家から,①急傾斜地での区画規模,

    ②小規模土地所有者への対応,③地区内に散在する墓地の取扱い,④湧水の処理等,全域の

    詳細な部分におよぶ意見が活発に出されたD 現在,研究会は溝口地区の役員を加えて「土地

    改良推進委員会」に発展し検討が行われている D

    (3) 従来の農家,市町村,コンサルタントの役害U21)

    農家の計画作成への参加に当たっては,農家,行政(市町村),計画者(コンサルタント〉

    各々の役割を明確にし,そのための条件を整えることが必要である D 各々の役割は表 7のよ

    うになろう。従来,農家の役割は事業の申請や計画に対する若干の意見提出といった程度の

    ものであった。山間地域の市町村では専門の農業土木技術者のいない市町村も多く,設計等

    は全てコンサルタントに任す場合が多い。計画者〈コンサルタント〉からは,従来の一般的

    な区画割だけが記入された計画図が示され,区画間の段差,つぶれ地等の情報が農家に提供

    されない場合も多かった。

    (4) 本事例における計画作成の特徴と今後のあり方

    本事例の特徴は,①農家と筆者らが共に測量,踏査を実行したことo これによって農家の

    関心が地区全体に広がれ区画形状,田面差等についての共通認識が得られた。さらに,計

    画に対して積極的で,全域かっ細部にわたって意見が出され,相互理解が得られた。②村が

    全村の圃場整備計画と団地区分を行ったこと D 荒廃化の不安を持つ農家の圃場整備への気運

    を高めた。③計画者(筆者ら〉が積極的に農家の意向をくみ計画作成を行ったこと o ④計画

    図として, IV. 2で示した畦畔法面を記載した計画平面図や計画鳥敵図を作成したこと O こ

    れによって,農家の圃場整備に対する意識が大きく変化し,理解を容易にした。

    以上のように,農家の計画参加を可能にするには行政,計画者がそのための環境作りを行

  • 146 信州大学農学部紀要第30巻第2号(1993)

    表7. 圃場整備計画における 3者の役割

    従来の状況 本事例 の場合 今後求められる役割

    ①事業の申請 ①事業の申請

    農家 ②計画案に対する意見 -調査,設計への参加(測…ー 一→②計画作成への参加

    量・踏査〉 円→③計画作成に必要な情報収

    受益者〉

    -研究会での急傾斜地整備 集・提供

    の考え方への理解 ④計画案への意見提出

    (工法など技術の情報収集〉 ⑤計画の判断・決定

    (・地元協議による計画判断〉

    ①情報収集類似整備地 -全村の圃場整備計画と各 !→①情報提供

    の見学 地区団地の位置づけ ーーーーーー ②計画の作成行政 高率補助事

    [関補助金工l③利害調整〈市村) 町

    業検討 法等の選定 ④地元説明会

    ②計画への一部参加(区画 -説明会の開催 ⑤財政補助

    割への意見〉

    ③地元説明会の開催

    ④農家負担軽減措置

    ①情報収集・調査・分析 -全筆の土地利用調査,測一一 一→①情報収集・調査・分析

    計 ②計画設計 -急傾斜地に適した工法の一一 一円l一一歩②傾斜地に適Lた工法等の

    画選定 提示

    ③計画提示・説明 ③安全性,維持管理作業へ

    者 -潰れ地記載の計画平面図 配慮、した設計

    計画鳥轍図の作成 ー--ーーー 一→④農家の理解しやすい計画

    図を用いての計画説明

    うことが重要である。本事例をふまえると,今後の 3者の役割は,表 7右端に示すものにな

    ろう o さらにこの役割を十分果たすためには三者の相互調整も必要となるD

    VII. 急傾斜地水田団地の圃場整備計画事例

    1. 長方形区画と等高線型区画による進入路発生の比較 一小諸市菱平地区の事例_6)

    本事例では,急傾斜地に長方形区画を設定した地区を対象として,等高線型区画で計画し

    た場合,進入路,つぶれ地,土工量等がどの様に変化するかを比較検討し,進入路を解消す

    るための区画方式として,等高線型区画の有利性を示す。

    (1) 対象地区の概況と技術的特徴

    1) 地区の概況 事例地として,長野県小諸市の北方,浅関連峰高峰山麓の南斜面に位

    置する菱平地区を選定した。この地区は,標高720------960m,傾斜1/4-----1/12の急傾斜地で,

    昭和58年より 110haの水田を対象に県営圃場整備事業が行われている D 検討を行ったのは地

    区内の昭和58,59年度に施工された12haで,両側を深い沢に挟まれた平均傾斜1/7の棚田団

  • 千野ら:急傾斜地水田の圃場整備計画の基本的考え方と計画事例 147

    地である(図13)。整備により従前の271区画は,整備後77区画になった。

    2) 整備方式の特徴 菱平地区の整備の特徴は,次の 3点である。①当初は等高線に沿

    って区画長辺を曲折させる等高線型区画が計画されたが,地元との調整の結果,長方形区画

    となった。② 1区画 l道路方式によって整備された。③事前換地を行い,農家の所有規模に

    合わせて区画短辺長を変え区画規模をきめる区画配置方式が採用された。

    (2) 長方形区画と進入路の発生

    1) 2区画 1道路方式と進入路 菱平地区では地形の湾曲しているところに長方形区画

    を設置したため,道路を挟む区画聞に段差が発生した(図14)。この段差はB・C列及びC

    .D列の区画問で大きく,最大 9mにも達した (N0.35'"'-'59) 0 道路 Iで、はA列を基準にA,

    B両列に対応する 2区画 1道路方式としたが, B列上流部の No.19'"'-'21の区画では道路面と

    田面との段差が約 4mにもなった。ここでは巨大な下り進入路が形成されることになった

    ため,安全性とつぶれ地の減少のために進入路位置の変更が行われた。これらの区画では道

    路IIから進入することになり,道路II側の法面を切土して斜めの上り進入路が形成された。

    道路II,IIIでは2区画 1道路方式を採用する限り,道路両側の多くの区画に進入路の設置

    はさけられなかった。

    進入路を減少させるには,道路IIはC列に,道路IIIはD列に対応する 1区画 l道路方式の

    採用が必要であった。

    2) 1区画 l道路方式と段差 1区画 l道路方式を採用した道路II,IIIでは,進入路が

    減少している D これは 1区画 1道路方式の採用の効果もあるが,同時に各道路の縦断勾配を

    傾斜の変曲点で変化させ,地形勾配に対応してきたことも影響している。道路IIで、は,上流

    部の縦断勾配は16.5%,下流部は11.7%,道路IIIでは,上流部から13.2%,7.0%, 15.2%

    の縦断勾配が採用された。しかし,地形勾配の急な個所では,こうした対応にもかかわらず

    縦断勾配と遊離し 2m以上の段差を生じている (C列 No.46'"'-'50,D列 No.60'"'-'70)。

    (3) 当初計画における等高線型区画と進入路の発生

    1) 当初計画における等高線型区画 対象地区は傾斜が急で地形の湾曲も大きかったた

    図13. 菱平地区の従前区画の鳥敵図

    め,前述したように,当初は等

    高線に沿って区画長辺を曲折さ

    せる等高線型区画の計画がたて

    られた(図15)0この計画では,

    長方形区画と同様な 1区画 1道

    路方式の道路配置とし,等高線

    型区画で配置するものであった。

    ここで、は,農作業に支障を来さ

    ないよう短辺長をほぼ一定とし,

    曲折角度も最少1500 とするなど

    考慮されたが,地形の最も複雑

    なC列では三角田などの不整形

    田を生じた (N0.41, 48, 49)。

    これが農家に「作業に支障を生

  • 148 信州大学農学部紀要第30巻第 2号(1993)

    長込畦畔法面

    (1) 平面図 (2) 道路縦断図

    図14. 現況区画(長方形区画〉

    100 m

    忌畦畔法面

    道路II

    BH…c

    (1)平面図 (2) 道路縦断図

    図15. 当初計画における等高線型区画

    じるのではないか」としづ不安をいだかせ,現在の長方形区画に変更されたので、あるo

    2) 当初計画における進入路の発生と道路配置 長方形区画と同様な道路配置を前提と

    した等高線型区画であるが,道路を挟む区画聞の段差は長方形区画の場合よりも減少してい

  • 千野ら:急傾斜地水田の圃場整備計画の基本的考え方と計画事例 149

    る。道路面と田面との段差のない区画は,長方形区画の場合の38区画から53区画に改善され

    た(表 8)。

    道路 Iは2区画 1道路方式としたが,等高線型区画でも上流部のA・B列の区画間で約 3mの段差を生じ, B列の上流部で進入路が生じた (No.24'"'-'28)。

    道路IIを挟むB・C列の区画間では,上流側に位置する区画は等高線に忠実に配置されたため段差を生じなかったが,下流側に位置する区画では区画長辺の配置が等高線と遊離した

    ため最大 5mの段差を生じた(図15(2))。このためB・C列に対する2区画 1道路方式は設置できず, c列に対応する 1区画 1道路方式となった。

    また,道路IIIを挟むC・D列の区画間の段差は 1'"'-'2mになった。さらに道路IIIの縦断

    勾配を一定にせず地形勾配に合わせて上流側で15.8%,下流側で10.1%とすることによれ

    進入路は減少した。それでも38区画中14区画 (36.8%)に進入路が必要で、あったD このため

    道路IIIはD列に対応する 1区画 1道路方式になった。

    3) 等高線型区画と段差の解消 当初計画では進入路を解消しようとする考えは存在せ

    ず,長方形区画と同様な道路配置のもとで,個々の区画の土工量の軽減に重点が置かれた。

    そのため,長辺方向の区画聞の段差が解消されないまま残ってしまっtc.o

    2区画 l道路方式で,道路を挟む区画の田面高が同一であれば,道路を各区画に接して配

    置することが容易になる。等高線型区画は,この条件を満たすことが可能であったが,当初

    計画では,このような等高線型区画の利点、を充分に活かせなかった。このため長方形区画に

    比して土工量を23.2%軽減しえたが,道路を挟む区画間段差の解消は部分的なものにとどま

    ったのであるo

    (4) 進入路を解消する等高線型区画(筆者案〉

    筆者らは,当初計画で示された等高線型区画を基本に以下の 3条件を満たす 2区画 1道路

    方式の区画をIV. 2.で示した数値地形モデ、ルを用いて設定した(図16)。①A・B列, c .D列の区画聞の田面が同一レベルにあること D ②A・B列, c ・D列の区画長辺の睦畔が同一線上にあること。③各区画の短辺の一部が道路に接すること口

    また,この他に農業機械の作業性を阻害しない等高線型区画の形状条件1)として,①区画

    の幅を一定とすること,②曲折部の角度を農作業機械の運行に支障のない角度とすること,

    という条件も付加した。

    上記の条件を満たす等高線型区画によって,次の点、を改善できた。

    ①A・B列の区画では道路 1,C ・D列の区画では道路IIにより 2区画 1道路方式の採用が可能になった。当初計画で必要とした 3本の道路のうち, B. C列聞の道路を廃止するこ

    とができた。

    ②73の全ての区画は道路と接することになり,進入路を設けなくてもよくなった。なお,

    道路の縦断勾配を道路 Iでは12.1%,道路IIでは途中で屈折させ上流部で16.5%,下流部で

    9.2%とした。

    ③この方式では,道路を挟む区画聞の田面高及び畦畔の連続性が保たれているため,将来

    の再区画整理時には,道路 I及びIIを改廃することによって容易に等高線方向に区画の拡大

    が可能である。

    (5) 長方形区画と等高線型区画との比較

  • 150 信州大学農学部紀要第30巻第 2号(1993)

    長よ畦畔法面

    o 100 m

    (1) 平面図 (2) 道路縦断図

    図16. 等高線型区画(筆者案〉

    ①現在の長方形区画,②当初計画の等高線型区画及び③進入路を解消する等高線型区画

    (筆者案〉の三通りの区画割のもとで生じる段差等を比較すると,表 8のようになる。

    同じ道路配置で設定された①と②の方式を比較すると,等高線型区画の②は①に比して,

    土工量を23.2%,つぶれ地率を14.5%減少させ,道路面との段差の生じない区画を増加させ

    た。しかし,②は三角田等が形成され,長辺方向の区画間段差も残って,安全性の点からは

    不十分なものであった口

    これに対して筆者らが提案した③の方式は,①②の方式に比して i)進入路を設置する

    ことなく道路は全ての区画に接することができるため,安全性が確保されること, ii)一本

    の道路を廃止し,つぶれ地の減少による土地利用率を向上させること,さらに, iii)①の方

    式と比して16.1%の土工量を減少することができる,とし、う利点を有している D

    2. 急傾斜地での進入路を解消する事例と農家の反応 ー飯山市藤沢地区の事例一22)23)

    本事例は, 1/10未満の比較的緩傾斜団地と平均1/7の急傾斜地団地の 2カ所の整備事例で

    あるO 前者では2区画 1道路方式のもとで進入路を解消する計画案を示し,後者では2区画

    1道路方式が採用できない地区において,等高線型区画を導入することによって,土工量,

    工費を軽減できることを示した。さらに,これらの計画に対する農家の意見を示した。

    この地区では,中山間地域活性化事業の一環で画場整備が実施されることになり,これら

    の検討をふまえて実施計画が作成されている D

    (1) 対象地区

    対象とする団地は,飯山市藤沢地区にある「藤沢団地」と「原団地」の 2ヵ所であるo 藤

    沢団地は千曲川左岸の国道117号, ]R飯山線と野々海川に挟まれた傾斜1/10"-'1/15,面積13

  • 千野ら:急傾斜地水田の圃場整備計画の基本的考え方と計画事例

    表8. 菱平地区における各計画の比較

    長方形区画 当初計画された 等高線型区画

    (現況区画〉 等高線型区画 〈筆者案〉

    区 画 数 77 78 73

    全区画面積 (ha) 12.197 12.412 12.388

    水張部面積(凶)* 8.328 10.278 10.458

    つぶれ地率(%)** 31.72 17.19 15.58

    5 a以下 O( 0.0%) O( 0.0%) O( 0.0%)

    5 '"'-' 10 a 6( 7.8 ) 7( 9.0 ) 1c 1.4 )

    10 '"'-' 15 a 32(41. 6 ) 26(33.3 ) 13( 17.8 )

    15 '"'-' 20 a 26(33.8 ) 30(38.5 ) 50( 68.5 )

    20 '"'-' 25 a 1003.0 ) 15(19.2 ) 7( 9.6 )

    25 a以上 3( 3.9 ) O( 0.0 ) 2( 2.7 )

    5 a以下 5( 6.5%) O( 0.0%) O( 0.0%)

    5 '"'-' 10 a 30(39.0 ) 17(21.8 ) 2( 2.7 )

    10 '"'-' 15 a 33(42.9 ) 34(43.6 ) 47( 63.4 )

    15 '"'-' 20 a 800.4 ) 26(33.3 ) 21C 28.8 )

    20 '"'-' 25 a 1c 1.3 ) 1c 1.3 ) 2( 2.7 )

    25 a以上 O( 0.0 ) O( 0.0 ) 1( 1.4 )

    段差なし 38(49.4%) 53(67.9%) 73(100.0%)

    50 crn未満 9(11.7 ) 11(14.1 ) O( 0.0 )

    50crn'"'-' 1. om ,9(11.7 ) 800.3 ) O( 0.0 )

    1.0 '"'-'2.0m 15(19.5 ) 6( 8.2 ) O( 0.0 )

    2.0 '"'-'3.0m 5( 6.5 ) O( 0.0 ) O( 0.0 )

    3.0 m以 上 1c 1.3 ) O( 0.0 ) O( 0.0 )

    切盛土量o 000m3) **** 175.406 134.779 147.119

    単位土量o 14.381 10.859 11. 876 OOOnf/凶〉」

    ;水張部面積は区画面積から畦畔法面部分の面積を差し号|いたもの。

    ;つぶれ地率=(区画面積一水張部面積)/区画面積x100 (%) ;長方形区画の進入路段差は現況により示した。

    件付;切盛土量は区画割を基に計算された切土量と盛土量の合計。

    151

    haの団地である〈図17,18)。この団地は上流部の谷地田とそれに接する扇状地からなる 2

    つの地形面をもっo 地区内の水田区画は301区画 1区画当たり平均面積は3.9a,最大面積

    も11.9aに過ぎないD 地区内には,中央部に車道があるものの他は畦畔を利用した歩道であ

    るD このため農業機械の区画内への進入にも支障を生じているo

    一方,原団地は標高520'"'"'560mの段丘上にあれ凹凸のある複雑な地形で傾斜1/7,面積

  • 152 信州大学農学部紀要第30巻第 2号 (1993)

    1990

    口水田

    回転作田

    図畑地

    園水平荒廃地

    圃傾斜荒廃地

    図17. 藤沢団地の土地利用状況

    all刷lJ凶ll問|四14吋

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    囚水田

    園 道 路

    圏河川

    図18. 現況鳥轍図(藤沢団地〉

    20haの団地である D 地区内には主要地方道が通り,さらに国営飯山開拓事業の幹線農道が

    地区内で地方道と結合することになっている。この地区内の水田区画は369区画,地区内の

    道路は県道以外は幅員も狭く軽トラックの通行がかろうじて可能な状態である D この団地も

    藤沢地区と同様に農業機械の区画内への搬入が難しい区画が多い。また水利状況は2つの溜

    池に依存し,田越かんがし、を行っている区画が多い。両地区の現況を表 9に示した。

  • 千野ら:急傾斜地水田の圃場整備計画の基本的考え方と計画事例 153

    表9. 藤沢・原団地の現況

    藤沢 団地 原 団地

    計画区域面積 13.0 ha 20.0 ha

    対象区画面積 11.7 ha 17.0凶

    内水張面積 9.5 ha 15.0 ha

    土 地所有者 35名 50名

    区 画 数 301区画 389区画

    l区画当り平均面積 3.9 a 4.4 a

    1戸当り平均所有33.3 a (8.6区画〉 34.0 a (7.8区画〉

    面 積(区画数〉

    最大所有者の規模105 a (28区画〉 187 a (35区画〉

    〈区画数〉

    最小所有者の規模2.7a ( 1区画〉 4.2a ( 1区画〉

    〈区画数〉

    表10. 藤沢団地の計画条件とその特徴

    長方形区画 I型 長方形区画 II型 等高線型区画

    ①標準区画20a ① 標準区画を設定せず, ① 地形に合わせて区画を出来る

    (25x80m) 地形に合わせてできるだ だけ大きくすること

    ② 長方形区画 け拡大 ② 等高線型区画(短辺長一定,計 ③ 碁盤目状に区画を配置 ② 長方形区画 曲折角度140

    0

    以内〉

    画 (平坦地で見られる配 ③ 道路・水路も地形に合 ③ 扇状地は2区画 1道路方式

    置〉 わせて配置 ④ 用排兼用水路条 ④ 用排分離水路 ④ 用排兼用水路 ⑤進入路を解消し安全性を高め

    件 るため i)区画間の連続性を

    保たせるため,長辺を同一線上

    に配置し, ii)道路を挟む区画

    のレベルを向ーとした。

    ① 区画間の最大段差6.9 ① 区画聞の最大段差6.9 ① 道路が全ての区画に接するた

    立1 ロ1 め進入路は必要なし特

    ② 20 a以下の区画が10% ② 水張面積15a以下の区 ② 土工量が増加した。

    を占める。 画は存在しない

    徴③ 道路・水路によるつぶ ③短辺長が一定とならな

    れ地が28%になる。 い不定型区画が発生し

    た。

    (2) 藤沢団地の計画

    この地区では,従来通りの考え方に基づいて設定された長方形区画 (1,II型〉と前章ま

    でに示した諸条件を満たす等高線型区画の三つの計画案について対比する D

    1) 3計画の計画条件 この地区は前述のように谷地田と扇状地の 2つの地形からなる

    が, 3つの計画とも上部の谷地田の取扱いはほ�