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「材料」 ( Journal of the Society of Materials Science, Japan), Vol. 62, No. 8, pp. 510-517, Aug. 2013 論  文 1 緒     言 海洋鋼構造物は激しい腐食環境に曝されるため,その 腐食の進展機構を理解し,性能低下を予測する方法を確 立することが重要である.特に,船舶や漂流物の衝突に よる鋼構造物の塗装の損傷は,傷部での鋼材の集中腐食 やその周囲の塗装の劣化を誘発する恐れがある.しかし ながら,既往の研究では鋼材中で生じる均一腐食(ミク ロセル腐食)に着目した事例が多く,局所腐食(マクロ セル腐食)を対象とした事例は数少ない. 塗装鋼材の傷部では,ミクロセル腐食およびマクロセ ル腐食のアノード反応による鉄の溶解(イオン化)が生 じる.同時に傷部周辺の塗装下では,①マクロセル腐食 のカソード反応で生じる水酸化イオンの発生・蓄積や ②外来物質の浸透に起因した塗装の“膨れ”や“破れ”等 の変質(以下塗装変質とする)が起きるとされている. 1), 2) しかし,傷部周辺でのマクロセル腐食現象,特に傷部で のアノード反応のみならず塗装下で生じるカソード反応 を定量的に評価した研究 3) は数が少なく,理論的な観点 から評価する手法も見当たらない.さらに,塗装鋼材の 腐食挙動を把握する目的で数十年間に及ぶ曝露試験が実 施され貴重な知見が得られている. 4), 5) 一方で,このよう な長期曝露試験を実施するには多大な費用と労力が必要 となる.このため,比較的短期間でデータを取得できる 促進試験が多用されており,鋼材の腐食を促進するため に,50℃の高温下で実施することとなっている. 1) しかし, 温度などの促進条件は経験的な知見から設定されている 場合が多く,腐食速度に対する定量的な影響度合いが不 明確なのが現状である. 上記を受け,本研究では以下の項目を目的とした. (1) 鋼材腐食や塗装変質の観点からマクロセル腐食およ びミクロセル腐食を区別して評価し,塗装鋼材の傷 部周辺で生じる腐食進展機構を明らかにする. (2) 促進試験と実環境試験における腐食速度の違いを定 量的に把握するため,温度が傷部周辺で生じる腐食 に及ぼす影響を実験的に把握する. (3) 上記 (1) に基づき,傷部周辺で生じるマクロセル電 流を評価するための数値計算モデルを提案する. 2 実 験 概 要 21 供試体概要 本研究では,Fig. 1 (a)に示すような異なる直径の円形 鋼材(厚さ:3.2mm,幅:9mm)から構成される供試体 を製作した.各鋼材の裏面にはリード線がはんだ付けさ 塗装鋼材に生じた傷部周辺で生じる腐食の評価 西 田 孝 弘 大 即 信 明 安 中 俊 貴 ** 和 田 賢 治 ** Evaluation of Corrosion around Defect on Paint-Coated Steel by Takahiro NISHIDA , Nobuaki OTSUKI , Toshiki ANNAKA ** and Kenji WADA ** Corrosion of paint-coated steel exposed to marine environment is one of the serious problems and there are many researches related to such corrosion. Also it is recognized that the defect plays very important roles in such corrosion. Nevertheless, there are still few studies about the deterioration progress of paint-coated steel around defect. Therefore, the objective of present study is to clarify the corrosion progress of paint-coated steel around defect based on experimental and mathematical approach. In the experiments, accelerated test simulating the sub-tidal zone was conducted to observe the macrocell corrosion behavior as well as microcell corrosion. Here, temperature of the solution was changed as parameter in order to clarify the influence of temperature on corrosion rate. Also a mathematical model for calculation of the macrocell corrosion current around defect was proposed. The conclusions derived from present study were as follows. (1) Anodic current of macrocell corrosion at defect parts and its cathodic current at paint-coated parts increased, as time passed. After much cathodic reaction of macrocell corrosion occurred on steel plate under paint-coating, the coating was blistered and/or ripped, and then microcell corrosion current increasingly occurred there. (2) The higher corrosion current observed with temperature elevation. Also it was estimated that the diffusion of oxygen or Fe 2+ controlled the corrosion current after coatings degradation based on the activation energy obtained in present study. (3) A mathematical model for macrocell corrosion current was proposed and the trends of the model agreed with experimental data. Key words : Macrocell and microcell, Steel corrosion paint, Defect, Acceleration test, Mathematical model 原稿受理 平成 24 12 7 日 Received Dec. 7, 2012 ©2013 The Society of Materials Science, Japan 正 会 員 東京工業大学大学院理工学研究科 〒152-8552 東京都目黒区大岡山,Graduate school of Sci. and Eng., Tokyo Inst. of Tech., Meguro-ku, Tokyo, 152-8552 ** 東京工業大学大学院理工学研究科 〒152-8552 東京都目黒区大岡山,Graduate school of Sci. and Eng., Tokyo Inst. of Tech., Meguro-ku, Tokyo, 152-8552

Evaluation of Corrosion around Defect on Paint …...corrosion occurred on steel plate under paint-coating, the coating was blistered and/or ripped, and then microcell corrosion current

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「材料」 (Journal of the Society of Materials Science, Japan), Vol. 62, No. 8, pp. 510-517, Aug. 2013論  文

1 緒     言

海洋鋼構造物は激しい腐食環境に曝されるため,その腐食の進展機構を理解し,性能低下を予測する方法を確立することが重要である.特に,船舶や漂流物の衝突による鋼構造物の塗装の損傷は,傷部での鋼材の集中腐食やその周囲の塗装の劣化を誘発する恐れがある.しかしながら,既往の研究では鋼材中で生じる均一腐食(ミクロセル腐食)に着目した事例が多く,局所腐食(マクロセル腐食)を対象とした事例は数少ない.塗装鋼材の傷部では,ミクロセル腐食およびマクロセ

ル腐食のアノード反応による鉄の溶解(イオン化)が生じる.同時に傷部周辺の塗装下では,①マクロセル腐食のカソード反応で生じる水酸化イオンの発生・蓄積や②外来物質の浸透に起因した塗装の“膨れ”や“破れ”等の変質(以下塗装変質とする)が起きるとされている.1), 2)

しかし,傷部周辺でのマクロセル腐食現象,特に傷部でのアノード反応のみならず塗装下で生じるカソード反応を定量的に評価した研究 3)は数が少なく,理論的な観点から評価する手法も見当たらない.さらに,塗装鋼材の腐食挙動を把握する目的で数十年間に及ぶ曝露試験が実施され貴重な知見が得られている.4), 5)一方で,このよう

な長期曝露試験を実施するには多大な費用と労力が必要となる.このため,比較的短期間でデータを取得できる促進試験が多用されており,鋼材の腐食を促進するために,50℃の高温下で実施することとなっている.1)しかし,温度などの促進条件は経験的な知見から設定されている場合が多く,腐食速度に対する定量的な影響度合いが不明確なのが現状である.上記を受け,本研究では以下の項目を目的とした.

(1) 鋼材腐食や塗装変質の観点からマクロセル腐食およびミクロセル腐食を区別して評価し,塗装鋼材の傷部周辺で生じる腐食進展機構を明らかにする.

(2) 促進試験と実環境試験における腐食速度の違いを定量的に把握するため,温度が傷部周辺で生じる腐食に及ぼす影響を実験的に把握する.

(3) 上記 (1) に基づき,傷部周辺で生じるマクロセル電流を評価するための数値計算モデルを提案する.

2 実 験 概 要

2・1 供試体概要

本研究では,Fig. 1 (a)に示すような異なる直径の円形鋼材(厚さ:3.2mm,幅:9mm)から構成される供試体を製作した.各鋼材の裏面にはリード線がはんだ付けさ

塗装鋼材に生じた傷部周辺で生じる腐食の評価†

西 田 孝 弘** 大 即 信 明**

安 中 俊 貴** 和 田 賢 治**

Evaluation of Corrosion around Defect on Paint-Coated Steel

by

Takahiro NISHIDA*, Nobuaki OTSUKI

*, Toshiki ANNAKA**and Kenji WADA

**

Corrosion of paint-coated steel exposed to marine environment is one of the serious problems and there aremany researches related to such corrosion. Also it is recognized that the defect plays very important roles in suchcorrosion. Nevertheless, there are still few studies about the deterioration progress of paint-coated steel arounddefect. Therefore, the objective of present study is to clarify the corrosion progress of paint-coated steel around defectbased on experimental and mathematical approach. In the experiments, accelerated test simulating the sub-tidal zone wasconducted to observe the macrocell corrosion behavior as well as microcell corrosion. Here, temperature of the solutionwas changed as parameter in order to clarify the influence of temperature on corrosion rate. Also a mathematicalmodel for calculation of the macrocell corrosion current around defect was proposed.

The conclusions derived from present study were as follows. (1) Anodic current of macrocell corrosion at defectparts and its cathodic current at paint-coated parts increased, as time passed. After much cathodic reaction of macrocellcorrosion occurred on steel plate under paint-coating, the coating was blistered and/or ripped, and then microcellcorrosion current increasingly occurred there. (2) The higher corrosion current observed with temperature elevation. Alsoit was estimated that the diffusion of oxygen or Fe2+ controlled the corrosion current after coating’s degradationbased on the activation energy obtained in present study. (3) A mathematical model for macrocell corrosion currentwas proposed and the trends of the model agreed with experimental data.

Key words : Macrocell and microcell, Steel corrosion paint, Defect, Acceleration test, Mathematicalmodel

† 原稿受理 平成 24年 12月 7日 Received Dec. 7, 2012 ©2013 The Society of Materials Science, Japan* 正 会 員 東京工業大学大学院理工学研究科 〒152-8552 東京都目黒区大岡山,Graduate school of Sci. and Eng., Tokyo Inst. of Tech., Meguro-ku,

Tokyo, 152-8552** 東京工業大学大学院理工学研究科 〒152-8552 東京都目黒区大岡山,Graduate school of Sci. and Eng., Tokyo Inst. of Tech., Meguro-ku, Tokyo,

152-8552

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れており (Fig. 1 (b)),後にリード線を介して各鋼材要素間を流れるマクロセル電流および各要素内のミクロセル電流を区別して評価できるようにした.上記の鋼材をFig. 1 (c)に示すように各要素が接触しないように配慮しながらエポキシ系樹脂により直径 125mmの円形分割鋼材に成型した.上記成型後,各要素間に取り付けたリード線を接続することにより電気的に 1枚の鋼材となるようにした (Fig. 1 (d)).以下,中心に位置する円形の要素を“R-0”,それ以外のリング状の鋼材要素を内側から“R-1~ R-5”とする.各鋼材要素の面積は同図に示す通りである.上記の円形分割鋼材の表面を塗装し,中央(R-0の部分)にドリルで直径約 10mmの人工傷を設け,傷部を有する塗装円形分割鋼材(以下供試体とする)とした.塗料には,(a) 長油性フタル酸系樹脂塗料および (b) 変性ポリアミドアミン硬化型タールエポキシ樹脂塗料を用い,これらによる供試体への塗装をそれぞれ,(a) フタル酸系塗装および (b)タールエポキシ系塗装とする.塗装厚さはいずれも約 150μmとした.

2・2 曝露環境および検討方法

本研究では,“海中部および干満帯下部を模擬した環境における有機被覆鋼材の標準腐食促進試験法 1)”を参照し,NaCl水溶液 (3.0w.t.%, 40℃) 中での時間経過に伴う塗装変質と腐食電流密度との関連性を把握した(第 3章).その後,腐食電流密度の温度依存性を調べるために,同じ供試体に対して,測定時期(1日,7日,14日,21日)毎に浸漬溶液の温度を 20℃および 30℃に変化させて測定を行った(第 4章).なお,供試体の溶液への浸漬には 420 × 640 × 高さ 300mmの容器を用い,水深約200mmの位置に供試体を設置した.また,溶液の加温には電熱ヒーターを用い,酸素と窒素の混合気体をバブリングすることにより溶存酸素量を 5.1mg/Lに調整した.

2・3 測定項目および方法

本研究では,塗装変質の進展を把握するため,外観観察を行った.また,電気化学的な手法により塗膜抵抗,自然電位,分極抵抗,およびマクロセル電流を測定した.塗膜抵抗に関しては,交流インピーダンス法から得られるボード線図より,高周波側(約 10kHz)の抵抗を求め,鋼材要素の面積を掛け,塗装厚さで除することにより塗

膜抵抗率とした.自然電位の測定では Ag/AgCl電極を使用した.分極抵抗に関しては,交流インピーダンス法から得られる低周波側(約 10mHz)の抵抗から高周波側の抵抗を引いた値を用い,鋼材要素の面積を掛けることにより分極抵抗とした.さらに,Stern-Geary定数 6)(本研究では 0.0209Vとした)を分極抵抗で除することにより,ミクロセル電流密度を求めた.なお,上記の測定は,対象とした分割鋼材要素における塗膜抵抗および分極抵抗を個別に求めるため,隣り合う鋼材要素を繋ぐリード線を切り離した状態で行った.マクロセル電流に関しては,Fig. 1 (d)で示した鋼材要素間を繋いだリード線を流れる電流を無抵抗電流計により測定し,各鋼材要素の面積で除することによりマクロセル電流密度を求めた.3)なお,これらの電流密度は腐食速度と関連があり,100μA/cm2の電流密度が 1.16mm/yearに相当する.3)

3 傷部周辺で生じる腐食進展機構の整理

本章では,鋼材腐食や塗装変質の観点からマクロセル電流密度よびミクロセル電流密度を区別して把握した.また,得られた結果に基づき,塗装鋼材の傷部周辺で生じる腐食進展機構を整理した.

3・1 塗装の外観観察

Fig. 2に供試体の曝露面の観察結果を示す.供試体を促進環境下に曝露した結果,傷部においては,何れの供試体においても浸漬後数時間で錆の発生が確認され,時間の経過とともに錆の量が増加していく様子が確認された.一方,塗装部については,塗装種類により変質の状況が異なることが確認された.すなわち,フタル酸系塗装においては,浸漬後 7日以内に膨れが確認され,14日以内に膨れが破れとなり,その部分からの錆汁が確認された.一方,タールエポキシ系塗装においても,7日以内に膨れが確認されたが,その後破れとなるまでの進展は確認されなかった.これらの違いは塗料の引張特性や伸び特性に大きく関わっていると考えられ,今後,塗装の力学的な特性と変質の進行速度についての検討が必要と考えられる.なお,膨れ内の溶液を注射器により抽出し,pHを確認したところアルカリ性(pH = 9~ 11程度)であった.また,膨れ部の塗装を取り除き下地鋼材の様子を確認したところ,膨れ直下での腐食の痕跡はなかった.これらのことから,膨れが生じた部位ではカソード反応が主に生じていたと推察される.

†塗装鋼材に生じた傷部周辺で生じる腐食の評価† 511

Fig. 1 Outline of specimen. Fig. 2 Result of visual observation (defect and paint).

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3・2 塗膜抵抗率の推移

Fig. 3に各塗装を用いた場合の塗膜抵抗率の経時変化を示す.何れの塗装においても 1日目と 7日目では塗膜抵抗率が低下した.特に,膨れが生じた鋼材要素の方が生じていない鋼材要素より大きく低下した.従って,時

間経過に伴う塗膜抵抗率の低下は,塗装部への水分の浸透とともに,膨れや破れが影響したと考えられる.一方,塗装種類別に見ると,初期の値については,タールエポキシ系塗装の方がフタル酸系塗装と比較して,2オーダー程度塗膜抵抗率が高かった.また,フタル酸系塗装の場合は時間の経過とともに塗膜抵抗率が徐々に低下することが確認されるが,タールエポキシ系塗装の場合は 7日以降の塗膜抵抗率の低下は小さく,ほぼ横ばいとなることが確認された.上記の結果から,本研究で使用した塗装においては,タールエポキシ系塗装の方がフタル酸系塗装よりも塗装変質に対して高い抵抗性を持っていると考えられる.また,塗装に膨れ,さらには破れが生じると塗膜抵抗率が低下すると考えられる.

3・3 マクロセル電流密度の推移

前節の結果から傷部を有する塗装鋼材を促進環境下に曝露した場合,塗装部において膨れが生じることが確認され,その部分がカソードとなっている可能性が示唆された.また,膨れや破れの発生した部分は塗膜抵抗率の低下がみられ,腐食電流密度の増大が予想される.そこで,本節では,マクロセル電流密度の継時変化に基づき,傷部周辺で生じる腐食の挙動を把握した.

Fig. 4に供試体の各鋼材要素でのマクロセル電流密度の経時変化を示す.まず,塗装種類に着目すると,(b) タールエポキシ系塗装よりも (a) フタル酸系塗装の方が,傷部でのマクロセル電流密度が高かった.これは

*西田孝弘,大即信明,安中俊貴,和田賢治*512

Fig. 5 Time dependent change of microcell corrosion.

Fig. 4 Time dependent change of macrocell corrosion.

Fig. 3 Time dependent change of paint resistivity.

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塗料の電気抵抗率(イオンの移動しやすさ)の違いによると考えられる.一方,タールエポキシ系塗装では 7日目以降も傷部でのマクロセル電流密度が上昇する傾向にあるが,フタル酸系塗装では低下した.そこで,フタル酸系塗装を用いた場合の塗装部におけるマクロセル電流密度を見ると,14日目においては R-5で,21日目においてはR-2~ R-4で,アノード部が存在した.一方,タールエポキシ系塗装では,曝露 21日まですべての塗装部がカソード部となることが確認された.前節より,何れの塗装においても塗装の膨れが確認されたが,特に,フタル酸系塗装においては 14日目に塗装の破れに進展した.以上より,塗装が破れるまでは傷部と塗装部の間でマ

クロセル腐食が生じ,傷部でアノード反応が,塗装部でカソード反応が生じると考えられる.その後,塗装下の鋼材でのカソード反応により塗装と鋼材の付着力の低下,OH−や水分等の蓄積が生じ,膨れや破れに進展したと推察される.特に,破れが生じた場合,傷部でのマクロセルによるアノード電流密度は減少するが,塗装部において新たなアノード部が形成され,腐食する部分が傷部から周辺部へ広がっていくと考えられる.

3・4 ミクロセル電流密度の推移

Fig. 5に供試体の各要素でのミクロセル電流密度の経時変化を示す.これより,傷部においては,何れの塗装を用いた場合でも初期から比較的高いミクロセル電流密度となった.また,フタル酸系塗装を用いた場合,塗装部においても傷部よりは低いが,ミクロセル電流密度が時間の経過とともに高くなった.特に,この傾向は R-5の部分で顕著であった.3・1節で示したように,外観観察および塗膜抵抗率の変化からフタル酸系塗装は早期に塗装変質が進行することが考えられ,その結果塗装部においてもミクロセル腐食が確認されたと考えられる.一方,タールエポキシ系塗装においては,塗装部でのミクロセル電流密度は傷部と比較して明らかに低く,塗装下でのミクロセル腐食は小さいと考えられる.

3・5 傷部周辺で生じる腐食進展機構の整理

上記においては,傷部周辺で生じるマクロセル腐食およびミクロセル腐食の全体的な挙動をそれぞれ把握した.ここでは,マクロセル腐食およびミクロセル腐食を比較することにより,腐食進展機構について整理する.マクロセル電流密度およびミクロセル電流密度の傷部,塗装変質(膨れや破れ)が目視で確認された塗装部,目視で確認されなかった塗装部の経時変化を Fig. 6~ 8にそれぞれ示す.傷部の腐食電流密度は,塗装部よりも 10倍程度電流密度が高かった.塗装種類別に見ると,フタル酸系塗装では,曝露 7日後においてマクロセルおよびミクロセル電流密度の何れも高い値となった (Fig. 6 (a)).しかしながら,その後は,腐食電流密度が減少する傾向が確認された.これは,時間の経過に伴い塗装変質が進行し,傷部以外の部位がアノード(マクロセル電流密度の正値)となったためと考えられる.すなわち,Fig. 7 (a)に示すように,曝露 7日目に確認された膨れが 14日後には破れに進展し,その部分がアノード部となったこと,加えて,Fig. 8 (a)に示すように目視では膨れや破れが確認されなかった塗装部でも曝露 21日後にはアノード電流が確認されたことから,これらの部位でアノード反応が生じ,結果として傷部での腐食反応が小さくなったと推察される.さらに,Fig. 7 (a)および Fig. 8 (a)より,時間の経過とともに,塗装部においてもミクロセル電流密度の上昇が確認された.この傾向は Fig. 7 (a)の方が大きく,特に破れの発生により鋼材が外環境に曝され,腐食反応が生じやすくなったと考えられる.一方,タールエポキシ系塗装では,傷部におけるマクロセル電流密度がミクロセル電流密度より明らかに小さかった (Fig. 6 (b)).これは,塗装部(Fig. 7 (b)およびFig. 8 (b))におけるカソード反応(マクロセル電流密度の負値)が小さく,マクロセル電流が生じにくいためと推察される.ただし,Fig. 7 (b)に示すように,徐々にではあるが膨れが生じた塗装部でのマクロセル腐食のカソード電流(負値)の増加が確認される.従って,より長期の

†塗装鋼材に生じた傷部周辺で生じる腐食の評価† 513

Fig. 6 Time dependent change of currentdensity at defect part.

Fig. 7 Time dependent change of currentdensity at paint part with degradation.

Fig. 8 Time dependent change of currentdensity at paint part.

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曝露によりタールエポキシ系塗装でもマクロセル腐食が激しくなる可能性があることが伺える.以上の結果から,傷部周辺での腐食は,傷部と塗装部

の間でのマクロセル腐食および傷部でのミクロセル腐食が進行し,塗装変質に伴い,傷部周辺の塗装部でのミクロセル腐食の増大および新たなマクロセル腐食のアノード部の形成が起こると推察される.以上に関して,本研究では,Table 1に示すような腐食進展機構を考え,本研究で得られた実験結果に基づきこれを検証する.ステップ 1(潜伏期)は膨れが生じるまでとし,この

間は Fig. 5に示したように傷部をアノード,塗装部をカソードとするマクロセルが形成される.カソード反応により生じるOH−の蓄積に関しては,3・1節で示したように膨れ内部の溶液がアルカリ性を示したことから推察される.さらに,Fig. 9にマクロセル腐食のカソード反応による積算電気量密度が塗膜抵抗率に及ぼす影響を示す.カソード反応の積算電気量密度が 0.03C/cm2程度(図中(a))までは変化が小さいが,それ以上となると急激に塗膜抵抗率が低下した.また,何れの塗装においても膨れの発生は積算電気量密度が 0.3C/cm2前後(図中 (b))となった時点であった.これらの結果は,塗装の力学特性に依存すると考えられるが,本研究で用いた塗装では,膨れや破れ等の塗装変質の発生はマクロセル腐食のカソード電流に支配されると推察される.一方,傷部での腐食反応に関しては,Fig. 6に示したようにミクロセル腐食と同時にマクロセル腐食のアノード反応が生じると考えられる.また,ステップ 2(進展期)は膨れ発生から破れ発生までとし,塗装下のOH−濃度の上昇による浸透圧の増大および塗装での拡散係数の増大により,膨れが生じる.1), 2)

その後も Fig. 7に示したようにマクロセル腐食が生じ,膨れは破れへと進展し (Fig. 2) 更なる塗装変質が生じる.さらにステップ 3(加速期)は破れ発生後とし,塩化物イオンや酸素,水の浸透が助長され,さらに腐食反応が活発化する.特に,破れが生じた塗装部は Fig. 7 (a)

に示したように,ミクロセル腐食の増大のみならずマクロセル腐食のアノードとなる.また,上記のステップ 1から 3への過程において,膨

れや破れ等の塗装変質(塗膜抵抗率の低下)により,Fig. 10に示すように,その部分でのミクロセル電流密度が大きく増大すると考えられる.以上のように,傷部周辺で生じる腐食の進展は概ね

Table 1のように進行し,初期の腐食反応では塗装下部でのカソード反応が塗装変質(塗膜抵抗率の低下等)を誘発し,これに伴って塗装下部での腐食が増大する,すなわち腐食する領域が広がっていくと考えられる.7)

4 腐食挙動に及ぼす温度の影響

前章で得られた腐食進展機構を勘案すると,膨れや剥がれなどの塗装変質は,塗装内での物質移動速度やカソード反応速度に大きく依存すると推察される.これらの速度に影響を及ぼす要因としては,温度が考えられ,現状規格化されている規準 1)にも経験的に取り入れられている.しかしながら,定量的な影響度合いの評価はなされておらず,促進試験で実施した期間が実際の期間としてどの程度であるか換算する方法は確立されていない.また,腐食反応の進行を律速している反応を推定するためは,腐食反応の温度依存性を示す活性化エネルギーを把握することが重要である.そこで,本章では,温度が腐食速度に及ぼす影響を実験的に検討した.

4・1 腐食電流密度の温度依存性

Fig. 11~ 13に傷部,塗装変質が目視で確認された塗装部,目視で確認されなかった塗装部のマクロセル電流密度およびミクロセル電流密度の温度依存性をそれぞれ示す.これらより,何れの部位においても温度の上昇に伴い腐食電流密度が増大することが確認された.これは,温度の上昇により腐食反応に必要な物質の移動速度や腐食反応自体が促進されたためと推察される.

4・2 アレニウス式による活性化エネルギーの算出

上記のような反応速度の温度依存性に関しては一般にアレニウス式に従うと考えられる.8)そこで,本研究では,

*西田孝弘,大即信明,安中俊貴,和田賢治*514

Table 1 Corrosion progress around defect of paint coated steel.

Fig. 9 Influence of integrated cathodic current densityof macrocell corrosion on resistivity of paint.

Fig. 10 Influence of resistivity of paint on microcellcurrent density.

12553(p.510-517) 13.7.24 12:52 ページ 514

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†塗装鋼材に生じた傷部周辺で生じる腐食の評価† 515

Fig. 11~ 13に示した結果を用い,著者らの既往の検討を参照し,9)腐食電流密度の対数と絶対温度の逆数の関係の傾きから見かけの活性化エネルギーを算出した (Fig. 14).これより,曝露 1日後の見掛けの活性化エネルギーは傷部でのミクロセル電流密度を除いて概ね 25~ 35kcal/mol(グループⅠとする)と比較的高い値となった.一方,傷部のミクロセル腐食と曝露 7日以降のそれ以外の見掛けの活性化エネルギーは,概ね 5~ 20kcal/mol(グループⅡとする)となった.一般に,鋼材の腐食のように反応が逐次的に進行する場合,反応全体の活性化エネルギーは反応を律速する素反応の活性化エネルギーと等しくなり,活性化エネルギーの変化は律速反応の変化を意味する.従って,上記に示したグループⅠとグループⅡにおいては,律速反応が異なることが推察される.グループⅠの活性化エネルギーについては,今回の検討結果内のデータから得られた塗膜抵抗率の活性化エネルギー(29.5kcal/mol,図中 (a))と同程度となった.従って,グループⅠでの反応は塗装内での電流が全体の反応を律速していると推察される.一方,グループⅡの活性化エネルギーは,既往の研究で得られている不働態皮膜中を移動する鉄イオン拡散の活性化エネルギー(17kcal/mol,10)図中(b))や酸素拡散の活性化エネルギー(11kcal/mol,10)図中 (c))と同程度と考えられ,これらが全体の反応を律速してい

ると推察される.また,アレニウス式を考慮することによりそれぞれの温度による促進倍率は式 (1)で表すことができ,10℃の温度変化によりグループⅠで約 4.1~ 6.1倍程度,グループⅡで約 1.4~ 2.8倍程度となると推察される.

(1)

ここで,VTnは温度 Tnにおける腐食電流密度 (μA/cm2),ΔEaは活性化エネルギー (kcal/mol),Rは気体定数であり 1.99 × 10−3 (kcal/K/mol),Tは絶対温度 (K)を示す.なお,傷部周辺でのマクロセル腐食および塗装下でのミクロセル腐食は,何れも塗装内を電気が流れることで生じ,曝露 1日では,塗膜抵抗率が高いことから塗膜抵抗(塗膜内を流れる電流)が全体の反応を律速し,その後塗装変質に伴う抵抗率の低下および水分の供給により律速反応が変化したと推察される.以上の結果から,温度は塗装の傷部周辺における腐食に影響を与え,温度が高くなるほど腐食電流密度が指数的に大きくなると考えられる.また,活性化エネルギーから,塗装変質前は塗装内での電流に,塗装変質後は酸素や鉄イオンの拡散に律速されることが示唆された.

5 マクロセル腐食の数値計算モデルの構築

第 3章の検討により,塗装鋼材の傷部周辺で生じる腐食進展においては,傷部でのミクロセル腐食のみならず,マクロセル腐食のカソード反応による塗膜変質を考慮する必要があることが分かった.また,第 4章の検討より,これらの反応はマクロセル腐食に大きく関係する塗膜内の電気の流れや酸素の拡散が律速していることが推察された.これらのことから,傷部周辺で生じる腐食現象を理解するためには,マクロセル腐食のカソード電流密度分布を把握することが重要であると考えられる.そこで,本章では,傷部周辺で生じるマクロセル電流密度を算出するための数値計算モデルの構築を試みた.

Fig. 11 Influence of temperature on currentdensity at defect part.

Fig. 12 Influence of temperature on currentdensity at paint part with blister.

Fig. 13 Influence of temperature on currentdensity at paint part.

Fig. 14 Apparent activation energy obtained in this study.

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*西田孝弘,大即信明,安中俊貴,和田賢治*516

5・1 数値計算モデルの導出

本研究では,傷部を起点とする塗装鋼板のマクロセル電流を評価するために Fig. 15に示すような傷部を中心とする円筒座標系を仮定し,電気回路モデルを設定した.供試体の中心からの距離が rから r + Δrまでの微小区間を考えると,溶液抵抗 (Rs),塗膜抵抗と分極抵抗の和(Rp) および鋼材抵抗 (Rm) は次式のように表される.

(2)

ここで,ρsは溶液抵抗率,ρpは塗膜抵抗率と分極抵抗率の和,ρmは鋼板抵抗率,bsは溶液厚さ,bpは塗装と分極抵抗の厚さ,bmは鋼材厚さであり,抵抗率および厚さの単位はそれぞれΩm,mである.また,傷部から距離 rから r + Δrにおける溶液部,鋼板部を横断する電流を Js (r),Jm (r)(図中の矢印の方向が正)とし,電位をそれぞれ Es (r),Em (r)とする.図中PQ間において,オームの法則により式 (3)が得られ,Rm (r)を代入することにより,式 (4)のように整理できる.

(3)

(4)

図中 Q点において,キルヒホッフの第一法則およびオームの法則を考慮すると要素間を流れる電流は式 (5)となり,Rp (r + Δr)を代入すると式 (6)となる.

(5)

(6)

R,S点において同様に整理すると次式を得る.

(7)

(8)

ここで,V(r)を Es (r)−Em (r)として,式 (7)から式 (4)を引くと,次式が得られる.

(9)

また,式 (6),(8)より,次式が得られる.

(10)

(11)

式 (9)の両辺に rを掛け微分を行うと次式を得る.

(12)

式 (10)を代入し両辺に rをかけて整理すると次式となる.

(13)

ここで, (14)

式 (13)はベッセル方程式 11)であり,これを解くと次式が得られる.

(15)

ここで,C1,C2は定数,I0 (x)は第一種の,K0 (x)は第二種の変形されたベッセル関数である.11)

また,式 (9),(11),(15)より,Js (r),Jm (r)はそれぞれ次式のように求めることができる.

(16)

(17)

5・2 境界条件

上記の数値計算モデルを用いて,カソード電流密度を評価するに当たり,未知の定数が 3つ (C1 , C2 , C3) 存在している.このため,以下の境界条件を設定した.

(18)(鋼材端部から外側に流出する電流はゼロ)

(19)(欠陥部近傍での電位差は一定)

(20)(各要素における溶液と鋼材を流れる電流は等しい)上記を考慮し,C1および C2を求めて整理すると次式

を得る.

(21)

式 (21)が鋼材内部を流れるマクロセル腐食のカソード電流であり,以下の検討では本式を用いて評価する.

5・3 数値計算結果と実験結果の比較

上記の数値計算モデルを検証するため,本研究で用いた 2種類の塗装について Fig. 16に示すように数値計算結果と実験結果を比較した.なお,実験結果については第 2章で示した供試体と同一である.また,計算に用いた物性値は Table 2に示す通りである.なお,本モデルでは境界条件として与えた傷部における鋼材表面と塗装表面の電位差 Vaが必要となる.この Vaについて,ケルビンプローブを用いて測定した既往の研究 12)では,500mV程度という報告がある.この電位は塗料の種類により異なると考えられるが,現状本研究で使用した塗料での値は不明確である.したがって,本研究では上記の値を参照しながら Vaをパラメータとして数値計算を実施した.計算の結果,何れの塗料を用いた場合にも,傷部からの距離の増加に伴いカソード電流密度が減少し,実験結果を再現できることが確認された.なお,Vaについては,フタル酸系塗装の場合 50mV程度,タールエポキシ系塗料の場合 100mV程度とすることで実験結果と概ね一致する結果であった.

Fig. 15 Outline of electrical circuit model.

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†塗装鋼材に生じた傷部周辺で生じる腐食の評価† 517

5・4 まとめ

本章では,傷部周辺で生じる電気回路を円筒座標系としてモデル化し,ベッセル方程式を用いて解くことにより,その周辺で生じるマクロセル腐食の電流を評価可能な数値計算モデルを構築した.また,本モデルにより実験結果を概ね再現できることが確認された.ただし,本数値計算モデルは,時間経過に伴う塗装変質や塗装のむら等の不均質な材料特性を考慮できない.また,現状境界条件として与えている Vaの値が不明確である.今後,これらの点を改良し,傷部周辺で生じる腐食に対する評価システムの構築を行っていきたいと考えている.

6 結     言

本研究では,塗装鋼材の傷部周辺に生じる腐食について検討を行った.以下に本研究で得られた結論を示す.

(1) 塗装鋼材の傷部周辺の腐食では,傷部でのミクロセル腐食のみならず,傷部をアノード,塗装部をカソードとしたマクロセル腐食が生じることを示した.特に,塗装部で生じるカソード反応は塗膜抵抗率の減少を引き起こし,さらには,膨れや破れを生じさせることが実験結果から示唆された.上記の結果,塗膜抵抗率の減少に伴い塗装部でのミクロセル腐食は大きくなり,破れが生じた部分では,新たなマクロセル腐食のアノードとなることも確認された.また,上記の腐食の進展機構を Step 1~ Step3に区分し,その進行を実験結果に基づき確認した.

(2) 温度の上昇に伴い,傷部周辺でのマクロセル腐食およびミクロセル腐食は共に大きくなることが確認され

た.また,得られた活性化エネルギーから,塗装鋼材の傷部周辺に生じる腐食反応は,塗装が健全な場合は塗膜抵抗(塗膜内を流れる電流)が,塗膜変質が生じると酸素や Fe2+の拡散が支配的になると推察された.

(3) 上記 (1)に基づき,傷部周辺で生じるマクロセル電流を評価するための数値計算モデルを構築した.本研究は,日本鉄鋼連盟研究助成金事業(代表者:大即信明,研究期間:平成 22年度~ 26年度)の一環として実施した.ここに感謝の意を表する.

参 考 文 献

1 ) Committee of Structural Engineering, “Guidelines for

evaluation of durability and load-carrying capacity for

steel structures under marine environment”, Structural

Engineering Series 19, pp.71-84 (2009) JSCE.

2 ) Research Group for Corrosion Protection Method for

Steel Pail “Corrosion protection technique for offshore

structures”, pp.25-30 (2010) Gihodoshuppan.

3 ) N. Otsuki, A. K. Min, M. Madlangbayan and T. Nishida, “A

study on corrosion of paint-coated steel with defect in

marine environment”, Journal of JSCE, Division E, Vol.63,

No.4, pp.667-676 (2007).

4 ) M. Yamamoto, T. Kajiki, K, Matsuoka and K. Imafuku,

“Durability of organic coated steel exposed in marine

environment for twenty years”, Zairyo-to-Kankyo, Vol.55,

pp.239-244 (2006).

5 ) S. Yoshizaki and S. Moriya, “Steel corrosiopn and tar eposy

coating degradation for 20 years at the marine exposure site”,

Journal of JSCE, Division F, Vol.65, No.2, pp.222-229

(2009).

6 ) M. Stern and A. L.Geary, “Electrochemical polarization : I. a

theoretical analysis of the shape of polarization curves”,

Journals of the Electrochemical Society, Vol.104, No.1,

pp.56-63 (1957).

7 ) N. Otsuki, K. Kobayashi and T. Nishida, “Deterioration

model of corrosion protection materials based on exposure test

in marine environment and laboratory test”, Bousei-Kanri,

Nol.52, No.10, pp.377-385 (2008).

8 ) M. Ooki, “Chemical dictionary”, p.275 (1994) Tokyo Kagaku

Dojin.

9 ) T. Nishida, N. Otsuki, H. Hamamoto and M. A. Baccay,

“Temperature dependency of corrosion rate of steel bars in

concrete influenced by material segregation”, Journal of

JSCE, No.781/V-66, pp.75-87 (2005).

10) T. Noda and N. Sato, “Ion current in passive film on steel

surface”, Journal of Japan Institute of Metals, Vol.12,

pp.1143-1149 (1974).

11) C. R. Wylie and L. C. Barrett, “Advanced engineering

mathematics 6th edition”, pp.783-855 (1995) McGRAW-

HILL INTERNATIONAL EDITIONS.

12) M. Stratmann, “Corrosion stability of polymer-coated met-

als-new concepts based on fundamental understanding”,

Corrosion, Vol.61, No.12, pp.1115-1126 (2005).

Fig. 16 Comparison between measured and calculated value.

Table 2 Input data for numerical calculation.

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