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海外事例から洋上風力発電の普及を考える イギリスにおける メガプロジェクトの検証

イギリスにおける メガプロジェクトの検証 · 2019-07-04 · イギリスにおけるメガプロジェクトの検証 4 サプライチェーンの構築 イギリス政府が最大6,000万ポンドを投じて港湾での

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海外事例から洋上風力発電の普及を考える

イギリスにおける メガプロジェクトの検証

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目次

読者の皆様へ 1

1 イギリスにおける洋上風力発電の「メガプロジェクト」 2

1.1市場状況:イギリスにおける洋上風力発電 3

電力市場改革白書 7

再生可能エネルギー使用義務制度(RO):すでに10億ポンドの市場 7

1.2洋上風力発電プロジェクトのコストと推移 9

1.3競争を牽引するメガプロジェクト 11

投資プロジェクトのマネジメントにおける最先端の手法 15

2 洋上風力発電のメガプロジェクトの主要課題 17

2.1タービンのサプライチェーン 18

ケーススタディー:フォアウィンド 21

2.2船舶の契約 23

ケーススタディー:シーエナジーPLC 25

2.3開発とHSE:洋上石油・ガス開発業界の経験の活用 29

ケーススタディー:洋上風力発電:資源開発事業者(油田・ガス田)からの視点 31

2.4洋上風力発電の送電網の統合 35

断続的な発電のバックアップのための技術的選択肢となった天然ガス 37

2.5その他の考慮すべき点と課題 40

3 結論 41

主要関係者への影響 43

4 用語集 45

5 筆者 47

6 参考資料 49

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1 イギリスにおけるメガプロジェクトの検証

本報告書は、英国の洋上風力発電業界がまだ黎明期にある2012年に発表されました。当時、洋上風力発電の均等化発電原価(Levelized Cost of Electricity : LCOE)は150〜200ポンド/ MWH(メガワット)で、運用可能な風力発電所は15カ所、発電設備容量は1.3GW(ギガワット) 強しかありませんでした。その後、洋上風力発電 のプロジェクトは大規模化し、陸地から遠く、水深が深い海域へと移行します。洋上風力発電の競争力を高めるには、コストを半減させる必要 がありました。当時の目標は「2020年までに100 ポンド/MWH」という極めて野心的なもので、従来 どおりのやり方では達成が困難なレベルのコスト 削減が求められました。当時、洋上で使用されていた技術やプロセス、ビジネスモデルは海洋建設向けに設計されたものではなく、陸上風力発電用の技術を応用したものでした。英国の風力 発電業界は、インフラや容量、サプライチェーンにおいて重大な課題に直面していたのです。この 報告書は、「メガプロジェクト」のマインドセット ――すなわち大型のタービン、効率的な契約、リスク共有、洋上設置用の特殊船舶、競争力向上 とコスト削減を目的とする地域のサプライチェーン開発などについて、詳細に説明しています。

端的に言えば、2012年の英国の状況は、現在の日本の状況と類似しています。私の同僚が英国 の2012年版報告書を基に日本語版制作を決めた理由がそこにあります。英国がメガプロジェクトの実現のためにタービンやコンポーネント、インフラ/サービスのサプライチェーン、供給エコシステムを国内で開発する過程で得た教訓は、日本にとっても極めて有意義なものとなるはずです。

2012年から7年後の現在、英国の洋上風力発電業界は、世界一の発展と競争力を誇るまでに成長しました。洋上風力発電所は38カ所、発電設備容量は8GWを超え、さらに6GW相当の発電所の建設費が既に資金調達され、現在建設中です。設備利用率は30%から40%に増加しました。

読者の皆様へ業界は、2017年に「2020年までに100ポンド/MWH」という均等化発電原価(LCOE)の目標を4年前倒しで達成しました。また、2017年の英国 のオークションにおける平均行使価格は約60〜 80ユーロ/MWH低下しました。さらに洋上風力発電の開発によって、大量の雇用創出、洋上風力発電を支援する地域産業の発展に加えて、地域振興計画という恩恵がもたらされています。

英国同様に海に囲まれた日本でも洋上風力への期待は大きく、ここ数年は、これまでの国内風力事業者に加え、一般電気事業者の大規模投資、海外資本の参入が発表され急速な発達・普及が見込まれています。再エネ海域利用法により海域 利用調整の障壁は解消されていくものの、大規模化に伴う技術開発、投資・運営費用低減、地域 振興など考えるべき課題は多く存在します。アクセンチュアは、再エネの普及が先行する海外での 経験を通じて、日本の洋上風力発電業界の発展 を促進できる機会が存在していると考えています。

本報告書が皆様のお役に立つことを心から願っています。

メリッサ・スターク(Melissa Stark)アクセンチュア 素材・エネルギー部門 再生可能エネルギー グローバル統括

山崎 智アクセンチュア株式会社素材・エネルギー部門 再生可能エネルギー統括 マネジング・ディレクター

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イギリスにおけるメガプロジェクトの検証 2

1イギリスにおける洋上風力 発電の「メガプロジェクト」

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3 イギリスにおけるメガプロジェクトの検証

風力は、イギリスの豊富な再生可能エネルギーのひとつです。国別では、ヨーロッパ地域だけでなくおそらく世界的に見ても、イギリスが洋上風力発電に最適な条件を満たしているとされています1。業界団体RenewableUK(旧英国風力エネルギー協会)のデータによると、イギリスの洋上風力発電だけで2国内の電力需要を十分賄えます3。

クリーンな再生可能エネルギーが潤沢に活用できることは、イギリスが気候変動や再生可能エネルギー推進に積極的に取り組む上で、戦略の鍵になります。欧州連合(EU)レベルでは、2009年の再生可能エネルギー指令(Renewable Energy Directive)の規定により、イギリスのエネルギー消費量全体に占める再生可能エネルギーの割合は、2010年の3%から2020年には15%に引き上げなければなりません4。また、2008年に制定されたイギリス国内の気候変動法(CCA)のカーボンバジェットでは、温室効果ガス(GHG)排出量を(2010年比で)2020年までに少なくとも34%、2050年までに少なくとも80%の削減を目指すとされています5。CCAでは、EU域内排出量取引制度(EUETS)指令で採択されたイギリスの排出量削減目標割当の達成に力を注いでいます。このETSは、国連の気候変動枠組条約での交渉においてEUが提案した目標を達成するための、重要な手段になります。

イギリス政府は、他の再生可能エネルギーと並んで、これらの困難な目的を達成するため重要な役割を果たすことが期待される、洋上風力発電の革新的な発展を促進するために一連の政策措置を採択しました。現在のところ、それらの政策が奏功して投資や業界支援への動きが起こり、実際に幅広い分野からの投資と発電容量や発電量の急激な増加につながっています。2008年以降、洋上風力タービンの発電容量は2倍以上に増え、2010年には約1.3ギガワット(GW)6と国内の総発電容量の約1.5%を占め、イギリスは世界有数の洋上風力発電国となっています7。現在稼働中の15カ所の洋上風力発電所は、陸上風力発電所にくらべて大幅に安定した強い風が吹くので、2010年の発電量は、イギリスの総発電量の約1%を占めています(約3TWh)8。しかし、再生可能エネルギーの推進と温室効果ガス削減目標を達成するには、洋上風力発電容量のさらなる開発が求められます。

支えとなる再生可能エネルギー法制再生可能エネルギー普及局(ORED)が、イギリスの再生可能エネルギーに関する目標達成を担っています。その洋上風力発電関連の主な施策は、次のとおりです。

再生可能エネルギーに対する補助金

2011年夏、イギリス政府は電力市場改革(EMR)白書を発表し9(7ページの関連コラム参照)、低炭素発電及び再生可能エネルギーによる発電に関する技術に対する長期的、包括的かつ集中的な支援提供のための様々な取り組みを進めています。現在のところ、洋上風力発電開発推進の大きな力になっているのは、再生可能エネルギー使用義務制度(RO、7ページの関連コラム参照)ですが、そのほかの仕組み(差額決済契約による固定価格買取制度案など)も追い風になることが予想されます。

送配電に係る障害を除外する

OREDの第二の使命は、プランニングシステム、サプライチェーン、送電系統の接続など、既存の再生可能エネルギー技術を速やかに配備するための問題点を見つけ出し、対処することです。

ROやEMRの具体的な計画のほかにも、EMR白書と共に発表された再生可能エネルギーロードマップ10では、洋上風力発電事業のさらなる発展につながる追加の政策や法令、支援プログラムが示されています。なかでもそれらの法令では、洋上風力発電事業の発展を阻害する要因とされる様々な障害の排除を目指しています。また、具体的な支援プログラムは、次のとおりです11。

コスト削減のためのイノベーションの支援

技術の開発や実証によるコスト削減に対して、イギリス政府は2011年から2015年にかけて最大3000万ポンドを支給する予定です。洋上再生可能技術イノベーションセンター(TIC)も設立され、エネルギー技術研究所(ETI)は2500万ポンドを国立再生可能エネルギーセンター(NaREC)のテスト施設に投じることになっています。

1.1市場状況:イギリスにおける洋上風力発電

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イギリスにおけるメガプロジェクトの検証 4

サプライチェーンの構築

イギリス政府が最大6,000万ポンドを投じて港湾での風力発電所の建設に関わる製品の製造工場を建設し、スコットランド政府が約7,000万ポンドを投じて、港湾と国内における洋上風力タービンなどの設備強化を行う予定です。

投資リスクの最小化

政府は、速やかに進めているROに関するバンディングの見直しを完了し、電力市場改革を推進し、EMR-RO移行計画を実行することになっています。

投資のための融資

政府系金融機関グリーン投資銀行は、洋上風力発電に対して積極的な貸付を行う予定です12。また、イギリス政府は、洋上風力開発業者フォーラム13を通じて開発業者や投資家と協力し、洋上風力発電に必要な投資先を見極め、政府としてのさらなる行動の是非を判断します。さらに洋上風力発電所のリースにおけるオイル・ガス条項に関する投資家の不安を軽減します。

費用対効果の高い送配電系統への投資と接続

洋上送電の調整プロジェクトの制度の在り方に関するレビューを行い14、中期的(ラウンド3)な洋上送配電設備の共同開発を実現します。またレビューでは、送配電系統への接続に係る安全性に関する長期的な立場が明らかにされます。

計画と承認

洋上開発による他の海洋利用者に対する潜在的な影響の調整を図り、広範な環境への配慮を行うため、洋上の戦略的な環境アセスメント(OffshoreStrategic Environmental Assessment)15を公表しています。承認判断は、延期が決まったり、必要な場合は調整が図られたりします。

イギリスにおける洋上風力発電の概要再生可能エネルギーロードマップの「再生可能エネルギー戦略主要シナリオ」では、2020年までに約30%のエネルギー源を再生可能エネルギーにするのが望ましいとしています。2010年時点で、その割合は約6.7%であり16、洋上風力発電が目標達成に向けて大きな役割を果たすことになります。

政府の「中央値」の推計によると、2020年に洋上風力発電容量が18GWであれば、2030年には40GWに到達します(図1参照)。また、発電容量4.2GWから約24カ月間で2020年の目標値に達するには(図2参照)、年間成長率は20%になります。その規模の風力発電所を配備し、5MWの洋上風力タービンを使用すると仮定すれば、目標達成には年間360基の洋上風力タービンが必要になります。そのレベルの配備が必要だとすれば、大きな影響があり、部品のサプライチェーン、ロジスティクス、サービスと共に、健康や安全ならびに環境マネジメントの大幅な変革が求められます。

実際、イギリスにおける洋上風力発電のキャパシティと発電量の急速な増加が求められることによって、本レポートで「メガプロジェクト」と呼ぶ大規模な発電所の整備が進んでいます。具体的には、石炭や天然ガスの火力発電所に相当する、800MWを超えるキャパシティを持つ発電所であり、そのサイズの洋上風力発電所の整備の難しさは、バックアップとして用いられる小規模な開発に匹敵します

そうした洋上風力発電所のメガプロジェクトは、すでに進んでいます。イギリスの海底を管理するクラウン・エステートは、洋上風力発電プロジェクトのための海底区域のリースについて、3回の入札を行っています17。2001年、2003年にそれぞれ実施されたラウンド1、ラウンド2では、落札事業者の全体プロジェクト規模は約8GW、平均では約100MW、400MWとなっています。

また2010年に実施されたラウンド3では、落札事業者は最大32GW規模の設備整備が可能です。平均プロジェクト規模も過去2回を大幅に上回る約1GWとなっています。すでに1カ所の建設作業は始まっており、さらに1カ所のメガプロジェクトが計画段階にあります(1.3参照)。

そうしたメガプロジェクトの多大かつ多様な影響は、イギリスをはじめとする風力発電業界のバリューチェーンにとどまらず、広く電力および燃料のバリューチェーンにも及びます。このアクセンチュアのレポートでは、そうしたメガプロジェクトの課題と共に、エネルギー業界における関連先への影響の可能性について調査し、議論するものです。

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なお本レポートでは、洋上風力発電業界が直面する主要課題、対応可能なソリューションとして、次のテーマを取り上げます。

• タービンのサプライチェーンや船舶の契約など、バリューチェーンにおける障害

• 洋上におけるインフラ開発とHES(健康面、安全性、環境)の問題

• 送電系統の統合と分離のマネジメント

• 資金調達、承認、R&Dプログラムなど、その他の検討事項や課題

まとめの部分では、風力発電をはじめ次のような幅広いエネルギー業界関係先への影響についても検証します。

公共事業者

石油・ガス会社

タービンメーカー

資源開発事業者

船舶業者

5 イギリスにおけるメガプロジェクトの検証

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イギリスにおけるメガプロジェクトの検証 6

図1.イギリスにおける洋上風力発電の開発可能性

テラワット・アワー(TWh)

業界下位 業界上位 中央値

90

18 GW

11 GW

80

70

60

50

40

30

20

10

0

2010 20122011 20202019201820172016201520142013

出典:「イギリスの再生可能エネルギーロードマップ」(2011年7月)、英国エネルギー・気候変動省(現在のビジネス・エネルギー・産業戦略省)、www.decc.gov.uk

図2.イギリスにおける洋上風力発電の既存能力と計画能力

10,000

8,000

7,000

5,000

4,000

3,000

2,000

1,000

0稼働中 建設中 計画中

1,858

2,359

1,224

3,675

9,116

6,000

9,000

メガワット(MW)

合計承認済み

出典:アクセンチュアの分析と「イギリスの再生可能エネルギーロードマップ」(2011年7月)、英国エネルギー・気候変動省(現在のビジネス・エネルギー・産業戦略省)、www.decc.gov.uk

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7 イギリスにおけるメガプロジェクトの検証

電力市場改革白書2011年7月、イギリス政府は「電力事業の将来計画:安全かつ安価で低炭素の電力白書(Planningour electric future: a White Paper for secure,affordableand low-carbonelectricity)」を発表しました。その文書は、電力市場改革(EMR)に係る白書と呼ばれ、投資を集め、電力価格への影響を抑制すると共に、ガス、原子力、再生可能エネルギーなどのほか二酸化炭素の回収・貯蔵の循環サイクルを上手く構成させ、安全なエネルギー源を生み出すための主要な方策が示されています。市場改革に向けた施策によって、洋上風力発電投資には直接的あるいは間接的な影響が想定され、その中には次のような項目が含まれています。

最低炭素価格制度

EU域内排出量取引制度における取引価格の変動に伴う投資家の不安を取り除くため、二酸化炭素排出量価格を適正かつ最低取引価格に設定し、低炭素発電へのインセンティブを高めるもの

差額決済契約による固定価格買取制度(FiT-DfD)

あらゆる低炭素発電への投資に対して、安定した金銭的インセンティブを与えるものです。

二酸化炭素排出基準(EPS) 

新設の発電所の炭素最大排出量は、450gCO2/kWhに明確に規定されています。

容量メカニズム 

電力需要への対応および発電のための仕組み。

政府は、EMRの主要施策に関する規制を2012年春に策定し、2013年春の終わりには導入して、2014年頃には初めての低炭素プロジェクトの支援を確立する予定です。2012年予算にも、それらの計画に対する継続的な支援が盛り込まれています18。

再生可能エネルギー使用義務制度(RO):すでに10億ポンド規模の市場イギリスの洋上風力発電開発や再生可能エネルギーの推進を支えている主な政策は、再生可能エネルギー使用義務制度(RO)です。施行されたのは、2002年(イングランド、スコットランド、ウェールズ)から2005年(北アイルランド)の間で、「電力会社は電力の一定量を決められた再生可能エネルギーで賄わなければならず、その割合は年々増加する。従わない場合は罰金を支払わなければならない」と規定されています19。ROの使用義務は、アメリカにおける再生可能エネルギー利用割合基準(RenewablePortfolioStandards)と似ており20、電力事業者が(罰金を恐れて)電力供給量に占める再生可能エネルギーの割合を増やすように仕向ける効果的な金銭的インセンティブになっています。

またROでは、再生可能エネルギー証書(ROC)の発行と取引によって、柔軟な法令遵守と経済的効率性も実現しています。まずイギリスのエネルギー市場を規制する政府機関であるガス・電力市場規制庁(Ofgem)が、ROCを発行して再生可能エネルギーによる発電を認証します。それを発電事業者が電力会社や取引会社に直接売却し、電力会社から関係先に取引されます。そうしてROC市場が成立し、ROCの売却益が再生可能エネルギーに対する投資のインセンティブになっています。また、ROCの価格設定における需要、供給、競争をうまく利用して、多大な経済的効率性も達成しています。ROCの取引は、非化石燃料購入機関(NFPA)が担当し、電子オークション(e-ROC)によって購入者と売却者を結び付けています。

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イギリスにおけるメガプロジェクトの検証 8

2009年4月1日以降、1単位のROCが発行される電力量は、発電に使用された技術によって異なるようになり「バンディングRO(banded RO)」と呼ばれています。それまでは、再生可能エネルギーによる発電量1メガワット・アワー(MWh)がROC1単位とされていました。バンディングの導入によって、発電のコストと大規模な配備の可能性に応じて、発電技術ごとに発行されるROCの数が変わることになりました。

2010~2011年の再生可能エネルギー使用義務レベルは、イングランド、ウェールズ、スコットランドが0.111ROCs/MWh、北アイルランドが0.0427ROCs/KWh21、2011~2012年のレベルは、その水準を上回りそれぞれ0.124ROCs/KWh、0.055ROCs/KWhになる予定です。

電力事業者が使用義務を果たすには、Ofgemに十分なROCを示さなければなりません。使用義務に相当するROCがない場合は、買い上げファンドに相当額を支払わなければならず、その金額はROCを持つ事

業者に達成比率に応じて配分され、さらなるインセンティブとなります。2010年の修正指令の政府方針では、イングランド、ウェールズ、スコットランドの電力事業者は、少なくとも2037年3月31日まで、北アイルランドでは少なくとも2033年3月31日までROの対象になるとされています。2011~2012年の買い上げ価格は、1ROCあたり38.69ポンドに設定されていました22。

2009年4月1日から2010年3月31日までの間、Ofgemは2120万のROCを発行しています(20.3GWhの再生エネルギーによる発電量に相当)23。2011年1月から12月までのe-ROCによる平均売却価格は、ROC1単位あたり47.95ポンド、合計712,000ROCがオークション対象となりました24。つまり、1年間の電子ROC市場の規模は、約3400万ポンドとなり、年間のROC発行数が2400万25、1単位あたり価格が48ポンドとすれば、ROC市場全体の価値は約11億5000万ポンドに上ります。

発電に利用された技術ごとのROCの発行数

出典:再生可能エネルギー使用義務制度、英国エネルギー・気候変動省(現在のビジネス・エネルギー・産業戦略省)、www.decc.gov.uk

技術 ROCのバンディング

洋上風量発電 1.5ROCs/MWh

2ROCs/MWh 発電所またはキャパシティ

2010年4月1日から2014年3月31日まで

陸上風力発電 1ROC/MWh

波力・潮力発電 2ROCs/MWh

エネルギー専用穀物 2ROCs/MWh

高度なガス化・熱分解・嫌気性消化処理 2ROCs/MWh

下水ガス発電 0.5ROCs/MWh

ランドフィルガス発電 0.25ROCs/MWh

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9 イギリスにおけるメガプロジェクトの検証

一見、風力タービンは、従来の電力発電技術よりも技術的に簡単に思えるかもしれません。しかし、洋上風力発電所の開発は、複雑で長期にわたり、リスクもあり資金のかかるプロセスなのです。しかも洋上風力発電は新興技術であり、イギリスでガスや石炭火力発電と競争できるのは、ROをはじめとする政府の支援制度の存在があるためでもあります。そうした支援がなければ、現在のエネルギー市場の状況下では、洋上風力発電への本格的な投資も実現していません26。

洋上風力発電が持続可能で、成熟し、競争力のある発電技術になるための1つの条件は(つまり、政府支援がなくても、他の発電技術と同様に魅力的なビジネスになるには)、投資コストの大幅な低下です。最近のレポートでは27、欧州風力エネルギー協会(EWEA)が2020年には約40GWの風力発電の発電容量を予測しています。そのためには迅速な投資と建設計画が不可欠であり、2011年の年間約1GWの設備整備から2020年には年間6GW以上の整備が必要になります。その間の累計投資額は約550億ポンドに上ります。

それだけ大規模な設備に必要な巨額投資を集めるには、洋上風力発電業界が、他の発電技術との競争力が上昇傾向にあることを実証しなければなりません。実際、図3のようにEWEAの予測と推定から見れば、洋上風力発電所のMWあたりの投資コストは減少傾向にあります。EWEAのデータから判断すると、投資コストは今後10年間で現在の230万ポンド/MWから2020年には130万ポンド/MWまで引き下げなければなりません。これは46%の投資コストの削減になり、-6%の年平均成長率に相当します。同様のコスト削減目標は、英国エネルギー・気候変動省(現在のビジネス・エネルギー・産業戦略省)(DECC)による最近のレポートでも発表されています28。

一般的な洋上風力発電プロジェクトは、投資、オペレーション、閉鎖の3段階で構成されます(図4参照)。投資段階で何よりも重要なのは設備投資であり、最大80%のプロジェクト資金が投じられます。資本的支出(CAPEX)の中では、タービン及びその部品、建設への投資額が大きく、全体の50~80%を占めています。洋上環境の性質上、開発と承認に最大10%、導入段階に最大15%のCAPEXが投じられます。

洋上風力発電プロジェクトの開発及び建設は、スタートから承認、風力発電事業者への引き渡しまで、投資段階が9年にも及び、かなり長期になる可能性もあります。その間、多くの時間は計画と承認取得に費やされ、最終的な投資判断のかなり前に5年の時間、10%もの設備投資が必要になる可能性もあります。

大規模な洋上風力発電所は、未だ大規模かつフルライフサイクルにわたる運用テストをされていませんが、20年以上のライフスパンが予想されています。そのオペレーション段階では、厳しい洋上環境のために、オペレーション並びにメンテナンス(O&M)コストの大部分を船舶と機材に投じなければなりません。

このように洋上風力発電所の開発、建設、オペレーションは長期におよぶリスクのある資金のかかるプロジェクトなのです。洋上風力発電が他の発電技術と競争するためには、投資やオペレーション段階全般での大幅なコスト削減が求められます。つまり、コスト削減は、イギリスの洋上風力発電に関する重要な目標達成の必要条件になります。

アクセンチュアは、メガプロジェクトの出現が、必要不可欠なコスト削減を実現する手助けとなると信じています。以後のパートでは、バリューチェーンの重要な要素に対するメガプロジェクトの需要によって、どのように洋上風力発電業界が変化するのかを、検証していきます。

1.2洋上風力発電プロジェクトのコストと推移

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イギリスにおけるメガプロジェクトの検証 10

図3.欧州における設備増強計画と投資コストの削減予定

設備新設計画(MW) 投資費用(百万ポンド/MW)

8,000

メガワット(MW) 百万ポンド/MW

7,000

6,000

5,000

4,000

3,000

2,000

1,000

0 0

2

1

3

4

5

2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020

出典:アクセンチュアの算出。「WindinourSails:ThecomingofEurope’soffshorewindenergyindustry」、欧州風力エネルギー協会、2011年。www.ewea.org

図4.洋上風力発電プロジェクトのライフサイクル

1.5~2.5年1~2年4~5年 20年あまり

タービンの製造

部品の製造導入

サポートサービス閉鎖開発

CAPEX 70~80% OPEX 20~30%

開発と承認CAPEXの5~10%

導入CAPEXの10~15%

O&M(船舶と機器)

OPEXの20~30%

閉鎖OPEXの0~5%

部品と構造CAPEXの20~30%

タービンCAPEXの30~50%

広範な技術とロジスティクスの改善

5~7年

1~2年

オペレーション/メンテナンス

• リスク分散の欠如

• 不十分なキャパシティ

• 船舶提供の制約と特注船舶の不足

• 不十分なロジスティクス

• 送電線接続性の問題

• 補助金への大幅な依存

• 信頼性

• EOL価値の低さ• リサイクルの

可能性

• 規制の不確実性• 多大な調査費用• 開発者業者への

リスクの偏り

• 複数の契約• 標準化の欠如

注:25メートルの海底に300MWのタービンを100機導入する計画コストの割合は、一般的に入手可能なデータの平均値を算出CAPEX=設備投資(capitalexpenditure)、EOL=サポートの終了(endoflife)、OPEX=運営費(operationalexpenditure)

出典:アクセンチュア分析

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11 イギリスにおけるメガプロジェクトの検証

イギリス政府の再生可能エネルギーロードマップ29

での推計によると、2010年の洋上風力発電のエネルギー市況は30、MWhあたり149~191ポンドです。コンバインドサイクル発電のような補助金を受けていない発電技術と競争できるようになるには、そのコストをMWhあたり100ポンドに近づけなければなりません。そのためには30~50%の大幅なコスト削減が求められます。

それだけの削減が必要になると、現在の洋上風力発電所の規模(100~300MW)で業界全体が最先端の手法を取り入れても、従来の発電技術と競合できるほどのコスト削減にはつながりません。IPAの調査によると31、大型発電所や海上の石油やガスのプラットフォームなど、1993年以降の大規模で複雑な投資プロジェクトは、ほとんどが成功せず費用超過になっています。アクセンチュアの過去の経験から、大型投資プロジェクトで最先端手法を取り入れれば、10億ドルあたり最大20%のコスト削減が可能です。大幅な削減効果ながら、それでも洋上風量発電が競争力を持ち、メガプロジェクト32で規模の経済を探求するには十分ではありません。

図5、図6は、世界各国の主な洋上風力発電プロジェクトとメガプロジェクトの傾向をまとめたものです。注目すべきは、メガプロジェクトの建設予定地の大部分がイギリスであり、(わかっている予定プロジェクトの70%以上)、洋上風力発電技術の開発、整備に成功するための極めて重要な拠点になっている点です。

メガプロジェクトのキャパシティは、現在稼働中の風力発電所に比べてかなり大きく、多くの場合、巨大な規模です。そうしたプロジェクトは、洋上風力発電所の開発の費用を大幅に引き下げる可能性があります。実際、エネルギー業界では、プロジェクトの規模が大きくなれば、大幅なコスト削減につながることが実証されています。例えば、原子力発電所、石油・液化天然ガス(LNG)のタンカー、LNGの液化ユニットなどの規模を見れば明らかです。次に挙げるのは、既存のプロジェクト規模からメガプロジェクトへの移行によって、規模の経済性が働く事例です。

• リスク分散と効率的な契約

• 費用対効果の高い地質調査

• 熾烈な競争によって、バリューチェーンの各業務機能に価格の下落圧力がかかる

• サプライチェーンの最適化と統合に向けた投資欲求の増大

• タービンの大型化と新技術の導入により発電設備の建設費用の低減、1ユニットあたりの発電量の増加(エネルギー回収の効率化)、オペレーション費用の削減

• 特注の大型船と洋上風力発電専用の船による、迅速かつ安全な導入及びオペレーション

• 信頼性の向上、オペレーション費用の削減、健康・安全問題の解決による技術やプロセスの成熟

1.3競争を牽引するメガプロジェクト

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イギリスにおけるメガプロジェクトの検証 12

図5.洋上風力発電所の規模の変化:通常のプロジェクトからメガプロジェクトへ

洋上風力発電―稼働中海岸からの距離(km)

プロジェクトキャパシティ(MW)-対数

メガプロジェクト100

100 1,000 10,000

50

0

Thanet Rødsand II Horns Rev II Lynn and Inner DowsingWalney I

91

100905451

円の大きさ:タービンの数

80

洋上風力発電―建設中海岸からの距離(km)

プロジェクトキャパシティ(MW)-対数

メガプロジェクト100

100 1,000 10,000

50

1408875

1750

London Array BARD Offshore Greater Gabbard Sheringham ShoalLincs

円の大きさ:タービンの数

洋上風力発電―計画中海岸からの距離(km)

Bristol Channel Irish Sea Norfolk Bank HornseaFirth of Forth

プロジェクトキャパシティ(MW)-対数

メガプロジェクト100

100 1,000 10,000

50 720

4035

420150

0

円の大きさ:タービンの数(10MWタービンを想定)出典:アクセンチュア分析

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13 イギリスにおけるメガプロジェクトの検証

図6.洋上風力発電の大型プロジェクトとメガプロジェクト

プロジェクト名 国名 タービン数海岸からの距離(km)

サイズ(MW)

メガプロジェクト? 共同事業体メンバー

稼働中

Thanet イギリス 100 11 300 No VattenfallHorns Rev II デンマーク 91 30 209 No DONGRødsand II デンマーク 90 9 207 No E.ONLynn and Inner Dowsing

イギリス 54 5.2 194 No Centrica

Walney I イギリス 51 14 184 No DONG & SSE

建設中

London Array イギリス 175 20 1,000 Yes DONG, E.ON, MasdarGreater Gabbard イギリス 140 23 500 No SSE, RWE npowerBARD Offshore 1 ドイツ 80 90 400 No Enovos, BARD GroupSheringham Shoal イギリス 88 17 315 No Scira (Statoil & Statkraft)Lincs イギリス 75 8 270 No Centrica

計画中

Dogger Bank イギリス TBC 125 9,000 Yes SSE Renewables, RWE npower Renewables, Statoil and Statkraft

Norfolk Bank イギリス TBC 53.5 7,200 Yes Scotish Power Renewables and Vattenfall Vindkraft

Irish Sea イギリス TBC 15 4,200 Yes Centrica Renewable Energy and involving RES Group

Hornsea イギリス TBC 34 4,000 Yes Mainstream Renewable Power and Siemens Project Ventures

Firth of Forth イギリス TBC 22 3,500 Yes SSE Renewables and FluorGreat Lake Array カナダ TBC TBC 1,600 Yes Trillium Power Wind CorporationArgyll Array イギリス TBC 5 1,500 Yes Scotish Power RenewablesBristol Channel イギリス TBC 14 1,500 Yes RWE npower RenewablesFinngrunden スウェーデン 300 40 1,500 Yes WPD OffshoreMoray Firth イギリス TBC 28 1,300 Yes EDP Renovaveis and SeaEnergy

RenewablesDelta Nordsee 1 ドイツ 286 39 1,255 Yes E.ONMørevind ノルウェー TBC TBC 1,200 Yes TrønderEnergi Kraft ASTriton Knoll イギリス TBC 32 1,200 Yes RWE npowerCodling アイルランド 220 13 1,100 Yes Fred Olsen Renewables/

Treasury HoldingsIdunn ノルウェー TBC TBC 1,100 Yes Fred Olsen RenewablesStadviind ノルウェー TBC TBC 1,080 Yes Vestavind Kraft ASÆgir ノルウェー TBC TBC 1,000 Yes Oceanwind ASSørlige Nordsjøen ノルウェー TBC TBC 1,000 Yes Lyse Produksjon ASBohai Bay 中国 TBC TBC 1,000 Yes CNOOCAiolos ドイツ 197 120 985 Yes WPD OffshoreInnogy Nordsee 1 ドイツ 162 40 985 Yes RWE InnogyBeatrice 2 イギリス 184 13.5 920 Yes SSE Renewables,

Repsol Nuevas EnergiesInch cape イギリス 180 22 905 Yes Repsol Nuevas EnergiesIsle of wight イギリス TBC 20.7 900 Yes Eneco New Energy

出典:アクセンチュア、RenewableUKの許可を得て転載

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イギリスにおけるメガプロジェクトの検証 14

図7.洋上風力発電プロジェクトのライフサイクルの進化とコスト削減の可能領域

現状

タービンの製造

部品の製造導入

サポートサービス閉鎖開発

オペレーション/メンテナンス

• 高額な海底調査• 長期の

ライセンス契約• 開発段階における

多様な業者との契約• 限定的なリスク分散

• 細分化されたサプライチェーン

• 標準化の欠如• 5MWギアボックス

ユニット• モノパイル式・

立体骨組構法の基礎• 陸上風力発電の技術や

手法の多くを洋上風力発電に移行

• 初期段階のサービスセクター

• 供給不足• 改良した船• 送電網の接続

部品における障害

• 補助金による利益• 寸断の原因

―多額の費用が必要な安定化と送電網のグレードアップ

• 初期段階のサービスセクター

• HSE問題―高額な保険費用

• 数少ない閉鎖経験• 特定の部品の低い

リサイクル能力• 高い閉鎖費用

今後

• 石油やガス開発からの効率的な調査技術

• 合理化されたライセンス形態

• エンド・ツー・エンドの契約

• バランスの良いリスク分散

• 最適化したサプライチェーン

• 部品の標準化• 2桁MWのダイレクト

ドライブとハイブリッドユニット

• 石油やガス業界の技術を利用した第二世代の基礎

• 特注の洋上風力発電技術

• 成熟したサービスセクター

• 特注の船• すべての部品の

十分な供給

• エネルギーの調達と安定性の向上

• あらゆる発電技術との競争

• 貯蔵、バックアップ能力との送電網の十分な統合によるベースロードとしての役割

• 成熟したサービスセクター

• 限定的なHSE問題―保険費用の削減

• 進化した閉鎖セクター• タービン部品のための

EOL価値• 高いリサイクル能力

出典:アクセンチュア分析

図7は、大規模なメガプロジェクトによって、洋上風力発電のライフサイクルに影響を及ぼしそうなエリアを詳細に示したものです。

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15 イギリスにおけるメガプロジェクトの検証

投資プロジェクトのマネジメントにおける最先端の手法下図のように、大型投資プロジェクトのマネジメントは、ビジネス戦略からスタートし、当局との許認可、設計、調達、建設と委託、オペレーションの6段階で構成されています。

アクセンチュアのこれまでの経験から、それぞれの段階で最先端の手法を取り入れれば、コスト削減、効率の改善、性能の向上によって、大幅な便益を受けられる可能性があります。投資額10億ポンドあたり20%ものコスト削減、5%ものオペレーションマージンの増加につながる要因は、次のとおりです。

• プロセスの効率性の改善

• 構成制御の安定性の向上

• 調達戦略の最適化

• 厳格な販売管理とスケジュールの遵守

• 操業権の譲渡におけるプラント供給量の増加

投資プロジェクトのマネジメントにおける標準的手法と最先端の手法、便益の範囲

最先端の手法

標準的手法 標準的手法

最先端の手法

ビジネス戦略 当局との許認可 設計 調達と設計、調達と建設(EPC) 建設と始動 オペレーション

戦略はプロジェクトごとに策定され、EPCが包括的に検討されません

当局との許認可機能は、主に外部の受託業者が担っています

EPC事業者がエンジニアリングプロセスを担当し、オーナーオペレーターが範囲を承認します

プロジェクトのリスク指標は、明確に規定されておらず、全体的な資金配分計画に組み込まれています

許認可に関わる文書はプロジェクトごとに管理されています

複数の事業者が、1つのプロジェクトのエンジニアリング作業を行います

5年以下の短期戦略が重視されています 許認可変更の管理プロセスがEPC事業者と厳密に統合されていません

手動の集中的なプロセスによって、エンジニアリング成果を調整します

資金ポートフォリオの全プロジェクトを包括する調達戦略がありません

サブサプライヤーとの関係に透明性がありません(EPCがサブサプライヤーとの関係を持っています)

コスト主導のアプローチで重要な部品のコストを下げているが、資産の全体的な所有コストを考慮していません

PMOプロセスはプロジェクトごとに定められ、全体としての基準がありません

過去の経験は、後に見直されることはなく、プロジェクトや組織機能ごとに共有されることもありません

個別の契約や一連の契約に対する契約者の債権を確認し、支払いを行うのに多大な労力を必要とします

発電機の起動およびそれに係る立ち上げ作業と初期のオペレーションを主に支えているのは、エンジニアリングとEPC事業者です

情報の透明性に欠けており、主要なオペレーションデータ取得に繰り返しデータを請求しなければなりません

最初の数年間は、設計と建設に係る諸問題への解決にむけた対応に費やされます

戦略が明確に規定され、プロジェクトのあらゆる意思決定の指標になります

戦略によってEPCの意思決定プロセスが決まります

ポートフォリオ戦略によって、すべてのプロジェクトが最適化されています

あらゆるプロジェクトのリスク指標が標準化されています

複数の計画領域に対する長期戦略が重視されています

規制当局との深いつながりのある内部スタッフが組織を構成しています

許認可機能は規制当局と統一されたスケジュールを構築しています

許認可プロセスは、重複作業を回避するためEPC事業者と密接に統合されています

許認可に関わる提出書類は内容の再利用が可能になっています。

オーナーオペレーターが明確な情報戦略を持ち、契約上の義務に組み込みます

3Dモデルを多用し、事業者間のエンジニアリングの相違を特定します

オペレーションのアウトプットに対する最大の影響を特定するために厳格な設計管理プロセスに変更します

情報標準フォーマット(ISO15926)を取り入れ、データの交換や連携を行います

投資プロジェクトのポートフォリオ全体で、重要な製品・機器・部品の調達を最適化します

調達戦略で莫大な初期投資コストを削減し、長期的な予備パーツの調達問題を解決する戦略を立てます

機器を建設可能にすることでデザイン変更を実現し、資産は調達プロセスの初期段階で確認、管理します

EPC事業者を組織的にマネジメントし、サブサプライヤーとの関係によって提供価値を最適化します

PMO構造と方法が明確に規定されおり、プロセス、プロジェクトの管理、価値指標が明らかになっています

コストデータをプロジェクトスケジュールに入れたツールを使って、契約者の債権を自動的に確認し、支払いを行います

複数のプロジェクトを継続的に見直せるように、品質保証と学習のプロセスが統合されています

エンジニアリングデータが研修やスタートアッププロセスに活かされています

エンジニアリングとEPCベンダーは、将来のサービス提供、長期的なO&M費用の削減に注力します

設計と建設に係る諸問題の解決へむけた対応は、研修期間と手順の作成プロセスで見つかります

情報の最新化が可能な仕組みが、メンテナンスの効率性の向上に貢献します。

主要なビジネスパートナーと性能とトレンドのデータを共有しています

代表的な便益便益は今後のフェーズで現実化 プロセスの効率化による許認可プロセスの

コストを15~25%の削減デザイン変更に伴う構成制御の安定性向上を保証し、投資額10億ポンドあたり2~5%のコスト削減を実現

代表的な便益資金投資10億ポンドあたり5~8%のコスト削減を、戦略的調達や調達戦略によって実現

事業者の管理とプロジェクトスケジュールの遵守によって、投資額10億ポンドあたり3~6%のコスト削減

オペレーションの最初の数年で、予定通りのオペレーションを行うプラントの供給能力が増加するため、オペレーションマージンも2~5%増加

出典:アクセンチュア分析

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イギリスにおけるメガプロジェクトの検証 16

最先端の手法

標準的手法 標準的手法

最先端の手法

ビジネス戦略 当局との許認可 設計 調達と設計、調達と建設(EPC) 建設と始動 オペレーション

戦略はプロジェクトごとに策定され、EPCが包括的に検討されません

当局との許認可機能は、主に外部の受託業者が担っています

EPC事業者がエンジニアリングプロセスを担当し、オーナーオペレーターが範囲を承認します

プロジェクトのリスク指標は、明確に規定されておらず、全体的な資金配分計画に組み込まれています

許認可に関わる文書はプロジェクトごとに管理されています

複数の事業者が、1つのプロジェクトのエンジニアリング作業を行います

5年以下の短期戦略が重視されています 許認可変更の管理プロセスがEPC事業者と厳密に統合されていません

手動の集中的なプロセスによって、エンジニアリング成果を調整します

資金ポートフォリオの全プロジェクトを包括する調達戦略がありません

サブサプライヤーとの関係に透明性がありません(EPCがサブサプライヤーとの関係を持っています)

コスト主導のアプローチで重要な部品のコストを下げているが、資産の全体的な所有コストを考慮していません

PMOプロセスはプロジェクトごとに定められ、全体としての基準がありません

過去の経験は、後に見直されることはなく、プロジェクトや組織機能ごとに共有されることもありません

個別の契約や一連の契約に対する契約者の債権を確認し、支払いを行うのに多大な労力を必要とします

発電機の起動およびそれに係る立ち上げ作業と初期のオペレーションを主に支えているのは、エンジニアリングとEPC事業者です

情報の透明性に欠けており、主要なオペレーションデータ取得に繰り返しデータを請求しなければなりません

最初の数年間は、設計と建設に係る諸問題への解決にむけた対応に費やされます

戦略が明確に規定され、プロジェクトのあらゆる意思決定の指標になります

戦略によってEPCの意思決定プロセスが決まります

ポートフォリオ戦略によって、すべてのプロジェクトが最適化されています

あらゆるプロジェクトのリスク指標が標準化されています

複数の計画領域に対する長期戦略が重視されています

規制当局との深いつながりのある内部スタッフが組織を構成しています

許認可機能は規制当局と統一されたスケジュールを構築しています

許認可プロセスは、重複作業を回避するためEPC事業者と密接に統合されています

許認可に関わる提出書類は内容の再利用が可能になっています。

オーナーオペレーターが明確な情報戦略を持ち、契約上の義務に組み込みます

3Dモデルを多用し、事業者間のエンジニアリングの相違を特定します

オペレーションのアウトプットに対する最大の影響を特定するために厳格な設計管理プロセスに変更します

情報標準フォーマット(ISO15926)を取り入れ、データの交換や連携を行います

投資プロジェクトのポートフォリオ全体で、重要な製品・機器・部品の調達を最適化します

調達戦略で莫大な初期投資コストを削減し、長期的な予備パーツの調達問題を解決する戦略を立てます

機器を建設可能にすることでデザイン変更を実現し、資産は調達プロセスの初期段階で確認、管理します

EPC事業者を組織的にマネジメントし、サブサプライヤーとの関係によって提供価値を最適化します

PMO構造と方法が明確に規定されおり、プロセス、プロジェクトの管理、価値指標が明らかになっています

コストデータをプロジェクトスケジュールに入れたツールを使って、契約者の債権を自動的に確認し、支払いを行います

複数のプロジェクトを継続的に見直せるように、品質保証と学習のプロセスが統合されています

エンジニアリングデータが研修やスタートアッププロセスに活かされています

エンジニアリングとEPCベンダーは、将来のサービス提供、長期的なO&M費用の削減に注力します

設計と建設に係る諸問題の解決へむけた対応は、研修期間と手順の作成プロセスで見つかります

情報の最新化が可能な仕組みが、メンテナンスの効率性の向上に貢献します。

主要なビジネスパートナーと性能とトレンドのデータを共有しています

代表的な便益便益は今後のフェーズで現実化 プロセスの効率化による許認可プロセスの

コストを15~25%の削減デザイン変更に伴う構成制御の安定性向上を保証し、投資額10億ポンドあたり2~5%のコスト削減を実現

代表的な便益資金投資10億ポンドあたり5~8%のコスト削減を、戦略的調達や調達戦略によって実現

事業者の管理とプロジェクトスケジュールの遵守によって、投資額10億ポンドあたり3~6%のコスト削減

オペレーションの最初の数年で、予定通りのオペレーションを行うプラントの供給能力が増加するため、オペレーションマージンも2~5%増加

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17 イギリスにおけるメガプロジェクトの検証

洋上風力発電のメガ プロジェクトの主要課題2

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イギリスにおけるメガプロジェクトの検証 18

洋上風力発電のメガ プロジェクトの主要課題

メガプロジェクトによってクリーンなエネルギーを膨大に作り出せる可能性がある一方で、大規模ならでは課題もあります。それらの課題の解決は、 コスト削減とプロジェクトの経済性を高めるために重要となります。 メガプロジェクトの規模、複雑さ、投資資金を考えれば、現在のサプライチェーン、 ビジネスモデル、ビジネスのプロセスや手順は変えなければなりません。 開発やオペレーション費用の削減、売上の増加に向けた展望がなければ、 メガプロジェクトは構築できません。このセクションでは、メガプロジェクトを立ち上げるにあたって、洋上風力発電業界が克服すべき4つの大きな課題について、アクセンチュアの見解を紹介します。

もしイギリスで計画中の洋上風力発電所を2015年から2022年までに建設するのであれば、平均1日あたり1基という現在の業界の生産能力を大幅に上回る建設スピードになります。世界的には、風力タービン市場は供給超過です。その背景にあるのは、世界的な景気の低迷と資金調達の難しさ、原材料価格の高騰と変動による、プロジェクトの凍結、需要の低迷という状態です。欧州やアメリカ大陸における需要増のスピードは、中国をはじめとするアジア諸国に後れを取り、風力タービンの製造拠点は急速に東に移っています。西側諸国のマーケットシェアは低下し、供給能力も低下しています。

そうした短期的な市場状況が、買い手市場や風力タービンの供給体制の再編につながっているものの、長期的な成長基盤は健在です。そのためグローバルな風力タービンのサプライチェーンは、大幅な変化と増強が不可欠であり、イギリスのクラウン・エステートが承認した40GWの風力発電所開発を支えなければなりません33。また、アメリカ、中国、ヨーロッパ大陸など他の地域でも同レベルの成長が予想されます。しかし、そうした需要状況で費用対効果の高い成長を実現し、高度な品質を保証するには、大きな課題が残ります。

そのため風力タービンのサプライチェーンは、潜在的な障害になっています。現状では、新興の洋上風力発電業界を支えるサプライチェーンが、成長性のある魅力的な投資先になるためには、メガプロジェクトに合わせて進化すべき点があります。その多くは、R&D投資やコスト削減、競争、協力、統合、専門化のインセンティブになる、需要サイドの強い後押しが欠如していることが直接的に影響しています。

では、もし実際に需要が増え始めれば、風力タービンのサプライチェーンは変化し、コスト削減が実現する可能性はあるのでしょうか。

その手がかりになるのは、既存の洋上風力タービンのサプライチェーンが、小規模な陸上の風力発電所向けに作られていることです。現在の風力タービンの需要は、多くがそれらのものなのです。その結果、洋上風力発電プロジェクトは、洋上の建設やオペレーション環境とは全く異なる陸上風力発電向けの技術、プロセス、ビジネスモデルの多くを取り入れなければなりません。つまり風力タービンのサプライチェーンは、変革が必要であり、メガワットプロジェクトによる風力タービン需要の膨大な増加によって、実際に変化するはずです。

風力タービンのサプライチェーンの概要洋上風力タービンの主な要素の名称は、陸上用のものと違うわけではありませんが、すでに説明したように、次第に進化する可能性があります。2つのタイプの違いは、タービンのサイズ、羽根の素材や性能、動力伝達装置、特に予想される2桁メガワットユニット、塔、基礎の構造に係る技術が、年々進化し、今後も進化し続けると予想されます。また、洋上プロジェクト開発が増えていることから、おそらく送電技術は、現在の高圧交流送電(HVAC)から高圧直流送電(HVDC)にシフトすると予想されます。そうすれば長距離送電によるロスが少なくなります。

洋上風力タービン市場における垂直統合は極めて少なく、ビジネスモデルも様々です。大手風力タービンメーカーの主力商品は、タービン、羽根、塔であり、残りはアウトソーシングしています。発電機やコントローラーのメーカーは少なく、動力伝達装置のメーカーも

2.1タービンのサプライチェーン

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19 イギリスにおけるメガプロジェクトの検証

数社のみです。そうした状況は、メガプロジェクトの登場によって変化が予想され、バリューチェーンの統合を促し、基礎の構造に係る技術(浮遊する基礎など)や送電網にも新たな動きがあるかもしれません。

風力タービンのサプライチェーンによる経済性改善の余地大幅なコスト削減と収益の改善、あるいはそれらを数年で達成するための明確な展望作りは、洋上風力発電業界によって極めて重要です。メガプロジェクトのビジネスケースは、政府支援に大きく依存しており、業界発展のために必要な投資を集めるには、プロジェクトの経済性の改善を約束しなければなりません。

洋上風力発電コストの約50~80%を占めるのは、部品や構造物であり34、コストの大幅削減には包括的なアプローチが欠かせません。コスト削減と効率性改善に大きく貢献するのは、特注の洋上に適した設計、製造工程の最適化、ロジスティクスの改善です。

設置したタービンのコスト削減だけでなく、経済的なオペレーションも重要になります。規模の拡大、デザインの改善、新たな部品技術によって、エネルギー回収量は増加します。オペレーションとメンテナンスコストの管理には、メンテナンスの信頼性と予測が不可欠です。洋上メンテナンスにかかるコストの大部分は、予定外の修復作業です。そうした性能や、信頼できる予測可能なメンテナンスを左右するのが、タービンデザインです。

タービンの部品と技術

現在、洋上風力発電所で使われている技術の多くは、洋上向けの技術ではなく、陸上風力発電の技術を改良したものです。

そうした技術は、洋上風力発電プロジェクトが沖に進み、水深が深く、風のスピードが速くなるにつれて、課題が増えてきています。エネルギー回収を最大限にするために、タービンサイズはこれまでにない大きさになり、6MWモデルもすでに市場投入されています。しかし、規模が大きくなれば必ずしも良いわけではありません。信頼性やロジスティクスの問題につながりかねず、その中には規模の縮小や部品の軽量化によって、ある程度解決できるものもあります。ギアボックスを直接駆動のものに変えるのは、その一例です。その一方で、騒音や視覚的インパクトのように、陸上風力発電における一般的な問題点の中には、洋上環境では重要性が低く、技術的なイノベーションのチャンスを提供できるかもしれません。

プロジェクトの経済性をさらに改善し、投資を呼び込むためには、引き続き大幅な技術開発が必要だという全体の共通認識はあります。しかし、大手タービンメーカーの技術部門は、いまも陸上技術ばかりに力を注ぎ、陸上風力タービンがタービン市場の圧倒的シェアを占めています。この技術的な問題は、克服すべき重要な障害のひとつであり、アクセンチュアでは、メガプロジェクトの発足と共に解決に導くことになると考えています。

図8.大手タービンメーカーの垂直統合

Vestas

Gamesa

GE Energy

Enercon

Siemens Wind

Suzlon

Nordex

直接駆動の動力伝達装置タービンサプライチェーンにおける明確なプレゼンス

タービン 回転翼動力伝達装置

(直接駆動のギアボックス)

発電機 コントローラー 塔 基礎 送電網

*送電網:風力発電所と送電系統を物理的に接続するインフラサービス出典:アクセンチュア分析

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イギリスにおけるメガプロジェクトの検証 20

アクセンチュアの調査によると、プロジェクトの開発事業者とオペレーターの収益改善には、3つの領域の技術改善が有効になる可能性があります。それらは、部品生産の合理化による資本費用の削減、信頼性の高い予測可能なメンテナンスによるオペレーション費用の削減、エネルギー回収量の増加による売上の増加です。

図9には技術開発によるコスト削減や収益向上を通じてプロジェクトの経済性が向上する可能性がある風力発電タービン部品をまとめています。

ロジスティクス

洋上風力発電所の設置には、輸送と、通常は巨大な規模や重量ながら壊れやすい複数の部品の取り扱いが不可欠です。タービンの技術と同様に、洋上風力タービンのロジスティクスも、これまでのところ多くは陸上風力発電業界、そのほか石油やガスの洋上オペレーションを応用しているものの、専用の車両や船舶の数に限りがあるため高コストで時間的制約があります。新たな技術、プロセス、海岸で港湾あるいは港湾近くで浮遊タービンの生産ができるようになり、海上でタービンの効率的な組み立てができれば、劇的なコストと時間の削減につながります。

連携と契約

風力タービンのサプライチェーンの構築は、連携が図られず、リスクの分散や回避もなされていません。開発事業者やサプライヤー、政府といった主要メンバー間の契約も標準化されていません。

例えば、一般的に開発事業者は事前注文がなければ、サプライチェーンは構築されず、生産能力は増強されない可能性が高いと考えています。しかし、事前注文は費用がかかり、リスクも高いため、開発事業者は十分で持続可能なタービンのサプライチェーンができてから、最終的な投資判断を行います。そうすれば、長いリードタイムのある部品の事前注文に伴うリスクを軽減できます。実際、洋上風力発電の調達において、タービンのリードタイムは最長クラスで、2年以上というのも珍しくありません。その一方でサプライヤーは別のアプローチを進めており、共同コミットメントや、承認とエンジニアリング、製造キャパシティ、投資判断、注文の段階的・同時並行の遂行を模索しています。プロジェクト開発に対する契約のアプローチや契約の手法は、現在のところ部品が実質的に発注される最終投資判断の段階で、供給が始まります。そうなると必然的にサプライチェーンの反応は遅くなり、部品の不足や遅れが生じます。

そのため業界では、サプライチェーンの供給と需要の両サイドが、相手が高いリスクを冒して投資し、保証を提供して、業界の前進を実現してくれることを期待し、気が付いたときには動きが取れなくなってしまいます。この膠着状態を打破し、需要・供給サイドの目的の統合と調整を図るには、十分なコミュニケーションとコラボレーション、画期的なリスク分散と契約アプローチの標準化、サプライチェーンを合理化する機会の探求と推進が必要です。政府やサービス企業は、そうした高度な連携を推進し、仲介するための新たな方法に資金を投じるべきです(規制については、次のセクションを参照)。

図9.風力発電タービンの部品と、コスト及び売上改善が可能な領域

出典:アクセンチュア分析

部品生産の合理化による資本費用の削減

信頼性の高い予測可能なメンテナンスによるオペレーション費用の削減

エネルギー回収量の増加による売上の増加

羽根の技術 ● ● ●

構造デザインの改善 ● ● ●

空気力学的デザインの改善 ● ●

ギアボックスの標準化 ● ●

直接的/ハイブリッドな動力伝達 ● ●

低速発電機 ●

第二世代の基礎 ● ● ●

HVDCの接続性の活用 ●

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ケーススタディー

フォアウィンド(Forewind)

企業概要フォアウィンドは、国際的な大手エネルギー企業(SSE、RWE、Statoil、Statkraft)によるジョイントベンチャー組織です。2010年1月、世界最大の洋上風力発電所計画であるドッガーバンクの開発権を与えられています。

開発契約では、フォアウィンドがプロジェクト承諾のための準備プログラムを行うことになっており、そのためにパートナー各社は4,000万ポンドを出資する予定です。具体的な業務は、次のとおりです。

• プロジェクトの構築

• リース契約の締結

• 主要な承諾事項の履行

ドッガーバンクは、巨大エリアなので、いずれの開発もいくつかの段階に分けて、段階ごとにいくつかのプロジェクトを作って進めなければなりません。目標は、2020年までに9GWの発電容量を達成するという合意の履行ですが、エリア全体では約13GWのキャパシティがあり、それはイギリスで予測される電力需要の10%に相当します。

投資判断は2014年後半に行われ、その後、発電所の開発とメンテナンスは、様々な親会社グループ、将来追加されるパートナーが担います。

ビジネス上の課題建設費用の抑制と適切なリスク分散:収支を成立させるための重要な要素

フォアウィンドの計画どおり9GWの発電容量を実現するには、この地域に400億ポンドの投資が必要になります。同社のビジネスマネジメントの責任者であるビョルン・イーヴァル・ベルガモによると、それだけの規模のプロジェクトに投資を集めるには、収支が成立することを実証するのが何よりも大切な要素になります。フォアウィンドがコスト削減に成功し、健全なビジネスケースを示せれば、共同事業への投資も集まりやすくなります。

コスト削減に努めることは、現在の洋上風力発電業界が直面する大きな課題です。タービンのサプライチェーンと船舶の契約は、資本投資段階では突出したコスト要素です。将来の投資に向けて競争力を維持するには、税金による支援がなくても利益が上げられるような展望を示さなければなりません。そうなると、1MWあたり200~300万ポンドという現在の洋上風力タービンの設置費用を引き下げられなければ、現実的にいつまで政府支援受けられるのかという重要な疑問が起こります。

今のところ開発事業者が初期段階のリスクの多くを担っています。送電網のオペレーターや政府など、他の主要ステークホルダーもより多くの建設リスクを担い、投資家や開発業者を集めなければなりません。しかし、そうしたリスク分散を現実化するには、業界がコスト効率の改善傾向を実証し始めなければなりません。

送電網への接続を保証するコストの削減

開発初期段階における企業にとっての深刻な問題のひとつは、洋上風力発電プロジェクトの計画最大発電容量に十分な送電網の接続容量を確保するための、接続網の強化に必要な投資に関するものです。

現在のところ、政府は送電網の強化を求めていません。むしろ送電会社ナショナル・グリッドとフォアウィンドのような開発事業者の二者間合意によって、送電網の強化や接続は行われています。開発事業者は、2年に1度更新されるキャンセル補償に係る契約の締結をしなければならず、もし開発者が契約内容を果たせなければ、送電網のオペレーターに多額のキャンセル料が支払われます。その金額は、試運転の日が近づくにつれて増え、ギガワット規模のプロジェクトの場合、10億ポンド単位の金額が保証されます。そうした仕組みは、開発事業者にとっては大きなリスクであり、投資判断の前に検討しなければなりません。

政府機関は、送電網の接続プロセスにおけるリスク軽減について、さらに協調して進めていく必要があります。洋上風力発電業界を持続可能にするためには、開発事業者が全面的に送電網接続のキャンセル保証のリスクを負うような仕組みを変えなければなりません。

HES(健康、安全、環境)性能の改善

洋上風力発電業界における健康と安全のリスクは、疑う余地が全くないものと実証されており、HES(健康、安全、環境)性能は改善が求められています。業界全体として健康と安全の問題には、これまで以上に注力するようになっており、フォアウィンドも業界トップクラスの取り組みを目指しています。

気象・海洋学の調査を別とすれば、初期の開発事業者には、海洋沖の複雑な環境についての経験がほとんどありません。プロジェクトの導入やオペレーション、メンテナンス段階には、多くの健康や安全性のリスクが存在し、何よりのリスクは風力タービンへの出入りに関するものです。船やヘリコプターは、建設やメンテナンスのオペレーションに欠かせません。プラントや道具の信頼性を高めて、現場への訪問回数を最小限にすれば、リスクは大幅に減らせます。

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フォアウィンドでは、許認可申請中にオペレーションとメンテナンスの戦略をいくつか記し、最終判断は将来の現場オペレーターに任せる予定です。安全なオペレーションやメンテナンスは、技術、マインドセット、人員を共にマネジメントすることで達成できると信じているからです。

環境面のリスクや問題は、許認可申請の作業で十分対処できます。それらの調査は、重要なコスト要素でもあります。環境影響調査は、許認可申請の重要な付随資料であり、船やヘリコプターで収集したデータや分析データも含まれています。環境に関する文書は、あらゆる環境問題をカバーすると同時に、将来の主要オペレーターが、健康面や安全は環境よりも重要だと考えるだろうことを想定しています。

フォアウィンドのHES(健康、安全、環境)担当マネジャーによると、洋上風力発電業界は、HES(健康、安全、環境)について石油・ガス業界から学ぶことが数多くあります。石油・ガス業界に比べると、洋上風力発電の規制には明らかに改善の余地が残る部分があります。それはおそらく新興の業界だからです。規制は、業界横断的な基準を確立する基盤であり、その基準がHES(健康、安全、環境)に関するリスク軽減に大いに役立ちます。洋上風力発電業界は、石油・ガス業界の進化した原則を活用すべきです。例えば北海油田では、何年も前から業界内の新しい手法や出来事に関する知識の共有がうまく進み、現在もその状況は続いています。

風力発電業界は、発電所の建設やオペレーションに使われている機器、プラント、部品がオイル漏れや大規模爆発など大惨事を起こすようなものではないという意味では、比較的リスクは低い。その一方で、導入、オペレーション、メンテナンスを高所、水上で行うことによるリスクは、石油・ガス業界と同等、場合によってはそれ以上です(例えば、高速回転のタービンブレードの近くで、ヘリコプターによるオペレーションを行わなければなりません)。洋上での資源エネルギー開発業界との知識の共有や移転は、洋上風力発電業界のHES(健康、安全、環境)としてのの性能を改善するために大いに役立つはずです。

持続可能なサプライチェーンの構築

UKIが、計画する洋上風力発電能力を2015年から2022年までに達成すると仮定すれば、1日あたり1基の風力タービンを建設しなければなりません。現在、洋上風力タービンのサプライチェーンでは、そのような需要レベルを決して満たせません。

サプライチェーンのキャパシティは、事前注文の要件なく増強が必要です。最終的な投資判断の前に、十分な部品のキャパシティと事前注文を確保するすべてのリスクを負えば、開発者には大きな負担になります。市場の潜在的な

成長機会から便益を得るには、サプライヤーからの投資が持続可能なサプライチェーン構築の重要な要素になります。

フォアウィンドは、様々な考え方を認め、主要オペレーターがそれらを評価、選択するように技術やデザインの選択範囲を広げれば、許認可申請はより柔軟なものになると考えています。そうすれば、サプライヤーの競争やイノベーションが促され、コスト削減が進むでしょう。しかし、そうしたアプローチは、部品製造のリードタイムやサプライチェーンのキャパシティに悪影響も与えます。

適正な人材の確保

初期の開発段階では、石油・ガス業界との人材をめぐる競争は限定的で、当初の予想を下回る状況になっています。むしろ、適正な人材を業界全体に呼び込み、十分な研修時間を確保する問題のほうが重要です。

技術選択の決定要因としての拡張可能性

洋上風力タービンの技術は、急速に進化しており、ドガーバンクにおけるフォアウィンドの最初のプロジェクトの予定期間には、最大10MWの容量を持つ風力タービンが製造可能になると予想されています。

フォアウィンドは、どの技術でも拡張可能性は極めて重要であり、十分な拡張可能性のある適正な技術を持っていれば、小規模企業でも急成長できると考えています。

ここで学ぶべき重要な知識洋上風力発電業界にとって、ギガワット規模のプロジェクトが承認されたことは、形勢を一変させる事態です。フォアウィンドのように1GWを超える発電容量が予定されているプロジェクトは、既存の大幅に小規模な洋上風力発電プロジェクトとは完全に異なる性質のものです。フォアウィンドは、成熟したメーカーが持続可能なサプライチェーンの確保に動き、投資家やオペレーターのリスクが軽減されることになることは好感されます。風力タービン製造のリードタイムについての問題は、主要サプライヤーによる解決が求められています。

適用する技術の選択は、ギガワット規模のプロジェクトを支えるサプライヤーが少数であることに比べれば大きな問題とは言えません。今後、テクノロジーの進歩に伴い、M&Aが進み、その発展は加速していくことが予測されます。

健康と安全面での視点は業界にとって大切な問題であり、石油・ガス業界の知識や規制の移転が求められています。しかし環境問題への関心は低く、当局への許認可申請プロセスにおいてのみ扱われています。

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洋上の基礎や風力タービンの取り付けのために契約されている船のほとんどは、石油・ガス業界からの転用となっています。洋上プロジェクトのすべての段階で船が使われますが、重量物搬送船、パイプ・ケーブル敷設船、移送船など、取り付け作業に必要な船の確保めぐる競争が、特に熾烈になっています。石油・ガス業界向けの船は約675隻あり、ほとんどが洋上風力発電に直接転用できます。しかし、石油・ガスプロジェクトが動きを取り戻し、北海の国々で配船の任を解かれるにつれて、洋上風力発電業界は厳しい競争に直面し、船舶不足になっています。また、洋上風力発電用の船は、複雑な運航や航行技術が求められるため、独自の問題に対処できる厳格で業界固有の船体へのニーズが高まっています。つまり、供給不足と船体の変更への要望から、専用の設置船を求めるようになっています。2013年までには、洋上風力発電市場に20隻以上の専用の設置船が投入され、1日あたりの使用料金が下がり、洋上風力建設固有のニーズに合わない船の引退が進む可能性が高くなります。しかし、開発事業者は、サプライリスクの保証を迫られ、さらなる投資が求められています。

開発者と造船メーカーは、洋上風力発電に最適化した船のニーズを理解しています。しかし、そうした高性能な船は複雑で建造の難易度が高く約2年の製造期間と1億ポンドもの多額の投資が必要です。多くの建設事業者は、確固たる契約をせずにメーカー側が発電容量を増やすことを期待しています。ところが投資家は、潜在的な利益の保証がなければ資金提供を躊躇します。この開発事業者と船のサプライヤーの膠着状態は、セクション2.1で説明したように、新しい船の入手が遅れてプロジェクトの成果や収益性に影響を与えている、風力タービンメーカーの状況に似ています。そのため開発事業者の多くは、難しい投資環境の中、高いリスクを受容し、契約を確認してから最終投資判断をしています。もし開発事業者が、このリスクを引き受けようとしなければ、特にメガプロジェクト

の場合は、政府支援がなければプロジェクトの中止は回避できないかもしれません。欧州風力エネルギー協会(EWEA)は、洋上風力発電所の成長予想から、船に対する投資は17億ポンドになるだろうと予測しています35。専用船が発注されていますが、実際にどれだけ製造でき、市場の需要に対応できるかどうか現段階では不透明さが残ります。

資金の問題は、船の計画に関係してHSEの問題にもつながります。初期の開発事業者は、海洋調査を行い、気象海洋学マストや風力ブイを設置する新しい高品質の船に投資する十分な資金がないので、HES(健康、安全、環境)の問題が広がる可能性があります。多くの洋上風力発電の開発事業者は、最高級の石油・ガス事業者向け船舶の高い料金や、船舶の供給不足のため他の地域から船を移送するための高額費用を支払えません。洋上建設で高度な船を使用すれば、1日あたりの料金は33万5,000ポンドを上回り、地域間の船の移送料は1,300万ポンドを超える可能性があります。大型の石油・ガスプロジェクトでは予算内の金額ですが、小規模な洋上風力発電プロジェクトにとっては一般的に高額すぎます。そのため、市場で調達可能な数少ない洋上風力発電専用の船を利用するか、稼働しなくなった古い石油・ガス事業向けの船を転用するかの2つの選択肢しかありません。古い安価な船を使えば、HSEリスクも高まり、ある程度の環境上のリスクもあります。つまり船に関しても、洋上風力発電に関する他の要件と同じように、不確実性と確実な投資資金不足が船舶供給の制約となり、プロジェクトの遅れにつながる恐れがあります。船のサプライヤーが洋上風力発電市場に本腰を入れて対応するには、業界の将来と収益性について共通の理解とそれを実現するビジネスエンジニアリング力が求められます。図10は、洋上風力発電業界に船舶を供給している主な企業をまとめたものです。

2.2船舶の契約

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図10.洋上風力発電業界への船舶のサプライヤー

企業 国 サービス概要

海洋契約者

GeoSea (DEMEの一部門) ベルギー 発電所建設Scaldis (DEMEの一部門) ベルギー 基礎、変圧器、風力タービンの設置Seaway Heavy Lift キプロス 発電所の設置A2Sea デンマーク 輸送、基礎と風力タービンの設置Swire Blue Ocean デンマーク 基礎と風力タービンの設置HGO Infrasea Solution ドイツ・ベルギー 重量物用の船の提供、洋上でのロジスティクスソリューション

(HochtiefとDEMEの保有)BARD ドイツ 洋上風力発電所の開発、製造、建設Hochtief ドイツ Hochtiefのソリューションを使った基礎の設置Muhibbah marine ドイツ 発電所の設置Ballast Nedam オランダ 風力発電所の設計と建設Heerema Fabrication Group オランダ 風力発電所のエンジニアリングと製造Jack up Barges BV オランダ 回転翼、羽根の設置Jumbo Shipping オランダ 風力タービンのトランジションピースの設置Smit オランダ 重量物運搬とタービン基礎部の移送EIDE Marine Service ノルウェー 風力発電所の風力タービンの設置Fred Olsen Energy ノルウェー 子会社のHarlandとWolffが、基礎と変電所を設計、

建築し、風力タービンを設置Inwind ノルウェー 調査、移送、風力タービン、基礎、変電所の設置、Master Marin ノルウェー 風力発電所の設置Fugro Seacore イギリス 現場調査、基礎の設置GOAH Offshore イギリス 風力タービンと基礎の移送、設置MPI Offshore イギリス 基礎、タービンの変圧器、ケーブルの設置、移送、

プロジェクトマネジメントSeaEnergy イギリス 風力発電所のアクセス、オペレーション、メンテナンスサービスSea Jacks イギリス 風力発電の設置Subsea 7 イギリス ケーブルの設置、基礎と変電所の建設

ケーブル設置事業者

CT Offshore デンマーク 海中ケーブルの設置NKT Cable デンマーク ケーブルの設置をはじめ風力発電所のターンキーソリューションNexans フランス ケーブルの設置をはじめ風力発電所のターンキーソリューションTechnip フランス 海中のケーブル設置(2011年8月にSubOceanを買収)Siem Offshore Contractor ドイツ 海底のケーブル設置、修理、メンテナンスPrysmian イタリア ケーブルの設置をはじめ風力発電所のターンキーソリューションVisser & Smit オランダ 欧州における大手電線設置事業者Aker Solution ノルウェー 風力発電所のための海中での配電ABB スイス ケーブルの製造、設置Briggs Marine イギリス ケーブルの設置をはじめ風力発電所のターンキーソリューションGlobal Marine イギリス 海底ケーブルの設置、メンテナンス、

関連するエンジニアリングサービスSubsea 7 イギリス ケーブルの設置、基礎と変電所の建設

出典:アクセンチュア、RenewableUKの許可を得て転載

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ケーススタディー

シーエナジーPLC(SeaEnergyPLC)

企業概要シーエナジーPLCは、公共企業であり、子会社がスコットランドのアバディーンを拠点とするエネルギーサービスグループを形成しています。伝統的に石油・ガス、再生可能エネルギーを組み合わせ、両方のセクターでプロジェクト開発やサービス提供を行っています。また、現在グループで洋上エネルギーサービスビジネスを立ち上げ中であり、拡大しつつある洋上風力発電業界やその他の洋上エネルギー関連顧客にアクセスサービスなどを提供し、石油やガスへの投資も行っています。

シーエナジーは、洋上風力発電所でオペレーションやメンテナスサービスを行い、それらのサービス用の船も提供する予定です。風力発電所向けの最新の船や設備、オペレーションやメンテナンスによって、開発事業者のコスト削減をサポートします。また、安全性向上につながる、次のような効果も期待できます。

• 実証済みの最新技術の統合

• アクセス機能、宿泊設備、業務機能の同一場所への配備

• 多目的船の導入による船体数の削減

• 洋上風力発電所のライフサイクルを通じた支援のためのデザインと設計

• 24時間・年中無休の長期的な配備

• 複数の場所での安全で効率的な作業のためのサイクルタイムの最短化

アクセンチュアは、シーエナジーのジョン・アルダーシー・ウィリアムズ(CEO)とマイク・カマーフォード(技術責任者)にイギリスをはじめとする洋上風力発電業界が直面する課題やチャンスについてインタビューを行いました。

ビジネス上の課題洋上風力発電業界は、他の洋上ビジネスの教訓を学び、自らのソリューションを開発すべきです。

現在の洋上風力発電業界は、大規模プロジェクトを成功させるために、進化が求められる特性がいくつもあります。例えば、適切な戦略の構築・導入、浮遊型タービン、サイクルタイムの短縮、目的に合わせた資産の利用、サプライチェーンの進化、文化的問題などです。

洋上風力発電プロジェクトに使われている既存の手法や技術は、基本的に陸上風力発電のソリューションを「洋上化」したものです。大規模な洋上風力発電所を成功させるには、新しいオリジナルのタービンテクノロジー、ロジスティクス、サプライチェーン、オペレーション体制が必要だということを、シーエナジーは認識しています。

代替手段となる建設・導入戦略―石油・ガス企業の教訓に基づいたもの

タービンの製造と建設についての次の2つの選択肢には、両極端な戦略が表れています。

沿岸近くでタービンを組み立て、組み立てたユニットを運搬:

石油・ガス業界の経験から、建設計画と洋上作業の複雑さを考えれば、望ましい選択肢です。特に複数のユニットを扱う場合は、多額の費用がかかり、リスクの高い洋上作業を最小限にできます。このより効率的な洋上オペレーションをサポートするためには、港湾の十分な開発と特注の船が必要になります。また、統合的な設置作業の要件に柔軟に対応できるようにするには、タービンのデザイン開発も必要です。

風力タービンの組み立て部品を搬送し、洋上で組み立て:

この選択肢は、リスクが高く費用がかかる洋上作業が生じるので、効率的ではありませんが、現在の一般的な方法です。やはり港湾の十分な開発は必要ですが、サプライチェーンの特定領域に特化した複数の港に作業を分散できます(ケーブル、羽根、塔など)。この場合、特注の船はそれほど多く必要ではなく、船主のリスクは軽減されます。船も複数の用途に使用可能になり、開発事業者は、必要であれば代替の船を利用できます。

どちらを選択するかは、経済性とそれぞれのリスク評価によって決まります。

浮遊タービン

長期的に見れば、浮遊タービンは重要なものになる可能性があります。設置に必要な専用船や専用機器の数が少なく、ロジスティクスが複雑にならず、プロジェクトに伴うリスクも軽減されます。そうした技術の開発は、水深が制約にならなくなるので、世界的な洋上風力発電の推進につながります。

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サイクルタイムの短縮―リーン生産方式からの教訓

風力タービンは、建設戦略とは別に、洋上建設向けにデザインしなければなりません。風力発電所は分散した複数のユニットなので、設置から試運転、オペレーション、メンテナンス(O&M)のサイクルタイムを最小限にする必要があります。

日本の自動車メーカーのような効率的なメーカーは、製造プロセスを検証し、組み立ての工程数を最小限にしています。それを洋上風力発電所に応用するならば、エンド・ツー・エンドのデザインと建設プロセスを考慮し、製造、ロジスティクス、建設、オペレーション、メンテナンスの意見をデザインに取り入れなければなりません。風力タービンと基礎の組み立てプロセスを自動化し、部品を標準化すれば、建設可能性と品質が高まり、コストやエラーは減り、サイクルタイムも短くなります。

現在、各サプライヤーは独自のデザインを持っており、洋上風力発電独自のソリューションは限られています。しかし自動化への投資を促すには、メーカーが長期的な風力タービンの需要について、展望を持っていなければなりません。

ケーブルの敷設―専用船の重要性

もうひとつの問題となるのが、設置段階でケーブルが何度も損傷を受けることです。その大きな理由は、ケーブルの敷設船が専用船ではないからです。大西洋横断のケーブルが敷設された時、専用のケーブル船が使われ、生産されたケーブルは、統合的な方法で直接船に積み込まれました。もし同じ方法を洋上風力発電に取り入れれば、生産の統合、専用機器によるケーブルの搬入と設置、コスト削減、信頼性の向上につながります。

サプライチェーンの進化

これまで説明してきた改善策には、サプライチェーンとの、あるいはサプライチェーン内の連携が欠かせません。既存のサプライチェーンは、大型の洋上風力発電プロジェクトに最適なものではなく、うまく機能するサプライチェーンの構築には、適切な国際的連携が求められます。重要な製造施設が、すでにドイツとデンマークで稼働しており、サプライチェーンと出荷能力がすでにあるところで、キャパシティが増える可能性があります。ただ、キャパシティが増える可能性があるということは、イギリスをはじめとする欧州で、新しい専門の最適な生産施設が建設されるかも

しれません。そうなると、関係を開発、改善すると共に、サプライチェーン全体の品質の充実とインセンティブが求められます。特にサプライチェーンの両サイドで、信頼と共に長期的なコミットメントを構築する必要があります。

公共事業者と開発業者は、設置施設の1MWあたりのコストではなく、1MWhのコストに注目すべきです。契約手法も変更が必要です。長期的な関係が求められ、欧州の公共企業の中には長期的な利益のために短期的な利益を犠牲にするところもあり、業界としてより大きな利益につながる可能性もあります。

洋上風力発電事業の大きな課題は、石油・ガスセクターで培われたスキルやケイパビリティを再生可能エネルギーセクターに応用する方法です。シーエナジーのように、石油・ガスと再生可能エネルギーの両方経験のある企業は、その動きを促せる立場にあります。

文化的障壁

業界固有のカルチャーも障害になり得ます。実際に公益企業や風力発電企業が、石油・ガス会社の洋上での経験を受け入れることに抵抗を示しています。メーカー、開発事業者、石油・ガス会社の信頼構築には、その視点での障害を取り除く必要があります。

プロジェクトのパフォーマンスを高めるために設計された船の使用業界関係者によると、施設設置のための船のチャーターは、通常プロジェクト費用の約2%を占めます。ただ、その船のプロジェクト成果への影響は甚大です。

目的に合うように設計された船を使えば、スケジュール的にきわめて優位になり、追加費用を上回る効果が期待できます。また、最初のCAPEX(資本支出)と1日あたりの費用は高いかもしれませんが、オーバーランの可能性が低くなり、プロジェクトの利益は高くなり、スケジュール的なリスクも軽減されます。

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しかし、専用船の造船は、資金を調達できるかどうかに大きく左右されます。船のオペレーターは、理想的な特注のデザインや特徴(船の能力は高まりますが、コストと1日あたりの料金は高くなります)を「希薄化」して、資金調達できるようにします。

そうした事業構造から抜け出すためには、開発事業者が価格と価値の違いをうまく見極めて、将来の仕事に向けた明快で安全な経路が開発されるよう後押しする必要があります。プロジェクトの費用(プロジェクトの装備次第)、1MWあたりのトータル費用、プロジェクトの価値(プロジェクトのライフサイクル発電量MWhあたりの価値)には大きな違いがあります。現在のところ、プロジェクトの個々の要素(設置に使う船の1日あたりの料金など)を最少化することが重視されていますが、より包括的視点から、プロジェクトのライフサイクル価値を高めるほうが賢明です。安くあげれば、極めて高くつく可能性もあります

HSEの改善成功するビジネスは統制が利いているように、高い安全性は統制によって達成できます。そのためには、計画、調達、モニタリング、計画どおりの実行が欠かせません。現在のところ、洋上風力発電の安全性は、1970年代の石油・ガス業界の状況に似ており、不明確で統制のない安全体制で不十分な安全行動が見られます。HSEは、形式上義務を持ち、健康と安全の管理や成果の全責任を負う、オペレーターの責務です。

もうひとつの障害は、明確さの欠如です。誰が洋上風力発電を規制しているのか、はっきりしない場合があります。業界全体が、「何を持ち逃げできるか」という風潮ではなく、「何をすべきか」という風潮に変わらなければなりません。そうした風潮の一因は、明確な規制がないことです。洋上風力発電向けの明確に規定された総合的HSE体制は、ビジネスにも役立ちます。北海の石油・ガス業界は、洋上設備の設置規制(セーフティーケース)の策定と採用をサポートしています。セーフティーケースは、実質的には1つのシンプルな規制「大事故(炭化水素漏れや災害)を避けなければ、法的責任を問われ、罰則を受けることになる」です。人はリスクを負い、それを何とか回避しようとするものだと理解しています。洋上風力発電業界として新たな規制体系を作る必要はなく、セーフティーケースを応用するだけでよいのです。現在、建設デザインマネジメントは、建設段階だけに適用されています。セーフティーケースは、風力発電所のライフスパン全体に応用できるはずです。

規制とインセンティブ洋上風力発電が発展しているということは、規制とインセンティブのフレームワークが機能していることであり、その改善も可能です。例えばROのROCは、契約による証書ではないので、資金調達につながっていません。特に売上規模の小さい企業は、その影響を受けています。固定価格買取制度は、資金調達を比較的容易にし、その売上によって資金提供者は事業性を見極めます。

洋上風力発電所の開発許認可プロセスは、長期にわたり手間を要するもので、合理化すべきです。最近、海洋管理の所管組織が再編されたものの、今のところうまく機能しておらず、組織変革がキャパシティと整合していないので、動きの遅い規制組織となっています。

断続のマネジメント洋上風力発電のバックアップについてどの選択が最適かは、市場が判断すべきです。送電と市場の関係者は、送電の断続に対応する方法を学ぶ必要があります。

ここで学ぶべき重要な知識シーエナジーは、洋上風力発電業界について、次の2つのことを信じています。

業界は正しい問題を、正しい規模で考える必要があります。具体的には、十分なサプライチェーンの構築、契約手法の変更、包括的なHSE手法の導入、バリューチェーンに関わるすべての対象者と協力し、洋上風力発電独自のより良いソリューションを作ることなどです。

洋上風力発電業界は、過去に同様の問題に対処した業界の経験から学ぶことができます。スキルや能力を応用できそうなのは、基礎構造の技術、リスク対応、契約、リスク分散、HSEのマネジメントなどです。

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外洋は、経験を積むには厳しい環境です。洋上でのオペレーションの成功を大きく左右するのは、プロジェクトを時間と予算どおりに、安全に遂行する能力です。しかし、プロジェクトの安全な遂行は、洋上風力発電事業の成長にあわせて、業界の懸念材料になっています。急激な成長によって、経験や知識を急速に増やす必要に迫られています。しかし、経験の習得には時間が必要です。能力の構築を計画的に進めなければならないことを考えれば、洋上風力発電は、まだ豊富な経験を有しているわけではありません。幸い、洋上でのオペレーションに求められるスキルや安全慣行は、石油・ガス業界の過去40年にもわたる困難な費用のかかるオペレーションプロセスを通じて構築されています。洋上風力発電業界は、数年におよぶ休業災害やプロジェクトコストの超過を全力で回避しなければなりません。2020年までに18GWの洋上風力発電を実現するという切迫したスケジュールでは36、開発事業者が成熟し、安全で安定した業界になるための時間が十分だとは言えません。小規模で政府支援を受けていた業界が、大規模で信頼できる再生可能エネルギー源になるには、迅速な判断と、洋上エネルギーの先駆けである石油・ガス業界が経験した貴重な知識の応用と技術共有・移転の促進が不可欠です。

近年、プロジェクトの遅れ、コスト超過、HSEに関するインシデントの発生が石油・ガス業界よりも増えていることを勘案すると、陸上の風力発電ビジネスの経験を直接洋上風力発電に転用することはできないと考えられます。北海の厳しい環境による課題は、スケジュールと予算通りの事故のないプロジェクトに対する脅威になっています。最先端の手法によるプロジェクトマネジメントと経験の増加は、費用とスケジュール管理に役立つものの、安全な労働環境づくりは、さらに難しい課題です。アクセンチュアが行った業界幹部への調査とインタビューによると、洋上風力発電業界は、HSE関連のインシデントと死亡者数には隔たりがあります37。

洋上風力発電と洋上の石油・ガス業界を比較するのは、公平ではありません。近年の石油・ガス業界は、多大な経験と教訓で業界の安全な文化を維持しています。それに対して洋上風力発電業界は、健康的で成熟した業界を目指してHSEに注意し始めたところです。2006年にスタートしたRenewableUKの

「Lessons Learned Database」38は、この数年業界が成熟し、洋上風力発電開発事業者の労働環境改善に取り組んできたことがわかる一事例です。また、業界独自の連携に注目したHSEカンファレンスは、石油・ガス業界から成功したイニシアティブを取り入れ、経験と成果のギャップを埋めるために活用しているもうひとつの事例です。

RenewableUKでは、「建設」と「洋上」を再生可能エネルギー業界のHSEを改善する2つの注目点とし39、「記録されているインシデントの大半が洋上風力発電所の建設段階で起こっており」、「洋上風力発電業界の環境で可能な救済行動のロジスティック上の複雑さが特徴的」と指摘されています。しかし、業界特有のHSEリスクの問題を生み出しているのは、洋上風力発電開発のサプライヤーの能力とスキルの大幅な不足です。開発プロジェクトが大型化し、技術的に複雑になるにつれて、プロジェクトに関われる業界内のサプライヤーの数は少なくなっています。

現在低迷傾向の北海市場で操業している洋上風力発電業界や油田開発(OFS)事業者にとって幸いなのは、石油・ガスと風力発電の洋上でのオペレーションには、重複するところが多い点です。発電エネルギーは異なるかもしれませんが、プロジェクト遂行に必要な事業内容には、多くの類似点があります。洋上風力発電プロジェクトは、初期段階のエンジニアデザインから設置、接続、試運転まで第三者のサプライヤーのサービス能力を必要とします。多くのOFS事業者は、そのポテンシャルを認め、M&Aで洋上風力発電に参入しはじめ、組織内に再生可能エネルギー部門を立ち上げたり、OFSサービスに組み入れたりしています。

洋上風力発電業界のニーズへの対応に特化するサプライヤーもありますが、その多くは、規模や複雑さの増すラウンド3のプロジェクトに対応する経験や能力が十分ではありません。ラウンド1とラウンド2の合計で8.2GW規模なのに対して、ラウンド3のプロジェクトは、9カ所で新たに約32GWの発電所を新設する計画です40。また、ラウンド3のプロジェクトは、水深が深く複雑な環境なので、これまで以上の技術的知識が求められます。より深く厳しい環境への動きに伴って、プロジェクト開発者はOFS事業者の技術力やこれま

2.3開発とHSE:洋上石油・ガス開発業界の経験の活用

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イギリスにおけるメガプロジェクトの検証 30

での経験に注目しています。プロジェクトの規模が大きくなり、複雑になると、コストも増加します。ラウンド3のプロジェクトは10億ポンドを上回るとされ、100億ポンドを超えるゾーンもあります41。つまり、ラウンド3のプロジェクトの重要性は大きく、2020年にはイギリス全体のエネルギーニーズの25%を提供できる計画です42。プロジェクトの規模や資金が大きくなり、その環境が厳しくなり、北海油田のエネルギー資源が少なくなる中、石油・ガス業界の様々な関係先が、風力発電に注目しています。従来のサプライヤー、オペレーター、あらゆる都市が、自らの洋上経験を活かすチャンスだと考え、新しい急成長中の潜在成長力のある洋上風力発電市場に進出しています。

石油・ガスの経験は、洋上風力発電を自律的なオペレーションに引き上げるためのパートナーの重要な要件になります。2011年にアバディーンのロバートゴードン大学と、アクセンチュアが委託した43洋上風力発電や海洋石油・ガスオペレーションに関わる36の企業、組織、団体が、石油・ガスの経験を洋上風力発電に移行する可能性を探る調査に参加しました。その結果、洋上風力発電を将来の有望な収入源と見なす傾向が見られました。また、4分の3以上が、石油やガスでの経験が洋上風力発電に活かせると回答しています。さらに、プロジェクトのデザイン、建設、オペレーション、閉鎖の段階について聞いたところ、60%以上が全段階でスキルの活用ができると答えています。洋上風力発電は、北海の海洋資産が減少傾向になる中で、巨額の利益を見込める可能性があり、より技術的に難しいプロジェクトに移行するために、スキルの一段の変化が求められています。

洋上風力発電の成長市場に注目しているのは、OFS事業者だけではありません。アバディーン市では、洋上での産業をハイドロカーボン資源主体の開発から風力発電に移行し、開発の第一線に据えることにしました。2001年以降、アバディーン・リニューワブル・エネルギー・グループ(AREG)は、積極的に再生可能エネルギー開発プロジェクトを後押ししています。AREGは160名以上のスタッフを抱えた企業で、10年以上にわたって炭化水素エネルギーセンターから再生可能エネルギーセンターへの移行に、アバディーンが大きな役割を果たせるように取り組んでいます。

AREGとジョイントベンチャーのパートナーであるテクニップ・アンド・ヴァッテンフォールは、アバディーン湾に欧州海洋風力発電所設置センター(EOWDC)を作ろうとしています。海洋エンジニアのリーダーとしてのポジションを使って、アバディーンはEOWDCが洋上風力発電開発に大きな役割を果たし、信頼性とキャパシティの検証によってコストやリスクの削減につなげようとしています。また、OFS事業者は、既存能力の直接的な移行だけでなく、プロジェクト開発者との画期的なパートナーシップによって市場参入しようとしています。テクニップとサブシー7は、欧州の大手公営企業と「学術交流協定」(MOU)を締結しています(テクニップは、スペインのイベルドローラ44、サブシー7はスコティッシュ・アンド・サザン・エナジー(SSE)45)。

それらのパートナーシップは、洋上風力発電を構成する2つの主な業界である、陸上風力発電業界と海洋の石油・ガス業界のスキルを、戦略的に融合しようとするものです。それぞれのスキルを活用することによって、「最もコスト効率がよく安全な洋上風力発電プロジェクトの開発」46を目指しています。もしすべての組織が参加すれば、北海油田での40年以上にわたるエネルギー開発で学んだ経験や知識が、洋上風力発電の将来に大きな役割を果たすことになります。

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ケーススタディー

洋上風力発電:資源開発事業者(油田・ガス田)からの視点

油田サービスは、エンジニアリング、調達、建設、メンテナンス(EPCM)の一括契約としても知られ、難しい洋上環境で数十年にわたって設計、建設、オペレーションの経験のあるグローバルな業界です。その経験や能力が移転可能なことを考えれば、その多くの企業が洋上風力発電事業に参入しても驚きではありません。

資源開発事業者(油田・ガス田)やEPCM企業が洋上風力発電に参入する事例アクセンチュアでは、グローバルな資源開発事業者(油田・ガス田)、北海で操業する主要企業に関する一般公開の情報から、洋上風力発電事業への関わりについて調査しました。その結果、特に欧州では、資源開発事業者(油田・ガス田)が新興の洋上風力発電業界にサービス提供を増やしている、あるいわ増やそうとしていることが明らかになりました。ここでは、その一部事例を取り上げ、資源開発事業者(油田・ガス田)が洋上風力発電を成長領域と見なしている状況を紹介します。

テクニップ(Technip)

2011年8月、テクニップは、4番目の中核ビジネスとして正式に洋上風力発電ビジネスに参入しました。新たなビジネスとしてオペレーションの導入、ケーブルの敷設を行っています。それら新規ビジネスの一環として、すでにいくつかの取り組みを行っています。

• サブオーシャングループの全資産を買収し、ケーブル敷設能力を強化しました。約300名のスタッフ、一部陸上資産、重要な継続中の契約、未執行の契約も取得し、洋上風力発電におけるサービス範囲を広げています。

• 欧州の洋上風力発電ビジネスの拠点をアバディーンに置き、イギリスをはじめとする欧州の洋上風力発電プロジェクトを支援する、高度なエンジニアリングセンターとする予定です。また、ヴィッテンフォールやAREG(アバディーン・リニューアブル・エナジー・グループ)とパートナーシップを締結し、11基の新世代洋上風力タービンの設置を提案しています。

• イベルドローラ(グラスゴーの洋上風力発電企業)と覚書を締結し、フランスの西海岸沖に発電所を開発予定です。

• 世界初のフルスケールの浮遊式洋上風力タービン「ハイウィンド」をスタトイル(Statoil)向けに設置し、フィンランドで世界初の重力による耐氷基礎を構築し導入しています。

• ヴァートウィンド(Vertwind)プロジェクトを立ち上げ、テクニップ、ネヌファール(Nenuphar)、コンバーチーム(Conver team)、EDF・エナジーズ・ヌーベルズ(EDFEnergiesNouvelles)の組合で、洋上浮遊式風力タービンの垂直軸の試作品をテストしています。

サブシー7(Subsea7)

• サブシー7は、再生可能エネルギービジネスを行い、プロジェクトマネジメント、エンジニアリング、建設サービスを洋上の再生可能エネルギー業界に提供しています1。

• 2011年、イギリスの公共企業スコティッシュ・アンド・サザン・エナジー(SSE)のリニューアルエネルギー部門SSEリニューアブルズ・ディベロップメンツ2と提携しました。両社をはじめその他のパートナー企業は、洋上風力発電所を開発し、開発を遂行しています。イギリスの洋上風力発電所は、5,500MW以上の発電容量になる計画です。サブシー7の業務範囲は、あらゆる洋上のオペレーション、タービンや洋上変電所、基礎、ケーブルの統合的な設置です。

ネプチューン(Neptune)

ネプチューンは、再生可能エネルギー業界のクライアントに、建設デザイン、総合エンジニアリング、溶接サービスのクライアントごとにカスタマイズされたソリューションを提供しています。アバディーンを拠点とする洋上部門では、北海やヨーロッパ市場のクライアントに対応し、「波や潮のシステム、洋上風力発電領域の海洋再生可能エネルギープロジェクト開発の業界リーダー」を自認しています3。

フルオー(Fluor)

コンセプトデザインから最終建設まで、リニューアルエネルギーのプロジェクトサービスを提供し、エンジニアリング、調達、建設、プラント技術の統合、プログラムマネジメント、オペレーションとメンテナンス、試運転などの経験があります4。イギリス サフォーク沖の500MWの洋上風力発電所開発では、グレーター・ガバード・オフショア・ウィンズ・リミテッドにエンジニアリング、調達、建設(EPC)サービスを提供し、完成すれば世界最大の洋上風力発電所になる予定です5。

31 イギリスにおけるメガプロジェクトの検証

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ペトロファック(Petrofac)

ペトロファックは、欧州の洋上風力発電セクターにサービスを提供するため、ケイパビリティの開発・獲得に注力しています。エネルギーのスペシャリストTNEIの獲得について、CEOは次のように話しています。「ペトロファックは再生可能エネルギーセクターでの地位を構築するつもりです。既存の技術的コンサルティング、洋上エンジニアリング、プロジェクトマネジメント、オペレーションスキルは、急成長する市場に参入するための力強い基盤になります。TNEIの技術能力が加われば、ペトロファックの風力発電サービスの能力も向上します」6

テンネット(TenneT)とはプランニングとエンジニアリングのサポートサービスを提供し、ドイツの北海ではメンテナンスとサポートサービスを行っています7。ボルウィンアルファ(BorWinalpha)のプラットフォームでは、テネットと共に開発と事前オペレーションを担当し、当初はオペレーションプランニングのサポートとして研修の要請や健康、安全、環境面の指示などを行っていました。そのプランニングとエンジニアリングのサポートの後、「ABBのメンテナンスとサポートサービスを受託し、洋上施設設置マネジャーや試運転のエンジニアを提供しています」8。

サイペン(Saipem)

サイペンエンジニアリング・アンド・コンストラクションは、成長戦略のひとつとして、洋上風力発電のような多角的なビジネスで卓越した成果を上げることを掲げています9。

洋上風力発電の事業課題アクセンチュアが資源開発業界(油田・ガス田)の幹部にインタビューしたところ、業界のケイパビリティは、まだ洋上風力発電事業者に十分、あるいは一部すら活用されていないと指摘し、業界が直面している主要な事業課題に言及しました。

石油・ガス業界との資源をめぐる競争

洋上風力発電は、海洋の石油・ガス業界に比べて成熟していない業界であり、資金支援も十分ではありませんが、石油・ガス業界と競合してオペレーションを行わなければなりません。特に同じタイプのエンジニア、プロジェクトマネジャー、船やサプライヤーを集める必要があります。石油・ガス業界は資金力があり、確立された業界なので、洋上風力発電業界に比べて魅力的です。逆に洋上風力発電は、仕事が少なく、資金も乏しく、リスクも大きいので、新しいサプライヤーやスタッフの確保は容易ではありません。

契約

洋上風力発電の発展には、契約のプロセスを成熟させる必要があります。石油・ガス業界には、業務のタイプにあわせて標準的な契約の定型書式があり、それをケースバイケースで修正します。そのため、それぞれのプロジェクトで交渉の範囲や内容を、ゼロから考える必要がなく、共通の契約用語もあります。一方の洋上風力発電業界はそうではなく、契約には時間と費用がかかり、必要以上に労力を要します。すべての契約をゼロから作らなければなりません。また、クライアント(通常公共企業)は、それぞれ契約慣行が異なります。石油・ガス業界では、単独のプロジェクトマネジャー契約者(PMC)が一般的なのに対して、公共企業はプロジェクトを複数の要素に分け、そこに別々のサプライヤーが入札します。洋上風力発電では、その習慣がサプライチェーンを分断し、必ずしもプロジェクト全体のコスト削減につながらず、リスクを高めています。また、最低価格で落札するサプライヤーを選ぶのか、プロジェクトの全体コストを下げるサプライヤーを選ぶのかという状況になります。プロジェクトの要素を一体的に提供しなければ、洋上環境では課題が生じます。船の1日あたり料金が高いため、相互に依存関係にあるサプライチェーンの価値が低下します。

契約におけるリスクの取り扱い、なかでも気象リスクについては、洋上風力発電業界が石油・ガス業界から学ぶことができます。石油・ガス業界では、気象や設備設置のリスクは、資源開発事業者(油田・ガス田)と石油会社で分担しています。しかし、公共企業の考え方からすれば、資源開発事業者(油田・ガス田)がすべてのリスクを負担することになります。大規模な保険がなければ、そうした状況は不可能です。

成長と投資のタイミング

洋上風力発電業界は、将来の予測を立てにくい状況にあります。洋上での設置作業のために新たな船の購入を検討するとき、コストは高く(新しい船は2億5,000万ポンド程度)、不確実性も高い(船が必要な性能を備えていない可能性、例えば50m以上の海底に届くかどうかなど)。そのため、開発事業者は発注を受けてから、どのタイプの船を購入するのかを決めます。ただし、船を所有しいていなければ、発注を受けるチャンスも減ります。

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コスト削減

発展途上の業界と同様、洋上風力発電業界は、バリューチェーンでおそらく約50%ものコスト削減につながる点を見つけ出さなければなりません。タービンは、設置作業のコストの40~45%を占め、メーカーはコスト削減の方法を持っています。この段階のコスト削減は、デザイン、製造、建設、導入プロセスにおけるR&Dとイノベーションによるもので、まず洋上環境に注目し、次に地形を考えます。R&Dが進めば、デザインは安くなり、タービンのサイズと性能も改善します。洋上風力発電のリスク(並びにコスト)の大半は、重い重量によるものです。技術革新によって、素材は軽くなるので、持ち上げる費用も安くなり、オペレーターも実践を積んで効率性を上げなければなりません。

タービンのメーカーや設置作業のように、資源開発事業者(油田・ガス田)のコストは、業界での経験を重ね、イノベーションを続ければ、低下する傾向にあります。業界はくい打ちの構造から府浮遊式の構造に移行する可能性が高く、コスト削減につながる方法ですが、必要な技術的なイノベーションが起こるまでには時間がかかります。

資源開発事業者(油田・ガス田)は、洋上風力発電と海洋の石油・ガス開発に、同様のサービスを提供しています。いずれの業界も同じようなオペレーション費用がかかるので、そのオペレーション費用に合わせて同様の価格を請求します。長期的にみると例えば、大型プロジェクトのための大量購入のようなプロセスと規模の経済性が生じる一方で、人件費、エンジニアの報酬は変化せず、石油・ガス業界が提示する価格に影響されます。

プロジェクトの開発や洋上風力発電所のオペレーション費用が高い状況は、今後も重要な問題となる可能性が高く、業界としてはコスト削減の必要性を感じています。風力タービンの費用はもちろん、他のサプライチェーンのコスト削減は避けられません。R&Dによってエネルギー回収の安価かつ効率的な方法が見つかるかもしれませんが、そのためには新たな技術を開発するための先行投資と、そのテストのための時間が不可欠です。海洋の石油・ガス開発と比較すれば、洋上風力発電のコストは高くなります。時間が経てば、石油・ガス業界の費用が上がり、洋上風力発電の費用が下がって、釣り合いがとれるかもしれません。それまでは、風力発電の開発事業者は、サービスや資源を石油・ガスのメジャーと競合することになり、コストダウンに努めなければなりません。

HSE

HES(健康面、安全性、環境)に関するガイドラインは存在するものの、規制や報告体制は確立していません。それによって洋上風力事業の推進には、大きな問題が生じています。死亡率が高く、業界としての記録もあまり残っていません。死亡率が高いと、この業界に従事することを避け

ようとします。また、HSEに関する規制がないため、最も価格が安い(しかも安全性が最低水準の)サプライヤーを最も魅力的だと思ってしまいます。

HSEの規制を導入すれば、おそらく業界の安全性は高まりますが、オペレーション費用は高くなります。そのため、資金的余裕のない小規模事業者は市場から排除され、規模の大きな事業者が優位になります。そうした統合とサプライ市場の成熟は、他の業界にも見られます。例えば、アメリカのシェールガス業界では、厳しい規制によって小規模事業者が排除されています。

金銭的負担はあるものの、HSEに関する規制によって、持続可能な業界にしなければなりません。経営陣のなかには、HSEはOfgemではない政府機関がマネジメントすべきという意見もあります。というのも一般的な公共企業は、洋上環境からすっかり排除されてしまいます。海洋の石油・ガスの専門家によって、健康や安全についての最先端の手法を、洋上風力発電業界に紹介すべきです。時間と経験によって、洋上風力発電業界の明確なHSEの要件が確立できるようになります。

まとめ資源開発事業者(油田・ガス田)は、イギリスの洋上風力発電の発展に重要な役割を果たします。そうした企業は何十年も経験を重ねて、安全な設備を作り、大規模な洋上設備のオペレーションとメンテナンスを行ってきました。エンジニアリングの資源のほかにも、石油・ガス業界のHSEやプロジェクトマネジメント、リスクマネジメント、契約のシステムでの経験は、できる限り活用すべきです。洋上風力発電業界は、事業構造として費用を半減する方法を見つけ出し、今後5年間の展望、今後10年間の施設建設期間コスト削減の見通しについても明確にしなければなりません。さもなければ、開発事業者が投資をしなくなります。

1 Subsea7S.A.AnnualReportandFinancialStatements2011,www.subsea7.com.

2 SSEOffshoreWindAlliance,Subsea7,www.subsea7.com.

3 Fabrication&OffshoreServices,Neptune,www.neptunems.com.

4 RenewableEnergy,Fluor,www.fluor.com.5 GreaterGabbard-OffshoreWindFarm–EPC,Fluor,www.fluor.com.

6 http://www.petrofac.com.7 ケーススタディー:TenneTBorwinAlpha,Petrofac,www.petrofac.com.

8 http://www.petrofac.com.9 BUEngineering&Construction、2011年11月、Saipem,www.saipem.com.

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風力発電の断続性を考えれば、電力供給網や関連市場に入り、予測可能性を高めておくことが、風力エネルギーの普及には重要です。洋上の風速は陸上よりも速く、安定しているので、洋上風力発電は陸上に比べて「エネルギーミックス」に入りやすいです。そうはいっても洋上風力は比較的予測不可能なので、供給網を統合するには「バックアップ」や「ファーミング」で断続的な供給を一定にする必要があります。

現在の統合状況現在のところ、断続的な再生可能エネルギーのバックアップをしているのは、風力発電フリートです。送電オペレーターがフリートの出力を調整して、バランスよく風力エネルギーを供給し、消費者の需要変化にも終日対応します。そこには瞬動予備力を持つベースロード発電所と、必要に応じて大規模な供給が可能なサイクリングプラントやピーキングプラントも加わっています。

通常ベースロード発電所は、大型の水素、原子力、石炭、コンバインドサイクルガスタービン(CCGT)のユニットで、常に10万メガワット単位の効率的発電が可能で、アウトプットを最適化しています。イギリスでは、天然ガスがベースロード発電所を支え、2010年総発電量の47%を占めています。そのほかに石炭が28%、原子力が16%となっています47。天然ガスの割合が突出しているのは、北海でのガス田の発見によって、過去20年間、天然ガス発電所が大幅に増設されたことによるものです。石炭は生産量が減少し、排出規制も厳しいため、バックアップは石炭からガスに変わりつつあります。

近年は、電力市場の自由化と大規模な再生可能エネルギーの配備によって、個々のプラントがいつ、どれだけの電力の供給を求められるのか、全く予想できない状況です。そのため逆にプラントの稼働時間は伸びています。大半のプラントは10年以上前に設計、建築されているので、資本コストを抑え、安定的に最大出力を効率化するようになっており、高度な出力の調整能力はありません。そうした既存のベースロード発電所は、サイクリングプラントと位置付けるには、費用がかかり、スピードや出力の調整ができません。柔軟な対応ができるようにしようとすると、燃料効率が低下して、一般的なベースロードのオペレーションよりもkWhあたりの排出量も増加します48。

ベースロード発電所に加えて、電力需要の増える日中などには、ピーキングプラントがバックアップ能力を発揮します。一般的にシンプルサイクル、オープンサイクルのガスタービンまたはディーゼル発電なので、発電開始や発電量の増減がスムーズで、需給変動への対応が容易です。そうした対応の速いピーキングプラントは、ベースロード発電所よりも風量発電の発電量の変動をうまく一定に保つことができます。しかしピーキングプラントは、発電フリートでは最もエネルギー効率が低いので、変動費が高騰し、排出量も増えてしまいます。

洋上風力発電所の配備の有効性を改善するには、現状を変革し、風力発電の断続性をうまくバックアップできる能力を組み込むことです。そうした候補になりそうなのは、柔軟なバックアップ能力を備えた天然ガスや水力、長期的には新たなエネルギー貯蔵技術やデマンドレスポンスシステムなどが有望かもしれません。

バックアップ発電の柔軟性の改善発電フリートの変化による送電網の要請に応じて、公共企業や発電所の開発事業者は、そうしたニーズに対応しようとしています。新たな発電所は柔軟性が重視され、燃料や発電量を柔軟に変えられるようになっています。タービンや熱交換器、素材の改善により、プラントの対応が迅速になっています。例えば、ドイツの大手公営企業が導入している最新の石炭やガスの発電所は、従来のものより増減スピードが3倍になっています49。そうなると、1カ所の大規模な発電所で、風力発電の断続性をこれまで以上にバックアップできます。現在の風力発電のバックアップは、イギリスで広く普及している天然ガスが最適というのが一般的な見解です。戦略国際問題研究所のレポートでは、「再生可能エネルギーの開発には不可欠なパートナー」とされています50。

そうした送電網の柔軟なバックアップとしてガスを配備すれば、欧州経済でガスへの移行が起こる可能性が高くなります。カーボンプライシングやその他の排出規制によって、古い石炭プラントの廃炉も続きます。イギリスでは、ガス発電が大きな割合を占めていることから、この傾向はあまり公表されていません。しかしDECCの予測では、2016年までに約11GWの石炭と火力発電所、6GW分の原子力発電所が閉鎖されます51。それだけの規模の発電所が閉鎖されれば、

2.4洋上風力発電の送電網の統合

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新たに大規模な発電所を作り、2015年以降の供給不足のリスクを最小限しなければなりません。新たな供給源の大半は天然ガスのユニットになります。

CCGTの利用が進めば、新たな送電網のキャパシティが構築され、旧式を改良した既存プラントも収支を考慮した上で、柔軟性が高いものになるはずです。ガスタービンや発電所のメーカーであるシーメンスやGEなどは、CCGTのプラントが柔軟になり、ベースロードオペレーションの時は高い効率性を維持できるように取り組んでいます。その開発には、GEのフレックス・エフィシェンシー50ccパワー・プラント52(再生可能なバックアッププラントして発売)のような新しいプラントデザイン、シーメンス53が提案している既存CCGTプラントのアップグレードなども含まれています。

最近のシンプルサイクル・ガスタービンモデルも、エネルギー効率が向上しており、既存のベースロード発電に匹敵するレベルです。例えば、最新の200MWプラスモデルの場合、10分で75%のキャパシティまで到達し、シンプルサイクルオペレーションで38.5%まで効率が上がり54ます。これは通常の石炭プラントレベルです。それらのユニットは、風力エネルギーの変動をバックアップする効率的な手法になり、運転予備力や柔軟なベースロードの短いサイクルをバックアップできます。そうしたモデルは最先端のガスタービン技術であり、古くなったピークプラントでは、それほどの効率性は提供できず、再生可能エネルギーのバックアップには送電網全体へのマイナスの影響しかありません。そのため、新たなピークキャパシティと柔軟なCCGTキャパシティの配備は、リニューアル可能な配備と共に行い、オペレーションコストと排出量の最少化につなげるべきです。

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断続的な発電のバックアップのための技術的選択肢となった天然ガス

サイクル能力

LNG火力発電所は、石炭やバイオマスのボイラー・トゥ・スチームタービンシステムと比べて循環が簡単です。その理由は燃料供給が容易で、反応がよい直燃のガスタービンシステムだからです。新しいCCGTのプラントは、新しい石炭プラントが1分間で27MWの立ち上がり55に対して、1分間で38MWです。このスピーディーな立ち上がりで、様々なアウトプットを迅速かつシステムへの負荷なく発電できるので、風力発電の出力変動の調整に技術的にも経済的にも優れたシステムなのです。原子力発電所は、さらに立ち上がりが速く(63MW/分)、限界費用の低さと排出ガスを出さないことから、電力会社はベースロード発電として採用しようとします。

CO2排出量

天然ガスによる発電は、石炭によるものに比べてCO2をはじめとする排出ガスの量が少ない。その理由は、石炭よりも天然ガスの方が炭素含有量が少なく、天然ガスの発電所の方が燃料をエネルギーに変える燃料効率が高いからです56。

供給の安全性

近年、天然ガスの埋蔵量の推計が増加し、グローバルな液化天然ガス(LNG)市場が拡大を続けていることから、グローバルな天然ガスの供給が安定し、長期的に安値が予想されています。そうした新しい低コストガスの典型例となった背景には、慣例にとらわれないガス採取方法の改善があり(液圧破砕技術によるシェールガス採掘)、経済的に回収可能な埋蔵量が増えています。そうした埋蔵量の増加は、2000年代半ばの天然ガス価格の高騰によるLNG投資の波にもつながっています。新たなLNGの生産能力には、かつては未開発だった埋蔵分が入っており、新しく再ガス化も欧州やアジアで可能になったことで、LNG市場の流動性と供給の多様性は、ますます高まっています。

柔軟なキャパシティの開発業者に経済的な安定性を確保するため、政府や送電事業者は、風力発電のバックアップとして優先権をもらえるようにすべきです。既存のベースロード発電所に比べれば、効率もサイクルスピードも格段に上回っています。炭素価格の制度設計は、何よりも経済効率的で、さらに効率的で柔軟な対応のできるプラント開発のインセンティブになります。ほかにも市場ベースの政策は(容量市場など)、柔軟性のあるバックアップ容量への投資を促す手段になります。DECCの電力市場改革に係る白書に記されているように、現在イギリス政府は、潜在的なキャパシティメカニズムを調査し、再生可能エネルギーの成長を支援する十分なバックアップキャパシティの提供を目指しています。いかなる容量市場も、新設及び改良のプロジェクトの中で、柔軟性への投資に対する経済的保証を提供すべきです。

安定した洋上風力発電所:独自のバックアップ能力

いくつかの場所では、再生可能エネルギー開発事業者が、極めて柔軟なガス火力発電所を、安定供給が難しい風力発電所に共同で併設し、1つの安定した発電所として電力市場に参入しています。数ギガワットの洋上風力発電プロジェクトで、100%のバックアップ能力を備えるのは負担が大きすぎますが、専用のバックアップ能力を共同で保有するのは、安定的供給ができない電力を送る不安定さを抑制する方法として価値があるかもしれません。また、発電効率の悪いベースロードユニットやピークユニットに必要なサイクル数を減らせます。また、そうした連携は、洋上風力発電事業者とバックアップの風力タービンオペレーターの間で、予測可能な風力発電システムを使用し、データを共有できるので、最適なバックアップ能力の計画と配備も可能になります。

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先ほど紹介した容量市場システムとは対照的に、そうした独自の開発は、より直接的にバックアップ能力の確保につながります。また、目標が明確なので、シンプルなアプローチで計画、実行が可能です。ただし、リスク負担が大きいのは次善のプロバイダーであり、一度バックアップ能力が確立されれば、バックアップに関するさらなるイノベーションが生まれにくくなります。DECCは、市場のアプローチではなく、政府が戦略的に埋蔵量を保有、メンテナンスする責務を負うほうが望ましいと思っているようですが57、容量市場は信頼できる市場であり、現在も事前調査は続いています。

水力発電

風力発電のバックアップとして天然ガスは有望ですが、水力発電は、現在実用化されている再生可能エネルギーをバックアップする手段として、技術的に最も効果的です。水力発電は、回転が速く、排出ガスも少なく、サイクルプロセスでのエネルギー効率も低下しません。将来洋上風力発電で有名な国になりうるノルウェーは、28GWの水力発電能力を有する国でもあります58。つまり、ノルウェーは、洋上風力発電と水力発電を統合したうらやましい立場なのです。水力発電は、技術的に魅力的ですが、再生可能エネルギーのバックアップとしての役割は限られており、ふさわしい設置場所も少ない。ノルウェーやカナダのような国々は、大量の水力発電のキャパシティに恵まれています。しかし、ほかの国々では、大規模な水力発電所を設置する場所が限られいます。アメリカと西欧諸国では、水力発電の候補地はすでに開発され、新たに施設を作っても、大きな成長は望めません。

送配電系統の相互連携への本格的な投資は、その制約に係る問題を解決する大きな力になるかもしれません。例えば、ある地域において、発電量に変動のある風力発電のバックアップを、離れた地域にある水力発電が担う可能性もあります。実際そうした可能性についての調査がノルウェーのCEDREN調査センターで行われており59、ドイツをはじめとするEU諸国が、ノルウェーの揚水貯蔵のインフラを活用して、既存の再生可能エネルギー発電容量のバランスを図る方法や、北海で計画されている大規模な洋上風力発電に活かす方法が検証されています。ノルウェーの揚水貯蔵のインフラを拡張して、高圧直流送電「スーパーグリッド」に投資をすれば、イギリスやアイルランドをはじめとする欧州における再生可能エネルギーのバックアップをノルウェーの「グリーンバッテリー」ができる可能性もあります。

将来の技術

現在のところ、天然ガスと水力発電が最善の技術ですが、炭素フリーのエネルギーが確保された未来への動きの中で、欠点もあります。技術的に優れているのは、柔軟にキャパシティを変えられ、過剰があれば効率的に再生可能エネルギーとして貯蔵できる点です。需要があれば提供できるので、スムーズな供給が可能です。そうした貯蔵は、送電網や現地レベルで行い、消費者の電力使用量を発電量の変動にあわせて調整する自動デマンドレスポンスにバックアップされている場合もあります。そうした技術はかなり有望ですが、いずれも新しい技術なので、近々再生可能エネルギーのバックアップを広く行う可能性は低いです。

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39 イギリスにおけるメガプロジェクトの検証

公益事業レベルのエネルギー貯蔵技術としてバッテリーやフライホイール、圧縮ガスの調査が何十年にもわたって行われていますが、再生可能エネルギーの台頭や、家庭用家電製品からのバッテリー技術の躍進により、投資資金を回収しつつあります。電力貯蔵技術の主な課題は、十分な両方向の効率性を提供し、電力貯蔵を経済的に魅力的な仕組みにすると共に、十分な耐久性を備えた業界のタイムスケール(年単位ではなく10年単位)でオペレーションできるシステムとし、コストと資源の観点から拡張性のあるものにすることです。現状では、(揚水発電を除いて)それらを克服できる技術はありません。A123システムズによる中国とハワイでの風力発電のバックアッププロジェクトのように60、いくつか試験的プロジェクトは始まっているものの、まだ規模が小さすぎて商用にはなりません。主要なエネルギーをバックアップできるほど耐久性と拡張性のある技術になるまでには、まだ何年か必要です。

デマンドレスポンスは、再生可能エネルギーの断続性をマネジメントする新たな手法です。現在は、主にピーク時の需要抑制に使われており、電力事業者側が大口顧客やアグリゲーターにピーク時の電力使用を控えてもらい61、送電網への負担を和らげるものです。現在は手動のプロセスで、人と人とのコミュニケーションと手動での電力使用調整を行っています。しかし将来的には、エネルギーマネジメントシステムの構築が自動化され、電化製品や機器が「スマート」機能で構築され、「スマートグリッド」が完成し、高度に自動化したデマンドレスポンス能力が組み入れられたシステムが完成します。

このシナリオでは、エアコンや照明などの不必要な負荷は建物のコントロールセンターで調整可能で、業務施設は速やかに不必要な電力の需給管理をします。電気自動車がある程度普及していれば、充電ステーションでリアルタイムに電力消費を管理します。そうなれば、自動車のバッテリーから双方向の電気の流れが可能になり、バッテリー、が先ほど説明したような電気の貯蓄拠点になります。

デマンドレスポンスには大きな可能性がありますが、建物は半分の寿命でも数十年なので、ある程度の建物や工場に集中管理のコントロール機能やエネルギー効率の良い技術を整備するには、数十年必要になります。それまでの間、天然ガスと水力発電が、クリーンで効率的かつ経済的に統合された洋上風力発電のキャパシティを最大限活かせるような手法を提供します。しかし将来的には、それらのシステムが、風力発電の大きな変動特性のバランスを図る機会を提供するでしょう。

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資金調達メガプロジェクトは多大な資金を必要とする投資であり、イギリスが計画している規模の洋上風力発電所の開発資金として、数百億ポンドを調達するのは、難しい課題です。ただし、それだけの規模の投資資金調達には、改善できる点もあります。

グリーン投資銀行を通じた政府融資のほか、洋上風力発電のメガプロジェクトの資金面について、資金調達を容易にし、保険費用を削減するには、次のような方法があります。

• 健全なビジネスケースの実証:資金を確保するには、健全なビジネスケースを示さなければなりません。投資を期待できそうなコミュニティーには、洋上風力発電が従来の発電技術と競合するようになるという展望を示すと共に、電気や燃料価格、炭素価格、規制、政府支援をはじめとするサポートなど、ビジネスを左右する大きな要件の現実的なシナリオを提示する必要があります。

• 建設やオペレーション、資金調達、規制などの徹底したリスク調査とリスクマネジメント:資金提供者は、一般的に保守的で、リスク評価を重視しています。洋上風力発電のリスクのほかにも建設やオペレーションの体系的かつ包括的、透明で客観的な事前調査とプレゼンテーション、それらに対する対応計画は、資金確保の可能性を高めるはずです。

• 証券化をはじめとする体系的なファイナンス手段:資産担保証券などの債券があれば、公的及び私的投資家は洋上風力発電に対する追加投資に使えます。しかし、洋上風力発電は新興ビジネスなので、何らかの政府支援や政府サポートが必要になる可能性が高くなります。

• 資金提供を求める相手のリスク選好に合わせた、プロジェクトの契約、開発、融資の説明―リスク/リターンの選好は、相手方が投資銀行、インフラファンド、保険ファンド、年金ファンド、プライベートエクイティのいずれかによって変わります。プロジェクトの開発者とオペレーターは、特定先から資金提供を受けるために、慎重にプロジェクトを探り、相手に合せて説明します。

承認と規制許認可申請プロセスの合理化や環境アセスメントプロセスなど、開発に関する障害を克服するイギリス政府の取り組みは、概ね市場から評価されていますが、サプライチェーンについての懸念は払拭されていません。(2013年当時)政府は小さな修正には前向きですが、必要な抜本的変革を行うという強い思いは、まだ欠けていると思われています。

明らかに求められているのは、政府がより積極的に調整を行うことです。ある領域で失敗すると(送電網のインフラ、設置のための船、タービンのメーカーなど)サプライチェーンの別要素への重要な投資も危うくなります。北海における40GWレベルの洋上風力発電計画は、イギリスの開発業界にとって巨大なチャンスです。政府からの支援を示さなければ、そのチャンスを逃す恐れもあります。そのリスクを最小限にするためには、支援を増やし、適切なサプライチェーン構築のための需要サイドと供給サイドの連携を強化することです。

HSE分野とREACH要件(EUにおける化学物質の登録、評価、認可及び制限)については、規制と透明性も欠如しています。洋上風力発電に特有のHSE規制は、業界の安全性を向上させ、保険費用を抑制する可能性があります。

公的なR&Dプログラム洋上風力発電への強い後押しの一環として、イギリス政府は洋上風力タービン技術におけるイノベーションのための巨額ファンドを提供しています。イギリスの再生可能エネルギーロードマップでは、R&D支援は、カーボントラスト、エネルギー技術研究所、英国エネルギー・気候変動省(現在のビジネス・エネルギー・産業戦略省)が行うとされています。欧州レベルでは、各国の協力的活動のために欧州風力エネルギー技術プラットフォームが設立され、FP7では、洋上活用の可能性を探ることも発表されています。開発事業者、サプライヤー、オペレーターは、そうした支援を活用する方法を探り、協力して技術改革を進め、市場関係者に大規模な民営のR&Dプログラムの必要性を認めさせなければなりません。

2.5その他の考慮すべき点と課題

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41 イギリスにおけるメガプロジェクトの検証

結論3

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イギリスにおけるメガプロジェクトの検証 42

洋上風力発電は、クリーンな再生可能エネルギーを潤沢に生み出す有望なプロジェクトです。イギリスにおいて、計画中を含めて800MWを超える巨大プロジェクトが進行しているのは、政府支援の包括的枠組みのおかげです。今では石炭や天然ガスのプラントと競合できるレベルになっています。しかし、本当に(政府支援なく)従来の発電技術と競合できるようになるには、洋上風力発電の開発コストを、今の1MWあたり230万ポンドから130万ポンドまで半減させ、プロジェクト全体の収支を改善する必要があります。アクセンチュアは、そうしたメガプロジェクトが規模の効率性を追求し、開発やオペレーションの最新手法を取り入れ、デジタルテクノロジーを活用した自動化によりサプライチェーンの経済性を高めることによって、洋上風力発電の収支を改善できると考えています。

全世界合計で3,917MWの発電容量を有する洋上風力発電は、全世界の総発電容量の0.08%に過ぎません。(2013年当時)62。しかしイギリスは、この小さな市場を、今後20年間で13件のメガプロジェクトを推進することによって、合計37,125MW以上の発電容量を持つ規模にスケールアップしようとしています。イギリス以外では、わずか11件で800MWの発電容量のプロジェクトが計画されているだけです。また、ほかの国々では、通常メガプロジェクトは2~3件にも満たない数です。そうなると洋上風力発電の将来を大きく左右するのは、イギリス市場の状況です。その成否によって、政府の補助金に支えられて少しずつ成長するニッチ市場のままなのか、エネルギーミックスに大きく貢献できるのかが決まります。

現在のコスト構造とオペレーションモデルが試されるのはイギリス本レポートでは、次のようなメガプロジェクトの開発における様々な課題について注目しました。

• 風力タービンのサプライチェーンと船舶の契約。それらは、現在のところ計画されているプロジェクトに量、規模、業界の独自性への対応という観点から不十分です。バリューチェーンの需要サイドと供給サイドの連携が、今後の成功の鍵になると思われます。

• 洋上風力発電業界のHSEパフォーマンスの改善。開発およびオペレーションにおいて、成熟した石油・ガス業界の海洋で学んだ教訓、ケイパビリティ、手法を活用して、比較的短期間での改善が求められます。

• 洋上風力発電の最適化とバックアップ。大規模な発電の不確実性の問題を最小限に抑えるために、他のエネルギー資源による発電容量のバックアップが不可欠です。

もちろん、ほかにも資金調達など重要な課題は様々あります。しかしアクセンチュアでは、ここまで指摘した課題が洋上風力発電のメガプロジェクトに特有のものだと考えています。

ここで指摘した課題に効果的に対処すると共に、洋上風力発電業界の成功には、次のような取り組みも求められると考えています。

• 関係者による業界の発展。プロジェクトの開発事業者(公共事業、石油会社、共同事業体など)、資源開発事業者(油田・ガス田)、海洋契約業界、風力タービンなどのメーカー、送電会社、それらすべてが規模、スケジュール、お互いのビジネスに対する理解、競合できるコスト構造の必要性を共有する必要があります。

• 規制当局との対応、プロジェクトの計画と開発、リスクマネジメント、HSE、業界関係者との関係をより成熟させなければなりません。

• 大規模なプロジェクトのマネジメントと契約における、最先端手法の本格的な導入が求められます。

• 柔軟で低コストのインフラとオペレーションモデルによって、共同事業体からの要請、所有権や操業権の変更にも対応します。

• HSE性能を改善するために、簡潔にまとめられた規制の明確化が求められます。

• 課題やチャンスの包括的かつエンド・ツー・エンドの理解によって、適切なケイパビリティ、資源、技術を構築し、海洋環境での開発やオペレーションに活かします。

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43 イギリスにおけるメガプロジェクトの検証

障害を克服し、ケイパビリティを構築して戦略的な洋上風力発電業界にすることは、バリューチェーンの面々には、それぞれ異なる意味があります。洋上風力発電に関わるUtility事業者、資源開発事業者(油田・ガス田)、石油・ガス会社、船舶の提供者、風力タービンのメーカーは、役割も長年の特性もケイパビリティも異なります。このセクションでは、洋上風力発電の様々な関係者への影響について簡単に検証します。

Utility事業者Utility事業者は、開発者、共同事業体メンバー、オペレーターなど、洋上風力発電のメガプロジェクトでは多彩な役割を果たします。その成功には、次のようなことが求められます。

• 発電業界において、洋上風力発電が直接あるいは間接的に果たす役割を判断し、理解すること。

• メガプロジェクトの開発に必要な資産とスキル、その取得方法を理解すること(ケイパビリティの構築、取得、ジョイントベンチャーやサービスプロバイダーなど)。

• プロジェクトマネジメントとエンジニアリングスキルを高め、業界に求められる構造的なコスト削減を実現すること。

• 石油・ガス業界など他の業界の経験を学び、その経験を共有する手法を構築すること

• 新たな契約スキームを構築してリスクを分散し、サプライチェーンに十分なインセンティブを与えること。例:ビジネスの論拠を1MWあたりのコストから1MWhあたりのコストに変える、細分化した契約からエンジニアリング、調達、計画(ターンキー)のアプローチに変える

• 石油・ガス企業をはじめUtility事業者以外との共同事業のためのオペレーションモデルを確立し、実行すること。

主要関係者への影響• 長期的な技術やR&D投資の必要性を理解し、戦略を確立すること。例:ピークマネジメント、デマンドレスポンス、エネルギーの貯蔵

• 発電量の変動特性をマネジメントするための戦略を策定し、実行すること。例:柔軟な発電能力とのバンドリング、送電を通じたマネジメント

• 洋上風力発電特有の簡潔で確固たるHSE規制の必要性を理解すること。

• 風力タービンメーカー、船舶の契約事業者、油田サービス事業者、その他の業界関係者と連携し、コスト削減の展望の構築、業界の認知度の向上、関係者の増大(資金提供者など)に努めること。

石油・ガス会社洋上での大規模な施設の建設とオペレーションを実際に経験しているのは、石油・ガス会社だけです。そのため、洋上浮力発電のメガプロジェクトのバリューチェーンで、主要メンバーになる可能性があります。また、天然ガスの資産も保有しているので、洋上風力発電の重要なサポート燃料になるかもしれません。イギリスでは、スタトイル(Statoil)やレプソル(Repsol)がUtility事業者などと連携し、洋上風力発電に参入し始めています。参入企業には、次のようなことが求められます。

• 海上でのプロジェクトマネジメント、開発、建設、オペレーション、HSEの経験を活用すること。例:洋上風力発電の事業開発者やオペレーションへの知識の共有と技術継承の必要性を認識すること

• 洋上風力発電業界が、どのように(技術、オペレーションモデル、契約など)天然ガスを効果的に活用するかを判断すること。

• 共同事業の経済性等を総合的に評価すること

• 洋上風力発電に特有のHSEフレームワークを開発事業者に取り入れてもらうこと。

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イギリスにおけるメガプロジェクトの検証 44

風力タービンメーカー風力タービンメーカーの役割はやはり大きいものの、洋上風力タービンに対する安定的な長期的需要の展望が明らかになるまでは、技術やツールの見直し、オペレーションや投資、ケイパビリティの増強は、おそらく自制します。市場への供給に成功するには、次のようなことが求められます。

• プロジェクト開発者との新たなパートナーモデルを模索し、将来の需要を確保すると共にリスクを軽減すること。

• 洋上環境でのロジスティクスやオペレーションがこれまでとは全く異なることを考えれば、技術にはエンド・ツー・エンドの視点が必要であり、設計、製品・部品工場、ロジスティクス、メンテナンスへの配慮が欠かせない点を認識すること。

• 最も効率的で大規模なサプライチェーンを構築するためには、製品供給する国と設備を構築する需要国の国境を越えた協力が不可欠だと認識すること。

• 部品の標準化や、洋上風力発電専用のタービンや技術のためのR&D資金を集めるには、画期的な方法を探り、構築すること。例:バリューチェーンすべてのメンバーとのパートナー関係

• プロジェクトの開発事業者、船舶の契約事業者、資源開発事業者(油田・ガス田)、その他の業界関係者と関わり、コスト削減の展望の構築、業界の認知度の向上、関係者の増大(資金提供者など)に努めること。

資源開発事業者(油田・ガス田)資源開発事業者(油田・ガス田)の役割も重要で、建設、オペレーション、ロジスティクスのコスト削減に向けた触媒のような役割を果たします。求められるのは、次のような行動です。

• 開発事業者や関係組織との画期的なパートナー関係を探り、技術的なブレークスルー、コスト削減、リスク分散につなげること。

• 開発事業者が洋上風力発電業界特有のHSEフレームワークを取り入れられるようにサポートすること。

• M&Aを通じた洋上風力発電事業への参入機会を探り、ケイパビリティを増強すると共に、洋上風力発電事業に関する知識を速やかに取得すること。

• 海上における石油・ガス業界での貴重な経験を活用し、そこで学んだ知識を洋上風力発電の開発事業者や船舶の契約事業者と共有して、洋上風力発電業界の発展を促すこと。

• 業界で学んだ知識を他の資源開発事業者(油田・ガス田)と共有すること。

船舶の契約事業者船舶の契約事業者の行動は、プロジェクトの行方を左右し、プロジェクトのライフサイクルに大きく影響します。そのため、次のような行動が求められます。

• 開発事業者との長期にわたる戦略的合意とコミットメントを求め、造船費用の回収をより確実にすること。

• プロジェクト開発者と共に様々な業界で船舶を最大限有効活用する方法を探すこと。例:潮力・波力エネルギー、石油・ガスプロジェクト

• 風力タービンの設計者やプロジェクト開発者と密接に連携し、洋上風力発電プロジェクトにふさわしい船体デザインを投入すること。

• 船舶の特性を把握し、洋上風量発電事業に最適なものにすると共に、可能な場合は既存の船を改修すること。

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45 イギリスにおけるメガプロジェクトの検証

用語集4

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用語集

用語/略語  定義・解説

AREG Aberdeen Renewable Energy Groupベースロード発電所 大規模な水力、原子力、石炭、コンバインド・サイクル・ガスタービン発電所。

ピーク時、オフピーク時に稼働。CAPEX 資本支出CCA  気候変動法 (イギリス)CCGT コンバインド・サイクル・ガス・タービンDECC 英国エネルギー・気候変動省(現在のビジネス・エネルギー・産業戦略省)EMR 電力市場改革(イギリス)EOWCD 欧州洋上風力配電センターEPS 排出性能基準e-ROC  再生可能エネルギー購入義務証書の電子オークション(イギリス)ETI エネルギー技術研究所ETS 排出量取引制度EU 欧州連合EWEA 欧州風力エネルギー協会FIT-CFD 差金決済型固定価格買取制度GHG 温室効果ガスGIB グリーン投資銀行(イギリス)GW ギガワットHSE 健康、安全、環境HVAC 高圧交流送電HVDC 高圧直流送電IPA インディペンデント・プロジェクト・アナリシスLNG 液化天然ガスM&A 合併と吸収(Merger and acquisition)メガプロジェクト 800MW以上の洋上風力発電プロジェクトMOU 覚書MW メガワットMWh メガワットアワーNaREC 国立再生可能エネルギーセンターNFPA 非化石燃料購入庁O&M オペレーションとメンテナンスOfgem ガス・電力市場規制局(イギリス)OFS 油田サービスORED 再生可能エネルギー普及局ピーキングプラント シンプルサイクル、オープンサイクルのガスタービンまたはディーゼル発電。

ピーク時に稼働REACH EUにおける化学物質の登録、評価、認可および制限RO 再生可能エネルギー使用義務制度(イギリス)ROC 再生可能エネルギー購入義務証書(イギリス)TIC 技術イノベーションセンターTWh テラワット・アワー英国クラウン・エステート 洋上風力発電用の海底の使用権を管理する団体UNFCCC 気候変動枠組条約

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筆者5MelissaStarkLead,[email protected]

MauricioBermudez-NeubauerLead,OffshoreWind

[email protected]

[email protected]

[email protected]

[email protected]

[email protected]

[email protected]

[email protected]

執筆協力者(アルファベット順)[email protected]

[email protected]

[email protected]

ØyvindStrø[email protected]

日本語版編者浦上雄二郎アクセンチュア株式会社 素材・エネルギー本部公益事業部門統括マネジング・ディレクター

山﨑智アクセンチュア株式会社 素材・エネルギー本部再生可能エネルギー統括マネジング・ディレクター

小野田敬アクセンチュア株式会社 素材・エネルギー本部マネジング・ディレクター洋上風力発電&VPP事業担当

佐藤泰介アクセンチュア株式会社 素材・エネルギー本部テクノロジーコンサルタント

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参考資料6

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1 ヨーロッパ地域の洋上風力スピードは、TheWorldofWindAtlases-Europeのサイトwww.windatlas.dkを参照。

2 年間約1,000テラワットアワー(TWh)とされている。

3 BWEAの発表データ「OffshoreWind,RenewableUK」(www.bwea.com)

4 欧州議会、2009年4月23日議会の再生可能エネルギー促進指令(2009/28/EC)。正式な議事録はeur-lex.europa.euを参照。

5 英国エネルギー・気候変動省(現在のビジネス・エネルギー・産業戦略省)のカーボンバジェットwww.decc.gov.uk

6 英国エネルギー・気候変動省(現在のビジネス・エネルギー・産業戦略省)「Capacityof,andelectricitygeneratedfrom,renewablesources」www.decc.gov.uk

7 英国エネルギー・気候変動省(現在のビジネス・エネルギー・産業戦略省)UKRenewableEnergyRoadmap」2011年7月、www.decc.gov.uk

8 英国エネルギー・気候変動省(現在のビジネス・エネルギー・産業戦略省)「Renewablesourcesofenergy,DigestofUnitedKingdomenergystatistics2011」第7章 www.decc.gov.uk

9 電力市場改革(EMR)白書2011、英国エネルギー・気候変動省(現在のビジネス・エネルギー・産業戦略省)、www.decc.gov.uk

10「UKRenewableEnergyRoadmap」(2011年7月)、英国エネルギー・気候変動省(現在のビジネス・エネルギー・産業戦略省)、www.decc.gov.uk

11 同上

12 GIBの使命は、資金支援によりプライベートセクターのグリーンエコノミーへの投資を促し、新たなグリーンエネルギー並びに二酸化炭素回収技術の開発につなげることである。

13 洋上風力開発業者フォーラムは、政府と業界が、洋上風力発電の実現と提供を妨げかねない障壁へのソリューションを共に見つけ出すために、クラウン・エステートが設立した。www.thecrownestate.co.uk

14 ガス・電力市場規制局(ofgem)の洋上送電の調整プロジェクト。www.ofgem.gov.uk

15 SEAプロセスとは、英国エネルギー・気候変動省(現在のビジネス・エネルギー・産業戦略省)の戦略的環境アセスメントのこと。www.offshore-sea.org.uk

16 英国エネルギー・気候変動省(現在のビジネス・エネルギー・産業戦略省)「UKRenewableEnergyRoadmap」2011年7月、www.decc.gov.uk

17 洋上風力発電所のリース、英国エネルギー・気候変動省(現在のビジネス・エネルギー・産業戦略省)、www.decc.gov.uk

18 2012年3月21日の英国の財務大臣ジョージ・オズボーンのコメント。www.hm-treasury.gov.uk

19 再生可能エネルギー使用義務制度、英国エネルギー・気候変動省(現在のビジネス・エネルギー・産業戦略省)、www.decc.gov.uk

20 RenewablePortfolioStandardsFactSheet、CHPパートナーシップ、米国環境保護庁、www.epa.gov

21 RenewablesObligation–TotalObligationLevelsfor2010、Ofgem、2011年8月5日、www.ofgem.gov.uk

22 CalculatingtheLeveloftheRenewablesObligation、英国エネルギー・気候変動省(現在のビジネス・エネルギー・産業戦略省)、www.decc.gov.uk

23 RenewablesObligationAnnualReport:2009-10、Ofgem、www.ofgem.gov.uk

24 E-ROC:オンラインROCオークションサービス、www.e-roc.co.uk

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25「CertificatesbyTechnologyandOrder」、2011‐2012、Ofgem、www.renewablesandchp.ofgem.gov.uk

26 ほかのすべての条件が同じで、燃料、カーボン価格(炭素排出に係る税金や排出権価格)、電気料金が上昇すれば、洋上風力発電の競争力は上昇する。

27「EuropeEnthusiasticforOffshoreWind,ButRealActionLags」WorldGasIntelligence、2011年12月14日、global.factiva.com

28「ReviewofthegenerationcostsanddeploymentpotentialofrenewableelectricitytechnologiesinUK」、英国エネルギー・気候変動省(現在のビジネス・エネルギー・産業戦略省)、www.decc.gov

29 英国エネルギー・気候変動省(現在のビジネス・エネルギー・産業戦略省)「UKRenewableEnergyRoadmap」2011年7月、www.decc.gov.uk

30 様々な発電技術の投資とオペレーション費用の比較ができる指標。

31「Megafielddevelopmentsrequirespecialtactics,riskmanagement」、オフショア、2003年6月、©2003PennWellCorp.,http://ipaglobal.com.

32 すでに説明したように、メガプロジェクトとは、800MW以上のキャパシティを持つ洋上風力発電プロジェクト。

33 プロジェクトの詳細は、クラウン・エステートのサイトを参照。www.thecrownestate.co.uk

34 図4参照。「UK-Offshorewindsettoseecostsfallandjobsriseovernext10years」RenewableEnergyMagazine、2011年7月11日、http://global.factiva.com.

35「Windpowerandshipyardindustriesmakejointcallforinvestmentsinshipsforoffshorewindexpansion」、欧州風力エネルギー協会、www.ewea.org.

36 英国エネルギー・気候変動省(現在のビジネス・エネルギー・産業戦略省)「UKRenewableEnergyRoadmap」2011年7月、www.decc.gov.uk

37 アクセンチュアでは、RenewableUKのサイト(www.bwea.com/statistics/2009.asp)から2009年に構築された洋上風力発電、「AnnualHealthandSafetyReport2010」から洋上と大型陸上風力タービンでの死亡者数を推計。許可を得て転載。

38「AnnualHealthandSafetyReport2010」、RenewableUK、www.bwea.com.許可を得て転載。

39 同上

40 英国エネルギー・気候変動省(現在のビジネス・エネルギー・産業戦略省)「UKRenewableEnergyRoadmap」2011年7月、www.decc.gov.uk

41 同上

42「TheCrownEstateAnnouncesRound3OffshoreWindDevelopmentPartners」クラウン・エステート、2010年1月8日、www.thecrownestate.co.uk.

43 アクセンチュアの委託調査は、ロバートゴードン大学のMBAコースのAudu,M.、Jinadu,B.、Mugisha,A.、Olusoga,A.が実施。

44「TechnipCelebratesOfficialLaunchofOffshoreWindBusinessandsignsMOUwithIberdrola」2011年8月1日、テクニップ、www.technip.com.

45「Subsea7LaunchesRenewableUnit,FormsOffshoreWindAlliance」、DowJonesBusinessNews、2011年1月19日、http://global.factiva.com.

46 同上

47 電力発電のための燃料、英国エネルギー・気候変動省(現在のビジネス・エネルギー・産業戦略省)、www.decc.gov.uk

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イギリスにおけるメガプロジェクトの検証 52

48 C. lePair&K.deGroot, ‘The impactofwindgeneratedelectricityonfossilfuelconsumption’,www.clepair.net/windefficiency.html.あるオランダの研究によると、再生可能燃料のエネルギー効率は5%である。もし火力発電のプラントが、出力に変動特性のある再生可能エネルギープラントのバックアップに入れば、エネルギー効率は2.5%まで低下し、最初の再生可能エネルギーで達成した燃料の削減効果を打ち消すことになる。この主張は悲観的すぎるように感じるが、出力に変動特性のある再生可能エネルギーのシェアが増えるにつれて、そうした傾向は強くなる。再生可能エネルギーの配備の価値を維持するためには、変動特性を補完するために追加エネルギーが必要になることによるエネルギー効率の低下を最小限に抑えることが一層重要になる。

49「TheNeedfor“SmartMegawatt”–PowerGenerationinEurope–Facts&Trends」、RWE、www.rwe.com.

50「DevelopingAmerica’sUnconventionalGasResources」、2010年12月、戦略国際問題研究所(CSIS)、©2012,http://csis.org.

51「ThefutureofUKenergy」、英国エネルギー・気候変動省(現在のビジネス・エネルギー・産業戦略省)、www.decc.gov.uk

52 FlexEfficiencyTM50CombinedCyclePowerPlant,www.ge-flexibility.com/index.jsp.FlexEfficiencyはゼネラル・エレクットリック・カンパニーの登録商法。

53 Henkel,N.、Schmid,E.、Gobrecht,E.、「OperationalFlexibilityEnhancementsofCombinedCyclePowerPlants」マレーシア、クアラルンプールのSiemensAG,POWER-GENAsia2008にて発表されたもの。2008年10月21日、www.energy.siemens.com.

54 7FAGasTurbine、GEEnergy、www.ge-flexibility.com.

55「TheNeedfor“SmartMegawatt”–PowerGenerationinEurope–Facts&Trends」、RWE、www.rwe.com.

56 直接的な比較では、天然ガスのCO2排出量は、石炭100万btuあたりのCO2排出量の約55%になる。そこに天然ガスの高い効率性(約55%)と石炭の効率性(約39%)を加えると、天然ガスのCO2排出量はわずか40%になる。

57「AnnexC–ConsultationonpossiblemodelsforaCapacityMechanism」、英国エネルギー・気候変動省(現在のビジネス・エネルギー・産業戦略省)、www.decc.gov.uk

58 Energy、StatisticsNorway、www.ssb.no.

59「Researchcouncillookstothefuture」、ReCharge、2011年11月11日、©2011ReCharge.

60「A123SystemstoSupplyAdvancedEnergyStorageSolutiontoMauiElectricCompanytoSupportMauiSmartGridProject」2011年12月20日、A123Systems、www.a123systems.com.

61「供給中断可能契約(interruptiblecontracts)」と呼ばれるもの。

62 アクセンチュアがEWEAとEnerdata(グローバルなエネルギーとCO2データ)からのデータに基づいて分析。

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本資料は2012年にAccentureが発表した内容を日本市場向けに翻訳のうえ加筆編集したものです。