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国立防災科挙技術センター研究報告 第34号 1985年3月 624,151,57/.012.2 水平・上下2方向振動台による一層鉄骨フレームの破壊実験 親宏* 国立防災科学技術センター 0ne Story Stee1Fmme Co11apse Tests by Using the Two Dimensiona1Shaking Ta (Hohzonta1and Up-Down) By Chikah辻o Mimwa ル肋〃α1Rε蜘κ乃Cθ〃ε7仰肋α∫〃伽リε〃わ〃,〃ρ舳 A1〕stmct The experimenta1studies on one story stee1frame responses were canied out by using the two dimensiona1sma11size shaking t tions of the tests weエe one horizonta1md up-down.The two di Iesponses of the stee1frames weエe comp肛ed with the正esponses ho正izonta1excitations. Moエeover,the expeエimenta1resu1ts weエe compaエed with com Judging from the resu1ts of the shaking tab1e tests and computeエs of up-down excitations aエe estimated sma11. 1.はじめに 大多数の耐震設計および耐震性研究は水平一方向についてのみ行われている.しかし実際 の地震動は3軸と各軸についての回転を含んだ6自由度を有している、このため,水平一方 向だけの取扱で充分な耐震性を有すると判断できるのか疑問が残る.構造物に関しては,弾 性域だけの扱いであるなら,重ね合わせが成立し,多方向地震動に対し,さしたる取扱上の 問題はない.しかし塑性域などの非線型領域を対象とした場合,方向についての重ね合わせ に保証がないため,構造物の多方向地震応答に対する研究の必要性が叫ばれている. 多方向振動台の開発とあいまって,構造物の多方向地震応答の研究も数多く行われるよう *第2研究部 一59一

水平・上下2方向振動台による一層鉄骨フレームの破壊実験...624,151,57/.012.2 水平・上下2方向振動台による一層鉄骨フレームの破壊実験

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国立防災科挙技術センター研究報告 第34号 1985年3月

624,151,57/.012.2

水平・上下2方向振動台による一層鉄骨フレームの破壊実験

箕 輪 親宏*

国立防災科学技術センター

  0ne Story Stee1Fmme Co11apse Tests

by Using the Two Dimensiona1Shaking Tab1e

     (Hohzonta1and Up-Down)

           By

        Chikah辻o Mimwa

ル肋〃α1Rε蜘κ乃Cθ〃ε7仰肋α∫〃伽リε〃わ〃,〃ρ舳

A1〕stmct

  The experimenta1studies on one story stee1frame responses to eaエthquake motions

were canied out by using the two dimensiona1sma11size shaking tab1e.The dエive direc-

tions of the tests weエe one horizonta1md up-down.The two dimensional excitation

Iesponses of the stee1frames weエe comp肛ed with the正esponses of one dimensiona1

ho正izonta1excitations.

  Moエeover,the expeエimenta1resu1ts weエe compaエed with computer simu1ations.

Judging from the resu1ts of the shaking tab1e tests and computeエsimu1ations,the effects

of up-down excitations aエe estimated sma11.

1.はじめに

 大多数の耐震設計および耐震性研究は水平一方向についてのみ行われている.しかし実際

の地震動は3軸と各軸についての回転を含んだ6自由度を有している、このため,水平一方

向だけの取扱で充分な耐震性を有すると判断できるのか疑問が残る.構造物に関しては,弾

性域だけの扱いであるなら,重ね合わせが成立し,多方向地震動に対し,さしたる取扱上の

問題はない.しかし塑性域などの非線型領域を対象とした場合,方向についての重ね合わせ

に保証がないため,構造物の多方向地震応答に対する研究の必要性が叫ばれている.

 多方向振動台の開発とあいまって,構造物の多方向地震応答の研究も数多く行われるよう

*第2研究部

一59一

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国立防災科学技術センター研究報告 第34号 1985年3月

になった。しかし構造物の多方向応答に関しては静力学的に扱った事例も少なく,今後の数

多くの研究の積み重ねが必要と考えられる.

 国立防災科学技術センターでも小型3次元振動台を用いて配管模型・摩擦負荷フレーム模

型’水槽模型等の実験を行ってきた(小川,箕輸,1981).水槽模型の実験では非線型性を

有するスロッシングについても或る程度,重ね合わせが成立するのを確認している.

 上下動が構造物に与える影響は水平動が与えるものより小さいと考えられる.その理由は

上下動として常に重力加速度1Gが構造物に加わっており,そのため構造物は,荷重の変動

があっても揺れないように,上下方向には剛に作られる.しかし,水平方向に対して通常は

荷重を受けないため,上下方向に比べ一般に柔らかく作られる.

 しかし,水平動により大きく変形し,安定性がかなり失われた所に上下動が加わった場合,

上下動の効果は無視できないのではないかとの推測がある.今回の実験では小型1層鉄骨門

形フレーム模型供試体を水平・上下2方向振動台で加振し,大変形時に於ける上下動の影響

を調べ,この推測の是非を検討し,併せてコンピューターシミュレーションと実験との比較

検討を行った.

2.実  験

 図1に示す小型水平’上下2方向振動台(小川,1976)に小型1層鉄骨門形フレーム模型

供試体を設置し,各種試験を行った1供試体である小型1層鉄骨門形ブレーム模型について

は図2にその構成を示す.供試体の重量は,20㎏の鉄板11枚と4.7㎏の鉄板4枚および5.4

OuTLI“E OF SH^民I咄G T^8LE TEST

TEST STRu〔TuREDlSPL-CE”ENTH[TER

   S.D.HE^ST

T.D.H

 SH^KlNC400       T^BLE

  1OOO        HORIZONT^L        ^CTu^TOR

COuNTER ”^SS

一EST

TlD・V淵11。

ノ        /   / 7/・ /

図1 実験装置

Fig.1 The two d㎞ensiona1smal1size shaking tab1e.

一60一

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水平・上下2方向振動台による一層鉄骨フレームの破壊実験一箕輪

kgの梁1本で,合計245kgである.柱は6mx30mの断面で,高さ40㎝,両端には固定のた

め厚さ15m,大きさ70mx70mの鋼製ブロックが溶接されている.柱に用いた鋼材の引張試

験結果は5片の試験片の平均で降伏応力69.30㎏/㎡,最大引張応力74.88kg/出であった一

写真1には振動台実験で変形した供試体の状況を示す.

 供試体の水平復元力特性を求めるため,図3に示す方法で水平引張試験を行った.この水

平引張試験では自重(供試体の重量)の水平復元力特性に対する効果を見るため2種の供試

体重量245kgと35kg(鉄板1枚)について行った.この試験により得た水平復元力と水平変

形の関係を図4に示す.なお,この記録にはアナログのX Yレコーダーを使用した・

 振動台実験はランダム波(地震波)を用いて行った.この振動台への入力に用いたランダ

ム波は,地震応答解析で最も多く用いられており,標準地震波とも見傲されるようになった

エルセントロ1940年であり,水平入力波には一般に頻繁に使われているN-S成分を使用し

「日O“T ELE一^TlON OF TEST STRU〔TU咀E

          ∫^咄÷…「

400     フo

[1

5^H・∫押

τ舳 1W

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     STEE[Pし^T[S{百π一¶〕

 COLU一“ S[〔T!O円

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COLu”H

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L型一        wI陥岨E

一HO艘一10刊τ^L [五〔]T^lO刊…

図2 実験供試体ユ層鉄骨門形フレーム

Fig.2 The test fエame of one story stee1structure.

写真1実験状況と供試体の変形

Plloto1 The dynamic deformation of

    the test f正ame.

一61一

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国立防災科学技術センター研究報告 第34号 1985年3月

THE OuTLINE OF STATIC TENSION TEST

DISPACE”ENTMETER

         LO^DTEST STRuCTuRE         CELL

CH^IN

BLOCK「ア

4501000

O        O

SH^KユNG T^BLE

RES I ST^NCE

STRuCTuRE

図5

Fig.3

水平引張試験状況

The static tension tests of horizonta1dhections.

TEST STRuCTuRE 阯EIGHT

    35kg

.:■1…1.二≡:1二;帥.1  jl,.「’1:一11.1;・・1. ,・=1・1二=一由’・1;

■!一一■■61;j.11-1.一1。

’■[一一一一一.■’;il,1!l1-i=’■’1!:=jドーn’j11.}11l≡11ll;ll

1l≡li一舳,≡i≡]11l1lli1i舳r.1l≡≡川11鮒1三

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1皇1肚

’1l.一1il’■■.

図4

Fig.4

}il,1

TEST STRuCTuRE 阯EI6HT

    245kg

水平引張試験に於ける水平引張カと水平層聞変位の関係

Theエoops of hoエizonta1tension1oads and stoエy displacements.

一62一

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水平・上下2方向振動台による一層鉄骨フレームの破壊実験一箕輸

た.実験は水平1方向加振と水平・上下2方向加振の2種を行った.測定は供試体加速度

(水平加振方向S.A H,水平加振直角方向S.A.R.H,上下方向S.A.V)の3成分,振動台

加速度(水平加振方向T A.H,上下方向丁.A.V)の2成分,供試体変位については水平加

振方向1成分,振動台変位については水平と上下の加振機のピストン位置2成分について行

い,デジタルデータレコーダーに200Hzのサンプリングで言己録した.この他にモニターの目

的で柱頭と柱脚の歪も測定した.また一方,ビデオ画像記録も行った.

 水平1方向加振の記録波形を図5に,水平・上下2方向加振の記録波形を図6に示す.ま

たこれらの加振の水平層問変位と水平供試体加速度の関係をループにして描いたものを図7,

8に示す.

ME^SUREMENTRECORDSOFONEO川ENS10N^L(HORIZONTALONLY〕EXCIT^TION

      ~W、(パ      ㌧州W}…W{小}舳州VV㍗…τw=ノー榊鶯    、__

        }朴^一仙〃、叫一→リ榊1州w舳

・一一一押ザド州(州州州州岬㈹m昨一一一小WW}一へ仰州w伽w∫v伽く舳wwゾ一^伽払へ岬→→〉}〉伽㎞M}}へ~    一{{~

図5 水平1方向加振実験測定波形

Fig.5  The shaking tab1e test正ecords of hoエizonta1excitations・

 ME^SuREMENTRECORDSOFTWOD川ENS1ON^LlHOR1ZONTAL+uP-D㎝N〕EXCITATION

斗(]w㌃一{(…ψ甲一^」⊥州一一一’^』ww~ぺ…~’へ~”’{~㍗wW山…㍗wr

   ㎞ノし一~一ル\.ぺ吋{一^1}一)}一川川㌧・』一〃{…一~→ノ㌧、い一一へ~(岬〈岬・〃㌧H(ノ〉)       一一一一→州~v州仰㎞岬{舳w-w舳榊           一

→{べw㎞へ帆}岬w{へ^M~{舳}〃一州州一^Mへ仲州一一}   WいWい~w^へ(~、州~V岬v)州Wv州州WVw}~v舳、州w伽r叫㎞へ^~曲){{しr}へ’w一州片㎞      ㎞→、ルヘ刈㌧~曲へ~舳

図6

Hg.6

水平・上下2方向加振実験測定波形

The shaking tab1e testエecoエds of hoエizonta1and up-dow1l excitations.

一63一

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国立防災科学技術センター研究報告 第34号 1985年3月

HOR1ZO^T^L ONLY EXC1T^TION

1[〕1〕川uLlUHヒ^〔〔ELE冊TION

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TESTSTRu〔TURE^CCE[[MTIOH 一_^、一一、

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  図7 水平ユ方向加振実験水平H

     加速度と水平層間変位の

     関係

 Fig.7 The roop of test frame

     acce1efations and sto】=y

     displacementsintheho-     rizonta1excitations、

HORIZONT^L + uP-DOWN EXCIT^T10N

図8 水平・上下2方向加振実

   験水平加速度と水平層問

   変位の関係

Fig.8 The roop of test fエame

    acce1e工ations and sto工y

    disp1acements in the ho一

   工izonta1and up-down   eXCitatiOnS.

3.解析式

 本実験のように変形が柱部材角にして%以上になる系に対しては変形を考慮した式を用い

なければならない。本供試体は梁の曲げ剛性が柱に比べ格段に大きく無限大と見なせるので,

図9に示すようにモデル化し,2次元平面内で座標を同図のように定める.解析式は次の力

のつり合い式を用いて行う(山田,マトリックス法材料力学1970).

F砂cosθ十F〃sinθ:Q

F似sinθ十F初cosθ=N

}(・〕

一64一

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水平・上下2方向振動台による一層鉄骨フレームの破壊実験一箕輪

Th

3:阯

J㌻

E:YOuNG MODULUS工:CEOMETBTCAL ㎜ONEI可T OF 工NTER工^ OF COLU凹Nm:MASS OF TEST STRuC工U冒£A:SECTTON ^RE^ OF COLuMNQ:SHEAR RESISTANCE OF COLU互{N

N:AX工AL BES工STANCE OF

 COLUMNFリ=HOPIZONT^L EXC工TAT⊥ON

 FO肩CEF =UP_DOWN EXC工TAT工ON^FOBCE

}2・12E工/・ヨ,k。一2・E^/・

図9 解析モデル

Fig.9 The model ofana1ys帆

ここで,

h+仇COSθ二    〉(h。ω)・。”・

,Sinθ=     〉(h。仇)・。”・

     12E IQ二2x    (〃cosθ一〃s1nθ)      h3

     E AN:2x   (~(h+〃)2+砂2 -h)     h

    hF、一一一(る十㌔),F仇一一m(易十易、)

    m

11)式から次の幾何学的非線型方程式が得られる.

m(ろ十;)一m(易十壬     σ              σ

十9)   十んb〃=0   h+仇

m(・十%)。。仇十m(ω十仇・十・)

                   ^。仇)・。砂・

     。ん(η一h)   一0       α              h+〃

ここで,gは重力加速度である.

 水平復元力特性は,近似的にであるが,(2〕の第1式のんb砂に対応する.

は一般には水平変位〃の関数f(〃)で表される.

(2)

水平復元力特性

4.水平復元力特性

 水平引張試験結果(図4)から水平復元力特性の骨曲線は供試体重量35kg,245㎏の両ケ

ースともtri-1inearと推定される.両重量の場合とも第一弾性限変位X1は4㎝,第二弾性

限変位X2は6㎝とみなせる.12)式を水平引張試験に適用すると,水平引張力をPとして,

次式を得る.

一65一

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国立防災科学技術センター研究報告 第34号 1985年3月

               似              砂

     Pll∵;二÷/③                        h+ω

 図4の点線はf(〃)をtri-linearとしたときの,13)式を満たすP一〃の関係である.この

点線を求めるのに用いた定数は,第一弾性限変位X1と第二弾性限変位X2は前に述べた4

㎝と6㎝,第一勾配BK1は46.25㎏/㎝,第二勾配BK2は17.5㎏/cm, 第一勾配BK3は

6-O㎏/㎝,柱高は37㎝,軸方向弾性係数は189000kg/㎝とした.これらの値を用いれば,

tri-1inear水平復元カ特性の骨曲線で水平引張試験結果をほぼ表現できるのが判る.

 一方,h=37㎝として,第一勾配BK1を曲げ勇断の計算式12EI/h3を用いて求めると

53.7kg/cmとなり,BK1=46.25㎏/㎝を得るためには柱高を等価的に38.9㎝と考えなけれ

ばならない.また第一弾性限変位4cmの降伏変位を得るには,全塑性モーメントで考え,降

伏応力に鋼材の引張試験の値を用いて等価的な柱高を出すと38㎝となる.計算に用いた柱高

は幾何学的なものであり,弾性定数等を求めるための柱高ではない.

 しかし,この供試体の水平復元力特性の全体を図3の水平引張試験から推定するのは困難

である.本報告では振動台実験の供試体水平層間変位と供試体水平加速度のループである図

7,8を基に推定し,本供試体の水平復元力特性全体を図10のように仮定し,コンピュータ

ーシミュレーションに用いた.この図で直線CD,EF,E C’はOAに平行であり,勾配は

BK1である.

 以上に述べた水平復元カ特性は供試体重量Wの効果を除いた特性である.ここで供試体重

が水平復元カ特性に与える影響について見ると,13〕の第工式から判るように供試体重量の増

加により水平バネ定数が見掛け上,W/(h+仇)だけ柔らかくなる.

BK3 CRESTORING FORCE B G

  BK            I三‘2^.I..一・・…一・Iド

Bk1   BK1

o BK1

DX1  X2 STORY

Bk4

E

^.

B1

STORY D!SPL^CE”ENT

 図10 Tri-linear水平復元カ特性モ

    デル

Hg.10 The assuming characteエistics

    of工esto正ing forces of test

    frames in hoエizonta1directions.

一66一

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水平・上下2方向振動台による一層鉄骨フレームの破壊実験一箕輸

 また,供試体重量35㎏,245kgの二種の水平引張試験結果である図4の立ち上がり勾配を

比較しても供試体重量245kgの試験結果の方が,水平バネ定数が小さいのが判る.

5. コンピューターシミュレーション

 振動台実験の供試体応答結果を,振動台加速度を入力と考え,コンピューターでシミュレ

ーションを試みた.モデルは1質点で水平・上下2方向シミュレーションである.計算式は

12)式を用い,時刻歴応答を求めるのには4次のRUNGE-KUTTA法を採用し,刻み時問を

1/1000秒にして計算を実施した.柱の水平復元力特性は図10に示すtri-linear形とし,柱

の軸方向復元力特性に関しては,単に弾性とした.各定数の設定値は図4の点線を計算した

ときと同じ値である.なお,質量は0.25kg・sec2/c叫減衰定数は水平方向について1%,上

下方向について0,5%とした.図10のEDの勾配BK4についてはパラメーターとして扱った.

実験時系列応答と計算時系列応答の差を二乗し,時刻についての総和平均を取り,その平方

根を取ったものD。を,水平.上下2方向加振と水平工方向加振の水平変位波形と水平加速度

波形について求めた.これを図1ユに示す.BK4が27kg/㎝から35㎏/cmの範囲で水平1方

向および水平’上下2方向加振の両ケースとも,このD、が小さくなっている.計算ではこ

の範囲よりBK4の値が小さいと残留変位が実験記録よりも大きくなり,BK4の値が大きく

なると残留変位が実験記録よりも小さくなる.水平1方向および水平・上下2方向加振の両

ケースの水平変位波形についてのDsの和を取るとBK4=33㎏/㎝の場合が最も小さい,ま

■・・へ

■=ONED川ENSlOMLlHORlZ㎝下^L〕

X:THODI旺NSm^L㈹RIZONT^L・UP-D㎝N〕

_      = OISPL^CE”ENT

  : ^CCELER^TION

ぺ      ・11三・≒      メク㍉、!\ !

、∴メ〆/x       /

        /x

       /x

   x      \    x,x

200

150

 図11

Hg.11

20         25         30         35         40

     “4   ”kg/o岬

BK4をパラメーターとしたときの計算波形と測定波形の差

The differences between the test records and comput-

eエsimu1ations with the spring vaエiations BK4.

一67一

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国立防災科学技術センター研究報告 第34号 1985年3月

たは水平加速度波形についても両加振ケースのD、の和はこの場合に最小になる1即ち,この

BK4の値のときにコンピューターシミュレーション波形は実験波形に,設定条件の基で,最

も良く似る。このときのコンピューターシミュレーションで求めた波形と,同様に求めた水

平層問変位と水平供試体加速度のループを,水平1方向加振については図12に,水平・上下

2方向加振については図13に示す.これらの図で実線がコンピューターシミュレーション,

点線が実験記録波形である.なお,コンピューターシミュレーションの方が大きく現われて

いる.

 供試体上下応答波形は水平変形が生じることにより,幾何的に誘起される面が大きく,両

加振ケースともコンピューターシミュレーションと実験記録波形はよく一致している.

                  一 CO”PuTERCO岬uTERS㎜L^Tl㎝O川EDl…ENSl㎝^LEXClT^TlOHlHORlヱ㎝了^L〕 一・…一一・一”E^SuREHE”T

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 図12水平ユ方向加振のコンピューターシミュレーション

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水平・上下2方向振動台による一層鉄骨フレームの破壊実験一箕輪

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 図13水平・上下2方向加振のコンピューターシミュレーション

Fig.13 Computer simu1ation time histories ofhorizonta1and up-down excitatiOns。

6.水平1方向加振と水平・上下2方向加振の相違

 両加振ケースの実験データである図5と図6の供試体水平変位(S.D.H)は大変良く似て

いる.ここでは,実験に於ける水平1方向加振と水平・上下2方向加振の供試体応答の相違

を調べた.

 両加振ケースとも水平加振にはエルセントロユ940年N-S成分を用いており同一レベルで

振動台に入力している.振動台水平変位を基に両加振ケースの位相を合わせて描いた各変位

波形を図14に示す.この図でVIDEOとあるのは第4研究部の協力により,ビデオ画像から

コンピューターにより読み取られた変位波形である.ビデオ計測は従来の変位計計測とほぼ

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国立防災科学技術センター研究報告 第34号 1985年3月

一致しており工学的に見て使用可能と考えられる.

 この図の上下層間変位もやはり両加振ケースともほぼ一致しており,供試体の上下層間変

位は水平動により誘起されたものであることが裏付される.

 ここで両加振ケースの供試体水平変位波形を詳しく比べて見るとビデオ計測,変位計計測

ともわずかながら相違がみられる.そこで,この波形について両加振ケースの差を各時刻に

ついて取った波形を見ると,最大1.7㎝ほどあるカミ残留変位についてはその差はほとんど

ない.全体として見ると,水平1方向加振のほうが供試体応答は大きくなっており,この最

大1.7㎝の差は供試体水平変位波形の最大変位の約1割である.

 この差が大きいと見るか,小さいと見るかは今後の検討事項と考えられる.しかし,最大

応答変位そのものには0.1m程度の差しか見られず,両加振の差はほとんど無いとして良い.

 コンピューターシミュレーションに於ける両加振の差は実験よりも僅かに大きいが,全体

としては無視できるものと見られる.

 以上のように本供試体に関しては両加振に於ける水平層問変位及び上下層間変位の相違は

微小であり,上下加振の影響はほとんどないと考えられる.

7 おわりに

今後このような実験を多層の模型に広げて行い,上下動の効果を実験的に調べる必要があ

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 図14

Fig.14

実験に於ける水平1方向加振と水平・上下2方向加振の比較

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水平・上下2方向振動台による一層鉄骨フレームの破壊実験一箕輪

ると考える.また,コンピューターシミュレーションについてsystem identificationの方法

を取り入れて行うべきと考える.

 今回は水平1方向加振と水平・上下2方向加振であったが,一般には二次元加振で効果が

現れるのは水平2方向加振であると考えられており,水平2方向振動台あるいは3次元6自

由度振動台,及び多方向強制加カシステム(多方向反力壁)等の実験施設が求められる.

謝  辞

 本実験を行うにあたり第2研究部小川主任研究官から助言と協力を得た.また本供試体は

同主任研究官により提供されたものである.ここに深く感謝する.

 第4研究部勝山室長および矢崎研究員からビデオ計測のデータを頂いた.ここに深く感謝

する.

                    参考文献

1)小川信行・箕輸親宏(1981)1三次元精密振動台による小型模型実験一三次元振動台による実験そ

  の1一.防災科学技術研究資料,第67号,139pp.2)小川信行(1976):二次元振動装置製作に関する報告(第1報)一二次元接手試験装置の試作一.

 防災科学技術研究資料,第26号,16pp.                   一一一一

3)山田嘉昭(1970):マトリックス法材料カ学.培風館,67-100・

                               (1984年11月7日 原稿受理)

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