9
日皮会誌:100 (9), 913-921, 1990 (平2) マウス生長期毛球部組織由来の好中球及び リンパ球遊走因子の性状について 玉如1)2)宮渫 順子1)高森 建二1) 正常C3Hマウス(幻の生長期毛球部組織抽出液 (HBE)中に好中球及びリンパ球遊走因子が存在する ことをin vitro の系で証明した.好中球に対する遊走 活性は100℃,10分間の加熱及びprotease処理により ほぼ失活したのに対し,リンパ球に対する遊走活性は これらの処理に抵抗性を示した.一方, neuraminidase 処理によってリンパ球に対する遊走因子の活性は約 30%失われたが好中球に対する走化活性は安定性を示 した.又両者とも56℃,30分間の加熱処理及び透析処 理による遊走活性の低下は殆ど見られなかった.以上 より生長期毛球部組織には各々好中球及びリンパ球に 対する,少なくとも2種類の遊走活性物質が存在する ことが示唆された. 表皮及びその付属器に,所謂炎症性細胞の浸潤を伴 う疾患は数多く見られるが,これらの疾患,特に非感 染性疾患における表皮や付属器への細胞浸潤機構につ いては今日尚不明な点が多い. 近年,かかる細胞浸潤を惹起せしめる因子(或いは 物質)として,表皮成分あるいは鱗屑,痴皮等をその 抽出材料として各種のものが検出,報告されてきた. 即ち,表皮ヶラチノサイトや乾癖の鱗屑などからの ETAFI)`5)(epidermal cell・derived thymocyte activating factor),補体のactive fragmentである C5a6)~8),或いはLeukotriene B49),PLF7)1o)(pSoriatiC leukocytic factor)などの白血球遊走活性物質等が相 次いで検出され,これらの物質と細胞浸潤機構との相 関が次々と明らかにされつつある.一方,毛嚢組織由 1)順天堂大学医学部皮膚科学教室(主任 小川秀興教 授) 2)北京中日友好医院西医皮膚科(主任 廉潔教 授) 平成2年3月19ロ受付,平成2年3月30日掲載決定 別刷請求先:(〒113)東京都文京区本郷2-1 ―1 順天堂大学医学部皮膚科学教室 玉如 来の細胞浸潤惹起因子については, Kanzakiは11)人由 来のtrichilemmoma細胞の培養上清より多核白血球 遊走因子の存在を報告し,又Nishiokaら12)は種々検 討を加えた結果同じTrichilemmomaよりの樹立細胞 株の一つがIL・1αを産生することを報告した.これら は大変興味深い研究であり,もし正常の毛球部組識に もかかる因子が存在するならば,毛嚢部を中心とする 各種病変の病態を理解する上で大きな基盤ともなり得 よう.そこで今回我々は,正常マウスの生長期毛球部 組織を対象としてかかる因子の検索を種々試みたとこ ろ,その抽出物中に各々性質の異なる好中球遊走因子 とリンパ球遊走因子が存在することを見出したので以 下にその詳細について報告する. 材料と方法 1.マウス生長期毛球部組織を対象とした抽出液の 調製法について: 服部らの方法13)14)に従って,一様に黒褐色の生長期 毛が生え揃った生後30日齢のC3Hマウス(D背部皮 膚を剥離し,実体顕微鏡下に皮下組織を取り除き,オ タマジャクシ状の生長期毛球部組織を露出させた.眼 科用クーパーを用いてかかる毛球部組織を丹念に集 め,湿重量5gに対しPBS(十)を約95mlの比率で加 え,5%(W/V)毛球部組織懸濁液を作製した.また遊 走能に対する濃度依存性実験の際には10~20%のもの も調製した. Polytron homogenizer (Kinemmatica Luzern Steinhofhalde Switzerland)にて最大スピー ド,30秒間,10回ホモジナイズを繰り返した後, 12,000Xg, 30分間の遠心により得られた上清を5% crude hair bulb exract(HBE)とした.調製したHBE は-30℃に保存し,用時融解して使用した.尚,使用 時にはfilter (クラボウSteradisc25, 0.45μm filter) 滅菌を施行したものを実験に供した. 2.好中球並びにリンパ球浮遊液の調製方法: 本田らの方法15)16)に従って好中球並びにリンパ球の 浮遊液を調製したが,以下に簡単にそれらの方法を記 す.正常人ヘパリン加静脈血に,3%(W/V)デキスト ラソT500 (M.W. 500.000, Pharmacia Fine Chemi-

マウス生長期毛球部組織由来の好中球及び リンパ球 …drmtl.org/data/100090913.pdfchemotaxisとchemokinesisを判定した. 7. HBEの一般的性質: 1)熱処理:5%HBEを小試験管に入れ,それぞれ

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Page 1: マウス生長期毛球部組織由来の好中球及び リンパ球 …drmtl.org/data/100090913.pdfchemotaxisとchemokinesisを判定した. 7. HBEの一般的性質: 1)熱処理:5%HBEを小試験管に入れ,それぞれ

日皮会誌:100 (9), 913-921, 1990 (平2)

マウス生長期毛球部組織由来の好中球及び

  リンパ球遊走因子の性状について

  宋  玉如1)2)宮渫 順子1)高森 建二1)

          要  旨

 正常C3Hマウス(幻の生長期毛球部組織抽出液

(HBE)中に好中球及びリンパ球遊走因子が存在する

ことをin vitro の系で証明した.好中球に対する遊走

活性は100℃,10分間の加熱及びprotease処理により

ほぼ失活したのに対し,リンパ球に対する遊走活性は

これらの処理に抵抗性を示した.一方, neuraminidase

処理によってリンパ球に対する遊走因子の活性は約

30%失われたが好中球に対する走化活性は安定性を示

した.又両者とも56℃,30分間の加熱処理及び透析処

理による遊走活性の低下は殆ど見られなかった.以上

より生長期毛球部組織には各々好中球及びリンパ球に

対する,少なくとも2種類の遊走活性物質が存在する

ことが示唆された.

          緒  言

 表皮及びその付属器に,所謂炎症性細胞の浸潤を伴

う疾患は数多く見られるが,これらの疾患,特に非感

染性疾患における表皮や付属器への細胞浸潤機構につ

いては今日尚不明な点が多い.

 近年,かかる細胞浸潤を惹起せしめる因子(或いは

物質)として,表皮成分あるいは鱗屑,痴皮等をその

抽出材料として各種のものが検出,報告されてきた.

即ち,表皮ヶラチノサイトや乾癖の鱗屑などからの

ETAFI)`5)(epidermal cell・derived thymocyte

activating factor),補体のactive fragmentである

C5a6)~8),或いはLeukotriene B49),PLF7)1o)(pSoriatiC

leukocytic factor)などの白血球遊走活性物質等が相

次いで検出され,これらの物質と細胞浸潤機構との相

関が次々と明らかにされつつある.一方,毛嚢組織由

1)順天堂大学医学部皮膚科学教室(主任 小川秀興教

 授)

2)北京中日友好医院西医皮膚科(主任 範 廉潔教

 授)

平成2年3月19ロ受付,平成2年3月30日掲載決定

別刷請求先:(〒113)東京都文京区本郷2-1 ― 1

 順天堂大学医学部皮膚科学教室 宋 玉如

来の細胞浸潤惹起因子については, Kanzakiは11)人由

来のtrichilemmoma細胞の培養上清より多核白血球

遊走因子の存在を報告し,又Nishiokaら12)は種々検

討を加えた結果同じTrichilemmomaよりの樹立細胞

株の一つがIL・1αを産生することを報告した.これら

は大変興味深い研究であり,もし正常の毛球部組識に

もかかる因子が存在するならば,毛嚢部を中心とする

各種病変の病態を理解する上で大きな基盤ともなり得

よう.そこで今回我々は,正常マウスの生長期毛球部

組織を対象としてかかる因子の検索を種々試みたとこ

ろ,その抽出物中に各々性質の異なる好中球遊走因子

とリンパ球遊走因子が存在することを見出したので以

下にその詳細について報告する.

          材料と方法

 1.マウス生長期毛球部組織を対象とした抽出液の

調製法について:

服部らの方法13)14)に従って,一様に黒褐色の生長期

毛が生え揃った生後30日齢のC3Hマウス(D背部皮

膚を剥離し,実体顕微鏡下に皮下組織を取り除き,オ

タマジャクシ状の生長期毛球部組織を露出させた.眼

科用クーパーを用いてかかる毛球部組織を丹念に集

め,湿重量5gに対しPBS(十)を約95mlの比率で加

え,5%(W/V)毛球部組織懸濁液を作製した.また遊

走能に対する濃度依存性実験の際には10~20%のもの

も調製した. Polytron homogenizer (Kinemmatica

Luzern Steinhofhalde Switzerland)にて最大スピー

ド,30秒間,10回ホモジナイズを繰り返した後,

12,000Xg, 30分間の遠心により得られた上清を5%

crude hair bulb exract(HBE)とした.調製したHBE

は-30℃に保存し,用時融解して使用した.尚,使用

時にはfilter (クラボウSteradisc25, 0.45μm filter)

滅菌を施行したものを実験に供した.

 2.好中球並びにリンパ球浮遊液の調製方法:

 本田らの方法15)16)に従って好中球並びにリンパ球の

浮遊液を調製したが,以下に簡単にそれらの方法を記

す.正常人ヘパリン加静脈血に,3%(W/V)デキスト

ラソT500 (M.W. 500.000, Pharmacia Fine Chemi-

Page 2: マウス生長期毛球部組織由来の好中球及び リンパ球 …drmtl.org/data/100090913.pdfchemotaxisとchemokinesisを判定した. 7. HBEの一般的性質: 1)熱処理:5%HBEを小試験管に入れ,それぞれ

914 宋  玉如ほか

cals, Sweden)生食液を等量加え,よく混合した後室

温に約60分間静置した.分離した血漿層を同量の

Ficoll・Hypaque液(SG = 1.077g/ml)上に静かに重層

し. 639 Xg, 20分間,15℃にて遠心した.

 1)好中球浮遊液の調製:上記の遠心により,好中球

と少量の赤血球が沈痘として得られた.混入している

少量の赤血球は低張処理(0.2%NaClを小量加え90秒

間低張処理を行なった)後,等量の1.6%NaClを加え

て等張液とし, 132 xg, 10分間,4℃にて遠心すること

により除去し,沈法分画に好中球15)を集めた.これを

PBS(-)で洗浄後, PBS(十)を用いて3×106個/ml

の好中球浮遊液を調製した.念の為,赤血球の混入の

ないことを検鏡にて確認した.

 2)リンパ球浮遊液の調製:上記の比重遠心法によ

り,中間層にリンパ球及び単球が分離された,この層

を採取しPBS(-)に混合後, 132 Xg, 10分間,4℃に

て遠心して得られた細胞(リンパ球及び単球)成分を

glass petri dish 上で37℃,30分間培養することにより

単球成分を除去した16)リンパ球を含む培養上清を遠

心(132 xg, 10分間,4℃)することにより,リンパ理

分画を得た.これをPBS(十)で3×106個/mlとなる

ように調製した.尚,リンパ球の純度については念の

為検鏡にて確認した.

 3) Cell viability test">:得られた好中球とリンパ

球の生死の判定はTrypan blue exclusion test にて行

なった.即ち,血球浮遊液0.1mlと生食液0.1mlに1%

トリパンブルー液0.03mlを加えて検鏡後,染色された

血球と染色されていない血球の比を求めることによ

り, cell viabilityを求めた. Viabilityが97%~99%と

確認された血球浮遊液を実験に供した.

 3. Chemotactic activityの測定法:

 Chemotactic activityはmodified Boyden cham-

ber法15)にて測定した.即ち, chamberの下室に被検液

を0.2ml注入し, pore size 3.0μmのcellulose nitrate

filter(Sartorius製)を装着した後,上室には好中球又

はリンパ球からなる細胞浮遊液を0.3ml注入した.

37℃で一定時間incubationした後, filtnrを取り出し,

4%ホルマリソにて固定した後,ヘマトキシリソにて染

色した.乾燥後, xylenにて透明化し, front leading

法16)即ち光学顕微鏡(Nikon Labophoto Japan)の400

倍倍率で最も深く遊走した2個の細胞の平均到達距離

を10視野測定し,その平均値を遊走能とした.なお,

各サンプルについての測定値はtriplicateの系で行

なった.

 4.白血球遊走能の時間依存性:

 5%HBEをchemoattractantとして使用し, incu-

bation時間を好中球については0, 5, 15, 30分,リ

ンパ球について0, 15, 30, 60, 90, 120分とし,それ

ぞれの時間における好中球とリンパ球の走化能を測定

した.

 5.白血球遊走能のHBE濃度依存性:

 HBE濃度をPBS(十)を用いて0, 2.5, 5%に設

定し,それぞれの濃度における好中球及びリンパ球の

遊走能を測定した.なお, incubaiion時間は好中球は

25分,リソパ球は90分とした.

 6. Checkerboard assay :

 本実験はZigmondら18)と本田ら15)の方法に従って

行なった. 0, 2.5, 5%のHBEをそれぞれBoyden

chamberの下室のみに入れた系と上,下室ともに入れ

た系にて好中球とリンパ球の遊走能を測定した.得ら

れた結果をZigmondら18)15)の計算式に従い,

chemotaxisとchemokinesisを判定した.

 7. HBEの一般的性質:

 1)熱処理:5%HBEを小試験管に入れ,それぞれ

56℃,30分間あるいは100℃,10分間加熱後,氷水中に

浸潤した.

 2)透析:Seamless cellulose tubing (Union Car・

bide America)に5%HBEを入れ, PBS (十)に対

して一昼夜,4℃にて透析した.

 3)各種酵素による処理ト

 ①Pronase P : 5 %濃度のHBEを0.2mg/mlのプ

ロナーゼP(科研化学株式会社)とともに37℃,30分間

反応させ,直ちに氷水中に浸潰することにより反応を

停止した.

 ②Trypsin : 5 %HBEを0.2mg/inl tripsin (bovin

pancreas type XII, SIGMA, USA)とともに37℃,

30分間incubation後, 20mM phenylmetylsulfonyl

fluoride (PMSF, SIGMA, USA)を添加することに

より,反応を停止させた.尚,同濃度のPMSFは好中

球とリンパ球の遊走能には全く影響を与えなかった.

 ③Neuraminidase : 5 %HBEをl.Ounit/ml neur・

aminidase (clostridium perfringes type x, SIGMA,

USA)とともに37℃,30分間incubation後,直ちに氷

水中に浸潰することにより反応を停止させた.

 以上の加く,加熱,透析,或いは各種酵素にて処理

した5%HBEを12,O00Xg, 30分間,4℃にて遠心後,

得られた上清をchemoattractantとして用い,好中球

とリンパ球の遊走能をBoyden法にて測定した.

Page 3: マウス生長期毛球部組織由来の好中球及び リンパ球 …drmtl.org/data/100090913.pdfchemotaxisとchemokinesisを判定した. 7. HBEの一般的性質: 1)熱処理:5%HBEを小試験管に入れ,それぞれ

毛球部組織由来の白血球遊走因子

 8)ザイモサン処理血清の調製方法15’ : 20mg/ml の

ザイモザソ(Zymosan A, S. cerevisiae yeast,

SIGMA, USA)生食混合液0.4nilを遠心し,得られた

沈澱に正常人血清1.0mlを加えて,37℃,30分間反応さ

せた.得られた遠心上清をzymosan treated serum と

し, PBS (十)にて2倍希釈したものをattractantの

陽性コントロールとして使用した.

          結  果

 1.好中球とリンパ球遊走能の時間依存性:

 5%HBEに対する好中球の遊走能は図1に示す如

く,0から30分の間ではincubation時間に比例して,

直線的な増加を示した.尚,25分間の反応時間では好

中球はfilterの厚さの約2/3までの遊走を示した.一

方,リンパ球の5%HBEに対する遊走能は図2に示

す如く,0から90分の間では反応時間に比例して直線

的に増加したが,90分以上では略平衡状態を示した.

 2.白血球遊走能のHBE濃度依存性:好中球とリ

ンパ球の遊走能がHBE濃度依存性を示すかどうか,

attractantとして各種濃度のHBEを用い, incuba・

tion時間を図1,2で観察された結果を参考にして好

中球では25分レリソパ球では90分に固定して各々測定

した.図3に示す如く,好中球の遊走能はHBE濃度の

増加と共に急激に上昇し, 5%HBE濃度において最

大遊走能を示した.一方,リンパ球の遊走能も,図4

に見られる如く, HBE濃度に比例して増加し,5%

HBE濃度において最大遊走能を示した.これらの結

果より,以後の実験においては, 5% HBEを

attractantとして使用した.

 3. Checkerboard assay :

 HBEが好中球及びリンパ球に対して,遊走活性を

有している可能性が濃度依存性及び時間依存性の実験

から強く示唆されたので, checkerboard assay を行な

う事により, HBEのchemoattractantとしての性質

を更に詳細に検討した.

 表1に示す如く,好中球の走化能は下室のHBE濃

度の上昇に伴って増加し,各HBE濃度における走化

能はその濃度における無方向性の運動を表わす理論値

より大きい値を示した.又, Boyden chamber の上室,

下室のHBE濃度を同様にした時の値は, HBE濃度が

Oである時の値より大きい値を示した.しかし, HBE

濃度を増加してもHBE濃度に依存した

chemolocomotionの増加は認められなかった.一方,

リンパ球の走化能も表2に示す如く,下室HBE濃度

の上昇に伴って増加し,各濃度における走化能もran・

liNOUvaDrn

915

             TIME (mil)

図1 好中球遊走能の時間依存性. 5%HBEを

 chemoattract antとしてポイデソ法にて好中球遊

 走能を測定した,縦軸に好中球の遊走距離(μm),

 横軸にincubation time (min)を示す.●:5%

 HBEに対する好中球の遊走距離;▲:陰性コント

 ロールのPBS(十)に対する好中球の遊走距離.各

 値はtriplicateの平均値で示した.

       2

(■≫") NOUVHSIH

              TIME【lio】

図2 リソパ球遊走能の時間依存性. 5%HBEに対

 するリンパ球遊走能をボイデソ法にて測定した.縦

 軸はリンパ球の遊走距離(μm),横軸はincubation

 time(min)を示す.0:5%HBEに対するリソパ球

 の遊走距離;△:陰性コソトロールのPBS(十)に

 対するリソパ球の遊走距離.各値はtriplicateの平

 均値で示した.

dom locomotion の理論値より高値を示した.又,上,

下室のHBE濃度を同様にして濃度勾配をoにした時

の値はHBE濃度がOの時の値より大きい値を示し

た.しかし, HBE濃度に依存した遊走能の増加は認め

られなかった.

 4. HBEの生化学的性状:

 好中球とリンパ球に対するchemoattractantとし

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916

 6

Z.AS

(lai'iuouvaoiw

宋  玉如ほか

表1 好中球migrationのcheckerboard assay.

 concM??乙tion

in upp聚ヤamber

HBE concentration inlower chamber         (%)

0 2.5 5.0

 0

2.5

5.0

16.6 56.2(24.1)

47.1

77.9(44.7)

40.1

          H B E {%)

図3 好中球遊走能のHBE濃度依存性.各種濃度の

 HBEに対する好中球の遊走能をボイデソ法にて測

 定した.縦軸は好中球の遊走距離(μm),横軸は

 HBEの濃度(%)を示す. Incubation time は25分

 とした.●:好中球遊走距離. ZAS→:陽性コソト

ロールのザイモサソ処理血清に対する好中球の遊走

 距離.各値はtriplicateの平均値(mean士SD)で示

 した.

    2

(迂)言にま{}笙

          H E B {%)

図4 リンパ球遊走能のHBE濃度依存性.各種濃度

 のHBEに対するリンパ球の遊走能をボイデソ法に

 て測定した.縦軸はリンパ球の遊走距離(μm),横

 軸はHBE濃度(%)を示す. Incubation time は90

 分.0:HBEに対するリンパ球の遊走距離;zAS

 →:陽性コソトロールのザイモサソ処理血清に対す

 るリンパ球遊走距離.各値はtriplicateの平均値

 (mean士SD)で示した.

てのHBEの性状を,加熱,透析,或いは各種酵素によ

る処理を行なうことにより検討した(表3). 56°C, 30

分間の加熱ではHBEの走化活性は好中球に対しては

若干の低下を示したものの,リンパ球に対する活性は

全く影響を受けなかった. 100℃,10分間の加熱では,

好中球に対する活性は約93%失活したが,リンパ球に

対する活性は約70%残存した.透析によっては好中球

及びリンパ球に対する走化活性は殆ど影響を受けな

かった.好中球に対する活性は0.2mg/mlのpronase

 表中の数字は各HBE濃度(%)における好中球の

migrationの値(μm)を示す.( ):Zigmondらの方法

にて算出した無方向性運動(radom locomotion)による

と思われる理論値

表2 リンパ球migrationのcheckerbord assay

ij昌r皆皆,  (%)

HBE concentration inlower chamber       (%)

0 2.5 5.0

 0

2.5

5.0

11.6 34.9(16.4)

37.3

46.9(34.4)

25.0

表中の数字は各HBE濃度(%)におけるリンパ球の

migrationの値(μm)を示す.( ):Zigmondらの方法に

て算出した無方向性運動(random locomotion)によると

思われる理論値.

表3 HBEの好中球とリンパ球に対する遊走活性

 に及ぼす各種処理の効果

Treatment(。h,昌m穴7摺y迄trol)

PMN Ly

Heating

   56℃, 30min

  100℃, lOmin

Dialysis

Enzyme treatment   (37℃ 30min)

 Pronase (0.2mg/ml)

 Trypsin (0.2mg/ml)

 Neuraminidase      (l.Ounit/ml)

92

7

99

 4

14

92

100

 70

104

71

66

73

及び同濃度のtrypsin処理により殆ど失活したが(そ

れぞれ. 96%と86%失活),リンパ球に対する活性はこ

れらの処理に対して比較的安定性を示した(71~66%

活性残存). Neuraminidase処理では,好中球に対する

遊走活性は殆ど失われなかったが,リンパ球に対する

活性は約30%失活した.

          考  按

 今回,我々は正常マウスの生長期毛球部の組織中に

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毛球部組織由来の白血球遊走因子

は好中球とリンパ球に対する少なくとも二種類の遊走

因子が存在することをin vitro の系で明らかにした.

即ち, HBEは好中球及びリンパ球に対してincuba-

tion time及び濃度に依存した走化活性を示した(図

1, 2, 3, 4).この好中球及びリンパ球に対して見

られたHBEの走化活性が,被検細胞に対する

chemdtaxis作用によるものなのか,それともrandom

locomotionの完進作用によるものなのかを, checker・

board assay を行なうことにより検討した.その結果,

HBEは好中球,リンパ球の両血球に対して軽度の

chemokinesis作用を有してはいるものの,その主たる

作用はchemotaxis作用であることが示された(表1,

2).

 次に,好中球とリンパ球に対しchemotaxis作用を

示すHBE中の各々の因子(物質)の性状を検討すると

同時にそれらが同一のものであるか,或いは異なった

ものであるかを明らかにするためにHBEを透析,加

熱,或いは各種の酵素によって処理を行ない,そのも

たらす変化を比較検討した.表3から明らかなように,

HBE中に存在する好中球遊走因子は①非透析性であ

ること,②100℃,10分の加熱により略失活すること,

③プロナーゼやトリプシンのようなプロテアーゼ処理

により,各々96%, 86%の活性が失われるが,④ノイ

ラミニダーゼ処理に対しては抵抗性を示すこと等よ

り,本因子は活性発現に立体構造を必要とする高分子

タソパク質である可能性が示唆された.一方,リンパ

球遊走因子は①非透析性であること,②100℃,10分の

加熱に対し比較的安定であること,③プロテアーゼ処

理に対しても比較的抵抗性を示すこと,④ノイラミニ

ダーゼ処理により約30%失活すること等より,本因子

は高分子糖蛋白である可能性が示唆された.以上の結

果は, HBE中には,好中球に対する遊走因子とリンパ

球に対する遊走因子の,各々性質の異なる少なくとも

2種類の白血球遊走因子が存在することを示唆してお

り,極めて興味深い.

 C3Hマウスの生長期の毛球部は極めてよく発達し

ており,これを分離採取することは比較的容易である.

我々はこれを服部ら13)U)の方法に従い実体顕微鏡下に

細心の注意を払いっつ採取したが,一応の可能性とし

て毛球部細胞以外の細胞や成分の混入の可能性も考え

ておかなければならないであろ‰例えば血管内皮細

胞19)線維芽細胞2o)や末梢血細胞成分である

monocyte21)や血小板22)などには好中球やリンパ球の

遊走因子が存在することが知られており,これらの成

917

分の混入は可能性としては一応考えられよう.しかし,

通常これらの細胞はなんらかの刺激を与えられなけれ

ば,好中球やリンパ球遊走因子の産生・放出を行なわ

ないことも知られており,正常マウス毛球部組織に上

記細胞等に由来する遊走活性物質が常に充分量存在し

ていることは考えにくい,また血球成分や血清等の液

性成分の混入を危惧し,採取した毛球部組織をホモジ

ナイズする前にPBSにて充分洗浄する操作も行なっ

てみたが遊走因子活性には影響を与えなかった.また,

本実験にて用いた毛球部組織の純度については服部

ら14)が組織学的或いは培養などを行い充分検討を行

たっているので,少なくとも大量の他細胞成分の混入

は考えられない.但し,将来的には各遊走因子に対す

る抗体を作成し,その毛球部への局在を証明しない限

り,決定的なことは言えない.これは将来の課題とし

たい.

 次の問題として,今回検出された白血球遊走因子が

従来他組織或いは細胞から検出されたものと同一のも

のであるか,或いは全く別のものであるかが問題とな

ろう.まずHBE中の好中球遊走因子についてである

が,鑑別を要するものとして補体系成分, LTB.,

TNF,IL・8, IL・1(ETAF)などが挙げられよう.補

体由来の因子の一つであるC5aはin vitroにては好中

球23)リンパ球24)の. in vivo では好中球の遊走活性を

示すことが知られている25)26)またC3系のactive

fragmentであるC3.は56℃,30分間の加熱にて遊走活

性を失うが,C5系のactive fragmentであるC5,は不

活性化されないことが知られている23).HBEの好中球

遊走活性は56℃,30分間の処理では影響を受けない為

C3.の可能性は否定されるが, C5aである可能性は,毛

球部採取時に既に活性化されているとすれば否定でき

ない.しかしながら,前述した如く試料をホモジナイ

ズする前に充分洗浄してもしなくても,あまり活性に

変化がなかったことから, C5aである可能性は余り大

きいとは思えない.次にアラキドソ酸誘導体である

LTB4とその誘導体は, in vitro, in vivoにて好中

球27)-29)好酸球27)28)30)の遊走活性を有し,種々の刺激

によりkeratinocyteを始めとする種々の細胞から産

生されることが知られているが27)これらはいずれも低

分子量である点から,またpronaseなどのタンパク分

解酵素にて影響を受けない点からも除外できよう.細

胞由来因子(cytokine)の中で, TNFはin vivoの系

で好中球25)26)リンパ球31)に対する遊走活性を有する

が,細菌内毒素などの刺激によってのみmonocyteよ

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918 宋  玉如ほか

り産生される物質であり,正常状態では有意に産生さ

れないと考えられる為,これも一応除外されよう. IL-

8は,IL・1, TNF, LPSなどの刺激により, monocyte,

人皮膚由来線維芽細胞,角化細胞,血管内皮細胞より

産生され21),in vitro, in vivo において好中球, T-cell

の走化活性を有する21)32?33)しかし分子量は8KDと低

分子である点と,正常の状態では皮膚内に有意に存在

しないと考えられている為,これも一応除外できよう.

 又, IL-1とETAFは,抽出法等の違いにより多小異

なる性質を示す事もあるが,最近では両者は同一のも

のと考えられている. ETAFは表皮細胞より常時産生

され, in vitroでは好中球3),単核球3)(主にmynocyte)

及びT-cen4)の, in vivo でも好中球や単核球34)の走化

活性を示すことが知られている.生物化学的には

ETAF活性は,80℃,10分間の加熱にて失活1),pH≦

3と13で失活する1).又,90℃,15分間加熱にてもin vivo

における好中球遊走能が50%失活するという報告があ

る34)分子量にっいてはIL・1と同様に15~18KDとい

う報告が多いが,38~70KDの高分子量分画にも同時

に分離されるという報告もある3)5)これは分離中に血

清タンパクなどと凝集したものであろうと言われてい

る.一方, IL-1は種々の刺激によりmonocyteやma-

crophageから産生され. in vitroでは好中球,T・

ce1116),B・cell16),monocyteの, in vivoでは好中球に

対する走化活性25)26)34)~37)を示すという.生物化学的に

は90℃,15分の加熱にて, in vivoでの好中球走化能が

90%失活するという報告がある叫分子量は12~16KD

である2)が,抽出法により85KD以上のものが同時に分

離されるという報告もある38)この場合もやはり血清

中の他の物質と結合した為と考えられている.IL・1は

IL・1αとIL-1βの二つに分類され,末梢血中に存在す

るmonocyteは主にIL・1βを含んでおり, IL-1αは1/

10~1/20に過ぎないことが知られている.一方,培養

keratinocyte中のETAFは膨大な量のIL・1αを含

み, IL-1βはその1/2~1/4であるという燃Dowdらは

IL-laのin vivo の実験にて単核球,好中球両方の浸潤

を認めたが,細胞浸潤は100℃,60分間加熱にて失活し

たと報告している36)以上のことよりHBE中の好中

球遊走因子は細部では多小異なるようにも思われるが

ETAF/IL・1αである可能性は現在のところ否定でき

ない. in vivo の系における比較,そして最終的には分

離精製して比較検討する必要があると思われる.

 この他,皮膚由来の好中球遊走因子としてTa・

kematsuらがEpidermal cyst内容物より抽出した物

質"', Tagamiらが乾癖患者scaleより抽出したPLF

(psoriatic leukocytic factor)7)等かあるが,いずれも

100℃,10分間の加熱にて安定であるなどの生化学的性

質が, HBE中の好中球遊走因子とは異なっている.一

方Kanzakiによると, trichilemmomaのK-TL-1 cell

lineの培養液中に産生された物質は, in vitro, in vivo

ともに好中球遊走因子を含んでおり11)熱に不安定で,

透析による活性の変化はなかったという.又,西岡ら

もtrichilemmoma K-TL・1 cell line の培養液中にIL・

1αの存在を確認している12)これらとHBE中の好中

球遊走因子との異同については今のところ不明であ

り,今後の検討が必要であろう.もし同一あるいは近

似したものであったにしても,腫瘍化した細胞のみか

らではなく,正常細胞から検出されたという点で重要

な意義を残し得よう.

 一方, HBE中の.リンパ球遊走因子については

100℃レ10分の加熱及びTryspsin処理に対してかなり

の抵抗性を示す(表3)ことから,先に述べた如く,

HBE中の好中球遊走因子とは生物化学的に異なる物

質である可能性が強い. ETAF/IL-1αはリンパ球に対

する遊走化活性は認められないという報告41)がある

が,認められるという報告も多く見られ3)4)34)36)一定し

ていない.特にSauderら4)はETAF中のT・cell

chemo attractantは, ETAF活性の認められない低濃

度においても遊走活性を示すが,濃度依存性が認めら

れない点において, ETAF活性とparallelな関係を示

す好中球遊走因子とは性質が異なるとしている.しか

し, ETAF中に認められるリンパ球遊走因子が確実に

ETAF/IL-1αによるもりなのか,それとも抽出過程に

混入した他のcytokineによるものなのかについては

未だ明らかでない.いずれにしてもHBE中のリンパ

球遊走因子がこれら既に報告された因子と同一あるい

はきわめて近似したものである可能性は一応考えられ

よう.

 今後,従来の白血球遊走因子の同定において試みら

れたが如く,更にin vivoでの実験系を追加して比較

検討すると共に,分離・精製を行い,その生化学的,

生物学的性状そして免疫化学的手法を用いての局在の

確認等,検索を進めていきたい.今回,毛球部組織よ

り同定された好中球遊走因子とリンパ球遊走因子が,

従来報告された因子(物質)と全く違うものであるか,

同一あるいは類似したものであるか,いずれにあった

にせよ,正常状態にある毛球部組織にかかる成分が大

量に含まれていたことは極めて興味深く,今後毛包・

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毛球部組織由来の白血球遊走因子

毛嚢組織を主舞台として発症する疾患像を理解する上

で考慮するに値する重要知見と思われる.

  これらの因子がin vitroのみならずin vivoの系に

おいて各々独立した走化特性を有するか否か,そして

更に精製を進めての特性の同定など,今後の課題は多

                             文

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919

tt

 稿を終えるにあたり,御指導並びに御校閲を賜わった小

川秀興教授に対し,深甚なる感謝の意を表します。

 尚,本論文の要旨は日本皮膚科学会第661回研究東京地方

会において発表した。

献       ゛

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毛球部組織由来の白血球遊走因子

The Partial Characterization of Neutrophils and Lymphocytes Chemotactic

       Factors from Murine Anagenic Hair Bulb Extract

        Yuru Song*'**, Yoriko Miyazawa* and Kenji Takamori*

       *Department of Dermatology, Juntendo University School of Medicine

                (Director: Prof. H. Ogawa)

              **China-Japan Friendship Hospital

              (Director: Prof. U. Fan), B耐ing

       (Received March 19,1990; accepted for publication March 30,1990)

921

  The murine anagenic hair bulb extract (HBE) showed a chemotactic activity for both neutrophils and

lymphocytes in vitro. The activity for both cells was retained after heating at 56°C for 30 min, and dialysis.

However, heating at 100°C for 10 min inactivated the chemotactic activity for neutrophils, but not for lymphocytes.

Activity for neutrophils was sensitive to degradation by trypsin or pronase but stable to neuraminidase treatment.

0n the other hand, activity for lymphocytes was not affected by protease treatment, but was reduced by

approximately 30% after being treated by neuraminidase. These findings suggest that HBE contains at least two

kinds of chemoattractants for neutrophils and lymphocytes。

  GpnJDermatollOO:913~921,1990ト

Key wordsにanagenic hair bulb extract, neutrophils and lymphocytes chemoattractant