9
1 ウイルス学総論 感染免疫学講義 平成18年5月29日 はしか、水ぼうそう、おたふくかぜ、しん インフルエンザ、SARS、エイズ かぜ、白病、ガン、下痢 感染と感染症 感染:微生物が生体宿主に侵入し定着、増殖すること 汚染:微生物が生体宿主に付着したにすぎない場合 感染症:感染によってこる病気 発病 :感染により生体が様々な障害を受け、病的な変化が 現れた場合 潜伏期:感染から発病に至る期間 感染と感染症 伝染病:感染症の中でヒトからヒトへ伝染していくもの 流行:伝染病で患者が多発すること 汎発的流行:世界的な模の流行 地域流行 :比的地域が限られている流行 散発的流行:患者の数があまり多くなく、少しずつ、 しかし、継続的に発生する場合 DNAとRNA ウイルスは生物? P60 ・すべての生物にはΖ伝子がある ・生物は複製し子孫を残すが、無生物は複製できない 細菌はΖ伝子としてDNAを持つ 細菌は単独で複製できる ウイルスはΖ伝子としてDNAまたはRNAを持つ ウイルスは単独では複製できない 生物細胞に感染し、その細胞の中でなら複製する

ウイルス学総論p-s-inoue/yoshino/060529.pdf致死的伝染性単核症(Duncan病):特殊な家系の男子に集積 EBウイルスに特異的な免疫不全を示し、EBウイルス感染細胞を

  • Upload
    others

  • View
    0

  • Download
    0

Embed Size (px)

Citation preview

Page 1: ウイルス学総論p-s-inoue/yoshino/060529.pdf致死的伝染性単核症(Duncan病):特殊な家系の男子に集積 EBウイルスに特異的な免疫不全を示し、EBウイルス感染細胞を

1

ウイルス学総論

感染免疫学講義平成18年5月29日

はしか、水ぼうそう、おたふくかぜ、 しん

インフルエンザ、SARS、エイズ

かぜ、白 病、ガン、下痢

感染と感染症

感染:微生物が生体宿主に侵入し定着、増殖すること

汚染:微生物が生体宿主に付着したにすぎない場合

感染症:感染によって こる病気

発病 :感染により生体が様々な障害を受け、病的な変化が    現れた場合

潜伏期:感染から発病に至る期間

感染と感染症

伝染病:感染症の中でヒトからヒトへ伝染していくもの

流行:伝染病で患者が多発すること

汎発的流行:世界的な 模の流行

地域流行 :比 的地域が限られている流行

散発的流行:患者の数があまり多くなく、少しずつ、      しかし、継続的に発生する場合

DNAとRNAウイルスは生物?

P60

・すべての生物には 伝子がある

・生物は複製し子孫を残すが、無生物は複製できない

細菌は 伝子としてDNAを持つ

細菌は単独で複製できる

ウイルスは 伝子としてDNAまたはRNAを持つ

ウイルスは単独では複製できない

生物細胞に感染し、その細胞の中でなら複製する

Page 2: ウイルス学総論p-s-inoue/yoshino/060529.pdf致死的伝染性単核症(Duncan病):特殊な家系の男子に集積 EBウイルスに特異的な免疫不全を示し、EBウイルス感染細胞を

2

寄生 と 共生

ウイルスと細菌の比大きさP60

ウイルス:20~250nm程度     光学顕微 では見ることが出来ない

  細菌:ウイルスの数十倍~数百倍の大きさ     光学顕微 で見られる

ウイルスと細菌の比大きさP60

もし、ウイルスが直径1cm程のビー玉ぐらいの大きさだったら…

人間の大きさは?

恐竜

約30m 約2000m

岩手山

約100m

マリオス

ウイルスと細菌の比増殖P64

ウイルス:必ず他の生物(細菌、カビ、植物、動物)に     入り込んで宿主の力を借りて行う

  細菌:自己増殖

ウイルスの 伝情報P62

DNAデオキシリボ核酸

RNAリボ核酸

ウイルス

1本鎖DNA

2本鎖DNA

1本鎖RNA

2本鎖RNA

ウイルスはDNAかRNAのどちらかしか持たない

ウイルスの基本構造P62 図5-1

核酸+

タンパク の殻(カプシド)

核酸+

タンパク の殻(カプシド)+

糖タンパク と脂 の外被(エンベロープ)

Page 3: ウイルス学総論p-s-inoue/yoshino/060529.pdf致死的伝染性単核症(Duncan病):特殊な家系の男子に集積 EBウイルスに特異的な免疫不全を示し、EBウイルス感染細胞を

3

ウイルスの形態

アデノウイルス B型肝炎ウイルス エボラウイルス

センダイウイルス イネ萎縮病ウイルス シイタケウイルス

病原微生物の感染経路P130

空気感染(結核、麻疹など)

飛沫感染(インフルエンザ、 疹など)

接触感染(MRSA、ロタなど)

性感染(HIV、梅毒、クラミジアなど)

動物 オウム病

エキノコックスQ熱ペストなど

昆虫日本脳炎

マラリア西ナイル熱病など

咬傷

狂犬病

! 品

サルモネラ

色ブドウ球菌コレラボツリヌスなど

土壌

破傷

料水

クリプトスポリジウムA型肝炎E型肝炎など

母子感染

HIVHTLV

B型肝炎など

ウイルスの感染経路P130

•皮膚•口腔粘膜•呼吸器粘膜•消化器粘膜•眼結膜•泌尿生殖器•咬傷•輸

水平感染 垂直感染

•胎盤(子宮内)•産道•母乳•唾液• 液

ウイルスの臓器親和性P94

一般に、微生物が宿主体内に侵入し、定着し、増殖した場合を感染とよぶ

ウイルスの場合は、細胞外で増殖できないため、増殖するために特定の宿主細胞が必要

ウイルスが特定の細胞、組織、器官(臓器)を好んで感染する性 を親和性といい、その対象となる器官は標的器官という

•全身性•神経親和性•皮膚・粘膜親和性•眼親和性•肝臓親和性•唾液腺親和性•リンパ球親和性•消化器親和性

ウイルス感染と発病P94

•顕性感染

•不顕性感染

•日和見感染

日和見感染症健常人に対しては通常病原性を発揮しない弱毒微生物が、何らかの原因で生体 御機構に障害のある患者において病原性を示し感染を引き こすこと

感染と感染症抵抗力

(自然抵抗、免疫力など)

感染力(病原体の種 、量、進入経路、ビルレンス)

感染不成立

不顕性感染

軽症

中等症

重症

病死

発病

Page 4: ウイルス学総論p-s-inoue/yoshino/060529.pdf致死的伝染性単核症(Duncan病):特殊な家系の男子に集積 EBウイルスに特異的な免疫不全を示し、EBウイルス感染細胞を

4

特異的抵抗性

ある個体に対して本来感染能のあるウイルスがその個体の先天的なウイルス増殖抑制機構により増殖できない場合

=

個体の抵抗力

特異的抵抗性種、系統

EBウイルス

伝染性単核症:米国で思春期以後の若い人に多い       日本人には稀

Burkittリンパ腫:アフリカの 温多湿地帯の小児(5~10歳)の         顔 に好発する悪性リンパ腫

上咽頭癌:中国(東南 )を出身地とする成人(男子に多い)の     後 腔に好発するリンパ上皮腫

致死的伝染性単核症(Duncan病):特殊な家系の男子に集積       EBウイルスに特異的な免疫不全を示し、EBウイルス感染細胞を         排除することが出来ないために致死的伝染性単核症をきたす

特異的抵抗性年齢

¸一般にウイルス感染に対しては胎生期に最も感受性が い

¸生後次第に抵抗性をもつようになる

¸老化するに従い再び抵抗性が低下する

抵抗性の年齢依存性は特異免疫能の年齢依存とも一致し、両者を分離しがたい

特異的抵抗性栄養状態

普通では致死的でないウイルスの感染が、栄養不良の状態では致死的になることがある

アフリカでは麻疹による死亡率が欧米の400倍に及ぶ

NAIDS: Nutritionally Acquired Immune Deficiency Syndromes

特異的抵抗性温度

一般にウイルスの増殖には至適温度がある

ライノウイルス: 腔(33℃)など体温より低い温度のみで増殖冬期に感冒が多いこととウイルス増殖の至適温度が関連(?)

ヘルペスウイルス:発熱によって潜伏状態のウイルスが誘発         水疱を生じる

特異的抵抗性ホルモン

副腎皮 ホルモンはウイルスに対する感受性を める

コルチゾン: 膜ヘルペスの誘発      種痘疹の拡大

妊婦ポリオや肝炎の重症化潜伏中のポリオーマウイルス、サイトメガロウイルス、単純ヘルペスウイルス2型などの再活性化

Page 5: ウイルス学総論p-s-inoue/yoshino/060529.pdf致死的伝染性単核症(Duncan病):特殊な家系の男子に集積 EBウイルスに特異的な免疫不全を示し、EBウイルス感染細胞を

5

不顕性感染

顕性感染 :症状の現れる感染不顕性感染:症状の現れない感染

ウイルス感染症の場合,まったく症状がでなくても感染が続いている場合があるウイルスの病原性,感染力と宿主側の抵抗性や特異性との関係によって顕性感染になるか不顕性感染になるかが決まる

不顕性感染をおこすウイルスはその宿主との間に平衡関係にある不顕性感染をおこすウイルスはその自然宿主との間の相互依存関係にある場合が多く,同じウイルスでも自然宿主とは異なる宿主に感染すると致命的な感染を引き こす例がある

熱ウイルス旧世界サルには不顕性感染ヒトには重篤な症状新世界ザルには致命的

不顕性感染

不顕性感染の頻度が い感染症の場合、一般にヒトからヒトへの感染経路の 求が困難になる場合が多くあり、疫学上重要な意味をもつ

不顕性感染者は病状の自 がなく、通常の社会活動に支障無く参加できるので、感染源としての自 があまりなく、危 な存在である場合がある

不顕性感染では感染者の行動が制約無く伝播し、被感染者に直接知られることなく影 を及ぼしているという意味で重要な疫学上の 題である

プリオン病 BSE(牛海綿状脳症)P336~

BSEとはどのような病気?

1. 潜伏期間は3~7年程度、発症すると消耗して死亡、その経過は2週間から 6ヶ月。

2. 英国では3~6歳牛が主に発症。

3. 臨床症状は、神経過敏、攻撃的あるいは沈鬱状態となり、泌乳量の減少、 欲減退による体重減少、異常姿勢、協調運動失調、麻痺、 立不能などであり、 死の転帰をとる。

BSEの原因は何?

プリオンという通常の細胞タンパクが異常化したもの

プリオンは、細菌やウイルスの感染に有効な薬剤であっても効果がない

異常化プリオンは、通常の加熱調理等では不活化されない

ヒトや他の動物に似た病気は?

めん羊や山羊      :スクレイピーミンク         :伝達性ミンク脳症ネコ          :ネコ海綿状脳症シカやエルク(ヘラジカ):慢性消耗病

ヒト:クールー   クロイツフェルト・ヤコブ病   致死性家族性不眠症   新変異型クロイツフェルト・ヤコブ病

Page 6: ウイルス学総論p-s-inoue/yoshino/060529.pdf致死的伝染性単核症(Duncan病):特殊な家系の男子に集積 EBウイルスに特異的な免疫不全を示し、EBウイルス感染細胞を

6

英国など諸外国での新変異型クロイツフェルト・ヤコブ病発生状況は?

平成17年1月現在英国 153名フランス 9名アイルランド 2名イタリア 1名米国 1名カナダ 1名

アイルランド及びカナダの事例については英国での滞在歴があり、アメリカの事例は在米の英国人。

諸外国でのBSE発生状況は?

国際獣疫事務局の統本疾病が1986年に英国で発見されて以来、英国のほか、ベルギー、デンマーク、フランス、ドイツ、アイルランド、イタリア、ルクセンブルク、オランダ、ギリシャ、スペイン、ポルトガル、フィンランド、オーストリア、スイス、リヒテンシュタイン、チェコ、スロヴァキア、スロベニア、ポーランド、イスラエル及びカナダで国産牛の発生例が報告。

オマーン、フォークランド諸島、デンマーク、カナダ、イタリア、アゾレスでは英国から輸入された牛でのBSE発生が報告。なお、2003年12月に報告された米国での発生例はカナダから輸入された牛とされている。

日本でのBSE発生状況は?

平成13年10月18日の全頭検査開始以降、BSEと診断された牛の 肉、内臓等、当該牛に由来するものはすべて焼却処分されており、市場には流通していない。

確認年月日 確認時の月齢 品種 性別 生産地

1 平成13年9月10日 64ヶ月例 ホルスタイン種 雌 北海道

2 平成13年11月21日 67ヶ月例 ホルスタイン種 雌 北海道

3 平成13年12月2日 68ヶ月例 ホルスタイン種 雌 群馬

4 平成14年5月13日 73ヶ月例 ホルスタイン種 雌 北海道

5 平成14年8月23日 80ヶ月例 ホルスタイン種 雌 神奈川

6 平成15年1月20日 83ヶ月例 ホルスタイン種 雌 北海道

7 平成15年1月23日 81ヶ月例 ホルスタイン種 雌 北海道

8 平成15年10月6日 23ヶ月例 ホルスタイン種 去勢 栃木

9 平成15年11月4日 21ヶ月例 ホルスタイン種 去勢 兵庫

10 平成16年2月22日 95ヶ月例 ホルスタイン種 雌 神奈川

11 平成16年3月9日 94ヶ月例 ホルスタイン種 雌 北海道

12 平成16年9月13日 62ヶ月例 ホルスタイン種 雌 熊本

13 平成16年9月21日 103ヶ月例 ホルスタイン種 雌 北海道

14 平成16年10月14日 48ヶ月例 ホルスタイン種 雌 北海道

15 平成17年2月26日 102ヶ月例 ホルスタイン種 雌 北海道

16 平成17年3月27日 108ヶ月例 ホルスタイン種 雌 北海道

17 平成17年4月8日 54ヶ月例 ホルスタイン種 雌 北海道

18 平成17年5月10日 68ヶ月例 ホルスタイン種 雌 北海道

19 平成17年5月31日 109ヶ月例 ホルスタイン種 雌 北海道

20 平成17年6月3日 57ヶ月例 ホルスタイン種 雌 北海道

21 平成18年3月13日 68ヶ月例 ホルスタイン種 雌 北海道

22 平成18年3月13日 169ヶ月例 毛和牛 雌 崎

23 平成18年4月17日 71ヶ月例 ホルスタイン種 雌 岡山

特定 位の取扱いは?

国内において、と畜・ 体時にすべての牛の頭 (舌、頬肉を除く。)、せき 及び回腸遠位 の焼却並びにこれらにより 用肉等が汚染されることのないよう 生的な処理を義務

回腸遠位 とは小腸の末端 分を指し、盲腸の接続 分から2メートルまでの 位

牛のせき柱については、せき柱に含まれる背根神経節のリスクがせき と同程度とされたため、平成16年2月16日からBSE発生国の牛せき柱の 品使用等が禁止

米国でBSEの感染の疑いがある牛が発見された時の対応は?

平成15年12月24日米国においてBSEが疑われる牛が発見されたとの米国農務省の発表を受け、米国から輸入される牛肉等を検疫所において保留

平成15年12月26日英国の獣医学研究所における確定診断の結果、BSEと診断されたため、米国産牛肉等の輸入を禁止

牛肉は安全?

「国際獣疫事務局」の基準では、筋肉は特定 位ではないとされており、牛肉の安全性には問題がないとされている。

国内においては、 用として処理されるすべての牛についてBSE検査を実施するとともに、と畜・ 体時にすべての牛の特定 位の除去・焼却及びこれらにより 肉等が汚染されることのないよう 生的な処理が義務づけられている。

Page 7: ウイルス学総論p-s-inoue/yoshino/060529.pdf致死的伝染性単核症(Duncan病):特殊な家系の男子に集積 EBウイルスに特異的な免疫不全を示し、EBウイルス感染細胞を

7

乳製品は安全?

WHO専 家会議報告によると、動物や人の海綿状脳症においても乳はこれらの病気を伝達しないこととされており、したがって、BSEの発生率が い国であっても、乳及び乳製品は、安全と考えられるとされている。

用牛脂は安全?

国内においては、 用として処理されるすべての牛についてBSE検査を実施するとともに、と畜・ 体時にすべての牛の特定 位の除去・焼却及びこれらにより 肉等が汚染されることのないよう 生的な処理が義務づけられている。

用牛脂については、特定 位及びせき柱以外の 位を原料として、 品 生法に基づく 用油脂製造業の 可を得た施において溶 、精製されており、問題はない。

エマージングウイルスと新興感染症P192

年 病気 病原体 備考1981 エイズ ヒト免疫不全ウイルス

1985 ウシ海綿状脳症(BSE) プリオン 2001日本で発生、2003米国で発生

1989 エボラ出 熱 エボラウイルス 過去1976、1979に発生。これ以降1995、1996にも流行

1991 ベネズエラ出 熱 グアナリトウイルス

1993 リフトバレー熱 リフトバレーウイルスエジプトで流行、過去に1977に大流行。その後1997年、1999年に流行

1993 ハンタウイルス肺症候群 ハンタウイルス 米国南西 で発生

1994 ブラジル出 熱 サビアウイルス

1997 病原性トリインフルエンザ感染 トリインフルエンザウイルス 香港で発生、今年日本でも見られたがヒトへの感染はなし

1998 ニパウイルス感染 ニパウイルス マレーシアで発生

1999 ウエストナイル熱 ウエストナイルウイルス 米国で発生

1999 マールブルグ病 マールブルグウイルス コンゴで発生

2000 新型アレナウイルス感染 ホワイトウォーターアロヤウイルス 米国カリフォルニアで発生

2003 重症急性呼吸器症候群 SARSコロナウイルス 中国広東省で発生

SARS (Severe Acute Respiratory Syndrome)重症急性呼吸器症候群

中国広東省で最初の症例が こったとされる

新型コロナウイルスが原因の新しく発見された感染症

SARS はどんな病気?

SARSを発症している人や、SARSウイルスとの密接な接触後通常2~10日(平均5~6日)たって、38℃以上の急な発熱、咳、息切れ、呼吸困難などのインフルエンザ様の症状

発熱から約1週間後に呼吸困難、咳、肺炎などの症状

下痢、頭痛、悪寒戦慄、 欲不振、全身倦怠感、意 混濁などの症状も見られる

SARS はどのように感染する?

SARSウイルスは基本的に、症状のある人から感染する

最も感染の危 性が いと考えられる状況•SARS患者の看 や介•SARS患者との同居•SARS患者の体液や気道分泌物との直接接触

感染は、患者が咳やくしゃみをしたときに飛び散るしぶきを吸い込むことによる感染(飛沫感染)が中心

Page 8: ウイルス学総論p-s-inoue/yoshino/060529.pdf致死的伝染性単核症(Duncan病):特殊な家系の男子に集積 EBウイルスに特異的な免疫不全を示し、EBウイルス感染細胞を

8

SARS に感染すると必ず症状がでる?

SARSウイルスに感染した人のうち、症状がでる割合は確認されていない

SARSの不顕性感染や極めて軽症な症例も存在する

SARS の治療法は?

有効なSARSの治療法はまだ確立されていない

肺炎などの症状を緩和し、全身状態を良くするための対症療法が中心

症状がではじめた頃は、SARSとそれ以外の原因からの肺炎との区別をつけるのは難しいため、一般的な細菌性肺炎に対する抗菌薬で治療する

肺炎が重症になると、酸素が投与されたり、人工呼吸器が使われたりすることがある

SARS を発症しても治る?

SARSの可能性があると診断された人の80~90%が軽い肺炎やインフルエンザ様の症状を呈した後、6~7日で症状が改善し回復

10~20%の人が呼吸器不全などで重症化

致死率は9.6%(WHOの報告)

SARS いつ、どこで、どのように広まった?

SARSは、2002年11月16日に中国広東省仏山市で最初の患者発生

その後、香港、北京などに広がり、感染した人の移動によって世界中に拡大した

最終的に8,098症例と774死亡例が報告された

2003年7月5日に、WHOは世界的な流行が終息したと宣

日本国内にSARS 患者はいた?

2002年11月から2003年7月5日までの流行期に、日本国内の医療機関から届けられた報告症例数は、 2003年6月末で68例(疑い例52例、可能性例16例)であったが、全ての症例でSARSは確認されなかった

SARS除外 定•他の診断によって症状が説明できるもの•標準の抗生剤治療等で、3日以内に症状の改善を見るもの(細菌性感染等抗生剤反応性疾患の可能性が い)

現在、海外旅行に行くとSARSに感染する危 がある?

現在、WHOはどの国に対しても渡航自粛勧告は出していない

通常の観光等で海外を訪問することで、特に感染を恐れる必要はないが、旅行前には必ず、訪問先の最新情報を入手する

過去に流行が確認された地域から帰国した人との接触も問題ない

感染の危 がある場所を訪れたり、感染の危 が い行為を行った人で発熱等の症状がある人は、念のため医療機関あるいは保健所などにあらかじめ相談し、受診する

Page 9: ウイルス学総論p-s-inoue/yoshino/060529.pdf致死的伝染性単核症(Duncan病):特殊な家系の男子に集積 EBウイルスに特異的な免疫不全を示し、EBウイルス感染細胞を

9

どのような症状のとき「SARSに感染したかも」と考える?

SARSの症状は、急な発熱と呼吸器症状を主とする

症状だけでは他の感染症と区別がつかない場合が多い

SARSの症状と同じだからといって全ての人がSARSウイルスに感染したわけではない•症状が重い• 引いて治りが悪い•同じようなひどい呼吸器症状の人と密接な接触をした•周りに同じような症状の人が多い•SARS患者が発生している地域へ旅行。滞在歴がある

感染の心配が消えない場合は、医療機関に連絡し受診する

国や自治体のSARS対策は?

日本国内にはSARS患者がいないため、輸入例の検知に力が注がれている

SARSウイルスに 似したウイルスが分離されたハクビシンやタヌキ等の輸入禁止措置

もしSARSに罹ったときの医療費は?

SARSと診断された患者については、 道府県知事が入院勧告を行い、感染症法に基づいた入院となる

この勧告で入院する場合は、患者本人の医療費負担はない

疑い段階でSARSとして診断がついていない場合は、一般の医療として取り扱われるので、通常の保 診療と同様に自己負担

次回講義

•DNAウイルス

•肝炎ウイルス