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生態系と調和した持続的な経済社会システムの構築には、環境負荷が少ない高品質のエネルギーの
長期的安定供給が不可欠である。産業革命を支えたエネルギー源である石炭から、第2次大戦後現在
まで急速に展開されたより高品質で安価な石油や天然ガスへの大規模な転換は人類の歴史上稀有の出
来事であった。原子力発電による電気の供給もこれらの高品質エネルギー源に支えられた寄生的なエ
ネルギー変換技術にすぎない。しかしながら、中東油田に関する M. Simmons の詳細な実証分析によ
れば、中東原油の最大の供給国サウジアラビアでさえ新規の油田開発はすでに峠を超え、中東石油全
体の供給不安は現実のものになりつつある(Simmons、2005)。2008年6月にはニューヨーク市場で
の原油価格が史上最高値を更新し140ドル近くに達したことは記憶に新しい。また、中国やインドに
代表されるアジアに於ける今後予測される急速な経済発展により、アジア地域でのエネルギー消費量
は石油換算(TOE)で2004年の31億から2030年には62億に達すると推定されている(Ito、2007)。
このアジア地域のエネルギー消費推定値は2030年における世界のエネルギー使用量の約4割に該当
する量になると言われている。
一方生態系や社会経済システムに地球温暖化現象が与える影響が近未来に深刻化するとの危惧から、
石油や天然ガスに代替可能なエネルギー源の探求が国際的にも急務になりつつあり、代替可能なエネ
ルギー源のひとつとしてバイオ燃料が注目を集めつつある。実際、アメリカとブラジルは2007年3
月にバイオ燃料の総括的2国間協定を締結し、大規模なバイオ燃料生産を強力に推進することに合意
した。日本においても新エネルギーの普及促進のために、2003年度から再生可能エネルギー割当制度
(RPS(Renewables Portfolio Standard)制度)が実施されている。ヨーロッパでは同様の制度が日本よ
りも先行して実施されている。
我々は農業作物、特にトウモロコシやサトウキビからバイオ燃料を生産する方法が自立的な技術に
なりうるかどうかを経済学および熱力学の観点から再検討を加えてきた。この成果は来年5月にイギ
リスの出版社 Earthscan から出版されることが決定している。本のタイトルは以下のとおりである。
The Biofuel Delusion: The fallacy of large scale agro-biofuels production
エネルギー
バイオ燃料の幻想
総合科学部 人間社会学科 法律経済コース/ ICTA, UAB, Barcelona, Spain
教授 眞弓浩三/ Prof. Mario Giampietro
Tel/Fax:088-656-7175 E-mail:[email protected]
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Mario Giampietro眞弓浩三