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想起率の推移にみるBtoBBtoC の差異 学生片平ゼミ 34湯月哲海 1

想起率の推移にみるBtoBとBtoC の差異...IBMはB to Bカテゴリで2008年~2013年までなんと1位(想起率3.0%~ 4.5%) しかし2014年から首位から陥落。その後は大きく落ち込む。2014年:2位

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Page 1: 想起率の推移にみるBtoBとBtoC の差異...IBMはB to Bカテゴリで2008年~2013年までなんと1位(想起率3.0%~ 4.5%) しかし2014年から首位から陥落。その後は大きく落ち込む。2014年:2位

想起率の推移にみるBtoBとBtoCの差異

学生片平ゼミ 34期

湯月哲海

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Page 2: 想起率の推移にみるBtoBとBtoC の差異...IBMはB to Bカテゴリで2008年~2013年までなんと1位(想起率3.0%~ 4.5%) しかし2014年から首位から陥落。その後は大きく落ち込む。2014年:2位

問題意識

ブランド・ジャパンの想起率データを見るに、実に「安定している」!どのカテゴリであろうと上位10社の顔触れは10年以上ほとんど変わらず

しかし、総じて安定している顔触れのなかでも、ちらほらと上位から姿を消すブランドもあり(復活する場合も見受けられるが)

「安定していた」のに上位から(1度でも)姿を消したブランドにはどんな特徴があるのか?深堀りすることで新しいブランドの見方が浮かび上がるかも

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「安定した」ブランド、「落ち込む」ブランド2003~2007年の5年連続で総合ランキング上位50位以内にあった

ブランドを抽出(34ブランド)

これらのブランドのうち、2008~2017年までの間に一度でも総合ランキング上位50位から陥落したことのあるブランドを抽出

抽出したブランドが総合ランキングにおいてどれだけ想起率(回答者数/母数)を落としているのかを分析

また、抽出したブランドが属するうち、より上位に位置することの多いカテゴリごとの順位と想起率(回答数/母数)の遷移を追う例えば『IBM』は電機・ITと企業(B to B)、情報・教育といったカテゴリで出現

するが、その中でも最も上位に位置することが多いのは企業(B to B)なのでこれにおける推移を追うそうすることで、「総合では上位から外れてしまったが、電機・ITの分野では

依然として強いブランドである」といったパターンも認識できる

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SONY ソニーTOYOTA トヨタ自動車HONDA ホンダNISSAN 日産自動車Canon キヤノンSHARP シャープ松下電器産業Panasonic パナソニックNEC 日本電気Apple アップルコンピュータKao 花王TOSHIBA 東芝SUNTORY サントリーIBM アイ・ビー・エムDELL デルコンピュータNTT DoCoMo NTTドコモAEON イオンHITACHI 日立製作所FUJITSU 富士通EPSON セイコーエプソンKIRIN キリンビールNational ナショナルAsahi アサヒビールANA 全日空AJINOMOTO 味の素SHISEIDO 資生堂NTT 日本電信電話mazda マツダKDDIKAGOME カゴメAmazon アマゾンNikon ニコンRAKUTEN 楽天ヤマト運輸

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「安定した」ブランドと「落ち込む」ブランド

32ブランド中、2008年~2017年までの間に一度でも50位以内から陥落したことのあるブランドは…

松下電器産業、IBM、DELL、EPSON、National、NTT、KDDI、Nikon

このうち、ブランドの統廃合を行った松下系列を除けば

IBM、DELL、EPSON、NTT、KDDI、Nikon

総合から姿を消したことがあっても、各カテゴリ(B to Bや、電機・ITなど)ではどうだろう?

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IBMの順位・想起率推移

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IBMの順位・想起率推移

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DELLの順位・想起率推移

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DELLの順位・想起率推移

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EPSONの順位・想起率推移

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EPSONの順位・想起率推移

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Nikonの順位・想起率推移

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Nikonの順位・想起率推移

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NTTの順位・想起率推移

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NTTの順位・想起率推移

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KDDIの順位・想起率推移

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KDDIの順位・想起率推移

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「安定した」ブランドと「落ち込む」ブランド

抽出されたブランドはIBMを除き、「電機・IT」カテゴリで高い位置を占めるブランドであったIBMも「電機・IT」カテゴリで上位に複数回登場するが、基本的に「B to B」カテ

ゴリが最も上位に登場する回数が多い

IBMは2004年のPC事業部門売却以降、法人向け業務のみを受け持つ。一方、他ブランドはB to C業務も大きなウェイトを占める

B to BブランドとB to Cブランドで、何か興味深い差異がみつかるのではないか?

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「安定した」ブランドと「落ち込む」ブランド

基本的に上位ブランドほど安定しているはずだが、IBMは大きな落ち込みを見せたIBMはB to Bカテゴリで2008年~2013年までなんと1位(想起率3.0%~

4.5%)

しかし2014年から首位から陥落。その後は大きく落ち込む。2014年:2位(2.9%) 2015年:4位(1.6%) 2016年:25位(1.3%)

それ以外のブランドは2008年から下降傾向にあったが、近年は安定している場合が多いNTT、EPSON、DELL、Nikonがそのように見える

一方、KDDIはおそらく自社ブランドであるauに注目が行きがち⇒「KDDI」自体の落ち込みは止まっていない

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仮説:消費者個人としての接触がブランド評価に与える影響IBMはB to B取引に注力、2004年にLenovoにPC事業部門を買収さ

れてからは、一般消費者と直接触れる機会は無いと思われる

一方、それ以外のブランドは法人向けのみならず、一般消費者向けの製品・サービスも展開。個人として触れる機会が比較的多い

直接触れる機会が多いブランドほど、自らの実体験に基づき判断されることも多くなるので、そう簡単にdeclineしない?

法人向けが主のブランドは、個人として触れ合う機会がない分、判断の基準が日経新聞などの産業紙情報に依存?→不祥事がなくとも、業績のbad newsだけで大きく落ち込む?

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仮説検証(IBMの売上ポートフォリオ)

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仮説検証(IBMの売上ポートフォリオ)

売上ポートフォリオを鑑みても、IBMが法人向け中心であることは自明

Thinkpad擁するPC事業部門は2004年にLenovoに売却

⇒一般消費者との強い接点が失われる

⇒以降、IBMは法人向け製品/サービスのみに携わる

となると、IBMの評価は産業紙の情報に大きく左右される?

産業紙上の報道から、各ブランドの趨勢にどのように影響を与えたかを調べてみる

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仮説検証(産業ニュースからみるIBM)

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仮説検証(2014年当時の報道)

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(いずれも日経新聞より)

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仮説検証(2015年の報道)

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仮説検証(2016年の報道)

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仮説検証

IBMは想起率を大きく落とした2014年以降に日系電子版紙面上で業績の落ち込みを報道する特集が多く組まれるしかし、2016年はそこまで多くない⇒2017年版の結果に反映?

一方、DELLはそもそも日系電子版上で特集を組まれることがほとんど無かった(2014年9月~2016年9月までの記事)

EPSONは、新製品のロンチなどの特集は多く組まれていたが、業績不振についての報道は無し(一部、株価が大きく下落したという報道のみ)

NTTとKDDIも、基本的に業績不振に関するニュースはなし(一部、株価についての報道)。新製品/サービスに関するニュースが主

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結果とその解釈

IBMのブランド評価上の「落ち込み」は、産業ニュースの趨勢と関係がありそう

しかし、自分の仮説を証明するには、他ブランドについては業績不振の特集が組まれているにも関わらず、「落ち込み」は軽微であることを証明しなければならない

その意味では、仮説検証は不完全であった

とはいえ、B to Bブランドを評価する際に、回答者はいわばアナリストのつもりで、自分事として判断するのではなく、業績などから判断する可能性が大いにあることは言えると思われる

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