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- コ ン テ ン ツ -
・御挨拶・手術コラム・トピックス・統計 学会発表
2015 年
-1-
名古屋徳洲会総合病院
総長
心臓血管外科部長
大橋
壯樹
心臓血管外科医師
古井
雅人
心臓血管外科
年報
名古屋徳洲会総合病院
心臓血管外科部長
飯田
浩司
心臓血管外科医長
只腰
雅夫
2015 名古屋徳洲会総合病院 心臓血管外科 年報 2015 年 1月 発行
≪心臓血管外科外来体制≫
※午前診9:30~11:30※夕診 17:00~19:00
心臓血管外科医師は24時間
院内常駐体制です
-
御
挨
拶 -
午前診
月
火
水
木
金
土
夕診
飯田・内野只腰 担当医
担当医担当医担当医
担当医
大橋・景山飯田
大橋・古井小谷
★緊急患者様はいつでも受け付けます
名古屋徳洲会総合病院
Tel:(0568) 51-8711Fax:(0568) 51-7115
愛知県春日井市
高蔵寺町北2-52
JR中央線、高蔵寺駅
で下車。北口より西へ
徒歩5分
〒487-0016
当 院
高蔵寺駅南口
北口北口
★紹介状持参の場合はいつでも受け付けます
ハイブリッド手術室
当院心臓血管外科医師
新築となった名古屋徳洲会総合病院
地域の皆様方そして
連携をさせていただいて
いる医療機関の皆様方に
は大変お世話になってお
ります。心より御礼申し
上げます。
平成10年(
1998年)
より心臓血管外科を開設
して17年になりました。
当院心臓血管外科での
手術件数は5千件を超
え、当グループでの手術
総数は1万件を超えまし
た。昨年4月の新築移転
とともにハイブリッド手
術室
が稼働し昨年のハイ
ブリッド手術は115例
となりました。本年は経
カテーテル大動脈弁置換
術(TAVI
)の施設認定をい
ただきTAVI
の開始に向け
準備中です。循環器内科、
放射線科とさらに連携を
図りハートチームとして
循環器医療を発展させて
まいります。
植込み型補助人工心
臓手術を開始してから重
症心不全の患者さんが増
加しPCPS
症例が38例、補
助人工心臓手術5例と
増え、そのうち植込み型
補助人工心臓手術は昨
年1例行ない順調な経過
です。小さな傷口での心
臓手術(M
ICS)
も標準的
な治療になりつつありま
す。再手術例も27例(12
例の弁膜症、7例の胸部
大動脈瘤、その他8例)行
いました。
また只腰先生の加入
で血管外科手術症例が
飛躍的に増えました。飯
田先生の加入で小児の
漏斗胸の手術も順調に
行われています。
緊急手術、高齢者、再
手術、重症心不全の症例
が増加し手術をさせてい
ただいたにもかかわらず
救命できなかった患者さ
ん、合併症で後遺症を残
された患者さんも少な
からずおられます。患者
さん、ご家族様はもとよ
りご紹介していただいた
医療関係者の皆様に大
変申し訳なく思います。
多く経験と反省をさせ
ていただき、今後手術を
させていただく患者さん
をより多く救命しお役に
たてるように精進してま
いります。
日本の心臓血管外科
を取り巻く状況も変わり
つつあります。新しい厚生
労働省主体の専門医機
構において学会の乱立増
加に言及し、学会と関係
なく手術数に合わせた後
期研修医数の制定が現
実のものとなります。植
込み型補助人工心臓、
TAVI
等の先進治療にお
ける施設の限定も多くな
りました。今回の診療報
酬改定に伴う時間外・深
夜緊急加算により十分な
外科医師数を確保し、多
くの症例数をこなし、
チーム医療を推進する病
院への優遇が定められま
した。これらは心臓血管
外科の集約化につながり
ますが緊急患者の受け入
れを行う義務も負うはず
であり当院は今後も緊急
手術はすべて受け入れる
体制を維持していく所存
です。
昨年も地域の皆様・各
医療機関の皆様には大
変お世話になりました。
2014年も手術を
含め、多くの臨床経験を
積ませて頂くことがで
きました。研究面では2
回、冠動脈バイパス術の
成績をまとめて学会発
表する機会を得ました。
PCI
を施行後にステント
内狭窄が認められ手術
に回ってくる患者さん
や、左主幹部病変絡みの
患者さんなど一時期よ
りも増えておりバイパ
ス治療も見直されてい
る印象があります。当院
では低侵襲を心がけ、冠
動脈バイパス術の98%近
くをオフポンプで施行し
ております。またなるべ
く太い静脈グラフトを使
用して末梢側を個別では
なく連続吻合することで
グラフト本数および手術
時間も短縮しなおかつグ
ラフトの開存率も悪くな
いというデータを出して
おります。
今後もこのような工夫
を重ねながら、少しでも
患者さんのより良い予後
につながるよう努力して
いきますので宜しくお願
い申し上げます。
2014年5月に赴
任して以来、心臓血管
外科の一員として診
療、手術を行っており
ます。今まで見聞きし
たどこよりも、重症の
心臓血管疾患の緊急手
術が多い病院です。「生
命だけは平等だ」の徳
洲会の理念に基づき、
医師、看護師、技師、事
務職など全職種が協力
して、迅速な診断、手術
に努めております。急
性大動脈解離などの人
員や資材を要する緊急
手術にも随時迅速に対
応する事が可能です。
病院が新築され設備が
一新されて、緊急手術
への対応がより容易に
なっています。今後も
地域の方々の安心に貢
献できるように、診療
に専心いたします。ご
指導のほどよろしくお
願い申し上げます。
また、私は胸壁外科
として、漏斗胸、鳩胸な
どの診察、治療も行っ
ております。受診をご
希望の方はいつでもご
連絡ください。[
胸壁外
科]
でインターネット上
を検索して頂ければ、
疾患の解説等を公開い
たしております。まれ
な疾患で悩んでおられ
る方のお力になれれば
幸いです。
昨年の7月から名古
屋徳洲会総合病院で主
に末梢血管外科を担当
させていただいており
ます。当院では、昨年の
新病院移転以後、ハイブ
リッド手術室(血管造影
が可能な手術室)を運用
しております。ハイブ
リッド手術室により、血
管外科治療手段の幅が
大きく広がりました。
シャント閉塞の場合、
血栓除去の後、引き続き
シャント造影を行い、
PTA
を追加しています。
従来ですと、手術室で血
栓除去を行った後、血管
造影室へ移動してP
TA
でしたが、ハイブリッド
手術室では一連の治療
が可能となりました。こ
れにより、手術時間の短
縮、手術成功率の向上、
シャント感染のリスク
の軽減を図ることがで
きました。
下肢動脈血流障害に
つきましても、ハイブ
リッド手術室を多用し
ており、術中造影を行い
ながら、確実な血流改善
治療が行えるようにな
りました。
また、大動脈瘤に対し
ても緊急のステントグ
ラフトが可能となって
おります。
ハイブリッド手術室
の運用には、心臓血管外
科医、看護師の他に、麻
酔科医、循環器内科医、
放射線技師、臨床工学士
等多くの職種でのチー
ム医療が必要ですが、皆
情熱をもって、緊急対
応、24時間運用のために
取り組んでいます。
現在、導入準備中なの
は、下肢静脈瘤に対する
ラジオ波焼灼術です。こ
れは現在、普及しつつあ
るレーザー治療よりも
さらに新しい治療法で、
レーザーと比べて、術後
疼痛の軽減、内出血の減
少が期待されています。
次のアナウンスをぜひ
ご期待ください。
-2-
2015 名古屋徳洲会総合病院 心臓血管外科 年報 2015 年 1月 発行
心臓血管外科医師
内野
学
心臓血管外科医師
小谷
典子
景山
聡一郎
大阪大学医学部附属病院
今年は、より専門的
な知識、技能の修得を
目的に日々研鑽を積ん
でいきたいと考えてお
りますので、ご指導の
ほどお願い致します。
これからも患者さん
ならびにご家族様に十
分説明し納得して頂い
た上で誠意をもって治
療にあたっていきたい
と考えております。
名古屋徳洲会総合病
院にて心臓血管外科グ
ループ新年懇談会を行
いました。忙しい中、大
阪、京都から集まってい
ただきました。専門医
資格認定に関する勉強
会、症例検討会、手術症
例報告会を行い、その後
新年会を行いました。若
平素より大変お世話
になります。
昨年は半年間、大阪
大学心臓血管外科にて
植込み型補助人工心臓
を始めとする心不全外
科の研修をしてきまし
た。劇症型心筋炎や急
性心筋梗塞に対する一
時的体外設置型補助人
工心臓、拡張型心筋症に
対する植込み型補助人
工心臓や心臓移植に至
るまで、本邦最先端の心
不全外科の経験を積ん
で来ました。
最大限の内科的治療
を施行したにも関わら
ず安静時でも明らかな
症状を認める重症心不
全に対する外科的治療
は、今後、飛躍的な発展
が期待される領域です。
古くは、左室拡張を伴う
重症心不全に対し、
Batista
手術などに代表
される左室形成手術が
行われて来ました。しか
し、左室形成手術がなか
なか心臓移植の代替治
療になり得ない状況が
続く中、2010年以
降、日本の重症心不全外
科治療は大きな転換期
を迎えました。臓器移植
法の改正に始まり、20
11年には植込み型補
助人工心臓が心臓移植
へのブリッジ適応のみで
はありますが、正式に保
険償還されました。
従来の補助人工心臓
は体外設置型と呼ばれ、
大きな機械が体に装着
されるため心臓移植ま
での数年間の入院が余
儀なくされます。しかし
植込み型補助人工心臓
による在宅治療が日本
でも標準的な医療とな
ることで、重症心不全の
患者さんが自宅に戻れ、
日常生活を取り戻す時
代がやってきました。ま
た本邦の植込み型補助
人工心臓の生存退院率
は非常に高く、ほとんど
の症例で在宅治療が可
能となっています。
本邦では、依然として
重症心不全治療のゴー
ルは心臓移植ですが、海
外では植込み型補助人
工心臓が心臓移植のブ
リッジデバイスの枠を超
え、心臓移植代替治療
としての地位を築きつつ
あります。今まで、内科
的治療の限界を超える
と諦めるしかなかった重
症心不全患者の治療法
の選択肢が飛躍的に広
がり、多くの患者さんの
自宅退院が期待出来る
と考えています。
東海地方における心
い先生が多く集まり活
気のある会になりまし
た。さらに連携と協力
を深め手術のレベルを
高めるべく研鑽するこ
とを誓いました。
不全外科の領域はまだ
まだ発展途上の状態に
あります。今後、東海地
方の重症心不全外科の
領域を先頭に立って引っ
張っていけるよう研鑽を
積んでいく所存です。
本年もよろしくご指
導、ご鞭撻をお願い申し
上げます。
大阪大学医学部附属病院
研修報告
名古屋徳洲会心臓血管外科グループ
新年懇談会
2013年10月より
働かせて頂いておりま
す。
昨年は新病院への移
転などもあり、ますま
す症例も増えてまいり
ました。これもひとえ
に患者さんをご紹介し
てくださる紹介医の先
生方のおかげでござい
ます。
2015年はさらに
より多くの患者さんの
お力になれるよう、
チーム一丸となって頑
張りたいと思います。
今後ともよろしくお
願い致します。
景山聡一郎
大阪大学心臓血管外科にて
名古屋徳洲会総合病院心臓血管外科グループ
2015年
1月17日
昨年も地域の皆様・各
医療機関の皆様には大
変お世話になりました。
2014年も手術を
含め、多くの臨床経験を
積ませて頂くことがで
きました。研究面では2
回、冠動脈バイパス術の
成績をまとめて学会発
表する機会を得ました。
PCI
を施行後にステント
内狭窄が認められ手術
に回ってくる患者さん
や、左主幹部病変絡みの
患者さんなど一時期よ
りも増えておりバイパ
ス治療も見直されてい
る印象があります。当院
では低侵襲を心がけ、冠
動脈バイパス術の98%近
くをオフポンプで施行し
ております。またなるべ
く太い静脈グラフトを使
用して末梢側を個別では
なく連続吻合することで
グラフト本数および手術
時間も短縮しなおかつグ
ラフトの開存率も悪くな
いというデータを出して
おります。
今後もこのような工夫
を重ねながら、少しでも
患者さんのより良い予後
につながるよう努力して
いきますので宜しくお願
い申し上げます。
-3-
重症心不全手術
2015 名古屋徳洲会総合病院 心臓血管外科 年報 2015 年 1月 発行
元気に退院された植込み型補助人工心臓装着の竹川さん
MICS-OPCABの様子
僧帽弁手術後の創部
日本循環器学会シンポジウムにて
ハイブリッド手術室
弓部大動脈瘤に対するステントグラフト
心臓血管外科手術コラム
冠動脈バイパス術
弁膜症手術
胸部大動脈瘤手術
腹部大動脈瘤手術
シャント手術
私のガイドライン
一昨年(2013
年)に東海地区初の植
込み型補助人工心臓
手術を行いました。1
例目の患者さんは現
在脳梗塞で当院に入
院中ですが意識もあ
りリハビリを続けて
います。2014年2
月には第2例目の植
込み型補助人工心臓
手術を行いました。経
過は極めて良好で現
在自宅で普通の生活
を送っています。また
大阪大学で施行した
東海地区の患者さん
の経過観察も行って
おり、6人の植込み型
補助人工心臓患者さ
んを見させてもらっ
ています。
同時に重症心不全
の診療も増えてきま
した。2014年は
PCPS
装着を38例、両心
補助装置を4例行い
ました。特に46歳の重
症劇症型心筋炎で
PCPS
にても多臓器障
害、うっ血性肺水腫が
進行したため両心補
助人工心臓を装着し
ました。臓器障害は改
善し心機能の改善とと
もに13日目に両心補助
から離脱でき元気に退
院されました。PCPS
で
も循環不全(臓器障
害)、肺うっ血を来す
場合もあきらめるこ
となく両心補助人工
心臓にて救命できる
ことが判明し今後も
このような症例に対
して積極的に取り組
んでいきたいと思い
ます。
昨年の冠動脈バイパ
ス術は91例(弁膜症等
合併を含む)でした。単
独冠動脈バイパス手術
71例中オフポンプ手術
は70例(
99%)で、緊急
症例、状態の不安定な
症例、低心機能の症例
でもオフポンプ手術が
すべて可能となりまし
た。
LAD
1枝病変に対し
ては左第5肋間小切開
によるM
ICS-OPCAB
を
4例に行いました。冠
動脈バイパス術後の再
手術例に対し回旋枝に
対しても左肋間小切開
によるM
ICS-OPCAB
を
右肋間小切開による
僧帽弁手術、右房手術
(心房中隔欠損症)も増
加してきました。手術の
視野は従来の胸骨正中
切開に比べて逆に良好
ですが、大動脈、僧帽弁
等に手が届かないこと
に対するストレスが残
ります。症例を選んで
慎重にさせていただい
ております。バイパス術
後等の再手術例に対し
て最適の方法と考えて
積極的に再手術に応用
しています。
弁置換術後10年以上
経過する患者さんも多
く見させていただくよ
うになりました。昨年は
生体弁機能不全で再手
術を8例行いました。
生体弁の石灰化、ひび
割れ、劣化が原因で、軽
い心不全にて準緊急で
手術をする場合が多く
あります。生体弁患者
さんで術後10年以上の
場合は、息切れ、咳がひ
どくなったり、レントゲ
ンで心拡大がみられた
り、心臓超音波検査で
新たな逆流を認めた場
合は当院受診あるいは
ご紹介いただければあ
りがたいです。
弁の逆流に対しては
昨年は62例のA型急
性大動脈解離の手術を
行い、47例のB型急性
大動脈解離を受け入
れました。当院での多
くの急性大動脈解離の
検討を行い、偽腔の血
栓化したタイプ、大動
脈の拡大していないタ
イプでも破裂する危険
性が高くどのようなタ
イプのA型急性大動脈
解離でも手術が原則で
あることを昨年の日本
循環器学会シンポジウ
ム、胸部外科学会等で
発表させていただきま
した。CTで破裂と診
断できない場合でも手
術してみると破裂して
いる症例が多く存在し
ていることも判明しま
した。安定した状態で
手術に移行させること
も困難なことがあり、
術前の降圧、鎮痛鎮静、
あるいはショック状態
に対しては呼吸循環動
態の安定化を図ること
が重要と思われまし
た。
弓部大動脈瘤、急性大
動脈解離において末梢
側の吻合が下行になる
場合、吻合が困難で出
血、手術時間の延長に
つながる懸念がありま
すが、末梢側をステン
トグラフトに置き換え
るオープンステントグ
ラフト手術が復活しま
した。当院では過去に
(1998年〜200
1年)オープンステン
トグラフト手術を7例
行ないましたが自家製
でその煩雑性もあり中
止していました。20
14年にJグラフトの
市販に伴い使用を再開
し9例のオープンステ
ントグラフトを用いた
胸部大動脈瘤手術を
行いました。下行大動
脈瘤は原則ステントグ
ラフトを第一選択にし
ていますが、上行大動
脈瘤、弓部瘤、胸腹部大
動脈瘤は人工血管置換
手術を行っています。ス
テントグラフトは胸部
に19例、腹部に12例の
計31例に行いました。
弓部大動脈瘤に対し
てもステントグラフト
を行いました。慎重に
適応を若年者、ネック
のない症例、動脈内粥
状硬化(shaggy aorta
)
の場合は原則手術を選
択しています。
昨年は腹部大動脈瘤
手術45例で緊急が11例
(手術死亡3例)でした。
ステントグラフトは12
例でした。1998年か
ら2014年までに当
院で経験した腹部大動
脈瘤手術は900例で
あり、そのうち破裂性腹
部大動脈瘤は285例
で32%でした。平均年齢
は75歳で80歳以上が1
05例(37%)と高齢者
が多かったです。大部
分は真性瘤ですが、感染
末梢血管、シャント
の専門医である只腰先
生の加入により、昨年
のシャント手術は78例
と飛躍的に伸びまし
た。シャント作成手術、
シャント閉塞、シャント
トラブルに対する再手
術等は緊急でかつハイ
ブリッド手術室でカ
テーテル治療も同時に
行っています。
行うことができました。
1本のグラフトで、
2〜3か所のバイパス
を行うセクエンシャル
バイパスは50例行いま
した。3枝以上のバイ
パス48例では46例(
96
%)
にセクエンシャル
バイパスを行ってい
ます。グラフト採取、
吻合数を減らし、手術
時間、手術侵襲を軽減
することができます。
またグラフト斜切開平
行四辺形吻合にて質の
高い吻合を行うことが
できました。当院では
術後のグラフト開存を
全例超音波による内胸
動脈血流と腎機能正常
例には造影CTで確認
しています。造影CT
検査、超音波検査を施
行しえた190グラフ
ト中186グラフトの
開存を認め98%の開存
率でした。
性大動脈瘤が8例、炎症
性大動脈瘤が2例みら
れました。また、人工血
管置換
術後遠隔期の破
裂が6例でステントグ
ラフト内挿術後の破裂
も2例経験しました。
1ヶ月以内の手術死亡
が55例(19%)でした。術
前術中心停止となった
のは16例でそのうち4
例は生存退院されまし
た。
なるべくなら形成術を
させていただいており
ます。弁逆流が複雑な
ものや心機能の悪いも
のは手術時に逆流が無
くなっても遠隔期に再
発する危険性が高いた
め弁置換術を原則にし
ています。
大阪大学 澤芳樹教授と植込み型補助人工心臓装着の竹川さん
植込み型補助人工心臓装着の竹川さん 蒲郡温泉
-4-
2015 名古屋徳洲会総合病院 心臓血管外科 年報 2015 年 1月 発行
心臓血管外科
新築記念特別講演開催
トピックス
2014年
救急隊合同勉強会
重症心不全と
人工心臓
第15回心臓血管外科
術後の会
特別医療講演
心臓血管外科、麻酔科特別講演
心臓大血管手術における無輸血手術の試み
演者
安部
和夫先生
(宝塚さとう病院麻酔科部長)
心臓移植と植込み型補助人工心臓の現状
演者
松田
暉先生
(大阪大学名誉教授、日本心臓移植研究会代表幹事)
名古屋大学 碓氷章彦教授
700 人以上の参加者が熱心に聴講
川島康生先生を囲んで
埼玉医科大学国際医療センター新浪博士教授を囲んで
安部和夫先生松田暉先生
4月12日当院にて新
築記念心臓血管外科特
別講演を開催しまし
た。
国立循環器病セン
ター名誉総長川島康生
先生の座長にて、名古
屋大学心臓外科教授碓
氷章彦先生が心臓血管
外科手術の現況、大阪
大学心臓血管外科教授
澤芳樹先生が最新の手
術について講演してい
ただきました。
700人以上の参加
者で超満員状態の熱気
の中、興味深いお話し
を熱心に聞いていただ
きました。
5歳の時に手術をしていただいた江口さんと 25年ぶりに再会
11月4日、当院にて救
急隊との合同勉強会を
行いました。重症心不
全と人工心臓という演
題で、今後遭遇するで
あろう植込み型補助人
工心臓装着患者さんの
救急対応について少し
でも理解いただけるよ
うに説明させていただ
きました。地元の救急
隊から岐阜、揖斐、豊
田、東濃の消防隊で計
71名集まっていただき
ました。
8月28日に当院にて
心臓血管外科、麻酔科
特別講演を開催致しま
した。演題①では、日本
で最も多くの無輸血心
臓大血管外科手術麻酔
を行っている安部和夫
先生が、無輸血での心
臓大血管手術の経験に
ついて講演をして頂き
ました。
演題②では、日本最
初の脳死心臓移植を行
ない、植込み型補助人
工心臓の普及に尽力さ
れた松田暉先生が講演
されました。世界最初
の心臓移植手術が行わ
れた1967年の翌年
に日本でも和田壽郎先
生により心臓移植が行
10月4日に当院およ
び中津川からバス4台
にて150名の参加に
て術後の会のツアーを
開催しました。蒲郡温
泉にて太平洋を眺めな
がら温泉に入りまし
た。また同時に別会場
で術後の困ったことの
質問コーナーを設け多
くの皆様から術後の不
安なことについての質
問を頂き担当者からの
回答をさせていただき
ました。その後メイン
会場で食事を楽しみな
がら職員のマジック南
京玉簾ショー、医療講
演を行いました。最後
に病気で倒れて以来久
しぶりに旅行を楽しん
だ人工心臓装着の患者
さんからのお話をいた
だきました。命の大切
さ、生きることの楽し
みと感謝を共有し、次
回もお元気に参加して
いただけることを願い
ながら皆様帰途につき
ました。
5月24日当院講義室
にて、埼玉医科大学国
際医療センター心臓外
科教授、新浪博士先生
を招いて心臓血管外科
に於ける治療戦略につ
いて講演していただき
ました。
年間500例の手術
をこなす新進気鋭の心
臓外科医のいままでの
活躍の陰での苦労話を
聞かせていただきまし
た。
われました。しかしその
移植に対して透明性が
ないと批判され、日本は
暗黒の時代でした。その
後川島康生先生、松田暉
先生の尽力により19
99年脳死心臓移植が
行われました。皆様の理
解をいただくための透
明性のある移植手術を
心がけており、そのプ
レッシャーは想像を絶
すると思われました。そ
の頃の模様を楽しく講
演して頂きました。
講演後、碓氷章彦先
生に当院看護師から花
束を贈呈しました。澤
芳樹先生には当院で植
込み型補助人工心臓を
植えられお元気にされ
ている竹川さんより花
束贈呈がありました。
最後に川島康生先生に
25年前に手術をしてい
ただき東海地区でお元
気に暮らしている江口
さんより花束と感謝の
言葉をいただき聴衆の
涙を誘いました。
4月12日
5月24日
8月28日
11月4日
10月4日
-5-
2015 名古屋徳洲会総合病院 心臓血管外科 年報 2015 年 1月 発行
大阪大学医学部医学科
5年
李
知香
大阪大学医学部医学科
5年
新井
弓紀子
景山
聡一郎
当院のスライドが
メイン会場にて発
表されました。
ニューヨークの会場にて
Aortic Sym
posium
はアメリカ胸部外科学
会(AATS
)が二年に一
度、ニューヨークで開催
する大動脈疾患の国際
学会で、2012年に
続き、今回は2演題を
発表しました。教科書
を見れば必ず載ってい
るような有名な先生が
世界中から集まる学会
のため、発表すること
自体が名誉ですが、今
回は2演題共に優秀演
題に選んでいただきま
した。私が発表したの
は、2題とも当院にお
ける急性大動脈解離の
緊急手術の結果をまと
めたものです。
急性大動脈解離は、
心臓から続く体の幹の
ような太い血管、大動
脈に突然発症する病気
で、動脈の壁が脆弱に
なり破裂や臓器虚血を
引き起こす突然死の危
険性がきわめて高い疾
患です。人口10万人の
うち年間で3人程度
の発症と言われ、非常
にめずらしく、しかも
緊急性、危険性が高い
きわめて重篤な疾患で
す。当院では愛知県だ
けでなく、岐阜県や三
重県からもこの疾患が
集まり、症例を積み重
ねて来ました。
日本の急性大動脈解
離は、世界的に見ても
非常に成績が良く、ま
た、海外では手術をあ
きらめるような高齢者
であっても、安全に手術
が行われています。今
回私が発表したのは、
多くの急性大動脈の手
術症例をまとめただけ
でなく、日本特有とも
言える80歳を超える超
高齢者に対する手術成
績です。今回は、優秀演
題に選ばれたため、本
会場の急性大動脈解離
のセッションにて、
Steven. L. Lansman
先
生とD
. Craig m
iller
先
生にて、私の発表内容
が紹介されました。千
人規模の学会会場で、
私の作成したスライド
を用いて、日本の手術
成績という形で紹介し
ていただき、また非常
に高齢の患者に対して
もいい成績を出してい
ると評価していただき
ました。われわれの施
設が一度も緊急手術を
断ることなく積み重ね
てきた手術症例を、世
界的な舞台で評価して
いただいたことは、非
常に光栄な瞬間でし
た。
二度目のニューヨー
クの学会発表は非常に
有意義であり、毎日の
ニューヨーク『A
ortic Symposium
』学会報告
大阪大学医学部指定学外臨床実習が行われました
大阪大学の学外臨床
実習で1か月間お世話
になりました。今まで一
人暮らしをしたことが
なく、大阪から離れた
環境で、しかも初めての
外科系の臨床実習だっ
たので不安に思っていま
したが、医師・看護師の
みなさんやその他ス
タッフの方々はとても
親切で、すぐに打ち解
けることが出来ました。
特に、心臓血管外科の
先生方は、分からないこ
とだらけの私に、ガウン
テクニックや手洗いな
ど基本的なことから手
術の手技の説明まで毎
日丁寧に教えてくだ
さって、とても勉強にな
りました。
学内の外科では毎日
手術に入ることはあま
りないのですが、この1
か月間は毎日みっちり
先生方につかせて頂いて
たくさんの手術を見る
ことが出来ました。もと
もと私は外科志望では
なかったのですが、先生
方の手技を間近で見て
いて、尊敬しましたし憧
れを感じました。
1か月間、本当にお
世話になりました。
診療を、今後もこつこつ
と積み重ねて行く大事
さをあらためて感じる
ことが出来ました。こ
の先も、診療技術を磨
き、世界に誇れる医療
を地域の皆様に提供し
ていきたいと思います。
4月24、25日
9月8日から4週
間、臨床実習をさせて
いただきました。外科
での実習は初めてで、
わからないことばかり
で不安でしたが、心臓
血管外科の先生方は
もちろん、他科の先生
方やコメディカルの
方々、その他スタッフの
みなさんが私たちのこ
とを気にかけてくださ
り、とても充実した毎
日を過ごすことができ
ました。
実習期間中は毎日
のように、冠動脈バイ
パス術や弁置換術、大
動脈解離や大動脈瘤
に対する人工血管置
換術といった様々な手
術を見せていただき、
たくさんのことを学ば
せていただきました。
また外来診察の見学
もさせていただき、術
後の患者さんが病気
を乗り越えて元気に過
ごされているのを見
て、改めて医学という
ものの力を感じまし
た。しかしそれだけで
なく、手術が必要な患
者さんに対して納得さ
れるまで丁寧に説明さ
れる先生の姿を見て、
患者さんとしっかりと
向き合うことの大切さ
も実感しました。患者
さんを断らないという
理念のもと、時には1
日に複数の手術を行
うこともあるとても忙
しい毎日の中でも、先
生方はとても生き生き
と仕事をされていて、
私も将来は患者さん
のために働けるタフな
医師になりたいという
思いがいっそう強くな
りました。
今後もこちらで学ん
だ経験を生かして、知
識や技術だけでなく
思いやりの気持ちを
持った立派な医師にな
れるよう、邁進してい
きたいと思います。
-6-
2015 名古屋徳洲会総合病院 心臓血管外科 年報 2015 年 1月 発行
≪心臓血管外科全手術数 1998年開設以来≫
冠動脈バイパス術
弁膜症手術
1270
手術名 手術数
797
胸部大動脈瘤
心筋梗塞合併症手術
先天性心疾患
肺血管手術
心臓内種瘤
その他心臓手術
腹部大動脈瘤
末梢血管手術
静脈手術
680
55
38
13
32
54
503
486
266
シャント手術 471
≪心臓血管外科手術数推移≫ 開心術
開心術以外
≪手術別推移≫
名古屋徳洲会総合病院 心臓血管外科
2014年(1月1日~12月31日)
心臓大血管手術成績
2014年
学会発表・論文
■■■■■■■■■■■■■■■■
1週間以内 1ヶ月以内 1年以内 出血 脳梗塞 呼吸不全 創部感染 縦隔炎
予定 55 0 1 0 4 1 1 0 0
緊急 17 0 0 0 1 0 2 0 0
71 例 (全単独冠動脈バイパス術 70 例)
MICS 4 例
弁形成 20 不整脈手術 11
1週間以内 1ヶ月以内 1年以内 出血 脳梗塞 呼吸不全 創部感染 縦隔炎
予定 65 2 2 1 0 2 3 2 1
緊急 11 1 2 0 1 2 1 0 0
MICS 7 例
1週間以内 1ヶ月以内 1年以内 出血 脳梗塞 呼吸不全 創部感染 縦隔炎
予定 3 0 0 1 4 2 0 0 0
緊急 20 3 4 1 0 0 8 0 0
内訳 先天性1、心筋梗塞合併症11 , 人工心臓10、肺血管手術1
1週間以内 1ヶ月以内 1年以内 出血 脳梗塞 呼吸不全 創部感染 縦隔炎
予定 31 2 0 0 2 1 0 1 1
緊急 75 12 2 3 0 19 2 2 1
19 例
1週間以内 1ヶ月以内 1年以内 出血 脳梗塞 呼吸不全 創部感染
予定 34 0 0 0 0 0 0 0
緊急 11 3 0 1 0 0 2 0
12 例
予定
緊急
予定
緊急
予定
緊急
同時に2種類以上の手術の場合は主要手術のみに含めた。
術後死亡 1週間以内 手術後1週間以内に死亡したもの(原因を問わず)
1ヶ月以内 手術後1ヶ月以内に死亡したもの(原因を問わず)
1年以内 手術後1年以内に入院中に死亡したもの(原因を問わず)
出血 術後出血により再手術を要したもの
脳梗塞 術後1週間以内に神経学的異常又は頭部CTにて異常を示したもの
呼吸不全 術後1週間以上の人工呼吸を要したもの(原因を問わず)
創部感染 皮下に限局した哆開を伴う感染
縦隔炎 胸骨より深部の感染にて処置の必要なもの
成績は定義どおりに判断させていただき、事務、看護部に誤りのないことを確認していただきました。
静脈手術 2929 手術死亡(0)
0 手術死亡(0)
手術死亡(3)
シャント手術 7838 手術死亡(1)
40 手術死亡(1)
45 例術後死亡 術後合併症
ステントグラフト手術
末梢血管手術 6217 手術死亡(0)
45
106 例術後死亡 術後合併症
ステントグラフト手術
腹部大動脈瘤
他の心臓手術
23 例術後死亡 術後合併症
胸部大動脈瘤
オフポンプバイパス手術
弁膜症手術
76 例術後死亡 術後合併症
冠動脈バイパス術
72 例術後死亡 術後合併症
0
100
200
300
400
500
600
1998 2000 2002 2004 2006 2008 2010 2012 2014
0
50
100
150
200
250
300
350
1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014
腹部大動脈瘤 胸部大動脈瘤 その他の心臓手術
弁膜症手術 冠動脈バイパス術
第100回
東海心臓外科懇話会記念大会
(2月8日
名古屋)
《一般演題》M
ICS
手術で行った巨大左心房粘液腫の1例
小谷
典子
第44回
日本心臓血管外科学会学術総会
(2月19日
熊本)
《シンポジウム》緊急冠動脈バイパス術498例の検討
大橋
壯樹
第78回
一般社団法人
日本循環器学会学術集会
(3月22日
東京)
《シンポジウム》Sophisticated M
edical Team Covering Entirery Neighborhood Hospitals
Improves Outcom
e of Managem
ent for Acute Dissection
大橋
壯樹
AATS AORTIC SYM
POSIUM 2014
(4月24日
ニューヨーク)
《一般演題》The Surgical Result of Type A Acute Aortic Dissection in Consecutive 633 Patients in the
Single Center
《一般演題》The Surgical Result of Type A Acute Aortic D
issection in 117 Consecutive O
ctogenarians and Nonagenarians
景山
聡一郎
第31
日本呼吸器外科学会
(5月29日
東京)
《座長》漏斗胸に対する胸肋挙上術
飯田
浩司
第57回
関西胸部外科学会学術集会
(6月19日
大阪)
《シンポジウム》静脈斜切開平行四辺形吻合によるセクエンシャルバイパ
スを多用した冠血行再建術の成績
古井
雅人
第57回
関西胸部外科学会学術集会
(6月20日
大阪)
《一般演題》僧帽弁形成術後遠隔期に再発を来した拡張型心筋症に対し、
MICS
での体外循環下大動脈非剥離全弁尖温存僧帽弁置換術を施行した1例
内野
学
第57回
関西胸部外科学会学術集会
(6月20日
大阪)
《一般演題》静脈斜切開平行四辺形吻合による3連セクエンシャルバイパ
スを含めた冠動脈5枝バイパス術の1例
小谷
典子
第143回
日本循環器学会東海地方会
(7月5日
岐阜)
《一般演題》A型急性大動脈解離術後既往の急性肺塞栓に対してM
ICS(
右肋間開胸)
による血栓除去術を施行した1例
小谷
典子
第19回
日本冠動脈外科学会学術大会
(7月10日
東京)
《一般演題》静脈斜切開平行四辺形吻合によるsequential
吻合を多用したCABG
の成績
古井
雅人
第101回
東海心臓外科懇話会
(9月6日
浜松)
《一般演題》多臓器不全を合併した発症1週間目のA型急性大動脈解離破
裂の1救命例
小谷
典子
第67回
日本胸部外科学会
(10月1日
福岡)
《一般演題》80歳以上の超高齢者に対するA型急性大動脈解離128例の手
術成績
景山
聡一郎
第67回
日本胸部外科学会
(10月2日
福岡)
《一般演題》当院のOPCAB
における中枢側吻合の検討:大動脈部分遮断は回避すべ
きか?
内野
学
第28回
European
Association for Cardio Thoracic Surgery A
nnual Meeting
(10月13日
ミラノ)
《一般演題》The M
orpology of the Thorax and Heart in Patients w
ith Pectus Excavatum
, and theCanges after Surgical Correction
飯田
浩司
日本循環器学会東海北陸合同地方会
(10月25日
名古屋)
《一般演題》PCPS
にても循環の維持が困難な劇症型心筋炎に対し両心バイ
パス装着にて救命し得た1例
小谷
典子
第6回
東海重症心不全研究会
(12月5日
名古屋)
《一般演題》当院における両心補助バイパス(BiV
AD)
5例の経験
小谷
典子