Upload
others
View
2
Download
0
Embed Size (px)
Citation preview
佐倉病院 整形外科 高橋 宏
整形外科と歩行障害
~脊椎(せぼね)由来の歩行障害~
2017.3.25. 東邦大学医療センター佐倉病院
市民公開講座
今日の内容
脊椎、脊髄とは?
腰椎(こし)からくる歩行障害 ⇒ 腰部脊柱管狭窄症
頚椎(くび)からくる歩行障害 ⇒ 頚椎症性脊髄症
脊椎(せぼね)とは?
7椎(C1-C7)
12椎 (Th1-12)
5椎 (L1-L5)
脊髄(神経)とは?
脊椎の解剖学的構造
脊柱管 (骨のトンネル)
の中を脊髄(神経) が通っている
今日の内容
脊椎、脊髄とは?
腰椎(こし)からくる歩行障害 ⇒ 腰部脊柱管狭窄症
頚椎(くび)からくる歩行障害 ⇒ 頚椎症性脊髄症
腰部脊柱管狭窄症とは…
腰の神経の通り道が狭くなって、中を通る神経や血管が圧迫され、血流が悪くなり、腰や脚の
痛みや痺れが起こる病気
腰部脊柱管狭窄症の症状
下肢の痛み(坐骨神経痛など)
下肢のしびれや異常感覚(灼熱感など)
間欠性跛行
腰痛
排尿、排便障害
腰部脊柱管狭窄症における 間欠性跛行
CT Myelography 水平断像
MRI T2強調 矢状断像
MRI T2強調 水平断像
腰部脊柱管狭窄症の画像 MRI
• 神経の状態を確認するのに優れる • 放射線被ばくが無い
CT • 骨の状態を確認するのに有利 • 神経の状態は分からない • 造影剤を使用すると神経と骨の
詳細な位置関係が分かる
腰部脊柱管狭窄症の治療
投薬治療(くすりの治療)
リハビリテーション
ブロック治療
手術
⇒ クリニックでの 治療 ⇒ 専門病院での 治療
薬物療法 効果
消炎鎮痛薬 痛み止めで、湿布、塗り薬、 飲み薬などがあります
血流改善薬 神経の血の巡りを良くし、 痛みを和らげます
筋弛緩薬 筋肉の緊張をとることで 症状を和らげます
ビタミンB12 神経の環境を良くするビタミンです
薬物療法
リハビリテーション
物理療法(温熱療法、ホットパックなど)
運動療法(ストレッチ、体幹の筋力トレーニング)
牽引療法
リハビリテーションには、① 痛みの軽減 ② 筋緊張の軽減 ③ 可動域(体の硬さ)の改善 ④ 日常生活動作の改善 などに効果があるとされる
こういった、まめに通ってリハビリを行って症状を緩和させるリハビリテーションを行うには、近くのかかりつけの整形外科クリニックが便利!
ブロック治療
手術療法
除圧術(トンネルを拡げるだけ)
固定術(ボルトを入れて固定を追加し、
神経が絶対的に安静がとれるようにする)
CT Myelography 水平断像
MRI T2強調 矢状断像
MRI T2強調 水平断像
症例 72歳 男性
L5
L4
L3
L2
L1
除圧良好
脊柱管狭窄 +
ヘルニア突出
術前MRI 術後3ヵ月MRI
L4/5 片側進入両側除圧術施行(傷は約2.5cm)
術後2週CT 水平断像
術前MRI T1強調矢状断像
(右椎間孔)
術前CTM 矢状断再構築像 (右椎間孔)
術前CTM L4/5レベル水平断像
症例 71歳 男性
L4-5-S 後方椎体間固定術施行 L4
L5
S1
術後CT水平断像 術後CT 冠状断再構築像
術後X線 正面像
術後X線 側面像
今日の内容
脊椎、脊髄とは?
腰椎(こし)からくる歩行障害 ⇒ 腰部脊柱管狭窄症
頚椎(くび)からくる歩行障害 ⇒ 頚椎症性脊髄症
頚椎での圧迫病変による症状の出方
脊髄症状と神経根症状がある!
頚椎症性脊髄症 首の神経の通り道が狭くなって中を通る脊髄が圧迫され、
手指の巧緻運動障害(ハシやボタンなど細かい作業が
できない)、四肢の麻痺や歩行障害が起こる病気
脊髄症状の出方
症状の出方の順番は一般的には… 手指痺れ ⇒ 巧緻運動障害 ⇒ 歩行障害 が多い
脊髄への圧迫が著明になると… ⇒比較的急激な症状(麻痺)の進行 週単位、月単位で一気に悪くなることも!
脊髄への圧迫がそれ程でないうちは… ⇒無症状! (この場合外来で経過観察のことが多い)
症状が増悪し始めたら早期の治療が必要!
頚椎症性脊髄症の治療 無症状 or 症状が軽い間は…
⇒ 経過観察 保存療法(薬物治療、リハビリテーション)
症状が重度となる もしくは 急速に悪化する
⇒ 手術加療 ただし症状が100%改善するわけではない 悪化を食い止めるという意味合いもあり
後方手術(椎弓形成術、後方除圧固定術)
前方除圧固定術
症例 77歳 女性
MRI T2強調矢状断像
MRI T2強調水平断像
2週間前から急速に脊髄症状増悪
箸不可能、歩行不能
椎弓形成術(後方除圧術)施行
術後CT水平断像 (スペーサー)
術後MRI T2強調矢状断像
術後単純X線 側面像
JOA Score 改善率: 47.8% 手指しびれは遺残 独歩可能 (階段のみ手すり使用)
症例 58歳 男性 手指巧緻運動障害, 歩行障害
MRI T2強調 正中矢状断像
MRI C5/6高位 T2強調水平断像
CTM C5/6高位水平断像
X線側面像 中間位
前方除圧固定術(C4-7)施行
術後X線側面像 術後CT
正中矢状断像
術後CT C5/6高位水平断像
術前CTM C5/6高位水平断像
まとめ
腰椎(こしぼね)からくる歩行障害の代表例
として腰部脊柱管狭窄症がある。
腰部脊柱管狭窄症の治療の原則は保存
治療(くすり、リハビリ、ブロック治療等)であ
るが、改善がなければ手術も選択肢となる。
頚椎(くび)からくる歩行障害の代表例とし
て頚椎症性脊髄症がある。
頚椎症性脊髄症では症状が軽度のうちは
保存加療が選択されるが、症状が急速に増
悪するようであれば手術が考慮される。
まとめ