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58 第11回 東京都輸血療法研究会報告書 59 第11回 東京都輸血療法研究会報告書 それでは、「輸血実施における不適合輸血防止と副作用観察の要点」、池田先生お願いします。 【スライド 1よろしくお願いします。虎の門病院の看護 師の池田と申します。 【スライド 2初めに、輸血は移植の一種であり、輸血治 療を行うには専門の知識と判断力が要求され ます。輸血に関する職種として、医師、検査 技師、看護師などがありますが、それぞれの 職種において、輸血に関する専門性の向上を 目的として学会認定制度が導入されています。 平成 24 年現在、各職種における学会認定制 度の状況はこのようになっています。 虎の門病院 看護部 【スライド 32010 年より 5 学会の協力および看護協会の 推薦を得て、学会認定臨床輸血看護師制度が開 始されました。私は外来で勤務しておりますが、 外来でも血液内科の慢性輸血患者さんや化学療 法中に輸血が必要となる方などの外来での輸血 に多く携わり、また自己血採血にも 3 年前から 携わることもあり、昨年度この資格を取得しま した。特に、患者さんの最も近いところで輸血 に関与し実施する看護師の責任は大きいと言え ます。 実際にベッドサイドでどのように輸血が行われているか、また最も重篤な副作用を引き起こす不 適合輸血についてどのような注意点や対策が行われているか、当院の現状を基に述べたいと思いま す。 【スライド 4本日の内容です。 1 過誤輸血の実際 当院の輸血の使用状況 輸血に関わる職種・管理体制 過誤輸血の現状 2 不適合輸血防止の取り組み 輸血実施までの実際の流れを看護師の立場か らご紹介したいと思います。 3 輸血実施時の観察の要点 輸血開始直後からの観察の要点 主な急性副作用の種類 過誤輸血・副作用発生時の対応 となっています。 【スライド 5当院の紹介です。 ベッド数が 890 床、診療科 33 科、手術件数 は年間 7,400 件余ですが、中でも血液内科では 造血幹細胞移植が積極的に行われ、昨年の移植 件数は 154 件でした。全国でも移植件数は多い 病院となりますが、そのため年間の血液使用量 11 万単位以上となり、大変多くの輸血が行わ れています。

【スライド 3 学会の協力および看護協会の (3)輸 …...【スライド5】 当院の紹介です。 ベッド数が890床、診療科33科、手術件数 は年間7,400件余ですが、中でも血液内科では

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Page 1: 【スライド 3 学会の協力および看護協会の (3)輸 …...【スライド5】 当院の紹介です。 ベッド数が890床、診療科33科、手術件数 は年間7,400件余ですが、中でも血液内科では

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第11回 東京都輸血療法研究会報告書

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第11回 東京都輸血療法研究会報告書

(座長:藤田先生)

それでは、「輸血実施における不適合輸血防止と副作用観察の要点」、池田先生お願いします。

【スライド 1】 よろしくお願いします。虎の門病院の看護

師の池田と申します。

【スライド 2】 初めに、輸血は移植の一種であり、輸血治

療を行うには専門の知識と判断力が要求され

ます。輸血に関する職種として、医師、検査

技師、看護師などがありますが、それぞれの

職種において、輸血に関する専門性の向上を

目的として学会認定制度が導入されています。

平成 24 年現在、各職種における学会認定制

度の状況はこのようになっています。

(3)輸血実施における不適合輸血防止と副作用観察の要点

虎の門病院 看護部 池 田 未 和

【スライド 3】 2010 年より 5 学会の協力および看護協会の

推薦を得て、学会認定臨床輸血看護師制度が開

始されました。私は外来で勤務しておりますが、

外来でも血液内科の慢性輸血患者さんや化学療

法中に輸血が必要となる方などの外来での輸血

に多く携わり、また自己血採血にも 3 年前から

携わることもあり、昨年度この資格を取得しま

した。特に、患者さんの最も近いところで輸血

に関与し実施する看護師の責任は大きいと言え

ます。 実際にベッドサイドでどのように輸血が行われているか、また最も重篤な副作用を引き起こす不

適合輸血についてどのような注意点や対策が行われているか、当院の現状を基に述べたいと思いま

す。

【スライド 4】 本日の内容です。 1 過誤輸血の実際 当院の輸血の使用状況 輸血に関わる職種・管理体制 過誤輸血の現状 2 不適合輸血防止の取り組み 輸血実施までの実際の流れを看護師の立場か

らご紹介したいと思います。 3 輸血実施時の観察の要点 輸血開始直後からの観察の要点 主な急性副作用の種類 過誤輸血・副作用発生時の対応 となっています。

【スライド 5】 当院の紹介です。 ベッド数が 890 床、診療科 33 科、手術件数

は年間 7,400 件余ですが、中でも血液内科では

造血幹細胞移植が積極的に行われ、昨年の移植

件数は 154 件でした。全国でも移植件数は多い

病院となりますが、そのため年間の血液使用量

は 11 万単位以上となり、大変多くの輸血が行わ

れています。

Page 2: 【スライド 3 学会の協力および看護協会の (3)輸 …...【スライド5】 当院の紹介です。 ベッド数が890床、診療科33科、手術件数 は年間7,400件余ですが、中でも血液内科では

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第11回 東京都輸血療法研究会報告書

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第11回 東京都輸血療法研究会報告書

8外

昨年度まで

件数が増加す

ています。血

ます。混合病

ていなかった

院することも

病棟での輸血

輸血件数の多

止への取り組

当院の輸血

1984 年に輸

ました。輸血

輸血責任医師

名(学会認

外来看護師 2ています。夜

直を置いてい

また、輸血

門の代表が集

いや取り決め

次に、全国

2000 年以前

すが、2000 年

でも、年間 1

での輸血使用

するとともに

血液内科のベ

病棟のため、

た病棟にも血

もあり、あま

血が行われる

多さと併せて

組みが重要と

血管理体制で

輸血部が設立

血部のスタッ

師 1 名、専任

定検査技師

2 名(学会認

夜間・休日は

います。 血療法委員会

集まり、輸血

めが行われて

国での過誤輸

前は年間 30年以降は年々

10 例程度の報

用状況ですが

に、輸血使用

ベッド数も増

今まで血液

血液内科の患

まり輸血に慣

る場面も増え

て考えると、

となってきま

です。 立され、一元

ッフとしまし

任輸血担当臨

4 名)、自己

認定看護師 1は、輸血業務

会が隔月開催

血療法につい

ています。

輸血の報告件

例ほどの計

々減少してい

報告がある状

が、年々移植

用量も増加し

増えてきてい

液内科が入っ

患者さんが入

慣れていない

えています。

過誤輸血防

す。

元管理となり

しては、専任

臨床検査技師

己血採血時の

名)となっ

務専任の日当

催され、各部

いての話し合

件数です。 計算になりま

います。それ

状況です。

【スライド

【スライド

【スライド

ド 6】

ド 7】

ド 8】

【スライド 9】 原因としては、患者・バッグの取り違い、血

液型判定ミス、血液型確認ミスなどがあります

が、患者・バッグ取り違いが最も多く、払い出

し後の確実な患者認証と実施が重要だと言え

ます。

【スライド 10】 過誤輸血に関与した職種としましては、医師、

看護師、検査技師などがありますが、看護師の

関わった事例が一番多くなっており、実際に輸

血をつなぎ実施する看護師の責任は非常に大

きいと言えます。

【スライド 11】 こちらは 2010 年の輸血業務に関する全国的

なアンケート調査です。「過誤輸血につながるよ

うなインシデントはありましたか?」という項

目では、回答が得られた施設のうち 3 分の 1 の

施設が、実際には過誤輸血は行われず、未遂で

はありましたが何かしらのインシデントがあっ

たという状況でした。 内容としましては、患者・検体の取り違え、

血液型判定や転記ミス等が多く、事務的な手続

きの中、十分な確認作業を行っていれば防げる

ようなものが多く、過誤輸血防止のシステムの導入、またさらなる改善が必要だと言えます。

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第11回 東京都輸血療法研究会報告書

【スライド 12】 次に、実際の輸血オーダーの流れに沿って、

不適合輸血防止の取り組みを見ていきたいと思

います。 まず、医師が輸血の必要性を患者に説明し、

輸血同意書を取得します。輸血同意書は輸血部

へ送付されます。輸血をオーダリングシステム

よりオーダーします。同時に輸血指示書が印刷

されるので、クロスマッチ採血の指示とともに

ナースへ手渡しすることになっています。 ナースは、輸血指示書とクロスマッチ指示を

受け取り、照合のための血液型台紙をプリントアウトしておきます。輸血部では、輸血同意書確認

後、スキャンし製剤の準備に入ります。

【スライド 13】 実際の輸血指示書と血液型台紙です。 指示書には、患者さんの氏名・血液型・製剤

の種類・単位数に加え、投与時間・輸血前後の

注射投与の有無を記入するようになっていま

す。

【スライド 14】 輸血部でクロスマッチテストが終了し、ナー

スへ連絡が入り、血液製剤を受け取ります。ク

ロスマッチテスト報告書と認証済みラベルを、

輸血部スタッフと照合し受け取ります。これが

1 回目の照合になります。

【スライド 15】 製剤を受け取った後、照合を行います。必ず

輸血指示書・クロスマッチテスト報告書・血液

型台紙の 3 点を使用します。

【スライド 16】 2 回目の照合は、ドクターとナースで照合し

ます。製剤の種類、単位数、血液型、製剤番号、

有効年月日を読み合わせします。赤血球・血小

板製剤は、放射線照射済であることも確認しま

す。

【スライド 17】 次に、ナース 2 名で同様に照合します。先ほ

どドクターとの照合で製剤の確認をしたナー

スは、今度は伝票を確認します。この時、使用

する輸血ルートも用意し、製剤に適したルート

で行うことも確認します。また、血液バッグの

異常がないかもチェックします。これが第二段

階の照合になります。

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第11回 東京都輸血療法研究会報告書

【スライド 18】 照合を行ったら、クロスマッチ伝票にサイン

をします。

【スライド 19】 次に、患者さんとの確認になります。 ベッドサイドへ行き、患者さんに、これから

輸血を行うことを説明します。輸血開始前のバ

イタルサインを測定します。名前を名乗ること

ができる患者さんの場合、氏名と血液型を言っ

てもらい、患者さん本人にも輸血バッグと認証

済みラベルを見せ、一緒に確認してもらいます。

意識状態の悪い患者さんの場合などは、必ず医

療スタッフ2名でリストバンドの氏名と血液型

を声に出して確認します。さらに、PDA でリ

ストバンドの患者 ID を読み取ります。

【スライド 20】 次に、製剤バッグのバーコードを読み取りま

す。 患者画面に、製剤の種類と製剤番号が表示さ

れます。 実施ボタンを押し、次に進みます。

【スライド 21】 正しい製剤であれば、「登録しますか?」と

メッセージが出るため登録します。適切な製剤

でない場合、大きな×印と、「この患者さん用

に払い出された製剤ではありません」というコ

メントが表示されるようになっており、バッグ

の取り違えなどがあった場合に気付けるよう

になっています。どんなに緊急の場合でも、こ

の PDA を使用して患者・製剤認証を必ず行う

ようマニュアルに明記されています。このよう なシステムが導入されていないところでも、払

い出しの段階と病棟での照合と患者さんでの照合、3 段階の照合は必ず必要となってきます。

【スライド 22】 不適合輸血防止のための観察点です。 輸血開始直後からの観察の要点です。 患者認証が済み輸血を開始します。先ほどの

森川先生のお話にもありましたが、ポンプがあ

る場合はポンプを使用します。当院はミッドプ

レス型のポンプがありますが、陽圧がかからな

いようなポンプの導入が検討されています。開

始 15 分までは、急性の輸血副作用が出やすい

ため、1 分当たり 1mL 程度の速度に設定します。

【スライド 23】 輸血開始から 5分間はベッドサイドを離れず

に観察します。急性の症状が出ないか確認した

後、5 分後、再度バイタルサインを測定します。 観察のポイントとしましては、発熱、悪寒・

戦慄、熱感・ほてり、掻痒感、発赤・顔面紅潮、

発疹・蕁麻疹、呼吸困難、嘔気・嘔吐、胸痛・

腹痛・腰背部痛、頭痛・頭重感、血圧上昇、血

圧上昇、動悸・頻脈、血管痛、意識障害、赤褐

色尿などがあります。 これらの症状の出現によって、どのような副

作用が起こっているか推測することができます。 主に、赤矢印の症状が出た場合は、不適合輸血の可能性があるため直ちに輸血を中止します。

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第11回 東京都輸血療法研究会報告書

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第11回 東京都輸血療法研究会報告書

【スライド 24】 症状が出現せず、再度 15 分後にバイタルを

測定し、問題がなければ、指示どおりの投与時

間に合わせ流量設定をします。 この場合、赤濃液 280mLを 2時間の予定で、

140 を設定しています。

【スライド 25】 無事輸血が終了しましたら、クロスマッチ報

告書に使用日時を記入します。認証済みカード

の裏が副作用報告書になっているため、副作用

の有無を記入し併せて輸血部へ送付します。

【スライド 26】 主な急性の輸血副作用は、不適合輸血のほか

に、細菌汚染した製剤による反応、重症アレル

ギー反応、非溶血性発熱反応などがありますが、

これらは 5~15 分の間に多く現れるため、特に

輸血開始 15 分は症状の観察を行い、早期に対

処できることが重要です。 しかし、輸血終了後も TACO(transfusion-associated circulatory overload :輸血関連循環過負荷)や TRALI(transfusion-related acute lung injury:輸血関連急性肺障害)の起こる可能性もあるため、引

き続き症状の観察が必要です。

【スライド 27】 急性輸血副作用発現時の対応です。 直ちに輸血を停止します。製剤に付いている

認証済みカードの患者氏名・血液型・製剤の種

類を確認し、事務的なミスがないか確認します。

輸血部の医師へ直ちに報告します。可能な限り

患者に近い接続部から、生食またはリンゲル液

を満たしたルートに交換します。採血も行い、

輸血バッグとともに輸血部へ提出します。医師

は患者への説明を行います。 各副作用の予防策と対応については、この後

の奥山先生のご発表がありますので省略します。

【スライド 28】 まとめとしまして、輸血療法が行われる場面

として、平常時だけでなく、緊急時、救命時が

考えられますが、いかなる場面でも輸血実施の

手順書を遵守しなければなりません。緊急時、

救命時だからといって確認作業を怠っていい

わけではなく、このような時ほど焦ったりミス

が起きやすいため、確認作業の徹底を心掛ける

よう、全職種チームとして意識の統一を図って

いく必要があります。いくらマニュアルが整備

されていても、遵守されるためには院内全体で

の啓蒙活動が必要だと思います。

【スライド 29】 病院全体では、安全な輸血をテーマに医療安

全講習会などが行われています。また、ナース

も毎年新採用者が 100 名を超えるため、新採用

者のオリエンテーションを行っています。各病

棟でも勉強会が開催されています。今後も安全

な輸血療法のため、継続的に教育を行っていく

必要があると思います。 以上です。ご清聴ありがとうございました。

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第11回 東京都輸血療法研究会報告書

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第11回 東京都輸血療法研究会報告書

(座長:藤田先生)

大変わかりやすい講演でございましたけれども、ご質問などありますか。 (質問:稲葉先生)

神奈川県赤十字血液センターの稲葉といいます。 わかりやすい解説ではあったのですが、1 点だけ。不適合輸血のときの血圧の問題を、ちょっと

誤解しておられるようなので指摘させていただきます。むしろ血圧は上がります。頻脈、また血圧

低下の関係からは、ちょっと見直していただけたらと。 (座長:藤田先生)

ありがとうございました。 私のほうから記録のことで、輸血を開始したら終了までの記録というのは 100%近い率で行われ

ていると思いますが、先生が示したように 6 時間以内の後半の部分ですね。確かに副作用の症状

が特にないことを確認しますが、それを記録するのはなかなか自分たちでは難しいなと思います。

先生方のところで、何か工夫されていることとかあるのでしょうか。 (回答:池田先生)

すみません。勤務しているのが外来なので、今の病棟の現状はちょっとわかりませんが、看護計

画もオンライン化されていまして、テンプレートのようなものがあり、看護業務や観察項目という

ところで自動でリマインドするような機能が付いています。点滴のルート確保したとき、やったと

きにチェックしなさいとか、血糖を測ったときにチェックしなさいというリマインダーはあるので、

ルールにはなっていませんが今後知識の啓蒙を図られて、そのリマインダーを輸血実施した看護師

が入力するというルールができたらいいのかなと思います。

(座長:藤田先生)

それでは次の「副作用の予防対策とその治療」、駒込病院の奥山先生お願いします。

【スライド 1】 駒込病院の奥山です。よろしくお願いいた

します。 今日は藤田先生のほうから、ベッドサイド

の副作用の予防対策とその治療について話を

しなさいと言われて考えてきたわけですけれ

ども、意外にベッドサイドで副作用の予防対

策をする、この後お話をしますがなかなか難

しい。予防対策というのは、ベッドサイドに

来るまでに、日赤であるとか輸血検査部も今

のお話だと看護師さんとか、それぞれ予防対

策を取っているわけですが、いざベッドサイドに来て輸血を始めるというところで、副作用の予

防対策はどういうものがあるかということを今日は皆さんと一緒に考えていきたいと思います。

最後に治療についても触れますが、そこをメインにお話ししたいと思います。

【スライド 2】 まず最初に示したのが、輸血学会から『輸

血副作用対応ガイド』というものが出ていま

す。今ホームページにも載っていますし、今

日の私のお話もずいぶん参考にさせていただ

いていますので、皆さまも参考にしていただ

ければと思います。

(4)副作用の予防対策とその治療

東京都立駒込病院 輸血・細胞治療科 奥 山 美 樹

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第11回 東京都輸血療法研究会報告書

71

第11回 東京都輸血療法研究会報告書

Tと

早速、ベッ

とで始めます

副作用はど

た『輸血副作

した。副作用

比べて、ちょ

かと思います

ド』にのっと

輸血による

では急性輸血

かれておりま

TACO、アレ

として、溶血

どれがベッ

ですね。日赤

査をして、そ

抗体があると

ません。

予防できる

血関連循環過

発熱性非溶血

て順番に考え

ッドサイドで

す。

どういうもの

作用対応ガイ

用はどれでも

ょっと分類の

す。ここには

とった分け方

る有害反応が

血副作用と遅

ます。急性は

レルギー、発

血、GVHD、

ッドサイドで

赤でスクリー

それを信じる

とかないとか

るのは、急性

過負荷(TAC血性輸血副作

えていこうと

での副作用予

のがあるか、

イド』に倣っ

も同じですが

の仕方が違う

は『輸血副作

方をしており

が輸血副作用

遅発性輸血副

は、溶血性、

発熱、細菌感

肝炎等が挙

で副作用対策

ーニングして

しかないで

か、そういうと

性溶血性輸血

CO)、アレル

作用です。こ

と思います。

予防というこ

今お示しし

て表示しま

が、教科書と

ものもある

作用対応ガイ

ます。 用です。ここ

副作用に分

、TRALI、感染。遅発性

挙がっていま

策ができると

て、NAT(Nuす。細菌感染

ところである

血副作用、輸

ルギー反応、

れらについ

す。 考えますと、

ucleic Acid A染もそうです

ると直前にベ

、例えば肝炎

Amplificatiす。TRALI もベッドサイド

炎になるとど

on Test:核

もドナーさん

ドということ

【スライド

【スライド

どうしようも

核酸増幅検査

んのほうに Hはなかなか

【スライド

ド 3】

ド 4】

ない

査)検

HLAかでき

ド 5】

【スライド 6】 急性溶血性副作用は、まさにガイドにも書い

てありますが、大部分が不適合輸血です。つま

り、医療過誤、輸血過誤というのが直接的な副

作用の原因となるわけです。ですから、急性溶

血性副作用の予防対策というのは、ほぼイコー

ル輸血過誤防止ということになります。

【スライド 7】 輸血過誤防止については、今、池田さんが細

かくお話ししてくれたので総論だけにします。

この「輸血過誤防止のチェックポイント」も輸

血学会から持ってきたものです。各段階でのチ

ェックポイントを書いてありますが、ベッドサ

イドということに関してお話ししますと、病棟

での患者・血液バッグの取り違え防止と、手術

室での患者・血液バッグの取り違え防止になり

ます。ちょっと小さいと思いますので拡大しま

す。

【スライド 8】 これはまさに今、池田さんがお話ししてくれ

たところです。病棟での患者・血液バッグの取

り違え防止ということで、患者さん自身にお名

前や血液型を言っていただくとか、今はリスト

バンドもあります。それと、PDA やバーコード

リーダーを使って間違いをなくそうとしていま

す。

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第11回 東京都輸血療法研究会報告書

73

第11回 東京都輸血療法研究会報告書

【スライド 9】 これも先ほど触れられていましたが、意識が

ないような場合は、スタッフで読み合わせをす

る、照合をする、こういうことで取り違え防止

をします。これが 1 つです。

【スライド 10】 輸血関連循環過負荷(TACO)です。これも

ガイドに載っています。 心機能低下の疑われる症例の赤血球輸血で

は、1mL/min 以下の速度で輸血を開始し、輸血

開始後 30 分間は定期的に患者のバイタルサイ

ンをモニターする。TACO というのは、輸血に

よって、循環動態が過負荷になって心不全を起

こすというものです。 これは言われているとおり、もともと心機能

が悪いのであれば、過負荷にならないようにゆ

っくり輸血をしましょうということです。ただ、 あらかじめわかっている場合は、こういうこ ともあるかと思いますが、こうではない場合 に起きることが当然あると思います。そうい うことのほうが、むしろ多いかもしれません。 これは事前に予防というのは、また難しいと いう気がいたします。

【スライド 11】 アレルギー反応です。これは重いものから軽

いものまで幅広くありますし、軽いものはむし

ろよく経験するかと思います。ちょっとした蕁

麻疹が出るとか、発疹が出るということです。

これも『輸血副作用対応ガイド』に載っていま

す。 輸血の 30~60 分前に、抗ヒスタミン剤また

はステロイド剤を使用すると書いてあります。

この事前に抗ヒスタミン剤などを使う前処置

を実際に行われている施設の方も結構多いか

と思います。これについては後でご紹介しますけれども、これらはだいぶ使われているのではない

でしょうか。 もう 1 つは、重症アレルギー反応が連続する場合には、赤血球製剤ならば洗浄赤血球を使用し、

血小板製剤ならば血漿部分の置換、洗浄を行うことを試みる。これは今日の最初の診療報酬の話の

通り、今回の診療報酬を通りましたので、重症アレルギー反応が連続して起きた場合には、取れる

対策の 1 つだと思われます。 3 番目には、まれな例のことが入れられています。IgA 欠損、ハプトグロビン欠損患者への FFP輸血については、日赤血液センターに同欠損登録者の FFP の在庫があるので事前に相談するとよ

い。これも十分予防対策の 1 つだと思っています。

【スライド 12】 発熱性非溶血性輸血副作用、発熱です。これ

も『輸血副作用対応ガイド』から持ってきてい

ます。実際にはもうちょっと長く書いてありま

すが、ここではかいつまんで書いています。 2007 年 1 月 16 日より、すべての製剤が保存

前白血球除去製剤となっており、白血球から放

出される発熱性サイトカインについては、臨床

症状が出ると思われる白血球濃度以下に抑えら

れているので予防対策が取られていると書かれ

ています。それ以外の具体的な予防策は書いて

ありません。 とはいえ、これは保存前白血球除去をした後でも、実際には輸血で発熱が起きている症例は経験

していますね。ですから、これも具体的にはベッドサイドで予防するのはむずかしいのではないか

と考えられます。

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第11回 東京都輸血療法研究会報告書

75

第11回 東京都輸血療法研究会報告書

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の 1 つです。

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ingle donor われている血

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として毒にも

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レルギーのと

う話をしまし

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あまり多くな

ルニア大学の

て、解熱剤と

スタミン剤で

bo ですね、偽

はあまり多く

証しています

しばらくは、

法ですが、血

二重盲検です

も、どちらに

ちなみに、

去されている

platelets で

血小板と同じ

ればいいかと

り分けて、ア

スタミン剤

も薬にもなら

になったかと

断しました。

蕁麻疹または

ときに前処置

したけれども

とを調べたと

スタディーと

献も 2002 年

ない、きちん

の病院で、血

としてアセト

であるジフェ

偽薬を用いた

ないという

す。 この内容を

血小板輸血前

すから相手方

に当たったか

この方の血

る SDP です。

です。今現在

じようなもの

と思います。

アセトアミノ

を与える群

らないような

というのは、患

具体的には

は発疹。これ

置をすること

、実際に効

ころ、きち

しての報告

年と少し古い

んとした報告

血小板輸血の

アミノフェ

ンヒドラミ

た前向きの二

ことですが

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前に振り分け

方、主治医や

かはわからな

血小板は保存

。SDP は、

在、日本で行

のだと考え

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と、placeboな糖分のデキ

患者さんへ直

は熱が 38℃以

れをこの研究

二重盲検試験

、これにおい

します。

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験、こういっ

いての非溶血

と生理食塩液

ートなり質問

った場合、ま

R であると定

ったコントロ

血性輸血反応

液を与える群

問表を書いて

または 1℃以

定義しており

【スライド

ールされた

応(NHTR)

【スライド

群に分けまし

ていただくの

以上高くなっ

ます。

13】

スタ

の予

14】

した。 と看

た場

行い

り分

たも

にな

うち

方が

訳は

は 4ん有

きた

8(8り既

すが

3(3 そ

ある

です

偽薬

も、

フェ

セト

ミン

べて

とい

あり

フェ

も、

の検

ゃる

半田

結果です。51いました。振

分けた後で、

ものがあるか

なりました。

ち 13 人の患者

がいます)の

は、前処置群

46 分の 7 回

有意差などは

もう 1 点、違

たという人が

8/71)で 1既往がある人

が、起きた人

3/13)です

それからもう

る時の輸血は

す。2 人いてそ

薬群のときに

結論は、この

「保存前白血

ェレーシスの

トアミノフェ

ン(抗ヒスタ

て NHTR の

いうことにな

この論文のデ

りますが、薬

ェンヒドラミ

ヒスタミン

検討の余地は

今日この会が

るというお話

田先生がいら

1 人の患者さ

振り分けて、

ちょっとデ

からです。3530 人 46 回

者さんに、1の NHTR が

群は 52 分の 8(7/46)、ほ

は出ませんで

違う点で、今

が 27 分の 711.3%です。

人でまた起こ

人を見ると、

す。 1 つ、スラ

は前処置群に

それぞれ 1 回

に起きなかっ

の論文の研究

血球除去をし

の血小板製剤

ェン(解熱剤

タミン剤)の

の発生を減ら

なります。 ディスカッシ

薬の量を変え

ンは抗ヒス

ンのレセプタ

はあるものの

が始まる前に

話がありまし

らっしゃった

さんが 98 回

若干差があ

データが不足

5 人 52 回が

回が偽薬群で

15 回(2 回

起きました。

8 回(8/52)ほぼ同じです

でした。 今まで NHTR(7/27)で

統計的な有

すという頻

前処置群と偽

ライドには書

に分類されて

回ずつ NHTたそうです

究においてで

したシングル

剤」の輸血の

剤)とジフェ

前処置は、

すことがで

ションの中に

えたらどうか

タミン剤で

ーには H1 と

、今回はこ

に藤田先生と

した。すみませ

たら、ちょっ

の輸血を

るのは振

で脱落し

前処置群

す。この

、起きた

。この内

、偽薬群

。もちろ

R の既往があ

25.9%です。

有意差は出て

度が高い傾向

偽薬群との差

書いてありま

、次の輸血は

TR を起こし

すけれど

ドナーア

際に、ア

ンヒドラ

偽薬に比

きない、

も書いて

とか、ジ

すけれど

と H2 があり

ういうデータ

お話しして、

せん、私がフ

とコメントを

ある方とない

。今までなく

ていませんが

向が表れてい

差はありませ

ませんが、複

は偽薬群に分

たのですが、

りますが違う

タが出たとい

、慶應大学が

フォローでき

をいただけれ

い方で比べま

くて初めて起

が、2 倍以上

いると思いま

せん。14 分

複数回輸血さ

分類されたと

、2 人とも前

うものを入れ

いう報告です

が少しそうい

きていなかっ

ればと思いま

【ス

ます。今まで

起きたという

上差がありま

ます。この

の 4(4/14

れていた方

という方が

前処置群のと

【ス

れたらどうか

す。 いう研究をや

ったのですが

ます。

スライド 15

あってまた起

う人が 71 分

すので、や

7 人の内訳

4)と 13 分

方がいました。

2 人いたそ

きに起きて、

スライド 16

かという。彼

っていらっ

が、もし会場

Page 10: 【スライド 3 学会の協力および看護協会の (3)輸 …...【スライド5】 当院の紹介です。 ベッド数が890床、診療科33科、手術件数 は年間7,400件余ですが、中でも血液内科では

76

第11回 東京都輸血療法研究会報告書

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第11回 東京都輸血療法研究会報告書

日常的にや

りした効果が

こからが副作

予防処置が

はっきりした

見して治療す

これもガイ

項目が書かれ

戦慄、掻痒感

吸困難等々書

ているところ

赤褐色尿)は

詳細を確認す

やられている

がないという

作用への対処

が幾つかあり

たものがない

するというの

イドから持っ

れています。熱

感・痒みとか

書いてありま

ろ(呼吸困難、

は、重症副作

すると書かれ

るわりに、あ

のが今の報

処のお話です

ますけれど

いということ

のが一番です

ってきたもの

熱があるか

か、あと発赤

ます。このう

、血圧低下、

作用の可能性

れています。

あまりはっき

報告です。こ

す。

ども、あまり

で、早く発

す。

のです。症状

とか、悪寒・

赤、発疹、呼

ち色が付い

意識障害、

性が高いので

【スライド

【スライド

【スライド

17】

18】

19】

もと

が研

す。

のよ

際こ

表に

にな

す。

中止

たが

く患

たま

の維

めに

はド

うで

ら、

を保

Tうお

用対

ます

害の

する

を行

今の

てい

この表もガイ

ともとは愛知

研究班で作ら

今 1 枚前の

ようなものが

このようなも

になっていま

なるかと思い

少し具体的な

急性溶血性副

止です。先ほ

が、まずは中

患者さんに近

ままで、乳酸

維持と利尿に

にチェックす

ドパミンを使

ですけれども

溶血所見や

大事なことは

保って、血圧

RALI は、ベ

お話をしまし

対応ガイド』

す。 まず輸血を中

の治療ですか

ることが多い

行う。それか

のところ有効

いますし、ま

イドから持っ

知医科大学の

られたものか

のスライドで

があるかチェ

ものが疑われ

ます。これは

います。

な対処治療に

副作用の対処

ほども池田さ

中止をします

近いところで

酸リンゲル液

に努める。バ

する。血圧低

使う。それか

も量をきちん

や DIC などの

は、不適合輸

圧を保って、

ベッドサイド

したけれども

にありまし

中止します。

から呼吸管理

いかと思いま

から、ステロ

効性が確認さ

また血圧が下

てきたもの

の高本先生や

から来ている

でお示しした

ックしてい

れますという

は実際の現場

について入っ

処です。まず

んの発表に

す。それから

で、静脈留置

液を急速に輸

バイタルサイ

低下が見られ

から導尿して

んと測って、尿

の合併に注意

血であった

尿を保つと

ドの予防は難

、これも『

したので一応

基本的には

理です。おそ

すけれども

イド剤を使

れていない

下がった場合

ですが、

加藤先生

と思いま

項目、ど

くと、実

診断項目

では参考

ていきま

は輸血の

ありまし

、なるべ

針は残し

液し血圧

ンを小ま

た場合に

、色もそ

尿が少なくな

意しましょう

という場合に

いうことが大

しいとい

輸血副作

お話しし

急性肺障

らく挿管

酸素療法

うことは

と書かれ

には昇圧

なってきた場

。患者さん

には、とにか

大事だと思い

場合には利尿

んの血液型を

かく補液をし

います。

【ス

【ス

尿剤の投与に

再検査しま

して、循環血

【ス

スライド 20

スライド 21

になる。それ

しょう。 血液量、腎血流

スライド 22

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第11回 東京都輸血療法研究会報告書

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第11回 東京都輸血療法研究会報告書

剤を使用する

で有効性はな

アレルギー

でどうかなと

た場合の対処

であるとか静

ます。改善す

て全身性の場

たはアナフィ

低下・気管支

抗ヒスタミン

いうことが書

以上で、ま

基本的には

用の予防は、

比較的限局さ

早期対処がよ

も、輸血実施

まさに先ほど

護師さんのお

強調して、私

す。ご清聴あ

(座長:藤田

ご質問どな

では先生、

抗ヒスタミン

にしても若干

討の報告等は

(回答:奥山

私の知って

思います。

る。利尿剤は

ないと書かれ

ー反応、これ

という話をし

処です。局所

静注剤の薬で

すれば輸血再

場合にはステ

ィラキシーに

支痙攣におい

ン剤、ステロ

書かれており

まとめに入り

は、ベッドサ

対策が可能

されています

より重要だと

施中の患者観

どお話いただ

お力が非常に

私のお話を終

ありがとうご

田先生)

なたかござい

よろしいで

ン剤は即効性

干時間がかか

はございます

山先生)

ている限りあ

は TACO と違

れております

れは先ほど予

したのですが

所的な場合に

でいいだろう

再開も可能で

テロイドを併

にはエピネフ

いては、エピ

ロイドなども

ます。

ます。 サイドにおけ

能な場合もあ

す。まずは、

と思います。

観察は極めて

だいたベッド

に重要だなと

終わりにした

ございました

いますでしょ

すか。アレル

性ですぐ効く

かるのではな

すでしょうか

ありませんが

違って、ボリ

す。

予防のところ

が、実際に出

には、経口剤

とされてい

です。広がっ

併用する。ま

リン、血圧

ピネフリンや

併用してと

ける輸血副作

あるものの、

早期発見と

そのために

て重要です。

ドサイドの看

いうことを

たいと思いま

た。

うか。 ルギーを防止

と考えます

ないかと自分

か。

が、そういうこ

リューム負荷

止するために

が、ステロイ

は兼ねてか

ことも踏まえ

荷で対象外に

に前投与する

イドはソルコ

ら思っていて

えて 30~60

になっている

る、30 分前の

コーテフ、ハ

て、前投与の

0 分と書かれ

るわけではな

【スライド

【スライド

の根拠という

ハイドロコー

の適正な時間

れているのか

いの

23】

24】

か、

トン

の検

かなと

(座長:藤田先生)

それでは、総合討論の時間が 5 分程度でございますけれども、前半と後半に分けて、前半は私、

真鍋先生、森川さんの部分で、輸血実施までの安全対策ということでご説明しました。その分野

でご質問などありますか。 (髙橋先生)

質問というよりは、今回の企画は非常に大成功だと思います。あらためて輸血実施に関して掘

り下げた検討、各職種に分かれ、どういう点がポイントかというのは非常に少ないと思います。 演者の方と座長の先生方にお願いしたいのですが、これをぜひ論文化して下さい。先ほど奥山

先生が引用されましたけれどもチェックポイントですとか、それから池田先生が引用されました

輸血実施手順書は 10 年以上前に作られたものでございます。チェックポイントに関しては、状

況がだいぶ変わってきているので改定が必要だという議論もございますし、それから実施手順書

は今日お話を伺いますと、もう少し肉付けした詳細版を作ることが有用と思います。やはり今日

の話はかなり立体的といいますか、素晴らしい内容を含んでいますので、ぜひそれをまとめてい

ただきたいというのが私のお願いであります。 (座長:藤田先生)

輸血学会理事長ご指摘のとおりです。学会でも医療安全部門で先生ご指摘の点を検討している

と聞いておりますので、東京都としてどのような形にするかというのは、また持ち帰らせていた

だいて検討させていただきます。先生ご指摘ありがとうございます。 それでは後半の部分ですね、看護師さんの立場、あるいは医師の立場での患者さんの観察、副

作用対策という部分のご講演がありましたけれども、何かございますでしょうか。 (比留間先生)

比留間医院の比留間と申します。 虎の門病院の池田さんに教えていただきたいのですが、大変わかりやすくポイントをついた現

場の声でよかったと思います。非常によく急性副作用の対策を取られていると思います。

ディスカッション

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第11回 東京都輸血療法研究会報告書

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第11回 東京都輸血療法研究会報告書

急性副作用の場合は、直ちに輸血を中止するとご報告されておりましたが、その点でちょっとお伺

いします。 急性輸血副作用の中では、発熱反応などが最も多く、赤血球製剤では通常数パーセントの頻度で

起こります。一方、不適合輸血はほとんど起こっていないと思います。そこで、お伺いしたいのは、

たとえば単に発熱反応が起きた場合でも、必ず輸血を中止してラインを換えたりして、主治医に報

告されたりしているのでしょうか。 (池田先生)

ご質問ありがとうございます。 発熱があった場合は全ての患者に、直ちにラインまで替えて対応するということはないのですが、

医師に報告をして指示を仰ぐということはしていると思います。 (比留間先生)

そうすると、急性輸血副作用の対応といっても、その状態によってなかなか統一的な対応は難し

いのではないでしょうか。赤血球輸血の頻度が高い血液内科病棟などでは、輸血後の発熱反応は高

頻度で起こるので、実際にはそのまま様子を見ている場合もあるのではないでしょうか。輸血を直

ちに中止するか否かの区別分けが可能でしょうか。 (池田先生)

今回は、血液型不適合輸血の重篤な副作用への対応というところでフォーカスしてお話ししたの

で、スタッフ全体の意識としては、出現した副作用のここからここまでは絶対にすぐ中止してとか、

逆に様子を見てよい等、そこまで意識の統一はできていないかと思います。 (比留間先生)

わかりました。ありがとうございました。 もうーつ、奥山先生にお伺いしてもいいですか。 奥山先生も輸血副作用の対策に対し、科学的に客観的にご説朋していただき非常によかったと思

います。輪血学会の対応策をお示ししていただきましたが、たとえば不適合輸血や TRALI のとき

のステ口イドの使用に関しては、ちょっと消極的な感じがします。 臨床現場で、輪血に伴い血圧低下やショックが起きた場合、これはいったい、TRALI なのか

TACO なのか、あるいは不適合輸血なのか、アナフィラキシーなのか、直ちにはわからないです

よね。不適合輸血に関しても、基本的には抗原抗体反応に伴い、アナフィラキシー反応が起きてい

るので、補体が関与した血管透過性の亢進などが関与していると思います。また、TRALI に関し

ては、まさに抗原抗体反応が関与しています。ステロイドは細胞膜の安定化作用、およぴ血管透過

性を改善する作用がありますので、このような病態には有効である可能性があると思います。輸血

学会のガイドラインに文句を言うつもりはないのですが、不適合輸血や TRALI の際にメチルプレ

ドニソロンなどのステロイドをより積極的に使うベきであると思いますがいかがでしょうか。

(奥山先生)

おっしゃるとおりだと思います。確かに現場では、これが起きて、すぐ TRALI だとわかること

はむしろ少ないので。とは言っても、確かに行かないかもしれないけれども、行ってしまっている

ということはままあるのではないかと思います。 (髙橋先生)

比留間先生、ありがとうございました。 輸血学会のガイドラインというお話ですけれども、これは正確に言うと、山口大学の藤井先生が

研究班で作られたものです。輸血学会が作ったわけではないけれども輸血学会のホームページに載

せていると、そういう意味合いであります。もちろんこれも十分でない部分もあるかと思いますけ

れども、なべて言うと、学会としてはこういうプラクティカルな話をどんどん展開していかなけれ

ばいけない。学問の発展ということもありますけれども、それ以前に輸血の臨床に直結するような

ものを作っていかなければいけないと考えています。 (田崎先生)

TRALI のことですが、実を言うと厚生労働省の研究班が 4 月からできまして、TRALI と TACOの鑑別が難しいということは、即ち治療のほうにも影響することになりますので、ここ 3 年以内

にはコンセンサスが得られるようなガイドラインを作ろうと考えております。パブリックコメント

なども募り、皆さんの意見を取り入れ、よいものができるようにしたいと思います。 一応私がその代表なものですから、ちょっとコメントさせていただきました。 それから先ほどの看護師の方ですけれども、認定を取得された方ですのでご承知かと思いますが、

39℃以上の熱が出るとか、比留間先生のコメントにもありましたけれども、血圧が 30mmHg 下が

ってしまうとか呼吸困難とか、そういった重篤なものはぜひとも見逃さないでほしいなと思います。 あと、慣れっこになってしまうというのがありましたけれども、生命の危機につながるサインに

関しては特に、横文字で書いてあったと思います。いろいろな副作用の中でこれだけは重要だとい

うものですので、そこはやはり外せません。ぜひとも再確認をお願いいたします。 (座長:藤田先生)

まとめていただきまして、ありがとうございました。 ちょうど時間となりましたので、このシンポジウムは終わりにさせていただきたいと思います。

どうもありがとうございました。

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第11回 東京都輸血療法研究会報告書

第 11 回から、比留間先生から私藤田が代表世話人となりました。まだ未熟者でございますけ

れども、新たな視点でこの研究会を成熟させていきたいと思っておりますので、ご協力をお願い

したいと思います。 本日、講演された演者の方、座長の方、あるいは東京都赤十字血液センターの方、ご協力をど

うもありがとうございました。来年ももちろん開催いたしますので、よろしくお願いしたいと思

います。 今日はどうもお疲れさまでした。ありがとうございました。

閉会の挨拶 6 東京都輸血療法研究会 世話人代表

藤 田 浩

第11回 東京都輸血療法研究会報告書

2013年3月

東京都赤十字血液センター 学術課

ジャパンステージ株式会社

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