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12 2009 vol.9 担任が仕掛ける目的別HR活動 キャリア 教育 実践事例 40 25 10 使1学年部長 斎藤友彦先生 鶴の裏に目標を書くときは「だめと 言っていると本当にだめになる、で きると言えばできる」と励ましました。 「鶴になんて書いた?」など、生徒に 声をかけるきっかけ作りにも役立ち ました。 調使使修学旅行期間中のクラスでの渓流下り 肩を寄せ合って危険を乗り越える体験に、楽しげな表情を見せる生徒たち。 「進学校ではクラスはどこかよそよそしいライバル集団になりがちですが、こう した活動が仲間意識を持つきっかけになります」。 3学年担任 鈴木映司先生 クラス活動では、生徒をコントロー ルしようとせず、自主性を重視し、手 作り感が出るように心がけていま す。詰め込みすぎず、ゆるませすぎ ずのバランスが、カンの発揮のしど ころでしょうか。 生徒数/857人 (男子414人・女子443人) システム園芸科3学級、 情報企画科3学級、普通科23学級 進路状況(2008年度)/ 大短進学37.9%、専各進学31.5%、 就職22.8%、その他7.8% 京都府木津川市木津内田山34 0774-72-0031 http://www.kyoto-be.ne.jp/kizu-hs/ URL TEL School Data 生徒数/895人 (男子510人・女子385人) 普通科 20学級、理数科 3学級 進路状況(2008年度)/ 大短進学84.5%、専各進学0.4%、 就職0.4%、その他14.7% 静岡県伊豆の国市韮山229 055-949-1009 http://www1.ocn.ne.jp/nirako/ URL TEL School Data 千羽鶴で作った巨大な鶴 千羽鶴を折る作業には、「心を耕す」願いも込めた。「うっとうしい」などの荒 んだ言葉が頻繁に出る生徒に対し、本当にそれでいいのか考え、自分で自 分を変えられる人になってほしいとの思いがあったという。

キャリア 担任が仕掛ける目的別HR活動 実践事例souken.shingakunet.com/career_g/2009_ccvol.9_12.pdf · 2009 vol.912 担任が仕掛ける目的別HR活動 キャリア

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122009 vol.9

担任が仕掛ける目的別HR活動キャリア教育実践事例

を意識してか、テストの目標が「赤点をとら

ない」から「前回よりいい点をとる」に変わ

るなど、前向きな内容が多くなりました。授

業でも私語が目に見えて少なくなり、落ち

着いて勉強するようになりました」。

 

卒業式の前日に、斎藤先生は生徒が折っ

た千羽の鶴で、黒板に大きな鶴のオブジェを

作った。このサプライズに生徒は驚き、感動。

「最初は折るのが下手だったけど、段々うま

くなった。何でも積み重ねが大事だと思った」

「小さなことでも、積み重ねればこの鶴のよ

うに大きなことが成し遂げられると思った」

など、口々に感想を言ってくれた。多くの生

徒が進路を無事決められたのも、この鶴の

後押しが大きかったと感じている。

卒業式に先生が作った

大きな鶴に達成感を味わう

 

斎藤友彦先生が、昨年3学年を担任した

とき「進路決定に向けて目標を持って一日

一日を過ごしてほしい」と考え、思いついたの

が「千羽鶴」だった。40人が年間約25回ある

LHRの最初の10分を使って1羽ずつ鶴を

折り、卒業までに千羽作ることを目標にし

た。初回の生徒の反応は上々。毎回折り紙

の裏に「テストの目標」など、テーマを決めて

目標を書くことになり、「折り鶴係」も自然

に決まった。

 

マンネリ感を防ぐため、学期末には今ま

で折った中から1羽を引いて、書かれた内容

を読み上げる時間も作った。「読まれること

1学年部長斎藤友彦先生鶴の裏に目標を書くときは「だめと言っていると本当にだめになる、できると言えばできる」と励ましました。「鶴になんて書いた?」など、生徒に声をかけるきっかけ作りにも役立ちました。

目標を書き、積み重ねの

大切さを知る千羽鶴作り

LHR

 

昨年2学年を担任したとき、修学旅行

中にクラス単位で活動する日があった。鈴

木先生は「単なる観光で終わらない、有意

義な経験をさせたい」と考え、渓流下りと

洞窟探検のプログラムを提案した。「私が

地理の教員なので、当日は地図を見ながら

地図記号を解説するなど、勉強の要素も

盛り込みました。探検ルートにはかなりの

難所があり、助けあったり、声をかけあった

りできて、団結力が高まったと思います」。

 

クラス単位で活動するときこそ、クラスの

カラーを出すチャンスだという鈴木先生。

「担当教科や趣味など、担任の得意分野

を生かして、親密さを深めてはどうでしょ

うか?」

地理の教員ならではの

修学旅行で洞窟探検を提案

 「食べる行事は単純に盛り上がり、仲間

作りに役立ちます」という鈴木映司先生。

担任をもつと、年1回は調理室を使ったお

好み焼きやホットケーキ作り、屋外施設を使

ったバーベキューなどを実施している。「作る

人、片づける人など、役割分担ができて、自

然に会話が広がります。また料理が得意な

男子の好感度や存在感がアップしたりと、生

徒の意外な個性が輝いて、親密さが増す効

果もあります。担任はLHRの年間計画

も、生徒の学習状況も把握しています。そ

れを踏まえてタイミングを見計らい、こうし

た活動を実施するといいと思います」。

修学旅行期間中のクラスでの渓流下り肩を寄せ合って危険を乗り越える体験に、楽しげな表情を見せる生徒たち。「進学校ではクラスはどこかよそよそしいライバル集団になりがちですが、こうした活動が仲間意識を持つきっかけになります」。

3学年担任鈴木映司先生クラス活動では、生徒をコントロールしようとせず、自主性を重視し、手作り感が出るように心がけています。詰め込みすぎず、ゆるませすぎずのバランスが、カンの発揮のしどころでしょうか。

担任の得意分野を生か

して、クラスを親密に

静岡県立韮山高校

放課後・修学旅行期間

生徒数/857人(男子414人・女子443人)システム園芸科3学級、情報企画科3学級、普通科23学級進路状況(2008年度)/大短進学37.9%、専各進学31.5%、就職22.8%、その他7.8%京都府木津川市木津内田山34  0774-72-0031  http://www.kyoto-be.ne.jp/kizu-hs/URLTEL

S c h o o l D a t a

京都府立木津高校

生徒数/895人(男子510人・女子385人)普通科 20学級、理数科 3学級進路状況(2008年度)/大短進学84.5%、専各進学0.4%、就職0.4%、その他14.7%静岡県伊豆の国市韮山229  055-949-1009  http://www1.ocn.ne.jp/̃nirako/URLTEL

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千羽鶴で作った巨大な鶴千羽鶴を折る作業には、「心を耕す」願いも込めた。「うっとうしい」などの荒んだ言葉が頻繁に出る生徒に対し、本当にそれでいいのか考え、自分で自分を変えられる人になってほしいとの思いがあったという。

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2009 vol.913

今回は、LHRや放課後を使ったり、学校行事の一環として、クラス独自に行うHR(ホームルーム)活動をピックアップ。担任の裁量に任される部分なだけに、目的も内容も様々。何に気をつけてどう行えばいいか、ベテランの先生にも意見を伺った。

 

北海道清里高校では、昨年8〜11月の3カ月間、カナ

ダからの交換留学生を受け入れた。昨年2学年を担任

した英語教員の山崎秀樹先生は、その歓迎会とお別れ

会を提案し、企画、進行をすべて生徒にまかせた。先生

が伝えたのは「留学生が来てよかったと思える会にしよ

う」ということだけ。歓迎会ではバレーボールの試合や英

語だけで行う「フルーツバスケット」のゲームなどで盛り上

がった。また歓迎会でもお別れ会でも、生徒が懸命に準

備して英語による司会、スピーチなどを行い、留学生は

「また来たい」と大感激してくれたという。「担任が介入

しないことで、生徒の飾らない思いが留学生に通じ、やっ

てよかったと思える会になりました」という山崎先生。

 「HR活動は、授業で身につけたことを、自分の知恵と

融合してアウトプットする機会」だという山崎先生。「今

回の場合はスピーキングのテストとは違い、多少文法が違

っても気にせず英会話ができる喜びを味わっているよう

でした。創造力を自由に発揮できる場を作れば、生徒は

予想以上の力を見せてくれると思います」。

 

齋藤昌広先生は、前任校で1学年を担任した時、入

学後まもない天気のいい日を選び、クラス全員で近くの

「桜の名所」にお花見に出かけていた。「まだお互いの顔

も名前もわかってない時期。どこかよそよそしく緊張し

ています。担任もそれは同じ。そんななか、青空のもとで

桜を見ていると、自然と穏やかな気持ちになり、お互い

が心を開いて接することができます」という齋藤先生。

学級費を使って団子を食べるのも楽しみのひとつ。ぎこ

ちないながらも、笑顔がみられるひとときになる。「3年

間のスタートを切る実感がわく活動で、生徒の心にも深

く残るようです」。

 

また前任校では、河原で郷土料理の芋煮を作る学校

行事を実施していた。各クラス10人くらいずつのグループ

に分かれ、担任がグループごとに味見をするのが恒例だ

った。現任校でも地元寒河江市の神輿祭りに、1年生

全員と2・3年生の有志がハイテク神輿を担ぎ参加す

る行事がある。これらの学校を離れた各種の行事が互

いに一体感を持ち、親睦を深めるきっかけになっている。

「工業高校では高校が最後

の学校生活になる生徒が

多く、クラスメイトは生涯の

友になりうる大切な存在。

このため家族のように信頼

し合える人間関係づくり

をめざしています」。

入学直後の緊張を和らげ

心の距離を縮めるお花見

山形県立寒さ

え河江工業高校

LHR

授業で学んだ英語を

生かした歓送迎会

北海道清里高校

 

橋爪清成先生が前任校で担任したクラスは、3年間ク

ラス替えがなかった。1学年の時はリーダーシップをとれ

る生徒がいなくてバラバラだったため、橋爪先生は2学年

のとき、ある生徒にHR長になることを依頼。以来、HR

長を中心に生徒主導のHR活動を積極的に行ってき

た。なかでも校外を散策しながらの俳句大会は印象深

いという。

 「国語の授業で何度か俳句を作り、俳句作りのおも

しろさを感じて、この企画を考えたようです。人気投

票も行い、上位になった俳句は学級通信に掲載しまし

た」。「満開の

桜とまざる

曇り空」、「乱れつつ

桜の散

りし

わが心」「幾年も

人喜ばす

桜かな」など、橋爪先

生も感心するような繊細な感性が光る俳句がいくつ

も生まれた。生徒も互いの句を読みあって刺激を受け

たり、意外なセンスの良さを評価する機会になったとい

う。「以前、生徒にHR活動の企画をまかせたら、3回

続けて映画のDVD上映になってしまい、『貴重な時間

を無駄に使ってしまった』とがっかりしたことがありま

す。俳句大会はHR長を中心

に、徐々にクラスがまとまった成

果だと感じました。生徒主導

で有意義な活動ができるよう

になるまでは、担任が舵取りを

することも必要だと思いま

す」。 生

徒の感性を磨く

屋外での俳句大会生徒数/960人

(男子578人・女子382人)普通科 24学級進路状況/進路先については非公表福島県福島市森合町5-72  024-535-2391  http://fukuko.net/URLTEL

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LHR

生徒数/434人(男子416人・女子18人)機械科3学級、電子機械科3学級、情報技術科3学級、土木科3学級進路状況(2008年度)/大短進学32.0%、専各進学17.0%、就職51.0%、その他0%山形県寒河江市緑町148番地  0237-86-4278  http://www.sagae-th.ed.jp/URLTEL

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福島県立福島高校

LHR

「自然体の国際交流は、生徒の心に一生の思い出として刻まれると思います」

生徒数/111人(男子58人・女子53人)普通科 4学級、進路状況(2008年度)/大短進学30.6%、専各進学36.2%、就職30.5%、その他2.7%北海道斜里郡清里町羽衣町38  0152-25-2310  http://www.kiyosato.hokkaido-c.ed.jp/URLTEL

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142009 vol.9

 

佼成学園女子高校の留学クラスは、2学年の1年間

をニュージーランドで過ごす。1学年は7、8、12月に、学

校の宿泊施設で1〜2泊のクラス合宿を行い、本音で語

り合う場を作る。今年はホストファミリーにふるまう和

食の調理実習などとともに、自己開示のグループワーク

を行った。まずは担任の須賀好美先生が自分の抱える

悩みや問題を率直に語り、これを皮切りに車座になった

すべての生徒が自分の思いを順番に語った。中には胸がい

っぱいになって涙ぐんだり、言葉に詰まる生徒もいた。

 

多くの生徒には「本音のぶつかり合いは疲れるし恥ず

かしいからできれば避けたい」という思いがある。しかし

宿泊体験で互いの思いを気兼ねなく話すことで、「人間

関係でぶつかるのは避けられない。そこから逃げてはいけ

ない」と気付く。「合宿後は、クラスで起こる様々な問題

について自主的に話し合い、解決するようになります。

こうした経験を経て留学すると、留学先でも勇気を出

して一歩踏み込んだ人間関係を築き、自立して大きく成

長する姿が見られます」と須賀先生。

自己開示により絆を

深め、自立を目指す

東京都・佼成学園女子中学・高校

宿泊合宿

生徒数/445人(女子のみ)普通科 17学級進路状況(2008年度)/大短進学78.9%、専各進学15.4%、就職1.6%、その他4.1%東京都世田谷区給田2-1-1  03-3300-2351  http://www.girls.kosei.ac.jp/URLTEL

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堀浩司先生が以前3学年を担任したとき、クラスの

中で、「休み時間も勉強を頑張りたい」という生徒と、

「休み時間くらいは息抜きしたい」という生徒との間に

溝があり、はっきりとは表面化しないものの、険悪なムー

ドが漂っていた。「このままではいけない」と感じた先生

は、ある日「受験は団体戦だ。言いたいことがあるなら、

この際全部言い合おう」と提案し、討論会を実施した。

「言いたいことを言い合うと、収拾がつかなくなって事態

が悪化する危険もあると思います。でもこのクラスは文

化祭でも色々もめたのですが、何とか乗り切って結果を

残しました。進学に関しては、勉強を頑張ろうという雰

囲気がありました。だから悪い結論になることはないと

踏んでいました。賭けでしたが、担任だからこそできる臨

機応変な判断だったと思います」。

 

話し合いの結論はでなかったが、双方が初めて率直に

自分の思いを言い合うことができた。受験でピリピリし

て、お互いの立場を思いやる余裕に欠けていたことに気

づいた生徒が多く、翌日からは、休み時間に話したい生

徒は廊下に出るなど、周囲

を気づかった行動ができるよ

うになったという。「クラスでい

ざこざが起こるのは当然。時

には『雨降って地固まる』た

めの仕掛けも必要だと思い

ます」。

対立を話し合いで

解決する討論会生徒数/704人

(男子316人・女子388人)普通科 18学級進路状況(2008年度)/大短進学80.4%、専各進学5.2%、就職0.4%、その他13.9%滋賀県守山市守山3-12-34  077-582-2289  http://www.moriyama-h.shiga-ec.ed.jp/URLTEL

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滋賀県立守山高校

放課後

合宿ではネイティブの先生の授業も実施。多様な経験が相互理解の一助に。

 

山本牧子先生が昨年1学年を担任したとき、クラス

で自由に過ごせる校外学習の半日に、「公園でフォトラ

リーをしよう」というアイデアが出た。フォトラリーとは

事前に用意した現地の写真を見て、その撮影スポットを

探すオリエンテーション。「中心となった生徒はクラスのリー

ダー格ではありませんでした。でもこの活動で人を楽しま

せるために頑張る姿はすばらしいものでした」と山本先

生。景品を用意したり、わかりやすく説明するために工

夫したりと、細かな部分までていねいに取り組んだ。努力

のかいあって、当日は大好評だった。

 「HR活動は学校行事よりアットホームな雰囲気。大

舞台には気後れしてしまう生徒もやる気になります。

運営の仕方などを覚え、やり遂げれば、次にもっと大き

な行事にかかわる意欲もわいてくると思います」。山本

先生は生徒を見守りながら、「こんな資料を作るとわか

りやすいのでは?」、「同じような経験をした○○先輩に

聞いてみたら?」などのヒントを出した。入念な準備があ

ってこそ、達成感も大きくなったと実感している。

行事の準備・運営法を

練習するフォトラリー

大阪府立芦間高校

学校行事

生徒数/711人(男子163人・女子548人)総合学科 18学級進路状況(2008年度)/大短進学73.0%、専各進学14.0%、就職7.0%、その他6.0%大阪府守口市外島町1-43  06-6993-7687  http://ashima-hs.sakura.ne.jp/URLTEL

S c h o o l D a t a

フォトラリー後の集合写真。クラスの良い思い出は一人ひとりの財産に。

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2009 vol.915

●グループごとに交代で「学級新聞」を作ろうとしたが、生徒の自主的な活動にならず、結局はよくある教員からの一方的な「学級通信」になってしまった。(北海道)

●クラスで校内清掃を企画したのに、学校の方針で学習活動を優先され、生徒の意向が無視されてしまった。(福島県)

●「自分の町の夜景を見よう」と夜のピクニックを企画し、危険箇所の下見や交通機関の発着時間を調べて万全を期したのに、当日雨が降って中止になった。(福岡県)

●クラスの班ごとに掃除競争を実施。いかにきれいに掃除できるかを競うはずが、いつの間にか、いかに早く終わらせるかがテーマになってしまい、他の先生から苦情が殺到。1回で終了した。(東京都)

●留学生のお別れ会の内容をすべて生徒まかせにしたら、一部の生徒の内輪受けの雰囲気が強くなり、留学生も他の生徒も乗り切れない内容になってしまった。(北海道)

私の失敗談先生と生徒の気持ちがかみ合わなかったり、生徒に任せすぎて迷走するなど、失敗の原因は様々。

HR活動のアイデア他にも全国から届いた活動の数々。行事や世相と絡めたもの、クラスの絆を深めるものなど、目的も内容もバリエーション豊富。真似できる活動を見つけてみては?

●学園祭の打ち上げ。紆余曲折を経て、行事をやりきった達成感を確かめ合った。(滋賀県)

●少年による殺人事件が多発した時期に、その問題について討論した。(石川県)

●「私のひそかな自慢」と題して、他人が知らない自分の自慢話をしてもらった。(三重県)

●国内で起きた災害に対する支援物資の配送。生徒が地元自治体や関係団体に問い合わせ、必要な物資をリストアップ。自宅から持ち寄ったり、募金活動をして集めた。(千葉県)

●高校生活最後の授業の日、教室で机を四角に並べてお弁当を食べ、プチお別れ会に。「きれいに洗って、お母さんへの手紙を入れる」という生徒の言葉が印象的だった。(大阪府)

●家族や平和について考える本を読んで、意見交換をする読書会。クラス全員が、互いの心の深い部分で触れ合えた。(愛媛県)

●私の異動が決まったとき、生徒が開いてくれたお別れ会。私に対する替え歌を歌ってくれ、大きな布にメッセージを書き、一人ひとりが花を渡してメッセージを伝えてくれた。クラスが一つになった感じがした。(東京都)

●教育実習生を囲んでの慰労会。「お疲れ様」を伝えてお別れを言うことで、クラスの一体感が高まった。(滋賀県)

 クラスで独自に活動する時間を最もとりやすいのは、週1回のLHRでしょう。でも学校行事や行事の準備に使われることが意外に多く、担任が自由に使える時間はほとんどない、という学校が多いかもしれません。進学に力を入れていれば、LHRのほとんどが進路学習やキャリア教育に充てられている場合もあるようです。そんな状況ではありますが、担任が「ここで空いた1時間だけでも有効に使いたい」と意識して独自の活動を実施すると、クラス作りに役立つと思います。 例えば1学年は学校生活に馴染むためのレクリエーションが有効。スポーツなら男女一緒に楽しめるバレーボールやバドミントン、料理なら調理室を使ったお菓子作りなどが、親睦を深めるにはもってこいの活動です。2学年は中だるみしやすいので、準備にそれなりの時間をかけ、達成感を味わえるような凝ったイベントを企画してもいいでしょう。3学年は進路に焦点が当たりますから、目標に向かってクラス全体が集中して取り組めるような内容を考えるといいと思います。年間で見ても同様のことがいえます。1学期は親睦を深め、2学期は成長を促し、3学期は目標達成のためのヒントを与えたり、1年間を振り返る節目になるような活動を企画すると、HR活動でクラスのメリハリやリズムを作れます。

 HR活動は、クラスの雰囲気や生徒の実態に合わせて行うことが大事です。そのためには、目の前にいる生徒を理解し、状況を把握することが欠かせません。お昼休みや掃除中の雑談から、生徒の要望や希望が見えてくることもあるでしょう。また「今度のLHRが空いているけど、何か面白い行事をやらないか?」と率直に聞いてしまうのもいいと思

います。ただ全員に対して公式に質問すると、発言力の強い生徒の一存で決まってしまう心配があります。ときには担任の目線でクラスに必要な活動を考え、提案することが大事ですね。 クラスの雰囲気が荒れたり、人間関係で問題が起こった場合も、解決に向けて担任がアクションを起こさなければなりません。私は生徒に相談してしまうことが多いです。「こんなところが問題だと思うけど、どう思う?」と質問すると、生徒は案外冷静に状況を分析し、担任が気づかなかった部分まで指摘してくれます。担任の見立てと生徒の実態がズレていることは、ままあります。その状況で的外れな企画をしかけても、生徒は白けて乗ってこないので注意が必要です。

 HR活動はすべての生徒が、リーダーになるチャンスです。普段の様子を見ながら、必要とあらば担任がリーダーを指名してもいいと思います。時には自信なさげで、前に出たがらない生徒に、担任から活動の企画や準備を頼み、周囲にフォローをお願いすることがあってもいいでしょう。でも「やりたくない」と主張するのも生徒の権利。高校生ともなると「クラス全員で仲よくしよう」といっても無理な年齢ですから。むしろ世の中は気持ちの通じ合う人ばかりではなく、多様な価値観があること、それでも一緒に行動しなければいけないこと、異なる個性の集まった集団でも自分も相手も居心地良い環境がつくれることを学ぶことが大事です。教員は職業柄、自分でやりたがり、生徒に手をかけたがり、こうなってほしいという夢をもちたがる傾向があります。HR活動の主役はあくまで生徒ですから、生徒にとって有意義な時間になるよう意識したいものです。

リーダーの育成や多様な個性を認め合う場として活用

東京都立雪谷高校(定時制)主任教諭梅澤秀監先生東京都高等学校特別活動研究会HR活動部会・元部長。東京都教育委員会都立高校教育課程委員会特別活動部会委員。著書に「ホームルーム指導ワークシート」「クラス担任の実務カレンダー」(共に学事出版・共著)など。

親睦、成長、目標達成など、学年・学期ごとの目的に応じた活動を

特別インタビュー

長年HR活動を研究してきた梅澤先生は、「学年・学期ごとの目的に応じた活動が、メリハリやリズムを作るのに有効」と語る。一人ひとりの個性をどう引き出すかと、クラスとしてどうまとめあげるかの双方を意識しながら、HR活動を有効に取り入れてほしいという。

ときにはクラスのトラブルを解決する活動を提案