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アカデミアの知財を強くするために 1 京都大学大学院薬学研究科 最先端創薬研究センター 2011 年 11 ⽉ 18 ⽇ 「わが国における新規抗がん剤開発の諸問題」合同シンポジウム ― 産学官連携をどう進めるか ― © 2011 JUN UTSUMI 「新規抗がん剤開発諸問題」合同シンポジウム

アカデミアの知財を強くするために - UMINatdd-frm.umin.jp/slide/2011118/1-4utsumi.pdf · 大手10社は20%以上、vs. 全産業4%) 市販後調査 1/20,000~1/30,000

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アカデミアの知財を強くするために

1

京都大学大学院薬学研究科 最先端創薬研究センター

内 海 潤

2011 年 11 ⽉ 18 ⽇

「わが国における新規抗がん剤開発の諸問題」合同シンポジウム

― 産学官連携をどう進めるか ―

© 2011 JUN UTSUMI 「新規抗がん剤開発諸問題」合同シンポジウム

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医薬品の研究開発と事業

5 10 15 20 25

研究開発投資額

製品販売額 (収益率10~30%)

薬事承認申請

製造販売認可

0

200

400

200

30

基礎研究・製剤研究 臨床開発 承認 申請

(億円)

(年)

① 医薬成分・用法は特許で守る ② 事業化には国家審査・承認が必須 ③ 特許満了で後発品が出て売上減 ④ 販売収益>研究開発投資であること ⑤ 販売収益を研究開発投資に再投資 (研開費は売上の10%以上、 大手10社は20%以上、vs. 全産業4%)

市販後調査

1/20,000~1/30,000

1/3~1/4

承認までの成功確率

研究開発も事業も “クスリはリスク“

特許満了

ジェネリック薬が競合

医薬成分・用法の特許

医薬ビジネスの基本

© 2011 JUN UTSUMI 「新規抗がん剤開発諸問題」合同シンポジウム 2

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© 2011 JUN UTSUMI 「新規抗がん剤開発諸問題」合同シンポジウム 3

研究 開発 事業

承認 申請

臨床試験 (PhI/II/III)

投与ルート検討 剤形処方検討 ADME試験 前臨床試験 製法検討

標的分子の機能修飾 化合物の選択

(リード化合物 /最適化)

薬効/用途検討 スクリーニング法

の確立

対象疾患想定 標的分子探索

上市

物質(標的遺伝子)

方法(代謝物測定法)

用途(追加適応症=複数)

物質(製剤・合剤)

物質(中間体・結晶・塩)

方法(併用法)

方法(スクリーニング法)

用途(適応症)

物質(リード・周辺化合物)

方法(製法)

方法(新規試験評価法)

物質(最適化物)

Translational Research First in man, POC

Critical Path Research Surrogate End Point

Biomarker (Efficacy, AE)

物質(バイオマーカー=複数)

創薬プロセスと特許創出の関係

物質(タンパク質)

アカデミア・公的研究機関

ベンチャー企業

CRO/SMO CSO

大手製薬企業

創薬の基本特許は研究にかかっている!

2 4 6 8 13 15

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© 2011 JUN UTSUMI 「新規抗がん剤開発諸問題」合同シンポジウム 4

0 20 40 60 80 100

大学特許に

産学連携に

大学との連携と特許に対する意識調査

◆企業は、

◆特許事務所が見た大学ライフサイエンス特許は、

0 5 10 15

学会発表や論文発表のアリバイ的出願

本気で実用化を考えているか疑問

発明面白く、新規技術の期待あり

発明面白いが、実用性に乏しい

発明面白いが、企業サポートが必要

期待している 期待していない

(%)

(件数、複数回答)

(出所:IT、バイオ関係大手企業53社に対するアンケート、北海道大学知的財産本部2007年調査)

期待している → 基礎研究に優れる

期待していない → 実用性に乏しい

最多意見

(出所:東京・大阪の大手特許事務所15社に対するアンケート、北海道大学知的財産本部2007年調査)

産学連携で 活きる

90%

48%

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© 2011 JUN UTSUMI 「新規抗がん剤開発諸問題」合同シンポジウム 5

アカデミア知財(特許)の意義

◆アカデミアの特許出願の意義 ①研究を守る → 研究対象技術範囲を先行出願し、他者権利から守る ②研究を活かす → 特許ライセンスを通じて研究成果の実用化を行う

◆強い特許とは ①権利取得の観点から → 広い技術的範囲で実施権を確保し、基本特許になる ②権利行使の観点から → 侵害訴訟(無効の抗弁)に耐える特許発明を限定している

◆留意点 ※ 基本特許は、先行技術にない新しい機能を可能にした特許発明。多くの改良特許を生む。 ※「広い特許」は、優れた研究成果の新発明による、「強い特許」は特許出願技術が左右する。

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解決 対応 発見 分析

© 2011 JUN UTSUMI 「新規抗がん剤開発諸問題」合同シンポジウム 6

課題1:大学研究の基本的特質の認識

大学研究は課題分析からの「発見」が多い。「発見」を「発明」へ転換を

研究的 開発的

課題解決のプロセス

科学 技術

発見 発明

Science Technology

Discovery Invention

発見から発明を 導く努力が必要

【プロセスの壁】

大学 企業

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課題2:出口戦略からの発明創出

事業戦略 技術戦略・知財戦略 研究戦略

どのような製品を作るか? 研究対象を何とするか? どのような技術が必要か? どのような特許で守るか?

企業は事業からアプローチ 出口が明確

使う特許・必要な特許

事業のための研究 ・needs-pull 型 ・market-pull 型

大学は研究からアプローチ 出口が不明確

使われるかもしれない特許

学問のための研究 ・seeds-push 型 ・technology-push 型

大学

企業

大学特許は出口戦略から創出されず産業利用性が弱い。出口戦略の強化を

© 2011 JUN UTSUMI 「新規抗がん剤開発諸問題」合同シンポジウム 7

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課題3:特許出願プロセスの強化

特許出願 請求項・明細書作成 発明創出

大学

企業

大学は基本手続で出願、企業は充実した支援で出願。大学は手続強化を

研究者

知 財 部

弁 理 士 開発部 事業部

先行技術調査 (公共&商用DB)

事業分野に 精通した知財助言

事業分野に 精通したベテラン

戦略的な 出願手続

出口の事業化 戦略が反映

知 財 部

研究者 特許事務所 弁 理 士

大学先端研究には 精通してる弁理士は

かなり少ない

基本的な 出願手続

先行技術調査 (公共DB)

大学では出願プロセスでも 出口(産業利用性)の助言が不足

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アカデミアの知財を強くするために(1)

「強い知財を作る」

①大学研究は「課題分析型」で発見が多い → 大学研究の「発見」を「発明」に転換を

②研究の出口戦略が不明確である → 大学特許は出口戦略の強化を

③特許出願プロセスは基本手続きのみ → 大学は外部機関のコンサルティング活用で出願を

On-site IP management 研究現場・プロジェクト内に知財マネージャーを配置

Professional consultation 知財マネージャーは企業の研究と事業企画の経験者を 不足機能は外部の特許事務所・コンサルタントを活用

Action

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© 2011 JUN UTSUMI 「新規抗がん剤開発諸問題」合同シンポジウム 10

各国の創薬力(FDA承認252品目:1998-2007)

バイオ企業(自主あるいは同地域大学シーズ)

バイオ企業(他地域大学シーズ)

製薬企業(大学シーズ)

大手製薬企業(自主シーズ)

年間最高売り上げ高(US$ billion) 承認品目数

The importance of new companies for drug discovery: origins of a decade of new drugs

Kneller R, Nature Reviews Drug Discovery: 9 ; 867-882, 2010

◎創薬を行っているのは、限られた先進国である。 (高い科学技術レベル、新薬メーカーの存在、大学病院/治験インフラの整備、患者人口等)

◎新薬創出力は米国がトップで、バイオ医薬が大きく貢献している。 ◎大学がシーズの創出で健闘している: 大学 → バイオ医薬企業:16%、従来型製薬企業 : 8%

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Academic Drug Discovery “New R&D partnerships to access new sources of innovation”

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0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

Priority review

Standard review

All approvals

N Engl J Med, 364;6, 2011

PSR

I dis

cove

ry (

%)

Public-Sector Research Institution(公的研究機関) による創薬への貢献(1990~2007FDA承認薬)

創薬の難易度を考えれば、貢献度10%は素晴らしい成果。 新規適応症はほぼ独占(臨床現場からのテーマアップ)。

◆サイエンス・リンケージ*が意味する「産学連携の必要性」 産業分野 国際出願あり 国際出願なし

バイオ分野(医薬を含む) 15.2 10.4

ナノテク分野 3.2 1.9

IT分野 0.1 0.3

(出所:玉田俊平太、「産学連携イノベーション」2010)

◆米国公的研究機関の Drug Discovery

Drug Discovery こそ産学連携で

*特許1件あたりに何件の学

術論文が引用されているか

を表す数値

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年度 応募数 採択数

2010 139 1(0.7%)

2009 193 3(1.6%)

2008 153 6(3.9%)

2007 242 11(4.5%)

創薬シーズはオープンイノベーション化

Science at our core.

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①日本は創薬産業が伸びる条件を保有している → 創薬産業は臨床医学との「産学連携」である

②創薬シーズはオープンイノベーション化している → 大学シーズを積極的に展開できる環境になってきた

③世界でも Academic Drug Discovery が潮流に → 多様なアライアンスでアカデミアの「知」を活かす

アカデミアの知財を強くするために(2)

「広く知財を活かす」

Marketing and Networking 市場調査(First in class/Best in class)と成果の発信

Collaboration and Licensing 早期の連携と特許ライセンス。企業からもアプローチを

Action

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ご清聴どうもありがとうございました

本発表内容は所属機関を代表するものではなく、 発表者個人の見解に基づくものです。 内容に関するお問い合わせは下記まで:

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