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ヒト皮膚バリア機能と角層構造の
相関解析手法の開発
関西学院大学 理工学部 物理学科
教授 加藤 知
実験助手 中沢 寛光
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真皮
表皮
角層
角質細胞ルート 細胞間脂質ルート体外
体内
:角質細胞 :細胞間脂質
皮膚角層の構造研究の意義
・皮膚最外層にある角層は角質細胞とそれを取り囲む細胞間脂質層から成る。
・厚さ10μmの角層は、外界と体内との間の高機能インターフェイス
・角層のバリア機能と構造の関係の解明は、肌状態の改善や経皮吸収薬の開発に必須
特に、角層内の水と脂質層との関係についてはよくわかっていない。
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角質細胞ルート 細胞間脂質ルート体外
体内
:角質細胞 :細胞間脂質Bouwstra et al; J. Lipid Res. (1998)
Ohta et al; Chem Phys Lipids. (2003)
13nm 6nm
0.41nm X 2
0.37nm X 1
角質細胞
細胞間脂質
回折像
電子線/X線
0.41nm X 3
オーソロンビック相
ヘキサゴナル相
バリア能
バリア機能には細胞間脂質層が重要
細胞間脂質層:6nmと13nmの2種類の周期を持つラメラ構造
ラメラ内で脂質分子の配列:ヘキサゴナル相(Hex)とオーソロンビック相(Ort)
秩序構造
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角層の
構造解析
X線回折
ATR-FTIR
電子線回折
電顕観察
角層の構造解析に使用される手法
微少試料(非侵襲的) 局所構造
試料操作容易・動的測定
平均構造
一長一短がある
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SPring-8での実験風景 FSBL (03XU) 第2ハッチ
放射光を用いたX線回折法
・微少試料のため放射光が必要
・散乱強度をかせぐために、
整形手術で切り出した角層
シートを丸めて使うのが一般的
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放射光X線l~0.1 nm
溶液注入
角層試料
溶液セルの構造
○溶液セルによる溶液浸透過程の構造解析
セル内に溶液を注入⇒溶液浸透に伴う構造変化の動的観察
・従来のX線試料セル(溶液セル)の問題点
散乱強度を稼ぐため角層を丸め潰して固定 ⇒ 溶液との接触面積が不明
構造上温度操作が難しい
角層の表裏の環境を独立して制御できない
斜入射セルの開発経緯
I. Hatta, H. Nakazawa et al. (2010) Chem. Phys. Lipids. 163. 381-
丸めた角層シート
溶液注入
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溶液セルによる観測例
角層にクロロホルム-メタノール(2:1)溶液を作用し、細胞間脂質が溶出する過
程、すなわち脱脂が生じる過程を観察した。
I. Hatta, H. Nakazawa et al. (2010) Chem. Phys. Lipids. 163. 381-
大きく脂質膜構造を破壊する物質でないと、構造変化が小さい
⇒ 溶液が十分浸透していかない?
小角(ラメラ構造) 広角(脂質配列)
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従来技術とその問題点のまとめ
肌状態の評価、効率のよい経皮吸収薬の開発
皮膚角層の物質透過機構解明
放射光を利用した薬剤の皮膚角層透過過程の動的観測
溶液セルの開発:丸めた試料に溶液注入
・溶液の浸透効率が低い
・試料の表裏で濃度勾配を設定できない
・温度など環境制御ができない
・他の測定との組み合わせができない
問題点
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試料
ペルチェ素子
入射X線
溶液注入及びTEWL測定孔
回折X線
水の供給(TEWL測定時)
中沢 寛光、加藤 知
試料保持装置「特願: 2012-071442」
今回開発した斜入射セル
・高輝度放射光X線(SPring-8 03XU)の利用 ⇒ シート状でも回折像取得可能
①配向試料にX線を斜め入射
②角層の表裏の環境を独立制御
③正確な温度制御
④他の測定と同時測定可能
特徴
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X-ray
斜入射セルの特徴
配向した角層シートの回折像
小角ピーク
広角ピーク
小角ピーク(ラメラ周期)と広角ピーク(脂質配列)は互いに直行する方向の強度が強い
脂質層は配向している
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シート状の試料
水で満たす
閉塞型蒸散計プローブ
解放型蒸散計プローブ
溶液の注入Or
水分蒸散量の測定
N2
斜入射セルの特徴
試料表裏の環境独立制御測定が可能
測定例: 構造と経皮水分蒸散量(TEWL)の同時測定
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斜入射セルの特徴
試料表裏の環境独立制御測定の例
構造と経皮水分蒸散量(TEWL)の同時測定
TEWL測定器
斜入射セル
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水分蒸散
入射X線
回折X線
斜入射セルの特徴 構造と経皮水分蒸散量(TEWL)の温度依存性の同時測定
角層内における水の移動に対し、脂質の配列構造変化が影響していること
を示すデータが得られた(データは当日示す)。
生理的温度付近(30-40℃)でHEXからORTへの転移が起こることが知られている
温度を変えて
X線回折とTEWLの同時測定
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斜入射セルの特徴・従来技術との比較
• 配向試料(従来法では丸めた試料)
⇒溶液浸透効率増加(溶液との接触面積増加)
• 従来では、温度制御がむずかしかったが、斜入射セルでは、精度よく温度制御できる
⇒角層構造の温度依存性測定
• 従来法ではできなかった表裏の区別
⇒表側と裏側で独立して環境設定可能
(水分蒸散量(TEWL)の同時測定などができる)
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想定される用途
• 斜入射セルは、配向試料を用いた開放型セルであるため、様々な物質を表面に塗布してその浸透課程を追跡できる。
⇒効率のよい経皮吸収薬の開発
• 他の手法との組み合わせが可能
⇒TEWL以外に、電圧印加や機械的刺激に対する応答など
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今後の課題と企業への期待
• 薬剤の塗布方法の改善
試料面が斜めになっているため、重力によって塗布薬剤の移動が起こる。また、塗布薬剤からの散乱の影響が大きい。
• 他の測定法の組み込み
電圧印加によるエレクトロボレーションや超音波の薬剤浸透への影響などを評価できるように改善する
⇒様々な測定技術をもつ企業には、組み込む手法の提言を期待する
• 多様な塗布薬剤に対する対応
企業には多様な製剤の提供を期待する
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本技術に関する知的財産権
• 発明の名称 :試料保持装置および試料分析方法
• 出願番号 :特願2012-071442
• 公開番号:特開2013-205077
• 出願人 :学校法人関西学院
• 発明者 :中沢寛光、加藤知
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サンプル
ビームシャッター 電子線
透過型電子顕微鏡
特徴
非侵襲的に実験を行うことができる
深さ方向の解析が可能
広角情報のみ
局所及び平均構造の解析
⇔実像を観察しながら構造ドメインの解析可能
高真空下
ビームダメージがある(極低照射量)
サンプリングに工夫が必要
⇔実験や解析が難しい
研究室で開発している関連技術の紹介
①低照射量電子線回折法
CCDカメラ
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実験は角層1層(角質細胞数個)でも行うことができる(非侵襲的測定)。ただし電子線
の透過力は弱いので、角質細胞1個(φ =~30μ m)を中空の状態に保持して固定する必
要がある。この処理に少々テクニックが必要。
我々は、電顕用グリッドに接着剤を塗布し、それを皮膚に直接貼りつけて角質細胞を採
取、固定するグリッドストリッピング法を採用している。
低照射量電子線回折法
~2 mm
Side view
glue
corneocytes
upper view
Side view
H. Nakazawa, S. Kato et al. (2009) Chem. Phys. Lipids. 160. 47-
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低照射量電子線回折法
1つの角質細胞上の脂質層から得られた電子線回折像
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②凍結超薄切片電子顕微鏡観察
研究室で開発している関連技術の紹介
ウルトラミクロトーム
粘着テープ
テープで剥がした1層の角質細胞
急速凍結
超薄切片
電子顕微鏡観察
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凍結超薄切片電子顕微鏡観察
2枚のテープでサンドイッチ
された角層試料
細胞間脂質の層状構造
(13nm周期構造)
特徴
・包埋法よりも簡便でアーティファクトが少ない
・剥離した1層の角質細胞が観察できる
低倍率 高倍率
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お問い合わせ先
関西学院大学
研究推進社会連携機構
TEL : 079-565 - 9052
FAX : 079-565 - 7910
e-mail: ip.renkei@kwansei.ac.jp