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ミクロ フロンティア 大学 センター 概要 、ミクロ をサーベイし、そ じる。ミクロ をおいて 、コンピュータ に依 してお り、そ IT ある いうこ きる。す わち、ミクロ これま コンピュータ ってきた がパソコン 易に きるように った いうこ だけ われていた が、一 学に てに り、そ して、 されるこ った。それ に、ミクロ したい いう を喚 し、そ ため される ある いう びついてきている。 1 はじめに 2000 ノーベル ダニエル・マックファーデン(Daniel McFaddenカリフォルニア大学 ジェームズ・ ックマン(James J. Heckman)シカゴ大学 された。 にミクロ する 、こ めて ある。こ ミクロ されたこ を意 する に、そ められた いって い。 マックファーデン する るケース について する。第3 ベックマン する たらす 題について じる。第4 するデータを いて、 について じ、ミクロ 学およびミ クロ するこ について れたい。 1

ミクロ計量経済学のフロンティア - Hitotsubashi Universitykitamura/PDF/A207.pdf在変数についてのシグナルであると考えるやり方である。この場合ロジット(logit)モ

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ミクロ計量経済学のフロンティア北村行伸

一橋大学経済研究所附属日本経済統計情報センター

概 要

本報告では、ミクロ計量経済学の近年の発展をサーベイし、その理論的意義と現実政策への応用の可能性を論じる。ミクロ計量経済学の発展は何をおいても、コンピュータ技術の発展に依存しており、その意味では IT革命の副産物であるということもできる。すなわち、ミクロ計量経済学はこれまで大型コンピュータで行ってきた計算がパソコン上で容易に計算できるようになったということで、一部の専門家だけで使われていた手法が、一挙に経済学に関心のある研究者全てに利用が可能になり、その結果として、膨大な実証結果が蓄積されることになった。それは同時に、ミクロ経済統計を利用したいという需要を喚起し、そのための制度的、法的措置が緩和されるべきであるという要請に結びついてきている。

1 はじめに昨年 2000年のノーベル経済学賞はダニエル・マックファーデン(Daniel McFadden)

カリフォルニア大学教授とジェームズ・へックマン(James J. Heckman)シカゴ大学

教授に授与された。彼らの仕事はともにミクロ計量経済学の分野に属するもので、この

分野での受賞は初めてである。このことはミクロ計量経済学の研究が広く認知されたこ

とを意味すると同時に、その有用性が認められたといっても過言ではない。報告では第

2節でマックファーデン教授の仕事に属する質的従属変数が離散値をとるケースの計量

経済学的な意味について解説する。第3節はベックマン教授の仕事に属する切断従属変

数がもたらす様々な計量経済学上の問題について論じる。第4節では、日本の家計貯蓄

に関するデータを用いて、家計行動の多様性について論じ、ミクロ計量経済学およびミ

クロ経済統計を利用することの有用性について触れたい。

1

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2 質的(ダミー)従属変数1

従属(被説明)変数が非連続な(離散)値をとる場合を考えてみよう。例えば、

1. 自動車を保有するか?

2. 主婦がパートで働くか?

3. 結婚するか?

4. 就業しているか?

などの結果は2つの選択肢から1つを選ぶことになる。注意すべきは、自動車を保有す

ると1,保有しなければ0というように数字で表すことはできるが、数字の大きさ自体

には意味がないということである。

具体的な例として、結婚するかどうか (Y)を所得あるいは年齢 (X)で説明するケー

スを考えてみよう。従属変数を

Y = 0 結婚しない

Y = 1 結婚する

と定義すれば、選択の結果はダミー変数で表すことができる。このような関係を推定す

る最も簡単な方法は通常の最小2乗法を使うことである。もう一つの方法は、選択の背

後に結婚願望という直接観測できない潜在変数(latent variable)があり、観測値は潜

在変数についてのシグナルであると考えるやり方である。この場合ロジット(logit)モ

デルやプロビット(probit)モデルと呼ばれる推計方法を用いる。

2.1 線形確率モデル(the linear probability model)

線形回帰モデルは説明変数の線形関数によってYの期待値が決まると仮定し、線形確

率モデルと呼ばれる。

Yi= α+ βX i+ui i = 1, · · · , n (1)

Xiは所得(年齢)、uiは誤差項である。Yi の条件付き期待値はXiの線形関数となる。

E(Y i| X i) = α + βX i (2)

X = Xi の時 Yi = 1となる確率を Pi とすれば、Yi の分布は、1この節の基本的参考文献はMaddala(1983)である。より平易な文献には浅野・中村

(2000、第 10章)とMaddala(1988)がある。

2

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Yi 確率

0 1− P i1 Pi

となり、Yi の期待値は保有確率 Pi に他ならない。

E(Yi | Xi) = 0(1− Pi) + 1 · Pi = Pi (3)

従って、条件付き期待値は保有確率でX の線形関数となる。

E(Yi | Xi) = α+ βXi = Pi (4)

誤差項 ui の分布は Yi の分布から、以下のように与えられる。

Yi ui (= Yi − Pi) 確率

0 −P i 1− P i1 1− P i Pi

uiは Yi = 1の時 1− Pi、Yi = 0の時−Piとなり、2つの値しかとらない。したがって ui の分布は正規分布ではない。

分散は、

V ar(ui| X i) = E(u2i )− E(ui)2= (−P i)2(1− P i) + (1− P i)2Pi= Pi−P 2i= Pi(1− P i)

(5)

となり、Xi の値とともに変化する。

線形確率モデルの特徴は次の通りである。

1. 保有確率が説明変数の線形関数で表されるため、(0, 1)の範囲をはずれることも

ある。

2. 誤差項(ui)は正規分布には従わない。

3. 誤差項の分数はPi(1−Pi)で、Xiとともに変化し不均一分散(heteroscedasticity)となる。

誤差項が正規分布に従わず、不均一分散であれば、最小2乗推定量は有効ではない

(inefficient)。この場合は次のような加重最小2乗推定を行う。

1. (4.1)式を OLS推定する。

3

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2. ウェイトwi =p�yi(1− �yi)を計算する。

3. yiÁwi = α + βxiÁwi についてWLS推定を行う。

1960-70年代には線形確率モデルが多用された。Meyer and Pifer (1970)は、銀行倒産

について分析したし、Altman (1968)は製造業企業の倒産確率を判別分析(discriminant

analysis)を用いて行った。その際、倒産企業と継続企業のサンプルをとり、倒産確率

を線形確率モデルや線形判別関数を推計して求めていた。

線形判別関数

n人のサンプルに対して、k 個説明変数があり、n人のうち n1 人がグループ π1 に

属し、n2人がグループ π2に属する(n = n1 + n2 )ことがわかっているとき、k個

の説明変数による線形判別関数を推計したい。

例えば、ローンの応募者のうち、n1人にはローンが与えられ、n2人は拒否されたと

する。また応募者の社会経済的な属性情報(xi)はわかっている。

次のような線形関数を定義しよう。

Z = λ0 +

kXi=1

λixi

2つのグループを判別するための最適な方法は、λi が次の比率 η を最小化する場合で

ある。

η =Z のグループ間分散(between-group variance)

Z のグループ内分散 (within-group variance)

このようにして、パラメータ λi を決めれば、それを用いて応募者がどちらのグルー

プに入るかを予測できる。

2.2 非線形確率モデル

線形確率モデルの欠陥を避けるには、確率はX の(増加)関数で必ずゼロから1の

間にはいるような関数形のモデルを考える必要がある。このような確率を表す関数とし

ては累積密度関数(cumulative density function)が思い浮かぶ。このような累積密度

関数の形状を与えて非線形回帰を行えば、X と保有確率の関係を決めているパラメー

タが推定できる。保有確率を累積密度関数で表す背後には潜在変数(latent variable)

モデルと呼ばれる選択行動モデルがある。潜在変数モデルでは線形確率モデルとは異な

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り、所得は結婚の、見えない「願望」に影響し、それを通じて確率が決まると考える。

潜在変数(Y ∗)は (6)のように、X についての線形関数と誤差要因 ε の和と仮定し、

Y ∗ = α + βX + ε (6)

潜在変数が臨海値を越えると Y の値が1(結婚する)になるとする。

図1 ダミー従属変数と線形回帰

× ×× ××××××××

×××××××× ×× ×

真の回帰関数→←線形回帰

観察値

観察値

 Y

0X

結婚(Y = 1)の条件は、

Y ∗ > 0 ⇐⇒ α + βX + ε > 0

⇐⇒ ε > −α− βX (7)

となり、結婚確率は誤差項 εについての確率と書ける。以下では、一般性を失うことな

く、εの分散を1とする。i番目のサンプルの結婚確率はF (·)で εの累積密度関数を表せば、

Pr(Yi = 1) = Pr(Y ∗i > 0) = Pr(εi > −α− βXi)

= 1− F (−α− βXi)(8)

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また、非婚確率は、

Pr(Yi = 0) = Pr(Y ∗i ≤ 0) = Pr(εi ≤ −α− βXi)= F (−α− βXi) (9)

と書ける。

実用されている累積密度関数は、(1)ロジスティック分布と(2)標準正規分布の

2つであり、前者を用いたモデルをロジットモデル、後者を用いたモデルをプロビット

モデルと呼ぶ。

2.2.1 ロジットモデル(グループデータからの推定)

ロジットモデルでは、結婚確率を次式で表す。

Pi= E(Y i= 1 | X i) =1

1 + exp(−(α + βXi))(10)

ここで Zi = α + βXi とおき、Zi はXi に制限がなければマイナス無限大からプ

ラス無限大の値をとり、結婚確率は Zi がプラス無限大の時1、マイナス無限大の時0

となる。

非婚確率は、

1− Pi = exp(−Zi)1 + exp(−Zi) (11)

(10)と (11)から結婚、非婚の確率の比(オッズ)は、

Pi1− Pi = exp(Zi) (12)

対数をとり、

ln

µPi

1− Pi

¶= Zi = α + βXi (13)

この式の左辺はロジットと呼ばれる。もし結婚確率が観測可能なら、ロジットをX に

回帰して (α, β)を推定できる。

個人データからは結婚確率は観測できないが、同じ所得(年齢)の人が多数いる場

合、標本割合 ( �P )は結婚確率の推定値と考えられる。所得(年齢)が i番目の値 (Xi)

である個人が全部でNi 人、そのうち既婚者が ni人とすれば、グループ(コーホート)

の �P は ni/Ni となる。

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標本の割合と所得(年齢)の関係は誤差項 εを加えて

ln

�Pi

1− �Pi

!= Zi = α + βXi + εi (14)

と表せ、パラメータに関して線型モデルが与えられる。ただし、 �Piが0か1の 場合は

(4.14)式の左辺は定義できなくなる。

グループデータの場合、標本が大きければグループ iの誤差項 εi は近似的に正規分

布に従い、分数は 1/(Ni �Pi(1− Pi))となる。

εi ∼ N·0,

1

NiPi(1− Pi)¸= N(0,σ2i ) (15)

それぞれのグループによって誤差項の分散は異なり得るので、不均一となり最小2乗

推定量は有効(efficient)でなくなる。このとき、漸近的有効推定量は分散の平方根の

逆数で加重した最小2乗法(weighted least square)で与えられる。分散 σ2i は未知だ

が、標本割合 �Pi より、

�σ2i =1

Ni �Pi(1− �Pi)(16)

で推定値が求まる。

ロジットモデルの推定手続き

1. 各所得(年齢)レベルに応じて結婚確率( �Pi)を求める。

2. ロジット Li = ln( �Pi/(1− Pi))を計算する。3. 不均一分散を除去するための加重を行う。

w12i Li = w

12i α + w

12i Xiβ + w

12i εi

=⇒ L↑i = αw12i + βX

∗i + ui (17)

ここでwi = Ni �Pi(1− �Pi), L∗i = w

12i Li, X

∗i = w

12i Xi, ui = w

12i εi である。

4. L∗ をw12、X∗ に最小2乗回帰する。定数項は使わない。

2.2.2 プロビットモデル(個別データからの推定)

個人レベルの既婚・未婚と所得(年齢)のデータがある場合、グループデータと違い、

加重最小2乗法は使えない。まず所得(年齢)グループごとの結婚確率を求める必要は

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ない。強引にグループの確率を求めてロジット推定を行うことは可能だが、そのような

平均化は元データの情報を失うことになり、推定値の精度は下がる。またある所得(年

齢)に対応する個人の従属変数の値は0か1であり、対数オッズは定義できない。個人

データすべての情報を利用して推定する場合には最尤法(maximum likelihood)を

用いる(補論3-A参照)。

個人データに対応する尤度を求める。観察値が(Y1 = 1, Y2 = 0, Y3 = 0)と

なっていれば、(6)の誤差項 εi が独立なら尤度関数は確率の積、

Pr(Y1 = 1) · Pr(Y2 = 0) · Pr(Y3 = 0) · · · ·

となる。一般的に尤度関数は (8)、(9)の表現を用いると、

L(α, β) =YYi=1

(1− F (−α− βXi))YYi=0

F (−α− βXi) (18)

と表せる。ここでQ

Yi=1(0)

は Yi = 1(0)となる観察値について積をとる操作を表してい

る。(18)は次のように表せる。

L(α,β) = πi {1− F (−α− βXi)}Yi F (−α− βXi)(1−Yi) (19)

この対数尤度は、

lnL(α,β) = Σi {Yi ln {1− F (−α− βXi)}+ (1− Yi) lnF (−α− βXi)}(20)

となる。パラメータの推定には F (·)の関数形(εの分布)を特定化した最尤法が使われる。もっともよく使われるのが標準正規分布を仮定したものでプロビット(Probit)

モデルと呼ばれる。

係数の解釈

説明変数X の値に対応する結婚確率と、X の結婚確率への限界効果の大きさは次の

ように表せる。

結婚確率= 1− F (−α− βX i)

限界効果は線形回帰とは異なり、β で表されるのではなく、結婚確率をX で微分し

て次のように求められる。

∂P2(Yi = 1)

∂X=∂(1− F (−α− βX))

∂X= βf(−α− βX)

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ここで f(·)は累積密度関数 F を微分したものであり、確率密度関数を−α − βXで評価した値である。

Yiの値が 0か 1しかとらない場合に決定係数(R2)のような当てはまりの良さを示

す指標を作るのは難しい。

Effron(1978)は、線形確率モデルの場合、推計値 �Yi が求められるのでR2−タイ

プの指標を考えることができると論じた。すなわち一般的に決定係数は次のように定義

される。

R2 = 1−

nPi=1

(yi − �yi)2nPi=1

(yi − yi)2

ここで

nPi=1

(yi − �yi)2 は定義できる。被説明変数が二項選択の場合には

Σ(yi − yi)2 = Σy2i − ny2i = n1 − n(n1n)2 =

n1n2n

EffronのR2−タイプ指標は

R2 = 1− n

n1n2

nPi=1

(yi − �yi)2 (21)

と定義される。

Amemiya(1981)は次のような定式化を提示した。

nPi=1

(yi − �yi)2�yi(1− �yi) (22)

これは誤差2乗和を分散の逆数で加重したものである。

係数についての検定

β の最尤推定量は漸近的に正規分布に従う。標本数が大きければ �β の漸近分布を使

い通常の仮説検定が行える。係数の一部についての検定は線形回帰における F検定と同

様に制約なしと制約付きの2つの最尤法による推定結果を比べるという方法が使える。

もちろん、制約なしの尤度は制約付きの場合より大きくなり、差が大きければ制約は正

しくないことを示唆する。検定に使われる統計量は制約なし(Unrestricted)の尤度を

LU、制約付き(Restricted)の尤度をLR とし、尤度比(LU/LR)の対数を2倍した

9

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ものが用いられる。これは尤度比検定と呼ばれ、近似的に自由度=制約の数のカイ2乗

分布に従う。

2(lnLU − lnLR) ∼ X2(p) pは制約数 (23)

あてはまりの尺度

質的従属変数モデルのあてはまり尺度として最も多く使われているのが尤度比イン

デックスである。一般に複数の説明変数があるケースで潜在変数は、

Y ∗ = β0 + xβ + ε

と書けるが、もし説明変数 xが結婚確率に影響しないのであれば、定数項以外の係数は

すべてゼロ(β = 0)のはずである。β = 0という制約をおいたときの β0 の推定値

は、全体の結婚確率を P とすれば、P = 1− F (−β0)が成立する。対数尤度は、lnL0= n [P lnP + (1− P ) ln(1− P )]

となる。これが制約付きの対数尤度である。βに制約をつけない場合の対数尤度を lnLUという。

ここで次の尤度比インデックス(Likelihood Ratio Index)を定義する。2

LRI = 1− lnLUlnL0

(24)

もしすべてのβ = 0ならば、lnLU = lnL0となりLRI = 0となる。すべての既婚

者の結婚確率を1、未婚者の結婚確率を0と完璧に予測するならLU = 1(lnLU = 0)

となり LRI = 1となる。

尤度比インデックスに加え、予測の的中率(proportion of correct predictions)も 用

いられることがある。

Xの値に応じて予測された結婚確率を計算し、もし結婚確率が 0.5以上なら予測は結

婚、0.5未満なら予測は未婚として扱う。すなわち、予測値 �y∗i は次のルールに従って0か1の値をとる。

�y∗i =

(1 �yi > 0.5の場合0 �yi < 0.5の場合

的中率は次のように定義される。

的中率=正しい予測値の数全観測値の数

2この定義はMcFadden(1974)による。

10

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例えば、次のような表を考えてみよう。

0 1 合計

0 36 4 40

1 8 52 60

合計 44 56 100 的中率88/100

観察値

予測値

100個の観察値のうち 60が既婚、40が未婚であるときに、予測値は 56が既婚、44が

未婚であるとすると、この予測の的中率は 88/ 100となる。この的中率が高いことは

必ずしもモデルのあてはまりがよいことを意味しているわけではない。標本の 90%が

既婚の時、説明変数の値に関わりなくすべての標本につき確率1で結婚するとする推定

値の「的中率」は 90%であるが、これではモデルの説明力とは関係がないことは明ら

かであろう。

3 切断従属変数

従属変数が質と量の両方の性質を持つようなデータを考えてみよう。例えば、

1. 自動車関係経費への支出

2. アウトドアレジャーへの支出

3. 株式の保有高

これらの変数を個人レベルで観察すると、一部の個人がプラスで残りはゼロの値をと

る。すなわち、このタイプのデータは (1)保有しているかどうか(0か1)の選択(質

的変数)と (2)保有している場合にはどれぐらいか(量的変数)が複合されたものであ

ることがわかる。

ロジットやプロビットモデルでは潜在変数の値は直接観察できないが、この場合、潜

在変数(支出)が臨海値(0)を越えるとその値が観察されるようになるという性質を

持っている。

11

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このようなデータは厳密には次の2種類に分けることができる。すなわち、従属変数

がある値以上、以下、あるいは上下で切断されていても、説明変数はすべての標本につ

いて観察される場合を検閲標本(censored sample)と呼び、説明変数についても切

断されなかった標本のみが観察される場合を切断標本(truncated sample)と呼ぶ。

以下ではこの両者の区別は行わない。

3.1 切断正規分布(truncated normal distribution)

切断された変数は、例えば、平均が µの正規分布から選ばれた無作為標本(y)につ

いて、ある水準以下のデータは検閲(censor)されて消されているようなケースに相当

する。

y > a なら yの値がそのまま公開されるy ≤ a なら y = 0として扱われる

y の密度関数を f(·)、累積密度関数を F (·)で表すと、検閲をパスした標本の密度関数は

f(y)

1− F (a) , y > a (25)

となる。

図2のように検閲をパスした標本は密度関数 f(·)を aで切断した右側の密度と同じ形になる(赤線の部分)。条件付きの密度関数はその下の面積が1になるように調整し、

f(·)を y が aを超える確率 (1− F (a))で割ることにより得られる。

12

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図2

E(y|y>a) E(y|y>a)検閲をパスしなかった 検閲をパスした標本の期待値 標本の期待値

検閲前の標本の期待値

切断された分布の条件付き期待値は (25)の密度関数より

E(y | y > a) = R∞a

yf(y)

1− F (a)dy (26)

により求められる。これは無条件の期待値 µより大きくなる。

一般的に、切断された分布の期待値と元の分布の期待値については、次のような関係

が成り立つ。

E(y | y > a) > E(y) : 下から切断された分布の期待値E(y | y > a) < E(y) : 上から切断された分布の期待値

さらに y が正規分布に従う場合、条件付き期待値E(y | y > a)と切断点 aの関係は図3のようになる。

条件付き期待値は aが小さくなると無条件の期待値 µに漸近し、大きくなるに従っ

て aに近づく。

13

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図3  切断された正規分布の期待値

μ

45°線

E(y|y>a)

a

3.2 トービット・モデル

観察される値 (y)と潜在変数 (y∗)の間に次の関係が存在し、誤差項 εi は x と無相関で独立に平均 0の正規分布に従うとする。

y∗i = α + βxi + εi i = 1, · · · , n (27)

ε ≈ N(0, σ2)

y∗i > 0なら yi = y∗i

y∗i ≤ 0なら yi = 0(28)

ここでは、潜在変数については古典的正規回帰モデルの仮定が成立しているが、潜在

変数が負ならば切断され、その値は直接観察できないと考える。このようなモデルを提

唱者トービンにちなんでトービット・モデルと呼ばれている。(図4)

ここでは真の回帰線のパラメータ (α,β)と分散 σ2の値を求めることが問題となる。

支出がゼロとなる確率はxの値に依存して変化し、εについての条件として書き表せる。

Pr(y = 0 | x) = Pr(y∗ ≤ 0 | x) = Pr(α + βx+ ε ≤ 0 | x)= Pr(ε ≤ −α− βx | x) = F (−α− βx)

ここで F (·)は εの累積密度関数である。確率は標準正規分布の累積密度関数 Φ(·)を

14

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図 4  トー ビ ット ・モデルの考え方

最小 2乗法 で推定 され た回帰線

y

x

真の回帰線

×   ×  ×  ×

××

×

×

×

使って書き直すと、

Pr(y = 0 | x) = Φµ−α− βx

σ

¶(29)

プラスの支出の確率は、

Pr(y > 0 | x) = 1− Φµ−α− βx

σ

¶(30)

となる。支出がプラスで切断された標本の条件付き期待値は次のように表せる。

E(y | y∗ > 0, x) = E(α + βx+ ε | ε > −α− βx)= α+ βx+ E(ε | ε > −α− βx) (31)

εの条件付き期待値E(ε | ε > −α− βx)は分布が下から切断されているため、プラスとなる。切断された標本の期待値は常に潜在変数の期待値より大きくなる。

図5は真の回帰線 (a)と切断された標本の条件付き期待値 (b)およびゼロを含むす

べての観察値の期待値 (c)の関係を示したものである。(c)は、

E(y | x) = E(y | y = 0, x) = Pr(y = 0 | x) + E(y | y > 0, x) Pr(y > 0 | x)= E(y | y > 0, x) Pr(y > 0 | x)= (α + βx+ E(ε | ε > −α− βx))(1− Φ((−α− βx)Áσ)) (32)

15

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図5  切断された標本の期待値

真の回帰線 (a)

y

x

切断された(ゼロを除いた)標本の期待値 (b)

ゼロを含めたすべての観察値の期待値 (c)

となり、(31)と比べて切断された標本の期待値より小さくなる。つまり、(b) > (c)と

なる。

これらの関係を推計する場合には最小2乗法を用いるとゼロに偏った推計となること

が、図4と図 5から明らかである。

3.3 最尤法

従属変数がプラスの場合、尤度関数は密度の積、ゼロの場合、尤度関数は確率の積と

して表せる。プラスの場合 y = α + βx + εなので、ε = y − α − βxと書ける。ε ≈ N(0, σ2)であり εÁσ は標準正規分布に従う。標準正規分布の密度関数 φ(·)により yの密度は次のように表せる。

f(y) =1

σφ

µy − α− βx

σ

¶(33)

(29)のようにゼロが起こる確率はPr(y = 0 | x) = Φ ¡−α−βxσ

¢である。尤度関数は、

L(α,β, σ) =Qyi>0

1

σφ

µyi − α− βxi

σ

¶ Qyi=0

Φ

µ−α− βxiσ

¶(34)

16

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となる。対数尤度を α, β,σ について最大化することによって、最尤推定量が求まる

(トービット推定という)3。

3.4 トービット・モデルの限界

1. 誤差項に関する想定・非正規性と不均一分散性古典的回帰モデルにおいて最小2乗推定量は誤差項が正規分布に従わなくても最

小分散不偏であり、また誤差項が不均一分散でも不遍性と一致性は保たれていた。

つまり最小2乗法は誤差項の想定について頑強(robust)な推定量であった。

トービット・モデルでは、正規性が成立しない場合や不均一分散の場合には、最

尤推定値は一致性を持たない。しかし古典的回帰モデルのように誤差項の想定に

対して頑健な推定法はない。これは従属変数の分布をあらゆる乗法を使って適切

に推測して、それに基づいて密度関数の分布を設定するしかないということを意

味している。

さらにHeckman(1990)は以下で指摘するような問題を解決する目的で次のような

一般モデルを提示した。4

y1i = X1iβ1 + ε1i (35)

y2i = X2iβ2 + ε2i (36)

Ti = 1(Ziγ + ε0i > 0) (37)

yi = Tiy1i + (1− Ti)y2i (38)

ここで Ti は Ziγ + ε0i > 0ならば 1、Ziγ + ε0i ≤ 0ならば 0をとる選択変数

である。

このモデルの要点は以下の2つである。

2. 変数効果の多様性(heterogeneity)変数にかかる係数は個人の属性に応じて決まる。例えば、労働組合が賃金に与え

る効果について考えてみよう。一般的に、組合員の賃金は非組合員の賃金より高

い。(35)は組合員の賃金関数とし、(36)は非組合員の賃金関数だとしよう。非組

合員は学歴による賃金上昇率は低いことが知られている。Xiの k番目の変数は学

歴だとすると、βk2 < βk1 ということである。組合員であるかどうかの効果は切辺

3トービットの最尤推定量の詳しい導出についてはMaddala(1983) chapter6を参照されたい。

4本節は Johnston and Dinardo (1997), pp.446-452を参照。

17

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だけではなく、係数の違いにも出てくるのである。すなわち、

組合員効果 i = Xi(β1 − β2) (39)

である。

3. 選別性バイアス(selectivity bias)選別性の問題は、選別された(管理)グループの属性が選別の方法自体に影響を

受けており、かつ結果に影響を与えるとすれば、選別された変数が結果に影響を

与えているという因果関係は、誤っていることがある。例えば、私立学校の教育の

質の評価について考えてみよう。教育の効果は卒業後の所得で測れるとする。経

済学者は学生の家庭環境に関する情報はないものとする。もしこの私立学校が家

庭の資産が大きい学生を優先的に選別しており、また裕福な家庭の学生は教育の

質に関わりなく裕福になりやすいという事実があるとすれば、この選別のメカニ

ズムを知らずに計量分析すると、本当は家庭環境の違いに帰属する効果を教育の

効果と間違えてしまうことになる。

Heckman(1976)は上述の選別性バイアス問題を二段階の修正を施すことによって解

決できることを示した(Heckman�s two-step estimator)。

選別性バイアスに関する古典的事例はGronau(1974)によって提示されている。この

場合、女性賃金が結果であり、労働市場への参入を選別効果としよう。

次のような女性賃金関数を考える(これは (35)に相当する)。

wi = Xiβ + ε1i (40)

ここで wi は対数表示の賃金、Xi は労働経験や学歴などの属性ベクトルである。ここ

で問題になるのは労働市場に参入してくる女性はランダムに選ばれたわけではない。こ

の選別によって係数 β はバイアスを生じるだろう。

労働市場への参加関数を次のように書く(これは (37)に相当)。

Ti = 1 (Ziγ + ε0i > 0) (41)

ここでZ は女性の労働市場への参加を説明する変数のベクトルである。Ziと Xiには

共通の変数も含まれていいが、GronauはZ に子供の数も含めた。これは女性の労働市

場への参加に影響を与えるかもしれないが、賃金には影響しない。

労働市場に参加している女性に関する賃金関数 (41)の期待値をみれば、選別問題は

明らかである。

E [wi | Xi Ti = 1] = Xiβ + E [εγi | ε0i > −Ziγ] (42)

18

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ε0 と ε1 はともに正規分布し、次のような関係がある。

ε1i =σ0,1σ20ε0i + υi =

σ0,1σ0

· ε0iσ0+ υi (43)

ここで υi は ε0i に無相関、σ0,1 は ε0i と ε1i の共分数、ε1i は ε0i の分散である。

(43)を使って (42)の誤差項を書き換える。

E [ε1i | ε0i > −Ziγ] = σ0,1σ0E

·ε0iσ0| ε0iσ0>−Ziγσ0

¸=σ0,1σ0

φ(ZiγÁσ0)Φ(ZiγÁσ0)

(44)

ここで φ(·)は標準正規密度関数、Φ(·)はその累積密度関数である。遠別バイアスはσ0,1 がゼロでない場合に生じると解釈できる。

ところで (5.17)を OLSで推計すると、β はバイアスを持つが、次のような変数(こ

こで φ(ZiγÁσ0)Φ(ZiγÁσ0)

は inverse Mills ratio、あるいはハザード比と呼ばれる)を加えること

でこのバイアスを除去することができる。

wi = Xiβ +φ(ZiγÁσ0)Φ(ZiγÁσ0)

�σ (45)

Heckmanはこのようなモデルを次のような2段階修正で推計することを提示した。

1. Zi をプロビット推計することで γÁσ0 を求める。2. the inverse Mills ratioを計算する。

3. Ti = 1のデータに関して (5.21)を OLSで推計する。この推定量は一致推定量で

ある。

実際には、このような手続きは既存の計量パッケージ(例えば STATA)のコマンド

(Heckman)を用いることで Heckman二段階推計は容易に行うことができる。

もちろん、この推計方法は必ずしも最適とはいえないし、(5.17)を単純にしたほう

がより効率的である場合もある。Davidson and Mackinnon (1993)が指摘しているよう

に、2段階推計は選別性バイアスがあるかどうかのテストに用いるべきであるという考

え方もある。

19

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4 家計貯蓄行動への応用

ミクロ計量経済学のフロンティアの一つが個人属性の多様性(heterogeneity)にある

ことは、これまで述べてきたとおりであるが、家計貯蓄行動を例にとって、それを具体

的に説明しよう。

一般に、家計貯蓄は所得や資産のほかに年齢(ライフサイクル)、出生年(コーホー

ト)、暦年に規定されることが知られている。ミクロ経済統計が利用可能になる前には、

国民所得統計の家計部門のデータや家計調査報告書を用いても、年齢、出生年、暦年等

の効果を正確には分離できなかったが、「全国消費実態調査」(総務省)の個票データが

利用可能になり、それぞれの効果を分離することが可能になった。

ミクロ統計を用いると貯蓄は次のようにモデル化できる。

Sit= f(ageit, cohorti, year) + g(X it) + εit (46)

ここで、Sit は家計 iの t年における貯蓄、Xit は可処分所得、金融資産、社会保障

保険料、社会保障受取、その他の説明変数である。

さらに f(·)と g(·)は分離可能な構造を持っていると仮定する。

f(.) = A(ageit) + C(cohorti) + y(year) (47)

ここで、C(·)と y(·)はダミー変数として入っている。A(·)にはダミー変数か年齢の実数が入る。

g(.) =X

giXit+X

hiZit (48)

ここでXit は経済変数、Zit は家計属性を表す。

(47)、(48)を (46)に代入し、それを可処分所得で割ったもの(ダミー変数と家計属性

は除く)を実証研究におけるモデルとして用いるが、それは以下のように定義できる。

(S/DisposableIncome)it=l(Age)it+β(Cohortdummy)i+γ(Y eardummy)t

+X

gi(X/DispisableIncome)it+X

hiZit+εit

(49)

この式を Quantile regression(中位値)で推計する。この推計方法を用いるのは後

で説明するようにサンプルが多様(heterogeneous)であり、かつ貯蓄率(S/Disposable

20

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Income)は上限が 1で下限は決まっていない。切断従属変数をとっているからである。5

結果は表 1-表 5に掲載されている。すべてのデータは 1984年、1989年、1994年分

のデータをプールして、それを年齢、出生年、暦年毎に組み替えることができるように

してある。

表1は Quantile regressionモデルで説明変数に年齢階層ダミーを入れたもの、表2

は年齢と年齢の2乗の項を直接入れたものである。貯蓄額の正負によって分離した結果、

労働力人口と持ち家率ダミーもともに有意であるが、逆の符号となっている。表2の結

果も同様であるが、可処分所得の逆数の項のパラメータは貯蓄額を正負に分離した場合、

理論とは逆の符号になっている。このようにパラメータの符号が不安定であるのは、サ

ンプルの多様性のためであると思われる。そこでさらにこれをコーホート別に推計した

のが表3である。ここで明らかにコーホートによってパラメータの大きさや符号条件が

異なっている。共通した特色として、(1)有意に正の所得効果、(2)有意に負の資産

効果、(3)有意に正の持ち家ダミー効果、が認められる。

表4は所得十分位別に推計したものである。それを図示したものが図1-図4であ

る。図1の所得十分位別の貯蓄率のヒストグラムが示しているように、各所得分位毎に

分布がかなり違っている。表4から明らかなように、第7分位以上の高所得階層では所

得効果は見いだせない。負債効果は低所得階層と最高所得階層(第 10分位)で負となっ

ている。

これらから明らかなように、コーホートや所得階層別にみるだけでは、家計行動の多

様性はまだうまく処理できていない。そこで、さらにコーホートと所得階層をクロスし

たセルに分割したものが表5であり、どのセルに最も人口が多いかをみた。それによれ

ば、若年層は低所得層に属し、中年層は高所得層に属する。また高齢層にはいると再び

所得が低下することが見てとれる。ベビーブーマー世代であるコーホート6は、本来な

らば高所得層にあるべきであるのに、中所得しか得ていない。また、図3から明らかな

ように、他のコーホートと比べた場合(図2、図4)、貯蓄率の分布は各所得階層で極め

て整然としている。ベビーブーマー世代は他の世代と比べて、行動の多様性が低い(ば

らつきが小さい)ということがわかる。わが国において人口構造上、最も大きなウェイ

トを持つベビーブーマー世代の経済行動については、さらに調べる必要があるが、その

ためにはここで提示したようなミクロ計量経済学の手法を用いることが有効である。す

なわち、ミクロ計量経済学は多様性の原因を探りながら、一方で欠損値を補う方法を探

り、他方で多様な主体を分離し、同質なサンプルの経済行動を摘出することにその本質

と真価があるということである。

5この推計方法の詳細と結果についてはKitamura(2001)参照。

21

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Table 1 Effects of Cohort, Age and Time on Saving Rate by

Quantile Regression with Age dummies (Median)

Note : dumcoh9, dum1984, dum2024 and dum7500 are dropped due to collinearity.

EstimatedCoefficient t-value Estimated

Coefficient t-value EstimatedCoefficient t-value

Number of Household Members -8.907 -105.41 -2.917 -43.84 3.432 23.14Number of Working Members 10.201 78.37 3.418 32.99 -14.273 -58.07Home Ownership Dummy 7.773 34.89 -7.824 -43.57 44.096 118.211 / Disposable Income 86,759 2.87 883,653 15.03 694,035 23.64Social Security Benefits / Disposable Income 9.967 20.62 1.779 3.70 -35.129 -56.58Social Security Contributions / Disposable Income 5.360 3.48 -81.152 -43.86 -125.908 -77.13Financial Assets / Disposable Income -1,349.552 -70.10 -342.016 -13.14 -471.800 -23.91Debt / Disposable Income 163.555 3.37 1,955.598 46.34 -1,759.895 -25.61dumcoh1 -40.400 -27.02 5.201 4.05 -19.227 -8.46dumcoh2 -63.959 -45.38 7.317 6.07 6.845 3.19dumcoh3 -75.452 -60.97 5.386 5.12 14.383 7.55dumcoh4 -59.454 -55.44 -11.742 -12.99 24.790 14.74dumcoh5 -56.138 -62.06 10.049 13.28 11.875 8.22dumcoh6 -49.860 -67.01 -9.131 -14.86 49.642 40.55dumcoh7 -39.414 -66.73 -0.352 -0.74 37.908 37.71dumcoh8 -35.837 -72.19 -7.030 -17.93 -26.655 -30.58dum1989 -11.074 -38.57 9.354 39.48 -0.182 -0.39dum1994 -11.125 -26.19 8.293 22.88 -10.901 -16.47dum2529 1.654 1.11 6.116 5.09 27.392 11.25dum3034 43.132 32.65 1.366 1.28 -49.864 -23.06dum3539 54.705 44.40 8.320 8.30 -98.682 -49.12dum4044 56.478 49.42 4.701 4.98 -65.569 -35.68dum4549 58.396 54.18 8.130 8.92 -70.199 -41.66dum5054 61.460 59.24 -0.879 -0.97 -59.514 -38.13dum5559 53.083 52.20 3.866 4.23 -78.821 -54.11dum6064 50.008 51.53 2.209 2.43 -64.147 -49.61dum6569 54.967 53.53 -4.751 -4.87 -72.023 -54.58dum7074 15.210 12.57 -5.988 -5.00 -51.839 -35.82constant 37.436 23.63 32.654 24.80 17.599 6.85

Diagnostic TestNumber of ObservationPseudo R2Raw sum of deviationsMin sum of deviations 796,686

81,7210.0716

1,097,926

28,4730.1580946,237

2,517,735 1,019,269

110,1940.1362

2,914,772

Dependent variable: Saving RateTotal Saving>=0 Saving<0

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Table 2 Effects of Cohort, Age and Time on Saving Rate by

Quantile Regression with Age and Age2 variables (Median)

Note : dumcoh9, and dum1984 are dropped due to collinearity.

EstimatedCoefficient t-value Estimated

Coefficient t-value EstimatedCoefficient t-value

Number of Household Members -1.001 -12.50 -3.012 -41.87 6.031 37.88Number of Working Members -2.556 -20.63 5.987 53.31 -3.890 -14.57Home Ownership Dummy 33.384 154.18 7.539 37.90 -14.193 -34.601 / Disposable Income -282,971 -9.65 365,629 5.62 1,264,626 39.19Social Security Benefits / Disposable Income -88.044 -193.38 -1.429 -2.74 -12.943 -19.54Social Security Contributions / Disposable Income -101.805 -68.37 -39.864 -19.57 -137.385 -76.80Financial Assets / Disposable Income -3,829.987 -205.21 -273.190 -9.54 -2,956.165 -136.18Debt / Disposable Income 802.828 17.07 -919.737 -19.75 -560.894 -7.75dumcoh1 202.863 87.41 4.077 1.92 -43.931 -10.05dumcoh2 135.739 67.15 -2.128 -1.16 -40.801 -10.61dumcoh3 78.843 44.50 1.073 0.67 -47.993 -14.06dumcoh4 48.097 31.63 -1.630 -1.19 -49.424 -16.69dumcoh5 31.552 25.13 1.280 1.13 -22.762 -9.27dumcoh6 13.459 13.75 2.365 2.69 -14.274 -7.39dumcoh7 -6.958 -9.39 -0.008 -0.01 -43.156 -29.23dumcoh8 12.478 23.35 6.495 13.69 -23.308 -21.56dum1989 22.675 63.78 5.297 16.44 -12.528 -18.26dum1994 46.696 76.72 6.636 11.96 -16.146 -13.97Age -3.151 -27.87 0.165 1.58 2.091 9.77Age * Age 0.705 7.73 -0.216 -2.45 -0.897 -5.62constant 97.345 40.65 19.831 8.78 -48.228 -10.60

Diagnostic TestNumber of ObservationPseudo R2Raw sum of deviationsMin sum of deviations 2,523,804 1,020,921

110,1940.1341

2,914,772

Dependent variable: Saving RateTotal Saving>=0 Saving<0

798,642

81,7210.0701

1,097,926

28,4730.1560946,237

Page 28: ミクロ計量経済学のフロンティア - Hitotsubashi Universitykitamura/PDF/A207.pdf在変数についてのシグナルであると考えるやり方である。この場合ロジット(logit)モ

Table 3 Saving Rate of Individual Cohort by Quantile Regression

(Median)

EstimatedCoefficient t-value Estimated

Coefficient t-value EstimatedCoefficient t-value

Number of Household Members -4.128 -6.00 -10.179 -25.07 -5.055 -16.01Number of Working Members 3.013 2.84 -16.631 -27.67 10.747 24.26Home Ownership Dummy 1.973 1.23 28.696 22.93 13.662 14.541 / Disposable Income -8,435,304 -89.48 -10,700,000 -184.58 -289,012 -2.21Social Security Benefits / Disposable Income -2.816 -1.53 -26.940 -22.61 -19.833 -15.82Social Security Contributions / Disposable Income -154.058 -26.09 257.043 58.40 -166.212 -35.06Financial Assets / Disposable Income -1,225.639 -24.58 -7,243.007 -159.66 -1,583.803 -27.30Debt / Disposable Income 244.595 0.61 -3,504.067 -12.26 455.798 2.42Age -0.357 -0.13 -155.346 -37.46 19.158 6.17Age * Age 0.733 0.41 130.259 38.94 -19.108 -7.01dum1989 -2.504 -0.96 24.609 13.26 5.413 3.59dum1994 -12.166 -3.00 -23.715 -8.15 34.133 14.30constant 67.267 0.68 4,729.406 36.95 -451.885 -5.13

Diagnostic TestNumber of ObservationPseudo R2Raw sum of deviationsMin sum of deviations

EstimatedCoefficient t-value Estimated

Coefficient t-value EstimatedCoefficient t-value

Number of Household Members -3.884 -15.58 -9.090 -46.99 -2.512 -14.24Number of Working Members 5.737 17.59 7.572 27.58 1.166 4.07Home Ownership Dummy 3.268 4.70 48.832 93.87 8.041 17.651 / Disposable Income -5,743,744 -53.55 -180,160 -1.42 -6,298,231 -50.84Social Security Benefits / Disposable Income -8.550 -4.45 -1.414 -0.71 -3.242 -1.63Social Security Contributions / Disposable Income -62.669 -12.93 -39.912 -8.54 -57.596 -16.23Financial Assets / Disposable Income -1,557.511 -25.25 -329.462 -5.22 -1,320.270 -17.38Debt / Disposable Income 532.817 3.42 -2,625.370 -21.03 -542.395 -5.48Age -7.057 -3.09 6.370 3.96 -7.774 -5.58Age * Age 6.805 3.10 -3.166 -1.85 8.816 5.32dum1989 1.428 1.18 -10.542 -11.10 1.818 1.98dum1994 5.452 2.85 -43.399 -29.09 0.885 0.62constant 225.951 3.83 -200.719 -5.34 218.644 7.54

Diagnostic TestNumber of ObservationPseudo R2Raw sum of deviationsMin sum of deviations

334,624 389,110 411,783299,346 357,800 377,013

272,353

0.1054 0.0805 0.0844

Cohort 6

19,37113,142 16,818

5,386

Dependent Variable : Saving RateCohort 4 Cohort 5

8,5200.2579265,057196,711

0.2368356,877

10,8470.1772366,319301,394

Dependent Variable : Saving RateCohort 1 Cohort 2 Cohort 3

Page 29: ミクロ計量経済学のフロンティア - Hitotsubashi Universitykitamura/PDF/A207.pdf在変数についてのシグナルであると考えるやり方である。この場合ロジット(logit)モ

Note : dum1984 is dropped due to collinearity.

EstimatedCoefficient t-value Estimated

Coefficient t-value EstimatedCoefficient t-value

Number of Household Members -3.996 -23.41 0.239 1.32 -3.144 -10.23Number of Working Members 1.042 3.47 4.090 12.13 1.669 2.85Home Ownership Dummy 3.613 8.49 6.351 13.70 9.390 11.761 / Disposable Income -8,911,889 -82.81 -2,659,751 -20.64 -8,134,342 -37.13Social Security Benefits / Disposable Income 9.364 4.70 -43.412 -19.32 -3.048 -0.84Social Security Contributions / Disposable Income -7.652 -2.10 27.275 5.99 -59.941 -8.65Financial Assets / Disposable Income -688.268 -7.90 -980.452 -11.28 -1,274.056 -8.07Debt / Disposable Income 1,660.212 19.85 733.862 7.09 417.900 2.70Age 14.694 12.02 -7.766 -6.10 -7.163 -2.95Age * Age -18.992 -11.73 11.273 6.01 9.554 2.39dum1989 -14.431 -16.07 4.052 3.76 1.238 0.49dum1994 -14.897 -10.94 4.528 3.02 7.730 2.42constant -207.312 -9.13 145.093 6.93 184.224 5.27

Diagnostic TestNumber of ObservationPseudo R2Raw sum of deviationsMin sum of deviations 333,874 229,579 132,829

17,850 11,824 6,436

147,0320.1058 0.1134 0.0966373,368 258,950

Dependent Variable : Saving RateCohort 7 Cohort 8 Cohort 9

Page 30: ミクロ計量経済学のフロンティア - Hitotsubashi Universitykitamura/PDF/A207.pdf在変数についてのシグナルであると考えるやり方である。この場合ロジット(logit)モ

Table 4 Saving Rate of Income Decile by Quantile Regression (Median)

Note : dumcoh9, dum1984, dum2024 and dum7500 are dropped due to collinearity.

EstimatedCoefficient t-value Estimated

Coefficient t-value EstimatedCoefficient t-value Estimated

Coefficient t-value EstimatedCoefficient t-value

Number of Household Members 7.007 14.97 -1.744 -5.46 -3.657 -13.45 -3.543 -12.40 -3.217 -15.99Number of Working Members -10.318 -12.91 -0.557 -0.97 4.308 9.16 2.835 5.86 3.662 10.87Home Ownership Dummy 26.322 27.43 7.784 10.82 4.957 7.94 5.796 8.42 4.069 8.041 / Disposable Income -2,259,606 -42.58 -1,611,674 -1.58 -9,702,974 -6.07 -8,694,083 -3.52 -9,621,962 -4.34Social Security Benefits / Disposable Income -45.423 -36.06 -2.041 -1.25 -2.385 -1.37 -4.013 -1.83 -3.046 -1.77Social Security Contributions / Disposable Income -241.444 -81.58 -22.983 -3.85 -31.842 -5.15 -39.536 -5.35 -71.540 -12.26Financial Assets / Disposable Income -3,698.009 -103.26 -965.369 -14.50 -1,108.732 -13.37 -1,104.865 -10.71 -1,234.953 -15.11Debt / Disposable Income -4,967.999 -34.74 -201.807 -1.07 1,718.522 11.07 806.833 4.67 958.770 8.31dumcoh1 -20.814 -6.29 -8.506 -2.31 0.414 0.09 -4.499 -0.77 21.432 4.36dumcoh2 -16.684 -4.82 -16.311 -4.49 -6.604 -1.52 -11.184 -2.05 8.179 1.80dumcoh3 -27.128 -7.88 -26.238 -7.77 -8.465 -2.20 -9.944 -2.09 3.711 0.94dumcoh4 -26.996 -7.71 11.178 3.58 -5.594 -1.66 -5.545 -1.35 7.372 2.19dumcoh5 -16.674 -4.92 -7.664 -2.81 -2.618 -0.93 -3.806 -1.13 7.682 2.78dumcoh6 21.574 6.93 4.140 1.85 -2.422 -1.09 -3.846 -1.44 4.121 1.89dumcoh7 23.007 8.41 -4.320 -2.50 -0.814 -0.49 -3.423 -1.71 0.588 0.36dumcoh8 -31.270 -13.00 -1.113 -0.81 -4.225 -3.32 -1.191 -0.81 2.002 1.69dum1989 -30.931 -28.64 -3.357 -3.89 0.569 0.66 0.031 0.03 2.916 3.62dum1994 -0.635 -0.47 -5.643 -4.65 -1.498 -1.13 -1.320 -0.81 7.507 5.58dum2529 25.905 7.04 -3.702 -1.09 -2.044 -0.48 3.448 0.67 26.033 5.58dum3034 -53.082 -14.51 -1.821 -0.57 -2.054 -0.53 4.000 0.87 23.763 5.77dum3539 -28.417 -7.69 -6.597 -2.09 -0.657 -0.18 5.247 1.21 23.421 6.14dum4044 7.805 2.14 -0.699 -0.22 -3.484 -1.00 3.361 0.81 17.077 4.81dum4549 3.229 0.91 -10.958 -3.49 -3.110 -0.92 2.328 0.57 9.733 2.87dum5054 4.067 1.22 11.971 3.87 2.177 0.65 5.124 1.23 12.205 3.68dum5559 31.601 10.85 12.930 4.35 3.783 1.14 8.846 2.08 14.317 4.30dum6064 17.319 7.27 10.033 3.71 -1.725 -0.53 10.846 2.55 10.354 3.12dum6569 8.193 3.43 -1.120 -0.41 -8.273 -2.41 7.845 1.70 4.520 1.27dum7074 -6.472 -2.58 -6.740 -2.14 -5.854 -1.46 7.152 1.31 -4.860 -1.13constant 56.201 15.91 31.634 5.13 66.836 8.45 58.352 5.66 37.188 4.32

Diagnostic TestNumber of ObservationPseudo R2Raw sum of deviationsMin sum of deviations

226,337219,657 217,686227,671

Decile 5

11,018 11,0200.0352 0.0382

Decile 4

261,982

11,020 11,0180.2570656,549487,837

0.0437273,942

11,0210.0431241,775231,357

Dependent Variable : Saving RateDecile 1 Decile 2 Decile 3

Page 31: ミクロ計量経済学のフロンティア - Hitotsubashi Universitykitamura/PDF/A207.pdf在変数についてのシグナルであると考えるやり方である。この場合ロジット(logit)モ

Note : dumcoh9, dum1984, dum2024 and dum7500 are dropped due to collinearity.

EstimatedCoefficient t-value Estimated

Coefficient t-value EstimatedCoefficient t-value Estimated

Coefficient t-value EstimatedCoefficient t-value

Number of Household Members -3.258 -14.21 -2.767 -12.98 -2.218 -10.05 -2.138 -7.98 -1.438 -6.06Number of Working Members 4.248 11.31 4.573 13.16 4.244 12.06 5.916 14.10 4.426 12.96Home Ownership Dummy 2.767 4.50 5.643 9.57 6.762 9.95 4.324 4.89 3.503 3.871 / Disposable Income -26,600,000 -9.11 -2,868,904 -1.04 -11,163 0.00 1,104,793 0.38 1,120,919 0.84Social Security Benefits / Disposable Income 4.918 2.38 4.741 2.42 22.358 10.48 8.797 3.42 15.467 6.72Social Security Contributions / Disposable Income -15.999 -2.23 -37.390 -5.25 -97.787 -12.22 -49.488 -5.09 14.080 1.62Financial Assets / Disposable Income 164.514 1.79 -836.678 -9.35 -368.892 -3.78 -908.070 -7.56 -357.129 -3.30Debt / Disposable Income 1,475.474 9.53 935.797 7.87 595.461 3.69 748.154 3.61 -226.304 -1.34dumcoh1 2.527 0.34 1.754 0.19 -23.426 -2.18 -13.891 -2.35 0.741 0.14dumcoh2 -38.238 -5.63 -1.576 -0.20 -15.945 -1.67 -11.887 -2.13 -5.686 -1.10dumcoh3 -36.624 -6.24 -0.574 -0.08 -19.388 -2.35 -11.489 -2.33 -6.290 -1.36dumcoh4 -27.034 -5.45 -0.655 -0.11 -11.462 -1.65 -7.539 -1.74 -7.699 -1.87dumcoh5 -15.448 -3.82 -0.492 -0.10 -11.186 -1.98 -8.504 -2.26 -11.002 -2.99dumcoh6 -11.692 -3.70 -1.187 -0.32 -8.930 -2.03 -7.688 -2.33 -10.200 -3.06dumcoh7 -9.863 -4.28 -0.548 -0.21 -3.275 -1.03 -7.832 -2.69 -5.337 -1.74dumcoh8 -4.949 -3.05 -1.950 -1.08 -7.578 -3.46 -4.648 -1.75 -3.910 -1.36dum1989 -3.252 -2.89 1.561 1.22 2.564 1.69 1.801 1.51 -3.541 -2.92dum1994 -7.820 -3.95 2.244 0.96 1.173 0.42 0.249 0.14 1.486 0.87dum2529 -7.832 -1.06 1.144 0.12 -5.294 -0.45 -20.534 -4.71 -7.616 -1.40dum3034 0.096 0.01 0.914 0.11 -1.248 -0.12 -21.391 -9.01 -21.117 -8.01dum3539 0.709 0.12 1.834 0.24 1.365 0.15 -15.758 -4.78 -17.314 -5.05dum4044 3.673 0.68 -3.517 -0.53 -3.888 -0.49 -17.221 -4.57 -18.512 -4.98dum4549 4.479 0.90 -8.529 -1.44 -7.777 -1.12 -25.508 -5.91 -18.114 -4.44dum5054 12.072 2.55 -9.800 -1.85 -6.097 -1.02 -27.051 -5.49 -19.612 -4.34dum5559 18.778 4.05 -3.850 -0.79 2.999 0.58 -19.254 -3.46 -23.042 -4.58dum6064 -11.339 -2.46 -0.844 -0.19 3.934 0.87 -17.490 -2.83 -22.906 -4.12dum6569 -10.467 -2.14 -3.096 -0.67 4.049 0.92 -8.815 -1.28 -18.073 -2.91dum7074 -7.267 -1.18 1.782 0.31 1.561 0.26 -12.055 -1.47 -26.912 -3.69constant 113.243 9.75 35.381 2.81 40.040 2.81 52.230 8.60 52.100 17.29

Diagnostic TestNumber of ObservationPseudo R2Raw sum of deviationsMin sum of deviations 205,479

11,0200.0411 0.0411222,535 214,287

11,018

213,382

Decile 9 Decile 10

11,019 11,020

222,863 222,366213,832 213,989 214,054

Decile 8

223,384

11,0200.0405 0.0377 0.0418

Dependent Variable : Saving RateDecile 6 Decile 7

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Table 5 Number and Share of Households by Cohort x Decile

Note : Shadow indicates the highest share in the same cohort.

cohort 1 cohort 2 cohort 3 cohort 4 cohort 5 cohort 6 cohort 7 cohort 8 cohort 9 Total

2,079 2,014 1,375 762 747 1,012 1,364 1,111 556 11,020 (1.89) (1.83) (1.25) (0.69) (0.68) (0.92) (1.24) (1.01) (0.50) (10.00)

916 1,077 906 688 971 1,685 2,130 1,690 955 11,018 (0.83) (0.98) (0.82) (0.62) (0.88) (1.53) (1.93) (1.53) (0.87) (10.00)

486 750 845 915 1,298 2,040 2,146 1,518 1,023 11,021 (0.44) (0.68) (0.77) (0.83) (1.18) (1.85) (1.95) (1.38) (0.93) (10.00)

349 665 892 1,022 1,531 2,126 2,029 1,452 952 11,018 (0.32) (0.60) (0.81) (0.93) (1.39) (1.93) (1.84) (1.32) (0.86) (10.00)

280 617 926 1,172 1,712 2,123 1,978 1,419 793 11,020 (0.25) (0.56) (0.84) (1.06) (1.55) (1.93) (1.80) (1.29) (0.72) (10.00)

271 626 982 1,329 1,735 2,151 1,980 1,283 662 11,019 (0.25) (0.57) (0.89) (1.21) (1.57) (1.95) (1.80) (1.16) (0.60) (10.00)

252 624 1,106 1,499 1,885 2,129 1,873 1,135 517 11,020 (0.23) (0.57) (1.00) (1.36) (1.71) (1.93) (1.70) (1.03) (0.47) (10.00)

232 689 1,154 1,596 2,071 2,112 1,800 926 440 11,020 (0.21) (0.63) (1.05) (1.45) (1.88) (1.92) (1.63) (0.84) (0.40) (10.00)

250 736 1,258 1,857 2,270 2,113 1,441 753 340 11,018 (0.23) (0.67) (1.14) (1.69) (2.06) (1.92) (1.31) (0.68) (0.31) (10.00)

271 722 1,403 2,302 2,598 1,880 1,109 537 198 11,020 (0.25) (0.66) (1.27) (2.09) (2.36) (1.71) (1.01) (0.49) (0.18) (10.00)

5,386 8,520 10,847 13,142 16,818 19,371 17,850 11,824 6,436 110,194 (4.89) (7.73) (9.84) (11.93) (15.26) (17.58) (16.20) (10.73) (5.84) (100.00)

decile 1

decile 2

decile 3

decile 4

decile 5

decile 6

Total

decile 7

decile 8

decile 9

decile 10

Page 33: ミクロ計量経済学のフロンティア - Hitotsubashi Universitykitamura/PDF/A207.pdf在変数についてのシグナルであると考えるやり方である。この場合ロジット(logit)モ

Fig.1 Distribution of Saving Rate by Income Decile (Total)

Fraction

bw-1177.15 87.0313

0

.260254

Fraction

bw-408.573 81.6181

0

.163097

Fraction

bw-367.315 79.619

0

.159786

Fraction

bw-290.947 84.7441

0

.138591

Fraction

bw-249.224 89.3146

0

.132123

Fraction

bw-226.245 85.5837

0

.118704

Fraction

bw-187.418 88.5458

0

.102813

Fraction

bw-168.686 84.7908

0

.095735

Fraction

bw-120.257 88.1812

0

.080595

Fraction

bw-88.5185 92.1509

0

.066969

Page 34: ミクロ計量経済学のフロンティア - Hitotsubashi Universitykitamura/PDF/A207.pdf在変数についてのシグナルであると考えるやり方である。この場合ロジット(logit)モ

Fig.2 Distribution of Saving Rate by Income Decile against Cohort 1

Fraction

bw-1177.15 86.0896

0

.230399

Fraction

bw-361.49 75.0279

0

.110262

Fraction

bw-264.717 73.1007

0

.092593

Fraction

bw-214.225 79.3824

0

.091691

Fraction

bw-136.76 89.3146

0

.078571

Fraction

bw-201.478 85.5837

0

.110701

Fraction

bw-125.444 72.0624

0

.071429

Fraction

bw-117.373 74.2794

0

.081897

Fraction

bw-120.257 78.0992

0

.08

Fraction

bw-39.5069 88.8283

0

.055351

Page 35: ミクロ計量経済学のフロンティア - Hitotsubashi Universitykitamura/PDF/A207.pdf在変数についてのシグナルであると考えるやり方である。この場合ロジット(logit)モ

Fig.3 Distribution of Saving Rate by Income Decile against Cohort 6

Fraction

bw-891.758 75.6599

0

.261858

Fraction

bw-233.838 77.4172

0

.122849

Fraction

bw-321.801 75.6676

0

.157843

Fraction

bw-224.842 79.2179

0

.134525

Fraction

bw-204.775 86.3552

0

.134715

Fraction

bw-226.245 77.6935

0

.134356

Fraction

bw-176.844 83.1016

0

.104274

Fraction

bw-143.602 81.3642

0

.094223

Fraction

bw-117.914 83.8781

0

.074775

Fraction

bw-88.5185 79.7572

0

.067021

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Fig.4 Distribution of Saving Rate by Income Decile against Cohort 9

Fraction

bw-889.948 62.0549

0

.264388

Fraction

bw-392.816 81.6181

0

.168586

Fraction

bw-331.669 78.9197

0

.154448

Fraction

bw-282.439 79.7066

0

.152311

Fraction

bw-249.224 79.2506

0

.121059

Fraction

bw-163.371 74.8174

0

.098187

Fraction

bw-174.878 73.4162

0

.104449

Fraction

bw-103.316 84.6866

0

.079545

Fraction

bw-113.963 84.0212

0

.094118

Fraction

bw-46.4593 87.5306

0

.075758