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Vol. 26 No. 138 電波研究所 季 報 June 1980
pp. 513 529
研究
ミリ波帯電波伝搬実験計画
2. 送受信システム
:J 1: JJ;i 俊夫キ 11 i演洋治* j長|品j 克典キ
北村 JJ)): [J * 今:JI: 雄司*
(昭和 54年 10月15日受理)
PROPAGATION EXPERIMENT PROGRAM AT MILLIMETER WAVES
2. Transmitter and Receiver System
By
Toshio IHARA, Yoji FURUHAMA, Katsusuke TORMA,
Katsumi KITAMURA, and Yuji IMAI
In order to make clear the propagation characteristics of radio waves above 40 GHz through the
atmosphere, especially the e妊ectsof precipitation, RRL has conducted the propagation experiment
at millimeter and centimeter wave bands, assigned to four frequencies of 81. 8 GHz, 34. 5 GHz, 11. 5
GHz and 1. 7 GHz in the “atmospheric windowsヘsinceApril 1979.
Transmitter and receiver subsystem, basing on a multi-frequency phase lock, is one of five sub-
system which configure the whole experimental system. Copolar attenuation, cross polarization
discrimination, and phase di妊erencebetween two frequencies can be measured by this system.
In this paper, the construction, characteristics, and functions of this system are described.
1. まえがき
40GHz以上の電波の大気伝搬特性,とりわけ降雨に
よる影響の解明を目的として, 1979年4月以来,大気の
窓にあたる 81.84 GHz, 34. 5 GHz, 11. 5 GHz, 1. 7 GHz
の4周波数を選定し電波伝搬実験を行っている。実験シ
ステムは五つのサブシステムから成り,本送受信システ
ムはそのうちの1サブシステムである。送受信システム
のうち, 34.5 GHz, 11. 5 GHz, 1. 7 GHzの実験システ
ムは技術試験衛星E型(ETS-Ilきく 2号)を用いた電
波伝搬実験iζ使用された装置を利用しており,既存設備
の有効利用を図っている。また新たに製作した 81.84
GHzの伝搬実験装置と有機的に結合し多周波同期送受
信システムを備成するよう配厳しである。これによりセ
ンチ波帯からミリ波帯にかけて多周波で多種類の伝搬デ
*屯波部超高周波伝搬研究室
513
ータが取得できるようになっている。
本文では送受信システムの構成,特性,機能について
述べる。
2. 送受信システムの概要
本送受信システム構成の概要を第l図!C::示す。このシ
ステムは今回新たに製作を行った SOGHz帯伝搬実験シ
ステムと,電波研究所鹿島支所に設置されてETS-Ilを
用いた電波伝搬実験lζ使用されたミリ波,センチ波帯の
伝搬実験装置を水平伝搬路での実験に適合するように一
部改造し移設を行ったもの(以後ETS-Il伝搬実験シス
テムと呼ぶ)とから構成されている。
SO GHz帯伝倣実験システムは送信装置,送信アンテ
ナ,受信装置,受信アンテナ, 2GHz帯電測, i正用
簡易発振器から成り,受信レベノレの測定は 2GHz帯電
界強度測定器(2GHz帯電測)により 2.13GHzのIF
514 ミリ波帯電波伝搬実験計画 2 電波研究所季報
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!:fl 1 1~1 送受f,1システムブロックダイアグラム
却で行っている。送受信装置は ETSE伝搬実験システ
ムとのインタフェ スを有している。
ETS E 伝搬実験システムは送信装置, 送信アンテ
ナ3 受信装置, 受信アンテナ,位相同期型信号検出品u.受信信号強度絞正装置及び 80GHz帯伝搬実験システム
とのインタフェースから成っている。
これらの 80GHz帯伝徹実験システムと ETS-11伝搬
実験システムは各々独立に動作するとともに,以下((述
べるように両者のインタフェースを介して114;の動作を
するζ とも可能である。 ETS-JI伝搬実験システムでは
3周波数(34.5 GHz, 11. 5 GHz, 1. 7 GHz)の送信信
号はすべて 106.5625 MHz水晶発振器出力 を共通の信
号源にし逓倍することlζよって得られている。また,受
信局発信号も 11.5 GHzあるいは 1.7 GHzの受信信号
lζ同期した 106.5625 M Hz’出圧制御水品発振器出力を
逓倍するととによって得られているので3周波数の位相
が同期した同期送受信システムを繕成している。一方,
80GHz帯伝搬尖験システムの送信周波数及び受信局発
周波数を同様に 106.5625 MHzの調波関係 tζ 選べば本
送受信システムの全周波数の位相が同WJした同期送受信
システムを構成する乙とが可能になる。とれは,ETS-JI
伝搬実験システムから 80GHz帯伝搬実験システムへ
106. 5625 MHzの信号を供給する乙とによって実現され
ている。通常はζ のような 80GHz帯伝搬実験システム
とETSE伝倣実験システムが同期した状態で運用され
ている。但し, 二つの伝搬実験システムで独立に実験を
立l2図送(t;,システムの外側
A 80 GHz i,日送信装置,B 80 GHz ~~:送信アンテナC ETS-lT送信装置, D !. 7 GHz :;;;送f,iアンテナ
E lし5GHz ・:I}送信アンテナF 34. 5 GHz :f!J'送信アンテナ
行えるように, 80GHz議伝搬実験システムも 106.5625
MHz水晶発振器を内蔵している。
次lζ送受信システムの設置状況ICついて述べる。送信
システムは(凶日立製作所 ・I'jJ央研究所内の塔屋(海抜高
125 m) Iζ設置され,受信システムは屯波研究所内の 3
号館 51椅のミリ校受信室(海抜高 95m)に設置されてい
る。伝擁立距離は約 1.3km,伝搬路の仰角は約 1.30であ
る。受信システムはアンテナ,給電部を除き屋内IC設置
され,室温を 23土3°CK制御lすることにより装置の屯
気的特性が周閤温度の変化を受けないようにしてあるo
?.f~ 21辺IC送信システムの外観,第 3凶』ζ受信アンテナ
515
3.1 BOGHz帯送信システム
SO GHz帯送信システムは第2図に示すよ うf(送信装
置と送信アンテナが一体の防滴燐造になっており,81.84
GHzの信号を送信する。
3. 1. 1 80 GHz ·~If i主信装Vi
第4図に 80GHz帯送信装置の内観,):'f:l5区llζプロッ
クダイアタラ ムを示す。 81.84 GHzの送信信号は
106. 5625 MHzの信号を 768逓倍することKよって得ら
れ,出力は約3dBmである。 106.5625 MHzの信号は送
信装置に内脱している 106.5625 MHz 水品発振若誌はl力
あるいは ETS-JI送信装置から分岐した信号を用いてお
り,両者はスイッチによって切り替えるζ とができる。
また81.84GHzの出力段には方向性結合器を介して送信
出力をモニタできるようにモニタ端子が設けられてい
る。 装置の位体内部κはヒータが設けられており,送信
山)J,送信周波数の安定度を良くするためi主体内部の温
円
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1980
80GHz帯伝搬実験 システム
June No. 138
の外観を示す。
3.
Vol. 26
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臼'l5 l'<I 80 GHz {/!'i主foi"談ii'lブロックダイアグラム
電波研究所季報
511,宮町
ミリ波帯電波伝微実験計画 2
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間関制度(。c)
JO 20 10 。
516
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揃遺漏凶咽窓辺判明
SO GHz帯送信アンテナの構造
の範囲で調整できる。アンテナ前面にはテフロン板のレ
ドームが下向きに 50傾斜して取り付けられ,主反射鏡,
副反射鏡及び1次放射器へ水滴が付着するのを防ぐ構造
になっている。 1次放射器にはフィードームが取り付け
られており給電部の導波管回路の気密を保っている。
第9図(吋, (b)はそれぞれBOGHz帯送信アンテナの方
位角及び仰角方向の近軸指向性パターンを示したもので
ある。ビームの半値幅は約0.5。,利得は49.2dBであ
る。
3.2 soGHz帯受信システム
BO GHz帯受信システムはBOGHz帯受信装置, 80
GHz帯受信アンテナ, 2GHz帯電測及び較正用簡易発
振器から楠成され, 81.84GHzの受信レベルの測定に用
いられる。
3. 2.1 BO GHz借受信装置
第 10凶lζ BOGHz帯受信装置の内観,第11図l乙プロ
ックダイアグラムを示す。 81.84 GHzの受信信号は
106. 5625 MHzを750逓倍した局発信号と混合され
1. 918125 GHz k周波数変換され,更に 106.5625 MHz
と混合されて2.13125GHzと1.705GHzの二つの IF信
号として出力される。 106.5625 MHzの信号は受信装置
に内蔵している水晶発振器出力あるいは ETS-Il受信シ
ステムから供給される信号をスイッチによって切り替え
第8図
第7図 SO GHz帯送信装置の送信周波数のi1¥¥l皮特性
縦軸は81.84GHzからの周波数偏差を示している。
度を一定になるよう制御している。設定温度は High,
Lowの2種類ありそれぞれ周閤温度がO~30°C及びO
~20。Cの範囲iζ対して箆体内の温度を一定にしてい
る。
第 6図lζ送信出力の周囲温度の変化lζ対する変動特性
を示す。温度設定が Highあるいは Lowのいずれの
場合にも周囲温度がO~45。Cの範囲で出力電力の変動
は!dB以下になっている。東京における気温の日変化
は10。C程度なので,送信電力の日周変化は Lowの場
合l乙O.5dB/day, Highの場合IC0.2dB/day以下であ
る。
第 7図は箆体内部の温度を Highlζ設定したときの
周囲温度に対する送信周波数の変動特性を示す。縦軸は
81.84GHzからの周波数偏差を表している。周波数設定
時iと生じた一定の偏差を除くと O~45°Cの周囲温度に
対する送信周波数の変動は少なく,設定時の偏差を含め
ても 20kHz程度の範聞に収まっている。 81.84GHzの
受信レベルを帯域6MHzあるいは600kHzの2GHz捗
電測で測定するので, ζれに比べて送信周波数の安定度
は十分良い。乙こではBOGHz帯内蔵の 106.5625 MHz
水品発振器出力を逓倍した場合の特性を示したが, ET
S-Il送信装置から 106.5625 MHzの信号を供給した場
合にも同様の特性を示す。
3.1.2 80GHz帯送信アンテナ
BO GHz帯送信アンテナは第8図lζ示すような口径50
cmのカセグレンアンテナであり, 1次放射器は円錐ホ
ーンである。主反射鏡,副反射鏡ともに鏡面修正されて
いる。鏡面は旋盤加工されており鏡面精度は 0.04mm
rms以下である。アンテナの方位角,仰角ともに ±50
517 1980 June No. 138
。Vol. 26
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通常はとの状態で迎用しており, 乙の場合 1.7 GHzの
伝級データは取得できない。当然のζ とながら,乙の運
用では,ETシE 送受信システムから 80GHz帯送受信
システムへ 106.5625 MHzの信号が供給されている必
要がある。
第 12区lは81.84 GHz入力端子から 2.13GHz及び
1. 7 GHzのIF出力端子聞の信号の入ILi力特性を示す。
81. 84 GHz入力屯力が-40~-lOOdBmの範囲で入出
力関係の直線性が保たれている。
第 13図は81.84 GHz入力端子から 2.13GHz及び
1. 7 GHzのIF出力端子までの利得の温度特性を示した
ものである。周閲j品l変O~45°Cの純阻lで利得は O.5dB
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て用いる乙とができる。2.13GHzの信号は 2GHz帯屯
測に入力され信号レベノレの測定がなされる。1.705 GHz
の信号は ETS-TI受信システムの 1.7 GHz帯受信装置
へ入力することにより, 81.84 GHzと11.5GHzあるい
は81.84 GHzと34.5GHzといった異なる周波数問の
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Vol. 26 No. 138 June 1980 519
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520 ミリ波帯電波伝搬実験計画 2 電波研究所季報
2G抱
帯入力
尚周波部 受信指示部20土0.:1蝿fa
データ処JI!!νステムヘ
砕けTι OFF cα.ti' ON
第15図 2GHz 帯電~ltlプロックダイアグラム
程度の温度変化をするが,実際ICは受信装置の周囲温度
はお土3°Cの範囲に制御されているので利得の温度変
動は無視できるほど小さい。
また,本装置の NFは周囲温度25°Cの時11.7 dBで
ある。
なお,本装置の入力段ILは方向性結合器を介して較正
信号を入力するための較正用入力端子が設けられてい
る。
3. 2.2 80GHz帯受信アンテナ
80GHz帯受信アンテナの形式, 機造は80GHz帯送
信アンテナと全く同じである。第 14図(a), (b)はそれぞ
れ80GHz帯受信アンテナの方位角及び仰角方向の近軸
指向性パターンを示したものである。ビームの半値l隔は
約0.5。,利得は 48.9dBである。
3.2. 3 2GHz帯電iJ!IJ
2GHz帯電測は第15図lζ示すように高周波部と受信
指示部とから構成されている。高周波部へ入力された
2.13GHzの信号は lOkHzでAM変調された後70
MHz k周波数変換される。 70MHzの信号は受信指示
部で更に 20MHzk周波数変換され可変のリアクタン
ス減衰器を通った後対数圧縮される。対数圧縮特性が
dBリニアな範囲は約50dBなので入力電力範囲に対し
て最適になるように,リアクタンス減衰器の減衰量を設
定する必要がある。対数圧縮された信号は 6MHzある
いは600kHzのBPFを通り検波されるが,検波信号か
ら変調信号lOkHzを選択し乙の検波電圧を出力として
いる。
付加的な機能としては, 20MHzで周波数弁別を行い
2GHz帯の局部発振器lとモータ駆動でAFCをかけるこ
とができる。また,入力レベJレがOIC近いとき内部雑音
梧
・.
~11111 ....,. -ao -10 吋 (I -so 吋 0 -30
81.840H•畳信義憤入力( dBm)
第 16図 SO GHz帯受信'i'&'.力検波特例
によってAFCが働き局発周波数がでたらめな変動をし
ないように,ある入力レベル以下ではAFCが動作しな
いようなスケルチレベルの設定を行う乙とができる。
第16図は80GHz帯受信装置と 2GHz帯電測を接続
したときの 81.84 GHz入力電力と 2GHz帯電測の出力
電圧の関係を示す。第 16図は電測の帯域が6MHzの
場合を示している。入力電力が-90dBm程度より大き
Vol. 26 No. 138 June 1980
第1表 81.84GHz受信電力測定の誤差 2GHzm 電視~の帯域が 6MHz の場合を示した。
SO GHz 11f受信装置の NF I
80 GHz ;;g:受関の附 I SO GHz帯受信装i霞と 2GHzI 帯電測の接ケープルの損失 l
2G吋電測の NF I 受信装置入力換算の受信系の|NF I
6MHz帯域での受信装肉入|カ換算雑音電力(品) |
雑音電力の偏差のrms=主主•rn
-r=7×io-4sec, B=6x100 Hz, -r:検波時定数, B:稽域幅
ll. 7 dB (25°C)
-0. 5 dB (2.13 GHz出力のとき)
4dB
8.6dB (常/IV
15.1 dB
-9ldBm (8xIO-IDmW)
-109dBm (1. 23x10-11mw)
雑音電力の偏差の rmsSO GHz帯受信装置入力電力
准
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いときには電測の出力電圧はほぼdBリニアな特性を示
している。しかし,乙れよりも入力電力が小さくなると
熱雑音のために出力電圧は下方への飽和傾向を示す。第
1表は熱雑音によって生じる 81.84GHz受信電力測定
の誤差を装置の諸元から概算したものである。熱雑音に
よる測定誤差を81.84GHz入力電力lζ対する熱雑音電
力の平均値からの rms偏差の比で定義すると, 81.84
GHz入力電力が-90dBmのときの誤差は ±0.05dB,
-95dBmのとき O.2 dB, -100 dBmのとき士0.6dB
程度である。なお,熱雑音電力の平均値は-91dBmで
521
ある。実際にはとのほか機器の特性の温度変化などが加
わり誤差を増加させる。しかし80GHz帯受信装置, 2
GHz帯電測ともに温度制御された室内に設置されてい
るので, 6MHz帯域では厳しく見て-90dBm程度,
若干の誤差を許せば-lOOdBm程度まで意味のある電
力測定が可能である。
3.2.4 較正用簡易発振器
81.84GHzのインパット発振器であり,出力は固定の
減衰器により 5dBmlζ調整されている。 80GHz帯受信
装置の較正用入力端子に可変の導波管減衰器を介して接
続し80GHz帯受信装置及び2GHz帯電測総合のレベ
ル較正ができる。較正用入力端子に 5dBm入力した状
態は受信装置入力端子から-40dBm入力した状態と等
価になっている。 81.84GHzインパット発振器の周波数
安定度は水晶発振器の安定度に比べて数桁落ちるが,較
正は非較的短時間のうちに行われるので,周波数安定度
による実用上の問題は生じていない。
4. ETS-11伝搬実験システム
4. l ETS-11送信システム
ETS-Il送信システムはETS-Il地上局用 lOm<Pアン
テナのコリメーションに用いられた可搬形の装置で,第
2図lζ示したように送信装置と送信アンテナが一体の防
滴構造をしている。
4. 1. 1 ETS-JI送信装置
第 17図lζETS-Il送信装置のプロックダイアグラム
を示す。 34.5 GHz, 11. 5 GHz, 1. 7 GHzの信号は
106. 5625 MHzの水晶発振器出力を3分岐し,それぞれ
324逓倍, 108逓倍, 16逓倍して得られているので互い
にコヒーレントであり,送信電力はそれぞれ lOdBm,
12dBm, 7dBmである。また, 106.5625 MHz信号を
80GHz帯送信システムへ分岐するための出力端子を設
けている。送信周波数を安定化するため 106.5625 MHz
3-l.5《 I~』
11.50!17.
I 7C1llz
第 17閃 ETS-11送信装it1tプロックダイアグラム
522 ミリ波帯電波伝搬実験計画 2
ヨ!2表 ETS-II送信アンテナの性能
電波研究所季報
水晶発振器は Ovenl乙入れられている。また, 1.7 GHz
及び34.5GHzの信号lζ矩形i波によって 100%振幅変調
がかけられるようになっている。
4. 1. 2 ETS Il )ls{言アンテナ
ETS E送信アンテナは 34.SGHz及び 11.5 GHzが
コルゲFートホーンアンテナ, 1.7 GHzカまクロス夕、イポ
ールアンテナで偏波特性の良好な右旋円偏波信号を得て
いる。第2表lζ主な性能を示す。 34.5GHz及び11.5
GHzの給電部は偏分波器及びそれと 45° 傾いた偏波変
換器から成っている。導波管の接続を変えて左旋門{li1i
波,垂直{同波,水平偏波を送信することも可能である。
34. 5GHz及び11.5GHzのホーン関口商にはガラス布
入テフロン板のホーンカバーが取付けられておりアンテ
3 4.5(]/lz
I :.1 0¥f
14 0¥f
司FI 慾2
¥:-po I
1 1.5 ( lHz
SOGIセ帯受信装糧へ
1.7GHz
FET LNA
140M
項
主な性能
l'I .
!. 7 GHz帯\11.5 GHz帯l34.5GHz続
得\ 13. 5 dB I 22.附 I23.0dB
右旋円偏波l右旋円偏波|右旋円鰍
!.平lj
2. {f,ij 担比
3. 交足偏波
tr.旋円偏波 Itr.旋円偏ill
水 平 偏 波 | 水 平 煽 波
霊夜偏波 Ifil直{同校
|-叩以下l-35dB以下
W噌
W明
w明町間・x
y
xx Co-pol
桜*※
戸I
・容4襲来
xx
I ~ ~.31\U lz
※4
:初XY
Co・pol
※※※ ¢ 2
※済※
’3
Co-ool
料 XX,XY成分はPOLARCONVERTERで極度様変換され XPDとXpol/Co polの位相差として出力される。料* </>1. t/>2,のをベクトルポノレトメータで測定し周波数回の位相差を求める。
第 18図 ETS-II受信淡町主要部のプロックダイアグラム
523
期型信号検出部から構成されている。第18図は装置の
主要部のプロックダイアグラムを示す。との装置の特徴
は11.5GHzあるいは 1.7 GHzの受信信号に 106.5625
MHz電圧制御水品発振器(VCXO)の位相を同期させ,
乙れを 34.5 GHz, 11. 5 GHz, 1. 7 GHz,及び81.84
GHzのすべての受信信号IC共通の局発信号源として用
いるととにより送信周波数の変動にかかわらず狭帯域の
受信が可能なととと,異なる周波数聞の位相差が潰tl定で
きることである。
34.5GHz及び11.5GHzの右旋及び左旋円偏波の受
信信号は周波数変換部で 1.7GHz,更に 140MHziζ周
波数変換され, 1.7GHzの受信信号(あるいは81.84
GHzのIFである 1.7GHzの信号)も 1.7GHz帯受信
装置で 140MHzlζ周波数変換される。 34.5GHzの右
旋及び左旋円偏波の受信信号は更に位相同期検出部で,
右旋円偏波信号lζ位相同期した 129.3 MHz電圧制御発
振器(VCO)を局発信号として10.7 MHz iと周波数変
換されAGC増幅される。右旋及び左旋円偏波信号の
AGC増幅器は,二つの信号の振幅比及び位相差が変わ
らないように特性が同じものであり,利得はともに右旋
1980 June No. 138 Vol. 26
内
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》
川
E
H
R召
/ 1ブ
/
/ 。』I.//’パ,川z
ナ及び給電部の気密を保っている。 1.7GHzのアンテナ
にもカバーがつけられている。降雨時にはホーンカバー
に付着する水滴によるアンテナ特性の劣化が問題にな
る。
4.2 ETS-11受信システム
ETS-Il受信システムは今回新たに製作した 34.5GHz
/11.5GHz共用のオフセットパラボラアンテナを除き
ETS-Il地上局用受信システムに一部改造を施し移設し
たもので,第1図lζ示すように受信アンテナ及び偏分波
系, 34.5GHz帯周波数変換部, 11.5GHz帯周波数変換
部, 1.7GHz帯受信装置,位相周期型信号検出架,受信
信号強度較正装置から構成される。
4. 2. 1 ETS-Il受信装置
本装置はETS-Il地上局用の受信装置に 1.3kmの水
平伝搬路lζ適合するようなレベルダイアグラムの変更,
1. 7GHz用位相周期検出部の位相周期ループフィルタ
帯域の変更, 80GHz帯受信装置へ106.5625 MHz信号
を分配するよう改造を行ったものである。しかし,装置
の回路構成については本質的な差はなく,とれについて
の詳しい説明は参考文献山にあるので,こ ζではその要
点を述べる。
ETS-Il受信装置は34.5GHz帯周波数変換部, 11. 5
GHz帯周波数変換部, 1.7GHz帯受信装置及び位相同
?’v
困
層
R
g
10
XPD (dB)
ETS-Il受信装置の XPD入出カ特性
20 30 40 50
第 20図
0 60
ー刊-50
受信獲殴人 11電刀( d”m】
ETS-Il受信装置の主偏波信号入出カ特性
-<;O -;u -・・ ~o -100
第四図
-110
524 ミリ波帯電波伝搬実験計画 2 電 波 研 究 所 季 報
第3表 ETS-ll受信システムの性能
入力 J,',j 波数
雑' ff m 数
位相ViJJD]Jレープ;ll'域削
出力 ft(分時定数
二!ミ偏波入力レベル較正範閲
交差偏波識別皮絞正範囲
円偏波信号の入力レベJレlζ追従している。実際には二つ
のAGC増幅器lζ若干の特性の違いがあるがこれは較正
により除くことができる。 AGC増幅器のAGCバイア
スを右旋円偏波の受信信号の検波出力としている。左旋
円偏波の信号はAGC増幅器で噌幅された後同期検波さ
れ右旋円偏波の信号と同相及び直交な成分lζ 分離され
る。更に極座標変換され交差偏波識別度及び交差偏波/
主偏波間位相差として電圧出力される。 11.5GHzの場
合にも全く同様であり, 1.7 GHzの場合には主偏波のレ
ベルのみ出力される。また, 129.3 MHzの三つの局発
信号はそれぞれ34.5 GHz, 11. 5 GHz, 1. 7 GHzの主偏
波の受信信号に位相同期しているので,これをベクトノレ
ボルトメータ IC入力して異なった周波数問の位相差を測
定している。周波数fしんの受信信号の位相を φt,φ1
とすると,めを基準にしたとき, め一(んlfi)φzが測
定される。
なお, ETS-II受信装置の入力部には,導波管切替器
(34. 5 GHz及び 11.5GHzの場合)あるいは同軸切替
器 (1.7GHzの場合)を介して受信信号強度較正装置が
接続されており,容易に受信装置の較正ができるように
なっている。
第四図は受信入力レベルと出力電圧の関係,第20図
は交差偏波識別度と出力電圧の関係、を示す。
第3表l乙本装置の主な性能を示す。表中に示した較正
範囲は受信信号強度絞正装置の性能に対応している。
4. 2. 2 ETS-II受信アンテナ
34. 5GHz及び 11.5GHz用の受信アンテナとして2
周波共用のオフセットパラボラアンテナを, 1.7 GHzの
受信アンテナとしてヘリカノレアンテナを用いている。オ
フセットパラボラアンテナは今回新たに製作したもので
あり,第21図に示すようにオフセット角 gooで 1次放
射器として< Jレチフレアホーンを用いている。口径は
55cmである。 1次放射器としてマルチフレアホーンを
11. 5 GHz 1. 7GHz
11. 50875 GHz土1.15MHz 1. 705 GHz土170kHz
6dB以下 2dB以下
100, 500, 1000 Hz 100, 1000, 3000 Hz
同左 同友
-88~ 48dBm -60~ーllOdBm
10~50dB
第21図オフセットパラボラアンテナの構造
用いた理由は, 3倍異なる周波数で給電系を共用しでも
良好な 1次放射特性及び交差偏波特性が得られるためで
ある。オフセット角はアンテナの設置条件から決定され
た。
オフセットパラボラアンテナで受信された 34.5GHz
及び 11.5GHzの信号はアンテナに続く偏分波系で右旋
及び左旋円偏波信号IC分離され受信装置で各種の測定が
なされる。
第22図(め,(扮は 34.5GHz,第23図(司,(b)は 11.5
GHzの右旋及び左旋円偏の方位角及び仰角方向の近軸
指向性パターンを示す。 34.5GHz及び11.5 GHzのア
ンテナ利得はそれぞれ44.1 dB, 34. 6 dB, またビーム
の半値幅は約 10と30である。一方,右旋円偏波と左旋
円偏波の利得の差がアンテナ及び偏分波系総合の交差偏
波識別度lζ対応し,ビームの中心付近では34.5GHz及
びll.5GHzともに 45dB以上であり満足すべき特性と
考えられる。しかし,とのデータはアンテナ特性測定用
の比較的良好な伝搬路で得られた結果であり,実際の伝
機路では建造物や大地からの反射波などの影響を受ける
ために送受総合の特性はこれよりも劣化している。この
/ \ le.-判
I~ /一\
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~ 、、司、、、、
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525 1980 June No. 138
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-30
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Vol. 26
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仰角方向パターン
34. 5GHz受信アンテナの近軸指向性パターン Co-polと X-polの差が XPDlζ対応している。
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第 22図
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電波研究所季報ミリ波帯電波伝搬実験計画 2
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2唱
V
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--50
2 -1 -2 -3
角〈度]仰
仰角方向パターン
11.5GHz受信アンテナの近軸指向性パターン Co-polとX-polの差が XPDIC対応している。
(b)
第 23図
527 1980 June No. 138 Vol. 26
AID変換分解能
サンプル周期
V
V
F
U
F
O
AUAυ
~~
F
h
d
F町u
nunu
--
目項定測タ--ア搬伝
「 出力電圧
。~5V
凶
-38~-91dBm(6 MHz) -38~ー101dBm(600 kHz)
50~ 90dBm
範定損lj波
水平偏彼
{馬主目項
81. 84 GHz 主偏放レベJレ
定iJllJ
。~5V右旋円偏波主偏波レベル34.5GHz
。~5V-48~-88dBm 有能円偏波主偏波レベル11. 5 GHz
-180°~+180° 位相差34. 5 GHz/11. 5 GHz
-180°~+180° 位相差81. 84 GHz/11. 5 GHz 12ピット、I秒
。~5V10~50dB XPD 34. 5 GHz
-2.5~2.5V -180°~+180° 位相差34. 5 GHz X pol/Co-pol
0~5V
-2.5~2.5V -180。~+180°
: 10~50dB
{立相差
11.5GHz XPD
11. 5 GHz X-pol/Co-pol
1. 7GHz 主偏波レベル* 0~5V -60~ーllOdBm
キ 81.84GHzの 1.7GHz IF信号を通常は測定している。
正ilifi:円偏i&:
J〆
I/ ノ /
RI 84 lfb レ/ 〆’ y
v ノ
/ レ/ばs同
/
/ /
/ / v v /
/ し〆
ν / v /' 5 Iド
ν /
I 0 事責向はアンテナのビーム幅の広い 11.5GHz lこより強く
現れている。
1. 7 GHzのヘリカJレアンテナは ETS-IT地上局用と
して用いられた8素子のアンテナアレイのうち 1素子を
利用したもので利得は lldBである。
IO
《
z
-w)
aM弓を
働
率
I 00
第 24図降雨減衰特性
Marshall and Palmerの雨滴粒径分布∞及び温度
20°Cの水の誘電半巾を仮定したときの球形雨泌によ
る減衰特性を示す。伝搬距離l.3km
GHz帯伝搬実験システムの場合には最小受信電力とurJ天時受信装置入力の差を, ETSE伝搬実験システムの
場合には較正可能な受信装置最小入力と晴天時受信装置
入力との差を示している。 ETS-Il伝機実験システムは
装置の熱雑音IC対しては十分な余裕を持っているが, ill~
定可能な範囲が較正可能な範囲によって制限されるため
である。 81.84 GHz, 34. 5 GHz, 11. 5 GHz, 1. 7 GHz
の主偏波の降雨減衰測定マージンは約52dB, 38 dB, 39
dB, 38dBである。一方,第24図は伝搬距離が1.3km
で Marshalland Palmerの雨滴粒径分布{目(地上に
おける平均的な雨滴粒径分布である)を仮定したときの
本送受信システムによって測定される伝倣データ項目
と使用する主偏波,測定範囲,出力電圧,計算機でデー
タ収集する時のサンプリング周期とサンプリングピット
数を第4表に示す。測定される項目は, 81.84GHz7)<平
偏波信号の受信電力, 34.5 GHz, 11. 5 GHz, 1. 7 GHzの
右旋円偏波信号の受信電力, 34.5GHz及び11.5GHz
の交差偏波識別度, 34.5GHz及び 11.5GHzの交差偏
波/主偏波閣の位相差, 34.5 GHz/11. 5 GHz聞の位相
差, 81.84 GHz/11. 5GHz (あるいは81.84 GHz/34. 5
GHz)聞の位相差である。各項目の信号lζ対応してアナ
ログ電圧が出力され計算機によって1秒ごとに AID変
換され収集される。
第5表は本送受信システムの諸元と, 81.84 GHz,
34. 5 GHz, 11. 5 GHz, 1. 7 GHzの信号の主偏波レベル
の降雨減哀測定7 ージンの計算例を示す。ここで80
GHz帯伝倣実験システムの最小受信電力は受信装置入
力換算の熱雑音電力(帯域6MHzの場合を示す)を意
味し, ETS-Il伝搬実験システムの場合には位相閥均jル
ープ帯域幅を lkHzとしたときの位相同期ループのス
レッショルドl乙対応した受信装置入力を意味する。晴天
時受信装置入力及び降雨減衰測定マージンの項で括弧で
示したのは装置の据付調整完了時の検査データに基づい
た値である。なお,降雨減衰測定マージンとしては80
送受信システムの機能5.
』0
降雨強度(,../h)
528 ミリ波帯電波伝搬実験計画 2 電波研究所季報
£(~ 5表送受信システムの降雨減哀測定マ ジン
装 世 80 GHz骨?
諸 JC
送 {言 偏 i政
型
送信アンテナ
受信アンテナ
降雨減衰と降雨強度の理論的な関係を示す。81.84 GHz,
34. 5 GHz, 11. 5 GHzの場合について示している。第5
表の降雨減衰測定マージンと第24図の降雨減衰特性を
比絞すると 81.84GHzでは 6MHzの受信帯域で約100
mm/h (600 kHzの受信帯域だと降雨減衰測定マージン
がlOdB増すので約150mm/h)程度, 34.5GHzの場
合には約 150mm/h程度の降雨による減衰まで測定可
能である。東京における降雨強度の最大値は 150mm/h
程度と考えられるのでほとんどの場合のデータが得られ
ることになる。 11.5 GHz, 1. 7 GHzの場合には降雨減
衰測定マージンに十分な余裕がある。
ETS E 送受信システム
34. 5 GHz 指 1. 7GHz帯
11. 50875 1. 705
右旋門偏波
10 12 7
o. 5 o. 5
クロスダイポ-Jレ
23 22. 9 11. 5
125. 5 116. 99. 4
’\ カ Jレ
44.1 34. 6 11.
-49.4 -47.0 -70.4
2. I o. 7 1. 65
-72.1(-72)*
-60~-110
-124**** -129*紳* -133林**
37. 9(38)牟*
6. まとめ
ミリ波信電波伝搬実験用送受信システムの構成と特性
及びその機能について報告した。主要な点は,本送受信
システムが81.84 GHz, 34. 5 GHz, 11. 5 GHz, 1. 7
GHzの全周波数でほぼ満足すべき降雨減衰の測定マー
ジンを持っている乙と,多周波数の周期送受信システム
というユニークなシステム織成になっており,同一伝搬
路で同時に多種類の伝搬データが得られるので,逆lζ伝
機路での平均的な粒径分布を推定する等降雨のリモート
センシングが可能である乙と,装置の安定度に十分配慮
Vol. 26 No. 138 June 1980
していることである。
現在,本送受信システムを用いて1日24時間のペー
スで順調に伝搬データが得られつつある。送受信システ
ムlζ残された検討課題は,降雨時lζアンテナlζ付着する
水滴の影響,大地や建造物からの反射波による晴天時の
送受信特性の劣化及び変動などについて,今後実験を進
める中で明らかにして行くことである。
参考文献
(1)林理三雄,木村繁,藤田正晴,篠塚隆,小園普ー,
529
吉村和幸;“技術試験衛星E型(ETS-II) 「きく 2
号」電波伝搬実験用地上施設特集 6.受信測定系とそ
の特性, I.装置の概要及びその電気特性”,電波研季
報, 24,No.126, pp. 39-52, 1978.
(2) Marshall, J. S. and Palmer, W. M.;“The dis-
tribution of rain drops with sizeヘJour.Meteor.,
5, pp. 165-166, 1948.
(3) Ray, P. S.;“Broadband complex refractive
indices of ice and waterヘAppl.Opt., 11, No. 8,
pp. 1836-1844, 1972.
illllllllllllllflllllllllfllllflllllflllllflllflllllllflllllllllfllllflllllllfllllllllllflllllllllfllllll I I I