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タンパク質の同定と質量分析タンパク質の同定と質量分析
横浜市立大学・高山光男横浜市立大学・高山光男
1.プロテオーム解析1.プロテオーム解析
2.タンパク質イオンのフラグメンテーション2.タンパク質イオンのフラグメンテーション
3.タンパク質の高次構造とフラグメンテーション3.タンパク質の高次構造とフラグメンテーション
4.4.MSMS情報の正確な使用と情報の正確な使用と Rational MSRational MS
MASSPECSMASSPECS(本内容の無断転載を禁じます)(本内容の無断転載を禁じます)
1.プロテオーム解析1.プロテオーム解析
発現するタンパク質
生命現象を理解するには、生物の発生・分化の歴史を決め生命現象を理解するには、生物の発生・分化の歴史を決めているDNAの塩基配列の解読だけでは不十分だ。ているDNAの塩基配列の解読だけでは不十分だ。
そうだ、そうだ、GenGenomeome から発現するから発現する ProteProtein in をすべてをすべて同定してしまおう。同定してしまおう。
Dr. Marc Wilkins said at the Siena 2Dr. Marc Wilkins said at the Siena 2--DE meeting in 1994, when DE meeting in 1994, when he was a graduate student.he was a graduate student.
MASSPECSMASSPECS
プロテオーム解析に適したプロテオーム解析に適したMSMSイオン化の原理イオン化の原理ペプチドペプチド//タンパク質を高効率でイオン化できることがタンパク質を高効率でイオン化できることが必要条件必要条件
・・ Electrospray IonizationElectrospray Ionization ((ESIESI))
・・ MatrixMatrix--assisted Laserassisted LaserDesorption/IonizationDesorption/Ionization ((MALDIMALDI))
MASSPECSMASSPECS
Electrospray IonizationElectrospray Ionization ((ESIESI))
+ 3,000 VMASSPECSMASSPECS
馬心筋アポミオグロビンの馬心筋アポミオグロビンのESIESI--MSMS
タンパク質研究に欠かせないソフトイオン化法タンパク質研究に欠かせないソフトイオン化法
MatrixMatrix--assisted Laserassisted LaserDesorption/IonizationDesorption/Ionization ((MALDIMALDI))
O
HO
HO OH
O
HO
HO OH
O
HO
HO OH
337 nm photonH
H
MASSPECSMASSPECS
馬心筋アポミオグロビンの馬心筋アポミオグロビンのMALDIMALDI--TOF MSTOF MS
MASSPECSMASSPECS
フラグメントイオンからアミノ酸配列もわかるフラグメントイオンからアミノ酸配列もわかる
MASSPECSMASSPECS
タンパク質のタンパク質のMSMS情報情報
mm//zz が基本情報が基本情報MASSPECSMASSPECS
プロテオーム解析におけるプロテオーム解析におけるMSMSの役割の役割
・各生物種の全発現タンパク質の同定・各生物種の全発現タンパク質の同定・ペプチドマスフィンガープリンティング・ペプチドマスフィンガープリンティング
・アミノ酸配列解析・アミノ酸配列解析
・翻訳後修飾タンパク質の構造解析・翻訳後修飾タンパク質の構造解析
・相互作用解析・相互作用解析
MASSPECSMASSPECS
MS MS を使うタンパク質の同定を使うタンパク質の同定
PeptidePeptide--mass fingerprintingmass fingerprinting
AminoAmino--acid sequencingacid sequencing
最もよく使われるタンパク質同定法最もよく使われるタンパク質同定法PeptidePeptide--mass fingerprintingmass fingerprinting
MASSPECSMASSPECS
PeptidePeptide--mass fingerprintingmass fingerprinting
ペプチドイオンのペプチドイオンの mm//zz 値の集合値の集合
MASSPECSMASSPECS
アミノ酸配列情報を利用するタンパク質同定法アミノ酸配列情報を利用するタンパク質同定法酵素消化と酵素消化とMS/MSMS/MSの組み合わせの組み合わせ
またはまたは EdmanEdman 法法
MASSPECSMASSPECS
アミノ酸配列解析のための分解法アミノ酸配列解析のための分解法
MASSPECSMASSPECS
CID CID またはまたは PSD PSD を使うアミノ酸配列解析:を使うアミノ酸配列解析:ペプチド結合の分解が特徴ペプチド結合の分解が特徴
MASSPECSMASSPECS
タンパク質の同定にはアミノ酸配列が最高の情報タンパク質の同定にはアミノ酸配列が最高の情報
MSでアミノ酸配列情報を得るのは思ったほど楽ではないMSでアミノ酸配列情報を得るのは思ったほど楽ではない
MALDIMALDI--PSD PSD でも難しいでも難しい !!
MASSPECSMASSPECS
2.タンパク質イオンのフラグメンテーション2.タンパク質イオンのフラグメンテーション
Horse heart Horse heart apomyoglobinapomyoglobin
InIn--source Decaysource Decay oror hydrogenhydrogen--attachment dissociationattachment dissociation
MALDI MALDI を使うタンパク質の直接シーケンシングを使うタンパク質の直接シーケンシング
MASSPECSMASSPECS
MALDIMALDIのイオン化機構のイオン化機構
MASSPECSMASSPECS
タンパク質タンパク質//ペプチド分子はマトリックス結晶表面をペプチド分子はマトリックス結晶表面を覆っている覆っている
MASSPECSMASSPECS
2,52,5--DHBDHBの結晶表面(左)とペプチド試料を導入したの結晶表面(左)とペプチド試料を導入した結晶表面(右)の原子間力顕微鏡像結晶表面(右)の原子間力顕微鏡像
2,52,5--DHBDHBの結晶表面のステップ構造はペプチドの導入によの結晶表面のステップ構造はペプチドの導入によってスムースになるが、結晶の内部構造は変わらない。ってスムースになるが、結晶の内部構造は変わらない。
337nm 337nm のレーザー光照射によりマトリックスが励起さのレーザー光照射によりマトリックスが励起され、結晶表面を覆っているタンパク質に水素原子が移れ、結晶表面を覆っているタンパク質に水素原子が移
動する動する
MASSPECSMASSPECS
MALDIMALDIを使うタンパク質のラジカル誘導型フラグメンテーを使うタンパク質のラジカル誘導型フラグメンテーションション
MASSPECSMASSPECS
ラジカル誘起によるタンパク質のラジカル誘起によるタンパク質のαα開裂(単純開裂)開裂(単純開裂)
αα開裂はイオン化室で生じる速い過程であるため、開裂はイオン化室で生じる速い過程であるため、アミン結合の特異的な分解を可能にしているアミン結合の特異的な分解を可能にしている
InIn--source Decay (ISD)source Decay (ISD)
MALDIMALDI--TOF MS TOF MS 装置におけるイオンの分解位置装置におけるイオンの分解位置: : InIn--source Decay source Decay とと PostPost--source decaysource decay
MASSPECSMASSPECS
PSDPSD(上段)(上段) とと ISD ISD (下段)の比較(下段)の比較
ACTH18ACTH18--3939, , MMrr 2465.72465.7 RPVKVYPNGAEDESAEAFPLEFRPVKVYPNGAEDESAEAFPLEF
MASSPECSMASSPECS
ISDISD(上段)(上段) とと PSD PSD (下段)のスペクトルの比較(下段)のスペクトルの比較Substance PSubstance P, , MMr 1347.7r 1347.7 R P K P Q Q F F G L MR P K P Q Q F F G L M--NHNH22
MASSPECSMASSPECS
PSD PSD とと ISD ISD の分解の特徴の分解の特徴
PSDPSD
ISDISD
MASSPECSMASSPECS
ペプチド断片イオンの名称ペプチド断片イオンの名称
MASSPECSMASSPECS
ISDISD を使うプロテオーム解析を使うプロテオーム解析
ペプチドシーケンシングペプチドシーケンシング 11::塩基性アミノ酸塩基性アミノ酸 (Arg or Lys) (Arg or Lys) がが NN--末端側にあると、末端側にあると、45 u45 u 差差のの
cc--イオンとイオンと aa--イオンの対ピークが観測される。イオンの対ピークが観測される。
ペプチドシーケンシングペプチドシーケンシング 22::塩基性アミノ酸塩基性アミノ酸 (Arg or Lys) (Arg or Lys) がが CC--末端側にあると、末端側にあると、15 u15 u 差差のの z+2z+2--イオンとイオンと yy--イオンの対ピークが観測される。イオンの対ピークが観測される。
タンパク質の直接シーケンシングタンパク質の直接シーケンシング 11::馬のアポミオグロビン馬のアポミオグロビン ((MMr 16951)r 16951)
フラグメントイオンの解析フラグメントイオンの解析低質量領域に低質量領域に cc--イオンが、より低質量領域にはイオンが、より低質量領域には 15u15u差の差の
zz+2+2 とと yy--イオンが観測される。イオンが観測される。
MASSPECSMASSPECS
タンパク質同定の手順タンパク質同定の手順 その1その1cc--イオンのピーク間質量差にアミノ酸を割り当て、部分イオンのピーク間質量差にアミノ酸を割り当て、部分
アミノ酸配列候補を得る。アミノ酸配列候補を得る。
タンパク質同定の手順タンパク質同定の手順 その2その2得られた部分アミノ酸配列を、データベース検索ソフトに入力する。得られた部分アミノ酸配列を、データベース検索ソフトに入力する。
MASSPECSMASSPECS
タンパク質同定の手順タンパク質同定の手順 その3その3入力されたアミノ酸配列を持つタンパク質の候補が得られる。入力されたアミノ酸配列を持つタンパク質の候補が得られる。
MASSPECSMASSPECS
タンパク質の直接シーケンシングタンパク質の直接シーケンシング 22::
マッコウクジラのアポミオグロビンのマッコウクジラのアポミオグロビンのISDISDスペクトルスペクトル
MASSPECSMASSPECS
タンパク質の直接シーケンシングタンパク質の直接シーケンシング 33::CGMMVCGMMVコートタンパク質のコートタンパク質のISDISDスペクトルスペクトル
MASSPECSMASSPECS
タンパク質の直接シーケンシングタンパク質の直接シーケンシング 44::馬チトクロム馬チトクロムc c ののISDISDスペクトルスペクトル
MASSPECSMASSPECS
3.タンパク質の高次構造とフラグメンテーション3.タンパク質の高次構造とフラグメンテーション
ミオグロビンのミオグロビンの cc35 イオンはなぜ高い?イオンはなぜ高い?
MALDIMALDI--TOF mass spectra of Equine TOF mass spectra of Equine apomyoglobinapomyoglobin ((MrMr 16951)16951)
↓↓
MASSPECSMASSPECS
ミオグロビンのミオグロビンの cc35 イオンはなぜ高い?イオンはなぜ高い?
二次構造では,二次構造では,His36His36ははへへリックスに挟まれたターン部分リックスに挟まれたターン部分
↓↓
MASSPECSMASSPECS
ミオグロビンのミオグロビンの cc35 イオンはなぜ高い?イオンはなぜ高い?GlyGly--HisHisは,へリックスに挟まれたターン部分は,へリックスに挟まれたターン部分
↓↓
MASSPECSMASSPECS
O
HO
OH
OH
OH O
OH
OH
O
HO
OH
OH
OH O
OH
OH
HNCH
C
CH3
NHCH2 C
HN
O
CH C
H2C
NH
O
CHC
H3C NH
O
HO
OH
OH
OHO
OH
OH
O
HO
OH
OH
OHO
OH
OH
NHN CH
CH2C
OHOCH
C CH
HO
O
H3C CH2CH3
OO
ミオグロビンのミオグロビンの cc35 イオンはなぜ高い?イオンはなぜ高い?
helixhelixhelixhelix
turnturn
へリックス領域のへリックス領域のCOCOはマトリックスのはマトリックスのOHOHと結合できないと結合できない
MASSPECSMASSPECS
3.正確な3.正確なMSMS情報の使用と情報の使用とRational MSRational MS
19981998年、年、TOF MS TOF MS の性能は格段に向上し、の性能は格段に向上し、10%10%谷分解能谷分解能はは 3,000 3,000 以上になった以上になった!!
MASSPECSMASSPECS
19921992年、年、TOF MS TOF MS の性能は、の性能は、mm//zz 720720 とと 759759 を分を分離できる程度だった。離できる程度だった。1010%谷分解能は%谷分解能は 1010 以下以下!!
MASSPECSMASSPECS
From Empirical Mass Spectrometry From Empirical Mass Spectrometry to Rational Mass Spectrometryto Rational Mass Spectrometry
・・MSMS装置の高精度化に伴う正確な装置の高精度化に伴う正確なMSMS情報情報の使用と厳密な解析の使用と厳密な解析
・・MSMS学学 ((MASSPECSMASSPECS) ) の体系化の体系化
MASSPECSMASSPECS
1.プロテオーム解析生命現象を理解するには、生物の発生・分化の歴史を決めているDNAの塩基配列の解読だけでは不十分だ。プロテオーム解析に適したMSイオン化の原理Electrospray Ionization (ESI)馬心筋アポミオグロビンのESI-MSタンパク質研究に欠かせないソフトイオン化法Matrix-assisted Laser Desorption/Ionization (MALDI)馬心筋アポミオグロビンのMALDI-TOF MSフラグメントイオンからアミノ酸配列もわかるタンパク質のMS情報プロテオーム解析におけるMSの役割MS を使うタンパク質の同定最もよく使われるタンパク質同定法Peptide-mass fingerprintingPeptide-mass fingerprintingアミノ酸配列情報を利用するタンパク質同定法 酵素消化とMS/MSの組み合わせ または Edman 法アミノ酸配列解析のための分解法CID または PSD を使うアミノ酸配列解析:ペプチド結合の分解が特徴タンパク質の同定にはアミノ酸配列が最高の情報MSでアミノ酸配列情報を得るのは思ったほど楽ではない2.タンパク質イオンのフラグメンテーションMALDI を使うタンパク質の直接シーケンシングMALDIのイオン化機構タンパク質/ペプチド分子はマトリックス結晶表面を覆っている2,5-DHBの結晶表面(左)とペプチド試料を導入した結晶表面(右)の原子間力顕微鏡像337nm のレーザー光照射によりマトリックスが励起され、結晶表面を覆っているタンパク質に水素原子が移動するMALDIを使うタンパク質のラジカル誘導型フラグメンテーションラジカル誘起によるタンパク質のα開裂(単純開裂)MALDI-TOF MS 装置におけるイオンの分解位置: In-source Decay と Post-source decayPSD(上段) と ISD (下段)の比較ISD(上段) と PSD (下段)のスペクトルの比較Substance P, Mr 1347.7 R P K P Q Q F F G L M-NH2PSD と ISD の分解の特徴ペプチド断片イオンの名称ISD を使うプロテオーム解析ペプチドシーケンシング 1: 塩基性アミノ酸 (Arg or Lys) が N-末端側にあると、45 u 差の c-イオンと a-イオンの対ピークが観測される。ペプチドシーケンシング 2: 塩基性アミノ酸 (Arg or Lys) が C-末端側にあると、15 u 差の z+2-イオンと y-イオンの対ピークが観測される。タンパク質の直接シーケンシング 1: 馬のアポミオグロビン (Mr 16951)フラグメントイオンの解析 低質量領域に c-イオンが、より低質量領域には 15u差のz+2 と y-イオンが観測される。タンパク質同定の手順 その1 c-イオンのピーク間質量差にアミノ酸を割り当て、部分アミノ酸配列候補を得る。タンパク質同定の手順 その2 得られた部分アミノ酸配列を、データベース検索ソフトに入力する。タンパク質同定の手順 その3 入力されたアミノ酸配列を持つタンパク質の候補が得られる。タンパク質の直接シーケンシング 2:CGMMVコートタンパク質のISDスペクトル馬チトクロムc のISDスペクトル3.タンパク質の高次構造とフラグメンテーションミオグロビンの c35 イオンはなぜ高い?ミオグロビンの c35 イオンはなぜ高い?ミオグロビンの c35 イオンはなぜ高い?3.正確なMS情報の使用とRational MS1992年、TOF MS の性能は、m/z 720 と 759 を分離できる程度だった。10%谷分解能は 10 以下!From Empirical Mass Spectrometry to Rational Mass Spectrometry