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概 要
フッ素樹脂コーティングは他の樹脂コーティングでは得ることのでき
ない、薬品に対する耐食性や非粘着性などの優れた特性を有しておりま
す。
ただフッ素樹脂コーティングと一言にいってもフッ素樹脂にはいろいろ
な種類があります。
そのためフッ素樹脂の特性を生かして使用する用途、内容物によりコー
ティングするフッ素樹脂を決定します。
その時にフッ素樹脂の特性や性能の比較など、フッ素樹脂コーティング
の選択や仕様を決めるにあたり、知っていれば役に立つと考えられる内
容について解説しました。
また、よくフッ素樹脂コーティングをテフロンコーティングと言われ
る事がありますが、テフロン(フッ素樹脂)はデュポン(株)の商品名
です。
この解説書ではフッ素樹脂コーティングと呼びます。
また虫歯予防に使われている「フッソ」はふっ素化合物(フッ化ナトリ
ウムの水溶液)で「ふっ素樹脂」ではありません。
この解説書ではフッ素樹脂の歴史や化学式等の難しい内容について
は、書いておりません。
主にステンレス製容器へのフッ素樹脂コーティングについて解説してい
ますので、フッ素樹脂の加工や電気的な用途については省いています。
フッ素樹脂の呼び方については化学名称の頭文字をとっています。
例:PTFE:Poly Tetra Fluoro Ethylene(4フッ化エチレン)
極力わかりやすい文章を心がけましたが、不明な点や疑問な事がござ
いましたら、Faxやメールにてご連絡頂ければ幸いです。
ご注意
目 次
概 要
第2章 フッ素樹脂コーティングの特性
2-1 耐薬品性(耐食性)
2-2 非粘着性
2-3 非濡性(撥水性)
2-4 耐熱性と耐寒性
2-5 耐候性
2-6 すべり性(低摩耗性)
2-7 耐摩耗性
2-8 電気特性
第1章 フッ素樹脂コーティングとは
1-1 フッ素樹脂コーティングの加工方法
1-2 フッ素樹脂コーティングの加工精度
1-3 フッ素樹脂コーティングの寿命
1-4 フッ素樹脂コーティングの食品安全性
第3章 フッ素樹脂コーティング材の選定
3-1 耐薬品用には
3-2 耐熱用には
3-3 耐摩耗用には
3-4 電気特性には
3-5 コーティング膜厚の選定
3-6 フッ素樹脂コーティング比較表
第4章 注意点
4-1 ピンホール(小さな貫通穴)について
4-2 ピンホールレスの膜厚
4-3 容器には面取りが必要です
4-4 母材の変色
4-5 フッ素樹脂の加熱
4-6 フッ素樹脂の静電気
4-7 フッ素樹脂の廃棄
第5章 Q&A
第6章 ちょっと専門的な話
第7章 用語の解説
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 6
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 8
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 10
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 13
第1章 フッ素樹脂コーティングとは フッ素樹脂を基材(弊社の場合はステンレス鋼)にコーティング加
工(薄膜を付着加工)した物です。
フッ素樹脂の特性として他の樹脂に比べて、耐薬品性、耐熱性、非
粘着性、すべり性、非濡れ性、絶縁性等、優れた特性を持っていま
す。
この特性を生かして、薬液などからの基材の保護(耐食性)や、内
容物を加熱(耐熱性)したりスムーズに排出する(すべり性)時な
どの用途に使用されます。
フッ素樹脂コーティングの加工精度
○表面の精度は出せません。
吹き付け塗装となりますので、コーティング膜厚の加工精度としては一般的に
+10~20%の範囲で厚めに加工をします。
1-2
フッ素樹脂コーティングの寿命
○基材の腐食によります。
フッ素樹脂コーティングは素材の劣化がありませんので、寿命とは摩耗やキズ、
基材の腐食等による皮膜剥離をいいます。
ガス・水分・薬液などが徐々に浸透していくので、数年以上の長期間にわたり使
用していると、基材が腐食し、皮膜剥離をおこすことがあります。
1-3
食品安全性
○毒性はありません。
米国食品医薬局(FDA:Foodand Drugs Administration)より、人体に対して毒性
無しという結果がでています。
フッ素樹脂コーティングされたフライパンで調理した料理(フッ素樹脂が微量に
含まれている)は安全です。
飲み込んでも、フッ素樹脂は消化せずに排泄されます 。
フッ素樹脂コーティングの加工方法
○焼き付け塗装です。
一般的には、脱脂、表面処理、吹付け塗装、乾燥、焼成となります。
ですので、熱に弱い基材や付属品を付けたままコーティングは出来ません。
1-1
1-4
脱脂
表面処理 乾燥
吹付け塗装 ヒーター加熱
焼成 完成
1
第2章
2-1
フッ素樹脂コーティングの特性
フッ素樹脂は他の樹脂に比べて、耐薬品性、耐熱性、非粘着性、
すべり性、非濡れ性、絶縁性等、多くの優れた特性を持っていま
す。
この特性を理解することで、用途にあったフッ素樹脂コーティングの選定
や使用上の注意など、容器を使用する上での参考になります。
下記内容については「ちょっと専門的な話」に再度記載します。
耐薬品性(耐食性)
○ほとんどの薬品に対しフッ素樹脂は侵され
ません。
ただしフッ素樹脂にも種類が多くあり、フッ素の
含有が少ない樹脂は溶剤に溶解したり、薬品に侵される物があります。
さらに皮膜の薄いコーティングを行うとピンホール(小さな貫通穴)が発生す
るため、そこから薬液が基材に進入しサビが発生します。
そのため膜厚を厚くしピンホールレスにする必要があります。
また浸透性の強い薬品を使用するときは、その浸透力も考慮する必要がありま
す。
フッ素樹脂のPTFEやPFAは現在のところ溶解させたり侵す薬品はないよ
うです。
薬品 OK
2-2 非粘着性
○ほとんどの物質が固着しません。
フッ素樹脂コーティングにはほとんどの物質が固着
しません。
ただし、粘着性の非常に強いものは垂直面でも落下しないことがあります。
フライパンのコーティングでも有名なとおり、フッ素樹脂はいずれも非粘着性
を備えています。
また特殊な表面処理をしないと接着剤での接着は不可能です。
接着は NG
2-3 非濡性(撥水性)
○水も油もはじきます。 フッ素樹脂コーティングの表面は水も油もはじきます。
このため、溶液によって濡れることもなく、汚れにくくなり
ます。
また汚れても簡単に洗浄ができるので、洗浄時間の短縮、省力化、能率化
ができます。
水 油
2
2-4 耐熱性と耐寒性
○-240℃(低温)から260℃(高温)まで
フッ素樹脂及びその複合系は他の樹脂に比べて耐熱性や耐寒性に優れていま
す。
フッ素樹脂の種類によりますが-240℃から260℃まで広範囲にわたり使
用できます。
短時間ならば310℃までも使えるフッ素樹脂もあります。
2-5 耐候性
○屋外の使用でも大丈夫
屋外での暴露では、太陽光線に
よる光分解作用・酸化作用・
気温の変化による膨張収縮作用等の環境にさらされます。
フッ素樹脂は、これらの厳しい環境下において、
変化・劣化を起こしにくい特性を持っています
2-6 すべり性(低摩擦性)
○濡れた氷と同じ
フッ素樹脂の表面は「濡れた氷の表面と同じ」と言われるくらい摩擦抵抗があ
りません。(氷の摩擦係数は、およそ0.01)
例えば摩擦係数(摩擦抵抗を表す値)が舗装道路を走るゴムタイヤで0.9に
対してフッ素樹脂は0.05と非常に低い値になります。
このため、フッ素樹脂コーティングした表面は、スティック・スリップ(びび
り現象)をおこしません。
スティック・スリップ(びびり)とは接触面がスティック(固着)とスリップ(滑
り)を繰り返す現象です。
2-7 耐摩耗性
○削られにくい
フッ素樹脂に補強用のバインダー樹脂を含有することにより被膜強度をあげ、
すべり性をプラスされた耐摩耗性の向上したフッ素樹脂コーティングがありま
す。
2-8 電気特性
○電気絶縁物質です
プラスチックのため、基本的に高い絶縁性(抵抗値)と、小さな誘電率を持ち
ます。
天候 OK
3
第3章 フッ素樹脂コーティング材の選定 ステンレス容器に適したフッ素樹脂は下記のような3種類があります。
PFA、FEP、ETFE
各々、特性がありますので使用目的や内容物、環境によって最適な
フッ素樹脂コーティングの材質を選定する必要があります。
選定に際しては弊社にご相談ください。
3-1 耐薬品(耐食)用には
○FEP、PFA系の厚い被膜(300μ程度)が
適しています。
薬液等が基材に触れさせないよう、厚い被膜でピンホールレス(小さな貫通穴
のない)にする必要があります。
一部の薬品に対しては変性塗料系も使用できます。
PTFE系は肉厚でもピンホールの発生が避けられず、耐食用として適当では
ありません。
フッ素樹脂自身は溶剤に溶解したり、薬品に侵されることはありません 。
3-2 耐熱用には
○PFA、PTFE系が適しています。
PTFE、PFAコーティングは耐熱性のほか低温特性に優れ-240℃から
260℃まで広範囲に使用でき、短時間なら310℃までも使えます。
FEPは200℃で連続使用が可能です。
フッ素樹脂は一般に高温になると有毒な分解ガスを発生しますので、換気に注
意する必要があります。
3-3 耐摩耗用には
○PFA/PTFE複合系が適しています。
適度の荷重がかかる摩耗に対してはPTFE/PFA複合系を用いることによ
り、耐摩耗性と非粘着性の両方に優れた被膜が得られます。
3-4 電気特性
○FEP系やPFAが適しています。
FEP系やPFA系及び変性塗料系は電気的用途に適しています。
また、導電性フッ素樹脂コーティングもあります。
4
3-5 コーティング膜厚の選定
○非粘着には30μm、耐食性には300μm
粘着物のくっつきを防ぎたいときや、表面のすべりを良くしたい場合はPTF
Eを30μmほどの薄い膜にします。
耐食性を持たせたいときはPFA、FEP、ETFE等を300μm~1.5mm
という厚めの膜を設定します。
ただし、厚塗りのフッ素樹脂加工は容器の面取りが必要です。
凸コーナー部の角R加工不足による皮膜切れや膜厚不足に起因するピンホール
の発生と、凹コーナー部の角R加工不足による膜厚過多のため発生した発泡に
起因するピンホールの発生があります。
フッ素樹脂コーティング比較表
PFA FEP ETFE 変性PTFE PTFE
塗膜厚 μm 30 ~ 600 30µ ~ 1.2㎜ 30µ ~ 1.5㎜ 20 ~ 40 20 ~ 60
連続耐熱温度 ℃ 260 200 180 250 260
断続耐熱温度 ℃ 310 260 --- 250 310
耐寒性 ℃ -100 -100 -100 --- -260
硬度(鉛筆硬度)* H HB~F 6H 3H F~H
耐摩耗性 ◎ ○ ◎ ◎ ○
非粘着・離型性 ◎ ◎ ○ ○ ◎
耐食性
耐酸、耐アルカリ
耐有機溶剤
◎ ◎ ◎ △ ◎
ピンホール 無し(肉厚) 無し(肉厚) 無し(肉厚) --- 有り
◎:優 ○:良 △:可
3-6
*鉛筆の硬さは下記のように左のHが硬く、右のBに行くほど柔らかくなります。
9H(ハード:硬い)~F(ファーム:しっかりした)、H、HB、B~6B(ブラック:黒い)
詳しい試験方法はは「JISK5600-5-4」をご覧下さい。
5
第4章 フッ素樹脂コーティングの注意点
フッ素樹脂コーティングは、あらゆる樹脂のなかで万能のような解説を
してきましたが、下記のような注意点があります。
フッ素樹脂コーティングをご依頼されるときは、下記の内容に注意し
使用目的にあったコーティングをご検討ください。
4-1 ピンホール(小さな貫通穴)について
○フッ素樹脂コーティングにはピンホールが存在します。
フッ素樹脂コーティングにはピンホールが存在するため、ピンホールから薬液
が基材に染み込みます。
これにより使用してから数ヶ月で基材が腐食し、サビが発生する事があります。
このサビによりコーティング皮膜が剥がれてしまう事があります。
この対策としてコーティング皮膜を厚くして、ピンホールレスにします。
コーティングするフッ素樹脂はPFA、またはFEPで、最低150μm以上の
膜厚が必要です。
4-2 ピンホールレスの膜厚
○だいたい300~400μm。
一般的には膜厚として300~400μm程度としています。
膜厚が厚くなるとフッ素樹脂の収縮が大きくなり皮膜剥離がしやすく、かえっ
て耐食性が低下するためです。
また当然、肉厚を厚くすれば加工費用が上がります。
4-3 容器には面取りが必要です
○面取りが無いと腐食の原因になります。
厚塗りのフッ素樹脂コーティングでも、コーナー部に基材の腐食が発生する場
合があります。
原因は、コーナー部の角Rが無いため膜厚が足りなかったり、厚すぎたりし皮
膜切れやピンホールが発生してしまうためです。
このコーナー部のピンホールから基材の腐食が発生してしまいます。
この対策としてコーナーは5R以上、へこんだ部分のコーナーは15R以上の
面取りがあると良いです。
ステンレス基材 ステンレス基材
ピンホール
コーティング
コーティング 角コーナー Rコーナー
コーティング
しみ込まない
単層 複層
6
4-4 母材の変色
○加工処理の熱で母材が変色します。
フッ素樹脂コーティングではフッ素樹脂塗料の焼き付けに、だいたい400℃
程度の加熱をします。
このためステンレスは300℃以上の高温では薄い黄土色のテンパーカラー
(熱処理による酸化皮膜色)に変色します。
4-5 フッ素樹脂の加熱
○フッ素樹脂は毒ガスが発生します。
加熱や火災、溶接作業のような高温状態(約400℃以上)になりますと、
フッ素樹脂が熱分解し、毒性のあるガスを発生します。
誤って吸引すると呼吸障害などを起こしたり、環境に悪影響を及ぼします。
周囲での火気取り扱いは避けるか、やむを得ない場合は充分な換気を行う、ま
たはマスクを装着して、作業を行う必要があります。
4-6 フッ素樹脂の静電気
○フッ素樹脂コーティングは静電気を発生します。
粉体等の内容物と擦れ静電気を発生します。
可燃性の高い雰囲気で使用する場合は、静電気による放電の火花が災害をおこ
す可能性がありますので、容器にアースを取ります。
これに対して導電性のフッ素樹脂コーティングもあります。
4-7 フッ素樹脂の廃棄
○フッ素樹脂の廃棄に焼却は出来ません。
フッ素樹脂は加熱すると毒性のガスを発生させますので、廃棄の場合には焼却
は避け、安全型処分場にて処分する必要があります。
ただし、燃焼時に発生した熱分解生成物を処理できる装置が設置してある場合
には、フッ素樹脂の焼却処理は可能です。
焼却できない場合は産業廃棄物として廃棄です。 産業廃棄物
7
第5章 Q&A 弊社に寄せられましたフッ素樹脂コーティングについて、よくあ
る質問に対しての回答です。
5-1 フッ素樹脂コーティングのピンホールの確認は
ご要望があればピンホール検査を実施します。
コーティングの後に、ピンホール探知機でピンホールの有無をチェックしま
す。
5-2 フッ素樹脂コーティング膜厚の確認は
ご要望があれば膜厚計にて膜厚の検査を致します。
5-3 フッ素樹脂コーティングの手入れ方法は
フッ素樹脂は他の樹脂よりもとても柔らかいので、金属たわしやナイロンたわ
しは使わないでください。
中性洗剤と柔らかいスポンジを使用してください。
傷などが付きますと、そこからコーティングが剥がれたり、薬液が基材に進入
し、さびの原因になります。
洗浄した後は、柔らかい紙で水分等を拭き取ってください。
5-4 フッ素樹脂コーティングの色は
フッ素樹脂コーティングの色は主に母剤にフッ素樹脂を固定する為のプライ
マー(接着剤)の色です。
一般的には緑、茶色、灰色ですが、御希望により黒、白などがあります。
5-5 フッ素樹脂コーティングの費用は
フッ素樹脂PFAコーティング、膜厚50μm
例えば弊社ST-C-18(蓋付き4L)容器がだいたい¥15,000位(容器含む)から
ST-C-565H(蓋付き200L)容器で¥160,000(容器含む)程度です。
ただし容器の形状や構造、膜厚などによりコーティングの費用が大きく変わり
ますので、お見積をご提出いたします。
スポンジ OK
ブラシ
8
5-6 フッ素樹脂コーティングの再コーティングは
傷ついたり剥がれたり汚れたからといって、フッ素樹脂コーティングの上に重
ねてコーティングは出来ません。
古いコーティングを剥がしてから、再度コーティングをおこないます。
5-7 フッ素樹脂のリサイクルは
フッ素樹脂コーティングのリサイクルについては、まだ明確な指針は出ていな
いようです。
弊社ではフッ素樹脂コーティングの容器はステンレスのスクラップとして引
き取って頂いてます。
9
ちょっと専門的な話 少し専門用語が入りますが、知っていれば加工業者が話す言葉を理
解でき、話がスムーズにすすむと思います。
フッ素樹脂コーティング材の主な種類
○PTFE : 四フッ化エチレン
PolyTetraFluoroEthylene
フッ素樹脂というと、この名前を言うくらい代表的な樹脂です。
フッ素樹脂コーティング材の中で最も高い連続使用耐熱温度260℃を有して
います。
耐熱性のほか、非粘着性、非濡性、低摩擦特性などにも優れています。
溶融粘度が高いためピンホールが発生しやすく耐食用としては適切ではありま
せん。
着色顔料に有害な重金属類を一切含んでいないものを使用すれば、食品用とし
て適しています。
○PFA:四フッ化エチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体
TetraFluoroethylene-perfluoroAlkylvinylethercopolymer
連続使用温度は260℃であり、物理特性、化学特性、電気的特性もPTFE
によく似ています。
しかも熟溶融粘度が低いためPTFEでは得られなかったピンホールの少ない
連続被膜を得ることが可能です。
高温使用の耐食用としては最高の性能を持つフッ素樹脂コーティング材料で
す。
○FEP:四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体
FluorinatedEthylenePropylene copolymer
焼成時に溶融するので、厚くコーティングすることによりピンホールの無い被
膜が得られます。
特に耐薬品性、耐食性、非粘着性に優れています。
連続使用耐熱温度は200℃です。
○PTFE/FEP複合
PTFEの持つ固体潤滑性とFEPの持つ物理的強度により、耐皮膜強度と耐
摩耗性、良好な非粘着性を兼ね備えています。
連続慣用耐熱温度は260℃です。
○その他
強い密着性とフッ素樹脂の特性を持つ、フッ素樹脂と有機バインダー樹脂を含
んだ変性塗料等があります。
6-1
第6章
10
フッ素樹脂の特徴
フッ素樹脂の分子はC(炭素)-F(フッ素)結合が強力で、か
つF(フッ素)が緻密にC(炭素)の周りを覆っている構造を
持っています。
これにより下記のような特徴があります。
○耐食性(耐薬品性)
炭素とフッ素の結合が強力なので強酸・強アルカリ等の薬液が結合できず、高
い耐食性(耐薬品性)を持ちます。
○耐熱性
F(フッ素)が緻密にC(炭素)の周りを覆っている構造を持っているため、
温度が高くなっても酸化されにくくなります。
このため、耐熱性の高い特徴が有ります。
○耐候性
屋外では、太陽光線による光分解作用・酸化作用・気温の変化による膨張収縮
作用等がありますが、フッ素樹脂は、これらの厳しい環境下において、変化・劣
化を起こしにくい特性を持っています。
○非粘着性、非接着性
C(炭素)-F(フッ素)結合が強力なため表面エネルギーが低く、外部に影
響されず接着エネルギーも小さくなります。
接着エネルギーが小さければ非粘着性が高いくなります。
このため水をはじくように、接着剤も弾かれてしまうためです。
○高い撥水性
フッ素樹脂は分子レベルでフッ素と炭素の結合が強い構造によるため、表面エ
ネルギーが低く、他の物質との相互作用が著しく低くなるため濡れにくくなり
ます。
○低摩擦性
高分子のフッ素樹脂はフッ素と炭素の結合が強いため、分子間同士の凝集力が
弱く、小さな力で長い高分子鎖がほぐされてしまいます。
なので他の物質と接触したとき、フッ素樹脂表面の分子鎖は分子が引っかかっ
たりせず容易に変形してやり過ごしてしまいます。
○高い絶縁性(抵抗値)と、小さな誘電率
フッ素樹脂はプラスチックのうちで最も優れた電気的性質を持っています。
高い絶縁性(抵抗値)と、小さな誘電率、誘電体損失が少ない、耐アーク性表
面抵抗などがあります。
また体積抵抗率も、測定限界を超えるレベルの高さです 。
○高純度
基本的に気体からの重合であるために、不純物による汚染は少なく高純度に作
ることが出来ます。
6-2
フッ素樹脂
分子構造 C C
F F
F
C
F
F F
11
浸透とは
○ピンホールレスでも分子が浸透します。
フッ素樹脂皮膜は有機高分子で出来ているために、液体、気体等の分子がフッ
素樹脂皮膜を浸透します。
このためピンホールがないフッ素樹脂でも基材は薬液等で錆びてしまいます。
なので膜厚が厚ければ、なかなか基材まで薬液等が到達しにくいのですが、長
期間使用していますと、徐々に基材が錆びていくことがあります。
6-4
膜厚の厚さ
○膜厚は適度が良いです。
フッ素樹脂コーティングの膜厚は500μmをピークとして、1mm、2mmと厚く
なるにつれてコーティングの密着力が消失するまでの時間が減少していきま
す。
つまり、膜厚が厚くなるとかえって耐食性が低下します。
これは、フッ素樹脂の残留収縮応力による影響です。
6-5
フッ素樹脂コーティングの寿命
○適度な皮膜と丁寧な使用。
一般に言われている寿命とはコーティング皮膜の剥離をいいます。
皮膜剥離は、上述のようなフッ素樹脂のピンホールや残留収縮応力・浸透にて
基材の錆が発生し、これにより皮膜が剥離していきます。
また表面に傷を付けたり、こすって薄くすると剥離の原因になります。
6-3
FDA(アメリカ食品医薬品局)対策
○正常に使用していれば問題はないようです。
医薬品製造に対するFDAの査察に対して、フッ素樹脂コーティングがFDA
規格に準拠しているかどうかは、直接的には査察の対象とはならないようで
す。
内容物が付着していたり、コーティング皮膜が剥がれていたりしておらず、正
常に運用・管理されており、説明できるデータがあればクリアできるようで
す。
フッ素樹脂コーティングの安全性について最も一般的なデータは、「食品衛生
法・食品、添加物等の規格基準」(昭和34年旧厚生省告示第370号)のうち個別
規格に規定された以外の合成樹脂製の器具又は容器包装(昭和57年旧厚生省告
示20号)です。
6-6
12
第7章 用語の解説 ステンレス容器に行うフッ素樹脂コーティングでよく使われる用語を
まとめてみました
50音、アルファベット順です。
7-2 コーティング(coating)
物体の表面に薄膜を付着させて覆うことです。
フッ素樹脂コーティングの場合は基材にフッ素樹脂を焼き付けて密着します。
例えばレンズの表面反射を防ぐため、表面を薄膜でおおったり、防水スプレー
で布・紙の表面が雨などで濡れるのを防いだりすることです。
鉛筆引っかき試験
塗膜を鉛筆で引っかき、傷又は破れができた時の鉛筆の硬度記号で塗膜の硬さ
を表す試験方法です。
JIS K5600-5-4(ISO/DIN 15184)引っかき硬度(鉛筆法)
7-1
7-3 すべり性
触れあった相手の材料がスムーズに動く性質です。
フッ素樹脂は他のプラスチックに比べて、非常に低い摩擦係数をもっていま
す。荷重・摺動により摩擦係数は変化しますが、一般的には0.05~0.10の値を
示します。
7-4
7-5
耐熱性
物質が高温でも分解や軟化がしにくく、連続使用に耐える性質をいいます。
フッ素樹脂の場合は一般的に250℃~300℃程度です。
7-6
低摩耗性
相手の材料との接触や摺動によって、塗膜が削られにくい性質を言います。
摺動部分や材料用のコンベア、搬送帯などに利用される性質です。
耐薬品用
塗膜が酸、アルカリ、塩等の薬品の水溶液に浸されにくい性質です。
基材への薬品の浸透を遅らせ、基材を守るためには、膜厚を厚く加工する必要
があります。
7-7 電気特性
フッ素樹脂はあらゆるプラスチックの中で最も優れた電気特性(絶縁抵抗が大
きい等)をもっています。
絶縁性が高く静電気を耐電してしまうため、導電材を加えて帯電を防止した導
電性コーティング膜もあります。
13
7-8 ピンホール(pinhole)
塗膜面を針で突いたような細くて深い穴の状態。
このピンホールより薬液等が進入し基材の錆の原因となります。
耐薬品性のコーティングの場合は、厚く塗りピンホールレスとします。
7-9 難付着性
フッ素樹脂コーティング膜には、ほとんどのものが付着あるいは、こびりつき
にくく、たとえ固着しても簡単に取り除くことができます。
汚れても簡単に拭き取り、洗浄が出来ます。
7-10 撥水性
塗膜表面が水をはじく性質。
フッ素樹脂コーティング膜は水も油もはじきますので、ほとんどの液体に濡れ
にくく、汚れ防止になります。
7-11 フッ素樹脂
フッ素原子と炭素原子を結合させた合成樹脂(プラスチック)の総称です。
結合する原子によって性質は異なるため、フッ素樹脂は様々な種類に分かれま
す。
フッ素樹脂は1938年にでデュポン(株)で四フッ化エチレンの重合物が発
見されて以来、コーティング材料、成形品、含浸材料、フイルム、建築材等に
広く用いられています。
ふっ素樹脂は、フッ素元素(F)と炭素(C)鎖からなる熱可塑性ポリマーで
す。
フッ素樹脂コーティングのフライパンなど、食器類で一般には有名です。
膜厚
基材に塗布された塗料の膜厚。一般的には焼成後の膜厚で、μm(マイクロメー
トル)単位で表される。
50μmは0.05mmです。
例:カラー版新聞紙70μm、新聞折り込みチラシ50~70μm
7-12
7-13 マイクロメートル(μm)
長さの単位。1mm(ミリメートル)の1000分の1。
現在でもミクロンと呼ばれることがありますが、このミクロンという呼称は
1967年に国際度量衡総会で廃止されています。
7-14 ライニング(lining)
腐食・摩耗などの防止のために、基材に他の材料をはりつけること。
コーティングより肉厚(だいたい400μm以上)の皮膜を言います。
14
撹拌・温調ユニットカタログ
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